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2000-03-29 第147回国会 衆議院 建設委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月二十九日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 大口 善徳君    理事 佐田玄一郎君 理事 佐藤 静雄君    理事 原田 義昭君 理事 宮路 和明君    理事 田中 慶秋君 理事 吉田 公一君    理事 井上 義久君 理事 青木 宏之君       加藤 卓二君    亀井 久興君       岸田 文雄君    小林 多門君       桜田 義孝君    西川 公也君       野田 聖子君    蓮実  進君       林田  彪君    増田 敏男君       松本 和那君    宮腰 光寛君       樽床 伸二君    平野 博文君       前原 誠司君    渡辺  周君       上田  勇君    西野  陽君       辻  第一君    中島 武敏君       中西 績介君     …………………………………    国務大臣    (国土庁長官)      中山 正暉君    国土政務次官       増田 敏男君    建設政務次官       加藤 卓二君    建設政務次官       岸田 文雄君    政府参考人    (環境庁水質保全局長)  遠藤 保雄君    政府参考人    (国土庁大都市圏整備局長    )            板倉 英則君    政府参考人    (資源エネルギー庁公益事    業部長)         大井  篤君    政府参考人    (運輸大臣官房技術審議官    )            藤森 泰明君    政府参考人    (消防庁次長)      細野 光弘君    建設委員会専門員     福田 秀文君     ————————————— 三月二十三日  建設省中部地方建設局における男女平等な職場の実現に関する請願田中慶秋紹介)(第七一七号) 同月二十九日  愛知万博利用した新住宅開発事業の中止に関する請願瀬古由起子紹介)(第八五一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案内閣提出第五九号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 大口善徳

    大口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、大深度地下公共的使用に関する特別措置法案を議題といたします。  この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として国土庁大都市圏整備局長板倉英則君、環境庁水質保全局長遠藤保雄君、資源エネルギー庁公益事業部長大井篤君、運輸大臣官房技術審議官藤森泰明君、消防庁次長細野光弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 大口善徳

    大口委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田公一君。
  5. 吉田公一

    吉田(公)委員 おはようございます。  大深度地下利用法という、かねてから過密都市では、空中を利用するか地下利用するか、平面利用はもう限界に来ているわけでありますから、そういう意味ではむしろ遅過ぎた感があるわけでございまして、もっと早くこういう法案ができていれば、もっと過密都市の改善につながったのではないか、こう思っております。  私ども、耳にいたしましたのは、ちょうど十年ぐらい前に、大深度地下利用しようではないか、伺いますと、法案の準備をしたかどうかわかりませんが、しかし、十年たって、こうして大深度地下利用しようではないかという法律案が出てまいりましたが、この法案提出をなぜ今日にしたのか、あるいはまた、この法案の理念とは何かということを大臣お尋ねをしたい、そう思います。
  6. 中山正暉

    中山国務大臣 先生御所属の民主党の皆様方も大変この問題に御熱心に御協議をいただいていたということを仄聞しておりますが、私も、この仕事につく前から、大深度というのは、日本のような国土の場合、特に過密の大都市の中で、道路の下を、権利関係整理しながら、いろいろな難しい問題を克服して、今まで電力とかいろいろな公共的な仕事でやってきておりましたのを見ておりまして、もっと効率的なものはないかと思っておりましたが、先生のお話のように、十年ぐらいになりましょうか、この問題がいろいろ各地で検討されている。ちょうど私がこうして就任いたしまして、どうするかという判断がありましたときに、これはぜひやろうということを申し上げたわけでございます。  我が国でも、大都市地域において社会資本を整備する場合には、土地利用高度化とか複雑化が進んできておりますことから、地上で実施することは困難なことが増す傾向が出てまいりました。  一方、社会資本整備のための用地を取得するには、地権者との交渉とか合意を経て権利を取得することが基本でございますが、その際、地権者との権利調整に要する時間が総じて長期化する傾向にありまして、権利調整難航等のために効率的な事業の実施が困難だということが多々生ずるようになりました。  これらの理由から、大都市地域における社会資本整備は、主に道路等地下利用、それから合理的なルート設定が困難となる場合がございますので、道路地下中心に浅い地下利用はふくそうしておりまして、このために、地上及び浅深度、いわゆる浅いところでの地下に加えて、地権者による通常利用が行われない地下空間である大深度地下を、国民の権利保護留意をしながら社会資本整備空間として円滑に利用するための制度を導入する必要性が高まってきた、これはもう二十一世紀、ミレニアムに突入しました現代として私は喫緊の問題である、かような判断から提出をいたしました次第でございます。  よろしくお願いしたいと思います。
  7. 吉田公一

    吉田(公)委員 私有権に関する憲法上の解釈が変わったわけでも何でもないので、そういう意味では既にもっと前から法律案としてつくろうと思えばできたわけでありますが、バブルが崩壊して、高度経済成長が終わりに近づいて、今大変経済不況なんですけれども一つは、これによって都市改造並びに効率のよい都市整備ができれば、公共事業、特に大都市圏に対する公共事業費というのは、私は東京ですけれども、非常に少ない。そういう意味からいっても、これを機会に大都市にぜひひとつ投資をしてもらいたい、そう思っているわけでありますが、この法案メリットといいますか、この法案を施行したことによってどういう点が都市改造できるかということでございます。大臣から、またよろしくお願いします。
  8. 中山正暉

    中山国務大臣 大変大きなメリットが予想できると思いますが、今のところ予測されるものといたしましては、大深度地下使用に係るルールが定められることにより、事業の目算が立てやすくなるということ。それから、理想的なルートが確保しやすくなる、直線コースがとれるということでございます。事業期間短縮、それからコスト縮減につながる。三番目には、対象事業公益性の高い事業に限定したことによりまして、その反射的効果としての、早い者勝ちとか虫食い的な利用とか、そういういろいろ予測される、私的な利用による大深度地下の無秩序な開発を防ぐという効果。それからまた、地表や浅い地下に比べて深いほど地震に対して強いそうでございまして、地震に対して安全であり、騒音とか振動の減少、それから、景観保護というのにも、これは電線の地中化なんかには大変有効に活用できると思うのでございますが、そういう景観保護にも役立つ。  まだその他にあるかもわかりませんが、今考えられる点はそういうメリットがあると思います。
  9. 吉田公一

    吉田(公)委員 この法案によって、先ほど申し上げたように、事業が拡大されるということでいえば、経済的にも大変いい効果があるわけでありまして、共同溝の設置、電柱の地中化なんということも言われておりますが、そういう意味では経済効果にも非常にプラスになるわけでありまして、効率のよい公共事業ということを考えれば、ぜひこの大深度地下法によって、早速でも工事ができるように、即、大臣の方で御検討いただきたい、こう思うのであります。経済的にもよい効果ということになれば、今大臣の御答弁にあったように、通したはいいけれどもなかなか実施することは難しいということにならないように、ぜひひとつこのことについては大臣にお願いしたい、こう思っております。  経済によい効果があるかどうかということは、私は三番目に聞こうと思ったのですけれども、今大臣からお答えがございまして、何しろこのことで四十五分もやれなんというものですから、どうやって時間をつぶそうかと思って、同じことを三回も四回も言わなくちゃいけないので容易じゃないと思っているのですが、場合によれば早目に終わりたい、こう思っています。長くやればいいというものじゃありませんしね。  それから、従来のやり方で地下利用して事業を実施する場合と、この法案によって大深度地下利用事業を実施する場合とで、事業費の面で、こういうことになるわけですね。今までは非常に地価が高かった。しかし今、地価は三分の一ぐらいになってしまいましたから、つまり、地下利用した方が土地を買うよりかは安いだろう、こういうこともあって、それぞれできるだけ二重投資をしないようにというので道路の下へ暗渠や地下鉄地下道路なんかを入れたんですけれども、今度は土地が下がっちゃったものですから、大深度の方が安いのか、そうでない方が安いのか。  それから、日本土木技術というのは世界有数土木技術ですから大概なことはできるわけですけれども、そういう意味では事業費の面でどのような違いが出てくるかということについて。
  10. 板倉英則

    板倉政府参考人 コスト面でどうなるかというお尋ねでございますが、個別の事業によりまして当然異なってまいるわけでございますが、大深度地下は浅深度地下に比べまして縦方向掘削量はふえますので、それはコスト増要因にはなるわけでございますが、横方向トンネルにつきましては、大深度地下というのは非常にかたく引き締まった層でございますので、工法的にも容易な面がございます。そしてまた、ルートA点B点最短距離で結べるということで短縮効果もございますので、事業費全体として一割程度のコストダウンは可能であろうというふうに思っております。  また、事業期間短縮効果とか、御指摘のような用地を買わないで済む軽減を考慮しますと、さらにコストダウンが可能ではないかというふうに見込んでおります。
  11. 吉田公一

    吉田(公)委員 時間があるから答弁をもっと長くしてもいいんだよ。  次に、政務次官お尋ねいたしますが、こんなことを言うのは珍しいんだよ、答弁を長くしてくれなんという話は。政務次官、長くにどうぞ。市長の御経験もございますし、遠慮なくやってください。  この法案適用を受ける具体的な事業として例えばどのようなものが想定されるかということでございますが、早速手をつけなきゃならないという緊急の課題というものがあるのかどうか、政務次官お尋ねをしたい、こう思っております。
  12. 増田敏男

    増田政務次官 お答えを申し上げます。  声がちょっと風邪で悪いので、おわび申し上げます。  この法案適用を受ける具体的な事業はどのようなものがあるかというお尋ねでございますが、この法案は、大深度地下の適正かつ合理的な使用とともに、公共利益となる事業の円滑な遂行を目的といたしております。  現在でも、大深度地下に相当するような深い地下が、超高圧送電線それからまた上下水道、それ以外にも地下河川とか地下鉄とかいろいろあるわけでございますが、生活に密着したライフライン施設中心利用されているというのが実情であります。  通常道路地下に設置されるために、曲がりくねったルート、そういう設定を強いられてしまいます。そういう例が多数存在していることは先生も御案内のところかと思います。本法によって、このようなライフライン施設あるいは地下鉄地下河川等公共公益事業がより円滑に実施されることが見込まれるところでありまして、関係事業者も期待しているだろう、このように見ております。  よろしく御協力をお願い申し上げます。
  13. 吉田公一

    吉田(公)委員 大深度地下のように、御承知のとおり、深い地下利用通常では想定されないし、普通の所有権が及ぶところの所有者にとっては、大深度ということで利用価値はありません。したがって、土地所有権は及ばないということが考えられますが、この法案でこの点についてどのように考えているのか。
  14. 板倉英則

    板倉政府参考人 土地所有権との関係についてのお尋ねでございますが、御案内のとおり、民法二百七条におきまして、「土地所有権ハ法令制限内ニ於テ其土地上下ニ及フ」とされているわけでございますので、大深度地下にも形上は土地所有権が及んでいるという理解に立っているわけでございます。  ただし、先生指摘のように、地権者によって通常使用されない空間、この通常というのは現在存在する超高層ビル等を想定しているわけでございますが、通常利用されない空間であり、公益性を有する事業のために使用権設定いたしましても実質的な損失がないだろう、そういうことで、原則として事前補償は要しないという整理をしたわけでございます。  ただし、例外的に補償を要する場合もないとは言えませんので、事後的に請求を待ちまして補償することとしまして、権利保護に遺漏のない仕組みとしたところでございます。
  15. 吉田公一

    吉田(公)委員 地表部や浅い地下利用する場合の手続というのはあると思うんですね。当然、大深度だから四十メーター以下はいいけれども、それ以上の浅いところでは従来のように地下権というのを持っているわけで、そういう場合には、手続的には四十メーターのところはいいとして、それから上へ上がってくる場合に、三十メーター、二十メーター、十メーターとこうなるわけですが、その点については、その都度、深度が浅くなるたびに手続手法が違ってくるのではないか、そう思うんですが、その点どうなんでしょう。
  16. 板倉英則

    板倉政府参考人 お尋ねの大深度地下施設というのは、御指摘のように、地表部とかあるいは浅深度とつながるということが重要でございますので、その浅深度あるいは地表部につきましては、従来から、任意買収とか、あるいは道路占用許可とか、土地収用法に基づく使用権の取得というような方法がとられてきたところでございます。  このうちの土地収用法というのは、御案内のとおり、公共目的のための土地収用使用に関する一般法でございまして、同法は、土地収用使用に伴って補償すべき損失が存在する、通常発生するという前提のもとに仕組みが組み立てられておりまして、事前権利者から権利を取得するために補償金を払ってそれでその事業に取りかかる、こういう仕組みになっているわけでございます。  一方、今回御審議いただいております本法案は、通常土地利用が行われない大深度地下空間対象とすることから、公法上の使用権設定を先行させても損失は発生しないだろうということで、その推定のもとに制度を組み立てておりまして、事前補償手続は不要としているところでございますが、先生指摘のとおり、地上につながらないと大深度地下施設というのは機能を全うできませんので、そこら辺は土地収用法等関係法律と緊密な連携をとってそういった問題に対処していく必要があるというふうに考えております。
  17. 吉田公一

    吉田(公)委員 だから、四十メーター以下の人については利用権だけだ、所有権はない、こういう判断だろうと思うんです。ただ、具体的に補償の問題になったときに、おたくは四十メーターだから補償はない、おたくは三十九メーターだから補償になるんだ、こういう何メーターかを離れて技術的にそういう問題が残ると思うんですが、その辺が非常に難しいと思うんですね。Aという人の地下は四十メーターだ、隣の家は三十九・八メーターなんということがあるわけで、そういう場合なんかは具体的に、それはもうしようがないのかな。
  18. 板倉英則

    板倉政府参考人 今回御提案しております大深度法案におきましては、外形的に大深度地下の定義を設けまして、今御指摘のとおり、通常の場合は四十メートル以下、そうでない場合は支持層の上面から十メートル下以下ということでやっているわけでございまして、後段の方は支持層が特定できるという前提でそういう制度にさせていただいているわけでございます。  そして、そういったところについては、外形的に特定をいたした上で本法案の特別の手続要件適用していくという考え方でございまして、今御指摘のような問題につきましては、一応四十メートル以下ということで外形的に割り切りをしている、あるいは支持層から十メートル下のところ以下を大深度とすることで割り切りをしている、このルールによって今後は運用されていくことになるだろうというふうに思っております。
  19. 吉田公一

    吉田(公)委員 所有権はある、しかし利用権はないということなんですが、そうすると、利用権がないから利用権補償というのはできないとして、所有権はあるということになりますと、四十メーターだろうが五十メーターだろうが所有権はあるんだと。したがって、私は、所有権を持っているんだから、むしろ民法上は利用権よりか所有権の方が強いわけですが、所有権を主張されてということになりますと、補償だとか法律上の問題はどうなるかということなんですが。
  20. 板倉英則

    板倉政府参考人 この法案におきまして、今先生の御指摘の問題は法律上の問題としては一番大きな問題でございまして、土地所有権との関係と本法案によりまして設定いたします公法上の使用権との関係はどうなるかということでございますが、これは、先ほど申しましたような形で大深度地下を一応定義しまして、それを外形的に把握した上で本法手続適用していくことに整理をさせていただいたということでございます。  したがいまして、土地所有権は当然その大深度地下部分についても及んではいるわけでございますが、判例通説等では、利益の及ぶ範囲所有権範囲理解することが大方の理解のようでございますので、したがって実質的な損失はないと推定されるということで、今回の制度の構築が可能になったというふうに理解しております。
  21. 吉田公一

    吉田(公)委員 これは土地収用法適用されるのかどうかということが一つと、それから、よく大規模工事をやったりするときに環境影響評価というのをやるわけですが、大深度法にはその環境影響評価というものがあるのかないのか。それから、さっき言ったように問題点はどうなっているのか、この二点。
  22. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のとおり、土地収用法あるいは環境影響評価法というのがございまして、今回の大深度法案というのは新法でございますので、土地収用法との関係で申しますと、土地収用法一般法で、大深度地下法は大深度の特性にかんがみた特別法である、こういう理解でございます。両制度が併存している状態でございますので、大深度地下利用する場合に、従来のように土地収用でいけないことはございませんが、非常に手続が煩雑でございますので、恐らく今回の大深度法手続に沿って使用権設定を求めてくるようになるだろうというふうに考えております。  それから、環境影響評価法との関係で申しますと、本法に基づく使用権設定に際しましてはアセス手続をとっていることが前提になりまして、アセスの終わったものについて使用権の申請をしていただくということで両法の整合性を図っているところでございます。
  23. 吉田公一

    吉田(公)委員 要するに、環境影響評価というものは必ずやるというわけじゃないんですね。
  24. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のとおり、環境影響評価法というのは対象事業が決まっておりますので、対象にならない事業もございます。それにつきましては、本法環境保全上必要な特別の配慮をしなきゃいけないという規定がございまして、それを受ける形で基本方針というのを定めるわけでございますが、環境保全に関する基本方針の中で、環境影響評価法適用されないような事業本法対象事業につきましては本法の中で十分対策をとる、そういう仕組みにしているところでございます。
  25. 吉田公一

    吉田(公)委員 例えば、工事をやる場合に地下水流なんかに影響を与えることも多々あると思いますし、それから、最近は大都市では井戸はありませんが、防災対策井戸をわざとつくっているところもございます。その際に、この工事手法でいって地下水脈井戸がれがあったときにはどういう対処をされるのかということでございます。
  26. 板倉英則

    板倉政府参考人 地下水の問題というのは、大深度地下については特に留意をしなきゃならない問題というふうに私ども理解しておりまして、大深度地下水の特徴といたしましては、高い地下水圧を受ける、それから大深度は、地下水脈がございます中深度あるいは浅深度と異なりまして地下水の流動がほとんどない、非常に遅いということが言われております。  それで、その高い地下水圧が作用することに対しまして、横方向トンネル掘削するということをやるわけでございますが、最近のシールドマシン技術進歩によりまして、密閉式シールド工法ということを採用すれば地下水にほとんど影響を与えずに掘削することが可能な段階に至っております。  それから、縦方向掘削していく場合でございますが、これはやはり地下水にかかる場合が過去にもございまして、これにつきましては、掘削に際しまして地下水影響ができるだけ生じないように適切な工法の選択ということでございますが、例えば連続地中壁を設置する場合に粘土層まで届くように設置するというようなことによりまして、影響を最小限にとどめることが可能かと思います。  それで、こういう工事をいたしますと時たま井戸がかれるというようなことが、実際そういう損害が発生することもございまして、これについてどう考えているかということでございますが、まず、公共事業の施行に伴います井戸がれの問題というのは、私どもが今まで議論しておりました損失補償世界とは違って、いわゆる損害賠償世界であるというふうに理解しているところでございます。  そして、先生の御指摘いただきましたような損害が実際に生じた場合には、その生じた損害に対して補てんすることになるわけでございますが、あらかじめ損害の発生が予見される、あるいは把握できるというときには事前賠償をするように基本方針等で指針を示していきたいと思っているところでございます。  いずれにしましても、地下水の問題というのは非常に大きな問題でございますので、事前の調査を前広に行うように事業者に求めるとともに、損害が現に発生した場合には速やかに適切な対応をとるよう慎重に指導してまいりたいと思っております。
  27. 吉田公一

    吉田(公)委員 こういう小冊子がありますが、この中で、「トンネル豆知識」、新関門トンネル、それから東京湾アクアライン関越トンネル、「世界で一番長い道路トンネルは、」こういうことでありますが、大深度やるときに長いトンネルのことを一生懸命説明したってしようがないんで、一番深いトンネルというのはどれなのかということでございますが、どれなんですか。一番長いというのは書いてあるけれども、長いのじゃなくて深いというのを言ってくれなきゃ。
  28. 板倉英則

