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1999-12-14 第146回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月十四日(火曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 松岡 利勝君    理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君    理事 松下 忠洋君 理事 宮本 一三君    理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       赤城 徳彦君    今村 雅弘君       小野寺五典君    河井 克行君       木部 佳昭君    岸本 光造君       北村 直人君    熊谷 市雄君       栗原 博久君    塩谷  立君       園田 修光君    藤本 孝雄君       二田 孝治君    御法川英文君       矢上 雅義君    谷津 義男君       安住  淳君    石橋 大吉君       木幡 弘道君    佐藤謙一郎君       漆原 良夫君    木村 太郎君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤木 洋子君       前島 秀行君     …………………………………    農林水産大臣       玉沢徳一郎君    外務政務次官       東  祥三君    農林水産政務次官     谷津 義男君    農林水産政務次官     金田 勝年君    政府参考人    (外務大臣官房審議官)  横田  淳君    農林水産委員会専門員   外山 文雄君     ————————————— 委員の異動 十二月十四日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   藤木 洋子君     藤田 スミ君     ————————————— 十二月八日  新たな米政策見直し国内農業を守る政策転換に関する請願中林よし子紹介)(第七九五号)  同(藤田スミ紹介)(第七九六号)  同(松本善明紹介)(第七九七号)  同(古堅実吉紹介)(第八九二号)  食料農業農村基本法施策推進WTO農業交渉及び農業者年金制度見直しに関する請願木島日出夫紹介)(第七九八号)  国営川辺川土地改良事業変更計画凍結に関する請願佐藤謙一郎紹介)(第一〇一七号) 同月九日  国営川辺川地区土地改良事業促進に関する請願園田博之紹介)(第一〇八四号)  同(林田彪紹介)(第一一九六号)  同(矢上雅義紹介)(第一一九七号)  国営川辺川土地改良事業変更計画凍結に関する請願中島武敏紹介)(第一〇八五号)  食料農業農村基本法施策推進WTO農業交渉及び農業者年金制度見直しに関する請願北沢清功紹介)(第一一九四号)  同(村井仁紹介)(第一一九五号)  同(羽田孜紹介)(第一四四五号)  首都近郊農業保全のための法整備等に関する請願今井宏紹介)(第一四三九号)  同(大野松茂紹介)(第一四四〇号)  同(加藤卓二紹介)(第一四四一号)  同(福永信彦紹介)(第一四四二号)  同(三ツ林弥太郎紹介)(第一四四三号)  同(山口泰明紹介)(第一四四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件(WTOシアトル閣僚会議の結果)     午前十時十分開議      ————◇—————
  2. 松岡利勝

    松岡委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、WTOシアトル閣僚会議の結果について政府から報告を聴取いたします。農林水産大臣玉沢徳一郎君。
  3. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 私は、米国シアトル市で行われました第三回WTO閣僚会議出席するため、十一月三十日から十二月五日までの間出張してまいりました。閣僚会議自体議論凍結するという結果になりましたが、この会議を通して、私は、WTOムーア事務局長議長である米国バシェフスキー通商代表米国グリックマン農務長官EUフィッシュラー農業漁業委員など世界各国農林水産行政責任者と直接議論を行い、文字どおり昼夜の別なく真剣な話し合いができたと考えております。  また、今回の会議には、本委員会松岡委員長を初め各会派から派遣されました委員先生方におかれましては、積極的な議員外交を展開していただき、我が国主張に対する諸外国の理解促進を図っていただいたことにつきまして、この場をおかりいたしまして改めて御礼申し上げます。  それでは、お手元に配付しております「WTOシアトル閣僚会議の結果について」という資料に沿って、私から概略を御報告いたします。  今回のWTO閣僚会議は、全体会合のもとに農業市場アクセス等の五つの閣僚級分科会を設置し、各分野ごとに真剣な議論が行われました。しかしながら、農業ダンピング防止措置等各国立場が大きく異なっており、一方、時間が余りに限られていたことや、百三十五の加盟国を抱え、運営上、議論効率性透明性を両立させることが極めて難しい状況であったことなどから、会議最終日の三日になっても調整がつかず、ついに現地時間十二月三日午後十時、日本時間四日の午後三時過ぎに開催された全体会合で、米国バシェフスキー通商代表が、このプロセスを中断する、中身の進展はあったので、これを凍結ジュネーブに引き継ぐ旨発言するに至ったわけであります。  次に、農林水産分野議論の概要について御報告いたします。  今回の閣僚会議において、農業分野につきましては、第一に、農産物鉱工業製品同一ルールのもとに置くか否か、第二に、次期交渉における農業協定第二十条の位置づけ、第三に、農業多面的機能取り扱いという、大きく三つの論点がありました。  このうち、我が国主張してまいりました、農産物鉱工業製品同一ルールのもとに置くという一部の国の考え方農業の特性を無視するものであるということ、次期農業交渉農業協定第二十条に基づくものであることにつきましては、おおむね各国理解を得ることができたと考えております。  また、我が国EU等は、今回の会合で、最後まで農業多面的機能重要性への配慮を強く主張しました。この結果、多面的機能具体的内容である食料安全保障環境保護農村地域活性化、食品の安全性につきましては、各国理解を得ることができたと考えております。ただ、ケアンズ・グループを中心に、農業多面的機能という文言自体には、概念規定が明確でない、あるいは貿易歪曲的な措置として利用されるおそれがあるという意見が強く出されたところであります。したがいまして、今後、各国理解を得るための取り組みを強化することが必要と考えております。  次に、林野・水産分野につきましては、貿易問題を考える上で、地球的規模環境問題や資源持続的利用輸出国輸入国権利義務のバランスの観点について十分な配慮が払われることが必要であるとの考え方について、各国理解が深まったと考えております。  農業分野につきましては、農業協定第二十条に基づき、来年から交渉が開始されることになっております。今回の閣僚会議において何らの合意もなされなかったことから、農業交渉の取り進め方につきましては、見通しが困難な状況にあります。また、新しいラウンドの立ち上げについては、今後ジュネーブ議論されることとなっておりまして、その状況にも留意する必要があると考えております。いずれにしましても、この交渉において我が国は、今回の閣僚会議議論の積み重ねも十分生かして、二十一世紀農産物貿易ルールの構築のため、関係者が一体となって積極的な貢献を果たしていきたいと考えております。  委員各位におかれましては、今後とも一層の御理解と御支援を賜りますようお願いをいたしまして、報告とさせていただきます。
  4. 松岡利勝

  5. 松岡利勝

    松岡委員長 この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として外務大臣官房審議官横田淳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松岡利勝

    松岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 松岡利勝

    松岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今村雅弘君。
  8. 今村雅弘

    今村委員 おはようございます。会期末の迫る中、貴重な質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。  大臣大役御苦労さまでございました。厳しい国会日程の中、そしてまた、向こうでは無秩序なデモが荒れ狂う中で大変な御活躍ということで、まずもって心から敬意を表する次第でございます。テレビ等大臣が堂々たる対応をされておるということにつきまして、私の地元でも大変頼もしいという声が多く寄せられているということをまず御報告したいと思っております。  私もシアトルに参りまして、大変貴重な経験をさせていただいたわけでございます。今回のこの閣僚会議、いろいろな面で従来とは違ったものだったのじゃないかなという感じを強くしているわけでございます。きょうは時間も限られておりますので、簡潔に三点ほどについて時間があればお伺いしたいということでございます。  まず第一点は、今回の会議成果についての評価でございます。第二は、これからの交渉進め方、そしてまた第三は、今回、非常に存在感をアピールしました発展途上国との関係強化、これはODAあり方等々があるかと思いますが、この三点について伺いたいというふうに思うわけでございます。  まず第一点、今回の会議評価ということで、私なりにもちょっと考えてみたわけでございますが、二つぐらい大きなものがあるのかなというふうに思っております。  まず第一点は、今回は、もう十分な準備といいますか、心構えをして取り組んだということではないか。前回のUR合意のときには、これは細川政権のもとであったわけでございますが、何だかわけがわからないうちに決められてしまった。後になって、こんなことだったのかということで反省しても、もう後の祭りというような感じがあったわけでございます。  しかしながら、今回はもうそうはいかぬぞということで、農水省もしっかり前準備をされましたし、私たち自民党内でも何回となく勉強会をやって取り組んだ。そして、この農水委員会でもしっかり議論をして、代表団も派遣したということで積極的な議員外交も展開したわけでございます。そしてまた、関係団体ともよく協議して、皆さんシアトルまでたくさん出られて、しっかりした外交を展開された、まさに総力戦で取り組んだということが今回の一つの特徴かなと。  第二には、何といっても従来からのガット、WTO体制下における経済第一主義あるいは自由貿易至上主義、こういった流れに一つの大きな変化が生じてきたのではないかという感じがいたしております。我が国主張してきた農業多面的機能といったものを中心に、環境資源、人口とか食料、そういった問題がまさに地球人類の存亡と未来をかけた課題提起として十分に受けとめられたのではないかというふうに思っているわけでございます。そしてまた、先ほど言いましたように、これと関連して発展途上国存在が大きく認識されたということでございます。  以上、総力戦での取り組み、あるいは世界の潮流の変化といったことについて私は強く感じたわけでございますが、大臣におかれては、今回の会議についてどういう評価をされ、また見解を持っておられるのか。先ほど伺ったわけでございますが、もう少しよければ詳しくお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  9. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 委員も十分御承知のとおりだと思いますが、今回の閣僚会議は、あくまでもこれからの貿易交渉を行う考え方宣言案の中にまとめる、こういう趣旨会議でございまして、一つの枠組みをつくる、こういうことだと認識をしておりました。したがいまして、貿易自体は、貿易を通じましてそれぞれの国が利益を得ることでありますから、貿易は否定するものではありません。しかしながら、農業貿易は他の鉱工業製品とは同じくするものではないのだということを我々は主張してきた。  それは、やはり農業といいますのは、それぞれの国の特質がある。それから同時に、委員がおっしゃられましたように、多面的な機能というものがありまして、多くの役割を果たしておる。したがって、鉱工業製品と同じようなルールでやるとするならば、いわゆる大農経営をやっておる国々が、家族経営中心としてやっている国に対しまして一方的に犠牲を強いるというような結果になる可能性がございますので、あくまでも農業貿易というものは各国の多面的な機能というものに十分配慮して、そこに配慮しながら貿易ルールを構築する必要がある、こういうことで、私は相互理解共存共栄ということを主張してまいったところでございます。  発展途上国国々に対しましても、先進国発展途上国農業がともに共存できることを追求していくことがこの大会の成功のかぎになるということも申し上げたところでありますし、各国農業特質理解を示していくことが大事であるということも申し上げたわけでございます。  そういう点は、この会場を取り巻いた五万人のデモ隊、一部大変過激な行動をとった団体もありますが、おおむね大部分団体におかれましては、環境観点消費者観点あるいは生産者観点から、やはり農業の一方的な自由化というものはする必要がないのではないかというようなアピールが見られたわけでございます。我々はそうしたことも十分勘案をしましてやっていかなければならないんじゃないかということを主張してまいりましたし、そうした意見が徐々に多くの国々理解をされるという結果を生んだ、こういうふうに考えておるところでございます。
  10. 今村雅弘

