運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-11-11 第146回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十一月十一日(木曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 中山 成彬君    理事 伊藤 達也君 理事 小林 興起君    理事 河本 三郎君 理事 山本 幸三君    理事 大畠 章宏君 理事 吉田  治君    理事 大口 善徳君 理事 塩田  晋君       小野 晋也君    岡部 英男君       奥田 幹生君    奥谷  通君       粕谷  茂君    小島 敏男君       古賀 正浩君    桜井 郁三君       田中 和徳君    竹本 直一君       中山 太郎君    細田 博之君       村田敬次郎君    茂木 敏充君       森田  一君    山口 泰明君       渡辺 博道君    渋谷  修君       島津 尚純君    高木 義明君       中山 義活君    山本 譲司君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       藤井 裕久君    金子 満広君       吉井 英勝君    北沢 清功君     …………………………………    経済企画政務次官     小池百合子君    通商産業政務次官     細田 博之君    通商産業政務次官     茂木 敏充君    参考人    (法政大学総長)     清成 忠男君    参考人    (財団法人日本証券経済研    究所主任研究員)     紺谷 典子君    参考人    (全国中小企業団体中央会    常任理事    宮城中小企業団体中央会    会長)          佐伯 昭雄君    参考人    (東成エレクトロビーム株    式会社代表取締役社長)  上野  保君    商工委員会専門員     酒井 喜隆君     ————————————— 委員の異動 十一月十一日  辞任         補欠選任   新藤 義孝君     渡辺 博道君   川端 達夫君     高木 義明君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 博道君     新藤 義孝君   高木 義明君     川端 達夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業基本法等の一部を改正する法律案内閣提出第一号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 中山成彬

    中山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業基本法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として法政大学総長清成忠男君、財団法人日本証券経済研究所主任研究員紺谷典子君、全国中小企業団体中央会常任理事宮城中小企業団体中央会会長佐伯昭雄君及び東成エレクトロビーム株式会社代表取締役社長上野保君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず清成参考人にお願いいたします。
  3. 清成忠男

    清成参考人 法政大学清成でございます。  きょうの私の御報告はレジュメのとおりでございますけれども、最初に基本認識といたしまして、中小企業評価といいましょうか、構造改革でありますとか新しい産業創出の先兵は中小企業ベンチャーであるということを申し上げておきたいわけであります。それは、諸外国統計等を見ておりましても、雇用増というのは中小企業ベンチャーというのが貢献しておりまして、大企業セクターというのは雇用削減をしているということになるわけであります。それからまた、日本の大企業キャッチアップ型ということでございますので、新しい産業を生むということには余り向いていない組織であるというように理解しているわけであります。  ただ、こういう基本認識の場合にもう一言申し上げておきたいのは、中小企業というのは大変ばらつきの大きい多様な存在であるということであります。中小企業といいますと経済的弱者というイメージがございます。無論、弱者としての中小企業というのも少なくないわけでありますけれども、他方では、大企業を凌駕するような技術あるいは収益性成長性を持っているものも少なくないという、大変ばらつきの大きい存在であるということを申し上げておきたいわけであります。  さて、最近の先進国中小企業政策を見ておりますと、どこの国でも中小企業ベンチャー振興というのが共通の課題になっているわけであります。これは、産業構造の大きな転換期である。既存の大量生産工業が成熟化したということ、それから、生産機能発展途上国の方にどんどん移行しているということがあり、先進国ではサービス産業を中心に中小企業が台頭してきているということがあるわけであります。そして八〇年代以降、欧米では新保守主義政権下で、創業中小企業経営革新支援というのが中心的な課題になってきております。この傾向は最近の中道左派政権に移行しても全く変わっていない、中小企業振興あるいは創業支援というのは大変重視されているということであります。  さてそこで、きょうの中心的なテーマであります中小企業基本法改正問題でありますけれども、基本法体系というのは政策思想が二重構造論であるということであります。  二重構造論というのは、基本的には、中小企業過小過多、小さ過ぎて多過ぎる、したがって過当競争を繰り返している、したがって過当競争でありますから利益が上がらない、したがって資本蓄積ができない、投資ができない、したがって低生産性の前に据え置かれる、低生産性を長時間労働でカバーするという、大変暗いイメージ中小企業を描くわけでありますけれども、その結果、格差が非常に拡大をするということになり、中小企業は一律に経済的な弱者である、こういうとらえ方であったわけであります。  しかし、このこと自体、昭和三十八年、一九六三年時点、果たしてそういう意味の二重構造存在していたかどうかというのは非常に疑問でもあるわけであります。二重構造思想でありますから、したがって、政策目標というのは結果の是正格差是正、そしてグループ化ということでスケールアップを図るということでありますから、競争制限的な政策手法というものをとったということ。したがって、創業に関しては大変否定的な見方が強かったわけであります。過小過多で、多過ぎるから創業などはとんでもないという発想であったわけであります。  しかし、実はこの基本法思想というのは、昭和二十三年、一九四八年に制定されました中小企業庁設置法、これは市場経済を非常に重視しております、したがって設置法思想からはだんだん乖離していったということが言えるわけであります。この設置法制定の前年、昭和二十二年には独禁法制定されております。したがって、市場経済重視ということ、それから市場における権力の乱用禁止という政策思想から中小企業庁設置法もできておりまして、したがって創業支援というのもうたっているわけであります。  さてその後、こうした基本法体系からしますと、経済の実態が大きく変わってきたということがあるわけであります。  基本法制定昭和三十八年でございますけれども、実は昭和三十八年から創業が活発化するわけであります。昭和三十八年から昭和四十五年ぐらいまでの間というのは、創業が極めて活発であったということであります。中小企業成長というのも非常に活発であった。昭和三十年代には中堅企業論というのも登場するわけであります。それに応じて、中小企業観中小企業についての物の見方も変化するし、それから、基本法にもかかわらず、実際にはさまざまな施策が講じられてきたということがあるわけであります。  特に、九〇年代に入ってからは、基本法体系からしますとやや問題であろうかもしれませんけれども、創業支援でありますとか、あるいは中小企業創造活動促進法による政策が展開されたわけでありまして、この政策は、私は非常に成功した政策だろうというふうに思っているわけであります。中小企業多様化が非常に進みまして、もはや一律に経済的弱者というわけではないということであります。むしろ最近では、中小企業活力に着目する必要がある、ベンチャー企業の台頭にも配慮する必要があるというように論調が変わってきているわけであります。  今後、やはり市場経済重視企業家自立性自己責任を尊重すべきである、そして、自助の助成という政策の基調が重要であろうというふうに考えるわけであります。しかしながら、市場経済には欠陥もございます。市場失敗ということがありますので、市場補完ということで政策が必要であるわけであります。  そして、基本法体系からの転換ということで、過去の中小企業政策を見直すということが重要でありますので、平成六年から平成八年にかけまして二年ちょっとの間、中小企業庁計画課勉強会を続けたわけでありまして、戦後の中小企業政策を総ざらいして、全部洗い直したという研究会がございました。それから、平成十年から十一年、昨年からことしにかけては、中小企業政策研究会中小企業庁長官諮問機関でありますけれども、そこでやはり過去の政策を洗ったわけであります。同時並行的に、中小企業近代化審議会におきましても、過去の政策政策効果評価、これもかつてなかったことだろうと思うのですが、一つ一つ政策効果も測定したわけであります。  こうしたことを積み重ねまして、中小企業政策審議会では、基本法全面改正が必要であろうという問題提起をしているわけであります。  今後必要な施策でございますけれども、規制緩和等を進めまして、競争条件整備する、機会の平等を保障するということが重要であろうと思います。そして、しかしながら、市場経済重視に対応してセーフティーネットを用意するということが中政審の答申の中に盛り込まれているわけであります。  市場経済というのは、セーフティーネットの裏打ちがあって初めてうまくワークするという側面があるわけであります。企業家の再挑戦の可能性を保障するような、例えば倒産関連法律整備でありますとか、そして、より重要なのは、社会的にはパブリックドメインの構築、これは社会的セーフティーネットと言ってもいいのですが、パブリックな領域で、所得格差拡大の問題でありますとか、環境、教育あるいは福祉、こういったさまざまな問題をカバーする地域的な仕組みが重要であろうというふうに思うわけです。  こうした制度につきましては、自治省の地域活力創出プランでありますとか、あるいは厚生省の地域福祉計画でありますとか、こういうものが地域レベルで準備されているわけでありまして、こういうものと産業政策をうまく連動させることが重要であろうというふうに思っております。  最後に、必要な施策としましては、経営資源へのアクセスの円滑化を図る。中小規模であるがゆえに不利をこうむっているという面が存在するとすれば、それは政策的にカバーするということになるわけであります。  資金供給仕組みというのはだんだん整いつつある。十分とは言えないにしてもこれはいい方向に向かっている。特に、これから直接金融が非常に重要になるわけでありますけれども、成長企業向け株式市場整備等が急速に進んでいるわけであります。  問題は、企業家支援する企業内外専門人材が不足している。これは、中小企業創業に当たって、それを企業の中から支えるような人材でありますとか、あるいはまた外部から支援する人材が不足しているということがあるわけであります。  もう一つつけ加えるとしますと、やはり企業家風土というのを我が国の中にもう一回再生していく。創業創業を生むといったような状況をどうつくり出すかということが非常に重要であろうと思うわけであります。  大体予定された時間が参っておりますので、これで私のお話はおしまいにしたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  4. 中山成彬

    中山委員長 どうもありがとうございました。  次に、紺谷参考人にお願いいたします。
  5. 紺谷典子

    紺谷参考人 おはようございます。日本証券経済研究所紺谷でございます。  中小企業政策についてお話しさせていただきたいと思うのですけれども、今回のこの不況というのは、やはり中小企業が置かれている状況というのをとても明らかにしたと思うのですね。中小企業はもう強くなったとか自立だというふうに言われるのですけれども、それももちろん正しいのですけれども、やはりこういうふうに経済が悪くなってくると、中小企業が傷むんだな、中小企業ってやはり弱いんだなということがよくわかったかなと思うのですね。  それから、最近のアンケート調査でも明らかなんですけれども、中小企業が何にお困りかということを考えてみますと、やはり金融と税なんですね。圧倒的に金融問題と税だということでありまして、この不況でも金融と税で非常に苦しめられちゃったなという観点で、この九〇年代の大不況が、中小企業が置かれている状況を極めてはっきりと示したんではないかと思っているわけでございます。  つまり、今、市場メカニズムのあらしみたいなことになっておりまして、ですから、通産省があるいは中小企業庁が、今までは言ってみたら保護、指導だったんだけれども、これからは自立支援だとおっしゃっていて、それは、市場メカニズムの導入が必要、競争性の増進が必要という意味で極めて正しいのですけれども、ただ、それだけじゃ困るという部分があるということなんですね。そういう点から考えますと、市場メカニズム論の横行というのが今回の不況をひどくした一因でもあるのではないかと思っているのでございます。  どうしてかと申しますと、市場メカニズムというのは、やはり弱肉強食、優勝劣敗なんですね。ですから、アメリカなんかもそうなんですけれども、一方で市場メカニズムによる効率性を非常に強く志向しながら、他方市場メカニズムからはじき飛ばされてしまうような弱者に対する手当てとか、それから一方で独禁法が非常に厳しいとか、そういう、市場失敗部分に関して十分な補完策をとっているということを学ばなくちゃいけないと思うのですね。  その点、日本経済学者皆さんは、極めて短絡的にと言ったら申しわけないんですけれども、市場メカニズムさえ導入すれば、自由な競争さえ導入すれば万事がうまくいくみたいな極めて幼稚な市場メカニズム論を展開なさって、そのことが今日の不況にどれほど大きな痛手を与えたかというふうに思っているわけでございます。  例えば金融破綻に関しても、金融ビッグバンというのが行われたわけなんですけれども、こんな不況の真っ最中に、こんな金融不安のただ中で金融機関競争させたら何が起きるかということでございます。  やはり自分が生き残りたいわけですから、競争に負けたらば自分が敗退せざるを得ないわけですから、自分が生き残るために、率のいいお客だけを手に入れようとするわけですね。これ以上不良債権ふやしてなるものかということで、中小企業だというだけでもう貸さないというような貸し渋りに走ったり、あるいは詐欺同然の融資引き揚げまであったと言われているわけでございますけれども、そういう形で、金融の面で非常に中小企業が苦しい立場に置かれたというわけでございます。  しかも、競争だ、自由化だとか、市場メカニズムだというふうにおっしゃっていたわけなんですけれども、でも、そういう中で、こういう弱者に対する保護ということを何も考えていなかったんですよ。  だけれども、アメリカでは、例えばクレジットユニオンのように、互助会方式だということで税を免除されているような、そういう、地域金融を守ったり業者金融を守ったりというような組織だってきちんとあるわけですね。それから、コミュニティー・リインベストメント・アクトというようなものがありまして、地域金融を守るとか、中小企業への融資の比率を一定量義務を課すとか、そういうような法律だってきちんとあるわけでございます。  ところが、日本で行われた金融ビッグバン構想の中では、中小企業金融というのはほとんど顧みられなかったということがあるんですね。これからは中小企業を育てるのが何より大事だということは多くの国民の皆さんの一致した意見だろうと思うにもかかわらず、これから金融サービスを向上させます、金融市場改革をやりますという金融ビッグバン構想の中に、中小企業金融というのがほとんど論じられなかったという問題があるわけです。  のみならず、むしろ今まで中小企業を育ててきた信用金庫とか信用組合というような組織が、組合方式であるということの利点をなお明らかにするような方向改正が行われたかというと、全然逆でございまして、どうせ小さいんだから、もたないんだから、くっつけてしまえというような、とても乱暴な再編策がとられたわけでございます。  ところが、信用金庫信用組合というのは、大銀行のようにコンピューターも動かしていないかもしれないし、あるいはテレビに出るようなエコノミストもいないかもしれないし、海外の支店から毎日のように時々刻々の情報を集めているということもないかもしれないんですけれども、毎日毎日商店街を歩きまして、足で稼ぐ融資審査ということをやってきたわけです。あそこの御主人は怠け者だけれども奥さんはしっかりしているから貸そうとか、あのおやじさんの頭はセンスが古くて何か先細りに見えたけれども、息子はいいセンスをしていて、近々息子に代がかわるらしいとか、そういうことで融資審査をしてきているというのが信用金庫信用組合なんですね。  どうしてそれが可能かというと、特定地域、狭い地域に特化する、あるいは特定の業種に特化するということで、専門性を限ることによって大金融機関も及ばないようなきめ細かな融資審査が可能であったということです。  むしろそういうものをこれから育てましょう、中小企業活性化が大事だと言うんだったらそういう議論方向であるべきにもかかわらず、そうならなかったということです。信用金庫信用組合日本では中小企業並みの税金を課されておりまして、それはアメリカと全く違うんでございますけれども、それをさらに普通銀行化させるというような方向金融ビッグバンであったかなと思うわけでございます。  それから、金融学者とかあるいはマスコミ、識者の方たちが、だめな銀行はつぶしてしまえ、だめな銀行をつぶして効率的な銀行を残すことが日本金融サービスを向上させるんだというふうにおっしゃっていたわけなんですけれども、でも、銀行をつぶしたら借り手が困るということへの配慮がほとんどなかったんですね。預金者については随分論じられましたし、当面は預金は全額保護するという施策もとられたわけなんですけれども、銀行には借り手がついているということに関する御議論はほとんどなかったわけでございます。  それで、金融学者方たちは、銀行がつぶれると借り手はどうするんですかなんて聞かれると、資本市場育成が必要だなんておっしゃるんですね。間に合わないんですよ。確かに、中長期的に見て、資本市場育成とかすそ野を広げるということは非常に大切なことだと思います。やるべきことだと思います。ですけれども、現状で日本企業資金調達といったら、大企業を除きますと、やはり金融機関からの借り入れしかないんですよね。そこで貸し渋られたらどうするんだということで、貸し渋りによって、詐欺同然の融資引き揚げによって、黒字の企業まで倒産するということが起きちゃったじゃないですか。それなのに銀行をつぶせばいいんだという非常に安易な議論になったということです。  それから、銀行であれ証券会社であれ、破綻したところは市場がノーと言ったんだ、市場が選別して非効率金融機関存在を許さなかったんだと言うんです。皆さん市場市場がとおっしゃるんですね。株価が下がったということは市場が判断したんだ、判定を下したんだとおっしゃるんですけれども、そういうふうにおっしゃる一方で、かつては、日本株価なんかでたらめだ、市場なんというのはわかっていないんだ、そういうことをさんざんおっしゃってきたわけです。いつから市場がそんな神様のように企業の選別をする能力ができたんだとお聞きしたいぐらいなんです。  実は、最近の日本市場というのは外資系が暗躍しておりまして、日本株価決定外資だと言ってもよろしいぐらいなんですね。もちろんその半分以上は日本人の投資家だったわけですけれども、非常に自信をなくしてしまいまして、外資が売るんだったら一緒に売る、買うんだったら買うというような付和雷同型になってしまったものですから、外国の思うがままの株価操作みたいな形になってしまったわけでございます。  それで、どんどん売り浴びせということでありまして、なぜ長銀が日債銀より先につぶれたのかということを考えますと、長銀株価の方が高かったからですよ。百円を十円にして九十円もうかるよりは、三百円を十円にして二百九十円もうかった方がいいという、ただただそれだけのことなんですね。だから、危ないといううわさのある中で最も優良なところからねらい撃ちするというようなことだって市場では起きたわけでございます。  それなのに、市場判定を下したとか、市場がその存在を許さなかったというような、市場の暴力を許すような、そういう議論ばかりしてきたということだろうと思うんです。  また、ペイオフについてもそうなんですけれども、ペイオフをやることによって利用者自立を促すというんでしょうか、銀行を判断するようにしないといけないと。やはり消費者であろうとも銀行を選んで、それでしないと、いつまでも預金保護をしているということでは利用者モラルハザードを招くというようなことも言われたわけなんですけれども、公認会計士がだまされるような銀行会計報告を読んで、どうやって中小企業とかあるいは一般の預金者銀行を判断できるというんでしょうか。これから財務の勉強会計勉強をしろというんでしょうか。そんなの不便きわまりないですよ。そのことに使う国民的なエネルギーということを考えますと、壮大なむだとしか言いようがないんですね。どこが効率化なんだと思うわけでございます。  そんなビッグバンだったらやめてくれと言いたいぐらいなんでございますけれども、極めて安易に、ディスクロージャーさえすればいいんだみたいな感じになっているわけでございますね。  ペイオフなんというのは自己責任だと言うんですけれども、そのために必要な啓蒙とか教育とかあるいはさまざまなインフラ整備格付機関をもっと充実させるとかそういうことを一切しないまま、いきなり自己責任ということを突きつけられているのが日本中小企業であったり預金者であったり投資家であるわけでございます。しかも、金融サービス法をつくるのをやめちゃおうかななんという御議論まで今ごろになって出ているという、とんでもない状態なんでございます。そういう金融の問題というのが極めて重要なんですね。  今度の中小企業基本法改正案の中にも、例えば資金供給円滑化ということで、金融重要性ということはきちんと御指摘いただいているわけでございます。ですけれども、ただ円滑化と、まあ基本法なんだから仕方がないんですけれども、具体的にどうするのかということをやはりお考えいただきたいと思うわけでございます。  それから、自己資本の充実ということをおっしゃっていまして、これは証券市場の問題と税の問題であろうと思うんですけれども、税金の問題というのも非常に厳しいですね。  もう既に言い古された相続税の問題というのもあるわけでございますけれども、農業に関しては事業の継承を重視して、税の繰り延べとかそういう措置がとられているわけでございますね。だとしたら、中小企業に対してもそういう配慮があってしかるべきと思うのでございます。  さらには、固定資産税など不動産の税金なんでございますけれども、日本では固定資産税の実質税率が非常に低い。外国に比べて非常に低いんだから、これをもうちょっと外国並みにしなくてはいけないんだということで、不況の真っ最中に土地、不動産の評価額を上げるというようなことをやってしまったわけでございます。ですから、不況の最中に固定資産税の負担額もふえるということになっているわけなんです。  そこで非常に重要なことは、税率という観点で国際比較をいたしますと、日本の実質税率が低いのは事実でございます。ですけれども、税額という点から見たらどうなのかな。  私は、二十年ぐらい前から各国の企業の資産の比較や何かをやってきているわけでございますけれども、それでわかりますことは、日本企業資産の中で土地のウエートが物すごく高いということなんです。それは地価が高いからなんでございますけれども、同じ事業をやるんだったらば海外の何十倍の土地の価格を負担しないと事業が始められないし、継続できないということなんですね。そのための金利負担だって重いわけでございます。つまり、一時期、日本の土地の値段はアメリカの百倍だと言われたわけなんですけれども、同じ面積の工場や支店をつくったとしたら、それだけの土地の資産を持たなきゃいけないということです。そうしますと、同じ税率をかけていたら大変な税額負担になるわけでございます。  税額負担という形ではどうなのかという国際比較をぜひ大蔵省にはおやりいただきたいと思うわけでございますけれども、そういう御議論も余り学者はなさらなかったということがあるわけですね。  最近、外形標準課税の導入というようなことでありまして、かなり前から、赤字法人というのがある、働いてもいない家族にお給料を払っているとか、あるいは自分たちの個人生活に使った費用を会社のコストとして落としているじゃないかとか、けしからぬというような議論がずっとあったわけです。  確かにそういう企業がないとは言えないと思います。ですけれども、一方で、お給料ももらわずに家族ぐるみで一生懸命事業を行っている町工場とか中小企業というのも非常に多いわけですね。個人業種も多いわけでございます。それなのにそういうマイナスのイメージばかり振りまかれているということでありまして、外形標準課税というのがいずれは導入されるものであろうというふうに思いますし、絶対だめということは言えないんですけれども、なぜこの不況の最中にそういうことを議論するんですかということなんですよ。  やるべきことの順序が違うんじゃないですかということです。そのために中小企業がとことん傷んできたということでありまして、税と金融というのは非常に大事かなと思うんですね。  それで、中小企業ということでいいますと、かつてはみんなが弱かったわけですけれども、これからは中小企業こそ大事という時代がやってくると思うんです。  どうしてかというと、昔は、大きいことはいいことだという時代だったんですよ。大企業が規模に物を言わせて大規模生産をして、そのことによってコストを下げて少しでも安くすることによって、一軒でも多くの御家庭が欲しいものを手に入れていくという、そういう高度成長の時代があったわけですけれども、今は必要最低限のものはもう手に入れちゃった、ちょっと欲しいかなと思うものも全部手に入れちゃった、今はぜいたく品の時代なんですね。  人によってぜいたくする場所が違いますから、マーケットはかつてのように大きくはないかもしれないです。だけれども、高くてもいいよ、スポーツシューズだって三万円でも買うよというような人たちがそろっているわけでございますから、これからは、マーケット一つ一つは小さいんだけれども、消費者が欲しがるものをつくれば高くてもちゃんと売れる、高付加価値でも売れる、そういう消費パターンになってきているわけでございます。それはまさしく中小企業の時代でもあるのかなということであります。  比較的に御指摘が少ない点を中心にお話しさせていただきました。もう時間になっちゃったので途中で残念なんですけれども、後ほどまたお話しさせていただけるチャンスがあるとうれしいなと思っております。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 中山成彬

