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1999-12-02 第146回国会 衆議院 厚生委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月二日(木曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 江口 一雄君    理事 安倍 晋三君 理事 衛藤 晟一君    理事 木村 義雄君 理事 田中眞紀子君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 岡島 正之君       伊吹 文明君    石崎  岳君       遠藤 利明君    大村 秀章君       鴨下 一郎君    鈴木 俊一君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       田野瀬良太郎君   田村 憲久君       戸井田 徹君    根本  匠君       桧田  仁君    福永 信彦君       松本  純君    宮島 大典君       家西  悟君    石毛えい子君       五島 正規君    土肥 隆一君       中桐 伸五君    古川 元久君       青山 二三君    漆原 良夫君       吉田 幸弘君    鰐淵 俊之君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君     …………………………………    参考人    (ジャーナリスト)    大谷 昭宏君    参考人    (構想日本代表)    (慶應義塾大学総合政策学    部教授)         加藤 秀樹君    参考人    (一橋大学経済研究所教授    )            高山 憲之君    参考人    (年金福祉事業団理事長) 森  仁美君    参考人    (財団法人日本老人福祉財    団理事)         吉田  勇君    参考人              (東京大学大学院経済学研    究科教授)        若杉 敬明君    厚生委員会専門員     杉谷 正秀君     ————————————— 委員の異動 十二月二日  辞任         補欠選任   遠藤 利明君     福永 信彦君   久保 哲司君     漆原 良夫君 同日         辞任         補欠選任   福永 信彦君     田野瀬良太郎君   漆原 良夫君     久保 哲司君 同日         辞任         補欠選任   田野瀬良太郎君    遠藤 利明君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案について  年金資金運用基金法案について  年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案について     午前九時三十一分開議      ————◇—————
  2. 江口一雄

    江口委員長 これより会議を開きます。  国民年金法等の一部を改正する法律案年金資金運用基金法案及び年金福祉事業団解散及び業務承継等に関する法律案について、本日は、参考人としてジャーナリスト大谷昭宏君、構想日本代表慶応義塾大学総合政策学部教授加藤秀樹君、一橋大学経済研究所教授高山憲之君、年金福祉事業団理事長森仁美君、財団法人日本老人福祉財団理事吉田勇君、東京大学大学院経済学研究科教授若杉敬明君、以上六名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの発言にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず、大谷参考人にお願い申し上げます。
  3. 大谷昭宏

    大谷参考人 大谷でございます。  「サンデープロジェクト」で、先日この年金の問題をやらせていただきまして、恐らくきょうはそのことでお招きをいただいたのだというふうに思っております。法案について御審議なさっていることに大変敬意を表するのですが、言うなれば、おふろの水を幾ら入れても、栓を抜いたまま入れていたのでは国民幾らお金があっても足りない、主にきょうはそのことを申し上げに来たつもりなのです。  私どもは先日の番組で、老人福祉財団経営するゆうゆうの里について取材をさせていただいたわけです。しかし、これは御承知のように完全に経営が破綻しているわけでして、万一返済不能ということになればお年寄り二千人が路頭に迷うわけです。そもそも、厚生省が監督している、そして国民年金がつぎ込まれている、そういう団体においてお年寄り路頭に迷うとは一体いかがなことなのか。我々はそういうつもりで年金を払っているはずではないわけであります。  年金多額に流されているところが、現在、職員のボーナスが払えない、固定資産税も払えないといった状況は一体どうなのか。光熱費もやっと払えているという状況であります。それから、昨年一年間で六十六人が退職しておりまして、これは全体の一五%に当たる。後ほど恐らく、サービス低下はないという弁明が聞かれると思いますが、これはうそでありまして、大変なサービス低下で、お年寄りたちはケアもままならない。パートで補っているから大丈夫だというのも、これは偽りであります。こういったことは、年福それから老人福祉財団がやっていることの、まさに氷山の一角だというふうに私は考えております。  お年寄りの多くは、厚生省認可団体である、日本で一番大きい施設であるということで、家屋敷を売って、言うなればお年寄り命金でついの住みかを、これは厚生省がついている、あるいは年金福祉事業団がついているから大丈夫だということで入ったわけです。もうお金はないわけです。そういったところが、運営誤り多額損失を出して、現在、お年寄り路頭に迷わせている。  一番いけないことは、こういう運営誤りをしておきながら、厚生省も、それから事業団財団も、だれ一人責任をとらない。一貫して自分たちの失敗を認めない。我々の取材に対しても、我々は「サンデープロジェクト」という番組を非常に誇り高く思っておりまして、国民の多くの方が見ていただいているというふうに考えておりますので、再々にわたって、どうしてこういうことになったのか、責任者からお話を聞きたいと。厚生省は多忙を理由にお断りになりました。それから財団の、きょうお見えの理事は、ついに姿をあらわさなかったわけです。こういうことで、国民に対して責任をとっているのか。  それで、お金が足りない、だから国民痛みを分かち合うと。一切痛みを感じていない連中はだれなのだ、そういうことを野放しにしたままなぜ痛みを分かち合うということばかり強調するのか、このことは私たちは声を大にして叫んでおいていいことだと思っております。  もちろん将来的に年金が不足してくる、国民にある程度の負担を強いるということは、私はそれはあながち否定しません、やむを得ないことである部分もあろうかと思います。だけれども、こういう連中にこういうむちゃくちゃをやらせて、底抜けのことをしておいて、それでだれ一人責任をとらず、その責任追及しない形のまま、国民にこういう負担を強いてもいいのか。  しかも、彼らは年金融資するときに、必ず天下り条件につけておるわけです。これだけの金をやるから二人引き取れ、三人引き取れと。簡単に言えば、自分たちの食いぶちのために国民年金を流して、そこで給料をいただこうというのが紛れもない姿だと私は思っております。  もう一点。番組では、全国各地にありますグリーンピア、これを取材させていただきました。こちらの方は、ゆうゆうの里のように二千人のお年寄りを抱えているわけではないのですが、今どき信じられないような広大な、我々から見れば愚かな施設をつくって、赤字をたれ流している。これはかつて、まだ日本バブルに踊っていた、そういう時期につくられたわけですが、現在では二千億円の赤字を抱えているわけです。  当時、二百億円という巨大なプロジェクトを組んだわけであります。しかもこれは、赤字赤字と言いながら、修繕費とか運営費が割方少なく済んでいる。どうもおかしいなと思って調べてみますと、はっきり言えば裏会計で、実はそれは年金でほとんど補てんしているわけです。経営そのもの赤字で、どれだけ修繕費がかかろうが、言うなれば、我々から見れば裏金のような年金で全部補てんしているのであれば、はっきり言ってこれほど楽な商売はないというふうに私どもは思っているわけです。  国は、この経営が成り立たないから何とかしようということで、各地方自治体に買い取ってくれないかという話を持ちかけているわけですが、そもそもそんなものを買い取った日には修繕費も何も年金から来なくなるわけですから、それでなくても赤字に苦しんでいる地方自治体が買い取るはずがないわけです。結局、この一カ所百万坪以上という条件をつけられた巨大プロジェクトは、完全に宙に浮いて、なおかつ引き取り手がない、つぶすわけにもいかないということで、今後延々と赤字を垂れ流すはずです。  こうしたゆうゆうの里、グリーンピアに関して、恐らくきょうの参考人の諸氏の方々からは、例えばゆうゆうの里について言えば、銀行協調融資の話が進んでいる、再建計画が立っている、あるいは、マスメディア、我々がこうやってゆうゆうの里、グリーンピアのことを報道するから入居者が来ないんだ、せっかく銀行協調融資の話も進んでいるのに、マスコミが書き立てるから客が来ないだけだ、マスコミが書くことによってこれだけのキャンセルが出たというような抗弁をすると思うのですが、これはすべて私はうそだと思っております。  こんな団体に対して、シビアな状況に迫られている銀行お金を貸すはずもないわけですし、それから、不良債権をこれ以上ふやしちゃいけないという国の方針にも本来反してくるわけですから、こんな施設に対して何百億というお金を払うはずがない。  加えて、老人福祉財団は、十二億円という建設費の未払いが残っておりまして、本来老人施設を建てるはずだった土地を、某建設会社に仮差し押さえまでされているわけです。ちゃんとお金が来ているにもかかわらず、何で十二億円ものお金建設会社に払われていないのか。これは建設するということで融資したはずでありますから、それが払われていないということになれば、明らかに背任だと私は思うわけです。  私たち年金をめぐって背任と思われるような行為までしておきながら、やはり年金は足りないんだ、国民負担を強いるんだ、痛みを分かち合うんだ。どこをどうつついたらそういう理屈が出てくるのか、私は、一人のジャーナリストとしてではなくて、国民として、万感の怒りを持っているわけです。  それで、十二億円が流用されていなければ明らかに建設会社に支払われたはずですから、私たちはそこを追及したわけですが、最終的には、事業団から百億円の金が来ているから、その中にその十二億円も入っている、こういう抗弁をするわけです。これは簡単に言えば、つまみ食いをしておいて、後から山ほど御飯を足せばどこをつまみ食いしたかわからなくなってしまうというからくりをやっているだけであります。  私たち追及に対して、理事長は、やはりこれは年金福祉事業団に対して申しわけないことをした、老人福祉財団財務担当理事と同席した理事長はそのように認めているわけです。ところが、それでは後々背任になってしまうというので、後になって否定してきているわけです。  何ということか、私たち追及に対しては、つまんだかつまんでいないかは別として、金に色目がついているわけじゃないというような奇妙きてれつな抗弁をしているわけです。六十七億だ十二億だというのは彼らにとってはさしたるお金ではないかもしれませんけれども、今回年金痛みを強いられる人々にとっては、大変なお金であるわけです。そんなものを、つまんだか色目がついていないか、そういうようなごまかしを続けているわけです。  もう一点言いますと、先ほども申し上げましたが、明らかにこれは、厚生官僚天下り先をどれだけつくるのか。年金福祉事業団理事長年収は二千六百万円であります。四年間在職した場合の退職金は二千三百万円、グリーンピアの四カ所の経営を委託されております年金保養協会専務理事年収は一千八百万円であります。幾ら退職金をもらっているのかということに関しては、私たち再々取材要求に対しても、ついに明らかにしなかったわけです。  これが、民間企業でじゃぶじゃぶもうかって、それで多額退職金をいただいているというのであれば、我々は何も文句を言う気はないわけです。しかし、年金が足りなくなっている、困っているというときに、国民年金多額融資されているそういった組織の長たる者が、幾ら退職金を取っていったのか、天下ってどれだけの収入を得たのかということさえも明らかにしないとするのであれば、私は、かすめ取られたとしか思いようがないわけです。  私たちが一番主張したいことは、年金が足りない、将来的に非常に国民負担が強まるんだというのであれば、どうしてその情報をきちんと公開しないのか。どこに幾ら融資して、どれだけのものが焦げついたのか。バブルの時期に融資した分が焦げついたということであれば、日本企業には多くあるわけですから、何もそれをあげつらって私たちは言う気はないわけです。ただ、どういう運用をしてどういう損失を出して、そのときの責任者はどういう責任をとったのかということを、なぜ国民の前に明らかにしないのか。そうでなければ、国民痛みを強いると言われることに納得できないわけです。  そしてもう一つは、お金のかわりに自分たちポストを設けさせる天下りといった制度は、この際もうきっちりとやめる。そうでない限り、彼らはポストが欲しさに大変むだな融資をしていくのは当たり前なわけです。ここにこういうのをつくっておけば自分たちは将来そこで安泰のポストがもらえるということになれば、もともとは人のお金ですから、幾らでも流用するに決まっているわけです。  そういうことをまずやめさせた上で、もうそういうむだ遣いはない、おふろの底の栓は閉じた、だから大丈夫だということを委員会でまずお示しいただきたい。もう二度とこういうことはないんだから、むだなことはないから、それでもお金が足りないんだから、こういう形で改革法は通しますと。どうしてそこをほっておいて、この法だけを通そうとするのか。  加えて、今後、全額ではありませんが、百四十兆円というお金運用、これは、今までは大蔵が強く関与していたわけですが、厚生省運用できるということになっているわけです。こういったお金に対して大蔵がすべて口を挟むということは、必ずしも私は適当だとは思っておりません。しかし、私たち取材した厚生省厚生官僚、そして天下り、それから各財団、あるいはもろもろの運営機関にいるこういうお役人、官僚に任せておいたのでは、将来この百四十兆円というお金もどこに消えるかわからないという不安があるわけです。はっきり言って、こんな人たちに任せていいのかと。  少し長くなりましたが、私は、少なくとも当委員会国民の前に、二度とこういうようなお金むだ遣いはない、確実にそこのところは担保されるということを明らかにした上で、十分な審議をする。急ぐことはないわけですから、国民の前にそれを示した上で、だからこの法案を通さなければならないんだということをぜひ御教示願いたいということを、切に願っているわけです。  長くなりましたが、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  4. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、加藤参考人にお願い申し上げます。
  5. 加藤秀樹

