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1999-11-04 第146回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月四日(木曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   平成十一年十一月四日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、裁判官弾劾裁判所裁判員、同予備員裁判   官訴追委員及び同予備員辞任の件  一、裁判官弾劾裁判所裁判員等各種委員選挙  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  青木幹雄君及び井上裕君から裁判官弾劾裁判所裁判員を、佐藤泰三君から同予備員を、石渡清元君、清水嘉与子君及び成瀬守重君から裁判官訴追委員を、堂本暁子君から同予備員を、それぞれ辞任いたしたいとの申し出がございました。  いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、いずれも許可することに決しました。      ─────・─────
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) この際、欠員となりました  裁判官弾劾裁判所裁判員二名、同予備員一名、  裁判官訴追委員三名、同予備員一名、またあわせて  皇室会議予備議員一名、  皇室経済会議予備議員一名、  検察官適格審査会委員一名、同予備委員一名、  国土審議会委員二名、  国土開発幹線自動車道建設審議会委員一名、  北海道開発審議会委員一名の選挙 を行います。  つきましては、これら各種委員選挙は、いずれもその手続を省略し、議長において指名することとし、また、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員裁判官訴追委員予備員皇室会議予備議員皇室経済会議予備議員職務を行う順序は、これを議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、議長は、  裁判官弾劾裁判所裁判員岩崎純三君及び岡野裕君を、  同予備員岩永浩美君を、  裁判官訴追委員加藤紀文君、鴻池祥肇君及び南野知惠子君を、  同予備員田村公平君を、  皇室会議予備議員村上正邦君を、  皇室経済会議予備議員山本正和君を、  検察官適格審査会委員上野公成君を、  同君の予備委員海老原義彦君を、  国土審議会委員上杉光弘君及び岡野裕君を、  国土開発幹線自動車道建設審議会委員上杉光弘君を、  北海道開発審議会委員竹村泰子君を、 それぞれ指名いたします。  なお、裁判官弾劾裁判所裁判員予備員職務を行う順序は、岩永浩美君を第一順位といたします。  また、裁判官訴追委員予備員職務を行う順序は、田村公平君を第二順位とし、第二順位阿部幸代君を第三順位に、第三順位福島瑞穂君を第四順位に、第四順位月原茂皓君を第五順位といたします。  また、皇室会議予備議員職務を行う順序は、村上正邦君を第一順位といたします。  また、皇室経済会議予備議員職務を行う順序は、山本正和君を第二順位といたします。      ─────・─────
  6. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る十月二十九日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。寺崎昭久君。    〔寺崎昭久君登壇、拍手〕
  7. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 私は、民主党・新緑風会を代表して、総理所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問を行います。  連立政権において、規模が大きくなり過ぎた状態は、一般に過大規模連合政権と呼ばれ、それによって議会は法案を通過させるだけの無力な承認機関になり、議会政治の精神は死滅してしまう、それは政党間競争が議会から内閣に移転してしまうためであると政治学上その弊害が指摘されておりますように、数の横暴により議会の形骸化民主主義政党政治の堕落を招くものと考えられております。  しかるに、このたび発足した自自公連立政権は、衆議院で七二%、参議院で五六%を占める戦後最大の巨大与党政権であります。ところが、小渕総理は自自公連立政権の意義について、政治の安定のためや多数派の形成は民主主義の基本であるなどの発言にとどまり、巨大連立政権の弊害について一言も言及されていないのであります。一国の総理として、一般則無視の不見識な発言と断ぜざるを得ません。政権の安定と国民生活の安定とは別物であります。  所信表明演説で、総理は、三党派政策合意に盛り込まれた衆議院定数の削減、安全保障政治家個人への企業団体献金の禁止といった重要課題についてその取り組みを触れられませんでしたが、このことは国会での論争が既に連立政権内に移転している証左ではありませんか。その上、三党間調整が難航必至だから言及はできないでは、三党派連立は、やはり政策を実行するための政権ではなく、単なる数合わせとしか言いようがございません。  以上の指摘について、総理の御所見をお聞かせいただきたいと思います。  さきの参議院選挙で、自由党自民党と厳しく対峙して戦われました。にもかかわらず、その後自由党は、選挙公約をほご、国民の意思を踏みにじるような背信行為ともいうべき自民党政権延命のための自自公連立政権へ走りました。与野党の関係で戦った政党が連立を組むのであれば、少なくともそれについて国民の洗礼を受けるのは当然、それが憲政の王道であります。  事実、昨年八月、衆議院会議小沢自由党党首は、「もともと自民党に対しては、衆議院においても国民は過半数を与えておりません。そうである以上、野党に政権をゆだねるか、衆議院の解散・総選挙を断行し、国民の信を得た正統な政権に道を譲るのが憲政の常道であります。」と述べられております。自由党は、なぜ党首みずからが解散・総選挙を主張しながら連立に参加されるのでしょうか。  また、ことし一月には自自で、衆議院比例定数を五十名削減する、国連平和活動に積極的に参加することなどを政策合意したはずです。しかし、その後、自自公協議の中でなぜか自由党は主張をトーンダウンさせております。これでは、政権にとどまるために譲歩、妥協を繰り返していると見られても仕方がありません。  自由党は日ごろの立派な見識、主張を曲げてまでなぜ連立政権に参加されるのか、自由党の二階運輸大臣の御所見を伺います。  これまで自民党公明党に対してさまざまな批判を行ってまいりました。例えば、自民党のある幹部は、公明党との閣内協力は憲法の政教分離に照らし疑義があると述べております。小渕総理はこの発言をどう受けとめておられますか。あわせて、政教分離についてのお考えもお聞かせください。  また、このような自民党公明党批判に対して公明党の続総務庁長官はどのようにお考えか、忌憚のない御意見を聞かせてください。  昨年十一月七日、新党平和と公明が合流した公明党結党大会を開きました。その大会で神崎公明党代表は、自民党補完勢力になる気は全くないと強調し、当時注目された自公連立可能性に否定的な考えを示され、自民党と連携しない公明党が生まれたはずでございます。しかし、結党から一年もたたずして党是を百八十度転換されました。国民は、公明党は反自民ではなかったのか、露骨な公約違反だと驚き、公党のあり方を疑っております。  路線として自民党との連立政権参加を選ばれるなら、さきの結党を振り出しに戻して自民党と連携する党を新しくつくる必要があるのではないでしょうか。そうでなければ国民に対して説明がつかないのではないでしょうか。続長官の明快なる答弁を求めます。  総理、このように自自公連立矛盾だらけであり、無理があり過ぎます。処女航海で沈没したタイタニック同様、内憂外患の氷山に激突して海の藻くずと消えるは必定、到底国民の負託にこたえられる政権ではありません。国民を道連れにしないでください。総理、可及的速やかに解散を決断し、国民の信を問うべきではありませんか。真摯な御答弁を求めます。  次に、西村眞悟防衛政務次官核武装発言等について質問をいたします。  西村議員は雑誌のインタビューで、日本も核武装した方がよいかもしれないということも国会で検討せねばならないと発言したとされていますが、政府の要職にある者がこのように発言したとすれば、我が国が国是とし、日米安全保障体制の前提である非核三原則を変更しようとしていると誤解されても仕方がありません。健全で活発な安保論議に水を差しかねない問題でもあります。  また西村議員は、核抑止力を論ずる中で強姦という比喩を多用されておりますが、この発言は、女性の尊厳を損ない、人権を無視した極めて悪質な暴言であり、断じて許せません。事もあろうにその西村議員は、政務次官辞任に当たり、防衛庁から栄誉礼で送られました。  青木官房長官は、慣例に従っただけだから問題はないという趣旨の見解を示されたようでございます。総理国民に対して遺憾、陳謝の表明を余儀なくされた問題の政務次官に対し、また国民感情自衛官の士気、栄誉礼の意義に照らして、今日でも栄誉礼は問題なかったと考えておられるのでしょうか。過ちを改むるにやぶさかでないとはこういうときに使う言葉だと思います。その無神経さに憤りを覚えつつ、青木官房長官の見解をお尋ねいたします。  西村議員が防衛問題に一家言を持っている人物であることを承知の上で防衛政務次官に任命したとすれば、総理西村議員爆弾発言を期待していたのではないかとさえ疑います。総理、御自身の進退も含め、責任のあり方国民の前に明らかにしてください。  次に、政治倫理及び政治改革に関連して伺います。  まず、さきに受託収賄罪の有罪が確定した藤波孝生官房長官への対応についてであります。  昭和六十三年に発覚したリクルート事件は、金に絡んだ政治家企業のゆがんだ関係をクローズアップさせました。このリクルート事件をきっかけにして当時の竹下内閣が崩壊し、自民党単独政権の終えんにつながったことを、小渕総理はよもやお忘れではないと思います。  リクルート事件後、平成四年に改正された公職選挙法では、収賄罪で有罪が確定した議員は自動的に失職することになりました。法理には刑罰不遡及の原則があることは承知しておりますが、しかし法改正前の事件とはいえ、立法府の一員として、汚職の罪で有罪が確定した議員は法の趣旨にのっとって当然辞任すべきものであります。  また、藤波元官房長官自民党離党届を出したそうですが、自民党総裁でもあられる小渕総理はそれで一件落着とされるのでしょうか。また、所信表明演説総理からこの問題についての一言の陳謝、釈明もなかったのはなぜでしょうか。総理の答弁を求めます。  さらに、当時、多数の政治家が藤波元官房長官同様リクルート社から未公開株を譲渡されながら訴追を免れたことから、収賄罪に係る法改正政治的懸案となったことを、この際、思い起こしていただきたいと思います。利益誘導政治から政策本位の政治へと転換を図ることが政治改革の原点であったはずでございます。  総理、今なすべきことは藤波元官房長官に速やかな議員辞職を促すとともに、新たな立法措置を講じて政治倫理の確立へ明確な姿勢を示すことでございます。しかるに、自民党あっせん利得罪に関する法律の制定を約束しておきながら、いまだに提出されておりません。総理、リーダーシップが問われているのであります。それとも、政治家個人への企業団体献金の継続が念頭にあってお蔵入りということでもあるのでしょうか。総理の答弁を求めます。  民主党は、公明党や社民党、参議院の会とともに、ことし五月、地位利用収賄罪処罰法案を提出いたしました。これは、国会議員が役所にあっせんして特定の業者等に不当に便宜を図って報酬を得た場合は罰するということにしたものでございます。これも一刻も早く審議入りし、法案の成立を図るべきだと考えますが、総理の答弁を求めます。  また、この法案を共同提案した公明党の続長官には、この法案成立に向けた決意をお伺いいたします。  次に、茨城県東海村で起きた臨界事故についてお尋ねしますが、質問に先立ち、今回の事故で被曝された方々に心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い御健康の回復をお祈りいたします。  私ども民主党は、事故翌日に現地を訪れ、橋本茨城県知事ともお会いし、混乱する状況を見聞し、地元の皆さんの御要望をお聞きしながら、政府初期対応の拙劣さ、指揮命令系統が全く機能していなかったことに愕然としたわけであります。事故発生から時系列で追っていけばいくほど、政府の対応の悪さが露呈されます。  加えて、総理政府事故対策本部長として現地を視察されたのは事故発生から六日もたった後のことでございます。なぜでしょうか。総理、御自身のことも交え、政府の対応がなぜここまでおくれたのか、見解をお聞かせください。  また、原子力安全面チェック機能が的確に機能していなかったことも問題であります。このままでは再び同じ轍を踏むおそれもあります。そこで私は、現行機構アメリカ原子力規制委員会、NRCのような強力な権限を持った完全な独立機関に統合、改組すべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。  また、原子力損害賠償補償法が適用されるのは身体への傷害、物品の損壊など直接の被害との報道があることもあり、今回間接的な被害を受けられた方々は何の補償もないんではないかという不安を抱かれております。総理、どのように取り扱われるのでございましょうか。  また、現在検討中の原子炉等規制法改正案は、核燃料加工施設などにも定期検査等を追加するようでありますが、その際事故調査したアメリカエネルギー省調査団が、帰国後に、日本では作業員は規則に従うものでルールを守れば事故は起きないとの立場だが、人はミスを犯すものである、ミスが起こっても防ぐシステムが重要と指摘しておりますが、ぜひ考慮していただきたいと思いますし、さらに私は、作業マニュアルがしばしば現場でつくられているという事実にも留意する必要があると思います。総理の見解をお尋ねいたします。  次に、山陽新幹線コンクリート剥落事故についてお聞きいたします。  ことし六月二十七日、山陽新幹線福岡トンネルでのコンクリート剥落を初め、平成八年以降、高架橋からのコンクリート片落下事故等山陽区間だけでも四十九件発生しております。幸い、これまでは大惨事を免れておりますが、再発防止は焦眉の急であります。なぜこのような事故が続発するのか。当時の資材、人材不足の影響なども原因と見られておりますけれども、国鉄OB交通評論家角本良平氏は、関係者緊張感自負心も失った結果だと、危機管理意識希薄化と体制の不備を鋭く指摘されております。  十月九日の北九州トンネル内での剥落事故再発では、大方の国民は、またか、本当に安全点検をやったのか、八月の安全宣言は営業を優先したのではないかと疑っております。不安を払拭し切れないでおります。  政府は、事故重大性にかんがみ、列車の運行をとめてでも即刻徹底的に安全総点検と対策を講じ、もって国民の信頼を回復するよう、とりわけJR西日本に対して強く指導、対策する責任があるのではありませんか。総理の見解をお尋ねします。  次に、政府が近々決定する経済対策及び第二次補正予算について伺います。  今、景気に明るさが見え始めたことは事実ですが、しかし、企業のリストラによる雇用不安が続き、所得の伸びが低迷し、また、企業過剰設備を抱えている状況では本格的に消費が回復する見通しは持てません。円高基調が進めばせっかくの回復の芽が摘み取られる可能性もあるわけであります。  私たちは、当初予算の段階から、構造改革につながるめり張りのきいた景気刺激型予算を編成するよう求めてまいりましたが、政府・与党は全く聞く耳を持たず、原案をがむしゃらに成立させました。しかも、当初予算が執行されてわずか三カ月ちょっとで第一次補正予算の提出を余儀なくされ、この国会で第二次補正予算を提出するとは言語道断であります。  当初予算も第一次予算欠陥品であったことは間違いありません。本来、このような失態は内閣総辞職ものであります。この点について、総理の見解をお尋ねいたします。  私たちは、本来の景気牽引役である民需が安定するまでは財政・金融政策による景気の下支えは必要であると考えておりますが、それは将来にツケを残すばらまきではなく、構造改革につながる経済対策でなければなりません。いたずらに規模をふやすのではなく、政策の質を高めるべきです。その一環として、効率的な補正予算を編成すべきであり、平成十二年度予算につなげるべきだと考えております。  すなわち、第二次補正予算では、公共投資の従来型配分をやめ、介護基盤の充実、IT投資等情報通信インフラの整備、バリアフリーの町づくりなどに集中して実施すべきであります。整備新幹線の前倒しを進められるなら、先ほど指摘したコンクリート剥落事故等の実態を踏まえて、いっそのこと予算新幹線点検事業に振り向けた方が賢明ではありませんか。  東海村の放射線漏れの例に見られるように、これから高度成長期のひずみとも言える事故が次々と起こる可能性がないとは言えません。新事業よりも、戦後日本の手抜き工事を総点検したり、社会資本を補修する事業に力点を置くように提言いたします。  また、コンピューターの西暦二〇〇〇年問題や耐震都市づくりへの対策にも万全を期し、過去を振り返り未来に備える安心・安全事業に力を入れるとともに、あわせて東海村事故政府初期態勢のおくれを反省し、原子力事故、災害、有事等に備えた政府危機管理体制を整備充実することを提言いたします。  失業や老後に備えたセーフティーネットを着実につくることも大事です。規制撤廃新規事業創出、新しい時代に対応した雇用の流動化知的財産権における競争力強化政府事業の徹底した民営化などを進める政策メニューに取り組むべきであります。この民主党提言に対する総理の見解を求めます。  次に、中小企業政策についてお尋ねいたします。  雇用の八〇%、事業所の九九%を占める中小企業は、我が国経済国民生活にとって極めて大切な存在であります。産業、雇用の空洞化が危惧されている現在、我が国産業の再構築に向けて中小企業活力の維持、起業家精神の喚起こそ日本経済が必要とする喫緊の課題であります。それには国民にビジネスチャンスが十分提供され、容易に新規事業を起こせる環境づくり重点施策として据える必要があります。  かかる観点から、今回政府が打ち出そうとしている新事業ベンチャー企業育成策を推察すると、極めて魅力の乏しいものと言わざるを得ません。最大の目玉であるエンゼル税制に関しては、株式会社の株式の譲渡損失を他の所得からも繰り越して繰越控除ができるようにすべきとの民主党の提言を葬り去りました。これから事業を起こそうとする人、ベンチャー企業に資金を提供しようとする人だけではなく、世界の市場も政府の対応を一笑に付するに違いありません。  さきの国会で民主党は、女性起業家の育成、補助金を交付されなかった場合の理由の開示、エンゼル税制ストックオプション税制の拡充、国立大学教官民間役員兼務の解除などを盛り込んだ起業家支援法案衆議院に提出しましたが、自民党だけではなく自由党公明党も反対されました。なぜでしょうか。自由党の二階大臣、公明党の続長官にその理由について御答弁を求めます。  また、実効ある事業承継税制の先送りも問題です。中小企業国会と銘打つなら、政府事業承継税制等を含め抜本的な施策に踏み込むべきではありませんか。中小企業金融安定化特別保証制度によって、中小企業の倒産が減り貸し渋りに効果を発揮したとの評価がある一方、かえって中小企業の足腰を弱め、逆に創意工夫に努力する企業ややる気のある企業が報われないとの批判もございます。加えて、政府はこの制度の詳細な実態を明らかにしていないことも問題であります。なぜ今回保証枠を十兆円追加するのか、その根拠も不明であります。私たちは、この制度について運用状況を厳しく検証した上、真に必要な金額のみを追加すべきだと考えております。  以上、我々の提言にどう答えていただけるのか、総理の答弁を求めます。  次に、我が国の財政についてお尋ねいたします。  現在、国と地方の長期債務残高は六百兆円という巨額に達しようとしております。その原因の一端が、バブル崩壊後の景気対策と称する財政出動の繰り返しにあったことは周知の事実であります。アメリカ、イギリスに比べても我が国財政事情は異常をきわめております。安易な赤字国債の増発が金利の上昇を呼ぶ可能性にも留意しなければなりません。さらに、円高基調につながり、二重に経済のマイナス効果をもたらす懸念があります。  以上の点についてどのようにお考えか、総理の見解をお尋ねいたします。  近く提出される第二次補正予算では、財源をまた赤字国債に依存せざるを得ない状況であります。こうした中、自自公三党の合意に、国債の円滑な消化を図るため、国債多様化を協議するという項目が盛り込まれました。今後、国債の消化が楽観できない状況を踏まえて深読みすると重大な懸念が沸き上がってくるのであります。すなわち、日銀の国債引き受けを想定しているのではないかとも読めるわけであります。総理財政法第五条が設けられた経緯をよもやお忘れではないと思いますが、日銀の国債引き受けはないと断言されますか、明確にお答え願います。  私は、今すぐ財政出動をすべてやめろとは申しません。しかし、少なくとも、今後どのようなスケジュールであるいは方法で財政の健全化を求めるかということを直ちに明確に示す必要があるのではないでしょうか。小渕総理は財政の健全化についてどのようなビジョンをお持ちなのでしょうか。十一月二日の衆議院会議総理は、経済が回復軌道に乗った時点で検討するとおっしゃいましたが、これでは答弁になっていません。逃げていては国民の理解も協力も得られません。国民一人当たり五百万円もの国と地方の借金をどう解消するのか、国民にメッセージを伝えるべきであります。総理、骨格なりともぜひお聞かせいただきたいと思います。  次に、金融についてお尋ねいたします。  昨年の金融国会から一年がたち、金融不安は少なくとも表面上は鎮静化したように言われています。しかし、問題の本質は果たして解決されたのでしょうか。私はそうではないと思います。  例えば、ペイオフを延期せよという問題のすりかえ論の背景を考えてみても、それは明らかであります。すなわち、もともと、二〇〇一年四月にはペイオフの凍結が解除されるので、それまでに金融不安を完全に解消しようという議論であったものが、いつの間にか、このままではペイオフ凍結解除は危険だ、だから延長してはという議論になってきたことは問題だと思います。ペイオフ凍結解除を先送りするかどうかではなく、金融自由化についての哲学とタイムスケジュール国民に示し、あわせて金融機関に徹底的に不良債権処理をさせ、不健全な金融機関を整理すべきだと考えますが、総理の御答弁を求めます。  次に、金融機関への公的資金投入問題についてお尋ねいたします。  金融再生法に基づく特別公的管理の適用第一号として一時的に国有化されている日本長期信用銀行が、アメリカ投資グループリップルウッド・ホールディングス社に営業譲渡されることになりました。その際、必要な公的資金は四兆円に上ると言われております。一年ちょっと前までは債務超過ですらないと言われた銀行が、経営陣も逮捕されたあげく、どうしてこのようなことになったのでしょうか。小渕総理は、昨年、長銀を住友信託銀行に救済させようとしたことをまさかお忘れでないと思います。この救済策を持ち出したことや巨額なコストを税金で支出する結果を招いたことについて、内閣の責任をどう感じられておられるのか、総理にお尋ねいたします。  受け皿の金融機関には、長銀から引き継いだ借り手に、必要な事業資金を供給する責任があると考えます。単に融資を引き揚げるような経営がなされるなら、四兆円もの公的資金を投入して長銀を国有化した意義がなくなってしまいます。新しい受け皿機関には、金融再生法の趣旨を理解し、預金者へのサービス、健全な借り手の保護という、私たちが強調してきた銀行の役割を十分認識した上で、効率的で信頼できる経営の基盤を確立することが期待されますが、政府としてどのような見通しをお持ちなのか、総理の見解を伺います。  続いて、商工ローン問題についてお尋ねいたします。  政府の失策で景気が後退し、金融問題に適切な手を打たなかったために、銀行の貸し渋りを背景に、過剰融資や高金利、苛烈な取り立て等で中小企業を苦しめている商工ローン問題が取りざたされております。公的資金を受けている金融機関が商工ローン業者に多額融資をしているといった問題もありますが、もともとこの問題は、小渕内閣の傍観者的態度によって引き起こされたと言っても過言ではありません。  民主党は、貸出金利の引き下げを図るため、出資法等の改正を衆議院に提出しておりますが、一刻も早く改正案を成立させるべきであります。  