○不破哲三君 私は、日本共産党を
代表して、小渕首相に
質問いたします。
まず、三党
連立内閣の問題です。
小渕首相は、新
内閣の意義を強調しましたが、その内容は、
さきの
選挙で、与党として
国民に支持を訴えた
政党と、野党として支持を訴えた
政党との連合であります。これは、
政府の成り立ちそのものが
国民に対する公約を裏切ったものであって、この
ような
政府がそのまま国政の執行に当たることは、
国民主権と議会制民主主義の原則を根本から損なうものと言わざるを得ません。
国民主権の立場に立って、解散・総
選挙を速やかに行い、
国民の
審判を仰ぐことを要求するものであります。(
拍手)
次に、首相の
政治姿勢について伺いたい。
まず、
防衛政務次官の更迭の問題ですが、西村氏が超タカ派と言われる軍事優先論者であったことは、最初から御存じだったはずであります。その任命は、自由、自民両党首の
合意によるものと言われ、軍事優先路線への一層の踏み込みを図った、意図的な人事との疑いが消えません。西村氏をあえて防衛次官に配置した真意はどこにあったのか、任命
責任とあわせて伺いたいのであります。(
拍手)
次に、
企業・団体の
政治献金の問題です。
政治家への献金は
禁止し
政党への献金は見直すという条項は、九四年三月に
法律で決定されたものです。それ以来、衆参合わせて三回の国政
選挙がありましたが、あなた方は、その条項を改定する問題について有権者に語ったことは一度もありませんでした。それを、
実施の直前になって廃止を企てるとは、全く言語道断の
暴挙であります。
しかも、この条項は、
政党助成金を導入する前提として決められたものです。
国民一人当たり二百五十円、総額三百億円を超える税金を分け取りしながら、
企業献金も野放しにして二重取りを図るとは、
国民をばかにするにもほどがあるではありませんか。この企ては直ちに撤回し、
法律の規定どおり、期限内に
政治家個人への
企業・
団体献金の
禁止を定めた
法律を制定するとともに、
政党献金の見直しの手続を開始することを強く要求するものであります。(
拍手)
自民党政治は、今多くの分野で行き詰まり
状況に陥っており、
政策の大胆な転換が求められています。
まず、原子力
行政の問題です。
九月三十日に起きた東海村核燃料施設での
臨界事故は、日本の
国民にはもちろん、世界にも衝撃を与えました。そこで浮き彫りになったのは、日本の原子力
行政の根本的な
欠陥だったからであります。しかも、その
欠陥は、今日の国際水準からいえばけた外れのものであります。
第一の問題は、
政府の
行政が安全神話を基礎にしていることです。
既に、
国会の委員会審議で明らかになったことですが、今回の
事故の際、現場の事業所からは
事故発生の四十分後、午前十一時十五分に
臨界事故という判断がファクスで
科学技術庁に送られました。しかし担当部局は、
臨界事故など信じられないとしてその報告を受け入れず、
科学技術庁が
臨界事故との確認に到達したのは、それから五時間近くたった午後四時ごろだったとのことです。そこに、
事故対策のおくれの決定的な背景がありました。これこそ、安全神話の恐ろしさの紛れもない実証ではないでしょうか。
安全神話とは、原子力は安全だから心配でないという立場です。これを
国民に宣伝すると同時に、自分もこの神話にとらわれて、安全
対策を手抜きする。原子力大国でありながら、こんな神話に固執している
政府は、日本以外には今日の世界にどこにもありません。
アメリカで一九七九年にスリーマイル島の原発
事故が起きたとき、大統領命令で
事故原因の調査に当たったケメニー委員会が最終報告で最も強調したのは、原子力発電は安全だという思い込みに最大の問題があった、これを原子力発電は本来的に危険性の高いものであるという
姿勢に切りかえねばならないという
反省でした。この教訓は、今では世界の多くの国々の共通の認識となっています。
今、原子力
行政では、
基本姿勢のこの転換が何よりも必要ではありませんか。原子力の持つ本来的な危険性について
国民に正直に語り、だからこそ、
政府が
国民の安全確保のために万全の体制をとる。安全神話を一掃して、正直で科学的な
行政への転換を断行する
