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1999-03-10 第145回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十日(水曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  三月九日     辞任         補欠選任      佐々木知子君     溝手 顕正君      佐藤 昭郎君     市川 一朗君      鈴木 正孝君     松谷蒼一郎君      中川 義雄君     斉藤 滋宣君      三浦 一水君     狩野  安君      森下 博之君     岩井 國臣君      森山  裕君     金田 勝年君      円 より子君     朝日 俊弘君      海野 義孝君     加藤 修一君      小泉 親司君     井上 美代君      橋本  敦君     須藤美也子君      照屋 寛徳君     清水 澄子君      奥村 展三君     菅川 健二君      田名部匡省君     堂本 暁子君      佐藤 道夫君     西川きよし君  三月十日     辞任         補欠選任      小川 敏夫君     江田 五月君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 岩井 國臣君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 吉村剛太郎君                 若林 正俊君                 朝日 俊弘君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 高野 博師君                 浜田卓二郎君                 井上 美代君                 小池  晃君                 須藤美也子君                日下部禧代子君                 清水 澄子君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 菅川 健二君                 堂本 暁子君                 西川きよし君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     陣内 孝雄君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣     有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        労働大臣     甘利  明君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官) 野中 広務君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣総理大臣官        房審議官     佐藤 正紀君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁施設        部長       宝槻 吉昭君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁自然保護        局長       丸山 晴男君        環境庁大気保全        局長       廣瀬  省君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省関税局長  渡辺 裕泰君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文化庁次長    近藤 信司君        厚生大臣官房総        務審議官     真野  章君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        林野庁長官    山本  徹君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        建設省建設経済        局長       木下 博夫君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        広島公立高等        学校長協会会長  岸元  學君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○委嘱審査に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  平成十一年度総予算三案の審査委嘱についてお諮りいたします。  本件につきましては、本日の理事会において協議の結果、次のとおり決定いたしました。  一、審査委嘱する委員会及び各委員会の所管は、お手元配付のとおりとする。  一、審査委嘱する期間は、常任委員会については三月十二日から十六日正午までの間、特別委員会については三月十六日午前の半日間とする。  以上でございます。  ただいま御報告いたしましたとおりとすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、本日の委員会広島公立高等学校長協会会長岸元學君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、教育環境福祉に関する集中審議を行います。  質疑者はお手元質疑通告表のとおりでございます。  それでは、これより質疑を行います。矢野哲朗君。
  7. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 自由民主党の矢野哲朗でございます。  きょうは、集中審議のテーマに基づきまして教育問題を取り上げさせていただきたいと思います。  現在、全国で卒業式実施されておるところでありますけれども文部省平成元年から国旗国歌指導に力を入れまして、効果は徐々に上がっていることを聞いております。しかしながら、新聞でも大々的に報道されております、埼玉県の所沢高校、そして千葉県の小金高校小金高校におきましては、生徒会反対に遭って国旗国歌実施することができなかった。所沢高校においては、一日に二つの卒業式があったというふうな報道もあります。ですから、徐々に効果は上がってきたんだけれども、まだまだ大変厳しい教育現場があるということを再確認したつもりであります。  お手元配付をさせていただいていますけれども、その資料は大阪府立高校卒業式の模様であります。ごらんいただければわかりますように、国歌斉唱時にほとんどの生徒が欠席の状況であります。なおかつ国旗がどこにも見当たらないという現場の写真であります。大阪府内では、この国旗式場内掲揚が百校のうちわずか六校であります。国歌斉唱、全員が斉唱されるというのは四校しかないという結果が報告されておるわけであります。国旗国歌をめぐる動き文部省御報告のとおりとはいかない現状があるなということを改めて認識し、質問をさせていただきます。  そして先般、集中でもって、私もあの時期大変深刻な問題だということであえて取り上げさせていただいた広島県の教育現場の実情、本日はあの痛々しい事件で亡くなった先生同僚であられます、そして広島県の高等学校長協会会長であります岸元學先生にお越しをいただいております。  国旗国歌をめぐる問題について質問をさせていただきますけれども質問に入る前に、今回、岸元先生いろんなお悩みもあったかもしれません、しかしこの場に出席をいただいております。私ども要請におこたえいただいてお越しいただいた真意についてお述べをいただきたいと思います。
  8. 岸本學

    参考人岸元學君) 広島県の教育現場におきましては、教職員団体研究団体運動団体学校運営に強い働きかけをし、校長が実質上動きがとれないというふうな状況がございます。その中で、一人の校長が命を失ったという痛ましいことが生じました。  私は、第二、第三の犠牲者を出さないためにはどうしたらよいかという思いでこの席に出席させていただきました。
  9. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 岸元先生の勇気ある行動、私も評価をさせていただきたいと思います。  本題に入ります。  このたび、石川校長卒業式の前日、去る二月二十八日に自殺に追い込まれました。岸元先生校長協会会長といたしまして自殺に至る経緯について御存じのことが多々あると思います。できる限り具体的に御説明を願いたい。また、一部のマスコミ報道では、職務命令石川校長を死に追いやったというふうな報道もされております。その辺の見解もあわせてお述べいただきたいと思います。
  10. 岸本學

    参考人岸元學君) 石川校長は、二月二十四日から先生自殺される直前の二十七日まで、連日連夜八回にわたり校内、校外で一日約五時間平均にわたる会議とか交渉が持たれました。その中で、あくまで石川校長国歌斉唱実施すると言うのなら、従来三脚掲揚されていた国旗までも引きおろすぞとか、授業の補習や駅伝の世話など、学校運営の一切に協力しないぞというふうな形で反対されました。  そこで、校長は、一時はあきらめの気持ちになっておりましたが、同じ地区校長たち国歌斉唱をするというふうな情報を得て、すがるような思いで二十八日に職員会議を設定してくれないかというふうに組合要請したところですが、拒否されました。石川校長無力感に打ちひしがれながら、「何が正しいのかわからない 管理能力はないことかも知れないが、自分の選ぶ道がどこにもない。」との遺書をしたためてお亡くなりになりました。同僚校長としてまことに痛ましく思っているところであります。  ところで、職務命令石川校長を追い詰めたというふうな考え方マスコミ等を通じて流布されておりますけれども教職員を説得する材料として、私ども校長の方から教育委員会職務命令を出してもらえないかという心待ちの気持ちがあったという事実をここに報告させていただきます。そして、その効力は結構あったというふうに私は受けとめております。
  11. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 広島県におかれましては、今までは国旗三脚掲揚することは教職員組合、そして解放同盟も容認していたというような経緯があったようでありますね。しかしながら、今回改めて国歌斉唱しようと、そのことを容認すれば今まで容認していた国旗は今度は掲揚を認めないぞ、こういうふうな一つの推移があったと、そんなことでよろしいわけですね。
  12. 岸本學

    参考人岸元學君) 五者協国歌斉唱反対する戦略を練りました。五者協とは、広島高等学校教職員組合広島教職員組合広島同和教育研究協議会広島高等学校同和教育推進協議会、そして部落解放同盟広島県連合会、この五者が国歌斉唱実施をいかにとめるかという戦略を練ったのであります。  二月中旬までは各高等学校同和教育推進係高等学校教職員組合執行部国旗国歌実施する県教育委員会通達と我々が今までやってきた教育内容がそぐわないという観点で校長に迫り、国旗国歌実施すべきとの県教育委員会通達を撤回させるという方向で闘争を組もう、それでも校長通達どおり国歌斉唱をしようとするなら次のような闘争を組む、すなわち従来掲げていた国旗もおろすと校長に迫るということです。  こうして見ますと、石川校長は五者協戦略犠牲者になったというふうに私は受けとめざるを得ません。
  13. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 お話をるるお伺いしまして、さまざまな反対妨害運動石川先生に向かって行動されていた、そのことが理解できるわけでありますけれども、特に教職員組合、いずれにせよ教育関係の一員であるということでありますから、その話は一部理解ができるかもしれません。しかしながら、全く民間団体部外者までが一緒になってそういった教育の中に、現場に入っていって組織的な反対運動をやった、このことは私も大変問題だなというふうに考えております。  岸元先生、こうした組織的反対運動の中で、高校長協会会長という立場で先生自身が直接いろいろやはり抗議を受けた、いろんな抵抗を受けられた現実があろうと思います。やはり詳しくお述べいただきたいと思います。
  14. 岸本學

    参考人岸元學君) 平成三年の十二月五日のことでしたが、高等学校長協会高等学校教職員組合との間で、国旗三脚ですべての学校に上げるが国歌斉唱はしないという約束がなされました。今回、文部省是正指導を受けた広島県では、国旗国歌を学習指導要領どおり実施するという方針を固められました。そして、各学校長指導が入ってまいりました。  そこで、校長協会としましては、平成三年の約束事があったままでは昨年どおり実施率が一八・六に固定されてしまう、これでは何のための文部省是正指導であろうかということで、私と副会長とが高等学校教職員組合本部に参りまして、国歌斉唱をしないというこれまでの約束を破棄通告しました。高等学校教職員組合の方では、私の方へ抗議電報を打てというふうな闘争を組まれたように思います。  その中で、一、二紹介させていただきたいというふうに思います。  岸元學様 抗議 約束は守るように日頃生徒に諭しているはずの校長高教組との 高教組というのは高等学校教職員組合のことでございます、  高教組との整理を一方的に破棄し、現場を大混乱させ、一人の良心的な校長を死に追いやる悲劇を生み出したあなたの責任は重大である。 あなたのような独裁的、独善的な校長会長となる公立校長協会とはいかなるものなのか。教育者としての良心のかけらがあるとすれば、即刻教育界から身を引きなさい。 石川校長を死に追いやったのは私であるというふうに決めつけた抗議文であります。  また、石川校長が在職されていた世羅高校からも抗議電報が参っております。「教育者としての良心はないですね。 教育界から出ていってください。」、全く反省の色も見えません。私は、世羅高校先生方に失望せざるを得ません。
  15. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 先ほど私が問題提起させていただいた五者協、その中に部落解放同盟名前が出てまいりました。この団体、本来民間団体でありますから、教育の中に介入するというふうなことは非常に問題があるなと、そう思う一人でありますけれども、今回この団体がとった行動を詳しくひとつお教えいただきたいと思います。
  16. 岸本學