連立三党は民主党のこの案に賛成か反対か、小渕総理、二階大臣、続長官、それぞれの見解を明らかにしていただきたいと思います。反対とおっしゃるなら、その理由を述べていただきたいと思います。  教育問題についてお尋ねします。  総理はかねてより、富国有徳の国づくりを目指すと表明され、有徳の実現には、感動する教育、心の教育、いわゆる道徳教育が重要と強調されてこられました。しかし、教育現場は、道徳教育の充実どころか、親も学校も子供も心が荒廃し、学級崩壊、いじめ、少年犯罪や不登校生徒の増加など、暗いニュースが覆っております。児童生徒だけでなく、家庭内における児童虐待や、指導する側の教職員の不登校、不祥事の増加も伝えられるところであり、徳や心の不在が引き起こした惨状が現実に存在するのであります。どうにかしなければならないという気持ちは私も同じであります。しかし、あそこでもここでもと改革案を出したところで、その理念が明確でなければ教育が混乱するだけであります。  そこで、総理にお尋ねします。  教育改革の根幹となる理念は何ですか。そして、三党派合意の教育改革国民会議の設置の目的は何でしょうか。具体的にどのようなテーマを取り上げるおつもりなのでしょうか。  イギリスでは、もはや抽象的な教育行政では解決できないとして、教育成果を上げた校長や教頭に高給の保証、運営効率の悪い学校の民営化政策が発表され、子供の不登校問題に関しては、子供のずる休みを黙認した親に対して逮捕刑を含む罰則規定の導入を設ける政策が発表されました。手法に賛否両論があり、実効性に疑問の声もありますが、ブレア首相の教育に対する熱意や緊張感について学ぶべきものが大いにあると思いますが、総理、いかがですか。  安全保障について伺います。  自自公政策合意に、「わが国の緊急事態への対応」として、「有事法制研究を踏まえ、」「第一分類、第二分類のうち早急に整備するものとして合意が得られる事項について立法化を図る。」とありますが、具体的な内容は何でしょうか。「合意が得られる事項」と言うだけでは政策とは言えません。小渕総理はどのような内容の法整備を考えておられるのか、その全体像について御説明いただきたいと思います。  また、政策合意は、PKF本体業務への参加の凍結解除に関し法的措置を早急に講ずることも挙げておられますが、PKO参加五原則を維持するか変更するかについて、三党派で合意が得られているのかどうか。今国会中にその法改正を行うつもりなのか。あるいは、東ティモール情勢への人的貢献はPKFの凍結解除なしでも可能なのか、総理の見解を伺います。  さらに、PKO以外の国連活動に関する役割強化についても三党派合意がなされておりますが、その内容も不詳であります。これは自由党が提案している多国籍軍への後方支援を可能にする法律を制定するということなのでしょうか。多国籍軍へ後方支援を行うことについて三党派の合意ができているのでしょうか。役割強化は従来の憲法解釈論の範囲なのか、総理に伺います。  また、前国会で、いわゆるガイドライン関連法案の原案から船舶検査活動に関する条項を削除した問題について、自自公三党は前国会中にも別途立法措置をとると合意し、その後、与党の幹部は本臨時国会に法案を提出すると公言されていましたが、この約束はどうなっているのでしょうか、総理に伺います。  朝鮮民主主義人民共和国に対する政策について伺います。  北朝鮮による二回目のテポドンミサイル発射の可能性は本当に遠のいたのでしょうか。北朝鮮の核開発とミサイル開発を確実に停止させることが我が国安全保障上重要な問題でございます。この十月十三日、ウィリアム・ペリー・アメリカ北朝鮮政策調整官の報告書が公表されましたが、総理はこれをどう受けとめておられますか。  また、十月二十三日に韓国済州島で行われた日韓閣僚懇談会や、これに先立つ総理と金鍾泌首相との会談で何が話し合われたのでしょうか。このたびのチャーター便運航停止の解除と関係があるのでしょうか。食糧支援、朝鮮半島エネルギー機構への資金協力について今後どう取り扱うつもりなのか、総理にお伺いいたします。  日ロ領土交渉について伺います。  平成九年十一月にクラスノヤルスクで、二〇〇〇年までに領土問題を解決して平和条約を締結することが合意されました。しかし、この問題にイニシアチブを発揮してきたエリツィン大統領の健康不安やロシア国内の政治・経済の混迷が続く中、目に見える交渉の進展がありません。この三月、当時、在札幌ロシア総領事であったアンドレイ・クリフツォフ氏は、二〇〇〇年までに領土問題を解決し平和条約を結ぶとの基本的流れは変わっていないが、二〇〇〇年に平和条約を締結することは準備が整っておらず、達成が難しくなったと発言しております。クリフツォフ氏は、帰国後この問題を担当されることになっております。  政府は、この問題は二〇〇一年以降になってもそれは誤差の範囲で、継続協議やむなしと考えておられるのかどうか、領土問題への対応について総理の見解を伺います。  「信なくば立たず」とは政治の要諦であります。冒頭にも申し上げましたが、自自公政権国民の審判を経て成立したわけではなく、矛盾をベールで覆い隠しただけのモザイク政権であります。政治不信を増幅させるだけではないでしょうか。  この際、速やかに解散・総選挙を行い、国民に信を問うことこそ小渕内閣の最優先課題であることを重ねて申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  8. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 寺崎昭久議員にお答え申し上げます。  冒頭、議員から三党派による連立内閣に関しまして種々御指摘をされた上で、衆議院議員定数削減、安全保障企業団体献金についての所信表明で触れられていない点についてのお尋ねがございました。  私は、繰り返し申し述べておりますとおり、安定した政局のもとで政策を共有できる政党は、お互いに切磋琢磨し、よりよい政策を練り上げ、相協力して実行していくことが国民や国家のためになると確信し、今般の連立内閣を樹立したところであります。  その際、いわゆる多数の横暴ということをお話しされましたが、決して多数の横暴に陥ってはならないということは民主主義の原理原則だと思っております。そうした立場から、野党との建設的な討論、質疑などを通じて少数意見によく耳を傾けていくことは、これまた当然のことであると考えております。  今般の所信表明におきまして、所信表明の冒頭でお断り申し上げましたように、特に当面する経済、安全、安心の三つの課題に絞り、内閣の基本方針をお示ししたところでございます。なお、衆議院議員の定数削減、安全保障企業団体献金問題等につきまして、政府としては三党合意を踏まえ、忠実に対応してまいりたいと考えております。また、これらの問題につきましては、各党各会派におきまして十分議論を深めていただけるものと考えております。  次に、宗教団体が支持している政党政権参加と憲法第二十条の定める政教分離原則との関係についてお尋ねがありましたが、この点につきましては、昭和四十五年の質問主意書に対する内閣答弁書以来、累次にわたり明らかにされているとおりでありまして、宗教団体が推薦し、または支持した公職の候補者が閣僚に就任し、国政を担当するに至る場合において、当該宗教団体と国政を担当することとなった者とは法律的には別個の存在であり、宗教団体が政治上の権力を行使していることにはならないのでありますから、憲法第二十条第一項後段違反の問題は生じないと考えております。  解散につきまして最後にも御指摘がありましたが、我が国は現在、経済新生や安全対策など、直ちに実行、実現に努めなければならない緊急の課題が数多くあり、またその一方で、二十一世紀を見据え、長い視野で考え、先見性を持って手を打たなければならない課題もございます。  こうした中、私は、先ほど申し述べた考えに立ちまして連立内閣を樹立したところであり、この内閣に与えられた使命にかんがみ、また現下の緊急課題につき、まさに今国会で御審議をいただくときに当たりまして、安定的で確固たる政権運営に全力を傾注すべきであり、解散は全く念頭にございません。  次に、西村前政務次官の更迭問題についてお尋ねがございました。  先般、西村前防衛政務次官から不適切な発言がなされたため、その辞表を受理し、直ちに更迭をいたしました。この発言について、たとえ個人的見解と断った上のものとはいえ、政務次官という政府の要職にあることを深く自覚して適切に対応すべきであったと、まことに遺憾であります。  このたびの組閣では、国会審議活性化法の趣旨を踏まえ、政務次官人事にも十分意を用いたつもりではありましたが、このような事態になりましてまことに残念であり、任命権者として国民の皆様に心からおわびを申し上げます。  今後、内閣が一致結束して山積する重要課題に取り組み、国民の負託にこたえていくことこそ私としてなすべきことだと強く念じておるところであります。  なお、西村議員の防衛問題について、個人的な意見につきましては私としてもある程度承知はいたしておりましたが、結果として国民の不信を招き今回の事態に至りましたことはまことに申しわけなく、責任を痛感いたしておるところであります。  収賄罪により有罪が確定した議員国会議員としての身分の問題についてでありますが、数次にわたりまして法改正がなされたところであり、大変厳しい取り扱いとなってきていることにつきましては承知をいたしております。私といたしましては、政治家政治倫理の問題についてこれを深く受けとめているところでございます。  なお、御指摘の事例につきましては、法律上そのような取り扱いになっておらないことは議員も御指摘をされたとおりだと考えております。  あっせん利得罪についてお尋ねがありました。  この問題につきましては、かねてから自由民主党等においても議論が行われ、また、御指摘の法律案が参議院に提出されているものと承知をいたしておりますが、政府といたしましては、国会等において各党各会派で十分御議論をいただくことが基本であると考えており、その結果を踏まえ、適切に対処してまいりたいと考えております。  次に、東海村の事故についてでございますが、先般の事故に係る政府対応に関する御指摘がございました。  事故当日から、科学技術庁長官を本部長とする事故対策本部の設置や原子力安全委員の現場への派遣等に引き続き、内閣総理大臣である私を本部長として関係閣僚から構成される政府対策本部を設置し、この事故に対して、政府として可能な限りの対応を行ったところであります。  また、私としては、政府対策本部において十月四日に今後の対策を取りまとめた後、直ちに現地を視察し、政府一体の取り組みに対する地元の皆さんの理解に努めたところでございます。  直ちに現地に参らなかったことについての御批判もありましたが、政府としては対応なくして、その方策を考えることがまず第一のことでありまして、今申し上げましたように、それを考えた上で現地に参って対処いたしておるところでありますので、御理解いただきたいと思います。  現在、原因の徹底究明を行っているところであり、その結果を踏まえ、二度とこのよう事故の起こることのないよう努めてまいります。また、事故への初動対応にかかわりますと、事故重大性把握等に関し政府危機管理体制にまだ改善の余地があることも事実であり、危機管理体制につきまして万全を尽くしてまいりたいと考えております。  原子力安全行政について御指摘がありました。  我が国では原子力の規制と推進の機能を効果的に分離しつつ、科学技術庁または通商産業省が法令に基づく安全審査等を行い、さらに原子力安全委員会がダブルチェックをする仕組みになっており、原子力安全委員会はみずから擁する二百名に及ぶ専門家を動員して安全審査等に厳正に臨んできたところでありますが、しかしながら、今回の事故が起こってしまったことにつきまして、これを厳しく受けとめ、安全確保の抜本的強化を図ってまいります。  なお、省庁再編後は、内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置するなど、一層の体制整備、規制部局の充実強化を図ってまいります。  今般の臨界事故による損害の賠償についてでありますが、身体の傷害や物の損傷を伴わない損害であっても、放射線の作用等の間に相当の因果関係が認められるものであれば賠償対象となるものと考えております。政府としては、被害者救済に遺漏なきよう原子力損害賠償制度の適切な運用を図ってまいります。  原子炉等規制法についてでございますが、今回の事故にかんがみ、現在、原子炉等規制法の改正について検討を進めており、厳しい緊張感を持続するため、施設等のハード面の安全規制の強化のみならず、作業手順の遵守状況等、国が確認する制度の創設や従業員教育の義務化等、ソフト面の保安対策の強化についても検討いたしておるところであります。  次に、山陽新幹線コンクリート剥落事故についてのお尋ねでありました。  鉄道の安全輸送の確保は最優先の課題との認識のもと、徹底した原因の究明及び安全確保策の確立を図るとともに、JR西日本に対し、安全総点検に万全を期するよう求めるほか、厳正な指導監督を行うことにより、新幹線の安全輸送に対する国民の信頼が速やかに回復されるよう努めてまいります。  次に、十一年度当初予算及び第一次補正予算が欠陥予算ではないかという御指摘をいただき、お尋ねもありました。  私は、就任以来、内閣の命運をかけ我が国経済回復軌道に乗せるという決意のもとで、今日まであらゆる手段を講じてまいりました。例えば十一年度当初予算におきまして、景気回復に全力を尽くす観点から、いわゆる十五カ月予算考え方のもとに編成を行い、さらにその後の厳しさを増す雇用情勢に適切に対応すべく第一次補正予算を編成したところでございます。  このように、私は、その時々の経済社会情勢を的確に見きわめ、適切な措置を講じてまいったところであります。これらの効果の浸透などにより、景気は厳しい状況をなお脱していないものの緩やかな改善を続けており、これまで内閣を挙げて取り組んできた経済財政運営に御理解をいただけるものと考えております。  さらに、ここで重要なことは、手を緩めることなく経済を本格的回復軌道につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築き、未来に向け経済を新生させることであると考えております。こうした観点から、理念ある経済新生対策を早急に取りまとめ、あわせて第二次補正予算を編成し今国会に提出をいたします。  なお、予算編成に当たりましては、常に変化しております国民の皆様のニーズに的確に対応し、貴重な財源をより効率的、効果的に配分するよう今後とも努めてまいる所存でございます。  事故対応した点検社会資本の補修事業についてのお尋ねがありました。  山陽新幹線事故等を踏まえ、これらに共通した点検方法及び今後の補修のあり方の問題について、おのおの事故災害防止安全対策会議及び農林水産省、運輸省、建設省から成るコンクリート構造物の耐久性検討委員会を開催しており、これらの検討を踏まえつつ、適切に対処してまいります。  危機管理体制整備充実についての御提言がありました。  政府といたしましては、危機管理対応能力の強化を最重要課題と位置づけ、これまでの体制整備充実に努めてきたところであります。しかしながら、先般の東海事故への初動対応を顧みますと、事故重大性の把握等に関し、危機管理体制にまだ改善の余地があることも事実であります。今後とも、コンピューター西暦二〇〇〇年問題、耐震都市づくり、各種災害への対応を含む危機管理体制を常に点検、改善し、国民に安心感を与える対応の実現に向け努力いたしてまいります。  次に、失業問題等でありますが、失業や老後に備えたセーフティーネット整備についてお尋ねがありました。  国民の生活を支え、安心を与えるセーフティーネットである雇用保険、年金、医療、介護等の社会保障につきましては、各制度が将来にわたって安定的に運用、運営できますよう、その改革に取り組むとともに、各種の雇用対策介護基盤整備など関係施策の充実に引き続き努めてまいります。  新規事業創出雇用流動化知的財産権における競争力強化などに取り組むべきとの御指摘でありました。  我が国経済の自律的な発展を図るために、経済の生産性の向上を通じた産業競争力の強化、諸制度の見直しを含めた経済構造改革の推進が不可欠であると考えております。このような観点から、創業・ベンチャー支援の拡充等を通じた新規産業創出のための施策を推進するとともに、人材移動の円滑化や人材育成など新たな時代に対応した雇用政策の展開や、知的財産権の適切な保護、利用の推進などに努めてまいる考えであります。  相続税についてでありますが、この相続税において、中小企業事業承継に対して配慮がなされてきておると承知をいたしております。  いずれにせよ、相続税につきましては、昨年の政府税調答申等におきまして種々検討すべき事柄があるとされており、どのような内容の見直しを行うことができるかどうか、年末までに政府及び与党の税制調査会での議論をお願いしたいと考えております。  特別保証制度につきまして、御批判を交えてお尋ねがございました。  中小企業を取り巻く厳しい金融環境が解消されていないことから、中小企業へのセーフティーネットとしての性格も勘案し、今年度と来年度の合計で保証枠を十兆円追加することといたしたものであります。  本制度を一年間延長するに当たりましては、雇用の増大など建設的努力の計画を有することを要件といたしておりまして、中小企業者が厳しい経済状況を前向きに乗り切っていくための後押しとして役立てていただきたいと考えております。  次に、財政支出の拡大に伴う国債の増発が経済に及ぼす影響についてお尋ねがありました。  バブル崩壊後の累次の経済対策は、景気がスパイラル的に悪化していくのを防止し、その下支えに貢献したものと考えております。その結果、我が国財政は御指摘のように極めて厳しい状況にありますが、長期金利、さらには為替の水準については、国債の需給のみならず、景気の動向等さまざまな要素によって変動するものであり、実体経済に与える影響についても一概に申し上げることはなかなか困難な面がございます。  いずれにせよ、財政経済運営に当たりましては、今後とも金融・為替市場の動向について十分注視していく必要があると考えております。  国債日銀引き受けについてのお尋ねがありました。  確かに、戦前、戦中に軍事費等の調達のため多額の公債を日銀引き受けにより発行した結果、急激なインフレが生じたことを契機とし、現行財政法において健全財政主義の原則とあわせて公債の日銀引き受けを原則として禁止し、公債は日銀以外の市中資金により消化するという市中消化原則を定めておるところであります。政府としては、こうした財政法趣旨を遵守することが必要であると考えております。  次に、財政健全化についてのお尋ねでありました。  我が国財政が極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えますと、財政構造改革という大変重い課題を背負っておると常々痛感いたしております。ただ、せっかく上向きになりました我が国経済をさらに大きく前進させることにより、財政状況の改善が図られるような時点をしっかり見きわめる必要があり、その見きわめを誤り景気後退といった流れになってしまってはいけないと考えております。二兎を追う者は一兎をも得ずといったことのないよう、まずは何としても一兎を確実に得るべく、引き続き我が国経済が立ち直り安定成長の軌道に乗せるため全力投球で立ち向かっていくことが必要と考えております。  したがいまして、我が国経済回復軌道に乗り、足元がしっかりと固まった段階において、財政、税制上の諸課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にもそのあるべき姿を示すというのが順序であるということをぜひ御理解願いたいと考えております。  金融自由化についてのお尋ねがありました。  金融システム改革は、金融機関の商品、業務等の抜本的な自由化などにより、国民金融資産の有利な運用と円滑な資金調達を可能にし、我が国経済を活性化させるものであり、二〇〇一年までに我が国金融市場がニューヨーク、ロンドン並みに国際金融市場になって再生することを目指し、着実に推進しているところでございます。  また、預金等の全額保護の特例措置が終了いたします二〇〇一年三月までに揺らぐことのない強い競争力を持った金融システムを再構築するために、金融再生法及び金融機能早期健全化法をも活用しつつ、不良債権問題を解決する等、我が国金融システムに対する内外の信認の確保に全力で取り組んでおるところでございます。  次に、長銀に投入される公的資金に係る責任についてのお尋ねでございました。  昨年八月時点で長銀は債務超過にないと認識をされ、御指摘のような合併構想も推進されたことは事実であります。しかし、与野党合意を踏まえ成立いたしました金融再生法のもとで、長銀からの申し出を受け、金融監督庁の検査結果等を踏まえ、長銀は債務超過と認定され、同法による処理が図られているところであります。その結果、御指摘の金額に近い公的資金の投入という結果になり得るかと存じますが、これはあくまで預金者等の保護、我が国金融システムの安定及びその再生を図る上で不可欠なものであると考えております。  長銀譲渡先による新生長銀の経営方針についてでありますが、現在の最優先交渉先の提案におきましては、新生長銀は金融再生委員会の資産判定によりまして長銀が引き続き保有することが適当とされたすべての貸し出し関連資産を承継するとともに、承継した貸し出し関連資産に係る債務者に対し適切な融資を継続することとされており、新生長銀においては既存の顧客基盤を重視した経営が行われるものと考えております。  次に、いわゆる商工ローンの問題についてお尋ねがありましたが、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置づけ等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、お尋ねの法案についてはこのような観点から国会における御論議を注視してまいりたいと考えております。  次に、議員の教育に対する熱いお気持ちも承らせていただきましたが、まず、議員が詳しく引用されましたイギリスのブレア首相の進めておられる教育改革につきましては、私も承知をいたしており、関心を持っております。教育の問題は先進各国共通の問題であり、先のケルン・サミットでも初めて議題として取り上げられたところであります。  さて、お尋ねの教育改革の根幹となる理念でありますが、私は、かねてから富国有徳の考え方のもと、品格や徳のある国家を目指すべきであると述べてきておりますが、教育は国家百年の計の礎を築くものとの認識に立ち、これからの若者が夢を持てるよう日本を実現するための未来へのかけ橋と位置づけ、新しい世紀の到来を前に取り組むべき最重要課題として対応してまいりたいと考えております。  また、教育改革国民会議につきましては、今回の与党三党派の協議におきまして、青少年の人間形成を促すとともに、二十一世紀を支える有為の人材を育成する教育を実現するため、多方面の有識者が参加する教育改革国民会議を設け、学校制度、学術研究体制も含めた教育の基本問題を幅広く検討することとされたところでありまして、今後、その趣旨を踏まえ、私としても全力を挙げて取り組んでまいります。  次に、有事法制についてのお尋ねがございました。  議員より、有事法制の整備我が国への武力攻撃などに対し自衛隊等がシビリアンコントロールのもとで適切に対処するために必要であるとの趣旨の御指摘がありました。多くの識者もまた同様の御指摘をされているところであり、私も軌を一にするところであります。  政府といたしましては、有事法制についての研究をあくまでも憲法の枠内で行っており、議員同様、有事法制は重要な問題であるとの認識のもと、先般の三党合意を踏まえるとともに、国会における御議論国民世論の動向を注視しながら適切に対処してまいる所存であります。  次に、いわゆるPKOへの参加五原則についてのお尋ねがありました。  我が国が国際社会へ応分の貢献を行うべきことは当然でありまして、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、国会はもとより国民各位の御理解をいただきつつ、積極的に進めてまいりたいと考えております。  いわゆる五原則につきましては、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たって、憲法で禁じられた武力の行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定された国際平和協力法の重要な骨格でありますので、仮に凍結解除されるとしても、五原則を変更することは政府としては考えておりません。他方、この問題につきましては種々議論があるところでもありますので、今後各党各会派において十分御議論いただきたいと考えております。  東ティモール情勢の人的貢献についてでありますが、我が国は東ティモール問題の平和的解決のためできる限りの支援を行う旨表明しているところであり、いわゆる人的貢献についても、既に国連東ティモールミッションには文民警察官及び政務官を派遣したところであり、また先般、UNHCRの実施する人道的な国際救援活動への支援の可能性を検討すべく、現地に調査団を派遣したところであります。  多国籍軍への後方支援を可能とする法律の制定についてでありますが、政府といたしましては、国連を中心とする国際平和のための努力に対し、憲法の枠内で貢献することが必要と考えており、このような観点から、三党合意や今後の国会の御議論等を踏まえつつ、検討してまいりたいと考えております。  次に、船舶検査活動に関する法案の本臨時国会への提出についてのお尋ねがありました。  船舶検査活動につきましては、周辺事態安全確保法案等の修正協議におきまして三党派間でぎりぎりまで協議された結果、最終的に協議が調わず、別途立法措置をとるとの前提で削除されることとなったものと理解しております。政府といたしましては、早期に三党派間で協議が調い、新たな立法措置が講じられることを強く期待いたしておるところであります。  次に、北朝鮮に関するお尋ねでありました。  我が国は、ペリー報告を全面的に支持しております。先般の日韓閣僚懇談会等では、日本、米国、韓国が引き続き緊密に連携していくことを確認いたしたところであります。  今般の日朝間のチャーター便再開は、米国、韓国との連携も踏まえつつ、我が国政府として独自に判断したものであります。食糧支援については、今後さまざまな懸案への北朝鮮側の対応を総合的に勘案しつつ検討すべきものと考えます。KEDOは、北朝鮮の核兵器開発を封ずるための最も現実的かつ効果的な枠組みであり、引き続き支持していく考えであります。  最後に、日ロ問題についてお触れになられました。  日ロの平和条約交渉につきましては、両国間で東京宣言やクラスノヤルスク合意を初めとする一連の合意及び宣言が積み上げられ、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの交渉指針が確立いたしております。  問題が難しいものであることは多言を要しませんが、今まさにこの交渉指針に基づき、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう日ロ双方が全力を尽くす時期であると考え最大の努力を傾注いたしたいと考えております。  以上、お答えを申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣二階俊博君登壇、拍手〕