    板倉政府参考人 失礼いたしました。  トンネルで一番深いのは何かというお尋ねでございますが、私どもの把握しております、これは南アフリカの例でございますが、鉱山のためのトンネルが三千五百七十八メートルに達しているということを資料で把握しております。
  29. 吉田公一

    吉田(公)委員 いや、アフリカトンネルじゃなくて、できれば日本トンネルを言ってもらいたいんだよ。アフリカなんか行ったこともないのに。
  30. 板倉英則

    板倉政府参考人 大変失礼しました。  我が国トンネルの例で申し上げますと、関越トンネルが土かぶりが約一千メーターということで、一番深い方に属すると思います。
  31. 吉田公一

    吉田(公)委員 大深度地下法という法律をぜひ通して、そして都市に利用することによって、経済効果は上がるし、都市基盤整備にもつながるし、遅すぎた感がありますけれども、ぜひこの法律案を通して、具体的に建設省でこの法案が即適用して実施できるようにお願いをしたい、こう思っております。  いろいろ質問はありますけれども、これ以上やっていると一般質問みたいになっちゃって、大深度法はとにかくぜひやってもらいたい、しかも工事もぜひやってもらいたいということにしたい、こう思います。  十六分残っております。次は宮腰さんの質問の番のようでございますが、基本的には大臣がいるときに質問をする、こういうことですから、宮腰さんに大臣がいるときに質問をさせてあげようといういい気持ちで、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  32. 大口善徳

    大口委員長 宮腰光寛君。
  33. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 吉田先生の御配慮で、大臣のおいでになる時間帯に質問ができるということでありまして、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  この大深度地下利用法、極めて大きな意義のある法律だと思っております。とにかく、土地所有者への事前補償を原則不要とするということによりまして、大都市での公共事業、公益事業が難航する最大の原因となっております用地問題を回避して、事業期間短縮コスト縮減が可能になるということでありまして、本当に極めて重要な期待をされている法案ではないかというふうに思っております。  先ほどの御答弁にもありましたけれども、これまでも、超高圧地中送電線や上下水道のトンネルあるいは液化天然ガスの地下タンク等のライフラインの施設を初め、鉄道や地下河川でも大深度利用の実績がありますけれども、先ほど大臣からおっしゃったように、早い者勝ちあるいは虫食いというような利用を防ぐためにも、早期に大深度地下利用法を制定し、利用ルールを定めることは大きな意義があるというふうに思っております。  そこで、この法案が成立することによりまして、具体的にどのような事業が進んでいくということを想定しておいでになるのか、大臣にお伺いしたいと思います。
  34. 中山正暉

    中山国務大臣 先生のお話のとおりで、大変これは希望的な、日本のインフラストラクチャーが進展する上にも大変効果的なものであろうと大きな期待をいたしておりまして、それで政府提案ということにさせていただいて、一にかかって国家的な大計画の礎を築くものだ、私はこう思っております。  大深度地下の適正かつ合理的な使用というのは、公共利益となる事業の円滑な遂行を目的とするものということで、現在でも大深度地下に相当するような深い地下が、超高圧送電線、上下水道等の生活に密着したライフラインの施設中心利用されておりますけれども通常道路地下に設置されるため、曲がりくねったルート設定が強いられているのが多数、今までいろいろ進捗状況に影響を与えるようなことが多かったわけでございますが、本法によりまして、このようなライフラインの施設地下鉄地下河川公共公益事業の円滑に実施されることが見込まれまして、関係事業者も大きく期待をしておりますし、大変コストの縮減にもつながる。  今は三大都市圏を大体中心にしておりますけれども、将来は、これは日本列島と言わず、アジアの諸国とつながっていく大きな効果、例えばドーバー海峡なんかにも大トンネルができたわけでございますが、私なんかは、これはロシアの国会議員にも話をしましたが、やがてシベリア開発なんというのは、日本の東北、北海道を開発するには、これは大きな大深度でシベリア大陸ともつながる可能性のあるものに発展していく、鉄道を走らせれば。また、チューブ式の方式でやりますれば、これは安全には最も適した交通機関になる可能性もあるわけでございまして、私は、二十一世紀の夢は、そういう意味でのいわゆる世界的な規模での地下を使ったいろいろな交流にも、これは将来の夢でございますが、発展していくものと考えております。
  35. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 大変壮大な夢だというふうにおっしゃいました。将来は日本列島全体に、あるいはアジア、世界にということでありますが、当面この法律の適用地域をどうするかということについてお伺いいたしたいと思います。  今ほど大臣も、現在のところ三大都市圏を想定されているということでおっしゃいました。この適用対象地域については政令で定めるということになっておりまして、大深度地下使用しようとする計画が具体化されれば、例えば政令指定都市なども対象地域にすることも検討されていいのではないかというふうに思います。  やはり事業期間短縮コスト縮減が可能になる、あるいは、一番の大きな問題であります、土地所有者への事前補償を原則不要とするということでありますから、浅深度地下利用が進んでいない地域においても、例えば鉄道を、地下鉄を引くというときに、浅深度地下よりも、まず何よりも大深度地下を掘って事業をしよう、浅深度地下があいておっても大深度地下をまず使いたいという構想が当然出てくると思います。当面は三大都市圏を想定されているということでありますけれども事業が具体化されるということになりますと政令指定都市なども対象に含めてもいいのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  36. 中山正暉

    中山国務大臣 先生の御指摘のとおりだと思います。  今、十二の指定都市があると思いますが、本法は、土地利用高度化とか複雑化が進んでおります大都市地域において、公共利益となるような事業効率的な実施が困難となっている状況を踏まえて制定しようとするものでございますので、当面は対象地域とすべき必要性の高い地域として三大都市圏ということを想定いたしておりますが、その他の地域におきましても、人口の集中度とか土地利用の状況等の事情を勘案しまして、大深度地下使用する具体的な必要性に応じて、政令で機動的に対応をしてまいりたい。  これは、これから中央省庁も一府十二省になりますでしょうが、広域行政というのも対象にしながら、この大深度利用というものが各都市の連携、いわゆる地方の時代と言われますから、そういう地方の各都市を対象にしていろいろと想定をしてまいる必要がある、私はかように考えております。
  37. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 これで大臣への質問は終わらせていただきたいと思いますので、あとは政務次官にお願いしたいというふうに思います。  次に、大深度地下使用権についてであります。  この大深度地下利用法によります使用権土地所有権関係でありますけれども、憲法第二十九条第三項に、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」あるいは民法第二百七条に、「土地所有権ハ法令制限内ニ於テ其土地上下ニ及フ」という土地所有権に関する規定があります。  今回、大深度地下における使用権設定に当たりまして、土地所有権に対する事前補償を原則不要といたしましたけれども、どのように法的に調整がなされているのか、政務次官にお伺いしたいと思います。
  38. 増田敏男

    増田政務次官 お答えを申し上げますが、民法第二百七条におきまして、「土地所有権ハ法令制限内ニ於テ其土地上下ニ及フ」というふうにうたわれておりますが、ただいま先生が申されたとおりであります。大深度地下にも土地所有権は及んでいると解されております。  しかしながら、大深度地下地権者によって通常使用されない空間であり、本法により、公益性を有する事業のために公法上の使用権設定しても、地権者に実質的な損失が生じないと考えられることから、使用権設定手続を先行させることとしたわけであります。  その際、国民の権利保護に遺漏のないよう、例外的に損失がある場合には、事後的に請求を待って補償することとしております。  以上でございます。
  39. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 使用権設定手続でありますけれども、この法律の中でもいろいろな形で土地所有者権利保護ということがうたわれております。具体的にどのようにその権利保護が図られているのか、あるいはまた第四十一条で、土地収用法に基づく処分について、行政手続法第二章の「申請に対する処分」あるいは第三章の「不利益処分」の規定は適用しないということになっておりますが、その理由はどのようになっているのか、伺いたいと思います。
  40. 板倉英則

    板倉政府参考人 使用権設定に際しまして本法が予定しております手続を簡単に申しますと、まず、使用権設定の処分を行う使用権設定大臣たる国土交通大臣あるいは都道府県知事は、事業者に対して、地権者への説明会の開催等の周知措置をまずとってほしいということを要請することができます。それからもう一つは、使用権設定に当たりまして、あらかじめ、これは都市計画法とか収用法と同じでございますが、一般公衆に対する公告縦覧を行い、あるいは地権者を初めとする利害関係人が設定権者に対して意見書を提出することができる、さらに、使用権設定権者は、必要に応じまして、公聴会を開きまして一般の意見を求めることもできます、というようなことで、権利保護に十分配慮した規定としているところでございます。  それから、お尋ねの行政手続法との関係でございますけれども本法では、当事者間で補償の額の協議が不調に終わったという場合には、土地収用法による収用委員会の裁決を求めるということ、土地収用をちょっとおかりするということにいたしておりますが、その処分は、土地収用法に定める、より権利保護に手厚い特別な、準司法的な手続通常言われておりますが、そういう手続を経て慎重に行われますので、土地収用法もそうでございますが、行政手続法の規定は不適用としたところでございます。
  41. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 次に、使用期間についてであります。  国土交通大臣または都道府県知事が使用の認可をする際に、使用期間を告示することとされております。常識的に考えまして、鉄道や道路などを大深度地下に建設する場合に半永久的な使用というのが想定されるわけでありますが、使用期間の設定についてはどのように考えておいでになるのか、伺いたいと思います。
  42. 板倉英則

    板倉政府参考人 本法の認可に当たりまして、構造物の安全性の確保ということを認可の一つの要件にいたしておりまして、これは構造物が一定の耐力を有することということでございます。そうなりますと、通常、大深度地下トンネル等の構造物を設置する場合は、先生指摘のとおり半永久的な使用になることが多いだろうと想定されます。  それで、地下鉄等の実務におきましても、例えば都市高速鉄道の構造物存続中というような、明確な使用期限を定めずに裁決をしている例がございますが、本法におきましてもこういった通例に従いまして、使用期間については、土地収用法による使用権の先ほど言いましたような例に倣いまして、特定の期限を定めず、当該施設の存する限りということを規定することを想定しております。
  43. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 使用権設定に伴う補償についてでありますが、この法律には、大深度地下の一定の範囲における立体的な区域であって、対象事業を施行する区域である事業区域内において井戸や温泉などの既存の物件がある場合には事前補償対象となるということになっております。しかし、事業区域の周辺にある井戸や温泉が事業実施後に影響を受けた場合、あるいは水脈の関係などで周辺に地盤沈下が起きた場合などの補償は既存の法律適用することになりまして、原則として訴える側に立証責任が伴うわけであります。  大深度の場合、浅い地下よりも被害の因果関係を立証することが困難であるというふうに考えられますので、基本方針の中にこのような被害に関する配慮を盛り込むことができないか、伺いたいと思います。
  44. 板倉英則

    板倉政府参考人 公共性を有する事業を実施していく際に、確かに井戸がかれるとか温泉に影響があるとかいう問題が、周辺への影響がございますが、私どものこの法律の立場というのは、そういうものを事前にできるだけ詳細に調査しまして、損害が生じないように必要な対策を講じていくということでございます。  井戸がかれるという現象につきましては、事業区域周辺で起こる現象でございますが、これについては、先生案内のとおり、私どもがこの法律の中で決めました損失補償の問題ではなくて、先生指摘のように民法の一般通則に従うということであろうと思います。特に、七百九条の不法行為責任の損害賠償の問題でございますが、これは裁判所の最近の実務を見ておりましても、事案によっては事実上の挙証責任を起業者側にむしろ負わせる、つまり請求者の方は、起こった事実とその工事との関係についてある程度の蓋然性が証明されれば足りるということで、あとそれを否定するには起業者側がそうでないということを言わないと、裁判所としてはその請求者の請求を認容するというような判例実務になっているようでございます。  それからもう一つは、工作物ができ上がっちゃった後の問題で、そういう井戸がかれるというような現象が起こった場合には、工作物の責任というのは無過失責任でございますので、これは先生指摘のような問題は生じないと思っております。  いずれにしましても、周辺の井戸等につきましては、あらかじめの物件調査等で十分把握しまして、特に損害が発生するような場合には適切な対応をするように基本方針の中で明確に記載していきたいと思っております。
  45. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 最後の質問ですけれども、大深度地下における安全の問題についてであります。  法案第五条に、大深度地下使用に当たっては、安全の確保及び環境保全に特に配慮しなければならないと定め、第六条におきましても、安全確保、環境保全に関する事項を基本方針の中に盛り込むということが定められております。  そこで、運輸省の方にお伺いしたいのですが、先ごろ起きました営団地下鉄日比谷線中目黒駅での脱線衝突事故に絡んでお伺いをいたしたいと思います。  脱線が発生したカーブは半径百六十・一メートルでありまして、運輸省令で定める鉄道のカーブの基準百六十メートルをわずか十センチクリアしているにすぎなかったわけであります。半径百六十メートルの基準を満たしていないカーブは営団地下鉄全体で二十九カ所に上るわけでありますが、そのうち、脱線防止ガードの設置基準とされる半径百四十メートル以下のカーブは十七カ所もあります。さらに、運輸省令の基準すれすれの半径百六十メートル以上百六十一メートル未満という急カーブは、事故が起きた日比谷線だけでも十三カ所もあるというふうに聞いております。  地下鉄で急カーブが多いのは、運輸省令の基準をぎりぎりに満たしつつ建設コストを抑えるというねらいのほかに、浅深度地下においては、地下鉄の線路が民有地の下を通る場合には用地費や使用料がかかるので、できるだけ道路の下を通すために、カーブが民有地にかからないよう交差点の範囲内で曲がり込もうとするためだということを聞いております。  大深度地下利用できるということになれば、民有地に対する事前補償が原則不要となり、極力道路の下を通るという制約を免れて、カーブの描き方にも余裕が出る、そうなればこのような脱線事故は起きなくなると考えられるのではないかと思います。  法案第十六条「使用の認可の要件」の第五号に「事業計画が基本方針に適合するものであること。」と定められておりますが、大深度地下における事故発生を一〇〇%防止するために、鉄道のカーブの基準を見直したり、脱線防止ガードの設置基準なども当然見直す必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 藤森泰明

    藤森政府参考人 一般的に地下鉄に曲線が多いということは、ただいま先生が御指摘の理由によるものが多いというふうに私どもも考えるところでございます。  御指摘の、線路の最小曲線半径についてでございますが、普通鉄道構造規則の規定によりまして、当該線路の輸送特性に応じた設計最高速度ごとに定められております。例えば、設計最高速度が時速百十キロメートルを超える場合には六百メートル、あるいは時速七十キロメートル以下の場合には百六十メートルというふうに定められております。また、地形上等のためにやむを得ない場合には、設計最高速度にかかわりなく百六十メートルとすることができるようになっているところでございます。  これによりまして、鉄道の線路が地下にあるかあるいは地上にあるかにかかわりませず、線路及び車両が所定の水準に整備され、そして所定の速度で運転が行われることによりまして、通常の状態における列車走行の安全性が確保されているところでございます。  また、もう一点、御指摘のございました脱線防止ガードについてでございますけれども、これも普通鉄道構造規則及びその告示において定められておりまして、曲線半径の小さい曲線等に設けるというふうに規定されております。これを受けまして、鉄道事業者が具体的な設置基準を、曲線におきます運転速度とか車両性能とか線路の状況等を勘案して定めているところでございます。  御指摘の技術基準についての見直しといいますか検討についてでございますけれども、日比谷線の事故に対応いたしまして、運輸省の方では事故調査検討会を直ちに立ち上げまして、原因究明と再発防止対策というものを検討しているところでございます。  今後、この事故調査検討会でさらにより詳細な検討を行っていただきまして、その検討を踏まえつつ、技術基準の見直しについても適切に対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  47. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 終わります。
  48. 大口善徳

    大口委員長 樽床伸二君。
  49. 樽床伸二

    樽床委員 民主党の樽床でございます。  大深度地下法案に対しまして、質問をさせていただきます。多少重複があるかもわかりませんが、お許しをいただきまして、よろしくお願いをしたいと思います。  まず、先ほど来からの我が党の吉田委員の質問に対してもいろいろお答えがありましたけれども、総体的に建設省及び政府の説明ではもういいことばかりでありまして、何も今回の法律について悪いところはない、このようなニュアンスで聞こえるわけでありますが、先ほど来より、地下水の問題とか地盤沈下等々、若干の指摘はあったわけでありますが、そういった問題の発生をどの程度予期しているのか、まずお聞きいたしたいと思います。
  50. 増田敏男

    増田政務次官 お答えをいたしますが、この法案の実施によりまして、地下水の湧出やらあるいは地盤沈下、地震、火災などの類焼など、そういった悪い点の関係はどう考えているかというお尋ねだったと思います。  大深度地下に想定される代表的な問題点といたしましては、ただいま御発言がございましたように、安全面では火災、地震災害の問題、それから環境面では地下水位の低下による取水障害や地盤沈下の問題等であります。これらの問題については、臨時大深度地下利用調査会に技術・安全・環境部会を設置いたしまして、それぞれの分野で専門家により約三年間にわたり慎重に審議して、問題点及び課題に対する対応策について取りまとめたところであります。  大深度地下利用については、現状では調査分析の事例が必ずしも十分とは言えませんが、この面で相当対策の進んでいる長大トンネルやらあるいは超高層ビルの事例を参考としながら、今後さらに調査研究を進め、データ、知見の蓄積に努めてまいります。  本法案による使用権設定の審査に当たっても、個別具体の事業に即して万全の対策がとられるよう慎重を期してまいらなければならない、このように考えております。
  51. 樽床伸二

    樽床委員 今御答弁がありました何とか審議会、それで十分にいろいろ検討していくというお話でありましたけれども法案の中に盛り込まれておるのは、そういう形で逐一考えていくというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  52. 増田敏男

    増田政務次官 おっしゃる方向であります。  そこで、一つ、御心配の災害についてなのですが、この関係は、まず大丈夫だろうというような前提でいろいろと取り組みをしてきました。もう一つは、万が一起きたらどうかというようなことを踏まえて検討を願った、このように聞いております。  そこで、大深度地下使用協議会についてですが、これは、公共利益となる事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用を図るために必要な協議を行うため、対象地域ごとに、政令で定めるところにより、国の関係行政機関及び関係都道府県により大深度地下使用協議会を組織して取り組んでいく、こういうような仕組みができているわけであります。万全を期したいと思います。
  53. 樽床伸二

    樽床委員 私も、別にこの法案に反対をするわけではありませんので、やいやい追及をするわけではありませんが、今、ちょっと気になりましたのは、火災について、大丈夫だという前提で議論を始めて、それで万が一起こったときにはどうするのだ、こういう方向に議論が行ったという趣旨のお話があったわけでありますけれども、火災というのは大体あるということ、地下でも、深いところでも地上でも同じでありまして、起きたときの問題でいくと、やはり密封されている分だけ、また深い分だけしんどくなるのではないかというふうに思いますが、火災については、大丈夫だという前提で始めたというのはちょっといかがなものかなと思いますが、これは別に質問を予定しておりませんでしたけれども、次官、どうですか。
  54. 増田敏男

    増田政務次官 私の言葉が足りなかったかどうかわかりませんが、二通りに考えてもちろん研究しました。まず火災は大丈夫か、このことに対して取り組んだ、そして不幸にして起きた、このことに対してどうか、こういうような取り組みをしたと聞いていると申し上げました。大丈夫でやっていって、あら、火事になっちゃった、大変だ、そういう意味ではございません。  もちろん、こう言うと何なんですが、今日までの例を見ますると、人間の常識、知識を超えて災害は起きております。したがって、真剣に、慎重に取り組んでいかなかったらという考え方は、先生と同じであります。一生懸命努めてまいりたいと思います。
  55. 樽床伸二

