○
杉浦委員 杉浦正健でございます。
まず、
臼井法務大臣、
山本政務次官におかれましては、このところ
法務委員会、
法務行政、
課題が山積しておるわけでありますが、その中で御就任いただきまして本当に御苦労さまでございます。人格、
識見ともに我ら
自民党が胸を張って誇れるお二方を
法務行政に送り込めたということで、喜んでおる次第であります。
また、
委員長は我が同僚の中で敬愛してやまない
武部先生が御就任くださいました。
法務委員会も、オウム問題を初め、
重要課題がたくさんあるわけでありますが、大いに御尽力いただけることを期待申し上げている次第でございます。
きょうは
一般質疑ということでございますが、現在、
我が国の
司法行政全体の大きな
課題になっております
司法改革について若干私見を申し上げ、
法務省それから
最高裁にも御
出席をいただいておりますが、御
決意のほどをお伺いしたいと思っておる次第であります。
この問題、実は既に皆さん御
案内のとおり、
内閣に
司法制度改革審議会が設置されました。その
審議会の方につきましては、
先国会におきまして当
委員会において御
審議いただいて成立させたものでございますが、それに先立ちまして、実は、私
ども自由民主党としては、二年以上、そもそもはもう三年近い前でございましたけれ
ども、
司法制度改革調査会を立ち上げまして鋭意取り組んでまいった問題でございます。それに当初からかかわっておった
人間の一人として、このように
事態が進んでおりますことを欣快至極に思っておる次第でございます。
前回の
選挙が終わって間もなくであったと思いますが、
橋本総理から、当時
政調会長でございました
山崎拓先生を通じまして、
司法改革の
緊要性にかんがみて取り組んでほしいという御
要請がございました。御
案内のとおり、
橋本総理は六
大改革を仰せ出された方であります。六
大改革を
選挙の公約として全面に打ち出して、
現下日本の当面している諸問題について、個々の
改革ではだめだ、
パッケージで全体
改革像を示して、そして国を挙げて取り組むということが大切だということを力説され、
選挙でも訴えられ、そしてそれを実行に移されたわけであります。
当時、
山崎先生が
政調会長で、最初の
司法制度改革調査会では
会長をお引き受けになられたわけでありますが、そのときの
お話では、六番目の
改革に次ぐ七
大改革としてこの
司法改革を位置づけるんだ、しっかりやってほしいというふうに
橋本総理がおっしゃられたということを伺っております。
ちょっと
余談になりますが、私は、
橋本総理、不幸にもといいますか、この間の
参議院選挙で敗北を喫して退陣されましたが、人の評価というのはひつぎを覆って定まるという
言葉がありますけれ
ども、
我が国の戦後史上で
日本の
改革を
パッケージで包括的にやらなきゃいかぬと六
大改革を言い出され、七
大改革まで手をつけられたという
意味では、大変な功績を残されたと思っております。まだ生きておられますが、そう思っております。
もちろん、
改革は緒についたばかりであります。省庁の再編成にしても、
地方分権にしても、
金融システム改革は一応仕上がりましたが、その他これから引き続きやらなきゃいけないことでありますが、私は、
橋本総理の
改革に対する姿勢は大変高く評価させていただいておる次第でございます。ちょっと
余談になりましたが。
そして、
山崎先生のもとで、
保岡興治先生が
会長代理、その後は
会長に就任されましたが、なられ、そして、私に
事務局長をやれという御下命がございまして、喜んで参加させていただいた次第でございます。
自民党の
調査会におきましては、ほぼ一年ぐらいをかけまして、
関係各方面から詳細な
ヒアリングを行い、そして、二
段階に分けてやったのですが、
分科会を設ける、大体今の
内閣の
審議会と同じような
考えですが、
制度のインフラと人に関するもの、二つに分けまして、当
委員会の
理事でございます
太田先生と、それから
加藤先生は
委員でなくなりましたかな、
加藤先生が
分科会長になられまして、
ヒアリングに基づいて出された
問題点について詳細な詰めを行い、昨年の
参議院選挙の前に
自民党としての
結論をまとめて
橋本総理に
答申をしたということはもう御
案内のとおりでございます。
その
答申の
結論の
一つが、
内閣においても
司法制度改革審議会を設置して、広く
国民の声を聞いて
改革を進めてほしいという
項目でございました。
橋本総理は退陣され、
小渕総理が後を継がれたわけでありますけれ
ども、私
ども自民党のその
要請を
政府、
内閣として重く受けとめていただきまして、
先国会におきまして
審議会法が
内閣提出で提出されるに至ったわけでございます。重ねて申しますが、そういう
意味で、私
どもがささやかな
努力でやってまいりましたことが実を結びつつあると申しますか、これからでありますが、前進しておるということは本当にうれしい次第でございます。
自民党におきましても、
内閣における
審議会の設置に伴いまして、今までございました
司法制度改革調査会をさらに強化いたしまして、つい先日、
司法制度調査会を発足させました。
保岡先生を
会長に仰ぎ、ここにおられる
与謝野先生、
太田先生初めそうそうたる
