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1999-03-16 第145回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十六日(火曜日)    午後一時四分開会     ─────────────    委員の異動  三月十一日     辞任         補欠選任      寺崎 昭久君     郡司  彰君      山本  保君     高野 博師君      八田ひろ子君     須藤美也子君      吉川 春子君     市田 忠義君      水野 誠一君     菅川 健二君  三月十五日     辞任         補欠選任      松谷蒼一郎君     脇  雅史君      柳田  稔君     木俣 佳丈君      高野 博師君     益田 洋介君      市田 忠義君     宮本 岳志君      西川きよし君     石井 一二君  三月十六日     辞任         補欠選任      小池  晃君     橋本  敦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 脇  雅史君                 海野  徹君                 江田 五月君                 木俣 佳丈君                 郡司  彰君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 加藤 修一君                 浜田卓二郎君                 益田 洋介君                 小池  晃君                 須藤美也子君                 橋本  敦君                 宮本 岳志君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 菅川 健二君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        労働大臣     甘利  明君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君         ─────        会計検査院長   疋田 周朗君         ─────    政府委員        内閣審議官        兼中央省庁等改        革推進本部事務        局次長      松田 隆利君        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        金融再生委員会        事務局長     森  昭治君        総務庁行政管理        局長       瀧上 信光君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        総務庁恩給局長  桑原  博君        防衛庁長官官房        長        守屋 武昌君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  柳澤 協二君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁研究        開発局長     池田  要君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁次長  宮島  彰君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        運輸大臣官房長  梅崎  壽君        運輸省海上技術        安全局長     谷野龍一郎君        運輸省港湾局長  川嶋 康宏君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      片木  淳君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付) ○委嘱審査報告書に関する件     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度総予算三案の締めくくり総括質疑に関する理事会決定事項について御報告いたします。  締めくくり総括質疑は一日間分とすること、質疑割り当て時間の総時間は百三十二分とすること、各会派への割り当て時間は、自由民主党二十分、民主党・新緑風会四十三分、公明党十七分、日本共産党十七分、社会民主党・護憲連合十三分、自由党九分、参議院の会九分、二院クラブ・自由連合四分とすること、質疑順位につきましてはお手元に配付いたしておりますとおりでございます。     ─────────────
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより締めくくり総括質疑に入ります。吉村剛太郎君。
  4. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 平成十一年度予算もいよいよ大詰めでございまして、あすには参議院でも結果が出る、このような運びになっておるわけでございます。我々与党といたしましては、参議院におきましても多数で可決されることを願っておるわけでございます。史上最速予算案が上がるという形になりつつあるわけでございますが、質疑に入ります前に総理に、総理として初めてこの予算国会を迎えられまして、このようなスピード、そしてなおかつ実がある質疑が行われた、このように我々も自負しておるわけでございますが、それに対しまして総理としての御感想をまずお聞きしたい、このように思います。
  5. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) このたび、衆参両院におきまして政府提出予算案につきましての御審議をお願いしてまいりましたが、両院におきまして積極的な御審議を賜りまして今日を迎えることができました。  このことは、恐らく現下の日本経済が極めて厳しい困難な状況にありまして、そのために政府といたしましても全力を挙げて十一年度予算関連政策を打ち出させていただいておるわけでございまして、国民の皆さんにおかれましてもいろいろの御批判はあろうかと思いますが、何はともあれ国の政治の大きな方向性を示すということは予算を執行するということではなかろうかと思っております。改めて、いろいろと政府の施策に対する御注文、御指摘はちょうだいをいたしておりますが、ぜひ一日も早くこれを成立せしめて、そして国民のために予算を執行させていただくことにより日本の現在の経済状況、不況、こういうものを乗り越えるための大きな第一歩を踏み出させていただきたい、こう念願いたしておるところでございます。
  6. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 それでは、質問に入らせていただきます。  まず、三月十二日にアメリカにおきまして、NATOにチェコ、ポーランド、ハンガリーが加入する運びとなりました。かつてのワルシャワ条約機構の国々でございますが、これがNATOに参画するということはまさに歴史的なことであり、また歴史の大きな転換といいますものを私ども感じるわけでございます。この件について、政府としてはどのようなとらえ方をしておるかお聞かせいただきたい、このように思います。
  7. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 欧州では、NATOあるいはOSCE、WEUといった機構が併存して重層的な安全保障枠組みを形成しているわけであります。  その中で、NATO冷戦中から集団的防衛のための機構として欧州の安定と平和の維持に中心的な役割を果たしてきた、こういう認識をしているわけでありますが、今後、NATO共同防衛任務を維持しつつも、今回の三カ国の新規加盟やロシアとの対話の推進、さらには平和のためのパートナーシップと呼ばれる域外国との協力の拡大を通じて統合と協力を基盤とする欧州安全保障秩序の構築に向けて中心的な役割を果たしていくと考えております。
  8. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 まさに欧州の安全のかなめであるNATOでございますが、このNATO加盟儀式アメリカミズーリ州で行われたということでございます。北大西洋条約の十条に、既に加盟している国の全会一致の合意により招請された加盟文書アメリカ合衆国に寄託することによって締約国になる。だから、今度新規加入した三カ国はアメリカ寄託をしたわけですね。ちょっと我々聞きなれないことでもあるわけでございますが、これは事務方で結構ですけれども、この点についての御説明をちょっとお願いしたいと思います。
  9. 西村六善

    政府委員西村六善君) 今、先生がおっしゃられましたとおり、寄託に関します文書アメリカ政府寄託したわけでございます。多くの国際条約、多数国間条約におきまして行われているやり方でございまして、そのやり方にのっとりましてアメリカ政府に対して寄託をしたわけでございます。  その寄託をした場所ミズーリ州であったわけでございますけれども、これはアメリカ政府及びNATO諸国一つの政治的な意味合いを込めまして舞台をつくったというふうに解されるべきものかと存じます。戦後チャーチル首相ミズーリ州におきまして有名な鉄のカーテン演説を行ったわけでございますけれども、その鉄のカーテン演説を行った場所にちなみまして、そこでその儀式を行ったという次第でございます。
  10. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 歴史的にチャーチルが鉄のカーテン演説を行っているという点もあろうかと思いますが、これは形からすればまさにNATOの盟主はアメリカだということを如実に物語っておるんではないか、このように私は解釈するんですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  11. 西村六善

    政府委員西村六善君) 北大西洋条約に関します条約の条文にのっとって寄託が行われたというふうに理解しております。
  12. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ということで、やはりアメリカ主導で今日の三カ国の加盟があり、今後もそのような形で進むかどうかはわかりませんが、アメリカが今日までは中心的な役割を果たしてきたということになろうと思っております。  一方、我が国を取り巻きますこのアジア太平洋地区、九六年四月に日米安保共同宣言がなされたわけでございます。冷戦後のアジア太平洋地域安全保障について再確認をするということであるわけでございます。共同宣言を拝見してみますと、同盟という言葉が非常に使われております。また、再確認という言葉が何度も使われておりますが、同盟ということについての定義、これをちょっと言っていただきたいと思います。
  13. 東郷和彦

    政府委員東郷和彦君) お答え申し上げます。  国際法上、同盟という言葉に関して法律的な定義というものはないと思います。一般的な言葉といたしましては、二つの国がそれぞれ価値を同じくして協力し合っていく、そういうような意味合いに使われているというふうに承知しております。
  14. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 多国間は同盟ではないのですか。
  15. 東郷和彦

    政府委員東郷和彦君) お答え申し上げます。  多国間の同盟ということもございます。失礼いたしました。
  16. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 もう申すまでもなく、NATOといいますのは多国間の安全保障の取り決めであり、同盟であると。一方、日米安保といいますのは二国間ということで、同じ同盟だということでございますが、NATOの方は随分とアメリカ主導で今日まで来たのではないか、このように思っておりますが、日米の今度の共同宣言についてはどういう雰囲気の中から共同宣言という形になってきたのか。アメリカ主導なのか日本主導なのか、また双方の歩み寄りなのか、この点についての見解をちょっとお聞きしたいと思います。
  17. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 先生指摘の一九九六年四月の日米安全保障共同宣言でございますけれども、これはまさにその前文にも記されておりますけれども、日本と米国との間の堅固な同盟関係というものが、冷戦の期間中を通じましてもアジア太平洋地域の平和と安全の確保に役立ってきたと。こういう同盟関係が、冷戦が終結した後どのような形で再確認をし、両国民の間で支持を得てその実効性を保っていくか、さらにそれを向上させていくか、こういう共通の日米間の問題意識から出発したものと、こう認識しております。
  18. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 このアジア太平洋地域には幾つもの同盟、それから安全保障条約がございます。  古くはANZUS、それからアメリカフィリピン、それから今日、米韓、それぞれ二国間の安全保障条約同盟関係と言うのでしょうか、あるわけでございます。その中におきまして、ANZUSの方はある意味ではもう意味をなさない。アメリカフィリピンの問題も形骸化しておるのではないかなと。一つ米韓は、現実に北を控えております韓国でございますから、非常に大きな意味を持っておる。そしてその中で、日米安保といいますものが冷戦終結後になおかつ大きな意味を持っておるということだと、このように思います。  かつて、安保賛成か反対か、そして国内で大きなデモが頻発したあの当時に比べますと、随分と日米安保といいますものも国民の間に定着をし、またそれぞれとらえ方も、私の見方からすると進歩してきたな、このような思いがするわけでございます。  今回のこの国会審議の中でも、まだまだ、今回の共同宣言確認安保の質の改定だという御議論もあります。だから、新しい安保条約という形で国会承認事項としろという論もあります。また、質の転換を前向きにとらえて、新しく周辺事態に取り組むために、集団的自衛権の行使まで踏み込んではどうかという意見もあるわけでございます。  政府としては今日までもいろいろと答弁がなされてきておるわけでございますが、ここで確認意味で、安保共同宣言、それからそれに連なるガイドラインについての御認識をお聞きしたい、このように思います。
  19. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日米安保条約に基づく日米安保体制は、過去四十年間我が国に平和と繁栄をもたらし、極東に平和と繁栄をもたらしただけでなくて、アジア太平洋における安定と発展のための基本的な枠組みとしても有効に機能してきたと評価しているわけであります。このような日米安保条約役割国民の大多数により支持されていると考えておりまして、政府としては、今後とも日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとして維持していく考えでございます。  そして、現在国会にお諮りしている周辺事態安全確保法案等は、冷戦終結後も依然として不安定、不確定、不確実な要因が存在する中で、日米安保体制のより効果的な運用確保し、我が国に対する武力攻撃発生等を抑止することに資するものであると考えております。政府としては、これらが早期に成立または承認されることを強く期待しているわけでございます。
  20. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 先ほど申しましたように、ヨーロッパにおきますNATO存在、それからアジア太平洋地域におきます日米安保存在国際社会の平和を維持するという意味では、この二つは本当に重要なそれぞれの同盟関係だ、このように私は認識する次第でございます。  今、外務大臣がおっしゃいました点、まさにそのとおりだ、このように思っておりますが、どうか政府としてもその点のやはりPRをよろしく国民にも強調して広げていっていただきたい、このようにお願いをする次第でございます。  続きまして、アジア太平洋地域におきまして最も今我々が危機を感じておりますのは、北朝鮮ミサイルの問題でございます。現に、昨年八月三十一日、我が国土の上空を飛び越して太平洋ミサイルが着弾をした。これはミサイルではない、人工衛星だという主張もございますが、いずれにしましても、そのような事態があったということに我々は大変危機を感じておる次第でございます。  そういう中で、一つ確認でございますが、「ノドン六基配備確認 中国との国境近く」、これは発射の兆候は見られないが確認をしたという新聞情報でございますが、六基が一カ所に集中しておる、これは移動式車両に搭載されておるという報道でございます。この点について政府として確認しておれば、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  21. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 北朝鮮ミサイル開発配備状況につきましては、同国が非常に閉鎖的な体制をとっていることに加えまして、秘密裏に進めている活動でもあることから、断定的に述べることは極めて困難でございますけれども、我が国安全保障にとって重大な影響を及ぼすものでございますので、私どもも鋭意種々情報を集め、継続的に分析評価を行っているところでございます。  防衛庁としては、北朝鮮のノドンミサイルについては、種々情報を総合すれば、北朝鮮がその開発を既に完了し、その配備を行っている可能性が非常に高いと判断しております。一方、その配備場所配備数など配備状況の詳細につきましては、関連する情報を鋭意収集し分析評価を行っているものの、同ミサイル発射台つき車両に搭載されて運用されるものである、こういうこともあり、一般に正確に把握することは難しく、現段階では確たることを申し上げることは大変困難であると思っております。  いずれにしましても、ノドン射程距離は千三百キロに達すると見られ、我が国のほぼ全域がその射程内に入るという可能性がありますので、その動向につきましては引き続き細心の注意を払ってまいりたい、こう思っております。
  22. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ノドンにしろテポドンにしろ、我が国土を完全に射程圏内に入れるほどの射程距離を持っておるわけでございます。  現在、申すまでもなく、韓国北朝鮮は三十八度線を挟んで緊張状態にある。したがいまして、北がミサイルを、そのような足が長い兵器を持つという意味といいますものは、南に対するものを超しておるんではないかという私の認識でございます。もう少し足が短いICBMとかそういうもので十分南と対応できるはずでございますが、その千キロを超す射程を持つミサイル開発し、または配備をしておるということ、その意図といいますものは那辺にあるのか。長官の御認識についてお聞きしたいと思います。
  23. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) これは大変難しい判断でございますが、一つの考え方として、私が先般韓国へお伺いした際に、韓国のある首脳が、北朝鮮は今七十キロぐらい飛ぶ大砲を随分備えている、だからミサイル韓国向けのものではなくてそれ以外のものを想定して何かやっているのかもしらぬという断片的な話があったということを申し上げて、それ以上のことは私の方からは申し上げることはできません。
  24. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 韓国の人々はまさに、むしろそれよりも川に毒物を投入するとか、そういうものを恐れておる、ミサイルについてはむしろ楽天的だというようなことも仄聞するところでございます。  ところで、これも新聞報道でございますが、米軍は昨年十一月に、朝鮮半島有事での五〇二七作戦計画を大幅に見直し、米韓連合軍による北朝鮮への先制攻撃によって国家機能を崩壊させることを目的とした軍事計画を策定したと、これはまだ未確認かもわかりませんが、ある新聞社がその情報を得ておるわけですね。  といいますのは、ミサイルについての問題は別といたしましても、韓国としてはそれを含めて総合的に北の今日の兵力の増強といいますか向上といいますものに非常に神経質になっておる証左だと、このように思っております。  この五〇二七作戦についての御説明をまずお聞きしたいと思います。
  25. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 米韓連合軍の共同作戦計画については、私どもにはいまだ知らされておりません。委員が御指摘のような報道があったことは私どもも承知しておりますが、その具体的な内容については私どもは知らされていないところであります。
  26. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 米韓の問題であるし、軍事的なことですから、なかなか長官も詳しいことは申し上げられないということであろうかと、このように思っております。参考までに、非常に具体的な作戦計画で、例えば二百門の二十四センチロケット砲と一万門の火器で二十四時間以内に北朝鮮の砲兵軍団を攻撃する、このような内容でございます。  これについての質問はこれ以上申しませんが、いずれにしても、非常に米韓危機感を持っておるということであり、現実に北が我が国土を射程に入れたミサイルを持っておる、核についてはまだ未確認でございますが、このおそれもあるということでございます。  先般のこの予算委員会でも私自身質問をいたし、また外交・防衛委員会でもこの質問がありましたが、じゃミサイルが飛んできたときにどうするか、またそれに着手が確認をされたときはどうするかという点でございますが、もう一度長官にこの点についての見解をお聞きしたい、このように思います。
  27. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今、委員から御質問のありました点については、日米双方とも幅広い情報収集活動を継続しているところであります。  日米安保体制のもと、そのような活動を通じて得られた情報については必要な情報交換等を行っていることは当然でありますが、情報交換の態様につきましては、例えば会議等の場を活用して行われることもありますし、あるいは早期警戒情報のように迅速に情報の提供を受けることもあります。このように、日米両国の情報交換については、交換する情報の種類や内容に応じて適切な方法で行われているところでございます。  個別的な、具体的な内容について明らかにすることは、双方の情報収集能力を明らかにすることにもなりますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  28. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 現実にミサイルが飛んできた、着弾したというときは、これはもう当然有事でございますが、そのミサイル発射可能性が非常に高いというときの先制攻撃、これについてもう一度長官のはっきりした見解をお聞かせいただきたいと思います。
  29. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 委員よく御承知のとおり、我が国の憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の発動については、三つの発動要件がございます。一つ我が国に対する急迫不正の侵害があること、もう一つは排除するために他の適当な手段がないこと、もう一つは必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに該当する場合に限りこの自衛権の発動ができるわけでありますが、我が国に対する急迫不正の侵害がない場合に自衛権の行使として武力の行使を行うことは、憲法上は認められていないところであります。  この場合に、我が国に対する急迫不正の侵害がある場合については、従来から我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指している。この武力攻撃が発生した場合というのは、侵害のおそれがあるときではない、また我が国が現実に被害を受けたときでもない、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである、こういうふうに考えております。  したがって、我が国に現実に被害が発生していない時点であっても侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手していれば、我が国に対する武力攻撃が発生したこととなるわけでございますから、自衛権発動の他の二つの要件を満たす場合には、我が国としては自衛権を発動し相手国の戦闘機や艦船を攻撃することは法理的にも可能だと思っております。そういうことが昭和三十一年の政府統一見解でも述べられているわけであります。  先制攻撃というものは、武力攻撃のおそれがあると推量される場合に他国を攻撃することでございますので、そういうことは我が国憲法九条のもとで許されないということは今申し上げたとおりであります。  我が国に対する急迫不正の侵害がある場合については我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指し、その武力攻撃が発生した場合というのは侵害のおそれがあると推量されるときではないのですから憲法上先制攻撃が認められない、現実の被害が発生していない時点であっても自衛権が発動できるという見解が先制攻撃を認めているものではない、こういうことでございます。
  30. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 非常に微妙な点がございまして、急迫不正の侵害があった場合は、もうこれは既に被害が出ておるわけです。そうなったときはもう遅い。しかし、着手の段階であれば先制攻撃ができるというふうに私は今解釈をいたしました。  さて、実際問題として、そういうような事態でも、我が国はいわゆる足が長い兵器を持っておりません。当然、日米安保のもとにアメリカに頼らなければならないということでございます。  そこで、実際問題として、アメリカはいわゆる米韓の相互防衛条約米韓関係というのがございます。先般、韓国の千国防相ですか、お見えになったときも、事前協議なくして先制攻撃については反対であるというようなことも、これは記者会見ですが、そのようなことを言っておった、このように記憶をしております。  ただ、実際問題として、おそれがある、では日米安保に基づいて北の核施設をたたくということ、これは理屈の上ではできますが、しかし我が国の北に対する心情的なものと、それから韓国の北に対する心情的なもの、韓国の方々は例えば親兄弟が北、南に別れているものもあります。そういうときに、果たして日米安保が機能するかどうかという問題が私は非常に現実問題としては出てくるのではないかなという気がするんです。  その点については、長官、どのようなお考えでございましょうか。
  31. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) ただいま委員がおっしゃいましたことは、三月六日あたりの我が国の報道でも、千容宅国防部長官が、今、委員がおっしゃったようなことを新聞で記者会見されたという報道があったことは私どももよく知っております。  それは大変遺憾なことでございますが、一部の我が国の報道の中で、私は先ほど来きちっと国会で何度も答弁しているわけですが、防衛庁長官が先制攻撃ができると国会答弁をしたという誤解による報道をしたものですから、それを国防部長官が心配して、そういうことを記者会見なさったということであります。  私どもは直ちに、それが大変な誤解であるということで、日本にいる韓国の駐在武官あるいは韓国にいる日本の駐在武官等を通じてすぐその誤解を解きましたし、先般も李政策企画局長が別の用件で訪日されましたので、一時間ばかり私から篤と話をして、きのう李局長から電話が入りまして、全くの誤解であるということがよくわかりましたし、千国防部長官も腹の奥からよく理解できたということで、そのことを韓国の新聞の記者会見でも鮮明にお話をしたという連絡をいただきました。  そういうことで、千長官日本が一方的にそういう反応をするということは決してないということをよく理解していただいたと思っております。同様のことを中国に対しても今説明して、理解を得ているところであります。  北朝鮮情勢の対応に関しましては、私どもはやっぱり日米韓三国間の緊密かつ継続的な協議及び三国間の密接な政策調整が重要である、こういうことで千国防部長官あるいはアメリカのコーエン国防長官それからペリー政策調整官等ともそのことは何度も話し合いをしまして、同じ認識である、認識を共有しているということであります。  私は、そういう意味でこれからも三国間の密接な話し合いが大事であるということで、特に韓国とは即座にいろいろな事態に対応できる情報網を来月ぐらいには、さっき李政策企画局長が来日したという話はその具体的な問題を詰めるために来たわけでありまして、ほぼ話し合いがまとまりましたので、そういう情報網を通じてもお互いに理解を深め、万全を期していきたい、こう思って対処しているところであります。
  32. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 非常に微妙な点がございまして、これは一般国民はなかなかわからないのではないかなと、こんな感じがするわけでございます。  そういう中で、やっぱり現実に北朝鮮ミサイル開発しておる、そして昨年八月三十一日にはそれが飛来をし太平洋に着弾した。あの時点において我々国民は寝耳に水であった。しかし、防衛庁の方では既に十日か二週間ぐらい前にその情報をキャッチしてイージス艦が日本海の方に出動しておった、このように伺っております。  今の長官の御答弁でも非常に微妙なところがあって国民にはわかりにくい。これではだんだん国民は非常に不安に思っておるだろうと、このように思うわけでございまして、ミサイルについての情報の開示、これはいたずらに混乱を招くようなことがあってはならない。しかし、台風でも、台風警報、注意報、ランクがあるわけでございます。  そういう情報の開示については、防衛庁としてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  33. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 今大変大事な御指摘をいただいたわけでありますが、まず政府としては、北朝鮮が弾道ミサイルを再度発射する場合に備えまして、昨年の八月の教訓も踏まえ、政府部内の情報の伝達体制の整備や各省庁間の連携等について鋭意検討を行っているところであります。  防衛庁としましては、このような政府としての検討に積極的に参加するとともに、北朝鮮問題への対応、特にミサイル発射された場合の対応について、私のもとに重要事態対応会議を設置して、かなり多くの会議を開きまして議論を重ね、適切に対応し得るような努力を重ねているところであります。  今述べたような検討を踏まえまして、国民の皆さんの安全確保の観点から、発射前における必要な情報の提供についても適切な手段を用いて実施することが必要じゃないだろうか、そういった対応にも万全を期してまいりたいということで、そのあり方についても今熱心に検討を加えているところであります。  防衛庁としましては、国民の命と財産の安全確保の観点から、必要な情報は公表すべきだと考えておるわけでありますが、具体的にどのような内容を公表するかといった事柄については、現在、政府として検討が進められていることもあり、その具体策について今お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  34. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 大変重要な点であろうと思いますので、防衛庁としてもよろしく御検討をお願いしたい、このように思います。  そして、もう時間もありませんが、現下の我が国の防衛上一番心配なのはやっぱり北のミサイルだ、このように思っております。直接侵略というのは今のところ、朝鮮半島は南に韓国存在するわけでございますから一つのバッファーがあるな、このように思いますが、長距離のミサイルということ、そして今申しましたように、実際の被害が起こる前に対応できるかということ、我が国は兵器を持っていない、安保に頼らなければならない、じゃ安保が本当に機能するか、事前に機能するか、侵害を受ける前に機能するかということについて、実は私は危惧の念を持っております。  といいますのは、国際世論、それからアメリカは民主主義の国ですから、アメリカの国内世論という中で、アメリカ自身の主権が侵害されるときは、これは現に先般先制攻撃というようなこともあった、先制攻撃といいますか基地をたたくということもあったわけですが、日米同盟を結んでおるという関係であるが、一方では韓国と北の関係があるという中、それから国際世論という中で非常に難しい選択をしなければならない、判断をしなければならないことになろうかと思います。  かつて真珠湾、あれはむしろ日本を戦争に持ってくるために真珠湾攻撃をさせたんだというような見方をする歴史家もいるわけでございまして、もし北をたたくなら、一度日本が被害を受ける、それからやるというような判断も、これは歴史的にもアメリカはとったこともあるのではないか、パールハーバーのことを思いますと。そういうときに非常に難しい判断をしなければならないと思います。  その辺、日米安保に甘えていていいかどうかということ、そういう問題も含めて、最後に長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  35. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 先ほど来、委員から大変微妙な問題についての御説明がありました。  例えば個人の正当防衛みたいなものを考えてみた場合に、相手が来てピストルを構えたと。構えたから殺されるおそれがあるといって相手を撃ったんじゃいかぬというのが、おそれがあるだけで攻撃に着手しちゃいかぬという意味のように考えることはできると思います。また、被害が出たときでなければ反撃しちゃいかぬということであれば、相手にピストルで撃たれて死んでしまったんじゃ反撃できないわけですから、これも当たらないと思います。  一番当たるのは、相手がピストルを構えて撃った、しかし撃ったけれども当たらなかった、そのときには反撃に着手していいというふうに考えればよくおわかりいただけるんじゃないかと思うのでございます。  我が国に対する武力攻撃がなされる場合に、安保体制枠組みに基づく日米共同対処ということが一番基本になると思います。そういうことは日米防衛協力のための指針にもきちっと明記されておりますので、私どもとしては、米軍との共同対処をきちっとやることがとりあえず国民の生命と財産を守るための一つの大事な要素である、こういうふうに考えております。
  36. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 終わります。
  37. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で吉村剛太郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  38. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、今井澄君の質疑を行います。今井澄君。
  39. 今井澄

