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1999-11-10 第146回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十日(水曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 武部  勤君    理事 太田 誠一君 理事 杉浦 正健君    理事 与謝野 馨君 理事 横内 正明君    理事 北村 哲男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 西村 眞悟君       石破  茂君    奥野 誠亮君       鯨岡 兵輔君    熊谷 市雄君       左藤  恵君    菅  義偉君       高市 早苗君    藤井 孝男君       保岡 興治君    山本 有二君       枝野 幸男君    坂上 富男君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君     …………………………………    法務大臣         臼井日出男君    法務政務次官       山本 有二君    最高裁判所事務総局総務局    長事務取扱        堀籠 幸男君    最高裁判所事務総局人事局    長            金築 誠志君    最高裁判所事務総局刑事局    長            白木  勇君    政府参考人    (警察庁長官官房長)   石川 重明君    政府参考人    (警察庁生活安全局長)  黒澤 正和君    政府参考人    (警察庁刑事局長)    林  則清君    政府参考人    (法務省刑事局長)    松尾 邦弘君    政府参考人    (法務省矯正局長)    坂井 一郎君    政府参考人    (公安調査庁長官)    木藤 繁夫君    法務委員会専門員     井上 隆久君     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     石破  茂君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     笹川  堯君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前九時四十五分開議      ————◇—————
  2. 武部勤

    武部委員長 これより会議を開きます。  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房長石川重明君、警察庁生活安全局長黒澤正和君、警察庁刑事局長林則清君、法務省刑事局長松尾邦弘君、法務省矯正局長坂井一郎君、公安調査庁長官木藤繁夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 武部勤

    武部委員長 次に、お諮りいたします。  本日、最高裁判所堀籠総務局長事務取扱金築人事局長白木刑事局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  6. 武部勤

    武部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。杉浦正健君。
  7. 杉浦正健

    杉浦委員 杉浦正健でございます。  まず、臼井法務大臣山本政務次官におかれましては、このところ法務委員会法務行政課題が山積しておるわけでありますが、その中で御就任いただきまして本当に御苦労さまでございます。人格、識見ともに我ら自民党が胸を張って誇れるお二方を法務行政に送り込めたということで、喜んでおる次第であります。  また、委員長は我が同僚の中で敬愛してやまない武部先生が御就任くださいました。法務委員会も、オウム問題を初め、重要課題がたくさんあるわけでありますが、大いに御尽力いただけることを期待申し上げている次第でございます。  きょうは一般質疑ということでございますが、現在、我が国司法行政全体の大きな課題になっております司法改革について若干私見を申し上げ、法務省それから最高裁にも御出席をいただいておりますが、御決意のほどをお伺いしたいと思っておる次第であります。  この問題、実は既に皆さん御案内のとおり、内閣司法制度改革審議会が設置されました。その審議会の方につきましては、先国会におきまして当委員会において御審議いただいて成立させたものでございますが、それに先立ちまして、実は、私ども自由民主党としては、二年以上、そもそもはもう三年近い前でございましたけれども司法制度改革調査会を立ち上げまして鋭意取り組んでまいった問題でございます。それに当初からかかわっておった人間の一人として、このように事態が進んでおりますことを欣快至極に思っておる次第でございます。  前回の選挙が終わって間もなくであったと思いますが、橋本総理から、当時政調会長でございました山崎拓先生を通じまして、司法改革緊要性にかんがみて取り組んでほしいという御要請がございました。御案内のとおり、橋本総理は六大改革を仰せ出された方であります。六大改革選挙の公約として全面に打ち出して、現下日本の当面している諸問題について、個々の改革ではだめだ、パッケージで全体改革像を示して、そして国を挙げて取り組むということが大切だということを力説され、選挙でも訴えられ、そしてそれを実行に移されたわけであります。  当時、山崎先生政調会長で、最初の司法制度改革調査会では会長をお引き受けになられたわけでありますが、そのときのお話では、六番目の改革に次ぐ七大改革としてこの司法改革を位置づけるんだ、しっかりやってほしいというふうに橋本総理がおっしゃられたということを伺っております。  ちょっと余談になりますが、私は、橋本総理、不幸にもといいますか、この間の参議院選挙で敗北を喫して退陣されましたが、人の評価というのはひつぎを覆って定まるという言葉がありますけれども我が国の戦後史上で日本改革パッケージで包括的にやらなきゃいかぬと六大改革を言い出され、七大改革まで手をつけられたという意味では、大変な功績を残されたと思っております。まだ生きておられますが、そう思っております。  もちろん、改革は緒についたばかりであります。省庁の再編成にしても、地方分権にしても、金融システム改革は一応仕上がりましたが、その他これから引き続きやらなきゃいけないことでありますが、私は、橋本総理改革に対する姿勢は大変高く評価させていただいておる次第でございます。ちょっと余談になりましたが。  そして、山崎先生のもとで、保岡興治先生会長代理、その後は会長に就任されましたが、なられ、そして、私に事務局長をやれという御下命がございまして、喜んで参加させていただいた次第でございます。  自民党調査会におきましては、ほぼ一年ぐらいをかけまして、関係各方面から詳細なヒアリングを行い、そして、二段階に分けてやったのですが、分科会を設ける、大体今の内閣審議会と同じような考えですが、制度のインフラと人に関するもの、二つに分けまして、当委員会理事でございます太田先生と、それから加藤先生委員でなくなりましたかな、加藤先生分科会長になられまして、ヒアリングに基づいて出された問題点について詳細な詰めを行い、昨年の参議院選挙の前に自民党としての結論をまとめて橋本総理答申をしたということはもう御案内のとおりでございます。  その答申結論一つが、内閣においても司法制度改革審議会を設置して、広く国民の声を聞いて改革を進めてほしいという項目でございました。橋本総理は退陣され、小渕総理が後を継がれたわけでありますけれども、私ども自民党のその要請政府内閣として重く受けとめていただきまして、先国会におきまして審議会法内閣提出で提出されるに至ったわけでございます。重ねて申しますが、そういう意味で、私どもがささやかな努力でやってまいりましたことが実を結びつつあると申しますか、これからでありますが、前進しておるということは本当にうれしい次第でございます。  自民党におきましても、内閣における審議会の設置に伴いまして、今までございました司法制度改革調査会をさらに強化いたしまして、つい先日、司法制度調査会を発足させました。保岡先生会長に仰ぎ、ここにおられる与謝野先生太田先生初めそうそうたる方々に御参加をいただきまして、五つの小委員会を設置いたしました。そして、それぞれが内閣審議会審議と並行して、あるいはむしろ先行して党内で議論を深めていこう、そして、党の立場審議会議論に前向きに反映させていただくように努力しようということに相なっております。  私は、この司法制度改革については、かつては法曹界の一員でもあったわけでございまして、弁護士会を初めといたしまして広い意味での法曹関係者の中に相当機運が高くなっているということは前から認識をしておりました。また、社会においても、つまり司法制度のもとにある国民各界各層においてもさまざまな形で改革に対する要望があるということは承知しておりましたが、自民党司法制度調査会におけるヒアリングを通じまして、まさにそのことを痛感したわけでございます。  日本司法制度は、明治維新とともに、司法省ができて、西欧の制度を取り入れ、整備を始めたのは御案内のとおりであります。帝国憲法発布を契機にしてさらにさまざまな整備が行われて今日に至っておりますが、基本的に、明治維新以来と申しますか、明治にできた骨格以来、その骨格を維持されたまま今日に至っておるわけであります。戦後の、敗戦に伴う占領、それによってアメリカ的な司法制度考え方がかなり入りまして、刑訴法改正等が行われておるわけでありますけれども基本的には変わっていないと認識しております。  そして、その間百三十年、四十年にわたる蓄積があります。司法当局裁判所における判例の積み重ね、弁護士会においても代言人時代からさまざまな努力が行われました。長い先輩の歴史があるわけでございますが、一言で申しまして、司法制度全体については一種の制度疲労と申しますか、疲労蓄積と申しますか、停滞と申しますか、そういう面がこのところ強くあらわれていることは否定できないのではないかと思うわけでございます。  これは党の調査会等でも取り上げられたことですので幾つか例示をさせていただきますと、例えば工業所有権をめぐる争訟につきましては、アメリカ、ヨーロッパに比べると非常に立ちおくれが目立つわけであります。  裁判が遅いとか、制度基本的なシステムも若干違う面もあるわけですけれども、何よりも、認容される損害賠償額がけた違いであります。日本の場合、私の記憶では、最高限がせいぜい数十億ぐらいのものだと思いますが、アメリカに至ってはその十倍はおろかその百倍近い認容額もあるというような状況であります。工業所有権制度というのは、これからの日本にとって、知的な財産、国民が生み出してきたものを守る大変重要な柱であるわけでありますが、その立ちおくれが懸念されるわけでございます。  もう一つ党の方で挙げられましたのは、慰謝料額が少な過ぎる。とりわけ名誉毀損、これは刑法の名誉毀損罪があるわけですが、この名誉毀損に対する司法関係運用裁判所等判例がもう定着しておるわけでありますが、その全体の構造が、名誉を侵害された方々の名誉の回復についてはいささか常識離れしているのじゃないか。その慰謝料に至っては、これは微々たるものしか認容しないわけであります。  当今、一番問題になるのはマスコミによる名誉毀損ということでございましょうが、マスコミ等も、ひどい言い方をいたしますと、慰謝料が安いことを計算ずく予算に計上して、名誉毀損しても構わない、被害回復措置も、例えば新聞でありましたら一面のトップにやれとかいうような命令は下らないわけでありまして、ちゃんと今の名誉毀損に対する法的制度の不備を前提にしてやっているとしか思えない節もあるわけでございます。  不法行為については、弁護費用は最近相手方に負担させる制度が定着してまいっておりますけれども認容額が少ないものですから、大体その一割から二割程度という、弁護費用も微々たるものであります。名誉毀損裁判をやるには優秀な弁護士を頼まなきゃいけない。数百万円ぐらいの弁護費用が要るのは当たり前でありますが、認容額が例えば百万円ですと、一割ぐらいしか認めない、十万円ぐらいしか。というようなことで、優秀な弁護士も頼めない。裁判が遅いから、判決があった段階ではもう回復不可能な状態になっている。我々政治家に至っては、その間に選挙で落選するという悲惨な事態も時には起こるということでありまして、まあ政治家のことはさておきまして、これは大きな問題ではないかと思うわけであります。  もう一つ言わせていただきますと、刑事手続におきましても、いわゆる権利保釈の問題があります。これは前から私は言っておるのですが、保釈権利であるわけです。刑訴法何条でしたか、あるわけですが、ただし書きがあって、ただし、逃亡のおそれとか証拠隠滅のおそれがある場合にはしなくてもいい、こういうふうに、しないのが例外になっておるわけですが、ここには裁判所法務省弁護士もいらっしゃいますが、実態は逆転しております。保釈しないのが当たり前、原則であって、幾ら保釈金を積むといっても保釈をなかなか認めない、これが実態であります。原則例外が逆転しているという現状であります。これは長い間の運用ですから、とりわけ検察官裁判官の方に責任があると思うのですが、弁護士会の方ももっと戦っていいのではないかと常々私は思っておる次第でございます。裁かれる国民の側から見た場合の国民人権、例えば勾留ということですと自由を奪うわけですが、そういう立場から見た司法運用というと、まさに今の状況は、私は憂うべき状態だと言ってよろしいかと思います。  一例を挙げれば、アメリカですと、住所がはっきりしていて逃亡のおそれもないと認めれば、保釈金はうんと高いですが、どんどん保釈するというのが実情であります。日本の場合ですと、第一回の裁判裁判所で自白して裁判が短くなるという保証はないから、ほとんどやられないというのが現実でありまして、ここはどういうふうにして改善したらいいのか。法務大臣においても、指揮権を発動してこれを是正するぐらいのことをやっていただいてもいいのではないか。それは個人的に思っている次第であります。  ほかにもいろいろありますが、時間がございませんので割愛させていただきますけれども、やはりこの司法改革を進めるに当たっての視点で、特にきょう出席しておられる法務省裁判所、それから広い意味権力であります警察、そういった関係者に望みたいのは、司法権力というのは、憲法によって国家から与えられているものではあるけれども、あくまでもそれは国民の信託に基づいて、国民のためにゆだねられた権力だという意識を強く持っていただきたい。制度疲労をして機能しなくなっているというのも、根本を尋ねるとそういうところにあるのではないだろうか、こう思うわけであります。  言い方をかえますと、権力を行使する者はもっともっと謙虚になってほしい。政治もそうですし、行政もそうですが、権力国民からゆだねられている者は、謙抑という言葉があるわけですが、謙虚に、権限の行使というのは抑制的に行うというのが根本でなければいかぬと思うわけでありますが、その視点が欠落しかかっているというのが今の司法現状ではないだろうか、こう思う次第でございます。  したがって、司法制度改革、これから内閣におかれても進められてまいるわけであります。我々も参加してまいりますが、あの委員会の場合は法曹関係者はごく少数ですから、あるいは参考人を通していろいろな各界各層国民の声に謙虚に耳を傾けて、先入観を持たずに、これから迎える二千年紀に向かって日本司法制度はかくあるべきだということを、自分たち考えはよそに置いて取り組んでいただきたいというのが切なる願いでございます。  私も法曹三者の一翼に加わったこともあるわけでわかるのですが、裁判官検察官弁護士司法試験を通って、大変な試験を通ってくるわけでありまして、優秀な人が多い。自分を見ていて思うのですが、やはり特権的というか、とかく独善的傾向に陥りやすいわけであります。そういう傾向法曹三者にはあるわけでございまして、その点はよくよく留意いただいて、この司法改革には前向きに、謙虚に、虚心に取り組んでいただくことを希望する次第でございます。  私、自民党法律扶助制度改革委員会の小委員長を仰せつかったので、機会あるごとに触れていることなんですけれども、党でも議論した、今度の司法制度審議会でも議論してきたことになっているのですが、真っ先に出てきたのが法律扶助協会改革ということで、今度国会に出すそうですが、法律もつくる、それから予算もふやすということで改革というのを出してこられました。別に、出したことを悪いとは言っていませんが、私がヒアリングした限り、党の方でも、あの法律扶助制度改革というのは民事にとどまらず刑事も入れるべきだ、そして民事個人だけだけれども、法人も入れなければいかぬという議論はしておったわけですから、まだ審議はこれからだというのに、なぜ今の法律扶助民事個人だけ対象の制度法律にして出してくるというふうなあれをとられるのか。  これは法曹三者で長い間研究会をやってこられた。そして、報告書は出ています。それはそれでいいのですが、それに基づいて出てきた案でありまして、内輪の議論だけでつくった案だと言っていいでしょう、メンバーは学者が何人か入っておりますけれども。それはそれで決して悪いことじゃないけれども司法改革全体の中でもっと大きなイギリス並み法律扶助協会をつくろうぐらい思っておる人間もおるわけですから、今のちっぽけな扶助協会にとらわれないで、この際、先進諸国に引けをとらない、法律のいわばセーフティーネットでございます、国民訴訟費用を負担できない方々に対して権利実現の機会を与えるというネット役割を果たす制度ですから、考えてほしいと思うわけです。これなどは法曹三者のひとりよがりの考えで出してきたものとしか思えないわけでございます。  時間が大分迫ってまいりましたので、この辺で終わらせていただきます。  最後に、法務大臣並びに最高裁から御出席いただいておりますが、私の意見を述べさせていただきましたけれども、それに対する感想を含めまして、司法改革に対する御決意のほどを御両者からお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  8. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま杉浦委員から、自由民主党における長い間のいろいろな御努力あるいは司法制度改革に対するお考えを伺わせていただきました。御苦労に対して心から敬意を表する次第でございます。  司法は、近代国家基本でございます法の支配を実現する、こういう役割を担っておりまして、国民権利実現を図るとともに、国民基本的人権というものを擁護する、さらには、国民生活の安全を維持する等々、国民生活にとって極めて重要な役割を担っているものでございます。  二十一世紀我が国におきましては、社会が複雑多様化いたしておりますし、また、国際化等もどんどんしていくという環境にございますし、社会規制緩和等改革によりまして、事前規制型から事後チェック型というものに移行する、そうした変化をいたしているわけでございます。そうしたことを考えますと、司法役割というのは一層重要なものになってきている、このように感じている次第でございます。  したがいまして、司法機能の充実、そして国民が身近に利用することができる司法、あるいは国民社会のニーズに的確にこたえ得る司法、こういうことをしっかりと構築していく必要があると思います。先生からいろいろお話をいただきました諸点につきまして、これからもしっかりと心にとめながら決意を新たにして頑張ってまいりたい、このように考えている次第でございます。  先ほどお話しいただきました司法制度改革審議会におきましては、お話のとおり、司法制度改革と基盤の整備に関して、基本的な施策について国民的な見地から審議が行われているというふうに存じております。私ども法務省といたしましても、司法制度を所轄する官庁といたしまして、この司法制度改革審議会審議が円満にいきますように、最大限努力をいたしますとともに積極的に支援をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。  この暮れまでには重要項目というものを決めまして、明年には先生指摘のように国民の幅広い層からいろいろな御意見というものを聴取して、今後、答申というものを決めていくということになろうかと思いますが、私ども、しっかりと応援をしてまいりたいと思っております。
  9. 堀籠幸男

