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1999-12-14 第146回国会 衆議院 法務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月十四日(火曜日)     午後三時二十七分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 笹川  堯君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       太田 誠一君    奥野 誠亮君       加藤 紘一君    鯨岡 兵輔君       熊谷 市雄君    左藤  恵君       菅  義偉君    高市 早苗君       竹本 直一君    保岡 興治君       山本 有二君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    坂上 富男君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    一川 保夫君       木島日出夫君    保坂 展人君     …………………………………    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    自治政務次官       平林 鴻三君    最高裁判所事務総局総務局    長事務取扱        堀籠 幸男君    政府参考人    (警察庁長官)      関口 祐弘君    政府参考人    (法務大臣官房長)    但木 敬一君    政府参考人    (法務大臣官房司法法制調    査部長)         房村 精一君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (法務省刑事局長)    松尾 邦弘君    政府参考人    (法務省人権擁護局長)  横山 匡輝君    政府参考人    (運輸省鉄道局次長)   石川 裕己君    政府参考人    (建設省河川局長)    竹村公太郎君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十二月十四日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     竹本 直一君   権藤 恒夫君     一川 保夫君 同日         辞任         補欠選任   竹本 直一君     加藤 紘一君   一川 保夫君     権藤 恒夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午後三時二十七分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官関口祐弘君、法務大臣官房長但木敬一君、法務大臣官房司法法制調査部長房精一君、法務省民事局長細川清君、法務省刑事局長松尾邦弘君、法務省人権擁護局長横山匡輝君、運輸省鉄道局次長石川裕己君、建設省河川局長竹村公太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所堀籠総務局長事務取扱から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。与謝野馨君。
  7. 与謝野馨

    与謝野委員 まず、きょうは犯罪被害者対策についてお伺いしたいと思うんですが、去る十月二十六日、法務大臣から法制審議会に対しまして、刑事手続における犯罪被害者保護を図るため、いろいろな諮問がされたわけでございます。  松尾局長にお伺いいたしたいと思いますが、近年、いろいろな犯罪がございます。被害者もおりまして、こういう方々に対する対策必要性というものは広く社会で言われるようになってまいりました。私どもが所属しております自由民主党でも近々この問題について取り扱うことになると思うわけでございますが、法務大臣がこの問題について法制審議会に対して諮問されたその背景について、まずお話をいただきたいと思います。
  8. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 多少詳しくなるかもしれませんが、背景について御答弁したいと思います。  背景については、我々法務省視点ということで、まず三点申し上げたいと思います。  いずれも法務省刑事局でございますので、刑事司法に関することという範囲内でのことでございますが、まず第一点でございますが、犯罪被害者と申しますのは、心身ともに傷つくと同時に、また財産的損害もこうむるわけでございます。しかし、近代の刑事法におきましては、犯罪被害者私的報復を禁じておりまして、刑罰権は国家が独占しているということでございます。  こうした現代法におきましては、被害者というのは、刑事訴訟手続におきましては、証人あるいは参考人の一人として位置づけられる、こういう立場にすぎないと言われております。刑事手続当事者、これは検察官被告人ということになりますし、被告人に対して弁護人がつく場合があります。それと、それについての判断をする裁判官ということになるわけでございますが、被害者はこの当事者ではないというふうにされております。刑事手続が対象としている事件によりまして直接の被害を受けた当事者ということではありますが、そうした当事者の置かれている状況というのは、刑事手続においても特に、その他の証人等と比べましても心情あるいは名誉について適切な配慮を受け、かつこれを尊重さるべき立場にあるということだろうと思います。こうした位置づけを見直す必要があるのではないか、これが基本的視点の第一点でございます。  それから二番目は、被害者というのは、証人尋問の際などに過度に精神的な負担を受ける、あるいは精神的な苦痛を受けることがございます。いわゆる二次被害に遭うという表現でこれがあらわされておりますが、そういうことが問題とされております。  また、被害者犯罪によってこうむった損害を的確迅速に回復するということがかなり困難な場合が多いわけでございます。三点目は、この被害回復の問題ということでございます。今回いろいろ法案を考えるに当たりましての基本的な視点は、この三つでございます。  こうした被害者についての関心の高まりといいますか、これは国際的に見ましても、十年ちょっと前になりますが、一九八五年に国連総会で、犯罪及び権力の濫用の被害者のための司法基本原則宣言というものが採択されまして、その中で「被害者は、同情及びその尊厳に対する敬意をもって処遇される」ということが宣言されております。この宣言を端緒といたしまして、諸外国におきましても、証人負担を軽減する方策とか、あるいは被害者刑事手続への関与度合いを強めるとか、あるいは被害回復のための諸制度を整備するとか、さまざまな措置が講じられてきたわけでございます。  このようなことで、今回法務省といたしましても、刑事手続面において早急に手当てを要すると考えられる九つ事項に関しまして必要な法整備を図るべく、委員お尋ねのように、この十月に法制審議会整備要項の骨子をお示しして諮問した次第でございます。  以上でございます。
  9. 与謝野馨

    与謝野委員 九項目にわたる諮問を行っておりますが、一項目項目その意味を教えていただきたいと思いますし、御説明を願いたいと思います。  第一項目の「性犯罪告訴期間の撤廃又は延長」、これはいろいろな性犯罪、親告罪になっておるものもございますが、これはどういう意味を込めて諮問されたのか、その点についてお伺いしたい。
  10. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 現在の法律では、性犯罪告訴権者に対しまして、犯人を知った日から六カ月という告訴期間の制限がございます。  二点だけ申し上げておきますが、この性犯罪というのは、男性の立場から言うのはなかなか問題があるかもしれませんが、女性にとっての精神的な負担あるいは衝撃の度合いというのは極めて深刻なものがございます。そうした精神的な痛手から六カ月以内に立ち上がって、告訴期間内に告訴をするということがなかなか厳しい場合が多うございます。  それからもう一つは、この性犯罪被害者犯人とが特別な関係にある。一つの例は、例えば雇用関係にある、上下関係にあるというようなことでございまして、そうした特別な関係に束縛されまして、なかなか六カ月は徒過してしまうというケースも少なからずあります。そうした関係が切れてから告訴ということになりますと、現在の告訴期間は六カ月でございますので、告訴権は事実上消滅している、告訴できないという事態がございます。  こうしたことは、性犯罪被害者を守る会というのが、いろいろな形があります。あるいはいろいろな分野で、これはやはり不当である、不合理であるという指摘が非常に強くなされておりまして、今度の諮問の第一項目にこれを挙げたのは以上の理由でございます。
  11. 与謝野馨

    与謝野委員 第二、第三、第四項目は、それぞれ証人尋問に関することでございます。第二項目は「ビデオリンク方式による証人尋問」、第三項目は「証人尋問の際の証人遮へい」、第四は「証人尋問の際の証人への付添い」、これはいずれも証人に対するいろいろな配慮ということがあると思いますが、これらについて具体的な御説明をいただきたい。
  12. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 御指摘のように、諮問事項のうちの二、三、四は、基本的には証人に対する負担軽減措置ということでくくれるかと思います。  まず、ビデオリンクということですが、耳なれない言葉でございますが、例えば別室等ビデオをワンセット用意いたしまして、証人には別室証言してもらうということでございます。それで、それを審理の証拠として活用するということです。  それから二番目の、証人尋問の際の証人遮へいというのは、法廷に出ますと、例えば今私の立っている位置がちょうど法廷によく似ているわけでございますが、証人はこういうところに立ちまして、傍聴人に向かって基本的には証言をするということでございますが、その際でも、被告人と相対することについて、事実上非常に精神的なプレッシャーを感じることがあります。特に、被害者性犯罪被害者でありまして、年少であるということになりますと、やはり被告人の姿を見ること自体証人にとって非常に証言を不可能にさせるような事態も考えられます。その場合には、少なくとも証人被告人との間に遮へいを置きまして、見えないようにするというようなことも可能にしたらいかがかというのが、今の遮へいの問題。  それから、証人への付き添いでございます。これは、今申し上げた例で、非常に年齢の行かない性犯罪被害者ですと、例えば母親がいないとなかなか証言ができない。あるいは、カウンセラーが十分にカウンセラーとして長期間その被害者につき合った後で証人になることを承諾したような場合には、カウンセラーがそばにいないと証言できないという事態も、これまでの法廷では間々出現した事態でございます。そうしたときには付き添いをつけて証言を可能にする、あるいは証人負担を大幅に軽減するということでございます。  なお、二番目のビデオリンク方式ということは、実はもう一つの効果がありまして、例えば性犯罪複数で行われます。たまたまその犯人が、早く捕まった者は早く公判になる、それから他の者は遅く捕まったために公判が分離されまして、二度三度と同じ法廷が開かれるということになります。そうしますと、現在は、要求されれば被害者は、例えば法廷三つに分離されておりますと三回、その性被害を受けた状況について細かく証言することになります。そうした場合に、ビデオリンク方式によって撮ったビデオを二番目、三番目の法廷証拠として使えないかという発想もございます。そうしたことを今回、このビデオリンク方式による証人尋問ということで御議論をいただきたい、こういうことでございます。
  13. 与謝野馨

    与謝野委員 冒頭松尾局長の御説明で、日本の刑事手続においては、被害者というのは当事者では全くないという扱われ方をしている、そういう御説明がございましたが、諮問の五項目め、六項目め、七項目め、これはいずれも被害者にかかわることを諮問されております。五番目が「被害者等傍聴に対する配慮」、六番目が「被害者等による公判記録閲覧及び謄写」、七番目が「公判手続における被害者等による心情意見等陳述」、この三つについての御説明をいただきたい。
  14. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 お尋ねの五番目の「被害者等傍聴に対する配慮」、これは、現実に被害者被告人公判につきまして大変強い関心を持っております。しかし、事件が、例えば非常に耳目を聳動した、あるいは国民の注視を浴びているような事件ですと、傍聴希望者が非常に多数おります。そういう場合に、被害者が必ずしも傍聴がいつも可能だということにはなりません。この五項目めは、被害者の置かれた特別な立場配慮しまして、そうした公判の機会に被害者のための優先的な傍聴席を確保しようということでございます。  それから、六番目の「被害者等による公判記録閲覧及び謄写」でございます。  被害者犯罪による被害を受けまして、被告人に対する件では刑事公判進行します。しかし、それとは別に、被害者に対して財産的な損害回復しろということで、民事事件を起こしたいと思うことも多々ございます。そうした場合に、刑事記録民事記録というのは性質が異なるものですから、被害者の手元に必ずしも告訴あるいは損害賠償請求をするための資料がないケースも多々ございます。その場合には、公判記録閲覧謄写被害者等、あるいは被害者が亡くなった場合にはその遺族ということになりますが、特別に閲覧謄写する権利を与えよう、それを刑事公判以外でも活用できるようにしたいというような配慮でございます。  それから、七番目の「公判手続における被害者等による心情意見等陳述」でございます。  これは先ほど冒頭で申し上げました基本的な視点の第一点にかかわることでございますが、今委員も御指摘のように、現在の刑事訴訟手続では被害者当事者ではございません。そうした被害者に対して当事者の、完全な当事者ではございませんが、当事者のような機能も一部与えようというのがこの七番目の心情意見陳述です。  被害者公判傍聴し、あるいは公判手続をずっといろいろな形で被害者なりに見ていきますが、最後被害者として、単に証人として証言した以外に言いたいことがいっぱいある場合があります。その場合には率直にその心情を吐露してもらおう、それが被害者に対する配慮であると同時に刑事司法についての国民信頼を高めることにもなるだろうということでございまして、そうしたこれまでの当事者、対立する当事者ではない被害者にある意味では質的な変化のある立場を与えたらどうかというのがこの第七番目でございます。
  15. 与謝野馨