    ○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。  参議院の本予算委員会も大詰めを迎えまして、いよいよ締めくくり総括質疑となりました。世上では、ことしは史上最速予算の通過が見込まれる、こういうことが言われているわけでありますが、そういった中で、参議院予算委員会は、過去十年あるいは十一年を振り返ってみますと、一番長かったのが九十四時間。それを超える質疑時間を現在確保しつつありますし、各般にわたって大変広い範囲の質疑が行われてきたというふうに思っております。  その中で、幾つか新しい問題も出てきましたが、しかし一方でなかなか質疑が深まらなかったという点もあると思うんです。例えば金融問題では、例の確認書というものが提出されたわけでありますけれども、一方、なかなか資料要求に対してこたえていただけないという点で不満を残す点もあるわけでありますが、それについてもかなり全般的な質疑ができたというふうにとりあえずのところは考えております。  さて、小渕内閣は経済再生内閣を自称して頑張ってきておられるわけでありますが、去る十二日に発表された国民所得統計速報によれば、そしてまた、けさは月例経済報告、私も経済企画庁等からお聞きいたしましたが、昨年十—十二月期が前期比マイナス〇・八%、年率換算にすると三・二%ということで、政府としても大変厳しいという御認識を持っておられると思います。お聞きしますと、一月ごろには政府の方としても若干のプラスになるのではないかというふうな考えもお持ちだったようですし、民間でもマイナスでもほんのわずかのマイナスだろうと、〇・一とかそのぐらいだろうという見通しもあったようであります。これが大幅に狂ったわけでありますけれども、このことについての御所見、原因についてどう考えておられるか、まず経済企画庁長官にお伺いいたします。
  40. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員指摘のとおり、私も予想以上の落ち込み、〇・八%というのは予想以上の落ち込みでございました。  そして、御指摘のように、二月十二日に仙谷委員に対する答弁で、私は十—十二月はゼロか若干プラスになるかもしれないというようなお答えをいたしました。それに比べますと大変違いますので、その点は率直におわびしたいと思うのでありますが、その理由についてちょっと聞いていただきたいと思います。  まず第一は、その前の七—九月期が、速報で出しましたのと、二次QEといいまして法人企業統計で出しましたのと〇・四%も上方修正されました。前の方が上がったものですから、今度が同じでもその下がったところが非常にたくさん出てきたわけです。  その最大の理由は、中小企業の設備投資が低いと思っていたんですが、七—九月期に大変プラス、一一%のプラスになっているんです。これはいまだに実感と合わないのでございますが、経理統計上の癖もございまして、ある程度そういうことが出てきたのじゃないかと考えております。  それからもう一つは、十二月ぐらいに住宅投資がかなり進むと見られておりましたが、政府の税制の関係で、十二月に着工しようと思っていた人が一月にずれ込ませたということで、〇・一%ぐらい下がったと。それから外需が、輸出の方が意外に伸びなくて輸入が意外に減らなかった。  この結果、七—九月はプラス〇・三でございましたものが十—十二月にはマイナス〇・三%、これで差し引き〇・六%違う。もしそういう統計上の誤差がなかったといたしますと、内需だけとりましたらやはりほぼとんとん、前期と同じか前期よりは少し上向いた状況になったのでございますけれども、ちょっと言いわけがましくて申しわけないのでございますが、そういうような統計上で前期が修正されたということが非常に大きな理由になっております。
  41. 今井澄

    ○今井澄君 総理の御所見をあわせてお伺いしたいと思います。
  42. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま経企庁長官から御答弁させていただきましたが、堺屋長官国会におきましてもかなり本音のところをお話し申し上げてきたような気が私はいたしております。  そういう意味では、九—十二月につきましては、希望的に申し上げればその段階で明るい見通しが立てばということでありましたが、これもしばしば申し上げておりますが、明るさの前に一番暗い状況というのがこの九—十二月にあらわれているのではないかというふうに思っております。そういった意味では若干予想にたがうことになりました。また統計のとり方につきましても今御説明ございました。ぜひ一—三月は我々としては明るい見通しが立てるようにということで、今その三月期を迎えて、その方向性について数字が改善されることをこいねがい、また努力をさせていただいているところでございます。
  43. 今井澄

    ○今井澄君 今原因や所見についてお伺いしたわけでありますが、私は単に前期、七—九月期が修正されたからという、あるいはちょっと設備投資や消費がずれたという、そんな簡単なものではないんじゃないかというふうに思うんです。これは貿易収支の問題もそうだと思うんです。  きょう、月例経済報告をお聞きしまして、御説明はなかったんですが、後でちょっと見てみますと、資本収支が十二月でプラスになっているんですね。非常に特異なことのようにも思います。また、世上ではかなり何人かのエコノミストが今後のトレンドとして日本はどうも双子の赤字の方向に行くんではないだろうか、貿易収支の方も、貿易摩擦になるぐらいいつも黒字ですけれども、必ずしもそうは見れないんじゃないかというお話があるので、たまたま例えば貿易収支の方で〇・三ポイントあったから落ちたとか、そういうことは言えるんでしょうか。
  44. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 申し上げましたのはあくまでも前期との比でございまして、日本の貿易収支は依然として大きな黒字を続けておりますし、また一月、二月も貿易収支の黒字幅がむしろ広がっております。これは為替の動向とも関係がございます。  それから、委員指摘の資本収支でございますが、これは日本の株式に買いの注文が入りましてやや変わったというようなこともございまして、大きなトレンドの流れではなしに、むしろ小さな波動の方で変わっているんだろうと思っております。
  45. 今井澄

    ○今井澄君 もちろん私もそうであればいいと思うんですけれども、余り事態を甘く見て、これが一時的なものだとか、ちょっとずれただけだという見方は非常に危険なような気がいたします。  ちょうど、きょうお配りしました資料、「自己負担割合について」、これは後で使いますが、その二ページ目に家計貯蓄率のグラフがあります。それで、最近ではますます日本の貯蓄率は上がってきて、九七年が一三・六、九八年が一五・四という数字もありますね。  そこで、今の問題はおくとして、消費の方へ移りたいんですけれども、企画庁長官、三番バッターはウエーティングサークルでなかなかいい素振りをしている、打ってくれるんじゃないかということを期待していると。私は実はここのところが非常に問題だと思うんです。  本予算委員会の冒頭の総括質疑のときにも申し上げたんです。税制改正、減税との関係で申し上げたわけでありますけれども、どうも消費が拡大する環境にないと。一時的にいろいろな消費税還元セールだとか今度地域振興券とか、いろいろなことで一時的な動きはあるにしても、これは決して長続きしないんじゃないか、長期的には消費はむしろずっと低迷ということではないかというふうに心配しているわけなんです。  もう一度お尋ねいたしますけれども、現在の政府の減税案、中低所得層にとってみれば、確かに一時的な特別減税ではありますが、九八年度に比べればむしろ増税になる、表現は気に入らないかもしれませんが、こういう状況の中で、しかも後でもう一度また触れますが、一方で年金とか雇用とかこういうものについての不安が一向になくならないという状況の中では、やはりこれからの三番バッターに期待するということは非常に難しいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  46. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 委員、大変的を射た指摘をしていただいていると思うんです。  現在、日本は非常に不安心理が強うございまして、最近の調査によりますと、二十歳代の人でさえも半分以上が老後が心配だと答えている。これは十年前、八六年の調査に比べますと倍増いたしておりまして、若者が老後が心配だというような状態になっておる。これはいろんな理由があると思います。  その第一は、やはり不況が進行いたしまして、それによって不安になっている。そしてまた、その不安心理が委員指摘のように消費を抑えてなかなか回復を難しくしている。あるいは経営者の方でも投資を控えるというようなところがあろうかと思います。  第二番目には、御指摘のように財政の問題あるいは年金の問題、そういった問題が非常に不安がられて、今後日本の年金は大丈夫だろうかという不安があろうかと思います。  そして第三に、やはり大きな問題として少子高齢化という社会構造的な変化がありまして、これに伴いまして日本の雇用慣行が大きく変わる、また産業構造も変わる。今までこういう学校を出てこういう会社に勤めていたら定年まで安心だと思っていた人がそうはいかなくなってきている。こういう構造変化の問題もあろうかと思います。  そういうことに対応いたしまして、政府といたしましては、目下の緊急的な経済対策と並べまして、長期行動的な政策として先ごろには経済戦略会議から提言もいただきました。また、それを踏まえて、一月十八日に小渕総理大臣から経済審議会に対して、十年程度を目途とした方策を考えろ、日本のあるべき姿とそれに至る政策を考えろという御指示もいただいておりますので、本年の前半ぐらいにそれを出したいと考えております。  御指摘の点でございますが、税金との関係、これは減税が一時、特別減税がなくなってそれにかわって恒久減税になった。このことによって標準世帯で三百六十一万円と四百九十一万円ぐらいの間の方が無税から有税になった。それから、その上の方々も増税になった部分がございますが、これはむしろ、私は委員と御意見が違うかもしれませんけれども、恒久減税になったということで安心感が出てきているんじゃないか。一時的な特別減税だけでは来年どんな税制になるかわからないという不安がありましたが、やはりこれが恒久的な減税政策になったので安定感が出てきているんじゃないか。むしろ、私たちといたしましては、できるだけ早く恒常的な日本の次の姿を国民の方々に描いてお見せすることによって御安心いただくのが筋ではないかと考えております。
  47. 今井澄

    ○今井澄君 その減税のことなんですけれども、前のときにも申し上げたんですが、民主党も対案を出したわけです。それは中低所得層にも、それはもう一つは子育て支援手当との組み合わせですけれども、あわせて出すことが大事だと。当面、今年度に比べれば税負担がふえますけれども恒久減税だから大丈夫ですよと、今の経企庁長官の御答弁では、どうも国民はそうは思っていないんじゃないかと思うんです。  大蔵大臣にお尋ねしたいんですけれども、やはりそういう消費という非常に景気対策として大事なところに焦点を当てれば、今度の政府の減税案というのは、景気を浮揚するという意味ではプラスの効果がないどころかマイナスの効果があるんではないか。むしろ減税をするならば、あわせて私どもが提案したような方向での対策が景気回復に資するのではないか。  重ねて大蔵大臣に御所見をお聞きしたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この予算委員会で既に何度も御議論になりました。今井委員も前回もその点をおっしゃいました。  確かに、平成十年度分に係る一遍限りの減税、いわゆる定額減税というものは非常に大きな無税層をつくり出しました。それは例えて申しますと、仮に十万円の税を払っていた、定額で十万円免税してあげますと言えばその方はゼロになってしまうわけでございますから、それは当然そうなります。これが定率の減税でございますと、なかなかそういう景気のいいことは申し上げませんが、十万円払っていた方には二〇%減税をいたします、八万円は払ってくださいと。  そういうふうな緩いカーブでの累進課税というのが所得税の特色でございますが、突然実額で十万円まけますと言えば、がけみたいな、あるがけのところでゼロ、急に高い課税所得というふうに、丘陵が描けませんので、その丘陵とがけとの間でなくなるこの三角の部分が八百万人いたわけでございますから、これからの日本を考えますと、そういう八百万人プラスという納税者を失うことは私は将来の日本の正常な姿に返ったときの税制としてはとてもやれないことだし、これは御存じでございますが、それによって四百九十一万円というような、この間も申し上げましたが、アメリカで申しますと二百八十万ぐらいでございますか、イギリスですと百二十万ぐらいでございますが、四百九十一万というそういう課税最低限というのはとても日本のような円熟した国で私はやっていけない、一遍はできましたが、将来やってはならぬことだという思いがございまして、今回は定率減税にいたしました。  その結果は、しかし御指摘がありましたように、昨年新しく納税者でなくなった方々がまたことし納税者になられて、そして昨年の負担よりも多い場合には十万円近く負担がふえた。それはそのとおりでございますから、その限りで生まれるべき購買力が生まれなかったではないか、あるいは六五%という課税のトップレートを五〇にした、それは高額所得者にはいいけれども、そこから大した購買力は生まれないではないか。二つの御批判がございまして、そのことがこの予算委員会の税制についての中心の議論であったように思います。  私思いますのに、確かにそのようにして昨年に比べて減税から生ずる購買力、余剰購買力は今年の方が少ないということは事実でございましょうけれども、先ほど経済企画庁長官が言われましたように、一遍限りそういう減税をしてもらったという立場と、それはしかし先はわかりませんということでございますが、ことしのようにまたもう一遍納税者に呼び戻されたが、しかしこれは安定的に今後こういう税制になっていくのだ、多少のことはやっぱり自分たちぐらいになれば払ってもいいのだろうと思ってもらえるかどうか。その辺のところは、どっちが少し長い目で見て購買力に資するかというのは、私はいろいろ問題があるだろうと思います。先がこれで少し、一遍限りでない、まあまあこれで国がいくのかなというような多少の安心感、その間に施策が進行しておりますから、去年と同じ環境であるわけでは必ずしもありません、それは背景も変わっていますから。  今度の所得税改正というのは、前年、平成十年分に比べまして減税の幅は金額は小さく、したがってそこから生まれたかもしれない購買力というものは今年の場合は小さかった、それは平成十一年分の場合は小さい。それはそのとおりでございましょうけれども、だからといってことし減税をしていないわけではございません。これだけの、九兆幾らという減税をいたしておるわけでございますから、相対的に昨年に比べてその点が劣るというようなことは言えないのではないだろうか。  もっと面倒な言葉を使いますれば、そうやって生ずる限界の購買力よりも平均の購買力ということで見ていきますと、やはり多少経済が落ちついてきた、ひょっとしたらもう底は過ぎたかなといったようなことが消費者に与える影響というものはばかにならないのではないか。  つまり、もう一遍申しますと、今井委員のおっしゃいました、その計数的な比較においてはそれは決して否定いたしませんけれども、全体の雰囲気として平均的な購買力というものがどう動くかということの方が大事なのではないだろうか、こう思っておるわけでございます。
  49. 今井澄

