○伊藤(忠)
委員 ありがとうございます。そういう認識はお互いに共有できると思うんですね。ところが、そのフラッグキャリアのNTTが、だんだんフラッグキャリアとしての地位が危うくなってきている、私はそのように思っています。
株は上がっていますね。株というのは余り実態とリンクしない場面がございまして、株屋さんに言わせれば、なぜあの株が上がったのかというのはまた株屋さんの理由がございますから、私は全然素人でございますからそこまで言及する知恵はございませんが、調子よく上がっておるんですが、実際の置かれておる立場というのはだんだんと危うくなってきておる、私はそう
考えています。
なぜ危うくなってきておるのか。その要因を申し上げます。五点ございます。簡潔に申し上げます。
まず第一点は、長期増分方式が導入をされますと、もう収入はがんと落ちますね。これは
郵政省も資料でお持ちでございます。研究会モデルによる接続料金の値下げだけで、東
日本が三年間に一千二百億、西
日本も三年間に一千億実は収入が減ります。そうでなくても西
日本は今赤字です。こけるのじゃないでしょうかね。四年目に起きてくれればよろしいけれ
ども、三年間どどっと減っていって、起きてこずにこけたままだったら、これは倒産です。そういう
状況になる。
一方、これからプライスキャップ制が導入されていくわけですが、これが東西それぞれで三百五十億ずつ収入減になりますね。収入が減っても、経常利益でプラスになっていて赤字でなければ、
企業としてはどうにかすれすれのところでやっていけるということだって経営者が判断するかもわかりませんね。しかし、それでは体力が非常に、やはり強化という部分は、設備投資が当然落ちますから、どうしたってうまくいかないというのが一点目。
二点目が、御
承知のように、東西のNTTというのは固定電話をやっているわけですね。ところが、ドコモに代表されますように、
携帯電話の数の方が固定電話を上回っておるわけですよ。これからだんだんそうなっていきます。もっと
携帯電話はふえます。
私、町を歩いていましても
思いますよ。公衆電話の中にお嬢さんが入りまして、公衆電話の方へおしりを向けて
携帯電話をやっていますものね。あれを見ると、今日の象徴だと
思いますよ。だから、
携帯電話全体がどんどんとこれからは
進展するんじゃないでしょうか。このことによって、東西の収入はだんだん下降していきます。これははっきりしているんですね。
三点目。ユニバーサル
サービスの経費負担というのはそれなりにかぶりますね、
法律で義務づけられておりますから。あまねく公平に
サービスを提供しなければいけないという公的な義務を負っているわけで、このことの費用負担というのは、
法律が変わらない限り永遠に続くわけでございます。
四点目。民間の市内網の独占状態が崩れまして、だんだんとNTT両社の市場が縮小化していくということです。そういう言い方だったら語弊がないと思うので、私はその言葉を選んだのですが、縮小化していくと
思います。相対的な
問題なんです。つまり、電力系だとかいろいろなところがやはりどんどんと
事業を起こされますから、言うならば、NCCの市場がだんだん通信網が広がるということになるわけです。これに加えて、爆発的にこれから
進展するのがCATVじゃないでしょうか。
我が三重県というのは、
全国でもトップクラスにCATVが発達している県なんです。そこに
加入しております
加入数は、大体一〇%を超えます。もうそこまで来ています。第三セクターによって
地域回線網というのがどんどんと張られていくわけです。
インターネットが当然各家庭で使われますね。もちろん電話だって、やろうと思えば
事業者ならばやっていけるわけですよ。便利なものです。それが各家庭に、くまなく
地域回線網がこれから
発展していくと思うんです。
ということは、NTTにかわってもう
一つの網ができるわけですから、それがどんどんと人気を集めて広がっていって稼働するということになれば、片方の収入が下がることはもう常識なんで、そういう時代を本格的に今迎えようとしておりますね。これはやはり、これから
情報通信のあり方を
郵政省も検討なさるわけですが、このことは絶対に重要なポイントになってくると私は思っています。そのことを抜きに、これからの
ネットワーク構想なり、あるいは
インターネットどうのこうのと抽象的には言いますよ、言いますが、これが非常に大きなファクターになっていくと私は思っておりまして、そういう影響がこれからは大きくなっていくんじゃないでしょうか。
五点目は、どんなに赤字で苦しくとも、株式の配当をやらなきゃならない義務があります。大蔵省に株式の配当をしなければいかぬわけですよ。赤字
企業は株の配当を普通しなくていいんですよ。私、そう聞いています。自分は経営者になったことはないんですが、そうでしょう。
ところが、赤字
企業であろうと黒字
企業であろうと、NTTの場合には
法律で義務づけられていまして、最大の株主の大蔵省に配当しなきゃいかぬ。一〇%なのか八%なのかというのは、これはいろいろその時々で決めるんでしょうけれ
ども。財源は大蔵に行くわけですよ。赤字
企業から吸い取っていくわけです、株主が。
そして、売却益の使途でもそうですが、御
承知のように国債整理基金、赤字国債の穴埋めに使っておるわけでしょう、現在、特別会計で。もう
一つは産業投資特別会計で、それを投資しておるわけですね。これは、公共
事業のシーリングの別枠でやられていることはもう御
承知でしょう。常識なんです。
だから、私は、ここに資料を持っていますけれ
ども、何とこれは皮肉なんですが、私も資料をめくってわかったんですが、預金
保険機構、あそこに八千億、この売却益を投入しておるわけですよ。一体これはどういうことや、そう
思いますよね。
本来、親というのは、子供をいたわること、かわいがる立場じゃないですか。子供が瀕死の重症にこれからだんだんなっていくというのに、まだその上に親はあぐらをかいて、子供から吸い取るなんということは一体何を
考えておるのか。リストラをやるといったって限界がありますよ。これは大いにやっていくんでしょうけれ
ども、これはやはり限界があります。
そういう厳しい
状況にこれから本格的に、言うならば、NTTというのは、好むと好まざるとにかかわらず、客観的な条件として、事実としてそこに追い込まれていくんだということを、私は事実をもってお訴えしたいんです。フラッグキャリアどころか、大変な
状況になっていく。特殊会社のままでいいのか、未来はあるのかということを私は訴えたいと思うんです。
それで、電力は、
地域独占が維持されながら通信
事業に参入していますね。JRは清算
事業団方式で赤字をそれなりに埋めてきましたね、公費援助で。民営化しまして、どうにかそれで走っています。そこがまた通信
事業に参入しましたね。そういう例が公共
事業であるじゃないですか。
では、何でここだけは、言うならば自力でやっていけと。やっていけるうちはいいんですけれ
ども、どうにもならないところへ迷い込んでいく、はまり込んでいく。ある
意味ではアリ地獄、そういう
状況下にあるわけで、しかもなお長期増分費用方式を導入してやったら、骨皮筋右衛門になってしまう。それでも
郵政省はまだ、
我が国のフラッグキャリアとして位置づけておやりになろうということなんでございましょうか。
大臣、お答えをいただきます。