    樽床委員 人類始まって以来、火災と地震というのは常にあるわけでありますから、また予測できないところで出てくるわけでありますので、そこら辺の点につきましては、十分に御配慮、また万全を期していただきたい、このように思っております。  そういう点からいきますと、我々にも若干の御説明をいただいたところによりますと、既に大深度に相当する地域、地域といいますか、そういうところで事業が行われている。先ほど大臣答弁の中にもありましたように、地下鉄とか超高圧地中送電線とか、また上下水道というふうに、この法律に相当する深さのところで事業がもう既にあるわけでありますが、そういうところにおいて、安全面とか環境面において何らかの調査、どういう影響が出るかということはされておられるのでしょうか。当然されているとは思いますが、いかがでしょうか。
  56. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生指摘のとおり、既に大深度地下でいろいろな利用が進められております。その中で、いろいろな安全面の問題、あるいは環境面での知見の蓄積というのが進んでおります。  一例で申しますと、トンネル等の地下構造物に長期的にどのような荷重がかかるかということを把握するために、荷重を継続的に観測したり、あるいは、地下水への影響ということが大事でございますが、その影響を把握するために、地下水位を長期にわたり観測している例もございます。  今申し上げましたのはほんの一例でございますけれども、いずれにしましても、こういった先行する事業の実施によって得られた安全上あるいは環境上の蓄積されたデータ、知見というものを、今後の本案の施行に当たりまして十分活用してまいりたいと考えております。
  57. 樽床伸二

    樽床委員 それなりにやっておられるということでありますが、その結果において、安全上問題がない、環境上問題がないという結果が出ているんでしょうか。今後の参考にしていくというのは、それはもちろんそうでありますが、結果についてどのような結果が出ておるんでしょうか。
  58. 板倉英則

    板倉政府参考人 私ども、今掌握したことを申し上げますと、先ほどトンネルの例を申しましたが、トンネルにかかる荷重につきまして、大深度の場合は、土圧に比べて水圧というのが主たる支配的な荷重でございます。そういうことがわかりました。  それから、特にシールドトンネルという場合に、最近は、地下水影響がないような密閉式シールド工法というものを採用することによりまして、高性能の防水シールを使ってその止水対策をするとか、そういうようなことで、地下水位に大きな変動を与えることなく地下工事が実施できるというようなことがわかっております。  まだまだ十分とは言えませんけれども、今後とも、その蓄積されたデータをさらに内容のあるものにしていきまして、こういった最新の知見をもとに本法の運用の適正を期していきたいと思っております。
  59. 樽床伸二

    樽床委員 別に批判のための批判をするわけではありませんが、昨今、役所から出てくるいろいろな調査結果について、本当にそうなのかという声が国民の中に結構あるわけでありまして、ですから、いろいろな事故等々が起こって、その調査結果に対する信頼が揺らいでいるという点もあろうかと思います。  ですから、必ずこの使用協議会、現在では東京、大阪、名古屋、三大都市圏でつくられるだろうということでありますが、それぞれのところにおける調査の情報公開ということはきっちりやっていただかないと、知らなかった、いやこれを隠していた、または間違っていた、それから操作していたということがあると、これは深いところですから大変なことになりますもので、その公開、きちっと皆さん方に偽りなくお示しをして御判断をいただくというようなこと、また、それについて現状はこうなので、これからのいろいろな方向性からするとこういうことが予想されるかもわからないというようなことも含めて、きちっと情報公開をしてもらわないと困るというふうに思っておりますが、いかがでしょうか。
  60. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生案内のとおり、提出させていただいております本法案の第八条というのがございまして、  国及び都道府県は、公共利益となる事業の円滑な遂行と大深度地下の適正かつ合理的な利用に資するため、対象地域における地盤の状況、地下利用状況等に関する情報の収集及び提供その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。 ということで、御指摘のとおり、大深度地下行政に当たりまして、情報公開というのは非常に重要な要素だと思っております。  私どもは、蓄積された知見については情報公開に努めさせていただきますし、また、事業者の側でも、そういうものを十分参考にしていただきながら、最先端の技術でこの問題に対応していただきたいと思っているわけでございます。
  61. 樽床伸二

    樽床委員 制度的にいろいろなことができましても、問題は人の気持ちの問題でありますから、使用協議会を構成するそれぞれの都道府県、また中央省庁を含めて仕組みはできておりますけれども、それがきちっと動かないというようなことのくれぐれもないように、ちょっと生意気なことを申し上げますならば、心してそのあたりの問題をきっちりと公開していただきたい。  それで、おかしなところがあったら、それはやめるという勇気も必要なわけでありまして、ただ単に、一つ事業で、一度決めたからもう目をつぶってどんどん前に進んでいかなきゃならぬということではなくて、予測される危険性があるならば、そこは一度立ちどまるというぐらいの勇気を持ってやっていただきたい、このように思っているところであります。  次に、この法案に対しまして、関係機関といいますか、事業者といいますか、当然予測できるのは、例えば電力、ガス、鉄道等々の民間事業者、またそれぞれの地方自治体ということもあります。そこら辺から、どういう意見がこの法案に対して寄せられているんでしょうか。
  62. 板倉英則

    板倉政府参考人 現在、大深度利用をお使いいただいている例としましては、先ほど以来、超高圧送電線あるいは上下水道等の生活に密着したライフラインが中心であるということをるる申し上げてまいりました。  いずれにしましても、こういった事業者は、民地の地下を通るということになりますと、地権者の一々の同意がなければいけない。東京のような非常に錯綜しているところでは、どこに地権者がいらっしゃるかもわからないというようなことで、それにすごく時間がかかってしまっているということがございます。また一方、道路も相当込み合っておりまして、浅いところはもうほとんど満杯に近くなっておりますので、そういった意味でも、新しい大深度法案必要性というのがあるかと思います。  事業者あるいは関係自治体から寄せられている意見といたしましては、この法案ができれば、大深度地下使用に係る明確なルールが定められることになりますので、事業の目算が立てやすくなるというようなことが一点。  それから、先ほど以来出ておりますように、ルートについて、理想的なルートが確保できれば、ルート短縮あるいは事業期間短縮という、コスト削減につながるような面も大きく期待できますので、そういうことで、ぜひこの制度をつくっていただきたいというような御要望をいただいておるところでございます。
  63. 樽床伸二

    樽床委員 そうすると、それぞれの関係者からは、ぜひともやってくれ、こういう意見が政府の方に来ていると理解をしてよろしいんだろうというふうに思っております。ただ、先ほどの質疑の中にも若干ありますけれども、今回の法律は、三大都市圏にとりあえずは限定している、先ほど政令都市云々というお話もありましたけれども。  私は、三大都市圏に住んでおりますから、個人的には別にさほど気にしておりません。そして個人的には、いろいろおしかりを受けるかもわかりませんが、人のたくさん住んでいるところに対して、もっと建設行政が重点的に行われるべきだろうというふうな個人的見解は持ってはいるものの、全体、国家的な観点からいくと、過密過疎の問題がさらに進んでいくのかもわからない、こういう危惧を抱く方も多々おられるわけであります。  そういう点からいくと、地方の、地方と言うと失礼でありますね、三大都市圏以外の自治体等々はこの問題についてどのようにお考えになっているのか。それとも、余り関心がなく、ほとんどこういう法案のことをお知りでないということかもわかりません。  そういったことも含めまして、国土の均衡ある発展という点から考えて、さらに密集地に人口が集中をして過疎過密が進むのではないかという危惧に対しては、どのようにお考えでありましょうか。
  64. 増田敏男

    増田政務次官 お尋ね関係でございますが、本法案は、土地利用高度化複雑化が進んでいる大都市圏地域において、公共利益となる事業効率的な実施が困難となっている状況を踏まえまして、大深度地下使用して事業を行う際の権利調整ルールを明確にするとともに、大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることを目的としております。御心配いただきました関係等も踏まえながらお答えしているわけでありますが、特定の事業の促進をもちろん意図するものではございません。したがって、御懸念のような問題は生じなかろうというふうに考えております。  また、本法案は、大深度地下において電気、ガス、上下水道、電気通信等の生活に密着した身近なライフライン等の整備を行うためのものでありまして、まさに生活に密着した住民のための施設整備に資したい、このような考え方から進めているところであります。よろしくお願いいたします。
  65. 樽床伸二

    樽床委員 先ほど申し上げましたように、私は、今の次官の御説明に対して、それはそうだろうと。都市部に住んでおる実感からすると、それはそのとおりだなというふうには思うものの、過疎過密ということから考えますと、いわゆる都市部の利便性がさらに高まるという話でありまして、この法案を通してルールを決めて大深度を使っていく。そうすると、そこを使うことによってさらに都市部の利便性が高まるわけですね。そしてまた、上下水道も整備されて生活もよりよくなっていく、こういうことになると、またおのずと都市部に人が集まってきやすい。これは、環境ができていくわけでありますから、そこら辺について危惧をされている人がおられるのではなかろうかというふうに私は予測をしているわけでありますけれども、今の次官の御説明によりますと、そういう懸念はないというふうにおっしゃったわけでありますが、本当にないのでしょうか。
  66. 増田敏男

    増田政務次官 私は、逆に人口がふえない方におりますので、御心配をいただいて恐縮に存じます。  確かに、二十一世紀は都市の時代だ、一口にこのように言われております。したがって、このままおけば嫌でも過密過疎の関係はどんどん進んでいってしまうだろう、このように考えまして、御心配いただいたような関係は、私の頭の中にももちろんございます。  そこで、行政側といたしましては、今先生が御心配いただいたそれらの点を十分踏まえながら、そういったことが、できるだけ差ができないような展開がなる、こういうふうに広くすべての行政に期待もし、私も取り組んでいこう、こういう考え方でございます。いろいろありがとうございます。
  67. 樽床伸二

    樽床委員 それ以上の話は当然ないと思いますが、とにかく、全体を配慮するにはどうしたらいいのかということでいくと、この法案が三大都市圏に本当に限るべきかどうかというところまで議論がいくのだろうというふうに思います。そういうようなことも含めて、また、よりよき見直しという観点からのいろいろな意味での不断の配慮、検討を続けていただきたい。  私、いつもいろいろな委員会で言っておりますが、ややもすれば、法案をつくればもうそれで終わりで、後はほかの法案の作成に入る、またほかの施策の方に重点が、たっと移りまして、あれどうなっていたんだと言ったら、いや、どうなっていましたかなと言うので、ちゃんと動いているのですかと言うと、さあどうでしょうかね、こういうことはないようにぜひともお願いをしたい。次官もそのことはしっかりと、二十年も三十年も次官をされるわけではありませんから、引き継ぎをきっちりとしていただきたい、このようにお願いをしておきます。  それから、一つお尋ねをいたしますけれども、昨今、地方分権化の流れが定着をしつつある。私はまだまだ不十分であるというふうに認識をいたしておりまして、私は元来、地方分権といいますか地方主権というか、そういう方向を強力に推進するべきだという考え方を持つ一人でありますけれども、そういう観点からすると、今回のこの法案は地方分権化の流れと逆行するのかしないのか、少し教えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  68. 増田敏男

    増田政務次官 大変謙虚な中に鋭いことを踏まえた御質問なので、真摯にお答えを申し上げていきたいと思います。  本法案においては、地方分権の観点を踏まえながら、国土交通大臣使用権設定する事業は、二以上の都道府県にまたがる事業、それから国や都道府県が行う事業等に限定をしまして、それ以外の事業については、一般に都道府県知事が自治事務として使用権設定すること、このようにいたしてございます。また、事業の構想段階から関係する都道府県の意向が十分反映されるような仕組みとなるよう、本法対象地域ごとに大深度地下使用協議会を設置することといたしております。  このように、本法案は、各省調整に当たっても、地方分権の観点を踏まえたものというふうに理解の上でスタートをとっております。  先ほどお話がございましたが、私も首長出身なので、いよいよ四月から分権が具体的にスタートしていきます。人間においても権限においても財源においても、地方がしっかり根づいてほしいな、思いは樽床先生と同じだと思います。  ありがとうございました。お答えといたします。
  69. 樽床伸二

    樽床委員 次官は首長経験者として実感であろうと思います。よく、地方に任せたらとんでもないことをするのではないかという御懸念が、中央の方では漏れ聞こえてくるわけでありますが、大人と子供の関係で、子供をいつまでも過保護にすると子供はいつまでたっても立派な大人にならない、私はこのように思っておりますから、卵か鶏かの議論でありますけれども、目の見えるところの人が責任を持ってしっかりと物を推進していく、そういう観点から強力な地方分権を進めていく、こういうことに対して、次官の政府内での力強い取り組みをぜひとも御期待を申し上げたい、このように思っております。よろしくお願いを申し上げる次第であります。  続きまして、もう既に行われている大深度に相当する地域での利用例の中で、超高圧地中送電線、こういうことの説明も先ほどありましたし、私ども、また政府の方からもお聞きをいたしております。この超高圧、五十万ボルトというふうに聞いておりますが、超高圧をこういうものでいくと送電ロスが若干減るであろうというふうなことを聞いているわけであります。  私は、昨今、ちょうど今原発の廃棄物の問題もいろいろ議論をされているところでありますけれども我が国のエネルギー政策からいくと、この建設とは若干ずれるかもわかりませんけれども、原発に対していろいろな意見があろうかとは思います。原発を全部やめてしまうというのはこれは現実的ではないわけでありますけれども、かつて我々が、二十年、三十年前になると私はまだ小学生でありましたから記憶しておりませんが、二十年ぐらい前の議論でいきますと、原発は結局安いのだというのが一つの根拠であった、すべての根拠じゃありませんが、一つの根拠であったように思います。  しかし、それが二十年たちますと、原発は終わった後の、後処理のお金がかなりたくさんかかるなというのがだんだん実感としてわかってきまして、私は、かつてよりは本当に安いのかなというふうに思い始めているというのが正直なところであります。  そういうような現状も踏まえながら考えますと、実はこの送電ロスを解消することによって新たな発電所をつくらなくてもこれは済むわけでありますから、送電ロスの解消というのは非常に私は技術的な、地味な意見かもわかりませんけれども我が国のエネルギー政策においては非常に重要な、実はポイントであろうと思います。一〇〇の電気をつくって末端で使えるのが二〇とか三〇とかで、七〇はどこかへ途中で飛んでいっておる、こういう話でありますから、非常にもったいないわけでありまして、理屈で言うと、発電所で一〇〇つくったら一〇〇全部最終の消費者が使えるようになるとすれば、これは不可能かもわかりませんけれども、使えるとすれば、今の発電量で今の大体三倍から四倍の電力が使えるということになるわけでありますから、その送電ロスを少しでも減らしていくということは、新たな施設をつくらなくても電力需要に対応できるということになるわけでありますから、大変重要なポイントだと私は考えているわけであります。  そういった観点から、通産省の方になるかもわかりませんけれども、超高圧地中送電線をいろいろな形で、大深度地下利用についてのいいケースであるということでいきますと、私はこういうようなことはもっと推進してもらいたいというふうに思うわけでありますが、政府といたしましては、今、この送電ロス解消のための研究はどのようにされているんでしょうか。それからまた、この大深度地下利用は、こういうような超高圧地中送電線をもっとたくさん張りめぐらすことによって、送電ロスが少しでも減るということに資するんでしょうか。いかがでしょうか。
  70. 大井篤

    大井政府参考人 お答えいたします。  今、御指摘のありました送電ロス低減に向けての我が方の取り組みでございますけれども、現在超電導送電ケーブルの開発ということで研究開発に鋭意取り組んでおるところでございます。御承知のとおり、大変低い温度の領域では抵抗値がなくなるということもありますので、これが究極の送電ロスを解消するものであろうということで鋭意やっているところであります。  それから、大深度地下利用しました場合に送電ロスがどういうふうになるかということでございますが、今我が国で送電ロスで失われておる電気、五%ぐらいであります。五%といっても、根っこは大変多いわけでございます。これをいかに少なくしていくかということは大変重要な課題だと思っております。  送電ロスは、御承知のとおり、送電路の長さに比例して大きくなるわけでございます。したがいまして、大深度利用によりまして送電の距離というものが短くなればそれに応じて送電ロスが低減する、こういうことになります。また、それに加えまして、電力事業者からいたしますと、電力設備の形成というものが容易になるというようなメリットがあるというふうに聞いております。
  71. 樽床伸二

    樽床委員 今、五%とおっしゃいました。これはどういうことですか。五%というのは、五%しか送電ロスでなくなっていないということですか。そうすると、九五%は利用されているということになるんですか。
  72. 大井篤

    大井政府参考人 送電によって失われるロスというのは五%というところであります。もちろん、発電所において一次のエネルギーを入れてそれが電気に転換する、これは当然もうちょっと低くなるわけでありますが、そこから発電されたものが送電路を経由して送られてくる、その過程において失われるものは五%程度、こういうことであります。
  73. 樽床伸二

    樽床委員 ちょっとしつこいようで、私は理科系じゃありませんので技術的なことはよくわからないんですが、要は、電気が発電所から電線に入って、ざあっと我々の家まで来る、この間に、電気が来る間になくなるロスが、五%しかなくならない、ここは一〇〇入ったら九五は来ている、こういうふうに考えていいんですか。
  74. 大井篤

    大井政府参考人 そういうことでございます。
  75. 樽床伸二

    樽床委員 わかりました。ちょっと認識を新たにいたしまして、また勉強させていただきたいと思います。  そうすると、超高圧地中送電線の、これは今東電がやっておられるのでしょうけれども、これは距離が短くなることによってのみ送電ロスに対応できるということであって、超高圧になるがゆえに送電ロスが少しでも減るということじゃないんですか。ちょっとそこら辺、教えていただきたいと思います。
  76. 大井篤

    大井政府参考人 お答えいたします。  先生指摘のとおり、超高圧にすることによって送電ロスが低減するという効果はもちろんございます。
  77. 樽床伸二

    樽床委員 超高圧にすれば多少でも減る、こういうふうなことでありますと、超高圧の送電線はやはり地下の深いところの方がいい、こういうことでやっておられるのだろうと思いますが、そうすると、各電力会社、これから新たな計画をつくるときには大深度を、これは今は五十万ボルトですが、技術的には例えば、よくわかりませんが、もっと百万ボルトとかそうなればなるほど送電ロスも減るということになるんだろうと思いますので、まだ法律が通っておりませんから、どうのこうのということじゃありませんが、今、関係事業者でこういうような超高圧地中送電線をさらにつくっていくという計画はあるんでしょうか。
  78. 大井篤

    大井政府参考人 お答えいたします。  毎年年度末、つまり三月の末になりますと、電気事業法に基づきまして、各社の、電力会社の供給計画というのが届け出られることになっております。その供給計画ですが、今、平成十一年三月、昨年時点で届け出られたもので東京電力というのがちょっと私手元にありますので、それを見てみますと、いわゆる着工準備中あるいは着手予定の五十万ボルト送電線は、たまたまその年度においてはございませんでした。  しかしながら、比較的電圧のレベルの高い送電線ということで申し上げると、豊島高輪線というのが二十七万五千、それから川崎高輪線、これも二十七万五千ということで計画が入っております。  なお、最新の平成十二年度の供給計画でございますけれども、たしかきょう届け出られることになっておりまして、ちょっと私の手元に十二年度の供給計画はございませんので、その内容については申し上げられないということでございます。
  79. 樽床伸二

