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河野国務大臣 WTOに出席いたしましていろいろな感想がございますけれども、大事なことの
一つは、
市民社会が
WTOに非常に関心を持って、積極的にこれに
参加しようとされたということだと思うのです。これは突然のことではなくて、もう随分前から準備されて、したがって、
シアトルには五万人以上の
NGOが集まるだろうというようなことを予測されておりまして、現に恐らくそれに近い数の方々が集まられたと
思います。
残念だったことは、非常に整然と
アピールをなさった
NGOもおりますけれども、一部少し暴力に走って秩序をめちゃめちゃにしてしまったという
状況があったために、せっかくの
市民社会の
アピールというものが、当初予測されていたほど効果がなくなってしまったのではないかということが非常に残念だったように
思います。
それはそれといたしまして、今
伊藤先生お話しのように、二十一
世紀に我々が直面をするであろういろいろな問題の中で、やはり一番深刻なものは、人類がいかに生きるかということだと
思います。そして、
WTOでもそうでございましたけれども、百三十五カ国の
参加国のうちおよそ四分の三は
途上国の
人たちでございまして、この
途上国の
人たちの非常に切実な
主張、
意見と富める国の
主張、
意見との間に大変大きな乖離があって、この溝が十分埋め切れないうちに
時間切れになってしまったということだろうと
思います。
これを
自由貿易体制によって、いわゆる
自由貿易でこの溝が埋め切れるかどうかということになりますと、これはまた、理想はそうでございますけれども、必ずしもすぐにそれが
現実のものにはならないということであるとすれば、やはりそこに
援助といいますか、とりわけ
人道援助というものが必要になってくる。
前回のこの
外務委員会でも
松本先生との
議論をさせていただきましたけれども、
人道援助の中には、ストレートで
食糧をお送りするという
援助もあれば、
農業技術を
支援するという
援助のやり方もある、つまり
農業というものの構造を変えていく
技術援助ということもあるわけで、一体どの
援助がどの
地域には適切なのかというのは一概に言えない、
ケース・
バイ・
ケースであろうかと
思います。こうしたことを、やはり人道的な立場に立って、丁寧に
ケース・
バイ・
ケースを
考えていくという
姿勢がなければならないだろう、二十一
世紀の少なくとも初頭にはそういう
状況がしばらくの間続いていかざるを得ないだろうというふうに感じた次第でございます。
そういう
意味からも、こうした
食糧援助のための国際的な機構というものはなお非常に
重要性を持ち続けていくに違いない、そんなふうに思った次第でございます。