    与謝野委員 八、九は財産的な損害回復に関する件を諮問されておりますが、八番目は「民事上の和解を記載した公判調書に対する執行力付与」、九番目は「被害回復に資するための没収及び追徴に関する制度の利用」、この二つについて内容を御説明いただきたい。
  16. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 まず、「民事上の和解を記載した公判調書に対する執行力付与」でございますが、刑事事件進行によりまして、被告人としては、例えばあるケースでは、このままいったら場合によったら実刑になりかねないというようなケースですと、往々にしまして被害者側示談といいますか、損害賠償の申し入れをすることがあります。それによりまして犯情といいますか情状を少しでもよくしようという心理が働く場合には、被害者側被告人側とで裁判外損害賠償あるいは示談等の話し合いが行われます。  例えば、損害賠償として五百万円払います、当面即金で二百万円、あとの三百万円は例えば三年間に一年ずつ分割で払いますというような示談ができます。それは、書面にできる場合もありますし、口頭の約束の場合もございます。そうした場合に、実際に判決がおりまして執行猶予が仮についたとします。そうすると、残りの三百万円が払われるかというと、払う場合もありますし、中にはそのままいなくなったり、あるいは履行しないというケースがございます。その場合に、被害者側がとれる手段は、民事訴訟を起こすことになります。しかし、これがまた時間がかかる、それぞれの証拠関係の整理が要るということでございますので、被害者側は二度手間になるわけでございます。  そうしたものについて、そうした和解ができましたら、これを公判調書に記載いたしまして、払わない場合には直ちに強制執行できるというような制度をつくったらどうか、これは被害者損害賠償回復にかなり強力に働くであろうということでございまして、これが第八項目でございます。  第九項目は、さき国会で御審議いただきました組織犯罪対策三法と関係するのでございますが、犯罪被害あるいは犯罪によって得た財物について凍結の制度被告人が動かさないようにとめてしまう制度等いろいろな制度が今度法案としてできました。それから、没収追徴につきましても、これを没収しますと、基本的には国庫に帰属しますので、被害者に返りにくいということになってしまいますので、その場合には没収追徴につきましても国庫に帰属しないという特別な手続もこの中に入っております。  そうしますと、これを被害者の方の被害回復に充てるような仕組みをつくりませんと、国庫にも没収しない、つまりは被告人あるいは犯人の方に財産が戻ってしまうようなことも考えられるということでございますので、これは没収追徴に関する制度を利用して、被害者に優先的にそうした弁済に充てられないかというようなことを検討していただこうということでございます。
  17. 与謝野馨

    与謝野委員 最後項目は、通常没収追徴等があるとこれは国庫に入るわけですが、その例外を設けようということですか。
  18. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 さき国会で成立した法律で、その例外が設けられております。ただ、それが被害者の方に返るルートがまだつけられていないわけでございますので、さらにそうした制度を利用しながら被害回復を図る仕組みがつくれないかということが、この最後項目発想でございます。
  19. 与謝野馨

    与謝野委員 そこで、こういうことは多分法制審議会も急いでくださっていると思いますが、法制審議会自体審議進行もありますが、法務省としては、いつごろ答申をいただいて、来年の通常国会に間に合うのかどうか、一体どういう作業を一応頭の中に入れて進めておられるのか。その点の御決意なり、現段階で判断できることをお伺いしたい。
  20. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 現在、この諮問事項は、法制審議会刑事法部会審議されております。  法務省事務局といたしましては、内々ではございますが、次の通常国会に閣法として提出して御審議いただきたいと思っておりますので、それを考えますと、おおよそ一月末ごろまでにはこの九つ項目全体につきましての御審議を終えていただいて、二月に法制審議会総会で大臣に対して答申をしていただくということがあれば、法案の作成にとっては時期的に大変プラスであろうということを内々でお願いしているところでございます。
  21. 与謝野馨

    与謝野委員 次に、少年がかかわるいろいろな事件についてお伺いしたいわけですが、現在、国会には、内閣提出少年法等の一部を改正する法律案が提出されております。これはもうさき通常国会で提出されておりますが、この少年法改正をするに至った経緯を刑事局長に伺いたい。
  22. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 少年法においていろいろな問題が各分野指摘されておりますが、特に近年、例えば、いわゆる山形マット死事件というものがございます。あるいは、幾つか事例を挙げますと、草加事件とか綾瀬母子強盗殺人事件、その三点を挙げておきますが、こうした事件では、少年関与している人数複数あるいは多数なものですから、事案が大変複雑でございます。  そうしたことが少年審判の場でも問題となりまして、家庭裁判所において認定された事実、そこで関与されたとされる少年たちの特定ということにつきまして、家庭裁判所認定が、それから後に行われた被害者親族等からなされた民事事件損害賠償請求における地方裁判所高等裁判所等の事実認定と必ずしも合致しないということで、社会から見ると、果たして事実はどうだったのかということにつきまして大変疑問が呈される事件が相次いだわけでございます。そうしたことを契機といたしまして、少年審判における非行事実が的確に認定されているのかどうか、事実が解明されているのかどうかということが問題になったわけでございます。  申すまでもなく、少年審判というのは、非行事実を確定しまして、それに対応した保護処分を行うという手続でございます。その前提としての事実の解明が十分になされていないということになりますと、少年審判全体についての国民信頼を損なうことになるということでございます。こうした少年審判における事実認定手続のあり方が国民の間で広く問われるという事態になりました。  このような状況のもとで、少年審判制度に対する国民信頼を確保するためには、この事実認定手続の一層の適正化のために所要の法整備を図る必要があるということでございます。そうしたことで、今回の少年法は、特にこの審判の中の事実の解明という部分につきまして視点を当てまして、いろいろな角度から法改正をお願いしているということでございます。
  23. 与謝野馨

    与謝野委員 改正法案では、検察官関与事件法定刑範囲を、「死刑又は無期若しくは長期三年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件」とし、被害者が死亡した場合については、明らかにその必要がないと認める場合を除いて検察官審判出席できることとしているわけですが、これについては関与範囲が広過ぎるという指摘があります。この点について刑事局長の見解を伺いたい。
  24. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 少年審判事件、非常に多数でございますが、検察官関与すべき事件というのは、まず、社会的に見て重大な事件ということがあろうかと思います。殺人傷害致死等の非常に重い刑はもちろんのことでございますが、長期十年の定めがあります傷害罪恐喝罪、それから長期五年の定めがある逮捕監禁業務過失致死傷等においても、これは結果が重大なものもございますが、中には、それほどではないにしても多数の共犯者による複雑な事案がございます。  特に最近の少年は、自動車、オートバイ等交通手段を多用するわけでございますが、例えば、暴走行為等によって引き起こされた業務過失致死傷ということになりますと、大人数で引き起こした事件でございますので、これ自体法定刑長期五年でございますが、事案解明に大変手間取るということでございまして、その事実解明機能を今問題にしているわけでございます。そういった点では、重罪に劣らず、こうしたいわば業務過失致死傷等におきましても、家庭裁判所において、実際にこの行為に加担したのはだれか、それぞれの刑責はだれかという事実を確定する際に、多数が関与して非常に複雑になるものでございますから、大変解明が難しいということでございます。  そういうことで、今回の法案では、死刑無期もしくは長期三年を超える懲役ということで、法定刑としては確かに広い範囲にわたって検察官関与できるということにしております。しかしながら、今申し上げましたように、検察官関与するのは事実の解明が非常に困難な事件でございますので、こうした長期三年を超える事件のすべてに検察官関与するわけではございません。そういう意味では、実際に検察官関与される事件というのは相当程度絞り込まれるというふうに我々は考えております。  それから、そうした枠内の事件のうち、被害者の死亡という極めて重大な結果が生じた事件につきましては、これは、結果の重大性等に着目いたしまして、検察官の申し出がある場合には、家庭裁判所が明らかにその必要がないと認める場合を除きまして、検察官出席の決定をするということにしております。  したがって、関与範囲が全体として、法定刑からくると非常に広い印象でございますが、現実には、検察官関与する事件は極めて限定されるというふうに御理解いただきたいと思っております。
  25. 与謝野馨

    与謝野委員 今回出されております少年法の問題について、各界でいろいろな意見がありますが、我が党内にも、この少年法は実は年齢問題を避けて通っているという指摘もございまして、やはり年齢問題をあわせて改正すべきであるという有力な意見がございます。  今回の改正法案になぜ年齢問題が含まれていないのか、その理由を刑事局長に御説明をいただきたいと思いますし、また、この年齢問題について法務省内部あるいは法制審の中で今後議論をする予定はないのか、あるいは、その必要性はないのかということについても意見を伺いたい。
  26. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 最近、少年の年齢問題については大変各方面で議論がございます。例えば、神戸の連続殺傷事件等を契機としまして、たまたまその少年が十四歳という低年齢だったということもございまして、現在、十四歳、十五歳というのは少年法でいいますと逆送できない、つまり、一般の裁判所刑事事件として裁くことはできないという年齢になっております。そうしたこともありまして、この十四歳、十五歳も事案によっては逆送すべきではないかという議論。それから、十八歳、十九歳という少年の中でも比較的年齢の高い層については成人と同じに扱うべきではないかという議論。代表的にはそういった議論がなされているわけでございます。  今回の法案は、先ほどから申し上げておりますように、少年審判の直面している事実認定機能の強化という点に着目して、まず法案化して御審議をお願いしておりますが、この年齢問題についても、法務省としては、刑事司法全般において少年をどう扱うかという問題、あるいは、刑事司法のみならず、例えば、高年齢の少年につきましては、同じように、十八歳、十九歳の選挙権をどうするかというような議論もあわせて行われておりまして、そうしたいろいろな角度からの議論というものを年齢問題では積み重ねていただく必要があるのではないかというふうに考えております。  今後の国会における御論議等も踏まえまして、法務省としても、年齢問題について真剣に議論していかなければならないというふうに考えている次第でございます。
  27. 与謝野馨

