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1999-12-07 第146回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月七日(火曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 金子 一義君    理事 衛藤征士郎君 理事 鴨下 一郎君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 上田 清司君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君       石原 伸晃君    大石 秀政君       大野 功統君    奥谷  通君       河井 克行君    桜井  新君       桜田 義孝君    塩谷  立君       下村 博文君    砂田 圭佑君       高市 早苗君    西川 公也君       蓮実  進君    林  幹雄君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       村井  仁君    村上誠一郎君       渡辺 博道君    石井 紘基君       岩國 哲人君    岡田 克也君       奥田  建君    川内 博史君       河村たかし君    末松 義規君       仙谷 由人君    中川 正春君       大口 善徳君    谷口 隆義君       並木 正芳君    若松 謙維君       安倍 基雄君    一川 保夫君       中村 鋭一君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    横光 克彦君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    金融再生政務次官     村井  仁君    大蔵政務次官       大野 功統君    政府参考人    (金融監督庁監督部長)  乾  文男君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    参考人    (日本銀行総裁)    山口  泰君    参考人    (日本銀行理事)     黒田  巖君    参考人    (日本銀行理事)     引馬  滋君    参考人    (日本銀行理事)     小畑 義治君    参考人    (日本銀行政策委員会審議    委員)          田谷 禎三君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   塩谷  立君     蓮実  進君   林  幹雄君     奥谷  通君   宮本 一三君     宮腰 光寛君   河村たかし君     石井 紘基君   仙谷 由人君     奥田  建君   中川 正春君     川内 博史君   一川 保夫君     中村 鋭一君 同日  辞任         補欠選任   奥谷  通君     林  幹雄君   蓮実  進君     塩谷  立君   宮腰 光寛君     宮本 一三君   石井 紘基君     河村たかし君   奥田  建君     仙谷 由人君   川内 博史君     中川 正春君   中村 鋭一君     一川 保夫君     ————————————— 十二月七日  貸金業規制等に関する法律の一部を改正する法律案岡田克也君外三名提出衆法第六号)  貸金業規制等に関する法律等の一部を改正する法律案相沢英之君外八名提、衆法第一〇号)  貸金業規制等に関する法律等の一部を改正する法律案佐々木憲昭君外一名提出衆法第一二号) 同日  共済年金制度の堅持に関する請願野田毅紹介)(第六一二号)  中小自営業者婦人自家労賃税制等に関する請願瀬古由起子紹介)(第六一三号)  同(古堅実吉紹介)(第六六九号)  同(矢島恒夫紹介)(第六七〇号)  同(松本惟子君紹介)(第七三三号)  酒販免許制度緩和反対に関する請願尾身幸次紹介)(第六一四号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願瀬古由起子紹介)(第六一五号)  同(石井郁子紹介)(第六七一号)  同(東中光雄紹介)(第六七二号)  同(藤田スミ紹介)(第六七三号)  同(吉井英勝紹介)(第六七四号)  銀行による金融被害実態解明被害者早期救済のための集中審議等に関する請願枝野幸男紹介)(第七一七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十五回国会閣法第一二一号)  金融に関する件(通貨及び金融調節に関する報告書)     午前十一時三分開議      ————◇—————
  2. 金子一義

    金子委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君、日本銀行総裁山口泰君、日本銀行理事黒田巖君、日本銀行理事引馬滋君、日本銀行理事小畑義治君、日本銀行政策委員会審議委員田谷禎三君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として金融監督庁監督部長乾文男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 金子一義

    金子委員長 去る三日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、日本銀行から国会提出されました通貨及び金融調節に関する報告書につきまして、概要説明を求めます。日本銀行総裁速水優君。
  5. 速水優

    速水参考人 それでは初めに、平成十一年度上期の日本銀行通貨及び金融調節に関する報告書概要につきまして、説明させていただきます。  去る十二月三日に、日本銀行法第五十四条に基づき、本年度上期の金融政策運営に係る半期報告書国会提出させていただきました。本日は、本報告書につきまして御説明機会を与えていただきましたことに、厚く御礼申し上げます。  まず初めに、日本経済現状に対する認識と金融政策運営について、簡単に述べさせていただきます。  日本銀行は、本年二月にゼロ金利政策という思い切った金融緩和措置を講じてから、約十カ月が経過いたしました。この間、大変厳しい状況にあった日本経済にも、徐々に改善の兆しが見られ始めております。  まず、本年前半は、公共投資住宅投資が総需要を下支えしました。その後、夏場には、アジア中心とした世界景気回復を反映しまして、輸出が明確に増加し始めました。このために、最近では企業生産活動回復に転じており、その影響企業収益プラスに働き始めておりますほか、家計所得の面にも徐々に及びつつあるように思います。また、ゼロ金利政策効果もありまして、金融機関企業流動性懸念は大きく後退し、企業景況感改善してまいっております。このため、日本銀行では、景気現状につきましては、下げどまりから持ち直しに転じつつあるという判断をいたしております。  また、この一年間、バブル崩壊後、長きにわたって日本経済が直面してまいりました中長期的な課題への取り組みにつきましても、前進が見られました。第一は、金融機関企業不良資産処理であります。第二は、新たな国際環境のもとでの産業構造変革という課題でございます。  まず、不良資産処理の方は、まだ終わったわけではございませんが、公的資本の投入を柱といたします金融システム安定化策などによりまして、不良資産問題が経済全体の危機につながる懸念はかなり後退したように思われます。本年春先ごろから、企業消費者のマインドが持ち直してきたのも、この金融再編という大きな流れを含めまして、金融システム安定化によるところが非常に大きかったというふうに考えております。  もう一つの、産業構造変革という課題につきましても、前向きの動きが出ております。企業の大規模な事業再編情報通信分野中心とした新しい企業群の台頭などは、新時代の幕あけを予感させるものでございます。  また、本年夏ごろから目立ってまいりましたアジア経済回復は、こうした日本経済変革動きと相互に好影響を及ぼし合っている面があり、日本を含め、東アジア諸国全体として拡大していく力が働き始めている可能性があるように思います。  以上のように、日本経済は、ようやくバブル崩壊後の長期停滞から脱却する足がかりをつかみつつあるように思います。株価がこの一年で約五割上昇したことも、そうした期待感市場参加者が強めていることの反映かと思われます。  しかし、自律回復に向けての展望は、現時点ではまだ確実なものとなっているとは言えません。金融システムが一応安定したとは申しましても、金融機関は中期的な経営健全化の途上にありますし、金融仲介機能が十分に回復されるには至っておりません。  また、経済の一部に次第に新しい流れが起こりつつあるとは申せ、全体として見ますと、過剰債務あるいは供給能力が残っておりまして、引き続き設備投資や雇用、賃金の抑制要因として作用しているように思います。  こうした中で、このところやや不安定な動きとなっております為替相場につきましても、それが経済にどのような影響を与えるのか、注意深く見ていく必要があると思います。  これらを踏まえますと、足元の景気は、下げどまりから持ち直しに転じつつありますが、先行きにつきましては、個人消費設備投資など、民間需要の動向を慎重に点検していくことが必要な段階に来ていると考えます。  日本銀行は、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでゼロ金利政策を継続するということを明確にいたしております。以上申し上げたような景気物価情勢を踏まえますと、まだゼロ金利政策の解除ができる段階には至っていないように判断いたしております。ゼロ金利政策につきましては、その副作用についてさまざまな御意見があることも承知いたしております。しかし、現段階では、最近見られ始めた経済の前向きな動きを将来につなげていくためにも、金融面から経済活動をしっかり支えていくことが必要であると考えております。  金融政策運営をめぐりましては、こうしたゼロ金利政策についての評価を初めとして、政策運営の手法や枠組みなどを含めまして、さまざまな論点があろうかと存じます。本日は、委員会の御意見を幅広くちょうだいするとともに、日本銀行考え方をできるだけ率直に説明して、御理解を賜りたいと存じております。何とぞどうぞよろしくお願い申し上げます。  初めに当たりまして、一言説明させていただきました。御清聴ありがとうございました。
  6. 金子一義

    金子委員長 これにて概要説明は終了いたしました。     —————————————
  7. 金子一義

    金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
  8. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 第三回目の日本銀行株主総会にようこそいらっしゃいました。日本銀行は株式会社でありますけれども株主総会がありませんので、私ども株主たる国民にかわってこの業務報告を受け、質問をするわけであります。  この一年間、どうも政府日本銀行との関係がぎくしゃくしているような、そういう印象を我々は受けております。大変残念なことなんですね。やはり、先ほど総裁おっしゃられましたように、まだ非常事態が最終的に終わったわけじゃないのですね。したがって、その非常事態対応危機管理というものは、それぞれの金融当局すり合わせをきちんとやって対応をしてもらわなければ困るわけであります。  とにかく、政府日銀と全然違ったことを言っているのじゃないかという印象を例えばマーケットに与えれば、すきを見せることになりますから、すきを見せるとやられちゃいますから、そういうことがないようにお願いをしたいと思っておるのです。  お金世界は、日銀がゼロ金利をやりましてから、方向性は非常に整ってきたのですね。積極財政金融緩和、そして円高抑止、こういう三本の方向性がそろったわけですね。今までは日本お金ヨーロッパに向かったり、あるいはヨーロッパお金アメリカ株投資に回ったり、またアメリカからまた日本お金が戻ってくる、そういうようなことが起こってきたのでしょうね。先ほど総裁おっしゃったように、日本株価も五割ぐらい上がった。ドルベース平均株価をカウントすると、もっともうかっているのかもしれませんね。  しかし、そういう状態が続いている間はいいけれども、例えばグリーンスパンさんも、グリーンスパンさんというのは速水総裁よりも一歳年上なんだそうですね、知りませんでしたけれどもグリーンスパンさんは、アメリカ株価は上がり過ぎだ、どうもこれは調整してもいいのじゃないかみたいなメッセージを再三発しておられる。では、アメリカ株価が五割高いのかどうか知りませんが、三割ぐらい来年の年明けぐらいから調整し始めるというと、日本株価が、三割調整すると、小渕内閣の最安値みたいなところまでいってしまうわけですから、これは非常によくない話なんですね。  だから、どこから崩れてくるかよくわからぬのですよ。日本バブルと言われる債券相場から崩れてくるか、あるいは、ユーロもちょっと今乱高下しているようですけれども、そういうところから崩れるか、あるいはアルゼンチンの方から崩れるか、よくわからぬところが多いわけであります。  しかし、金融当局としては、そういった危機管理に対してきちんと金融当局同士すり合わせができる、そういうシステムがあるのでしょうね。いかがでしょうか、総裁
  9. 速水優

    速水参考人 御指摘のように、金融資本市場あるいは為替市場というものは、さまざまなショックが、何が起こるかわからない。それによって大きく市場が動くことが十分あり得るわけでございまして、一昨年の金融システム不安あるいは昨年の国際流動性危機といったようなこともそういったものの一つではなかったかと、御指摘の点は常々強く私どもも認識しているつもりでございます。  日本銀行は、そういう観点から、これまでも関連省庁中心に各レベルにおきまして幅広く情報の交換をいたしております。また、とりわけ近年は金融グローバル化が進んでおりますので、主要国中央銀行との連絡体制も一段と強化してきておるつもりでございます。もとより内外金融をめぐります情勢予想外のテンポで変化する可能性もございますので、私どもとしてもそうした点は十分念頭に置いて、関係方面と一層綿密な関係を保ってまいりたいと思っております。  特に、大蔵省とは、宮澤大蔵大臣と折に触れてよくお目にかかるし、話し合う機会もございます。また、企画庁長官ともそうですし、企画庁の方々も決定会合には御陪席いただいております。金融監督庁の方もあるいは再生委員会の方も適時適切にそれぞれの段階情報を交換いたしております。特に海外中央銀行につきましては、BISその他、お目にかかる機会も多うございますけれども、欧米あるいは近隣諸国それぞれの立場で電話で話し合ったりお会いしたりという機会が非常に頻繁になっていることを申し上げまして、それらの関係はなるたけ水も漏らさぬようにいたしておることを申し上げたいと思います。
  10. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 強いドルアメリカの利益とか、為替政策通商政策手段にしないとか、そう言っておったルービンさんはもうウォールストリートへお帰りになられたのですね。先週のWTOのあのどたばた劇を見ても、来年あたりは大統領選もありますから、そうすると、アメリカの民主党は労働組合の支持を得なければいかぬというので、もしかしたらまた為替通商政策手段になってくるかもしれない、そういうおそれも十分にあるのですね。したがって、そういうこともよく念頭に置いて日銀政策運営をやっていただきたいと思っております。  日銀政策短期金利一刀流みたいな話だったのですね。ところが、短い刀を、気がついてみたら、刀の部分がなくなってしまっておったということなんですね。そうすると、別の刀を取り出してやるか、デフレ怪獣と戦うためには長短二刀流でやらないといけないのじゃないか、私はそう言い続けてきたのでありますけれどもデフレ懸念が払拭されるまでゼロ金利を続ける、こういうことなんですが、では、そのデフレ懸念が払拭されるというのはどういうことなんだ。例えば、CPI、消費者物価プラスにいくことなのか、卸売物価プラスになることなのか、GDPプラスになることなのか、よくわからないのですね。  では、例えば、日銀はことしのインフレ率はどれくらいに見込んでおったのですか。
  11. 山口泰

