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1999-05-13 第145回国会 参議院 労働・社会政策委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十三日(木曜日)    午前九時七分開会     ─────────────    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      山崎  力君     高橋紀世子君  五月十日     辞任         補欠選任      但馬 久美君     日笠 勝之君  五月十一日     辞任         補欠選任      小宮山洋子君     松田 岩夫君      日笠 勝之君     但馬 久美君      高橋紀世子君     菅川 健二君  五月十二日     辞任         補欠選任      菅川 健二君     高橋紀世子君  五月十三日     辞任         補欠選任      川橋 幸子君     足立 良平君      高橋紀世子君     菅川 健二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         吉岡 吉典君     理 事                 田浦  直君                 溝手 顕正君                 川橋 幸子君                 笹野 貞子君                 谷林 正昭君                 菅川 健二君     委 員                 大島 慶久君                 斉藤 滋宣君                 鈴木 政二君                 中島 眞人君                 山崎 正昭君                 今泉  昭君                 但馬 久美君                 山本  保君                 市田 忠義君                 大脇 雅子君                 鶴保 庸介君    国務大臣        労働大臣     甘利  明君    政府委員        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君    説明員        人事院事務総局        職員局審議官   平山 英三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日までに、小宮山洋子君及び高橋紀世子君が委員辞任され、その補欠として松田岩夫君及び菅川健二君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事菅川健二君を指名いたします。     ─────────────
  5. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 川橋幸子

    川橋幸子君 おはようございます。民主党・新緑風会の川橋幸子でございます。  本日は九十分の質問時間をちょうだいしておりますけれども議題となっております安衛法作業環境測定法改正以外にも、さまざまこの時期、労働問題、雇用問題をめぐる問題がございますので、質問をたくさん通告させていただいております。私も要領よくやりたいと相努めますので、ぜひ御協力くださいますよう初めにお願い申し上げます。  それでは、まず最初は深夜業の問題でございます。  この四月から改正労働基準法、それから改正雇用機会均等法育児休業法介護休業法とそろって女性にといいますか、あるいは男女とも家族的責任職業との両立という新しい課題に向けての法体系整備されて施行されたところでございます。私も連合の皆様と御一緒に、四月一日改正均等法施行前夜、基準法施行前夜の三十一日の日にはマイクを握りましてあちこち街頭で、これは政府を批判するという話ではなくて、私ども労働者も、それから一人一人の個人がこの法律をよく知りながらよく活用してまいりたいというそういう趣旨街頭活動を行ってきたというところでございます。  そこで、改正雇用機会均等法施行とともに労働基準法女性の深夜業への就業制限が解消されたことに伴いまして、この四月から新たに深夜業女性も就業できるという環境になったわけでございますけれども雇用機会均等法改正のときの審議では非常に懸念された問題でもございました。  一つは、何といっても健康確保の問題、特に女性の場合は母性機能との関係もありまして深夜業健康確保への影響が懸念されたこと。それから、これは女性だけに限らず男女ともにということではございますけれども、現状ではとりわけ女性にとって重い負担がかかっております家族的責任との調和がどのように図られるかと。  一方では、深夜業解禁によりまして就業機会がふえるんだからというお話もございますが、明暗それぞれの影響があったことが予測されたはずでございます。そして、今五月、わずか一カ月少しということかもわかりませんけれども、新たに深夜業女性にとって解消されたこと、これに伴う当面施行直後の動向をどのように把握しておられるのか、わかりやすくまず御説明いただきたいと思います。
  7. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) この四月一日から女性も深夜勤務につけるということになったわけでございますが、私どもでただいま全国の女性少年室を通じていろいろ実態把握に努めておるところでございます。その他各方面からの情報等もございますが、そういうものをもとにどういう状況かを御報告させていただきたいと思います。  現在のところ、これまで男性が大変多く従事していたような産業、例えば自動車、鉄鋼、印刷、電力などの大手製造業、あるいは鉄道やバスなどの運輸業、特に運転の方などでございますが、こういうところの深夜交代制勤務女性を新たに配置する、あるいはそのために女性を採用するといったように、女性方々の職域の拡大が見られるというようなところでございます。  こういう企業におきましては、これに伴いまして通勤等の安全の確保ということで、送迎バスの運行あるいは駐車場等防犯灯設置などの措置を講じられますとともに、従来整備されておられませんでした女性用仮眠室休養室あるいは更衣室、トイレの設置、あるいは作業ラインの改善といったようなことも行われておりまして、女性が働きやすい就業環境整備というのが進められているというふうに承知しております。
  8. 川橋幸子

    川橋幸子君 まずは労働省把握では円滑に施行が始まったというふうにとらえられているようでございます。それは結構なことだろうと思いますけれども、先ほど冒頭申し上げました深夜業についてのさまざまな明暗を分けるような影響が懸念されておったわけでございます。  昨年四月、ちょうど一年前ぐらいに、これは少々苦言を呈するとすれば遅過ぎるのではないかと私は思いますけれども、深夜業労働者の健康に及ぼす影響ついてのアンケート調査をされて、その結果が提出されておるわけでございます。事業主、働く人々、それから産業医所見も含めてさまざまな見方の中から本当に深夜業についての問題点というのは何なんだろうか、何が問題で、どこに手を打てばその明暗のうちの暗にセーフティーネットを張りながらメリットの方を生かせるのだろうか、そういうことが一般の働く人々の側でも知りたいという、そういう状況にあるのではないかと思われます。  一年間たちまして、この結果を私も読ませていただきまして、今、改正労働基準法施行に当たりまして浮き彫りになっていることは、常識的といえば常識的、だけれども常識的であるがゆえに問題の所在が心配されるといいましょうか、それに対する精神的な不安もあるのではないかと思われます。  そこで、私の口から申し上げますよりも、まず労働省の方から深夜業浮き彫りになっているその問題点、あるいはそこで条件整備をしなければいけないこと等々、労働者側あるいは会社側からの回答を含めてわかりやすく浮き彫りにしていただきたいと思います。いかがでしょうか。
  9. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 私ども、今回の改正案を提案させていただく前に専門家によります研究会を立ち上げまして、深夜業の実情、問題点等把握するためのアンケートを実施いたしました。  それによりますと、一つ労働者側から見た問題点でございますが、深夜勤務を行う上での問題点として、労働者側からは、疲労が蓄積されるというふうに答えておられる方が四九%、また睡眠が十分とれないと答えておられる方が四五・九%と、約半数の方が健康との関連での問題を意識されている状況にございます。  また、そうしたことを反映いたしましてか、就業環境整備等に関する措置で、会社側に実施を希望したいというものを見ますと、仮眠施設休憩施設整備、この点を挙げる方が二九%、また勤務表作成、いわばシフト表作成だろうと思いますが、そういう作成に当たりまして労働者の方の希望を反映してほしいというものが二〇・三%、あるいは夜間も利用できる食事施設整備、あるいは夜間も利用できるふろ、シャワー施設整備、こういったことを希望する方もおられました。  また、会社が実施している深夜業従事者の健康を維持するための措置について、労働者側から見たものでございますが、健康上問題があれば勤務配慮してもらっている、こういうふうに答えられる方が四四・五%おられました。また、時間外労働、休日労働について、一定の上限を設けて過度にならないように配慮されているというふうに答えられる方が二七・一%、そのほか、随時健康診断を受診できる体制にあるとか、随時産業医に相談できる、こういうふうに答えられる方もかなりおられました。  また、事業者が深夜業従事者を選定するに当たりまして、事業者の方がどういう点に留意するかということを見ますと、ふだんの健康状態を重視していくというのが五四・六%でございまして、過半数を超える事業主健康状況に留意しながら深夜業従事者を選定している状況がうかがわれました。また、労働者意見希望、あるいは産業医の方の意見健康診断の結果を考慮して深夜業に従事させるかどうかを決めるというのがそれぞれ半数近い状況にございました。  そのほかにも、労働時間、深夜勤務回数等について何らかの限度を設けたり、健康上の理由があれば昼間の勤務配置がえを行うなどという回答もたくさんございました。そういった状況にございます。
  10. 川橋幸子

    川橋幸子君 今の局長のアウトラインの説明で、深夜業実態というんでしょうか、深夜業につく人々健康状態あるいは精神的なメンタルな問題、それから会社側での雇用管理上の配慮の問題、雇用管理というんでしょうか健康管理というんでしょうか、配慮の問題が浮き彫りになってまいりまして、やはりポイントは、女性男性を問わず、深夜帯、寝る時間に働くという、生体リズムを崩すというそのことが直健康に影響を及ぼすといいますよりも、疲労する、疲労が回復しない、それから夜ぐっすり眠れない、不眠あるいは眠りが浅いというようなことが疲労回復にとって非常に大きな問題であるとすれば、これは同じ根を持つ問題でございます。  それから、会社側健康管理の方も、深夜業が必要な事業主についていえば、アンケート調査は、全然そういう配慮をしていないというような回答が全くないわけではない、ある程度見られておりまして、そこはこれから指導していかなければいけませんけれども、大半は深夜業労働者にしてもらうためにはそれなりの配慮が必要だということが常識としては行き渡っているということは見てとれるわけでございます。  朝早くから大臣にも同席いただいておりますけれども、きょうは法案の性質上もありまして、大変技術的な質問が多うございまして、大臣に発言いただく機会がなくて大変御無礼でございますけれども、でもこの一般的なところでいかがでございましょうか。深夜業というものが人間睡眠とか疲労とかに深くかかわる、それから特別の安全管理とかなんとかということではなくて、ごく常識的な疲労を取るための措置というものについて事業主というものは意を用いなければならないし、現にそれをやっている事業主が多い。非常に常識的な問題が浮き上がってきて、これをしっかりと労働行政の中で担保していただくということが行政の使命ではないかと私は思うのでございますけれども、ここらで常識的なところで少しお答えいただきたいと思います。
  11. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 深夜業のいわゆる解禁に関しましては、世の中からの要請、必要性によって対処をされているわけでありますけれども、当然人間生態系には若干逆らって仕事が行われるわけでありますから、それによる影響は当然出てくるものと思われます。そして、それに対して事業主がきちっと対処する、あるいは体力の弱いところについては国がその支援をするというのは労働政策上当然に行われるべきことであると思いますし、法律にもそうでありますし、それをさらにしっかりとカバーする指針というものをつくって遺漏なきを期したいというふうに思っております。
  12. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変ありがとうございました。ということで、大臣におまとめいただいたところでもう既に費用助成お話大臣の方からお答えいただいているところで、今回安衛法改正におきまして大きく取り上げられておりますのが自発的な健康診断の問題でございます。法定は年二回、深夜業につく労働者には事業主定期健康診断を二回やらなければいけないとなっておるわけでございますが、やはり健康上の不安、それから現に疲労がたまっているときの自己健康管理をしっかりするという意味で自発的な健康診断についての規定を設け、それに対しての費用助成が今回の法改正で、具体案はこれからということかもわかりませんが、法文上明記されているというわけでございます。  それから、自発的健康診断であっても、医師所見によりまして交代制シフトについて考えるとか回数とか時間帯を考えるとかという意味での医師所見等々も聞くと、法定健康診断と同じように自発的な健康診断についても十分にそれが有効に機能するように今度の法案では措置されているわけでございますが、衆議院の段階の審議では健診項目が年二回、非常に定期的な健康診断検査項目というのは硬直的といいましょうか、基礎的なところで血圧をはかったり体重をはかったりあるいはコレステロール値をはかったりというような、そういう基礎的なところは常に見ていかなければいけない、保たれなければいけないのかもわかりませんけれども、やっぱり胃のぐあいが悪いとかどうも頭が重いとか、深夜業の場合は不安感個人自覚症状によっては希望する健診項目法定項目ではない、個人ニーズに沿ったものにしてもらえないかという、こういう希望が強かったことが一つです。  ということで、健診項目法定の健診とは違う項目について検討してほしいというそういう質問衆議院でたくさんあったこと。それから対象労働者につきましても、常夜勤とか交代制シフトとかそういう勤務とか、そういう対象労働者を限定的に決めるのではなくて、その職場職場で合ったような対象労働者に自発的健診の費用助成を認める、そういう要望ないしは労働省の見解を聞く質問が多かったこと。それから、費用助成の具体的なやり方につきましてさまざま議員の側からも質問し関心を持ったわけでございます。  この三点、まず健診項目対象労働者費用助成、それぞれ連動するものでございますので、自発的な健康診断が実効性あるように行われるためにはどのように労働省では考えておられるか。すべて研究会検討にお任せしてその結果を見てということではなくて、健康管理のための労働省としての方向性について、具体的な回答でなくて結構でございますので、こういう方向性でその研究会検討をお願いしたいというその姿勢をお聞かせいただきたいと思います。
  13. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回の改正法案におきましては、深夜業に従事する方について、年二回の定期健診のほかに、自発的に定期健診を待たずに健診を受け、それが事業主が深夜業回数を減少したりする措置につながるような道をつくるということで提案させていただいておるわけでございます。ただ、そういった意味では、この自発的健診も定期健診の間をいわば随時補っていく役割を果たすものでございますので、自発的健診の項目につきましても定期健診とのいわば均衡というようなものを考慮していかなければならないことは事実でございますが、ただ、そういった制度趣旨に即したものとなるようにいろいろ工夫はいたしたいと思っておりますので、具体的なあり方につきましては、今後労使の推薦する医師の方を含めた専門家委員会設置いたしまして、深夜業に従事する方々の定期健診を含めた健康診断あり方について御検討をいただきたいと思っております。その意見を聞いた上で、関係審議会労使とも意見を伺った上で作成をしてまいりたいと思っております。  対象者範囲につきましても、労働省令で定めますのでこれからの検討になるわけでございますが、現在、年二回の定期健診の対象になる常時深夜業に従事する方が、例えば一週一回、四週四回の深夜業というようなことが一つ基準になっていますように、そうしたことを、深夜業回数基本として対象者範囲を考えていきたいと思いますが、現在のものとの均衡を考慮しつつ、今後中央労働基準審議会に諮りまして御議論いただいた上でこの自発的健診の対象者についても具体的に定めてまいりたいと思っております。  また、こうした自発的健診を受けた場合の費用助成でございますが、これは来年度の予算要求に向けまして内容を固めまして具体的な要求をしてまいりたいと思っておりますが、ただいま申し上げました自発的健診の場合の項目をどういうふうに考えていくか、また対象者を具体的にどう設定するかと密接に関連いたしますので、その辺が固まり次第、助成あり方につきましても連動させて私ども固めた上で予算要求をしてまいりたいと思っておるところでございます。
  14. 川橋幸子

    川橋幸子君 法定の健診との均衡を見て等々というその表現ぶりは、自発的といったからといって法定以上にはなかなか面倒見れないよ、そんなふうな感じが聞こえるわけでございます。まず最初に何か上限があるというようなそういう印象を受けてしまうわけでございますけれども、私としましては、できるだけニーズに応ずるということがこの自発的健診の意義だろうと思うことを申し上げさせていただきたい、そういう視点からの審議会等々の中での議論を労働省としてもリードしてもらいたいというふうに思います。  費用助成につきましては、これは私の意見でございますけれども、中を見ますと、法定二回を実施していない、つまり法律違反事業場も一割強あるというのがどうやら調査結果に見る実態のようでございます。そういうところから考えますと、むしろ事業主にというよりも、個人が自発的に健診を受けられるような、あるいはそれ以前に法定健診を受ける権利があるということをよく本人が知りまして、そして自己健康管理をするということが重要かと思いますと、事業主経由ではやらないところもあるということから考えますと、むしろダイレクトに個人に支給できるようなそういう方法を考えられないものだろうかということを思いますし、それから、法定二回をやっていない事業場でも、二回やっていないんだからあなたのところは会社に言ってやってもらいなさいよという話ではなくて、二回やっていないところでも自発的に個人が受けたいと思った場合には健診が同じように活用できるというようなことも考えてほしいと思います。  そろそろスピードアップしないと最後までたどりつけませんので、お答えはちょうだいしなくても大丈夫ですね。法定回数未満の場合には自発的健診は認めないなんということはありませんね。 じゃ一言だけ。
  15. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 自発的健康診断という新しい道筋につきましては、本人の主体的な健康管理というものにも期待する一面がございますので、事業主が定期健診の義務づけをいわばサボっている状況であっても、本人の方の自発的健診については費用助成対象にしていくということは、これは基本的な考え方として持っております。  また、どういう形の支給形態をとるかにつきましては、これは現物給付的なやり方からいろんなやり方が技術的にあろうかと思いますので、今後、費用助成内容検討する中で十分詰めてまいりたいと思っております。
  16. 川橋幸子

    川橋幸子君 それでは、まだ自発的健診には聞く項目をお伝えしておきましたけれども、そろそろスピードアップを図らなければいけないということでございますので、次の質問に移らせていただきます。  次は、ILO百七十一号条約という、夜業に関するILO国際基準があるわけでございます。今回安全衛生法関係改正が行われて、めでたくこのILO条約夜業批准の要件が整うとよろしいのですが、安衛法だけではなくてさきの基準法改正も含めてですけれども、どうやら批准条件はまだ未整備ということでございますが、どこが問題であって、今後それをどのように解消していくおつもりか、お尋ねしたいと思います。
  17. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございましたILO第百七十一号条約でございますが、これは、夜業労働者保護するために、いわば健康確保上の措置あるいは配置転換等措置母性保護に関する措置等について規定をいたしておるわけでございます。  全体として、今回の提案申し上げている改正を含めまして、こうした夜業労働者についてのいわば保護考え方方向としてはこのILO条約に私ども沿っておるものと考えておるわけでございますが、ただ、具体的な求められる措置につきましては、考え方といいますか、発想の違いみたいなものが幾つかあるわけでございます。  一つは、例えば健康状態について、私ども法体系では、まず基本事業主に雇い入れ時あるいは定期的な健康診断を義務づけていく、その間に今回自発的健診というようなものも織り込んでいく考えでございますが、ILO条約の求めるものは、いわば労働者権利として、自己の請求によって健康状態についての評価を無料で受けられるような制度、こういう仕組みでございまして、事業主の義務づけの形をとっていない、こういう考え方がこの条約との関係ではどういう整合性を持つことになるんだろうかという問題が一つございます。  また、健康上の問題があった場合に、ILO条約の方では配置転換ということが行われる、こういうことを求めておるわけでございますが、我が国の安全衛生法の体系では、配置転換だけではなくて労働時間の短縮、あるいは今回提案申し上げていますように深夜業回数の減少といった幅広い措置労働者の方と話し合ったりする中で決めていってもらう、こういう仕組みになっておりまして、この辺もILO条約と若干考え方、発想の違いみたいなものがあるわけでございまして、この辺について、なおこの条約との整合性については研究すべき課題が残っているというふうに受けとめておるところでございます。
  18. 川橋幸子

