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2000-03-14 第147回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十二年三月十四日(火曜日)     午前九時十五分開議  出席委員    委員長 田端 正広君    理事 稲葉 大和君 理事 小野 晋也君    理事 河本 三郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 平野 博文君    理事 近江巳記夫君 理事 菅原喜重郎君       岩下 栄一君    江渡 聡徳君       越智 通雄君    木村 隆秀君       菅  義偉君    田村 憲久君       滝   実君    古屋 圭司君      三ッ林弥太郎君    望月 義夫君       川内 博史君    近藤 昭一君       松沢 成文君    吉田  治君       斉藤 鉄夫君    吉田 幸弘君       吉井 英勝君    辻元 清美君       中村喜四郎君     …………………………………    国務大臣    (科学技術庁長官)    中曽根弘文君    科学技術政務次官     斉藤 鉄夫君    外務政務次官       山本 一太君    政府参考人    (科学技術庁科学技術政策    局長)          青江  茂君    政府参考人    (科学技術庁科学技術振興    局長)          越智 謙二君    政府参考人    (科学技術庁研究開発局長    )            池田  要君    政府参考人    (科学技術庁原子力局長) 興  直孝君    政府参考人    (科学技術庁原子力安全局    長)           間宮  馨君    政府参考人    (文部省学術国際局長)  工藤 智規君    政府参考人    (資源エネルギー庁長官官    房審議官)        藤冨 正晴君    参考人    (原子力安全委員会委員長    )            佐藤 一男君    参考人    (宇宙開発事業団理事長    )            五代 富文君    参考人    (宇宙開発事業団理事)  斎藤 勝利君    参考人    (核燃料サイクル開発機構    理事)          藤本 昭穂君    科学技術委員会専門員   宮武 太郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十五日  辞任         補欠選任   谷垣 禎一君     越智 通雄君 三月十四日  辞任         補欠選任   岩下 栄一君     滝   実君   岡部 英男君     菅  義偉君   木村 隆秀君     田村 憲久君   川内 博史君     松沢 成文君   中西 啓介君     吉田 幸弘君 同日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     岡部 英男君   田村 憲久君     木村 隆秀君   滝   実君     岩下 栄一君   松沢 成文君     川内 博史君   吉田 幸弘君     中西 啓介君     ————————————— 三月十四日  技術士法の一部を改正する法律案内閣提出第六四号) 二月二十九日  原子力政策転換し脱原発を進めることに関する請願保坂展人君紹介)(第二二二号)  脱原発への政策転換に関する請願保坂展人君紹介)(第二二三号)  同(土井たか子紹介)(第二九六号)  脱原発政策への転換に関する請願辻元清美紹介)(第二五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  技術士法の一部を改正する法律案内閣提出第六四号)  科学技術振興基本施策に関する件     午前九時十五分開議      ————◇—————
  2. 田端正広

    田端委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として科学技術庁科学技術政策局長青江茂君、科学技術庁科学技術振興局長越智謙二君、科学技術庁研究開発局長池田要君、科学技術庁原子力局長興直孝君、科学技術庁原子力安全局長間宮馨君、文部省学術国際局長工藤智規君及び資源エネルギー庁長官官房審議官藤冨正晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田端正広

    田端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長佐藤一男君、宇宙開発事業団理事長五代富文君、宇宙開発事業団理事斎藤勝利君及び核燃料サイクル開発機構理事藤本昭穂君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田端正広

    田端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 田端正広

    田端委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君
  6. 小野晋也

    小野委員 委員長、まず許可をいただきたいのでございますが、資料を一枚配付させていただきたいと思いますが、御許可いただけますでしょうか。
  7. 田端正広

    田端委員長 結構でございます。
  8. 小野晋也

    小野委員 それでは、本日は、大臣所信に対します質疑ということでございますから、現在の日本科学技術政策全般に関する基本問題を提起させていただいて、それに基づいての質疑を展開させていただきたいと存じます。  今配付をいただいております資料でございますけれども日本科学技術という問題に関して、それを一本の木に例えてイメージを描かせていただいたものでございます。  一本の木、それは根があり、幹があり、そして枝葉がある、こういうふうに構成されているわけでございます。科学技術というものをその絵のイメージで例えてお話をさせていただきますならば、枝葉に相当するところが一番見ばえのいいところ、具体的な形として皆さんの目に映るところでございますから、ちょうど製造技術であったり、また製品技術である。この部分は、日本技術に非常に定評のある部分であると私どもは考えている点でございます。  一方、その枝葉を支えるところには幹があり、そして、その幹がしっかりと立つためには、大地に対して深く根を張っていくということが必要になるわけであります。科学技術においてこの部分が何かということを考えますと、根の部分が一番根源の部分ということになるわけでありますから、基礎研究であったり、また国民の間に科学技術を尊重しようという風土が存在する、こういうようなものに相当するんだろうというふうに思います。  この両者をつなぎ合わせる部分に幹があるわけでありますけれども、これが何かというと、一つには資源配分。つまり、この幹から枝葉がいろいろな方向に広がるわけでありますから、どういうようにその枝葉を張るかということを決める部分がこの資源配分であって、日本の国が持つところのお金でありますとか人材であるとか、また、さまざまな環境条件等があるわけでありますが、これをいかに重点的にどの分野配分していくかという問題を決するのが幹の一つの大きな役割であろうと思います。  それから第二点目には、管理技術システムというふうに書いているわけでありますが、種々雑多な技術というものを統合して、そして、それを有意ならしめていく機能がやはり枝葉を支えていくところのこの幹の役割であるというふうに考えるわけであります。  それから、それを人間的な面で支えているものとしてのマネジメント人材、特に、日本の国においてのビッグプロジェクト、最近いろいろな問題を抱えているわけでありますが、人間的な問題において、プロジェクトマネジメントする人材が果たして育っているのだろうか。その幹の部分の大きな要素としての人材問題というのがあると思います。  それから、技術移転システムというのもここに入れておりますけれども、基礎的な研究というものを具体的な製品に展開していくためには、この幹を通じて水分や養分が流れていくわけでありまして、この移転システムというのも幹の役割になるだろうと思います。  それから、教育啓発活動というふうに書いてあります。この部分を通して、先ほどの人材の問題に関連してくるのでありましょうけれども、多くの科学技術を志向する人たちをきちんと育成する幹の役割を果たしているかどうかというようなことでございます。  絵を見ていただきますと、その幹の部分にわざわざ突っかい棒をかいてありますけれども、幹が細くて支え切れないなら、突っかい棒をうまく政策的に準備をさせていただきながら、この幹の部分がしっかりとした幹になるようにしていかねばならないのではないだろうか。かすかな風が吹くだけで、枝葉は茂っているけれども幹がぽきっと折れるというような状態では、いささかこれは心もとない状況になるわけでありまして、日本国民が最近日本科学技術に対して持っている印象というのはまさにその部分ではないでしょうか。  ですから、今回、平成十二年度科学技術基本計画最終年度を迎えるわけでありますが、次に向けてのいろいろな計画もこれから展開されてくることになるでしょう、議論も行われることになるでしょう。その中において、日本科学技術は、この幹の部分を確立してこそ次の時代により大きく枝葉を張ることのできるものになってくるという御認識をぜひ委員皆さん方に共有をいただければというふうに感じまして、この絵を御紹介させていただいた次第でございます。  そこで、きょうの質問でございますけれども、この考え方に基づきまして、それぞれの項目についての御質問をさせていただきたいと思う次第でございます。  まず第一点目には、先ほど申しました資源配分の問題でございます。御存じのとおり、科学技術基本計画が制定されて、来年度最終年度で、計画の中に十七兆円という金額が織り込まれていたわけでありますが、今回の当初予算をこの中に繰り入れますと十七兆円を超えるということで、この目標達成されたということについては、委員各位また科学技術庁皆さん方に心より敬意を表したいと思う次第でございます。  この達成に対してどういう思いを抱いておられるのか。また、計画途中ではございますけれども、この科学技術基本計画をこれまで四年間遂行してこられる中で、この計画日本科学技術振興並びに産業育成にいかなる貢献をしてきたという評価を持っておられるのか。そして、さらに具体的に、皆さん方がこういう大きな成果を上げることができたという評価事例があるならば、それをお示しいただきたいと思います。
  9. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 小野委員、御意見を表明されました根と幹と枝の部分、大変重要な御指摘という認識で聞かせていただきました。  これまでは、日本は、製造技術製品技術はいわゆる応用研究成果としてすばらしいけれども基礎研究に力を入れてこなかった、こういうことが言われてきまして、この基礎研究に力を入れてきました。しかし、その認識というのは、基礎研究があって、その成果が出ればすぐ応用研究製造技術に結びつくのだ、こういう認識があったわけですけれども小野委員の御指摘は、そうではなくて、その間に幹に相当する部分がある、これが先ほどいろいろ御説明あったいろいろなシステムマネジメントの問題だ、ここをしっかりしなければ、たとえ基礎研究を一生懸命やったとしても、それが将来の製造技術製品技術応用研究成果としてあらわれてこない、そういう御認識、今までになかった点でございます。  その点をいろいろなところで委員指摘をいただきまして、我々もそういう認識を持ちつつ、諸課題に対応しているところでございます。  御質問は、科学技術基本計画、来年度第一次が終了いたします。それについての成果そして反省点、これはどうかという御質問でございますけれども、まず、十七兆円、皆様の御指導のおかげで達成をさせていただく予定でございます。今参議院で審議をいただいております平成十二年度予算案が成立をいたしますと、十七兆三千億円という形になりまして、この第一次基本計画での投資目標達成されるわけでございまして、大変感謝をいたしております。  そして、現実に研究現場では大変研究が活性化されてきた、こういう評価をいただいております。具体例はたくさんございますが、例えば、ネーチャーというイギリスの雑誌がございますけれども自然科学界では超一流の雑誌ということになっておりますけれども、ここへ投稿し、また掲載される論文数が、ここ四年間、五年間顕著にふえてきた、それも若手研究者研究成果としてふえてきたというふうなことが挙げられておりますし、また、現場の声としても、大変研究現場が活性化されてきた、若手研究者の登用についても大変競争的資金の活用等あってなされてきた、こういう評価をいただいているところでございます。  しかし、反面、大学、国立研究機関施設整備老朽化狭隘化対策についてはまだまだ不十分である、こういうフォローアップの結果も出ているわけでございまして、再来年度からの第二次基本計画におきましてはこの点にも十分留意しながら、基本計画を今から立案の準備作業を進めているところでございます。
  10. 小野晋也

    小野委員 先日、実は前の科学技術庁長官を務められました有馬先生と対談をやらせていただきました。そのときに、私の方から、最近のジェー・シー・オー事故ないしH2の打ち上げ失敗等々の事例を見ていると、先生俳人でございますけれども、こういう俳句いかがでしょうというて御紹介申し上げましたのが、「春風にもろく倒れし桜かな」こういうふうな句であったわけであります。そうすると、さすが有馬先生俳人として名を鳴らしておられるだけありまして、春風と桜というのはお互いぶつかり合うから少しまずいな、こうしなさいよということで、「そよ風にもろく倒れし桜かな」こういうふうに直していただいたわけでございます。  日本の今の科学技術、もちろん桜を背景にしながら、日本の将来を担いながらやっているわけであります。それがそよ風が吹いたくらいでぽきりと幹が折れてしまうような、そんな姿ではまことに情けない話でございまして、先ほど斉藤政務次官の方から力強い決意の表明もございましたけれどもそよ風どころか台風が来ても折れない、倒れない、こういう姿を追い求めていただきますように、ぜひこれは次期の科学技術基本計画の中において十分な御検討をお願い申し上げておきたいと思う次第でございます。  そこで、今後その作業を進めるに当たって、二点の問題点指摘させていただきたいと思います。  第一点目は、先ほど十七兆円達成ということに対しての敬意を表させていただいたわけでございますけれども、しかしながら、現場の声を聞いてみました場合に、必ずしもそれで満足だというわけではない。人間というのは限りない欲望があるものでありますから、いかなる状態でもそれは不満があるものではございましょうが、基本的な問題といたしまして何が指摘されたかというと、補正予算によってこの金額が満たされる形であるということは、年ごとにその予算規模が大きく変動する可能性を持つということなのではないか。  科学技術研究というのは、皆さん御存じのとおり、随分長期にわたっての研究を推進していかねばならないテーマが多いわけでございまして、体制を組んだところが、短期間でその予算が使えなくなってしまうというような形では、科学技術研究継続性を担保することができない。人材だとか設備だとか、こういうものを十分に整えて研究に取り組んだところが継続できない、こういうふうな形になることは非常に大きな国家的損失になるのではないだろうかというのが第一点目の指摘でございます。  それからもう一つ指摘は、科学技術基本計画に基づいて各省庁が力を入れて予算を積み上げてこられてこの金額になったわけでございますけれども、必ずしも戦略性において日本の国の将来の科学技術のあり方を示し得るものではなかったのではなかろうかという指摘もあるのは事実でございます。  各省庁を横断的に見ていただきながら、より国家戦略的に重点項目を設定しつつ、よりよき研究成果を出すための戦略的な資源配分のための総合的な機関というものが必要なのではなかろうかというような指摘があるわけでございますが、これら二点についての御見解をお聞かせいただければと思います。
  11. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 まず最初の、当初予算では十七兆を達成していない、その点についてどうかという御指摘でございますけれども小野委員指摘のとおり、当初予算のみでは十五・三兆円になるわけでございます。  御指摘のとおり、補正予算で上積みをしていくという形では毎年毎年安定的な予算の執行ということができないのではないかという御指摘、まさしくそのとおりでございまして、基本的には当初予算での達成ということを目指してきたわけでございますけれども、第一次基本計画では、それは補正予算も含めてという形で達成させていただきました。まあ、お金に色はついておりませんので、補正予算、当初予算、いずれに由来するものであるにせよ、基本的に科学技術振興に役立つ形で使わせていただきますので、その点につきましては、その反省をまた第二次計画に生かしたいと思っております。  それから、戦略的な配分という面が足らないのではないかという第二点の御指摘でございますけれども、現在は、科学技術会議年度ごとに、次の年度はこういうところに重点配分すべきだという提案をしております。また、来年の一月からは総合科学技術会議内閣府の中にできまして、戦略的な重点配分をする機能法律でも明記をしております。そういう形で、小野委員が御指摘いただきました戦略的な資源配分ができるように、今後も努めてまいります。
  12. 小野晋也

    小野委員 先ほど政務次官が言われました戦略的な配分問題に関しましては、これは国家にとっての非常に基本的な問題であろうと思っております。  形式的な議論になるのではなくて、やはり実質を伴い、本当に日本にとって十年後、二十年後というところを展望する中で、どういう政策が必要なのか。アメリカがこういうことをやっているだとか、ヨーロッパがこんなことをやっているからという追随的なことではなくて、日本独自の考え方、思想というものを基本に置きながら、どういう展開をすべきなのかというあたりについての十分な議論が展開できる場にしていただきますように、この点は十分な御検討をこれからもお願い申し上げておきたいと思っております。  そこで、第二点目の幹の問題といたしまして、管理技術システムの問題を取り上げさせていただきました。この点に関しては、質問は一部分だけに今回とどまるわけでございますが。  まず第一点目は、ジェー・シー・オー事故等いろいろな事故が起こりました場合に、よく新聞紙上に躍ります言葉は、これまでもこの委員会でよく議論されてまいりました、この問題は想定外の問題であったという言い方でございます。その想定というものが非常にあいまいなものでありますだけに、私どもはその議論に非常に心もとないところを感じてならないわけでございますが、想定とは一体どういうことを意味する言葉であって、もし想定というものを皆さん方がお持ちになっておられるとするのならば、これはだれがどんな基準をもってつくり上げておられるものなのか。  これは管理問題の一番の基本にあるテーマでございますので、御答弁をお願い申し上げます。
  13. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 大変難しい御質問でございます。  想定とは何かということでございますが、安全評価分野に限って申し上げますと、安全評価には、いわゆる確率論的な評価と決定論的な評価がございます。  決定論的な安全評価という場合、例えば原子力発電所の場合、最もシビアな厳しい事故を考え、その事故を考えておけばその他の事象についてはそれ以下であって安全側である、こういう事故を設定して事故解析を行っていきます。その最も厳しい状況想定するという形で、この想定が使われます。  また、確率論的な評価では、これはいろいろな事象の発生する確率を計算していくわけでございますが、この確率論的な場合は、それぞれの事象発生確率想定する、このような形になります。  これまでの原子力施設もしくはその他のいろいろな施設については決定論的な手法が主に使われておりましたので、そういう意味では、想定ということにつきまして、最もシビアな事故想定したということでございます。
  14. 小野晋也

    小野委員 今の答弁でございますけれども、私は、現段階で答弁されると恐らくそういう答弁にならざるを得ないなというような印象を持っております。  しかしながら、そのもとでこれまで幾多の事故失敗が繰り返されてきたのは事実でございまして、今改めて私たちは、その問題のとらえ方自身に反省を持ちながら新しい取り組みにかかっていかねばならないのではなかろうかという印象を非常に強く持っているわけでございます。  つまり、一つ評価基準を持って、その評価基準のもとで、ツリー式にそれを細分化していってチェックをして、それを総合化しさえすれば全体の安全が確保できるというような考え方では、巨大なシステムというのを必ずしも完全に管理できないのではないか。  つまり、評価基準そのものも多種多様化する。評価基準そのものすら確率論的なものに置きかえていって、多様な見方というものを前提にしつつ、複雑な巨大システムに対していろいろな方面からチェックを加えていきながら、それらをクロスするところにおいて、問題事象またその数値の食い違い等の形であらわれるようなものが出てくれば、その部分には問題がある可能性が高いというような形の管理手法というものがこれから生まれてこなければならないのではなかろうか。こんな印象を、ちょっとイメージ的なお話で申しわけないのですが、私は経験的に持たせていただいているわけでございます。  そんなことを考えてまいりました場合に、この巨大なものの管理というのは、単にロケットのシステムだとか原子力システムというだけではありません。いうならば、現代社会そのものが実は巨大なシステムなんですね。情報ネットワークで結ばれていて、世界じゅうが一つ事象において一気に影響を及ぼされるような中に我々は日々の生活を送っているということを考えました場合に、この巨大システムをいかに人類は統御し得るのか、安全に管理し得るのかというテーマ人類史上の非常に大きな課題になってきているというような問題のとらえ方をするといたしましても、巨大なものの管理システムについて、新しい管理手法開発という問題は喫緊の課題であり、また日本科学技術世界に大きく貢献できる道ではなかろうか。  また、ひいては産業界においても、いろいろな産業管理問題というのは存在するわけでありますから、工程管理だとかいろいろあるわけでありますけれども、そういうところにも非常に役立つ、広範な影響を及ぼし得るものである。  こんなことをいろいろと思いをめぐらせてまいりました場合に、この際思い切って世界の英知を集めて、この巨大複雑システムをいかに人類は統御できるのかという問題に対しての検討を始めることが非常に大事なテーマではなかろうかという気持ちがいたしているわけであります。  そこで、この際、思い切って予算を投じてこの問題に取り組むということを私の立場から提案を申し上げたいと思うのでありますが、御所見はいかがでございましょうか。
  15. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 小野委員の、根、幹、枝葉考え方から出てくる新しい考え方だと思います。  日本の場合、例えばジャンボジェットや777の飛行機、部品一つ一つを見ていると日本で生産をされている。しかし、それを統合化する技術日本になくて、それはアメリカでつくられているというふうなことからも、全体システムを見る新しい手法について、日本はこれから力を入れていくべきではないかという小野委員のお説は大変説得力のあるものだと考えております。  そのためには、何万部品もあるいろいろなシステム、これは部品に限らないかもしれません、先ほどおっしゃいましたように、システムとして、これが人間に置きかえられるのかもしれませんけれども、そういう情報を一元的に管理する新しい手法、情報処理手法というふうなことも必要になってくるのかもしれません。どういうところから取り組んでいかなくてはならないのかというところも、日本の場合、まだ現状ではわかっていないわけでございますけれども小野委員の問題意識で、どういうふうに日本が取り組んでいくべきかということについては、非常に重要な視点だと思いますので、これからもぜひ一生懸命考えていきたいと思っております。
  16. 小野晋也

    小野委員 今政務次官の方から、巨大なシステムを一元的に管理という表現をなされましたけれども、実はこれは一元的管理という手法のみにとらわれてはならないレベルに達しておりまして、多元的に管理という問題を考えねばならない時代なのではないだろうか。というのは、重箱の隅をつつくような御指摘で申しわけありませんが、この管理問題において、発想自身をかなり切りかえていかなければ、これだけ大きなシステムというものは恐らく統御できないというのが私の直観的な考え方でございまして、そんな点も含めまして、今後、具体的な予算化の問題も含めての検討をいただきますようにお願い申し上げたいと思います。  続きまして、この幹の問題として三点目に取り上げましたマネジメント人材の問題でございますが、この点、ちょっと大臣、申しわけありません。時間的に質問申し上げる時間がなくなってまいったようでございますから、またの機会にさせていただきまして、次のテーマに移らせていただきたいと思うのでございます。  それは教育啓発の問題でございます。  いろいろな場所で大臣も御発言になっておられますけれども、文部大臣を兼任しておられるというお立場もあるのでございましょう、やはり未来の日本のためには人材育成というものが非常に大事だ、教育という問題が何よりも大事な課題である、こういうことを言っておられるわけでございます。技術の側面で考えてまいりました場合に、細かな専門的知識というのはもちろん必要でございますが、同時に、最近のいろいろな問題状況を見てまいりました場合に、より広く全体を見渡す力を持つという面も尊重していかねばならないのではないだろうかという印象を非常に強く持たせていただいているわけであります。  技術者の場合、では、その広範な知識または広範な部分に通用するような感覚というものが何によって培われてくるかというと、やはり私は物づくりだろうと思います。自分自身がつくり上げるべき目標をきちんと持っていて、その目標に向かって自分自身が創意工夫をしながらそれをつくり上げていく。そのプロセスには幾度も幾度もトラブルがあらわれてくるでしょう。そのトラブルをまたみずからが工夫をしながら乗り越えていくという経験を何度も何度も繰り返していくことを通して、初めて技術者としての基本的なセンスというものが培われてくるのだろうと考えております。  先般、この国会におきましても、議員立法でものづくり基本法というものも成立させることができたわけでございますが、これらの精神を踏まえて、これからの科学技術推進という姿勢をきちんと確立していただきたい、これはお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、かねてより私どもが提唱してまいりましたロボフェスタの問題でございます。いよいよ西暦二〇〇一年の開会ということになりますと、来年の夏の開会でございますから、残すところが一年半を切るというように、目前のことになってまいりました。  そこで、この重要性は大臣もかねてより御指摘をいただいているところでございますけれども国民的に見ました場合に、いま一つこの取り組みに対する理解というものが進んできていない、こういうのが実感として感じられるところでございます。片や、堺屋経済企画庁長官は、情報社会を展望しながら、これからはインターネットが大事だから、西暦二〇〇一年を迎えるに当たって、インターネット博覧会、インパクというのをやろうということで、みずからがいろいろな場面に登場されて、この重要性を訴えておられる。  一方に情報社会の問題があるとするならば、一方で物づくりのロボフェスタがあるというように、両輪というふうにお考えをいただきますならば、中曽根大臣御自身が、いろいろな政府広報もございますでしょう、一般的なマスコミ対応というものもございますでしょう、そういうところでロボフェスタという問題を啓発していただく。ロボフェスタの顔といえば中曽根大臣、こういうふうなイメージをつくっていただきますならば、国民的により大きなインパクトを与えることができるのではないだろうか、こんな思いを持っているわけでございますが、大臣の御所見はいかがでございましょう。
  17. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員がおっしゃいますように、物づくりというのは非常に大切であります。日本の発展を考えていく上で、技術、技能が重要なわけでありますが、それはすなわち物づくりが原点であろうと思っておりまして、私自身もこれに力を入れていかなければならないと思っております。  そういう中で、ロボットというものは先端的な科学技術のいわゆる成果の集大成でもありまして、ロボフェスタを国民に対してアピールすることによって、物づくりへの理解、あるいはそういう分野へ進む人たちが多く生まれる、いろいろな面において大変効果があろう、私はそういうふうに思っております。  私自身みずから率先してやれということでございますが、昨年末でございましたか、全国の高専のロボコンにも私行かせていただいて、見てまいりました。自分自身楽しんでまいりましたし、それから学生さんたちが本当に自分たちの手でああいうすばらしいものをつくる、感心して帰ってきたのです。どんどんこういうものが盛んになって、物づくりの発展につながっていけばいいな、そういうふうにも思っているところでございます。  先生はロボコンのことについても中心になってやっていただいておりますが、私も、今後も御指導をいただきながら一生懸命やりたいと思っています。
  18. 小野晋也

    小野委員 高専のロボコンに御出席いただいたということでございますが、大臣、あのロボコンの場で、高専の学生たちが目を輝かせながら生きている姿、それが二十一世紀の日本を切り開く若人の力であります。そのことを十分御認識いただいていると思いますが、その上にもまた御尽力を賜りまして、ぜひ二〇〇一年のロボフェスタ成功に向けてお力を尽くしていただきますようにお願いを申し上げます。  科学技術評価会議の重要性につきましてもきょうは一言申し述べさせていただこうと思ったのですが、これはもう、幹を支えるところの一番大事な突っかい棒部分科学技術評価会議ということになるだろうと思います。お二人の御所見は後ほどまた個人的に承らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げまして、時間となりましたので、質問を終了させていただきたいと思います。どうも失礼しました。
  19. 田端正広

