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参考人(
岡沢憲芙君) 早稲田大学の
岡沢でございます。
本日は、
意見表明の機会をお与えくださいまして、心から感謝いたします。非常に時間が限られておりますので、早速話の内容に入らせていただきたいと思います。
レジュメの一ページでございますけれども、上の四行に「
少子化の挑戦にどう
政策対応するか」という基本的な視点を書いておきました。
平均寿命が延び、
男女間平均寿命差が拡大し、それにつれて
女性のライフスタイル、意識が変化しているのに
社会システムが
政策対応できないでいるということ。こうした問題を解決するためには、つまり
人口構造や有権者構造の変容にどう
政策対応するかという視点で考えるときには、労働空間、居住空間、通勤移動空間、余暇空間、社交空間、医療
福祉空間、こうした側面の中でそれぞれの環境をどう整備していくかということが非常に重要な
政策対応の視点ではないかと考えます。
そのときに、多くの国々の中で
最初に少子
高齢化を経験した
スウェーデンがある意味でヒントを提供してくれるかもしれない、そういう判断から恐らくきょう私にこういう
意見表明の場が与えられたんだろうと理解しております。
お
手元の六ページに「北欧のカルチャー・ショック」という項目をつくってみました。北欧の
家族というのと
日本の
家族というのはかなり違います。それを「北欧のカルチャー・ショック」という表現で並べてみました。北欧を旅する
日本の
人たちが経験した伝統的な北欧ショックというのは、こういうものがありました。
一九六〇年代に初めて北欧を訪問した
人たちは、次の人のためにドアをあけてくれる北欧人の姿に感動したものであります。フォー・ザ・ネクスト・パーソンという考え方が非常に圧倒的でございまして、六〇年代に初めて北欧に渡った私も
最初にこれに感動いたしました。ドアをあけようとすると、必ず次の人のために来るまでドアをあけていてくれる。そして次の人が、
スウェーデン語でタックと言うんですが、ありがとうと言って次の人のためにドアをあけていくというこういうのに感動したものであります。
そして、八〇年代後半に北欧を旅した人は、恐らく公共のバスがおじぎをする姿に感動したと思います。バスや地下鉄がほぼバリアフリーの状態になって、停留所に高齢者がいたりベビーカーを引いている人がいると、バスの前の三分の一がおじぎをして乗りやすくしてくれるという姿に感動したものだろうと思います。
そして、八〇年代から九〇年代の初頭にかけて初めて北欧を旅行した人は、
男性がベビーカーを引いて職場や町の中を濶歩している姿に随分アジアとは違うなというふうに感動されたはずであります。
そうした現象と並行しまして、アジアから来た長期定住者の経験する北欧ショックというのがございます。そこに書いておきましたけれども、大
家族主義的な伝統を持つアジアの諸国から来た長期定住者は、住めば住むほどアジア的な意味でここには
家族がないという表現をよくしたものであります。これは、
日本から来た長期定住者もほぼ同じような経験を持っております。それほど伝統的な大
家族主義的
家族観で育った人にとっては相当大きなカルチャーショックであったと思います。
そうした現象を並べてみますと、「
スウェーデンの
家族の
特徴」として次の十一があると思います。一、高い離婚率。二、事実婚の通常化。この事実婚が定常化したために、今では同棲法、
スウェーデン語で言うとサンボーラーゲンというのがあるんですが、同棲法をつくっております。そして、三番目が婚外子の
一般化。四番目が養子縁組の簡素化。五番目がマルチハビテーションという、ワンファミリーが複数の住宅を持っていて、そしてそこを行き来する。御承知のとおり、モバイルテレホンが一番発達しているのは実は北欧諸国でございますから、そのマルチハビテーションの中で非常に新しい形の親密な
家族間
関係が構築されている、
家庭内コミュニケーションが濃密な状態で維持されているということであります。