    樽床委員 これは法律がまだ通っておりませんから、通っていない法律に基づいて計画を立てることは公式的にはできないだろうと思いますが、この法案が通った暁には、いろいろな観点からいって、こういう超高圧送電線をさらに推進していく、行政指導がいいのかどうかわかりませんが、その方がより電力会社がもうかるということでありますと、その方がいいに決まっているわけでありまして、そういうトータル的な意味からの指導というか取り組みというか、ぜひともお願いをしたい、このように思っております。国家のためという観点から、ぜひともお願いをしたいと思っております。  今、ちょうど東電という民間の企業の固有名詞が出てまいりましたが、この法案を見ておりまして、私はこの法案ができました後は、俗にPFIと言われているものがさらに推進しやすくなるのではないかという感じがしているわけであります。なぜかというと、用地買収の費用がかからないわけですね。  そこで、使用協議会で、これは民間はまだで、行政ベースの協議会であるというふうには聞いておりますが、民間からすると、その当事者からすると、大深度を使って鉄道なりいろいろな公共施設をPFIを使ってやることがいいというふうに判断される方も私はふえてくるのではなかろうかというふうに予想をしておるわけでありますが、そこら辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  80. 板倉英則

    板倉政府参考人 今、御審議いただいております本法案でございますが、対象事業法律上、限定列挙という建前で書いておりまして、ただ、その対象事業範囲であれば、対象事業を行う対象事業者につきましては、公共、民間を問わずこの法律適用されることになります。  そこで、例えば公共インフラについて、今回のPFI法に基づきまして特定事業事業者として選定されたというようなことを想定した場合は、この法案に乗っかりまして、その事業者、民間事業者がこの大深度事業が行い得る道が開かれた、そういうことと理解しております。
  81. 樽床伸二

    樽床委員 今の御答弁によりますと、この法案が通った暁にはPFIについての障害は若干なりともなくなる、こういうことで、PFIがさらに進んでいくのではないか、そういう環境整備にはなる、このようなお話であったというふうに理解をするわけであります。  その前にもう一点だけ確認させていただきたいのですが、先ほどのどなたかの質問にもありましたけれども用地買収コストとか、施工期間が短くなる、それからまたいろいろなルート短縮、要するに一直線でいくとか、何か先ほどの話でありますと、全体で一〇%プラスアルファのコストが縮減できるのではないかという御答弁があったように先ほど聞きましたが、それでよろしいのでしょうか。もう一回確認させてください。
  82. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のとおりでございまして、大深度地下利用する場合には、縦方向に掘る立て坑の距離は長くなりますので、それが若干のコスト増要因になることは間違いございませんが、逆に、横方向トンネルにつきましては、非常に固く引き締まった安定した地盤を掘りますので、工法的にも容易になりますし、また、先ほど以来出ておりますルート短縮効果もございますものですから、トータル的に見まして一割程度の削減が可能であろう。さらに、事業期間短縮効果とか用地費の軽減とか、そういった点も考慮すれば、さらにコストダウンも可能であろうというふうに考えております。
  83. 樽床伸二

    樽床委員 要するに、コストが一〇%以上も下がる、こういうことでありますから、それは大変結構なことではないのかというふうに我々は考えておるわけであります。我が党といたしましては、公共事業がすべて要らないというふうに言っているわけではなくて、要らない公共事業はやめて要る公共事業をやりましょう、しかも、要る公共事業も値段ができるだけ安くできるものは安くした方がいい、当たり前の話でありまして、そういう点から主張しておるわけでありますが、そういう点からいくと、この大深度地下法案公共事業事業費の縮減ということに対しては効果があるというふうに考えるわけであります。  そういう点からさらに申し上げますならば、私ども、今ここに我々の建設関係のネクスト大臣も来ておりますけれども、PFIの推進につきましては、建設省はそれなりに前向きであろうというふうには認識をいたしておりますが、ややもすれば及び腰の方が多いというふうに漏れ伝え聞いておるわけであります。それが当たっているかどうかはわかりません。私が、まだまだ不確定な話でありますが、そういうような認識を若干持っておるということでありますけれども。  そういう観点からいきますと、私どもは、PFIを推進していくに当たっては、数値目標をしっかりと掲げてやった方がいいと。そして、このPFI推進によって公共事業が、先ほど言いましたように必要なものはしっかりとやっていただきたいわけでありますが、事業費そのものの縮減が、今おっしゃった本法が出てきましたら一〇%以上削減できるということでありますと、公共事業費事業費削減ということにつきましても実は目標を持てばいいんじゃないか。せっかくこういう法案が通って、実際ここの場でも、一〇%以上事業費が少なくなるんです、こういうふうにおっしゃっているわけでありますから。  そういうようなことについて、PFIがさらに推進されるだろうということも踏まえると、その結果としてはPFI推進の数値目標、さらにはそれに伴って公共事業削減の数値目標というものを決めてかかるいい機会ではないのかというふうに考えておりますが、その点についてどのようにお考えでありましょうか。
  84. 板倉英則

    板倉政府参考人 PFI法あるいは大深度地下使用法案、いずれもまだ新しい制度でございますので、答えも一般的なものになってしまいまして恐縮でございますが、まず、目標ということにつきましては、政府として、まだ具体的な公共事業費全体の縮減目標とかそういうものを試算したことはないと思います。そこら辺、私どももちょっとよく承知していないところでございます。しかし、PFI事業が活用されまして、その事業効率的に実施される、あるいは国や地方公共団体の財政支出が全体として縮減の方向に向かうということは一般的に言われているところでございまして、そう期待しているところでございます。  本法案との関連で申し上げますならば、先ほど申しましたように、PFI法で特定事業に選定された事業者がこの法案を活用することは十分可能でございますので、そういう意味では、そういう事業については積極的に支援していきたいというふうに考えております。
  85. 樽床伸二

    樽床委員 お願いをしておきたいわけであります。  今申し上げましたように、せっかくこういう法案をつくって、いいきっかけになるわけでありますから、物事には何かにつけて節目節目というものが必要でありまして、その節目をいいものにしていく、本当にこの後のことについていいきっかけにしていくということから考えますと、この法案一つの契機として、今申し上げましたPFIの推進の目標まで立てて、だって、これでやりやすくなるのですから、そういうような努力をしていただきたいし、また、必ず数値目標というのを決めて進んでいただきたい。  公共事業事業費削減についても、効果は同じで安くできれば安い方がいいに決まっておるわけでありますが、結局は国民の皆さんの税金でありますから、そういうものを考えると、これをきっかけにそのような数値目標をしっかりとつくって推進をしていただきたい、強くお願いをし、要望をさせていただきたいと思います。  前の質問の方がいろいろありましたものですから、若干時間があるということでありますので、最後に私、お金はかかりますけれども、元来、共同溝というものは推進をするべきだという論者の一人でありまして、共同溝をつくると、またいろいろなところで掘り返す必要もない。今ちょうど年度末ですね、あちこちで工事が行われておるわけでありまして、この間ここを掘っていて、また掘っておる、何でやねん、いや、この間はガスで今度は電気やとか下水やとか、全然違う名目で同じところを一年じゅう掘っておるようなことがあるわけであって、あんなことは非常にばかばかしいわけであります。  また、景観等々も含めて、とにかく、フランスでしたかな、の方では百年前につくった共同溝が今なおしっかりとあって、非常に都市の景観等々いろいろなことに貢献しているということも聞いておりますが、そういうような前提で、共同溝というのは、私は、お金はかかっても国家の財産として長い目で推進していくべきだという考え方を持っているわけでありまして、これまでの共同溝の実績についてちょっと教えていただければと思います。
  86. 岸田文雄

    岸田政務次官 共同溝の整備実績につきまして御質問をいただきましたが、共同溝というもの、今先生から御指摘ありましたように、道路の掘り返し工事をなくす、あるいは景観に資する、あるいは地震等の災害時にライフラインの安全性を確保する等々、大きな意義を持っていると考えております。そういった考えのもとに、これまで公益事業者の適正な負担のもとに、低利融資等の支援措置により整備を推進してきたところであります。  実績といたしまして、平成十一年度末の予定で、全国で整備延長約四百三十キロというふうになっております。これは四百三十キロ、昭和三十八年に法律ができましてから今日まで三十七年間でしょうか、そうしますと、年平均約十二キロ弱ということになるかと思います。近年の実績を見ますと、平成十一年度、平成十二年度、ともに当初予算で五百七十二億の予算が計上されておりまして、年間約二十キロの整備を行い、また行う予定ということになっております。平均十二キロで、ここ二年ばかり年二十キロですから、だんだんペースを上げながら、トータルで平成十一年度末で四百三十キロの整備延長ということになっている、これが整備実績でございます。
  87. 樽床伸二

    樽床委員 今回の法案が通りますと、共同溝はさらに進みやすくなるというふうに私は感覚的に思うわけでありますが、この法案が通ることによって、コストは共同溝においても下がるのでしょうか。いかがでしょうか。
  88. 岸田文雄

    岸田政務次官 共同溝の整備というもの、ケース・バイ・ケースだというふうに考えておりますが、ケースによりましてはコストを下げることが期待できる、それはおっしゃるとおりだと思っております。
  89. 樽床伸二

    樽床委員 コストが下がるのであればさらに進みやすくなるわけでありますから、今、税金がぼんぼんふえてたくさんの増収を、言葉は不適切でありますが、ばらまいて公共事業をするような時代じゃありませんで、限られた財源をいかに効率よく、しかも要るものに使っていくのかという時代でありますから、そういう点でいくと、この法案の実施によって共同溝を建設するコストが下がるのであれば、さらに共同溝推進について建設省、政府挙げて取り組んでいただきたい、このように思っているわけでありますが、そのあたりにつきまして、御決意というか考え方はいかがでしょうか。
  90. 岸田文雄

    岸田政務次官 共同溝の設置というもの、特徴としまして、非常に関係者が多いという特徴がございます。電力ですとか通信、ガス、上水道、工業用水、下水道等々、関係者が非常に多いわけでありますので、この辺の調整をしっかりとやりながら、コストの面も考えながら、基本的な認識としまして共同溝の重要性をしっかりと認識しておりますので、今後とも、計画的かつ重点的に推進してまいる所存であります。  ぜひまた御指導いただきますよう、よろしくお願いいたします。
  91. 樽床伸二

    樽床委員 一応、通告をしている質問は以上で終わるわけでありまして、時間が前へ前へ倒れてきましたものですから、残り時間はそれをもらうとまだ若干あるわけでありますので、通告のない質問でいくとちょっとぐあいが悪いかもわかりませんが、一つだけ、今回の質問の中で気になりましたことを、通告しておりませんが一点だけ、お許しをいただきまして質問させていただきたいと思います。  それは、大深度地下使用協議会、これは行政ベースでつくられるということでありますが、どうも私、この約四十五分余りの質疑の中でも感じておりますが、行政ベースだけで本当にいいのかなというふうなのがどうしても離れないわけでありまして、やはり関係事業者ですか、そういうような方がここに入るのが適切なのかどうかというのは私もよくわかりませんが、行政ベースだけでこの協議会を推進していっていいのかどうかということについて一抹のすっきりしないものがあるわけでありますが、そのあたり、いかがでございましょうか。
  92. 板倉英則

    板倉政府参考人 協議会の運営に当たりましては、法定のメンバーといたしましては、御指摘のとおり国と都道府県ということになっておりますが、しかし、実際にそれぞれの事業を進めていく場合には、電力なら電力、ガスならガスといったような民間の事業者が入らないと、実際の協議、調整はできないわけでございまして、この法律でも、そういった場合、必要に応じて民間の関係事業者を呼ぶこともできますし、また、その面にお詳しい学識経験者の方をお呼びすることもできますので、実務的には、そういう方をお招きして実際の協議、調整を行っていく、こういう格好になろうかと思います。
  93. 樽床伸二

    樽床委員 実際にはそういうことになるんでしょうけれども、先ほどPFIの話でも申し上げましたように、PFIの政府の基本方針ですか、結局、民間の発意を大事にする、こういうのが基本方針であるわけでありまして、要は、民間の人がやってやろうという、また熱意を持ってされることをちゃんと受けとめましょう、こういうのがPFIの基本方針の中に入っているわけであります。  そういうことからいくと、ややもすれば官尊民卑の体質の中で、こういうようなPFIが推進できるような、さらに進むような、この法案が通って、それを大深度地下利用を推進する使用協議会で、それは地下の深いところで補償もしなくていいようなところでありますから、公の力が強く及ばなければならないだろうという考えはよくわかるものの、PFI推進ということから考えますと、官尊民卑の発想をできる限り払拭していただいて、そして公共事業、同じ事業を安いお金でできるというのはそれは結構なことでありますし、そういうようなことから、そういうような官尊民卑の精神を少しでも薄めていただくように心からお願いを申し上げる次第であります。  以上で私の質問を終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  94. 大口善徳

    大口委員長 上田勇君。
  95. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  きょうは、大深度地下利用の特別措置法につきまして、何点か質疑をさせていただきます。  このたびの法案提出に当たりまして、国土庁からさまざまな御説明をいただきまして、現に四十メーターを超えるような地下が送電線だとか鉄道、上下水道などで利用されており、私の地元においてもそうした事例が多いということには正直言って驚いたところでございます。  今回の大深度地下利用を促進することによりまして、大都市部におきます各種の公共公益事業効率的な実施に大きく資するものであるというふうに期待をしているところでございます。  きょうは、そういうことで、この法案の中身で何点か質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず初めに、きょうこれまでの質疑の中でも若干触れられてきましたけれども、今回の法案、実は、この大深度利用というのは、昭和六十三年に総合土地対策要綱が決定されてから今回の法案提出までに、実に十二年間という長期間がかかっているわけでありますけれども、何でそんなに長い時間がかかったのか。省庁間のいろいろな調整があったというようなことも伺っておりますが、その辺の理由をお伺いしたいというふうに思います。
  96. 中山正暉

    中山国務大臣 今お話がありましたように、昭和六十三年でございますか、各省庁より大深度地下利用構想が提案されまして、それから法律案をつくろうということで関係省庁間で調整をして、それから平成元年の三月、竹下改造内閣でございますが、内閣内政審議室等の十省庁による関係省庁会議を設置して、それから平成七年の六月、野沢太三参議院議員を中心にした議員提案によりまして、臨時大深度地下利用調査会設置法が国会へ提出されました。これは衆参とも全会一致で可決されました。平成七年の八月に、臨時大深度地下利用調査会を設置して、平成七年の十一月、内閣総理大臣から諮問がありました。それから、平成十年五月の二十七日に調査会答申を決定いたしまして、内閣総理大臣に報告をして、同月の二十九日、国会報告をいたしまして、平成十年六月十七日、内閣内政審議室等十三省庁による大深度地下利用関係省庁連絡会議を設置したということでございます。  どうするんだという私に判断を、議員立法でやるのか、それとも内閣で提出をするかという判断がありましたけれども、これはぜひひとつ内閣で私は提出するべきではないかという判断をいたしましたのでございますが、総理大臣も大変関心を持たれておりますし、それからまた大蔵大臣からも、中身の話を聞かせろという、事前にいろいろな各省庁の評価を結集するようなお話がありまして、大深度地下利用につきまして、土地所有権との関係とか、土地収用法や公物管理権との関係とか、法律的、技術的に検討すべき課題がたくさんありましたことから、平成七年以降、臨時大深度地下利用調査会において三年間検討した、慎重に慎重を重ねてこの法案提出にこぎつけたということで、まさに日数はかかっておりますが、それなりの基盤をちゃんと踏まえて対応すべきだということで今日に至ったわけでございます。  ミレニアム計画として大変時期を得たものだと私は思っておりますが、平成十年五月に調査会の答申をいただきまして関係省庁間のほとんどの妥結を見たということで、この際、機が熟したということではないかと私は思っております。
  97. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは次に、法案の内容につきまして何点か御質問させていただきたいというふうに思います。  この大深度地下利用というのは、考え方としては、そもそも土地所有者土地利用影響を及ぼさないという前提で、大深度の部分を公共公益事業のために利用するという考え方であるというふうに思います。  であれば、その対象地域、今回の法案では第三条で対象地域を政令で定めるということで、先ほどからの論議の中でも三大都市圏ごとに市町村の名前で定めるということで、相当限定的に指定しているというようなことと承知いたしましたけれども、そもそもそういうふうな考え方であるのであれば、対象地域を限定するという、特殊な地域によって例外的に認めるというような方法よりも、これはもともと土地所有者に与える影響が軽微なわけでありますので、全国的な共通のルールとして定めるべきではなかったかというふうに思いますけれども、そのあたりの議論というのはどういうものがあったのでしょうか。お考えをお示しいただきたいと思います。
  98. 増田敏男

    増田政務次官 お尋ね関係でございますが、本法案は、土地利用高度化複雑化が進んでおります大都市地域において、公共利益となる事業効率的な実施が困難となっている状況を踏まえて制定しよう、こういう考え方でスタートしております。  このような立法の趣旨にかんがみまして、必要な範囲対象地域とする観点から、当面は三大都市圏対象地域といたしました。その他の地域についても、具体の事業必要性に応じて政令で追加する所存でありますので、固定的にこれというわけではありませんので、御理解をいただきたいと思います。
  99. 上田勇

    ○上田(勇)委員 三大都市圏の指定する地域がニーズがあるというのはよくわかります。  ただ、ちょっとこれは基本的な考え方の問題なんですが、いわゆる深い地下を使うということは、その上の土地所有者利用者に重大な影響がないので、そういう了解なり補償をすることなしに公共のためであれば使ってもいいという考え方であるというふうに思います。どうも今の考え方だと、実はニーズがあるので、多少の影響があって上に迷惑はかける、所有者利用者に迷惑はかけるんだけれども、ニーズの方があるからやむを得ないので、限定的な地域においてはやむを得ず認めるというふうに聞こえたんですけれども、そういうような考え方なんでしょうか。ちょっとその辺の整理をしていただければというふうに思います。
  100. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生案内のとおりでございますが、臨時大深度地下利用調査会答申が平成十年五月に出されておりますが、その中でも、先生の今御指摘いただいた問題についてどう考えるかということについて触れております。  とりあえず三大都市圏に限定するという考え方は、先ほど総括政務次官答弁したとおりでございますが、要は、土地利用が非常に稠密であるということで、実際に社会生活に必要なライフライン系統の事業を実施しようと思っても、なかなか適地がないということも現実にございますし、そういう必要性もまた大都市地域中心に多いということが確かに背景としてございます。  ただ、一方で、権利制限にかかわることであるから、財産権に対しては全国一律であるべきだという考え方も少数意見として付記されたわけでございますが、私どもはその中間を行くといいますか、法律では、三大都市圏等を当面対象としつつ、事業必要性が生じた時点でその他の地域についても検討する、そういう組み立てにさせていただいた次第でございます。
  101. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっとほかのこともあるので、これはこの辺にしておきますけれども、どうもニーズと権利という問題が混乱しているんじゃないかというような感じがいたします。  もちろん、三大都市圏以外ではそれほどのニーズがないので、とりあえず現実には支障がないのでそれは構わないんだと思うんですけれども、今後検討するときに、必要性が生じたところから追加指定していくというような考え方というのは、逆に誤解を招くんじゃないかと思うんですね。どうも、大深度を使うというのは、実は所有者なり現に使用している人間に対する権利の大きな制約になるとか、迷惑がかかる、だから限定的にやっているんだというような誤解を招くおそれがあるというふうに思いますので、ちょっとその辺は論理構成をぜひ整理していただければというふうに思うわけでございます。では、お願いします。
  102. 板倉英則

    板倉政府参考人 ちょっと私の説明が言葉足らずでございましたが、土地利用についてある種の制限を課すると、その制限の妥当性というのが問われるわけでございまして、公益事業を実施する際に、そういった現実のニーズがあるということも、制限を課すことの妥当性の中には考慮の要因として一つ入ってくるかと思います。そういうことを勘案いたしまして、制限の妥当性という観点も考慮しまして、とりあえずは三大都市圏等に当面適用していこうということでございます。
  103. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは、次の事項に移りたいと思います。  法案の第四条では、対象事業を列挙して定めているんですが、これらの事業については、これまでの実績であるとか公共性だとかにおいて選定されたというふうに承知をしておりますけれども、同時に、土地収用法の規定に準じて記述したというふうなことも伺ったんです。これら第一号から十三号まで十三の事業を列挙しているわけですが、それを選定した理由を再度御説明いただければというふうに思います。
  104. 板倉英則