    今村委員 おおむねわかりました。会議のいろいろな報道されない細かいこと等につきましても、これからまた機会があれば伺いたいと思っております。  第二点に移りますが、まさに今回は、玉沢農水大臣の裂帛の気合いのもとに、相撲でいえば、十分仕切りをしてさあ行くぞというところで、相手がこれは困ったなということで待ったをかけたというような状況じゃないかと思うわけでございますが、問題はこれからの進め方ということではないかと思っております。  今回の会議は中断、そして凍結ということでありますが、実質的には、ただいま大臣が言われたようにいろいろな議論がなされて、一定の前進もあったと私は認識をしているわけでございます。残念ながら表現としては出てこないわけでございますが、しかし、仮にそうだとして、非常にほかの分野に比して、そういう意味では農業分野はまさに一歩突出、先行したという格好になっているわけでございます。今後はぜひこの成果を、せっかくの成果を足固めをしていくといいますか、そういったことが絶対に必要ではないか、まずこう思うわけでございます。  他方では、我が国交渉進め方としては、やはり全分野包括的にやっていこうじゃないかということで取り組んでいくということでいきますと、一刻も早くほかの分野、商工とかサービスといった分野も早く追っかけてきてくれなければ困る。そうしないと、先行した農業分野だけが孤立して、下手すると、集中砲火を浴びる可能性もあるわけでございますが、この辺がなかなか、兼ね合いの問題、そしてまた、アメリカ大統領選挙を控えているというようなことで、この進め方については非常に難しいとは思うのでありますが、今後とも、やり方としては、二国間協議をやるとか、WTO以外の場、例えばFAOとかそういった国際会議の場でも、十分こういった成果を踏まえて、交渉を実質的に進めていくということはできるんじゃないかというふうに私は思っているわけでございます。  そういったものを踏まえて、今後における取り組み方、そしてまた、できればスケジュール等を、見通しなりなんなり、お考えがあればぜひ伺いたいというふうに思います。
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 全体の次の閣僚会議の持ち方でございますが、これは閉幕に当たりましてバシェフスキー議長の方から話があったわけでございますが、WTOムーア事務局長が、各国調整をしながら次の包括的な会議についてはぜひ準備を進めるようにということが第一点であります。  それから同時に、この協定によりますと、農業の問題とサービスの問題は来年から自動的に交渉に入る、こういうことになっておるわけでございます。しかしながら、いずれもこの会議の終幕に当たりまして、いつやるかというようなことについては何ら取り決めがなされない状況でございますので、この点はまだ不透明な状況になっておるわけでございます。  しかしながら、この宣言案そのものは中断されるということになりまして、農業協定に従ってやるということにもしなったとすれば、これはあくまでも農業協定の第二十条を中心としてやっていく。今回の宣言案の中におきましては、二十条の枠を超えてもっと要求しようという国と、それはいかぬという国と、いろいろ分かれたわけでございますからね。ですから、そういう対立点があって中断したということでありますが、もしやるとすれば、忠実に農業協定の第二十条に基づくということは当然のことであると思います。それと全体会議との、あるいは包括会議といいますか、それとの関連については、これから協議内容、つまり、ジュネーブで行われる大使級会談等理事会が十七日にも開かれるというふうに聞いておるわけでございますので、そういうことを見ながら対応していかなければならないと考えておりますので、今後とも御理解を賜りたいと思います。
  12. 今村雅弘

    今村委員 これからがまさにスタートということで、ぜひ、今後ともしっかりした取り組みお願いしたいというふうに思うわけでございます。  ところで、一応交渉はこういうことになったわけでございますが、当面の扱いとして、やはり農家の皆さんの関心が深いのは、二〇〇〇年以降あるいは二〇〇一年以降どういうことになっていくのかなというようなことがあるかと思います。この辺は、我が国取り組みの姿勢等々にもかかわってきますし、戦術の問題になってきますので、いろいろ言えない部分もあるかと思いますが、例えばMA米扱い等々、今後のその辺の扱い方について、よければ、差し支えない範囲で結構でございますから、お伺いしたいと思います。
  13. 谷津義男

    谷津政務次官 先生案内のとおり、本年の四月から実施されている関税措置への切りかえによりまして、二〇〇〇年度の米のミニマムアクセス数量は七十六万七千玄米トン、二次関税率キログラム当たり三百四十一円となっております。二〇〇一年以降のミニマムアクセス数量と二次関税率につきましては、次期農業交渉において論議されると見込まれております。  この交渉におきましては、次期期間中の取り扱いも含めまして、新たな合意がなされない限りは、現行協定実施期間最終年度である二〇〇〇年度のミニマムアクセス数量と二次税率が維持されるものと考えております。
  14. 今村雅弘

    今村委員 わかりました。  いずれにしろ、これから交渉が本格的に、いろいろな準備を含めてやっていくということでございます。  最後に、これは質問というよりも私のお願いということになるかと思いますが、今回は、発展途上国を含めて、大変存在感を多くの国が示したわけでございます。そういう意味で、これから日本の農政あるいは外交としても、ぜひ、こういった国にしっかり我が国主張理解してもらう必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、例えばODA等の問題にしても、これは決して、援助をするからうちの味方になってくれといったことではなくて、こういった国が発展をすることが世界貿易の拡大にもつながっていく、そういった大乗的な見地からODAあり方等にも取り組んでいくべきじゃないか。そういうことにすれば我が国貿易黒字に対する風当たりも弱くなってくる、あるいは農産物自由化への圧力も弱くなってくる、そういうことも私は思うわけでございます。  いずれにしろ、新しい二〇〇〇年以降はまさに地球世紀人類世紀と言われるわけでありますから、そういった大きな観点から、今後ぜひ、ODA等々を含めた発展途上国との連携といったものについてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思うわけでございます。  時間があればで結構でございますが、お願いだけしておきます。
  15. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 委員のおっしゃられますように、貿易協定を有利にするとかなんとかということよりは、要するに、ODAを通じまして、我が国外交政策国益にかかわる重要な政策との間の連携を図る、これが大事だと思いまして、ODA中期政策が八月に、そのような趣旨決定をされたわけでございます。  したがいまして、ODAを通じまして、その国々との間におきまして農業問題等についてもお互いに相互理解を深め、そして、そういう相互理解の上に、今後、WTO等交渉についても同じような立場からの考えを表明して、貿易ルールの中にこれを盛り込んでいく努力が必要である、このように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  16. 今村雅弘

    今村委員 頑張ってください。どうもありがとうございました。
  17. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、小平忠正君。
  18. 小平忠正

