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政府参考人(
矢野朝水君) この市場
運用事業につきましては、よく世間の方からは
厚生省、
年金福祉事業団が
運用に失敗をした、何か株を買って失敗をしてそれで
赤字になったんじゃないか、こういう御批判があるわけですけれ
ども、実はそういうことではございませんで、これはほかの機関投資家と比べまして決して
年金福祉事業団の
運用が劣っておるということではないわけでございます。
例えば、機関投資家としましては生命保険会社なり信託銀行あるいは厚生
年金基金、こういったいろいろなところが機関投資家として
運用事業をやっておられるわけでございますけれ
ども、そういったところと比べて決して引けをとらない
運用でございます。第一、二十六兆円というような巨額な規模でございますので、言ってみますればもう日本全体のマーケットを買うというような
運用をやっておるわけでございます。したがいまして、世間様よりまずい
運用をやってそれで
赤字が出ておると、こういうことではないということはぜひ御
理解をいただきたいと思うわけでございます。
それでは、なぜこういった
赤字が出ているかということでございますけれ
ども、これはやはり今の仕組みに私
どもは無理があると思っております。つまり、
年金のお金というのは一度保険料として集めましてそれを
資金運用部にお預けする、それをまた七年なり十年なりの固定金利で借りてきまして市場で
運用すると、こういう仕組みをとっておるわけでございます。
したがいまして、長期固定金利でございますから、
バブル崩壊以降のような金利が一貫して低下を続ける、こういった局面、あるいは株式市場が長期に低迷をする、こういう中で
民間の金利というのはどんどん下がっていくわけですけれ
ども、借入コストは高どまりをする。現在でもまだ、
平成十年度でいいますと平均しまして約四・四%でございます。新規の預託金利というのは一・七二%ということで二%を切っておるわけでございますけれ
ども、借りてきて
運用している
資金につきましては四・四%の利子を払わなきゃいけないと、こういうことでございます。
それで、市場での
運用は、
環境が悪いということは御案内のとおりでございまして、
平成十年度でいきますと総合収益が二・七一%ということになっておりまして、この借入コストの差というものが約四千億ということで、これが
赤字として
平成十年度に追加されたと。したがいまして、時価ベースで見ますと
平成十年度末で一兆四千億といったような
累積赤字になっておるわけでございます。
それで、この問題をどうするんだということでございますけれ
ども、私
どももこのままではいけないということで必死に取り組んでいるわけでございます。
ただ、これはマーケットの
状況によって非常に影響を受けるわけでございまして、今後のマーケットがどう展開するかということにかかっているわけでございまして、現時点で一〇〇%確実なことは申し上げられないわけですけれ
ども、ただ
運用コストという点につきましては利払いのコストというのがこれからどんどん下がっていくわけでございます。そういった点では、非常に
環境としてはむしろプラスの面が見られるんじゃないかと思っております。
ちなみに、マーケットコストがどの程度
運用に影響するかということでございますけれ
ども、これは
平成十年度末、ことしの三月末時点でのことでございますけれ
ども、例えば日経平均が千円上下いたしますと収益に対しまして約四千二百億円の影響があるということでございます。また、ニューヨーク・ダウが百ドル上下いたしますと三百億円、為替レートが一円上下すると四百億円、それから国債指標銘柄の金利が〇・一%上下するだけで六百億円、こういった影響を受けるわけでございます。
こういうことで、ことしの三月末のマーケットというのは非常に
運用環境が悪かったということでございまして、その後かなり
改善を見ております。ことしの九月末で見ますと
赤字幅は約半分程度に減少しておるということでございまして、これからも
運用についてのいろいろな努力をしていかなきゃいけないというのは当然でございますけれ
ども、この
累積赤字は決して解消できないような代物ではないということはぜひ御
理解いただきたいと思います。