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1999-03-11 第145回国会 参議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      朝日 俊弘君     円 より子君      郡司  彰君     寺崎 昭久君      高野 博師君     山本  保君      井上 美代君     吉川 春子君      須藤美也子君     八田ひろ子君      清水 澄子君     照屋 寛徳君      菅川 健二君     奥村 展三君      堂本 暁子君     水野 誠一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 寺崎 昭久君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 浜田卓二郎君                 山本  保君                 小池  晃君                 八田ひろ子君                 吉川 春子君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 水野 誠一君                 西川きよし君    国務大臣        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣     有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        運輸大臣     川崎 二郎君        労働大臣     甘利  明君        自治大臣     野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        総務庁人事局長  中川 良一君        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        総務庁統計局長  井上 達夫君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        環境庁長官官房        長        太田 義武君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省保健医療        局長       伊藤 雅治君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        岩田 満泰君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        運輸省運輸政策        局長       羽生 次郎君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働大臣官房政        策調査部長    坂本 哲也君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       渡邊  信君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君        建設省都市局長  山本 正堯君        自治大臣官房総        務審議官     香山 充弘君        自治省行政局長        兼内閣審議官   鈴木 正明君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度総予算三案についての理事会決定事項について御報告いたします。  本日の一般質疑割り当て時間は百四十分とし、各会派への割り当て時間は、自由民主党二十八分、民主党・新緑風会四十三分、公明党十七分、日本共産党十七分、社会民主党・護憲連合十三分、自由党九分、参議院の会九分、二院クラブ・自由連合四分とすること、質疑順位につきましてはお手元に配付いたしておりますとおりでございます。     ─────────────
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。斉藤滋宣君。
  4. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 おはようございます。  予算委員会の冒頭より、大臣を初め政府委員皆様方に御出席賜りまして質問機会をいただきました自由民主党斉藤滋宣でございます。  昨今の大変厳しい雇用情勢にかんがみまして、雇用情勢の問題につきまして若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、政府は、去る三月五日の産業構造転換雇用対策本部において、一両年で約七十七万人の新規雇用創出が期待される旨明らかにしたところであります。その際出されました「雇用創出が期待される各分野における取組について」という資料を拝見いたしますと、この数字を明らかにしたねらいは、「現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、施策の一層の具体的推進を図るため、」とあり、この七十七万人の試算は、注を読みますと、「各分野において、試算推計が可能な関連施策とそれに伴う雇用創出規模等を算出したものであり、各分野における雇用創出規模の総数を示すものではない。また、この他の分野においても、試算推計は困難であるが、関連施策による雇用創出が期待される。」としているわけであります。  雇用創出部分全体の数字でもないこの部分的な七十七万人の試算をあえて取り出して公表するというそのねらい、目的といいますか、それはどの辺にあるのか、もう少し詳しく説明していただきたいと思います。
  5. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) 政府といたしましては、昨年の十一月に緊急経済対策というのをまとめさせていただきまして、それに基づいて補正予算とか当初予算の編成に取り組んできているわけでございますが、その緊急経済対策というのは百万人規模雇用創出・安定を目指して、総事業規模十七兆円超、これに恒久的減税六兆円超を含めれば二十兆円を大きく上回る規模緊急経済対策というふうに考えておりまして、要するに、百万人規模雇用創出・安定を目指してというのが大きな目的としてかかっておったわけでございます。  これにつきましては、国会における御指摘もございまして、政府としてはこれをどうやって創出・安定をしていくのかということにつきましては、マクロ的にこの緊急経済対策GDPをどれだけ押し上げるか、それに伴って雇用弾性値からはじいて三十七万人ぐらいマクロ的に雇用創出効果が期待できる、別途雇用の維持安定ということもある、こういういわばマクロ的な御説明を従来してきたかと思うわけでございますが、先般の産業構造転換雇用対策本部におきましては、先生が今お読みいただきましたように、さらに一層具体的な推進を図るということで施策を考えていこうということで取り組みが決められたわけでございます。  その中で一つありますのは、政府施策を種にいたしまして、どの分野で向こう一両年のうちにどのぐらいの具体的な雇用創出規模というものが想定できるのかということを、確かに大変困難な作業でございましたけれども、あえて、数値目標ということじゃございませんが、期待される雇用創出効果ということではじかせていただいたと。その分野保健福祉分野であり、情報通信分野であり、住宅及び関連分野であり、観光分野であるということでございまして、確かに先生、ふえるものも減るものもあるということは当然わかっておりますけれども、そういう中で具体的に戦略的にこれから雇用創出を図っていく、それも政府施策が種になってやっていけるところ、そういうところで計算できるところを計算いたしまして、この間取りまとめさせていただいた。これからはそういう分野にさらに重点的にもろもろの施策を講じていきまして、向こう一両年でできるだけ多くの雇用機会をつくっていきたい、こういうものでございます。
  6. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今の室長さんのお話の中で、いわゆる緊急経済対策の中で百万人規模雇用創出を図る、そういう中から出てきたものというお話でありますけれども、非常に私自身勉強不足でわからないのかもしれませんけれども、緊急経済対策において雇用創出が見込まれる数字、三十七万人と発表されています。それと今回七十七万人と。こういう数字が出てきますと、ぱっと筋目に見たときに、足すと百十万人ぐらいになるのかな、こう思ってしまうわけでありますけれども、そこの七十七万人の雇用創出という部分と、それから昨年十一月の緊急経済対策によって雇用創出が見込まれる三十七万人、ここの関係が、皆さんはわかるのかもしれませんけれども、ちょっと私はわかりづらい。  特に、そういう緊急経済対策のときに一兆円規模雇用創出効果を図って百万人の雇用を図るんだということを言っていましたから、一般国民皆さん方にしても百万人の雇用創出というのが頭に入っていますし、昨今の雇用情勢が大変悪いということが毎日のように報道されるわけですから、そういうところから三十七万人雇用創出ができる、七十七万人雇用創出ができる、こう出てくると、これは足して百万人となるのかなというふうに思う人もいるんではないのかなと。  そこで、緊急経済対策における三十七万人の雇用創出効果というのと、今回における七十七万人の雇用創出効果が見込まれるというのは、どのように考えたらいいのか、ちょっと教えていただきたい。  例えば、一つには三十七万人というのが別個にあって、七十七万人、両方あって足した分が雇用創出効果なのか、もしくは全くそうではなくして、七十七万人の雇用創出効果の中に三十七万人が含まれるのか、それとも三十七万人と七十七万人が一部分リンクしてあるのか、その辺のところをもう少し詳しくお話しいただければありがたいと思います。
  7. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) 三十七万人というのは、まさに先ほど申し上げましたように、GDPが幾ら押し上げられる、それで雇用弾性値を掛けたらそういう数字が出てくるという極めてマクロ的な数字でございます。ですから、そういう三十七万人と今回の七十七万人を足すという性格のものではないということでございます。  七十七万人は、個別に、特に保健福祉分野なんかが典型でございますけれども、これは予算を伴いますので、新ゴールドプランで八万人であるとか、あとその他の保育とか障害者関係で二万人とかいうかたい数字もあるわけでございますが、それ以外は、確かに民間の活動がこうなるであろうということも織り込んだ試算にはなっておりますけれども、あくまでも今回は積み上げ的な手法で、向こう一両年効果が期待されるという、そういう推計をさせていただいたということでございまして、推計の仕方もとらまえ方も違いますので、両方足したり引いたりというものではないということを御理解いただきたいと思います。
  8. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 そうしますと、足したり引いたりじゃないというのは、積み上げ方式と、いわゆる雇用弾性値〇・三を経済成長率に掛けたものを見込んで三十七万人、そのマクロ的に見たものと積み上げ方式の違いというのはよくわかるんですけれども、ただ、正直申し上げて、報道で三十七万人雇用創出効果がありますよ、そしてまた一方では七十七万人ふえますよ、こう言われたときに非常に理解しづらい面があるのではないのかなと私は危惧するわけです。  ですから、私はもう少し丁寧にわかりやすくそういう数字というのを使う必要があるんではないのかなと。今の説明を聞いておっても、もう七十七万人と三十七万人を足すような性質のものじゃないというのはわかるんですけれども、例えば理解として、七十七万人の一部に三十七万人もリンクしておって、全体としてはそういう雇用創出押し上げ効果は、足したものではないけれども、それに近い数字のものがあるという理解でよろしいんでしょうか。
  9. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) これは、十あれば十それぞれ幾らで足し上げて十の項目の合計がどうかというたぐいの作業じゃございませんのでなかなか難しいのでございますが、今回の七十七万人の中でも、例えば住宅の場合には約四十万人ということを見込んであるわけでございます。これは住宅着工戸数が二十万戸ふえるという場合に、これだけの波及効果も含めて四十万人の雇用創出が期待されていくわけですが、一方の、最初のGDP押し上げられる、それに伴って雇用弾性値で三十七万人というときには、そのGDP押し上げの中に、じゃ今回の緊急経済対策でもろもろ盛り込まれている住宅政策が入っているのかいないのかといえば、観念的には入っていると観念できるわけでございますので、そういう意味で三十七万人とこの七十七万人の住宅分野雇用創出規模の間に全く関係がないとは言えないかもしれませんが、しかし今回やっている積算作業というのはそういう形ではやっておりませんので、あくまでも別個に、どちらかというと積み上げ的にやっておりますから、そういう意味の重複はないと言っても間違いではないんではないかというふうに思っております。
  10. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私自身は、今回こういう形で施策積み上げ方式雇用創出効果というのを出したということは大変評価しているわけであります。  というのは、今やっぱり三カ月連続で失業率が過去最悪の四・四%を続けている、失業者数が二百九十八万人を数える、こういう時期になって、やはりそういう積み上げ方式でこういう雇用創出がありますよといって試算することについては、今までない手法ですから大変私も評価するわけでありますけれども、でもよくあの中身を見てみますと、例えば今の室長さんの説明にあったように、住宅着工件数とか、それからほかの規制緩和によって雇用創出が見込まれる量というものと、それから福祉分野においてホームヘルパーがふえる、それから特養ができることによって職員がふえる、そういう政府予算措置をしたりすることによって確実にふえるという部分と、それからある意味では民間主導型でもって民間が頑張ってくれることによって雇用創出が図れる、そういうものを、数字を出したことは評価するんですけれども、そういうのを一緒に出してしまっているということに対して、私は別に考えなければいけないのではないのかなという気もするわけです。  ですから、そこに数字の何といいますか、大変生意気な呼び方ですがレトリックといいますか、信用できる数字と、それから期待数値と取りまぜになってしまっているんではないのかなという気がするんですけれども、その辺はいかがお考えでしょうか。
  11. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) 御指摘のとおりの面はあるかと思います。この種の積算作業にはどうしても伴う問題でございまして、確かに我々検討段階で、それぞれおっしゃるように予算と非常にリンクの強いものから、そうじゃない住宅のように、まあ政策はあれだけ大きなことをやっているわけでございますから、それが核になって民間住宅投資が活発になる、それに伴って雇用がふえていくというのは決しておかしな話じゃないと思っていますが、しかし、間接効果も含んでいるじゃないか、直接効果だけのものと間接効果を含んだものと足し上げることについてどうかという議論は、実は我々の検討段階でもいたしました。  ただ、そういうものであるということを、ここにちゃんと説明書きに書いてありますように、ですから、足してはいかぬと言われますと、かえってわかりにくくなるようにばらばらにしておくという手もございますけれども、当面具体的な雇用創出が目指し得るんではないかということを考えたこの四分野について、あえてこういうことで一両年頑張っていこうということでさせていただきましたので、個別の数字だけでもういいのかもしれませんけれども、わかりやすくという意味で注を伴いながら合計の七十七万という数字を表示させていただいているということでございます。
  12. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今回の試算なんですけれども、これは一両年試算ですから、恐らくこういう形で来年度の予算雇用創出効果というのを計算して出されると思うんですけれども、それ以外の今後の予算についてはこういうことをやっていく御予定なんでしょうか。
  13. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) 今回のものに準じてできるような具体的な分野が出てまいりましたらそういう作業をすることもあろうかと思いますが、一般的にはこれは大変難しい作業だと思います。あくまでもこれは五百兆円の大きな規模日本経済民間主導でやっている経済でございますので、各雇用分野における数字をはじくというのは大変難しいことでございます。一般的にはなかなか困難でございますが、これからも具体的な政策主導して何かをやっていくというような分野についての効果ということであれば努力をしていきたいと思っております。
  14. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 もう一回ちょっと基本的なことを確認したいんですけれども、効果評価のためにこの数値を積み上げて今回出されたわけですか。要するに、今年度予算雇用創出効果がこのぐらいある、だからそのためにこれを積み上げたと。  例えば単純に考えますと、七十七万人ほどの雇用創出効果はないかもしれないけれども、平成十年度だって、ゴールドプラン推進していけば、今まで何万戸か建てた特養に対して新たにふえるわけですから、そこには雇用創出効果は生まれてくる。それから、規制緩和をやっていけば、そこにも減る部分もあるけれどもふえる部分もあるということで、それぞれの年度について、ことしだとか来年だとかというのは、大きい小さいはあるにしても毎年雇用創出効果はあるわけです。  ですから、私が聞きたいのは、今厳しいときだからこういう対策をとって、大変難しいことだけれどもあえてことしと来年こういう雇用創出効果を出そうとするのか、それとも予算には全部雇用創出効果が伴うわけですから、これから先もこういうことを考えていらっしゃるのかというところをもう少し教えていただきたいんですが。
  15. 竹島一彦

    政府委員竹島一彦君) 今の先生お話では前者でございまして、こういうふうに厳しい雇用情勢が続いているという中でできるだけの施策を講じなければならぬ、そういう緊急的な発想からこういうことをさせていただいておりますので、雇用状況が改善しました場合にはこういう作業は必要なくなるものというふうに思っております。
  16. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 一番先に、今回なぜこういう七十七万人の雇用創出効果を出すかというお話をお伺いしたわけですけれども、一つには、こういう数値を出すことによって政府民間一緒になって雇用創出を頑張っていこう、それから各省庁もこういう予算づけをしたわけだから雇用創出効果を上げるために頑張ろうということもわかるんですが、その中に、我々が考えると、政府のなし得ることですから国民皆さんに対する説明もあったのではないかと思うんです。  ですから、例えばこの七十七万人という数字を発表したときに、それが丸々ふえるというふうに考える人もいるし考えない人もいるかもしれないけれども、今これだけ個人消費が冷え切っているときに、そしてまた雇用環境が悪化しているときに、昨年の経済対策における三十七万人とか今回の七十七万人ということを発表することによって、国民に対するアナウンス効果、いわゆる雇用不安によって個人消費が抑えられている部分を、これから雇用はある程度改善するんですよ、そして皆さんが不安に思っている部分は七十七万人丸々かどうかは別にしても大分改善していくんですよ、だから安心して少し消費の方に回してくださいという気持ちはなかったのでしょうか。
  17. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇用創出効果を具体的な数字で示そうという一番の発端は、政労使雇用対策会議の席上から生まれたものであります。政府側は労働大臣と通産大臣、都合によって官房長官も出る、そして日経連と連合で構成をされております。  その席上でいろいろな議論がなされました。百万という数字がなぜ出たかといえば、これは失業の中の非自発的失業、つまり自分の意思でなくて会社の事情により、あるいは倒産により事実上首を切られてしまった、そういう人たちの不安が社会不安として大きくなって、それが自己防衛に消費者を走らせて消費が停滞する、不況のまさに原因にもなっているんではないか。少しでも安心感を打ち出さなければならない。ですから、政府施策雇用創出するということにしっかりと目を向けて行われていますよという意思表示、表明をすべきである。これは労使から強い要請がなされたところでございます。その意思を政府としてもしっかりと受けとめよう。  ただし、正直申し上げまして計画経済ではございませんから、これで幾ら生まれますこれで幾ら生まれますと、資本主義自由経済ではそう簡単な算出はできません。もちろん介護福祉の分野のように予算雇用がかなり直結している部分は割と簡単にはじけるのであります。しかし、それ以外の部分は、民間の活力の部分とこれを支援する部分、いろいろありますから、なかなか方程式が一つぴしっと合ってそれでカシャッと出てくるというものではありませんけれども、これくらいは期待されるんではないだろうか、そのための施策を重点的にとっていくべきだ、そういう目標値的なことも含めて算定はできるだろうということで我々が掲げたわけであります。  当初は、GDP押し上げ効果によって雇用にはね返る数値しかその時点ではなかなかはじけない。もちろん労働省の分野では、過去の経験値から中小労確法の改正をするとどのくらいになるかというのをはじきました。他分野も可能な限りはじいてもらえないだろうかということで、恐らく初めての取り組みとしてこういうことをしたわけであります。  もちろん、GDP押し上げ効果と個別分野はかなりオーバーラップはあると思います。ただし、どこまでがオーバーラップでどこまでがネット値だというのはわかりません。しかし、こういう姿勢で政府雇用にしっかりと目を向けていきます、だから少しでも安心感を醸成するようになってもらいたいという思いでございます。
  18. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 大臣の思いはよくわかるんですけれども、逆に受ける側からすれば、例えば七十七万人と言われますとその部分がふえるんだと。実際ふえるんですよね。でも、その部分は確かに七十七万人ふえるんですけれども、例えば今回の七十七万人ふえるところでも、規制緩和なんかが入っていますからその部分で減る部分もあるはずだと思うんですね、この四分野でも。それから、社会全体で見れば、ことし一年間見れば雇用が減少するところも当然あると思うんです。  ですから、やはり私は国民サイドに立って考えれば、大臣が今おっしゃったようになかなか計算できないというのもよくわかるんですけれども、七十七万、三十七万とかと出てしまうとそれが丸々国民皆さんの頭に入ってしまって、では今失業者が二百九十八万いるのが約百万人ぐらいなくなるのかとか、そういうところまで考えてしまうのかなと。であれば、雇用創出は七十七万人ふえます、だけれども現実にこの一年間トータルでやっていけば減少部分もあります、そうすると差し引きでもってことし一年間最後に雇用創出されるのがどのぐらいですよということの方が、なかなか難しいことでありますけれども、国民皆さんからすれば非常にわかりやすいんじゃないかと思うんです。  ですから、今回の七十七万人の雇用創出というと、一年間七十七万人確かにふえるけれども、ふえる分と減る分とを差し引いて真水分はどのぐらいなんですかというとなかなか言えないと思うんですが、そこのところにやはり国民皆さん方は目が行くんではないのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  19. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇用失業情勢の抜本的解決は、もう先生先刻御承知のとおり、景気をいかにして引き上げるかということになります。景気の現状がはかばかしくいかないで雇用状況だけ改善するというウルトラCはなかなかないと思います。しかし、そういった中でも、個別分野ごとに雇用を生み出す努力をしてもらいたい、具体的な政策はこれこれこういうことを投入して引き上げますということを提示しているわけであります。そして、今御指摘の新たにリストラその他で雇用が失われる部分も当然あると思います。それがどのくらい失われてということの見通しは正直言って立ちません。もちろんリストラをやる間にも、雇用を維持していくための雇用維持政策というのは労働省が中心になって、雇調金であるとかあるいは労働移動支援金であるとか、いろいろな策を講じて雇用を失わせないような努力もしているわけであります。  でありますから、三つ四つの施策があわせて投入をされていくわけでありますから、この部分で幾ら減って、これで幾ら足してというのはなかなかできません。ただ、政府として具体的に、この分野でこのくらい、この分野でこのくらいという、雇用創出に一生懸命取り組んでおりますということを国民に対して訴えたいというところから出てきた発想でございます。
  20. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 大変難しいことはわかるんですけれども、やはり一つの目安といいますか、今おっしゃったように、例えば昨年の緊急経済対策のときには、あの緊急経済対策が二・三%国内総生産を押し上げる、だから雇用弾性値〇・三から〇・七をとって、低い方の〇・三でもって三十七万人というのを出した。それは理解できるんです。  では、私どもが今考えるときに、ことし雇用創出がこのぐらいありますよと、じゃ雇用減がどのぐらいあって、一年間でどの程度雇用がふえるのかなということを考えようとしたときに、今経企庁で出している経済見通しの〇・五%だとかそういうところに雇用弾性値を掛けても、平均値だから合わないとか、それから雇用総数が二十万ふえるという数字を見て、じゃこれでそのぐらいかなと思っても、それも違う。  そうすると、説明するたびにその物差しみたいなものが違ってきて、ことし雇用創出効果というのはどのぐらいあらわれて、雇用減少がどのぐらいあって、雇用がどのぐらい生まれるのかという真水の部分を見ようとするときに、どういう物差しを持って見たらいいのか私はちょっとわからないものですから、教えていただければと思うんです。
  21. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) ネットがどのくらいになるかというのはだれもわからないんだと思うんです。自由主義市場経済でありますから、これは民間の活動分野に多くが依存しているわけです。景気が予定より早く立ち上がっていけば雇用の改善も予定よりは早いですから、いきなり失業情勢が改善をされてくるということもそれはあると思います。  今、これから個々の企業がどう具体的にリストラをしていくのか、失業率がこれから先どう変わるのかというのは、明確なはじき方はできないものでありますから、市場にゆだねなければならない部分のことは精緻に計算はできませんけれども、我々が創出していく部分については、こうやってやっていくつもりです、このくらいは期待ができるんではないかということは示せるということでありますので、減る分がどれくらい減るかということについてはちょっとわからないんです。これが我々の今の限界値だというふうに思っております。  要は、政府雇用に相当ナーバスになって取り組んでいますよということを示す必要がある。これは労使一体となった要望でもあったんですね。そのときに、具体的にそんな細かい算定なんてできないんじゃないのという議論も実はいたしました。しかし、労使一体となって、世の中に対してこういう面に取り組んでいくということを政府が示すべきだと、強い要望もあったということはお知らせをさせていただきます。
  22. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 おっしゃることは本当に理解できるんです。ただ、大変大臣に失礼ですけれども、さっき大臣もちょっとおっしゃられましたけれども、ある程度の予測みたいなものは持つことはできるけれども、きちっとしたものはできないというのは、それはそれでいいんですが、やっぱりある程度の予測みたいなものがなければ、労働政策雇用政策というものを展開するときに判断材料がなくなるのではないのかなと思うんですね。  ですから、大変難しいのはわかるんですけれども、やはりそこら辺をもう少し努力していくことが必要なんではないかなと思うんです。
  23. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 私のお預かりしている労働政策分野は、極力雇用の維持をどう図っていくかという分野でありますが、その点に関しまして言えば、先生の御意見もしっかり受けとめて、これからも機動的に対応していくということだけはお約束できます。
  24. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 おっしゃることはよく理解できます。  今回いろいろお話を聞いておって、本当に大変単純で申しわけないんですけれども、緊急経済対策のときの、先ほども申し上げましたけれども、三十七万という創出効果試算したときには経企庁でやられていますね。そして、あのときのいわゆる雇用安定維持という部分での六十四万人というのは労働省で試算、そして今回、いわゆる七十七万人の積み上げ方式のときには内政審議室ということで、この試算推計するところが三カ所にまたがっているわけであります、それは種々の手法だとかいろんなことがあってそういうことになっているんだとは思うんですが。  ただ、雇用政策を考えたときに、これをやっぱり労働省で一本化してやることはできないのかな。例えば人手が足りなかったらそれぞれから出向していただいて労働省の中でもってそういう試算数値をはじいてみる、そのことによって雇用政策が一貫して、どの数字だとこれは違って、こっちを見るとまたこれも違う、ばらばらではなくして一貫した流れができるのではないのかな、そういうふうに私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  25. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 労働大臣と通産大臣のもとに政労使雇用対策会議というのがありまして、そこでいろいろヒアリングを各省いたしました。そのことも今回の個々の分野数字のごくあらあらの下地にはなっているんだと思います。政府産業構造転換雇用対策本部は、総理が座長役でありますが、労働大臣もそのもとで副座長といいますか、その役をいただいております。そこで労働省が準主役的な役割を果たしながら、各省に総理の号令のもとに呼びかけていくといういい体制ができております。そこに今度は幹事会を設置していろいろフォローしていこうということも決まっておりますので、先生の御指摘にあるような形でほぼ体制がとれるのではないかと思っております。
  26. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 どうもありがとうございます。  暫時、大野先生の方に質問を譲りたいと思います。
  27. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。大野つや子君。
  28. 大野つや子

    大野つや子君 自由民主党大野つや子でございます。予算委員会での質問は初めてでございますので、ふなれな点がございます。どうぞお許しをいただきたいと思います。  さて、本年の一月に中学生、高校生を対象として読売新聞が行いました全国青少年アンケート調査の結果を見て、正直、私は非常に驚いております。文部大臣もごらんになっているかと思いますが、先生に不満を感じたことがあるという回答が八三%、学校に行きたくないと思ったことがあるが六三%、そしていじめの被害に遭ったことがあるという回答が三四%にも達しています。また、私たち政治家に関係することですが、政治家への信頼度はわずか六%であります。信頼できないは何と九二%であります。子供たちの評価は率直に受けとめ、信頼回復に努めねばならないと思います。  文部大臣は、このようなアンケート調査の結果についてどのような感想、御所見をお持ちでいらっしゃいますか。また、こうした子供たちの現状への不満、不信は根深いものがあるだけに、容易に改善しないと思います。行政としても辛抱強く着実に改善を図っていく必要があろうと思います。そのあたりの御見解、心構えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  29. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先生指摘になられました読売新聞のアンケート調査、私も非常に興味深く見ました。確かに、忍耐の場である、学ぶ場であるべき学校において子供たちにかなり批判があるということは、これを見てよくわかりました。  ただ、私自身の経験からも、学校へ行きたくないと思ったことはありましたね、私も。そういう意味で、学校へ行きたくないなんという子供もやっぱりいるんだろうと。そういう意味では何とかして学校が楽しくなるように今努力をさせていただいております。  それからまた、先生に対する不満ということは、実は一月十日でございましたか、NHKで特集をやりましたときに、子供たちと一時間以上直接話しました。そのときにもかなり子供たちが学校なり先生に対する注文、不満を述べておりました。こういうことと重ね合わせまして読売新聞のアンケートを考えた次第でございます。ただ、私としては大変うれしかったのは、五四%の生徒が信頼できる先生がいると答えていることでございます。いずれにいたしましても、こういう子供たちの印象は大切にしながら今後進んでいかなければならないと思っております。  しかし、その中で特に悪口を言われたり仲間外れにされたことのある生徒というのが三割いたということは、やはりこの問題が極めて深刻であるということを認識いたしました。このいじめというふうなことは絶対許されないことでございますので、改めて子供たちの倫理観や規範意識の徹底を図っていく必要があると思った次第でございます。  こういう点で、心の教育は何かという御質問もきのうございましたけれども、心の教育なども、今後、学校現場あるいは家庭あるいは地域社会で進めていきたいと思っております。
  30. 大野つや子

    大野つや子君 文部大臣は一月末に、学級崩壊の実態を調べるため国立教育研究所などに事例調査を依頼する旨を明らかにされています。大臣は、学級崩壊はごく少数の例とは言えないがどこの学校でもある現象だとも言えない、できるだけ早く実態を詳しくつかんで必要な対策をとりたいと述べておられます。そして、マスコミ報道によりますと、最近の学級崩壊は小学生どころか幼稚園にまでおりてきていると言われております。こうした学級崩壊を防ぐには、何より原因究明を急がなければなりません。その意味で、大臣のとられた措置は時宜にかなったものと評価いたします。  そこで、大臣は実態調査を具体的にどのように進めようとしているのか、また必要な対策とは具体的にどういったものなのか。多くの国民の皆様が親の立場として注目していますので、わかりやすく御説明をいただきたいと思います。
  31. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず、私は十校程度、ごくごく少数でございますが現場を回ってまいりまして、それぞれの学校で学級崩壊というのがあるかということを尋ねましたけれども、ほとんどの学校でないと、それからほとんどのクラスでないということでございました。ただ、教育困難な子がいるということはやはり事実でございます。それからまた、新聞等々でいわゆる学級崩壊が随分言われておりますので、やはりこれは極めて重大な課題であると私は認識いたしました。  そこで、その実態や原因を明確にするために、今御質問のことでございますが、先月、国立教育研究所や大学の研究者、指導主事などから成る研究会に研究委嘱をいたしたところでございます。  この調査研究ではどういうことをやるかと申しますと、現在、小中学校における学級の経営がどうなっているか、その事例について幅広く収集し、実際幾つかの学校へ聞き取り調査をしていただくようお願いをしております。こういうことで、私どもがちょっと行ったところでは見えないようなことを突っ込んで検討していただきたいと思っております。
  32. 大野つや子