    ○今井澄君 御丁寧な御答弁をいただいたんですが、私はそういうことをお聞きしているんじゃないんです。それはもう前にもそういうことをお聞きいたしました。  問題は、例えば今度こういう十—十二月期が予想よりも厳しいという現実も踏まえながら、そして当面はとにかく景気を浮揚させることが大事なんだということであれば、そのために一体どういう手を打たれるのかということで、そういう趣旨からお聞きしたんです。一般的な税理論をお聞きしたわけでもないですし、この予算審議が始まった時点と今とで同じ御答弁ということ自身が私は全くおかしいと思っております。従来型と言われようと公共事業をやり、あるいは地域振興券、いろんな批判があってもそういうことをやって何とか景気をというふうにやっておられるんだったら、それなりの手がおありでしょうということでお聞きしたんですが、もうこれ以上お聞きしても同じ御答弁のようですからやめておきます。  ところで、こういう十—十二月期のQEあるいは月例経済報告を踏まえていろいろなエコノミストの方たちがいろんなことを言っておられる。見方は、ここで底を打ったという見方と、いや、まだまだだという二つに分かれるように思いますが、それはそれとして、いずれの見方をする人たちも、やっぱりことし五月、六月、七月というあたりになるとかなり厳しくなるんじゃないだろうかという見方というのは大体共通しているように思うんです。  それはやっぱり消費と設備投資の問題だと思いますが、設備投資については恐らくすぐにというわけにいかない。自動車、鉄鋼などは三割も過剰じゃないか、電力はそれ以上だという説もありますし、全体的には設備投資はうまくいかない。そうすると、四番バッターはなかなかこれはすぐにはヒットを打ってくれそうもない、ましてホームランを打ってくれそうもないので、当面は消費ということになりますが、消費も、先ほどから申し上げておりますし今後も申し上げますが、大変厳しい状況で、そこで民間のエコノミストの見方も、この十二日の発表を見て意見が分かれるところは、追加的な対策が必要ではないかということと、追加的な対策を従来型でやったらいけないよという意見に大きく二つに分かれているように私は見ているんです。  その点で、やれるだけのことはすべてやっていますということなんですが、追加の対策、つまり大型の補正予算とかそういうものを組まれるつもりは本当にないのか、これでやっていけるとお思いかどうか、その辺をお尋ねいたします。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) おかげさまで予算案につきましては、非常に迅速に、しかし御熱心に御討議をいただきまして、いつもより早く成立を私どもも期待しておるわけでございますが、そのことの余得は、もう既に成立後にいろいろいたすべきことの準備を大蔵省では始めようとしておりまして、成立いたしましたら各省に呼びかけて、いわゆる予算執行の準備をこんなに早くやることができますので、おかげさまで予算というものの執行が大変にいつもより早く行われる、公共事業等は殊にそうでございますが、そういう環境がございます。  それからまた、先般、柳沢大臣のもとに金融機関に対する資金の導入も行われました。かねて考えておりました大型予算、大型減税、金融の整備というようなことがほぼここでできつつございます。また、金利もほぼここで落ちついていて低いといったようなこと。  例えで申しますと、なべに大体入れるべきものは入れて、さてこれが煮えるかなというようなところなんだと私は思うのでございます。煮えるはずだと実は思っておりますが、これ以上何かを入れるかとおっしゃいましても、それは急にそういうものが考えられるわけでもございませんし、何とかこれを、通過させていただきました予算の執行、あるいは減税、あるいは金融の正常化、強いて申しましたら、企業側がかなり古いあるいは時間的に古くなった設備をかなり抱いておると思われますので、このいわゆるリストラ、これがこの次の段階の問題なのではなかろうか。  ただ、それは雇用に関係しますから、非常に注意深くやらないといけませんけれども、一般にデフレギャップと言われているものの中にそういうものが含まれている可能性がある。そこらあたりがこれから次のステップではないかと思っておりますけれども、政府自身がやらなければならないこと、やるべきことは、国会の御協力も得まして、まず年度内にほぼ完成をする、こういうふうに考えております。
  51. 今井澄

    ○今井澄君 私ども民主党も、金融の安定化あるいは構造改革のためには、昨年、国会の場においても全力を挙げて政府にも協力してきたところでありますし、今後とも日本経済の再生や構造改革のためには頑張っていくつもりでありますが、どうもやはり政府の見方は甘過ぎるのではないか、このままでは構造改革も進まないのではないかという心配を申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  参議院の今回の予算委員会で特筆すべき課題の一つは、日の丸・君が代問題だったと思います。  去る二月二十五日、小渕総理は自民党の狩野議員の質問に答えられて、現時点では法制化は考えていない、こういうふうに答弁されたわけですが、それからわずか一週間、三月二日には官房長官が記者会見の場で法制化について検討に着手するということを発表されて、にわかにこの問題がこの委員会でも大きな課題になってきたところであります。  それで、なぜ急にこの一週間の間にこういうふうに変わられたのか。まず、総理にその理由をお聞きしたいと思いますし、あわせて本当に何か今国会にも上程するというお話もあったやに聞きますが、そのおつもりなのかどうか、お尋ねいたします。
  52. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府といたしましては、これまでも国旗・国歌につきまして、長年の慣行により日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間に定着しておると考えられる旨御答弁申し上げてきたところでございます。  しかしながら、よくよく考えてみまして、日の丸・君が代が国旗・国歌として国民の中に広く定着している中で、二十一世紀を迎えるに当たりまして、諸外国で国旗・国歌を法制化している国もあること、また成文法を旨とする我が国にあっては国旗・国歌につきまして成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えられることなどから、今回、国旗・国歌の法制化も含めて検討に着手することにいたしたものでございます。  法案の提出の時期につきましては、国権の最高機関である国会の御議論等を踏まえ、できれば今国会に法案を提出できる運びとなることが望ましいと考えておるところでございますが、私は、この問題に当初答弁を申し上げましたときに、たしか諸外国の例も若干御紹介をさせていただいたような記憶がございます。また、最近この問題について政党の中でやはり法制化というものについて言及をされた党もございまして、かねがね自民党としてもそうした考え方を持っておりましたことも事実であります。  今井委員指摘のように、確かに私、今の時点でと思いましたが、その後、正直に申し上げて、広島での世羅高校の問題等もございました。これがすべてだとは申し上げませんけれども、この機会に、慣習法であるこの問題について、内閣としてはやはり法制化することの方がよりこの問題に対して国民の間におきましての考え方に一つ方向性を見出すことができないか。あるいはまた、ちょうど世紀も変わることでありますし、特に国旗・国歌につきましては、私ども子供のころから、特に終戦後いろいろな御議論がございました。しかし、それには確かに過ぐる大戦についての記憶、問題から、国旗に対し、国歌に対しましてもいろいろな思いがあったことは事実でございますが、はや半世紀を経ておりますので、この機会に改めて法制化をいたしまして、そして一つの考え方をまとめることが望ましいのではないか、こう思いまして答弁が変わりましたわけでございます。  御理解いただければありがたいと思っている次第でございます。
  53. 今井澄

    ○今井澄君 私も個人としては、日の丸の旗というのは好きですし、また国として国歌・国旗を持つことはこれは非常に自然なことだと思うんですね。例えばオリンピックのときに日章旗が上がるとかそういうふうなことについては、これはかなり、徐々にではありますけれどもそういう形にはなってきていると思うんです。  しかし、私も地元に帰ってこの問題をいろいろ聞いてみますと、やっぱり日の丸と君が代に対しては随分違った感覚を持っておられる方がいるんですね。私も個人として申し上げれば、君が代はどうも、もうちょっと元気な曲の方がいいんじゃないかなと思うし、歌詞についてももっと素直に歌える歌詞の方がいいというふうに個人的には思いますし、何かそういうことがあるんですね。  それから、世界のこともこれまでも審議の中でも随分出されましたけれども、そして小渕総理も御答弁になりましたが、例えばフランスは、今ちょうど日本に来ているあの絵ですね、「民衆を率いる自由の女神」、まさに激しい戦いの中でかち取ったということで非常に好戦的な国歌でもあるわけですけれども、そういう国、あるいはアメリカのように独立をかち取った国、そういう国の国歌・国旗のあり方や制定の仕方と、例えばイギリスのように、これは国歌・国旗に限りませんが、法律も大体成文法というのが余りなくて、慣習法的にやってきていて今王室があり議会があるという国と、これ随分違うと思うんですね。  日本は、極端な言い方をすればこういう点についてはイギリス的なのかなと思うわけですので、何も法律をつくるということを、アメリカやフランスが法律があるからというのでやる必要は必ずしもない。しかも今、総理もお触れになりましたように、私も戦前の生まれですけれども、私は戦争でひもじい以外は余りひどい目に遭ったことがないものですからあれなんですけれども、やっぱりひどい目に遭った方はそれなりにこういうものについての何かいろいろな感情もあるわけですね。  そうしますと、やっぱり思想信条という意味でこれは慎重であるべきなんではないかと私は思うんですよ。二月二十五日に当面法制化するつもりはないとおっしゃっておきながら、一週間後にころっと変わる。それは私も大変痛ましいことだと思いますし、本当に哀悼の意をささげたいと思っておりますけれども、そのことだけですぐにというのはまたかえってトラブルを大きくするんではないかという心配があります。  そこで、ひとつお尋ねしたいのは、教育現場以外でこの日の丸・君が代問題で深刻なトラブルが発生しているところはどこかあるのか。国内でも国外でもあったらちょっとお聞きしたいと思うんですが、よろしくお願いいたします。
  54. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先般の卒業式で国旗・国歌の取り扱いについて大変努力されておられました広島県世羅高校の校長先生が自殺されたことは大変痛ましい、残念なことと思っておりますが、政府といたしまして、これまで国旗・国歌につきまして長年の慣行により日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間に定着しておるものと考えておりますが、今、今井委員指摘のように、他のところでトラブルがあったかと問われますと、今の段階で直接的にそのことがトラブルの原因になったということは承知をいたしておりません。  これも国際的慣行かもしれませんけれども、というよりも、むしろ米国などがそうかもしれませんけれども、国旗につきましては、必ずそれぞれ公的機関を含めまして掲揚されておるというような点、あるいはまた祝祭日その他につきましてもそうしたことがごく普通に行われていることに比べますと、ややこの国旗・国歌に対しての一般国民認識と申しましょうか、そうしたものが薄れておるというような現状は我が国において顕著な状況ではないか、こういうふうに考えております。
  55. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、私は提案申し上げたいんですけれども、一つは、早急な法制化というものはかえってトラブルの原因になるからじっくりした議論をした方がいいと思うことと、特に教育現場にこのことが持ち込まれているということが非常に問題だと思うんです。  子供のうちから国旗・国歌に対してのあれを養おうというのは、それは一般論としてはそういうことはあるかもしれませんが、その結果被害を受けているのはだれかというと、校長先生でもあるかもしれませんけれども、生徒なんですよ。広島だけの問題じゃなくて、所沢の問題だってあるわけです。  だから、それはどっちが先かということを言い出すとまた水かけ論になるかもしれませんけれども、いわゆる五五年体制あるいは米ソ冷戦構造のもと、いろんなことがありました。しかし、急にここで広島の世羅高校の問題があったから、学校で国旗を掲揚し、国歌を歌わせるために、あるいは君が代を歌わせるためには法的な整備が必要なんだということをやれば、ますます現場にそういうトラブルを拡大する、あるいは固定化するということに私はつながりかねないと思うんです。  だから、そういう意味では、ひとまずこの問題については冷静になって考えてみなければいけないと思うんですけれども、文部大臣いかがですか。
  56. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) たびたびお答えいたしていることでございますけれども、私が一番心配していることは、国際化が非常に進んでいるということです。その中で、やっぱり子供のうちからしっかりとした国旗・国歌の意義を理解し、自国のものはもちろんでありますが、他の国の国旗・国歌を尊重する、敬意を払うというふうな基本的な礼儀作法を身につけておくことは必要だと思うのです。  このため、学校においては、現在、社会科では国旗及び国歌の意義並びにそれらを尊重する態度を育成するとともに、音楽では国歌君が代を指導し、特別活動においては入学式や卒業式などにおいて国旗を掲揚し国歌を斉唱することといたしております。  文部省といたしましては、今後とも各学校において、国旗・国歌についての理解がさらに深められるよう、関係の教育委員会に対する指導を一層充実させていきたいと思っております。
  57. 今井澄

    ○今井澄君 私はやっぱりそれはおかしいと思うんです。確かに国際化が進んでいる。国際的にもそういう精神というか気持ちを養うことは大事だ、それはそうですよ。だけれども、この前、山下委員が子供の問題を質問されたときに、文部大臣もうなずいて聞いておられたじゃないですか。子供の世界が荒廃しているのは大人の世界が荒廃しているからじゃないですかと。大体、どれだけの大人が祝祭日に国旗を掲げているんですか。地域でも家庭でもそういう問題がないのに、学校だけに持ち込むから、その被害に遭うのは学校の先生であり生徒なんじゃないですか。むしろそこのところをよく考えて、やるんだったら大人ですよ、問題は。  そういうことで、国民的な議論をするならする、これはやはり原点に返って、場合によっては今あるものをどうするかということも含めて議論すべきじゃないでしょうか。どうでしょうか、総理
  58. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私は、はっきりと我々大人がしっかりしないとならぬということは申し上げました。それから同時に、子供たちに対しても基本的な教育はしなければならないということを申し上げました。どちらもやらなきゃならぬと思っております。
  59. 今井澄

    ○今井澄君 これ以上は水かけ論になりますが、今の大人の世界の道徳の荒廃はひどいものですよね。私も土、日、自宅へ帰りますけれども、グリーン車の中のグリーン料金を払って乗る大人たちのマナーの悪さですよ、これが子供を悪くしているんだと私は思うんです。そういう意味では文部省だけが頑張ったってだめなんですよ。文部省だけが頑張るから変なところにひずみが出てくるんですよ。だから、文部省ももっとゆったりと構えてやっていただきたいと思います。  さて、次の問題に移りたいと思いますが、やっぱり今の問題も戦後処理の問題にもかかわるわけですが、今恩給法あるいは戦傷病者戦没者遺族等援護法の審議が各委員会で行われている中で、いわゆる在日あるいは日本にいない人も含めて、かつて日本の軍人軍属であった外国人の国籍条項の問題が随分議論されております。私も実はずっと厚生委員会におりまして、毎年この援護法の問題で石成基さんたちの訴訟の問題取り上げてまいりました。  ところが、ことしは、野中官房長官が去る九日の衆議院の内閣委員会、それからその後の記者会見において大変前向きな発言をされたということを私はうれしく受け取っておりました。それからもう一つ、十二日の参議院の総務委員会、これ私も出ておりましたが、自民党の海老原委員からこの問題そろそろ解決すべきではないかという質疑があり、やはり官房長官は前向きな御答弁だったんです。ところが、その後十二日に衆議院の厚生委員会が開かれて、宮下厚生大臣がなかなかかたい御返事をされたといううわさを聞きまして、速記録などを取り寄せてみたんです。  厚生大臣も大変苦しい御答弁だったということはわかるわけですが、やはり基本的には、こういう日本の軍人軍属として働いた方に対して、強制的に日本国籍を奪っているわけですから、何とか対処することを内閣として、これは野中官房長官個人の心情とかあるいは援護法を守る厚生大臣の公的な立場とか、そういう個々のことではなくて、内閣全体の問題として、この国籍条項を撤廃するなり、それができないなら別途方策を講ずるなり、やるべき時期に来ていると思いますが、総理、いかにお考えでしょうか。
  60. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、委員指摘のように、この国籍条項の問題は、かねて国会でも長年取り上げられてきている問題でございます。ただ、政府といたしましては、恩給法の国籍条項は制度の基本的な約束事の一つとなっておるところでありまして、このような国籍条項を設けておりますのは制度の沿革及び性格に由来するものであり、現行法上、現に外国人であるこれらの人々を恩給制度の枠内で処理することは大変困難であり、慎重に検討すべきものであるというのが政府の公式の見解でございます。
  61. 今井澄

    ○今井澄君 それは公式な見解はわかっておりますが、その中で、官房長官、これ官房長官としては、単なる個人、政治家としての心情だけではなく、内閣として取り組みたいということを言っておられると思うんですが、その点のお取り組みはいかがはかどっておりますでしょうか。
  62. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 恩給法及び援護法等の取り扱いにつきましては、今、総理並びに宮下厚生大臣がそれぞれ委員会等でお答えになったとおりでございます。  ただ、私は、内閣委員会等におきます質問に対しまして、佐々木委員なり河合委員なり、あるいは海老原委員なりにお答えをいたしましたのは、そういう中におきまして、それぞれ過去におきまして、金さんを初めとする高裁等の判決の中から、いわゆる立法府において考えられるべき措置ではなかろうかという問題提起がされておるわけでございます。私ども、一九〇〇年代の最後を終わって新しい世紀につなげるに当たりまして、こういう問題が整理をされないままに終始するということは後世のために決していいことではないと考えますとともに、ある意味において立法府として、かつて台湾問題等の弔慰金処理等が行われた経過もあるわけでございます。  今回の場合、当然のこと、日韓条約においてそれぞれ決定された後、在韓のかつての日本軍人軍属についてはそれなりの個人措置がされておる経過等もございますし、その措置が在日の軍人軍属においてはされていないというところから問題が提起をされてきておるわけでございますので、韓国においてどのようにこれをお考えになるのか、あるいはそれが及ぼす影響等十分調査をした上で、なおこの問題については戦後処理の一つの問題として当然のこと、検討しなければならない重要な課題である旨を申し上げた次第でございます。  現在、官房副長官のもとに外政審議室等におきまして、それぞれ韓国の対応の問題及び国内においてこれを措置する場合のさまざまな波及的な問題等を含めて検討をさせておるところでございます。
  63. 今井澄

    ○今井澄君 外務大臣にお尋ねしたいんですが、日韓局長級協議というのが毎年あると思いますが、この問題で韓国側からこれを何とかしてくれという問題提起、毎年ここのところされているんではないですか。
  64. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 平成三年一月に日韓両国の外相間で、在日韓国人の法的地位及び待遇に関する覚書に署名を行って以降、右問題に関する今御指摘の日韓局長級協議を毎年実施しているわけであります。  その協議の場において、近年韓国側より、援護法の国籍条項を撤廃して在日韓国人への補償の道を開いてほしいという要望が来ているわけであります。これに対して日本側からは、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定第二条一により、日韓両国の間では、在日韓国人の援護法に係る主張を含め両国及び両国民の間の請求権の問題が完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認している旨、応答しているところでございます。  韓国側に対してはそういう応答をすると同時に、韓国側の要望については関係省庁にお伝えしているところでございます。
  65. 今井澄

    ○今井澄君 では、外務省内では検討を一切していないんですね。  それで、関係省庁に伝えているというのはどこどこですか。
  66. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 正確にどことどこということは政府委員に答えさせてもいいですが、少なくとも厚生省には伝えているということでございます。
  67. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 韓国との間の局長級会談、いろいろな事項を扱っておりますが、今の援護法等の問題は厚生省に御相談しております。
  68. 今井澄