    中山委員長 どうもありがとうございました。  次に、佐伯参考人にお願いいたします。
  7. 佐伯昭雄

    佐伯参考人 私は、宮城中小企業団体中央会会長で、全国中小企業団体中央会常任理事をしております佐伯でございます。  私自身は昭和四十三年に創業いたしました。光と電子の未来を開くということをモットーにしまして、電子応用計測器とか分析装置、いわば最先端といいますか、そういう技術の製造、販売を行っている中小企業を経営しております。  まず、本国会が中小企業国会であるということで、小渕総理を初め、きょうお並びの先生方を初め皆が、現下の中小企業が直面しているいろいろな諸問題を取り上げて、新しい世紀に向かいまして中小企業の果たすべき役割をこれから論じるということに対しまして、まず敬意を表するものでございます。また、中小企業の一人として、実りのある論議のもとに法案が成立されることを期待しているものでございます。  現在商工委員会において検討している基本法の見直しに先立って行われました中小企業政策審議会に、委員の一人として参加をさせていただいておりました。この法案が同審議会の答申を踏まえて立案されたものということでございますので、私としては、まずもって基本的に賛意をあらわしたいと思います。できるだけ早く本国会で成立させていただきますようお願いを申し上げるものでございます。  せっかくの機会でございますので、基本法改正案及び新しい中小企業政策の内容に関しまして若干の要望や意見というものを述べさせていただきたい、かように思っております。  まず第一に、新基本法の第三条に示されております新しい中小企業政策の基本理念ということでございます。  御存じのとおり、中小企業が、非常に多様な分野でいろいろ特色のある事業を行っておって、我が国の経済の基盤を形成している、これはもう異論のないところだと思います。しかし、今後とも時代の変化に即応しまして創意工夫を生かして経営の向上を図る、それが我が国の経済活力の維持とか強化に果たすべき重要な使命であると思っています。このため、中小企業者の自主的な努力、自助努力ですね、それと経営の革新、創業の促進、経営基盤の強化、それから環境変化への適用の円滑化など、こういうことが規定されておりますけれども、こういうことには基本的に賛同しているところでございます。  ただ、中政審の答案で、多様で活力ある独立した中小企業育成、発展という表現でまとめておりますけれども、若干、創業者の支援が前面に押し出されている。ベンチャー企業云々、すると既存の中小企業はどうなるんだろう、配慮が弱まるんじゃないかという心配が、一部誤解があるようにいろいろな公聴会で私も承っております。  私は審議にも加わっておりましたので、答申に示された新しい基本理念というのは、中小企業経営資源というのはまだまだ確かに十分とは言えない脆弱性を抱えておりまして、他方、しかし中小企業は、機動性、柔軟性、それから創造性といった強みを発揮しやすいということも事実でございまして、それらの強みを発揮しやすい環境を整備する、そういう前向きな自助努力というものに対する支援策を示したことは重要だろうというふうに思っております。  ただ、運用面といいますか実際面としましては、創業支援のみならず、既存の中小企業、これが圧倒的に数が多いわけです。きょうの新聞でも、これからベンチャーとかなんかを何万社かつくろうとかいうのが日経に載っているのをちょっと拝見していますけれども、九十万社とか百万社あるという既存の中小企業者、それらへの配慮というか、そこら辺の自助努力を円滑にやるために、個別的、具体的な展開に当たっての配慮というのがぜひ必要だろうというふうに思っております。  さらに、連携、組織化ということで、中央会というのはもともと組織化のための特殊法人でございますので、組合という結成ですね、それが、現在は、私ども宮城県も含めまして、任意グループあるいは非法人組織も含めた多角的な連携を行っております。新しい基本法でも、中小企業が相互に経営資源補完することに資するため、中小企業者の交流、連携の推進、それから事業の共同化のための組織整備を推進することというふうに規定されておりますけれども、現在、世の中が非常に変化しておりまして、組織化に対するニーズも多様化しております。  ですから、そういう意味で、お互いに中小企業が弱い経営資源を相互に補完する、それでその経営基盤を強化していくということは、これからも非常に重要なことであります。我々中小企業団体中央会としては、こういう多様化するニーズに十分対応できるように体制を整え、一生懸命努力をしているということなので、今後ともよろしくお願いを申し上げたいというふうに思っております。  これからの中小企業の団体、それは、この団体法の改正がこれから行われると思うんですけれども、事業協同組合あるいは協業組合の株式会社あるいは有限会社への組織変更を可能とする、これは非常に有効なことだろうと思いますので、ぜひ一日も早い成立を期待しているわけでございます。  現在、五万に近い協同組合が全国にあります。宮城県でも六百六十組合くらいあります。傘下企業が八万社、零細企業、一人、二人を含めて、八万人くらいの組織の中で、協同組合の事業が円滑に、外部の資本調達とかそういうことも含めて、会社へ組織変更していこう、こういうことが非常に有効であるということは先ほども申し上げたとおりでございます。  株式会社は最低資本金の制限が一千万とか、有限会社が三百万とか、そういう規定がありますけれども、組合というのはそういう最低資本金の制約がございませんので、何人か集まって、こういうことをやろうというふうなことでめどがついたら、すぐ株式会社に変更できる。これは非常に、ある意味では創業支援の具体的な方向政策の一つだろうというふうに思っておりますので、ぜひここら辺を御理解していただければというふうに思っております。  創業支援ということについては、私も創業時、ベンチャーとか脱サラとかという言葉のない時代に始めたものですけれども、銀行を初め資金繰りについては非常に苦労して、現在またこういう大きな不況の中でいろいろな面で苦労しているわけでございますけれども、創業の促進のときに、先ほども紺谷委員が申されたように、特に中小企業の一番の大きな面は資金の調達というふうなこと、もう一つは技術開発、さらに製品を商品にして売るためのマーケティング、市場開拓、そういうふうなことが、非常に中小企業が基盤が弱いという意味で、そこら辺の強化、支援が必要だろうというふうに思っております。  これは大蔵省とかなんかの関係があると思うのですけれども、ストックオプションの件とかエンゼル税制の改正、ここら辺のことも、今後上程の予定と聞いておりますので、いろいろな意味で速やかに実現をお願いしたいというふうに思っております。  それから、技術開発支援でございますけれども、中小企業といえども、ベンチャーだけじゃなくて既存の中小企業でも、不断の技術開発が非常に重要であるということはもう大企業以上に必要なことでございますから、そのための経営資源の確保、技術の向上とか研究開発の促進ということが明記されておりますけれども、引き続き、中小企業の技術開発支援の充実強化ということをお願い申し上げたいというふうに思っております。  この前もここでちょっと発言の機会を与えられましたけれども、日本版SBIR制度がスタートしておりますが、まだまだ私は不十分だろうと思っております。というのは、参加省庁も五省庁ぐらいで、百二十億ぐらいの予算しかないと思うのですけれども、アメリカが千七百億くらいですか、せめて半分、七百億以上のSBIR関連の予算ということが私は必要であろうというふうに思っております。  さらに、もう時間が余りないので少しはしょりますけれども、何回も言いますように、中小企業の資金の供給、そういうツールの多様化。最近、貸し渋りとか、テレビで言われております商工ローンの問題、これは本当に、困っている零細企業と言っては悪いですけれども、深刻な問題だろうというふうな思いがいたしております。ですから、間接金融に依存している現実、これを、新しい施策の中でいろいろ、無担保社債の引き受けができるよとか、信用保証協会法の改正とか、そういうふうなことも今後具体的な政策の中でぜひ促進を図っていくようにお願いを申し上げたいというふうに思っております。  最後になりましたけれども、中小企業の範囲の拡大ということ。  先ほども申し上げましたように、現在の物価水準、基本法ができた時代とはまるっきり変わっておりまして、それから業種が変わっております。ソフトとかそういう面の産業がかなり発展してきておる中で、資本金それから従業員の数、そういうふうなことをぜひ引き上げていただきたい、お願い申し上げたいところでございます。  その中でも、特に小規模の企業者についても、通産大臣が、近代化資金の貸付制度、これを、小規模事業者、二十人以下というふうにかなり焦点を合わせるというような配慮をなさるそうでございますけれども、その辺もよろしくお願いを申し上げたい、かように思っております。  最後に中小企業の予算でございますけれども、現在、国も県も財政的には非常に大変な時代になっているということはよくわかりますけれども、しかし、我が国の中小企業の役割の重要性、そういうことに比べますと、現在の中小企業関係は一般歳出予算の〇・四%くらい、たったの〇・四%という状況でございますので、地方財政とか自治体が苦しいということはわかりますけれども、もう目の前に迫った二十一世紀において、中小企業が本当に経済のダイナミズムの源泉であるということであり続けるために、さらなる予算の拡充をお願い申し上げたいというふうに思っております。  ちょうど時間でございますので、これで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  8. 中山成彬

    中山委員長 どうもありがとうございました。  次に、上野参考人にお願いいたします。
  9. 上野保

    上野参考人 東成エレクトロビームの上野でございます。このたび、中小企業基本法の一部改正の審議に当たりまして、参考人として意見を申し述べさせていただきます機会を賜りまして、大変光栄に存じております。  私は、二十一世紀の中小企業に必要とされるものということで意見を申し述べさせていただきます。  一番目に、私どもの会社の概要について簡単に御説明申し上げます。  社名は、東成エレクトロビーム株式会社と申します。業種は、電子ビームとレーザー加工をいたしております。本社は、東京の西多摩郡瑞穂町にございます。工場は、羽村市にもう一つございます。資本金は、一千万円の中小企業でございまして、昭和五十二年にオイルショックの直後に創業いたしまして、ことしで二十三年目を迎えております。社員は七十名の物づくりの会社でございまして、エレクトロニクス、自動車とその部品、半導体とその製造装置、それから航空、宇宙、そのほか機械あるいは鉄鋼、重工、こういう多くのお客様の研究開発あるいは試作をサポートする会社でございます。その中には量産に入っているものもございます。  二番目に、私どもの方に注文いただきます発注者側の形態と構造変化ということでお話し申し上げてみたいと思います。  注文をいただきますお客様においては、バブルの崩壊後、リストラが進みまして開発とか試作関係の人手不足が大変進んでいる、それから予算も大変厳しい状況になりまして試作のスケジュールは大変厳しい、こういうふうにおっしゃいます。自動車産業に見られますように、下請構造の激変ということも起きております。  そういう状況の中で、三番目に、中小企業の受注形態の変化ということについてお話ししてみたいと思います。  ことしの私どもの三月期の決算では、前年比二けたのマイナスでございました。大変厳しい状況でございまして、四月から七月ぐらいまでさらにマイナスが続いておりました。状況としては大変厳しい状況が続いております。物づくりの会社がこんな状況でございますので、流通関係の方々、あるいはサービス関係の私どもが関係するいろいろな経営者の方々にお聞きしましても、大変厳しい状況だ、こういうふうに申しております。  しかし、夏ぐらいから、今まで予算取りみたいな見積もりを前提とした引き合いが大変多かったわけですけれども、最近は発注を前提とした見積もりが大変多くなってまいりまして、今受注の方も少しずつ増加に転じております。私どもにとっては、大変うれしい状況がかすかに見えてきたという状況でございます。  四番目に、私ども中小企業の経営課題でございます。  私ども中小企業も、世界の経済の中に組み込まれてきておりまして、もうこれはいや応なしに、国際競争の中で、品質とかコストの面で競争の中に本当にさらされているという実態でございます。  したがって、このような状況の中で、私ども中小企業としては、自社の持っている技術とかノウハウを、あるいは製品をその中で磨き上げる必要がある、こういう現実に直面しております。すなわち、経営の革新と技術開発を目指すにはどうしたらいいだろうか、こういう身近な課題であります。  また、中小企業としましては、企業間のネットワークをつくる、要するに自社だけではなかなかこの厳しい状況の中を生き延びることができない、連携をするというようなことが大変重要な課題になってございます。  それから次に、研究や開発に力を入れまして、売り上げも伸ばしたい、それから利益も上げたい、こういう本当に厳しい状況の中にあって、意欲を、あるいは希望を強く持っているわけでございます。  それから、もう一つの中小企業の経営課題としましては、事業の継承についての問題でございます。先ほどもお話がございましたけれども、税制の問題は、避けて通れない、中小企業に対する重要な問題ではないかなと考えています。特に未公開株の評価というようなことも、ぜひ検討をお願いしたいというふうに考えております。  五番目に、二十一世紀に生き残る中小企業の戦略としての考え方でございます。  私は、一つ目は、自社の強みを磨き上げることによって、役に立つ会社、これが私ども中小企業が目指す一つの方向づけではないかなと考えています。それは一つは、例えて申しますと、お客様から御注文いただくときに、私どもとすれば、社内事情というのがかなりの場面で出てまいります。社内事情を優先するような会社ではだめだというふうに私は考えて、それを実践しております。  二つ目は、産学官の連携でございます。  現在、私どもの多摩の地域には大変多くの企業存在しております。東京の三鷹以西の方は多摩と言うわけですけれども、そこと埼玉県さんの南西部でございますね、それから神奈川県さんの内陸部、県央部と申しますけれども、そこの地域というのは、産業それから大学がたくさん立地しております。四人以上の事業所で一万六千を超えます。それから、理系の大学が二十六校もございます。それから、製品開発型の中堅、中小企業というのは二百五十社もあります。そのほか、基盤技術型の中小企業を含めまして、四人以上の事業所が一万六千五百もあるわけでございます。  この地域の産学連携というのは大変注目されておりまして、関東通産局さんの大変大きな力入れによりまして、今、日本の一つのモデル地域として新しい産学連携を実践しております。  ここでの活動といいますのは、具体的にはネットワークをつくりまして、大学の先生方の研究のテーマとか、あるいはどういう先生方がいらっしゃるか、そういうことを盛んにPRをしていただきますし、私ども中小企業も、自分たちの持てる技術、あるいは持てる機械設備、今までのいろいろな研究開発の実績、こういうようなことをPRできる場をつくってございまして、毎日のように産学連携の情報が入ってまいります。こういうところに入っていくということも、我々中小企業にとっては大変重要なことではないかなというふうに考えております。  その中でもまた、大学の先生方も最近随分変わってきたなというふうに私考えておりまして、中小企業に気軽においでくださいますし、指導賜ることもだんだん多くなってきております。こういう事態というのは大変私ども中小企業としては心強いわけでございまして、ぜひこういうことを推進していくようにお願いしたいなというふうに考えております。  それから、私ども中小企業としましても、今まで大学の先生方というのはなかなか敷居が高いというふうに間違った考え方をしていたこともあると思っていますので、私ども中小企業としても活発に先生方にコンタクトする。そして、産学連携の実を上げるということが肝要かと思っております。  それから三つ目には、公的な支援策の活用でございます。  平成十年度の補正予算から、中小企業者向けとしまして、数多くのメニューが出てまいりました。特に、中小企業の技術革新制度、日本版SBIRとして紹介されておりますけれども、スモール・ビジネス・イノベーション・リサーチ、こういう全く新しい制度に私どもも応募いたしまして、中小企業総合事業団さんの厳しい審査がございまして、採択をちょうだいいたしました。  その中でも、やはり指導事項が入ってございまして、こういうところをしっかりやりなさいと。最近は評価が大変厳しゅうございまして、ただ採択とか不採択ということじゃなくて、どういうところが問題である、あるいは採択されても、こういうところをちゃんとやってください、こういうことを書いてございますので、中央省庁の方々の、あるいは現場でのやっておられることというのは大変有効になってきているというふうに私は思っております。  それから、私ども中小企業としては、やはりそういういいメニューができておりますし、公募にチャレンジするということがやはり大事なことではないかなというふうに考えております。  それと、政策金融と言われます金融の面では、私ども、中小企業金融公庫の役目というのは大変重要だというふうに考えております。創業して間もなく、長期の設備資金、運転資金をお借りしまして、現在の新しい生産設備、工場建設なんかを進めてまいりました。大変にありがたい役割をしていただいているというふうに考えております。  それから、中小企業は、経営の革新とか新技術を推進していくためには優秀な人材を求めております。しかし、これは中小企業が独自に採用するというのは大変厳しい状況でございますので、これからは、中小企業診断士の方々、あるいはプロのコンサルタントの方、税理士それから公認会計士の方々の指導を受ける場面というのが大変多くなってくると思っております。中小企業としては、自分の会社をよくするための指導を仰ぐわけですので、これからはいいサービスを受けるためにもやはり受益者負担ということを考えていく必要があるのではないかな、こんなふうに考えております。  四つ目は、私ども中小企業も、十年プランと私は申し上げておりますけれども、やはり中小企業自分の会社をこうしたいんだという長期のコンセプトを持つことが大切だというふうに考えております。経営者の事業に対する思い入れを社員に話し、協力会社さんにも御説明し、それからファイナンス関係とかお客様にもお話しすることによりまして、夢の実現に向かって、我が国の産業力の活力と言われますその源泉となって力強く生き延びていきたいな、こういうふうに考えております。  六番目に、中小企業政策への要望でございます。  事業所数で九九%を占める中小企業は、大変今厳しい状況にあります。このような中で、中小企業経営革新支援法というのは大変有効な法律だというふうに考えております。東京地区では既に多くの方々が認定されております。しかし、地方へ行きますと、まだ地方の経営者はこのことについて余り詳しく知らない方々もおられますので、ぜひ都道府県の方々にこれをよくPRしてくださいということを強くお願い申し上げたいなと思っております。そのような制度の説明会というのを、全国でぜひ進めていただきたいと思っています。  それからもう一つは、中小企業というのは、自社の単独で新技術や新製品を開発することが大変難しい状況にございます。公的なこういう支援策を通じまして、足がかりにして、私どもは、こういう新しい、日本版SBIRといわれるような中小企業技術革新制度を活用いたしまして、ニーズの段階から技術開発をし、販路を開拓し、事業化に結びつけるという、画期的な法律だというふうに私は思っておりますし、ぜひこれを推進していただきたい。  今現在、通産省さん初め五省庁さんの参画をいただいているわけですけれども、ぜひもっと多くの、全省庁さんに参加していただいて、予算規模もアメリカの十分の一ぐらいでは本当につらいところでございますので、ぜひ大幅な増額をお願い申し上げたいと思っています。  次に、この中小企業基本法についての評価でございます。  私は、中小企業政策研究会という中小企業庁長官研究会のところから参加させていただいておりまして、全十二回ございました研究会に全部参加させていただきまして、中小企業立場から数々の御提案を申し上げました。そして、中小企業政策審議会の専門委員といたしましても、また多くの御提案を申し上げました。したがって、このような、今日本が得意とする物づくりは、世界の大競争時代の中にあっても、間違いなく生き延びることができるというふうに私は感じております。そういうことで、この中小企業基本法は、多くの方々からこの理念については賛同を受けるというふうに考えております。  これからこの理念を踏まえまして、中小企業が持ち前の行動力と決断力、そして連携を図りまして、来るべき二十一世紀に元気に生き延びてまいりたいというふうに考えております。この法律が一日も早く成立されるようにお願い申し上げます。  これで私の意見陳述を終わります。(拍手)
  10. 中山成彬

