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1999-11-10 第146回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十日(水曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 金子 一義君    理事 衛藤征士郎君 理事 鴨下 一郎君    理事 根本  匠君 理事 渡辺 喜美君    理事 上田 清司君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 鈴木 淑夫君       石原 伸晃君    大石 秀政君       大野 功統君    奥山 茂彦君       河井 克行君    桜井  新君       桜田 義孝君    塩谷  立君       下村 博文君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    高市 早苗君       西川 公也君    林  幹雄君       桧田  仁君    宮本 一三君       村井  仁君    村上誠一郎君       岩國 哲人君    岡田 克也君       河村たかし君    末松 義規君       仙谷 由人君    中川 正春君       松崎 公昭君    大口 善徳君       谷口 隆義君    並木 正芳君       若松 謙維君    安倍 基雄君       一川 保夫君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    横光 克彦君     …………………………………    大蔵大臣         宮澤 喜一君    国務大臣    (金融再生委員会委員長) 越智 通雄君    金融再生政務次官     村井  仁君    大蔵政務次官       大野 功統君    政府参考人    (金融再生委員会事務局長    )            森  昭治君    政府参考人    (金融監督庁監督部長)  乾  文男君    政府参考人    (大蔵省理財局長)    中川 雅治君    参考人    (日本銀行総裁)     速水  優君    大蔵委員会専門員     田頭 基典君     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   林  幹雄君     田中 和徳君   渡辺 博道君     奥山 茂彦君   河村たかし君     松崎 公昭君 同日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     桧田  仁君   田中 和徳君     林  幹雄君   松崎 公昭君     河村たかし君 同日  辞任         補欠選任   桧田  仁君     渡辺 博道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件     午前九時三十一分開議      ————◇—————
  2. 金子一義

    金子委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、お諮りいたします。  各件調査のため、本日、政府参考人として大蔵省理財局長中川雅治君、金融再生委員会事務局長森昭治君、金融監督庁監督部長乾文男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 金子一義

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 金子一義

    金子委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若松謙維君
  6. 若松謙維

    若松委員 公明党・改革クラブを代表して、一般質疑、特に、引き続き商工ローンの問題について質問させていただきたいと思います。  既に我が党から、谷口議員がこれらの点について総括的に、特に根保証過剰貸し付けダブルスタンダード、過剰取り立て、監督庁指導監督強化、こういったところが網羅的に議論されております。  質問通告しておりますので、それに準じて質問させていただきますが、金融監督庁にちょっとお聞きしたいのですけれども、これは質問通告しておりません。地元の貸金業に聞きましたところ、全国貸金業協会の会長の松田さんという方が辞任したということで、どうも私の埼玉の方ではうわさになっているのですけれども、そういった事実はございますか。
  7. 村井仁

    村井政務次官 ただいまのようなお話、私、現在時点では報告を受けておりません。それだけお答え申し上げます。
  8. 若松謙維

    若松委員 はい、わかりました。  それではきょうは、私の質問観点は、どちらかというと今まで日栄とか商工ファンドとか、そういった大手商工ローン業者質問が中心となっておりましたけれども、私は、全国三万社あります中小零細貸金業、こういったところへ当委員会での議論がどのような影響を及ぼすのか、そういった観点から質問させていただきたいのです。  特に、いわゆるダブルスタンダードの廃止もしくは上限金利引き下げ、こういったことが実際に行われますと、これらの中小零細貸金業へどのような影響を及ぼすのか、やはりこれもしっかり議論した方がいいのではないかと思います。  そこで、金融監督庁にお伺いしたいのですけれども、例えばやみ金融が増加するのか、または結果的にダブルスタンダードが廃止されて中小貸金業が倒産して、全体的にどういったプラスマイナスがあるのか、社会全体にどういう影響があるのか、ちょっとそういったところを総括的にお話しいただけますでしょうか。
  9. 村井仁

    村井政務次官 私どもは、貸金業規制法上、私どもが与えられている権限というのは、いわゆる行為規制に限られておりまして、実態把握というのは非常に限定された権限でやっておるわけでございます。そういう立場から申しますと、いわゆる中小貸金業者、今委員仰せになりましたが、それを仮に貸出残高五百億円以下の貸金業者、これについて見ますと、登録業者数が全貸金業者の約九九%、三万一千社ほどございまして、それから貸出残高が全貸金業者貸付残高の約二五%、約十六兆円、こういうことであると承知をしております。  それで、これにつきまして、私ども借り手保護という観点から、過剰貸し付けの禁止ですとか、書面の交付義務でございますとか、取り立て行為規制等の、先ほど申しましたように行為規制を専らやっているわけでございまして、財務状況を含めて業者経営面については行政として直接把握していない、これが実情でございます。そういう意味で、今のお尋ねに直接お答えできない。  若干付言を申しますと、全貸金業者から年に一回、業務報告書というものの提出を求めておりますけれども、この内容は、消費者向け、事業者向けと二区分いたしまして、そこで何件それぞれ貸し付けたか、それから、貸付金残高が今申しました消費者向け、事業者向け別二区分でそれぞれ幾らあるか、それから、平均約定金利がそれぞれ幾らであるかという程度のことしかとらえていない、これが実情でございまして、そういう意味では、ちょっとただいまの委員の御質問に直接お答えする資料を持ち合わせていないというのが実情でございます。
  10. 若松謙維

    若松委員 それで、これは金融監督庁並びに後で宮澤大蔵大臣からも長年の御経験に基づいてちょっと御見解をいただきたいのです。  今、とにかく中小零細が非常に多い、なかなかその把握自体が困難だ、そういう話ですけれども、では、これは率直な御意見感想でも結構なんですけれども、望ましい、あるべき中小零細貸金業者への規制とか法律等、これは現行法で十分なのかどうか、そこら辺に対する心証的なところをいただきたい。  また、上限四〇%の妥当性、さらにスプレッド規制というのですか、やはりもうけ過ぎというところ、そこからまた別の問題も出ていると思うのですけれども、そういった観点からちょっとお答えいただきたいのです。  あわせて、この商工ローン問題というのは、極めて大手なり、三万社の中のもう本当に二、三社に集中しておりまして、それに引きずり込まれてかえってマイナス面影響もかなりあるのではないかというところが、まさに町金融というのですか、そういったところに出ているのです。そうであるならば、この貸金業大手中小とに法体系を分けて、それで何らかの、中小零細にもそれに合った指導監督なりができるような、また報告ができるような、そういったものがこの際必要ではないかと思うのですけれども、まず金融監督庁にお考えを伺って、それで宮澤大蔵大臣感想をいただきたいと思います。
  11. 村井仁

    村井政務次官 大変難しい問題でございまして、確かに委員指摘のように、業態いろいろでございます。いわゆる俗にノンバンクと呼ばれる業態でございますが、リースあり、カードローンあり、サラ金あり、こういった事業者金融あり、いろいろな業態があるわけでございまして、またそれが規模別にもいろいろである。それから、いわゆる町金融というものまであるわけでございまして、それに対しましてどのような規制の形態があるべきであるかということは、これはもう貸金業法昭和二十九年でございますか、以来、長年にわたりましていろいろ御議論がございまして、とりわけて昭和五十年代、非常に詰めた御議論もあった歴史的な経緯があると私も承知しております。  そういう意味で、ことしの六月、民主党から御提案のございましたような議員立法案もあり、それからかたがた、最近、金利低下傾向にあるというような状況も踏まえまして、一体どういうふうにしていったらいいのか、各党各会派における御議論を私ども金融監督庁としても注視しながら、いろいろまた実態把握にも努めている、これが実情でございます。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは主として金融監督庁担当越智大臣がお答えされるのがよろしいのかと思いますけれども、今若松委員の言われましたことは、昭和五十八年に当院並びに参議院におきまして貸付業についての御議論がいろいろございまして、そして法律が成立したわけですが、そのときの問題意識は主としてサラ金であったわけでございます。そのときも今のような御議論が非常にありました。  ただ、今日の問題は、商工ローンという、それとはかなり異質と申しますか、数量的にも規模としても違う問題から起こったいろいろな弊害について、国会でも御議論になり、また業界も自粛をするしないというような話があって、金融監督庁が主として事案の検討、処理に当たっておられますが、おっしゃいますように、そのことについて、いわゆる商工ローンについては一つ結論を恐らく出さなければなりませんし、また業界でもそういうことは感じていることだと思います。  そのこととの関連において、今総括政務次官が言われましたような、規制法による貸付残高が五百億円以上の貸金業者については事業報告書は求めておる。しかし、事業報告書を求めておるということが必ずしも業界内容について行政が十分知っておるということでは、遺憾ながらそういうことではないんだ、遺憾ながらとはおっしゃいませんでしたが、そういうことではないんだと。その辺のところにその問題のいろいろ難しさがあるんだと私は思うんです。  つまり、不正が行われたり、あるいは零細借金をする人が不正な目に遭うということは行政としては看過できませんけれども、しかし、そういうことに熱心な余り貸金業者を非常に厳しく取り締まるということになりますと、それは、貸金業者が実際本来の正常の業務としておる、またそれとして世の中から求められている業務が順調に行われなくなるという心配は当然にあるわけでございます。これは五十八年のときにも御議論になりましたが、行政がどの程度介入をすべきなのか、あるいは必要以上の介入はすべきでないのかという問題はやはりどうしてもあるというのが当時の国会の御認識でもあったし、今も私どもそう考えるわけです。  ですから、商工ローンについて、いろいろどうしてもしなければならぬということはもとよりといたしまして、それとの関連において、俗に三万、実際には一万八千ぐらいと言われますが、その貸金業が営んでいる社会的な機能を逆に殺してしまうということは、やはり非常に問題であろうと思います。  したがいまして、長いこと申し上げましたが、こういう御議論があり、また金融監督庁がいろいろ行政をやっていかれて、片っ方で商工ローンの問題は一つ処理が出た場合に、今度は零細貸金業についてどの程度のことをしたらいいか、あるいはどの程度以上のことはしない方がいいかという議論は、別途国会でもしていただく必要があると思いますし、私どもも、それは考えました上で処置すべきことではないかというふうに思います。
  13. 若松謙維

    若松委員 御両人からお話を聞いて、結論は、なかなか結論は出しにくいということですね。これは実際に、まさに今回の四〇%の上限を設けたときもかなり議論になったようですけれども、では何で四〇%かという、正直言って根拠も明確にない、恐らく政治的ないろいろな決着という形をとったのかと思うのです。  それでは、今回のこの商工ローン、これだけ規模が大きくなったというのも、その背景には、やはり不景気、そして金融機関の貸し渋り、こういったところがあろうかと思うのです。  そこで、越智金融再生委員会委員長にお聞きしたいのですけれども、ちょうどこの資料がございます。これをちょっと見ていただきたいんですけれども、今の貸し渋りの要因、そしてまた、その貸し渋りで困っている方が商工ローンに流れる、そこら辺の原因というものを私なりに整理したいと思うんです。  「貸し渋りの三パターン」ですね。まず、当然一番は、銀行資金がない場合。二番目に、BIS自己資本規制による資産圧縮による場合、これは釈迦に説法です。三番目なんですけれども、急に貸付金利が引き上げられた、担保を要求された、こういうことが結構現場で起きている。それはなぜかというと、やはり金融機関の、特に銀行貸し付けとまた金利体系というのが非常に、要は弾力性がない。  例えば、ここで通常の「日本における融資考え方」ということで、まず、当然金利にはリスクも反映されます。それで、例えばAという非常にいい会社デフォルト率は〇・二%、Bというのは一・三、Cというのは三%。それで、利ざやというのは、これが日本金融機関のちょっとおかしいところなんですけれども、例えばAですと収益率プラス〇・八、Bは収益率マイナス〇・二、でも結果的には、リスク度が低いA、そしてやや高いB、結局利ざやはそんなに変わらない。そしてC、デフォルト率が高くなるところは結局日本金融機関貸し付けを行わない、こういう形だろうと思うんです。  では欧米はどうなのかというと、二枚目に、例えば欧米の場合には、結局収益率をまず最初に一つ経営管理目標みたいな形で設けて、それで、当然デフォルト率というのはそのリスクに応じてどのくらいかというのが出てくるわけですから、その結果利ざやが生じてくる。利ざやが生じてくれば、それに調達コストを入れて金利が決まってくる。特に、このCというデフォルト率が高いところに対しても欧米金融機関貸し付けているんですね。銀行貸し付けている。  日本は、このCに対して途端に貸し付けないんです。なぜかというと、さっきの金利差というものの考え方が、いわゆるリスクプレミアムを全然反映していない。こういうことから、このCという、リスクが高くてもこれから事業の継続のチャンスもあるし成長のチャンスもある、それに対して結果的に銀行資金供給機能を果たしていない。そこに商工ローンという今回の問題はかみ合っていると思うんですね。  そこで、委員長にお伺いしたんですけれども、結局、特にこのCに対して、図がありますけれども、大事なのは、BからCの間に対してリスクを上乗せして、そして当然スプレッドもとって、利ざやですね、最終的な収益率、そういった逆算からの金利というのですか、それは一〇%でも一五%でも二〇%近くてもいいと思うんです、スルガ銀行がやっているような。そういった形に早急に日本金融貸し付け実態を指導していかないと、いつまでたっても日本金融機関貸し倒ればかり恐れて、現にいろいろと話を聞きますと、例えば銀行支店長なり行員が、貸し倒れが生じちゃった、そうすると一部を自分の給料から差し引かれるみたいなことが実態として行われていることも聞いております。  そういったところをやめさせて、まさにさっきのCに対して銀行が、当然リスクプレミアムをオンして、高金利でもいいと思うんです、そういったところに資金供給をやらないと、本質的なこの商工ローンの問題は解決できない、そう思うんですけれども委員長、いかがですか。
  14. 越智通雄

    越智国務大臣 今初めて若松先生の御所見を承りまして、感想と言ったら申しわけありませんが、私の頭の中を去来することを申し上げますと、日本の場合には概して利ざや欧米に比べて少のうございます。欧米一般にかなり高い。米が一番高いと理解しております。それで、ヨーロッパ、日本利ざやが少なくなっている。  それからもう一つ、昨今の銀行等金融機関の貸し出しは担保主義になっておりますので、物的担保としての不動産をとったり、あるいは、余りケースは多くございませんけれども人的保証のみというのもございますし、場合によりますと、中小企業に貸しているときは、会社に貸して、社長の人的保証とそのほかに会社の土地や何かを物的にもとる。  今お話しのは、デフォルト率が高いというか、むしろ担保がそう十分でない状態で融資をもっとさせたらどうか、そのかわり、リスクをカバーする意味金利を、利ざやをもっと上げてもいいんじゃないかと。お考えとしてはわかりますけれども、今の日本では余りやっていないというか、やれないような状況じゃないかな。  銀行の検査からいいますと、そういう貸し付けはどうしても、要注意あるいは要管理と申しますか、二分類、三分類の方に入っていくことになりますので、そこに、今おっしゃったような、ハイリスク・ハイリターンという、こういう金融が、商工ローンみたいなのが入ってきた、その点はそうだと思いますけれども、今おっしゃるような意味での金融のあり方をもっと普及しろというお話でしたら、ちょっと今まだそこまでは考えておりませんということでございます。
  15. 村井仁

    村井政務次官 ちょっとおわびを申し上げなければなりません。  先ほど若松委員に対する答弁で、貸金業法昭和二十九年と私申しましたのは、これは誤りでございまして、罰則金利を決めております出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律、これが昭和二十九年、そういうことでございます。修正だけ申し上げます。
  16. 若松謙維