  9. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 寺崎議員より私に対し、運輸大臣としてではなく、自由党としての質問が三点ございました。  我々政党政治家が常に心しなければならないことは、あくまでも国家国民のための政治を行うことであります。今日、我が国はかつてない危機に直面しており、経済、社会、教育などあらゆる分野での構造改革を大胆かつスピーディーに断行することが強く求められております。  御承知のように、自由党はかかる認識に立って党の基本政策である「日本再興へのシナリオ」をまとめました。この基本政策を実現するために私たちは、理念と政策が一致するならいついかなる政党とも協力することを内外に約束してまいりました。  自由民主党連立政権を組むに至ったのも、小渕総理・総裁を初め自民党が我々自由党考えに理解を示され、ともに協力し、日本の将来のため、しっかりとした新しい船をつくろうと決断されたからであります。小渕総理及び自由党の小沢党首のリーダーシップのもと、お互いの基本政策、基本理念について真摯な意見交換が行われ、政策合意に至りました。今回の公明党を加えた三党連立政権も同様であります。  議員は、選挙公約のほご、国民への背信行為自由党批判されましたが、政党政治家にとって大事なことは、政治は何をなすべきかであり、いたずらに政策よりも政争を優先し、展望のない閉塞状態を続け、国家国民を不幸に陥れることではないと考えております。  なお、定数削減や国連平和活動への参加の面で自自合意よりいささか後退しているのではないかという指摘でありましたが、単独政権ではなく連立政権の性格上、党の政策を一〇〇%直ちに実現することが困難なことは当然であります。自由党としては、国会においてさらに国民の皆さんの理解と協力を得る努力を今後とも続けてまいりたいと考えております。  次に、民主党御提案の起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案につきましては、さき国会で、政府提案の産業活力再生特別措置法案の対案として衆議院に提出され、廃案になったものであります。自由党は、与党として、政府に対し中小企業者の事業再構築の円滑な実施を義務づける「中小企業者への配慮」という一条を新たに起こすことなど、自由党主張どおり作成された政府案が最善と考え、賛成し、民主党の対案には反対したものであります。  次に、商工ローンについてのお尋ねでありますが、自由党は、昨年の臨時国会において、自由民主党と協議し、中小企業に対する貸し渋りを救済することで意見が一致しましたので、中小企業者に対する特別保証制度を創設いたしましただけに、商工ローン等、この種の問題に対しても重大な関心を持っております。行き過ぎた債権の回収などに明らかな違法行為がある場合、厳正な取り締まり、処罰が行われるべきことは言うまでもありません。加えて、事業者と比べて情報量など不利な立場に置かれている借り手や連帯保証人に対して、契約締結の際に契約内容について十分な説明責任が果たされるべきであります。  自由党といたしましては、かねてより金融サービス法を制定して市場ルールの整備を厳正に行うべきであると主張しております。この問題につきましては、既に与党三党においても検討が進んでいるようでありますので、民主党案を含めて活発な議論が行われた後、速やかに成案を得ることができるものと期待しております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣続訓弘君登壇、拍手〕
  10. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 寺崎昭久議員の代表質問にお答え申し上げます。  私に対するお尋ねは、五点ございました。  まず、政教分離に関する自民党公明党批判に対するお尋ねがございました。  今回の三党連立政権は、自民党小渕総理・総裁の申し出により、政策合意を経て成立したもので、自民党政党として公明党に対し批判があるとは伺っておりません。さらに、憲法上も全く問題はなく、政教分離考え方につきましては、ただいま総理が御答弁されたとおりでございます。  次に、自民党との連立政権参加に関するお尋ねがございました。  経済社会を含め、あらゆる面で日本が危機的状況にある今、自民党小渕総理・総裁からの連立政権への参加要請を受け、公明党は、自民か非自民かという政党の側からの論理を乗り越え、中道政治を実現するチャンスと受けとめ、政策合意の上に連立参加を決定したものであり、必ず国民の皆様方の御理解がいただけるものと確信しております。また、このたびの連携は、公明党自民党補完勢力となるのではなく、主体性を持ちながらその政策を実現し、民衆の側に立った政治を実現するために参加したものであります。重ねて国民の皆様の御理解を賜りたいと存じます。  次に、お尋ねの地位利用収賄罪処罰法案につきましては、与野党の枠組みが変わったこともあり、公明党として与党協議の場で成立を働きかけていくと伺っており、私としても努力してまいりたいと存じます。  次に、民主党提出の起業家支援法案への反対理由についてのお尋ねがありました。  民主党が提出された起業家支援法案は、当時政府が提出した産業活力再生法案に盛り込まれているものや、既に措置済みや、または運用で十分可能なもの、逆に十分な検討が必要であり性急に結論を出すことが困難なものなどがあり、公明党としては政府が提出した産業活力再生法案に賛成したものであります。  最後に、商工ローン問題についてのお尋ねですが、商工ローン問題は、御指摘のとおり緊急に対応すべき問題であり、公明党は、利息の上限引き下げに加え、一つは、過剰貸し付けの禁止規定に罰則を設けるなど貸金業規制法を見直して規制を強化する、二つ目に、根保証の問題や連帯保証人のあり方を再検討する、三つ目に、過酷な回収実態に対して法的な対応が可能なのかなどを検討すべきと考え与党協議に働きかけていくと聞いております。  なお、出資法等の改正法案民主党から提案されていることは承知しておりますが、私としては、与党として適切な対案をつくるべきであると考えております。いずれにいたしましても、重要な問題であり、国会における御論議を注視してまいりたいと存じます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣青木幹雄君登壇、拍手〕
  11. 青木幹雄

    国務大臣青木幹雄君) 答弁の前に一言申し上げます。  私は参議院議員であります。その自覚と誇りを持って一生懸命頑張っていきますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、寺崎議員にお答えをいたします。  私に対する議員の御質問は、西村前防衛政務次官が離任の際栄誉礼を受けられたことに対する記者の質問に私がお答えした、その真意を問われたものと考えております。  私がお答えいたしましたのは、本人が固辞する場合を除き関係法令に基づき栄誉礼を行うこととされており、本人の意思により従来どおり栄誉礼を受けられたことはいたし方ないことであったというお答えをいたしております。  しかし、西村前防衛政務次官は、みずからの発言が不適当であったことを認め更迭されたものであり、その上、任命権者である総理が本会議という公式の場で国民に対し遺憾、陳謝表明を余儀なくされたことは、そのみずからの責任の重さを十分認識されるべきものだと考えております。栄誉礼を受けるか受けないかの判断は、政治家としてみずからが良識に従って判断されるべきものだと考えております。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  12. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 岡野裕君。    〔岡野裕君登壇、拍手〕
  13. 岡野裕

    岡野裕君 私は、自由民主党及び我が同志自由党とを代表して、去る十月二十九日に行われた所信表明演説に関し、総理大臣質問をいたします。  この際、あらかじめお断りを申し上げます。  何もここで自自公三党の仲のよさ、みつ月ぶりを見せつけるわけではありません。しかし、三党話し合いの結果、数ある質問項目のうち、私からはおおむね中小企業対策を中心とする経済対策及び外交・防衛問題を、同じく盟友公明党からは教育及び社会保障関係を重点に質問を申し上げることと相なりました。総理、よろしくお願いを申し上げます。  さて、過ぐる十月二十五日、キルギスにおいて拉致されていた日本人四人全員が、六十三日ぶりに無事解放されたところであります。本当によかったなと国民一同胸をなでおろし、長くつらい思いに耐えてこられた四人の方々及びその御家族に対し、心からお喜びを申し上げる次第であります。何よりでございました。  ここ二カ月余りの間、我が小渕総理陣頭指揮のもと、キルギス国のアカーエフ大統領を初め関係者との緊密な連携により、厳冬、酷寒期を迎える前に全面解決に至りましたこと、幾多粘り強い重畳的な努力の成果であり、当事者国の首脳を初めとする関係者に対し、深甚なる感謝の意を表する次第でございます。ありがとうございました。  さて、先般、我が国が今まさに浮沈をかけた歴史的転換期にあるという強い危機感のもと、自民党自由党公明党三党の政治的、政策合意成立し、十月五日に三党連立による第二次小渕改造内閣が発足をいたしました。  思えば、今年夏、第百四十五国会終盤におきまして、国旗・国歌あるいは組織犯罪防止はたまた住民基本台帳等重要法案の審議が難航に難航を重ね、閉会日の前日に至って、なお動議の連発により実に十四回にわたる記名採決、堂々めぐりが行われるという参議院実態が露呈をしたところであります。これぞ少数与党の限界と申してよろしいでありましょう。  時あたかも、景気浮揚、経済新生、あるいは国民の安全、安心、介護制度等あまた重要案件を待ったなしに処理していかねばならぬ、この今であります。果たして参議院の現状はこれにこたえることができるでしょうか。答えは無論ノーであります。  かくて、我が党を初め、その思いを同じくする自由党、次いで公明党の三党に、切磋琢磨を前提とした信頼感が醸成され、国家国民を思う必然の産物として自自公三党の連立が定まってまいったものと認識をいたしております。  しかるに、一部マスコミ等は、これをもって議席七〇%を超える巨大与党の出現と報じ、大政翼賛会的強硬路線に走るのではないかなどといぶかるなど、国民に誤解を与えかねまじき論調も見られるところであります。  しかし、三党連立意義は、何よりも我が参議院において考えを等しくする与党勢力の安定であり、その意味で政権基盤がより強化されたにとどまるものであります。  我々は数におごるつもりは毛頭ありません。三党により、より広く国民各界各層の声を十分に吸い上げ、これを国政に反映し、まさに対話と実行により、ただただこの歴史的転換期に適時適切に対処してまいりたいと考えるがゆえにほかなりません。  自自公連立を陣頭指揮によりみずから実現をされた小渕総理のお考えはいかがでありましょうか。  次に、目下、我が国の将来を左右する課題はまさにメジロ押しであります。景気回復はもとより、経済構造改革、社会保障や政治、行政の諸改革は喫緊の命題であります。同時に、教育、安全保障東海村を契機とする原子力防災対策等、これまた国のありさまを決める基本テーマであります。  各党党首間で国の基本問題に関する国会討議、いわゆるクエスチョンタイムが実現されようとしております。また、政府委員制度を廃止して、官僚に頼らず政治主導で答弁をする国会審議の改革が実現し、来年からは憲法調査会がこれまた設置されるところであります。  憲法問題については、タブーなく幅広く論議を交わし、我が国の歴史と伝統への誇りを取り戻し、日本のアイデンティティーをいかに確立してまいるか。あるいは、荒廃しつつある教育を根本的に見直し、どのように人づくりを進めていくか。さらに、国際社会、アジアにおける我が国の果たす役割について大きく見直していくべきではないか。このような基本課題について、真摯な論議を重ね、世論を喚起していくことが肝要であります。  総理の「二十一世紀日本の構想」懇談会で、かねてから総理提唱に係る富国有徳の構想が討議されております。人づくりはまさに国づくりでもあります。されば、この視点を踏まえ、総理が二十一世紀へのかけ橋をつくる内閣として我が国をどのように展望されておられるか、所見をお伺いいたします。  来る十一月十二日は天皇陛下御在位十年記念式典が行われます。民間でも全国的に盛大な祝賀の催しが計画されている趣であります。  私どもは、このときこそ国旗日の丸を掲揚し、国歌君が代の唱和により、二十一世紀の明るい日本に向けて、国を挙げてのお祝いといたしたいと願っております。政府はその取り組みに万全を期されたいことを要請するものであります。  次に、景気中小企業雇用等々の問題について質問をいたします。  我が小渕内閣の発足以来、積極的な財政金融対策等各種景気浮揚策によりまして、不安を残しながらも緩やかな改善が続き始めた今日であります。しかし、個人消費に強さがなく、設備投資も低迷をしており、厳しい状況は今後も変わりないと論ずる向きがないわけではありません。  かかる中にあって、景気の腰折れを招くことなく本格的な回復のための機動的な財政運営、中小企業向けの税制改正、同じく思い切った年末融資等々、総合的な経済新生対策が策定されようとしております。間もなくこれらの対策を内容とする第二次補正予算が提出されるでありましょう。  とするならば、今回十兆円を超えるとおっしゃる経済新生対策効果のほどはいかがでありましょうか。また、景気を自力反転の軌道に乗せることの公算はいかがでありましょうか。総理の込められたる御抱負を重ねてお聞かせいただければ幸いであります。  中小企業政策議会は、中小企業を弱者としてではなく我が国経済のダイナミズムの源泉、こうとらえております。これこそ技術革新、雇用創出、地域経済の担い手であるとして、大きな政策の転換を求めております。中小企業こそ戦後復興の原動力でありました。優良な部品生産等高い技術の結晶を提供してきたまさに中核であります。中小企業者は、きのうも、そしてきょうも歯を食いしばって頑張っております。  総理は、中小企業、地場産業活性化のため、新しくどのよう対策を打ち出されるのか、また、ベンチャー企業のためチャレンジ精神と創造性をどうかき立てていかれるのか、その具体的対応についてなお若干の補足をお述べいただきたい。  また、二〇〇〇年から経済新生のスタートを切る起爆剤として、総理のいわゆるミレニアム・プロジェクトにつきましてさらなる御決意を承りたい、かように存じます。  今年夏以降、大手都市銀行等の間で持ち株会社の設立、大型合併等、メガバンク構想が打ち出され、国民は驚きと期待を持って受けとめました。こうした金融機関の各種大再編・統合は、当然取引関係にある一般企業の再編を伴うものであります。金融システムが再生し、あるいはさらに産業の再構築が進むものと思われます。  また、企業は、国際競争に生き残りをかけて一層のリストラを強めていくことでありましょう。日産自動車の例、これまたしかりであります。しかし、競争力強化だけの切り捨て的な安易な人員整理は、雇用不安、ひいては社会不安を助長するおそれなしといたしません。大企業は、過剰雇用を新しいビジネスや同じく新しい分野に生かすべきであり、これぞ経営者の手腕であり、また責任であります。  総理は、安易とも見られがちな人員整理と深刻な雇用情勢について、一つ、どのような認識を持っておられましょうか、二つ、補正予算では雇用問題にどのように対処していくおつもりなのでありましょうか、御見解をちょうだいしたいと存じます。  次に、外交防衛についてであります。  今日の国際情勢は、世界経済の停滞に加え、軍事対立、紛争等が続出し、特にアジアにおいては平和を脅かしかねない状況が続いておること、御存じのとおりであります。  冒頭申し上げたキルギスでの日本人拉致事件の教訓として、治安不安定な地域では、情報収集を初め、事件再発防止対策を十分に講ずべきこと、論をまちません。複雑、不安定な国際関係において、国連初め主要国の協力体制の強化が不可欠であります。特に、アジアの安定と平和を確立するため、日本にはひときわ大きな期待が寄せられているところであります。我が国の外交は、その中核的役割を担う重大な責任を持つことを自覚すべきであります。  かかる状況の中にあって、来年七月二十一日から三日間、九州・沖縄サミットが開催されます。この総理の大英断は、世界的注目を集め、我が国にとってもはかり知れない大きな意義を持つものであります。国を挙げ、何が何でも成功をかち得なければなりません。  過般、青木、野中新旧官房長官現地に飛ばれました。機を見るに敏なる行動であります。サミットを契機に、沖縄県民の多年にわたる御労苦、要望を改めて真剣に受けとめ、普天間を初めとする沖縄の基地問題、経済の問題に一つの転機を促す格好の機会と申することができましょう。サミット会場あるいはインフラの整備、警備体制に万全を期することは言うまでもございません。  日本、沖縄からアジアに向け、あるいは世界に向けて平和と繁栄のメッセージを胸を張って発信できるよう総理にその決意と取り組みにつきましてお伺いを申し上げます。  東ティモールへの我が国対応については、湾岸戦争の教訓にかんがみ、結局出すのは金だけだ、かよう批判を受けることのないよう、人的貢献について、人道面を初め、できる限りの対応協力をすることが重要であります。  与党三党の政権合意では、PKF本体業務の凍結解除するため法的措置を早急に講ずると、かようにあります。東ティモールの情勢等をも踏まえ、可及的早期の実現を望むものであります。五原則を踏まえたPKFへの参加を初め、国連の多様な平和活動への積極的な参加等につきまして、総理はいかに対応をされていかれるのでありましょうか、御方針をお伺いいたします。  前通常国会において、かねて懸案であったガイドライン関係法が成立をいたしました。我が国の周辺事態への備えとして大きな成果でございます。しかし、肝心な我が国の有事法制は、今のところ全く不備と申せましょう。政府が進めてきた有事対応の検討は、遺憾ながらまだ研究段階にとどまるのではありませんか。海上警備についても、強化すべきことが浮き彫りになっております。早急に法整備の具体案を作成し、国民の理解を得ながら、合意を得られるものから、来る通常国会からでも速やかに立法化を図るべきではないかと、かように思考するところであります。  北朝鮮問題を初め、我が国の防衛にすきを見せないよう安全保障の基本方針の策定、有事法制への対応について総理の基本的な考え方をお伺いいたします。  終わりに当たり一言申し上げます。  この臨時国会は、四十八日間の短期であります。が、第二次補正予算案、中小企業対策原子力防災、オウム真理教対策等、重要法案がまさにくびすを接しているところであります。  かような懸案の多い国会審議に当たりましては、できるだけ各会派の御理解を得、審議を充実し、参議院としての存在感を高めていくことが肝要であります。初めての役人抜き答弁で万一審議立ち往生とでもなれば、また何をか言わんやであります。政府はすべからく一こま一こまが国家国民のためと、かように心得られ、胸を張った答弁を心がけられますよう精励されんことを望んでやみません。  自自公三党は、合意した重要課題の実現を図りつつ、小渕内閣を存分に支えてまいる所存であります。総理におかれましては、二十一世紀の日本を見据え、世論支持率の極めて高いその国民の期待に沿うべく、ますますリーダーシップを発揮されんことをこいねがいまして、私の代表質問を終わります。  よろしくお願いを申し上げます。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  14. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 岡野裕議員にお答え申し上げます。  冒頭、議員から三党派の連立に至るまでの参議院側の認識や状況にお触れになられつつ、この連立内閣の使命等についてお尋ねがございました。  これまでも繰り返し申し述べておりますが、私は、安定した政局のもとで、政策を共有できる政党が互いに切磋琢磨し、よりよい政策を練り上げ、相協力して実行に移していくことが国民や国家のためだと確信し、三党派の広範な政策合意をもととして連立内閣を樹立いたしたところでございます。  今後の国政運営に当たりましては、議員御指摘のとおり、現下の歴史的な転換期に当たり、必要な政策を適時適切に実行し、国民の負託と信頼にこたえていくことこそが、この内閣の使命であると改めて肝に銘ずるとともに、その際、対話と実行の基本方針のもと、広く国民各界各層との対話を積み重ね、政策に反映させるべく全力を挙げてまいる覚悟であります。  議員から多くの基本的課題について御指摘をいただいた上で、二十一世紀の我が国の展望についてのお尋ねもありました。御指摘のように、「二十一世紀日本の構想」懇談会におきまして、二十一世紀のあるべき国の姿について、外交や経済、教育、文化、社会福祉など幅広い視点から有識者の方々に検討を進めていただいております。私自身も一泊二日の合宿へも参加するなど積極的に取り組んでおるところでありますが、今後の懇談会の検討の成果を踏まえつつ、富国有徳の理念のもと、物と心のバランスがとれ、品格や徳を有する国づくり、これを目指してまいりたいと考えております。  とりわけ、資源の少ない我が国にとりまして、御指摘のように、人づくり、教育の問題は、国家百年の計の礎を築くものであり、新しい世紀の到来を前に取り組むべき最重要課題であると考えます。このため、教育をめぐる諸課題について鋭意取り組んでまいりたいと考えております。  天皇陛下御在位十年記念式典についてのお尋ねでありました。  政府といたしましては、来る十一月十二日に天皇皇后両陛下御臨席のもと、天皇陛下御在位十年記念式典を挙行することといたしており、式典では国旗を掲げ、国歌を斉唱するなど、国民こぞってお祝い申し上げたいと考えております。  経済新生対策効果景気の自力反転の可能性についてのお尋ねがありました。  本対策には、二十一世紀型社会インフラの整備などの公共投資を、景気の腰折れを招かないよう適切な規模で盛り込むとともに、公共需要から民間需要へのバトンタッチを円滑に行うべく個人消費や設備投資を喚起し、将来の発展基盤を確保するための構造改革を一層推進する内容といたしてまいりたいと思います。  