    山口参考人 御指摘のように、インフレをどういう指標で見るかというのはなかなか難しい点でございまして、これですべてわかるという物差しがあるわけではございません。  一つ材料といたしまして、生鮮食品を除いた消費者物価というので見てみますと、御案内のとおり、ここのところ幸い安定的に推移しております。ことしに入りましてからの前年同期比を取り出しますと、細かくなりますが、マイナス〇・〇五%というのが一月から十月までの前年比の平均でございます。つまり、ちょうどほぼとんとんと言ってよろしいかと思います。ことしにつきましても、大体この延長線上でおさまるのではないかというふうに思っております。
  12. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 日銀のゼロ金利政策日銀のパラダイムでいけばそれしかなかったのかもしれませんが、既に二月から始まって十カ月近くたっているのですね。既に半年ぐらい前からこのゼロ金利が、すべて効果が出尽くしているのではないかという指摘が出ていたわけであります。  そこで、金利政策ということから離れられないのであれば、より長目金利ターゲットにするしかないのですね。既に、例えば二年物の国債を、レポオペというのですか、そういうものに使うとかやっておられるわけなのでありますけれども、来年から国債が、例えば財投債ども含めて、いわば債券ビッグバンみたいなことが起こってくるのですね。そうすると、国債発行政策とか流通政策も多様化していかなければならないのですね。  そういう中で、例えばインフレインデックス債なんというのは世界の常識なのですけれども日本ではこういうものは出していないわけであります。インフレインデックス債というのは、これはある意味で、投資家にはインフレリスクを回避できる商品であり、また、発行体である国にとっては、インフレを起こしたらペナルティーを受けますよ、こういうたぐいのものであります。また、年金とか郵貯みたいに長い運用をせざるを得ないというところにとっては大変好都合な商品なんですね。こういうものについて、日本銀行としては何か御感想はありますか。
  13. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  国債が非常に大量に発行されている状況でございますから、その発行面それから流通面両方におきまして、やはりいろいろな商品性改善流動性の向上を図っていくということが基本的に必要だし、望ましいと思っております。  そういう観点から、今御指摘物価連動債インフレインデックス債ということを考えてみますと、これは諸外国において既にそういうことが導入されている国もございますし、また、我が国の中でも何度かそういう提言がこれまであったというふうに記憶しております。  私ども中央銀行立場から考えますと、物価連動債というのは、これによりまして人々の、あるいは市場におけるインフレ予想期待インフレ率というものを把握するための一つ手段になるかもしれないというように考えております。もちろん、それだけですべて物価についての情報が完全にわかるというわけではございませんけれども、いろいろな材料を組み合わせて判断する場合の一つ材料になるというふうに考えております。  ただ、念のためもう一つだけつけ加えさせていただきますと、日銀について、もう少し長目債券対象オペをやったらいいではないかというような御指摘をただいまちょうだいしたわけでございますけれども、私どもがかねて申し上げておりますのは、中央銀行が、例えば財政につきまして、安易なファイナンスを中央銀行信用の方からつくり出すことになってはいけないというような配慮がございますので、物価連動債が出てくれば、それを直ちにオペ対象に入れるというようなことまで考えているわけではございません。
  14. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今御指摘のように、これは期待インフレ率の観測が極めて容易になるという長所を持っておるのですね。今、副総裁お話ですと、財政規律という側面から、こういうものが出てきてもすぐオペ対象にはしないのだ、こういうお話でありました。  今、我が国経済政策、二通りの考え方があるような気がするのですね。一つ尊王攘夷論みたいなものですよ。もうこれ以上借金するな、これ以上金融緩和するな、円が高くなってもいいじゃないか、その結果、アメリカお金流れなくてもいいじゃないか、そういうたぐいの立場ですね。それに対して、我々のように、先ほど申し上げたように、まだ非常事態が終わったわけではないのだから、積極財政金融緩和、さらなる緩和ですね、そして円高を抑止する、こういう立場を継続すべきである、こういう立場の違いですよ。日本銀行がどうも尊王攘夷論に傾きつつあるのではないかという気がしてならないわけでありまして、そういたしますと、これは冒頭の話に申し上げましたように、政府政策との整合性がうまくいかなくなってしまうという大問題があるのですね。  そこで、この平成大不況の一番の根幹というのは資産デフレなんですね。とりわけ地価ですよ。お手元に私のつたない論文をお配りしてあると思いますけれども、二ページ目をお開きいただきますとグラフが出ております。これは、日本地価の総額がGDPの何倍あるかというグラフでありますけれども、要するに、地価が下がり続けるという状況のもとでは日本民間のバランスシートは劣化し続ける、こういう問題があって、国が幾ら借金をし続けてもブラックホールに吸い込まれるような話なんですね。  したがって、いかに地価を下げどめるかということが必要なわけでありまして、私は、地価インデックス債というものを出すべきだ。これは今から二十年前に野口悠紀雄さんが提案をしたものでありますけれども、こういうものを六大都市圏商業地公共事業用地の買い取りの特定財源として交付したらいいのじゃないですか。今どき土地は有利な資産だと思う人はほとんどいませんので、公共事業用地の取得が容易になるということが考えられるわけでございます。  時間がありませんのではしょりますけれども、こういった資産価額について、今回審議委員になられました田谷審議委員は、非常に早くから着目をしておられたエコノミストだと理解をいたしております。先ほど私が申し上げました物価目標、これに加えて地価目標、これを日銀金融政策の中にターゲットとして加えるべきだ、こういうことをこの論文の中で私は申し上げているのでありますけれども田谷審議委員におかれましては、まだ一回目の審議会に御出席されていない立場で大変恐縮でございますが、国会デビューの御所見をお伺いしたいと思うのでございます。本当は審議委員になられる前に来ていただくのがよかったのかもしれませんが、まず、審議委員デビューの一言、よろしくお願いいたします。
  15. 田谷禎三

    田谷参考人 お答え申し上げます。  新日銀法日本銀行の理念を、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資すると定めています。物価の安定は、人々投資や貯蓄といった将来にわたる経済活動が合理的に行える環境を用意することで、効率的な資源の配分を可能にし、経済の持続的な発展の基礎をつくるものです。中央銀行物価の安定を目標として金融政策を運営すべきであるというのは、先進主要国においても共通の理解となっています。  一方、地価そのもの金融政策目標とするということは、諸外国にも例がございませんし、難しい点が多いように思います。一般的に、資産価格は、地価もその一つですが、その資産を利用して得られる将来の収益を現在の価格に引き直したものです。したがって、資産価格の形成には、期待あるいは将来に対する予想といったものが大きな役割を果たすことになりますので、適切な資産価格の水準をあらかじめ特定することは難しいと思いますし、中央銀行がそうした資産価格をコントロールできるかという問題もあると思います。  ただ、バブルの生成とその崩壊という経験を踏まえますと、金融政策の運営上、地価株価といった資産価格に十分な関心を払うべきであると考えています。すなわち、資産価格は、先行きの経済に対する人々の期待あるいは将来予想など、重要な情報を多く含んでいると思います。また、資産価格の変動は、企業消費者のマインド、ひいては実際の経済活動に重大な影響を及ぼし得るものです。したがって、資産価格の動向につきましては、景気物価の動向を判断していく上での重要な材料一つとして、十分注意を払っていきたいと考えております。  以上です。
  16. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 審議委員になりますと、今までの立場がちょこっと変わって、執行部寄りになったりする方もいないわけではないので、ひとつ今までの御所見を、信念を曲げずにやっていただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  17. 金子一義

    金子委員長 次に、並木正芳君。
  18. 並木正芳

    ○並木委員 公明党・改革クラブの並木でございます。よろしくお願いいたします。  初めに、報告書に入る前に、基本的な問題をお聞きしたいと思いますけれども日銀法改正から一年半以上が既に過ぎたわけですけれども、開かれた中央銀行としての日銀の権限強化とともに、その責任も重大になってきたわけです。かつて、金制調の答申にも、「日本銀行の運営に携わる人々が、独立性の強化に伴い、国民に対し重大な責任を負うことを自覚し、日本銀行の運営を適切に遂行していくことが必要である。日本銀行におかれても、二一世紀の我が国金融システムの中核に相応しい中央銀行を目指し、自己改革を進めていくことを強く望みたい。」まさに基本的な姿勢が問われているわけでございます。  これまでにいろいろ論議があったわけですけれども、いわゆる日銀の役職員の給与体系、こういうものの見直し、あるいは情報化時代に即応したシステム、また支店、事務所等の統廃合、このような、リストラ策といいますか、これを現状までにどのように進められたか、また、現在これから進めようとしている計画、その辺についてお聞きしたいと思います。
  19. 引馬滋

    ○引馬参考人 今先生おっしゃった私どもの自己改革という点でございますけれども、私ども、いろいろな見直しに取り組んでまいったということでございます。御質問の役職員の給与でございますけれども、新しい法律では、社会一般の情勢に適合したものとなるよう新しい支給の基準を定めよ、こういうぐあいになっておるわけでございます。昨年これを定めましたし、また、給与の水準というものにつきましても、昨年度も給与水準調整を行いましたし、今年度も昨年に引き続き年収の引き下げを行ってきたということでございます。  それから、情報化時代への対応という点でございますけれども、この点につきましては、一つは、極力迅速な情報の発信を図るということが大事だろうと思います。これによって透明性の向上に努めるということが一つかと思います。  それから二つ目は、いわゆる機械化というものの積極的な活用を図ることによりまして、業務運営面での効率化、高度化を図っていくこと、こういうものが課題であるというぐあいに認識しているわけでございますが、迅速な情報発信という点では、私ども、インターネットホームページというものを利用しまして、各種の情報を迅速に公表しているということでございまして、国民の皆様からも大変好評をいただいているということでございます。ちなみに、最近では、月当たり百二十万件程度のインターネットホームページへのアクセスがあるという状況でございます。  また、効率化、高度化という点でございますけれども、この点につきましては、私ども金融インフラでございます日本銀行金融ネットワーク、これのいろいろなプロジェクトを推進いたしておりまして、最新の情報通信技術を活用して、業務の一層の機械化に努めているということでございます。  最後に、支店、事務所の統廃合の関係でございますけれども、これにつきましては、私ども、支店、事務所、それぞれの地域で大変重要な役割を担っているというぐあいに認識しておりまして、地域の方々からも相応に必要性を認められている、こういうぐあいに理解しているわけでございますが、地域経済、時代時代によって変化するものでございまして、私どもではこうした点も踏まえまして、一方で、支店、事務所の問題ということになりますと、職員の雇用面に与える影響ということも考えなければならないわけでございますが、現在、支店、事務所機能のあり方ということについて、総点検を行っているということでございます。ともあれ、この問題は非常に重要な問題だというぐあいに認識しておりまして、時間をかけてしっかりと検討してまいりたい、このように考えているところでございます。  いずれにせよ、今後ともこうした見直しの努力を続けていくことによりまして、よりよい日本銀行の実現というものを図ってまいりたいというぐあいに考えているところでございまして、ぜひとも御理解、御支援を賜りたいというぐあいに存じております。
  20. 並木正芳

    ○並木委員 何分にも時間が少ないものですから、基本的な改革、今もお話あったところですけれども、さらなる改革を求めていきたいと思います。  報告書に入りますけれども報告書にありますとおり、夏以降の円高局面におきまして、円売り介入を日本銀行が不胎化するべきではない、こういう声が高まって、会合においても、為替介入問題を、しかしこういうところでは避けて、ゼロ金利政策で潤沢な資金が供給されているからそれでいいだろうというような意見に終始したということですけれども、その後大蔵とのいろいろなあつれきとかがありまして、いわば日銀が介入をしたというような、そうしたアナウンスが広まったことによりまして、円が一定の安定を保った。そういう状況だと思いますけれども、非常に今輸出が上向きだ、アジア情勢にも絡んでということですけれども日本にとって輸出というのが、非常に大きな経済影響を当然ながらあらわすわけであります。  金融政策為替相場を左右するというのは不適当だというのは常識的見解かと思いますけれども、今申し上げたように、日銀の動向というのは非常に実際には反映されている。そういう点を配慮して、これから市場からさらに期待とか圧力がかかってくると思うのですが、こうした局面でも、日本銀行日本経済浮揚への責任、それとまた裏腹の独自性、こういうバランスについてどのように考えられているのか。  これからも世界情勢からすると円高圧力が続いて、特にユーロが今落ち込んできたというところで、このユーロとの関係での円高ということも考えられます。アメリカ経済の動静、またユーロの動静、これを考えながら、今後日銀がどの辺で見通して、どういう対応をしていくか、その辺の見解をお聞きしたいと思います。
  21. 速水優

    速水参考人 お答え申し上げます。  今非常にホットな問題でございます。おっしゃるように、先般来、ここ二週間ほどの間に円が強くなって、ドルとユーロがほぼ同じになって、きのうあたりからどっちも百二円何がしというようなことで非常に新しい事態になりつつあることは御指摘のとおりでございます。  円の相場というのはいろいろファクターがございますし、私どもも、もちろん金融政策為替だけで動かすものではないとも思いますし、同時に、為替というものは、始終ウオッチしていて、金融政策を決定する場合の重要な要素になることはこれまた見逃せないところでございます。私どももその辺はよく心得て調整をいたしておるつもりでございます。  当面の動きについて申し上げますと、円がここまで強くなっておりますのは、日本経済回復期待が高まってきたということ、それから株が非常に高い、堅調に推移しているということ。それからアメリカのサイドでいえば、アメリカは国内は非常に順調に成長を遂げており、生産が伸びて株価も上がっているわけですけれども、経常収支が非常に大きな赤字、GDPの四%近い赤字になって、それと同時に資本の方が、日本等へ株への投資が出ていく。その反面、アメリカへ入ってくる例えば日本からの、従来常時出ておりました機関投資家投資信託などのドル債等への投資というのがこのところとまっておるわけですね。それはなぜかというと、やはり金利が上がっていくときには国債価格が下がりますから、今投資すると危ない、あるいは円がもっと強くなるのなら強くなったところで投資すればいいというようなことで、このところしばらく、向こうへ流れていく金が流れていっていない、そういう事態が起こっておることが一つの大きな変化だと思います。  しかし、アメリカ流れていく金というのはやはりアメリカの方が落ちついてくればまた自然に流れ出すものでございますから、その辺のところは、今が少し異常な事態ではなかろうか。そういうこともありまして、先般、百一円台に入るといった状況の中で、百二円から百一円というようなところで介入が行われたのだというふうに思っております。  私どもとしては、協調介入ができればよろしゅうございますけれども、必ずしも、そうでなくても、大きな乱高下が起こるときには御指摘のように輸出がかなり大きな、今度のGDPを見ましても外需要因で支えているという感じでございますので、このところ輸出を伸ばしていくことは大事なことだと思いますし、よくその辺のところを見ながら、相場の調整、大蔵省のお手伝いをさせていただくし、意見の交換をさせていただきながら、金融調節をしてまいりたいというふうに考えております。
  22. 並木正芳

    ○並木委員 微妙なところなので発言も慎重だったようですけれども金融当局と大蔵省とよく連携をとってというようなこともありました。その辺は日本では大変重要な問題ですので、その辺よろしくお願いしたいと思います。  次に、今渡辺委員意見でも地価の問題が出たわけですけれども日銀の役割というのは、物価の安定と資金決済の円滑をもって信用秩序を維持する、こういうことにあるのは御案内のとおりで、報告書によると、低下傾向から物価も横ばいになったということで、安定したというふうに判断しているようですけれども日本物価というのは御案内のとおり、地価もそうですけれども、諸外国に比べて非常に高いというところで、今後世界の競争力として、物価が高いということは非常にハンディになる。日本社会もだんだん成熟化して高齢化社会になっていくわけですけれども、こういう中で、もちろん先端産業を興して世界に伍していく、こういうことも必要ですけれども、同時に価格競争もあるわけです。  この辺についての、物価のレベルというのが現在安定ということですけれども日本物価水準というのをどのように考えられているのか、あるいは今後どのように誘導していくべきか、横ばいということをよしとしているのかもしれませんけれども、その辺についての見解をお伺いしたいと思います。
  23. 速水優

    速水参考人 御指摘のように、物価につきましては、貿易財については日本は競争力が十分あるし、競争力のないものはどんどん構造改革が行われつつあるのだろうと思います。ただ問題は、やはり国内のサービス産業などで価格が高いというのが数字の上でも出てきますし、それが日本物価問題の根底にある一つの難しい問題だというふうに思います。  その原因としては、もとより日本は一人当たりの国民所得は一位とか二位とか言っているだけに高いわけですから、賃金が高い。サービス産業で賃金が高ければどうしても高くなっていくと同時に、もう一つ日本で問題なのは、やはりサービス部門では競争を制限するような規制の存在などがまだ残っておりまして、経済の中で、やや非効率と言ってもいいかと思いますが、競争的な環境がまだはっきり出てきていないということがサービス部門の物価を高くつり上げている背景にあるのではないかというふうに思っております。  この辺のところは金融だけではもちろんできないことで、今度の構造改革それから規制の緩和といったようなことで、ぜひこの機会に実行していただきたいというふうに思っております。  日本銀行は、御指摘のように、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するというのが私ども目標でございますから、物価問題は、どの部門もやはり注意深く見て、政策に生かしてまいりたいというふうに考えております。
  24. 並木正芳

