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参考人(
山本文男君) 私は、
介護保険制度については
特別対策の件と恒久
対策、それから実施上の課題について御
意見を申し上げたいと思います。
まず最初に、私も
保険者、すなわち町村側として今日まで来年四月一日の実施に向けて
準備を進めてまいりまして、既に十月一日から先ほどからお話がありますような
認定事務に入っております。
私のところについて話しますと、三万四、五千ぐらいの要
介護者がいるだろう、こう予測をしておりますが、その中で今約三分の一ぐらいの
調査も終了して、さらにその後三分の一ぐらいが
判定事務が終わっているという状況でございます。
判定の
段階で特別に支障になるようなことはまだ報告を受けておりませんけれども、もろもろの小さな
問題点が出てくるかもしれません。しかし、いずれにしましてもある
意味では
準備を完了しているというところまで行っておりますので、今
基本になるようなことを
変更しますと、我々
現場の町村としては大
混乱を起こすことは間違いありません。
今一番困っておりますのは、
特別対策で
保険料を一体幾らに制定すればいいのかというのでかなり苦渋をしておるんですが、御存じのように賦課
準備というのがございまして、
保険料を決めますと少なくとも三カ月ぐらいの
準備期間が必要となります。したがって、四月一日から
保険料を徴収するということになれば、今月かもしくは一月までぐらいに
保険料を制定する条例を決めなければなりません。現在時点では少し無理なような感じがいたします。
特別対策を行われることになりますけれども、いずれにしても
保険料を決めないと
特別対策での基金の授受ができなくなりますので少し時間おくれの感がある、こういうところでございます。
ですから、
保険料だとか
認定だとか
サービスだとか
基本になっておるようなところを
変更するということになりますと、我々
保険者側の
準備ができないということになりますので、ぜひその点についてはあらかじめ御了承いただきますようお願い申し上げたいと思います。
さて、この
特別対策ですけれども、今のところ
政府の方で大筋で決められておるようでございます。私どもは最初からこの
特別対策には賛成をしておりません。今でもしておりません。それはなぜかと申し上げますと、我々は二年有余をかけて
準備を進めてきておりますので、今それを
変更するということになりますと、被
保険者の
皆さんたちにある
意味では動揺を与えることになるわけでございます。
ところが、被
保険者の
方々は、
保険料を徴収しないということになりますと、だれも個人的な利害が伴ってきますから喜ぶだろうと思いますけれども、その後が大変なんです。ゼロ、二分の一の時間が過ぎて、さて本格的に
保険料を徴収するということになりますと、いろんなものが出てくるだろうと予測されます。例えば、
市町村長が努力をしてもう少しこれが下がるように国側に
要望したらどうだ、国だって初めはゼロにしたじゃないか、こういうことを言われる理由をつくることになると思います。これが私ど
もとしては大変重荷になっておりますので、できればこの
特別対策についてはやらない方がいいんではないか、こういうふうに今でも思っております。
せっかく国側は、
市町村が運営がしやすいように、
住民の
皆さんたちの軽減を図るためという、言うなら温情的な
措置でございますので、やるならばこの特別
交付金の基金についてはできるだけフリーハンドにすべきである、こういうふうに申し上げてきているところでございます。この点についてはまずぜひひとつ御了解を願いたいと思います。
この
特別対策をやるのは反対というのは、一号
保険というのは
保険者の専管
事項であって、他の人がどうだこうだと言うべき事柄ではないと私は思います。法で定めてありますから、したがって
保険者の専管
事項を他の人がどうだこうだと言うのは言うならば侵害することになる、こういう
意味でございます。しかしながら、それをうまくやるためには基金はできるだけフリーハンドにすべきである、これが国側も
保険者側もそれぞれの
立場を尊重するという
考え方である、こういう
意味でございます。
それからその次でございますけれども、
保険料対策だけやればいいというものではございません。
保険者というのは
準備のためにかなりの
経費を必要としてまいりました。ですから、私は少なくともこの立ち上がり資金を特別に交付すべきである、そういうふうに申し上げてきておるところでございまして、この立ち上がり資金は少なくとも一千億ぐらいを交付しなければ、
保険者側としては、百億ぐらいですと
平均すると三百万ですから一人の人件費にも満たないということになります。
そういうことを考えていきますと、三千万程度の立ち上がり資金を交付することこそ大事である。なぜならば、
事務費の補助が
認定事務の二分の一だけ補助をするということになっておりますから、その他の事務
経費については一切自弁でございます。もちろん、人件費については交付税で見るといいますけれども、これは全部の
地方の自治団体が実施するわけで、国税のたらい回しみたいな格好になるわけですから、特別枠が出てきて、そして人件費を交付税に算入するということであるなら別でございますけれども、どうやらその点についても少し不安がないとは言えません。
したがって、さっき申し上げたような立ち上がり資金を考えるべきである、これが
特別対策である、こういうふうに思っておるところでございます。
その次に、恒久
対策なんですけれども、これは先ほど市長会からも話が出ておりましたように、
財政調整
交付金は当然外枠として別個に設定することが必要である、こういうふうに申し上げてきております。