このような内容を経済新生対策に盛り込むことにより、我が国経済を本格的な回復軌道につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築いてまいります。  次に、中小企業、地場産業の活性化及びベンチャー企業育成のための対策についての御質問がありました。  私は、総理就任以降、改めて各地の中小企業の現場をお訪ねし、また、多くの中小企業関係者と懇談し、その実情を自分の目と耳でしっかりとつかまえるよう努力してまいりました。私は、数多くの中小企業の努力こそが日本経済の原動力の一つとなっていると考えております。  こうした考え方に立ち、経営の向上に懸命に努力されている中小企業や地場産業にきめ細やかな支援策を講じていく一方で、自助努力の支援という原則に立って創業、すなわち業を興すこと、そしてまたベンチャー企業の振興を進めていくつもりでありまして、そのため今後法律改正や予算等を含めた総合的な対策を進めてまいります。  次に、ミレニアム・プロジェクトについてお尋ねがありました。  新たな千年紀の始まりを目前に控え、新しい産業を生み出す大胆な技術革新に取り組む産学官共同のプロジェクトを情報化、高齢化、環境対応の三つの分野で進めてまいります。今後、省庁横断的な取り組みと官民の十分な連携を図り、平成十二年度予算総理特別枠、すなわち、情報通信・科学技術・環境等経済新生特別枠におきまして特段の予算配分を行うなど、強力な推進体制を構築し、明るい未来を切り開く核をつくり上げてまいりたいと考えます。  雇用情勢の認識と補正予算についてのお尋ねでありました。  雇用情勢は、勤め先や事業の都合による失業者、いわゆる非自発的失業者が九十八万人と依然多く、厳しい状況にあると認識いたしております。政府としては、第二次補正予算の編成に当たりまして、中小企業雇用の創出・安定対策産業構造の変化に対応した人材の育成のための施策等の雇用対策に重点的に予算措置を行うことにより、雇用の創出、安定に万全を尽くしてまいります。  明年の九州・沖縄サミットへの決意と取り組みについてお尋ねがありました。  我が国議長国を務めます九州・沖縄サミットは、岡野議員が述べられましたとおり、我が国にとって大きな意義を持つものとして、最重要の外交日程考えており、全力で取り組んでまいる考えであります。二〇〇〇年という節目の年にアジアで行われることを踏まえ、急速な高齢化、高度情報化やグローバル化等により生じる諸問題を乗り越えて、二十一世紀がよりよく明るいものとなるよう、また、アジアの視点を取り入れつつ、議員御指摘をされましたように、力強いメッセージを沖縄から発出いたしたいと考えております。  国連平和維持隊への参加を含めた国連の多様な平和活動への積極的な参加について御質問がありました。  我が国が国際社会への応分の貢献を行うべきことは至極当然であり、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、国会はもとより国民各位の御理解をいただきつつ、積極的に進めてまいりたいと考えております。  なお、いわゆる参加五原則については、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たりまして、憲法で禁じられた武力の行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定された国際平和協力法の重要な骨格でありますので、仮に凍結解除されるとしても、五原則を変更することは政府としては考えておりません。他方、この問題については種々御議論があるところでありますので、今後、各党各会派において十分御議論いただきたいと考えております。  最後に、我が国安全保障に関する御質問でありましたが、我が国の防衛にすきを見せてはならないとの岡野議員の御認識を私としても共有するところであり、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命、財産を守ることは政府の最も重要な責務であり、我が国安全保障体制を一層強固なものとするための努力を今後とも引き続き責任を持って行ってまいる考えであります。  御指摘の安全保障の基本方針の策定について、三党合意や今後の国会での御議論を踏まえつつ検討してまいりたいと考えます。また、有事法制につきましても、政府としては重要な問題と認識しており、先般の三党合意を踏まえるとともに、国会における議論国民世論の動向などを注視しながら適切に対処してまいる考えであります。  議員御指摘のように、実は今国会から、いわゆる国会活性化法によりまして政府委員の廃止等、従来国会で行われてまいりました制度、慣行等が新たになるわけであります。国会活性化に対しまして、議会としてもいろいろの新しい方策がとられることだろうと思いますけれども、政府といたしましても、その法制定の趣旨を踏まえ、政府として全力を挙げて、政治優位といいますか、そうした形の政治を目指して懸命の努力をし、誠実に対処いたしていきますことを最後に申し上げまして、答弁といたしたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  15. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて午後一時まで いたします。    午前十一時五十八分休憩      ─────・─────    午後一時一分開議
  16. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続けます。浜四津敏子君。    〔浜四津敏子君登壇、拍手〕
  17. 浜四津敏子

    ○浜四津敏子君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました小渕総理所信表明演説を中心に、当面する諸課題につき、総理並びに関係大臣質問をいたします。  去る十月五日、自民党自由党公明党・改革クラブによる連立政権が発足いたしました。初めに、連立政権意義、目的及び課題を確認させていただきます。  世界は今、新たな世紀へ向けての大変革に揺れ動いています。そうした中、我が国は、従来型政治・行政システムの機能不全、経済の低迷、急速な少子高齢化、教育の荒廃など、一刻の猶予も許されない多くの課題に直面しております。また、第三次産業革命とも言われる世界的な経済環境の変化、ますます深刻化する地球環境問題、地域紛争や災害、貧困などへの人道支援などにも的確かつ機敏に対応していかなければなりません。  こうした状況にあって、今、政治に求められているものは何か。従来型の停滞、先送り、小手先の政治国民不在の権力闘争などの後ろ向きの政治では、課題解決も迅速かつ的確な対応も望むべくもありません。  経済不況に苦しみ、現在と将来の生活に大きな不安を抱く国民の痛みを我が痛みとしつつ、国民の願いを真正面から受けとめ、国民のための改革に全力を挙げる、その先頭に立つのが政治でなければなりません。当然のことながら、政治は、ひたすら国民方々のため、国民への奉仕が本来の任務だからであります。政治は、今こそその本来の任務と機能を回復し、課題解決に総力を挙げるときであります。  この数年間、よりよい政治あり方を求めてさまざまな試行錯誤が繰り返されてきました。戦後五十年間続いてきた万年与野党対決型の硬直した政治は、九三年、細川連立政権発足後、大きく揺らぎ始め、昨年の参院選の結果を受けて完全に終わりを告げ、本格的な連立の時代に入りました。  こうした時代における連立政権にとって大事なことは、何を目指しての連立なのか、その目的と課題を明らかにし、その実現に全力を尽くすことであります。今、巨大与党などの批判がありますが、巨大かどうか、それ自体が問題なのではありません。問題は、連立政権が何を目指し、そしてどういう結果を出したのかにあります。その結果を見て初めて政権の評価が決まるのであります。大事なことは、国民方々のために少しでもよい結果を積み重ねていくことです。  そこで、この連立政権の目的及び課題は何か。私は三つに要約できると思っております。  まず第一は、何といっても経済再生です。日本経済を衰退から発展へ、確かな軌道に乗せることであります。それこそが、国民の生活安全保障であり、国の財政再建を可能にする出発点だからです。  第二は、不安から安心へ、すなわち本格的な少子高齢社会にあって、安心できる子育て、介護、年金、医療のシステムに再構築する道筋をつけること。  第三は、物、金さえあれば、もうかりさえすれば、自分さえよければいいとのエゴの社会から、互いに助け合える人間性豊かな質の高い社会への転換を図ること、そのための環境、教育、人権施策を大きく前進させることであります。  公明党は、切迫した国難ともいうべき危機打開のため、政治の安定と政治本来の任務及び機能回復を図り、かつ日本構造改革を着実に実現することを目指し、同時に公明党結党以来掲げてきた人間主義の中道政治前進のため、連立政権参画を決断いたしました。この目的を達成し、できるだけ多くのいい結果を出して、国民の皆様におこたえしてまいりたいと思います。  連立政権発足に当たり、その意義、目的、課題につき、総理の御見解と御決意を伺います。  次に、少子化問題について伺います。  日本の少子高齢化は諸外国に例を見ない速さで進んでいますが、その対策が十全になされていないことに国民は大きな不安を持っております。とりわけ、少子化対策については決定打を欠いたまま今日に至っております。少子化の主な原因として、職場優先などの企業風土、固定的な男女の役割分業などによる育児の負担感、仕事との両立の負担感が挙げられています。  そうした状況を見たとき、少子化対策の第一の課題は、仕事と育児を両立できる環境づくりにあります。労働時間の短縮、フレックスタイム等による労働時間の弾力化の促進を初め、育児休業制度の充実、子育てが一段落した後もとの職場に復帰できる再雇用制度の普及といった雇用環境の改善と保育サービスの拡充をどう具体的に推進されるのか、お伺いします。  次に、子育てに金銭的、物理的負担が大きいことが少子化の原因の一つと指摘されています。児童手当の抜本拡充を初め、乳幼児医療費の無料化など子育て家庭に対する経済的な支援や子育ての悩みの相談など、多面的な子育て支援をどう図っていくかが第二の課題です。  第三の課題としては、子供が大切に育てられる環境をつくることです。子供の虐待の防止と救護のための支援策を初め、子供の人権を守り、親を孤立無援に放置するのでなく、地域社会で温かくはぐくんでいくシステムを早急につくり上げる必要があります。  この三つの課題に今後どのように取り組まれるのか、総理の御決意をお伺いします。  次に、教育について伺います。  不登校やいじめ、自殺、非行、援助交際、そして学級崩壊と、長年指摘され続けてきた教育の現状はますます目を覆うばかりの惨状であります。  かつて我が国では、人づくりは木づくりと言われていました。人を育てるのは苗木を育てるのと同じ、何の木かよく見てそれにふさわしい育て方をせよというのです。桜の苗木、梅の苗木、松の苗木など、それぞれ木の育て方は一本一本異なる、画一的に同じやり方を押しつけてはそれぞれのよさ、美しさを引き出すことはできない、そればかりか枯らしてしまうということです。  画一的管理型教育が子供たちを押しつぶしてきた一番の原因であることは論をまちません。とともに、知識偏重教育が教育をゆがめたもう一つの原因としてだれもが指摘してきたところであります。  知識偏重教育では、全人格でなく、その小さな一部分である知性だけが育成され、その結果、日本は知識や技術の面では世界でも最も高い水準にあると評価されながら、その一方で、モラルの低さ、真の知性の欠如、感性の低俗さなどが常に指摘されてまいりました。このままでは、欧米からもアジアからも人間としての共感や精神的な支持は到底得られず、孤立の道をたどりかねません。それは、礼儀、徳性、良心、正義感、他者への思いやりなど、人としての当たり前、人間としての基本、すなわち大事な精神性を育ててこなかった当然の結果であります。  そして、この精神の衰退こそが、実は日本社会のすべての分野における現在の危機的状況をもたらした根本原因であることを明確に認識しなければならないと思います。その認識なくして、真の教育の改革も日本再生もなし遂げることはできないのであります。  今回の連立政権合意書の中で教育改革国民会議を設置することが盛り込まれましたが、この基本認識をしっかり踏まえて大胆に議論し、待ったなしの教育改革を実現すべきであります。  私は、今後の教育改革を進めるに際して、具体的には特に次のような観点が重要であると考えます。  第一に、画一的な知識教授型の教育から多彩な知恵創出型の人間教育への転換です。  子供たちが学校の中のみでなく、広く社会や地域の中で多種多様な人たちから生きた教育を学べるような仕組みと環境をつくることです。職業経験、社会経験、人生経験豊かな大人たちとの触れ合いは、子供たちにとって大きな触発となり、生き生きとした体験学習となります。また、その中から礼儀や思いやりといった人間としての基本がはぐくまれ、そして真の人権教育も平和・環境教育も進むことになりましょう。  第二に、学歴社会の打破であります。  学歴にとらわれることなく、年齢や国籍、生活状況に左右されることなく、生涯にわたってだれもが学ぶ機会を得る仕組みを拡大することであります。  以上のように、日本を真に再生させる一番のかぎは教育改革にかかっており、そのためにも早期に大胆な教育改革をすべきと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。  次に、行政評価制度について伺います。  公明党の強い主張により、与党三党派は、連立政権発足に当たり、行政改革を着実に進める観点から、客観的基準に基づく政策評価を徹底することを合意いたしました。  これまで数々の税金のむだ遣いを見聞きしている国民の間には、政府事業に対する根深い不信感があります。政治の使命が国民への奉仕にあると同様、行政の本来の使命は国民へのサービスであり、奉仕であります。税金のむだ遣いなどはこの使命を忘れ切った姿と言わざるを得ません。  今後、政府は、行政機関が行政サービスのあるべき姿を具体的項目と数値指標で目標設定し、その達成状況国民に情報公開した上で、その評価を行い、次の政策予算づくりに生かしていくという行政評価制度を導入して、税金のむだ遣いができない仕組みをつくることにより国民の信頼を取り戻さなければなりません。行政に本来の任務を果たさせるための行政評価制度は、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカを中心に欧米で急速に一般化しつつあります。  ところで、すぐれた政府、すなわち国民に対して正しい行為をする政府経済が成功するために必要な条件であると言ったのは、「国富論」をあらわしたアダム・スミスであります。ここにも日本経済日本社会再生の大事なヒントがあります。  そこで、数値目標を含めた客観的基準に基づく政策評価の徹底、生活者の視点への配慮、情報公開の原則、外部評価・立法府のチェック体制の強化などを基本原則とした行政評価法の制定を含め、二十一世紀に向けた抜本的な行政改革の遂行につき、総務庁長官の御決意を伺います。  さて、九月三十日に東海村のジェー・シー・オー核燃料施設において、作業員臨界事故により大量の放射線を被曝する事故が発生しました。心よりお見舞い申し上げます。  事故発生後、放射線医学総合研究所並びに緊急被ばく医療ネットワーク会議を中心に被曝者の救命のための医療が迅速に進められました。その治療において、三名の被曝作業員のうち二名に臍帯血移植が行われ、臍帯血移植治療の重要性が改めて認識されることとなりました。  今回の迅速な医療対応は、日本臍帯血バンク支援ボランティアの会代表有田美智世さんらとともに、我が党がその早期設置を強く求めてきた公的臍帯血バンクが本年八月にスタートしていたことが大きな力となりました。公的バンク設立がおくれていたら、今回の治療が間に合わなかったであろうことを思うと、有田代表を初めボランティアの皆様、そして御支援をいただいた多くの国民の皆様に心から感謝申し上げます。  ちなみに、日本における臍帯血移植例は、本年七月三十日現在、百五十四例、うち成人に対する移植例は十二名に上っており、順調に白血病等の治療の実績を積み重ねております。  今後、今回のよう原子力事故発生を未然に防止する体制を整えることが第一の課題であることは言うまでもありません。しかし、同時に、万一の場合に備えて万全の医療体制を厚生省、自治省、科学技術庁、防衛庁など政府一体となって整えておくことが必要不可欠であります。  さらに、今回の救命医療において重要な役割を果たした公的臍帯血バンクの財政基盤確保のためには、臍帯血バンク利用料への保険適用が必要不可欠であります。政府は、その実現を決断すべきであります。  国民の生命最優先、そして安全、安心の社会を実現するための万全の危機管理医療体制構築につき、総理の御決意を伺います。  最後に、政治家個人に対する企業団体献金についてであります。  政治家個人への企業団体献金は、政治腐敗に対する国民の厳しい指摘の中で、九五年に施行された改正政治資金規正法附則九条に「施行後五年を経過した場合において、これを禁止する措置を講ずるものとする。」と定められたところであります。  公明党は、従来から、政治家個人への企業団体献金は法律の定めに従い来年一月より禁止すべきであると主張してまいりました。公明党として与党協議の場においてもこのことを強く主張することを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  18. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 浜四津敏子議員にお答え申し上げます。  冒頭、浜四津議員から、政治あり方につきまして高い御識見を示されるとともに、公明党連立政権参画への決意の背景、理由につきまして明らかにされ、また力強い決意を述べられた上で、改めてこの連立政権意義、目的、課題についてのお尋ねでありました。  繰り返して申し述べておるところではありますが、安定した政局のもとで政策を共有できる政党が互いに切磋琢磨し、よりよい政策を練り上げて相協力して実行に移していくことが、結果、国民や国家のためだと確信し、三党派の広範な政策合意をもととして連立内閣を樹立いたしたところであります。  したがいまして、この内閣の使命は、経済、社会保障、安全保障政治・行政改革、教育、環境等の課題について三党派の合意を誠実に実現していくことであり、これにより国民の皆様の信頼と負託にこたえてまいりたいと考えております。  特にこの内閣が取り組む当面の最重要課題といたしまして、第一に、経済新生に向けた総合的な取り組み、第二に、原子力の安全・防災対策や、いわゆるオウム対策関連法による安全な社会の実現、第三に、年金や介護など安心で活力ある社会の整備などを考えており、今国会で関連法案等を御審議願いたいと考えております。同時に、教育など富国有徳の理念のもと、長い視野で考え、先見性を持って手を打たねばならない課題につきましても、果敢に取り組んでまいりたいと考えております。  以上申し述べた課題は、議員御指摘の三つの課題、すなわち経済再生、安心、人間性豊かな質の高い社会への転換と重なるものであり、政府与党一体となってともに取り組んでまいりたいと考えております。  議員御指摘のように、巨大与党に対する御批判があることは承知をいたしております。しかし、議員が御指摘のように、その与党としての責任というものはどのような結果を出すかにかかっておるわけでありまして、改めて三党として連立意義を明らかにし、結果として国民のためになる政策を行う、このための連立であることをぜひ国民の皆様にも御理解をいただきたいと考える次第であります。  少子化対策等につきましてでありますが、少子化対策としての雇用環境の改善等につきましては、仕事と家庭が両立できるような環境の整備や育児のために退職した方の再雇用制度の普及促進等は重要な課題であり、積極的に取り組んでまいります。  保育サービスにつきましては、多様化し、かつ増加していく保育需要に的確に対応し、充実に努めてまいります。  次に、子育てに対してでありますが、児童手当につきましては、与党間で所得課税の諸控除などをあわせて検討することとされており、今後の与党間の協議を踏まえながら、少子化対策全体を検討する中で、具体的財源確保等に留意しつつ検討していく必要があるものと考えます。  乳幼児の医療費につきましては、現在、国において公費負担している難病の子供、未熟児、障害児等以外の医療費一般については、少子化対策関係で中期的には検討すべき課題考えますが、国として新たな特別の対策を講じることは現在のところ考えておりません。  子育ての悩みの相談についてでありますが、保育所を活用した地域子育て支援センターの整備等により、地域における身近な相談支援体制の充実に努めてまいりたいと考えております。  次に、教育の問題に触れられました。  特に、知識偏重の教授型から知恵創出型に変えていかなきゃならない、また、学歴社会の打破ということを強くお訴えをされました。大変貴重な御意見であろうかと考え、この問題につきましては、ぜひ、教育改革について御指摘をいただきましたように、我々としても全力を挙げて努力していかなきゃならぬと考えております。  私は、かねてから、この国のあるべき姿として、経済的な富に加えて、物と心のバランスがとれ、品格や徳のある国家、すなわち富国有徳を目指すべきだと考えてまいりました。教育は国家百年の計の礎を築くものであり、これからの若者が夢を持てるよう日本を実現するための未来へのかけ橋として位置づけ、新しい世紀の到来を前に取り組むべき最重要課題として対応してまいりたいと考えております。  昭和二十二年に教育基本法が制定されて以来、これまで政府としては、昭和六十二年の臨教審の答申や、橋本内閣の六大改革の一つとして教育改革を位置づけ推進するなど、さまざまな努力がなされてきたところであります。しかしながら、いじめや不登校、いわゆる学級崩壊など教育全般についてさまざまな問題が提起され、またケルン・サミットでも先進各国共通の悩みとして教育の問題が初めて議題として取り上げられたところでありまして、二十一世紀に向け国民的に議論を重ねていくことが大切であると考えております。  私自身経済社会情勢の大きな変化や国際化の進展のもとで、例えば生涯学習、地域社会と家族、さらには個と公、すなわち個人とパブリックとしての公の両立という視点から教育をどう考えるのかといった問題意識を持っておるところでございます。  また、先ほどお答えいたしましたが、議員御指摘のとおり、今回の三党派間の協議におきまして、多方面の有識者が参加をいたします教育改革国民会議を設け教育の基本問題を幅広く検討することとされたところであります。今後、私といたしまして、この趣旨を踏まえ全力を挙げて取り組んでまいりますが、基本にさかのぼって幅広く二十一世紀に向けた教育のあり方について大胆に検討していただきたいと考えております。  次に、原子力災害の医療体制についてお尋ねがありましたが、まず、現地医療機関において放射能汚染の有無の検査、治療等を実施、その上で困難な障害治療等については放射線医学総合研究所を中心としたネットワークで対応することといたしておりまして、今後とも政府が一体となりましてその一層の充実強化に取り組んでまいります。  また、かねてから公明党が取り組まれてこられました臍帯血移植につきましては、平成十年四月の診療報酬改定において保険適用し、また、平成十一年度予算において臍帯血バンクに対する補助を計上いたしたところであります。臍帯血バンクの運営費用については、今後どのよう対応が必要か検討したいと考えておる次第でございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたします。(拍手)    〔国務大臣続訓弘君登壇、拍手〕