    ○並木委員 時間があと五分ほどしかないということですけれども国債についてちょっとお聞きしたいのです。  御案内のとおり、政府は、景気浮揚のために赤字国債を発行して、その財源で諸対策を講じているというところで、その赤字の額ももう限界に達しつつある、このように言われているわけで、大変重大な問題になっているわけです。そういうところで、今後国債の信用低下あるいは金利上昇、その辺で、日銀関係するところへの買い切りオペとか、そういう期待とか圧力がかかってくる。現状でもかかっているわけですけれども、その辺について、今後国債に関する日銀オペについてはどのように見解を持たれているのかお伺いしたい。
  25. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  国債の買い切りオペにつきましての考え方はこれまでと全く変わっておりません。国債の買い切りオペを、長期金利が上がらないようにとか、あるいは財政資金の調達を円滑にするといった目的でふやし始めてしまいますと、結局は引き受けと同様に、財政支出の拡大とか通貨の増発に歯どめがきかなくなって、将来、悪性のインフレを招く結果になっていくのではないかということを懸念しております。  日本銀行としましては、ゼロ金利政策のもとで、豊富で弾力的な資金供給を続けていくということが私どもの当面の課題でございます。また、民間の資金需要は引き続き弱くて、機関投資家等は有利な運用先を求めているわけでございますが、マクロ的に見て、民間部門の大幅な貯蓄超過というのがまだ続いておるわけでございます。そういうことを考えて、良好な市場環境のもとで、財政の動向などをきっかけにして長期金利が上昇するというようなことがあるとすれば、二つのケースがあると思うのです。  一つは、景気物価に対する市場の見方が強気になっていく場合、それからもう一つは、将来の財政運営に対する懸念から、国債に対するリスクプレミアムが高まっていく。前者の方は、景気がよくなっていって金利が上がっていくのは、これは自然の動きでございますから、行き過ぎは留意しつつも、受け入れていいことだと思っております。ただ、後者の場合は、財政運営のあり方について、国民的な観点から見直していかなくてはいけないというふうに思っております。  もともと国民金融資産がたくさんあるわけでございますし、外からも、これからビッグバンで金が入ってくるわけでございますから、国債市場を拡大し流動性をふやしていくという努力をしていくと同時に、政府の方でも、国債の品種をふやして、短いものをかなりたくさん最近出してくださっております。こういうものがうまく市場で消化されていくように、それによって財政の必要資金が調達されていくことを願っている次第でございます。
  26. 並木正芳

    ○並木委員 最後に、時間もありませんので、ゼロ金利政策が続いておるわけですけれども、それでも民間銀行の貸し出しがふえないということで、実体経済へのむしろ副作用の方がこれから問題になってくるというように考えるわけです。  その辺について、時間もありませんけれども民間銀行の貸し出しが滞っている、いわゆる貸し渋り状態。そういうことで、商工ローン問題、あしたもやるということですけれども、私も、金融プロジェクトの一員として、党の方では法改正の必要性云々で論議をしているんですけれども、その中で一つだけ、現行法上でちょっと気になることが、このごろ係争がそういうことで多くなってきたので、せっかく政務次官もおいでいただきましたので、お聞きします。  いわゆる貸金業規制等に関する法律の第十七条ということですけれども、これが、契約時に所定の事項について契約内容を明らかにする書面の交付を義務づけている。根保証人に対しても、保証契約である以上、きちっとその際の、もう幾ら借りている、既に借りている人が根保証をさらに追加保証ということが多いんですけれども、そのときだけの契約を署名させたりするので、どうもそれだけという感覚が強くて、署名をしてしまったという人が今の係争事件では多いようです。その際に、もう既にこれは幾ら借りていますよ、こういう状況ですよというようなことからさらに貸していく、そういう契約締結時の説明もしていないというのは、現行法でも明らかに違反じゃないか。その辺を、現行法上の解釈がそうだとすれば、現行法で違反している業者を登録抹消する、こういう手続もさらには必要になってくるんじゃないか、そう考えるんですけれども、政務次官、その点について、一言お伺いします。
  27. 村井仁

    村井政務次官 貸金業規制法の十七条第二項におきまして、保証契約を締結したときには、御指摘のように、遅滞なく、貸付金額、貸付利率等の貸し付けに係る契約事項を記載した書面、「及び当該保証契約の内容を明らかにする事項で総理府令、大蔵省令で定めるものを記載した書面を当該保証人に交付しなければならない。」こういう規定をしております。お尋ねのように、根保証契約を締結した場合についても、同項の規制の対象になるものと私どもは判断しております。  そこで、さらにお尋ねの、貸金業規制法三十七条におきまして、貸金業者の登録の取り消し事由というのが、これは限定列挙されているわけでございますが、貸金業者がその一つに該当する場合においては、その登録を私どもとしては取り消さなければならない、こういう規定になっているわけでございます。  問題は、これは一般論としてしか申し上げることはできませんけれども貸金業規制法の規定に違反して罰金の刑に処せられた場合は、まさに法第三十七条において登録取り消しの事由にされている、法六条第一項第五号に該当するということになるんですが、罰金刑に処せられた場合というのは、あくまで判決が確定した場合のことをいう、そういう理解にいたしております。
  28. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。  政務次官には、特にお忙しい中をわざわざお越しいただいて、ありがとうございます。終わります。
  29. 金子一義

    金子委員長 次に、鈴木淑夫君。
  30. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  新日銀法の第五十四条第一項に基づく国会への報告書提出、これで三回目でございますが、前回の報告書を当大蔵委員会で審議いたしました際にも申し上げたことなんですが、新日銀法の五十四条第一項については、この法律が法案として国会へ出ておりますときに一つ問題になったことがあります。それは、この報告書をなぜ大蔵大臣経由で出すのかということでありまして、日本銀行の独立性を考えるならば、もし大蔵大臣意見を言ったりして、報告書の中身に影響が出てはいけないのじゃないか、こういう議論がありました。  そのときに大蔵大臣がはっきり言われましたことは、いや、これは、行政組織法上の問題として、日銀が直接出すよりも大蔵省経由にした方がいいという配慮であって、内容については大蔵省は一切タッチしない、注文をつけたりは絶対しない、こういうことでありまして、そうか、そういうことならということで、この条文はそのまま成立した法案の中に残ったといういきさつがございます。  そこで、速水総裁に念のためにお尋ねいたしますが、今回のこの報告書について、大蔵大臣あるいは大蔵省の事務方等から、事前に何らかの意見が寄せられたという事実はございますか。
  31. 速水優

    速水参考人 そういう事実は全くございません。
  32. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 大変結構なことだと思います。これからも、ひとつそういうことで報告書を毎回提出いただきたいと思います。  さて、今回の報告書は、本年の四月から九月まで、九九年度上期でございます。この時期の金融政策を一口で申しますならば、ことしの二月から実施した、いわゆるゼロ金利政策緩和効果を浸透させる時期であったということではないかと思います。したがって、日本銀行としては、この時期、ゼロ金利政策効果が、いかなるルートで、あるいはいかなるプロセスで実体経済に浸透していって、どういう効果をあらわした、成果を上げたのかということについて、十分分析していると思われるのです。  この金融政策効果の浸透ルートというのは、かなり複雑であることは申すまでもありません。一番簡単なのは、ゼロ金利政策をとったわけですから、その結果、オーバーナイトのコールレートがほとんどゼロ、〇・〇二から〇・〇三という、短資業者の仲介手数料並みのところに下がったわけですから、長短金利の裁定が働く、あるいは、金融市場あるいは資本市場も含めた市場間の裁定が働く、そのことによって金利全般が下がっていった。貸出金利も下がった、あるいは社債の発行レートも下がったということで、企業金融にかかわる金利が長短ともに下がる、あるいは住宅ローンといった家計にかかわる金利も下がる、この金利効果というのが一つあるわけでございます。  それ以外にも、ゼロ金利を維持するためには量的緩和をされたわけですから、量的に非常に緩和をした。統計を見ると、すぐわかることでありますが、名目成長率、名目GDPの前年比、この四—六、七—九、ほとんど前年並み、つまり、一年間はほぼゼロ成長でありますが、その間、マネーサプライ、M2プラスCDで見ても、どんな尺度を使って見ても、三%、四%伸びております。  つまり、量的緩和が大変な勢いで進んで、通貨のベロシティーは大変下がったということですが、この量的緩和からは、一体どういう影響が実体経済に及んだと見ているか。  それからさらに、三番目には、このゼロ金利政策影響で一種の金利裁定が働いて、株価が、この報告書の中にもあるように、五割も上昇したわけですね、去年のボトムからはかって。これは当然資産効果を持ったはずであります。いかなるところでどういう資産効果が出たと思っておられるか。  そして、四番目には、ゼロ金利政策をとって金利全般を下げたことによって、海外との金利裁定関係からいえば、円高をある程度阻止した。逆に言えば、これをやらなかったらもっともっと円高になったかもしれない。そのことから来る拡張効果、実体経済に対する拡張効果もあるでしょう。  ざっと挙げて四つぐらい考えられるわけですが、日本銀行は、ゼロ金利政策緩和効果の浸透を図ると繰り返し繰り返し言っている。この報告書にも書いてあるわけですが、具体的に、どういうルートで、どういうメカニズムで、どういう効果が上がったと認識しておられるか、お尋ねしたいと思います。
  33. 速水優

    速水参考人 御指摘のように、ゼロ金利を始めましてもう十カ月になるわけでございますが、まず何よりも、金利自体、オーバーナイト金利は事実上ゼロ%になっておりますし、金融機関の多くは流動性確保への安心感が浸透してきているということは、これは非常に大きなメリットだったと思います。  ターム物の金利につきましても、ずっとゼロに近かったわけですけれども、二〇〇〇年問題で年越しが出てまいりまして、このところ少し高くなっておりますが、これはまた年を越えれば落ちついてくるものだというふうに思っております。  長期金利につきましては、これまた総じて落ちついた動きを示して、株価は上昇していったということでございます。  企業金融について見ましても、ゼロ金利政策公的資本の投入などによりまして、金融機関流動性、それから自己資本の強化が行われまして、大幅に手元は緩和されてきておるわけで、金融機関としては、融資先の信用力を見きわめながら融資を回復させようという姿勢をとっておるように見られます。  これまでのところ、企業サイドの方で資金需要がまだ起こってこない。これは金を出しただけではなかなか出てこない。全体が明るくなって、あるいは今よく言われている構造改革とか、IT産業とか新しいニュービジネスが起こってきて初めて出てくるものだというふうに思っておりますけれども、そういうものが出てきた場合に、大企業だけでなく中小企業でも、銀行貸し出し以外にもいろいろな出資の資金が出てくる。大企業の場合には、社債とかCPとかいうようなものが、直接金融市場企業の資金調達環境を大きく好転させていくことは間違いない、もうそうなってきているように思います。  こういう金融環境改善というのは、企業金融の円滑化とか企業や家計のコンフィデンスの改善といったような形で実体経済にかなり好影響を与えてきているということを、私ども自信を持って申し上げられると思います。
  34. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そのとおりだと思います。私、今四つのルートを申し上げたんですが、一般的に、金利が下がったことによる拡張効果、それから量的緩和の拡張効果、これはだれでも気がついていることですが、意外と見落とされているのは、株価の上昇に伴う資産効果と、それからもっと円高が進んだかもしれないことを阻止したことによる拡張効果だというふうに思うんですね。  特に、日本銀行自身が試算して発表している実質実効為替相場がありますね。ふだん我々は名目の対ドルレートを見ているわけですが、インフレ格差で修正した実質の、それから、対ドルだけじゃなくて、貿易量をウエートに使ったり、さまざまな通貨との為替を加重平均した実効レートですね。実質実効レートで見ますと、名目の対米レートで見ているほど円高は進んでいない。  これは、日本物価が極めて落ちついている、それどころかやや下がっている、インフレ格差が非常に大きいから、実質レートを見るとそんなに円高ではない。それからもう一つは、アジア通貨が、一昨年の通貨危機までは事実上ドルにリンクしておりましたが、その後一度フロートして通貨危機と言われるほどの大暴落を起こしました後、割と円と共変的に動いています。ドルとは反対方向へ動いている。だから、アジア通貨を入れてきた実効レートは比較的落ちついているんですね、対ドルレートで見るより。そういう実質実効レートで見た場合の円相場は余り円高になっていない。この背後には私は明らかにゼロ金利政策影響があると思っています。  そして、そのことが今の鉱工業生産の回復に響いている。つまり、輸出が相当今伸びていますね。それはアジア経済回復しているからだという所得面から説明されることが多いんですが、必ずしもそれだけではないというふうに思います。実質実効レートの面から見ても過大な円高にはなっていない。その結果、輸出が伸びて鉱工業生産、例のX12のアリマで調整したのを見ますと、一—三、四—六、七—九、そして予測指数を入れた十—十二、四四半期連続で増加をしている。これが今景気を支えていると思いますが、その背後に、今言った、実質実効レートがそれほど円高になっていないということがあり、その一因としてゼロ金利政策効果指摘しなければならないと思っております。  それとの関係も少しあるんですが、ここで例の、介入資金をそのままほっておくのか、それとも金融調節で吸い上げちゃうのかという胎化、不胎化の問題について確認をさせていただきます。  日本銀行はかねてから不胎化政策をとっている。つまり、介入資金を市場にほっておくんじゃないんだ、金融調節の中で調節してしまうという説明をしておりましたが、先週大規模な介入をして急激な円高を阻止することに成功したとき、介入資金を市場に置いておいたというステートメントがありました。その結果、日本銀行の方針が変わったかなというような誤解があったと思うんですが、私の理解ではそうではない。  日本銀行は、これまで同様、介入資金のほかに、毎日の財政収支じりで動く資金、それから日銀券に対する需要の変化等々を総合的に判断して毎日の金融調節を行い、その結果としてリクワイアドリザーブの四兆円プラスアルファのエクセスリザーブをマーケットの中に置いておくというような超緩和政策を行って、それでゼロ金利を維持しているんだ。したがって、日本銀行の介入に際しての不胎化の政策が、胎化の政策、そのまま資金をおっぽり出しておく政策に変わったとは思っておりませんが、確認のため伺います。変化はないですね。
  35. 速水優