そして、六番目が
出生率が低い。
少子化が進み、
家族規模が縮小した。そして、伝統的な
家族機能がどのような形で
社会化されるべきなのかという議論が起こった。そこで出てきたのが高齢者介護の
社会化ということと
育児の
社会化。具体的に言うと、子持ち
家族への
経済支援、児童
手当と住宅
手当に要約されるのではないかと思います。
そして、
スウェーデンの
家族の第七の
特徴は、海外に親類がいるファミリーが多いということであります。これは後で
お話ししますけれども、
スウェーデンはもともと非常に貧しい農業国家でございまして、ヨーロッパで一番貧しい農業国家、それが今
世紀の初頭まで
スウェーデンの代名詞でございました。どの
程度の貧しさかといいますと、当時、約百万人の
スウェーデン人が海外に移住をいたしました。当時の
人口が四百万から四百五十万の時代でしたから、全
国民の四人に一人が海外に移民せざるを得なかった、それほど貧しかった農業国家であります。
逆に言うと、多くのファミリーが海外に親戚を持つという新しい
家族の形態が生まれた。それが
家族構成の国際化という点で非常にユニークな役割を演じてきた。例えば、在外選挙権の問題であるとか在住
外国人の地方参政権の問題なんというのは
スウェーデンはいち早く導入した国の
一つになるんですが、やはりその
背景には今述べたように二十
世紀の初頭、膨大な
国民が海外に移民せざるを得なかったという
歴史的な
背景があるというふうに考えたらいいと思います。
そして八番目の
特徴は、
男性の家事・
育児分担が進んでいるということであります。これは大体六〇年代以後の現象でございまして、炊事、洗濯は大体
男性がよく参加しております。
そして九番目、これは
先ほどの繰り返しになりますが、少子
高齢化現象を先導した。そして、その過程で介護の
社会化と
育児の
社会化が進んだということ。
そして、
スウェーデンの
家族の十番目の
特徴なんですが、これは独立時期が早いということ。比較的若い段階から自立教育が徹底しておりまして、個性重視の旺盛な自立精神、もしくは
経済的自立を促進する教育、職業教育が早い段階から進められております。この自立というコンセプトに包含されるのは、自己決定、自己選択、自己責任、自己投資という考え方が非常に濃密でございまして、国や地方自治体が何かをやってくれると考える前に、まず自分は何ができるのかということを
最初に考えてほしい。
一般的なイメージとしての
福祉国家というと、何となく人に優しい
社会を考えそうでありますが、実際には逆でございまして、自分が労働可能なときに働いて納めた税金をいざというときに回収しているだけでして、ある意味では非常にきつい
社会だというふうに言えるかと思います。
いずれにしましても、自立精神が非常に旺盛でございまして、それが早い家離れ、早い親離れ、早い子離れ、早い夫離れ、早い妻離れというような現象で起こっておりまして、新しい
スウェーデンの
家族の
特徴になっているというふうに言えるかと思います。
そして十一番目の
特徴は、
経済的依存、扶養、丸抱え
関係を超えた
家族間の濃度の高い精神的きずなというのが北欧のファミリーシステムの非常に大きな
特徴になっているということであります。例えば、高齢者センターに
家族の者が入っていると、
家族の者がそこに訪問する頻度は非常に高うございます。これは
日本の高齢者センターとは全く逆でございまして、
日本の場合はどうしても預けっ放しという
傾向があるんですが、北欧は非常に濃密に
家族とのつき合いがある。これは大きな
特徴で、指摘できることではないかと思います。
こうした現在の
スウェーデンのファミリーが抱えている
特徴の幾つかが、恐らくこれから
日本が
少子化問題に対して
政策対応するときの考え方のヒントの幾つかにつながっていくんだろうというふうに漠然と考えていただければと思います。
そして、その次に指摘しておかねばならないのは、
スウェーデンが
少子化の問題をどの時期からということですが、レジュメの五ページに書いておきました。