    ○今井澄君 では、ちょっと政府委員にお尋ねしますが、韓国側は、だけれどもこの問題は先ほどの大臣の答弁のように完全解決したものとみなしていないわけですよね。あるいは、解決したというふうになっていても何とかしてほしいという要望があるんじゃないですか。
  69. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先ほど外務大臣から御説明ございましたような説明をその都度行っているわけでございますが、韓国側からは、日本のそういう現行法上、対処は難しいということには理解が示されております。他方、何とか方法がないか、講じてもらいたい、検討をお願いすると、こういうことでございます。
  70. 今井澄

    ○今井澄君 厚生省あるいは厚生大臣にお尋ねしたいんですが、昨年十月にいわゆる国連の規約人権委員会といわれる、正式な名前を言うと長いですが、市民的及び政治的権利に関する国際規約の実施を監視する規約人権委員会、こういうところに日本政府代表団が行きましていろいろ質疑があったわけですが、日本からは外務省、法務省、文部省、厚生省、労働省、警察庁と二十人ほど行っておられるようです。そこでコルビル委員という方から、昨年の九月二十九日の東京高裁判決、これは憲法違反ではないけれども何とかすべきではないかということを政府に求めているわけですが、それについて、その代表団で行った厚生省大臣官房精神保健課の杉中課長補佐という人が、この問題に対して速やかな対応を図ることが強く望まれるというコメントがされたことは承知していると。コメントがされたというのは判決でですね、この点については現在政府部内で判決内容を詳細に検討しているところであるというんですが、政府部内というのはどこで、どのような検討が進んで、現在どうなっているんでしょうか。
  71. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 昨年、ジュネーブで行われました国連の規約人権委員会の審査におきまして、御指摘のとおり、九月二十九日に東京高裁判決がありました直後でありますが、東京高裁判決の趣旨とその付言にかかわる部分につきましてコルビル委員が質問をいたしました。そして、日本代表団の厚生省の役人が政府部内で判決の内容を詳細に検討している旨の答弁をいたしておることは承知しておりますが、これは、一つは東京高裁判決が出てから間もなかったということもございますし、その係官は現段階で判決文の詳細な内容を検討している旨を答えたものというように私どもは理解しております。  なお、この点は、御指摘の付言の中で、国際人権規約では合理的な理由に基づく取り扱いの差異まで禁止するものではないと承知しておるということで、これは高等裁判所の判決の中の付言にわざわざ人権規約を引用いたしまして、合理的な理由に基づく取り扱いの差異まで禁止したものではないと承知しておるということで、人権委員会の関心課題についても判決自体の中で言及されておられます。  ただ、付言は、確かにおっしゃっているように、援護法の国籍条項を改廃して在日韓国人にも同法の適用の道を開くなどの立法措置や行政上の特別措置をとることが強く望まれると、こう書いてあります。  その点の指摘を踏まえて官房長官の御発言になったと存じますけれども、私どもとしては、いろいろの積み重ねの中で今日までこうして来ておりますし、今外務省の答弁を聞いておりましても、韓国政府としては、このことの理解はしているが何とかしてほしいという局長会談の提案であったようにお伺いしております。  私どもとしては、大変な積み重ねによって困難な状況の中で今日までの結論を得ておる国籍条項の問題でございますから、にわかに援護法を改正するということは考えておりません。
  72. 今井澄

    ○今井澄君 それぞれのところでこの問題が来ているわけですけれども、かたくなな態度をそれぞれ今まではとってきたと思うんですね。しかし、今やはり一九〇〇年代を終わるに当たって、官房長官のお言葉ではありませんが、こういった問題について何らかの手が打てないのか。まさに人道上の問題であるだけではなく、日本としての二十世紀にお別れを告げる意味での責任を果たす問題としても、これは内閣挙げて取り組んでいただきたいと思うんですが、そういう意味総理から何らかの前向きの御答弁をぜひお願いしたいと思いますが、お取り組みをお願いします。
  73. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府としての見解は先ほど申し述べたところでございますが、官房長官御自身も真情を吐露されてこの問題の重要性を御指摘されたわけでございます。  今、厚生大臣も、厚生大臣として援護法を預かる最高責任者としてそのような考え方をいたしておるわけでございますが、こうした問題について、先ほどの答弁の中で韓国側の御指摘もあるやに聞いておりますが、政府としては、従来の日韓の条約によりましてすべて決着しておるという立場ではございましょう。でありますが、今、官房長官のそのような御指摘もございました。今直ちにこのことを改変するということは率直に申し上げて難しいことだろうと思いますが、一つの問題提起として勉強させていただきたいと思います。
  74. 今井澄

    ○今井澄君 御答弁ありがとうございました。  そこで、またちょっと日本経済や何かの問題に戻りたいと思いますが、経済戦略会議が去る二月二十六日に「日本経済再生への戦略」というのを出されたわけですが、この経済戦略会議の答申と小渕内閣の経済を中心とする政策との関係はどう理解したらよろしいでしょうか、総理
  75. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 経済戦略会議は、昨年来私が内閣をお預かりいたしまして、現下の最大の課題は景気の回復というところに絞られておりますし、また将来にわたって日本経済を健全化していかなきゃならぬということで、識者の皆さんにお集まりいただきまして御諮問申し上げました。  その結果、大変立派な御答申をちょうだいいたしましたので、それを各閣僚の皆さんにも十分検討していただきまして、今直ちに実現可能なものから始まりまして、率直に申し上げますと、年金の問題等につきましての考え方は現政府が取り組んでおる問題をさらに大きく転換させるような考え方を示されておりますので、直ちにこのことを実行するということは大変困難だと思いますが、私自身、政府の責任者としてお預かりしたことですから、各閣僚の皆さんにも十分な検討をお願いしていきたいと思いますと同時に、この問題につきましては、ぜひ国会におきましてもある時期御検討をいただくように私からもお願いもいたしたいというふうな気がいたしております。  そういった意味では、この答申を私としては真摯に受けとめ、その実現のためにも努力をいたすということを戦略会議の皆さんにもお約束をいたしておりますので、現在、一つ一つ精査しながら実現に向けて努力いたすべきものについては最善を尽くしていきたいと思っております。
  76. 今井澄

    ○今井澄君 私も、この答申だけではなく、前に二つほど出ました中間報告とかそういうのを読ませていただいて、それはなかなかいいことも書いてあるし、今度も、日本的システムの至るところにほころびが出てきているから本当に抜本改革しなきゃならないと。まさに私はそうだと思うんです。  ただ、全体を読んでみますと、端的に言ってこれはアメリカモデルなんです。それは、例えば金融とか何かは有無を言わさずアメリカの言うことというか、アメリカ的ないわゆるグローバルスタンダードと言われるものに合わさざるを得ないものも確かにあるわけです。でも、何から何までアメリカが世界の標準じゃないわけですね。これに合わせていくと、非常に私は一面で心配なところがあるんです。  それで、ちょっと具体的にお聞きしたいんですが、この「はじめに」の「日本経済の現状認識」のところに、「第一に、雇用・年金の先行きに対する不安、財政赤字の急膨張など国民の将来不安の高まりが景気の無視できない抑制要因となっている。」と。  まさにそのとおりだと思うんです。これを第一に挙げてくれたことは、社会保障問題を自分のテーマとしてやってきている私にとってはまさにぴったり一致するところであるんです。ところが、その後、いろいろ書いてあるところにちょっと問題がありまして、こうした不安は手厚い社会保障システムが制度としての持続可能性を失いつつあることに起因しておりと。この認識総理も共有されるのかどうかをお聞きしたいんです。つまり、この認識は現在の日本の社会保障制度が手厚いという認識なんですけれども、総理、そう思われますか。
  77. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっと数字等にわたりますので、私の方から最初に申し上げさせていただきますが、今、総理の御答弁のありましたように、戦略会議の答申は政府の公式見解ではないというのははっきりしております。この点は留意しなければなりませんが、御指摘のように社会保障制度につきましては、制度としてサステーナビリティーを失っている、持続可能性を失っている。その前提になるのは手厚い社会保障システムだというのは委員の御指摘のとおりでございまして、私どももどちらかといいますと、今の社会保障システムは医療保険その他個々に見ますとかなり水準が高いと私は思います。  社会保障費全体の対国民所得比は欧米に比べまして低いですが、これから高齢化がもっと進みますとその比率はどんどん上がってまいります。ただし、一人当たりの給付費で見ますとまあ他国並みの水準になっておるかなということ。  それから個々に、長くなりますので簡単に申し上げますが、医療保険制度につきましては、国民皆医療でございまして、一定の自己負担で医療が受けられるということでありまして、自己負担率等を比較いたしましても、イギリスやドイツやフランスよりも高いけれども、アメリカのメディケア等の負担率よりは低くなっているというような状況でございますし、医療提供体制につきましても、制度や人口構成等の諸状況が異なりますので各国を一律に論ずることはできませんけれども、人口当たりの病床数は各国と比較して多いという事実もございますし、人口当たりの医師数、看護婦数については、各国と比較して中間的なあるいは中位的な位置にあるものと認識しております。  また、基礎年金の水準は老後生活の基礎的部分を賄うという考え方でございますが、現役世代を含めた全世帯の消費水準の伸び率等を総合勘案して決めておりまして、これは総務庁の統計局で出されております基礎的消費支出というものから比較しても、四十年満期の問題ではございますが、一人六万七千円、夫婦二人で十三万四千円程度のものは決して水準として劣後したものではない。  それから、介護サービスの供給体制につきましても、私どもはゴールドプランを鋭意やってこの円滑な施行に備えて準備をいたしておりますが、外国の例ではドイツとかオランダ、イスラエル等がやっておりますが、余り多くの国では介護保険についてはやっていないという事情がございます。  福祉水準としてかなり高いということは言えると思いますが、ただ問題は、御指摘のように、持続可能性が本当にあるのかどうかということで今私どもは検討させていただいておりまして、特に年金なんかは、やはり安心、安定できる中長期的な課題でございますし、それの制度を設計するということで鋭意今検討しておりまして、やがて法案として御提示して御審議をいただこう、こういうことになっております。
  78. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国の社会保障は、国民すべてを公的年金、医療保険でカバーするなど、制度的には欧米諸国に遜色のないものになっており、給付水準につきましては、人口が急速に高齢化しているが、欧米諸国に比べて、これまで高齢化率が低かったこと、年金制度のスタートが比較的遅かったこともあり、年金制度の成熟度が低いことなどから、社会保障給付費全体の対国民所得比は欧米諸国に比べて低い水準ではありますが、一人当たりの給付費では他国並みの水準となっているところであると認識しております。  それぞれの点につきましては、今、厚生大臣から御答弁ございまして、諸外国との比較論といいましても、北欧の制度とどう引き比べるかというような問題もございますが、今、日本としては少子高齢化という急速な世界にないようなそうしたスピードで高齢化している中で、とるべき手段としては懸命に努力した結果であると認識はいたしておりますが、戦略会議につきましては、このままで将来にわたっていくことができるかというその非常なる将来にわたっての見通しから考えまして、かなりドラスチックなことをやらなければならないのではないかという御指摘だと戦略会議の答申を読ませていただいておるわけでございます。
  79. 今井澄

    ○今井澄君 私も、今の日本の社会保障が欧米諸国に比べて著しく劣っているとか、そう言うつもりはないんですよ。だけれども問題なのは、ようやく欧米先進国に社会保障が追いついたなということだと思うんです。頑張ってやってきたわけです、介護保険だってやっと。  実は介護保険という制度は世界にはまだ少ない制度ですけれども、介護のシステムというのは欧米なんかにはあるんです。日本には全くなかったわけです。だからこういう制度をつくらなきゃならない、とにかく急いでやってきた。高度成長でたまったものをつぎ込んで一生懸命やってきたわけです。だから、ようやく数字的に見れば今、厚生大臣総理がお答えになったとおりだと思うんです。  そこで一つの問題は、アメリカと比べればいいです、だけれども私が先ほど言いましたように、アメリカモデルでいいんですかということをまずひとつ疑って、アメリカはこういう社会保障では比較の対象から外すべきだ、やっぱりそうするとヨーロッパ諸国だ。ヨーロッパ諸国と比べてどうかといいますと、年金も、例えば今国民年金六万幾らと言われますけれども、半分以上の人は四万円以下しかもらっていないわけです。厚生年金だって、今成熟した中で標準的には二十三万ぐらいもらえると言っていますけれども、特に女の人の場合には十万円以下しかもらっていない人が半分以上なんです。まだまだそういう状況です。  医療の方は、資料を配りましたけれども、国民皆保険、保険証一枚でどこでもかかれると言われるけれども、あっと気がついて見たら一番日本が自己負担比率が高いんです。現金を払わなきゃ医者にかかれないという世界になりつつあるんです。私はそこを問題にしたいと思うんです。  こういう現在の数字だけの認識で、日本は手厚い社会保障だ、だからこれはリストラしていいんだなんと思ったらこれは大間違いだと思うんです。やっと頑張って頑張って苦労してここへたどりついた途端に、この制度はこれからもうもちませんよと言われたら日本国民はどうなりますか。今まで何のために苦労して頑張ってきたんでしょう。  だから、そこに国民の不安があるんです。年金だって、やっと制度ができた途端に五年ごとの見直しでどんどん削られる。私は、政府役割というのは、安心を与えるためにはせっかく築いた制度をリストラの前にまず安定させることだと思うんです。しかも、それだけの財源的余裕は日本にはまだあるわけです。それは資料の三枚目のところの数字、これはこの前の公聴会のときに神野公述人が配られたものの中にありますが、その真ん中を見ても、租税と社会保険料の対GDP比はまだ日本は低いわけです。今これをいかにして安定させた上で、将来、新しい社会との関係で構築していくかということを考えなければならないと思います。  そこで、政府役割で、大きな政府論、小さな政府論をやろうと思ったんですが、時間が来ましたのでもうやめざるを得ませんが、一つだけ。  資料の三を見ていただいたところで、今盛んにこの経済戦略会議でも小さな政府小さな政府ということが言われておりますが、日本は今大きな政府なのか小さな政府なのか、この資料を見ていただければわかります。公務員の数は世界で一番少ないわけです。それから、租税収入も少ない方です。政府の支出も少ない方です。社会保障に関しての指標の一つと言われる租税・社会保険料の対GDP比も少ないわけです。まだ小さな政府で、やっとこれだけの社会保障や雇用を築いてきたわけです。どういう点で小さな政府にしようとしておられるんですか。総理、お尋ねしたいんです。
  80. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 小さな政府というのはしばしば我々も用語として使っておるんですが、英語で言うスモールガバメントなのか、チープガバメントなのか、いろいろ議論がございまして、一九八〇年代前後から、主として福祉とそれに伴う負担のあり方をめぐって、例えば西欧型の高福祉高負担による大きな政府との対比を中心として諸外国においてもさまざまな議論がなされてまいっております。  この点につきましては国民的議論にゆだねられるべき問題でありますが、私としては、我が国では活力ある福祉社会の建設を前提としていくべきことにつきましてはおおむねコンセンサスがあるのではないかと考えております。  一方、小さな政府といった場合に、あるいは先ほど指摘がありましたが、公務員の数とかあるいは行政のあり方とか、こういうものでありまして、一般的にスリムな政府というようなことも言われる場合があります。  こうした観点に立ちますれば、橋本内閣が取り組んでまいりました行政改革、こうしたものを実現していくということの中に、スリムな政府、効率的な政府というものを考えていかなければならない原点があろうかというふうに考えております。
  81. 今井澄

    ○今井澄君 関連質疑の方へ移らせていただきたいと思います。
  82. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。平田健二君。
  83. 平田健二

    ○平田健二君 総理にお伺いいたします。  中村前法務大臣が辞任をされました。御感想をお伺いいたしたいと思います。
  84. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 中村前法務大臣は、特に司法制度のあり方につきまして一つのお考えを持っておったように理解いたしております。こうした問題のすべてにわたりましてこれを処置することなく辞任されたということにつきましては、私自身大変残念な思いもいたしております。  一方、国会でもいろいろ御指摘をされまして、幾つかの諸点につきましての御批判もいただいてまいりました。そのためと申し上げますか、国会での法務委員会を初めといたしましての御審議等が中断いたし、そのことをもって、中村前法務大臣におかれてはこの責任をとって辞任されたということでございます。  任命権者としては大変残念でありますが、また同時に、こうした事態になりましたことにつきましては、この状態に至りましたことにつきましての責任は率直に深く承知をいたしておるつもりでございます。
  85. 平田健二

    ○平田健二君 私は、総理から直接お伺いしておりませんが、マスコミの報道等によりますと、総理は、中村前法務大臣の一連の発言を聞かれて、私としては辞任に値しないというようなことをおっしゃられたというふうに報道されておりますけれども、事実でしょうか。
  86. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 実は、この問題については衆参両院でも取り上げられておりまして、特に参議院では幾つかの諸点についてお示しをされておられました。  ただ、その問題につきましては、この総括締めくくりの段階までに、官房長官として、その一つ一つといいますか中村法務大臣のお考えも聞こうということになっておりましたので、その点につきまして、すべてではありませんが、私自身もこの質疑応答をお聞きした中で、法務大臣としての対応についての御批判もありましたし、また、中村正三郎衆議院議員としてかつて取り組まれた問題についての御指摘もあったように記憶いたしております。  そういったもろもろにつきまして、私としてはすべてこれが辞任に至る原因であるかということにつきましては十分認識をすることができなかったことではございますけれども、しかし諸般の情勢の中で、御本人自身がこの事態にかんがみまして辞任をされたいということでございましたので、私としてはそれを了承させていただいた、こういうことでございます。
  87. 平田健二

    ○平田健二君 総理、今回の法務大臣辞任の問題につきましては、野党から指摘され、国会審議がうまくいかない、だからやめさせた。今、総理のおっしゃったことであれば、私は総理は体を張ってでも中村前法務大臣の辞任を慰留すべきだったというふうに思うんですね。間違ったことをしていないわけですから、慰留するのは当然じゃないかと思うんですが、それはもう終わったことですから言いません。  憲法を尊重、擁護しなきゃならぬ、そういった義務に違反した発言をし、さらには検察庁法第十四条に違反するような、みずから直接個別事件を指揮したり、公文書を興味本位で長期間にわたって私有する、こういった方を法務大臣に任命した任命権者としての責任がある、それはしっかり問われるべきだというふうに思っております。やはり総理としての指導力、そういったものが私は問われていると思います。いかがでしょうか。
  88. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 憲法発言につきましては、ここでも質疑応答で御本人からも申し述べられておりますし、また一月五日の問題につきましては、それを撤回して、御本人としては憲法を改正するということの意思はないということで、内閣の方針に従うということでありましたので、私はそれを認めさせていただきました。  また、検察庁法十四条につきましては、今、平田委員指摘でございますが、私は直接そのことについて指揮をしたとかということ、指揮をするということであれば、当然十四条に従ってある事案について法務大臣としての権限を行使するということだろうと思いますが、そうしたことはなかったというふうにこれを理解しておりまして、そういった点で、中村前法務大臣の本院における答弁はその真実をお話ししておると、そういうふうに理解したわけでございます。
  89. 平田健二

    ○平田健二君 やっぱりこういった問題な発言をする人物を任命したという総理の責任は問われるべきだと私は思っております。  次に移ります。  厚生省にお伺いいたします。  第三十三回目の年金審議会が開催されました。厚生省はどういう基準でこの年金審議会の委員の選出をされておるんでしょうか。教えていただきたいと思います。
  90. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) お答え申し上げます。  年金問題というのは非常に幅広いわけでございます。そういうことで、この年金審議会につきましては社会保障制度全般、あるいは人口問題、経済、財政、労働問題、企業経営、共済制度、女性問題、こういったさまざまな分野の専門家を委員にお願いしておるわけでございます。それからまた経営者団体、労働組合、そういった方々から選ばれている委員もございます。
  91. 平田健二