    加藤参考人 加藤でございます。  時間がございませんので、私は年金積立金運用に限ってお話をしたいと思います。  まず、この法案の中に含まれております、日本の今からつくっていこうという自主運用仕組みというのは、私の知る限りにおいては、世界でも例がない仕組みだと考えております。  言うまでもございませんけれども年金給付というのは債務の履行であります。その意味では退職金と非常に似たものでありまして、支払い期限が到来した債務を払っていく。したがって、それに見合った資産を持っているということが一番大事だということだと思います。  しかも、公的年金の場合には、税と同じように強制的に保険料を徴収するわけですから、企業年金あるいは個人年金と違うわけで、そういう意味でも、ますます安全、確実な運用が最優先されるべきだというのが世界の常識だと私は考えております。その限りにおいては、資金運用部への預託というのは運用先としては非常に有利であります。これは間違いのない事実だと思います。  例えば、現在、十年国債金利プラス〇・二%で運用されております。これは、積立金運用というのは七年間の預託ですから、市場における国債残存期間七年物というのは大体一・五%であることを考えれば、〇・五%ぐらい上回るわけです。これは恐らくどの腕ききのファンドマネジャーに聞いても、それだけで回すのは大変に難しいという答えが返ってくると考えております。しかもそこは、コストは実質ゼロ、またリスクはゼロなわけですから、こんな有利な運用先というのは現実的にはないと私は考えます。  実績を見てみたいと思いますけれども、過去十三年間の年金福祉事業団運用実績ですけれども、十三年間で、相撲流に言うと四勝九敗、十一年七月の事業団事業報告を見ますと、時価で一・二兆円、簿価で一・八兆円余りの赤字になっております。これは国債金利より、先ほど申し上げました金利よりは大分低いということです。  いろいろ理由があると思いますけれども、最も大きい理由を考えますと、株式運用比率約四割、これはリスク運用が非常に高いということに尽きるのじゃないかと考えております。  株式運用には、これは詳しい説明は差し控えますけれども資本金などのいわゆるリスクバッファーというのが不可欠であります。これも金融専門家であれば全員一致する点だと思います。ところが、年金の場合にはこれが、責任準備金という形でとらえなければならないんだと思いますけれども日本積立金にはこのリスクバッファーがございません。  では、なければどうなるかということなんですけれども、現在のリスクをとるべきバッファーがなければ、将来にツケを回すしかないわけです。将来にツケを回すということはどういうことかといいますと、給付額の引き下げか保険料の引き上げのいずれかということになります。これは、実質的には増税と同じだということになります。したがって、これは国民にとっては非常に重い選択になる、このことは大事なことだと思います。  ちなみに、各国の例を少し見てまいりますと、日本と同じようにかなり大きい積立金を持っています国というのは、アメリカスウェーデンのみです。  アメリカの場合には、いわゆるベビーブーマーに対する支払い到来ということで積立金を多目に持っているわけですけれども、これはすべて非市場性国債、政府が市場に対して介入しないようにという配慮から、非市場性国債ですべて運用されております。実は現クリントン政権がこれを株式運用に回したいということで改正案を出しましたけれどもグリーンスパンFRB議長を初め猛反対を受けて結局断念に至ったということは、つい最近報道されたとおりであります。  また、スウェーデンはやや特殊ですけれども貯蓄率が非常に低い国です。五%、大体日本の三分の一から四分の一なものですから、国策として積立金社会資本充実のために回そうという、これはむしろマクロ政策的な意味合いが強い国です。ここでは、これも今改革案が進行中のようですけれども保険料一八・五%、そのうちの一六・五%を賦課方式、二%を積立方式で、この二%については、国民選択にゆだねて、特別勘定運用しようと。この二%分については、したがって、公的年金ですけれども個人選択によるいわば国の四〇一K版だ、こういう言い方をすることもできるんだと思います。  ただし、これまでの運用実績を見てみますと、九割以上は確定利付資産運用をしております。この点でも、株式を四割もというのはまさに例がないということになります。  それから最後に、運用リスクとともに、政治の金融市場への介入というのは非常に大きい問題であります。ここはまさに国会の委員会ですから、そこは直ちに御理解いただけると思いますけれども、現に年金福祉事業団については、いわゆるPKO、プライス・キーピング・オペレーションと言われますけれども、あの金を使ってもっと株価を上げたらどうかという圧力がかかっていた、あるいは実際にそういう操作が行われたということがしきりに報道されました。こういう可能性がないということは決して言えないと思います。  また、もし株が下がって運用成績が悪くなってくると、今度は、年金を受け取る国民の側から議会に対して圧力がかかるという可能性も排除できない。もっとちゃんとやれやという声がかかる、そういうおそれは十分にあるのではないかと思います。この点についても、先ほど申し上げましたアメリカ株式運用が議論されていましたときに、グリーンスパンが非常に強調したところであります。  以上のような問題点を踏まえた上で、幾つか、こういう手だてをとるべきではないかという提言を申し上げたいと思います。  まず第一に、責任明確化であります。  今回新しくつくられる基金に関する法律の中にも、忠実義務あるいは注意義務というのが明記されております。しかし、私は、忠実義務あるいは注意義務というのはどこまでいっても漠然としたものであって、例えば現在の金融機関にもすべて、商法あるいは金融関連法律の中に忠実義務なりあるいはいわゆる善管注意義務というものが課されているわけです。しかし、そんなものが幾ら課されても、金融はああいう状態であったし、あるいはそういうことに対して金融機関のトップが責任をとったかということを考えると、これはほとんど無力であったと言わざるを得ないのじゃないかと思います。  これに対してアメリカでは、受託者責任という考え方があります。フィデューシャリーデューティーと言うのですけれども法律上は、いわゆるERISAと呼ばれます退職金年金に関する法律の中にこれは明記されておりますけれども法律ではどこまでいってもそう具体的なことは書けないわけです。しかし、アメリカの場合には、判例の積み重ねで非常に詳細な例が示されております。そこでいわば責任がとられる仕組みがある程度できているということだと思います。  また、例えば忠実義務注意義務で、私たちはせいぜい頑張った、しかし市場状況が悪かったから結果的には損したということでは、私は、先ほど申し上げましたように公的年金というのは国が負っている債務なものですから、市場状況が悪かった、だから結果的にはマイナスでも仕方がないということでは許されない、ここは明らかに結果責任が非常に重要だと考えております。  その意味でも、過去十三年間の年金福祉事業団責任をどうやってとるのか、これをやはり償却して、それできちっと責任をとってからでないと、新しい仕組みにすべきではないのではないかと思います。  また、二十年、三十年運用すれば必ずもうかるんだということでは、私は説明にはならないと思います。どの企業でも、いや、何十年かやらせてもらえたら必ずもうかるというのでは、これでは経営者責任としてはならないわけです。ですから、毎年毎年の財務諸表あるいは運用成績の中でこれをきちっと示して、責任をとる仕組みをつくっていく必要があると考えます。  それから二番目に、今の点と深くかかわる話ですけれども、九七年六月に厚生省から年金審議会に示された数字の中で、現在の公的年金の中には九百十兆円の積み立て不足があるという数字がございます。これは、いわゆる複式簿記的に言えば、九百十兆円の債務超過になっているということになります。しかし、この九百十兆円の債務超過というのは、通常の公的年金に関する報告書の中には出てこない数字であります。ですから、その意味では、複式会計の仕組みをとった会計方式をきちっと整備して、例えばこういう債務超過状況になっているということ自体が情報開示されるような仕組みが必要であると考えます。  それから三番目ですけれども、それでも自主運用をするということであれば、私は、運用対象を絞るべきである、原則として国債を中心とした運用に絞るべきであると考えます。公的年金の場合には、私は、基本的にはマクロ的な金融に対する配慮が必要であると思っております。年金財政にとって最も有効な手だてというのは、経済成長が大きくなるということだからであります。  最後に、情報公開の徹底ということを申し上げたいと思います。  これは、単に財務諸表だけではなくて、いわゆるALM分析の結果、あるいは受託金融機関の選定基準ですとか金融機関ごとの運用実績、それから委託手数料等かなり詳細な運用コストなど、すべてを情報開示して、どういう状況になっているか国民が常にわかるようにすることが大事なんだと思います。  私は、今御審議されております運用に関する部分についても、恐らくほとんどの国民が、もしこの年金積立金運用が失敗したときにはそのツケを払わされる可能性があるということを知らないのではないかと考えております。  この運用に関する関連法案というのは、二〇〇一年の実施までにまだ大分時間があるわけですから、ぜひここで十分な御審議をいただきたいと思います。(拍手)
  6. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、高山参考人にお願いをいたします。
  7. 高山憲之

    高山参考人 一橋大学の高山でございます。年金改正法案等について、参考人として、以下六点にわたり意見を申し上げたいと思います。  まず第一点目。高齢者をめぐる雇用環境が依然として厳しい状況が続いております。そして、今後とも好転する見通しは立っておりません。  特に、男性の六十歳前半層の雇用環境は殊のほか厳しいものがございます。かつて、バブルの時期がございまして、日本経済絶好調の時期でございましたが、この時期でも、六十代前半層の有効求人倍率は〇・二前後でありまして、決してよかったということではありません。ですから、景気が回復すればこの六十代前半層の雇用環境がきっとよくなるに違いないという想定は、少なくとも過去の実績からすると、信じることができないわけであります。ですから、この点をどうするかというのが大変難しい問題となっているということを最初に申し上げたい。  それから、定年を六十五歳に引き上げたらどうかという案がございます。これは、反面で組織の新陳代謝をおくらせてしまいますし、青壮年層のやる気をそいでしまう、あるいは女性、若者の雇用を抑制しかねないという問題がございます。  先日の公聴会で日経連の福岡専務理事がいらっしゃったと思いますけれども、その日経連は、六十五歳への定年引き上げには今もって反対でございます。どうここの調整をなさるのかという問題が残っているというふうに思います。  それから次に、受給開始年齢を六十五歳に引き上げますと、六十歳代前半層、特に六十一歳とか六十二歳の人が問題になるのですけれども、この人たちの雇用環境、いわば労働力需要が非常に減退してしまうおそれが強いということがございます。  これは、六十代前半層に対する繰り上げ減額の制度あるいは在職老齢年金の制度がどうなるかということと密接に関連をするわけでありますが、今回法案の中で提示されている内容に即して申し上げますと、いわば年金から雇用への補助金という形の在職老齢年金の金額が減る形になります。これは、企業経営者にとっては、高齢者を雇うときの補助金が減るということと全く同じなんですね。ですから、そうであれば、六十代前半層の人たちを今までのようにはもう雇えないという話になってしまうわけです。  仮に、では働いてもいいですよという話になって、条件が折り合っても、そのときには賃金が今より下がっているおそれが強いわけであります。そういう意味で、今のような状況のもとで支給開始年齢を六十五歳に上げるということは、年金財政には確かに好転という一つのプラス効果があるんですが、そのツケはだれかが負う。だれかが負うというのは、六十歳前半層で職を求めようとしてもなかなかそれを手にできない人たちだということでございます。  二点目は、総給付費の伸びがどうもきつ過ぎるのではないかというのが今回の年金改正の背景にある考え方でございます。何としてもこの伸びを抑えたい。そのときに、今回その一つとして、受給開始年齢を六十五歳に引き上げたいという提案になっているんですけれども、それとは別の考え方もあるのではないかということです。  確かに、総給付費、大変なものでございます。これは何とかコントロールしなければいけない。手段は幾つかあるはずなんですね。本当に六十五歳引き上げでいいのかどうかの検討をもう少し慎重になさっていただきたいということです。  対案として、いわゆるモデル年金という言葉がございます。サラリーマンの年金でいいますと、四十年勤めますと大体二十万円プラスアルファくらいになりますけれども、このモデル年金を受給するために、現在、四十年保険料を払ってくださいということになっているんですが、これを将来的に四十五年に延ばしたらどうかということでございます。  なぜこういう提案を私が申し上げたいかということを、以下説明してみたいと思います。  いずれにしても将来、給付金が大変なことになる、だれかに譲ってもらわないと給付をコントロールできない、そのときに一体だれに譲ってもらうかということです。  六十五歳引き上げ、みんな一律じゃないか、給付水準引き下げ、みんな一律じゃないかということなんですが、実際はそうじゃないんですね。六十五歳まで働くことが容易な人はいっぱいいるわけです。どこからも声がかかる。あるいは、この法案を準備した年金局長さん等は恐らく六十五歳まで簡単に働けるでしょう。あるいは私のような、大学院を出ていろいろな意味で声がかかってくる可能性が高い人間もいるわけです。そういう人間は、実は何も犠牲を負わないで済むわけです。  ところが、高卒で十八歳ぐらいから社会に出る、四十年以上働いてもうくたびれてしまった、技術革新の波が速くてそれについていけない、六十歳から年金をもらいたいときにはあなたは四二%減額で年金をもらいなさいというのが、実は六十五歳引き上げ案の意味なんです。だれが一体ツケを負うかということなんです。  ところが、この四十五年拠出案というのは、私は大学院を出ましたので実は三十歳前に社会に出た人間ですが、四十五年保険料を拠出しなさいというと、これは七十五歳まで働きなさいということですね。事実上、私の場合は不可能だと思います。私は恐らく、この案になると年金がかなり減額になる人間なんです。年金局長さんはよくわかりませんけれども、多分彼も満たさないおそれがあると思います。  要するに、社会的に見て恵まれた人間からまず譲るという原則をどうして採用しないのかということです。だれかが犠牲を負わないと、給付はコントロールできないんです。だれから一体譲ってもらうのかという問題なんですね。場合によっては、こういう非常につらいことを国民にお願いするわけですから、国会議員の皆さんの議員年金でさえも譲っていただかなければならないかもしれません。そうして初めて、みんなが納得する話だと思うのです。そういう準備が今できていない。乱暴に六十五歳引き上げだと言っているのが今の状況であるというふうに、実は私は考えているわけです。それで一体いいのか。もうちょっとそこを詰めて議論しなければいけない。  現に、一律カットというような方法は、今やアメリカでもヨーロッパでももう反省を迫られているのです。一体だれが先に譲るのかということをもっと議論しなければいけない、そういう状況に立ち至っているという意味でございます。  ちなみに申し上げますと、モデル年金受給のための拠出年数、これはフランスは現在四十年ですが、ことしの四月にジョスパン内閣のもとで四十二・五年への延長というものが提案され、検討が進んでおります。また、ドイツは四十五年でございますし、イギリス、オランダに至っては、何と四十九年でございます。日本は四十年ということなんです。日本は一番寿命が長い国です。四十五年案というのは今回の提案の中には入っていないんですけれども、私は、やるとしたらまずこちらではないかというふうに思っているんです。なぜ支給開始年齢引き上げを先にやるのか、順序が違うというふうに申し上げたい。  受給開始年齢引き上げは、では全然やらなくていいかというと、私は実はそうは考えていないのです。これは最後の切り札で、とっておくべきものであるということなんです。これは、希望する人が六十五歳まで働くことができるような社会の実現を目指すということです。そのために必要なことを総動員でやるということです。適切な諸施策をすべて進めるということです。その成果を見定めた上で、受給開始年齢の引き上げということを実施したらどうかというふうに私は申し上げたいわけです。  あわせて、この引き上げ問題の中で非常にみんなが不安に思っていることは、では繰り上げ減額で六十歳から年金をもらうときに自分の年金はどうなるんだ、そういうことに関する答えが今ないということです。今回の法案の中には、二〇一三年に至って支給開始年齢を上げるときの直近の生命表を使いましてこの減額率を定めたいということになっているんですが、一体それが幾らになるかわからないわけですね、今のやり方では。せめて最新の、直近の生命表を使ったらどのくらいの減額率になりますよというぐらいの情報は与える責任があるのではないかと思うのです。  これを私が目の子で計算しましたところ、仮に六十歳繰り上げ減額だったら二五%ぐらいの減額でいいのではないか。四二%減額は明らかに懲罰的です。早く年金をもらうやつは犠牲をそれだけ余分に払ってもらうという、懲罰的な考え方が今あると思います。一体それでいいのかということです。  それから、きょうの本題であります年金資金の運用問題につきましては、これは、先ほど加藤参考人がおっしゃった意見に私は全面的に賛成でございます。公的運用にはポリティカルリスクが伴って、これを避けることはできません。これは世界の常識でございます。特に問題なのは、運用に失敗してもだれも責任をとらないということです。民間の企業だったら、財務の担当者が失敗したらみんな責任をとってやめていくわけですね。あるいは、自分の財産を差し出すようなことになる人もいるわけです。そういうことを、公的にやったらだれもしないわけですね。そして、そのツケは結果的に、先ほど加藤参考人がおっしゃったように国民に回ってくるということなんです。  私は、アメリカのやり方がベストだとは思っておりませんけれども、次善の策として、アメリカのように全額国債の購入を義務づけたらどうかというふうに思っているんです。そうしたら、今の法案の中にあるあの難しい仕組みは、実は一切不要になるんです。  現在の法案の中に、年金資金運用基金をつくって、その中に投資理事会をつくる、あるいは運用委員会をつくるとか、自家運用のための制度を今度は整備するとか、いろいろ具体的に書いてあるんですけれども、例えば株式運用なんかすると、かなりの手数料を払わなければいけません。いろいろな組織をつくるごとに、それだけ役人の数をふやさなければならぬ。小さな政府と逆行する考え方なんです。むしろ国債運用に徹すれば、アメリカ並みになって、このようないろいろな新しい機関は一切不要になるわけです。  私は、公的運用がうまくいくという話を信じることができませんので、ぜひこの点はあわせて検討していただきたいと思います。  あと二点だけ申し上げます。  五番目ですが、厚生年金基金の代行制度は廃止するのが望ましいと考えます。その際、代行相当分の積立金は厚生年金本体に移管し、代行しなかったというふうにみなしをいたしまして、移管積立金は免除保険料の元利合計と同じ額にいたしまして、利回りは、厚生年金本体と同じ、資金運用部預託利回りとすればよいというふうに考えます。  それから六点目は、日本版四〇一Kの導入が今問題になっておりますけれども、今のような財政状況あるいは景気を見ますと、税収中立性というものを確保する必要性が高いというふうに考えます。そうした中で、運用収益課税は残すべきではないかというふうに考えております。  また、窓口として国民年金基金連合会を使う案が出ておりますけれども、これは全く不要だというふうに考えております。  以上で私の陳述を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、森参考人にお願いいたします。
  9. 森仁美