    参考人岸元學君) 先ほど来、部落解放同盟という団体名が出ておりますが、本県の部落解放同盟広島連合会は特異な、他の都道府県の部落解放同盟とか、また部落解放同盟中央本部の方々とは違った動きをなされますので、同じ名前団体とは峻別して受けとめていただくということを前提にお話し申し上げたいというふうに思います。  さて、このたびの展開でございますが、部落解放同盟広島連合会は、その連合会要請によって二月十一日、福山地区校長十八名が解放会館、いわゆる部落解放運動を進めるに当たっての集会所と申しましょうか、そこへ出席しましたところ、部落解放同盟広島県連の方、それから高等学校教職員組合の人々など約百人に及ぶ人たちからいわゆる大衆団交を受けるに至りました。  卒業式での君が代の実施は従来行ってきた同和教育と矛盾するとの要望書校長会として県教育委員会に出せというふうに、次のようなやりとりで強く迫られました。要望書を書け、検討させてください、今ここで書け、わかりましたと、このようにして要望書を出す結果になりました。その間、二時間から三時間かけての交渉だったというふうに私は聞いております。  引き続き、十三日にも石川先生がおられた尾道、三原地区校長たちもさっきのような百人規模の交渉を受け、要望書県教育委員会に提出しました。  さらに、国歌斉唱を予定している個々の学校にも卒業式が近づくにつれて部落解放同盟広島県連の方がおいでになって、我々の子供たちを当日欠席させるぞとか、卒業式途中で退席させるぞとか言われ、そうすると退席すればこの子が部落の子であるということがはっきり明確になってしまう、そのことによって新たな差別事件が起きたら許さぬぞ、こういうふうな国歌斉唱実施を妨害するような行為がありました。  また、卒業式後には、国歌斉唱を拒否して卒業式を欠席した生徒に対して校長がわび状を書かせられるというふうな事実も聞いております。  私自身の場合ですが、今回私には何もございませんでした。しかし、平成四年二月末のころです。卒業式を翌日に控えた日のことですけれども、私は当時教頭でございました。そこへ団体の方がおいでになって、国旗掲揚国歌斉唱も取りやめるように強要されました。そのときの、もし実施するなら街宣車でもって卒業式をひねりつぶすぞと言われた言葉をいまだに忘れることはできません。
  17. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 長年にわたって広島県の教育現場における大変法律にも抵触するようないろんな反抗運動が起きてきた、このことを改めて聞かせていただいたつもりであります。  卒業式というのは純然たる教育内容行為だと思うのであります。なぜ学校部外団体介入して学校運営を左右することができるんですか。その教育現場実態、本当に想像できかねる実態があるんです。  なおかつ、いろいろ調べてみますと、そこには一つ考え方のポイントとして八者懇談会合意文書、そういうものも広島県にあるというふうな話を聞いております。合意文書内容、そしてそのことがどういうふうに現場で反映され問題を起こしているか、御説明を願います。
  18. 岸本學

    参考人岸元學君) 広島県では昭和六十年に当時のさまざまな教育課題を解決するために八者懇合意がなされました。  八者とは広島県知事広島県議会議長広島教育長部落解放同盟広島県連合会、広島高等学校教職員組合広島教職員組合広島同和教育研究協議会広島高等学校同和教育推進協議会、以上の八者であります。  この八者で広島県における学校教育の安定と充実を図っていこうという合意がなされ、その合意文書の中にこういう一節があります。「差別事件の解決に当たっては、関係団体とも連携し、」という文言です。「関係団体」とはこの場合は部落解放同盟でございます。この「連携」という言葉拡大解釈、ひとり歩きし、今回の卒業式の持ち方についてまでもいろいろと部落解放同盟介入を許すという結果を招いたのではないかというふうに私は受けとめております。  願わくば、部落解放同盟広島県連合会におかれては、もう少し節度というものを考えていただきたいと願っております。
  19. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 肝心なところなものですから再確認をさせていただきます。  八者懇合意文書では「関係団体とも連携し、」というふうな表現を使われているけれども現状連携を逸脱してあくまでも教育現場介入をしているというふうなことでよろしいですか。
  20. 岸本學

