運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-12-07 第146回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月七日(火曜日)     午前九時三十三分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 笹川  堯君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       大野 松茂君    太田 誠一君       奥野 誠亮君    加藤 紘一君       鯨岡 兵輔君    熊谷 市雄君       左藤  恵君    菅  義偉君       園田 修光君    高市 早苗君       藤井 孝男君    保岡 興治君       山本 有二君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    玄葉光一郎君       坂上 富男君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    若松 謙維君       安倍 基雄君    三沢  淳君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君     …………………………………    議員           亀井 久興君    議員           山本 幸三君    議員           上田  勇君    議員           漆原 良夫君    議員           西村 眞悟君    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局民事局    長    兼最高裁判所事務総局行政    局長           千葉 勝美君    政府参考人    (金融監督庁監督部長)  乾  文男君    政府参考人    (法務省民事局長)    細川  清君    政府参考人    (大蔵大臣官房参事官)  高木 祥吉君    政府参考人    (国税庁次長)      大武健一郎君    政府参考人    (国税庁課税部長)    河上 信彦君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     大野 松茂君   枝野 幸男君     玄葉光一郎君   漆原 良夫君     若松 謙維君   権藤 恒夫君     三沢  淳君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     園田 修光君   玄葉光一郎君     枝野 幸男君   若松 謙維君     漆原 良夫君   三沢  淳君     権藤 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     熊谷 市雄君     ————————————— 十二月七日  子供の視点からの少年法論議に関する請願(辻第一君紹介)(第六六八号)  法制審議会の公開に関する請願枝野幸男紹介)(第七一六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案亀井久興君外六名提出衆法第五号)  電気通信回線による登記情報の提供に関する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第五九号)     午前九時三十三分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  亀井久興君外六名提出特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案を議題といたします。  まず、提出者より趣旨説明を聴取いたします。亀井久興君。     —————————————  特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 亀井久興

    亀井(久)議員 特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案につきまして、提案者を代表して、その提案理由を御説明いたします。  現下の厳しい経済情勢のもとで、個人破産者が十万人を超えるなど、経済的に破綻し、またはそのおそれのある個人及び法人債務者の数が、今、急激に増加しております。このため、このような債務者債務を迅速かつ円滑に調整するための方策を講じることによって、債務者経済的再生に資するとともに、国民経済の健全な発展を図る必要があります。  この法律案は、支払い不能に陥るおそれのある債務者等経済的再生に資するため、民事調停法特例として特定調停手続を定めることにより、裁判所における民事調停手続を利用して、そのような債務者等が負っている金銭債務に係る利害関係調整促進しようとするものであります。  この法律案の要点は、次のとおりであります。  第一に、支払い不能に陥るおそれのある者、事業の継続に支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することが困難である者等特定債務者とした上で、特定債務者は、金銭債務に関する利害関係調整であって、その経済的再生に資するためのものについて、特定調停申し立てを行うことができることとし、あわせてその申し立て手続等規定することといたしております。  第二に、同一特定債務者についての複数事件一括処理を容易にする観点から、異なる裁判所間の事件の移送や、関係権利者参加の要件の緩和を図り、また、同一裁判所に係属する複数事件の併合に関する規定等を整備することとしております。  第三に、特定調停内容については、特定債務者経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければならないこととし、調停委員会は、そのような内容合意成立する見込みがない等の場合には、調停を不成立として事件を終了することといたしております。  第四に、成立すべき特定調停内容の適正を担保する観点から、特定調停を行う調停委員会民事調停委員の指定に関する規定を整備するとともに、当事者債権債務発生原因内容等に関する事実を明らかにすべき義務を負うことを明らかにし、また、必要な資料の収集に関する調停委員会の権限を拡充するため、当事者または参加人に対する文書等提出命令官庁等からの意見聴取等規定を整備することとしております。  第五に、特定調停成立促進を図る観点から、民事執行手続の停止の制度を拡充するほか、書面による調停条項案の受諾の制度及び調停委員会調停条項を定める制度を設けることとしております。  最後に、第六として、その施行については、公布の日から起算して二カ月を経過した日から施行することといたしております。  以上をもちまして、特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案提案理由とさせていただき、今後の審議における議員各位の御理解と御協力をお願い申し上げまして、説明を終わります。
  4. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 武部勤

    武部委員長 この際、お諮りいたします。  本案審査のため、本日、政府参考人として金融監督庁監督部長乾文男君、法務省民事局長細川清君、大蔵大臣官房参事官高木祥吉君、国税庁次長大武健一郎君、国税庁課税部長河上信彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所千葉民事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  9. 武部勤

    武部委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若松謙維君
  10. 若松謙維

    若松委員 公明党改革クラブを代表して、提案者に幾つか質問をさせていただきたいと思います。  まず、この法案ですけれども、平成十年六月、七月、政府・自民党の金融再生トータルプラン、そういったところで協議が始められて、またことしの年初の自由党の与党入り、また十月の公明党改革クラブ与党ということで、最終的に本年十一月十九日、自民、自由そして公明、この与党三党の提案という形になったわけで、その関係者に対しまして、御努力に対して心より敬意を表する次第でございます。  それで、質問をさせていただきたいと思います。  昨日も経企庁の、景気、第三・四半期のマイナス一パーという形が出て、まさに現下経済情勢はいまだに厳しい。こういう状況のために、個人破産者倒産する中小企業は大変急増している。こういうことで、これについて適切な対策を講ずることは喫緊課題であると考えるわけです。このような事態に対して、本法案による特定調停制度はどういった意義を持つのか、お答えいただきたいと思います。
  11. 漆原良夫

    漆原議員 本法案による特定調停制度は、現行民事調停法特例を設けて、個人法人を問わず、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するという観点から、公平かつ妥当で経済的合理性を有する内容調停成立を図ろうとするものでございます。このような調停成立し、これを履行することによって、個人事業者倒産破産に至る事態を回避するということができます。  委員指摘のとおり、個人債務者については、いわゆるサラ金等による多重債務者申し立て民事調停事件、また破産事件が急増しているところでありまして、また今後住宅ローン債務者経済的破綻がふえることも懸念される状況でございます。また、法人についても、現下経済情勢を反映して企業倒産が増加しているほか、我が国経済再生のために不良債権実質的処理促進する必要性も強いと言えると思います。さらに、いわゆる商工ローン債務者となっている中小事業者についても、円滑な債務調整手続手段を提供することはまさに喫緊課題であろうかと思っております。  特定調停制度が設けられることによりまして、裁判所調停手続を利用して、債務者破綻に至る前に、債権者との話し合いにより迅速、円満に合理的な再建計画を立てることが促進されるならば、その意義は極めて大きいというふうに考えております。
  12. 若松謙維

    若松委員 それでは、この特定調停制度ですけれども、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するための制度ということでありますけれども、具体的にどのような者がこの制度を利用することが想定されますか。
  13. 漆原良夫

    漆原議員 特定調停は、倒産に至る前の段階で、話し合いにより債務調整を図ろうとする制度でございまして、この制度を利用して、倒産という社会的な評価を受けるわけではございません。したがって、経済的に破綻するおそれのある債務者であれば、法人個人か、あるいは事業者であるか否かを問わず広く利用することができまして、債務者側にこれを利用するについての抵抗感も少ないだろうというふうに考えております。  特に個人の場合には、サラ金クレジット等による多重債務者や、今後ふえると思われる住宅ローン債務者破産を回避して経済生活再建を図ろうとする場合や、あるいは、法人であっても、商工ローン債務者の場合や、債権者数が少なく、または債権者債務者間の意見の対立が少ないような場合、特に、既に大方の債権者協力が得られて一部の債権者との間での調整を残すのみになっているような場合、こういうふうな場合には特定調停は有効な手段として機能することが期待されておるところでございます。
  14. 若松謙維

    若松委員 それでは、特定債務者特定調停申し立てをした場合に、債権者にとって特定調停に応ずることはどのようなメリットがあるか、お答えいただきたいと思います。
  15. 漆原良夫

    漆原議員 今回の特定調停によって成立した調停条項は、確定判決同一効力を持ちます。したがって、これに基づいて、債務名義として強制執行することができるわけでございます。  さらに、特定調停は、常に、特定債務者経済的再生に資するという観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければなりません。したがって、調停内容は、個々の債権者にとって経済的合理性を有するというものであるとともに、債権者同士の間でも、担保権の有無とか順位とか、こういうものを考慮した公平なものでなければなりません。  債務者との個別の話し合い一般調停手続ではこのような条件が求められるわけではないので、専門的知識経験を有するような調停委員から成る調停委員会のもとで、このような条件のもとで調停が進められること自体も債権者にとって大きなメリットになるだろうというふうに考えております。
  16. 若松謙維

    若松委員 この法案によりまして、現行債務弁済協定調停機能が拡充されるわけです。そうしますと、サラ金クレジット債務を抱える給与所得者経済的再生のための有効な手段と考えられている、こういうことですけれども、一方、倒産するおそれのある企業特定調停申し立てを行った場合、それによって労働者権利が害されるおそれがあると思うんですけれども、それについてはいかがですか。
  17. 漆原良夫

    漆原議員 雇用者たる企業特定調停申し立てをした場合に労働者がその当事者となることは、理論的にはあり得ないことではないと思います。  しかし、この調停手続においても、両当事者間の合意成立することが前提でありまして、労働者の意に反して権利を制限されたり、あるいは意に反する合意を強制されるということは一切ございません。しかも、特定調停手続における調停条項は、先ほど申しましたように、特定債務者経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものというものでなければなりませんから、賃金債権に関しては、一般債権に対して優先的な地位があるわけでございますから、そういうことを反映した合意内容になっていなければならないと思います。また、企業経済的再生に資するというためには、当該企業労働者理解合意が得られる内容のものでなければならないことも当然でございます。  したがって、労働者特定調停当事者となった場合であっても、その地位は、通常の民事調停や任意の話し合いによる場合よりも、私は、制度上はむしろ保護されているものであり、特定調停によって労働者権利が害されるのではないかという委員の御懸念は不要なのではないかというふうに考えております。
  18. 若松謙維

    若松委員 労働者に関しては、労働組合観点から後ほど質問させていただきます。  経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するための制度ということでこの特定調停制度が設けられていますけれども、その場合に、債務者が安易にこの特定調停制度を使って、いわゆる債務者モラルハザードを招くのではないか、こういうおそれがあるわけですけれども、それについてはいかがですか。
  19. 漆原良夫

    漆原議員 特定調停の結果、特定債務者について、その支払い能力等に照らして、債権者が有する債権の一部放棄だとか、あるいは金利の減免が行われることは事実でございますが、特定調停手続は、倒産に至ることなく特定債務者事業または経済生活再建を図ることを目的として、特定債務者債務等調整を行う手続でございます。その調整当事者間の合意によって行われるものでございまして、債権者の意に反して一方的に債務者債務を免除させるようなものではございません。したがって、これを利用して、債権者との間で、債権者にとっても経済的合理性のある内容合意成立させるためには、特定債務者において、倒産手続を選択した場合に比べて、再建に向けての相当な意欲と実際の自己努力が必要となってまいります。  したがって、債務者モラルハザードを招くものではないかという委員の御指摘、御批判は当たらないのではないかというふうに考えております。
  20. 若松謙維

    若松委員 先般、この委員会におきまして、政府提出民事再生法案審議がちょうど終わったところですけれども、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生を図る、こういう点におきましては、特定調停制度民事再生手続とはいろいろな面で共通する面が多いかと思います。それで、民事再生手続とは別に特定調停制度を設ける実益は何なのか、ちょっと両制度関係で御説明いただきたいと思います。
  21. 漆原良夫