    大野つや子君 子供の心がすさんで犯罪や学級崩壊につながっているということが言われています。では、すさんだ心に対して何か処方せんはあるのかと考えてみますと、簡単に答えは出てこないと思います。子供に影響する大人の世界がよくならないと子供も変わらないという論調があり、確かにそのとおりと思います。これを解決するには長期的、構造的な対策、対応が求められ、日本政府挙げて取り組むべき大きな課題であろうと思います。  さらに、子供の世界に限って心の教育問題を考えますと、いわゆる道徳教育の充実が求められます。つまり、国や郷土、家庭を愛し、よりよいものにするよう努力する、そうした行為や考え方をとうとぶ道徳教育でありますが、それが十分行われていないのが今日の状況であろうと考えます。  そこで、大臣にお伺いをしたいのでございますが、国旗・国歌の位置づけについて、学習指導要領では国旗・国歌についての位置づけはどのようになっているのか、どんなように書いてあるのかということを実際にこのページを繰ってごらんになったことがあるでしょうか。(資料を示す)  実は、この一番最後のページにございます。ここに今示したものが高等学校向けの実物でございますが、全三百八十五ページのうちこの最後三百八十五ページ目に、つまり最後の最後のページ、しかも最後から二番目の項目で、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と、わずか一行半しか書かれてございません。本当はつけ足しみたいにこんなところに記述するのではなく、もっと前面に出していただきたい、一番前にでも出していただきたい、そんな気がいたします。  また、「その意義を踏まえ、」、とりあえずその意義について何も言及がありませんが、だからいろいろな解釈をしてしまうのだと思います。もっとわかりやすく各国の国旗に敬意を払うとともに、国際儀礼でもあることは具体的に書いて指導すべきであると思っております。  私は、国を愛する気持ち、それがやはり自分の国の国旗を愛し国歌を愛するということにつながってくる、そう考えておりますが、文部大臣の御意見はいかがでしょうか。
  33. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 委員指摘の点に関しまして、私も同感なところが幾つもございます。子供たちが将来国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長するためには、学校教育において国民として基本的な倫理といたしまして、我が国の基本的なしつけといたしまして、我が国の国歌・国旗はもとより、諸外国の国歌・国旗に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てていかなければならないと思います。  小学校あるいは中学校の学習指導要領などを見ておりますと、この点かなり前の方で重要なポイントとして指導するよう明記しているところでございます。学習指導要領においては、社会科で我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育て、道徳で郷土や国を愛する心を持つことを指導することとしておりますほか、たびたびここでも御議論賜りました、入学式や卒業式などにおいて、その意義を踏まえ、国旗を掲揚し国歌を斉唱するよう指導することを明記いたしております。私は、高等学校の前の問題であると思っておりまして、特に小学校、中学校ではこの点についてきちっと今後も指導をさせていただきたいと思っております。  文部省におきましては、今後も国を愛する心、郷土を愛する心、人を愛する心というふうなことをしっかり教え、国歌・国旗についての指導も行うよう努力をいたしたいと思っております。
  34. 大野つや子

    大野つや子君 御答弁ありがとうございました。  そこで、教育基本法を見直すことで子供の心の教育にも新たな活路が開けてくると考えます。現行の教育基本法は、国を愛する健全な心、日本の歴史、伝統の尊重、国民としての義務、道徳等について明確に規定されておりません。教育基本法は昭和二十二年三月に公布され、五十年以上が経過しております。今の子供が置かれている状況、教育現場、環境に合わせて改善、見直す必要があるのではないかと思います。  私ども自由民主党も、平成九年十月にまとめました「教育改革推進の提言」の中で、  子どもたちが安心して生活することができるのは、父や母をはじめ大人たちが義務と責任をしっかりと果たしていることや、先人の大変な努力により安定した立派な国家が存在しているお陰であることを子どもたちに理解させ、彼らもまた将来国民として協力、貢献する責任があることを認識させる必要がある。 とし、かかる趣旨を織り込んだ教育基本法の見直しを提言しております。  教育の憲法である教育基本法を見直し、子供の心の教育の改善につなげていく私どもの考え方について、文部大臣はどのような認識をお持ちでいらっしゃいますか、お聞きいたします。
  35. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 教育基本法についてさまざまな御質問があり、私もたびたびお答え申し上げてまいりましたが、教育基本法の第一条を見ますと、教育の目的として、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、」というふうな言葉が書いてございます。そういう意味で、平和的な国家ということで国を愛するというふうな気持ちがあると思います。  それから、「勤労と責任を重んじ、」というところに、我々国民全体がもっと責任を持っていかなければならない、そういう責任をきちっと重んじて教育をすべきだ、勤労の大切さも教えるべきだというふうなことが書いてございます。  それから、「心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」とされております。こういう点で、国民が身につけるべき基本的な徳目はかなり示されているかと思います。道徳教育や国を愛する心、日本の歴史、伝統の尊重など、このような国民として生きていく上で普遍的かつ基本的な事柄を教えることは、こういう意味で第一条の趣旨に含まれていると考えております。  ただ、教育基本法につきましては制定後さまざまな議論がございます。そして、道徳教育などの記述が具体的文言としてないという御意見があるということもよく存じ上げております。これにつきましては、現行学習指導要領などにおいても既に相当程度具体的に定めていることでございます。そしてまた、特に新しい学習指導要領においてより一層この充実を図るということにいたしております。  ただ、さまざまな時代を経ておりますので、教育基本法の見直しの検討につきましては、戦後教育の基本として果たしてきた役割を踏まえながら、さまざまな御意見にも耳を傾けて国民的な議論を積み重ねなければいけない、そして慎重に行っていくべきものと考えております。  たびたび同じような御答弁で申しわけありませんけれども、この重要性に関しては私どもよく認識しているところでございます。
  36. 大野つや子

    大野つや子君 先ほど、子供の世界は大人の世界を反映している、大人の世界の改善のため国を挙げて取り組むべきと申し上げました。ただ、その一方で、大人の世界の悪影響を子供の世界に及ぼさない措置を講ずることで子供の健全な成長、心の豊かさの回復が実現されていくのではないかと思います。  しかし現状は、私、母親の立場から申しますと、雑誌、テレビを初めインターネットなど性に関する情報が至るところにはんらんしております。さらに、若者や中高生、小学生などへのドラッグの浸透が心配され、危機的な状況であります。大人においても恥ずかしく嘆かわしい大問題でございますのに、まして子供たちへの悪影響ははかり知れません。  文部大臣、この問題について、青少年の健全育成の観点から率直な感想をちょうだいできたらと思います。
  37. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私もこの問題は極めて重要なことと思って心配をしております。まず、子供たちに対する影響が大きい大人の人たちが正しい行動をしてほしいと思います。特に援助交際などということは絶対やっちゃいけない。こういう点について私どもも大変心配をし、さまざまなところでそういうことのないよう努力をさせていただいております。  それから、特に最近では、主に覚せい剤でございますが、覚せい剤の乱用が起こってきている。これにつきましては、お父さん、お母さんに差し上げます家庭教育ノート等においても、絶対使わないようにしてほしい、使わすなということを言っておりますし、性の逸脱行為などについてもお願いをしている次第でございます。薬物に関しましては、厚生省とも一緒になりまして、さらに教育を進めていきたいと思っております。  それから、暴力であるとか性に関する映像が多過ぎると私は思っています。新聞、雑誌等を初め、特にテレビ、インターネットでこの問題は大きいと思っています。しかし、私は敗れました。さんざんVチップを導入するとか、そういう手段を講じてでも子供たちに余りにも暴力的な映像やあるいは性に関する映像を見せないでほしいと。Vチップというのは一つのシンボリックなものでございますけれども、もっとやってほしいということを申しましたが、私は敗れました。何で敗れたかというと、言論の自由、表現の自由という憲法によって保障されたものがあるということが常に言われまして、私は二回、三回とこの問題に関しては敗れた次第でございます。しかし、今後もこれは引き続いてやっていきたいと思っています。
  38. 大野つや子

    大野つや子君 大臣、ありがとうございました。大臣の強いお心でこれからもしっかり取り組んでいっていただきたいと思います。  次に、地域社会における子供の活動の振興についてお伺いいたします。  心の教育を充実させていくためには、学校を取り巻く地域社会の力を生かすことが重要であると考えます。実際、子供は学校の中だけで育つのではなく、地域社会において豊かな遊びや学びの経験を積むことによって人間として成長していくと思います。特に、平成十四年度から完全学校週五日制が実施されることにより、地域での子供の活動を振興していくことが重要であると思います。  文部大臣、地域社会における子供の活動の振興を関係省庁と連携しながらどのように進めていくお考えがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  39. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先生指摘のように、特に平成十四年、二〇〇二年より完全学校週五日制になりますので、どうしても地域社会にお願いをしなければならないということが私どもの認識でございます。すべてを学校で教えることはもう不可能である。ですから、どうしても家庭とか地域社会に教育をお願いしなければなりません。  そこで、今さまざまな計画を進めているところでございます。大野先生質問の子どもプランのことでございますが、現在全国子どもプラン緊急三カ年戦略を策定いたしまして、関係省庁との協力を得ながら緊急かつ計画的に施策推進させていただいております。  全国子どもプランというものの主な内容は、まず第一に、通信衛星により毎週学校休業土曜日などに全国の子供たちの心に例えばスポーツ選手や科学者などが直接語りかけるプログラムを提供いたします。そういう子ども放送局を設置することにいたしております。子供たちからも質問を受けられるようにしたいと思っております。  それから、全国の親や子供たちにさまざまな体験活動や家庭教育支援に関する情報提供を地域ごとに行う子どもセンターの全国的な展開を図っているところでございます。  そしてまた三番目に、各省庁と連携して子供の豊かな体験活動を推進するということを図っておりますが、例えば建設省及び環境庁と提携いたしまして、子どもの水辺再発見プロジェクト、川や湖の水辺を子供たちに遊べるようにしていただく。それから、子ども長期自然体験村を設置し、あぜ道やせせらぎで遊べるようにする、これは農林水産省と提携して行っております。さらにまた、通産省、特に中小企業庁と連携いたしまして、子供たちに商業活動体験というものをやるよう現在努力をいたしております。さらにまた、環境庁にお願いいたしまして、国定公園やあるいは国立公園等々における、子どもパークレンジャーと言っていますが、子供がレンジャーについて自然に親しむというふうな施策を現在進めているところでございます。
  40. 大野つや子

    大野つや子君 続きまして、さきの質問に関連いたしますが、麻薬の低年齢化に対する予防策についてお伺いしたいと思います。  麻薬被害の低年齢化に対し厚生省を中心にして対策を講じられているようですが、最近は小学校の高学年にまで影響が浸透していると言われております。そこで、小学校レベルにおいても麻薬、ドラッグが悪いことを予防策として十分に教えていく必要があるわけです。我が国の被害状況は幸いにも諸外国に比べ低いと聞いておりますが、大きくならないよう最善の策をとる必要があると思います。  厚生省では、中学生以上を対象に乱用防止読本、このようなものが出ておると聞いております。麻薬の害を教えているわけでございますが、本年は中高生の保護者を対象にした乱用防止読本がつくられると聞いています。私は、さらに小学生向けにも麻薬被害の撲滅を目指す努力を期待するわけでございますので、子供たちにもわかりやすい、小冊で結構だと思います、漫画でもいいと思いますが、早急に着手されるよう重ねてお願いしたいと思います。  この点につきまして、厚生大臣文部大臣にお伺いしたいと思います。
  41. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 覚せい剤等の検挙件数でございますが、今、第三次乱用期とも申すべき状況でございまして、大幅に増加しておりますが、平成九年では高校生の検挙者数は二百十九人、中学生が前年とほぼ倍増の四十三人というように薬物乱用の低年齢化が浸透しておりまして、大変心配しております。  厚生省では、学校における薬物乱用防止教室へ薬物乱用防止キャラバンカーを派遣したり、あるいは麻薬取締官のOBを派遣する等、予防啓発活動を推進しておるところでございます。特に十年度におきましては薬物乱用防止キャラバンカーを一台から四台に増設しまして、全国に啓発宣伝をやっておる。それから、今御指摘のように、中高校生の保護者用の薬物乱用防止読本を約九百万部作成してこれを配付することにしております。それから、高校生のイベント等の問題も対応しておる。  薬物の低年齢化ということですが、小学校六年生の薬物乱用事件も御指摘のようにございました。したがって、小学生のうちから薬物乱用による健康被害に関する正しい知識を啓発することが重要であると考えておりますので、これから検討いたしまして、小学生のための啓発用読本を作成するなど、今後、予防啓発活動のさらなる充実強化を図ってまいりたいと思っております。
  42. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 委員指摘のように、数の上では諸外国に比べてまだまだ少ない方でございますが、今、厚生大臣が御指摘になられましたように非常に増加傾向でございます。この点について私どもも極めて憂慮していることでございます。  そこで、政府として、昨年五月、薬物乱用対策推進本部において策定いたしました薬物乱用防止五カ年戦略を強力に推進し、青少年への薬物乱用防止に関する指導の充実を図っているところでございますが、文部省といたしましては、まず警察官や麻薬取締官OB等を講師として、薬物乱用防止教室を全中学、高校において毎年開催することにいたしております。これは大変効果的のようでございます。  それから、今回の学習指導要領を改訂する際に、新たに小学校から薬物乱用防止に関する指導を行うよう明記することにいたしました。そしてさらに、平成十一年度予算案におきまして、新たに小学生用教育教材を作成して配付する予定でございます。また、薬物乱用防止教室がより効果を上げるよう、指導者用のマニュアルを作成する予定にいたしております。また、先ほど申し上げましたように、家庭教育ノートには薬物、特に覚せい剤は絶対使用しないようにということが既に書かれております。  厚生省を初めとする関係省庁とも、情報交換はもちろんでございますが、参考資料等の作成に当たっては協力を得るなど、さらにまた必要なところに指導者として、教育者として出向いていただくよう連携を積極的に進めているところでございまして、今後とも薬物乱用防止教育の一層の充実を図っていきたいと思っております。
  43. 大野つや子

    大野つや子君 文部大臣、ありがとうございました。  厚生大臣には引き続きお伺いをしたいと思います。  まず、臓器移植問題についてお伺いいたします。  皆様も御存じのとおり、二月二十八日に脳死の判定がなされましたドナーから、平成九年十月の臓器移植法の施行後初めての臓器移植が行われたわけです。それだけにマスコミ、国民の注目度は極めて高かったわけでございます。しかも、これまでのところ、臓器移植後の患者さんの状況はおおむね順調であるとの報告がなされております。  ここに、臓器を御提供いただいた方の御冥福を心からお祈りしたいと思います。また、御遺族に対しても、重い判断をよくなされたと敬意を表し、感謝する次第でございます。  臓器提供を受けた患者さんやその家族の方からも、ドナーに深く感謝したいと述べられています。今回の貴重な経験を生かし、臓器移植を順調に我が国医療に今後根づかせなければなりません。  そこで、厚生大臣、今回の臓器移植に関しての御所見を賜りたいと思います。
  44. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、委員お話しいただきましたように、最初の我が国の臓器移植法による臓器移植でございました。  臓器を提供いただいた方の御冥福を心から私もお祈り申し上げたい。それからまた、御家族の方のとうとい御決断というのは大変なことだったと思いますので、改めて敬意を表し、深く感謝を申し上げたいと思います。  今回の事例は、今申しましたように初めての事例でございますので、これが成功したと、今の段階では移植を受けた方々も健康状況は徐々に回復して順調のようでございますので、大変結構なことだと思いますが、これによって我が国の移植医療というのは新たな時代を迎えることになったというように認識しておりまして、我が国に移植医療が定着するように、これからもこの事例を検証して、そしてその結果を教訓として今後とも各般の推進をしてまいりたい、こう思います。  特に問題になりましたのは、提供される御家族のプライバシーの保護の問題と、それからやっぱり情報開示といいますか、一連のこれをきちっと整理をして今後の臓器移植に役立たせるということが極めて重要なことでもあると考えております。
  45. 大野つや子

    大野つや子君 ありがとうございます。  次に、今回のとうとい御遺志を大切に育てさせていただくためにも、臓器移植に関して国民理解を一段と深め、個人がみずからの判断で十分納得し安心してドナーになれる環境の整備に努めなければならないと思います。その観点から質問をさせていただきます。  今回、大阪大学附属病院では心臓移植手術が行われました。その際、日本臓器移植ネットワークが行った患者さんの順位判定が当初間違っていました。順位二位の患者さんが移植手術を受ける最優先患者と判定されていたわけです。すぐに誤認に気づき事なきを得たとのことですが、二度とこのような順位の判定違いのないよう、強くお願いしたいと思います。  また、順位判定の手順、基準について、国民に納得できるように情報公開をしておく必要を感じております。なぜなら、そこに意図的また作為的な判断が入る余地をつくる、ないしは意図的な判断ではないかとの疑念を招くようなことがあってはならないからでございます。  厚生大臣に、順位判定の基準について説明を求めますとともに、その情報公開についての御所見を伺いたいと思います。
  46. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 移植患者の選択につきましてでございますが、日本臓器移植ネットワークという社団法人がございますが、そこで順番を取り違えたということがございました。大変遺憾なことでございますが、これは要するに、大阪大学の患者とそれから国立循環器病センターの患者でございますが、この候補者との間で、実際に集中治療室に入って昇圧剤の点滴を受けた期間が三百日ありましたが、それを加算しなかったものですから逆転していたというミスでございます。これは残念なことでございます。  こうした選択基準は、やはり委員のおっしゃるように、医学的見地を踏まえながらもわかりやすく公平、公正に行われなければなりませんので、この点はしっかり検討して明確にして、また必要であれば情報開示もして、一般にどのような順序で行われるかを示す必要があろうかと思っています。  それから、一般的に今、後者の情報開示の問題でございますが、この臓器移植の事例に係る情報開示全般のあり方は大変、今回第一回目の最初の症例であるわけでありますけれども、先ほど申しましたように、プライバシーの保護と移植医療の透明性の確保の両立の面からその調整を図っていかなければなりません。  患者の方々の家族の方々も一段落をした後の学術的な情報開示については御理解もいただいておりますので、これらを整理してしかるべきときに、今後の臓器移植のためにやはり有用なプロセスであろうと存じますので、これも必要に応じて開示をしていきたい、こう思っております。
  47. 大野つや子

    大野つや子君 ありがとうございます。  最後に、臓器移植に関する厚生省の行政のスタンスについてお聞きいたします。  今回は初めての脳死移植であったにもかかわらず、おおむねそつなく問題処理を進められたと思います。ただ、幾つか気になる点がございました。  一つは、臓器移植前の過程における情報公開の問題です。もちろん個別にはドナーの家族の承認も得る必要があるでしょうが、どういう情報は公開していい、あるいは公開できないといった基準がはっきりとなければなりません。また、情報の公開のタイミングに関しても、明らかになった時点で即時開示するのか一定期間を置くのかについても、情報内容によって違いがあると思います。厚生大臣は、こうした情報公開のあり方全般に対してしっかりした基準を設けて対応していただきたいと思います。  何といっても、関係者の方々のプライバシーには行政及び病院側は十分過ぎるほどの規制と配慮が必要であると考えます。今回のマスコミ報道の中には、その点が欠落しているものも多く見受けられました。国民の臓器移植に対する信頼を盤石なものにするためにも、情報公開とプライバシーの保護にはしっかりと対応していただきたいと思います。  厚生大臣の御認識を伺って、私の質問を終わります。
  48. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員のおっしゃるとおりでございまして、私どももプライバシーの保護とそれから情報開示との調整をどういうプロセスでやったらいいか、今回の事例を今後の参考のためによく検討をして、また必要なものは情報開示もしていきたいと思っています。
  49. 大野つや子

    大野つや子君 ありがとうございました。
  50. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で斉藤滋宣君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  51. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、海野徹君の質疑を行います。海野徹君。
  52. 海野徹

    ○海野徹君 民主党・新緑風会の海野であります。  総括質疑で時間の関係で御質問できない部分がありました。その問題を中心に御質問をさせていただきたいと思っております。  まず最初に、大蔵大臣に御質問させていただきたいと思いますが、大変今世の中不況でありまして、いろんなところで何とかしろというようなお声を随分聞いておりますし、私ども地元へ帰りましても中心はその話題で、それ以外の話題ということはあり得ないような状況なんですが、しかしながら、まだまだ日本は非常に豊かじゃないかというような議論があります。  確かに、数字から見ますと、アジア全体の七割を占める五兆ドルの経済規模がある。あるいは対外債権、海外純資産の残高、あるいは外貨準備高、一人当たりのGDPはG7の先進国ではこれはもうトップなんだと。そして、日本の平均年収はアメリカの一・四倍もあるんじゃないか。貯蓄率は、日本が一四%もあるにもかかわらずアメリカはゼロに近い。しかしながら、個人の消費額はアメリカの方が日本の一・五倍もある。ブランド品に関しては、最高級のブランド協会のレポートがありますが、欧州の売り上げ、ヨーロッパの売り上げは横ばいだ、アジアは激変している、しかしながら日本だけは二〇%近く伸びている。  こんな数字を見ますと、非常に日本はまだまだ豊かなんだなと。不況って何だろうかというようなことなんですが、実際は大変な不況である。これが数字のマジックなのか、あるいは実質的な数字が別にあるのか、あるいは市場経済の本質的な問題がどこかに横たわっているのか、いろんな問題があるのじゃないかなと思いますが、私はまだまだこういった問題は本質的な議論をしなくちゃいけないんじゃないかと思います。数年前までは大変バブル絶頂のときは非常に日本は豊かなんだ、しかしながら個人的な豊かさが生活実感として伴っていない、その辺の政策をどうするんだというようなことがありました。  私はそういった意味で、ある意味では管理者層の姿の中で、金融機関が持っている不良債権の処理はできているんですが、精神面における不良債権の処理が管理者層にないんじゃないか。そういった意味での日本の悲劇性を非常に感じるわけなんですが、大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) おっしゃいますように、我が国で非常に貧乏なのは政府でございますが、国全体で申しますならば、家計も海外勘定も大きな黒字を持っておるわけでございますので、国が貧乏なわけではない、政府が貧乏だと。本当を申せばそう申し上げるべきなんだと思いますけれども、しかし、それにもかかわらず、国民にございます一種のフラストレーションというのは、統計的に申しますならば、やはりマイナス成長が四四半期も続いていて、そしていつプラス成長になるか見当がつかないという問題がございます。  政府は、平成十一年度は年度といたしまして〇・五%の成長を心がけておりますが、今四半期ごとに四回続きましたマイナス成長が、間もなくこの十─十二月期が一両日中に出るわけでございますが、ここでプラスに転じるか転じないか。これはしかし、いずれにしても十一年度分じゃございませんのですが、まだそういうような状況にいるわけでございます。  そして、恐らく日本経済が二十一世紀に向かって経済社会が非常に大きな変革をしなければならないということは国民皆さん薄々と感じていらっしゃいますけれども、今までいろいろ日本経済のプラス成長を困難にしているいわば大きなインベントリーと申しますか、あるいはヘドロのようなものと申し上げることがいいのかもしれません、それがどのぐらいあるのかということが実はわかっていない。それは政府もわかっておりませんし、エコノミストもわかっていないわけでございます。したがって、マクロモデルでやりましてもみんな同じような計算を実はしているのでございまして、そのもとになるデータがつかめていない。  これがまた国民がフラストレーションを感じるもとでありますし、政府自身も、平成十一年度〇・五%成長するんだね、それならそれを分析して言ってみろとお尋ねがありましても、それはデータがわかりませんので申し上げられない、そういう現状というのが、しかも二十一世紀には非常に大きな変革をしなきゃならないということだけがわかっている。そういういろんな意味でのフラストレーションではないかというふうに私は思っております。
  54. 海野徹

    ○海野徹君 私も大蔵大臣の認識とほぼ同じであります。こういうような不況のとき、今回の一九九九年度の予算もそうなんですが、すぐ財政で何とかしろ、財政出動だというような話があります。これを数年繰り返してきました。  以前、大臣には決算委員会で私も話をさせていただきました。アクセルを踏んだりブレーキを踏んだりあるいはそのタイミングを間違えたり、あるいは今度はアクセル全開だ、地方自治体も大変なんですよ、そういうようなお話をさせていただいたんですが、いまだに不況脱出の出口が見えてこないというのが実態じゃないかなと思います。これまで多額の公共投資が行われてきたその現実、景気の下支えになっているこの実態、それがあります。となると、まだまだこれからもやはり同じような財政出動、ゼロというわけにはいかない。  大臣も長年にわたりそういった意味で景気対策を検証されてきました。こうした不況から脱出して本当の意味での豊かさを実現するための公共投資とは一体どういう姿なんでしょうか。あるいは大変最近いろんな学者の方々が公共投資の経済波及効果はもう減少していますよというようなことを言われますが、その辺についての分析がありましたら御見解をお伺いしたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それで、前の続きを申し上げますと、おっしゃいますように、何年も続けてお人によっては百兆に近いという公共投資をやってきて、一向にどうも頭が水面に出ない。いつ出るんだということが計数的に申し上げられないということを先ほど申しましたんですが、しかし、そういう積み重ねた努力によってヘドロがだんだん固まってきて、今度こそは水面に出られるかな、そっちの方向に向かっているということだけは間違いないわけでございます。  そういうことも考えまして、このたびの公共投資につきましても、例えば物流関係であるとかあるいは二十一世紀を展望した投資であるとか生活枠と称するもの、物流関係は一千五百億でございますし、二十一世紀を展望したものは千億、それから生活枠が二千五百億。  これはある意味で二つ問題がございまして、一つは即効をねらいたいということ、しかし我々が水面に出たときには二十一世紀を向いていなければいけないわけですから、それに役立つもの。それから、いわゆる今まで考えられておりました公共投資。これは御批判はありますけれども、しかし雇用に非常に不安がございますものですから、殊に地方のことを考えますと、これも全くなしで済ますというわけにはいかない。そういう種類の公共投資を思い切っていたしております。  しかし、海野委員がおっしゃいますように、こういうことがこれから毎年何度でもできるわけではないという思いがいたしております。
  56. 海野徹

    ○海野徹君 大臣の方から、毎年できる問題じゃないというようなお話がありましたが、まだまだ、将来に向けての都市のあり方、あるいは地域のあり方、国のあり方を考えますと、公共投資が全くなくなってしまうというわけにもいきません。  そういった中で、問題はやっぱり財源ということになってきます。今、国、地方を問わず大変な財政赤字、大臣がおっしゃったように貧乏なんだということなんですが、さりとて不況下で、では民間からPFI方式を含めてすぐ資金を調達できるか。なかなかそういうことはできないんじゃないか。やむを得ずしばらくの間、国債、地方債にある程度依存するという部分が出てくると思います。  そういった意味で、今回の予算にあります三十一兆円、大変大量な国債発行であります。その問題が引き起こしたいろんな問題点があるんじゃないかと思いますが、その問題点と、それにいろんな意味で対応されたというふうにお聞きしておりますし、その対応をした中でのまた問題点が新たに浮き上がってきたんじゃないかと思いますが、その点について御見解をお伺いします。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の夏ごろまでは長期金利が〇・六というのがたしか一番低い金利であったと思いますが、とにかく一より下の金利が続いておりまして、これはいかにも異常であったわけでございますが、昨年の十一月、十二月のころから長期金利の上昇が始まりまして、ちょうどそのころに政府予算編成をいたしまして、平成十一年度の国債が大量になるということ、それから資金運用部のいわば財源が、平成十一年度はともかく、十二年度はどうも減っていくのではないかということもございまして、運用部が今まで月中に買っておりました既発債を買うのを一月にはやめるというふうなことを申しましたこともありまして、多少過剰反応であったと思いますけれども、金利が二を突き抜けまして二・幾つということになりまして、これは私どももちょっと不注意だったと私は率直に思います。  しかし、それは過剰反応でありましたせいもあり、また私どもも、やはりこれだけの国債を出すとなれば、期限、国債の期限でございますね、それもいろいろなバラエティーをつけるべきだし、また、資金運用部についてももう少しいろいろなやりくりもできるだろうというようなこともございまして、多少その辺の心構えをやはり発行者としては考えなければならないということもございまして、長期金利はまた二を割り込んだわけでございます。一・八とか九とか言っておりました。  しかるところ、その後に日本銀行がオーバーナイトの金利をゼロにしてもやむを得ないという政策をとられました結果、その残った金はだんだん期間物であるとかあるいは国債まで及んでまいりまして、したがって、十年物の指標銘柄の利回りは、昨日、一・六幾らであったと思いますが、今日もきっと一・七とかその辺にいるんだと思います。  それは結局、国債の値のことを申し上げておるわけですから、相場の裏側を申し上げているようなことで、どっちみちどこかに安定するというものではないと思いますけれども、ただ、大量の国債を発行するという事実には変わりがありませんので、やはり発行者としては今後十分いろいろ注意をしていかなければならない。幸か不幸か民間の資金需要は出てまいりませんけれども、しかし、国が発行するにいたしましてもやっぱり有利な条件で発行するということは大事なことでもございますので、十分注意をしなければならないという現状だと思います。
  58. 海野徹

    ○海野徹君 過剰反応あるいはこちらも不注意だったというような話で、いろんな対応を考えていらっしゃる。  ただ、残念なことに、まだまだ民間資金需要は出てこないということなんですけれども、余りにも大量な国債発行の与信がありまして、日銀で国債を引き受けるべきだというような議論が非常に声高に叫ばれました。私どもとしては非常にこれは危険だ。財政法上でもこれは禁止している。つい我々の父親の年代のときはそれで大変な状況を見ていますから、そういうことがあってはいけない。ましてや、調整インフレ論で有名なポール・クルーグマン教授がそういうことを言っている延長線上にあるなというようなことを聞くものですから、非常に気になるところなんです。  それ以前にやることがあるんじゃないかなと思いまして、ちょっと提案させていただきながら見解をお聞きしたいわけなんですが、民間千二百兆円とも言われております。この中で拘束性のあるお金がたくさんありますから、純然たる金額として活用できるお金というのはその何分の一かと思うんですが、それが海外にも流出しているというような実態もあります。あるいは外資系の銀行がそれを目指して来ているんだというような話もあります。そういう中で、公共投資に十分活用できる資金が私は潜在的にあるんじゃないかと思っています。  だから、ある意味では非常に魅力ある特別な種類の、民間の資金を持っていらっしゃる方々にとって魅力ある国債が発行できれば、それは部分的かもしれませんけれども、引受手は出てくるんじゃないかなと思います。そうやれば、国債の消化の問題あるいは過剰貯蓄の問題も解消できていくんではないか。そんな国債を検討してみる御用意はございませんですか。
  59. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今言われましたのは、無利子でもいいからそのかわり相続税はかからないとか、そういったようなことでございますね。  かつて田中角栄さんが総理大臣でいらしたときにそういうことを考えられたことがございましたし、聞くところではフランスがアルジェリア戦争、その前のインドシナ戦争あたりのときに財政が悪くて一遍やったそうでございますけれども、うまくいかなかったというようなことを聞いております。  これは、財政のオーソドックスな立場から言えばもう反論することはわけないことでございますけれども、そうでない、こういう異常なときには異常なことも考えるべきではないかという意味お話を伺っているわけですが、どうもうまくメリットが出てこない。税の公平とかいろんなことはとにかくもう申し上げないとしまして、メリットが出てこない。それだけの大きなものが吸収できないのではないかというような思いがしております。  オーソドックスなお答えをすることはわけのないことですけれども、そうでない時代でございますから、効果があればひとつ考えなければならないということは、私は、おっしゃることはおかしいとは思っていませんが、どうもメリットが出そうもないという感じがいたします。金額がそれだけ大きくいかないんじゃないか。
  60. 海野徹