    速水参考人 御指摘のように、変えたわけではございません。  円売り・ドル買いで市場に円をばらまいておるわけでございますけれども、それはこの分だというふうにゼロ金利のもとで色をつけることは全く意味がないことだと思っております。そういうものを含めて、毎日毎日の資金の需給関係を見ながら積み上げ幅を朝、発表いたしておるわけでございます。  この間の十二月一日の発表文、総裁談話は、かなり介入量が多かったようだからきょうはどういう積み方をするかなということを内外で非常に注目して見ておられたようなので、それを解説する意味で二つのことを言ったわけで、一つは、日本銀行は大蔵省の介入に全く同調してやるんだということと、介入資金も利用して豊富で弾力的な資金供給を行っていきますよということを総裁談話として発表させていただいたつもりでございます。変わっておりません。
  36. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 大変私は結構なことだと思うんですね。非常に蛇が棒をのみ込んじゃったような感じで、いや、我々は常に不胎化政策をとっているなどとおっしゃらないで、介入資金も含めて全体を調節したよ、だから今回介入資金は市場に残っている、そういう柔軟な説明の仕方をされたのは大変結構だと思いますし、しかし、同時に日本銀行の姿勢が基本的に変わっていないということもはっきりしたというふうに思います。  最後に、この超低金利のゼロ金利政策、この打ち切りの時期といいますか、どういう条件が整ったら打ち切るのかということについてお伺いしたいんですが、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで続けるというふうに報告書の中で言っておられます。先ほど渡辺委員からも似たような質問があったわけですが、私は、これでいいと思うんですよ。これでいいと思うんですが、デフレ懸念の払拭という場合に、デフレですから物価指数がすぐ頭に浮かんできますが、私は、物価指数の動向で判断するよりも、その背後にある実体経済動きで判断すべきだと。つまり、デフレというのも、やはり実体経済の方に原因があってデフレ的になっていくわけですからね。実体経済の方から判断すべきだと思います。  では、どういう面に注目すべきかというと、やはりよく言われるように、民需主導型の持続的な、サステーナブルなグロースが始まったかどうかで判定すべきだというふうに思います。たとえ、物価がもう下がらなくなった、安定し始めたということがありましても、実体経済の中で民間市場経済の好循環に基づく自律的な、サステーナブルな回復動きが出ていなければ、私はゼロ金利政策を解除してはいけないというふうに思っております。  その好循環というのは私は二つ基本的にあると思うんですが、一つは、言うまでもなく設備投資ですね。設備投資が出てきた、その結果総需要が拡大する、その総需要拡大が再び設備投資を刺激するという好循環。それからもう一つは、現在私はこっちの好循環の気配が出ていると思いますが、在庫調整は完了した、輸出も伸びているものだから生産がどんどん回復している、その結果、雇用が改善してくる、時間外手当がふえるということから個人所得がふえる、個人所得がふえるから個人消費がふえる、個人消費がふえるから生産の回復は持続する、そこからまた雇用、賃金というこっちの好循環の方は、私はやや気配は出ているなと思います。  御承知のように失業率は、最悪の四・九%からこのところ四・八、四・七、四・七と三カ月下がっておりますし、完全失業者は少しずつ減っています。就業者が少しずつふえ始めました。こっちの好循環は芽生えているなというふうに思うんですが、質問したいことは、物価指数にとらわれるよりも、その背後にある実体経済の中でサステーナブルな民需主導型の回復動きが出ているかどうかで判定すべきだと思うがどうかという点でございます。いかがでしょう。
  37. 速水優

    速水参考人 全く先生御指摘のとおりだと思います。足元の景気動きにつきましては数字である程度わかりますけれども、先行きがどうなっていくかということについては、特に民間設備投資や消費動向というものがどういうふうに変わっていくのかということについては、やはりそういう全体の流れを見ながら判断する以外にはないというふうに思っております。  アメリカの場合にも、九一年を底にしてよくなってきたわけですけれども、よくジョブレスリカバリーなどと言われておりますように、銀行貸し出しは伸びていない、あるいは雇用もそれほどよくなっていないけれども景気がぐっと上がっていった、GDPはふえていったといったようなことが起こっているわけで、私ども、全体としてそれを判断して、デフレ懸念の払拭が展望できるということになったときには、ここだと思って時を失せずにゼロ金利を手放したいというふうに思っております。
  38. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 本年度上期を対象にしたこの報告書に述べられている金融政策については、恐らく後世の歴史家が見ても合格点をつけるだろうと思います。私もこの間の金融政策の運営を評価する者の一人でございます。どうか、引き続き独立性を維持しながら、国民に十分わかりやすい説明をしつつ、間違いのない金融政策の運営を行っていただきたいと思います。きょうはどうも御苦労さまでございました。  終わります。
  39. 金子一義

    金子委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後零時四十五分開議
  40. 金子一義

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田清司君。
  41. 上田清司

    ○上田(清)委員 速水総裁初め役員の皆様方、きょうは御苦労さまでございます。  早速ですが、まず、けさの新聞でありますが、榊原前財務官が日銀総裁ばっさり、そういう記事が出ておりますが、この点について、「責任ある発言できぬ人は辞めよ」と、責任のない発言をなされたというような御批判をされておりますけれども総裁はどう思われますか。
  42. 速水優

    速水参考人 私は、常に責任を持って話をしておるつもりでございます。榊原さんから直接聞いた話ではございませんので、私も新聞で読んだだけで、風の便りに、彼が聞こえよがしに、私のことを心配して叱咤激励してくれているんだなというふうに受け取っております。  一層、毎日毎日の職責を全うしてまいりたいというふうに考えております。
  43. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変大人の態度で、立派だと思います。  大野政務次官、実は、榊原前財務官がこういうお話もされているんですが、過日の大蔵委員会で、円相場の水準について総裁が容認をしたと認められるような発言をされたことに関して、「あれは失言。当局者が為替レベルに言及するのはタブーだ」、こんなことを榊原前財務官は言っておられますが、まさに大蔵の立場からいえば、日銀総裁がそのような発言をすることはタブーなんでしょうか。まずいのでしょうか。
  44. 大野功統

    大野(功)政務次官 大変個性豊かな方の発言でございますけれども、議論というのはもうどういう議論をしてもいいわけでございますし、あのときの日銀総裁の発言というのは、為替市場あるいは金融市場に非常にいい影響を与えたものじゃないか、このように私は思っております。しかし、それはあのときの問題だけに限って申し上げているわけでございます。
  45. 上田清司

    ○上田(清)委員 これもまた寛容なる御発言をいただいております。  ただ、私は、九月のころの日銀総裁のいわば介入資金の投入、対策について、多分にどこかで説明不足というのでしょうか、あるいは説明のし過ぎというのでしょうか、そういう感覚がまさに国際的ないわば日本に対する不信状況を醸し出したような、そんな感じが私はしておりまして、どうも総裁説明が、うまくないと言ったらいいのでしょうか、そんな感じがいたします。  例えば、アメリカグリーンスパン議長なんかと比較して、総裁は御自身の記者会見を初めとするさまざまな発言の表現力についてどのように感想を持っておられますか。極めて答えづらい質問かもしれませんが。
  46. 速水優

    速水参考人 私も、グリーンスパン議長は、その場その場での非常に含蓄のある、しかも、表現をいろいろ考えてつくっておられるんじゃないかなと思わせることがございます。  私も、特に為替とか金融市場の問題というのは専門的な問題でございますから、普通の方々にはかなりわかりやすく話をしないと理解していただけないということは痛切に感じております。その辺は少しこれからは考えて物を表現していかなきゃいけないと思いますし、私どもの方も広報をもう少し強化しようということで、先般も人事を決めたりした次第でございます。どうかこれからは期待して聞いていてください。
  47. 上田清司

    ○上田(清)委員 非常に総裁のやる気を感じるわけでありますが、実は、松下前総裁の任期が本来ならば今月十二月で終わりということで、いわば速水総裁はピンチヒッターとして登場されたニュアンスでありましたけれども、今の御発言を聞きますと、まさしくやる気満々というふうな考え方でよろしいでしょうか。
  48. 速水優

    速水参考人 やる気満々という気持ちではいるわけですけれども、十分なことができるかどうか、まあ一生懸命やります。  ただ、私は旧法で任命を受けておりますので、新法にもはっきり書いてありますけれども、旧法で、任命を受けた日から五年間ということでございますので、任期は二〇〇三年三月十九日まであることになっております。
  49. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  先日、大蔵大臣にもお伺いしたのですが、新しい審議委員の任命について大蔵省の方から強い要請があったと、まさに風の便りで私も聞いておるんですけれども、そのことについて、日銀一つの判断として、受け入れたのか、それとも強く望んだのか、お伺いしたいと思います。
  50. 速水優

    速水参考人 田谷審議委員はきょうも午前中に出ておられましたが、審議委員の選任については、日銀法二十三条二項に、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」というふうに定められております。したがいまして、候補者の選任は内閣において行うことになっておりまして、日本銀行は、個別の審議委員人事について具体的に申し上げる立場にはございません。  今回、任命されました田谷審議委員は、IMFのエコノミストをやられたり、大和総研の常務理事あるいは欧州の支店長等々、非常に多くの内外の金融関係の仕事を歴任されて、国際金融とか経済政策に関する著書、論文等も非常に多い方でございます。経済金融全般に関してすぐれた識見を持っておられる方だというふうに思っております。私も以前からよく存じ上げてはおったわけですけれども、今後大いに期待して、一緒に討議をしてまいりたいというふうによく考えております。
  51. 上田清司

    ○上田(清)委員 形式上は内閣が選考するのかもしれませんが、実態的にはそうではないというふうに私は理解しております。これからも、来年もたしか人事の補充があるのではなかろうかと私は思っておりますが、日銀としてどのような方を審議委員として選考基準を持っておられるのか。これは内々にあるのじゃないでしょうか。何もないのでしょうか。
  52. 速水優

    速水参考人 今回の場合は、後藤委員という長くお務めになった方の後任でございましたが、私ども、特にどういう方にということは申してもおりませんし、内閣にお任せして任命をしていただいた次第でございます。
  53. 上田清司

    ○上田(清)委員 実は、先般の大蔵委員会委員長にお預かりということになっておりますが、できましたら、今度、新しい審議委員の方に所見を述べていただき、そして大蔵委員会とかで若干議論をさせていただければ、審議委員の方がどういう物の考え方を持ち、そしてそれが委員会の中で明らかにされながら国民の信託を受けていく、そういう仕組みができ上がるのじゃないかというようなことで委員長に御提案をさせていただいて、今、お預かりということになっております。  ぜひそういう機会が設けられたら私は非常にいいのではないかなというふうに思っておりますが、総裁、この点について、言いにくいかもしれませんが、そういう形になったらどう思われますか。
  54. 速水優

    速水参考人 これはやはり国会がお決めになることでございますので、日本銀行としてコメントすることは差し控えさせていただきます。
  55. 上田清司

    ○上田(清)委員 結構でございます。  それでは、日ごろから疑惑追及の上田清司ということになっておりますが、これからは理論闘争の上田ということで、金融景気問題について議論をさせていただきたいと思っております。  それでは早速ですが、昨日、GDPの七月—九月期の発表がございまして、前期比でマイナス一%だという結果が出ました。大体九月ぐらいまでの動きについて、私はこの報告書で一種の景気判断なり、経済情勢判断なりができ上がっているというふうに思っておりますが、景気判断として、まあ簡単に申し上げれば、いわば下げどまり状況が続くもとで、生産、輸出等の一部に次第に明るい動きが見られるようになった、一方では企業の設備や債務の過剰感が依然強い中で、設備投資の減少基調が続いたほか云々ということで、個人消費も一進一退を続けておる、こんな分析を一番最初の要旨のところで述べておられます。  この七月—九月期の景気判断、昨日出ましたところのマイナス一%という、そういう事態を受けて、新たなる景気判断というのは、日銀でどのようにとらえておられるか、お伺いしたいと思います。     〔委員長退席、渡辺(喜)委員長代理着席〕
  56. 速水優

    速水参考人 この七—九月はマイナスになるかもしれないということは、かねてから聞いておりましたし、このままいきましても、十—十二月、一—三月がゼロ、ゼロでいってもプラス政府見通しの数字よりは少し上になるのかもしれないということでございますから、特に今回の数字で慌てるといったような感じを私は持っておりません。  ただ、内需が不振で輸出が伸びて、それが主因になってああいう数字が出てきたんだということで、もう少し国内の民間需要を掘り起こしていく、その意味でも、今度の経済新生対策というのは、非常に期待を持って見てまいりたいというふうに思っております。
  57. 上田清司

    ○上田(清)委員 年末の企業の資金繰りの問題も極めて重要な問題になっていると思いますが、この点については、日銀の方で特に政策的な配慮、あるいは特別な施策というのはあるのでしょうか。
  58. 山口泰

    山口参考人 今たまたま二〇〇〇年問題ということが市場の中で非常に大きな問題の一つとして意識されておるのは上田委員御案内のとおりでございまして、かねてから年末を越える資金の需給関係がタイトになりまして、その金利が上昇傾向をたどっておりました。  私どもは、そういう市場に対しまして、極力多目、厚目に、しかも前広に資金を供給することによりまして、市場の中にある流動性についての懸念を極力払拭したいということで全力を挙げてマーケットに資金を供給してまいりました。  その結果もございまして、ごく最近に至りまして、市場のタイト感もほぼ峠を越えつつあるような雰囲気が出始めておりますので、ここで気を緩めることなく、そういう市場の安心感をさらに定着させるべく全力で資金を供給してまいりたいと思っております。  こういう流動性の潤沢な供給をさらに継続、徹底させることによりまして、私どもが今実行しておりますゼロ金利政策効果を最大限、経済の隅々に浸透させていきたい、こういうふうに考えております。
  59. 上田清司

    ○上田(清)委員 ゼロ金利政策については後で議論させていただきたいと思っておりますが、若干、ちょっと質問に対して回答がずれたような感じがいたします。特別な年末の資金繰りについての施策があるのかないのかということだけ、もう一度お答えしていただきたいのですが。
  60. 山口泰

    山口参考人 今申し上げたことのほかに、特にことしの年末対策として何か用意しているということはございません。
  61. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは、これもまた基本的な日銀の見解としてお聞きしておきたいのですが、いわば都市銀行の大型合併がどんどん進んでいるところですが、地銀についていろいろ、まさに風の便りで、金融監督庁レベルではもっともっと整理したいというのでしょうか、合併を進めたいというような考え方もあるようでありますし、あるいはないという話もございますし、日銀として、現在の地銀のあり方も含めて、合併問題について特にお考えがあるのかないのか、そのことについてお伺いしたいと思います。
  62. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  大手銀行では、先生御指摘のとおり、このところ統合、合併の動きが前向きに非常に目立つところでございますが、地域金融機関につきましても、引き続き不良債権の処理に努めるとともに、それに伴って資本基盤が脆弱になれば、やはり資本増強をすべきである。現に、今までに公的資本といたしまして四行、地域金融機関公的資本の注入を受けていると思いますが、そのほかに、自助努力といたしまして、実施済みあるいはこれから実施するという公表行を含めまして四十数行が自助努力で増資をやろうということでございます。  私ども日本銀行の基本的立場は、こういう不良債権処理、そしてそれに伴う資本基盤の強化というのは大事でございますが、それと同時に、ビッグバンが進展する中でやはり地域金融機関におきましても、それぞれの地域の実情に応じましてさらに再編あるいは合併を進めていく余地はまだあるというふうに考えております。  もとより、合併、再編は私ども日本銀行なら日本銀行当局がこうあるべきだということを示すものではございませんで、あくまでも経営者が自主的な、将来の業務の再構築とかあるいは経営戦略を御判断されながら進めていかれるべきものだと思っておりますが、私ども日本銀行としても、金融システムが一層揺るぎないものになるよう、地域金融機関の合併、再編についても、日本銀行立場からサポートしてまいりたいというふうに思っております。
  63. 上田清司