  20. 松沢成文

    松沢委員 民主党の松沢成文でございます。  私は、長官とこれまでさまざま議論をしてまいりましたジェー・シー・オー事故の責任問題について、私としてもどうしても納得ができない、科学技術庁に行政責任はないと言った長官の言葉は絶対に認めるわけにはいかない、こういう思いで、再度この問題で長官と議論をしたいというふうに思っております。  ジェー・シー・オーの処分受け入れへということで、きょうの朝刊に載っておりました。ジェー・シー・オー科学技術庁の事業許可を取り消す行政処分についての聴聞が昨日行われたということで、ジェー・シー・オーは謝罪をして処分を受け入れた。これを受けて、科技庁は今月中にも許可取り消しを正式決定するということであります。これを受けて、木谷社長も辞意をほのめかしているということで、また先般は、その親会社であります住友金属鉱山の社長さんも責任をとって辞職をされた。  このジェー・シー・オーという事業体については、監督官庁の科技庁からもこういう行政処分がなされて、それぞれの社長さんがおやめになった、一つのけじめがついたわけであります。今後、補償問題等々、継続してしっかりと被曝者に対して行わなければいけない、あるいは地域住民に対して行わなければいけないことはありますけれども一つけじめはつきました。十二月に事故調査報告書が出て、今回、ジェー・シー・オーの処分も決定をしたということであります。  こういう中で、私、先日の二月十八日に予算委員会ジェー・シー・オー事故について科学技術庁としての行政責任をただしたところ、長官は、「行政責任はないと思っております。」という返答でありました。この一言は、即刻日本じゅうに波及をしまして、特に原子力関連施設の立地自治体では、本当か、とんでもないという意見が巻き起こりまして、私のもとにも、幾つかの自治体から、本当ですかという確認までありました。許せないという意見でございました。  そこで、まず初めに長官にお聞きしたいのですが、これは今月の二十一日に地方議会で採決を予定されている意見書であります。ですから、まだ採決をされていないので、その自治体の名前は伏せますけれども、ひとつクオートしますけれども、こんなふうに書かれています。  多くの被害者、これは被曝者あるいは地域住民ですね、被害者を出し、国民に大きな不安を抱かせた事態を勘案するとき、ずさんな行為を長年にわたり見逃し許してきた国、監督官庁の責任は当事者同様に重大なものである。行政が責任所在を明確にすべきだとは国民がひとしく考える常識である。しかるに、二月三日、科学技術庁次官の発言として、その責任所在に否定的な考え方が伝えられ、また十八日には、衆議院予算委員会において、科学技術庁長官が行政責任はないと思っていると発言するなど、まことに遺憾なことであり、到底看過することはできない。ましてや、原子力施設を有する地域住民にとっては許しがたい発言である。こういう文章になっております。  その意見書は、求める事項として、一つ、国においては東海村臨界事故における責任の所在を認めることというふうになっております。  原子力立地の自治体というのは全国に数十あるわけでありまして、この自治体だけではなく、私のところにも複数の自治体から、こういう意見書が提案されて国に上げられるという方向だそうであります。  さて、長官、みずからの行政責任はないと言い切ったこの発言に対して、全国の原子力関連の自治体から猛烈な非難の声が今巻き起こっている。まず、この状況について長官はいかがお考えでしょうか。
  21. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 全国の自治体から猛烈な批判が起こっているというお話でございました。  私自身、自治体から直接連絡等受けているわけではございませんけれども原子力施設のある立地自治体等において、そういうような動きといいますか、また御批判があることは承知をしております。  去る二月の十八日でございましたか、予算委員会での委員質問に対しまして、私は、行政責任はないと申し上げました。繰り返しになるかもしれませんけれども、まず、事故が起きた直接の原因はジェー・シー・オーにある、この違法な行為によるものであるということが一つであります。  そして、私が行政責任はないと申し上げた意味は、一つは、行政責任という言葉もはっきりと定義があるのかどうかわかりませんけれども、これもどういうふうに理解したらいいかということもあるかもしれませんが、科学技術庁といたしましては、ジェー・シー・オー施設に対しまして、昨年原子力関係の法案を改正していただきましたけれども、その改正前の原子炉等規制法に基づいて、法律上求められる行政行為は実施してきたということでありまして、科学技術庁がやらなければならないと法律で決められていることをやらなかったとか、あるいは法律に違反をするようなことをやっていたわけではありません。そういう意味で行政責任はないということを申し上げたのでありまして、大変な、重大な事故が起きたわけでありますから、私ども、全く責任がないとか、あるいは現場が悪いんだとか、ただそういうふうに一刀両断で申し上げるつもりは全然ありません。  大変重く受けとめておりますし、そういうところから原因究明と再発防止のための法案の御審議もお願いし、また、住民の皆さんに対するできるだけのことをしようということで、健康問題あるいは風評被害、損害賠償等々、私どもの立場でできることはやってきたつもりでございまして、誠心誠意この問題には努力をし、地元の皆さんの御不安を一日も早く解決して、もとの生活に戻れるように、そういう気持ちでやってきたわけでございます。そういう点、ぜひ御理解いただきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  22. 松沢成文

    松沢委員 残念ながら、私も地域住民も御理解できないのです。責任を認めるか認めないか、この二者択一なんですね、長官として地域住民が求めていることは、あるいは国民が求めていることは。  今長官は、ジェー・シー・オーに直接的な責任があると。それじゃ、広く行政にも間接的な責任はあるのですか。今、行政責任はないと言った。でも、広く関連する責任はあるようなことを言っていますけれども、それでは、間接的な責任は行政にもあると。要するに、責任があるかないかをきちっと長官に言っていただかないと、地元の住民も、あるいは野党の立場で私も理解ができないのです。そこはどうでしょうか。では、間接的な責任はあるんですか。
  23. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 これまた、間接的な責任の意味も、委員のお考えのがどういうことか私自身正確にはわかりませんけれども、私どもといたしましては、前からも申し上げておりますとおり、事故当日、この事故に対しましては、現場状況等については、得られた情報をもとに政府としては可能な限りの対応を行ってきた、また判断を行ってきたということでございます。  しかしながら、法律的な不備もあったと思いますし、情報の不足もあったとも思いますし、初期対応等について必ずしも万全でなかった、あるいは、それ以前の安全審査体制等についてもいろいろ反省すべき点がある、そういう意味で、私ども、責任が全然ないというわけではございません、そういうふうに申し上げているところでございます。
  24. 松沢成文

    松沢委員 今、法的な責任で解釈すると科技庁は瑕疵がないとか、いろいろ細かい御説明があるのですが、全然責任がないとは言っていないというのであれば、それでは、行政とか監督とかいう上の言葉を取っ払っちゃって、今回のジェー・シー・オー事故に対して科学技術庁にも責任がある、こう言っていいんですね。こういうことですね。全然責任がないというわけではありませんということは、責任があるということですね。お答えください。
  25. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 そのときそのときの最善の判断をしたつもりでございますし、また最善の対応をしたつもりでございますが、結果として十分な現地での対応が行えなかったということで、こういうことを深く受けとめているわけでございます。そういう意味では、深く反省をしているということでございます。
  26. 松沢成文

    松沢委員 深く反省をするだとか重大に受けとめるとか、そうやって逃げるわけですけれども、それでは、少し具体的に詰めていきたいと思います。  実は、三月八日、茨城県の県議会でこの問題についてのやりとりがございました。これは自民党の県会議員さんからの質問でありますけれども科学技術庁長官は行政責任がないと言ったということに対して知事はどう考えるか、橋本知事の答弁です。クオートします。  今回の事故に関しましては、ウラン加工施設の安全審査指針におきまして、臨界事故想定していなかったことや、立入検査等でジェー・シー・オーのずさんな管理の実態を見抜けなかったこと、さらには事故発生後の初動態勢のおくれや、その後の防災対策について、的確な助言がなされなかったことなど、国についてもさまざまな問題点が明らかになっております。   地元としては、これまで、安全は国が全面的に保障するという信頼のもとに、原子力関連事業所を受け入れてきたわけであり、行政責任というのか監督責任というのかはともかく、今回の事故が起きたことについて、国にも相当な責任はあるのではないかと考えております。   このような状況の中で 途中ちょっと抜かしますけれども、今回の行政責任はないと言った長官の発言は、「地元の住民感情に、甚だ配慮を欠くものであり、極めて遺憾に思っております。」このように答弁されているんですね。  長官、茨城県の橋本知事が、住民感情に甚だ配慮を欠き、遺憾だ、事故が起きたことについても国にも相当な責任があると明言して、長官の言い分は間違っていると言っているわけですね。橋本知事のこの発言をどのように受けとめますでしょうか。
  27. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私の国会での答弁が、日ごろから原子力について御理解をいただき、御協力を特にいただいている地域の住民の皆様方に対して、そういう皆さんの住民感情に甚だ配慮を欠く結果になったということでございます。そういう意味では、私の発言、もう少しそういう点、配慮ができなかったかと、今この知事さんの御発言をお聞きして思っているところでございます。  私は、繰り返して申し上げますけれども、私どもも今回の事故を本当に厳しく受けとめて、これは原子力に対する信頼を失墜したとかそういうこともありますが、それ以上に地域住民の皆さんに大変な御迷惑をおかけした、そして、私どもも必ずしも百点満点でなかったということから、法律の整備もお願いをし、先ほど申し上げましたようなあらゆることを誠心誠意やってきたわけでございます。行政責任はないという言葉によりまして、住民の皆さんや知事さんやいろいろな方が大変お怒りになられたわけでありますけれども、行政責任はないという趣旨は先ほど申し上げたようなことでありますし、原因究明と再発防止、そして住民の皆さんの対応に全力で当たってきたわけでございます。
  28. 松沢成文

    松沢委員 橋本知事は、今回の事故が起きたことについて、国にも相当な責任があると言っているんですね。長官は行政責任がないと言っているわけですから、この橋本知事の認識とは違うのですね。長官は責任はないと言っているんですから、橋本知事は責任があると言っているんですから、橋本知事の認識は私とは違うのですね。そこを、違うか違わないか言ってください。言っていることが全然違うのですから、これは小学生もわかる議論です。橋本知事は、あると言っているんです。そして中曽根長官は、いろいろな修飾をしていますけれども、責任は認めていません。責任があると認めるのであれば私も理解できるのですけれども。橋本知事は、相当な責任があるとおっしゃっているんですね。
  29. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私は、私の気持ちを再三申し上げておるところでございますし、科学技術庁の対応を御説明してきているところでございます。  知事さんの御発言をもう一度読み返させていただくと、「行政責任というのか監督責任というのかはともかく、今回の事故が起きたことについて、国にも相当な責任はあるのではないかと考えております。」ということで、知事さんがどういうようなことでこういうようなお考えなのか、私はちょっと推測できません。私自身は私の考えに基づいて、特に法的な面において私どもがいわゆる行政責任と言われるようなことはないと思いますと申し上げているのでございます。
  30. 松沢成文

    松沢委員 それでは、知事の認識と違うのですね、長官の認識は。そうでしょう。知事の認識とは違うのですね。ちょっとその辺、確認させてください。
  31. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 今申し上げましたとおり、知事さんのこの言葉はここに書いてあるとおりだと思いますが、どういうことからそういう御認識になられたかということは私今存じませんので、違うか同じかということはちょっと比較できない、申し上げることはできないと思います。
  32. 松沢成文

    松沢委員 それでは、知事の具体的な考えを御説明します。ここで知事は言っているんです。  知事は、まず、科学技術庁の責任について、一つ、安全審査指針で臨界事故想定していなかったこと。二つ目、立入検査でジェー・シー・オーの違法作業を見抜けなかったこと。三つ目、事故発生後の初動のおくれ。四つ目、その後の対策で国から的確な助言がなかった。この四点を指摘した上で、国にも相当な責任があると言っているんです。  知事さんがどんなことを言っているかわからないので答えられないというのは全く答弁にならない。この四点について、科学技術庁はそれぞれ責任を認識しているんですか。それを答えてください。
  33. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 知事の御発言、「臨界事故想定していなかったことや、立入検査等でジェー・シー・オーのずさんな管理の実態を見抜けなかったこと、さらには事故発生後の初動態勢のおくれや、その後の防災対策について、的確な助言がなされなかったことなど、国についてもさまざまな問題点」となっています。  この一つ一つについて御意見を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、立入検査につきましても、委員御承知のとおり、現地の現場には行きましたけれども操業はしていなかったということがほとんどでございましたし、当時の状況でいえば、六ケ所村を初めとする、法的に検査等をやらなければならないところがあったわけで、こういうふうに法的に義務づけられていなかったということから、実態を見抜けるような立ち入りができなかったというようなこともございます。  また、初動態勢のおくれにつきましては、もう御案内のとおりでありまして、対策本部は、ここで一々時間を申し上げませんけれども、それなりに設置をして対応をとってまいりました。ただ、情報が少なかった。情報が少ないのはなぜかというと、臨界事故が起きるというようなことが想定されていなかったために、中性子線を測定するモニター等がなかった、そういうことから情報等やあるいは測定というものがおくれたという、それぞれの事情はあるわけでございます。  私どもとしては、責任がないとは申しませんと私申し上げておりますけれども、そういう意味ではいろいろ反省をして、そして再発防止対策を先生方にもお願いして法案をつくっていただいているということでございます。
  34. 松沢成文

    松沢委員 ちょっと小学生の国語の議論になりますけれども、責任がないと申しませんということは、責任があるということなんですね。これをお聞かせください。
  35. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 行政責任という言葉と、ただ責任という言葉、どういう違いなのかわかりませんけれども、全くないということはないと思います。
  36. 松沢成文

    松沢委員 あるというふうに私は解釈せざるを得ません。  そこで、もう一つ確認しますが、それでは、橋本知事の、今私が何度も申し上げた認識、国の責任についてもきちっと明言しています。理由まで言っています。それと長官の認識は違うのですね。今これだけいろいろと理由を言って、知事のお気持ちもわかるけれども、行政としてはこういうふうに判断して、こうやって瑕疵はないと、いろいろな説明をしました。  ただ、私がここに端的に先ほど指摘した橋本知事の県議会での答弁認識と、科技庁長官の認識は違うのですね。
  37. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 再三申し上げておりますけれども、私どもとしては、そのときそのときの行動、対応というものは、そのとき判断できる最善のものであった、そういうふうに思っております。
  38. 松沢成文

    松沢委員 ちょっと委員長、答えにならないのですけれども。これでは議論を進められません。  認識が違うか違わないのか、同じなのか、それを問うていて、答えは二つに一つだと思います。明確に答えてください。そうやって理由をごたごた述べるだけで、これは一番大切なことなんですよ。  委員長、これじゃ議論を進められません。委員長として答弁者にそこをきちっと言っていただけないでしょうか。
  39. 田端正広

    田端委員長 中曽根科学技術庁長官、明確に答弁をお願いいたします。
  40. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、確かに知事さんの発言録、私いただいておりますけれども、知事さんのこの御発言のベースとなります、例えば国にも責任はあるのではないかと考えておりますということについてのいわゆる認識というものを、私、十分にここで存じ上げておりませんので、同じかどうかとおっしゃっても、私は私の考えを述べることしかできないということでございます。
  41. 松沢成文

    松沢委員 ここは、知事の認識とはやはり全く同じではないということでしょう。全く同じではないということですね、いろいろ、私には私の考え方があるということですから。全く同じではない、そこについてはどうですか。  では、県議会の答弁で言ったこの橋本知事の認識と長官の認識は全く同じではないということについてはいいんですね。
  42. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 知事の認識は、ここに書いてあることもその一つだと思います。途中省略しますが、「国についてもさまざまな問題点が明らかになっております。」そういうふうに知事が述べておられるわけで、私どももさまざまな問題点があったと思っていますから、この点については同じであります。
  43. 松沢成文

    松沢委員 いやいや、その後ろの一番大事なところです。「事故が起きたことについて、国にも相当な責任はある」とまで、最後、ここで結んでいるんです。これについての認識を聞いているのです。だから、長官が国には責任がないと思っているのであれば認識が違うわけです。
  44. 田端正広

    田端委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  45. 田端正広

    田端委員長 速記を起こして。  中曽根科学技術庁長官
  46. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 たびたび御質問いただいておりますが、私の方は私の見解を述べて、それが知事のお考えと合っているかどうかというのは委員の方でお考えいただいてよろしいんじゃないですか。知事さんがここでおっしゃっていることを、私がこれを読み取って、私が同じか同じでないかという判断をしろということでございますけれども、私は私の立場なり考えを先ほどから再三申し上げてきております。責任についても申し上げております。知事さんのは、私は文で見ているだけでありますけれども、そういう点では、この文面からある程度は判断できますけれども、必ずしも正確な判断ができるかどうか、これからだけではわかりません。ですから、同じか同じじゃないかは委員が御判断していただけたらと思いますけれども、私は、責任はなくはありませんと申し上げております。
  47. 松沢成文

    松沢委員 責任がなくはありませんということは、否定の否定ですから責任はある、こういうことですね。そこだけ確認させてください、なくはありません。
  48. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 いわゆる行政責任、これにつきましては先ほどから申し上げておりますし、知事さんも、「行政責任というのか監督責任というのかはともかく、」というまくら言葉みたいなものがあるわけであります。これについては私はもう申し上げているとおりであります。そして、当日の対応あるいは安全審査等あるいはそれ以前の立入調査等については、委員も十分御事情は御存じのとおりであります。  私どもは、それぞれその場そのときの最善の対応をとってきたと思っておるわけでございますから、とってきたけれども責任はある、そういうお考えだと思いますけれども、私たちは深く反省しています。結果としてこういう大きな事故が起きたということは、いろいろ不備があった、万全でなかったということから、法律もより万全になるように改正をお願いしたものでありますし、その後の各自治体等においてもいろいろな面での整備をお願いしているところでございます。
  49. 松沢成文

    松沢委員 これは水かけ論になっちゃうんですが、要するに、責任はなくはないということは、責任はあるということなんですね。そういう形で私は認識をします。  次に行きますけれども、初動態勢のおくれ、これについても、一生懸命やった中でベストは尽くしたということなんですね、一言で言うと。ただ、この初動態勢のおくれが、すなわち臨界が継続しているという認識に至るのがおくれて、したがって中性子線を測定するのもおくれて避難命令もおくれていったわけですね。  さて、そこで、被曝線量がふえていて、ある意味で被曝者もふえている可能性があるのですね、初動態勢のおくれによって。だから、それだけ住民の被曝量も、もし初動態勢がしっかりしていればもっと少なくて済んだ、これは私は逃げられない事実だと思うのですよ。ですから、私は、被曝線量がふえた、あるいは被曝者がふえてしまった中には、政府の初動態勢のおくれが大きな原因の一つである、したがって政府の責任は免れないという判断なんですが、このことについてはいかがでしょうか。
  50. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 初動態勢についての御質問でございますけれども、先ほど申し上げましたけれども、事業者からの情報連絡が十分でなかった、内容も不十分であったということがございました。それから、これは臨界事故は起こり得ないとされておりまして、それに備えた中性子線のモニターがなかった。そういうようなことから、この事故状況の正確な把握がおくれて、そして初動において県や村に対しまして必ずしも十分な助言ができなかったことなど反省すべき点があった、そういうふうに認識しているところでございます。
  51. 松沢成文

    松沢委員 政府にも責任があったということですね。
  52. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 情報がなくて十分な対応ができなかった。情報がないのは、事業者からの連絡が遅かったり、内容が不十分であった。あるいは、臨界事故想定していなかったために中性子線のモニターはなかった。そういうことから、今申し上げましたような十分な助言ができなかったということ、これが委員がおっしゃいますようなことに当たるかどうかということでございます。
  53. 松沢成文

    松沢委員 臨界を想定し得なかったということは、安全審査から一連の流れの中で、あのジェー・シー・オーのような施設には臨界はあり得ないのだというのが科技庁の原子力安全局や原子力安全委員会の中のある意味でコンセンサスだった。ところが、そこで臨界が起こっちゃった。ある意味で、安全審査の最初のやり方からずっとここに至る経緯までに判断の間違いがあったからこういうことになったんじゃないんですか。
  54. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 安全審査につきましては、基本的にはダブルチェックをやっておるということでございます。そして、このジェー・シー・オーの加工工場の場合には、形状の管理等、臨界事故が起きないようなプロセス、工程、設計になっていたわけであります。そして、まさか人がそういうような違法なことをやるということも全く想定していなかったわけでございまして、臨界が起こるということを想定していなかった、そういうことでございます。
  55. 松沢成文

    松沢委員 長官、地域の四百二十数人の被曝認定者、こういう皆さんも、後で取り上げますけれども、相当今は苦労されています、精神的にも。入院されている方も大分いるのです。こういう皆さんが長官の発言をやはり注目しているのですね。今のような発言で果たして納得されるのか、私は甚だ疑問であります。  ただ、論を進めます。  運転管理専門官についてお聞かせいただきますが、平成十年以降、東海村には科技庁の運転管理専門官が設置されて、ジェー・シー・オーには毎月一回程度、巡視をしていたということであります。  まず、その巡視の日付、それぞれの内容、また科技庁は専門官からどのように報告を受けていたのか、巡視結果の報告書というのがあるのかないのか、あったら、それを私たちに提出いただけるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  56. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 東海村に常駐をしております運転管理専門官は、平成十年四月に着任以来、毎月一回程度、ジェー・シー・オー東海事業所の巡視を実施してきたところでございます。そのうちの転換試験棟につきましては、平成十年の四月十六日、九月三日、それから十一年の三月四日の三回、巡視を実施してきております。しかし、運転中ではなかったということでございました。  この運転管理専門官の業務は、保安規定の遵守状況について調査するとともに、施設の運転及び管理状況等を的確に把握して、その内容を本庁に連絡することとされております。三回の巡視では、ここには第一加工施設、第二加工施設転換試験棟とあるわけでございますが、この第一及び第二加工施設棟も含めまして、異常があったとの報告は受けておりません。
  57. 松沢成文

    松沢委員 それでは委員長、お諮りいただきたいのですけれども、この巡視結果の報告書というのがあると思うんですね。それをこの委員会に、きょうでなくて結構ですから、提出いただきたいと思うんですけれども、それをお諮りください。
  58. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 運転管理専門官の巡視の報告でございますけれども、異常があった場合に報告を受けるという形になっておりまして、異常がその時点での調査ではございませんでしたので、報告は当庁の方には来ておりません。ありません。
  59. 松沢成文

    松沢委員 運転管理専門官が各原子力施設あるいは原子力関連施設を巡視して、その報告書を出させないのですか。ちょっとこれは問題だな。それで監督責任は果たせるのですか。
  60. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 法定で立入調査をするところはきちっとした報告書があると思いますが、こちらは任意でございましたので、そのような報告はないということでございます。
  61. 松沢成文

    松沢委員 まさしく監督責任というか監督責務の欠如ですよ。それで責任はないと言い放っちゃうのでは、国民は絶対納得できない。  三回、巡視を行ったということであります。それで、そのときは転換試験棟、ここは操業していなかったので見られなかったということでありますけれども、これは中には入ったのですか。操業はしていなかったと思いますが、運転管理専門官はきちっと中に入って、装置だとか、そういうものは見たのですか。あるいは、運転管理専門官は、そのときはやっていないけれども、どういうふうに行われているか、それをちゃんとチェックしたのですか。作業手順書はそこでなぜ見なかったのですか。これは大臣でなくてもいいですから、担当の方でもいいから、答えてください。
  62. 間宮馨

    間宮政府参考人 御説明申し上げます。  いわゆる運転管理専門官が今回三回行ったという、この三回は立ち入りをしております。したがいまして、そのときに操業していなかったという答えを先ほど大臣の方から申し上げたわけでございます。  今いわゆるマニュアル等の点検ということでございましたが、いずれにしましても、これは一人で東海区域すべてを見ておりまして、時間的に非常に厳しい中に置かれているわけです。したがいまして、毎回毎回膨大な調査をするというわけにいきませんので、もちろん、そのときそのときに自分でテーマを決めて、きょうはこういうところをチェックしようということで行くわけでございますので、そういう意味で、その時々の見方に応じて、異常があるかないかということで、異常があった場合は報告が来るというやり方になっております。
  63. 松沢成文

    松沢委員 これはちょっと確認したいのですけれども転換試験棟というのは操業はしていなかったのはわかります。ただ、中には入っているのですか、運転管理専門官は。操業していないというのを聞いて、ああそう、では、そこはやめておこう、みんなこうやって省略しているのですか。大変な問題ですよ、ここは。
  64. 間宮馨

    間宮政府参考人 先ほど申し上げましたように、三回、この試験棟に行っておりますが、その都度入っております。
  65. 松沢成文

    松沢委員 中に入って、恐らく装置も見ているのでしょう。そこで、もしかしたらバケツがあったかわかりませんけれども、あるいはそういうものに気づかなかった。これだけの裏マニュアルにも従わないような違法操業が行われていた、こういう事実があるにもかかわらず、中に入って装置も見たけれども、それを見過ごしてきた、ここに監督者としての責任はありませんか。  それで、もう一つジェー・シー・オー側からこの転換試験棟の操業についての説明は受けているのですか。どういうふうにやっているとか、それを受けているのですか。この運転管理専門官というのは何をしに行っているのですか。
  66. 間宮馨