    ○海野徹君 メリットが出ないというお話がありましたが、私どもは研究してきました。個人貯蓄を社会資本整備に活用する手法としていろんな角度から勉強しています。今おっしゃったいわゆる相続税の減免国債、相続国債、あるいはレベニュー債、あるいは株式転換請求権つきの国公債、こういうようなものが使えるんじゃないかなというような研究が一応我々として出ているんです。  もう一度お伺いさせていただきます。  相続国債、相続税減免国債、これは利息や将来の償還負担の軽減のために極めて低利、長期の条件で発行するということ。そのために、低利を補うから相続資産のうち相続国債分に係る相続税の減免特典を付する。利率は、現在の金利水準で考えると検討の余地もあるかもしれませんが、おおむね公定歩合程度、二十年満期、そういうような発行条件。これは、技術的な問題さえ検討すれば、要するに技術的な問題だと思うんです、できるんではないかと思いますが、再度御見解を伺います。
  61. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 技術的には私はそんなに難しい話ではなさそうに思うのでございますが、一体どれだけのものがそれで売れるだろうかということ。それから、これまた全く矛盾するようなことを申し上げるんですが、そういう国債があるんならみんなそっちを買うのじゃないか、そうするとこっちの国債が売れないんじゃないか。矛盾したことを申し上げているんですけれども、そんなことを言う人もあります。  私が申し上げていますのは、技術的にできないとは思いません。それから、いろいろ理屈はあっても、それは普通の時代でないんだからやってみようかということは十分あり得ると思うんですが、実は今発行しております国債のクーポンレートは一・九でございますので、現実に十年物で一・九というレートはかなり国際的にも平時からいっても低いレートでございまして、民間の資金需要がないからでもございましょうけれども、そのぐらいで国債の発行ができているものでございますから、注意しなきゃいけませんけれども、オーソドックスな方法でやっていけるのではないかなというふうに思っているわけでございます。
  62. 海野徹

    ○海野徹君 流通性の問題ということで、どれだけの資金を吸収できるかというようなお話がありました。相続税を納める人を対象にしますから、非常にそういった意味では売れる先というのは限定されていると思います。  ただ、非常に日本人というのは高い貯蓄性向を示していますから、未来型志向の社会資本の整備については、大変な売れる先というか購入層になっていくんじゃないかと思いますし、それと同時に、自分が持っている資産を孫あるいは次世代のために使っていくということが非常に役に立つということが自覚できれば、私は、結構日本人のそういう資産を持っていらっしゃる方々は新しい形で国債を買っていくのではないかという期待をします。  日本人はそういう非常に生まじめさがありますし、それが我が国がここまで来た精神的な支柱になったんではないかと思いますから、技術的に可能だということであれば、今こそその点を含めて何とか検討していただきたいと思いますが、再度御答弁をお願いします。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 恐らくお考えになっていらっしゃいますのは、国債が仮に無利子で相続税がかかりませんということになりますと、買う人は金持ちばっかりじゃなくて、それはいいやと、それを買おうじゃないかということはありそうな気がいたします。そこのところで普通の国債の売れ行きに影響があるとかないとかいう問題があるのかもしれません。  ですから、多少のことはオーソドックスでなくてもやっぱり考えなきゃいかぬとは思いますものの、先ほど申しましたように、注意はいたしますが、今、利付国債のクーポンが一・九ぐらいであるということから、これですと何とかやっていけるという気持ちがございましてこんなことを申し上げておりますんですが、しかしせっかくのお話でございますから、また事務当局の諸君にも研究をさせてはみることにいたします。
  64. 海野徹

    ○海野徹君 ぜひ研究していただきたいと思います。原資の使い方の問題でありますし、それと私は発行額を検討すれば十分いけるのではないかと思いますから、これは地方レベルではもう研究が始まっていまして結構あちこちで話を聞くものですから、ぜひよろしくお願いします。  それでは次に、厚生大臣に御質問させていただきます。  介護保険制度、万全の体制をとるというようなお話をいただきました。介護保険制度については、いろんな現場を歩いていまして、私も社会福祉法人の理事をやっているものですから、細かな問題を含めて非常に懸念の声が多いです。受ける側で、要介護高齢者が生活の質の向上あるいは幸福感が達成できる、実現できる、そういうことが究極の目的だと思います。  そういった意味で、現場の声を踏まえて数点御質問させていただければと思っていますが、民間では今ホームヘルプサービスというのがほとんど赤字です。部分的に身体介護に関しては三〇%近いアップになりましたから、ここでは何とかかんとかしのいでいるというような状況なんですが、非常に単価が低過ぎるんです。どうも厚生省の方々というのは、介護事業というのはもともと、単価を設定する、あるいは家庭で面倒を見るのは当たり前だからそういうのは低くてもいいじゃないかという思想が根底にあるのかどうかわかりませんが、非常に低いんじゃないか。低いということは、適正な利益が出ません。  介護基盤整備を充実するとしたら民間の事業者の参入というのはどうしても欠くわけにいかないわけです。欠くわけにいきませんし、どんどん入ってきてほしい、むしろ今いる人たちももっともっと質のいいサービスを提供するようになってほしい。そのためには、どうしても適切な介護報酬単価というのが設定されるべきだと思うんですが、その辺の作業はどの程度まで進んでおりますか、御見解を聞かせてください。
  65. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ホームヘルプサービスの問題についてお触れになりましたが、私ども、基本的にはそういう委員の今お考えのとおりに考えております。  具体的に介護報酬というのはいつ、どのような手順で定めるかについてお答え申し上げたいと思いますが、私どもはサービスの種類ごとに要介護度とか事業所施設の所在地等を勘案しまして平均的な費用の額を算定いたしまして設定するということにしたいと思っております。  介護報酬に関しまして今までやったことは何かといいますと、一応中間的な取りまとめを昨年の秋、十月ぐらいにまず開始いたしまして、ことしの四月、五月に向けて介護報酬の実態調査の実施を予定しております。実態をまず調査する。それから、介護報酬の骨格につきまして審議会で検討していただきまして、大体ことしの夏をめどに介護報酬の骨格案をまとめていきたい。それに基づきまして、介護報酬の最終的な設定の時期は、平成十二年度予算とも関連しますし事務手続等もございますので、今年末ぐらいまでには定めていきたいなというふうに思っております。  それ以前におきましても、今不安感という点がありましたし、民間事業者の参入というものも重要な視点でございますので、いろいろな審議会で審議をしていただくわけですが、そういうものの公開とか会議資料の公表等を通じまして、制度発足に備えまして、施設事業者でどういうことになるのかという見通しもあらあらなところでもお示ししていく必要があろうかというように考えておりまして、そういった情報は前広に提供して万全を期していきたい、こう思っております。
  66. 海野徹

    ○海野徹君 夏ごろ骨格案をということだったんですが、できるだけ早くそれをやっていただきたいと思います。  これは民間事業者にとって、受ける方の側にも選択権が欲しいわけですから、そういったいろんな意味で競争原理が働くように多数の民間事業者の参入が必要でありますし、準備期間が必要ですから、一日も早くその辺の作業を進めていただきたいと思います。  それから、現場を歩いてみまして、利用者が抱える非常に問題点、懸念があります。今、ホームヘルプサービスを利用している者の大体六、七割が無料世帯なんです、無料で利用させていただいている。そういう問題がありますし、業者を選択できるという部分もあるわけです。いろんなサービスがあるから業者も選択できる。そのかわり業者から選択されてしまう逆選択という可能性も出てきてしまいます。あるいは、保険料の滞納者への対応はどうするんだろうというような個人的なレベルでの問題があるんですが、その辺に対しての対応策はいかがでしょうか。
  67. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 介護保険制度は、サービスを利用される方と、それから利用されない方の公平を保つために、介護費用の一割を負担していただくことになっております。したがいまして、一割といいましてもかなりの額になる。例えば、療養型病床群に入所の場合等は、今は四十万円以上だと言われておりますから四万円というようなことになるわけで、高額な介護費用を要するということがございますので、低所得階層に対しては、高額療養費制度というのがございますが、それらの精神を踏まえて低所得対策はきちっとしてやっていきたい、こう考えております。  それで、具体的なやり方につきましてはこれからいろいろ額の算定等はやってまいりますが、高額の介護費用の負担の問題と食費の問題、こうした問題も低所得対策として考えなければならないという点がございますので、そういった線に十分配慮していきたいと思っております。
  68. 海野徹

    ○海野徹君 ありがとうございました。  まだ厚生大臣に聞きたいことがあるんですが、時間の問題で次に移らせていただきます。  それでは文部大臣、よろしくお願いします。  第六次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画、これが始まってもうあと二〇〇〇年で終了ということなんですが、今どの程度までの作業は進んでおりますか。多分、大変な改善計画が進められてもう終了間際に来ていると思うんですけれども、にもかかわらず不登校の児童とか生徒が十万人を突破してしまった、あるいは、先ほども問題になりましたが学級崩壊も広がりを見せている。実際、改善計画でありながら改善の実が上がっていないんじゃないかという印象を持つわけなんですが、よろしくお願いします。
  69. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘の義務教育諸学校の第六次教職員配置改善計画につきましては、平成五年から六年計画で完成の予定でございましたけれども、これを二年延長いたしまして、平成十二年度完成ということで現在進めているところでございます。  全体の改善総数は三万四百人ということを予定しておりますが、平成十年度までに二万六千六百八十五人改善を図りまして進捗率は八七・八%、来年度の十一年度予算案につきましては二千五百十五人を新たに計上いたしまして、これを合わせますと進捗率は九六・一%となります。残りは千二百人ということで、これは平成十二年度に改善をさせていただきたいと考えているところでございます。
  70. 海野徹

    ○海野徹君 改善の実は上がっているかどうか。
  71. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 実は、そのところが私は非常に心配している部分です。  三十人学級というような声がございますね。私も、少人数の方がいいということは思うんです。現に、今お返事申し上げましたような改善計画の結果、現在、依然として標準の人数は四十人でございますけれども、一学級当たりの児童生徒数は、全国平均では小学校では二十七・四人、中学校では三十二・七人までいっています。  確かに、私も学級編制の規模につきまして、一般的には規模が小さい方がいいだろうと考えておりますし、そうすれば、児童生徒一人一人の特性に応じたきめ細かい指導ができるものと考えております。私も中央教育審議会の会長であったころ、欧米並みの先生と子供の比にすべきであるというようなことは主張いたしましたし、答申にも書き込んだ次第でございます。  しかし、どうも学習集団の大きさとか学級規模の大きさというものと教育効果というものとの関係というのは、必ずしも明らかではない。特に私がどうもわからないのは、一九八〇年から、十年かかりましたけれども四十五人より四十人学級へ減らしてきたわけですね。にもかかわらず、今御指摘のようにいじめや不登校はむしろふえてきてしまった。そこで、教育指導をより効果的に行っていくにはどうしたらいいかとか、多分四十人学級にしたことによって明らかに教育効果は上がっているんだと思うんですが、どういうところで特に上がってきているか、どこに問題があるのか、こういうことが私の非常な関心事でございます。しかしながら、現在も定員を改善しながらチームティーチングを行うとか小人数の学習集団をつくっていくとか、そういう授業は行っております。  そこで、私はもう一歩突っ込んで、この点に関してどういうふうに学級を編制していったらいいのかということで大変な関心を持っておりますので、専門家の協力を得まして現在検討を行っているところでございます。すなわち、昨年九月の中教審、中央教育審議会の答申を受けまして、現在、今後の学級規模のあり方や、御指摘のとおり学級編制の問題等につきましてさらに弾力化を図る必要がございますので、学校週五日制の時代において、新しい教育課程の実施も視野に入れて、今申し上げたように専門家の協力を得て検討しているところでございます。  本当に単に学級を小さくすればいじめの問題とか不登校がおさまるのかどうか、この辺についても私も非常に真剣に考えているところでございますし、文部省といたしましても、今この点慎重に真剣に検討しているところでございます。
  72. 海野徹

    ○海野徹君 学級編制とか教職員の定数の問題は後から質問しようかと思ったんですが、基本的なお考えをお話しいただいたわけなんですが、ちょっといろんな問題が起こっている。先ほど言いましたように改善の実が上がっていないんじゃないかな、必ずしもそれがじゃ学級の規模とどうなんだというような、私もそういう感想を持っております。私どもは団塊の世代と言われるベビーブームにありました。非常に大きな、多数の中で育てられました。それだけに、私も餓鬼大将だったものですから後ろでいたずらしながら一時間授業時間を楽しく過ごしていたものですから、必ずしもきめ細かくやられることがどうかなという思いがあるわけなんです。  そういった意味で、今子供たちの選択肢が非常に少なくなっているんじゃないかという気が私はしております。私のときは、将来はそれこそ大臣になりたいとか何になりたいとかというような夢がありました。しかし、今の子供たちには余り夢がないような気がしているんです。目の前に受験がありますから。十四歳という年齢は非常に今問題になっているわけなんですが、そういった意味では、大人の価値観、社会の価値観というのがバブルが崩壊してから非常に変わってきている。変わっている、問題点があるというのは大人はわかっている。しかしながら、大人は口をつぐんでいる。それで、いい学校へ行け、いい会社へ入れ、そういうような流れの中で、やっぱり勉強してとにかく受験を何とかするんだというようなことで非常に精神的な圧迫が激しいんじゃないか。その精神的に圧迫されて窮屈な部分が別のエネルギーを出してしまう、それがいじめだったりあるいは人を傷つけたりというところにいっているんじゃないかと思っているんです。  だからそういった意味では、ある意味では、大蔵大臣を前にしてこんなことを言っちゃいけないんですが、景気回復より少年問題を解決する方が日本にとって一番大事じゃないかというような感想を持っているわけなんですが、大臣の御見解をお願いします。
  73. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私どもといたしましても、十五歳の入学試験ということが一つ問題になっているということは非常に真剣に考えておりまして、そして御指摘のように、子供たちに夢を持たすことが非常に大切だと思っております。したがって、さまざまな学校での工夫それから地域社会で工夫をすることによって、子供たちに夢を持たせたいと思っております。  特に、入学試験のことでございますけれども、大学の入学試験が実は随分多様化して易しくなってきております。──いや、非常に易しくなっている。明らかでございます。それからもう一つは、高等学校の入学試験もさまざまなやり方をやるようになっています。しかしながら、御指摘の十五歳の非常に情緒的に不安定なところでどうするか。その一つの解決策が、今回打ち出しております中高一貫教育でございまして、中高一貫で三、三というのを一つにまとめていくことによって、そこでの入学試験に対する圧力は減らしていくという方向に今進んでいるところでございます。
  74. 海野徹

    ○海野徹君 わかりました。  それで、最近バタフライナイフを使った事件が数件ありました。非常に私はその処理が気になっているんです。  そこで、文部大臣に御見解を聞きたいんですけれども、買ってもいけない、売ってもいけない、あるいは持ってきてもいけない。要するに、ないない尽くしなんです、すべて。やはりナイフそれ自体にそれなりの有用性、効用がある。あるいは世界全体だったらそれをむしろ活用しなければ命にかかわるという場面だってあると思うんです。だから、むしろそういうような有用性とか効果的な使い方を教えるべきであって、取り上げてそれでいいというのは余りにも大人が責任の放棄をしているんじゃないか。非常に未成熟な処置じゃないかなと私は思っているんですが、御見解をお願いします。
  75. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 多少、私個人の考えをつけ加えることをお許しいただきたいと思います。  明らかに、ナイフにせよそういうものをどういうふうに使うべきかということをちゃんと教えるべきだと思います。私も、青少年、特に中学校の子供たちに対する理科教育等ではナイフを与えて実験をします。そして、ナイフの使い方を正しく教える。使ったことがないからどうしたらいいかわからない、これはやはり御指摘のようにきちっと指導していくべきだと思っております。ただ、余りにも危険なことが起こりましたので、今ちょっと過剰に防衛しているところがございますけれども、本質的には、正しく器具というものは使うべきだと思いますし、そのためには正しい指導を行っていく、教育を行っていくべきだと思っております。
  76. 海野徹

    ○海野徹君 私は、全くそういった意味文部大臣の個人的な見解といえども同感であります。  そういった未成熟な処置をしてしまうというのは、私は、先ほど多分お話ししたかと思うんですけれども、日本全体に精神面、心の不良債権というのが充満しているんじゃないかな、指導者層、管理者層に、大人に。だから、結局そういうものを救済するすべがない、今手が打たれていない。それだけに、子供たちが持っている心のやみを共有できるような発言を我々はできていない、しようとしていない。  そういった意味で、いろんな問題を抱えている子供たちの心のやみを共有するような発言を我々大人がしていかなくちゃいけないと思うんですが、その辺について御見解をお願いします。
  77. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 特に、完全週五日制が導入された場合に、この問題が大きくさらに浮上してまいると思います。  そして、私どもといたしましては、余りに子供に干渉するな、自由に遊ばせてほしいというふうなことを言っているところです。それからまた、地域社会にお願いをいたしまして、余りに危険だ危険だと言わないでほしい、少し自己責任で自由に遊べるようにしてやってほしい、ボランティアの人々、お父さん、お母さんは遠くから見ていてほしい、こういうふうなことを言っております。  現に、羽根木公園というのが世田谷にございますが、あそこは極めて自由に子供たちが火をおこしたり、木に登ったりすることができるようになっています。そしてまた、ナイフなどをつくるということもやっているわけです。火をおこしてそこで鉄を延ばしてナイフのようなものをつくる、こういうことすらできているわけであります。こういうことをさらに進めていかなければならない。  余りにもお父さん、お母さんたちが過保護になり、余りにも制限してはいかぬと思っておりますし、地域社会にも同じようにお願いしたい。ただ、余りにも危険なことがありましたら、これは正しく指導していただきたいと思っております。
  78. 海野徹

    ○海野徹君 私も、いろんな問題を抱えた子供たちと接して彼らの心を開くような作業をやったこともあるものですから、私自身も餓鬼大将でありましただけにいたずらする気持ちが非常によくわかるものですから、その子たちと心が共有できるようなことをこれからもやっていきたいなと思うんです。  いろんな問題が非常にあります。事態も一層の深刻度を増しております。それだけに中教審の答申といいますか要請、これを重く受けとめるべきじゃないか。大臣も先ほどおっしゃっていました。専門家の検討が待たれている、それについての対応を急ぎますというような話だった。学級編制、教職員の定数の問題、これはやはり私はある程度の規模、三十人以下みたいな形でやりながら、ただ裁量権は学校に任せますよ、いろんな問題があればその現場に任せますよと。大きくしてもいい、小さくしてもいい、そういうことを含めてやはりこの答申というんですか、専門家の意見を具体的に早く実現してほしいわけなんですが、見解をお願いします。
  79. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ただいま、まさにその点について慎重かつ迅速に結論を出すようにお願いをしているところでございます。  また、財政的な問題というのも極めて大きいものでございますから、財政的な問題もにらみながら最善の教育を行うように進めていきたいと思っております。
  80. 海野徹

    ○海野徹君 時間がありません。それでは、文部大臣、まだまだ質問させていただきたいことはたくさんあるわけなんですが、農水大臣に改めて来ていただいておりますから質問させていただきます。  前回は条件不利地域のことでちょっとかみ合いませんでしたから、別な観点からお話しさせていただきます。  文部大臣もいらっしゃるものですから、ぜひ農水大臣からいろんな意味で強力な要請をしていただきたいということで、教科書に農業の問題、改訂されるごとにページ数が減っている、あるいはボリュームが減っている、非常に問題だと思う。  これは、要するに国民的な合意を得る、理解を深めていく、また消費者の食料、農業、農村に対する理解をどんどん深めていく、今度の新しい基本法でそういう問題が当然義務づけられているというようなこともありますから。どうも、コストの問題あるいは内外価格差で、安けりゃいいんじゃないか、あるいは安全性なんかどうでもいいんじゃないかと。あるいは、特定のところに産物とか、地域に非常に固まってしまっているようなところがあるわけなんです。  その辺については、農水大臣、今度新しい基本法を含めて、とにかく国民的な合意を得るんだ、理解を得るんだということであれば、子供のときからこういうようなことを教育してほしいわけなんですが、その点、御見解をお願いしたいと思います。
  81. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生指摘のことは、有馬文部大臣にお願いするというよりも、文部大臣の方からもお話がございまして、まさに今やれることから文部省としてもやっていただいております。  昨日も、予算委員会で農林省との連携での教育という御発言が文部大臣からございましたが、子供たちが農業農村で体験をする、自然と触れ合うということ、それから農業の大切さというものを実感する、あるいはまた、農村の方から都市の方に来ていただいてまた交流を深める、両方大事だろうと思います。  子供たちにおいても、都市のコンクリートの地面しか知らない子供たちに田んぼやあぜ道、あるいは森林や海等々を肌で感じてもらうということを、ぜひ教科書の面でも私は大いにその重要性というものを指導していただきたい。また、農村の方でも農業の大切さというもの、誇りというものを持っていただきたい。  ちょっと古いデータを今思い出したんですけれども、アメリカと日本の高校生に将来何になりたいかというアンケートを同時にとったときに、アメリカではいろんな職業の中の一番か二番目に牧場主というのがありましたが、日本の方は、農業関係、牧場関係になりたいというのは少なくともベストテンの中になかったということで、私は十年ぐらい前のデータで大変ショックを受けたことがあります。  そういう意味で、教科書の中で都市に住む子供たちが食料、農業、農村の大切さ、あるいはまた農村地域に住む子供たちが自分たちの仕事の大切さ、誇りというものが持てるような教育そして教科書づくりということを文部大臣にお願いしているところでありまして、教科書の改訂というのは何年かに一遍ということでございますので今すぐにということではございませんが、私の理解では、文部大臣には大変御理解をいただいているというふうに理解をしております。
  82. 海野徹

    ○海野徹君 それでは、農水大臣にいま一度質問させていただきます。  「沈黙の春」が書かれたのが一九六二年、レイチェル・カーソン、「農薬の陰謀」、ロバート・バンデンボッシュによって書かれたのが一九八二年、有吉佐和子の「複合汚染」、これが一九七五年、「複合汚染」から二十四年たっています。  そういった意味で、一向に我々の周りの化学物質に対する改善がなされてきていない。ヨーロッパなんかでは遺伝子組みかえに対する大変厳しい処置がある。それだけに、日本へアメリカ産の大豆を含めて遺伝子組みかえ食品の輸出が集中するんではないかという危険性があるわけなんです。今まさに化学汚染から生物汚染へ移行し始めたんじゃないかと私は思っているわけなんですが、遺伝子組みかえ食品の表示義務に対する大臣の見解をお願いします。
  83. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) いわゆるGMO食品については、アメリカ、カナダ等の輸出国、そしてまたEU等でそれぞれ違う見解に基づくスタンダードがあるようでございまして、私のところにもそれぞれの立場からいろいろな要請やらアドバイスやら実情の説明やらに来ていただく方が多いわけでありますけれども、とにかく遺伝子組みかえ食品については、まず、安全性というものが大前提にあって、その大前提のもとで、今我々のところで食品表示問題懇談会で御議論いただいているのは表示をどうするかという問題であります。  表示の仕方がアメリカ方式とEU方式が違う、それも参考にさせていただきますが、去年一つの案を提示いたしまして、それに対していろんな方から御意見をいただきました。一万人を超える方からいろんな御意見をいただきましたが、その多くは表示についてきちっとすべきだというような御意見が強いように私は理解をしております。  いずれにいたしましても、安全ということを前提にいたしまして、きちっと専門的な観点、また国内でもいろんな立場の方の御議論を今まさにしておるわけでございますので、懇談会またその下の小委員会のもとで、我が国としてどういう形のものがベストであるかということを、今専門的な立場の御議論を広く国民的な御議論も踏まえた上でやっておるところでございまして、私の立場というよりも、御議論をお願いしている最中でございまして、夏までに一つの結論を出していきたいというふうに考えております。
  84. 海野徹

