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1999-12-14 第146回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月十四日(火曜日)     午後三時一分開議  出席委員    委員長 井奥 貞雄君    理事 伊藤 公介君 理事 河野 太郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 森山 眞弓君    理事 玄葉光一郎君 理事 藤田 幸久君    理事 赤松 正雄君 理事 西田  猛君       飯島 忠義君    小川  元君       嘉数 知賢君    木村  勉君       阪上 善秀君    櫻内 義雄君       下地 幹郎君    戸井田 徹君       山口 泰明君    伊藤 英成君       上原 康助君    川内 博史君       山中あき子君    東  祥三君       井上 一成君    古堅 実吉君       松本 善明君    伊藤  茂君     …………………………………    外務大臣         河野 洋平君    外務政務次官       東  祥三君    農林水産政務次官     谷津 義男君    通商産業政務次官     細田 博之君    政府参考人    (警察庁警備局長)    金重 凱之君    外務委員会専門員     黒川 祐次君     ————————————— 十二月九日  核兵器完全禁止核廃絶国際条約の締結に関する請願(久保哲司君紹介)(第一二六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  政府参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  国際情勢に関する件     午後三時一分開議      ————◇—————
  2. 井奥貞雄

    井奥委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りをいたします。  本件調査のため、本日、政府参考人として、委員飯島忠義君の質疑に際し、警察庁警備局長金重凱之君出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 井奥貞雄

    井奥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 井奥貞雄

    井奥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飯島忠義君。
  5. 飯島忠義

    飯島委員 自由民主党飯島忠義です。  まず、質問に入ります前に、大変私的なことでございますけれども、きょうこうして外務委員会におきまして河野外務大臣議論ができますこと、大変うれしく思っております。私の政治家としてのスタートは、今から二十四年前になりますけれども河野洋平代議士との出会いからであります。地方政治家として十六年、そして国会で三年余、まさに、時には同志として、また、たまにはちょっと距離を感じながら、しかしいずれにいたしましても、かつては野党の自由民主党総裁として森幹事長ともども御苦労をいただき、そしてまた政権政党への復活を実現され、今こうして再び外務大臣として国家の限りない発展のために御尽力をいただいておりますことに、私は敬意をあらわしますとともに、大きな誇りを感じております。  さて、それでは限られた時間でありますから、この十二月の六日、八日の衆参両院予算委員会における自見庄三郎、濱田健一溝手顕正照屋寛徳委員北朝鮮との国交正常化についての質疑を念頭に置きながら、外務大臣を初め、政務次官参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。  まず初めに、確認意味で、村山訪朝団成果についてどのような評価をされているのか、また、これを踏まえて今後の日朝間の改善に向けてどう取り組んでいかれるおつもりなのか、伺っておきたいと思います。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 村山総理団長とする各党議員から成ります訪朝団がピョンヤンを訪れまして、先方政党間の協議をされまして、出発前に村山団長は、この訪朝団の大事な仕事政府間協議環境をつくることだということを言っておられたことを考えれば、この訪朝団先方との間に発出されました共同発表文は、まことに所期の目的を果たされたというふうに高く評価をいたしております。  私は、この共同発表の文章を受けまして、訪朝団皆さんお話も十分に伺いながら、我が国がこれからやらなければならない、あるいはやるべき作業に真剣に取り組みたい、こう考えております。
  7. 飯島忠義

    飯島委員 先刻皆さん案内のとおり、我が国北朝鮮対話は、平成四年の十一月の第八回正常化交渉北朝鮮が一方的に退席して以来、七年余りにわたって途絶えたままとなっておりました。この十月の十二日のペリー報告日米韓が緊密に協議しつつ共同で練り上げてきた包括的かつ統合されたアプローチを基礎に米国政府が作成したものであり、我が国が全面的に支持したものであります。報告の内容については、外務委員皆さんもよく御承知のことでありますので割愛させていただきますけれども、この報告が、今回の両国政党間の合意ではありますが、大きな役割を果たし、その延長線上に合意形成の素地があったとも言えると考えます。  今般の与野党の政党代表訪朝団成果については、小渕総理も、また、今河野外務大臣も同様でございますけれども小渕総理におかれましては、予算委員会の自見委員質問に対し、政党間の協議を通じて、政府間の日朝国交正常化交渉を円滑に行うというための環境整備目的として大きな成果を上げられました、これを歓迎するとともに、村山団長ほか団員の皆さんの御努力に感謝したいと思います、政府といたしましても、その訪朝団がまとめられた共同発表を重く受けとめておるところでございますと答弁をされております。  そこで、私が心配いたしますのは、その三項目の中の二に関してでございますけれども双方関心を持っている人道問題について、この人道問題についてをどのように理解されているか、また具体的には何を示しているのか、大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  8. 河野洋平

    河野国務大臣 飯島議員指摘共同発表の二項目めというのは、「双方は、日本国政党代表訪朝団平壌訪問契機として、日朝両国関心を持っている人道問題解決重要性について合意し、それぞれの政府の協力の下で赤十字に対してこのためにお互い協力していくよう勧告することにした。」このくだりだと思います。  その中で、「人道問題解決重要性について」あるいは「日朝両国関心を持っている人道問題解決重要性」、このくだり議員は御関心がおありのようでございますが、ここで言われる人道問題は、この訪朝団に参加をされました議員方々お話を伺いますと、双方にそれぞれ人道問題について意見があったようでございます。例えば、食糧援助という意味人道問題もあれば、いわゆる北朝鮮によって拉致されたのではないかという疑惑の濃い事件について我が方としては大変な関心があるわけでございますし、さらに、日本人妻の里帰りの問題も人道上の問題でございます。  こうした問題について具体的な御議論があった後でこの共同発表がまとめられたという経緯を見ましても、ここに書かれております「日朝両国関心を持っている人道問題」というのは、そうしたものすべてをこの中に含めているというふうに私ども解釈をいたしております。
  9. 飯島忠義

    飯島委員 私も同様の理解を持っておりますが、しかし、政治というもの、これは国内世論にも動向にも敏感でなければならない。  これは十二月の六日の産経新聞の、二日に実施した「今後の日朝関係をどう考えるか」という世論調査でございますけれども、その質問に対して、まず拉致事件解決が先決、それなしに交渉すべきではないというのが六三%と、ミサイル問題とか日本領海侵犯事件とか、それらの影響もあろうと思いますけれども、大変高い数字を示していると考えております。  そこで、参考人として御出席をいただいております警察庁警備局長金重さん、この拉致事件について、疑わしいと思われる件数、人数についてまずお答えをいただきたいと思います。
  10. 金重凱之

    金重政府参考人 警察といたしましては、これまでの一連の捜査の結果を総合的かつ入念に検討いたしました結果、ただいま御指摘北朝鮮による拉致の疑いのある事件につきましては、現在までのところ、七件十名であるというふうに判断いたしております。それからまた、拉致未遂であったと思われるものとしまして、一件二名を把握いたしておるところでございます。
  11. 飯島忠義

    飯島委員 疑わしい、拉致事件ではないかと思われるものが七件十人、また未遂が一件で二名だと。国交がない中での調査ですから大変難しいことではございますけれども、今日までの調査状況というものはいかがなっているのか、伺っておきたいと思います。
  12. 金重凱之

    金重政府参考人 この七件十名についての捜査でございますけれども、これらの事件につきましては、警察といたしましても、事態の重大性ということにかんがみまして、韓国当局との情報交換を含めまして、外務省等関係機関と連携いたしつつ、新たな情報の収集あるいは各事件相互関連性調査等々、所要の捜査を継続してきているところでございます。
  13. 飯島忠義

    飯島委員 御案内のとおり、合意文作成過程の中でいろいろな論議があったように訪朝団の先輩からも伺っておりますけれども拉致ではなくて行方不明者としての再調査、この再調査を約束されたということでありますけれども東外務政務次官におかれましてはどのようなお考えを持っておられるか、率直にお示しをいただきたいと思います。
  14. 東祥三

    東政務次官 御指摘の問題につきましては、村山訪朝団の際に、訪朝団側より率直にこの問題の存在を指摘した、そして北朝鮮側より行方不明者として再調査することは可能であると考えるとの発言を得たものと伺っております。  政府としても、この問題は我が国国民の生命に関する重要な問題であると認識していますし、また政府としては、この問題の解決に向けての効果的な方向を追求しながら、あらゆる機会をとらえて北朝鮮側の真剣な対応を粘り強く求めていく考えであります。  基本的な論理の問題でございます。感情の問題ではなくて、論理の問題でこの問題を考える場合、例えば私個人で、当然拉致問題が解決されない限り国交正常化というのはあり得ないのではないのか、よくわかります。しかし、その拉致問題というものを解決しよう、するためにはいろいろな選択肢があると思いますが、平和的に問題を解決していくという前提であるとするならば、やはり国交正常化の道を探っていく過程でもってこの問題が徐々に徐々に明らかになっていくのではないのか、そういうふうに私は思っております。  ただ、それが果たしてそのような方向性に行くのかどうなのか、それは本当に今までいろいろな委員会において総理そしてまた大臣等が言われているとおりだろうと思う。粘り強く、この問題について意識を鮮明にしながら、そして北朝鮮との関係性を、不正常な関係であることはすべての方が御存じなわけですから、何とかして一歩一歩窓をあけていくという作業が必要なんだろうというふうに思います。
  15. 飯島忠義