    川橋幸子君 国情が違うと一口に言われるわけでございますけれども労働市場の違い、あるいは働く労働者と資本の側の立場の違いから生ずる労使双方の意識の違い等々から考えますと、日本は日本らしく、日本らしくというのは変ですが、日本に適した方法でのこの条約趣旨を取り入れる、こういう方向で私も結構だとは思うのでございますが、その自発的健康診断との関連で言えば、労働者が請求するときに無料で健診を受ける権利というものは、この自発的健診の将来発展的な、うまくいった場合ですよ、発展的にやれた場合にはむしろ事業主経由よりも、自発的健診の義務づけって変ですね、それはボランタリーなものであって、義務づけではないんですが、無料でということに重きがあるかと思います。今回費用負担の問題も、健診項目対象労働者とあわせて額が決まって労災から支給されるということなんだろうと思いますが、その辺の実態が見えた段階で、ILO条約の要請にこれがマッチするような形でなおなるように御努力をちょうだいしたいというのが私の気持ちでございます。  さて、深夜業女性解禁されることに伴ってといいましょうか、あるいは女性だけにかかわらず、今のさまざまな産業界の変容、あるいは二十四時間都市と言われるような国民生活の変容の中で、常夜勤の深夜業あるいは交代制の深夜業等々がふえていく、こんなことが見込まれるわけでございます。  そこで、さきの雇用機会均等法改正の際の基準法改正の議論のときには、やはり男性も含めて深夜業あり方というんでしょうか、深夜業がもたらすデメリットをどうやって少なくしていけるんだろうか。新たな工夫が必要だということから、それにこたえて労働省としましては、まずそれについては業種別にガイドラインを決めるんだと。それからそれを踏まえて総合的なガイドラインを決めたいというような、こんなお話があったと思います。  自主的ガイドラインを決めるというのは、それは時期はどのように考えておられるのか、どんな内容になっていくのか。それから、自主的なガイドライン、ガイドライン自身が指針という意味で非常に緩やかなものでございますけれども、その緩やかなものを労使で自主的につくっていただくと。緩やかな上にも緩やかな自己規制のようなものになるわけでございます。それができてからようやく総合ガイドラインといいますのが行政の指針としてのガイドラインになっていくわけでございます。かなり期間が長い感じがするわけでございますけれども、その間のこうした深夜業に伴う健康管理対策、就業管理対策等々についてはどのようにお進めになるつもりか。それもあわせて、ガイドラインの策定のスケジュール、めど、内容とあわせて、それまでの間の行政の対応についてお聞かせください。
  19. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業に従事する方々就業環境整備等の問題、御承知のように深夜業、いろんな業種、業態によりましてさまざまな形で行われておるわけでございます。それらの労働内容というものもまたさまざまあるわけでございまして、画一的、一律的な形でこれを規制していくというわけにはなかなかいかない実情については御理解いただけるかと思います。  そうしたことも踏まえまして、主要な業種につきまして職場環境等を熟知している労使一つのテーブルに着きまして、自主的にそうした中での深夜業に従事する方の就業条件就業環境等の整備を図っていくためには、どういう項目についてどういうあり方労使が考えていけばいいか、そういった意味のガイドラインを自主的につくっていただく。そのためのテーブルを私ども用意し、いろんな実態等について調査する必要があればお手伝いをしたりして、話し合いを促進していく、そういった事業を本年度の予算の中に計上させていただいたわけでございます。  現在、関係労使にそうした事業内容説明いたしておりまして、幾つかの労使がそういったものにこたえて現在テーブルに着くためのいろいろ話し合いを労使で行われている状況も出てきております。私どもそうした状況の中から、早ければ六月ころからこうしたテーブルに着いて労使の話し合いが始まるものができるんではないかというふうに考えておるところでございます。  その内容、どういう自主的なガイドラインができ上がるかでございますが、これはテーブルに着いていただいて職場環境を熟知している労使の話し合いというものを見なくてはいけないわけでございますが、私ども、先生先ほど御指摘ございましたアンケート等を行いました研究会の報告、この中でも労使が考慮すべき事項等幾つか挙げておりますので、そういったものを提示しながら話し合いを進めていくとか、そういった形でできるだけ深夜業に従事する方が抱えている問題にいわば的確に対応した自主的ガイドラインができ上がるように努力をしてまいりたいと思っております。  スケジュールでございますが、そうした関係労使の話し合いが今後どういうテンポで進むか、早いもの、あるいは幾つか問題を抱えて若干時間がかかるものと出てくるかと思いますが、私ども長くとも二カ年度内でそういったものができ上がるようにということを考えて必要な予算等の対応をしてまいりたいと思っているところでございます。そうしたものを逐次積み重ねながら、先般の労働基準法改正の際に決議のございました総合的なガイドライン、こういったものの検討に資するような状況をつくっていきたいというふうに考えております。  そうしたものができ上がるまで、深夜業に働く方々がもし健康等の問題があった場合に行政としても的確な対応をしていかなければいけないことはもちろんでございまして、少なくとも労働基準法あるいは安全衛生法に基づく関連の労働基準につきましては、深夜業についてはとりわけ何が何でも守っていただく、こういうことで監督指導等に当たらなければならないと思いますし、今回改正法案を成立させていただきましたならば、こうした健康管理あり方についても一つの新しい道筋ができますので、そうしたことの周知を進める中で深夜業に従事する方々の健康というものに労使が十分配慮した対応ができるように周知、啓発に努めていきたいと思っております。
  20. 川橋幸子

    川橋幸子君 ということで、局長の御答弁どおりこれから鋭意仕事をやっていただくといたしまして、私の感じは、総合的ガイドラインというのは全業種に非常に共通する事項、基本的な事項についてガイドラインを決めることが先で、具体的な各労使の中の業種別あるいは職種別の特殊なディテールはむしろ総合ラインが決まった後で入れるというのが普通のやり方といいますか、適しているやり方じゃないかと私は思うことだけ申し上げさせていただきますが、とにかく急いでいただきたいこと、それからそれまでの間は現行の法体系の中でしっかりとやっていただきたいということを希望させていただきたいと思います。  さて、もう一つ、深夜業に対してはガイドラインといいますか、これは法律の中では指針と定められることでございますが、深夜業女性への解禁に伴いまして、深夜業に従事する女性労働者就業環境等に関する指針というものがつくられて、この改正労働基準法施行に備えられたわけでございます。この指針の指導は十分やっていただいたのか、周知はできているんだろうかということがまず一つでございます。  それから、これは深夜業女性解禁されるその当面の措置という、そういう性格を持つ指針だと言われております。しかし、ここに書かれております就業条件整備、特に家族的責任との両立等々はこれは女性だけのものではない、家族的責任を有する男女労働者双方に適用されるべき指針だとしますと、かなり先のことになるかもわかりませんが、将来自主的ガイドラインに統合していくとすれば、自主的ガイドラインの中にそういうものを、家族的責任との両立についてガイドラインの項目となるように統合することを女性局からも提言していくべきだと思いますけれども局長、いかがでしょうか。
  21. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) まず最初の、深夜業に従事する女性労働者就業環境等に関する指針についての周知徹底でございますが、昨年の三月にこの指針を定めまして、ことしの四月一日から女性に深夜業解禁になるということに備えまして、一年余りの間全国の女性少年室を中心にこの指針の周知徹底に努めてまいったわけでございます。今後とも、労働基準監督機関等とも連携を強めながら、指針に示してございますような通勤上の安全の確保、あるいは業務遂行上の安全の確保、その他仮眠室等法令に基づく各種施設の整備など、周知徹底、指導に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。  この指針はそういうことで周知徹底に努めるわけでございますが、育児、介護など家族的責任を持つ方々の深夜勤務の問題につきましては、これはもう先生十分御承知だと思いますが、育児・介護休業法の中に、そういった場合、一定の範囲労働者については請求すれば深夜勤務をしなくていいという深夜業制限の措置というのが既に設けられ施行されておるわけでございます。  そういう家族的責任を持つ労働者方々の深夜勤務につきましては、こういった規定も踏まえ、また今後の実施状況施行状況等も踏まえながら、私どもといたしましても、仕事と家庭の両立というのが女性局の重要な任務でございます。そういった観点からの必要な意見と申しますか、必要な連携というのは担当部局と密接に強力にとりながら進めてまいりたいと思っておるところでございます。
  22. 川橋幸子

    川橋幸子君 もう少しこの話はちゃんとした議論をしなければいけないんだろうと思いますが、とりあえず私の要望ということでこの場は終わらせていただきたいのですが、後ほど大臣にも質問するわけですけれども、今度は内閣府に男女共同参画会議というものが置かれまして、女性の問題というのは実は女性のためだけの問題ではなくて男女両方の問題である、この社会がどこか硬直化しているところはむしろ男女のバランス、社会運営の中に、企業運営の中に、あるいはこうした国会もそうかもわかりませんが、そういう中で男女バランスというんでしょうか、それぞれの培われたジェンダーの視点を通していくことによって、女性だけのマージナルな小さな話ではなくて、社会全体が活性化して社会の中で家族の価値とかゆとりとか潤いとか、そんなものが大きくなってくる、そういう方向に現在あるわけでございます。  ということでありましたら、深夜業の問題の中も、女性のための深夜業ということではなくて、深夜業全体の中で男女労働者がいかに調和した働き方ができるか、家族との関係が保てるかということもこのガイドラインの中では、大分時間がたつようでございますから、総合的ガイドラインを策定するころにはそれを統合した形にしていくべきだと、そういう私の考えなんですが、こういう考え、認識について、大臣、また退屈していらっしゃるだろうと思いますので、一言いかがでしょうか。短くて結構です。
  23. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 基本的には川橋先生お考えのとおりだと思います。  ただ、いずれにいたしましても、母性保護女性の生理的原因に帰する問題については当然別枠でしっかりと保護していかなければなりませんけれども、それ以外の部分につきましては、男女ともに深夜業に従事する人、そして家族的責任をどう果たしていくか、同等の立場で対等に保護策を遂行していくということであろうと思っております。
  24. 川橋幸子

    川橋幸子君 聞きようによっては非常に御理解いただいているような感じもいたしますし、また別の耳で聞きますと、まだ大臣もうちょっと男女共同参画の意味を御理解いただきたいという気もいたしますが、まずは御答弁ありがとうございました。  さてそれでは、今回衆議院審議でも、あるいは現場の働く人々からも非常に要望が強かったのが仮眠室の問題であります。  仮眠室というのは、先ほど、深夜業というものが非常に疲労が蓄積する、回復しない、よく眠れないということからニーズが高いものであるということが局長の口からも紹介されたわけでございますが、そこでお尋ねしたいのは、仮眠室につきましては、安衛則の中にあるわけでございますけれども、その中に、適当な睡眠、仮眠の場所を設けなければいけないということで、この「適当な」というのが何が適当なのかは適当なんですね。「適当」の中身というのは全く適当、それ以上のことは何も書いていない。  ところで、屋内作業場、働く場所もそうですし事務オフィスもそうでございますけれども、温度等については余り不快にならないように、あるいは能率が下がらないように、労働者の健康に影響が及ばない、温度についてはある程度の規定があるわけでございます。適当な温度が保てるように冷暖房を設備するというようなことがあるわけです。ただ、湿度についてはどうやらない。ですが、どうも日本の夜、日本の夏の気候なんかを考えますと、冬よりも夏の非常に寝苦しい夜、熱帯夜と言われているような寝苦しい夜の仮眠、睡眠というものは、これは疲労回復のためにはそれこそ適当な仮眠施設として設備される、これが必要だと思うのでございます。  労働省では快適職場の施策というのがありまして、大変言葉はきれいでございます。アメニティーの職場ということでございますが、中を見ますと、どうも職場というのは働く場所ということで、働く場所の中にBGMを流すみたいな、そういうことは書いてあるんですけれども、この仮眠施設等々については、一行ぐらいは触れてあるかもしれませんが、余り触れられていない。どうも休む場所というのは、これは労働時間でないという感じがあるのでしょうか、これは職場ではないというようなそういう今までのコンセプトだったんじゃないかと思うんですけれども、私は仮眠室というのは、特に事業場に附属して設けられている仮眠室なんというのはまさに職場と一体なのでそれは職場、むしろ安衛則の職場の温度管理の適用があってもいいぐらいだと、このように思うわけでございますけれども、どうでしょうか、今のような話を聞いて。  適当な仮眠施設、この「適当な」の中に、快適職場とまではいかないけれども、不快指数が非常に高いようなときにはそれを、安らかな睡眠確保されるようなある種の、これは規則でがんじがらめにしろということではないですけれども、この「適当」の中にこういうものをちゃんと考えるべきではないか、職場の快適化という中に仮眠室の問題も含めて考えるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。  仮眠室はまず職場ですか職場でないですか。
  25. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 安全衛生規則で定めています適当な睡眠及び仮眠の場所についての考え方でございますが、これはもちろん安全衛生規則、罰則をもって最低労働基準として事業主に守っていただく法律でございまして、すべての事業場、世の中行われるあらゆる事業場について最低でもこれだけはということを求めていく法律また省令でございます。そういったことで考えて適当な睡眠、仮眠の場所という表現がとられているわけでございますが、そういうことを考えれば、働く方々が必要があるときに仮眠をとりあるいは休憩をとれる、常識的に見てそれだけのことができる施設でなければならないということは当然だろうと思います。  私ども、さらに今回女性の方の深夜業保護規定が解消されたり、また健康というものに対する意識が非常に高まっている、そういった状況の中でこの睡眠、仮眠の場所というものをどう考えていくかということになりますと、これは罰則つきの法律がより望ましいものをリードしていく役割を罰則を持ったままで果たしていくというわけにはなかなかいかないわけでございますので、睡眠や仮眠の場所というものがより望ましい快適なものへ整備されていくということになりますと、一つは、そうした労使が職場の改善等々についてよく話し合ってそういった前向きでぜひ取り組んでいただきたいと思いますし、そういったことが全体的になかなか一挙に進むことが難しいということもあろうかと思いまして、今回既に手がけております主要な業種について、自主的な深夜業に働く方々就業環境整備を図るためのガイドラインをつくってもらう、こういった事業の中でもそういった問題点も提起しつつ労使の方に話し合っていただく、そういう中で望ましい睡眠や仮眠の場所についてのいわば労使考え方というものが整理されていくかと思います。  そうした成果を見きわめながら、先生御指摘ございました職場の快適化ということについて労働大臣の方が一定の指針を今示しながら指導しておりますけれども、そうした指針のあり方についてもそういった労使の積み重ねた成果を反映させた方がいいんではないか、こういう状況が出てくれば、私ども十分そういったものを取り入れていくことについては検討をしていきたいと思っておるところでございます。
  26. 川橋幸子

    川橋幸子君 結論は、規則というよりもこれからの話し合いの中でということのように承りました。  さてそこで、大変形式になって恐縮でございますけれども、お答えぶりを確認させていただきたいと思います。  問いは、深夜業に従事する労働者健康確保措置を強めるため、適当な睡眠及び仮眠の場所の確保を初めとする各種措置の強化が必要であり、特に女性保護規定解消に伴い女性の深夜業も拡大すると考えられ、その実態把握や関連規則の見直しをすべきと考えるがどうかという、こういうお尋ねでございます。大臣、お願いいたします。
  27. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 深夜業に従事をする女性労働者に関しましては、深夜業に従事する女性労働者就業環境等の整備に関する指針、この指針を示しまして、労働安全衛生規則に基づく仮眠室設置等についても事業者への周知及び指導を図っておるところであります。  今後、深夜業に従事をする労働者健康確保の観点から、深夜業に係る女性保護規定の解消を踏まえまして、就業環境実態把握し、女性労働者就業環境や関連制度整備、深夜業に係る業種別の自主的ガイドライン等の動向を踏まえた就業環境の快適化につきまして必要に応じ適切な措置を講ずるよう努めていくこととしたいと考えております。
  28. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。やはり時間の使い方が、どうも私も聞きたいときには言葉を多く聞いてしまいましておくれぎみでございます。  化学物質の管理関係についても、今回は作業環境測定法改正ということでMSDS、データシートという新しい手法が出ているわけでございますが、この中では一問だけ聞かせていただきます。  MSデータシート、要望としましてはデータシートの対象物質、当面一千となっておりますが、これは政府の姿勢としては、調査すべき有害物質についてはやはり千にこだわらず広げていくべきではないかということ。  それから、データシートの交付規定についてペナルティーがないけれども大丈夫か。その辺、商品名、企業名の公表で担保するというなら、そこはしっかりやるべきではないか。何しろ、特定化学物質の問題というのは現在非常に世界的に大きな問題になっているということで、ペナルティーについての実効性の担保についてはちゃんとやっていただきたいということ。  それから三点目は、何といいましても被害を受けるのは働く人々自身でございますので、その個人にデータシートの情報がしっかりと伝わるようにしてほしい。今までのお答えぶりからいいますと、製造元の取扱責任者の名前、連絡先等が入るというようなことが書いてありますが、私はついでに電話番号も書くべきだと。それは労働者が自分で自己管理する、大変お金もかからない、そして確実な方法だとすると、そういうこともお願いしたい。  聞くべきことは全部要望として述べさせていただきまして、最後に、こうした特定化学物質の問題については新しい世界の動きがございます。環境ホルモン等々も言われ、レイチェル・カーソンというアメリカの女性でございますけれども、随分前に「沈黙の春」ということで警告を発して、それが大きな問題に今なっているわけでございますが、労働安全衛生については新しいILO条約もそれに対応するように出てきております。そうした労働安全衛生に関するILO条約批准に向けての環境整備について一問だけ伺わせていただきます。
  29. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回の御提案させていただいておりますMSDS、データシート、この義務づけ、制度化によりまして、ILO百七十号条約が求めております化学物質につきましての表示あるいはその情報資料のユーザーへの確実な提供等々の体制は、この条約趣旨に沿いまして私どもでき上がるものと考えております。  ただ、本条約では、そうしたラベルといいますか表示がない物質、それからそういった情報資料等のない物質、これらはどんなものであれ一切使用してはならないということをこの条約は求めておりまして、私ども今現在御提案申し上げているような、確実に化学物質に関する情報が伝わるような仕組みをつくるという考え方では対応できていない部分もございます。  そういった、どんな物質であれ一切使用してはならないというところまで我が国が行けるのかどうかも今後の検討課題だろうと思いますし、そうした点につきましては引き続き私ども検討をさせていただきたいと思っておるところでございます。
  30. 川橋幸子