    与謝野委員 質問を終わります。
  28. 武部勤

    武部委員長 北村哲男君。
  29. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。私は、主として、臼井法務大臣そして山本政務次官に御質問したいと思います。  私の質問の趣旨は、現在二十六万人とも二十七万人とも言われておるオーバーステイの外国人の人たち、その人たちの内実あるいは処遇について日本はこれからどういうふうな態度をとっていくべきかというのはかなり大事な問題であると思いますので、その点について、わずかな時間でありますけれども聞いてまいりたいと思っています。  まず、私どもが普通に言っております二十六、七万というオーバーステイの人たちの数あるいはその国別の内訳、あるいはどういう目的で日本に入ってこられたのかということについての概要をお尋ねしたいと存じます。
  30. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員お尋ねをいただきましたオーバーステイの者たちでございますが、平成十一年七月一日現在でございますが、定められた在留期間を経過して本邦に在留する者でございます。その数は約二十六万八千人というふうになっております。  主な国籍では、韓国約六万四千人、フィリピン約三万九千人、中国約三万六千人、タイ約二万七千人、ペルー約一万人となっております。また入国時の在留資格別では、短期滞在が約二十万人、興行約一万三千人、就学約一万二千人となっております。
  31. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 この人たちは、恐らくかなり前からお入りになっている方が多いと思うのです。高度成長期あるいはバブル期に日本の中で長い間実際働いて、特に日本の経済成長あるいは経済に対して貢献をしてこられた、いろいろな役割を果たしてこられた人なんですけれども、その中で、未成年の子供、日本で生活する中で日本で生まれ、あるいは連れてこられた方々の未成年の子供の人たちの数は現在どのぐらいいらっしゃるのでしょうか。
  32. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 平成十一年七月一日現在でございます。先ほど申し上げました在留期間を経過して本邦に在留する者のうち二十歳未満の者は約一万一千人となっております。
  33. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 このオーバーステイという言葉でございますが、大臣、通常この言葉は私どもは不法残留という言い方でよく、私どもというより一般的に使われております。しかし、不法残留と言いますといかにも悪いことをしたような印象を覚えるので、私はあえてここでオーバーステイと言いました。オーバーステイという言葉はそのまま訳せば超過滞在ということですね。よその、フランスなんかの言葉も日本語に訳すと不正規滞在とかそういう言葉を使われているのです。また、いろいろ御苦労されて、この人たちのことを未登録外国人と言われたりする人たちもいます。  私は、その中で特にこの不法残留という言葉が非常に気になるのです。今申しましたように、この人たちが何か悪いことをしたような感じを受けるので、ひとつここで、大臣のお気持ちとしてあるいは御決意として、こういう不法残留という言葉はもうなくそうではないか、超過滞在あるいはもうちょっといい言葉を、適当な言葉を。というのは、何かその二十七万人の人たちは不法にいるというふうな感じで非常に印象がよくないのですね。特にまた子供たちにとっては、不法残留者の子供なんということになるのです。しかし例えば、余りいい例じゃないかもしれませんけれども、結婚届を出さなくて夫婦になっていたって別に不法夫婦とは言いませんね。これはぴったりこないかもしれませんけれども、どういうお感じを受けますか、ひとつそのあたりを聞きたいと思います。
  34. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 委員のお気持ちはよくわかるわけでございます。やはり型どおりのお答えになるわけでございますが、不法残留とは、定められた在留期間を経過して本邦に在留する者ということでございます。すなわち入管法第二十四条四号に該当する者を指しておりまして、同法第二条の二の規定に反して第七十条の五号で刑罰を科せられるべき者であって、私どもとしては、特に不適切な表現ではない、このように考えているのでございます。
  35. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私は、臼井法務大臣が大臣になられて、こういう言葉はもうやめて、例えば無免許運転でも無免許運転と言うのですよ、不法運転者とは言わないのですね。それはよくないけれども、そういう行政的な違反の場合と自然法的なものとの区別はして、しかも、確かにオーバーはしているかもしれないけれども、現実の社会にそれなりの普通の人間として生きている者に対する言葉としては適当でないと私は思っておりますので、強くその辺を求めたいと思います。政務次官いかがですか。大臣と同じですか。少しは違った答えを言ってください、法律家として。
  36. 山本有二