    飯島委員 本当に心配する点は多々あるわけでございますけれども、しかし、この合意に基づいてこれからきちっとした対応をする、そういう面での努力が問われると思うのです。  実は、これは新聞の切り抜きというか、十二月の六日の朝日新聞で、五日付の朝鮮労働党機関紙労働新聞、この記事、御案内だと思うのですけれども、ちょっと読ませていただきます。「拉致疑惑関係改善に水」」と、これは大きく新聞記者の方の記事の要約というものをタイトルにしているわけでございますけれども、こういうふうに書いてあるのですね。「同日付の朝鮮労働党機関紙労働新聞」が「日本不純勢力拉致疑惑問題を再び持ち出すのは朝日関係改善を目指す動きに水をさすものだ」と批判した」。当然のように、私どもは、先ほどの外務大臣答弁にもありましたけれども北朝鮮在住日本人妻の帰国問題も含めてでございますけれども、それらを含めて人道問題というとらえ方をしているのですが、「北朝鮮は公式的には人道問題の定義を明確にしていないだけに、今後、北朝鮮側拉致問題を除く食糧支援などに限定する恐れも出てきた。」。これが、次の質問になりますけれども、非常に大きなテーマだと思うのです。  政府としては、この人道問題の定義交渉の中で煮詰める、そういう必要があろうと私は思っておりますけれども外務大臣いかがお考えでございますか。この定義です。
  16. 河野洋平

    河野国務大臣 人道問題の定義という御質問でございます。  この両国共同発表の中に書かれております人道問題の定義は、この共同発表にかかわられた村山団長を初めとする議員団方々、すなわち政党皆さん有権的解釈権があるのであって、そうしたことを政府側定義づけるということには多少問題があるというふうに思いますが、しかし、先ほど申し上げましたように、こうした文言で共同発表をなさるプロセスを考えてみれば、どうしても人道問題の中には今議員おっしゃったような問題は両国関心事として入っているというふうに見るのが常識的だというふうに思います。
  17. 飯島忠義

    飯島委員 小渕総理が、拉致事件ということではなしに行方不明者であってもいいという発言をされているのですよね。ですから、そういう面でいいますと、ぜひとも、これは党の機関紙ではありますけれども、基本的に労働党訪朝団の間の合意、その一方の北朝鮮側の党の機関紙がそういう主張をされているわけですから、そこは、定義についてのやりとりはともかくとして、要は正常化への道の中できちっとしたやりとりをしていただきたい、このことだけはお願いをしておきたいと思います。  さて、テポドン発射以来、日本対抗措置をとってまいりました。四項目あったと思いますね。一つは、KEDOへの拠出協定、これはこの間の通常国会、六月末日に国会で承認されました。さらには、この訪朝団契機に、チャーター便の運航ができました。となりますと、残りは政府間交渉の開始と食糧援助、この二点だけだと思いますけれども、まず、そうした理解でいいのかどうか、また、あわせて、予備会談について、いつごろどこでどんなレベルでと考えられているか、伺っておきたいと思います。
  18. 河野洋平

    河野国務大臣 村山訪朝団成果を踏まえて外務省として政府間の国交正常化交渉を始めようとすれば、今議員が御指摘になりました、昨年八月のテポドン発射を受けて我が国がとってきた措置がございますが、この措置解除していくということも必要でございます。  この措置解除につきましては、国交正常化交渉の開催、それから食糧支援を当面見合わせる、この二つ措置がとられているわけです。議員指摘のように、四つの措置がとられていたうちの二つは既に解除しておりまして、二つが残っております。この二つ措置解除しておくということが政府として交渉に臨むために必要だというふうに考えまして、政府部内で議論をし、与党内にも御議論をお願いしてきたわけでございますが、本日までその議論がずっと続いてまいりまして、今の報告を聞きますと、夕方の官房長官の正式な記者会見でこの二つ措置解除するという発表ができるというところまで来たという報告を聞いております。もちろん、この食糧支援の当面見合わせという措置解除するということが直ちに食糧支援をするということではございません。あくまでもこれは二国間の交渉をこれから行う上で十分慎重に考えいかなければならないことは当然でございます。  なお、もう一点、議員からお尋ねの、それでは予備会談その他はいつやるのか、こういうお尋ねでございますが、実はこれはまだ決まっているわけではございませんで、予備会談もそれから赤十字話し合いも、これからその時期等については議論をするということになっております。
  19. 飯島忠義

    飯島委員 けさの自由民主党の部会でもいろいろな論議がありましたけれども、これらの制限解除については条件つきながらいいだろう、こういうことであったと思うんです。  とりわけ食糧支援問題、これについては相当の論議がございましたので、これは担当の外務大臣として、その辺のめり張りというか、どっちに重きを置いているのかということでお尋ねしたいのですけれども、参議院の予算委員会で、外務大臣がこういうふうに両論というか言われているんですね。飢餓に瀕していると状況がはっきりすれば人道上の問題として考えなければならないと前向きな発言をされておる。一方で、政府間の意見をまとめる必要がある、慎重な対応をしたいと。  大変に難しい課題ではありますけれども外務大臣として、率直な気持ちでいいですよ。これについてどっちが本音なのかというそんな質問は失礼なので、大臣として私はこう考えるよというところをお示しいただきたいと思います。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 正直申し上げまして、隣国ともいうべきまことに近い国で食糧が全く欠乏している、栄養失調の子供もいる、これはいろいろなニュースがあって、いろいろな報道があって、どれが正しい報道であるかということはまだ私にはわかりません。しかし、国際機関北朝鮮に行っていろいろ資料を集めて発言をしていることなどを考えると、かなり厳しい状況であろうというふうに今私は思っておりますが、その状況がどういうものであるかということも十分に検討する必要があると思いますし、他方、今議員がおっしゃったように、人道問題というのは一方的にあるのではなくて、双方にそれぞれ問題を抱えているわけでございますから、お互い意見に耳を傾けて、そしてお互い真摯な態度で人道問題を解決しよう、解消しようという姿勢が持たれることが私としては望ましいというふうに思っているわけでございまして、これらは、議員もおっしゃったように、会議が持たれて、話し合いが持たれて、その話し合いの中でそれぞれの実情が明らかにされるということが問題を解決していくポイントではないかというふうに思います。
  21. 飯島忠義

    飯島委員 これは日赤と、また北朝鮮赤十字社の問題ではあろうと思うんですけれども外務大臣お話であるところの飢餓に瀕している、その現場というか、本当にそうなのかどうかというのが見えないところに問題があるわけなんですね。  そういう面で、やはり人道的な問題ですから、実際そういうことであるならば、私どもとしても、食糧支援について、例えば国交正常化交渉と切り離してでもいいと思うんですけれども、となりますと、日赤なら日赤食糧が本当に困った人に渡っているのかどうか、そういう査察というか視察というか、そういったものがあれば日本国民も納得してくれると思うんですよ。この辺について、日赤のことではありますけれども、また向こうの赤十字社のことではありますけれども、どのように大臣としてお考えか、お願いいたします。
  22. 河野洋平

    河野国務大臣 確かに議員のおっしゃるとおり、食糧支援については、本当に困っているところに我々の善意が届くかどうかということは我々として大いに関心を持たなければならないことでございます。そうした点が赤十字会談によって確認ができるかどうか、あるいは、先ほどもちょっと申し上げましたが、国際的な食糧援助機関もございますが、こうした食糧援助機関などが確認ができるかどうかということも我々にとっては関心事でございます。  このことは限度があるというか、程度があるというか、一定限度を超えると内政干渉とかいろいろな問題に議論が移っていくこともあるかもしれませんけれども、しかし、我々とすれば、我々の善意を届けるということからすれば、この善意が本当に欲しい人のところに届いてほしいということを願わずにはいられないわけでございまして、その窓口となります私どもとしては、でき得る限り我々の意図がそのとおりになるように努力をしなければならないというふうに思います。
  23. 飯島忠義

    飯島委員 時間がもう残り少なくなりましたので、最後の質問にさせていただきたいと思います。  残った制限解除二つ、四時からですか、官房長官会見をなさるということですけれども国交正常化交渉というものと食糧支援凍結解除、これを切り離して考えていくのか、それとも一体的に考えていくのか、大変大きな問題だと思うんですね。私は、今までの質疑の中でも、人道的な問題、そういったものについての食糧援助が必要であれば、それが事実だとすれば切り離してもいいんではないかという考えを持っていますけれども外務大臣はどのようにお考えになっているか、伺っておきます。  あわせて、これはこれからの交渉の基本的な姿勢というんですか、国民の間に反北朝鮮感情が大変に根強い、しかしながら、村山訪朝団の思いであるところの対話再開を最優先、まさにこの粘り強い外交交渉というものが求められていると考えます。つきましては、それらに当たる外務省の長として、その決意のほどを伺って、私の質問は終えさせていただきたいと思います。
  24. 河野洋平

    河野国務大臣 大変難しい御質問でございます。ただ、最初に、現時点において直ちに日朝国交正常化が始まるとか、あるいはまたすぐに北朝鮮食糧支援を行うというような状況ではないということをまず申し上げておかなければならないと思います。  そして、一般論として申し上げれば、食糧支援の問題は国交正常化交渉の中で取り上げることは排除されていない、そういうこともあり得る。しかし、他方において、この問題は人道問題として国交正常化交渉とは全く別個に取り扱うということもあり得るということでございます。つまり、この両者はどちらだと決められるものではないということを申し上げなければならないと思います。  さて、北朝鮮との交渉というものが現実のものになってくると、日本国内における国民皆さんのこの問題に対する関心というものは、あるいは理解というものはどういうものかということをやはりよく見なければならないと思います。必ずしもすべての人たちがこの問題に同じような関心を持っているというわけではありません。人によってはテポドン脅威というものがすぐに頭に浮かんだり、あるいは人道問題というものが頭に浮かんだり、いろいろな見方があると思います。  しかし、私は、いずれにせよ一番重要な問題は、やはり我が国安全保障という観点も忘れてはならないということだと思います。もちろん、いわゆる拉致疑惑、極めて重要な問題であります。しかし、本質的に一番重要な問題は、我が国近隣諸国との間に信頼関係が持てる、そして安全保障において、お互い信頼によって安全保障ができるという形に持っていくということが何よりも大事で、そうした中でさまざまな問題は解消されていく、解決されていくということが大事だと思うのです。  少なくとも、現在、我が国において大変な現実的な脅威というものに昨年の八月触れたような感じを持った人は多いと思うのですね。お互いにもっと信頼関係をつくり、願わくば友好的な関係が持ち合えるような未来を我々は一日も早くつくらなければいけないということを、私は多くの方々に申し上げたいと思います。  そして、このことは極めて困難な仕事だと思います。一朝一夕でできるというほど簡単ではありません。ここまでの長い歴史の中にはさまざまな問題があるわけでございますから、そうしたことを考えながら、議員おっしゃるように、粘り強く、辛抱強くこの交渉に臨まなければいけない。時には問題も起こるかもしれません。また、時には新しい展望が開けることがあるかもしれません。しかし、いつでも、これはやらなければならない問題だという気持ちを持ってこの問題には取り組みたいと思っております。
  25. 飯島忠義