    ○平田健二君 三月の十二日、そして昨日と年金審議会が開催をされ、答申が出されたわけですけれども、十二日と十五日、開催通知はいつごろ出されましたか。
  92. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) この年金審議会の委員先生方というのは皆さん非常に忙しいわけでございます。そういうことで私どもはかなり幅をとって、その間に時間があいているかどうかというのを確認いたしまして、そういう中で調整をしながら日にちを決定するということでございまして、実際に招集の通知を差し上げましたのは、いずれも二、三日前じゃなかったかと思います。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  93. 平田健二

    ○平田健二君 日にちをはっきり言ってください。
  94. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) ちょっと手元に資料がなくて申しわけありませんけれども、後刻調べまして御案内いたしたいと思います。
  95. 平田健二

    ○平田健二君 労働側委員といいますか、連合推薦の委員から、委員会開催の日程について延期の申し入れはございませんでしたでしょうか。
  96. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これは今、春闘で非常に忙しいということで、できたら延ばしてほしい、そういう要請はございました。  ただ、このほかの委員の方々にも非常にお忙しい中で何とか日程を調整していただきましたので、もうそれしかないということで、ぜひ御出席をということでお願いいたしまして、連合推薦の委員は三名いらっしゃったわけですけれども、二名の方につきましてはちゃんと御出席いただいたということでございます。
  97. 平田健二

    ○平田健二君 今回の年金審議会は、主な議題といいますか、主要な課題は何だったんでしょうか。
  98. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) ことしは五年に一度の財政再計算の年でございます。したがいまして、年金制度改正案の要綱につきまして諮問をしたいということでお集まりいただいたわけでございます。
  99. 平田健二

    ○平田健二君 主要な課題は。
  100. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) これは今申し上げましたように、年金制度改正案の要綱でございます。
  101. 平田健二

    ○平田健二君 厚生年金の改正も議論されましたか。
  102. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今回の改正は非常に広範多岐にわたっておりまして、国民年金、厚生年金、それから厚生年金基金制度、さらに年金積立金の運用問題、こういったあらゆる問題について改正をするということで諮問をいたしたわけでございます。
  103. 平田健二

    ○平田健二君 十二日の金曜日に会議を開き、そして二日置いて月曜日に答申を出した。十二日の金曜日の夜に初めて会合を開いて、十五日の月曜日にもう結論を出して答申を厚生大臣にした、こういうことですね。間違いないですね。
  104. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 十二日に諮問をいたしまして、十五日に答申を受けたというのはおっしゃるとおりでございます。  ただ、この年金制度改正につきましては、実は一昨年の五月から約二年近く御審議をお願いしたわけでございまして、延べ三十一回にわたりまして審議が行われたわけでございます。そういう慎重な審議を経て、昨年の十月に意見書をいただきました。その意見書をもとに私どもは改正案をつくりまして、それをまた御説明をしたと。そういうことで、二回の審議で結論を出したというよりも、二年近くにわたる三十四回の審議を経て、今回、十五日に答申をいただいたということでございます。  それから、先ほどのいつ開催通知を出したかという問題でございますけれども、十二日につきましては十日の夕方、十五日につきましては十二日の夜に速達で御案内をしております。
  105. 平田健二

    ○平田健二君 もう既に御承知のように、厚生年金は勤労者の方が掛けるんですね。その勤労者を代表するといいますか、労働者を代表する連合推薦の三人の委員が、先ほどお答えになりましたが、ちょうど今賃上げの時期でして、忙しい時期だから日程を延期してほしいという申し入れをしておりましたね。にもかかわらず、十二日、十五日で、あなたは二年間やってきたとおっしゃいましたけれども、最終答申を出す一番重要な会議じゃないですか。一番重要な会議のところで、詰めのところで出席できないと言っておるのに、無理をして委員会を開くなんて、こんな非民主的な運営がありますか。いかがですか。
  106. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 先ほどから申し上げておりますように、非常に忙しい方ばかりでございます。そういう中で何とかやりくりをして出席をしていただいたわけでございます。連合推薦の三名の方も、十二日、十五日、いずれも厳しい日程ではございましたけれども、三名のうちお二人は参加いただきまして、内容につきましても十分意見を述べられましたし、そういう意見は答申の中にも少数意見ではありますけれども盛り込まれておるわけでございます。
  107. 平田健二

    ○平田健二君 いや、違いますよ。連合から、諮問の答申の内容は確かに別な考え方もありますけれども、委員会の開催の仕方が問題だということできのう抗議行動を受けていませんか。いかがですか。
  108. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 連合からはいろいろ抗議行動は受けております。  これは、昨年の十月までに三十一回審議して意見書をいただいたわけですけれども、そのときもそういう抗議行動がございまして、そのときも意見を述べられ、この意見書は到底認められないということで退席をされたわけでございます。  今回も同じような展開をたどりまして、意見は十分言っていただきましたけれども、その意見は、年金審議会としての答申の内容については承知しかねる、こういうことで退席されて抗議行動を展開された、こういうことでございます。
  109. 平田健二

    ○平田健二君 組織の代表者というのは、確かに公益の先生方それから使側の代表者の方と違いまして、やはり組織で検討しなければいかぬわけです。最終答申が決められようとするときに、金曜日の夜に会議をして、組織の中で議論をするまでもなくもう月曜日にはその答申案を出さなければいかぬと。なぜそんなに急がなければいかぬのですか、どうしてそんなに急いでやらなきゃいけないんですか、お聞かせください。
  110. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 年金制度の今回の改正案というのは、例年と違いまして予算非関連としてその改正案を国会に提出する、こういうことになったわけでございます。予算非関連法案の提出期限といいますのは三月九日でございます。もうその日を既に過ぎているわけでございます。  そういうことで、私どもとしましては、もう二年近くの議論をしてきたわけでございますし、ここで制度改正の全体像をお示しする、それで一刻も早く国会に法案を提出する、こういうことが年金制度について不安とか不信とかいろいろ言われておる中で、そういう年金の長期的な姿をお示しするということがそういう不安、不信を解消することにもつながる、一刻も早く法案を国会に提出するというのが年金を預かる厚生省の役目だ、こういう認識をいたしまして、審議をお願いしたということでございます。  一日、二日であたふたと強行した、こういうことではございませんで、二年にわたる慎重な審議の結果、今回の法律の改正案の中身が固まってきたということでございます。
  111. 平田健二

    ○平田健二君 ちょっと別な角度からお尋ねします。  昨年の九月十六日に、総務庁は行政監察の結果として、パート労働者の年金加入問題を指摘しています。パートタイマーに係る被保険者の適用対象の範囲を明確にし法令で規定することと、厚生省に改善命令を出しておりますが、その内容を報告してください。
  112. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 昨年の九月十八日に年金に関する行政監察の結果に基づく勧告ということで、二点御指摘を受けております。一つは、都道府県に対しまして適用漏れ被保険者が多いと見込まれる事業所を重点的に調査するように指導すること。それから二点目は、パートタイマーに係る被保険者の適用対象範囲を明確にし、法令で規定することでございます。
  113. 平田健二

    ○平田健二君 総務庁は、この監察に対して基本的に六カ月で回答しなさいと、これは間違いないですか。改善命令を出して六カ月以内に回答しなさい、こういうことですね。
  114. 東田親司

    政府委員(東田親司君) 勧告に対する回答につきましては、二回にわたっていただくことにしておりますが、期限につきましては私どもの内規で一定の期限を付しております。  先生がおっしゃる六カ月というのは二回目の回答のとき、それを原則としておりますけれども、一回目につきましては三カ月を原則としているところでございます。
  115. 平田健二

    ○平田健二君 九月十六日にパート労働者の問題について指摘をされました。回答指定日はきょうなんですよ。どういう回答になっていますか。
  116. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 御指摘の点につきましては、まず第一点目の適用漏れ被保険者について重点的に調査するように指導するということにつきましては、私どもとしても、事業主に対する指導の強化、周知徹底を図るということと、いわゆる短時間労働者の多いと見込まれる事業所に対しまして重点的に選定して、事業所調査等を効果的に行うというふうに考えております。  それから、二点目のパートタイマーに係る被保険者の適用範囲の取り扱いにつきまして法令化するという点につきましては、パートタイマーというのは非常に就業形態が多様でございますので、パート労働の実態や基準の必要性についてなお調査検討することが必要ということで今後の検討課題としていくということでございます。
  117. 平田健二

    ○平田健二君 厚生省、三月末に回答しなきゃならぬわけでしょう。それで急いだわけですよ。  先ほど二年間検討してきた、十二日と十五日の二日間でやったわけじゃないと。そんなに急ぐのならば、総務庁から指摘をされた改善命令はやっていないじゃないですか。ちぐはぐじゃないですか、行政が。急がなきゃいかぬことはほうっておいて。これはどういうことですか。ちゃんと説明してください。
  118. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほど来、年金審議会の問題につきまして御指摘がございますが、私ども、基本的には、今、局長の答弁しましたように、年金財政再計算期に当たりますので、一昨年の五月から鋭意検討を続けて、審議会としては三十一回やりまして、そのほかきのうまで合わせて三十四回やっているんですね。その間、いわゆる労働者側委員と言われる方々も審議に参加されておられまして、そして昨年の十月九日には意見答申が出ました。このときもやはり意見の一致を見ませんで、いろいろな意見がございまして、退席をされたようにお伺いをしております。しかし、問題の議論はずっとトレースしてなされてきているものだと承知しております。  私どもは、先ほど局長の言いましたように、この法案審議の関係からして三月中にはぜひこれは法案として提出したいということで鋭意努力してまいりまして、そして法案要綱がまとめられたわけでございまして、それを委員先生方に諮問いたしたいがいかがかということで御了解を得てやったものでございます。  したがって、最終場面で委員が退席をされました。しかし、その意見は十分述べられておりますので、この答申にはいろいろな点で付記されております。  いわゆる労働者側委員の反対というのは、私どもも承知しておりますが、給付水準の調整はいかぬとか、比例部分の引き下げはだめだとか、あるいは保険料の凍結解除は慎重にやるべきであるとか、基礎年金の税方式への転換について意見が述べられているとか、いろいろ付記すべき意見をまとめておりますので、私どもとしては、春闘でお忙しい中でお願いしたわけでありますけれども、審議の過程では十分意見が反映されたものだと思います。  そしてまた、この種の審議会は、そこで決定するものでもございません、意見の一致を見ることが望ましいわけでありますけれども、意見の一致を見ない場合は少数意見として付記する、あるいは両論併記する、いろいろなタイプがありますが、これは諮問に対しての答申をいただく審議会でございますから、最後まで両論があっても、審議会の運営でございますし、委員の意見でございますから私どもはこれに反対はできませんけれども、そういう決定の場でないだけに、願わくば十分な審議を尽くされてその意見が反映されるということが極めて重要なことだと考えておりますので、まずその点を申し上げておきます。  それから、パートの問題につきましては、確かに九月十八日に行政監察の結果に基づく勧告として指摘がございます。都道府県に対しましては、適用漏れ被保険者が多いということがございますので、これは直ちに連絡をとります。とっていないならばとらせます。  そしてまた同時に、パートタイマーに係る被保険者の適用対象範囲を明確にして法令で規定するということの指摘もございます。これは委員御承知のとおりでございますが、ちょっと申し上げておきますと、一日または一週の所定労働時間及び一月の所定労働日数が、当該事業所において同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね四分の三以上であることということが、これは法定ではございませんで、事実上の指導によって行われております。この点が、やはり訓令なり規則なり政令なりのレベルであるいは決めるべきことかなと私も思いますので、これは至急検討させていただきますが、年金審議会でもこの問題は提起されております。  しかし、技術的な問題等もございますので、なかなか直ちに結論が得られないということで、年金審議会の方でも扱っておられますので、私どもとしても、パートタイマーの問題はいろいろ関連することが多いですから慎重に検討して、早期に行政監察の指摘の方向で解決いたしたい、こう思っておるところでございます。
  119. 平田健二

    ○平田健二君 私は、内容の問題はともかくとしまして、審議会の運営のあり方について指摘をしたわけでございまして、ぜひ民主的な運営をしてほしいなと。こういうやり方でやるのならば、国会に法案が出されても私ども審議できない。  総務庁長官、総務庁の行政監察で改善命令を出したのを守らない。今度の年金審議会は、大臣が三月じゅうに国会に提出すると、一言で十二、十五日と二日間で答申案をまとめたわけです。回答は要りません。  いずれにしても、こういう審議会は時間をゆっくりとってやはり国民全体の意見を聞いて答申をつくるというふうにぜひしていただきたいと思います。  次に移ります。  次に、中小企業の社会保険の脱退問題、先日来報道されております。経営難を理由に、特に中小企業の社会保険脱退の動きが広まっておるように報道されております。  三月十一日に、連合から社会保険庁に対して中小企業の社会保険からの脱退に関する申し出があったと思いますが、内容を御説明いただきたいと思います。
  120. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 今、先生がおっしゃいましたように、三月十一日に日本労働組合総連合会から社会保険庁長官に対しまして要請がございました。  一つは、厚生年金保険、政府管掌健康保険、それから脱退した強制適用事業所については早急に再加入させるということ。それから二点目には、保険料納付が特に困難な事業主については支払い猶予措置を講じること。三点目は、経営難の中小企業が社会保険料を延滞した場合、この目的に特定した融資制度を創設すること。それから四点目には、強制適用事業主の違法行為に対し調査や罰則を厳格に適用すること。それから、延滞金を徴収しない場合として納付義務者の経営難を追加することなどが指摘されております。
  121. 平田健二

    ○平田健二君 社会保険庁としては、そうした社会保険から脱退するという実態をどのように把握されておりますか。
  122. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 昨今の非常に経済的な不況といいますか、そういった中で、非常に経営の悪化を余儀なくされる事業所が増加していることは御承知のとおりであります。しかし、社会保険制度といたしましては、事業を継続していただく以上、保険料は必ず納付していただくということをお願いしているところであります。このため、各都道府県に対しましても、従来から事業主に対して適正な届け出の励行について指導しているところでありまして、担当職員においても事業主に適切な指導をするように指導しております。  しかしながら、一部で今社会保険脱退問題という形で偽装休業などによる喪失届が提出されているという問題があるとすれば非常に問題でありますので、私どもとしては、平成十一年二月の全国課長会議におきまして、さらに適切な指導の徹底を指示してきたところでございます。
  123. 平田健二

    ○平田健二君 具体的な実態、把握していますでしょう。特異な例はございませんか。
  124. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 最近におきます具体的な事例としましては、一つは福島県のタクシー業者でございますけれども、休業を理由にいわゆる全喪届といいますか、従業員全員の喪失届が出された例がございます。  これは社会保険事務所の方で調査いたしまして、実態として事業が継続されているということでありますので、再度加入の手続をお願いして、現在は再度加入されておるというところでございます。
  125. 平田健二

    ○平田健二君 私どもの調査では、栃木、社会保険を脱退させられた、社会保険事務所が経営不振を理由に脱退を受け付けている。社会保険事務所が受け付けておるんです。秋田、従業員十三名、縫製業、経営不振を理由に健保を国保に、厚生年金を国民年金に切りかえさせられた。社会保険事務所は届け出を受理し、会社は廃業とのことで調査を行わなかった。  実は社会保険事務所の職員がこういったことを指導しておるんじゃないかと言われておるんですけれども、いかがでしょうか。
  126. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 先ほど申し上げましたように、私どもとしては、基本的には事業を継続している以上、保険料を必ず納付していただくということで事業主に適正な届け出の励行をお願いしているところでありますし、担当職員においても事業主に対して適切な指導をしておるものと承知しております。
  127. 平田健二

    ○平田健二君 社会保険は、従業員五人以上の事業所は強制的に加入しなきゃならぬということじゃないんでしょうか、いかがでしょうか。
  128. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 御指摘のとおり、強制加入でございます。
  129. 平田健二

    ○平田健二君 今言いましたように、NHKの報道にもありました。そして、私たちが連合の組合を通じて調査していただきました結果、社会保険事務所も認めて脱退をさせておる、こういう事例がたくさんあるわけです。  どのような対策を講じておるのですか。単に脱退させるだけですか。経営不振だからもう脱退しますとなって、それで済むんでしょうか。いかがですか。
  130. 宮島彰

    政府委員(宮島彰君) 納付期限を過ぎまして保険料が納められないという事業主に対しましては、基本的には督促状を発行いたしまして、督促状の指定期限を過ぎてもなお納付がないという事業主に対しては、延滞金の付加あるいはいわゆる滞納処分というものを実施いたします。  しかし、実態的にはいきなり滞納処分というものを行う前に、事業主との面談等、未納の原因なりあるいは保険料の納付方法等について具体的に個別ケースごとに相談、指導に十分時間をかけまして、各事業所の経営状況など考慮いたしまして、例えば滞納分の保険料の分納など保険料納付計画を作成するなり、あるいは当該計画の履行を指導するといった形で、各個別ごとにきめ細かな指導を行っているということでございます。
  131. 平田健二

    ○平田健二君 連合からの申し入れがあったそうですが、やはりこのような経済状況の中で、特に中小零細企業の方々は社会保険料を納めるのも大変だという実態なんですね。ですから、社会保険料を払うという使途を限定した融資制度、先ほどちょっと連合の提案がございましたね。こういったものは考えておられませんか。いかがですか。
  132. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほどの社会保険庁の全喪届の扱いの問題でございますが、私もそういうことは承知しておりますし、またNHKのテレビ等でもそういうことが言われております。やはり企業が存続する以上、きちっと納めていただくということが、これは制度を維持する上でも大変重要なことでありますし、それがほかの事業者あるいは勤労者の方々に御迷惑になるということもございますので、厳格にやっていかなければならないと思います。  ただ、これはどうしてそういうふうに連合の方からあるかといいますと、企業であれば、企業が払うときに半分ずつ持ちますから負担が割かし軽いんですね。ところが、それが厚生年金から国民年金に移りますと、夫婦二人でそれぞれが別個に取られますから、定額でいただきますから、それで負担感が非常に高まって、すぐそれが知らされるという傾向もあるようでございます。これは自動的にそのようになるようです。ですから、そういうチェック機能もありますので、企業が存続している以上はきちっとやっていくべきものだということをちょっと最初に申し上げさせていただきます。  ところで、連合の提案の融資制度でございますが、融資の原資を一体何に求めるかとか、あるいは保険料の納付が困難な事業主が融資を受けて一体その融資の返済ができるかどうかというような、そして担保をどうするかというような問題等もございますので、私どもは、やはり納付をしていただく、そしてそれには今、次長の言ったように、指導計画のもとでいろいろ分割納付その他もございますから、そういった手順によって必ず納めていただくという前提を崩すわけにはまいらぬと思っております。
  133. 平田健二

    ○平田健二君 勤労者にとっては年金受給権が確保されないわけですね。それから、年金が確保されないということは老後の設計ができないということですね。これは大変な事態でして、こういった方々は特に中小零細の方ですから、もう少ししっかり、社会保険庁も違法行為を増長するような、助けるような職員がおるなんということを指摘されておるわけですから、きっちりそういったことをした職員を罰するとか、そういったきちっとした制度といいますか、責任者を処罰する、連合から申し入れられていますね、ぜひやってほしいと思いますが、いかがでしょうか。  融資制度がなかなか難しい、これを見ると全部難しいじゃないですか。結局、社会保険は払えないということじゃないですか。老後の生活設計ができないのをそのまま見過ごしておるということじゃないですか。もっとしっかりやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  134. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員会でも御指摘がございまして、収納率を上げるためにそういうことをやっているんじゃないかという指摘もありました。しかし、そういうことはないということは私も確認はしておりますけれども、具体的なケースで今のようなことが行われるということは極めて適切なことではございません。そういうことのないようにしかるべき指導をすると同時に、なおかつそれでも何らかの誘因によって行うようなことがあれば、これは一応処分といいますか、そういった面で是正を図っていくということは当然なことでございますから、それはしなければならないと思います。
  135. 平田健二