    若松委員 再生委員会委員長、やはり日本の画一的な金利体系というのは、結果的に日本の経済全体を、資本主義社会ですから景気もよくなる悪くなる、そこでの調整機能というのは、やはり金融機関がバラエティーある金利体系を持った貸し付けを持つということは、これはどういう状況であろうが進めるべきじゃないかと思うんですね。ですから、ちょっと時間がないから私は議論しませんけれども、ぜひこれは必要だということを私は問題提起をして、また今後機会があれば議論をさせていただきたいと思っております。  それで、あと時間が少なくなってきましたので、最後、きょうは一般問題ということで、国の決算制度改善貸借対照表の作成、これについて大蔵省にお伺いしたいんですけれども、ちょうど私の資料三、四にその内容を説明しております。  特にニュージーランドとかアングロサクソン系が、この決算制度、かなり一生懸命今努力しております。特に米国ですと、やはり政府会計基準も既にあり、決算開示につきましても連結ベース。かつ外庁連結対象にしている。当然貸借対照表もつくっている。財務情報はあくまでも発生主義。そして、資産の再評価もしている。さらに、将来負担が予測されるであろう支出額も計上している、いわゆる公務員年金債務とか退職金の引き当てとか。  こんな形ですけれども日本は何ら今のところされていないということで、資料四にアメリカ日本政府の、特に財務情報という形でアメリカ貸借対照表連結ベースでつくっておりますので、政府貸付金不良債権金額とか代位弁済額国家公務員年金債務等将来への未払い、さらに環境債務、これについていかに日本情報として国民に知れていないか、こういうことを言っております。  そこで、一挙に質問するわけですけれども、これは大蔵大臣か、もしくは政務次官かわかりませんけれども、ちょうどアメリカはあのアル・ゴアが行政改革をやった。かつ決算制度改革も主導でやったんですね。ですから、大野政務次官がかなりアメリカも精通されていますし、恐らくどんどん引っ張ってくれるんじゃないかということで、大蔵大臣とずっとやっていましたので、名指しで大野政務次官にお聞きしたいんです。  まず、貸借対照表をつくるにしろ、国の決算制度をつくるにしろ、できるところからやるという方法も一つなんですけれども、それではやはり世間ではもう通用しないと思うんですね。少なくとも基準をつくる、一つでも二つでもいいと思うんです。そのための政府会計基準、これは早急につくって、かつ最低、連結ベース、当初は中央省庁だけでいいと思います。それで、二年、三年後には特殊法人とか独立行政法人を入れる。かつ発生主義、これは最低盛り込んで、当然、そのためにはお金がかかりますから、ちょうど私が三年前にアメリカへ行ったときの財務情報局というところは、日本でいう主計課に相当するのですか、二百五十人いました。今はリストラして百八十人。日本は今主計課が二十二人。プラスサポート機関として五人。これでは話にならないと思います。ですから、平成十二年度にもやはり決算制度改善のための予算措置をしっかりすべきだと思うんですけれども、その二つの点について、大野さん、いかがでしょうか。
  17. 大野功統

    大野(功)政務次官 国の財産がどうなっているか、借金がどうなっているか、これをはっきり国民に明示する、これは大変重要なことだと思います。  現状は、若松先生指摘のとおり、発生主義に対して現金主義というような格好で、国の財産一つとってみましても、建物は償却という考え方がありますけれども、道路、河川になるとわからない。さらに、物品につきましても取得価額で見ている。出資金は一体どうなっているんだ、一体、補助金は地方の財産として見るのか、国の財産として見るのか、こういう本当に現金主義に陥っているところがございます。そういう問題意識若松先生は常にお持ちになって、過去におきましても行革特委で随分と問題提起をされております。その問題提起に対して敬意を払うものでございます。  ただし、我々の場合は、今申し上げましたような問題点について、これからどんどん技術的に詰めていかなきゃいけない、その前にも専門家意見も聞いていかなきゃいけない、あるいはアメリカ事情についても勉強しなきゃいけない、こういうような問題山積でございまして、先生認識実態は少しおくれているような感じがいたしております。しかしながら、できれば来年の春には論点整理をして、その論点整理の上に立って、会計基準なりあるいは連結の問題、発生主義の問題、こういうことを考えていかなければいけないのではないか、このように思っておるところでございます。  こういうことになりますと、情報公開されますと、それに伴って大変な費用がまた要るわけでございます。現在、我々は厳しい財政事情のもとで行政効率化に努めているところでございますけれども問題点、今会計につきましては新しい会計基準をつくる方向で勉強する、そしてその方向が明らかになれば、新しくその点はまた検討していかなきゃいけない、こういう認識でおる次第でございます。
  18. 若松謙維

    若松委員 初めて聞きましたけれども、二〇〇〇年四月、論点整理、これは当然公表していただけるんですね。
  19. 大野功統

    大野(功)政務次官 公表するための基準でございますから、公表するのは当然かと思っております。
  20. 若松謙維

    若松委員 先ほど言いましたように、大蔵省の限られた主計局の事務の予算内でこれから実際これだけのことをやろうとするのは非常に厳しいと思います。ですから、アウトソーシングして専門家をもっともっと使って、それで、やはり数十億かかったって、それによってディスクローズされて、いろいろなむだな経費が削減されれば、プラス要素はかなりあると思うんですね。そういう面で、平成十二年度の予算化というのはいかがですか。
  21. 大野功統

    大野(功)政務次官 先ほども申し上げたとおりでございますけれども論点整理の後どういう方向で進んでいくのか。論点整理をして基本方針をつくった上で考えさせていただくべきことだと思っておりますけれども先生の御意見は十分拝聴させていただきました。
  22. 若松謙維

    若松委員 時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  23. 金子一義

    金子委員長 次に、渡辺喜美君。
  24. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 このたび大蔵委員会理事を仰せつかりました、平社員の渡辺喜美でございます。係長ぐらいに昇格させてもらったなという感じがいたしております。  きょうは、宮澤大臣が参議院本会議に御出席ということで、大野総括政務次官に専らお聞きをしたいと思っております。  大野政務次官におかれましては、新しい制度のもとでの実質的な副大臣、国会答弁も政府委員には基本的にやらせずに副大臣が大半のお答えをされる、こういうことでありますから、私どもにとっても大変心強く思う次第でございます。  そこで、大野総括政務次官はもともと大蔵省におられた方で、なおかつ国際派である、こういう華麗な御経歴を持っておられます。昔から大蔵省というのは、局あって省なしなどと言われてきたものでありますけれども、昔、例えば統制金利の時代に、郵便貯金の金利をどうするかなどというと、理財局と銀行局でけんかをよくしておったなどという時代があったわけでございます。  最近、この十年ぐらいの日本のお金の世界、経済の運営を見ておりますと、どうも大蔵省の中の局間調整がうまくいっていないのじゃないのか、そういう気がしてならないのでありますけれども、副大臣におかれましては、新しい体制のもとでこの局間調整はいかようにおやりになるおつもりか、ちょっとお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  25. 大野功統

    大野(功)政務次官 渡辺先生から大変高邁なるお話をちょうだいしました。自分は平社員とおっしゃったわけでございますが、大変、重役の見識をお持ちになっていることに対しまして敬意を払う次第でございます。  大蔵省には局あって省なしということがよく言われました。今はどうか。今、大蔵省自身がそのことについて自覚症状を持っておりますので、例えば組織的に申し上げますと、大蔵省行政の在り方に関する懇談会、瀬島龍三座長でございますけれども、この瀬島龍三座長のもとに、官房においてもう少し総合調整能力を高めたらどうか、強化したらどうか、こういう議論がありまして、結論としまして、報告書の中でも書いてありますけれども、例えば、政策課題によっては、臨機応変に関係各局が参加するプロジェクトチームをつくったらどうか、こういうことも書かれております。  詳しくは申し上げませんが、こういうもとで早速、例えば円の国際化の問題、それから二十一世紀の資金の流れをどうするかという問題、こういうことにつきましてプロジェクトチームをつくっておる次第でございます。  プロジェクトチームをつくって前向きに政策に取り組むということは、私は、大蔵省の体質は基本的にどうも、持ってきた案に対してイエスあるいはノーと言う。ゴルフをやっていますと、パットをするときにこのぐらいパットが短くなりますと、残りパット、これはオーケー、あるいはもう一遍やれ、こういうことをよく言うのでありますが、まさに大蔵省というのは、パットに対してオーケーを言っているとか、自分がプレーヤーにならないところがあったわけでございますが、こういうプロジェクトチームをつくることによって、大蔵省みずからが新しい時代に挑戦して政策づくりをやっていく、こういう体質に少しずつ変わりつつある、このように思っている次第でございます。  さらに、総括政務次官としてどうするんだ、こういうことでございます。  もちろん宮澤大蔵大臣のもとでこういうことは十分やっておりますが、私、事あるごとに言っておりますのは、大蔵省職員の意識改革の問題でございます。大蔵省自身、自分が言っていることは絶対正しいんだ、無謬性ということでございますが、これがありますと、他人の言うことなんか聞きません。ですから、それは反省して、やはり他人の言っていることを十分聞きながら自分の信じる発言をしてもらいたい、こういうことでございます。  さらにもう一つ申し上げれば、幅広く長期的な視野、そして基本的な視野で考えていくのがまさに大蔵省である。幅広く長期的、基本的な視野で考えれば、必ず局あって省なしというようなことはないのではないか、なくなるのではないか、こういう意識で、意識改革をお願いしているところでございます。  宮澤大蔵大臣のもとに、先生おっしゃるような方向で総体として頑張っていきたい、このように思っております。
  26. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 ぜひ今おっしゃられたことを実践をしていただきたいと思いますし、また、平成宮澤是清蔵相が誕生して一年何カ月かたつわけでございますので、ぜひ新体制を実効あらしめるものにしていただきたいと思っております。  まあ、局間調整がつかないときは、宮澤大臣が両局長を大臣室に呼んで、あしたから入れかわりなさい、こう言うのが一番よろしいのではなかろうかと思いますし、宮澤大臣であればそんなことは簡単にできると思っております。  いずれにしても、この二年の間、日本経済が非常事態に直面をし、私は残念ながらまだ非常事態は脱し切っていないという認識でございますが、この非常事態を本当にうまいぐあいに抜け出すことができたなら、本当に宮澤是清蔵相は歴史に残る名元総理、蔵相におなりになるのではなかろうかと私は思っておるのでございます。  いずれにしても、この危機を最終的に脱却するには、やはりどうしてもお金の世界のマネー総合戦略、こういうものが必要でございまして、今ようやく、ことしになってからでありますけれども、当面のマクロ経済政策が出そろったわけですね。つまり、積極財政、金融緩和、円高抑止と。ついこの間までは、これが非常にちぐはぐだったわけであります。ちぐはぐである結果、マーケットに対して非常によくないメッセージを発し続けてきたのだろうと思います。  したがって、こういうマネーの総合戦略、実はこれは大蔵省だけではうまくいかないのですが、大蔵省の中でこういう総合戦略を考える作戦本部というのはあるものなんでしょうか、どうでしょうか。
  27. 大野功統

    大野(功)政務次官 作戦本部があるのかという御質問でございます。  私、胸を張ってお答えしたいと思うのでありますが、宮澤大蔵大臣が作戦本部長として我々を指揮監督されていらっしゃるわけでございます。問題があるごとに、私ともう一人の政務次官、林政務次官、あるいは関係の局長をお呼びいただきまして、みんなで議論しておるという形でございます。  それから、実態的に申し上げますと、先ほどもちょっと触れましたが、21世紀の資金の流れの構造改革に関する研究会、これは本間正明大阪大学副学長が座長でございますけれども、この中で、一番、二十一世紀初頭の資金の流れの構造をどのように考えるのか、二番、経済の潜在力を高め最大限に発揮するために、効率的な資金配分を確保していく上での政策課題は何か、三番、市場を通じた効率的な資金配分に加え、公的部門が果たすべき役割は何か、こういうことを中心に検討を進めて、これまでの議論は中間整理されているところでございます。来年夏を目途に、さらに研究、討議していく。これを参考にしながら、やはり我々自身が宮澤大蔵大臣を中心に総合戦略を練っていかなければいけない、このように考えているところでございます。
  28. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、総合戦略というものは国益に立脚をしてつくられなければなりません。したがって、省益とか局益とか、そういう矮小なものではなく、日本のよって立つべき原理原則と利益、これをしっかり見据えてつくっていく必要があるのだろうと思います。  そこで、この二年間ほどの混乱の中で、一つ日本が戦略的な視点が欠けていたのかなという気がする事例でありますけれども、アジアの通貨危機に際して、非常に我が国が打つ手が後手に回ってしまった。IMF主導型の処方せんというのが、大変アジアにとってはまずかったわけでございます。例えば、緊縮財政みたいな処方せんはアジアの危機を逆に深刻化させてしまったわけでありますし、個別救済パッケージみたいなものが伝染、コンテージョンをもたらしてしまった、そういうようなことがあったわけでございます。  かつて大蔵省の中でも、アジア通貨基金をつくったらどうだ、こういう構想があったのでございます。残念ながら、これは主に二つの理由でつぶされてしまいました。一つは、IMFと機能がダブっていても仕方ないじゃないか、IMFの機能強化で対応できるじゃないか、こういうような議論ですね。それからもう一つは、アジア独自の機関をつくりますと身内に甘くなるじゃないか、したがってモラルハザードが起きる、こういうような理由でございました。  しかし、考えてみますと、例えばこの間ブラジルで危機が起こりました。あのときアメリカは、自分のところの裏庭みたいなものでありますから、大変本気になってこの救済に乗り出したのですね。これなんかを見ておりますと、ちょっとダブルスタンダードじゃないのかなと思うようなところがありまして、やはりアジアの問題というのは我々にとって極めてバイタルな意味を持つわけであって、そういうことを考えますと、日本主導のAMF構想というのは、もう一度再構築をすべきではなかろうかと思うのでございます。  それで、この間こういう本が私の手元に届いたのでございますけれども、これは「二〇一〇年日本実現 山崎拓」、こう書いてありまして、多分これは政策委員長をおやりになっていた大野副大臣が取りまとめられたのではなかろうかと思うのですが、ここの本にも、アジア通貨基金はつくるべきだと。第一に、各国経済状況の定期的なモニタリングを行う必要があって、早期発見をする必要がある、こういうことですね。それから第二に、予防のために必要な流動性を供給するため、危機に応じて特別融資を行う。それから第三には、危機からの回復に必要な中長期の資金や保証の提供を行う、こういう提案がなされているわけでございます。アジア開発銀行などに期限つきで基金を設けるなどの具体的な提案もなされております。  私は、自分も似たような提案を出しておるのですが、この間できたばかりの国際協力銀行というのがあるのですね。これは二十兆円ぐらいの、世銀と同じぐらいのずうたいの銀行になったわけでございますが、ここにとりあえず事務局などを置いて、アジア・ファンドみたいなものをつくって似たようなことをやったらいいじゃないか、こういう提案をしているのでございます。  どうですか、副大臣、こういう構想をもう一回考えてみる価値はあるとお思いになりませんか。
  29. 大野功統

    大野(功)政務次官 結論から先に申し上げますと、アジア通貨基金構想というのは、私は中期的に取り組んでいくべき課題だと思っております。  先生御存じのとおり、一九九七年IMF・世銀総会を目指して、このAMF構想というのは随分議論されました。その議論されたことが後に残っておりますのがマニラ・フレームワークでございます。マニラ・フレームワークにおきましては、先生もただいま御指摘なさいましたけれども、各国経済政策をサーベイランス、監視する、議論する、こういう機能もありますし、その他ございますけれども、そういうマニラ・フレームワークとそれからアジア通貨基金構想との違いというのは、アジア通貨基金構想が参加各国の出資金を得ている、それからもう一つは独自の事務局を持っている、こういうところが大きな違いかと思います。  したがいまして、いろいろな観点から中期的に議論をしていきたい、勉強していきたい。今先生がおっしゃった国際協力銀行の中にそういうものを設けたらどうか、こういうことも一つの御意見として考えてまいりたい。中期的目標として頑張ってまいります。
  30. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、大事なことは国家の総合戦略であります。この点をひとつ一番の基本としてやっていっていただきたいと思います。  日本のこの、失われた十年などと言いますが、平成大不況に陥った根本原因は何かといいますと、これは完璧に資産価格の大暴落から始まったデフレ経済、こういうことであろうと思うのですね。したがって、今も土地は下がり続けているのであります。これは、景気が悪いから地価が下がるのだ、景気がよくなれば地価は上がるのだ、こういう解説がなされているのでありますけれども日本の場合、この土地の資産効果が、プラスマイナス両方ともに非常に大きいのですね。  最近ではアメリカの株価が似たような現象を起こしているのでありますが、アメリカの株価は、アメリカのGDPの約一・六倍と言われております。ちょうど日本のバブル最盛期の倍率と同じような数字なんですね。一方土地の方は、アメリカの方は大したことはありませんで、一倍弱ぐらいのところにあるようであります。一方、日本の土地の総資産額は、バブル以前には大体GDPの三倍ぐらいでした。バブルの最盛期には、これが五倍を超えたのですね。今、それが三倍ぐらいのところまで下がってきているのでありますが、依然としてこれは下げどまっていない。  そういたしますと、来年下がる土地を買う奇特な人というのはいないのですね。この地価が下げどまらないということは、結局日本経済のバランスシート調整が終わらない、こういうことになるわけでありまして、地価の下落に歯どめをかける総合戦略を考えていかなければいかぬと思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。政策手段は別として。
  31. 大野功統