    参考人岸元學君) 今回の卒業式にかかわる状況を見ますと、私は教育介入という以外に言葉を選ぶことはございません。以上です。
  21. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 石川先生の最後の走り書きを披露させていただきます。「何が正しいのかわからない 管理能力はないことかも知れないが、自分の選ぶ道がどこにもない。」という走り書きを書き残して石川先生自殺の道を選ばれました。一連の大変痛々しい広島県の教育現場の御披露があったと思います。  今の御披瀝に際しまして、総理総理の二十一世紀に向かっての一つの大きな指針であります富国有徳、そんな思いをするときに、全く相反した現場がある。私は、二十一世紀のあしたを大変憂える一人であります。総理のこういう現場に対する、何とかしなければいけないなと、問題意識を持っての前向きな姿勢をひとつお示しいただきたいと思います。
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいまの矢野委員岸元参考人質疑といいますか応答を緊張してお聞きをいたしておりました。  改めて広島県の教育現場実態に触れまして、その責任ある高等学校長協会会長さんとされまして、極めて困難な状況の中で身を挺して教育正常化といいますか、そのために御尽瘁をされておられる岸元参考人の苦悩といいますか、そういうものを改めて感じた次第でございますと同時に、先般お亡くなりになられた故石川校長のこれまた苦悩に満ちた責任者としてのお立場について、その実態がどこに生まれてきたかということについての先生のお話を承りました。  率直に申し上げて、私も生まれ故郷があるわけでございますが、日本全国同じような状況であるという感じはいたしておりませんが、そういった意味で、今後とも広島県における教育実態のあり方というものにつきまして、さらに我々としても十分実態を把握し、承知をし、そして二度と再びこうした不幸な事件教育指導者として教育一筋に取り組んでこられた現場の責任者が、こうしたことが再び起こらないようにするためには何があるべきかということにつきまして真剣に検討していかなきゃならないという思いを新たにいたした次第でございます。
  23. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 岸元先生の前でもう一つ質問させていただきます。  宮澤大蔵大臣、御地元の問題であります。先般、広島教育問題を考える国会議員の会が発足をした模様でありますけれども、重鎮であられる蔵相、こういう地元の問題が、広くはこの問題が波及して日本の至るところに同じような問題提起をしている、そう思うと本当に黙ってはいられない話であります。何とかしていただきたい。  ひとつ、校長協会会長の前で、せっかくここまで意を決して出席をいただきました、地元の話としてどう取り上げるか、覚悟をお伺いしたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 予期しておりませんでしたお尋ねでございますが、実はこの問題はきのうきょうの話ではございませんで、四十年ほどの歴史がございます。それも、今、校長さんのお話からお聞きになりましたように、広島県のほとんど東部に限られた問題でございました。ですから、それは私がまさに選ばれてまいりました地域でありまして、四十年間たくさんの人が闘ってまいりました。こうやって今命を落とされた方の報道がございましたが、人の知ると知らないとにかかわらず、たくさんの人がいわばリンチに遭い、職を失い、あるいは失望して公職をやめる、それは無限にございます。  しかし、何でその闘いが勝てなかったかといいますと、基本的には、部落という問題に関係がありますために、これについて報道することが差別発言になるということを報道機関は常に恐れておりまして、このことを口にすることができない。天敵は共産党であります。共産党だけは実に勇敢に発言をしてきましたが、それ以外は、これについての差別発言を批判されるために世論の形成ができない、これが一番の原因であったと思います。  私自身も、そういう中にあって、このことについて、今日までこの事態の解決に十分な寄与ができなかったことを恥ずかしく思っております。  今度こういう不幸な事件がありまして、初めてそのような事件として広く取り上げることができるようになった。今度の痛ましい世羅校長の死というものは、そういう意味で、この問題をようやく公に議論できるようになったというのが私の郷里の方の雰囲気でございます。  したがいまして、国会がこういう機会を設けていただいて、また参考人もよく意を決してここにおいでいただいて、この問題が公に議論されるようになったということは、何十年うっくつしておりました問題に初めて国民の目を公のもとに集中させることになりまして、この点につきましては、国会の御配慮に私は心から感謝いたしますし、また参考人としておいでになった岸元さんの勇気に心から私は敬意を表します。  率直な感じを申しますと、自分がこの中にあって何十年も解決できなかった問題について国会がこうやって取り上げていただきましたことに本当に勇気を感じますし、また自分として今まで果たし得なかったことに渾身の努力を尽くしたい、こう思っております。
  25. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 ありがとうございました。  せっかくこういう機会ができました。先頭を走っていただきたい。  そして、今の大蔵大臣の答弁にもありましたように、四十年間現場でこんなに苦しんできた、それに残念ながら文部省として介入もせず今日を迎えた、このことは非常に大きいですよ。ひとつその責任たるや十分に考えていただきたいと思います。  岸元先生、いろいろな御意見ありがとうございました。心から感謝申し上げます。そして、この勇気ある行動に対して我々も一丸となって問題解決のために努力をする、あえて私からもそういうことをお約束させていただきながら、きょうの質疑に心から感謝を申し上げまして、参考人に対する質疑はとめさせていただきます。  質問を続けます。  先ほど八者合意経緯参考人の発言からありました。この合意文書は既に行政側と特定の運動団体との間で交わされた広島県の学校教育に関する合意文書となっておりますが、国旗国歌実施に大きな支障になっている事実が明らかになったわけであります。  文部省にお伺いをいたします。  このことは教育の中立性を規定した教育基本法第十条に抵触するというように私は考えますけれども、御見解を願います。
  26. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず、差別は絶対あってはいけません。したがいまして、同和教育というのは進めていかなければならない。しかしながら、この前も亀井先生に対して御答弁申し上げましたけれども同和教育ということと政治運動や社会運動との関係は明確に分けていかなければならないと思っております。  ですから、教育の中立性が守られなければならない、そういう点で必要なことがあればこれはいろいろ御相談に応ずることがあると思いますが、少なくとも教育の中立性ということはいかなる状況であろうと守らなきゃならないと思っております。
  27. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 文部大臣、今の現場の報告をお聞きして、大変中立性が侵害されていると私は聞きました。ですから、文部大臣として、今の状況を聞いた上、現場がどういう状況なのか、問題があるのかないのか、あるんだったら今後文部省としてどうするんだということを聞かせてください。
  28. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 教育の中立を破るようなことがあれば断固としてこれは排除しなきゃいけない。したがいまして、その八者協議にしても、是々非々であろうと思いますが、きちっと政治問題とは分けていかなきゃいけない、このことは明らかでございます。
  29. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 もうちょっと明快に頼みますよ。先ほど、お互いに協調してやっていこうというふうな取り決めが日増しに、介入までしているよというふうな発言があるわけでありますから、それを聞いた上でどう処すかということをひとつ御答弁願います。
  30. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 教育の中立性が破られるようなところはもう絶対に排除していかなくちゃいけないということを繰り返し申し上げたいと思います。  ですから、現在の教育に関して協調的にやっていこうというふうなことに対しては私は評価いたします。しかしながら、国歌国旗の問題とか、そういうふうに既に学習指導要領でもって文部省が行っております国歌国旗掲揚あるいは斉唱というふうなことにまで御意見をいただき干渉するというふうなことに対しては、断固として排除しなければならないと思っております。
  31. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 基本法においては罰則規定がないですよね。ですから、いかに指導徹底を図るか、これしかないんです。まさに今問題提起されたんですけれども文部省としてこれを具体的に今後どうするんだと。その御意見をください。
  32. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 既に文部省としては、広島教育委員会に対してたびたび指導し、お願いをしてきております。今後もこれを強く指導していくということを申し上げたいと思います。
  33. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 先ほどの大蔵大臣のお言葉をおかりします。残念ながらなかなか表へ出てこなかった、しかしこれからは違うよと。ですから、本当にこの機を逃しちゃいけませんよ。今までも努力をされたかもしれない。しかし、残念ながらその努力では解決できなかった、問題が山積をしている現場があるわけでありますから、本当にこれからやっていってください、こう私は期待します。  それで、官房長官が四十五分から抜けられますので、ちょっと順番があちこちしますけれども、今回、法制化を何とかしたいということで決意をなされたというふうなコメントも載っております。けさの新聞にも載っておるので、これをちょっと再確認したいんです。  いろいろ誤解を生んでいるんです。義務化しないということ、子供たちの本質的な問題になるからそこまでは立ち入ってはいけないというふうな話でありますけれども、今の状況下で少なからず校長先生教職員、この人たちには国旗国歌というものを義務づける、教育する義務があるというふうに私は理解しています。  その点からして、官房長官、今回の法制化でもって遵守規定を入れることは否定的な考えを示したけれども学校での指導を徹底させるためには何らかの尊重規定が必要と考えますと、これは当然のことなんです。なぜここまでエクスキューズして法制化というものを考えなきゃいけないんですか。原理原則に基づいて、やっぱり日本の国旗は日の丸だ、国歌は君が代だ、ひとしくひとつみんなでその重要性、意義というものをお互いに理解し合おうじゃないか、なぜ素直にそういうふうなことでこの法制化を考えられないんですか。エクスキューズが余りにも多過ぎる、そういうふうに私は感じられてならないのでありますけれども、御見解をいただきたいと思います。
  34. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 国旗国歌の法制化の検討と学校現場におきます国旗国歌指導との関係につきましては、さまざまな報道がされておりますことから、ちょうど三月四日であったと思いますが、記者の方からこれについて義務化をするのかどうかというお尋ねがございました。  ただいま国歌国旗の成文化については、一応長年の慣行によりまして日の丸・君が代が国旗国歌であるという認識が確立し、広く国民の間に定着をしておるけれども、しかし一つの、世紀末として国旗国歌について成文化することがいいのではないか。あるいはそういう上に立って、今それぞれお話のありました広島等の長い教育現場を初めとする混乱を考えてまいりましたときに、指導要領はあるけれども、一体どこに根拠があるんだというような指摘で随分苦しんでまいりまして、現場の管理者及び私どもも市町村管理者や府県の管理者の一翼を担いながら、いろんな交渉の場に出て苦悩したときを思い起こしながら、根拠となるべき成文化を必要とするのではなかろうかという気持ちを持ってまいったわけでございます。  さはさりとて、国旗国歌を義務づけるのかという指摘がございましたので、私自身は、今幅広く、古川官房副長官をヘッドにしてこれを成文化することへのいろんな角度の検討をしていただいておるけれども学校における国歌国旗指導は、法制化をするとともに、我が国の国民として国旗国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることが重要であって、現在、学習指導要領に基づいてこれが行われておるものであり、それそのものをも法制化して義務づけることについては、私はなじまないものであろうと個人的見解を申し上げた次第であります。
  35. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 ちょっと理解し得ないのでありますけれども平成六年に与謝野文部大臣が、校長やその監督下にある教師は、生徒国旗国歌について教育指導をしなければいけない義務がありますよというふうなことの見解を述べておられます。  ですから、官房長官、今の官房長官の答弁、この見解、もう少し踏み込んでいいんじゃないですか、こういう見解に基づいてやってまいりますよと。エクスキューズは必要なし。  なおかつ、もう一つ申し上げるならば、生徒たちの問題でありますけれども国旗国歌の重要性、意義を教育した結果、どういう成果が上がったかは児童生徒の内面の問題でありとありますね。  ですから、その結果はいずれにせよ、これが法制化されることによって一つの幅の中でこの重要性、意義というものが考えられなければいけない。今ばらつきがあり過ぎるんですよ。だから、国旗国歌に対する一つの重要性、意義というものは国民それぞれが理解が全然違うんです。  法制化に基づいて一つの方向性をつくって、当然のことながら指導していく、当たり前の話だと思うんです。ですから、その辺での見解をあと一度お願いします。
  36. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私は、日の丸が国旗であり君が代が国歌であるということを法文的に明確にすることによって、これは単に学校教育のためにやるだけでなく、国家の尊厳にかけてこれを成文化することがよかろうと考えて、今多方面にわたって事務的に検討をお願いしておるところでございます。これを教育現場において義務づけるということは、これはそういう道を選ぶべきでなく、文部省指導要領においてこの法的根拠に基づいて教育現場に生かせるように、そしてそれが国旗とし国歌として尊重されるように、私は記者会見において問われたことを今も正しいと考えておる一人でございます。
  37. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 何らかの尊重規定を設けたいと。ぜひその辺でひとつ今後の発言を収れんさせていただきたいと思います。  一言一言がいろんな余波を生むので、我々もこういうエクスキューズが本当にどうなんだろうなという、常に記事を読むとそんな感じがいたしますから、官房長官、この尊重規定を設けなければいけない、何らかの形で設けようというようなところにひとつ発言を集約されんことを御期待申し上げたい。お願いします。  文部大臣にお伺いをいたします。  石川校長さんが自殺に追いやられる経緯を見ますと、国歌国旗実施を求めた石川校長職務命令を拒否した教職員の皆さんに大きな問題があったということは明らかだと思うのであります。これは上司の職務命令の遵守を規定した地方公務員法第三十二条への違反になると私は考えております。職務命令を拒否した教職員の処分はいかがなものか、お伺いをします。
  38. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) これは、まず県教委が検討され、その実態に応じて県教委が御判断される、文部省としてはその結論に対して援助いたしたいと思っております。
  39. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 ですからこの場で、県教委の見解を尊重するという話でありますけれども、残念ながら今まで県教委でもってそれなりの判断ができ得なかったんです。だからこんな混乱が起きちゃったんです。だから、改めてお伺いしますけれども一つの方向性を示してください。
  40. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 今回の事件それからその周辺のさまざまなことを考えに入れまして、今まで以上に厳正に対処したいと思っております。
  41. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 加えまして、学校運営のあり方でありますけれども校長先生の職務権限と同時に、教職員会議のあり方、非常に矛盾したあり方が学校現場にあるというふうな指摘もありました。その点での御見解はいかがですか。
  42. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 教職員の立場とそれから校長の立場というのははっきり違いがあると思います。あくまでも学校運営というのは校長が責任を持つ、そして教職員はそれに対して協力をするということが建前でございます。  そういう意味で、教職員の集まり、すなわち職員会議のあり方というのは、今申し上げたように、あくまでも校長考え方に従って教育を円滑に行っていく上での、一緒にやっていく上での、協力する上での会議だと私は判断しております。  あくまでも校長先生が主体的にすべてを決定していく責任がございますし、教職員指導することによって教育の理念を教職員に伝え、そしてその教職員子供たちに対してしっかりとした教育を施すということが学校の体系だと思っております。
  43. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 今の説明を私もいろんなものを読みながら理解しているつもりであります。ですから、有馬文部大臣として、先ほどから申し上げているように、こういう具体的な事実がありました、しからば私はこう考えますよと、なぜその答弁が出てこないのかな。私は今回、長年にわたって教育現場をずっと渡ってきて、確かに文部大臣教育現場というのは理想的な教育現場を歩いてきたかもしれない、こんなきょうお伺いしたような厳しい現場というのは想像でき得なかったかもしれません。しかし、いざ現実のものになったわけでありますから、長年の教育経験をもってして、しからば私としてこうしたいな、そこまでの意見に踏み込んでくださいよ。お願いします。
  44. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まず、今回の大変不幸な事件ということがございます。こういうふうな現実が今はっきりしてきております。そういう点で、今まで以上に校長の役割それから職員会議のあり方等々について厳正に考え、さらなる検討をいたしたいと思っております。
  45. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 るる質問させていただきました。  きょうの質問の中身としまして、日本の中で、国内でいろんな教育現場の問題がある、その一つ象徴的な現場の問題点、広島教育現場の問題点を指摘させていただきながら、今後の文部行政のあり方、もっと前に出てください。一歩も二歩も前に出てください。そしてしっかりと指導してやってください。現場の県教だけではなかなか対応できない現実があるということを改めて認識いただいたと思います。  加えまして、私は今後法制化に向かって総理以下御努力をいただけると思います。私は、原理原則に基づいて、日本の国旗は日の丸であるし、国歌は君が代だということで粛々と法制化に向かっていただきたい。そして結果的には、法制化になった結果、国民それぞれが我が日本の国旗国歌であるということを尊重し、意義があるんだということをそれぞれが認め合うような風土をつくっていただきたい。  ですから、先ほどから何回も申し上げたように、義務化をするしない、法制化になったら義務化するのは当然だと思うんです。そういうふうなエクスキューズをしないで、粛々と私は法制化に進んでいただきたいと思いますけれども、最後に総理の御見解をいただきたいと思います。
  46. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 子供たちが将来国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長するために、学校教育におきまして国旗国歌に対する正しい認識と、それらを尊重する態度を育てることが極めて重要であると考えます。  このため、学校におきまして、入学式や卒業式などにおいて、その意義を踏まえ、国旗掲揚し、国歌斉唱するものとされ、その一層の充実が図られることを強く期待いたしておることに変わりございません。改めて、二十一世紀を迎えるに当たりまして、国旗国歌について成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えることなどから、国旗国歌の法制化も含め検討に着手することといたしたものでございます。  我が国の国民として、学校教育におきまして国旗国歌に対する正しい認識とそれらを尊重する態度を育てることは、これまでと同様極めて重要であり、学校教育においてしっかりとした指導が行われることが重要と考えております。  本予算委員会におきましても、あるいはまた過ぐる本会議におきましても扇議員からもそうした国旗国歌の問題についてお取り上げがありました。私は、この委員会におきまして、現時点におきましての法制化につきましてはその考え方は現時点では持ち得ていないことを実は答弁いたしました。しかし、その際、それぞれの国々における状況につきましてもお話し申し上げましたし、また政党の中にも法制化をお考えになっている政党もございますし、今答弁申し上げましたように、今やこの二十一世紀を前にして一つの方向性を定むべきものと、こう考えておるわけでございます。  そこで、今お話にありました、これをどのような観点において義務づけるかどうかということにつきましては、現在、先ほど官房長官も御答弁を申し上げておりますが、まずは法制化に対しての準備を内閣としていたしたところでございます。  したがいまして、恐らくこの問題につきましては閣僚それぞれにもいろいろなお考えがあろうかと思います。いずれ、最後の責任は私として、これは取りまとめさせていただかなければならないと思っておりますが、先ほど来の御議論等について、矢野委員等の御主張、お考え等もございます。各党とのいろいろ御意見もあろうかと思います。できる限りそれを集約した形で、かつ内閣としても、将来にわたって国民が国旗を敬い、そして国歌をお互い日本の国歌としてこれを心から歌うことのできるような、そういう姿にならなきゃならぬ、こう考えてこれからの法制化につきまして十分その意を受けとめながら法制化に向かって努力をいたしていきたいと思っております。
  47. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 総理のリーダーシップを心から御期待を申し上げます。  加えまして、岸元先生のきょうの御出席に心から感謝を申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  48. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。松谷蒼一郎君。
  49. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 自民党の松谷でございます。  矢野先生に関連をいたしまして、国旗国歌の問題について若干質問させていただきます。  先ほど、広島県の教育現場に関連しての質問に対し、総理大蔵大臣から真摯な御答弁がございました。大変に私も感動をいたしました。このたびの予算委員会で最も私は感動し、胸にこたえたものでございます。景気回復も大変重要でありますが、やはりこういう根本問題についてただしていくということが政治の原点ではないかと感じた次第でございます。  そこで、若干お伺いをいたしますが、近世に入って国家が成立をしてまいりました。国家の意味というのは極めて重要でありますが、その国家の意味する象徴は何と考えるのか、これについて総理にお伺いいたしたいと存じます。  強烈な市民意識を持ったフランスにおきましても、国家の象徴は青、白、赤の三色旗であると第五共和国憲法第二条第二項において規定をしております。  我が国における国家の象徴を何と考えられるのか、総理に伺いたいと存じます。
  50. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国家にとりまして、国旗国歌がその象徴として意義深いものであり重要なものである、このように考えております。
  51. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 重要というよりは、国家の象徴は国旗である、私はそういうように思います。  広辞林をひもときますと、国旗は国家の象徴的な印とされる旗である、我が国では日章旗だというように記されております。  このたびの法制化の問題というのは大変長い間のいろいろな論議の中で起こってきたものとは思います。しかし皮肉なことに、共産党の国歌国旗についての法制化についての二月十九日の新見解、法律で定められれば日の丸・君が代を容認してもよいという考え方、これが導火線になったものであろうかと思いますし、さらに広島県の本日論議されました高校長自殺が引き金になったというように考えております。  慣習的に定着したとはいいながら、二十世紀を終えるに当たりまして、やはりこの国旗国歌の問題というのは結論を与えるべきではないかと私は思っております。それが総理の務めではないかというように思います。  そういう意味で、今国会中に、こういうように論争が非常に国民的に沸き起こってきたこの時期に当たって法制化の御提案をしていただくということが極めて重要ではないかと存じますが、いかがでございましょうか。
  52. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府といたしましては、長年の慣行によりまして、国民の間に日の丸・君が代が国旗国歌であるとの認識は既に定着しているものと考えております。  このような中で、二十一世紀を迎えるに当たりまして、我が国でも国旗国歌を成文法として位置づけることについて検討する時期に達してきたのではないかと考えられることから、今回、国旗国歌の法制化も含めた検討に着手したものであります。  政府といたしましては、本件につきまして、国権の最高機関である国会の御議論等を踏まえ、できれば今国会に法案を提出できる運びとなることが望ましいと考えておるところでございます。  国旗国歌に関しましては、私自身も、この国会に籍を置かしていただいて四十年近くなりますが、振り返ってみますと、当時としてはまだ日の丸とか君が代に対する、国民の中にかつての大戦のことを振り返ってアレルギーがかなり存在しておったことは事実でございまして、そういった意味で、私、出たころにいろいろと話題に取り上げられた中で、戦争を振り返って、それがこうしたことを思い起こさせるという意味での非常な反対論もあったように思っております。  しかし今日、時を経て、静かに改めて我が国を思い、その象徴としての国歌国旗というものを考えましたときに、私としては、この際この問題についての一つの結論を内閣としてもとるべきだと思いますし、もとより、申し上げましたようにこれは国民を代表される国会での最終的御判断をいただかなきゃなりませんが、今日改めて政府といたしましては成文化について努力をしたいと思っておりますので、これが法律案として提出をされることのできるように内閣としては努力をいたしていきたいと思っております。
  53. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 ただいま明確に総理から、今国会に国旗国歌についての法案の提出について明言をされました。大変ありがとうございました。私は、極めて重要なことであるというように認識をしております。  その中身については、先ほど同僚議員であります矢野議員からいろいろと強制化の問題等々について質問がございましたので、これについては省略をいたしますが、私は、日の丸と君が代というものが国民の間に既に定着をしておりますし、国際的な慣習の中でも定着をしているというように思いますが、さらにこの際国民的なコンセンサスを得る必要があると思うのかどうか、あるとすればどういうような方法によって実施をするのか、その点についてお伺いいたします。
  54. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど御答弁申し上げましたように、私は、国民の間にこの問題につきましては基本的な考え方では定着をしておるというふうに考えております。したがいまして、改めてこれを世に問う、いかなる形かはわかりませんが、そういうことの必要性はないのではないか、むしろここに国民を代表されておられる国会における最終判断がありますれば、そのことをもって私はよろしいのではないか、こう考えております。
  55. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 ありがとうございました。総理の見解のとおりであろうと存じます。  そこで、私は、国旗については極めて国民大多数の間に、もうほとんど全国民がこれについては意識が定着していると思うんですが、国歌についていろんな意見があるわけであります。  国旗については、例えば私はフランスに若干の間留学をしていた経験がありますが、国祭日におきましてはシャンゼリゼの大通りに翩翻として三色旗が翻り、それも大変大きな三色旗が道路を埋め尽くして翻るわけであります。あらゆる祝祭日がそうであります。そこに、ああ国家というものがあるんだなという思いをいたします。  ただ、国歌というものは、なかなかこれは目に見えるものではありませんので、我が国においてもいろいろな意見があるというふうに聞いてはおりますが、しかし例えばフランスは国歌はラ・マルセイエーズであるというように憲法において定めております。マルセイエーズの歌は、もう御案内のとおり、非常に好戦的な歌であります。米国の歌もそうであります。要するに、国歌というのは独立を守っていこうというその気概に満ちた歌であるというように思うわけであります。  それに対して我が国の君が代は、そういうところはありませんで、非常に私は平和的な歌であるというように思います。そういう意味で、私はまさに戦後の我が国にふさわしい歌ではないかというように思うわけでありますが、その点についてはいかがお感じでございましょうか。
  56. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) また法律案を国会で御審議する段階でいろいろ考え方は申し述べたいと思いますが、基本的には委員の今お説のように私も認識をいたしております。  話はちょっとそれますけれども、現在、国立博物館でルーブル美術館からお借りをいたしました「民衆をひきいる自由の女神」という有名な絵がフランス政府の御好意によりまして展示をされておりますが、あそこにはまさに三色旗が、初めて革命によってフランスの一つの象徴として女神がこの旗を持って進んでおるという姿でございます。  ラ・マルセイエーズ、フランスの国歌におきましても、和訳を読みますれば、まことに好戦的といいますか、そういう感じのする歌でございますけれども、それぞれの国々には国旗国歌、それぞれの長い歴史的な経過もあるわけでございますが、我が国の国旗国歌については私は今、松谷委員のお話しのようなことと理解をさせていただいております。
  57. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 先の話をするのはちょっとまだ早いのかもしれませんが、しかしかなり各党におきましてこの国歌国旗についての法制化の意識が醸成されているというように私は思います。そういう意味で、これが法制化された場合、強制するかどうかという問題は若干別にいたしましても、やはりあらゆる国家的祭典、国際的な事業、そういうものには当然各国のようにこの国旗国歌を十分に実施をしていかなきゃならないというように思うんですが、その実施についても、私は、教育の問題もありますが、あらゆる分野において実施をすることのために政府は大きな努力をしていく必要があるというように思います。そのためには予算もかなりかかるかもしれません。  そういう先のことで大変申しわけありませんが、ひとつ総理としてはぜひその辺のこともお含みおきいただきまして、全力をもって取り組んでいく決意をひとつよろしくお願い申し上げます。
  58. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘の点はある種の常識論かと思います。ただ、こうした問題については憲法の思想及び良心の自由との関係等も考えられますので、こうした点について慎重に検討し、法制化の段階で議員各位のお考え等も十分承りながら対処いたしてまいりたい、このように考えております。
  59. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 それでは、時間がございませんので国旗国歌の問題を離れまして、佐世保の基地問題について若干の質問をさせていただきます。  せんだっての予算委員会でもいろいろ御質疑がありましたが、今沖縄の那覇軍港の移転が方針として浦添市に決まっております。具体的な動きというものはまだ十分には見られませんが、ただ浦添の軍港の場合には、軍と民が共同して使用する方針であるというように聞いております。  ところが、それも一つの経験例として、佐世保の軍港はまさに米軍と自衛隊と民間企業が併存をしておりまして、これが大変に厳しい状況になっておりまして、いろんな場面、特に米軍の艦船が入港するたびに地元で大きな問題になってきております。これは、ある意味では沖縄の問題に大きな教訓になるんじゃないだろうかというように思うわけであります。  特に、佐世保の港湾というのは、入り口は狭いんですが中は非常に広い、軍港としてはすばらしい軍港であります。また、港としても非常にすばらしい港でありますが、これらの米軍、自衛隊、地元企業が混在しているために、環境問題についてもいろんな問題が発生をしております。例えばPCB問題もあります。  そういう問題について環境庁として現状をどう把握され、これに対する解決策があるのかどうか、これについて環境庁長官にお伺いをいたしたいと存じます。
  60. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生の地元であります佐世保港にまつわるいろんな問題があることを私もよくよく承知をいたしております。  特に米軍の施設等から排出される問題、そしてまた地元の佐世保重工から生じる問題等々が時にはいがみ合っておる状況にあるわけでありますけれども、このPCBの問題もその一つじゃないだろうか、こう思っておるところであります。ここの底質土のPCB汚染の問題についても前々から私も承知をいたしております。  防衛施設庁は、平成十年の四月から七月にかけてこのPCB汚染がされているか否かという事実関係の原因究明の調査を実施いたしたところでありまして、汚染の原因は造船会社のドックで行われた民間の船舶の塗装であると推察されるという結論を出したと聞いております。そして、佐世保市は防衛施設庁に対して、この調査結果の詳細について照会していると承知をいたしております。  環境庁としては、この防衛施設庁や佐世保市等関係各機関の対応を注視しながら、必要に応じて技術的助言を行うなど、環境に係る技術的知見とノウハウを生かして適切に処理をしてまいりたいと思っておるところであります。  いろいろと問題が多いと思いますけれども、御指導のほどよろしくお願いいたす次第であります。
  61. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 防衛施設庁の長官をお呼びしていたと思いますが、環境問題として大変に深刻な問題は、人口が密集している佐世保市内のど真ん中に弾薬庫がある、それも大型の米軍の弾薬庫がある、この問題であります。前畑弾薬庫でありますが、これの移転促進について前回私が予算委員会で御質問したところ、野呂田防衛庁長官は、八百万円の調査費をもって前向きに促進のために検討したいという御発言でありましたが、そのとおりでありますか。結論だけ、ちょっと時間がありませんので、よろしくお願いします。
  62. 大森敬治