    山本(有)政務次官 先生のお考え、私も同感でございますし、今後そういう方向で検討してまいりたいとは存じますが、現段階で、現在の立場でお答えするとするならば、大臣と同様でございます。
  37. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 この問題で余り言うのはおかしいのですが、私どもは一般的に不法残留という言葉は使わないでいこうと思っておりますので、そういうものは定着させていきたいと思っております。  ところで、今の二十六万八千人という人数の推計というのはどういう根拠に基づいて推計されたのでしょうか。
  38. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど申し上げました二十六万八千人という数字でございますけれども、外国人が上陸許可を受けた際に提出した入国記録をもとといたしまして、その後在留期間が経過をしたにもかかわらず出国記録のない統計上の数値でございまして、若干の誤差はございますけれども、概数値を示すものとしてはかなり正確なものであると考えております。
  39. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ちょっとまた統計で恐縮なんですが、一九九五年、約五年前からの問題で、このオーバーステイの方々の中で在留特別許可を求めて出頭した方々の件数、そしてその主たる理由についてどのようなことが挙げられておるのか、その点についてお伺いしたいと存じます。
  40. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 在留特別許可を求めて行われました異議申し立てを受理いたしました件数は、平成六年が約七百三十件、平成七年約千二百七十件、平成八年約千五百四十件、平成九年約千五百八十件、平成十年約二千九百六十件でございます。  異議申し立ての理由は、個々の事案によって異なっておりますけれども、日本人と婚姻をしたということによりまして引き続き我が国での在留を希望する者が大部分を占めておるわけでございます。そのほか、日本におきまして安定した在留を許可されている永住者または特別永住者等と婚姻したこと、日本人の実子を監護養育していることなどを理由とするものなどでございます。
  41. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今理由を述べられた中で、日本人配偶者または日本国籍の実子の存在を理由とした在留特別許可ということが挙げられました。これが大部分であるというふうにお話しになったのですが、日本人の男性あるいは女性と結婚し、あるいは日本国籍の実子の存在を理由とした許可が認められるというのはどういう理由からでしょうか。
  42. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 在留特別許可の許否に当たっては、諸般の事情を考慮いたしておりますけれども、御指摘の場合につきましては、日本人と密接な身分関係を有する者については、その家族関係保護するという観点から、本邦での在留を認める必要性が高いことが多うございまして、この点を重要な要素として考慮したものでございます。
  43. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今は、確かに、日本人に近いというか、日本人と一緒になった、日本人の家族になった、あるいは日本人の子供を持ったという身分関係的なものを大きく言われていますね。  しかし、私は、もう一つの観点といいますか、日本で実際に働き、日本になじみ、そして日本人と同じように、オーバーステイではあるけれども、日本の生活になれ、違反の部分は別にしまして、それなりに日本の社会に貢献してきた、そういう理由も挙げられてもいいんではないかと思います。  いわゆる身分関係だけに一方的にするならば、最終的には、よく言われるように、帰化すればいいじゃないかとか、そういうふうな言い方になってくる。帰化する人間だけを認めるんだという日本的な考え方があるんですけれども、私は、それをいま一歩返って、これだけ日本が少子化になって、ある意味では、余りいい言い方じゃないんですが、三K労働を支えてくれた人たちに対する日本社会の恩返し的な、あるいはどうしてもまたこれからの社会に必要な人たち、これを今後どのように処遇していくかということが、国際社会の中に生きていく日本のこれからの選択肢の一つであろう。日本は、諸外国から見て、その辺はかなり厳しい、伝統的な見方しかできていないという感じがするんです。  ですから、そのあたりで、日本人の配偶者を得た者、あるいはそれに近い者という理由は、身分関係ということで、一つ理由はわかりました。では、そのほかに、私が今言ったような観点で、これからの国際社会を支えていく、あるいは今まで支えてもらった人たちについて追認をしていく、もちろん犯罪なんかを犯した人はだめですけれども、オーバーステイという事実を除けばまじめに日本の社会に貢献してきてくれた人に対し、あるいは日本の社会になじんだ人に対して特在を認めていく、そういう観点からの理由というのはそのほかにありますか。
  44. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 在留特別許可の判断というものに当たりましては、先ほど申し上げました、日本人の配偶者であること、あるいは日本国籍の実子が存在すること等々のほかに、在留を希望する理由でございますとか、家庭状況でございますとか、あるいは御本人の素行等々、個人的な事情のほかにも、内外の諸情勢等を踏まえまして個別的に慎重に決定をされるということになっておりまして、その事情は個々さまざまでございまして、一概に申し上げるということはできないと思います。
  45. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 それは確かに、大臣の裁量権の範囲ですから、個々別々にそれぞれの事情があることはよくわかります。  しかし、先ほどの日本人配偶者あるいは日本人の実子というのは、一つの客観的な基準。それがあるから、そういうことを皆さん御存じになれば、そういう人たちは安心して大臣に特別許可を求めていく。外国にお帰りになるのは別ですけれども、求めていく。その二十六万八千人という人たちが、日本に住みたいけれども非常に不安に感じて、しかし、申し出ればだめだといって帰りなさいというふうになってしまう不安を抱えているからこそ、なかなか申し出ることはできない、社会の隅でまじめに働いている。  ですから、私は、個々別々というふうなことじゃなくて、今のような客観的な基準をやはりもう一つ、二つ、私が言った観点から示していただく。それに基づいて、それに適合する人が出頭する、出ていく、審査をする、そして認めていくという。それは、日本の社会に有害な人は必要ありませんよ、帰っていただくことになると思いますけれども、聞いているところによると、そうじゃない人がほとんどというか、非常に多くの人たちがそういう人たちである。ここにもきょうは何人かお見えになっています。そういう人たちは、こういうところでも堂々と来られる人たちだ、自信を持って日本の社会で生きておられる方だと私は思うのですね。そういう人たちが大臣に申し出れば安心してできるというような内部基準とか、あるいは審査機関とか、そういうものはこれからある程度固めていくという、今はだめだということで結構ですけれども、固めていく、基準をつくっていくというお考えはありますか。
  46. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘の点等につきましては、一法務大臣でお答えするというよりは、むしろ日本の入管行政といいますか、国際化の中で、日本で働いていただく、あるいは日本に来ていただく方々に対して今後どういうふうに考えて対処していくか、より幅広い、いろいろな観点というものを総合して見ていかなければならない、こういうふうに思っております。  いずれにいたしましても、委員のお気持ちはよく理解するところでございます。
  47. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そのとおりだと思うのです。まさに日本の入管行政だし、日本の外国人政策の問題ですから、これはやはり前向きにとらえていただきたい。  私はさっき追認という言葉を使ったのですけれども、確かに今はなかなかあの人たちも出てこられない。安心して出てこられる、だけれどもそれは、安心して来られる人たちは、自分たちが自信を持って日本で——例えば偽装結婚をしたとかなんとかいう人は堂々と来られないと思うのです、調査をすればわかるわけですから。そうじゃなくて、きっちりと、日本の社会に定着している人たちについては、その実績をやはり認めてあげる、そして特在を認めるという形で追認をしていくという社会行為というのは私は必要だと思っておりますので、ぜひその辺を前向きに検討していただきたい。山本政務次官の方も、ひとつよろしくお願いします。  それでは次に、具体的な話になります。  ことしの九月一日に、東京入管に二十一人の外国人の人たちが、五つの家族、子供連れですけれども、合計二十一人の人が在留特別許可申請を申し出たというふうに大きく新聞に載りました。それはどういう理由によるものでしょうか。
  48. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員お尋ねの九月一日に東京入管に出頭した二十一名のことにつきましては、大変恐縮でございますが、個別の案件に関するものでございまして、個人のプライバシー保護の観点から、異議申し立て理由等につきましては、そうした具体的な事情については答弁を控えさせていただきたいと思います。
  49. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 それはそう聞きましょう。  この件については、ある程度わかっていることは、理由はそれなりに推測できると思います。子供を連れている、子供が大きくなった、日本で生活している、だから日本に置きたいということがほとんどであろうと思います。  ところで、この二十一人の件につきましては、何か既に審査が終わって、許可待ちだというふうに聞いておりますけれども、そういうふうに伺ってよろしいんでしょうか。
  50. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 許可待ちというのは正式な、正しい表現ではないんじゃないかと思っておりまして、現在、法務大臣の裁決のための審査を待っている、こういう状況であります。
  51. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 失礼しました。それは私の言い方が不正確でした。  しかし、従来だと、この特別許可を求めて、結論が出るまでに非常にばらばら、短いケースもあるんですが、非常に長い時間をかけて、その人たちの生活態度とかいろいろな、先ほど大臣が言われた条件を調査して、その結果、結論を出すというケースがあった。ところが、この二十一人に関しては、九月一日に出頭してわずか数カ月、七十日足らずのうちに口頭審理が終了してしまったというふうなことが言われているのですね。それに対して、その方々は非常に不安に駆られている。あっさりとけられるのではないかというふうな懸念というものを表明しておられまして、もう少しちゃんと調べてくれないか、あるいは時間をかけてというふうに言っておられるのですけれども、そのあたりについては、よその今までの例と比べて公平性が保たれているのかといえば、当たり前、保っていますというお答えになると思うのですけれども、しっかりとそのあたりは配慮されて、事件になった、新聞だねになった、だから早く結論をつけてしまうのだというふうなことはまさかないでしょうね。その辺については、大臣、いかがでしょう。
  52. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、個別の案件についてはお答えを差し控えさせていただくわけでございますが、一般論でお答えをするならば、在留特別許可を求める案件の大部分は日本人の配偶者がいるという場合でございまして、このような案件は、婚姻の信憑性及び安定性などの調査に相当の期間を要することが多くなっております。したがって、審査の期間も長くなる、こういうことでございます。  しかし、違反事実などの事実関係が明らかであり、事実関係調査に期間を要しない案件につきましては、比較的手続進行等がスムーズであるということは言えると思うわけでございまして、もちろん、このような場合につきましても慎重に検討いたしまして、審査の公平をしっかりと保つように努めてまいりたいと思います。
  53. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ぜひ、そのあたりは慎重にお願いして、また御希望に沿うような形の結論が出ることを私は望みます。  ところで、この二十一人の人たちは、二人を除いて全部子供のいらっしゃる家族のようです。本件について児童の権利条約、私どもは子どもの権利条約と言っているのですけれども、子どもの権利条約の三条一項には、数年前日本も批准したこの条約でありますけれども、「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」という条約を私どもは批准しておるわけです。この点については十分に尊重され、本件についても十分尊重されると考えますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  54. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘いただきました児童の権利に関する条約に関してでございますが、入管法の規定による退去強制手続に当たっては、委員指摘をいただきました児童の権利に関する条約の趣旨をも踏まえつつ、慎重に検討いたしました上で適切な結論を出してまいりたいと考えております。
  55. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 特に私は、今回出頭した中に八名の子供さんがおられる。やはりその人たちの人権というか、特に日本で育って日本の学校に行き、まだ行っている人もいるか、あるいはおらないかもしれませんけれども、日本の社会になじんで、恐らく本国に帰っても、むしろ日本の方になじみが深い人たちだと思っておりますので、特にそのあたりの子供の利益というものを最優先に考えておいていただきたいと望む次第です。  最後になりますけれども、ことしの五月、外登法の一部を改正する法律が通りました。その中で、法律が通ったときに附帯決議が盛り込まれております。その附帯決議の中で、「在留特別許可等の各制度の運用に当たっては、当該外国人の在留中に生じた家族的結合等の実情を十分考慮すること。」という言葉、特に、家族的結合の実情を考慮するというのは、衆参双方の委員会での附帯決議でございました。  私は、この問題がまさに本件にも当てはまる事例ではないかと思いますので、その趣旨に沿った措置が本件についても、本件というかこの二十一人の人たちについても当てはまるし、また先ほど日本人の配偶者ならいいということ、とにかく日本に近づけるのではなくて、そうではなくて子供中心だということ、特にまた家族が大事だという観点からの配慮というものが大事だと思いますので、そのあたりについての大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  56. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 在留特別許可の運用に当たりましては、委員指摘の第百四十五回国会で成立をいたしました入管法一部改正に係る附帯決議の趣旨をも踏まえまして、適切に対処するように努めてまいりたいと思います。
  57. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 一つ二つ残しておりますが、本日はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  58. 武部勤

    武部委員長 坂上富男君。
  59. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上でございます。  まず、警察庁長官にお伺いをいたします。以下、簡潔に御答弁いただきたいと思います。  神奈川県警の不祥事問題は、渡辺元神奈川県警本部長以下を起訴されました。また、行政処分として懲戒免職を含む処分がなされました。この反省をも含めまして、警察法改正の骨子ができたことが報じられております。これは、公安委員会に監察指示権や不祥事の報告義務を付するなどというような規定が新設されると言われておるわけでございます。  しかしながら、警察庁本庁における神奈川県警不祥事についての責任問題については全く発表がなされておりません。長官を初め関係の諸君の進退について、何らかの言明があってしかるべきだと私は思っておるわけでございます。また、このことについては既に参議院においても指摘をされておるところでございます。私は、国民の皆様方が、このことについて何らの発表もないことについて大変不満を持っていることを私にも聞かされております。私は、この際、長官みずからの進退をここに明確にいたしまして、その責任をとるべきだと思慮しておりますが、率直な決意を表明されることを期待しながら質問をいたしたいと思います。
  60. 関口祐弘

    関口政府参考人 このところ神奈川県警におきまして不祥事が相次いで、国民の警察に対する信頼が著しく損なわれておりますこと、極めて残念な、遺憾な状況でございます。中でも、元警察本部長を初め幹部多数が、犯人隠避あるいは証拠隠滅ということで立件送致をされる、それにつきまして、過日、元本部長を初め五名の者が起訴される、その余の者が起訴猶予というふうな事態に至りましたことを、私どもとしても大変重く受けとめているところでございます。  今回の事件の反省を踏まえまして、国家公安委員会及び警察庁におきましては、警察に対する国民信頼回復するため、不祥事案の結果に対して厳正な措置をとることはもとよりでありますけれども、監察体制の強化、服務規定のさらなる徹底、人事・教育制度の改善等、不祥事案再発防止対策に組織を挙げて取り組むとともに、公安委員会の警察に対する管理機能の一層の充実強化を図るため、ただいま委員指摘のような警察法の一部改正というものを検討しているところでございます。  こうした不祥事案再発防止対策を強力に推進することによりまして警察に対する国民信頼回復することが、現在私に課せられた重大な責任であると考えているところでございまして、そのために全力を尽くしてまいりたい、かように思います。
  61. 坂上富男

    ○坂上委員 もうそれは当たり前のことでございます。さらに、いわゆる警察始まって以来の不祥事でございます、しかも、起訴されるという大変な事態になったわけでございます、これについて、いわゆる最高の警察庁として、その責任があるんじゃなかろうか、こう私は言っておるわけであります。  これについて、一体、全く責任なしだ、もうこれで終わりだ、あとは警察法の改正をして終わりだ、こういうふうなお考えなのかどうか。これが国民が非常に、この間の発表から聞いてみまして、行政処分があった、起訴処分があった、これはこれでいいのでございますが、さらにこの上の本庁がどうなっているのか、このことが問題なのでございます。  今お話を聞きますと、改正は結構でございます、ぜひやってください。あわせて、その責任、この不祥事に対する上の方の責任としてどうされるのかということを私は申し上げているわけでございまして、この決意をひとつ表明していただきたい、こう思っています。
  62. 関口祐弘

    関口政府参考人 ただいまお答えしたとおりでございますけれども、今回の事件の反省を踏まえまして、国家公安委員会及び警察庁におきましては、警察に対する国民信頼回復するために、警察法の改正も視野に入れまして、公安委員会の管理機能のさらなる充実強化、監察体制の強化等の措置を講じようとしているところでございます。  こうした諸施策を具体化することによりまして警察に対する国民信頼回復することが、警察庁なり、あるいは私に課せられた重大な務めであるというふうに考えているところでございまして、そのために全力を尽くしてまいりたい、かように考えるわけでございます。
  63. 坂上富男