    川橋幸子君 先ほど夜業条約の方では、各国の労働市場あるいは雇用制度、慣行はそれぞれの国の今までの経緯、バックグラウンドの違いから、それは日本にとって直にILO条約規定がぴったり当てはまるかどうか、これについては私はその事情を理解するような発言、質問をさせていただきましたが、安全衛生、こういう技術的な問題について、これは各国の事情というのは余りないのではないかというのが私の持論でございます。テクニカルな部分、この物質がいいか悪いか、害があるのかないのかというのは万国共通といいますか、地球上同じではないかと思いますので、ぜひ批准に向けて、大半は要件を満たしていらっしゃるというようなお話でございますが、なお検討すべきところがあるならクリアしていただきたいということを申し上げたいと思います。  次は、小規模事業場の問題でございます。  かねてより、安全衛生法の場合は、小規模事業場にこそ労働災害が多い。だけれども制度上の手当てにつきましては小規模事業場についての義務づけがなされない。単純に言えばこういう制度上の格差がございました。働く人々の側から見れば、問題が多い小規模事業場ほど安全衛生についてはしっかりとやってほしいんだと。これは人の命から考えても当然の気持ちでございます。  制度上の格差の解消が今回の本案では見送られてしまったことに対して大変残念に思うのでございますが、制度上の格差の問題、これをどのように考えておられるのかまずお伺いして、その上で、もう直に確認答弁をいただいてもいい事例かと思いますが、同じ質問で確認の御答弁までちょうだいするような御答弁を局長にお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
  31. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 小規模事業場につきましては、労働災害の発生件数、全体にはこれも小規模事業場も含めて減少してきておるわけですが、発生率という点で大企業等と比較すると非常に発生率は高いというような状況にございまして、私ども、こうした小規模事業場の安全あるいは衛生というものを含めた健康対策、大変重要な課題であると考えております。現に私ども労働災害防止対策の軸にしております第九次労働災害防止計画におきましても最重要課題として位置づけておるところでございます。  労働災害の防止対策につきましては、こうした小規模事業場を集団でとらえて、いろんな安全活動を支援していくための助成制度、またはそれに対するいろんなノウハウの提供等を行って支援を進めてきておるわけでございますが、一方、先生御指摘ございました健康対策面で考えますと、そういう安全衛生委員会あるいは安全衛生管理者、それから産業医選任義務等の問題につきまして、五十人以上のところは義務づけがなされ、それ以外のところは必ずしもそういった強い義務づけがなされていない、こういう格差があることも事実でございます。こうした点についても、小規模事業場健康確保対策あるいは安全確保対策の一つとして今後検討を進めていかなければならないことは御指摘のとおりでございます。  こうした衛生委員会産業医等の対象事業場範囲等の制度上の格差につきましては、平成八年の段階で中央労働基準審議会の建議において引き続き検討をすることとされておりまして、また本年一月の同審議会の建議におきましても検討の場を別途設けて引き続き検討するということが指摘されているところでございます。  私ども、これを踏まえまして、今後、労使を含めました関係者をメンバーとする委員会設置いたしまして、小規模事業場における総合的な健康確保の方策について検討を進めることにいたしております。その検討結果を踏まえまして、平成八年の労働安全衛生法改正の際に、施行後五年経過した平成十三年のときにその見直しを行うというようなことが要請されておりますので、その見直しに当たりまして、中央労働基準審議会におきまして総合的な見地から検討を加えていただき、小規模事業場において職場環境の改善が図られるよう、必要な対策を講じてまいりたいと考えております。
  32. 川橋幸子

    川橋幸子君 次回というんでしょうか、五年ごとの改正があるわけでございますが、前回の改正から五年経過といいますと平成十三年になるわけでございます。その見直しに当たっては、制度上の格差問題について十分御検討いただくと。できれば改善すべきということを再度ポイントとして申し上げさせていただきたいと思います。  次に、ダイオキシンの問題に入らせていただきます。  このところ非常にダイオキシン問題が、自治体のごみ焼却炉からの問題ということで、私が以前お世話になった、勤務させていただいた所沢で社会問題化した。結局は、行政側の対応というものが早くに、そして透明で公開されてやるということが必要なわけでございます。  労働省では、大阪の豊能の美化センターについて調査をされましたところ、暴露濃度が働いている人の場合ですから周辺住民に比べて著しく高いということが判明したけれども、当面健康上の被害はないというようなことで報道されているわけでございます。  そこで、三点まとめてお尋ねさせていただきたいと思います。  大阪の豊能、これだけねらい撃ちすることで十分ではなくて、一罰百戒でこれは足りるわけではなくて、これはべたに全部、全国の焼却炉、非常に危険な状態にあるわけでございますから、まず早急に調査をすべきだと思います。やってもらえますか。それが一つ。  それから二番目は、その結果を公表して、公開して明らかにした上で、労働省としては迅速なとるべき対策、もちろん厚生省側においても焼却炉施設の改良等々やるべきことがあると思いますが、労働省としても連携しながら迅速な対応、もたもたしない即の対応が必要だと思いますが、いかがでしょうか。  それから、現在までは健康上の被害は出ていないということでございますけれども、もしもそういう問題が生じた場合にはやはり適切な労災補償上の措置をとる、そういう行政の姿勢を明らかにすることが今回特に社会問題化してきたダイオキシン問題については必要だと思います。  以上の問題について、三点まとめて局長から答弁をお願いいたします。
  33. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございましたように、大阪府の豊能郡の美化センターで働いておられた方々につきまして、血中ダイオキシン類の濃度等健康状況等について調査いたしましたところ、一部の労働者につきまして大変高い血中のダイオキシン濃度があることが判明いたしたわけでございます。  そうした状況も踏まえまして、私ども本年度も引き続き国内の他の施設につきまして、作業環境中のダイオキシン類の濃度やあるいは血中濃度を含めました関係労働者健康状況把握するための調査を実施するというふうに予定いたしておりまして、既に専門家によりますそうした手順等を相談するための委員会設置して準備に入っているところでございます。  また、既に判明いたしましたこの豊能郡の美化センターでの一部の高いダイオキシン類が検出された方々につきましても、私ども健康状況のフォローアップといいますか、継続的にその健康状況把握は行ってまいりたいと考えておるところでございます。  こうした結果、公表等の必要な措置をとっていくことはもちろんでございますが、働いている方々の場合、環境中に放出される場合と違いまして、これは事業者が作業環境を十分に管理し、それから働く方々がマスクの着用等々によりましてダイオキシン類の暴露を防ぐことが十分可能なわけでございますので、既に昨年の十月に私ども、こうした作業環境中の管理のありよう、それからそうした暴露を防ぐためのマスクその他の防具の着用等々を業者に求めていくための通達を発しておりまして、そうしたものの周知に努めてきたところでございます。  また、最近におきましては、労働大臣の指示もございまして、そうした通達を大量のリーフレット、パンフレットにいたしまして、直接都道府県の労働基準局長から個々の業者にそうした遵守を要請するということも緊急活動として展開をいたしたところでございます。  今後、こうした調査が積み重なる中で、もちろんそうしたことについて私ども手落ちがあればいかぬというふうに考えておりますので、調査結果等も見ながら、そうしたかねてからの対策に万全を期していくことはもちろんでございます。  それから、現在、大阪の美化センターで一部高い濃度が検出された方々について、今までのいろんな過去の事例、外国の事例等々との比較をしながら、どう評価するかということを専門家の方にお願いしておるわけでございますが、今のところそうした状況、必ずしも現段階で健康等の影響が出ているというふうなところまではいっていない、こういう評価でございます。  ただ、ダイオキシン類の健康に及ぼす影響についてはまだまだ学術的な知見等も不十分な面もございますので、私ども、先ほど申し上げました今後の調査、あるいは豊能郡の美化センターで働いていた方々の今後のフォローアップ等々を通じまして、この健康問題というものには十分また知見の収集等に当たってまいりたいと思っております。  それで、労災、既に二名の方から労災の申請も出ておりますけれども、そうした問題につきましては、その働いていた状況、暴露の状況、また発症の経緯等々について的確に事実関係把握し、場合によりましては専門家の方にそうした資料を開示しながら業務との関連を判断していく、そういった適切な対応をとるように努力してまいる考えでございます。
  34. 川橋幸子

    川橋幸子君 大変御丁寧な説明、そうした真摯な態度で当たっていただくということで了解いたしますが、やはりちょっと文字にして確認させていただきたいと。大臣、恐縮ですが、御確認の答弁をお願いしたいと存じます。  問いは、大阪府の清掃工場の作業者の血液から高濃度のダイオキシンが検出され、これが廃棄物焼却作業に伴うものであることが調査により明らかになったことなどを踏まえ、労働者のダイオキシン被災の防止のために、早急に全国的な調査を実施するとともに暴露防止措置を徹底すべきではないか。また、その結果などにおいて労働者への健康影響が明らかになった場合には、労災認定や長期的ケアの促進など、適切に対応すべきと思うがいかがか、こういう問いでございます。
  35. 甘利明

    国務大臣甘利明君) ただいま御指摘の点につきましては、ごみ焼却施設での作業に伴う労働者へのダイオキシン類の暴露防止措置を徹底させますとともに、ダイオキシン類の暴露を受けた労働者健康状況等について調査を進めまして、その結果を踏まえて適切な対策を講ずるようにしたいと考えております。  また、ダイオキシン類により健康障害を起こしたとして労災請求が行われました場合には、作業内容、暴露状況、発症の経過等について的確に調査を行いまして、業務上か否かの判断を適切に行ってまいりたいと思っております。
  36. 川橋幸子

    川橋幸子君 ありがとうございました。  それでは、労災の関係で、大分前でございましたが、労働委員会と称しておりましたころに過労死の問題を取り上げさせていただきましたが、今回、自殺過労死の労災認定の件についてお伺いしたいと思います。  これは長野の飯田市の方でございますけれども、プレス工の夫の方が過労が原因でうつ病となって自殺したということでございます。これについては、遺族である奥様が地裁に訴訟を起こされたわけでございますが、長野地裁では原告側の方のプレス工の遺族の方が勝訴されております。  これは新聞によりますと、自殺過労死についても従来の基準を緩和する、見直したいという、そういう報道がなされておりますが、それにつきまして労働省では現在どのような経緯でそれをやろうとしていらっしゃるのか、主としてスケジュールを明らかにしていただきたいと思います。自殺過労死の認定基準の見直しについての労働省の方針、対応をわかりやすく御説明ください。
  37. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先生から過労自殺という御指摘がございましたが、いわゆる業務に起因していろんな精神的な負荷があったために、いろんな精神的な障害等々の経過を経て自殺に至る、大変残念なケースにつきましての労災上の取り扱いでございますが、今までも私ども、業務とのそうした意味での相当因果関係が認められるケースにつきましては、労災の対象となるいわゆる業務上の取り扱いをいたしてきているところでございますが、そうした判断に当たりまして、いわゆる過労といいますか、過労だけではなしに、業務上非常に大きい異常な出来事があったケースとか、精神的な負荷が非常に大きかったケースとか、いろんなパターンが自殺に至る経過にあるわけでございますので、私どもそうした事案につきまして正確に、また遺漏のないよう期すために、こうした自殺事案につきましては、申請のあった各労働基準監督署の窓口だけの判断ではなしに、本省の方にそうした事案の調査結果を上げさせまして、本省の方で精神科の医師の方等々も含めた専門家の場にそういったものを開示いたしまして、業務上か否かの判断について意見を聞いた上で決定する、こういう仕組みをとってきたところでございます。  ただ、これをやりますと非常に時間がかかることもございます。そうしたことから現在私ども、精神科医、法律専門家の方等で構成される検討会を構成いたしまして、医学的、法的側面からこうした自殺者に対応するための、処理していくための判断のいわばやり方、よりどころになるものをつくっていこう、こういうことで鋭意作業を進めておるところでございます。  私ども、大変難しい課題でございまして、こうした専門家方々でもいろんな議論があるわけでございますが、何とか年度内には地方にも示せるようなところまで持っていければということで、そういった作業スケジュールを念頭に置いて作業を進めているところでございます。
  38. 川橋幸子

    川橋幸子君 年度内には明らかにして地方に示せる、そういうスケジュールだということでよろしゅうございますね。  ぜひ、鋭意急いでいただきたいと思いますのは、現在、こうした雇用状況の中で、過労死を言っているわけではないですが、労働者間の競争が非常に高まってきている。ですから、健康管理安全管理の問題もそうですけれども、特にこうしたメンタルな問題、産業の競争力強化というときに、労働者間の競争力、それが即はね返るようなこういう社会は、ゆとりなんてとんでもない、公平でもない、将来に夢が持てる安心して暮らせる社会ではないと思うとすると、こういう問題こそこの時期労働省、雇用問題もそうでございますが、労働省、しっかりやっていただきたいと思うわけでございます。  それで、大臣には後ほど雇用平等の関係お話を伺おうかと思いましたが、先ほど既にそれらしき質問をさせていただきましたので、後ろの質問をカットするかわりに、今の問題、むしろ大臣から御見解を伺わせていただけたらと思います。短くて結構です。  過労死という言葉は、過労死という言葉で即英語圏の人にも通じると。行政指導とか官僚主導とかという言葉と同じように、過労死という言葉がそのとおりそれでわかったという状況になっている。日本にとっては非常に不名誉なことだし、私は労働省にとっても気の毒なことではないか、労働省出身者だから言うわけではなくて、そう思います。それこそ認定の担当者自身が自殺することがなきにしもあらずと、精神的に悩まされることでございます。私は、もっと根本的な解決というのを日本の社会は図るべきだと思うんです。  先日のプレスセンターの中で、たしか野田聖子郵政大臣が、今の雇用情勢の中でやるべきことはサービス残業をなくすことだと。私はこれは名言だと思うんです。サービス残業をなくすことによって、賃下げをしないでワークシェアリングをする、不安定雇用をするんじゃなくて常用雇用のワークシェアリングをする、そういう観点が一番の根本的な解決になるのではないかと思います。むしろ、労働条件労働時間の面で働くルールをしっかりさせる。サービス残業というのは、労働者の方も自分の権利意識をしっかりとやらないということはありますけれども、これは違法な行為、残業手当を払わなければいけない行為でございます。  そういう日本の働き方、日本の企業のあり方に対する国際的な世論の批判的な見方にも照らして、過労死をなくすということは非常にシンボリックなことだと思いますが、こういう根本解決について、今の時期でございます、特に労働大臣、いかがお考えでしょうか。
  39. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 過労死と雇用情勢に関連して、サービス残業をまず減らす、あるいはその分の仕事量がどうしても必要な場合には、そこをワークシェアリングで雇用をふやす、それは基本的にそのとおりだと思います。  本来、サービス残業というのはあってはならないことでありますし、あってはならないことが存在するとしたならば、まだまだ労働行政がきちんと徹底をしていないということになってしまうわけでありますから、そこは行政担当責任者としても、違法行為がまかり通るようなことがないようにきちんと対処していかなければというふうに思うわけであります。  サービス残業がないにもかかわらず、過労死というものが仮にあるとしたならば……
  40. 川橋幸子

    川橋幸子君 もうそこで結構です。過労死とサービス残業を、重箱の隅のように伺っているわけではありませんので。  サービス残業はあってはならないことと、大臣のその一言を大変私は評価させていただきまして、ぜひその姿勢で労働行政をやっていただきたいと思います。  さて、残り時間、三十七分まででございまして、短くなってまいりましたので、均等法関係については局長から一問だけ伺わせていただきたいと思います。  ほかにまた聞かせていただきたいことがたくさんございますが、改正均等法につきましては、努力義務から禁止規定になるということで、国際的な水準にようやくたどり着いた改正均等法だったと思います。  この四月から施行されたわけでございますが、新規学卒の就職状況を見ますと、この不況の中で、それぞれの学卒、大学、短大、高校とそれぞれあるわけでございますが、どう考えても男女間の就職率の格差というのが縮まっていない。今度は女性だからといって募集・採用において差別してはならないという禁止規定になったんだけれども、均等法の効果というのはちっともあらわれていないというふうにしか読み取れない今回の新規学卒の就職状況でございます。  短くて結構でございますので、それを非難しているということよりも、均等法の効果というものをもっと浸透させてほしいという趣旨から伺っておりますので、済みませんが一、二分でお答えいただけないでしょうか。
  41. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) ことしの新規学卒者の就職状況というのは全体的に大変厳しいものがあったというのは御承知のとおりかと思います。先生御指摘のとおり、女子学生と男子学生を比較してみますと、確かに女子学生の方がやや厳しい状況であったと申し上げざるを得ない状況ではございます。  この四月一日から男女雇用機会均等法改正され、募集・採用につきまして女性を差別することは禁止ということになったわけでございますので、私どもといたしましては、この均等法の趣旨の徹底というのに全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。  特に、来春の新規学卒者の募集に向けまして、公共職業安定所、それから新聞の求人広告、求人情報誌など、いずれにおきましても私ども粘り強く御協力をお願いした成果であろうかと思いますが、男女別々の求人、あるいは男女別の条件をつけたような求人というのは姿を消しまして、法律趣旨がかなり徹底をされておるというような状況かと存じますので、引き続き来春の新規学卒者の募集に向けまして努力を重ねてまいりたいと思っておるところでございます。
  42. 川橋幸子

    川橋幸子君 女子学生の就職が氷河期と言われた、バブルが破綻した直後そんな表現が使われました。氷河期あるいは超氷河期というふうな表現も見られました。そのときに、厳しいときにこそ性別によって差別されることなく、厳しいなら厳しいように男女ともにその厳しさを公平に負うという、そういう社会が欲しいわけでございます。  それで、当時氷河期と言われたところに女性の就職率、男子学生に比べて非常に不利になったときに、ああこれは雇用機会均等法がざる法と言われても仕方のなかったことなのかと、私も労働省の中の一人として汗をかきましたけれども、何のための汗かきだったのかという感じがいたしまして、今回の禁止規定になった改正均等法には期待をしたわけでございますが、なお施行直後ということもあるかと思います。来年の学卒についてはこの均等法の効果、実効性がしっかりと見えるような、そういう体制を組んでいただきたいということを要望させていただきまして、最後に、このところ本当に雇用問題が社会の主役になってまいるということは、労働省にとっては頑張ってもらいたいと思う反面、労働省が頑張らなくてもいいような世の中の方がいいなということをつくづく考えることでございます。  失業率が五%の大台に上がりました。これがはっきりいたしました。百万人の雇用創出と言っておりましたのが、一体この百万人で五%の失業率、この雇用問題の対応に大丈夫なのかと、大変何か率と人数が更新されるような日々でございます。  きのうのある新聞の川柳を見ていましたら、どうぞ追い越してくださいと書いてあって、だれがというと、消費税率が失業率殿に追い越しはいつですかというような川柳があり、笑えない、でも笑い飛ばすというのが健全な国民性かもわかりませんけれども、そういう話になっております。  ところで、総理から労働大臣に対して、こういう事態に対して、五月中に労働省としての対応方針をまとめてほしいという、こんな指示があったやに伺っておりますが、その中身とこれからの御決意を伺って私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  43. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 四月二十三日の閣議におきまして、総理から特に発言がありました。現下の雇用失業情勢にかんがみ、労働大臣は通産大臣、文部大臣等、関係閣僚と連携をとりながら新たなる雇用対策を打ち出してもらいたい、五月中に結論を取りまとめてほしいというお話でありました。  総理は、このところ各地で折に触れて、これからは雇用が一番大事だということをおっしゃっておられます。産業競争力会議におきまして、産業の競争力を強めていく、これが景気の回復を確かなものにするということで、政府挙げて取り組んでいるわけでありますが、その結果が雇用情勢の悪化につながらないように、産業競争力をつけて経済を立ち上げていくことは雇用に犠牲を強いることと同義語ではないというのが総理の思いでございまして、影響が出るにしても最小限に抑えるようにどう対処していくかを考えてほしいという要請でありました。  今現在、通産省あるいは文部省等々と打ち合わせをしている最中であります。私なりに思いがございまして、それはごく近い将来生ずるであろうと予測をされる雇用の場と数をできるだけ把握して、それに見合ったような職業訓練をした人材を供給できるような一連のシステム、現在も実は当然労働行政の中にあることはあるのでありますけれども、それを強化したものに求職者個人の主体的な選択制というものを加味して一連のシステムができないものかということを今考えております。  その他、通産省は通産省なり、文部省は文部省なりの考え方が出てくると思いまして、それをまとめ上げたものを五月いっぱいに発表させていただきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、先生御指摘のとおり、今労働行政が非常に注目をされております。これは、注目されること自体は大臣としてはうれしいことでありますけれども、おっしゃるようにこういう状態が長く続くということは世の中にとっては決していいことではありません。問題は私の在任中にすべて解決をして、そういう面で歴代労働大臣としては一番目立つ大臣として、以降の大臣が一切目立たないように対処をしていきたいというふうに思っております。
  44. 川橋幸子