方々に御参加をいただきまして、五つの小
委員会を設置いたしました。そして、それぞれが
内閣の
審議会の
審議と並行して、あるいはむしろ先行して党内で
議論を深めていこう、そして、党の
立場で
審議会の
議論に前向きに反映させていただくように
努力しようということに相なっております。
私は、この
司法制度改革については、かつては
法曹界の一員でもあったわけでございまして、
弁護士会を初めといたしまして広い
意味での
法曹関係者の中に
相当機運が高くなっているということは前から
認識をしておりました。また、
社会においても、つまり
司法制度のもとにある
国民各界各層においてもさまざまな形で
改革に対する要望があるということは承知しておりましたが、
自民党の
司法制度調査会における
ヒアリングを通じまして、まさにそのことを痛感したわけでございます。
日本の
司法制度は、
明治維新とともに、
司法省ができて、西欧の
制度を取り入れ、
整備を始めたのは御
案内のとおりであります。
帝国憲法発布を契機にしてさらにさまざまな
整備が行われて今日に至っておりますが、
基本的に、
明治維新以来と申しますか、明治にできた
骨格以来、その
骨格を維持されたまま今日に至っておるわけであります。戦後の、敗戦に伴う占領、それによって
アメリカ的な
司法制度の
考え方がかなり入りまして、
刑訴法の
改正等が行われておるわけでありますけれ
ども、
基本的には変わっていないと
認識しております。
そして、その間百三十年、四十年にわたる
蓄積があります。
司法当局、
裁判所における
判例の積み重ね、
弁護士会においても
代言人時代からさまざまな
努力が行われました。長い先輩の歴史があるわけでございますが、一言で申しまして、
司法制度全体については一種の
制度疲労と申しますか、
疲労の
蓄積と申しますか、停滞と申しますか、そういう面がこのところ強くあらわれていることは否定できないのではないかと思うわけでございます。
これは党の
調査会等でも取り上げられたことですので幾つか例示をさせていただきますと、例えば
工業所有権をめぐる争訟につきましては、
アメリカ、ヨーロッパに比べると非常に立ちおくれが目立つわけであります。
裁判が遅いとか、
制度の
基本的な
システムも若干違う面もあるわけですけれ
ども、何よりも、認容される
損害賠償額がけた違いであります。
日本の場合、私の記憶では、
最高限がせいぜい数十億ぐらいのものだと思いますが、
アメリカに至ってはその十倍はおろかその百倍近い
認容額もあるというような
状況であります。
工業所有権の
制度というのは、これからの
日本にとって、知的な財産、
国民が生み出してきたものを守る大変重要な柱であるわけでありますが、その立ちおくれが懸念されるわけでございます。
もう
一つ党の方で挙げられましたのは、
慰謝料額が少な過ぎる。とりわけ
名誉毀損、これは刑法の
名誉毀損罪があるわけですが、この
名誉毀損に対する
司法関係の
運用、
裁判所等の
判例がもう定着しておるわけでありますが、その全体の構造が、名誉を侵害された
方々の名誉の
回復についてはいささか常識離れしているのじゃないか。その
慰謝料に至っては、これは微々たるものしか認容しないわけであります。
当今、一番問題になるのは
マスコミによる
名誉毀損ということでございましょうが、
マスコミ等も、ひどい
言い方をいたしますと、
慰謝料が安いことを
計算ずくで
予算に計上して、
名誉毀損しても構わない、
被害回復措置も、例えば新聞でありましたら一面のトップにやれとかいうような命令は下らないわけでありまして、ちゃんと今の
名誉毀損に対する
法的制度の不備を前提にしてやっているとしか思えない節もあるわけでございます。
不法行為については、
弁護費用は最近相手方に負担させる
制度が定着してまいっておりますけれ
ども、
認容額が少ないものですから、大体その一割から二割程度という、
弁護費用も微々たるものであります。
名誉毀損の
裁判をやるには優秀な
弁護士を頼まなきゃいけない。数百万円ぐらいの
弁護費用が要るのは当たり前でありますが、
認容額が例えば百万円ですと、一割ぐらいしか認めない、十万円ぐらいしか。というようなことで、優秀な
弁護士も頼めない。
裁判が遅いから、判決があった
段階ではもう
回復不可能な
状態になっている。我々
政治家に至っては、その間に
選挙で落選するという悲惨な
事態も時には起こるということでありまして、まあ
政治家のことはさておきまして、これは大きな問題ではないかと思うわけであります。
もう
一つ言わせていただきますと、
刑事手続におきましても、いわゆる
権利保釈の問題があります。これは前から私は言っておるのですが、
保釈は
権利であるわけです。
刑訴法何条でしたか、あるわけですが、ただし書きがあって、ただし、
逃亡のおそれとか
証拠隠滅のおそれがある場合にはしなくてもいい、こういうふうに、しないのが
例外になっておるわけですが、ここには
裁判所も
法務省も
弁護士もいらっしゃいますが、
実態は逆転しております。
保釈しないのが当たり前、
原則であって、
幾ら保釈金を積むといっても
保釈をなかなか認めない、これが
実態であります。
原則と
例外が逆転しているという
現状であります。これは長い間の