    ○上田(清)委員 極めて明快な御答弁、ありがとうございます。  それでは、ちょうど小畑理事が出てこられましたので、思い出しまして、六カ月前の質疑のときに私、日銀の考査問題について少し伺いました。長銀と日債銀の特融のときもそうですが、考査が本当に実を上げているんだろうか、そんなことも含めて議論をしたときに、こういう私の質疑に答えて小畑理事は、  今後、現在のセーフティーネットのもとで、考査運営等につきまして反省すべき点があるならば、先生御指摘のように、まだ総括するにはやや時間が早いような気もいたしている面もございますので、今までの痛みを伴う経験をも含めて、今後の考査の運営につきましては、さらに行内で議論し、検討を進めてまいる、あるいは反省すべき点があれば反省して対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。 と言っておられまして、私も、今年度から日銀なりに新しい考査の仕組みというものを内部で検討されているかのようなことも聞いておりますし、六月のこの答弁もございますので、そういう中身について、表立って全然見えてこないので、その辺はどうなっておるのか、この場の機会をおかりしてお聞きしたいのです。
  64. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、表立ってなかなか出てこないという御指摘は、御指摘のとおりとして反省として受けとめたいというふうに思っておりますが、私ども中央銀行の役割を的確に果たしていくために、考査運営については常時見直してまいっておるつもりでございまして、特に最近では、金融技術あるいは情報通信の発達の中で、なかなか金融機関のリスク管理のあり方あるいは問題というのがとらえにくい、勉強しなければならない面も多々ございまして、見えにくい面というのは、私ども考査局の内部では、そういう金融技術の高度化、専門化に伴いまして、金融機関が的確なリスク管理体制をしいておるか、あるいはあるべき姿等について、それを見られる人材を鋭意育成しつつあるところでございます。  まだまだ私ども自信はございませんが、引き続き金融機関のリスク管理の的確な把握という点については努力を重ねておりますし、先生に御答弁した後もそういう努力を続けておるということでございます。  それからもう一つ、私ども外向きとの関係では、考査自体、経営資源に非常に制約がございますので、いかに効率的な考査運営を行うかというのも一つの問題でございまして、そういうことから、健全行と見られるところについては極力インターバルを長くして、あるいは我々がオフサイト・モニタリングで問題があるなという先にはなるべく期間を短くする、頻度を上げる考査、要するに考査運営にめり張りをつける。これは積極的に、都市銀行から信用金庫に至るまで、めり張りをつける、頻度を変える、そういう考査運営をやっております。  それから、トピックス的なことといたしましては、先ほど山口総裁がお答えいたしましたが、二〇〇〇年問題、いよいよ目の前に参っておりますけれども、二〇〇〇年問題は万が一があれば国民経済にも大変大きな影響を与えますので、考査運営上も、金融機関にこの二〇〇〇年問題にターゲットを絞りました特別考査も鋭意実施中でございまして、さらに、日本長期信用銀行では虚偽報告があったり、我々の考査運営面でも反省すべき点はあるわけでございますけれども、今後とも、先生の御指摘を踏まえ、もっと外に見える形で努力は積み重ねさせていただきたいというふうに思っておるところでございます。
  65. 上田清司

    ○上田(清)委員 日債銀と長銀のときに、皆さんはまさに健全行である、債務超過はなしと言ってそうではなかったという、日銀の考査体制というものに対する信用を世間的に言えば失った一つの問題であったわけでありますから、私はその当時、半年前に、話が違ったじゃないか、日銀と大蔵の検査と考査を信用して資本注入をしたんだという理屈でありましたから、それが間違っていたということになると、日銀の考査能力について、これは相当問題にしなきゃならないということで問題点として挙げました。  今後検討を加えるということでありますから、できましたら、今までこうでありました、これからこうですという、新旧対照表じゃありませんが、そういうものを出していただかないと、我々には見えません。日銀の信用を高める意味でも、ぜひ大蔵委員会に資料を提出していただきたいということを委員長にお願いしたいと思います。
  66. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員長代理 理事会で協議します。
  67. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは、二〇〇〇年問題もちょっと出ましたので、具体的に聞きますが、各金融機関に対して二〇〇〇年問題について日銀としてどのような指導方針を出されているのか。例えば指導文書みたいなものはあるのでしょうか。
  68. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  結論的に申し上げれば、指導文書というようなものはございません。私ども、この二〇〇〇年問題には、もう二年以上にわたりまして取り組んできているわけでございますけれども、私どもの取引先金融機関に対しましては、基本的に、私どもとして、例えばテストあるいは危機管理、コンティンジェンシー・プラン、こういうものをつくるべきではないかとか、そういう問題点を相手に情報提供する、それから先ほど申し上げました私どもの考査、ターゲット考査を始めて、今も続けておるわけでございますが、そこで、そのテストの状態とか、あるいはコンティンジェンシー・プランのあり方をいろいろディスカッションして、改善すべき点があるならば、私ども立場からは、改善されてはいかがか、そういう形で取引先金融機関の二〇〇〇年問題への対応を促してきているというふうに御理解いただいていいと思います。  それからもう一つ、ヒアリングとか考査ばかりできませんので、時々アンケートというようなことも去年から二回ばかりにわたって実施いたしておりまして、これは、こういう対応はお済みですか、こういうことをどうチェックされておられますかとか、そういうアンケートにお答えいただいて、私どもも取引先全体の二〇〇〇年問題対応状況も把握しているということでございます。  そういうふうな取引先との関係、二〇〇〇年問題への対応を促す中で、現時点で私ども認識いたしておりますのは、少なくとも日本銀行と取引がある金融機関については、二〇〇〇年問題についての対応は、テストも、あるいは危機管理計画、コンティンジェンシー・プランの作成についても、順調に対応しているというふうな認識でおるわけでございますが、この二〇〇〇年問題というのは幾ら対応しても、海外からの影響も含めまして、切りがない問題でもございます。  そういうことで、完璧だという自信はございません。そういう意味では、今後とも、残り少ない日数でございますけれども、より一層、取引先金融機関とも二〇〇〇年問題に万全を期すよう、さらに努力は積み重ねてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  69. 上田清司

    ○上田(清)委員 まさしく二〇〇〇年問題は極めて重要な問題であります。末端の市中金融機関のさまざまな機能がストップすると大変経済にも影響を与えていきますので、万全な体制をとっておられるということで基本的にはそれをよしとしたい、そういう思いでございますが、さらに趣旨が徹底されますことを心から願っております。  さて、同じようにもう一つ気になるところは、ペイオフが間近に迫ってきたところでございますが、延期論も含めて一部いろいろな議論はありますが、予定どおりやるということが前提になっておりますので、この点について日銀も何らかの形でさまざまな対応をなされていると思いますが、具体的な形でペイオフ対策というのはどのようなものになっているのか、簡潔で結構でございますので、念のために確認させてください。
  70. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  簡潔にということでございますが、私ども日本銀行のペイオフに対する考え方、基本的なことをまず申し述べさせていただきたいと思います。  これは総裁国会等で申し上げているとおり、やはりモラルハザードの問題とかコストの問題、あるいは日本金融システムに対する国際的な信認の問題、あるいは不良債権処理の問題等々を考えますと、やはり二〇〇一年三月までの時限措置は時限措置として、予定どおり二〇〇一年四月以降は、新しいセーフティーネットの構築は必要でございますけれども、二〇〇一年四月以降はペイオフ解禁という考え方が基本的考え方でございます。  具体的に日本銀行としてそういうペイオフについて何か取り組んでいるかということは、現在金融審議会で御案内のとおり最後の詰めが行われておるわけでございますが、私ども日本銀行といたしましても、今まで痛みを伴う経験もしながら、信用秩序の維持に関しましては、種々いろいろなノウハウ、スキルを蓄えてきているわけでございまして、大蔵省、預金保険機構あるいは金融再生委員会関係省庁と、今この二〇〇一年四月以降のセーフティーネットのあり方について、日本銀行立場からも積極的に意見を言い、議論をいたしております。今日本銀行としてなしていることは、大蔵省を初め、二〇〇一年四月以降のいわゆる恒久的なセーフティーネットづくりに積極的に貢献しようとして取り組んでおるということでございます。  一つだけつけ加えさせていただければ、私ども日本銀行一つの特色は、マーケットとの対話、マーケットの状況をモニタリングするということでございますので、この預金保険制度が国民に正しく理解されて二〇〇一年四月以降を迎えるように、預金動向等も含めまして、全体の金融機関の預金の流れなどにつきましても、引き続き日本銀行としては本支店を通じてモニタリングを注意深く行っておる。現時点では問題はあるとは思っておりませんけれども、引き続き、そういう日本銀行のマーケットとの対話あるいは預金動向の資金の流れという点では、注意深くモニタリングを続けていきたいというふうに思っておるところでございます。
  71. 上田清司

    ○上田(清)委員 実は最後に申し上げようと思ったのですが、この報告書全体を見まして、簡単に言うと、過去の議事録の集計、取りまとめという感じがしてならないのですね。一種の日銀政策方針あるいは自己評価、それから政策展望あるいは戦略、そういうものをもう少しきちっと議論の対象になるように出されたらいかがだろうか。結果について御報告をするのが報告書ということでしょうけれども、しかし、国民は、あるいは我々国会は、もう少し顔の見える日銀というものを見たいものですから、できれば報告書の中身は、今言った今日的な問題も、やはり通貨及び金融調節に関連する問題でございますから、二〇〇〇年問題も入れてほしいし、ペイオフの問題も入れてほしい。  いろいろ試行錯誤をしながら、こうして報告書ができております。初年度のときには、バランスシートの問題が参考意見ということで、それは参考意見というのはおかしいのじゃないかということで御指摘をさせていただいたら、早速取り入れていただいて、きちっと本文の中に出てきたりしておりますが、私は、今日銀にもっと必要なことは、やはり過去の議事録の集計じゃなくて、それももちろん大事なことでありますが、どのような政策決定がなされているかを、私ども後で、あるいは毎週のように、早急に送っていただいておりますので、大変ありがたいと思っております。  しかし、一番大事なことは、もう少し戦略的なものについてきちんと日銀が議論したものを正確に世に伝えることじゃないかなと思います。それは速水総裁の談話の中でいろいろその時々に出ていますが、時としてそれが違う形で世の中で評価されるのも、やはりそういう意味での戦略性だとか、そういうものが余り出されていないような気が私はしておりますので、ちょっと議論がかみ合わないかもしれませんが、少し頭の中に、念頭に入れていただきたいなというふうに思っております。  それで、きょう、今までちょっと確認事項みたいなことをやっておりましたが、これからは論争でございますが、ゼロ金利政策について、この報告書の中でも、要旨の中で、基本的には資金を潤沢にということで、いわば金融機関並びに金融機関を通じて企業が資金繰りに困らないように、こういうことがゼロ金利政策のいわば主たる目的で、一方では、長期金利が反騰をしないように、こういうことを念頭に進めておられる、私はこのように理解をしておりますが、このような理解でよろしいのでしょうか。
  72. 山口泰

    山口参考人 ゼロ金利政策効果、ねらいいかんという御質問であったと思います。  ゼロ金利政策のまず効果につきましては、当然金利をできる限り低いところまで下げるということをもちまして、景気の調整過程をできるだけスムーズなものにし、なるべく早く民需を中心とした経済の自律的な回復を実現させたいというのが最大の眼目でございます。もちろん、ここ数年間の日本経済を振り返りますと、さまざまな意味で経済にデフレ的な圧力がかかり続けていたわけでございますから、そういうデフレ懸念を払拭できるような情勢になるべく早く持っていきたいというのが私どもの念願でございまして、そのためには、物価を見ると同時に、その物価の背後にあります経済のさまざまなダイナミックな動きを視野に入れていきたいということで、民需を中心とした自律的な回復軌道を早く実現させたいというのが最大の眼目でございます。
  73. 上田清司

    ○上田(清)委員 報告書にもあるように、実はそれが実現できていないという総括がございますが、なぜでしょう。
  74. 山口泰

    山口参考人 ゼロ金利政策につきましては、午前中の質疑の中でも私どもの方からお答えを申し上げましたけれども、この二月にそういう政策を実行し始めて以来、さまざまな形でその効果金融市場から経済の実体面に浸透しつつある状況であろうというふうに思っております。  私どもは、金融政策に加えましてとられております財政政策面の効果も相まちまして、マクロ経済の状態がなるべく正常に復帰していくことを願っているわけでございますけれども日本経済の中には、残念ながらバブルの崩壊以後、金融システムの問題を初めといたしましてさまざまな構造面での諸問題というのがあるわけでございまして、マクロ経済の展開だけによりましてそのすべてを早急に解決し去るというわけにもなかなかいかないという面がございます。多少時間がかかるのはやむを得なかったという面があるわけでございますけれども、現在のマクロ政策効果が極力速やかに浸透いたしますように、私どもといたしまして全力を尽くしてまいりたい、引き続き全力を挙げてまいりたいと思っております。
  75. 上田清司

    ○上田(清)委員 御承知のとおり、金融機関は、調達コストがゼロに近い形で資金を調達し、そして市中のさまざまな企業に貸し出しを行うわけでございますし、当然、そういう調達コストがゼロに近いということも含めて非常に潤沢に資金が流通するはずだ、供給されるはずだという理論に立っているはずですが、最近においては、ちょっと大企業改善されてプラスに転じてきておりますが、中小企業は、例えば昨年の三月あたりを起点にしますと、当時がマイナス一・三ぐらいだったのですが、一番新しいところの、たしか十月ぐらいでマイナス七・三という前年比で、全然資金が潤沢に中小企業に回らない、こういう日銀の意図とは違った形が出ているような気が私はいたしますが、この点については反論がございますか。
  76. 山口泰

    山口参考人 金融システムの大きな問題に対しましては、低金利効果のみならず、公的資本のかなり大規模な注入がことしの三月末にかけて実行されまして、これらの効果が相まちまして、金融システムにもそれなりの安定状態が幸い戻ってきていると存じます。今御指摘もございましたように、その結果、金融機関にとっての流動性調達というような問題はおおむね影を潜めた。これは大変な改善であるというふうに思っております。  問題は、そこから先、つまり金融機関から先になかなか信用拡張の力が及んでいかないという点でございますが、これは、やはり自己資本がかなり大きくダメージを受けるということが生じ、結果として金融機関が与信行動に慎重にならざるを得ないという状況が根本に底流しているからだというふうに認識しております。  幸い、この面におきましても、時間がたつにつれまして何がしかの改善というのが少しずつ出てきているように思います。私どもの短期経済観測、短観などを使いまして、中小企業のサイドから金融機関の貸し出し態度はどうかというようなことを伺ってみましても、昨年末からことしの初めぐらいが一番最悪の、最も厳しい状況でございましたが、少しずつ、徐々に徐々にではございますが、金融機関の貸し出し態度も緩む方向に動いてきているというような結果も出てきております。  したがいまして、これも、以前のような、バブル期のような与信行動に戻るということは考えられませんし、それは適当でもないと思うわけでございますが、現在の金利政策それから資本基盤の強化という両面の効果が相まちまして、もう少し企業金融についても改善傾向が進行し、浸透していくということを期待しております。     〔渡辺(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 上田清司