    中山委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 中山成彬

    中山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏男君。
  12. 小島敏男

    ○小島委員 自由民主党の小島敏男でございます。本日は、参考人の皆様には、お忙しいところ商工委員会に御参加をいただきましてありがとうございました。  商工委員会では、きのう、おとといと、この新中小企業基本法の関係について、かんかんがくがくの意見が交わされ、きのうは夜七時まで、おとといは六時までということで、大変に皆さん方が勉強され、この問題に真剣に取り組んでいるということが私もわかりました。  中小企業が我が国において大変に大切な、重要な役割を果たしてきた、そして今後もその役割を果たすために私たちはどうしたらいいかということを論じてきたわけであります。今回の改正が三十六年ぶりの抜本的な改正となるために、中小企業者にとっては、この法案が、末端まで光を当ててもらいたいというのが委員各位の意見でありました。  参考人の方々は、ともに中小企業政策審議会委員として、また専門委員として、この法案等には間接直接的に参画なさった方々ですので、この法律案についてはいろいろと御提言もされたでしょうし、また熟知されていると思います。私は思うのですけれども、法案が施行されるということは一つの線を引くことですから、法案が施行されますと、これに対して右になった人、左になった人というのが必ず出てくるわけでありまして、そういう点においても、改正してよかったと大方の方が言われるような、そんな法案であるようにこれからも審議を続けてまいりたいと思っています。  時間がありませんので四人の方それぞれということにいきませんので、清成参考人紺谷参考人、最初のお二人の方に御質問をさせていただきたいと思います。  その前に、私は埼玉県の熊谷の生まれであります。十七号の端の商店街の中で生まれ育ちまして、その中で、市議会、県議会を経験し、ここまで来るのに二十九年かかりました。非常に長いことかかったのですけれども、今思い起こしてみますと、市議会、県議会を通じて、商店街のこと、中小企業のこと、このことを私たちが真剣に取り組まなければ、ここまで政治活動は続けられなかったのではないかなということを自負しています。そういうことで、私そのものは商店街のことを今昔は肌で感じておりますし、零細企業立場は私の立場そのものであるということを感じています。  きょうは幸いなことに、理事皆さんにも感謝しなければならないのですけれども、私の誕生日なんですよ。平成十一年の十一月十一日ということで一が六つ並びまして非常にめでたいのですけれども、そのときに質疑の順番を与えていただきましたことに心から感謝を申し上げます。それも一番ですから。  そこで、清成参考人にお伺いしたいのですけれども、今までのお話を聞きますとベンチャーという言葉が非常に多く使われるわけでありますけれども、先ほど佐伯参考人がいみじくも言いました。どうもベンチャーが先走って、私たち中小企業は蚊帳の外になるのではないかというような危機感も持っておられる発言がございました。そこで、ベンチャーが先に出るということであっても、今回はやはり商店街中小企業、零細企業に対しても目が届くのであるということをぜひ参考人からもお話しいただきたいのです。  創業の促進が新たな政策体系の中に位置づけられておる、そういう新規創業というのは経済の活性化にどのような役割を果たすか。それからもう一つは、今お話しいたしましたように、では商店街はどうなのか、零細業者はどうなのかということに対しての光は、どの辺に新しい法案として支えられるのか、この辺をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、小林(興)委員長代理着席〕  創業の消極的評価ということで先ほども説明がありましたけれども、昭和二十三年の設置法の理念から乖離しているということでありまして、それ以来うたっているんだけれども、皮肉なことに、創業が活発化したのが昭和三十八年から四十五年にかけてだというような話もありました。創業の問題というのは世界の流れの中でも、これからの中小企業を支える、そういう中では重要なことだと思いますけれども、ぜひ以上の点についてお伺いをしたいと思います。  それから、紺谷参考人でございますが、漏れ聞くところによりますと、大変に大蔵キラーというようなことも聞いていますけれども、発言を聞いていて、歯切れのいい発言に、私ももっと長く話を聞きたいなというような感じも受けました。  今回の法改正についてでありますけれども、先ほど来お話が出ておりますけれども、中小企業はやはり金融と税制であるということが言われているわけであります。きのう、おとといあたりも野党の皆さんからどんどん出たことは、貸し渋りに対する考え方ということが出ていたわけです。  私たちも納得がいかないのは、やはり先ほども銀行の話が出ていましたけれども、銀行が今の時期にというような話もありましたが、いずれにしても、政府がとったことは、多額のお金を投入して、私たちの税金を投入して、銀行を立ち直らせるためにやってきたわけでありますけれども、私どもがちょっと驚くのは、今騒がれている商工ローン、この関係について、多額の税金を投入した銀行がまた日栄等にお金を貸しているということに対して、非常な憤りを感じているわけですね。  ですから、商工ローンに対する論議というのも活発に行われたのですけれども、ぜひこの機会に紺谷参考人から、今の貸し渋りとあわせて商工ローンの考え方についてもお聞かせいただければありがたいと思います。  それから、時間がありませんので、ペイオフの話も出ましたけれども、そのペイオフの考え方。今、賛否両論、凍結すべきである、いや実施すべきであるということなんですけれども、私は基本的には、ペイオフというのは国民にまだ周知していないですよ。知らないのですね。そういうことで、ひとり歩きをしているような感じも受けるわけでありますけれども、その辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  13. 清成忠男

    清成参考人 御質問が二つございました。  一つは創業の意義ということでございます。  日本では、この十年ほど創業が相当に減っている、創業率が低下しているということが言われるわけであります。残念ながら、日本には創業を的確に把握する統計はございません。ございませんけれども、個人企業の数でありますとか法人企業の数から見ますと減少しておりますから、したがって、廃業が創業を上回っているということになるわけであります。  実は、これは先進諸国の中では全く例外的な現象でありまして、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、どこも創業は非常に活発であります。なかんずくアメリカ、イギリス、ドイツ。フランスの場合には若干ふえたり減ったりはしているのですけれども、今一番創業が活発なのがドイツでありまして、二番目がアメリカだと言っていいわけであります。ドイツの場合には十年ぐらいで創業が倍増しております。それから、アメリカの場合には倍増するのにやはり二十年ぐらいかかっております。  それで、この創業の意義ということでありますけれども、これは、創業一般というのと、イノベーティブな企業、革新的な企業創業というのでは、若干意味が違うであろうというように思うわけであります。  創業一般ということで非常にふえているというのは、産業構造が大きく変わってきた、サービス経済化の関係がございまして、したがって、サービス産業において新しいタイプの創業が非常にふえている。しかしながら、このサービス産業においては、フランチャイズとかそういう形で、半ば独立性を失いながらも安定化を選ぶ、こういうタイプの創業も非常に多いのですね。特にアメリカの場合には、そういうものも相当に多いということがあるわけであります。これは、雇用の創出には寄与するわけでありますけれども、必ずしも社会的に大変な革新といいましょうか、展開して影響を与えるということにはならないと思うのですね。  この創業一般と違って、ベンチャー創業ということがあろうかと思います。ベンチャービジネスというのは、実は私どもが三十年ほど前につくりましたジャパニーズイングリッシュでありまして、日本でしか使われない言葉でもあるのですけれども、私どもは、知的なイノベーターとしての中小企業というように定義づけを行ったわけであります。それで、少なくともイノベーションを展開するということで、これは国際競争力の強化でありますとか、あるいは国民生活の向上でありますとか、あるいは地域経済への貢献とか、いろいろな意味で社会的にインパクトを与え得るというように思っております。  なかんずく、先ほども上野参考人からも御報告がありましたように、今、大変グローバルな競争の中で日本中小企業が戦っていかなければならない、しかも生産機能はどんどん海外に流出しているということになりますと、やはりイノベーションを展開するということが非常に重要になるということで、これは決して製造業だけに限定されるわけではなくて、特に情報通信技術ということになりますと、サービス産業においても大変イノベーティブな中小企業の登場が要求されている。  実は、アメリカの場合に、八〇年代の初頭にドル高政策の中で大企業の空洞化が生じて、その間隙を縫って新しい中小企業が数多く登場し、それが十数年たって今大企業になっている。シリコンバレーですね。情報通信産業という新しい産業を形成して、そして米国経済の復活に寄与した。したがって、大企業ではなくてベンチャーが寄与した。このベンチャーの開発した技術が大企業に導入されて、例えば自動車産業ではサプライチェーンマネジメントといったようなものが展開されてきて復活するという、こういう関係でベンチャーが非常に重要である。  しかし、新規の創業ばかりじゃなくて、佐伯さんの会社のような一定の歴史を持っている企業経営革新、これは私は第二の創業であろうということで、既存企業振興ということも非常に重要だというふうに考えております。  それからもう一点の零細企業の件でございますけれども、商店街に着目しますと、残念ながら九十数%は停滞または衰退ということになっております。これは、大規模小売店舗のシェアが反面高まっているということでもあるわけで、しかも、大規模小売店舗が入っていない商店街というのがほとんど没落状態にあるということであろうと思うのですね。そして、この商店街から外れたところにコンビニエンスストア等がどんどん展開するということになりますから、今、零細小売業については非常に厳しい状態にある。  これに対する政策というのは、今まで、商業集積に着目する、商店街の再生ということに着目しているわけですけれども、これは実は横のレベルの政策なんですね。今の第二次の流通革命というのは、消費者とメーカーを流通業者がバーティカルに、垂直的に結びつける、コンピュータリゼーションとそれから配送、これをうまく連動させていくといったような形になっているわけですね。したがって、消費者から末端小売、それから中間流通、生産というバーティカルな構造を改善しないことには、商店街の再生とかあるいは零細小売業の再生というのは実はあり得ないというように思っております。
  14. 紺谷典子