  19. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 浜四津敏子議員の代表質問にお答え申し上げます。  行政評価法の制定を含め、二十一世紀に向けた抜本的な行政改革の遂行についての総務庁長官の決意いかんとのお尋ねでございました。  行政評価につきましては、国家行政組織法などの関係法律や、中央省庁等改革の推進に関する方針に基づき、全政府的に厳正で客観的な政策評価を行うためのシステムを構築したところであり、この具体化を図りつつ、着実に実施していくことが重要であると認識しております。  このため、現在、総務庁を中心として各省庁との連携を図りつつ、政策評価の実施方法等に関するガイドラインの策定作業や、有識者の参集のもとで評価手法等の研究を進めているところでございます。  その際、御指摘のとおり、客観的な政策評価手法の確立、評価内容、評価結果等の積極的公表、公正中立な立場からの第三者的評価の実施などの諸点を踏まえ、国民的視点に立った政策評価制度となるよう十分に配意してまいります。  このような検討に基づく新しい制度のもとでの各府省及び総務省の実施状況を踏まえ、速やかに法制定の実現に向けた検討をしてまいる所存であります。  私は、以上のよう政策評価制度の確立を含め、明治以来の行政システムを抜本的に改める歴史的な大改革と認識している中央省庁等改革の推進に全力を尽くしてまいる所存であります。  また、中央省庁等改革と密接不可分の課題である規制緩和、地方分権についても積極的に推進するとともに、特殊法人等の整理合理化などさまざまな課題についても着実に取り組んでまいる決意であります。(拍手)     ─────────────
  20. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 立木洋君。    〔立木洋君登壇、拍手〕
  21. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、小渕首相に質問をいたします。  自自公政権成立で、だれもが最大の危惧を抱いたのが数の暴走を繰り広げることでした。成立から約一カ月、早くもその危惧は最悪の形であらわになりつつあります。  国会で、専守防衛の否定、徴兵制復活や自衛隊は天皇の軍隊等々、憲法などお構いなしの特異とも言える軍事強化一辺倒の主張を行ってきた西村氏を防衛政務次官に任命するなどということは、自自公三党の絶対多数という数の背景がなければでき得なかったことでしょう。そして非核三原則を公然と覆す核兵器保有発言であります。  そこで、伺いたい。  首相は、今回の組閣について、見識と経験を重視したと説明し、一昨日の衆議院会議では、西村氏がどういう発言をしてきたかある程度承知していたと答弁をしました。承知していたということは、まさにそういう西村氏の見識と経験を重視して任命したということではありませんか。あいまいにせずに具体的に答えていただきたい。また、内閣の方針に反するというなら、なぜ辞職ではなく罷免にしなかったのですか。  いま一つ、企業団体献金の禁止についてであります。  来年一月から政治家個人への企業団体献金を禁止することは、自民党も賛成して法律に明記されたことであります。しかも、事の発端は、リクルート、佐川急便、共和等々、自民党議員が次々と金権・汚職事件を引き起こしたことにあります。その自民党企業献金の禁止は間違いだった、だからほごにすると言い、過ちを改むるにはばかることなかれだなどと平然と述べる資格が本当にあるんでしょうか。これは、過ちを改めない、それでもはばかることなかれという開き直り以外の何物でもないではありませんか。  首相、あなたは企業献金禁止の法律の実施について衆議院で、それは国会で各党が決めることと逃げの答弁を繰り返しましたが、あなた御自身はどう考えているのですか、明確な答弁を求めます。  次に、実施時期が迫ってきた介護保険についてであります。  希望するすべての人が安心して介護サービスを受けられる介護保険制度の確立は、国民の強い願いであります。ところが、今日最大の問題は、現状のまま実施すれば特養ホームが九万人分不足し、ホームヘルパーも三三%の基盤整備率にしか達していないように、保険料は徴収するが必要な介護サービスを提供できないという事態を招くことにあります。  保険というのは、資格のある人にはきちんと給付・サービスが提供されてこそ成り立つシステムであり、介護サービスが提供できないというのではその前提条件を欠くことになります。  だからこそ日本共産党は、この法律ができて以降、三度にわたって介護基盤整備の促進、高い保険料や利用料の引き下げと低所得者への減免制度の創設、認定制度の改善などを政府に要求してまいりました。そして保険として成り立つ見通しが立つまで保険料の徴収を凍結するよう提案したのであります。  ところが、自自公三党合意は、保険料徴収のわずか半年間延期というだけで、肝心の介護基盤整備の強化策もなければ財源対策もありません。中身なしの半年徴収延期論であって、これでは矛盾と負担増を先送りするだけではありませんか。なぜこういうことになったのでしょうか。  政府が、安心できる介護保険制度をつくることより、社会保障に対する国の財政負担の軽減を優先させたからであります。現に来年度は介護保険スタートの年だというのに、来年度予算概算要求を見ますと、介護基盤整備関連費が三千四百億円も減らされているのであります。この姿勢を改めることこそ肝要ではありませんか。  このことを指摘した上で、改めて幾つかの提案を行うものであります。  第一に、特養ホームとホームヘルパーの抜本的な増設、増員を図ることであります。  介護を希望するすべての人にサービスが提供できるようにするのは当然であります。そのために、基盤整備の目標を引き上げるとともに、国庫補助率の引き上げ、特養ホームの用地取得費への国庫助成の創設を図るべきであります。  第二に、高齢者、低所得者への保険料の減免制度をつくることです。  今、高齢者の七六%が住民税非課税であります。保険料の無料を含む思い切った軽減措置をとるべきではありませんか。現在、国民健康保険の滞納者は約三百五十万世帯に上っています。この上に介護保険料が上乗せされればさらに滞納者が急増することは必至であり、そうなれば医療も介護も受けられないという悲惨な事態が国民を襲うことになるのです。  第三に、低所得者に対する利用料の減免制度を設けることです。  利用料を取れない人が四割に上る自治体や、高い利用料のため介護サービスを辞退するというケースも指摘されており、使える介護制度にするには国の財政支援による減免制度が不可欠です。  第四に、以上の点の改善を来年の四月までできないというのなら、介護保険制度は国による契約違反ということになります。したがって、サービス提供の準備が必要最小限整うまで保険料の徴収は延期し、その間に制度の改善、改革に全力を挙げるべきです。  もちろん、保険料の徴収を延期したとしても、介護を必要とする現状からして介護サービスをおくらせることはできません。この間は、国の福祉水準を後退させない、低所得者を排除しないということを最小限の前提とした暫定措置を講ずるべきであります。  また、財源は、政府がやろうとしているように今の財政構造を変えないことを前提とした赤字国債の発行では、将来の増税や負担増を招くだけであります。大型公共事業や銀行、大企業支援などのむだを大胆に圧縮することによって賄うべきであります。  以上の提案について首相の答弁を求めます。  次に、九月三十日に発生した東海村の核燃料加工工場での臨界事故についてであります。  この事故は、日本のみならず世界に大きな衝撃を与えました。権威ある科学雑誌ネーチャーの社説は、東海村での臨界事故は近年の原子力事故で最悪のものとなった、科学技術庁に原子力の安全性を十分に規制、監督する能力がないことが明らかになったと指摘しています。  日本共産党国会議員団は、この間数度にわたり東海村や全国の核燃料加工工場を調査いたしました。そこで鮮明になったことは、安全神話にしがみつく原子力行政がいかに災厄をもたらすかということであります。  日本共産党の調査に対し、事故が発生した工場、ジェー・シー・オー側は、十時三十五分に事故が発生した直後に臨界の可能性ありと判断し、十一時十五分には科学技術庁にファクスで連絡を入れています。さらに十一時五十八分には、科学技術庁の運転管理専門官が現場を訪れた際にも、ジェー・シー・オーの所長は臨界事故考えざるを得ないと説明しています。それにもかかわらず、科学技術庁が臨界事故を確認したのは、最初の連絡を受けてから五時間近くも後になってからであります。  ここには、臨界事故は起こらないと信じ切っているために、臨界の判断も対応の判断も何もできないという科学技術庁の背筋の凍りつくようなお粗末な実態が浮かび上がっています。実際、今回の事故は想定されていなかったために、中性子線の測定器もない、臨界を制御するすべがない、防護策もなければ、避難対策もない。文字どおりないない尽くしでした。  そこで、まずお聞きしたい。  ジェー・シー・オーのウラン加工工場をいかなる場合でも臨界事故は起こらないと認定したことは明らかに間違いであった、このことをはっきりお認めになるのかどうか、明確にお答えいただきたい。  一昨日の衆議院会議で、我が党の不破委員長は、安全神話を原子力行政から一掃して、原子力発電の危険性を踏まえた行政への転換を断行するよう求めました。これともかかわって、次の三つの提案を行うものです。ちなみに、この提案は世界では常識と言うべきものであり、国際的に突出しておくれた日本原子力行政の現状を打開することを願っているものであります。  第一は、通産省、科学技術庁、電力業界、原子力メーカーなどによる常軌を逸した安全宣伝をやめ、原子力は危険であるからこそ安全の確保に万全を期すことが重要であることを率直に語るべきであります。  かつて、旧動燃は、安全を強調する余り、角砂糖一個の大きさでも五千万人を汚染するという猛毒プルトニウムを飲んでも大丈夫だというPRアニメまでつくって批判を浴びました。今やこんな国は世界じゅう探してもどこにもないでしょう。政府全体で、原子力は安全という宣伝のために年間何と百三十四億円という膨大な広報費を使っています。そんなことに使うぐらいなら、それを安全対策の強化に回す方がはるかに有効ではありませんか。  第二は、原子力発電は、過酷事故、シビアアクシデントが起こった場合の危険性を認識して、徹底した安全・防災対策を講ずるべきであります。  IAEA、国際原子力機関の安全諮問委員会は、一九八八年、アメリカのスリーマイル島の事故、旧ソ連のチェルノブイリの事故なども踏まえて、事故を起こさないように安全対策を強化するとともに、原子力発電が設計で考えられた以上の過酷な事故、炉心が溶け出し、大量の放射線がまき散らされるというシビアアクシデントが起こった場合のことも十分認識して、各国の原発はそれを踏まえた対応を行うべきだと勧告をいたしました。  私は、この国際会議の勧告を踏まえて、去る一九九〇年、外務委員会で過酷事故対策をただしたわけであります。ところが政府は、我が国原子力施設は現実にシビアアクシデントが起こるとは科学的には考えられない程度にまで安全性が高められている、したがってシビアアクシデントの見地から安全規制を強める必要はないと考えておりますと、この国際会議の勧告を拒否する姿勢を重ねて明らかにしたのでした。その後も現在に至るまで、過酷事故を前提とした安全規制や防災対策を拒否し続けているのであります。世界が受け入れているこの勧告を日本も全面的に受け入れるべきではありませんか。はっきりお答えいただきたい。  第三は、新しい知見があれば、それを絶えず安全対策の中に組み込むことであります。今回のジェー・シー・オーの事故では、安全規制に過去の臨界事故の経験が生かされていませんでした。あるいは、阪神・淡路大震災をもたらした地震の揺れは、現在稼働中の全原発が想定している揺れを大きく上回ったものにもかかわらず、原発の耐震基準は問題ない、稼働中の全原発は安全だという、全く現実と反する結論を出しています。  以上の三点、首相の答弁を求めます。  次に、ますます深刻さが増す雇用問題、中小企業、農業など産業政策についてただすものです。  フランスの十月三十一日付ル・モンド紙が、日本資本主義の変化が進んでいるという特集を組み、その中で、リストラの波が日本列島に砕け散っていると指摘して、大企業による大量の人員削減がもたらす社会的経費は極めて大きいと分析をしています。これは、ルールなき資本主義と言われた日本資本主義がさらに変貌し、一段とルールなき社会に突入しようとしている姿を鋭くえぐり出した論評であります。  ところが、この深刻な事態に対し、鈍感どころか、リストラ、首切りを推奨さえしてきたのが小渕内閣であります。首相は、リストラは当然であり、失業率が上がるのもやむを得ないと表明いたしました。経企庁長官は、まるで人ごとのように、リストラを推し進めていく中で大量の解雇が行われるのではないか、全体では恐らく百万人を超えるでしょうと語る始末であります。だからこそ、日産が二万一千人もの人員削減計画を発表しても政府としては全く打つ手なしで、ただ傍観するだけであります。  衆議院の代表質問で我が党の委員長は、リストラの横行を抑えることに政治が力を発揮すること、雇用拡大の決め手となる労働時間の短縮、解雇規制法など労働者保護のルールの確立など三つの提案を行いました。ところが首相は、リストラ、解雇規制も、労働時間の短縮による雇用拡大も、すべて労使間の問題として何一つこれを前向きに受けとめる姿勢を示しませんでした。  そこで、改めてお聞きしたい。  首相、あなたは今もリストラは当然、失業率が上がっても仕方がないという立場なんでしょうか。労働者の権利を守る新たな法制は一切必要ないという立場なんでしょうか。あなたは去る七月、衆議院予算委員会で我が党の大森議員質問に対して、サービス残業は犯罪だと答弁しました。法治国家なら犯罪を放置することは許されません。首相、サービス残業を禁止するために今まで何をしてこられたのですか、またこれから何をされるのか、はっきり述べていただきたい。  このことを伺った上で、あなた方の失政によって生み出された数百万人の失業者対策に絞って幾つかの提案を行い、明確な見解を求めます。  第一は、雇用保険の給付期間の延長と拡充についてであります。  今、高齢者や障害者には延長給付の制度がありますが、四十五歳から五十五歳、五十五歳以上の方々は、それぞれ有効求人倍率が〇・三四倍、〇・一倍と低く、再就職は困難をきわめています。こうした働き盛りの失業者及び失業率の特に高い地域での延長給付を行うべきであります。また、新卒者は雇用保険未加入のため失業手当そのものがありません。就職の意志があって、職業訓練を受けようという人たちに対して、最低限の生活を維持しながら職業訓練を受けられる手当を支給すべきです。  第二は、政府がこの九月から実施した緊急地域雇用特別交付金の改善であります。  政府は、これによって三十万人の雇用拡大と銘を打っていますが、公的就労事業にはしないという方針で自治体の事業にさまざまな縛りがかけられているため、雇用の拡大にも、つなぎ職を提供することにもなっていません。この予算を拡大し、失業者に臨時の公的就労の場を提供するようにすべきです。  第三は、職業訓練の抜本的な拡充を図ることです。  今、厳しい雇用情勢のもとで、競争率が激しく、多くの失業者が希望する職業訓練を受けられない状態にあります。臨時的に民間の専門学校なども活用して、職業訓練の機会を大幅に拡充すべきであります。  次に、中小企業対策についてです。  政府は、今国会中小企業国会と位置づけていますが、問題はその中身であります。  日本中小企業は、物づくり基盤技術や技術革新探求の面でも国際的に高い評価を受け、また、大企業がリストラを進めている中でも雇用の担い手となって日本経済に貢献してまいりました。文字どおり、日本経済の主役というのが日本共産党の位置づけであります。これからの日本経済のことを考えたとき、この役割を十分に果たせるようにすることは政治に課せられた大きな責任ではありませんか。  この中小企業の発展を支える上で不可欠なことの一つは、中小企業の経営を守るルールをしっかりと確立するということであります。  ところが、自民党政府がやってきたことは何でしょう。商店街を守るルールであった大型店の出店規制はなくす、親企業の無法から下請企業を守るルールはあっても、実効性を担保する体制はつくらない。日産の大リストラ計画は、労働者、下請企業、地域経済、自治体など、広い範囲に衝撃を与えていますが、何一つこれを実質的に規制するルールはありません。いわば無法地帯に置かれてきたのが大多数の中小企業であります。  この国会中小企業国会と言うなら、最低限、次のことを行うべきです。  第一に、今、下請企業は、全国に百万近くあると言われる下請中小企業の取引を監視する下請検査官は、通産省と公正取引委員会を合わせてもたった七十一名であります。これではチェックできるはずがないではありませんか。無法な取引をやめさせるため、下請検査官の人員を大幅に拡充し、自治体にも配置すべきであります。  第二に、日産のような大規模なリストラは地域経済全体にも巨大な被害をもたらします。このような大規模なリストラに対して、自治体との協議や計画の変更、中止の勧告ができる制度、リストラアセスメント法をつくるべきではありませんか。  第三に、金融のルールであります。暴利をむさぼり暴力的に回収を行う商工ローンによる被害は、多数の自殺者を出すなど悲惨なものであります。しかも許せないことは、この商工ローンに資金を提供していたのが、巨額の公的資金を受けながら貸し渋りを行ってきた銀行だということであります。この間、銀行に対しては二十一兆円以上の公的資金が投入されてきましたが、その銀行は同額の二十一兆円も貸し出しが減っているのであります。その一部が商工ローンに回り、中小企業をえじきにしてきたわけであります。私たちはこういうことを考えたとき、銀行による商工ローンへの融資を厳しく規制すべきであります。  また、アメリカの地域再投資法のように、銀行に地域企業への一定割合の融資を義務づけるべきです。同時に、年四〇%の高利にもなる出資法の上限金利を二〇%まで引き下げ、高金利によるトラブルや犯罪をなくす対策を緊急にとることを強く求めるものであります。  あわせて、官公需の拡大についてもただしておきたい。  現在、国の官公需の中小企業向け発注率は四〇・九%、地方は六九・四%にとどまっています。これをそれぞれ五〇%、七五%に引き上げれば、二兆円を超える仕事や物品を新たに中小企業に発注することができます。これを真剣に追求すべきではありませんか。  以上の提案について首相の答弁を求めます。  さて、日本の食料自給率が四一%まで落ち込み、今では一億二千万人の国民の七千万人分は外国に食料を頼るという異常さであります。特に今怒りを呼んでいるのが、一方で米を大量に輸入しながら、豊作で余ったお米は一俵六十キロを六百円程度で家畜のえさ米にしろというやり方であります。  農業・食料生産は、二十一世紀に向けて日本民族の存立の基盤にかかわる問題であります。そこで、食料自給率の向上に向けて計画的に取り組むことを前提として、次の要求を行うものです。  第一は、農業予算あり方を抜本的に組み直すことです。  日本の場合、農業予算の約半分が、むだな農道空港、干拓事業、減反の憂き目に遭う圃場整備など、ゼネコンだけを潤す土木事業につぎ込まれています。農業を続け、後継者を育てる上でも不可欠な所得補償、価格補償には一割も使われていません。EU諸国などでは農業関係予算の五割から七割が所得・価格補償対策に回され、農業の向上と食料の維持を実現しています。それと比較するなら、日本の逆立ちぶりは明瞭であります。  農業予算の枠はこのままでも中身を組みかえれば、農業に携わる人々にも希望を持って生産に取り組んでもらうことができます。この方向に大胆に転換すべきです。  第二は、次期WTO交渉にどう臨むかということであります。  WTO農業協定前文には、「食糧安全保障、環境保護の必要その他の非貿易的関心事項に配慮」することを明記しています。また、日本や韓国などアジア・モンスーン地帯では、水田を続けることが環境と国土保全に大きな役割を果たしています。一九九六年の世界食料サミットNGOフォーラムの声明では、各国の食料主権を主張し、食料と農業はあらゆる面で家族農業に有利となるよう方向づけ直さなければならないと指摘をしています。このように道理ある交渉は十分可能であります。米を輸入自由化の対象から外すよう最大限の知恵を絞って強く交渉に臨むべきであります。  以上の二点について答弁を求めます。  最後に、非核・平和の問題です。  アメリカ上院本会議は、去る十月十三日、包括的核実験禁止条約の批准を否決いたしました。包括的核実験禁止条約は、核兵器の廃絶を求める世界じゅうの人々の願いを背景にして、核実験の全面的禁止を求めてきた国際世論の高まりの中でつくられたものであり、すべての核爆発実験を全面的に禁止する史上初めての条約であります。  この条約の速やかな発効を求めるとともに、核保有国は未臨界実験をも中止して、核軍縮に取り組むべきであるとの声が国際的に高まっていますが、今回のアメリカ議会の決定はこうした世界の流れに逆行するものです。  したがって、今、包括的核実験禁止条約の速やかな発効とすべての核実験の全面禁止の実現に向けて国際的な圧力を強めるべきですが、同時にこの際、核兵器問題の根源に真剣に目を向けるべきであります。  もともとアメリカ政府が包括的核実験禁止条約の成立を推進したのは、核拡散防止条約の無期限延長を実施させる目的で、世界の反核世論に耳を閉ざしていないという姿勢を示すためでした。核拡散防止条約は五カ国の核保有国による核兵器保有を独占的特権としたものであり、対等であるべき国際秩序の根本にかかわる重大な矛盾をつくり出しただけではなく、世界のすべての国が核兵器を保有しないようにする核兵器廃絶の課題とも相入れないものであります。  日本共産党は、昨年六月、不破委員長が五つの核保有国首脳あてに書簡を送り、核兵器独占体制そのものに核兵器をめぐるさまざまの危険の重大な根源があり、その矛盾を直視して危険な現状を打開する道を探求すべきであると要請いたしました。唯一の被爆国である日本政府自身が、この立場から核兵器のない世界の実現に真剣に努力すべきであります。  現在、見逃してならないことは、決して容認することのできないインド、パキスタンの核実験が行われたことに示されているように、この核保有国の核兵器独占体制の矛盾の深刻さであります。  核兵器保有国がみずから核兵器を保有し、維持しながら他国に核拡散の禁止を主張しても、これは説得力を持ちません。同様に、アメリカの核政策に同調し、核独占体制を擁護する立場も、非核を求める国民の願いや国際的な流れと決して相入れるものでもありません。核兵器をなくすための努力は必要不可欠であります。こうした事態を真剣に考慮し、二十一世紀には人類を核兵器の恐怖から解放するために、次のことを日本政府に提案するものであります。  第一に、アメリカ政府に対し、包括的核実験禁止条約を速やかに批准するための努力を行うこと、さらに核兵器の保有と維持を求める手段としての未臨界実験も含めて中止することを求めるべきであります。  第二に、国連総会でも繰り返し決議されているように、期限を切って核兵器の廃絶を主題とする国際的協議を速やかに開始する国連決議に賛成するということであります。  以上、国民の安心、安全、日本経済あり方、非核・平和にかかわる問題について、我々の積極的な提案を行いながら質問をいたしてまいりました。これらはいずれ行われる総選挙でも熱い争点となるものです。そして国民は、小渕政権の正当性のなさからも、解散・総選挙国民の審判を仰ぐことを強く求めています。この国民の声に速やかにこたえるよう強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  22. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 立木洋議員にお答え申し上げます。  まず、西村前政務次官の更迭問題についてお尋ねがありました。  先般、西村前防衛政務次官から不適切な発言がなされたため、その辞表を受理し、直ちに更迭いたしました。この発言につきましては、たとえ個人的見解と断ったものとはいえ、政務次官という政府の要職にあることを深く自覚して適切に対応すべきであったと、まことに遺憾であります。  このたびの組閣では、国会審議活性化法の趣旨を踏まえ、政務次官人事にも意を用いたつもりでありましたが、このような事態になりましてまことに残念であり、任命権者として国民の皆様に心からおわびを申し上げております。また、議員の防衛問題についての個人的意見についてもある程度承知はいたしておりましたが、結果として国民の不信を招き、今回の事態に至りましたことはまことに申しわけなく、責任を深く痛感いたしております。  企業団体献金についてお尋ねがありましたが、企業団体献金の取り扱いにつきましては、先般の三党派の合意を受けまして、自民党におきまして企業団体献金の問題を初め、政党助成、政治資金制度の改革について総合的な検討を行い、政党助成・政治資金制度等改革の基本方針を取りまとめ、自由、公明両党に提示されたところと承知をいたしております。いずれにしても、これらの問題につきましては、各党各会派において十分御論議を深めていただきたいと考えております。  介護保険制度におけるサービスの基盤整備と保険料等の減免についてお尋ねがありましたが、今般の与党三党の合意におきまして、新しい介護制度の円滑な実施のため、基盤整備の推進や低所得対策に関する内容も盛り込まれているものと承知をいたしており、その具体的な対応につきましては早急に政府内で検討してまいります。  