    ○坂上委員 同じ答弁を二度も三度も繰り返してもしようがないから、本日はこの程度でやめますけれども、これはやはりきちっと進退についての責任をとってもらわなければ、国民は承知しませんよ、これだけの事案を起こしているんだから。  警察というのは、まさか悪いことをするなんて、物を隠すなんというようなこと、そして組織的に裁判になるようなことをするなんてだれも思わないんだ。それほど信頼していたんだ。これが裏切られたのであります。不祥事のマニュアル、これも提出してくれと言ったって提出しない。しようがないから、別の手続できょう手続をとりましたが、これでは信頼はできないのであります。  でありますから、今後もあることでございますから、私は指摘だけいたしまして、時間もありませんので、次の質問に移ります。  お帰りになって結構でございます。  まず、建設省にお聞きをいたします。  先般、私が質問をいたしましたことの中で、建設省が河川敷を荒川建設という会社に交換登記をいたしたわけでございます。しかし、これは国有財産法十八条違反で手続上無効だということが判明をいたしたわけでございます。そこで、荒川建設が現物出資をいたしましたこの交換物件、これは荒川リゾートという会社に出資をされているのでございますが、これも当然無効になるわけでございます。  したがいまして、これはもう原状回復しなければなりません。国の財産は国のところに戻してもらわなければならないのでございますが、本日現在、私が調べたところによりますと、依然としてそのまま国の財産がまだ荒川リゾートの名前で登記をしてあるわけでございまして、政府提出の文書によりますと、ここのリゾート会社は八億の欠損金が出ておる会社でございます。  こうやって登記をいつまでもこんなことをしておって、差し押さえを受けたらどうするつもりなのか。本当に建設省は何を考えておられるのか、全く私は不審に思っております。これはもう直ちに抹消登記しなければならぬと思っていますが、いつまでに抹消登記するつもりなのでございますか。  それから、この現物出資の土地がゴルフ場となっておったわけであります。それまでは、河川敷を占用許可によって使用させておったわけでございますが、これが現物出資されたのがことしの三月三十一日ですから、現物出資が無効になりましたら、この河川の占用権は一体どうなるのか、河川占用の使用料は一体どうするつもりなのか。これをまずきちっと建設省からお答えをいただきたいと思います。どうでしょうか。
  64. 竹村公太郎

    ○竹村政府参考人 お答えいたします。  今先生のお尋ねの件でございますが、今回の交換契約は無効であり、早急に抹消登記を行うべきであると認識しております。  抹消登記の手続につきましては、不動産登記法第二十五条によりまして、共同申請または嘱託により行うことが必要であるとなっております。したがって、速やかに関係者からの同意を得まして抹消登記を行うよう、今後とも最大限の努力をしてまいりたいと考えております。  建設省の出先機関の北陸地方建設局は、交換が無効であることを関係者に伝えて以来、関係者に対して同意を得るよう申し入れているところでございます。今後とも最大限その努力を行いまして、抹消登記を行っていきたいと考えております。(坂上委員「いつまでにやるんだ」と呼ぶ)  時期につきましては、現在、明確に申し上げられるような段階でありませんが、今後とも、関係者の同意を得るよう最大限の努力を払っていきたいと考えております。  二番目の御質問でございます。  占用許可及び占用料の取り扱い方針でございますが、土地交換が無効となった国有地は、従前、占用を許可し、占用料を徴収していた土地であります。そのため、同様の取り扱いになることが望ましいわけでございますが、今後、占用許可及び占用料の取り扱いについて、占用料の徴収権者であります新潟県とも調整の上、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。(坂上委員「この金額は幾らですか」と呼ぶ)  金額につきましては、私ども、現在ここでは申し上げる立場にはございませんので、お許し願いたいと考えております。
  65. 坂上富男

    ○坂上委員 こんなのはあすにでもできるのですね。どうも建設省は怠けているのじゃないですか。ひとつ早急に登記するように要請をいたしたいと思います。  この点について法務省にお聞きします。  現物出資が無効になりますと、現物出資にかわるべき現金ですが、これは取締役が共同して返済というか提供義務がある、こういうこの間の御答弁でございましたが、私は、やはり第一義的には現物出資をした荒川建設が提供すべき義務があるのだろうと思っておるわけであります。それにあわせまして、取締役が共同した担保責任を負っておるんだと。したがいまして、これは不真正連帯債務というような形になっているのではなかろうかと思いますが、この点について、まずはっきり御答弁をいただきたいと思っておるわけでございます。  それから、今言った、その現物のかわりに別の不動産を現物出資できるなどというようなことがあり得るのですか。どうも建設省はそれができるのだと思って今までぼたぼたしたのじゃなかろうかと私は思っているのでございますが、この点はっきりと聞かせてやってください。別のものを現物出資できますか、こんなことはできっこないでしょう。  それから、今のような状況の場合、貸借対照表はどういう記載になるのですか、これもひとつお答えをいただきたいと思います。
  66. 細川清

    細川政府参考人 これは、商法の規定に基づいて、一般論としてお答え申し上げます。  株式会社におきまして、新株発行の新株引受人が払込期日までに現物出資の給付をしないときは、その引受人は当然に引受人としての権利を失います。そして、ただいま坂上委員指摘のとおり、取締役は共同して現物出資に相当する金額を払い込む義務があるわけでございます。  この場合におきましても、会社が具体的な損害をこうむり、そのことについて現物出資者に帰責事由があるときは、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになっております。これは商法の第二百八十条ノ九の第三項で定めているところでございます。この責任は民法上の債務不履行責任でございますので、弁済等の一般的な消滅原因によって消滅するほか、十年の消滅時効にかかることになり、それまでは免れることはできないことになるわけでございます。  なお、現物出資にかえて他の不動産を提供することはできるかというお尋ねでございますが、それは、今坂上委員が御指摘のとおり、現物出資に関しては、本来の給付がなされない限りその給付がされたことにならないため、他のものの給付でこれにかえることができないということになるわけでございます。  それから次に、貸借対照表への記載の問題でございますが、現物出資者による給付が不能である場合には、会社がその者に対して損害賠償請求権を取得したときは、その請求権は金銭債権でございますので、貸借対照表の資産の部に未収入金として計上することになります。なお、取締役に対して取得する払込担保責任、これにつきましても同様でございます。
  67. 坂上富男

    ○坂上委員 そうしますと、局長、こういうふうに理解したらよろしゅうございますか。  今言ったように、まず、抹消登記がなされないものだから、このリゾート会社の財産のように外形的には見えるわけでございます。しかし、これは無効でございますから、このかわりの現金を株金として払い込まなきゃならぬ。払い込まなかった場合は、これは十年以内には払ってもらわなければならない、こういうようなお話のようでございます。  そうしますと、会社の責任としては、これはもう現物出資をした人にいわゆる株金払い込みの訴訟を起こす、あるいは取締役にその訴訟を起こすということは会社の義務として出てくるのじゃなかろうかと思いますが、これはどうですか。
  68. 細川清

    細川政府参考人 取締役は共同して払い込みの責任を負います。ですから、払い込みがなされない場合には、増資は有効でございますので、新株発行の手続も有効でございますので、そのお金を払い込んでいただかないと資本充実の原則に反するということになりますので、それを任意に履行されない場合は、会社は訴訟を提起してでもその履行を求めるということになるわけでございます。  それから、現物出資者の責任は、これは損害賠償責任でございますので、これは資本となるものではございません。しかし、会社の取締役は会社に対して忠実義務を負っておりまして、あるいは民法上の善管注意義務を負っておりますので、これに従って誠実に義務を処理する必要がありますから、そういうことは結局、会社の損害回復するための訴訟を提起する必要があるということになるわけでございます。
  69. 坂上富男

    ○坂上委員 商法上のことはわかりました。  それから、今度は自治省でございます。  平成十一年五月二十日付で、自治大臣官房総務審議官から、第三セクターに関する指針が出ております。どうもこのごろ第三セクターに問題が多いものですから、こういうふうなことを気をつけなさいよ、こういうふうに出ているわけでございます。  これは、自治省からいただいたいわゆる荒川リゾートの、第三セクターに対する資産内容の報告だろうと思うのであります。これによりますと、欠損金が八億円、しかもこの増資の仕方がどうも無効になった、こういうような状態にあるとき、自治省の立場といたしましては、これはどういうふうな指導をなさるのか。特に、ここの荒川町という町が千四百七十万円も出資をしておるいわゆるリゾート会社なんですね。でありまするから、これがまかり間違いまして損失が発生したということになりますと、町民に対する損失、こういうふうな形に実はなるわけでございます。第三セクターに対する自治省の指導としてはどうされておるのか。  特に私は要請したいのでございますが、こういうようなことがあるせいでございましょうか、平成九年と平成十年の決算諸表が、貸借対照表等が荒川町に提出されていない、これを株主である荒川町の議員さんが見ようとしても見ることができない、こういう状態なのでございますが、自治省の方としては、これを提出させるように何らかの形がとられませんか、いかがです。
  70. 平林鴻三

    ○平林政務次官 ただいまの坂上委員からのお尋ねでございますが、本年五月に、地方公共団体による第三セクターの設立や運営の指導監督等に当たっての留意事項というものを取りまとめまして、地方公共団体に第三セクターに関する指針として通知をいたしております。  その中で、経営状況が悪化している第三セクターについては、問題を先送りすることなく、その原因を検証し、抜本的な経営の改善策を検討することや、さらに深刻な状況にある場合にあっては、第三セクター方式での事業の存廃についても判断することを各地方団体に要請をいたしております。  今後とも必要に応じて助言等を行うことといたしておりますので、地方団体におきまして、この指針を参考にしていただいて第三セクターの見直しを進めてもらいたい、そう思っておるところでございます。  なお、荒川町が財務諸表を九年、十年にわたって受け取っていないということは、実を言いますと私も全く初耳でございますので、調べました上でしかるべき方法を講じたいと思っております。
  71. 坂上富男