    堀籠最高裁判所長官代理者 二十一世紀を目前にしまして、社会経済情勢変動期を迎え、国民司法に対する期待が高まっているという認識を持っております。裁判所といたしましても、利用者である国民にとってわかりやすく利用しやすい裁判制度の構築を目指し、国民の負託にこたえ得る司法制度実現に向けて最大限努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  また、司法制度改革審議会からの要請がありますれば、各種の資料の提供や実情の紹介を行うとともに、裁判制度を担う立場から意見を申し上げるなどして、できる限りの協力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  10. 杉浦正健

    杉浦委員 終わります。
  11. 武部勤

  12. 坂上富男

    坂上委員 坂上富男でございます。臼井大臣山本政務次官におかれては、大変重要な職務に御就任になったわけでございますが、まずはおめでとうございます。  さて、きのう、国会改革の一環といたしまして、政府委員制度を廃止いたしまして、直接大臣から、直接政務次官から御答弁をいただくという方式になったわけでございますが、これに対する所感はいかがでしたか。簡単にどうぞ。
  13. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今度新しい方式になりました。私も大臣経験がございますが、従来でございますと、私が発言の中でもって説明に不十分な点がある場合には政府委員の方から補足的な説明があったりいたしまして、比較的そういう意味ではリラックスした感覚の中でやっておりましたけれども、大体が私、大臣政務次官答弁ということになりましたので、それだけに非常に緊張感を持って委員会等にも出席をさせていただいている次第でございます。
  14. 山本有二

    山本(有)政務次官 感想を持つほどまだ余裕はございませんが、とにかく先生方の御意見にしっかり答えるということで手いっぱいでございます。
  15. 坂上富男

    坂上委員 きのうの質問者からも意見を聞きますと、どうも相当間違いの答弁も多かったんじゃないかという指摘もあるわけでございます。これはやはり技術的なあるいは解釈的なことをそう専門にやっておるわけじゃないからやむを得ないことでもありますけれども、これがまた直ちに議事録になって、議事録の中が今度正常化されるというようなことも非常に私は危惧しておるわけでございます。  本当に、大臣政務次官、大変でございましょうが、そういう制度でございまするし、また、それにはきちっとした正確な御答弁もいただかなければならぬかと思っておるわけでございまして、この議事録に残るということ、それに対して反論の、指摘の証明がつかないこと、そんなようなことから、結果的に間違ったことがひとり歩きするというようなことになっても大変でございますので、大変失礼でございまするけれども、ひとつ精査されまして御答弁を期待したい、こう思っておるわけでございます。  そこで、早速でございますが、大臣、今大きな問題の中の一つに、まさに国民的な命題でございますが、部落問題。部落問題について大臣はどのような御認識でございますか。
  16. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私は関東でございまして、直接そうした問題について見聞きする機会というのは少ないわけでございますが、日本国における国民憲法のもとにおける平等、こういうことを考えますと、こうした問題につきましても引き続き国としてしっかりと対処していく必要がある、このように考えております。
  17. 坂上富男

    坂上委員 大臣、今部落問題、人権擁護推進審議会というところで審議なさっておるわけでございます。この法律を制定するに当たりまして、私たちは特に附帯決議というものをつけました。この附帯決議の中で、法的措置を講ずるということがうたわれておるわけでございます。  それで、先般、教育、啓蒙の問題につきまして中間報告といいましょうか提言がなされたわけでございますが、そのことによりますと、これにつきましてはまだ法的措置の必要はないというような感じの審議会の意向のようでございます。  そこで、今度はこの被害の回復については法的な措置が必要になるんじゃなかろうかというようなことも漏れ承っておるわけでございますが、私は、これは全く部落問題に対する認識が薄いんじゃなかろうか。  と申し上げまするのは、まさに千年とでも申しましょうか、大変長い歴史的な問題があり、また、生活風土の中からこういう差別という事態が本当に出てきたわけでございまして、ただ単に単純な、単純と言っては失礼でございますが、人権侵害というだけでは済まされない根深いものがあるわけでございます。  言葉としては、例えば差別の落書きがあった、これをどうするかというような問題でなくして、そこに根差しているものが象徴的に出てくるのであって、表面上だけをもって解決をしようとしたら、これはもう絶対に解決にならぬわけでございまして、本当に根底から、本当に深く、これについてひとつ、我々は探って、そしてどうすればいいかということはやはり検討して、これには強力な基本法がやはり制定されて初めてこれに向かう努力というものがやや本格的になるんじゃなかろうか。それとても完全ではないと私は思うのでございますが、しかし、我々が今与えられた努力としてはそれが精いっぱいなんだろう、こう思っておりますが、いわゆる人権をつかさどる大臣とされまして、こういう点に対する御見解はひとついかがでございますか。
  18. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員お話をいただきましたとおり、こうした問題については、長い間の歴史的な、あるいは生活風土に密着した、そうした長い間の経緯があるということはよく存じている次第でございます。  一方、先ほどお話しいただきました人権擁護推進審議会におきまして、本年七月に人権教育、啓発に関する施策の基本的事項についての答申が取りまとめられましたけれども、この答申の中には、お話のとおり、人権教育、啓発に関する法的措置というものは盛り込まれておらないわけでございます。審議会におきましては、答申で提言をしている諸施策はいずれも行財政措置で十分賄える、対応は可能である、このような認識のもとに今回の答申が取りまとめられたものというふうに考えております。  私ども法務省といたしましては、この答申最大限に尊重する、こういう立場で、これを踏まえて、速やかに所要の行財政措置を講ずるため、必要な施策を平成十二年度の政府予算の概算要求にも盛り込んでおるところでございまして、この答申を踏まえて、さらに人権啓発の充実をも図ってまいりたい、こういうふうに考えておりますが、先生お話しのとおり、こうした問題、大変重要な問題でございますので、先生の御意向も伺いながら、これから勉強させていただきたいと思います。
  19. 坂上富男

    坂上委員 被害回復などというのは簡単に、現象面があらわれたものをどう解決するかだけのことではなくして、その根底が象徴的に出てくるのがやはり差別の落書きとかそういうことなんでございまして、本当にその根底を見きわめをつけて、いわゆる政治の中でどうやったら解決できるかということを真剣に議論しなければならぬものでございまするから、失礼でございますが、この問題は法務省人権擁護局だけで解決する問題ではないわけでございますので、ぜひひとつ、法的な措置もとりながら対応するようにしていただきませんと、本当に薄っぺらな、予算これだけとったからということで解決できる問題でないと思いますので、私から強くこの点は指摘をしておきたいと思っております。  さて、ちょっと法務省にもお聞きをいたしますが、これは私の新潟県で実は起きておる問題でございますが、建設省がこういうミスをやったわけでございます。それで政務次官に御出頭を要求したのでございますが、ほかの委員会があって出席ができないということで、まず、こういう質問をいたしましたら、こういう回答が文書で来ました。  新潟県荒川における川底の土地と河川敷の国有地を河川工事のために等価交換をしたが、これは国有財産法十八条違反と考えるが、いかがか。また、今後どのように対応していくのか。こういう質問に対しまして、建設省はこういう答弁が文書でありました。一級河川荒川において、河川内の土地を河川敷の国有地と等価交換をしたことについては、国有財産法十八条による無効であることを確認しました。今後このようなことのないように、原因の究明、責任の所在、再発防止について明確にするよう、地方建設局に対し指導の徹底を図ってまいる所存であります。  そこで、国有財産法第十八条によりますと、「行政財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができない。」「前項の規定に違反する行為は、無効とする。」こういうことで建設省は、これは膨大な土地なんでございますが、河川敷になっておるものを交換したのですね、いわゆる私人と。  そしてこれが登記になっておるわけでございますが、これは時間の節約上、私から申し上げますが、建設省へは荒川建設さんというところから九十八筆の土地、それから建設省からは荒川建設さんへ百九筆の土地が所有権移転されておるわけでございます。そして、この荒川建設が受け取られましたところの土地百九筆について直ちに、今のは平成十一年の三月十日で交換したのでございますが、三月二十九日、もう現物出資登記いたしまして、百十五筆の土地を所有権移転登記がなされている、こういうことでございますが、これは事実であろうと確認をするわけでございます。  そこで、荒川リゾート開発株式会社の新株発行による変更の登記手続はどのようになされたかということにつきましては、商業不動産鑑定士の鑑定評価に基づく弁護士の証明書が添付されておって、商業登記法に定めた要件には一応合致はしておりますけれども、いわゆる鑑定士の鑑定評価と弁護士証明によって受理されて増資がなされたんだ、こうなっておるわけでございます。そしてその増資は、この登記簿謄本によりますと、いわゆる資本の額を三億八千四百十万円から十二億四千百万円に増資をしているのですね。いわゆる国有財産を現物出資いたしましたのが、約九億というような相当大きい金額が現物出資をされているわけであります。  そこで、いわゆる交換が無効になったわけでございまして、これは子会社なんでございますが、子会社にその交換を受けた荒川建設が現物出資をしておるわけであります。現物出資をしてこれが無効になった場合、一体これはどうなるのですか。もう無効だと建設省は言っているのですが、このことについてお聞きをしたいわけでございます。
  20. 山本有二

    山本(有)政務次官 一般論として申し上げれば、現物出資の目的とされた財産の取得契約が無効であったときは、現物出資による給付はなかったことになります。この場合、商法によると、現物出資者に割り当てられた新株は引き受けのない株式となり、取締役が共同して引き受けたものとみなされるので、新株発行の効力自体には影響を及ぼしませんが、取締役は共同して現物出資に相当する金額を払い込むべき義務を負います。  そういう認識でおります。
  21. 坂上富男

    坂上委員 今御指摘になりましたのが、商法二百八十条十三の第一項なんだろうと思うのでございます。結局、現物出資が無効であった。無効であったとするならば、一体だれがこの責任を負うのかといったら、いわゆるここの会社の取締役が共同して資本を充実しなければならぬ、こういうことだそうでございまして、商法の規定そのとおりでございます。  約九億でございますが、これは大変な金額でございます。どちらがいいのかわかりません。建設省が悪いのか、あるいは民間の方に問題があったのか、これはわかりませんけれども、何はともあれ、現物出資したことが無効になって、無効ということになると、そこの取締役が連帯してこの資本金を払い込むという、九億といったらこれは大変な金額でございます。この問題、一体どういうふうになるんだということになりますと、これはなかなか大変な問題だと思うのであります。  そこで、普通、私なんかは、前に弁護士をやっていた当時は、検査役だけで現物出資、裁判所の選任によって検査して、そしてこれは正当であるということの申請によって許可になったんでございますが、今度法律がずっと改正になりまして、現物出資する場合も、いわゆる不動産鑑定士と弁護士の証明があればよろしい、こういうような申請になっているそうでございますが、このいわゆる評価証明、評価等弁護士証明、これをひとつ提出していただけますかな。
  22. 山本有二

    山本(有)政務次官 申請書の添付書面は、商業登記法の規定により、利害関係人に限り閲覧することができるとされておりますけれども、その提出におきましては、最終的には、当法務委員会の御判断に従いまして提出させていただきます。
  23. 坂上富男

    坂上委員 委員長、今言ったように、この問題は大変重要な問題でございまして、国のミスによってこうなったのか、あるいは私人の瑕疵によってこうなったのか私は今わかりません。わかりませんが、今言ったように大変重要な問題でございます。しかも、不動産鑑定士の評価、これも一応正当だということで法務省が現物出資を受理を、許可をしている、こういう形になっておるわけでございますから、ぜひこの書類の取り寄せをひとつ要請いたしたいと思います。特に証言法に基づくひとつ請求をいたしますので、申請をいたしたいと思います。
  24. 武部勤

    武部委員長 理事会に諮り、協議いたします。
  25. 坂上富男

    坂上委員 結構でございます。どうぞひとつ、これは大事な問題でございますから、ぜひともお願いをいたしたいと思っております。  さて、その次でございますが、藤波判決と言われるものがあるわけでございますが、これは大臣、私たちの方は辞職勧告決議を出しているわけでございます。しかも検察、いわゆる国民の名のもとに検察がこのことについて処断を求めて、最高裁判所で確定をしたという事案でございますが、これに対してどういう御認識をお持ちなのか、実はお聞きをしたいのであります。これは法務大臣としてのいわゆる人権に対する感覚を実は、試すわけではありませんが、お聞きをするものなのであります。  まず、最高裁判所、こういうふうな表示があることは間違いございませんでしょうか。「被告人は、」藤波氏でございますが、  内閣官房の最高責任者である国務大臣として、内閣総理大臣を助けて、行政を公正かつ廉直に推進するという極めて重要な職責を有しながら、贈賄者から請託を受け、繰り返し多額の利益を受け取っていたものであって、自らの重要な職責に対する自覚を欠き、その結果国政に対する国民の信頼を著しく傷付けたものとして、強い非難に値するものであるというべきである。また、被告人は、私設秘書の給与を負担してもらったり、多額の会費を必要とする後援会の会員等になってもらったりしていた中で、請託の報酬として、年間一千万円もの金員の供与を受けたほか、 だあっと書いてあります。  そこで結局、こう言っておるわけでございます。いわゆる被告人は、  その趣旨を否認するだけではなく、リクルートコスモス株の取得に関しては、秘書が個人的に行ったものであり、自分は関与していないと一貫して弁解するなど、反省の態度は認められず、これらの点でも厳しく責められてもやむを得ないところがある。 こう言っておるわけでございます。極めて情状がよくない、こう高等裁判所指摘をしておるわけであります。そこで、最高裁判所は、藤波氏の上告について理由なしといって却下して、この情状が確定をしているわけでございます。  これは最高裁、間違いございませんでしょうか。
  26. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 私、所管でございませんで、ちょっと事前にお聞きしておりませんでしたので答弁する用意ができておりません。申しわけございません。
  27. 坂上富男

    坂上委員 最高裁判所裁判官でしょう、あなたも。職員ですか。判事さんでしょう。どうですか。こういうようなことはもう新聞や何かでしょっちゅう出ているのじゃないですか。聞かれることを用意してこなかったからわかりませんなんて、私が読み上げていることについてわからぬなんて、とんでもない。こんなのはもうどこでも言われているし、国会の中でも今問題になって、いわゆる辞職勧告決議まで出ているのでございますが、裁判所はちっとも関心ないのですか。
  28. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 私は人事を担当しておりまして、その関係ですと刑事局長がお答えするべき問題かと思いますが、正確なところを私の方でお答えするということはちょっとできないわけでございます。
  29. 坂上富男

    坂上委員 最高裁判所、こういうようなことで、ちょっと休憩せいという話もあるんでございますが……。こんなものはもう本当に新聞やなんかに出ておって、常識的にももうみんながわかっているわけですよ。これはよくないことなんであって、当たり前のことなんです。しかも、これは情状としては大変質が悪い、こうなっているわけでございます。  でありますから、こんなことは常識的な答弁もきちっとしてもらわぬといかぬと私は思っております。後の雲助判決についても私は最高裁判所からお聞きをしたいと思っておりますが、そんなような常識だと私はちょっといかぬなと思っております、指摘だけしておきますが。  さて、大臣、この感想はどうですか。
  30. 臼井日出男

    臼井国務大臣 お尋ねの件につきましては、平成十一年の十月二十日に最高裁判所において、藤波孝生被告人の上告を棄却する決定がなされて、有罪が確定したものと承知をいたしておりますが、裁判所の出されました判決の内容につきまして、法務大臣としてコメントすることは差し控えるべきだと思います。  また、藤波議員に対する議員辞職勧告決議案につきましても、衆議院に提出されたものということは承知いたしておりますけれども法務大臣としてのコメントは差し控えるべきだと思います。
  31. 坂上富男

    坂上委員 法務大臣の管轄下の検察官が最高裁判所に起訴して、そしてこういう判決を得たわけでございます。したがって、コメントすることは適当でないというのは、私は全くわかりません。これはもう本当にこのとおりであって、検察を管轄しておる法務大臣としては、この是非ぐらいについては判断いただかないといかないんじゃないでしょうか。判決に言われたとおりであるということぐらいはなぜ言えませんか。どうぞ。
  32. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもといたしましては、個々の事件についてはコメントさせていただけないということになっておりますが、一般的に申し上げて、私ども、検察がその事務に当たるに当たっては、的確、適正に事務を処理している、そのように考えております。
  33. 坂上富男