    紺谷参考人 最初に一言だけ言わせていただきたいのでございますけれども、今回のこの改正がよくないと言っているわけではなくて、大いにおやりいただきたいと思うのですね。ただ、旧来型の格差是正というようなものに余り焦点が合わなくなったというところがちょっと心配かなと思っているというだけのことでございます。格差是正は、これまでは最重要な柱でありましたけれども、今後も重要な柱の一つであり続けるであろうということでございます。  さて、貸し渋りについてなんですけれども、この貸し渋りというのは、やはり時ならぬときに銀行競争を求めた。ただでさえモラルの低い銀行を育てておいて、モラルの低い銀行がなりふり構わぬ貸し渋りに走るような、そういう金融ビッグバンをやっちゃったのが間違いだった。それで、金融改革の時期を誤っただけではなくて、中身が改革の名に値しないものであったということを先ほど申し上げさせていただいたのでございますけれども、ようやっと政治主導で、保証協会二十兆円とか、今度十兆円積み増していただくということでありますけれども、学者と官僚の皆さんの御議論で足りなかった部分を政治主導で補っていただけたということでありまして、今後もぜひ政治主導をお願いしたいと思っているのでございます。  貸し渋りの問題に関しましては、例えば一番大事なのは、学者の皆さんがおっしゃっているような証券市場の充実というだけじゃだめなんだと思うのです。もちろん、証券市場の充実ということは非常に大事ですし、今回の改正にもあるような、中堅企業ベンチャービジネスについて資金調達の場を広げてあげようということも大事なんですけれども、多くの中小企業は証券発行の費用にたえないですよ。  だって、ディスクロージャーの費用というのは非常に莫大なものがありまして、莫大といったって大企業にとっては大したことはないのですけれども、最低でも数百万。千万円ぐらいかかるということでありまして、監査を受けて有価証券報告書みたいなものを出していかなければいけないわけですよ。そんなこと、とてもじゃないけれどもやっていられないということですね。  不特定多数からそういうふうに資金調達するためには、それなりの資金がかかるわけでございます。ですから、今回の石原都知事の中小企業向けの債券市場というのが貸出債権の証券化ということでおさまりそうなのでございますけれども、せいぜいそのぐらいかなと。でも、それもとても大事なことだと思うのですね。  やはり中小企業というのは、金融機関と長年のおつき合いをすることによってお互いに知り合って、緊急の融資にも応じてもらえるというような、カスタマーズリレーションシップ、ロングタームリレーションシップというのが多分基本でありまして、それは金融機関の側にとっても資金調達をする企業にとっても、どちらもコストが少なくて済むということでございます。  それを基本としておやりいただきたいと思うのですけれども、日本銀行が結構優位に立っておりまして、例えば融資契約なんというのは、相互契約であるにもかかわらず、印紙代というのは借り手が負担する。何でそういうことになっているのと思うのでございますけれども、小さいところはそういう問題を初めとして。  例えば担保の話なんですけれども、担保割れなんだから追加の担保を入れろというのが当たり前のようになっておりますが、欧米では御承知のようにノンリコース型といいまして、担保をとる段階で、もういいよ、これで貸すよといった銀行側の判断というのがあったわけでございます。ですから、追加担保は求めないという形の貸し出しというのもあるわけでございますから、そういうこともぜひ促進していただきたいと思うのですね。  さらには、貸し手責任でございます。米国では特に厳しいのですけれども、貸し手責任ということでありまして、この貸し手責任という言葉は、住専問題のときに、銀行と大蔵省が御自分たちの責任をごまかすためになぜか農協に使ったのでございますけれども、本来の貸し手責任というのは、実は貸した側、融資をした側が融資という行為を使って経営に関与したその責任を問うものなんですね。つまり、あのときだって銀行の方だったのでございますけれども。  そういう意味で、貸し手責任というのをきちんとやっていく。詐欺同然の融資引き揚げとか、従来ずっと継続的にやってきたお互いの暗黙の了解があったものをいきなり裏切るとか、そういうものはやはり金融機関としての役目を十全に果たしたとは言えないんだという観点から、貸し手責任というものをもうちょっと厳しく金融機関側に迫っていただく、そういう方策もおとりいただきたいなと思うわけでございます。  それから商工ローンの問題なのでございますけれども、商工ローンというのは、これはニッチ産業ですね、今はやりのすき間産業といいますか。要するに、銀行が貸すべきところに貸していないからこそそういうことになってしまったわけでございます。  確かに、日栄とか商工ファンドとか、もう暴力団まがいのことをおやりになっている。だけれども、商工ローンがこれだけ急成長してきたというのは、ああいう暴力団まがいのやり方だけだったというわけではないですね。十分貸して採算がとれるようなところにまで銀行が貸さないからこそ、消費者ローンも商工ローンも急成長してきたということでありまして、そこにきちんと手当てをしていけば銀行だって大丈夫なんですよ。  それが、最近はやたらめったら数が多過ぎるといって金融再編という流れにあるわけなんでございますけれども、数のことだけ言ったら、アメリカには一万からの銀行があるのですよ。日本の方がずっと少ないですよ。何を基準に数が多い少ないというのか。  それから、合併して国際メガバンクができたというのですけれども、国際メガバンクができてもしかしたら多少はプラスがあるかなと思うのは、国際メガ企業でございます。やはり、企業が大から小まで、零細までたくさんあるように、それに対応した金融組織というのをおつくりいただかないといけないわけでございます。  国際メガバンクといいましても、三行統合なんて典型的なんですけれども、三行寄り集まって、確かに情報投資とかコンピューター投資のコストは小さくなるかもしれないですね。だけれども、調整のコストはどうなんだということです。  銀行なんというのは、書類から何から全部違うわけですよ。しかもプライドが高くて、御自分たちが一番とお考えの方たちですね。結婚相手だって、ほれて一緒になってもけんかの種が尽きないのに、ましてきのうまでライバル同士だった方たちが一緒になってうまくいくかどうかということでありまして、第一勧銀は二十年たってもまだぎくしゃくがとれない。今度懲りもせずによくなさるなと思うのでございますけれども、そういうような調整のコストということを忘れてしまって金融再編を進めていらした金融再生委員会というのは、ちょっと間違っていらしたんじゃないのかなと思うわけでございます。  大事なことは、きちんとニーズのあるところに業務を行っていく。よく経済学者皆さんも、売れるものをつくればいいんだよとおっしゃるじゃないですか。それなのになぜ金融問題となるとすぐ自己資本とか国際競争力とかそういう議論になってしまうのか、おかしいと思うのです。ニーズのあるものを提供していけば十分にどの産業だって生き残っていける、金融だってそうなんだということでございます。ですから、そのニーズに対して応じていくような融資審査をもうちょっとまじめにやってね、というようなことがあると思うのでございますけれども。  その点に関して、商工ローンの問題で一つ言わせていただきたいのですが、商工ローンにもまじめな業者はいっぱいいるということです。町の貸金業者という方たちも、この苦しい中で一生懸命中小企業を支えている弱小の貸金業者だってたくさんいるのですよ。  ところが最近、不動産とか建設とかそういう金融関係にはお金を貸さないということになっておりまして、なぜか銀行は、商工ローンには多額のお金を貸しているくせに、そういう町の金融業者には貸していないのですね。言ってみたら仕入れができないという状態になっておりまして、非常にお困りの方たちがいるのです。商工ローンの問題点というのはきちんと手当てしていただかないといけないのですけれども、商工ローンが脚光を浴び過ぎたために、町の金融業者皆いけないみたいな、商工ローン全部いけないみたいな、そういうことになってしまうと困るのですね。  高金利の上限規制が、グレーゾーンがあったりとかさまざまな問題があるのですけれども、高金利即いけないかというと、決してそうじゃないのですね。その問題も大事だと思うのです。どうしてかというと、一週間とか、場合によっては一日の金融をつけるというときに、低利ですと相手になれないのですよ。やはり最低限のコストというのがあるわけですね。  今、上限金利は金額に応じてということで三段階になっているのでございますけれども、期間に応じてというような考え方だって導入されてしかるべきと思うのですね。ですから、やたら高金利いけない、低金利にすればいいんだということではなくて、リスクに見合った、コストに見合った金利であるかどうかという質の問題が大事だということなんですね。  このどさくさ紛れに上限金利をうんと低く抑え過ぎてしまって、今は低金利ですからよろしいですよ、だけれども、将来、日本経済がまた復活して金利が高くなる時代に、それで手足を縛られて中小企業金融がまたその面で損なわれるということのないように、御配慮いただきたいと思うわけでございます。  ペイオフの問題も、私は、金融学者の御議論はほとんどというか、ことごとく間違っていると言ってもよろしいと思うのですけれども、例えば、先ほども申し上げましたけれども、自己責任を追及するというのですけれども、自己責任だったらば、それをとるだけの情報の提供ですとかそういうさまざまなものが必要であるにもかかわらず、そういう形に全然なっていないということですよ。  それから、自己資本比率規制やなんかもやはり同じような問題があると思うのですけれども、どうして地銀や第二地銀まで八%の自己資本比率規制でないといけないのですか。だって、自己資本なんてもともとジャパン・バッシングだって、これは周知の事実じゃないですか。国際的な業務を行う銀行が八%というのはもう決まってしまったんだからしようがないとしても、国内でだけ業務を行う銀行にまで八%を求めるなんというようなことを今この時点でやってしまったりしたものですから、なお貸し渋りがひどくなったということじゃないですか。  マスコミの皆さんも、規制緩和、規制緩和とおっしゃっているわけですよ。だとしたら、法的根拠のない過剰な規制に対して何で文句をおっしゃらないのか。柳沢さんの方針を越智さんがお変えになったとなったらば、守旧派だとか業界寄りだとか改革路線の後退だとかというような批判が随分新聞に載ったのでございますけれども、とんでもないですよ。余分な規制をこれ以上する必要なんて全くないと思うのですね。  ですから、自己資本の問題というのも大いに考えていただきたい。もともと銀行の自己資本と銀行経営の健全性なんて何の関係もないなんというのは、欧米でたくさん実証分析がなされているわけでございます。しかも、アメリカがやりました早期是正措置なんというのは金融不安が静まってから入れたものでございまして、金融不安のただ中であんなことをやったら何が起きるか、ちょっとは想像力を働かせてみてよということなんでございます。  それから国際メガバンクというのも、さっき申し上げましたけれども、利用者にとってどこがいいんだというと、余りよくわからないのですね。だって、例えば三行一緒になって、それは一本の矢よりも三本の方が強い、折れないということはあるかもしれないのですけれども、三行が一緒になってそれでつぶれなくなったというだけだったら、ちょっと悲しいなと思うのですね。矢というのは折れさえしなければいいのか。矢というのは武器でございますから、折れなければ矢は務めを果たしたのかというとそうではないわけでございますね。そこのところが非常に肝心だということでございます。  例えば、富士には断られたけれども一勧からは借りられた、そういう中小企業だってあったかと思うのですけれども、三行統合すると、中小企業にとってはチャンスが減るだけでございます。そういう問題点ということもきちんと御整理いただきたいと思っております。  どうも長くなって失礼いたしました。
  15. 小島敏男

    ○小島委員 どうもありがとうございました。  大変に、質問の仕方が悪かったんだか反省していますけれども、清成参考人紺谷参考人にはいろいろと御示唆のある御意見をいただきましてありがとうございました。  どうもありがとうございました。
  16. 小林興起

    ○小林(興)委員長代理 それでは、吉田治君。
  17. 吉田治

    ○吉田(治)委員 民主党の吉田治でございます。  民主党は、中小企業政策を今私どもも勉強しておりまして、今回の国会に臨むに当たって、やはり今までのような俗に言うばらまき的な中小企業施策はよくない、やる気のある、これからつくろうという人もそうですし、現在その中小企業をやられている方にも、やる気のある方がもっともっとできる中小企業政策というふうなものをしていかなければならないというふうに、強く訴えをしているところであります。  そして、今国会のこの中小企業基本法の国会論議を含め、この委員会質疑を眺めておりまして一言言えることは、非常に焦点がぼけているのではないかな、基本法は憲法みたいなもので、これを変えることのみにきゅうきゅうとして、本来であるならば、金融の問題であるとか税制の問題、はっきり言ってそこのところも明らかになって議論をしなければならないのが、どうもその辺が明らかにならずして、単に基本法改正ということで終わってしまっているのではないかな。  特に、紺谷参考人のお話の中で、自由競争という形になってきますと、私どもも昨日の質疑の中で、回収しやすいところから回収していくんだ、ということは、業績のいい会社からとにかく金融機関はむしり取っていくというふうなことをしていくと、ますます体力を弱めていくのではないか、そういうふうな話。それから、金融の問題に関しては、単に民間金融機関があって、補完的な政府金融機関があって、それで終わりであとは商工ローンというのはどう考えてもおかしいのじゃないか、その間に、ハイリスク・ハイリターンかもしれないけれども、そういうふうな部分金融というものがあっていいのではないかというふうなお話等を質疑の中でさせていただいております。  そこで、紺谷参考人。多分今ので十二分に、しゃべり足らないという部分は補われたと思うのですけれども、あえて、金融というふうな問題の中で、中小企業育成のための金融というのは何なのか。そしてもう一点目は、税制ということを先ほど言われました。中小企業にとってどこが問題なのか。この二点を、まず紺谷参考人の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 紺谷典子

    紺谷参考人 どうも申しわけありません。もうほとんどしゃべらせていただいたかなとは思うのでございますけれども。  やはり、中小企業金融ということでありますと、中小企業に特化する専門金融機関というのが必要であろうかなとは思うんですけれども、それができていないということが一番肝心だと思います。証券市場だとか何だとかという方向に話が流れているんですけれども、先ほども申し上げましたように、融資の充実ということが一番大事だと思うんです。そこが今までの金融議論で最も落ちていたところかなと思うわけでございます。  金融市場にも市場メカニズムをということなんですけれども、市場メカニズムというのは、やはり弱者をたたきつぶしてしまうというところがあるわけでございますから、米国のように中小への融資をきちんと守るようにということでやってもらいたいなと思うんですね。  日本で、例えば消費者について申し上げますと、子供にやるお年玉のお金がないから貸してくれなんというと気が狂っているのかと思われて救急車を呼ばれちゃうかもしれないですけれども、米国では、クリスマスプレゼントのお金がないから貸してくれといって十分に貸してもらえるんだそうでございます。そういうきめ細かい金融という形になっているということをぜひぜひ見習ってほしいと思うんですね。市場メカニズムといって、やたらめったら自由競争を取り入れればいいんだというような幼稚なやり方を決してアメリカはやっていないということでございます。  それから、税制に関しましても、日本では今ベンチャーだ、創業支援だという話になって、それは全くそのとおりだと思うんですけれども、リスクをとるという行為をきちんと評価するという形になっていないんですね。もうけたかったんだろうみたいな感じになっているわけでございます。ですからまず、リスクをとるということは非常に必要なことなので、だれかがリスクをとって事業転換をしてくれないと日本経済はもたないんだというような、一般国民の皆さんに対する基本的な情報啓蒙活動、教育啓蒙活動というのはぜひぜひ必要だろうと思うんですね。  それをおやりいただくとともに、例えば企業に対する税金にいたしましても、企業に対する税金を重くするということは個人と関係ないんだという視点が非常に強いのでございますけれども、それは、言ってみたら大蔵省が税金を強化するためにマスコミに振りまいたイメージでございまして、企業というのはただの箱、生産のためのシステムでございますから、企業に対する課税ということは、従業員とか株主とか取引先の人たちとか、個人に分割していくところの、配分していくところの原資が小さくなるということです。最終的には、やはり個人が税負担をしているわけですね。だから、企業に対する課税の強化というのは生産への課税の強化であるというような視点も、ぜひ持たないといけないと思うのですね。  創業という点について言いますと、日本は、利益が上がってもうかったらきっちり税金をもらうよ、所得がふえたんだから、資産があるんだからということになっておりまして、今は、公開時点で株式を売った場合には税金を半分にしてあげようねということはあるのですけれども、一遍に全部放出するわけじゃありませんから、二回目以降は普通の、ただただ株を買った投資家と同じ扱いになっているわけですね。それは変なんじゃないでしょうか。  創業支援というのだったら、しつこいようで申しわけないのですけれども、やはり税金と金融というのは非常に大事なんでございまして、税制というのもいろいろな問題点があるのでございますけれども、やはり一体化して、この基本法の精神をさまざまな税法だとか金融の関係に生かしていただきたいとお願いしたいと思います。  どうも失礼いたしました。
  19. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ありがとうございます。  後ほど時間があれば、紺谷参考人、マスコミに非常によく出られて、やはり私たち議員というのは割とマスコミのイメージに振り回されている。この中小企業基本法改正も、どうもマスコミが振りまいた部分というものにとらわれている部分があるのではないかなというふうな感覚にございますので、もしも時間があれば後ほどと思います。  続きまして、佐伯参考人。本当にいつも中央会におかれて大変な御苦労をされて、取りまとめというのは、これはもう中小企業というのは大阪でいうたらおやじさんの集まりですので、それぞれが一国一城のあるじを束ねるというのは大変なお仕事をなさっている。  その中において私はずばりお聞きしたいのは、今回の中小企業基本法改正中小企業を助けることになるのか、それともそうでないのかということ。そして、助けるためにはこういうふうな中で何を盛り込んでいかなければならないのか。この二点、お聞かせいただければと思います。
  20. 佐伯昭雄

    佐伯参考人 今御質問いただきまして、この法律中小企業を本当に助けるのかというふうな御質問だと思うのですけれども、私の考えといたしましては、やはり本当の企業というのは、我々が自助努力で、自分の責任で、自分でやるというのが本来の姿ですけれども、弱い中小企業をある意味支援する、余り補助金漬けという意味でなくて、方向的に、この基本法が新しいベンチャー創業するとかあるいは既存の中小企業の技術改善を支援するとか、そういう意味では助ける方向になっているものというふうには私は理解しております。ただ、個々の企業については自助努力ということになるのじゃなかろうか、そういうふうに思っております。  ちょっと追加いたしますと、先ほど、既存の企業創業と、何か全然異質なものを分けて、創業だけ、こちらだけがおかしいのではないか、そういうことを私は申し上げたのではなくて、創業ということも必要だし、既存の中小企業支援といいますか改善も、どちらも両方とも重要であるというのが私の本当の考えであるということを補足させていただきたいと思います。  以上です。
  21. 吉田治

    ○吉田(治)委員 続きまして、上野参考人にお聞かせをいただきたいのですけれども、上野参考人もオイルショックの後に会社を起こされた。まさに今で言う、はやり言葉で言ったらベンチャーでございますね。  いつぐらいから出てきたのかなとふと思い返しますと、今から十五、六年前、たまたま私の妹が短大を出るときの入社試験の模擬試験の中にベンチャーという言葉が入っておりまして、兄ちゃんこれ何と聞かれたときに、冒険するということかなあ、冒険企業かなあ、ひょっとしたらカヌーか何か売るところと違うかというふうな冗談話をしたのが十五年前。  今、そういうふうな認知度が高まってきた中で、実際御自身で企業を起こされた大先輩として、先ほどのお話の中にあったかもしれませんけれども、ベンチャー育成にとってこれがやはり一番大事だよというふうなものがありましたら、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  22. 上野保

    上野参考人 御質問いただきまして、ありがとうございました。  私が創業をいたしました昭和五十二年というのは、オイルショックの直後でございます。私のそのときの創業の考え方というのははっきりしてございまして、まず一つは、これだけ景気の悪い状況のときに創業すれば、まじめに仕事をやれば必ず、景気がよくなってきたら絶対よくなる、そういう確信を持っておりました。  したがって、私が先ほどから申し上げているように、今現在の中小企業の景気の状況というのは大変厳しいわけですけれども、しかし私は、一つは、新しく会社を起こすチャンスだろうというふうに私どもの仲間あるいは相談にお見えになる方々にも申し上げておりまして、いろいろな人たちが会社を起こすことの手助けのためのお話をしてございます。  ただ、そうはいいましても、簡単なものではございません。最初の段階で、やはり資金を集めることで大変苦労いたしました。そのときに、自分の友人、そういう方々のお力をおかりしまして、資金を何とか集めました。そういうことで大変苦労されるわけです。  まず一つは、自分がどういうビジネスをやりたいんだということを、やはり事業に対する思い込みというのを強くすることが私は大切だと思うんですね。そうじゃないと途中で挫折してしまうんですね、経営者自体が。これはしっかりと持つことだというふうに考えております。  それから、もう一つは、私自身が自分の心に決めたことで、二つ大事なことがあります。一つは、社員に対する給料の遅配、欠配は絶対しない、こう決めました。それから二番目は、金融機関からお金を借りるわけですね。そのときには必ず約定を交わします。いつ幾日から元本を幾らずつ返済します、金利は幾ら払いますということを決めるわけですけれども、それは絶対破らないということを私は二十三年間続けてまいりました。したがって、信用ということは、人間的にどうかということではなくて、むしろ社会的な信用というのは決めたことをきちっと守ることだ、こういうふうに私は理解しております。したがって、社長として、またその資質としましては誠実ということが非常に重要なことだと私は思っているんです。人と約束をし、それから人のために尽くす、そのことによって自分たちの企業が生かされるということだと思っています。  それともう一つ大事なことは、チャレンジをしていく。要するに、会社を起こすときも、今現に業を起こしている場合も、先ほどの零細企業とか小規模の企業の方々にも申し上げたいことは、やはり同じように経営者ですから、今の現状に甘んじないでぜひチャレンジをするという精神だと思いますし、もう一つ最後に申し上げたいのは、自分だけで悩まないで、いろいろな交流会に参画して、しかも自分から情報を発信していただきたい。そうすれば、いろいろな方々からまたいろいろな助けが来る、こういうふうに思います。  ぜひそういうことで、私自身もそういう信念で会社を経営しております、どうぞよろしくお願いいたします。
  23. 吉田治

    ○吉田(治)委員 ありがとうございます。非常に示唆に富むお話と同時に、やはり一つなし得た方というのは、その精神というんですか、片仮名で言うスピリットというふうなもの、初めは、始めるときには、ある意味ではお金もうけもしたいという部分があったと思うんですけれども、やはりそこに一本筋が通ってくるということは私はかえって重要じゃないかなと思うんです。  そこで、清成参考人にお聞かせをいただきたいと思います。  中小企業の専門家というお立場と同時に、大学の学長、総長というお立場で、やはり我々は、そういうベンチャーというか新しい創業者というイメージの中においては、企業家になるための大学生の必要条件、そういうふうなものは、やはり小さい、初等教育のときから重要だというこの委員会での議論もございます。実際、御自身が大学生を指導されて、おまえら頑張って企業家になれと多分言われているんだと思います。決して、大企業へ行けとか、役所の試験を受けろと言うお方ではないと思うんですけれども、その辺、例えば今の学生に対して何が必要なのか、また、それのためには、大学だけじゃなくて教育全般にこういうことが必要だというふうなことがございましたら、ぜひともお聞かせをいただきたいと思います。     〔小林(興)委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 清成忠男