    間宮政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、三度行ったわけですが、その都度、操業していない状態にあったという中で、いわゆる設備を見るわけですね、基本的には。その設備に関しては異常が発見できなかったということでございます。  かつ、どういうことをやっているのというぐらいのことは聞きますけれども、その時点において、ここが違法なことをやっているという頭がないわけでございますから、特にジェー・シー・オーについては、最近こういうことになったわけですけれども、過去においては優良企業であったということもあるわけですから、そういう意味においては、普通のチェックをして、異常があるかないかということで確認をして帰ってきたということでございまして、特に向こうの方から裏マニュアルに相当するようなやり方でやっているという説明は当然なかったわけでございます。  それと、これは仮の話でございますが、仮に操業中に立ち会ったとすれば、当然ながらバケツを使っているところを見れば、これは一目瞭然でわかるわけですね、違反行為をしているということは。ただ、この会社自体、組織的にそういう違法マニュアルをつくっていたわけでございますので、そういう違法性を認識していた中で、専門官が来たときに事実を隠そうという意図が働けば、これは普通のやり方でなかなかそういうものが見抜けるということにはならないかと思います。  そういう意味において、結果としては、操業していないときに行ったということで、なかなか操業の実態はわからなかったということでございますが、操業しているときに行ったとしても、これだけの違法行為をしていたところが、そう簡単に見抜けるようなやり方をするかどうかについては疑問ではないかというふうに考えております。
  67. 松沢成文

    松沢委員 長官、運転管理専門官は、転換試験棟はきょうは操業はしていない、操業は休みだったけれども、中に入っていると今安全局長がおっしゃいました。中に入って装置は見ている、そして、どういうことをやっているのだということも説明を受けていると言っているのです。それで、相当続いていたこの違法操業、裏マニュアルもつくって、その裏マニュアルにも従わない違法操業、これがずっと続いていたことを、三回もやりながら見抜けなかった。ここに監督省庁としての科学技術庁、あるいは検査権限を持つ科学技術庁としての不備はなかったのですか。ここに責任は感じませんか。大臣としてお答えください。
  68. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 三回とも転換試験棟の中に入って、そしてプロセスを見たということでございますが、先ほど局長答弁いたしましたように、バケツ等を使って操業していればこれはもう一目瞭然、さっきの発言のとおりでありますが、操業していない場合に、作業員が、裏マニュアルがあるわけでございますから、違法性を認識して、運転管理専門官が行ったときにこの事実を隠そうとした場合には、工程をいじくって許可されたものと違うような形に大きく改造していれば、それは運転管理専門官も自分で見つけることができるかもしれませんが、工程を大きくいじくることなく、バケツも隠して、そして特に異常はありませんというふうに言われた場合に、そういう状況下で見抜くというのは非常に難しいのではないか、私はそういうふうに思います。
  69. 松沢成文

    松沢委員 ある意味でこれは警察の捜査と一緒で、そこで犯罪があるのはわかっているのに、その直前まで行って、話したら、向こうにいいようにやられて、ああそうですか、ないのですねと帰っちゃった警察官と全く一緒なんですね、そういう意味では。それは、そこの現場まで行って三回も調べておきながら、重大な犯罪に気づかなかったわけですよ。だから、その件に対して、総合的に見て行政としての不備はなかったかというのです。  それは法的に見るとこうだし、あるいは本人がそういうふうに隠そうと思ってやっているのだから、こっちは気づくはずがないじゃないか、こういう見解ですけれども、私は、科技庁として、これだけ三回も見て、それも現場に入って話まで聞いていて、この重大な犯罪に気づいていないということは、これは科技庁としての責任は絶対に免れないと思います。
  70. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員の御発言の警察の事例と同じというのは、私は理解できませんし、納得いきません。  先ほどから再三の答弁になりますけれども、違法性を認識して隠していて、そしてこれは作業をやっていなかったわけですから、その中で三回行っても四回行っても五回行っても、そちらがそういうような姿勢で隠そうとした場合に見抜くというのは、やはり事実として難しいのではないか。その場合に、運転管理専門官の責任に本当にすべきことなのか。  彼は、ここが義務づけられて行くところではないところでありましたけれども、間隔はあきましたけれども、訪問した。運転しているかしていないか、していないときはずっとほとんどしていなかったわけでありますから、そういう時期に行ったのもやむを得ないことでありますし、そのほか回らなければならないところがたくさんある中で、ここに行って、現場を見て、そして事実を隠された中で、一通りの調査をして帰ってきた。  彼は彼なりに業務を、彼のやれる範囲内ではやっていたのではないか、私はそういうふうに思っておりまして、これは怠慢だとか、見抜けなかったのは大きな責任がある、そこまで結びつけることができるのかな、私はそういうふうに思います。
  71. 松沢成文

    松沢委員 この件に関しては責任はないときっぱり言っていただいたので、私も、その長官の発言はわかります。  そこで、これは非常にうがった見方で、現場の運転管理専門官には大変失礼な言い方になるかもしれませんが、長官、警察でもあるいは銀行でも、監督官庁である行政と業者の癒着というのがそこらじゅうで今事件になっているわけですね。警察の場合は、現場の警察と監察官の癒着でありましたけれども。この運転管理専門官が、ジェー・シー・オーの方々と、検査の後なんかに、巡視の後なんかに飲食をともにしていたという可能性はありませんか。絶対にないと明言できますか。
  72. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私は、飲食していたかどうかということについての情報といいますか、報告といいますか、そういうものを受けておりませんので、ここではっきりある、ないは申し上げられませんが、ないと信じております。
  73. 松沢成文

    松沢委員 私も現地を見た中で、これはうわさとして、まさかあってはならないと思いますが、そういうことを指摘する方もいたのですね。ですから、科学技術庁として、この運転管理専門官とその調べる対象の施設、そこの検査後なんかに飲食のもてなしがあったかどうかを調査して、返答してください。私たちも自分たちの立場で調査をさせていただきたいと思いますので、それはやっていただけますでしょうか。
  74. 間宮馨

    間宮政府参考人 我々がこれまで得ている情報では、そういうことは全くございません。ございません中で、どうしてもやれということであれば、やります。
  75. 松沢成文

    松沢委員 では、お願いします。  もう残り時間が少ないのですけれども、この事故があったのが九月三十日、もう半年近くになっているわけですけれども、長官は、内閣改造で事故の直後に科学技術庁長官になられて、恐らく十月の五日か六日に現地を総理と一緒に訪れていますね。総理がメロンを食べたり食事をしたりして、安全だというアピールもなさいました、そこで。それ以来、この事故調査もどんどん進んでいって、調査報告書もできて、あるいは今回行政処分も行われるという中で、中曽根長官は、一度でも現地に足を運んで、現地の事情をじっくり視察するという努力をなさいましたでしょうか。
  76. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員のおっしゃいますように、就任翌日翌朝、東海村に、総理にお供して、御一緒して行ってまいりました。それ以来、今まで一度も行っていません。  ただ、私自身、現地に行きたいという強い希望を持っておりまして、いつだか忘れましたけれども、東海村の村長さんの方にも、伺いたいけれどもということで打診をいたしました。国会が始まりましてから、平日は、科学技術と文部、両方の委員会、あるいは予算委員会等々で、あらかじめ日にちを決めて伺うことができませんので、土曜日ということで申し入れをいたしましたら、村長さんの方の御都合が今度は合わなかったということで、一度流れたことがございます。  その後も私は再三、訪問したいということを希望を持っておりまして、日程の検討をしておりましたけれども、今日まで実現していないということで、これも事務局に命じまして、現地と十分連絡をとるようにということで、そういう訪問の現地との調整をやっているところでございます。
  77. 松沢成文

    松沢委員 私たちは二週間ほど前に、東海村の事故、その後はどういう状況かということで、民主党で行ってまいりました。  長官も行っていただくとわかると思うのですが、やはり現地は相当傷ついていますし、住民の方々も物すごく不安がっているし、感情的になっていますよ。風評被害に苦しむ農民の声、発病の不安におびえる被曝者の声、原子力の安全性への不安を抱える住民の声、こうした声を本当に聞いて長官に発言してほしいというふうに私は思うのですね。僕は、行政責任がないと言ったその後に行ったのですけれども、それぞれ農民も訪ねました、被曝者の皆さんにも十数名集まっていただいてさまざまな悩みを聞きました。東海村の役場にも行きました。やはり相当な怒りですね。許せない、そういう怒りです。  ぜひとも長官、やはり現地に行ってこういう皆さんの声を聞いてくるべきだと思いますね。そしてそこで、行政責任がないと思っているのであれば、きちっとそれを主張してみてください。私は、大変な反発に遭うと思います。ただ、それは考え方の問題ですから、長官がそう考えるのであればぜひとも、そこで皆さん意見を聞きながら議論をしてきてほしいと思うのです。  そこで、長官おっしゃっていただいたように、東海村に、あるいは現地の視察に近々行く、できるだけ早く行くという決意でよろしいのですね。
  78. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 国会が開会中でございますので、平日に伺って、現地の皆さんに御迷惑をかけないでいろいろな方にお会いしてきたいという強い希望をずっと持っておりますけれども、平日は、その日急に委員会があいたからという形で行くわけにもなかなかいきませんので、土曜日しか検討ができない状況でありまして、土曜日で、先ほど申し上げましたような形で、一度日程が先方と合わなかったということがございます。私自身土曜日も、もちろん東海村の事故対策が最優先でありますけれども、公務等もありますし、先方の御都合もあろうかと思います。  そういう形で、早く行きたいとは思っておりまして、今後も先方といろいろ連絡をとってみたいと思っておりますが、今週も国会のお許しがいただければ海外に行くということもありますし、そのほかG8の教育大臣会議等々ありまして、なかなか週末といえども難しい状況でございますが、努力を続けたい。  そして、委員おっしゃいましたように、現地の皆さんの御心配というのは大変なものだろうと思っております。行政責任はないというその言葉だけ伝わるということであれば、大変また御不満も御批判も多いことと思いますが、ただ、私どもは、この委員会で再三申し上げておりますように、あらゆる対応をとって皆さんの生活が一日も早くもとに戻るようにしたい、そして二度と起こることがないようにということで、全力で取り組んでいるということはぜひ御理解いただきたい、そういうふうに思っております。
  79. 松沢成文

    松沢委員 きょう長官と議論をさせていただいて、責任はないわけではないということなので、責任を感じておられるというふうに私は判断をいたしますけれども、やはり原子力の行政推進は今大きな壁にぶち当たっていると思うのですね。  それで、原子力の傷ついた信頼を取り戻すには、まず行政がしっかりと責任を認めて、そして新しい体制で、安全規制はしっかりやりますという体制をつくり上げて新たなスタートを切らないと、プルサーマル計画だって相当厳しい状況です。原発計画自身が知事の判断で中断になっているというところもあるわけでありまして、今、長官の発言で、これだけの自治体が相当な反発を持ってやっている。これでは私は、今後の原子力の行政推進は非常に困難だと思っておりまして、ぜひとも科学技術庁皆さんにおかれましては、きちっと責任を認めた上で、その中で新たな行政を推進していただきたい、そのことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  80. 田端正広

    田端委員長 平野博文君。
  81. 平野博文

    ○平野委員 民主党の平野博文でございます。  先ほど同僚議員の松沢さんの方から御質問がありましたが、一つどうしても解せない点がありますので、通告はしておりませんが、ぜひ、考え方だけはお聞かせをいただきたいと思います。  その一つは、責任と権限、このことに対する相関関係です。責任と権限というのは、直接対峙している関係であれば明確になるのですが、第三者が入ってくる、大衆がおる、こういうふうに三者、四者になってきたときの責任と権限のあり方というのが非常に難しい部分があると思うのです。  しかしながら、私は、権限があれば当然そこに責任は伴うと思うのでありますが、その点についてはどうでしょうか。その言葉だけでいいのです。原子力とかそういうことを言っているのじゃないんですよ。責任と権限ということに対する相関関係はどうでしょうか。通告していませんから申しわけないのですが、日本語ですから。
  82. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 権限があれば責任はあるものと思っております。
  83. 平野博文

    ○平野委員 非常によくわかりました。そのことは後で御質問をさせていただきます。  さて、私はきょうは、日本のエネルギーのあり方というものを本当に考えていかなければならない、こういう視点から、少し前提をつくった上でないと、その前提が崩れますと議論がみんな崩れてしまいますものですから、まず前提を少しつくっていきたいと思います。  今、日本のエネルギー源の構成比というのは、大体、石油が五三・六%、石炭が一六・九、原子力が一二・九、天然ガスが一一・六、水力三・八、その他、こういうことであるわけであります。これが構成比であります。しかし、その中身を見ますと、大部分は化石燃料に依存をしているということも事実であります。化石燃料ですから、期間がある意味では制限される、枯渇の問題もある。一方、国際的立場で地球温暖化、こういう問題もあるわけであります。  そういう中で、今後のエネルギーの事情を考えたときに、化石燃料への依存を、よりクリーンな代替エネルギーに移行していかなければならないということは、もう皆さん方御存じのとおりだと私は思っています。そういう中で、二十一世紀のエネルギー政策とは、どういうエネルギー政策が一番ふさわしいのかということを本当に議論をしていかなければならないと思っています。  加えて循環型社会、こういうことからいきますと、相反する行為を実は今しているわけであります。環境という側面と経済活動という側面では、二律相反する行為をしているわけであります。しかしながら、そこにバランスのいい考え方をどう取り入れていくかというのも科学技術の本来の使命だと私は思うわけであります。今後、自然エネルギーの利用、開発も含めて積極的に進めていかなければならない、こう思っておるわけですが、ちょっと前提条件ですから、それに対しては長官、そのとおりです、いや、違いますという見解があればまず一つお答えいただきたいと思います。イエス、ノーでいいですよ。
  84. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 今後エネルギー需要も増大していくことと思いますし、一方で環境の問題も深刻であります。そういう中で、また、エネルギーは安定確保もしなければなりません。そういう意味で、そういうバランスをとりながら、そして人類の発展に貢献できるようなエネルギー源を求めていくということは大変大事なことであろうかと思っております。
  85. 平野博文

    ○平野委員 今長官も、おおむねそういう方向だ、こういうことですね。  私、もう一つ前提条件をつくります。  一方、現在まで国策として進めてきた原子力政策についても、やはり直視して議論をしなければならないと思っています。現在、日本では五十二基の原子炉が、検査に入っている分は別にいたしまして五十二基があるわけであります。総エネルギーに占める比率は一三%でありますし、電力の供給という視点から見ても、三五%が原子力の利用に依存をしています。これも事実だと私は思います。  原子力発電の是非論についてはきょうは議論は避けますが、原子力施設事故が起これば、レベルの大小はあるにしても、広範囲な環境破壊を起こしていくということも、昨今の事故の現象あるいは過去に起こっておる事故状況から見ても明らかであります。当然、そのときの問題点として、安全性に対する担保というのは絶対不可欠なものであるというのが、事故が起こったときのそれぞれの反省の視点から皆さん方は口々に申されているわけであります。このことも長官は否定はし得ないと私は断定的に申し上げたいわけであります。  我が国の原子力の利用というのは、現状におけるエネルギーの供給されている状況を踏まえますと、代替エネルギーとか新エネルギーに移行していかなければならないと申せ、現実の問題点としては、やはり原子力のエネルギーを供給いただく、こういうシステムに依存せざるを得ないということも否定はできない、こう思うわけであります。COP3の問題を含めて、よりクリーンなエネルギーを利用していくという視点から見ても、原子力に現時点では依存をせざるを得ない、こういうことも私は事実だろうと思います。  一方、平成三年の美浜の事故平成七年の「もんじゅ」のナトリウムの事故であります。加えて、昨年のジェー・シー・オー事故であります。いろいろなレベル差はあっても、関連部門としての事故が多発していることも事実であります。MOX燃料におけるデータの改ざんとかいろいろなことも新聞紙上で出されておりますし、先ほど申し上げましたように原子力に依存しなきゃならないにもかかわらず、依存すればするほど安全性を高めなきゃならないにもかかわらず、こういう事故が起こっているということも直視しなければならないと思っています。  そういう意味で、昨年のジェー・シー・オーの臨界事故以降、国民皆さんから見たときに原子力の安全性に対する不安というものが非常に高まりを持っておりますし、私自身も元技術屋の端くれでございますが、やはり不安感を持っています。  そういう視点で私は大変危惧をするのでありますが、二月の二十二日に三重県の知事が、芦浜の原子力発電所計画を白紙撤回する、こういう発言をされたわけであります。これは県民の信頼感、認識がそこに至っていないという知事の御判断でしょうからそれはやむを得ないとしても、そういう状況がある。したがって、原子力に係るあらゆる面での安全性の向上と確保というのは、私はこれからエネルギー事情を考えていったときには必須の最重要課題だと認識をしておりますし、そういう視点では、国民皆さんの理解、納得を得られる仕組みをどうつくっていくかということが非常に大事だと思っていますが、この前提条件の第二項について、長官、どう認識されますか。
  86. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私は、まさに委員のおっしゃるとおりだと思います。  先ほどから申し上げましたけれども、環境問題とか安定供給とか、そういうことを考えますと原子力に依存せざるを得ない。新エネルギーの開発も進んでおりますけれども、十年後の長期見通しをとりましても、まだまだこれに取ってかわれるほどの力にならないと想定されているわけでありまして、だからこそ安全でなければならない。その安全が、事故等によって信頼が失墜するということは本当に重大なことだ、私はそういうふうに思っております。  原子力の重要性、必要性につきましては、委員からも御発言ありまして、申し上げるまでもありませんけれども、とにかく安全確保を大前提に、立地地域を初めとして、国民の皆様方の理解と信頼を得ることが第一歩だ、大前提だ、そういうふうに思っています。  そして、そのためにはいろいろな取り組みをしなければなりませんけれども、具体的な取り組みとしては、やはり安全運転の実績を積み上げるということが一つではないか。それから、立地の地域の方々との共存を図るための取り組みを強化して、情報もどんどん公開する、そしてまた国民皆さん意見もどんどんお聞きする、そういう姿勢が大事ではないか。シンポジウムとかフォーラムとかそういうものも開いて、そういう形で地道な信頼回復に努める、そして安全確保に努めるということが一番重要ではないかと思っております。
  87. 平野博文

    ○平野委員 そこで、質問をしてまいりたいと思います。  今私が申し上げましたようなことは、中曽根長官も同様の考え方であるという認識に立って、その前提を共有して質問をさせていただきたいと思います。  さきの科学技術委員会の長官の所信表明がございました。議事録を見まして、その中で長官が述べられているわけでありますが、特に、ウラン加工工場における臨界事故というのは、我が国の原子力開発利用の歴史上初めて、放射線の事故が起こって、死亡事故ということでとうとい命を失った、こういうことで、痛恨の事故である、こう所信の中にうたわれております。また、「この事故の厳しい反省に立って、」原子力防災法二法云々、こういうことであったわけであります。  そこで、「厳しい反省に立って、」という所信の言葉がございますが、厳しい反省というのは、どういう視点の反省に立っておられますか。その点についてお聞きしたいと思います。
  88. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほどからも御議論になっておりますように、ジェー・シー・オー事故に関連して、安全審査体制は万全であったのか、それから初期の対応はこれも万全であったのか、そういう面を指しているわけでございます。
  89. 平野博文

    ○平野委員 その中に、「安全確保と国民の理解を大前提として原子力科学技術を推進してまいります。」こういう言葉でございます。  ところが、厳しい反省というのは、行政として厳しい反省に立っているのか、何に立っているのか、よって立つところがわからないのですね。情緒的な部分はわかるのですが、行政に置かれている立場においての厳しい反省に立っているのか、行政のこういう立場だから反省していますというのか。ここが非常によくわからないのです、この言葉で。その点をちょっと聞きたいですね。
  90. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私は、行政を代表する立場でございます。この厳しい反省というのは、行政を行う上において万全であったか、そういう反省ということでございます。
  91. 平野博文

    ○平野委員 ということは、責任が出てくるのですよ。そこを先ほど同僚議員の質問であいまいにしちゃうものだから、なかなか同僚議員は納得しないですよ。  責任あるということは、すべて辞任をしろという意味じゃないのです。行政に置かれているステージには必ず責任があるのだ、権限があるのですから。業を取り消したわけでしょう。その取り消す権限を持つということは、起こったことに対する責任というのは科学技術庁には絶対あるのですよ。そういう意味の責任があるということを明確に先ほどお答えいただいたらすっと流れるのですが、ぼかしちゃうものですから進まない。これを言いたいわけでございます。  ですから、厳しい反省というのは、行政機関としての反省をきちっと踏まえて、新しい仕組みをつくりましょう、こういうことであると理解しています。  それで、原子力安全委員会につきましは、来年一月の内閣府への移行を実質的に前倒しして、平成十二年度当初より事務局機能を総理府本府に移しましょう、職員数も大幅に拡充するなど、「独立性と機能の抜本的強化をいたします。」というふうに述べておられるわけであります。  独立性と機能の抜本的強化という表現を使われているわけでありますが、抜本的強化でこの仕組みの改正でございますか。その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  92. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員御案内のとおり、また今御発言のとおり、原子力安全委員会平成十三年の一月から内閣府に移行いたしまして独立の事務局を持つこととなっておりますけれどもジェー・シー・オー事故を踏まえまして、来年の一月を待つまでもなく、原子力安全委員会の独立性と機能の強化を早急に図るために、ことしの四月、すなわち平成十二年度当初から総理府に事務局機能を移管して、人員体制を強化することにしたところでございます。
  93. 平野博文

    ○平野委員 独立性の強化といいますが、では、今までは独立をしていないというふうにとるんですか。その辺はどうなんですか。
  94. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 原子力安全委員会は、設立以来、日本原子力の安全の確保と向上のために活動して多くの実績を上げてきた、そういうふうに思っております。  しかし、今般のジェー・シー・オー事故を踏まえまして、安全委員会が一次規制行政庁に対する監視の機能を一層強化するとともに、これを行政庁とは独立した立場で行うことをより明確にするために、総理府に事務局機能を移管し、あわせて人員を増強することとしたものでございます。
  95. 平野博文

    ○平野委員 きょうは大変お忙しいところ、安全委員会佐藤委員長にお越しいただいています。大変ありがとうございます。  そこで、原子力安全委員会が行政省庁の中にあった、こういうことで、逆説に質問をいたします。今までは原子力安全委員会は、独立性は保たれていなかったのでしょうか。
  96. 佐藤一男

    佐藤参考人 この原子力安全委員会が設立されたのはもう二十年以上前のことでございますが、その趣旨というものは、行政に埋没することなく、行政と一線を画して国民の立場で安全性に目を配るということであったと私は理解しております。私の先輩も含めまして、歴代原子力安全委員は、その趣旨を実現すべく一生懸命努力をしてきたというふうに考えております。そういう意味では、私ども、独立した機関として行動しなければならない。これは常日ごろから、みずからそう言い聞かせながら行動してきたつもりでございます。  ただ、御指摘にもございますように、監視という言葉はいいかどうかわかりませんけれども、言うなれば、目を配ってチェックしなければならない規制行政庁が事務局になっておるというような、これは制度の趣旨からしていかがなものか、そういう御批判が従前からあったということも承知しております。むしろ私どもは、それであるがゆえに、みずからを持するに厳しくしなきゃならぬと思ってまいったわけでございます。  今度、事務局がまずは総理府に移行する、さらには、その後は内閣府に移行する。そういう意味では、そういう事務局の仕組みといいますか、制度といいますか、これも極めてすっきりした形になるというふうに私ども考えております。
  97. 平野博文

    ○平野委員 今、佐藤委員長おっしゃられましたが、規制行政庁じゃないでしょう。推進行政機関じゃないですか。
  98. 佐藤一男

    佐藤参考人 ちょっと言葉が足りのうございました。推進機関でもあり、また規制行政機関でもある、こういう趣旨でございました。
  99. 平野博文

    ○平野委員 そこで私、佐藤委員長、日々やられておる御労苦には感謝いたしますが、今までの一連の事故、かなり起こっていますね。それに対して、原子力安全委員会として、こうあればもっと十分に機能できたのにな、八条委員会であるがゆえに、諮問されない限り動けないんですよ、こういうところについて歯がゆさを感じたことはありませんか。
  100. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは、確かに原子力安全委員会はいわゆる八条機関でございます。  ただ、原子力委員会及び原子力安全委員会設置法によりますと、原子力安全委員会というのは、聞かれたことに答える機関であるとは書いてございません。これは、みずから企画し、審議し、決定する機関であるというふうに位置づけられておりまして、私どもも可能な限りその趣旨を体すべく努力してきたつもりでございます。  もちろん、いろいろ至らぬ点は、それは省みればあろうかとは思いますけれども、その趣旨に沿って私どもは努力してきたつもりでございます。
  101. 平野博文

    ○平野委員 つもりですと言われますと、そうではないということを言いますと水かけ論になるのですが、やはり八条委員会であるがゆえに余りにも受け身的な業務体系のもとに来ているように私は思えてなりません。  もう一つは、ダブルチェックだという表現をよくお使いですが、実際、原子力安全委員会にダブルチェックでかかっている、こういうことをよくおっしゃる。国民も、なるほど、ダブルチェックがかかっているのか、こういうことを言うわけですが、例えば原子力発電所の安全規制の概要でいきますと、建設前段階には、確かに通産省の大臣から原子力安全委員会に諮問され、答申をするのですね。これは、建設前には、ある意味でのチェック体制は入っていますよ。  ところが、建設段階、運転段階になってきますと、原子力安全委員会の働く役割が本当にきちっと働いているのかというと、制度的に働かなくなっているのですよ、この仕組みでいえば。その点は、委員長がいいのか大臣がいいのかわかりませんが、委員長、お答えできますか。
  102. 佐藤一男