    飯島委員 以上で終了します。ありがとうございました。
  26. 井奥貞雄

    井奥委員長 次に、伊藤英成君。
  27. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 本日は、朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮の問題を中心にして質問をしたいと思います。  私は、いわゆる朝鮮半島の問題について非常に大きな関心を持って取り組んできたつもりです。それは、この朝鮮半島緊張緩和ということが、日朝関係改善、もちろん日朝関係のみならず、まさにこの北東アジアの平和と安定にとってどんなにか重大な問題であるか。そしてまた、例えば在日米軍基地、あるいは沖縄の問題を考えてみても、この朝鮮半島がどういうふうになるかということが極めて重要な要素である、こういうふうに思うから余計にでありますが、この朝鮮半島あるいは北朝鮮の問題について大きな関心を抱いてきたつもりです。その辺について、まず外務大臣はどんなふうに思われますか。
  28. 河野洋平

    河野国務大臣 北朝鮮の問題は、議員指摘のとおり、北東アジアの安定というものに決定的な要素になっていると思います。また他方北朝鮮の現在抱えている問題の中には、核の不拡散という我々の強い要求もあるわけでございまして、核の不拡散、さらにはこの地域の安全とか安定とか、そういったものを考えてみましても、この問題に我々が取り組む必要性というものは非常に大きいものがあるというふうに私は考えております。
  29. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最近北朝鮮は、米国あるいはEUを含めてフィリピンとかオーストラリアとか、そうしたところへの正常化に向けた協議に乗り出すというようなことなど、いわゆる対外活動を大変活発化していると私は思うのです。それは、国際的な孤立をできるだけ避けよう、あるいは対外関係の強化、そのために乗り出していくとも考えられるわけですが、こうした北朝鮮の対外関係の活動の活発化している意図について、どのように評価あるいは分析をしておられますか。
  30. 河野洋平

    河野国務大臣 議員指摘のとおり、北朝鮮は最近特に、アメリカ、中国、EUを初めとする国々と対外的な交渉に積極的のように我々にも感じられます。  その意図は何かという御質問だろうと思いますが、幾つかの事例を見てみますと、米朝関係、まずアメリカとの関係におきましては、御案内のとおり、九月上旬のベルリンにおける米朝協議の結果、アメリカが対北朝鮮制裁の緩和を発表したのに続きまして、北朝鮮が米朝協議の続いている間はミサイル発射を行わない旨発表するなど、この両国関係は前向きな進展があるというふうに思います。このことは、アメリカの経済制裁の緩和といいますか、そういうことに向かっているというふうに考えていいと思います。  中朝、中国との関係におきましては、ことしに入りまして、六月に金永南北朝鮮最高人民会議の常任委員長の中国訪問、十月にはトウカセン中国外交部長の訪朝が実現するなど、これも高いレベルの往来がございまして、恐らく北朝鮮と中国との関係には何らかのこれまた改善というものがあるんだろうと思います。  北朝鮮とEUとの関係におきましては、十一月下旬、第二回の局長級政治対話が開催されまして、双方関心事項につき協議が行われたと言われているわけでございます。  こうした各国との間の交流というものは、北朝鮮の現体制を維持する上で、安全保障上の最大の関心国であるアメリカとは一定の関係を持っておくことが必要という判断があると考えられますし、中国との間では伝統的な友好関係を再確認する、EUとの間には食糧支援の獲得といった側面があるのではないかというふうにも思われておりまして、こうした積極的な対外活動というものは我々も注意深く見ていなければならないと思います。  しかし、いずれにしても、現在の北朝鮮の体制が我々から見ると不透明な部分が多いということもあって、確たることがまだ申し上げられないのが状況でございます。
  31. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私のコメントは省略いたしますが、先般、今月の一日から三日まで村山元首相を団長とする超党派のいわゆる村山訪朝団北朝鮮を訪問いたしまして、朝鮮労働党会談を持ちました。私もその一員として参加をしたわけでありますけれども、この村山訪朝団は、あくまで政府間による国交正常化交渉環境整備を行うという目的で行ったわけですね。  もちろん、私も、この訪朝団が実際に行く前も、村山総理とも何度もお会いいたして、議員政党代表として行くわけなんですが、こういう立場で、政府間の交渉をやってもらうために、ぜひ、その環境整備、窓口を開くためにという目的でやりましょうという話なんかもしたりしました。そして、結果はああいう形になりまして、私は一定の成果を、あるいは一定の役割を果たすことができたのだ、このように思っておりますが、外務大臣として、今回の訪朝団成果をどういうふうに評価をされておられますか。
  32. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほども飯島議員の御質問にお答えをいたしましたけれども、およそ七年近くの間中断をしておりました政府間交渉というものを再開するために、今回の訪朝団は、あの共同発表を拝見する限り、十分な成果を上げられたというふうに私は考えております。伊藤議員もこの訪朝団に参加をされて大きな役割を果たされたというふうに伺っておりますが、この訪朝団成果が今後、両国政府間の交渉というものにつながっていかなければならないというふうに考えております。  訪朝団には各党の議員が参加をされる、しかも団長を元総理がお務めになるという大変ハイレベルの、大型の訪朝団でございまして、そうしたことが今回の成果を上げるためにも一定の役割を果たしているというふうに考えておりますだけに、私はこの機会をきちんととらえなければならぬというふうに感じております。
  33. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今回の訪朝団がああいう形で共同発表合意をすることができたりいたしました。しかし、この話は、ある意味で一つの大きなステップを踏んだということではあるのですが、問題はやはりこれからなんですね。そして、その多くの諸課題を考えたときに、なかなか容易ではない状況だと私は予想されます。  そういう意味で、どんな姿勢でこれからの交渉に臨もうとされているのか、外務大臣考え方を伺います。
  34. 河野洋平

    河野国務大臣 歴史的に見ましても、二つの国の間に正常でない関係があるということはぜひとも改善されなければならないというふうに私どもは思っておるわけでございまして、この交渉の再開に向けて粘り強くまずは努力をし、交渉に当たりましては、お互いに率直に抱えている問題について議論をして、一つずつ成果を上げていかなければならぬというふうに思っております。  私ども考えております作業の方法が先方にとって受け入れられるものであるかどうかということからまず考えなければならないと思いますが、訪朝団の帰国後の話を承りますと、できるだけ早期に作業を始めるべきだという御指示、御要請もございますので、その御要請にできるだけ沿いたいというふうに考えております。
  35. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今度、日朝間で話し合いが行われていき、そしてそのことは日朝間で一つのパイプができて事が進んでいくことになるといたしましょう。そのときに、日米韓三国の緊密な調整ということも、また一方で非常に重要なことですね。  それで、ひょっとしてといいましょうか、日朝間の国交正常化話し合いが非常にうまく早く進んだとした場合に、日米韓の方の関係はどういう形になっていくのか。こちらの方は核の問題あるいはミサイルの問題等々いろいろあったりするわけですが、そういう意味で、この日米韓三国の協調の話と日朝間の話し合い、パイプの話とはどういう関係でこれから取り組んでいかれることになるでしょうか。
  36. 河野洋平

    河野国務大臣 私は、日米韓はそれぞれ十分に緊密に連絡をし合っておりますから心配はないと思っております。むしろ、アメリカも韓国も我が国も、それぞれの立場で北朝鮮との交渉あるいは話し合いあるいは経済活動、いろいろと北朝鮮との間のパイプを持っていくということが相互にプラスの作用をするというふうに考えておりまして、これは、自分より先に出ないようにしてほしいとか、自分がここまでしか進んでいないからそれ以上は待てとか、そういうことにはならないと私は思います。それぞれが進めば進むだけ、他の二国に対してプラスの影響がもたらされるというふうに、若干楽観的かもしれませんけれども、私はそういうふうに考えておりますし、冒頭申し上げましたように、三つの国の連絡が極めて緊密でございますから、そうしたそごはないというふうに私は考えております。
  37. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ところで、北朝鮮の問題を考えるときに、北朝鮮のこれからの将来にとって、特に経済問題など、北朝鮮にとって日本重要性というものについて、どういう御認識を持たれますか。
  38. 河野洋平

    河野国務大臣 これはもう、政治的にも経済的にも近い二つの国の関係は、十分理解し合える関係あるいは安心してつき合える関係になるということは、政治的にも経済的にも大きなプラスがあるというふうに私は思います。北朝鮮にとりましては、韓国との関係正常化されるということは大変大きなメリットがあるでありましょうし、同じように、日本との関係正常化されるということにはこれまた大きなメリットがあるというふうに確信をいたします。
  39. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は、将来日朝関係改善をされて、もちろん政治的な問題も含めてでありますが、経済関係の交流等が行われていった場合に、恐らく北朝鮮にとってはその最も重要な相手が、韓国もそうかもしれませんが、日本になるんではないか、こう思うんですね。そういうことは十分に前提に置いて物を考えることが必要ではないか、こう思うものですから、一言申し上げました。  それから、先ほどもちょっと話が出ましたけれども、昨年の八月のミサイル発射に伴ってとられました措置解除は、本日解除されるんだと思いますが、どういう内容で解除されるんでしょうか。
  40. 河野洋平