    川橋幸子君 一番目立つ大臣としてぜひ、まだ失業率は上がるということが大方の見方でございます。この危機の時代に一番目立つ大臣として御活躍を私もお願い申し上げたいと思います。  けさの新聞では、日経連の根本会長が、雇用創出二兆というんでしょうか、何かそんな記事、補正を求める声が上がっております。補正絡みの話がどうも政局絡みで取りざたされる、私はこれはゆゆしいことでございまして、政局絡みではなく働く人々のために考えていただきたい。  設備廃棄について、前は金融が危ないと言われていた。今や金融だけじゃなくて、今度は製造業部門での設備縮小について、供給面の構造強化のためにというような言い方で言われております。失業者が目立ってふえることは確かでございます。連合がかねて要求しております全国的な延長給付を含めて補正をお考えいただきたいということを申し上げさせていただきまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  45. 但馬久美

    但馬久美君 公明党の但馬久美でございます。  今も川橋議員からも私も質問したい質問がダブっておりますけれども、また私なりの質問とさせていただいて、そして前半は法案についてお伺いいたします。後半は化学物資について、きょうは厚生省の方にも来ていただいておりますので、四十五分質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  まず、法案についてですけれども、MSDSの導入において、今回、労働省の告示とこの安衛法明記との相違点についてお伺いいたします。  MSDSの導入に関する労働省の告示は、一九九〇年採択の化学物質条約に基づいて出されたのですけれども、今度の安衛法改正案においては、化学物質の譲渡・提供者から譲渡・提供先へのMSDSの交付義務づけをしたと言われております。この告示の段階から法案明記することによってどういう変化が期待できるのか、また、違反の場合でも罰則がないようですけれども、それで労働者の安全や健康が担保できるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  46. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今御指摘ございましたように、このMSDSの問題、平成四年に労働大臣の方が告示を出しまして、MSDSの交付を関係方面にそれをよりどころにして指導をしてきたところでございます。  これはあくまで指導のよりどころでございまして、今回はこの危険有害性を有する物質につきまして政令で指定した上でMSDSの交付を譲渡・提供者に義務づける、いわば今までの指導ということで自主性にゆだねられていたところから法律上の義務として位置づけることにいたしたところがまず大きな違いでございます。  これは、もちろん安全衛生法は事業主労働者関係を律していく法律でございまして、いわば事業主に情報を提供する譲渡・提供者について罰則を科すというところまでこれは制度上なかなか難しいわけでございますが、私ども、MSDSの交付を受けた事業主労働者に対しましてそれを周知させる、そういった義務づけもあわせて講じていく。また、指針を示しまして、そうしたMSDSの交付を受けた物質についての管理等のありようについても示していく。こういうことをこの改正法案と一対のものとして考えておりまして、そうしたことによりまして危険有害性を有する化学物質についてのいわば情報開示、またそれに基づく適切な管理というものができ上がっていく、こういうふうに考えておるところでございます。
  47. 但馬久美

    但馬久美君 交付の義務づけは労働者の健康障害を生じるおそれのある化学物質が対象になっておりますけれども、その化学物質という判定、これはどこの機関でだれがやるのか。
  48. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回MSDSの交付を義務づける対象物でございますが、現行法において、製造の許可制の対象にしたり、あるいは有害性等のラベル、そういったものの表示の対象になっている化学物質のほかに、産業衛生上の観点から一定の措置を講ずることについていわば専門的な科学的知見が示されているもの、そういった化学物質を広く対象としていく考えでございます。  具体的には政令で指定いたしますが、その政令の指定に当たりましては、例えば日本産業衛生学会、あるいは米国労働衛生専門官会議、そういったところがそうした化学物質について勧告をいたしております。そうした勧告の対象となった化学物質等を、いわば権威ある機関での評価がございますので、そうした化学物質につきまして専門家意見を聞いた上で対象として選定していく。私ども、御指摘がございましたように、現在までそうした知見が出ているものを想定いたしますと、約一千種類くらいの化学物質になるのではないかというふうに考えているところでございます。
  49. 但馬久美

    但馬久美君 それで、供給者あるいは提供者のMSDSの作成については告示で全化学物質が対象になっておりますが、これは実際はどうなのか。それで、もしそれが事実であるならば、このMSDSの交付も、せっかく作成されているのであるので、全化学物質に拡大すべきではないかと思いますけれども、それに対してはどういう御意見を持っていらっしゃいますか。
  50. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回のMSDSの交付の譲渡・提供者に対する義務づけでございますが、これは法律上の義務としてそういった交付を義務づけてまいりますし、その交付されたMSDSをもとに労働者の方への周知、また労働大臣が示す指針に基づいての管理等の措置を講じていくわけでございますので、当然、危険有害性について知見が一定の評価がなされているものに限られていく。ただ、物質としては千物質ぐらいに、かなり広い範囲になるわけでございます。  一方、従来から、平成四年以来その指導のよりどころとして広く、まだ評価が確立していない化学物質以外についてもMSDSの交付を指導してまいりましたが、こういうやり方については引き続き継続してやってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  51. 但馬久美

    但馬久美君 それでは、MSDSの修正についてですけれども、化学物質の研究は日進月歩、進歩しております。まず、当然MSDSの記載内容、また修正や追加記述が頻繁に変わっていくと思われますけれども実態はどうなのか。また、そのMSDSの修正や追加記述はだれがどのように行うのか。そしてまた、日付の記述もきちっとなされているのかどうか。この三点、お伺いいたします。
  52. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回提案させていただいております法律の中では、譲渡・提供者がMSDSを最初交付する、その後にMSDSのシートに記載すべき事項について変更をしなければならないという場合につきましては、その変更の内容を速やかに相手に通知するように努力義務を課しておるところでございます。  私ども、こうした化学物質がその後新しい知見等が加わったことによってMSDSの内容を変更していかなければならない、そういう場合に譲渡・提供者が速やかにそうした変更の通知等を行うように十分周知や指導に努めてまいりたいと思っております。  一方、私ども自身も、標準的なMSDSというものを作成いたしまして、これを広く公開してまいります。そういったものについても順次新しい知見に基づいて見直しを行ってまいりますので、そういった物質を取り扱う譲渡・提供者はそれに準じて当然変更の内容を周知、通知してもらう、そういったことの体制ができるように準備してまいりたいと思っております。
  53. 但馬久美

    但馬久美君 ぜひその体制はきちっとしていただきたいと思います、これからどんどん出てまいりますので。  そして、今回のILO百七十号条約批准についてですけれども、一九九〇年には我が国も採択はしておりますけれども批准には至っておりません。一九九七年末現在では批准国はわずか七カ国にすぎないと伺っております。しかも、先進国においては一国も批准していないと言われておりますけれども、我が国が批准できない理由と、そしてまたこれからの推進の見通しはどうなのか、なぜまた七カ国しかないのか、その点を御見解をお伺いいたします。
  54. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回のMSDSの交付の義務づけ等一連の改正内容、全体としてはこの条約趣旨方向に沿ったものでございまして、化学物質についての表示、また、それの持つ特性等についての情報資料の提供、これを求めている条約趣旨に合致しているものでございます。  ただ、本条約ではさらに、いわゆる表示や安全に関する情報資料等のない化学物質についてはどんな化学物質であれ一切使用してはならないことまでこの条約が要請しているわけでございまして、この点につきましては国内法制上、安全衛生法に限らず、国内法制との関係で種々問題がございますので、引き続きそこについては整合性検討しなければならない。これが現在まで私ども批准ができない理由でございます。  御指摘がございましたように、諸外国を見ますと、批准している国は七カ国でございます。それぞれの国の批准していない理由については、詳細については私ども確実には把握いたしておりませんが、先進国を見ますと、今回私どもが提案申し上げているような形での化学物質についての情報資料の提供体制というものは各国で整備しておりますので、私どもも今回の改正によってそうした一連の体制が整うわけでございますが、恐らく、先ほど我が国でもこうした点がなお課題として残るということを申し上げた点等がやはり多くの国で課題となっているのではないかと思われるところでございます。
  55. 但馬久美

    但馬久美君 ありがとうございました。  それでは次に、ダイオキシンについて先ほども川橋議員の方からありましたけれども、大阪府の能勢町のごみ焼却施設から高濃度の排気ガスが出ておりまして、その従業員の血中脂肪の一グラム当たりに対して最高の八百五・八ピコグラムという暴露を受けたわけですけれども、この被害は非常に有名になりました。  そこで、三点についてお尋ねいたしますけれども、一点目は、労働省の健康調査では結論的には健康には影響がないと言われておりますが、しかし、一般にダイオキシン類には二百十種類もの種類があるにもかかわらず、豊能郡のごみ焼却施設の労働者の健康調査においてはTCDDという、一番猛毒と言われるこの一種類しか評価をしていないというふうに言われておりますけれども、これでは不十分な健康調査ではないかと思います。この点、どういうふうにお考えでしょうか。
  56. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、ダイオキシン類については、種々の種類の化合物がダイオキシン類の中には含まれるわけでございまして、二百十種類ぐらいあるというふうに言われております。  今回、豊能郡の美化センターで働いておられた方々のダイオキシン類の血中濃度の測定に当たりましては、その測定自体は、ダイオキシン類、ほかの物質につきましても、TCDD以外についても測定をいたして、その結果を出しているところございます。  ただ、評価の段階に当たりまして、ダイオキシン類の毒性の評価、また過去の文献的な、例えば事故、実験等々であらわれてくるダイオキシン類についての健康との関連に関する資料等々の比較を行い、評価をする際には、今までのところTCDDによりなされているのが一般的でございまして、最近になりますと、ダイオキシン類と言われる化学物質について毒性を評価する場合には、二百十種類の化合物すべてについてその毒性を考慮したいわば毒性等量、TEQと呼ばれる指標で評価することが望ましいとされておるわけでございますが、今までの過去のそうした実験や事故の際に報告されているダイオキシン類のいろんな濃度と比較しながら今回のものを評価しようとすると、現段階ではTCDDによらざるを得ないということで、そういったやり方で今回健康等の関連についても評価を専門家方々がいたして報告をいたしたところでございます。  今後、ダイオキシン類についていろんな知見が集積されてくることが期待されるわけでございまして、そうしたものにあわせて評価の際の軸になるそういった指標のとり方というものもいろいろ検討されていくべきものと考えておりますが、現段階では、そうしたTCDDによっていろんな過去の事例等々と比較しながら評価するということがいわばやむを得ない方法であろうかと考えております。
  57. 但馬久美

    但馬久美君 こういう焼却施設がほかにも三十七カ所あると聞いております。そういう意味で、従業員の健康調査はたとえ既に廃業していても追跡調査を行うべきと思います。この点、しっかり調査していただきたいと思います。  そして、三点目には、厚生省にお伺いいたします。  焼却炉の排出ガスの調査の際に、ふだんとは違うような燃焼方法を行って排出ガスを少なくするようにメーカーさんに指示があったというようなことも言われておりますけれども、このことの事実関係、これがもし事実ならば非常に許せない詐欺行為であると思います。この点、どういうふうに厚生省さんはとっていらっしゃるか、お聞かせください。
  58. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 私ども把握をしております報道は三つの報道がございます。  一つは、今御指摘のございました豊能郡の美化センターでございます。確かに測定の際に多少通常の条件と変えて測定をしたということがございまして、このケースにつきましては、大阪府あるいは組合に対しまして再稼働時に適切な測定を行うように指導したわけでございますが、御存じのようにこの施設はもう既に廃止になっております。  ほかに二施設ございますが、そのうち一施設は報道のような事実の確認はできなかったということでございます。もうあと残りの一施設につきましては、やはり一定のいわゆる報告をしなかったというふうなこと、高濃度であって報告をしなかったというふうな事実がございまして、改善を指導したところでございます。私ども承知しておりますのは三件でございます。  なお、いわゆるダイオキシンの測定にあわせまして、ダイオキシンは先生御存じのように不完全燃焼の際に非常に発生しやすいわけでございます。これをチェックいたしますために、燃焼温度、それから一酸化炭素の濃度、これを連続的に測定をし記録するように義務づけておりますので、測定日の前後におきまして、燃焼温度の変化、一酸化炭素濃度がどう変化しているかということによりまして、いわゆる人為的な操作がなされたかどうかということは点検可能だというふうに考えておりますので、都道府県の立入検査あるいは報告聴取の際に、ダイオキシン濃度だけではなくて、測定日前後の燃焼温度、一酸化炭素濃度等をチェックすることによりましてそういったことの点検が可能であろうというふうに私どもとしては考えております。
  59. 但馬久美

    但馬久美君 しっかり調査していただきたいと思います。  従業員のみならず、この周辺の住民とかまた農家の人たち、そしてまたその農作物を食している人たちに対して本当に多大な被害を与えているものですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  それでは変わりますけれども女性保護規定の解消による職場の環境の改善についてお伺いいたします。  いよいよことし四月一日から女性保護規定が解消されました。深夜業や休日労働男性と同等に行うようになりましたけれども、それに先立って平成十年には深夜業に従事する女性労働者就業環境等の整備に関する指針、ガイドラインですね、これが労働省から告示の形で出されております。四点あるんですけれども、告示されているのですけれども、この実施状況が、にわか仕立てなので、女性の立場から見て完備という状態ではないと思います。労働省はこの指針の実施状況についてどのように見ておられるのか、その点お聞かせください。
  60. 藤井龍子

    政府委員藤井龍子君) 深夜業に従事する女性労働者就業環境等の整備に関する指針の実施状況でございますが、これは事業主女性労働者を深夜業に従事させる場合に、特に四つの点について適切な措置を講ずるべきであるということでお示しし、これに従った指導を全国の女性少年室を通じて行ってきておるところでございます。  この徹底状況でございますが、施行後一月ちょっとという状況でございますので、私ども女性少年室を通じまして個別案件で把握をしておるというのが実際でございます。  大体大企業中心の御報告になるかと思いますが、自動車産業、鉄鋼産業、印刷あるいは電力業といったような大手の製造業などで、ラインなど交代制勤務、深夜にかかる交代制勤務というのがございますが、そういうところに女性を新たに配置される、あるいは鉄道やバスの運転手さん、終バス、終電が深夜にかかるというようなそういうところに新たに女性を採用されているというような状況把握できているところでございます。  そういった企業におきましては、私どもの指針に従いまして、通勤の防犯措置で、例えば送迎バスを運行されるとか、工場周辺の防犯灯を新たに増設されるといったような措置も講じられておるようでございますし、また、安全衛生法や規則に基づきまして、男女別々に仮眠室休養室を設けなければいけないということになっておるわけでございますので、これまでまだ整備されていなかったところはそういう女性専用の仮眠室休養室あるいは更衣室、トイレ、シャワー室といったものが整備されているというような報告を受けておるということで、私どもとしましてはそういった企業においては必要な就業環境整備というのはかなりよく行われていると見ているところでございます。
  61. 但馬久美

    但馬久美君 先ほどの川橋さんのときのこの同じ質問でございますけれども、今日こういう経済が非常に悪化している中で、この指針の完全施行というのは企業にとっては大変だと思うんですね。だから、ぜひ私は国からそういう助成金等を創設するなど、やはり指針の実施をうまく回転していくために必要であると思いますけれども、そういう点はどういうふうにお考えでしょうか。
  62. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 深夜業に従事をする女性労働者就業環境等の整備に関してでありますが、基本的には法律で最低基準をきちっと決める、そして指針でさらにこれに上乗せをするといいますか、より快適な環境整備を行うと。具体的には女性少年室を中心に指針の周知徹底を図ってきたところでありますが、今後ともさらなる徹底を図る、そのために、もちろん女性少年室が中心になるのでありますが、労働基準監督機関とも連携をして、必要な指導を行っていくと。  そして、先生御指摘のとおり、こういう経済環境下にあって、体力の弱い企業にとっては当然新たな負荷を強いるということにもなりますから、そこについては融資制度、これは労働福祉事業団とか雇用促進事業団等々幾つかあるのでありますが、それを適切に利用していただいて、指針の徹底、具体的な実現が図れるように支援、指導をしていくというふうに心得ております。
  63. 但馬久美

    但馬久美君 ありがとうございました。  それでは次に、五十名未満の小規模の事業所における労働災害対策についてお伺いいたします。  労働安全衛生法の問題といたしまして、五十名未満の事業所における労働災害が非常に多いというのが昔から大きな問題になっておりますけれども、一向に改善の兆しが見えておりません。  そこで、中小企業の安全衛生問題の改善のためにも、地域産業保健センター、また労災防止指導員など、こういう制度を強化せよという切実な要望が出ておりますので、労働省はこういう点どういうふうに考えておられるか、御意見をお聞かせください。
  64. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございましたように、小規模事業所における労働災害、全体としては減少しておりますが、発生率から見ますと、大企業等に比べてかなり高い状況にあるわけでございます。私ども、そうした小規模事業場労働災害の防止、またそこで働く方々健康確保は大変重要な課題だというふうに認識いたしておりまして、私どもの対策のよりどころになっております第九次労働災害防止計画においてもそうしたことを重点課題として取り上げているところでございます。  労働災害の防止の観点からは、五十人未満の小規模事業所に対しましては、集団でいろいろ安全活動を実施する場合の費用助成等を含めて、かねてより事業を展開して支援をしてきておるわけでございますが、今御指摘ございました健康確保という面につきまして、地域の産業保健センター、都道府県の産業保健推進センター等を整備して、こうした小規模事業場における健康確保対策にそういったところが窓口となって当たっていく、そういう体制も整備をしてきておるところでございます。  ただ、いろんな安全衛生法上の安全衛生管理の体系、あるいは産業医選任義務等について五十人未満とそれより大きい事業所について一定の差が設けられていることも事実でございます。  そうした労働災害防止全体をこれからどう進めていくのか、またそうした違いを今後どういうふうに対応していくべきなのかにつきまして、かねて中央労働基準審議会からもそうした問題について検討を進めるべしという指摘がございました。また、前回の労働安全衛生法改正の際にも、五年後の見直しに当たってそういったことを検討していくべきということも出ているわけでございますので、私ども、そうしたことを受けまして、労使から成る関係のそうしたことについて検討する委員会設置いたしまして、こうした小規模事業場における健康確保対策のあり方等について検討をしていきたい、そうした検討の結果を踏まえて、労働安全衛生法、五年後に健康関連の部分について見直しということが要請されておりますので、そうした際にそうした成果を生かしてまいりたいと考えているところでございます。
  65. 但馬久美