    佐藤参考人 御指摘のとおり、例えば原子炉で申しますと、設置許可段階におきましては、行政庁の行った安全審査の結果について意見を求められ、これに安全委員会意見を述べるということが法律上の手続として定められているわけであります。そのほかについては、手続として法律で定めるということには確かになってございませんけれども、少なくとも安全委員会がそれをすることを妨げるような規定はどこにもないと理解しております。  ただ、確かに御指摘のとおり、例えば許可以降の規制のあり方その他について、これまで本当に目配りが十分だったかということになりますと、これは残念ながら、一つには物理的な制約と申しますか、そういうものもあって、なかなか思うに任せなかったことがあったことも事実でございます。  このたび、予算が成立いたしますと、要員等もかなり増強していただけるというふうに理解しておりまして、後続規制のあり方、これが適正であるかどうかということを安全委員会みずから調査して、そして必要な意見を述べるという活動をすることを考えておりまして、まだ年度は改まっておりませんけれども、これの試行を既に始めていたところでございます。
  103. 平野博文

    ○平野委員 ですから、逆に、確かに建設前段階のときにはやっていますが、それ以降はやらなくていいというのはないけれども、法的にやれというふうになっていない、こういうことですよね。だから、ここの部分で、安全の規制に対する企画をして、もっと自発的に投げかけていけばいい。業務ワークとしてはあったんでしょうけれども、やっていないということじゃないですか、逆に言いますと。やっていないと僕は思うんですよ。  だから、逆に、もっとやれるような仕組みづくりをやはりしていくべきだ。勧告だけするんではやりがいないですよ。そのかわり、責任もきちっととる、行政権限もきちっとそこに与えていくような安全の規制の仕組みをつくらないと。国民皆さん、確かに事故がたくさん起こった、とりわけ、きわめつけはジェー・シー・オーの臨界事故が起こった、したがって、二度と起こさない、そのためには、こういう行政機関の仕組みも変えます、安全性を担保するための権限も与えます、こんな仕組みをつくっていくべきだと私は思うんです。この四月に総理府本府に移した、人がたくさんふえてありがとう、こんな問題ではないと僕は思うんですよ。その点、長官どうですか。
  104. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 現在のダブルチェック体制、委員の御承知のとおりであります。いわば、これは多重防護の考え方でやっておるわけでございまして、私どもとしては、今の我が国の原子力利用の安全確保のためにはふさわしい規制体系と考えておるわけでありますが、事務局体制を初めとして、総理府に移し、また来年は内閣府に移してさらにこの事務局体制も強化をする、またより独立性の高いものにしていくということでございます。  今後、安全委員会機能の中には、原子力関係の現場等にも、従来のように設置許可以前のチェックだけでなくて、その後も調査に入れるようになるわけでございまして、そういう意味では、安全委員会機能も、また権限といいますか、そういうものもより強化されることになる、そういうふうに思っております。
  105. 平野博文

    ○平野委員 そこが権限強化になっているのか。僕はならないと思うんですね。しょせん八条委員会の限界があるわけですよ。きちっとチェックの権限と立入検査まで今回はしていこう。そうしなければ、先ほど来の御質問ありましたが、稼働していないときに見に行って、やっていないからだめでした、そういうことではチェックにならないですよ。行きますからよろしくなんて事前に言ったら、うがった見方をすれば、悪いことをしていてももとに戻してやるんですよ、これは。  だから、強制的に立ち入りする、不意に立ち入りをする、その結果だめなものはだめということをきちっと命令できる権限を与えるべきではないでしょうか。また、そういうふうに与えないことには、国民の安全性に対する確保をきちっと政府がしましたよという理屈に立てないと私は思うんです。ですから、今回、四月に安全性ということから前倒しをしたという考え方はわかりますが、もっと独立した行政機関につくっていくべきだというふうに私は考えておるわけであります。  したがって、こういうやり方をしても、先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、ダブルチェックをしている、ダブルチェックをしていると言うけれども、中身は本当にダブルですか。マニュアルどおりに検査しましたかどうかという、資料チェックしているだけじゃないですか。別の視点から、緊張感ある体制のもとにチェックしておりますか、委員長、どうですか。書式チェックじゃないですか。
  106. 佐藤一男

    佐藤参考人 許可以降の規制のあり方については、随時私どもとしても報告を求め、必要あればこれに対して意見を述べるということはやっておるところでございます。それから、報告がなきゃ何もできぬというようなことでは決してございませんで、一、二の例を挙げますと、例えば今原子力発電所ではアクシデントマネジメントという活動をやっておりますが、これは安全委員会のイニシアチブで始まったことであります。そのほかにも、調べればいろいろ例はあろうかと思いますけれども。ですから、全く受け身な立場で行動してきたということではないと考えております。
  107. 平野博文

    ○平野委員 そこは、立場が違いますから、議論がかみ合わなくて仕方がないと思いますが、ただ、これは、きっちり国民の世論がなるほど安全性が確保できたなという意識がないと、原子力の行政が本当に進まないと私は思いますよ。  もう一つ言います。事故調査委員会事故報告書というのが出ています。その中で、権限と責任の乖離がこのような事故に結びついたということを委員長が述べておられます。ここの権限と責任の乖離というのは、どういうところを指して述べられたんでしょうか。その点は、これは事故調査委員長ですから、佐藤委員長ではありませんが、長官、報告書見ておられますよね。権限と責任の乖離がこのような事故に結びついたということをこの調査委員会委員長が述べておられるんですね。これはどの権限と責任が乖離したことによって起こったのでしょうか。
  108. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 事故調査委員会の報告はその中で、今委員指摘のとおり、吉川委員長の所感といたしまして、今回の臨界事故原子力安全委員会、規制行政庁、事業者、それから一般社会の関係のもとでは認識し得なかった結果だと考えるべきとの指摘をしておりまして、さらに、この四者の権限と責任の区分が明確でないと指摘をしているところでございます。  私といたしましては、この指摘は、特に安全確保に責任を有する原子力事業者それから私ども規制行政庁、そして原子力安全委員会が、おのおのの役割を明確にしつつ、またそれを十分に自覚して、その責任を全うすることにより安全確保に万全を期すことを求めているもの、そういうふうに理解をしております。つまり、事業者は安全確保に第一義的責任を有する役割がありますし、それから規制行政庁は法律に基づいた安全規制を十分に行うという役割、責任がありますし、そして原子力安全委員会は規制行政庁の活動に十分に目を行き届かせて、不十分な点があれば必要な意見を的確に述べるべき役割がある、そういうふうに認識をしております。したがいまして、これらの今申し上げた三者の役割を明確にして、それぞれが行う活動が相まって安全確保に遺漏ない体制ができるようすることが大事であると考えております。  このため、委員御案内のとおり、原子力保安検査官の導入など、規制行政庁における体制の充実も今回図るようにしたわけでございまして、原子力安全委員会機能と事務局体制の強化等によりまして、一層実効性ある安全確保体制の確立を図っていきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  109. 平野博文

    ○平野委員 なかなかここのところはかみ合わないんですね、権限と責任の乖離。  私、少し例を挙げますと、こういう点で、なるほど権限と責任の乖離しているなというところがうかがえるんですね。  国がジェー・シー・オーの違法な作業を見逃してきたにもかかわらず、ところが、これは見逃したんではないという先ほどの表現でしたよ。ジェー・シー・オーの事業者責任ばかりを追及する。事業者の第一義責任はあるんですよ、これは絶対あるんです。そこに終始をして、事故の前の、保安規定の遵守状況調査は七年間もやっていないんですよ。これは法律で云々という、強制的にやらなきゃならない、そういうことは明記されてないからやっていない。しかし、保安規定の遵守状況調査ではやはりやらなければならない。七年間もやっていない。  二点目。東海村の村長さんが、三百五十メートルの危険地域で屋内の避難を決断しなければならなかった、なぜなんだ。これが二つ目。  三点目。原子力安全委員会の住田委員長代理が現地で臨界をとめるための指揮を行った。これは、結果はやられてよかったと私思っていますが、どういう権限でどういう法的裏づけのもとに行ったのか。  事故を起こしたジェー・シー・オーを見抜けなかった行政の責任というのは絶対にある。炉規制法上、加工施設の定期検査の義務づけがなかったため、責任はないということを大臣はるる言っておられますが、私は、絶対あると。あるというのは、権限と責任が乖離しているからなんですよ。こういう仕組みをつくっているところの責任がある、こういうことを僕は言いたいわけであります。  また五点目は、原子力安全委員会の権限のなさです。委員長は、心では本当はないと思っているけれども、こういう場だからそういうことを言わないと思うのですが、権限のなさですよ。現行は、規制行政庁が規制の主体であり、稼働している規制では行政庁の責任なんだ、こういうことになっているのです。報告があれば審査をするという体制は現実の姿です。しかし、原子力安全委員会には批判が来るのですよ。したがって、権限がないしどうしようというジレンマが佐藤委員長に絶対あると私思うのです。  したがって、そのジレンマをとると同時に、行政の仕組みをどういうふうに変えていって、原子力の安全確保を、国民皆さんに、こういうふうにしましたから安全性が担保できましたということを明確にやらずして、知事がだめだと言ったら、もうやめます。  私、最後に質問しようと思っていますが、今度、原子力を六基ほど縮小するという新聞記事が出ましたね。エネルギーの長期計画を明確に出さずして、そういう批判があったから、はい、六基削減します。何ですか、これ。国策として進めてきたエネルギーの供給体制ですよ。それを明確にしないから批判があるのですよ。明確にしたら、やはり依存しているんだな、そうしたら——より安全にチェックする体制をきちっとつくってくれたら安心できるという仕組みの土壌もないままに、批判が来たら、二十基必要だと言ってきたことをもう十二基ぐらいにやめよう、こんな安易にやってもらったら絶対に困るわけであります。  緊張感がなさ過ぎますよ、この行政チェックという機能では。緊張感がないという意味では、警察の問題だって同じだと思うのです。  したがって、進める立場、それを公正に安全性という担保でチェックする組織、これを明確につくっていくということが今原子力行政の中で一番求められていることだと私思います。それがないまままた先送りすれば、先ほど同僚議員の松沢さんが言いましたように、原子力行政の推進というのは非常に難しい、こういうことになるのであります。  したがって、我が党としましては、安全規制に対するチェックをより独立した公正な機関として、法案を今検討しておるところでございます。ちょこちょこと手直しして、人さえふやせばいい、こんなことで国民は絶対に納得しない。  佐藤委員長、もっと楽に仕事ができ、客観的に仕事ができる仕組みを我が党は出しますよ。今大変窮屈でしょう、そう思いませんか。
  110. 佐藤一男

    佐藤参考人 いろいろ御指摘をいただきまして、これは私ども委員会に非常に御期待があるということかとも感じております。その御期待にこたえるべく一生懸命やらなければならないのは当然でありますが、これまでも私どもやってまいりました。  どういう制度であっても、いいところ、足りないところというのは必ず生ずる。それを我々の努力でどこまで埋めることができるのか、こういうことではないか。私ども今までやってまいりましたが、現行の制度のもとで、本当に原子力安全委員会が持てる力を完全に発揮できたか、発揮するためには何が必要かということを一生懸命考えてきたつもりでございます。例えばその仕組みが改まった場合には、また同じ努力をするということになろうかというふうに考えております。
  111. 平野博文

    ○平野委員 時間が参りましたので最後にいたしますが、先ほど言いましたように、日本のエネルギー事情というのは、資源もない、そういうところでありますから、やはり供給の長期計画をきちっと明確に立てなければいかぬと私思っています。その点、長官、どういうふうにエネルギーのあり方をお考えでしょうか。  それと、過日、これは新聞報道ですが、二〇一〇年までに原子力発電所を十六から二十基を新たに建設する、こういう原発計画を断念する、建設目標を十三基にする、こういうふうに新聞報道されたのです。これは何でこういうことになったのか、ここが非常にあいまいであります。  三重県知事が言って、これ以上進めるのは難しい、したがってやめていこうか、あるいはもっとあれすれば、将来、省エネとかそういうシステムができるから、トータルエネルギー需要としては少なくなるから、当初もくろんでおった二十基が十三基でいいんだ、多分そういう答えをすると思うのですよ。しかし、余りにも安直にやり過ぎですよ。  やはり長期計画というのをもっと明確に出していくべきだと思いますが、私は知らないものですから、出されているのであれば、お答えをいただきたいと思います。
  112. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 通商産業省は、長期エネルギーの需給見通しを含むエネルギー政策の見直しに着手する予定と私どもも承知をしております。この検討に当たりましては、環境保全等の要請に対応しながら安定供給を実現していくという、このエネルギー政策基本は不変とされておりまして、今後ともエネルギー供給に果たす原子力の重要性は変わらないものと私ども考えております。  現在、原子力委員会におきまして、二十一世紀に向けた原子力研究開発利用に求められる基本的な理念を明らかにして、そして原子力政策の全体像と長期展望を国民皆さんに提示するために、ことしの年末までの策定を目指して新たな長期計画審議を行っているところでございます。二十一世紀には、この新しい長期計画を踏まえて、安全の確保を大前提に原子力研究開発利用を進めていきたい、そういうふうに思っております。
  113. 平野博文

    ○平野委員 時間が参りましたので終わりますが、やはり国民皆さんに明確に出していただいて、その上で、国民皆さんの理解を得て進めていくことがこの原子力政策に最も必要なことだろうというふうに私思います。  終わります。ありがとうございました。
  114. 田端正広

    田端委員長 辻一彦君。
  115. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、四十五分ほどでありますが、せっかくの大臣の所信表明でありますので、基本的な点を二、三伺って、少し具体的な問題でも質問したいと思います。  まず第一に、科技庁長官は文部大臣でもありますので、両方兼ねていらっしゃいますが、宇宙開発の問題で、さきには十一月に、科技庁が力を入れておった衛星打ち上げが、残念ながら、非常に期待があったにもかかわらず失敗をした。また最近では、少し前でありますが、文部省が中心になっておりました衛星の打ち上げ、これも残念ながら失敗をした。国民からすれば非常に宇宙開発は期待をかけている、しかも国際的にもかなり、日本のレベルは、ロケットについては高いレベルだというような認識がされ、外国からも打ち上げについてのロケットの発注が相当見込まれる、そういう状況の中で起こった一連の経過は非常に残念な気がします。  そういう点で、長官は文相と両方兼ねておるわけでありますので、この二つの結果について、総括的な反省と、これからどうするお考えであるか、この点を初めに一点だけお尋ねしたいと思います。
  116. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 昨年十一月のH2八号機の打ち上げの失敗に続きまして、ことしの二月にM5ロケットの打ち上げが失敗をいたしました。国民の皆様の御期待に沿えないどころか、国民の皆様に大きな御迷惑をおかけいたしましたし、また日本科学技術の振興という点を考えましても、大変に残念に思うと同時に、まことに申しわけなく、そういうふうに思っております。  まずはこれらの失敗の原因の究明を行うことが第一であるということから、現在、両ロケット打ち上げ失敗につきましては原因究明を行っているわけでありますけれども技術的側面はもちろんでありますけれども、その背景にまで踏み込んで徹底的に検証する必要があるのではないか、そういうふうに私思っております。  現在、宇宙開発委員会技術評価部会において原因究明が行われているわけでありますけれども、今考えましたようなことから、原因究明に加えて、昨年末から特別会合も開催をしていただきまして、宇宙開発体制全体の立て直しに向けた検討が精力的に行われているところでございます。  この特別会合では、宇宙開発事業団の組織とか体制とかあるいはメーカーとの役割の分担、さらには産業界の製造現場における品質保証とか検査等のあり方、そういうところまで踏み込んで、信頼性確保のための対応策が検討されているところでございます。これらの検討結果を十分に踏まえて、ロケット技術の信頼性を高めるとともに、日本の宇宙開発体制を立て直して、国民の皆様の御期待にまたおこたえできるように努力をしていきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  117. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうはその問題に深く入るのが私の内容ではないので、基本的な考えを伺って、これからひとつぜひ立て直しのために奮闘いただきたい、このことを要望、期待をして、とどめたいと思います。  それから、質問の順序で、私は原子力の長計とさっきお話が出ました原子力エネルギーの供給の下方修正について伺いたいと思っておりますが、ちょっと外務との関係があるので、本題の方のMOX燃料の英国返還問題について、これを先にお尋ねをしたいと思います。  まずこれについて、後で詳しい論議はいたしますが、ごく簡単に言えば、イギリスの核燃料会社におきまして、BNFLと言われておりますが、ここで製作したMOX燃料が装荷前になってデータ捏造によって全く信頼を失って、全面的に今ストップしているという状況にあります。この一連の経過について要点をまず伺って、それから質疑をいたしたいと思います。
  118. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 御説明いたします。  本件、結構長い経緯がございますが、かいつまんで申し上げますと、昨年九月十四日に関西電力高浜原子力発電所三号機用のMOXのペレットの外径の品質保証用のデータについて疑義が判明いたしました。早速、関西電力に対して調査を指示いたしました。九月の二十四日に関西電力から中間報告書を受領いたしまして、高浜三号機用については不正がございました、それから高浜四号機用については疑義にとどまっているということでございました。その後、最終報告書が十一月の一日に関西電力から通産省に対して報告がされまして、高浜四号機用について不正はないという報告書でございました。  その後、昨年の十二月の十六日になりまして、BNFL社から関西電力に対して、不正のロットが高浜四号機用についてあったという報告がございました。これを受けまして、関西電力は、高浜四号機用MOX燃料の輸入燃料体検査申請が出ていたものを取り下げるに至ったわけでございます。このときに通産省から関西電力に対して、事実をよく究明するように指示をしております。  その後、本年になりまして、二月の七日から十日まで、イギリスの貿易産業省、それから保健安全執行部、いわゆるNIIと言われる検査当局が日本に参りまして、事の経緯、それからNIIの調査、BNFL社の調査の内容などを報告してまいりました。その件につきまして、二月の十八日にNIIの報告書、BNFLの中間報告書がイギリスで公表されております。その後、三月一日に関西電力から、データ不正に関する分析、品質保証、管理上の問題点などの中間報告を受領して、公表しております。  以上でございます。
  119. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大事なポイントが必ずしも全部尽くされていないと思うので、若干重複しますが、私から補足をしたいと思います。  この問題をずっと見ると、まずBNFL、いわゆるイギリスの核燃料の会社が日本のMOX燃料を引き受けてつくっている。そこで高浜三、四号炉にこのMOX燃料を年内装荷する準備が進められておった。そのときに、燃料は日本へ着いたのでありますが、三号機はデータ捏造がはっきりしたので、これはつくり直すということになったのですね。四号機は心配がないと言っておったのですね。  しかも、それは通産省がまず、この場合は科学技術庁じゃなしに通産省になりますが、行政としての第一次責任官庁、チェック機関、それからダブルチェックをやるのは原子力安全委員会、この二つがいずれも、四号機用のMOX燃料については不正事実はないという報告を妥当である、このように認めたわけですね。日本の第一次チェック機関、これは通産省・エネルギー庁になりますが、それと第二次のチェック機関の安全委員会において、電気事業者が提出した報告書を妥当であると認めたのですね。  そして、その上に立って、福井県の県議会は十一月一日に、受け入れの高浜町の議会は十一月二日に全員協議会を開いて、その報告を電気事業者、そしてまた役所の方から受けて、それならば了承するという、一応この方向になったのですね。  ところが、一月半たって十二月の十六日に、肝心のイギリスの燃料をつくっているBNFLという燃料会社から文書でもって、高浜に着いたMOX燃料八体のうち、四つはもう使えない、使うな、こう言って、装荷できない、簡単に言えば使ってはいけないということを、直接イギリスの燃料会社から言ってきたわけですね。  ところが、その中で、この報告書、イギリスの方には原子力施設検査局という、日本でいうと安全委員会になりますか、検査当局がありますね。安全委員会とはちょっと違いますが、検査当局がある。そこが検査をした結果を見ると、一日に二十四時間動いているとすると、五つのコースがあると四つのコースで不正が出ておったということが明らかになったんですね、調査の結果。  そうすれば、五つのうち四つの不正が明確であるとすれば、あとの一つも、これはそういうことが組織的に行われていると考えざるを得ない。だから福井県は、こういう状況の中で、高浜については、八つについては全部問題があるから、使わないようにしたいということを電力の事業者関電に申し入れたのですね。関電の対応は、これについては非常に早かったですよ。直ちに論議をして、そしてこれは使いません、こういうことをちゃんと福井県に対して通達してきたんですよ。  しかし、これは原子力行政に対する重大な信頼の喪失になったんですね、福井県においては。それはそうですよ。現地に調査に行って、そして電気事業者が報告した、それを通産省も心配ない、妥当である、安全委員会も妥当であると認めて、県議会と地元の高浜町議会にそれが報告されて了解された。ところが、半月たったら、全く違った中身がイギリスから報告されてきて、これは使えなくなったと言う。これは直接の事故ではない。しかし、私はそれ以上に、せっかく積み上げた原子力行政に対する信頼の重大なる喪失につながったと思うんです。  こういうことをどうするのかという問題がありますが、まず、これは通産に伺うべきですが、きょうは通産大臣もいないし、エネ庁長官もいませんから、この問題に総括的に、こういう状況の中で科技庁長官としてどう感じられているか。私は、原子力行政の信頼度を物すごく失っていく大きな過程である。だから、いかにほかのことで努力をしても、こういうことが崩れたら、せっかくの努力が台なしになる懸念がある、そこを率直にひとつお尋ねしたい。
  120. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 御指摘のMOX燃料データの捏造問題につきましては、今委員お話しなさいましたように、今原子力関係で一番大事なことは信頼を回復するということであり、安全を確保するということでございますが、まさに信頼を裏切るようなデータの捏造があったということは、大変残念なことでございます。  国民の皆様方にもこういうことからまた大きな不安を抱かせたわけでありますけれども、私ども、通産省とともに、今後こういうようなことのないように検査体制等十分に注意をしてやって、そして信頼の回復につながるように努力をしなければならない、そういうふうに思っております。
  121. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 恐縮でございますが、通産省のポジションを御説明させていただきます。  昨年の十一月一日に当省に報告されました関西電力の報告書においては、高浜三号機用の二十二ロットに不正があり、高浜四号機用の一ロットについてはデータの一致数がやや多いものの、不正はないとされておりました。(辻(一)委員「細かい説明はよくわかっていますから、ポイントだけちょっと知らせてください」と呼ぶ)はい。この関西電力の調査は結果的に不十分であったことになりまして、その調査報告を妥当として受理しました点については、当省としても反省すべきことと認識しております。  なお、高浜四号機用の輸入燃料体検査の合否の最終判断を行う過程において、慎重を期すという観点から、十二月十二日に職員を改めてイギリスの原子力施設検査局、NIIに派遣するとともに、関西電力に対しても、再度BNFL社に対して確認を行うよう指示していたところであります。  そのところ、十二月十六日になりまして、新たな不正が判明いたしました。これはBNFL社が独自にやっていたものでありまして、NIIもDTIも知らなかった調査でございます。関西電力はこれを受けまして検査申請を取り下げ、最終的な合否の判断に至らなかったものであります。  今後、通産省としましては、有識者も含めた委員会において検討を行い、当省としての問題点の整理や再発防止対策の取りまとめを行うこととしておりまして、原子力発電の安全確保に係る責任を全うしていきたいと思っております。  以上でございます。
  122. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それはよくわかるけれども、大事なのは、電気事業者が報告した報告書を通産省がオーケーして、これは妥当である、こうしたのですね。まず私は、その第一次にチェックすべき重大な責任を持つ監督官庁、この場合には通産、エネ庁になりますが、どうしてそれを見過ごしたのか、なぜチェックできなかったのか、細かい説明は時間がないからいいですが、なぜできなかったのか、ポイントだけちょっと聞かせてほしい。
  123. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 御説明します。  輸入燃料体検査は大きく二つに分かれておりまして、一つは外観の検査、それからもう一つは品質管理のデータを書類検査するものでございますが、今回のように、品質管理のデータの不正が意図的に行われた場合には、これを検査の段階において発見することには限界もございます。  したがいまして、今後、事業者における品質管理体制の確認のあり方について、先ほど申し上げました有識者の委員会で十分検討してまいりたいと思っております。
  124. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つ伺いますが、去年、使用済み燃料のいわゆる輸送容器のデータ捏造問題を国会では随分論議をしたのですね。そして、あの中で、前の有馬長官も、科学者、技術者としてデータの捏造であるとか改ざんのようなことは絶対あってはならない問題だ、そのためにあらゆる努力をして、そういうことが起こらないようにしたい、こう言ったのですね。  国が違う、私はこれは日本に独特のこういう改ざんかと思ったら、イギリスはもっとひどいことを中身としてはやっておったわけですが、あのときの輸送容器の改ざんあるいはその後のデータ捏造、こういうものについての経験が、今の答弁を聞いていたら何にも生かされていないのですね。ああいうものをきちっと生かして点検をやったら、まだまだ違った対応ができるはずだと思うんですが、これは時間の点からもうそれ以上言いませんが、安全委員会もめくら判を押すだけではだめなんで、どうだったのか、詳しい説明はいいですから、そこをちょっと聞かせてほしい。
  125. 佐藤一男