    板倉政府参考人 この法案適用する対象事業の考え方でございますが、基本的には土地収用法対象事業を念頭に置いております。ただし、土地収用法対象事業でも、大深度地下使用の可能性の低いもの、あるいはほとんど予想されないものにつきましては除外いたしまして、本法は、したがって土地収用法対象事業のうち、大深度地下利用の可能性の高い事業法律で限定列挙するという仕組みにしたわけでございます。
  105. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の御説明で結構なんですが、ちょっと一つだけ確認をさせていただきたいんです。  限定的に列挙したということでございますけれども、しかし、第四条の第十二号には、  前各号に掲げる事業のほか、土地収用法第三条各号に掲げるものに関する事業又は都市計画法の規定により土地使用することができる都市計画事業のうち、大深度地下使用する必要があるものとして政令で定めるもの という規定がございます。  そうしたら、土地収用法の規定を拝見しましたら、一号から十一号までに定められているものがその中にも入っていますし、それ以外の事業もあるんですけれども、同時にまた、この中でせっかく十一号まで限定的に列挙したのに、また全部に広げてしまっているのはどういうことなのかという疑問と、ちょっとあわせてなんですが、土地収用法の中には、実に、ちょっと読んでみますと、例えば土地収用法の第三条の中の二十七号には、一般廃棄物処理施設とか、産業廃棄物処理施設その他の廃棄物処理施設というようなことがございますし、三十三号、三十四号ではいわゆる原子力施設ども入っております。  これは政令で定めるので、当然こんな施設が大深度地下利用には想定されないというふうに私も理解しておりますけれども、どうもこの十二号というのがあると、こういった施設で大深度とはいえ地下利用されるということになると、少し考え物かなというような考えもいたします。  その辺についてのお考えと、これは、政令で予定されているというのはどういうような事業なのか、その辺をちょっと御説明というか、確認をさせていただきたいというふうに思います。
  106. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生御懸念の、政令で追加できることにすると事業が際限なく広がるのではないか、こういう御懸念かと思いますが、この大深度地下利用法案の対象事業というのは、収用法の列挙した事業を上限といたしまして、その中で大深度地下利用必要性の高いものを列挙した、こういうことでございます。  それで、個別のお話が出ましたので、ちょっとそれについてコメントさせていただきますけれども、一般廃棄物処理施設とか産業廃棄物処理施設は、私ども、考え方としては拾い得る事業だと思うわけでございますが、今のところ、大深度を使ってこういう施設を整備しようというお考えが、今のところですが、ないように聞いておりますので、それは事業必要性が出た段階で検討させていただきたい、こういうことでございます。  それからもう一つは原子力の関係、原子力施設関係でございますが、これは私ども、大深度法でそれを追加指定する考えは全く持っておりません。
  107. 上田勇

    ○上田(勇)委員 当然、今度大深度利用について、今ちょっと事例を挙げさせていただいた施設というのは想定されないということでありましたので、そのとおりだと思いますし、また今回のこの法案の趣旨からいっても、そういう施設まで含めるというようなことについては適当ではないというふうに私も考えておりますので、今の御答弁は多とさせていただくところでございます。  それでは次に、大深度地下利用範囲のことについてちょっと御質問させていただきますが、この大深度範囲というのは、やはり支持層の位置によって変わってくるわけでございます。  この支持層の高さというのは、いろいろ御説明いただいた模式図などではほぼ水平に、直線に描かれておりますが、現実には必ずしも水平、一様ではないものだというふうに思います。数メーター単位程度の凹凸というのは当然そんなに珍しいことでもありませんし、昔の河道などの地域で侵食されている場合などは、十メーター、時によっては数十メーターに及ぶような湾曲がある場合もあるわけでありますが、この支持層の位置によって大深度地下範囲が変わってくるわけでありまして、当然この大深度地下という範囲の上の面、これも水平ではないわけであります。  となりますと、事業者使用を申請したときに、許可権者としては、どういう根拠に基づいてそれが本当に大深度範囲であるのかといったことを正確に判断することができるのか、その辺の、ちょっと技術的な話かもしれませんが、お考えを伺いたいというふうに思います。
  108. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のとおり、東京を例にとりましても、支持層は、山の手付近でございますと数メートルから十ないし二十メーター程度、それから、下町の方へずっと行きますと、深いところでは五、六十メーターというような分布になっておりまして、今国土庁でも、その分布状況につきまして把握すべく、地下利用マップというものを作成中でございます。ただし、それは非常に概括的な把握でございますので、個々の大深度使用の認可の申請に当たりましては、事業者が詳細にその支持層の位置とか広がり方を調べていただきまして、それで我々の持っている情報と突き合わせまして慎重に審査していきたい、そういう考え方でございます。  それで、支持層については、この法律は特定ができるという建前で組み立てておりますので、確かに高低はございますが、その支持層の位置が特定できるということでこの法律制度適用できる、こういう前提に立った組み立てになっております。
  109. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう一点。大深度地下範囲使用する権利は、これは都道府県に備え置きます登録簿に記載することとなっております。先ほどのお話でも、これは土地所有権の制限、重大な支障はないけれども一定の制限であるというような話でもありましたが、この使用権設定してある土地が取引される際に、そういった制限があるかどうか、これが紛らわしくなることも考えられるわけであります。そういう取引の際の紛らわしさを避けるためには、これは登記するのが最もわかりやすいはっきりした方法なのではないかというふうに思うのですが、これは登記することとしなかった理由を御説明いただければと思います。
  110. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生案内のとおりでございますが、本法に基づく使用権というのは、いわゆる公法上の使用権ということになっておりまして、土地収用法の場合も同じでございますが、不動産登記上は登記になじまないという整理になっております。  ただし、仰せのとおり、土地の取引等について、こういう制限がかかっているかどうかというのは大変重要な事項でございますので、登記にかわる措置を講じております。  本法では、都道府県単位に登録簿というものを調製いたしまして、常時それを閲覧に供する、さらには、市町村におきましては、大深度地下使用権を取得した事業区域の範囲を図面で常時閲覧に供するというようなことを考えている次第でございます。
  111. 上田勇

    ○上田(勇)委員 最後になりますけれども、この法案の第十二条で、各種事業事前の調整について定められております。これは、各種事業効率的な実施のためにはとても重要な、有用な制度であるというふうに考えておりますが、大深度については今回こういう定めが決まったのですが、どうもそれよりも浅い部分の地下使用について、各種事業間の調整が必ずしもうまくいっていないという事態があるのではないかと思います。  短い期間に何回も同じ道路が掘り起こされたり、そういった事例はよく目にすることでもありますし、結果として、その事業費の増嵩につながるだけじゃなくて、地域においても著しい不便が生じているというようなこともよく耳にするところでございます。  この際、この法案とはちょっと離れますが、やはり国土交通省という総合的な省庁ができるわけでもございますので、そこがイニシアチブをとりまして、大深度に限らずそうした各種事業間の調整システム、もっと浅い部分の地下使用についてもそういう調整システムをつくるべきではないかというふうに考えますが、その辺、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  112. 板倉英則

    板倉政府参考人 本法案の第十二条の事前事業間調整のシステムでございますが、これは先生から大変いい仕組みではないかというふうにお褒めをいただいたのでございますが、この事業間調整というのは、通常の場合は、これまでは行政庁と民間事業者の間で、ネゴの世界でやってきたものでございますが、これは法律の表に出しまして、明確な調整方針のもとに調整を進めていこう、それから、できるだけ計画の早い段階、構想段階から調整をしていこう、こういう趣旨でつくったものでございます。  それで、各種法律本法との運用面等でどういう連携を図るのかということでございますが、例えば都市計画法は、今一部改正法を議論しているようでございますが、都市施設の区域を立体的に定める、もちろんそれによって地下についても都市計画が及ぶことがあり得るわけでございますけれども、そういったものとの調整あるいは土地収用法との調整、それから各種公物管理法がございますので、調整というのがございます。ただ、私ども、こういう先生指摘の協議会というのをそれぞれの地域ごとに設けることにいたしまして、今申し上げたような法律を所管している国の行政機関はすべてメンバーに入りますので、そこで実質的な調整が相当程度進むのだろうというふうに考えております。  それから、今度、省庁統合によりまして運輸省と建設省等で地方整備局というのができますが、協議会の実質的なコーディネーターといいますか事務局は、その地方整備局が恐らく実質的に役割を担っていくことになると思いますので、そういう意味では、先生の御指摘のような観点から調整が進むのではないかというふうに考えているところでございます。
  113. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう時間でもありますし、法案とは直接関係ないことなのでこの辺にさせていただきますけれども公共事業に対するいろいろな批判が出るときには、同じ道路を一年間に何回も掘り起こしただとか、道路を舗装した後にまた掘り起こしただとか、そういった批判が、これは一般的な意見でありますけれども、必ず聞かれるわけでございます。そういった意味では、各事業者間のちょっと前倒しでのいろいろな事業調整をすることによって、もっと効率的な事業も図られますし、よりそういった批判に対してもこたえるのではないかというふうに思います。  そういった意味で、今回、国土交通省という形で省庁が統合されたわけでございますので、ぜひとも、そういった一般の市民の方々からの批判にもこたえていただいて、貴重な財源をぜひ効率的、効果的に使っていただくためにもそういうようなことに今後心がけていただきたいというふうに御要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  114. 大口善徳

    大口委員長 青木宏之君。
  115. 青木宏之

    ○青木委員 今までの質問とあるいは重なる部分もあるかもしれませんが、立場を変えての質問でございますので、お許しをいただきたいと思います。  今も、最後に事業間調整の問題が出ました。ちょっと今の御答弁が、御質問の御答弁に合っているのかなと。ずっと聞いておったのですが、ちょっとはっきりわからなかったところもあるのです。今の御質問の点は、要するに、浅深度、大深度でなくて浅深度でのそういう事業間調整についてのお答えを求められたのだろうと思うのですが、何かお答えが大深度事業間調整のような感じがしたわけでございますので、私も大深度における事業間調整の問題について初めにお尋ねをしたいと思っておりましたので、ちょっと私、今の御答弁がよくわからなかったものですから、再度、浅深度なのか大深度なのか、それぞれ分けて御説明をいただきたいと思います。  要するに、私が申し上げたいのも、大深度であればあるほどこれはほぼ恒久的な施設事業ということになろうかと思います。したがって、いわゆる早い者勝ちといいますか、先に事業が施行されますと後からそこが当然事業の邪魔になるわけでございますので、大体事業というものが公共性があるものですから、事前に大体想定できると思うのです、こういう事業、こういう事業と。あるいは、そういう事業をやろうとする事業体、地方公共団体にしても国にしてもあるいは民間にしても、どういうところかということも、大体現段階で想定できる。  したがって、その協議会で事前に恐らく協議がされるであろうと思うのですけれども、しかし、そこには当然時間的なラグというものがあるわけだと思いますので、現段階において想定される事業あるいは事業体、そういったものにおいて、ある程度の先まで想定をして総合的あるいは計画的に事業間調整をまずするということが大深度の場合は特に必要なのではないか、そういうふうに考えますので、そのあたりのお考えも含めて、先ほどの御質問に対するお答えも含めてちょっと私からお答えを求めたいと思います。
  116. 板倉英則

    板倉政府参考人 先ほどの上田先生の御質問に対する答弁がよくわからなかったという御指摘でございますので、ちょっと敷衍させていただきますが、大深度地下利用施設というのは地表部あるいは浅深度につながらないとその機能を果たし得ないということが当然あるわけでございまして、そうなりますと、地表部あるいは浅深度対象としております都市計画法とか土地収用法とか公物管理法というような関係が出てまいります。そういった関係法律と十分調整を図りながら、大深度地表部、浅深度との使用についてそごのないように十分調整をしていく必要があるという観点からの御説明でございました。  それから、今の先生の御質問のポイントは、恐らく各種事業が実施時期等がまちまちで、なかなかそういう実施時期の違う事業を調整するというのは難しいのじゃないかという御指摘かと思いますが、私ども一つは大深度地下というのが残された貴重な空間でございますので、一たん施設が設置されますと撤去が困難という特性を持っておりますので、十分慎重に対処する必要があるという基本的な認識のもとに、第六条の「基本方針」におきまして、その中の一つに「大深度地下の適正かつ合理的な利用に関する基本的な事項」というのがございますが、ここで事業間の調整のルールをきちっと示したい。  特に、実施時期の異なる事業についても、先ほど御指摘の協議会のメンバーの中にそれぞれの行政機関が入りまして、この行政機関はある程度長期的に、それぞれの所管についてどのような時期にどのような事業が行われるかというのは相当程度把握しているわけでございますので、その協議会の席でできるだけ突き合わせをいたしまして、情報交換いたしまして、適正な大深度使用、つまり、早い者勝ちとかそういうことが起こらないように十分調整の上進めていくべき、そういうふうに運営を心がけていきたいというふうに思っております。
  117. 青木宏之

    ○青木委員 これは、結局大都市のことになるわけですので、これから別の課題として、都市再開発の問題とかあるいは中心市街地活性化とかあるいは用途地域等々の見直しとか、いろいろな意味で、都計法もこれからあるわけですけれども、これはいわゆる地上部ですね、都市計画とも絡んでくる、当然交通も絡んでくるわけです、社会基盤整備も絡んでくる。だから、これは相当慎重に検討を関係者間でしっかりして、かなり長期のスパンでやっていかないと、掘ってつくったわ、また計画が変わったわというようなことが起こる心配がある。若干、そういう点を杞憂かもしれませんが危惧をしておりますので、これがスタートする段階での技術的な問題かと思いますけれども、ぜひその辺は慎重にひとつ事を進めていただくように、これは要望をさせていただいておきます。  それから二番目でございますが、今まで出たかもしれませんが、安全性ということに関してでございます。  いわゆる基本的な、我が国地震を考えなきゃいけませんが、地震ということについては、大深度は、それ以上の部位に比べては非常に安全性が高いという意味で非常に価値があるというふうには思うわけでありますが、一つ、今言いましたように一回やりますと、それはかなり長期間、工事費もかかるわけですし、その場所をずっと占有するわけですので、施設の老朽化の問題あるいは耐用年数の問題。  普通のトンネルみたいな考え方になるんでしょうが、トンネルでもこの間うち、いろいろコンクリートの剥離なんかもあったわけでありますし、また、仮に何か想定せざる事故が起こったりあるいは老朽化が起こったりした場合には、当然改修したりあるいは補強したりしなきゃなりません。  したがって、それにもかなりいわゆる手間がかかるというふうに想定をされるわけですけれども、普通の地上地下あるいは浅深度に比べて、今回の大深度の設計施工に当たって、その辺はかなり強度等をより必要以上に要求されることをお考えになっておるのか、あるいは従来どおりの地上地下と同じようなやり方でいいとお考えなのか、そのあたりを少しお聞かせいただきたいと思います。
  118. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生指摘のとおり、確かに大深度というのは後々掘り返したりすることがなかなか難しい施設でございますので、施設の設置に当たりましては、その構造の耐久性ということに十分着目して認可する必要があると思っております。  私どもは、この大深度施設を想定する場合に、先ほど以来申しておりますように、地上におきまして超高層ビルが建っていてもその地下を使うという前提で構造物の耐久性を考えております。具体的には、シールドのセグメントの厚さを十分上部の荷重に耐えられるようなしっかりした構造にするというような、これは一例でございますけれども、当然そういうことが必要だというふうに考えておりまして、これはいずれ基本方針あるいは技術指針の中で明確にしていくべき問題だと思っております。
  119. 青木宏之

    ○青木委員 それで、いわゆる離隔距離、支持層から十メーター以下を大深度とするということになっておりますが、今度は、大深度施設施設、A施設とB施設あるいはC施設との離隔距離というものは何かお定めになられるのか。ということは、これは専門家がやられることですから間違いはないと思うんですけれども、要するに、穴をあけておくわけですので、どんどん、どこまで穴をあけていったらいいか。  例えば、今のシールドの径は十二メーターが最大だというふうに聞いておりますが、それでほとんどの事業は事足れりとするのか、あるいは将来またもっと大きなものが必要となってくるのか。そういうこともいろいろ考えたりして、要するに、離隔距離というものは技術的に何かお考えになっているのか。そういったものは必要ないのか。  要するに、地盤沈下、落盤等の危険性というものを、これから事業を行っていくについて全く心配する必要はないということなのか、そのあたり、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  120. 板倉英則

    板倉政府参考人 離隔距離の考え方でございますが、この法律適用される問題について申しますと、支持層に到達する基礎ぐいにつきまして、我々、技術部会で種々検討をいただいた結果、支持層を支えるくいの太さの二分の一の貫入があれば、ほぼその構造物の安全という面からいえば大丈夫だろう、こういうことを参考にいたしまして、その際に、基礎ぐいの杭径の最大値は大体四メートル程度でございますので、まあ二メートル程度貫入すれば大丈夫だろうと。さらに十メートルといたしましたのは、その二メートルに加えまして、工事を施工する際に振動等の観点から配慮する必要があるということで、そういった振動などの物理的な干渉を避けるということで安全サイドをとりまして、十メーターというふうに決めさせていただいたところでございます。  それから、関連しまして、建築物はそういう関係でございますが、大深度地下施設同士はどうなるのか。この問題につきましては、大深度施設の種類によりまして、例えば、上に行く方がいい、下に行っても構わない、あるいは共同化できるものは共同化するというようなことが出てまいりますので、大深度地下施設相互の事業の調整方針につきましても基本方針の中で何らかの形で触れさせていただくように考えたいと思います。
  121. 青木宏之

    ○青木委員 参考までにお聞かせをいただきたいんですが、この大深度、大体百メーターまで技術は可能という現代のレベルだそうですが、百メーターまで想定をして、いわゆる核兵器で直撃されてこれは損壊されるのか、耐え得るのか。ちょっとわかりましたら御参考までにお聞かせをいただきたいと思います。
  122. 板倉英則

    板倉政府参考人 初めにあらかじめお断りをさせていただきたいと思いますが、本法対象事業法律で限定列挙するということを基本といたしておりまして、核シェルター等について対象事業にすることは考えておりません。  ただ、せっかくのお尋ねでございますので、私どもちょっと専門的な知識が足りない面があろうかと思いますが、確かに御指摘のとおり、ヨーロッパ等、あるいはアメリカでもそうでございますが、地下を核シェルターとして使っている例があるようでございます。  それで、核シェルターというのはどんな機能を期待しているかということを私どもなりに調べたところ、核兵器の直撃を受けた場合は非常に難しいだろうと。しかし、放射線被害を最小限に食いとめるという意味であれば、早くそこに避難すれば相当の効果が上げられるというような程度の知識しかございませんが、よろしくお願いいたします。
  123. 青木宏之

    ○青木委員 それでは次ですが、私がちょっと心配をしておりますのは、事業の中断後の措置ということについてであります。  当然、何らかの事由で、何でもそうですが、なければ結構なことですけれども、万が一ということを常にやはり考えていくということが大事ですので、事業が中断された場合、三十八条で原状回復義務というものが規定をされております。法律の規定はいいんですね。これでいいんです。原状回復、要するにもとへ戻しなさい、これはいいんです。  ですが、事実上、法律があってもそのとおりにならないということが世の中あるわけでして、地方公共団体がやったり国がやったり、あるいは大手の民間企業等がやるからそんなことはないととりあえずは思えるかもしれませんが、万が一ということを考えて、要するに回復が不能の事態、回復されないということになりますと、現在の法律上はいわゆる行政代執行という格好で一応整備はされておるわけですので、それでやればできると理屈上はなるわけです。例えば豊島のごみの問題にしても、要するに現実に履行されない、原状回復されないということが現に地上では起こっているわけですので、では、大深度においてそういうことが一応想定された場合どうしたらいいのか。仮に、そこで次に事業をやろうと思っても、中断して穴があきっ放しでほったらかし、そこを通りたいがという場合もあるわけですね。そうすると、それがあるから認可されないという事態になるのか、あるいは、そこをやりたいならあなたが原状回復してやりなさいというのか、その辺がちょっとはっきりしませんので、ある程度の御説明をお願いしたいと思います。
  124. 板倉英則