    河野国務大臣 恐らく、夕刻の官房長官記者会見と言われますから、四時ごろの会見官房長官から発表があるのではないか考えておりますが、先ほど来申し上げておりますように、村山訪朝団成果考えますと、これは両国間の対話の好機だ、チャンスだ、この好機を最大限に活用するべきだという判断のもとに、昨年八月のミサイル発射を踏まえてとってきた措置、すなわち国交正常化交渉の開催及び食糧などの支援を当面見合わせるとの措置解除することに決定する、こういう判断でございます。  これは、言ってみれば昨年八月以前の状態に戻るというふうに考えていただいていいのではないかと思います。したがって、先ほど飯島議員にも御答弁申し上げましたが、このことが直ちに食糧支援を開始するというものではございませんし、直ちに国交正常化交渉が開始されるということでもない。開始するための作業がこれから行われていくわけでございまして、まだまだ、国交正常化交渉を始めるまでには、例えば予備的な話し合いとかそうしたものも行われなければなりませんから、本日の決定をもって直ちにそれらが始まるということではない。繰り返して申し上げますが、昨年の八月以前の状態に戻る、こういうふうに考えていただいた方がいいかと思います。
  41. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今後、いわゆる日朝国交正常化交渉をどういうふうに進めるかということでありますけれども、今、日朝間には本当にたくさんの課題があります。それは、いわゆる拉致疑惑行方不明者問題もあり、ミサイルの問題もあれば、あるいは過去の清算と言われる問題などなどたくさんあります。そうした中で、そうした多くの課題を一つのテーブルの上にのっけて、包括的解決のアプローチといいましょうか、あるいは一括交渉といいましょうか、そういうやり方をしないとなかなかこれはうまくいかない、それぞれの課題をあるリンケージでもって物を考えないとうまく進められないんだろうと私は思うんですが、その辺のことについてはどのように考えられますか。
  42. 河野洋平

    河野国務大臣 これから始めようという場面でございますから、どういうやり方をするかとかどういうふうに持っていくかとかいうことについては、しばらく御猶予をいただいて交渉に臨ませていただきたいというふうにひとつお願いをいたします。
  43. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 報道されるところですと、本交渉への準備段階としてということでしょう、予備交渉というのか、予備会談というものが考えられているようでありますが、これは具体的に、いつ、どこで、そしてどういう議題を設定して進めようとされておられるのか、伺います。
  44. 河野洋平

    河野国務大臣 先般、国会におきまして、小渕総理から、予備的な会談はできるだけ早くやりたいと思う、できれば年内にもという意味の御発言がございました。まだ具体的に、いつごろ、どうということが詰まっておりませんので、担当者としては正確にお答えはいたしかねます。  繰り返し申し上げますが、村山訪朝団成果を踏まえてそのフォローとして作業をするわけでございますから、できるだけ早期にスタートをしろという御要請にはできるだけおこたえをしたいと思いますが、これは相手のあることでございますし、また、私どもの中の準備にも時間が必要でございますので、私からはしかときょうは申し上げられないのをお許しいただきたいと思います。
  45. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 少なくとも私の理解では、村山総理がことしの六月の時点で訪朝をしようという話がありました。そのときからもそうでありますが、あるいは今回の十二月一日からの訪朝のときもそうであるわけですが、一九〇〇年代に起こったことについてこの一九〇〇年代のうちに関係改善にぜひ向かわせたい、あるいは二十世紀に起こった問題について二十世紀のうちにぜひ解決をしたいという考え方で今回訪朝したと思います。今私が申し上げたようなことを村山総理も言われたり、それから朝鮮労働党の金容淳書記も言われたりいたしました。そして、今回の共同発表もまさにそうした趣旨の文章になっております。  一九〇〇年代と考えますと、実際に今回行ったときも、一九〇〇年代のうちにというふうに考えたときに、どうしてもこの十二月のうちに、あるいはことしのうちに訪朝しなければという思いもあって行って、その旨を話をいたしました。したがって、まさにこの一九〇〇年代と考えますと、あと二週間ないというぐらいの状況であります。この十二月はそういう意味では極めて重要な月であるわけです。  先ほど外務大臣ができるだけ早期にという話は、もちろん今私が申し上げたことは十分に前提とした上で、極めて近いうちにと私は思うんですが、しかし、今のお話を聞いていますと、本当に極めて近いうちに実現できるのかしらんという気さえするわけであります。もう少し具体的に、いつというふうなことは、あるいはどういう考え方で何をそこで議論しようとするのかということはございませんか。
  46. 河野洋平

    河野国務大臣 双方にそれぞれ準備がございますし、考え方がございます。これらが合致しなければ予定は立てられないわけでございまして、今ここで我が方の都合のいいのはこういう順番でこういうふうにやっていくのがいいのだということを申し上げるのは、少し御勘弁をいただきたいというふうに思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、準備が整い、双方の都合といいますか、双方のいいという時期が合致するできるだけ早い時期に行われることが望ましいわけでございまして、しかも、その会合といいますか話し合いは、赤十字話し合いもございましょうし、予備的な会談という話し合いもございましょうし、それらも含めて、我が方の準備状況、あるいは我が方の考え方の整理等もいたしまして、先方の都合等も十分問い合わせて作業に入るということでございますから、きょうここで申し上げるほど固まっていないということだけは申し上げていいと思います。
  47. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今、最後の点はよく聞こえなかったのですが、今のところは日程は決まっていないということでしょうか。
  48. 河野洋平

    河野国務大臣 予定は固まっていないというふうに申し上げました。
  49. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ところで、先ほどもちょっと話が出ましたけれども予備会談は早急にというふうに考えるといたしまして、世論調査等を見ますと、いわゆる拉致疑惑などを解決することなしに正常化交渉をすべきでないというような意見を持つ人のパーセンテージが結構高い世論調査も出たりしているわけですね。そうした世論あるいは世論調査の結果との関係で、外務大臣はこの正常化交渉などについてはどういうふうに考えられますか。
  50. 河野洋平

    河野国務大臣 それは、国民の生命にかかわる問題は世論が高い関心を示されるのは当然だと思います。私どももそうしたことを踏まえて作業をしなければならないと思いますが、一方で、それと同様にといいますか、我が国安全保障全般についても考えなければならないというふうにも思っておりまして、いずれにせよ、話し合いの中でそれらは解決策を見つけ出すことができる、話し合いなくして問題が解決できるかどうかということについては、私は大変疑問を持っているのでございます。
  51. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先ほど、これからの予備会談等の話のときに、赤十字の話もあったりいたしました。  今回、日朝国交正常化交渉を進めていくに当たって、国内の世論との関係でどういうふうに進めていくかというのは非常に重要なことであるわけですが、いわゆる拉致疑惑の問題、あるいは行方不明者の問題、あるいは食糧支援等々、こうした問題について、今回の村山訪朝団朝鮮労働党との間で交わしました共同発表では、人道問題について、政府の協力のもとで赤十字が協力していくように勧告をするというふうにしたわけですね。これは、いわゆる赤十字だけに任せておくと、そこだけにお願いしてしまったのでは必ずしもうまく進まないかもしれないというようなこともありまして、政府が関与してやってもらいたいという思いであの文章にしたわけですね。  それで、拉致問題等、この解決に向けて、日朝赤十字間の作業に対して、政府はどういうふうにそこに関与して仕事を進めていこうとされるのか、具体的にどういうふうに政府が関与するのか、その辺のことについて伺います。
  52. 河野洋平

    河野国務大臣 この共同発表をおつくりになるときに伊藤議員も参加しておられたわけで、ここに「それぞれの政府の協力の下で」、こう字句を入れられたというか、この字句が入っている意味というのは、私も訪朝団で帰られた方々お話を伺いますと、今伊藤議員お話しになったと同じ説明をしておられました。私どもとしては、極めて重要な問題がこの人道問題に含まれているであろう、そういうことにかんがみて、日本赤十字社と協力し合いながら政府も必要な関与をしていくという気持ちでおります。  それは、政府として打ち合わせをすることもたくさんあるだろうと思いますし、また、政府が関与しなければできない問題もあるのではないかというふうに私ども考えておりまして、この共同発表のとおり、政府として十分協力をしていきたいと考えております。
  53. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 食糧支援の問題について伺います。  食糧支援の問題についても、本日、凍結解除といいましょうか、制裁解除といいましょうか、そういうことで発表されるようでありますけれども、先般の訪朝団朝鮮労働党との会談の中でも、朝鮮労働党の方から食糧支援の問題についても早く求める趣旨の話もあったりいたしました。この食糧支援の再開問題と政府間のいわゆる正常化に向けての話し合いとの関係について、これはタイミングの問題になりますけれども、その関係についてどのように考えておられるのか、伺います。
  54. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほどから何度かお答えをいたしておりますが、食糧支援というのは、一つは人道的な見地から行うという支援があると思います。しかし、その場合には、極めて透明度が高い、どのくらい足らないのかとか、どういうふうに足らないのかということがもう少し明確になった方が我々として作業がしやすいという気持ちを実は持っております。  しかし、国際機関の伝えるところなどを見ましても、やはりここ数年、北朝鮮食糧は百万トンから百二十万トン程度輸入が必要だという数字が報告されております。ここに十一月八日付の国連食糧農業機関、FAOの予測でございますけれども、この予測の数字を見ますと、総需要量は四百七十六万五千トン、総供給量は三百四十七万二千トンで、百二十九万三千トンが輸入必要量だ、つまりこの分が足らないというふうにFAOも予測をしているわけでございまして、この食糧の不足分についてどう考えるかということだろうと思います。  これは国交正常化交渉と絡めて考えるか、全く別個に考えるかということについては、先ほども答弁を申し上げたところでございますが、それは一概にどちらでなければならないということでもない、状況をもう少しよく見ながら考えなければいけない。つまり、正常化交渉の中に食糧支援が全く排除されるかというとそうでもないし、食糧支援という議論の中で、正常化についてこれまた一定の議論があるということもあり得るというふうに思っておりまして、この問題は、一概に全く別のものということも言えないし、これをリンクさせなければ話し合うべきでないということも言えないのではないかというふうに今は思っております。  これはいずれにせよこれから交渉を始めるわけでございまして、その交渉のテーブルに着くまでに私どもとして心づもりもつくらなければなりませんし、また、テーブルに着いて話し合った段階でどういう状況になってくるかということもよく確かめたいというふうに考えております。
  55. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今回の訪朝団朝鮮労働党議論の中でも、そしてまたこの共同発表の文章にも出ておりますが、過去の歴史の清算ということを明確に述べています。その過去の歴史の清算ということについて、基本的にどういうふうに考えてこれから対応されようとしているのか、伺います。
  56. 河野洋平