    ○森参考人 年金福祉事業団理事長森仁美でございます。せっかく機会をお与えいただきましたので、年金福祉事業団業務についてお話を申し上げ、御参考に供したいと存じます。  年金福祉事業団は、被保険者の福祉を増進するということを目的にいたしまして、いろいろな議論を得ながら、年金積立金の還元融資を行います専門機関といたしまして、昭和三十六年に、拠出制国民年金のスタートとともに、多くの関係者の期待と御理解のもとにスタートをしたものでございます。以来、年金積立金を活用した被保険者のための還元融資を初めとしまして、与えられた任務に邁進をしてまいったのであります。  事業団は、現在、大きく分けまして三つの事業を行っております。一つは、大蔵省の資金運用部に預け入れられました年金積立金を借入金として私どもが受け入れまして、これを運用する資金運用事業であります。二つ目は、被保険者の方々などに対しまして住宅購入資金を貸し付けたり、あるいは年金受給権を担保にして小口の資金をお貸しするという融資事業でございます。それから三番目は、私どもグリーンピアと呼んでおりますが、大規模な保養基地を設置いたしまして、その管理運営を行う施設事業、その三つの事業でございます。  個々の事業について若干、状況を御説明申し上げたいと存じます。  まず、資金運用事業でございますが、資金運用部預託されました年金積立金のうちから、約二十六兆円を資金運用部から借り入れまして、これを原資としまして運用するわけでございます。運用の形は、ほぼ九割は、信託銀行や生命保険会社あるいは投資顧問会社といった民間の運用専門機関に委託をいたしまして運用をいたしております。約一割は、投資顧問会社の助言を受けて、私どもが債券で、いわゆる自家運用として運用をいたしているものでございます。  この民間機関に委託して運用をするというのは、いろいろな考え方を複合いたしまして、後ほど申し上げます、今とられている、今ある理論に基づきポートフォリオを組んでやっていくということでございまして、大変複雑な過程をとり、かつ複雑な管理を行っているものでございます。  この資金運用の成果につきましては、当団の業務の決算上、十年度末で約一兆二千億円の累積利差損を計上せざるを得ませんでした。このことで多くの方々に大変御心配をおかけいたしておりますことを、大変心苦しく、また、その結果を重く受けとめているところでございます。  運用自体は、他の年金資金を運用いたします機関投資家の運用成果と比較いたしまして、私たちはそれほど遜色がないと思ってはおりますものの、近年の金利の低下でございますとか、あるいは株価の低迷などにより、資金運用部へ利払いをしなければならないための収益と私どもが上げた収益との間に、いわゆる逆ざや現象を生じているものでございまして、この逆ざやの部分が累積利差損として決算上計上されているものでございます。  なお、その後の株式市場の動向などから、本年十月末に置き直してみますと、この一兆二千億円の額は約四千億円にまで縮小をしていると見込んでおります。  このように、私ども運用は、いろいろな合理的なと考えられる方法によってはおりますものの、市場環境に大変大きく影響されておりますことをぜひ御理解賜りたいと存じます。  事業団といたしましては、現代投資理論に基づきます基本ポートフォリオをつくりまして、平成七年度から時価ベースでのリスク・リターン管理を開始いたしました。また、いわゆるバランス型の運用機関だけではなくて、特化型の運用機関を採用するなど、運用手法の多様化、さらに手数料の削減などにも努めてまいっております。  また、平素の管理の立場から、運用機関からは、定時、一年に二回、私自身が出てヒアリングを行いますが、各月にも随時のヒアリングを実施して、各運用機関から事情を聞き、運用状況の把握と管理に努めております。その際に出てまいります運用機関の定性、定量評価の結果に基づきまして、資金の配分あるいは回収を行うということももちろんあるわけでございます。  運用世界で言われておりますいわゆるプラン・ドゥー・シーという三要素に沿って、資金運用事業の目的達成に全力を挙げてきているところでございますが、なお一層の努力を続けてまいりたいと考えております。  なお、ディスクローズの問題でございますけれども、米国の年金基金等と比較いたしましても、私どもは遜色がないのではないかと自負をいたしております。かなり細かい部分までディスクローズをいたしておりまして、例えば、ホームページではかなり詳細なものを出しておりますし、英語版でもホームページを提供いたしているところでございます。  近時の状況を申し上げますと、大体、一日に五十件から百件の間のアクセスがございます。そのアクセスが、この資金運用だけを見たものかどうかは定かではございませんが、国民の間に大変関心を持たれている一つの証左ではなかろうかと考えております。  次に、融資事業でございますが、その大宗を占めておりますのは、いわゆる年金住宅融資でございます。十年度は約九万件、約八千五百億円の融資を行っておりまして、十年度末で融資残高は百六十万件、約十兆円に上っております。  融資事業では、このほかに、福祉施設設置整備資金の貸付事業、それから年金受給者の方々に対します年金担保貸付事業、被保険者の子弟の教育費等に充てていただくための資金の貸し付けのあっせん事業というものをも実施いたしております。  施設事業についてでございますけれどもグリーンピアは、年金受給者、被保険者などの余暇活動を推進することを目的といたしました宿泊施設、スポーツ施設、文化活動施設あるいは研修施設といったものを複合いたしました大規模な施設でございます。  大変広大な土地と大きな施設を持っているわけでございますが、これが全国に十三カ所設置をされております。十三カ所全体で、毎年二百万人以上の方々が御利用になっておられます。最初にできましたのが、昭和五十五年の北海道大沼基地、兵庫の三木基地でございますけれども、その開業以来利用された方は累計で約三千五百万人、国民四人に一人の方が御利用いただいたということであろうと思っております。  このグリーンピアはいわゆる福祉施設として設置をいたしておるものでございまして、仕掛けは、年金福祉事業団が設置をいたしまして、年金福祉事業団は、設置者責任を果たす意味で、施設費、それから施設に伴います固定資産税、あるいは森林を管理するための費用、さらには大規模な修繕を必要とするような場合、例えば災害に遭った、こういうような場合の修繕費、これを負担いたしておりますが、運営自体は、その施設が所在をいたします地元県に九つ、四つを財団法人年金保養協会に委託をして実施しているのでございます。  受託者においてはこれを独立採算で運営するという構成でございまして、経営は、最近では、経済全体の低迷等により大変厳しい状況になっております。こういう状況下ではありますけれども、固定経費の削減努力などにより何とか収支均衡をとりながら受給者へのサービスに万全を期したいと思っているところでございます。  現在、撤退の方針が示されておりますが、何とかこの緑豊かな広大な施設を地元自治体に利活用していただけないかということで、譲渡を含めまして地方自治体と協議を続けているところでございます。  今回、財政投融資制度の抜本的な改革ということにあわせまして、平成九年六月の閣議決定の実施に向けましていろいろな改革が行われるわけでございます。この方針に沿いまして、私どもは、国民の皆様に御不便をおかけしないように、また、貴重な国民の皆様の年金資金を用いての事業であるということを改めて肝に銘じながら、役職員一同全力を挙げて今後の業務の遂行に取り組んでまいる所存でございます。ぜひ御理解を賜りたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、吉田参考人にお願いいたします。
  11. 吉田勇

    吉田参考人 財団法人日本老人福祉財団の理事・総務部長をいたしております吉田でございます。本日は、発言、説明の機会を与えていただき、ありがとうございます。  初めに、当財団運営について、当財団施設入居者、先生方、行政御当局、関係各位に大変な御心配をおかけしておりますことをおわび申し上げます。財団としては、今後さらに努力を重ね、一刻も早く入居者方々が安心できるように努力いたしたいと考えています。  初めに、当財団の概要について申し上げます。  当財団は、昭和四十八年十二月、厚生大臣の許可を受け、財団法人として設立されました。  当財団の目的は、寄附行為第一条で、年金受給権者その他の老人に対し、その心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な施設の設置等の措置を講じ、その有効適切な運営により老人の福祉の向上と社会的活動への参加の道を開くこととなっております。また第四条では、当財団の事業として、老人ホームその他の福祉施設並びにこれらに附帯する施設の設置、管理、運営に関する事業等が規定されております。これにより、当財団では、老人福祉法に定める有料老人ホームとして、佐倉、湯河原、伊豆高原、浜松、京都、大阪、神戸のゆうゆうの里の七施設を設置運営いたしております。  当施設全体の入居者は、この十月末現在、約二千人となっております。  財団の役員は、理事長、常勤の理事三名、非常勤理事六名、監事一名の十一名となっております。職員数は、十一月一日現在、常勤役員を含む正職員三百五十二名、臨時職員四百二十七名となっております。  財団資産は、平成十一年三月末現在、約六百十三億円です。銀行等からの借入金は四百二十五億円です。このうち、横浜の土地購入のための借入金は約六十三億円です。アメリカの土地購入関連の借入金は約二十三億円です。  現在開設されている施設のうち最も最近開設された京都ゆうゆうの里は、景気後退の影響等を受けて入居が伸び悩み、このため、財団の資金繰りが悪化しているのが現状です。  株式投資については、損失が二十八億円と報道されていますが、これは損失のみを単純に加算したものであり、売却益、配当等を加算すると、純損失は約三億円です。  アメリカの現地非営利法人が当ゆうゆうの里に倣った有料老人ホームを開設したいとの希望があり、当財団アメリカに土地を購入するなど、この法人を援助してきましたが、この法人の運営が行き詰まり、当財団損失が発生することが予想されること、財団株式を購入したため損失を生じさせたこと、さらに、これらの問題で入居者、職員の一部が理事長等の責任を問題としたことから、このような事態を招いた前理事長、前常務理事は平成九年六月に責任をとって辞任いたしました。しかしながら、その後、前常務理事は、みずから辞任したことはなく、理事会で解任させられたとして、いまだ理事の地位にあることの確認を求める訴訟を東京地方裁判所に提起し、現在訴訟は係属中です。  平成九年七月、現役員の体制となってから、財団役員、職員は、財団の再建に懸命に取り組んでいます。  まず、入居者を増加させることが第一と考え、関東、中部、関西に募集チームを編成するとともに、契約職員制度を導入し、入居者の増加に努めています。  さらに、入居者に対するサービスを低下させない範囲で運営の効率化に努め、正職員に欠員が生じたときは、臨時職員で補える場合は極力臨時職員で補うなどしていますが、それができないときは、正職員を新たに雇用してサービス水準を維持するようにしております。その結果、施設所在府県の立入調査においても、サービスの提供についてはおおむね良好と判定されていると聞いております。  また、入居者の多くからは、特にサービス水準について苦情は聞いておりません。さらに、多くの入居者が、先般、サービス水準が低下したとの新聞報道に対して抗議いたしました。  私どもは、見通しを誤ることとなった施設建設計画、アメリカの土地購入、株式投資による損失について、バブル崩壊という事情があったとはいえ、その責任を重く受けとめております。今後は、入居者が不安を抱かれないようにすることを第一として、会社再建に実績のある方をこの十月から本財団に迎え、現在、より実効性のある財団再建策を策定中です。監督官庁、年金福祉事業団銀行方々の御理解と御支援を得て、再建に努める覚悟です。先生方の御理解をぜひお願いいたしたいと考えます。  ありがとうございました。(拍手)
  12. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  次に、若杉参考人にお願い申し上げます。
  13. 若杉敬明