    板倉政府参考人 先生指摘のとおり、三十八条というのがこの法案にございまして、事業を中止や廃止した場合には、報告、届け出を義務づけるとともに原状回復の責務を課しているわけでございます。  それで、私どもといたしましては、その点につきまして、事業者は安全の確保とか環境保全という観点から見て問題がないように措置した上で、例えば砂で埋め戻す等の適切な原状回復を求めるというようなことを、今後、基本方針あるいは技術指針等で検討してまいりたいと思いますが、法律上課せられた義務に対して、履行しない場合はどうなるかということは確かにあるわけでございます。これは一つは、そこに工作物が残るということがありますので、民法上の不法行為、工作物の無過失責任を問えるということが一点ございます。それから、使用期間が終了しますと所有権が完全にもとに戻りますので、所有権に基づく原状回復請求も可能になってまいるかと思います。  それでもなおかつ目的が達成できないという場合には、仰せのとおり行政代執行によらざるを得ない、こういうようなことでございまして、余り的確に先生に御答弁できないわけでございますが、そういった関係法律を使いながら、法律に課せられた原状回復義務の実効を確保していきたいというふうに考えております。
  125. 青木宏之

    ○青木委員 なかなか現実問題というのは、法律で全部取り仕切るというのも難しいわけですけれども、しかし法治国家ですから、法律はつくっていかなければ、これは国会の仕事でもあるし我々の仕事でもあるんですが、現在の行政代執行が、現実問題効果を上げていないという面もあるわけですので、直接のあれではないですけれども大臣ちょっとそのあたり、一般法になりますけれども、若干関係しますので、大臣から一言お答えいただければと思います。
  126. 中山正暉

    中山国務大臣 先生の御指摘、貴重な御指摘だ、あらゆる問題を想定しておかなければならないという前提に立ちましたら、先生の御心配は、特に一般の目に触れない大深度でございますから、その辺の配慮をしなければならないと思っております。  使用権設定に当たりましては、そもそも、事業を遂行しないおそれのある事業者使用権設定を行わないようにするということがまず大前提だと思います。それから、事業遂行能力の審査につきましても最善の注意を払いまして、そういう資格とか能力とか、そんなものを慎重に検討する所存でございます。  また、万が一、事業の廃止などによりまして大深度地下使用する必要がなくなったときには、本法上、事業者は、まずその旨を国土交通大臣、来年の一月六日からのことでございますが、または都道府県知事に届け出をしなければならないという三十条の規定、また次に、遅滞なく安全の確保及び環境保全のための必要な措置をとらなければならないという三十八条の規定、そういう義務を負うことになりますので、事業者は具体的に、安全の確保及び環境保全の観点から問題がないように措置した上で、砂で埋め戻す等の適切な原状回復の措置をとる。  それからまた、事業のために設置された工作物により損害が発生した場合には、事業者民法七百十七条、国家賠償法の第二条により、一種の無過失責任を負うことになると思います。  これらにもかかわらず事業者が適切な原状回復を行わない場合には、行政代執行法、先ほどから局長から御答弁申し上げておりますような、法律に基づく行政代執行を適正に執行してまいる所存でございます。  そういうことで、万全を期して国土の、国民が安寧に生活をしておりますその基盤をできるだけ、あらゆる想定をして対応してまいる。また何か起こりました節には、先ほど先生が国会の責任もあるとおっしゃっておられますが、そういう問題でまたいろいろ改善、改革を適切に行ってまいりたいと思っております。
  127. 青木宏之

    ○青木委員 最後になると思いますが、第十六条に使用の許可の規定があるわけですけれども大臣、知事の、いわゆるできる規定になっておるわけですが、条件がずっと、かなり厳しくつけられておりますので、これだけの厳しい条件をクリアしていれば、できる規定でなくて、する規定でいいような気もするのですけれども、できる規定としておる理由というものがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  128. 板倉英則

    板倉政府参考人 確かに、十六条の規定のしぶりというのはできるということでございますが、これは先生よく御案内のとおりでございますが、公法上の特許という扱いでございまして、法律に基づきまして一定の要件を満たしていたときに権原を付与する。おっしゃいますように、確かに要件はかなり厳しく書いてございますので、全くの自由裁量ではないわけでございますが、仮に、突き詰めて考えますと、すべての要件を満たしていてもなおかつ認可を拒否することが法律上は可能である、こういうことでございます。
  129. 青木宏之

    ○青木委員 時間が来ましたけれども、ということは要するに、許可権限者である大臣、知事が、条件は全部そろっておっても、ある種の、仮に政治的な判断によって、ちょっとこれは許可を与えるにはまずいという場合は法律上は不許可ということができると解釈していいのか。そういうことはないということなのか。いかがでしょうか。
  130. 板倉英則

    板倉政府参考人 確かに先ほど申しましたように覊束裁量的な、ある種の裁量行為でございますが、しかし、その場合は、この法律の趣旨、目的等に沿って判断するという拘束がございますので、そういうふうに対処していきたいというふうに思っております。
  131. 青木宏之

    ○青木委員 ありがとうございました。終わります。
  132. 大口善徳

    大口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  133. 大口善徳

    大口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中島武敏君。
  134. 中島武敏

    ○中島委員 この法案は、臨時大深度地下利用調査会で審議されて、九八年五月二十七日に答申され、それに基づいて大深度地下利用法案が作成されたわけですね。  それで、私、調査会の第一回の議事概要を読みますと、閉会した後の記者会見でこういうことが述べられているんです。きょう出た意見では委員は大深度地下利用に賛成なのか、こういう質問が出されまして、これに対して会長が答えて言うには、積極的な利用をという意見を述べる人はいた、消極的な意見は特になかったので皆さん賛成なのだろうと推測している、こういうふうに答えておられるんですね。  この調査会の目的は、今後の大深度地下利用に関する基本的理念及び施策の基本並びに大深度地下公共利用の円滑化を図るための施策はいかにあるべきか、こういうところにあるわけなんですけれども、私は、積極的賛成論者あるいは推進論者ばかりではお手盛りのそしりを免れないのじゃないかという気がいたします。  そういう点からいいますと、大深度という地下利用する上での問題点を明らかにすることも大変重要なことであります。同時に、しかし、根本的な反対論者、疑問を持つ人、また問題点や意見を持つ専門家などもあわせてこの委員に選任するべきだったのじゃないかということについてまず伺いたいと思います。
  135. 板倉英則

    板倉政府参考人 臨時大深度地下利用調査会において、どういう立場といいますか、どういう意見があったかというお尋ねでございますので、私どもの承知している範囲で申し上げます。  この調査会自体、委員が国会同意人事ということになっておりまして、各界から非常にすぐれた識見を結集するという目的でつくられているわけでございますが、審議の過程におきまして、例えばで申しますと、安全、環境分野については慎重に対すべきとか、あるいは地下水についても慎重に対応するように、さらに、火災対策については万全を期するようにとか、あるいはバリアフリーとか弱者という観点から十分配慮するようにとか、いろいろなさまざまな意見が出されておりまして、これらの意見の中身につきましては、答申の中に十分反映させていただいている、こういう理解でおります。
  136. 中島武敏

    ○中島委員 私も、会議録とか、それから概要の発表だとかというものをいろいろ読ませていただいております。しかし、今御答弁あったのですけれども、なおかつ私申し上げたいのです。  それは何かというと、実は、この調査会の設置法案であります臨時大深度地下利用調査会設置法案質疑されたときに、私はこういうふうに当時指摘しております。  今度の場合、公正で民主的な議論を保障することが必要だと思うのですね。そのためには、委員の民主的、公正な選任が前提とならなければならないことは言うまでもないと思うのです。その点で、大深度地下利用を促進したい、こう考える方々だけじゃなくて、慎重に考える慎重派の人たち、それから反対の意見の論者、こういう人たちもやはり委員に選ぶ必要があるのではないか こういうふうに私は実は指摘をいたしました。  私、いろいろ見ているのですけれども、後でまた問題にもしたいと思っているのですけれども、どうも私の危惧が不幸にして当たったと言わざるを得ないんじゃないかな、そういうことを私は感じるわけであります。これはダム審の見直しの問題のときにもいろいろ問題になったのですけれども、推進論者だけ集めて、その結論を制度化する、法案化する、国会に提出するというようなことは、やはり厳にやめるべきじゃないか、率直な意見ですけれども、こんなふうに思います。いかがでしょうか。
  137. 板倉英則

    板倉政府参考人 先ほども申し上げさせていただいたわけでございますが、この委員の人選に当たりましては、法律の趣旨にのっとりまして人選がなされたと思っておりますし、また国会でも御同意いただいた人事でございます。それぞれの各界を代表する方々ばかりでございまして、確かに、調査会の中では幅広い議論が行われておりますので、そういうものが十分答申に反映されるということが必要だと思いますが、現在出された答申というのはそういうものを十分反映した中身になっている、私どもはそういうふうに承知しております。
  138. 中島武敏

    ○中島委員 では、次の問題に移りたいと思います。  この大深度地下利用について国民の議論が熟成しているとお考えになりますか。どの程度、国民に情報を提供し、また国民の声をお聞きになったか。あるいは、公聴会などを行いましたか。それから、マスコミでもほとんどこの問題は議論されていないのじゃないでしょうか。国民の権利にかかわる問題であり、しかもまた大深度という未解明、知見が得られない世界の話でもあります。同時にまた、残された大変貴重な地下の問題でもあります。そういう点で、調査会として、また政府として、どんなふうなことを行われたか、この点について伺いたいと思います。
  139. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のとおり、大深度地下利用という新しい施策を始めるわけでございますので、その啓蒙につきましては政府として最善の努力をする必要があると思っております。  この答申ができるまでの経緯についてちょっと簡単に申し上げますと、私ども、中間取りまとめがまとまった段階でパンフレットを作成いたしまして、自治体それから学術団体等に配付させていただいております。それから、インターネットのホームページを開設いたしまして、中間取りまとめあるいは答申の内容を紹介しておりまして、これについては一般からも意見が受けられるようにしてございます。  それから、審議会自体といたしまして、外部の学識者あるいは有識者との意見交換が大事だということで、これは数次にわたって設けられております。それから、実務担当者、自治体、事業者経済団体等との意見交換もさせていただいて、答申を取りまとめるに至ったわけでございます。  さらに私どもとしましては、個別に、委員にはおなりにならなかったけれども、こういう方面で大変お詳しいと思われる一般有識者あるいは関連団体に個別ヒアリングをし、またそれとは別にアンケート調査等も実施いたしまして、民意というか国民がこの問題についてどうお感じになっているかを調査した次第でございます。
  140. 中島武敏

    ○中島委員 私はいろいろな会議録なんかも読ませていただいた上でなんですけれども、説明会はどなたがおいでになったのですか。報告によりますと、建設業が三割とかそれから公務員が二割、こんなような数字が出てくるのですね。これはいわば仕事上のことでおいでになっていらっしゃるのじゃないか、そういう気がするのです。一般の市民の方はほとんど来ていなかったというのが偽らざる現実じゃないかなということを私は指摘したいのですね。  そして、その参加者にアンケートをとっていらっしゃる。そうしますと、その結果が、賛成八割、こういう数字が出ているのです、報告によりますと。それから、大深度地下という言葉を知っているかと言ったら、九五%の人が知っている、こういうふうに答えたというんですね。調査会の存在を知っているかと言うと、五八%の人が知っていると答えておった。補償金は必要かという問いに対しては、四分の一がそうは思わない、こういう答えが出てくるのですね。これはこういう結果が国民の意識だというふうに大臣もお考えになるかどうかということなんですよ。  それから、大深度地下利用について不安を感じる理由は何かと言うと、環境問題というのが二割というような数字で出ておりまして、私もこれを読んで、いや、これはえらい数字が出ているな、しかし、言ってみれば、業者の人やあるいは公務員の方々がかなりの部分を占めているということからいって、こういう意見が出てくるのじゃないか。  だけれども、間違えてはいかぬのは、こんなところに、国民の皆さんが大深度地下利用ということについて理解がいっているというふうには到底私なんか思わないのですよ。それで、大深度地下利用というのは国民にもう認知された、こんなふうにゆめゆめ考えてはいかぬのじゃないかと思うんです。局長がお答えになりますか、大臣の見解も聞きたいとも思っているのですけれども
  141. 中山正暉

    中山国務大臣 近代社会、これからそういう進捗度の速い公共の福祉のためを考えながら、国家の経済発展を期する。特に、金の卵を産む鳥と思われるのが三大都市圏でございますから、日本の均衡ある発展に資するために、三大都市圏の機能を高度化させる。そのために資する効果は私は非常に大きいと思います。  世論の中でどうだろうかというお話がありましたが、先ほどからの御質問の中でも、もう何でこんなに長くかかったのだというお話もあるくらいでございまして、これは専門家といいますか、そういうことに関心を持っている方々にはかなり浸透をしている題材ではないかなと私は思いますし、我々も、やはり代わりに議する士と書いてありますから、代議士と書いてありますから、これは大いにひとつ主導権を発揮して、国民にこういう新しい近代科学技術を利用した大深度という、これは軍事面で、大深度で核実験までしている国があるわけでございますから、むしろそっちの方が私なんか問題だと思っております。むしろ世の中、進捗するために平和利用をしてもらわなければ困るわけでございますけれども、これは全く新しい、国家機能を上げるための、いわゆる国民の繁栄のための大深度利用でございますから、これは環境の問題その他の問題に対しても万全を期して、大深度利用するということは国民の皆様方に御理解を得られるのではないか、私はかように考えております。
  142. 中島武敏

    ○中島委員 大臣の見解を伺いました。  しかし、これはその事業者になるような人たちだけが、あるいはその関係者が承知しておっても始まらない問題でありまして、地権者とかその下を走られる上にいる方々とか国民一般とか、こういうような人たちがよく承知して、それから法律が出されるというのが一番いい姿かなということを私は思っているのです。そういう点からいうと、まだまだそういう段階には至っていないということを申し上げておきたいと思うんですね。  その次の問題なんですが、対象事業は、大臣、これは道路河川、水路、貯水池、農業用の道路、用排水路、鉄道、軌道、通信回線、電気事業、ガス事業の工作物、水道、工業用水道、下水道、その他土地収用法対象施設としているもので政令で定めるもの、こういうふうになっているわけですね。  それで、当面、具体的にどのような事業を想定しているかをまず伺いたいと思います。
  143. 中山正暉

    中山国務大臣 この法案は、大深度地下の適正かつ合理的な使用ということで、公共利益となる事業の円滑な遂行を目的とするものでございますが、現在でも、その大深度地下に相当するような深い地下が、超高圧送電線とかそれから上下水道等の生活に密着したライフラインの施設中心にもう既に利用されております。ですが、これを通常道路地下に設置されるために、曲がりくねった設定ルートでかえっていろいろな問題が起こるのでございまして、いわゆるこのようなライフラインの施設地下鉄とか地下河川等公益性の高い事業中心本法の活用が図られるものと見込まれておりまして、関係事業者もそれに対する大きな期待がございます。どういうものがこれからできますか、それぞれに法律で対応してまいりたいと思います。
  144. 中島武敏

    ○中島委員 大臣も御存じかもしれないのですけれども、しれないどころかよく御存じじゃないかなということを思うのですけれども、この調査会の中でも随分議論になっていまして、この法律制度がないとリニア新幹線は建設が不可能だという発言なんかもあって、ああこの委員の方はリニア新幹線、これが目標だな、目的だなということをじかに大変わかるような熱弁を振るっておられます。だからリニア新幹線ですね。  それから、東京の場合、外郭環状線が、東京だけではありません、千葉、埼玉、東京ですね、これで外郭環状線が問題になっておりますけれども、この点では、石原東京都知事がぜひこれは大深度でというようなことを言っておられるということも私聞いているのですよ。  それからエイトライナー、これは北赤羽から羽田までの環八の下を通る地下鉄なんですけれども、これの構想、これをつくろうではないかという運動がありまして、最近は、これもひとつ大深度地下でいこう、こういう話も出ているのですね。ですから、私の耳によく入ってくるのはやはり鉄道、地下鉄ですね、それから道路とか、こういう話がよく耳に入るのですよ。  それで、特に、そういうことになりますと、さっきもお話ありましたように、大都市、私なんか東京選挙区ですから東京、こういうところで大プロジェクトを組んで、そして大深度利用をやりたい、これはそういうための法律かなということ、それだけではないんですよ、もう私読んでおりますからいいんですけれども。だけれども、やはりそういうところに一番大きなねらい、目的があるのかなというふうに考えるのですけれども大臣、これはどうなんでしょう。
  145. 板倉英則

    板倉政府参考人 今、先生が幾つかの事例を挙げられたわけでございますが、私ども、この法律が施行されまして適用される事業として想定いたしておりますのは、先ほど申し上げましたように、身近な生活に密着するライフライン系統が先行してくるのではないかというふうに思っております。  それで、その際に、東京の既成市街地は大変土地利用が複雑、高度化しておりまして、実際に必要な施設でも、地表部あるいは浅い地下を通ろうと思ってもなかなか用地が手当てできないということは御案内のとおりでございまして、本当に必要な施設効率的につくるためにはどうしたらいいかという観点も重要かと思いまして、大深度を使う場合にはこういうルールでいきましょうということがこの法案の中身でございまして、御理解いただきたいと思います。
  146. 中山正暉

    中山国務大臣 私にもお尋ねがございましたので。  私は、やはり人間が乗るものというのはどこで地表に出てくるか、これは大深度でございますから大変な勾配が要ると思いまして、相当な広い地域がないと地表に出てくる部分というのは大変不都合なんじゃないかと思いますから、そのためには、人間が乗る場合には空気とかそんなものをどう確保するかとか、これは素人で、先生と同じようにいろいろな想像力をたくましくする意味で、先生の想像力たくましい御質問に想像力たくましく答弁をするとしますと、私は、空気をどこからとるかとか、大深度地表にあらわれない有効利用をどんなふうにするかというのには、まだ人が乗る場合にはいろいろ問題があるのではないか。全日空ホテルのところからちょっと六本木の方へ上がっていきますところにも、今地下の空気抜きの、大きな空気孔ができている。今工事中でございますが、あれが空気孔なんだなと思って、私見ながら自動車で走ったりするのでございます。  そういう意味での、これからの大研究の課題の中で、今局長が申しましたように、ライフラインが当面の目的で私はいいのではないか、これが三大都市圏の問題ということで。今新幹線とかリニアとか考えましたら、これはほかの大都市圏と結ぶ話になってまいりますので、まだまだそこまでの話ではないのかなと思いながら先生の御質問を伺っておりました。
  147. 中島武敏

    ○中島委員 なかなか大臣、慎重な発言をされましたね。それは伺いました。  それから、次の問題なんですけれども、これもちょっと大臣に伺いたいのですけれども、民間による開発が考えられるんじゃないか。そうすると、民間が手をつけるということになりますと、やはり利益追求と無関係でありませんから、無秩序な乱開発地下でやられるという懸念が生まれてきます。こういう点でどうなのかなということと、私的な乱開発を防ぐためにどういう措置が法的にとられているのかということについて伺いたいのです。
  148. 中山正暉

