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1999-12-10 第146回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年十二月十日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 仲村 正治君    理事 石破  茂君 理事 実川 幸夫君    理事 菅  義偉君 理事 森田 健作君    理事 高木 義明君 理事 玉置 一弥君    理事 赤羽 一嘉君 理事 江崎 鐵磨君       衛藤 晟一君    小里 貞利君       木村 隆秀君    久野統一郎君       栗原 裕康君    坂本 剛二君       中野 正志君    望月 義夫君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       奥田  建君    今田 保典君       佐藤 敬夫君    永井 英慈君       前原 誠司君    倉田 栄喜君       鰐淵 俊之君    寺前  巖君       平賀 高成君     …………………………………    参考人    (京都大学大学院工学研究    科助教授)        朝倉 俊弘君    参考人    (東京大学国際産学共同    研究センター教授)    魚本 健人君    参考人    (財団法人鉄道総合技術研    究所理事)        若生 寛治君    参考人    (社団法人日本トンネル技    術協会理事)       齋藤 武夫君    運輸委員会専門員     長尾 正和君     ————————————— 委員の異動 十二月十日  辞任         補欠選任   岩浅 嘉仁君     鰐淵 俊之君 同日  辞任         補欠選任   鰐淵 俊之君     岩浅 嘉仁君     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件(鉄道におけるコンクリート剥落事故問題)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 仲村正治

    仲村委員長 これより会議を開きます。  陸運に関する件、特に鉄道におけるコンクリート剥落事故問題について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、参考人として京都大学大学院工学研究科助教授朝倉俊弘君、東京大学国際産学共同研究センター教授魚本健人君財団法人鉄道総合技術研究所理事若生寛治君及び社団法人日本トンネル技術協会理事齋藤武夫君、以上四名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわりませず本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  朝倉参考人魚本参考人若生参考人齋藤参考人の順に、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず朝倉参考人にお願いいたします。
  3. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 京都大学朝倉でございます。  意見を述べさせていただきます。  まず、トンネル保守現状についてでございますが、現在鉄道では、全般検査と申しまして、二年に一回、目視検査を中心とした検査を行っております。これによりまして、Aランク、これが一番悪い方のランクになりますが、Aランクになると考えられるものについては詳細な調査や測定を行う個別検査を行います。これによって、Aランク、最も悪いランクトンネルについては、さらにAA、それからA1、A2といった措置緊急度に応じた細かい区分がなされます。  トンネル変状、傷み方と申しましてもいろいろな種類がございますが、お手元レジュメにもございますように、外力が作用して変形が生じる、あるいはもともとコンクリート等品質に問題があって劣化が生じる、あるいは漏水が生じるというような種類がございます。  鉄道について見てみますと、トンネルの半数以上は戦前につくられたものであるということで、今後、それらのトンネルを安全で経済的に長寿命化させるということが各鉄道事業者の大切な経営問題になっているというふうに思われます。  さて、今回の一連の剥落事故について、私なりの見方を述べさせていただきたいと思います。  まず、福岡トンネルにつきましては、コールドジョイントに覆工内部の初生的なひび割れ、さらに漏水が寄与いたしまして剥落に至った。これは、検査の目のつけどころがこれまで過去の多くのいろいろな事例に基づいて整理されていたということから、まさに専門家にとっても盲点であったというふうな位置づけになろうかと思われます。  次に、北九州トンネルでございますが、これは、コンクリートの注ぎ口と言われている突起物に、これも施工のかなり早い段階ひび割れが生じていた。これに漏水等が寄与しまして剥落に至ったということです。  こういった突起物存在そのものが非常に少ないということ、あるいはトンネル構造として本質的に必要なものではないということ、あるいは、側壁部にございますので、落下しても列車には当たらないというようなことから見過ごされてきたというような背景もございますが、少なくとも、かなり早い段階からひび割れが入っていたことについては疑いのないところでございますので、検査によって、特に打音検査によって防ぎ切れなかったのかなという思いでございます。  次に、礼文浜トンネルでございますが、これはトンネルの覆工に局部的に圧力が作用したということで、いわゆる押し抜き剪断破壊と言われる破壊の形態でございます。これはコンクリートを打設してかなり早い段階で局部的な力が作用したという、タイミングという意味でかなり偶発的な現象かなと思っております。  ただ、これについても、専門的に見れば、非常に特徴的なひび割れが早い段階から生じていたはずであるというふうに思われますので、打音検査によって予防できなかったのかなという気持ちを持っております。  こういった事故を受けて、現在山陽新幹線では総点検が行われておりますが、点検方法、あるいは現在行われている措置については十分に評価のできるものであると考えております。ただし、採用されている剥落防止工については、長期的な立場からベストな工法の選択であるのかどうかという点については、今後検討が必要かと考えております。  こういった現状を踏まえて、今後、トンネル保守のあり方、どうあるべきかということでございますが、私自身は、検査保守手法とか手順については、これまでのやり方で基本的には是とするものであるというふうに考えております。  ただし、目視検査はそれなりに各担当者が十分な集中力を持ってやっていただきたい、あるいは、目視検査によって危険と思われる箇所については漏れなく十分な打音検査が徹底して行われることが必要である、目視検査なり打音検査をきちんとやるということが重要であろうと思っております。  また、そういった検査結果を正しく記録として残す、あるいは、各事業者で、その記録に基づいて会社のシステムとして管理をきちんと行うということを徹底して行っていただきたいものだと考えております。  昨今、マスコミ等で特に新しい検査法重要性がうたわれております。確かに、検査を客観的あるいは定量的に行うという意味で新しい検査手法の開発が急がれるところではございますが、これはあくまで人間が行う検査の補完的な手段であるということを十分に考える必要があろうと思っております。人間感覚能力、目で見て得られる情報は非常に多様でございますし、かつ、人間が行うということで即時に判断ができる、あるいは、打音検査は同時に必要な措置を行うことにもなっているということをぜひ御認識いただきたいと思います。新しい調査法を適用すれば事足れりということでは決してないということを申し上げたいと思います。  最後に、私自身の考えを述べさせていただきたいと思います。  我が国において、これまで必死に社会資本の投資を行って建設を進めてまいりましたが、これからは保守時代に嫌でもなっていくのではないか。そういった意味で、国会の先生方におかれましても、あるいは行政の指導についても、あるいは各事業者においても、保守をシステム化して真剣に取り組んでいくことが必要ではないかというふうに強く考えているわけでございます。ともすれば、要員あるいは予算、そういった側面でこれまで建設の日陰に保守が入っていたというような気がいたします。ぜひ保守に国を挙げて真剣に取り組むということが必要であろうと思っております。  さらに、今回の事故の解決に当たって、本来、保守のあるべき姿を探求するという姿勢が重要であろうと思っております。犯人捜し的な取り組みではなく、責任を設定して、その責任をとらせれば問題が解決するということでは決してないと思っております。  それから、昨今、コストダウンが叫ばれておりますが、その成果を拙速に求める余り、本来、ライフサイクルコストダウンであるべきものが、イニシアルコストダウンになってしまっているんではないかということに非常に強い危惧の念を抱くものでございます。  最後に、これまで縁の下の力持ちとしてトンネル保守を文字どおり日夜支えてこられた保守の現場の担当者の方に、敬意と感謝の念をささげて、結びとしたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手
  4. 仲村正治