    河野国務大臣 我が国は、過去の歴史の問題について、戦後五十年という節目に村山総理村山談話というのを発出されました。この村山談話に記されていることが、我が国のこうした問題に対する基本的な認識でなくてはならないというふうに思っております。あの村山談話に盛り込まれた精神というものを体していずれの国とも対応したいというふうに考えております。
  57. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 その問題はまた改めて議論することがあると思いますが、残された時間が余りありませんので、最後のテーマについて伺いたいのです。  日本人妻の里帰りの問題でありますが、先般の訪朝団朝鮮労働党との会議においても、金容淳書記からは、日本政府赤十字日本の国籍を離脱した人は受け入れないと言ったために全員が帰国を辞退した、要するに、一回目、二回目が行われました、しかし三回目が結果として実現できなかった、その理由は国籍離脱者のためだ、こういうことであったわけですが、これはなぜ対象外としたのでしょうか。
  58. 河野洋平

    河野国務大臣 政府としては、本件の故郷訪問事業の対象者は、原則として、北朝鮮への帰還事業が始まった一九五九年以降、配偶者とともに北朝鮮に渡り、現在まで北朝鮮に在住している方々であって、基本的には出国当時日本国籍を有していた方々及び終戦前からの在留邦人で現在北朝鮮に在住している方々というふうに規定をしたわけでございます。これらに該当しない方々については、第一義的には北朝鮮当局の問題であると認識をしておりますが、故郷訪問事業の人道的な趣旨にかんがみまして、個別の事情を勘案し、具体的なケースごとに対応を判断するというふうに私どもは現在考えております。
  59. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の話は、確認をいたしますけれども、少なくとも北朝鮮側の見方ですと、国籍離脱者の問題について日本側がそれを対象外とした、そのためにこれはとめたんですよ、あるいは、三回目に来ようとしていた日本人妻皆さん方も、それならばもうやめようというふうにしたんですよというお話でございました。  今のお話は、今後、いわゆる日本人妻の里帰りの問題については、この国籍離脱者の問題については再検討しましょうという意味なんでしょうか。
  60. 河野洋平

    河野国務大臣 日本人配偶者の故郷訪問につきましては、昨年六月、朝鮮赤十字会によって第三回故郷訪問の申請がすべて取り消された旨発表があって以降、実施されていない状況にございます。我が国政府としては、人道的見地から、今後とも故郷訪問が続くことを希望しており、北朝鮮側の建設的な対応を期待しているところでございます。  そこで、今般、村山訪朝団北朝鮮との間で作成をいたしました共同発表に言います人道問題には、日本人配偶者の故郷訪問の問題も含まれているのではないか考えます。今後、北朝鮮との間でこの問題が取り上げられる際には、政府といたしましても、この事業の主体である日本赤十字社と協力し合い、積極的に関与してまいる所存でございます。  先ほど御答弁を申し上げましたように、国籍離脱者問題として双方議論がございましたこの点につきましても、先ほど申し上げました二つのケースに該当しない方々につきましては、第一義的には北朝鮮当局の問題であると認識をしておりますが、故郷訪問事業の人道的な趣旨にかんがみまして、個別の事情を勘案し、具体的なケースごとに対応を判断するという立場に立つ予定でございます。
  61. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 時間も来てしまったのですが、もう一つ最後に確認いたしますが、今のは、人道的見地からできるだけ実現できるように弾力的に考えていこうと思っておりますということですね。
  62. 河野洋平

    河野国務大臣 議員の御趣旨のとおりでございます。
  63. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の件も、人道的な見地から弾力的に前向きに取り組むというお話でありますので、ぜひよろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
  64. 井奥貞雄

    井奥委員長 次に、松本善明君。
  65. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、WTOの問題で外務大臣に伺いたいと思います。  WTOのシアトルの閣僚会議が決裂ということになりました。農業、ダンピング防止措置、貿易関連での労働問題と、三分野で決定的な対立があったということでありますが、それぞれについて、アメリカ、日本、EU、発展途上国の主張と対立した点について御説明をいただきたいと思います。
  66. 河野洋平

    河野国務大臣 お答えをする前にちょっと申し上げたいと思いますが、私、このWTOの会議出席をいたしておりまして、今議員からシアトルの閣僚会議が決裂をしたというお話がございましたが、出席をしておりました人間として、決裂という感じは実は受けなかったわけでございます。大変多くの国々が参加をし、各国の閣僚がそれぞれの国益も考えて大変な議論になったわけでございますが、最終的には、例えばどこかとどこかが大げんかして、だめだというのでばんと決裂をしたという感じではございませんで、それぞれの分科会は相当に熱心な討議が行われておりまして、一つ一つの分科会では、徐々にではありますけれども意見の幅が縮まりつつはあったわけでございます。  しかし、時間切れということになりまして、最終的な取りまとめの閣僚宣言は発出できないという状況になったのでございまして、結局、最後の段階では、議長から、今回は最終的な取りまとめはできなかったけれども、それぞれの会議でなされた議論というものは大事にして、これらを凍結して来るべき日にその協議を続けたいというような意味の御発言があって、これは、言ってみれば凍結ということになったのであって、決裂をしたという感じは受けなかったということをまず最初に申し上げたいと思います。  いずれにいたしましても、この新ラウンドが立ち上げられなかったのには、私ども見ておりまして、幾つかの問題点があったと思います。  一つは、今議員が御指摘になりました農業問題、それからアンチダンピング措置、それから労働問題といったこれらの問題につきましては、加盟国の立場にまだまだ大きな相違がございました。  二つ目に、WTOの加盟国が百三十五カ国という大変数の多い国が参加をする。多数の国が参加するということは大変うれしいこと、大事なことでございますけれども、今度は、百三十五カ国の参加によります会議の運営にいろいろ問題が出てまいりました。会議の運営上の効率性あるいは透明性、こういった点に非常な困難さが出てきたということがございます。今回も幾つかの分科会に分かれて同時並行的に議論が行われておりましたけれども、国によっては、代表者の数が非常に少ないために関心のある幾つかの分科会に参加できないということもございます。そうした効率性と透明性の問題がございました。  三つ目には、新ラウンド立ち上げ自体に対するコンセンサスが完全になかった。つまり、今度のラウンドを立ち上げることによってこういうことを目指そう、こういう問題についてお互いに処理をしようというコンセンサスというものがどうもなかったんじゃないかという感じがするわけでございます。  さてそこで、今お尋ねの幾つかの問題について申し上げますと、農業問題につきましては、我が国は農業の多面的機能への配慮を閣僚宣言に書き込むべしという主張をいたしました。これにつきまして、アメリカやケアンズ諸国が、多面的機能を認めるわけにいかない、さらなる自由化を要求するということでございましたし、ECもまたECで、農業問題につきましては農産物の輸出補助金問題というのがございまして、我が国とECとの間では議論がかみ合って、双方で多面的機能を書き込むということについて協力関係が一時できましたけれども、最終的には取りまとめに至らなかったということがございます。  それから、通商問題という御質問でございますが、その中で一番大きな問題はアンチダンピングの問題でございまして、我が国は、アンチダンピング措置の乱用は多角的貿易体制に対する脅威である、次期交渉ではアンチダンピング措置の規律を強化するという協定をつくるべきであるという主張を展開いたしました。これにECは日本ほど積極的ではありませんでしたが、アメリカは交渉対象とすることにすら反対という非常に強い反対でございました。一部途上国も規律強化の必要性を主張して、この点では我が国と歩調が合った部分もございます。  それから労働問題でございますが、労働問題は、AFL・CIOなどの動きもございまして、アメリカが大変熱心でございました。しかし、この問題につきましては開発途上国は非常に警戒心が強くて、この問題を討議するということには極めて消極的でございました。我が国は、労働問題は基本的にILOで処理されるべきものというふうに主張をして、これまた合意ができなかったわけでございます。
  67. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣は決裂という感じではないという話ですけれども、今までのラウンドでも、各国の立場の相違というものはあったけれども、これほど露骨な形で宣言ができなかったということはかつてないことなんです。各国の政治家同士の話ですから、けんかというようなことではもちろんないでしょうけれども共同宣言ができなかったということは極めて重大なことだと思うんですね。感じの問題ではないと私は思います。そういうふうになった、世界政治の中で非常に重大な問題が起こった、この原因がどこにあるかということを分析しなければ、これからの貿易だとか日本の農業問題その他、対立した問題の解決をするということができないんじゃないか。  端的に私ども思いますのは、またいろいろ報道もされていますが、アメリカの主張、要求がEUからも発展途上国からも反発を受けた、これがやはり決裂の大きな原因ではないかというふうに思います。農業でいうならば、アメリカから威圧的ともいうような自由化の圧力があって、それが反発されたと思いますが、日本政府は、アメリカのそういう態度に対して、多面的機能の問題はお触れになりましたけれども、具体的にどのようにアメリカの主張に対して反論し、そしてどういうふうになったのか、そこをお答えいただきたいと思います。
  68. 谷津義男