    若杉参考人 東京大学の若杉でございます。  私は、年金局長の私的研究会であります年金積立金運用の基本方針に関する研究会の座長として報告書をまとめた立場から、年金自主運用の基本的な考え方、あるいはそこにおける前提というようなことについてお話をしてみたいと思います。  私がきょう申し上げたいことは、皆様のお手元に「年金積立金の全額自主運用をめぐって」というメモがあると思いますが、少し長いので、時間の許す限りで説明してまいりたいと思います。  そこでは大体四つのことに分けて書かれています。まず「自主運用の意義」、二番目に「年金積立金運用原則」、三番目に「運用責任体制」、四番目に「現実の諸問題」というようなことでまとめてございます。  最初に「自主運用の意義」というところからいきますけれども、この辺は制度の前提でございますので、皆さんよく御存じのところでございますが、一応、なぜ積立金があるかというところからお話ししたいと思います。  我が国の公的年金は、世代間、世代内の相互扶助の考え方で行われていることは皆さん御存じのとおりです。しかし、少子・高齢化の急速な進行によりまして、将来の現役世代の保険料負担が急激に大きくなることが予想されておりましたので、その世代間の負担の不公平を緩和する目的で部分的に積み立て方式が導入されました。積立金とその運用益とで将来世代の負担を軽減するという工夫でございます。その結果、現在百三十四兆円余という積立金が生じているわけです。この積立金が効率的に運用されるほど、現在及び将来を通じて現役世代の保険料負担をより軽減できる、そういう意味を持っているわけです。その意味で、積立金運用の課題は、いかに高い利回りを確保するかということになるわけです。  それでは、これまで公的年金積立金資金運用部預託されてきたわけですが、どうして自主運用に至ったかといいますと、それは、もともと厚生省が、より高い運用利回りを実現するべく、長年自主運用による市場運用を主張してきたということが一つあるわけですが、それと財投改革、そういうことがありまして、それを契機に自主運用ということになったわけでございます。  ところで、自主運用をする、市場運用ということになるわけですが、市場ではどういう原理が成り立っているかということですが、全世界的に金融の自由化、国際化が進んでおりまして、市場においてはリスク・リターンのトレードオフという経済原理が成立するようになっております。つまり、安全確実な運用を目指せば利回りはおのずと低くなり、また逆に、高いリターンを実現しようと思えば期間ごとの運用利回りの変動は大きくならざるを得ない、そういういわゆるハイリスク・ハイリターン、ローリスク・ローリターンという関係でございます。  それでは、こういうような市場の環境の中で、自主運用をするという効果はどういうことなのでしょうか。公的年金積立金を、資金運用部預託よりも高い利回りの運用に向けようとするということになるわけですが、そのことは、全体として保険料を低めるということが効果でございます。  ただし、運用にはリスクがありますので、運用がよければ、その後の保険料を低くすることができるし、さらに低めることができる。あるいはまた、運用が悪ければ保険料を上げざるを得ないということになるわけですが、五年ごとの財政再計算の際に改定される保険料の変動を大きくする、そういう要素をはらむということになります。しかし、積立金があるわけですから、これをバッファーとして利用することによりましてリスクを吸収することが可能でありまして、安定的に保険料の軽減を実現できるということになるわけでございます。  ただし、この場合、重要なことは、この積立金の額というものがどういうような数理計算に基づいているかということをきちんとしておくことでございます。したがって、数理計算に基づいて積立金残高の時間的な推移を計画しまして、運用リスクにより積立金が計画からどれだけ乖離しているか、多いのか少ないのか、そういうようなことを常に監視することが不可欠だということになるわけです。  それでは、実際に年金積立金運用原則はいかなるものであるのでしょうか。そのことについて、しばらく御説明したいと思います。  まず最初に、ALMということでございます。  年金積立金運用を現代の資産運用の管理の観点から見ますと、次のようになります。  一般に、調達した資金には、リスクと期間という二つの側面がございます。つまり、その調達した資金がどの程度のリスクを負うことができるかという問題と、返済期限がいつかという満期の問題でございます。  他方、資金を運用する場合にも、その運用機会にいかなるリスクが伴うかというリスクの問題と、資金の回収までにどの程度の期間を要するかという時間の側面とがあります。したがって、資金の調達、運用を安定的に行う、あるいはそこから安定的に利益を上げるためには、調達と運用を、そのリスク、時間という二つの面から対応させる必要があります。  その観点から、調達と運用とを対応させるための管理、それを資産負債管理、あるいはALM、アセット・ライアビリティーズ・マネジメントでございますが、そういうふうに呼んでおります。そういうことで、現代の資産運用の一つの原則はALMということでございます。  もう一つは、分散ということでございます。  資本主義におきましては、資本がリスク負担するということが大前提でございますので、金融資産運用には必ずリスクが伴います。このリスクは、通常、二つの部分に分けることができます。つまり、アンシステマチックリスクと呼ばれるものと、システマチックリスクというふうに呼ばれるものでございます。  前者は、いろいろな多様な資産、ここで言う資産というのはアセットクラスということなんですが、国内株、外国株、国内債、外国債、あるいは転換社債、証券化商品等々、そういういろいろな証券を性格別に分けたもの、そういうものをアセットクラスといいますが、そういうアセットクラスを組み合わせることによりまして、あるいはさらに、同じアセットクラスの中で、例えば株式の中でいろいろな銘柄を持つことによって、多数の銘柄を持つことによって、そういうアンシステマチックリスクはお互いに相殺されて消えてしまうということが理論的にも経験的にも確かめられております。  このことから、現代では、なるべく多様な対象に分散投資をしつつアンシステマチックリスクを消去し、分散投資によっても消すことのできないシステマチックリスクをコントロールするということが資産運用における大前提でございまして、それが合理的な行動というふうにされております。これを通常、銘柄分散、あるいは単に分散投資というふうに呼んでおります。そのいろいろな資産、あるいは多数の銘柄を保有するためには、それだけ大きな資金を必要としますので、一般に、資金量が大きいほど効率的な分散投資が可能になるというふうに考えられております。  また、別の観点から見ますと、資産運用収益率には、平均回帰、そういう現象が見られます。  これは、収益率が非常に上がったり下がったりしても、大体いつかは平均的な水準に返ってくるという、つまり、平均値の周りで行ったり来たりしているということなんですけれども、そういう平均回帰現象というものがしばしば見られますので、運用期間が長くなるほど全期間を通しての運用利回りの変動を小さくできる、そういう効果も経験的に知られております。このことから、資金が許す限り長期間保有することが、リスクの回避の点で効率的であるということが知られているわけです。これを時間分散というふうに呼んでおります。  それでは、こういうような一般的な資産運用管理の原則があるときに、公的年金積立金運用原則はどういうものかといいますと、やはり現代の資産としまして共通のものがあるわけでして、ALMの観点から、調達資金のリスク、期間に対応した運用を行い、かつ銘柄分散、時間分散の効果を活用して、リスク・リターンに関してより効率的な運用を行うべきであるということになるわけでございます。  公的年金積立金は、常に一定額が存在する、ある額が存在すると予想されておりますし、また、事実上、非常に長期の資金でございます。しかも、額が大きいわけですから、十分に銘柄分散、時間分散を活用し、リスクを有効に管理することが可能だということになります。  それに比べまして、従来の資金運用部預託は、期間七年、元本保証、確定金利の安全運用でありまして、年金積立金という資金の性格にはマッチしていないということでございます。その意味で、非効率的な運用であったということでございます。もちろん、安全、確実という点のメリットがあるわけですが、その分、保険料が高くならざるを得ない、そういう問題があるわけでございます。  公的年金には、先ほど申し上げましたように、積立金をバッファーとして利用できるわけですから、それを用いましてある程度のリスク負担することが可能だということになります。自主運用によって市場運用が行われるならば、より資金の性格に合った運用が可能になり、国民保険料負担を軽減できるということになるわけです。  ところで、この自主運用に関しまして、運用対象を規制するべきだという考え方、御意見がいろいろあるわけですけれども、分散投資というのは、いろいろな銘柄、とりわけ異種のものを組み合わせるということによりまして、利回り水準、これをリターンと呼んでいますけれども、それを犠牲にすることなくリスクを低減できる、そういう原理を応用しているわけです。  例えば株の場合でも、個々の銘柄で見るとリスクが大きくても、分散投資をすれば、資産全体、つまりポートフォリオとしてはリスクが小さくなるということが経験的にも確かめられております。といいましても、株式はもともと企業リスク負担する役割を負っているわけですから、それ相応のリスクが残ることは事実でございます。しかし、株式のポートフォリオと債券ポートフォリオという異なる資産を組み合わせることによって、リスク・リターンが両者の中間にあるような運用というものが可能になるわけでございます。  したがって、個々の銘柄や資産リスクが大きいからといって運用を規制することは大変非効率的なわけでして、資本市場資産運用技術も発達した現在においては、従来のような運用対象規制は望ましくないというふうに言えるわけでございます。  そういうことから、大事なことは、市場で流通しております金融資産を適切に分類して、その資産分類、アセットクラスと呼んでいますが、そのもとで資産の最適な組み合わせを実現すること、それが重要だということになるわけです。もしリスクの小さい運用を意図したければ、そういうものをねらっているのであれば、リスクの小さい資産の組み入れ比率を大きくすればよいわけでございます。  いずれにせよ、いろいろな資産、銘柄を組み合わせてリスクを低減させるポートフォリオ的な発想が重要だということになります。そういうことで、公的年金積立金運用の原則も、ALM、分散投資ということでやっていくということでございます。  この後、私のメモには「運用責任体制」というようなことが書いてありますが、そこでは「受託者責任の確立」ということと、それからディスクロージャー、「情報開示の重要性」ということを強調しております。この点につきましては、ほかの参考人の方が述べられたことと全く私も同意見ですし、また、その報告書でもそういうことを特に強調しております。  時間が参りましたので、私の意見陳述は以上とさせていただきます。  最後に、私は、自主運用関連法につきましては賛成であるということを付言しておきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  14. 江口一雄

    江口委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 江口一雄

    江口委員長 参考人に対する発言の申し出がありますので、順次これを許します。砂田圭佑君。
  16. 砂田圭佑

    ○砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。  参考人の皆さんには、きょうは大変お忙しい中、わざわざ御出席をいただきまして、御礼申し上げます。ありがとうございます。大変限られた時間でございますので、端的に質問を申し上げたいと思います。  私は、国民にとって将来大変大事な年金、その年金積立金がどんなふうに安全に確保されているのかということについて、とにかく本当のことを知りたい、真実を知りたい、唯一その思いだけで参考人の皆さんに御質問をしたいと思います。決してそれ以外の思惑があったり、意図があったりして質問するわけではございませんので、御理解をいただきたいと思います。  まず、吉田参考人に伺います。先ほど来大谷参考人からいろいろ、ゆうゆうの里、グリーンピア等についてのお話がありました。先般の「サンデープロジェクト」で報道されましたそれについて、取材を受けられた吉田参考人はどんなふうに受けとめておられるか、まずそのことをお伺いしたいと思います。
  17. 吉田勇

    吉田参考人 十一月十四日に放映されました「サンデープロジェクト」の番組につきましては、一面的な報道であり、入居者の不安を増幅するものではないかと受けとめております。報道内容に納得できない点を挙げれば、具体的には例えば以下の点です。  一、施設におけるサービスが低下したとの報道がなされましたが、サービスは低下したとは考えていません。先ほど申しましたように、正職員の減少に対しては、これを補うため臨時職員を採用し、サービス水準を維持するようにしております。正職員に換算した臨時職員の数はむしろ増加しております。また先ほどの繰り返しになりますけれども施設所在府県における立入調査によれば、サービスの提供についてはおおむね良好とされたと聞いております。  入居者のほとんどは、サービス低下について特に指摘はしておりません。先ほどの朝日新聞の報道に対し、サービス低下の事実はないとして入居者代表が抗議した施設が三施設あります。これは、佐倉、湯河原、神戸のゆうゆうの里でございます。  それから、入居者の次女が入居者である父に対する施設のサービスが低下している旨番組で述べていますけれども、そういう事実はなく、さらに、入居者の配偶者と長女が同番組取材に対し、施設のケア内容に満足しており次女とは考えが異なると述べているにもかかわらず、次女の意見のみが報道されていることに対し、このお二人は怒りを覚えるとして同番組に抗議文を送っております。  また、サービス内容の変更に際しましては、入居者代表、施設長、職場長から成る運営連絡会議において、入居者に十分説明し、納得を受けるようにしております。これが第一点です。  第二点、年金福祉事業団から京都施設建設資金として融資を受けた六十九億円のうち、十二億円が運転資金に流用されたと報道されておりますけれども、これは事実と異なっていると考えます。京都施設建設費総額は約百十五億円でありますが、このうち年金福祉事業団融資額は約六十九億円であります。財団は既に百四億円を建設業者等に支払っておりますので、事業団からの融資額は全額建設工事代金として支払われていると考えております。  同番組中、先ほど出ましたけれども、当財団理事長が、運転資金に充てられたと受け取られかねない発言をしたため、その場で財務担当の理事が訂正したにもかかわらず、同理事の発言は全く放映されていないことも我々は非常に疑問に思っております。  第三番目、株式投資による損失が二十八億円であると報道されましたけれども、先ほど申しましたように、損失のみを単純に加算して二十八億円と言うております。利益である売却益、配当などは無視して二十八億円の損失が生じたと言っております。繰り返しになりますけれども、売却益、配当などを加算すると、純損失は約三億円となっております。  このように、私どもの言い分は取り上げられないで、一方的な面からの報道が取り上げられる、これは報道の公正さという面で私どもは非常に疑問を持たざるを得ない、こういうふうに考えております。  以上です。
  18. 砂田圭佑

    ○砂田委員 今の財団理事お話と先ほど大谷参考人から伺った話には、かなり開きがあるように感じます。  そこで大谷参考人に、今理事から話がありましたサービスの低下、あるいは建設費の問題、あるいは株式投資の差額の問題、二十八億円が三億円というような話もありました。そして、事業団は、今も入居者はあるわけですし、これからも入居者を募集していかなければならない、途端に今やめてしまうわけにいかないという状況の中では、テレビの報道の影響というのはかなり大きなものがあるのではないかという気がいたします。そういう点から、何が真実かという意味からも、ぜひひっくるめてお答えをいただければありがたいと思います。
  19. 大谷昭宏

    大谷参考人 私ども番組に対してある種大変屈辱的な御発言だったと、大変憤りに燃えております。  そもそもサービス低下がなかったというのであれば、これは理事長も、パートの職員を決して差別するわけではないけれども実質的に正職員とパートの職員の間には開きがあるということは、私ども取材のときに明確に答えているわけです。パートの職員をどんどんふやして、正職員はやめさせていって、その上で数はふえているんだということであれば、これは私は、インチキ、欺罔であろうと思うのです。  それと、多くのお年寄りは、例えば入浴とかさまざまな介護というのは、ふだん顔を合わせて、その職員と極めて親密な中で行われているものでありまして、長年面倒を見てくださった、お世話をしてくださった職員をやめさせて、すべてそれをパートで補充する、だからサービス低下はないんだという言葉は、私は、この方々が本当に老人の介護に携わっている方だろうかというような憤りさえ感じるわけです。  それから、建設費の十二億円云々というのは、先ほど来申しておりますように、確かにそのうちの十二億円というのは一回流用したかもしれないということは私ども番組ではっきり理事長は言っておるわけです。その後、河内理事もその発言については否定しておりません。その後、田中理事が、物は考えようだというような御発言があったんですが、正確に、先ほどの発言は間違いだったというようなことは言っておりませんし、そういう意味では、年福に対して申しわけないことをしたということを明らかに平野理事長が言っているわけです。  これは、きょうは時間の関係がありますので公開できませんが、私どもは、ビデオは公開することはできませんが、そのときのビデオのやりとり、これは活字にいたしまして全部持ってきております。もし疑問があるということであれば、ビデオの提供は大変差し支えるのでできないのですが、そこのテープ起こしした分は、委員にお見せすることはできようかというふうに考えております。  それから、株の損失云々に関しては、先ほどの御説明にもありましたように、ある短期をとって損失が出たとかその後これだけもうけが入ったからということであれば、簡単な話、待ってくれ、今二十八億損したけれども十年たてばもうかるんだという論議を展開しているにすぎないわけであって、そういうことが果たして抗弁になるだろうか。  そういったるる欺瞞に満ちた答えで、なおかつこういう財団が存在しているということに対して、私どもは疑問を呈したわけでありまして、報道にいささかの誤りもなかったと確信しております。
  20. 砂田圭佑

    ○砂田委員 時間になりましたが、いずれにいたしましても、我々にとって大変大事な財産、それをみんなで守るという思いをしっかり持って事に当たっていただきたい、ぜひともよろしくお願いを申し上げる次第でございます。  ありがとうございました。
  21. 江口一雄

    江口委員長 福島豊君。
  22. 福島豊

    ○福島委員 公明党・改革クラブの福島豊でございます。  本日は、参考人の先生方には、大変お忙しい中、国会においでいただきまして本当にありがとうございます。時間も限られておりますので、質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに高山先生に御質問したいんですが、先生の御説または御著作も繰り返し私は拝見いたしておりますが、支給開始年齢の六十五歳への引き上げということに対して、これは一番きつい措置であるということでございます。  ただ、私は、慶応大学の清家先生が生涯現役社会ということをおっしゃっておられますが、少子・高齢化が進む中で労働力人口というのは減少していく、その中で二十一世紀の社会というのは、やはり生涯現役社会と呼べるようなものをつくっていかなきゃいけないんじゃないか。その中にあって年金制度はいかにあるべきかといえば、引退する年齢に影響を与えない中立的な制度に改めるべきである。  ですから、今回の六十五歳への段階的な支給開始年齢の引き上げと同時に、私どもは、適正な減額率、最新の生命表に基づいた適正な減額率をもって、生涯受給額において支給開始年齢が不公平を生じないようにすべきであるということを主張いたしまして、厚生省も減額率の見直しということに対して前向きな答弁をいたしておりますが、それによって先生御主張の点につきましても代替ができるのではないかというふうに私は思いますが、先生の御見解をお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、田中(眞)委員長代理着席〕
  23. 高山憲之

    高山参考人 清家先生の生涯現役社会、あるいは今労働省がかなり力を入れて推進している政策でございますが、これの構想自体は、私は全く賛成でございます。ただし、本当にこの夢のような話が実現するのかということなんですね。私はそこだけなんです。  私が、会社の経営者じゃありませんけれども経営者だったらどう考えるかということですね。本当に高齢者を雇うのかということなんです。女性もいるじゃないか、外国人だっているじゃないか、その中での選択の問題になっているわけです。やはり高齢者がそれなりの就業能力を高めないと、なかなか声がかかってこない。そこのところの担保が本当にこの間につくれるのかどうかに対する私の心配なんです。ですから、そこのところの心配がクリアされてからでもいいじゃないか、もっと先にやることがあるということを、私は先ほど申し上げたつもりなんです。  以上でございます。
  24. 福島豊

    ○福島委員 私は、今のように企業社会、会社人間ということで六十五歳まで働き続けるというようなことでは、生涯現役社会というのはできないだろうというふうに思います。NPOの活躍の場をもっと広げるべきだという議論もあります。また、セカンドライフという言葉もありますけれども、多様な働き方を保障するような社会づくりというのをぜひしていかなきゃいけない、そのように考えておりまして、まだ二〇一三年からということでございますけれども、それまでの間に最大の努力をしていきたい、そのように思います。  次に、若杉参考人自主運用の問題についてお尋ねをしたいと思います。  昨日の質疑の中でも、年金積立金でマネーゲームを行うのではないかという御意見もございました。しかし、年金資金の積立金運用というのは、先ほども参考人から御説明がありましたように、長期の観点に立ってポートフォリオというものをしっかりとつくった上で運用する、考え方そのものが短期間に株を売買して収益を上げるというような考え方とはまったく違う話だというふうに私は理解をいたしております。  ただそこで、グリーンスパン議長がこれはだめだというふうに話をされている最大のポイントは、政治の介入をいかに排除するのかというところなんだと思うんですね。そこのところが、日本の政府に対しての国民の信頼というのが余りない、率直に言ってそうなんだと私は思いますけれども、それで今回の自主運用ということに対しても、民主党を初めとした委員の先生方からさまざまな御批判が出ているんだと思います。  今回の自主運用ということに対して政治の介入というものをいかに排除できるのかということについての先生のお考えと、それからもう一つは、こうした形でリスクをマネジメントしたとしても、例えばバブルの崩壊のような大きな変化が起こったときにそれは果たして対応できるのか、この点についての先生の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  25. 若杉敬明

