○鈴木(淑)
委員 自由党の鈴木淑夫でございます。
速水日銀総裁、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございました。初めに私は、
金融政策について
速水総裁にお伺いしたいと思います。
御承知のように、九月の下旬ごろから十月にかけまして、
日本の新聞、テレビ等、マスコミは、
日本銀行の
金融政策が変更されるのではないか、あるいは変更すべきだと
政府が
考えているんだとか
アメリカ当局が
考えているんだとかいうような、あたかも対立があるかのごとき報道をいたしました。いわゆる日銀包囲網をしいて、
日本銀行の九月二十一日の政策
委員会の政策決定会合を見詰めたわけであります。
日本銀行は、この会合におきましていわゆるゼロ
金利政策を続けていくという決定をいたしましたために、何か政策変更なしと、包囲網をしいて攻め立てたのに頑固に
日本銀行は動かなかったと言わんばかりの報道がされまして、その結果、一時円高に振れたり、株価が下がったりしておりました。
しかしながら、今振り返ってみますと、そういう一時の、私は誤解に基づいていると思いますが、誤解に基づく混乱の後、マーケットは落ちつきを取り戻しました。円相場もこのところ百五円前後で安定しておりますし、その円相場のもとで、景気は、少なくとも鉱工業生産、出荷等で見る限り、七—九に増加率が加速した上に、予測指数を見ますと、十月にわずかに下がった後、十一月に大きく上がるということで、十—十二も生産上昇、出荷増加、こういう形になっております。株価も、それを好感してか、このところ日経平均で一万八千円台を維持しているということで、
日本銀行があそこで政策を変更しなかったということは、今振り返ってみると、十分に理解され、その結果、景気も順調、株価も順調、円相場も安定、まあよかったねというふうに思います。
ですから、その
意味で私は
日本銀行の政策決定を支持するものでありますが、ただ、総裁、せっかくお越しいただきましたので、率直に私の
意見を申し上げますと、どうも
日本銀行は自分がやっている
金融政策についての説明の仕方がちょっと下手だったのじゃないか、開き直って言えば、アカウンタビリティーを、説明責任を十分に果たしていなかったために誤解されたのじゃないかというふうに思うわけであります。例えば、九月二十一日に発表されました「当面の
金融政策運営に関する
考え方」、これは大変いい文章で、あれがマスコミに理解され、海外で理解されていれば、あんなばかげた報道はなかったと思うんです。
あの中のポイントとして、私は、これを何でもっと大きな声でおっしゃらなかったかと思いますのは、現在の必要準備額、リクワイアドリザーブは約四兆円だ、ところが
日本銀行は、
金利をゼロに保つために、さらに一兆円余計な
資金を常にマーケットに置いているんだよ、エクセスリザーブが一兆円だ、あるいはアイドルバランスが一兆円もマーケットにあるんだ、そのうち七、八千億円というのはもう行き場がなくて、短資
業者、ブローカーの手元に残っちゃっている。だれも金を借りない。ブローカーの手元に残っちゃっている。これぐらい量的な緩和を徹底しているからこそ、オーバーナイトの、翌日物のコールレートが〇・〇二ないし〇・〇三、これは短資
業者の仲介手数料を引いたらまさにゼロです。ほとんどゼロですね。だからゼロ
金利政策とおっしゃるわけです。そういう状態になっているんだよ、このことをもっと早くしっかりとマスコミに理解させておけば、マスコミの表現、本当に、私は見て、何だと思ったのですが、量的緩和に転換するかどうかと書いているんですね。あるいは一層の
金融緩和をするかどうか、そういう政策変更をするかどうかの重要な
会議である、これが日銀包囲網の中身ですよ。
ところが、量的緩和に転換するかといったって、遊休
資金が一兆円も転がっているマーケットなんて、世界じゅう見渡して
日本しかありません。今の
日本しかない。とんでもない量的
金融緩和です。一層の
金融緩和といったって、それじゃアイドルバランス一兆円の上にあと五千億を積んだら、一兆円積んだら、何が起きるのか、ちょっと
考えればわかると思うのですが、どうもその辺のことをきちっと理解させていなかったためにああいう騒動が、騒動といいますか、空騒ぎが起きたというふうに私は思っております。その
意味で、
日本銀行におかれては一層のアカウンタビリティー全うの努力をしていただきたいというふうに思うわけです。
それで、あのとき新聞などが、
アメリカ当局がそういう圧力をかけていると言うものですから、私は、
アメリカの友人、例えばIMFのナンバーツーのスタンレー・フィッシャーとか、あるいは連銀の中にも友人がおります。それからマーケットにもおります。国際電話で聞きました。回答は、そういう圧力をかけているというような事実はないんだよ、
日本に対して内需拡大してくれとは言っておるが、量的
金融緩和に転換しろだの、一層の
金融緩和だのという表現で言っている事実はないとみんな言っておりました。
それよりも彼らが言ったのは、何て
日本は下手なんだ、どうして
政府と中央
銀行が対立しているかのごとき報道をばんばん世界に流すのか、先進国としてあんな下手な国はないぞ、
日本はどうしてあんなに下手なんだ、こういうことを言った人が非常に多いですね。
これは、新日銀法になってからは、御承知のように政策決定会合には
大蔵大臣と経済企画庁長官が
出席できるわけです。お忙しいときは
総括政務次官がお出かけになればいいわけですよ。そこでがんがん日銀と
議論することができるわけです。ですから、世間の目に、世界の目に、対立しているなどというのをさらさないで、対立したければ大いに対立してやれるわけですね。それがしばらくたって公表された結果、
国民はどっちの
意見が正しかったのだろうというのは後で判定できるわけです。そういう透明性と日銀の独立性と
政府が
意見を言う
チャンスと、全部用意してあるのが今の新日銀法であります。
それにもかかわらず、そう言ってはなんですが、
大蔵省の顧問ですよね、前財務官は。あの顧問がこの論争に火をつけたといいますか、あれはサンデープロジェクトですか、榊原さんのことを私は言っている。榊原さんが日銀の政策批判をやったのですよ。それが誤ったマスコミの日銀包囲網に火をつけたのです。こういうことは非常に残念なことだというふうに思います。
私はすぐに聞きました、
大蔵省は政策決定会合に行かなかったのかと。谷垣
政務次官、ちゃんと行っておられるんですね。そういうときに、やめたとはいえまだ顧問の肩書を持っている人が、ああいうところで日銀の政策の批判を大っぴらにやるということは、先進国から見ると
考えられないそうです。
日本は下手なことをやるなということのようでありました。
以上、
日本銀行に対して、多少辛口のことを申し上げ、また、
大蔵省あるいは
政府におかれましても、どうぞ新日銀法のもとでは、ちゃんと
意見を述べる機会がある以上、表で対立を演出するようなことを、私は当局がおやりになったとは全然思っていません。しかし、結果的にまだ
大蔵省にくっついている顧問の方がしゃべったからああいうことになった。ああいうことがございませんようにお願いしたいと思います。
そこで、総裁にまず具体的な
質問を
一つさせていただきますが、マーケットに一兆円もアイドルバランスがあったら、その上、量的緩和と称して一兆五千億にしてみても二兆にしてみても効果はないだろうというふうに私は思うのですが、
日本銀行はこの点についてどういうふうにお
考えであったがゆえに、政策変更せず、今のままでいく、十分に緩和しているというふうにお答えになったのでしょうか。仮に短資
業者の手元にある金をもうちょっと積み上げたら、何が起きるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。