    漆原議員 両制度とも、経済的に破綻するおそれのある債務者、これは個人並びに法人でございますが、この経済的再生を図るための制度でございますが、その手続の基本的な性格は大きく違っております。  すなわち、特定調停民事調停の一類型でございまして、専門的な知識経験を有する調停委員当事者間の合意の形成を図るという手続であって、その合意効力は、調停当事者となった者だけにしか及びません。  これに対して民事再生手続は、現行の和議にかわる再建型倒産法制一つでありまして、債務者事業再建再生等のため、再生計画の策定に向けて、裁判所監督下で、債権者権利行使を制限しながら、再生計画成立遂行を図る手続でありまして、再生計画反対債権者をも拘束します。  また、特定調停はあくまでも調停手続でありまして、迅速、柔軟な手続の進行が可能であり、費用も低廉であるというメリットがあります。特に、個人債務者関係者話し合いによって再建計画を立てられる状況にある事業者等にとっては有効な手段となります。  これに対して民事再生手続は、会社更生に比べれば簡単な手続ではありますが、債権者権利行使が制約され、各種保全処分否認権制度等債務者事業等再生のための強力な手段が提供され、一部の債権者反対があっても再建計画成立遂行が可能となる強制的な要素を有しております。  このように両制度はそれぞれ特徴がありまして、経済的に破綻するおそれのある債務者に対して経済的再生を図るための多様な手段を提供するという意味においては、民事再生手続のほかに特定調停制度を設けることも十分な意義のあることと考えるところでございます。
  22. 若松謙維

    若松委員 これは、御説明はどなたでも結構です、ちょっと時間がないので。  調停委員というのがあるわけですけれども、これはどういった人たちを含むのか。そして、これは裁判所監督下ということですから裁判所が任命するわけですけれども、そういう任命される調停委員というのをどういうふうに確保するのか。ちょっとそこら辺について、せっかくの機会ですから、御説明いただきたいと思います。
  23. 山本幸三

    山本(幸)議員 調停委員は、この法案で書いておりますけれども、今回の場合は、債務者経済的再生を図るという意味で全体像を見る必要がございますので、企業の経営、会計、税務あるいは資産の評価等についての専門的な知識を持った方々にお願いしたいと考えております。  今、民事調停委員は約一万二千人ぐらいいますけれども、弁護士の方あるいは税理士の方いらっしゃいます。ただ、全体としてはまだまだ数としては足りないと思いますので、これからは会計士さんとか税理士さんとかそういう方々の数をふやしていく必要があろうと思います。その意味で、今最高裁において公認会計士協会あるいは税理士会と内々の打ち合わせをやっておりまして、両協会とも、できるだけ協力したいというように返事をいただいていると聞いております。
  24. 若松謙維

    若松委員 あともう一つ、この特定調停ですけれども、手続費用が廉価であるということですが、どのくらい廉価なのか、ちょっとイメージ的に、もし金額等で示していただければと思います。
  25. 山本幸三

    山本(幸)議員 民事調停の場合は、免除される債務の額に応じて金額が決まってくるということがございます。ただ、債務金額がわからない場合には五千五十円の申し立て費用、それから文書等を出す場合の郵便費用が若干かかります。免除する額によりまして……(若松委員テーブルがあるわけですね」と呼ぶ)テーブルが出ます。例えば、百万円免除してもらうという場合には申し立て手数料は五千三百円、一千万円の場合には二万七千三百円というぐあいになっております。  これに比較いたしまして倒産手続等は、申し立て手数料が一万円かかりまして、そのほかに管財人とかを予定する場合の予納金がそれにかかります。あるいはまた、弁護士さんを雇う場合には弁護士費用というようなことがかかってくるということでございます。  個人破産をやる場合には二、三万円でできると思います。その意味ではこの特定調停とそれほどは変わらないかもしれませんけれども、ちょっと複雑な関係になると管財人費用とか弁護士費用とかを考えると数十万円以上かかるということになりますので、それはやはり特定調停の方が簡便でかつ安くなるのではないかと思います。     〔委員長退席杉浦委員長代理着席
  26. 若松謙維

    若松委員 では、済みません、もうちょっとそこの点について。  先ほど、一万二千人ぐらいが登録しているということですけれども、恐らく専門家の方は、私も会計士税理士なわけですけれども、登録して調停参加しても、恐らく一万七、八千円じゃないかなと思うんですね、弁護士とずっと横並びだと思いますので。大体そんな基準ですかね。そうしますと、やはりサービスを提供する側からすればメリットがないので、本当に調停委員の人がふえるのかなという危惧があるわけですけれども、そういった危惧に対しては、どうお考えになりますか。
  27. 山本幸三

    山本(幸)議員 御指摘のように、現在は調停委員が午前、午後勤めて一万七千五百円ぐらいをいただけるということでございますけれども、それは不十分だという意見もございますので、これは今後考えなければなりません。  ただ、私どもは、税理士会方々とも話しておりまして、例えば今回のものは税務処理の問題とかが重要になる、そういう形で税理士会として協力することは、税理士会機能を発揮しているということを社会的に示すことができるという意味で、むしろ税理士会としては大いに協力すべきではないか、これは金額の多寡ということよりもそういう社会的使命を果たすということでやるべきではないかという意見も聞いております。  その辺は、最高裁としてもできるだけそういう社会的意義を訴えて協力を求めていくものだと思いますし、待遇等についてはまた別途今後考えていかなければいけない問題だと思います。
  28. 若松謙維

    若松委員 恐らく、例えば税理士連合会責任者の方とかは格好をつけてそういうことを言うわけですけれども、弁護士の方もそうだと思うんですけれども、やはり私もこれはノルマですから税理士納税相談に行くわけですが、あれだけ時間を拘束されて、本当に気持ちよく行っているかというと、実際に人を配置するのは大変なんですね。ですから、お上の仕事を手伝うのが何かステータスみたいな時代は実はもう終わったので、もっと現場の声というか、やはり経済の実態に応じた配慮というのもぜひお願いしたいなということをお伝えしまして、ちょっと次の質問に行きたいわけです。  ちょっと具体的になりますけれども、本法の第十四条第二項、ここでは特に労働組合等からの意見聴取規定が設けられているわけですけれども、その趣旨についてお伺いします。
  29. 漆原良夫

    漆原議員 本件の特定調停申立人法人である場合においては、その事業再生の進め方については当該法人とその従業者との間の雇用契約関係に大きな影響を及ぼすことになりますし、また当該法人事業再生には従業者協力が必要不可欠な問題でございます。そこで、調停委員会特定調停を行うに当たりましては、当該法人従業者意見を集団的に聞くということにするために本項の規定が設けられたものでございます。  意見聴取対象者は、第一義的には当該申立人使用人その他の従業者過半数で組織する労働組合であって、そのような労働組合がないときは当該申立人使用人その他の従業者過半数を代表する者、こうなっております。  調停委員会は、労働組合等に対しても意見を求めれば足り、現実に意見が述べられなくても特定調停を行うことは妨げられませんし、また意見が述べられた場合でもその意見に拘束されるものではありません。しかしながら、当該従業者の集団的な意見がある労働組合等意見に反する内容事業再建案というのは遂行の見込みが乏しいこととなりますので、その意見は、通常、特定調停事件における当事者間の合意が、特定債務者経済的再生に資するとの観点から公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものであるかどうかを判断する上で重要な要素になろうというふうに考えております。
  30. 若松謙維

    若松委員 時間が若干残っておりますので、税法について質問させていただきたいと思いますけれども、本法案に基づく特定調停について、税務上はどういう取り扱いになるのか、それについてお伺いします。
  31. 河上信彦

    河上政府参考人 お答えいたします。  本法案の目的の達成のためには、税務上の処理が迅速かつ円滑に行われることが重要であるというふうに理解しております。  本法案におきまして、特定債務者方々につきまして、経済的再生を図ることを目的として、公正かつ妥当で経済的合理性を確保しながら、裁判所におきまして慎重に調停が実施されることとなっておると承知しております。  国税庁といたしましては、個々の事案の処理に当たりまして、税法等に照らしまして適正に処理するということとなりますが、本法案に基づく特定調停一般民事調停と異なる特質を有していること、さらに、多数発生することも見込まれることを十分に念頭に置きまして、その迅速かつ円滑な対応ができるよう最大限の努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  32. 若松謙維

    若松委員 最後の質問にいたしますけれども、この迅速かつ円滑な対応なんですけれども、これではちょっと現場の、特に税理士さんとかお困りになるので、具体的に、この法案の「公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容」という、基本通達の九—四—二、ここでの経済的合理性、これと同じと理解していいのか、これについていかがですか。
  33. 河上信彦

    河上政府参考人 基本的には御指摘のとおりと考えております。
  34. 若松謙維

    若松委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  35. 杉浦正健

    杉浦委員長代理 次に、安倍基雄君。
  36. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 冒頭に、提案者じゃなくて政府側にお聞きしたいんですけれども、我々、民事再生法をやりましたね。この議員提出法案は、その前段階というか民事再生にまで至らないものを調停でやろうという話でございますけれども、本来、こういったものは内閣提出でやってしかるべきところなんじゃないかな。もちろん、議員立法をどんどんと進めることは大切なことですけれども、議員立法はなかなかメリット・デメリットがある。本来それは、緊急を要するような場合に、内閣提出を待っていたらどうも時間がかかるという要素があるんですけれども、何でこれを議員立法にゆだねたのか。民事再生法は閣法でやったし、民事調停の法律ももともと政府提案の法律であるんだ、何でこれだけを議員提案の形をとったかという点を、政務次官でもいいですし政府参考人の方でもいいですけれども、お聞きしたいと思います。
  37. 細川清

    細川政府参考人 お答え申し上げます。  法務省では倒産法制全体の見直し作業を行っておりますが、現在の経済情勢、なかんずく企業倒産が急増しているという実情にかんがみまして、主として事業者向けの再建型の倒産手続を最優先で整備すべきではないかというふうに考えておりまして、それで、この前御審議いただきました民事再生法案提出させていただいたということになっております。  他方、倒産の情勢を見ますと、企業倒産だけではなくて、住宅ローンの破綻とかあるいはサラ金等の問題で個人倒産の増加も非常に大きな、顕著な状況となっております。  こういう状況を踏まえまして、自民党内の、特に金融再生トータルプランの推進調査会の中で、先ほど申しました企業再建手続を含む倒産法制見直しの早期実現とともに、経済的に破綻するおそれのある者の急増に対応するため、倒産を避けて調停再生を図る制度を早急に整備すべきだという意見が大変強くなったわけでございます。そこで、提案者でいらっしゃいます山本幸三議員を初め自民党の議員の中でまず検討が始められ、さらに与党の中で検討が進められ、各党の意見を聞いてこの法案の中身が固まったという経緯がございます。  そういう経緯でございますので、私どもから見れば、これが議員立法で提出されるというのは大変自然な経過のように受けとめているわけでございます。
  38. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 企業個人倒産もふえているというのは当然な話で、そういったことについてやはり内閣そのものが正面から取り組むという姿勢があってしかるべきなんですよ。議員立法でやっているからそれで済むという話ではなくて、企業倒産以外に個人のいろいろの問題を含めたことに内閣そのものが取り組むという姿勢が本当にあるべきだ。  私は、今度の法案は、議員立法としてはそこそこよくできていると。これは極めて技術的な問題ですから、私も昔、役人ですから、法制局に行って、一字一句、あらゆる事案を想定しながら時間をかけてつくる、そういうのが通常の内閣提出法案なんですけれども、もちろんこの議員立法でも、そこそこその辺の勉強はしたような跡がうかがわれます。  ただ、ちょっと私は、非常に大事なものですから、何でこういったことに内閣が責任を持たぬのか。その関係で、どうも法制審議会というのが、やり出すと遅い、そういう問題があると私は思う。だから、やはりこの法制審議会をもうちょっとワーカブルというかスピーディーに動かせるようなシステムが必要なんじゃないか。この点、大臣は来ておられませんけれども、政務次官に、もっと法制審議会がちゃんと、きちっきちっと早く機能するようにということを私は要望するわけです。であるから、要するに時間がかかるものだから、早急に手を打たなくちゃいけないという話がみんな議員立法になってしまう。この間の法定準備金の取り崩しの話は随分ラフな議員立法だと私は思ったんですが、これも、急ぐからということで議員立法でやりました。  ちょっとこの点、政府として、もっともっとこの法制審議会を臨機に、ちゃんと対応できるような審議会にしてほしいと思いますが、これは政務次官に聞きましょう、お答えください。
  39. 山本有二

    山本(有)政務次官 安倍先生の御指摘の点を踏まえまして、最近のオウム法案等、法制審、すべてカットいたしましてそのまま閣法で提出いたしましたり、臨機応変、適時適切に対処していこうという覚悟で取り組んでおりますので、御理解をいただきたい。よろしくお願いします。
  40. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 では、本法案についてお聞きします。  これは特例でございますけれども、現行民事調停とどういう点が異なっているかという御説明を願いたいと思います。
  41. 西村眞悟