    ○上田(清)委員 日銀の短観の部分ではそういう意識があることも事実ですけれども、具体的な数字として、直近の数字がマイナス七・三になっている。これについてはどう考えればいいのでしょうか。どうにも腑に落ちない。資金は潤沢に供給されている。資本注入もなされている。まさに健全化計画の中でも明確に二兆九千億を予定しているわけですが、半期分で大体九千億ぐらいしか行っていないので、この調子で行くと一兆八千億で、一兆円近く貸出計画が未達成になる可能性がある。それだけ実は資金需要がないのだと言ってしまえばそれまでのことかもしれませんが、私にはそう思えません。  まさしく自己資本が毀損しておりますので、旅館業だとかそういったところは五〇%ぐらいが債務超過になっている。いろいろ具体的な資料もありますが、大体二〇%ないし二五%ぐらい、すべての中小企業は分野別に見ても大体そのくらいの毀損状態になっている。そんなことを思うと、貸し出しの基準みたいなものを場合によっては二〇%ぐらい、甘くすると言っては言葉が悪いかもしれません、その毀損状態に合わせた考え方も必要になるのではないかと私は思ったりもしております。  こういうことについて、特に日銀の中で検討されたようなことはあるのかどうか。そのことだけちょっと確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
  78. 山口泰

    山口参考人 民間金融機関がどのような基準をもってどういう企業、顧客を相手に信用を供与するかというのは、これは経営判断の最も重要な部分でございます。したがいまして、日銀の方からこういう基準が適当ではないかというようなことをお示しするわけにはまいりませんし、そういうことは恐らく適当でもないだろうというふうに思います。現状認識だけ、一言だけ申し上げさせていただきます。  委員指摘のとおり、企業の方からアプローチいたしましても、金融機関の貸し出し態度が以前ほどの緩和状態に戻っていないということは事実だと存じます。それは、既にお話の中にもございましたけれども、資本基盤が毀損されてしまったのは、残念ながら金融機関の方だけでもありませんし、企業の方にもそういうことが生じたわけでございます。いろいろ聞くところによりますと、金融機関も、中小企業、特に優良中小企業に対してはもっと借りてほしいというような貸し出し攻勢を懸命にかけているというのが実態だと存じますけれども、バランスシートそのものがかなり傷んでしまい、今構造改善真っ最中というような企業も全国にあまたあるわけでございますから、そういう企業にとりましてはなかなか厳しい状態が続いているという状況ではないかと存じます。
  79. 上田清司

    ○上田(清)委員 このゼロ金利政策あるいは低金利政策というものが、私は何か銀行だけがもうかる仕組みになっているのではないかなというふうに思いますね。調達コストがほとんどかからない。だから私は、以前、多分四年か五年ぐらい前になると思いますが、三塚大蔵大臣だったか武村大蔵大臣だったか忘れてしまいましたが、日本経済は魔のサイクルに陥っているのじゃないかと。  何を言っているのかといいますと、超低金利システムの中にほうり込んで、超低金利がゆえに企業はいわば不動産を中心として処理をしなくても済んでしまう。つまり借金状態を維持できる。もし金利が高ければ早く処理をしなくてはいけない、したがって土地の流動化も進むわけでありますが、実はしばらく塩漬けにしていてもそんなに経営にこたえない。むしろ塩漬けにしている間に状況が変わったらそれで対応すればいいや、そういう仕掛けになってきた。  したがって、土地の流動化が進まないがゆえに経済もまたこれは動かない。経済が動かないからまさに金融危機になり、あるいはまた金融機関を救うためにさらに低金利政策を続けなければならない。このマイナスの循環に完全に陥っていくのではないか。だから、これは早く一時的なものにして、固定化してはいけませんよというような議論をした記憶が私はあるのです。どうもこれに陥っているのではないかなというような嫌いが私はしておりまして、そしてまた今のゼロ金利政策についても、まさにそのわなに入っていくような気がしてならないわけであります。  では、おまえ違う政策が何かあるのかと言われたら、正直なところ私もそういう確かな政策があるわけではありませんが、しかし何かちょっと異常な形でビルトインされていくような気がしてならないのですが、政策委員会審議委員会の議事録を見ておりましても、そうした議論も多少ありますし、それぞれこのゼロ金利政策についてどのような形でいろいろな方々が述べておるかもちょっと確認いたしました。少し申し上げてみます。  例えば、九八年六月十一日に森下松下電器産業社長は、「金利はある程度ついているのが常識で、現在のようなノー金利に近い状況では企業経営を進めるうえでも支障を来す」。それから太田宏次中部電力社長、九八年六月二十二日、「これだけ金利が低いと預金も使えず、おカネを使う人は少ない」。景気浮揚の一つとして金利引き上げを提唱されておられます。それから、日経連の根本二郎会長が本年三月三日に、日銀金融緩和強化で無担保コール翌日物金利がゼロに近づいていることについて、「金利がゼロでもいいというのはいかがなものか」、こんなことを述べておられます。あるいは、先ごろ審議委員になられました田谷当時大和総研の常務理事は、「ゼロ金利により金融調節を通じた経済活動の誘導は限界に達した。日銀金融政策はすでに、国債買い切りオペを経由した量的緩和に質的に移っている」とかなり踏み込んだ意見を言っておられます。また、日本総研の高橋進調査部長などは、「短期的にデフレ圧力は緩和された。ただ、家計の利子所得減少などマイナス面もある」。  こんな、それぞれ各界を代表する人たちがゼロ金利政策について副作用の、副作用という言葉がこの中でも出てきておりますし、委員会の中でもいろいろな議論があったみたいですが、確かに金融不安を一気に落ちつかせたという点では間違いなくその効果はあった、非常に安心感が出たということに関してはいいのですが、これは本当にいつまで続けられるのかという、限定的なものだということも含めてある程度指針を出しておかないと、超低金利政策が外せなくなったのと同じように極めて日銀金利政策の幅がなくなってしまう、いわば日銀の手足を縛るものになってしまう、固定化されれば。これも大変なことだなというふうに私は思っておりますので、この点について逆に私に御指導賜りたいと思っております。教えていただきたいと思います。いかがでしょうか、この議論に関して。
  80. 山口泰

    山口参考人 非常に重要な点を御指摘いただいたと思っております。ゼロ金利政策には、御指摘のとおり、その効果と同時に裏側にある種の副作用が伴っている、このことは否定できないと存じます。  今上田委員は、後者のいわば問題点、副作用的な部分を主として御指摘になられたというふうに存じます。私どもも、政策委員会でこの政策を議論するたびごとに、効果と同時にどういうような問題点が生じているのだろうかというようなことをできるだけ点検するようにしてまいったつもりでございます。なるべく副作用が少ない政策であるにこしたことはないわけでございますが、何分金利ゼロというかなり極端な政策でございますから、金利収入に収入の多くを依存している方々に大変御迷惑をおかけしているとか、あるいは、先ほどのお話にもございましたが、ある種の構造改善努力をひょっとしたらおくらせてしまっているのかもしれないとか、そういうようなことがこれまでも政策委員会の議論の中で話題になってきたところでございます。  ただ同時に、午前中の御議論にもございましたが、多くの効果経済を刺激する力を発揮してきたということも事実であるというふうに私ども思っておりまして、全体を総括してみますと、幸いここ数カ月間、我が国経済の中には改善に向かう動きというのがようやく見られ始めてきたというふうに私ども考えております。まだ先行きについて楽観できる状況ではございませんし、将来についてのデフレ懸念というのは私ども依然として持ち続けておりますので、現在はこの政策を続けるほか選択肢がないというふうに思っておりますが、今のところ、幸い、この金利でいつまでたっても抜け出せないというような材料ばかりが蓄積されつつあるということでは決してないというふうに思っております。
  81. 上田清司

    ○上田(清)委員 もう一つ懸念なのは、特にアメリカとの関係においての考え方でありますが、実は私、マクロエコノミーウイークリーという国際証券の水野和夫さんの毎週の論文を、わからないなりに一生懸命読んでおりまして、この方の考え方に若干共鳴している部分もあるのですが、まさに財政金融政策でつくり出した巨大なマネーが、一たんアメリカ流れて、そして日本回復基調に入った、そういう形を称して株価の高騰につながってくる、その資金に使われている、しかし、これはまさに見せかけの回復であり、基本的な雇用や産業の構造改革が進まないままに事態が進展している、半永久的にこんなことを続けて世の中がうまく回るわけはない、それどころか財政的にも国家が破綻していく、こういうことではないかというような議論をしておられますことに私は共感をしているわけであります。  日本政府がつくり出す公共事業を中心とする膨大な財政政策、そして日銀がつくり出す金融政策の中で生み出された巨大なマネーというのが、本当に産業の活力あるいは中小企業の活力につながっているかというと、私にはどうもそう思えない。  例えば、株価も、確かに年頭から三割上がっておりますね。しかし、鉄は国家なりという言葉がございましたが、そういう高炉メーカーなどはことごとく株価百円。あるいは日本を代表するようなゼネコンも、もちろん名前は挙げませんが、百円以下というのがずらりとある。あるいは速水総裁がおられました日商岩井とか日本を代表するような商社、こういったところも惨々たる状況にある。これも、ここ一年や二年の話じゃなくてずっと続いている。  いわば、開銀、今日本政策投資銀行日銀の力をかりてやっと生きている。こんな状態を見ていると、どうも成功していないんじゃないかと思わざるを得ない。日銀の超低金利政策にしてもあるいはゼロ金利政策についても、何か間違っているんじゃないか、こんな思いをしているのですけれども、この点について再度、総裁、どのようにお考えでしょうか。
  82. 速水優

    速水参考人 今御指摘のゼロ金利効果が余り出ていないじゃないかという御意見ですが、今私どもがやっているゼロ金利というのは、いつかもここで話したら市場が直ちに暴れ出したのですけれども、異常事態であることは間違いないのです。  私が着任したとき、既に公定歩合は〇・五、オーバーナイトコールはそのちょっと下というようなところでした。潤沢な資金を出すため、私どもがこうやってゼロ金利にまでしているということにつきましては、先ほど御指摘になったような、資本主義経済の中で金利機能が余り活発に動いていないじゃないかという御批判は当然ありますし、副作用も十分私どもも承知しているつもりでございます。しかし、今大事なことは、やはり公共事業などだけで国の経済が成り立っていけるものではございません。やはり公共事業が出、輸出も伸び、低金利設備投資ができて、それが回り回って所得をふやし消費がふえていくというふうになって初めて景気がよくなった、これから経済が本当に活況を呈するように動き出す。民間動き出してくれないとだめなんですね。それを私どもは下支えする意味で公共投資とともにゼロ金利政策というものをやっているわけなんで、現在は少しずつその効果が見えてきたような感じもするのです。  ただ、いつも申し上げておりますように、デフレ懸念が完全に払拭されるというところまではまだとてもいっておりません。その展望もまだ見えておりませんので、もうしばらくこのまま続けていくしかないというふうに思っております。  その辺は、むしろ私どもから、国会の先生方、政府に対しても、ぜひこの機会に思い切った構造改革をやっていただいて、民間が踊り出してくるように持っていっていただきたいというふうに思っております。ぜひお願いいたします。
  83. 上田清司

    ○上田(清)委員 同時に、日銀に対しても私は申し上げますが、資本と労働の生産性を上げていくような、そういう産業により着目した金利政策、あるいはさまざまな、コマーシャルペーパーの買い支えだとか、そういうこともやっていただきたいというふうに思っております。そのことはぜひ御理解していただきたいと思います。  それでは、国債の問題についてお伺いしたいと思います。  剛腕の野中広務前官房長官が官房長官時代に、長期国債を買い受けしろというような議論が出て、びっくり仰天して、この大蔵委員会でも幾分議論が出まして、そんなことはない、長期国債の引き受けはしない、悪性インフレにつながるという極めて見識ある議論を速水総裁の方から出されて安心したわけでありますが、例えば十月十三日に短期国債の買い切りオペの導入を決定されて、まさに国債丸のみこそは否定されておりますが、これをいわば根雪のようにずっと積み重ねて、あるいはずっと連続的にやっていけば、事実上長期国債の買い切りと同じじゃないか、こういう議論があります。この点についてはどのようにお答えになられますか。
  84. 速水優

    速水参考人 短期国債の買い取りというのは、これは特に今、Y2Kもございますし、年越しの資金はかなり需要が多いわけですね。そういう中で、今短期証券をオペに使って二月なり三月なり資金を供給すれば、そういうものには非常に役に立ちますし、それはもう期日が来ればみんな償還していくものですから、私は、これが国債買い切りの先例になるとは思っておりません。  むしろ、こういうのこそ私どもがやるべきことなんですから、そういう意味で、先般のG7においても、弾力的に、適時適切にゼロ金利政策のもとで金融調節をやっていきたいということを申したつもりでございます。そのことはかなり浸透してきているのじゃないかと思います。  これが、今おっしゃったような短期証券の買い切りといったようなものが長期国債の買い入れの前例になるというようなことは、私は、全然性質の違ったものだというふうに思っておりますし、そうお考えいただきたいと思っております。
  85. 上田清司

    ○上田(清)委員 私は、前例になるとは言っておらないのです。そうじゃなくて、短期のものをずっと積み上げていけば結局は長期にもなるのじゃないかという、一種のごまかしにつながる可能性もありますよということをちょっと申し上げました。このことについては別に反論なされなくても結構であります。  もう一つ、非常に難しい、私もわからなかったので調べたのですが、現先方式という形でございます。非常に専門的な用語でありますが、これも一種の買い戻し特約みたいな話になるかな、私はそういう理解をしてしまったのですが、とにかく国債丸のみ引き受けだけはしない、そのかわり何でもありだという感覚も、いささか中央銀行としての権威、あるいは金利政策等の考え方からしても、もう少し明確に限定的なものであるということを言い切って、やるとすればやるとか、もうやっておられるわけですけれども、何か不明朗のまま実行されている、そういう感じが私はいたします。  これは限定戦争ですよというようなニュアンスをもっときちっと市場に出していただいた方が、日銀の姿勢というのが評価されるのではないかというふうに私は思っておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  86. 速水優

    速水参考人 今おっしゃっておりますのは、恐らく、先般決めました郵便貯金の集中満期問題への対応のことだと思います。  ちょうど十年前に、六%以上で郵便局が集めた貯金が、来年、再来年の二年通じて百兆以上、期日となるわけですね。そういうものが、どれだけロールオーバーするのか、あるいは流出してしまうものかというのは、ちょっと今の段階では非常に難しいのですけれども、既に起こってしまっている大きな取引の帰結が近く起こるわけです。それに対してどう対応していくかというのは、これは大蔵省とも随分話し合いをした結果、私どもが決めましたのは、資金運用部が必要とする資金については資金運用部みずから市場で調達してもらう、どうしても資金が足りなくなるというようなことになった場合には、日銀が売り現先の形で短期に国債を買って資金繰りをお手伝いするということを決めたわけでして、これなども買い切りのオペとは全く違っているものだということを御理解いただきたいと思うんです。
  87. 上田清司

    ○上田(清)委員 全く違うものだというふうに私も申し上げております。  問題は、限定的なものだというニュアンスを、ニュアンスというよりも、正確にそれを発揮された方が日銀の基本的なポリシーに合うのではないかというようなことを私は申し上げておるわけであります。むしろ、何となく不明朗な形で続けておられては困る、そんなことを私は申し上げておりますので、ちょっと総裁、質問に対して若干考え違いがあったような気がいたしますので、その点は是正していただきたいと思います。  ぜひ、こういうものは限定的なものだという前提があってこのような政策をとるんだということをしていかないと、小渕内閣と同じで日銀も何でもありということになってしまいますので、やはり中央銀行の誇りを持って政策運営に携わっていただきたい、こんな思いがありますので、大変恐縮ですが申し上げました。  それではもう一つ、デノミについて。既にいろいろな議論が出ておりますが、総裁としては、これは念頭にある話なのか、あるいは検討もしていない、あるいはまた全く考えてもいない、いろいろ議論があると思いますが、どのようにお考えなのか。
  88. 速水優