    但馬久美君 ぜひ五年後見直しまでにはきちっとした整備を行っていただきたいと思います。  それでは次に、今非常に紙面をにぎわせております化学物質、私も東京で起きたサリン事件とか、そしてまたその後の事件捜査を通しまして、今いろんな化学物質によって事件が起きているということを聞きますと、一般の方々にとっては非常に不安でありますし、そういう意味で今回、この労働委員会ではありますけれども、厚生省の方にも来ていただきまして細かく質問させていただきたいと思います。  ある雑誌に次のような深刻な体験が載っておりました。これは中古住宅を買った方の話でありますけれども、中古住宅を購入したものの、シロアリの被害に遭いまして、徹底的に駆除を行い、さらに室内のリフォームを行って念願のリフォームが完成しました。そのとき、ほっと一息つく間もなくその方が倒れてしまったということなんですね。その方の状態は、頭のてっぺんから足の先まで全体にもうあらゆる症状が出てきて、それは頭痛とか微熱とか目まいとか、それから鼻血、そして首の凝りとか。一番困ったのは不整脈とか、また脂汗が出てきて脈拍数が通常でない、普通五十から八十のところが百二十ぐらいになってしまった。そういう症状が起きたわけなんですね。そして、育児どころではなくて、家事もできなくなってしまった。そういう状況が今まではなかったのに、今回、家のリフォームをした結果そういうふうになった。  いろんな部局を回られまして、検査結果異常なしという判断が出たわけなんです。でも、最終の診断結果は引っ越しうつ病であったと。これは新築病とも言って、新しい家を新築、改築したときに体調の不調を来すもので、環境の変化についていけず、そういう精神的なストレスによってそういう病状になった、ひいてはこの体調の不調を悪くさせるということが一つの診断とされたわけなんですね。  しかし、後にこの体調の不調の原因は、シロアリ駆除剤の散布やまた室内の接着剤に含まれるホルムアルデヒドという化学物質であったということがわかった。これは典型的な化学物質の過敏症の一例でシックハウス症候群と、これはよく使われる言葉ですけれども、言われております。家やマンションに使用されている化学物質が原因で体調の不調を訴える方が急増しているんですけれども、現在、そうした患者さんはどれぐらいいらっしゃるのか、またそれをどのように調査されているのか、厚生省の方にお伺いいたします。
  66. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 実は私もテレビでそういった報道に何回か接したことがございます。大変深刻な症状を訴えておられまして、大きな問題だなというふうに感じているところでございます。  今御指摘の室内の空気中の化学物質によります健康被害の実態についてでございますが、これは国民生活センターの情報などを総合いたしますと、近年増加の傾向にあるというふうに承知をいたしております。これらの健康被害につきましては、今先生お話のございましたいわゆるシックハウス症候群あるいは化学物質過敏症といった名前で呼ばれているわけでございますけれども、残念ながら、現在の時点におきましては、その定義あるいは原因、あるいは症状自体などが確立をされていないということから、その被害の実態というものを把握することは非常に困難な状況にあるということでございます。  厚生省といたしましては、まず、こういった化学物質の人体への健康影響の評価ということは非常に重要でございますので、そういったことを行いますとともに、いわゆる化学物質過敏症などの健康被害とそれから化学物質との関係、どういう種類の化学物質にどの程度さらされればそういう症状が起こるかということの、いわゆるそういった実態把握ということで調査研究を実施しているところでございますが、引き続きこういった調査研究を進めますとともに、必要な情報収集に努めまして、健康被害発生の実態把握あるいはそれに対する対策の確立ということにつきまして引き続き努力を続けたいと思いますが、残念ながらまだ十分にその実態がわかっていないという状況でございますので、調査研究を強力に推進するということが重要であるというふうに考えております。
  67. 但馬久美

    但馬久美君 それでは、欧米とか海外でのあれはどうだということで、こういうふうに取り上げております。  いわゆる省エネビルにおいて、これは欧米各地の話ですけれども、居住者から、目まいや吐き気、頭痛、そしてまた平衡感覚の失調、そして目や鼻やのどの痛み、粘膜や皮膚の乾燥感、せきがぜいぜいするとかまたのどがかれるなど、いろんな症状を訴える苦情がビルの所有者や国や州に対して出てくるようになっております。またデンマークでは、千五百人の市民を対象調査したところ、一五%以上の人に先ほどの症状のいずれかが見えたと言われております。  また、同様にアメリカでは二百のビルで調査したところ、いずれのビルにおいても何らかの苦情が出ているということが報告されております。この報告はシックビルディングシンドロームといって、これが語源となって我が国ではシックハウス症候群と名づけられているんですけれども、しかし厳密に言えば、このシックハウス症候群の原因にダニやペットやカビなども一因となっているということですけれども、化学物質の過敏症とは一線を引かれております。  化学物質過敏症とは、建物に使用されている新建材また接着剤、またトルエンなどに含まれる化学物質が揮発して、それを吸い込むことによって体調の不調を来すものもあれば、また、化学物質を扱う労働の現場においても起こるのも含まれております。  ところで、この体調の不調を的確に化学物質過敏症と診断する医療機関が非常に少ないと言われております。今も御答弁で、過敏症ということがはっきり断定できるということはまだまだ不可能であるということを言われておりますけれども、ただ唯一、北里大学医学部の眼科教室だけがこれを訴えているんですけれども、実際のところこれがどうなのか、その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  68. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 先ほど生活衛生局長からもお答えをさせていただきましたが、化学物質過敏症につきましては疾患の概念がまだ十分確立されていないというのが現状でございます。  我が国におきましては、中毒学が一方にあるわけでございますが、またアレルギーという分野もあるわけでございます。化学物質過敏症は、中毒学やアレルギー、そのそれぞれで説明できない状態を示すということで、これにどう取り組むかということで、先ほどお話のありました北里大学の石川先生にお願いをいたしまして、平成九年度から、新しい病気として考えるべきか否かということで研究班を設けて研究していただいているところでございます。  したがいまして、病気の概念が確立していないということから、化学物質過敏症を専門に扱う医師とか医療機関が非常に少ないというのが現状でございまして、私どもとしては、病気の概念の確立を研究班を設置して進めると同時に、できるだけその研究成果を医療機関に提供いたしまして、お医者さんがそういう患者さんが来たときに適切に対応できるように、今後とも研究班を中心に疾患概念の確立と実態把握を進めていきたいと考えているところでございます。
  69. 但馬久美

    但馬久美君 概念と今おっしゃいましたけれども、アメリカではキューレンという学者によって化学物質過敏症というのが命名されたと聞いております。比較的多量の化学物質に暴露された後、低濃度の化学物質が体に繰り返し暴露されたり、またごく微量でも毎日一定量が長年にわたって体内に浸透し続けると、自律神経失調症やアレルギー症状と類似した体の反応をあらわす症例があらわれるとわかってきましたとこの学者は言っておられます。そこで、その原因となる薬品や環境化学物質が判明したとき、これらの患者を称して化学物質過敏症と呼ぶようになったと言われております。  それでは、どれくらいの人が化学物質過敏症にかかっているかと申しますと、アメリカのニュージャージー州のある学者の疫学調査によりますと、アメリカ人の約一〇%が過敏症にかかっていると言われております。これは一九八九年ですから十年前の話です。また、別の学者のノースカロライナの人の疫学調査や、また日本人の四万五千人の調査から、先進国では人口の約一割に化学物質過敏症の疾患があると一般的に言われるようになっております。  このことは、私が勝手に言っているのではなくて、日本医師会の雑誌記事にきちっと記載されております。これが事実であれば非常に大変なことですし、また日本人の約一割ですから千三百万人に当たると思います。これだけの人が何らかの化学物質過敏症にかかっているということになりますので、厚生省はこうした見解に対して、これを聞かれましてどういう感想をお持ちですか。
  70. 伊藤雅治

    政府委員伊藤雅治君) 今、委員御指摘の合衆国やカナダで国民の一〇%にも達しているというのは、私どもとしても承知をしているところでございます。  残念ながら、我が国におきましては、この化学物質過敏症の実態についての信頼できる調査がないというのが現状でございまして、私どもも、病気の診断基準の確立と同時にこの実態把握も研究班を中心に今後とも力を入れていく必要があると考えているところでございます。
  71. 但馬久美

    但馬久美君 ぜひ調査し、そしてまた化学物質過敏症というのはいまだに一部の医学者の見解に過ぎないわけですから、こういう事実からして厚生省は本当に早く手を打っていただきたい、そういうふうに思います。早期に化学物質過敏症という学術名もしくは病名をきちっと認可して医学界を混乱させないでいただきたい。現実にそうした患者さんがいらっしゃるわけですから、患者さん本位の厚生省であっていただきたいと思います。広く伝達して、苦しんでいる人たちに対して不安を取っていただきたい、そういうふうに思います。  それでは、次に労働省にお伺いいたします。  日本では五十人から三千人の従業員を抱える企業が一人の産業医を抱える義務があるとされております。この産業医に対して、こうした化学物質過敏症あるいは化学物質疾病について、この治療法、どのように指導していらっしゃるのか、また当然労働の現場においても化学物質過敏症や化学物質疾病が起きていると思われますけれども、どれぐらいの数の患者さんが診察を受けているのか、お聞かせください。
  72. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 化学物質による職場での疾病の問題でございますが、それに関連いたしまして産業医の方がそうした問題に的確に対応できる形になっているかという御指摘でございます。  現在、産業医の方につきましては、労働者の方の健康管理を行うのに必要な医学的知識につきまして一定の要件を備えることを必要といたしているところでございます。具体的には、労働大臣が定める講習を修了した者の中から選任されることが必要になっておりまして、こうした講習の中には業務上の疾病の予防に関する科目として、化学物質による疾病の予防対策についても含まれているところでございまして、こうしたことを通じまして、産業医の方の化学物質と疾病の関係に関する知識、情報の提供に努めているところでございます。  あわせまして、私ども各都道府県単位に産業保健推進センターを今整備いたしてきております。ここが各地域の産業医の方からの専門的な相談に応じたり、また産業医の方に対します専門的な研修を実施したりする機能を果たしているところでございまして、そうしたところを通じましても化学物質と疾病に関する情報等の提供が十分産業医の方に参りますように努力をいたしておるところでございます。  それから、御指摘ございましたいわゆる化学物質過敏症の問題について、労働の現場でどのくらいの方が治療を受けているかという御指摘でございますが、化学物質過敏症の問題については先ほど来厚生省の方からもお話がありましたように、未解明の部分も多くて、現在医療機関等で情報収集が進められているものと承知しておりまして、労働省といたしましても、そうした知見の収集については今後とも努力してまいりたいと考えております。  そういうことで、化学物質過敏症ということで明確に分類されて何名の方が治療を受けているかというようなデータについてはございません。ただ、労災保険の請求に際しまして、主治医の方がその後病名を化学物質過敏症というような形でそういうふうに名づけておられるようなケースについて労災の請求があったというようなものについては、私どもここのところ数件把握はいたしております。
  73. 但馬久美

    但馬久美君 化学物質過敏症の治療には保険の適用もないわけですから、マスコミで騒がれてきていますので、ある程度病気の原因がわかっても、保険の適用がなければ治療代のコストが非常に高く、それを懸念する方々も多くいらっしゃいます。そういう意味で、厚生省も早くこの化学物質過敏症というものに対してきちっとした病名を名づけていただきたい、そういうふうにも思います。  時間がありませんので、もうあと一点質問いたします。  これは、厚生省と労働省にお伺いいたします。  人工化学物質は五万種とも十万種とも言われております。多種多様ですけれども、さらに毎年約千種類が新たにつくられていると言われております。もちろん私たちの生活がこの化学物質の生産によって便利になったということは否定できませんけれども、しかし拡大生産の路線に隠れて安全性の確認が軽視され、またそのためにコストの負担については世界的に見ても消極的であります。  例えば発がん物質の動物実験では、全世界的にできるのが三百件が限度と言われております。それに対して、千種類が生まれているわけですから、三割しかできないと。これでは開発に対する安全性の確認が永久にできないということにもなりますし、フィフティー・フィフティーにするには、具体的には人員や施設の増大が要求されると思います。その後に化学物質の毒性についての総点検も行うべきだと思いますけれども、日本ではむしろ世界的にも安全性の確認の方面に対しては非常におくれているとも伺っておりますので、この点について厚生省と労働省にお伺いしまして、私の質問とさせていただきます。
  74. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 御指摘の化学物質の安全性の確保ということは非常に重要な問題でございます。ただし、安全性を確認するということに関しましては、各種の毒性実験といったものを実施しなければなりませんし、その結果を評価し、既存化学物質につきましての安全性点検ということが重要であるということは十分認識をいたしておりまして、従来より順次これを進めているところでございます。  ただ、今、先生御指摘のございましたように、安全性の点検に必要な毒性試験の実施につきましては、非常に多くの経費と時間を要することもまた事実でございまして、こういったことから、一国のみでこれを全部実施するということはなかなか困難な状況にございます。このために、国際的な取り組みといたしまして、OECDにおきまして、世界的に生産量の多い化学物質につきまして、加盟各国が分担、協力をいたしまして効率的に安全性点検を実施していく活動が行われているところでございます。  我が国といたしましても、関係省庁と協力をいたしまして、この取り組みに参加をいたしまして化学物質の安全性点検に関する国際協力を推進しているところでございます。このうち、人の健康影響に関します部分につきましては私ども厚生省が中心になって行っているところでございます。  今後とも、こういった国際的な枠組みでの取り組みが非常に強力に推進をされているところでございますので、OECDあるいはWHO等々、国際的な諸機関とも連携をとりながら安全性の点検に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  75. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 新規の化学物質の有害性の把握の問題につきましては、労働安全衛生法上、新規化学物質を製造するあるいは輸入する事業者に対しまして、がん原性に係る有害性調査を義務づけておるところでございますが、国としてもそうした有害性調査の実施、これを援助していくために、日本バイオアッセイ研究センター、そういった専門の施設を設けまして、がん原性試験等の実施等に当たっておるところでございます。  ただ、こうした物質のそうした試験につきましては、なかなか費用、時間がかかるということは先ほど厚生省の方からもお話があったとおりでございまして、私どもそうした意味で、やはり関係行政機関、あるいは国際的にも連携を深めながらそうした化学物質の知見を迅速に、また広く収集いたしまして、それに応じた的確な対応をとっていく。  あわせまして、既にそうしたがん原性が疑われる物質等について、安全衛生法上、製造段階あるいは労働現場における管理のあり方等々について規制を設けておりますので、そうしたものについて十分徹底をさせていく努力を引き続きいたしてまいりたいと思っております。
  76. 但馬久美

    但馬久美君 ぜひ、やはり人の生命にかかわる問題でありますから、化学物質の取り扱いとか、また安全対策というのは非常にこれから大事だと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  以上でございます。
  77. 市田忠義

    ○市田忠義君 日本共産党の市田です。  今衆議院労働者派遣法が審議中ですが、賃金の面でも労働条件の面でも大変過酷な状態に派遣労働者が置かれている、身分も大変不安定ですし、一般の労働者には認められているような権利でも、その権利が奪われているというような実態も数々あります。  そこで、私、まず初めにお伺いしたいのは、労働安全衛生法というのは当然派遣労働者にも適用されるというふうに思いますが、いかがですか。
  78. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働安全衛生法、当然ながら派遣労働者として働く方についても適用のあるところでございます。
  79. 市田忠義

    ○市田忠義君 労働安全衛生法第六十六条には、事業者労働者に対して医師による健康診断を行わなければならないと、その旨規定されていますし、具体的に定めた労働安全衛生規則第四十三条で、事業者は常時使用する労働者を雇い入れるときは健康診断を行うことが義務づけられていると、こうなっていますが、この常時使用する労働者というのはどういう労働者ですか。
  80. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、一般健康診断、常時使用される方を対象として事業主が実施することを義務づけておるわけでございますが、この常時使用される労働者につきましては、期間の定めのない雇用の形、あるいは期間の定めがある場合でも一年を超えて雇用される見込みがあるケース、そういった方がいわばこの常時使用性があるかどうかの一つの判断基準になるわけでございます。
  81. 市田忠義

    ○市田忠義君 じゃ、登録型の派遣労働者というのはこの常時使用に当たるんですか、どうなんですか。
  82. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 登録型ということだけでは今私、常時使用性があるかどうかについてなかなか一律的にはお答えしにくいかと存じますが、要するに、期間の短い形で雇用されているケースにつきまして、実質上反復更新されて一年を超えていくようなことになる場合には常時使用性がある、こういう判断をしてきております。そういったことに照らして、御指摘のような方について、個々のケースに即して常時使用されるものとするかどうかの判断をしていくことになるわけでございます。
  83. 市田忠義

    ○市田忠義君 労働安全衛生法は当然派遣労働者にも適用されるというふうに最初はお認めになりましたけれども、じゃ、登録型の派遣労働者の場合は常時使用かどうかということを見た上で、そうでない場合は労働安全衛生法の適用外になるわけですね。健康診断も受けさせないでも構わないと、こういうことになるわけですか。
  84. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 安全衛生法におきまして事業主に義務づけているいわば雇い入れ時の健康診断、それから一年に一回あるいは半年に一回の定期健康診断、これは、事業主がその労働者健康状況を継続的に把握して、適正に健康との兼ね合いを考慮した配置をしていく等のいわば適切な労務管理を行わせていくための義務づけでございます。したがいまして、臨時的にとかいう形で、常時使用される形にならない方についてまで事業主にそうしたことを義務づけるわけにはまいらない、そういうことで、常時使用される労働者の方がそういった健康診断の義務づけの対象になるわけでございます。  そうした考え方は、これは派遣労働者の方でも一般のそうでない方でも全く同様でございまして、常時使用性がある限りそうした健康診断事業主に実施が義務づけられることになるわけでございます。
  85. 市田忠義

    ○市田忠義君 じゃ、お聞きしますが、派遣労働者は雇い入れ時に健康診断をどれぐらい受けているかという調査はやっていますか。
  86. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働者の方から見て何名の方について実際健康診断が行われているかということを統計的に把握するのは困難でございまして、そうしたことについては今データはないわけでございますが、ただ、そうした労働者派遣事業を営む事業者につきまして、労働基準法を初めとした労働基準関係法律の履行を確保してもらう、これは当然でございまして、全国の労働基準監督機関が監督指導を行ってまいるわけでございますが、そうした中で労働者派遣事業を営む事業場に対します指導監督も行っております。  そういう中から集計いたしますと、平成九年にこうした監督指導の対象になった労働者派遣事業、百十六件ございますが、そうした事業場定期健康診断等につきまして何らかの違反があったというのは十三件でございます。それから、平成十年にはこうした監督指導の対象になった労働者派遣の事業者が百五十八件ございますが、その中で違反が認められたものは二十二件でございます。
  87. 市田忠義

    ○市田忠義君 派遣労働者は今大体八十六万人ぐらいというふうに言われておりますけれども、そのうち登録型が七十万人、ですから圧倒的多数が登録型であるわけです。ところが、一般に派遣労働者労働安全衛生法の適用を受けるというふうにおっしゃるけれども、常時使用に当たらないような場合にはその対象外だと。ただでさえ大変な状態に置かれている登録型の派遣労働者健康診断すらまともに受けられない。しかも、一体そういう派遣労働者が雇い入れのときに健康診断をどれぐらい受けているかという調査もきちんとしてない。しかも、我々は派遣労働者の枠を広げることに反対ですが、政府考え方はどんどん広げていこうと。広げていこうというときに、そういう労働者の雇い入れのときに健康診断をやるなんというのは最小限の責任だと思うんだけれども、そういうことすらが、適用されると言いながら実際には健康診断を受けづらい、受けにくい、そういう実態がほとんどじゃないかと思うんです。私、実態を調べてそういう人たちがきちんと健康診断を受けられるようにする、当たり前だと思うんですが、大臣、いかがですか。
  88. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今まで基準局長が答弁させていただいたとおりなんでありますが、常時使用する労働者ということをどうとらえるかと、確かに問題になります。  労働安全衛生法は派遣労働者対象にあるのにどうしてだということでありますけれども、そこには常時使用する労働者がその対象になるということがその具体的な中身になっているわけでありますが、そうでない者をどこまでどうカバーするかという問題、すべてを対象とせよということになりますと、結局一日働いた者もするという、突き詰めればそこまでいってしまうわけでありますから、これは自己管理といいますか、自己責任の部分と使用者側の責任という部分のある程度すみ分け部分が出てくるのだというふうに思っております。  常時派遣労働者として雇用されている限りは、健康診断が確実に実施され、適切な健康管理が行われていくように監督指導を進めていくということは当然のことであります。
  89. 市田忠義