スウェーデンは一九三〇年代にやはり
少子化の問題に直撃されます。そして、ノーベル平和賞をもらいましたアルバ・ミュルダールという学者が「
人口問題の危機」を書いたのが一九三〇年代でございまして、このころから実は
スウェーデンでは
少子化問題そして
女性の
社会参画の問題ということをワンセットで考えるようになった。つまり、
女性が
育児、家事、炊事という
家庭内の労働と
社会的労働という二つの荷重を強いられるようなシステムを続けている限り
人口減という現象は避けられないかもしれないということを問題提起いたしまして、それ以来、
スウェーデンの政党、労働組合というのはこの問題に取り組んできたというふうに言えるかと思います。
そして、一九三〇年代から徐々に回復しまして、ずっと進んでいたんですけれども、一九六〇年代末、七〇年代の初頭からもう一度下降ぎみを描きまして、そして一九八〇年代の末に逆転、再上昇するまでしばらくの間、
合計特殊出生率が低下していました。そして、一九九〇年代中庸になるとまた再び下がり始めまして、一九九八年、昨年記録的な低さ、一・五二になっておりますが、そのときの新聞は非常に衝撃的でございますけれども、しかしこれが大体底を見て、これからは
傾向としては反転していくんではないかという予想が成り立っております。その
背景にあるのは、非常に
経済が今好調にあるということであります。
レジュメの一ページに戻りますけれども、
少子化問題というのはどういう視点から分析する必要があるのだろうかということを
スウェーデンの経験から考えますと、こういう視点があると思います。
一つは、
少子化が労働市場に対してどういう影響を与えていくのか。第二の視点は、
少子化というものが
企業や
経済構造にどういう衝撃を与えていくのか。第三の視点は、
少子化が
社会福祉体制に対してどういう衝撃を与えていくのか。第四は、家や
家族、家
制度に対してどういうような影響を与えていくのか。第五は、
少子化が地域
社会にどういう衝撃を与えるのか。第六は、
少子化が教育環境にどのような影響を与えるのか。そして第七は、
少子化が個人生活や市民哲学にどのような影響を与えていくか。こうした七つの包括的な視点で
少子化の問題を語っていかないと問題は解決しない。ある
一つの法律をつくってそれが解決をするという問題ではなさそうだということは
スウェーデンの経験からも簡単に類推することができると思います。
そうしますと、レジュメでいう二ページの一番下にアンダーラインの下から書いておきましたけれども、
少子化問題に対する
政策問題を考えるときには、まずスタートラインは、少子
社会というのは望ましいのか、望ましくないのか。そして、それがだれにとって望ましい、もしくは望ましくないのかということに関する基本的合意がどのような形で
形成されるんだろうか。地球
社会全体としては
人口が爆発して天然資源が枯渇し、また地球環境が汚染される、環境が破壊されるために、余りの極端な
人口膨張は望ましくないといって
人口抑制
政策をとっているときに、
一つの国が
少子化は望ましくないという形で
政策対応しようとするときに、それは国際的なコンセンサスをどのような形でとれるのかどうかということもやはり議論としてやっておく必要はあるんではないか。地球
社会全体と
日本の
人口問題の相対的バランスはどうなのか、地域
社会と
企業社会にとってそれは何を意味するのか、
男性と
女性にとって
少子化は望ましいのか望ましくないのか、そういうさまざまな視点からこの問題を考えておく必要があろうかと思います。
そしてもしくは、その議論の結果、
少子化そのものが望ましくないとしたら、
出生率を高める
政策をどう構築するかという次のステージに進むはずであります。そうすれば、構造や
制度をどうさわっていくのか、また意識をどのように変えようとしていくのかという議論になっていくかと思います。そして、そのときの
制度であるとか構造の改革の視点というのは、上に述べました一番から七番までのさまざまな領域でどう
制度をさわっていくのか、変えていくのかという発想が必要ではないかと思います。