よう強く求めるものであります。(
拍手)
第二の問題は、安全確保の体制の問題です。ここにも、世界的な水準から見ての大変な
欠陥と立ちおくれがあります。
世界の多くの国では、原子力の安全のための規制の仕事は、原子力発電を推進する
行政部門とは切り離されています。例えば、イギリスでは保健省が、ドイツでは環境省が、アメリカでは独立した
行政機関である
原子力規制委員会がこの仕事に当たっています。
ところが、日本では、原子力施設を設置する認可の権限も、原子炉は通商産業省、再処理は
科学技術庁という
ように、すべて原子力の研究や開発を進めている推進部門が持っています。規制の仕事が推進部門のいわば副業として扱われているわけで、これでは
国民が信頼できる安全
行政が成り立つはずはありません。
現在、推進部門から独立した形になっているのは
原子力安全委員会だけですが、その権限は極めて弱いもので、原子力の施設や事業の認可についても補助的な権限しか与えられていません。
さらに、この委員会は、人事面でも技術面でも、それに必要な体制を持っていません。アメリカの
原子力規制委員会は、三千人を超える専門のスタッフを持って原子力発電のすべての過程に
責任を負う仕事をしています。ところが、日本の
原子力安全委員会では、安全委員の五人については九九年度から全員常勤の体制が
ようやくとられる
ようになりましたが、専門委員二百四人は全員非常勤で、専従者は事務局の職員十八人にとどまるという極めて貧しい体制であります。
私は、一九七〇年代に
国会でこの問題を取り上げ、アメリカの実例も挙げながら、原子力発電に手をつける以上その安全に
責任を負える体制の確立が急務であることを強く指摘しました。それから二十年余りたち、日本は世界で有数の原子力大国となりましたが、安全確保の体制は世界で最もおくれた状態のままであります。
私は、直ちに次の
改革に取り組むことを
提案するものです。
第一は、原子力の安全
行政を推進
行政と切り離し、安全確保のための独立した規制
機関を確立し、施設や事業の認可や運転の点検、
事故時の調査など、安全
行政に必要な権限をこの
機関に集中することであります。これは、国際原子力
機関が定めた原子力発電の
基本安全原則で、既に一九八八年に国際基準として定められていることであります。
第二は、専従者を中心にした安全審査、安全
行政の体制を確立し、質、量ともに十分な専門的スタッフをそこに配置することであります。
第三の問題は、プルトニウム循環方式の問題です。
九五年の「もんじゅ」の
事故から今回の東海村の
事故まで、最近の重大
事故の多くはこのプルトニウム方式に関連しています。
プルトニウム循環方式とは、軽水炉でできる使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、それを高速増殖炉などの燃料に使って、続けて発電を進め
ようという方式です。
確かに、原子力発電の初期には国際的にもこの方式に大きな期待がかけられましたが、そこにはもともと安全上多くの問題がありました。プルトニウム自体が、非常に高い放射能を持つ上、核兵器に簡単に転用できるという危険な物質であります。さらに、この方式を進める過程の一つ一つに技術的に未解決の問題が多く、これまでの原子力発電で経験しなかった重大な
事故、災害が起こることも予想されるなどなどでした。実際、日本より先にこの方式に踏み出した国々は、次々と重大
事故に直面しました。その結果、八〇年代の末から九〇年代にかけて、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスが次々とこの方式をやめる
方針を決定したのであります。
その中で、今なおプルトニウム方式に固執し、それを
基本方針としている国は日本だけで、そこに国際的に大きな批判の声が上がっていることに私たちは耳を傾ける必要があります。今回の
事故でも、アメリカのエネルギー環境調査研究所及び核
管理研究所という二つの研究所から、プルトニウム燃料の使用は思い切るべきだという勧告が一致して寄せられています。
そこで、首相に伺いたい。
政府は、安全