    小平委員 おはようございます。  大臣、十一月下旬から十二月に入っての、シアトルでのWTO関係国閣僚会議出席、まことに御苦労さまでございました。  今質問自民党議員からございましたが、我々も、超党派議員外交の一環として参加をいたしました。  特に、これについては政府間の交渉でございますので、私ども国益を第一に考えまして、基本的にはこれは与野党の問題ではない、日本という国がこのような農業環境の中でどうやって自国の農業を、我が国農業をしっかり守っていくか、これがやはり今回のWTOの大きな観点であると私は思います。  しかし御案内のように、WTOは、農業のみならず多岐にわたっております。決裂になった今回の経緯を振り返りましても、もちろん、いわゆる議長国アメリカの、言うならばリーダーシップといいますか、会議運営に一部いろいろな不手際があったと伝わってもおりますが、しかしそれだけではなくて、各国主張がいろいろな点においてぶつかり合った、このように言えるのではないかと思います。  そこで、振り返ってみますと、ウルグアイ・ラウンドのときを思い起こしますと、まず一つは、当時と比べまして世界経済グローバル化が非常に進んできたと私は思う。そして、私の記憶に間違いなければ、当初私どもがいろいろと交渉をしたころは、最初アメリカリン農務長官の時代でありました、当時はMTOといっていましたですね、参加国はまだ百カ国未満だったような記憶があります。それが最終段階では、WTOの決着のあたりでは百十数カ国になりました。しかし、今次は百三十五の国ですか、しかもそのうち大多数がいわゆる開発途上国。しかし、WTO決定全会一致、そのような意味考えましても、非常に会議運営は難しいということも理解できます。  そしてもう一つ今回の大きな違いは、NGOといいますか、市民活動的な、また地球環境をしっかり守ろう、そういう活動が盛んにあり、今回のデモは非常に過激に発展しまして、実は、私も党の立場で外に行ったとき、デモの中に巻き込まれて一時不穏な状態に遭遇しました。このデモ動きも、もちろんアメリカ労働組合活動が当初スタートではあるかと思いますけれどもNGO参加がさらにこれを大きくした。もちろん、残念なことに、一部の不穏分子といいますか破壊分子といいますか、そういう動きもあってあのような、最終的には戒厳令の発動という事態までなりまして、そんなことを今思い起こしております。  それで、大臣にお聞きするのですが、その前にちょっと私から、当時の事実関係を申し上げておきたいのであります。  先ほどの質問で、当時の細川政権時に、何だかわからないうちにああいうふうになった、こういうふうな御発言がございましたが、これは私は正確を、要を得ていないと思います。その以前にもう数年前から、これは当時の与党、自民党政権の中でいろいろと政府間の交渉が進められてきました。しかも当時は、いわゆるプンタデルエステ宣言、そのときは非常に情報公開もなっていなかった、秘密裏に行われてきた。そういう積み重ねがあって、そしてああいう不徹底な、秘密主義の中であのような結論にいってしまった。当時としては、苦渋の選択でああいう、特にお米については部分自由化の選択を余儀なくされた。こんなことを思い起こすと、単に細川政権時にああなっていないということ、あれには積み重ねがあって、ああいう経緯の中でたまたまあそこが結論の時期であった、こんなことを思い起こしていただきたいと思います。これについては、もう済んだことですから、これ以上申し上げません。  そこで、今御質問の中で、今回のこの経緯等々、今大臣から御報告がございました。私はそういうことを振り返って、大臣も、グリーンルームですか、これも問題があるかと思います。一部の先進国中心にした会議の展開の中で、開発途上国が言うならば反乱を起こした、こんなことも今申し上げたような観点から理解できると思うのでありますが、その中で、大臣我が国主張はもう既に私どもも承っておりますし、また我が国主張については私も賛成であります。  そういうところで、特に大臣多面的機能ということを非常に強く叫ばれて、大事な終盤の段階で、そのことが盛り込まれるように特に声を強く議長にその発言をされた、そこも承っておりますが、あのとき私どもは、事前に韓国を初めスイスやフランス等々とも議員外交を展開いたしました。その中で、これについては賛同といいますか、合意の点があったのでありますが、あの政府交渉の中の閣僚会議の中で、多面的機能というのは、日本だけが孤立をしてほかの国は少しトーンが変わった、私はこんなふうにも承っております。  そんなことを含めて、今回、大臣がそこにどう留意をされて頑張られたのか、ちょっと確認をしておきたいのであります。よろしくお願いします。
  19. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 この多面的機能というのは極めて重要な考え方であると思うのでありますが、議論をする中において若干私も認識を新たにしたわけでありますけれども、かなり以前からこの言葉はFAOにおきましても議論されてきた。しかしながら、この会議が行われる前に行われたFAOの総会等におきましては、多面的機能重要性主張した国が二十一カ国、これに対して反対をした国が十一カ国という数字がFAOの総会で示されております。最終宣言案の中においては、多面的機能という言葉は入りましたが、まだコンセンサスが得られていないという声明になっておるわけであります。  私は、つまり、非貿易的関心事項という項目がございまして、その中に食料の安全保障、環境の保護あるいは農村の開発とか食品の安全という言葉が入っているわけですから、そういう要素が入っておるならば、より正確な文言としまして、この多面的機能という言葉の方がより正確ではないかということを最後まで主張した、こういうことでございます。  やはり同じような立場に立っている国々が、自分の国の最大関心事というものがそれぞれあるわけでございますので、やはり最終決着がつくまではどんなことがあっても多面的機能というものをおろしてはならない、こういう信念で頑張ったわけでございます。私どもがこのことを主張してまいったことで、EUの方におきましても輸出補助金の撤廃、この撤廃という言葉を彼らはどう言葉にかえるかということで、最後までもめたわけでございます。  つまり、そういうようなこと等もありまして、この会議におきましては、やはりみずからの国が最も正しいと思ったことは最後まで主張し続けるということが大事である、決してその他の国々がトーンが弱まったということではございませんで、やはり自分の国の最大関心事項というようなものがある。その関連で言っておるわけでありますけれども、しかし、多面的機能フレンズ国、友の会という中核の五カ国になるわけですが、これらの国々も決して最後までこの主張をおろしたわけではございませんので、この点も御理解をいただきたいと思っておるわけであります。
  20. 小平忠正

    小平委員 大臣のその御期待は私どもも同じ思いでありますが、各国それぞれ特殊な事情を抱えております。  特に韓国は、非常に手を携えて頑張っていける協力国であると思いますけれども、しかし、かの国は依然としてお米の部分自由化を堅持していますので、そういう意味においては交渉スタンスも微妙に違ってくる点もあるのではないか、こんなふうに思いますが、そこのところは今後の交渉いかんです、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  そこで、今回、今お話がございましたように、EUあたりは輸出補助金の撤廃に対し非常に抵抗というものがございました。また、一部、例えばインドのようにこのWTOそのものを否定するような、発展途上国中心に、WTOは単に先進国のための機構である、開発途上国には何ら利益になっていない、こういう主張もこれあり、これは例の貿易と労働という問題の場でも、非常にこれからも問題になっていくと思います。  そこで、決裂しましたので、要するに中身の問題をきょうは論ずることはできないと思います。問題は、これからどうやってこの交渉我が国に有利に、外交というのは、単に我が国が有利な展開をどう進めていくか、端的に言ってそこにありますので、どう進めていくかでありますが、いよいよ来年からは、前のウルグアイ・ラウンドの約束によって農業の問題はテーブルに着かなきゃなりません。しかし、WTOとしての会議じゃなくて、あくまでも今までの延長の中での会議でありますので、そこはアメリカ等々の巻き返しもあると思いますが、ひとつしっかりと頑張っていただきたい。きょうはそこを申し上げることが大きな意義であります。  そこで、重ねて、先ほどちょっと御質問がありましたので確認したいのですが、いわゆるMA制度が終わった後の七年後の問題ですね。  これは、今、最終年次の数量を基本としていかれる、そういうふうな御答弁が政務次官からございました。そうですね。最終年度でもって、それを基準にしてやっていく。しかし、MA制度は単に六年間の約束でやってきたわけであります。そして、その後については、言うなら、解釈によっては、まだ白紙である。したがって、そこからいくということも今決めつけるのは早急であろうと私は思います。そうでしょう。  しかも、我が国は、昨年政府決定によって完全自由化に踏み込んだのですから、ならば、なぜ完全自由化に踏み込んだのにMA制度をさらに堅持して、しかも、最終年度のあのような大きな数量を我々はみずから最初の段階から引き受けるのか。やはりそれは交渉スタートとして、最初はまずゼロからいくべきだ、そういう姿勢があってしかるべきだ、私はそんなふうに思います。  この点も含めて、今後の取り組みについてお考えなりをお聞きしておきたいと思います。まず大臣からちょっと。
  21. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 宣言案会議の中のところから申し上げていきますけれども、一部の国から、自由化を進めていくという項目の中に、要するに、関税を大幅に引き下げてという文言を入れようとした国がございます。ところが、私はこれは非常に公平な裁きだったと思いますけれどもバシェフスキー議長が、全体の議長でありながら農業分科会の議長をやって最後会議に臨んだわけでありますけれども、これは関税を下げるとかなんとかという言葉は事前交渉に入るので、その提案は却下します、こういうことでやったというのが状況でございます。  したがって、すべてはこれからの、宣言案なら宣言案ができた後の交渉ということになってくるわけでございますが、委員のおっしゃられた趣旨も十分踏まえて、個々個別の交渉ということになった場合におきましては、これからやっていくということでございますから、それにはそれなりの戦略を立ててやっていかなければいかぬ、このように思います。
  22. 谷津義男