    佐藤参考人 これは規制行政庁の通産省の方から、安全委員会にかなり詳細にわたっての御報告がございました。  問題は、高浜の三号機用の方、少しデータの一致数が多いものが一体ある。それについてはさまざまな統計解析等もしておりまして、一見多いけれども決して不自然ではないという説明も承ったわけであります。私ども、それをなるほどというふうに了承して、その点では私ども不明を恥ずるところであります。  それでは、こういう問題をどういうふうにこれからやっていかなきゃならないか。今、藤冨審議官の方からも、例えば品質管理の方法、品質保証データの見方、その他もろもろ検討すると。これにつきましては、安全委員会も、新たな捏造が見つかったという報告を受けまして、少々、何と申しますか、何ということだという感じがしたわけでありますが、その点については十分に対策を講じて報告するようにということを求めているところであります。  ただ、こういう問題の根底には、これは御指摘日本の使用済み燃料容器のデータ捏造等々もございますが、やはり技術者の基本的な倫理というのを高めていくという努力も必要ではないかというふうに考えるところであります。具体的にどうすれば倫理が高まるかというのは、これはなかなか難しいことかとは思いますが、その点も必要なことだなというふうに感じております。     〔委員長退席、山口(俊)委員長代理着席〕
  126. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう少し十分に時間をかけて通産のあり方、安全委員会のあり方を論議すべきですが、全体の時間の点からそれ以上は申し上げませんが、これは非常に日本原子力行政の信頼を落としたと思うんですね。私は、ほかの方では随分役所も電気事業者もそれぞれ努力しているのはわかりますが、こういうことがあるともう台なしにしちゃうということを、これだけは特に強調しておきたいと思います。  そこで、問題は、日本の方には輸入はされなかったけれども、イギリスがやった検査でアウトになった中に、MOX燃料の燃料棒の中にねじとかコンクリの破片が入っておったという、考えることのできない事実が起きておるわけですね。それはエックス線検査でアウトになってはねられておりますが。これは百分の二ミリ以内の誤差でなければ、燃料棒の中のペレットといいますか、燃料は熱が出たらふえちゃうわけですから、被覆管を破っちゃう懸念がある。だから、そういうものは百分の二ミリ以内の誤差しか基準で認めていないにもかかわらず、ねじが入ったりコンクリートのかけらが入っておる。そんなことは我々は考えられないことだけれども、それが事実イギリスで起こって検査ではねられているということですね。こういう問題を持っておるということ。  したがって、日本の方においては、電気事業者関西電力も、八体を全部、高浜に着いているのをイギリスに引き取ってくれ、返還したいと申し入れておるんですね。それから福井県も、知事名でもって、こんな使い物にならないものは預かっておくわけにはいかぬから、とにかくイギリスの責任で引き取れ、こう言っておるんですね。それは通産大臣にも、原子力安全委員長にも、それぞれ福井県の知事名で正式要請が三月一日か二日に出されて要請をされておるし、科技庁にも同然だと私は思います。  そこで、こういう事実の上に立って、原子力行政の信頼を回復するには、今通産省や科技庁長官、それから安全委員長が述べられたようなことを具体的にやってもらうということがまず第一ですね。  もう一つは、使うことのできない燃料体八体を高浜に預かっておるというようなことはあってはならぬです。これを返したいというのが電気事業者を含め福井県の正式な態度なんですが、これは早急にイギリスに引き取らすべき、返還すべきものと思いますが、これについてまず通産省と、それからきょう外務政務次官見えていますね。外務省はこの中でどう考えているか、それをそれぞれ伺いたいと思います。時間の点からポイントで結構です。
  127. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 御説明します。  高浜発電所の四号機用のMOX燃料八体につきましては、本年二月に東京で行われました日英政府間協議の際、当省から英国政府に対し、当該燃料を英国に返還するよう要求いたしました。また、御案内のように、関西電力及び福井県からも英国側に対して、当該MOX燃料を英国に返還するよう強く要請していると承知しております。これに対しまして、英国政府は、返還輸送を含めてあらゆる選択肢を検討し、本件に係る見解をできるだけ早く我が国に提出する旨表明しております。  今回の責任は英国側に全責任があり、当省としては引き続き迅速に協議を進めてまいる所存でございます。
  128. 山本一太

    ○山本(一)政務次官 できるだけ簡潔に申し上げますが、ほとんど今の説明でございまして、私どもとしましても、今回の問題の責任というのは英国側にある。英国側もこれを踏まえて、政府間協議では、返還輸送も含めたありとあらゆる選択肢を検討の上、できるだけ早く日本側に見解を示す、こう申しておりますので、政府間においてこの協議を迅速に進めていく、これに尽きると思います。
  129. 辻一彦

    ○辻(一)委員 政務次官は何か十二時までという時間だから、ちょっと急ぎます。  NII、イギリスの原子力施設検査局、これは検査に当たる責任機関ですが、そこの報告書の内容をさっと見ると、これは政府からもらった資料ですが、その報告書の中には、一つは、データの不正がいろいろあったことは事実である、これは認めておるんですね。しかし、第二点は、これは非常に大事なんですが、ペレットは何万というか大変な数ですから、それはレーザーで自動で全部測定をやって、外径、外の直径は基準の範囲内にあるから、安全上はイギリスの検査機関の条件を満たしている、こういうことが、ちょっと表現が違うかわからぬが、書いてありますね。  こういうことは、不正の事実はあった、しかし、安全からいえばこれは基準を満たしているんだから心配ない、こういうことを言っていると思うんですね。そうすれば、そう簡単にイギリスが持って帰りますというふうには私はいかないと思うんですね。強力な通産当局と外務当局の交渉をきちっとやって、これは日本原子力行政の信頼に著しく大きな問題であるということをよくよく向こうに説明してきちっと引き取りをさせないと、簡単にはいかないと思うんですが、そこらのひとつ外務省の決意を聞きたい。
  130. 山本一太

    ○山本(一)政務次官 今委員指摘のとおり、この問題の責任は英国側にある。これは英国側も認めているところでございますので、彼らが出してくる選択肢を十分勘案してきちっとした対応をさせていただきたい、このように考えております。
  131. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 まさに今外務政務次官がおっしゃったとおり、私どもも、技術的にすべてのものをデータチェックしているからといって、社会的安全性は非常に重要な問題だと思っておりますので、英国政府に対して返還を要求してまいりたいと思っております。
  132. 辻一彦

    ○辻(一)委員 外務省、通産省に伺いますが、もう一度、返還させる決意はあるのか、腹はあるのか、どうなんですか。
  133. 山本一太

    ○山本(一)政務次官 現在、政府間で交渉していることでございますので、少なくとも英国側の見解は、ありとあらゆる選択肢を含めて早急に提示するということでございますから、それを踏まえて政府間できちっと協議をしていく、このようにお答え申し上げたいと思います。
  134. 藤冨正晴

    藤冨政府参考人 私ども、返還を要求しておりますので、英国側の回答を待って早急に協議したいと思っております。
  135. 辻一彦

    ○辻(一)委員 向こうの回答を待ってそう簡単に解決できるような問題ではない。これは非常に日本の政府の腹構えが私は要ると思うんですよ。それは、もう抜け道が書いてある。安全上はイギリスの条件を満たしているんだ、そういうのは企業間の交渉の問題だと。こうして逃げ道が書いてあるんですよ。  だから、これを使えないということは、イギリス側からも使うなと言ってきているその四体、それから、工場の運転状況は、五つに分ければ、四つが不正を出しておれば残りの一つもそう見ざるを得ない。こういう中で、これは持って帰ってくれないと、日本にこのまま置いていたのでは、私は、ほかの原子力行政も信頼を失って、進まないと思います。だから、異常な決意を持ってひとつ事に当たってほしいと思います。  と同時に、これは営業用ですから、所管は通産・エネ庁になりますが、科技庁も、原子力行政に対する信頼度の問題を考えれば全く共通した問題、長官の決意もあわせて伺いたい。
  136. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げましたように、英国での捏造とはいえ、このようなことが起き、日本原子力に協力をしていただいているいろいろな方々、また国民、多くの方々に御心配をおかけし、また信頼を失墜したということは大変残念なことでございます。  外務省、通産省が御努力いただいておりますので、それを見守っていきたい、そういうふうに思っております。
  137. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、この問題はここで切り上げますが、最初に返って、長計の見直しはしばしばこの委員会でも取り上げてきました。そしてまた、歴代の科技庁長官に対しても何回か、ここ数年にわたって、その見直しの必要があるということを私も力説をしてきたと思います。  要するに、プルトニウムをどう使っていくかという長期計画が中身の主なところであろうと思いますが、それを考えると、高速増殖炉の今の状況から見れば、残念ながら、三十年あるいは五十年後でないと営業運転の可能性がなかなか立たない。それからATR、いわゆる新型転換炉、これは実験段階では比較的うまくいっておったのですが、電力会社の方では採算が合わぬというので手を上げてしまった。だから、これもとんざをしているわけですね。  そうなりますと、三番目のいわゆるプルサーマルというか、プルトニウムを余分に持たないために、これをMOX燃料にして燃やす、こういうのが、第三番目の位置づけが、今見るとどうも一番先に躍り出しそうな状況にあるのですが、ここらの経緯をひとつ明確にして、そして反省すべきは反省をし、ここを長計の中に明確に出さないと、数字いじりだけで私は済ませられないと思うのですね。  前科技庁長官も、この長計の見通しについて論議したときに、いろいろな見通しの誤りがあるのではないかと言うと、これは事務当局を含めてなかなか、いや、それは誤りじゃない、もう前からちゃんといろいろ書いてありました、こう言っているのです。しかし、見通しが狂ったのかと言うと、これは黙っている。それはやむを得ぬということになるのですね。  だから、見通しに誤りがあったということと見通しに狂いがあったということと、厳密に言えばどれぐらい違うのかは私はわかりませんが、いずれにしても、事態は大きく変化をしている。そういうものを踏まえた長計の中身が出ないと、それは数字いじりだけになる。そういう意味の長計の見直しについてどう考えておるのか、この点を一点、長官から伺いたい。
  138. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 原子力委員会におきましては、二十一世紀に向けた原子力開発利用に求められる基本的な理念を明らかにいたしまして、そして、原子力政策の全体像と長期展望を国民に提示するために、今、新たな長期計画の策定に向けた審議を行っているところでございます。  この長期計画の策定に当たりましては、現代に生きる我々が後世に何を残していけるのか、そのために原子力はいかなる貢献をすることができるのか、そういう原子力の平和利用の原点に立ち返りまして議論を行っているところでございます。  エネルギーの事情については、委員が十分御承知のわけでありますけれども、新エネルギーでどれだけのエネルギーを賄えるのかなど、ほかのエネルギーの特徴等も十分に検討した上で、今後エネルギーとしての原子力の必要性や位置づけについて広く国民皆さんに明らかにしていく、そういう基本的な立場をとっているところでございます。  また、新しい長期計画の策定に当たりましては、審議の透明性、それから国民皆さん意見聴取を行うなど、民主的な手続を経ることによりまして、国民の皆様方の信頼を得ていくこととしたいと思っているところでございます。     〔山口(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これも論議をすれば随分ありますが、あとは割愛をします。  そこで、今度は非常に具体的な問題で伺いたいのですが、先ほど松沢委員も、また平野委員も御指摘になっておりましたが、ジェー・シー・オーの後の始末といいますか、後に残された問題が随分ありますね。私も一緒にこの間、もう一度現地の調査、しかもそれは三百五十メーターから五百メーター以内にいらっしゃる住民の皆さんに会って、いろいろな心配や悩みであるとか、そういうことを具体的に聞いた。これは農家も含めてでありますが。  その中で幾つかを申し上げたいのですが、第一は、東海の地区に、高レベルの放射性廃棄物の溶液が相当量保管されておるわけですね。この高レベルの放射性廃液をどう処理するかということは今後に残されておるのですが、今、現地においては、この周辺の住民にとってはやはり非常に不安のもとになっております。  ちょっと紹介しましたが、私も去年の一月にアメリカ施設を見たときに、ハンフォードサイト、生産炉を八つ持って、アメリカの原水爆の原料、プルトニウムを全部そこで生産しておった。それは八つとも廃炉にして、ところが、高濃液の百万ガロン単位のタンクが百六十個ほど地下に埋設してある。ところが、一重のタンクはどうしても漏れて、それが地下水帯にまで達して、十五年たつとコロンビア川に移っていく。それをどう防止するか、土壌間の移行を防止するかというので、アメリカとしては、最新の科学の粋をここにつぎ込んで、今その実験をしているというのです。  核兵器から出てきたところの廃液も非常にこれから問題。もうロシアは言うまでもないと思うのですが、詳しいことは別にしますが、私は、平和利用であるところの使用済み燃料から出てきたところのいろいろな廃液、あるいは研究施設から出てきた廃液も、非常に大きな問題を持っておると思うのです。この廃液処分について、簡単で結構ですから、ひとつ伺いたい。
  140. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 サイクル機構の東海再処理施設で発生いたしました高レベル放射性廃液につきましては、再処理施設に隣接をしておりますガラス固化技術開発施設におきましてガラス固化することとなっております。委員御承知のとおりでございます。  このガラス固化技術開発施設は、プラント規模でガラス固化の運転技術、保守技術等の開発を行う施設として、再処理施設と一体として設置承認を受けているものでございます。平成九年三月に発生いたしましたアスファルト固化処理施設の火災爆発事故以来運転を停止しております東海再処理施設の運転が開始されれば、このガラス固化技術開発施設におきましても、プラント技術の改良等を行いつつ、当面は年間約四十体分ずつのガラス固化処理を行う計画でございます。  このガラス固化処理を行うまでの間、高レベル廃液は再処理施設内の廃液貯槽において安全に管理をされておるわけでございます。
  141. 辻一彦

    ○辻(一)委員 高レベルの廃液はもう既に相当量溶液で保管をされている。だから、再処理をしたから出てくるのを処理する問題とは、工場は同じかわからないけれども、これは筋が少し違うわけなので、そういう既に大量に保管されている高レベル放射性廃液を早く処理してもらいたいというのが、現地の住民、あそこを取り巻く皆さんの御要望、強い懸念であるということを指摘して、対応をひとつ急いでほしいと思います。  あと二点。  一つは、三百五十メーター以内に住む皆さんと二、三回、十人とか十五人、みんな女性、お母さんが小さな子供を連れていらっしゃって、いろいろ意見を聞くと、一番心配は、幼児が被曝をしたのではないかと。今は、一定期間は国の方で健康診断とかを保障しているけれども、この小さな子供が一人前に大きくなっていくまでに長い期間が要る。そのときに、きちっと健康診断、追跡調査等によって心配のないようにしてほしいということが、皆小さい子供、赤ん坊を抱えていらっしゃって、非常に切実な御意見ですね。これは私は無理がないと思う。  だから、これは一定期間だけは申告があれば診断しますというのでなしに、こういう小さな子供はずっと調べて、御希望があれば、あるいは強制的というとあれですが、相当な期間にわたってこの子供たちの診断に心配ないようにするということができるのかどうか、ぜひやるべきであると思います、それについて一つ。  それからもう一つは、三百五十メーター以内、皆住宅がありますね。そこに野菜畑があるのですね。自分の裏庭というか、そっちの方に皆野菜をつくっていらっしゃる。だけれども、その野菜畑に野菜をつくるについて心配だ、こう言っているのですね。それは、必ずしも詳しいことはわかっていない点もあると思いますが、一般に言えば、ここの畑で野菜がつくれるのかどうか、もしこれが心配がないということになれば、野菜をつくればもっと理解が広がるだろう。  そこで、土壌検査を、農家の広いところの検査だけでなしに、家庭菜園をみんなが持っているのですから、そういうところを一遍検査してほしい。それによってもし心配がないとなれば野菜をつくるし、そうすればみんなの安心感も広がるのじゃないか。  この二つは非常に具体的な問題であると思うのです。したがって、具体的にひとつこれについてのお答えを伺いたい。
  142. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 今回の臨界事故によります放射線の影響による健康管理のあり方につきましては、ことしの一月二十五日の原子力安全委員会の健康管理検討委員会、ここの中間取りまとめが出されております。  この取りまとめにおきましては、公衆の線量限度等を考慮して、推定線量が一ミリシーベルトを超える者、また推定線量が一ミリシーベルト以下でありましても、避難要請区域内、いわゆる三百五十メーターの範囲でございますが、この区域内に居住または勤務する方につきましては、将来にわたって日常的に健康的な生活を過ごすための一般的な助言に資するための健康診断を希望する方々に行うとともに、幅広く健康相談も実施していくことが適切である、そういうふうに考えております。  科学技術庁といたしましては、この健康管理検討委員会基本方針に従いまして、幼児も含めて周辺住民等の健康管理を適切に行ってまいりたい、そういうふうに考えております。  それから、二番目のお尋ねの土壌の汚染のことでございますけれども、今回の事故では放射性のガス状物質が施設から放出された、そういうふうに考えられるわけでございますが、事故に起因して検出された土壌など環境試料中の放射性物質のレベルは十分に低く、住民の皆さんの健康や環境に影響を及ぼすものではないと判断されております。  周辺住民の方々の野菜畑などにつきましては、茨城県の公害技術センターが土壌などの採取それから分析のデータを管理しておりまして、また周辺住民の個別の調査依頼、相談にも応じていただけると聞いております。  私ども科学技術庁といたしましては、周辺の住民の方々が不安を持たれないように、その声に真摯に耳を傾けまして、対応に万全を期すことが重要と認識しております。したがいまして、この土壌の調査につきましても、そういう御要望を県に適切に伝えていきたい、そういうふうに思っております。
  143. 辻一彦

    ○辻(一)委員 努力をいろいろしているということはわかりますが、それでは、三百五十メーター以内の、現在は幼児ですが、これから大きくなるまでかなり時間がたちますが、その間についての追跡調査、健康診断等はきちっと政府は責任を持って応ずるということですね。それをひとつ確認したい。
  144. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 住民の皆様方の健康診断につきましては、私どももそうすることが大事だ、そういうふうに考えております。
  145. 辻一彦

    ○辻(一)委員 それから、さっき岩手大学の方でいろいろ野菜畑等調査をしたということですが、それはそういう調査がなされたのは非常に結構ですが、現実にあの周辺の野菜畑を持っている御家庭の奥さん方がそういう心配をして言ってきている。だから、念のためにもう一度科技庁が出かけて、そして土壌調査をやるということはそんな難しい問題ではない、できるかどうか、いかがですか。
  146. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 近隣の住民の方で野菜畑等をお持ちで、そういう土壌についての御不安がある場合には、お申し出いただければ県の方に取り次いでいきたい、そういうふうに思っております。
  147. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと二、三分時間があるようですから、最後に一点伺いたいのは、風評被害の問題です。  これは、農家の方とも三軒ほど自宅を訪ねて懇談をし、そこのJAといいますか、農協の皆さんともいろいろ意見を聞きましたが、第一次風評に対する補償は去年の十二月末一応行われているということです。しかし、第二次の補償というか、風評というものはどのぐらいの範囲が被害なのか、非常に難しい問題ですね。  しかし、地元の農家のお話を聞くと、地元の名前を出したレッテルを張るとそれは敬遠されてしまう、だからレッテルが使えない。ところが、干し芋の産地ですから、そういうものはそこしか生産がないので、そのレッテルを変えるわけにはいかない。そうすると、価格は物すごく暴落してしまっている、下がってしまっている。そういうことが野菜から干し芋に至るまで随分とあるのですが、そういうものの風評被害をどれぐらい見込んでいるのか、補償要求額と実質の補償額との間にどれぐらいの乖離というか差があるのか、お尋ねしたい。
  148. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 ジェー・シー・オーは、茨城県と東海村の御協力をいただいて、今委員お話ありましたように、昨年末までに補償金の仮払いを実施いたしまして、また、ことしの一月から三月上旬にかけまして、補償金額確定のための窓口を設けて請求者の方々と話し合いを行い、その結果、三月五日現在で、請求件数の約八五・七%に当たります約五千百五十件について合意に達した、そういうふうに聞いております。  いわゆる風評被害につきまして、事故直後から大変私どももこの問題については憂慮いたしまして、いろいろなところに茨城県産の農産物あるいは水産物等々購入していただくように私たちの立場でお願いもし、我々科技庁でも干し芋を買って、私も食べました。こういう現地の風評被害につきましては大変な多くの案件があるわけでありまして、そのうちの大体のものが合意に達して補償金額の支払いが行われた、そういうふうに聞いております。  今委員が御質問の、合意した補償額と要望額の差がどれぐらいあるか、そういうお尋ねでございますけれども、合意した額は約八十六億円と伺っておるわけですが、要望額につきましては、私ども承知をしておりません。
  149. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が参りました。ひとつ科技庁も通産省も安全委員会も、あそこの干し芋をどんと買っておやつのかわりに持って帰って使ってもらう、そういうことが、もう心配ないんだということの具体的なあかしになると思うので、ひとつそういう努力をしながらこの地元の補償要望に極力こたえていただくように期待をしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  150. 田端正広