    西村(眞)議員 大まかに申し上げますと、本特定調停民事調停の一環でございます。一類型でございます。ただ、経済的に破綻するおそれのある者が、その経済的再生を図るための債務調整を求めて申し立てるものでございます。それゆえ、簡易、迅速、柔軟であるべきという特色を保ちつつ、多数の関係者の集団的な処理や調停委員会の職権による調査権限の強化など、倒産手続に類した扱いをすることが望ましいという側面がございます。  本法は、そのような考慮に基づいて、経済的に破綻するおそれのある債務者再生に資するための手続にふさわしい民事調停特例を定めたものでございます。  具体的には、特定調停については、経済的に破綻するおそれのある債務者からの申し立て事件に限られておりますし、特定調停内容は、債務者経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済合理性を有するものでなければならないとされております。また、そのために、当事者債権債務発生原因内容等に関する事実を明らかにする責務があるものとされ、事件一括処理特定調停成立を容易にするための措置や、民事執行手続の停止、調停委員の指定、調停委員会による資料等の収集等についての特例規定が設けられているわけでございます。
  42. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 通常の調停の場合には、どっちかというと、一対一とか、要するにお互い同士が合意すればいい。だが、こういった経済的破綻なんかの場合には関係する人間が多い。そういう意味で、いわゆる民事再生と通常の調停との中間的なものじゃないかと私は把握しております。  例えば、調停というのはお互いが同意すればいいんだ、合意すればいいんだという話ですが、結局一番心配なのは、債権者がぞろぞろいる、一部の債権者債務者の間に調停成立しちゃう、そうすると、主な債権者が抜けて、後から文句を言おうと思っても、いろいろな主な財産が既に処分されちゃうというような場合も十分考えられるので、本来、主な債権者、できれば全債権者でしょうけれども、全債権者になるとまた民事再生法の領域なのかもしれませんけれども、その辺をある程度、こういったことを始めますよということを債権者に知らせにゃいかぬのじゃないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  43. 西村眞悟

    西村(眞)議員 先生の御質問の御趣旨は、やはり調停であるから全債権者を呼び出すべきではないかということと、参加していない債権者が不測の損害を受けることがあるのではないかということの御質問だと思っておりますが、先ほどこの特定調停の特色を申し上げまして、迅速かつ柔軟という調停手続メリットを生かして経済再生を図るという趣旨で組み立てられております。また、この趣旨から見れば、全債権者を常に手続参加させるということは適当でないと考えられます。  その趣旨は、特定債務者経済的再生の可能性を高めるために、多数の債権者との間で債務等調整を行う必要があるのでございますけれども、通常の場合は、主要な債権者すべてを相手として調停が行われることになると思いますけれども、場合によっては、一部の債権者との間の調停特定調停手続外で進めることも可能でございますし、また、債権者の中には、経済的再生の可能性を左右しない少額の債権者等も含まれておるのでございます。特定調停当事者として、経済的再生の可能性を左右しないような少額の方を参加させる必要性が薄いこともこれまた事実でございます。したがって、これらの者をすべて債権者という形式的名前だけで参加させることを求めて、それによってしか特定調停が開始されないということは非現実的でございます。  また、調停委員会においては、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容調停成立させるために必要であると判断した場合には、相手方となっていなかった債権者を新たに手続参加させることもできますし、また、相手方とされなかった債権者自身も、調停委員会の許可を受けることなく手続参加することができる旨の規定がそのために設けられております。  さて、このような手続によって、参加しない債権者が不測の不利益を受けることはないかという後段の御質問に移るわけでございますが、特定調停民事調停の一類型ですから、特定債務者と一部の債権者との間で特定調停成立したとしても、その効力当事者以外の者には及びません。当事者以外の者がそれによって自己の債権をカットされるなどの法律的不利益を受けることは、調停という性質上あり得ないのでございます。手続参加しない債権者は、特定債務者と他の債権者との間で特定調停手続が進行中であっても、また、既に特定調停成立していても、特定債務者に対して、本来有する債権内容に従ってその権利を行使することができる立場にございます。  またさらに、特定調停は、先ほども申し上げましたように、公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければなりません。手続参加した債権者のみが有利な条件で弁済を受け、参加していない債権者に対する債務の弁済の資力がなくなるような内容、このような調停条項は、本特定調停趣旨からあり得ないのでございます。  また、これを担保するために、特定債務者は、申し立てに当たり、関係権利者の一覧表を提出しなければならないことになっているところでございますし、特定債務者債権者担保権者は、容易に手続参加することができるものとされておるわけでございます。  また、調停委員会としては、相当と認めるときは、相手方になっていない債権者参加を命ずることができますし、仮に一部の債権者手続参加していないために公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容調停ができない場合には、十八条の規定により事件を終了させることもできますし、また、その場合は終了させるべきでございます。  仮に、何らかの理由によって他の債権者を害することとなるような特定調停成立してしまった場合には、その害されることになった債権者は、民法四百二十四条の詐害行為取り消し権に基づく権利を行使することができます。そして、自己の利益を守ることができるのでございます。  また、債務者について、破産民事再生手続などの法的倒産手続が開始された場合にも、債権者間の公平を確保するための否認権の対象となると解されております。  以上でございます。
  44. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 基本的にそういったことを防止するために、あらかじめ債権者の一覧とかそういったものを提出させておくということはあるわけでございますけれども、やはり一番心配するのは、後から大きな債権者が出てきて、おれたちが知らないうちにやられちゃった。詐害行為取り消し権なんかがありますけれども、処分されちゃった財産をもとに戻すのもなかなか大変だということもございますから、この運用にはよほどの注意をしていかなくちゃいけない。  お話が出ましたように、細かい、小さい債権者を一々集めてやるなんというふうになってくるとまた特定調停意味が失われますからこの点はあれですけれども、主な債権者あたりは十分わかるようにするという、いわば調停委員会の判断になりましょうけれども、後からトラブルが起こらないような調停が行われてしかるべきだと思います。  それと関連しまして、調停委員会がいわば調停条項を定めて、これはどうだというぐあいに提示する条文がございますけれども、この点についてはどういった趣旨であるのか。その関連として、ちょっと権限が強大になり過ぎるのじゃないかというような疑問点もございますが、この点を御説明願いたいと思います。
  45. 西村眞悟

    西村(眞)議員 本法案では、御質問にありますように、調停委員会が定める調停条項制度が採用されております。この趣旨と、調停の権限が強大になり過ぎはしないかという御質問でございましたけれども、現行民事調停の中にも、商事調停事件、鉱害調停事件、地代借賃増減調停事件等については、当事者間に合意成立する見込みがない場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意があるときは、申し立てにより、調停委員会調停条項を定めることができ、これを調書に記載したときは、調停成立したものとみなすという制度も採用されております。  また、民事訴訟法においても、この制度を参考にして、訴訟において当事者双方の共同の申し立てがあるときは、裁判所または裁判官が事件の解決のために適当な和解条項を定めることができ、これにより、和解が調ったものとみなすとする規定も設けられておるわけでございます。民事訴訟法二百六十五条でございます。  さて、特定調停事件においては、特定債務者に係る総合的な債務調整のために、当事者となっているすべての債権者から調停条項案への同意を得ることが必要に当然なっておりますが、債権者の中には、調停委員会から示される公的判断であれば従うけれども、話し合いによる任意の合意には応じられないとの態度をとる者もございます。  そこで、特定調停においては、このような仲裁的な方法による紛争解決手段を用意することとしております。民事訴訟法二百六十五条の規定に倣って、調停委員会が定める調停条項制度を導入することとしたのでございます。これがこの制度の導入の趣旨でございます。  次に、この条項に基づく双方の申し立ての範囲を超える内容調停条項を定めることも可能であって、権限が強大になり過ぎるのではないかという御質問でございますが、調停委員会調停条項を定めることができるのは、それを求める当事者の共同の申し立てがある場合に限られております。また、特定調停において調停委員会が定める調停条項内容は、特定債務者経済的再生に資するという観点から、この制度趣旨である公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければならないということも定められておるわけでございます。  そのような制限のない制度、先ほど御紹介いたしました制度と比較して、この制限のあるもとでの特定調停、本制度が、調停においては、調停委員会の権限が相当程度制限されておると感じておるものでございます。したがって、調停委員会の権限が強大になり過ぎるというふうな御批判は当たらないのではないか、むしろ制限されておると解釈してよろしいのではないかと思っております。
  46. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 いずれにいたしましても、この法律が円滑に運用できるようによくウオッチしていかなきゃいかぬと思っております。  時間が参りましたから、これで私の質問を終わります。
  47. 杉浦正健

    杉浦委員長代理 次に、北村哲男君。
  48. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  私は、答弁要求者に山本先生というふうに指定したような形ですが、提案者どなたでも結構でございますので、よろしくお願いします。  まず、この法案の目的、どういうことを目指しているのかということ、あるいは対象をどうしているかということ、ほぼわかることはわかるのですが、特に、昨年のいわゆる金融国会で不動産権利調整法というふうな形で法案が出されました。そこでは、総務庁ですか、政府が、行政庁の中にこういう委員会を置いて、それで調整を図ろうという目的、特にまた対象が、恐らく法人に限られたというふうに記憶しておりますけれども、それが金融国会で廃案になって、そしてそのかわりというのはおかしいのですけれども、その継続の中でこの法案が出されたということでありますので、どこがどう違うのか、あるいはどういうものを目指しているのかということについて、イメージ、概要からまず御説明を願いたいと存じます。
  49. 亀井久興

    亀井(久)議員 今委員指摘の点でございますが、まず、本法案の目指すものといいますか、目的と申しますか、そのことからお答えをいたしたいと思います。  特定調停制度現行民事調停法特例でございまして、個人法人を問わずに、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容調停成立を図ろうとするものでございます。  個人債務者につきましては、いわゆるサラ金等によります多重債務者申し立てます民事調停事件破産事件が急増しておるということは御承知のとおりでございますが、また、今後住宅ローン債務者経済的破綻がふえることも懸念される状況にございます。また、法人につきましても、現下経済情勢を反映いたしまして企業倒産が増加をしておりますし、我が国経済再生のために不良債権の実質的な処理を促進する必要もございます。さらに、いわゆる商工ローン債務者となっております中小事業者につきましても、円滑な債務調整手段を提供することは喫緊課題ではないかと存じます。  本法案によります特定調停制度の目的は、こうした債務者が、経済的破綻に至る前に裁判所調停制度を利用して、迅速、円滑に合理的な再建計画を立てることを促進いたしまして、これによってこれらの者の経済的再生を図ろうとするものでございまして、その対象は、個人法人事業者、非事業者を問わず、経済的に破綻するおそれのある債務者一般といたしております。  先ほど御指摘のございました昨年の金融国会において廃案になりました不動産権利調整法案との関連でございますけれども、今御指摘ございましたように、今度の特定調停は、調停委員会によって、裁判所の、司法の場においてこれを調整しようということでございますが、基本的に前回の法案については、先ほど御指摘もございましたように、行政府の中に委員会を置く、そういうことでございましたので、その点が基本的に違っておることでございます。  昨年、この法案が廃案になりましたときに幾つかの御批判がございましたけれども、それは、今申し上げましたように、本来裁判所において行うべきことではないかという御批判、それから二番目には、対象となる債務者事業者のみに限らずに個人債務者についても対象にすべきではないかということ、また三番目に、債権放棄がされた場合の税制上の特例措置を法案に盛り込んだということが大手のゼネコン等に対するいわゆる徳政令にほかならないのではないか、そうした点、こんな御批判があったわけでございますが、本法案をつくるに当たりましては、このような御批判に十分に配慮をいたしまして、今申し上げましたような前の法案とは異なった内容になっておるところでございます。  本法案は、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するということを目的としている制度でございまして、裁判所における民事調停の一類型である特定調停制度を設けて、裁判所調停制度を利用するということでございますので、このことによって成立した合意につきましては、判決と同一効力を有することとなります。  また第二に、対象となる債務者事業者に限定しないで、むしろ個人債務者や中小規模の事業者向けの制度として位置づけることにいたしました。  三番目に、調停成立した場合の債権放棄に伴う税制上の手当てにつきましては、法文上はこれを講じないということにいたしております。  以上が、前回の不動産権利調整法案と異なる点と本法案の目指すところでございます。
  50. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 以前の権利等の調整に関する臨時措置法がああいう形で出されたのについて、率直に言って、意図は何だろうかということを当時考えたことがあります。  そうすると、そのときには、行政庁がそういう調整をして調停をつくることによって、切り捨てた債権税務上償却処理できる、それが一番の主眼だ、いわゆる心はそこにあるんだということで、裁判所でなぜできないのかというと、裁判所でするとどうしてもそれがストレートにいかないというふうに聞きました。たしか、何か通達の百十九条とかなんとかというのはうっすら記憶にあるんですけれども、そのあたりは今回、今の亀井先生の御説明の中でも、特にその条項は置かないことにしたと。  そうすると、一番の主眼として、それはある面ではゼネコン徳政令だというふうな批判もぽんと出たりしたんですけれども、すっぱりと切り捨てて、そして債権者も身が軽くなるということがこの調停でストレートにできるかどうか。先ほども説明があったようですけれども、そのあたりはどのように解決をされたのか、御説明を願いたいと存じます。     〔杉浦委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 山本幸三