    ○海野徹君 ありがとうございました。  残余の時間は、関連質疑で寺崎議員にお譲りします。
  85. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。寺崎昭久君。
  86. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 この三月五日に政府から年金制度改正案大綱が発表されましたので、年金問題万般にわたって質問させていただきたいと思いますけれども、本日は時間がそれほどございませんので、企業年金に絞って幾つか見解をただしたいと思います。  このところ、企業年金の財政状態が悪くなっているということが伝えられておりまして、民間の調査機関の推定などによりますと、国家予算にも匹敵するというような報道もございます。昨年十一月、大和総研が発表したところによりますと、これは退職金や適格年金なども含まれているんだと思いますけれども、不足額は約五十三兆円、あるいは長銀総研では六十兆円、ゴールドマン・サックス証券によれば八十一兆円というような巨額な積み立て不足が伝えられているところであります。  こうした企業の将来債務を計算するには、年金の運用利回りを初め、基礎率をどう見るか、とりわけ予定利率をどの水準に置くかということは、そういう前提が入りますし、しかも長期にわたる推計ですから、幾ら不足するかということをはじき出すのも大変難しいとは思いますけれども、これを押さえておかなければならないと思います。 したがって、そういう一定の前提を置いた数字で結構でございますが、将来債務についてどれぐらいの積み立て不足があるとお考えなのか、まず厚生大臣からお伺いしたいと思います。
  87. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この厚生年金基金に関しての将来債務の積み立て不足という点に限定して答弁させていただきますが、平成九年三月末の決算状況によりますと、厚生年金基金全体で責任準備金が四十三兆二千七百億円、一方、年金資産は四十二兆六千百億円となっておりまして、全体では六千六百億円の積み立て不足となっております。  このうち、積み立て不足を抱える厚生年金基金だけについて見ますと、全体の約三分の二程度でございますが、これら基金の積み立て不足額合計額は一兆二千六百億円ということになっております。  この積み立て不足につきましては、今お話しのございましたように、バブル崩壊後の低金利とか株価の低迷によりまして、年金基金の運用が芳しくないというような点があろうかと存じます。
  88. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 大蔵省にお尋ねしますが、税制適格年金の積み立て不足額は幾らになりますか。
  89. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 企業年金につきましては、資産運用の利回りの低下でありますとか含み損等によりまして、一般に積み立て不足が累積している状況にあるということは私どもも承知しておりますけれども、委員御承知のように、適格退職年金の場合には厚生年金基金と違いまして根拠法がございません。税制上の措置ということでございますので、具体的な積み立て不足の現状については承知しておりません。
  90. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 企業が今解散したとすると、積立金は幾ら必要なのか、それに対してどれだけ引き当てられているのか、労働省にお尋ねします。
  91. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 退職金債務の問題でございますが、この退職金を一時金にするか、あるいは年金化するか、その組み合わせを行うか等々につきましても、個々に労使が話し合って決定しております。  また、その原資を社外に積み立てていくのか、社内に準備金として積み上げて御指摘のような引当金の形で持っていくのか、そういう場合にも年齢構成等に応じてどういう割合で引き当てていくのか、その辺も個々の企業ごとに個々でございまして、私どもは、現時点でそうした退職金債務の具体的な数値について把握することは困難でございまして、そうした数値は把握できておりません。
  92. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 国民の大事な老後の社会保障といいましょうか、セーフティーネットについて三省庁から別々にお伺いすること自体、私は大変不満なんです。  ですけれども、今のお答えでは、根拠法がないから把握していないとか、あるいは報告義務がないからわからないというようなことで、よく老後の社会保障を考えられますね。大変腹が立ちます。法的裏づけがないんだったらないなりに推計方法はいろいろあるじゃないですか。私は宇宙の星の数を数えてくださいと言っているわけじゃないんですよ。いろんな推計方法があるわけですよ。  今、国の最大の課題というのは国民に安心をしてもらうような状態をつくること、総理もそうおっしゃっているじゃないですか、安心へのかけ橋が一番大事だと。にもかかわらず、わかりませんというようなことで済まされるんですか。国民はごみですか。失業者が今三百万人に迫っているというのに、一束三百万人の失業者じゃないんですよ。一人一人に生活がある生身の人間の三百万人なんです。把握できません、していませんということで生活保障、社会保障が考えられるんですか。大変腹が立ちますし、悲しくなります。そういう行政のあり方でいいんですか。行政改革の対象ですよ、それは。  大蔵大臣、どうでしょうか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 適格退職年金の場合、政府委員から今申し上げました根拠法がないのでわからないということは、それは私自身がお尋ねがありますので聞きまして、極めて心外なことだという思いがしております。それは三省庁が関連をしていることでございますけれども、根拠法がないといっても、そういうことは全然わかりませんというお返事は、どうも行政としては私はよろしくないと思います。  私が今各省にかわってお答えをすることは立場上できませんけれども、ひとつ関係閣僚にもお話をして、やっぱり共同して推定するなり何かしなければいかぬのじゃないか、こう思っていることを申し上げます。
  94. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ぜひそのようにお取り計らい願いたいと思います。  厚生大臣にお伺いしますが、将来債務についての全貌がわからない状態なので、仮に数十兆円ぐらいの積み立て不足だという前提でお話をさせていただきますが、今一部上場の株式の株主の資産というんでしょうか、保有額というのは大体百二十兆とか百三十兆とか言われておりますが、それの半分とか六割に匹敵するような金額が今積み立て不足というような状態に置かれているわけであります。つまり、隠れ借金をそれぞれの企業が持っていると言ってもいいと思います。  その原因については先ほど厚生大臣からもお伺いいたしましたけれども、予定利率を九六年度まで据え置いたのはなぜでしょうか。九二年から既に運用利回りが予定利率を下回っていたというのがわかっていたと思いますが、いかがでしょう。
  95. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 厚生年金基金の予定利率につきましては、現実は今おっしゃられましたように自由化をしております。しかしながら、実際には五・五%のところが圧倒的に多い状況でございます。  これは非現実的ではないかという感覚もしないわけではございませんが、この水準は、バブル期までは厚生年金基金の運用実績は五・五%をはるかに上回っておりました。ところが、バブル崩壊後も海外での運用の好調等を反映いたしまして、国内との大幅な乖離がありまして五・五%としておるという状況でございまして、この金利を、自由化はいたしましたけれども、そう上げ下げは直ちにできないという事情もあろうかと思うんです。
  96. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ちょっと数字のことなので厚生省にお尋ねしますが、予定利率を自由化したのは九七年からということでよろしいでしょうか。
  97. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) おっしゃられるとおりでございます。平成九年度から自由化いたしております。
  98. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 となりますと、今の大臣のお答えとは少しずれるんです。九二年から予定利回りを実際の運用利回りが下回っておるにもかかわらず九七年から自由化したというのは、ちょっとタイムラグがあり過ぎるんじゃないでしょうか、なぜですかというのが私の質問の趣旨でございます。
  99. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 予定利率をどうするかというのは、非常に長期的な期待収益率ということでございますので、長期的に判断をするというのが基本でございます。  それで、これはやや技術的といえば技術的なことなんですけれども、時価ベースで見たらどうかということと簿価ベースで見たらどうかということがあるわけでございます。  確かに、簿価ベースで見ますと、平成四年以降は予定利率五・五を一貫して下回っておるわけでございます。したがって、これは何とかしなきゃいかぬという問題認識を持っておったわけでございます。  一方、時価ベースで見ますと、これもバブル崩壊以降はおおむね五・五を下回っておるわけでございますけれども、例えば平成七年度で見ますと一〇・二七ということで一〇%台を確保しております。平成九年度で見ますと五・六五ということで、この場合も五・五を上回っておるということでございます。  そして、平成九年度から私どもは簿価ベースでなくて時価ベースで判断すべきだ、こういうふうに基準を改めたわけでございます。あわせまして、予定利率につきましても、昨今のこういう状況を総合的に判断いたしまして自由化をしたということでございます。
  100. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 対応が少しおくれたということの背景として、今おっしゃられました年金の資産の評価が簿価基準であった、つまり原価法であったというところに問題があり、株の含み損を顕在化させないために、値段の下がった株式とか収益性の低い株式をなかなか外へ出したがらなかったということが傷を大きくしたのではないかというような認識を持っております。  ところで、大蔵大臣にお尋ねしますが、平成九年と十年で主として基金の積み立て不足から十四基金が解散になっております。解散に至らないまでも、予定利率を今お話しのように引き下げるとか、あるいは過去勤務債務の前倒し償却をやるとか給付額を削減する等々のいろんな努力が各企業年金でやられているわけであります。  その背景として、二〇〇一年三月度決算からの会計基準の国際化で、もし退職給付債務があるとすればそれを開示し、なお不足額が生じていればバランスシート上の負債に記載しなければならないというようなことがあるんだと思います。もし数十兆と言われるような企業年金の不足額がそのまま開示されると、日本の企業の格付にどういう影響が出るんでしょうか。あるいは、そのことによって日本経済にどういう影響が出るとお考えでしょうか。経済という面からお答えいただければと思います。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 平成十二年四月、それから始まる事業年度からでございますか、そういうことになってまいると承知しております。これは、そのこと自身は極めて妥当なことであると申し上げざるを得ないと思います。それによっていろんなことがディスクローズされるわけでございますが、これはそういうことを考えて各企業が対応してもらうしかないだろう。おっしゃいますように、このままの状態でそれにぶつかりますと、それはちょっと十分予測ができませんような展開になりかねませんので。しかし、それはディスクローズすることが悪いというふうな論理にはどうしてもなりませんので、やはりそれはそういうふうに対応していくしかないのではないかと考えます。
  102. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 企業年金も企業の格付に影響を与えるとすれば、言ってみれば金融子会社みたいな性格も一部にあると思います。もう既に御存じのとおり、九〇年前半にGMが企業年金の積み立て不足によって大きく企業の格付が下がったようないきさつもあります。ですから、我が国としてもそういう認識でこの企業年金問題を見なければいけないと思いますが、もう一度大蔵大臣、お願いします。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日本経済はまた隆盛になると思いますが、かつて隆盛のころ、右上がりでございますから、何となくそういうことはみんなのんきに、年がたてばもっとよくなる、こう思っていた要素があると思いますけれども、それがいっときどうもそうではなくなってきまして、実態は、さっきGMのお話をなさいましたが、同じような話が起こってくる。  しかし、それはそういうことをディスクローズした上でやっぱりちゃんとした経済になっていかなきゃいけないというのはお国も企業も同じだと思いますから、それは覚悟して立ち向かわなきゃならない事態だと思います。
  104. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ありがとうございました。  そうした中で、にわかに現実味を帯びてきたのが年金基金の積み立て不足を企業の保有株式で穴埋めしようという案でございます。これは年金制度改正案大綱にも盛られている内容でございますが、言うまでもなくこれまで年金掛金というのは現金で行うことということになっておりましたので、これは方針の一大変更だと思います。  ところで、厚生大臣はこれによってどれぐらい穴埋めが期待できると考えておられますか。
  105. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今お話しのような厚生年金基金の積み立て不足を円滑に解消するという観点から、企業が保有する株式を一定の条件のもとに厚生年金の掛金として現金にかえて拠出するようにしたいということで、私ども、今度の年金改正の大綱の中に織り込みまして、法案としても出させていただきたいというように思っております。  実際にどれだけ株式による拠出が行われるかは、現実にまだ手を上げたものでもございませんので今定かではございませんが、私どもとしては、年金基金の健全な運営ということに配慮して、一定の条件とは何であるかということを今極力詰めておる次第でございます。
  106. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 マスコミを通じて伝わってくる話によりますと、株式を入れることについて、当初よりも一年ほど早めたというように聞いておりますが、そのとおりですか。その理由は何でしょうか。
  107. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) お答え申し上げます。  私どもは、当初、施行期日につきましては平成十二年四月ということで、切りのいい新年度からということを考えておったわけでございます。ところが、与党との調整の中で、この問題は急を要する、できるだけ早く前倒しをしたらどうか、こういう御意見が出たわけでございまして、それを受けて私どもとしては交付の日から三カ月以内で政令で定める日ということで前倒しで実施したいということで、今そういう方向で検討しておるということでございます。
  108. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 具体的には期末対策に間に合うようにしたい、こういうことでしょうか。
  109. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 期末対策に間に合わせるというようなことではなくて、積み立て不足を一刻も早く解消したい、そういうことから、こういう制度はできるだけ早く実施に移すべきだ、こういう御意見を私どもとしても受け入れて、そういう考え方で対応したいということでございます。
  110. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 今、厚生大臣は一定の条件のもとにということをおっしゃいました。これから詰められるとのことでありますけれども、株式による出資を認めるというのを拝見したときに一番先に頭に浮かんだことは、持ち合い株のはけ口になるんじゃないだろうか、そうなると不良株式の飛ばしの受け皿になる心配はないんだろうかとか、もう一つは、基金の財政基盤が市況に左右されることになりますので、不安定化するのではないだろうかというようなことが頭に浮かんだわけでありますけれども、一定の条件のもとにというのはどういうお考え方がベースになっているんでしょうか。
  111. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 現実には、今の基金の中で株式等に運用いたしておりますから、これは十分知見は持っていると思います。ただ問題は、これから現金にかえて株式をいただくということになるわけですから、あくまでもやっぱり基金の健全性を維持していくということが重要でございます。  今飛ばしの話等もございましたが、不良株式を押しつけられるようなことがあってはいけませんので、これはいろいろな条件が必要かと思います。例えば、一株で大量に引き受けることを調整するとか、あるいは多様化するとか、いろいろな点があろうかと思いますが、今後そういう健全性の見地から受け入れについてはきちっとしていきたい。  なお、持ち合い株の問題につきましては報道がいろいろされております。そういう誘因があることは私も否定はできません。したがって、持ち合い株の拠出になる可能性もありますし、そうでなくて自社株を拠出する場合もありましょうけれども、いずれにいたしましても、私どもとしては、受け皿としては年金基金の充実という点から非常にチェックをしていかなきゃならない、そういうための一定の条件と申し上げたわけでございます。
  112. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 年金基金の充実というからには、例えば株式を基金の判断で市場に出すとか、そういうこともなければならないと思うんですが、ただいま持ち合い株をめぐる取り扱いというか措置につきましては、厚生省だけではなくてほかの省庁からもいろいろ案が出ているように承知しております。  したがって、まず厚生大臣のお考えを伺いたいわけでありますけれども、厚生省が考えている株式を掛金として出資することを認めるに当たって、それを市場で売却してもよろしい、するかしないかは基金の判断であるという状態の株式を渡すつもりなのかどうか、そこの点を押さえておきたいと思います。
  113. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 現金にかえて株式を拠出していただけば、株式の所有権は基金に移ります。基金としては、これは自主運用の建前で今後やってまいりますから、いろいろの専門機関等に現在も株式を委託してやっておりますが、そういった方法をとって健全運営をしていきたいと思っています。
  114. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  115. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。寺崎昭久君。
  116. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 休憩前に厚生大臣から、企業に拠出された株式の処分については基金において決定するべしというお話をいただきまして、私はそのとおりでやってもらいたいと思うんですけれども、ただ厚生年金法第百十九条によりますと、理事の定数というのは偶数とし、その半数は事業主において選定した代議員において、また他の半数は加入員において互選した代議員において選ぶとなっており、なお理事のうちから一人の理事長を選ぶんだけれども、それは事業主において選定するということになっておりますね。  そうしますと、実質的には独立した法人格を持つ基金といえども、かなり企業の意思が反映されやすい仕組みになっていると思うんですけれども、それはやむを得ないことでしょうか。
  117. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) この厚生年金基金の役員につきましては、受託者責任、いわゆる注意義務、それから基金のためだけを考えて行動しなきゃいけないという忠実義務、こういったものが課せられているわけでございます。したがって、確かに役員の半分は企業サイドの方が選ばれますけれども、企業の利益と基金の利益、基金の利益というのは要するに加入員、受給者の利益でございますが、この利益が衝突する場合にはこれは基金の利益、加入員の利益を優先させなきゃいけない、こういうことになっているわけでございまして、その点については制度的に担保されておるわけでございますので御懸念のようなことは生じ得ない、こう確信しております。
  118. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 株式拠出の際にもう一つ考えておかなければいけないのは、いわゆるコーポレートガバナンスということであろうと思います。  例えばアメリカなどでは、株式は企業年金を運用する際にあってかなりいい利回りの商品であるという認識のもとに株式投資などに使われているわけでありますけれども、それはコーポレートガバナンス、つまり議決権の行使をするというのが前提になっているように思います。  日本の場合、株式を基金に出すその株というのは議決権を当然有していると思います。その点についての確認と、それからもう一つ、コーポレートガバナンスについての厚生大臣の御認識を伺いたいと思います。
  119. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 株式の所有権は基金に移転されます。したがって、母体企業が株式の拠出によって転売を制限したり、議決権を留保したりすることはできない仕組みにいたします。  それから、コーポレートガバナンスの問題でございますが、したがって基金としては加入員の受給権を保護するということをモットーとして資産運用をやって受託者責任を果たしていくということでございますので、この点については今、局長の方からも発言がありましたように、この運用の基本方針というのを詳細に定めておりますので、そういった企業支配にならないようにする仕組みもできておりますし、運用もそうしたいと思っております。
  120. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 もし株式を拠出した場合、それが値下がりしたとすると、企業に補てん義務があるのでしょうか、どうでしょうか。
  121. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 現在も厚生年金基金の資産の中には株式を含めてその運用をしておりますので、価格変動のリスクは基金が負う仕組みになっております。  現物で出資された株式についても、拠出後は基金の資産となりますから、拠出後の価格変動のリスクは基金が当然負うことになります。  なお、株式が値下がりしたことによって基金の資産が年金債務と比較して不足するような事態になりますれば、現行制度と同様、追加拠出が必要になるものというように考えております。
  122. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ちょっと最後のところを聞き漏らしたのかもしれませんが、あてがいぶちの株式を基金が受け取っても、値下がりした場合にはこれは基金の責任において処理しろと、こういうことでございましょうか。
  123. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 理論上はそうなります。
  124. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 ですから、私は飛ばしの心配があると先ほど申し上げたわけです。出したときは正常な形かもしれませんが、少し時期がたったらゼロにするということがあって、それは基金側の意思と関係のない株式で入れられたらどうなるんでしょうか。例えば日債銀なんかの例で、一時期は大変いい値段がついていたのが一円、二円ということになっちゃったらどうなるんでしょうか。
  125. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) その点は、株式の受領については先ほど一定の条件ということを申し上げましたが、個別株式について余り一度に大量に資産総額に対して大きな比率を占めるような引き受け方はリスクが大きいと思います。そういったことも一定の条件の中に入りますし、もちろん上場株式に限定をしたいというような条件とか、それから拠出した株式の価格が今問題だと思いますが、拠出時の市場価格で一応評価いたします。株式でございますから変動はあると思いますけれども、私どもとしては、飛ばしとかそういう実態が判明するような場合は、これは企業との相対の話し合いで受け入れるわけでありますから、受け入れかどうかは基金が自主的に判断しなければならないケースもあろうかとも思います。
  126. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほど申し上げましたように、あてがいぶちの株式を入れられたわけであります。御存じのとおり、九四年十一月に日本紡績業厚生年金基金が解散に追い込まれました。その理由というのは、当初の加入者が二万人いたのが十分の一になってしまった、運用環境も悪くなったというのが原因でありますけれども、そのときに、基金の元加入企業が元理事長を相手取って、企業が穴埋めした代行部分の不足金について損害賠償を求められました。  あてがいぶちの株式から出た損失が仮に解散の原因になったとしても、これは年金基金の理事長の責任だということなんでしょうか。
  127. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 株式につきましては、厚生年金基金は現在でも資産総額の中で二十数%運用しているわけでございます。そういうことで、そういった株式が下落するということはしょっちゅう生ずることでございますけれども、その場合には、もしその結果積み立て不足が生じるということになりますと、改めて企業サイドでそれを補うための追加拠出が必要になる、こういうことでございます。したがいまして、今話題になっております現物での株式の拠出を認める場合も今の仕組みが基本的にそのまま当てはまるということでございますので、今回こういう現物拠出を認めたとしても今のような仕組みが変わるわけではないということでございます。  それからまた、この現物拠出は企業からのあてがいぶちということではございませんで、これは基金としては理事会という正式な機関があるわけでございまして、そこできちんと議論をして受け入れるかどうかを決定していただく。その場合には、理事には基金に対する忠実義務、注意義務が課せられるということでございまして、加入員の利益を損なって安易に受け入れる、こういうことは制度的にできない仕組みになっておりますので、御指摘のような御懸念は生じないというふうに私どもは思っておるわけでございます。
  128. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほども申し上げましたように、理事の半数は加入者において互選するといっても、これは従業員なんです。会社から給料をもらっている人なんです。どちらが力関係で強いですか。それを考えたら、基金がどういう意思決定ができるかというのは、だれが意思決定できるかというのはおのずからわかるじゃないですか。形式的な話はいいんです。  受託者責任というものがこれで果たして担保できるのでしょうか。もう一回聞きます。
  129. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 受託者責任、つまり基金に対する忠実義務、それから意思決定をするに際しての注意義務、これを法律的にもきちんと義務づけておりますし、具体的な中身につきましては、受託者責任のガイドラインという形で通知でもって細部についても指導しているところでございます。  そういうことで、理事会において現物拠出を受け入れるかどうかという決定に際しましては、基金の利益、加入員の利益を無視して安易に現物株式を受け入れる、こういうことは制度的にもあり得ないということを我々としては考えているということでございます。
  130. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 年金については、もっと独立法人としての条件を備えるようなことを今後ぜひ考えていただきたいと思っております。  現に積み立て不足がございまして、それを放置すれば格付が下がる、資金調達コストが上昇するということになれば、私は放置はできないのだろうと思います。企業が株式を取得すること、あるいはそれを運用する、運用パフォーマンスに組み入れるということについて私は反対しているわけではありません。ただ、それは基金が主体的に運用スタイルの中で運用できるということが条件だと思っているわけであります。  もし、持ち合い株の解消のために、そして市場への放出を制限するために、そのことによって株価の下落を下支えするということが動機であれば、これはやめてもらいたい、慎重でなければいかぬと思っているような次第であります。  年金というのは、まだ概念がはっきりしていないようでありますけれども、賃金の後払いなのか、あるいは永年勤続に対する報酬なのか、その辺について厚生大臣はどうお考えですか。
  131. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 年金の性格は、同じ年金という名前でも、税制適格年金なんかは退職金の後払いあるいは年金化のような色彩が強うございますし、それぞれの制度によって違うのではないかと思うんですが、日本では独特の退職金制度というのが事実また一方ございます。それを年金化するということも方式としては考えられるし、制度によってその性格はさまざまであろうかと思います。  しかし、今や年金制度というのは公的年金を主軸に構築されておりますから、これは一つの権利として、システムとして私どもは考えておりますので、その性格がいかようなものであれ、将来の展望の持てる、安心、安定といった制度を構築することが極めて重要だと考えておるわけです。
  132. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 年金受給権を認めるという立場ですと、株式を投入するといっても、いい株、悪い株というのがあるんだと思います。厚生省のガイドラインにそういうことはうたわれるつもりですか。
  133. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほど日債銀の話とか長期信用銀行の話が出ましたけれども、それは当時、ああいう銀行の一流株が崩壊するなんという考えもしないことが起きたわけです。金融市場というのはそういう経済変動の激しい荒波にさらされたときにもあのような変化があるということも、これは頭に置いていかなければならないと思います。  しかし、先ほど来御議論いただいておりますように、これを受け入れるについては、あらゆる面からチェックをして、そして確実なもの、現金にかわるようなものとして将来も担保されるかどうかという視点はどうしても厳重にチェックする機能を強化しなければいけないと思います。  これは、今持っている資金を株式で運用する場合と異なりまして、入り口でのチェックが極めて重要だと思いますから、そういった仕組み、運用についても現行のままでいいかどうか、さらに検討していきたいと思っています。
  134. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 基金財政の悪化が言われている中では、とりわけ情報の開示だとか受給権をどうやって付与するんだとか、あるいは最低積立金を設定するというような条件を整備することが大事だと思います。アメリカなどで言うERISA法のようなものが必要だということであります。  橋本内閣は九六年に制定を閣議決定したはずですけれども、その後どうなっているんですか。
  135. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 今の御指摘のございましたERISA法みたいな企業年金の基本法、企業年金は日本では厚生年金基金ですとか適格年金とか制度がばらばらでございます。中身もばらばらでございまして、共通のルールをつくるべきだ、こういう御指摘がございまして、政府といたしましても平成十年度中、つまりことしの三月中に基本法をつくるということで三省庁、これは大蔵省、厚生省、労働省でございますけれども、検討を続けてまいりました。  ただ、内容につきまして非常にいろんな議論がございまして、例えば受給権保護のために支払い保証制度をつくるべきか、つくるべきでないか、こういった点につきましても労使の意見が激しく対立しておる、こういう状況でございます。  したがいまして、今年の三月いっぱいという期限につきましては、これは非常に厳しい、難しいわけでございまして、もう少し時間をかけて議論していきたいということを考えております。
  136. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 もう少しとおっしゃいますけれども、もう三年もたっているわけですね。いつまでにまとめられる予定なのか、もう一度言っていただけますか。厚生大臣、どうですか。
  137. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは平成十年の三月に閣議決定をいたしまして、規制緩和推進三カ年計画という中で、実施予定時期は明示されておりまして、十年度に結論と、こう書いてあるわけです。したがって、三月までにこの閣議決定どおりであればやらなければならないことでございますが、現実にはそれは不可能でございますので、これは何らかの手続をして、そして延ばすことはやむを得ないと思っておりますが、基本法の問題でありますから、いろいろ多角的な検討も必要でございますから、一カ月後、二カ月後というようなわけにはまいらないと思いますが、なるべく早期に検討をして成案を得たいというように申し上げておきます。
  138. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 それでは、当面の年金基金に対してどういう支援策がとられるのかについて、私の案を申し上げたいと思います。攻守所を逆にするような話ですけれども、御見解をお尋ねします。  第一案というのは、厚生年金の代行部分の責任準備金の積み立て不足、これについては年金基金本体の積立金から補てんするということをお考えいただけないか。  ということは、この赤字の背景には、五・五%という予定利率を長い間据え置いた、いいときもありましたけれども、その後も据え置いたということがあり、その後の長期低金利政策の中で生じたわけでありますから政府に責任がないとは言えないということで、厚年本体から補てんできないかというのが第一案でございます。いかがでしょうか。
  139. 矢野朝水

    政府委員矢野朝水君) 厚生年金基金と申しますのは、これは基金の自助努力で制度運営をする、こういう仕組みでございます。したがって、積み立て不足が生じました場合も、これは企業の労使、企業の努力で解消すべきでございまして、厚生年金本体から補てんをする、こういうことは全く考えられないわけでございます。
  140. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 議論する時間がないので、第二案を申し上げます。  第二案というのは、財政資金を、つまり税金とか一般会計を投入して、それを使った施策を講ずるということはどうでしょうか。  というのは、政府、日銀の長期にわたる低金利政策によって生じたという部分があるわけです。一方では金融機関にはいろいろ手当てをしているということであれば、今回は企業年金の方に手当てしたっていいじゃないですかというのが理屈ですが、どうですか。
  141. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 残念ながら、性格を異にしておりますので、私どもはそういう政策を今とるつもりはございません。
  142. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 第三案を申し上げます。  それができないなら、せめて積み立て不足について政府保証がつけられないかというのが、これによって財政状態がよくなるわけではありませんが、格付にプラスに働くのではないかということであります。
  143. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お答えがすべて提案に対してノーというような形で申しわけございませんが、債務保証も今のところ考えておりません。
  144. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 第四案は、代行部分を返上してもらいたいということです。いろいろ理由を申し上げたいと思いますけれども、時間が参りましたのでそれは申し上げません。  ただ、やれないという理由を先に考えるのではなくて、何とか困っている人たちを助けよう、銀行とか金融機関を守るだけじゃなくて、究極的には国民生活を守るというのが政治の仕事なんですから、そのために少々へ理屈でも曲がっていても国民皆さんが納得できればいいじゃないですか。大体公的資金を金融機関に入れたというのはおかしいんですよ。だったら、どうして国民が困っているのに、不安を抱いているのにそれに使えないのかというのが私の結論でございます。  どうですか、代行部分の返上は。
  145. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、今公的資金の導入の問題と比較して論ぜられておられますけれども、代行部分は代行部分としてそれぞれ年金確保の、しかも企業年金とミックスした形で保証がなされておるものでございまして、私どもとしてはこれを維持し、健全な形でやっていきたい、こう思っております。
  146. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 先ほど国の債務保証をつけられないか、あるいは国のお金を入れられないかというようなことを申し上げましたので、財政当局の御意見を大蔵大臣に伺えませんでしょうか。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 所管大臣からああいうふうにお答えいただいておりますので私が申し上げることはないわけですが、午前中から伺っておりまして、年金というものを私も、ああ、そういうことを考えなきゃいかぬのかなと、いろいろ御教示を受けた点がございます。ですからどうと今申し上げることもできませんけれども、やっぱりそういう社会的な機能を非常に持っているものだなということは大変私は蒙を開いていただきましたことは事実でございます。
  148. 寺崎昭久

    寺崎昭久君 どうもありがとうございました。
  149. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で海野徹君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  150. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、山本保君の質疑を行います。山本保君。
  151. 山本保

    山本保君 公明党の山本保でございます。  二月二十六日ですか、経済戦略会議から「日本経済再生への戦略」という答申が出されたというふうに伺っております。そして読ませていただいたわけでございますけれども、まず最初にお聞きしますのは、この答申は現在の小渕内閣の経済政策上どのような意義を持っているものか、どういうふうに位置づくものであるのか、また今後政府はこれに対してどのような対応をされるのか、お願いいたします。
  152. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 去る二月二十六日、経済戦略会議より二百三十四項目に及ぶ非常に具体的で内容の豊富な答申をいただきました。これは政府機関の八条委員会の答申でございますが、従来の発想と違いまして、まず各省で協議をしてできるものだけを答申してもらうという方式じゃなしに、できる限り自由に出していただいて、そしてこれに各省がどう反応していくか、また国会の先生方の御意見もいかがなものかという、石を投げて波紋を起こす、それに応じてできるだけ多くのことをできるだけ早く実現していく、また実現できないものはそれぞれの審議会でさらに検討する、各省で検討する、そういうような方式で考えております。  したがって、この線に従ってできるだけ日本の再生に尽くしていきたいと思いますが、すべてが実行できる、早期に実現できるというものではないという点もお含みおきいただきたいと思います。
  153. 山本保

    山本保君 今、経済企画庁長官はそのようにおっしゃいましたが、まずさっと読みますと、例えば小さな政府でありますとか構造改革でありますとか護送船団方式の批判でありますとか、少なくとも経済企画庁長官がこれまでいろんなところで言われてきたこと、それをただ作文しただけではないか、こんなような気もするわけでございますが、そうではないということについて、またこれは例えば前内閣のやり方とは、今やり方についての方法の違いは言われましたけれども、内容についてどういうかじを切ったのか、ここについてお話しいただけますか。
  154. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 先ほども申しましたように二百三十四項目に及ぶ非常に膨大なものでございますので、いろんな意見が入っております。委員の十人の方々が知恵を絞って出していただいたものでございますから、私どもも教えられるところがたくさんございました。  その中で一つポイントになっておりますのは、経済の再生と財政の再建についての一つのスケジュールが出されたこと。それから、今問題になっておりますバブルの負債、不動産を中心とする負債を帳簿上ではなしに実際の形でどのように処理していくのがいいかというような問題。その他いろいろございますが、お時間の点もございますので、また御質問がありましたらその項目ごとに詳しくお話しさせていただきたいと思いますが、非常に重要なポイントは、それぞれに関連する法案を出していただきまして、その中で、この法案はこう変えたらいいのだが果たしてそれができるだろうかというような具体的な名前を並べていただいておるのも大きな特徴だと思います。
  155. 山本保

    山本保君 最後に言われたその法案などについても本当は各省大臣にお聞きしたいところではありますけれども、最初に性格づけがされたように、これから検討しようということでしょうから、きょうはそのことについてはお聞きしないでおきます。長官がおっしゃるように、あそこに書かれているような対応が確かに進んでいくのであれば大変動きが出てくるなという気はいたします。  そこで、この答申について一点だけまずお聞きしたいのでございます、大きな流れとして。それは、この中に戦略ステップというのが書いてございます。十年間で今のマイナス成長から、そして経済構造改革もなし遂げるんだという、この十年間のものでございますけれども、これについて本当にこれは計画ができるのであるかということについてお伺いしたいわけですが、その内容について簡単に御説明いただけますか。
  156. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済戦略会議の出しました十カ年間の経済再生に向けての戦略ステップというのは、一九九九年から二〇〇〇年、今年から来年でございますが、この年度をバブル経済の集中的な清算期間とする。それから、二〇〇一年から二〇〇二年度でございますが、これを成長軌道への回復と経済健全化の期間とする。そして、二〇〇三年度から二〇〇八年度まで、この期間を財政再建、構造改革による本格的再生期間とする。この三つに分類しております。  そして、それぞれに景気対策経済システムの安定、これが第一期に進めるべき最優先課題である。第二段階の二〇〇一年から二〇〇二年にかけましては、経済の動向と、なるべく早く構造改革をしていく。そして三段階目では、これを民間の需要の成長に、潜在成長率に合わせていく。こういうような段階を説明しております。
  157. 山本保