行政に大きな弱点を抱えながら、その危険性が国際的にも実証されているプルトニウム方式になぜ固執するのですか。従来の
方針がどうあろうと、今こそこの方式を取りやめる方向で根本的な再検討を行うべきでありませんか。
私は、七〇年代以来、原子力の安全の問題で警告や
提案を行うと同時に、プルトニウム方式についても、それに踏み込むことの危険性を指摘してきました。特に四年前には、プルトニウム方式をやめ、二十一世紀にふさわしい新しいエネルギー
政策を探求する真剣な努力を
政府に求めました。
原子力発電、それもプルトニウム方式にエネルギー
政策のすべてをかけるといったやり方では、二十一世紀にエネルギーの分野で日本が出口のない行き詰まりに落ち込む大きな危険があります。今こそ大胆な再検討のメスを入れ、
国民的な英知を集めて、二十一世紀にふさわしいエネルギー
政策の確立のために真剣な努力を払うべきであります。(
拍手)
次に、
日本経済の危機に対する
対策の問題に進みます。
今、不況問題で最も深刻なのは、
雇用の危機の急激な進行です。失業統計は、この八カ月間、完全失業者三百万人以上、失業率四・五%以上という過去最悪の水準を記録し続けています。
政府は、不況は底を打ったなどの評価を振りまいていますが、
雇用危機が拡大しているただ中でそんな評価が通用するものではありません。
日本経済の回復と発展のためにも、
雇用危機の解決を目指す本格的な取り組みが迫られていると思います。まずこの点で、首相の
見解を聞きたいと思います。
雇用危機を解決する上で、今、私たちの前には二つの大きな課題があります。
一つは、大
企業のリストラ、人員の大量
削減をどう抑えるかという問題です。
最近でも、興銀、第一勧銀、富士
銀行の統合に伴う六千人
削減、住友、さくら
銀行合併の九千三百人
削減、日産の二万一千人
削減、NTTの二万人
削減、三菱自動車の一万人
削減など、この数十年来の歴史に前例を見ない
ような大
規模な人員
削減計画が次々と発表されました。これらの
リストラ計画は、それのもたらす
社会的、
経済的な影響を配慮することなしに、狭い意味での
企業の利潤確保だけを追求する立場から、極めて乱暴なやり方で行われ
ようとしているのが特徴であります。
私は、この問題で、緊急の三つの
提案を行いたいと思います。
第一に、リストラに対する
政府の
態度は、無策というより、リストラ激励の立場です。これでは、
雇用対策を幾ら口で唱えても空文句にしかなりません。今日、リストラ至上主義とでもいった調子で傍若無人に横行しているリストラを
政府自身が激励する
態度をとることは、
日本経済の将来を大もとから危うくするものであります。
政府の
基本姿勢を、リストラの横行を抑えることに
政治の力を発揮するという方向に転換させるべきであります。(
拍手)
第二に、労働時間の短縮への緊急の取り組みであります。
これが
雇用拡大の決め手になることは世界の常識です。フランスでは、
政府が労働時間の短縮に取り組み、
雇用面でも既に着実な成果を上げたことが報告されています。
とりわけ日本では、日本特有の長時間労働を解決することは懸案の問題になってきました。この機会に、労働時間の短縮を
政治の大問題として取り上げ、思い切ってこれに取り組もうではありませんか。
この五月、
社会経済生産性本部がこの問題で大変興味ある試算を発表しました。それによると、今広く行われているサービス残業を廃止すれば九十万人の
雇用を拡大でき、残業をゼロにすれば百七十万人、合わせて二百六十万人の
雇用を拡大する効果があるというのが結論でした。完全失業者の八割以上が解消できるということであります。
サービス残業の根絶を初め、世界に例のない長時間労働の解消のために、この目標を
政府として明確にし、経営者団体にも呼びかけ、特別の本格的な取り組みをすべきであります。
第三は、労働者保護のルールを確立し、
企業の横暴勝手を許さない措置をとることです。
ヨーロッパの多くの国には、
雇用の問題で労働者の権利を保障し、一方的な人員整理を防止する解雇規制法があります。さらに、欧州連合、EUが吸収や合併など
企業の組織変更に伴う解雇を
禁止する指令を出すなど、ヨーロッパ