    清成参考人 やはり、教育問題がこういうベンチャーとか中小企業の理解にとって大変重要だと思うんですね。一般中小企業のことを中学とか高校とかの政治経済なんかの教科書では非常に暗く書いてしまっているんです。ですから、まず、中等教育を終えた段階で、企業家になろうとか、あるいは中小企業を始めようとか、中小企業に勤めようなんということは全く思わなくなってしまう。そして大学に入って、教育ママに、一流企業に勤めなさい、こういうような中で育ってくるわけですね。  しかし、私どもの大学でも父母会というのがあるんですが、学生諸君の進路選択は非常に難しくなっているので、父母会を開きますと、以前は母親が圧倒的に出席していたのが、最近は父親も一緒に来る。大体、団塊の世代なんですが、明らかに自信喪失なんですね。既存の経済的な仕組みがもう制度疲労に陥っている、銀行も含めて。したがって、息子たちの進路選択に非常に真剣になっている。それから、女性の場合に非常に就職が難しくなってきている、あるいは就職しても大企業というのは男性中心の管理社会ですから。  そういうことで、私どもの大学院に企業家養成コースというのをつくりましたら、これは日本で第一号なんですけれども、毎年四、五倍の倍率で殺到するわけですね。ですから、企業家の道を選ぶということが人生の一つの選択に日本でもようやくなってきた。したがって、特にこれから、敗者復活の可能性とか、つまり失敗から学ぶということを評価するとか、そういう社会的風土をつくっていかざるを得ないだろう。  それで私は、ちょうど二年前でありますけれども、日本ベンチャー学会というのを創立したわけであります。現在会員は千五百人になっておりますけれども、学生部会というところに多くの学生が入ってくるのと、やはりベンチャー学会で日本のカルチャーを変えていく必要があるんじゃないかということで、昨年の第一回の大会ではベンチャーが文化を変えるというようなテーマで議論をしたわけであります。やはり、ベンチャー企業家だけではなくて、それを取り巻く支援人材もきちんと育成していくべきではないかということで、そういう意味では初等教育から高等教育まで教育の役割が非常に重要だというふうに思っております。
  25. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういう意味でいったら、清成参考人の言われた敗者復活であるとかそういうふうな、選択肢として考えるようになって随分時代が変わってきたということですけれども、その中において、紺谷参考人にもう一度お聞かせいただきたいんですけれども、これからの中でマーケットメカニズムというんですか、市場というふうな言い方を随分参考人もされましたし、私どもも今していると思います。私自身は、本当にそれでいいのかなと。  何か、経済官僚と言われる官僚の皆さんに、特に若手を中心に聞くと、もうマーケット、マーケットばかり。これは私いつも言っているんですけれども、片仮名とアルファベットで三文字四文字になったものというのは怪しげだ、こんなものばかりがはびこるようになったらとんでもないと言っているんですけれども、市場、マーケットメカニズム補完というふうなことに関しては、紺谷参考人としては、それは政治システムなのか、官僚システムなのか、学者なのか、それとも経営者の頭を変えていくことなのか。そういう補完をするための政策というか流れというのはどういうふうなものなのか、何が必要なのか。ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  26. 紺谷典子

    紺谷参考人 市場メカニズムというのは人類が発見した価格決定の仕組みとしては最良のものであろうとは思うのでございますけれども、だけれども、完全なものじゃないということです。一〇〇%完全無欠のものじゃない。そんなことは三十年前のあの公害騒動で明らかなんですね。金融というのは不確実性を伴うということでありまして、経済学の教科書に出ている市場失敗例のうちの一つなんですよ。経済学のイロハのイなんですね。そうであるにもかかわらず、そういうリスクを伴う将来の不確実性があるような金融市場に、市場メカニズムを導入すればそれで何でもかんでもうまくいくみたいな、そういう話になっているわけでございます。  例えば、外資系は白馬の騎士だみたいに言われましたけれども、御承知のように全然そうじゃなかったということは明らかになってきているわけなんですけれども、ああいう犯罪行為をしなくても、例えばシティバンクは預金の残高が少ないお客からは年間二万四千円の口座管理手数料を取っているんです。月二千円なんですね。今度東京三菱銀行が同じことをやろうといって、きっとあっという間にほかの銀行も追随するであろうと思うんですね。  それは、つまり小口のお客さんは来ないでよという銀行側の意思表示なんです。おいしくないから、利益にならないから来ないでねと本当は張り紙したいぐらいなんですけれども、そんなことを書きますと週刊誌が騒いで営業できなくなってしまいますから、そうするかわりに、これは効率的な経営ですと言って、小口と大口は分けて率の悪いお客様からは管理手数料をいただきますという形にしているだけなんですね。それはそれで資本の原理でございますから、いたし方のないことであろうと思うんですね。  ですけれども、だとしたら、では過疎地の方々、零細業者の皆さん、低所得者の皆さん金融サービスを受けなくていいのかというと、全然そうではないわけでございますから、これからは市場メカニズムの時代だと言うのだったら、まさしく政策補完というのは今から後の方が重要だということなんですね。ですから、政府系の政策金融も必要でありましょうし、今回みたいな非常事態ですと、融資保証のようなことをおやりいただくということも大事だと思うんですね。  大変申しわけない言い分でありますけれども、経済学者皆さんは、平時と緊急事態との区別が一切おつきになっていなかったと思うんです。御承知のように、昨年の夏から秋にかけては日本発の恐慌かと言われるような緊急事態であったわけです。それなのに平時と全く同じ御議論しかなさらなかったということでありまして、言ってみたらば、日本は大あらしに巻き込まれているような状態だったんですね。  大あらしだったら船頭だっておぼれると言われるような中で、だめな銀行はつぶせ、だめな企業はつぶせ、努力しない企業なんかはつぶれても仕方がないというようなことをおっしゃったわけなんですけれども、合格ラインが物すごく上がっていたということなんですね。七十五点、八十点ぐらいになっちゃっていたわけですよ。  こんなにもうかっている会社があるじゃないかとおっしゃるんですけれども、やはりいつの時代でも百点とれるところ、九十五点とれるところというのはあるわけでございます。ですけれども、普通の人、普通の企業が普通の努力をして生き残っていける、生活を続けていけるというのが本来政治の役割でございますし、政治がおやりくださらなかったらば、やってよと言うのが専門家の仕事であるにもかかわらず、専門家が全く逆のことをおっしゃっていたということでございます。六十点が本来は合格ラインなんですね。そういう普通の努力で普通に生活していけるという状態にはなかったわけでございます。  今回の融資保証に関しても、暴力団にまで貸したじゃないかと言うんですけれども、一〇〇%完全無欠の政策なんというのは、どこの国にだってどんな時期にだって決してないと言ってもよろしいと思うんですね。それは、中には失敗しちゃって、そういうところに行ったでしょう。銀行のやり方はもちろん問題で、それは追及しなくちゃいけないと思いますけれども、でも、要するに許容範囲であるかどうかということだけなんですよ。失敗例を言挙げして、だからだめだったというのではなくて、トータルな評価というのが必要だろうと思うんですね。  本当はもっと言いたいんですけれども、時間にまたがってしまいましたからこの辺でやめさせていただきます。どうも失礼いたしました。
  27. 吉田治

    ○吉田(治)委員 時間があればもっとお聞かせをいただきたいところですけれども、各参考人の皆様、本当にありがとうございました。時間ですので終わらせていただきます。
  28. 中山成彬

    中山委員長 大口善徳君。
  29. 大口善徳

    ○大口委員 公明党・改革クラブを代表しまして、大口が質問に立たせていただきます。  きょうは、四人の参考人、大変ありがとうございます。お忙しい中、よく来ていただきました。そしてまた、今、四人の参考人からすばらしい示唆に富んだお話をいただきまして、今回の基本法の審議に非常にプラスになることであろうと深く感謝しております。どうかよろしくお願いします。  私、地元を歩いておりますと、例えば商店街の商店主さんあるいは町工場の方、本当に現場の方々が今十年続いた不況の中で一生懸命頑張っておられる。そして、努力していないところというのはもう既にないわけでして、既存の中小企業皆さん、小企業皆さんは本当に努力をしているわけです。  私は、ある零細企業の社長さんがおっしゃっていましたけれども、一たん業を立ち上げて従業員を抱えたならば飛び続けなければいけないのだ、休むことはできないのだ、飛び続けるしかないのだ、そういうお話をいただきまして、私自身にも当てはめてみまして、政治家も飛び続けなければいけない、ともに頑張りましょう、こういうお話をしたわけです。  そういう中で、今回、中小企業基本法を三十六年ぶりに改正されるわけでございますけれども、九九%という圧倒的な事業所数のシェアの中で、中小企業、零細企業が本当に元気になっていただかなければ、この長いトンネルを脱出することはできない。そういう点で、本当にきめ細やかな支援策というものを構築していかなきゃいけない、そういうことをつくづく思うわけでございます。  そういう点で、少し皆さんにお話をお伺いしたいと思います。  一つは、紺谷参考人にお伺いいたします。  非常に地に足のついた、本当に現場をよく御存じの発想からの御意見であったと思って、今ずっと感心をしておるわけでございます。  そういう中で、今、金融ビッグバンの問題につきましてもお話がございました。そして、小規模だとかあるいは中小でありますとか、そういう企業にとって本当に必要な金融もありますし、また、社会的弱者と言われている方等、一般の庶民の方にとって必要な金融もある。特に、ライフラインバンキングといいますか、中小零細のライフライン、あるいは庶民のライフライン、こういうものをしっかりと支援していかなきゃいけない、大事にしていかなきゃいけないということを、私も本当に痛切にそう思います。  私どもの地元の信用金庫の方がおっしゃっていましたけれども、信用金庫の私たちは一生懸命零細に貸しています、また零細に貸さなきゃ生きていけないのです、そのために一生懸命やっています、ですけれども、昨年以来の金融危機の中でいろいろな改革がなされたしわ寄せが来ておりまして、貸し渋りするなと言われても貸し渋りせざるを得ない、そういうことをもっと国会で議論していただきたい、そういうお話がございました。  そのことにつきまして、紺谷参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
  30. 紺谷典子

    紺谷参考人 貸し渋りというのは、先ほども申し上げましたように、金融機関が非常に傷んでいる中でいきなり競争を始めさせたということでありまして、言ってみたら、日本金融機関というのは過保護で甘やかされたおでぶな赤ん坊みたいなものだったんですよ。全然鍛えられていなかったんですね。それで、うちの中でごろごろしてしまって、チャンバラごっこ一つしたことがない、そういう金融機関が育っていたわけなんですけれども、そこにいきなり完全武装のしたたかな外資が土足で乗り込んでくるというような状況をつくりまして、さあ競争しなさいよ、負けたらあなたは死んでもらいますみたいな、そういう形になったわけでございますから、貸し渋りが生じるのはやむを得ないかなということでございます。  実は、アメリカは三十年前から、ヨーロッパの諸国、そのほかの国々というのは、イギリスは二十年前から金融ビッグバンをやってまいりまして、改革というのは常にゲームの途中のルールの変更でございますから、必ずどこかしら割を食うところができるわけですね。そういうショックが少ないように、社会に与えるダメージが少ないように、改革のプラスの面だけをできるだけ多く生かしていけるように、時間をかけて改革を進めてきたわけでございます。つまり、景気が上り坂のときを見計らってリストラとか効率化ということを進めてきたんですね。それでも貸し渋りは起きたと言われているんです。  ところが、日本は大不況の真っ最中に、金融不安の真っただ中で金融機関競争を迫ったということでありまして、弱者であるところの中小企業がはじき飛ばされるという状況をつくり上げてしまったということですね。ですから、そこの大間違いというのがあるわけでございます。  でも、やはりその中で、先ほどから繰り返し申し上げさせていただいているように、中小企業金融というのはどういう形で維持していくのかという御議論がほとんどされていないのですよ。それで、学者の皆さんがおっしゃっている非常にありきたりの、やれディスクロージャーだとか、やれ証券市場の充実だとか、それで済んじゃっているんですけれども、でも実は、やはり先ほどから言っている、範囲を限定することによって、対象を絞ることによって、大銀行も及ばないような専門性を発揮して、それで貸していく、そういうことをおやりいただくというのが一番だろうと思うんですね。  そのためには、やはり互助会方式金融機関というのも選択肢の重要な一つにしなくてはいけないわけなんですけれども、日本の場合は、信用金庫信用組合預金者と出資者というのは別なんですよ。米国はそうじゃないですね。互助会という形が非常に明らかになっているわけです。  それで、日本の場合は、先ほど申し上げましたが、税金も払っているし、いろいろな規制もあって、員外預金とか員外貸し付けの規制はあるものの、本来の互助会方式の有利性を生かすというような形に全然なっていませんので、ぜひぜひそこのところをもう一度一から出直すぐらいの気持ちで御議論いただいて、どうやって中小企業金融をつけていくかということをお考えいただかないといけないと思うんです。でないと、冒頭に申し上げましたが、金融というのが中小企業にとって重大なネックなんだということが目の前で物すごく明らかになっているわけですね。それなのにそこのところの議論がきちんとなされていないということでありまして、根本的なところに立ち返って中小企業金融というのをぜひ御議論いただきたいと思うんです。  そうじゃないと、今、中小企業皆さんは、戦後の自分の五十年は一体何だったのかというような打ちひしがれた状態にあるわけでございます。開業率が減ってきたというのはずっと昔からなんですけれども、この失われた十年と言われる不況が開業意欲を甚だ阻害していたということもまた事実でありまして、ですから、前向きにリスクをとりたい、頑張れば報われるんだ、そういう状況をきちんとおつくりいただかないといけないと思うんですね。ベンチャーや何か、やれやれと言っても、そういう土壌がなかったらできないわけです。  ですから、中小企業というのはどうせ弱者なんだから要らないよというんだけれども、でも、社会というのは大から小までいろいろなものでつくられているわけです。石垣だって大きな石とちっちゃな石でつくられているわけでございます、こういう例を出すと何か年かなという感じがしてしまうんですけれども。でも、ともかく、そういうちっちゃいところは要らない、弱いところは要らないというわけではなくて、そういうところがさまざま組み合わさってより強固な社会ができている、経済システムができ上がっているということでございますから、弱いから要らないとか小さいからだめなんだというようなことでは決してありませんで、弱いところ、小さいところというのは市場弱者でありますから、そこにはむしろ支援をしてお残りいただくというふうにしないと、今はやりの地域活性化ということだってできないわけでございます。  商店街がつぶれると、あるいは職人芸がなくなって文化の継承もままならないということになりますから、地方の活性化、過疎地の活性化、あるいは技能の継承という点でまいりましても、中小企業育成というのは非常に大事だと思うんですね。  しかも、中小企業というのはハイリスク・ハイリターンでございます。その入り口の中で閉ざされてしまいますとなかなか伸びていけないわけですから、ある程度強くなるまでは何とか守るということでありまして、稲の早苗だって、きちんと育ててある程度やってから田んぼに移すわけですね。その程度の配慮というのはぜひおやりいただきたいし、最も重要なのは金融だということでございます。
  31. 大口善徳

    ○大口委員 そういう中で、公的金融機関が、やはり大きな使命があると私は思います。  なかなか民間がついていっていないということは、一つは担保主義というのが大きいわけです。担保がないと貸さない。公的金融機関も、もちろん国民の税金ですから配慮しなければいけないわけですけれども、やはりあるべき金融ということからいきますと、しっかり目ききがいて、そしてその技術だとかあるいは会社の将来性だとかそういうことをきちっと判断して、そして、土地だとかそういうものではなくて、無体財産権でありますとか、そういう、物ではないその企業の将来性というものをきちっと審査して、そして従来の担保によらない貸し付けをきちっとやっていくということは非常に私は大事だと思います。  それと、昨年の十月一日からつくりましたあの特別保証制度、これも有益でございまして、今回私どもの要求で十兆円の枠がついたわけでございます。一年間期限も延長する、こういうことになったわけでございます。  そういう点で、公的金融につきましてのいろいろ御要望といいますか、そういうことにつきまして、佐伯参考人に。  そしてまた、上野参考人には、私も町場を歩いておりましたら、今の企業経営者、三代目だとか四代目、三十代、四十の人が今引き継いでいる。非常に悩んでいます。今の家業を続けるのもあと数年だろう、本当に大転換しなきゃいけない、そういうふうに思ってはいます。ですから、異業種交流会に参加したり、いろいろ勉強されています。非常に知識を求めておられます。  そういう点で、そういう若い人たちを、創業も大事ですが、今の既存の企業も、廃業に陥らないでずっと続けていくということも大事です。そのあたりのソフトの支援といいますか、そういうことについてお伺いしたいと思います。  そして最後に、清成参考人につきましては、マサチューセッツ工科大学のレスター・サロー教授も「富のピラミッド」の「日本語版によせて」という中で、「知識主義経済の果実を得られるようにするには、日本は二つの問題を解決しなければならない。 教育制度を変え、そしておそらくは社会の態度も変えて、技術の大きな飛躍を生み出すような創造的思考を促すようにしなければならない。アメリカでは、ハイテク関連のベンチャー企業の十社のうち九社が失敗する。失敗を許容する姿勢がなければ、成功は生まれない。挑戦して失敗したものが復帰して、キャリアを築いていけるように、社会制度をつくり変えなければならない。」こういうことも提言しておるわけです。  ベンチャー企業の、ある意味では最先端の学者でもございますし、また教育現場に携わっておられる清成参考人に、この点についての御意見をお伺いしたいと思います。
  32. 佐伯昭雄