    山本保君 それについてもう少し詳しくお聞きしたいわけでございます。  例えば、今最後におっしゃいましたように、最初は、まず今のバブル経済の後遺症をなくすために積極的なマクロ経済政策をとるのだと。次に今度は、一気に構造改革を進める覚悟が必要だ、こういう言い方にしております。これは全く矛盾した、大変な大転換をしようということでありますけれども、このようなことが本当にできるのでしょうか。  大蔵大臣、ある本に大蔵大臣は、日本の財政の流れの中でいつもキーポイントに立っているのが宮澤喜一であるというようなことを読んだことがございますけれども、大蔵大臣、この財政改革というものについて可能でございますか。
  158. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 経済戦略会議の答申の中で、この部分につきましては、偶然でございましたけれども、私が国会の両院におきまして自分の腹づもりのようなことで御説明しておりましたことと偶然に大体一致しております。  ただ、現実にやってみましたときに、時間的に押せ押せになる可能性はひょっとしてある、ないことを望みますが、手順としてはもう私はこれしかないだろうと。そして、殊に大事なのは、仮に二%程度の成長ができましても、その軌道に乗ったと判断するのにやっぱりちょっと時間がかかると思いますから、すぐに慌てて始めない方がよくて、そこは二年とかなんとか見ておいた方がいいと思います。その点も大体お考えが一緒のように思います。  そしてその辺で、構造的な改革というのは、それは政府もいたさなければなりませんが、民間から自然に起こってくるべきものが多いのではないか。つまり、この財政構造改革というのは恐らく、財政だけではありませんで税制もそうでございましょうし、中央、地方との関係もそうだと思いますが、つまり日本の経済社会というものがかなりもう今までと違った新しいものになっていかなければならないはずでございますので、そういう構造改革は、政府ももちろん助けますけれども、民間主導で起こってくる部分が多いのではないかというふうに思っております。
  159. 山本保

    山本保君 その内容についての前に、一つこの中におもしろい表現があったんですね。それはこうありました。一律的かつ硬直的な形で歳出削減や税収増加措置をとれば、これは景気後退をもたらし、かえって財政赤字を悪化させる。これはまさに橋本内閣の批判をきちんとされたのかという気がするわけでございまして、政府関係の文書で当然こういうことをやった上で、批判をした上で持っていくのが当たり前だと思いますが、ちょっと目新しく思ったのでございますが、今のような理解でよろしいでしょうか。
  160. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 特に特定の政策あるいは内閣を批判したんじゃなしに、一般論として言ったことでございますが、やはり往々にして陥りやすい欠点を見事に指摘していただいていると思います。
  161. 山本保

    山本保君 直前のことでしたから非常に具体性があるのかなという気もいたします。  それでもう一つ、細かい内容についてはまた次回にいたしまして、私読みまして、自分の専門とも絡み、バウチャー制というのが随所に出てまいりまして、ひとつこの意義について私お聞きしたいと思っております。  私は、結論から言えば、今までの言うなら補助金型の行政から自由な選択を選ばせる新しい方法ではないかという気がするわけでございますが、総合的に三つのものが出ておるようですけれども、どのような意義を持っておるというふうにお考えでございますか。
  162. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) バウチャーというのが戦略会議では、私の記憶によりますと、保育バウチャーとそれから介護の点とそれから勤労者の能力開発、その三つに出てくると思いますが、それぞれにつきまして消費者の選択、役所が決めて供給者に補助をするんじゃなしに、消費者が選択できるような仕掛けを重視しているんだと思います。  この点について、発想は非常にいいんですが、技術的にはバウチャーが本人に使用されるか流通するか、いろんな問題点がありますので、よく検討していきたいと思いますが、基本的にはおもしろい発想だと思っております。
  163. 山本保

    山本保君 長官は詳しいようですので、私の意見をひとつ聞いていただきたいんですが、我が党が昨年主張いたしまして今回できました地域振興券、減税策としての意味だけが論じられておりますけれども、私は以前からバウチャーを研究していた者として、日本で初めてのバウチャー制の一つのはしりではないかというような気がするわけでございますけれども、こういう見解についてはどうお考えでございますか。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはどうもバウチャーという日本語をまたぼつぼつ探しておきませんと、これはきっと大変に発展すると思いますね。アメリカではバウチャーという言葉が割にわかりやすいですが、意外でありましたのは、ソ連が国有財産を民有にするときに国民にバウチャーを出しましたですね。あれは非常に私は意外でありましたが、まさに我々も、これから消費者に選択を与えるための手段としてきっとバウチャーというものが広くいろんなときに考えられるようになるのではないか。  ただ、今のところサービス側の多様化がございませんから、現実にあるサービスみたいなものがはやって発展していくという段階にありまして、バウチャーですと、あるものがあってそこでバウチャーが役に立つわけですから、ちょっとにわかに一挙にバウチャーには入らないかもしれませんが、しかし消費者本位の社会になりますと、いろいろ提供するサービスが多様化しておって、その中で消費者がバウチャーを使える、こういうことにならなきゃならぬのだろうと私は思っておりますので、つきましては、バウチャーという言葉を先生せっかく御研究ですから、うまい言葉を探していただきたい。将来のこれアイデアになると思うんです。まさにこの間の、地域振興券という言葉はともかく、とりあえずああいう名前にいたしましたが、ああいうアイデアが展開するんだろうと思います。
  165. 山本保

    山本保君 本当に切符とかクーポンとか、なかなかいい言葉がないなというのはそのとおりであります。  今、大蔵大臣からも、まさにこれが成立するといいますか、効果的に動くためには多様なサービスが先になくてはならないということ、おっしゃったとおりであります。  そこで、せっかく大臣もおいでですので、細かくなりますが、例えば保育バウチャー、こう言いまして保育の多様化と、こうなりますと、今度は幼稚園教育というものと保育というものが当然垣根を取っ払って、そして同じようにバウチャーを使う、こういう議論になってくるのではないかと思うんですが、この辺のところについて両省の大臣はどのようにお考えでございますか。
  166. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 保育のバウチャーでありますが、これは今お話しのように個人の選択の自由ということでございまして、具体的に保育所の利用等につきましては、施設と利用者の契約によってサービスを提供することになります。バウチャー方式でありますと、基本的には日々の契約更新というのが前提になると思うんです。それでないと多様な選択はできません。場所も変えることはできません。したがって、そういうことが保育の場合にいいかどうかという一つの問題がございまして、私どもは補助金その他で保育制度というのは維持しているわけですが、その補助金部分をバウチャーにして市町村が償還するという格好になると思いますけれども、実は保育所との信頼関係とか継続的な関係が保育の場合極めて重要ではないかという視点が一つあります。  それから、待機児の多い地域とそうでない地域がございますが、待機児の多い、ミスマッチの多いようなところは、それを探すのに大変だという保育所の現実の問題があります。それから、母子家庭等の優先度を高くしておりますけれども、そういった方々が入所しにくいというような点も指摘されております。それからまた、保育所側としては、その保育所にバウチャー券を持ってこられる方が多数出ますと、職員の確保とかそういう問題もございます。  ですから、どうも保育所等で基本的にバウチャー制度によって選択を自由に変えるということが全面的にいいかどうかという点は大変私も疑問に思うんです。ただ、一過性の、一時的な預かりとかなんとかいうようなことであれば、あるいはその余地はあるのかなという感じがしないではございません。  それから、保育所と幼稚園のあり方は、これはずっと伝統的に幼保の一元化その他で議論されております。文部大臣からも御答弁があると思いますが、今は、施設を共用化したりいろいろなセンターで連携をしたり、幼稚園と保育所の先生方の合同研修をやったり教育内容の整合性を図るとか、そういう同一化の方向をとっておりますので、そういう基盤がつくられてくればそういう制度の可能性はあるのかもわかりませんが、それ以前に、今申しましたような施設との継続性の問題等々いろいろ問題もあるように思われます。
  167. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ただいま厚生大臣より御答弁申し上げたことにかなり近いことになろうかと思いますが、御指摘の保育バウチャー制は、保護者の選択の自由を基礎に保育サービスの向上をねらうということであろうと思います。  しかし、このバウチャー制については二、三問題がございます。一部の施設に子供が集中してしまう、あるいは集まらないといった事態が生ずるおそれがないか。それからもう一つは、公私立を通じて公費で負担することになれば財政的に極めて大きな負担にならないだろうかというあたりが問題であると考えております。  いずれにしても、バウチャー制というのは新しい考えでございまして、我が国の幼児教育の制度になじむかどうか、検討をすべきだと考えております。  なお、厚生大臣が今おっしゃられましたように、幼稚園と保育所につきましては共通な部分もございます。したがいまして、現在、厚生省と協議しながら両施設の連携を図る努力をしているところでございます。具体的には、預かり保育を推進する、施設の共用化の推進、教員と保母の合同研修の開催などを行っているところでございます。  今後もさらに厚生省との連携を緊密にして、保護者や幼児の立場に立って利用しやすい環境の整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。バウチャー制というふうなことも一つの可能性として考えてみたいと思っております。
  168. 山本保

    山本保君 さっき堺屋長官の方から、各省の意見を聞かずにまとめたんだと。はしなくもその状況が明らかになったような気がいたします。厚生省は大変消極的ですし、得るものが多いであろうと言う文部省の方はちょっと積極性があるのかなということですが、今後これは、大蔵大臣も言われましたように、サービスをそのような公的なとか役所とかそういうことで分けていかないということがこの流れなんですから、ぜひ考えていただきたいと思います。  まだちょっと時間がありますので、では次に介護バウチャーについてと、それから能力開発バウチャーということについて順にお聞きしたいと思います。
  169. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 居宅介護サービスにバウチャー方式を導入するメリットといたしましては、仮に導入したとして、介護サービス計画を作成する方式に比較しまして、サービスの種類の変更を自由に行い、選択ができるという点が指摘されております。この点は確かにそういう面が否定できないと思います。  他方で、導入する場合の問題点としては、私ども、介護支援専門員による専門的な助言をいただきながら介護サービスを、ケアプランをつくってこれをやるわけでございますが、このバウチャー制度によりますとそういった制度的な保障措置が担保されないという面があるのではないか。それから、バウチャーの発行事務や回収事務の負担が重いのではないかというような点、特に重度の要介護者にとりましてはバウチャーの管理等がかえって負担を増す等が指摘されております。  したがって、そういう事務的な問題もございますし、ケアプランの中での支給限度額の管理の問題でもございますから、私どもとしては基本的にそういったケアプランの中での介護システムを考えておるわけでございますが、これから介護の問題も、民間の自由な参入その他、供給面は自由化をしようとしておりますので、検討すべき課題かなという観点から検討はさせていただきたいと思っています。
  170. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 能力開発バウチャーに関してですが、今教育訓練給付というのをやっておりまして、これとの比較を今させております。  両方とも、受講者の自由意思で、自分はこういうものを勉強したい、こういう能力をつけたいということでフレキシビリティーがある。  一方、バウチャーによる懸念される点は、言ってみれば金券ですから、ちゃんと履行した、つまり学習したということをどう確認できるのかなという点があります。教育訓練給付は、受講終了を確認して、後で八割、二十万上限でお支払いするということでありますから、御本人がもちろん意欲にあふれてちゃんとやればそれでいいんですが、受講しないで使われたり、受講途中で終わっちゃったりとか、そういうことが懸念される点かなということで、今、プラス、マイナスいろいろ勉強させていただいております。
  171. 山本保

    山本保君 時間がないのでこの議論はまたの機会にしたいと思いますけれども、今の介護に関していえば、まさに自由に選べるということでございますから、ここでこれを導入すれば、例えば介護単価を大臣が決めなければならないとか、こういう薬価と同じような問題は全部クリアされるわけでございます。  それから、能力開発に関していえば、大臣、公共事業予算から振り分けるなんてことが書いてございますので、ぜひここは積極的に取り組んでいただきたいなと。こうなれば、今度は、一体公教育というのはじゃ何なんだ、大学や高校は一体何をやっているんだと、こういう話にぜひなりたいと思っていますが、次に行きたいと思います。  それで、ちょっと今度は話を変えまして、保育と育児休業、いわゆる子育てについてお聞きしたいのでございます。  今、ゼロ歳児、つまり生まれた赤ちゃん、一年間に大体百二十万人弱生まれておるわけでございますが、これに対して、労働省の有給育児休業と厚生省の乳児保育、この二つが並立しております。 この現状についてお聞きしたいと思っております。まず、労働省からお願いできますか。
  172. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 現在、育児休業制度を利用しております方が六万五千人おられます。
  173. 山本保

    山本保君 国の予算はどのくらいですか。
  174. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 国の予算は、育児休業給付の実績支給金額でありますが、九年度で二百五十九億円であります。
  175. 山本保

    山本保君 厚生大臣
  176. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 保育所におきます乳児、ゼロ歳児でございますが、入所児童数は平成十年度当初で五万九千人。乳児の保育に要する費用は一人当たり平均十五万四千円くらいでございまして、年間に要する費用総額はそのゼロ歳児だけで千五百億円程度となっております。  それから一方、乳児の待機児童数は、平成十年度当初におきまして六千五百人くらいおります。都市部を中心とした低年齢児童の保育所入所待機の解消は極めて重要でございますから、そういった点の施策を強力に進めておるというのが現状でございます。
  177. 山本保

    山本保君 つまり、百二十万人弱の新生児に対して、公的な支援というのは約十二万人である、一割であるということ。ですから、九割の方には、児童手当を別にすれば、ここに明らかな格差があるということです。そして、お金についても、今おっしゃいましたけれども、大体同数の赤ちゃんと考えたときに、労働省の予算としては二百六十億円であるが、保育事業に関して言えば一千五百億円とおっしゃったわけです。  つまり、この状況に対して、今度両省は一緒になるという計画だそうでございますが、もっと両省が一緒に計画をして、言うならば、より負担が少なくなおかつ子供にとっていい環境をどのように与えていくのか、おのずから答えはわかってくるような気がするわけですが、この辺について計画はあるのでしょうか。どちらの大臣でも結構です。
  178. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) このたび、十一年度予算におきまして労働省と厚生省がタイアップいたしまして、コンビネーションを組んで委員の今おっしゃったような事業をモデル的に実施するということを計画しております。
  179. 山本保

    山本保君 それがまた出たところで議論をしたいと思っております。  次に、今度は教育行政問題についてお伺いいたします。  先般のこの委員会でもちょっとお聞きしたことをもう少し深めてみたいと思うわけでございますが、地方における教育行政というのは一般行政から相対的に独立しております。この意義、なぜこのような制度になっているのか、文部大臣、お願いします。
  180. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 教育委員会は、教育行政の中立性、継続性という問題がございますので、その中立性や継続性を確保する観点から知事や市町村から独立した行政委員会として設置されていると考えております。そして、学校教育や社会教育、文化、スポーツ等の振興のために重要な役割を果たしていると考えております。
  181. 山本保

    山本保君 そのとおりでございます。そして、それは直接に住民に責任を負って行うと教育基本法にあるわけでございます。つまり、地方の住民の教育意思をそこへ集めるということで専門家である学校を管理する、これが教育委員会の基本的な仕事であります。  そこで、教育委員会について三点ほどお聞きしたいわけです。  まず、新聞等を見ますと、教育長の任命承認の場合に上級教育長からの承認が要るというこの制度を廃止しようというようなお話があるようでございますが、これについて説明してください。
  182. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 地方教育行政法の改正につきましては、今国会に関係法案を提出する予定といたしております。現在、そのための準備を進めているところでございます。  法律改正の最終的な内容につきましては現在検討中でございますが、今御指摘の教育長の任命承認制度については廃止する方向で検討いたしております。  その理由は、平成八年十二月の地方分権推進委員会の勧告や平成十年九月の中央教育審議会の答申を受けまして、地方公共団体の人事について当該地方公共団体の責任において教育長に適任者を選任することが必要であると考えているからでございます。
  183. 山本保

    山本保君 つまり、一般行政においても、例えば市の何とか部長を上の県の部長やまた大臣が承認するというような制度はないわけであります。先ほどおっしゃったように、教育こそ独立して住民の意思を反映しなければならないという制度でありながら、一般行政にもないような制度がこれまでずっとあった。全く転倒しているわけですから、これは大至急直していただきたいと思っております。  次に、そこで問題は、その場合、教育長という事務屋のトップがおるわけでありますね、専門家です、この教育長を教育委員が兼任してもいいようにしたい、こういうことを聞いておるわけでございます。これはどういうようなことですか。
  184. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 現在、市町村教育委員会の教育長につきましては教育委員を兼任する制度になっております。このような現行の市町村教育委員会の制度においても、教育長は教育委員会の指揮監督に服し、教育委員の合議で決定された方針のもとに具体的事務を執行することとされており、教育長が教育委員を兼任することは現行教育委員会制度の理念と反するものではございません。  現在、教育長の任命承認制度について廃止する方向で検討しておりますが、それに関連して教育長に適材を確保する仕組みが必要と考えており、現行の市町村の教育長が教育委員を兼任する制度の導入も含め、その具体的方策を検討しているところでございます。
  185. 山本保

    山本保君 現実には、とっていいという制度だったはずでありまして、それを定めるというのはどうか。というのは、二つの場合があるわけです。  つまり、助役さんになっていくような方の教育長ポストとなっておるわけでして、こういう方が教育委員を兼任されれば、その人が教育委員会をずっと持っていく、当然そうなってしまう。これでは先ほどおっしゃった理念はどこかに飛んでしまうわけです。  しかし一方、逆に教育委員になられた方が以前教員をやっておられたというようなことで、非常に教育的な能力がある方を教育長にする、こういうことであれば納得できるなというわけですから、ここについては何らかの歯どめをきちんとつけていただきたいということを希望いたします。  次に、もう一つ、先回も申し上げましたけれども、大きな町でも市でも五人しか置けないというこの法律のここを緩和できないかということ。また、午前中にもお話がありましたけれども、学級定数については、教育目的から考えてその状況に応じて自由に組めるようにすべきではないかと先回申し上げたわけですが、改めてお聞きします。この辺についてはどうでしょうか。
  186. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 現行制度では、教育委員会の委員の数は、今御指摘のように原則五人とされております。しかしながら、町村については、人口規模や財政状況などを勘案いたしまして、例外的に条例により三人の教育委員で構成することも可能になっております。  昨年九月の中央教育審議会の答申では、近年、地域住民の教育行政に対する関心、要望が多様化している中で、地域住民の多様な意向を教育行政に反映する観点から、都道府県や市の教育委員の数を弾力化することを提言しております。  文部省といたしましては、このような観点から、教育委員の数を画一的に五人としている現行制度を見直すことは必要であると考えており、国、地方を通じた行財政改革の流れや地方行政制度全体との整合性も踏まえながら、制度の改正について検討してまいりたいと考えております。
  187. 山本保

    山本保君 定数の自由化についてはどうですか。
  188. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) このことも今検討はいたしているところでございますが、すぐにそうだということはお約束いたしませんけれども、検討はいたしております。
  189. 山本保

    山本保君 積極的なお答えをいただいたというふうに思っております。ありがとうございます。  それで次に、ちょっと観点を変えますが、障害を持った方に対して労働省の方が行う雇用の支援と厚生省の福祉の支援というのがどうもばらばらではないかという気がしておるわけでございます。これについて何か新しい対策を今度持とうということだそうでございますが、どのようなものなのか、御説明ください。
  190. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 先般、私、ある雑誌の誌上で障害者の就業を支援するボランティア団体と対談をいたしまして、そしてカルチャーショックを受けたのでありますが、その障害者雇用支援団体のスローガンは、障害者よ納税者になろうという話でありました。そのメンバーの中には、車いすで、首から下が全く動かない人が口でパソコンをいじりながらいよいよ会社に雇われる段階まで応援してきたということであります。大変に感銘を受けました。  世の中の流れというのは、福祉から雇用へというのが先進国の合い言葉になっていますが、同時に、福祉から雇用に行った人がまた福祉に戻れるという、相互フリーといいますかバリアフリーが大事だというふうに思っておりまして、二十一世紀には労働省と厚生省が一緒になるわけでありますが、そこで障害者に関しまして障害者の生活支援と就業支援を一体的に行おうということを試行的に十一年度から始めることにいたしておりまして、全国で十カ所の拠点をつくるようにいたしております。もちろん文部省とも協力するわけでありますが、この事業を二年間くらい行いまして、そのうちにそこを、十三年度くらいからは障害者就業生活支援センターとして位置づけてモデル箇所にしたいというふうに考えております。
  191. 山本保

    山本保君 厚生省のそれに対する対応についてお願いします。
  192. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、労働大臣の方から両省の枠組みの基本的な点については触れられておりますが、厚生省の方としても、この生活支援を主体といたしまして、知的障害者が通勤する寮等を運営する場合に、社会福祉法人でございますが、生活支援ワーカーを配置したり、それから障害者のうち就職を希望している者や現に就職している者の家庭等を訪問することによりまして、金銭管理や衣食住等生活面の相談に応じ、助言を行う等地域的な支援を行うということで、労働省の方の問題とタイアップしてやろうと。  それから、知的障害者の通勤寮に養護学校生徒を短期間受け入れまして、入寮者と起居をともにしたり、就業体験を聞きながら日常生活習慣や通勤習慣などを身につけさせるための訓練を行うというようなことを予定しておりまして、労働省の就業支援対策とセットとしてやっていこうということでございます。
  193. 山本保

    山本保君 当然もう既に行われていなければならなかったことがやっと初めて行われたということに驚くわけでございます。しかし、両省とも積極的に今後伸ばしていこうということで頑張っていただきたいんですが、一つここで疑問があります。つまり、このような方は養護学校というところから出てこられるわけです。ですから、文部省はこういう考え方をどう思いますか。
  194. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 文部省におきましては、従来から養護学校における職業教育の充実を図っております。私も先日見てまいりました。特に体験的な学習を通して職業教育が行われるように努めておるところでございます。  具体的には、養護学校の学習指導要領において勤労にかかわる体験的な学習を重要視した規定を設けているほか、知的障害養護学校の高等部の教科の職業でも現場実習を重要視しております。各学校においては、関係機関との連携を図りながら現場実習などの体験的な学習を推進しているところでございます。  さらに、先週公表いたしました新しい養護学校の学習指導要領案においては、職業的な自立の推進という観点から、知的障害養護学校の高等部に新たな教科、情報あるいは流通・サービスなどを設けるともに、今回新設した総合的な学習の時間にも就業体験などの体験的な学習を積極的に取り入れるように示したところでございます。  文部省におきましては、こういう諸施策を通じて、今後とも関係省庁とも連携を図りながら養護学校の職業教育の充実に努めてまいる所存でございます。
  195. 山本保

    山本保君 今おっしゃったことは、つまり学校としてその中の中身をよくしようということを言っておられるわけです。しかし、こういう分野は、学校は学校、福祉は福祉、労働は労働、これじゃだめだということになっているわけですよ。今おっしゃった学習指導要領を見ましても、そういうことに関してはたった一つだけ、「児童福祉施設、医療機関等との連携を密にし、指導の効果をあげるよう」と、こういうのが書いてあるだけであって、どのような施設、どんな人たちということが全く抜けているのではないかと思いますけれども、どうですか。
  196. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 各関係機関あるいは産業界、地域社会等々のお手伝いをいただきまして、インターンシップ、現場で勉強すると、現場で体験をするということを大いに図っているところでございます。
  197. 山本保

    山本保君 大臣が今おっしゃったインターンシップというのは、まさに一般のまたは優秀な方についてというイメージなんですよ。ですから、ぜひ養護学校の子供さんについても、先ほども何か中高一貫のことを言われましたが、私は中高一貫の法案のときに賛成する条件として申し上げたのは、中高一貫というのは教育学的に考えれば、まさに養護学校こそ率先してやっていくべきものだというふうに言いました。  ちょっとついでにといいますか、これは通告になかったので質問ではないんですが、一つだけ。  ここで国旗とか国歌について午前中もお話がありまして、私はちょっと余りにも政治運動的な発想の議論がされているような気がしているものですから、もう少し教育的な意味での議論も冷静にすべきではないかということを申し上げたい。  その一つの例として、例えば幼稚園の教育要領には、実は国旗のことは書いてありますが国歌はございません。なぜか。難しいからでしょう、きっと。しかし、難しいという内容論を言うのではなくして、国民の基本的な知識、または技能、技術として、国民としての資質としてということであれば、難しいということは関係ないんじゃないかと思うんです。  逆に、高等学校というのは年齢制限もないし、実は大人が行ったって法律上は何にも問題ない。まさに今まで話してきたような、これからの構造改革において新しい人的資源というときには、高等学校、大学を一般の方がどんどん使う、再教育ではなく最初からそうするというのが出てくるわけです。そのときに、高等学校の生徒さんに指導をするものであるというようなのは全くおかしいんじゃないかという気がしておりますが、これは意見だけ言わせていただきます。  最後に、時間がありませんので順番を崩しまして、介護について、労働大臣にこの前委員会でも申し上げたことから先にお聞きしたいんですが、今度から有給の介護休業が始まる、これが必要になってから三カ月間だけ使える、これはおかしいのではないかと申し上げました。いかがでございましょうか。
  198. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) より使いやすくということであると、いろいろフレキシブルに対応することも要望として上がってくるかと思います。ただ、事業主がどこまで耐え得るかということを配慮しながらある部分はやらなくちゃいけないと思いますので、一応連続する三カ月ということで定めたわけであります。  しかし、介護休業の期間や回数を含めまして、できる限り制度の弾力的な運用が行われることが望ましいことでありますので、育児・介護休業法の第二十条二項に、事業主は、介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずるよう努めなければならない旨の努力義務が規定されているところでありまして、この点については、事業主の一層の周知啓発に努めたいというふうに思っております。
  199. 山本保

    山本保君 今の問題は、つまり育児の場合は最初のところが大事だから一年間ということはよくわかるわけです。介護のときに、最初の三カ月は実の家族がやって後は専門家に、これは全然論理が合わないんじゃないかと思うんですけれども、厚生大臣、何か御発言ございますか。
  200. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 連続する三カ月ということのようでございます。一方、介護の方は非常に長期的な期間を要します。私どもとしては、率直なところを申しますと、介護保険制度というのは保険制度としてそれ自体完結したいという気持ちはございます。したがって、介護休業制度が本当に介護の保険制度とどういう関係に立つかなというのは一度考えてもいいのではないかなという感じはいたしておりますが、さて、現実にはそうなっていないので、三カ月の介護休業は、これから今度は手当を四月一日から払うということでございますから、両制度相まって介護の充実を期することは当然だと今のところ考えております。
  201. 山本保

    山本保君 もちろん三カ月をもっと延ばすというようなことが一番基本なんですけれども、三カ月を例えば九十日間というふうに解釈して、その九十日間を毎週一日なり二日なり使う、こういうことができるようにされれば、まず現実に介護保険が始まっても大変専門家と家族との連携もうまくいくと思います。  労働大臣、先ほど非常に積極的な御発言だったと思います。ただ、法律にある努力義務は、お金を出すとは読めませんので、その辺をきちんとしていただかないと、幾ら努力しても、それについて有給の、そこが使えるかどうかが問題でございますが、ただ、今それに対する取り組みの姿勢は積極的であり、検討していただけるものだというふうに思いまして、私の質問を以上で終わります。  ありがとうございました。
  202. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で山本保君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  203. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、八田ひろ子君の質疑を行います。八田ひろ子君。
  204. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 日本共産党八田ひろ子でございます。  二〇〇五年に愛知県瀬戸市の海上の森を会場にした万博が開催されることが閣議でも了解をされております。  通産大臣にお伺いをいたしますけれども、二〇〇五年日本国際博覧会は何をテーマとして開かれるのか、また、なぜそういうテーマになったのか御説明ください。
  205. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 二〇〇五年日本国際博覧会のテーマは、「新しい地球創造・自然の叡智」でございます。このテーマは、我々の直面するエネルギーや環境問題は自然の浄化力の限界を超えた急速な工業化のプロセスがもたらしたものであるとの認識のもと、自然は人間に従属するものではなく、また高度な技術は決して自然を破壊するものでもなく、人と自然との間で互いが助け合い、高め合う関係をつくり出すことができるはずであるとの考えに立ち設定したものと承知をしております。  博覧会の構想については、当初愛知県を中心に「新しい地球創造」とのテーマが提案され、愛知県県内八十八市町村及び近隣県から、これを前提に博覧会の誘致決議及び意見書が提出されてきたこと等を踏まえ、さらに検討を加え、平成八年秋に取りまとめたものでございます。国際的な競争の中で我が国での開催が決定したのも、このような各界各層の知恵によって練られた博覧会構想が高く評価された結果と認識をしております。
  206. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 「自然の叡智」というテーマで大変すばらしいと思うんですが、通産大臣はこの海上の森がどういうところか、実際においでになったことがおありでしょうか。
  207. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 塚原大臣、佐藤大臣ともに現地に行かれましたが、私は、写真、ビデオあるいは模型等で会場のことは勉強いたしましたが、まだ残念ながら現地には行く機会がございません。一日も早くここを視察しなければならないとは思っております。
  208. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 海上の森の中まで来ていただきたいと思うんです。  ここは、きょうパネルを持ってまいりましたが、(図表掲示)海の上と書いて「かいしょ」と読みます。この森にはオオタカが舞って、非常に緑が豊かなところで、世界では日本の伊勢湾を囲んだ地域にだけ生息すると言われるシデコブシの花がこういうふうに咲くわけでありますけれども、また、こちら側は、大正池のようだというふうに言われる通称海上池というのがあって、瀬戸市民は無論のことたくさんの方が散策に出かける場所です。  海上の森の場所を申し上げますと、ここがそうなんですけれども、大型開発から免れた里山、人と自然との共生で注目される里山を今に残すところですが、こういうところをなぜ自然を破壊されるのか、その会場にした理由を聞かせてください。
  209. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 会場候補地の選定に当たりましては、地元愛知県において四つの条件、すなわち大都市機能の活用、戦略的な地域づくりのビジョンの存在、交通基盤整備計画の存在、用地確保の可能性をすべて満たす場所として愛知県瀬戸市南東部を会場候補地に決定したと承知しております。  政府としては、愛知県から提出された会場構想について、環境に十分配慮するという観点に立って所要の修正を加えた上で閣議了解し、博覧会国際事務局に対し開催申請を行いました。  具体的には、希少種がまとまって生息、生育する環境の保全を図り、屋戸川、寺山川などの水系の保全を図るという基本的な考え方のもとに、主要施設を整備する区域の大幅縮小等を内容とする変更を行ったものでございます。  その結果、平成九年六月の博覧会国際事務局総会、BIE総会において我が国の提案が国際的に圧倒的な支持を得て本国際博覧会の開催が正式に決定されたものであり、この場所を基本として準備を進めております。
  210. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 それならば、具体的な構想、会場基本計画はどういうものですか。
  211. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) お答え申し上げます。  会場計画につきましては、博覧会協会から昨年の七月を皮切りにこれまで三度にわたって検討状況を公表いたしております。広く意見を求めておる状況でございます。現在、さらに博覧会協会におきまして検討が進められている状況でございます。
  212. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 テーマは大変立派だと思うんですけれども、その構想がなぜまだ決まっていないんでしょうか。
  213. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) 会場計画につきましては、環境影響評価の作業経過あるいはその結果を十分に反映しながら策定することが重要であると考えておりまして、現在環境影響評価の手続が進捗中でございます。会場計画の検討はこれと並行して行われていくものと承知をいたしております。
  214. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 実際には、この間、どういう万博をするかというさまざまな絵や模型が繰り返しありまして、これが全部そうなんですけれども、その中には、森に柱を立ててその上に空中回廊をつくって、この水平回廊を歩くことが自然に親しんでもらうことだとか、あるいはバーチャルリアリティーだと言って、何かをつけて森の中を歩くとチョウチョウが浮かんでいるように見える仕掛けだとか、人工的なせせらぎの合成音を聞かせるのが自然の英知とか、率直に言ってどこが自然環境との共生か。  さっきの御説明にあったんですけれども、どういうものなのかというのが浮かんでは消え浮かんでは消え、そのたびにこれが原案ですかと聞きますと、そうではなくて、あくまで素案だからこうなるとは言えない。最初は四つの森というのも出たんですけれども、次の発表では何と廃墟の森というのも入れて十二の宇宙をつくる。  要するに、海上の森の生態系を破壊する案しか浮かんでこないから出てこないというのが実態じゃないでしょうか。通産大臣、どうでしょうか。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  215. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) この博覧会を担当されている方々すべては、自然との共生あるいは「自然の叡智」という本来のテーマというものを大切にして物を考えていると私は確信をしております。  会場計画については、環境影響評価の作業経過を反映しつつ検討されているというふうに承知しておりまして、これによりまして適正な環境配慮が確保された会場計画が策定されるものと私どもは考えております。
  216. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 環境に配慮がなかなかできない、環境破壊というのを実証しているのが新住宅市街地開発事業、略称で新住事業という会場づくりです。ブルドーザーで木を切り山を崩し谷を埋めるという造成事業なんですが、当初の規模よりどんどんと小さくなっていますね。建設省どうでしょうか。
  217. 山本正堯