規模での規制も行われています。日本にはその種の解雇規制法や労働者保護法は存在しておらず、一方的な解雇を抑制する
社会的なルールも確立していません。このことが、今、
日本経済の弱点となって、大
規模な人員
削減の横行を許す背景ともなっています。
これまでこの分野で労働者の権利を守るルール的な足がかりとなってきたのは、最高裁
判決で、人員整理に際して経営者側が守るべき最低条件が整理解雇の四要件として定式化されたことでした。しかし、これは裁判での判例であり、実際の適用も極めて狭い範囲にとどまっています。今日の深刻な情勢は、一方的な人員整理を抑え、労働者の権利を守る
社会的なルールを確立すること、特に法的なルールとなる解雇規制法の制定を強く求めています。この問題は、全労連や連合など労働組合組織から切実な要求としてそれぞれ提起されています。
日本共産党は、九六年に
国会に解雇規制
法案を
提出しました。今、今日的な問題点を織り込んで内容をより充実させ、この
国会に改めて
提出する準備中ですが、この問題について首相の
見解を求めるものであります。(
拍手)
雇用にかかわるもう一つの重大問題は、
中小企業対策であります。
首相は
所信表明演説で、
中小企業対策を大いに強調し、この
国会を
中小企業国会と意義づけました。言葉は結構ですが、問題は中身であります。目新しいのはベンチャー
企業対策だけというのでは、今日の深刻な情勢に
対応することはできません。
中小企業は、
経済に占める比重からいって、文字どおり
日本経済の主役であります。全体の一%に満たない
ようなごく限られた少数の
企業への
対策だけでなく、
日本経済を支える
中小企業全体への支援となる
ような形で
対策を展開してこそ、今日の要請にこたえる
中小企業対策と言えるのであります。
そのためには、第一に、
予算の思い切った拡充であります。
今日、
中小企業対策予算の貧困は目に余るものがあります。今年度の
予算は千九百二十三億円、全国六百数十万に上る
中小企業の経営を支える
予算が、
長銀という一
銀行の不良債権処理につぎ込む四兆五千億円のわずか二十三分の一という驚くべき貧しさであります。
一九六三年に
中小企業基本法を制定したとき、
政府は、
予算の大幅な増額に道を開くことを公約しました。最初の数年間は
中小企業予算の比重は若干ふえ、一九六七年度には一般歳出の〇・八八%を占める
ようになりましたが、その後減り続け、今年度はついに比重わずか〇・四一%という史上最低のところまで低落しました。
この問題では、全国の
地方自治体の活動の中に研究すべき多くの教訓があります。
中
選挙区
時代に私の
選挙区に属した墨田区は、
保守の区政ですが、日本共産党の
提案がきっかけになって、一九七九年に
中小企業振興
基本条例ができ、それを指針に
対策の充実に努めてきました。すべての中小業者が共同利用できる
中小企業センターもつくられ、融資、技術、契約、市場など各分野にわたる振興策が展開されて、
地域経済の大事な支えとなっています。
予算は年二十一億円程度、区の総
予算の約二%に当たります。
これは、全国的な経験のごく一部にすぎませんが、
政治が
中小企業のために何をやれるかを見る上で、国政でも大いに参考になるものだと思います。
国の
予算でも、
中小企業対策費をせめて一般歳出の二%程度にふやし、その経営をいろいろな側面、角度から支え、
日本経済の力を底辺から強化する抜本策に転じるべきであります。
第二に、下請
企業の保護も重大問題であります。
不況の中で、下請への締めつけと切り捨てが拡大し、全国で悲鳴が上がっています。下請の保護を内容とした
法律はありますが、現場では無視されて実際の効力を発揮していません。先日亡くなったソニーの前会長盛田氏は、下請
企業との前近代的な
関係を、世界に通用しない日本型経営の悪習の一つに挙げました。
日本経済の恥となるこの
関係をなくしていくには、
政府がまず、下請保護を産業
政策の柱として位置づけ、法的な面でさらに充実を図るとともに、
行政面で本格的な体制をとって、その確実な
実施を図っていく必要があります。
第三に、全国どこを歩いても、商店街の寂れの深刻さが目につきます。これには不況の全般的な影響ももちろんありますが、大型店が連続的に進出することにより打撃を受けたというのは、どこでも共通に聞かれる訴えであります。