一つの結論として、恐らく多くの先進工業国家がたどった結論だろうと思いますが、職場、
家庭、地域
社会で
男女が役割と責任を分かち合い、共生する
男女共同参画型への
社会の構築が望ましいという結論になるんでしょうけれども、そうするとそのためにどういう
政策が可能なのか。これは、やはり七つの
政策領域でもう一度構築していく必要があるんだろうと私は思います。
そして、
政策対応の視点は三ページの頭に矢印の下に書いておきました二つだと思います。どう
政策対応するかとすると、
一つは産みたいのに産めない状態があるとしたらそれをどう克服するか、最終的に
子供を産む、産まないというのは個人の自由の問題でありますから、余り公的な権力が介入できる問題ではありません。ただ、政治や行政が
対応できる問題としては、産みたいんだけれども産めない事情があるとしたら、それを産むことが可能な状態にすることは政治や行政が大いにやらねばならない
政策領域だろうと私は思います。そうすると、産みたいのに産めない状態があるとしたらそれをどういう形で克服するか、産むことへの不安を解消、縮小するという策をどう構築するかだろうと思います。そして、もう
一つ踏み込んだ
政策です。産んだ方が得と思える
制度を
充実してより
合計特殊出生率を引き上げるということも可能かもしれないという視点は二つあると思います。
この二つの視点でさまざまな
政策を展開しても、にもかかわらず当初予定したほどの
合計特殊出生率が引き上がらないとしたら、
少子化が回避できないとしたら、少子
社会にどう
政策対応するかという問題を構築していく必要がある。これがやっぱり第三のステージの
政策問題として考えていく必要がある。だから、ファーストステージ、セカンドステージ、サードステージ、それぞれ段階的な
政策対応をしていく必要があるんではないかと思います。
きょうは限られた時間で
お話しするわけですので、当面の
政策目標、産みたいのに産めない状態の克服というところに論点を絞って
お話をさせていただきたいと思います。
産むことへの不安を解消、縮小するという作業であります。これにつきましては、七ページに厚生省
人口問題
研究所の
出生動向基本
調査第十回の
調査結果、おなじみの
調査がございます。「妻が理想の数の子どもをもとうとしない理由」であります。これについて順番に、もしか
スウェーデンだったらこういう
政策対応をしたでしょうねという視点を並べてみたいと思います。
まず
最初に、「子どもが生めないから」、一四・一%という現象がありますが、これについては、
スウェーデンは養子縁組の簡素化と各種
手当、補助金の養子、実子間格差を解消するという形で
政策対応してまいりました。片方で予期しないときに
子供が産まれた、それで困っている夫婦がいる一方で、本当は産みたいのに
子供が産めないという夫婦がいる。その間にどのような形で養子縁組が可能なのかというようなことを考えると、その養子と実子の間のさまざまな格差を是正するという形で
政策対応するというやり方が
一つあります。
そして、その次です。「高年齢で生むのはいやだから」、二九・六%と出ておりますが、嫌な
女性に強制はできない。ただ問題は、若いときに産みたかったのに産めなかった理由を分析して
政策対応することは可能だろうという姿勢をとるでしょうねということは推測できます。
そして、いよいよその次からパーセントが多い項目なんですが、「子どもの教育にお金がかかるから」、二八・三%です。一人当たりGDPが二万五千ドルを超え、世界のGDPの一五%を生産する堂々たる
経済大国で、次の世代の
子供を産むということに対してこれだけ大きな
経済的理由が出るというのは、やっぱり何か
政策対応が妥当ではないなと私は思います。
子供の教育にお金がかかるからという問題については、教育環境の整備、それは生涯教育
制度の
充実であるとか、奨学金
制度の
充実という形で
対応できると思います。ちなみに、
スウェーデンは、幼稚園から大学院まで授業料はただになっております。
その次です。「
