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佐藤道夫君 本当の最後になりました。ほんの少々御辛抱ください、お願いいたします。
実は、午前中、
福山議員と
大蔵大臣との問答を聞いておりまして、いささか気になることがあるものですから、最初にこの点を取り上げさせていただきたいと思います。
第一は、今問題になっております確認書につきまして、これが公文書かどうかということについて、
大蔵大臣は、さあ、公文書か私文書かよくわかりません、何しろ官印というものも押してありませんというようなことをおっしゃいました。大変失礼ですけれども、これは絶対におかしいです。大学の法学部を優秀な成績で出られた方の御
答弁とはなかなか思えない。
公文書というのは、これは法律上の定義がありまして、公務員が職務上の権限に従って作成する一切の文書と。判この有無なんというのは問題ないんです。官印が押してある、押していない、そんなことは一切関係ございません。そもそも判このない公文書もありまして、これは無印公文書というふうに言われております。これを偽造すれば無印公文書偽造と、こういうことになります。
本件の文書は、これは明らかに
大臣官房審議官中井何がしが署名押印をしておる文書でありまして、大蔵省が云々云々と、こういうふうに書いておりますから、世間の人が見て、これは大蔵省の公式文書と思う立派な公文書であります。ぜひとも誤解は解いていただきたいと思います。
それから、この件に関しまして、何か向こうの方で、それは当事者が会ってお互いの会話をした、それをメモ的にしたものである、文書とも言えないんじゃないかというふうな発言があったかに思いますけれども、これまた大変おかしい、大学を出ていないんじゃないかと思いたくなるくらいであります。メモというのは、御存じのとおり、ちょこっと書くだけのものでありまして、メモに一々署名押印をする、肩書きを書いてメモをつくるなんという人は世の中にいないわけですから、メモなんてものではない。
現物はごらんになっておられると思いますけれども、中井審議官、これが署名押印をしている。もう一人は、
日本生命の副社長がやっぱり署名押印をしている。これはちょっと変わった文書でありまして、公文書と私文書の併存している文書だろうと私思うんですよ。中身は、大蔵省はこう考える、こう確認する、
日本生命はこういうふうにアナウンスするとか、それぞれ言い尽くしているだけのことですから、双方の意思表示をまとめた私文書と公文書の合体文書だと、こういうふうに考えていいと思います、この文書の性格は。
それからもう
一つ。山口元
銀行局長が
参考人として来た際に、この文書は中井審議官が勝手につくったものではありません、しかし私は命令はしたことはありませんと、こういう言い方をしている。これにつきましても、何しろ官房審議官でございますから命令関係はやっぱりないのかなというような、何かそういう奥歯に物の挟まった言い方でございまして、これもまた大変私間違いだと思います。
官房審議官というのは何をするのか。それぞれ担当があるんですよ、
銀行局担当、関税局担当。
銀行局の職務を処理する限りにおきましては
局長と指揮命令の関係に立つ。官房審議官だから命令なんか受けない、そんなものじゃないんですよ。
一般的にそういう関係にありまして、それから本件の場合には、中井審議官がやってきまして、
局長、こういう確認書を取り交わすことにしましたよ、ああそれでお願いしますと。別に命令調では言っておりませんけれども、役所というのはそういうものなのでありまして、ああそれでお願いしますよと言ったときに具体的な職務命令関係が発生するわけであります。これをもって命令と言うわけであって、私、命令した覚えがございませんと言う人は、これまた大学を出ているのかどうか、私大変疑問なんで、何か山口
参考人とお会いになる機会でもありましたら、君、そういう意見があったよということで、くれぐれも彼の認識を改めるように伝言していただければ幸いでございます。
そこで、時間がなくなりかけておりますので、私自身も同じように、大蔵省の
銀行局の確認書、それから奉加帳方式の問題を取り上げて、彼らの責任ということを論じてみたいと思います。
簡単に申さば、
平成九年の二月、三月ごろ、マスコミは
日債銀を取り上げまして、
日債銀危うし、経営
破綻も間近、何しろ不良債権が膨大だということをしきりに報道しておりました、ごらんになったと思います。それを受けまして、監督官庁である大蔵省も、事は重大と、重大な関心を持ちまして検査に踏み込んだんだろうと私思います。
一般の検査とは違いまして、何しろ検査
対象の
銀行がつぶれかけておる、一体どうなんだろうかと。マスコミは、膨大な不良債権を抱えている、その点を重点的に検査をやれ、しかも
銀行が倒れるかどうかという瀬戸際であるからして、この検査もなるべく短期間に、一月か二月かそれぐらいでやってこいと、こう言うのは当然であります。
検査は別に趣味としてやっているわけじゃないのでありまして、検査をしてその結果を行政に反映させていく。ですから、それを受けとめて
銀行局が今度は行政をやる。はて
日債銀をどうしようか、つぶそうか、それともまた立ち直る余地があるのかどうか、こういうふうな判断が次に来るわけでありまして、最初に検査ありき、それから行政が続く、こういうことなんです。検査が開始されたのは四月十六日、しかし何と四月一日にもう奉加帳方式なるものが横行しておるわけですね。これは一体何だろうかと。だれが考えてもおかしいと思いますよ。