    山本(幸)議員 御指摘のように、昨年の金融国会における不動産関連権利調整法におきましては、まさに調整をやりまして、債務免除、債権放棄した場合には直ちに自動的にその分が損金処理できるという規定を置いてございました。これが批判の対象にもなったわけでありますけれども、他方、こういう問題を処理するときには、債権者のインセンティブがないとなかなかうまくいきませんものですから、債権者にとって最大のインセンティブは、委員指摘のように税務上の処理でございます。  そこは大変悩ましい問題でございましたが、今回の法案では、私どもとしては、もう思い切って、自動的に無税償却ということは断念せざるを得ない、司法制度民事調停を使うということもありまして、自動的に無税償却することができないということで、法文上はその関係が断ち切れた形になっております。  ただ、先ほども申し上げましたように、債権者から見ればそのインセンティブがないとなかなか応じにくいものですから、そこを何とか実態的にうまくできないものかと相当国税庁とやり合いをいたしまして、最終的な税務判断は税務当局に残ることはやむを得ないけれども、しかし、この制度がうまくいって、本当に債務者経済的再生に資するということのためには、債権者が乗ってこないとだめですから、実態的に税務当局も最大限の協力をしてもらうという詰めをやりまして、御指摘のような法人税基本通達に、経済的合理性を有する場合にはそういう処理ができるという規定がもともとございますので、それに何とか、完全に一〇〇%というわけにはいきませんが、できるだけそれと合致するようなものの内容をここで調停としてできれば、税務当局の方もそれを最大限尊重して処理していくという形で、実態的に国税庁と話をさせていただいているところでございます。
  52. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 私も、当時そのことをかなり詰めて裁判所に、行政庁ならストレートに償却できる、裁判所だったらだめなのかということを言ったら、裁判所はどうも首をかしげるんですね。うちではだめです、国税が言うことを聞きませんというふうな言い方をするんですが、そのあたりは、できるのなら、あのときだって最初からこれをお考えになったと思うんですね。  ですから、これはやはり個別判断ではあるんでしょうね。しかし、できるだけやる。基本通達というのはもともとあって、合理性がある場合はそのまま償却できるわけですから。国税も協力をするということは詰めておられたというふうに聞いてよろしゅうございますか。
  53. 山本幸三

    山本(幸)議員 そのところが私ども一番苦労したところでございまして、最高裁の方にもいろいろ、相当詰めた議論をしましたし、そして国税庁とも相当詰めた議論をして、国税庁としても最大限、ここまでは答弁できますという形で先ほど御答弁いただいたところであります。  私どもとしても、実効が上がるように、今後とも最高裁税務当局との間で、これはケースを積み上げていくしかないと思いますけれども、この特定調停によるものがちゃんとした、公正かつ妥当で経済的合理性を有するということが確立していけば、最終判断は税務当局ですが、しかし、限りなく自動的にいけるような形に近い形でそういう処理がいけたらなと希望を持っているところでございます。
  54. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。そのようにならなければ余り意味がないと私も思うんです。  そうすると、この調停だけが特別扱いされて、普通の調停は特別扱いされないのか、あるいは判決は特別扱いされないのかということについては、余り追及してもまずいかもしれませんけれども、もしおわかりであれば。やはり普通の調停でやったらだめになるんですかね。それとも合理性があればということで、個々的に判断するというのは間違いないんですね。特別にここは扱うわけですか、この特定調停については。
  55. 山本幸三

    山本(幸)議員 国税庁から聞いているところでは、一般民事調停税務判断とは全く違う話だから、それで出た結論については、税務当局としてはまさに法人税基本通達に乗るかどうかをゼロからやります、個別ケースに基づいて判断していきますということでございます。  ただ、特定調停については、その立案の経緯から、当初から話し合いを持っておりますので、主要税務署には相談窓口をつくってもらうなり、事前の感触等が得られるように仕組んでありますので、この辺は一般民事調停とは違うというように理解しております。
  56. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  今回の特定調停法は、前と違って、例えば個人債務弁済の、サラ金被害者とか多重債務者ですか、そういう人も利用できるわけですね。そうすると、随分その人たちが助かるだろうというふうに思うんです。  最高裁の、これは恐らくインターネットだと思うんだけれども、債務弁済協定調停事件といってすごく、平成九年で約十九万二千件があって、そのうち三分の二はまさにこの債務弁済協定だというふうにして、急増している経過。そういうふうな中で利用されると、随分こういう事件の処理に役に立ってくるだろうと思うし、そうすると、金融国会で出された調停法は主に事業者を対象にされたんですが、この新しい調停法の利用頻度が、まさに債務弁済協定の多重債務者、急増しておるものの方にシフトするというか、そっちの方に利用者がずっとふえるようになってくるんですけれども、そのあたりは、特にその債権者であるサラ金、先ほど言われた商工ローンとか、そういうところとの話し合いということは立法の過程でされておりますか。
  57. 山本幸三

    山本(幸)議員 サラ金関係者とは直接話し合いはしておりません。日弁連とは立案の当初から話し合いをさせていただいております。  話し合いをしておりませんでしたが、私のところには貸金業業界からは、この法案はけしからぬ、我々の権利を踏みにじって債務者ばかりが得をするようなものではないか、ぜひ再考すべきであるという批判文書は来ております。
  58. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 サラ金業者にとっても、今では恐らく調停だけでは償却できないし、償却できるならばさっさと切り捨てた方が得だと思うのですけれども、その辺は何で批判されたかわかりませんけれども、それはそれで結構です。  それで、このインターネットの中の最後に、「現在、破産法を含めた倒産制度の全面的な改正作業が進められていますが、その一環として、この債務弁済協定調停事件手続がより円滑かつ迅速に進められるように民事調停法規を改正することが検討されています。運用上の工夫、努力に加えて、このような立法上の手当てがされることで、民事調停制度の紛争解決機能が一層充実したものとなることが期待されます。」というようなことが一般国民向けに出されているのです。これは最高裁ですからいいのですけれども。  この倒産法制の改正検討事項の中に、当然、債務弁済協定調停事件の充実ということは入っておるのですけれども、これは本来国がやるものですよね、法務省のことだと思っておるのです。そのあたりは、私は法務省に聞いてもいいのですけれども、どっちでもいいのですが、それとこの関係はどうなるんですか。両方でお答えください。
  59. 山本幸三

    山本(幸)議員 まず、私の理解するところの倒産法制に関する改正検討事項との関係でございます。  平成九年十二月に法務省の民事局参事官室から出ておりますが、この中に、経済的に破綻した債務者当事者とする調停事件についての改正の要否の問題が取り上げられておりまして、改正の方向性として、以下の考え方が例示されております。  一つは、債務弁済協定調停事件について管轄を有する裁判所は、当該調停事件申立人申し立てた他の債務弁済協定調停事件でその管轄に属さないものについても、みずから処理することができるものとするとの考え方。  二番目が、債務弁済協定調停事件当事者が遠隔地に居住する等の理由により出頭することが困難であると認められる場合において、その当事者があらかじめ調停委員会から提示された調停条項案を受諾する旨の書面を提出し、申立人が期日に出頭して当該調停条項案を受諾したときは、当事者間に合意成立したものとみなすものとするとの考え方。  三番目。債務弁済協定調停事件については、調停委員会は、当事者間に合意成立する見込みがない場合または成立した合意が相当でないと認める場合において、当事者の共同の申し立てがあるときは、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができるものとし、当事者は、調停条項の告知前に限り、その申し立てを、相手方の同意なしに、取り下げることができるものとするとの考え方。  四番目に、債務弁済協定調停事件当事者は、債務発生原因事実、弁済の状況等の債務の存否及び額に関する事実について、明らかにしなければならないものとするとの考え方。  五番目に、債務弁済協定調停事件において、裁判所がした調停にかわる決定に対して、当事者または利害関係人からの乱用的な異議申し立てがされた場合について、何らかの対策を講ずるものとするとの考え方。  以上が大体の方向でありますが、このうち、前四項につきましては本法案に取り入れられているわけでございます。ただ五番目の、調停にかわる決定の効力の強化については、そもそも合意を前提とする民事調停の本質にかかわるものですから、これはなかなか難しいということで、本法案には入っておりません。  私は、この点につきましては、この特定調停の議論をするときにも法務省民事局とも十分な打ち合わせをしておりましたものですから、そういうことを踏まえて、改正の方向としてはこういうことがある、その場合の役割分担は、先ほども御質問がありましたけれども、できる場合には議員立法でやってもらうところはやってもらう、そして閣法でやる場合にはそれなりの手続も要りますから、若干時間がかかるので、しかし詰めた議論はそちらでやるというぐあいに考えておられたのじゃないかと思います。
  60. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 民事局に聞きたいのですけれども、ここに「民事調停法規を改正することが検討されています。」と書いてあるんですね。確かにこれも一部、調停特例法をつくっているのですけれども。再生法も一つの、それに近いところがあると思うのですけれども、倒産法制の改正検討事項の中で民事調停法規の改正ということも検討されているということなのですが、その流れと今のこの法案との関係、これはどういうふうに理解すればよろしいか、御説明をお願いします。
  61. 細川清

    細川政府参考人 私どもが公表しました倒産法制の改正検討事項は、百項目以上にわたる大変膨大なものでございますが、その最後に、民事調停制度の改善、特に多重債務者関係についてのことを問題提起しております。中身は、ただいま山本幸三議員から御説明があったとおりでございます。  それで、この特定調停法案は結局のところ、ただいま提案者から御説明がございましたように、私どもが問題点としていた点を十分検討された上で新たな立法をされるということでございますので、私どもが持っていた問題意識の大部分を取り上げられて現実に立法化されたということでございます。ですから、この議員提案法案が出されなければ、これは閣法でやらなければいけない問題であったというふうに理解しているわけでございます。
  62. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 あわせて民事局長に一言聞きますが、そうすると、この特定調停債務弁済協定調停というのが、それこそ二十万件に達するぐらいの、非常に今の裁判所の、まさになかなか解決ができないという、司法改革の大きな焦点の一つでもあると思うのですけれども、それが大きく解決されるであろうというふうな理解をしておられるわけですか。
  63. 細川清

    細川政府参考人 多数の倒産事件あるいは債務弁済協定の調停事件について、裁判所で処理される上でいろいろ隘路があるのではないかというふうに言われておりますが、少なくとも制度的には、法律の手続面においては相当程度改善が図られるということになるのではないかと思っております。
  64. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 わかりました。  次に、特定調停調停案作成は、普通の民事調停を考えると、ある程度当事者の言い分をそれぞれ聞きながら、自然にできていくといいますか、余り無理をしないで合意をつくっていくというイメージがあるのですけれども、しかし、かなり債権を切り捨てて、強行的というか指導力を発揮してやらないと目的が達成されないような気がするのです。先生方は余り普通の調停はかかわっておられないかもしれませんが、特に、前の権利調整臨時措置法などはかなり強い指導力が発揮されるような感じの法案であったというふうに受けているし、今回は調停法の特例なので、指導力という意味では相当質的に違うのじゃないかという感じがするのですが、そのあたりはどのようにお考えでこの法案をおつくりになったのでしょうか。
  65. 山本幸三