大型店の進出問題では、
政府はこのところ、以前にあった規制措置をやめて、出店をより自由にする
政策を進めてきました。しかし、最近のヨーロッパでは、反対に、
地域経済の活性化や環境改善の見地から、大型店の進出を規制し、
地域商店街の振興に
政治が乗り出すという実例がふえています。これは大いに学ぶ点ではないでしょうか。
地域経済の活性化の立場で、大型店の進出に対して的確な規制の措置をとると同時に、
地域商店街の振興のために、国として、自治体への援助を初め、思い切った
対策を講じるべきであります。(
拍手)
次に、
介護保険の問題に進みます。
介護保険で一番問題なのは、
国民から
保険料を徴収しながら、国と自治体が必要な
介護サービスを提供できないという状態に陥ることです。こういう
事態が生まれたら、国政への
国民の信頼は、
国民生活の大もとから失われることになります。
日本共産党は、この立場から、
国民の必要に
対応できる
よう、基盤整備の促進や
制度上の問題点の解決に力を尽くし、それが一応の解決を見るまで
保険料の徴収を凍結するという緊急の
対応策をこの七月に
提案しました。
政府・与党の側でも、問題の深刻さに気がついた
ようで、先日来、手直しの動きがありました。しかし、その内容は、矛盾を解決しないまま短期間の凍結を図るという一時しのぎのものである上、その負担が
国民にかぶせられる危険が大きくあります。
そこで、私は、改めて私たちの
提案を行うものです。
第一に、
保険料徴収の凍結とは、
実施の時期をただ延ばせばよいということではありません。問題の中心は、
介護保険の
実施を目前にしながら、ホームヘルパーの体制や特別養護老人ホームの増設などの面で、必要なサービスを提供するだけの基盤が整っていないという点にあります。また、料金や認定など、
制度の上でも重大な問題点が浮かび上がってきました。
大事なことは、凍結期間内にそれらの問題を解決して
介護保険の
実施に
最低限必要な条件を整えることであります。だから、私たちは、基盤整備などの進行
状況を見定めた上で凍結解除の時期を決定する
よう提案したのであります。この中身を抜きにして、ただ短期間の凍結というだけでは、矛盾の爆発を先に延ばすだけのことで、問題の解決には役立たないし、
選挙の思惑からの引き延ばしという批判を免れません。凍結する以上、その期間中に基盤整備を促進し、また、低所得者への
保険料、利用料の減免や認定問題などの
制度上の問題点を解決するという立場を明らかにする必要があります。
第二に、凍結措置は当然
財源を必要としますが、日本共産党は、増税にせよ、将来の
税収を担保にした
赤字国債の発行にせよ、その
財源を新たな
国民負担に求めることには強く反対します。凍結措置のための
財源は、現在の
予算の枠内で、ゼネコン型
公共事業の圧縮など、
財政支出の内容を切りかえることで賄うべきであります。
介護保険という、高齢者
対策に不可欠のこの
制度が多くの
国民に歓迎される形で
実施されることを願い、以上の二点を
提案するものであります。
もともと、
介護保険が今日の困難な
事態を迎えた根本には、
公共事業には手厚く、
社会保障には薄くという
財政政策の大きな矛盾がありました。
介護保険は
国民的な大事業です。その導入には、それを支える
財政基盤の確立が不可欠でした。本来なら、この大事業に踏み出す機会に、
予算編成をヨーロッパ、アメリカ並みの
社会保障中心の
予算編成に大きく切りかえるぐらいの転換が必要でした。しかし、
政府は、そのことはもちろん、国が
介護のための新たな
財政負担を担うことさえ否定しました。それどころか、この機会に、これまで
介護のために国が支出していた負担を三千四百億円減らすという逆向きの措置まで行いました。その結果が今日の深刻な
事態を招いたのであります。
公共事業に五十兆円、
社会保障に二十兆円という枠組みに固執することは、
介護保険に困難をもたらすだけではありません。この枠組みのもとでは、年金にせよ医療
保険にせよ、
社会保障のどんな分野でも二十一世紀の見通しは開かれません。そればかりか、日本の
