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齋藤参考人 齋藤でございます。
短い時間での御
説明でございますので、十分御理解できない部分もおありかと思いますけれども、
我が国の
トンネル施工技術の変遷について、お
手元の資料によって
説明をしたいと思います。
こういう図があると思います。一ページ目でございますけれども、木製支柱式支保工の
施工概要図は、昭和初期から昭和三十五年ごろまでの間に採用されていた木製支保工による掘削工法のうち、丹那
トンネル、大正七年から昭和九年の十六年間の間で
施工した事例の図面でございます。
この工法の特徴は、支保部材、支保部材と申しますのは、
トンネルを掘削後
トンネルの地圧を支える部材のことを申しますけれども、これは木材でございました。すべて人力で
施工をしたということであります。
掘削の順序は、この左上の
トンネル断面図の番号の順番で
施工をしております。その
施工順の断面図が(1)から(10)までに示してあるように、とても多くの工種に分かれておりまして、当時は大変な苦労をして危険を伴いながら
トンネルを掘削した
状況がおわかりいただければ幸いでございます。
次に、二ページ目でございます。
二ページ目をごらんいただきますと、前のページの木製支柱式支保工の次に採用された工法がこの矢板工法でございまして、昭和三十五年ごろから昭和六十年ごろまで採用され、山陽
新幹線はこの工法にて
施工をしております。支保工も木材からH形鋼にかわり、掘削断面も木製工法に比べてかなり広くなりまして、
施工も人力から機械化
施工へと移行してまいります。
掘削順序としましては、左下の断面図がございますが、それと、上部にある側面図を参考にしてごらんください。
まず(1)の底設導坑を掘削いたしまして、同時に、この導坑によりまして、地質
状況を把握し、湧水の
処理の役目も兼ねておりました。右の写真中央付近にありますレールの見えるところが底設導坑になります。次に(2)の上半掘削を行います。写真の左側が上半掘削
状況の写真であります。支保工にH形鋼と、その外周に矢板、木材が使用されているのがわかると思います。その次に(3)のアーチ
コンクリートを打設し、(4)、(5)の順番で
側壁部の掘削を行いまして、そして
最後に(6)の側壁
コンクリートを打設いたします。
コンクリートの打設
方法については、四ページ目で詳しく
説明申し上げます。
坑内の運搬手段は、レールによる軌条方式で
施工いたしました。
安全性、
施工性、
経済性について、木製支柱式支保工に比べて格段の
向上が図られました。
次に、三ページをごらんください。
矢板工法の次に採用され、現在も
施工されている工法がこのNATM工法であります。このNATM工法はオーストリアで開発された工法であります。この工法は、ロックボルトと吹きつけ
コンクリートを主な支保部材とし、
トンネルの変形をはかりながら
施工いたします。現在標準工法になっている(1)の補助ベンチつき全断面工法ですが、左の図面にありますように、二から三メーターの小段を設け、安全で効率的に
施工をしております。
施工順序といたしましては、左下の
トンネル断面図のように、
トンネル断面全部を一度に掘削することができるようになり、それに伴い大型の機械の使用が可能となりまして、
安全性、
施工性、
経済性について飛躍的に
向上いたしました。
運搬、移動
方法は、基本的にはタイヤ工法となり、レールは不要となります。
掘削
方法といたしましては、上部にある側面図の左上より順に
施工いたします。まず、せん孔、装薬ですが、削岩機と称する削孔機で
トンネル断面に水平に長さ一メーターから二メーター程度の多くの穴をあけ、爆薬を装薬し発破します。
次に、
トンネル掘削土砂の搬出ですが、大きなズリ積み機械と大きなダンプトラックが採用でき、効率的に掘削土砂を搬出いたします。
その次に、吹きつけ
コンクリート工に移り、掘り終わった掘削側面に
コンクリートを吹きつけます。その吹きつけ厚さは五から二十センチ程度となります。写真の左側が、全断面を掘削し吹きつけ
コンクリートが完了した
状況です。
その次に、削岩機にて
トンネル周方向に二から四メーター程度の穴をあけ、ロックボルトを挿入し、
コンクリートモルタル等で固定し、
トンネルの安定を図ります。
以上が掘削のワンサイクルであり、これを繰り返して掘削し、
トンネル内空の変位等を計測して、安全を確認しながら掘進いたします。
写真の右側は、
コンクリートを一度に
トンネル全周ライニングした
状況写真です。現在はほとんどこの工法が採用されております。
最後に、四ページ目の
コンクリート施工概要図をごらんください。
矢板工法において、逆巻き工法と称して、上段の図のごとく、アーチ
コンクリート打設を先行打設し、次に(2)、足つけ
コンクリート打設をしてアーチ部を支え、
最後に側壁
コンクリート打設を行います。したがって、アーチと側壁
コンクリートの間には打ち継ぎ目が生じることになります。
中央付近の左側の図面はアーチ
コンクリート打設用型枠のイメージ図であり、その右側が側壁
コンクリート打設用セントル図であります。
施工上の煩雑さを感じ取っていただけると思います。
コンクリート打設機械は、搬送と打設が行えるプレスクリートと言われる機械を採用し、圧縮
空気により圧送する
方法にて打設いたしました。
次にNATM工法ですが、下段に示すように、全断面を一度に打設することができます。
施工順序としましては、(1)、インバート
コンクリート打設後、(2)の防水シートを設置しまして、(3)のアーチ
コンクリート打設で全周完了いたします。生コン車も打設位置まで進入が可能になり、矢板工法で見られた生コン車よりプレスクリートへの積みかえ作業も不要となっております。
コンクリート打設は、
コンクリートポンプにてアーチセントル内に圧入いたします。また、防水シートの採用により、
トンネル内の湧水がほとんどなくなりました。下の写真が、そのでき上がりの
状況でございます。
山陽
新幹線建設当時は、レール工法が標準工法でありましたので、
車両の脱線や
コンクリート機械のトラブルで
コンクリートの打設が中断し、不連続面が発生する場合もありましたが、NATM工法の採用によって大断面
施工が可能となり、十分に換気が確保でき、直接生コン車が
トンネル内に入れるようになりましたので、運搬によるトラブルや
コンクリート打設機の改良、改善が図られることによって、故障もほとんどなくなり、不連続面が発生することが少なくなったのが
現状でございます。
以上、
我が国の
トンネル施工技術の変遷について
説明させていただきました。
説明及び資料等に不行き届きの点があろうと思いますが、御理解いただければ幸いでございます。
以上でございます。(
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