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参考人(折口
雅博君)
中小企業基本法の中には、従来型の
中小企業とそれから
ベンチャー企業と言われるこの二つのものが含まれているというふうに
理解しています。
これは違うものだというふうに思われがちなんですが、もとはといえば
創業した当時は皆普通の
中小企業ですから、そこから、ある段階である意思を持って
ベンチャー企業になっていく、そして意思を持って従来型の
中小企業のままでいるというふうになっているというふうに私は
理解しております。
恐らく従来型の
中小企業、これも世の中の基礎的な部分を支える上で重要なものだとは思います。ただ、
経済を画期的に
活性化していくという意味では、
ベンチャー企業を育てていくということが大変重要になってくるというふうに思っています。
ただ、今まではこの
ベンチャー企業というのが育ちにくい
環境にあったということです。なぜかというと、
中小企業を全部一緒にしておりますので、初めのうちはお金が集まらない、銀行からも融資を受けられないということで、そこを突破しないと、幾らいいアイデアがあったり幾らやる気がある人間がいても、なかなか上がってこれないという現実がありました。だから、そこのところを考えて
政策を打つ必要があるというふうに思っています。
皆様御存じのとおり、アメリカは、八〇年代は
経済は沈滞しておりましたが、九〇年代に入りましてから目覚ましい
発展をいたしました。その核となった会社がマイクロソフトであり、インテルであり、そしてシスコシステムズであり、今で言えばAOLであるということです。これらはみんな
ベンチャー企業であり、今言ったほとんどの会社が大体八四、五年ぐらいに起業した会社です。わずかまだ十五年もたっていない会社なわけです。
これが何であんなに伸びられたかということなんですけれ
ども、そして今アメリカのベンチャーのすそ野がなぜあれだけ大きくあるかということなんですが、大きなものとしてはやはり社会でベンチャーを育てられるインフラがあるということだと思います。
一番初めに来るのは、多分
日本がこれから導入した方がいいと思われることとしては、まずは
税制の問題があると思います。今回のこの
法案に関係あるかどうかわかりませんが、私は根本的な話をしたいと思っています。
エンジェル税制、これに関しては今
国会でも議論されることになっていると思いますが、アメリカの場合は、一般投資家が投資して、そしてもし失敗した場合、所得と合算して年間一千万までは損金に認められるというふうになっております。これが大きな
役割になっていくというふうに思っています。
日本ではもっと強烈にやってもいいと思っているんですけれ
ども。
理由としては、個人がまずは欲望に基づいて、欲望と言ったらちょっとあれですけれ
ども、自分がそれで資産をふやそうと思って投資するという多くの人が参加することによって選ばれてくる、要するに
企業が成長してくるということが、まず広い枠をつくる意味で大事だと思います。
そして、その中で、
日本でも
ベンチャー企業で失敗しそうになる会社というのは、
資金調達に失敗して失敗する例が一番多いです。特に、
技術職の人なんかは
資金調達に関しては余り得意でないという人もいます。そういう人
たちが初めの段階でお金を集められるという大変大きなメリットがあります。
お金を集めて自分で
事業を実際にやってみますと、大きくなっていく過程でいろんなことを学びます。本当に財務戦略をちゃんと考えられるようになるとか、人事マネジメントができるようになるとか、マーケティングの仕方がちゃんとできるようになるというふうになります。そうすると、初めはある
技術に対してのプロフェッショナルにもかかわらず、だんだんプロの
経営者になっていくことができます。そういう人がどんどんふえていきます。
アメリカは、そういう人
たちが株式公開をどんどんして資産をためます。ためた人が自分の会社を売却したり、もしくは、やりながらその資産をもとに新たなベンチャーに投資するということをやっています。そして、彼らがそのベンチャーを見ますので、経験者ですからプロですね、プロが見るので、次のベンチャーも成功確率が高いということです。
不思議なんですが、例えばプロ野球の解説者になっている人は、プロ野球選手で優秀な人がなっていますね。だからよくわかるわけです。監督やコーチにしてもそうです。だけれ
ども、何で
経済の方は
事業を成功させた人がベンチャーキャピタリストをやっていないんですかと。
日本は、コンサルタントになっているのは、大学を出てからMBAを取ってきて、
事業は全然やらないでベンチャーキャピタリストになったりしています。アメリカは、ベンチャーキャピタリスト、シリコンバレーのキャピタリストは皆さん
事業経験者です。だから、うまくいくわけです。どんどん投資していく、うまくいく。その循環がどんどん枠を大きくして、新しいベンチャーが育っていくということになりますので、まず、この
エンジェル税制というのは大変大事だろうなと思っております。
ただ、ここで
日本の場合、注意しなくちゃいけませんのは、従来型の
中小企業というものを引きずっている面もありまして、確かにそんなに売り上げが上がらないものですから、皆さん経費等を会社で使っております。そういう面が、例えば今度ベンチャーになったときでもそういうことが起こっていくとどうなるかということなんです。
投資家からお金が集まります。集まるけれ
ども、公私混同的なことになっていくとなると、これは大変まずいことになってくると思います。なので、やはりベンチャーを目指すんだとなってお金を集めるんだとなった会社においては、間違いなくディスクロージャーというものを徹底的にする必要があります。そして、公私混同があったり、もしくは
経営上まずいようなことをした場合、アメリカであれば逮捕されてしまいます。
日本は、金融でいろいろありましたけれ
ども、なかなか逮捕される人も少ない。そういう風土があるわけですね。
そういうのを厳しくして、やはり権利と義務は一体化するわけですよということです。お金も集められます。だけれ