    仲村委員長 ありがとうございました。  次に、魚本参考人にお願いいたします。
  5. 魚本健人

    魚本参考人 東京大学魚本と申します。私、トンネル専門家ではございません。私は、どちらかといいますと、コンクリートそのもの研究者であり、そちらの方を専門としている人間であります。  皆様のお手元の方に私のレジュメをちょっと出させていただきましたが、一枚目と二枚目を同じ紙の裏表にコピーしてありますので、ちょっと見づらいかもしれませんが、それを見てお話を聞いていただきたいと思います。  今回コンクリートのいろいろな剥落事故等がございましたけれども、これはここに書いてございますが、コンクリート品質がいろいろな影響を及ぼすということも一つあります。特にフレッシュコンクリート硬化コンクリート品質には、材料それから配合、施工というものが非常に大きな影響を及ぼします。コンクリート劣化という問題は、いろいろな時代にいろいろな問題が起こって、その都度、技術を担当しております我々の方でいろいろな対策等を検討させていただきました。  現在、非常に重要視されております耐久性というものの中では、例えば凍結融解に対する抵抗性の問題があります。特に、東北地方等寒いところでは、冬場の水の凍結、それから、昼間に一度凍った水が解けるという、この繰り返しによりまして表層部分から徐々に劣化して剥落するということが起こります。これに対する対策としましては、コンクリートの中に大体四、五%の空気を入れてあげる、連行してあげるという方法がとられております。これを使えば、かなり厳しい環境条件でも表層からの劣化を防止することが可能となっております。  アルカリ骨材反応につきましては、特に我が国におきましては、昭和四十年以降、砕石が非常にたくさん使われるようになりました。その場合に、山の選び方にもよりますけれども、たまたま選んだ山の鉱物が、反応性を有する骨材が入っているという場合には、特にコンクリートの中のセメントから供給されますアルカリ御存じのように、コンクリートは、pHでいくと大体一三ぐらいあります。pHで最も高いと一四までいきますが、ログでいっておりますので、一三というのも非常に高いアルカリ性でございます。こういうアルカリと反応して、その結果として反応生成物ができて、そしてその中に水が吸収されて膨張するという現象が起こります。その結果、かなり多くのコンクリートひび割れが発生するということが見られます。現在、我が国では、アルカリ骨材反応がかなり多く見受けられるのは、中国地方が多うございます。  それから、コンクリート補強鋼材腐食でございますが、これは、先ほど言いました、コンクリートは非常にアルカリ性が高いものですから、内部鋼材通常は非常に健全な状態を保っていることができます。何十年たっても中の鉄筋が、例えば全然さびていないという状況が起こります。しかしながら、空気中の炭酸ガス、実はコンクリートの中のセメント水和物はそれと反応いたしまして、徐々にではありますが、水酸化カルシウム等炭酸カルシウムに変わるというようなことが起こりますので、徐々にpHが、一三だったものが一二、一一というふうに下がってまいります。そうなりますと、鋼材腐食しやすい環境になる。一番鋼材にとって腐食しやすい状況は、酸性化です。ですから、そういう状況に変わっていくと腐食をしやすくなるということがあります。  それから、海砂その他から供給されます塩分、こういうものが中に入ってまいりますと、これは海岸構造物等もそうなんですけれども、中性化が余り進んでいなくても著しく腐食が進行するということになっております。そのために、現在では、例えば海砂等を使用する場合には、所定塩分量以下になるように洗浄して使うというようなことになっております。  それから次に、化学薬品等によるコンクリート劣化、これは主に酸、それから塩類による劣化が生じます。これは、皆さんよく御存じなのは、大体、温泉地帯、それから化学工場、それから我々の近くでいきますと下水道とか下水処理施設、こういうところのコンクリートは、そのままにしておきますと酸や塩類による表層からの劣化が起こり、また、内部鋼材腐食するということが起こります。  それから、疲労荷重等、これは設計のときに通常は考慮されておりますけれども、例えば、通行する車両重量がふえたりすると、結果的にはその疲労耐力が落ちるというようなことが起こります。  次に、コンクリート施工方法についてですが、基本的には、所定品質を満足するコンクリートをきちんとつくるということが大切でして、今日行われておる方法は、通常コンクリートポンプを使うというのが多いのですが、振動締め固めを行って、打ち継ぎ目の処理を行って養生するというやり方になっております。こういうことは、例えば、我々の土木学会でつくっておりますコンクリート標準示方書等に、かなり詳細にどういうふうにするべきかということがうたわれております。最近では、自己充てんコンクリートというような新しいコンクリートが開発されておりまして、特に締め固めをしなくても、きちんと隅々までに充てんできるコンクリートというようなものも開発されております。こういうような状況です。  次に、検査保守方法です。先ほど朝倉先生の方から御説明がありましたけれども、構造物がいろいろ違いましても、基本的には定期点検、それから詳細点検もしくは検査、こういうものが行われます。どのような構造物でありましても、通常目視検査が大半でございます。これは定期点検の場合です。これが、どうも少しおかしいというような話になったときに詳細検査が行われることが多くて、その場合には非破壊検査、それから、部分的な破壊検査といいますが、コアをとってコンクリート内部を調べるというようなことも行われています。これが行われた後に、通常劣化の予測ということを行います。どのようなペースで劣化しているかということを、データから解析的に求めて、それで補修すべきかどうかということを判定いたします。  補修補強の違いは、一つは、補修の方は耐荷力の回復とか向上目的としないで、劣化した部位等を押さえてひび割れ注入をしたり、劣化箇所を撤去して断面修復をしてコーティングするというのが、通常構造物ですと一般的であります。  補強に関しては、部材や構造物耐荷力を現在よりも上げるというような目的で行われまして、補強鋼材通常は追加したり、例えばアウトケーブル等を使うとか、それから、鋼板またはコンクリート、こういうもので巻き立てるとか、それからFRPのシートを使うというような方法が行われております。これは、主に耐震補強等皆さんもいろいろ見ておられると思います。  それ以外に、非破壊検査につきまして若干触れさせていただきます。  大きく分けますと、超音波と弾性波による非破壊検査がございます。これはどちらかというと、音を、人間の耳で聞く音、それから物体の中を通っていく波、弾性波、これを調べるという方法で、内部状況、または表層部分の判定をするという方法です。  次に、電磁波、放射線、こういうものを用いた方法としましては、レーダー、赤外線、エックス線、それから電磁誘導写真撮影等があります。最近ですと、デジタルカメラ等がかなり多様に使われるようになってまいりました。  今回、いろいろな剥落事故がありましたので、ちょっとだけ私の方の意見を述べさせていただきますと、コンクリート構造物耐久性向上させるためにいろいろな方法が考えられます。  ここに挙がっておりますように、一つは、設計段階ではやはり施工とか、かぶり等耐久性を考慮したような設計をしなければならないということ、それから、最終的には、ライフサイクルコストを考慮した余裕のある設計がどうしても重要であるというふうに考えております。特に、今回の新幹線のような重要構造物の場合には、ここら辺の配慮がかなり大切でございまして、ある意味では、一般構造物との差別化をした方がよろしいのではないかというふうに考えております。  二番目に、コンクリート品質向上ということですが、当然品質管理を徹底して、よく言われるような、本来は打設してはいけないコンクリートをそのまま打ってしまったというようなことのないような管理体制、それから、例えばエポキシ樹脂塗装鉄筋などのような耐久性のある材料を使用するとか、先ほど言いましたような施工に起因する問題を解消することができる自己充てんコンクリート、こういうようなものを使うということが重要かと思われます。  あと、施工管理等ですが、特に私らの立場からいいますと、適切な施工をきちんと徹底させるだけではなくて、施工分業化に関しまして、どうしてもいろいろな業者さんが仕事をされますので、その場合の責任明確化ということがかなり大事だと思います。示方書の方では、今回の示方書の改定では、つくった構造物設計した人、施工した人等の名前もきちんと銘板に入れてはどうかというような提案をさせていただいております。それから、重要構造物に対しては、優良業者とか技術者の積極的な利用も考えられると思います。  これからISO絡みがいろいろ出てまいりますが、こういう構造物施工に当たっては、第三者機関による検査等が必要であろうというふうに考えます。  既存の構造物につきまして特に大事な点は、点検検査重要性でございます。朝倉先生も御説明されましたが、構造物が完成してからの検査をきちんと徹底して行うことが必要であります。その要領、データベース化、こういうものが非常に大切になっております。  それから、技術力がある、こういう技術者をもっと育成することが非常に大切かと思います。我々、大学でも、授業では、新しい構造物をつくるばかりでなくて、その後のでき上がった構造物メンテナンス等に対する授業も行っておりますが、もっとこういう分野を広げる必要があろうかと思います。  それから維持管理につきましては、ここに書いてございますように、その重要性、特に、二〇三〇年ぐらいになりますと、例えば橋梁でいきますと、約五〇%の橋梁が築五十年というオーダーになってまいります。そうなりますと、メンテナンスにかかる費用は非常に莫大なものになると考えられます。  こういうことを考えますと、ぜひこういう維持管理重要性を認識して、それに対する組織体制を完備すると同時に、やはりその後心配になってまいります補修補強方法につきましては、やはりかなり小さな企業が開発しているものが多くて、これに対するもっと重点的な対策というものも必要であるというふうに考えております。  一般的な話でまことに申しわけございませんが、私の方の、特にコンクリート全般についての御説明をさせていただきました。  どうもありがとうございます。(拍手
  6. 仲村正治

    仲村委員長 ありがとうございました。  次に、若生参考人にお願いいたします。
  7. 若生寛治

    若生参考人 鉄道総研理事若生でございます。  鉄道車両構造強度等につきまして、どのような要素から構成されているかにつきまして申し述べさせていただきます。  鉄道車両設計に際しましては、幾つかの要求される条件があるわけでございます。まず、安全性でございます。次に、乗り心地空調などの快適性通勤電車ドア数などの利便性メンテナンス性、さらに経済性として新車の価格や保守コスト、さらには環境に調和した鉄道として振動騒音の少ない省エネ車両であることなどが挙げられ、これらをできるだけ満足するように設計されるわけでございます。  ここでは、その中で、車両安全性を確保するのに極めて重要な役割でございます、強度に関係する構造上の要素事項について述べさせていただきます。  まず、旅客用車両車体構造についてでございますが、新幹線車両在来線車両を問わず、そのほとんどが張殻構造、いわゆるモノコックボディー構造になっております。これは、ちょうど卵の殻のように、車体全体で強度を負担するため、各種の骨組みとなる柱と外板がバランスよく強度を受け持つように構成され、これによって軽くて強度の高い車体を構成しているわけでございます。  次に、車体にかかる荷重でございますが、車体強度を構成する柱や外板重量、乗客の重量電気部品ブレーキ部品等の機器の重量、それに走行中の上下振動によって生じる慣性力等を考慮いたします。車両の前後にかかる荷重といたしましては、車両を連結して走行する際の引っ張り力、圧縮力等がございます。新幹線の場合には、トンネル内を高速で走行しますので、車外の圧力が変動しても、車内圧力を一定に保ち、車内を快適にする必要がございます。このため、車体気密構造とする必要があり、車両内外圧力差に対応した強度も考慮いたします。屋根にかかる荷重として見ますのは、屋根板空調機パンタグラフ等荷重でございまして、部分的な衝撃荷重を前提とした設計をいたしてはおりません。これらを考慮して、具体的にどのくらい荷重がかかるのかについての条件を定め、これによって車両設計がなされております。  次に、車体を組み上げる強度材料でございますが、材料といたしましては、現在、鋼製ステンレス鋼製アルミニウム合金製の三種類が使われておるところでございます。いずれの材料を用いても車両としての必要な強度を持たせますので、アルミニウム合金車だから鋼製車より弱いなどということはございません。一方、鋼製は長年の使用によりまして外板の隅や柱のつけ根等腐食が発生いたしますが、ステンレス鋼製腐食しないので、鋼製に比べてその分薄くできます。つまり、軽量にできるわけでございます。さらに、アルミニウム合金製金属自体の比重が鋼の約三分の一と軽いので、同じ強度を持たせても、鋼製に比べて約二分の一の重さにできるわけでございます。そして、軽量車両は、エネルギー的にも有利でございますし、走行中に発生する振動騒音も低く、車両や軌道の傷みも少なくなるなどのメリットがありますので、最近の車両ステンレス鋼製及びアルミニウム合金製が主力をなしているところでございます。  次に、強度に関する試験でございますが、新しい型式の車両製作段階で種々の試験を行います。すなわち、車体におもしを載せたり、油圧シリンダーによって押したりして、上下方向、前後方向のたわみ等を測定したり、ねじり試験や三点支持等の不整支持、その車両が持っている固有の振動数の測定等、さらに新幹線では気密試験等を行い、成績の評価をいたします。  ここで、三点支持とは、車両の修繕工場等で車体を支持する際、一時的に不均一に支持され、車体がねじられるようなことなどを想定したものでございます。また、気密試験とは、車体内部圧力空気を入れまして、内部からの圧力を加えてそのときの車体の状態を調べる試験でございます。車両として竣工した段階で、走行試験等により車両振動の確認等をいたします。  鉄道車両構造強度につきましては以上のような次第でございますが、次に、落石や土砂崩壊などによる軌道上の障害物について、あるいは踏切障害等についての対策につきまして、主に車両強度とのかかわりにつきまして申し述べたいと思います。  この対策は、地上側がメーンでやっているわけでございますが、車両も両方相まって実施しておるところでございます。ここでは、車両側の対策としてどのようなことを実施しているかにつきまして申し上げたいと思います。  新幹線の場合には、速度も高く、東海道新幹線〇系車両のスタート時から、車両の先頭部に、車体前部排障装置、補助排障装置及び台車排障装置が取りつけられ、さまざまな大きさの障害物を排障あるいははね飛ばすようにしてございます。  新幹線車両の先頭車両の先頭部台枠下部に取りつけられている排障装置は馬蹄形をしてございまして、これは、かつての鉄道技術研究所で三分の一の模型排障装置により衝撃試験を行いまして、百キログラム程度の障害物であればおおむねはね飛ばし、車体各部の変形が発生しない程度であり、それにより決められたものでございます。現在の新幹線車両の排障装置は、その設計の考え方の線上にございます。また、一トン程度の障害物に対しては、これらが大きく変形して、衝撃エネルギーの吸収が可能ということになってございます。  在来線の特急、急行、近郊型車両には、一般に車体に先頭部スカートが、降雪地帯では台車にスノープラウが取りつけられている場合がありまして、台車には排障器が取りつけられてございます。在来線の踏切対策として、運転台前部を強化したものもございます。  以上をもちまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  8. 仲村正治