    田端委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後四時一分開議
  151. 田端正広

    田端委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 私は、きょうは非常に限られた時間でございますので、科学技術基本計画につきましてお伺いしたいと思います。  私は、長年本委員会に在籍させていただいておるわけでございますが、資源のない我が国におきまして、これからの我が国をどうしていくか、科学技術創造立国ということを何十年も前から心に秘めまして努力をいたしてまいりました。また、それを支えるのは人材であります。教育立国にすべきである、この二つを私の信念として、微力ですが、努力をいたしてまいりました。  今般、総理の施政方針演説におきましても、この二本が柱になっておるわけでございます。長官の所信表明におきましても同様で、この二つを柱として取り上げていらっしゃるわけでございます。  これからの二十一世紀を展望いたしましたときに、何といいましても、やはり情報化、そして高齢化、さらにはまた地球的な規模、そういう思いを深くするわけでございます。  この際、改めまして、この科学技術に対する思いといいますか、決意というものを、まず大臣からお伺いしたいと思います。
  153. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員も御指摘のように、過日の小渕総理の施政方針演説におきましても、科学技術創造立国を掲げ、また科学技術の振興を内閣の重要課題として進めていく、そういうお話がございました。日本がこれからも発展をし、また世界に尊敬され、あるいは世界の発展に大きく寄与していく、そういうことを考えますと、科学技術の振興というのは最も大切なものの一つであろうと思っております。  先生を初め委員の皆様方のいろいろな御尽力によりまして、科学技術基本法を初めとして、科学技術振興体制も大変充実をし、整えていただきましたけれども、まだまだ科学技術でやるべきことは多いわけでございまして、今後、また皆様方の御指導をいただきながら、科学技術創造立国実現のために努力をしていきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 この基本計画というのは、平成七年、長年懸案でございました科学技術基本法を議員立法で成立することができまして、翌年、この基本計画が策定されたわけでございます。したがいまして、この第一次五カ年計画というのは平成八年からスタートいたしまして、この平成十二年度、五年間でそれを達成する、十年を見通してこの五年間の計画、こういうことでございます。  これを振り返って検証してまいりますと、平成十一年度までに十三兆八千九百二十五億。今、予算案審議されておりまして、平成十二年度が三兆二千八百三十八億、トータルいたしますと十七兆一千七百六十三億、十七兆を一応クリアすることができました。しかし、中身を見てまいりますと、平成十年、平成十一年度で大幅な補正予算というものが追加されまして、その額は累計で一兆八千九百七億、こういうことになっております。  そこで、何事もやはりゴールということが大事でございまして、最終年度を担当された中曽根長官が、一応の目標十七兆のテープをお切りになるということでございまして、冒頭言われたように、多くの課題をまだ残しておるわけではございますが、一応この金額予算が成立すれば達成されるということにおきまして、第一次計画評価といいますか、簡潔にお伺いしたいと思います。
  155. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 科学技術庁におきましては、関係省庁と連携をいたしまして、一昨年より、この科学技術基本計画の進捗状況調査するためのフォローアップを実施しております。その中間取りまとめによりますと、研究開発現場が著しく活性化されるなど、科学技術全般の水準の向上に貢献していることが高く評価されておるわけでございます。  お話にありましたように、政府研究開発予算も、補正予算を含みますけれども、十七兆二千億円ということで、目標達成することができるわけでございます。そういう形で水準の向上には大きく貢献をしましたけれども施設とか設備の老朽化、狭隘化等もまだまだ指摘されておるところでございまして、今後、そういう点の改善を含めまして、科学技術の振興に努めていかなければならない、そういうふうに思っております。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣もおっしゃったように、研究現場の活性化、確かに、そういういろいろな面があろうかと思います。また、おっしゃったように、研究施設の狭隘化等、改善しなきゃならない問題が多数残っております。  当初の、こういう基本計画が作成されたその基盤になったのは何かといいますと、平成四年の科学技術政策大綱、これが平成四年に策定されております。そのときは、少なくとも、対GDP比におきまして、欧米先進国並みに早期に引き上げるということがございました。早ければ、その倍増を早期に目標としてやっていくと。  そのとき、平成年度科学技術トータルの予算というものが二兆一千三百四十七億なんですね。これは、倍増ということにいたしますと、四兆二千六百九十四億、こうなります。平成十二年度政府予算というものが三兆二千八百三十八億でございますから、約一兆弱足らないわけですね。ですから、倍増というその基本になった考え方からいきますとまだ弱い、こういうことでございます。  さらに、先般の分科会でも私申し上げましたが、特に大学等の研究施設設備の老朽化、狭隘化というもの、これはもう大変なものでございまして、大学院生等も、廊下に積み上げた研究設備等の中をかいくぐってやっておるというようなところが随所にあるわけでございます。そういう点、十分おわかりだと思いますが、そういうことがございますし、あるいは知的基盤整備等まだまだ充実をしなきゃならない問題は多数ございます。  その点につきまして、大臣も大学の教育施設等の充実をおっしゃっておるわけでございますが、そのほか特に強く意識されている今後推進しなきゃならない項目としてはどういうことを考えておられますか。当然、それは基本計画に盛り込まれたことになるんじゃないかと思いますが。
  157. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 欧米先進国に比べまして、まだまだ研究開発に対する予算も十分とは言えないと私も思います。  今後の課題といたしましては、いろいろありますけれども、やはり大きな目標というものをきちっと明確にする、目標を設定して進めるということが大事だと思いますが、その中ではやはり基礎研究を推進していくということが大きな柱になろうか、そういうふうに思っております。  それからもう一つは、科学技術研究のためのよりよい環境づくりが必要ではないか、そういうふうに思っております。研究者の方々が日本に来て研究をしたいと言われるような環境づくり、また、先ほど申し上げました研究環境の中では施設設備等の改善もありますけれども、そういうような環境づくりが大事だと思っておりますし、それから、評価システムも改善をしていかなければならない。さらには、国立試験研究機関等、大きく今行政改革の大きな流れの中で変わっていきつつあるわけでありますけれども科学技術行政体制につきましても、今後弾力的に、機動的に研究ができるような体制づくりをしていくことが必要であろう、そういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、最初に申し上げましたけれども、大きな国家的な目標というものをきちっと据えて取り組むことだ、そういうふうに思っております。
  158. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは一番新しい白書のデータで見てまいりますと、主要国におきます政府負担研究費のGDP比、これを見てまいりますと、日本が〇・六三、フランスが〇・九七、ドイツが〇・八三、アメリカが〇・八〇、そうなっております。それから主要国におきます研究費の政府負担割合、これを見てまいりますと、日本が二〇・四、イギリスが三〇・八、アメリカが三一・〇、ドイツが三六・二、フランスが四三・一。いずれにいたしましても、主要国に比べてみましても数字的にもやはりこういう差があるわけでございます。  今大臣、幾つかの項目もずっとおっしゃっておるわけでございますが、私はここで一つ特に申し上げておきたいと思いますが、競争的資金の規模、これは先進国に比べまして著しく低いんですね。政府の研究開発投資というのを見てまいりますと、アメリカが三三・八、イギリスが四〇・一、日本が八・三なんですね。こういうことも十分また念頭に置いていただきまして、今後そういう中身の点、ともすれば器の方に目が行くわけでございますけれども、そういう点、よろしく今後力を入れていただきたい、このように思います。  その点ひとつ答弁お願いしたいと思います。
  159. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員がいろいろ数字的な御指摘がありました。御説明いただきましたとおり、政府負担の研究費のGDP比にいたしましても、あるいは政府負担割合にいたしましても、欧米諸国に比べますとまだ十分ではない、そういうふうに思います。  そういう意味で今後、これらにつきましては欧米先進諸国と同等となるような努力を私どももしていかなければならない、そういうふうに思っているところでございます。
  160. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、二十一世紀に入り第二次計画ということでございますが、御承知のように、明年から省庁再編がございまして総合科学技術会議という形になるわけでございます。しかし、この十二年度で五年間の計画が完結するわけでございまして、そうなってまいりますと明年度からスタート、特に夏場においては各省の概算要求も始まるわけでございますし、そうしますと今が一番大事になってくるんですね。総合科学技術会議というのは明年なんですから、スタートは。  ですから、その辺、第二次の、またその以降につきまして、計画策定が今どうなっているのか、現在の検討状況、それから今後のスケジュール、そういうことで、計画策定に当たりましての基本的なスタンスというものにつきましてお伺いしたいと思います。
  161. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど評価について申し上げましたけれども科学技術全般の水準の向上に貢献しているという点は高く評価されますが、施設老朽化とか狭隘化が問題とされているわけであります。こういう指摘を踏まえまして、新たな政策展開を見据えた検討を行うために、昨年の八月に科学技術会議政策委員会に四つのワーキンググループを設けました。科学技術目標、知的基盤、研究システム、それから産業技術の四つのワーキンググループを設置し検討を深めてきたところでございます。  その結果、これからの科学技術の振興は、我が国が科学技術分野で国際的に重要な地位を占めることができるような明確な目標を立てた上で、その目標達成に向けて、限られた資源を重点的にまた効率的に活用して、戦略的に研究開発を推進し、質の高い研究成果を生み出すとともに、それらの成果を社会において積極的に活用していくことが必要である、そういうふうに認識をしているところでございます。  今後、これらのことを十分踏まえまして次期基本計画検討を行い、引き続いて科学技術創造立国の実現に向けて科学技術の振興に努めてまいりたい、そういうふうに思っております。
  162. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在の科学技術会議、これは総理が主宰されるわけでございますけれども、事務局という立場、一番かなめの立場は科学技術庁長官でございますし、そういう点におきまして、明年から第二次五カ年計画というものはスタートするわけでございますので、その点、第一次計画をしっかりと踏まえて、揺るぎのないものにやっていただきたい、このように思うわけでございます。  そこで、私は、第一次計画というものを振り返りましたときに、この十七兆という数字が盛り込まれたということ、これは非常に大きな意義があったと思うんです。大蔵当局も、数字を入れることについてはいろいろ御意見があったということもお聞きしておるわけでございますが、これは非常に大きかったと思うんです。  したがって、第二次計画以降におきましても、思い切った、これは財政当局、政府一体となって、こういう数字を打ち込むということは非常に大きな推進力になると私は思うんです。この点につきましてどういうようにお考えなのか、率直な御意見を賜りたいと思います。
  163. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 委員指摘にございましたように、現在の科学技術基本計画におきまして十七兆円という目標を掲げたということは大変に意義のあったことと私も思っております。  次期基本計画の具体的な記述の内容につきましては、諸般の状況を踏まえながら今後検討していきたい、そういうふうに考えております。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは、もう時間がありませんので、きょうは与えられた時間が非常に少のうございましたのでこれで終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、一番大事な柱になるのは、基本計画の新たな策定であり、また裏付けであり、その強力な政府一体となっての推進であると思います。その一番の中核にあって頑張っていかれるのが中曽根大臣でございますので、どうぞひとつその点一層また御努力をいただきますことを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上でございます。
  165. 田端正広

  166. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣の所信表明について質問させていただきます。  さきの施政方針演説で総理は、これからの日本のあるべき姿として、科学技術創造立国を目標一つに掲げられました。また、長官も、「科学技術立国の実現への寄与をより確かなものにしてまいる所存」だという所信の表明でありました。  この件について要望なんですが、実は、倫理面においては、人知が進むほど悪知恵も進んでいるのが歴史の現実でありますから、この面をしっかり一緒に対応しないと、学問ばかりではなく、人間社会の健全な発展、また自然科学の発展もないと思いますから、文部大臣も兼ねている長官ですから、この点を一緒に配慮していただけるようにまず要望しておきます。  それから、所信表明で深海地球ドリリング計画も発表されました。このことにつきましても私は今まで再三質問もしておきましたが、このドリリング船の釜石港への寄港地化を何か考えてくれという要望をしておきましたので、現長官にもこのことをひとつ要望したいと思います。  さらに、地震に関する基盤的調査観測施設の整備、このことについては、先々週、長官や政務次官にも要望書を出しておきましたが、ミューオン素粒子による岩手山への観測基地の設置をお願いしているわけでございますので、まずこのことも強くお願い申しておきたい。  要望を以上申し上げまして、質問に入らさせていただきます。  まず第一番目に、宇宙開発原子力開発の体制面についてですが、科学技術創造立国と先ほど言いましたが、こういう言葉が言われてから久しい時間もたっていると私は思っております。技術あるいは国際競争力で高い評価を受けていた我が国も、ジェー・シー・オーの臨界事故やロケットの打ち上げ失敗、トンネル内のコンクリート落下の続発、医療ミス等、内外の信頼を失墜させる事故が続発しています。  特にロケットについては、続けて失敗しており、ハイテク技術の面での日本の威信を最も損なったものであると思います。エンジンを、大海、しかも三千メートルの水底から引き揚げたということ、こういう技術面は本当にこれは大したものだなというふうに驚かされる面もあるんですが、このように原因究明に懸命に取り組んでいるので、間もなくその原因はわかるかもしれませんが、しかし大事なのはその先の対策だと私は考えております。  打ち上げ失敗については、このこともこの前質問しておりましたが、それぞれ原因は異なるかもしれませんが、何度も続くということは、チェック、品質管理あるいは責任体制に問題があるのではないかと私は考えております。  機器や部品の発注についても、現在は、宇宙開発事業団からはそれぞれ異なるメーカーに発注して組み立てているようです。これでは、品質管理が複雑になるし、失敗の原因がどこにあったかもあいまいになる可能性があるわけです。どこか一社にまとめて発注すべきという方法もあるわけですから、いずれにせよ、故障のあった箇所だけでなく、宇宙開発事業団の体制とか発注のあり方など、もう少し構造的問題にまでメスを入れて検討すべきだと考えておりますので、政府の見解をまず聞きたいと思います。
  167. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 昨年のH2ロケット八号機に続きまして、ことしの二月、M5ロケットの打ち上げが失敗をいたしました。国民の皆様方の期待にこたえることができませんでしたし、また、大きく期待を裏切る結果になりまして、大変残念に思うとともに、申しわけなくも思っております。  まずは原因究明ということでございまして、原因究明を徹底的に行うべく全力を挙げて取り組んでいるところでございますけれども、これらの失敗の原因につきましては、技術的な側面だけでなく、その背景にまで踏み込んで究明をすべきと考えておるところでございます。  H2ロケットにつきましては、事故直後から宇宙開発委員会技術評価部会におきまして原因究明が行われておりますけれども、これに加えまして、昨年末から同委員会の特別会合が開催され、宇宙開発体制の立て直しに向けた検討が精力的に行われているところでございます。  この特別会合では、御指摘宇宙開発事業団の組織とか体制、それから宇宙開発事業団とメーカーとの役割分担、さらには産業界の製造現場における品質保証、検査等のあり方などにも踏み込んで、信頼性確保のための対応策が検討されているところでございます。  これらの検討結果を十分に踏まえ、ロケット技術の信頼性を高めるとともに、我が国の宇宙開発体制を立て直し、そして、国民の期待にこたえられる宇宙開発が推進できるよう最善を尽くしていきたいと思っておるところでございます。
  168. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 本来は、建築関係の事業ですと、事業主が一切また再事業をさせられる。そういうこともあるんですから、独禁法だ何だかんだ、そんなことを考慮されるかもしれませんが、失敗したらまたその発注した会社にもとからやり直させて成功させる。あるいは、日本の会社ばかりでなくたって、外国もあるんですから、そういうような気持ちで、国内産業ばかりいわゆる育てるというようなことよりも、まず日本でのロケットのそういう対策を何か体制的に、構造的に発注の仕方から見直していただかなければ、不安でどうもしようがないわけですので、ぜひこの点をこれから考慮していっていただきたい。  それで、このロケットの打ち上げ失敗を受けて、科学技術庁及び文部省では、宇宙開発事業団と宇宙科学研究所を含めた協議会を設立したのでありますが、この点については評価もするんですが、しかし問題は、今後どんな検討を進めていくのかが大事であると思います。ですから、もう少しこの点について具体的方針を明らかにしていただきたいと思います。
  169. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 先ほど申し上げました最近のロケットの事故をめぐる状況を踏まえつつ、宇宙科学技術の確実また効率的な実施を図る観点から、宇宙開発事業団と宇宙科学研究所にさらに科学技術庁の航空宇宙技術研究所も加えまして、さらに科学技術庁それから文部省の両省庁も参加をいたしました関係五者から成る協議会を設け、先月末に最初の会合を開いたところでございます。  この協議会では、宇宙関係三機関の事業につきまして、最も効率的かつ効果的な推進の方策を検討することとしております。具体的には、ロケットや人工衛星の打ち上げをより信頼性の高いものとするための連携協力方策、それから、各機関間の今後の研究開発の具体的な協力課題の抽出、さらに、各機関産業界との協力関係、役割分担などについて検討していく予定でございます。  この協議会における検討結果も、これら宇宙開発関係機関の今後の個々のプログラムや協力事業、さらには実施体制の立て直しに反映をして、国民皆さんの期待にこたえられる信頼性や効率性の高い宇宙開発が推進できるよう最善の努力をしていきたいと思っております。
  170. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 平成十二年度予算では、既に文部科学省の予算となっていることが大きな特徴でありまして、両機関とも同じ文部科学省の傘下に入るのでありますから、両者の連携は自然によくならなければならないと思います。そこで、省庁再編をよい契機としてとらえて、宇宙開発体制の立て直しを図ってもらいたいことを強く要望し、次の質問に移ります。  省庁再編で心配なのは原子力行政。平成十二年一月からは科学技術庁原子力安全規制の部局が文部科学省、経済産業省と内閣府に分割されます。そこで、高レベル廃棄物の処理処分についても、これまでは科学技術庁が前面に出ておりましたが、来年からは産業省に業務が移ることであります。この放射性廃棄物の最終処分の法案も通商産業省の方が中心になってまとめていると聞いているわけなんですが、実は、高レベル放射性廃棄物につきましては、私は、前有馬長官、前々谷垣禎一長官にも再三質問してまいりまして、日本原子力政策は便所のない家をつくっているのだから、この便所づくりをどうするのだということで、谷垣大臣からは、二〇〇〇年までにはこの処分法案をつくります、そういう返答をいただいておりました。  そういう点では、原子力発電における廃棄物問題の重要案件である廃棄物処分のための枠組みづくりに大きく今回前進があったと私は評価はいたします。しかしながら、このことも質問を続けてきたわけなんですが、実際に処分場を引き受けるところが出てくるかどうかがポイントであると思います。ですから、処理場はこれからであります。  大事なのは、国や電力会社が処分場をどこかの自治体に押しつけるのではなく、自治体の方が進んで処分場を引き受けたいと言ってくるような枠組みをつくることであり、つくってほしいという要望もしてまいりました。最終処分場は、通産省の方では四兆円からの事業費その他が見込まれるような話を聞きました。安全確保をきちんとして、情報もきちんと提供していくことによって、自治体の方から処分場を引き受けたいというような声あるいは陳情が出てくるようでなければ、日本原子力政策の推進も先が暗いのではないかと思いますので、このような安全確保、情報公開あるいは原子力と地域との共存といった点について、原子力委員長でもある科学技術長官に、今後の原子力行政の進め方について見解を問いたいと思います。
  171. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 高レベル放射性廃棄物処分の問題等、御指摘をいただきました。原子力の長期計画は、これは科学技術庁長官委員長であります原子力委員会で策定します。また、その研究開発についても科学技術庁の所掌でございます。そういう意味で、今回の高レベル廃棄物関係の法案がなぜ通産関係、商工で審議されるのだという最初の御指摘をいただきましたけれども、今回は、その実施主体と予算についてのことでございまして、電気事業者の責務等について議論をするということで商工委員会になりましたけれども、我々も大きな関心を持っているところでございます。  また、今後の原子力行政、特に放射性廃棄物関連の施設については、立地地域の皆さんの、また国民の理解が必要ではないかという御質問でございますけれども、まず、高レベル処分につきましては、今後、原子力委員会で示された方針に基づいて研究開発及び安全規制に関する取り組みが進められておりますけれども、その全体像を明らかにすることによって、処分の実施主体を設立する等、処分事業の具体化に向けて着実な取り組みを行い、国民皆さんの理解を得ていきたい、このように考えているところでございます。  また、原子力についての安全確保、情報公開、地域との共存という御指摘をいただきました。現場において安全運転等の実績を積み上げ、最善の努力を図り、立地地域との共存を図る取り組みを強化し、また、国民との対話の観点から、原子力委員会専門部会等で報告書を取りまとめる際の国民からの意見聴取による政策決定過程の透明化やシンポジウム、フォーラム、説明会の開催等、積極的な情報の公開に取り組んでまいりたい、このように決意をしているところでございます。
  172. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 本当に原子力行政は、今国民の中の一般空気としては非常に危険なものだという先入観がまず入っているわけですし、また、それを裏づけるような事故が多発しているわけなんですから、これからは安全確保、情報公開、それから地域との共存といった面を強く前面に押し出した対応をしていっていただきたいと思う次第でございます。  次に、平成十二年度は、科学技術庁だけでなく、政府全体として一つの節目にもなるのじゃないかと私は思っております。それは、科学技術基本法及び科学技術基本計画に沿って各種施策を展開してきました。当初の計画の対象であった五年を過ぎ、新たな計画が必要になる現時点に立っているからであります。  それで、現在の科学技術基本計画の果たした役割をどうとらえ、今後五年間どう取り組んでいくのか、このことについての所信を、私の今までのいろいろな質問も加えてお聞きしたいと思います。
  173. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 科学技術庁におきましては、関係省庁と連携をいたし、一昨年末から、科学技術基本計画の進捗状況調査するためのフォローアップを実施しているところでございます。  その中間取りまとめによりますと、研究開発現場は著しく活性化をしてきている、そして、科学技術全般の水準の向上に大きく貢献していることが評価されておるわけでございます。また同時に、一層の取り組みを期待する声も多く寄せられているわけでございます。  こういう御指摘また評価を踏まえまして、新たな政策展開を見据えた検討を行うために、昨年の八月に科学技術会議政策委員会に、科学技術目標、知的基盤、研究システム産業技術、この四つのワーキンググループを設置し、検討を進めてきたところでございます。  その結果、これからの科学技術の振興は、我が国が科学技術分野で国際的に重要な地位を占めることができるような明確な目標を立てた上で、その目標達成に向けて、限られた資源を重点的にまた効率的に活用し、そして戦略的に研究開発を推進し、質の高い研究成果を生み出すとともに、それらの成果を社会において積極的に活用していくことが重要である、そういうふうに認識をしております。  こういうことを十分踏まえながら、次期基本計画検討を行いまして、引き続いて科学技術創造立国の実現に向けて科学技術の振興に努めてまいりたい、そういうふうに思っております。
  174. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が来ましたので、質問を残して、これで終わります。どうもありがとうございました。
  175. 田端正広

    田端委員長 吉井英勝君。
  176. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私、きょうは最初に宇宙開発の問題からお聞きをしていきたいというふうに思います。せんだってH2ロケット八号機の打ち上げ失敗があり、その原因はこれから解明される部分、もちろんたくさんあるわけですが、問題の液体水素燃料をエンジンに送るターボポンプ入り口の羽根、インデューサーの部分の金属疲労による破壊という問題について伺っていきたいと思うんです。  液体酸素ターボポンプについては、航空宇宙技術研究所で、キャビテーションと言われる低圧部に発生する液の沸騰現象に伴う軸振動、その抑制機構を実験と理論考察を行って、こちらの方から報告論文も出されております。実際、四万二千回転ぐらいという高速回転ですから、回転の中心と支点の位置のわずかなずれが生じただけでも非常に大きな力が働いて、回転体の持つ固有振動数との関係で破壊に至ったりとか、そういう問題があるわけですが、この軸振動というのはインデューサーに発生する旋回キャビテーションによるものという報告などもなされております。  そこで、液体酸素と、もう一つの方の、今度の問題は液体水素の方になりますが、ここにはいろいろな違いもありますから、問題になっている液体水素のターボポンプの方については、これは液体酸素のターボポンプと同じ実験を行っておられるのかどうか、まずこのところから伺っていきたいと思います。
  177. 池田要

    池田政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおりに、液体酸素のターボポンプにつきましては、航空宇宙技術研究所が平成三年以前から研究をして知見を有しておったわけでございますけれども、今回、H2八号機の事故につきまして注目をしております液体水素ターボポンプにつきましては、これは宇宙開発事業団が、ちょうどH2ロケットの開発段階では最終段階と申しますか、初号機は平成六年に打ち上げているわけでございますけれども平成五年に、最終的に使用するエンジンと同じタイプの、認定エンジンと言っておりますけれども、これの燃焼試験を行いましたときに、減圧した制御といったような場合に、先生指摘のインデューサー、羽根の部分でございますけれども、その部分にキャビテーションによる軸振動が起こるといったことを確認したというふうに聞いております。
  178. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、キャビテーションが起こる場合に、液体酸素の方のエンジンの場合、これは液体酸素で行い、そして液体水素の方の燃料については液体水素でもってキャビテーションについての実験というのを行って確認がされているのですか。
  179. 五代富文

    ○五代参考人 液体酸素のキャビテーション、それから液体水素ポンプのキャビテーション、これはそれぞれ起こります。  ただ、液体水素につきましては、液体水素の比重が非常に小さい、水の十六分の一というものですから、世界全般にわたって水素の方のキャビテーションは酸素に比べて問題が少ない、こういう認識でございました。
  180. 吉井英勝

    ○吉井委員 ということは、十六分の一ということで、酸素に比べて影響は小さいということで、やっていないということですね。
  181. 五代富文

    ○五代参考人 液体水素につきましてもインデューサーの試験というのは行っております。  どのように順番しておるかといいますと、全体のターボポンプの中に、一番最初の入り口のところにインデューサーがございます。最初にインデューサーだけの回転試験、これを行いました。それから、インデューサーと、その後ろに本当の羽根車があるわけです、これを組み合わせたいわゆる液体水素ターボポンプ、それの試験も行っております。また、その後、当然のことながら、そのターボポンプとエンジン全部と組み合わせた試験も多数行っております。
  182. 吉井英勝

    ○吉井委員 どういうふうにやったかはよくわかっているのです。  問題は、液体水素を使ってその実験をされたのかということを伺っているのです。
  183. 五代富文

    ○五代参考人 液体水素を使った試験を行っております。
  184. 吉井英勝

    ○吉井委員 ただ、伺っているところでは、それは肝心の液体水素になるものについては、模擬液体として液体窒素を使っていたんじゃありませんか。水素ガスの方は別なところで使っているわけですね。タービン駆動は水素ガスで行う、だけれども、実際には試験流体の方は模擬液体として液体窒素を使っていたということじゃありませんか。
  185. 五代富文

    ○五代参考人 液体水素を使う前に、特に研究的には、まず液体窒素を使ってシミュレーション、実験を行います。
  186. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、された実験というのが、これは最初の液体酸素の方も、実は模擬液体としては液体窒素を使っているんですね。ただ、酸素と窒素の場合ですと三十二と二十八ですから比較的に近いわけですが、水素ですと二ですから十六分の一とか十四分の一で、その模擬液体に窒素を使って酸素のデータをとる方は、これはある程度比較的に挙動も近いのかなということは、私は必ずしもわからぬことはないんです。  しかし、それを水素の場合に液体窒素でもって模擬をしてしまうと、十四分の一ということですから、そして水素と酸素、窒素とはさまざまな物性値の違いとかそういう問題があるのに、液体窒素でもって実験をやってデータをとったということだけであれば、結局、液体酸素用のエンジンも液体水素用のエンジンも模擬液体に同じものを使っておれば、それは余り変わらないというデータが出てきてもおかしくない、そういうことになるんじゃないですか。
  187. 五代富文

    ○五代参考人 お答えいたします。  酸素と水素、いろいろな物性、比重等が違います。こういうときに、データの整理といたしましては、無次元化をして、いろいろなものが共通に、普遍的なデータ整理をいたします。ですから、液体窒素の実験をそのまま液体水素に適用するわけではございません。
  188. 吉井英勝

    ○吉井委員 あなたのおっしゃる無次元化という話は、例えばもう少し流速の遅いところでやったら、例えばプラントル数を使うとか、その話は私はわからぬことはないんです。しかし、無次元化は無次元化であって、実際に水素でもってやったときの、物性値の違いだけじゃなしに、さまざまな影響によって、酸素の場合あるいは酸素に近い液体窒素でやっている場合と実は違う問題が出るかもしれないんですね。それを実験的には結局きわめていなかったということが今のお答えでわかりました。そして、今度の事故というのは、まさにその液体水素燃料エンジンのところでの問題なんですね。  ですから、無次元化したといっても何といっても、要するに、とったデータは液体窒素のデータであった。だから、本当の意味での液体水素燃料をエンジンに送るところのターボポンプ入り口のデータをとるということについては、私は随分大きな問題を残しておったんじゃないか。  ここで言いたいのは、そういうことを含めて、液体窒素の場合はどうか、液体酸素の場合はどうか、液体水素の場合はどうか、そういうきちっとした基礎的な研究も行って、それぞれに応じた材料の問題とか物性値の違いによるさまざまな問題というものを解明してこそ、新しい進歩といいますか発展というものがあるわけです。そういう点では、せっかく酸素の段階で、最初に液体窒素にしろ模擬液体を使いながら実験をされた、しかし、これは化学的にさらに活性であるとかいろいろな問題があったのか、どういう問題があったか知りませんが、いずれにしても、そういう分野で本来きちんと押さえておくべきところを必ずしも押さえ切ることができていなかった。  そういう点では、基礎科学といいますか基礎研究という分野で本当はもっと着実な積み上げというものを、これは何もこの分野だけじゃありませんが、あの巨大システムなんですから、その一つ一つについてきちんと積み上げていくというこの取り組みが今回の問題からやはり出てくるんじゃないかと私は思うんですが、これは政府参考人の方から聞いておきたいと思います。
  189. 池田要