    ○谷津政務次官 農業の問題でありますけれども我が国におきましては、農業の多面的機能についての重要性について配慮して、それを最後まで強く主張したところであります。この結果、非貿易的関心事項として、多面的機能の具体的な内容である食糧安全保障環境保護、農村地域の活性化、食糧の安全性については各国の理解を得ることができた。ただ、今、先生おっしゃるように、アメリカを初めケアンズ・グループから、農業の多面的機能という文言自体については概念規定が明確でない、あるいは貿易歪曲的な措置として利用されるおそれがあるといった意見が強く出されておりまして、これを各国の理解を得ることがこれから大事なことではないかと思うんです。  ただ、バシェフスキー議長がこういうことを言ったという経緯をちょっと申し上げますと、実は、例えば関税の問題に対してある国からそういう提案がなされたんですが、ここはそういう場ではないということでバシェフスキーはこれを取り上げなかったといういきさつもあることをひとつ御認識していただきたいと思うんです。  事実関係について御説明を申し上げますと、十二月の三日に各国に配付されました事務局の案というのが出ました。それには、非貿易的関心事項には環境保護の必要性あるいは食糧安全保障、農村地域の経済的活力と開発、食糧の安全性を含むことが盛り込まれておりまして、最終的には合意には至りませんでしたけれども、こういった面が理解をされたということが言えるのではなかろうかと思うんです。
  69. 松本善明

    ○松本(善)委員 私どもは、農業の多面的機能という主張を政府が最後まで貫くべきだというふうに思っているわけです。このこと自体は、非貿易的関心事項というよりは一歩強まった主張であることはもう間違いないと思うんですね。このことは、私どもは米の輸入自由化反対運動の中で強く主張をしてきたことであります。  水田が洪水の防止や土壌崩壊防止に貢献し、国土保全に大きな役割を果たすことだとか、水質浄化や有機性廃棄物の処理など、自然環境の保全に効果的であることなど、政府が今言っているようなことは、私ども、以前からずっと主張してきたことであります。これをなぜWTO協定作成交渉の中で主張し、発展途上国などにも同調を求めなかったんだろうか。今になって突然主張するようになったのはどういうわけだろうか。そこには反省はないんだろうか。  もっと前からこのことはわかり切っていたことであります。それを主張してこなくて、今回になって突然主張した。私はそこに大きな反省がなければならないと思いますが、その経過についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  70. 谷津義男

    ○谷津政務次官 多面的機能ということについて、今先生、我が国が何か突然言い出したようなおっしゃり方をしたんですが、ローマで行われた食糧サミット、このときに、もう既に我が国は多面的機能ということについて強い主張をいたしました。このときにもケアンズ・グループはかなり反論をしたのでありますけれども、EUとも、これはそういう要素があるということで、宣言案の中に多面的機能というのが盛り込まれておりまして、急に言ったわけではございませんので、その辺のところは御理解いただきたいと思います。
  71. 松本善明

    ○松本(善)委員 ローマ・サミットで言われたことは知っていますけれども、ただ、WTOでこういうふうになる前、この基本的な枠組みが決まるときになぜ主張しなかったのか。そのことについて反省はないのか。私どもは言っていたし、国内ではいっぱいそういう議論があったわけです。それがなぜ言われないで、やはりそのときにもっと本格的にやらなければならなかった、その辺はどう考えているのかということを聞いているんですよ。
  72. 谷津義男

    ○谷津政務次官 これはあらゆる機会に申し上げておったんですが、実は、OECDでもそういうことを申し上げておったわけですね。そして、我が国におきましても、今度のWTO交渉に際しましての我が国の提案としては、かなり前でありますが、提案する前に議論をいたしまして、当然、このことは非常に重要な問題であるということから提案の中に入れたという経緯は先生も御案内のとおりだろうと思うんです。
  73. 松本善明

    ○松本(善)委員 私はここで、言っていたんだけれどもしようがなかったんだという弁明を聞いてもしようがないと思っているんですよ。やはり、この多面的機能を認めさせるということについての系統的な努力をしてこなければならなかった、また、これからしなければならない、そこに問題があるんだと思うんですよ。この問題で多数を得る、世界の多数の世論を味方にするということが大事なので、交渉の単なる手だてとして、言ったけれども、ほかの国が余り言わなかったので折れてしまいましたというのでは済まないんですね、この多面的機能の問題。  農業という問題は、言うまでもなく、各国に相違があって当然のことなんです。土地の広さだとか気候だとかいろいろなことがあって、違いがあって当然なんです。日本の米のように、各国が農業について独自の文化を持っているというのは当然のことであります。日本の場合の祭りなどは、ほとんど稲作との関係なんです。農業の特殊性というか、そういうものについて世界の合意を得る、そういう外交姿勢が必要なんです。  私は、一回の交渉だけではなくて、WTO、今の枠組みができるときから問題にしているのは、そういう国際的な努力をしてこなかったというところに反省をし、そしてこれからその努力をしていくんだという決意が聞かれなければ、言ったけれどもどうにもなりませんでした、そんなことを聞いたって、日本食糧や農業を心配している人たちは、何を言っているんだということになると思うんですよ。そこを聞いているんです。
  74. 谷津義男

    ○谷津政務次官 確かに、松本先生おっしゃるとおり、かつてガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉のときに、この多面的機能ということについての主張は少なかったというふうに思います。  しかし、この交渉の中で二十条、いわゆる六年たつ前の一年前ということで再交渉が行われるという段階を経るわけなんですが、その前に、この多面的機能ということについて、これは環境問題、あるいはまた食糧安全保障、いろいろありますが、そういう中について、我が国としましては、もうEUにも何回もそのことを申し上げ、EUもそのとおりだということで同調してくれましたし、また、多くの国々に我が国の主張というのを説明申し上げまして、かなりの国が同調してくださっておるということで、今回も、御案内のとおり、フレンドグループにおいても数多くの国々がこの日本の主張に賛成をして行動をともにしてくれているということでございまして、全然それを怠っているというようなことではありません。また、今後もこのことはしっかりと主張して、この交渉を成功させていきたいというふうに考えているところです。
  75. 河野洋平

    河野国務大臣 私も、交渉に行っておりました人間として、今農水省の総括政務次官が御答弁申し上げましたが、農業関係者のこの問題に取り組む姿勢というものは極めて強いものがございまして、しかも、これは、松本議員の御指摘もございましたけれども、今回初めてのことではない。相当長期にわたって、しかも国際的に大変幅広く、こうした我が国の主張の理解を求めるために大変な努力をされてきているということは承知をしております。  先ほど御答弁がございましたけれども、今回の農業問題の議論の中で、食糧安全保障とか環境保護とか農村地域の活性化とか、これまで日本の農林関係人たちが主張してこられた具体的な問題については相当に理解が進んで、今回も、分科会の中の取りまとめの文章の中にはそれらはかなり多くが入り込んで、ちりばめられておりまして、中には、多面的機能それ自身がもうこの中に入っているではないかということをおっしゃる方がいるくらいに、農業問題に対する理解を求める作業は進んでいたことは事実でございます。  しかし、農水大臣を初めとして日本の代表団は、さらに多面的機能という言葉、文言を盛り込むということがどうしても重要だということで、最後まで一歩も引かずに議論をされておったということを、私は同席をして見ております。  この問題については、多面的機能というものが、定義がはっきりしないとか、あるいは保護主義の隠れみのに使われるではないかといったようなケアンズ・グループを中心とする国からの批判もありましたけれども、そうしたことに対してきちんと一つずつ整理をし、説得をして、大変幅広い理解を得ることができたというふうに思います。  私は、引き続き、年がかわればさらにまた議論を行わなければならないわけでございますが、さらに一段と、農業関係方々、農水大臣を初めとして努力をされるに違いない、我々もまた努力しなければならぬ、こう考えているところでございます。
  76. 松本善明

    ○松本(善)委員 しかし、外交問題の処理というのは、やはり勝利しなければ意味がないので、幾ら一生懸命やりましたと言ったって、これはだめなんですよ。WTO協定のときから、やはり改めて考え直さないといけない。実際に頑張ったと言うけれども、多面的機能というのは閣僚宣言案の中からは落ちたということでしょう。そこではやはり譲っているわけですよ。私は、これは道理のあることなんだから、どうしてもこれを入れさせるということについての方針をやはり持たなければならない。  今、総括政務次官も言われたわけですが、かなりの国、数多くの国がこれに理解を示している。外務大臣も言われました。それはどういう国なのか。どの程度、どういう国がどういう理解を示したのか、それをさらに急速に増加をさせるという確信と手だてがあるのかどうか、その両方を伺いたいと思います。
  77. 谷津義男

    ○谷津政務次官 先ほど申し上げましたとおり、まず、フレンドグループというのを実はつくりました。これは、私自身もEUのフィシュラーと会談したときに、そういう仲間づくりというのは非常に大事だろう、特にケアンズ・グループがああいうふうにまとまって動くわけですから、こちらもフレンドグループをつくるべきだという話がありまして、私は即座に賛成をいたしまして、それを閣僚級にまで上げてやった方がいいだろうということで、それもそうだということから、EU、これは十五カ国になるわけですけれども、もちろんEUは入りました。  それから、EUに入っていないノルウェーとかスイスとか韓国、こういうところも参加をしてまいりましたし、それから発展途上国のモーリシャスなんかも入ってまいりまして、そして今、この間の会合で二十三カ国入りまして、そういったことで協議を重ねている。  それだけではなくして、今後、私どもとしましては、WTOだけではなくて、OECDとかあるいはFAOにおいても同様の活動を展開しまして、数多くの国を入れていく努力をしなければならぬというふうに思っております。
  78. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり工業生産物と農業生産物とを同様に扱うということ自体が無理なわけで、私は、今の多面的機能の問題について、妥協しないで、やはりそれを国際的な取り決めの中に入れる、一歩進んで、やはりWTO協定そのものを見直すということまで進まなければならないと思います。  時間の関係確認したいのですが、これからアメリカは、二国間交渉で米の関税の引き下げを強く求めてくるということはもう必至だろうと思います。私どもは、やはり農業というのは特別なんだということはしっかりと国際世論にしないと、これはなかなか関税だけでは、関税というのはもともと引き下げが前提になるものですからだめなんではないか。これに対して断固としてアメリカの要求を拒否する決意があるのかどうか、外務大臣と農水省の総括政務次官、両方にお聞きしたいと思います。
  79. 谷津義男