    仲村委員長 ありがとうございました。  次に、齋藤参考人にお願いいたします。
  9. 齋藤武夫

    齋藤参考人 齋藤でございます。  短い時間での御説明でございますので、十分御理解できない部分もおありかと思いますけれども、我が国トンネル施工技術の変遷について、お手元の資料によって説明をしたいと思います。  こういう図があると思います。一ページ目でございますけれども、木製支柱式支保工の施工概要図は、昭和初期から昭和三十五年ごろまでの間に採用されていた木製支保工による掘削工法のうち、丹那トンネル、大正七年から昭和九年の十六年間の間で施工した事例の図面でございます。  この工法の特徴は、支保部材、支保部材と申しますのは、トンネルを掘削後トンネルの地圧を支える部材のことを申しますけれども、これは木材でございました。すべて人力で施工をしたということであります。  掘削の順序は、この左上のトンネル断面図の番号の順番で施工をしております。その施工順の断面図が(1)から(10)までに示してあるように、とても多くの工種に分かれておりまして、当時は大変な苦労をして危険を伴いながらトンネルを掘削した状況がおわかりいただければ幸いでございます。  次に、二ページ目でございます。  二ページ目をごらんいただきますと、前のページの木製支柱式支保工の次に採用された工法がこの矢板工法でございまして、昭和三十五年ごろから昭和六十年ごろまで採用され、山陽新幹線はこの工法にて施工をしております。支保工も木材からH形鋼にかわり、掘削断面も木製工法に比べてかなり広くなりまして、施工も人力から機械化施工へと移行してまいります。  掘削順序としましては、左下の断面図がございますが、それと、上部にある側面図を参考にしてごらんください。  まず(1)の底設導坑を掘削いたしまして、同時に、この導坑によりまして、地質状況を把握し、湧水の処理の役目も兼ねておりました。右の写真中央付近にありますレールの見えるところが底設導坑になります。次に(2)の上半掘削を行います。写真の左側が上半掘削状況の写真であります。支保工にH形鋼と、その外周に矢板、木材が使用されているのがわかると思います。その次に(3)のアーチコンクリートを打設し、(4)、(5)の順番で側壁部の掘削を行いまして、そして最後に(6)の側壁コンクリートを打設いたします。コンクリートの打設方法については、四ページ目で詳しく説明申し上げます。  坑内の運搬手段は、レールによる軌条方式で施工いたしました。安全性施工性、経済性について、木製支柱式支保工に比べて格段の向上が図られました。  次に、三ページをごらんください。  矢板工法の次に採用され、現在も施工されている工法がこのNATM工法であります。このNATM工法はオーストリアで開発された工法であります。この工法は、ロックボルトと吹きつけコンクリートを主な支保部材とし、トンネルの変形をはかりながら施工いたします。現在標準工法になっている(1)の補助ベンチつき全断面工法ですが、左の図面にありますように、二から三メーターの小段を設け、安全で効率的に施工をしております。  施工順序といたしましては、左下のトンネル断面図のように、トンネル断面全部を一度に掘削することができるようになり、それに伴い大型の機械の使用が可能となりまして、安全性施工性、経済性について飛躍的に向上いたしました。  運搬、移動方法は、基本的にはタイヤ工法となり、レールは不要となります。  掘削方法といたしましては、上部にある側面図の左上より順に施工いたします。まず、せん孔、装薬ですが、削岩機と称する削孔機でトンネル断面に水平に長さ一メーターから二メーター程度の多くの穴をあけ、爆薬を装薬し発破します。  次に、トンネル掘削土砂の搬出ですが、大きなズリ積み機械と大きなダンプトラックが採用でき、効率的に掘削土砂を搬出いたします。  その次に、吹きつけコンクリート工に移り、掘り終わった掘削側面にコンクリートを吹きつけます。その吹きつけ厚さは五から二十センチ程度となります。写真の左側が、全断面を掘削し吹きつけコンクリートが完了した状況です。  その次に、削岩機にてトンネル周方向に二から四メーター程度の穴をあけ、ロックボルトを挿入し、コンクリートモルタル等で固定し、トンネルの安定を図ります。  以上が掘削のワンサイクルであり、これを繰り返して掘削し、トンネル内空の変位等を計測して、安全を確認しながら掘進いたします。  写真の右側は、コンクリートを一度にトンネル全周ライニングした状況写真です。現在はほとんどこの工法が採用されております。  最後に、四ページ目のコンクリート施工概要図をごらんください。  矢板工法において、逆巻き工法と称して、上段の図のごとく、アーチコンクリート打設を先行打設し、次に(2)、足つけコンクリート打設をしてアーチ部を支え、最後に側壁コンクリート打設を行います。したがって、アーチと側壁コンクリートの間には打ち継ぎ目が生じることになります。  中央付近の左側の図面はアーチコンクリート打設用型枠のイメージ図であり、その右側が側壁コンクリート打設用セントル図であります。  施工上の煩雑さを感じ取っていただけると思います。  コンクリート打設機械は、搬送と打設が行えるプレスクリートと言われる機械を採用し、圧縮空気により圧送する方法にて打設いたしました。  次にNATM工法ですが、下段に示すように、全断面を一度に打設することができます。  施工順序としましては、(1)、インバートコンクリート打設後、(2)の防水シートを設置しまして、(3)のアーチコンクリート打設で全周完了いたします。生コン車も打設位置まで進入が可能になり、矢板工法で見られた生コン車よりプレスクリートへの積みかえ作業も不要となっております。  コンクリート打設は、コンクリートポンプにてアーチセントル内に圧入いたします。また、防水シートの採用により、トンネル内の湧水がほとんどなくなりました。下の写真が、そのでき上がりの状況でございます。  山陽新幹線建設当時は、レール工法が標準工法でありましたので、車両の脱線やコンクリート機械のトラブルでコンクリートの打設が中断し、不連続面が発生する場合もありましたが、NATM工法の採用によって大断面施工が可能となり、十分に換気が確保でき、直接生コン車がトンネル内に入れるようになりましたので、運搬によるトラブルやコンクリート打設機の改良、改善が図られることによって、故障もほとんどなくなり、不連続面が発生することが少なくなったのが現状でございます。  以上、我が国トンネル施工技術の変遷について説明させていただきました。説明及び資料等に不行き届きの点があろうと思いますが、御理解いただければ幸いでございます。  以上でございます。(拍手
  10. 仲村正治

    仲村委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 仲村正治

    仲村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  12. 石破茂

    ○石破委員 参考人先生方、本日はお忙しいところをまことにありがとうございました。  私ども運輸委員会は、福岡トンネル北九州トンネル事故がありまして、現場に視察に参りました。専門家がそうそろっておるわけではございませんが、現状を見、そしてまた作業の現場を見、その都度委員会を開いて適切な対応を求め、提言もしてきたわけであります。  福岡トンネルがあって、北九州トンネルのときはまたか、こういう感じだったんですね。今度また、礼文浜トンネルでまたまたかというようなことになりまして、どうもこれは、例えばJRをお呼びし、また運輸大臣をお呼びしてお話をしても、予想外のことであった、適宜適切に対応したいと。運輸省もJRも一生懸命やっておられることは、私ども現場にも行って大変よくわかるのでありますけれども、どうもらちがあかない。それでは、専門家先生方をお呼びして、実際に国民が疑問に思っていること等々をついて専門的な見地からお教えをいただきたいということで、きょうお出ましをいただいたような次第でございます。  世の中の人は、どうもセンセーショナルな報道のせいかもしれませんが、これから先、特に高度成長期につくられたトンネル、高架橋、あのような構造物がどんどん壊れるんじゃないのか、あちらこちら、もう二〇〇〇年代に入るとそういうものががらがらと崩れていって、大変なことが起こるのではないだろうかということを恐れておる。  そしてまた、奇跡のような話で、福岡トンネルにおいても、北九州トンネルにおいても、礼文浜トンネルにおいても、全く死傷者が出ていない。これはもう大変なことだと思いますね。福岡トンネルの場合には、たまたまというのか何というのか、屋根にどんと落ちたが、だれもけがをしなかった。北九州トンネルの場合には、動かす前に落ちているのがわかった。礼文浜トンネルの場合には貨物列車であったというようなことで、私はそういうような奇跡が三回続いたのかしらという気もしているのです。  まず、こういうものがどんと落ちたときに、新聞なんかの書き方は、まかり間違えば脱線、転覆、大惨事、たくさんの死傷者が出たに違いないというような書き方をするのであります。大変なことである、新幹線をとめてでも全部点検せよ、そしてまた海砂を使ったようなものは極めて危ないというようなことを報道され、また国民もそれを恐れておるのだと思います。  私も委員会で何回かJRにもお尋ねをしたことですが、まず若生先生にちょっとお尋ねをしたいのですけれども、確かに言われてみるとそうなんですね。車体設計車両設計というのは、安全性であり、快適性であり、利便性であり、経済性であり、省エネを追求する。安全性というのも、物事には常識の範囲というのがあって、トンネルから二トンの岩が降ってきて、それでも安全な車両設計する、そういう思想は多分ないんだろうと思っているのです。そんなものを考えたら、重戦車みたいな列車をつくらなきゃいかぬということになってしまうのでしょう。  こういう報道がありますよね。福岡トンネルのときに、〇系の車両だったから大丈夫だったと。これがもし軽い五〇〇系とか七〇〇系とか、ああいうものは軽量化が進んでおって、エアコンディショナーとかそういうものは全部下の方に収納されておって、非常に弱い構造になっておるのではないか。  〇系と五〇〇系、七〇〇系、上から物が落ちてくるという、本来の設計思想外にあるものですけれども、そういうものが落ちたときに強度に差はありますかありませんか。ちょっとお教えをいただければありがたい。
  13. 若生寛治

    若生参考人 お答え申し上げます。  〇系に比べまして五〇〇系、七〇〇系は速度が高いわけですけれども、その分だけ屋根の強化、いろいろな意味で強化をされているということでございます。そういうことで、特に問題がないと考えております。
  14. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、これは鉄道総研で今考えておりますというお話でしたが、数字的にきちんとこれは大丈夫だというようなものは、データがございますか。  つまり、実際岩が降ってくるなどということは一種想定外のことのはずなんです。しかしながら、強度においてはとにかく差がないということで、それは数字的に裏打ちされたものと思ってよろしゅうございますか。
  15. 若生寛治

    若生参考人 全体の気密構造等の設計荷重の点においていろいろ検討するということでございまして、設計荷重的に鉄道総研で検討したことはございません。
  16. 石破茂

    ○石破委員 若生参考人ばかりお尋ねして恐縮なんですが、わからないので教えてください。  今度の礼文浜トンネル、貨物列車がそれにぶつかって脱線をしたということですね。あそこは優等列車が大変多く走っておるところであって、人気のある北斗星などというのもあそこを走っておる。仮に、夜行列車が百二十キロであの状況に遭遇をしたとしたら、当然脱線はするのでしょうけれども、どのような状況が起こると想定をされますか。
  17. 若生寛治

    若生参考人 このたびの件が、例えば旅客列車にぶつかった場合などを御想定ということでございますが、鉄道総研は今回の脱線事故調査を行ってはおりません。当時の脱線状況を詳細に把握しておりませんけれども、衝突時に車体に作用した衝撃力によって脱線したというよりも、台車が軌道内に落ちていたコンクリートの塊を巻き込み、輪軸が持ち上げられて脱線に至ったのではないかと推測されるわけでございます。旅客列車につきましても、全く同じ状況であれば落下物が台車に巻き込まれる可能性は高いと考えられます。  しかしながら、このDD五一の貨物機関車と旅客列車、例えばJR北海道を代表する特急の気動車の二八一系の台車構造等が違っておりまして、例えば、今回脱線したDD五一の場合には減速機がついてございますが、二八一系の先頭台車の一番前の車軸には減速機がついていないというような構造上の違いとか、いろいろな諸条件の違いがありまして、脱線するかどうかについては、コンクリート破壊の仕方とか列車が停車するまでの間のコンクリートの塊の挙動等にもよりますので、一概には申し上げることができないかと存じます。
  18. 石破茂