    政府委員(大森敬治君) お答え申し上げます。  御指摘のとおりでございまして、私ども八百万の予算を調査費としてつけております。また最近、佐世保市長におかれましても市内移転を視野に入れまして、国と協力してこの弾庫の移転問題について積極的に取り組む御意向を示されております。  私どもといたしましても、このような地元の動きを踏まえまして積極的に取り組んでまいりたいと思います。また、八百万の調査費につきましては、佐世保市とも十分調整した上で執行していきたいと思っております。
  63. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 冒頭申し上げましたが、佐世保港は米軍、自衛隊、地元企業が混在して、米軍艦船入港のたびに非常に大きな問題が発生している。このたびも米軍艦船が六月に入港する、そこで地元企業が操業している四号、五号岸壁について明け渡せと、こういうようなことで地元の市民が激高して、これはそのときの二月二十八日にありました総決起大会の模様でありますが、こういうことがしょっちゅう起こっているんです。(資料を示す)  佐世保という町は、軍港については大変理解のあるところでありますが、こういう状態が続くと市民感情が悪化していくだろうと思うんです。沖縄のような状況になる可能性があるわけなんです。しかも、佐世保というのは朝鮮半島に近くて、米軍としては非常に重要な基地であろうというように思います。  したがいまして、これはその都度、確かに何とかこう薬を張りかえるようなことで防衛施設庁はやっておるようでございますが、そうではなくて、やっぱり基本的に米軍と自衛隊と地元のすみ分けの基本計画をつくって、それに向かって前進していくという必要があるんじゃないかと思うんです。  せんだって、我が党の議員連盟の会合において施設庁長官は、すみ分けの基本計画の調査費を来年度十二年度予算で要求しようという前向きな発言がありましたが、そのとおりでよろしゅうございますか。
  64. 大森敬治