その次に、法で定めております
財政安定化基金というのがございますが、これを支援するのは一号
保険の徴収などが不十分になったときに、言いかえると財源不足が起こったときに貸し付けと助成をしようというのがこの
財政安定化基金でございます。だから、その資金を提供するものは交付する方の側に立つべきでありますから、受ける方がこの基金の資金
負担をするというのは不合理じゃないか、こういうふうに思いますので、
財政安定化基金については当分の間凍結をして、別途に
保険者に対して何らかの
財政支援をすべきであるというふうに思っておるところでございます。
それから次は、低所得者
対策ですけれども、これは先ほど話がございましたので省略しますが、
介護保険で最も大事なのは低所得者
対策です。ですから、これをきちんとやることが必要じゃないかと思っております。
次は、
事務費でございますけれども、さっき申し上げたように二分の一の助成なんですけれども、実質上現在時点で予定をされておりますのは四分の一ぐらい。今度一生懸命に努力をしていただいて、二分の一の約八〇%ぐらいにはできるのではないかと言われておりますけれども、
事務費は約束どおりに二分の一の助成をしていただくようお願い申し上げたいと思います。
それから、さっきお話がございましたように、いろいろ
変更になりますものですから、国保の徴収の上に上積みする二号
保険もございますが、一号も同じですけれども、これのソフトが変わってしまいます。それで、それの改修をしなきゃなりませんが、これらについての
費用も当然
負担をしていただくようお願い申し上げたいということでございます。
さらにもう
一つは、実施上の課題でございますけれども、
ホームヘルパーのヘルプについてまだまだ甘い見方をしているんじゃないか。だから、七千七百五十億円についても、実際に七千七百五十億円がゼロ、二分の一に充当するだけの
金額なのかというのは少し疑問がございます。
それはなぜかといいますと、
厚生省が示しております
保険料の額というのは各県から持ち上がってきたところの額の
平均値を出したものであると言われております。ところが、各県から出されております価格が正確にとられているかということについては、いささか疑問が私はあると思います。
例えば
一つの例を挙げますと、
ホームヘルプ事業というのは二十四時間やらなきゃなりません。現在我々が体験をしておりますのは八時半から五時までなんです。だから、八時半から五時までの間で、しかも休憩時間や通勤時間などを加えてありますから、したがって実質的に
ホームヘルプ事業を行っている時間というのは三、四時間しかない。それが頭の中に先入観念としてありますから、これからの
ホームヘルパーの数は大体これぐらいでいいだろうという推定をしていると思います。
ところが、これから本格的な
介護が始まりますと二十四時間やらなきゃいけない。早朝と深夜が起こります。早朝と深夜になりますと、通常考えております
介護費用の三倍もしくは場所によっては五倍必要になってくるということでございます。それらが計算されて
保険料の
平均値を出されているかどうかについては、よその県は存じませんけれども、私は少し疑問がある。したがって、七千七百五十億というのは基礎がそういうふうに少し違っているから、完全にゼロ%、二分の一に充当することが可能かどうかということでございます。ですから、この二十四時間体制について十分配慮をする必要があるということでございます。
しかも、ヘルプ事業に民間参入ができるようになっておりますから、このためのマニュアルを国が示すべきではないでしょうか。民間の業者に対してこうやらなきゃいけませんよというマニュアルをつくることが必要であると思います。
それからもう
一つは、療養型病床群で
医療と
介護の比率が、
厚生省が示しているのは少し無理があります。だから、私どもは大体六対四、
医療が六、
介護が四、六対四でいくべきであると。中には七対三だと言う方もおられますけれども、言うなら最高として六対四の比率で療養型病床群というのは面倒を見ていくべきであるというふうに思っているところでございます。
最後になりますけれども、これだけはお聞き願いたいんですが、家族
介護の慰労金です。
これは該当が極めて少ないと思いますけれども、私に申し上げさせていただくならば、将来の家族
介護の大きな火種になるということでございます。したがって、当初は
制度外で設けるということにしておりますが、この
制度外が
制度の中に入ってきて、しかもだんだん家族
介護が、重点的に在宅
介護が行われていくということになりますと、基礎から
介護制度が壊れていく可能性がございます。ですから、ここのあたりについては十分考える必要がある。
基準を決められておりますけれども、それをごらんになってもおわかりのように、そもそも重度の人
たちがある期間
介護を受けない、しかも低所得者の人
たちに対して慰労金を上げるということは到底考えられないことでございます。しかし、この
制度を設けるということは何らかの意図があるような感じもしないではございません。これが将来の火種になってだんだん拡大していき、
制度内に入ってきて、家族
介護を無資格で、家族ならばどなたが
介護してもよろしい、そしてしかも
介護費用はこれぐらいだというものの
もとづくりをするような感じがします。ここらあたりについては十分ひとつお考えをいただいて、国側としてこれは未来永劫に
制度外で、こういう方法で実施していくんだということだけはお守りいただくようお願い申し上げたいと思います。
そのほかもろもろございますけれども、そういうような
特別対策、恒久
対策、それから実施上の課題、こういうことをまとめてお願い申し上げました。よろしくお願いいたします。
終わります。