    谷津政務次官 ただいまの先生の御指摘の件でありますが、実はミニマムアクセス米につきましては附属書の五に書いてございまして、そのままそれを維持していくということであります。  それから関税につきましては、実はこのことは書いてないわけでありますけれども、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときに合意されたことは、そのときの基準を交渉の間は続けるということになっておりますから、このWTOにおきましても、これは続けていくものとして私ども主張していきたい、このように考えております。
  23. 小平忠正

    小平委員 時間が来ましたので簡潔に申し上げますが、附属書のそういう農業協定の取り決めも、あくまでも部分自由化というものをいわゆる前提にして取り決めておりますので、完全自由化ということになった場合、また状況が違う、そういう解釈もしていいのではないか、私はそう思います。  要するに言いたいことは、今後の交渉において、何も我々はハードルを低くいく必要はない、強くいっていいと思うのですね。そこのところをよく考慮に入れて頑張っていただきたい、こういう意味で申し上げておきたいと思います。  それと外務省に、きょうせっかく横田審議官、アメリカに行かれましたので、実は、いわゆるアンチダンピング、それから、クリントンがあのように発言した貿易と労働の問題、アメリカ発展途上国とのいわゆるあつれき、そういうことを含めて、全体的な、総括のような意味合いと、今後に向けての外務省のお考えをお聞きしたかったのであります。  東政務次官にもわざわざお越しいただきましたけれども、時間が五十分で終わりましたので、そのことを、立場がちょうど我が国農業問題とアンチダンピングとは違いますので、非常にアメリカのエゴがありまして、これも決裂になった大きな一因だと私どもはとらえておりますが、そこをお聞きしたかったのでありますが、時間が来ましたので、これで終わります。  どうもありがとうございました。
  24. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、宮地正介君。
  25. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうはWTO問題について、時間が十五分という限られた時間でございますので、単刀直入にお伺いしていきたいと思います。  今回のWTO交渉がなぜ決裂をしたのか、やはりこの分析をしっかりする必要があろうかと私は思います。  来年アメリカ大統領選挙を控えて、クリントン大統領の演説等を聞いておりますと、労働団体あるいはアメリカ国内の産業を意識した大変シビアな演説内容を私はテレビで拝見いたしまして、むしろ今回の決裂はそうしたところの意識というものを大変に重要視して、妥協よりも先送りをした、この辺が本音なのかな、こういう感じがしておりますが、きょうは外務省から東政務次官も見えておりますので、外務省、まずこの点をどのように分析をされているか、その辺についての御答弁をお願いしたいと思います。
  26. 東祥三

    ○東政務次官 お答えさせていただきます。  今委員が御指摘のとおり、第三回目のシアトルで行われました閣僚会議において、新ラウンドがなぜ立ち上げられなかったのかと、この点については、種々いろいろな要因があるのですけれども、三点に要約することができると思います。  先ほど来議論されているところの、例えば農業問題あるいはアンチダンピング措置に対しての問題、そしてまた、貿易等にかかわります労働とのかかわり合い方、そういう側面において、加盟国間において立場の大きな相違があった、これが一点でございます。  二点目は、御高承のとおり、WTO加盟国百三十五カ国ございます、この膨大な加盟国を抱えて、会議運営における効率性、つまり、百三十五をまとめていくということにおいて、その代表者が例えば二十数が集まったとしても、それが果たして全体を包含するような立場になっているのかどうなのか。数が少なくなれば効率性が増すのですけれども、数が少ないと逆に全体の動きがわからなくなってしまうという透明性の問題。つまり、会議運営における効率性透明性の両立の困難さが挙げられると思います。  第三番目として、究極的な問題だったと思うのですが、新ラウンド立ち上げ自体に対するコンセンサスが百三十五カ国一致していなかった、この三点に要約されると思います。  また、先ほど御指摘になりました大統領選挙とのかかわり合いでいきますと、私たち日本政府としては、議長米国政府については、必死になって何とかしてこのシアトル立ち上げよう、そのようにされていたと思います。ただ、大統領選挙を控えて、国内のさまざまな圧力に直面しつつも、何とかして保護主義的な圧力に対抗するため努力するという厳しい状況にあったとも承知いたしております。  いずれにいたしましても、多角的貿易体制の維持強化というのは、我が国を初め世界各国にとり極めて重要な問題である、そのような認識をいたしております。したがって、我が国としては新ラウンドを早期に立ち上げることが重要と考えておりまして、そのためにも各国ともに引き続き徹底的に努力していきたい、このように思っております。
  27. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ政務次官に伺いたいのですが、今回のWTO交渉議論を通じて大変重要なポイントは、我が国が、先ほどから議論されております農業交渉等について、食料の安全保障あるいは多面的機能、いわゆる環境保全等の問題について、やはりEU諸国とか発展途上国との連携といいますか、外交的な交渉の中で、特に東アジアの中でもタイとかインドネシアとかフィリピン、非常に我々日本と友好国もたくさんあるわけですね、そうした国とやはり不断の友好関係、信頼関係を築いておくということが大変重要ではないか、私はこういうことを痛感したわけです。  今後、こうした発展途上国なりEU諸国、また特に東アジアの発展途上国あるいはアフリカの発展途上国に対して積極的な友好外交を展開していくことが大事ではないか、こう思いますが、この点についての外務省の見解を伺っておきたいと思います。
  28. 東祥三

    ○東政務次官 先ほど申し上げましたとおり、WTOには百三十五カ国が加盟している、そのうち約四分の三をいわゆる発展途上国が占めております。そういう意味で、今委員が御指摘になりましたように、発展途上国の関心に十分な考慮を払うことが極めて重要であると考えます。と同時に、今委員が御指摘になられたとおり、日本と極めて友好関係を持っている国々もあります。そういう国々との連携もさらに深めていかなければならない、このように思っております。  したがって、我が国としてはEU発展途上国を含む各国調整を図りつつ、次期交渉日本国益にかなったものとなるよう主導的な役割を果たしていかなければならない、このように思っております。
  29. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣に伺いますが、大臣農業問題で、このグリーンルームで七時間猶予の大変な議論をされた。そういう中で、先ほど来から三つの点について報告がございました。特に、私は前回、所信表明に対しても申し上げましたが、この農業協定二十条のいわゆる非貿易的関心事項、具体的に世界食料安全保障、これに我が国がどう貢献するか、それからいわゆる地球環境保全、この地球環境保全に水田農業中心とした農業がどう貢献していくか、こうした問題は大変重要である。ともすると、日本国内の食料の安全保障、国内の国土保全、環境保全、ここに日本は重点を置いているんではないかという誤解なり、狭義のそうした理解がまだ根強く世界各国にあるんではないか、もう少し積極的に、我が国はこの二十条の精神である世界食料安全保障に対しても、責任を持って国際貢献していくんだ、こういうことをグリーンルームの中でどの程度強調されたのか、この点について報告いただきたいと思います。
  30. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 委員の御趣旨はもっともでございます。しかし、今回の閣僚宣言案におきましては、貿易問題を扱う、こういう観点でございますから、我が国と同じような立場多面的機能を十分認識している国々と行動をともにして発言をしたということでございます。世界食料の安全保障をどうするか、あるいは環境の問題をどうするかという問題も大事でありますけれども、それはそれでやはりまた別途議論する場が必要なんではないか、私はそう思います。  今回の場合は、農業貿易ルールをどうするか、こういう観点でございますから、決して日本だけが、日本の利己的な主張でこの多面的機能主張したのではないということだけは御理解をいただきたいと思います。     〔委員長退席、松下委員長代理着席〕
  31. 宮地正介