ども、当然持ち株比率も減ります。減っていいわけです。あるベンチャーの起業者によると、持ち株比率が減っちゃうからそれはちょっと困ると言う人もいますが、そんなことはないです。減ったって、それはきちんと
経営すればいいわけです。別に自分のポジションも危うくなりません。実力があって
経営するから、預かったお金をちゃんと資産運用できるんですね。それを期待して投資家もお金を出すわけですから、そういう義務をしっかりやる必要があるということです。
そうすれば、きちんとその持ち株比率の中で少なくとも責任を果たせます。そして、社外取締役がたくさんいて、監視の目の中でもやれますということで、より緊張感を持って、本当に成功させるぞという客観情勢も整いますので、それはうまくいけるのにおいても重要なことであります。
そういうふうに
経営を科学的に持っていくことが大事だと思います。言ってみれば権利と義務、これをはっきりして
エンジェル税制を入れれば
日本でもうまくいくのではないかな、そういうふうに思っています。
それから、大
企業との戦いの中で、伸びゆくベンチャー、これが途中でつぶされたら大変だから何か策を練ろうというふうに思われている方がいらっしゃるかもしれません。そういう議論もたまに出ます。ですけれ
ども、私はこれは全然必要はないというふうに思っています。従来型のいわゆる
中小企業はある程度必要があると思います。それは本当に部品をつくるとか基礎を固める上でなくてはならない存在があります。そういうところは、下請法とかそういうのがあった方がいいと思います。
ただ、ベンチャーというのは、将来本当に大きくなる、大
企業に伍して大きくなろうと思って、そういう志を持って、そして
エンジェル税制とかの
支援も受けながら大きくなるところですから、これはかえって何か甘いことを条件に出すと強くなれません。その戦いに勝ってこそ本当に大きくなれるということです。
だから、例えばIBMがありました。マイクロソフトは後から出てきました。だけれ
ども、結局、IBMよりも株式時価総額においては当然もうずっと大きい会社になりました。それは、IBMがマイクロソフトをベンチャーだからといって生かしてくれたわけではありません。マイクロソフトは負けないためにソフトという、OSという一番強いところを押さえたわけです。でも当時は、初めのころは、IBMはそれがすごく強くなると思わなかった。思わなかったけれ
ども、それをビル・ゲイツはわかっていたわけですね。
そうやって、つぶされそうになるものをよけながら、そして本当に強いものの本質をわかりながら戦ってきているので大きくなれているわけです。だから、そうやっていって勝ち抜いたところが本当に強くなります。
今、
日本だって伸びている会社はそうです。光通信という会社、携帯電話の会社でトップの会社があります。これの時価総額はもう四兆円近くあります。十年前にできた会社です。数々のNTTとかいう大
企業、NTTに本当につぶされそうになる可能性は十分ありました。ですけれ
ども、圧倒的なセールス力で、そして頭を使ってあれだけのシェアを持ってきて、今二千億円以上の売り上げがあります。
やはりこれは、そうやって自分で強くなってきたからこそ大きくなれているんですね。なので、そういうことは自由競争にさせる、競争させてより強い会社をつくっていく。それが国際的に本当に強い会社が
日本の中から出ていく大事なことだというふうに思っています。
最後、三分ぐらいあると思いますので、根本的なことをもう一つ言います。
今言った手段は、確かに実務的に大事なことであると思います。ですが、物事は何でも根本が大事です。根源が大事ですね。
日本でなぜベンチャーが育たないか、なぜ弱いかというと、私は教育問題にあると思っています。
特に大事なのは小学校の教育問題だと思っています。物心ついたときに初めて習うのが足し算、引き算とか漢字であるというのでは、実務的、戦術的なことをいきなり習うわけです。そしてそのまま受験競争があって、会社に入って、大蔵省とか行きますね。そうすると、その戦術的なことができる人が偉い人である、人間的に偉い人だというふうに思われております。ですが、なぜ本当はそうでもないかなというと、アメリカなんかではもっと違うんですね。
まず、私は理想的にも思うんですけれ
ども、小学校に入ったときに、自分は何のために生まれてきたのか、社会に何をなすべきか、そして自分は将来何をしてどう人生を価値あるものにしていくのか、自己
実現していくのかということを真剣に考えさせることをさせたらいいと思います。それを作文にでも書かせて、より真剣に考えている人が点数がいい、その点数を半分ぐらい、そして実務的な点数を半分ぐらい、その総合点で成績が決まっていけば、かなり人格的にもすぐれてくると思います。
その中で
日本に欠けていることが三つあって、一つは、プライドを与える教育をしていない。それからもう一つは、目的意識、人生の目的とかそういう大きな目標、これを考えさせる教育をしていない。もう一つは、三つ目は悪平等主義、これがあります。
この三つがあって、起業家に非常に大事なこの三つが足りないので出にくくなっています。起業家で大事なのは、まずプライドを持っていなくちゃいけません。プライドがあるということは、まず国家では社会性がある、天下国家を考えるということです。
日本人がなぜ天下国家を考えなくなったか。それはプライドを与えられる教育というのが戦後なくなってきちゃったからです。起業家はやっぱりプライドがなきゃできません。それイコール社会を考える、ミッションを考える。だからそこに役立つものを目指していくんだという志を持って
経営ができます。これが大事です。
それから、目的意識がないから戦略性がないんですね。起業家は戦略が大事です。実務も大事ですけれ
ども、大きな戦略を考えていくということが大事です。それを考えられる能力が余りなくて、重箱の隅をつつくとか、木を見て森を見ないことを考えやすいというのが
日本人の特徴です。
それから、悪平等、これによってユニークな発想が出なくなる、もしくは人と違うことを行う、考えることが阻まれるという
環境にあります。
ですから、そういうことが大きく起業家が育たない、ベンチャーが育たない原因にもなっておりますので、その辺教育改革も含めてやっていくことが大事であるというふうに思っています。
以上です。