    ○平田健二君 次に、介護休業中の社会保険料の免除についてお伺いをいたします。  育児休業を取得した際には社会保険料はどのようになるんでしょうか。
  136. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) お答え申し上げます。  育児休業期間中の保険料につきましては、平成七年四月からでございますけれども、本人の保険料を免除いたしております。そして今度、年金制度改正案を検討中でございますけれども、育児休業をとりやすくする、このために事業主負担分につきましても免除をしよう、そういう方向で今検討を進めております。
  137. 平田健二

    ○平田健二君 介護休業制度がことしの四月からスタートするんですけれども、介護休業を取得した労働者には社会保険料はどうなりますか。
  138. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 介護休業制度というのはことしの四月から施行されるわけでございますけれども、年金、医療保険の適用に関しましては、その保険料は免除されない取り扱いでございます。
  139. 平田健二

    ○平田健二君 育児休業も介護休業も家族的な責任を果たすという意味では同じですね。育児休業では社会保険料は免除になる、介護休業を取得した場合には社会保険料は免除にならない。制度としてちょっといかがなものでしょうか。
  140. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 年金制度といいますのは、次の世代が育つということによって初めてこの制度が成り立つわけでございます。したがって、子供を生み育てていただけるような方々については年金制度としても応分の支援をしよう、こういうことでございます。  一方、介護につきましては、これも大変なことでございますけれども、年金制度という観点から見ますと、年金制度にとりましては育児休業とは趣旨が違う、年金制度に直接影響を与えるようなものではない、こういうことから、介護につきましては保険料を免除するという取り扱いにはしていないということでございます。
  141. 平田健二

    ○平田健二君 ちょっと説明を受けても合理性がないんです。同じ育児と介護。どうですか。育児はずっと育てたら将来税金がもらえるから社会保険料を免除しよう、余り言うといかぬですが、介護はもう先が見えているからやめておこう、こういうことですか。それはあなた、両方とも家庭の中で同じじゃないですか。いかがですか。
  142. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 要は、育児と介護では年金制度との関係でおのずから性格が異なるということでございます。  そしてまた、介護につきまして保険料免除に対して慎重だというのは、一つは保険料が今回凍結になったわけです。予定したお金が入ってこない、そういう中で免除をどんどん拡大するということは、結局残ったほかの方がその分余計に負担せざるを得ない、こういうことになるわけでございまして、年金制度の中で介護の保険料を免除するというのはそういう実際面から見てもいろいろ問題がございます。  それから、理屈の上から考えましても育児休業とはおのずから性格が異なるんじゃないかということで、介護休業中については今回の年金制度改正案の中でも保険料は免除をしない、こういう取り扱いにしているところでございます。
  143. 平田健二

    ○平田健二君 労働大臣、育児休業は賃金二五%、賃金といいますか雇用保険から負担をしますね。介護も二五%負担しますね。育児は二五%負担して社会保険料は免除、介護は二五%負担して社会保険料は免除じゃない。雇用保険を使って二五%保障した賃金が介護保険の人には社会保険料に使われちゃうんですよ、収入がないわけですから。雇用保険の趣旨からするとちょっとそぐわないと思うんですけれども、いかがですか、労働大臣という立場から。
  144. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 育児休業給付も介護休業給付も、それぞれ育児並びに介護をしている間のささやかな生活保障といいますか、給与の四分の一を保険給付しているわけであります。その中から社会保険料の労働者負担分一三・一%が損なわれるということは、これは生活の面からいけば多大な不安になると思います。私の立場からしますと、制度間のイコールフッティングという関係から、ぜひ介護においても同様な措置をしてもらいたいということで協議をいたしておりまして、これからも要請をさせていただきたいと思います。
  145. 平田健二

    ○平田健二君 もう一つあるんです。育児休業中の介護保険料は免除なんです。介護休業中は介護保険料は免除じゃないんです。そうですよね、間違いございませんか。
  146. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 十二年四月から介護保険料がスタートいたしますが、今御指摘のとおりこれは一緒に免除になります、一般保険料、介護保険料ともに育児休業の場合。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕
  147. 平田健二

    ○平田健二君 介護は。
  148. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 介護はなりません。
  149. 平田健二

    ○平田健二君 そのことを聞いておるんです。どうして育児と介護をそう分けなきゃいかぬのですか。やっぱり先ほどのことですか。
  150. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは制度の違いがございまして、先ほど年金局長の方から将来の保険者になる点があるから考慮する、これも一理あると思いますけれども、介護保険の方は三カ月を限度として連続していなければならないという条件があります。一方、育児の方は一年間ということでございまして、おのずから制度の違いがあります。  なお、さらにつけ加えるならば、私どもは介護保険というのは社会の責任で保険システムでやろうということを本旨としておりますから、本当であれば家族介護は、それは付加的なものとしてもちろんございますけれども、それなしでも保険システムで介護はできるという前提に立っておりますので、そこは制度上の違いがあると思います。扶養介護の方はそういった問題が独立してございません。これは少子化対策その他で十分また違う政策的な目的があるからであります。
  151. 平田健二

    ○平田健二君 そう言わないで、育児も介護も免除するというふうにぜひ努力していただきたいと思います。  次に、雇用保険料の問題ですけれども、雇用保険が五年連続赤字だということで、報道によりますと雇用保険料率を引き上げる検討を労働省がやっておる、こういう報道がされておりますけれども、事実でしょうか。
  152. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 新聞報道にはいろいろと書いてございますけれども、きょう時点で私が指示をしたこともありませんし、事務方がきょうの時点で検討を始めているということもございません。
  153. 平田健二

    ○平田健二君 きょうの時点ですか。もう五年も続けて赤字だから、きょうの時点は保険料率を上げるということは検討していないけれども、あしたになればまた変わりませんか。先ほど一週間したら変わりましたね。変わりませんか。
  154. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 確かに、各先生方から御指摘がされているように今の保険会計が非常にタイトになってきております。このところ毎年積立金の取り崩しが続いております。平成十一年度予算案におきましても約九千八百億、一兆弱取り崩しが予定をされております。そうしますと、その時点で三兆円がさらに二兆円になるということでありますから、こういう状況が引き続き続くようであれば、抜本的な手だてを講じない限り保険制度がもたないということは事実であります。  ただ、いずれにいたしましても、急激にこういう状況に至りましたのは、まさに失業率が拡大をして雇用保険給付者がふえたということでありまして、景気の動向がどうなってくるかが一番大きいかぎになると思いますし、いろいろ御相談をする時期が来ましたら各方面に御相談をさせていただきたいと思います。
  155. 平田健二

    ○平田健二君 雇用保険財政が五年連続赤字、これは国庫負担率の問題です。制度発足時は失業保険と言われておったわけですけれども、昭和二十二年、三三%、三分の一でしたね。雇用保険という制度に変わったのが昭和五十年で、これが本則で二五%。それ以降徐々に下がってきまして、現在一四%。この一四%というのは財革法で一四%にしたわけですから、財革法を凍結したわけですから、やはりこれだけ赤字が続くのなら国庫負担を本則の二五%に戻すことを検討されたらいかがですか。
  156. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 収支に関するいろんなことを検討しなければならないと思っております。収支状況がどうなるか、あるいは国家財政の状況、それから景気の動向、いろいろ勘案をしながら、そのとき各分野について考えてみたいというふうに思っております。
  157. 平田健二

    ○平田健二君 ぜひひとつ国庫負担率も本則に戻すように努力をしていただきたいと思います。  労働大臣、もう一つお尋ねしたいんですが、雇用保険を掛けて失業する方はいいんですが、実は雇用保険の枠外の人、自家営業の人、それから家族従業者のような方、いわゆる雇用保険の対象外の人たちですね、この方たちの失業も今徐々にふえておると思うんですけれども、この方たちの対策というのはどういうふうになっているんでしょうか。
  158. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇用活性化総合プランの中でいろいろと対策は講じております。ただし、雇用保険での対応というのは、先生指摘のとおり、保険にかかわっている人たちの拠出によって構成をされていますから、その保険制度に加わっていない人についてはもちろん対象外であります。対象外の人に対していわゆる就職促進手当というのも、御承知だと思いますが、ございます。  ただ、ここはこの制度設計をしましたときに、景気の変動、つまり好景気、不景気によって影響が出る失業者でない、例えば国策によって失業を余儀なくされちゃった人とか、あるいは景気の変動がどうあれ、厳しい事情によってもともと仕事につけない、そういう人たちを対象とした制度設計になっておりますので、景気変動を受けて失業をした雇用保険対象者以外の方については、これは対応をされておりません。  ただ、中高年齢者の雇用に関しての、中高年齢者を対象としたプロジェクトというものを活性化プランで組みまして、これは中心的には非自発的失業者が中心で、それに自発的も加えますが、さらに保険制度で救われない人たちについても若干手を伸ばして検討しようということはやっておりますが、全般的、網羅的に網を張るようなシステムは正直言ってございません。
  159. 平田健二

    ○平田健二君 最後に、労働大臣、今の雇用保険の枠外の人たちが今大変な状況になっているということをぜひ御認識いただいて、対応を早急に考えていただきたい。連合に参加している組合員のことだけではなくて、組合をつくっていない人たちのためにもぜひひとつ配慮してほしいと要望して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  160. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で今井澄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  161. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、山下栄一君の質疑を行います。山下栄一君。
  162. 山下栄一

    ○山下栄一君 公明党の山下でございます。  私は、まず最初に行政経費のむだ遣い、国民に負担を求める前に国民が払われた税金がむだに使われておらないか、こういう観点から行政に取り組むということがいつも求められるべきでありますけれども、特に現状況下にあって各省庁は求められているというふうに思います。その観点から具体的に質問させていただきたいというふうに思います。  特に大蔵大臣には質問通告しておりませんけれども、一応決算にもかかわることでございますのでぜひお聞き願いまして、場合によってはちょっと質問させていただくかもわかりませんので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  古い話ではございますけれども、運輸大臣科学技術庁長官にまずお伺いしたいというふうに思います。二十年前の話でございます。  昭和五十二年、宇宙開発事業団、昭和五十四年、運輸省の特に海上保安庁それから那覇航空交通管制部、これが会計検査院に税金のむだ遣いの観点から指摘を受けております。これは電気代の払い過ぎということでございます。  ちょっと古い話ではございますけれども、この指摘を受けているということについて、両大臣、御存じでしょうか。
  163. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 昭和五十四年の決算で会計検査院から、今御指摘いただいた海上保安庁及び航空局、契約電力が電力の使用実績に比べ著しく過大となったことにより電気料金が不経済になっていたという指摘を受けました。  現実、昭和五十二年度が千七百キロワットの契約をいたしました。実際は千三百キロワットでよかったと。五十二年が四百万円の過払い、五十三年が四百万、五十四年が三百万、それから航空局においては、三百万、二百万、五百万という御指摘をいただき、五十五年に改善をいたしたところでございます。
  164. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 昭和五十二年度決算検査報告で宇宙開発事業団における電気需給契約の契約電力の決定が不適切であったとの指摘を受け、同事業団においては本指摘を踏まえた見直しを行い、適正な執行に努めてきたものと承知いたしております。また、科学技術庁としては、所管の研究開発機関に対し再発防止を注意勧告してきております。
  165. 山下栄一

    ○山下栄一君 運輸大臣科学技術庁長官に再度お尋ねいたしますが、指摘を受けた部局は改善するということは、これはすぐされると思うんですね。それに対して、この指摘を受けて以降それぞれの庁内、これは所管のさまざまな附属機関それから地方部局それから特殊法人等の所管の法人、そういうところまで含めて、一つの問題を指摘を受けたことについてきちっと、こういうことが二度とあってはならないという観点からの再発防止の取り組みを普通されるものなんでしょうか。  これはほかの大臣のところも同じだと思うんですけれども、特に指摘を受けました運輸大臣科学技術庁長官に再度お尋ねをしたい。指摘を受けてから再発防止のためにどのようなことをされてきたか。
  166. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御指摘いただいた件を基本的には経理、今では会計課という組織でありますけれども、会計課がしっかり各組織におろしてチェックをしていく、徹底をしていく、これがルールであろうと思っております。  ただ、五十四年当時でございますので、どこまで全部やり得たかということについては私は承知いたしておりません。
  167. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほど申し上げましたように、五十二年度以後、所管の研究開発機関に対して再発防止を注意勧告し、会計上さまざまチェックをいたしました。残念ながら、平成九年度決算検査報告において放射線医学総合研究所における電気需給契約について、夏季割引制度がそこで変わったのですが、その制度を導入することにより電気料金の節減を図るべきという指摘がありました。今申しましたように、この年に割引の仕方が変わりました。  この件につきましては、平成九年度に改定された東京電力の同制度の変更について、その契約変更を十分この研究所が認識いたしておりませんで、その点、残念ながら多少余計に電気料を払うということが起こりました。この年、たまたま新しい加速器が動き出しまして、その加速器の電気料が幾らかかるかというふうなことについて経験がなかったことによると聞いております。  しかし、それにしてもこういう指摘を受けたということは大変残念なことでありまして、反省をいたしております。そして、放射線医学総合研究所においては、本件指摘を踏まえ、平成十年度より夏季割引制度を導入いたしました。  科学技術庁といたしましては、予算の合理的かつ効率的な執行の観点から、所管の各研究機関に対し、さらに一層この点を注意すべく適切な指導監督に努めているところでございます。
  168. 山下栄一

    ○山下栄一君 科学技術庁長官平成九年度の検査院の指摘事項の話にまで触れられました。運輸大臣はそこまで触れられておりませんけれども。  平成九年度の会計検査院の報告というのは一番新しい報告でございます。数カ月前、去年の十二月に総理大臣に検査院長から報告があり、この一月に国会に提出されている。その中に同じ指摘が運輸省と科学技術庁にされている。  このことについて会計検査院から御報告をお願いします。
  169. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) お答えいたします。  私ども会計検査院といたしましては、電気料金などの各種の公共料金につきましては、経済性の観点から使用実態に見合った経済的なものになっているかどうか、また各種の割引制度を活用した経済的なものとなっているか、こういった点に着眼して検査をしているところでございます。  先ほど委員がおっしゃいました平成九年度の検査報告に掲記しております事項でございますけれども、まず科学技術庁の事態につきましては、放射線医学総合研究所の重粒子線装置などの設備につきまして、その定期保守点検作業を夏季に行っているわけでございますけれども、その使用電力が契約電力の三〇%以上低減するというような場合には電気料金の割引を受けられる割引制度があるにもかかわらず、この適用を受けていないために電気料金が不経済になったものでございます。  次に、運輸省の事態につきましては、海上保安庁あるいは気象庁などの九官署におきまして、レーダー装置あるいはコンピューター、こういったものを二十四時間運用しておりまして、夜間の電力の占める割合が多くなっておりますのに、時間帯別の電力の適用を受けておらず、電気料金が不経済となっていたものでございます。  なお、これらの指摘事項につきましては、本院の指摘に基づきまして、当局において改善の処置がとられております。
  170. 山下栄一

    ○山下栄一君 今、淡々と検査院長は報告されたんですけれども、この電気代の払い過ぎの問題は、非常に細かい話ですけれども、これは大変私は深刻な問題であるというふうに思っております。平成九年度、会計検査院が電気需給契約における改善問題を指摘したということは、過去に少しさかのぼりますと、これは内閣は一体何をしていたんだ、そういう問題にかかわる話だと、場合によっては国会軽視にかかわる話だというふうな認識は検査院にはございませんか。
  171. 疋田周朗

    会計検査院長(疋田周朗君) 会計検査院といたしましては、過去の検査結果あるいは当局の対応状況、さらには契約種別、料金体系の変化、こういったものを勘案しながら、同じ契約に関する指摘ではございますけれども、指摘の態様が異なっていることも多いということを御理解いただきたいと思います。  例えば、電気需給契約で申し上げますと、五十年代は契約電力が使用実績に比べて過大になっているという指摘が多かったわけでございますが、平成九年度検査報告の指摘につきましては、割引料金制度の適用を受けることができたのに受けていなかったというような指摘で、その態様が若干異なっているところでございます。  したがいまして、このような私どもの検査の成果がほかの省庁や団体にも広く波及し、同種類似の指摘が繰り返されることがないよう期待しているところでございまして、毎年、各省庁の会計課長や監査課長あるいは出資団体の監事、監査役を対象といたしまして検査報告の指摘事項の説明会を開催いたしましたり、さらには都道府県の会計職員あるいは内部監査職員を対象にしまして毎年講習会を開催しているわけでございますけれども、その際、指摘事例やその監査手法などについて詳しく説明したりしているところでございます。  そういったことで、今後ともあらゆる機会を通じまして積極的に指摘事例の周知徹底を図りまして、広く再発防止に寄与すべくさらに一層努力を続けてまいりたいと考えております。
  172. 山下栄一

    ○山下栄一君 ちょっと余りに認識が弱いように思いますが、運輸大臣は昭和五十四年の指摘、今回の指摘、特に重みを持って受けとめられておりませんでしょうか。
  173. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 民間のサービスが多様化してきております。そういった中で、従来の契約のまま安易な契約行為を続けてきたのではなかろうかという厳しい御指摘をいただいたと思っております。  この問題については平成十年で直させていただきましたけれども、例えば旅費におきましても多様なサービスが提供される時代であります、また通信においてもそういった時代でありますので、民間のそういうサービスの動向に対してもう少し官庁側は耳をそばだてながらしっかり対応していきなさい、こういう御指摘であろうと思っております。  公共事業費の縮減のみならず、こういった一つ一つの部分に切り込みながら全体のコスト縮減に努力をしてまいりたい、このようにとらえております。
  174. 山下栄一

    ○山下栄一君 先ほどちょっと触れましたけれども、内閣全体の責任そして国会軽視にもかかわる話ということを申し上げましたけれども、私も調べさせていただいてこのことがわかったんですけれども、余り伝えられていないというふうな感じがしました、お聞きしながら。  実は、昭和五十九年に内閣を挙げて電気需給契約だけに限って全省庁、それも地方部局も関係法人も含めて全部調査したことがあるんですが、高村外務大臣は御存じですか。
  175. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 申しわけありませんが、知りませんでした。
  176. 山下栄一

    ○山下栄一君 それでは、昭和六十一年二月、全省庁挙げての調査、後から触れますけれども、昭和六十一年二月の当時の中曽根総理大臣名で坂田衆議院議長に提出された閣議了解を経ての電気需給契約に係る報告がございますが、総理大臣、ちょっと読み上げていただきたいと思います。
  177. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昭和六十年三月二十八日、昭和五十六年度決算に関する衆議院の議決に対して、昭和六十一年二月七日内閣から、「電気需給契約の改善については、」、中略でございますが、「各省庁において更に改善措置を要する施設については、逐次その改善を図ってきたところである。 今後とも、需給電力の動向を常に把握し、電気需給契約の適正化に努めてまいる所存である。」旨、報告いたしたところでございます。
  178. 山下栄一