    山本(幸)議員 おっしゃったように、今回の場合は特定債務者経済的再生を図るということを見なければなりませんので、そういう債務者債権債務関係あるいは支払い能力等を全体として把握する必要があると思います。その再生を図るためには、債権者との間で一般民事調停とは少し踏み込んだ形の調停をしなければなりませんので、調停委員会がかなりリーダーシップを発揮しなければならないだろうというように思っております。その意味で、今回の場合には、一般民事調停ではなかったわけでありますが、民事調停委員には専門的な方々をぜひ採用しなければならないという調停委員の指名という規定を置いて、できるだけそういうリーダーシップがとれるような形にしたいものと思っております。  ただ、事業者等債権者が少し数が多い、少し複雑であるというような場合には、これは私の個人的なイメージでありますけれども、やはり特定債務者が相当程度走り回って、あらかじめ債権者の間でまあまあこれはいけるんじゃないかというぐらいの感触は得られるように相当の努力をしていないとなかなか難しいんじゃないかなという気がしております。
  66. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 先ほど若松委員からの質問の中で、日当といいますか、たった一万円何がしでそんなに有能な人間が集まるのかと。今おっしゃったように、それこそ事前に相当走り回ってやらなくちゃならない。私も東京簡裁の調停委員を経験したことがあるんですけれども、やはり一つの小さな事件でやっても、当事者に会ったり現場を見たり一日つぶれるようなことがあるわけですよね。これだけの権限を与え、目的が非常に崇高であるけれども、実際やる人に、済みませんがボランティアでお願いしますというふうなことをして、それだけの専門家が集まるだろうかという疑問が非常にします。  それについて裁判所にお伺いしますけれども、今私が言ったように、この新型調停に対して裁判所はどのような準備態勢を整えているんだろうか。すなわち、東京簡裁の今の調停制度を見ると、何人かは後から聞きますけれども、恐らく百人か二百人の調停委員がいます。しかし、裁判官は恐らく四、五人です。そうすると、当事者を呼んで調停委員が机に並びます、そしてお話を聞きましょうと。裁判官は、来て、ではよろしくということで去ってしまう。裁判所の指導力はまずないと見ていい。最後に調停調書をつくるときは、執行力の問題とかでいろいろ書きます。しかし、あとは全部調停委員任せ。調停委員はボランティア。ボランティアだと強制力はないですよ、実際。義務的に出ている、まあ失礼ですが、ボランティアといっても積極的なボランティアじゃないかもわかりませんけれども、それも、私は弁護士出身ですから、弁護士なんかはある程度社会的な奉仕をするという義務が職業的に定められているし、それこそそういう立場にいますけれども、そうでない方々もいるんです。そうじゃなくて、建築家の方々とかあるいは普通の市民の方もおられるわけですから、そういう方々が本当にやはり必死になって、権利関係をとりたい、あるいは切り捨てたいという人たちの間に立って指導力を本当に発揮できるんだろうかという実効性について非常に疑問を持ちます。  ところで、裁判所はそのあたりについて、今までの調停制度と違った指導力を発揮するようなシステムというものを考えておられるんだろうかということについて、裁判所にお伺いしたいと思います。
  67. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 現在、個人多重債務者等が貸金業者、信販会社を相手として支払いの猶予等を求める、いわゆる債務弁済協定調停事件でございますが、裁判所に多数申し立てられておりまして、今回の法律が施行されれば、こうした事件が今度は特定調停という形で申し立てられることになると思われるわけでございます。  現在の債務弁済協定調停事件は迅速に解決されておると思っております。そのノウハウが蓄積されております。したがいまして、これを特定調停事件においても生かすことができるのではないかと思っております。また、税務企業の財務などの知識経験が必要な事件、これも、これまでも同種の調停事件がございまして、その処理のノウハウも生かすことができるのではないかと思っております。したがいまして、専門的な係を設けるとかいうようなことではなくて、一応現状の体制で対応ができるのではないかというふうに考えております。  ただ、委員指摘のとおり、この種の事件で、専門的な知識経験を有する調停委員の活躍ということがやはり大事でございまして、この事件の処理では中心的な役割を果たすということになろうかと考えております。これまでの調停委員の先生方の執務ぶりを見ておりましても、非常に熱意を持って積極的に仕事をしているところでございまして、今後ともそういう活躍を期待していきたいと思います。  しかしながら、この法律が施行されまして、必要がありますれば、その後の状況を見まして、裁判所も事務処理体制のあり方についてさらに検討を進めていきたいと考えております。
  68. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 もう一つ最高裁に聞きます。  調停委員の報酬は普通の調停委員と同じように考えておられるんでしょうか、それだけをまず聞きたいと思います。
  69. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 特定調停事件を扱った調停についての調停委員の報酬についても、普通の調停事件の処理と同様に考えております。
  70. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 そうすると、待遇とかそういうのは全部現状と一緒だとおっしゃるんですが、現在の調停制度、先ほどほかの方から全国の数とか言われましたけれども、調停制度がどういうふうに行われているかという概要、例えば全国で何人ぐらいの調停委員がどういうところでやっておられるか、あるいは東京あるいは大阪はどのぐらいの体制でやっておられるのか、それから事件数、それから事件はどのくらいで解決をしているのか、あるいは調停委員の職業別、裁判官の配置、そのようなことを、どういうふうな調停制度が現状日本では全国で行われているかということを御説明、余り細かく言われるとわからなくなりますから、概要で結構です。
  71. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 平成十一年十月一日現在の民事調停委員の数でございますが、総数は約一万二千人でございます。そのうち、弁護士資格を有している方が約千九百人、公認会計士の方が約六十人、それから税理士が約三百人でございます。  東京簡裁における民事調停委員の総数は約五百五十人、弁護士が約三百人、公認会計士税理士も数名ずつございます。  それから、裁判官の配置の関係でございますけれども、東京簡裁とか大阪簡裁などある程度まとまった事件数のある簡易裁判所には、そういう調停事件を専門的あるいは集中的に担当する裁判官を配置して処理をしているところでございます。  件数の関係で申し上げますと、民事調停事件の新受件数は年々増加をしております。平成十年では二十四万八千八百三十三件というふうになっておる、こういう状況でございます。
  72. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 今のお話を聞いても、全国で一万二千で弁護士が一千九百、一割ちょっとというぐらいで、公認会計士さんが全国で六十人ですからね。税理士さんも三百人ぐらい。  そうすると、私は、この新しい特定調停法については、よっぽど人選を考えてつくり直さなければ、もちろん、今までの体制でするわけではないと思います、新しくつくるんだと思いますが、よほどのことを考えて名簿をつくらなくちゃいけないと思うし、その待遇とか、待遇ばかり言って本当に恐縮なんですけれども、あるいは体制、部屋をどうするかとか、場所の問題とか、それを整えなくちゃいけないと思うんです。最高裁はどういうことを今頭の中に描いて、たった二カ月でもう実施しなくちゃいけないということなんですけれども、一体何人ぐらいの人たちを募集し、全国にどのように配置し、どういうふうにしようとしておられるのか。まさか今までのものをそのままでやってくださいというわけには、今までの一万二千人の体制の中であらあらだけやってくださいという、この多重債務者関係はその部分もあるかと思いますけれども、しかし、多重債務者は今度の法案でつけ足したようなもので、本当はもっと中企業、小企業なんかの錯綜した権利関係調整しながらやっていくというのもこの法律の大きな主眼だと思うんです。そういうことも頭に入れてどういうふうにつくられようとしているかについての御説明をお願いしたいと思います。
  73. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 特定調停法では、事案の性質に応じて解決に必要な税務それから企業の財務などの専門的な知識経験を有する者を調停委員に指定することとなっております。委員指摘のとおり、まさにこういう専門的な知識を持った調停委員が活躍していかなきゃならないわけでございます。  現在、裁判所におきまして、日本公認会計士協会とかあるいは日本税理士会連合会などのいわゆる専門家関係団体に調停委員にたくさんなってくださいということで協力依頼などをしております。非常にいい感触を得ておりまして、そういう専門家調停委員のさらなる拡充に努めていきたいと考えております。
  74. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 開いてみればどうなるかわからないということがありますので、これは出発してからも考え方を固定しないで随時充実するような形にしていただきたいと存じます。  次に、山本議員にお伺いします。  七条一項ただし書きという項目があります。この点について確認をしておきたいんですけれども、すなわち「給料、賃金、賞与、退職手当及び退職年金並びにこれらの性質を有する給与に係る債権に基づく民事執行の手続については、この限りでない。」という項目が加わっておりますけれども、その趣旨の御説明をお願いします。
  75. 山本幸三

    山本(幸)議員 企業労働者が未払い賃金の給与債権に基づきまして債務名義を取得いたしまして、これによって当該企業の財産に対し民事執行手続を開始するという事態、これはかなり例外的な事態だと思いますけれども、そういう場合には、他の債権者も強制的な手続を開始する可能性が高く、当事者間の話し合い手続である特定調停によって事件を解決するのはそもそも困難なことが多いのではないか、それが通常ではないかと思われるわけであります。したがいまして、そのような場合は、そもそも本法案による執行停止命令を発するための要件である、事件特定調停によって解決することが相当である場合には当たらないということになるのではないかと思われます。  しかし、万一そういう場合でも、特定調停手続が進められていくということも原理的には考えられるわけでありまして、そうした場合に、給与債権に基づく民事執行手続が停止されるならば給与債権の保護に欠ける事態が生ずることが懸念されますので、その保護に万全を期すということから、念のため、給与債権に基づく民事執行手続が停止の対象から除外されることを明示したものでございます。
  76. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 続けて、九条に関して。  九条で、民事調停法の十一条を排除しております。排除すると無制限にならないかという疑問と、それから、関係権利者以外の利害関係人はというふうな言葉を使っておられますけれども、利害関係を有しない関係権利者というのは存在するのかどうか聞きたいと思います。
  77. 山本幸三

    山本(幸)議員 第九条でございますが、これは、特定調停の結果について利害関係を有する者のうち関係権利者については調停委員会の許可を要することなく特定調停手続参加することができるものとする規定でございまして、現行民事調停法第十一条一項の規定、すなわち、調停の結果について利害関係を有する者が調停手続参加するには調停委員会の許可を要する旨の特則でございます。つまり、許可を要しないでできるということであります。  特定調停は、事件の性質上、申立人である特定債務者につきまして、特定調停の対象となった債務のみならず、その資力、債務状況全般に係る事実関係が明らかにされる必要がございまして、また、特定調停の結果は特定債務者のその余の債務についての弁済可能性に影響するものであることでありますので、関係権利者特定調停の結果につき大いに利害関係を有するところでございます。そして、多くの関係権利者参加を得ることは特定債務者に係る債務等を総合的に調整する上で望ましいことから、関係権利者については調停委員会の判断にかからしめることなく特定調停への参加を認めることにしたものでございます。  それが趣旨でありますが、その場合無制限にならないかということでございますが、本法第九条の規定によりまして手続参加することができるのは特定調停の結果について利害関係を有する関係権利者に限られておりますので、参加し得る範囲が無制限になるということはないと思っております。関係権利者とは、本法の第二条第四項によって定められているところでございますが、「特定債務者に対して財産上の請求権を有する者及び特定債務者の財産の上に担保権を有する者」を意味するものでございます。  それから、ではそれ以外の利害関係者が手続参加できないかということでありますが、これは民事調停法の、本法の方に戻りまして、十一条一項の規定によりまして、委員会の許可を受ければそれに参加することが可能となります。  それから、関係権利者のうち利害関係を有しない者は想定されるのかということでございますが、通常は関係権利者は常に特定調停の結果について利害関係を有するものと考えられます。ただ、例外的に、著しく額が小さい債権者でこの限りではないと解する余地がないかといえばあり得るかなというところではないかと思います。
  78. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 確認ですが、十四条二項という条項があります。これは労働組合意見を求めるものとするという規定なんです。これはせんだってこちらで審議した民事再生法でもいろいろと問題になったんですが、単に意見を求めるというだけでなく、特に労働者あるいは労働組合意見を尊重する、意見を求めかつ尊重するというふうに読み込んでよろしいかどうかを確認したいと思います。
  79. 山本幸三