一般的に子どもを育てるのにお金がかかるから」、これがやっぱり最頻度で三〇・一%であります。やはり、
経済大国なのになぜお金がかかるから
子供が産めないという状態になっているのか。とすると、今世界に約二百九デモクラシーと称する国があるんですけれども、これほどの
経済力を持っている国の親がこういう悩みを持っているわけですから、ほかの国においてをやということを考えると、もう少し積極的な一歩踏み出した形の
政策対応を実際にやっていく必要があるんではないかと思います。そのためには、保育所の整備、児童
手当の
充実、
出産・
育児休暇
制度の
充実や児童看護休暇
制度の
充実という形で
政策対応が十分可能ではないかと思います。
そして、その次のパーセント、二〇・六%が「
育児の心理的・肉体的
負担に耐えられないから」という理由がありますけれども、これについては保育所の
充実という側面が
一つと、あと
一つは、
子供を産むときのもう一人のパートナーである
男性が
育児過程に参加してくれないということが非常に大きな精神的
負担になっているとするならば、
育児・家事過程に
男性が参加することによって、労働環境と
家庭環境、そして都市環境を整備しながら、
男性も
女性も
育児過程に参加する、家事過程に参加するという環境を整備することによって、
女性の
育児に対する精神的心理的な
負担がかなりの
程度解消されるのではないかというふうに
スウェーデンなら解釈するでしょうね、もしくは
政策対応するでしょうねということは言えるかと思います。そのためにやることは労働時間の短縮だろうと思います。そして、二番目が年休の延長と完全消化、そして三番目が幼児を持つ親の労働時間選択
制度、五番が児童看護休暇
制度、バリアフリーの都市計画、そしてジェンダーフリーの住宅という形で、
男性も
女性も
育児過程に参加できるような環境を整備していくだろう。実際問題として、後でまとめながら
お話しさせていただきたいと思うんですが、やっぱり一番大きな突破口は私は労働時間の短縮ということだろうと思います。
そして、その次が「家が狭いから」が一二・四%なんですが、これは住宅
政策の
充実で十分
対応できるわけであります。住宅補助金の
充実。
スウェーデンがやっていることは、
家族数に応じた優先的住宅提供と補助金の提供というのをやっていますね。つまり、
子供が何人のファミリーなら何平米までの住宅にできるだけ住んでください、一人一人の
子供を余り狭い部屋に住まわせないでくださいという形で、ファミリーの大きさによって適正な住宅の規模というものを決めていまして、そしてそれに対して補助金を出していくという形をしております。
最後が「自分の
仕事に差し支えるから」、これが九・二%ですが、これは労働環境、
女性環境の整備でありまして、所得保障の少ない
出産・
育児休暇がバリアになっているんだとしたら、
出産・
育児休暇の所得保障を
スウェーデン並みに八〇ないしは八五%に引き上げるなんという
政策も必要でしょう。
日本の場合にはこれがあるんです、
出産・
育児休暇を一回目とるときには何となく職場の雰囲気もいいよねと言うんですが、それが二度三度になると何となく速やかにとらせてもらえない、嫌みの
一つも言われる可能性があると。そのときにやっぱり
出産・
育児休暇、今所得保障がわずか二五%しか出ていないんですから、できれば二度三度でもどうぞどうぞという歓迎するムードがあれば随分精神的な悩みは解消できるんだなという気がいたします。そして、その次ですが、
男性が
出産・
育児休暇を気安くとれない職場のムードというのもあろうかと思います。これをどのような形で解消していくかだろうと思います。
そのようなことをずっと進めていって、結局はきょうの
スウェーデンの
少子化対策はどうなったのかということなんですが、それを
子供を産む性である
女性の環境というところでまとめてみたのが十二ページであります。そして、そうした
スウェーデンの
女性環境をつくり上げた
背景、理由が十三ページであります。
十二ページについて御