    ○谷津政務次官 二国間交渉で迫ってくるのではないかというお話でございますけれども、今回のシアトルの閣僚会議の結果を踏まえまして、今後、米国との話し合いも持たなければならないと思いますが、今後のWTOのあり方、交渉の進め方について検討していく必要もあるのではなかろうかというふうに思うのです。  なお、二国間の枠組みの問題ですけれども、先生御案内のとおり、かつてAPECにおいても相当そういうことを言われたのですね。しかし、これについてはWTOで交渉するということで、APECにおいてはその議論をしなかったわけでありますが、これからWTOの交渉の中でそれを進めていかなければならない。ただ、アメリカがあるいは米の関税の引き下げということを言ってくるというお話でありますが、あるいはそういうこともあろうかと私は思います。  しかし、この問題につきましては、先生御案内のとおり、二〇〇一年以降の関税化の問題については、今の交渉の段階において、これがずっと延びている間はそのまま今の時点が引き継がれていくだろうというふうに考えます。例えば、キログラム当たり三百四十一円、これが続いていくと思うのです。  今後、その問題について言ってきた場合においては、我が国といたしましても、これは、御案内のとおり、国内の価格とそれから国際価格との差は関税として認められているわけでありますから、その辺のところはしっかりと主張して理解を得ていきたいというふうに考えております。
  80. 河野洋平

    河野国務大臣 今、農水省から御答弁がございましたとおりでありますが、さらに私から申し上げれば、先般のWTOの閉会に当たって、議長国アメリカのバシェフスキー議長は、年が改まれば、農業とサービスにおいては従来決まっているとおり直ちに作業を始めるということになっておるという旨、あいさつの中で言ったわけでございます。  私どもは、そうしたことが一体どういう状況になるか、直ちに農業問題の交渉が始まるといっても、それがどういう状況から始まるか、あるいはどの時点で始められるか、これらについてもまだまだ現在の時点では不明な部分が多いわけでございますが、いずれにしても、バシェフスキー議長が言いましたとおり、WTOの議論の中でこの問題、農業問題も議論がされるものというふうに考えるのが今一番常識ではないかと思います。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は、関税だけではだめで、やはり農業についての、米の輸入自由化問題、その枠組みそのものについて主張しなければだめだと思いますが、当面、多面的機能への理解を広げていくということをWTO交渉の柱に据えるというならば、ミニマムアクセス米の受け入れ返上についても検討をすべきではないかと思いますが、そこはどう考えていますか。
  82. 谷津義男

    ○谷津政務次官 ミニマムアクセス米の件でございますけれども、現行協定上では、ミニマムアクセス米については、現行の交渉の続いている間は今までのものが進んでいくことは先生御案内のとおり、これは五条だったか、そういうことになっております。  ですから、今後、このミニマムアクセス米についてどうするかということについて、あるいはまたWTOでそういった面についての強い主張があるいは出てくるかもしれません。しかし、我が国におきましては、新たな合意がなされない限り、この問題の水準、二〇〇〇年度の水準は絶対に維持していかなければならぬし、また維持されるものというふうに思っております。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間も来ましたので、最後に労働問題について一問聞いて終わりにしたいと思います。  貿易との関連での労働問題でも、アメリカ、日本、EUと発展途上国との対決の図式になったと思います。この労働問題の扱いでは、既に昨年の多数国間投資協定交渉で、経済大国は、投資企業の経営幹部等に対する国籍要件を禁止したり、投資受け入れ国が自国民を一定水準雇用することを要求すること自体を禁止したりする内容を協定案に盛り込むなどしました。発展途上国の大きな反発を受けて、結局協定はつぶれました。貿易や投資を有利にするために各国の労働政策を経済大国の思いどおりにするという考えそのものが間違っていると思います。  外相は、今回、労働問題の扱いでどう受けとめられているのか。先ほどのお話では、ILOでやるべきだという趣旨のお話をされました。私は、やはり発展途上国の労働者の権利を抑え込むような方向に進むことは我が国として断固反対すべきだと思いますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  84. 河野洋平

    河野国務大臣 お話しのとおり、労働問題をWTOで扱うことには我が国として賛成いたしかねる、この問題はそれ自体重要な問題でございますから、まず国際労働機関、ILOが取り組むべきものではないかというふうに考えて、そのように主張をしてきた次第でございます。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 これで終わります。
  86. 井奥貞雄

    井奥委員長 次に、伊藤茂君。
  87. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 幾つか質問をさせていただきます。もう夜分になりましたが、国会に、夜、風が吹かないように期待をしながら。  同僚議員から、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化にかかわる御質問がございました。私の方から大臣二つ、冒頭に要望的意見を申し上げまして、御意見を伺いたいというふうに思います。  繰り返しませんが、九〇年代、間もなく終わろうとするわけでありますが、さまざまの曲折が日朝間にございました。この間にまた環境のさまざまな大きな変化も起こってまいりました。しかし、大臣が前向きに御答弁評価をいただきましたように、村山さんを団長とする、すべての政党が参加をする代表団が行きまして、政府間交渉への環境整備ができたということだと思います。しかし、また、これからさまざま困難な仕事でございます。しかし、粘り強く、また、お互いに誠意を持って努力をして前向きに局面を開いていくということが求められているということは、先ほどの大臣の御答弁気持ちのとおりでありまして、私もそう思います。ぜひそういう努力を真剣に進められるようにという要望を前提にしながら、二つございます。  一つは、この間に当委員会でも議論がございましたが、では、日本は一体どういう外交戦略を持って臨むのか、そういうものがはっきりしているのかいないのかということも含めました議論がしばしばございました。  同僚議員皆さんもお読みになっておりますように、この間に例えばペリー報告がございます。やはり非常にリーズナブルにと申しましょうか、さまざまな条件をきちんと整理をして、我々はこう考える、スペシャルアドバイザーという立場になるわけですが、その答案といいますか、考え方を実は出しているわけであります。読んで非常に参考にもなりますし、ペリーさんも随分努力をなさった方ですから、その御努力の経過を含めまして、ああ、そうかなということを私ども思うわけでございますし、私どもだけではなくて、さまざまの国の人、アメリカの議会で議論があることは議会ですから当然のことなんですが、理解をしてみんながやはり真摯に議論をするというふうなものが提起をされているというふうに思います。  読みましても、九四年以降のさまざまな情勢の変化、金日成さんが亡くなって責任者がかわったこともございますし、ミサイル問題もございますし、あるいは食糧問題もありますし、また、韓国の新しい大統領が就任されたこともありますし、そういうようなことをきちんと正確に分析いたしております。また、三つの前提条件なども、整理をすればそのとおりだなということを思います。また、二つの道戦略とか主要な政策提言とか、それぞれやはりあの方の立場での提議を述べているということになります。  外務大臣に同じことを論文に書けというのじゃありませんが、何か日本でも、たくさんのこういうことについての有識者もいらっしゃいますし、いろいろなところで意見交換、討論なさっていることもマスコミ紙上でもその他の本でも伺いますし、やはり、こういう一つの視野の広い展望と見通し、こう考えるべきではないか。混雑するときには道しるべが非常に大事でございまして、そういうものが何かの形で求められるのではないだろうか。アジアでも非常に大きなポジションを持つ日本ですから、そういう努力を何かの形でやはり表現をするということが必要なんじゃないか。この局面に当たりましては、特段に、ペリー報告など資料を再読いたしましてそんな思いがいたします。やはり、見通しを立てる、それから、こういうことですよ、冷静に考えてこういうことがいいんじゃないでしょうかということを提起するような努力が、何も政府が全部やれという意味じゃありませんが、必要なのではないだろうかという気持ちがすることが一つでございます。  もう一つは、当然ですが、アジア的視野で考えるという意味での視点をもっと広く持ってやることだと思います。確かに、拉致問題と言われる行方不明者の問題とかあるいはミサイル問題とか、いろいろなことがございます。国民的には非常に不信感が高まっているという局面もあるというのも事実であります。しかし、これからのアジア、また日朝関係、二国間関係もそうですが、二国間関係だけではなくて、やはり、アジアの将来像をどうするのかということは、新世紀を前にしてまことに重要な課題だと思います。  ペリー報告を読みましても、そういう視点を前提に置いたさまざまの議論が述べられております。関係各国の状況ども述べられております。また、金大中大統領、いわゆる包容政策と言われますけれども、それについての考え方も、確かな情勢分析と自信を持った次への展望ということが語られている。また、それによって朝鮮半島を含めたアジアが冷戦構造から抜け出す国際プログラムというものを考えて提起をしているということではないだろうか。  私は、前の高村さんが大臣のときもいつも大臣に要望したんですが、特段に、河野大臣にも、やはりそういうことが求められているのにどうこたえるのかという時代ではないだろうか、また、そういう見識を持った立場から朝鮮問題を論ずるということにおいて、レベルの高い日本国民ですから、広い理解とコンセンサスが成り立っていくということではないだろうかというふうに思いますが、大臣の見識ある御発言はどうでしょうか。
  88. 河野洋平