    ○宮地委員 この議論は、きょうは時間がないのでまたゆっくりしたいと思います。  きょう東政務次官にもちょっと来ていただいているので、これからやはり日本の水田農業というものが大変に環境保全に有効である、御存じかと思いますが、一ヘクタール当たり米は五トンとれる、ところが、CO2は十五トン吸収できる、それだけ非常に温暖化現象に対しても貢献のできる農業が水田農業なんですね。  そういう中で、今、日本の国は二百七十万ヘクタールの、米を全部生産すると千三百五十万トンつくれるだけの能力を持っているわけです。ところが、生産調整ということで九百五十万トンぐらいに今抑えている、四百万トン抑えている。しかし、これからの世界は、まず人口爆発で現状六十億が二十一世紀半ばには百億になろう、あるいは温暖化現象で、もう既にインドネシアを初め異常気象で米だとか農作物がとれない、あるいは地域紛争で難民が出て大変な食料危機だ。二十一世紀世界における食料の安全保障というのは大変重要な課題であろう、ある意味では軍事よりも食料問題が最大の課題ではないか、まさにソフトパワー、グリーンパワーの時代が二十一世紀にやってくるであろう、こう考えたとき、やはり食糧援助という問題は先進国日本として大変重要な責務を持っている、私はこう思うわけです。  ところが、残念ながら、政務次官、ODAの大体一兆円の予算の中で、十一年度の実績を見ましても、いわゆる食糧増産援助費とケネディ・ラウンドの食糧援助費を合わせましても三百八十一億なんですね、ODAの中で。農水省も農水省なりに、平成十一年度を見ても、食管会計を使ったり、十万トンの食糧援助で一般会計で三十億円ぐらいの予算を計上しています。これとて、十二年度の今回の食料関係予算を見ても五十九億ぐらいなんです。これでは、幾ら日本が、食料安全保障の問題だ、あるいは環境保全だと言っても、なかなかこれは、実際面から見ると、世界各国百三十五カ国から見れば、やはり日本は、自分のところのいわゆる食料安全保障の問題や自分のところの環境保全しか考えていないんじゃないか、本当に世界のことを考えているのか、こう言われかねない、私はこう思うんです。  政務次官、ぜひこのODA見直しをしっかりやっていただいて、二十一世紀を見据えた食糧援助に対する予算についても、もう日本のことだけでなくして、我が国世界を視野にしたそうした環境保全対策、食料安全保障政策に積極的に取り組んでいるんだ、こういうことを示す必要があるんではないか、私はこう思いますが、この点について政務次官の所見を伺っておきたいと思います。
  32. 東祥三

    ○東政務次官 委員御指摘のとおり、まさに日本農業における視点というのは、食料安全保障のみならず、国土の保全という極めて重要な、この点についてはシアトルの非公式の閣僚会議にも私、参加させていただきまして、その重要性について指摘させていただいたところでございます。その点についての認識は共有いたします。  そして、日本の今後のあるべき方向性として、御案内のとおり、世界全体でも、現段階においても約八億一千万強の人々が栄養不足、栄養失調に陥っているという現状、そういう中で、日本世界全体の人口問題を踏まえた上で、食料の問題に対してもっと積極的に貢献していくべきである、そしてまた、その背景にある哲学を世界に発信していくべきであるという御主張に対しては、素直に耳を傾けなければならない、このように思います。  他方、さきの外務委員会、また本会議において通していただきましたいわゆる援助規約協定においても、日本が、まさに今委員が御指摘の視点に立った上で、積極的に食糧援助、日本が食糧援助というふうに言ったとしても、基本的には食料輸入国でございますので、日本で生産するものを云々というのみならず、世界各国、とりわけ発展途上国における農業、そしてまた、食料の増産にかかわる技術援助等を通して、目に見えない形で、また項目として挙がってきていない形で一生懸命やっているわけでございますが、本日、委員からのそのような御指摘を踏まえた上で、さらに今後とも検討していきたいというふうに思います。
  33. 宮地正介

    ○宮地委員 玉沢大臣、今回の決裂で今後の見通しが大変厳しい状況にあることは、我々も承知をしております。特に、アメリカ大統領選挙という大変な、政治的マターが入り込んできている。こういうことを考えますと、来年の十一月の大統領選挙が終わるまでは新ラウンドの立ち上げの問題は非常に紆余曲折があろうか、私はこう思います。本年、ジュネーブでいわゆる事務方の会議もあるようで、その辺のスケジュールも決めるようですが、そういう流れの中で、新大統領が誕生して閣僚を決めますと、下手をすると、再来年の夏ごろまで非常に厳しい状況が続くんじゃないか、こんな見通しもできてくるわけですね。  しかし、その間に、私は、ケアンズ・グループを中心とした、特にその中の発展途上国、特にその中の東アジア、こういう国に対しては信頼を得るように、また、日本としてもやはり友好を積極的に進めて、そうした国々とも農業問題を中心とした話し合いを進めていくことが、立ち上がった以降の大変重要なポイントになるのではないか、この点についてぜひ頑張っていただきたい。  時間が参りましたのでこれで終わりますが、今後の農林水産省あるいは外務省が一枚岩で、国益にかなった、また世界的視野に立った、そうした次元で頑張られることを御期待して、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  34. 松下忠洋

    ○松下委員長代理 菅原喜重郎君。
  35. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回のシアトルWTO閣僚会議には、大臣初め皆さん方、御苦労さまでございました。  私は、自由化されても食える日本農業、また、自由化され、外国農産物と対抗しても十分に対抗できる営農形態の確立、それが日本農業の、また日本農業政策中心になければならぬということを主張している人間でございますので、どちらかというと貿易の自由推進論者です。しかし現実には、やはり農業の持っている多面的機能あるいは農業の基盤、基礎の問題、確立の問題で、このまま自由化しましても日本農業が崩壊しますので、先進国に対抗できる基盤が整備されないうちは自由化は反対だ、こういうふうに考えている次第でございます。  ですから、今回、農業多面的機能重要性を強く主張され、この農業多面的機能の発現によって最終的には閣僚宣言の採択は行われなかったことにまでなったのではないかとも思っておりまして、この点に対して大臣の努力に評価をしたいと思っております。  それで、これらのことも入れまして、大臣から各国間の状況はどうだったかをお聞きしますし、今後、諸外国に農業多面的機能重要性主張するに当たっては、我が国の国内においても精力的にこれを実践する必要があると思います。EUにおいては、環境保全、景観保持等に配慮した農業への助成も行うなどの努力をしているわけでありますが、我が国において、多面的機能を発揮するために、それでは現在どのような施策が行われ、どのような予算措置がとられているのか、これも世界に、国民にやはり知らしめるべきであると思いますので、あわせてこのことについてお答えをいただきたいと思います。
  36. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 世界と競争できるような農業を目指していくべきであるという御趣旨であると承りましたが、確かにそれは大きな目標でありますけれども、土地利用型の農業といいますのは、土地の耕境あるいは豊凶、そういうようなものに左右されるわけでありますから、今後ともここの部分は十分考えて対処していかなきゃいかぬ。  特に、土地利用型の農業という場合におきましては、地理的に非常に困難な地域で農業をやっている場合におきましては、その自然的な困難を克服しながらやっていく、農業をやりながら、同時に国土保全にも十分配慮しながらやっていく、こういうところが重要であると考えまして、それでこの多面的な機能という重要性主張したところでございます。  各国状況はどうかというお話でございますので、アメリカグリックマン農務長官とお会いした場合におきましては、農務長官には、我が国アメリカからどれだけの飼料穀物とか小麦を輸入しているかということについてはよく申し上げた。貿易におきましては、要するに、輸入国輸出国もどちらも利益を得るような形でバランスをとっていくということは、私は大事なことだと思います。日本の畜産を発展させるためには、アメリカから飼料穀物を千五百万トン輸入しているわけですから、そういう面では貿易の面で利益を得ていると思うのであります。  そういうわけで、米国側に対しまして、そういう観点から、例えば、両国がともに共存共栄していくという観点からいいますならば、土地利用型の農業というものはいろいろな果たしておる役割というものがあって、したがって、これについては、やはり農産品と鉱工業品というものを同一ルールに置くべきではないということを強調しましたところ、グリックマン農務長官は、ほぼこれは理解をしたところでございます。  ただ、ケアンズ・グループと言われる国々は、多面的機能というものを敵視しておりまして、最初からこういうものは議題にしないというような態度で出てきたわけでありますから、私は、そういうことはない、分科会でも総会でも各国がこの問題について主張しているじゃないか、また、これが数年前からも常に議論をされてきたことでありまして、具体的には、食料の安全保障、環境の保護、食品の安全とか農村の開発という言葉が入っているじゃないか、それを総評すれば、多面的機能という言葉はより正確な言葉として入れて何がおかしいか、こういうような議論です。  結局、この議論で終わったわけではございませんで、これは御理解をいただきたいと思いますが、休憩に入ったわけでございますけれども、まだ六つぐらいの問題がありまして、調整しなきゃいかぬと入ったわけでありますけれどもEUは、この議論の最中におきまして、輸出補助金の撤廃という言葉を取るということで相当議論しました。そして、宣言案全体の問題も含めて、要するに、十五カ国の加盟国があるので、その国々と相談をしてこなければならぬということで、十四時四十五分に再開されたのでありますけれどもEUはかなり相談に時間がかかりまして、農業委員会はそのまま再開されずに終わったというのが現状でございます。これはいわゆる水入り、時間切れ、こういうように御理解をいただければと思います。
  37. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣の答弁の方が長くて、多面的機能の面を落とされたようですが、これはどなたかから、今、日本の施策としてどのように取り組んでいるかです。
  38. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 この具体的な取り組みについて申し上げますが、農業の持続的な発展を図るため、農地、水等の生産基盤の確保、整備、新規就農の促進等による担い手の確保、育成と農業経営の法人化等の推進、それから、環境と調和した持続性の高い農業生産方式の導入促進等の施策を講じるとともに、農村の振興を図るため、生産・生活基盤が一体となった総合的な農村整備、そして、良好な景観の形成や歴史的土地改良施設の保全等に配慮した農村整備等の施策を講じているところでございます。  さらに、今後は、中山間地域等の条件不利地域におきまして、耕作放棄を防止し、多面的機能を確保するための直接支払い制度を実施するなど、その一層の発揮に努めてまいることといたしているところであります。
  39. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一応、多面的機能への施策は国内ばかりじゃなく、やはり海外援助の中にも努めてそういうことを意識して援助していくように、そうしないと、WTOのようなああいう世界会議ではこれを取り上げることがなかなか難しくなってくると思いますので、そこをよろしくお願いします。  さらに、今、大臣から、土地利用型農業においてはああいう広大な土地を持っている大陸の国には対抗できないようにも聞こえる節の答弁を私、受け取ったんです。しかし、日本では土地利用型といいましても、事水田におきましては、日本人の食料、大体一千万トン確保すればいいわけですから、今は九百万トンになりましたが、その水田の基盤整備あるいはかんがい排水の完備は、絶対に日本人の食料安全保障確保のために必要な整備ですから、このことだけはちゃんと決められた面積が算定できるんですから、その点について、かんがい排水の整備を初めとする農業基盤の抜本的な整備を緊急に行うことが重要であると私は再三主張してきたわけでございます。  現在、事業費等が増嵩しましても、地方自治体の助成などで、農家負担が五%、一〇%にもなっております。しかし、農業後継者のないところでは、借金を子供に残したくないということで、こういうわずかな負担でも、その事業に対してこれを促進するのは大変困難な状況でございます。  ですから、私はこのことも再三申し上げておりましたが、この基盤整備にはいわゆる減歩制度を活用し、その減歩した農地で事業費を捻出することによって、国庫負担とも相まって、農家の現金負担を思い切ってゼロにするような仕組みでこの基盤整備、基礎の確立を図っていかないといかぬということを言っているわけですので、この点について、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  40. 谷津義男