    ○市田忠義君 極端な例をおっしゃったら私だめだと思うんです。一日働いた者も健康診断を受けさせろと、そんなことは言ってないですよ。  派遣大手のパソナの場合、登録型の派遣労働者で大体年平均して八カ月ぐらい派遣労働者として働いている、そういう数字が出ているんです。これを考えた場合、年平均八カ月ということは、八カ月働いて残りの四カ月は待機しているというのはこれは考えにくいと思うんです。恐らく、例えば年平均八カ月だから、三カ月働いて次二カ月は待機している、また三カ月働いて二カ月待機して次二カ月働く。こうなれば年八カ月働く。待機期間が、間を置いてというか中断期間が入る、こういう形になるのが大体通例だと思うんです。じゃ、聞きますが、例えば今言ったような平均して八カ月、こういう中断期間がある、派遣先が変更するということもある、こういう場合は健康診断対象、常時労働者ということになるんですか、どうなりますか。こういう場合は、少なくとも労働安全衛生法で義務づけられている対象外になっちゃうのですか、どうなんですか。私、一日なんというようなことは言ってないですよ。今のような場合はどうなんですか。
  90. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今御指摘あった事実関係だけではなかなか技術的にお答え申し上げるのは難しいかと存じます。  基本的には、短い契約期間等であれ、反復更新して雇用されて一年を超えるような形が想定されるケースについては、常時使用される者として扱っていることは事実でございます。  今のように、八カ月ということでございますが、一体どういう形で八カ月になるのか、実質的に拘束性があるというような形で、パソナから要請があった場合にはいつでも行けるような態勢に、派遣される態勢になっていくのかどうか、ちょっといろんなケースを見させていただかないと、正直、最終的な判断というのはできないと思いますので、今どちらかについてこうだというふうにお答えするのは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、労働基準監督署、そうした監督指導を行っていく際に、派遣事業を営むものにつきましても、労働条件確保のために私ども必ずそうしたところも対象に含めて監督を行っていくわけでございますので、先生御指摘のような実例につきましては、そうした中から実例等についても私どもピックアップしまして、いろいろ調べてみたいと思いますし、どういう実情にあるのか把握した上でまたお答えするときがあればお答えさせていただきたいと思います。
  91. 市田忠義

    ○市田忠義君 冒頭にも言ったように、ただでさえ過酷な大変な状況に置かれている派遣労働者が、法律上名目的には労働安全衛生法対象外ではないと言いながら、実際上は本当にごく当たり前の最小限の雇い入れ時の年一回の健康診断が実際に受けられているのかどうかという調査もない。  しかも、今の話ならば、大変受けにくい状況にあるという事態をやっぱりしっかり押さえて、そういう労働者が雇い入れ時あるいは年一回の健康診断がしっかり受けられるようにぜひ前向きに検討していただきたいと思う。大臣、改めてもう一度いかがですか。  私、一日働いた者でもと、そんなことは言っていないので、今のような場合、例えば八カ月というような場合に、ああいう中断期間があるような場合どうなのか、そういうことも含めてぜひ私は検討する必要がある、実態もつかむということをぜひやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  92. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先ほど局長からお答えさせていただきました、実態把握させていただいて、また派遣法等の議論のときにいろいろと議論させていただきたいというふうに思っております。
  93. 市田忠義

    ○市田忠義君 前向きに検討するとはまだおっしゃっていませんので、ひとつ引き続きこれは追及していきたい。  ほかにも聞きたいことがいっぱいありますので次に移ります。  深夜業に従事する労働者は年一回じゃなくて六カ月に一回健康診断を受ける必要がありますし、今度の改正で自主健診を尊重するということになりました。  ここで深夜業に従事する労働者というのは、毎日深夜業に従事する必要があるのか、月何回以上というような規定があるのか、これはいかがでしょうか。
  94. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業に従事される方についての定期健康診断、六カ月に一回となっておりますが、これは常時使用される方であって、週一回以上また月四回以上深夜業に従事する者という考え方対象にしております。
  95. 市田忠義

    ○市田忠義君 これは先ほどの健康診断の話とも同様、一般の健康診断ともかかわる話ですが、例えば登録型の派遣労働者が深夜業につく場合、中断期間なんかがあって六カ月に一回といってもなかなか健康診断を受けられなくなるんじゃないかという心配を我々するわけですが、そういう人々が、派遣労働者で深夜業に従事する人がちゃんと六カ月に一回健康診断を受けられるような措置検討されているのかどうか、いかがですか。
  96. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほども申し上げましたように、全国の労働基準監督署が監督指導を行う際に、派遣事業を営むところにつきましてもそうした監督指導を行い、こうした定期健康診断等についての違反が認められないかどうかチェックを行いまして、先ほど数字を申し上げたとおりでございます。平成九年で申し上げれば、百十六件を監督して違反が認められたものは十三件ということでございますので、常時使用されるということで働いておられる派遣労働者の方についても、私ども現在、この定期健康診断等について、深夜働くケースであれ大半は実施されていると。もし実施されていないケースにつきましては、この十三件についても臨検監督の結果是正勧告等を出して是正をさせているはずでございますので、今後もそうした監督指導につきましては、労働者派遣事業のケースにつきまして、労働者の方の健康を守る観点からきちんと各監督署が臨むように対応してまいりたいと思っております。
  97. 市田忠義

    ○市田忠義君 大半はやられていると言うけれども、常時でない場合は深夜業に従事していても六カ月に一回の健康診断対象には入らないわけでしょう、今の話なら。常時使用でない場合は、深夜業に従事していても、例えば間に何カ月間か中断があって、さっき言ったような年平均八カ月働いているという場合でも、深夜業をやっていても六カ月に一回の健康診断、これはいつの時点で、例えば今度の新しい改正で自主健診の権利が与えられたと、登録型派遣労働者はどの時点でこの自主健診の権利が発生するんですか。
  98. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 失礼をいたしました。先ほど先生からは、要するに実質的に夜派遣される派遣労働者については定期健診のチャンスがなくなるのではないかという、いわば時間的あるいはそういったいわば便宜上といいますか、定期健診に赴く余裕がないのではないかというような御指摘かと思いまして、そうしたことについては安全衛生法違反になるのでということでお答え申し上げたわけでございますが、ただ、安全衛生法上義務づけられている健康診断対象者というのは常時使用するあるいは常時使用される方でございますので、そうした方について、それは夜働くかどうかにかかわらず事業主健康状況を雇い入れ時から、または半年に一回、あるいは年に一回継続的にフォローして、この方の職場配置、あるいは昼の勤務にするか夜の勤務にするかというようなことを決めていくために必要な措置として健康診断を行うこと、いわば継続的に健康状況把握することを事業主に義務づけておるわけでございますので、要するに断続的にしか働かない、また、この次は来てくれるかどうかわからないというパターンの働き方をされる方について労働安全衛生法事業主健康診断を義務づけるわけにいかないことは、これは御理解いただけると思うわけでございます。そうした制度上の問題については、今申し上げたような説明で御理解をいただきたいと思います。
  99. 市田忠義

    ○市田忠義君 だから、制度上も検討すべきじゃないかと。今これだけ派遣労働者がふえているもとで、派遣労働者労働安全衛生法の当然適用内に入るんだと言いながら、実際は排除されるじゃないか、そういう人が生まれないような措置を新たに検討すべきじゃないかということを今言っているんです。  じゃ、もう一つお聞きしたいと思いますが、例えば健康診断の結果作業転換が必要となった場合に、派遣労働者の場合、派遣先で作業転換を行うのか、それとも派遣元が作業転換にふさわしい派遣先を提供することになるのか、これはどちらがやることになるんですか。
  100. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これは労働者派遣事業法におきまして、労働基準法労働安全衛生法等についての使用者責任については明確にそこの関係は定めを持っておりまして、今、一般健康診断、いわゆる雇い入れ時、あるいは定期健康診断の結果、有所見ということが出て、何らかの職場配置等について安全衛生法が求めている就業上の措置を講じなければならないということになりますと、その責任は派遣元にございます。それで、派遣元がそうした健康が確保されるような形のいわば派遣へ切りかえていかなければならないということになるわけでございます。
  101. 市田忠義

    ○市田忠義君 じゃ、もう一度確認しておきますが、そういう場合は派遣元が新たな派遣先を提供する、そういう義務を課すんだというふうに確認していいですか。  例えば、健康診断の結果、仕事先を変更する必要があるというふうに判断した場合には、派遣元が新しい派遣先を提供する、そういう義務を負うと。そこまでしないと、結局派遣先にとったら自分のところで役立つ人しか要らないわけだから、そんなもの送っていらぬということになるわけで、派遣元がそういう問題についてきちんと責任を持たないと私は本当に派遣労働者は大変になると思うんですが、その辺、先ほど伊藤さんそういう趣旨のことをおっしゃったと思うんですが、そう確認していいですか。
  102. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 健康診断の結果何らかの所見が出て就業上の措置を実施していく場合、私どもそうした場合の実施の仕方についての手順やそういったものについての指針を現在も労働大臣が定めて、それに基づいて指導をいたしております。  そうした際に、まずはそうした有所見が出て何らかの就業上の工夫をしなくてはいけないという場合、これは派遣労働者の場合であれそうでない方の場合であれ、労働条件等の変更を来すわけでございます。そういう可能性があるわけでございますから、事業主労働者の方がまず十分話し合って、納得いく形で就業上の例えば配置転換なり労働時間の変更なり、そういったものをやるべきだと。少なくともそうしたことを理由に解雇等の不利益取り扱いみたいなことにならないように、これはそういったものをよりどころに指導をいたしてきておるわけでございますので、今回、自発的健診というようなものの新しい道も入るわけでございますので、そうした点については今後指導に万全を期していきたいと考えております。
  103. 市田忠義

    ○市田忠義君 結局、派遣労働者法律の恩恵を受けられなくなるんじゃないか。そういうことがないような具体的な措置をぜひ前向きに検討していただきたいことを申し上げて、次の質問に移りたいと思うんです。  先ほども過労死や過労自殺の話がございましたが、今大変、深夜に及ぶ過酷な労働だとか強度のストレスを受ける業務がふえてきたこともあって、過労死、特に過労自殺がふえております。この問題についてお聞きしたいと思います。  オリックスのスカウトをやっていた三輪田氏が選手の獲得をめぐる心労から自殺を遂げたという事件は我々の記憶にまだ新しいわけですが、新聞報道によると、遺族が労災の申請をしたということが報じられておりましたが、私、大変この間の自殺過労死事件に対する労働省の対応を見て本当に心配しているというか、考え直していただく必要があるというふうに思っていることがあります。  それは、労働者災害補償保険法の十二条の二の二の一項、こういう文言があります。「故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となつた事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。」、こういう規定があります。要するに、故意による死亡、すなわち自殺については支給制限を行う、こういう規定になっているわけです。  自殺の場合、それが業務に起因していても、発作的でないとだめだとか、覚悟の自殺、遺書を書いたような自殺は自分が死ぬことがわかっているわけだからこれは故意による死亡だ、だめだと。業務に起因する躁うつ症で自殺した場合でも、その自殺したときが心神喪失状態であった場合には労災の支給対象となるけれども、そうでない場合はその対象とならない、こういう、この項目を使って異常に労災認定を狭める、当然補償すべき人がそのためになかなか補償されないという事例があちこちにある。  例えば、一般労働者でこの間自殺を労災もしくは公務災害として申請した数がどれぐらいあるか、それに対して労災認定をされた件数がどれぐらいあるかちょっと見てみますと、例えば一九八九年、申請された件数は一件。その翌年がゼロ、その翌年が一、順番に三、五、十、十一、三十。一九九六年では三十件。大変ふえてきているんです、ここ数年。じゃ、労災認定された件数はどうか。ほとんど変わっていないんです。一九八九年が一件。あとゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、ゼロ、一、二です。申請件数は九四年ぐらいを境にうんとふえているのに、実際の認定された件数はこれぐらいなんです。  私はそこで人事院にお聞きしたいんですが、国家公務員の公務災害補償を定めている国家公務員災害補償法、ここには私が先ほど紹介した労災保険法の十二条の二の二の一項のような規定があるかどうか、御説明いただきたい。
  104. 平山英三

    説明員(平山英三君) お答えいたします。  職員が故意に災害を生じさせた場合については公務上の災害と認められないということは当然でありますので、国家公務員災害補償法では労災保険法第十二条の二の二第一項に相当する規定は置いておりません。
  105. 市田忠義

    ○市田忠義君 大変私は明快だと思うんです。要するに、自殺が公務上のものであれば認定する、それ以外の条件は要らないと。心神喪失状態であるとかそのときに明確な自覚があったとか、そういうことじゃなくて、その自殺が公務上のものであれば労災認定する、だから先ほど言ったような規定は国家公務員災害補償法には設けていないんだということだと思うんです。  ところが、労災保険法にだけあるこの規定を使って、先ほど私が言ったように、その自殺が業務と相当因果関係があるというだけでは足りないと。例えば、後でもこれはお聞きしたいと思うんですけれども、長野の飯島労災、最初請求却下したときの根拠は、仮に反応性うつ病に罹患していたとしても、心身喪失の状態にあったということができず、自由意思に基づき自殺したものであるから、その自殺は労災保険法十二条の二の二第一項所定の故意に死亡結果を惹起させた場合に該当する、だから労災認定できないと。自殺したときに心神喪失状態でなかったという理由をもって、それは故意による死亡だ、だめだと、あの条項を使って労災認定しようとしなかった。これが労働省考え方なんですよ。だから、国家公務員災害補償法よりも高いハードルを置いて労災給付を否認する。  そこで私は厚生省にお聞きしたいんですが、厚生年金保険法にはかつて故意による遺族年金等の支給制限条項があったはずですが、どういう規定だったか説明してください。
  106. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) 厚生年金保険法の七十三条の関係でございますけれども、これは昭和四十年に改正されたわけです。改正されるまでは、故意による死亡、つまり自殺でございますけれども、その場合遺族には遺族年金は支給されない、こういう規定であったわけです。ところが、自殺の場合でも残された遺族には罪もないし生活はやはり保障してあげなきゃいけない、こういう必要性があるということで、故意による死亡というのを削除いたしまして年金を支給するようにしたということでございます。そういう改正を昭和四十年にやったということでございます。
  107. 市田忠義

    ○市田忠義君 ちゃんと厚生省はそういう改正をやっているんですよ。労働省だけ本当に私は特異だと思うんですね。  しかも、今言われた故意による死亡というのを削除したのは昭和四十年。その四十年以前、昭和三十五年の十月六日付保険発第一二三号、まだ法の改正が行われていないもとだけれども、運用面では既にこういうことがやられていたんですよ。「自殺による保険事故を生じた場合の遺族年金の支給制限については、自殺行為は何らかの精神異常に起因しておこなわれる場合が多く、たとえ当該行為が外見上通常人と全く同様の状態にあったとしても、これをもってただちに故意に保険事故を発生せしめたものとして給付制限をおこなうことは適当でない」、「自殺という行為が、精神異常の状態でおこなわれた場合、その精神異常が行為の動機となったと認められるものであれば、給付制限をおこなわれない」。法の改正前でもこういういわば運用が既にあった。  そして、昭和三十六年制定の国民年金保険法、これには絶対的な制限規定はなかったということから改正されたんです。私、改正理由を読んでみたら、こう書いていますよ。「従来、自己の故意の犯罪行為により廃疾になったり、死亡した場合や、自殺した場合などは保険給付の支給をおこなわないこととしていましたが、とくに死亡の場合は、遺族には責がなく、事情の如何を問わずに一律に支給しないことは社会立法としては必ずしも好ましくなく、現行でも自殺の場合は、解釈上自殺時は心神耗弱状態にあったとして故意性を阻却するものとして扱っていることでもありますので、国民年金等を参酌して、これを改め、絶対的給付制限としては故意の事故による廃疾に係わる障害給付と廃疾により繰り上げ支給される老齢年金に限られることとなったためであります」。これは極めて私は明快だと思うんです。他の法令から見ても労働省の立場は私は極めて特異だということを先ほど言いました。  そこで、労働省にお聞きしたい。  大阪地裁で平成九年十月二十九日にあった岸和田労基署長事件判決、これは長い判決ですから全文は結構ですから、この労災保険法十二条の二の二の解釈についてどういう判決を下しているか、その部分を読み上げてください。
  108. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 条文については今手元あれでございますが、御指摘の岸和田の労働基準監督署が扱った事件について、高裁まで争われた事件については、この十二条の二の二第一項の関係につきましては、判決におきましては、「業務と死傷等の結果との間の因果関係が中断された場合において、それが労働者の故意に基づく行為によるときは、政府が保険給付を行わないことを注意的に規定したものと解すべきである。」、こういう趣旨の判決と承知いたしております。  私ども、先生から再三今御指摘ございましたように、この労働者災害補償においての扱いについても……
  109. 市田忠義

    ○市田忠義君 判決だけ読み上げてくれたらいいんです。
  110. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 違うところは申し上げなくてよろしいですか。
  111. 市田忠義

    ○市田忠義君 あなたね、大変都合のいいところだけ読まれたんですよ。私はここを読んでくれときのう指定して、線まで引いてレクでやっているんですよ。そこをあなたは外して読んでいるんです。そんな恣意的なことをやったらだめですよ。  だから、あなたが読まなかったところを読みましょう。「労働者が自殺した場合、通常は、当該労働者が死の結果を認識し、これを認容したといえるのであるが、そのことから直ちに当該労働者に故意があり、同項により、保険給付を受けられないと解すべきではなく、」、ここを読んでほしかったんです。ところが、あなたはそこを読まなくてその前段のところだけ、そんな勝手な読み方をしたらだめですよ。  その後のところも紹介しましょう。「労働者の自殺による死亡の業務起因性を肯定するには自殺当時の精神状態が極度の精神異常又は心神喪失であることが必要であるとYは主張するが、自殺に労働者の自由意思がある程度介在していたとしても、業務との因果関係を肯定できる場合があり得ることに鑑みれば」云々と。すなわち、業務に起因していれば自殺時に心神喪失状態であろうが喪失状態でなかった場合であろうが労災認定すべきだということをこの判決は述べているんです。そこをあなたは省いて言ったらだめですよ。  そこで、先ほどの質問川橋委員もお尋ねになりましたが、長野の飯島労災、これもきのう指定したところどおり読んでくださいよ、どういう判決がこの問題について下されたか。
  112. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この部分かと存じますが、「労災保険法一二条の二の二第一項は、「故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。」と定めているが、この規定は、当該負傷、疾病若しくは死亡の結果がそもそも業務を原因とせず、業務と右死亡結果等との間に条件関係すら存在しない場合に労災保険給付を行わないという当然の事理を確認的に規定したものと解される。」、こういう部分でございまして、これは私ども基本的にはこんな考え方でやっているわけでございまして、先生の一連の申されたことにつきましては、最近の私どもが業務上の認定した事例等をめぐりながら、申請について私どもこの十二条の二の二第一項は現在そういう意味で必ずしも扱っていない、もっと業務に起因していろいろうつその他の精神症状を起こして自殺という破局を迎えた場合について、その業務上の因果関係を判断するために相当事実関係調査しながら、事実関係に基づいて因果関係があるケースについては自殺であれ業務上として判断しているケースもあることを申し添えておきたいと存じます。
  113. 市田忠義