    河野国務大臣 ペリー・プロセスを私も拝見をいたしました。確かに、議員がおっしゃるように、その奥行きの深さといいますか幅の広さといいますか、まことに我々にとっていろいろと教えられる部分も多いものでございます。  しかし、考えてみると、ペリー・プロセスは、アメリカを中心に韓国、日本、みんな一緒になってつくったものでございまして、あの中には言ってみれば我が国意見も相当入っている、もっと言えば三分の一は日本がつくった、これはちょっと言い過ぎだと思いますけれども日本の分析といいますか、日本の主張というものも取り入れられている。そういうものを取り入れているから幅も広がり奥行きも深くなっていると言えば言えるかと思いますが、日本にはそういうものがないのは残念至極とおっしゃいますが、日本にもそういうものをつくるだけの能力はある、それがあのペリー・プロセスの中に生きているというふうに私は考えたいと思うのでございます。  もう一つ感じを申し上げれば、アメリカにはたくさんのシンクタンクがございます。国際問題についてさまざまな人がさまざまな場所に集まってシンクタンクをつくる、また、それをバックアップするだけの、つまり財政支援をするだけのものもある。そして、例えば地域的に非常に深い研究が行われる、あるいはプロジェクトごとに非常に正確なデータがそこに集められる。そういうシンクタンクの活動というものは、我々から見ると非常にうらやましい部分もあるわけです。  ただ、こうした民間のシンクタンクの作業というものが、すべてがすべて政府の政策に反映されるものでもないし、政府考えを受けているものでもないわけで、その辺は非常に自由濶達にそういうものがあって、それなりの人材を育てる、そういう役目を果たしている部分もあるだろうと思います。  我が国にもそうした国際的な問題を研究するシンクタンクというものがもっとあって育ってほしいという気持ちもございますし、また、今議員がおっしゃいましたように、アジアの国々の中にはよく、三原則とか五原則とか幾つかの原則を立てて、それを発表して、その原則を曲げないという主張をなさる国や人もおりますけれども、それも一つのやり方だろうと思います。しかし、例えばASEAN全域のことを考える、アジア全体のことを考える、あるいは国際的にいろいろ考えていくという場合には、我々には我々の幅というものもまた必要な場合もあるわけでございまして、いろいろなやり方があると申し上げた方がいいかと思います。
  89. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 三分の一は日本意見と伺いましたが、ちょっと瞬間的に思い出したことがございます。前にナイ・レポートというのがございました。ジョセフ・ナイさんですね。私どもも与党の一派におりまして実は随分悩んだ日米共同宣言に至る経過でございましたが、ある元事務次官の方が、あれはナイ・レポートと言われますが、ナイ・○○レポートなんですよ、一緒にやったんです、というふうなことを思い出します。私は、ネーミングのことを言うわけではありませんが、もっとやはり世界に日本のいい顔が見えるということが本当に大事だろうと思います。  あるマスコミで前に読んだのを思い出したのですが、前は日米関係でも、ジャパン・バッシング、それがいつの間にやらジャパン・パッシングになって、その後ナッシングと言われるようになったとひどいことを書いた文章がございましたが、やはり日本の顔、日本がアジアに、世界に、さまざまな方々に送るメッセージというものが、戦後処理などと二十一世紀という問題も含めて非常に大事なことではないだろうかということを、私は野党ではありますが、政府にいつも強く期待をしているという気持ちを申し述べておきたいと思います。  次に、日本国政党代表訪朝団朝鮮労働党代表団との間の共同発表というのがございまして、その前文に、可能な限り不幸な過去の歴史を清算し、両国民の利益に合うよう云々という言葉がございます。この「不幸な過去の歴史を清算し、」ということに非常に大きな意味合いと歴史の重みがあるということは申すまでもございません。長い植民地支配の歴史があり、その清算が済んでいない唯一の隣国という異常な状況になっているわけでございまして、このままでいいはずがございません。  先ほど大臣が御答弁になりましたように、いわゆる戦後五十年に当たりましての村山元首相の談話など、これは広く、北朝鮮皆さんも含めまして、アジアに対する日本の意思表示というふうに現在もとられていると思います。  ただ、ではどうするのかという場合に、現実問題として、過去の清算、国交正常化への努力、そういう問題と同時に、当面するミサイルとか行方不明者とかいろいろな問題を切り離してばらばらに議論することもできないのが現実だということだろうと私は思います。  そうなりますと、いわゆる包括、一括というくくり方を機械的にやるのも間違いでございますけれども、やはりさまざまなことを広く話題にしながら、今の四国四者会談もそうですが、分科会をつくったりいろいろやっておりますが、やはりそういう意味での戦後の不幸な過去の歴史の清算ということはきちんと念頭に置き、また理解をきちんと持ちながら、どのように話をしていくのかということが今後の政府の課題だろうというふうに思います。  確かに、筋からいって、打開しなければならない問題はたくさんあるのですが、しかし、現実に、向こうの側からすれば、日本に対して、そういう歴史的な清算に対して誠意がないではないかというさまざまな気持ちがあるだろう。日本国内にもさまざまな気持ちがあるという状況にあるわけでありまして、その辺のところを含めながら、双方に不信感がある現実を踏まえながら、前向きにどう誠実に道を開くのかということが問われている。しかも、それはのんびりと時間をかけるというわけにもまいらないというのが現実だと思いますが、この歴史の清算についてどうお考えでしょうか。
  90. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほども答弁申し上げましたけれども、私どもは、今議員がお触れになりました村山総理時代の戦後五十年という節目に発出されました総理大臣談話の精神というものを基本として、アジアの諸国の人々に対して対応していかなければいけないというふうに思っております。  しかし、国家と国家の関係というものは、それはそれなりにまた一つずつの国家との関係をつくり上げてきているわけでございまして、この問題については政府間交渉によって話をしていく必要があるというふうに思います。  さらに、交渉に入る上で、こうした歴史的な不幸な過去の認識が、その入り口というのでしょうか、乗り越えなければならない最初の問題かどうかということについては、私は、極めて重要な問題ではありますけれども、やはり両国間にございます問題は幾つかあるわけでございまして、それらをどういうふうに考えていくか。この問題が乗り越えられなければ決して次へ進めないということでありますと、また七年前の繰り返しになってしまいかねないということもございます。  これは、交渉当事者が先方との話し合いの中でいろいろと考え議論をしながら進めていかなければならないと思っておりまして、これらの問題につきましては、これから開始をされるであろう予備的な話し合いを初めとして、そうした作業に若干の幅を持たせていただきたいというふうに思います。
  91. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ、この共同発表の中にあります「日朝両国関心を持っている人道問題解決重要性」ということで伺います。幾つか双方にございます。それぞれ言うまでもございません。  私は、いわゆる里帰り、いわゆる日本人妻とかいうような問題はそう難しいことではないだろう。一昨年の春から夏、第一陣が実現するまで私もいろいろかかわりましたが、赤十字以下含めまして、まじめな努力をすればできることではないかなというふうに思っておりますし、一昨年、当時、与党三党で伺いましたときにも、予定されている里帰りの皆さんにもお会いをいたしまして、期待の気持ちも伺いました。しかし、その中での一つの問題、それからいわゆる行方不明という問題につきましても、この二年来、話題となって表現をされたことでありまして、途中でミサイル問題その他いろいろなことの中で崩壊してしまいました。やはり、こういうこともきちんと、日本人道と主権にかかわる問題ですから、国民理解されるような処理の努力というものをされる必要があると思います。  ただ、人道問題、食糧問題でございまして、二、三日前に新聞を読んでおりましたら、朝鮮問題でいつもいい御意見を言っていただく慶応大学の小此木さんがこういうことを述べられております。食糧支援問題は、小規模な人道援助と大規模な政策援助に区別すべきである、前者は政治問題と切り離して提供するが、米国がやっているように、後者については北朝鮮側政治的な譲歩とリンケージしなければならない。  要するに、困っている、飢えている、餓死者が出る、そういうときに、何も日本が余っているからというわけではないですが、助けてあげるということは、当然ながらこれはヒューマニズムかヒューマニティーか、人道のことでございまして、もう一つは、やはり基盤整備も含めた大規模な政策的援助というものもまたあるだろう。それはやはり、いろいろな両国間の改善努力の中で実現をするということではないだろうかというようなことを、時々私も個人的に意見を聞いたりするのですが、小此木さんがそんなことを言われておりました。  いずれにしろ、この人道的な援助につきましては、新聞で見ましたら、中国も好意的で、しかも韓国代表も促したいというふうな見出しの記事が載っておりましたが、小此木さんのそういう記事、なるほどそういう考え方もあるなという思いがいたしましたが、いかがでしょう。
  92. 河野洋平

    河野国務大臣 これから交渉を始めるわけでございますから、先方の希望のプライオリティーはどれが高いかということもよく確認をしなければなりませんし、我が方には我が方の考え方もあるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、食糧支援の問題は人道問題としてこうした国交正常化に全くリンクさせないというもの、全く国交正常化問題が食糧支援から排除されるということはないと思いますし、また、これをすべてリンクさせてでなければ考えないという人道支援というものもないだろうというふうに思います。  ここはしかし、これからの交渉当事者に少し議論をする、あるいは考える幅を持たせて交渉に臨ませていただきたい、こういうふうに思います。
  93. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ありがとうございました。      ————◇—————
  94. 井奥貞雄

    井奥委員長 この際、御報告いたします。  今会期中、本委員会に付託された請願は十六件であります。各請願の取り扱いにつきましては、先ほど理事会において協議をいたしましたが、委員会での採否の決定はいずれも保留とすることになりましたので、御了承願います。  なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり四件であります。      ————◇—————
  95. 井奥貞雄

    井奥委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 井奥貞雄

    井奥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中の委員派遣承認申請の件についてお諮りをいたします。  閉会中審査案件が付託され、委員派遣の必要が生じました場合、議長に対して、委員派遣の承認申請を行うこととし、派遣委員、派遣期間及び派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 井奥貞雄

    井奥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会