    ○石破委員 もちろん、想定外という言葉は、私は使っちゃいけないとは言ったのですけれども、今まで経験したこともないようなことが次から次から起こっておりますわけで、ぜひ鉄道総研におかれても、この場合には何が起こるか、さらにどのように安全性を高めるかということの御研究は、ぜひいただきたいと私は思っておるのです。  朝倉先生にお尋ねをいたしますが、大体今の検査方法で基本的には是とするというお話でございました。世の中には、先ほど申し上げましたように、新幹線をとめて徹底的にやらないとだめなんだ、とめないのは、それは営業のことを考えてとめないのであって、まことにもってけしからぬというような論調がございます。私ども、専門家ではないからよくわかりません。これは先生がごらんになって、とめて行っても今のままでもそんなに差がないというふうなお考えでいらっしゃいますか。
  19. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答えいたします。  私個人の考えといたしましては、例えば新幹線を例にとりますと、毎夜列車の走らない時間帯がございますので、この時間帯を使って毎日検査を行っておられますので、あえてとめてやることのメリットがどれほどあるのかなというのは疑問に思っております。
  20. 石破茂

    ○石破委員 そういたしますと、今のままのやり方できちんとやっていく、これで安全は保たれるということを、専門家の先生がそうおっしゃいますので、それはそのことを信じて私どももこの後の経緯を見守ってまいりたいというふうに考えております。  これはトンネルに限らず、コンクリート構造物一般についてでございますが、これは魚本先生にお尋ねをした方がいいのかもしれません。要するに、高度成長期の六〇年代半ばから八〇年代にかけて、トンネルには限りませんが、川砂をとってはいけないというような規制が行われて海砂が大量に使われたことによって、コンクリートが非常に弱くなっておる。東名高速道路と山陽新幹線と比べてみればその差は歴然であって、東名高速道路が二十歳代の青年の体力を持っておるとすれば、これは小林先生の本に書いてあったことですが、山陽新幹線は小学校四年生でありながら七十五歳のごとき体力であるというような物すごいことが書いてあった。これは私ども専門家ではないから本当によくわからない。ただ、その本を信じるとすれば、これは大変なことなのだろう。  それで、六〇年代から八〇年代の高度成長期に海砂が大量に使われ、それが塩分を除去しない状況で使用されたとしたならば、やはりそれは大変な状況が惹起されるという認識について、先生どうお考えですか。
  21. 魚本健人

    魚本参考人 お答えいたします。  海砂につきましては、基本的には六〇年代から八〇年代につきましては、確かに除塩が十分に行われていなかったという事実がございます。  先ほど御説明しましたように、塩分がかなりたくさん入っておりますと、特に鉄筋コンクリートもしくはプレストレストコンクリート構造物、要するに内部鋼材補強材として使っている構造物につきましては、通常構造物に比べると著しく早く鉄筋鋼材腐食するということは事実でございます。  ですから、一般的な構造物でありましても、あの年代につくられた構造物で、特に先ほど申し上げましたが、東北、関東から北は海砂が余り使われておりませんけれども、中国地方からあちらの方は、骨材の不足ということもございましてかなり多量に使われておったということは事実でございますので、程度の差はあろうかと思いますが、通常構造物よりも早く劣化するということは言えると思います。  ただ、それが七十五歳に相当するかどうかということについては、何とも私わかりません。  以上です。
  22. 石破茂

    ○石破委員 これは齋藤参考人にお尋ねをした方がいいのかな。つまり、そういう時期、川砂が不足をしておって海砂を使わねばならない、そういう時期があった。そういうようなトンネルでありますとか構造物でありますとかは、こことこことあそこというようなことは大体特定ができ、絞り込みができるものですか。
  23. 齋藤武夫

    齋藤参考人 これははっきりはお答えできませんけれども、履歴を調べれば、海砂を使ったあるいは川砂を使ったということはある程度わかると思います。
  24. 石破茂

    ○石破委員 そうしますと、どなたかがおっしゃいましたね、犯人捜ししたって仕方がないのであって、それは捜さなきゃいかぬことはいかぬのでしょうけれども、もう時効も過ぎていることですし、いかにしてこの補修をするか、可及的速やかにやるかということが我々に課せられた使命なんだろうなというふうに思います。  そうしますと、朝倉先生、そういうようなものを特定して、この時期、このような工法というふうに特定をして、そこに集中的に検査を行うということはどうなんでしょう。  つまり、どれもこれものべつ幕なしにやってみても、きのうのある報道には四万トンネルとかと書いてありましたが、四万トンネルもやるなんといったらこれは気が遠くなるようなお話なんですね。やはりそれはどれもこれも悪い。北九州トンネルのときもずっと突起物を落としていました。どう見たってこれは落とさなくてもいいだろうと思われるようなところまで一生懸命落としているわけですね。のべつ幕なしに全部やるよりも、本当に幾つかの要件を絞り込んで、特定のものに対してきちんと検査を行うということについて、どのようなお考えでいらっしゃいますか。
  25. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答えいたします。  まさに先生御指摘のとおりでございまして、そういった意味で、私先ほど意見陳述でも申し上げましたが、これまでのトンネル保守については、いろいろな事故例、あるいは対策の事例をもとに、重点的に見なければいけないところを整理してマニュアルとして検査を行っていただいております。  今回の山陽新幹線に集中した事故については、コンクリートそのものにも時代的な背景があって、御指摘のように問題がある、そのような可能性があるということで、山陽新幹線、全面的に検査を行っているわけでございます。  そういったことで、過去の事例に基づいて、起こり得る可能性の高いところについて集中的に検査するというのは非常に大事なことで、これからもやっていかなければいけないと思います。  さらにそれに加えて、全体として、トンネルに限らず、保守に対する各事業者集中力といったものに、構造物全体が老朽化するということは避けられないわけでございますので、ぜひこれから力を入れていただければと希望するところでございます。
  26. 石破茂

    ○石破委員 魚本先生のお話の中に、朝倉先生のお話ですと、人間の五感にまさるものはないんだというお話、それはもう確かにそうだと思うんですが、しかしそれだけでは足りないというか、それをさらに効果的にするために、超音波であるとかアコースティックエミッションであるとかそういうものもあるよ、レーダーとか赤外線とかそういうものもあるよ、こういうお話でありました。どちらにしても、その両者を効果的に組み合わせてということではなかろうかと理解をしております。  それを踏まえまして、先生の御提案の中に、第三者機関による検査、そして検査費用の考慮ということがございました。これは私もおぼろげに考えておったことなんですが、検査というのはどうも権威ある第三者がやった方がいいのではないか。そしてまた、これから先その費用というものは膨大になることが予想されるのであって、それはそれで国家としても予算を組みながらやっていく、経営を圧迫しないように、安全を優先しながらやっていく、そういうようなことが必要なのかなと思っておるんです。  先生のお考えになる第三者機関というのは、イメージで結構ですが、どのようなものでございましょう。
  27. 魚本健人

    魚本参考人 お答えいたします。  一つは、先ほどの前半の部分で、ちょっと誤解があるといけないと思いましたので補足させていただきますが、非破壊検査がいろいろ行われておりますが、そのうちの一つが打音法でございます。その場合に、打音法のいいところと悪いところがございますが、例えば赤外線だとかレーダーだとかそういうものを使いますとどういうことができるかというと、全面を要するにくまなく調査をすることが可能でございます。これが打音法とある意味では違うところでございます。打音法は、例えばここをたたいて、ここをたたいてということはできますが、全部連続的にというのは非常に難しゅうございます。そのために、そういう方法で例えば構造物を実際に調べて、そしてそこでおかしいと思われる部分は割とわかりますので、そこを集中的に例えば打音法で調べるというような方法がいいんではないかというふうに私は考えております。  それから、第三者機関でございますけれども、そういうようなことをやるときに、従来ですと、それぞれの設備を持っておられる組織がある一定の数の方をそういうところに配分されるというやり方が行われております。これは自動車業界でも航空機でも、みんなそうなんですけれども、そうしますと、使っているところの人間が言うわけですから、これは危ないよというふうに言ったとしても、どうしてもそちらの方が優先になる。要するに、使うところ、もしくはつくっているところが優先になる。そのために、検査をしたことであっても、そのことの重要性とか、お金が特にかかるというようなことになりますとなかなか認めてもらえないということがあります。  そこで私が勝手な私案として出させていただいたのは、ある意味では使う側と検査する側を分けておかないとやはりフェアな検査がしにくいだろう、もしくはその評価もしにくいだろうということで、第三者機関というのが企業体であってもお役所系のものであっても構わないと思いますが、そういう分野をやはり育成する必要があるのではないかということでそういう提案をさせていただきました。  以上でございます。
  28. 石破茂

    ○石破委員 以上で終わります。  いずれにいたしましても、これは本当にみんなで全力を挙げて取り組んでいかねばならぬことでございますので、先生方にも今後とも御協力を心からお願いいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  29. 仲村正治

    仲村委員長 次に、高木義明君。
  30. 高木義明

    ○高木委員 民主党の高木義明でございます。  コンクリート剥落事故につきまして、参考人皆さん方に若干のお尋ねをしてまいりたいと思います。  今回のこの参考人招致ということにつきましては、六月二十七日の山陽新幹線福岡トンネル、これのコンクリート剥落事故がございまして、その原因究明、現場視察、国会での審議等々がございました。しかし、この後に相次ぐ剥落事故が続きまして、一体安全宣言はどうなっておるのか、まさにその信頼性が国民に問われておるわけです。したがいまして、そういう関係官庁に対する質疑はもとより、ここで一回、本当に、今日現在、新幹線あるいは各種鉄道が運行しておりますけれども、安全だろうか、そういう観点に立って、まさに現場の第一線で御活躍をされておる各先生方の御意見を聞いてみようではないか、こういういきさつもございました。  六月二十七日に山陽新幹線福岡トンネル、それから十月九日に同じ北九州トンネル、また十月十七日には飯田線の小沢トンネルの側壁崩落、十月十八日が上越新幹線の高架橋からの落下、十一月五日には北海道第二今別トンネルにおいての落下、そして最近では十一月二十八日の室蘭線の礼文浜トンネル、こういうことが最近とみにふえてきている。これにおいて、やはり鉄道事業というのは安全確保というのが大使命であるわけでありますが、まさに国民はそのことについて非常に懸念を抱いておる、このことが鉄道離れになっては大変問題だと私は思っております。  この問題の根幹につきましては、先ほどからもお話をしておりますように、建設時にまつわる構造的欠陥の可能性が高いと私は思うんですけれども、今回はやはり原因がどこにあってどうしていくのかというのが一番大切な私どもの課題でございます。また、これはJRの構造物に限らずに国内のあらゆるコンクリート構造物維持管理に共通する課題であろうと私は思っております。したがって、インフラの整備のあり方とともに、いわゆる保守技術の開発、あるいは点検保守機材の研究、こういったものが今ほど求められておるときはない、私はこのように思っております。  そういう意味で以下お尋ねをしてまいりたいと思います。重複はございますけれども、立場を異なってのお尋ねでございますので、恐縮ですがよろしくお願いをしたいと思います。  まず、山陽新幹線剥落事故。これは、開業予定が昭和四十九年の十二月であった、それが諸般の事情でおくれて昭和五十年三月に延ばした。当時はオイルショックの直後であり、資材、人員確保にも大変苦労をした、こういう時代でもありました。そういう中で、工期の非常に窮屈なものがあったでしょうし、そのことによって施工不良が出てきたのではないか。まさにコールドジョイントというものがそうであったと思っております。  しかし、私は、去る二年ぐらい前ですけれども、北陸新幹線の新倶利伽羅トンネル建設現場を視察したことがございます。やはり予算、事業の執行上、建設予算というものも限られておって、普通のビルや建物を建てるように、連続的に、短期な間に仕上げるということが事実上大変困難ではないのか。したがって、コールドジョイントというものができやすい状況通常あるんだろうと私は思っておるんです。  ない方がいいのですけれども、しかし、相当長いトンネル、あるいは膨大な事業ですから、そういうことはやはり起こり得る、そういうのが私は当然想定できる問題だと思っております。あえてコールドジョイントが大きな要因だと言われておる。こういうことに対して、その工事の構造的要因についてはどのようにお考えになっておられるのか、その点について、まずお聞かせをいただきたい。  朝倉参考人、そして齋藤参考人にもお尋ねをしておきたいと思います。
  31. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答えいたします。  山陽新幹線建設当時の時代的背景については、先生の御指摘のとおりではないかと私も思っております。  ただ、コールドジョイントあるいは覆工コンクリートの何らかの問題点ということにつきましては、工期を急いだことのために生じたとすべてをくくるわけにはいかないのじゃないかというふうに思っております。  先ほど齋藤参考人の御説明でも、当時の施工技術状況というのがございましたので、その施工技術に起因して、ある意味ではやむを得ず生じたものもあるのではないか、工期を急がされたということも一つの要因ではあったとは思いますが、それが原因のすべてではないのではないか、このように考えております。
  32. 齋藤武夫