    大野(功)政務次官 ただいま渡辺先生から、日本の現在の不況の分析がございました。ひっきょう地価あるいは資産デフレということで、資産価格、とりわけ地価の下落というものをとめない限り景気は回復しないのだ、こういうことでございます。  お話を承りながら私思い出しましたのは、去年の五月でございますが、グリーンスパンと一時間半にわたって会談したときのことでございます。一時間半の間、グリーンスパンはただ一つのことだけ言っておりました。それは何かといいますと、金融機関から不良債権を除去すること、これなしには日本の景気は回復しない、こういうことで、日本もその道を今歩んでいることは御承知のとおりでございます。  それから第二に、それでは土地の問題を一体どう考えるんだ。これは一つは、大企業の遊休土地をどうするんだという問題があろうかと思います。それから、虫食い土地等を整理して有効に土地を利用していこう、これはもう既に去年の経済対策で住都公団が手をつけております。それから、その他政府として土地の有効利用をやっていこう、土地需要の創出を図っていこう、こういう施策もやっているところでございます。しかし、なかなか難しい課題であることは先生御存じのとおりでございます。  もう一つ私が申し上げたいのは、今の景気情勢の中で、消費、住宅、公共投資、設備投資、こう並べてみますと、一番やはり心配なのが設備投資でございます。設備投資が自律的に回復していない、このことを思いますと、やはり今我々が一つ直面しなきゃいけない問題というのは、ROE、株主資本利益率、これに着目して外国投資家が日本に投資をしている、したがって、そうなりますと、日本の企業としてはどうしても設備をふやしていくというインセンティブがなくなってくる、これは大変残念なことに縮小均衡になっていくのではないか、このように思う次第でございます。したがいまして、景気回復のためには設備投資をふやすということで、どうしても規制緩和、これはずっとやっていることでございます。  それからもう一つは、やはり中小企業の直接投資をふやしていくために、今国会中小企業国会と言われておりますから、これは対策ができるわけでございますけれども、そういうようなことを考えていかなきゃいけない。さらに、いわゆる金融資産、間接金融から直接金融へ移していかないと投資がふえていかないんじゃないか。  こういう問題意識を持ちながらやっていきたいと思っております。
  32. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 政策手段についてまで言及されたわけでございますが、それらに加えて、私は金融政策も非常に大事なものだと思っております。バランスシート不況の結果、需要追加策をとらざるを得なくなり、膨大な国債を大量発行したわけですね。昨年、長期金利が上昇するということがことしの初めにかけても二回ほど起こったのでありますけれども資金運用部が、二〇〇〇年の郵貯問題、償還問題、これについてマーケットに非常に心配を与えてしまったのがその原因なんですね。こういうことは非常によくないことだと私は思うのであります。  この郵貯の償還問題については、先週ですか、日銀の方と合意がなされたわけであって、こうしたことはきちんとお互いすり合わせをして、全くお互いにそごはありませんよ、こういうことが大事なことだと思います。  資金運用部が長期国債を大体百兆円ぐらい持っておるのでありますけれども、こういう資金運用部のお金を例えば長期国債の買い取りに回すことだって決して不可能ではないんですね。例えば、住宅金融公庫などに毎年相当のお金を資金運用部から流すのですが、今お金がじゃぶじゃぶ余っていますから、銀行ども運用先がなくて商工ローンみたいなところにお金を流しちゃっているんですね。だったら、いっそのこと資金運用部が住宅金融公庫に金を流さずに、住金が銀行から資金を調達して、資金運用部はそれで長期国債の買い取りをどんどんやるということだってできないわけじゃないんですね。ですから、そういう発想も、すっとんきょうな話かもしれませんけれども、いざというときは何でもありよ、そういう心構えが必要だという意味で申し上げているわけでございます。  そこで、国債管理政策もいろいろお考えになられていると思いますが、国債の種類も多様化して、例えば五年物国債を出すとかストリップス債を出すとか、そういうこともあるわけでございますが、物価連動国債というのがありまして、これは非常におもしろい話だなと私は思うのであります。  自民党の債券市場問題小委員会というのを越智金問調査会長のもとで金子委員長で検討してきたのでありますけれども、物価連動国債というのは、これは変動利付債とちょっと違いまして、元本などもインフレに連動して増減する。結局メリットは、発行体にとってはコスト削減になる、投資家にとってはインフレリスクを軽減する、こういうことが言われております。  どうですか、こういうものの発行を検討されてみたらいかがですか。
  33. 金子一義

    金子委員長 質問は、どちらにされますか。
  34. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 理財局長あるいは副大臣、どちらでも結構でございます。
  35. 大野功統

    大野(功)政務次官 先生今おっしゃった、時代が変わっていくわけですから何でもありよという発想法で頑張れ、こういう御指摘でございました。私も、頭を柔軟にして、いろいろな場面で対応できるように柔構造で頑張っていかなきゃいけない、こう思っております。  例えば物価連動の国債という御指摘でございますが、国債につきましては、またこれからもいろいろと柔軟な頭で対処してまいりたい、このように思っております。
  36. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 物価連動国債が出せるようになりますと、インフレインデックス債でありますから、価格変動をウオッチすることができるようになるんですね。そういたしますと、市場を通じて期待インフレ率を継続的に測定していくことが可能になる、こういうことでありますから、いわゆるインフレターゲット論の技術的問題も克服できるようになるわけですね。  そこで、最後になりましたが、日本銀行金融政策の中で、いずれまた日本銀行の株主総会でやらせていただきますけれども、物価目標つきマネタリーベース・ターゲティング、こういうことを中原政策委員などは提案されているわけでございます。これは非常に参考に値する提案であって、量的緩和を行うと、例えばターム物の金利が低下していくとか、あるいは金融機関資産構成を変化させて当座預金から債券や株式あるいは貸し出しをふやすというようなことが起こったり、期待インフレ率が上昇することによって実質金利が低下するとか、為替が円安に向かうとか、あるいは株価が上昇して資産効果が出てくるとか、そういうことが考えられるわけですね。インフレターゲットをやっている国というのはかなりありまして、これは世界の常識、日本の非常識というところなんですね。  ですから、日本銀行法は第二条で、物価の安定ということで国民経済の健全な発展に資する、こういうことでありますから、まさに物価安定目標というのは国の総合的な国家戦略として決めていくべきであろうと私は思うのでございます。ぜひこれを実現していきたいと思いますし、また、中原さんなどは実際の具体的な数値もCPI、消費者物価に置いて言っておられるのでございますが、私は、先ほど申し上げましたように、地価、六大商業圏の地価も今下がり続けておりますので、これがゼロになる、つまり下げどまる、そういうこともこのターゲットの中に入れたらどうだということを提案しているのでございます。  時間がありませんので、これで終わりにいたします。どうもありがとうございました。
  37. 金子一義

    金子委員長 次に、鈴木淑夫君。
  38. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  速水日銀総裁、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございました。初めに私は、金融政策について速水総裁にお伺いしたいと思います。  御承知のように、九月の下旬ごろから十月にかけまして、日本の新聞、テレビ等、マスコミは、日本銀行金融政策が変更されるのではないか、あるいは変更すべきだと政府考えているんだとかアメリカ当局が考えているんだとかいうような、あたかも対立があるかのごとき報道をいたしました。いわゆる日銀包囲網をしいて、日本銀行の九月二十一日の政策委員会の政策決定会合を見詰めたわけであります。  日本銀行は、この会合におきましていわゆるゼロ金利政策を続けていくという決定をいたしましたために、何か政策変更なしと、包囲網をしいて攻め立てたのに頑固に日本銀行は動かなかったと言わんばかりの報道がされまして、その結果、一時円高に振れたり、株価が下がったりしておりました。  しかしながら、今振り返ってみますと、そういう一時の、私は誤解に基づいていると思いますが、誤解に基づく混乱の後、マーケットは落ちつきを取り戻しました。円相場もこのところ百五円前後で安定しておりますし、その円相場のもとで、景気は、少なくとも鉱工業生産、出荷等で見る限り、七—九に増加率が加速した上に、予測指数を見ますと、十月にわずかに下がった後、十一月に大きく上がるということで、十—十二も生産上昇、出荷増加、こういう形になっております。株価も、それを好感してか、このところ日経平均で一万八千円台を維持しているということで、日本銀行があそこで政策を変更しなかったということは、今振り返ってみると、十分に理解され、その結果、景気も順調、株価も順調、円相場も安定、まあよかったねというふうに思います。  ですから、その意味で私は日本銀行の政策決定を支持するものでありますが、ただ、総裁、せっかくお越しいただきましたので、率直に私の意見を申し上げますと、どうも日本銀行は自分がやっている金融政策についての説明の仕方がちょっと下手だったのじゃないか、開き直って言えば、アカウンタビリティーを、説明責任を十分に果たしていなかったために誤解されたのじゃないかというふうに思うわけであります。例えば、九月二十一日に発表されました「当面の金融政策運営に関する考え方」、これは大変いい文章で、あれがマスコミに理解され、海外で理解されていれば、あんなばかげた報道はなかったと思うんです。  あの中のポイントとして、私は、これを何でもっと大きな声でおっしゃらなかったかと思いますのは、現在の必要準備額、リクワイアドリザーブは約四兆円だ、ところが日本銀行は、金利をゼロに保つために、さらに一兆円余計な資金を常にマーケットに置いているんだよ、エクセスリザーブが一兆円だ、あるいはアイドルバランスが一兆円もマーケットにあるんだ、そのうち七、八千億円というのはもう行き場がなくて、短資業者、ブローカーの手元に残っちゃっている。だれも金を借りない。ブローカーの手元に残っちゃっている。これぐらい量的な緩和を徹底しているからこそ、オーバーナイトの、翌日物のコールレートが〇・〇二ないし〇・〇三、これは短資業者の仲介手数料を引いたらまさにゼロです。ほとんどゼロですね。だからゼロ金利政策とおっしゃるわけです。そういう状態になっているんだよ、このことをもっと早くしっかりとマスコミに理解させておけば、マスコミの表現、本当に、私は見て、何だと思ったのですが、量的緩和に転換するかどうかと書いているんですね。あるいは一層の金融緩和をするかどうか、そういう政策変更をするかどうかの重要な会議である、これが日銀包囲網の中身ですよ。  ところが、量的緩和に転換するかといったって、遊休資金が一兆円も転がっているマーケットなんて、世界じゅう見渡して日本しかありません。今の日本しかない。とんでもない量的金融緩和です。一層の金融緩和といったって、それじゃアイドルバランス一兆円の上にあと五千億を積んだら、一兆円積んだら、何が起きるのか、ちょっと考えればわかると思うのですが、どうもその辺のことをきちっと理解させていなかったためにああいう騒動が、騒動といいますか、空騒ぎが起きたというふうに私は思っております。その意味で、日本銀行におかれては一層のアカウンタビリティー全うの努力をしていただきたいというふうに思うわけです。  それで、あのとき新聞などが、アメリカ当局がそういう圧力をかけていると言うものですから、私は、アメリカの友人、例えばIMFのナンバーツーのスタンレー・フィッシャーとか、あるいは連銀の中にも友人がおります。それからマーケットにもおります。国際電話で聞きました。回答は、そういう圧力をかけているというような事実はないんだよ、日本に対して内需拡大してくれとは言っておるが、量的金融緩和に転換しろだの、一層の金融緩和だのという表現で言っている事実はないとみんな言っておりました。  それよりも彼らが言ったのは、何て日本は下手なんだ、どうして政府と中央銀行が対立しているかのごとき報道をばんばん世界に流すのか、先進国としてあんな下手な国はないぞ、日本はどうしてあんなに下手なんだ、こういうことを言った人が非常に多いですね。  これは、新日銀法になってからは、御承知のように政策決定会合には大蔵大臣と経済企画庁長官が出席できるわけです。お忙しいときは総括政務次官がお出かけになればいいわけですよ。そこでがんがん日銀と議論することができるわけです。ですから、世間の目に、世界の目に、対立しているなどというのをさらさないで、対立したければ大いに対立してやれるわけですね。それがしばらくたって公表された結果、国民はどっちの意見が正しかったのだろうというのは後で判定できるわけです。そういう透明性と日銀の独立性と政府意見を言うチャンスと、全部用意してあるのが今の新日銀法であります。  それにもかかわらず、そう言ってはなんですが、大蔵省の顧問ですよね、前財務官は。あの顧問がこの論争に火をつけたといいますか、あれはサンデープロジェクトですか、榊原さんのことを私は言っている。榊原さんが日銀の政策批判をやったのですよ。それが誤ったマスコミの日銀包囲網に火をつけたのです。こういうことは非常に残念なことだというふうに思います。  私はすぐに聞きました、大蔵省は政策決定会合に行かなかったのかと。谷垣政務次官、ちゃんと行っておられるんですね。そういうときに、やめたとはいえまだ顧問の肩書を持っている人が、ああいうところで日銀の政策の批判を大っぴらにやるということは、先進国から見ると考えられないそうです。日本は下手なことをやるなということのようでありました。  以上、日本銀行に対して、多少辛口のことを申し上げ、また、大蔵省あるいは政府におかれましても、どうぞ新日銀法のもとでは、ちゃんと意見を述べる機会がある以上、表で対立を演出するようなことを、私は当局がおやりになったとは全然思っていません。しかし、結果的にまだ大蔵省にくっついている顧問の方がしゃべったからああいうことになった。ああいうことがございませんようにお願いしたいと思います。  そこで、総裁にまず具体的な質問一つさせていただきますが、マーケットに一兆円もアイドルバランスがあったら、その上、量的緩和と称して一兆五千億にしてみても二兆にしてみても効果はないだろうというふうに私は思うのですが、日本銀行はこの点についてどういうふうにお考えであったがゆえに、政策変更せず、今のままでいく、十分に緩和しているというふうにお答えになったのでしょうか。仮に短資業者の手元にある金をもうちょっと積み上げたら、何が起きるのでしょうか。お答えいただきたいと思います。
  39. 速水優