運用ですから、とりわけ
検察官、
裁判官の方に責任があると思うのですが、
弁護士会の方ももっと戦っていいのではないかと常々私は思っておる次第でございます。裁かれる
国民の側から見た場合の
国民の
人権、例えば勾留ということですと自由を奪うわけですが、そういう
立場から見た
司法の
運用というと、まさに今の
状況は、私は憂うべき
状態だと言ってよろしいかと思います。
一例を挙げれば、
アメリカですと、住所がはっきりしていて
逃亡のおそれもないと認めれば、
保釈金はうんと高いですが、どんどん
保釈するというのが
実情であります。
日本の場合ですと、第一回の
裁判で
裁判所で自白して
裁判が短くなるという保証はないから、ほとんどやられないというのが現実でありまして、ここはどういうふうにして改善したらいいのか。
法務大臣においても、
指揮権を発動してこれを是正するぐらいのことをやっていただいてもいいのではないか。それは
個人的に思っている次第であります。
ほかにもいろいろありますが、時間がございませんので割愛させていただきますけれ
ども、やはりこの
司法改革を進めるに当たっての
視点で、特にきょう
出席しておられる
法務省、
裁判所、それから広い
意味の
権力であります警察、そういった
関係者に望みたいのは、
司法権力というのは、
憲法によって
国家から与えられているものではあるけれ
ども、あくまでもそれは
国民の信託に基づいて、
国民のためにゆだねられた
権力だという意識を強く持っていただきたい。
制度が
疲労をして機能しなくなっているというのも、
根本を尋ねるとそういうところにあるのではないだろうか、こう思うわけであります。
言い方をかえますと、
権力を行使する者はもっともっと謙虚になってほしい。
政治もそうですし、
行政もそうですが、
権力を
国民からゆだねられている者は、謙抑という
言葉があるわけですが、謙虚に、権限の行使というのは抑制的に行うというのが
根本でなければいかぬと思うわけでありますが、その
視点が欠落しかかっているというのが今の
司法の
現状ではないだろうか、こう思う次第でございます。
したがって、
司法制度改革、これから
内閣におかれても進められてまいるわけであります。我々も参加してまいりますが、あの
委員会の場合は
法曹関係者はごく少数ですから、あるいは
参考人を通していろいろな
各界各層の
国民の声に謙虚に耳を傾けて、先入観を持たずに、これから迎える二千年紀に向かって
日本の
司法制度はかくあるべきだということを、
自分たちの
考えはよそに置いて取り組んでいただきたいというのが切なる願いでございます。
私も
法曹三者の一翼に加わったこともあるわけでわかるのですが、
裁判官、
検察官、
弁護士、
司法試験を通って、大変な
試験を通ってくるわけでありまして、優秀な人が多い。
自分を見ていて思うのですが、やはり特権的というか、とかく
独善的傾向に陥りやすいわけであります。そういう
傾向が
法曹三者にはあるわけでございまして、その点はよくよく留意いただいて、この
司法改革には前向きに、謙虚に、虚心に取り組んでいただくことを希望する次第でございます。
私、
自民党の
法律扶助制度改革委員会の小
委員長を仰せつかったので、機会あるごとに触れていることなんですけれ
ども、党でも
議論した、今度の
司法制度審議会でも
議論してきたことになっているのですが、真っ先に出てきたのが
法律扶助協会の
改革ということで、今度
国会に出すそうですが、
法律もつくる、それから
予算もふやすということで
改革というのを出してこられました。別に、出したことを悪いとは言っていませんが、私が
ヒアリングした限り、党の方でも、あの
法律扶助制度の
改革というのは
民事にとどまらず
刑事も入れるべきだ、そして
民事も
個人だけだけれ
ども、法人も入れなければいかぬという
議論はしておったわけですから、まだ
審議はこれからだというのに、なぜ今の
法律扶助、
民事の
個人だけ対象の
制度を
法律にして出してくるというふうなあれをとられるのか。
これは
法曹三者で長い
間研究会をやってこられた。そして、
報告書は出ています。それはそれでいいのですが、それに基づいて出てきた案でありまして、内輪の
議論だけでつくった案だと言っていいでしょう、メンバーは学者が何人か入っておりますけれ
ども。それはそれで決して悪いことじゃないけれ
ども、
司法改革全体の中でもっと大きな
イギリス並みの
法律扶助協会をつくろうぐらい思っておる
人間もおるわけですから、今のちっぽけな
扶助協会にとらわれないで、この際、
先進諸国に引けをとらない、
法律のいわば
セーフティーネットでございます、
国民の
訴訟費用を負担できない
方々に対して
権利実現の機会を与えるという
ネットの
役割を果たす
制度ですから、
考えてほしいと思うわけです。これなどは
法曹三者のひとりよがりの
考えで出してきたものとしか思えないわけでございます。
時間が大分迫ってまいりましたので、この辺で終わらせていただきます。
最後に、
法務大臣並びに
最高裁から御
出席いただいておりますが、私の
意見を述べさせていただきましたけれ
ども、それに対する
感想を含めまして、
司法改革に対する御
決意のほどを御両者からお伺いして、
質問を終わりたいと思います。