○田英夫君 もちろん二十数万の
自衛隊員がおられるわけですから、いろいろお考えの方があることは当然でしょうけれ
ども、今の防衛
局長の話は私もよく
理解できるつもりです。
さっき外部から特定の考え方を押しつけるとか持ち込むとかいうことを言いましたけれ
ども、私は、私の仲間でしたからあえて名前を言わざるを得ないんですが、攻撃をするつもりで例に挙げるんじゃないんですけれ
ども、三島由紀夫君が
最後にとった行動というのはもう御存じのとおりです。三島由紀夫君は本名は平岡君というんですが、小学校からずっと大学まで私の一級下におりました。したがって、彼の育ち方、信条、すべてよく
理解しているつもりです。非常に残念な結果だったと思うんです。
長々と申し上げるつもりはありませんし、三島由紀夫論を言うつもりはありませんが、一つの残念な
気持ちを込めて言いたいのは、私
どもが一緒に育ったころの教育というのは、本当に今から思うとすさまじいものです。皆さん、恐らくきょうここにおられる中で私が一番年寄りだろうと思うし、戦前の教育を御存じの方はほとんどおられないと思う。特に、私
どもの学校では小学校に入ったころから、君たちは皇室の藩屏であるということを言われました。藩屏という字は今でも私は書けませんよ。しかし、
意味はわかる。何度も言われているとわかるものです。怖いものですよ、だから教育というのは。
そういう教育を受けてきて、三島由紀夫君というのは非常に頭のいいまじめな少年、青年でしたからそのまま育っていって、そして私はほぼ同時に社会に出たんですが、私は新聞記者という社会の底辺に目を向けざるを得ない、そういう仕事をしたことがある
意味で幸いだったかもしれない。
彼は、大蔵省の役人になってすぐやめて書斎に入ってしまった。同じ作家でも、社会派の作家ではなくて書斎に入ってしまったという中で、頭の中で物を考えるという仕事、いわばそれはタイムカプセルに入っていたような状態になっていたと私は思うんです。そして、その中から外を見ると、自分たちが育ち描いてきたあるべき世界と全く違う。例えば、
自衛隊を見るとこれはいたたまれないという
気持ちに彼はなったとしても不思議ではないんです、僕らの受けてきた教育からすると。その
最後があの姿だったのではないかと私は思っているんですが、そういうことがもしこれからも多数あるとすれば非常に危険なことになる。
ここに、こういう席にはふさわしくないような派手な本ですけれ
ども、「戦争論」という本がある。漫画ですよ。これはある
意味ではマスコミでもよく言われる人が書いた本で、私も見て驚きました。こういうものを若い人たち、漫画世代と言われた若い人たちが読んで育ってくると、戦争というものは我々とは違ったものになるなと。
こういう
意味で、改めて考えさせられているんですけれ
ども、そういう中で、先日ある集会、これは戦争に反対をするというか、そういう
意味の平和集会ですけれ
ども、その議案書のようなものを読んでおりましたら、最近の小渕内閣は戦争のできる国に
日本をしようとしているのではないかという表現がありました。戦争のできる国という表現は私は非常に注目すべき表現だなと思って、なるほどと思いました。私の立場からすると、さきの通常
国会で行われた一連の
議論そしてその結論というのは、平和運動をする市民の人たちからすると、なるほどそうなんだなと。
こういう
意味で、
日本国
憲法というのは、
日本はあの戦争の体験の中から戦争をしない国という決心をしている。これは世界でも本当に数少ない、ゼロとは言いませんけれ
ども、そういう国であるわけです。戦争をしないとみずから宣言をした国だということだと思います。それを戦争のできる国にしようとしているんじゃないかと。
有事立法ということは、けさも出ましたけれ
ども、私は、もしそうだとするならば、
有事という言葉は非常にあいまいで、敗戦を終戦と言ったのと同じような
意味でこれは戦争ですよ。戦争ということに
対応するための
法律ということではないかなと。もう先ほど同僚
委員が質問されましたから、第一
分類、第二
分類、さらに第三
分類もはっきりさせていただきたいとは思いますけれ
ども、それは横に置きます。そして、やはり戦争というものに対する考え方というのを、この
国会の中でももう少し突っ込んで
議論をする場をつくった方がいいんじゃないだろうかと思うんです。
有事立法というのは実は最近出てきた話じゃなくて、いわゆる三矢
研究というのが一九六〇年代半ばに
自衛隊の制服の皆さんがひそかにつくったものとして
国会で、当時の社会党の先輩議員が公にされたことから明らかになったわけですが、その中に実はもう
有事立法は十二分に論じられている。二カ月で
国会を可決成立させる、こういうことまで
計画をされていて、既にさきの通常
国会で成立したような
法律も彼らの言う
有事立法の中には入っているということになるわけでありまして、そういう
意味では、何も
有事立法はこれからつくるだけではないと広い
意味で言えば言えるんじゃないかと思います。
ですから、そうやって考えてくると、これは質問というより私の
意見をずっと申し上げたいんですけれ
ども、私は実は、戦争から帰ってきて、社会に出て、子供が生まれても、男の子に対しても自分の戦争体験というものを言いたくありませんでした。後輩に対しても余り話すことをしませんでした。それは私だけじゃなくて、私と同僚の同じ世代の友達たちというか仲間たちはほぼ同じだったと思います。やっぱり敗戦という中で、もちろん大きなショックを受けましたし、そういう中であの忌まわしい思いを語りたくなかった。
しかし、今改めて先日来の
経験を考えると、いわば戦争の語部にならなくちゃいけないなと、この年になってから今改めて思っているぐらい、こういう本を読むにつけても、本当の戦争というものはどんなものかということをもっともっと皆さんと一緒に考えなくちゃいけないんじゃないかと思い始めているわけです。
突然ですが、
河野外務大臣、この私の考えに対してどういうふうに思われますか。