    政府委員山本正堯君) お答えをさせていただきます。  新住宅市街地開発事業に係ります規模でございますが、平成二年の十月に建設大臣が新住宅市街地開発事業に準ずる事業として指定いたしました事業の施行区域面積は約二百二十ヘクタールでございます。  現在、愛知県が新住宅市街地開発事業の都市計画案の縦覧に先立って行っております環境影響評価準備書、いわゆるプレ縦覧の記載によれば、区域の面積は約百三十八・八ヘクタールとなっておるところでございます。なお、平成七年の十二月の博覧会の閣議了解時点では、博覧会会場を約五百四十ヘクタールとして、新住宅市街地開発事業の区域の面積は明らかになっておりませんけれども、その後九年九月に愛知県が公表いたしました新住宅市街地開発事業では利用区域面積約百五十ヘクタールということにしているところでございます。
  218. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 そうなんですね。環境を考えるとどんどんと小さくしなくちゃいけないけれども、環境に与える影響は大きい。  今地元で説明と質疑が行われております、先ほど大臣がおっしゃっている環境アセスの準備書を私ここに持ってきました。この準備書なんですけれども、これ見ていただくとおわかりなんですけれども、万博の会場とそれから会場を造成する新住事業と会場を貫く高規格道路、名古屋瀬戸線、これ三つが別々なアセスなんですね。(資料を示す)同じところでやるのに三つ別々で、これでは本当の環境影響評価がわからないんじゃないかと批判されていますが、その不十分なものを見てもどうかというと、絶滅危惧種、レッドデータブックに載っている植物が幾つか消滅をしていくとか、あるいはタヌキが減る、キツネとテンはすめなくなる、いろんなことが書かれているわけなんです。  環境庁長官、藤前干潟では環境庁は指導的な役割を果たしていただいたと思います。あの藤前の上流がこの海上の森なんです。この大規模な環境破壊が行われようとしているときに、長官、ぜひ一度現地を見ていただいて、環境を守るという環境庁の役割、アセスで御意見も言われるわけですけれども、そういうのを果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  219. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先ほど来お話がございましたように、今回の愛知万博は「自然の叡智」というのをテーマにいたしまして二〇〇五年に開催することが予定されておりますけれども、会場予定地及びその周辺は人とのかかわりの中で成立してきた二次林を主体とした里山であり、地元の有名なギフチョウやシデコブシなど、この地域に特徴的な動植物も生息、生育する地域であると認識いたしております。  現在、アセス法を先取りする形で環境影響評価の手続が実施されておりますが、その中で、今後幅広く国民の意見や地方公共団体の意見を受けて、実効ある環境影響評価が行われることが重要であると考えておるところであります。  そこで、今、藤前干潟のお話もございましたけれども、藤前はちゃんと地元の協力を得まして保存されることになったわけでありますし、また近々にはラムサール条約に加入することにも相なっておるわけであります。環境につきましては十分配意をした形でこの博覧会をぜひ成功させていただきたいと思っておるところであります。  私も現地を見てみようと、こう思っておるわけでありますけれども、現地の動植物と申しましたら春先が一番いいということでございまして、間もなく木の芽も芽生えるころでございますから、その時期を見て視察をさせていただきたい、そして環境には優しい万博であるように努めてまいりたいと思っておるところであります。
  220. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 環境に優しい万博がなかなかできなくて今私が質問しているんですね。  三月二日の全国紙に愛教大の植物分類学専攻の芹沢俊介先生が論文を出されました。結論は「要するに、海上地区の里山で二千五百万人規模の博覧会を、看板通り環境に配慮しながら開催するのは、とても無理である。」。これが専門家の意見なんですね。環境庁長官、ありがとうございました。  そこで、通産大臣に伺いますが、二〇〇五年まであと六年という段階で、今お話しになったような貴重な自然がある、だから構想もできていない、理由ははっきりしているわけなんですね。緑が豊か、自然が残っている、こういうところでなぜ木を切って、埋め立てて、崩して、環境万博なのかという批判の声が大きい。  愛知県の世論調査、新聞報道でも、こんな大型プロジェクトはやめよ、見直せが実は過半数を占めている。どんどん世論が変わっている。こういう世論があるから計画の決めようがないじゃないですか。まさに行き詰まっている。私は、いまだに構想が決まっていないのはむしろ幸いだと思うんです。  こういう環境破壊の環境万博、やめるべきだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  221. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 閣議決定もしておりますこの万博でございます。また一方では、環境に十分配慮しながら計画を進めているわけでございまして、これをやめろというお話でございますが、そういうお考えを持つ方もおられるということはわかりますけれども、私どもの立場はこれを進めるという立場でございます。
  222. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 海上の森でおやりにならない方が私は絶対にいいと思うんですね。二〇〇五年日本国際博覧会は、その名のとおり、日本国が手を挙げてBIE総会で開催が認められた。先ほど御説明があったんですけれども、しかし各国の前例を見ますと、その開き方や場所を住民投票など国民の声で変更するという国が結構あるんですね。そして、開催そのものをやめた国もある。環境破壊を世界に見せる環境万博、これはブラックユーモアにもならないと私は思います。  では、一体この万博の事業費というのは幾らになるんでしょうか。
  223. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) お答え申し上げます。  建設費ということでございますが、先ほども御説明申し上げましたとおり、今後、会場計画の策定作業がさらに進めていかれるわけでございまして、その進捗に応じまして、それに対応した会場建設費が具体化していく、こういうことでございます。
  224. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 事業費はわからぬ、未定だと、こういうのが続いているわけですけれども、政府は未定だ未定だと、こういうふうにして事業費の規模を発表されませんが、閣議了解では極力経費を削減すると。それでは、残りの事業費はどこが負担するのかという問題が出てくるわけなんですね。  報道によりますと、万博関連事業も含めていろいろ出ています。自治体負担が大変だということです。先ほどお話をいたしました万博会場にアクセスする名古屋瀬戸道路、これでも実際には三千億円。会場の乗り入れを予定している鉄道、愛環鉄道の整備も三百億円から四百億円。これは愛知県とか周辺の市が出している第三セクターです。リニアを予定している東部丘陵線というのは一千億円。まだこれは直接の事業だけですから、関連を合わせると莫大なものだと予想はされるわけです。  二〇〇五年国際博覧会の開催に当たって経費を節減するということから、先ほどからお話ししている会場の基盤整備、あれは地元、県がやる、こういうふうに決められていますけれども、会場のちょうど地元になる瀬戸市では、新住関連事業で百十三億円にもなる負担。これどうしたらいいのか、とてもたえられないと市議会で大問題になっているんです。この地域でいいますと、万博だけじゃない。さらに中部新国際空港も、道路も、鉄道も、宅地造成も二〇〇五年の万博を目指して進められようとしている。こういう関連の公共事業は、国家プロジェクトだからいわば聖域扱い。  自治大臣にお伺いするんですけれども、こういう巨大プロジェクト事業で自治体の借金が拡大をする、地方財政が大変な中でますます大変だ、これは困るというので実際に当該の自治体でも声が上がって論議されている、どういうふうにお考えになるでしょうか。
  225. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) この愛知万博は、もう御承知のとおり、地元の地方団体あるいは地元の経済界の強い誘致活動などを踏まえて政府として開催申請を進めて、そして日本開催が決定されて、現在、財団法人二〇〇五年日本国際博覧会協会を中心に準備が進められておるわけでございます。  この開催に関連する公共事業については、御指摘のとおり、博覧会の開催申請に当たっての閣議了解において、「その必要性等について十分な検討を行い、通常の公共事業費の中での適切な配分により対処することとし、新たに国及び地方公共団体による特別の財政措置は講じないこと。」とされておるわけであります。  したがって、今後、関連の公共事業の内容などが検討されることになるわけですが、愛知県など地元の地方団体におきましても、閣議了解の趣旨を踏まえて既定予算の中で施策の選択を行っていただいて、円滑な財政運営が確保されるよう適切に対処されると考えております。
  226. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 特段の配慮はない。先ほど国は節減節減、閣議了解、それで瀬戸市のように、もしこういう事業が行われて、これが通常の負担ということになったらとてもやっていけないんだという議論が起こるんです。  愛知県自体も実はそうなんです。東京や大阪や神奈川と並んで非常事態宣言を出しています。お金が足りない、だから地方行革という名のもとに何を削っていくのか、公共事業、とりわけ万博、空港は削れない、その関連も削れない、だから独自の施策、補助金などを削っていくという方向が示されているんです。  私は、ここに愛知県の豊橋市の高校二年生になる女生徒の投書が新聞に載りましたので、これは朝日新聞なんですけれども読みます。   私が高校に入り、お金が要るようになって、母の給料だけではやっていけなくなりました。   私もアルバイトをしてわずかですが家計を助けています。   片親で私立高校に通うのは大変なのですが、最近、私立高校への助成金が減らされるという記事を読みました。そうなると、授業料が引き上げられるのではと心配です。上がると、私の家は本当にやっていけなくなるからです。   私立高校への助成金は、どの家庭でも必要なものです。 これはずっと自分は学校を続けたいということが続いていくわけなんですけれども、この県では愛知方式と言われるような私学の運営費に対して独自の上乗せ助成や授業料の直接補助、公私の格差を少なくする制度をつくってきました。こういう部分が地方行革の対象で削られようとしている。  愛知では、全国で初めて一般職員の賃金が三・五%、平均三十四万円もカットされるという万博どころではない財政事情、これで自治体本来の役割が果たせると大臣はお考えなんでしょうか。
  227. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 今地元の愛知県におきましても、これは全国、国も地方自治体いずれもそうですが、大変深刻な財政状況にございます。  そうした深刻な財政状況を踏まえて、地元の愛知県におきましても歳入の確保あるいは経常的経費の削減、新たな行財政改革推進計画の策定など、歳入歳出両面にわたってさまざまな財政運営上の努力を進めておられるものと承知をいたしております。  そこで、そういう中でありますが、愛知県におかれて、あるいは地元の自治体におかれては、そういうような環境の中でありますが、閣議了解の趣旨をも踏まえて、少子高齢社会に向けた地域福祉施策の充実などの当面する行政課題への対応などにも配慮しながら、施策の選択や予算の配分を行って適切に対処され、必要な事業を行おうとしておられるものだと考えております。
  228. 八田ひろ子

    八田ひろ子君 海上の森で万博を開こうとするから行き詰まり、矛盾も広がる。  こういう事業を今こそやめるべきであると強く求めて、私の議論を終わって、吉川春子委員の関連質問をお願いいたします。
  229. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 関連質疑を許します。吉川春子君。
  230. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党吉川春子です。  雇用・失業問題は深刻な社会問題です。リストラによる解雇が官民ともに荒れ狂っている中、失業者が二百九十八万人と最悪、そして有効求人倍率は〇・四九%です。国民の不安は頂点に達しています。  こうした中、三月五日発表された政府産業構造転換雇用対策本部の取り組みによると雇用創出規模七十七万人とされていますが、官房長官、これは政府が責任を持って新たな雇用を生み出す数と理解してよろしいですか。
  231. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 詳細につきましては労働大臣からお答えいたしますけれども、内閣を挙げてのこの雇用を達成する目標にそれぞれ個別数値を挙げて、七十七万人と設定したものでございます。
  232. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 三月五日の産業構造転換雇用対策本部におきましては、一両年のうちに新規雇用が期待される四分野についての数字が各担当大臣から発表されました。これによりますと、保健・福祉分野において十万人、情報通信分野におきましては十八万人、住宅及びその関連分野において四十万人、観光分野において九万人の雇用創出されるという説明であります。  平成十一年度予算措置を中心に、規制緩和を含めて各種の関連施策を強力に推進することといたしております。
  233. 吉川春子

    吉川春子君 運輸大臣にお伺いします。  観光分野で九万人の雇用創出が期待されるといいますが、どういう試算なんでしょう。根拠をお示しください。
  234. 羽生次郎

    政府委員(羽生次郎君) お答えいたします。  観光分野というのは相当大きな市場でございまして、国内消費額で約二十兆円と推計されております。また、そのうち宿泊関連が約十五兆円でございます。そして、産業連関表を使いますと雇用で約百九十万人の規模があると考えられております。  このように、観光は地域振興や雇用創出に大変大きく寄与するものでありますが、今後さらに生活空間戦略プランによります平均宿泊日数、これを一・六泊から二泊へ、これは十年がかりでございまして、この二年度において二千億円ずつくらいの消費規模があると考えられます。さらに、祝日三連休化法の施行に伴いまして約五千億円の消費が考えられますので、約九千億円の消費額の増加を見込んでおります。これに対応する新規雇用増として九万人を見込んでいるわけでございます。  ただ、これは机上のプランでございますが、この実績を調べてみましたところ、なかなかよい数字が出ております。と申しますのは、十一月の勤労感謝の日の前後を調べますと、平成九年と十年が三連休でございまして平成八年が二連休でございましたので、これを比較してみますと、例えば東京近郊の保養地、日光等でございますと約二割程度の増加が八年と十年を比べるとございます。さらに、北海道等を見ますと、羽田—北海道路線、これは運賃を引いたというせいもございますが、平成八年と十年を比べますと三二%の増加がございます。また、高速バスにつきましても、これは新宿—富士五湖・松本方面でやはり一〇%から二〇%の需要増がございます。また、さらに旅行業を見ますと、平成八年と十年を比べますと十一月で三割以上の増加がございます。  このような現実の実績を見ますと、この宿泊増によります雇用増、観光需要の増加に伴う雇用増というのは十分達成可能なものであると考えております。
  235. 吉川春子

    吉川春子君 運輸省が監修された「数字で見る観光」という冊子がありまして、これを見ますと、宿泊数がこの八年間でもうどんどん減ってきているんですね。それなのにもかかわらず、どうしてふえるんですか。全くその四万人とか九万人とかという数字、おかしいじゃないですか。
  236. 羽生次郎

    政府委員(羽生次郎君) 先生指摘のとおり、この数年を見ますと一・六一が一・五九になったり一・六泊になっているのは事実でございます。  ただ、この数字、なぜこのようになったかというのを分析いたしますと、これは総理府の調査にも出ていたと思うのでございますが、一つには時間がないこと、もう一つはコストの割高感があること、もう一つは情報がないこと、この三つが非常に大きい要因だと考えております。  そこで、このたび政府の方で採択いたしました戦略プランによりますと、この三つの分野で大きな改善を考えております。  すなわち、コスト感を安くするために航空運賃を下げるような方策を講じるとか、あるいは祝日三連休化法の施行等によりまして休日の機会をふやす、さらに情報についても消費者に適正な情報が渡るように必要な施策を講じる、このような方法によって一・六泊から二泊が、これは十年がかりでございますが、増加することが可能であると考えております。
  237. 吉川春子

    吉川春子君 一両年と言っているのに十年かかるというのはどういうことですか。  大臣、これによって本当に九万人の雇用創出できるんでしょうか。大臣にお答えいただきたいと思います。
  238. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今、詳細な数字については御報告を申し上げたとおりでございます。  ただ、委員御心配いただいておりますのは、例えば予算で裏打ちをされた施策ではございません。基本的に小さな施策を積み重ねながら、特にこの三連休化法につきましては院で、まさに議員立法によってなし遂げられた施策でございます。そのときにもいろいろ議論があって、やはりこれをしっかりやった方がいいということでお決めいただいた。まさに院でお決めいただいた施策を、我々はそれを裏打ちするべくどうやっていくかということでやらせていただいておる、こういうことでございます。  また、一方、海外旅行、日本から海外へ行かれますのは千七百万人、日本に来られるのは現実として四百万人という落差がございます。中国にも、これから観光旅行で来られるようなことになり、事務所も開設させていただきました。また、アメリカ等には今スポットでコマーシャルを打たせていただいております。  一つ一つ施策というものを積み重ねながら、これだけで全部できるとは申し上げません、一つ一つ丁寧にやりながら観光というものを振興して九万人の雇用創出したい、努力をしてまいりたい、こう考えております。
  239. 吉川春子

    吉川春子君 労働大臣、私、けさの議論を聞いていました。これで七十七万人の雇用創出されるんですね、この事業で。はっきりお答えください。
  240. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) けさもお答えしたとおり、予算で具体的に雇用にかちっと当てはまる部分も確かにありますけれども、基本的には資本主義市場経済の中で民間の活力をどうやって引き出すかというところでありますから、これは計画経済のもとでの算定作業ではありません。そういうふうに施策を駆使すれば期待ができるということでありますから、かっちり何人がどういう算定方式の後にきちっと出るんだというほどがちがちに詰まった数字ではありませんが、そういうふうに期待ができるし、それに向けて全員が努力をするというところでございます。
  241. 吉川春子

    吉川春子君 もう少し実効ある雇用創出策をぜひやっていただきたいと思うんです。  自治大臣、京都では府の直接的な事業の実施によって雇用創出に結びつく施策を検討しています。府単費の土木事業で、委託契約をする際に地元住民を優先的に雇うことができないかなどを検討していくということです。  これは一例ですけれども、全国の市町村で雇用創出の取り組みが行われていますが、政府として何らかの財政的な応援ができないものでしょうか。
  242. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 自治省では、平成十一年度の地方財政計画の中で、地域活力創出プランを推進するために一兆円の事業費を計上いたしておるわけでございます。これは、地域の自立促進の条件を整備しようということと、あわせて地域の活力によって我が国経済の再生にも寄与しようということで、その目的で計上したわけでございます。  具体的には、ソフト事業として、地場産業の振興やベンチャー企業の創業、事業化支援などの地域経済再生のための取り組みや、人づくりに対する総合的な取り組みに必要な経費として普通交付税措置、これは二千五百億円程度でございますが、これを講ずるとともに、ハードの事業として、地域経済再生、人づくり、それから広域連携などを推進するための地域活力創出事業などに対して地域総合整備事業債による支援、七千五百億円程度でありますが、これを行おうとしておるわけでございます。  これらの財政措置を活用していただいて、地方公共団体における地域経済対策が積極的に推進されて、雇用の確保が図られるということを期待いたしておるわけであります。
  243. 吉川春子

    吉川春子君 雇用創出は、やはり市町村でそれぞれの実情に合わせてきめ細かく行うということが非常に重要ですので、自治体の取り組みが前進するように、大臣、ぜひ御尽力をお願いしたいと思います。  もう一度、どうぞ。
  244. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) そのように努力をいたします。
  245. 吉川春子

    吉川春子君 労働大臣、期待される雇用創出規模は非常に根拠がないということが今の答弁でも明らかであったのですけれども、例えばフランスなどでは若者の就業拡大ということに力を入れていますが、ここではどんな手を打っているか、御存じでしょうか。
  246. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 御指摘のフランスにおきましては、一昨年に制定をされました若年雇用就業拡大に関する法律に基づきまして、二十五歳以下の若年者を教育、文化、司法等の非営利分野において一年間の期限つきで直接雇用する施策を実施しているというふうに承知しております。
  247. 吉川春子

    吉川春子君 もうちょっと詳しく、事務局、言ってくれませんか。
  248. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) この法律によります事業の実施主体は地方自治体等ということになっておりまして、その事業の内容は、教育、文化、司法等非営利の性格を有し、かつ既存の民間分野と競合しない分野での新規の活動ポストを創設するということで、国からの補助金を受けて若年者を一年間期限つきで雇用する、当該若年者には最低賃金を保障するということで、九八年末時点で約十五万人が雇用されているというふうに聞いております。
  249. 吉川春子

    吉川春子君 こういうような施策を、大臣、日本でできないのはなぜですか。
  250. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 先生も御存じだと思うんですけれども、欧米と日本は若年者雇用の形態が全く違うんですね。日本は学卒で一括採用します。今フランスの例が出ていますけれども、フランスは通年雇用の国ですから、学校を出たから即就職が待っているということじゃないんです。  これは、職業能力がない者はどんな立派な大学を出ても採用されません。通年雇用で、職業能力がある者から採用されていくんですね。ですから、ヨーロッパやアメリカでは学校は出たけれどということが日本の数倍の大きな悩みなのでありまして、さきの雇用サミットでもそのことがけんけんがくがく議論をされていました。  ちなみに、フランスでは二十四歳以下の失業率というのは二二・五%、日本は八%です。この日本の八%というのは、就職した後三年以内に三分の一がやめちゃうからなんですね。つまり、自発的な失業で、そこにはミスマッチというものがかんでいるんです。フランスを初めとするヨーロッパでは最初から就職できないんですね。そこをどうしようかということでありますから、バックグラウンドが全然違うということを御承知おきいただきたいと思います。
  251. 吉川春子

    吉川春子君 政府が直接雇用対策をして雇用創出する、そういう施策をどうしてできないのかということを伺ったんですけれども、日本はそういうことを全然やらないわけですね。  引き続き雇用対策について、まず厚生省に伺いますが、私はここにポスターを持ってきました。(資料掲示)  厚生大臣、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」、このポスターは男性にも家庭責任を果たさせるために早く家庭に帰す、こういう意味のポスターでしょうか。
  252. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 子育ての責任は女性だけではなくて男性も共有すべきであるということを呼びかけたポスターでございます。
  253. 吉川春子

    吉川春子君 四月一日より実施されます女子保護規定の廃止によって年間百五十時間に制限されていた女性の残業規制が取り払われて、これによって残業が大幅にふえるわけですね。厚生省のポスターのように、今度は家庭責任を女性も果たせなくなる、こういうことも危惧されるわけです。  日本共産党は時間外労働を男女とも百五十時間に規制すべきだという政策を出しているんですけれども、やはり男性並みの残業時間ではなくて男女共通で百五十時間にする、こういうふうにして男女共通規制で残業規制を行うべきではないんでしょうか、どうでしょうか。
  254. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 時間外労働につきましては、適正に管理をするということで、以前は法律の裏打ちのない指導であったものが、さきの労働基準法の改正で法的裏打ちのある指導ということに変わったわけであります。その水準がどこにあるべきかは、現時点の水準については既に議論をいただいてそれが定まっているわけでありますが、今後の問題は国会で審議をいただきたいと思います。
  255. 吉川春子

    吉川春子君 労働省、年間の総実労働時間は何時間ですか。
  256. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 毎月勤労統計で見ました年間の総実労働時間は平成十年で千八百七十一時間と記憶しております。
  257. 吉川春子

    吉川春子君 千八百時間はいつ達成するんですか。
  258. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 私どもは年間の総実労働時間千八百時間を目標に掲げてただいま努力している最中でございます。この千八百時間を達成するための要素、大きいものが三つございまして、週四十時間労働制を実施していくこと、また残業時間を抑制していくこと、さらに有給休暇の取得を促進していくこと、こういった三つを軸に進めております。週四十時間労働制、また残業時間についても経済情勢とのかかわりがございますが、当初千八百時間のために必要とされる平均水準を下回るところまで参っております。  ただ、問題は有給休暇の取得促進等が進んでいない。これらをなお私どもは精力的に労使の方に呼びかけ、取得率を上げていくことによりまして千八百時間に近づけるものと考えております。現在の経済計画期間中にということを目標にしておりますので、その辺を念頭に置いて精いっぱいの努力をさせていただきたいと存じます。
  259. 吉川春子

    吉川春子君 総務庁長官、労働力調査の九八年の非農林従業者の一人当たりの週平均就業時間は何時間でしょうか。
  260. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 四二・八時間と聞いております。
  261. 吉川春子

    吉川春子君 これを一年間に直すと二千二百十時間になります。労働省の労働時間より多いんですけれども、これはどういう差だと思いますか。
  262. 太田誠一

    国務大臣太田誠一君) 統計のとり方が違っておるというふうに理解しております。  労働力調査の週間就業時間は、月末の末日から一週間をとった、その就業した時間の合計であります。そして、労働力調査には副業の時間も入っております。そこが違う点であろうかと思います。
  263. 吉川春子

    吉川春子君 時間がないので端的に申しますと、総務庁の時間の方にはサービス残業、不払い時間が入っているわけですね。  労働省に伺いますけれども、この不払い労働時間をなくすための努力をぜひしていただきたいんですが、今何をしていますか。
  264. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 共産党の先生からよくその点をお話しされますけれども、もちろん残業しながら不払いであるということについては監督署を中心にきちんとやっていきます。  ただ、統計の差というのは、総務庁長官からもお話がありましたように、月末の一週間の忙しいところを五十二倍したのと、毎月全部通しでやったのとは差が出るのは決まってるんです。大体ゴールデンウィークも入っていなければ、お盆休みも入っていない。そういうことがありますから、月末に近い忙しい時期の一週間だけとって五十二倍するということを毎月の勤労統計と比較することに無理があると思います。
  265. 吉川春子

    吉川春子君 それならサービス残業の時間を労働省は示してください。
  266. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) サービス残業は本来してはいけないということでありますが、そういう統計は労働省では把握できておりません。
  267. 吉川春子

    吉川春子君 把握もしないでおいて、総務庁の時間が長いとかとどうして言えるんですか。むしろサービス労働をなくすことによって雇用創出するということが必要なんです。  ですから、サービス残業をなくすことによって私たちは四百万の新しい雇用創出できるという試算をしておりますけれども、雇用創出と言うならばまず不払い残業をなくすべきじゃないか、そのことによって直接的な雇用創出して、若年労働者の失業も救うべきじゃないか。どうですか。
  268. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 前提を置かれてそれを否定申し上げているのに、それを無視して話を進めていられるから話が食い違っちゃうんです。  統計のとり方は、今申し上げましたように忙しいところをとってそれを五十二倍したものと、毎月の全部を調べてやったので差が出るのに決まっているんです。それで、残業をしながら残業手当を払わないということについては監督署を通じてちゃんと指導をしていますし、これからもしていきます。
  269. 吉川春子

    吉川春子君 サービス残業の時間も把握しない、そしてそれに取り組むための積極的な通達を一つも出さない、そしてたくさんの不払い残業を生んでいる。そのことを解決せずにやっぱり雇用創出というのはできないんです。人間らしく働くという労働者の権利も認められない、そしてこの安室さんのパパがだっこしているように、赤ちゃんを男性も一緒になって保育するという時間さえ国民は持てないじゃないですか。  ですから、雇用創出と人間らしく働くという両方を含めるために私たちは女子保護規定の廃止を三年間延期する法律を出しています。そのことをやっぱりぜひやるべきだということを主張して、私は終わりたいと思います。
  270. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 以上で八田ひろ子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  271. 竹山裕