    速水参考人 鈴木先生に、日銀のこれまで歩んできた道についていろいろ御理解もいただき、かつまた御指摘、御注意もいただきまして、ありがとうございます。  今の御質問でございますが、日本銀行は、誘導目標でありますコールレートを事実上ゼロで安定的に推移させる、そのことによって金融機関の所要準備を大幅に上回る資金供給を続けているわけでございます。こうした思い切った金融緩和政策の浸透ということが、一年物までの各種の市場金利、いわゆる二〇〇〇年問題の影響を除いてみますと、総じてこれらのものはゼロ近辺まで低下してきておるわけです。  このように、ゼロ金利政策のもとで、市場金利の低下余地というのはほとんどなくなってきている、乏しくなってきていると言えましょう。また、金融機関では、ほとんどコストのかからない資金をいつでも調達できるという安心感が広がっておりますし、超過準備を持とうとする動機は低下しているように思われます。  こうした市場環境のもとでは、日本銀行がこれ以上資金供給をふやしても資金がそのまま短資会社に積み上がる、いわば市場に残ってしまうという可能性が大きいわけでございまして、そういう場合に、既に低下余地の乏しくなっている金利はもちろんのこと、金融機関の信用創造活動、それから企業の設備投資行動、そういうものに、これによって目に見える効果が及んでいくというふうには思われませんので、今のゼロ金利政策をしばらく続けていく、デフレ懸念の解消が展望できるまで続けていくということでよろしいと思っております。
  40. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  私、実は短資会社の人に、七、八千億のアイドルバランスを仮に倍にしたら、あなた、どうすると聞いてみました。そうしたら彼の答えは、このアイドルバランスは実は日によって非常にフラクチュエートするらしいですね。それから、いつコールがかかってくるかわかりません。だから、すぐにでも引き上げられる極めて流動性の高い状態、しかもリスクのない状態に置いておかなければいけないので、運用するのはせいぜいTBかFBだと言っていました。  だとすれば、これは全然緩和の効果はないのですね。TB、FBで政府に金が戻るだけです。僕は短資会社に、CPでも買ってやれば企業金融の方に金が回るではないか、そうすれば一層の量的緩和をしたときに企業金融の刺激になるだろうと言ったら、冗談じゃない、CPみたいな危ないもの買えるかということでしたね。だからそういう意味で、今総裁のお答えどおりに、現在の緩和状態という、これはもう超緩和だと私は思いますが、それをさらに持続するので十分なのであって、もっとアイドルバランス、遊休資金をばらまけというのは、何の意味もないと私は思っております。  ただ、今総裁がおっしゃった言葉で、金融緩和の効果を浸透させるというふうにおっしゃいました。私はこの言い方をもっともっと早くから言ってほしかったと思います。九月のあの時点では、ゼロ金利政策を維持するというニュアンスなのですね。現在は政策を変更しないというニュアンスが非常に強く出ている。そうではなくて、今の政策というのは考えられる超緩和だから、これを浸透させるという、最近のおっしゃり方のような言い方をあのころからしていただいておると余り誤解は生じなかったと思います。  私、与党三党の政策責任者会議のメンバーでございますが、あそこから出しましたステートメントでも、誤解が起きてはいけないと思ったものですから、量的緩和に転換しろとか一層の金融緩和をしろとかいう言葉を避けております。そうではなくて、第二次補正予算でまた国債が追加されるが、そういう状態であっても金融緩和の効果が続くように、金融緩和を浸透させておいてねという表現にしておりますが、日銀さんも最近そういう、緩和効果の浸透を図る、ゼロ金利政策を維持するではなくて、ゼロ金利政策で金融緩和の浸透を図るという言い方は大変結構だというふうに思っております。  どうぞこれからも、説明責任ということを十分お考えいただいて、わかりやすい表現で現状を国民に説明していただきたいというふうに思っております。  次にもう一つ、これはまた、間違えると誤解に基づいた日銀批判が出そうなテーマがございます。それは運用部の資金繰り対策です。先週金曜日に大蔵省から発表になりました。  御承知のように、来年度あるいは再来年度は、高金利のときに扱った十年物の定額貯金の満期が来ますから、大量の流出が起きる。その結果、運用部資金が急速に減っていくというおそれがあります。しかし、私はこういうことが起きないことを願っておりますが、御承知のように、再来年の四月に予定どおりペイオフ解禁をいたしますと、それを見越して、来年の間に今度は逆方向資金移動が起きる可能性もないではないですね。弱い民間の企業から安全な郵貯へ金が逃げてくるということも起こり得るかもしれない。したがって、来年の郵貯、したがってまた運用部の金繰りくらい、不確実性に富んでいるというか、なかなか見通しができないものはないというふうに思っております。  そういう中で、大蔵省理財局、そして日本銀行はうまいことを考えたと私は思うのですね。つまり、現先という形で運用部が、金が足りなければ市中から調達してくる。この市中から調達する現先が量的に足りなくなった場合に限り、つまり市中が応じてこない場合に限り、一時的に日銀との間でやはり現先を使うということを考えた。これは、非常に見通しの難しい金繰り対策としてはベストソリューションだなと思います。二つ意味でいい。  一つは、現先ですから、短期ですから非常に弾力的に、予想外のことが起きても対応ができます。それからもう一つは、現先というのはマネーマーケットの話、短期金融市場の話ですから、これでありますと、日本銀行はオペで相当程度影響を与えることができます。だから、運用部が現先で金を吸い上げたからといって、金利が上昇しないように日銀が逆に買いオペで対応するというのも極めて容易。その二つ意味で、大変いい方法を考えつかれたと思います。  しかし、誤解が生じてはいけないと思うので、日本銀行の見解をお伺いしておきますが、現先といえども、くるくる回していれば根雪になってしまうのだから、これは日銀による国債引き受けへの道を開くものではないかというふうな批判が出てくるかもしれないと思うのですね。日本銀行としてはそれについてどういう見解をお持ちでございましょうか。
  41. 速水優

    速水参考人 この問題は、大変金利の高いときに大量の郵便貯金が生まれまして、それが来年の四月以降、二年間で百兆円も期日が来て、それが現在のこの金利状態の中でどれだけ、ロールオーバーといいますか、残っていくことができるのかという非常に難しい問題であると同時に、金額が大きいだけに私どもとしてはこれは大変なことだなということで、かなり早い時期から大蔵省の御要請もあって協議をしてまいったわけでございます。  今回の措置の基本的な考え方は、今御指摘ありましたように、資金運用部が必要とする資金については資金運用部みずからが市場から調達するということを原則とする、それと同時に日本銀行もこれを補完する形で一時的な流動性を供給するということでございます。  資金運用部を含めまして政府資金繰りが中央銀行資金に依存することは、本来望ましいことではございません。ただし、今回の場合、郵便貯金の資金流出の規模とペースなどについてなかなか見きわめが難しいわけで、資金運用部の資金繰りやそれに対応する金融市場の資金過不足の振れが極めて大きいものになるだろうという感じがいたしまして、こうした点を踏まえまして、日本銀行としても円滑な金融調節を実施していこうということで一定の協力を行うことと決めたわけでございます。  本件に関して特に御理解いただきたいと思いますのは、この日本銀行の対応というのは、政府に対して長期固定的な資金を供給しようということではないということでございます。今回の対応は、まず郵便貯金集中満期という二年間に限られた例外的な措置であるということと、あくまでも資金運用部みずからが市場調達をすることを原則としながら、日本銀行は必要と認められる場合に一時的な流動性を供給するということでございます。  特に今回は、以上のような意味で必要な対応を講ずることとしたわけでございますが、金融調節を預かります日本銀行としましては、国会でも今後の郵貯のあり方、財投のあり方について精力的に御議論を続けていただいて、今回のような郵貯問題が再び発生することのないように強く期待いたしておる次第でございます。  いずれにしましても、日本銀行としては、日本銀行による国債の引き受けを禁止しております財政法の精神につきましては、今後とも厳に守っていくつもりでございます。
  42. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 大変力強いお言葉で私も安心いたしましたが、ぜひ今おっしゃったようなことを、先ほどと同じことでわかりやすく国民に訴えて、誤解に基づくマスコミ報道などが出ないように御努力をいただきたいと思います。  大蔵大臣はお席にいらっしゃいませんが、大野総括政務次官、この件につきましては非常に早くから大蔵省日本銀行が話し合っていい案をおつくりになったと私は理解しておりますが、もし何か一言御感想がございましたらお願いいたします。
  43. 大野功統

    大野(功)政務次官 鈴木先生に、いい案をつくった、こういう高い評価をいただきまして、私も、全くいい知恵を日銀の協力のもとに出していただいたな、金融市場にも大変安心感を与えたのじゃないか、このように思っています。  ポイントはもう議論されておりますが、私、一つは、これは短期の世界であって長期の世界じゃない。それからもう一つは、アウトライトオペレーションじゃない、売り切り、買い切りじゃない。それからもう一つ、やはり日銀のバックアップがある。この三点は高く評価できるのじゃないか、このように思っております。
  44. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 全く同感でございます。  最後に、もう時間もありませんので、話題を変えまして、円の国際化について御質問させていただきます。  本年に入って、自自公政権のもとで円の国際化を推進するような手が次々と打ち出されております。例えばFBを入札発行に切りかえる、これによってTBとFBという短期の政府の証券の、百兆円近い規模に持っていこうと思えば持っていけると思いますが、そういう市場をつくることが可能になってきた。  また、非居住者や外国法人の受取利息差益等に対する税金の源泉徴収、これを免除した。もう御承知のように、アメリカとドイツはこれをやっておりませんから、ドルやマルクに比べて、円はこの点で非常に厄介な国際通貨というふうに国際的には見られていたわけですが、それをやめた。  それから、有取税と取引所税を廃止することによって金融取引のコストを下げた。  それから、国債についておりました繰り上げ償還条項、これは使ったことがないのですが、こんなものがついていると、本当に繰り上げ条項を使われたときには、例えば、今のようにマーケットの値段が額面より上にいるときに繰り上げ償還なんて言われたらどんと下がって大損しますから、こんなものがついていたんじゃ国際通貨円の運用に際して、まじめに考えると怖くて国債を買えないなという話になります。これもやめたわけでございます。  こういうふうに、次々と自自公政権のもとで円の国際化を進める手を打ってきたわけでございますが、これまでのところ、これらの手によって多少とも円の国際化が進むような動きがあるのでしょうか。統計は非常におくれるので我々にはわからない。しかし、マーケットを見ておられる日銀総裁とかあるいは現にこういう手をお打ちになった大蔵省の方で、こういう手を打ったから円の国際化は少しは進み始めたよということがあればお答えいただきたいと思いますが、日銀総裁、いかがでございましょうか。
  45. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  円の国際化、これは、私はかねてから三つの条件を言っておりました。一つは、円への内外の信認が強いこと、二つ目には、円の背景にある経済というものが、実体経済が強くて大きいものであること、三つ目は、円が使い勝手がいいものであること、この三つの条件を満たしていかないと円の国際化は成立しないと思っておりました。  昨年の四月からこれが一つ一つ始められて、例のフリー、フェア、グローバルといったようなことで実現していったわけでございます。数字だけを見ましても、市中公募された金額ベースで見ますと、短期国債市場の規模で、FB、TBというのが円を主体としたああいう国際金融市場のまさに花形となるべきものだと思うのです。これが真っ先に自由化されまして、本年の三月末の十七兆円というのが、この九月末には既にもう三十七兆円程度まで拡大しております。FB公募入札化が完了いたします来年度に入りますと、六十兆円規模の市場に成長していくというふうに見ております。  この間、私どもも従来のFBやTBを使ったオペレーションをどんどん拡充してきております。政府におかれても、先ほどおっしゃったような有取税の廃止とかFB、TBの償還差益に係る源泉徴収、源徴の撤廃、そういった税制面の見直しもやってきてくださっておるわけで、円の国際化に当たりましては、市場の取引実態ども踏まえながら、制度面の手当てを含めて今後とも努力を積み重ねていきたいと思っております。  遅まきではございますけれども、円の国際金融市場が育つということは、金融業のみならず、IT産業とか通信、その他ロンドンのシティーなどを見てもおわかりのように、非常に大きな波及効果を持つものだというふうに思っております。国内経済の立ち直りがまだ一部に懸念を残しております現在において、このように円を主体とした国際金融市場が東京に育ちつつあるということは、実に喜ばしいことだというふうに思います。  これをもっともっと広げていってCP、手形、社債、国債、株、さらには貿易にも、もっと海外で円を持ち円を使ってもらうようにしていけば、今の円高に対する企業の抵抗力といったようなものも、円を使うことによって解けていくのではないかというふうに思っております。
  46. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 円の国際化、私どもが打った手で着実に進み始めたというお話を伺いました。しかし、これでいいというわけのものではないと思います。まだまだ打つ手があると思います。  大蔵大臣、お忙しいところお戻りになったばかりで恐縮でございますが、もちろん円の国際化を推進するお立場だと思いますけれども、そのためにまだまだ打つ手がある。  例えば、さっきも渡辺委員がちょっと言っておりましたが、日本では国債のストリップス債を認めておりませんですね。これはやはり不便だと思います、国際通貨円を運用するときに。それから、現先の方法が、日本では有取税を回避するため変な格好をとっておりまして、現金担保を入れておいて貸借みたいなことをやるわけですね。これはもう堂々と売り戻し条件つきの買いという正攻法のやり方でやりませんと、諸外国から見て、日本金融市場は使い勝手が悪いね、変なところだねということになると思います。  また、決済の面でも、よく言われますように、リアルタイムのグロスセツルメント、即時グロス決済というのでしょうか、あるいはデリバリー・バーサス・ペイメント、証券の授受と決済を同時にぱっとやるとか、そういうものを、エレクトロニックなファンドトランスファーをひっかけてやっていきませんと、ニューヨークあるいはロンドンと並ぶ三大国際金融センターにはなれないと思うんですね。  たくさんまだまだ打つ手があると思っております。一円が〇・〇〇九五ドルだ、ゼロが三つも並ぶような状態は、通貨は御承知のように価値尺度機能というのが基礎ですが、価値尺度機能に劣っているということかもしれません。いろいろ考えるべきポイントがあると思いますが、最後に大蔵大臣の御所見を伺わせていただきたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円の国際化につきましては、戦後長い間、我が国自身の基本的なポリシーというものが必ずしも明確でございませんでしたが、ここへ来ましてかなりそれがはっきりしてまいりましたことは喜ばしいことでありますし、また、先年の東南アジアの為替危機などからも、結果としてはそういう空気が少しずつ醸成されておるというふうに見ておりまして、政府としましても、今鈴木委員が言われましたように、あるいは日銀総裁がお答えになられましたように、具体的に円が使いやすいような、使ってもらえるような国際通貨にしたいという制度上のいろいろな改善をいたしてまいっております。  今お話のございましたストリップス債それからリパーチェーシングのことも、税金がなくなりましたわけですから、それなりの新しい方法があっても一向に差し支えないように思います。そういう観点で、まだ改めるべき制度上の問題があれば、それは改めることの方が望ましい。さしたる支障もないように思いますので、そういうふうにいたしまして、円を持ってもらった場合に円を十分に使えるというための市場の整備、制度の整備、あるいは障害になるものの排除をこれからも進めていくべきものというふうに考えております。
  48. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。終わります。
  49. 金子一義

    金子委員長 次に、岡田克也君。
  50. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也でございます。  大蔵委員会は初めてですので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  さて、ちょっと通告と順序を一、二と入れかえて、金融行政の方からお聞きをしていきたいというふうに思いますが、現在の我が国の銀行を中心とする金融機関の置かれた状況といいますか、一言で言えば惨たんたる状況である、そういうふうに思います。グローバルな競争力を持った銀行は現時点ではない、あるいは一周おくれ二周おくれだ、こういう話もございます。それから、バブルの負の遺産である不良債権の処理もまだ十分には終わっていない。そういう中で、金融が傷んでいるということが日本経済全体をおかしくしているわけでありますし、あるいは、いつ金融機関が倒れるかもしれないということで国民生活にも大変な不安を招いている、そういうふうに思います。  大蔵大臣にお聞きしますけれども大蔵大臣はかつて大蔵大臣も務められ、総理も務められたわけでありますが、現在のこういう日本金融状況を、どこで失敗をして現在のような状況になったのかとお考えでしょうか。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 片方で、一九八五年がプラザ合意でございますが、そのころには、世界の銀行といえば十大銀行はほとんど日本銀行といったような時代がございました。そのことを考えますと、全く今昔の感にたえない、アメリカ銀行あるいはヨーロッパの銀行が全部その地位をとってしまった。ですから、問題は明らかにその間にあったということになります。端的に申して、プラザ合意以降の日本通貨の上昇、それからくる日本経済の変貌、バブルがあり、バストがありという中で金融機関がかつて持っていた地位をそのように失ったということになりますから、その間に事情があったということは明らかと思います。  いろいろございますけれども金融機関自身が、いわゆる世界のリストラクチャー、アメリカが非常に苦労をして、御承知のようにナショナルシティーがもう少しでどうなるかというところまで苦労したときに、持っていた地位が逆転をしたわけですから、そういう苦労を結局しなかったということになる。なぜしなかったかということになれば、恐らく、アメリカ銀行がそういう状況でございましたから、国際化の波が押し寄せてこなかった。こちらはそれをいいことにして、何となくやはり護送船団行政というものに甘んじていた。そこらが問題でありましたでしょうから、それは大蔵省銀行行政にも問題のあることであります。  それで、こういうことになりまして、一昨年の三月ごろにはジャパン・プレミアムがあれだけ大きなものになって、借りられない銀行もあるという惨めなことで、私は、いっときは銀行一つ二つ、証券会社でも一つ二つ世界の市場に出ていけるとかつて思ったことは全部だめになったかなと思っていましたし、今でもまだそういう自信がしっかりあるとは申しませんが、さすがにいろいろな施策がなされ、銀行自身もいろいろ苦労をして、ここへ来て銀行間、金融機関の間の合併などがかなりのテンポで行われるようになりましたので、一緒になったから強くなるというわけのものじゃございませんでしょうが、これでしばらくたてば幾つかは世界的に競争できる立場になるかな、ようやく今なるだけの情勢が少しずつできてきているんではないかと思っています。  ですから、お答えといたしましては、どこが間違ったかとおっしゃれば、一九八五年からその後に起こりました状況に対処できなかったということであると思います。
  52. 岡田克也