    速水参考人 デノミに対する私ども考え方は、幾度か議論はしたことはございますけれども、最近改めてデノミの議論が出ているというのは、一つは、ユーロが誕生して、三けた表示の通貨というのが主要国の中では円だけになった。しかも、ユーロとドルはほとんど同じになってきた。事実上、これからは三つの通貨の国際金融為替市場でのもみ合いになると思うんですね。そういう意味からも、この際デノミした方が、いいチャンスではないかという意見一つの理のあるところだとも思いますし、二十一世紀に入るに当たってこれをやったらどうかというようなこともあるのですが、私の感じでは、デノミというのは国民生活全般に影響する問題でありますし、特にコストを考えますと、だれが払うのか。これはY2Kどころじゃないですからね、全部切りかえなきゃいけない。そのコストはそれぞれ企業が払わなきゃならぬ。恐らく一兆や二兆で済むものじゃないと思うんですね。各企業がみんな今収益をふやそう、景気をよくしようとしているときに、そういうことが起こってくるのがいいのかなという問題はどう考えるべきか。  その辺のところは、私もまだ結論が出ているわけじゃございませんけれども、広く国民理解を得た上で、おやりになるならやっていただく必要があるというふうに思っております。
  89. 上田清司

    ○上田(清)委員 前段の部分だけ聞いていると、どきっとしておられたんじゃないかと思います、後ろの理事の皆さん方やら関係の皆様は。私もびっくりいたしました、前段だけですと。それはともかく、基本的な認識について伺いましたので、結構でございます。  実は、山口総裁に宿題を出していたんですよ、お感じになっていなかったかもしれませんが。ちょうど一年前の山一特融の問題について、四原則論について私も少し議論をさせていただいたんです。大体皆さん、重要な御指摘でありがとうございますと言うのですけれども、今後参考にしますと言うのですけれども、細かく聞くと大体参考にしていないのですよ。それで、私だけは特別に、そう言ったら必ず追っかけて聞くんです、最後。それで私はスッポンの上田清司と言われているんですけれども、こういうお話をしております。  実は、私の方から少し申し上げておきますということで、要するに、山一特融に見られますように、特融が焦げつく、それで、どんな回収の方法があるのかとか、どういう特融の基本的な原則をつくればいいのかとか、そういう議論を一年前にさせていただいたんです。そして、私の方から若干の宿題でこういうことを申し上げておりました。「回収方式、回収条件、回収見込み、回収不能時点での処理方針、この辺が一番のポイントになると思いますので、ぜひ後で議事録を読んでいただいて、そういう視点を持っていただきたい」と申し上げました。  なぜそういうことを言ったのかということについても後段で、要は、昭和四十年のころの山一の特融のときは、当時の田中角栄大蔵大臣が無限にお金を出すと言ったんですが、反面、特約条項をつくっておいて、役員の私財全部没収ということを条件にして、経営陣の責任追及を先にとってしまって、そして世の中の混乱状態をおさめるためにあえて特融を出していく。そういう極めて経営陣に対しては厳しい仕組みをつくっておられたにもかかわらず、最近ではそういうことはなくて、もちろん後で民事、刑事の責任追及はあるということを前提にはしておられるんですけれども、余りそういう意味での責任追及の姿勢が日銀になかった、そういう思いを込めて実は御提案をさせていただいた経緯があります。  その後、特融も何回かございました。中小の金融機関の破綻について出てきましたが、しかし、現実に多分まだまだ特融の融資残高、いわば焦げつき状況というんでしょうか、しかし、預保の関係からいけば、最終的には日銀は傷つかずに済むということでありますが、預保の中身そのものはやはり国民お金でありますから、日銀は傷つかなくても国民は傷つくわけでありますから、相当そういう特融についてもきちっとした仕組みができ上がらなくちゃいけないというふうに私は思っております。  その後、日銀で特融の仕組みについて御検討をなされたのか、あるいは回収についてもどのような新しい仕組みを考えられたのか。私は若干宿題を与えていたつもりであります。一年後にこういうお話をさせていただきましたけれども、どうでしょうか。
  90. 山口泰

    山口参考人 確かに、この場での質疑を通じまして、上田先生から宿題をちょうだいいたしました。それを踏まえまして、いわゆる四原則と私どもが呼んでおります日銀から特別な資金を融通する場合の原則的な考え方につきまして、さらに詳細に検討を加えまして、半年前の年次報告の中で私どもなりのお答えを提出させていただいたつもりでございます。  原則的な考え方につきましては、繰り返しを省かせていただきますが、今御指摘いただきましたように、日銀の資金というのはあくまでも短期一時的なつなぎ資金で、流動性供与ということを目的にするものでございますから、これは返ってくるお金でないといけないというのが、当たり前ですが基本だと存じます。したがいまして、どういう資金によってあるいは仕組みによってそれが回収可能になるかということを常に厳正にチェックを加えた上で、特融を実行する、しないということの判断をしてまいったつもりでございます。
  91. 上田清司

    ○上田(清)委員 具体的に、今、日銀特融の一番新しい数字で残高は幾らで、その増減の見通しについてはどのように考えておられるか。
  92. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  昨日現在、十二月六日現在の特融残高でございますが、八千七百六十五億円でございます。  細かくなりますが内訳を申し上げておきますと、山一向けが三千二百九十九億円、あと、再生法に基づきまして、管財人方式によりまして処理に入っております金融機関に向けまして特融を実施いたしておりますが、国民銀行向けが百六億円、幸福銀行向けが千八百六十六億円、東京相和銀行向けが千二百六十五億円、なみはや銀行向けが百六十六億円、新潟中央銀行向けが九百六十三億円、このほか、みどり銀行がみなと銀行に生まれ変わっておりますが、みどり銀行に出しましてみなと銀行へ引き継ぎました特融一千百億円、トータルで先ほど申し上げた金額でございます。  山口総裁もお答え申し上げましたが、現在私ども特融を実施いたしておりますので、これをごらんいただきますと、再生法に基づいて、要するに管財人の処理が終わるまで、管財人の処理が終わった時点で、先生も御指摘のとおり預金保険機構から資金援助が出ますので、私どもの特融は完全に返済される、あくまでもそれまでの一時的つなぎ資金ということで運営させていただいております。  今後特融がどういうふうな推移をたどるかということでございますが、現時点でのセーフティーネット、二〇〇一年三月まで時限措置がございますが、全債務保護という現時点でのセーフティーネットを前提といたしますと、特融の中心は、管財人方式による破綻金融機関に向けまして一時的に出る可能性が強いというふうに思っておりますが、特融の今後の見通しについては、いかんせん、これはプラス、増加要因、あるいはマイナス、減少要因がいろいろございまして、的確にはお答え申し上げることはできないというのが正直なところでございます。  御案内のとおり、揺るぎない金融システムをつくっていくためには、もし今後とも存続が不可能な金融機関があれば、やはり二〇〇一年三月までのセーフティーネットのあるもとで破綻処理に入っていかざるを得ない銀行が不幸にして出てくるかもしれない、これは増加要因でございます。一方、今貸しております国民銀行向け等の特融は、今後、管財人が処理を進めて資産処分等が行われてまいりますと、要するに管財人処理が終わった時点では私どもが返済を受ける、これは減少要因でございます。  そういうプラスマイナスの要因が不透明でございますので、私ども中央銀行としては、今の金融システムの脆弱なもとでは、中央銀行としての信用秩序の維持という点ではその使命達成に努めてまいることは当然でございますけれども、今後の見通しとなると、ちょっと御勘弁、不透明だというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  93. 上田清司

    ○上田(清)委員 御指摘のとおり、日銀は傷つかないけれども、場合によっては預保が傷つく、つまり国民が損をするという仕組みになっておりますので、先ほど申し上げました考査との絡みもこの日銀特融と私は関係があると思っておりますので、丁寧な仕組みを再度構築していただきたいということを申し添えておきます。  それでは、時間も余りありませんが、給与カットとかいろいろ内部の努力をされているのは認めるところでありますが、時としてポーズになってはいけない。当然、民間銀行等も、金融機関等もそうしたリストラ等をやっておりますから、それとの比較の中で、やはりきちっと対応すべきだというふうに私は思っておりますので、改めてこのことについては、資料を提示いただきながら、少し精査をさせていただきたいと思っておりますので、御覚悟のほどをよろしくお願いしたいと思います。  それから、支店長宅の処分等についても国会でお約束をされておりますが、この進捗状況についても後で資料を御提出していただきたいと思っております。ここでの御答弁は結構でございます。  それで、最後でございますが、さまざまなことがありまして、日銀も内部改革を一生懸命やっておられることは多々認めるところであります。しかも、たしか、私の記憶によると、外資系のコンサルタント会社に内部改革についての処方せんを委託して、そしてその報告が十一月ごろ出たというふうなことも聞いております。この点については全く新聞報道とかに出ていないような気がいたしますが、内部でマル秘になっているのですか、それとも、それをオープンにされてしっかり日銀の内部改革のために役に立てようというような形になっているのでしょうか。この点についてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  94. 引馬滋

    ○引馬参考人 私どもが先般実施いたしましたコンサルティングの関係についての御質問でございますが、まず、私ども、コンサルティング結果を踏まえまして、中期人員目標というところに結びつけましたので、その際に記者会見を行いまして記者発表をいたしているわけでございますが、その際に、あわせてマッキンゼー社から出ました報告書をディスクローズいたしております。  ただし、これはエッセンスでございます。といいますのは、報告書は膨大なものでございまして、私どもの機密に属する分野もございますので、その辺のところを除きまして、ポイントについて報告書の骨子を対外的に発表いたしているところでございます。
  95. 上田清司

    ○上田(清)委員 これは国会の方には配付されておりますか。議員会館レベルで、大蔵の理事だとかそういったところには特別によく御配付される嫌いがありますけれども
  96. 引馬滋

    ○引馬参考人 国会の先生方の御理解を得ながら私どもの改革をやっていくということは大変重要な点でございますので、記者レクの前に関係の先生方のところには報告書提出いたしまして御説明済みでございます。
  97. 上田清司

    ○上田(清)委員 見落としたということですから、申しわけありません。今後気をつけていきたいと思います。  それでは、最後に確認の意味で、途中で申し上げましたこの報告書、私、精査できるほど時間がありませんでしたが、感じたことだけ最後に申し上げますが、どうもやはり議事録の集計だというようなニュアンスが強い感じがいたしますので、日銀として戦略思考的なものを対外的にしっかりアピールされるような文言を最初の部分に入れていただければいいかなというふうなことを、私はあえて申し上げたいと思っております。  また、政策効果、評価というものも、こういう政策においてこういう自己評価あるいは効果があるということも、もちろん書いていないことはないのですが、その部分をもっと明確に打ち出されることが、市場に対する安心感や、あるいはまた国民に対する信頼につながっていくのではないかなというようなことを最後に重ねて申し上げまして、終わります。  ありがとうございました。
  98. 金子一義

    金子委員長 次に、矢島恒夫君。
  99. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  総裁初め役員の皆さん、本当に御苦労さまですが、私が最後の質問者ということになります。  日銀報告書を読ませていただきました。膨大なものですし、中身についてすべてを理解したというわけではございませんが、持ち時間の関係で、絞ってお伺いしたいと思います。  午前中から午後にかけての今までの各委員の質問の中で、ゼロ金利問題というのがいろいろ出されておりますし、それぞれ答弁いただいているわけですから、答弁いただいた部分については質問を省略しながら、まずその辺から入っていきたいと思います。  日銀が、九五年の九月、公定歩合を史上最低の〇・五%に引き下げました。それからいよいよ今度は五年目にもう入ってきているということになるかと思います。そして、日銀は、引き続きゼロ金利政策の継続というものも決定しておるわけであります。  そうした中で、実は、長期金利の問題でまずお伺いしたいのですが、今、第二次の補正予算の審議が予算委員会の方では行われているわけであります。財源がありませんから、政府は、その財源として、七兆五千六百六十億円という国債の発行でこれを賄っていこうというので提案しているわけです。この間、次々と国債の発行が行われてまいりました。この大量発行というものが長期金利に及ぼす影響をどのように日銀としては見ているか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  100. 速水優

    速水参考人 日本銀行のゼロ金利政策のもとで豊富な資金供給を行ってきたわけでございますが、そのことが長期金利を、かつて二%を超えていたのが、一・八%前後で今ずっと来ておるわけですね。これからまた新たに、今度は七兆数千億、国債が補正予算で要るということでございますけれども、その辺のところは恐らく市場で吸収できる、短期のものを大分お出しになるようでございますから、できていくんだと思います。  明年度も含めて、これからどれだけの国債が発行されていくのか、私どもにはちょっとまだ見当がつかないのですが、民間の資金需要は比較的まだ弱いし、機関投資家の方は有利な運用先を求めてまいりますし、マクロ的にも、民間部門というのはまだかなり大幅な貯蓄超過が続いていくのではないかというふうに見ております。こういう良好な市場環境のもとで長期金利というのは総じて落ちついた動きを示すと、楽観的かもしれませんが、推測ができると思うのです。  ただ、今後、仮に財政の動向などをきっかけにして長期金利が上がっていくということがあるとすれば、二つのケースがあると思うのですね。一つは、景気物価に対する市場の見方がかなり明るく強気になってきて、景気が上がり始めて、それに乗っかって長期金利も上がっていくという場合。もう一つは、将来の財政運営に対する懸念から、国債に対するリスクプレミアムといいますか、需給関係からいって国債が売れなくて金利が上がっていく、こういう場合と二つあると思うのですね。  前者の方であれば、景気回復と両立するものですから、行き過ぎには留意しなければいけませんけれども、それはむしろ受け入れていただいていかなければ、多少金利財政負担がふえるかもしれませんけれども、仕方のないことだと思っております。  後者の場合であると、財政運営のあり方について、そういう上がり方であれば、やはり国債の格にも響いてまいりますでしょうし、信用にも響いてまいりましょうし、ひいては、円、日本経済への不信、日本への不信といったようなことが起こってくる可能性がございますので、そういうふうにならないように、国民的な観点からも十分注意して見ていく必要がある。と同時に、やはり市場をうまく拡大し、流動性をふやしていって、一般市民の貯蓄を動かすとか、あるいは金融機関の余剰資金をうまく使っていくとか、あるいは海外から市場へ入ってくる資金をこういうものに運用してもらうとか、そういうようなことを今から十分考えてやっていく必要があるというふうに思っております。
  101. 矢島恒夫

    矢島委員 今総裁がお答えになった後者の部分、こういう状況の中で上がるということについて、財政運営の問題だということが言えると思うんですが、そうだとしても、金利が上昇してまいりますと、日銀への金融緩和への圧力というのはいろいろと強まってくるのではないかと思うのです。  そこで、先ほど総裁から、前の上田委員の質問の中でお答えになっていたので、もし不足があればお聞きしたいのは、先月、日銀は、先ほど言いましたような郵貯の問題などを含めて資金運用部が保有する国債を引き受けるということで大蔵省と合意されたというわけですが、その合意内容を、一部総裁がもうお話しになっているので、先ほどの発言以外にとりわけ合意内容でお聞かせいただければと思います。
  102. 速水優