    若杉参考人 お答えいたします。  最初に、政治や何かの介入あるいはPKOというようなことでございますけれども、これはひとえに、受託者責任をきちんとするということと、情報開示をきちんとするという、その二つで担保することだと思います。  公的年金自主運用といいますと、厚生省のお役人さんが自分で株を選んだりとか、あるいはいろいろな銘柄を選んだりというようなイメージを持たれる方が多いんですけれども厚生省サイド、厚生大臣の責任のもとで運用委員会やあるいは年金資金運用基金が決めることは、どの程度の公的年金お金リスク負担できるかということを決めまして、それに対して、そういうリスクであればどのくらいのリターンがねらえるかということを決めることがまず第一でございます。そして、それを実現するためにどういうアセットクラス、つまり、国債であるとか株であるとかあるいは海外の証券であるとか、そういうものをどういう割合で持つかということを決めます。そしてその後は、民間の運用機関に、それぞれ具体的な銘柄選択というようなことはゆだねるわけですね。  ですから、そこのところでまず運用委員会やあるいは年金資金運用基金がやることは、基本的な目標の設定、そして基本的なアセットアロケーションあるいはアセットミックスの決定ということでして、そこのところに対してきちんとしたプロセスでまず決めるということと、そして、その決定のプロセスをすべて記録しておきまして、後で公開するということが大事だと思います。  そういうことで、あくまでも国民のための資産運用だということをきちんとするということと、そして、その決定のプロセスをきちんと記録に残し開示をするということによって政治の介入や何かを阻止することができるというふうに私は考えております。  それから二番目の、暴落や何かが起こったときにそういうことは避けられるのかということでございますが、そういうことはどうしても避けることができません。それはだれもそういうことは避けることができないわけでして、これはちょっと軽い言い方になってしまいますが、思いがけないことが起こってしまったということで、やはりみんなで負担するよりほかないということになるわけですね。  ただ、積立金運用に関しましては、リスクリスクということばかりが強調されておりますけれども、私が先ほど申し上げましたように、なぜ運用するかといいますと、それによって保険料を軽減しようという目的があるわけです。ですから、若干リスクをとることによって保険料を軽減できる、そういうメリットと、そのかわり、そのメリットを追求しようとすると後で運用が悪かったときに保険料を上げなければいけないというようなことが起こるかもしれない、そういうリスクもあるわけです。その辺は、初めから安全なものに運用して保険料が高いのと、あるいは保険料を低くして後から万が一が起こったときに追加負担をするのとどちらがいいか、これはやはり国民選択の問題だと思います。  どうもありがとうございました。
  26. 福島豊

    ○福島委員 まさに、安全と利回りの有利さということのバランス感覚なんだと思うんですね。  ただ、問題は、実際に運用の方針を決めた後に、それは情報公開されても、これはおかしいんじゃないかと思ったときに、それを変えるすべを多分国民が持たないというところに最大の問題があるのだろうなというふうに私は思っております。  それで、加藤参考人にお聞きをしたいと思うんですが、財投の方がいいんじゃないか、安定しているというお話が最初にあったと思います。  ただ、私は先生にお聞きしたいんですが、財投の金利というのは、実際に財投の融資によって行われている事業でそれだけの金利を上げているものはほとんどないと思います。一般財源から補てんされているというのが実態だ。そういうこと自体が問題だからそれを改めようという話になったのであって、財投が何か非常に安定したいい制度であるかのような御発言というのは、現実としては当たらないんじゃないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  27. 加藤秀樹

    加藤参考人 私は、先ほど財投がいいとか、あるいはそれを前提にして考えると申し上げたつもりはございません。  残念ながら、受託者責任というのは今の日本ではまだ確立しておりません。受託者責任というのは、要するに、ほかにより有利な運用先があって、それをとらなかった場合には明らかに違反を問われる仕組みであります。したがって、それでいえば、日本で、財投あるいは資金運用部に委託するという仕組みの是非は別にして、現在はそういう仕組みがあるわけです。現在そういう仕組みがありながら、そこで運用しておれば明らかに今の年金福祉事業団よりははるかにいい収益があった、にもかかわらず、その収益を見過ごしたという意味で明らかにこれは受託者責任違反であって、もしアメリカであれば損害賠償を問われる仕組みだということを申し上げているわけです。  ですから、例えば、私は先ほど最後に、国債運用というような限定を考えるべきだと申し上げましたけれども、別に、財投あるいは運用部に対する委託ということを前提にする必要はないのでありまして、あえてリスクを冒す意味がどこにあるのか。  先ほど若杉参考人から分散投資の御説明がありました。これは全くそのとおりであると思いますけれども、しかし、今世の中にさまざまな金融商品があって、例えば投資信託など、すべて分散投資が行われております。また、年金福祉事業団の資金運用に関してもこの分散投資が行われたはずであります。にもかかわらず、十三年間というかなり長期間にわたっての結果がマイナスと出ているわけであります。私は、その事実を重視すべきだということを申し上げているつもりであります。
  28. 福島豊

    ○福島委員 もう時間が限られましたので質問を終わりますが、最後に、私もう少し議論したいんです。  ただ、年福事業団も当初のころはもうかっていた。要は、行政機構というのが一たん始めてしまうと、状況が変わったにもかかわらず継続してしまう、そういう日本の行政のあり方の問題がそこにはあるんだというふうに思うんです。それは別に、その運用自体が問題だということとは恐らく直結していない。  それから二つ目は、国債で全部やればいいじゃないかという意見がありますけれども、それはまた、財政との分離の問題が出てくると思います。年金資金があるんだから国債を何ぼ出しても大丈夫だという、至って規律のない財政を日本は持っておりますので、そういうことにまたつながるという話があるというふうに私は思いますし、どちらも一長一短がありまして、間でどういうバランスをとるのかということが大事ではないかというふうに今思っているということを最後に申し上げまして、また参考人の皆様に感謝を申し上げまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  29. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 吉田幸弘さん。
  30. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。本日は、参考人の方にはお忙しいところ貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  まず、森参考人にお伺いをしたいと思います。年金福祉事業団の資金の運用事業についてお伺いをしたいと思います。  ずばりお尋ねしますが、事業団運用能力がほかの年金資金の運用機関と比較をして劣っているのかどうか、この点についてまずお伺いをしたい。  そして、特にこの五年間の運用成績はどうであるのか、各年度の財投の新規の金利と比較をしてその成績はどうなっているのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  31. 森仁美

    ○森参考人 運用能力が劣っているのではないかという端的なお尋ねでございました。  私は、決して劣っているということはないと確信をいたしております。  それから、ここ五年間の状況でございますが、実は先ほども申し上げましたように、平成七年が、基本ポートフォリオをつくり、新たな管理運用を始めたと言ってもいい変化の年でございます。したがいまして、五年と申されますと平成六年になってしまうものでございますから、その六年と五年間というのをちょっと変えさせていただきますと、その後の平成七年の状況は、私は大変よくなっていると思っております。  平成六年の状況で見てまいりますと、実は新規の預託金利が、当時、平均的に四年間でずっと見てみますと二・六八でございます。それに対して総合収益は六・一二ということでございまして、金利よりも三・四四%上回った、要するにプラスの方向の成績を残しております。しかし、それが七年の前、六年では大変悪うございまして、この六年を入れますと、新しいシステムを入れる前を考えますと、実は全体としては三・〇二%の預託金利でございまして、総合収益が四・九一。一・八九%のプラスであったということでございます。  私たちは、この新しいシステムのもとで長期運用ということに全力を重ねていけば、必ずいい結果が得られると考えております。
  32. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 では、新しいシステムのもとで運用収益をできる限り確保する、この方針、また細かな方法、コスト削減などの分野でこれまで実施してきた努力、今後はどのように行っていくのか、さらには情報公開の面も含めて少し詳しくお示しをいただきたいと思います。
  33. 森仁美

    ○森参考人 先ほども少し申し上げましたが、基本ポートフォリオに基づきます一貫した運用管理を徹底するということがまず第一でございます。それから、運用機関の選択、選定について、新たな運用手法の研究結果を用いていくというような厳しい目で見ていきたいと思っております。それから、情報システムの整備というのもまた不可欠でございます。さらに、運用手数料の合理化、これも大変重要でございます。  私どもは、これまでもやっておりましたが、例えばコストの安いパッシブ運用の方にシフトしながらパフォーマンスをよくする方法、こういうものも考えていく必要があろうと思っております。  国民の理解を得る観点からのディスクローズの充実、これはまだいろいろ御注文があろうかと思います。そういうものも取り込みながら、さらに一層の努力を重ねてまいりたいと思っておりまして、以上のようなことを考えながら、先進的な取り組みをしつつ、よくやっていると言われる日を望んで一生懸命頑張りたいと思っております。
  34. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 ありがとうございます。  続いて、若杉参考人にお伺いします。  今回の財投の改革にあわせて行われる新しい運用が、我が国の国民経済全般にとってどのようなメリットが起こるのか、この点についてお話をいただきたいと思います。
  35. 若杉敬明

    若杉参考人 お答えします。  大変大きなお金公的年金の百三十四兆円、これは当然、一遍に市場に出るわけではありませんで、資金運用部に七年の満期で預託されているわけですが、実際には資金運用部は最長三十年までの長期の貸し出しをしておりますので、その百三十四兆円が厚生省に戻ってくるには大体十数年、十五年ぐらいかかるんじゃないかというふうに言われておりますので、毎年十兆円ぐらいのお金市場に流れていくということでございます。  そういうことで、かなりのお金市場に流れていくわけですから、経済学でいいますと、市場が熱くなるというか流動性が高くなるということで、市場の効率化、合理化に貢献するというふうに期待しております。これはまた、公的年金お金だけではありませんで、郵貯のお金もこれから市場運用されるわけでして、そういうようなことが、あわせて日本市場を豊かなものにしていくのではないかというふうに期待しております。  以上でございます。
  36. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 ありがとうございます。  続いて、大谷参考人にお伺いしたいと思います。  年金という問題ではなくて、広く社会保障についてのお考えを示していただきたいと思うのです。医療とか年金は確かに不都合な点、いろいろな悪い情報もあるかと思うのです。けれども、現にこの制度が今まで続く中で、いい情報というか、現在の社会保障、医療、年金、福祉、これらについての多少いい情報があればお示しをいただきたいと思います。
  37. 大谷昭宏

    大谷参考人 大変難しい御質問だと思うのです。さまざまな社会保障制度が今非常に論議されておりまして、少子・高齢化の中でこれから大変な局面を迎えるということは、我々メディアの中にいる人間も十分自覚しておるわけです。  先ほどの御議論を聞いておりますと、運用益云々のお話が出ていて、これはやはり百三十何兆円というお金を寝かせておくということは当然もったいないわけですから、何とかその中で益を出して受益者の負担を減らすということも当然必要かと思うわけです。  しかしながら、現在の日本の制度を見ていくときに、このまま今の役人たちに任せておいてそういうことが可能であろうかということを私たちは痛切に感じるわけです。極端な言い方をすれば、もうける端から浪費されたのでは国民はたまったものではない。こういうふうに社会制度が非常に議論されていくときには、まずそういうシステムをきちんと確立することが必要なのではないか。  少なくとも年金とか介護とか、国民の生命、健康にかかわるところには、多額退職金を目的とするような役人は天下りさせない。別に、だから道路公団だったらいいとかいうわけではないのですけれども、少なくとも国民の生命にかかわるところにそういう人たちが巣くって、多額お金を巻き上げていくという制度だけは何としても改めていただきたい。  五万円、六万円の国民年金の中から新たに介護保険のお金を払って、手取りは三万円だ四万円だとおっしゃっているお年寄りたちから見れば、どう考えても、この方たちが二、三年勤めて何千万円というお金を懐に入れて、また知らぬ顔で別のところへ去っていくというようなシステムが大手を振って歩いている中で、幾ら社会保障制度の確立ということが言われても、国民は納得しないと私は思うのです。  今後、社会保障制度というものが医療や介護あるいは年金の面で国民に多くの負担を強いてくること、これはある程度やむを得ない。しかし、痛みを強いる以上は、ぬけぬけと大もうけをするような方々国民の意識を逆なでするような方々をまず駆逐してからにしていただきたいというふうに確信しております。
  38. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 これで質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  39. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 石毛えい子さん。
  40. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  本日は、参考人の皆様、御多忙のところをありがとうございました。  それでは、質問をさせていただきます。  私は、こういう社会保障制度が大変大きな変革、転換を迫られている時期に、そこにはどれだけ民主主義が貫かれているか、情報公開が徹底して市民、利用者になる人たちが判断できるようなシステムができるかということは、大変重要な要素の一つだというふうに考えております。  そういう観点からも、それから現に大変お困りになっていらっしゃる御高齢の方がいらっしゃるというその現実からも、日本老人福祉財団運営されておりますゆうゆうの里に大きな関心を寄せております。  そこで、具体的に大谷参考人に、取材をなさってどのようなことをお考えになったかという点で、次の質問をさせていただきたいと思います。  私はこのことにつきましてずっと当事者の方からお話を伺っているときに、この日本老人福祉財団、あるいはゆうゆうの里の運営のあり方を決めていく理事会が、非常に不透明だといいますか不明朗だと。現理事長は非常勤の理事長で、その方は前理事長の友人の方というふうに伺っておりますし、それから、先ほど参考人お話の中に、十月からですか、新しい嘱託の方を迎え入れて再建策を講じているのでという御報告がございましたけれども、その方も現理事長の友人の方というふうに伺っておりまして、どうも私的な関係で理事の構成が動いているというふうに思えるわけです。  こういう公益法人の場合には、もっと透明性の高い開かれた理事会システムであるべきだというふうに私は考えているわけですけれども、何人かの理事さんにお会いになっておられると思いますので、そのあたりについての御感想をお伺いしたいと思います。
  41. 大谷昭宏