    ○岡田委員 今大臣はプラザ合意以降のことをお話しになったわけでありますけれども、私は、もう少しさかのぼる話ではないか、そういうふうに思います。つまり、今回のバブルにおける例外がない都市銀行のバブルに踊った姿、そういうのを見るときに、やはり護送船団方式の影響というものが非常にきいているんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。  実は、貿易とか資本の自由化というのは、一九六〇年代に日本がOECDに加盟することによって一区切りつけたわけであります。そのときにもいろいろな議論があったと思いますけれども、それを日本政府として決断をして、貿易や資本の自由化に踏み切った。それから護送船団方式を捨てて金融の自由化まで、一体、三十年近い間何をしていたんだろうか、こんな気がいたします。  たまたま先般ある本を読んだのですけれども、長銀の取締役だった箭内さんという方が書かれた「元役員が見た長銀破綻」という本でありますが、その中にもこういう表現が出てまいります。  七〇年代の銀行は一店舗でも多く支店を出したかった。八〇年代は金利自由化が進行中で少しでも新商品を出したかった。九〇年代は業態の垣根を低くする中で多角化が最重要課題であった。しかし、そのいずれもが、すべて許認可は大蔵省の一存で決まった。そういう中で、自分で考えることを放棄し、自己責任やリスクの感覚がなくなっていった。こういう表現があります。  これは非常にわかりやすいお話だと私は思うわけでありますが、例えば、バブルのときにいろいろな業界でそれぞれ問題が起きました。しかし、大手の都市銀行がすべて例外なくそのバブルに踊ったという姿を見るときに、やはりそこには護送船団方式の影の部分が色濃く出ている、そういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に同感でございます。  私は以前から思っておったことでございますが、特に岡田委員は通産行政にはお詳しいので、通産行政大蔵省金融行政とを比べましたときに、いわゆる自由化、ガットもございますし、OECDもございますし、いろいろな意味で、戦争中、戦後の統制経済というものがなくなって、産業では自由化が行われて、その結果として、これは大変立ち入った表現ですけれども、通産行政というのは、実は立っていく一種の基盤を失いそうになった。そのときに通産省は、これは自分たちは国民のサービス官庁になるしかないというふうに考えて一生懸命努力をされました。  それは立派な成果を果たしたと私は思っていますが、そのときに大蔵省は、統制法規が残っているものですから、あるいは殊に金融行政では護送船団方式というようなものがありますものですから、簡単に言えばのほほんとしておったということ。厳しい言い方ですが、私はそれは本当だったと当時から思っているわけです。  それに加えまして、アメリカ金融行政が非常に弱りましたから、自由化についての外からのプレッシャーがかかりにくかった。そのことが加わりまして、護送船団行政というものが生き延びてはいけない長い期間生き延びた、おっしゃることは、私はそのとおりと思っています。
  54. 岡田克也

    ○岡田委員 そこで、バブルで踊って大量の不良債権が発生した、こういうことでありますが、宮澤大臣が総理大臣時代に、つまり九二年の八月に自民党の軽井沢セミナーで、銀行救済ではなくて、迷惑するのは国民である、そのために公的援助をすることにやぶさかではない、こういう御発言がありました。  つまり、そのときにはもう既に宮澤総理は不良債権の問題の深刻さというものを十二分に認識されていた、こういうふうに思うわけでありますが、そのことが実現しなかった、いましばらく不良債権の問題に本格的に取り組むには時間が必要であったということは、これはなぜだというふうにお考えでしょうか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実現できなかったのは、私にそれだけの資質がなかったと申し上げるしかありませんが、当時の状況で申しますと、今から申せば、まず産業界は、経団連を中心にして、金融機関を救済するということに本能的な嫌悪を持ったということがあります。  次に、金融機関は、非常にいいところは自分のことではないという思いがしましたし、悪いところは自分のところがやられる、押しなべてすべての金融機関が、これは役所が入る、役所が入れば必ず自立性が失われる、あるいは責任者が出ると考えた。  最後に、お役人さん方は、いろいろ日本の経済もそう悪いことばかりはあるまい、そのうちによくなるだろう、自分たちがいろいろ仕組んできたことがそうすれば必ずそこで生きるだろう、余計なことを総理大臣にはしてほしくない、そういう雰囲気であったと思います。
  56. 岡田克也

    ○岡田委員 当時のことを西村元銀行局長がお書きになっているのですが、当時の銀行の経営状況や世論の動向を見ると、その実行にはよほどの政治的決断と指導力を要する難問であった、こういうふうに西村さんが最近書かれた本で書いておられます。  現実に、ほぼ同じ時期に、銀行行政の当面の運営方針という紙が書かれておりまして、その中では、状況をいたずらに悲観視することなく、冷静にして沈着、着実に真剣な対応をすることで問題解決可能である、こういうことで、いわば大蔵省の事務当局の方は、総理の発言にもかかわらず、時間をかけてゆっくりやっていこう、こういうことだったのじゃないかというふうに思います。  しかし、ここで私申し上げたいのは、そのときに宮澤総理は、公的援助をすることはやぶさかでないというふうに触れられたときに、同時に、ただし、そのときには銀行自身がどれだけの不良資産を抱えているかディスクロージャーしないといけないということも述べられたと報道されております。  ですから、私は、このときにもっとやりようがあったのじゃないか。もちろん、今おっしゃったように、産業界も、あるいは当事者である金融業界も、あるいは大蔵省の事務当局も、それぞれの事情のもとで必ずしももろ手を挙げて賛成ということじゃなかったかもしれませんが、しかし、そういったディスクロージャーを迫っていくという中で、実態を明らかにして、そして国民に理解を求めれば、私は、必ずしもこのときにやってやれなかったことではなかったのじゃないか。特に、宮澤総理、そのときは日本国総理大臣でありますから、一番力をお持ちの方であります。ですから、総理が本気になればできたのじゃないかという気がして仕方がないわけでありますが、いかがでしょうか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今御引用になりました表題のポリシーは、その年の八月に東証の株が一万四千三百幾らになりまして、一万四千円を割り込みそうになりました。そこで、私が大蔵省に言いましてつくらせた紙であります。それで一応株のピンチは逃れたわけでありますけれども、さらにその底にあるものへメスを入れようというところまで展開をすることができませんでした。  まさにおっしゃいますように、おまえがしっかりしておればできただろうと言われれば、自分の不明を申し上げるしかありませんが、当の金融界が賛成でない、産業界が賛成でないという状況の中では、言ってみれば、あのとき手術をしておけば大ごとにならずに済んだ、どうしてできなかったのかと言われているような思いがいたしておりまして、正直を申しまして、それから日本の経済がああいう展開になってしまう。もうそろそろ土地の値段も上がるだろう、株も底をついたのじゃないかといったような、そういう見方がいわば大方でありましたから、そういう非常にドラスチックな、手術をしなければならない、そういういわば世論と申しますか、認識になってこなかった。  総理大臣の責任だとおっしゃられれば、もう何も申し上げることはありませんが、そういうことでございました。
  58. 岡田克也

    ○岡田委員 その後も、不良債権の処理を、当面を糊塗するために大蔵省がおつくりになった共同債権買取機構、これも見方によっては債権の飛ばしである、合法的な飛ばしであるという言い方もできるかと思いますし、あるいは、大手行は一行たりともつぶさないということはつい最近まで言われてきたわけでありますが、そのことがかえって、政府もそう言っている以上つぶれることはなかろうということで、みずから努力するそのインセンティブを奪ったのかもしれません。  あるいは、再建計画中のものについては第一分類にする、住専のときだったと思いますが、そんないろいろなことが積み重なって、とにかく後送り、後送りする中で今日の状況になっている。そのことは私は言わざるを得ないわけで、ここはやはり日本金融行政の戦後の大失敗でありますので、そこをきちんと分析をして、そしてどこに問題があったのか、私は大蔵省としてもぜひそのことについては率直に分析をし、そして考え方、反省を国民に対しても説明をしていただきたい、そういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一九八五年以降、そういう事態に至りますまでの出来事、それについて、まずぼつぼつ客観的な説明が、叙述ができてこなければなりませんし、また、その間行政がどのように誤ったかということも説明されなければならないと思います。  率直に申しまして、しかし役所が自身でそれをどれだけ客観的にできるかということには、まだ少し問題があるかもしれない。むしろ、客観的に一種の学問的な分析として、そういうことがそっちの方から起こってくることがまず望ましいのではないか。それが常識になりましたときに、それを役所としての自己反省としてどのように裏づけるか、ここのところはどうしてもなされなければならない分析が大事な問題として今残っておるということは、私も岡田委員と同様に考えています。
  60. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、次に参ります。  先般の大手行への資本注入の問題について御質問したいと思いますが、越智大臣にお聞きする前に、ちょっと別の問題で一言お聞きしたいと思います。  平成五年十月四日の予算委員会におきまして、越智大臣質問に立っておられます。質問の相手は当時の石田大臣であります。石田大臣に対して、創価学会の建物を使って創価学会の人々が動きながら、何か公明党の選挙運動というか政治活動というか、そういうものと宗教の活動とが混然一体となっているように見えるけれども、それは政教分離ということとの関係でけじめがついていないんじゃないか、こういう御質問をされているわけでございます。  その御質問の大前提として、政教分離というものに対して、一般に言われているように、政治が宗教に介入するということを禁じているのが政教分離であるという考え方に立ったのではなくて、宗教が政治に対して物申すことも政教分離に反している、そういう前提に立たないとこういう質問は出てこないというふうに思うのですが、そのとおりでよろしいでしょうか。
  61. 越智通雄

    越智国務大臣 今、思いもかけず六年前の話を伺いました。  平成五年は、夏に宮澤内閣が終わりまして、そして、当時の非自民と言われる八党でございましたか、細川内閣をつくりまして、予算委員会が開かれたのは十月が初めてだったと思いますが、私は当時自民党の理事筆頭でございまして、野党は自民党だけという時代で……(発言する者あり)失礼いたしました。自民党と共産党だけが野党で、共産党さん、理事が出ていなかったものだからうっかりしました。それで、私は、いわば代表質問と言ったらおかしいですけれども、自民党としてこういうことを聞くということになりまして、石田さんのみならず何人かの閣僚の方にいろいろ違ったポイントで御質問したことを覚えております。石田さんはたしか法務大臣でいらっしゃいましたでしょうか。  そのときにお伺いしましたのは、今のお話のように、宗教団体の施設というものは課税その他からいうと別扱いを受けている、それが実際上公明党の選挙運動の使用に供されている場合には、一体そのけじめはどうなっているんだという議論がございまして、私の方で、どこか具体的な建物の名前が挙がったかと思いますけれども、ここを使っていませんか、それはおかしいんじゃないですかということでお伺いいたしましたら、そういう趣旨では使っていない、自分たちの宗教活動で講堂を使っているんだという御返事があったように記憶しております。  突然の御質問なので前の議事録を読んでおりませんけれども、そういうことでそのままに終わった、これが当時の実情でございます。
  62. 岡田克也

    ○岡田委員 石田さんはそのとき総務庁長官だったと思いますが、私が今聞きましたのは、越智委員質問の中で政教分離という言葉が出てくるわけですね。施設を利用することが政教分離に触れるのだということになりますと、それは一般に言われている政治が宗教に対して介入することを禁じているだけではなくて、宗教が政治に対して物申すことも政教分離に反している、そういう前提に立っていないと、こういう施設を使ったことについて政教分離という言葉は出てこないはずであります。  そこは現時点で越智大臣は、政教分離の意味として、そういった宗教団体が政治に対して口を出すということも含めて政教分離に反するというふうにお考えなんでしょうか。
  63. 越智通雄

    越智国務大臣 現状での認識をお問い合わせいただきました。  政教分離というのは、片側ではないと思います。両側から、どちら側からでもそれは分かれているべきだと考えております。
  64. 岡田克也

    ○岡田委員 しかし、今のお話は先般の総理の答弁とは矛盾しませんか。
  65. 越智通雄

    越智国務大臣 済みません。その点は総理は何とお答えになったのでしょうか。
  66. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっと今総理のものは持ち合わせておりませんが、例えば法制局長官の答弁等も含めまして、政教分離というのは、先ほども言いましたように、政治が宗教に対して例えば弾圧をしたり介入したりするということを禁じているのであって、その逆ではない、これが従来の政府の解釈だったと思いますが、今の大臣の答弁はそれとは違うわけですね。
  67. 越智通雄

    越智国務大臣 政教分離という意味はどういう定義かと聞かれたのなら、それはそういう定義があるのかもしれません。  私は、政治と宗教は、どっちがどっちに影響力を行使することも好ましくないという政治的信念といいますか考え方を持っております。そのことを申し上げたのです。
  68. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、好ましい好ましくないという個人的な見解を聞いているのじゃなくて、政教分離というその言葉に対する解釈を聞いているわけであります。  今の越智大臣お話はよくわかりましたので、これはまた次回以降やらせていただきますが、私は、小渕内閣の考え方とは大分違うお考えをお持ちである、そういうふうに認識をいたしました。  さて、ちょっと横にずれましたが、それでは先般の大手行への七・五兆円の資本注入についてちょっとお聞きしたいと思いますけれども、これは柳沢前大臣のときの話でございます。  大手行に対する資本注入に当たって、例えば、破綻懸念先債権の無担保部分については七〇%の引き当てで計算をするとか、あるいは要注意先債権の中の要管理先債権については一五%の引き当てで計算するとか、あるいは株についても時価で計算をする、計算の仕方としてはそういったことで、いわばアメリカンスタンダードでやって、そして七・五兆という非常に大きな額を資本注入したわけですね。そのことについて、いろいろな議論も当然あったと思います。やり過ぎだとか、銀行の方からはいろいろな議論も出たと思いますが、その点について越智大臣はいかに評価しておられるでしょうか。
  69. 越智通雄

    越智国務大臣 お話は早期健全化法の場合のことだと思いますが、早期健全化法のときには、きちんと資産の評価をし、そしてそれの引き当てを行い、また証券等についてはそれの評価もする。このときに、法律上は「適切に」としか書いてないのですよね。法律上に何%とは書いてございません。  御党で出されたのは、三つの分類で、債権といいますか資産分類等も重大懸念先とかいろいろ分け方があるのですが、三つの分け方のときに、率が多少私どもがやっているものと御党の提案とは食い違っておりますけれども、それはそれなりに私どもは公認会計士の方とも十分連携のとれた線で告示を行い、その告示に基づいて計算をした上で注入必要額を計算している、このように考えておりますので、その点は何ら問題ないと思っております。
  70. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党がかつて唱えたこととかなり似ているということは申し上げたいと思っておりましたが、今お聞きしたのは、民主党がどうのというよりも、平成十一年一月二十五日の金融再生委員会の「資本増強に当たっての償却・引当についての考え方」、その中で、先ほど言いましたような破綻懸念先債権については七〇%を目安にするとか、あるいは担保、保証で保全されていない要管理先債権については一五%を目安にするとか、株は時価で評価するとか、そういった基準を使って、ある意味では申請した銀行が予想していたよりも多額の資本注入をした。そういう手法、やり方について、越智大臣としてはどういうふうにお感じかということをお聞きしたわけです。そういった柳沢前大臣のやり方について、一番よかったというふうにお考えですか。
  71. 越智通雄

    越智国務大臣 それは行政の一貫性でございますから、既に一年近く前に出されました、そもそも再生委員会というのはちょうど一年前ぐらいにできているわけでございますが、それに従って行われました資本注入は、それなりに適正なものだと考えております。
  72. 岡田克也

    ○岡田委員 それではもう一度お聞きしますけれども、それでは、地銀とか第二地銀、あるいは信金、信組もあると思いますが、そういった金融機関に対する資本注入について、越智大臣は、嫌がる銀行に無理に資本注入する必要はない、リストラや再編は民間の責任でやるべきことであるというのが私の哲学である、こういうふうに述べておられるわけですね。  ということは、今後そういった地銀あるいは信金、信組についての資本注入については、基本的には申請してきたものについて、そして資本注入の額についても大手行とは違う基準で注入されるというふうにお考えなのでしょうか。それとも、同じような引き当て、同じような時価評価で注入されるというふうにお考えなのでしょうか。
  73. 越智通雄

    越智国務大臣 御党の基準では全部一緒にしていますけれども、再生委員会の方では国際基準行と地域銀行とは区別して認識いたしております。  そして、私が申しましたのは、あくまでも資本注入、これは当事行が手を挙げてくるのが前提だと私は思っておりますので、手も挙げてこないのに嫌々薬を飲ませるというか、そういうことではないだろうということを申し上げているわけで、その点は変わりません。  ただ、実際にそういうケースが出たときの計算の仕方はどうかと言われたら、従来の決めたとおりのことで計算をしてもらうしかない、このように思っております。
  74. 岡田克也