介護保険制度の発足に当たって暫定措置等についてお尋ねがありましたが、今般の与党三党の合意は、制度の円滑な実施を図る観点から、保険料の取り扱い等について取りまとめられたものであり、その具体的な対応につきましても早急に検討し、来年四月からの実施に向けて万全を期してまいります。  介護保険の財源についてお尋ねがありましたが、三党合意の申し入れ事項に対する具体的な対応につきましては、財源の手当ても含め、早急に政府内で検討いたしておるところであります。いずれにしても、今後とも財政運営に当たりまして、常に変化している国民のニーズに的確に対応し、貴重な財源をより効率的、効果的に配分するよう努めてまいる所存であります。  次に、東海事故についてでございますが、今回の事故を踏まえ、安全確保についてお尋ねがございました。  当該施設の安全審査におきましては、適切な臨界防止策が講じられていることから臨界事故が発生するおそれがないものと判断がなされたものであります。しかしながら、認められた条件を著しく逸脱した操作により今回の事故が起こってしまったことについて厳しく受けとめており、このよう事故が二度と起こらないよう安全確保の抜本的強化を図り、国民の信頼を求めてまいりたいと考えます。  原子力発電に関し、設計で考えられた以上の過酷な事故可能性についてのお尋ねでありました。  我が国では、さまざまな安全対策により、そのよう事故が起こる可能性は非常に低いと評価されております。念のため、リスクをより一層低減すべく、原子炉設置者において、おおむね二〇〇〇年を目途に過酷事故に関する対策が進められているところであります。  また、原子力安全対策への新しい知見の取り入れについてでありますが、耐震を含め、常に新しい知見を収集、評価し、安全対策に組み込むよう努めているところであります。  次に、雇用問題でありますが、リストラや解雇規制についてお尋ねがありました。  リストラにつきましては、企業や経営者団体に対し、雇用の安定に向けて最大限努力を求めるとともに、雇用の安定等の面から必要な指導、援助を行うなど、雇用対策に万全を期してまいります。  また、解雇につきまして、判例の考え方も踏まえ、具体的事情に応じ労使間で十分話し合われるべきものであり、一律に規制をするよう立法措置は適切でないと考えます。  サービス残業の解消についてでありますが、これまでも、法の趣旨の徹底を図るとともに、経済団体に対し、サービス残業をなくし適正な労働時間管理を行うよう指導等を行ってきたところであります。今後におきましても、法定労働時間や時間外労働の限度基準の遵守、割り増し賃金の適正な支払い等について的確な監督指導を実施し、労働基準法違反の是正に努めてまいります。  雇用保険についてお尋ねでありましたが、雇用保険の失業給付については、年齢別所定給付日数を設定することに加え、地域における雇用失業の状況や職業訓練を受講する必要性等に応じまして、給付日数を延長できる制度を設けており、その的確な制度運営に努めてまいります。  また、緊急地域雇用特別交付金についてでありますが、既にすべての都道府県に対し交付決定を行ったところであり、その交付金を活用した雇用就業機会の創出を積極的に推進してまいります。  さらに、離職者に対する職業訓練につきましては、民間の専修学校等の活用を図りつつ、大幅な拡充を図っているところであり、その積極的な推進を図ってまいります。  雇用の担い手としての中小企業についてのお尋ねがございました。  物づくりを支える基盤的技術の維持、活性化は、我が国経済の発展や雇用の創出にとりまして今後とも重要と考えております。物づくり人材の育成を初めとして、産業雇用を生み出す中小企業政策を積極的に推進してまいります。  下請取引の検査に関してお尋ねがありました。  下請企業に対する不公正な取引につきましては、下請代金支払遅延等防止法に基づきまして厳正かつ迅速に対処してきております。今後とも効果的な検査の実施に努力をいたします。自治体との関係では必要な協力を進めてまいります。  大規模リストラと自治体との関係についてお尋ねがありました。  リストラが地域の経済雇用に大きな影響を及ぼす場合には、企業と自治体との協議がなされることは重要と考えますが、リストラは企業の経営にかかわるものであり、法制化することは適当でないと考えます。  なお、日産のリストラ計画に対しては、関係都府県に地元自治体、日産等の関係者から成る連絡協議会を設置し、協議を行うことといたしております。  次に、商工ローン等の問題に対してのお尋ねでありました。  銀行の融資について、商工ローンへの融資を規制し、または地域企業への融資義務を課すべきではないかということであります。各金融機関は、それぞれの地域において中小企業への融資を初め、地域経済の発展のためさまざまな貢献をしているものと考えております。しかしながら、金融機関の個々の融資につきましては、民間当事者間の私的契約上の取引であり、基本的には各金融機関の自主的経営判断により行われるものであることから、法律で義務づけたり政府が介入したりすべきものではないと考えます。  出資法における貸金業者に対する上限金利の規制に関するお尋ねでありますが、政府としては、貸金業者への適切な監督と金融全体における貸金業の位置づけ等に関する幅広い議論を踏まえ、適切に対処すべきものと考えているところであり、このような観点から、国会における御論議を注視してまいりたいと考えております。  高金利をむさぼる金融業者に対する対策につきましては、刑罰に触れる行為があれば捜査当局において厳正に対処するものと承知をいたしております。  中小企業向け官公需についてお尋ねがありました。  これまで発注情報の提供の充実等を通じて中小企業の受注機会の増大に努めており、国及び公団等においては、昨年度の中小企業向け比率は過去最高の四一・五%となりました。今後とも受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体にも努力を要請してまいります。  次に、農業予算についてのお尋ねでありました。  農業関係予算全体につきましては、事業効果や地域のニーズ等も勘案しつつ必要な見直しを行い、新たな基本法の考えに沿った予算編成としていくこととしており、このような見直しの中で、市場原理を重視した価格形成の実現、価格政策の見直しに伴う経営安定対策の実施等に関する政策の推進につきましても所要の予算措置を講じてまいります。  WTO農業交渉に関するお尋ねでありましたが、農業協定はすべての農産物を対象としておりまして、米のみを協定の対象から外すことはできません。しかしながら、次期農業交渉におきましては、農業の多面的機能や食糧安全保障の重要性への配慮等、我が国の立場が十分反映されるよう対処してまいります。  最後に、核軍縮等についてのお尋ねでありました。  米国に対しては、私からクリントン大統領への親書等によりまして包括的核実験禁止条約批准への努力を求め、努力を約束するオルブライト国務長官の河野外務大臣あて書簡が届いております。未臨界実験は、包括的核実験禁止条約により禁止をされる核爆発に該当せず、既存の核兵器の安全性、信頼性を確保するためのものと承知をいたしております。  期限つき核廃絶の主張は、核兵器国と非核兵器国との対立を助長しかねず、核軍縮に関する話し合いの進展を妨げるおそれもあります。我が国は、核兵器のない世界の実現に向け、国連総会への核軍縮決議案提出等、引き続き積極的な役割を果たす考えでございます。  以上、お答えとさせていただきます。(拍手)     ─────────────
  23. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 谷本巍君。    〔谷本巍君登壇、拍手〕
  24. 谷本巍

    ○谷本巍君 私は、社会民主党・護憲連合を代表し、小渕総理の所信表明に対し、質問いたします。  昨年の参議院選挙が示したものは、与野党接近の中で緊張ある議会政治を求めるというものでありました。巨大なる自自公政権を望むような声は全くなかったと言ってよいのであります。  その三党連立内閣は、これまでの政治、行政のうみが吹き出すがごとき汚職事件などが相次ぐ中で発足いたしました。  総理の所信表明に期待したのは、国民の多くが賛同せぬ三党連立政権について、なぜ今巨大与党が必要なのか、そしてその理念と目指すべき方向が明らかにされることでありました。しかし、総理が述べられたのは、国民の皆様に御納得がいただけるような成果を上げるとの一片の言葉でしかありませんでした。  総理、所信表明を補足する意味も含め、三党連立の理念と、この政権が目指す方向性について述べていただきたいのであります。  さらにこの際伺いたいのは、新内閣発足早々の西村発言と、それにかかわる核問題についてであります。  西村前防衛政務次官日本核武装発言と、それにまつわる女性差別発言は、公的立場の責任者の発言としては許しがたい妄言と言わなければなりません。任命者としての小渕総理責任は、単なる謝罪だけでは済まされないものです。国際的影響を考えれば、西村氏の国会議員辞職は当然であり、小渕総理自身、この責任はどのようにおとりになるつもりなのか、伺いたいのであります。  また、核問題についてでありますが、日本は、非核三原則を国是とするだけでなく、核廃絶を全世界に向かって強く主張すべきであります。小渕総理は、所信表明で核軍縮・不拡散政策に取り組んできたと述べられましたが、これでは唯一の被爆国としての責任は果たせません。期限を切り、それまでにすべての核兵器を廃絶せよと全世界に向かって主張すべきです。総理見解を伺います。  次いで、第二次補正予算について伺います。  政府は、経済新生対策として総事業規模十兆円を超える二次補正予算を取りまとめ中だと聞きますが、国会を召集しておきながら、いまだに国会に上程せず、内容を明らかにできないというのは一体いかなることなのでありましょうか。私は、これが真実景気対策であって、選挙対策ではないことを心から願いつつ、総理補正予算に対する基本的な考え方をお伺いいたします。  最近、政府経済政策とその帰結について明白になり始めたことは、銀行や製造業大手については、公的資金の導入を含め政府がこれを支える反面、勤労者は自助努力のもとで厳しい市場原理の貫徹にさらされるという二極化現象であります。  そのもとで、例えば大型量販店の地域進出で見るなら、商店街を閉店街と化すばかりか、金融や物づくりにおける地域循環のあり方や、地域社会まで崩壊に導く例が多発しております。労働者へのリストラの嵐と同様、中小企業や農家など自営業者もまたリストラ同然の状態に追い込まれつつあります。それがまた男性の異常な自殺率の急増にも連なりました。勤労者向けの行き過ぎた市場原理の徹底は、他面では家庭崩壊とともに地域社会の崩壊さえ引き起こし、それが家庭と地域社会が持つ子育て生活教育機能の消失に連なるもとで、小学生低学年の学級解体さえ生み出すに至りました。市場原理は、生活の原理など調整の原理で支えられてこそ、そのよさを発揮するものです。総理はこうした現実をどう見ておられるか、御見解を承りたいのであります。  総理は所信表明の中で「未来に向け経済を新生させる」と語りました。国際競争力強化を念頭に置いてのことと思われますが、むき出しの市場原理の徹底は、雇用と賃金等の抑制が続くもとで実体経済が縮小し、過剰な資金が生み出す投機など擬制経済の肥大化とともに、日本経済はさらなる対外進出へと傾斜せざるを得なくなっていきます。  時あたかも、さき国会では、新ガイドライン関連法とともに国旗・国歌法を初め問題法案の軒並み成立が強行されました。いわゆる有事法制の一部を整備し、海外派兵準備が進められました。  歴史的に今の経済状態を見たとき、昭和恐慌から戦争への時代を経験した私たちが気づくことは、不良債権処理をめぐる施策にしましてもほとんど戦前と共通的であり、そしてその処理は、戦前の場合、戦争景気によって仕上げられたという事実であります。    〔議長退席、副議長着席〕  総理、今なさねばならぬことは、実体経済の縮小ではなく、どう拡充するかに心血を注ぐことです。エネルギー問題一つを見ても、再生可能エネルギー産業を新たな基幹産業としてさまざまな事業を興すことができますし、市民参加型の実験的社会システムも取り入れつつ、必要な施策整備するなら大きな需要開発となります。  国民生活に大きなひずみを生み出すむき出しの市場原理ではなく、人と環境に優しい市場をどうつくっていくかを二十一世紀に向けての最大課題とすべきではないでしょうか。総理、どうお考えでしょうか。  次に、中小企業対策について伺います。  小渕総理は今国会中小企業国会とすると前宣伝し、耳ざわりのいいことだけを言ってこられました。しかし、基本法改正案のもとである審議会の答申は、中小企業は生き残りをかけ自助努力で新技術や製品開発を行うべしとし、政府はそれを支援するというものでありました。  これは大企業との格差是正を目指したこれまでの中小企業政策を百八十度変え、弱肉強食経済への転換を図ろうとするものです。それがいかに冷酷なものかは、政府の言う新技術、新製品の開発にしても、実際に市場に受け入れられるかどうかは極めて難しく、大企業とは違い財政基盤の弱い中小企業にとりどんなにリスクが大きいかを見ても明らかであります。これらの点について総理はどうお考えなのでしょうか。  また、中小企業予算は二千億にも満たぬものです。それをそのままに、こうしたリスク分野への船出を奨励するのは僣越であります。総理はこの点どうお考えか。政策転換前に当初予算ベースで大幅にふやすことの方が先決なのではないでしょうか。  また、政府は、民事再生法案に見るように、倒産関連法制度整備し、当該倒産・廃業中小企業への共済制度の拡充適用や失業従業員再雇用への国の配慮などを基本法に盛り込みましたが、これは国自身が大リストラ時代容認を前提としてのことであります。  日産自動車のリストラ計画でも明らかなように、今後の中小企業の経営や雇用情勢はこのままでは想像を絶する大規模なものとなると見られ、同法案に規定する雇用への配慮などは絵にかいたもちになるほどの悪影響が想定されます。  にもかかわらず、本法案には、下請企業に対する親企業のリストラ、特に超大企業のリストラが与える影響への実効ある対策が見当たらぬのであります。総理、これはどういうことなのでしょうか。大企業のリストラに伴う下請企業の経営悪化や雇用不安に視点を置いた政策理念が全く無視されているのはなぜなのか、御説明をいただきたいのです。  続いて、政治献金、衆議院定数削減について伺います。  総理、五年前を思い出していただきたい。政治家個人に対する企業団体献金の禁止は、リクルート事件など贈収賄事件を受けて各党が合意したもので、国民に対する公約でもあります。しかるに、自民党は、来年一月一日の期限を迎え、これを先送りしようとしております。選挙制度については民意の反映に逆行する比例区定数の削減をもくろみ、企業献金はもらい放題を続けるというのでは、五年前の政治改革論議は一体何だったのでありましょうか。事が重大だけに、総理の真剣な態度表明を願いたいのであります。  また、比例区選出議員定数の削減ですが、与野党の選挙制度等に関する協議会と今回の三党合意との関係はどうなっておるのでしょうか。  今回の政策合意はあくまでも三党間の合意であって、国会における選挙制度に関する制度的取り扱いとは全く別なものです。選挙制度改正は、あくまでも各党の一致が前提であり、協議会で各党が合意したものを立法化するという協議会における確認を尊重すべきであります。総理のお考えはいかがでしょうか。  次に、介護保険制度について伺います。  与党三党は、保険料の徴収凍結等の合意をしました。これは制度の理念を根底から覆し、懸命に準備を進めてきた自治体に大混乱を持ち込むばかりか、政治不信を助長することに連なります。円滑なる実施を進めると言明した総理制度の理念に反するこうした見直しを行うことはないと思いますが、いかがでしょうか。  必要なことは、選挙目当ての一時的負担軽減ではなく、まず介護基盤整備を最優先課題として取り組むことです。総理の御所見を伺います。  また、年金改革ですが、言うまでもなく最大課題は基礎年金の空洞化であり、国庫負担問題です。今年度中に二分の一に引き上げることは、前回の法改正で、法律の附則だけでなく、自民党も含む全会一致の附帯決議に明記されており、これが立法府の意見なのであります。政府案はこの問題を二〇〇四年まで先送りしていますが、改めて総理の決断を求めます。  次に、東海村の核燃料加工施設臨界事故について伺います。  あってはならぬはずの事故が起きました。国民のだれもが驚いたのは、現場の作業も政府の安全管理も信じがたいほどずさんであったことです。総理は、所信表明の中で、国民の皆様に多大な御心配と御迷惑をかけたと述べながらも、起きるはずのない事故がなぜ起きたのか、再発防止策についても何らの具体的見解も示さず、国民の不安感をさらに広げました。  最近の技術体系は一人一人の創意工夫が入り込む余地がないほど巨大化し複雑化したことから、現場における浅はかな効率化が重大な結果をもたらすことが少なくありません。そうしたことが事もあろうに核燃料加工施設に実在したことの驚きは禁じ得ません。この背景にあるものは、いたずらに生産現場に厳しい効率化を迫る誤った風潮であります。その意味で、この事故は偶然とは言えぬ背景を持っております。総理、どうお考えでしょうか。  そうした問題点と、原因の追及とそれに伴う対策との関連で重要なのは安全審査であります。行政と一体的に原子力を推進してきた専門家による審査ではなく、原子力の危険性を喚起してきた専門家を加えた審査とするとともに、審査機関を行政から独立させることも含め見直しを行うべきです。その点もあわせてお伺いいたします。  次に、次期WTO交渉についてお伺いいたします。  十三年前、ウルグアイ・ラウンド交渉開始の閣僚会議を控えた第百七回国会で当時の中曽根総理は、所信表明で交渉に臨む考え方を明らかにいたしました。期せずして同様の局面で行われた小渕総理の所信表明は、ただ包括交渉を立ち上げるよう努めるという、極めて内容の乏しいものであります。  総理は、次期交渉が、その成り行きいかんによっては、さき国会成立した食料・農業・農村基本法が描いた食糧安全保障や多面的機能の確保も水泡に帰するという重大な問題をはらんでいることを肝に銘じ、今こそ確固たる姿勢を国の内外に明示すべきであります。  この点について、所信表明を補完する意味合いを込めて、腰の据わった御答弁を求めます。  また、さき政府は、次期WTO交渉において、遺伝子組みかえ農産物にかかわる貿易に関し議論を行うよう提案しております。しかし、遺伝子組みかえには、安全性のみならず生物多様性、地球環境への影響など、貿易や表示問題以前の究明しなければならない多くの問題が内在しています。また、種子を通じた食料世界戦略に日本農業を従属させる結果をもたらし、環境保全型農業や家族農業を崩壊させる危険性を持っております。  こうした遺伝子組みかえが持つ負の側面をどうお考えになっておるか、また慎重な態度をとるEU等との連携強化をどう図っていくか、お聞かせいただきたいのであります。  さらに、もう一つ重要なのはサービス分野の交渉であります。それは、公共サービス事業民営化、営利化が迫られようとしているからであります。  すべての人にあまねく提供されるべき公的教育や福祉、医療を初め、公共料金や年金、エネルギーから上下水道、ごみ処理などの分野に国内外の企業を分け隔てなく参入させることが目指されております。これらの事業が営利化されれば、遠隔地や貧困層に対しても公平に提供されてきたサービスのあり方は一変し、例えば遠隔地の郵便局は閉鎖されるなど、もうからないエリアと地域が切り捨てられていきます。  また、このサービス分野の自由化で、地方自治体がみずからの地域の公共サービスのあり方を主体的に決定できなくなっていきます。  これらの点について、総理はどうお考えでしょうか。  最後に、森林・林業問題について伺います。  二十一世紀の最大の資源問題は水資源となると言われております。日本とて例外でないことは、最近の集中豪雨による洪水等の例を見ても、いかに山が荒れ、保水力の低下が著しくなりつつあるかが明白であります。森林の整備が急がれなければなりません。  第二次世界大戦後、荒廃した森林・林業の再建に向け造成された一千万ヘクタールに及ぶ膨大な人工林にしても、その多くは整備を要する状態にあります。にもかかわらず、それがなされぬことが森林の衰退と林業不況を招き、担い手不足を深刻化する悪循環を生んでいるのであります。  食料・農業・農村基本法に続き、林業基本法が早急に制定されなければなりません。その柱は、森林の整備計画の具体化、国産材の需要拡大、森林所有者及び林業労働力担い手対策など、流域管理システムを一体化し、総合的に発揮するために国の責任を明らかにすべきであります。  総理がいかがお考えかを伺い、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  25. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 谷本巍議員にお答え申し上げます。  三党派の連立の理念と方向性についてお尋ねがありました。  繰り返して申し上げますが、私は、安定した政局のもとで政策を共有できる政党が互いに切磋琢磨し、よりよい政策を練り上げ、相協力して実行に移していくことが国民と国家のためだと確信し、三党派の広範な政策合意をもととして連立内閣を樹立いたしたところであります。したがいまして、この内閣の使命は、経済、社会保障、安全保障政治・行政改革、教育、環境等の課題について三党派の合意を誠実に実現していくことであり、これにより国民の皆様の信頼と負託にこたえてまいる所存であります。  特にこの内閣が取り組む当面の最重要課題として、第一に、経済新生に向けた総合的な取り組み、第二に、原子力の安全・防災対策やいわゆるオウム対策関連法による安全な社会の実現、第三に、年金や介護など、安心で活力のある社会の整備考えており、今国会で関連法案等をぜひ御審議願いたいと考えております。同時に、教育など、富国有徳の理念のもと、長い視野で考え、先見性を持って手を打たなければならない課題についても果敢に取り組んでまいる所存であります。  次に、西村前政務次官の更迭問題についてお尋ねがありました。  先般、西村前防衛政務次官から不適切な発言がなされたため、その辞表を受理し、直ちに更迭をいたしました。この発言につきましては、たとえ個人的見解と断った上でのものとはいえ、政務次官という政府の要職にあることを深く自覚して適切に対応すべきであったと。まことに遺憾であります。このたびの組閣では、国会審議活性化法の趣旨を踏まえ、政務次官人事にも十分意を用いたつもりではありましたが、このような事態になってまことに残念であり、任命権者として国民の皆様に心からおわびを申し上げます。今後、内閣が一致結束して山積する重要課題に取り組み、国民の負託にこたえていくことこそが私としてなすべきことだと強く念じているところであります。  次に、期限つき核廃絶についてお尋ねがありました。  あらかじめ期限を付して核廃絶を実現しようとの考え方は、実際には、これを主張する人々の意思に反し核兵器国と非核兵器国の対立を助長しかねず、結局は核兵器にかかわる話し合いの進展を妨げるおそれがあります。我が国は、核兵器のない世界を一日も早く実現すべく、国連総会への核軍縮決議案提出等、引き続き積極的な役割を果たしてまいる考えであります。  次に、第二次補正予算の基本的考え方についてのお尋ねがございました。  私は、就任以来、内閣の命運をかけて財政金融のあらゆる手段を講じて経済再生に取り組んできたところであり、これらの施策効果の浸透などにより、景気は厳しい状況をなお脱していないものの、緩やかな改善を続けておると認識しております。  今ここで重要なことは、手を緩めることなく経済を本格的な回復軌道につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築き、未来に向け経済を新生させることであると考えております。こうした観点から、理念ある経済新生対策を早急に取りまとめ、あわせて第二次補正予算を編成し、今国会に提出いたします。  具体的には、二十一世紀型社会インフラの整備などの公共投資につきまして三兆五千億円の予算措置を行うほか、信用保証の追加など中小企業向け等の金融対策、住宅金融対策雇用対策について重点的に予算措置を行うこととしたいと考えており、先月までに各省庁より御提出いただいた要望について現在全力を挙げて精査しているところであり、今月末までには取りまとめ、国会に提出したいと考えております。  市場原理との関係で今後の経済運営についてお尋ねがありました。  これからの我が国経済社会におきましては、個人の自由と自己責任が基本的行動原理となり、多くの人々が夢に挑戦し、その中から新しい創造性が生まれるべきものと考えております。  