    坂上委員 余り時間をとってもあれだから……。  だから、検察の方は、こうやってその責任を問うて、こういう情状を引き出したわけでございますが、それについて法務大臣がコメントできないというのは、私はどうしても納得できません。これはもう確定した事件ですから、確定したことについて、これは法務大臣としては裁判所の判決のとおりだと言うのは当たり前だと思うのでございますが、それさえ言えないところの法務大臣として、私はいささか異議を申し上げておきたいと思います。  これに関連して最高裁に聞きますが、この間から大変問題になっております京都の判決でございますが、こういうことが言われているんですね、この判決。これは民事裁判なんです。民事裁判でこう言っているんです。「一般論でいえばタクシー乗務員の中には雲助(蜘蛛助)まがいの者や賭事等で借財を抱えた者がまま見受けられること(顕著な事実といってよいかと思われる。)、」こういうようなことが書かれているんですね。全くこれは争点になった部分じゃないんです。何でこんなことを書く必要があったのか私はわかりません。  しかも、顕著な事実というのは二つあるんですね。公知の事実と裁判上顕著な事実と、この二つあって、これについては、顕著な事実というのは、もう大変明らかに目立つことを顕著な事実、こう言うのだそうですね、辞典を引いてみますと。これはもう大変なことを言っているのではないでしょうか。  これも、さっき言ったように部落問題と全く同様な差別意識を裁判官が持っておって、言わぬでもいいことをここで、何の恨みがあるのかどうかわかりませんけれども、こうやって書き連ねて、これを世に問うたという形なのですね。  しかも裁判所は、いわゆる雲助まがいという点については何か口頭注意をしたようでございますが、かけごと等で借金を抱えた者が間々見受けられるということについては、これは何も問題として取り上げていないのです。一体、こういうことについて最高裁判所はどういう見解なのですか。  私は、これは余り時間がないから言わないのでございますが、端的に最高裁としてお答えをいただきたいと思いますことは、言わなくたっていいことをなぜ言ったのかということがわからないのです。それから、こうやって差別用語、本当にこの運転に、乗っておる人たちは大変激しい怒りを持っております。  私はよくタクシーを利用いたしますが、特に私を知っておる人が、二度にわたりまして私に言いました。先生、最高裁判所でこんなことを許しているのですか。こういう裁判官に、失礼ですが、やめてもらわなければいけませんが、先生、どうしますか。私が法務をやっていることを知っておるものだから、二人の運転手から実はこう言われたのでございますが、これについて最高裁判所は、まずどういう認識があるのかもお答えをいただきたいと思います。これは大臣の方も、もし所感があったらお答えをいただきたいと思いますが、まずどうぞ。
  34. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  まず、争点でない部分について判断したのではないかという点でございますが、これは、タクシー運転手が乗客を殺害して、金品を奪ったという強盗殺人の被害者の遺族が、運転手とタクシー会社に対して提起した損害賠償請求訴訟でございまして、これは、被告会社の民法七百十五条一項ただし書きの免責、いわゆる選任、監督上の無過失の主張でございますが、この主張を排斥する部分について、ただいま委員指摘のような判断を示したものでございまして、争点になっていない部分について判断したものではないというふうに認識しております。  それから、処分をした対象が限定されているという点の理由でございますが、これは何分判決の内容にかかわる問題でございまして、裁判独立という大原則がございます。判決の認定判断の内容にわたる部分につきましては、司法行政立場から口を差し挟むということは控えるべきだという原則がございます。  他方、裁判の独立とは申しましても、認定判断の内容を判決書に表現する場合にどういう不適切な表現を使ってもいいのか、こういう問題はあるというふうに思います。理念的に申しますと、判決の認定判断の内容と判決書の表記の問題は区別できると思いますけれども、判決の内容と表記の問題は全く関係がないとは言えないわけでございまして、そういう微妙な問題がございますために、京都地裁の所長としては表記の問題に限定して、つまり雲助まがい、こういう表記の問題に限定して処分を行ったものというふうに考えております。
  35. 坂上富男

    坂上委員 だから、最高裁判所はどういう見解なんですか、こう聞いているのです。しかも、こんなことは争点になっていないでしょう。確かに運転手さんや自動車会社が訴訟の対象になったことはわかりますよ。いわゆるタクシー運転手一般が、こういうことが間々見受けられるなどというようなことが争点になったのですか。そんなものは全くならぬでしょう、どうですか。
  36. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 先ほど御説明申し上げましたように、会社側の選任、監督上の無過失を排斥する理由として述べているわけでございまして、そういう選任、監督上無過失とは言えない、その理由として述べておりますので、争点に対する判断だというふうに理解されます。
  37. 坂上富男

    坂上委員 とんでもない発言です、これは。では仮に弁護士が、結構裁判になったものもあります。弁護士一つの悪口は三百代言、こういう言葉が言われておるわけでございますが、どうも弁護士というのは人の金を勝手に使い込んで、しかも言うことが三百代言的なことしか言わない。こういうようなものはやはり責任があるんだという一つの材料にこんなことを使われたら、とんでもないことでございます。一体これ、この会社の選任、監督とどういう関係があるのですか。あなた、本当にそういうことを答弁できるのですか。
  38. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 先ほどから申し上げておりますとおり、こういう会社側の主張に対して御指摘のような表現で認定判断した、この内容の当否については、先ほど申し上げましたように、司法行政上の立場から口を差し挟むということは適当でないということでございます。
  39. 坂上富男

    坂上委員 これはまた別のときにあれしますが、大変問題です。これは私は弾劾裁判所の対象だと思っていますよ。これは裁判官独立の問題じゃないです、こんなことは。こんなことが許されて判決されたら、全く偏見を持った上での、表現が適当でないで済まされる問題ではないのですよ。さっき言ったように、部落問題と全く同じです、これは。最高裁判所がそんな認識であるから、この問題がこういうふうにして起きるのでございます。  最高裁判所は責任を感じていませんか。
  40. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 このたびの問題は、まことに遺憾な問題だと思っております。最高裁といたしましては、研修の機会などをとらえて、このたびのことを教訓として紹介し、各裁判官に注意喚起するなどいたしまして、他方、裁判官独立にも十分に配慮しつつも、可能な限りの手当てをしてまいりたいと考えております。そうすることが、国民の皆様の信頼にこたえるために最高裁として果たすべき責任であるというふうに考えております。
  41. 坂上富男

    坂上委員 これは毎日新聞の社説の一つです。ちょっと読み上げましょう。「「雲助まがい」の表現はあまりにも非常識と言わざるを得ない。裁判官には法律知識だけでなく「常識」もわきまえるよう求めたい。」こう言っているんですよ。では、裁判官というのは全部ですか、非常識というのは。そうじゃないでしょう。もう本当に僕らは尊敬する人たちばかりなんです。こういうのが出てきたのに私はびっくりしているわけでございます。こういう処分と、仙台で盗聴法の集会に出て、意見を言うた裁判官が戒告処分か何か受けたものがありますね。どっちが重いですか。
  42. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 御指摘のありましたいわゆる寺西判事補の件は、分限裁判の結果、懲戒の一種としての戒告とされておりますが、分限裁判による戒告と、今回の場合は下級裁判所事務処理規則に基づく注意でございますが、これを比較しますと、一般には通常、戒告の方が重いというふうに考えておりますので、今回の方が軽いと思います。
  43. 坂上富男

    坂上委員 寺西裁判官の問題は、これはもう私は処罰がおかしい、処分はおかしいと思っているのです。これよりも軽い処分をしているのです。これは評価からするならば、いわゆる訴追問題になってもしかるべき事案だと私は思っております。何と書いてあるかわかりますか。いわゆる裁判官の威信を侵した、こういうことが処罰の対象になるのですね。訴追の対象になるのですね。最高裁判所はもっとこれを検討すべきことなんじゃないですか。  また、私は運輸省から来てもらいまして、今、運輸省は需給調整規則というのを廃止するというわけですよ。できるだけタクシーをふやそう、こういうわけでございます。余りこれをやりますと、いわゆる規制緩和をやっちゃいますと、まさに労働者が過重労働になりまして、安全運転にも差し支えるような事態になったら、これは大変なわけでございますからね。  そんなようなことで、まさにこのものと重要にかかわっておるものでございまするから、私は、この需給調整規則廃止問題はもうしばらく延期をして状況を見るべきだ、こう思っておりますが、運輸省が来ておりませんので今言いませんが、ここで議事録にだけとどめていただくために申し上げます。  運転手の諸君たちは、本当に年間収入なんというのはまことに少ないんですね。本当に月二十万ぐらいになるかならぬかぐらいなんじゃないでしょうか。そんなような非常に必死に働いておる皆様方、それを裁判所の方から雲助呼ばわりして、おまえら雲助だから会社が責任があるんだなんというこういう答弁、とんでもないことでございまして、これは承認できません。指摘だけまずしておきます。  法務大臣、これは所感、どうですか。
  44. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員からお話ございましたいわゆる雲助発言につきましては、具体的な民事事件の判決の内容にかかわることでございますので、コメントは差し控えさせていただきますが、いわゆる裁判官というのは、中正公平、そして的確な判断を求められる立場におる者でございまして、委員から御指摘をいただきましたとおり、刑事司法の分野におきましても、身分等に関する偏見や予断に基づいた差別的な取り扱い、あるいは、そうとられるようなものがあってはならないというのは当然のことでございます。
  45. 坂上富男

    坂上委員 ちょっと時間がないので急ぎますが、今度は神奈川県警でございます。  私は調査室に調査をしてもらって、神奈川県警問題の不祥事がどれだけあったか、九月から今日まででございますが、十一あるんですね。これは、前のことを処分したとかいろいろ書いてあっての十一でございますが、本当にこれはひど過ぎますね。警察というのは全部こんなことをしているんだろうかと私も本当にびっくりしました。神奈川県警だけでなくて、これは全国こんなことになっているんですか。大変なことでございます。私たちは治安のために警察を信頼してやっているわけでございますが、こんなようなことが出てきたのでは、とてもじゃないが国民は安心して警察に任せられません。  さてそこで、警察の方といたしましては、当時の本部長以下八名とか十名とかおっしゃっておりますが、これは厳重に刑事責任を求めるために送検をする、こう言われておりますが、これは何で強制捜査しないんですか。強制捜査をしたらもっと出てくるかもしれませんが、どうですか。
  46. 石川重明

    石川政府参考人 ただいまお尋ねの件でございますが、平成八年の十二月に、当時神奈川県の警察本部の外事課に所属をしておりました警部補が、いわゆる不倫相手の女性とともに覚せい剤を使用したということがあったわけでございますが、事案の発覚当時、この覚せい剤使用容疑があったにもかかわらず適正な捜査が行われていないということで、犯人隠避に当たる行為があった可能性があるということで、現在、神奈川県警察において特別捜査班を編成いたしまして、鋭意捜査中でございます。  今お尋ねの件に関しましては、そういうことで、捜査中でございますので、この場で御答弁申し上げるのは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
  47. 坂上富男

    坂上委員 何で強制捜査はしないんですか、こう聞いているんです。捜査中だから答えられないことないんです。全力を挙げてやってもらわぬといかないので、だから言っているんです。  そこで、法律刑事訴訟法で与えられました強制捜査、なぜなさらないんですか、こう言っているんですよ。国民がそう言っているから、私はその声も受けて聞いているのでございますから。ましてや証拠隠滅、犯人隠避でしょう。証拠が、いつ、どういうことで隠されるか、こういうことはもう強制捜査の一番大事なことなんです。これは基本じゃないですか。もう一度御答弁いただきましょうか。
  48. 石川重明

    石川政府参考人 この問題につきましては、早期に捜査を遂げて、事案の徹底的な解明を図る、そして、それに基づいて厳正な措置をとるということが一番重要なことだろうと思っております。そういうことで、現在、神奈川県警察が必死に捜査を続けておる、こういうことでございます。  強制捜査をするかどうかという問題につきましては、法と証拠に基づいて、その時点、時点で捜査の段階で判断をされることだと思いますが、現時点において、私の立場で、強制捜査をするとかしないとかいうようなことについて答弁を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  49. 坂上富男

    坂上委員 山本政務次官に聞きましょうかね。送検されるという話でございます。これは普通は刑事局長。刑事局長に聞いても、また法と証拠に基づいてやります程度の答弁だから、私は、今度は直接検察官が責任を負えという質問も今出しているんですが、もう時間がないから、なかなか聞けません。  とにかく検察に送検になる、これは間違いないようでございます。検察の態度、ひとつ法律専門家の立場において、これについてどういう対応をされるのか。本当に今言ったように、国民は何でここまで来て強制捜査をしないんだという声はあるんです。だけれども、それでも、まあよくやったと言うべきなのかどうか、私はわかりませんけれども、ちょっと納得しない国民の方が多いんじゃないでしょうか。やはりまだなれ合いでやっているんじゃなかろうか、だから犯罪がいつも出てくるんじゃなかろうか、こう言っているわけでございます。  私たちは、特に神奈川県警については、いわゆる盗聴問題から始まりまして、坂本事件を見逃して、そしてあげくの果てはこんなことが続いて、果たして盗聴法などという手段を警察に与えていいんだろうかということを先般、大変激しい議論をしたわけでございますが、そしてそれが終わったら、こうやって、もくもくとこういうふらちなことが出てくるわけでございます。  この点、検察に送検になりましたら、政務次官としても、法務大臣もいらっしゃいますが、あなたの方からきちっとした決意をして、そう捜査指揮ということにはいかないのかもしれませんけれども、やはりこれは全く警察の信頼にかかわる問題でもございますし、捜査全体にかかわる問題でもありまするから、決意をお聞きしましょうか。
  50. 山本有二

    山本(有)政務次官 罪を問うべき者が不祥事を起こすことは絶対あってはならないことでございます。私も政務次官でございますから、一般的な指揮監督権を有する法務大臣を補佐して、厳正にこれは対処していきたいと存じております。
  51. 坂上富男

    坂上委員 ひとつ、検察庁の方は、国民が納得できるところの捜査を遂げていただくことを期待します。  もう一つ、警察にお聞きします。  これは、私は新聞をもとにして聞くことでございますが、私の地元の中央銀行が破綻いたしました。地元の新聞でもございますが、「旧経営陣追及へ捜査班 県警 特別背任の立件視野」、こう見出しが書かれておりますが、これは準備なさっておりますか。率直な御答弁を。
  52. 林則清

    ○林政府参考人 個別の金融機関に関しまして現に捜査を行っているか否かというのは、残念ながら答弁を差し控えさせていただきますが、新潟県警におきましても、深い関心を持って、御指摘の件については注目をしておるということであります。  一般論になって恐縮でありますけれども、警察におきましては、これまでも破綻金融機関の経営者らの不正事案等につきましては、それについて刑罰法令に触れる行為が認められれば、常に法と証拠に基づいて厳正に対処してきておるところでありまして、今後とも、刑罰に触れる行為が認められれば、所要の捜査態勢を組んで、そして厳正に対処してまいるという方針でございます。
  53. 坂上富男

    坂上委員 法務委員会の任務というのは、社会正義の実現人権の擁護と言われておるわけでございます。したがいまして、この二点に物事を絞ってあらゆることが行われなければならぬと私は思っております。  ぜひ新大臣、新政務次官、ひとつ期待をしておりますので、どうぞ我々の質問、それから要望にもきちっとこたえていただきまして、ひいて国民に対して本当に責任を果たしていただきますよう要請をいたしまして、時間だそうでございますので、ありがとうございました。
  54. 武部勤

    武部委員長 枝野幸男君。
  55. 枝野幸男

    ○枝野委員 それでは、私も引き続き、神奈川県警の問題について、法務大臣及び政務次官にお尋ねをさせていただきたいと思います。  現在進行形の話はともかくとして、神奈川県警でこれだけ相次いで不祥事、その中には刑事事件にも該当すると思われるようなものが幾つも含まれている、これがここまで見逃されてきたというのが客観的な事実として出てきております。これが見逃されてきたことについて、検察行政をつかさどる法務省法務大臣立場としてどのような認識をお持ちかということをまずお尋ねいたします。
  56. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど来いろいろお答えがございましたけれども、法を執行する者として、やはりこうしたことについては厳正な立場でもって行っていかなければならないということは当然のことでございまして、私どもも、こうした事案が起きた際、私どもとしては法と証拠に照らして厳正に対処していくべきもの、このように考えております。
  57. 枝野幸男

    ○枝野委員 これは通告をしておきましたので、御検討していただいていると思いますが、読んでおいていただいていると思いますが、刑事訴訟法には、例えば百九十一条で、犯罪捜査は警察が原則的に行いますが、必要と認めるときはみずから犯罪を捜査することができるという規定がございます。それからその後、百九十三条のところで、検察官は、その管轄区域について、司法警察職員、つまり警察官に対して、捜査に関し必要な一般的指示をすることができるという規定が置かれております。  つまり、警察官の不祥事について、つまり神奈川県警の警察官が行った犯罪について、検察庁、検察官は、みずから捜査をすることもできるし、一般的な指示を与えることもできるという立場であります。つまり、内輪の人間を神奈川県警がかばったということが一つ大きな問題であると同時に、内輪の問題であるがゆえにどうしてもかばう動きが出るということに対して、検察がこの百九十一条あるいは百九十三条を用いることで、外部からこの警察内部の犯罪についてはきちんと対応することがこの刑事訴訟法では求められるのではないだろうかというふうに思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  58. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話のございました神奈川県警等についての捜査、第一義的には警察内部でもって行われるべきものと考えております。  私どももちろん、お話ございましたように、第百九十三条で指揮を行うことができる、こういうことになっているわけでございますが、まず検察庁としては、警察の捜査というのが厳正になされるように助言をするなどして協力をしていくこと、さらに、事件の送致を受けた後は所要の捜査を尽くして事案の真相を解明していく、こういうことであるべきと考えております。  なお、私ども、この法解釈につきましては、いわゆる公訴の遂行を全うするために認められた権限、こういうふうに考えておりまして、今回、警察官による犯罪を抑止することを目的とするものではない、このように考えておりまして、そのような目的でもってその権限を行使することはできない、こう思います。
  59. 枝野幸男