    ○理事(竹山裕君) 次に、日下部禧代子君の質疑を行います。日下部禧代子君。
  272. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 社会民主党・護憲連合日下部禧代子でございます。  厚生省におきましては、現在、医療の抜本改革が進められておりますが、その改革の目標をどこに置いていらっしゃるのか、お願いいたします。
  273. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 現在、御承知のように、高齢化の進行とか疾病構造の変化が進んでおりまして、経済成長の伸びと医療費の伸びの不均衡が拡大しております。  医療制度の改革の目標は、こうした条件の中で良質な医療を効率的に提供できる仕組みと信頼できる安心した医療保険制度を確立することによりまして、二十一世紀の少子高齢化社会においてもすべての国民が安心して良質な医療サービスを受けることができるようにすることが極めて肝要であると認識し、そういった見地から医療保険改革に取り組んでおるところでございます。
  274. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 質の高いきめ細かな医療サービスの提供ということを国民は求めていると思いますが、そのためにはどのような改革が必要というふうに思っていらっしゃいますか。
  275. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 良質の医療の提供ということは、患者の立場を尊重して患者と医療従事者との信頼関係が維持されなければなりません。そしてまた、医療における情報提供を推進したり、国民の選択によって良質な医療が提供できる体制を目指す必要があると存じます。  こうした中で、現在関係審議会でいろいろの項目について検討しておりますが、なかんずく医療提供体制の改革案のたたき台の中では、診療情報の提供、インフォームド・コンセントとか等の問題や、あるいは医師、歯科医師等の資質向上を目指した卒後の臨床研修の必修化が盛り込まれておるところでございます。  今後、こうした審議会での審議をさらに進めまして、関係者の合意を得つつ、良質な医療提供体制の改革を目指していきたい、こう思っております。
  276. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今おっしゃいましたことは大変重要なことだと思います。しかしながら、最も重要な医療従事者の確保ということ、この点についてはお触れになりませんでしたが、いかがでございますか。
  277. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 医者及び看護婦ないしは作業療法士とか理学療法士、医療関係者の確保は極めて重要でございます。一定の需給計画のもとで計画的にこれをチェックし、整備をしておるというのが現状でございます。
  278. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 本年の一月十一日、横浜市立大学医学部の附属病院で二人の患者を取り違えて手術するという、全く考えられないような事件が起きました。その概要を厚生省報告してください。
  279. 中西明典

    政府委員(中西明典君) ただいま先生の方からお話しございましたとおり、一月十一日に起きた事件でございます。  横浜市からの報告によりますれば、その概要は、心臓疾患で入院の患者さん、それから肺疾患で入院の患者さんを病棟から手術室に引き継ぐ際に患者を取り違え、そのまま手術室へ送ってしまった。それから、手術に携わるお医者さんの側も、予定された患者が来ていることを前提に、患者を誤認して手術を実施した。術後の患者を集中治療室において観察中に担当医師が入れかわっていることに気づいた。  大ざっぱに言えば、こういった事件でございます。
  280. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 大変大ざっぱ過ぎます。もう少し詳しく御説明をいただきたかったのでございますが、厚生大臣、その原因はどのようなところにあるというふうに今認識していらっしゃいましょうか。  そしてまた、厚生省としては、これは今事故調査委員会が設置されていると思いますけれども、その発表を知ってからということになると思いますけれども、しかしなお、やはりこの事件をお知りになりまして、大ざっぱじゃなくて、厚生省はもう少しきちんと詳しいことを調べていらっしゃると思いますけれども、どのような認識を原因についてはお持ちでいらっしゃいますか。
  281. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員への経過の説明がちょっと大ざっぱだったようでございますが、なお必要であれば、準備をさせていただいておりますので追加させていただきます。  本件は、私ども、この事故の報告を受けたときに、これは国民の命を預かる医療機関としてあってはならない事故でございまして、全く驚きというほかはありません。国民の信頼や期待を大きく裏切ったものだと思いますが、基本的にはやはり一日の手術量も多いと思います、こういう大病院では。そういう中で、人間尊重といいますか、人権に配慮した点が欠けて、ややもすると職業的に、言葉は悪いですが、流れ作業的にやる可能性も否定できないのではないかと私個人は思いました。そんな意味で、いろいろこれはチェックすべき点が非常に多いと思います。  なお、この横浜の事件以外でも、輸血を間違えてみたり、いろいろ非常に致命的なことがしばしば報道されておりますので、私どもとしては、こういうことがあってはならないわけでありますので、類似事故もございますから、厚生省としてそういう再発防止を目的として有識者から成る検討会を、ちょっと遅いと言われるかもしれませんが、二月十七日に立ち上げまして、院内管理体制のあり方について権威ある方々あるいは経験のある方々に審議をいただいておるところでございます。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  なお、横浜の正式な委員会の報告等ももちろん参考にさせていただきますが、この取り違え事件以外にもいろいろの面で医療機関の中でチェックすべきことがないかどうかを含めて、早急に検討の結果を得て各医療機関へ普及を図っていくこととしたい。時期としては、なるべく早くということですが、できれば四月中くらいにはそういう方向を打ち出して、通知をして徹底を期していきたいというように思っております。
  282. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 この原因究明についてきょうは詳しく論議するつもりはございませんけれども、私は、事故の原因の大きな一つとして、コンピューター化されたカルテだとか、あるいはまた患者の顔よりは検査値あるいは画像を重要視する、あるいは疾病だけを見て患者を見ないという医師と患者との人間としてのつながりが希薄になっていっている、そのような今日の医療のあり方ということも今回の事件の大きな背景としてあるのではないかというふうに思うわけでございます。  厚生大臣、そしてまた医学教育を所管される文部大臣のそれぞれの御意見を承りたいと思います。
  283. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、委員のおっしゃられたように、いろいろ機械化され、様式等もコンピューター化されていくという中で、患者と医療従事者のコミュニケーションの確保というのは重要な指摘だと存じます。医療従事者によります適切な説明とか、患者の理解に基づく適切な医療が提供されて初めて本当に国民の求める医療が提供できると思います。  こうした観点から、平成九年の医療法改正におきましても、医療提供に当たっての患者への説明を医師等の努力義務として法律上位置づけをいたしております。  また、医師の卒後の臨床研修におきましても、研修目標といたしまして、患者及び家族のコミュニケーション能力を養成することが大切であるという旨を定め、各病院長等にあてて通知をしております。  さらに、医師の国家試験の出題基準につきましても、必修の基本的事項として、インフォームド・コンセントや医師と患者及び家族の関係を出題項目として掲記してございまして、国家試験を受ける段階からこうした問題の認識を深めていく必要があるというように思います。  今後とも、患者との良好な信頼関係を基礎にした、本当に適切な医療を担う医療従事者の養成確保、これに万全の措置を講じていきたい、こう考えております。
  284. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私は、本質的には医療に携わる人々の質の向上が必要であると思っております。同時にまた、機器類が大いに発展してまいりますので、そういう機器類に対しても十分な知識を持つような教育をしていかなくちゃならないと思っております。  具体的には、今日の医療においては、医師や歯科医師は患者のさまざまな背景に留意しつつ、診療の内容や方針を患者に十分に説明しその理解を得るとともに、患者の人権や意思を尊重し、相互の信頼関係のもとに責任を持って全人的な医療に当たることが要請されていると考えております。  そこで、今般公表されました二十一世紀医学・医療懇談会第四次報告においては、このような要請にこたえるために、第一、豊かな人間性とコミュニケーション能力等の育成の重視。二番、教育内容を医師として必須の基本的内容に厳選、精選するとともに、選択履修の幅を拡大、多様化すべし。三番目に、プライマリーケア、高齢者医療、救急医療など、今日の医療の課題に対応した教育の充実など、今後の医学教育の改革の方向についてさまざまな提言をいただいたところでございます。  しかし私は、医学に入ってくる、医学を目指す学生諸君を入学させる際に、医学に本当にふさわしい素質や志を持っているか、これを確かめた上で入学をさせるべきだと長年主張しております。幸い、一部の大学で積極的に、入学試験のときに、単に成績がいいだけではなく、口頭試問等で人物を見た上で入学を許可する方向に進みつつあるということを私は喜んでおります。  いずれにいたしましても、文部省といたしましては、審議会の提案を踏まえまして、今後より一層医学教育の充実を図っていくことが必要であると考えております。各大学に対して報告内容を周知徹底し、積極的な取り組みを促すとともに、その取り組みを支援してまいりたいと思っております。
  285. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 一人一人の生命に直接かかわる医療従事者、特に医師の養成プロセスというのは非常に重要な意味を持ちます。そして、その資質というのも重要な意味を持つというふうに思います。  しかし、もう一つの問題もあると思うんです。今回の横浜市立大学医学部附属病院の事故ですが、看護婦一人で二人の患者を搬送したと伝えられております。なぜ一人の看護婦が一人の患者を運ぶ体制ができていなかったのかという外部の者は素朴な疑問がわくのですけれども、これは看護婦さんが忙し過ぎたのではないか、人手不足ではないのか、そのことを私はまず感じたのでございますが、この点いかがでしょうか。
  286. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 確かに、看護婦さんお一人で患者二人を搬送したということのようでございますが、したがってそれから想像されることは、人手不足ではないか、看護婦不足ではないかということが容易に想像されるわけでございますが、これは横浜市の事故調査委員会の結論を待って最終的には判断したいと考えます。  平成十年の十一月に横浜市が実施した医療監視の結果によりますと、お医者さんにつきましては、必要数が百六十三名に対して現員が何と四百三十人いらっしゃるということ、これはいろいろ研修医等もあるいは含まれているのかもしれません。それから、看護婦につきましては、必要数が二百八十二名に対して現員が何と六百六十二名おるという報告がなされております。したがって、医療法上の必要数の二倍以上、もう相当な数の人員がこの病院にはあるということが判明しておりますが、こういうところからしても、人員が十分であっても事故は起こり得たのではないかという前提で私どもは考えないといけない。  もちろん、人員不足であれば問題は解消しなければなりませんが、この横浜市立病院の場合には、このような配置でありながら、なおそういった事故が起きている。しかも、看護婦さんがこれだけおりながら一人で搬送する体制ということは、管理運営あるいはその体制の運営に問題があったのではないかというように私は感じます。
  287. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今おっしゃったお言葉というのは、少し私とは、少しどころか大分考え方が違うというふうに思うんですね。必要とする看護婦の数、つまり看護婦に患者が何人というのではなくて患者に看護婦が何人という基準、我が国とそれから欧米との看護婦さんの基準がもう全然逆さまであるということを、厚生大臣、お気づきにならないでそういうお言葉を不用意におっしゃるものではないというふうに思います。
  288. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 人員配置の基準の具体的な詳細については局長から答弁させていただきますけれども、私ども具体的に急性期病床につきましては看護職員を二・五人に一人としておりまして、現行の一般病床の基準を引き上げた基準となっておることは承知をした上で御答弁を申し上げております。
  289. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 現在、医療提供体制の見直しということを進めておりまして、昨年の九月から医療審議会を開いておりまして、医療提供体制についての御議論をいただいておるところでございます。その中で、入院医療を提供する体制の整備が検討課題に入っておりまして、これについてはいろいろ御議論をいただいて、昨年の十二月二十五日にそれまでの議論を踏まえまして事務局よりたたき台というものを提示させていただきました。  この中で、今までの一般病床を急性期病床または短期病床と慢性期病床または長期病床に区分した上で、それぞれふさわしい人員配置基準を設けることも盛り込んでおるところでございます。具体的には、急性期病床につきましては看護職員を現行は入院患者四人に一人、四対一という基準でございましたが、これを入院患者二・五人に一人という現行の基準を引き上げた基準を考えておるところでございます。  いずれにせよ、このたたき台は現在検討中の事項でございまして、平成十二年度の実施に向けて今後さらに審議会で御議論をいただくとともに、関係者の合意が得られるよう最大限の努力をしてまいりたい、このように思っております。
  290. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうも患者二・五人に一人というのはこれはやっぱり非常に、患者一人に対して何人というのがやはり欧米で考えられている看護基準だというふうに私は受けとめておりますけれども。
  291. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 日本の病院と外国、先生は多分先進諸国の病院をおっしゃられていると思いますが、そこでは病院の患者さんが、日本の場合には急性期病床の方も慢性期病床の方も入っていらっしゃる、またその中間の亜急性の病気の患者さんも入るということでございまして、外国の方はどちらかというと急性期病床として利用されている場合が非常に多いものですから、そういう意味では日本の病院に入っている患者さんの中の疾病というのが先進諸国とは少し違うということから考えて、数が多いということは大変患者さんにとって便利になるということはよくわかっておりますけれども、これも全体を、その病気の構造とかそういうもの全体を見て、今のところは従来の四対一を二・五対一にしようというのが厚生省のたたき台の中身でございます。
  292. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 患者にとって看護婦さんが多い方がいいとわかっていらっしゃるんだったらば、なぜそういうことをちゃんとなさらないのかということでございますが。  今、看護職に象徴されるコメディカルの人手不足というものを私申し上げました。ところが今度は、医師不足を象徴するような痛ましい事例がございます。  一昨年、千葉県の大学病院で発生した女性小児科医の過労死事件について、労働省、経緯とそれから労災の対応状況についてお願いいたします。
  293. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) お話のございました事例でございますが、千葉県の総合病院に勤務されていた女性の小児科医の方の事例だと存じます。平成九年八月に、当直中の午前一時ごろクモ膜下出血を発症されまして、入院治療を受けておられましたが、その後亡くなられたという事例でございます。この件につきましては、その後労働基準監督署の方に御遺族の方から労災保険の遺族補償給付の請求がございました。  私ども、労災保険の対象にしていくためには業務に起因する疾病であることが必要でございますので、そうした点につきまして調査いたしましたところ、発症の当日は、午前八時から通常勤務を行われまして、その後引き続き当直としての勤務に従事され、倒れられる一時まで勤務されていたこと、また発症前の一週間の勤務状況も調べるわけでございますが、その点につきましても恒常的な長時間労働があり休日労働もあったこと等から、私ども業務に起因する疾病というふうに判断いたしまして遺族補償給付の支給の決定をいたしたところでございます。
  294. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 小児科医の不足につきましては厚生省の研究でも明らかにされております。平成八年度、九年度と二年度にわたってございますけれども、平成八年度の小児救急医療のあり方に関する研究の概要を厚生省お示しください。
  295. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 先生指摘の研究班は、平成八年度から十年度までの三カ年計画で、国立公衆衛生院の田中母子保健学部長を主任研究者として、小児救急医療の実態を調査し今後の小児救急医療体制のあり方の検討に資することを目的として始められ、現在最終報告を取りまとめていると聞いておるところでございます。そして、平成八年度及び平成九年度の研究班報告書の概要として問題点が六点ほど挙げられておるわけでございます。  その問題点は、一つは小児科当直が連日可能な施設が少ないこと、二つ目に救急医療を担う小児科医が不足していること、三つ目に小児科医の当直が大変厳しい状況にあること、四つ目に小児医療は病院経営上問題があること、五つ目に地域において小児救急医療体制がある地域が少ないこと、六つ目に救命救急センターにあっても小児を受け入れられない施設があることが挙げられているわけでございます。そして、具体的な提案としては、一つに連日小児科当直を行うことが可能な医療施設の確保、二つ目に小児専門病院と救命救急センターによる積極的な小児救急患者の受け入れを挙げられているところでございます。
  296. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、厚生省から研究についての概要、そしてどういう問題点が出されたかということの御報告を受けましたけれども、もう少し具体的にこの報告書では述べております。  例えば、当直明けがない施設が八二%に上っている、それから体調を崩した医師のいる施設が六〇%である、そして小児科医の過酷な勤務状態がこのように明らかになっているわけでございます。その結論といたしまして、このまま放置すればごく近い将来に小児救急医療は破綻し、社会問題化するのは必至であり、早急に対策を講ずべきというふうに結んでおります。そして、このような中で多くの小児科医の献身的なオーバーワークによってやっと支えられているのだというふうなことも述べられているわけでございます。  厚生大臣、厚生省の対応を含めまして、この小児科医の死ということも含めまして御所見を承りたいと存じます。
  297. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 千葉の女医の過労死の問題は今お話がございましたように大変痛ましいことでございます。そして、それは制度的ないろいろの課題があることも今御指摘されたとおりだと存じます。  そこで、厚生省としては、平成十一年度の予算で新たにどういうことをやっているかといいますと、すべての二次医療圏に夜間と休日に小児科医を確保して小児の救急医療に当たる医療機関を支援する体制をつくるために、小児科医等を確保する費用の一部、これは小児科医及び看護婦の人件費の一部の費用に当たると思いますが、それの一部を補助する新たな事業を十一年度予算案に計上いたしておるところでございます。  これは新たにやった事例を申し上げたわけでございますが、その他救急医療体制を既存の施設の中でどのように充実していくかということは大変重要な課題でございますから、これからも留意して検討させていただきたいと思っております。
  298. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 予算措置は何かなされましたか、この報告を受けまして。
  299. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 小児科救急の予算についてのお答えでございましょうか。
  300. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 はい。
  301. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) お答えを申し上げます。  今、大臣が申し上げましたように、すべての医療機関、二次医療圏では夜間とか休日に小児科医が対応できないということでは大変御心配をかけるわけでございます。そういう意味では、すべての二次医療機関で休日も夜間も小児科救急が受けられるような支援体制をつくろうということで、従来から地域の夜間当直の交代制なんかもやっておりますが、そういうときに小児科がある場合は大丈夫なんですけれども、小児科医がいない場合には別途に小児科の先生とそれから看護婦さんをお願いいたして、それに対する経費を補助するという事業でございまして、初年度二億五千万円用意をいたしたところでございます。
  302. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その二億五千万円でどの程度に具体的に事態が改善されるのでしょうか。
  303. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 全国の医療圏が三百五十程度ございますけれども、初年度三分の一の百十八医療圏で平成十一年度分を賄っておるところでございます。来年度また三分の一、その次の年にまた三分の一ということで、三年間で全医療圏でスタートすることになるわけでございます。
  304. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どの程度具体的にと申し上げたんですが、一体何人ぐらいの小児科医がどのくらいちゃんと、救急、当直明けもできるのかというふうなことであります。
  305. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 今申し上げましたのは、一つの医療圏でもっていつでも、休日でも夜間でも小児科の先生がいらっしゃるという状態をつくろうということでございまして、先生がおただしの夜勤明け、当直明けにまた昼間も勤務をするという状態を解消するかどうかについては、この事業では残念ながらそこまではわかりません。
  306. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 たくさんの小児科医が犠牲にならなければ全然動かないというのは、これは今少子化時代、日本の大変大きな課題であります。  そういう中で、小児科医のこういう状況というものをきちんと把握できないでいて、そしてまたそれに対応できないということは、少子化が大変だ大変だと言っていることとは非常に乖離するというふうに私は思っております。ぜひとももう少し真剣に取り組んでいただきたいというふうに思うのですが、大臣、いかがですか。
  307. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、新規事業につきまして数がわからないというのは、医療圏として予算補助はやっておりますから、具体的な小児科が何人、どういう態様になるかというところまでは把握していないという意味に私はとりました。  しかし一方、そういう実態を知ってこそ初めて対応ができるわけでございますから、委員のおっしゃるとおり、小児救急の整備の問題は喫緊の課題だと思います。小児科の負担の偏重を、特に重要だと思われるのは救急医療とか周産期医療などの一部の分野が非常に過酷であるというようにも承知しておりますから、十分検討させていただきます。
  308. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 亡くなった小児科医の方、そしてまた全国の小児科医の方たちが今のお言葉を聞いてどのように感じるか、これは後からさまざまな御意見が出てくるだろうというふうに思います。  ところで、昨年五月に厚生省が出しました医師の需給に関する検討会報告がございます。今後医師が過剰になるというふうに指摘しておりますが、その需給見直しと、その基準は一体何をもって基準としたのかをお知らせください。
  309. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 将来の医師の需給につきましては、平成九年七月に医師の需給に関する検討会を設置いたしまして、昨年五月に報告書が取りまとめられたところでございます。  当該報告書では、将来の医師の需要と供給とをそれぞれ推計した上で、両者を比較することにより需給バランスを予測いたしております。具体的な需要の推計に際しましては、外来患者や入院患者を診療する医師のほか、平成十二年までに社会的入院が解消するとの仮定を置いた上で、在宅の要介護老人のための医師や救急・僻地医療に対応する医師、さらに基礎医学教員や行政職、検診医、治験などの製薬にかかわるドクター、国際協力等の医師をこれはカウントして医者の需要の推計をいたしております。  同検討会の結論によりますと、現時点では全体としていまだ過剰な状態には至っておりませんが、将来は医師の過剰が顕在化すること、また医師の養成には長期間を要し、また急激な適正化を講ずることは難しいことから、過剰が顕在化、深刻化する前に対策を講ずる必要があるとされているところでございます。
  310. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その需給に関しては診療科目ごとに積算していないと思うんですが、その点はどうしてですか。
  311. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 専門領域ごとの医師の需給を予測することは極めて困難でありますことから、平成十年五月に出された医師の需給に関する検討会報告書においても採用されていないところでございます。また、医師に対して将来の専門分野の進路を強制することにも問題があると認識をいたしているところでございます。  しかし、診療分野ごとの需給バランスがとられることは先生おっしゃるように望ましいことでございまして、当該報告書においても、「地域間・分野間の医師の偏在解消に対して、医師養成の中心的な担い手である大学医学部や臨床研修病院、臨床医学関連学会の果たすべき役割には大きなものがあり、関係者においては協調して、こうした医師の偏在の解消を積極的に支援する姿勢が求められるところである。」とされております。  厚生省としても、この報告書の指摘に沿って関係者が理解を深められ、対応を進めることを期待しているところでございます。
  312. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 もう一点指摘しておきたいのは、そのような積算をなさいますときに、現場それから私たち一人一人の一般の普通の国民の声、いわゆる患者の声というのがどのように反映されているのかなというふうに思います。現状とやはり非常に感覚がずれているんじゃないかというふうなことが私はどうしても感ぜられるわけでございますが、いかにして患者の声をそういう積算の根拠として反映させているのでしょうか。
  313. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 今申し上げましたように、科別の医師のニーズというのをどう読み取るかということでございますけれども、実際にはどういう仕組みがベターなのかということも特に定説があるわけではございません。そういたしますと、実際的には、日ごろ行われている医療の現場、そういうところの御意見を集めていく、そうすればある程度の推測が立つということだろうと思うのであります。  ただ、もう一つは、先生方が医療を行われる場合、どうしても先生方の生活ということが絡んでまいります。そうすると、その先生方が医師として活躍されるときの生計ということをどうしても考慮されるということで経済的な問題も大きく影響してくるのではないか、このように思っておるところであります。
  314. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 医師がいわゆる厚生省の言う過剰になるとどういう弊害が起きてきますか。
  315. 小林秀資

    政府委員(小林秀資君) 医師の過剰ということになりますと、お医者さんになっても医師としての仕事につけないということになるわけでありますが、医師を養成するためには多大の経費がかかるということでございまして、そういう意味から、日本だけでなく先進諸国も医師の需給バランスを見て養成をしているというのが実態だと、このように理解をいたしております。
  316. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ところで、文部省は一九九九年度の入試から医学部、歯学部の募集人員を百人削減しておりますね。今後あるいはこれまでこの入学の募集人員の削減につきましてどのような方針を立てていらっしゃるのか、そしてまたその根拠についてお伺いいたします。
  317. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 医学部の入学定員につきましては、先ほど来お話が出ました平成九年六月の閣議決定及び昨年五月の厚生省の歯科医師の需給に関する検討会報告において、将来の過剰に対応して削減する必要があると指摘されております。  文部省におきましては、この点を踏まえつつ、医学部の入学定員のあり方について有識者から成る二十一世紀医学・医療懇談会において医学教育のあり方全体の中で検討を行い、本年二月に報告書が公表されたところでございます。  同報告においては、医学部の入学定員については厚生省における医師の需給見通しを踏まえて削減を行う必要があるが、削減に当たっては国公私立大学全体で対応すべきであり、医療をめぐる諸般の状況の推移を見ながら関係者において対応を検討するよう要請しています。  文部省といたしましては、同報告を踏まえまして、関係者における検討状況等を見ながら適切に対応してまいりたいと思っております。  私自身は、やはり社会全体をにらんで、この厚生省の方針もわかりますが、決して拙速な学生数の削減や増強というふうなことをすべきではない、慎重に判断すべきだと考えております。
  318. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 横浜市大病院の事件につきまして、朝日新聞の二月十六日付で川島康生先生、国立循環器病センター名誉総長、大阪大学名誉教授、文部大臣は御面識がおありになるかもわかりませんが、「論壇」にお言葉を寄せていらっしゃいます。  医療従事者が少ないということがこの事件の根本にあると。そしてそこで、「増員を真剣に求めてこなかった、私を含む大学関係者の怠慢でもあり、増員要求に対応できなかった文部官僚の責任でもあろう。」というふうに言っていらっしゃいますが、この点、文部大臣、いかがでしょうか。
  319. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほどお答えいたしましたように、懇談会等々ですぐれたお医者さん、すぐれた社会でオピニオンリーダーになっている人々、そういう人々にお願いをいたしまして懇談をしていただいたその結果が二月に報告されたわけであります。  文部省といたしましては、これを慎重に見ながら判断をしていきたいと思っております。
  320. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ぜひとも、その慎重にというときにこの川島先生の御意見もぜひ慎重に、お考えだけではなくて取り入れていただきたい、御考慮いただきたいということを望んでおきます。  今まで私は、あってはならないはずの二つの事例を挙げまして、医療従事者の不足ということについて論を進めてまいりました。つまり、医療改革では良質な医療サービスの提供を目標として挙げていらっしゃいます。そして、その実現には医師、看護婦など医療従事者の確保ということが必要不可欠であろうというふうに思うんです。しかしながら、医療保険福祉審議会制度企画部会の審議の様子を見ていると、どうもお金、財政面が非常に強調されているように思えてならないわけでございます。  それともう一つ、患者の立場が忘れられている、患者の視点が忘れられている。その辺の問題をつきまして、これからは患者の立場、サービスの利用者の立場に立つ改革こそが望まれるべきだと思うのですが、その点、厚生大臣いかがでございましょうか。
  321. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 良質な医療を確保するということは大変重要なことでございまして、単なる財政的な収支の均衡を図るというだけの視点で改革を検討すべきものではないことは申し上げるまでもございません。  なお、国民の立場に立って、利用者の立場に立っていろいろ考えるというのは、これはもう極めて当然とはいえ重要なことでございます。その視点を欠いた場合には、非常に国民の側から見て本当に必要な医療給付が受けられないおそれも生ずる可能性もございますから、そういう視点は十分踏まえて、委員の御指摘のような良質な医療の給付ということで医療改革をやってまいりたいと思っております。
  322. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今のお言葉、お約束いただいたというふうに受けとめさせていただきます。  最後に、大蔵大臣にお言葉をいただきたいのでございますが、医療改革というのは財源問題が重要であるということも承知しております。そしてまた、私は、財政状況が現在厳しいということも認識しておるつもりでございます。しかし、少子化社会だからこそ、また高齢化社会であるからこそ、国民一人一人が健康であるということがひいては社会的経費を軽減することにつながるわけであります。だから、どこに何のためにお金を使うのか、その物差しを誤るということは日本の将来を危うくすることにつながると思うんです。  経済効率優先という社会に対して、一つの警鐘があったと思うんです。それは、ケンブリッジ大学の福祉経済学者のセン教授がノーベル賞を受賞されたということ、このことはやはり非常に意味が大きいというふうに私は思うわけでございます。この方の専門は福祉経済学でございます。  その辺のところを、今までの議論も含めまして財政の専門家でいらっしゃいます大蔵大臣、そして元総理大臣でいらっしゃいました、大所高所からの御見解をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  323. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この間、センさんがおいでになりまして、一緒に食事をしていろいろお話を聞かせていただきました。おっしゃるようなことを言っておられました。  それで、平成十二年度から抜本改正をやられるということで、今関係の審議会で御検討中のようでございますけれども、それが財政面でどういう御要求になってくるのか、まだ伺うことができないでおりますけれども、何といっても、それは財政も大変でございますけれども、日本国民にとって国民の健康が一番大事でございますから、それが後回しになるようなことはあってはならないと思っておりますので、できるだけ御満足のいくように、財政としても、お話を聞いて実現してまいりたいと思っております。
  324. 日下部禧代子

    日下部禧代子君  もう少しいい御返事がいただけると思いましたけれども、残念でございます。  ありがとうございました。
  325. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で日下部禧代子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  326. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、入澤肇君の質疑を行います。入澤肇君。
  327. 入澤肇