    谷津政務次官 先生おっしゃるとおり、土地改良事業を行う際には権利者の三分の二以上の同意が前提だということは、御案内のとおりであると思うんです。それで、共同減歩や権利者の同意を前提とした特別減歩によって生じる土地を公共用地等に充当し、その清算金、売却益と申しましょうか、それを事業費の一部にすることは、農家負担の軽減を図る手段としては一つの方法であるというふうに考えられます。  また一方、区画整理制度にあるような義務的な減歩によって公共用地を創出することにつきましては、農地に対する個人の財産権を著しく損なう結果になるおそれがありますことから、制度化することは問題があるのではないかというふうに考えておるところでございます。  したがいまして、今後とも、現行の権利者の同意を前提とした特別減歩による公共用地の創出の制度の活用について周知を図ることに努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  41. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 一応、減歩制度は、建設省が実際に法律をつくって都市部にはやっているわけでございまして、それにはやはり地価がこれから問題になるわけなんですが、ぜひ私の主張を取り上げられるように努力していただきたい。  さらに、今回のWTO会議の中で、NGOから来た方で、日本は他国の森林から伐採された木材を輸入して自国の森林を保存しているのではないかという旨の指摘もあったと聞いているわけでございます。  しかし、持続可能な森林経営を無視した海外の森林の無秩序な伐採による木材製品の輸入が我が国林業の衰退を招き、間伐も思うに任せぬ事態を招致していることも現実であると思いますので、我が国としてはこうした誤解を解き、日本政府の提案どおり、森林はさまざまな公益的機能を有する天然資源であり、その機能は林業生産活動を含む適切な管理を通じて維持、発揮されるものであることをさらに主張することにより現在の関税率を維持し、林業者の森林整備に対する意欲をこれ以上低下させることのないように、森林の有する公益的機能貿易ルールに適切に反映すべきではないかとも思っておりますので、この点をお聞きして質問を終わります。
  42. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 今回の会議におきましては、十分議論がなされなかったところでございますけれども、林産物の貿易問題については、森林資源そのものの評価をまずしなければいかぬ、その森林資源といいますのは、全人類にとって重要な宝である、これをいかに持続的に利用していくかという観点から貿易ルールというものがつくられなければならぬのじゃないかということを主張しまして、私の方からは、市場アクセスの分科会の議長のレソト王国のマリー大臣に直接申し入れを行う等、主張してまいりました。その結果、マリー議長は、我が国主張を文言の中に入れるということについては同意をいたしたわけでございます。  したがいまして、今委員がおっしゃられた公益的な役割とか森林の持っておる重要性、そういうものを今後とも主張し、また国内でもそうした政策を展開いたしまして、世界国々理解を得ながら、今後貿易交渉の中でも我が国主張が通るように努力していきたい、このように考えております。
  43. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  44. 松下忠洋

    ○松下委員長代理 中林よし子君。
  45. 中林よし子

    ○中林委員 今回のWTO閣僚会議については、そのあり方そのものについても、かなりいろいろと批判が出ております。  私はここに、発展途上国五十五カ国の声明文を持っております。マジョリティー オブ WTO メンバーズ メイ リフューズ コンセンサス オン ミニステリアル デクラレーション。ちょっと英語がよくわからないのですけれども、そういう意味で、これは仮訳なんです。私が勝手に訳したのですけれども、大多数のWTO加盟国は閣僚宣言への同意を拒否するであろうという五十五カ国の発展途上国。この中で、実はラテンアメリカ、カリブ諸国だとかジンバブエ代表団などの、それぞれの声明文もこの中に加わっているわけですが、例えばラテンアメリカ、カリブ諸国は、透明性、公開性、すべての加盟国参加の条件がない限り、我々はこの閣僚宣言の目指すところに同意できないであろう、こう言っておりますし、アフリカ経済共同体は、手続の透明性存在せず、そしてアフリカ諸国は重要視されなかった、現在の状況のもとでは、この閣僚宣言の目指すものにこたえることはできない、こう言っております。それから、ジンバブエの方は、すべての加盟国は、WTOの意思決定のプロセスに平等に参加する完全な権利を持っている。我々はこれらの権利を強く求め、この組織はすべての加盟国の利益に役立つべきであって、少数国の支配を保護するべきではない、こういうふうに、この五十五カ国の宣言に集約され、今読み上げました英文の宣言の主題は、ちょっと読み上げますけれども、共同宣言において、大多数のWTO加盟国は、今回のシアトルでの経過について、深いところでの不一致、怒り、そして失望を表明している、彼らは、何らかの変化がつくり出されない限り、不一致は続くと述べている、議長が示した閣僚宣言草案に異議を申し立てても、変化の兆しは見えてこない、各国の一致した見解は、ということで、先ほど述べたような見解がこの英文の中にも盛り込まれております。  私もそうではないかと思うんですね。というのは、百三十五カ国の加盟国がありながら、グリーンルームの中でやられたのは三十カ国前後、百カ国以上がいわばそれから排除されていたということですから、こういう非民主的な、一部の国だけで事を進めるということは、やるべきではないんじゃないかと、それについての大臣の御見解をお聞きしたいと思います。     〔松下委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 委員おっしゃられるとおり、百三十五カ国が集まりましてやるわけですから、大変時間がかかる。しかし、この中でも、農業分科会は一番会議をやったと思います。少なくとも分科会の総会を二回やりまして、各国意見がそれぞれ表明をされました。一回三分以内の発言としましても、それを超えるわけでありますから、五時間から六時間の会議になります。  それを集約する意味で、グリーンルームという形で主要国が集まりまして話し合いをする、そういう議事手続をとったわけであります。しかし、この中におきましても、このグリーンルームに開発途上国が除外されたかというと決してそうではございませんで、グリーンルームのメンバーを見ますと、例えばアフリカ地域からどこの国、ラテンアメリカ国々からどこの国、アジアの国々はどこ、ヨーロッパはどこというような形で、大体地域を代表する国々参加していたように思うわけでございます。  ただ、いかんせん、グリーンルームと分科会との連携といいますか、そういうようなものが不十分だったというふうに思いますし、時間も足りなかった、こういうふうに思います。例えば、会合等におきましても、分科会はシンガポールから来たヨー大臣議長をやっている、ところが、最後の締めくくりのときにグリーンルームでは米国バシェフスキー通商代表議長を務めるというようなことで取りまとめようとした、こういうところに手続上非常に不十分な点があったという点は、私も認めるところであります。
  47. 中林よし子