    ○枝野委員 こういう細かいところに突っ込んでいいのかどうかを考えていたのですが、そちらから百九十三条の解釈の話が出てきましたので。  私が申し上げているのは、犯罪を抑止することについて検察に責任があるんじゃないかということではありません。現に警察官が犯罪を犯していることについては、警察が一次的に捜査権はあるとはいっても、内輪の問題だからなかなか捜査しにくい、だからこそ、百九十一条や百九十三条を使って検察がそこについては手を出すべきだろうということを申し上げているので、検察がぼうっとしていたから犯罪が起きたということを言っているんじゃなくて、起きた犯罪について今まで隠されていたことが検察の本来は対応すべきことだったんじゃないかということを申し上げているのです。
  60. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもといたしましては、個々の犯罪の状況に照らしてそれぞれに判断すべきものと考えておりますが、先ほど申し上げましたとおり、その状況判断をして、法と証拠に基づき厳正に対処してまいりたい、このように思っております。
  61. 枝野幸男

    ○枝野委員 では、こちらから聞きましょうか。  刑事訴訟法百九十一条で、「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる。」という規定がございます。この規定に基づいて犯罪捜査が行われていることの典型がいわゆる地検の特捜部と言われているところでありますが、この神奈川県警などの警察官が犯罪を行った神奈川県、つまり横浜地方検察庁において、この百九十一条に基づいて検察官あるいは検察事務官が直接捜査を行うためのスタッフといいますか、検察官といいますか、これはどれぐらいの対応、機能ができているのでありましょうか。
  62. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘のとおり、検察官はみずから犯罪の捜査を行うことができる、また、検察事務官にも指揮いたしまして犯罪の捜査を行わせることができる、このようになっております。  各地方検察庁の捜査人員は、各庁の事件の数などに基づきまして配分されております。御指摘の横浜地方検察庁には、検察官約百名、検察事務官約三百五十名が配置されているところでございます。
  63. 枝野幸男

    ○枝野委員 つまり、こういうことを聞いたわけです。東京地検の場合は特捜部という、まさにみずから直接捜査をする特別の部が置かれているわけですから、ここの人員は、要するに警察から上がってきた、送検された事件をやるのではなくて、みずから捜査しています。横浜地検の場合はどうなんでしょうかということをお伺いしているのです。
  64. 臼井日出男

    臼井国務大臣 すべての検察官は、本人の所属する部署にかかわらず、捜査をいたす権限を持っております。
  65. 枝野幸男

    ○枝野委員 権限は持っているけれども実際には行わなかった。  これは政務次官でも結構ですが、なぜ百九十一条があるのですか。つまり、本来、一般的には警察が捜査をして、検察に送検をして、検察が起訴をするというシステムの中で、あえて百九十一条が直接犯罪捜査ができる、それに基づいて現に東京地検や大阪地検では特捜部が置かれていて、百九十一条対応の専門をやっている、これはなぜだというふうに理解されておられますか。
  66. 山本有二

    山本(有)政務次官 犯罪というのは多種多様、多岐にわたるわけでありまして、その意味におきましては、捜査の端緒もそれ相応に多岐多様でございます。したがいまして、検察庁、これは公訴権を専権するわけでございますが、必ずしも警察からの送致を待つまでもなく、当然、社会正義実現のために捜査の端緒をとらえて訴追するという作業をすべき任務を負うということの確認であろうというように考えております。
  67. 枝野幸男

    ○枝野委員 それで、さまざまな捜査の端緒がございますね。例えば、警察官の犯罪によって被害を受けた被害者にとって、その警察官の属している警察に対して、例えばこういう被害に遭いましたと言うことは相当言いにくいことだとは思いませんか。
  68. 山本有二

    山本(有)政務次官 そのとおりだと思います。
  69. 枝野幸男

    ○枝野委員 それから、例えば犯人隠避などの犯罪については、一定の親族については刑を免除されておりますね。これはどういう趣旨だか御存じですよね。
  70. 山本有二

    山本(有)政務次官 知っておるつもりではございます。
  71. 枝野幸男

    ○枝野委員 親族とまではいかないまでも、例えば警察内部の人間が行った犯罪が、犯罪かもしれないということがあったときに、これは警察に限らないと思います、例えば役所でもそうですし、企業でもそうでしょうし、家族でもそうでしょうし、あるいは、もしかすると我々政党とかなんかでもそうかもしれないけれども、その中に属している人間が犯罪を犯したかもしれない、みずからそれを暴けということは、もちろん例えば我々政治の世界などでは倫理的にそれでもやらなければならない、警察も当然、倫理的にやらなければならないことではありますけれども、そうはいっても、やはり情としては、身内の人間の犯罪を暴くということはつらい、きついことだ。だからこそ、特に一定の親族については犯人隠避などについて刑の免除を認めている、こういうことではありませんか。
  72. 山本有二

    山本(有)政務次官 そのとおりだと思います。
  73. 枝野幸男

    ○枝野委員 そうしますと、捜査をする警察官の気持ちとしても、自分たちの身内の犯罪をみずから捜査するということはつらいことだ。一方、被害者の立場にとってみても、警察官の犯罪によって被害を受けて、そしてそれに対して何とかしてくれというときに、警察には言いにくいということを考えたときに、警察官の犯罪というものについて、これは百九十一条で、検察庁こそがまさにその中心になって、主体となって対応するということを期待されているのではないでしょうか。
  74. 山本有二

    山本(有)政務次官 そういう面も考えられると思います。
  75. 枝野幸男

    ○枝野委員 私はこの話で、過去の後ろ向きの話で、やっていなかったらどうだということを余り言うつもりはありません。今の日本の検察庁の体制では、東京地検、大阪地検こそは、名古屋までできたんですか、特捜部がございますが、現実に、例えば横浜地検の検事さんの数を考えたときには、警察から送検されてくる事件について適正迅速に処理するだけでほぼ手いっぱいだろうというふうに思います。  また、しかも東京や大阪のような特捜部という形で分かれていれば、例えばふだんの警察との連携というのも、刑事部の検事さんはどうしても警察との連携ということに気を使わなきゃならない。だけれども、特捜部であればかなりそこのところは、直接の連携をふだん特捜部はしておりませんから、そこは気を使う部分が少なくていいということもあってやりやすいだろうし、また自分自身が、警察から上がってくる問題じゃなくて、まさに警察官の犯罪もそのうちの一つだけれども、直接やらなければならない事件を中心にやるんだという自意識もある。  そういう意味では、本来は東京、大阪などに限らず、最悪の場合一人ずつでも仕方がないけれども、まさに百九十一条に基づいて、警察からの事件を処理するのではなくて、警察の犯罪などを含む直接やらざるを得ない事件、直接やることが合理的と思われる事件を担当すべき検察官の方が検察庁の中にいるべきではないだろうか。そういうことがあることによって、例えば警察の側も、いや、検察がやるだろうから、隠しても隠し切れないから早く手を打たなければならないなという抑止力が働くんじゃないかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  76. 山本有二

    山本(有)政務次官 より検察の機能を高めるという方向での御提言でございます。非常に傾聴に値すると存じます。
  77. 枝野幸男

    ○枝野委員 せっかくですから大臣、今の政務次官お話でどうでしょう。
  78. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今お話しのとおり、検察が国民の安心、安全のためにしっかりと仕事をするということは大切なことでございます。そうした特捜部の特殊性というものをしっかりと認識しながら、これからも頑張っていきたいと思います。
  79. 枝野幸男

    ○枝野委員 過去のことを、今回の神奈川県警のことについて揚げ足をとるつもりはありませんが、まさにこうやって御指摘をさせていただきました。今後の警察のこれから発生するかもしれない、それは人間のやることですから必ずあり得るわけですから、今後の警察官の犯罪が隠ぺいをされていた、後になってばれたということなどがあったときには、今度は検察庁としてあるいは法務省として、それは責任があるのじゃないかという追及をさせていただきたい。  したがって、これを機会に警察に対する検察のチェック、それから、特に被害に遭われた方からの情報を受けるという部分で神奈川県警のような事件が起こらないように、起こってもすぐに検察が対応して取り締まれるのだという体制をつくっていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。  さて次に、消費者契約法についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  消費者契約法について国民生活審議会議論が進行しておるのでありますが、御存じでありましょうか。
  80. 臼井日出男

    臼井国務大臣 承知をしております。
  81. 枝野幸男

    ○枝野委員 この審議会での議論が、ある段階で、一年以上前になるかと思いますが、中間報告というのが出されまして、不十分ではあるけれどもなかなかのものが出た。ところが、その後さまざまな議論がなされて、どうやらそれが大きく後退をしているということで、消費者団体とか弁護士会などから大きな異論が最近出てきている。これでは困る、後退ではないか、こういうふうな状況になっておるのでありますが、御存じでありましょうか。
  82. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘の中間報告のうち、幾つかの項目の全部あるいは一部が取り上げられていない、こういう御指摘でございますが、そのようなことがあったということは承知をいたしております。
  83. 枝野幸男

    ○枝野委員 この消費者契約法に関連しましては、国民生活審議会での議論とともに、これは法務省民事局長のところにでしょうか、現代契約法制研究会というものが設けられて、こちらでも検討されているというふうに聞いておりますが、この現代契約法制研究会の意味について御説明をいただけますでしょうか。
  84. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員今御指摘のとおり、いわゆる消費者契約は、私法上の効力を有する契約ルールとして構成されております。したがいまして、契約に関する一般法である民法の特別法であることは御指摘のとおりでございます。  したがいまして、私どもにおきましても、こうした問題については経済企画庁等と連携をとりながらいたしているところでございまして、先般、国民生活局長の方から私どもに対して、消費者契約法が民法上重要な特別法としての位置を占めることが予想されるということにかんがみまして御依頼がございましたので、平成十年二月に、民法学者をメンバーとする現代契約法制研究会を設置いたしまして、国生審において検討されている消費者契約法の内容につきましても、我が省といたしましても民法の体系との整合性等の観点から検討を行っているところでございます。
  85. 枝野幸男

    ○枝野委員 ここから先は御見解をそれぞれお尋ねしていきたいので、詳しくこちらの状況説明しながらお答えをいただければと思います。  確かに、消費者契約法は民法の特別法として、消費者と事業者との契約について、特に消費者の立場が弱いところを補強しようという趣旨であります。そして、消費者行政という観点からは経済企画庁が所掌であって、そして経済企画庁の立場として、この民法の特別法を国生審を中心につくっていこうと。それをちゃんと進めていただくのであるならば、民法を所管する法務省立場としては、経済企画庁が消費者保護の観点から民法の特別法をつくるに当たって、民法の観点からサポート、バックアップというこれまでの流れでよかったのであろうというふうに思っております。  しかし、現実に今、国生審の部会のところで進んでいる議論は、民法の特別法という意味づけで、そしてその必要性があって議論が始まり、そういう方向での中間報告が出たはずであるのにかかわらず、実は、いわゆる一種の業法を整備しろという話にすりかわりつつあります。これは、事業者団体などからそういう声が出ている。  つまり、従来の業法で、例えば宅建業法などではさまざまな細かいルールを決めて、例えばこういう書類を渡さなきゃいけないとか、かなり細かいことを書いて、そのルールどおり手続を踏めばオーケーで、その手続を踏まなかったらノーということをやっていますが、こういったものをたくさんつくれということをこの消費者契約法のつくり方としてやっていこうとしている。これでは、いわゆる民法の特別法として消費者契約一般の私法ルールを定めるという趣旨と変わってきてしまいます。  これは、事業者、消費者の、それぞれの立場の違いということもありますが、基本的には経済企画庁もいわゆる経済官庁でありまして法務官庁ではありませんので、民事一般ルールの特別法をつくる、そういう観点からすれば、本来は、これは民法そのものを所管している法務省が、その民法の特別法を、消費者を守るという観点で経済企画庁のアドバイスを受けながらつくっていくということの方がむしろ原則ではないだろうか。  そうでないと、民法のようないわゆる私法一般ルールについて携わったことのない経済企画庁が中心になって、民事特別法を消費者契約法という名前でつくろうとしても、従来そういったことに携わっていないわけですから、どうしても従来なじんでいるいわゆる業法の方向にいつの間にか視点がずれていってしまってきているという今の流れも必然ではないだろうか、私はこんな危惧をいたしております。  実はあした、消費者問題の特別委員会も開かれまして、そこで私、経済企画庁の方にも似たような視点から指摘をしようと思っていますが、民法の特別法というこの消費者契約法の目指しているものから考えるならば、本来民法を所管する法務省として、もっと踏み込んで進めていくべきではないか。  私、手元にありますが、五月一日のNBLという法律雑誌に、現代契約法制研究会の中間整理というものが載っております。かなり専門的な中身でありますが、これなどを読ませていただくと、民法の特別法としてはどうあらなければいけないのか、あるいはその中で消費者の保護ということではどういう視点が必要なのか、非常によく議論がされている、整理がされているという理解をいたしております。  役所同士の縄張り争いだなどというばかなことは、縦割りの世界、やめていただきたい話でありますが、まさに本来どちらがそのテーマについて対応し得る能力を持っているか。しかも、現実に経済企画庁のやっている審議会の方が、民事特別法ではなくて業法的な方向に流れているという現実を考えたならば、法務省がもっと踏み込んでこの問題に対応していく責任があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  86. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員から御指摘をいただきました経済企画庁における立場、これは、いわゆる広範な意味の消費者保護という問題が中心になっておりまして、御指摘の消費者契約法というのは、いわばその一部でございます。そうした意味から、従来どおり、こうした全般的な問題につきましては経済企画庁でもっておやりをいただく。  なお、先ほど私から御答弁申し上げましたとおり、経済企画庁からも、特に民法関係につきましてさらに強い意見というものを示してもらいたいということで御依頼がございましたので、先ほど申し上げた現代契約法制研究会というものを新しくつくりまして、研究をさせていただいております。  御指摘のように、私どもからは、しっかりとそうした立場でこれからも御意見を申し上げるということにいたしたいと思います。
  87. 枝野幸男

    ○枝野委員 これから、特に民法に限らず、世の中が複雑化していく中では、いわゆる法務省が所管する、六法という言い方がいいのかどうかわかりませんが、基本法に対して、さまざまな形でそれを実態に合わせて修正をしていく特別法的な世界というのはますます大事になっていくと思っています。  これを今までの日本の国は、まさに行政指導で、行政手続、行政ルールの中で物事を進めてきた。しかし、これからは、事前の行政の許認可よりも、ルールをきちんとつくってそのルールを守らせて、守らなかったら事後的に制裁を加えたり、あるいはこの消費者契約法の目指すもののように、損害賠償その他のルールをきちんとさせていくということで、事前の許認可から事後のルールへという話に流れを変えていこう、これは御異論がないんじゃないかと思いますが、そういう方向の中では、まさに民法であるとか刑法であるとかという法務省が所管する法律について、それぞれの細かい専門分野についての特別法をつくっていくということがかなり我々の仕事の大きな部分を占めてくる。  今までのように行政の事前のチェックが中心ではなくなるということでありますので、この問題に限らず、法務省としてかなり積極的に、他の部局が、例えば消費者保護の観点からこうするとか、例えば金融の適正化のためにこうするとか、いずれにしても、こういったことを事前の役所の規制ではなくて事後のルールでやろうと思ったら、いずれも民法や商法の世界とかかわってくる世界であって、そこの原則論と例外というものの関係をしっかりとさせていかないと法律の現場が混乱をしていくというふうに思いますので、ぜひ積極的にやっていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  88. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘のとおり、社会というのは非常に激しく変化をいたしておりまして、多くのものが、規制緩和の中で、事前規制型から事後チェック型にというふうに変化をしていっております。したがいまして、その我々の事後チェックという立場、しっかりと国民を守っていくという立場から、さらに十分な対策というものを立てていかなければなりません。そういう意味で、委員指摘のとおり、これからもさらに私どもの所轄する最大限の中でもって御意見を申し上げ、また実行してまいりたい、このように思っております。
  89. 枝野幸男

    ○枝野委員 さて、次のテーマに移りますが、オウム対策法について、法案審議の時間で私の質問時間がもらえるかどうかわかりませんので、一点だけお尋ねをさせていただいておきたいと思うのです。  この法案の五条でしょうか、要するに観察処分などの対象になる団体について、何年以内に、過去何年間に殺人事件を行ったとかというような制限がないのですね。とりあえず、当時の首謀者が影響力を持っていることということでありますから、比叡山の延暦寺とか興福寺とかはさすがに入らないようだなと思ったのですが、逆に、殺人などを行った場所とか、そういったことの限定も何もありませんので、これは多分、片方だけ言うと政治的に問題になるので両方言いますが、例えば米軍とか中国の人民解放軍は、少なくとも形式的にこの団体までは当たりますね。違いますか。
  90. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今回の新法におきましては、あくまでも我が国に対しての影響というものを規定いたしておりますので、それらのものは入らない、こういうことになるわけでございます。
  91. 枝野幸男

    ○枝野委員 どこの規定で入らなくなるのですか。どこに該当しないのですか。だって、殺人行為を行って、不特定かつ多数の者を殺害したことのある団体ではないですか。しかも、その団体で関与した者が構成員である団体ではないですか。国外での殺人は対象にならないのですか。
  92. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘の、コソボのアメリカ軍の問題あるいは天安門の中国軍の問題、あれは両方とも他国のものである、我が国ではないということから入らない、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  93. 枝野幸男