    佐伯参考人 今の御質問でございますけれども、我々中小企業にとって、確かに、去年の二十兆円の特別融資、これは非常に助かった。これがなかったら、何千か、何万社か、本当に努力しているところがだめになった可能性が救えた。ただ、マスコミとかなんかでは別な批判もあるやに聞いていますけれども、中小企業の現実から見るとこれは非常に有効な施策であるし、今先生御指摘のように、これからの十兆円の特別枠の追加、これはまた、これから年度末といいますか、年末を迎えて相当有効な施策になるだろうというふうに大いに期待しています。また、これについては、我々中小企業の団体としても感謝を申し上げたいというふうに思っております。  それからもう一つ、金融機関融資の関係で、担保力が非常に弱い、これは本当にそうでございまして、その中に、我々も上野さんもそうですけれども、技術系の会社が技術特許を持っている、無形の財産を全然認めてくれないということは、我々中央会のいろいろな会議の中でも、いろいろなところで出てくるわけです。  確かに、技術の判断をするというのは非常に難しい点もあると思うんですけれども、しかし、多少のリスクはあってもそれをやらないと、ベンチャーといいますか、技術関連の会社というのは伸びていかないと思います。これは特に政府系の金融機関がむしろ積極的に、民間に最初からそれをやれといったらかなりリスクが高いということで、シュリンクするといいますか、逡巡すると思いますけれども、まず政府系の金融機関がそこら辺を最初にやるべきだろうというふうに思いますので、ぜひそこら辺を、中小公庫とか何かのいろいろな制度がこれからできるようには聞いていますけれども、私の考えとしましては、実際の窓口の担当者にそれがぜひ徹底するように。  例えば、こういうところの論議とか上の方の論議というのは新聞に載りわかる、せいぜい支店長あたりまで行くけれども、実際の貸し付けの担当者にまではなかなか行かないですね。単なる決算書を見、何を見、それで判断するんだったら、コンピューターがあればいいんじゃないですかと私はよく言うんですけれども、コンピューターが審査するわけじゃないので、やはりそこの会社の内容、経営者の目を見て、発明の内容、そこら辺の努力が私は金融機関も必要だろうと思います。  純財務的にだけ見るということじゃなくて、伸びる中小企業か、努力しているのかというふうなことをぜひ見ていただきたいというのが私の考えであります。  以上です。
  33. 上野保

    上野参考人 今、御質問をちょうだいしました。この質問の内容というのは、大変私は重要な内容だと認識しております。  今、中小企業で、三代目とか四代目の方々が創業者の後を引き継いで、事業が大変厳しくて、なかなか自分らしさを出していくというのが大変厳しいというのは、私も全国に、いろいろな商工会議所さんとか県の方々から、あるいは振興公社さんからお招きいただきまして、年に四十回ぐらいそういう方々とお話しするチャンスがございます。  それで、二代目の方とか三代目の方々に私が申し上げていますのは、創業者あるいは二代目の人から直接帝王学をお聞きするというのも大変大事なんだ、しかしそれだけでは、親子の関係がありまして、適切なアドバイスをしているんですけれども、どうしてもそういった感情が入ってしまって十分に入り切らないということがありますので、自分の人生の師匠となるような、そういう社長を見つけてくださいというふうに私はアドバイスしております。  それで、現実に私のところへも何人もそういう二代目、三代目の方がおいでになりますので、いろいろな創業者の悩み、それから創業者のすばらしさ、そういうことを第三者がお話ししますと本当にすっと胸に入るようでして、そうすると、今度はまた二代目、三代目の社長が、あるいは自分の父からお聞きすることも理解できるようになるというようなことだと思っています。だから、そういうことをぜひお勧めしていただくようにお願いしてはどうかなというふうに考えております。  それから、経営者自体は、社内におきましても、あるいは銀行の方にも、あるいはお客様の前でも、泣き言を言えるような場所はないんですね。これが第三者の人生の師匠となるような人にめぐり会いますと、何でもお話しできますし、当然秘密を守っていただけますから、経営者の本当の姿を吐露できます。そこからいろいろなアドバイスを受けて、しかもそれを自信を持って実行できる、こういうことが私はいろいろなところで重要であると思っています。  それから、先生からもう一つ御質問いただきました、ソフトな連携とか支援ということについてのお話でございます。  私は今、大手企業とか中堅企業の、要するに仕事を出す方の方々が大変困っておられるという現実を感じております。それは一つは、物づくりの重要な部分でございます生産技術というところが、大企業の場合はちょっと弱体化しているんです。疲弊しているという言い方の方がいいかもしれません。そうしますと、大企業の方々は、今までは自分のところで全部研究開発をおやりになっておられたのが、重要な技術は、あるいは加工については、アウトソーシングするというような時代にどんどん今進んでおります。そのときに、中小企業の持っている加工技術とかそういうところだけを頼むんではなくて、全体の開発から相談に乗ってほしい、こういう要請が来るようになってきているんですね。  そうしますと、従来の考え方でいきますと、自分のところはこれしかできませんと言ってお断りしていたら、仕事としては頼む方は困るわけですね。それでどうなるかといいますと、私は、そういうことをお受けしたら、コーディネート会社というコンセプトを打ち出していまして、全部受けましょう、受けて、日ごろおつき合いしている中小企業が連携しましょう。自分のところの専門のところではコアコンピタンスとしてしっかり技術磨きをして、そしてニーズをお聞きして、協力会社さんと連携しながら開発を一緒になってまとめ上げていく。こういうことがソフトな連携というようなことで、これから中小企業としては大事な考え方になるんではないかなと私は思っているんです。  ただ、こういうところに金融がどういう形でもって支援できるのかなということを今御提案している最中でございますけれども、なかなかそういうところに支援をするというのは難しい、こういうふうなこともありますので、ぜひこの辺のところをこれから私どもももっと積極的に御提案して、これからそういうコーディネートをやっていくということが中小企業の生き延びていく一つの重要なモデルになるんではないかなと思っております。  先生がおっしゃられたソフトな連携、あるいはソフトなところへの支援策というのは、これからぜひ御検討をお願い申し上げたいなと思っております。
  34. 清成忠男

    清成参考人 先ほどレスター・サロー教授、ベンチャーは非常にハイリスクである、十社に九社が倒産という、それは、ベンチャーキャピタルが投資した場合に十社に九社がつぶれるということで、ベンチャーの成功率というのは恐らく千に一社もないんじゃないかという、そのくらいの成功率の低さなんですね。したがって、再挑戦あるいはもう何回でも挑戦する、こういう風土をつくっていかなければならないわけであります。  それと同時に、先ほど私、時間の関係で余り十分に申し上げられなかったんですが、ベンチャーのもう一つの役割が社会的にあると思うんですね。  それは、先ほどから紺谷参考人経済学者批判というのをしておられますけれども、実は私も経済学者ですけれども、紺谷参考人が批判しておられるのは主流派経済学という、いわゆる新古典派の経済学なんですが、市場経済を非常に重視するんですね、市場経済市場経済と。  そうしますと、優勝劣敗が起こって脱落者が当然出てくる、それから所得格差が開く、貧困層もふえてくるということがあるわけですね。日本では主流派経済学者は、シリコンバレー、市場経済評価というのは非常に強いんですけれども、実際には、シリコンバレーの中にイーストパロアルトというところがあるんですね。高失業率で犯罪地帯なんですね。しかしその場合に、実は成功した企業家たちがボランティアで財団をつくって地域問題の解決に当たる。先ほど私がパブリックドメインと言ったのは、そういう現象を指すわけなんですね。  成功した企業家たちが、実はここに一つ報告書があるんですが、「ギビング・バック・ザ・シリコンバレー・ウエー」、シリコンバレー方式なんですね。ギビング・バックというのは、もうけた企業家たちが地域貢献をしようじゃないか、環境問題から教育問題、福祉の問題、これを解決しようじゃないかということで、一種のボランティア主義というんでしょうか、そういうものをつくっていこうと。  実は、シリコンバレーにはそういう非営利組織がたくさんあるんですね。日本にはそういう社会的な安定を図る仕組みが欠落したまま、経済学者市場経済市場経済と言うんですね。シリコンバレーを見なさいと言うんですが、シリコンバレーの市場経済を支えているのは、実はこういう非営利組織が支えているということですね。  先ほど私は、自治省の政策とか厚生省の御政策ということを申したわけですけれども、地方自治体とかあるいは地方の中小企業団体とかそういうところが協力して新しい地域社会を構築していく、それが私はやはりベンチャーに対する社会的なセーフティーネットだろうというように思っております。
  35. 大口善徳

    ○大口委員 どうもありがとうございました。
  36. 中山成彬

    中山委員長 塩田晋君。
  37. 塩田晋

    ○塩田委員 四人の参考人皆さん方、非常に有益な御意見を賜りましてありがとうございます。  お一人お一人にお聞きしたいと思いますが、まず、清成参考人が述べられました中小企業政策の抜本的転換の必要性、その基本的認識、そしてまた中小企業基本法体系の特徴、こういったところをお聞きいたしまして、まことに適切な御意見であると思っております。私も全く同感でございまして、従来からこういった主張をしてきたところでございます。  通産大臣は、日本経済活力の源泉は中小企業である、こういう認識を言われまして、私は、日本経済の主力、これは中小企業である、そして今や日本経済の主役であるんだという考えで審議をずっと続けてきたところでございます。  我が国の中小企業というものは、参考人も言われましたように、二重構造というとらえ方が従来あったわけでございますが、私は、これはもう以前から間違いであると主張しておったわけでございます。  二重構造で、強者と弱者弱者保護すべきである、そして過小で過多である、したがって過当競争があるからこれを排除しなければならぬ、協同組合をつくって対抗しなければならぬ、こういった思想であったかと思います。これが主流であったと思うのですが、清成参考人が指摘されましたように、我が国の中小企業政策の中でも、中小企業庁設置法市場経済重視という観点があったということ、そしてまた独禁法制定とともに、やはり企業の独立性ということが設置法でうたわれておりますから、そういった考え方もあったことはあったわけでございますが、日本中小企業というのはなぜそれだけ活力があり、大きな力を発揮したかといいますと、やはり市場性、自由な市場競争、それが最も特徴的である。  もちろん、強者もでき、弱者もできて問題はあったわけでございますが、非常に生き生きとして中小企業が今まで日本経済を推進してきた、この事実を、やはり本質的に日本中小企業をとらえなければならない、このように思うわけでございまして、清成参考人の御意見に全く賛成でございます。そして、今や基本法の体系もそういった観点から法改正をしなければならぬということ、我々はそれを痛感しておるところであり、今回の基本法改正に基本的に賛成するわけでございます。  ベンチャー企業あるいは創業に対する支援、これが必要であり、また、諸外国においても先進諸国においても、それが重視されて運用されているということもお聞きいたしました。後ほどまた紺谷参考人にもお尋ねしたいと思いますけれども、金融あるいは税制、これについて、我々、中小企業者から一番聞きますのは常にこの問題でございます。きめ細かな金融対策がどうしても一番の関心事であり、我々が対策をしなければならない重要なことであると認識しておるわけでございます。  清成参考人が、必要な施策としていろいろ挙げておられます。セーフティーネットを用意するとか、あるいは競争条件整備、公正な取引、競争が行われるように、そういった仕組み、ルール、これの確立はどうしても必要であります。それにあわせまして、どうでしょうか、規制の撤廃あるいは廃止、こういったことをもっともっと強調される必要があるのではなかろうかと思うのですが、これについてお伺いしたいと思います。  規制緩和あるいは撤廃によりまして、ここ数年の例を見ましても、電波の規制をちょっと緩和しただけで携帯電話があれほど、何千万という数に一挙に拡大して、そういう事業も起こっておる。それに関連する事業も中小企業で起こっておるということですね。また、サービス関係につきましては、労働者の派遣業、こういったものを規制緩和することによりまして、派遣業者というものが急速に発展をしまして、今なおそういった企業が進んでおるわけでございます。また、SOHOなんかの動きもありますし、衛星を使った自宅での就業、こういったこと。あるいは企業も、情報通信の発展によりましてかなり中小企業が息づくということが考えられるわけでございますが、こういった規制緩和について、今までのもの以外に、以上に、そういった分野は何かないものでしょうか、お伺いいたします。
  38. 清成忠男

    清成参考人 規制には経済的規制と社会的規制があるわけでございますけれども、実際には、社会的規制という名のもとに、実情、利権を守るという形で経済的規制をやってしまうということがしばしばあるのですね。では実際にはどこのところが緩和されたらいいかという場合に、そもそも規制緩和というのは必要条件であって、十分条件ではないというふうに私は思っているのですね。  といいますのは、規制が緩和されたらすぐニュービジネスが出てくる、ベンチャーが出てくるということかどうかというと、そうではないのですね。つまり、社会的なニーズのある分野に規制があったという場合に、まず、規制をはねのけようと思ってそこにベンチャーが登場してくるのですね、そして、規制を緩和しろという要求が起こってくる。こういう順序のものが非常に多いのですね。人材派遣業であるとか、あるいは航空に関する規制の緩和とか、ああいうものを見ていてもそうなんですね。  したがって、社会的ニーズですね。どんなニーズがあって、それを実現するときにどんな規制があってそれを抑えているかという、これは企業家の側の主張に真剣に耳を傾ける必要があるだろう。自分はこういう分野でこんなビジネスをしたいと思っているのにという、その声がなかなか浮かび上がってこないのですね。抽象的に規制の側から接近して見ても、よくわからないということが随分あるのですね。  ですから、規制で困っている中小企業、あるいは規制を緩和したらこんなビジネスができるのにという、そういう声をくみ上げるような仕組み、これをつくることが大事ではないかというふうに私は思っております。
  39. 塩田晋

    ○塩田委員 先ほど携帯電話の例を申し上げましたが、本当にちょっとの電波の緩和であれほどのことが起こる。これは一つの特徴的な例でございますが、ほかにもいろいろあるのではないかと思うのですね。  しかし、余り緩和緩和としますと、これまた非常に弊害も起こりますね。例えば、タクシーを規制緩和してだれでも参加できるということにしますと、これは一定の場所的な制約がありますから、大変な過当競争になり、またいろいろな不便が起こるということ。これはほかにもそういう例があると思うのですね。だから、規制緩和ももちろん基本的には必要であり、また撤廃すべきものはすべきだと思いますが、やはりそういった弊害というものを十分に見ながら、これを緩和していく必要があると思います。  それはそれといたしまして、次に、紺谷参考人に対しましてお伺いいたします。  一つは、税制の関係でございますが、中小企業の業者にとって非常に関心の深い承継税制ですね。これにつきましてお触れになりましたけれども、諸外国と比較して、我が国の承継税制、これは随分昔から言われておりますけれどもなかなか進まない。今回一挙に進むかと思うのですけれども、この承継税制についてお伺いいたします。
  40. 紺谷典子

    紺谷参考人 証券税制というのは非常に重要なものでございまして、今まで比較的にごく小さな零細企業に対する手当てについてお話をさせていただいたんですけれども、当然のことながら、一方でベンチャーとか中堅企業というものも重要な柱になってくるわけでございます。証券市場育成することによって中堅企業資金調達の道を広げるということも必要不可欠な政策でございまして、それはぜひおやりいただかないといけないと思うんですね。  そういたしますと、日本の証券税制というのは、基本的にはもうかることはいけないことだみたいな形で……(塩田委員「ちょっと待ってください。承継税制、相続の関係です」と呼ぶ)承継税制、失礼いたしました。  では、承継税制、相続税のことなんですけれども、相続税に関しましては、もう既によく知られておりますように、日本の相続税率は非常に高いです。最高税率七〇%ですね。だけれども、米国は五五%ですし、ドイツは三〇%ですし、英仏というのは四〇%でございますね。財産があるのはけしからぬというような感じになっているわけでございます。  実は、これからの高齢化社会を控えて資産形成というのはとても大事なんですけれども、資産をためた人は罰金のようにたくさん相続税をとられてしまうみたいな形になっているわけでございます。その辺、税制全般を見直さないといけないと思うんですね。  特に、先ほども申し上げましたけれども、中小企業の事業基盤であるところの資産に対する相続税というのが事業承継を難しくしているということがあるわけでございますから、そこをぜひ見直ししていただかないといけないと思うんですね。  ところが、先日もある大新聞に載ったのでございますけれども、最高税率を払っている人はほんの十数人しかいない、だから構わないんだと言うのですけれども、七〇%を払っている人はそうかもしれないですけれども、六五%、六〇%、五五%の人はおいでなわけですね。そういうマスコミの御議論というのが随分大蔵省に味方しちゃっているなという気がするのでございます。  少なくとも各中小企業皆さんの御意見をお伺いしますと、相続税が大きな悩みの種なんですね。そこのところはぜひ改革しないといけないと思うんですけれども、今小渕政権はおやりくださるという話でございますから、その辺は期待してお待ちしたいなと思うんです。  ついでに証券税制の話もしていいですか。
  41. 塩田晋

    ○塩田委員 結構です。  紺谷参考人に続いてお願い申し上げます。  地域金融。現在、都市の大銀行を中心にして、中小企業者から貸し渋りその他の苦情を聞くわけです。案外今喜ばれておりますのは、地域信用金庫等、いわゆる地方金融、案外我々の周辺ではこれの評判がいいんです。一方、地域で集められた貯蓄が中央に集められて、地域には返ってこないという意見もありますね。郵便貯金等も含めましてそうですが、そういう地方金融の問題。  そして、これから起こり得る、あるいは起こってはならないことだと思いますが、ペイオフのことですね。これによって預金がシフトするということも考えられて、喜ばれて機能を果たしている地域金融の信金等が非常に影響を受けるんじゃないか。この辺のことについてお伺いいたします。
  42. 紺谷典子