    ○市田忠義君 あなた、そんないいかげんな答弁をしたらだめですよ。飯島労災の判決で労働省はどういう立場をとっていたんですか。ここを読みましょうか。  「うつ病に罹患した者は必ず自殺に至るというわけではないから、同疾病に罹患した被災労働者が自殺した場合であっても、発作により心神喪失の状態に陥り自由意思の介在が認められないままに自殺したような場合は」だめだ、こういうことを被告、要するに労働省は言ったんですよ。業務に起因していたとしても、覚悟の自殺だとか遺書を書いたり、心神喪失状態でない限りはだめなんだ、労災補償をやらないよと言って却下したのに対して、自殺した方の奥さんがこの裁判を起こされて、亡くなってから十四年目ですよ。そのとき四つだった長男は、この判決が出たときはもう十八歳です。奥さんは、この裁判の結果はうれしいけれども、このことによって自分の夫が帰ってくるわけではない、そういう言葉も述べておられました。  業務に起因していれば自殺である場合でもちゃんと労災認定をやるとあなたはおっしゃったけれども、やらないということをあなたは言ったから裁判になったんでしょう。どうなんですか。
  114. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) したがって、業務に相当異常な出来事あるいは重い精神的負荷があって、精神的ないわばストレス等の問題があり、それが例えば精神障害等を引き起こす原因として機能し、それでそうした状況が進行する中で自殺という事態に至る、そこは私どもも、やはりそうした精神障害のゆえにそういった完全な自由意思で故意に自分の命を絶ったというケースとして判断していないということは、今までの最近の事例からも当然でございます。  ただ、そうした中でも、自由意思があるかどうかというのはあくまで事実認定の問題でございまして、業務について悩むことがあったということと自殺をしたということとの、何といいますか、悩みがあればすべての自殺が業務との起因性が認められるわけじゃなくて、そこに自殺に至らざるを得ないような精神的な障害なりいろんなそういうことを引き起こす負荷があって自殺に至ったということを認定しておるわけでございます。
  115. 市田忠義

    ○市田忠義君 ちゃんと判決まで出て、労働省は上告しなかった、私はこれは英断だと思うんです。それは評価したいと思うんです。そんな言いわけを今したらだめですよ。  例えば、この方の場合だって、どんなことを言っているか、被告の側、労働省の側は。正月にカラオケに行ったとか、家族とちょっとお酒を飲んだ、だから躁うつ症が原因ではない、あるいは奥さんと性交渉を持った、そう書いてありますよ、ここに。だからこんなものは業務が原因の自殺というだけではないんだ、意識ははっきりしていたんだ、だからこんなものは労災認定すべきでない、こんなひどいことまで言って、十四年かかってようやく苦労に苦労を重ねてこういう判決が出た、そういうことについてはもっと重い認識で私は受けとめるべきだと思うんです。そうでしょう。  人事院も先ほど言われた。厚生省もああいうふうに言われた。わざわざ法律まで変えて、業務に起因さえしていれば自殺の場合も労災認定するべきだということを言っているのに、労働省だけはあの条文をいわば根拠にして労災認定を狭めようとしている、だからこういう裁判が起こるんじゃないんですか。あなた、何ぼ首をかしげてもだめですよ。恐らくこれをお読みになっているでしょう。そういうことまで労働省は言っているんですよ。  私は労働大臣にお伺いしたいです。これだけ批判されて、ある意味ではもう世間の常識とかなり離れているというのが今の私は労働省考え方だというふうに思うんです。だから、今、いろんな見直しもやろうということにしているんでしょう。先ほどの川橋委員質問に対しても、いろんな検討を今始めているということをおっしゃったけれども、国家公務員災害補償法、地方公務員災害補償法、ほとんど意味を持たないというのでそういう条文を置いていない。厚生年金保険法でも削除した。その規定をいまだに置いているから、いわばそれが足かせとなってなかなか労災認定が得られない。せっかく今認定基準の見直し作業を労働省がやっているんだったら、こういう無用の規定を削除するということを含めた検討をやるべきじゃないですか。大臣、いかがですか。
  116. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 市田先生のお話は大変興味深く勉強させていただいております。他の先生のがそうではないということではありませんが。  そこで、私も細かな部分まで子細に承知をしておるわけではありませんが、労働省が所管をしている労災補償の哲学、それ以外のものの哲学にどう違いがあるのかどうか、あるいは職務上、業務上との因果関係についてどう把握をするのか、その辺のところを少し勉強させていただきたいというふうに思っております。  ここで即答せよということであるならば、ぜひ先生も、こういう細かい問題について哲学論まで含めて質問をするからということを事前にいただければありがたいと思っております。
  117. 市田忠義

    ○市田忠義君 私は、労働大臣が飯島労災判決について上告されなかった、これは大臣の英断だと思うんです。だから、そういう態度をとられた大臣だからこそ私は言っているわけで、余りにもほかの法令と比べても労働省の態度が私は時代おくれだと思うんです。だから、本当に改めてそういう方向で見直すということをぜひやっていただきたいと思うんです。  大体、業務に起因した自殺であっても精神状態が極度の異常事態、心神喪失の状態でなかったらだめだとか、私の出身の京都の舞鶴の日立造船舞鶴造船所の下中さんという方は、遺書が残された自殺だから、これは覚悟の自殺だから労災認定できない、こういう話でしょう。あるいは、被災者の精神障害、それが業務に起因しているということがはっきりしていても、ほかにも要因があったらそれはだめだというふうな考え方、例えば中高年の労働者なんというのはほとんどの場合、配偶者や子供との家庭内の関係による精神的な負担、住宅ローン、いろんな複合的なやっぱり悩みはありますよ。しかし、業務に起因してそういう精神障害が起こったというのが、すべての要因でなくても一つの要因だったら労災認定するという方向で私は前向きで検討すべきだと思うんです。  ドイツなんかでも、自殺と労災の認定について、この百年ぐらいの間に大変大きな変化をしています。例えば、かつてはドイツの場合でも、故意による死亡すなわち自殺の場合はだめだというふうに言われていたのがだんだん変わってきて、さまざまな要因があったとしても、複合的であっても、それが業務に起因しているということであれば労災を認めるべきだと。日本と同じようにかつては、意思決定の契機がない場合のみ責任無能力状態の死亡は認めるけれどもそれ以外はだめというのが、ドイツでも百年ぐらい前はそういう考え方、ずっと第二次世界大戦の直後までそういう考えが続いていた。しかし、それでは労災の認定を狭めることになるということで、だんだん考え方も時代とともに諸外国でも変わってきているわけですから、ぜひ労働大臣、積極的に前向きにそういう検討をしていただきたいということを強く要望して、時間が来ましたので終わります。
  118. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 深夜業に従事する労働者生体リズムにさまざまな影響を及ぼす深夜業をめぐって、労働者の健康保持ということのために本改正案審議されるということについては非常に意義があることだというふうに思います。  ちょっと確認的にお尋ねをしたいのですが、深夜業に従事している労働者実態、そして業種ごと、就業形態ごとの実情をお尋ねしながら、年二回の健康診断がどのように実施をされているのか、その実績についてお尋ねをしたいと思います。
  119. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業に従事されている方々実態でございますが、深夜業に従事する労働者の方、平成九年に実施いたしました労働者健康状況調査報告等から推計いたしますと、何らかの形で常時深夜業に従事していることがあるという方が、男性で約五百三十万人、女性で約百四十万人、合計六百七十万人と推定をいたしております。  また、そうした実態につきまして、私ども昨年研究会を通じまして実情の調査をいたしましたが、深夜業の存在について業種別に見ますと、製造業の事業場で約三割、三〇%、それから運輸交通業で約二八%、それから保健衛生業で一四%、接客娯楽業で約九%、業種としてはかなりいろんな業種にまたがって存在しております。  また、形態を見ますと、交代制勤務で深夜働くという深夜交代制勤務労働者が約七四%ございます。それから、交代制ではなくて夜だけ何らかの形で働いておられる方が、常夜勤務労働者として分類いたしますと一三%、それから所定外労働がずっと延びて深夜まで及ぶ、そういう形が多いという方が一二%の割合になっております。  雇用形態別に見ますと、そうした深夜業に従事することがあるという方が、常用労働者の方が七四・二%でございまして、期間の定めのある方が二〇・六%、パートタイマーの方は五・二%と少なくなっております。  それから、深夜業に従事する方につきまして、年二回の健康診断を実施するよう事業主に義務づけておるところでございますが、その実施状況でございますが、深夜業に従事する労働者に対して二回以上の健康診断を実施している事業場の割合は約六八%になっております。一年に一回実施しているところというのが約二六%となっております。
  120. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 年二回義務づけられている健康診断が実施されているところが六八%で、あとは年一回が二六%というお答えですが、これはどういうところに原因があるんでしょうか。
  121. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これは、私どもさらに詳しく実情を把握しなくてはいけないわけでございますが、深夜業に従事したことがあるということでアンケート等で出てくる方が、いわば年二回健康診断を義務づけられる深夜業対象者に当たるかどうか、今、一週一回あるいは四週四回深夜業に従事することという方が年二回の対象者になるわけでございますが、それと必ずしも一致した形で答えてきているのかどうかということをちょっともう少し掘り下げなくてはいけない。一方では確かに年二回すべきところをしていない事業主も含まれている可能性ももちろんあるわけでございますので、その辺もう少し実態を分析しないと、先生に今その辺について正確にお答えできない状況でございます。
  122. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、今度自主的な受診ということになったわけですが、まず確認をさせていただきたいのは、これはどこの医療機関でも受診ができるわけですね。それで、その場合にそこの診断書を事業主に提出していくわけですけれども意見聴取が行われてさまざまな措置事業主からとられるまで、余りゆっくりではこれは困るわけですけれども、大体どんなふうに流れていくのかということを予測しておられるのでしょうか。
  123. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回、定期健診を待たずに自発的に受けた健診の結果についても、事業主に提出することによって深夜業回数の減少等の就業上の措置事業主検討することになる、そういう道筋を開いたわけでございます。これはあくまでも自発的に受ける健康診断でございますので、基本的には働く方が自主的に選択する医師、病院ということになります。そこで健康診断の結果が出て事業主に提出しますと、事業主は三カ月以内にそういった対応をとるように私ども今まで求めてきておるわけでございます、定期健診の場合についてですね。  今回の場合、もちろんその間、どのように労働者の方と話し合い、また産業医の方等の意見を聞きながら、例えば夜勤から昼間の勤務に移る場合等労働条件の変更等も含めて労使の方が納得するような形を通じてそうした対応措置をとりますので、そうした期間というものを、できるだけその三カ月の中で早くそうした結論を出すように私ども指導してまいりたいと思っております。  とりわけ自発的に健康診断を受けるという方は、どちらかといいますと自分の不安を感じて定期健康診断を待たずに健康診断を受けているわけでございますので、そうした事業主の対応をできるだけ早くとらなければならないということを思っておりますので、そうした観点からの指導は強化してまいりたいと思っております。
  124. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 こうした自主的受診に対する助成が行われるわけですけれども、この助成対象医療機関というものは限定されるのでしょうか。それから助成の支給先はどのようになるのでしょうか。その場合の支給要件というものはどんなふうになるのでしょうか。
  125. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 自発的健康診断を受ける場合の費用についての支援でございますが、これは平成十二年度の予算要求に向けて私ども内容を詰めて、具体的な予算要求をしてまいりたいと思っております。  そのための前提になりますのが、例えば自発的に健診を受ける場合の項目等についてどういうものを設定しておくか、あるいは支給方法をどうするか等々でございます。例えば項目につきましては、労使の方が推薦する医師等を含めて専門的な見地から検討をいただいて、その結果をもとに健康診断あり方を決めていこうというようなことで先ほどもお答え申し上げましたが、そういうことで自発的健診の内容を固めてまいりたいと思っておりますので、それが固まりました段階で具体的にどういう費用助成あり方がいいかというようなことを検討しなければなりませんので、それを早急に詰めて、その上で予算要求内容を詰めたいと思っております。  また、どういう診療機関が対象になるかということでございますが、基本的には先ほど申し上げましたように、労働者の方が自発的に受けるということで自主的に選択するわけでございますが、支給方法をどういうふうにするかと。いわば私どもが実務的に窓口処理ができる方法でないとなかなかこなし切れないものですから、例えば今の療養給付と同じように労災の指定病院等で現物給付の形でいく形になるのか、それ以外の方法をとるのか、労働者に直接費用を交付するような形になるのか、これはできるだけ簡素な、また行政の事務負担がかからない方法というものを検討していかなければなりませんので、これはもう少し時間をちょうだいして十分詰めて予算要求をしてまいりたいと思っております。
  126. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 やはりそうした助成はできるだけ効果的に行われなければならないというふうに思うわけです。ですから、現物給付かそれ以外、直接給付かどうかということですが、ただ、その受けられるということが労働者権利になって、不安なときはいつでもそれができますよということでないといけないので、クーポンなどを労働者に直接給付しておいて自発的な受診を推進するというようなことがいいんではないかというふうに思いますが、そういう検討は行われているでしょうか。
  127. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 確かにクーポンのような形で支給するという形も技術的にあり得ると思うんです。例えば、一定の対象となる方がそういったことで要件に該当すれば、クーポンを受けてそれの限りで受診ができる、こういう仕組みというのは技術的にあり得るかと思います。それも一種の現物給付の形になろうかと思いますが、そういったことを含めて、どういった支給方法をとることが健康診断を受けられる方にとっても利便性があり、また行政上、窓口での事務負担といいますか、できるだけ簡素なやり方につながるか、その辺を十分検討させていただきたいと思っております。
  128. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 深夜業は法的に二回の健康診断定期健康診断をする義務があるんですけれども、この年二回の健康診断とそれから自主的受診の関係。というのは、年一回しかやっていないところが二六%ですから、さらなる一回というものは定期健診が優先していくのかあるいは自発的健診が優先していくのか、この相互関係の調整は何か御検討しておられますか。
  129. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) いわば定期健康診断は、年二回の義務づけであれ年一回の義務づけであれ、事業主に対する義務づけでございます。一方、自発的健診につきましては、労働者がいわば自発的に主体的に健診を受診する場合でございますので、その相互の関係はむしろ基本的にはない、定期健診の間に、もし深夜業に従事しておられた方が自分の体について何らかの不安を感じた場合に自発的に受診されるという形で、それ自体は可能だというふうに考えております。
  130. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 受診をして、いわゆる有所見ということで、何らかの所見が発見された場合に、労働者の側からすれば、それに対して、例えば費用など、受診した場合に事業主にそれを知らせるという義務があるのか、あるいは何か言いたくないということが優先されるのか、あるいは、そういうことを言ったことの結果労働者が職場で不利益な処遇を受けるというふうなことがあっては、自主的受診がいわゆる労働者個人のプライバシーの権利を侵害することにもなると思うんですが、これはどのような施策を考えていらっしゃるでしょうか。
  131. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず基本的には、今回、自発的な健康診断についても、事業主に提出すれば、それをもとに事業主医師意見を聞いて深夜業回数の減少等の就業上の措置を講じていくという一つの流れは、あくまで労働者の主体的な判断でございますので、自発的に受けた健康診断の結果について必ずしも事業主へ提出することが法律上求められたりするものではございません。そういう性格のものでございます。  ただ、それを事業主の方に提出して就業上の措置についての検討が始まるということになりますと、本人健康状況、そうしたプライバシーとのかかわりというのは本来あるわけでございますが、これは今までの定期健康診断の場合も同様でございまして、事業主の方は、そういう定期健康診断を行うことによって就業上の措置等健康状況に留意しながら的確に決めていくという責務を負っているので、そうした健康診断の結果を当然見なくてはならない。  一方、労働者の方から見れば、そういったことも期待しつつ、一方ではプライバシーというものも大事にしたいという両方の要請が重なりますので、なかなかそこの、こうした健康管理面での事業主労働者の間でのプライバシーの問題というのは難しい課題を抱えております。  私ども、そうした問題についてどうしたらいいかということにつきましては、現在、学識者の方も集まって、研究会で議論を願っておりますけれども、そうした中で今後の対応というものを考えてまいりたいと思っていますが、ただ、少なくともそうしたことによって労働者の方が不利益を受けるようなことがあってはならないと思いますので、そうした点は現在示している指針の中でも、労働者の方と十分話し合って納得のいく形で就業上の措置を講じていくことを私どもも求めておりまして、そうした指導を進めておるわけでございます。  今度、自発的健診が入るということで、その指針についても改正を含めて考えてまいりますが、そうしたことを十分労働者と話し合ったり、不利益取り扱いに至ることのないような対応というものを事業主に対して指導していきたいと思っております。
  132. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 産業医選任する義務というのは五十人以上の事業所ということになっておりますが、これを拡大していくということは現場では大変大きな長い間の要求になっておりますが、例えば五十人を三十人の事業所に拡大していくためにはそういう何か支障があるんでしょうか。ぜひそういう方向検討していただきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  133. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 産業医選任の義務づけを五十人から三十人へという要請がかねてからあること、私どもも承知いたしております。  前回の労働安全衛生法改正の際にもその点が課題になりましたが、種々論議された中で、なお問題点を残して、五年後の見直しの一環としてそういったことについて改めて議論をしていくということになったというふうに承知いたしております。  そういう際の問題点といたしましては、一つは、中小規模の事業所に一律にそういった強制をしていくことが実際、本当に履行確保ということを含めて体力の観点等からできるのかどうかというようなことの観点からの議論ももちろんございますし、また産業医の方等のいわば供給の数からいいまして、実際そういった義務づけをしても十分履行確保できる体制になっているかどうかというようなこととの兼ね合いも考慮していかなければならない面がございます。そうした点について、いずれにいたしましても、関係審議会におきましても、中小規模の健康確保対策全体のあり方一つとして今後検討の場を設けて検討すべしということを指摘されております。  私ども今後は、労働安全衛生法の見直しという段階に向けましても、そうした関係労使から成る委員会を別途設定いたしまして、その中で小規模事業所における健康対策のあり方検討していただく、そういう中に今御指摘あったような問題も議論のテーマとしてぜひ検討をお願いしていきたいと思っておるところでございます。
  134. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 五十人以上の事業所と三十人以上の事業所を考えた場合に、ほとんどそれは同数ぐらいの事業場を含むというふうな説明もあり、それほどまでに三十人から五十人までの規模の事業所で産業医選任義務を免れることによって抜け落ちていく健康管理の問題というのは大きいんだというふうに思います。  そこで、ちょっと先ほど川橋委員もお尋ねになりましたが、地域産業保健センターの活性化ということが当面非常に重要だと思うわけですけれども、活性化に向けて労働省はどのような施策を講じようとしておられるのか、お尋ねします。
  135. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この地域産業保健センター、全国で三百四十七カ所の整備を平成九年度に終了いたしたところでございます。  全体を平均してみますと、健康相談の利用実績でございますが、一センター当たりの相談の件数が約三十八回、個別に訪問して相談に当たったというのが約二十三回、そういった状況でございます。  平均的にはそういう数字でございますが、これらを個々の地域産業保健センターの状況を見ますと、活発な活動を行っている地域センターもございますし、新設のセンターについてはまだ軌道に乗っていないというようなところも正直あるわけでございます。私ども、それぞれ活発なところの実例等も収集しながら、まだ軌道に乗っていないところ等についてそれを活性化させていくためにそういうものを活用していくこと等を含めて、この地域産業保健センターの活動の活発化についていろいろ工夫をしてきておるところでございます。  また最近におきましては、全国の整備が終わったこともございまして、さらに大都市等を中心に相談回数等をもっとふやせるように、あるいはメンタルヘルス面についての相談機能を持てるようにというようなことで予算額も増額いたしまして、大都市中心に機能の強化も図ってきております。ただ、いずれにしましてもそういった今全国の整備が終わったばかりでございまして、活動の活性化についてまだ途上でございます。  先ほど申し上げましたように、産業医選任義務の範囲等につきまして、今後小規模事業場における健康確保対策全体のあり方の中でそういったことも議論していただくというふうに申し上げましたが、そういう中にはこうした地域産業保健センターを小規模事業主がどう活用して、その活性化等と相まって、小規模事業場労働者の方の健康管理に役立てていくかというような視点もあわせて含めての労使の方から成る委員会の場で議論をしていただきたいと思っておるところでございます。
  136. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 とりわけ、地域産業保健センターの活性化に対して一つ障害になると言われておりますのは、こうした健康管理、いわゆる保健関係について検討していくということは、作業管理とか作業環境管理について事業所の抵抗感というものがある。それをどのように打ち破っていくのかということであり、そしてそうした従業員の健康管理を十分にすることによって作業効率が高くなっていくというメリットもあるわけですから、そうした活性化のためにはそうした事業所の抵抗感を打ち破っていくための何かの方策が必要ではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  137. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 確かに小規模事業所におきまして、そうした作業環境の改善なり、働く方々の健康の問題等について必ずしも意識を十分持っていただいていないというケースもあろうかと存じます。そうした事業所が本当に手軽に地域産業保健センターと相談し、そのサービスを受けられるような形に持っていくということは大変重要かと思います。  私ども、引き続きこうした地域産業保健センターがどういう機能を持っているか、どういうサービスを提供できるか等々を含めまして、地域の事業場に周知活動等は進めていきたいと思います。そういう周知と相まって、その事業主がこうした問題への理解が深まり、こうしたところを利用していただけるような形へつながるようにひとつ努力をしてみたいと存じます。
  138. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 産業衛生学会のシンポジウムに配られた資料として、私が手にした一つの資料がございます。それによりますと、熊谷地域産業保健センターでは、商工会議所を仲介して地域産業保健センターの活性化を図ったという事例もあります。こうした地域保健センターを知っているかというアンケートに対する回答では、知っている人が少ないわけですけれども、知らない人にもしこの事業を知ったら活用しますかといいますと、はいという答えがかなり高率になっているということです。各地域センターで非常に成功している事例もあるわけで、例えば産業医を共同選任していって、産業医をかかりつけの医者としていわば地域に開いていくようなシステムを目指しているところもあると報告されておりますので、十分にその調査研究をされまして、その活性化についてこれからも努力をしていっていただきたいと思います。  こうしたいわゆる深夜業に関する労働者健康管理に関する今回の法改正の意義と、これからの将来の制度の充実に向けて、労働大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  139. 甘利明