    齋藤参考人 お答えいたします。  工期を急がされて、コールドジョイントの要因になっているのじゃないかというお尋ねでございますけれども、私ども、当時の標準工法、先ほど二ページ目で御説明をしましたが、トンネルの一番下の真ん中に底設導坑を掘りまして、その後、上部の破断面を切り広げるわけでございますけれども、いわゆる工期がかかるというトンネルは事前に作業箇所をふやして施工できるというような状況にもなっておりましたので、なかなか厳しい工期ではございましたけれども、工程を検討して、そんなにできない工期ではないというふうに考えて取り組んでまいりました。  以上でございます。
  33. 高木義明

    ○高木委員 これは工事の工法にも関係するんですけれども、この山陽新幹線トンネルにしても、それからついせんだって事故がありました礼文浜トンネルにおきましても、覆工コンクリート鉄筋は使われておりませんね。これはそのデメリットを考えての工法だと私は思うんですが、最近の、昭和六十年代から始まったNATM、御説明がございましたけれども、これでも当然鉄筋は使わないことになっておるんですけれども、あの礼文浜トンネルは二トンぐらいの円錐状のコンクリートが線路に落ちているわけですね。高さ四十五センチ。これは、局部的な地圧がかかって起きた押し抜き剪断破壊と言われております。私は、やはり鉄筋を使った方がいいのじゃないか、こういう意見も持つわけなんですが、使った場合のデメリットはどこにあるのでしょうか。  朝倉参考人、そして魚本参考人にぜひこのことについての御見解を賜りたいと思います。
  34. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答えいたします。  もともとトンネルの覆工といいますのは、古くは自然から切り出した石ですとか、あるいは火で焼いたれんがを積み上げてつくるというのがもともとの技術でございました。これが、場所打ちコンクリート技術が発達する過程でコンクリートに置きかえられたという背景がございますので、あくまでも先生の御指摘の、引っ張り応力サイドを補強するという意味での鉄筋を使うという発想はございませんでした。  ただ、トンネルでも非常に土かぶりの浅い坑口の近辺ですとか、あるいは地質が非常に悪くて、十分な耐力を要するというような場合については現状でも鉄筋が採用されております。  鉄筋を使うことのデメリットといいますのは、当然のことながら手間がふえますので、少しお金がかかるということと、施工に手間がかかるということでございますが、特段使用上のデメリットということはないのではないかというふうに思われます。  以上です。
  35. 魚本健人

    魚本参考人 トンネルにつきましては、実は私ども土木学会コンクリート委員会では、今までは直接関与してこなかったといういきさつがございます。我々コンクリート通常構造物に使っている人間からいたしますと、無筋コンクリートとして位置づけているのは重力式ダムのようなものだけでございまして、それ以外のものはすべて最小鉄筋量というものを入れることになっております。  ですから、今回のいろいろなことで、トンネルのライニングではほとんど鉄筋コンクリートになっていないということを知ったわけでございますけれども、そういう場合には、ほかの方法として考えられるのは、例えば繊維を混入したコンクリートというようなものを使ってあげれば、今回のような簡単な崩落は起こりにくい、ほとんどまず起こらないということが言えます。  鉄筋を中に入れるという操作は、非常に狭いライニングの中に鉄筋を入れるということになりますから、確かに施工としては面倒くさくなるという点がございますけれども、特に重要構造物である場合には、当然鉄筋を入れた方が、もしくはそういう補強材を入れた方がいいのではないかと個人的には思っています。  ただ、従来トンネルをつくってこられた人、それから設計されてきた方は、特にコンクリートにそういうものを入れる必要はないという御判断があったかと思います。先々、靱性を高めるというためには、そういう鉄筋を入れておく、もしくは繊維を入れておくというような方法が望ましいのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  36. 高木義明

    ○高木委員 次に、いわゆる塩分の問題ですね。  一般的に鉄筋コンクリート構造物劣化の大きな要因は、一つには塩害というのがありますね。いわゆる海の方から風に乗って、あるいは台風等で来る、そういうこともありますし、あるいは内部の、いわゆる海砂を使ったという意味での塩害というのがあるわけです。  さきの運輸委員会、十一月十七日ですが、鉄道総研の参考人の方の答弁の中に次のようなことがありました。土木学会コンクリート標準示方書には、鉄筋コンクリートに用いるコンクリートの中の塩化物イオン量の規定がある、トンネル覆工コンクリートはもともと無筋で、影響がないので特に規定されなかった。いわゆる鉄筋が入っていないから、そういうのが規定されなかった。また、北九州トンネルでは、貝殻の混入が見られ、海砂を使用している、こういうお答えがありましたけれども、この海砂使用による、塩分による強度の不足、劣化、これについての影響、これについて魚本先生にお尋ねをしたいと思います。
  37. 魚本健人

    魚本参考人 海砂その他が使われた、最初からコンクリートの中に塩分が入っている場合の御説明をいたします。  そういうものが入っておりますと、実はセメントの水和反応、セメントは水と反応いたしますが、その水和反応が早まります。通常の凝結、固まる時間よりも短い時間で硬化するということが起こります。それともう一つは、内部にでき上がった水和物が、通常セメントと水をまぜたものと若干違った組成ができ上がります。そのために特に強度が変わるということはございませんけれども、トンネルでの、もし海砂にかなりたくさんの塩分が入っていたとすると、通常打設するよりも早い時間で固まってしまうために、先ほどお話のあった例えばコールドジョイントというようなものも、逆に言うとできやすくなる可能性があります。そういうこと。いわゆる施工とかいうものには、もしくは発熱という問題は起こりますけれども、強度そのものについてはそんなに大きな違いは生じません。初期の強度が出るだけでございます。  以上です。
  38. 高木義明

    ○高木委員 そこで、現実には、昨日の新聞報道によりますと、運輸省がトンネル安全問題検討会を開いて、山陽新幹線については劣化しておるところは約四万カ所あった、そういう報道もなされておるのですが、そういうことがありながらも、今後も続けて、年内に別の意味の安全宣言といいますか、そういうことが行われるのじゃないかと思っております。  大事なことは、いずれも局部的な問題で、トンネル全体が危険だという見方は私はよくないとは思っておりますが、当面、本当にトンネルコンクリート耐久性はどのくらいあるのでしょうか。そして、現状保守管理、そして先ほど補修補強の話がありましたけれども、当面の補強補修で大丈夫なんだろうかというのがやはり乗客、国民の不安ですよ。  その点について、朝倉先生、いかがでしょうか。
  39. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、全体としてのトンネル構造としての不安定性ということは心配いたしておりません。耐久性についても、コンクリート材料そのものが日に日に劣化をするというふうなことは決して考えておりませんし、心配もいたしておりません。  ただ、現実に、今回山陽新幹線では二回事故が続いておりますので、それについての原因究明をきちんとしなきゃいけないと思っておりますが、安全の確認につきましては、落下の可能性につきましては、現在行っている徹底的な打音検査で危険箇所を抽出するということで十分に確認ができるのではないか。  さらに、それで事足れりということは決して考えておりませんで、今後とも、新たな落下の可能性が生じないかどうか、特にひび割れ等の進展等について十分に留意をした継続的な保守が重要であろう、そのように考えております。
  40. 高木義明

    ○高木委員 時間が参りましたので、これで終わります。参考人先生方には、それぞれお忙しい中、貴重な意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
  41. 仲村正治

    仲村委員長 次に、倉田栄喜君。
  42. 倉田栄喜

    ○倉田委員 公明党の倉田でございます。きょうは、参考人の皆様方には大変ありがとうございます。  まず、朝倉参考人にお伺いをしたいと思います。  昨日の新聞にも、山陽新幹線トンネルだけでも異常音四万カ所、剥落防止へ四分の一落とす、こういう記事が載っていたわけであります。朝倉先生は、これから建設時代から保守時代へ、保守のシステムの見直しが必要である、こういうふうに先ほど御意見をお伺いしたわけでありますけれども、これは、山陽新幹線トンネルだけで異常音四万カ所、全体をやるとどれくらいの異常音が出るのだろう。それに対して、剥落防止へ対策をとらなければならないのだと思いますが、先生、これはどういうふうな対策をお考えでございますか。
  43. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 新聞で報道されました四万カ所につきましては、打音検査の結果、どのような数え方で四万カ所という数字になったのか、詳しい報告をJR西日本からいただいたわけでもございませんので、何とも論評しがたいというのが正直なところでございます。  それで、現在、打音検査によって音に異常を感じた場合については、小規模のものについてははつり落とす、それからある程度の大きさのものについてはフラットバーあるいはアングルといった鋼材で縫いつける、とめつけるという対策を行っております。私は、当面の安全性確保という意味では、現在の対策で十分安全なものだと評価いたしております。  ただ、これからも長年にわたって新幹線を安全に運行していくという立場で、現在とっている対策が長期的に本当にベストの選択かどうかということについては、十分な議論、検討をしたわけでもございませんので、もっといい、耐久性のすぐれた対策工法がないものかということについては、検討の余地があるのではないかと考えております。
  44. 倉田栄喜

    ○倉田委員 齋藤参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど、いわゆるコンクリート構造物が無筋である、こういうお話が出ておりました。昭和六十年ごろから現在に至っているNATM工法、これはコンクリートが基本的に無筋であるということでありますけれども、このNATM工法によるいわゆる天井から側面に至るコンクリートの厚さというのは、初歩的な質問で申しわけないのですが、大体どのくらいあるのですか。
  45. 齋藤武夫

    齋藤参考人 お答えします。  図面をちょっと見ていただくとありがたいと思うのですが、三ページでございます。左の下の方にトンネル構造がかかれておりますけれども、まず、先ほども申しましたように、いわゆるトンネルコンクリートの外側に吹きつけコンクリートというものが、三番というのがありますけれども、これが大体、山によって違いますけれども、五センチから二十センチぐらい吹きつけてございます。その後、止水シートを施工しまして、平均でいいますと大体四十センチぐらい、あるいは五十センチぐらいのコンクリートを打設するというのが標準ではなかろうか、こういうふうに思っています。
  46. 倉田栄喜