    ○枝野委員 法律上、どこに該当しないのか。少なくとも五条の一号とか二号とかには該当すると思いますよ。五号には当たらないと思いますけれども、少なくとも一項の一号や二号には形式的には該当するのじゃないですか。その先のところで、危険性があるかないかのところで外れると思いますが、少なくとも破壊的な活動を行った団体には該当する、五条の一項には該当するということではないのですか。
  94. 臼井日出男

    臼井国務大臣 これらの二つの例というものは外国で行われておりまして、我が国に対して直接何ら影響を及ぼすものではございません。したがいまして、この新法の範疇で言う対象には当たらない、こういうふうに申し上げております。
  95. 山本有二

    山本(有)政務次官 なお、御確認でありますが、国家そのものは、ここに言う団体には当たりません。
  96. 枝野幸男

    ○枝野委員 国家という概念がこの四条二項の団体という概念に当たらないので、米軍や人民解放軍は該当しない、これでよろしいですね。確認しますよ、いいですね。
  97. 山本有二

    山本(有)政務次官 主権の問題でありまして、そのとおりでございます。
  98. 枝野幸男

    ○枝野委員 わかりました。  それでは、もう一つ、一点だけ確認をしておきたい話がありまして、民法改正の話であります。  御承知かと思いますが、法制審議会で民法の改正についての答申が出ております。いわゆる選択的夫婦別氏制を導入すべきであるという方向での法制審の答申が出ておりますが、以後たなざらしになったままであります。前国会では、私を初めとして提出をいたしました議員立法の法案の方も廃案になってしまいました。法制審が議論を進めてきた結論のものを法制化するというのが、従来、一般的に法務省がやっておられることでありますが、なぜかこの点だけは進んでおられない。  この民法改正について、それぞれ大臣政務次官、どういうお立場、御見解をお持ちか、お答えいただければと思います。
  99. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘のとおり、法制審議会におきましては、平成八年二月に、選択的夫婦別氏制度の導入、あるいは嫡子でない子と嫡子である子の相続分の同等化等を内容とする民法の一部の改正というものを、法律案要綱として答申をいたしております。  しかしながら、同時に、この問題についての平成八年の総理府による世論調査の結果を見ますと、選択的夫婦別氏制度の導入に賛成の意見というものは三二・五%、反対の意見が三九・八%、通称を使用したらいいんじゃないかということの意見が二二・五%、こういうふうに出ておりまして、また、地方自治法第九十九条二項の規定に基づきまして地方議会から意見というものが提出をされているわけでございますが、この選択的夫婦別氏制度に関するものにつきましては、導入に積極的賛成という意見が四十四件、慎重ないし消極の意見というものが三百八十八件ということになっております。このような問題につきましては、国民意見が大きく分かれているところでもございます。  民法はいわゆる基本法でもございまして、特に、御指摘の問題のように、社会や家族のあり方など国民生活に重要な影響を及ぼす事柄につきましては、大方の国民の理解を得るということができるような状況で初めて法改正を行うのが相当であると考えております。したがいまして、この問題につきましては、さらに各方面におきまして御議論が深まることを期待いたしているところでございます。
  100. 山本有二

    山本(有)政務次官 基本的に大臣と同じ考えでございますが、大臣が御指摘されましたように、国民意見が大きく分かれていることに伴い、我が党、自由民主党でもこの議論は甲論乙駁、さまざまな御意見がございます。その議論の熟するところを待ってこの法改正を行うのが相当でないかという考え方をしております。
  101. 枝野幸男

    ○枝野委員 多分そういうお答えが出るんだろうなと思ったのですが、例えば人権にかかわるもの、例えば先ほど坂上委員から部落解放問題についての話が出ました。こういう問題については、国民の大多数が例えば人権を守るために何かしなければならないということに消極であったとしても進めなければならない、それが政治の責任だというふうに思いますが、その点についてはいかがですか。
  102. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘のとおりだと思います。
  103. 枝野幸男

    ○枝野委員 この民法改正、特に選択的夫婦別姓の話も私はまさにそういう問題だと思うんです。  これはずっと法務委員会で繰り返してきていますが、つまりこれは、みんなで別姓にしなさいという法律をつくるのであるならば、それはまさに国民のコンセンサスは大事である。今の状態でみんなで別姓にしなさいということは、これはおかしいだろうということでよくわかります。しかし、現に今求められているのは選択的夫婦別姓であって、夫婦は同じ氏の方がいいと思っていらっしゃる方はどうぞそのままでいてくださいという法律であります。あくまでも、どうしても別姓にしたい、しなければ不都合があるという方々だけ別姓にして結構ですよという話であります。  現実に、例えば今の日本社会の中では、多くの場合、女性が氏を変えていらっしゃいます。特に、仕事を持っておられる、しかも営業的な仕事、つまり多くの方に名刺を切って仕事をしている皆さんにとっては、例えば結婚して氏が変わったら、同一性の認識をしてもらうのに物すごいエネルギーがかかります。では逆に、事実婚で氏は変えませんということをやったときには、法律上の配偶者としての権利を行使できませんという不利益を受けます。それでは通称使用でやったらどうだろうか、かなり是正がされてきていますけれども、それでも戸籍名と通称名が食い違っていることによっての不利益を受けます。  こういう少数の方々の個別的な不利益を、他の皆さんには迷惑をかけない範囲で守りましょうというのは、私は、これは少数者の権利をどうやって守るかという人権問題である。したがって、世論の九九%が反対であろうと、一%でもこれをしてもらいたい、してもらわないと困るという人がいる以上は、政治の責任として進めなければならない問題だ、私はそう考えておりますが、いかがでしょうか。
  104. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員の御意見、拝聴いたしました。そういった御意見もあろうかと思っておりますが、私どもといたしましては、こうした問題が国民に大変大きな影響を与える問題であるということから、国民の皆さん方が大方賛成である、こうした状況の中で初めて法律というものは改正すべきである、このように考えていることには変わりはございません。
  105. 枝野幸男

    ○枝野委員 これ以上は水かけ論になる話ですのでこれぐらいにしておきますが、少なくとも、今現実に、法律婚をしたいんだけれども氏が変わることがハードルになってできない、あるいは、法律婚をしたがゆえにさまざまな不利益を受けているという方の立場というものをぜひ考えていただきたいということをお願いしておきたいと思います。当然のことながら、我々としては、議員立法として改めて再提出をするつもりでおることを申し添えておきたいというふうに思っております。  さて、時間が少なくなってしまったんですが、司法制度改革審議会が設置をされて進んでおります。大臣政務次官それぞれ、司法制度改革の必要性を今どう考えておられるのか、何を変えなければならないと思っているのか、簡単に御見解をお尋ねいたします。
  106. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど申し上げましたように、今、社会というものは大変大きく激しく動いている。複雑化もいたしてきておりますし、国際化もいたしてきておる。こうした環境の中で、司法というものは常に国民の使いやすい、また理解しやすい、そういったものでなければならないと考えておりまして、したがいまして、これらの国民の要望、期待にこたえ得るようなものに常にあるべきだ、こういうふうに考えておりまして、先ほど申し上げました司法制度審議会におきまして御議論をいただいているところでございます。  特に、この内容の中では、司法のあり方とその質及び量の問題とか、裁判の迅速化の問題でございますとか、あるいは国民司法参加のあり方等々の問題につきまして、いよいよこれから論点を絞っていただくということになっております。  これらの問題につきましては、二十一世紀に向けて司法課題として大変重要なものでございます。私どもといたしましても、これらの議論に積極的に応援をいたしてまいりたい、このように考えております。
  107. 山本有二

    山本(有)政務次官 大臣と同じ考え方でございますが、主権在民をあらわす、国民に近い司法というものの実現というように私の方は考えております。
  108. 枝野幸男

    ○枝野委員 幾つも争点のある話で、幾つか議論したいことがあって、例えば特に法曹一元の話などは山本政務次官などともやり合いたいと思っておるんですが、御見解が一緒だといいんですが。  一つ、とりあえず、今これから予算編成などもあるところで、短期のところで、大臣司法の量の話をされました。確かに、この国の裁判が遅いことの理由はたくさんあります。あるいは弁護士にも責任があるだろうと思いますし、制度、手続にも問題があると思いますが、間違いなく、裁判官の数あるいは裁判所の速記官、書記官、事務官の数、あるいは刑事事件に関しては検察官の数、検察事務官の数が圧倒的に足りないということが一つ大きなポイントになっていると思うんですけれども、その辺の認識はいかがでしょうか。
  109. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘のとおり、司法関係者の皆さんの数の問題については確かに足りない、こういう御指摘がございます。したがいまして、司法試験等につきましても、順次採用の人数をふやしてきておりまして、ことしは千名にまで引き上げた、こういうこともございます。  いずれにいたしましても、この量と質の問題というのは両方とも、どちらも捨ててはならない問題でございまして、ぜひとも両々相まって、社会のためにしっかりと働いていただく、そういう人材にこれから司法の世界に来ていただけるように努力をいたしてまいりたいと考えております。
  110. 枝野幸男

    ○枝野委員 確かに、司法試験の合格者をふやしているということはいいことで、どんどん、もう倍や三倍ぐらいにはふやすべきだと私は思っておるのですが、それと同時に、実は裁判官検察官弁護士の数だけが問題ではなくて、例えば、最近、破産事件とかそれから強制執行の事件とかが非常に多くて、これがたまっている。これについて、もちろん最後の判断、責任を持つのは裁判官でありますけれども、優秀な書記官の方がいらっしゃれば、かなりの部分は処理できる実態がございます。したがって、書記官の方の数とか、あるいは事務官の方の数というものも非常に大きな意味を持っております。  そこを考えると、残念ながら、裁判所においても検察庁においても検察官裁判官の数はふやしています、しかし、司法試験の合格者の数のふやし方に比べれば、実は裁判官検察官の数のふやし方は、必ずしもそれに対応しているとは私は思いません。むしろ、弁護士はふやしているけれども、それに比べれば裁判官の伸びなどは小さい。そこはそろえるべきだと思います。  ましてや、もちろん書記官の方なども、養成に時間がかかりますので、一気にばっと倍にトータル数をふやすなどできる世界ではありません。養成に時間がかかる世界ですが、ここのところをもっともっとふやしていく。あるいは検察庁の、先ほど出ました特捜部などが直接捜査する事件も、特捜検事だけが優秀なんじゃなくて、その下でやっていらっしゃる事務官の方が優秀だから、東京地検特捜部というのは優秀に仕事をしているということは、もう御存じのとおりです。  こういうところの数を、ここのところは司法試験の合格者の数にかかわらずふやしていけるのですが、必ずしもそうはなっていないという現状がございます。ぜひこういったところをふやしていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  111. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員今御指摘をいただきました点、私どもも同様に考えておりまして、お考えとしては、私たちにとりましては大変ありがたいお考えだと思っております。  いずれにいたしましても、平成八年から着実に増加いたす努力をいたしてまいっておりますが、今お話しの事務官等も含めまして、引き続きこれからも増員に努力をいたしてまいりたいと考えております。
  112. 枝野幸男

    ○枝野委員 これが最後になってしまうかもしれませんが、大臣にお願いといいますか、特に裁判所予算が問題であります。  法務省、検察庁の予算については、大臣政務次官で頑張って必要なところを確保していただく、それはやっていただけるだろうというふうに思っておりますが、裁判所予算が問題です。御承知のとおり三権分立でありますので、裁判所予算というものについては、大蔵省のコントロールを受けるのは本来おかしい。ただ、国会との関係では、行政府予算とまとめて出す。財源は限られていますので、事実上大蔵省の査定を受けて、希望どおりには通らないということが繰り返されているわけです。  それで、御存じかもしれませんが、二重予算制度というのがありまして、裁判所は、行政府の査定した査定結果に不満があれば、我々は本当はこう欲しいんだということを国会に直接出すこともできるのでありますが、現実には、戦後新憲法制定以来、出したのが一回だけで、しかも途中で引っ込めちゃったということで、国会では、大蔵省の査定した裁判所予算と、裁判所が欲しいと言っている裁判所予算とどっちがいいかという判断をしたことはありません。これは御承知のとおり、裁判所といえども、お金を握っている大蔵省の査定を受けざるを得ないという事実上の問題というのは、否定はできないだろうと思っています。  ここで問題なのは、最高裁判所そのものが政治的に動いてもらってはこれまた困ることでありますし、御承知のとおり、建設省とか運輸省とかというのは、政治家も含めて応援団がたくさんついて、もっと予算をよこせという話をやっていらっしゃるんでしょう、私は余りやったことがないのでよくわかりませんが。そうすると、裁判所が本当に必要な予算、その必要性についてもしっかりと認識し、その立場でバックアップすることを、例えば閣議の中で大蔵大臣に対してやることのできる、あるいはやることの期待されるのは、私は法務大臣であろうということになると思っております。  ぜひそうした認識を持って、これから予算編成に入ると思いますので、もちろん外野から私自身も最高裁予算の増枠については努力したいと思いますが、ぜひそういった形で内閣の中で大臣に頑張っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  113. 臼井日出男

    臼井国務大臣 御指摘裁判所関係予算、極めて大切でございますので、法務省といたしましても、また大臣の私といたしましても、しっかりと応援をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  114. 枝野幸男

    ○枝野委員 終わります。
  115. 武部勤

  116. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  大臣に対して、就任直後最初の一般質問であります。そこで、きょうは人権の問題についてお聞きしたいと思います。  二十一世紀人権世紀だと言われております。人権を擁護、発展させる、これは法務大臣法務省の非常に大事な任務になってきている、ますます大事になってきていると思います。  そこで、きょうは、昨年十一月五日に、国際人権規約B規約に基づいて、規約人権委員会から第四回日本政府報告書に対する最終意見が出されました。この問題について質問するということで、法務大臣にはぜひこの最終見解を読んでおいてほしいということも事前にお願いしておいたわけでありますが、これは法務大臣、お読みになられたでしょうか。
  117. 臼井日出男

    臼井国務大臣 読ませていただきました。
  118. 木島日出夫

    ○木島委員 そこでは、二十九項目に及んで、今の日本人権状況について、国際人権規約B規約から見て問題があると指摘された主要な懸念事項が勧告という形でなされているわけです。その多数が法務大臣所管にかかわる事項であります。いずれも、我が国基本的人権の保障、そしてその前進のためにも国民的な解決が求められている重要案件ばかりではないかと私は思います。  私はこの問題については、日本が、経済的には先進国なのでしょうから、人権問題でもゆめゆめ人権後進国と言われないように、人権先進国と言われるようにならなければならぬという立場から、中村元法務大臣に対しても、また陣内前法務大臣に対しても、その基本的な姿勢を問うてきたわけであります。  そこで、改めて、臼井法務大臣就任直後であります、昨年十一月五日に国際人権規約委員会から日本政府に出された二十九項目に及ぶ勧告、特に法務省所管の案件に関する勧告全体をどう受けとめるのか、その基本的な姿勢をまずお伺いしたいと思うのです。     〔委員長退席、太田(誠)委員長代理着席〕
  119. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員指摘をいただきました、市民的及び政治権利に関する国際規約、いわゆる人権B規約に基づく人権委員会が採択いたしました最終見解の勧告につきまして、私も承知をいたしているところでございます。  これらの二十九項目の中で、特に私ども関係のある項目といたしましては、人権の侵害調査のための独立の機関の設置の問題、あるいは、嫡子でない子に関する差別的な規定の改正の問題、外国人登録証明の常時携帯の義務についての問題、死刑確定者の処遇の改善の問題、起訴前の弁護制度の問題、検察官行政官に対する人権教育の問題、矯正施設における厳しい規則や懲罰の運用の問題、再入国許可制度の必要性の問題等々がございます。  これらの法務省関係をしている問題につきましては、必ずしも我が国の事情についての理解が十分でないとも思われる点もあるわけでございますけれども、その規約、勧告等の趣旨を尊重しつつ、我が国の事情等に照らして、必要に応じて適切に対処いたしてまいりたいと考えております。  特に、最初に申し上げました人権の侵害調査のための独立機関の設置の問題、あるいは外国人登録証明の常時携帯の問題等々につきましては、現在既に進めたものもございますし、これからもさらに努力をしてまいりたい、このように考えている次第であります。
  120. 木島日出夫