    中山国務大臣 本法案では、土地収用法対象事業となっているようなライフライン等の公益性の高い事業でございまして特に大深度地下使用する必要があるもの、具体的には、これまでの大深度地下に相当する深さの地下における実施例がありまして、今後大深度地下を活用する見込みである電気、ガス、上下水道それから電気通信等の事業対象事業としているものでございます。  本法案では、対象事業は、法律上いわゆる第四条で限定列挙しておりますものがございますが、対象事業者については、本法対象事業を行う事業者であれば、公共事業者それから民間事業者を問わず等しく適用されるものと思っております。  また、本法案は、上記のような生活に密着した身近なライフライン等の公益性を有する事業対象を限定しておりますが、その反射的な効果として、純粋に民間が私的目的のために行う開発事業は本法案対象外として抑制される、かようなふうに考えております。
  149. 中島武敏

    ○中島委員 短く言えば、公共公益事業に限る、そういうことでございますね。(中山国務大臣「そうでございます」と呼ぶ)はい。  それではもう一つ、次の問題なんですけれども、この法案を見ますと、国は基本方針を定めるとなっているのですね。その基本方針で何をやるのかというと、一つ公共利益となる事業、二つ、適正、合理的な利用、そして三つ、安全確保、環境保全、四つ、その他の公共的使用に関する重要な事項を定めなければならない、ちょっと私省略して短く言った点がありますけれども、こういうふうにされているのですね。  さらに、大深度地下使用協議会というのが組織されて、これが対象地域ごとに組織されて、必要な協議が行われるということになっています。  さて、そこで伺いたいのは、そうすると、基本方針の内容をチェックするのは一体どこなのかなということについて伺いたいのです。
  150. 増田敏男

    増田政務次官 お尋ねでございますが、国が定める大深度地下公共的使用に関する基本方針におきましては、事業間調整の方針など大深度地下の適正かつ合理的な利用に関する基本的な事項、火災、地震災害への対応など安全の確保、環境保全など配慮事項等について定めることとしております。使用の認可の際には、認可要件の一つとして、この基本方針に適合しているかどうか慎重に審査することとしております。  また、対象地域ごとに関係行政機関から成る大深度地下使用協議会を設置し、御発言にもございましたとおりです、できるだけ早い段階から基本方針に定められた事項について協議、調整することとしております。  さらに、大深度地下の適正かつ合理的な利用を図る観点から事前事業間調整の仕組みを設けており、施設の適正な配置や施設の共同化などを図ることといたしております。
  151. 中島武敏

    ○中島委員 今御説明ありましたけれども、結局推進者ばかりが対象事業を決定し協議するということになるのじゃないのですか。私はその点で、果たしてそれでいいのかな、やはり第三者機関でチェックする必要があるのじゃないかということを申し上げたのですけれども、この点はどうですか。
  152. 板倉英則

    板倉政府参考人 公法上の使用権設定ということで、私権の制限にかかわる問題でございますので、十分一般市民あるいは利害関係者の意見が反映される手続を踏んで最終的な使用権設定をするということが必要かと思います。  それで、私ども深度地下の特性に応じまして合理的な調整ルールを定めたいということで、具体的に申しますと、まず事業の初期の段階で説明会を開催いたしまして周知徹底を図る。それから、都市計画法や土地収用法にございますように、一般公衆への公告縦覧、それから利害関係人の意見書の提出等、地権者等の意見を十分反映できるような仕組みとして考えているわけでございます。  それから、個々に出されました意見等につきましては、審査に当たりまして十分参考にさせていただく、こういうふうに仕組んでいるわけでございます。
  153. 中島武敏

    ○中島委員 時間の関係もありますので、少し先を急ぎますけれども、多くの不安が起きてくる一つは何かというと、安全問題ですね。  この安全問題について伺いたいと思うのですが、地下空間による災害は過去どれくらいあったのか。その際、死傷者も含めてどのような被害があったのか。火事がその約半数と聞いておりますけれども、大深度の場合、消火活動が困難ではないのか。これらの問題点は完全にクリアしているのでしょうか。それから、特に不特定多数が利用する場合は問題点が多いと考えられるのですけれども、どうでしょうか。  それから、特に、消防庁、きょう来ていらっしゃいますか、消防庁の方でどういうふうにお考えになっているか。これはやはり問題があるなというふうに思っているのか、いやいやこれは大丈夫、こういうふうに思っていらっしゃるのか、御答弁をいただきたいと思うのです。
  154. 板倉英則

    板倉政府参考人 地下空間で、これは大深度に限らないわけでございますが、どのような災害があったかということにつきまして、まず火災ということでございますが、私どもその総数は把握しておりませんで、不案内ながらいただいている資料によりますと、地下空間における災害の約半数は火災である、先生指摘のとおりでございます。  それで、どんな事故が起こったかということにつきましては、これはいろいろ重大事故が起こっておりまして、例えば道路トンネル事故では、日本トンネルの火災事故で、これは昭和五十四年でございますが、死者が七名出ております。それから、静岡県のゴールデン地下街のガス爆発事故、これは昭和五十五年でございますが、死者が十四名出ております。それから、世田谷の地下通信ケーブルの火災、これは死傷者はございませんが、最長十日間電話が不通になったというようなことが起こっております。  私ども、こういった安全面での考慮すべき事項というものを非常に重く見ておりまして、審議会の答申もそうでございますが、この面の対策が一番進んでおります長大トンネルあるいは超高層ビル、それから先ほど言いました地下街等、いろいろな防火対策や防災対策を講じておりますが、そういうものを十分参照しながら、この大深度地下使用権設定に当たりましては慎重に対処してまいりたいと思っております。
  155. 細野光弘

    細野政府参考人 地下利用する施設につきましては、一般的に、地下空間という特別の空間でございますので、その防災対策につきましては、利用者等が避難をするないしは消防隊による消火救助活動等も行う上で大きな制約を受けることが想定されますので、一般的な地下空間につきまして、本法案対象とする事業の中では、不特定多数の者が利用する道路トンネル地下鉄につきまして、事業を所管する省庁とも協議の上に、事前に消火活動や救助活動を円滑に行うための設備等の設置を行わせているところでございます。  大深度地下につきましては、深度が深くなるにつれまして消火や救助活動はさらに困難性が増すことが予想されますので、もう御案内のとおり、この法案の中で、大深度地下利用に当たってはその特性にかんがみ安全の確保に特に配慮するというふうに規定されておりますし、それから、大深度地下利用に当たっての基本方針には、安全の確保に配慮すべき事項を定めることとされております。  さらに、大深度地下利用に係る個別の事業につきまして、先ほど来お話が出ておりますが、安全に係る事項も含めまして必要な協議を行う協議会を設けることとされております。  消防庁といたしましては、この協議会に参加をいたしまして、個別の事業についての安全に関しての協議を行うことといたしております。個別の事業計画が出てきた場合におきましては、それぞれの事業を所管する関係省庁と協議を行いつつ、安全確保対策について万全を期していきたいと考えております。
  156. 中島武敏

    ○中島委員 これはどうなんでしょうか、今使用協議会で協議をしながら進めるというようなお話があったのですけれども、消防庁としては、率直なところ、大深度で起きた火災というようなことになりますと、普通のところの火災とは違って、あるいは浅いところの地下での火災と違ってなかなか大変じゃないかなというのが私なんかの感じです。消防庁は、その辺についてどう思いますか。大深度で、できればそんなところでそんなものがなければというような気持ちになりますか。もう決まったことだからやはりいろいろ協議して万全を期す、それは私はわかるのですよ、わかるのですけれども、その辺のところ、率直なところを聞かせてもらいたいと思うのです。
  157. 細野光弘

    細野政府参考人 先ほどお答えしたのが私どもの率直な意見でございますけれども、先ほど局長の方からも若干御答弁がございました。既に、大深度に当たるようなトンネルとか鉄道等につきまして、かなり深いところでいろいろ設備をつくったときに協議をしてまいりまして、消防活動が円滑にできるための設備等を設けているような経緯もございます。当然そういったものも参考にしながら、今後協議に当たっていくと考えております。
  158. 中島武敏

    ○中島委員 では、このほかに地震とか浸水あるいは停電とか犯罪とかサリン事件のような無差別殺人、無差別も大量殺人ですね、これが起こった場合にどのように対処されるのでしょうか。  それからあわせて、掘り進んでいって活断層が見つかったという場合に、果たして見つかるのか見つからないのか、シールドマシンで掘るわけですからあるいは見つからないのかもしれないという気もするのですけれども、気がつかないで掘っていってしまった。活断層で、いつか地震というときにこれまた非常に大きな被害ということになると思うのです。その辺について、どんなふうにお考えでしょうか。
  159. 板倉英則

    板倉政府参考人 火災以外のその他の災害でございますけれども、まず浸水につきましては、これは重力に逆らった地上への排水ということが当然必要になりますので、まず入り口のところで止水施設を設ける等してとめるということと、それから、大深度地下構造物の施設の水密性を向上させるということで、いろいろ防水性の高いシールを使ったそういうものができておりますが、そういうものを使うとか、あるいは十分な容量の排水ポンプを常備するとか、そういった対策が考えられているわけでございます。  それから、停電につきましては、これは御案内のとおり、何かどこかで事故が起こったという場合には、こういう大きな施設につきましては、幾つかの区画に防火区画を分けまして、ぐあいの悪いところは直ちに電力の供給をとめまして、応急復旧を図った上でもとに復するというような対策がかなり進んでおります。そういった先進事例を十分参考にしながら、さらに複数系統の供給源を考えるとか、あるいは非常時に備えまして発電とか蓄電とか、そういう施設を整えておくとか、そういうことがあろうかと思います。  それから、防犯対策も同様でございますが、これについては、内部空間の設計に当たりましてできるだけ明るくて見通しのよい空間設計をするとか、あるいは、防犯カメラを常備いたしまして、何か起こったときに防災センターからすぐすべてが掌握できるとか、そういうようなことが考えられようと思います。  いずれにしましても、こういった問題につきましては、基本方針の中にきちっと対応を書いていきたいというふうに思っております。  それから、活断層のお話が出ましたけれども、普通の地震災害に対しては、大深度地表部に比べて揺れの大きさというのは数分の一にとどまるというふうに言われているわけでございますけれども、例えば活断層の直上で大きなずれが起こったというようなことについては、これは最善の注意を払ったとしてもなかなか抗し切れない面は確かにあろうかと思います。しかしながら、大深度地下構造物を設計するに当たりましては、特に地表部との接続部について揺れ方が違いますので、その変位に対応できるような構造の構造物を考えていきたいというような対策はあろうかと思います。  いずれにしましても、私どもが得られている知見の中で一番高い水準の技術を適用していけば、何とかそういう問題も克服できるのではないかというふうに考えております。
  160. 中島武敏

    ○中島委員 活断層などを含めていろいろ今詳しく言われましたようなことで、避難をするという場合、これは一体どういうふうに考えたらいいですか。エレベーター、物によりけりですけれども、大深度地下利用道路の場合と電車、地下鉄なんかの場合は違ってくるかと思うんですけれども、やはりエレベーターで垂直に対処しなきゃいかぬというような場合も出てくると思うんですよね。ところが、エレベーターといったって、人数は限られているし、大量輸送機関ですからたくさん要る。さあこれは一体、パニックやなんかが起きるんじゃないか。その辺のことについてはどんなふうにお考えになっていらっしゃるかということです。
  161. 板倉英則

    板倉政府参考人 現在、例えば道路につきまして最新のあれで申しますと、アクアラインなんかには、自動車の通る道のすぐ下にわきっちょから避難できるような穴があいておりまして、そこを滑り込むようにして地下の避難路にすぐおりられます。それで、そこを遮断しまして煙からよけられるようにするというような対策が講じられておりますし、関越のトンネルがございますが、あれは副道みたいなものをつくりまして、これは通常は維持管理のために使っているわけでございますが、災害時には避難できるような工夫が講じられております。そういった避難。  それから、建物の中では、先ほど申しましたが、地下街の例がそうでございますが、幾つかのセグメントに分けまして、それぞれ避難場所を、複数経路で避難場所にとりあえず一時避難しまして、それから地上部との連絡をとっていくというようなことが地下街の防火対策等ではかなり進んでおりまして、そういったものを我々は参考にしながら、基本方針で必要な事項を定めてまいりたいと思っております。
  162. 中島武敏

    ○中島委員 次に、環境の問題について伺いたいと思うんです。  環境問題でも大深度地下は未解明なことが多いですね。調査会の答申でも、大深度地下についての調査分析の事例が少なく、環境影響を予測するためには十分な知見が得られているとは言えないということを述べているわけです。専門家によりますと、地盤が酸化してガスが発生するとか、水素イオンの濃度が高くなって発熱するとか言われています。地下水位の低下、水圧の低下、地盤沈下、地下水汚染に対して環境アセスメントはおやりになるのかどうか、この点について伺います。
  163. 板倉英則

    板倉政府参考人 大深度地下使用する際に、環境影響評価法対象事業でございますときは、大深度地下法に基づく使用権設定の申請以前に環境アセスを所定の手続にのっとってきちっとやっていただくということがまず前提になります。私どもは、それを添付書類で見まして、適正に環境アセス手続がとられていたかどうかを審査することになっております。  それから、アセス法の対象以外の事業もございますので、それにつきましては、大深度法の五条の環境保全の特別な配慮という規定を受けまして、基本方針の中で基本的な事項を記載しまして、そして、認可の要件として基本方針に適合しているということが入っておりますので、そういった点から十分にチェックをしていきたいというふうに考えております。
  164. 中島武敏

    ○中島委員 私は、これは大深度地下ですから、アセスメントなんかも、今御答弁あったんですけれども、やはりそのための特別なアセス法というようなものが必要になってくるんじゃないかなということを思うんですけれども環境庁の方、きょうは来ていらっしゃいますね、その点について伺います。
  165. 遠藤保雄

    遠藤政府参考人 お答え申し上げます。  今先生指摘アセスの特別の手法ということでございますけれども、今板倉局長から答弁されましたように、この件、アセス法に乗るものはアセス法できちんとやってまいりますし、また、それ以下の小さい事業の場合につきましては、この法律によりまして私どもは認可をする際に意見を申し述べることができることになっておりますので、そういう形できちんと対応してまいりたい、こう思っております。
  166. 中島武敏

    ○中島委員 私、率直に言うけれども、ちょっと不十分じゃないかなということを思っているんです。今お二人から、環境庁の方からも、また国土庁の方からもお答えがありましたけれども。  実は、私は、会議録なんかを拝見しております。さっきから何回も言っているんですが、そこでこういうことが出てくるんですね。環境アセスを設けること、必要じゃないかというのは私なんですけれども、そうすると中央環境審議会に諮るべきものではないのですか。ところが、調査会である委員は、中央環境審議会に仮にお願いしますとすると、またそこでえらい時間がかかるのではないでしょうか、そこでまたゆるゆるやられたら国土庁の法案作成が随分おくれるのではないでしょうか、実際に、特に私どもはリニアを頭に置いている、幾ら実験に成功しても、大深度の問題がけりがつかないことには実用化できない。  私は、この発言に何か本質があらわれているんじゃないかという気がしてならないんですね。とかく法案の作成ということを急いだ余り、未解明の問題だからこそ、たくさんあるからこそ、やはりここは腰を据えてちゃんとしかるべくアセス法を、こういうアセスでなきゃならないというようなことを確立してからやっても決して遅くはないんじゃないか、私はそういうふうに思うんですけれども、どうでしょう。
  167. 板倉英則

    板倉政府参考人 大深度地下使用に際して環境保全上配慮すべき事項として、先ほどからも議論に出ておりますが、地下水の問題とかあるいは地盤沈下の問題とか、環境にかかわる重要な事項がございまして、そして大深度地下であるがゆえに配慮しなければならないというようなテーマももちろんあると思います。したがいまして、それにつきましては、私ども環境庁等とも十分協議して、これは政府が閣議で基本方針というのを決めることになっておりますので、そういった所要の基準等についてはそこの中で考えていきたいと思っております。
  168. 中島武敏

    ○中島委員 私は、もう一度やはり繰り返したいと思うんですね、それは。知見が少ないから、それから大変何か未知のことが多いから、そういうときには、今あなたが答弁しておられるよりも大事なのは、ちゃんと立ちどまって、しっかり、どんなふうにやるのが一番いいかということについて十分にやはり考えて、大深度の場合にはこうだ、こういうものを確立することが私は先決じゃないかというふうに思うんですね。それはそれだけ。  それから、もう一つこれは大臣に申し上げて私も終わりにしなきゃいかぬと思うんですけれども、今財政破綻なんですね、国、地方合わせて六百四十五兆円。その原因はどこにあるかというと、大規模開発に五十兆円。五十兆円ということになりますと、アメリカの二・七倍ですよ。それから、サミット参加国で、最後に参加したロシアと日本を除きますと、六カ国のサミット参加国が使っている公共事業費よりも日本一国の方が大きいんですね。私は、今そういうような問題をちゃんとやはり考慮に入れて、そういう事態だということを考慮して、こういうのは推進するというんじゃなくて、今ストップするということこそが大事じゃないかということを申し上げて、質問を終わりにしたいと思うんです。
  169. 中山正暉

    中山国務大臣 ちょっと観点が違うものですから。  日本は三十二兆円もアメリカの国債、いわゆる財務省証券を買っておりますし、その意味でアメリカにも大変な経済協力をしている。それで、今六百四十五兆とおっしゃいましたけれども、これは国民から借金をしておりますもので、外国からお金を借りているわけでもありませんし、また国民の金融資産、郵便貯金も、集中満期の際には二年間で百六兆というのが、逃げていくとはいいますけれども、二百六十兆あるというようでございますし、千三百三十三兆と言われるような国民の金融資産があります。その国民の大変な蓄積を使わせていただいてこの経済難をどう克服するかということでございますから、効率のいい公共事業というものを進捗してまいりますために、私はこれこそ近代の知恵ではないかと思いますものですから、その意味で本法案は、大深度地下において、電気・ガス、上下水道、それから電気通信、まさにITインフラに必要なものでございましょうし、生活に密着した身近なライフライン等の整備を行うためのものでございまして、国民のための施設整備に資するものと思っております。  本法案は、このような事業を大深度地下使用して実施する際の権利調整ルールを明確にするとともに、大深度地下の適正かつ合理的な利用を図ることを目的としておりますので、特定の事業の推進を意図するものではございませんで、合理的なルート設定が可能となり、公共利益となる事業の円滑な実施に資するとともに、コスト軽減に大きく寄与する、かような立場でまたひとつ御理解をいただきたいと思います。
  170. 中島武敏

    ○中島委員 終わります。
  171. 大口善徳

    大口委員長 中西績介君。
  172. 中西績介

    ○中西(績)委員 大深度地下については、地主の所有権が及ぶことは認めつつも、道路河川、鉄道、上下水道など公共性の高い事業について、原則として補償は不要としておるが、日本国憲法二十九条、民法二百六条、二百七条、あるいは土地収用法二条、三条などとそごを来さないのか、この点についてお答えいただき、調整はどのようにされておるのか明らかにしていただきたいと思います。
  173. 中山正暉

    中山国務大臣 憲法の第二十九条の二項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」こういたしておりますので、本法においては、この規定を踏まえまして、大深度地下地権者により通常使用されない空間である、この点が大切なところだと思いますが、そういう特性にかんがみまして、大深度について公法上の使用権設定を先行させるものと考えております。  また、大深度地下は、補償すべき損失が実質的に生じないと推定されることから、例外的に補償を要する場合は事後的に請求をもって補償する、井戸とかそれからまた温泉とかそういうものが出ている場合のことでございますが。通常利用とは、いわゆる土地の最有効利用意味しまして、現存する最大規模の超高層ビルの建築も含まれて、各地層、東京れき層とか、それから大阪の天満層とか梅田層とか、それから名古屋では海部層とかいう、いわゆる基盤がございますが、それから下を利用するということでございます。
  174. 中西績介