    池田政府参考人 先生今御指摘の、液体酸素ターボポンプのキャビテーションの問題と、今回、水素のターボポンプについて、同様な事例についてどう見きわめておったのかといった点についての御指摘でございますけれども、現在、このH2八号機の破損の原因につきましてはまだ調査中でございます。  これは、インデューサーの羽根が振動による疲労によって壊れたといったところまでは、引き揚げました部品の専門家による解析によって見きわめているわけでございますけれども、それが先生今御指摘のようなキャビテーションというような現象による振動によるものか、あるいは、このターボポンプ自身がエンジンの一部に据えつけられておるわけでございますけれども、これまで六機までは全くトラブルがなかったものがなぜかといったことにつきましては、異物がぶつかったことについて、今その可能性についても調査をされてございます。  そういう意味では、先生指摘のキャビテーションがこの羽根の振動による疲労破壊といったことにつながるということまではまだ見きわめがついていない状況にございますから、これをもってエンジンの故障だといったことについて断定する状況にないということをまず御理解いただきたいと思います。  それからもう一つ、この液体酸素のターボポンプにつきましては、航空宇宙技術研究所が先に研究をし知見を蓄えた上で、現在は宇宙開発事業団とも共同研究等を進めているわけでございますけれども、今回のこの事故の原因究明に当たりましては、先生指摘のような液体酸素のターボポンプから液体水素まで、こういうターボポンプのキャビテーションといったような事例まで、当時研究をし論文まで書いているような研究者を動員して今調査に当たっておりますから、そうした意味では、そういう知見がフルに活用された上で、御指摘の点についての答えも出される。その原因究明を私どもは今急いでいるところでございます。
  190. 吉井英勝

    ○吉井委員 原因究明は、私も、これからの問題が随分残っていると思うんです。  ただ、少なくとも、キャビテーションが原因と私も決めつけて言っているわけじゃないんですが、しかし、液体酸素用のものについてのデータは酸素に割と近いもので模擬して仮にやったとしても、液体水素用のエンジンについては、模擬燃料と比べても十四分の一。その他、物性値さまざま違う中で、やはりきちんきちんとデータを積み上げて、基礎的なところから研究を積み上げてやっていくというその姿勢が、私は今問われている。その点では、結局、水素のエンジンでありながら、実は水素を使っての実験はやっていなかったということですから、私は、これは随分大きく考え直さなきゃいけないところだと思います。  次に、文部省宇宙科学研究所のM5ロケットの打ち上げ失敗についても伺っておきたいんです。  一段目モーターのノズルのスロートからグラファイトが破損して、その破片が吹き飛ばされて、内圧が急減して推力が低下して、さらに姿勢制御も不能になって失敗した、こういう報告がなされておりますが、このノズルのグラファイトの破損は、六七年のアメリカ、また九五年のM5の三段目ロケットの地上燃焼試験の中でも亀裂発生など、内外に経験があるトラブルでもあったわけですから、なぜそれが起こったのか。  それは、ああいうノズルのスロートのところの形などからすると、ジェット流、衝撃波を出したときには、内側の方が随分減圧状態になる。外側は高圧になったりとか、そういうかなり大きな圧力差があったり、それから燃焼の仕方によっては温度差が随分ついてきたりとか、さまざまな問題があってのことですから、アメリカ日本の内外の事故、トラブル等を踏まえてどういう解明をしてこられたのか。これは文部省の方から伺っておきたいと思います。
  191. 工藤智規

    工藤政府参考人 今回の私どもの宇宙科学研究所におきますM5ロケットの打ち上げ失敗につきまして、いろいろ御心配をおかけして、まことに申しわけございません。  今し方、先生からお話ありましたように、打ち上げ失敗後、直ちに原因解明に努めまして、グラファイトの剥離、剥落で姿勢制御が乱れ、予定の軌道に投入できなかったということまでは推定されているのでございますけれども、どうしてそのグラファイトが剥落したのかということについては、これからの調査を待っているところでございます。  ロケットの発射場におきまして採取されました破片のさらに詳細な調査、それからメーカー等の製造工程における追加的な調査、設計精度の分析等、このグラファイトの剥落につきましてさらに徹底的な調査を行うべく目下検討に当たっているところでございます。
  192. 吉井英勝

    ○吉井委員 どうして剥脱したかとかのこれからの調査、これは当たり前の話なんです。  私が今お聞きしていますのは、アメリカでの経験とか、日本でのグラファイトの剥離した問題とか、こういう経験が既にあったわけですから、それを徹底して、どういうメカニズムでこういうことになったのか、その研究はどんなふうに進めてこられたのですかということを伺っているのです。
  193. 工藤智規

    工藤政府参考人 御案内のとおり、宇宙科学研究所のロケットは、ペンシルロケット以来、全段固体燃料型で、こつこつとここまで研究者の方々が、内外のいろいろな研究実績を踏まえつつ、蓄積してまいったところでございまして、しかも今回搭載いたしましたM5ロケットのグラファイトにつきましても、これまで二度成功していることもありまして、それに安心したわけじゃございませんけれども、昨年のH2ロケットの失敗を受けて、さらに総点検をしたのでございますが、既に加工されて取りつけられておりましたものですから、さらにその成分精度まで検査に及ばなかったということがございます。  ただ、今先生指摘のようなことも含めまして、研究所内外の専門家の方々で調査に当たっているところでございますので、先生の御示唆も含めまして、さらに私どもも、研究所の関係者に注意喚起をしまして、徹底的な原因究明に当たってまいりたいと思います。
  194. 吉井英勝

    ○吉井委員 二度成功したからというお話もあったのですが、しかし九五年のM5の三段目のときの剥離した問題とか、そういうときになぜ徹底してやろうとしなかったのか。  私はここで大臣に伺っておきたいのですが、やはり一つは、どうも基礎的な研究とか基礎的な技術の積み上げというものが最近軽視されてしまっているのじゃないか。こういう点では、文字どおり一つプロジェクトを決めて、そのプロジェクトの中心的なところだけじゃなしに、周辺技術とか、あるいはそれのさらにもっと深い学問的な意味も含めて、基礎研究とか基礎になる部分に本来もっと力を入れなければいけないのじゃないか。  どうも最近は、じきに商売になるようなところにばかりに頭が、政府の方も大分旗を振って、行きがちなんですが、やはり基礎の部分で本当にしっかり根を張った学問体系を築くということにしないと、私は長期的に見てじり貧になると思うんですね。この点では、基礎研究の問題について、ここで大臣の方に伺っておきたいと思います。
  195. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 私も先ほどから各委員の御質問にもお答えしておりますが、基礎研究は非常に大切だ、そういうふうに思っております。  一般的に基礎研究は、いわゆる応用研究に比べまして、直ちに成果が実用化に結びつくものではありませんけれども、そこから生み出されますいろいろな研究成果というものは、既存の技術体系に革新的な変化を与えるとともに、全く新しい技術体系の出現をももたらして、社会に大きな波及効果を与える大きな可能性を秘めたものである、そういうふうに認識しております。  そういう意味で、研究体制の中でも、今後も基礎研究の充実に努めていきたい、そういうふうに思っております。
  196. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、日本航空宇宙工業会の調査を少し見てみますと、宇宙産業の従業員数は、九五年の一万四百人から今九八年のデータで八千三百四十六人へと人員の減が大体一五%ぐらい。そのうち、ロケット分野で二千三百三十人が千三百七人へと四四%ぐらいの減員ですね。ですから、これは一つには、最近特にロケット分野事故失敗が相次いでいますが、リストラによる物づくり技術の衰退とか、あるいは研究意欲や技術の研さんに対する意欲が阻害されていく、そういう問題を非常に憂えているのです。  そういう状況というものは、個々の現象的な問題というよりも、物づくりの分野、製造業の分野、こういう産業分野で簡単にリストラが進んでいってしまって、コスト中心、もちろんむだな金を使うのはだめなんですが、しかし必要な安全対策とか、必要な基礎研究とか、そういうことにもかかわる人たちも次々とリストラされてしまう。そういうことでは、最近のロケット失敗の相次ぐ状況の中で、やはりそこの物づくりを支えるところがおろそかになっては非常に大変なことだなと私は思っているのですが、そこをどう打開していこうというふうに大臣としてはお考えか、このことを伺いたいと思います。
  197. 池田要

    池田政府参考人 先ほど先生から産業界におきますリストラが起こっているのではないかといったことについて御指摘がございました。  確かに、御指摘のように、この航空宇宙工業会におきますアンケート調査によりますと、九五年ぐらいまでの九〇年代におきまして、宇宙産業に携わる人については若干の御指摘のような現象があるのは事実でございますが、ただ、私ども、九五年以前につきましてはこの集計の仕方も違っているということも、微細構造につきましては若干気にしておりまして、そういう意味では、この中身については注意深く見る必要があると思っております。  私ども、メーカーから、この状況について、私ども承知しております限りでは、宇宙技術につきましては高い信頼性が求められる、そういったことから、技術、製造ともに、人員の質につきましては一定のレベルを維持してきているといったことを聞いているところでございます。  それに、これが今回の事故との関連について影響しているのではないかといった問題意識を持っていらっしゃるわけでございますけれども、今回、この原因究明については、まだ宇宙開発委員会技術評価部会で議論をしているところでございます。また、この会合におきましても、宇宙開発事業団の組織体制だけじゃなくて、メーカーの製造現場が一体どうなっているかといったことにつきましても踏み込んで今調査をしているところでございまして、今御指摘のような点につきましては、その見きわめを待って、私ども、よりはっきりしたお答えができるのではないか、これを急ぎたいと思っている状況にあることを御理解いただきたいと思っております。
  198. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、一例を挙げましたが、宇宙産業だけ狭く見ているのじゃないのです。実は、この間、製造業全体で見ても、九一年の一千百三十五万人の従業員が九七年には九百九十三万人へと、六年間で百四十一万人、製造業、要するに物づくりの分野の人が消えていっているわけですよ。  これは、特に日本のロケット、人工衛星など宇宙産業も下支えしてまいりました、例えば東京で言えば大田区ですね。あそこで非常にすぐれた旋盤加工やボール盤、そして溶接についても、ろうづけであれ、ガス溶接であれ、非常にすぐれた物づくりの腕を持っていた人たちが、そのネットワークが崩れていく。これは単に製造業の雇用者数が減ったというだけの問題じゃなしに、同時に中小企業も衰退し、物づくりの基盤が失われていっている。  ですから私は、大臣にここで本当に考えていただかなきゃいかぬと思っていますのは、ただロケットだ何だというそこだけに目を向けておったんじゃ、もちろんそこは大事なんです、基礎研究等の積み上げは必要なんです。ただ同時に、日本の今日の、八五年のプラザ合意以来円高政策が進められてきて、そしてその後、特に九五年の円高など、本当に惨たんたる時代が今生まれていますよ。この円高の中で生まれてきた産業空洞化現象、こういうものについて今度政治家の立場から、政治はそれに対してどうして日本の物づくりを守っていくのか、そういうふうな産業政策を、産業だから通産省ということじゃなしに、どうやっていくのかという、ここのところが私は、大臣にもやはり考えていただかなきゃならぬと思うのですが、これは大臣に伺いたいと思います。
  199. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 企業のリストラ等によりまして、現場が合理化をされたり人が解雇されたりして物づくりの力が弱体化といいますか、低下するということがあれば、これは大変なことだ、そういうふうに思っております。  そういうようなことは、今委員もおっしゃいましたように、宇宙開発関係に限らず全般に言えることでありまして、そういうことから、総理の懇談会のものづくり懇談会もございますし、また、私、科学技術庁の大臣といたしまして、過日、ロケットの失敗や東海村の事故等の教訓を踏まえまして、各界の方にお集まりいただいて、科学技術のいろいろな問題、特に製造現場にまで踏み込んでの科学技術の問題等について、今いろいろ議論をしていただいているところでもあります。あるいは、技能、技術を大切にするということから考えまして、職人大学の設立とか、そういうこともあるわけでございます。  まさに私は、日本産業界、もう一度復興といいますか、発展を目指すためには、基盤技術、物づくり技術、技能、技術を大いに振興していくということが大切であろう、そういうふうに思っております。
  200. 吉井英勝

    ○吉井委員 ものづくり懇談会も大事なんですけれども、幾つ懇談会つくってみたところでうまくいくものじゃありません、はっきり言って。  それで、今日、本当に産業空洞化が進んでいってしまっている。そこについて、既にヨーロッパなどではEU指令なども出して、地域経済とか物づくりの分野を守る上での雇用をどう守っていくかとか、そういうことをきちんと今手がけていっているときです。ですから私は、科学技術庁長官原子力とか宇宙産業分野を担当していらっしゃるわけですが、そこが本当に安全な体系として進んでいくには、やはり物づくりが産業としても成り立つように、産業政策そのものについて根本的な転換というものを考えていかないと、このまま産業空洞化がどんどん進むというやり方じゃ、これは幾ら懇談会たくさんつくってみたってうまくいきません。  ですから、これは政府として、通産大臣がそれを担当するだけじゃなしに、やはり科学技術庁長官としても、産業空洞化については、勝手な海外移転は許さないとか、そのかわり日本でどうするのかということを、産業政策をどのように転換するのか、そこのところを政府としてきちっと議論し対応していく、そういう立場でまず考えてもらわなきゃならぬということを申し上げておきたいと思います。  実は、なぜこういうことを私少し気になっているかといいますと、九五年一月のM3S2ロケットの失敗、九七年のH2五号、昨年のH2八号、そしてM5。九五年のあの円高のころから特に産業空洞化が深刻になっていますが、物づくりを支えるところが本当に、幾ら石播がやる、どこがやるといったって、大事なところの多くは大田区その他の中小企業の町工場で随分つくっているわけですよ。そこが崩れていってしまったら支えられないんです。  ですから、私はこの点では、九五年以来これだけロケットの失敗が頻繁に起こっているわけですから、かつては、九八年度までで九三%の成功率だと監査報告か何かに書いてあったのを読ませてもらいましたけれども、しかし現実には、最近になってどんどん成功率が落ちて失敗率が高くなってきている。それは、ロケットだけじゃなしに人工衛星の方でもこの間の失敗が相次いでいるわけですから、私は、基本のところをしっかり目を見据えて、日本産業政策として政府全体でもっと真剣に、町の中小企業が元気出すことも含めて、物づくり分野に力を入れないとこれは大変だということを申し上げておきたいと思います。  さて、このH2ロケット八号機を納品したのはロケットシステム社です。これはH2の五号機からでしたか、四号機からでしたか、ずっとロケットシステムというのがかかわってきているわけですが、ロケットシステムという会社は、そもそも工程管理や品質管理をやることのできる会社なんですか。
  201. 斎藤勝利

    斎藤参考人 お答えしたいと思います。  平成四年の四月にロケットシステムと事業団で技術移転についての契約を結びまして、その後、事業団におきます技術資料、それから事業団職員の派遣を含めまして技術移転をずっとやって、ロケットシステム技術能力の向上を図ってきたわけでございます。
  202. 吉井英勝

    ○吉井委員 民間会社を官が挙げて技術能力を高めるように頑張るというお話なんですが、私、今お聞きしていますのは、そのロケットシステムという、科学技術庁の事務次官の方の天下りポストでもあるところですが、そこが本当に品質管理とかあるいは工程管理をするだけの力を持っているのか、これは技術移転の前の話だと思うんですね。  資料いただいておりますが、ロケットシステムが、H2ロケット全機組み立ての製作、五号機について、六号機について、八号機について、四号機について、以前からずっとここが請け負っているわけですね。しかし、これは以前も取り上げましたけれども、そもそもそれだけの能力のある会社なのか。物づくりをする会社ではないわけでしょう。それで工程管理だとか品質管理ができているのか。私は、こういうふうなやり方がいいのかということを今改めて吟味しなきゃいけないと思うんですが、この点はどうなっているんですか。
  203. 池田要

    池田政府参考人 恐縮でございますが、事実関係だけ一つ訂正させていただきたいと思いますけれども科学技術庁事務次官の天下りポストということは当たらないかと思います。現在、ロケットシステムにはそういうものは置かれておりませんので、申し上げておきたいと思います。
  204. 斎藤勝利

    斎藤参考人 事業団からロケットシステムに製造請負契約を始めましたのは三号機からでございますけれども、三号機からずっと八号機まで製造請負契約を発注してございます。その間、事業団といたしましても十分レビューをしつつきたわけでございますけれども、これまで企業への発注、それから製造にかかわります監督、検査等の活動につきましては、良好に実施してきたと思っております。
  205. 吉井英勝

    ○吉井委員 五号機、八号機と相次いで失敗しているんですが、それだけ良好にやってきたら、良好に工程管理、品質管理をやっておったら、大体事故がなぜ起こったのか、そのこと自体の説明が全くつかなくなるというふうに思います。  先日、NHK特集で、NASAのチャレンジャーのこととか、それから規制緩和などで問題になったバリュージェット航空の問題などが、どこに問題があったかと、第三者機関も含めて徹底した調査が行われたのが紹介されました。今、日本でも、今回の事故そのものの原因だけにとどまらないで、こういうシステム、品質管理工程管理を含めて、あるいはロケットシステムという何ともえたいの理解しがたい会社も含めて、あるいは請負契約の問題とか、私は、徹底した第三者性の高い、アメリカの場合はTMIがあったらケメニー委員会をつくったりとか、非常に第三者性の高いところで徹底して調査するわけですが、単なる事故原因の調査だけじゃなしに、そういう第三者機関を設けての徹底調査が必要じゃないかと思うのですが、これはやはり大臣の方でそのことをお考えになって進めるべきときじゃありませんか。
  206. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 H2ロケット、またその次のH2Aロケットにつきましては宇宙開発事業団がその技術開発を行うわけでございますが、いずれは民間移転をしていかなくてはならないという今その過渡期にあるわけでございまして、その品質保証、品質管理のあり方についても、どのような技術移転をしていくかということについても、我々鋭意努力をしていかなくてはならないと思っております。  今回、特別会合を開いておりまして、私もその特別会合に参加させていただいておりますけれども、その部分についても、品質保証、品質管理のあり方、また発注者と受注者のあり方についても今検討しているところでございます。
  207. 吉井英勝

    ○吉井委員 大臣、本当に第三者性を持った、単なる事故原因というところだけにとどまらないで、それからこれまでの枠の中での検討だけじゃなしに、私は、アメリカが大きい事故があるたびに徹底して取り組むというこの姿勢は非常に大事だと思っているのです。日本もこういう第三者機関を設けて、徹底した、さまざまな問題の、工程管理も品質管理システム全体を含めてそういう調査、分析、検討というものが今求められているときだと思うのですが、これは大臣の方でそういうことについてはお考えになる必要があるんじゃないですか。
  208. 池田要

    池田政府参考人 初めにちょっと事実関係だけ申し上げたいと思います。  現在、事故の原因究明につきましては宇宙開発委員会技術評価部会で、これは第三者、専門家を動員いたしまして、公開の場で議論をしていただいております。また、今政務次官からも御指摘がございました、この事故原因究明と並行いたしまして、体制のあり方、こうしたメーカーとの関係等につきましても宇宙開発委員会の特別会合、これも外部の有識者の方をお願いいたしまして、公開の場でメーカーに直接説明を求める、そういったことも入れながら議論させていただいておりまして、御指摘のような第三者性の確保につきましては、私ども、こうした格好で取り組ませていただいているということにつきまして御理解をいただきたいと思います。
  209. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、やはりその点でも発想の転換が必要だと思います。アメリカの場合、大統領直轄の委員会をつくってでもやるわけですね。推進している委員会なり機関なり部局、部門、そこに属する委員会でやるというこれまでのスタイルから、やはり本当にそこまで発想の転換をしていくことが必要だ、このことを申し上げておきたいと思うのです。  先日、NASAが、経費削減でスペースシャトルの整備点検が行き届かず、安全確保に問題が生じているという報告書をまとめられたというふうに言われております。これは、コロンビアで配線類の損傷が表面化したことから、かつてのチャレンジャー事故のときもそうでしたが、今度も、コロンビアの配線の損傷が明らかになったということでもって、徹底してこれを調査していく。そして、一九九六年にシャトルの整備、打ち上げ準備などを民間会社に委託するやり方をしたけれども、その結果、経費が大幅に削減されたが、安全性を脅かす問題が起きているということで報告書も出てきて、そういうやり方がいいのかということを検討していこうとしているときです。  これは大臣、大臣もNASAの報告書などをもう検討されて、そうしたら日本でどういう調査研究を、検討を進めていくのかとか、そういうこともお考えだろうと思うのですが、大臣自身はNASAの報告書の要旨などをごらんになってどういうふうにお考えになりましたか。
  210. 池田要

    池田政府参考人 御指摘の報告書につきましては、まだ残念ながら直接大臣にお目にかけてはおりませんので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  211. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、そういうものはやはり速やかに大臣にも見てもらって、そのアメリカのやり方がいいか悪いかとか、それは日本日本流でまたいろいろ考えたらいい面もあるでしょう。しかし、まずそういうものをよくきちっと見て、どこの国のやっていることであっても、そこから大事な教訓を酌み取ったり、大統領直轄なりなんなりで、規制部門とか推進部門とは違うところでちゃんと第三者機関をつくって徹底的に検討するとか、そういうことをやってこそ、ロケットや人工衛星の相次ぐ失敗、物すごい金額のオシャカをつくってしまったわけですよ。大損害を生み出しているわけですからね。そういうことを生み出さない技術の体系とか基礎研究の充実とか、そういうものを本当に積み上げていくには何が必要なのかということを、これはやはり大臣自身がきちんと目を通し、考えて対処していくことが必要だというふうに私は思います。  そこで、もう一つ宇宙問題に関しては、エンデバーの地球三次元地図作成データの問題ですが、これは全面的に公開をしていかれますか。
  212. 池田要

    池田政府参考人 今回のミッションにつきましては、地球表面の詳しい立体地形図を作成することを目的にして行われたわけでございますけれども、取得されましたデータにつきましては基本的に公開される、科学目的、民間目的等に幅広く提供されると認識しております。  ただ、全面的にということを先生は力を入れられましたけれども、今回取得されましたデータのうち、合成開口レーダーで取得しましたデータの一部でございますけれども、米国国土以外の高解像度の加工処理データの配布につきましては、今後、米国のNASAと国家画像地図局とがガイドラインを策定するといったことで、配布のための指針に相当するものをつくるというふうに承知をしているところでございます。
  213. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本の宇宙開発というのは、これはたびたびの国会決議であれ、法律であれ、NASDAの設立の目的であれ何であれ、平和目的という、ここはきちっと貫いているわけです。アメリカの方は国防総省がかかわっているということで、それで軍事という問題が入ってきて、一緒に研究はしておったのだけれども日本の目的は平和目的なのだが、しかし、この三次元解析の地図の一部が全面的に公開されるというところからは離れたところへいってしまう。これでは日本の宇宙開発の目的そのものが損なわれますから、私はこの点は、これは大臣の方だと思うんですね、政府参考人の話じゃなしに。先ほどから政府参考人の方がなかなか御熱心に立ってこられるのですが、基本的には今大臣に質問するということでやっているわけですから。  大臣、日本は平和目的だとたびたび衆参の国会決議もして宇宙研究開発に取り組んでいるのだから、アメリカが国防総省がかかわっているという分野があったにしても、日本が参加するときは全面的に公開してもらわなければ困るのだと、そこは日米間でもきっちり物を言って、今回の成果物についても全面公開が得られるように取り組んでいく、私は、これは大臣としてやっていただかなければいけないことだと思いますが、ここは大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  214. 池田要

    池田政府参考人 大臣のお考えもあろうかと思いますけれども、まず事実関係だけ、恐縮でございますけれども申し上げさせていただきたいと思います。  現在、一部について公開されないものはあり得るといったことについての先生の御指摘でございますけれども、一般論といたしまして、こうしたリモートセンシングによって取得しましたデータの扱いについては国際的なルールがあるといったふうに御理解いただきたいと思います。その取得いたしましたデータを第三国に配布するといったことにつきましては、一定の配慮が必要とされているところでございます。  そもそもこれは、一九八六年でございますからもう数年前になりますけれども、国連では、こういうリモートセンシングの技術の進展にかんがみまして、原則を定めております。被探査国、第三国がシャトル等からリモートセンシングによって画像をとられた場合ですけれども、その国の合法的な権利ですとか利益、そういったものを害するような方法で行ってはならないといったことまでこの原則の中に言っているところでございます。  これはそういう配慮が必要だということをまず申し上げまして、またアメリカも、商業衛星からこうしたリモートセンシングによって得られましたデータにつきましては、例えば外交政策上支障がないことを条件としているといった状況にございます。  したがって、そもそもこうしたリモートセンシングのデータの扱いにつきましては、その性格から、今回取得いたしましたデータにつきましても、ガイドラインを設けてその取り扱いを定めるといったことで理解しているところでございます。
  215. 吉井英勝