    ○岡田委員 そうしますと、大手行以外についても、先ほどの金融再生委員会が一月二十五日に出された考え方、資本増強についての考え方は踏襲される、こういうことですね。
  75. 越智通雄

    越智国務大臣 行政の一貫性としては当然のことと思っております。
  76. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは次に、私は、ペイオフが二〇〇一年四月ということで迫っている中で、預金者が銀行金融機関に預金をする際に、判断をするだけの情報というものがなければ、この銀行が安全かどうか自己責任で判断しろといっても、きちんとした情報が出されていない限りそれはできないわけでございます。  ところが、現時点における情報の開示というのはかなり問題がある、こういうふうに思います。今公表を求められているのは、金融再生法施行規則四条に基づいて、四つに債権を分類して、そして公表することになっているわけでありますけれども、この中には、実は第二分類というのがほとんど正常債権に含まれている。つまり、要管理債権というのがありますけれども、それ以外の第二分類については正常債権の中に含まれているということで、実態がよくわからないという状況に私はあると思います。  それから、株の評価はもちろん時価ではなくて取得時の価額でいい、こういうことになっておりますから、もし、二〇〇一年の四月の段階においてもこういった現在の金融再生法で求める情報開示の数字が続いているとすれば、私は、預金者に自己責任で選んでくださいということは言えないというふうに思いますが、この辺をもう少し引き当て率をきちんとして、そして、株価についても時価で計算をして、実際にその金融機関状況がどうなっているかということが預金者に判断できるような、そういうふうにお変えになるつもりはございませんか。
  77. 越智通雄

    越智国務大臣 正直申しまして、前のあれで言えば、第二分類のところが大変わかりにくいという点はそのとおり、いろいろこれはもっと工夫をしなければいかぬだろうとは思っております。言葉で言うと、十分に注意しなければいかぬとか、管理が必要だとか、それを現実のそれぞれの債権の評価に当たってどういうふうにやっているか、おっしゃるように、その問題は大事だと思いますが、逆に言うと、それを一々どこまで公表できるか。何々会社に対する債権がどうという、それはなかなか非常に難しいところもございますので、できるだけ情報が明らかになるようにしなければいかぬ。  しかし、その前提になっております検査の実施でございますが、いわゆる大手行その他、大体全部終わりまして、第一地銀もよろしゅうございまして、第二地銀も再来年の三月までに終わります。そして今、信用金庫は何とか全部終われると思いますけれども、信用組合の方は、もしそれまでお考えになっているとすれば、信用組合の方は実は来年四月一日から我が方に来るものですから、ではこれが一年間で全部やれるか、約三百ございますものですから、そう言われると、大変、何と申しますか、今お引き受けしかねる状態ではないかな。来年度の人員の定員増加などもお願いしておりますけれども、諸般の情勢が整わなければ、今かなり苦しい状態かなという認識でおります。
  78. 岡田克也

    ○岡田委員 なかなか数字がよくわからないものですから、非常に国民も不安に思っているというふうに思います。  二〇〇一年四月ということを考えると余り時間がないわけでありますが、一年間の定義だと考えればもう数カ月しかないわけですけれども、やはりその間に相当思い切って、検査をするのは大前提でありますけれども、だめなものは破綻させる。そして、それなりの健全性を持ったものについては資本注入を、それは強制はできないかもしれませんが、大手行に対して柳沢大臣がやったような形で、まあある意味ではだまし討ちみたいなことだったかもしれませんが、かなり思い切って資本注入していくということがないと、ペイオフができないということになってしまうのじゃないか、そういうふうに思います。  私は、ちゃんとやるべきだという前提で議論させていただいているわけですけれども、そういったことについて、もう少し大臣として、積極的に検査、そしてその結果としての破綻ないし資本注入ということをどんどんやっていくという姿勢はお持ちじゃないでしょうか。先ほどのお話のように、向こうが言ってくるのを待っているということでは、全く状況は変わってこないというふうに思うわけですが。
  79. 村井仁

    村井政務次官 若干金融監督庁の所管にかかわることでございますので、私から申し上げさせていただきたいと存じます。  いわゆる金融検査マニュアルによりまして、ことしの七月一日以後実施する検査につきましてはこれをやっているわけでございます。それで、できるだけ正確な資産査定、それから償却、引き当て等決算処理に関することにつきまして、銀行につきましては中間決算、これは十一年の九月期でございますが、これから適用する。それから、信金等の協同組織金融機関、これにつきましては、十二年、来年の三月期決算に係る検査から適用するというようなことでやっていくわけでございますが、これがなかなか、数も数でございまして、大変でございます。  実際問題といたしましては、例えば信用金庫について申しますと、平成十検査事務年度、これは七月から翌年六月ということでございますが、これで百三十七金庫を実施し、今検査年度に二百二十金庫、これは予定でございます。次の来検査事務年度におきましては、その残りの三十七金庫に対して実施するというようなことで鋭意努力をしてまいる、こういうつもりでございまして、いずれにいたしましても、こういう検査をきっちりやりまして、その上で、お示しのように、できるだけのディスクロージャーをしてまいるということが大切だろうと思っております。  もう一つの問題は、先ほど委員長からお触れもございましたが、信用組合でございます。これの所掌が私どもの方へ移るのが来年の四月、そうなりまして、その後に検査をするということでございまして、時間が大変限られておりますから、私どもその辺の問題意識をよくわかっておりますので、都道府県に対しましても、現在の段階でもしっかりと検査をやるように、いろいろな意味で指示もいたしているということでございまして、できるだけ、ただいま岡田委員から御指摘のございました懸念を国民の側から持たれないような努力をしてまいりたい。  そのように、まずは実態把握、これに努めたいということでございます。
  80. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろ御説明いただいたのですが、金融再生法に基づく債権の分類、これは随分この法律をつくるときに民主党と自民党の中で議論があったところですが、これを二〇〇一年までに変えるというお考えはありませんか。
  81. 越智通雄

    越智国務大臣 今のところ私どもは、作業日程上、そういうことを考えておりませんが。
  82. 岡田克也

    ○岡田委員 ですから、今の再生法ですと、正常債権と要管理債権、危険債権それから破綻債権、こういうことですから、第二分類のほとんどが正常債権に入っちゃっているわけですね。これでは本当の実態がどこまでわかるのかなと、これはこの法律をつくったときから議論があったところでありますけれども、そのことを申し上げておきたいと思います。  それでは次に、長銀の問題をちょっと、時間も限られておりますが、申し上げたいと思います。  御案内のように、長銀が国有化されて、そして約四兆円近いお金がつぎ込まれて、リップルウッドに売るという方向で話が進んでおりますが、先般、これは九月二十九日ですが、大蔵大臣の記者会見を見ますと、大蔵大臣はこういうふうに言われているんですね。  長銀については、御案内のように、住友信託との合併の話というのがあったわけですけれども、もし合併しておったらもっと負担は少なかっただろうという議論は、今後もいろいろなされるであろう。しかし、そのことは国会の審議を通じてその可能性は消えていったわけですから、そういう事実は踏んまえて判断しないといけないだろうと思います。こう記者会見でお述べになっているんですね。  つまり、住友信託と合併しておったらもっと負担は少なくて済んだのじゃないか、こういうことだと思うのですが、今でもそういうふうにお考えでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、そういう質問がありまして、当時を回想して今御引用のことを答えたわけですが、今のお尋ねは、あそこで合併ができておったらこれだけの経済負担というものが生まれなくて済んだだろうかというお尋ねでございますから、実際に起こりました人文科学上の出来事であって、サイエンティフィックな出来事ではないものですから、もしということにお答えするのは非常に難しいことでございます。  現実に起こりましたことは、金融監督庁は、ある段階では、長銀は債務超過でない、債務超過と信ずる理由はないという判断をずっと続けてきておられましたが、国会で御審議がずっと進んでいきますうちに、現実に長銀の株価が下がっていく、ワリチョーが売れなくなるといったようなことが、これは人文科学のことでございますが、現実にずっと起こってまいります。その結果、最終的には、長銀が預金を支払うだけの能力がないということで法の適用を受けることになる。その数カ月の間の出来事を、もしそういうことがなかったらどうだとおっしゃいましても、それはお答えする方がなかなか難しい。  仮に住友信託との合併ができておったとしたらどうなのかというようなことをお尋ねになっているわけですから、そのところには、あのときの国会の御審議で、第一次的に不良債権を処理して、それを善後処置するために公的資金を一遍導入する、そして合併に進むという手続そのものが、そういうところに公的資金を導入していいのかという、これは国会で大変に御批判のあったところ。そういうこともございましたから、あれを全然なしにして、合併ができたらどうだったかということをお答えすることは事実上ちょっと難しい、正直を申しまして。そういう仮定を置けるかどうかというような感じがいたします。
  84. 岡田克也

    ○岡田委員 では、ちょっと質問をかえますが、もし住友信託と長銀が合併をしたとしたときに、一体どのぐらいの公的資本の注入が必要であったというふうに思われるでしょうか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、お答えすることが再び難しいわけでございますが、それは国会の御議論の中で、資産状態がどんどん変わってまいりますから。  ただ、仮に、あえて申し上げるのならば、一つの企業が生きておりますとき、ゴーイングコンサーンであるときは、生きているものはさらに元気になる可能性があります。しかし、死んでしまえばそれはもう元気になる可能性はありません。したがって、ゴーイングコンサーンがゴーイングコンサーンであるということは、やはりいろいろな意味で大事なことであって、それが死に体になってしまえばそれはもう回復の見込みがないということがございますから、したがいまして、一般論として、合併等によってゴーイングコンサーンがゴーイングコンサーンとして生き残るということは、決して無意味なことではないということは申し上げられるだろうと思います。
  86. 岡田克也

    ○岡田委員 ゴーイングコンサーンという単語は、まさしく長銀の責任者が、そういう名のもとにいろいろなプロジェクト会社をつくって、そして債権の飛ばしをしていった、こういうことだと私は思うわけですけれども、今、株価が下がるとか、それから資金が集まらないというお話がございました。しかし、株価の話は直接長銀そのものに関係のある話ではありませんし、ワリチョーが売れない、売れるという話は、いわば資金繰りの話だと思います。  国有化した途端に二・七兆円の債務超過であった、それはゴーイングコンサーンというところで少し言いわけをされるのかもしれませんが、やはり実態としては、もうどうしようもない債務超過だったというふうに言わざるを得ないのじゃないでしょうか。二・七兆穴があいていて、いや、これはとまらなければ、走っていればその部分は債務超過じゃないんだという議論というのは通用しないと思うんですね。実際に、もうとてもそれではやっていけないところまで来ていたというのが現実だったというふうに私は思うわけであります。  ですから、もしあの時点で合併をさせ、そして資本注入をするということになりますと、長銀は現実には債務超過だったわけですから、それに資本注入をしたということは法律違反になりますし、それから、合併後に資本注入をしたら、二・七兆の債務超過だったわけですから、合併した後に少なくとも二兆、三兆の公的資本を投入しなければもたなかっただろう、そういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここはちょっと行きがかり上お答えをすることになってしまいまして、実は政府委員がおられますともう少し正確にそこをお答えすることができるのですが、私の記憶で、昨年の三月に公的資金を投入いたしました。その時点では、監督庁は債務超過でないということを認定しておられます。そしてその後……(発言する者あり)監督庁ではありませんか、法律上とにかく債務超過でないという認定があります。  その後、国会の御審議の途中で、夏あたりでも監督庁長官は債務超過と認定する理由はないと言っておられますので、岡田委員があの時点でと言われますそのどの時点でということは、少なくとも夏ごろの時点で債務超過じゃないというふうに、債務超過であると信ずる理由はないと監督庁長官が言っておられますので、その時点ではそうであったと申し上げるべきではないか。  ちょっと私の記憶も必ずしも正確ではありませんが、そうであったと思います。
  88. 岡田克也

    ○岡田委員 あのときに日野長官は、現在調査中である、結論はいつ出るかわからない、そういう言い方でずっと引っ張ったわけですね。しかし、もう調査が始まってから二カ月以上たっていて、普通なら出てきていい状況だったにもかかわらずそれを引っ張って、現実にはもう債務超過だとわかっていたはずだと思うのですが。  ですから、そういうやり方がまさしく問われているのじゃないか。そして、その結果として、そのときに既に二・七兆ですから、現在の四兆円近い国民負担の大部分がもうそのとき既に確定をしておった、こういうことだと私は思います。  先般、我が党の鳩山代表が、この長銀の四兆円の問題を代表質問で小渕総理に質したところ、小渕総理の方は、あくまでも預金者等の保護、我が国金融システムの安定、再生を図る上で不可欠なものであると考えております、この一言だったわけですね。そこに国民に対してわびるという姿勢は全くないわけであります。四兆円という膨大なお金を使うことになりながら、そのことについて当事者としての責任という言葉が全く出てこないというのは、私は全く納得できないわけであります。  大蔵大臣もその当時から大蔵大臣として議論に参加しておられたわけでありますが、この長銀の四兆円ということについて、それはいわば当然のことであって、担当大臣として国民に対して何かわびるとかそういうことは全く必要ない、そういうふうにお考えでしょうか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、私に金融監督庁側の正確な資料がございませんので、それを御理解の上で申し上げますけれども、まず、昨年の三月に公的資本を投入したということについては、当時の関係者の説明等々を勘案いたしまして、これは債務超過でなかったというふうに考えております。  そして八月に、総理大臣が住友信託銀行と長銀との合併について推進をしたいと考えられましたときも、その場に監督庁長官はおられましたし、したがって、そのときに長期信用銀行が債務超過であったと考える理由はありません。そこまでのところは、私は恐らく間違いないと申し上げてよろしいと思いますが、その後の推移の中で、長銀が資産が非常に劣化をしていきまして、最終はああいう結果になるわけでございますから、そうなりますと、これは法律によって処理をすることになりまして、必要な資金を預金者保護のためには出さなければならないというところに入ってまいりますから、それは法律に基づいて処理がなされた。  長銀の資産がそういうふうに劣化したことについて政府に責任はなかったかとおっしゃられれば、それは、いろいろ法律的な意味でなくて政治的に問われなければならない問題でございましょうから、政治的な責任が一概にないというふうには、これは申し上げるわけにはいかないでしょう、どういうスタンダードで申すかということでございますから。法律的な責任という意味では、私はなかったと思います。  ただ、一つの内閣のもとで、大銀行が結果として債務超過でああいう結果になった、そういう出来事については、広い意味で政治は無責任だとは言えないだろうとおっしゃられれば、それは私はあえて争って申し上げるつもりはございません。
  90. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろな仕組みを使って、例えば利息分について追い貸しをして、そして利息を払わせたり、相当いろいろなことをして不良債権をあちこちに隠して、その結果として最後にどうしようもなくなったというのが長銀であり日債銀であった、そういうふうに思うわけであります。  そういう意味では、行政の対応が恐らく一年ぐらい遅かったんだと思うのですね。そのときには法律も何もなかったと言われればそのとおりでありますけれども、そういった法律の手当てをするということも含めて非常におくれた。その結果が、長銀だけで四兆円、日債銀も含めると六兆円ぐらいになるのかもしれませんが、それだけの国民の汗水垂らした税金が投入される結果になってしまった。  そのことについて、これはもちろん政府だけではなくて、我々も政治家ですから責任がないというふうに言うつもりはありませんけれども、しかし、やはり一番責任を感じていただかなければいけないのは大蔵大臣であり内閣総理大臣である、そういうふうに私は思います。本会議において、総理大臣の答弁に全くそういった視点が抜けておりましたので、今あえて申し上げたところでございます。  さて、時間も余りございませんので、少し景気対策と財政構造改革について簡単にお聞きしたいと思います。  小渕総理も、先般の本会議での答弁の中で、景気対策と財政構造改革の関係について、我が国経済が回復軌道に乗り、足元がしっかり固まった段階で財政、税制上の課題につき中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行う、こういうふうに言っておられるわけですね。ただ、これを見ていますと、回復軌道に乗ったところでそれから検討を始めて、中長期的視点からしっかり検討するんだ、こういうことになりますと、恐らく結果が出たころにはまた景気が悪くなっているのじゃないか。結局、財政構造改革というのは全くできないまま終わってしまうのじゃないか、そういう気がいたします。  もちろん、財政構造改革というのは増税だけではありません。大蔵大臣は、財政構造改革と当面の景気対策の関係について、どういう基本的なお考えなんでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在の一般会計が既に四〇%近い国債によって支えられておるわけでございますから、こういうことをいつまでも続けていくわけにはいかない。それをまず直さなければならないという意味では、財政改革と申しておりますのは、歳出側の問題とともに歳入側の問題に関係せざるを得ないだろうというふうに考えております。現に、今の国税の収入は十年前の国税の収入のレベルまで落ちておるわけでございますから、それを考えても、そのようなことが申し上げられると思います。  したがいまして、そのような財政改革、あるいはむしろ行、財、税制改革と申し上げるべきと思いますが、これは、我が国の経済がプラスの成長軌道に入ったということについて確信が持てませんと、そのような改革は可能でない、残念ながら現実的でないと考えますから、まず我が国の経済がプラスの成長軌道に乗って、軌道に乗るという意味はしばらくそこを外れない、一遍限りでないという意味でございますが、そのときには行、財、税制の改革に取りかからなければならない。  それで、願わくは名目二%ぐらいな成長がほぼ可能であるというときになってからならば間違いなくやれるだろうと思っておりますけれども、それがいつ、どうそういう時期になるかということを、今先のことをどうも正確に申し上げることができませんが、気持ちはそういう考えでございます。
  92. 岡田克也

