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今泉昭君
労働大臣が言われました
アメリカ型であってはならないし、そうすべきではないというお
考え方、大変私うれしく受けとめているわけでございますが、現実の実態を見てみますと、一方では生き残らなきゃならないという
企業の
一つの至上命題がありまして、もう一方では生き残るためには一番負担になっている
労働コストをいかにして少なくしなきゃならないかという、これはどちらかといえば過剰
雇用を解消していかなきゃならない、こういう二律背反の悩みの中で苦しんでおられるのが実態ではないかと思うんです。
そういう
社会の中で、今全体的な
一つの
流れというのは、人を中心とした
企業経営ではなくなりつつあることは事実なんです。
御存じのように、株主重視という形の、要するに、グローバル
スタンダードという言葉は私は否定したいのでありますが、それが何もグローバル
スタンダードじゃないと思うんですけれども、今まで
日本の
企業が人を中心とした
経営であったのが、
世界の、特に
アメリカ的
手法を押しつけられた結果、株主重視という形の
企業経営に押し込められつつあるのが現実ではないだろうかと思うんです。株主に対していい顔をしていなきゃいけない、いい数字をしていなければいろんな
意味で
世界の市場で
競争するために
ハンディキャップが出てくる、融資を受ける際にも、
企業の格を判定される上においてもというところの大変な大きな悩みがあるわけです。
特に私が重視しているのは、
我が国が抱えている過剰
雇用というものの実態なのであります。これはもういろんなところからいろんな数字が発表されていますから、どの数字が一番確実なのかわかりません。これはもう前提条件、いわゆる与件をどうとるかによりまして数字が変わってくるのでしょうけれども、一番ひどい推計によりますと、今
企業が抱えている過剰
雇用というのは八百五十三万人という推計を出しているあるシンクタンクもあるわけであります。
例えば、第一生命の
経済研究所では、これは昨年の七—九月期におけるところの実態でございますが、八百五十三万人の過剰
雇用を今
企業が抱えているという数字があります。それから、これはさくら銀行のシンクタンクですが、さくら総合研究所によりますと、この研究所では売上高
人件費比率に基づいて推計を出しているわけでございますが、恐らく五百万人
程度企業が過剰
雇用を抱えている。さらにまた、住友銀行が出しているのを見てみますと、六百七万人という推計が出ている。いずれも数字こそ違いますけれども、実は大変多くの過剰
雇用を抱えているという実態にあるわけであります。
いずれにせよこの過剰
雇用、過剰
雇用というのはいわゆる労務費負担の過剰さ、こういうことになるんでしょうけれども、これを何とかしなきゃならないという
企業行動が出てくることは間違いないと思うわけでございます。
そういうことを
考えてみますと、ある
意味では、この
派遣労働者の
自由化というのはその中の解決の手段として一番結びつきやすい条件をつくることにもなるわけでございまして、私は、そういうことを
考えてみますと、この
派遣労働法の
改正というのは決してみんながみんな悪いとは言っておりません。大変多くの、衆議院でも修正もなされましたし、いろいろな
意味での
工夫もされていることは認めているわけでございます。しかしながら、
雇用労働者に占める
割合に限界のあるこの
派遣労働者の
自由化よりももっとしなきゃならない
雇用対策というのが先にあったんじゃないか、こういうふうな
考え方を実は強く持っている者の一人であります。
特に今日の
雇用対策というのは、昭和五十年代につくられた柱から一歩も出ていないんですよね。毎回私は申し
上げている。いわゆる六〇年代はゴールデンシックスティーズと言われたぐらいに
世界的に高度
経済成長が続いていた
時代でございましたから、
我が国は一%、百万を切った七十万
程度の失業者の数でございました。これが、昭和四十八年十月の第一次石油ショックからがらっと変わってきた。五十年代になりますとこれが二%に乗った。
そのときに私はたまたま
労働界の現場にいましたから、それに対する
政府の対応、
労働省の対応というのは実は大変評価をしているわけでございまして、がらっと今までの
雇用対策というのを変えてきているわけであります。失業保険制度というものを抜本的に
改正して
雇用保険制度にした。いわゆる労使折半の負担ではなくして、
企業側にはさらにプラスアルファの負担を加えて、要するに
企業の中から人を外に放り出さないように、そういう
人たちのために
雇用調整給付金を用意するとか職業訓練のための費用をその会計でもって賄うとかという抜本的な
改正がなされたわけです。
この二%
時代の
我が国の
経済実態というのは二十年間続いてきたわけです、五十年代から。ところが、平成六年になって
我が国の
失業率が三%にぼんと乗った。そして、わずか三年で今度は四%になった。しかも四月の
失業率が五%になろうというような状態において、もう
派遣労働法の
改正どころじゃないんじゃないかと思うのであります。もっと抜本的な
雇用政策の
改正こそが喫緊の課題じゃないかというふうに思うわけです。
そういう
意味では、今いろんな構想が
大臣の口からも発表されていることを聞いていないわけではございません。そういう
意味で、抜本的にこの五%
時代の
失業率に対応して
考えていらっしゃることがあったらちょっとお聞きしたいと思うわけであります。