○佐藤道夫君 先ほど同僚議員の
質疑にも出ていたことなんですけれども、海外にいる
日本人、一時旅行中とか長期滞在あるいは短期滞在、いろんな形態があるということでしたけれども、その人たちの生命、身体、財産の安全の確保をすることが
在外公館に与えられた、ひいては
外務省に課せられた最大の仕事だろうと思うのであります。連日パーティーでお忙しいとは思いますけれども、しかしそれをおろそかにしたのでは
外務省の、
在外公館の存在価値はない、こう言われても仕方がない。
そういう
観点から、二つの問題を私は取り上げさせていただきたいと思います。
一つは、二年前のペルー国内での早稲田大学学生二名がペルー国軍に殺害されたというあの
事件であります。
実は、これは私、前にもこの
委員会で取り上げたんですけれども、そのときの高村
外務大臣の御回答が法律的にまことになっていないとしか思えなかったので、再検討してほしいということを私申し上げておりましたが、大臣が再検討する前におかわりになったらしいので、新しい大臣の所感をというか所見を、責任のある御回答をお願いしたい、こう思うわけであります。
この
ケースは、御記憶だろうと思いますけれども、二名の早稲田大学の学生がペルー国内を旅行中に、いかだに乗って川下りをしておって、軍隊の駐留地の前を通りかかったら呼びとめられて上陸するように言われて、別に軍隊ですから何の不安も抱かずに上陸をしたらいきなり殺害されてしまった、こういう
ケースで、まことにもって許しがたい大変な犯罪だと思います。軍人が職務の執行に名をかりてやったことですから、これ軍隊の犯罪即ペルー国の犯罪、ペルー国が殺したんだと言ってもいいわけですよ。
これ
日本の場合で
考えてごらんなさい、すぐわかりますから。ペルー国から学生が
日本に遊びに来まして、自衛隊駐屯地の前をぶらぶら通りかかったら、中から何人かの自衛官が出てきて、ちょっと来いと言われて入っていったらいきなりそこで殺されちゃったと。大変な問題でありましょう。ペルー国はもう国を挙げての大騒ぎになって、
日本に厳重抗議をする。
対応はどうするか、こういえば、やっぱり速やかに謝罪をすること、犯人を処罰すること、それから御遺族の
方々に謝罪をすること。この際に、犯人の自衛隊員たちは金がない、貧乏人だから仕方がない、我慢してくださいよと、これは絶対言えないわけですよ。
日本国としてきちっとした賠償をする、これは当たり前のことです。
このとき高村
外務大臣は、いや、やることはやりましたけれども、あとはもうペルー国に要求しても何もやることがないんです、御遺族の
方々が個人の
立場でペルー国を訴えるしかないんですと。その際に、多少ペルー国の法制に明るい弁護士の世話ぐらいはしますけれども、それだけでございまして、あとは何もできませんと。なお、参考までに、ペルー国には国家賠償制度がないんだそうですよ。だから訴えてもむだでしょうと言わんばかりのことでした。
こんなばかげたことは絶対あり得ないわけなんですよ。なぜそんな法解釈が出てくるのか。もう国家法人説のころから裁判の当事者は国家であることは当然なんでして、それから使用者責任というのが昔からこれまた言われておりまして、使用者が、使っている者の不法行為につきましては、
選任、監督の責任があれば賠償の責めに任ずると。国家賠償制度が法制化されているか、されていないかなんてことは
関係ないのでありまして、国際法の、あるいは国内法の常識として、そういう場合、国家は賠償の責めに任ずる、これだけのことなんですが、なぜか
日本国はペルー国に対し何の要求もしようとしない、国として。これはもう遺族個人の問題ですから勝手にやりなさいとほうり投げている。こんなことが許されるのだろうかと思うわけですよ。不思議で仕方がない。なぜこんな解釈が出てきて、何もやろうとしないのか。
口の悪い人は、あそこのフジモリ
大統領は日系人であるから、こんなことで日系
大統領の評判を落としたらえらいことだから、これは知らぬふりをしているんだと言う人もいますし、
事件が起きたときは橋本内閣だったんですね。橋本さんは慶応大学ですから、彼はあのとき、これはもう重大な不注意だということを言ったわけですよ。しかし、早稲田大学出身の総理大臣が誕生しましても全然
解決はしない。今や自民党は早稲田の時代と言ってもいいので、そこにおられる
外務大臣も早稲田大学なので、どうして後輩がこういう目に遭ったときに、皆さん方が集まってこれは何とかしようと、先輩としての責任だということでそれぞれの
立場を使ってペルー国
政府と交渉をする、
外務省をして交渉させるということで、これ物事を一歩でも
解決しようという気にならないのか不思議で仕方がない。
やっぱりフジモリ
大統領に傷はつけたくないという変な思惑があるんでしょうか。こんなことはしかし
関係ないわけですからね。フジモリ
大統領をサポートすることと、大変不幸な目に遭った御遺族の
方々にペルー国
政府にかけ合ってきちっとした賠償をさせることと
関係ないことであります。
私、これも高村
外務大臣に言ったんですけれども、ペルー国に対するODAが年間八十億だというんですよ。それなら一億円ぐらい差し引いて、そしてそれを遺族に差し上げなさい。ペルー国だって納得すると思うんですよ。うちは金がないから払えないと、こう言っているんでしょう、多分、内々に交渉すれば。それならODAから差し引いてそれを回すと。十分
考えられる
対応でありましょう。
いずれにしましても、殺害された学生の遺族の
方々がまことにもって気の毒千万としか言いようがない。もうかわいそうなことだけれども仕方がない、あきらめなさいと、これでおしまいになさる気なのかどうか、
政府のしっかりした回答を承りたいと思います。