    ○吉井委員 それは有馬大臣のときも公開だというお答えをいただいておりますが、今おっしゃったリモートセンシングの話、こういう場合は仮に別ということにしても、少なくとも軍事を理由にした非公開はない。軍事を理由にした非公開が出てくると、日本は一緒に平和目的で宇宙研究開発をやりたいのだが、できなくなりますよ。だから、日本が参加した場合は基本的に全面公開をやるのだという立場でやってもらいたいと、私は、これは大臣の方からアメリカなどの関係する政府機関の人にきちっと物を言ってもらうということが必要だと思います。これは大臣の方に伺いたいと思います。もう時間が終わりですから、大臣にそこは聞いておきます。
  216. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 宇宙の平和利用につきましては、昭和四十四年に国会決議がされているところでございます。しかし、その後いろいろな議論の経過がございました。例えば、自衛隊が電話を利用する、その電話が衛星を使った、これは宇宙の軍事利用になるのか、こういう議論を経て、最終的に汎用化された技術については、これが宇宙にかかわっていても宇宙の平和利用の原則に抵触しない、こういう汎用原理が確立されたところでございます。  今回のこのスペースシャトルにつきまして、開口合成レーダー、これは既に一般化された汎用性のある技術でございまして、その汎用性のある技術を国防省が使うということにつきましては、私たちとして、それが日本の国会決議に抵触するものではない、このように理解しております。
  217. 吉井英勝

    ○吉井委員 いや、公開しますねということなんです。  一言だけいいですか。もう終わろうと思ったのですが。  ですから大臣、私が言っていますのは、今回のデータが、基本的に全面公開ということを私申し上げましたけれども、軍事を理由にして非公開になるようなことがあってはいけませんから、日本は平和目的ということでやっているわけですから、そのことはきちんと物を申していかれますね。そこのところだけ大臣に。これは大臣しか答える人はいないわけですから、この問題は。
  218. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 この御質問にお答えする前に、先ほど委員の御質問で、海外のいろいろな体制も十分に参考にすべきだというお話がありまして、私、その点についてそのとおりだと思っております。一つのやり方等に固執することなく、よいところは取り入れていく姿勢が大切だと思っております。  それから、今の件につきましては、総括政務次官からも申し上げましたけれども、合成開口レーダーのお話でございましたけれども、一部のデータが汎用的な性質を有するものであるということから、取り扱われたといたしましても、日本の宇宙の平和利用の原則には問題はない、私もそういうふうに思っておるわけでありますし、アメリカが判断をすることだ、そういうふうに思います。
  219. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  220. 田端正広

  221. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  私はまず最初に、人形峠のウラン残土問題についてお聞きをしたいと思います。  私は、この人形峠ウラン残土問題については、橋本内閣のときから、日本原子力政策の負の遺産ということで、これを解決できない限りこれから同じような性質の問題が起こってくるのではないかということで、しつこく取り上げているのです。今、いろいろな局面を迎えておりますので、幾つか方針を聞かせていただきたいと思います。  昨年末には、撤去協定調停から十年余りを経ても事実上の撤去が行われないことに住民の怒りが爆発して、住民が実力行使で残土の搬出を始めるというような事態を招いています。また、東郷町も町内の保管を断念した、そして鳥取県も東郷町の意向を全面的に支持し、片山鳥取県知事が十二月二十日に核燃機構の理事長に、核燃機構の責任において処理し早急に岡山県と協議するように申し入れたというのは御承知のとおりだと思います。  そこで、核燃機構は理事長をトップに対策委員会をおつくりになりましたね。それで、二月の二十九日に、核燃機構の方が東郷町の動燃人形峠放射性廃棄物問題対策会議皆さんと会って話し合いをされたと思います。そして、その席では、今週の十三日からということですから、昨日から、岡山県に処理案の説明をするというようなお話もされたようなんですけれども、その後、現状はどのようになっているか、藤本参考人にまずお答えいただきたいと思います。
  222. 藤本昭穂

    藤本参考人 藤本でございます。お答え申し上げます。  対策会議に対しましては、これまでと同様にとにかく誠実に対応させていただくという所存でございます。  このたび技術検討委員会というものをつくりまして、これは理事長をヘッドといたしますところの全社的な検討委員会ということでございますけれども、ほぼ内容がまとまりました。岡山県に対しまして、まずその検討の結果、内容を御説明申し上げるということでお願いを申し上げておりましたところ、三月十三日以降と今先生おっしゃられたのでございますけれども、今のところ、三月の下旬にやっと御説明を申し上げさせることができるように岡山県の方から御回答をいただいております。岡山県とあわせまして鳥取県の方にもその御説明をいたすということでございますけれども、同日、同じように対策会議に対しましても御説明をするということにいたしておるところでございます。
  223. 辻元清美

    辻元委員 それでは、そのときに説明をする内容になるわけですが、一点確認をさせていただきたいと思います。  今、私の手元に、片山知事がことしの一月十七日に記者会見をされた速記のようなものがあります。この中で、一つ、鳥取県が気にしている部分については、核燃機構として岡山県に了解を求めなければならないことが法的にあるのかどうか、その辺が定かでありませんのでと出ていますね。知事は、何か法的ないし契約上の権利というか立場というか、それに基づいて拒否をするというふうに言われているのか、その辺がよくわかりませんので、というような発言もあります。  そして、さらに続けて、知事が、昨年末、十二月二十日に東京に行きまして、あのときも核燃機構に行って聞いたのですけれども、明確な説明は機構からはなかったのです、その辺はきっちり説明してくださいということをお願いしているとか、その後も知事は、岡山県との関係での法的な根拠、その点について随分記者会見で発言をされているわけです。  これから大分時間がたっておりますので、核燃機構としてはこの点はどのようにお考えなんでしょうか。この後調べられたりされていると思いますけれども
  224. 藤本昭穂

    藤本参考人 お答えをいたします。  まず、原子力にかかわります事業の推進に当たりましては、地元の御理解と御協力が何よりも重要だというふうに考えておりまして、これが得られなければ事業の推進というのはできないわけであります。そのように考えておるわけでございます。  岡山県との法的な関係ということでございますけれども、岡山県それから上齋原村と昭和五十四年に、人形峠事業所周辺環境保全等に関する協定書というものを締結いたしておるわけでございます。この協定というのは、私ども、地元の理解と協力を得て原子力事業を進めるという意味では、法律と同じぐらい重いものというふうに考えておるわけでございます。  この協定におきまして、人形峠環境技術センターにおきます施設の新増設または計画変更を行うときは岡山県及び上齋原村の事前了解を得ることとされているわけであります。捨て石を人形峠環境技術センターに搬入し、あるいは処理または保管、管理するということは、やはりこの協定による事前了解を必要とする事項に該当するというふうに考えておるわけでございます。  この法的根拠につきましては、まず具体的な処置方法が決まった段階で岡山県と協議に入るというのが基本であるというふうに私どもは考えているところでございます。
  225. 辻元清美

    辻元委員 これはもう何十年とこの問題が持ち越されてきているわけですね。それでまた振り出しに戻っているように私は思うんですね。この間、私も再三この問題について質問をしてきていますけれども、また今から岡山県に説明をすると。そして、鳥取県の方もこれは認められないとはっきり知事もおっしゃっているわけですね。地元の住民もこれ以上は、要するに、土地を借りている、期限も切れた土地に置いているわけですから、これも法的に問題が出てきて、そして、撤去してくれという話になってきている。  科学技術庁の見解もちょっとこの際聞いておきたいんですけれども斉藤政務次官は中国ブロック御選出と伺っております。これはしつこく私が質問をしてきたことも御存じだと思いますが、科学技術庁としてこれをどのようにお考えでしょうか、人形峠のウラン残土問題については。いかがですか。
  226. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 この鳥取県東郷町方面地区のウラン残土の問題につきましては、十年以上にわたって地元の方々に大変な御心配をおかけしているところでございます。その点については私たちも大変深く憂慮をいたしております。  ただ、これまで何も努力してこなかったということではございません。動燃、また核燃料サイクル機構、努力をしてまいりました。先ほど、ずっと十年間事態が動いていないかのような御発言でございましたが、この間には、例えば鳥取県の県有地に、もちろん鳥取県と合意のもとに安全にそれを処理するということについても、地元町それから鳥取県と鋭意その可能性について努力をしてきた、それが実現寸前にまで行ったという経緯もございました。また、この方面地区の中におきましても、地区の方の合意を得て何らかの方法で処理できないかということで努力をしてきた経緯もございました。  しかし、最終的に、今回、鳥取県及び方面地区の方が、やはり十年前の約束どおりこの地区から出してくれという決定をなされたわけでございます。そういうことで、私たちは、この約束を守るべく、これまでもこの約束を守るべく一生懸命努力をしてきたということは今のことで御理解をいただきたいと思いますけれども、まだその約束を履行する状況になっていないわけでございますが、今後、この核燃サイクル機構、当事者でございますけれども、今一生懸命各方面に努力をしているところでございますので、この努力を見守っていきたい、このように思っております。
  227. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、藤本理事にお伺いしたいのですけれども、この方面地区からの撤去については、責任は核燃機構にあるというような御認識を再度確認させていただきたいと思います。撤去の方向で岡山県にも説明するし、その方向性を持って臨むということですね。
  228. 藤本昭穂

    藤本参考人 協定を結んだのは私どもでございますので、その協定を守るのは私どもの責任であるというふうに思っております。
  229. 辻元清美

    辻元委員 今はっきり責任であるというお言葉を受けとめましたので、この協定どおり方面地区から、これは聞くところによりますと三千立方メートルというように聞いておりますので、このすべてを撤去し、二度と持ち込まないようにしていただきたいということを申し上げて、次の質問もありますので、きょうのところはこれで人形峠問題については終わります、幾つか確認させていただきましたので。  次に、東海村の臨界事故について質問させていただきます。  科学技術庁は、現在ICRPの一九九〇年勧告に取り入れられた中性子線量の見直しを国内法令に取り込む作業をしている最中である、作業は来年四月には完了し、法改正をするというように聞いているんですが、これでよろしいんでしょうか。参考人で結構です。
  230. 間宮馨

    間宮政府参考人 国際放射線防護委員会、ICRPの一九九〇年勧告におきましては、一九七七年勧告の実効線量当量にかえて、実効線量を導入しております。一九七七年勧告の実効線量当量では、中性子線の影響をガンマ線等の十倍としておりましたが、一九九〇年勧告の実効線量では、中性子線の影響を、エネルギーに応じて、ガンマ線等の五倍、十倍、二十倍としております。  このICRPの一九九〇年勧告の国内関係法令への取り入れに当たりましては、実効線量当量にかえて実効線量を用いることとしておりまして、現在、放射線審議会において御審議いただいているところでございます。放射線審議会からの答申をいただいた後、関係省庁において関係法令の改正が行われる予定でございます。
  231. 辻元清美

    辻元委員 そうなりますと、東海村の臨界事故についてさまざまな数値を発表されていますね。これは、今は実効線量当量で発表されているんですか、いかがですか。
  232. 間宮馨

    間宮政府参考人 現在の法令におきましては実効線量当量が用いられておりますので、実効線量当量でいろいろな数値をあらわしております。
  233. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、引き続きお伺いしたいんですが、これは東海村に配られましたニュースレター第二弾ということで、この中にも幾つかの数字が出てきます。この数字、特に健康に対する影響のところで、こういうくだりがあります。「がんの増加に代表される確率影響も、一般的には約二百ミリシーベルト以上の線量でのみ現れるとされており、」というくだりがあるんですが、この二百ミリシーベルトというのは、これは予算委員会などで大臣がお答えになっていますけれども、一九九〇年の勧告をもとに、これを一般的にわかりやすく記載したものであるという御答弁をされていますが、この二百という数字は実効線量でよろしいんですね。
  234. 間宮馨

    間宮政府参考人 ICRPの方からとっておりますので、実効線量であろうと思っております。
  235. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、一方、ここに、ある被曝をされた方の政府からの通知があります。「行動調査等に基づく線量の推定について」、これは皆さん御存じのとおりだと思いますが、例えばここに「あなたの線量の推定値は、六・五ミリシーベルトと算出されました。」こう入っていますが、これは実効線量当量に基づいて算定された数字ですか。
  236. 間宮馨

    間宮政府参考人 そのとおりでございます。
  237. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、被曝された方々は実効線量当量に基づいて自分の被曝の線量を通知されるわけですね。そして、今度配られたパンフレットの方は、二百ミリシーベルトと書いてありますけれども、これは実効線量に基づいたものですね。そうすると、これは矛盾してくるんじゃないですか。被曝された方は、自分はどれだけの線量を被曝して、それについて心配されているので、政府が使っている、もとになる基準の線量の値が全然違うじゃないですか。これについて、いかがですか。
  238. 間宮馨

    間宮政府参考人 今先生おっしゃいました昨年十二月の広報資料におきまして、九〇年勧告に基づきまして、一般的には二百ミリシーベルト以上の線量でのみあらわれるとされていると記載したのは、現在国際的に認められている科学的知見を採用したものでございます。一方、現行法令では、一九九〇年勧告で導入された実効線量はいまだ取り入れられておりません。実効線量当量が用いられておりますので、広報資料の周辺環境の線量評価については実効線量当量を用いて説明しているものでございます。これらは、目的に応じましてそれぞれ適切に使用したものでありまして、特に矛盾したものとは考えておりません。
  239. 辻元清美

    辻元委員 これを全戸配布しましたね、東海村の方に。実効線量は実効線量当量の、ちょっと大ざっぱに言いますと、約二倍になりますね、数値が。二倍になる。もう全然基準が違うじゃないですか。それで、これを被曝されて通知を受けた方が読まれて、ああこの二百というのと自分の数字は同じように計算されていると普通思いますよ。こういう通知の仕方をしている、斉藤政務次官、言っていることわかると思うんですけれども、いかがですか、これは。
  240. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 二点お答えしたいと思います。  まず一点は、九〇年勧告と一九七七年勧告、実効線量と実効線量当量という二つの物理量が定義されておりますけれども、そこで一番大きな問題は中性子の線質係数でございます。ガンマ線の影響に対して中性子がどれだけ影響するかということなんですけれども、一九七七年では中性子のエネルギー全部に対して十です……(辻元委員「それはわかるんですが、住民にとってこれはどうですかということなんですけれども」と呼ぶ)ですから、それをお答えするために今お答えしているんです。十でした。今回の一九九〇年勧告では、五のところもございます、十のところもございます、二十のところもございます。だから、すべてエネルギーが二十のところであれば確かに辻元委員おっしゃるように二倍になりますけれども、逆に、五、低くなっているところもございます。そういうことも考えなければ、一概に二倍になるとは言えない。これが一点。  それから、確かに九〇年勧告で、今根拠にされております文章、「九五%レベルで統計学的に有意ながんの過剰は約〇・二シーベルト以上の線量でのみみられる。」ということで、これは九〇年勧告に書いてある文章ですから、確かに実効線量だと考えるのが妥当でございますが、文章の中には何も書いてございません。  ただ、この〇・二シーベルトという数字は、広島、長崎のデータから出てきたものでございまして、この広島、長崎のデータは……(辻元委員「それはわかっているんです。住民が見たらどう受け取るかということを聞いているわけですよ。自分がこれを受け取って、この人の場合は六・五ミリシーベルトと書いてあって、こっちは二百。基準が違うのはおかしいじゃないですかと言っているんです」と呼ぶ)ですから、この〇・二シーベルトというのは、広島、長崎のデータ、これは実効線量当量でのデータでございますので、したがいまして、その文章についてそれを実効線量当量として読むというのは矛盾はないと思います。
  241. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、法改正をして実効線量に合わせた場合、この方には六・五ミリシーベルト、通知していますね。四月以降は変わってまた通知されるわけですか。どうなるんですか。
  242. 間宮馨

    間宮政府参考人 いわゆる住民の方々の健康管理につきましては、健康管理検討委員会における検討を経て行われておりまして、この検討は中性子線の影響を考慮した上で行われているものでございまして、実効線量に変更されたからといって健康管理検討委員会で示された周辺住民等の放射線影響基本方針に影響を与えるものではないと考えられますので、現時点においては変更する予定はございません。
  243. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、今の実効線量、このパンフレットで配られた方の、二百ミリシーベルトの話ですけれども日本基準でいった場合に、労災認定は白血病などは五ミリシーベルトという基準になっていますね。確定的影響確率影響があると思いますが、私は確率影響の方を問題にしたいと思います。この際に、労災は年間五ミリシーベルトで、現在労災認定をされた原発労働者は四名いると聞いています、これは確認しましたけれども。そして、三名の積算線量が公表されていて、四十、五十、六十ミリシーベルトと言われています。  配られたパンフレットの中では、二百ミリシーベルト以下の線量でのみあらわれることになっており、これはがんの増加に代表される確率影響についてですね、「今回の事故に関連して直ちにがんの増加などの健康影響を懸念する必要はないと考えられます。しかし、五十ミリシーベルト以上の線量でもごくわずかながらがんの増加が認められたとの報告もあることから、念のため長期的な健康影響について詳細な検討を行うこと」としてくれ、こう書いてあるわけなんです。  日本の労災認定の基準が五ミリで、そして勧告は二百ミリだから、それはそうお書きになったのかもしれませんけれども、普通考えたら、特に認定を受けている人は四十とか五十、六十で受けていらっしゃるということは、その被曝が原因で白血病になったということを認められたということですから、これとの関係はどうなっているのですか。科技庁はどのようにお考えですか。
  244. 間宮馨

    間宮政府参考人 労災認定は労災認定の考え方の中で行われておりまして、労災認定において認められたからということで因果関係が必ずあるというところまではいかないものと理解しております。今回、日本のトップクラスの専門家にお集まりいただいて健康管理検討委員会で十回以上議論をしているということで、その中でいろいろな観点から御議論があって今の結論に至ったということでございますので、労災認定の考え方と必ずしも一致するものではございません。
  245. 辻元清美

    辻元委員 でも、被曝に、これは労災認定だから被曝の形態が違うとか影響が違うというわけではないと私は思います。それで、一方で労災認定でこういう基準があって、そしてそれについて基準が違うとか、監督官庁が違ったら被曝について何か影響が変わるのでしょうか。いかがですか。私はそれはおかしいと思います。今ちょっと何かごちょごちょ言ってはりますけれども、おかしいですよ。  ですから、基準も二つあって、これは被曝者の立場に立って考えたら、どうでしょうか。自分が通知された基準と配られたパンフレットの基準が違う。そして、調べていくと労災認定はまた違う、五ミリシーベルトだとなっている。一体どうなっているんだと普通思われるんじゃないでしょうか。  その中で、時間が余りないのでこれは引き続き次もやりますけれども、このニュースレターの記載について、これは大臣が予算委員会でお答えになっていますけれども、「一九九〇年勧告で「九五%レベルで統計学的に有意ながんの過剰は約〇・二シーベルト以上の線量でのみみられる。」と記述されている部分を、一般的にわかりやすく」記述したんだと。あちこちで一般的にわかりやすくしていたというわけです。そうであるならば、この勧告をわかりやすく書くのだったら、注釈は要らないと思います。  どういうことかといいますと、これを見ると、「がんの増加に代表される確率影響も、一般的には約二百ミリシーベルト以上の線量でのみ現れるとされており、」ここまでですよ、これを簡単にしたというのは。この後に「今回の事故に関連して直ちにがんの増加などの健康影響を懸念する必要はないと考えられます。」こんなことは書いてないです、勧告には。これは注釈というものなんです。そして、さらにこの後、五十ミリシーベルト以上の線量のことにも触れていらっしゃいますけれども、「念のため長期的な健康影響について詳細な検討を行うこととしています。」「念のため」とか入れているわけですね。  私は、こういうデータなどを出したり解説する場合には、注釈、だからどうだということは、被曝者本人が判断すればいいと思います。出すデータも生データを出せとずっと言ってきたわけです。そして、この一九九〇年勧告ではこういうことがありますよとインフォームするのはいいですけれども、「直ちにがんの増加などの健康影響を懸念する必要はない」、これは科技庁がつけ加えているわけですね。  しかし、五十ミリシーベルト以上の線量でもごくわずかにあるわけだし、それからもう一つは、先ほどの労災認定の四名の方が既に白血病で認定されているということもあるわけですから、私は、これはわかりやすく言ったものというよりも、わかりやすく言ったもの以上にかなり意図が入っていると言わざるを得ないと思います。  ですから、こういうものを出すときには注意して出していただかないと困ると思いますが、いかがですか。この説明の部分は、私はこのニュースレターの中に必要ないと思うのです。住民の方に安心させたいとか必要以上の不安を持たせたくないというのは、それは住民が判断することであって、データや勧告などをわかりやすく言うのであれば、これは言い過ぎだと思いますよ。これは斉藤政務次官に聞きましょう。いかがですか。
  246. 斉藤鉄夫

    斉藤政務次官 ニュースレターのこの部分につきましては、ICRP九〇年勧告の科学的な記述をわかりやすく書いたものということだと理解をしております。
  247. 辻元清美

    辻元委員 それは何回も答弁されているのですが、書いていないことも書いてあるというわけですよ。ですから、それは被曝された方なりが生データであったり勧告をどう受けとめるかという問題であって、それ以上書くというのは、私はこのときに不適切であると思います。  大臣、どうですか。大臣は何回も予算委員会でこの件については答えていらっしゃいますよ。
  248. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 予算委員会でも確かに御答弁申し上げました。  ICRPの一九九〇年勧告の委員も御指摘のこの記述のところを、こちらのお配りいただいているコピーのアンダーラインのところの表現に書いているわけでありますけれども、二百ミリシーベルト以上の線量でのみあらわれるとされている、そういうふうに記述し、「しかし、」ということで、「五十ミリシーベルト以上の線量でもごくわずかながらがんの増加が認められたとの報告もあることから、」ということで、下の方の「念のため長期的な健康影響について詳細な検討を行うこととしています。」そういうふうな表現になっておるわけでありまして、私どもは、この表現は適切ではないか、そういうふうに思っております。
  249. 辻元清美

    辻元委員 時間が参りまして、原子力安全委員会委員長にお尋ねできなくて恐縮でした。それをちょっと申し上げたいと思いますが、私は、この二百ミリシーベルト以上の線量の問題よりも、「五十ミリシーベルト以上の線量でもごくわずかながらがんの増加が認められた」、ここの方をさらに問題にすべきだと思うのです。今後、影響が出てきて、白血病とか出てきた場合に、ここの部分で出てくる。  さらに、この勧告では、ここの部分についてはもっとしっかり研究せなあかんということも書いてあるじゃないですか。ここが問題だというふうなことも書いてありますので、ですから、私は、今の大臣の御答弁は、私の質問に対して答弁いただいていないというように言わざるを得ないと思います。  今の問題については、また次の委員会で引き続き深く掘り下げさせていただきたいと思いますので、覚悟をしておいてください。  以上です。終わります。      ————◇—————
  250. 田端正広

    田端委員長 次に、本日付託になりました内閣提出技術士法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。中曽根国務大臣。     —————————————  技術士法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  251. 中曽根弘文

    ○中曽根国務大臣 技術士法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  近年、国際的な経済活動の活発化に伴い、技術者の国境を越えた活動を促進する必要性が増大しております。このような状況に対応するため、欧米先進国を中心に技術者資格を相互に承認する動きが具体化しているところですが、アジア太平洋経済協力においても、域内での技術者資格の相互承認に向けた基本的な枠組みが合意され、現在、詳細な検討が進められております。また、科学技術創造立国を目指す我が国としては、技術基盤の強化及び技術革新による国際競争力強化等を図るため、これを支える技術者の育成、確保が重要な課題となっております。  一方で、現代社会は技術に多くを依存し、技術が社会に及ぼす影響がますます大きくなっていることにかんがみ、技術に携わる者が公共の安全、環境の保全等の公益の確保を図るべきことが強く求められております。  本法律案は、技術者をめぐるこのような現状を踏まえ、高等の専門的応用能力をもって我が国の科学技術の向上等に資することが期待されている技術士の制度について、国際的な整合性の確保、良質の技術士の一層の育成等を図ることを目的として、外国との相互承認に備え、一定の外国の技術者資格を有する者を技術士として認めることとするとともに、試験制度の改善等を図り、さらに、技術士等が技術に携わる者として果たすべき責務について新たに規定するものであります。  次に、本法律案の要旨を御説明いたします。  第一に、技術士制度について、外国との相互承認に対応するための規定の整備であります。  アジア太平洋経済協力域内における国際的な技術者資格の相互承認の枠組み等に対応するため、一定の外国の技術者資格を有する者を技術士として認めることができることとしております。  第二に、試験制度の改善等に関する規定の整備であります。  技術の高度化や総合化等に適切に対応できる技術士を確保するため、第一次試験において、新たに科学技術全般にわたる基礎的学識及び技術に携わる者として果たすべき公益に対する責務等に関する理解について確認するとともに、技術士を目指す者が必ずこうした基礎的学識等を習得しているよう、第二次試験の受験資格として、原則として第一次試験の受験を課すこととしております。  また、より多くの若手の優秀な人材技術士を目指すよう、一定の大学等の課程を修了した者については、第一次試験の受験を免除し、技術士補となる資格を有するものとして扱うこととしております。  さらに、より多くの技術者が第二次試験の受験の機会を持つことができるよう、第二次試験の受験要件として、技術士補として技術士を一定期間補助した場合等に加えて、新たに、優秀な指導者による監督のもとで科学技術に関する専門的応用能力を必要とする業務に一定期間従事した場合を認めることとしております。  これらの措置に加え、試験制度の改善に向けた所要の規定を整備することとしております。  第三に、技術士等が技術に携わる者として果たすべき責務に関する規定等を新たに追加することとしております。  まず、技術士及び技術士補について、その業務を行うに当たって、公共の安全や環境の保全等の公益を害することのないよう努めるべき責務を規定することとしております。  また、技術士について、継続的にその知識及び技能の水準の向上を図るなど、技術士としての資質の向上に努めるべき責務を規定するとともに、関連する所要の規定を整備することとしております。  以上が本法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  252. 田端正広

    田端委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十三分散会