    ○坂上委員 結構です。ぜひひとつお願いをしたいと思います。  どうぞ、自治省、結構でございます。  次に、私は、設問の第一、東京弁護士会がいわゆる人権救済申し立て事件につきまして警告文書を発しました。そのあて先人は東海旅客鉄道株式会社でありまして、人権侵害であるとしての警告が発せられたのであります。  ちょっと読み上げますが、東京弁護士会会長飯塚孝さん、   当会は、ジェイアール東海労働組合及び同組合新幹線地方本部東京運転所分会からの人権救済申立について、当会人権擁護委員会の調査結果に基づき、下記のとおり警告いたします。   貴社が一九九三年五月、東京運転所二階の運転科運転当直の天井に設置した監視カメラは、点呼を受け、待機する乗務員を、監視カメラにより監視することを主目的とするものであり、外部よりの侵入防止等防犯上のものとは考えられません。   かかる監視カメラによる労働者の常時監視は、労働者の人格権を侵害する違法な人権侵害行為ですので、速やかに上記カメラを撤去されるよう警告します。 こういうことであります。  これに基づきまして、運輸省に次のような要請書が出されております。  JR東海東京運転所に設置されている監視カメラは、四月三十日、東京弁護士会から撤去するように警告が発せられている。JR東海会社に、東京弁護士会人権擁護委員会の警告に速やかに従って、人権侵害の監視カメラを一日も早く撤去されるよう監督官庁として指導されるよう要請する、こういう文書が実は出ているわけであります。  どうもいろいろ聞いてみますと、これについて、警告に従わないという事実が出ているわけであります。なぜ警告に従わないかというと、この警告は事実誤認をしているというふうに理解しておると。監視カメラではありませんので取れません、取るべきカメラはありません、弁護士会についても、東京弁護士会だけではありません、第一弁護士会、第二弁護士会などありますのでなどと、これは東京都地方労働委員会での一九九九年四月の証言で供述をしておられるそうであります。これはまことに遺憾なことでございまして、こういうようなことをしているわけでございます。  まず法務省に聞きたいと思うのでございますが、弁護士会の人権擁護委員会と法務省人権擁護委員会、これはいずれも法的根拠に基づいて設置をされて、その必要によって、時には警告を発し、時には勧告を発し、そしてこれをやっていると思うのでございますが、これはどうでしょうか。それから、これに従わない場合、一体どう対応したらいいのか。ひとつ人権擁護局として御答弁いただきたい、こう思います。
  72. 横山匡輝

    横山政府参考人 法務省人権擁護機関の人権侵犯手続関係でございますけれども、これにつきましては、法務省設置法の第三条第二十七号で「人権侵犯事件調査及び情報の収集に関する事項」が法務省の所掌事務とされており、これを踏まえまして、人権侵犯事件調査処理の手続、内容等が、法務大臣訓令である人権侵犯事件調査処理規程により定められておるところであります。私どもは、この規程に基づいて対応しているわけであります。  なお、弁護士会の関係での御質問でありますが、これにつきましては、弁護士法で、弁護士の使命が基本的人権の擁護ということで掲げられておりますので、それに基づいて行われているものというふうに考えております。  ただ、それに従わなかった場合にどうなのかということでございますけれども、私どもとすれば、私どもの手続の中では精いっぱい勧告等で対応しているというところでございます。
  73. 坂上富男

    ○坂上委員 弁護士会の人権擁護委員会というのは、きちっと法律に基づいてできているものでございます。ちょっとこちらの方で不規則発言があって、弁護士会は非公式のものだなんという、こういうお話でありますが、とんでもない。そういうようなことが、こうやって公益事業である鉄道会社においてもいわゆる命令を守らぬ、こういうとんでもないことが起きているわけでございます。  運輸省にひとつ、こういうものはあなたの方で調査に行ったけれども、なかなか、大事な所長室にあるあれを見なかったというようなこともあったり、何かごまかされたというふうにも実は言われておるわけでございますが、今言ったように、公式な機関が公式に命令を出した以上は、いかなることがあってもこれは撤去しなければならぬと思っておるわけでございます。運輸省としては、これに対する指導監督はどういうふうにするか。  それから法務省の方、近くいわゆる人権擁護委員会に申し立てをすることになっておるわけでございますが、人権擁護局としては、法務省としては、これについてどういう対応をされるか。ぜひひとつ、時間が来ているそうですから、お答えをいただいて、質問を終わります。
  74. 石川裕己

    石川政府参考人 私どもとしても、本年四月に東京弁護士会からJR東海に対しまして警告書が出されていることは承知してございます。しかしながら、人権侵害にかかわる問題ということになりますと、運輸省の所管を越えるものだと考えております。
  75. 横山匡輝

    横山政府参考人 委員指摘の件に関しまして、被害を受けているとされる方が人権侵犯の申し立てを準備されているとの情報は、当局としても承知しております。  この種事案におきましては、被害を受けたとされる方からの具体的事実を踏まえた被害申告が人権侵犯事件として調査をする上で重要でありますので、委員指摘の件につきましても、そのような申し立てがなされれば、人権侵犯事件として調査をするなど、人権擁護機関として適切に対応してまいりたい、そのように考えております。
  76. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、ひとつ。
  77. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今お答えしたとおりでございまして、そうした申し立てがあればしっかりと対処したいと思います。
  78. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。
  79. 武部勤

  80. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  ことしの七月に司法制度改革審議会が設置、立ち上がりまして、今月、十二月八日には第八回の審議会が行われております。今月末までには論議すべき論点が整理されるという大変重大な段階に差しかかっております。きょう、先ほど当法務委員会でも小委員会を開きましたので、引き続き私は、この問題についてお尋ねしたいと思います。  最高裁当局を呼んでおりますので、まず、最高裁からお聞きをいたします。  本年十二月八日の審議会に、最高裁は、「二十一世紀の司法制度を考える 司法制度改革に関する裁判所の基本的な考え方」、こういう文書を提出しております。  最初にお聞きしますが、この文書は、最高裁事務総局が作成して提出した文書なんでしょうか。そしてこの文書は、最高裁の裁判官会議で諮られて、裁判官会議でこれでよしという形で、司法制度改革審議会に出された文書なんでしょうか。文書の基本的性格についてまず答弁願います。
  81. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 十二月八日に司法制度改革審議会に提出いたしました「二十一世紀の司法制度を考える」という文書は、事務総局が案をつくりまして、それを裁判官会議に付議いたしまして、提出することにつき御了承を得た文書でございます。
  82. 木島日出夫

    ○木島委員 内容について入りたいと思うのです。  私は、率直に言ってたくさんのことを指摘したいのですが、法曹一元の問題について集中的に、この文書に盛られている最高裁の認識についてお尋ねしたいと思うのです。  最初に、この文書は、戦後の司法制度改革はどのように行われてきたかという論述をしております。第一期は新制度の草創期、そして第二期は理念的対立による停滞期という位置づけであります。その中に、こういう文章があるのですね。  昭和三十七年、裁判官の確保の方策等について検討するため臨時司法制度調査会(臨司)が設置され、法曹一元問題、裁判官及び検察官の任用・給与に関する制度等を中心として検討された。昭和三十九年に出された意見書は、法曹一元問題のみならず、当時の司法制度全般にわたって検討を加えた総合的な改革の指針ともいうべきものであった。 これはいいのです。しかしその次に、   しかし、日弁連は、臨司意見書につき「法曹一元に対し消極的姿勢を示し、民主的司法の理念と相容れない官僚制的側面の除去に熱意を欠き、訴訟促進や裁判手続の合理化を追求した能率主義にとらわれている」などとして、これを厳しく批判し、この意見書に沿った改革に協力できないとの姿勢をとった。そのため、その後は、基本的に臨司意見書に従って制度改革を進めようとする裁判所法務省と弁護士会との間の対立が顕著となり、法曹三者の合意を要する改革は著しく困難となった。 こういう指摘をしておるのですね。  私は、驚くべき最高裁の現状認識だと思うのです。臨司意見書は、もう最高裁も御存じのように、法曹一元制度については、我が国においても一つの望ましい制度だと指摘をしました。しかし同時に、あの当時、「現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。」こうして、基盤が残念ながらまだ未成熟だという立場に立って意見書がつくられて、事実上、日弁連等からの法曹一元を速やかに実施すべきだという要求に対して、これを先送りしてしまう、そういう意見書になった、そこを日弁連は批判しているのですね。先送りさせちゃいかぬぞということで批判をしていたわけであります。  ところが、ことしの十二月八日に最高裁から司法制度改革審議会に出されたこの歴史的な経過に関する文書を見ますと、そうじゃないのですね。裁判所と検察庁は制度改革を進めようとしたが、弁護士会がむしろ消極的であったかのごとき文書になっているわけであります。  そこで、私は裁判所にお聞きしたいのですが、では、この間、臨司意見書を受けて、最高裁は法曹一元の基盤整備のために一体どんな制度改革を一生懸命進めてきたというのか、まずこの点をお聞かせ願いたいと思うのです。
  83. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 臨時司法制度調査会の意見書の中には「現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。」とございまして、それを受けまして、法曹一元の観点では、弁護士会にお願いいたしまして、弁護士任官の推進を図ることをやってきたところでございます。
  84. 木島日出夫

    ○木島委員 それに対して、では日弁連はどんな消極的な姿勢をとったというのですか。最高裁は、弁護士任官の問題についてどういう基本的な認識をこの間しているのですか。
  85. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 弁護士任官につきましては、日本弁護士連合会にお願いして、任官の促進を図るべく、いろいろ協議し、お願いいたしましたが、結果的に見て、毎年数人程度の任官しかないという実情でありまして、これは私どもといたしましても残念なことであるというふうに考えているところでございます。
  86. 木島日出夫

    ○木島委員 現実はそうなんですね。弁護士任官が今日なかなか進まないという実態にあることはそのとおりです。  では、最高裁としては、今日なぜ弁護士から裁判官への任官が進まないのか、その根本的原因あるいは背景、それがどんなところにあるんだと認識しておられるのでしょうか。弁護士会側の責任であり、その原因は専ら弁護士会、弁護士の方にあるという認識なんでしょうか。その辺の弁護士任官が現実になかなか進まない理由、背景、どう認識しているのか、御答弁願いたいと思うのです。
  87. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 弁護士任官が促進しない理由としては、私どもは、必ずしもはっきり申し上げられませんが、大きく分けて二つあるのではないかと思います。  一つは、我が国の弁護士制度が個人の信頼関係で成り立っていて、そういう弁護士の業態からして、すべての顧問先、信頼関係を絶って裁判官になるというのは非常に難しいという我が国の特徴があることが第一点ではないかと思います。  それからもう一つは、裁判官の職務と弁護士の職務の違いでありまして、弁護士の経験さえあればだれでも裁判官になって立派に裁判官の仕事をできるというわけでは必ずしもないのではないか、裁判官の仕事というのは、訴訟を指揮し、かなり精密な判決書を書くという職務の関係からいって、それになれるまで、あるいはそれに適するまでというのはかなり問題もある場合もあるのではないか、そういうようなことが弁護士任官を促進させない理由になっているようにも思われるところでございます。
  88. 木島日出夫