    大谷参考人 石毛委員がこのゆうゆうの里の問題につきまして大変御尽力いただいて実態の解明に御努力されているということは、取材の端々で私ども耳にしておりまして、何か孤軍奮闘の取材をしている中で、非常に私たちは心強く感じたということをまず申し上げておきたいと思います。  この理事会の問題ですが、取材その他を通じまして、はっきり言って、これだけのお金を動かしている財団でありながら、私は、当事者能力を持っていないんじゃないか、少なくとも国民にきちんとこたえることができないんじゃないかと。  私どもは、きょうお見えの吉田理事に対して、もろもろの責任を明らかにしてほしいということを再々申し上げたわけです。取材に応じていただくようにも申し上げたのですが、平野理事長は出てこられたのですが、吉田理事は外出を理由に出てこられなかった。何もこれは取材に応じなかったから腹いせで言っているわけではなくて、当事者としての権利も義務も放棄しているというふうに私は考えざるを得ないわけです。番組の中でも放映いたしましたが、平野理事長は、まさか業務命令を出すわけにいかないでしょうと言って笑っておられるぐらい、既に責任を放棄しているというような感じしか得なかったわけです。  それから、友人関係でこの理事会がたらい回し的にされているということも、委員御指摘のとおりだと思います。現理事長の親しい方がこの十月に入ったということも、私どもは既に取材しております。たしか、大変苦境に立っている某自動車会社におられた方だということでございますので、恐らくこちらの方にもまたコストカッターが始まるのかなということを大変危惧しているところでございます。
  42. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  それでは、吉田参考人にお伺いをしたいと思います。  今の理事会の構成といいましょうか、あり方についてでございますけれども、昨年ですか一昨年ですか、評議員会が形成されたというふうに伺っております。普通、こういう公益法人の理事を決定する場合には、評議員の間で理事候補を選んで、そして理事会が結成され、互選といいましょうか、そういう形で理事長が選出される。これは民主的な手続の問題でもありますし、公益法人のあり方としてはその方が正しいと思いますし、私はそういう方向性がとられるべきだというふうに考えるわけでございますけれども、この際、定款を変更されて理事会のあり方について、理事のお立場として御回答できる範囲もございますでしょうけれども、どのようにお考えになられますか、そこのところをお願いいたします。
  43. 吉田勇

    吉田参考人 結論から申しますと、私は先生のおっしゃったとおりにすべきだと思います。ただし、寄附行為の改正については、入居者の代表、私ども役員、それから職員が入りまして、研究会をいたしました。そのときにいろいろと、並行論というのですか、意見が一つにはまとまらなかった事実があります。  やはり一番問題なのは、評議員会で理事を選任する、こういう規定を設けるかどうかというところであります。その後、今度は、評議員会というのがありまして、評議員というのは、七施設ありますけれども、一施設から二名の入居者が入るわけですが、それと公益委員というのが三人くらいというふうな、少数なんです。そういうふうなことで入居者に偏った評議員会であるわけですね。ですから、そこで理事を選ぶということが果たして今の評議員会の構成でいいのかどうかという問題はあるわけです。  その評議員会にかけたときに、現理事長は、非常勤で弁護士でございますけれども、この問題は自分は次期の理事長に任せる、寄附行為を改正するかどうかは次期の理事長が決めることにしたいということで、これは評議員の方々も了承しております。  また、この問題につきましては、今の寄附行為では、理事会で理事を選ぶことになっていますので、私ども理事会にかけました。そのときに非常勤の理事の方から、今の評議員会の構成というものは入居者に偏った評議員会じゃないか、公益委員が非常に少ない、だから、もっと評議員会の構成そのものを見直した上でないと寄附行為の改正というのはすべきでない、理事会ではこういう意見もありました。  そういうようなことで、ちょっと長くなりましたけれども、次期の常勤の理事長が決まったときに、その理事長の判断で寄附行為を改正するかどうかということを決めたいというのが今の財団の立場であります。  ただ、私も寄附行為の改正は賛成でございますけれども、評議員会の構成が今の入居者中心の評議員会でいいのかどうかということについて、私は理事の一人としては疑義を持っております。そこのところをきちっと直して、今の総理府等の指導にもありますように、モデルというものは全部評議員会で理事を選任することになっていますから、それはぜひやるべきだと思いますが、ただ条件がある、こういうふうなことでございます。
  44. 石毛えい子

    ○石毛委員 ここは恐らく議論のあるところだろうと思います。  ゆうゆうの里を立ち上げる歴史的なこと、発足のときの、自分たちお金を出し合って一つのコミュニティーをつくろう、そういう思念と言いましょうか理想を生かすのであれば、入居者代表に評議員が多いのはある意味で当然のことだというふうに私は考えます。  ですから、時間がありませんので余り展開できませんけれども、果たして、公益性と新しい意味での当事者参加の公共性、そのことの関係性をどう考えていくかという非常に重要な論点だと思いますので、余り既存の法人の考え方というふうに横引きはしていただきたくないということを申し上げさせていただきたいと思います。  もう一点、ぜひお尋ねしたいのです。  年金福祉事業団理事長、森さんにお尋ねいたしますけれども、この老人福祉財団の累積の資金融資百三十五億のうちから、一部分でございますけれども、三年間の元本返済猶予が認められておりまして、前回の私の質問では、それに対する利子の支払いもそれほど十分にされていない、かなり少ない利子返済の状況だという御報告をいただきました。年金福祉事業団では、元本返済を三年猶予するというようなことが一般的にあることなのでしょうか。それはどういうふうな理由で可能になるのかというあたりを御説明いただければと思います。
  45. 森仁美

    ○森参考人 私どもがいろいろ融資をいたしております中で、形はいろいろなものがございますけれども、本年の三月二十日に、有料老人ホーム入居者の居住の安定ということを考慮いたしまして、貸付元本の返済一時猶予措置というのをとりました。これは有料老人ホームだけではなくて、最近の経済情勢の変動に伴って生活にお困りの方もおられるわけでございますので、そういう方からも御申請があればそれを受け付けるという一般的な仕組みの中でやったわけでございます。  それから、ただいまのお話に、私が前に先生にお答えしたかのようなお話でございましたが、今初めてではなかろうかと思います。
  46. 石毛えい子

    ○石毛委員 一般的にというところがちょっと私にはよく理解できなかったのですけれども、それは例えば、年金福祉事業団は一般の被保険者の方に住宅の融資をされておりますとか、教育資金の貸し付けの融資をされておりますとか、そういうことも含めて一般的にという御回答でしたのでしょうか、いかがでしょうか。
  47. 森仁美

    ○森参考人 もう少しく詳しく申し上げますと、昨年の十月二十三日の閣議決定というのがございます。その閣議決定の中では、公的住宅融資返済困難者に対しての措置というのが書かれております。それともう一つ、私ども融資事業全体について、閣議決定の対象と同じような状態にある者、例えば賃貸住宅の方あるいは老人の方、身体障害者がお住まいのもの、あるいは母子または児童のための施設、こういうものを一般的にと申し上げたわけでございます。  その中で、有料老人ホームの入居者、この方の居住の利益ということも考えますと、これをその対象に含めて措置をすることが大切なのではないかという判断をしたわけでございます。
  48. 石毛えい子

    ○石毛委員 そういたしますと、今回の措置は三年間ということでございますけれども、年々返済金はあるわけでございますから、次々と元本返済の責任が生まれているというか、あるわけでございますけれども、ずっと状況がこういう状況である限りはそういうことが継続していくというふううに理解させていただいてよろしいのでしょうか。
  49. 森仁美

    ○森参考人 未来永劫にそういう状況に行けるかどうかというのはわからないのでありますが、次々にお返しをいただかなければならない状態というのが起きてくることははっきりしております。  したがって、私どもは、融資をした責任上、お約束に従って、お貸ししたものは利息をつけてお返しいただくという基本は守りながら、お返しいただけるような状態を一方で支えるというのもまた必要でございます。それを考慮しながら対応をしていかなければならない、こう思っております。
  50. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひ、お返しいただけるような状態をというのはどういう状態をつくり出すということなのかお伺いしたいところですが、残念です、発言時間が終わりましたので。  ありがとうございました。
  51. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 古川元久さん。
  52. 古川元久

    ○古川委員 民主党の古川元久でございます。本日は、参考人皆様方には、大変に貴重な御意見をお伺いさせていただきまして、ありがとうございました。  時間が限られておりますので、早速御質問したいと思うんです。  まず、若杉参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、先生がお書きになられましてきょう提出していただいたこのペーパーを読みますと、今度の年金積立金自主運用は、専ら年金財政の面からだけ書いてあるようなんですね。先生は、郵貯の自主運用についてもいろいろと政府の方へも御意見を出されておられるようなんですけれども、そういった意味では、今回の年金積立金自主運用は、一面ではもちろん年金財政にかかわりますが、これはそもそも財投改革全体の中での一部分だというふうな認識をすべきものではないか、そういう大きな一面を持っていると思いますが、いかがでしょうか。簡潔にお答えいただきたいと思います。
  53. 若杉敬明

    若杉参考人 財投改革を契機に自主運用になりましたけれども、本来は、年金の資金にふさわしい運用ということが望ましいわけでして、そういう大原則の上から自主運用が始まったというふうに理解をしております。
  54. 古川元久

    ○古川委員 では、特にこれは財投改革とは別に、全く切り離して考えていい問題だというふうにお考えだということですか。
  55. 若杉敬明

    若杉参考人 財投改革は財投改革でいろいろな問題があると思いますので、それはそれで別に議論をしなければいけないと思いますが、今のこの自主運用の問題は、本来、年金の資金にふさわしい運用、そういう考え方でとらえるべきであると考えております。
  56. 古川元久

    ○古川委員 では、この辺をちょっと加藤参考人の方にもお伺いをしたいんですけれども加藤参考人は、この問題はこうして年金だけで、本体の財投改革とは切り離して議論をする。しかも、郵貯とかあるいは簡保の自主運用部分も出てくるわけでありますが、市場というマーケットの観点からすれば、当然、郵貯だとか簡保の資金も含めて公的プレーヤーが出てくるということについては、年金運用についても同じような観点で考えなきゃいけない、私はそのように思うんですが、これは、加藤先生、高山先生はどのように思われますか。
  57. 加藤秀樹

    加藤参考人 私は、市場の側から見れば、年金にしても郵貯にしても全く同じことであると考えております。したがって、マクロ的に見れば、それは国がかかわる資金運用をどうやっていくかという観点から総合的な検討が行われないといけないと思っております。  そういう意味で、先ほども申し上げましたように、例えば年金というのは、その年金積立金運用をいかにうまくするかという観点ももちろん非常に重要ですけれども、より基本的に言えば、やはり国の資源配分がマクロ的に適正に行われて経済成長が上がることが、結果的には年金に最大の果実をもたらすものだと思っておりますし、また、今度新しく基金をつくるということは、こういう言い方をすると若干語弊もあるかと思いますけれども、むしろ違うポケットの財投を新たにつくるおそれすらあるのではないかと考えております。
  58. 高山憲之

    高山参考人 基本的に、財投改革と切り離して議論することは極めて不適切だというふうに考えておりまして、その点での認識は先生と全く同じでございます。  私、先ほどの意見陳述の中で資金運用問題についてほとんど触れませんでした。それで、少し補足させていただきたいのですけれども若杉先生は大変立派な方でございまして一々ごもっともなんですが、ただ、長期投資のメリットを盛んに強調なさった、長期投資のメリットはあるというふうにおっしゃったんですが、ただ、期末資産の価値のばらつき度合いも極めて高いことは専門の学者が一致して指摘しているところでございます。  それをもう少し簡単に申し上げますと、資金運用に当たって大きな損失が発生することは必ずあるんだということなんです。そういう時期が必ずあるんだということなんです。そのときにだれも責任をとらないということを、私は心配をしているわけです。  こういう金融専門家とか資産運用専門家は、非常に難しい高度なテクニックを使って、私から見ると非常に小ざかしい話をしているというふうに思っているんですけれども、煙に巻いて、おれたちに任せてくれと言っているんですが、実際はどうなるかというと、結局だめになるケースが圧倒的に多いわけです。これは、ノーベル賞の経済学賞までもらった偉い先生がいるんですけれども、その人たちが関与したインベストファンドがつぶれているんですね。ですから、学者がこれくらいで大丈夫ですなんて言ったって、だめになるケースが結構あるということをぜひ御理解いただきたいのです。  そもそもこの資金運用問題を日本で提案したのは、実は小泉先生だと思います。小泉純一郎先生が厚生大臣就任の記者会見の席で、年福事業団廃止ということを基本指針としておっしゃって、この話が動き出したわけですね。今、厚生省がまとめたこのスキームを、新しい基金及びその周辺の問題を、私は小泉先生に一度お聞きしたいのです。小泉先生は、あの廃止を提案したときに、こんなスキームができるということを予想していたのかどうか。私は、失礼ながら、極めてがっかりなさっていると思います。全然意図と違ったものができ上がっているというふうに多分おっしゃるんじゃないか。  以上でございます。
  59. 古川元久

    ○古川委員 私も、確かに高山先生のおっしゃるとおりで、郵貯を民営化しろと言う人が、どうしてこの年金の百四十兆円を公的なプレーヤーで運用することを認めるのか、これはぜひ小泉先生に来ていただいて、ここで意見を聞いた方がいいんじゃないかなというふうに思います。ちょっと話が横にそれましたけれども……。  今、お二人の先生からは、これは財投改革と非常に関連が深いというふうなお話がありました。若杉先生、反論がありましたらどうぞ。
  60. 若杉敬明

    若杉参考人 もちろん、財投は財投で改革をしなければいけないわけですが、繰り返しになるのですけれども、本来、公的年金という形で年金を確保するためには、それに一番ふさわしい資産運用をすることが大事だ、そういうふうにお答えするしかないわけです。
  61. 古川元久

    ○古川委員 私も東大にいましたから、東大の先生は、どうも簡単なことを難しく言うのが得意なようで……。  私が聞いているのは、要は、これは財投改革と関係があるんですか、ないんですかということだけを聞いているのです。
  62. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 質問に答えてください。  若杉参考人
  63. 若杉敬明

    若杉参考人 そういう意味でいえば、財投改革の流れの中で出てきたことでして、大いに関係があると思います。
  64. 古川元久

    ○古川委員 それであれば、この法案——まだ財投本体の改革の案が出てきていないわけです。しかも、郵貯の自主運用とかそういうものもまだこれからなんです。これを年金本体の改正法案と一緒にやらなければいけない合理的理由はあるのかどうか。きょうの御意見を聞いても相当な問題があるわけでありますから、これは分離してでももっとじっくりと議論すべき問題じゃないか。私は、この前も大臣や局長に、これを一緒にする合理的理由はあるのかと。全然お答えになっていただけませんでした。もし、いらっしゃる先生方の中で、合理的な理由説明できる先生がいれば教えていただきたいと思うのです、私は恐らくないと思うのですけれども。  若杉先生と加藤先生、これはどうですか。一緒にやる合理的理由。むしろ、これは施行期日自体は附則で財投改革とあわせてとなっているわけでありますが、そこまで一緒に議論をしていく問題じゃないかというふうに私は思いますが、いかがですか。
  65. 若杉敬明

    若杉参考人 財投改革に伴って出てきたので、一緒にやるべきかどうかというのはまた議論があると思うのですが、まず、財投改革の中で一番問題になってきたのは、公的年金積立金とか郵貯のお金が自動的に資金運用部に入ってくるということが財投の規律をなくしたんじゃないかという議論があるわけです。そういう観点から言いますと、まず入り口のところで市場原理が働くということは、財投改革にとって大変いいことじゃないかというふうに考えております。
  66. 加藤秀樹

    加藤参考人 私は、余り難しくお答えするのは得意じゃないものですから、簡潔にお答えしますと、この法案自体が別の冊子になっておりますように、全くほかのところとは、全くと言うと語弊があるかもわかりませんが、関係ないと私は思います。むしろ、財投と一緒に審議すべき話だと考えております。
  67. 古川元久

    ○古川委員 若杉先生にもう一度簡単にお答えいただきたいのですが、これは切り離してもいいですが、しかし、ではそれをどう運用するかという中身ですから、これは経済学部の先生に、私、法学部出身の者が言うことじゃないと思いますが、経済的な金融の側面から大蔵委員会でも、最低でも合同審査をやるべきものだというふうに思いませんか。思うか思わないかだけお答えください。
  68. 若杉敬明