    ○岡田委員 増税するとかそういう話であれば、これは景気が回復してから本格的な議論が出てくるのかもしれませんが、歳出構造の改革の方は、今からでもやっていかなければいけない問題もたくさんあるのだと思います。  例えば医療制度改革ですね。高齢者医療を中心とする医療制度改革は、本来であれば二〇〇〇年度から実施をする。これは橋本政権のときに、保険料一割負担を二割に上げたときの政府・与党の約束であります。しかし、現実にその改革の姿は全く見えてきていない。とても二〇〇〇年度からできるという状況にはございません。  これは一つの例でありますが、やはり歳出構造の改革というものは、実際にそれが歳出減となって姿がはっきりしてくるためには何年か必要でありますから、そういう意味でも、今からもう具体的な姿をつくって、あるいは法律もつくってやっていく中で、二、三年たってその効果が出てくる、こういうことだろうと思うのです。  もし、今大臣がおっしゃったように、景気がある程度回復基調に乗った上でそれから議論をするのだ、こういうことになりますと、それからあっという間に三、四年たちますから、また景気が悪くなってできない、こういうことになるのじゃないかと懸念するわけですけれども、そういった点についてはいかがでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行政側の改革ということの中に受益者負担という問題がやはり考えられるわけでございますが、これもよほど慎重にいたしませんと、ネットの効果は増税に近いというようなことになりますから、その辺のことも考えていきませんと、確かに行政上の改革はしなければならないことはもう明らかで、そのために中央、地方の行政改革をしておるのでございますから、今おっしゃいましたような、しかし社会福祉関連の改革になりますと、どうしても受益者負担ということになりやすい。  そのことは避けられないとは思いますものの、税金じゃないからよかろうという簡単なわけにはまいりませんので、そこは慎重にいろいろ、しかし常にそういうことは心がけて、できる時期にはやっていかなければならないと思っていまして、そのうちまた不景気になってそうなってはいけませんので、そういうことになりませんように、いずれまた岡田委員も、そういうことをおやりにならなければならない影のお役を持っていらっしゃると思いますから、そういうことになりませんように一生懸命注意をいたします。
  94. 岡田克也

    ○岡田委員 最後になりますけれども、先ほど議論をいたしました長銀のリップルウッドに対する譲渡問題ですが、これについては、半年に一回国会に対して報告をするということになっておりますので、でき得ればといいますか、全部決まった後で報告をいただいても議論の余地がありませんので、最終的な契約を締結する前に当大蔵委員会において報告をしていただき議論する、そういう機会をぜひつくっていただきますように御要望申し上げておきたいと思います。  以上です。
  95. 金子一義

    金子委員長 次に、矢島恒夫君。
  96. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。私も引き続いて長銀問題で質問したいと思います。  金融再生委員会が九月二十八日の日に、長銀の譲渡先としてリップルウッド・ホールディングス社と覚書を取り交わすということが決まりまして、新聞でも一斉に、これで国民負担はさらに増大するなんという記事が載ったわけであります。  そこで、私は、まず国民負担の問題で尋ねたいと思います。  十月二十七日に当委員会で再生委員会の方から、ロス額の合計がこの六月時点で三・六兆円プラスアルファ、プラスアルファは譲渡時に引当金の追加がある、こういう御説明がありました。マイナス十億円については、二十四億株を十億円で売るというのがありますから、それはわかるのですが、この三・六兆円というのは、三月三十一日現在、特別公的管理勘定で二兆七千八百六十九億円、それに、八月十日ですか、預金保険機構の松田理事長が、八月までに拡大した損失が八千億円というのを発表されたわけですが、三・六兆円というものの中身について一つはお聞きしたい。数字的な問題ですから、参考人で結構ですが、その点についてお尋ねします。
  97. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、長銀のことし三月末決算時における債務超過相当額は、約二・八兆円でありました。さらに、本年八月に不適資産の第一次買い取りを預金保険機構にしてもらったわけですけれども、そのときのロス増が約八千億円でございました。三・六兆円と先般の十月二十七日の大蔵委員会で答弁させていただきましたのは、この二・八兆円と八千億円を足したものでございまして、それが合計約三・六兆円になるということでございます。
  98. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そうすると、森事務局長、六月時点でというのは間違いなんですか。
  99. 森昭治

    ○森政府参考人 大変申しわけございません。私の勘違いでございました。八月でございます。失礼いたしました。
  100. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、次にプラスアルファという面についてお聞きしたいのですけれども、中身は結局長銀の残りの資産、約二兆円あるわけですが、それの資産査定によって生ずるところの追加額というように考えられるのですが、その考え方と、それからおおよその損失額を。
  101. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  不確定要因でございますプラスアルファの中身は、ただいま先生が御指摘されたところかと思うのですけれども、不適資産の残りの部分、この第二次買い取りでさらにロスが膨れるのかそうでないのかというのが一つのポイントでございまして、この点につきましては、追加損失はさほど生じないというふうに我々は認識しております。  したがいまして、このプラスアルファの部分の大宗を占めますのは、適資産の引当金の追加でございます。これは、ことしの三月時点から売り渡し時、これはいつになるかまだ確定しておりませんけれども、そこの時点までの資産の劣化があるのかどうか、それに伴う引当金の増があるのかどうかというポイントと、もう一つは、新金融検査マニュアルがことしの九月から実施されます。したがって、三月のときの検査マニュアルと九月の検査マニュアルでは、少し九月の方が厳しくなっています。それに伴いまして、それを反映した公認会計士協会の実務指針も実は九月から変わるわけでございます。そういうこともございますので、ある程度の引当金の増が出るのではないか、それをプラスアルファと申し上げさせていただいたわけでございます。     〔委員長退席、石井(啓)委員長代理着席〕
  102. 矢島恒夫

    ○矢島委員 中身はわかりました。  ただ、問題は先のことなので幾らになるかというのはこれからのことというのはそのとおりだろうと思いますが、三兆円の、八月時点ではおおよそ出てきたのが八千億円というわけですから、比例配分でいくわけじゃありませんけれども、新聞等によると、どうも残りの二兆円で、三千億ないし五千億と幅がありますけれども、またさらにこのぐらいの追加があるんじゃないかなんという報道もありましたのでお聞きしたわけですが、これは先のことですから、果たしてどうなるかというのは、また国民負担を減らすという方向で努力するんだろうと思いますが。  そこで、この譲渡に係る覚書とそれから買収条件の概要というのが発表されておりますけれども、それに関して聞きたいと思います。  ことしの三月末時点で生じた保有株式の含み損の問題ですけれども、原価法をとっていた株価の評価を低価法に変えたということで、有価証券報告書を見ますと、その額がおおよそ二千七百八十三億円、こう出ておると思います。これだけの損失が、三月三十一日時点で原価法から低価法に改めたことによっての含み損として出てきたわけですが、これは公的資金で埋めるということになりますか。
  103. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、三月末時点で取得原価法からより保守的な低価法に変えたわけでございます。いわば原価法から低価法に変えることによる償却損、これは三千九十七億円出ております。一方、この三月末における含み益と含み損をいわば相殺しましたものは、結果的には含み益として八百九十二億円出ております。そういう低価法に基づいた有価証券の、これは直近時点、すなわちおとといの十一月八日の終わり値で試算しましたところ、ネットの含み益は二千六百五十五億円ほど出ております。  こうしたものが今長銀の資産サイドに載っておりまして、間もなく中間決算をしまして九月三十日現在のものを出すわけでございますけれども先生指摘のとおり、そういう低価法ではかった、基本的にはそういうものではかった資産サイド、それと負債サイド、その差のロスというものを国民の税金で埋めるわけでございます。したがって、この含み益というものを全部時価にすればその分ロスは少なくなるということは、先生指摘のとおりでございます。
  104. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、その後、現時点まで含み益が出てきているわけですね、二千六百五十五億ぐらい。この含み益の方、これは本来は、いわゆる国民の税金が姿を変えたものですから、国に入ってくるもの、こう考えてよろしいですか。
  105. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  例えば長銀の資産を譲渡するということになりますと、通常、その時点での資産の評価というのは、低価法とか取得原価法ではなくて、まさに時価ではかることになります。そういうことでございますれば、この二千六百五十五億、今現在の含み益でございますけれども、それは国の方に返ってくると考えるのが自然ではないかと思います。
  106. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、この取り交わした買収条件の概要の中で、「合計二千五百億円ないし二千七百五十億円の含み益を有する保有株式は」「売却して含み益を実現し、新生長銀の自己資本の増強に充当する。」ということは、今おっしゃった含み益の部分がそのまま国に返らずに、自己資本の増強のために新生長銀に渡される、こう考えていいですか。     〔石井(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 越智通雄

    越智国務大臣 先生指摘のように、そのお金をこちらへもらっちゃうのも一つの手ですけれども、私は当時交渉の担当者ではございませんでしたが、交渉の過程で、ともかく立ち上がってくる新生長銀をしっかりしたものにしたい、だからそれはそこに残して資本勘定に入れて、同時に、その結果新生長銀を、どのくらいになるかわかりませんが、三年とか五年とか頑張らせて、一たん株式の査定でゼロになっております新生長銀の株がある程度のお値段までカムバックすることも考えていきたい。  そういたしますと、実は政府の方はまだ、新生長銀というか、前からの長銀の株を保有している分もございますものですから、その程度のものが、言葉がおかしいかもしれませんが、取り返せるんじゃないかという勘定もありまして、あったんだと思うんです、そういうような取り決めになったということでございます。
  108. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこに重大な問題があると思うんですよ。今、越智大臣は、調停の段階で国に入れることも考えられるけれどもと。つまり、調停の約束の中で、含み益については、金額にしては二千五百億円から二千七百五十億円と幅がありますけれども、そういう含み益については新生長銀に渡しますよと。それから、それは先のことですから断定はできないけれども、今も長銀が持っているものがありますよ、それぞれ取引先やそのほかの関係から。その株について含み損が出れば、これは国民負担になる。  含み益が出る可能性が今は強いですよと言うけれども、それは譲渡する段階でどうなるか、これは先行きわからないけれども、基本的には、含み損については国でつまり負担をしなきゃならない。含み益については、その金額の間だけは新生長銀に渡すと。それ以上に含み益が出れば、それは戻ってきますよ。それは先のことなんだけれども、基本的な考え方は私の考え方でいいのか。
  109. 越智通雄

    越智国務大臣 私はそのように理解していなかったんですが、今おっしゃっているのは長銀の持っている他の会社の株でございますね。それについては、もう今の取り決めでそのままお渡しするわけですから、今さら含み損という話が計算上ふえてくるというふうには私は理解していなかったんですけれども。  それで、現状としましては、先生よく御存じのように、三月、四月のころが日本の株価はいわば底でございまして、普通の銀行の株でいうと数百円のが今千何百円、大体倍に上がっている状態でございますので、新長銀の持ち合わせの有価証券にそのような含み損が出る可能性は極めて少ない。  私が申し上げましたのは、政府がいまだ持っている長銀の株が、一たんゼロにしてあるわけですけれども、いずれ値がつく日が来るのではないかという意味で申し上げておるわけでございます。
  110. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そうすると、この考え方は間違いなんですか。  長銀保有株は、地銀だとか第二地銀株だとかが簿価で約八千億円、事業会社株が約一兆円、このうち現在の株価が簿価を下回っている銘柄については、譲渡前に売却して含み損を出し、公的資金で穴埋めする、これはこれでよろしいのですか。
  111. 森昭治

    ○森政府参考人 お答え申し上げます。  地銀等の営業上必要な株式の話でございますけれども、これは預金保険機構に売却いたしまして、基本的に保険機構は買い取った株式を長銀信託に信託いたしまして、基本的に五年間塩漬けにいたしまして、いわば取引先の安定を図るということになっております。  先生指摘の二千五百億から二千七百五十億の含み益の実現でございますけれども、それは基本的にそういうもの以外の株の売却によって含み益を得るということを考えている次第でございます。
  112. 矢島恒夫

    ○矢島委員 いずれにしろ、その調停の中で、一定の含み益が出たものについては二千五百、二千七百五十、これを渡す、それから含み損については、これは国民の負担になっていく、大枠で言えば。どこで利益が出るか、どこかでまた株が上がるか、いろいろなことがあるかもしれないけれども、そういう考え方が基本にあるわけですよ。こういうやり方が再生法の枠内でできるのかなということが私は疑問なんです。  というのは、この再生法案を審議した昨年の十月、提案者の方からこういうことも言われているわけですね。必ず債務超過の部分にしか国有化された金融機関についてはお金は入れませんということもルールできちんとしているわけであります。そういった形の中で、債務超過以上の部分はお金をできるだけ使わないという部分で、抜け道を限りなくふさいだつもりでおります。こういう答弁があります。それから、前の柳沢委員長も、国民の負担を最小にするために努力してきた、こういう御発言もあります。  そこで、一体どこまで膨らむのか。四兆円と大まかに言われておりますけれども、住専のとき六千八百五十億円で、私もさんざっぱら大蔵委員会でやりましたけれども、その六倍になるわけですね。  これは大蔵大臣にお聞きしたいのですが、財政を預かる立場として、こういう負担、相当な額の負担というものをどう認識されているか。また、この金融再生法の審議経過から見ますと、預金者保護に限って財政支出を認めるという立場があるわけですが、これから逸脱したものではないだろうか、その辺についての大臣のお考えをお聞きしたい。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さかのぼってどこまで申し上げていいかわかりませんが、一つは、やはり日本の信用、システミックリスクを防がなければならないという問題があったと思います。それからもう一つは、おっしゃいますように、預金者、この場合は債券、ワリチョーの保有者でございますか、預金者ではないかもしれません、預金者も多少ございますが。そういう意味の、その二つのことは、やはり国としてすべきことであったと思います。
  114. 矢島恒夫

    ○矢島委員 長銀を一時国有化して大変な税金が使われる、そして、これから外資系の投資集団に譲渡するんだけれども、その内容というものが、例えば、早期健全化、譲渡後ですよ、優先株二千四百億円ですか、それから先ほど出ている株の含み益の問題もあります。そして先ほど、マイナス十億円の部分も、実はこれは二十四億株ですから、将来莫大なキャピタルゲインがあるんじゃないかとも言われている。至れり尽くせりの中身になっているわけですね。  これだけのことを面倒を見ながら、一方、日債銀の問題もこれからやらなきゃならないから、これまた大変なことになるんじゃないかという心配がある。銀行業界の負担というのは、いわゆる保険料の部分にとどまっている。それは負担を見直すという方向にはない。国民の負担というのは、いわゆる税金、公的資金の投入というのはどんどんふえてくる。国民はなかなか納得しにくいのです。  そういう中で、銀行が貸し渋りをやる、おれのところには金が来ない、しようがないから商工ローンだ、こういうことになって、商工ローンの問題もきょうも話題になりましたけれども、大変な事態になっているわけですね。  そこで、この商工ローン実態から少しお尋ねしたいわけなんですが、過剰与信の問題や高金利の問題だとか、あるいは根保証の問題、それから過酷な取り立て、いろいろな問題が出ました。そこで、貸金業規制法、この第十三条にあるところの「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」と書かれているわけです。  金融監督庁が昨年の六月に、従来のガイドラインを修正して事務ガイドラインというのを出された。その中にはもっと具体的にいろいろ書かれているわけですね。例えば、四項目に分かれておりますが、その過剰貸し付けの問題です。(二)のところには、「顧客に対し、必要とする以上の金額の借入れを勧誘したり、借入意欲をそそるような勧誘をしてはならない」、こう書いてある。  今問題になっているのは、そういうものがありながら、しかしなかなか過剰融資の問題が解決できていない。ということは、貸金業法のこの十三条のところに罰則がない、これも大きな一つの問題だろう。ほかにも問題はありますよ。ありますけれども、それも一つの問題だろうと思うわけなんですね。  借り手側からいえば、考えた以上に融資してくれるという、一面ありがたさの面もあるわけですけれども、この過剰融資については、どうなんでしょう、法律をきちんと整備して、例えば貸付金の全部もしくは一部の返済を求めることができないような規定をつくるとか、あるいは刑罰、行政罰、こういう罰則を強化することが必要だなと思うのですが、どうお考えですか。
  115. 村井仁