    ○木島委員 今、大臣は、趣旨を尊重して適切に対処していきたいと答弁されました。ぜひこの最終見解、勧告という言葉で普通略称されておりますが、本当に重く受けとめて、全力を尽くして我が国における人権を前進させるために取り組んでいただきたいと思うのです。  今大臣から、ただ、この最終見解の中には我が国の事情を必ずしも的確につかんでなされたとは受けとめられない部分もあるというような答弁もありました。しかし、この勧告を見ますと、勧告は冒頭から、第六項におきましてこういう指摘があるのです。「委員会は、第三回報告書」、これは前回の報告書なんですね、今回の報告書に対する勧告がこれですから。第三回、前回の「報告書の審査後に出された勧告の大部分が履行されていないことを遺憾に思う。」こういうことが冒頭言われているのですね。これは私は大変遺憾なことだと思うのです。前回、人権委員会からこうすべきだという勧告が出されたけれども放置された、しかもそれが大部分だということまで指摘されたわけですからね。  大臣法務大臣になられたのは初めてでありましょうけれども、これまでの法務大臣並びに法務省のこの勧告に対する受けとめが、やはり基本的なところで問題があったんじゃないかと私は思わざるを得ないのです。  このことも含めて、前提なしの、重く受けとめるという答弁が欲しいと私は思うのですが、改めて決意のほどをお願いしたいのです。
  121. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほど私が申し上げましたとおり、これらのものにつきましては、我が国の事情等に照らしながら、必要に応じて適切に対処してまいりたい、このように考えている次第でございます。  特に、先ほど申し上げました外国人登録証明等の常時携帯等につきましては、本年八月に成立をいたしました外国人登録法の一部を改正する法律等によって、特別永住者等の登録証明等の常時携帯義務違反に対しては刑事罰を科さないというような改正もさせていただきましたし、現在行われております人権の侵害調査のための独立の機関の設置につきましては、人権擁護推進審議会において、審議の結果を踏まえて、さらに人権擁護につき新たな枠組みづくりなどに取り組む、そうした形で今後とも必要に応じて適切に措置をしてまいりたい、このように考えております。
  122. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、具体的な勧告の内容について、個別的な問題についてお伺いしていきたいと思うのです。  今、大臣答弁された中に、勧告にもある国内人権救済機関の設置問題があるかと思うので、その問題についてお聞きします。  勧告の第九項には「国内人権救済機関の設置」というところがあります。ちょっと大事なことですから読んでみますと、こういう勧告です。   委員会は、人権侵害を調査し、申立に対し救済を与えるために利用可能な制度的な仕組みの欠如について懸念を有する。当局がその権限を濫用しないこと及び当局が実務において個人人権を尊重することを確保するために、実効性のある制度的な仕組みが必要である。委員会は、日本の現行の人権擁護委員は、法務省の監督下にあり、また、その権限は勧告を発することに厳しく限定されていること、そのような仕組みにはあたらないと考える。委員会は、締約国 これは日本に対して、「人権侵害の申立てを調査するための独立の機関の設置を強く勧告する。」こういう文章です。  勧告書の中では、個々の勧告に対していろいろなニュアンスの違いを込めた文章をつくっているのですが、「強く勧告する。」という、強くという修飾がついているのは非常に特異なんですね、この分野は。  そこで、私は通常国会、二月十日の当委員会でこの問題を指摘いたしました。それに対して横山人権擁護局長の答弁は、基本的には今の大臣答弁と同じで、法務省としては人権擁護推進審議会での調査結果も踏まえて慎重に検討したい、こういう答弁でありますが、具体的に審議会での諮問の内容あるいは今の論議の内容、どんな段階まで来ているのか。特に、独立した人権救済機関の設置が勧告されているわけですから、その問題について審議会での審議状況等も答弁していただきたいと思います。
  123. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員指摘人権の侵害調査、救済につきまして、機関の設置の問題がございました。  人権救済制度のあり方につきましては、人権擁護施策推進法に基づきまして、平成九年三月に法務省に設置されました人権擁護推進審議会におきまして、法務大臣の諮問に基づきまして、本年九月以降本格的な調査審議が行われているものと承知をいたしております。  特に、人権救済を行う機関につきましては、委員指摘のとおり、一定の独立性が必要との考え方もございますので、審議会に対して人権救済機関の独立性の問題につきましても調査審議をお願いいたしておるところでございます。  私どもといたしましては、その結果も踏まえてしっかりと検討してまいりたい、このように考えております。
  124. 木島日出夫

    ○木島委員 審議会審議には大変期待するところも多いのですが、そういう独立した人権侵害救済機関の必要性については、大臣個人としては今どうでしょう。一政治家としての意見でも結構ですが。
  125. 臼井日出男

    臼井国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、既に諮問をいたしておりまして、今、鋭意審議会委員の皆さん方が御検討いただいているところでもございます。私どもとしては、それらの結果というものをしっかりと見きわめた上でもって実施をいたしてまいりたい、このように考えております。     〔太田(誠)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 木島日出夫

    ○木島委員 大臣はもっと審議会をいい方向で引っ張るぐらいの迫力がひとつ欲しいなと、希望だけは述べておきたいと思います。  実はこの問題では、国連総会では一九九三年に、既に国内人権機関の地位に関する原則というものが承認されておるのです。パリ原則と言われているものでございます。  この国際的基準、パリ原則によりますと、国内人権救済機関というのは、一つ人権侵害事件について調査し救済すること、二つ、立法や政策について提言すること、三つ、人権教育を実施すること、こういう三つの機能を有する、政府から独立した国内機関である、こうされているのですね。こういうのがもう既に国連総会で九三年に、国際社会原則として、一致してつくられているわけであります。  今回、日本政府に対して規約人権委員会から勧告されたのは、この三つの内容を持った機関が必要だという中での、最初の一番目のことについての勧告なんですね。  こういう状況に対して世界の状況を見ますと、既に、イギリス、フランス、カナダ、オーストリア、スウェーデン等多くの先進国では、いろいろ国柄によって姿形は違いがあるんでしょうけれども、国内人権機関と呼べるそういう機関が設置されているんです。特に私は、九〇年代にはアジア各国でもこのような国内人権機関が設置されるようになってきておるということを指摘して、アジアの諸国でこういうことが進んできているんですから、日本がおくれをとってはならぬということで指摘しておきます。  八七年にはフィリピン、九三年にはインド、同じく九三年にはインドネシアでそういうものが設置されているんです。そして、私は現時点での進行状況、つまびらかではありませんが、スリランカ、モンゴル、タイ、ネパール、パプアニューギニア、そして韓国などでもこういう機関の設立が具体化の方向に向かって急速に進んでいる、こういう状況なんですね。経済的には日本はこれらの国々と比べますとはるかに先進国であります。ゆめゆめ人権では後進国と言われるような状況にはしてはならぬと思うんですが、こんなアジアと世界の状況を踏まえまして、重ねて法務大臣決意をお聞きしたい。
  127. 臼井日出男

    臼井国務大臣 私どもは、二十九項目という中で、特に法務省関係のものにつきまして、ただいま私からもるる申し上げましたとおり、我が国内に適した答申をしっかりと出していただきまして、これに対して対応してまいりたいと思います。
  128. 木島日出夫

    ○木島委員 よろしくお願いしたいと思います。  法務省当局から、昨年出されたこの最終見解、勧告の個別項目について、法務省として前進させていきたいというものが指摘できるのかと私あらかじめ尋ねておきましたところ、例えば第十三項目の「在日コリアンに対する差別」の問題、十四項目の「アイヌに対する差別」の問題、第二十九項目の「女性の人身売買、子どもの買春・ポルノ」の問題、それから三十二項目の「裁判官検察官行政官に対する国際人権法教育」の問題、その中での法務省所管ですから、検察官に対する国際人権法教育問題、これらについては前向きの状況になっているということを聞いておりますので、まずその部分についてだけ一言ずつお聞きしたいと思うんです。決意を述べていただきたいと思うんです。  勧告第十三項目、「在日コリアンに対する差別」、こういう勧告です。「委員会は、日本国民でない在日コリアンの少数者の人達に対する、韓国・朝鮮学校が承認されないことを含む、差別の事例について懸念を有する。委員会は、締約国に対し、規約二十七条の下での保護は市民権を有する者に限定されないという点を強調する一般的意見二十三について注意を喚起する。」こういう勧告でありますが、これに対する法務大臣法務省としての対応について答弁願いたい。
  129. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘の点につきましては、法務省人権擁護機関におきましては、人権尊重思想の普及高揚を図る立場から、在日韓国・朝鮮人に対する偏見や差別をなくすため、積極的に啓発活動を行っております。  また、人権相談所を設けて相談に応じているほか、具体的に基本的人権の侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として速やかに調査し、侵犯事実の有無を確かめ、その結果に基づき事案に応じた適切な措置を講ずるように努めているところであります。  今後とも、積極的に人権の擁護を図ってまいりたいと考えております。
  130. 木島日出夫

    ○木島委員 続いて、勧告第十四項目は「アイヌに対する差別」であります。こういう勧告文であります。「委員会はアイヌ先住民族少数者の人々について、言語及び高等教育における差別、並びに先住地に関する権利が認められていないことに懸念を表明する。」  これに対する法務省としての受けとめ、御答弁願いたいと思うのです。
  131. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘をいただきましたアイヌ先住民に対する差別問題でございますが、法務省人権擁護機関では、アイヌの人々に対するあらゆる差別をなくすため、積極的に啓発活動を行っております。  また、人権相談所を設けて相談に応じているほか、先ほど申し上げましたように、具体的に基本的人権の侵害の疑いのある事案を認知した場合には、人権侵犯事件として速やかに調査し、侵犯事実の有無を確かめ、その結果に基づき事案に応じた適切な措置を講ずるように努めているところでございます。  今後とも、積極的に人権の擁護を図ってまいりたい、このように考えております。
  132. 木島日出夫

    ○木島委員 次に、三十二項目めの勧告ですが、「裁判官検察官行政官に対する国際人権法教育」の問題です。  先ほども同僚委員から、裁判官の運輸労働者に対する差別的な言葉が使われた問題、厳しく指摘されておりましたが、きょうは法務大臣に対する質問ですから、検察官に対する国際人権法教育問題についての対応について答弁を求めたいのですが、勧告を読んでみたいと思うのです。こういう勧告なんです。   委員会は、規約で保障された人権について、裁判官検察官、及び行政官に対する研修が何ら提供されていないことに懸念を有する。委員会は、このような研修を受講できるようにすることを強く勧告する。裁判官を規約の規定に習熟させるため、裁判官協議会及びセミナーが開催されるべきである。委員会の「一般的意見」及び第一選択議定書による個人通報に対して委員会が表明した「見解」が、裁判官に配布されるべきである。  裁判官のことをかなり厳しく指摘しておりますが、検察官に対してこの国際人権法に対してもっと教育すべきだという勧告についての法務大臣法務省としての見解を承りたい。
  133. 臼井日出男

    臼井国務大臣 いわゆる検察官及びその他法務省職員に対しての人権に関しての教育についての御質問でございますけれども、それぞれの研修におきまして、人権擁護局から講師の派遣を受けるなどいたしまして、人権問題に関する講義を行っております。  憲法の定める基本的人権、市民的及び政治権利に関する国際規約等人権に関する諸条約、人権擁護制度、同和問題、子供、女性、外国人等の人権問題等の各種人権問題の理解の増進に努めているところでございます。  また、検察官の職務というものは、被疑者、参考人関係者基本的人権にかかわるところが大でございますので、研修中の捜査、公判手続に関する各種講義や日常の執務においても、関係者人権への配慮についてきめ細かく指導いたしているところでございます。  今後も、引き続き研修等において職員の人権教育に努めてまいりたいと思います。
  134. 木島日出夫

    ○木島委員 これらは私から見て法務省として比較的前向きの対応がうかがえる部分なんですが、そのほかはどうもそうではない。時間も迫っておりますので、なかなか法務省が前向きにならない問題を一つだけ取り上げたいと思うのです。  第二十三項目め、「代用監獄」であります。この勧告はこう記しています。「委員会は、取調べをしない警察の部署によるとはいえ、「代用監獄」が分離した権限の管理下にないことに懸念を有する。このことは、規約第九条および十四条に定められている被拘禁者の権利が侵害される可能性を大きくしかねない。委員会は、第三回政府報告書の審査時の勧告を再度表明し、「代用監獄」制度を規約の要請をすべて満たすものにするよう勧告する。」こういう勧告なんですね。  まことに残念ながら、第三回のときにも勧告をしたんだ、しかし、日本政府は全く是正の措置をとっていない。とっていないばかりか、第四回の政府人権委員会に対する報告は、この問題では居直りとしか言えないような態度をとり続けているわけなんですね。  これは大問題だと思うんです。前回に続く再度の勧告です。放置できないんじゃないかと思いますので、法務大臣基本的な答弁、これに対する受けとめ、答弁していただきたい。
  135. 臼井日出男

    臼井国務大臣 我が国におきましては、刑事事件の真相解明を十全ならしめるために、極めて詳細な取り調べを行っているのが実情でございます。こうした実情のもとで、取り調べの電気的手段による記録を実施したり、あるいはその再生、反訳等に膨大な時間と労力、費用を要する等の問題がございます。  こうした中で、一方、供述したその内容を供述者に対して読み聞かせ、または朗読させ、補充、訂正の申し出があればそれらを加筆をする、こうしたいろいろなことを現在やっているところでございまして、収容人員という問題もあり、これらの捜査上の問題というものもあり、現在、残念ながら代用監獄というものを使わざるを得ないという状況にございます。  したがいまして、これらについてもできるだけ早く解消するように今後とも努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  136. 木島日出夫

    ○木島委員 今大臣から最後に、できるだけ早く解消するように努力をしていきたい、こういう御答弁をされました。大変重く受けとめたいと思うんです。  実は、昨年の第四回日本政府からの報告書、大変後ろ向きな報告だったのですが、それに対して二日間にわたって審査が行われたのですね。そういう中で、日本政府の代用監獄を廃止する意思がないという報告だったのですが、世界各国の、これは大変すばらしい人たちで構成されている委員会でありますが、激しい、厳しい批判が続出をしたという経過があるわけなんですね。  一つ二つ御紹介していきますと、モーリシャスのララー委員の発言なんですが、日本政府は、警察の中で捜査をしている担当警察官と身柄拘束をしている担当警察官が部門が別だ、だから大丈夫なんだというような、そんな意見書を書いているんですね。それに対して、捜査部門と身柄拘束の部門のトップは結局同じじゃないか、同じ警察の枠内での部門がたまたま違うからといって、そういう捜査機関のもとで身柄が代用監獄という形で拘置されていたのでは、それは国際人権規約に反するんだという、厳しい辛らつな指摘なんですね。私は当然だと思うんです。  そしてまた、どうも日本政府はこの問題で、その審査のときに、監獄法四条によって裁判官が代用監獄を巡視することができるなんという説明をしたようなんです。しかし、現在、日本裁判官が代用監獄に赴いて被拘禁者の状況を巡視するなんという、こんなことを第二次大戦後五十数年間やったためしが一度もないんですよ。一度もないようなことを、そういうことができて、あたかもしているかのごとき説明を国際規約人権委員会でするなんということはとんでもないことだと思うんです。これは法務省じゃなくて警察庁なのかもしれませんが。  そんなことを考えますと、これは非常に日本人権問題について国際的な恥部だ、恥ずべき問題だと考えておりますので、東京なんかでは拘置所はもうしっかりたくさんあるわけですから、警察庁の代用監獄に入れる必要性は基本的にはない地域もあるわけですから、法務大臣として、人権を預かる担当大臣として、先ほどの最後の答弁にありましたように、速やかに解消するという立場に立って、これは拘置所の設置が必要ですから予算措置も含めて、また法制度の問題も含めて、全力を尽くしていくということが求められていると思うので、最後にもう一度、そんなことも含めての決意を聞きまして終わりにしたいと思うのです。
  137. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員、国連B規約に関連をいたしましていろいろお話をいただきました。  先ほど来申し上げておりますとおり、そうした勧告というものを私どもはしっかりと受けとめて、解決への努力をしていく必要がある、このように思っております。
  138. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  139. 武部勤

  140. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、法務大臣、就任されて最初の一般質疑ということで、このところ法務委員会の中で一貫して考えてきました死刑の問題に触れて質問をしたいと思います。  大臣、御存じと思いますけれども、実はこの法務委員会の中で、これは与野党超えて、自由党、民主党、共産党そして私ども社民党、所属する議員が、政治家個人として死刑の問題を徹底的に考えてみようという議論がかなり熱心に繰り返されてきました。  ところが、死刑の執行というのは、大臣、この三年間、国会閉会中なんですね。昨年などは参議院選挙の公示日です。各党とも街頭でマイクを握り、参議院選挙ですから、所属する衆議院議員は応援に立つという日ですよね。死刑の議論などまるで、死刑廃止議員連盟というのはありますけれども、執行に対して、法務省あるいは大臣に対して抗議をするなんということはとてもできない日取りだった。  まず、このことを踏まえて、やはり国会での議論をきっちり踏まえて法務行政をとり行っていただきたいという点で、法務大臣に伺いたいと思います。
  141. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま死刑に関することをお話をいただいたわけでございますが、死刑というものは、まさに人の生命を絶つ極めて重大な刑罰でございますから、その執行に際しては慎重な態度で臨む必要があるということは当然のことでございます。  それと同時に、法治国家においては現在そうした法律がある、こうした中で、確定した裁判というものはその執行が厳正に行われなければならない、このように考えております。  この制度についての御議論はいろいろあろうかと思っておりますが、それらについては、ひとつ国会においても慎重に御審議をいただきたいと思います。
  142. 保坂展人

    ○保坂委員 これは具体的なケースなので、矯正局長にちょっと簡単に経過をお願いしたいと思いますが、起きてはならないことだとは思いますけれども、きのうの朝刊に、札幌拘置支所で死刑囚が自殺されたという記事が掲載されています。簡単で結構ですが、どういう事情だったのか。
  143. 坂井一郎

