○渋谷
委員 細田さん、私が言っているのは、昭和二十年代の
中小企業庁設置法の目的の中には、実は今
皆さんが新機軸だということで新しく打ち出している内容が既にその時点でうたわれていたということをぜひ理解していただきたいということです。
もっと早く実はこういうことについては取り組まなければいけなかった。ところが、
皆さん自身が指摘をしているように、これまで日本の
中小企業問題については、
経済の二重構造論を背景とした云々かんぬんとありますでしょう。これは特定の思想に基づいた日本
経済の分析から出てきている
議論なんですよ。こんなものはとっくに、昔にこんなものはもう終わっているのですよ。
私も、二十年以上
中小企業問題に取り組んできていますけれども、十年前に書いた私自身の本ですが、この中でも、
中小企業は、こんな二重構造論の中で虐げられ、搾取されているような存在ではない、それぞれ非常に多様で、それでさらに地域を守ったり、地域の中での非常に魅力ある、その地域をつくるための取り組みだとか、そういう多様な役割をしているのだ、成長を抑制された惨めな存在という一方的な見方は変えなければならないということを十年前の私自身の本でも言いましたし、別に私自身が言ったということではない、その当時、
中小企業問題にかかわった多くの学者
たちはそういう認識でしたよ。
ところが、
中小企業庁だけはどういうわけか二重構造論に引きずられてきたというのが実態なんです。だから、ここへ来て、相も変わらずこういう形での
政策提起になる。私に言わせれば、まるっきり白けた話でありまして、今ごろこんな論理で一体何をやるのか。
ベンチャーとか創造的
企業というのは今どきはやりですから、それはいいのです、私もそれは否定はしません、大いにやらなければいかぬ。やるための対策も幾つか具体的なアイデアはありますから、それに対する関連法案はこれからさらに出てくるようでありますので、そのときに具体的な提案をさせていただこうというぐあいに思っておりますが、それも含めて、実は小規模
企業政策です。例えばSOHOという形で新たに事業を起こすなどというのは、まさに一人でどこかに小さな部屋を借りて、あるいは自宅ででもいいですよ、コンピューター機器を使って事業をやる、まさに小規模
企業ではありませんか。この
議論は余りやりません、もう余り時間がないので。
ただ、
細田さんには、本当は両
大臣がいたときに理解してもらいたいと思ったのですが、きのうもある
委員からフランスのロワイエ法について、名前だけ出ておりました。このロワイエ法という
法律はその後改正されてラファラン法というぐあいに呼ばれていますけれども、名前はその
法律を成立させたその当時の
大臣の名前でありまして、中身は商業及び手工業の
方向づけに関する
法律、言ってみれば、日本で言う
中小企業基本法に匹敵するような
法律なんですね。どちらかというと大店法、大型店
規制の方で引用されますので、このロワイエ法はフランスの大店法だというぐあいに誤解している方もいらっしゃいます。実はそうではない。これは言ってみればフランスの
中小企業基本法。
我々が、古い時代から新しい時代に適用できるために
法律を変えようとすれば新旧対照表をつくるでしょう。役所では当然やります、どこの部分をどう変えるか。この
中小企業基本法も、一体どこが私が納得いかないのかということを明らかにするためには、このロワイエ法と比較してみればよくわかる。
お手元にないでしょうから簡単に申し上げますと、ロワイエ法では、例えば第一条では、
経済的、
政策的目標というのが掲げられています。流通の新しい形態の発達が小規模
企業の倒産及び商業設備の過剰を招くことを阻止しなければならない、というふうなことがその
政策目標の中に明確に出てくるのです。
さらに第二条では、職業訓練ということが出てきます。
中小企業、向こうでは、例えば手工業もそうですが、そういうことが、フランスの伝統的な社会あるいは地域を守るということが非常に重視されているわけですね。これは保護するという感覚ではないです。だからそこに、学校が終わったらすぐ働けるように、学校の中に職業訓練ということの教育システム、カリキュラムがきちっと位置づけられている、大学教育の中にも、あるいは見習い教育の中にも。
中小企業がそういう学校に行っている子供を見習いとして雇ったら、それに対する助成、支援措置もあるわけですね。