    ○中林委員 不十分な点があったということで、非民主的な閣僚会議のやり方、それを大臣もお認めになったわけです。  ここに、これだけじゃありませんけれども、「WTO交渉に向けての日本の提案」というのがあって、この中にはっきりと発展途上国についてもこういう観点からということがあるわけですね。「この交渉では、途上国に対する支援を含め特別な配慮を払うことにより、先進国と途上国との間の公平性を図り、途上国がWTO体制に積極的に参加できるような貿易ルールを構築することが必要」と考えるということで、日本政府としても、この日本の提案という中でははっきり述べていらっしゃるわけですね。私はそれを貫くべきだ、いわばルール確立のプロセスにおいても、やはりこれを民主的運営に生かすべきだというふうに思うんです。  そういう意味では、先進国日本がいわばリーダーシップをとっていく必要があると思うんですけれども、今回の経験を生かして、今後、そういう民主的な運営先進国一つの国としての日本の役割をどのようにお考えでしょうか。
  48. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 決して、民主的な運営がなされなかったと、農業分科会におきましては、要するに、各国に平等に発言の機会が与えられた、しかも、ほかの分科会ではないように二回も総会が行われた、こういうことでございますから、委員がおっしゃるように、全部非民主的なものだというようには受け取ってはおりません。しかしながら、我が国が提案しましたように、発展途上国に対しまして、いわゆる配慮する、あるいは支援をする、こういう姿勢は会議においてもずっととっておったわけでございまして、日本発展途上国から輸出するというようなものに対しましても、特別の措置等も行うということも既に提案をしておったわけでございます。  しかしながら、やはり私が申し上げましたように、先進国発展途上国も同じ農業がともども共存共栄して発展していくという趣旨が一番大事なことでございますので、発展途上国国々とも話し合いをしまして、今後、会議が開かれた場合におきましては十分その趣旨を生かしてやってまいりたい、このように考えております。
  49. 中林よし子

    ○中林委員 限られた時間で、百三十五カ国というたくさんの国がある、これはもう初めからわかるわけですね。だから、そういう中において、大臣が、アフリカの代表はどうのとか、カリブの方の代表はということで、入っているから非民主的とは思わないとおっしゃるんですけれども、しかし、WTOに加盟している百三十五カ国はすべてがやはり平等でなければならない、しかも、正式メンバーですよね。そういうことであるならば、二回ぐらいよその分科会よりも農業分野はたくさん会議を開いたからという言いわけをするのではなくして、時間も短かった、すべての国が三分ずつ平等には発言したんだとはおっしゃるけれども、しかし、主な仕事はグリーンルームで三十カ国前後でやったということは、もう間違いのない事実ですから、そういう意味ではやはり百三十五カ国が平等にやっていかないといけない。  この発展途上国の五十五カ国の宣言にも見られますように、何らかの変化をつくり出さない限りなかなかみんな同意できないだろう、こう言っているわけですから、そこを正していくことが国際的な問題では非常に大切だということを重ねて申し上げたいと思います。  そして、日本農業にとっても、一部の国だけがグリーンルームの中でやるんじゃなくて、すべてが平等にやるということが非常に重要ではないかというふうに実は私は思うんですね。結局、先進諸国だけの中でやると、やはり日本にとっても不利な状況があるんだろう。だから、先ほどから言われている食料主権の問題だとか、多面的機能の問題を十分押し出していくためにも、多くは発展途上国だとか、そういう国も同じように主張しているわけですから、やはりそういうやり方が必要だし、それから同時に、私はNGOの役割、これも決して見逃すわけにはいかないと思います。  NGOの方も「シアトルで起こったWTOの危機に関する世界NGO声明 いまこそ変革を!」という声明が出されております。その一つに非民主性が挙げられ、不公正、不正義、途上国の実質的な参加を否定しているとか、不透明性ということをうたっているわけですね。だから、こういうNGOの働きというのも決して無視するわけにはいかない、そこを取り入れてこそ、私は次期農業交渉に生かされていくんじゃないかというふうに思うわけですけれども、ぜひ日本はリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思うのですけれどもNGOの関係はどうお考えでしょうか。
  50. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 今回は五万人とも言われる方々が世界じゅうから集まりまして、デモをしたり会議をしたりいろいろしたわけでございます。NGOの関係でどう考えるかということでございますが、やはり世界の人々の幅広い意見というものを背景にして、農業問題等も、貿易問題も話し合いをしていかなきゃいかぬ、こういうように私は感じました。  しかしながら、自分たちの意見を表明するために社会的な秩序を無視して、要するに、暴力的な行為でやるというようなNGOの一部の過激的なものには賛成できない。あくまでもやはり平和的に自分たちの意見を表明する、そういうような団体であれば、今後とも私どももよく話し合いをしまして連携をしてやっていくということは大事だと思います。
  51. 中林よし子

    ○中林委員 私も、一部の過激なやり方というのは本当に遺憾だというふうに思っております。  そこで、私はたびたび米の関税化の問題についてなぜそんな関税化をするのかということをただしたときに、これは前の中川大臣なんですけれども次期交渉において、米を初めとする農業交渉で少なくとも我が国主張が確保できるような体制をしいていくためにも、例外なき関税化というWTO農業協定上の大原則に戻った方が交渉しやすい、いわば日本主張を通すために関税化するのだ、有利にするためだとおっしゃったんですけれども多面的機能という文言が最終提案から外れたということで見ると、文言はなくなったわけです。それは、大臣はさっきからはめ込んであるんだとおっしゃるんですけれども、少なくとも日本が米関税化に踏み切ったことが本当に有利に働いたとは到底思えないので、私はこの際、米の関税化、今からでも遅くないのできっぱり撤回をすべきだというふうに思い、そして、途上国だとかNGO我が国農業を守る立場を同じくする人たちと共同してやるべきではないかというふうに思っておりますけれども、米関税化の問題だけについて短く御答弁いただきたいと思います。
  52. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 米の関税化への切りかえはEU等連携すべき諸国と同じ土俵に立つことを可能にしたものでありまして、関係諸国との連携を図る上で大いに役立ったと考えております。
  53. 中林よし子

    ○中林委員 質問時間が終了になりましたので終わりますけれども、私は今回シアトルに行って本当に大変意を強くいたしました。日本共産党は、食料の確保と環境の保全が二十一世紀世界的規模で大問題になるということで、次期交渉においては、自由貿易の拡大ではなくして各国農業が共存して食料主権を確立していく、このことを主張するためにはWTOの枠そのものを改正する必要があるのではないか、こういう提起をしてまいりました。  今回、韓国だとかEU連携をとることができたし、発展途上国のさまざまな御意見も聞くことができて、むしろ輸出国のいわばエゴを押しつけてきたのはアメリカである、ケアンズ・グループである、このことが非常にはっきりとしたというふうに思います。そういう意味では、私は、政府WTO農業協定そのものの改正の方向にぜひ向かわれることを要望して、私の質問を終わります。
  54. 松岡利勝

    松岡委員長 次に、前島秀行君。
  55. 前島秀行

    ○前島委員 最初に、会議そのものは決裂、宣言案はまとまらなかったということでありますけれども、いわゆる最終案という案の扱いというのはもう消えてしまったのか、生きていないのか、どうなのかということ。  というのは、きょう配られておりますこの文章によりますと、議長の、通商代表の発言ということになっていますが、このプロセスは中断する、中身に進展はあったのでこれを凍結し、ジュネーブに引き継ぐ、その旨の発言があった、こういうふうにきょう正式に言っているわけですね。この文章を読む限りは、最終案というのは引き続き論議の土台になるんだな、そうすると生きているな、こういうふうに見ざるを得ません。大臣は、何か途中で、あれはもうなくなったんだというふうに発言されたようなことがたしか新聞に出ていたように私は記憶しますけれども、このことは非常に重要だと思いますので、この最終案の取り扱いというのは今後どういうふうになるのか、その辺のところの見解をお聞きしたいと思います。
  56. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 次の場合におきましては、WTOムーア事務局長調整をするということになりまして、この十七日にもジュネーブでの大使級会議が行われるということで、どのような形で提案がなされるかわかりませんが、この農業部門における宣言案部分は、つまり、全体的に包括的な会合が開かれた場合の宣言案であるということでございまして、全体的な包括的なものがなされない限り、それが議題に供されるというふうには私は考えておりません。
  57. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、来年の一月から農業交渉というのはウルグアイ・ラウンドからの経過の中であり得るんですか、どうなんですか。
  58. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 農業サービス協定上は一年前から交渉する、こういうことになっておるわけでございます。もし交渉するということになった場合におきましては、その宣言案とは関係なく、その場合は第二十条に忠実に交渉がなされるものと考えるわけでございます。しからば、いつそういう形で、では農業だけ先行してやるのかとか、包括的に農業も一緒にやるべきだとか、今度は各国がいろいろ意見が分かれているところでございますから、農業だけ先行してやるかどうかということについても、まだ何の判断もなされていないというのが現状です。
  59. 前島秀行