    坂井政府参考人 亡くなりました、自殺されました方は、太田勝憲さんと言われる五十五歳の方でございまして、いわゆる北海道の平取町一家四人殺人事件と呼ばれている事件によりまして、平成五年十二月二十一日に死刑の判決が確定された方であります。  それで、自殺の経緯についてでございますけれども、それを申し上げる前に、収容施設の中でこういう自殺という不祥事が起こったということにつきましては我々も大変遺憾に思っておりますし、亡くなられた太田さんの御冥福をお祈り申し上げるとともに、御遺族に対しても心からお悔やみを申し上げたいというふうに思っております。  それで、事故の経緯でございますが、本年の十一月八日午前七時三十分に太田さんは起床しまして、八時ごろに朝食を済ませたわけでございますが、同日は週三回実施している入浴日に当たりましたところから、午前九時二十八分に本人の居室と同じ棟にあります入浴場に連れていきまして、そこで入浴をしてもらったわけでございます。その際に、本人からかみそりの使用の願い出がございまして、入浴の担当職員がかみそりを貸したわけでございますが、かみそりを借りまして、お湯につかりまして、その三分後である九時三十一分になって浴槽の中で太田さんが眠っているような感じであったため、入浴担当職員が不審に思って確認したところ、右の頸部から出血しておりました。直ちに傷口を圧迫止血しながら非常ベルを鳴らし、駆けつけたお医者さん等で医務課に運びまして救急処置を講じ、その後は同四十八分ごろ救急車に乗せたわけでございますけれども、そのときには既に死亡していたということでございます。  以上、申し上げましたとおり、午前九時二十八分ごろかみそりを受領して、担当職員が自殺企図を確認した九時三十一分までの三分間にこのかみそりを使って右の頸部を切ったということでございます。
  144. 保坂展人

    ○保坂委員 私もこの死刑囚の冥福を祈りたいと思うんですが、ノンフィクション作家の佐野洋さんが「静かすぎる被告人」というモデルにされているという方で、事件は私は詳しくわかりません。  法務大臣、率直に、大変答えにくい質問だと思うんですが、一般的に言って、自殺というのはやはりそれ自体暴力である、是認されるべきものではないと強く思います。けれども、彼の場合は、そろそろ執行が近いのかなという状況が御本人の意識の中に恐らくあったでしょう。実際にいろいろ調べてみますと、やはり日本の今の絞首刑というのは痛みを伴う。大変大量の吐血もします。また、見るにたえない亡くなり方で、絶命するまでに大体平均十数分かかるという、これは残虐な刑罰だということで指摘をしているところですが、しかし、この方の場合は、処刑されるときを待つよりは、みずからかみそり一枚で亡くなったということをどういうふうに、どんな御感想をお持ちになられるでしょうか。  やはり、法に従って執行できなくて残念だというふうにお思いか、あるいは人の命というこの大きな問題をもっと掘り下げて、司法制度改革審議会でも死刑の問題はテーマに上がっていると聞いております、つまり、代替刑を含めて大いに議論しようじゃないかという時期ですので、あえて聞きにくい質問をいたします。
  145. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今回のこうした自殺事件があったということは、本来あってはならないことでございまして、まことに遺憾に思っております。また、御遺族の皆様方に対しても心からお悔やみを申し上げる次第でございます。  しかしながら、ただいま御指摘をいただきました個々の具体的な死刑執行に関する事項につきましてはお答えを控えさせていただきたいと思っておりますが、この死刑囚に関しましては、前にも自殺をしかけたということもございます。精神的に極めて不安定になっておったわけでございますが、こうした本人の状況というものを的確に把握をして処理することができなかったということは残念なことでございます。  こうした同種の事故が発生しないように今後とも万全を期していきたいと思います。
  146. 保坂展人

    ○保坂委員 きょうはこの辺にとどめたいと思いますけれども、例えば死刑囚の心情の安定、それから、罪を悔いて人格的に生まれ変わるというふうに、安定すればするほど、死刑を執行する側の、いわゆる刑務官の方たちは苦悩するわけですよね。矯正の仕事ということをしつつ、最後のいわば仕事のピリオドというのが処刑ということについて、やはり刑務官の現場の方からの声にもぜひ耳を傾けていただきたいと思います。  次に、警察の問題に移りたいと思いますが、先ほど同僚議員からも質問がありました。例の神奈川県警の不祥事のファイル、私も集めていますけれどもこのぐらいの厚さになりました。しかし、総集編のような不祥事が出てまいりました。例の警部補の覚せい剤。これは、残念ながら驚くべき事態ではないんですね。  というのも、本当は驚かなければいけないのですが、大変あるわけです、他に類例がある。警察の方が実は常習者であったということは他にも例があるんですね。ただ、例がないのは、それを知ったいわば組織、警務部長あるいは監察官室長、そして県警本部長までがこれは握りつぶそうと。この二つの事態があるわけですね。  警察官個人の犯罪と、そして組織ぐるみの隠ぺいと、大臣、どちらが社会的な影響が大きいとお考えでしょうか。
  147. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今回の一連の神奈川県警の事件につきましては、信頼をされなければならない立場の者がそうした事件を起こしたということで、大変影響は大きいものと考えております。
  148. 保坂展人

    ○保坂委員 それじゃ、指揮権の問題もありますので、これはあえて刑事局長にお聞きしたいと思いますけれども、神奈川県警では幾多の不祥事がずっと重なってきて、今回も特別捜査班がこの件を捜査中であるということは存じ上げています。  そして、警部補の方は逮捕されたんですね。しかしながら、書類送検ということで、その組織ぐるみの、警務部長、生活安全部長、薬物対策課長、監察官室長あるいは本部長その他送検ということなんですが、身内でまた特別班をつくって、根っこからメスを入れるというのは無理があるんじゃないか。この時期、やはり警察組織への信頼を回復するためにも、検察当局が厳正な捜査を行うということも国民の声ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  149. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 神奈川の警察官の一連の不祥事についての経緯は先生指摘のとおりでございます。  個々具体的な事件ごとに捜査がいかにあるべきかという点が検討される必要がございます。このような警察官が起こした不祥事と、それに関連して警察組織の中で問題があったというケースにつきましては、先生指摘のように、場合によりますと、検察庁が刑事訴訟法の規定を使いまして、独自にその捜査をすべきというふうに考えるべき事案もあろうかと思います。  神奈川の事件につきましては、現在、横浜地方検察庁に東京の特捜部等からも検事が応援に行きまして捜査態勢を組んでいるわけでございます。今の検察の姿勢といたしましては、神奈川県の警察本部がこの事件を大変重大視いたしまして、徹底した捜査を行っているということでございますので、今の横浜地検の姿勢といたしましては、その捜査を見守る、必要な都度、適宜助言をしていく、また、送致を受けました内容については、記録等を精査いたしまして、必要があれば検察官も徹底的に捜査をするという姿勢で臨んでいるところでございます。
  150. 保坂展人

    ○保坂委員 実は、きのう質問予告をして、けさ新聞を見たら、またもう一つ新たに、警察官が犯歴データを興信所に渡していたという記事が載っているんですね、各紙。  法務大臣、たしかきのうでしたか、いろいろやりとりの中で、通信傍受法が成立して、いわばその基盤ができたというふうにおっしゃったんですけれども、これは実際、NTTの顧客データ、この顧客データには、着信、発信あるいは料金の課金などの情報もあるはずなんですね。そして、警察のコンピューターに入っているいわゆる犯罪歴ですか、これらが四十件出た。しかもそれは、捜査権を持っている警察官がいわば捜査を偽装して入手した可能性もあるわけですね。こういった件について、一体これはどういうふうにとらえるのか。  実は、法務大臣にお尋ねをいたしますのは、前国会、我々は盗聴法と呼んできましたけれども、大変厳しいやりとりの中で、警察が公平かつ信頼される組織であるのかどうかということが何度も議論されたんですね。その際どういう答弁をされてきたのか、そして、この件をどうとらえるのか、二点、ちょっとお尋ねいたします。
  151. 臼井日出男

    臼井国務大臣 委員指摘をいただきました過去における法務省答弁の要旨でございますが、次のとおりでございまして、警察においては、過去の事件に関する処分等の結果を厳粛に受けとめ、国民の信頼を裏切ることのないよう適正な職務執行に努めている旨を表明いたしているところでございまして、法務大臣としても違法な傍受が行われることはないものと考えております。  通信傍受法は、極めて厳格な要件のもとで、裁判官の発する令状に基づいて行い、傍受の実施中、常に第三者が立ち会い、傍受した通信はすべて記録され、封印されて裁判官が保管をする、関係者に不服申し立て等が認められている、傍受を行う捜査官が故意に違法な行為を行った場合には三年以下の懲役に処せられる等の制度的な適正確保のための措置がとられておるわけでございます。したがいまして、警察においては、当然、法律の定める要件と手続を厳守した適正な運用を行っていただけるもの、このように考えているところでございます。
  152. 保坂展人

    ○保坂委員 それはきのうつくった答弁書じゃないかと思うんですね。きょうの事件を踏まえれば、やはり信用しなければならない警察官の中に、興信所にNTTから、こういうデータですよと言って渡してしまうような人が、この衆議院の法務委員会審議をしていたときもやっていたんですよ、警視庁のこの警官は。そこを踏まえて答弁していただきたいと思うんですけれども、警察の方に事実関係だけ。官房長、簡単に答えてください、時間がないので。  官房長にこの点について答えていただきたいんですが、匿名の電話があってこれは発覚したというけれども、匿名の電話はだれだったのか、あるいはこれは警察内部の告発だったのか否かについて。さらに、この四十人の、プライバシーをこの警察官に興信所に持っていかれた方には、警察署長あるいは警視庁のしかるべき人がおわびに行ったんですか。この二点。
  153. 石川重明

    石川政府参考人 まず、事実関係について簡単に……(保坂委員「事実関係はいいです。今の二点だけ」と呼ぶ)  匿名の電話というのが内部告発的なものかどうかといったようなものについては、承知をいたしておりません。  それから、漏えいされた対象の個人方々のところへおわびに行ったということについて、私ども承知しておりません。
  154. 保坂展人

    ○保坂委員 法務大臣、四十人の人の中には、この人、短銃を持っているのとか、記事だけだかわかりませんけれども、いわれのないルートで、全く法に基づかない、いわばやみ捜査で自分の情報が渡されちゃったんですよ。この人たちにきちっとおわびをするのが筋じゃないでしょうか。法務大臣としてはどうお考えでしょうか。
  155. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員から御指摘をいただきました事件につきましては、まだ私として事実関係の確認をいたしているわけではございませんが、もしそういうことが事実あったとするならば、まことに遺憾なことでございます。
  156. 保坂展人

    ○保坂委員 それだけの個人情報を侵害された方に対してはきちっと告知をして、あってはならないことが起きたということを謝罪するように政府の中できちっと議論していただきたい、要望しておきたいと思います。  さて、先ほど同僚議員からも、雲助と判決に書いてしまったということの適否について、これは許されないことだ、大臣も、人権上そういう職業の差別があってはならない、そういう御発言があったというふうにとらえました。  日本じゅうでたくさんの事件が起きます。きょうもきっといろいろな小さな事件が起きると思うんですけれども、しかし、その中に、まさに雲助事件、あえて雲助発言事件というふうに呼んでいいような事件の当事者、実は笠井一美さんという方なんですけれども、タクシーの運転手で、世田谷区内でタクシーを運転中に、前の方に自転車が走っていたのでクラクションを鳴らして、その自転車がよけて追い抜こうとしたところで、雲助というふうに言われたので、乗車中のタクシーをおりて、そこでトラブルがあった。  これは被害者と加害者で言い分が違います。言い分が違うから、そういうことに立ち入って聞くわけではありませんけれども、しかし結果として、被害者の方は一週間の擦過傷ということで診断書をもらって、実はこの事件が発生して三カ月もたってからその運転手の方は逮捕される。そして、私はそんな、確かに口論はした、そして一緒に倒れたようなことはあったけれども、馬乗りになって、殴ったりけったりなんという暴行はしなかったというふうに、事実において否認されたんですね。争いがあります。  実は、それで百七十七日間も勾留されたんですね。半年間の勾留です。その半年間の勾留と引きかえに彼は職も失い、そして、この方は円谷プロダクションという有名な、ウルトラマンとか、我々子供のころ楽しませていただいた、そういうテレビ番組をつくっておられた、その後テレビのプロダクションを二十年経営されていたという経歴の方なんですけれども、運転手としてのいわば職業もこのことで失い、そして百七十七日間勾留をされて、冤罪を叫んでいるんですね。  よもやタクシー運転手ということに偏見があってはならないと思うんですけれども、この事件の被害者側の主張が仮に全部正しいとすれば、殴って一週間の擦過傷を負わされた、このタクシー運転手の方は、そんなことはしていない、全くやっていないというふうに言っていて、そこに争いはあるんですけれども、しかし、そのことで一カ月どころか三カ月後に捜査が入って、逮捕されて半年勾留されるというのは、どうも根底にタクシー運転手という職業に対する差別があるんじゃないかと私は思うんですが、いかがでしょうか。
  157. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいまお話をいただきましたいわゆる雲助発言事件、こう申し上げてよろしいと思いますが、委員が今お話をいただきましたのは、むしろ裁判官の発言ではなくて具体的な事件に関することでございますので、大変恐縮でございますが、個別なことについてはお答えは控えさせていただきたい、こう思っております。  一般論として申し上げるならば、やはり人権尊重の立場から、そうした身分的な偏見や予断というものがあってはならないというふうに思う次第でありますが、いずれにいたしましても、私といたしましては、現場の検察当局においては的確な判断をしてくれているものと理解をいたしております。
  158. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは裁判所にお聞きしますけれども、この事件個別についてではなくて、雲助判決がありましたね。そして、私は今、雲助発言事件を指摘したわけですけれども裁判官人権教育というのはきっちりできていないんじゃないか。  例えば逮捕する際の要件として、逃亡及び証拠隠滅のおそれがある職業として、例えばタクシー運転手というのは、職場自体がタクシーという移動体ですから逃げやすいんだ、あるいはその判決文に出ているような偏見、借財を抱え云々、そういう意識を裁判官の方が持っているからこういう判決文が出てきたわけで、裁判官人権教育というのは一体どうなっているのか、来年度予算にでもきっちり計上してやる姿勢があるかどうか、この点についてお答えできると思うので、答えてください。
  159. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 裁判官人権教育についてでございますが、裁判官の教育、研修というのは司法研修でやっておりますけれども、この研修所におきまして、被疑者、被告人の人権にかかわる令状の諸問題、あるいは少年事件に関する諸問題について、講義だとか共同研究、問題研究などいろいろやっておりますが、その際に、人権擁護推進審議会の動きとか国際人権規約の問題とか、いわゆる同和問題あるいはセクシュアルハラスメントなど、こういった人権問題を取り上げまして、いろいろ共同研究、講義などをしております。  こういう研修につきましては、より一層充実を図っていきたいと思っております。
  160. 保坂展人

    ○保坂委員 そういった研究が不足していたからこんな判決が出てきたということを指摘して、法務省刑事局長にもう一点だけなんですけれども、実はこの雲助発言事件は判決が早くも出ているんですね。そして今、高裁でやっているところだそうです。  判決文を読ませていただくと、これは珍しいと思うんですが、つまり、被告側の、けがをされた方の言い分には相当程度矛盾があるということを書いています。つまり、現場になった通りは両側に車が駐車していてというふうに言っているが、両側に車が駐車すると自転車が通れなくなっちゃうとか、その通りがもうちょっと行くと広くなって、実はそんなことはなくて全く同じ幅の長い商店街だったりとか、そういう疑問点が判決文にも記載されているんですね。それはタクシー運転手ですから、タコメーターというのをつけています。事件発生のその瞬間というのは八十キロで走っているんですね。八十キロというと、どうも東京でいえば環八だとか甲州街道、そういう広い道でないと走れない。  推定無罪というのは知っていますけれども、推定有罪、つまり、目撃者もいない、そして被害者の供述、本人は否認、こういうことで有罪というふうになっているんですけれども、先ほどの人権教育の問題は、これは検察官にも言えることだと思うんです。  タクシー運転手をやられている方にさまざまな経歴の方がいる。一人一人が人間としてのプライドを持ってハンドルを握っている。やはり、その人たちを刑事罰に処すのにいやしくも偏見があってはならないし、ましてや矛盾点があるんなら捜査を尽くしていただきたい、一生懸命やっていただきたい。このことだけちょっと一言お答えいただきたいと思います。
  161. 松尾邦弘

    松尾政府参考人 御指摘の事件は、ことしの六月に東京地方裁判所で、懲役六月、執行猶予三年の判決を言い渡した傷害事件でございます。現在控訴審に係属中ということでございますので、具体的内容について私から立ち入ることは控えたいと思いますが、今先生の御指摘の点につきましても、当然その立ち会いの検察官は、事案の内容等にかんがみまして、そうしたことも念頭に置いて公判に立会しているものと考えております。  また、検察官に対する人権教育の問題、御指摘のとおり非常に重要でございます。我々としても、そういう差別的な言辞等については、いやしくも捜査の過程でそうしたことがないように、あるいは考え方そのものも徹底していくようにということで、各種の研修の中でいろいろな形で、講師を招くというような形で十分にそれが浸透するように徹底を図っているところでございます。
  162. 保坂展人

    ○保坂委員 これは本来は、公安調査庁にも来ていただいて、十点ぐらい考えていたんです。申しわけない、時間になってしまいました。  そこで最後に、今の雲助判決や雲助発言、いろいろ振り返ってみて政務次官にちょっと伺いたいんです。  今の刑事事件というのは、これは簡単な事件ですよね、一週間の擦過傷ですから。やりましたとやっていなくても認めれば、ほとんどの場合、身柄は出るんですね。しかし、やっていない、自分はこの真実に生命をかけたいと言えば、事の成り行き上、半年も勾留される。こういう今の刑事司法のあり方について、事実、間違って立件化される場合もあるわけですから、今まで事冤罪といいうのも死刑も含めてあったわけですから、その点もう一度きちっと点検するようなことが必要だと思うんですが、それだけ質問して終わります。
  163. 山本有二

