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吉川春子君 私は、
日本共産党を代表して、約千三百本の
関係法律の
整備等を内容とする
中央省庁等改革関係法施行法案及び
国立公文書館法の一部を改正する
法律案など五十九件の
独立行政法人個別
法案並びに
独立行政法人の
業務実施の
円滑化等のための
関係法律の
整備等に関する
法律案、すなわち
省庁改革施行関連
法案に対する反対討論を行います。
まず、名称を読み上げるだけでも六、七分もかかる
法案の審議を、総括的審議は八時間、また五十九本の
独立行政法人個別法はたったの七時間、一
法案当たりにするとわずか七分程度しか審議を行っていないのにもかかわらず本日議了しました。国家機構の
再編という
日本の将来のあり方と、
国民生活に重大な影響を与える多数の
法案をわずかな審議時間で、
国民にもほとんど知らしめないうちに成立させてしまうことは立法
機関としての国会の責務を放棄するものではないでしょうか。こうした強引な
委員会
運営を行った政府・与党に強く抗議します。
以下、
法案の内容に沿って具体的に反対理由を述べます。
反対の第一の理由は、本
法案は昨年成立した
中央省庁再編基本法を具体化するものですが、
国民が期待した
行政改革は、政官財の癒着を断つこと、
行政の姿勢を財界中心から
国民本位に切りかえること、財政の浪費に根本的にメスを入れること等であります。
しかし、政府が進めている
中央省庁再編は、
内閣機能の強化あるいは巨大利権官庁設置、
独立行政法人の創設により、
行政の
責任を投げ捨て、弱肉強食の市場原理や企業の経営手法を
行政に取り入れ
ようというものです。これは
日本国憲法のもとで
国民が営々と築いてきた民主主義的社会
制度の切り崩しと言わざるを得ないものです。
反対の第二の理由は、外交、防衛、治安などの分野以外は政府が
行政責任を放棄し、社会保障施設や教育・研究
機関、近い将来には国立病院や国立大学までも
独立行政法人としてこれらの
事務事業を
行政から分離し、減量・効率化を進め
ようとしていることです。
政府は、
独立行政法人について、三年から五年の中期目標や
評価で見直し、改廃、
組織の形態の変更を行い、減量・効率化を強力に推し進めることで人員と予算を削減できるとしています。その先には統廃合と民間移行が待っているのです。政府は、独法化によっても現在の
機能は変わることなく引き続き維持されるなどと答弁していますが、国会での政府答弁のいかんにかかわらず、
評価委員会の結論に基づいて計画、
評価・見直しの段階において厳しい減量・効率化のもとで切り捨てられることは火を見るより明らかです。
第三の理由は、
公務員の新規採用を極力なくし、また
独立行政法人化を行うことによって
国家公務員の定数を二五%も削減するとしている点です。
国立病院の医師、看護婦、労働基準監督官、登記所の
職員、国有林野の守り手など、現在でも不足している
公務員をなぜ二五%も削減するのか、私の
質問に対し政府は根拠を
説明できず、初めに削減ありきの態度です。
日本は諸外国に比べても
公務員が圧倒的に少ないのです。
国民が求める
行政の
責任を果たすためにはどうしても人手は必要です。これでは、労働者にはさらなる労働強化と、
国民には憲法が保障する健康で文化的な最低限度の生活の保障もできなくなるではありませんか。
第四の反対理由は、研究所、美術館などに対する国の
責任放棄にとどまらず、
国立公文書館を
独立行政法人にして、政府が国権の発動として行った閣議
決定の
記録や、
国民に公開されない秘密文書など、公文書、歴史資料の保管を
独立行政法人にゆだね、
行政の足跡を半永久的に保存するという諸国家が行っている当然の国の責務を放棄していることです。
第二次大戦後、政府は自分の都合の悪い公文書を大量に廃棄、紛失し、戦争
責任の証拠を抹殺しました。その結果、
日本は従軍慰安婦の政府の関与さえ最近まで認めなかったのです。戦争
責任すら認めない品位のない国との印象を諸外国に与えているのです。この轍を再び踏んではなりません。
第五の反対理由は、不動産、動産を問わず国家財産を
独立行政法人に出資として移行してしまうことです。
不動産は登記して所有権を移転し、動産は政令により
法人に移転してしまうということです。
独立行政法人から、さらに業績いかんによっては民営化の道も準備されています。
国民の財産を理由もなく大量に処分し、民間に譲り渡すことは許されるはずがありません。
東京、京都、奈良の各国立博物館を初め、名立たる八つの国立博物館、美術館には約十二万件に上る収蔵品があり、例えば奈良国立博物館には時価十億八千万円の国宝、絹本著色十一面観音像、国立西洋美術館にはパオロ・ヴェロネーゼの「聖女カタリナの神秘の結婚」を初め高価な収蔵品が保存されているのです。これらを国からの出資などと称して
法人に移管することは
国民の納得が得られません。研究所の所有する資産についても同様のことが言えます。この
ような国家の財産の不当な処分につながる
独立行政法人化は絶対に容認できません。
以上、反対の主な理由を述べ、討論を終わります。(拍手)