    政府委員(大森敬治君) 佐世保港の利用につきましては、御指摘のように、米海軍、海上自衛隊、民間企業ということで、かなりふくそうした利用になっております。  防衛施設庁といたしましても、やはり現在の経済活動、社会状況から見まして、新たな利用の形態というものを基本的に探っていかなければいけないというふうに認識しているところでございます。  また、御指摘のように、立神岸壁四号、五号岸壁につきましては、米軍が寄港するごとにやりくりをしてしのいでいる状況でございます。このような状況からいたしまして、御指摘のように、佐世保港全体を見ましたいわゆるすみ分けと申しますか、米海軍、海上自衛隊、地元企業との利用の方法につきまして考えていかなければいけないというふうに思っております。  取り急ぎ緊急の課題は四号、五号岸壁の利用でございまして、これについて考えていかなきゃいけないわけでございますけれども、この際はやはり全体の利用のあり方ということを視野に入れまして考えてまいりたい。  いずれにいたしましても、港湾管理者であります佐世保市長を初め、関係の御意見もいろいろ聞きながら具体的な方向につきまして検討してまいりたい。また、必要な場合には、十二年度におきまして基本的な調査ができるような経費を計上していきたいというふうに考えております。
  65. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 基本的なすみ分け計画についての調査費を要求していこう、こういう御答弁であります。  いずれにしても、この問題は地元の問題ではなくて、まさに国が国防としての関与する部分の問題であるわけです。これに対して、申しわけないけれども、防衛庁としてはその努力が若干今まで足りなかったんじゃないかという気がいたします。このまま放置したら大変なことになるので、今、防衛施設庁長官がお話しになりましたように、これから具体的にすみ分けの基本計画について前進をしていく、またその調査を行う、このことを確認いたしまして、我々地元としても十分これには協力をしてまいります。まさに、これは我が国の防衛の根幹をなす基地の問題でありますから、大きな情熱を持って前進をしていっていただきたいと存じます。  最後に、総理に、この佐世保の基地の問題について御理解のあるところがございましたら決意をいただきたいと存じますが、いかがでございましょうか。
  66. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本の安全のために米軍の協力を求めておるわけでございますが、そのために我が国の施設を提供するということがございまして、そのために地元との間に十分な協力、理解がなければ結果的にはこの日米の同盟関係というものにまで響くわけでございますので、地域の中でこうした問題について適切に対応しなければなりませんし、また施設庁といたしましても、地元住民の声も十分お聞きをしながら一つ一つ解決をしていくことが重要ではないか。やっぱり市民の協力というものが根底にあって初めて十分なる我が国としての提供義務が講ぜられるものだと思っておりますので、十分配慮いたしていくように努力いたしてまいりたいと思います。
  67. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 総理のまことに理解ある御答弁をいただきまして、まことにありがとうございました。  これで終わります。
  68. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で矢野哲朗君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  69. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、広中和歌子君の質疑を行います。広中和歌子君。
  70. 広中和歌子