    ○入澤肇君 最初に、経済企画庁長官にお話をお伺いしたいと思います。  中期財政政策試算を見ましても、今まさに我が国は行政改革を初め社会経済全般にわたる構造改革を本気で進めなくちゃいけないというふうに私は思っております。  その文書といたしまして、経済戦略会議の報告が出ましたし、また時間は前後いたしましたけれども、生活空間倍増計画あるいは産業再生計画なる文書が出てまいりました。  ちょっと辛口に見ますと、この二つの文書はいずれも網羅的でありまして、それから空間という概念に該当するのかどうかわからないようなあいまいなものも各省庁網羅的に入っておりますし、それからまた優先順位がはっきりしていません。どのように順番を追って進めていくかということについても書いてありません。さらに言えば、ソフトとハードの関係についても、この中に明確になっておりません。  しかし、中に書いてあることは極めて重要なことでございまして、産業政策、社会保障制度、都市政策、あるいはまた三権分立のあり方、こういうことについて、現時点において今の時代の要請に即応した抜本的改革を進めなくちゃいけないということは十分に認識されたわけであります。  翻って、今までの内閣の目玉的な政策になった文書をひもといてみますと、例えば所得倍増計画、これはある意味では経済成長に乗って見事に成功しました。私どもが役人になってから関与したのは、例えば列島改造論、それから非常に名文で書いてありました都市政策大綱、それからまた田園都市構想、あるいは環太平洋構想ですね。いずれも、ある面では実現したものもありますけれども、内閣が変わると同時に過去の文書になってしまった例が多いわけであります。しかし、私はこの際、今度出ました三つの文書、これは幻に終わらせてはいけないというふうに本当に思っているんです。  そこで、長官にお聞きしたいんですけれども、この三つの文書を見まして、長官として緊急的な課題、優先順位をつければどこから手をつけていくべきか。  それからさらに、特に優先順位の高いものについては力点をどこに置くのか。構造改革といったって、これはそれぞれの分野ごとにやり方が違うわけですね。福祉政策については福祉政策の構造改革の方法もあれば内容もあります。農政についてもあります。産業政策だって基礎産業とそれ以外の産業とは区別して考えるべきだし、何について優先的に考えていくべきか、力点の置き方は何か。さらに、工程管理という概念を入れれば、ステップとしてどのようなステップを踏むべきかということについて、長官の博識な御見解をお聞きして、まず皮切りにしたいと思います。
  328. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 大変全般的な御質問でございますけれども、まず優先順位というものと、それから日本がこれから目指していかなきゃいけない遠い未来というものとを分けて考えますと、まず優先順位としては、やはり今、小渕内閣が一生懸命やっております経済再生、とりわけ金融機関の問題とそれから景気の振興、この二つはとにかく今やらなければ、ここで手を抜くと日本全体が沈んでしまうおそれがあると思います。しかし、それはまことに臨床的な問題でございまして、本当に日本が新しい体質の国として輝かしい未来を目指すためには、別の問題が先生指摘のように必要だろうと思います。  その中で、やはり重要なことは、一つは、この戦略会議も書いておりますように、安全ネットのある健全な競争社会をつくっていく。今まで業界別には護送船団方式、系列的には金融系列、縦横に保護されていた日本の産業構造、企業構造を変えて、自由な創意の起こるものにしなきゃいけない、これが第一だろうかと思います。  もう一つ、第二番目の問題は、やはり終身雇用という年々だんだん賃金が上がっていくばかりというこの形を改めて、本当に適材適所の配置ができるようなそういった世の中も考えなきゃいけない。もちろん、これには危険性も伴いますから、それ相応の安全ネットが必要なんでございますけれども、そういうことも重要だろうと思います。  そして三番目には、やはり日本に新しい産業、新しい業を起こす、そういった気概が生まれるような世の中をつくらなければいけない。日本だけが先進国の中で今どんどんと自営業が減っておりますが、こういった若い人がもっと新しいものに出て、また中高年も新しい企業に挑戦できるような、そういう自由で濶達で、そして安全ネットのある社会につくりかえていく、これが今、中長期的には重要な問題だと思います。  小渕総理大臣から一月十八日に、経済審議会に十年ほど先を見通したあるべき姿という諮問をいただきましたので、鋭意そういった問題も検討をして、御満足いただけるような答申ができるように努力しているところでございます。
  329. 入澤肇

    ○入澤肇君 ぜひ、これらの重要な文書につきまして、行政当局がこれを受けまして、あるいは民間も、具体的にどこから着手していいかという工程管理表をつくるような気持ちでこれから作業に取り組んでいただきたいと私は要望しておきたいと思います。  その次に、自治大臣にお伺い申し上げます。  行革を進める中で、国の行政改革は今度また大変な法律がこれから出てまいりますけれども、地方自治も私は例外でないと思っております。特に、きのうも議論したんですけれども、年金等福祉の財源の問題を考えますと、国とあわせて地方自治体の経費の節減というのは急務であります。  その意味では、今、政令指定都市、中核都市、特例市等と幾重にも人口あるいはエリアの広さに着目して分割して事務や権限の分権化がなされておりますけれども、このだんだん細分化されている都市のあり方についてもう既に基本的に考え直していいときが来ているんじゃないか。政令指定都市とそれから都道府県のあり方、神奈川県などは一つの県の中に二つも政令指定都市がございます。県庁というのは横浜市と川崎市を除いたところを管轄するんだなんというふうに見ている向きもございます。  この都市制度のあり方につきまして、地方制度調査会を起こす考え方がおありでないかどうか、お聞きしたいと思います。
  330. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 確かに、神奈川県の場合、政令指定都市が二つある。福岡県も同じようにそういうことがあります。  今、地方行革を考えますときに、いわゆる県とそれから政令指定都市との関係をどうするかという切り口での問題点というのは確かにあると思います。政令指定都市になれば、ほかの都市よりもはるかに都道府県の権限が移譲されていて、率直に言って政令指定都市に関しては、もうもはやほとんど行政に関しては言うなら独立した形になってしまっている、そういうような実態に近いということでありますので、私はそういう意味で、今のところは県と政令指定都市の関係はまあいいのではないかと、今現在。ただ、そこに行く前のいわゆる中核都市、三十万にならなくとも二十万という規模になれば従来の市よりもさらに自治権を高めていく、行政権限の自主性を高めていくようなそういう特例市という制度をこれからさらに充実しようというふうに実は考えてもおります。  基本的には、住民に身近な行政サービスは基礎的自治体としての市というものが中核になってより自主性を高めて行政を担ってもらうという、その方向に向けてやっていかにゃなるまい、こう思って、今そういう意味での受け皿づくりの市町村の合併という問題を念頭に置いて努力をしてまいりたい、こう考えておりまして、それを中心とした国、地方を通ずる行財政改革ということに力を注いでまいりたいと考えております。
  331. 入澤肇

    ○入澤肇君 ぜひ、地方自治体の都市のあり方、あるいは市町村の大型合併の促進に力を入れてやっていただきたいと思うんです。  ちょっと小さなことなんですけれども、予算委員会あるいは国民福祉委員会等で地方視察をさせていただきまして気づいたことを二、三申し上げますと、どこへ行っても大変な箱物を整備しております。ある県に行きましたら、年間の維持管理費が二十三億円もかかる。博物館等が併設されていますので、施設の利用料がどのくらい入るかといったら、三千万ちょっとだというわけですね。そのぐらいのお金は県で出せるというふうなことを豪語しておりました。  それから、ある県に行きましたら、各都道府県ごとに工業試験場だとか農業試験場だとかみんな持っているんですけれども、研究テーマ、これにつきましてもみんなばらばらでありますし、広域で連携してやったらいいじゃないかなと思うようなこともたくさんありましたし、人員の交流あるいは施設の整備等につきましても各都道府県が持つのが合理的なのかなというふうな感じも持ちました。  これらの問題につきまして、特にまず第一に、箱物の過剰整備を抑制するために、例えばふるさと創生だとか国が補助金をつけて国の政策として進める以外に自分たちで独自でやるものについては、これは地方交付税を財源として使ってはいけない、県独自の財源で維持管理費を出せというふうな義務づけはできないものでしょうか。これは地方自治の本旨に即して、本旨から見るとなかなか難しいんですけれども、その部分は地方交付税の算定基礎から除くとか、いろんな工夫の仕方があると思うんですけれども、そこら辺につきましてちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  332. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 総論においては方向性は大賛成です。ただ、その箱物でも、単独でつくる箱物もあれば、かなりの部分はそうでもない部分もありまして、地方分権推進計画におきましても、「地方公共団体の事務として同化、定着、定型化しているものに係る補助金等、即ち、」「会館等公共施設の運営費をはじめとする地方公共団体の経常的な事務事業に係る国庫補助負担金については、原則として、一般財源化を図る。」こととされておるわけで、この趣旨に沿って今後とも一般財源化を含む国庫補助負担金の整理合理化を積極的に推進してまいりたいと思っています。  例えば、今日まで昭和六十年以降一般財源化されたもの、事業、例えば保健所の運営費の交付金、これは従来そういう形で国の方から措置されてきたわけですが、これらを一般財源化していく。ということになれば、少なくともそれぞれ自治体がみずからの責任において運営をしていくという形にだんだん切りかわっていくわけでございます。これらのことはかなり実は、看護婦等養成所運営費の自治体立の部分についてそういうことになったり、かなりそういったことは進んできておるということは申し上げておきたいと思います。
  333. 入澤肇

    ○入澤肇君 次に、労働大臣にお聞きしたいと思います。  きょう午前中から七十七万人の雇用創出計画の実現可能性について御議論ございました。私は、その議論の前に、国として必要な分野で、しかし他と比較すると労働条件が極めて不十分だ、そのために労働力が十分に確保できない、そういう分野があるんじゃないかと思っているんですけれども、労働大臣はどんなところをお考えになりますか。
  334. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 分野によっては、労働力が足りないけれども来ないというところはもちろんあります。いろんな分野があると思いますが、そういうところにはなぜ行かないかという理由が当然あるのでありまして、労働条件が悪いとか、あるいは求職者の職業能力が求めるところまで行っていないとか、それ以外にももろもろあると思います。  私どもの政策としては、職業能力を引き上げるとか、それから情報のミスマッチをなくすとか、いろいろなことに取り組んでいるわけでありますが、恐らく先生がおっしゃりたいのは、林業分野の人手不足をどうするかということだと思います。これは、なかなか一朝一夕にいかない問題が種々ありまして、それは先生の方がよく御存じだと思いますが、我々の守備範囲で可能なことはいろいろ取り組んでいるところであります。
  335. 入澤肇

    ○入澤肇君 労働力が本来必要とされるところへスムーズに移動しないといういろんな理由を私は調べたことがございます。  そこで、私がぜひお願いしたいのは、今林業だけじゃなくて、先ほど日下部先生も御質問されていましたけれども、看護婦だとか介護の分野、要するに労働は過重だけれども十分な所得が得られないというところは特別の政策があっていいんじゃないか、それが国策的に必要であるのであれば。  例えば、林野でいえば、どうしても間伐を急がなくちゃいけないんです。これは山の整備のために絶対必要なんです。国土の保全のために絶対必要なんです。ところが、要間伐林分、毎年毎年四十万ヘクタール以上やらなくちゃいけないんだけれども、二十万ヘクタールぐらいしかやれない。やっても木を林外に持ち出すこともできないということで、ほったらかしている。それが災害のもとになっています。日本の山に針葉樹を植えたということは大変なことなんですけれども、間伐を条件として植えているんですね。これにどのくらいの人間が必要かというと、約二万人。年間二百十日働くとして二万人です。  こういうところには、労働省が雇用保険でやっている雇用機会増大促進地域というのがありますね。あそこに企業が立地して職安を使って従業員を就職させた場合には、初年度賃金の二分の一を補てんするとかいう政策をやっています。これを業として、雇用機会増大促進地域例えば林業とか看護業とか介護士の業とか、そういうものを指定して、特別な政策をとるようなことをやったらいかがかと思うんですけれども、どうですか。
  336. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 一つのお考えだと思います。  つまり、基本的に私どもが雇調金とかあるいは特定求職者雇用開発助成金で支援をしておりますのは、その業が今雇用を支えて、やがて新しい時代を担っていく産業にスムーズに雇用が移るような善後策としていろんなことをやるわけでありますが、業自体が、言ってみれば今の経済原理からいうとなかなかペイをしない、しかしながら国策上必要なところについてどうするんだというお話であります。  これは、私どもの政策以前に、林業をどうしていくかという、構造改善も含めて、いかに構造改善しても足りない部分がこうあって、それをどうするかというのは、林野庁からいろいろ発信をしていただくお話だと思います。  この構造改善等の問題は非常に複雑で根が深い問題でありますし、有能な入澤先生が林野庁長官のときにも解決できなかった問題でありますから、これはなかなか大変だということはよく承知をしておりますが、そういう国家全体としてどうあるべきかということは、ぜひ林野を所管するところから情報発信、問題提起をしていただきたいというふうに思います。
  337. 入澤肇

    ○入澤肇君 いや、私が今、長官であれば、今のような政策を労働省にお願い申し上げたいと思います。  最後に、これはもう答弁は結構です。  先ほど終身雇用制、年功序列制の話が経企庁長官から出ました。こうなってきますと、労働行政、労働の基本法規、これらを根本的に変えていかなくちゃいけないんじゃないかと思うんです。  ぜひ、最低賃金法から含めまして労働省の関係法規について、新しい雇用情勢に対応した変革がなされるように検討されることを要望して、終わります。  どうもありがとうございました。
  338. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で入澤肇君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  339. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、水野誠一君の質疑を行います。水野誠一君。
  340. 水野誠一

    水野誠一君 参議院の会の水野誠一でございます。  平成十一年度の予算案のポイントは、何といっても前年度当初予算比五・四%増、八十一兆八千六百億円という一般会計予算規模ではないかと思います。景気回復に全力を尽くすという観点からのめり張りのきいた予算配分をしているという大蔵省の見解もあるわけでありますが、どうもその中身を見てまいりますと、依然公共事業などに重点を置いた従前型のスタイルのものである、こういう感想を持たざるを得ません。  そしてまた、さらに最大の問題というのが前年当初予算の二倍の三十一兆の公債発行額、この点ではないかと思います。これによって公債依存度はさらに拡大をしていくということで、国、地方合わせて長期債務残高は十一年度末には六百兆円を超えると、こんな心配もあるわけであります。  よくここで議論されます財政構造改革とそれから景気対策、どちらをとるんだという議論、これはてんびんにかけるだけの従来の発想ではなくて、この二つを両立させていく考え方、つまり予算の編成、執行をめぐる構造改革、すなわち質的な面に切り込んだ議論をしていかなければいけないときにきているのではないかなと私は感じるわけであります。  そういう視点から、十年度補正予算で措置された施策の執行状況とか、昨今の補正予算をめぐるさまざまな議論、あるいは予算の単年度主義に対する所見など、予算編成の構造そのものに関して伺っていきたいと思うわけであります。  まず、通産大臣に伺いたいのでありますが、通産省によりますと十年度当初予算における通産省の情報関連予算の総額は三百五十億円ということでございました。しかし、十年度の補正予算分を加えるとこの額はかなりふえるはずであります。この十年度補正予算分の込みの情報関連予算の総額と、さらに十年度の補正予算分で行われた施策の主な中身、これについてお答えをいただければと思います。
  341. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 情報化の推進は、我が国の経済構造改革と持続的成長を実現させる上で最も重要な経済政策一つと認識しております。通産省は情報化政策の中核を担う官庁といたしまして、従来から経済社会の情報化、各種の情報技術開発などの施策推進してまいりました。  通産省の情報通信関連予算については、その定義にいろいろ考え方がありますが、当省としては、平成十年度当初予算、特別会計を含んでおりますが、これと補正予算を合わせまして約二千五百億円を計上しているところでございます。  具体的には、次世代情報技術基盤の整備、電子商取引など経済社会分野への情報技術の積極的導入、教育、医療、福祉、地域の情報化支援、情報ベンチャーの支援、コンピューター西暦二〇〇〇年問題対策などの広範な施策を展開しております。  通産省といたしましては、高度情報通信社会の早期実現に向けて引き続き我が国の経済社会の情報化の推進に全力を傾けてまいりたいと考えております。
  342. 水野誠一

    水野誠一君 今御答弁いただきました内容によりますと、十年度当初予算三百五十億に対して補正予算分が加わりますと二千五百億を超えるという、こういう金額になるわけです。すなわち二千億以上の補正予算がそこで組まれたということであります。  一方、十一年度の予算案を見てみますと、情報関連予算が四百四十八億円ということであります。十年度の当初予算三百五十億に比べればこれはかなりの伸びでありますが、十年度補正後の二千五百億という金額から比べると五分の一以下ということになります。  もっとも、この二つの数字を単純に比較するということは余り意味がありません。特に、十年度の補正予算については特別減税あるいは総合経済対策を行うもので、その総額は前代未聞の数字であったということでありますが、しかしこれらのことを差し引いても、この落差、つまり二千億以上の落差というものは余りにも大きいのではないか。  今、通産大臣から成果も期待できるという期待の答弁がありましたが、情報通信の高度化に向けた設備投資ほか数々の施策の継続性、あるいは研究開発といった非常に時間のかかる施策の継続性という点を考えたときに、何かやはりこういった落差が出てくるということ、つまり単年度主義でこういった落差がどうしても生じてくるというところでの問題というのはないんでしょうか。いかがか、お答えください。
  343. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 十年度当初予算は三百五十億だったわけでございますが、財政当局の御理解もいただきまして十一年度の当初予算自体は二八%ふえるということでございましたが、平成十年度は一次補正と三次補正がございまして、その中で、一次補正においては千三百四十九億、三次補正においては八百二十億という予算をいただいたわけでございます。  これは、我々は多々ますます弁ずと考えておりますが、全体の予算の枠組みの中で情報関連予算も決まるわけでございますので、そうわがままを言うわけにもまいりません。  ただ、この分野での投資というのは大変日本の将来にとって大事だと思っておりますので、関係者の御理解、また衆参の御理解をいただきまして、なるべく私どもとしては多くの予算をいただきたいと思っておりますし、また一度始めた事業というのは継続性というものも大事でございますから、そういうことも十分強調しながら予算要求をしてまいりたいと思っております。
  344. 水野誠一

    水野誠一君 情報通信の分野あるいは環境分野等々、非常に重要な各分野において補正予算が大いについた、大きくついたということ自体は私も大変評価をしている。ただ、補正予算の場合、その執行を決めていく、その割り振りを決めていくという時間的な制約とか、あるいは今申し上げているような継続性という視点で、場当たり式な処置にならないように、できるだけ継続性のある研究開発に向けられるように、その点をお願いしたいと思うわけであります。  もちろん、この落差というのは情報関連予算に限ったことではないわけでありますが、そこの原因にある補正予算のあり方という問題、これは私はやはり重要な意味があるのではないかなと。つまり、財政法二十九条にあります「特に緊要となつた経費の支出」という本来の趣旨、これが最近大分違う使われ方、つまり補正予算のあり方というものが大分質的に変化をしてきているのではないかな、こんな気がするわけでありますが、この補正予算というものの現状、あるいはあるべき姿について大蔵大臣はどういうふうにお考えなのか、御見解を承れればと思います。
  345. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御質問の前提にございますように、単年度主義、憲法に定めております毎会計年度の予算をその都度国会にお出しをするということが動かせない基本なものでございますので、どうしても長期を展望した予算というものが難しゅうございまして、しかし、そのために国庫債務負担行為であるとか継続費であるとか繰り越し等をお願いしておるわけでございます。そういう中で歳入歳出ともやっていかなければならない、これはどうも国会がコントロールをされるお立場からいって当然だと考えております。  ただ、今お話しになりました十年度の一次と三次の補正というのは、これはまことに異常な財政、異常な経済情勢におけるやや異常なことでございまして、殊に第三次予算は事実上十五カ月を見て組んでおりますので、そういう意味では実際上は十二カ月でなく十五カ月を展望して組んだと。こういうことをする方がよかったと思いましたし、また即効性は重んじますけれども、二十一世紀を展望する情報のようなものはこの際きちんとしておきたいという気持ちもございまして、やや異例なことをいたしました。  それから、その前でも、補正予算というのは実はシーリングをかけますと最初の本予算を逃げるような役割をすることがございまして、これは余り感心したことではございませんが、これはちょっと慣例になっておりました。ですから、日本経済が本当に成長のサイクルに入りましたら、その辺の制度もいろいろ考えてみなきゃならないのではないかと思っております。
  346. 水野誠一

    水野誠一君 今、大臣もちょっと単年度主義についてもお触れになったわけでありますが、予算の単年度主義、会計年度独立の原則、これは憲法で定められた制度であるということはもう十分に承知しているわけでありますが、国の財政をめぐる状況が非常に単純だった時代にはこれは大いに機能する制度であった、原則であったと私も考えております。  しかし、今日のように予算制度もまた同時に社会のニーズも大変高度化し、複雑化してくると、こういう時代になってくると、これを厳格に運用することがかえってそういった政策の継続性であるとか、あるいは事業の長期的視野に立った遂行というものを妨げる要素、この方がどうも大きくなってきているんじゃないかなと、こんな感じもするわけであります。  例えば、情報通信や環境関連技術など今後成長が期待され、また国としても積極的に支援していくことが重要である分野では、特に単年度でその成果を得ることが難しい技術開発を伴うことも多い。こうした場合に、やっぱりある資本投下を一定期間にわたって安定的にかつ継続的に行っていく施策が重要になってくるのではないかと強く感ずるわけでございます。  しかし一方で、単年度主義あるいはこういう憲法の縛りがある中で、では運用上どんな工夫が考えられるのか。私は、何かやはりそこをひとつ工夫して、運用の中で解決していかなければいけないのではないかと思うわけでありますが、さっき大臣もちょっとお触れになった国庫債務負担行為というような手法もそのうちの一つかもしれません。  そんなことも含めて、大臣のお考えあるいは知恵をお授けいただければと思うんですが、いかがでございましょうか。
  347. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、私、決してそういうことを余り詳しく知っておりませんし、いずれにしてもこういう動乱期にはできないのだろうと思いますけれども、例えば今、水野委員が言われました国庫債務負担行為でございますが、十一年度で二十六兆ございます。二十六兆九千億。その中で十六兆が防衛関係費。これは御承知のような理由でございますが、こういうものが余りたくさんふえるということはよくないのかもしれませんけれども、しかし今おっしゃいましたようなやや長期的な性格を持った予算要求というのは、大蔵省と要求官庁との間で実際上将来に向かってある程度の了解があるといったようなやり方をしておるんだろうと思いますが、もう少しこれを、艦船の建造というようなこととはちょっと違いますが、何かやっぱり考えることが入り用ではないかなと。憲法を動かすことができませんので、そういうことは抜本改革のときにやはり考えてみなければならないかと思っております。  失礼いたしました。今二十六兆と申し上げましたが、二兆六千九百二十億です。失礼いたしました。
  348. 水野誠一

    水野誠一君 大臣のお答えにもありましたように、これは大変デリケートな問題でもあると思います。しかし、例えば国庫債務負担行為というものがよく言われる単に公共事業前倒しのためのゼロ国債というような使われ方、これも年度内支出を伴わない景気刺激策であるという評価もあれば、また慎重にこれは考えなければいけないという見解もあろうかと思うわけでありまして、特にこういった現行の予算のスキームの中で、どういうより効果の高い政策をとっていくかということの質的な議論を今後ともぜひやらせていただきたい、かように思う次第でございます。  以上で私の質問を終わらせていただきます。
  349. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で水野誠一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  350. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、西川きよし君の質疑を行います。西川きよし君。
  351. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願い申し上げます。  短い時間ですので、個々の案件に絞ったお尋ねをいたしますことをお許しいただきたいと思います。  まず、ケアハウスについてお伺いしたいと思います。  来年度の新ゴールドプランを拝見いたしまして、十一年度の目標値十万人分が予算要求では八万三千四百人となっております。下回っております。そもそもケアハウスを整備する目的はどういうことであったのか、現在の入所率、さらに目標値を下回ることになった背景について厚生省からお伺いしたいと思います。
  352. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 御指摘のケアハウスでございますけれども、これはひとり暮らしの高齢者が、地域の在宅のサービス、外部からサービスを受けまして、これを利用しながらできるだけ自立した生活が送れるようなことを目的といたしまして平成元年に制度化されたわけでございます。  入所率でございますけれども、ちょっと数字は古いんですが、平成八年十月一日現在の全国平均で八〇・五%でございます。したがって、二割ぐらいあいているということでございます。  それで、十一年度末までの整備総量十万という目標を下げたわけでございますけれども、これは都市部の周辺でしか需要が顕在化していない、こういうことでございまして、地方では持ち家が多いとか、それからやはり集団生活になじまないとか、こういった面と、それから恐らく利用料の負担の問題もあろうかと思うわけでございまして、被用者年金ですと恐らくこれで払えるような額でございますけれども、国民年金だけですとなかなか支払えない、こんなような事情も作用しているのではないか、こういうふうに思っております。
  353. 西川きよし

    西川きよし君 本当に死はだれにでも訪れてまいりますし、老後の不安な生活、これが一番寂しいのではないかなと思うわけです。そういう意味ではいいお住まいだなと思っておったんです。このケアハウスについては、原則全室個室といったプライバシーも重視されております。二十四時間職員の方がいらっしゃいます。老後の住まいといたしましては非常に期待も大きかったということです。  しかし、このところ、その実情をお伺いいたしますと、施設によっては入所率がかなり低い。もちろん、立地条件であるとか費用の問題等々いろいろあるそうです。また、かなり高齢な方とまだまだお元気なお年寄りとの自立の差、あるいはそれぞれの入所者の収入の格差が広がりつつあるようです。  ケアハウスの役割も多様化しつつありますけれども、そうした中で入所を考えるに当たっては介護が必要となった場合にどの程度の状態まで生活ができるのか。もし退所を迫られたときにその後の行き先は確保できるのか、利用する側からもいろいろと迷いが大きいのではないかなと思うわけです。  先日、厚生大臣が日下部先生の方にも御答弁なさいました。さらに整備を進めていくためには、このケアハウスのあり方については見直しの検討が必要だという御答弁をされました。具体的にはどのような問題をどういうふうに検討されていくのか、厚生大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  354. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ケアハウスにつきましては、常時介護を必要とするまでには至っていないけれども、自宅での生活には不安があるという独居老人といいますか、ひとり暮らしの高齢者にとって重要な施策であるという認識を持っております。  そこで、実はこの介護保険の導入に伴いまして要支援とか自立者が、五年間はいいけれども、後は施設から退去していただくという法整備にもなっておりますね。そういった意味で受け皿も必要でありますので、こうした状況を踏まえまして、ケアハウスについてはそういった受け皿としても考えられるという点がございます。  なお、ケアハウスと特別養護老人ホーム等の連携を推進していくことも極めて重要だと思うんです。  そこで、介護保険制度のもとにおきましては、ケアハウスにおきましても一定の介護人員と設備を整えた上で、保険給付を活用した入居者への介護サービスを提供することが可能になると思われます。これはできると思いますから、こうした介護保険サービスの積極的活用を図っていきたいということで、これを私ども特定施設入所者生活介護というように呼ばせていただいておりますが、こうした面で介護保険給付対象サービスの一つとして位置づけをしていきたいというように思っております。  ケアハウスというのはこのプランでは非常にちょっと充足率が今低いんですけれども、都会中心なものでございましょうけれども、田舎においても住宅が幾ら整備されていても、独居老人一人だけでは不安だという方がかなりありますから、低家賃その他コントロールをしてそういう施設を持つ、そしてそれがまた特老その他の施設介護ができるようになれば非常にいい施設ではないかというように評価をしております。
  355. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  そういうふうに特に五年問題なんかに御活用していただければ我々も安心でございます。  次に、介護保険制度の住民参加型訪問介護サービス、いわゆる家族のヘルパーに対して保険給付を行うかどうかという問題です。  この是非については、各方面、また全国の方々個人個人の中でも本当に賛否両論があるわけですけれども、これまで関係審議会等々で具体的にどのような意見が出されているのか、厚生省よりまず御紹介をいただきたいと思います。
  356. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 昨年来でございますけれども、医療保険福祉審議会におきまして、ホームヘルパーとしての資格を持った方についてでございますけれども、その方がホームヘルプサービスの事業をやっている人の従業員になりまして、その方が同居の家族も含めまして自分の家族に対しての訪問介護を行った場合、これについていろいろ御議論をいただいているところでございます。  この問題につきましては賛否両論があるわけでございまして、賛成の立場でございますけれども、訪問介護の十分な確保が困難な地域におきましては、みずからの同居家族に対しまして訪問介護を行った場合に介護保険から給付を行う。認めないということにいたしますと、十分なサービスの確保ができないのではないかというのが一点。それから、従業者の給料として払われるんだから、これは家族介護でも差し支えないのではないかと、こういう賛成論がある一方で、反対の立場からではございますが、これは事実上の現金給付ではないか、当面は現金給付はしない、こういう方針に反するのではないかというのが一点。それから二点目といたしまして、介護を社会化いたしまして家族の介護負担を軽減する、こういう目的で介護保険制度が創設されたのに、この趣旨を没却するのではないか、いろいろございますが、主なものはその程度でございます。
  357. 西川きよし

    西川きよし君 私個人としては、山間部のこととか過疎、離島のこと、いろいろございますけれども、来年のスタート時にするか、当面地域の実情を見きわめた中で導入をさせるかは別にいたしましても、実際にこのサービスを利用できないという状態を避けるという意味では制度化する必要があるのではないかなと。  いろいろなものを読ませていただいたり見せていただいたり、大臣より今具体的な御答弁をいただけるような状態ではないということもよく理解しておりますけれども、山路さんという方なんかは、実施まで保険の名に恥じぬサービスの整備に全力を挙げてほしい、結論はそれからでも遅くない、例えば園部町の野中さんは、地方では人員の問題もあってなかなか業者には頼ることができないというような、いろいろな書き物を読ませていただいて、現実にこうして質問をさせていただいている中でも本当に迷うわけです。  今の大臣のお立場もよくわかるんですけれども、これからの方向、個人の御見解でも結構ですから、御答弁をいただけたらと思います。この質問でもって終わらせていただきます。
  358. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ホームヘルパーの資格を持った人が自分の親族をホームヘルプサービスのケアプランの中で担当させていいかどうかというように問題を限定させていただきたいと思うんです。そうでないと、無定限にそれは保険システムですからできません。  そうした上で、今両論があるというのは局長の答弁です。私としては、これは両論それぞれの理屈があると思います。現金給付をやって奥さん方を介護のもとへ縛りつけていくという状況は好ましくありません。しかしながら、委員の御指摘のように、いろいろの要因によってそういうことも必要があろうかと思われますし、また肉親の温かみのある接触というのは、これは排除できないという面も一面私個人としては考えられます。  したがって、そういったケアプランの中でホームヘルプサービスをやるというのも一つの選択肢かなと、問われれば個人の見解はそのように申し上げておいて差し支えないと思います。
  359. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。
  360. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で西川きよし君の質疑は終了いたしました。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会