    ○木島委員 今、二つの理由をお述べになりました。いずれも、どちらかというと弁護士あるいは弁護士会の方に問題があるという御主張でありますが、ここについてはきょうは私は立ち入りません。  では、逆に受け入れる側の裁判所、最高裁を頂点とする裁判所の側に、今弁護士の方で任官してもよろしい、あるいは任官して裁判官としてきっちりやりたいという希望者の受け入れがなかなか進まない、そういう裁判所側の要因、それはないのかあるのか。これはみずからを省みて答弁していただきたいのですが、裁判所側の要因はあるのかないのか、どういう認識ですか、最高裁は。
  89. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、裁判官にふさわしい弁護士の方が任官してくれることがありがたいという基本的な方針をとっておりますが、裁判所の方として弁護士任官が困難になるような大きな理由というものはないのではないかというふうに考えているところでございます。
  90. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、率直に言って、そんな認識だから弁護士の裁判官への任官が進まないんじゃないかと思わざるを得ないのです。  具体的に言いますと、この臨司意見書が出された以降あたりから、いわゆる裁判官の官僚司法機構、ピラミッド型の、ヒエラルヒー的な強烈な裁判機構が形づくられてきたんじゃないかと指摘せざるを得ないからなんです。最高裁の事務総局を頂点にいたしまして、そして最高裁はすべての裁判官を支配する。人事で、配置転換で、そして給与関係で、そしてまた一九六〇年代後半から七〇年代前半にかけて大問題になりました青年法律家協会に加盟する裁判官への思想差別として、今日も寺西裁判官に対する問題もありますが、そういう人事政策、そしてまた裁判内容に対する干渉もあります。そういう強烈な最高裁事務総局の裁判官全体に対する統制、これをつくり上げてきたんじゃないか。  私はここで裁判官の報酬問題についても質問したことがあるんですが、本来、判事になったら給料はそんなに違っちゃいかぬのですが、給与体系が非常に細かく刻まれているというようなことも、裁判官に対する人事支配の手段として使われてきたんじゃないか。特に配置転換ですね、三年ぐらいで転勤させられる。そういう体制がつくり上げられてくる中で、この委員会でも再三論議されましたが、裁判官が裁判所の中で自由に物が言えない風潮が出てきている。だんだんそれが強化されてきた。  それで、日本の裁判所とドイツの裁判所を比較いたしました日独裁判官物語というのが今映画化されておりますが、ドイツの裁判官は非常に自由です。しかし、日本の裁判官は全く自由がない、自由に物が言えない。こういう状況が日本の司法部の中に、裁判所の中に臨司意見書以来着々と形づくられてきた。あんな息苦しいところに自由な職業である弁護士がとても入り込めない、そういう状況がつくられてきたんじゃないかと私は率直に言って指摘せざるを得ないんですが、そういう自己反省、裁判所はみずからを省みてそう思いませんか。そういう状況を脱却しなければ、幾ら口先だけで、弁護士の任官を進めましょう、いい弁護士には裁判官になってもらいたいと言ったって現実には進まないと思うんですが、最高裁、どうですか、そういう認識はございませんか。
  91. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 裁判所の雰囲気につきまして、弁護士任官した方が公刊物に書かれている感想を見ますと、裁判所は外で見ていたよりも非常に自由濶達で、自由に物が言えるところであるというふうに言われておりますし、私どもも、司法権の行使というのは憲法と良心に従って行うべきものである、そういう配慮をすべきであるというふうに考えているところでございます。
  92. 木島日出夫

    ○木島委員 先日、司法制度改革審議会設置法の審議をめぐって私質問をしたら、同じ答弁が裁判所出身の方からここでありました。私も読んだことがありますよ。たまたまそういう一つや二つの意見があるのを金科玉条にして、日本の裁判所の中は非常に自由な雰囲気があるんだなんて言ったら、私は大間違いだと思うんです。  最高裁が司法制度改革審議会に十二月八日に提出した文書を読みますと、十八ページのところに、今言ったように、「弁護士任官者の数は、現実には年間わずか数人にすぎない状況にあり、地域的にも一部の庁に限られている。これには種々の要因があると思われるが、帰するところは、臨司意見書で指摘された法曹一元のための基盤整備が進んでいないためであろう。」こういう文書なんですよ。要するに、あたかも評論家的に、まだ今日なお日本においてはそういう状況だから、臨司意見書で言う法曹一元のための基盤整備が進んでいない、こういう主張なんですね。要するに、今、日本の最高裁は、司法制度改革審議会に対して、法曹一元はまだやるべきでない、そういう認識にあるということをこの文書で突きつけたということですか、これは。
  93. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 法曹一元の問題につきましては、司法制度改革審議会の中で検討していただく事項であるというふうに私どもは考えております。  ただ、その中で、臨時司法制度調査会の意見書に書かれているような前提条件につきましても十分御審議願いたいというのが私どもの基本的な立場でございます。
  94. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、臨司意見書から今日まで数十年、最高裁が、臨司意見書で指摘されたように、法曹一元の制度が円滑に実施されるような基盤整備をつくろうという立場に本当に立ってこの間努力してきたのなら、もっと圧倒的多数の弁護士が裁判官になっていたという状況をつくり出せたと思うんですよ。しかし、さっき私が言ったように、逆の方向へ一生懸命走っていったから、裁判官になんかなろうとする弁護士がなかなか現実には生まれないという状況を最高裁がみずからつくり出してきたんだと私は思うんですよ。そういうことを棚に上げてしまって、評論家的に、まだ基盤整備が進んでいませんよ、その証明として弁護士任官の数は年間わずか数人にすぎないじゃないかという言い方をするのは余りにも私は不公正だと思わざるを得ないんですよ。どうですか。
  95. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 私どもは、十二月八日の司法制度改革審議会で述べましたとおりの認識に立っているということでございます。木島委員の御理解が得られないのは残念だというふうに考えております。
  96. 木島日出夫

    ○木島委員 なかなか裁判所は頑迷固陋だなと思わざるを得ないんです。  時間も迫っておりますから、では、私、もう一つ、この文書の、陪審制、参審制の検討のあり方という最高裁の認識についてお伺いします。  ここで陪審裁判についてこう言っているんですよ。「陪審裁判では、真実の発見という要請は後退せざるを得ないことになろう。」というんですね。私は、これは驚くべき認識、国民べっ視、独断と偏見、最高裁の思い上がりではないかと言わざるを得ないんです。何でキャリア裁判官なら真実が発見できて、陪審制度になると真実の発見は後退せざるを得ないということになるんでしょうか。その論拠を説明してください。
  97. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 陪審制度につきましては、諸外国の運用、実情等を広く研究いたしまして、外国で行われている陪審制度によりますと、実体的真実に向かっての精密司法よりも陪審員にわかりやすい、結論だけの裁判という方向に行きがちであるという報告、研究を受けまして、私どもはこういう認識に立っているということを表明したものでございます。
  98. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、何か実証的研究というのはあるんですか。日本はほぼ完璧なキャリア裁判官制度です。日本の刑事司法の方が例えば実体的真実の発見に非常に数字の上でもよくて、陪審をほぼ完璧にやっているアメリカの司法の方が実体的真実が非常におくれている、数の上でもそういう数字が出てきている、そんな実証的研究というのはあるんでしょうか。そういうものを持って最高裁はこういう文書をつくり、司法制度改革審議会に出したんでしょうか。あったら教えてください。
  99. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 陪審の裁判につきましては、その過程でどの程度の誤判があるかということにつきましては、現在ここに資料はありませんが、外国の学者の調査したものなどがあるようでありまして、その研究の結果を踏まえての意見でございます。
  100. 木島日出夫

    ○木島委員 基本的に、日本とアメリカなんて比較できっこないんですよ。日本は検察官が起訴をするかしないかをふるい分ける権限があります。ちょっと事実関係が難しいなと思えば、それは起訴しないのですね。起訴するものは、証拠的にもほぼ一〇〇%完璧なものにえりすぐって起訴している、そういう起訴便宜主義というのが日本は基本にあるわけです。それでも、なおかつ死刑で再審が四件も出ている、そういう状況は日本にもあるんでしょう。そういう日本の国の刑事司法基本原則と、そうじゃない国との、数字の上で、今数字も言っておりませんけれども、私はそう簡単に比較できるものじゃないと思うんですね。  では、もう一点言います。  この文書によりますと、どうも最高裁は陪審制度導入には反対だという趣旨で読み取れるんですが、その理由をいろいろ書いてあるんですよ。陪審の評決には理由が付されないから、詳細な事実認定を明示する現在の我が国の裁判とは全く異なる。そういう裁判となって、これはよくないという意味でしょう。それから、陪審裁判になると上訴も許されないことになるとか、陪審員となる国民負担の問題、陪審員に事件の予断を抱かせないための報道の規制の問題、連日開廷に対応する弁護人の態勢の問題、陪審員が直接的に証拠を吟味できるようにするための刑事訴訟手続の抜本的な見直し等についての検討、いろいろ細かいこともあげつらって、これはもう日本では陪審はだめなのだということを印象づけるための文書なんですね。  最高裁は、もう絶対に陪審はだめだ、そういう立場でこの文書をつくったのですか。
  101. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 この文書の目的は、陪審を我が国に導入する場合には、いろいろな問題点があります、その問題点の主要なものをここに指摘いたしまして、そういう問題点を十分検討した上で、最終的に国民司法参加がなおかつ必要かどうかという判断は国民がすべきである、そういう前提で司法制度改革審議会でも御審議願いたいというものでございます。
  102. 武部勤

    武部委員長 持ち時間が来ております。
  103. 木島日出夫

    ○木島委員 持ち時間を切ったから、終わります。  私は、今の短い時間の論議を聞いても、今の日本の裁判所、最高裁の体質に、国民意見をもっと取り入れよう、国民司法参加という点で非常に消極的だということを感じざるを得ません。こういう立場が、今現に行われている司法制度改革審議会に大きな影響を与えたら、大変なことになるという警告を発しておきたいと思います。  実はきょうは、法務省から同じ日付で司法制度改革審議会に出された「司法制度の現状と改革の課題」についても幾つか質問しようと思ったのですが、時間がなくなりましたので、やめます。  以上で終わります。
  104. 武部勤