    広中和歌子君 一番最初にコンピューター二〇〇〇年問題をお伺いしようと思ったんですが、官房長官がいらっしゃいませんので、それは後でさせていただきます。  私は、民主党・新緑風会の広中和歌子でございます。三月一日の総括質問に引き続きまして、その残りの質問をさせていただきたいと思います。  前回は、金融問題を含む日本の経済危機に関しての認識、共通の認識については一致しているわけでございます。しかし、世界第二の経済大国である日本、しかもそのGDPはアジア全体の二倍に達する、金融資産も千二百兆に上っている、海外にも一兆ドル前後の資産がある、国内には技術も人もある、それなのに国も国民も自信喪失している、おかしいではないかと。  方向性を見失っているわけではありません。例えば、イギリスの例であるとかヨーロッパの例であるとかアメリカの例などからもわかりますように、日本がしなければならないことはいろいろわかっているわけです。  日本が構造改革に直面していることはだれでも認めるところでございまして、長いことといってもここ十年ぐらいでございますけれども、野党も改革を言い続けた、私が属しておりました新進党におきましても、たゆまざる改革ということを言い続けてきたわけでございます。そしてまた、自民党におかれましても、橋本内閣の六大改革、それから小渕内閣の経済戦略会議というふうにメニューは立派にでき上がっております。しかし、どう料理していいか、ただただ材料を眺めているのが現状じゃないかというような気がしてなりません。改革を実行しなければと思いつつ、しかし今までのやり方を変えるにはいろいろ痛みも伴う、変えられないし変えたくないということだろうと思います。  私は、今多くの失業問題そして失業不安があるわけでございますけれども、従来の産業を守るだけではなくて新しい産業を起こす必要があるのではないか。それは七十七万人といったような政府主導の雇用創出計画ではなくて、何百万人もの規模で新しい雇用を創出していかなければならないんじゃないかと思っております。雇用は産業を発展させることで自然にふえてくる。労働移動も自分の自由意思で生涯設計の一部としてできるようになる。この企業を体験した後はその技術を生かして別のところに就職するというのが自由意思でできる、そのような状況をつくったときに雇用不安というのは真の意味でなくなるのではないかと思います。  ここまでのところで、大変恐縮でございますけれども総理は私のこの意見についてどのようなお考えをお持ちなのか、共有していただけるのかそうじゃないのか、お伺いできればと思います。
  71. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大変大きな問題を提起されておりますが、基本的には私はそうした考え方で、産業もある意味では新陳代謝していかなければならないことでございまして、そのためには、従来の産業がすべて生き残りができる状況ではないし、またある意味で新しい業を起こす企業というものがどんどん出てこなければならないことは事実だろうと思います。  そうした意味で考えますが、ただ、いわゆる米国流と申しますか、非常にドラスチックに企業が例えば再生するためには思い切ったリストラをやるというようなことで、早期に企業が回復をするというような形で、すべて日本ではこれが行い得るかどうかといういろんな問題があるんだと思います。できる限り日本的な優しさといいますか、心配りをしながらこの産業再生をさせていかなきゃならない。と同時に、一方で、ある意味で従来のような形で年功序列型、そして常に多くの方々を企業内に押しとどめておくようなことにつきましても、かなりメスを入れていかなければならない。  そういう意味で、日本型の経営の中で新しい産業をどう再生していくかというところが苦心の要るところだろうと思いますが、基本的には委員御指摘の点については十分理解いたしているつもりでございます。
  72. 広中和歌子