    国務大臣甘利明君) そもそも今回の改正は、昨年の基準法改正の際に衆参両院でいろいろと御指摘を受けました。特に大脇先生からは貴重な御指摘をいただきまして、それがもとになっていると承知をいたしております。  深夜業というのは、先ほども申し上げましたとおり、各種社会的要請から必要不可欠なものになっているわけでありまして、女性労働者の深夜業の制限の解消に伴って、今後女性の進出が見られなかった分野に女性が入っていくわけでありまして、その際に、深夜業に従事をする労働者健康確保を図るための措置を講ずべきだということが昨年の基準法の改正の際の附帯決議にも行われたわけであります。深夜業につきましては、健康への影響を及ぼす可能性があるために労働者健康管理の充実を図ることが重要であるという指摘もなされているわけであります。  今回の法改正の意義という御指摘でありますけれども、このような状況に的確に対応するためのものでありまして、深夜業に従事をする労働者健康管理の充実という観点から非常に重要なものであるというふうに考えております。
  140. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 化学物質等による労働者の健康障害の防止措置について、もう時間が来てしまいましたが、最後に一点お尋ねいたしたいのは、これまでと違って、いわゆるMSDSの交付の義務づけなどが行われるわけですが、この交付の義務づけに違反した場合の対策というものがしっかりしていないとこれは効果を上げないと思うのですが、事業主の違反が判明したときのいわば措置について一点お尋ねをして、質問を終わります。
  141. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回提案させていただいている法案では、MSDSの交付を譲渡・提供者に法律上の義務づけをいたしておりますので、私どもこうした義務が確実に履行されるよう、労働基準監督機関が強力に指導を展開していきたいというふうに思っております。  ただ、再三の指導にも応じない、こういう悪質な譲渡・提供者があった場合につきましては、その提供する化学物質について相手方が適切な労働衛生対策を講ずることが困難になる、こういうおそれもありますので、場合によりましては当該物質の商品名、製造者名等の情報を付して、それを利用するいわば労働現場の関係事業者に注意を喚起していくという、事実上譲渡・提供者の名前が出るようなことになるわけですが、そういう形で注意喚起を行うというようなこともあり得ると考えております。
  142. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 終わります。
  143. 菅川健二

    菅川健二君 参議院の会の菅川健二です。労働社会政策委員会での質問は初めてでございますので、ひとつどうぞよろしくお願いいたします。  まず、法案に先立ちまして、現下の最大の課題でございます雇用問題について若干質問させていただきたいと思います。  先ほど午前中、川橋委員からも御質問がございましたけれども、日々に失業者の増大の状況になっておるわけでございまして、これからさらに産業再生のために供給力過剰対策ということが大きな課題になろうかと思います。その場合にリストラということが大きなまた命題になってまいりまして、過剰設備の廃棄の問題、あるいは余剰労働力の問題等がクローズアップされますと、失業者というのは当然さらにふえるというおそれがあるわけでございます。  昨日、資料を労働省の方にお出しいたしましたけれども、アメリカの九〇年代の景気回復の状況をこの表で見ますと、非常に際立った傾向が出ておるわけでございます。それは、製造業におきましては労働生産性というものがどんどん高まってまいりまして、労働者の数は減ってまいっておるわけでございます。反面、サービス業を中心とします非製造業につきましては労働生産性はほどんど横ばいの状況であるわけでございますが、雇用者数はどんどんふえてまいっておるわけでございます。トータルといたしまして、御案内のように、アメリカにおきましては失業率の改善が図られてまいっておるわけでございます。  我が国も、恐らく今後こういった二極分化の趨勢というものが明確にあらわれてくるのじゃないかと思うわけでございまして、これからの雇用政策というものは、従来型の企業でできるだけ雇用を維持してもらうという政策から、他の部門への雇用移動、雇用の流動化に対しまして、それを円滑にするためのセーフティーネットをどうやってつくり上げていくかということが大きな問題になるのではないかと思うわけでございますが、労働大臣、これにつきましての御所見をお聞きいたしたいと思います。
  144. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かに菅川先生御指摘のとおり、企業あるいは産業というのは時代によって変遷をしていきます。戦後の日本を支えたのは繊維産業でありますが、やがて鉄鋼になり、家電になり、自動車になり、半導体と。ある程度耐用年数が来た産業界から次の時代を担う産業に経営資源が適切に移動するということは、日本全体の経済活力、国力を維持する上で非常に大事なことであります。ですから、御指摘のとおり、経営資源としての労働力が適切に移動していく、そのための各般の施策というのは非常に大事であります。  ただ、私は今までの雇用を支えている維持政策というのも決してないがしろにはできないんだというふうに思っております。と申しますのは、労働力の流動化ということがよく言われますけれども、それは受け入れ先があって初めてなし得ることであります。受け入れ先がないのに流動化してしまったら、外部労働市場、失業という場に滞留をしてしまうわけでありますから、その新たに移る場とそれから流動化施策というのは密接不可分の関係にあると思います。その間、企業が雇用を維持する、全く単独でだれの力もかりないで維持をするとすれば、雇用を維持すること自体が経営を相当圧迫することになりますから、ですから、国が何らかの手だてを整えて維持努力を支援する。その際に、単に抱えているだけではなくて、労働力の強化を図るといいますか、能力のバージョンアップを図るということで抱えるということはいろんな事態に対応できるための準備策だというふうに思っておりまして、私といたしましては、雇用の維持政策とそれから流動化に資する政策、これが両々相まって理想的な形になってくるというふうに考えております。
  145. 菅川健二

    菅川健二君 維持政策が重要であるということはもとよりでございますが、今後、より流動化対策に対するセーフティーネットが新たな対応として重要ではないかということを申したわけでございます。  そこで、この問題につきまして二点ほど指摘をさせていただきますと、一つは失業期間というものについて、ある程度ゆとりを持って次の職業を見つけていくということになりますと、現行の三百日の失業給付期間というのはやはりちょっと短過ぎるのではないかというふうに思うわけでございまして、倍の六百日ぐらいにふやすことが望ましいのではないかと思うわけでございますが、これらの点について、五月末に一つの成案を得られる中で検討項目一つとして挙がっておるのかどうか、その点を教えていただきたいと思います。
  146. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 不幸にして失業される、あるいは転職をされるということで再就職活動に入られたときに、これは実態の問題ですけれども、私どもの第一線機関の公共職業安定所のベテラン職員にいろいろ聞いてみますと、再就職が決まる人は実態としては三カ月以内に大部分の人が決まっているようでありまして、逆に言いますと、三カ月を超えてなお見つからないという人はこれはなかなか実際に決まっていかないということのようであります。そういったことで、現在この最高三百日の支給期間を延長するという考えはございません。  むしろ、できるだけ速やかに再就職をできるように援助するということが必要なことであろうというふうに思っておりまして、そういった面からいいますと、能力の再開発とか能力のアップが必要な方については、公共職業安定所長の指示で職業訓練を受講していただいて、その間は雇用保険を個別にそれぞれ延長するという制度がありますから、こういった雇用保険制度、現行の制度を活用しながら、できるだけ速やかな再就職先の確保、こういったことで努力をしていきたいと思います。
  147. 菅川健二

    菅川健二君 確かに早期に再就職ということは大変望ましいわけでございますが、しかしながら必ずしもそういっていないような実態もあるわけでございます。  あわせて、今御指摘のように、転職ということになりますと職業訓練ということがどうしても重要になるわけでございまして、経済戦略会議の答申に能力開発バウチャー制度の導入という提言があるわけでございますが、私は、本人の自発的な意思に基づいてできるだけ多様な訓練の機会を設けていく、あるいは訓練期間を設けていくということが重要ではないかと思うわけでございますが、この点について、バウチャー制度の導入というのは一つの大きなメリットがあるのではないかと思うわけでございますが、この取り組みにつきましてはいかがでしょうか。
  148. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 確かに、個々人が自発的意思に従って自分の自主的な選択で職業能力をつけていく、あるいはバージョンアップをしていく、これは今後今まで以上に大切になってくると思います。  先生先刻御承知のとおり、これに類する方式として教育訓練給付という制度がありまして、まさにこれはクーポン券こそ発行しませんけれども自発的意思に従って選択をし能力をつけていくという方式であります。  戦略会議からアメリカにおけるバウチャーの提言がありました。あれは百万人、百万円、一兆円という仕組みですから、これはもう一般会計の支出を前提とするということになっておりましたので、それは現行の予算の枠組みではできないわけでありますが、バウチャーをなぜ実施するかということで言えば、最終的には再就職に結びつける、あるいは現在就職している人もより自分の可能性を求めてステップアップができる、これを支援するということでありまして、最終的にはいずれにしてもより適切な職につくということになります。  今私が考えるに、喫緊の課題というのは、とにもかくにもこの四・八%という失業率を最大限改善していくということであります。  そうしますと、自分の意思で選ぶこともさることながら、それが単にカルチャースクールの延長線上で終わってしまってはならないんだと思います。世の中にどういう職のニーズが今あるのか、あるいは近未来に生まれてくるのか、それを把握して、そこに見合った能力開発を付与させていく。そして、その人がスムーズに職についていく。入り口から出口までしっかり系統づけてやっていかないと、単に能力開発部分だけを取り上げてそこに予算を投下するよりも、体系的に再就職に結びつけていくシステムを強化することの方が今の課題はプライオリティーが高いというふうに思っております。  そこで、先ほどの五月中にどういう策を策定するのかという御質問にもかかわるところでありますけれども、総理からの御指示をいただきまして、今、労働省、通産省を中心に打ち合わせをさせていただいております。  それは、再就職に結びつくところまで責任が持てるようなシステムの中に求職者の自主性をどう加味していくか、つまり、バウチャーのいい点を入れながらバウチャーよりも再就職に責任を持つ体制をつくりたいというふうに考えておりまして、近未来にどういうニーズがあるか、これは通産省の力をかりながら拾い出しをして、それに合ったような職業訓練がかみ合わせることができるようなシステムがないだろうかということを今検討中でございます。
  149. 菅川健二

    菅川健二君 今の御指摘の点は最も望ましいことでございますけれども、再就職に直結した訓練をやるんだということについて、これから五月末に向けていろいろ模索されるわけでございますので、より効果的な政策が出るようにひとつ汗をかいていただきたいと思います。  先ほど大臣は、とにかく一番目立つ大臣になるんだということを申されておりましたけれども、目立ち方もいろいろあるわけでございまして、失業率が最悪のときの大臣であったと言われないようにひとつこれから大いに頑張っていただきたいと思います。  それから、安全衛生法に絡めまして、これは改正案そのものにつきましては私は全く賛成でございますが、この際メンタルヘルスにつきまして若干御質問させていただきたいと思います。  午前中もいろいろ話がございましたけれども、過労自殺の問題とか、最近世情を反映しまして自殺者の数もふえておるわけでございまして、その中で経済、生活問題が原因であるというものもふえておりますし、また勤務問題による自殺ということもいろいろあるわけでございます。  特に勤務問題につきましては、やはり職場にいろいろな問題があるわけでございまして、企業内におきますメンタルヘルスというのが非常に重要だと思うわけでございます。これにつきまして、現状と労働省の対策につきまして簡潔に御答弁いただきたいと思います。
  150. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、私ども労働者健康状況等の調査を見まして、例えば不安、悩み、ストレス等を感じる労働者の割合というのを経年別に追っておりますが、ここのところ、やはり経済情勢その他社会情勢の変化に伴いまして大変多くなってきている傾向がございます。  私どもそうした状況にかんがみまして、このメンタルヘルスの重要性というものを今後労働者の方のいわば健康管理の一環として大変重要なものと受けとめております。  先ほど来申し上げておりましたが、都道府県の産業保健推進センター、地域産業保健センターがこうしたメンタルヘルスの相談が行えるような体制に持っていくことと、それから、私どもかねて進めてきておりますトータル・ヘルス・プロモーションと読んでおります心身両面にわたる健康づくりのための事業主の活動の促進、その中には運動指導等のほかに心理相談というようなものも組み込んでいくような指導等を行ってきているわけでございます。  さらに、労災病院等におきましても、勤労者のメンタルヘルスセンターというようなものを中に設けて、そうしたメンタルヘルスを重点的に扱う体制をつくるというような形で専門的なこうした面の診療機関の育成等を図ってきているところでございます。  ただ、こうした対策の中でも、やはりこうしたメンタルヘルスの悩みについて、心理上の悩み等について、企業内はもとより、なかなか話していくというようなことについて働く方々は大変やはりまだ心理的な抵抗もあるわけでございますので、私ども同時に、このメンタルヘルス対策に対する検討委員会を省内に設けておりまして、今後、将来に向けてさらにこのメンタルヘルスケアというものを推進していく場合に、基本的にはどういう方針であるべきか、事業場で実施すべきことは何か、それから行政等が実施すべきことは何かというようなことを今研究を重ねておるところでございます。
  151. 菅川健二

    菅川健二君 いろいろな方策をやっておられるわけでございますが、労働省の資料を見せていただきますと、企業での取り組み状況を見ますと、平成九年の数字でございますが、心の健康対策に取り組みをしておる企業は二六・五%、約四分の一にすぎないわけでございまして、事業所の規模別で見ますと、大企業はほとんどやっておるわけでございますが、中小零細になるに従って非常に取り組みが悪くなっておるわけでございます。  それから、先ほど御指摘になりました昭和六十三年十月に改正されて導入されましたトータル・ヘルス・プロモーション・プラン、THPというものについても、実施しておるところが五・五%と極めてわずかな状況になっておるわけでございます。今後、極めてこの問題は重要になるわけでございますので、さらに拡充につきまして御尽力をお願いいたしたいと思います。  労働大臣の御所見をお聞きしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  152. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先ほども自殺と労災との議論がありました。職務との因果関係をどう図るかというのは大事なことでありますけれども、さらに大事なことは、そうした不幸な事故が起こらないように未然にどう防止していくかということでありまして、このメンタルヘルスにつきましても労働省の施策の中の非常に重要な部分であります。  具体的対応につきましては、先ほど基準局長からもお答えをさせていただきました。私といたしましても、そういうことを踏まえて、これからもさらにこの分野の施策が充実していくように全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  153. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  155. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  笹野君から発言を求められておりますので、これを許します。笹野貞子君。
  156. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私は、ただいま可決されました労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、深夜業に従事する労働者健康確保及び就業上の措置の適切かつ有効な実施を図るため、労働者が自発的に受診する健康診断項目等の内容については、医師等の専門家による検討委員会を設け、深夜業に従事する労働者健康診断の在り方を含めて検討し、その意見を踏まえて策定すること。また、深夜業に従事する労働者が自発的に受診する健康診断費用について助成を行い得るよう必要な措置を講ずること。  二、深夜業に従事する労働者健康確保の観点から、深夜業に係る女性保護規定の解消を踏まえ、就業環境実態把握し、女性労働者就業環境や関連制度整備、深夜業に係る業種別の自主的ガイドライン等の動向を踏まえた就業環境の快適化について、必要に応じ適切な措置を講ずること。  三、労働者の健康障害を生ずるおそれのある化学物質で、表示、作業環境管理、健康管理等の規制の対象となるものについては、今後、必要に応じて追加することを含め、検討を行うこと。  四、化学物質に係る有害性等の情報提供及びそれに基づく事業者措置を実効あらしめるため、事業者や化学物質の譲渡・提供者が行う人材の育成、有害性等の情報の評価等について支援を行うよう努めること。  五、小規模事業場における健康確保方策については、平成八年改正労働安全衛生法施行後五年経過の平成十三年の見直しに当たって、衛生委員会産業医等の対象事業場範囲等の制度上の格差を含め、中央労働基準審議会において総合的な見地から検討を加え、所要の措置を講ずるよう努めること。  六、地域における労使の参加と協力を進め、地域産業保健センターの機能と活動の強化を図るとともに、労災防止指導員の活用を推進し、労働災害の多発する中小企業の労働安全衛生の改善に向けての制度と施策の充実を図ること。  七、労働者健康確保を図るため、作業関連疾患の予防または悪化の防止という観点から、健康診断の結果等を踏まえた措置の在り方について、労使等の関係者の意見を聴きながら検討を進めること。  八、職場での作業に伴う労働者のダイオキシン類へのばく露防止措置を徹底させるとともに、ダイオキシン類のばく露を受けた労働者健康状況等について調査を進め、その結果を踏まえて適切な対策を講ずること。  九、労働安全衛生に関するILO条約趣旨を勘案して労働安全衛生施策を推進するとともに、批准に向けての環境整備に努めること。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  157. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいま笹野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  158. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 全会一致と認めます。よって、笹野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、甘利労働大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。甘利労働大臣
  159. 甘利明

    国務大臣甘利明君) ただいま決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重し、努力してまいる所存であります。
  160. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  162. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、川橋幸子君が委員辞任され、その補欠として足立良平君が選任されました。     ─────────────
  163. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事谷林正昭君を指名いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時九分散会