  105. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、この委員会で足かけ何年かにわたって何度となく共産党緒方事件の反省と総括を警察当局にもあるいは検察にも法務省にも求めてきたところを踏まえまして、お聞きをしたいと思います。  あの神奈川県警の事件のときに、実行犯までをも特捜部の捜査が特定しながら、警察組織の深い部分にメスを入れることをためらって政治決着を図った、これが今日の神奈川県警の、いわば警察であれば何をやっても大丈夫だ、大目に見てもらえるし、守られる、こういう態度をつくったのじゃないでしょうか。  松尾刑事局長に伺いますが、神奈川県警の事態の責任の大きな根底に検察の責任があるのではないか、こう思いますが、いかがですか。
  106. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 今委員は二つの事件に触れられたと思います。  緒方宅の盗聴事件というのがございました。これにつきましても、検察は徹底した捜査を遂げまして、現職警官二名について、先生御指摘のように、盗聴行為というものの事実を認めた上で起訴猶予にしたということでございます。起訴猶予にした理由についてはこれまでも何度も申し上げておりますが、そうした徹底した捜査を通じての事案の内容にかんがみまして、検察として厳正公平、不偏不党という立場を堅持しながら、事案の処理として起訴猶予という選択をしたものと理解しております。  今回の神奈川県警の元本部長を初めとする事件につきましても、相応の捜査態勢を組みまして、相当長期間、徹底した捜査を遂げた上で、先日、事件の処理をしたということは既に先生御案内のとおりでございます。  この二つの事件が、それぞれ、前者の事件が不徹底であったために後者も発生したという一つの要因ではないのかという御指摘でございますが、二つの事件は全く別のことでございまして、また不徹底という御指摘については、今申し上げましたように、検察としては徹底した捜査を遂げて、事案の内容につきまして、厳正公平な判断の上で、そのような処理をしたものと承知しているところでございます。
  107. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、時間も限られていますし、松尾局長とのこういうやりとりもこれが最後になるというと、ちょっと寂しいわけでございますが、緒方事件以後、神奈川県警全体に違法行為に対する反省が組織として定着していったかどうかという局長の認識はいかがですか。
  108. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 先生の御指摘のような、神奈川県警自体を組織的に見た場合にこういう違法行為に対する一つの緩みがあったのではないかという御指摘がマスコミ報道を初め各般になされているということについては承知しております。  ただ、これが緒方事件以降ということでございますと、先ほど申し上げましたように、緒方事件につきましては、先ほど申し上げました理由で捜査を遂げ、徹底した処分を行ったということでございますので、それが一つの要因であるかどうかということにつきましては、必ずしも先生の御指摘のような事実はないのではないかなと私自身としては考えております。
  109. 保坂展人

    ○保坂委員 先般委員会で、私ども野党共同で提出を求めました、いわゆる神奈川県警の対応マニュアルと新聞で紹介されているものがございます。これを松尾局長はごらんになって、緒方事件の反省など、どこかうかがえるでしょうか。九一年にこれは出ていますからね、事件後ということで。
  110. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 御指摘の文書につきましては、この委員会等でもその内容について個別にお尋ねがあったりいたしまして、その限りで承知をしております。しかし、その全体的なものは私個人としましては読んでおりませんので、その内容についてコメントするのは控えたいと思っています。
  111. 保坂展人

    ○保坂委員 では、臼井法務大臣に伺いますが、私は十一月二十四日の法務委員会で、やはり大臣としてもこのマニュアルを入手して、じっくり見ていただきたい、こういうことで果たしていいのかどうか、きちっと目を通していただきたいとお願いをいたしましたが、ごらんになっていらっしゃいますでしょうか。また、どのような印象を持たれたか、お願いします。
  112. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今委員指摘をいただきましたように、先般私はその文書の入手に努力をするということを申し上げたわけでございますが、私ども法務省といたしましては、御指摘の文書が法務省の所管行政の遂行のために必要なものであればその入手に努める旨答弁をいたしたわけでございまして、御指摘の文書というものは専ら警察内部の組織管理にかかわるものでございまして、法務大臣または法務省が直接所管する事柄にかかわるものではないということでございますので、結果的に入手する必要はないと考えまして、現在その文書については私は見ておりません。
  113. 保坂展人

    ○保坂委員 法務大臣、何回かのやりとりの中で、これは警察の問題だ、しかし警察の問題であると同時に、法と秩序を預かる法務大臣自身の問題でもある。ですから、入手するように努力をします旨の答弁をされているんですよ。これは撤回されますか。
  114. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今私がお答えをいたしたとおりでございまして、委員指摘の趣旨に沿いまして検討いたしました結果、今冒頭に私がお答えをいたしましたような判断に至った次第でございます。
  115. 保坂展人

    ○保坂委員 ですから、法務委員会において、入手するように努力いたしますと。我々は、入手して見たいんですが見ることができないので、まずは大臣が見て、どういうものかと判断していただいて、きょう答弁していただこうと思ったんですよ。ですから、入手をするように努力をしますという答弁は、この際なしになさるんですか。撤回するんですか。これをはっきり御答弁ください。
  116. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 今御指摘をいただきましたけれども、私が冒頭お答えをいたしましたとおり、御指摘の文書自体は専ら警察内部のものである、こういうことでございまして、私ども法務大臣または法務省が直接所管する事柄には係るものではない。したがいまして、これらのものを国会に提出するか否か、そういった問題につきましては、最終的には所管の省庁において判断すべきものだと考えております。
  117. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、もう簡単に答えてください。それはもうわかったんです、三回おっしゃいましたから。要は、前回の答弁を撤回するんですかと聞いているんです。
  118. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 特に撤回をいたすものではありません。
  119. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、これからも努力するんですか。入手をするように努力するんですか。
  120. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 したがいまして、判断をした結果、入手をする必要はないと判断をいたしたのでございます。
  121. 保坂展人

    ○保坂委員 委員長、お願いしますけれども、大臣の答弁を今変えられるんだったら変えていただきたいんですね。入手をするように努力しますと前回答えられている。もうこれは入手できないと今おっしゃっているわけです。それなら、それはもう違っているというふうにはっきり言っていただければ次に進めるんですが。
  122. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 先ほど来もお答えをいたしておりますが、その文書が、私どもの法務省としての行政の遂行に必要なものであるとするならば、これは入手をする必要がある、こういうことで検討いたしたのでございます。したがいまして、行政的には必要なしと。したがって、もしそのお尋ねが、捜査の過程で収集された証拠に関するものであるというふうな観点でのお答えであるとするならば、それは私どものお答えをすべきものではない、このように思います。
  123. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと法務大臣、政治家同士の討論ということは今国会の目玉だったんですよ。ですから、確かに答えているんですよ、入手するように努力しますと。大臣として読んでくださいと言っているわけですよ。それに対して、検討したけれども入手しないと決められたんでしょう。そこはわかったんですよ。だから、前回の答弁はこう答えたけれども、やはり今は違う、つまり前回の答弁をここで撤回すると言ってくださいよ。
  124. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 御指摘で強いて言うならば、言葉足らずであったということは反省をいたしております。
  125. 保坂展人

    ○保坂委員 松尾刑事局長最後に、本当に最後の質問になるかと思いますが、私は、今回の神奈川県警に対する検察首脳の判断というのは大変及び腰だったんじゃないか、こう思っています。  警察本部長以下五人起訴、こういう事態に立ち至る以前に、その逮捕、身柄の勾留もしない。証拠隠滅の容疑者が互いに連絡をとり得る、これはまだ通信傍受はしていないと思うんですけれども、つまり、お互いの連絡がとり得る状況でこういうふうに推移をしていくということだと、神奈川県警の中で緒方事件があり、今回のとてつもない不祥事があった。けれども、これは神奈川県警に限らず、警察組織の自己改革というのはまた大きな機会を失ったんじゃないか。そこにやはり検察としても重大な責任を感じてほしい、こういうふうに思うんですが、いかがですか。
  126. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 委員からも何度かにわたりまして、なぜ強制をしないのかという御指摘がございました。  神奈川県警のこの元本部長の関与した犯人隠避事件でございますが、検察といたしましても、この事案が非常に重大なものであるということについては重く受けとめて、通常事件に比してかなり大がかりな捜査態勢を組んでおります。ただ、強制をするかしないかというのは個々の事案ごとに判断すべきものでございまして、例えば、罪種が証拠隠滅だから直ちに強制、あるいはそれが原則と、にわかにはそういうことではないように思います。現実に、統計を持ち出して恐縮でございますが、犯人隠避事件でも強制するのは約五割ぐらいというふうに承知しております。  そんなこともございまして、検察としては、この事件の置かれた状況、全体的なものも含めまして強制をするかしないか慎重に判断した上で、現在の状況の捜査を遂げたものと承知しております。  また、内容につきましても、送致を受けた九人の被疑者の中から五人を公判請求しているということでございますので、検察として、やはり証拠に照らし、またそれぞれの分担した責任に照らし厳正に処理したもの、このように理解しております。
  127. 保坂展人

    ○保坂委員 残り時間を使ってもう一問。  私も松尾局長も、いわゆる被害者という共通点があるんですね。自宅前への嫌がらせを受けられた、そういう意味では松尾局長被害者。私は、携帯電話で交わした会話が何者かによって傍受をされて、送付をされている、そういう被害に遭っているわけですね。  双方のケース、十分な捜査態勢、この真実、一体これは何だったのかという究明の態勢は十分かどうか、これだけお聞きします。
  128. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 先生が告訴されました電気通信法違反事件につきましては、直ちに東京地検特捜部で捜査をしております。現に捜査を継続中というふうに承知しているわけでございます。  捜査の内容、手法につきましては、東京地検といたしましても先生の告訴を重く受けとめまして、十分な力を投入しているというふうに我々は承知しているところでございます。  私の、個人が被害に遭った問題につきましては、私からいろいろコメントするのは適当でないかなと思いますので、控えたいと思っております。
  129. 保坂展人

    ○保坂委員 松尾局長とのやりとりがこれで最後というのは大変残念なんですね。立場がお変わりになっても、前例を変えて法務委員会に来ていただいて、また答弁をしていただきたいとも思うんですが。  さらに、もう質問時間が終わりましたので、法務大臣に対しては、死刑問題で、再三指摘しているように毎回閉会中なんで、閉会中の執行ということについて、なさらないようにという要望を、やはりきちっと国会の議論を避けるべきじゃないということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  130. 武部勤

    武部委員長 請願の審査に入ります。  本会期中、当委員会に付託になりました請願は八件であります。その取り扱いにつきましては、先ほどの理事会において慎重に協議いたしましたが、委員会の採否の決定はいずれも保留することになりましたので、御了承願います。  なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり十三件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  131. 武部勤

    武部委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  まず  第百四十二回国会内閣提出民事訴訟法の一部を改正する法律案 及び  第百四十五回国会内閣提出少年法等の一部を改正する法律案 の両法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  132. 武部勤

    武部委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次に  裁判所司法行政に関する件  法務行政及び検察行政に関する件  国内治安に関する件  人権擁護に関する件 以上の各件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中審査案件が付託となりました場合の諸件についてお諮りいたします。  まず、今会期中設置いたしました司法制度改革審議会に関する小委員会は、閉会中もなお引き続き存置することとし、小委員及び小委員長辞任の許可、補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中、委員会において、参考人出席を求める必要が生じました場合、また、小委員会において、参考人及び政府参考人出席を求める必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中、委員派遣を行う場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、派遣の目的、派遣委員、派遣期間、派遣地その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明十五日水曜日午前十一時四十分理事会、午前十一時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十一分散会