    山本(有)政務次官 具体的事件のコメントはできないんですが、一般論として、刑事手続が厳格に罪刑法定主義等の関係から設置されておるわけでありますが、その運用については、間々、先生指摘のようなこともあろうかとも思います。  今後、厳正に適切に運用していくということに努めたいと思います。
  164. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  終わります。
  165. 武部勤

    武部委員長 上田勇君。
  166. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  臼井大臣山本次官、このたびは御就任まことにおめでとうございます。前国会から引き続きまして重要案件が山積している中で、もう既に実質審議が始まるなど、大変御苦労さまでございます。  きょうは、この後クエスチョンタイムということで、すぐに御出席ということでございますので、若干時間が押しておりますが、極力、予定いたしました質問を若干省略させていただきまして、時間に間に合うようにさせていただきたいというふうに考えております。また、その間お食事の時間もございますでしょうから、それは適宜席を外していただいても結構でございますので、その点もどうか適宜対処されていただきたいというふうに思います。  きょうは一般質疑ということでございますので、法務行政司法制度全般につきまして、大臣、次官の見解を、先般の大臣のごあいさつの内容等も踏まえまして伺わせていただきたいというふうに考えております。  まず最初に、法律扶助事業補助金の予算の問題についてお伺いをしたいんですが、この法律扶助事業補助金、平成十一年度当初予算では六億円が計上されておりますが、本年は、雇用情勢が引き続き悪化していること等を背景といたしまして、民事法律扶助における自己破産申し立てに係る事件などが急増しているということから、その結果としまして法律扶助協会予算が相当不足しているという事態に立ち至っているわけであります。  こうした経済環境の中で、そういった意味での対策という観点からも必要とされているこの法律扶助の資金、これが不足することがないように政府としても万全の対応をしていただきたい、このことをお願い申し上げる次第でございます。  先日も、私を初め我が党の衆参議員の代表から山本次官の方にも直接要請をさせていただいたところでございますけれども、ぜひとも扶助協会の方の予算が不足することがないよう、今予定されております第二次補正予算においても追加予算を確保するように努力をしていただきたいというふうに考えておりますけれども、その点につきまして御所見を伺いたいと思います。
  167. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま委員から御指摘いただきました民事法律扶助制度は、憲法三十二条に定める裁判を受ける者の権利を実質的に保障するという理念のもとで充実が図られてきた重要な制度でございまして、御指摘のとおり、現在、自己破産事件などの扶助事件が大変急増いたしております。その需要に適切に対処するよう、先ほど法律扶助協会への問題も御指摘いただきましたけれども、事務当局に必要な検討をさせているところでございまして、御要望にこたえるべく努力をさせていただきたいと思います。
  168. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私どもとしましても、この予算の追加の必要性、とりわけ二次補正で計上する必要性につきましては、財政当局含めまして、各方面にも働きかけをさせていただきたいというふうに考えているところでございますので、ぜひとも大臣、次官におかれましても頑張っていただきたいと考えているところでございます。これも要請させていただきたいというふうに思います。  この法律扶助制度については、大臣からその重要性につきましては今、御答弁をいただきましたけれども、これまでも法制化の問題あるいは予算額の抜本的な拡充の問題、制度の充実などをこの委員会でも要請させていただきまして、これまでも前向きな御答弁をいただいているところでございます。  また、新聞報道によれば、自民党内においても、法律扶助の対象を拡大して、中小企業の破産手続もできるようにするなどの検討も議論されているというふうにも伺っているところでございます。  そこで、今後のスケジュール、平成十二年度以降の予算の確保の問題あるいは扶助制度自体の拡充なども含めまして、この法律扶助制度、これまでも諸外国に比べてまだまだ不備な点が多いというふうにも言われておりますけれども、今後どのようにそれを整備していくお考えか、御見解を伺いたいと思います。
  169. 臼井日出男

    臼井国務大臣 ただいま御指摘ございました問題につきましては、今回の民事法律扶助制度改革法務省内に設置された法律扶助制度の研究会におきまして積極的に検討されておりまして、平成十年三月に取りまとめられました同研究会報告を踏まえまして、緊急の制度改革の必要性に基づいて行われるものであるというふうに考えております。  同制度の重要性にかんがみますと、今回の制度改革におきましても、その結果を踏まえつつ、本制度をより一層充実させ、同事業の整備及び発展に努めてまいりたい、このように考えております。
  170. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、先日の大臣の御就任のごあいさつの中で、大臣司法制度改革につきまして、その重要性を述べていただいたわけでありますけれども、現在、この司法制度改革につきましては、これまでになく司法関係者のみならず各方面から非常に関心が高まっているというふうに承知しております。  先月の下旬ごろですか、新聞でずっと何日にもわたって連載記事もございました。それからわかるのは、経済界においても今の司法システムの重要性についての認識が強まっておって、それに伴って現行の制度に関するさまざまな問題点指摘されているというふうに思います。  こうした連載記事の中で経済界の問題意識をずっと見てみますと、大きく三つぐらいに分かれるんじゃないかというふうに思います。  一つは、やはり裁判に要する期間が長過ぎる、そのために紛争を司法制度で解決するにしてもその間のコストが高くつき過ぎるので、それをなかなか司法システムの中で解決するということにいかない。二つ目は、知的所有権の問題であるとか医療過誤の問題あるいは不良建築など、技術的、専門的な紛争処理が多発していて、なかなか今の制度が十分に対応できていないというような点。またさらに、当事者としては裁判で紛争にはっきりと白黒をつけたいんだけれども、なかなか実効のある、明らかな、はっきりとした結論が出てこないというような点などが指摘されているんです。  先ほどの質疑の中でも、現在、司法制度改革審議会が発足して、議論されている最中であるというふうにお話があったんですが、ということで、今結論お話しいただくわけにはいかない面も多いかと思いますけれども、こうした経済界からも今の司法システム現状を何とか改革してほしいというような声が上がっているわけでありますが、ひとつ、今の司法システム現状をどのように認識されているのか、またどのような方向での改革を志向されておられるのか、その基本的なお考え方を伺えればというふうに思います。よろしくお願いいたします。
  171. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘いただきました裁判が長期化しているような問題、あるいは知的所有権の問題につきまして、技術的、専門的な対応がよくできていない、あるいは当事者が求める実効性ある決着がついておらない、そうした問題は、まさに今委員が御指摘をいただきました司法制度審議会の検討の重要な課題一つになっているわけでございます。  御承知のとおり、今時代というものは大変大きな曲がり角にも来ておりますし、複雑多様化あるいは国際化している。しかも、規制緩和というものがどんどん進んでいる。こうした中で司法制度というものもしっかりと国民要求にこたえていかなければならない、こういうことでもございますので、私どもといたしましては、今委員が御指摘をいただきましたそういう点も含めまして、審議会審議状況というものをしっかりと見ながら、担当の法務大臣としてこれらの面について積極的に応援をいたしてまいりたい、このように考えております。
  172. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、法曹関係者だけじゃなくて、経済界を含めまして一般の方々から非常に関心を集めていることでございますので、ぜひとも、大臣、次官におかれましても、そうした国民の期待におこたえできるような改革ができますように御努力をお願い申し上げる次第でございます。  最後に、一つ大臣のごあいさつの中で出入国管理行政につきましても言及をされております。これは大臣も次官も御承知のこととは思いますけれども、現在の出入国管理行政基本的な考え方というのは、私はどうも今日の我が国の経済社会実態と相当かけ離れてしまっているんではないかというふうに考えております。  今日、外国人の就労者が非常に幅広い経済活動に従事しているわけでありますし、いろいろと現場の声を聞きますと、既にもう十年以上に及ぶような長期の滞在者も相当多くなっているというのが実態だというふうに思います。しかもその多くが、とりわけ単純労働に従事している人たちの多くが、不法入国あるいは超過滞在など、適法な在留資格を持っていないというわけであります。  しかし、これは、法律を厳格、厳密に運用してしまいますと経済に重大な支障が生じてしまって成り立たないという現実もありますし、実際上も、そういう意味では、行政当局としては弾力的な、現実的な運用がなされているのではないかというふうにも認識しております。  現実と法律の建前がこれほど乖離してしまうというのはやはり異常なことであると思いますし、その結果としていろいろな問題も指摘されております。雇用関係が不安定になる、雇用主の側にとっても、これはそういうデメリットがあるし、雇用される側の外国人にとりましても、いろいろな労働制度や健康保険制度などの適用の対象にもならなくて、場合によっては人権問題というようなことまで発生している。こうした実態というのはやはりこれ以上放置できないのではないかというふうに私は思います。  私は、これは個人的な意見でありますけれども、やはり今日の日本の経済の実態に即して現行の法制度行政のあり方をもう少し弾力的に見直さなければいけないのではないかというふうに考えております。ただ、この点についてはいろいろな異論があるのも承知しておりますし、欧米の諸国の事例を見てみましても、外国人の労働者を受け入れたことについては、付随してさまざまな問題も発生するということでありますので、労働市場の開放に慎重な意見にもやはり傾聴すべき点は多いというふうにも考えております。  ましてこの問題は、単に経済活動の問題だけじゃなくて、社会のあり方全般にかかわることでもございますので、やはり国民の一定のコンセンサスが必要であるというふうに思うわけでございます。そういう意味で、これから賛否両論含めて、やはり国民的な議論が行われるべきときにもう立ち至っているのではないかというふうに思います。  ちょうど先般、いわゆる超過滞在の外国人の方々二十数名が特別在留許可を求めて出頭してくるというような事件もございました。個別の審査でありますのでそれぞれ審査されるものというふうに理解しておりますので、ここではお伺いいたしませんけれども、やはりこの事件というのは重要な問題提起になったのではないのかなというふうにも思います。  そういう意味で、また、こうした支援運動などに携わっている方々からは、一定条件のもとで長期に在留している外国人にはいわゆるアムネスティというような形での在留資格を認めるべきではないかというような話も出ているという声もあるわけでありまして、そういう状況の中で、やはり政府として、今後、外国人就労者のあり方について、これは法務省だけの問題ではなくて、関係省庁がたくさんある問題でありますけれども、そういう連携をもとに、ぜひ法務大臣が、入管行政を主管されているわけでありますので、イニシアチブをとっていただきまして、この議論をリードしていただきたいというふうに考えている次第でございます。  ちょっと長い質問になって申しわけございませんけれども、この外国人の就労者の問題、また、それに伴います出入国管理行政につきましての大臣のお考え方を最後にお伺いしたいというふうに思います。
  173. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今御指摘をいただきました出入国管理の問題につきましては、私もよく申し上げるわけですが、外国の方にとって、日本に入ってきて最初の日本の顔であると思います。そういった意味で、正規の手続を経て入ってこられる外国の皆さん方に対しては、ぜひとも日本の温かさというものも理解していただけるような柔軟な対応というものが必要だろうと思っております。  また一方、不法滞留者、滞在者、あるいは不法に勤めている就労者、そういった者に対しては、やはり外国から見える方も大変多くなってきておりまして、国民一般に対しても大きな影響を与えているという中で、厳しくこうした者に対処していくということは必要なことであろうかと思っております。  一方、外国人就労者の受け入れにつきましても、専門的、技術的分野の外国人は積極的に受け入れるという従来の私ども政府基本というものに従いまして、今後、法務省令というものをしっかりと定めながら、円滑な受け入れを行ってまいりたい、このように考えております。
  174. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  ちょっとこれは、最後、もう答弁は結構でございますけれども、私が申し上げたかったのは、今の政府の方針が実際の、実態の経済社会とはやはり相当乖離してしまっているので、何とかこの溝を埋め合わすための議論をしていかなければいけないのじゃないかということでございます。  なかなか公式的な見解としては言っていただけないことだと思いますけれども、これは余りにもかけ離れているがゆえにいろいろな矛盾が生じているというのは、多分、大臣も次官もそれぞれ地元のいろいろな現場に行けば、もう目の当たりにすることだというふうに思います。  私も、地元でそういう中小企業、製造業などの現場や建設業の現場などを見ますと、この人たちを本当に厳正に取り締まったらすぐに仕事がとまってしまうんじゃないかという現実もありますし、実際の行政運用の中ではそれは現実的な対応はなされているというのは承知しておりますけれども、やはりこれは本音と建前の議論、これから政府部内でも、また国会の中でも議論をして、こうした矛盾点を解消していくための努力が必要なのではないかというふうに思いますので、ぜひ今後とも、政府の中におきまして、大臣また次官におかれましても、問題提起をしていただいて、問題の解消に全力で当たっていただければということをお願い申し上げまして終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  175. 武部勤

    武部委員長 西村眞悟君。
  176. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村です。  一点、今の出入国管理に関連するのですが、質問というよりもお願いして、予算を獲得していただきたいという観点からの発言でございます。  我が国に今百四十余の開港場がありまして、そこから外国から人が我が国に入ってくるわけですけれども、その日のうちにだれが入ったのか、警察情報とも合わせて一応確定できる開港場は成田空港と関西空港しかございません。そのほかの百四十余の開港場から入ってくる人のデータに関しては大体十日ぐらいかかるだろう。この間に何が起こっているのかといえば、だれが入ったかわからないという事態が起こっております。事実、許永中はいつ入ったのかわからぬけれども日本におったわけですね。  この事態を、沖縄サミットを控えて、我々は治安の観点からもう一度点検し直さねばならない。よく外国の犯罪組織は、日本の開港場の関空、成田以外から入ればわからないんだということは知っておりまして、その二開港場以外のところから入って、その日のうちに東京もしくは大阪に来て、一仕事をして、そして関空また成田から出国していく。警察の方は、だれが入ったかを把握して、どうもあの犯罪は、またあの行為は彼らの組織のなせるものであろうという推測のもとに調べたら、結局彼らは入って、もう既に出国しておった、歯ぎしりをするという事態があると私は聞いております。  したがって、この際、これは全国百四十余の開港場すべてを結ぶコンピューターネットワークシステム、そしてそれは警察の情報、またビザを発行する在外公館との情報の一元化を法務省がぜひイニシアチブをとって完成させていただきたいのです。  サミットを控えておりまして、これはやはり緊急事態だと思います。我が国の治安状況は、例えば新幹線の犬くぎを、だれが抜いたのかわからぬけれども、抜かれておる、送電線の鉄塔が倒れて、だれが倒したのかわからぬけれども、一切その背景がわからぬけれども、現実にその事態が起こっております。  よくアザー・ザン・ウオーという言葉がありまして、戦争のようであって戦争でない、戦争であるようだけれども実は戦争でない。このアザー・ザン・ウオーというか、妙な破壊活動ですね。それは平時だと我々全員が思っている中で、既に起こす能力を保持した者が我が国にいるのではないか、こういう危惧をやはり治安を維持する法務行政の最高責任にあられる大臣及び次官はお持ちいただいて、そしてこれはコンピューターシステムを完成させればできるわけですから、どうぞこのことをお願いしたいということでございます。  もう一度サミットに触れますが、沖縄にはやはり日米両軍の基地がございまして、この沖縄の基地が本当に目の上のたんこぶであると思っている周辺国は我が国の周りにあるわけですから。また、我が国国内における過激派組織等の闘争目標は沖縄サミット粉砕であることも、また事実であります。  したがって、国内の治安を確保する方策とともに、海外からいかなる者が何の目的で入ってくるのかということをその日のうちに一元把握するシステムを、どうかこの補正予算また本予算の機会にどんと築いていただきたいと思って、要望させていただく次第ですが、大臣の御所見をお願い申し上げます。
  177. 臼井日出男

    臼井国務大臣 今委員指摘の入管におけるシステムの電算化は大変重要な問題だと思っております。当省では、この一年間に主要な出入国港に、これは二十六でございます、旅券自動読み取り装置、MRPリーダーと申しておりますが、それを配備いたしまして、この機械を使って上陸しようとする外国人の所持する旅券を読み取り、強制退去をされたことのある者等の再上陸の拒否事由、そうした該当者というものを初めとする要注意外国人らの出入国港について速やかな把握ができるシステム整備してまいってきております。  これで一番肝心なことは、今委員指摘のとおり、どれくらいそのデータが蓄積されているかということでもあろうかと思っておりますので、今後とも、ブラックリスト等の充実等にも努力をいたしてまいりたいと思っております。  そうしたことのために、平成十二年度の予算でも概算要求をいたしておるところでございまして、今後とも、出入国管理のための電算処理システムを充実させてまいりたいと思っておりますし、また、委員指摘の全部を結ぶコンピューターシステム、そういったものも研究をさせていただきたいと思います。
  178. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。  予定がこの後おありだとお聞きしておりますので、大臣また次官の人権考えずに人権擁護のための議論をしていても仕方がありませんので、私の質問は次に譲らせていただきます。  終わります。      ————◇—————
  179. 武部勤

    武部委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律案及び与謝野馨君外五名提出、特定破産法人の破産財団に属すべき財産の回復に関する特別措置法案の両案審査のため、来る十六日火曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 武部勤

    武部委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十五分散会