    山本(幸)議員 先ほどの御質問にございました七条一項のただし書きの規定それからこの第十四条第二項の規定は、この法案を立法するに当たりまして民主党の先生方との議論をさせていただきました折に、民主党の先生方の強い御意向がございまして、それで導入したものでございます。  先ほどのものは給与債権については民事執行手続から除外するということでありますし、本項の規定労働組合等意見を求めるものとするということでございまして、これはこの法案の目的が特定債務者経済的再生に資するということでなければなりませんし、またその調停内容経済的再生に資するとの観点から公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならないということでございますので、労働者協力がなければとても再生というものは図れませんし、労働者の正当な権利を認めたものでなければ公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものではないと考えられますので、労働組合等意見は当然最大限に尊重されるべきものだと考えております。
  80. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 もう時間がなくなりましたので、あと一、二点と思ったのですが、一点だけ。  二十三条に「特定調停に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。」というふうに、規則の方に委任をしておるのですけれども、これはどういうことを規則に委任をしておると考えておられますか。
  81. 山本幸三

    山本(幸)議員 この部分は、特定債務者関係権利者提出を求められることとなる資料について、どういう資料を用意してくださいというような技術的、細目的なことについて最高裁規則で決めてもらうということになろうと思っております。具体的には、最高裁判所において検討をしていただくことになります。
  82. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  83. 武部勤

  84. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  我が党も、本法案には基本的に賛成であります。経済的に窮境にある債務者が、破産を回避して、なおかつ、民事再生法とか会社更生法とか非常に厳格な倒産法制によらずに、こういう調停という簡易な形で債務処理が図られる、そして経済的に立ち直るということは、非常に大事なことだと考えているからであります。  そこで、きょうは、この仕組みがよりよく、うまく機能するようにするためにはこういうことが必要だという観点から幾つかお伺いしたいと思います。  まず第一点でありますが、私は、この制度機能するかどうかのポイントの第一は、銀行とかクレジットサラ金会社などの個別的、我勝手な取り立てをきちっと抑えて、合理的な弁済計画を、調停条項といいますか、これをしっかりつくり、合意できるかどうかにかかっていると思います。言葉をかえれば、保全処分の実効性を高めることがまず一番大事だと思います。  現行民事調停法には、保全処分として、十二条に調停前の措置制度があります。そこでまず最高裁から、現在の金銭債務に係る調停の現状、数と、その中でもこの民事調停法十二条の調停前の措置がどう運用されているのか、特に、事前の保全処分との関係でどう運用されているのかの実態を答弁願いたいと思うのです。
  85. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 いわゆる債務弁済協定調停事件の統計というのはとっておりませんけれども、簡易裁判所の貸金業調停事件と信販関係調停事件の合計数がほぼこれに相当すると考えられるところでございます。  そこで、その債務弁済協定事件に相当する事件ということで申し上げますと、件数的に申し上げますと、平成六年は六万三千三百七十二件、平成七年は七万五千八百五十八件ございます。平成八年は十万八千七百二十四件、平成九年は十三万六千八百一件、平成十年は十八万八千四百九十八件。この五年間を見ますと、非常に急増する傾向にございます。  それから、調停前の措置の関係で申し上げますと、この関係につきましては、総数としてそう多い数ではございません。三十件、四十件、場合によったら十件程度という、年によって随分ばらつきがあるということでございます。
  86. 木島日出夫

    ○木島委員 そういうことなんですね。現行民事調停法十二条の調停前措置というのは、ほとんど機能していないということだと思うのです。  そこで、私は、この法案の第七条の民事執行手続の停止という条文は大変重要な条項だと思います。民事執行の手続の停止を命令できる。民事執行といいますと、当然ですが担保権の実行と債務名義をとった強制執行でありますから、これが調停申し立てることによってとめられるというのは大変強烈な制度でありまして、これがうまく機能すればかなりこの民事調停特定調停というのは機能を発揮するのではないかと思うのです。  そこで、提案者にお聞きしますが、七条には、担保を立てさせ、または立てさせないで民事執行手続の停止の申し立てができるとあります。しかし、特定債務者は、もう当然ですが資力がほとんどないという人たちであります。多額の担保を立てさせられたんじゃ事実上この第七条は死文化すると思いますので、その辺、提案者として、担保の問題、どう考えているのか御答弁願いたい。
  87. 山本幸三

    山本(幸)議員 御指摘のように、本特定調停では、一般民事調停とは違いまして、民事執行手続を停止する場合に、無担保での停止も認めることとしております。その担保の有無あるいはその額は裁判所の裁量にゆだねられるわけではございますけれども、裁判所は、特定調停成立の見込み、民事執行手続の停止の必要性、損害発生の見込み、特定債務者の資力等一切の事情を考慮して担保の有無及び額を決定することになると思います。  特定債務者は、御指摘のように、経済的に破綻するおそれのある者でございますので、担保の提供を求められても、その資力が乏しい場合が少なくないと考えられます。しかしながら、担保の提供ができないために民事執行手続の停止ができないとすれば、そのような特定債務者特定調停により経済的再生を図る機会を奪われることになりかねない。しかも、そのような特定債務者については、倒産手続に至った場合には、債権者権利行使は制約されまして、個別執行は禁止されるということに至ります。  こうしたことを考慮いたしまして、特定調停事件におきましては、民事執行手続を停止する場合の担保の提供の必要性については、民事執行手続の停止の要否を審理する裁判所の適切な判断にゆだねることとしたものでございます。
  88. 木島日出夫

    ○木島委員 次に、この民事執行手続の停止でとめられるのは民事執行であるわけでありますが、前回、民事再生法のときにも私は主張したのですが、租税債務もとめなければ事実上なかなか機能しない。そこで、できたらこの第七条に、民事執行手続停止じゃなくて、租税債権の執行停止というのも入れてほしかったと思うのですが、その点、提案者はどう考えるでしょうか。
  89. 山本幸三

    山本(幸)議員 先生の御主張はよくわかりますが、民事執行手続の停止の制度は、特定債務者について、調停によりその経済的再生に資するための債権債務調整が期待できる実情がある場合において、債権者による民事執行の手続が進行することによりまして特定債務者経済的基盤が失われることを防ぐために、裁判所が、申し立てにより一時的に手続の停止を命ずることができるとすることでございますので、停止の対象は、調停による調整の対象となっております債権に関する民事執行手続に限られております。  委員指摘の租税債権につきましては、その存否や支払い方法に関する調整はそもそも民事に関する紛争には当たりません。つまり、民事調停法第一条の規定する民事に関する紛争に当たりませんので、民事調停による調整の対象とすることはできません。したがいまして、御趣旨はよくわかるのでございますが、このことはこの制度で取り入れることは難しいということでございます。
  90. 木島日出夫

    ○木島委員 しっかり民間人が、債権者債務者一緒になって、何とか我慢するところは我慢して、妥協して調停をやろうというんですから、今消費税が払えなくて倒産するなんという例がどんどんふえているんですから、国民同士が、民間人同士がそういっていい調停制度をつくろうというんですから、ここはひとつ租税債権についても一緒になってそういう譲歩、妥協をするということが求められるんじゃないかということを、重ねて私の意見だけは述べておきまして、次に移りたいと思うんです。  抵当権者や債務名義をもって強制執行しようとする債権者を保全処分で抑えるだけでは足りないのじゃないかと思うんです。それは連帯保証人の問題なんです。連帯保証人に対して取り立てを非常に強めようとしているのが今の商工ローンや日栄などの問題です。これらの連帯保証人に対する取り立てを抑えないと、こういうサラ金業者、ローン会社は、おれはこんな民事調停には入りませんよ、勝手に権利主張しますよということにならざるを得ないわけでありますから、この特定調停制度をうまく機能させるためには、どうしても連帯保証に対する強制執行も保全処分の対象にすべきでないかと思うんですが、提案者はどうでしょうか。
  91. 山本幸三

    山本(幸)議員 連帯保証に基づく執行手続についても、特定調停の目的ということに合致すれば、当然執行停止をすることができると思います。
  92. 木島日出夫

    ○木島委員 これは第七条の解釈なんですが、どういう民事執行の手続が停止できるかで、特定調停の目的となった権利に関する民事執行の手続の停止ですから、これは入るという答弁だということでいいですね。解釈として、主債務特定調停の目的となっている場合には、その連帯保証人に対する民事執行手続の停止も命ずることができるとこの第七条を解釈してよろしいということですね。大事なところですから、確認しておきたいと思います。
  93. 山本幸三

    山本(幸)議員 その場合、保証人も特定調停当事者ということになっている必要があるのではないかと思います。
  94. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、特定調停手続の中に保証人も取り込んでいくということをやれば、執行停止もできる。大変いい制度になると私は思います。  次に、二番目の問題ですが、この制度が本当に実効性を持つかどうかの二つ目のポイントは、私は、抵当権を持つ銀行それから連帯保証人をとっているサラ金クレジット会社、これらの協力が得られるかどうかだと思うんですね。抵当権をとっている銀行なんというのは、もうおれは関係ない、抵当権を実行すればいいんだという傲慢な態度をとりがちでありますから、それを抑えることができるかどうかがポイントだと思うんです。  そこで、この法案は、こうした抵当権者等債権者の一部が調停条項案に服そうとしない場合、あるいは調停に出てこないような場合、そういう場合にも調停条項案を提示して調停成立させることができるのか、その制度的担保はあるのか、その辺、提案者にお聞きしたいと思うんです。
  95. 山本幸三

    山本(幸)議員 質問の御趣旨は、一部反対する債権者も拘束できるような制度が採用できないかということではないかと思いますけれども、反対する債権者をも拘束する制度を採用することは、当事者合意を基本とする民事調停手続の本質にかかわる問題でございますので、これは難しいというように考えざるを得ないと思います。  反対債権者に対しても効力を及ぼすことができる強制的な制度とするためには、そのような強制力を持たせるのにふさわしい要件を設ける必要がございます。そのためには、少なくともすべての債権者手続当事者となることが担保されていること、二番目に、各債権者債権額を確定する手続を備えていること、これが多数決の前提となるわけでありますが、そういう要件が必要であると考えられます。倒産法制ではそういうことが可能であると思われますが、倒産法制ではない、調停手続中にこのような要件を担保するための手続規定を置くことは、迅速かつ柔軟な手続という調停手続の特色を損なうことになるのではないかと思います。  また、当事者合意なくしてその権利を一方的に変更することについては、憲法上の問題もあると思いますので、慎重な検討を要することではないかと思います。
  96. 木島日出夫

    ○木島委員 調停というものの持つ本質的な限界だという答弁だと思うのですね。理屈ではそうだと思うんです。しかし、そういうことを言っていると、これが全然機能しなくなると思うんです。  そこで最高裁に聞くのですが、現行民事調停法でも、十七条で、調停にかわる決定ということができるんです。一部債権者が不満でも、調停にかわる決定ということで、非常に強権的な制度でありますが、あるんです。この運用の状況、最近、よく使われるようになってきている。一部サラ金会社が反対をしても、この制度で抑え込むということをやっておるようなので、数字で結構でございますが、運用の実態を教えてください。
  97. 千葉勝美

    千葉最高裁判所長官代理者 調停にかわる決定が出されているほとんどの事件は、債務弁済協定調停事件でございますが、債務弁済協定調停事件にほぼ相当する、先ほどちょっと申し上げました、簡裁における貸金業関係事件それから信販関係事件のデータでございますが、調停にかわる決定の件数ということを見てみますと、平成十年では三万九千百三十二件でございます。そのうち、異議の件数が七百九十一件、こういう数字になっております。
  98. 木島日出夫

    ○木島委員 現行民事調停法でもこういうことをやれているんですよ、調停にかわる決定という形で。  そうすると、保全手続なんかで民事執行手続の停止というので強力な権限を盛り込んで、何とか多重債務者の生活を守ろう、また中小零細企業経済再生を図ろうということで、言葉は悪いですけれども、債権者を何とか抑え込もうという趣旨でせっかくこの法律をつくられたのですから、一部反対する銀行や一部反対するクレジットサラ金会社が出てきても、現行制度もあるんですから取り込んで、調停成立させることができるんじゃないかと私は思うのです。そういう面では、現行民事調停法の十七条はなくなるわけじゃないのでしょう。確認しておきます。
  99. 山本幸三