    ○倉田委員 齋藤参考人にもう一度。このNATM工法からロックボルトというのが使われていますね。このロックボルトを使うようになったのは、どういう意味合いですか。
  47. 齋藤武夫

    齋藤参考人 一つは、先ほど来説明してきましたけれども、トンネル設計断面をできるだけ一遍に仕上げたいという目的がございます。これは当然、経済的にも有利なわけでございまして、それの大きな手法として、ロックボルトを打ち込みまして、そのロックボルトのいわゆる引っ張りというのですか、それでトンネルの地圧を押さえる、つり下げる、こんなようなことで使っております。
  48. 倉田栄喜

    ○倉田委員 魚本参考人にお伺いしたいと思います。  コンクリート専門家としての魚本先生は、先ほど、やはりコンクリート構造物としては最小鉄筋量があるのが普通だ、こういうお話でございました。今までのトンネル等々については、基本的に、コンクリートの中に鉄筋は入っていないということですけれども、先ほど四十センチなり五十センチなり、あるいは最初の吹きつけが四センチ、五センチなり、そういうコンクリート自体の重みを支えるためのいわゆる接着力というか緊縮力というのか、そういうものは大丈夫なんでしょうか。
  49. 魚本健人

    魚本参考人 お答えいたします。  トンネルのライニングの場合には、穴に対して周りの地山が押すような格好になっておりますので、ライニングのところにかかってくる荷重は、基本的には軸力が卓越いたします。すなわち、全部が大体圧縮力です。若干の曲げも加わりますけれども、基本的には、コンクリートの方にかかる力は圧縮が卓越するということになっておりますので、そういう意味での接合力というのはきちんと確保することが可能です。  ただし、それが偏圧を受けたりした場合には必ずしもそうはならないということが起こりますので、場合によってはそういう鉄筋を使ったコンクリートライニングというのもあろうかと思います。  以上です。
  50. 倉田栄喜

    ○倉田委員 魚本先生に重ねてお伺いいたします。  コンクリート施工上もそれから性質上もきちんとやっていれば、それは、中に鉄筋等々そういうものが入っていなくても、しっかりしたもので大丈夫だ、こういうふうに理解をしていいと思うのです。  そういたしますと、施工上の技術の問題であるとか、あるいはいわゆるコンクリート品質劣化等々、いろいろな要因があるのだろうと思いますが、そういうものを加味しても大丈夫だというふうに考えてもよろしいですか。
  51. 魚本健人

    魚本参考人 お答えいたします。  基本的に、トンネルの場合には、温度が急激に変わるとかいうこともございませんので、基本的には大きな劣化作用を受けることはないというふうに言われております。ただし、漏水その他があった場合には、その中に酸その他が含まれていたりすればそれによる劣化が生じる、そういうことがございますけれども、基本的には、コンクリートそのもの劣化は余り生じません。  ただ、安全という観点で見ますと、我々から考えますと、無筋コンクリートというのは非常に丈夫なんですけれども、脆性的な破壊を示す。鋼材でいうと、鋳鉄とそれから通常の炭素鋼の、我々が使っている軟鋼というようなものとの違いみたいなもので、やはりどこかに欠陥が一つあるとぱんと割れてしまうということが起こるので、それに対する配慮が先ほど言いました最小鉄筋比というような、最小の鉄筋は必ず入れるというような考え方になっております。
  52. 倉田栄喜

    ○倉田委員 それぞれ専門家先生方から御説明を聞けば、なるほど大丈夫なんだろう、こういうふうに思うわけであります。普通、私もそうですし国民の皆さんもそうかと思うのですけれども、トンネルではなくて普通の構造、例えばこういう建っている建築物を考えれば、中に鉄筋なり鉄骨などが入っているのが当然なのに、なぜ入っていないのか、こういうふうな疑問が生じましたのでお伺いをさせていただいたわけであります。  次の問題ですけれども、いわゆる劣化の問題等々について、これは朝倉先生にお伺いしたいと思います。先ほど、構造耐久性については心配はしていない、こういうお話でありました。構造耐久性については心配はしていないということでありますけれども、冒頭申し上げましたように、検査のあり方等々いろいろあるのだと思います。異常音が四万カ所もあるということを調べれば、その原因というのは何なんだ、これは犯人捜しということではないとしても、原因はしっかり突きとめて、そしてその対策は万全にしなければならない、こう思うわけであります。  朝倉先生の研究で「山岳トンネル変状発生機構とその対策」、「トンネルと地下」の一九九九年六月号を拝見させていただきますと、コンクリートが大丈夫かどうかということについての御研究だと思いますけれども、いろいろ、経年の問題、それから漏水の問題、有害水の問題、それから凍害の問題、さらには塩害の問題、そして煙害、アルカリ骨材反応の問題、それから材料不良の問題、さらには、その延長線だと思いますけれども、モルタルの吹きつけについても、金網入りモルタル、金網の入っていないモルタル等々、いろいろ研究成果を御発表なさっておられます。  この、先生の、いろいろ品質等について起こり得るであろう問題等々を御研究になった結果を見ても、これだけいろいろな原因があるのに大丈夫なのかなという危惧を、見ながら思ったわけであります。今コンクリート剥落事故が続いているのだけれども、先ほど異常音四万カ所ということを山陽新幹線トンネルだけで申し上げましたけれども、先生が御指摘をなさっている側面からこういう部分がきているのではないかということについては、いかがお考えでしょうか。
  53. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答え申し上げます。  私の書いたペーパーを丁寧にお読みいただいて、どうもありがとうございます。  確かに、これまでのトンネル変状状況というのをつぶさに研究してまいりますと、いろいろな要因で覆工の劣化等も事例としてあり得るということで、私どもが丹念に拾い集めた事例を整理すると、先生がお読みになったような項目を挙げることができるということでございます。  ただ、いずれをとっても非常にその発生の頻度というのは少ないものでございまして、今読み上げていただいたような各要因が、すべてのトンネルに一般的に起こるというものでは決してございません。  一つ取り上げてみますと、有害水というのは、例えば温泉地の温泉水といいますか、強い酸性水などにコンクリートがさらされると、それで材質が劣化してぼろぼろになるというような例がございましたが、これとて、広くトンネル調査した結果一カ所だけで見つかったという、非常に少ない事例であるというようなことでございまして、起こり得る原因としてはたくさん研究の成果を並べておりますが、それがすべてのトンネルコンクリートに悪影響を及ぼすということでは決してございません。
  54. 倉田栄喜

    ○倉田委員 では最後に、若生参考人にお聞きしたいと思います。  今までの事故、幸いにしてというのか死傷者は出なかった。先ほど参考人の方から、いわゆる車体安全性強度快適性等々のお話をお伺いいたしました。剥落事故がないように、今対策をしっかりとっていただいているということだと思いますが、これはどうなんでしょうか、車体安全性というものは。これからどんどんいわゆる年数がたってくる。先ほど劣化の問題を原因として申し上げましたけれども、これからの車体の安全上というかどういう車体をつくるかというときに、何か落下物があるだろうということを想定しなくていいのかどうか、あるいはそもそも想定したら無理な話になってしまうのかどうか。この点については、参考人、いかがお考えですか。
  55. 若生寛治

    若生参考人 落下物につきましては、全体の車体強度、気密の構造とか、あるいはクーラーの重量を支えるとか、あとパンタグラフの重量とか屋根板重量、そういう全体の強度の中での余裕と申しますか、そういう中で押さえているわけでございます。  老朽化、劣化しましても、全体には強度が極端に低下をするとかそういうことは決してございません。やはり、そのためのメンテナンスでございますので、そういうことのないような車両でなければならないと思います。  また、今後の新しい仕組みといたしましては、車体重量を極力増すことなく、例えば車体の中にエネルギー吸収装置を設けるとか、あるいは運転台から前方を監視しまして軌道の上の障害物を検出するような方法とかそういったもの、あと緩衝装置の能力をいろいろ軽量化の中で再検討するとか、そういった勉強があるかと存じます。そういったことについて、一部取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  56. 倉田栄喜

    ○倉田委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  57. 仲村正治

    仲村委員長 次に、鰐淵俊之君。
  58. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 自由党の鰐淵でございます。  本日は、参考人の皆様方、大変御苦労さまでございます。  まず最初に、朝倉参考人、そして齋藤参考人にお伺いしたいと思いますが、これは一般論として私申し上げますので、その所感をお話しいただきたいと思います。  と申しますのは、御案内のとおり、日本が高度成長を遂げる前、それからそれ以後におきましてのトンネルの延長のキロ数というのは、これはとてつもなく高度成長からが多いわけですね。例えば新幹線しかり、それから高速道路しかりでございます。非常に数が多くなってきている。そんなことで実は、それだけ多くのトンネルをつくっていかなければならないということから、勢い交通もスピードアップが要求される。スピードアップが要求されるということになれば、路線計画も勢い直線でもってスピードアップするというのは、これは常識的なスタイルだと思います。  その中で、トンネルを掘るということになりますと、トンネルのいわゆる環境問題、あるいは地質、地下水、あるいはまたもろもろの条件があると思うわけでございますが、そういった中で、無理な路線計画をつくっていったために、こういった事故もかなり多発しているのではないか、こういうようなことを言われる方もいるわけでございます。  そんなことで果たして、安全性というものが一番大事であるわけでございますから、そういった無理な設計によってトンネル施工していくというケースが間々あったのではないか、こういうような批判に対しましてどうお考えになっておりますか。ちょっと所見をいただきたいと思います。
  59. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、速度を向上させるために路線計画が直線的になっているということで、確かにトンネルのロケーション、線形の選定はかなり厳しい条件が重なってきております。そうはいいながらも、施工上、地形条件なり地質条件が有利なように、縦断線形あるいは平面線形に工夫をするというところが、トンネル専門家のいわば腕の見せどころでもあるわけでございます。  そうはいいながらも、路線の持つ曲線上の制約がございますので、どうしても難しい施工条件の地形、地質のところにトンネルを設置せざる得ないという場面も年々ふえてきております。ただ、その場合に、先生御指摘のように、それが事故につながっているということではないのではないかというふうに思われます。  そういう難しい地形、地質条件では、確かに建設段階設計上の工夫あるいは施工上の苦労というものが伴いますが、一たんそれでトンネルが完成して、周辺の地山と含めて安定した状態が完成できれば、それは半永久的に安定な状態が保てますので、施工上の苦労は伴いますが、後々の事故に直結するという条件ではないのではないかというふうに思います。
  60. 齋藤武夫