    ○山下栄一君 今読み上げていただきましたように、この昭和六十一年二月の総理大臣名の報告は、「今後とも、需給電力の動向を常に把握し、電気需給契約の適正化に努めてまいる所存である。」と。その一年前に衆議院本会議で「政府は、今後も需給電力の動向を把握し、適正な電気需給契約を行い、電気料金が不経済に支払われないよう努めるべきである。」、こういう決議を経て一年後に総理大臣の名前でこのことが書かれておるわけでございます。だから、電気需給契約の問題というのはちょっとほかの問題と違って大きな問題であるということなんです。なぜ先ほど高村外務大臣に申し上げたかと申しますと、決算委員会の当時のメンバーでいらっしゃったか、差しかえでいらっしゃったかと。  会検から昭和五十二年から五十四年まで連続して七省庁同じ電気需給契約で指摘を受けたと。宇宙開発事業団、日本中央競馬会、日本国有鉄道、雇用促進事業団、これは労働省関係ですね、外務省、運輸省、運輸省というのは海上保安庁と那覇の航空交通管制部でございます。これ五十二年、五十三年、五十四年三年立て続けで指摘を受けたので、当時の衆議院決算委員会は、会計検査院も、そういう存在があるけれども、国会で調査するという決議を全会一致でやって、衆議院の調査室を使って全省庁の調査をやりまして、全省庁でも抽出してやったわけです。そして、二億八千万から三億四百万円のむだ遣いがあるということを指摘いたしました。決算委員長の名前でそれを指摘したのが昭和五十九年五月のことでございます。  これを受けまして、当時の藤波官房長官は、委員長指摘を受けて内閣としても調査すると。そして事務次官会議も開いて大蔵省が中心になって全省庁調査したわけでございます。そして、これはちょっと後の話ですけれども同じ昭和五十九年のことです。十一月二日に決算委員会にその大蔵省が中心になって取りまとめた報告をした。このときに、今回指摘を受けた海上保安庁、気象庁、それから放射線医学総合研究所も、当時の運輸大臣のもとに、科学技術庁長官のもとに全部調べているんです。その上で今回また指摘を受けたと。  ということは、内閣としても取り組み、国会みずから調査し、そしてその衆議院本会議決議を行い、総理大臣名で、今申し上げましたように需給電力の動向を常に把握して、電気需給契約の適正化に努める、不経済にならないようにということを国会で約束したと。それがずっと一連の、昭和五十二年からの指摘に始まって、五十九年の内閣の調査、国会の調査、それを踏まえて本会議決議、閣議了解を経ての総理大臣の国会への報告書、全部終わったのが六十一年です。そういう経過を踏まえた上での今回の平成九年度の指摘であると。この指摘は、今までの指摘と違って大変重みがある、歴史があるということでございます。  運輸大臣科学技術庁長官、何度も内閣を挙げて、こういう料金については動向を敏感にキャッチして、そして適正な契約を結ぶことに努めるということを総理大臣名で言ったことに対して今回の指摘であるということなんですよ。  通産大臣にお聞きしますけれども、この最近の規制緩和に基づき料金契約の体系が変わりまして、そして大口消費者に対する割引料金のことが通産大臣に対する届け出で行われておるわけでございますけれども、このことについては通産省からは各省庁に、こういうことになったので、今までの指摘もあるからきちっとやりなさいよということは徹底されておられないんでしょうか。
  179. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 電力料金はいろいろな割引制度を導入して設備の稼働率の平準化を図っているわけでございます。そういう中で、電気事業法の立て方はどういうことになっているかといいますと、電気事業法上は約款内容の需要家への周知は電気事業者が行うものとされておりまして、電気事業者が周知徹底に努めてきたところでございます。  新しい料金、制度等が導入されるという可能性もあるわけでございますから、今後とも、電気事業者が行う周知を十分徹底するように私どもとしては求めてまいりたい、そのように思っております。
  180. 山下栄一

    ○山下栄一君 通産大臣、先ほど科学技術庁長官は、放射線医学総合研究所は新しい契約内容をよくわかっていなかったということもあったという御報告もありました。  先ほど申し上げましたように、総理大臣名で、今後とも需給電力の動向を常に内閣として把握して電気需給契約の適正化に努めてまいる、不経済にならないようにということを内閣を挙げて取り組むということを総理大臣が国会に約束しているわけです。  私は、それは通産大臣として各省庁に、それぞれの電力会社と各省庁が契約する問題という以前に、こういう新しい料金体系になったから割引制度もあるということをきちっと各省庁に徹底するのがこの総理大臣のお約束を実践することになるのではないかと思うんですけれども、されていなかったということですね。それは僕はおかしいと思います。いかがですか。
  181. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) これは政府並びに政府の機関が物を購入する場合には、なるべく安いものを買うというのが原則でございます。これは電気料金をただ漫然と払っているということではなくて、割引制度があるんだったら割引制度を積極的に利用するというのは電気を購入するものとしては当然のことでございますが、それを通産省が手とり足とり指導するという立場にはないんだろうと思っております。
  182. 山下栄一

    ○山下栄一君 手とり足とりじゃないんです。むだ遣いのもともとのお金は国民のお金でありますから、一円たりともむだ遣いしないという姿勢で本来行政に携わるべきであろう。そういう観点から考えると、国会に対して総理大臣が、需給電力の動向を常に把握し──一番真っ先に知るのはそれは通産大臣であるわけですから、税金のむだ遣いに対して通産大臣はどのような重みを持って行政をされているんですか、もう一度お聞きしたいと思います。
  183. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私は、ただいまの答弁で申し上げましたように、政府が物、サービスを購入するときには最も安いものを買うというのは原則でありまして、各省庁必ずその原則に従って行動していると思います。  もちろん先生からのそういう御指摘であれば、現行の電力料金の体系あるいは割引制度の概要等につきましては、念のため各省庁にお知らせをする、周知徹底するということをすべきだということであれば私どもとしては喜んでするつもりでございます。
  184. 山下栄一

    ○山下栄一君 だから、先ほど僕も読み上げたでしょう。この文書からしたら、国会に報告しているわけだから、約束しているわけですから、需給電力の動向、電気需給契約の適正化ということ、これに直接かかわっているのが通産大臣じゃないですか。  総理大臣、今回、平成九年度に二省庁がこういう経緯の上で指摘を受けたということは、私はこれはおろそかにできない問題であるというふうに思います。  昭和五十九年に国会みずから調査室を使って調査し、その結果むだ遣いが三億円も指摘され、その後さまざまな会議を経て内閣としても調査したと。そして、今回このような指摘を受けた。これは検査院の指摘がいかに軽いかといいますか、総理大臣、受けておられるわけですよ、ということを如実に示すものであるというふうに思うんですが、総理大臣の認識をお伺いしたいと思います。
  185. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府予算を編成し、これを執行していくという責任を負っておりますが、その中で執行に当たりまして御指摘を受けるようなむだ遣いといいますか、指摘をされることがあってはならぬと常々心がけておるわけでございます。しかしながら一方、会計検査院という制度を設けて常にこれを厳しく見詰めて報告書をいただいておるわけでありまして、政府といたしましては、それを受けとめまして反省の上に立って正すべきことは正してまいってきておると思っておりますが、今、山下委員から御指摘いただきましたように、かつてそういう指摘を受けながら、再度また検査院から指摘を受けたということはまことに申しわけないことだと思っております。  この数次にわたって会計検査院からそうした御指摘をいただくということは、内閣としてはあってはならぬことだろうと思っておりますので、今後ともそれぞれ各省庁を督励いたしまして、そうした事例が起こることのないように最善の努力を内閣としましてはいたしてまいりたい、このように考えております。
  186. 山下栄一

    ○山下栄一君 今のような答弁は昭和五十九年にもされております。二度じゃないんですわ、三回目ですねん。  昭和四十五年、スタートは。郵政省、建設省、運輸省が昭和四十五年に電気需給契約で指摘されているわけですよ。そして、五十二年、五十三年、五十四年、三年立て続けに指摘を受けて、たまらなくなった決算委員会、国会がみずから調査した、会計検査院があるのに。省庁挙げても調査したんです。調べたんですよ。会計検査院が指摘された以外のことまで改善しているんですよ、役所としても、調査室の指摘に基づいて。それが五十九年です。そして国会に約束しているんです、総理大臣は、電気需給契約の適正化に努めてまいる所存でございますと言うて。それが昭和六十一年のこと。再発じゃない、三回行われているわけです。だから、これはまた起こる、同じことが。  指摘を受けてもその場だけで終わってしまう。歴史的にも学習していないし、そして横の方でも、同じ役所でもほかの部局については学習していない。例えば科学技術庁は学習したけれどもほかの役所は学習しないという、それが延々と続いているということのあかしであるというふうに思います。私にどうか納得いくような御答弁をしていただきたいと思うんです。  電気需給契約、平成八年度から新しい料金体系になりました。それに基づいて全省庁はきちっと料金割引制度を適用し、むだ遣いがないように一生懸命努力しておるのかということ、これを私は内閣を挙げてきちっと調べていただきたい。いかがですか。
  187. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) そういう御指摘であれば、現行の料金体系、割引制度等々につきまして各省に通産省より詳しく説明をし、各省の中でまたそれぞれの機関に周知徹底させる、そういう手順を踏みたいと思っております。
  188. 山下栄一

    ○山下栄一君 総理大臣、現在、二つの役所が指摘された、新しいいろんな割引制度、選択的な契約内容が今通産省によってされておるけれども、それを全部チェックしながら、むだ遣いがないように各部署がやっておるかということを調べるべきではないかというふうに思うんです、今回、平成九年度は御報告受けたばかりだと思いますので。非常に深刻な問題だと思うんですけれども、何かされませんか、総理大臣の陣頭指揮で。
  189. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) いずれにいたしましても、検査院から指摘を受けたことをおろそかにしてはならないことでございますので、それぞれ省庁に当たって指摘を受けた点につきまして、十分指摘にこたえ得るように、対処するように政府を挙げて努力いたしてまいりたいと思います。
  190. 山下栄一

    ○山下栄一君 これは内閣だけではなくて、参議院衆議院も国立国会図書館も最高裁判所も、全部調べたんですよ、昭和五十九年は。  適正な契約が行われているかどうか全部調べて、全省庁、地方部局、所管法人まで含めて全部調査していただいて、そしてどれだけ節約できたかという報告を予算委員会にしてください。いかがですか。
  191. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府といたしましては、それぞれ省庁、新しい電力の需要に対しての新しいコードでいたしておることになりまして、その点、前と今と、再度指摘を受けるようになったことについては今申し上げましたように努力いたしますが、衆議院参議院あるいはその他の権能を有しているところにつきましては、これはそれぞれの部署におきましてもう一度対処していただくことが望ましいのではないかと思います。
  192. 山下栄一

    ○山下栄一君 行政府だけで結構です。今申し上げた内容もやっていただけますか。報告していただけますか。どれだけ節約できたかという報告です。予算委員会に報告してください。全省庁調べているんだから、昭和五十九年に。そうしてからまた起こっているんですよ。
  193. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) いつの年度のことを御指摘になっているかわかりませんが、現行の割引制度等を十分よく利用しているかどうかということについては多分各省庁にお願いすれば調査ができますが、むだがどのぐらいあったとかそういうことはできません。  ですから、こういう事業者はこれだけの電力を使うということですから、現行の制度の中のどういう割引制度を使っているのか、またどういう割引制度を使うことが最も料金の支払いが少なくて済むのかということはそれぞれ多分研究していると思うんですが、そういうことが周知徹底されているのかどうか、せっかくそういう制度があるものをきちんと利用しているかどうかということについては多分調査ができると思います。当然若干時間がかかると思います。
  194. 山下栄一

    ○山下栄一君 昭和五十九年は二週間でやったんですよ、全省庁。そんなに時間がかかりません。だから、現在どういう契約内容が行われていて、それが割引できるのかどうか、割引できるとしたらどれだけ割引できたかという報告をこの予算委員会にしていただきたい。  総理大臣、お願いします。
  195. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま通産大臣が答弁申し上げましたけれども、会計検査院から指摘された点につきまして、その内容について十分精査いたしまして、その改善のために努力をしていきたいと思っております。
  196. 山下栄一

    ○山下栄一君 終わります。
  197. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で山下栄一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  198. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、笠井亮君の質疑を行います。笠井亮君。
  199. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮です。  早くも締めくくり総括になりましたけれども、この間の予算審議を踏まえまして、まだまだ私どもとしては質疑をしていきたいという問題がたくさんあります。しかし、きょうは限って伺いたいと思います。  高知県の非核港湾条例は、昨十五日、県議会で継続審議と、正式にそういうことになりました。そのほかにも、苫小牧とか函館とか小樽を初めとして、全国各地でもこのような、方式さまざまありますけれども、とる動きが広がっております。そこで、この問題に関連して幾つかただしておきたいと思います。  まず、一般論として運輸省に伺いたいんですが、運輸大臣、港湾法というのがあります。港湾法は、港湾管理者である地方自治体がその固有の権能として、法令の範囲内において港湾管理のための条例、規則を定めることを、これは認めていますね。
  200. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 港湾法の内で定めることについては認めております。
  201. 笠井亮

    ○笠井亮君 それでは、実際にそのような法令に基づく条例、規則の中身について、これは国に対する報告義務というのはありますか。
  202. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 報告義務はございません。
  203. 笠井亮

    ○笠井亮君 これはあくまで各自治体に任されているわけであります。一々内容をチェックしない。法令に基づいて港湾管理のためのルールを決めることは、これは当然のことだからであります。つまり、港湾法上、地方自治体が港湾管理のための条例、規則をつくることができるということであります。  そこで、総理に伺いたいんですけれども、例えば日米地位協定の五条というのがありますが、この五条に基づく使用の場合、米艦船が民間の艦船を押しのけて港湾を優先使用するという権原、これは与えられていますか。
  204. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) お尋ねが、地位協定の条文上と申しますか解釈上も含めまして、米国艦船が民間船よりも優先的に港湾を使用できるという法的な根拠が地位協定五条にあるかということであれば、そういうようなことはございません。ただ、五条の一項で、米国の艦船は我が国の港に出入りをする権利というものを認められているということでございます。
  205. 笠井亮

    ○笠井亮君 優先使用は認められていないということだけ言えばいいんですよ。  これは私、港湾法との関係を聞きましたので、運輸大臣、どうですか。
  206. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 逆に言えば、特別な理由があれば拒否することができるということで、特別な理由がない場合は拒否することはできないということでございます。
  207. 笠井亮

    ○笠井亮君 特別な理由というのはどういうことですか、例えば。
  208. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今、一つの例として委員がお挙げになりました民間船舶でいっぱいである、その中にアメリカの船が長期的に泊めてくれということになれば、民間の船舶の使用が現実にされているということになれば特定な理由に当たるだろう、こう考えております。
  209. 笠井亮

    ○笠井亮君 今言われたので、もう少し私も確認したいんですけれども、要するに、港湾の使用が認められているという場合でも、既に民間の船舶が入っていて岸壁がいっぱいだ、あるいはその時点であいていても使用を求められた時間帯の中において既に先立って民間の船舶がもう予約している、したがってそれはいずれ米軍の艦船が入ってきた後にもう既に予約のある船が重なって入ってくることになっている、こういう場合などは港湾管理者が港湾の適正な管理運営に支障を来すということで拒否できる、こういうことでよろしいですね。
  210. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 優先使用は認められておりませんけれども、日米地位協定で入ることは認められるわけですから、順番順番に入っていくことについては何ら問題ないと思っております。
  211. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、順番順番ということは、もう予約が入っていて民間が来ることになっていた、既に先立ってなっているという場合は入れないということでいいんですね、それは。
  212. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) その港が船によっていっぱいの状況にある、そして当分どの船も出ていかない、そこへ米軍が長期的に使用させてくれということになれば、断ることはできるでしょうねと申し上げております。
  213. 笠井亮

    ○笠井亮君 総理、これは間違いないですね。もう大臣も言われているし、外務省も言っているんだから、いいですか、そこは。
  214. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 閣僚の発言を信頼しております。
  215. 笠井亮

    ○笠井亮君 要するに、国が入港できるというふうにしたとしても、外国の艦船というのが何でもかんでも港湾を自動的に使えるということにはならないと。港湾管理者は港湾の適正な管理運営に支障を来す場合には拒否できるし、それは港湾管理者の責任ということだと思うんです。これは今非常にはっきりしました。  さらに運輸大臣に伺いたいんですけれども、港湾管理条例の中に核積載艦の寄港を禁止する条項を盛り込むことも、港湾の適正な管理運営という立場からして当然可能と考えるかどうか、見解を伺いたいと思います。
  216. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今申されたのは、核を積載している船を日本の港に入れることができるかという御質問でしたので、私どもは非核三原則を持っておりますのでそのようなケースは考えられないと思っております。
  217. 笠井亮

    ○笠井亮君 考えられないと言っておるだけで、そういうのをつくること自体、港湾法に反するとは言えないでしょう。その点はどうですか。
  218. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 仮の話でございますので仮の話で申し上げれば、港湾の適正な管理運営に支障がなく、非核証明が提出されないという理由、これが特定な理由になるかということでありますけれども、外国艦船の港湾施設の使用を拒否した場合には港湾法第十三条第二項の不平等な取り扱いの禁止に抵触することがあり得ると認識いたしております。
  219. 笠井亮

    ○笠井亮君 非核証明が提出されるとかいう、そういう実際の運用上のことを聞いているんじゃないんですよ。核積載艦船の寄港を禁止するということを含むそういう条例や規則をつくったら、それ自体が港湾法に違反するのかということを聞いているんです。
  220. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 地方公共団体が非核港湾条例等により、外国艦船が核兵器を積載していないことを証する文書の提出を求め、その結果に基づき港湾施設の使用に関し決定を行う場合には、外交関係の処理に当たる国の決定に地方公共団体が関与し、またこれを制約するものである、したがって港湾管理者の権能を逸脱するものであると考えております。
  221. 笠井亮

    ○笠井亮君 十三条の二項の不平等な扱いをしちゃいけないというのは私は知っているんですよ。だからそこは、実際にそうやって運用して、そうなった場合にそこで初めて問題が出るんであって、そういうことを盛り込んだ条例をつくる、核積載艦船、これを寄港しちゃいけませんよという項目を盛り込んだら、それ自体が直ちに違法になるのかと聞いているんですよ。
  222. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) これは、冒頭申し上げましたように、核を積んだ船が日本に入る、それがあってはならないという条例、日本は三原則があって入るということはないわけですから、そういう法律をおつくりになるということ自体ちょっと私の……
  223. 笠井亮

    ○笠井亮君 法律じゃない。
  224. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 条例をおつくりになるというのは、ちょっと答える立場にないですね。
  225. 笠井亮

    ○笠井亮君 答える立場がというんじゃないんですよ。私は、港湾法上それが問題になるのかと聞いているんですよ。問題がないんだったら問題ないと言えばいいでしょう、それ自体は。
  226. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 港湾法でそれをつくることはだめだということは言えません。
  227. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうです、否定できないんです。法理上は可能だということです。これ、当然ですよ。  非核三原則を国是とする以上、外国艦船の寄港を許可するに際して国は当然に当該国艦船が核兵器はないと判断しているはずであります。国が核兵器は搭載していないと判断しているならばそういう証明を出せばいいわけで、国と地方の判断が違うことにはならないはずだと私は思うんですよ。その証明を当該国政府または外務省ができないという理由は何もないんじゃないかと思うんですけれども、総理、どうですか。
  228. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 先ほどから申し上げておりますとおり、三原則があって核積載の船が入ることはあり得ないと。あり得ないことを前提にしながら条例をおつくりになると言うから、これは少しおかしなことじゃないですかということを申し上げておるわけです。もっと言えば、それによって船が入ることを禁止することはできませんよと、こう申し上げておるんです。
  229. 笠井亮

    ○笠井亮君 私の問いに答えていないと思うんです。もう一回答えてください、ちゃんと。
  230. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 非核証明書をなぜ提出できないのかという趣旨の……
  231. 笠井亮

    ○笠井亮君 違います。
  232. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) そうじゃないんですか。
  233. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間を限られているんですから、ちゃんと聞いていてください。  委員長、ちょっと何とかしてくださいよ、本当に。私、時間がたっちゃってもったいない。
  234. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 笠井君、質問の内容をもう一度御発言ください。
  235. 笠井亮