    若杉参考人 幅広い観点から見るという点では、そういうことも必要だと思います。
  69. 古川元久

    ○古川委員 思うということでよろしいのですね、これは。  そういう点からも、やはりこの法案を慌てて上げるということの問題点が明らかになってきたんじゃないのかなという気がしますけれども、時間がなくなってしまいますから、次に行きます。  積立金の問題につきまして、今回の年金の本体の改正案でも、積立金はもっと積み増そうという話であるのですけれども、先ほどの若杉先生のペーパーとかを読ませていただいても、分散投資すればリスクは小さくなるんだというようなことが書いてあるわけですね。一般的にそうですね。  そういうことから考えると、年金積立金をふやしていくということは、国がそれだけのリスクをとっていくということになるわけですね、ある意味で集めていくわけですから。それが一カ所に集まれば、たくさん投資すれば、ハイリターンも期待できますが、ハイリスクもあるわけです。国全体のマクロの資金のポートフォリオということから考えれば、本当に国がこんなに強制的に保険料を吸い上げて運用することが、国民全体にとって、将来の世代の子供にとって好ましいのかどうかという問題は間違いなくあると思うのです。  しかも、この年金自主運用の場合には、責任は厚生大臣が受託者責任を負うと言われましたが、別に厚生大臣は損が出たら自腹を切るとかいうことじゃないですよね。厚生大臣が責任を負うというのは、最終的には国民に、保険料の引き上げとかあるいは年金給付額の抑制、また、保険のところでカバーしないのであれば、それは税負担というような形で回ってくるわけですね。  そういった意味では、先生のここには保険料引き下げとバラ色のことばかり書いてありますけれども、逆の可能性も十分あるわけですよ。そういうリスクを減らすためには、今百四十兆ある積立金の規模、これをもっとふやそうとする、そんなにこれはリスクをとっていいものですか。むしろ、もう少しこれは国民の側のところで、自分たちのところで、自分の稼ぎを将来のためにも掛けてもらうとか運用してもらう、そういう形でリスクを分散した方が、先生の理論からいえば、むしろトータルとして、国民全体として、将来まで踏まえて考えますと、リスクが分散されて国民経済にとっていいんじゃないかと思いますが、いかがでしょう。簡潔にお答えください。
  70. 若杉敬明

    若杉参考人 私は、リスクをたくさんとれと言っているわけではないわけでして、年金の資金の性格に合った程度でリスクをほどほどにとるように、それによってハイリターンを実現することができて、長期的に見れば保険料負担を軽減できる、そういう趣旨でございます。  それから、運用ですけれども年金というお金ですから、国民が将来に備えて年金を積み立てていこうということであれば、それが公的な年金で行われようが私的な年金で行われようが、積立金というのは当然生ずるわけです。それをどういうふうに運用するかという問題になるわけですが……(古川委員「具体的に規模がどうかということを聞いているのです」と呼ぶ)今、自主運用の中で考えているのは、厚生省自身が銘柄選択をしたりとか、そういうことをやろうとしているわけではないわけでして……(古川委員「規模が、百四十兆というのが適当な規模かどうかということです」と呼ぶ)
  71. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 質問は、手を挙げてから発言してください。
  72. 若杉敬明

    若杉参考人 それは、公的年金であろうと私的年金であろうと、国民がそれだけの年金が必要ということであれば、国の中にそれだけの積立金は生じざるを得ないわけです。そして、実際に運用するのは民間の金融機関運用することになります。そういう意味でいえば、今は資金運用部預託するという形で国の運用になっているわけですが、資金運用部運用しているわけですが、むしろこれからは民営化になるということでございます。そういうふうに私は理解するべきだと思っております。
  73. 古川元久

    ○古川委員 これはほかの保険と違って、年金の場合には保険料を強制徴収されているわけですから、国民にとって掛ける掛けないの選択はできないわけですよ。わかりますか。そういった意味では、先生、そこは全く違うと思うのですよ、釈迦に説法で申しわけありませんが。  時間がなくなりますから、質問だけさせていただきますけれども若杉先生は、先ほどのこの中で、積立金リスクをとれるバッファーだというお話がありました。しかし、加藤先生のお話の中では、とても積立金はバッファーとは言えないと。  責任準備金という観点からすれば、厚生省の試算から九百十兆の積立不足があるなんというお話は、若杉先生も当然御承知だと思います。それでも積立金はバッファーと言えるのでしょうか。経済学的に見て、これは学派の論争になるかもしれませんけれども、普通から考えれば積立金不足と考えるのが適当であって、この積立金リスクをとっていいバッファーだとは私は到底思えないというふうに思いますから、その点についてお伺いしたい。  もう一点、運用のあり方というのでいろいろ、ALM分析だとか、そういうものをやって運用していけばいいんだというお話がありました。その先生が、今度の基金でやられるという運用のあり方の観点から見て、今まで年金福祉事業団がやってきた運用のあり方、これは株に四五%くらい投資しているわけですね、これは適切だったというふうにお考えになっているのか。その二点についてお答えをいただきたい。  それを聞かれて、加藤先生から、それについてどう思われるか、その御意見を聞きたいと思います。
  74. 若杉敬明

    若杉参考人 バッファーにするかどうかということは、その運用の結果に応じて保険料を変えるのがいいか、それとも積立金という形で、ストックであるものの増減によってリスクを吸収していくのがいいか、これは国民選択の問題だと思います。  私としては、直接国民が目に触れる保険料を余り変動させるより、積立金で吸収した方がいいのじゃないかと思いますので、今の制度ではそれができないのですが、そういうような仕組みを考える必要があるのじゃないかと思います。  ただし、問題は、公的年金積立金がどれだけのものを持っているかということは、数理計算的に非常にあいまいな面が実はあるのですね。その辺のディスクロージャーは必ずしもされていません。ですから、そこをきちんとディスクローズするということが大前提だと思います。  それから、もう一つは何でしたか……(古川委員「今の年福がやってきた運用は、先生が言われる今度の運用の観点から見れば、株に四五%も投資するようなことは」と呼ぶ)それは、年金お金としては株へのウエートが大き過ぎたんじゃないかと、私自身としては思います。
  75. 加藤秀樹

    加藤参考人 バッファーになるかどうかということで言えば、私はこれは全くならないと思っております。今の百三十兆円といいますのは、当面のキャッシュフローという観点から滞留しているというものだけでありまして、複式会計の考え方でいきますと、それは、厚生省の二年前の試算でいきますと、九百兆円の債務を負っているわけですね。これはもう既に発生した債務なわけです。ですから、バッファーになり得るというのは、債務を超える資産があって初めて、その超える分がバッファーになるというのが基本的な考え方であります。
  76. 古川元久

    ○古川委員 若杉先生の今のお話の中で、今の年福はこれまでは運用のあり方には問題なかったというふうな発言ばかりあったのですけれども、それがやはりプロの目から見ればおかしいということが明らかになったと思います。  また、積立金がバッファーかという問題についても、今若杉先生が御自分でおっしゃられたように、実際に本当にこれがバッファーとして使えるかどうか。積立不足の試算、九百十兆という試算もあいまいだという話がありましたけれども、まず、本当にこれをリスクあるものに使うのであれば、そこの部分の計算をしっかりして、それをちゃんとこの国会の場でも国民に明らかにした上で、それから初めてリスク運用に入っていく、それが手順じゃないかというふうに私の考え方を申し上げて、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  77. 田中眞紀子

    田中(眞)委員長代理 児玉健次さん。
  78. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  最初に、加藤先生にお伺いしたいと思います。  政府と与党の思いどおりでいけば、二〇〇一年の四月から、年金の積み立て、百四十兆円を上回る部分、それから郵貯の方、郵貯は全額ではありませんが、その中で簡保事業団株式運用に回される部分、合わせて、我々が経験したことのない巨額の金額が株式市場金融市場に投入されることになります。そのことの持っている影響、そのことのインパクト、それをどういうふうにお考えになるかというのが一つです。  それからもう一つは、どのような形であれ、厚生大臣が、別の言い方をすれば国が、この株式を取得することになる、その株に伴う議決権の関連。国が私企業の議決権を行使することの問題、ないしは、そのことが不適であるというのでもし議決権を放棄するとすれば、資産運用という点で非常な無責任さが出てくる。そのあたりについて、加藤先生のお考えを伺いたいと思います。     〔田中(眞)委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 加藤秀樹

    加藤参考人 まず最初の点でありますけれども、第一の点、第二の点は非常に密接に絡んでいると思います。  私は、先ほども申し上げましたように、本当に圧倒的に世界最大の機関投資家が誕生するということですから、そのことの市場に対する影響というのは極めて大きいと思います。しかも、これも先ほど若杉参考人がお答えになりましたように、政治的な影響というのは、これは排除できないなと思います。一〇〇%排除する仕組みをつくるということは、これは不可能であると思います。  したがって、運用リスクの問題とポリティカルリスクという観点から、私は恐らく、世界のどこにも例がないということ自体が、そういうリスクが大きいからとられていないということであると思いますし、また、例えば国債を中心とした運用をすれば、そんな巨大なリスクをとる必要は全くないわけです。年金に限れば、年金積立金運用というのは、リターンを追求するのが目的ではないわけですね。これはあくまでも、国が負っている債務をいかに忠実に履行するかということですから、それを安定的に運用するというのが最大の目標だと思います。ですから、そういうことを考えますと、これは非常に大きい問題を含んでいると思います。  それから第二番目の、これはコーポレートガバナンスの話だと思いますけれども、これもいろいろな説明はし得ると思いますけれども、基本的に非常に大きい問題があると思います。  国が株主としての権利を行使するとすれば、企業に対する経営の介入、これは間接的であってもやはり経営に対する介入というふうになりますし、逆に、これだけ大きい金額を動かす機関投資家がそれを一切行使しないということになれば、株主の責任というのはどうなのか、企業経営をチェックする機能というのが動かないではないか、こういう問題をやはり含んでいると思います。
  80. 児玉健次

    ○児玉委員 高山先生にお伺いしたいと思います。  実は、年金の前々回の審議のとき、一九八九年でございますが、年金支給開始年齢の繰り延べが初めて提起されたときですが、そのとき私は、衆議院本会議でこの問題の是非について質問をいたしました。当時の海部首相は、私に対してこう答えました。「六十歳代前半層の雇用の場の確保を図りつつ、」と申しました。今回の審議で、まだ時間があるから大丈夫だと言う方もいますけれども、十年前にそういうことが言われて、そして十年後どうなっているかというと、ますます状況は厳しくなっている。  先ほどの先生の御意見を拝聴していて、例えば、労働省が最近出した高年齢者就業実態調査によりますと、これは平成八年で一番新しいものですが、従業員の規模五千人以上のところで定年制が何歳であるかという前に、定年前退職者が四三・三%。四三・三%が定年前で退職を余儀なくされている。こうなりますと、海部さんが言った六十歳代前半の雇用を確保するという前提が崩れたと思うのです。  そういう中で、繰り延べをそのまましていくことについて、私は全くそれは道理がないと考えるのですが、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  81. 江口一雄

    江口委員長 ただいま御出席をいただいております加藤参考人は、所用のため退席をされます。大変ありがとうございました。  高山参考人
  82. 高山憲之

    高山参考人 支給開始年齢問題は長年の懸案でございました。私の記憶では、昭和五十五年改正のときに厚生省が提案して以来、ずっと議論してきた問題でございます。そのたびごとに、高齢者の雇用確保ということがうたわれ、担当大臣は常にこのことを気にかけて施策を推進してきたはずだというふうに私自身は理解をしております。  ただ、残念なことに、ここ十年間、平成不況が長く続いてしまいました。バブルの清算がまだ残念ながら終わっておりません。  終わった後、では日本経済はどうなるかということなんですけれども、これもいろいろの考え方がございまして、いろいろなシナリオがあって、みんながこうなるというふうに信じられるようなものがまだないのですね。六十代前半、みんな働けるようになるんだというふうな思いにまだなっていないというところが一番気にかかる点でございます。  働く人が高齢者だけということではないのですね。女性もこれからもっと働くようになりますし、外国人労働ということも当然ある。あるいは、企業の関係者にとっては、場合によっては生産基地を外国に移してしまうという選択肢もあるわけです。その中で、高齢者の雇用が確実にうまくいくという見通しが立っていないわけですよ。今までこれだけの期間をかけてやってきながら、全然実績も上がっていない。二十一世紀になりますと、現役サラリーマンの数は減っておりまして、あるいは人口も減り出す、国内のマーケットがだんだん小さくなっていくわけです。そうした中で本当に高齢者の雇用確保ができるのかということなんですね。  私は当然やっていただきたいのですが、その成果に対して今から楽観論をもって将来の制度を決めるということについては、私はどうしても大きな違和感を禁じ得ません。  以上でございます。
  83. 児玉健次

    ○児玉委員 吉田さんと大谷さんに同じことについて二点お伺いしたいと思います。  一つは、先ほど吉田参考人お話の中で、アメリカに投資した、その結果、現在、財団損失をもたらしているというお話がありました。私の承知する限りで言いますと、財団がカリフォルニアに六十一エーカーの土地を購入したのは八九年の秋ではなかったかと思います。そして、結局、あれこれの経過があったけれども、そこから撤退したのは九七年の春であって、実にこの八年間、問題が指摘されながら、なぜそれが放置されたのか、そういうことの責任はだれがとるのか、この点についてお聞きしたいというのが一点目です。  二つ目は、ゆうゆうの里もさまざまにありますが、限定して聞きたいのは、京都のゆうゆうの里の現状です。入っている方に対するケアがおおむね良好だというふうにさっき全体的に言われたけれども、私の調査によれば、生存者で退去された方は、京都でいえば、九八年が六名、そして九九年、まだ年度途中ですが、七名ですね。そういう方たちが退去されて、入居率は二割台、そのような状態でおおむね良好と言えるのか、この二点についてお二人から聞きたいと思います。
  84. 吉田勇

    吉田参考人 質問は二つあったと思います。一つは、アメリカの問題でございます。  アメリカの問題につきましては、まだ損失は、生じたんじゃなくて、生じるおそれがあるということであります。  これはどういうことかといいますと、先ほど申しましたように、向こうの現地の非営利法人がゆうゆうの里に倣った有料老人ホームをつくりたいということが一九八九年にありまして、財団としては、土地を買ってそれを貸す、向こうの有料老人ホームが軌道に乗ったらその土地を売却する、こういうようなことで土地を確保したわけでございますけれども、一九九六年の終わりくらいになりましてもまだ立ち上がらない、こういうふうな状態にありました。  そのうちに、一九九六年の十二月に、向こうの非営利法人がお金がなくなったので財団に援助してくれというような話があり、そういう話を理事会にかけました。そこで、これ以上お金を貸したりなんかすると、事によると財団本体が危なくなる、もう援助はすべきでないというふうなことで、二年前の三月に、このアメリカ計画、アメリカの援助はしないということになりまして、土地はできるだけ早く売却しよう、こういうようなことになっているわけです。  それまで、千百五十万ドルぐらいで土地を買いまして、これは借金で買いましたが、それの利子とか固定資産税とか、こういうのを払っておりますので、私の記憶が正しければ、そのお金が大体三十五億ぐらいかかっていると思います。ただし、この値段であの土地は売れません。ですから、やはりどうしてもある程度損を覚悟で売らなきゃならないということです。     〔委員長退席、安倍(晋)委員長代理着席〕  それで、今、現地のアメリカの弁護士さんを通じて売却交渉をやっております。交渉の内容ですので、ここではちょっと内容を申し上げられません。また、日本でも、日本の弁護士免許を持っていて、なおかつカリフォルニア州の弁護士免許を持っている日本人の先生にいろいろと御指導いただいて、それでやっております。  買い主はおります。この土地はカリフォルニアにありまして、カリフォルニアの土地売買の手続というのはちょっと日本と違いますけれども、それに従っていろいろやっております。そういうようなことで、これがうまくいけば売却できるんじゃないか、そのときにはやはりある程度の損は生じる、生じざるを得ないという状態です。そういうようなことで、損失は生じていませんけれども損失は出るだろうというふうなことであります。  京都は、二年前にできたばかりです。ですから、入っている人は非常に新しいわけです。それで、これは私ども責任ですけれども、いろいろな経営不安の状態というものが報道されました。私ども、入って十年とかそういう期間は、生存で退去されるときはお金を返すことになっているわけです。ですから、どうも危ないというふうなことを考えるお方がいらっしゃいますと、そういう方は、お金が返ってくるからということで出る方がいらっしゃる、これはしようがないと思うのです。そういうようなことです。ですから、私どもは、サービスが低下したから出るということじゃないというふうに考えております。  以上です。     〔安倍(晋)委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 大谷昭宏