    紺谷参考人 貸し渋りにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、緊急避難的措置として政府が融資保証などをおやりいただいたということが随分きいたと思うのでございます。でも、貸し渋り対策というのは今後も定常的にやらなきゃいけないものだと思うんです。  つまり、緊急避難的な貸し渋りではなくて、銀行が、金融機関がきちんとリスクを見きわめて貸すというような行動をきちんとおとりいただけるかどうか、そういう意味での貸し渋り対策というのをきちんとおやりいただかないといけないと思うわけですね。  ペイオフについて申し上げますと、おっしゃるとおりに、ペイオフを実施するということで、預金シフトというのは重大な懸念があるわけでございまして、現にもう一部起こっているわけなんでございますけれども、それは非常にまずいことというんでしょうかね。  どうしてかと申しますと、市場というのはしばしばパニックを起こすんですよ。冷静に判断して預金を移すというんじゃなくて、ちょっとでも危ないと思ったら、さっと逃げちゃうんですね。逃げるコストというのは小さいですから、逃げちゃうんですよ。ところが、そうすることによって経済全体が受けるダメージというのは非常に大きいんですね。うわさ一つで農協がつぶれたというようなこともございますけれども、ペイオフというのはそういう危険性があるものなんだということでございます。  実は、預金保険なんというのは七〇年代の初めにできているんですけれども、全然使わないよという予定で、それで何の宣伝活動もしてこなかったわけです。アメリカに行きますと、金融機関には、FDICに加盟しています、預金保険機構に入っていますというのがちゃんと張ってあったりするわけでございますけれども、日本ではいまだに、預金保険について余り知らないとか、一千万円までしか預金が保証されないというようなことについて十分に知られていない。中小企業皆さんでも御存じない方が大勢おいでだというような状況にあるわけですね。何でそんなに急いで入れなきゃいけないのかということが非常にわかりにくい感じなんでございます。  今、かわって御議論されておりますのがPアンドAとかというようなものでございまして、要するに、銀行を破綻させて一千万円までということもいいんだけれども、それ以前に事業を継承する、つまり金融業務を継承するんだということでありまして、いいところと悪いところを分けて事業を継承すれば借り手預金者も守られるというような御議論をしているんですね。  PアンドAだ、PアンドAだ、海外ではそれをやっているんだという話なんでございますけれども、でも、PアンドAというと何かとても新しいもののように聞こえますけれども、では、長銀を住友信託に合併させようという、あれはPアンドAじゃなかったんですかということなんですね。  先ほど、委員のお一人が、片仮名を使えばいいのか、アルファベットを使えばいいのかというようなことをおっしゃいましたけれども、まさしくそれでございまして、PアンドAというと何か非常に特別な新しいことをやるように見えますけれども、金融機関をどこかに引き継いでもらって預金者借り手を守る、そういう方策は従来政府がおとりになってきた、やろうとしてきたことなんだ、それが一番コストが少ないんだと今金融学者はおっしゃっているんです。  では、どうして長銀を住友信託と合併させるのをあんなに邪魔したのかということですよ。あの時点でやっておけば二兆円で済んでいたものが、今やもう既に四兆五千億かかってしまって、今後五兆円を超えるのは必至だと言われているわけですね。その責任はどなたかおとりくださるのかという感じなんでございます。  そういうペイオフの問題というのも、借り手の問題、一千万円までしかということになりますと、中小企業は非常に困っちゃうわけです。だって、中小企業は、今銀行から借りようとすると、預金してくださいと言われちゃうわけですよ。定期預金をこっちに移してください、あそこの何々組合に入っているものをうちへ移してくれませんかと言われちゃうわけですね。つまり、一カ所にまとめないと融資を受けられないというような状況になっているときに、一千万円までじゃ困っちゃうわけですよ。  そういう中小企業が資金を動かせなくなるという状況が今生まれようとしているわけでございまして、そういうことへの配慮というのが全然ないんですね。何で今急いでペイオフをやらなきゃいけないのかということを、私は全くわからないんです。
  43. 塩田晋

    ○塩田委員 時間がありませんので、上野参考人それから佐伯参考人に簡単にお答え願いたいと思います。  技術開発に関しまして、特許の関係、これでいろいろ問題が起こっているかと思うんですが、それについての御意見を一言ずつお願いします。それで終わります。
  44. 佐伯昭雄

    佐伯参考人 企業にとって特許、工業所有権というのは非常に重要なことでございまして、研究開発というのは時間と金がかなりかかる。特許をとったから必ずしも全部本当にヒットするかどうか、これは多少確率の問題があると思います。例えば十で一つ当たるか、二十で一つかわかりませんけれども、いずれにせよ特許は非常に重要である。  そのための行動、SBIRとかいろいろな技術支援法が盛り込まれておりますので、全国の中小企業がいろいろな意味でこういう開発に挑戦すればきっといい発明が出てくるんじゃないかということで、ぜひこの法律の中の技術支援ということを有効に運用していただきたい、さように思います。
  45. 上野保

    上野参考人 中小企業にとっての特許の問題でございます。  私どもも、自社で特許の申請もしてございます。しかし、費用が一件当たり三十五万円とか四十万円ぐらいかかるんですね。出したいテーマはたくさんあるんですけれども、これがなかなかやはり企業にとっては負担になります。この辺のところをどうしたらいいかなということを大変悩んでおります。  それからもう一つは、TLOという、大学の技術を民間に技術移転するという新しい制度がまたできてきておりますので、こういうところで産学の連携をしまして、大学の持てる技術を今度は我々が民間で活用できるようなこの仕組みをもうちょっとやはり力を入れてやっていったらどうかなと思っていまして、ぜひこういうところにもある程度の対策も考えていただいたら大変ありがたいと思っております。
  46. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。終わります。
  47. 中山成彬

    中山委員長 吉井英勝君。
  48. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。きょうは、四人の参考人皆さんには大変御苦労さまでございます。  最初に、清成参考人に伺いたいというふうに思います。  今、中小企業基本法改正というこの問題を考えていくときに、やはり私は、現実に中小企業が置かれているこの現状から出発して、その抱えている問題を、当面の緊急対策として解決していくべき問題と、もう一つやはり、中長期的に見てどのように日本中小企業を丸ごと全体として支援していくのかという、そういう基本的な観点が大事かというふうに思うんです。  この点では、今日深刻な不況に置かれている、特に中小企業が苦しんでいる中には、一つは、九〇年代不況の中でも特に最近の消費不況の影響。それから、今まで親企業であったところがどんどん海外へ出て多国籍企業化してしまって、これで産業空洞化が起こってくる、下請は切り捨てられてくるという問題。それから、商業の分野では、大型店が郊外へ進出したり、市の中心部から撤退してしまったりとか、そういうさまざまな問題が出てきて本当に非常に厳しい状況に置かれている。ここをどう打開していくのか、そういうところに置かれている中小企業を丸ごとどう支援し発展させていくのかということが私は非常に大事じゃないかと考えているんです。  そのことに関連して、実は「信用金庫」九九年七月号、最近のものに、清成参考人が「中小企業政策の抜本的改革について」というのをお書きになった中で、「最近では創業率が低下しているが、それはとくに製造業と卸・小売業において著しい。生産機能の海外シフト、大手小売業による「開発輸入」などの影響が強いのである。まさに世界最適調達の結果であるといえよう。」こういう指摘をしておられます。  実際、この点で少し簡潔に見てみると、日本の今の最適調達という分野についていいますと、自動車、電機を中心とする輸出上位三十社で日本の総輸出額の五〇%を今占めていますね。この間ずっとそういう比率で来ております。  これは、戦後、輸出競争力をつけるということで、下請の近代化とか、上の方からのそういう高度化、近代化もやってきて、そういう中小企業政策を進めてきたこともありますが、輸出競争力をどんどんつけて、そしてどんどん貿易をした。そうすると円高になってくる。円高になりますと当然、人件費コストが相対的に上がってまいりますから、中小企業は大変厳しい状況にさらに置かれてくる。しかし、大企業の方は円高でも輸出できるようにということでさらなる下請単価の切り下げを求めてくるとか、過密労働なんかも進みましたが、そういうふうにしてやはり中小企業の経営が非常に困難になってきたというのが一方であります。  一方では、そのやり方が、これは野村総研のエコノミストの方がトヨタの研究をされたレポートの中でもありますが、そういう悪循環を深めて、ついには多国籍企業として海外へ出ていってしまう。自分の利益だけ求めて企業活動をするという結果が、御指摘された世界最適調達という、結果としてそういうことになってきていようかと思うんですが、そうすると、そういう中で、ではそういう中小企業をどうすればいいのか。  結果として、大田区へ行きましても西の東大阪へ行っても、基盤的技術の集積地では本当に物づくりをやってきたところが次々とつぶれていって、ネットワークを組んで仕事をしておったそのネットワークが崩れてくるという厳しい状況にあるわけですから、私はそういう点では、やはり格差是正とか不利の補正という問題、中小企業基本法の前文や第一条の政策目標に掲げていた問題というのは、今日的な時点での光を当てたものにやはり考えていかなきゃいけないのじゃないか。ばっさり前文を削除し第一条を切り捨てればいいというものじゃないと思うんですが、この点について清成参考人のお考えというものを伺っておきたい。  私は、むしろ下請二法など強化する、今日的な意味でのルールを強化するということが大事じゃないかと思うんですが、この点、清成参考人、いかがでしょうか。
  49. 清成忠男

    清成参考人 今の世界最適調達ということでありますけれども、これは九〇年代に入ってから急速に広がったと言ってもいいと思うんですね。  八〇年代の円高の時点から無論スタートしているわけでありますけれども、九〇年代にやはり社会主義の解体、変質ということで市場経済が地球規模に広がったということ、それから、発展途上国はテークオフということが一斉に進んだということ、こういったことで、東欧でありますとか中国でありますとか、あるいはベトナムでありますとか中南米ですね、こういった国々でコストに応じて生産をするというのが広がった結果であって、そういう現象に対応していったのがこの大企業の結果としての合同だったというように思っております。したがって、これはある意味ではやむを得ないことであったわけですね。こういう現象と先ほどの基盤技術の強化というのが実は密接に絡んでいるというのは、御指摘のとおりであろうと思うんですね。  つまり、大田区なら大田区で自己完結的にさまざまなファンクションがそこにあって、基盤技術が自己形成的にでき上がっていたということがかつてあったわけですね。それが、交通手段の発達でありますとか通信手段の発達で広がってしまった。例えば東京三百キロ圏に広がって、地域内の分業が地域間分業になってしまって、それがついには国際分業になってしまって、大田区でありますとか東大阪が自己完結性をなくしてしまったということから、必要な技術まで消えてしまうという大問題が実は起こっているわけであります。  こうした現象は、実はアメリカにおいてもドイツにおいても起こっているわけでありますけれども、自力でこれを回復する仕組みづくりに成功した国というのは、先進国、どこにもないんですね。これが非常にこの問題の解決の難しさを示していると思うんです。  基盤技術、これは熟練によるわけでありますけれども、ブルーカラー志向というのが若者の中から消えていってしまっているということ、ホワイトカラー志向にもうなってしまっている。したがって、町工場に入るよりも旅行代理店に入った方がいいといった選択をするような世の中になってしまった。それから、総論では基盤技術が大事だと言っても、自分息子が工業高校に入ると言ったら、大方の親は反対するんですね。現に今、関東地方では、高校のランクづけが普農商工と言われるわけですね、普通高校が一番上で工業高校が一番下だといったような。こういう風潮の中で実は起こってしまっている。  したがって、基本的には、この日本の一般市民の価値観とか教育観とかその辺から変えていかないと基盤技術の復活というのは非常に難しいんですね。御指摘の論点の重要性は私も非常に同感でありますけれども、そういう悩みを持っている。  それから、シリコンバレーを見てみますと、ハイテク関連企業が大体八千社ございます。その中で、加工業ですね、いわゆる町工場というのが一千社ぐらいあります。それで、そのうちの半分が精密機械加工なんですね。そういうところで使っている工作機械は、日本製かドイツ製なんです。もはやアメリカは、基盤技術をなくしたために、工作機械をつくれなくなってしまっている。では、ドイツはどうかというと、工作機械製造工の見習いのところが今どんどん減少しています。ですから、ドイツも早晩壊れていくだろう。  日本が辛うじて今残っているということであるのですが、では先進国にない仕組みをどうつくるのか、これが今的確な回答が出ていないというのが現状ではないかというように思っております。無論、問題が重要でありますから、こういう問題の検討はやっておりますけれども、なかなか難しいなというふうに考えているのが実感でございます。
  50. 吉井英勝

    ○吉井委員 やむを得ない、難しいというお話になってしまいますと先の展望が出てこないのですが、問題は、やむを得ないという自然現象じゃなくて、産業の内容とかさまざま歴史的に変化するのは当たり前の話なのですが、その過程で、野村総研のエコノミストの方なんかが分析されたように、やはり悪循環に入っていった問題。  そういうときに、下請には、本当に異常円高のときに現場へもし清成参考人が行っておられたらお聞きになったと思いますが、例えば浜松へ行ったら、自動車関係の単価、半値の八掛け二割引きでしたからね。そういうふうなコストダウンをやって、輸出競争力をまたつけてどんどんやって、円高をさらに激しくする。  このやり方じゃだめだということについては、実は、亡くなられたソニーの盛田さんにしても、日本型経営が危ないという中でやはり批判をしておられたし、私は、長野のセイコーエプソンの社長さんとお会いしてお話ししたときにも、プリンター市場の九七%ぐらいは日本企業が世界のシェアを占めているんだ、その日本企業同士の競争でコストダウン、コストダウンというのでみずから円高を招いて海外へと、これは技術開発力を失ってしまうという心配を語っておられました。  やはり私はそういうときに、これまで基本法の中で前文があり政策目標があって、その中で下請取引の問題についても第十八条できちっと決めて、ただ決めたからうまくいったんじゃなくて、そこが不十分だから、まさにそこを、今度は十八条を削除ですが、どう強めていくのか。新二十条では表題のところでは下請というのは消えてしまっているのですが、やはりそういう角度というものが必要なんじゃないかと思うのです。  時間の関係もありますので、紺谷参考人の方にも伺っておきたいのですが、市場競争という中にも、それが多国籍企業化してみずから国としては破綻を招く、企業としては多国籍企業でうまくいくかもしれませんが、やはり国としてそこにルールを考えないならば、中小企業というのは多くは地域経済を支えているわけですし、そこが衰退してしまったときには結局国の経済そのものも深刻な事態を招くわけです。私は、この点では、地場産業とか伝統産業とかさっきの基盤的技術の集積地の問題、あるいは大型店の進出による地域の崩壊、こういうものに対して、地域経済の発展を支える中小企業政策としてどういうことが期待されるのか、先ほどの問題もあわせてお考えをお聞かせいただければと思います。
  51. 紺谷典子

    紺谷参考人 今、清成参考人から御説明がありましたように、非常に中小企業支援というのは難しい部分が多々あると思うのですね。今現在において考えなくてはいけないところは、短期的な緊急避難措置と中長期的な施策というのをきっちり分けておくということだろうと思うのです。  恐慌の懸念まであったということでありまして、七十点とか七十五点の企業までどんどん破綻していくという状況は何としても食いとめなくてはいけないわけですから、融資保証で合格ラインを通常までは下げることはできなかったのですけれども、八十点までいっていたものを七十点まで下げていただいたというようなことがあったかと思うのです。そういうことを今現在はきっちりおやりいただきたいと思うわけです。短期的な不況政策というのは、まだ全然その必要性を失っていないと思うわけですね。それが一つでございます。  中長期的には、本当に難しくて私は正直に申し上げましてノーアイデアなのですけれども、例えばドイツなんかでも、マイスター制度や何かをとって技能者育成ということを努力していても、でもうまくいかないわけですね。おっしゃるとおり、従来型の産業で、日本は金型なんか非常に強いと言われているわけでございます。ですから、精密な金型を手早くつくるという技能は日本は世界一、二ということなんだそうで、しかもそれが非常に堅牢で狂いが少なくてということが製造業の強さにつながっておりまして、そういう日本の製造業の強さを中小企業の技能者が支えてきている、そういう側面は非常に強いわけですね。だから、何とかその継承ということをやりたいわけなんでございますけれども、ではどうしたらいいのかというと、本当に難しいと思います。  一生懸命考えているのですけれども、なかなかアイデアが浮かんでこないのでございますけれども、ただ思いますのは、中小企業というのは結構したたかなんだということです。  従来は、実は景気回復の局面では、中小企業から立ち上がってきているんですね。今回それが逆になっちゃったということは、これだけ長い不況であったということとか、資産デフレその他、貸し渋りとか、中小企業の首を絞めるようなことが多々あったものですから、中小企業が一番回復が遅いというような状況にあるのですけれども、ここの緊急避難が終わりますと、本来、中小企業というのは非常に強い部分もあるわけでございますから、そういう局面に至るまで、無用に倒産というようなことはやめてほしいなというようなことでございます。できるだけ、平均点を稼げるような、平均点以上の企業は残していただくということです。  今一部に、もう景気対策は要らないとか、補正予算は要らないと言おうと、例えばことしの夏の軽井沢セミナーで同友会でそういう議論が出たというお話なんですけれども、とんでもないことです。今は、多少景気はよくなり始めておりますけれども、薬を飲んで小康状態ということでありまして、薬をやめたらすぐぶり返すと思うのですね。それから、急速な円高の懸念とか、アメリカのバブル崩壊の懸念とか、いろいろな懸念要素は大きいわけでございまして、ヨーロッパ経済が随分回復してきたというようなことがきょうのニュースにもなっておりますけれども、でも、ヨーロッパもアジアも日本も、アメリカが破綻いたしますと、あっという間に逆戻りという状況にあるわけでございます。  ですから、ここできちんと安全圏まで日本経済を連れていくということが、目先そういう無用な中小企業の破綻を防ぐという意味でも重要な施策であろうかなと思っております。
  52. 吉井英勝

    ○吉井委員 もう一度、清成参考人紺谷参考人にお伺いしておきたいと思います。  清成参考人の方には先ほどまだお答えいただけていないのですが、不利の補正ということで、下請の二法など、やはりここを強化して、そして、下請で来たところが簡単に圧倒的な力の差で非常に不利な条件を押しつけられる、しかしそれは、大企業はうまくいくかもしれないけれども、その結果として、輸出競争力は回復してもまた貿易摩擦を起こしたり円高に振れるという問題があったわけですから、やはりそういう点では、不利の補正ということをきちっと社会のルールとしておくことが国際的に見ても大事なことではないかと思うのです。  同時に、格差は現実に続いているということは既に通産統計などでもはっきりしているわけですが、予算をそのままにしておいて、ベンチャー、優良企業に特化する支援とすると、これはそのほかが切り捨てられるということになりますから、中小予算をふやしてすべてを対象とした支援策を強化する、ここが中小企業対策では大事なところじゃないかと思うのですね。これが二つ目です。  あわせてもう一点は、OECDでは、ベンチャーというよりベリースモールビジネスという、ここが一番大事だという発想ですね。雇用とかイノベーションとか経済成長の独立した源泉だと。だから、小規模事業の重視。この点では、先ほど紺谷さんのおっしゃった、要するに小規模のところにもっと目を向けたということかと思うのですが、中小企業を、大中小いろいろありますが、全体を視野に入れた支援策というのが基本法ということを考えていくときに大事じゃないか、これが清成参考人にお伺いしたいところです。  もう一点、最後に紺谷参考人の方には、やはり社会のルールという点では、欧米では経済的規制と社会的規制を組み合わせているわけですね。これは大型店問題なんかでもそうですが、それがやはり必要なんじゃないかという点がその一つなんです。  同時に、地域金融機関の役割というものを先ほど少しお聞かせいただきましたが、やはりここをきっちりやらないと小規模事業を本当に支えられないのに、残念ながら、大阪でいいますと大阪弘容が、大きい方が小さい方に統合されちゃって、そしてリストラですから、地域を回れなくなっていますね。やはり、そういうことを食いとめないと、小規模事業を本当に支えることはできないんじゃないか。  この点だけ伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。
  53. 清成忠男