    ○前島委員 私がお聞きしたいのは、ウルグアイ・ラウンド以来の経過から、年明け、農業サービスの問題は交渉を引き続きやる、こういう経過がありますね。そして、シアトルでの閣僚宣言はつぶれた、しかし、最終合意的な提示があった、こういう状況ですね。(発言する者あり)最終案の提示があった。包括的な議論をするときには最終案というのが一定の議論の土台になるだろうけれども、それ以外の場合には、例えば農業問題だけの独自の交渉事については、この最終案というものは議論の対象ではない、こういうふうに解釈していいのですか。
  60. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 私はそう思います。つまり、宣言案そのもの合意していないのですから、これはいわゆる凍結ということになっておるわけですから、凍結ですから、全体会議凍結なんですよ。いつやるかということも決まっていないということですね。一方においては、農業サービスは来年の一月から、協定上はなっておる。しかし、では全体会議農業協定、別々にやるかどうかということについてはまだ意見が分かれているところだと思いますので、もし、どうしても農業協定に基づいてやるという百三十五カ国の合意ができた場合はやるかもしれませんが、しかし、やる場合は、この合意のない宣言案でやるわけにはいきませんから、当然、農業協定の第二十条の趣旨に従ってやる、こういうことでございます。
  61. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、年明けからやる、そのことについては日本も、経過上あるんだから、大臣自身もその交渉参加するよ、やりますよ、こうなってくる。では、そのときの議論の土台の中身というのは何になるか。
  62. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 つまり、二十条です。
  63. 前島秀行

    ○前島委員 二十条は経過といいましょうか根拠的なものを言っているのでありまして、中身については何も言っていないのですよ。討議する、交渉する根拠として二十条が存在していることは認めますけれども、それではその中身は何かといったら、それは何も書いていない。  確かに大臣主張として、大臣の受けとめ方としては、この最終案というのはもう白紙に戻っちゃったんだ、生きていないよと。しかし、この農林省が書いた文章で、議長バシェフスキー通商代表の発言としては、要するに、アメリカ側は、この文章を読む限りは、生きているんだ、こう言っているのですよ、全体の議長が。そして、農林省の文書の中に議長の意向を伝えた文章が載っているわけですよ。確かに大臣の気持ちとしたら、それは白紙、凍結、全然なくなっちゃったんだ、ゼロから議論し直すんだという気持ちであることはわかるけれども、この文章を見る限り、アメリカ通商代表、全体の議長ジュネーブに引き継ぎますよ、こう言っているわけですね。  これは意見の違いとして受けとめるわけですか、全体の意向なのかどうなのか、その辺のところをちょっと。
  64. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 そういう手続等もこれから議論しなきゃならぬだろうとは思いますけれども、いずれにせよ、凍結という言葉からいいますと、凍結はフリーズですから、凍結する場合は、今度はこれを温めてまたもとに戻して議論するという場合もあるかもしれません。  しかし、私が言っているのは、それは全体会議をやる場合のことでございまして、農業だけを単独にやるという場合においては、その宣言案には、案の合意がされていないわけですから、そういうものには拘束される必要はないということです。
  65. 前島秀行

    ○前島委員 そこら辺のところは微妙な受けとめ方であり、日本側として、日本農林水産大臣としては、あの最終案というものはもうなくなったんだ、全体の交渉事になってくると、一つ議論になる、こういう受けとめ方だろうと思いますから、個別の農業交渉にはこれは別なんだ、関係ないんだよ、こういう理解だろうと思いますね。わかりました。  それで、二、三、最終案の受けとめ方なんですけれども、私たちは、やはり今度のラウンドでの最大の目標というのは、いわゆる関税、米においてミニマムアクセスをこれ以上ふやさないということ、高関税を維持して米が自由に入ってこない状況をどうクリアするかということ、これが米に向けての一つの目標であるし、同時に、今、日本自身が基本法に基づいてさまざまな農業改革をやっている、政策を展開している、その中での畑作、大豆、小麦等々の経営安定策というものを国際ルールとしてWTOの中で認知させるということが我々の大きなねらいだろうし、目標だろう、私はこう受けとめているわけです。  そういう前提に立つと、この最終案というものにはさまざまひっかかるところがあるような気がいたします。  確かに、我々が要求した多面的機能のかわりに非貿易的関心事項が入った、このことは否定しませんし、入ったことはいいことだと思っています。しかし、多面的機能という言葉が入ることと非貿易的関心事項が入ることというのは、農政という意味においては大きな違いがあるような気がしてなりません。  要するに、多面的機能というのは農業生産、農業政策農業の側からの物の言い方なんですね。非貿易的関心事項というのは、自由化、そこの側から見た物の見方の表現なんですよ。そして同時に、今度の文章の中に、非貿易的関心事項においても条件つきですね。貿易を妨げないという条件つきでもあるし、あるいは農業改革の目標としてはWTOの規則や規律と一致した農業貿易の体制の確立であるというような表現等々を見ますと、この最終案は、大臣が改めて全体の会議が展開された場合は一つの大きな議題の柱になると言っているこの最終案は、さまざまな問題点を抱えているというふうに私は見ざるを得ないと思いますけれども大臣はその辺のところの問題点をどう感じておるか。
  66. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 極めて大事なところでございますので、議論内容を申し上げますが、私は、最終文章を、貿易を歪曲的に使うべきではないという文章そのものを削減することを要求しました。しかしながら、多面的フレンズ国の国々は、英語で大変恐縮ですが、シャルという言葉を使っているわけです。シャルということは、要するに、義務化であり、しなければならないという趣旨ですが、シュドという言葉に変えればかなり表現を和らげて、必ずしなきゃならぬということじゃなくて、意味をちょっと正確には言えませんけれども、そういうような議論がありました。  だから、シャルをシュドに変えればかなり、つまり、全体としての意思を明確にするわけじゃないですから、そういうような議論まで行われておって、そういう方向で大体集約するような方向でありました。
  67. 前島秀行

    ○前島委員 努力の過程は評価します。それで、私たちは現地には行きませんでしたけれども、さまざまな報道を見て、玉沢大臣以下努力をしたということは評価しますし、今、その一つの過程として御披露があったと思いますけれども、結果として出されてきた最終案の評価を私は聞いているのであります。  日本側としては、いろいろな問題点があの文章の中にあると受けとめるのか、いや、あの文章は万々歳だ、あの文章に基づいてこれからやっていけば、我々の目標であるミニマムアクセスの拡大も阻止できる、高関税化も維持できる、あるいは畑作等々の農業政策転換のときの安定化策も認知される、こういうふうに受けとめているのですか。
  68. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 非貿易的関心事項というふうな項の中に農村開発というのが明確に位置づけられておりますね。食料の安全保障というのが明確に位置づけられておりますから、先ほど言いましたように、シャルをシュドに変えればかなり読むことができる。したがいまして、第二十条の趣旨に沿って、そうしたところに配慮しながらやっていくということであるならば、いわゆる相打ちになる。  個々の問題点はこれから議論するわけでありますけれども宣言案の中に足がかりをつくっておいたということはあえて言えるのではないかとは思いますが、なおかつ、それがさらに生かされるためには多面的機能というものが明確に位置づけられることが必要だということで、最後まで主張して、一応今のところは物別れになっているというところです。
  69. 前島秀行

    ○前島委員 私は、まだ基本的な最終合意じゃないわけでありますから、多面的機能という点に日本はこれからも発言をしていくということが大事だろうと思いますので、その点の努力をお願いしたいと思います。  あと聞きたいことはたくさんありましたけれども、ちょうど時間が終わりましたので、区切りがつきましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  70. 松岡利勝

    松岡委員長 本日の質疑はこれにて終了いたしました。  そこで、委員長から政府に求めることがあります。  今、前島議員からもやりとり、これは大臣との間であったわけでありますけれども国益のもとになる基本というか、このシアトル最後の整理というものを、我が国政府全体としてどう整理し、そして、その整理したものをもってどう各国連携をしながら主張していくのか。その辺の基本スタンスを、今大臣は物別れという言葉もお使いになりました。したがって、最終案は委員長提案であって、お互いが受け入れた、合意した最終のものではない、こういうふうに今大臣は見解を申し述べられたと思います。  したがって、まさに国益を論ずる一番基本の新たなスタート台に立つわけでありますから、あすの理事会までに、政府として政府全体の、外務、通産も含めた、私は、きちんとした統一見解を示していただきたい。そうでないと、議論がいろいろ拡散をするということで、これは特に、この場から異例でありますが、私は、大事な基本だと思いますので、ぜひ政府にそのことを求めたいと思います。  あすまで無理であれば、それはなるべく可及的速やかに整理をしてもらいたい、こう思います。
  71. 玉沢徳一郎

    玉沢国務大臣 当然、これからこの会議の全体を集約しまして、次にどのような形で臨むべきかということについて、今政府全体という話がありましたけれども、少なくとも農業問題等につきましては、やはり当委員会にも御要求があればお示しをする必要があるのではないか。  ただ、明日ということはちょっと余りにも性急過ぎるのではないかと思いますので、御相談をさせていただきまして、御報告するようにしたいと思います。
  72. 松岡利勝

    松岡委員長 それでは、そういうことで、あとはまた、今後、取り扱い等は理事会の場で協議をしてまいりたいと思います。  次回は、明十五日水曜日午前十時理事会、午前十時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二分散会