    大谷参考人 委員御指摘の、アメリカでの土地の購入という件、これは私どもも、放映の中ではやらなかったのですが、実際に取材しております。  ゆうゆうの里といったようなノウハウをアメリカにもということで始められたというふうに私ども取材の中で聞いているのですが、大体、自分のところの運営さえおぼつかない、ろくなことができない連中が、何でアメリカにノウハウなのかと大変驚愕した次第でございまして、アメリカはノウハウを受けなくてよかったのではないかというふうに私どもは解釈しております。  八九年から九七年までもめ続けているわけです。九年間近くあったわけですから、前理事長が地位保全だなんだというこの経緯は、監督官庁であります厚生省は十分に承知しているはずなんです。しかも、今吉田理事がおっしゃったように、土地は売れていないわけです。ほったらかしているわけです。そういうことを厚生省は、監督官庁でありながら、大事な年金アメリカの土地に流れているということをこれほど放置したということの責任は私は大変重たいと思うのです。こういう監督官庁とこういうメンバーに年金をさわらせていていいのかということに、私は尽きると思うのです。  それから、京都ゆうゆうの里の件に関して申し上げれば、私どもが把握をしているところでは、現在入居率は二五・六%ぐらいだ。つまり、二割台で、八割近くが空っぽだ。これは番組の中でもやりましたけれども、はっきり申し上げて、ゴーストタウンと言っていいんじゃないかと思うのです。  ゆうゆうの里というのは、そもそも何人が入居するとかということよりも、お年寄りたちがそこでお互いにコミュニティーをつくって老後を過ごそうという理想の中で生まれてきたものだと思うわけです。そうなれば、購入希望のお年寄りも、あれだけの建物の中で、ほとんど電気が消えていて、二割しか入っていないということになれば、足が遠のくのは当たり前だと思うのです。  そういった中で、きちんとしたサービスが果たして行われているのか。先ほどから、吉田理事を初め、サービスの低下はないとおっしゃっているのですが、きょうは時間の関係で公開できませんけれども、私どもの手元には、今度はだれがやめていくんだろうかと不安で不安でならないという手紙をいただいているわけです。入手しているわけです。  そうしたことを放置しておいて、今、一部のゆうゆうの里で何をやっているかといいますと、この問題を報道いたしました朝日新聞と毎日新聞と私どもテレビ朝日に、老人福祉財団は抗議文を出してくるわけです。私たちから見れば荒唐無稽の抗議文なんですが、何でこんなに次々抗議文を出してくるのだろうかと思っておりましたら、これは、新規入居者マスコミはでたらめだということを示すための抗議文の文集をつくって配る。こんなばかな組織が世の中にあるかと。  マスコミあての抗議文の文集ができるような組織というのは一体どうなのかということで、私は先ほど来のやりとりを聞いておりますと、現執行部に関しては全く反省の余地がないし、今後も年金の垂れ流しは続くだろうと確信しております。
  86. 児玉健次

    ○児玉委員 ありがとうございました。
  87. 江口一雄

    江口委員長 中川智子さん。
  88. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。きょうはお忙しい中ありがとうございました。  まず最初に、ジャーナリストとしてお仕事をしていらっしゃる大谷参考人に伺いたいんですが、今回の年金改革、五年ごとにやっているんですが、今回は三つあって、年金一つだけじゃなくて、その自主運用の部分と、もう一つはいわゆる年福事業の解散と承継とあるのですが、国民の皆さんは、むしろこっちの方をよく知らないと思うんですよ。  この間、先週金曜日に、ここですごいもみくちゃで強行採決というのがあったのですが、グリーンピアの問題ですとか、あと自主運用、今度百四十兆のお金市場にどっと出されるということは、取材なんかをなさっていて、現場の市民の声として、国民の皆さんがこういうふうな法律なんだ、こんなに大変なんだよ、自分たち年金がこういうふうに使われているということをよく知っていると思われますでしょうか。そういう印象をちょっと大谷参考人にお伺いしたいと思うんです。
  89. 大谷昭宏

    大谷参考人 委員御指摘のとおり、例えば年福の問題とか自主運用の問題とか、こういうことを果たして国民が知っているんだろうかということからしますと、私ども日々取材して肌に感じているところは、恐らく国民は漠としか御存じないんじゃないかな、漠然と知っているというところなんじゃないかなと思うのです。  その漠然と知っているのが何かということが一番問題だと思うのですが、これは、年金に対する不安感と不信感だというふうに私は思っております。  とりわけ若い方々が、今のお年寄りはいい、あるいは五十歳以上の方々はぎりぎり何とかなるだろうか、だから自分たちは将来的にはこの社会から保障されないんじゃないかという不安感と、私どもの年代に対する不信感、あんたたちだけいい目をしていくんじゃないのかと。  そういうことにならないために当委員会で皆さんが御審議なさっているんだということは十分承知しているんですが、残念ながら、ここで各委員の皆さんが審議なさっていることは国民の中に浸透していない。むしろ不信感と不安感があおられているんじゃないか。  そういう意味では、私たちが先日やったような番組というのは、まさにその不信感と不安感を、言葉をかえれば、あおることになるかもしれないんですが、しかし、現実として、私たち番組をやる以前から不信感と不安感に満ち満ちているというふうに私は感じております。
  90. 中川智子

    ○中川(智)委員 続いて大谷参考人に、今のに関連してお伺いしたいんですけれども、今回、きょうの参考人方々お話の中でも、情報公開がまず基本だろうというお話がありました。  それで、グリーンピアとかを取材していて、一生懸命取り組んでいるけれども本当にだめだったんだ、一生懸命経営努力もしたけれどもだめだったというふうな、誠意を感じるような、本当に情報公開をして皆さんに知ってもらおうというような対応というのがあったかどうか、これをちょっと手短に教えていただきたいんですが。
  91. 大谷昭宏

    大谷参考人 先ほどホームページを開いてアクセスがどうのこうのとかというようなことがありましたけれども、私たち取材の中で、もっと細かい数字とかもっと具体的なことをということを何回も申し入れているわけです。ホームページにわざわざアクセスさせるぐらいであれば、我々メディアを通じてそういう細かい数字を出せばいいものを、出さない。そうしておいて、実は私たちはホームページを開いていますなんということは、私は、欺瞞に満ち満ちているだろうと。  それから、これは私はまだ現地に行って確認していなくて、スタッフが確認したんですが、放送後にゆうゆうの里は何をやったのかといえば、一部施設に部外者立入禁止の看板を張っただけだ。それが彼らがやった対策であるわけです。そういうような組織に、情報公開も何もあったものではない。  あのゆうゆうの里というのは、個々のお年寄りが入居しているわけです。では、お年寄りのところを訪ねる人間は全部、その看板を見て管理人のところに届けに行くのか、ゆうゆうの里は今戒厳令下なのかということからしますと、そういう情報管理をなさっているような方々に情報公開というのはほど遠いことだというふうに私は感じております。
  92. 中川智子

    ○中川(智)委員 ありがとうございます。  続きまして高山参考人にお伺いしたいんですけれども年金自主運用して市場に出しているアメリカもあのような状態でした。そして、世界の常識になっているのに、その世界の常識とわざわざ反対することをなぜ今日本がやろうとしているか、その意図を高山参考人はどのように思っていらっしゃるかというのが一点。  もう一つ高山参考人にお伺いしたいんですが、先ほど時間の関係で詳しくお話しできなかった繰り上げ支給の場合の減額率ですが、現行の減額率に対してどのようにお考えになるか。  この二点に対してお伺いしたいと思います。
  93. 高山憲之

    高山参考人 自主運用といいますか、財投改革だとか年福事業団の廃止という方針が最初に出されまして、その後の対応をとらなきゃいけないというのはそのとおりでございますけれども、問題は、積立金はゼロではないんですね。積立金は、先ほど来いろいろ御指摘ございますように、公的年金代行部分を外しただけで百四十兆円ぐらいある。それの運用をどうするかということ自体は、依然として問題が残っているわけです。  そうした中で、その運用をどうするかというときに、今の案のような自主運用という考え方もあるし、また別の考え方もあるわけですね。その中での選択の問題だというふうに私は理解しているんですが、今お示しされているような形のものに対しては、私は、先ほど来申し上げておりますけれども、非常に大きな疑問を禁じ得ないということです。  今は、資金運用部からお金を一たん年福事業団という形で借りているわけですね。借入金利という形でパフォーマンスの評価基準がはっきりしているわけです。借入金利を下回れば、これは運用パフォーマンスとしては失敗であったとはっきりするわけです。現にこれだけの累積赤字があるじゃないか、これをどうするんだ、だれが責任をとるんだ、まさに問題になるわけです。  ところが、自主運用ということになりますと、もともと資金運用部に預けたわけでもないわけですね。借りてくるお金でもないわけです。ただ預かっているお金なんです。いろいろ、善管注意義務だとかプロセスにおける責任だというところに配慮することは、法律家的な発想ですから当然やるようなんですけれども、結果的に、例えば国債利回りを下回るような運用になってしまうということが絶対ないかというと、そういうことではないんですよ。  ですから、私は次善の策だというふうに申し上げているんですけれども、当面は国債運用という形にして、いろいろなこういう変な機関をつくるとか、大きな政府に向かうような、役人がいろいろな機関をつくって何かやるというようなことはもうやめにしたらどうかということなんです。それが私の申し上げたい論点でございます。  それから二点目の減額率は、時間がなくて済みませんでした、今、六十歳から基礎年金の繰り上げ減額支給を受けますと、四二%減額なんです。  これは、国民年金の制度が発足した昭和三十六年の直近時点における生命表を使って数理計算して出てきたものなんですね。当時から見ますと、みんな物すごく長生きするようになったわけです。日本人は長生きするのは当たり前になったわけです。特に、減額率というのは男女差を設けてはいけないことになっているんですが、日本人で長生きするのは、実は男性と比べると女性の方が圧倒的に多いわけです。長生きするようになると、減額率は、保険中立的という観点からいいますと、そんなに大きな減額率にする必要はないわけです。  今ある四二%減額というのは基本的にどういうことを意味するかというと、長生きする女性の関係者で六十歳から減額繰り上げを受けた人に懲罰を与えているということなんですよ、それでいいんでしょうかという問題を私は提起しているというふうにお考えいただければいいと思います。  以上です。
  94. 中川智子

    ○中川(智)委員 続きまして、若杉参考人にちょっと伺いたいんです。  この朝日新聞の、若杉参考人意見で、きょうの御意見の中にもやはりありましたが、リスク・リターンの問題でもう一回聞きたいんですけれども、この中で、自主運用をして「期待以上に良い結果になる可能性もあるが、裏目に出ることもある。合理的な運用を行っている限り、それは運用者の責任とはいえない」と書かれていて、結局、すごく損失を出した場合は「そのような運用者を選んだ責任ということで、最終的に国民がそれを負担せざるを得ない。」というふうに書かれているんですね。  そうしたら、いわゆる運用者というのは国民であって、言ってみれば、金庫に入れておいて、金庫は十分だと思っていたら、いつの間にか金庫にすき間があいてぽろぽろお金がとられていて、実際泥棒にとられたら警察が捕まえてくれるわけですが、警察がないということですよね。ちょっとその辺、わからないものですから、簡単に教えていただきたいんですが。
  95. 若杉敬明

    若杉参考人 あくまで運用にはリスクがあるということですが、それは平均値というのがありまして、その周りでいいときも悪いときもあるということでございます。  長期的に見ますと、長い目で見れば平均が達成できるということでやっていくわけで、その途中では、平均を下回ることもあれば上回ることもある。今、下回ることばかり心配していますが、上回ることがあればかえって逆にいいこともあるわけですね。でも、長い目で見れば平均されるというのが統計の法則なわけです。そういう原理に従ってやろうというのがこの運用でございます。  ちなみに、運用につきまして、何か公的年金お金が非常にリスクをとるような印象ですが、昨年私たちが出した報告書では、リスクの管理ということを考えると、例えば国債の割合が八〇%とか、常識的に見てそんなにおかしくないようなポートフォリオになるように私は考えております。
  96. 中川智子

    ○中川(智)委員 最後に一点だけ、大谷参考人に。  今、私ちょっと、泥棒みたいな、そういうふうな表現をしてしまったんですが、結局、今の若杉参考人のように、上回るときはもらえるけれども、損したときは損しちゃったというようなことで、今回この法律を通したらだれが一番得するかというか、一番損するのはだれだろう。最後に一言、ジャーナリストとして御発言いただいて、その辺の思いを代弁していただいて、終わりたいと思いますが、だれが一番得するんでしょうね。
  97. 大谷昭宏

    大谷参考人 委員から、泥棒というのは不適切な御発言だったとおっしゃっていましたけれども、私は大泥棒だと思っております。  先ほど、百四十兆円云々で、株式運用とか、あるいは国債とか、いろいろな御意見が出ておりまして、私もそれぞれの御意見に耳を傾けながら聞いていたわけですが、きょう私がここへ参りましたのは、大前提として、私どもの社会のありようとして、これから社会保障が必要なんだけれども、それを運用なさる方、つかさどる方々にそういう資格があるだろうか、この方々国民はそういうものを負託していいんだろうか、自分の老後というものをそういう方々に任せていいんだろうかということを私たちは問い続けてきているわけです。  彼らが本当に国民の老後のことを考えているのか、あるいはこれから社会に出ていく若い方々が、社会というものを信用して年金を払って、だから自分の老後は安心なんだといって暮らせるような、そういうことを彼らが考えて本当に努力しているのかということを問えば、私たちが、ゆうゆうの里、そしてグリーンピアであのでたらめさを指摘した、あれをやった人たちが、今これをやっているわけです。こういう人たちに任せて、国民の老後だとかあるいは若い方たちの将来が保障されるはずがないわけです。この方たちをまず駆逐しなきゃだめなんです。そういう方々が二度と仕事にさわられないようなシステムをつくった上で、だから、もう安心していただきたい。その上で、国民はどういう痛みを分かち合うのか、将来を分かち合うのかと。  今のままで行けば、この百四十兆円という新しいポケットをもらったあの方々は、大喜びしてまた違うことを始める。その新しいポケットを与えるだけになってしまう。そういうことをきちんとする審議をしていただきたい。そうでない限り、私たち幾らお金を払っても、理屈をこねくり回して、やれアメリカだ、やれ百万坪の土地だというところにどんどんお金を回して、結果、そのツケを全部国民に回してくる、そしてなおかつ、だれも責任をとらない。  もちろん、国の将来を考えて、さまざまなお金の面あるいは率の面で御審議なさるのはやむを得ないことだと思うのですが、その前に、こういった若い方たちが絶望を抱くような社会のありよう、社会のシステムというのをまず直していただきたいということを、きょう私は強調しておきたいと思います。  ありがとうございました。
  98. 中川智子

    ○中川(智)委員 終わります。
  99. 江口一雄

    江口委員長 これにて参考人に対する発言は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十四分散会