    村井政務次官 今御指摘のどの程度まで貸していいかという話は、実は大変難しい問題でございます。  確かに事務ガイドラインのところで、いわゆる消費者ローンと申しましょうか、それにつきましては、例えば一業者当たり一つ貸し付けにつきまして五十万円、年収額の一〇%までというような具体的な基準を一応ガイドラインとしては設けている。しかし、これは罰則がない。それは今矢島委員指摘のとおりであります。  ただ、とりわけて商工ローンと呼ばれる事業者に対するローン、これにつきましては、やはり資金需要というものが一体いかほどのものであるかというのは、これはどうしてもケース・バイ・ケース、いろいろ違ってこざるを得ないのだろうと思うのでございます。さような意味で、その基準をなかなか明確に決めがたい。  それから、ただいま罰則というようなお話がございましたけれども、これは私の考え方をあえて申し上げますが、罰を与える、罰を科するというのは、やはり罪刑法定主義、非常に厳密に構成要件というものを決めるというのが基本的人権を守るという観点からもやはり重要な配慮ではないか。そういうことを考えてまいりますと、どの程度まで貸していいのかというところを明確に書くというのは非常に難しいのではなかろうか。そのゆえに、ただいまの御指摘のように、法律の十三条には罰則がない、あるいは事務ガイドラインというのもあくまで一つのガイドラインにとどまっておる、こういうことでございます。  ただ、金融監督庁といたしましては、ただいま御指摘のような事態を非常に重く考えまして、全国貸金業協会連合会、これに対しまして自主的な取り組みの検討を要請いたしまして、その結果、十月に、過剰貸し付けに係る規定を含む自主規制基準というものをつくってもらう、そして、都道府県の貸金業協会にこれを例示して、業者にこれを徹底するということをさせているということでございます。  こういった努力を今後とも重ねて、実効ある対応ができるようにしてまいりたい、こんなふうに思っているところでございます。
  116. 矢島恒夫

    ○矢島委員 少なくとも前向きの検討を法的な部分で、法改正も含めて考えるべきときに来ている。なかなか悠長なことを言っていられる状況じゃない、世の中は。自殺者が次々と出ているような状況もあるわけですし、今まさに日栄に対していろいろな問題が出ているわけですから、そういうものにきちんと対処していくのが政治に課せられた問題だと思うのですね。  そういう意味では、難しい問題だからどうも難しいよ、貸金業者の協会の方にいろいろ言っているのだというだけじゃ済まない状況がある。しかも、この自主規制を発表した全国貸金業協会連合会の会長というのが、何と今盛んに問題になっている日栄の社長さんですからね。一番法律を破ってやっている人なんですから、そういう点も十分考えていかなければならないのだろうと私は思います。  時間がありませんから、もう一つだけ最後の質問ともあわせて聞きたいと思います。  日栄は、非常に大変な取り立ての仕方だとか、それから根保証の問題、これはもう時間がないから全部やれませんが、非常にうまいことを言ってやるわけです。そのことは、実は内容についてはいちいち御指摘できませんけれども、裁判の陳述書の中で大牟田支店の支店長であった人が証言しているわけです。それから、こういう本、あした発売ですけれども、「商工ローン 借りてはいけない 日栄元支店長」、この人と陳述された方とは多分同じ方だろうと思いますが、この中に、回収マンの勲章は自殺者の数だ、どれだけ自殺させたかだというような項目だとか、読んでみますと、中身は大変衝撃的なことがいろいろ書いてあります。こういうあこぎな商売をやっているわけです。  行政の方としては、なかなかこれに手がつけにくいということで、協会だけにいろいろと自主規制をやれよと言っているような今の段階にあるのですが、私は一つは、私たちも商工ローン規制する法案について、これを今提出するための準備をしておりますが、いずれにしろ積極的な取り組みをしていただきたい。明らかに会社ぐるみなんですよ。今テレビの画面に出てきている、おどかした個人の社員だけの問題じゃないのです、この中を見ても、それから陳述書を見ても。  ですから、ここで越智大臣にお聞きしたいのですが、ひとつこういう会社については業務停止というような強い処置がここでは必要ではないか。越智大臣、いろいろと二十七日の答弁でも積極的な発言をされておりました。その辺についてはいかがでしょう。
  117. 越智通雄

    越智国務大臣 具体的な今の該当会社についてどうするかはまだ今ちょっと判断つきかねておりまして、実態調査することにしておりますけれども先生お話しのように、業務停止と登録の取り消しという二つの手段がございます。業務停止の方は、することができるということで、これは違反行為を認めたときに監督官庁としてやることができる。片っ方、登録の取り消しの方は、登録要件にかかわる者が違反になってしまった場合、あえて言えば役員が有罪になったような話でございますね、そういうときは登録を取り消さねばならないという法律になっているわけでございます。  今の状況ですと、手前の方の業務停止を期限を限ってどうこうするという話が恐らく、恐らくというか場合によって浮かび上がってくると思いますが、率直に言いまして、そこまでいく実態というか、あえて言えば証拠みたいなものがなかなかこれは大変なようでございまして、今出先の財務局等が懸命に実態調査をやっております。そういう状況でございます。
  118. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひ実態調査を厳格にやり、そしてきちんとした対処をしていただく、このことをお願いして、私の質問を終わります。
  119. 金子一義

    金子委員長 次に、横光克彦君。
  120. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  先般、当委員会で閉会中審査を行いました商工ローン問題を中心に、あれを一つのきっかけとして、商工ローン問題も大きく状況が変わりつつある、私はこのように思っております。  日栄の元社員が逮捕されました。そして、相も変わらず告訴の案件は相次いでふえております。また、過剰な暴力的な取り立ての実態も明るみに出ている。例えば業界二位の商工ファンド、ここの取り立ての仕方の中に、いわゆる市役所やあるいは税務署の職員の名をかたって、そして個人情報、つまり銀行名やあるいは口座番号を引き出している。いわゆるこういう違法な形、手口で、こういったことをマニュアル化して社員に督励しているということも明るみになっております。  また、先ほどお話ございましたように、日栄の元支店長が実名でその実態を暴露しております。大変なノルマを課せられる。達成しない場合には徹底的に締め上げられる。この締め上げられるのを回避するためには、やることは一つですよね。禁じられております過剰貸し付けや強引な取り立てや、いろいろな形で結局行動に出るしかないという流れになってきている。  金融監督庁は、当面は、今のお話にもございましたが、前回そうでした。商工ローン業界による自主的な業務改善に期待している、その状況を見守るという姿勢であったわけですが、やはりこういった状況の変化によって少しずつ方針を転換している、私はこのように受けとめております。仮に、社員の逮捕といった事件が契機で方針を転換したというのならば、私は、商工ローン問題に対する当局の対応が後手後手である、こういった批判は免れないと思うのですね。それでも、いろいろと対策に乗り出しつつあるというふうに受けとめております。その中の一つが、今お話にもございましたように、法改正も視野に入れつつあるということを聞いております。  私、前回も質問したのですが、やはり法の盲点といいますか、網をかいくぐってこういった悪質な方法がとられているということは否定しようがないと思うのですね。そして、こういったことを回避するためには、やはり法改正しかないのではないか、不備な点は直していくしかないのではないかという意見を言ったのですが、そんなに積極的な姿勢は見られませんでした。  これはちょっと例えは違いますが、やはり政治家のモラル、いわゆる政治改革が六年前に叫ばれましたね。そのときに、政治家みずからが政治倫理を持たなければいけないのですが、それは余りにも実態としては期待できない。そのために、あえて我々は自分たちの首を絞めるような、いわゆる罰則を強化するしかない。いわゆる腐敗選挙をする、買収とか、やっても直らないわけですね。そうすると、罰則をつくるしかない。それが連座制の強化だったのです。そのことによって、やはり随分そういった買収事件は減りました。こういうふうに、やはり罰則の強化しかないなという気がするわけです、これだけ大きな社会問題になっている以上は。  そこで、ちょっと政府側のお考えをお聞きしたいのですが、まず出資法の罰則適用金利を利息制限法まで引き下げる、こういったお考えはどのようにお持ちでしょうか。
  121. 越智通雄

    越智国務大臣 ちょっとお答えする前に、一般的に申し上げたいと思いますが、金融関係の罰則の強化ということでは、三年前に法律を出しましたが、これはあくまでも罰則のかかっているものの、例えば罰金の金額を上げるというようなことはやりました。何年かぶりの大きな改正を国会を通させていただいております。今お話しのように、罰則のついていないものに罰則をつけるということにつきましては、これは相当慎重に、言うなれば法務委員会的なところで御検討いただかなければ難しかろうかな、こんなふうに思っております。  それから、今自主規制を見守るといっても、ただ見ているというだけではなくて、実態調査その他をやるために、私ども対策室をつくりまして、二十七名の職員を監督庁の中につくってもらってそれに当たるということで、今月初めからやっております。  それから、今の金利の問題の前に、根保証というのが、余りほかで聞かない名前なものですから、これは自主規制の中に、当初、借入額の三倍というのが入っておりますが、この間も私はそのことをここで申し上げましたが、そうした考え方。あるいは根保証というものを、もう一遍別に保証人の判こをそこにもらう。百万円借りるという話と、根保証が一千万円なら一千万円というのは、別の保証書をつくってもらうような、そういう意味の確認作業をはっきりしたものにするとか、いろいろな方法があろうかと思っておりまして、今そういうことを思案考慮中でございます。  最後にお話しの、金利のところでございますが、金利上限を一斉に下げるというのもお考えがございまして、民主党の方からも出ている案にはそういうふうに書いてございますが、実は、貸金業者というのは六十四兆円の融資をしているわけでございますが、その中で五百億円以上の貸し出しをしているのは二百二十八社でございまして、二百二十八社で金額的に六十四兆中の四十六兆か七兆貸しております。そのうちの半分が事業者向け、そのほかにクレジットカードとかリースとか信販とかいろいろございまして、そんな関係もございますものですから、出資法を全部下げますと、あらゆる違う種類の業界にも全部適用になるケースが考えられますので、そういう意味で、どういうふうな影響が出るか、この点も十分考えながら慎重にいたすべきではないかということをこの前私はここで申し上げたわけでございます。  例えて言いますと、町の質屋さんもこの法律がかかるわけでございますが、十万円、今度のボーナスをもらうまでにどうしても必要だ。きょうは十一月の十日でございますが、十二月の十日になればボーナスが入るのだけれども一月借りたい。十万円借りるのに質屋に行くと三千円で借りられるわけですね。三千円で十万円借りたい。それで、担保の力がどれだけあるか知らないけれども、おじさん、ハンドバッグ一つ置いていくわよという金融が現に行われているわけでございますものですから、いきなり利息制限法のところまで下げていいかどうか、大変問題がございます。  利息制限法そのものも、御存じのように制限法といいながら金額によって三段階になっているというのは、業界実態を十分配慮しなければいかぬということで、きめの細かい作業がされているのではないか。だけれども、これはあくまでも議員立法でございますので、各党のお話し合い、御意見もよく承って、させていただきたい、このように思っております。
  122. 横光克彦

    ○横光委員 確かに、これは議員立法ですので、我々国会の方もこういった問題を慎重に調べた上で、積極的に対応をとっていかなければならないと思っております。  今のお答えの中で、根保証の件ですね。いわゆる十七条二項の追加融資のたびに保証人に知らせる義務を明確にする、これを私は求めたいと思っているのですが、今のお答えの中では、そのことに対してはかなり積極的である、このように受けとめてよろしいですね。——わかりました。十三条の件、あるいは三十条の件は、先ほどお話が出ましたので、重複は避けます。  それでは、もう時間もございませんので、もう一つお聞きしたいのですが、長銀の件ですが、金融再生委員会は、この譲渡先を米国投資会社のリップルウッドとするという方針を発表いたしました。このスキームでは、譲渡後三年間は融資先企業への融資残高が維持される、このようなことになっております。つまり、回収はしないということでございます。  しかし、この大口融資先は、銀行の不良債権の温床とも言われておりますいわゆる建設や不動産やあるいはノンバンクといったところが中心なのですね。ですから、新生された長銀は、こうした資産、いわゆる灰色ではございますがまだ黒でない、こういった不安のある資産を三年間も保有し続けなければならなくなってくるわけです。これは、いつまでも新しい長銀が灰色債権を国民負担で抱え込んで、結局は問題を先送りすることになりはしないか、そういった国民の声もあるわけです。  融資条件を譲渡条件にしたことは、企業の再建を阻害するとの指摘もあります。いわゆる自助努力を怠るのではないか、そういった声もあるわけですが、いろいろこれは確かに難しい問題だとは思いますが、国民に非常にわかりにくい。この交渉過程が不透明な気がしてならないわけですね。どうしてこういった契約になったのか、なぜそうしなければならなかったのかということをやはり国民に明確に説明していただきたい。越智再生委員長のお考えをお聞きしたいと思います。
  123. 越智通雄

    越智国務大臣 当時、直接の当事者ではございませんでしたけれども、私なりの理解を申し上げさせていただきますと、まず第一に、国と契約をするのはリップルウッド・ホールディングスではございませんで、彼らがマネージをしたニュー・LTCB・パートナーズというオランダ国籍の会社が買い取りの相手になります。そして、これに対しては今十二の銀行、ドイッチェバンク、メロンバンク等が金を出すというコミットをしまして、順調に進めば来年早々に資金も集まり、また正式契約も行われる。今は、優先的交渉権を持って、十一月末日まで、お互いに、どのぐらい資産が本当に大丈夫か、あるいは契約をどの程度事細かく決めるかということで、双方で一生懸命努力している、こういう状況でございます。  なお、三年間、今の日本長期信用銀行が貸しております、相手先によっては問題なしとしないところもございますけれども、むしろ三年を限られたということで、それらの企業は三年間に死に物狂いで健全なスタイルにならないと後がやっていけないわけでございますので、もう今からそういう意味で大変な、経営再建というのでしょうか、借り手の企業として健全化の努力を開始しているというか、するであろう、このように期待いたしておりまして、三年たってもだめなときにはむしろみずからに結果が降りかかってくる、こういう厳しい状況だと思っております。
  124. 横光克彦

    ○横光委員 それから、先ほどこれも質問されましたが、結果的には、譲渡のために四兆円前後という巨額の公的負担につながるわけですね。これは国民からすると、本当に何で一民間企業にそこまで金をつぎ込まなければならないのかという不信感が非常に強いと思うのですね。  ですから、先ほど大臣の政治責任ということを聞いたときの答弁でも非常にあいまいな答弁にしか私は聞こえなかったのですが、やはり一番大きな責任は当時の放漫経営者ですよ。これに対する経営責任は一応やりましたが、ここに新たに四兆円ということになった事態では、さらにもう一度放漫経営の責任追及をやるべきである、でなければ国民の怒りはおさまらないだろう、私はそういう気がいたしておるのです。  そのことに対する監督官庁の指導をやはり強くしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  125. 越智通雄

    越智国務大臣 実は、日長銀の中に内部調査委員会をつくりまして、それがかなり分厚なものをつくって、現在の頭取が安齋さんという、いわば政府から選任して派遣してある頭取でございますが、そちらに提出する。それを見て、経営責任でございますから、どこまで民事裁判が起こせるかを判断して、その結果を当方に言ってくることになっております。きょう時点ではまだ私は聞いておりませんが、しっかりと聞いて検討していきたい、このように思っております。
  126. 横光克彦

    ○横光委員 どうか指導強化をよろしくお願いしたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  127. 金子一義

    金子委員長 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十二分散会