    清成参考人 私は、中小企業を丸ごと救済していくということが必要だとは全く考えておりません。それは、やはり市場経済というのは優勝劣敗を決める仕組みであるわけですね。  私が大変印象的に思っておりますのは、初代の中小企業庁長官蜷川虎三さんなんです。長官時代にこういうことを言っておられるんですね。今、金融難である、金融難は経営難である、経営難の中には中小企業者の経営能力に問題がある場合が多いんだということを言っておられるんですね。ということは、そういう中小企業は救ってもむだではないかということを蜷川さんは指摘されているんです。その際に、国民経済的に見て貢献するものが重要である、こういう指摘をしておられるわけですね。したがって、国民生活の向上であるとか、あるいは地域経済の活性化とか、やはり社会的に貢献するものが重要であると。  つまり、企業の社会というのは義務教育と違うんですね。したがって、丸ごとというのは、これは私どもはあり得ないし、世界じゅう、先進諸国、どこの国の中小企業政策を見ても、丸ごと救うというような発想はまずない、これをちょっと申し上げておきたいわけであります。  それから、私どもが中小企業政策研究会議論した際に、例えば製造業については大体四類型ぐらいを考えたんですね。  まず第一類型は、自社製品を研究開発によってどんどん開発できるような企業。言ってみれば、ベンチャー型の企業と言ってもいいわけでありますけれども。  それから第二類型は、非常に高度の加工技術を持っている。例えばきょうの上野参考人企業なんかそうなんですが、提案型であって、大企業よりも技術水準が高いということなんですね。  それから第三類型というのは、大企業から図面を貸与されて加工をする。だから提案型ではないわけですね。ここが実は多数派なんですね。そこのところの力が強いというのが日本の特徴なんですね。したがって、価格とか品質面で、第三類型というのは多数派であるがゆえに非常にばらつくんですね、第二類型に近いものからそうでないものまで。  それから第四類型というのは、現代の技術水準に到達できない、廃業待ちというのがあるわけですね。  こういうように、中小企業というのはこの四つの類型があるだろう。第一類型は、ある意味ではほうっておいてもいいんですね、優等生ですから。しかし、そうはいっても、リスクマネー等で問題があれば、その供給は円滑化した方がいいだろうというわけですね。第二類型についても、税制等いろいろ問題があろうかと思うんですね。問題は、多数派の第三類型の中で、努力して第二類型に上がっていこうという、ここのところを底上げするのが一番重要じゃないかというように考えているわけですね。  第四類型まで救おうというのは、これは政策的にはちょっと無理だろう。つまり、これをやりますと、納税者とかあるいは消費者に迷惑になるということがあるわけですね。したがって、供給サイドからばかり考えますとこれを救うべきだという考え方があろうかと思いますけれども、逆に消費者サイドから考えた場合には、もう競争力がなくなったものを残すというのは非常に迷惑だ、やはりこういうことにもなってくるだろうと思うんですね。  しかし、先ほどから私が言っておりますように、中小企業政策というのはあくまでも経済政策の一環でありますけれども、全体政策という視点から見たら、やはりセーフティーネット、特に社会的セーフティーネットというのを用意する必要があるだろう。結局、そちら側で救っていくべき問題ではないかというように考える次第でございます。
  54. 中山成彬

    中山委員長 参考人に申し上げます。  時間が過ぎておりますので、できるだけ簡潔にお願いいたします。
  55. 紺谷典子

    紺谷参考人 一番時間を食っている人間でございますので、手短にということなんでございますけれども、今清成参考人がおっしゃったとおりだと思うんですね。全部助けるということは不可能でございます。ただ、例えば、アメリカや何かで中小企業が破綻いたしましたりしたときに、車は残してあげるとか、そういう最低限の生活に必要なものというのは残すわけですよ、車がなかったら食べていけないというところですから。そういうような配慮が日本では不足しているかなということが一つございます。  それから、不当な破綻というのが日本の場合は残念ながら多々見られるわけでございまして、大企業の力に物を言わせた、中小企業をたたきつぶすようなところがあるわけでございますから、その辺についてはぜひ御配慮いただきたいと思うんですが、今回の基本法改正でも、例えば取引の適正化ということは相変わらず残って、御努力いただけるようでございます。  それから、国が中小企業に発注していくというようなこともあるわけですから、その辺をぜひ充実させていただけばよろしいのではないのかなと思うわけでございます。
  56. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、参考人皆さん、どうもありがとうございました。  ただ、清成参考人、一言だけ。もともと助けていないんです、第四分類まで。私は、丸ごと助けろということじゃなくて、丸ごといろいろな形の支援策を考えるべきだというお話をいたしておりますので、誤解のないように。  終わります。
  57. 中山成彬

    中山委員長 北沢清功君。
  58. 北沢清功

    ○北沢委員 最後の質問ですが、社会民主党の北沢でございます。きょうは、参考人皆さん、本当にいろいろと貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  私は、実は生まれが山国でございまして、信州、長野県の安曇野というところです。その中で、別に大学を出たわけでもないし、また百姓一本で実は参っておりますが、私なりに、やはり周囲のいろいろの時代的な変化というものは敏感に感じておりますし、毎日非常に、そういう意味では今日の混迷というものを早く脱却しなければ本当の意欲がなくなるのではないかというふうに感じております。  きょうの主題になっておりますベンチャー企業にしても、やはり意欲があってこそ初めて成り立つわけでございます。  古い今までの経営というものの中での、または時代に対抗できないような弱者、そういう形で企業数が減っているということは事実でございますし、これは既に町の中でシャッターがおりる小さな零細企業もございます。  それと同時に、ベンチャー企業が、実は私どものこの審議の過程で問題になったことを、早く政府の具体的な予算づけをひとつ発表してくれと。そのことは実は昨晩ございまして、けさの新聞に細かいものが出ております。その中で問題になっている点は、やはりベンチャー企業を十四万から二十四万にする、十万ふやすという計画、それに対する金融支援というものが、主要な、今回の国会の中小企業国会と言われる状況でございます。  私は、今大事なことは意欲という面で、私どもの長野県は、ちょっと自慢申し上げては失礼ですが、山国で土地もなく非常に厳しいところでありますから、そこで生きていくためには勉強しなければだめだ。それと同時に、農業も相当全国的には進んでいますし、また外国との、グローバルという面では、日本の輸出の大宗をなした生糸や、それから今日のセイコーエプソンや富士通に見られるようないわゆる精密産業からハイテク産業というものに実は転換をしております。観光も、非常に厳しいわけですが、相当な発達をしてまいっております。  そういう中で、私は、このベンチャー企業一本という今回の改正の予算づけというものについては、既存の日本の家族的な中小企業の経営というものと、中小企業も非常に多様化していますから、そういう面で、そういう皆さんがどういうふうに生きていくかということをやはり今日の状況の中で政治の面で配慮していかなければならない、予算づけもしていかなければならないというふうに感じておりますから、ベンチャー企業の目指すものは、いわゆる今日の閉塞した中小企業の社会の中でどのように打開をするか、どんな方法を見出すかという意味で私は大切だろうと思います。  二十一世紀は企業にとって発展する要素は余りないのじゃないか。それは、一つには少子・高齢化もあるし、またはいわゆる地球温暖化等に見られるような環境問題もございます。それから、今問題になっている点は、国家財政は、どんどん今資金を出していますが、実は六百兆以上の世界に類を見ないような赤字ですね。これは景気を回復するためには仕方がないとしても、どういうふうにこれをだれが払っていくか、そこに問題点が大きくあるというふうに私は思っております。  そういう意味で、実は清成先生にお伺いしたいことは、二十一世紀に向けての、いわゆる今までの電気、自動車という主要産業から、情報通信も含めて、光ファイバーもこの間も予算化をして今全国的に埋めておるんですけれども、そういう意味で、新しい雇用を生み出すための新しい産業というものはどういうものが考えられるか、また、ベンチャー企業は、そういう中でそれを補完したり、または新たな、ハンバーガーとかああいうものに見られるような全く新しい生活様式にかかわる時代的な要請にこたえるという面で、そういう意味での補完的、補完的というよりは今までの産業にかわるべき新しい要素も持っているわけですから、非常に重要だと思います。ですから、やはり柱になる日本の主要産業をこれからどういう形で二十一世紀には考えられるかということと、いわゆるベンチャー企業の役割というものについて、またその意欲がどのようにわくかということについて、先生にお尋ねをしたいと思います。  それから、大事なことをもう一つお話をしたいと思いますが、私は教育の問題だろうと思うんですね。  やはり案外忘れられているのが、今日のこの日産問題を取り上げてみてもわかるんですが、企業は言いっ放しなんですね。だから、地域やまたそこに働く皆さん意見というものがほとんど入っておりません。ですから、今でさえも大変な三百万人以上の失業の中で、最近続々と大企業のリストラ案がいとも簡単に投げられてきておりますね。それは投げる人はいいとしても、その中に生きる者としてどういうふうに我々がするかという意味で、今日の中小企業者の今国会の見方の中に、ベンチャー企業だけが大きくクローズアップしておるものですから、おれたちはやはり切り捨てられるのだなという心配を持っていることは本当に事実なんです、私は地域を歩いてみて。  そんなことを含めて、教育の問題をどのようにするかということと、もっと幅広い、地域に働く皆さんも、企業も含めての合意形成というものを活発化するような方策はとられないかどうかということをお尋ねしたいと思います。  ちょっと長くなりましたけれども、お願いします。
  59. 清成忠男

    清成参考人 最初の御質問でございますけれども、二十一世紀に新しい雇用を生む産業ということでございますけれども、私は、一つは、やはり先端技術の分野、特に情報通信技術、それからバイオテクノロジーというのが新しい分野を切り開くだろう。特に情報通信の場合には、SOHO等を含めて、中小企業あるいは小規模企業に大変大きなビジネスチャンスをつくるだろうというように考えております。  もう一つ重要な分野というのは、私は問題解決型が重要だというふうに言っておるんですが、二十世紀の重化学工業化の過程でつくり出された問題というのはいろいろあるわけであります。その最たるものが環境問題だろうと思うんですね。そういう意味では、地球環境問題、環境関連技術というものの開発が重要でしょうし、環境関連産業というのが相当大きな産業になるだろう。これは昔の公害防止産業と若干違うわけですね、若干というか大いに違うと言った方がいいのかもしれませんけれども。結局、この循環型社会をどう形成していくかということに向けた技術開発とかいろいろな仕組みが重要になってくる。  それからもう一つが、少子・高齢化の進展で福祉需要が膨大に出てくる。これが的確に進められるかどうかという問題ですね。  介護保険についてはいろいろ問題もございますけれども、保険化することによって介護需要が市場メカニズムに乗るわけです。したがって、そこに民間企業が参入してくる。しかし、これは地域レベル産業ですから、やはりほとんど中小企業だろうというように考えられるわけですね。非営利組織まで含めて、福祉関連というのも膨大な需要をつくっていく産業分野だろうというように思っております。  それから、もう一つの教育問題でありますけれども、最近私どもの大学にいろいろ産業界からの声が入ってくるんですが、一番重要なのが、銀行とか証券に勤めている三十代の社員、こういう人たちが、銀行の将来が非常にはっきりしない、にもかかわらず給料は削減される、仕事は忙しくなってくる、先の見込みがないということで、転身したい、三十代ならやり直しができるから、こういうのがすごく多いんですね。今一斉に、東京都内でも、各大学が学部とか大学院あるいはエクステンションスクール等で対応しようとしているのは、一つはそこのところですね。  それから、もう一つ重要なのは中高年、特に団塊の世代、五十代の方々です。この人たちのリカレント教育というのがこれも非常に重要になっているわけですね。大企業とか銀行にいた方がすぐ中堅企業とか中小企業に移るというのは、カルチャーが違いますから非常に難しいんですね。そこで、一回、教育機関で再訓練を引き受けて、そして中堅、中小の方に移っていただくといったようなことは、私は非常に重要だというように思っております。
  60. 北沢清功

    ○北沢委員 雇用をどの分野で創設をしていくかという面で、先生の貴重な御意見をありがたく承っておきます。  次に、紺谷先生にお願いしたいんですが、私ども、公的資金を銀行に投入して銀行金融不安というものをなくするということで取り組んでまいりました。その結果としての最近の商工ローンにおけるああいうような状況というものは、金融というものは経済の血液だと私は思うんですね、血液がどこかで滞るとその階層はつぶれるわけです。そういう面で、銀行の使命というものを、社会的責任というものを私どもは公的資金という形で実は取り組んだ状況でありますし、また、今回の、昨晩もそういう面での発想も予算化されるようなことが発表されております。  先ほど先生からお話のございました、商工ローンで金利というものを抑制すべきではないということは、高利というのは、実は月利、月に四分から、中にはトイチというのが私どもの近辺でございます、十日間に一割という。これで成り立つ企業は、私はないんじゃないかなと。また、法定金利はたしか三段階に分けて最高は一五%でございますが、やはり四%という高金利を許すような形では、成り立たないものが存在するということは、取り扱いばかりではなくてやはり金利も実質的に下げて、そして成り立つような適正な、適正という言葉を申し上げますし、また、金利には多様化もあっていいと私は思います。  ある面では必要悪という表現になるとするならば、若干の金利の問題は当面はあれですが、基本的にはこのような状況になったのは貸し渋りなんですね。だから、貸し渋りについて公的資金を、保証をもっと出すということが今回の予算化されている面だろうというふうに思います。  そんなことを含めて、今回の日栄問題を含めて金利についてはどのようにお考えになられているか。また、先ほど私も申し上げるような金利の月利四分だとかそういう問題は直すようなことを考えるべきじゃないかと思いますが、そこら辺を含めて先生の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  61. 紺谷典子

    紺谷参考人 不当な高金利でもよろしいというようなことは決して申し上げておりませんで、適正な金利ということなんですね。  うんと短いほんの数日とか数週間というときに年利レベルでやりますと、コスト、採算割れになっちゃうわけですよ。そうすると、貸してもらえないですね。そういうことこそシステム金融とか非常にだめな悪い金融の方に追いやられるという部分がありますから、適正な金利ということはあくまで大事だと思うんですね、だけれども、そういう短期の金融でもきちんとコストがとれる程度の措置は、今だって多少、最低十五日分は取っていいというようなことは決められているそうなんですけれども、そういうことは今後も必要ではないかというだけのことでございます。  それから自己資本規制も、あれは本当に間違っているんで、中小企業に貸してそのリスクに見合う金利をちょうだいできる、リスクに見合った金利を受け取っているということが銀行破綻を防ぐ根本的な一番大事なことなんですね。そこをやらないで自己資本を縛るというのはとてもおかしいということでございます。あくまで適正金利ということなんですね。  金融の役割というのが非常に大事だ、おっしゃるとおりでございます。金融は血液を送っている心臓部でございまして、どんなに頭が若くたって、筋肉が丈夫でも、心臓がとまったらおしまいだよということなんでございまして、公的資金を投入してまで金融機関を救ったということは、心臓を守ったということなんです。銀行がかわいいからやったわけでも何でもなくて、銀行を守らなかったらば中小企業は守れない、借り手が守れない、日本経済が守れないという、ただただそれだけのことなんですね。  日本にはお金が十分あるにもかかわらず、なぜ貸し渋りが起きたかといいますと、銀行機能が衰えたからなんです。  預金をして、その預金が人に貸されて、受け取った先がすぐ使わなかったらまた預金してくる、それをまた別の人に貸すというようなことでお金を回転させているのが銀行の信用創造機能というものでありまして、池の噴水のポンプと全く同じなんですね。一定量のお水しかなくたって一日じゅうでも一年じゅうでも噴水が噴き上がるというのは、一たん噴き上げた水をまた還流しているということなんですね。そのポンプのパイプの目詰まりということが貸し倒れ、不良債権問題。貸した先から戻ってこないということですから、そのパイプの目詰まりを公的資金で直してやったということです。  そういう中で、例えば幾つかの大銀行が、中小企業金融をきちんと行わないどころか、一方で商工ローンなんかに物すごくお金を貸していたという現実が明らかになっているわけでございまして、これはもう厳しく取り締まっていただくということでないといけないと思うんですね。  そういう財政支援というのは今必要なんですけれども、ちょっとお話にありました財政赤字の問題というのがあるんですが、貿易黒字が継続している日本で、財政赤字が緊急、深刻であるわけがないんですよ。  だって、言ってみたら、奥様のやりくりはとても下手で、家計費は赤字で、あなた、また今月も赤字になっちゃったわ、国債発行してもいいというような状況でありましても、御主人様は荒稼ぎしていて、ほかの国に、ほかのおうちに幾らでもお金貸してあげていて、おまえひとりで荒稼ぎしてずるいよと言われるようなおうちと同じというのが日本でございます。確かに政府の借金は膨大でございますけれども、奥様は御主人から借りているだけ、日本の国債は国民が持っているだけということでありまして、国民と政府の話し合いで済む問題なんですね。  ですから、今みたいな緊急事態のときに、家計費が赤字だから病気でも薬も出さないとかお医者さんも呼ばないとかということは非常におかしいわけでございまして、経済学者皆さんは、市場メカニズム重視する一方で、政府の役割ということを非常に軽視しているんですね。だけれども、例えば、日銀の財務の健全性が損なわれるとか、財政の健全性が損なわれるというんですけれども、家族が大病を病んでお子さんも御主人様も寝込んでいるというときに、私までうつったら一大事といってお母さんが近づかないというような状況でいいのかどうかということですよ。  政府はやるべきことをきちんとやらなきゃいけないんで、民間が傷んでいるときのために政府の役割というのがあるわけですね。その役割をきちんと効率的にお果たしいただくということは大事なんでございますけれども、財政赤字ということを盾にとって不況の最中に増税したりとか、そういうことをしたのが今日の問題でございますから、余りにも財政赤字にこだわって必要な施策まで我慢する必要はないということでございます。
  62. 北沢清功

    ○北沢委員 大変ありがとうございました。  最後に一つだけお願いしたいことは、先ほど、アメリカでは倒産した皆さんに自動車を残すというお話は、私は初めて聞きまして、感心をいたしました。日本のあらゆる企業が今大変な状況で、毎日営業していても損をしてやっている方、赤字がふえている方があります。そういう皆さんは、かつては機織りの機械が非常に多いときに、国が機織りの機械を買って、そしてそういうものを破壊して企業を守ったということがございますが、そこら辺を含めて、そこまできめ細かな施策といいますか、後向きの資金についても、やはり生きていくための手段というものをもっときめ細かに政治なり社会が考えていくべきだという意味で、先生の御意見は貴重な意見だというふうに考えております。  そのこともこれから政治の分野で生かして、やはり日本産業の転換を、近代化をし、合うような形に改むべきではないかということも痛感をいたしましたので、貴重な御意見として承っておきます。ありがとうございました。
  63. 中山成彬

    中山委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様方には、長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十九分散会