    広中和歌子君 新しい産業を起こすためには何をするかということで、大変恐縮でございますが、もう一度見ていただきますが、医職住ということを申し上げました。医は、健康、安心、安全。職は、雇用の安定と創出、そして生涯にわたる生きがいある仕事でございます。そして住は、緑、憩い、コミュニティー、つまり広い意味の住環境でございます。  この前の委員会でそのことを申し上げまして経済企画庁長官に御感想をお伺いいたしましたところ、医職住という中身、つまり医職住というのは人間にとって一番大切なものであるけれども、その中身が時代とともにだんだん変わってくるのだということをおっしゃったことが大変感銘深かったわけですけれども、この医職住の充実を通じていかに日本の経済を活性化させていくかということでございます。  従来型の発想とか役割分担ではだめだろうと思います。省庁の縦割りを払って、規制を見直して、規制緩和というんじゃないんです、規制を見直す、強めるところは強める、要らないところはやめてしまう。地方分権で地域の声を掘り起こし、しかも取り上げ、参入規制も自由化していく、市民参加を促していく、情報も公開することによって消費者の選択肢をふやし、選択に任せる、そういうことでございます。こうしちゃいけない、ああしちゃいけないというんじゃなくて、消費者が選べるような状況をつくる。それからまた、国の公共事業で予算がないんだったらPFI、つまり民間資本を社会資本に投入されやすいような環境をつくる。  そこで、厚生大臣にお伺いいたします。  例えば、高齢者の看護のことでございますけれども、多くの人が今高齢化に対して不安を抱いている。月二千五百円の介護保険料を払っても果たして欲しい看護が受けられるかという問題でございます。  新ゴールドプランによって、この前お伺いいたしましたけれども、ホームヘルパー十七万人ということでございますけれども、私が聞いたところによりますと実需はもっともっと大きいと。九十万人とか百万人とか、少なくともそういったマンパワーがあれば安心だろうと思います。  今まで人材を集めるためにどのような努力をしていらっしゃるのか。そして、ただ集めればいいというものじゃございませんから、やはりトレーニングをしなきゃならないことだと思いますけれども、そういうプログラムについてどういうものを持っていらっしゃるのか。  それから、グループホームも含めて画一的でない多様な対応が必要だろうと思います。つまり、今までのやっていらっしゃったやり方ですと非常に画一的でお金がかかる。しかし、もっと多様な取り組みがあるんではないか、そのような感じがいたしますけれども、どうかその点についてお伺いしたいと思います。  よろしくお願いします。
  73. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これからの社会の中で、いろいろサービス、医職住でございますが、私の担当は医でありますが、広い意味で福祉であります。これは少子高齢化が進んでまいりますとその需要は限りなく増大していく可能性がございます。  私どもとしては、今、医の問題は医療保険制度、それから医療保険制度でもいろいろの観点からの検討が必要でございますが、それから介護保険の創設あるいは老健、老人医療の問題等々、数々の課題を抱えております。  今御指摘のように、プログラムとしては、例えば介護だけで申しますと、新ゴールドプランで今やっておる数は委員が御指摘のとおりでございまして、ヘルパーもおおむね十八万人ということで、今のスタート時点では大体そういう予想でございますが、これが市町村等の介護事業計画がこれからきちっとして上がってまいりますれば、あるいは潜在的な需要が増大してくる可能性もありますが、おおむねヘルパーは当初これで充足できるのではないかという観測を持っております。  それから、特別養護老人ホームにつきましては三十万人分ということで、ゴールドプラン以上に予算措置をしておりますけれども、これは都会と田舎で随分違うと思うんです。都市型の場合には、やはり都市部分ではかなり特老の需要が強く、不足する可能性もあるかもしれません。そういったことはいろいろこれからの地方公共団体から上げてこられます介護サービスの利用規模の顕在化に注目していきたいなと思っております。  それから、人材の育成でありますが、私どもも、もうおっしゃるとおりでありまして、介護あって人材なしでは困りますから、やはり介護を担う人材の育成というのは非常に重要でございまして、この点は委員のおっしゃるトレーニングセンターをつくって人材確保に努めろというような御趣旨はごもっともでございまして、現在何もやっていないわけではなくて、かなり力を入れているということも事実でございます。  例えば都道府県の介護実習・普及センターというのがございますが、これは五十四カ所で県に設置しておりますけれども、家族介護者や専門員の介護知識、技術の普及事業に徹底を期するというようなことをやっておりますし、市町村におきましてもデイサービスの一環として家族の介護者教室なども開催しているということでございます。  なお、この人材の質の問題については、非常に介護のサービスと影響いたしますから、今後とも重視してまいりたいと思います。  それから、幾つか指摘されている点で、規制の撤廃等でございますが、基本的には今回の介護サービスは官主導型の押しつけ介護ではなく、保険システムで自由に事業者が参入できるようにしようという発想に基づいておるのは委員の御指摘のとおりでございます。ただ、全く自由で保険制度が成り立つかというと、そうではございませんで、施設サービスあるいは在宅サービスにつきましても、一定の人員とか設備とか運営の基準を満たす施設でなければならないことは当然でございます。基準を決めます。  そして、都道府県知事が指定したものからサービスを受ける場合に、この質を確保するためにコントロールも必要かと存じますが、原則的にはボランティア活動その他の底辺の活動が非常に重要でございますので、がんじがらめに保険制度を形式的に運用するのではなくて、地域の方々の温かい気持ちで全部が支え合うというような方向でこれをシステム化していかなければならないというように思っておる次第でございます。  なお、雇用の問題についても言及されましたが、過般、総理大臣が本部長をなさっております雇用対策本部におきまして具体的な数値を七十七万と決めましたが、私どもの厚生関係、広い意味の医の関係で十万人規模を十一年度だけで増加できるということをはっきり明記させていただきました。介護保険が十二年の四月からスタートいたしますれば、それほどの増加が続くということも考えられませんが、なお増加傾向にあるということも十分予想されますので、人材の確保を図ってまいりたい。  ただし、保険システムでございますから、無制限に量をふやすということは保険料にすぐはね返るという一方の問題もございますので、質、量ともに充実したもので、その介護のサービスにふさわしい陣容を整えていくという視点を忘れてはならない、こう思っております。
  74. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も一人の女性として、また親の介護を通じましていろいろな老人福祉施設などの体験をしているものでございますけれども、何か地方自治体の指定業者に限られた現在の福祉サービス産業、それをどんどん幅を広げていっていただきたい。介護の範囲内での福祉を望む方もあるでしょうし、それを超えるものを望んでいる方もいらっしゃる。  それから、資格制度でございますけれども、その資格は余り厳しいものじゃなくても消費者が、つまり消費者というのは受け手ですね、介護を受ける方が決める。そこのところがもっと情報公開されればさまざまな多様性が出てくるのではないかというふうに思うわけでございます。  例えば、いろいろ福祉施設などを訪ねますと、建物だけはやたら立派で、その基準に基づいて補助金が出ているんじゃないかと思います。いつかはその補助金をめぐって汚職みたいなものもあったというふうに伺っておりますけれども、レベルがそのような基準に達しなくても、本当に住みよい十分なサービスを提供していらっしゃる福祉施設というのも、しかも民間であるわけでございまして、そういう人たちが自由にできるような方向を、そして情報公開だけは、つまり彼らが何をやっているかという中身の公表だけは大切に考える、そのようなことをぜひやっていただきたいと思います。  例えばグループホームなんということ、私はカリフォルニアで大分現状を見てまいりましたけれども、あれは普通の自宅を開放しているんです。日本でも例えば古い農家であるとか、子供たちが全部出払った大きなおうちというのも残っております。それをちょっとした改造で結構いいグループホームなどもできるといったようなことがあります。ですから、そのフレキシビリティーというものを十分に、だから中央でお決めになるんではなくて、地元のニーズに応じて多様な対応ができるようなことを許していただきたい。  フランスの場合、私はあるところに行ったんですけれども、昔どこの国でも紡績工場というのがありましたね。あれは全寮制みたいなことで、フランスでも紡績工場に寮があったみたいですけれども、それが老人ホームに変わっておりました。一人一部屋です。結構広いお部屋で、シャワーとトイレがついているというようなことで十二畳か十五畳くらいあったと思います。  この前のだれかの御質問で、日本の福祉では一人一部屋といったようなことはとても対応できないよとおっしゃったけれども、なぜそういうふうに決めてかかられるのか私はわかりません。もっと、例えば実存するところの社員寮であるとか学校であるとか、それから公団住宅などでもいろいろ空き家が出ております。そういうようなところを利用することによって、それをリモデルすることによって、つまり厚生省が建設省の管轄分野にお入りになるということになると思いますけれども、今あるものを有効に利用するという方向で各省庁が協力なさっていただけないか。学校もそうでございます。特に都心などでは空き教室というのがいっぱいあるわけでございまして、そこに幼稚園と老人施設を一緒にするとか。  それから、これは厚生大臣にお願いしても多分管轄が違うと言われますけれども、団地内で移動することができないんです。例えば、四階ぐらいに住んでいて階段がかなわないから一階に移りたいというときに、一たん外へ出て、そしてまた申し込まなければ入れないというようなことです。それから、例えば団地内に店をつくる、薬屋をつくる、ナースステーションをつくる、あるいは小さなコンビニをつくるというようなことも、今のいろいろな規制の中ではそれは可能ではないわけです。  こういうようなことを一々点検なさって、ともかく場所は探せばあるわけなんです。土地が高いとか何とかいっても、いろいろな工夫はあるんです。それを民間の、特に女性の力を利用していただいていろいろ知恵を集めていただきたい。それを心からお願いして、どうぞ御答弁お願いいたします。
  75. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員から非常に広範な問題指摘でございます。  まず、資格者の問題は、一定の資格を持つということは水準を定めるために必要であろうと思いますが、それが競合し合うことは当然でございます。したがって、消費者がある程度求める可能性も十分あると思います。  それから、情報公開は私も必要だと思います。今準備中でございますけれども、介護認定の実際でありますとか、あるいはブラックボックスと言われるコンピューターシステムによる判定等も公開した方がいいと思っています。そして市民、利用者の皆さん方の批判と、公平な措置がより進むことを期待しております。  それから、グループホームは現に私どもも奨励しておりまして、身体障害者の方々とか、そういう少人数で小作業場をつくるとかいろいろな場合はグループホームという形でその収容施設を認知しておりますが、介護の場合でも場合によるとそういうことも十分考えていかなけりゃならぬ。  それから、多様な施設の利用でございますが、これは委員のおっしゃるとおりでございまして、子供が少なくなれば空き教室が出たりしますから学校を保育所に使うとか、あるいは保育所と一緒になって介護の施設もできるかもしれません。そういう検討は十分なされますし、それから空き教室の転用は今度は簡易な方式で文部大臣の方でできるようにしていただきましたので、活用していきたい。  それから、例えば農協の空き倉庫、米の全量管理をやっていた時代につくられた倉庫等を改造すれば立派な施設になります。農業協同組合の方が中心になって介護への参入をしようということで、そういうことも積極的に私どもも働きかけをいたしております。  また、団地の問題もやはり委員のおっしゃるとおりでありまして、一階等にはそういう施設を組み込むこと、これは現行法でも可能でございますから、十分そういった都市型の高層住宅における介護施設のあり方も追求していきたい、そのように思います。  なお、最後におっしゃられた、女性が介護について力があるというのはそのとおりでございまして、女性の皆さん方のグループなりボランティアなり、そういうものの非常に今関心が介護について強いことを私どもは心強く思うと同時に、本当にそうした方々の着想なり発意を十分に生かしていきたい、こう思っております。
  76. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 残余の質疑は午後に譲ることといたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  77. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。広中和歌子君。
  78. 広中和歌子

    広中和歌子君 持続可能な開発というコンセプトが導入されてからもうかなりの年月がたつわけでございますが、一九九二年、ブラジルのリオで開かれました環境会議においては、いかに持続可能な開発を進めていくかということが大きなテーマになったわけでございます。我が国におきましても、一九九三年ですか、環境基本法ができ、その一番大きなメーンのところに持続可能な開発ということが言われているわけでございます。  そして、さまざまな取り組みが始まりましたけれども、ごみゼロの社会というんでしょうか、ごみ問題というのはなかなか難しくて、さまざまな地域で問題を起こしております。不法投棄であるとか、それから自分のところにはごみ処理場をつくってほしくないとか、いろいろなことがあるわけでございます。  そのことで、私はけさからの質問の流れの中で、ごみは決して迷惑なものではない、ごみを有効利用することによってそれを資源に変える、エネルギーに変える、特に電力に変えるといった趣旨でこれから御質問をさせていただきたいと思っているわけでございます。  どちらかというと、自分のごみは自分で処理しましょうよという考え方、それは非常に強いと思います。地元の住民にとりましては、よそのごみなど絶対引き受けたくないという気持ちも非常に強いし、しかし自分のごみはよそへ行ってくれればありがたいというのはどこかにあるわけです。ごみの問題というのはどこで処理するかというのが大変でございます。昔のように水に流すといった時代はもう遠い過去のことでございます。  そういう中で、自分のごみは自分のところでという形でのごみ処理というのはこれからどういう形で変わっていくのか。どの大臣にお伺いしていいかわからないんですけれども、その点についてどう思われますでしょうか。まず、厚生大臣でしょうか。
  79. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 環境基本計画におきましても、御指摘のように、循環型社会、リサイクル社会の構築が四項目の中の筆頭項目に挙げられているのは、委員よく御承知のところでございます。  私どもとしては、ごみ処理の後追いだけではなくて、こういうリサイクル社会をつくるということは極めて重要でございまして、政府としても一貫してそういう基本的な姿勢は持ち続けてきていると思います。つまり、今まで容器リサイクル法とか家電リサイクル法等を制定いたしましたのもその趣旨だと存じます。それからなお、各市町村にリサイクル関連施設の補助等も厚生省でやっておりますが、これもそういった視点に基づくものでございます。  一方、自分のごみは自分でということのほかに、非常に消費社会が大型化してまいりますと、広域化の問題もどうしても避けられません。したがって、広域大規模廃棄物処理施設の構想というのは、ぜひこれは取り上げなければならない課題だと思います。  そして、具体的に申しますと、例えばフェニックス計画というのがございますが、これは大阪、京都、兵庫、滋賀、和歌山、奈良等の廃棄物を受け入れる最終処分場を大阪湾につくろうということでございますけれども、こういった試みは非常に喫緊な大都市問題として重要な課題だと思います。残念ながら、関東、東京を中心にしたものはまだ浮上しておりません。  それから、一般廃棄物と産業廃棄物をあわせて処理することができる。これは、今までは産業廃棄物は別だと、一般廃棄物は市町村が分別収集してそれを処理するという建前で助成形態、規制の仕方が違っておりますが、そういうものを混合してできるような方法を考えよう。  それからまた、きょうは委員から午前中も話がございましたがPFI手法というもの、これはまだ法案が通過してございませんけれども、議員立法で出されています。民間の資金を活用してそういったリサイクル社会の基礎になる施設をつくって処理を促進していくということも極めて重要かと思われます。  それから、これも午前中にちょっとお言葉があったように思いますが、一般廃棄物を固形燃料化する、いわゆるRDF化という問題がございます。これは今援助をやって八カ所で既に実働を開始しておりますが、こうしたことによって一般廃棄物の体積量とかそういうものを減少させることができますし、コンパクトで保存もきくし、それからそれを再利用してエネルギーとしてできますから、広域化の処理としては非常に有効な手法だと思います。  さらに、その固形燃料化を利用した発電施設、これは現在はございません、残念ながら。しかし、今、三重県等で計画もございますので、私どもとしてはこうした未来社会の処理の仕方、これも推進しなければならぬというようなことどもを考えておる現状でございます。
  80. 広中和歌子