    速水参考人 先ほど御説明を少しさせていただいたかと思いますが、この問題は、やはり十年前に起こった帰結なんですね。それで、やはり何とか片づけなければいけないことですし、資金運用部が必要とする資金については運用部みずからが市場から調達するのが原則である、ただし、日本銀行もこれを補完する形で一時的な流動性を供給するんだということを原則にして、二年間を限って売り現先で資金を供給するという道をつけたわけでございます。  ここで強調させていただきたいのは、今回の日本銀行対応というのは、政府に対して長期固定的な資金を供給しようとするのではなくて、その点は国債の買い切りとは違ったものだということでございます。特に、一つは郵便貯金の集中満期という二年間に限られた例外的な措置であるということと、あくまでも資金運用部みずからが市場から資金調達することを原則として、日本銀行は、必要と認める場合にのみ一時的な流動性を供給するということでございます。したがいまして、日銀国債引き受けといったこととは全く性格が異なっているものだとお考えいただきたいと思います。  日本銀行としては、日本銀行による国債の引き受けを禁止しております今の財政法の精神につきましては、今後とも厳にこれを守っていきたいというふうに思っております。
  103. 矢島恒夫

    矢島委員 今までも、財政法五条というものを厳守するという明言は総裁から何回かいただいておりますので。  ただ、問題は、日銀の中にも量的緩和論というのがあります。インフレターゲット論だとかあるいは調整インフレ論など、いろいろ言われております。目標インフレ率を実現するまでは量的緩和が必要だという意見もあるようです。  私は、あえて資金運用部の国債引き受けについて御質問したのは、今の総裁の決意で十分納得はするわけですが、しかし、いろいろとこれを引き金にして国債引き受けを、いわゆる量的緩和論として加速してくるんじゃないかというような懸念もあるわけですから、断固として今の決意の方向でやっていただきたいと思います。  そこで次に、この超低金利というのが、日銀としてはいわゆる緊急避難的な処置としてもう四年が経過したわけですけれども、先ほど来マイナス面ということが言われております。報告書によりますと、五十九ページ以降にこれらの問題がいろいろと書かれておるわけですけれども、家計部門について私はお尋ねしたいわけであります。  受取利息が大幅に減少しております。それが個人消費を抑制しているということも言われております。景気の自律的回復ということにどうしても欠かすことのできない消費の部門ですけれども、この金利の低下による家計への影響日銀はどのように考えているか、まずお答えいただきたいと思います。
  104. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘いただきましたように、金利の低下によりまして、特にこのような非常に低い金利のもとでは、家計の金利収入が大幅に減少しているということは御指摘のとおりであろうと思います。そういう意味で、この金利収入に依存している家計がいろいろな意味で御苦労なさっているということも先生御指摘のとおりであり、これは朝御議論のありましたゼロ金利政策の副作用の大変大切な一側面であるというふうに私どもは認識しております。  ただ、これもまた御議論ありましたように、景気の自律的な回復がはっきりしていない今の段階金利を引き上げてしまいますと、企業投資採算の悪化とか資産価格の下落などを通じまして、経済全体の活動の水準が再び落ち込むおそれがあるというふうに私どもは考えております。そうなりますと、企業はリストラの姿勢を強めざるを得なくなりまして、雇用や賃金の情勢が一段と厳しいものになっていくおそれがあるというふうに考えております。  何しろ家計の収入の圧倒的な部分が雇用者所得でございますので、今申し上げましたような状況経済全体の活動水準が落ち込みますと、金利の減少を上回るような大きなダメージを家計に与えることになりかねないというふうに考えているわけでございます。その辺を総合判断しなければと考えております。
  105. 矢島恒夫

    矢島委員 総合的な判断というのは非常に重要だと私も思います。ただ、退職してほかに収入もない、年金暮らしというような方、一千万円ちょっと預金して、何とか退職金の一部で利息をと思っても、一年預けてもわずか三万円程度の利息では家計の足しにもならないわけです。  これは富士総研の統計なんですけれども、家計の利子所得の対前年比、これの減少額が九五年からの累計で二兆八千億円と出ていました。第一勧業銀行が八月五日に「調査リポート」というのを発表いたしましたが、その中に、六十歳以上の世帯では、純受取利息額は年間九万六千円の減少となっている、雇用や老後の不安などから、家計は金利低下による受取利息額の減少を埋め合わせようと消費を抑制していることも考えられるというのがありました。もちろん、経済企画庁の月例経済報告を見ましても、収入が低迷していることなどから、このところ個人消費は足踏み状態であるという記述もあります。  私は、この超低金利というのがいわゆる消費拡大にはマイナスの役割を果たしているというように思うわけですし、先ほど総合的に見るということをお答えいただいたわけですが、国民生活全般を見据えた上で、責任ある視点から見ていくということが極めて重要であると私は考えるのです。その点について、日銀はどのように考えていらっしゃいますか。
  106. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、ゼロ金利政策というものがプラス効果もあるが副作用もいろいろとあるという点につきましては、私どもも十分認識してやってきたつもりでございますし、今後さらに一層意を用いて、注意深く対応していく必要があるというふうに考えておるところでございます。  先生御指摘のとおり、これは現時点で、あるいはこれまでの収入が減ったということだけでなくて、将来に対するさまざまの不安といったようなこともまた非常に大切な側面であるというふうにも考えております。したがいまして、私どもとしては、先行きの経済の安定的、持続的な健全な発展ということを展望する方向で政策の運用を図っていく所存でございます。
  107. 矢島恒夫

    矢島委員 もう一つ景気が自律的に回復しない大きな柱として、企業設備投資がなかなか伸びない、こういう問題があります。こういう中でも中小企業の問題というのが非常に大きいわけであります。上場企業の全産業ベース二千百八十八社の九八年度の支払い利息、これが四兆九千二百五十七億円で、前年度比で五%減少しております。それから、公定歩合の引き下げ前の九四年度と比べてみますと三三%も減っております。上場企業の支払い利息というのは、当然金利が低いのですからこれは下がるに決まっておりますが、同時に銀行もいろいろ利ざやで低金利の恩恵を受けていると思います。そこで、銀行がただ同然で入れた国民預金をもって中小企業者にどしどし低金利で貸し出す、こういうことをやってくれるならまだ救いはあると思うのですよ。しかし、先ほども出ました貸し渋りの問題等、依然、問題として残されているわけです。  こういう意見もあるのですが、このことについてどうお考えですか。銀行融資依存度の高い中小企業の調達資金コストが超低金利政策によって果たして下がっているかどうか疑問であるという報道を見たのですが、中小企業設備投資は依然として低迷しているというような状況の中で、このことについて日銀の見方を教えていただきたいと思います。
  108. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  日本経済を支えるものとして、中小企業の活動、特にその設備投資活動が大変大切だという点につきまして、御指摘のとおりでございます。  従来、景気回復に当たりましては、大企業設備投資回復するよりもむしろ前に中小企業設備投資回復してまいりまして、経済全体は、語弊はあるかもしれませんが、それに引きずられるような形で回復してきたことが多かったように認識しております。それに比べますと、現在、中小企業がそういった過去の局面に比べて元気でない状態にあるというのは大変大きな問題だというふうに認識いたしております。  ところで、金融機関の貸し出しの金利でございますが、これは私ども銀行貸し出しの約定預金金利というものをとっておりますが、これはゼロ金利政策のもとで、あるいはそれ以前の低金利政策のもとで、傾向として大変下がってきておりまして、大変低い水準に現在達しております。  ただ、にもかかかわらず、先ほど申し上げましたように、設備投資が従来のように元気にまだなっていない、大変残念な状態でございます。これは金利もございますが、一つは、先ほど話がありましたように、中小企業自体もいま一つ財務の問題とか需要の問題とかでいろいろ経営に悩んでおられる、こういう面もあろうかと思います。また、金融機関もただいまさまざまなリストラ策を講じておりますが、まだその途中にあるというような点もあろうかと思います。  私どもといたしましては、早くそういった問題の解決、前進が進むことを期待しつつ、これをゼロ金利政策で当面下支えさせていただきたい、こういう考えでいるわけでございます。
  109. 矢島恒夫

    矢島委員 自律的な景気回復の軌道になかなか乗らないという現状の中で、貸し渋りの問題も大変ですけれども、もう一つ、中小企業にとって経営を困難にしている理由はいろいろあろうかと思いますけれども、この中で、融資の問題となりますが、信用組合や信用金庫などが次々と破綻している。地域経済に対して大変大きな問題を起こしているわけであります。私は、借り手保護の仕組みをつくる必要はある、こう考えております。  ところで日銀は、金融監督庁が、信用組合の経営支援基金構想という中で、基金の融資について日銀に相談があったと思うのですけれども、それを拒否されたと言われますが、その理由をおっしゃっていただきたい。
  110. 速水優

    速水参考人 私どもとしましては、銀行のみならず信用組合等におかれましても、極力早期に不良債権処理を完了されるとともに、必要に応じて資本基盤を強化していかれるということは大切なことだ、金融システム安定化を図るという意味でも重要な課題だというふうに考えております。  ただ、協同組織金融機関というのは、株式会社である銀行とは違いまして、資本調達の上で、制度面を含めていろいろな制約があることも事実でございます。したがいまして、私どもとしては、制度の見直しを含めて、協同組織金融機関の資本増強円滑化のための措置を早急に講じていく必要があるということは十分わかりますし、その点については、金融監督庁と私どもとも認識を全く同じくしておるわけです。  ただ、私どもとしましては、金融システム安定化のために中央銀行立場から行い得る協力というのは、やはり当然惜しまないつもりでおるのですけれども、返済確実でかつ一時的な資金繰りに充てられるというもの、そういうものでないと、中央銀行の資金としてはやはり御用立てするわけにはいかないわけで、先般の信用組合移管円滑化機構、この構想につきましては、そのままの形で対応するということは、私どもとしては適当でないと考えた次第でございます。この点、監督庁におかれましても、私どものこうした考え方について、引き続き理解を求めてまいりたいというふうに考えております。
  111. 矢島恒夫

    矢島委員 そういうものが必要だということは私も共通の認識でございます。  そこで、具体的な問題でお聞きしたいのですが、地方経済に信用組合、信用金庫の破綻というのが重大な影響を及ぼしておりますが、その一つに、埼玉県西部に四十四店舗を持って、預金量でいいますと県内第二位という小川信用金庫というのがあります。十一月十二日に、自力での再建を断念して破綻した。  そこで、日銀はことしになってこの小川信用金庫に考査に入ったと思うのですが、いつからいつまで入ったかということについてお答えいただきたい。
  112. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  小川信用金庫に対します考査は、本年の七月七日から二十三日にかけて実施いたしました。考査の結果につきましては、八月六日に通知いたしております。
  113. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで、その考査の内容ですが、分類はどうなったのか、その時点で債務超過であったのか、不良債権の中身はどんなものがあるのか、お答えいただけますか。
  114. 小畑義治

    小畑参考人 お答えいたします。  先生御案内のとおり、私どもの考査は行政権限がございませんし、それから取引先との協力関係、信頼関係で、契約に基づいてやっておるということで、日本銀行法あるいは考査の約定上、守秘義務と申しますか秘密保持義務がございまして、考査の具体的内容についてはお答えできない、申しわけございませんが、お許しいただきたいと思います。  ただ私ども、考査を小川信金に実施いたしまして、ポイントといたしまして申し上げられることは、当金庫の経営内容は、不良債権処理もかさみ、極めて厳しい状態にあったという認識でございます。そういうことから、当金庫に対しましては、自己資本の増強を含めまして、抜本的な経営安定化策の策定、実施を早急に検討するよう強く要請したということでございます。
  115. 矢島恒夫

    矢島委員 内容についてはお答えできないということですが、金融監督庁を呼んでおりますので、何問かこれについてお聞きしたいと思いますが、まず一つは、多分小川信用金庫の破綻状況については日銀からいろいろ報告を受けていると思うのですが、監督庁独自で検査を行ったのはいつですか。
  116. 乾文男

    ○乾政府参考人 監督庁の検査は、平成十年の一月に行ったわけでありますけれども、今日本銀行から答弁がございましたように、日本銀行の考査が七月に行われまして、その結果を受けまして、小川信用金庫から私ども関東財務局の方に、資産内容の悪化が指摘されているという報告を受けたわけでございます。  そこで、監督庁としましては、日本銀行に対しまして、日銀法四十四条に基づきまして、考査資料の提出をお願いしますとともに、小川信金に対しまして、直近時点での自己資本比率を把握するための九月末の自己資本比率を、信用金庫法に基づきまして、これは関東財務局長から徴求をしたところでございます。  これに対しまして、小川信金から十一月十二日に報告がございまして、先ほどから御議論が出ておりますように、ことしの三月以降、大口融資先の業況の悪化が相次いだこと、それから日銀考査で指摘された結果を踏まえまして、債務者の状況を見直しましたところ、大幅な債務超過に陥ったとの報告を受けたところでございます。  以上でございます。
  117. 矢島恒夫

    矢島委員 日銀に聞きますが、考査の基準日はいつだったのでしょうか。
  118. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  本年四月末でございます。
  119. 矢島恒夫

    矢島委員 金融監督庁に聞きます。  今後の破綻処理のスケジュール、どんなふうになっているかわかりますか。いずれにしろ、これは次に業務監査委員会で精査して、以下ずっとあるわけですが、では、端的に聞きます。業務監査委員会というのは発足したのかどうか。
  120. 乾文男

    ○乾政府参考人 小川信用金庫の破綻は、破綻処理、いろいろな方式がございますけれども、小川信用金庫の場合には、埼玉県信用金庫という埼玉県のトップの信用金庫だと思いますけれども、それを受け皿としまして、営業譲渡方式ということでございます。したがいまして、その営業譲渡につきまして、受け皿を中心としまして、これからいろいろな精査が行われるわけでございます。この営業譲渡いたすまでの間の営業につきまして、これを与信等あるいは債権管理等をきちんと行う観点から、先般、弁護士や公認会計士の方を中心とした業務監査委員会が発足したというふうに聞いておるところであります。
  121. 矢島恒夫

    矢島委員 時間になりましたので。  地元では、例えば、業務は引き続きやっているんだと言いながら手形割引ができなかったり拒否されてしまった、あるいは、ずっとそこだけで長年融資を受けたところが、小川信用金庫から融資できないと言われた。善意、健全な借り手に対しては貸すというような、いろいろありますけれども、大変な混乱が起きているんですよ。  そういう意味から、次々と倒産があの地域で起こるというような事態はどうしても避けなければならない。そのための適切な指導や監督をぜひやっていただきたい、このことだけ申し上げて、質問を終わりたいと思います。  終わります。
  122. 金子一義

    金子委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十分休憩      ————◇—————     午後五時十六分開議
  123. 金子一義

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百四十五回国会内閣提出国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、去る一日に終了いたしております。  本案につきまして、日本共産党から討論の申し出がありましたが、理事会で協議の結果、御遠慮願うことになりましたので、御了承願います。  これより採決に入ります。  内閣提出国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 金子一義

    金子委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  126. 金子一義

    金子委員長 次回は、明八日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会