さらに税制についての措置ももちろんあります。さらに社会保障についての措置もあります。もっと言えば、商売をやっていてどうしても働けなくなる、年を食って働けなくなる、それに対する営業補償の規定もあります。あるいは店を閉めるときには、それに対する給付金もあります。奥さんが一生懸命働いていて、奥さんが妊娠した、出産しなければならない、それに対する保険の規定もあります。あるいは老齢年金もあります。
さらに、
経済的な
規制ということで、申し上げました大型店
規制が実は出てくるわけですが、向こうはラファラン法ということでさらに
規制を強化いたしまして、
規制の対象面積を三百平米まで下げたのです。フランスでは下げたのです。日本では大店法を廃止しました。
そしてさらに、大店法とラファラン法の決定的な違いは、ラファラン法の方は許可制であります。日本の大店法は届け出制。つまり、大店法は、届け出をすれば、あと
一定の調整項目はあるけれども、あとは出店自由なんです。ラファラン法の方は許可制です。許可基準に合致しなければ許可されないということです。それを許可するための審議をする
委員会には、
中小企業者も入りますし、地域の
政治家も入りますし、
消費者代表も入ります。オープンなところで
議論して
結論を出していくわけです。
さらに、きょうの
議論の中にも出ておりました。例えば、市場で地域の八百屋さんは仕入れをする。それぞれ入札をして仕入れをするわけですが、大手のスーパーはその前に先取りをして、市場にその品物が来る前にそれを横取りしてしまう。市場に出てくる品物というのは本当に何割にしかすぎない状態になっているんです。それこそ、市場(しじょう)ということでいったらこれほどの不公正はありません。
例えばこういうことについても、差別的取り扱いの
禁止ということで、商品または役務の原価に関する差額によって正当化されない差別的取引の価格または条件をつけることは
禁止する。つまり、先ほど言った、大量に買うから安くしろ、
中小企業だから高くするというのはだめだということです。つまり、競争条件を公平にするということです。当たり前のことじゃないですか。あと、不当廉売とか景品つき販売等についての制限もあります。
さらには、基本法の中にこんなきめ細かな指摘もありますよ。商業
企業による腐敗しやすい食料品の代金の支払いは、品物を引き渡したその末日から三十日の期間以内にこれをなされなければならない。どうですか。きめ細かでしょう。これがまさに基本法という形で、フランスの場合は既に現在もこの
法律が生きておりますし、活用されているんです。
規制緩和というのが世界的な流れのように一般に言われておりますし、そのことで仕方がないということで通産省は今度のようないろいろな対応をしてくる。
そこで、実はフランス大使館にお願いをしまして、本国政府に照会をいたしました。フランスでは一体これはどうなっているのか。アメリカからの
規制緩和の要請はあるのか、一切ない。
規制緩和の要請はない。フランスはこのラファラン法について今後改廃する予定はありません、今後もこの
法律は私どもは運用してまいりますというのがフランス政府の私に対するファクスでの回答です。
どうですか。
中小企業問題に対する哲学が違うでしょう。アメリカのような
経済合理性、効率性だけでやっていけるんですか。日本にはもともとから、先ほど
中小企業の定義という
議論も申し上げましたけれども、すみ分けという考え方はあるんじゃないですか。
細田さんならごらんになったことがあるだろうと思いますが、これはもう二十年前に出されている本ですよ。シューマッハーの「スモール・イズ・ビューティフル」という本。ここにも
中小企業の有為性、
中小企業のすばらしさということが得々と説かれてありまして、大規模
企業、大規模システムの危うさというのがこの中で指摘されています。今度のような原発の事故の可能性などもこの中には出ているんです。だから、
中小企業を積極的に続けてこれを振興育成することは、何も保護
政策ではないんです。
細田さん、ここのところがわからないとこの基本法の
議論はできないわけです。幾らやっても、あなた方は依然として
中小企業を弱者というぐあいに思っているから、そこにはまり込みたくないので、こういう提案の中にもきちんとした位置づけが出てこないということがあるわけです。
私がつい演説をしてしまいましたけれども、
質問時間がなくなってきました。根本的なところがかみ合わないと
議論にならないから、あえてここまで
中小企業原論みたいなことを申し上げているわけですけれども、いかがですか。
細田さんと、せっかく
小池さんも残っていらっしゃるので、
中小企業問題についてぜひお考えを聞かせていただきます。