    ○笠井亮君 非核三原則を国是とする以上、外国艦船の寄港を許可するに際して、国は当然に当該国艦船が核兵器はないと判断しているはずでしょう。国が核兵器は搭載していないと判断しているならば、そういう証明を出せばいいわけで、国と地方の判断が違うということにならないと思うんですよ。その証明を当該国政府または外務省ができないという理由は何もないんじゃないですかと聞いているんです。
  236. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私は質問の内容を正確に理解していたつもりでございます。  我が国が非核三原則を国の基本政策として堅持しており、国が外国軍艦に対して寄港の同意を与えるか否かについて決定する際には、当然にこのような基本政策を堅持するとの立場を踏まえて対処しているわけであります。したがって、国の対応によって非核三原則を堅持するとの我が国の立場は確保されているわけであります。  したがって、地方公共団体から求めがあるとしても、外務省から個々の外国軍艦が核兵器を積載していないことを証明するような文書を発出することはそもそも必要でなく、そのような文書を発出することは考えていないということでございます。  なお、米軍艦船の我が国の港への出入りについては、日米安保条約及びその関連取り決めに基づき認められておりますが、日米安保条約上いかなる核の持ち込みも事前協議の対象であり、核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には、政府としては常にこれを拒否する考えでございます。
  237. 笠井亮

    ○笠井亮君 港湾の管理権があるから施設がいっぱいのときなど条例をつくって必要な措置ができる、自治体固有の権能があって何でもかんでも自由に入る仕組みにはなっていないということは先ほども言ったとおりです。  ましてや今、要するに外務大臣が言われたのは、外交、防衛は国の専管事項だと、だから国に従えという話なんでしょう。専管事項というならば、その政治的な責任で、国の責任で証明する説明責任というのもあるんじゃないですか。核を積載していないという政府・外務省の認識を自治体にも文書で示して、その上で国の認識を踏まえた措置を講じようとすることのどこが逸脱になるのか。  国の専管事項だから、地方は判断できないと思っている。地方自治体は思っています。そこで、大丈夫ですよと言ってもらって住民に説明することのどこがだめなんですか。国と地方が協力して国是を守っていこうということのどこが逸脱なんですか。
  238. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今申し上げたように、国の対応によって非核三原則を堅持するとの我が国の立場は確保されているわけであります。したがって、地方公共団体から求めがあるとしても、外務省から個々の外国軍艦が核兵器を積載していないことを証明するような文書を発出することはそもそも必要ではなく、そのような文書を発出することは考えていないわけであります。  必要ないだけではなくて、そのことによって出入の許可を判断するなどということを考えているとすれば、それはとんでもない権限の逸脱でありますから、そういうことを手助けするようなことを外務省ができるはずがないということであります。
  239. 笠井亮

    ○笠井亮君 地方自治体があっちこっちで不安だから教えてくれ、念のために確かめたい、国はないと言うんでしょうと、それを言ってくれればいいんですよということを言って、何でそれが逸脱なんですか。  言いますけれども、じゃ、そこのところで何が一体障害が出てくるんですか。そうでしょう。事前協議のことを言いました。事前協議がないというのは持ち込まれていないということだったらば、今言いましたよね、事前協議がないというんだから持ち込まれていないんだと、そう言うんだったらば、証明を求めても何の支障もないはずであります。それとも、あなた方は本当に持ち込まれているとでも言うんですか。そうでない限り支障などないでしょう。  しかも、あなた方は、この問題を伺うと、常にアメリカのことしか頭にないみたいなんですよ。  それでは外務省に伺いますけれども、アメリカ以外にも外国艦船はいっぱい入ってきています。核保有国の艦船もあります。八〇年代以降で結構ですが、日本の民間港に入港した外国軍艦の国別の隻数を言ってみてください。
  240. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 八〇年以降九八年までの外国軍艦による我が国港湾への寄港の国別実績を申し上げますと、アジア地域では、タイ五隻、マレーシア三隻、シンガポール三隻、フィリピン九隻、インドネシア五隻、インド六隻、パキスタン一隻、韓国八隻でございます。それから北米地域では、米国四百十一隻、カナダ十七隻でございます。それから中南米地域では、アルゼンチン二隻、チリ五隻、ブラジル二隻、メキシコ三隻、コロンビア二隻でございます。欧州地域では、フランス二十六隻、英国三十八隻、ドイツ五隻、イタリア五隻、オランダ五隻、スペイン二隻、ポルトガル五隻、スウェーデン三隻、ロシア一隻でございます。大洋州地域では、オーストラリア三十五隻、ニュージーランド六隻でございます。中近東地域では、トルコ一隻、オマーン一隻でございます。  この数字は過去にさかのぼって調べたものでございまして、民間港の範囲などの要因によって若干誤差があり得ると思います。そこは御理解いただきたいと存じますが、我が国港湾への外国軍艦による寄港実績の概略を示すものとお受けとめいただきたいと思います。
  241. 笠井亮

    ○笠井亮君 ずっといろいろ言ってもらったんですが、合計何隻ですか。
  242. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 六百十五だったと思います。六百十五隻です。
  243. 笠井亮

    ○笠井亮君 随分入っているんですよ。今言われましたフランス二十六隻、僕も書きとめました、イギリス三十八隻、ロシア一隻と核保有国もあります。これらの核保有国とか、それから政府が、この国は核兵器を持っているんじゃないかと疑惑を持っているというふうな国もありますよね、今の中には。  こういうことを含めて、アメリカ以外の国とは安保条約を結んでいませんから、事前協議もないです。これは確認するのが道理じゃないんですか。  どうやってその国の船が核兵器を積んでいないと判断するんですか、政府は。
  244. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本は非核三原則を天下に宣明しておりますから、相手の国はそれを当然知っていて寄港を求めてきているわけであります。そうした相手の国との信頼関係に基づいて、それぞれ、場合によったらこの国は信頼できないということもあり得るかもしれませんが、外務省が責任を持って信頼関係その他のもろもろの条件をしんしゃくしつつ決めているわけでございます。
  245. 笠井亮

    ○笠井亮君 外務大臣言葉をもうちょっと滑らかに、言うなら言ってくださいよ。  どういうチェックなんですか。信頼関係その他いろいろもろもろ、非核三原則を持っているから、相手は知っていて、そしてそうやってくれるだろうと。これはどうやってチェックしているんですか。国民がそれで本当に納得できますか。できませんよ、こんな話は。ごまかしじゃないんですか。ごまかしと言われたって、違うと言えないでしょう、これは。  信頼関係といってもいろいろありますとさっき言われました。いろいろ日本との関係で問題ある国、外務大臣は一番よく御存じですよね。そういう国も含めて、もろもろ勘案しまして、大丈夫でしょうと。  だから、口上書が来たらオーケーですよ、そしてそれは、地方自治体は国がオーケーしているんだから自動的にオーケーしなさいよ、こう言われても、どういうチェックなのか。住民は、実際港湾を使われるわけですから、大丈夫だろうかと。実質的には何もないじゃないですか。
  246. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 相手の国と全然信頼関係がなかったら、証明書をとろうが何しようが、うそついているんだったらどうしようもないわけなんですよ。  外交関係というのは、それぞれ全体の信頼関係の中で、我が国は非核三原則というのを天下に宣明していて、そういう中で日本に入りたいという国は、私たちは、特別の事情がない限り、それは持っていないだろうという判断ができますし、ただ場合によっては、それは諸般の事情によっていろいろ問題があるときには、それはいろんな対応の仕方があるだろう、そういうことは国が専管事項として判断すると。そんなに信頼できないんだったら、相手から非核証明書をもらったってうそをつくかもしれないとか何だとかいうことがあるわけでありまして、同じことなんですよ。
  247. 笠井亮

    ○笠井亮君 もう全然こんな答弁じゃ、これ本当だめですよ。(発言する者多し)
  248. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 質疑者以外の発言は審議の妨げになりますので、御静粛に願います。
  249. 笠井亮

    ○笠井亮君 本当にでたらめなことを言いますね。  外務大臣、あなたはもういつも言っています、一番信頼関係があるのは日米関係だと。そのアメリカでさえ事前協議というのが一応あって、安保条約があって事前協議があって、それで協議がないから相手は積んでこない、だからオーケーですと。協議があってそれは積んでいるということを言えば断るというちゃんと仕組みがあるじゃないですか。それを、最も信頼関係があるアメリカとはそういうことをやっておきながら、それ以外の国については、あなた方に言わせれば信頼関係はもっと薄いんでしょうが、そういう国との関係で、あなたが信頼関係その他でないとかやらないとかと言ったって、全然こんなのチェックになりませんよ。
  250. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) もろもろの状況の中で、我が国として、国として積んでいないという判断のもとにしているということでございます。  核を積んでいるような疑わしい特別の状況がある場合には、それはもろもろのまた別の判断の仕方もあるかもしれませんが、そういう状況がない場合においては国が我が国に寄港することを許可する、そういうことでございます。
  251. 笠井亮

    ○笠井亮君 専管事項と大見え切って言われながら、もろもろの条件でなんという言葉国民が納得できますか。我々だって納得できませんよ。
  252. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 世界の国がお互いに信頼関係を持って軍艦が入るときに、貴委員の立場を推していくと、これはすべての軍艦に立入検査をしなければ入れられないということにもなりかねないわけでありますが、私たちはそれぞれの状況において信頼している場合には国が判断しているわけであります。相手の国に証明書を出させればそれでいいとか、証明書などなくとも我が国が非核三原則というのを天下に宣明している中で外国がそれを承知の上で入りたいということは核を持っていないということは一応考えられると。  ただし、全体の状況の中でそれが特に疑わしい場合はまたいろいろな対応があるでしょうし、本当に疑わしい場合はそれは拒否することもあるでしょう。しかし、私たちは今国として責任を持って寄港を認めるか認めないかの事務をさせていただいている、こういうことを申し上げているわけでございます。
  253. 笠井亮

    ○笠井亮君 一応考えられるということで、全然話はだめです。  日米関係は条約、これに基づいて事前協議とか言いますよね。だけれども、非核三原則というのは法律でもないんですよ、法制的には一切そういう意味では拘束力はないでしょう、国是と言っているだけなんですからね。これは法律であれば別ですよ、それに対してどうなるか、照らしてどうするかということはまたいろいろ議論があるかもしれませんけれども、一応考えられるとか、そんな答弁をされて、これだめですよ、こんなの。
  254. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私たちは、国が責任を持ってやっていることで間違いがないと思っているということでございます。
  255. 笠井亮

    ○笠井亮君 総理大臣、今、外務大臣の答弁を聞かれて、私極めて無責任だと思うんですよ。外交を直接担当されて今責任を持ってやっている外務大臣が、本当にそういう形で一応とかもろもろとか、こんなことで国の外交をやられて外国の艦船が日本に入ってくる。本当に大丈夫だろうか、国民はみんな心配に思う。一応、もろもろ、これはちょっとあんまりなんじゃないですか。極めて無責任だと思うんですけれども、総理、こんなことで本当に国民に責任持てますか。──総理に聞いています、総理に聞いていますよ。
  256. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 改めて申し上げます。  我が国の非核三原則は、各国に対しても周知徹底されておるところでありまして、第三国が友好親善の目的で軍艦を我が国に寄港させることを希望する場合には、これら軍艦が核兵器を持ち込むことをそもそも想定されないところであります。  一般国際法上、外国軍艦の寄港は我が国の同意を必要とするところ、前述のとおり我が国の非核三原則は内外に周知徹底されておりますので、寄港を希望する相手国としては我が国の同意を求めるのに際し、かかる我が国の基本的政策を尊重するとの立場に立ちつつかかる同意を求めてくるものであることは当然の了解である。  相手国がこのような我が国の重要な政策を裏切ることはないとの信頼関係は外交の基本にかかわる問題であり、我が国としてはかかる立場からこれらの艦船の寄港に対処することになると考えると同時に対処してきたところであり、従来からこの信頼関係は失われているものでないと認識をいたしております。
  257. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は、総理はもう少し責任ある答弁をいただけると思ったら、基本的に同じですね。これでは本当に今議論になっている問題、国民的にも納得を得られませんよ。  では、私ちょっと聞きたいんですけれども、そういう中で、日米の間では事前協議というのはどういう位置づけになるんですか、今。要するにあってもなくても、非核三原則があるんだから、アメリカだろうとどこであろうと持ってこないという話でしたよね。事前協議というのは私はよくわからない。そういう中でどういう位置づけになりますか。
  258. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 事前協議をどう位置づけるかというのは、核の持ち込みについては事前協議が要求されるということになっておりますから、アメリカが事前協議を求めてこない以上はその艦船は核を持っていないということは当然我々は信頼をしている、こういうことでございます。
  259. 笠井亮

    ○笠井亮君 世界じゅうのどの国に行っても日本は非核三原則を持っていると、だから持ってくるはずない、そういう信頼関係を持っているんでしょう。しかし、アメリカとの間では事前協議というのがなきゃいけないんですね。そういう信頼関係なんですね、日本アメリカは。
  260. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 事前協議、そもそもの意義でございますけれども、これはもう申すまでもございませんが、安保条約の六条で米国が我が国にございます基地の使用を認められているということとの関係で、ある特定の行動を米国がとるに際しましては我が国に対して事前協議を行うということが義務づけられているということでございます。  したがいまして、今の装備にかかわります重要な変更、御指摘の問題との関連で申し上げますと、それもやはり安保条約におきまして米国が我が国の施設・区域を使用することが認められているというところから派生すると申しますか、それに関連した約束事である、こういうことでございます。
  261. 笠井亮

    ○笠井亮君 一番信頼関係があると政府が言っているアメリカとの関係では、特別にチェックする仕組みとして事前協議がなきゃいけないんですね。そういう信頼関係なんですかと聞いているんですよ。事前協議が何かなんという話を聞いているんじゃないんです。私も当然それを知っていて質問しているわけですから、そういう関係なんですかと聞いているんですよ、日米関係。
  262. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) アメリカ以外の国の軍艦が日本に来る場合には、一般的にまさに友好親善のために来るわけであります。アメリカの軍艦が来る場合には、日米安全保障条約に基づいて日本の平和と安全だとかあるいは極東の平和と安全を守るために来るわけでありまして、そういう場合にまさに単なる友好親善ということで来るわけではないわけでありますから、そういう場合であっても核を持ってきては困りますよ、こういうことを申し上げて、そしてそういう場合に核を持ってくるようなときには事前協議が必要ですと。日本の国是からいって、事前協議があった場合には必ず拒否する、こういうことになっているわけでございます。
  263. 笠井亮

    ○笠井亮君 では、単なる友好親善じゃないから核兵器を持ってくる可能性があるわけですね。
  264. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日本が非核三原則をきっちり宣明していますから、アメリカは持ってくる可能性はありません。
  265. 笠井亮

    ○笠井亮君 では、事前協議は要らないじゃないですか。同じことを聞いているんですよ。事前協議は要らないでしょう。そういうことになるのじゃないですか。
  266. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 事前協議というのは、戦闘作戦行動だとかその他含めて三つのカテゴリーについて事前協議が必要だと、こうされているわけで、私は、委員が核を持ち込むときに事前協議から外せという意見も持っておられるとは、知ってびっくりしたところでございますが、私はそれはあった方がいいと、こういうふうに思っております。
  267. 笠井亮

    ○笠井亮君 私はそんなことを言っているんじゃないですよ。あなたの理屈からいうと、そういうことになるんじゃないですか、位置づけがはっきりしないでしょうと。あってもなくても非核三原則があれば大丈夫だと言っているんだから、そのことを聞いたんですよ。  今伺っていましても、これは国民は本当に納得できませんよ。非核三原則を持っているから、そしてその国是を知っているはずと言うんだったらば、この証明書を出すというのが何の障害になるのか。実際にはノーチェックでしょう、今の話を聞くと。  非核港湾条例の動きというのは、中央政府のだらしなさというふうに私は思うんです、はっきり言って。それを自治体が地方自治の本旨に基づいて確かめると。大丈夫ですね、大丈夫ですよ、そうですかと、こういうところだってあるわけですから。しかも、それは国是に立ったものだと言われているわけでしょう。  私は、この点でも、政府が非核港湾条例の動きに対して妨害する資格、これは全くない、今の質疑を伺っても非常にそのことを感じたということで、明確に指摘をしておきたいと思います。  残された時間、経済問題を若干伺っておきたいのですけれども、今、日本経済が直面している問題というのは、深刻な不況からいかに脱出するかという問題と、未曾有の財政危機をどう解決して将来に備えるかという問題でありますけれども、この二つ危機への対応、予算審議で大問題になってまいりました。果たして答えが出たのか、出ていないと思うんです。  総理は、この間、当面の景気回復に全力を尽くすとの観点から従来型の積極予算を組んで、一方、財政問題については日本経済が回復軌道に乗った段階で検討すると答弁されてきました。  まさに財政健全化の旗を棚上げにしてしまったわけだと思うんですけれども、私は、問題があれかこれかではない、財政が本当に回復が困難なほど破綻しているのであれば、その解決に手をつけないで、どうして国民が安心して消費を拡大して、投資を呼び起こして景気を回復軌道に乗せることができるのか。  総理、いかがですか。
  268. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、経済再生の問題でございますが、平成十一年度金融システムの安定化策等によりまして不良債権処理、金融機関の再編が進みまして、我が国実体経済の回復を阻害している要因が取り除かれると考えております。  昨年末成立いたしました十年度第三次補正予算のもとで切れ目なく景気回復策を実施しておりまして、十一年度予算におきましても、恒久的な減税を初めとして、国、地方合わせて九兆円を超える思い切った減税を実施するほか、公共事業について大幅な伸びを確保するなど、積極的な財政運営を行うことといたしております。以上の諸施策を講ずることによりまして、背水の陣をもちまして、この状態を乗り越えるための努力をさせていただいておるところでございます。  財政再建の問題につきましては、何より現在の状況を乗り越えなきゃならぬということでございますので、そうした意味日本経済をプラス成長に向けて、そして、その暁におきまして国民の理解を求めながら、各種の方策を講じながら財政再建に向けて努力をしていきたいと思っておりますが、今二兎を追うことはなかなか困難でございますので、何はともあれ経済の再生、経済を活性化し、そしてプラス成長に持っていくというために、今全力を投入させていただいておるということでございます。
  269. 笠井亮

    ○笠井亮君 今、最後に総理は二兎を追うの話もされましたけれども、私は質疑を伺いながら、そして参加しながら、今のやり方では二兎とも失うことになる。財政はしばらくおいておくというふうな状況下ということは、それ自体問題であります。  それから、景気の問題もどうか。この間、質疑の中でさまざまな答弁もありました。大蔵大臣も各閣僚も答弁される中で、今回の所得税の改正、八千何百億円もの消費減になるかもしれないという御答弁もありました。法人税の減税も速効があるとは期待していない、中長期的に将来の投資計画に影響するんだという御答弁もありました。さらに、国民消費と企業の設備投資、この問題でも決め手がないということで認められてこられたと思うんです。まさにそういう点では、二兎を追って一兎をも得ずというのではなくて、実際一兎を追って一兎をも得ずということにならざるを得ない。  日本の将来と今の現実をそういう大変に深刻な状況に追い込む、それが今度の九九年度予算案だということを最後に厳しく指摘をさせていただきまして、私の質問を終わります。
  270. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で笠井亮君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  271. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) この際、御報告いたします。  本委員会は、平成十一年度総予算三案につきまして、総務委員会外十二委員会にその審査を委嘱いたしておりましたが、各委員長からそれぞれ審査概要について報告書が提出されました。  つきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  272. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  なお、このほか、報告書は別途印刷して委員の皆様方に配付することといたします。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会