そこでは、すべての人に対して公正な機会が与えられているほか、失敗した場合の最低限の安全ネットと再挑戦の可能性が確保されていることが前提となります。また、環境との調和も今後の重要な課題であると認識いたしております。  次に、中小企業政策についてでありますが、この見直しにつきましては、中小企業我が国経済の発展と活力の源泉であると位置づけをいたしまして、小規模企業からベンチャー企業まで、その特性に応じて支援していくことを内容とするものであります。また、自助努力のみでは対応し切れない環境の激変に対しては、セーフティーネットを提供し、万全を期することといたしております。中小企業対策につきましては、今後とも必要な予算を講じてまいりたいと考えております。  中小企業政策について重ねてお尋ねがありましたが、中小企業基本法の改正法案におきましては、国は中小企業経済的、社会的環境の著しい変化に適応していく上でその円滑化を図るために必要な施策を講ずることといたしており、その場合には中小企業の従事者の就職について考慮すべきことといたしております。今後とも、産業雇用を生み出す中小企業対策を積極的に推進してまいります。  次に、企業団体献金についてお尋ねでありましたが、これもしばしばお答え申し上げておりますように、企業団体献金の取り扱いにつきましては、先般の三党派の合意を受けまして、自民党において企業団体献金の問題を初め政党助成、政治資金制度等の改革について総合的な検討を行い、政党助成・政治資金制度等改革の基本方針を取りまとめ、自由、公明の二党に提示されたところと承知をいたしております。  いずれにしても、これらの問題につきましても各党各会派において十分論議を深めていただきたいと考えております  次に、衆議院比例代表選出議員の定数削減についてお尋ねがありました。  この問題につきましては、先般、自民、自由、公明三党間で合意がなされたところであります。また、御指摘の与野党間の協議会につきましては、本日開催をされ、選挙制度等について議論されたものと聞いております。  国会議員の定数のあり方につきましては、議会制度の根幹にかかわる問題でありますので、各党各会派において十分議論を深めていただきたいと存じます。  政府に対して申し入れのありました介護保険制度にかかわる三党合意についてお尋ねがありましたが、今般の与党三党の合意制度の円滑な実施という観点から取りまとめられたものと認識をしており、その中には、保険料に関する取り扱いのほか、基盤整備の推進に関する内容も盛り込まれているものと承知をいたしております。  いずれにいたしましても、申し入れ事項に対する具体的な対応につきましては、早急に政府部内で検討してまいります。  基礎年金の国庫負担についてでありますが、国庫負担率の引き上げについては、前回改正時におきまして財源を確保しつつ検討を加えることとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況等にかんがみ、今回の年金改正で実施することは困難であると考えております。  前国会に提出し継続審議となっております年金改正法案におきましては、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るもの」との附則が設けられているところであり、安定した財源確保のための具体的な方法と一体として検討する必要があると考えております。  次に、東海村の臨界事故についてでございますが、事故の背景と安全審査体制についてお尋ねがありました。  事故の背景につきましては、原子力安全委員会の事故調査委員会において、御指摘の点も含め原因の徹底究明に取り組んでいるところであります。  審査体制につきましては、科学技術庁または通商産業省が安全審査等を行い、さらに行政庁と独立した原子力安全委員会がみずからの擁する二百名に及ぶ専門家を動員して厳正にダブルチェックする仕組みとなっております。  しかしながら、今回の事故が起こってしまったことにつきましては、これを厳しく受けとめており、安全確保の抜本的強化を図ってまいらなければならないと考えております。  なお、省庁再編後は内閣府に原子力安全委員会を、経済産業省に原子力安全・保安院を設置するなど、一層の体制整備、規制部局の充実強化を図ってまいります。  次に、農業問題についてお尋ねがございました。  まず、WTOの次期交渉についてお尋ねがありました。  我が国としては、農業は極めて重要であると認識し、交渉においては我が国考え方が十分反映されるよう積極的に主張してまいりたいと考えております。遺伝子組みかえ作物については、我が国農業の発展に資する研究開発に取り組むほか、WTO次期交渉においても、問題点の洗い出し等を多角的に検討するための場の設置を提案しており、EUを初めとする各国と連携しつつ、積極的に取り組んでまいります。  次に、WTOのサービス分野交渉に関してお尋ねがありました。  WTOのサービス貿易一般協定におきましては、政府の権限の行使として提供されるサービスは対象から除外されているため、次期WTO交渉においていわゆる公共サービス事業民営化、営利化が迫られるわけではないものと考えております。いずれにせよ、国民各層の御意見を伺いながら次期WTO交渉に当たってまいります。  最後に、林業基本法についてお尋ねがありました。  森林の公益的機能の発揮に対する国民の要請はますます高まっている一方、林業採算性の悪化等により森林の管理水準の低下が危惧されていることから、現在、森林・林業・木材産業に関する基本政策の検討を急いでおるところであります。  林業基本法につきましては、これらの検討を踏まえた上でそのあり方について検討することといたしております。  以上、お答えとさせていただきます。(拍手)     ─────────────
  26. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 水野誠一君。    〔水野誠一君登壇、拍手〕
  27. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、参議院の会を代表して、総理所信表明演説と今国会における重要課題について、総理並びに関係大臣質問をさせていただきます。  所信表明演説が従来の総花式ではなく、経済、安全、安心という三つの課題に絞られたことについては評価すべきだと思いますが、その内容は残念ながらいささか具体性を欠いていると言わざるを得ません。  例えば、事業規模で十兆円を超えるという経済新生対策について、公共需要から民間需要へのバトンタッチの具体策とは何か、あるいは個人消費や設備投資の喚起のための構造改革とは一体何を意味しているのかなど、具体的な政策が見えてきません。  また、事業規模のみを強調した大盤振る舞いの景気対策を続けた結果、さらに悪化した財政への対応である財政構造改革についても、経済が本格的回復基調に乗った段階でそのあるべき姿を示すという先送りでしかなく、ここでは何一つ具体的な方向性が示されていないのであります。これでは総理のおっしゃる建設的楽観主義とはほど遠く、せつな的楽観主義になりかねないのではないでしょうか。  総理経済再生から経済新生への転換を強く意識されているようですが、この違いは一体何なのでしょうか。これは、経済再生対策において従来どおりの公共事業重視の一過性の需要刺激策に終始してみて、結果、根本的な経済活性化につながらなかったという自己反省に基づく転換なのかとも思えますが、総理の御所見を伺いたいと思います。  次に、総理自身、今国会中小企業国会と位置づけられております。中小企業政策の見直しについては、それが大きな波及効果を生む内容になっているかどうかという観点から今後の審議に臨みたいと考えております。  例えば、情報・ハイテク産業重視のベンチャーの育成は大変重要な施策ではありますが、こうした情報産業自体には、既存産業から生ずる失業を吸収するだけの雇用を質量両面から求めることは難しいことが通産省の調査などからも明らかになっています。  ですから、むしろこうした情報化技術を活用して生まれてくる高齢者介護などの新たなサービス業の創出、あるいはハイテク産業の高度機械化の陰で、日本の生産技術の質の高さを支えてきた小規模企業の職人的技能の保護育成などにもきめ細かい光を当てなければ、産業の合理化と雇用の確保という二律背反的な問題の解決にはならないのではないかと考えますが、通産大臣の御所見を伺いたいと思います。  さて、茨城東海村の核燃料施設の臨界事故から一カ月がたちました。ずさんな工程管理、核燃料施設に関する行政の危機管理意識の希薄さなど、既に多くの問題点が明らかになっています。このことからも、政府が推し進める核燃サイクル構想は、依然、未完成のサイクルと言わざるを得ません。  高速増殖炉の実現性、核燃料施設における放射性廃棄物処理の問題点、安いと言われてきた原子力発電コストへの疑問点など、エネルギー政策のトータルな姿が描き切れていないことが今回の事故によって改めて露呈されました。  さらに、今回の事故を契機に各地でプルサーマル計画の延期なども発表されており、政府が推進する原子力発電所の今後の建設にはかなりの困難が予想されますし、また、既存の原発の安全性の再点検も必要になってきました。  そこで、原子力発電所の新規立地計画には今なおいささかも変更の余地がないものとお考えか否か、通産大臣に伺いたいと思います。  今回の事故により、我が国原子力発電の安全神話が崩壊し、日本原子力政策に対する内外の信頼が失墜したことは紛れもない事実であります。事故再発防止に向けてあらゆる努力を傾けるべきであることは当然でありますが、失った信頼の回復は一朝一夕にできるものではありません。  今後は、ただ安全性を繰り返し唱えるばかりでなく、同時にそのリスクも正しく国民に伝え、あってはならない事態への備えや覚悟をしっかりと示した上で、国民と対話を積み重ねるという根本姿勢の転換こそが重要ではないかと考えますが、総理のお考えを伺いたいと思います。  次に、介護保険の問題に移ります。  急速に進む高齢化により、ますます深刻化する介護を社会全体で支えるという観点から、長年の議論を経て取りまとめられたこの制度がいよいよ来年四月からスタートしようとしており、各地の自治体で制度の運用に向けた準備が着々と進められてまいりました。  ところが、制度のスタートを五カ月後に控え、その重要な財源である保険料の徴収をおおむね半年の間行わないとする与党間の合意がなされたようであります。サービスの提供は始めるけれど保険料徴収はしばらく行わない、その理由を尋ねると、観察期間やならし運転期間が必要というあいまいな説明しか返ってこないことに極めて奇異な印象を持たざるを得ません。  加えて、おおむね半年の間とする理由、その期間が経過した後の保険料徴収の仕組み、新たな赤字国債に関する是非論、そして地域住民との綿密な連携を進めてきた自治体とのコンセンサスはどうなっているのかなどの重要な観点がすべて置き去りにされており、このような形でスタートすることが果たして安心して受けられる介護サービスのならし運転期間となり得るのか、甚だ疑問であると言わざるを得ません。  この期に及んでの制度の理念にかかわる方針の変更は、介護システムそのものの将来に新たな不安要素をもたらすものであり、各自治体はもちろん、制度の具体化に協力してきた住民や事業者の戸惑いは我々の想像以上と認識すべきではないでしょうか。  九七年当時、介護保険制度の取りまとめにおいて、丹羽厚生大臣が並々ならぬ御努力を傾けられたことを私はよく存じております。今になって介護保険をめぐるこうした混乱を迎えたことは大臣にとっても決して本意ではないのではと察しますが、今後のかじ取りをどういう姿勢でなさるおつもりか、伺いたいと思います。  次に、企業団体献金問題についてですが、これも今までほかの質問者から指摘されたことですので多くは申し上げません。ただ、企業団体献金政治家個人が受け続けるために、「これを禁止する措置を講ずるものとする。」と一たび決められた条文が邪魔だからこれを削除、または書きかえるというようなやり方がもしまかり通るならば、国民政治に対する信頼はますます失墜するのではないかということだけを指摘させていただきます。  当然、企業団体献金そのものに関してはさまざまな議論もありましょう。しかし、「これを禁止する」と一たび立法府が決めたことであります。政治家みずからが約束を守る、法律を守ることを貫けずして、教育を最重点課題に掲げられる総理は、一体何を若者たちに語ることができましょうか。総理の御所見を伺いたいと思います。  最後に、この臨時国会より政府委員制度が廃止され、閣僚、政務次官原則答弁することになりました。国の唯一の立法機関である国会が本来の姿を取り戻し、国会活性化へ向けて新たな一歩を踏み出したものと考えます。  総理は所信表明において、西村前防衛政務次官の不適切な発言に関連し、直ちに各政務次官に対し、みずからを厳しく律し職務に精励するよう重ねて指示したと述べておられます。  しかし、これでは問題のすりかえになりかねず、こういう不適切な発言をする政治家政務次官という要職に任命した総理の不明こそが問題なのであり、この不祥事に懲りて大臣政務次官政治家としての発言が過度に抑制されるようなことにでもなれば、今まで同様政府委員が無難な答弁を繰り返すことと何らかわりばえのしないものになってしまうのではないでしょうか。  その意味からも、大臣政務次官の人格と理性、感性、知性などの能力に基づいた厳格な人選こそが重要なのであり、従来の派閥順送り的人事は完全に排除されるべきだと考えますが、総理の御所見をお伺いして、代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  28. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 水野誠一議員にお答え申し上げます。  まず、経済再生と経済新生の違いについてお尋ねがございました。  デフレスパイラルに陥りかねない当時の厳しい経済状況から脱却し、経済を再生させることが昨年の緊急経済対策のねらいでありました。それら政策効果の浸透などにより、景気は厳しい状況をなお脱していないものの、緩やかな改善を続けております。ここで重要なのは、経済を本格的な回復軌道につなげていくとともに、二十一世紀の新たな発展基盤を築き、未来に向け経済を新生させることであります。  今般の経済新生対策は、二十一世紀型社会インフラの整備などの公共投資を、景気の腰折れを招かないような適切な規模で盛り込むとともに、公共需要から民間需要へのバトンタッチを円滑に行うべく個人消費や設備投資を喚起し、将来の発展基盤を確保するための構造改革を一層推進する内容といたします。  原子力利用を推進する上での姿勢について大変貴重な御指摘をいただきました。  今回の事故重大性にかんがみ、安全確保や原子力災害対策に万全を期し、一刻も早く内外の信頼を回復することが重要と考えます。このため、原子力安全対策の徹底的見直しと防災対策強化を図るとともに、情報公開をさらに進め、国民各界各層から幅広く御意見を伺いながら原子力の開発利用を進めてまいりたいと考えております。  企業団体献金についてお尋ねでございますが、これまたしばしば御答弁申し上げておりますが、企業団体献金の取り扱いにつきましては、先般の三党派の合意を受けまして、自民党において企業団体献金の問題を初め政党助成、政治資金制度等の改革について総合的な検討を行い、政党助成・政治資金制度等改革の基本方針を取りまとめ、自由、公明の二党に提示されたところと承知をいたしております。  いずれにしても、これらの問題につきましては、各党各会派におきまして十分論議を深めていただきたいと考えております。  最後に、国会での議論との関連で、大臣政務次官の人選についてお尋ねがありました。  御指摘のように、今国会から政府委員制度が廃止され、大臣政務次官答弁することになり、また次の通常国会から設置をされます国家基本政策委員会、いわゆるクエスチョンタイムの試行が実施されるなど、今回の改革は我が国政治のシステムを根本的に改革するものと考えております。  これを真に実効あらしめていくためには、私自身も含め閣僚、政務次官がこの改革の意義を十分踏まえ、国会での御議論に臨むとともに、国会での議論にともに責任を持つ野党の皆様にも建設的に取り組まれるようお願いする次第でございます。  また、大臣政務次官の人選に当たりまして、それぞれの方の識見、経験等を十分に踏まえ、適材適所を旨として臨むことが基本であり、今回の事態を重く受けとめ、さらに心してまいりたいと考えております。  最後に、水野議員御指摘のように、この国会活性化法によりまして、それぞれの委員会等におきまして、大臣並びに政務次官答弁を申し上げるわけでありますが、答弁とともに野党の皆さんとの討議、議論も行われるという方向が指し示されているように思います。  その際、個人としての意見をどの程度申し上げられるかどうかということにつきましては、今後委員会の進め方等におきましていろいろ工夫がなされるものだろうと思っておりまして、そういう観点から、いわゆるかつて政府委員が委員会で答弁されたよう政府の固有の見解を明らかにするに超えて、個人の見解をどの程度述べられるものかについては、今後この活性化法によって衆参両院における委員会の審議等においてこれが明らかになってくるものと思い、また、かつこのことについては国民の皆様がそうした委員会の与野党審議、特に政府と野党との自由討議という面においての見解のいかになすべきかということにつきましては、今後国会でいろいろと御審議の過程で御意見が出されるものと認識をいたしております。  ただ、政府といたしましては、誠実に政府見解を述べることにつきましては、国民の皆さんによりわかりやすくこのことを明らかにし、国民の御批判を仰ぐべきということにつきましては、当然のことと考えておる次第でございます。  以上、御答弁をさせていただきました。(拍手)    〔国務大臣深谷隆司君登壇、拍手〕
  29. 深谷隆司

    国務大臣(深谷隆司君) 水野議員の御質問にお答え申し上げます。  二つの点でありましたが、いずれも水野議員の御提言も含めて傾聴に値する質問であると受けとめております。  まさに多様で活力のある中小企業の発展は、我が国のあらゆる経済の面で波及的な効果を及ぼすものと確信をいたしております。今回の中小企業の見直しの中で、サービス業も含む企業の創業の促進ということをうたっておるのでありますが、御案内のように、我が国は廃業率に比べて創業率が低い、ここに経済の活性化を欠いている背景があると考えるからでございます。  さまざまな政策提言しておりますが、小規模企業についてはどうなのかという御懸念もあるようでありますが、一生懸命苦労なさっている小規模企業中小企業の皆様への配慮は、従来と同じようにあるいはそれ以上に進めてまいる覚悟であります。雇用と生産を生み出す中小企業の発展のために全力を挙げてみたいと考えております。  もう一点は、原子力発電所の新規立地計画がさき東海村の事故によって遅延するのではないかということを含む御質問でございました。  あの事故原子力の安全性について国民が極めて大きな不信を抱いたという点で、私どももまことに残念であり、極めて遺憾であると考えております。  しかし、そのことによってエネルギー政策の基本を変えようという思いは持っておりません。我が国のエネルギー政策の基本方針というのは、一つは安定的な供給の確保であり、もう一つは経済成長の確保、さらに第三点は環境を保全する、それをきちっと守り続けていくということでございます。地球の温暖化問題等を含めて、私は原子力エネルギーの重要性というのは変わっていないのではないか、そのように思います。  しかし、もとよりエネルギー政策最大の基本は安全確保ということでございまして、この間の東海村の事故は、原子力発電所のそれとは大きく中身を異にしておりますけれども、重大な反省材料として、私たちは例えば原子力防災などさまざまな法律改正も含め、補正予算等も通じて、これに対して安全の万全を期していかなければならない、そのように思っています。  抜本的な政策を次々と打ち立てることによって国民の信頼を回復し、そして原子力発電所の立地地域の住民の皆様に深い御理解をいただきたい、そのよう考えている次第です。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣丹羽雄哉君登壇、拍手〕
  30. 丹羽雄哉

    国務大臣(丹羽雄哉君) 水野議員にお答えをいたします。  議員の御質問は、介護保険料の徴収についての三党合意について厚生大臣としてどう考えるか、このような御質問でございます。  介護制度についての三党合意につきましては、高齢者の保険料の取り扱いなど、その内容についていろいろな御議論があることも十分承知いたしております。しかし、私が今皆様方に申し上げたいのは、最も大切なことはいかにして来年の四月から円滑に実施するか、このことに尽きるのではないか、こう考えているような次第でございます。  三党合意は、新しい制度の実施に伴って一部に危惧されております混乱を避け、円滑に実施するための措置として合意されたものであり、私といたしましては重く受けとめるとともに、政府といたしましては、国民の皆様方の御理解をいただきながら、関係者の皆様方が戸惑うことがないようその対策に万全を期してまいりたいと思っております。  どうぞ水野議員におかれましても、何とぞ御理解、御指導のほどよろしくお願いいたします。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  31. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 直嶋正行君。    〔直嶋正行君登壇、拍手〕