    齋藤参考人 私も、朝倉参考人意見と全く同じでございます。
  61. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 そこで、私、北海道出身なものでございますから、つい最近、室蘭線の礼文浜のトンネルの覆工壁の崩落があったわけでございます。これは先生も先ほど申されましたが、この状況は異常な破損が原因である、こういうぐあいに言われております。たくさんあるのですが、特にトンネル周辺の岩盤が緩み込んで偏圧が作用しまして、覆工壁の裏込めが不十分であった理由で偏圧が集中荷重になったとみなされる、これは私の知り合いのある学者がそういうぐあいに言っておるわけであります。  したがって、この事故は、万が一次のようなことに注意しておったならば、この崩落はなかったのではないか。  これは、計画設計段階においてあるいはルート選定に当たって、海岸の急崖斜面近傍は避けるべきでなかったのか、これが一点。二つ目は、トンネル建設に当たってこういった偏圧問題に配慮して十分な裏込めを施工すべきでなかったのか。それがあればこれは防げたのではないかということですね。三つ目は、施工後の保守点検では、偏圧の検査を行いながら放射状の亀裂の危険性を十分検討していくべきでなかったか。こういったことが言われておるわけでございます。  この点につきまして、朝倉参考人にお答えをいただきたいと思います。
  62. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答え申し上げます。  今、先生、三点について御指摘をなさったと思います。一つは、礼文浜トンネルのロケーション。御指摘のように非常に厳しい地形条件下に設置されておりまして、施工時には非常に難航いたしまして、偏圧が作用しないようにということで、保護切り取りといいまして、トンネル上部のがけを少し、岩や土を除くというようなこともなされております。  ただ、これは、先ほどの私のお答えと重なることになりますが、施工に困難を来しはいたしましたが、それで完成して安定な状態が一たん得られれば、半永久的にそれは期待できるものでございますので、急崖地に位置設定したことが今回の事故の原因ということではないのではないかと思われます。  それから、偏圧が作用したことが原因であって、その偏圧の作用が裏込め注入がなされていれば防ぎ得たかという御指摘については、確かに、トンネル構造といいますのは、コンクリートと地山の間にもしすき間があれば十分な強さを発揮できませんので、裏込め注入がなされて密着するということが望ましい条件でございます。ただ、ほとんどのケースの地山条件では地圧現象が発生するということはございませんで、まれにそういう場合については、確かに裏込め注入が必要になるということでございます。  今回の事故箇所につきましては、地山が崩れてくることを避けるための、通常、当時の施工法で、木の矢板を使って山を支えるということがなされているところが、木が施工されておりませんでした。これは、トンネル建設時は、事故当該箇所はかなり地質条件がよいと判断されてそのような施工がなされたと思われますが、それがコンクリート打設過程で微妙に変形が生じたということ、そういった意味で、先ほどの意見陳述で申し上げましたように、非常に偶発的でかつ希有な事故だったというふうに認識しております。  それから、三点目の御指摘の保守管理について、放射状のひび割れがあったはずで、防ぎ得たのではないかという御指摘については、全く先生と私は同意見を持っておりまして、放射状のひび割れに加えて円状のひび割れがかなり以前の段階から生じていたものと考えられますので、それが局部的な力がかかってかなり危険な状態だという認識を持っていただけなかったというところが非常に残念なことだと考えております。
  63. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今朝倉参考人のおっしゃったことは、十分私どもも理解できるわけでございます。  したがって、こういうトンネル保守点検というのは、目で確認し、それから音で確認し、そして最後は、超音波ですとか、いろいろなそういうメカでもってまた確認していく、こういうことをこれからは相当力を入れてやっていかなければ、またこういった偶発的なアクシデントは必ず起きる、私はこのように思うわけでございます。  少なくとも、打音検査でも山陽新幹線あたりは今言った四万カ所もあるということは、これはとんとん打っていけばいいんですが、強く打ったらそのままどっと崩落する場合もあり得るかもしれない。それはないということを確信しますけれども、しかし、強くたたけばそれはあるかもわからないですね。ですから、その辺はあんばいよくたたいておるんだろうとは思いますけれども、それだけやはり安全というものに対しては細心の注意を払っていくということが、今回のいろいろな問題で教訓としてあるのではないか。それだけに、今先生方もおっしゃったように、建設時代からやはり保守重点の時代に入ってきたということは、これはだれしも否定できない問題だと私は考えているところでございます。  そこで、一つは、先ほどコンクリートの問題もいろいろ劣化の問題も出ておりましたが、工業規格でもって行われた、建設したトンネルの覆工の壁が短期間に破損していくということは、いろいろな原因はあるんでしょうけれども、果たして最近の工業規格のコンクリート状況でいいのかどうか、こういった点について、魚本参考人、いかがでしょうか。
  64. 魚本健人

    魚本参考人 コンクリート品質につきましては、JIS規格等で、特に生コンクリートと呼ばれるコンクリートが非常にたくさん使われております。  その品質につきましては、かなり精度のよいものだというふうに言われておりますけれども、事実それが大半だと思いますが、コンクリート品質が要求されているものと必ずしも合わない場合もある。例えば、強度だけ指定してしまいますと、強度は満足するんだけれども、配合で言う水セメント比がかなり大きくて、結果的に非常に劣化の進みやすいコンクリートが搬入されてしまうというようなところがあろうかと思います。  今現在の規格では、強度とスランプ、それから空気量が大体指定項目になっておりますけれども、これからいろいろ構造物をつくっていく、もしくは、今までつくってきたわけですが、ぜひ強度以外の、例えば凍結融解に対する抵抗性もしくはアルカリ骨材反応等々のほかの要件、少なくとも水セメント比というようなものが指定項目に入ってくると非常に使いやすい、そして耐久性のあるコンクリートが得られるようになるのではないかというふうに考えております。  どうしても現在は、例えばセメントも昔に比べるとどんどん細かくなってきております。細かくなるのはなぜかというと、早く反応するからです。早く反応すると、例えば早く型枠を外すことができる。ということは、結果的に工事も短い期間でできるというような方向に進んでおりまして、強度その他がかなり優先され過ぎているがために、コンクリート品質に多少間違った方向に動いている部分があろうかと思いますので、先生の御説は非常に正しいと思います。
  65. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 今、魚本先生のお言葉は大変大事なことであると思っているわけです。  と申しますのは、コンクリート施工、規格がある意味では形骸化しているのではないか、こういう心配がございます。これはもう御例示にもありましたように骨材に関連した劣化問題で、いわばJIS規格による、公認しております早強セメントのいわゆる中性化の問題、こういった問題がどうも無視されておるということになると、これはやはり問題なわけであります。  したがって、先ほど先生が申されたように、コンクリートは一様に評価できるわけじゃないんですが、コンクリート強度というのはその環境によってやはりそれぞれ違ってくるのではないか。したがって、コンクリート強度というのは、言ってみると、環境に応じた耐用年数の設定というものが必要ではないか、私はそう思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。魚本参考人
  66. 魚本健人

    魚本参考人 コンクリートは、例えば温暖なところとそれから非常に寒い、厳しいというところでは、当然セメントの反応そのものの進行が違います。例えば、沖縄で使っていてちょうどいいコンクリートは、必ずしも北海道ではいいコンクリートにはならないことになります。それはなぜかといいますと、周りの環境が違うがために、できてくるコンクリート品質が同じにはならないというところがございます。  そういうこともありまして、先生が言われたとおりでございますけれども、ただ、最近、私たちが少しずつ提案しているのは、今日つくられているセメントよりももっとセメントの反応がゆっくり進むセメント、こういうものを使ってはどうかとか、例えば、強度が余り出ないセメントの方がいいのではないか。  それはなぜかといいますと、先ほど言いましたように、水とセメントの比が小さいほど非常に耐久性のあるコンクリートをつくることができるんですが、逆に、非常に早く強度が出て、それから高い強度が出るセメントですと、わずかなセメント量だけで同じ品質コンクリートができてしまう、同じ強度コンクリートができてしまいます。それよりも、多少強度の出るのが悪くても、より耐久性の高い材料を使った方がいいのではないかということが理由でございます。  以上でございます。
  67. 鰐淵俊之

    鰐淵委員 最後になりますが、私は、この辺は素人なものでございますから余りよく専門的にわからないわけでございます。ただ、戦前の建物をよく見る機会がございます。  例えば、トーチカですとかあるいは防空ごうですとか、あるいはまた市ケ谷にある大本営のコンクリ、しかもあの鉄筋はドイツの鉄筋ですね、それがいまだにしっかりしたものになっておる。それから、青函トンネルも割合と大きな事故というものが、コンクリが落ちるとかなんとかという事故がない。相当以前に、これは洞爺丸の転覆以後やったトンネルですが、しかし非常に丈夫である。今非常に科学が進歩しているから、まだまだコンクリであれ砂利であれ何であれ、いい品質のものを使えるはずでありますが、以前にできた構造物の方が丈夫である、これはやはりよく見直さなきゃいかぬと私は思うんですね。  私は、これはやはりある程度、かなりの時間をかけて養生もしっかりして、気早く使わないといいましょうか、構造物をきちっとしてから利用する。今は何か、とにかく早く早く、早く掘って早く固めて早く使う、こんなところにどうもこういったアクシデントが非常に起こりがちではないか、そう素人なりに考えておりますが、今後また先生方の御研究をひとつよろしくお願いしたいと思っております。  以上、終わります。
  68. 仲村正治

    仲村委員長 次に、平賀高成君。
  69. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  きょうは、参考人皆さんには大変御苦労さまでございます。  六月に山陽新幹線コンクリート剥落事故が起こって以来、さまざまな点検検査が行われてきました。そうしましたら、十月に同じ山陽新幹線で、今度は北九州トンネルコンクリート剥落事故が起こり、そして十二月になりますと北海道の礼文浜トンネルコンクリートの二トンの塊が落ちるというように、鉄道輸送の安全を確保するためにも、トンネルや高架橋の安全に対して万全を尽くすということが今求められていると思います。  私は素人でありますから、コンクリートの寿命については半永久的だというふうに思ってきました。ところが、現状を見ますと、いろいろなところでコンクリート剥落事故とか高架橋でコンクリートが落ちる、こういうことが続いているわけで、大変驚いているわけです。  それで、私は、これらの事故からいいまして、今までのトンネルや高架橋のコンクリート構造物を維持してきた点検検査やまたその維持管理について、改めて重大な事態としてこのことの認識が問われていると思うわけなんですが、この点について、魚本参考人の御見解を伺いたいと思います。
  70. 魚本健人

    魚本参考人 お答えいたします。  トンネルに限らず、いろいろな構造物維持管理につきましては、先ほど冒頭にも御説明いたしましたように、基本的には、それぞれの所有者と言ったらよろしいんでしょうか、それを管理されている組織が、それなりの基準等を設けて判定をし、そして検査をし、そして補修補強の要否を決めるというやり方が行われております。これはJRさんの場合だけではなくて、どの構造物でも同じでございます。  ただ、その場合に、微妙に少しずつそれぞれの組織ではやり方が違っているというのが事実でございまして、JRさんの場合には、今回御説明がありましたように、例えば二年に一回検査をする、それから個別検査があるというように承っておりますけれども、例えば通常のマンションその他ですと、十年間ぐらい何もしていなくて、しようがなくて見るというようなことが起こりますが、これはどうしても持っている方のやり方によろうかと思います。  どれが一番いいかということは必ずしも言えませんが、基本的には、コンクリート構造物の場合にはきちんとした検査をし、そしてそれが大丈夫かどうかを判定して適切な処置をするというのが大原則でございまして、ずっと放置しておいて例えば百年もつというようなものは非常に少のうございます。  以上でございます。
  71. 平賀高成

    ○平賀委員 事業者がそのような基準を持って点検しているものだということと、あわせてふさわしい点検維持管理が必要だというふうな答弁だったと思います。  そこで、きのうの十二月九日の新聞各紙を見ますと、JR山陽新幹線で打音検査によって約四万カ所で異音がし、はがれる可能性があった約一万カ所をたたき落とした、こういう記事が大きく報道されていました。今まで福岡トンネルコンクリートの塊が落ちたり、さらには北九州トンネルコンクリートの塊が落ちている、こういうことがあるたびにさまざまな総点検をやってきたわけです。ところが、にもかかわらずコンクリートが落ちるわけですから、今までの目視中心の点検を根本的に見直すことが私は必要だと思うんですが、この点で魚本参考人の御意見を伺いたいと思います。
  72. 魚本健人