それから、検査をやっている最中の五月三十日に確認書が交換される、これだっておかしいでしょう。検査が終わってからにしようやと言うのが当たり前の常識なんでしょう。
それから、これまたおかしいことは、七月十三日、検査をやっている最中に、大蔵省は何を思ったか、当面の責任者である検査
部長を交代させておるんですね。この最中に最高責任者を交代すれば、私は役所のことをよく知っておりますけれども、それだけでも一月ぐらい検査というのはおくれるんですよ。何を考えていたんだろうか、あの当時の大蔵省はと、こういうことも言いたくなるわけであります。
いずれにしろ、確認書を取り交わす、あるいは奉加帳方式をやる、その場合に、ちょっとあなた方お待ちください、今、我が検査部が一生懸命死に物狂いで検査をやっておりますから、それが上がってきた
段階で話し合いましょうと言うのが行政の責任でしょう。だれが考えてもそういうものでしょう。
なおおかしいのは、検査を命ずるのは
大蔵大臣、それから確認書を取り交わせとか奉加帳方式でいいかと、これについて指示、承認を与えるのも
大蔵大臣。
大蔵大臣という方は人格が二つあるのかとも疑いたくなるくらいで、片方で迅速に正確に検査をやれと言っておいて、片方で奉加帳を回せ、確認書を取り交わせと。検査結果を全く無視しておるじゃないですか。これでは人格
破綻だと言われても仕方がない。
ですから、検査のことは
大蔵大臣は承知していたけれども、どうも確認書を取り交わしたり奉加帳方式をやったことは
大臣に上げていないんじゃないかとしか思えない。上げれば、
大臣だって政治家ですから、それはおかしいよ、君、検査が終わってからやりたまえ、検査を急がせろ、一月、二月あれば大体の見当はすぐつくだろう、それを踏まえてやろう、こう言うのが当たり前でしょう。そう言われるのが怖いから上げなかったんだろうと私は思うんですよ。
これほど政治をばかにした、
大臣をばかにした、内閣をばかにした、ひいては国会、
国民をばかにした行政があるんだろうか。
今現在、告発がされておるようですから、
法務大臣に申し入れておきたいと思いますけれども、これが刑事
事件とすれば詐欺の犯意の立証というのは大変難しいです。
日本生命の連中をだまして金をあそこにつぎ込ませてやろうなんてだれもまともには思っていなかったんでしょう。ただ、大蔵省の役人とすれば、今検査が行われている、それを踏まえてあなた方ともう一度話し合いましょうと言う義務があるんですね。信義誠実の原則上の告知義務、こう言われておりまして、信義則上の告知義務
違反というやつで、場合によっては詐欺が成り立つんです。
大蔵省というのは国家公務員ですから、それぐらいの義務は負っているわけですから、
日本生命その他に対して、そういうことを告知する義務があるんですよ。それに
違反した以上、これは故意の詐欺だと言われても否定できないと私は思います。
法務大臣、お答えいただく時間がありませんので、私がこういうことを言っていたということを刑事局を通じて検察に伝えるようにぜひお願いいたします。時効が切迫しているからなかなかやる暇がないなんて、そういうことを言わせないように、ひとつしっかりやってくださいよ。お願いいたします。
それから、民事責任の問題、これはどうしても逃れられないと私は思いますよ。公務員が故意または過失で
国民に損害を与えた場合には、国が損害賠償の責めを負うわけですね、国家賠償法。これは法務省が所管しているわけであります。これを、検査結果を全然考慮しないで、聞こうともしないで、何しろ
局長が聞いたのは九月になってからだと、こんないいかげんなことですから、検査結果を知ろうともしないで金を出せ出せ、こう言ったということは明らかに重大な過失だ、こう言ってもいいと思います。
検査結果は九月になって発表されましたのも一兆幾らだと。多分、こんなことはプロの
金融屋である
銀行局の面々は皆知っていたんだろうと思うんですよ。それを、検査結果を早く、急げと。こう言うと恐らく一兆円を超えるような結果を出してくる。その際にどうするか。そういう難しいことは置いておいて、とりあえず民間
金融機関から金を出させよう、こういう思いがあってああいうことを急げ急げで、五月三十日にはもう終了しているわけですからね。検査の最中に全額拠出させておるわけですから、国が民間
金融機関をだました、こう言われても仕方がないことであります。
しかも、重大な過失がある場合には、当該公務員に国が払った損害金を求償できるわけでありますから、それはぜひとも、もしそういう
事態になったらば、山口あるいはその他の連中から求償権を行使して払わせてくださいよ。お願いいたします。これは大変大事なことであります。再発を防止する上からも、やっぱりこういうことをきちっとしておくことが私は大変に大事なんではないかと思います。
そこで、ほぼ時間も迫ってまいりましたので、こういうふうに検査と行政がばらばらに行われてきた、行政の方は検査結果も見ようともしなかった、これが実は二年前の自民党政権下で行われた大蔵行政だということにつきまして、
総理大臣はどういうふうに評価しておられるか。
それから、今私が申し上げました一連のことにつきまして、法律問題も含まれておりますけれども、
大蔵大臣としてどう考えておられるか、申しわけございませんけれども、時間も余りないようですけれども、お願いしたいと思います。