    山本(幸)議員 現行民事調停における裁判所の決定は、当然残ります。  ただ、その場合でも、その内容は、経済的再生に資するとの観点から公正かつ妥当で経済的合理性を有するものでなければならないという制約はかかります。
  100. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで私は、イギリスには一九八五年から銀行オンブズマン制度ができて、今大変機能しているとお聞きをしております。  余り時間がなくて恐縮ですが、法務省ですか、この制度の概要を簡潔に御答弁できますか。
  101. 細川清

    細川政府参考人 文献等による知識でお答え申し上げますが、英国の金融サービスオンブズマンは、いわゆるADR、代替的紛争解決機関の一種でございまして、現在のところ、銀行オンブズマン協会、保険オンブズマン協会などがあるということでございます。  保険オンブズマン制度には主要な保険会社のほとんどが参加しており、銀行オンブズマン制度には市中銀行のほとんどが加入しているものの、あくまでも任意の制度であって、法により制度加入が強制されているものではないと承知しております。  また、その対象でございますが、銀行の場合には、銀行の作為または不作為に対して不平を持つ顧客の紛争解決手続であるということでございまして、銀行オンブズマンの場合は、申し立て資格は、個人のほか、組合、法人格なき社団に認められているが、法人には認められていないというように聞いております。  また現在、銀行、保険、投資、営業等の各種オンブズマン協会を統合し、かつ加盟していない業者に対してもオンブズマンの決定に従う義務を課す内容法案が準備されているというふうに承知しております。
  102. 木島日出夫

    ○木島委員 イギリスのこの制度は、金融消費者救済制度だと思うのです。司法制度ではなくて、銀行の皆さん方が自主的にこういう制度をつくり上げてきたということはそのとおりだと思うのです。しかし、これが現に、銀行とのトラブルを起こしている消費者がここに救済申し立てをして、オンブズマンが入って、要するに調停をやったり、裁定をやったりして、具体的な解決を図っているわけであります。  では、改めてお聞きしますが、私、聞くところによると、最後の段階が裁定らしいんですが、銀行オンブズマンが出した裁定について、申立人である消費者個人がそれで結構ですということを申述したときは、債権者である銀行の方はそのオンブズマンの裁定に拘束をされる、片面的な拘束力を持つとお聞きしているんですが、それでよろしいですか。
  103. 細川清

    細川政府参考人 これも大急ぎで取り寄せた文献で、知っているところを申し上げますと、オンブズマンによる最終決定について、消費者は拘束されないが、消費者が受諾した場合は業界団体に加盟する銀行は拘束されるというふうに文献ではなっておりました。
  104. 木島日出夫

    ○木島委員 そうなんですよ。最近、日本の弁護士の皆さんが、非常にいい制度だというのでイギリスまで出かけていって調査研究して、その結果、「イギリスに見る金融サービス規制と消費者保護 訪英調査団報告」というのがあるんですよ。それに今のようなことが書かれております。  金融オンブズマン制度ですね。最終的には、このオンブズマンが、制定法上の権利や先例などを考慮しながら、銀行業務に関する自主規制あるいは不動産担保貸し付けに関する自主規制、こういうルールがあるらしいんですが、こういうものに基づいて、主として公平の観点から裁決をする。そうすると、銀行はこの裁決に拘束されるが、消費者が不満な場合には裁判をする権限は奪われない。消費者は拘束しないが、銀行は拘束される。大変いい制度だと思うので、ぜひ日本でもこういう制度をつくってもらいたい、つくるべきだと思いますし、私は、できたら提案者に、一歩手前まで来ているんですから、そういう手続をこの特定調停法に書き込んでもらいたかったなと思うんです。  大蔵省、お呼びしておりますのでお聞きしますが、日本でも、準司法手続というんでしょうか、こういう制度をつくるかどうか、検討状況、どうなっているかお聞きをいたします。
  105. 高木祥吉

    高木政府参考人 お答え申し上げます。  私どもの方では、先生も御承知のように、今金融審議会の方でいわゆる金融サービス法について御審議を願っております。その中の一環といたしまして、いわゆる裁判外紛争処理制度、これは今先生御指摘のオンブズマン制度等を含むものでございますが、そういったことにつきましても、イギリスを含め諸外国のそういう制度等を参考に、今御審議をお願いしているところであります。  来年の六月には最終報告をいただく予定でございますが、私どもといたしましては、そういう審議状況、議論の内容等を踏まえながら検討をしてまいりたいというふうに思っております。
  106. 木島日出夫

    ○木島委員 今バブル崩壊後十年たって、銀行の過剰貸し付け問題、クレジットサラ金会社の本当にひどい過剰な貸し付けが噴き出しているわけですから、そういう制度を日本でも一日も早く、速やかにつくって、そういう債務者を窮状から救い出すということが求められていると思いますので、私の方からも改めて要請をしておきたいと思います。  それがない状況です。本当は、日本は金融ビッグバンだけが先行してしまっているんですが、イギリスなんかでは、金融ビッグバンをやると同時に、そういう金融被害者、金融債務者の救済制度もきっちり銀行業界もつくっているわけですから、見習うところは見習うべきじゃないかというふうに思います。この特定債務特定調停法がそれにかわることはできないでしょうが、そういう金融債務者の窮状を救済するために役立つことが求められているんじゃないかというふうに思います。  この法案には、第十七条のように、「調停委員会が定める調停条項」と表題がありますが、これは事実上仲裁ですね。こういう条項もあるわけですから、こういう仲裁なんかを活用すれば、一部不満な銀行や不満なクレジットサラ金会社をも抑えて、いい仲裁裁定あるいは調停条項をつくればうまく機能していくんじゃないかと思います。  それで、最後になりますが、この特定調停機能する最後のポイントは、やはり税務問題だと私も思います。  この調停成立させようというインセンティブが債権者の方に生まれるかどうかは、私は、一つは、破産よりも再建の方がいい、破産よりも再建の方が債権回収の実が上がるということが一つだと思うんです。二つ目は、やはり、税務上の処理がこれで有利になるということだと思うんです。  同僚委員からも質問されておりましたが、昨年、国会に政府から提出され廃案になった不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措置法案、これは、一つ債務免除したものを全額損金算入する、二つ、法人の免除益については累積欠損金と相殺を認める、こういう二つの点で大変な税務上の特典を盛り込んだわけであります。そこで、これに対しては、これはとんでもない、大銀行とゼネコン徳政令ではないかと厳しい批判が集中をいたしました。私もその批判の急先鋒に立ちました。それで、おかげさまで廃案になったわけであります。  この法案には、その教訓からでしょうか、税務特例措置は完全に排除された、なくなったとお見受けするんです。それはそれで結構なことだと思うんです。しかし、中小零細商工業者や個人経済的窮境を救出しなきゃいかぬということは必要なんですね、ゼネコンや銀行を助ける必要はありませんけれども。そうするとやはり、債権者の方に税務上の一定の恩典を与えなければ、これはそう簡単に債務免除、債権放棄はしてくれないということなんです。  そこで、国税庁にお聞きしますが、この法案調停成立して債務免除や債権放棄がなされたときの税務上の処理がどうなるのか、簡潔にまず御答弁願いたい。
  107. 大武健一郎

    ○大武政府参考人 お答えさせていただきます。  先生御質問の件に関しまして、まさに税務上の処理をいたします場合には、やはり、債権放棄等を行うことの相当性、債権放棄等の額が合理的であること、債権管理がなされていること、債務放棄等をするものの範囲が相当であること、そして債権放棄等の額の割合が合理的であること等を見て、個々に判断するということになります。  したがいまして、本法案の公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容税務上の経済的合理性とは一致しない場合もあり得るとは思いますけれども、現段階でまだどのような内容調停事案が出てくるかわからない段階ではありますから確定的なことは申せませんけれども、ほぼ一致する事案が大部分であるというふうに考えておるわけでございます。
  108. 木島日出夫

    ○木島委員 この民事の特定調停法というのができて、曲がりなりにも、裁判所の機構を利用した調停ですね、公的な調停、そこが出してくる調停条項、そしてそれには、この法案の第十五条に、調停条項は「公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。」こういう条項がわざわざ書き込まれてきているわけですね。  そうすると、税務署も公でありますが、裁判所も公、調停委員会も公なんですね。そのフィルターを一つ通ってつくられた調停条項ですから、一応、私は税務上の経済的合理性が、一つのハードルはクリアしたんじゃないかなと思うんですね。  ですから、税務当局におかれましても、そういうふうな状況を重く受けとめて、損金算入等、適切な税務処理が行われることが必要だと思うのです。  先ほどの同僚委員質問に対する答弁で、一般民事調停と異なる特質をこの特定調停に関する調停条項は持っておる、それを重く受けとめる旨の答弁が行われました。それをもうちょっと詳しく、どういうことを言わんとしているのか、答弁願えますか。
  109. 大武健一郎

    ○大武政府参考人 お答えさせていただきます。  ただいま御質問のございました本法案に基づく特定調停でございますけれども、その調停条項が「公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容のものでなければならない。」とされていること、それからまた、調停委員の方には「事案の性質に応じて必要な法律、税務、金融、企業の財務、資産の評価等に関する専門的な知識経験を有する者を指定するものとする。」というようなことにされておりまして、一般民事調停とは異なる御指摘のような特質を有しているということは十分理解しております。  したがいまして、国税当局としても、このことを十分念頭に置いて、その執行が迅速かつ円滑なものとなるように全力で努めてまいりたい、このように考えております。
  110. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  111. 武部勤

  112. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  提案議員の皆さんに大変敬意を表しながら質問をしたいと思います。  まず、山本議員に伺いたいのですが、従前の民事調停申し立て、あるいはその成立した件数の中で、法人のものというのは大体どのぐらいあったのか。あるいは、その中で、例えばゼネコンなどが調停で結論が得られたという例があったのかどうか。
  113. 山本幸三

    山本(幸)議員 ちょっと最高裁がいないので正確な数字じゃないかもしれませんが、民事調停事件は、昨年で大体二十四万九千件ぐらいございます。そのうち、十九万件ぐらいがサラ金クレジット関係と言われておりますので、これは個人だと思います。それ以外が個人事業者ないしは法人ということになるんだろうと思います。  では、調停でゼネコン等云々のケースということでありますが、これは、最高裁に私ども聞きましても、若干はあるんじゃないかということですが、最高裁自体も、個別のケースについて、こういうものですという統計がないということでございました。  ただ、たまたま新聞報道等で知ったケースは、つい最近、整理回収機構が富士銀行を相手取りましてその貸し手責任を追及したということが民事調停の場で成立に至ったというケースを聞いております。
  114. 保坂展人

    ○保坂委員 これは、今不況に苦しんでいる個人事業者、あるいは住宅ローンの返済に苦しんでいる個人債務者、あるいはサラ金で多重債務等に陥っている個人債務者、そしてまた法人も、あらゆる形態を問わず申し立てることができる、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  115. 上田勇

    上田(勇)議員 本法案で御提案させていただいております特定調停制度というのは、個人法人を問わず、経済的に破綻するおそれのある債務者経済的再生に資するとの観点から、公正かつ妥当で経済的合理性を有する内容調停成立を図ろうとするものでありますので、委員が今挙げられました方々についても、法人個人の別を問わず対象になるというふうに考えております。
  116. 保坂展人

    ○保坂委員 それで、金融監督庁に来ていただいているのですが、とりわけ住宅ローンで困っている方というのは大変多いだろうというふうに思うわけなんです。あるいは、伝えられているところの商工ローンなどで厳しい取り立てに大変参っている、こういう方も多いと思うのです。  これは実態なんですけれども、今の日本の銀行の貸付残高の中で、法人を除いた個人の割合というのは一体どのぐらいあるのか、金額はどの程度なのか。住宅ローンがどのぐらいかなんということがわかるのかどうか。あるいは、商工ローンの貸付残高、あるいは件数。このあたり、わかる範囲で結構ですから、お願いします。
  117. 乾文男