    ○中西(績)委員 今お答えいただいたようなことでこれに取りかかったと思うんですけれども、大深度地下利用については、一九八八年、昭和六十三年ですが、臨時行政改革推進審議会、地価土地対策に関する答申以降、一九八九年、平成元年にかけて各省庁では種々検討されたことが法制化には至らなかった。一九八八年、閣議決定された総合土地対策要綱では、「所要の法律案を次期通常国会に提出すべく準備を進める。」となっているけれども提出されなかった理由は何なのか、そして本法案が急に今国会に提出されるその理由は何であるかをお答えください。
  175. 中山正暉

    中山国務大臣 先ほどちょっと、カイフ層と申しましたが、海部と書いてアマと読むそうでございますので。それから、弥富累層というのが名古屋だそうでございます。  今の御質問でございますが、大深度地下利用につきましては、民法の二百七条で「土地所有権ハ法令制限内ニ於テ其土地上下ニ及フ」、こう規定されている土地所有権が大深度地下に及んでいるか否か、また、土地所有権が及んでいることを前提としつつ、公法上の使用権設定するという法律の構成は可能か、その意味で、土地収用法における事前補償の原則、いわゆる壁が破れるか、そういう事前補償の壁が破れるかという原則との調整、それから使用権設定大臣土地収用法所管大臣との関係や、それから使用権設定大臣事業所管大臣との関係との調整、これは事業所管大臣を経由するという意味でございますが、そういう意味で、法律的、技術的に検討すべき課題が多々ありましたものでございますから、平成七年以降、臨時大深度地下利用調査会で三年間にわたって慎重な検討が行われました。  これらの問題を克服するために、調査会の答申を踏まえまして、内閣内政審議室やら内閣法制局を中心に調整を進めて、関係省庁で検討、調整を重ねた結果、内閣として提出する段階となったということでございますが、国土庁の中でもどうするかという御相談がございまして、私は、もう今こそその時期ではないかということで、提出に踏み切ったわけでございます。
  176. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、バブルごろにいろいろそうした点が検討されてきたと思うんですけれども、結局、今の大臣答弁からすると、各省庁間なりなんなりの調整などが相当複雑化しておったということ等を含めて、そして平成元年ごろまでには提出をされなかったということ、そのように理解をしてよろしいのですか。
  177. 中山正暉

    中山国務大臣 詳細は局長から御答弁申し上げますが、十三省庁ありましたので、日本法律をつくるときの慎重な、特に内閣法として提出する際には慎重を期すべきだということで、万全を期して省庁間の調整をしておったということでございます。  細かくは局長から御答弁申し上げます。
  178. 板倉英則

    板倉政府参考人 大きな問題は大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、補足させていただきますと、特に、十三省庁ある中で、使用権設定大臣をどうするかという問題が一つの焦点でございまして、これは、大深度地下利用に際して使用権設定するというのはある意味では私権に対する制限でございますので、統一的かつ公平な判断が求められる。  ですから、十年前に起こっていた議論というのは、各省庁がそれぞれお持ちになる事業を大深度地下利用するという、各省ばらばらに法案の作成作業が進んだわけでございますが、それではやはりぐあいが悪いということになりまして、内政室の方で、省庁再編後の国土交通大臣のもとで使用権設定をするということであれば統一的かつ公平な判断にふさわしいという御結論を出していただきまして、その所管の問題が片づいたというのが、今回法案化にかかれるようになった、その出発点がそういうことであったということでございます。
  179. 中西績介

    ○中西(績)委員 損失に対する補償請求は、事業が認可されてから一年以内に限定されておりますけれども、規定の対象となる損失とはいかなるものを指しておるのか。また、一年以内にすることは、事業実施者の役所などへの配慮が重視され過ぎるのではないか。補償請求を一年以内としたのはなぜなのか。この点についてお答えください。
  180. 板倉英則

    板倉政府参考人 まず、これは法律のいわゆる事後補償という規定を置きまして、通常事前補償をなくして公法上の使用権設定するわけでございますが、権利保護に遺憾のないように事後的に請求を待って補償する、その請求の期間が一年ということでございます。立法例もほかにもございまして、溝垣補償、御案内のとおりのあれにつきましても事後補償ということで、請求期間が一年、同じようなことをやっております。  それは、理由としましては、対象となるその施設が比較的軽微なもので、移転、除却が容易なものが対象になるという想定のもとに、こういう一年という調整期間を設けたわけでございます。
  181. 中西績介

    ○中西(績)委員 来年四月から首都圏、近畿圏、中部圏の中心部を対象にして施行するというが、具体的にはどう線引きをするのか。そして、市町村名で定める予定と聞いておりますけれども、長距離に及ぶリニアモーターカー関係市町村は対象としてあるのか。さらにまた、具体的に名乗りを上げている事業などはあるのか。また、リニアモーターカーが問題になっておったけれども、現在はいかになっておるのか。この点についてお答えいただきたい。
  182. 板倉英則

    板倉政府参考人 何点かのお尋ねでございますので一つずつ申し上げますが、まず指定対象地域、首都圏、近畿圏、中部圏の中の、具体的には、私ども今想定しておりますのは、既成市街地と近郊整備地帯の市町村の区域で指定をしたいと思っております。  それから、具体的に予定される事業のうちのリニアはどうかというお尋ねでございますが、これは、現在、実験線におきまして走行実験を繰り返しているところでございますが、まだ幾つかの、長期走行安定性とか、それから採算面での検討とか、同時にそれはコスト面の検討も重なるわけでございますが、そういった問題について、走行実験を続けつつ引き続き検討しているという段階と承っておりまして、今直ちにこの法律対象になるというようなところまでいっているのかどうか、私どもはよく承知しておりません。  それから、具体的に手を挙げている事業があるかということでございますが、これはまだ、私どもなりにいろいろな事業者と接触はしておりますが、個別の事業を申し上げますとそちらの方にもちょっと差しさわりがあろうかと思いますが、一般的には、電力とか上下水道とか、生活に非常に身近な公益性の高い事業から適用されていくのではないか、そういうように見通しております。
  183. 中西績介

    ○中西(績)委員 今日の科学的知見では予測しがたい問題が発生する可能性があると思うのですが、その場合の対策はいかにしようとしておるのか。  例えば、東京駅地下の水位上昇、その他災害等について、安全対策は先ほどから言っておりましたけれども可能かどうか、長期的視野に立った安全対策と事業認可に対処していくのか、ここらについてお答えください。
  184. 増田敏男

    増田政務次官 安全の確保や環境保全については、本法案において、まず「大深度地下使用に当たっては、その特性にかんがみ、安全の確保及び環境保全に特に配慮しなければならない。」旨を規定することとしております。  また、国が定める大深度地下公共的使用に関する基本方針において、安全の確保、環境保全等について配慮すべき事項を定め、使用の認可の際には、基本方針に適合しているかどうかを慎重に審査することとしております。  さらに、対象地域ごとに関係行政機関から成る大深度地下使用協議会を設置し、安全の確保や環境保全の観点から、できるだけ早い段階からこれらの課題について協議、調整することとしております。  また、国及び都道府県の責務として、対象地域における地盤の状況、地下利用状況等に関する情報の収集、提供、その他必要な措置を講ずるように努めなければならないことと規定しており、これらにより蓄積された知見は、本法案に基づく具体の事業の施行に当たり、安全面、環境面の両面から万全を期するよう、最大限活用していくこととしております。  以上です。
  185. 中西績介

    ○中西(績)委員 先ほど、いろいろ安全面についての論議が行われておりましたけれども、これらの問題について、できれば具体的なものを挙げていただいて、このようにということをお聞きしたかったのですけれども、この点は、また後日に回すことにいたします。  そこで、井戸や温泉など地下利用している土地所有者に対してのみ損失補償の義務を負うことにしておりますけれども地下水脈地下でつながっていることがたびたびあるわけでありますから、通常補償すべき損失が発生しない地下部分と断定しているが、これには問題があると思います。遮られると、付近の井戸使用不能になるなど、副次的な影響が考えられるわけでありますけれども、この場合の補償についてどのようにしようとしておるのか。
  186. 板倉英則

    板倉政府参考人 御指摘のように、地下を掘っていく段階で付近の井戸井戸がれするというような事態が起こり得るわけでございますが、こういった問題につきましては、従来の損失補償基準でも、御案内のとおり損失補償とはまた別個に、民法七百九条のいわゆる損害賠償として扱う、その原則に立って、しかしあらかじめ損害の発生が予見されるというような場合には事前賠償するという方針が示されております。  私ども、こういった通例に従いまして、万が一、大深度地下掘削に伴って周辺の井戸がかれるというようなことになった場合には、この例によりまして、事前にそれを把握して補償するというような手続をとれるよう、基本方針等でその指針を示してまいりたいと思っております。
  187. 中西績介

    ○中西(績)委員 地質図ないし地下地形図はどの程度完備されているのか。民間の各種ボーリング調査のデータを持っておると思いますけれども、これらについての活用はどのようにするのか、もし活用をする場合の法令の整備はどのようにされておるのか。
  188. 板倉英則

    板倉政府参考人 この法案の立案に当たりまして、私ども、東京、大阪、名古屋の三大都市圏につきまして、公共事業あるいは民間の事業により得られましたボーリングのデータ、これのデータベース化を進めてまいっておりまして、現在の進捗状況では、名古屋はほぼできつつございまして、それから東京、大阪についてもそれほど遅くない間にデータベースが整備される予定でございます。数で申しますと、ボーリングデータ数が、東京で約六万サンプル、大阪で約三万サンプル、名古屋で約二万六千サンプルということでございます。  これらのサンプルを十分活用いたしまして、私ども、法の適正な運用に当たるとともに、一般にも公開いたしまして、事業者がそれを参考にして必要な対策が十分講じられるよう指導してまいりたいと思っております。
  189. 中西績介

    ○中西(績)委員 大深度地下使用の認可を行った場合、告示をするとき、使用の期間を明示することが義務づけられておりますけれども、この期間についてどのように表示するか。期間が満了したときの引き続いて使用するとき、手続はどのようにしようとしておるのか。さらに、終了したとき回復の義務があると思うのですけれども、原状回復はどのようにしていくおつもりなのか。お答えください。
  190. 板倉英則

    板倉政府参考人 大深度地下に設けられることになります構造物というのは、かなりの耐久性を持った、強度の高い構造物になるわけでございます。そうなりますと、その使用の期間をどう設定するかという問題になるわけでございますが、例えば地下鉄等についてはその施設が存続する期間というような形で処分をしておりまして、私どもも、当該施設の存する限りというような、これは通例に従いまして特定の期限を定めずに認可をさせていただきたいと思っております。  それから、この法律では、事業を廃止するとかそういう場合には届け出義務を課しておりまして、そうしますと使用権が自動的になくなりますので、原状回復義務がございます。そして、法律上も原状回復について義務づけております。先ほどもちょっと議論がございました、それに従わない場合はどうするかというようなことがございますけれども、それは一般の行政代執行法とか既存の法律で対応していきたいと思っております。
  191. 中西績介

    ○中西(績)委員 使用認可の手続についてお聞きしたいと思いますけれども使用認可に関する処分をするときには、関係行政機関の意見を求めなければならないし、申請の事業者に対し、説明会の開催など、使用認可申請等の内容を周知させるために必要な措置を講ずることを求めることができる。その他、公聴会、使用認可申請書の公告縦覧、利害関係者の意見書の提出など、使用の認可の手続について所要の規定を設けるものとするとあります。  従来から問題になっておりますのは、反対なりあるいはいろいろ意見がある、こうしたときに、公聴会等で絶えず問題になってきた点でありますけれども、排除したり、あるいは形式的にこれを強行するというようなものになってきた経緯があるわけでありますけれども、こうした問題等については今後いかに対応をするおつもりか、お答えください。
  192. 中山正暉

    中山国務大臣 この法案につきましては、地権者による通常利用が見込まれない空間であるという大深度地下の特性に応じまして、合理的な権利調整ルールを定めるものとした点でございます。  使用権設定に当たりましては、国民の権利保護に十分配慮して、あらかじめ地権者に対して説明会を開催するとともに、都市計画法やらそれからまた土地収用法にもあるような一般公衆への公告、それから縦覧、利害関係人の意見書の提出等を定めることによりまして、地権者等の意見を十分に反映する仕組みにいたしたところでございます。  本法案の施行に当たりましては、この趣旨を踏まえまして、手続について周知を図るとともに、適正な運用に努めてまいりたい、個別的な意見書に対しても配慮をいたしたいと思っております。
  193. 中西績介

    ○中西(績)委員 この問題につきましては、特にこれからこの種問題についての民主的な手続を遂げていくということが、今、回答ありましたけれども、今までの状況等を十分反省した上でこれをやっていかないと、いろいろなところでの、ダムについての問題だとか、たくさんの係争的なものが出てきておるわけですね。ですから、これらについても、もともと審議会等でこれを認定したりなんかしておりますけれども、やはり依然として問題が解決されないままですね。  例えばダムなんかの場合には、今から三十年も前にダムを建設するということになれば、目的は何かということになってくる。ところが、だんだん時間がたつに従って、その水量が必要ないとか、あるいはいろいろな問題が出てくるわけですね。そうすると、今度、目的がだんだん変わってくる。こういうふうな問題等が今まであったわけです。だものですから、今度、一般の皆さんの信頼からすると、行政は何でもかんでも強行してくるんだというような認識を持つに至っておるわけです。  ですから、今回の大深度の場合には、先ほど出てきておった環境だとか安全だとか、いろいろな問題がたくさんあるわけでありますから、こうした点についてぜひ住民あるいは多くの皆さんがこれを理解し、そして了解できるという体制をとることの方が、十分慎重に、しかも対応策を出してやった方が、結局は短時間にそれが済んだということになり得ると私は思うのですね。ぜひこうした点について国土庁の方も指導し、各役所等におきましても考えるようにさせていくようにしていきたい、こう考えるわけであります。ぜひ御勘案いただきたいと思います。  それから、対象事業の中には、第四条関係になるわけでありますけれども土地収用法の第三条に特定されている、一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設その他の廃棄物の処理施設日本原子力研究所が研究の用に供する施設、核燃料サイクル開発機構の業務に関する施設が含まれています。  現在、社会的に問題を起こしておることもありまして、廃棄物事業について本法案の想定する中から排除する法的な担保が必要じゃないかと私は思うんですけれども、この点について、どのようになっておるでしょう。
  194. 板倉英則

    板倉政府参考人 本法案対象事業につきましては、基本的に土地収用法に限定列挙する事業というのを最大限といたしまして、その中で大深度地下使用必要性の高いものを本法対象事業とさせていただいているところでございます。それから、政令で、その範囲内で逐次追加ができる、こういう措置を講じております。  お尋ねの一般廃棄物処理施設とか産業廃棄物処理施設は、現在対象事業としておりませんが、これは厚生省等の関係省庁の御意見、あるいはその事業必要性等を十分勘案して、その時点で検討させていただくことになるかと思います。  それから、原子力関係については、全く予定をしておりません。
  195. 中西績介

    ○中西(績)委員 以上で終わります。
  196. 大口善徳

    大口委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  197. 大口善徳

    大口委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中島武敏君。
  198. 中島武敏

    ○中島委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題になりました大深度地下公共的使用に関する特別措置法案に対する反対討論を行います。  反対する理由の第一は、この法案大都市の大深度地下に、道路、鉄道、上下水道、河川、電気・通信・ガス事業施設等の建設を推進するための制度を創設していることであります。このことは、リニア新幹線を大深度でとか、首都圏の外郭環状線を大深度でなどと、この大深度地下利用制度化を見込んで声高に推進しようとしていることからも明らかであります。  我が党は、大深度地下公共利用自体を否定するものではありません。しかし、現在の国、地方自治体の破局的財政状況のもとで、むだで浪費的な公共事業の推進が大きな政治問題になっているときに、それをさらに促進することは問題であると考えます。今政治に求められているのは、公共投資公共事業のあり方そのものが問われているのでありまして、それに手をつけないまま、それをさらに推進する制度仕組みをつくることには反対であります。  第二の理由は、臨時大深度地下利用調査会の答申で「大深度地下については調査・分析の事例が少なく、環境影響を予測するために十分な知見が得られているとはいえない。」としているように、大深度地下についての十分な科学的、民主的な調査研究をしないまま、事業推進を第一義にしていることであります。  大深度地下は残された貴重な空間であり、一たん設置された施設の撤去は困難な空間であります。しかも、その開発利用については、技術面、安全面、環境面でさまざまな未解明な課題があることは、専門家がつとに指摘していることであります。したがって、未解明の課題について慎重な検討、審査が必要であるのに、それをあいまいにしたまま大深度地下利用を推進することは、我が国の将来にも禍根を残すものであります。  第三に、大深度地下使用について、事業者と行政機関の協議、調整だけを優先し、国民に対してはその事業の認可が済んでから使用認可の手続を定めていることであります。これでは土地所有者など国民の意見が反映される保証がないことは明らかであります。  以上三点の理由から本法案に反対することを表明して、討論を終わります。
  199. 大口善徳

    大口委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  200. 大口善徳

    大口委員長 これより採決に入ります。  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  201. 大口善徳

    大口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  202. 大口善徳

    大口委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、原田義昭君外四名より、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を聴取いたします。吉田公一君。
  203. 吉田公一

    吉田(公)委員 ただいま議題となりました大深度地下公共的使用に関する特別措置法案に対する附帯決議案につきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますが、その内容につきましては、既に質疑の過程において委員各位におかれましては十分御承知のところでありますので、この際、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえることといたします。     大深度地下公共的使用に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用について遺憾なきを期すべきである。  一 大深度地下公共的使用が三大都市圏における都市機能の過度の集中を招くことのないよう、十分配慮すること。  二 交通機関等の大深度地下使用については、長期的な振動等が人体に与える影響を含め環境への影響について厳正な審査を行うこと。また振動等が人体に与える長期的影響については、学術研究機関等における調査研究が活発に行われるよう配慮するとともに、その知見が審査において積極活用されるよう努めること。  三 大深度地下使用については、帯水層に係る事前の調査を十分に行い、周辺の地下水の取水に影響を与えることのないよう努めること。  四 大深度地下使用の認可を行うに当たっては、構造物の安全性に係る審査を十分に行い、利用者の安全の確保に万全を期すこと。  五 大深度地下公共的使用土地所有権と密接な関係を持つことに鑑み、本制度が円滑に運用されるよう、その趣旨の周知徹底を図るとともに、大深度地下使用の状況等本制度に関する情報の提供及び公開を積極的に行うこと。 以上であります。  委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。
  204. 大口善徳

    大口委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  205. 大口善徳

    大口委員長 起立多数。よって、原田義昭君外四名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、中山国土庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。国土庁長官中山正暉君。
  206. 中山正暉

    中山国務大臣 国土庁長官としてごあいさつを申し上げます。  大深度地下公共的使用に関する特別措置法案につきましては、本委員会におかれまして熱心な御討議をいただき、ただいま御可決をいただきましたことを深く感謝申し上げる次第でございます。  今後、御審議中における委員各位の御高見や、ただいま議決になりました附帯決議の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。  ここに、委員長初め委員各位の御指導、御協力に対し深く感謝の意を表し、ごあいさつといたします。  どうもありがとうございました。お世話になりました。(拍手)     —————————————
  207. 大口善徳

    大口委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 大口善徳

    大口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  209. 大口善徳

    大口委員長 次回は、来る三十一日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時二十八分散会