    魚本参考人 先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、目で見るというのは、非常に熟練した技術者の方がごらんになると、通常のことよりも非常にいろいろな原因から、例えば周りの状況まで勘案して、その劣化の程度というようなものまで判別することが可能でございます。しかしながら、余り熟練されていない方がごらんになった場合には見落としというものが起こってしまう可能性がございます。  そういうこともございまして、私どもの方で研究しいろいろ提案させてもらっているのは、最近ですと、例えばデジタルカメラその他を使わせていただいてきちんとした記録に残す、点検をされた人が特に問題はないと思ったとしてもそれをもう一回チェックすることができる、そういうような考え方はどうだろうかというような提案もさせていただいております。  そういう意味では、目視というのは非常に重要なものでありますけれども、特に記録に残らないものですから、見たままのものが残らないものですから、そういう非破壊検査のようなものを併用させていただくと、記録にも残るし、それから場合によっては記録をとった、点検をした人が余り技術的によくわからない方であってもその道の専門家の人が見るとこれはどうもおかしい状況だということがその写真なりなんなりからも判別できるというような利点があろうかというふうに思っております。  以上です。
  73. 平賀高成

    ○平賀委員 大変参考になる御意見だったと思いますが、今の魚本参考人の御発言にありましたように、私は点検をする技術者の技量という問題がやはり問われてくると思います。  今までは点検方法は目視と打音によって行われてきましたけれども、私は点検する人の技量や経験がやはり点検結果に大きく影響すると思うわけです。その点で、私は、やはり的確な点検を行うために点検者がふさわしい技量を持つためにどういう職員の研修やまた経験等が求められてくるのか、この点で朝倉参考人の御意見を伺いたいと思います。
  74. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 お答え申し上げます。  確かに先生御指摘のように、目視検査あるいは打音検査は非常に大事な検査でございまして、かつそれは、魚本参考人の御意見でもございましたように、個人的な主観、技量によるところが大きいと思います。それを的確に各技術者に行っていただくためには、先生御指摘のように、担当職員の教育研修が非常に大事だと思います。特に、今回の事故例以外にも、これまでにも変状とか事故の例はあったわけでございますので、そういった過去の事例を十分に知識として知っていただき、かつ、それの材料的な知識ですとか、あるいは力のかかり方に関するような力学的なメカニズム、そういったものを十分に研修を通じて理解していただくというようなことが今後大事になってくるのではないかと思います。  それから、さらに加えて申し上げますと、単にそういう経験、知識だけでは十分な検査はできないのではないかと私は思います。やはり各担当技術者の情熱といいますか、責任感、集中力といったものがなければそういう知識も十分に反映できないと思われますので、その辺のところは、各技術者がやりがいを持って取り組めるような保守担当技術者に対する適切な評価、感謝の気持ちというようなことが世の中全体として大事なのではないかと思います。
  75. 平賀高成

    ○平賀委員 今の御発言で、やはりこの問題は重要だという認識を私は理解することができました。  それで、今、山陽新幹線の総点検で、これはJR西日本だけではなくて、東日本とかJR東海とか、さらにはJR九州、そして、そういう会社だけではなくて、グループ企業や、さらにはコンサルタントや電気関係など延べ四万人の点検体制で、さらには保安車両やモーターカーなども他社から借り入れて行っている、こういうふうに私は聞いているわけなんですが、このような緊急点検を行う場合に、JR西日本一社だけでやることができないということは、現状保守点検体制が十分ではないということを示していると思うのです。  私は、緊急点検を含めた日常的な点検、そしてその保守体制について、人員や機材を含めて今後どういうふうな体制にすればいいのか、あるべきその体制について、魚本参考人に御見解を伺いたいと思います。
  76. 魚本健人

    魚本参考人 こういう検査を行う場合に、まず一つぜひ先生方にお願いしたいのは、そういうメンテナンスをやるという業種が実は非常に重要な役割であると同時に、非常にたくさんの経験、それから技量等がないと正しいことができません。  非常に簡単に言いますと、病院におられるお医者さんと同じように、例えば、この人がどういう病気になっているかということはいろいろな角度から調べないと本当のことがわからないというのと同じでございます。  しかしながら、そういう点検検査をされる方が社会的にも非常に高い評価を受けているということにはなっておりませんで、それがために、先ほど朝倉先生の方で言われた生きがいとか意欲とかというような方になりますけれども、やはりそれなりの評価をしてあげることが非常に大切だろうというふうに思います。それに応じたものも当然伴うだろうと思いますけれども。  それがまず根底にあって、そしてその上で、例えば新しい構造物をつくるというので何々会社に入るというのではなくて、そういうもののメンテナンスを私はぜひやりたいというような若い人がどんどん育ってこないと、先ほど言ったようなものはどうしてもおざなりな方向に動いてしまうかと思います。  ですから、こういう調査点検のための組織というのは、ある意味では、国としてももしくは社会としても認知をして、そして評価をして、その方々がやったことに対してはかなり客観的に見られるようにしてあげるためには、私も先ほどお答えしましたけれども、例えば第三者機関というようなものを設けて、そこできちんとそういう検査等をやるというのも一つ方法ではないかというふうに考えています。それがすぐにできるとは思っておりませんし、それがまた本当に一番いい解決策かどうかはちょっと言えませんけれども、そんな考えを持っております。  以上です。
  77. 平賀高成

    ○平賀委員 大変貴重な意見をありがとうございました。  それで、この点検問題で、先ほども朝倉参考人の方から新しい機材を使っての点検ということが言われておりましたが、私は、目視や打音という問題については、これは技術者本人のいろいろなレベルの違いがありますから、一定水準の点検水準を保つためにはこういうふうな機材の導入ということが今求められていると思うのです。  この辺について、先ほどは目視が多面的な点検には非常に有効だということが言われておりましたけれども、あわせて、有機的な相乗効果を発揮するという点で、一番ふさわしい機材についてどういうものがあるのか、朝倉参考人に改めて伺いたいと思います。
  78. 朝倉俊弘

    朝倉参考人 トンネル点検を補完的にサポートしてくれる新しい検査方法あるいは検査機器につきましては、例えば、目視検査をサポートするという意味では、写真撮影を行う、あるいはビデオ撮影を行う、あるいはデジタルカメラで記録として残すというような、何らかの具体的記録に残る手段というのがございます。連続撮影を行って、それを画像処理して画像情報をデータとして残すというような手段もございます。  それから、打音検査にかわる、あるいは打音検査を補完する手段といたしましては、例えば、超音波を用いて内部欠陥を調べる、あるいは電磁波を使ったいわゆるレーダー法と呼ばれているような、内部の空洞とかコンクリートの厚さを調べる、そういった方法がございます。さらに、赤外線センサーを用いまして熱分布を調べることによって、表面的な浮きといいますか剥離の状況を調べる、そういった方法が現在実用化に向けて、あるいは一部実用化されて用いられております。
  79. 平賀高成

    ○平賀委員 点検問題については、私は一区切りつけさせていただきます。  先ほど、車両の問題について、一番最初に伺いました質問者が、今の〇系の新幹線と七〇〇系とか五〇〇系の新幹線構造ではこれは大きな違いがあるわけなんですが、その質問をしたときに、強度の違いというのはそれほど問題はないんだ、違いはないんだというふうな御回答が若生参考人の方からありました。しかし、実際に、現にコンクリートの塊が落ち、そして列車などにぶつかる北海道の礼文浜トンネルのような事例があるわけです。ですから、そういうことを想定して実験やら検討などを行ったことがあるのかないのかについて伺いたいと思います。
  80. 若生寛治

    若生参考人 お答え申し上げます。  実験は、五〇〇系等で、シミュレーションにより、上から二百キロのコンクリートブロックを落とした場合につきまして、屋根板を破って中に入ることはないというような見解を得ているところでございます。これはJR西がやったものでございますが、私どもがその評価をいたしておるところでございます。  以上です。
  81. 平賀高成

    ○平賀委員 ちょっとよくわからなかったのですが、そういうことを想定して実際に強度の検討なんかはやったんですか。現に落ちているわけでしょう。もしかしたら直撃するかもしれないわけですから。その点について検討をしているのかどうなのか。
  82. 若生寛治

    若生参考人 お答えいたします。  車体強度は、私の意見陳述のところで御説明いたしましたとおり、気密構造の力とか、あるいは乗客の重量とか、あと構体の重量とか、そういったものを見て、ある一定の余裕をかけてつくるわけでございます。そういう中に、落下物自身はなかなか不特定で確定できないものですから、基本的に重量の積算の中には入っておりませんけれども、ある程度のもの、ある程度と申しましてもなかなか確定はできないわけですけれども、例えば屋根の上を人間が歩くとか、あるいは雪が積もるとか、そういったものは、積算はしていませんけれども、余裕の中で、全体の強度の中で見ているわけでございます。  コンクリートのブロックにつきましても、天井から、上から落ちるということは予想されてはいないわけなんですが、やはり強度的にはそれなりに対処できるものと考えているところでございます。
  83. 平賀高成

    ○平賀委員 よくまだわからないのですが、時間もありますので、最後に、私は、コンクリート劣化対策の問題で、これは原因究明というのがやはり一番大事だと思います。それによって、どういうふうな対策を講じることが必要なのかということになるわけですから。  その点で、私は、目視検査や打音検査だけではなくて、これはサンプルのコアの抽出とかその調査、それから塩害対策アルカリ骨材反応、それから中性化などの多角的な検討が求められていると思うのですが、この点で魚本参考人の御見解を伺いたいと思います。
  84. 魚本健人

    魚本参考人 お答えします。  コンクリートの今回のいろいろな劣化に関しましては、聞くところによりますと、いろいろ化学分析等もされておりまして、内部にどういうものが入っているか、それからどういう状況になっているかというようなことを調べているということを伺っております。  我々、何か問題が起こる、もし起こったようなときには必ず、例えば、どういう材料が使われていて、どういう配合でやって、そしてどれぐらいの物性、物理特性、強度なりヤング率なり、そういうものがあるか、それは通常だったらば起こり得る範囲なのか、それとも全然違う範囲なのか、そういうことを通常は調べると同時に、劣化に関します、例えば中性化深さですとか、塩分が、例えば外から入ってくれば、どこまで入っているかというようなことを調べるのが通例でございます。  今回の山陽新幹線の場合につきましても、サンプル的にではありましょうがそういう調査をされているというふうに伺っておりますので、どういう結果なのか、部分的には聞いておりますが、例えば塩分はまだかなりたくさん入っているとかいうことはわかっておりますけれども、それ以外のものについてもきっと報告いただけるものというふうに期待しております。  この新幹線の問題につきましては、トンネルのライニングの場合には、無筋コンクリートということもありまして、どちらかというと材料、それから施工、それと外力による劣化が大きな問題となりますけれども、高架橋の方は、それ以外にも、内部鉄筋が入っていて、それの腐食という問題がありまして、そちらの方まで考えなければいけないものですから、かなりそちらの方が大がかりな調査並びに補修補強が必要になるんではないかというふうに考えている次第でございます。  以上です。
  85. 平賀高成

    ○平賀委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  86. 仲村正治

    仲村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。委員会を代表しまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十四分散会