説明いたしますと、結局言おうとしていることは、結婚ハードル、
出産ハードル、
育児ハードル、高齢者介護ハードルを縮小もしくは除去しようとした。
男性と
女性が同じ機会を得るという形をとった方がフェアではないだろうかという発想をした。
そして、その四つのハードルを取るために具体的にどう
政策対応したかというと、そこに述べました一から十九。一、妊娠中の部署移動申告
制度。二、四百五十日間の
出産・
育児休暇。この所得保障は景気の変動によって大きな差があります。七五%から九〇%ぐらいの差であります。今大体八〇から八五です。
日本のマックスが二五%というのと比べると、やっぱり圧倒的な量だろうと思います。
最初の三百六十日が八〇から八五%提供されます。三、児童看護休暇
制度。四、保育所の整備。五、幼児を持つ親の労働時間選択
制度。六、姓の選択・継続
制度。七、同棲法。八、離婚自己決定権。九、
出産・中絶自己決定権。十、
男女機会均等オンブズマン
制度。十一、長期の有給休暇と完全消化。十二、短い労働時間。十三、教育休暇
制度。十四、学生ローン
制度。十五、労働経験大学入学
制度。十六、近しい人の最期をみとる介護休暇。十七、ホームヘルパー
制度の
充実。十八、グループホームの普及。十九、バリアフリーの都市計画。この一番から十九番の環境の中でいわゆる
男女共同参画型
社会をつくり上げたというふうに言えるかと思います。
北欧の政治学者、私が
お話しするのはほとんどが政治学者なんですが、政治学者と話をするとき、どれが一番大きな突破口になったでしょうかと言うと、ほとんどの人がやっぱり二番と四番を挙げます。四百五十日間の
出産・
育児休暇、そして手厚い所得保障が、安心して
出産、
育児と労働が両立可能な環境に自分
たちはいるんだという安心感を与えているということ。それと手近に非常に多様な保育所が準備されている。そのために安心して
育児と労働が両立できるというふうに答える人が多いと思います。
あと教育環境からいうと、十三、十四、十五というのは非常に重要な意味を持っております。これは平均寿命が延びたにもかかわらず、
女性は労働の場を
出産、
育児のたびごとに一度一時的に退出するわけですから、若いときに学んだ学問がもう一度再就職するときに使い物にならないときに、その精神的な不安を解消するために生涯学習環境を整備して、職場と
家庭と大学というもの、教育機関を何度も往復できるような環境につくった、これはこれからの
日本の教育
制度を考えるときの
一つの重要な視点の
一つになるんだろうと思いますが、十三、十四、十五があります。
そして、十三ページにはそうした環境を生み出した
背景、理由について書いておきました。
この中で一番重要な問題は何かというと、理由の六、労働環境の整備、とりわけ短時間労働、長期の有給休暇と完全消化、雇用安定法、そして
出産・
育児休暇
制度、そして幼児を持つ親の労働時間選択
制度、そして
最後に組織内情報共有化と書いておきましたが、この組織内の情報共有化ということをやらないとなかなか勤労者が年休をとれない。自分がいないと会社が困るというためになかなか休暇をとれないために、北欧諸国は組織内情報共有というのを非常に進めておりまして、会社を休んでも周りがファイルナンバーを見れば十分ピンチヒッターになれるという状況を持っています。
これはもともと情報公開が非常に激しく展開された国で、世界で
最初に出版の自由法が制定されたのが実に一七六六年、
日本の江戸時代の中期にはもう既に出版の自由法を世界で
最初に法文化した珍しい国なんですが、その伝統があるために情報公開が非常に進んでいる国なんです。
社会も情報公開が進んでいるように組織内情報公開も非常に進んでおりまして、情報を共有化することによって勤労者が比較的簡単に年休をとれる、私がいなくてもだれかが
対応できるという状態をつくっていった。これは非常に重要なことだろうと思います。
そして、私自身は少し自分なりにこういう
対応があるというのがあるんですが、ちょうど時間でございますので、一段落ここでさせていただきたいと思います。
以上です。