○谷本巍君 新しい
基本法農政の柱である
水田営農
政策がスタートしようとしております。私の
質疑時間は十五分であります。申し上げたいことはたくさんある。
質疑ということではその意も尽くせない。したがって、この事業の成功を祈りながら若干の問題提起をさせていただきたいと思っております。
初めに申し上げたいのは、
農政通の新
大臣が初仕事としてこれを手がけるということは、私は大変光栄なることだと思うのです。
といいますのは、この
施策いかんで、一貫して下落してきました
自給率を引き上げることが可能となる。それからもう
一つは、これまでとかく批判の多かった米の減反
政策、
食糧法制定以降下落続きの
自主流通米価格、これらの問題を改善に導く環境を整えることができるからであります。つまり、自給の引き上げということと
米政策の環境整備という
二つのことが一遍にやれるという可能性を持っているからであります。しかし、それには幾つかの
条件整備が必要であります。限られた時間の中で私は三つだけ提起をさせていただきたいと
思います。
その第一は、麦・
大豆作の新たな助成金がどうなるのかということであります。最高額は六万七千円という話を聞きました。昨年最高額を取った者はせいぜい二割から三割までいかなかったでしょう。ことしはどうなるか。最高額は昨年に比べ六千円上がりました。そして、団地化要件にしましても、利用集積でもよいということになりましたから、かなりこれがふえるのかなと思うのでありますが、現場の
皆さんや関係者の
皆さんに伺ってみますと、やってみなきゃわかりませんねというのがほとんどの声であります。
それにこの最高額と絡んでもう
一つ問題があるのは、最高額が七万三千円だとしましても、農地の貸し手と受け手の配分関係がどうなるのか、ここにもう
一つの問題があります。確かに、団地化を進めていくには農地の貸し出しへの配慮を抜きにしては成立いたしません。ところが、貸し出し手の取り分いかんでは最高額は簡単に米作収入を上回るような
状況になる可能性があります。
なぜ現場の
皆さんや団体の
皆さんが米以上の所得にこだわるのか。これは言うまでもありません、小麦にしたって
大豆にしたって米づくりほど楽じゃありませんよ、これは大変です。
谷津政務次官の地元も麦作をやっておられるからよく御存じと
思います。麦なんかの場合に、収穫期に雨に降られちゃって収穫ゼロ、収入ゼロということだって生じかねないといったような
問題等々があります。それにまた、これらの作物をやっていくのには新規投資が伴うといったような
問題等が出てまいります。それだけに助成金の
水準で大体すべてが決まりそうな感じが強いのであります。
新しい
基本法発足早々、これは私の勘が外れていればいいのでありますけれども、次に出てくる
自給率は下がりますよ、私はそう
思います。今そういう声が出ていますよ。これは新
基本法とは関係がないけれども、余りいいことじゃありませんよ。
そういう
状況の中で、
水田営農対策が何とか順調なスタートをできるようにさせていかなきゃなりません。しかもこの問題は、単なる
大豆と麦の増産対策ということだけじゃなくて、
米政策全体を変えていくという重要な意味合いを持っておるのであります。したがって、助成について
大臣と
政務次官のさらなるひとつ御奮闘を期待したいのであります。
それから
二つ目の問題は、
水田営農
政策がうまくいくと確かに
自主流通米の
需給バランスは実現しやすくなってまいります。しかし、それがそのまま
自主流通米価格の好転に結びつくかというと、若干の問題なしといたしません。
といいますのは、
政府の
需給調整は不作に備えた
備蓄に限定されております。そして全量回転
方式であって、全量が何と二百万トン、上限が二百万トンということになっているからであります。そのため、少々の豊作ともなりますと、大量の
政府在庫米との組み合わせで過剰買いたたきが起こりやすい。じゃ、不作のときはどうなのかというと、
備蓄米があって放出されるから値段はその割に上がらないといったような
状況が出てくるのであります。
不作対策だけではなくて、余剰対策をこの際
考えなければならないのではないでしょうか。
備蓄運用について、棚上げ
方式を併用するということも検討されてしかるべきでありましょうし、それから豊作による余剰米処理については、農家負担ではなくて制度でもってこれがやっていけるような道を開いていく必要があるのではないでしょうか。そうしますと、
水田営農
政策の成果が
自主流通米価格にストレートに出てくるようになってくるでありましょう。この点をひとつ検討していただきたい。
以上、
二つの問題指摘に加えて、もう
一つ経営安定対策で触れておきたいのであります。
農業団体は、これまで