  32. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 私は、民主党・新緑風会を代表して、小渕総理所信表明演説に対して、総理及び関連大臣質問いたします。  初めに一文を引用いたします。  「日本雇用情勢は「戦後最悪」を更新し続けており、」「すでに雇用不安が社会不安を招き、消費低迷・景気低迷を生み出す悪循環となっており、雇用の維持・安定ならびに雇用創出は、いまや国民的な緊急課題となっている。」。  これは連合と日経連が合意、発表した雇用安定宣言の一節であります。現下の雇用情勢に対する危機感があふれています。これと比べ総理の所信は、まるで別世界にいる人かと思うほど雇用問題に対する危機感も解決への意気込みも感じられませんでした。  また、雇用と並んで国民の大きな不安の種となっている老後の問題についても同様であります。介護保険をめぐる最近の与党三党のやりとりは、介護地獄とも呼ばれる深刻な社会問題を与党政治家が寄ってたかっておもちゃにしているとしか私には見えません。  小渕総理には、政治数合わせ選挙対策のために目先のお金をばらまくことには熱心でも、国民の不安を共有してみずから先頭に立って解決しようという気迫や熱意が感じられない、大変失礼ですが、問題意識すらお持ちになっていないように思えます。  以下、順次御所見をお伺いいたします。  まず、雇用問題について伺います。  雇用情勢は、八月、九月と統計数値の面ではわずかずつ改善に向かっています。しかしながら、その一方で、ほとんどの業種にわたり、それも日本を代表するような大企業が、今後二、三年の間に万単位にも及ぶ大幅な人員削減計画を相次いで発表しています。私がこの一年間の新聞報道をざっと拾っただけでもおよそ四十社、十五万人分ありました。  さらに、さき国会成立した産業再生法がこれらの動きに拍車をかけていくものと思います。その点では、雇用面での手当てを怠った政府責任は免れません。総理衆議院でお答えになった六月の緊急雇用対策は大企業のリストラの受け皿とはなり得ません。  現在、職にある勤労者にとっても雇用不安は増すばかりです。もちろん、これらは採用抑制や退職者の不補充、転籍などが中心になっています。とはいえ、実行段階では失業問題に発展する可能性が高いと見るべきです。また、周辺企業や地域社会にも甚大な影響を及ぼすと思います。  総理は、こうした一連の大企業のリストラ計画が勤労者の雇用や生活、地域社会に及ぼす影響をどのように見ておられるのでしょうか、また、それによって我が国の労働市場の先行きはどうなると見ておられるのでしょうか。総理の見通しと御判断をお伺いいたします。  また、総理雇用の場の確保に国はどのよう責任を負っているとお考えでしょうか。確かに、雇用の場は企業経済活動によってつくられるものであり、第一義的には、経営者に安易な雇用調整を慎み、失業者を出さないよう最大限の努力をする社会的責任があると考えます。しかし、企業の努力の限界を超え万やむを得ず解雇者が出る場合の対応責任は、企業にあるのでしょうか、国にあるのでしょうか。私は、そのような場合は国の責任において雇用の場の確保と勤労者の保護を行うべきであると考えますが、いかがでしょうか。  次に、勤労者保護の観点から指摘したいことがあります。  政府は、この数年、商法の改正などにより企業が分社や組織変更を弾力的に行えるよう整備を図ってこられました。今後、さらなる法整備も想定されます。これらは企業が新しい環境にこたえるために必要なものかもしれません。しかし、そこに働く勤労者の立場からは全く法的な手当てがなされていません。企業のドラスチックな組織変更等が失業や生活苦といった社会問題を引き起こしかねません。それを避けるために、私は、企業社会における両輪の一方である勤労者を保護する法整備がぜひ必要であると思いますが、総理の御見解を伺います。  次に、今後の雇用対策あり方について伺います。  政府は、昨年来雇用対策を打たれてきましたが、その効果には疑問を持たざるを得ません。例えば、本年六月の緊急雇用対策を受けた自治体での雇用創出の取り組みは目標を下回るとの専門家の指摘もあります。また、これはしょせんつなぎ的な対策でしかありません。従来型の雇用対策がもはや限界に達していると思います。総花的に助成金や奨励金をばらまくのではなく、雇用創出効果の大きい分野への重点志向や雇用情勢の特に悪化している地域や企業城下町に対しては、政府が総力を挙げて地域再生計画をつくるなどといった思い切った対策が必要と考えます。  今後の雇用対策あり方について、総理のお考えをお伺いいたします。  次に、社会保障政策について伺います。  経済不況の大きな要因である国民の将来不安を一日も早く取り除くためにも、さきの通常国会では社会保障改革に精力的に取り組むべきでありました。しかるに、自自連立政権内の意見対立のあおりを受けて、年金法案は会期末直前になってやっと提出されただけで審議できず、医療制度改革に至っては、これに関連業界の圧力も加わって法案すら作成できないありさまであります。  今国会総理の所信では、わずかに年金について触れるのみで、医療制度改革に至っては一言もありませんでした。  一体総理は医療制度の抜本改革をどうなさるおつもりなのでしょうか。医療費の増大にどのように対処なさるのでしょうか。危機に瀕した健保財政をどうやって立て直されるのでしょうか。はっきりとお答えいただきたいと思います。  本来、医療制度の抜本改革は、一昨年の医療費の国民負担引き上げとセットで実施すべきものでした。それを政府は負担引き上げだけをつまみ食いし、制度の抜本改革は平成十二年度実施に先送りいたしました。  現下の不況の引き金が、消費税等の増税と国民の医療費負担の増加にあることは既に定説となっています。深刻な不況をもたらした上、さらに国民への改革実行の約束も果たさないとすれば、総理には国民生活を預かる資格はありません。  総理はこの責任をどのようにとるおつもりか、国民に明らかにしていただきたい。  また、年金法案についても、抜本改革にはほど遠いと言わざるを得ません。現在提出されている法案は、給付の削減により将来世代の過重な負担を防止するとされています。しかし、給付の削減については法案に明記されており、総理のおっしゃるように引き下げが確実な給付を約束するものとなっています。しかし、過重な負担増の防止を担保するものは具体的には何もありません。  例えば、先国会成立した年金保険料の凍結を今後どうするかでその後の保険料負担も大きく変わります。さらには、基礎年金の財源を税に求めるのか保険とするのかで負担のあり方は全く異なってきます。しかし、政府与党は、政権の枠組みに影響するので、自自公三党合意において二〇〇五年を目途に年金、介護、後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みをつくるとして、その決定を先送りしています。さらに、国民年金の未納・未加入問題や女性の年金問題等にも何らこたえていません。  このような年金制度国民が将来にわたって安心できるとは到底思えませんが、総理、これらの課題にどうこたえていくのか、お聞かせください。  次に、介護保険制度について伺います。  自自公三党は、介護保険制度について、おおむね半年間は保険料徴収を行わないことや、家族介護に対する支援策は介護保険制度とは別枠で慰労金を支給することなどで合意されたと伺っております。制度実施まで五カ月というこの時期に、なぜ制度の根幹にかかわるような見直しを行うのか理解に苦しみます。選挙を意識したばらまきとしか理解できず、それが事実ならば国民を愚弄するものであり、断じて許されるものではありません。今回の合意事項は、介護保険の理念そのものを根本から変えようとするものです。  総理が所信演説で言われた、高齢者の介護を社会全体で支えていく、このことこそが介護保険の理念であったはずです。家族介護に対する慰労金の支給はこの理念に全く逆行するもので、介護する家族を慰労するどころか、介護サービスの整備にブレーキをかけ、結局、介護で泣く家族を増加させることにつながります。また、保険料凍結、徴収の先送りとも相まって巨額のツケを国民に回すだけであります。  また、今回の合意は来年四月の実施に向け必死の準備を続ける市町村を大きな混乱に陥れています。総理は、この混乱をどう収拾されるのか、また、保険制度を将来とも維持していくお考えか、お聞きします。  また、自由党公明党は介護制度を将来どのようにしていくべきと考えておられるのか、二階運輸大臣並びに続総務庁長官にお聞きします。  二〇〇〇年一月一日から政治家個人資金管理団体への企業団体献金が禁止されることは、政治資金規正法附則第九条に明記されています。自民党はこの公約をほごにし、自由党も同調する考えと伝えられております。  そもそもロッキード事件で田中元首相が逮捕され、リクルート事件竹下内閣が崩壊し、さらに、佐川急便事件、金丸元自民党副総裁の巨額脱税事件といった政治家とお金にまつわる一連の事件を契機に、このままでは日本政治は落ちるところまで落ちてしまうという反省の中から、腐敗の温床になりやすい企業団体献金を禁止し、透明性の高い政党助成金制度を採用したはずであります。つまり、企業団体献金の禁止こそ政治改革の原点であり、その一番根本の問題をほごにしようというのは、国民に対する背信行為であります。  一連の事件、そしてその反省に立ち、当時の細川総理と河野自民党総裁が決断し、法律にも明記した。こうした経緯で決まった内容を一度も実行しないままに軽々に変えてよいのでしょうか。  総理は、所信表明でこの問題に一切触れておられなかった。衆議院における鳩山民主党代表の質問に対しては、概略、自民党の提案を与党各党で十分議論していただきたいとの御答弁でしたが、ここは総理の所信を伺う場であります。与党三党ではなく、先ほど申し上げた過去の経緯を踏まえた上での総理自身見解をお聞かせください。  自自連立から自自公連立政権へと、国民の意向を無視した政権の枠組み変更は、国民から大変な不信を買っています。その上さらに、多くの時間と労力をかけて実現を図ってきた政治改革の根幹部分をほごにすれば、国民政治への信頼は地に落ちることは必至であります。総理みずからの御所見国民の皆様に直接語っていただくようお願い申し上げます。  次に、河野外務大臣にお聞きします。  大臣は、平成六年当時の総総会談の当事者として、紆余曲折した議論に最後の結論を下した責任者であります。その際の合意事項に、企業等の団体の寄附は政治家資金管理団体に対して五年に限り認めると明記されています。まさか今回の自民党議論を容認されることはないと思っていましたが、鳩山民主党代表の質問に対して、当時は党の議論を踏まえて会談に臨み決めたことであり、今回も党が決めたことに従うと答弁されています。それでは余りに無責任ではありませんか。総総会談で決め、その後記者会見までして国民に公党として約束されたことであります。  私は、今でもよく覚えています。あのとき、細川総理と河野総裁は二人そろって記者会見をされ、会談の結果を国民の皆さんにじゅんじゅんと語られました。その情景を見て多くの国民は、これで日本政治は変わると確信されたと思います。それを実施目前にしてほごにすることになれば、政治家として、また公党の責任者としても信義にもとる変節との批判を免れないと思いますが、外務大臣の御所見を改めてお伺いいたします。  また、公明、自由両党には、政治改革に取り組んだ初心を忘れず、貫徹することを切に要望いたします。  政治改革をとりわけ熱心にリードしていたのは細川連立政権下の新生党であり、現在の自由党幹部のほとんどの方がそのメンバーでした。当時、政権内の一部の人たちからさえも、細川政権の進めた政治改革に対して、政治資金の問題を先送りし、選挙制度改革にすりかえようとしているとの批判がありました。自由党自民党に同調して企業団体献金の禁止を覆せば、当時の批判を認めることになると思いますが、二階大臣に御説明いただきたい。  続長官にも同じ問題をお伺いいたします。  公明党は、政治改革を推進してきた当事者であり、政治家個人への企業団体献金禁止が党の基本政策にも明記されています。政治家のあっせん利得の禁止も推進するなど、ひときわ政治改革には熱心な政党であります。  続長官は、衆議院では三党協議にゆだねる旨発言され、また政党の枠組みが変わったとも申されました。しかし、政党の枠組みが変わったことにより基本政策を変えることになれば、それは本末転倒であります。基本政策の相入れない政党の枠組みをつくることの方が問題であり、むしろそちらを改めるべきであります。  三党協議ではどのよう主張をされようとしているのか、続長官にお伺いをいたします。不退転の決意で企業団体献金とあっせん利得の禁止を実現されるのかどうか、重ねてお伺いをいたします。  次に、衆議院定数削減問題について伺います。  自自両党はさきの通常国会で、衆議院比例代表選出議員定数五十削減法案を提出し、委員会における提案理由説明も行っており、この法案は継続審議となっております。  しかしながら、自自公三党は昨今、衆議院の比例定数を二十削減し、残りの三十名の削減は小選挙区などを中心に平成十二年の国勢調査の結果により行うと玉虫色の合意をしました。先に出した法案を一度も審議しないまま、異なる内容の法案を新たに提出しなければならない必要性が全く理解できません。総理から国民に明確に説明していただきたい。  また、自自公各党は、衆議院選挙制度としてどのよう制度が望ましいと考えておられるのですか。自由党は完全小選挙区を目指しているのですか。公明党はどうですか。小渕総理、二階大臣、続長官、それぞれにお示しください。  次に、農業問題について伺います。  今月末、シアトルで開催されるWTO閣僚会議を皮切りに、いよいよWTO新ラウンドが始まります。新ラウンドでは前回のウルグアイ・ラウンド同様、農業問題が極めて重要な交渉分野となることは間違いありません。  アメリカ政府は農業分野の貿易ルールづくりを最優先の課題にすることを早々に表明しております。また、EUも食品の安全性といった消費者保護を前面に打ち出す構えです。これに対し、我が国政府の姿勢は関係省庁の主張を総花的に羅列するといったものであり、農業分野のプライオリティーが不明確であります。新ラウンドにおける農業分野の位置づけについて、政府の基本姿勢を総理にお伺いいたします。  防衛庁の調達業務についてお尋ねします。  十月十九日には燃料談合が刑事告発され、石油会社の九人が逮捕されました。さらに、十月二十六日には会計検査院が、自衛隊艦船の修理や定期検査の発注入札について造船会社が事前調整を繰り返していた疑いを指摘しました。  防衛庁は、昨年の防衛装備品不正調達事件を機に調達業務の改革を実施したはずなのに、防衛庁と業者との癒着体質は払拭されていません。調達行政の総点検と早急な真相究明が求められていますが、今後いつまでにどのような措置を講ずるのか、総理に伺います。  以上、るる述べてまいりましたが、自自公連立政権である第二次小渕内閣では、理念も考え方も異なる与党間の意見調整に明け暮れ、深刻な雇用情勢への対処もならず、年金・医療改革はおくれにおくれ、介護保険制度政治改革においては議論を蒸し返し、その原点さえほごにしてしまう。明らかに時計の針を逆に回しています。  二〇〇〇年の節目を前に、このような小渕内閣のもとでは、総理の言われる「あしたに希望を持ち、未来の発展を確信のできる世の中」は絶対にやってこない。私ども民主党政権についてこそ可能になる。総理の所信を伺い、この確信を一層強くしたことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  33. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 直嶋正行議員にお答え申し上げます。  まず、リストラの影響についてお尋ねがありました。  企業が大規模なリストラを行う場合には、従業員の雇用や生活のみならず、関連企業や地域の経済社会にも影響を及ぼし、労働市場への影響も懸念されるところであります。政府といたしましては、企業や経営者団体に対して、従業員の雇用の安定に向けての最大限の努力を求めるとともに、雇用の安定等の面から必要な指導、援助を行うなど雇用対策に万全を期してまいります。  雇用の場の確保と企業の組織変更等に対応した労働者の保護についてのお尋ねもありました。  企業等に対して、雇用の安定に向けて最大限の努力を求めるとともに、国としても必要な対策を行い、雇用の安定に万全を期してまいります。また、企業組織の変更等に伴う勤労者の保護の問題については必要な検討をいたしてまいります。  雇用対策について重ねてお尋ねでしたが、現在、雇用創出効果の大きい成長分野における雇用創出や、地域の実情に応じた臨時応急の雇用就業機会の創出等を重点とする緊急雇用対策に全力で取り組んでおります。今後とも、中小企業における雇用の創出、安定対策などに特に力を入れて取り組んでまいります。  次に、医療制度の抜本改革に関するお尋ねでありましたが、安定した医療制度を確立するためには、医療制度におけるむだや非効率な点を見直し、質のよいサービスを効率的に提供できる仕組みづくりが必要であります。このため、政府では現在、医療制度の全般にわたり見直しを行っているところであり、具体的な制度改正案の検討を急ぎ、改革の実現に向けて最大限努力してまいります。  次に、国民年金及び厚生年金保険の保険料の凍結についてお尋ねでした。  これは、現在の我が国経済社会等の情勢を総合的に勘案し、景気回復のために行われる諸政策との整合性を確保する観点から緊急避難的に行うこととしたものであります。したがって、この凍結解除の時期につきましては、今後の景気回復状況などの総合的な事情を勘案しながら検討してまいりたいと考えております。  基礎年金の財源負担のあり方については、今回の年金制度改正法案におきまして、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との附則が設けられたところであります。  基礎年金につきましては、多くの検討事項が指摘されておりますが、その一つとして負担のあり方の問題もあるものと認識しており、そうした問題も含め、基礎年金のあり方について幅広く検討してまいりたいと考えております。  国民年金の未納・未加入問題のお尋ねでありますが、この問題の解決のためには、今回の年金制度改正を実現することにより、年金制度に対する国民の信頼を確保していくことが重要であると考えております。また、今般の改正案におきまして、半額免除制度の導入、学生が卒業後保険料を追納できる仕組みの創設などの制度を設けることといたしております。なお、周知広報、納付督励など実務的な対策についても、今後とも積極的に実施してまいりたいと考えております。  女性の年金問題についてのお尋ねですが、女性の社会進出や家族・就労形態の多様化を踏まえ、制度全体にわたる検討が必要となってきていることは認識をいたしております。しかしながら、具体的な検討を行う際には、就労状況、賃金水準といった女性が置かれている社会実態を踏まえつつ、関連諸制度との整合性に留意する必要があり、今後、これらの幅広い分野の専門家の御意見を聞きながら検討していきたいと考えております。  次に、政府に対して申し入れのありました介護制度にかかわる三党合意についてでありますが、今般の与党三党の合意は、制度の円滑な実施という観点から取りまとめられたものと認識をいたしておりまして、来年四月からの実施に向けて万全を期してまいります。なお、介護にかかわる財源及びそのあり方につきましては、今後、制度の実施状況を踏まえ、与党において協議されるものと承知いたしております。  企業団体献金についてお尋ねでありました。  これは、先ほど来御答弁申し上げておりますように、この取り扱いについては、過般の自民、自由、公明三党合意を受けて、自民党においては、政党助成・政治資金制度等改革の基本方針を取りまとめ、自由、公明の二党に提示されたところと承知をいたしております。  いずれにしても、この問題につきましては、各党各会派において十分論議を深めていただきたいと考えております。  定数削減等衆議院議員選挙制度についてお尋ねですが、連立政権の発足に当たりまして、自民、自由、公明三党間の協議によりまして合意がなされたところであります。  いずれにせよ、議員定数を初め衆議院議員選挙制度あり方につきましては、議会政治の根幹にかかわる問題でありますので、各党各会派において十分議論を深めていただきたいと存じます。  次に、WTO新ラウンドにおける農業問題についてお尋ねがございました。  この新ラウンドにおける農業分野の位置づけについては、我が国にとりましては農業は極めて重要であると認識をいたしており、次期農業交渉においては、国民的理解を得ながら、農業の多面的機能や食糧安全保障の重要性への配慮、輸出国と輸入国の権利義務バランスの回復が確保された貿易ルールの確立を積極的に主張していきたいと考えております。  最後に、防衛調達行政についてお尋ねがございました。  燃料談合問題について、検察当局の捜査等により事実関係が解明されるものと考えております。自衛艦修理問題については、防衛庁において事実関係を解明すべく鋭意調査中であると承知をいたしております。また、先般、防衛庁長官が、入札契約の問題を検証する電子システムを構築し、調達改革のフォローアップを推進するよう指示したとの報告を受けており、その成果に期待いたしておるところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣二階俊博君登壇、拍手〕
  34. 二階俊博

    国務大臣(二階俊博君) 直嶋議員にお答えをいたします。  介護制度に関する将来ビジョンについてのお尋ねであります。  自由党としての考えを申し述べます。  高齢化社会を迎えるに当たり、民間活力が十二分に発揮されるよう、社会経済の安定のためにセーフティーネットを構築することは最も重要な課題であります。しかしながら、国が基礎的社会保障に関して責任を持つことを明確にして老後や疾病の不安を取り除くためには、現行の保険方式はもはや限界であると自由党考えております。基礎的社会保障の財政基盤を確立するとともに、負担の公平化を図るため、消費税を福祉目的税に改め、基礎年金、高齢者医療、介護の財源に充てるべきであります。また、これによって保険料の直接負担を取り除くことができるのであります。今回の自民、自由、公明の三党連立発足に際しましても、従来の主張を貫き、この三分野を包括した総合的な枠組みを構築することで合意をした次第であります。  次に、細川内閣における政治改革についてのお尋ねであります。  直嶋議員も御存じのとおり、政治改革にはさまざまな課題があり、政治資金選挙制度はそれぞれ重要な課題であって、すりかえることなどとは全く御指摘は当たらないものと考えております。  自由党といたしましては、政治資金の問題については、政治資金の透明性を確保すること、そして政官業の癒着を絶つことが政治と金にまつわる不祥事を根絶するために必要であると考えております。この視点に立って党内で議論が行われていることを承知しております。  総理答弁のとおり、この問題については各党各会派において十分議論を深めていただけるものと考えております。  衆議院の定数削減については、自自で提出した法案と自自公政策合意事項が異なっている理由はなぜか、自由党の目指す衆議院選挙制度の改革とは何かという御質問であります。  衆議院の定数削減につきましては、御指摘のように、自由党は、自民党との政策合意に基づき、さき国会において、自民党と共同で衆議院の定数を比例代表選出から五十人削減する法案を提出いたしました。しかし、その後、連立政権公明党が加わることになり、三党間でそれこそ真剣な協議を続けた結果、衆議院の定数については五十名の削減と、うち二十名については次期総選挙において比例代表選出議員を削減することを内容とする公職選挙法の改正を次期臨時国会冒頭において処理する、残余の三十名の削減については、小選挙区定数などを中心に対処することとし、平成十二年の国勢調査の結果により所要の法改正を行うという合意となったのであります。  三党の合意においては、衆議院の定数を五十人削減するという自由党主張の根幹は維持されております。自由党として、今後の協議を通じ、その実現に全力を尽くしてまいりたいと思います。  なお、自由党の目指す衆議院選挙制度は、最終的には衆議院の定数を小選挙区のみで四百人とすることとして党として意見が一致をいたしております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣続訓弘君登壇、拍手〕
  35. 続訓弘

    国務大臣(続訓弘君) 直嶋正行議員の代表質問にお答えいたします。  私には三点ございました。  まず、介護保険制度に関するお尋ねでございますが、介護保険制度につきましては、法案成立当時からさまざまな議論がなされたことは直嶋議員自身も御承知のとおりでございます。  公明党は、与党協議において、当面は在宅介護サービスに対応した保険料の徴収にとどめ、施設介護に対応する財源につきましては公費等を主体とする負担でこれを実施するという主張をしておりますが、私としては、この問題に対する与党協議と当局の適切な対応を見守りたいと考えております。  次に、企業団体献金の廃止に対するお尋ねでございますが、公明党は、政治家個人への企業団体献金につきましては、法律どおり来年一月から禁止すべきであることを与党三党間の協議の場において主張しております。なお、私としてはその協議を見守りたいと考えております。  最後に、定数削減等衆議院議員選挙制度についてのお尋ねでございますが、公明党は、中選挙区に制度改革する中で五十名削減するという案を発表しております。連立政権の発足に当たり、自民、自由、公明三党間の協議により、一つ、衆議院議員の定数については五十名の削減と、うち二十名については次期総選挙において比例代表選出議員を削減することを内容とする公職選挙法の改正を次期臨時国会冒頭において処理する、二つ目、残余の三十名の削減については小選挙区定数などを中心に対処することとし、平成十二年の国勢調査の結果により所要の法改正を行うとの合意がなされたところであります。  いずれにせよ、議員定数を初め衆議院議員選挙制度あり方につきましては議会政治の根幹にかかわる問題でもございますので、各党各会派において十分論議を深めていただきたいと存じます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
  36. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) 議員御指摘のとおり、政治改革についてあの当時大変な議論が我が党内にございました。さまざまな意見が連日闘わされたわけでございますが、最終的に、私はそうした議論を踏まえて、細川総理との間に合意をつくり上げたわけでございます。その合意を記者会見で発表したことも議員御指摘のとおりでございます。  その後、その合意を踏まえまして法案化、法律として国会でお決めをいただいたわけでございますが、その当時も我が党内にはさまざまな議論はありましたけれども、政党として決まったことには従おうと、こういうことで五年前に法律はできたわけです。  この間、今日まで五年の間、さまざまな政治改革が行われまして、五年の月日がたって今日に至ったわけでございますが、いよいよ昨今再び議論がございまして、五年間の経験を踏まえて、政治資金についてどういう形にすることがいいかという議論が党内で各般の方々からの意見を聴取して議論が行われまして、基本方針が先日決まったところでございます。この基本方針を踏まえて、与党三党内で引き続き議論が行われると承知をいたしております。  私は、五年前を振り返り、さまざまな議論はあったけれども、党の決定に従われた多くの議員の皆様方のお気持ちを踏まえて、今回は私もまた党議決定には粛々と従いたい、こう考えているところでございます。(拍手)
  37. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十一分散会      ─────・─────