    ○乾政府参考人 お尋ねのありましたケースでございますけれども、まず、住宅ローンでございます。  私どもが把握しております銀行、これは都銀、長信銀、信託銀行、それから地銀、第二地銀、それに信用金庫も加えましたベースで見ますと、日本銀行の統計でいいますと、住宅ローンの残高は十一年六月末で七十五兆円というふうになってございます。  次に、商工ローン等から借りているものがどれぐらいかということでございます。  債務者ベースでの統計は私ども持っておりませんけれども、逆に、今よく名前が挙げられます商工ローン大手二社について申し上げますと、日栄につきましては貸出金総額は本年三月末で四千七百六十億円、それから、商工ファンドは本年七月末現在で四千八十二億円というふうになってございます。  以上でございます。
  118. 保坂展人

    ○保坂委員 もう一回金融監督庁に伺いたいのですが、今、大体大づかみで七十五兆円という住宅ローンの中で、いわゆるステップローンというのですか、ゆとり返済で金額が上がっちゃってとか、あるいはいろいろな理由で返済が遅延している、返済不能に近くなっているという数字は推定できますでしょうか。
  119. 乾文男

    ○乾政府参考人 私ども債務者サイドからの計数を持っておりませんので、先ほど申しました民間の金融機関からの融資の七十五兆円がどれぐらいが滞っているといいますか、そういう数字は持っていないわけでございます。  なお、先ほどおっしゃいましたステップローン、初め緩くて後からだんだんと返済がふえてくるというのは、民間の金融機関よりもむしろ住宅金融公庫で、初めに借りやすくするためにやっていた政策であるというふうに承知をしているところでございます。
  120. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、法務省の民事局長に、ちょっと突然だったのですけれども。  これは民事再生法でもそうですし、今回の特定調停でも、まずSOSというか、もうやっていけないという悲鳴が自営業者の方などに大変広がっているということがあるのだと思うんです。  警察庁の生活安全局から取り寄せた自殺者の統計というのを見てみますと、平成十年度、昨年で三万二千八百六十三人で、前年比八千四百七十二人ふえている。日本人男性の平均寿命が下がったというのは、これが根拠なんだと思います。そして自営業者の方が、平成九年には三千二十八人だったのが平成十年には四千三百五十五人と四三%ふえている。  それから、動機別という統計で見ますと、病苦が一番多いのですけれども、経済・生活問題が二位になっていまして、これが大変ふえている。平成九年が三千五百人台だったのが六千人台になって七〇%増。  こういう統計をどういうふうに受けとめられているかというあたりをちょっと。
  121. 細川清

    細川政府参考人 警察庁の資料を拝見いたしますと、自殺者の状況につきましては、ただいま御指摘のとおりのように拝見いたしました。この問題は、亡くなられた方に対しては大変痛ましいことでございます。  まず一番大事なことは、要するに、日本国、この国の経済全体が早く改善されるということが大事なわけでありますが、私どもの所管の関連から申しますと、経済的な破綻になった、あるいはなりつつある人たち経済的再生を助けるという制度を整備することが必要なのではないかというふうに考えておるわけでございまして、民事再生法を御審議いただきましたし、今回の法案もそういう趣旨にかなうものではないかというふうに考えておるところでございます。
  122. 保坂展人

    ○保坂委員 提案議員の方に、今の点。三万人台になって、男性の平均寿命までが減ってしまった、その中で数字をつぶさに見ると、自営業者の方が格段にふえている。理由でいうと、経済・生活問題のところが非常に多いというあたりをどう受けとめておられるか。つまり、ぎりぎりの生死のふちに行かれた人、残念ながら亡くなってしまった人以外にも、そこの寸前で立ちどまった人、引き返してきた人というのは多分この三万人をはるかに、これは推定できませんけれども、大変な数の人が今悩んでいると思うのですが、そのあたりについて。
  123. 山本幸三

    山本(幸)議員 御指摘の点は大変残念なことであるし、そういうことをそのまま放置していれば日本の社会自体が崩壊してしまうと私は大変な危機感を持っております。  その意味で、個人のみならず会社の経営者、特に中小零細企業の経営者がそういう事態に至ったときに何らかの再生を図るような手だてが十分になかったということが影響しているのではないかというのが、私どもこの法案に取りかかった最初の問題意識でございます。その意味では、これは看過できない、何とかできるだけの手だてを考えなければいけないという問題意識は委員と共通していると思います。  そういう意味におきまして、ぜひ、民事再生法はもちろんでありますけれども、それと同時に、個人も大きな対象となるこの特定調停法案の大いなる意義がそこに生まれてくるのではないかと思っております。
  124. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、続けて山本議員に伺いたいのですけれども、今回の提案された内容は、本当に困窮のふちにある人、あるいはもうあきらめかけている方にとって大変な朗報というか、これができるのかということで、一条の光が見えるということはあろうかと思うのです。  さらに、先ほど、実態ははっきりしないのですけれども、住宅ローンで返せなくなっている方、これはステップ返済というのでしょうか、一応会社の給料が減るという想定をしていないわけですよね、日本のサラリーマン。ところが、事実上、給料は減った、ボーナスは大幅にカットということで、家を売ろうにもこのバブルでもう価格がつかないということで大変困り切っている方、これは大変な数に上るのではないかと思うのですね。  それらの人たちにとって、いわゆる大きな反応が呼び起こされてくるのではないかという想定をされていらっしゃるのでしょうか。例えば、こういった法があるぞということで、大量に今困窮のふちにある方が申し立てに入るという事態を想定されていらっしゃるのでしょうか。
  125. 山本幸三

    山本(幸)議員 対象になると思われる方は、現在でも既に一般民事調停で行われておりますサラ金クレジット関係のいわゆる多重債務者は大いに対象になってくるのではないかと思いますし、御指摘の住宅ローンについても、これからまさに返済条件が厳しくなる。そして、自分の仕事が維持できてちゃんと払うということができればよかったわけでありますけれども、例えばリストラに遭ったりいたしますと途端にそれが不可能になりますし、住宅を売っても借金の半分も返せないというような事態があって、住宅はなくす、そして借金は残るというような事態に追い込まれるような方々が今後、今後の経済状況いかんによりますけれども出てくることも予想されますので、そうした方々に何とか債権者との間でうまく調整ができないかなということを考えているわけであります。それがどれぐらいになるかというのは、ちょっと具体的な数字的にはわかりません。  もともとアメリカでは、私の理解するところでは、そういう住宅についての融資を受けておりましても、住宅のアパートのかぎを債権者に渡したりすればそれですべての債権債務関係は終わり、つまりゼロから再出発できるというのが原則だというように理解しておりますし、日本のように、現状のような状況ですと大きなマイナスから再出発せざるを得ないということでありますので、せめてアメリカ並みにはそういうことができるようにしたいというところがこの法案についての問題意識でございます。
  126. 保坂展人

    ○保坂委員 時間が迫ってきたので、要は、この内容を見たときに、本当に困っている方は本当にいろいろ情報も探したいと思うし、また、新聞や週刊誌でこういう制度があるぞということが告知されればされるほど、それでは申し込んでみようと、やはりふえるというふうに考えていいと思うのですね。  きょうはあえて裁判所には来ていただかなかったのです。というのは、いつもお答えが平板で、時間の節約のために山本議員に伺いたいのですが、これは裁判所は対応できるのですか。どんどん門前市をなすみたいになったときに、一体どうするのだというあたりは提案議員としてどういうふうに考えられますか。
  127. 山本幸三

    山本(幸)議員 その点は、私どもも問題意識を持っておりまして、最高裁に対しては大丈夫かということを念を押しておりますが、最高裁の方は大丈夫ですというふうに言っていただいておりまして、そこは最高裁を信頼したいと思いますが、しかし同時に、おっしゃったように、これまでの状況とは違う事態が起こる可能性がありますので、その点は十分に最高裁においても対応していただけるようにお願いしたいと思いますし、私どもも、そうした点においていろいろな点から協力できるところは協力しなければいけないなと思っております。
  128. 保坂展人

    ○保坂委員 最高裁にやはり意識転換していただいて、本当に人員の要求を、今までの通年ベースのものでやろうという意識を変えていただきたいと私も思います。  それで、非常に困窮されている人にとっては注目すべき制度だと思うんですけれども、一点、世の中にはやはりいろいろ逆さから法律を見る方もいて、いわゆる困窮を装って、隠し財産あるいはいろいろな匿名の資金を実は持っているんだけれども、借金で首が回りませんよ、だれから見てもそうでしょうという形で出てくる人に対して、これは山本議員が日経新聞のインタビューに答えて、調査権を与えて、隠し財産などについてチェックするんだ、私財提供を求めることもあり得る、こうおっしゃっているんですが、この実効性ですね、調停作業の中でどれだけ調べられるのか。このあたりは具体的にどう考えておられますか。
  129. 山本幸三

    山本(幸)議員 その点は、いわゆる現行民事調停も職権探知主義ということでありまして、調停委員会が職権でもって一切の事情を調べて判断するということになっております。  これは、疑い出せば切りがないわけでありますけれども、しかし、今回の法案では、そういうモラルハザードを防ぐという観点におきましても、当事者の責務を訓示規定として置いておりますし、必要がある場合には資料提出命令をかける、それを過料をもって担保するという形にしておりますので、相当効果が期待できるんじゃないかと思っております。  万一、そういうことでできなければ、いわゆる民法の規定に戻りますし、あるいは、再生手続等に移行いたしますと否認権の対象になるということになって、債権者としてはそういう権利の回復ができるというふうに考えております。
  130. 保坂展人

    ○保坂委員 財産の状況を示すべき明細書などを提出すべしということになっているんですが、そこに虚偽の事実などがあった場合には、やはりそこは厳しく問うというふうにしていくべきだろうと意見を申し上げて、あと、二十四条関係で、クレ・サラ関係で必要書類を出してこないということで、極めて不透明な現実がある。これを実際のところ出させる。これは十万円以下の過料処分が罰則としてついているわけですけれども、これは、そろばんをはじいてみて、十万円なら払った方がいいやというようなことはないですか。ちょっと安過ぎるんじゃないかというようなことも考えるんですが、いかがですか。
  131. 山本幸三

    山本(幸)議員 過料の金額は、他の民事調停における過料等との均衡で考えて決めております。  例えば、現行民事調停では不出頭に対して五万円以下の過料、他方、調停前の措置命令違反に対しては十万円以下ということになっておりまして、単なる不出頭よりも重い制裁が科せられてしかるべきだ、そして調停前の措置命令の過料と同程度が適当ではないかと判断したわけであります。余り高くするというのも他との権衡が図られませんので、そういうふうにしております。  ただ、現行民事調停でも、サラ金調停をやっておりましても、債権者の方がなかなか協力しないという場合に、少なくとも訓示規定でも置いておいてくれれば、そういうことを債権者に言って促すことができるのにという要望が相当強うございました。したがいまして、今回は、そういう当事者の責務という訓示規定を、そうした声に応じまして入れましたし、そしてそれを過料をかけるということで二重にかけておるわけでございます。そこのところは現行よりは格段に効果が図られるんじゃないかと思っております。
  132. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、時間が参りましたので、労働債権の優先的な支払いなども含めていろいろ目配りをしていただいたことも含めて、提案議員の御苦労に敬意を表しながら、私の質問を終わります。
  133. 武部勤

    武部委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  134. 武部勤

    武部委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  亀井久興君外六名提出特定債務等調整促進のための特定調停に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 武部勤

    武部委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  137. 武部勤

    武部委員長 次に、第百四十五回国会、内閣提出電気通信回線による登記情報の提供に関する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。臼井法務大臣。     —————————————  電気通信回線による登記情報の提供に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  138. 臼井日出男

    ○臼井国務大臣 電気通信回線による登記情報の提供に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、最近における高度情報化社会の進展やこれに対応した行政サービスの質的向上の要請にかんがみ、不動産登記、商業登記等についての磁気ディスクをもって調製された登記簿に記録されている登記情報のより簡易かつ迅速な利用を図るため、登記情報電気通信回線を使用して提供する制度を創設するための措置を講じようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  第一に、法務大臣は、登記情報電気通信回線による閲覧をしようとする者の委託に係る登記情報電気通信回線を使用して当該委託者に送信することを業務とする法人を、全国に一を限って指定することができることとしております。  第二に、指定法人に対し、登記情報電気通信回線による閲覧をしようとする者の委託に係る登記情報の提供を電気通信回線を使用して請求する権利を認めることとしております。  第三に、指定法人に対する法務大臣の監督等に関する規定を設けることとしております。  以上が、この法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  139. 武部勤

    武部委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、来る十日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時八分散会