基準価格の改善要求といたしまして、三年
平均ではなく五年
平均にしてほしいという要請を続けてまいりました。しかし、
政府は、九九
年産価格を補てん金を加味した
水準とするということで三年
平均を続けることにいたしました。いかにもこれは取り繕いという感じであります。そうした声は、認定農家向けの九割補てんにも同じような声が出ております。
しかし、私は改善の意欲を買っていきたいんです。この問題では、これまで役所の実務を
担当しておられる
皆さんとも話をしてきました。変わりましたね。昔は、制度にちょっとでも手を入れるというと、白いものでも黒と役所の
皆さんおっしゃったものです。そうじゃない、どう改善すればいいかということで
皆さん懸命です。
そういう
状況であるだけに、この際、
大臣に申し上げておきたいのは、
価格下落が今後も続くようなら経営安定機能を果たせなくなってまいりますから、したがって経営安定対策を、実態を見ながら制度のさらなる改善と充実を期していただきたいということであります。
最後に、
推進体制の問題について触れさせていただきたいと存じます。
行政それと
生産者団体、出荷取扱業者、
農業委員会等の関係者から成る
水田農業推進協議会をつくって云々と書いてあります。私、これを見まして、さてこれは大丈夫かなと
思いました。なぜなのか。
その
一つは、既存の指導団体の協議会で革命的なことがやれますかということであります。
大臣も御存じでしょう、村を回って歩けば、最近あっちでもこっちでも耕作放棄の話が出てくる。さらにまた、単収の低い
水田なんかやってくれる人はありませんよというところだってある。せっかくつくった
農業用施設でも使われないものが目立ち始めてきております。ですから、あと数年たったらこの集落や村の
農業は成り立たなくなっていきはしないかと案ずる声だって少なくないのであります。
だから、みんなで
考えみんなで何とかしなきゃならぬときなんです。危機だから立て直しへの絶好のチャンスというとらえ方があってしかるべきなんです。果たしてこれまでの指導団体の集合体でその指導的力を発揮することができるのかどうなのか、私の第一の疑問はこれであります。
それから、
二つ目の問題は、トップダウンではなくて下からの力に支えられるようでないとこの事業は成功しないということであります。
例えば、先ほど申し上げた助成金の問題で申し上げますというと、農地の貸し手が受ける分と農地の借り手が受ける分、これをどうするか。これまでも
生産調整の中で間々見受けられましたのは、
生産調整奨励金をどっさり地主が取って、耕作する方はとにかく転作でできた作物だけということだって結構ありましたよ。ところが、地域全体で取り組むという
状況になってきますというと、その種の問題というのはおのずと解決されていきます。さらにはまた、みんなに元気が出てくれば、自治体や
政府への要求行動が出てくるはずです。今の村の
状況は冷え込んじゃってそういう
状況になっていないというところにより重大な危機的
状況があります。
さて、
最後の三つ目に思うことでありますが、もう
一つの問題は、活力を取り戻すのには、最近の情勢
変化を積極的に取り入れる工夫があってしかるべきではないかということであります。
新規就農者でいえば、定年就農、Uターン就農、県外就農等々が目立つようになってきました。この中には、米の集団転作なんかで非常に指導的な役割を果たしてくれる人たちが出てくるということをちょいちょいこのごろ見受けるようになってきました。
さらにまた、村の中じゃ女性の
皆さん、高齢者の
皆さんが朝市、産直運動をやっていく。そして、それも
大豆や小麦づくりで申し上げますというと、原料をつくるだけじゃないです。パンをつくってみましょう、そしてまた同じように御婦人の
皆さんが
中心になって、みそをつくってみましょう、加工の仕事が始まりましたね。そして、地場流通から今度は都市との提携というところへ発展している例もある。つくったものを加工するというのは一回転する。地域で販売すれば三回転していくんです。それだけ地域経済の貢献度が高くなってくるわけであります。
こうした動き等々も出てきているわけでありますから、そうした動きに学びながらそれに取り組んでいくという工夫もあってしかるべきだと私は
思います。
水田営農
政策は、地域
農業再建、そして地域
農業経済おこしとともに食べ方を変える運動にも貢献できるような組み立て方、これが工夫されてしかるべきなのじゃないでしょうか。
推進協議会の構成と
運営上の工夫について特段の力を注ぐよう期待を込めながら、私の発言は終わります。
答弁は結構であります。しかし、時間を少々残ました。
大臣の感想だけ、一言でも結構であります、承っておきたいと
思います。