財政そのものが破綻への道をまっしぐらに転落することになります。国と
地方の借金は、あなたの首相就任のとき既に五百四十四兆円、危機ラインをはるかに超えていました。しかし、あなたは、
公共事業への大盤振る舞いや
銀行支援六十兆円などの放漫
財政を続けてきた結果、さらにそれを五十六兆円もふやし、借金の総額は現在六百兆円、
国民一人当たり五百万円という途方もない
規模にまで膨れ上がりました。
首相は、日本の
財政的な破綻を防止し、それを再建するためにどの
ような方策と展望をお持ちなのですか。
公共事業中心の現在の枠組みをそのままにして、
財政再建に展望が開けると考えているのですか。私の考えでは、
公共事業主役の枠組みから転換してこそ二十一世紀の日本の
財政的再建と
経済再建の展望が開かれます。そのことを指摘して、次に進むものであります。
私は、この九月、マレーシア、シンガポール、ベトナムなど東南アジア諸国を歴訪しました。そして、アジアのこの
地域で、非核兵器、非軍事同盟という流れとともに、国際的な紛争問題に対して、まず軍事的
対応を考えるのではなく、話し合いによる平和解決を優先させ
ようという流れが非常に強く定着していることを実感しました。そのアジアから見ると、日本外交の弱点が一段と浮き彫りになった形で見えてきます。
一例を挙げましょう。この一年間、
政府と与党の関心は、有事に備えるということで、日本の周辺にいろいろな
事態が起きたとき、いかなる軍事的
対応をするかの問題に専ら集中してきました。そして、アメリカが軍事的
対応の道、つまり戦争の道を選んだときには、日本が自動的に参戦するという
憲法違反のガイドライン立法までついにつくり上げました。その際あなた方は、
国会の内外で朝鮮有事への
対応をしきりに問題にしましたが、朝鮮半島をめぐる各種の紛争問題について、平和的な解決のいかなる努力を日本がするかという外交
政策はついに提起されないままでした。
私は、一月
国会で、日本自身が北朝鮮との間に公式の交渉ルートを開き、問題の外交的解決に当たることを
提案しましたが、これについても
政府自身の積極的
対応はありませんでした。
しかし、この間に情勢は大きく変わりました。アメリカと北朝鮮との交渉で、北朝鮮問題は今平和解決の軌道に乗りつつあります。日本
国民を初め、アジアの各国もこの
事態を歓迎しています。では、
政府はこの局面でどの
ような積極
政策を用意しているのでしょうか。有事には備えたが平和解決の局面への備えはなかったというのでは、国際
政治への
対応はできません。
首相、
政府には、北朝鮮との
関係で日本が何を目指すかの外交目標を明確にする
責任があります。日本自身、北朝鮮との間には、ミサイル問題、拉致問題など幾つかの紛争問題を持っていますが、それは交渉によって解決すべき交渉の主題であって、その解決を交渉ルートを開く前提条件としたり、すべてを他の国の外交交渉にお任せするといった
態度では、問題は解決できません。
また、北朝鮮は、戦前の侵略戦争と植民地支配によって日本が被害を与えた国々の中で、その清算が全く未解決のまま残っているただ一つの国であります。そのことの解決を含め、北朝鮮との国交などの問題に取り組む日本自身の
責任ある立場を示す必要があります。
この点で、外交の目標と
政策を明確に持ち、その努力を尽くしてこそ、日本は、アジアと世界の多くの
国民が心配している朝鮮半島の情勢の改善と、この
地域に平和的な枠組みをつくる事業において積極的な役割を果たし得るでしょう。この問題について首相の
見解をただすものであります。
以上、幾つかの問題について私たちの
見解を述べ、必要に応じて
政府・与党の
政策と対置してきました。これらはすべて、二十一世紀の日本の
政治を考えるとき重要な意義を持つものであり、当然、来るべき総
選挙で大きな争点となる問題ばかりであります。首相、この
国会で論戦すると同時に、それらの論点について、有権者の間で堂々の論戦を行い、
国民の
審判を仰ごうではありませんか。そのためにも、早い時期の解散・総
選挙を重ねて要求して、
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