    広中和歌子君 厚生省が非常に前向きに御検討をなさっていただいているということを大変評価申し上げるわけでございますが、通産省は物をつくるということに、言ってみれば産業の動脈を一生懸命やっていらした、そしてすばらしいリーダーシップを発揮されてきた省でございますけれども、これからは静脈産業にも関心を持っていただきたい。静脈があって一回りするわけでございますので、そうした視点でごみ問題についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、リサイクルについてどのように思っていらっしゃるか、つまり環境の視点で産業構造というものを考えていただけているのかどうかということについてお伺いいたします。
  81. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 今の厚生大臣の御答弁に尽きていると思うわけでございますけれども、ごみの問題はまず発生量を少なくするということが大事だろうと思っております。それから、発生したごみを発電に回すのか、あるいは例えばアルミのようにまたアルミとして使うのか、あるいはペットボトルのように繊維に転換していくのか、いろんな方法がございます。  私どもとしては、RDF発電事業あるいはガス化溶融炉など新たなリサイクル関連技術を活用したさまざまな廃棄物の処理、リサイクルの取り組み、こういうことが大事だと考えておりますし、現に取り組んでおります。  こうしたリサイクル産業を初めとする、環境関連産業と我々は呼んでおりますが、これは環境の保全と経済の健全な発展の両立を実現する循環型経済システムの構築の担い手として非常に大きな発展をするだろうと私どもは考えております。平成十一年の一月二十九日に閣議決定されました産業再生計画及び経済構造の変革と創造のための行動計画においても、環境関連産業を今後成長が期待される十五の産業分野の一つとして位置づけております。  通産省といたしましても、例えば先駆的なリサイクル技術などの活用によりまして、地域の事業者及び地方自治体が連携して行う廃棄物の適正処理及びリサイクルに向けた取り組みに対して、厚生省と連携しながら、エコタウン事業としてソフト、ハードの両面からの支援を行っております。  また、採算性の面でも、事業者の取り組みが困難な基礎的、革新的技術開発に取り組むほか、企業等からの提案公募による研究開発テーマに対して補助を行うなど、環境関連技術の開発普及を図ってまいりたいと考えております。  通産省といたしましても、産業再生計画などを踏まえ、関係省庁と連携しながら環境関連産業の発展のため基盤整備を総合的に図っていく、そういう決意でやっております。
  82. 広中和歌子

    広中和歌子君 皆様方に本当にいいことを言っていただいております。そして、環境庁であるとか通産省であるとか、もちろん厚生省でもいろいろごみ問題について御提案をなさっている。しかし、午前中に申し上げましたように、やはり日本のこの分野における取り組みというのは明らかにおくれているわけです。  そして、人材もあるし技術もある、日本はすばらしいごみ発電所を例えばシンガポールに輸出しております。そこで私はすばらしいプラントを見ました。発電所の隣にあって、あたかも原子力発電所みたいに非常にクリーンで、ごみが自動的に送り込まれてくるとそれで発電をし、それを隣の発電所に渡しているといったような取り組みがなされているわけです。しかも、悔しいことに、それが日本の技術でなされているということなんです。我が国にその発電所がないというのはどういうことなんだろう。  この前、ウエステックという名前が書いてあったんですけれども、つまり産業廃棄物の、環境産業のすばらしい展覧会が千葉の幕張で開かれて、私は行ってまいりましたけれども、やはりすばらしい技術が日本にあるんですね。それをなぜ利用できないかということなんです。  そこで、環境庁長官に申し上げると同時にお願いもしたいんです。  例えば、ダイオキシンが危険だということは前から言われていたんですけれども、つまり小さな処理場とか学校でごみを燃やしているとか野焼きがあるとか、そういった現状に照らすと、ダイオキシンの危険性というものを情報公開することに非常にためらわれていたんじゃないかと思います。今ようやく、そうした住民からの要望もあって、ダイオキシンの予防数値というものが求められ、そしてそれが国民に示され、それと同時に対応が迫られているわけでございますけれども、もっと早目に、我が国の対応の技術、仕組み、そうしたこととは別に、これが安全数値なのだということを出していただければ、もっと早い取り組みができたんじゃないか。  日本は資金もある、技術もある、人もある。そういう中で、やはり企業にインセンティブを与えるためにもきちんとした数値をお出しいただいた方がよろしかったんじゃないかと思うわけでございますけれども、コメントをお願いいたします。
  83. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先ほど来お話がございましたように、環境産業、エコビジネスというのは今日非常に普及してまいっておると思うわけであります。先生がけさほどお尋ねのありました雇用の創出でございますけれども、これは私は、サービスとか観光、いろんなところから雇用の創出はあると思いますけれども、エコビジネスからの雇用の創出ということも大きく考えていかなければならない時代が参ったと思っておるわけであります。  日本は、一九九〇年前後の大きなバブルの時代を経まして、その当時はもう本当に大量生産、大量消費、大量廃棄という公害のまさに続出する時代であったわけでありますから、公害経験をして、そして新しい産業をそれに切りかえていったのはもう日本以外にないと言っても過言でないわけでありまして、シンガポールで使われておる機材にいたしましても日本型が多いということに相なったわけであります。  ですから、やればやっていくほどこの産業というものは大きく発展すると同時に、社会的な資本の充実にも相なってくると私は思っておるわけであります。  それはさておき、ダイオキシンの問題でございますけれども、この問題につきましても環境庁も調査の協力はもう所々方々でやってきておるわけです。例えば、所沢においても過去二年間その数値を出しまして協力をしてきておるわけでありますけれども、その数値を出してまた社会的な国民的な動揺を与えたらいけないということで公表を避けておったんじゃないだろうかと思うわけであります。  今日、その数値が求められておるわけでありまして、耐容一日摂取量がどの辺にあればいいのか、これを世界的な機構でありますWHOの数値もかりながら日本型の数値を出していこうということで、今、厚生省、環境庁の専門家会議におきましてその数値をはじいておるところであります。  できるだけ早くということで、この数値を出すことによって国民に安心や安全を与えていきたい、こう思っておるわけでありまして、決して私はこの数字が出たからどうというのではなくして、その数字によって国民に安心感を与えるその体制をつくっていくことが大切だ、こう思っておるわけでございます。
  84. 広中和歌子

    広中和歌子君 通産大臣にわざわざ申し上げることもないかもしれませんけれども、アメリカでマスキー法ができたおかげで、日本がそれに対応するために燃費効率のいい車ができたわけでございまして、そうした体験があるのでございますから、現状からできる法、できる範囲の法律じゃなくて、すべき法ということに果敢に転換をしていただきたいと心からお願いする次第でございます。  それで、RDF、固形化ごみ、これを電力に使うことに関してはもう既にさまざまな企業が取り組んでいらっしゃるんじゃございませんか。
  85. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) お答えいたします。  ごみを固形燃料化して発電を行うという事業については、まだ具体的に始まっているものはございませんが、ただいま福岡県と大牟田市が地域の周辺の市町村と一緒になってそういう計画を立てております。近く実現すると思っております。  私どもも厚生省さんなんかと一緒に応援していきたいと思いますが、そのときに、できた電力はその地元で使うと同時に、余った電力は九州電力に買い取っていただくということを考えているようでございます。
  86. 広中和歌子

    広中和歌子君 まさにそこのところだと思うんですけれども、要するに売電をする。それはそういう法律が数年前に入りまして随分事情が変わっているわけですけれども、自家発電ではなくて売電をするというところまで行かなければいけないんじゃないかと思います。  それから、特定の名前をお出しになる必要はないと思いますけれども、日本の燃焼技術というのはすごいものがあるわけですね。鉄鋼産業を初め造船会社とか、かつて重厚長大の産業であったところがどんどんこちらの燃焼炉について、しかもごみ発電に関心を持って、もう技術や何かでき上がっています。いつでも使えます。そして、場所もかつての埋立地が余り十分に今有効利用されていないという土地も探せばあるのではないかと思います。  ですから、こういうような点では、厚生省と環境庁と通産省が御一緒になってそうした特定の地域を探し、そして私はこうした環境を促進するためには、やはり今まで通産省が産業貿易を促進するためにお使いになってきたさまざまな手法、例えば補助金であるとか税制上の措置であるとか課徴金であるとか、さまざまなそうした経済的手法を十分にお使いになって、新しいリサイクル社会の構築の前進をしていただきたいと思うわけでございますけれども、これもどの大臣でも結構でございますけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  87. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生の御質問は、税制や予算でどうやってそういう技術の進展を触発していくかという問題だろうと思います。  近年、国際的にも環境問題が非常に関心が高まっておりますし、事業者がいち早く環境問題に取り組むことがむしろ産業競争力の維持に資するという面もあると考えております。今後、こういう分野は成長が期待される新たな産業の創出につながると考えられます。その一方で、初期参入段階でのコスト面の障壁が高かったり、事業者のコスト増を招いたりすることもございます。  そこで、通産省では事業者の取り組みに対する各般の支援策を講じております。例えば、エネルギー消費効率の高い設備やリサイクル関係設備の導入に対する税制面、資金面での助成を行っているほか、環境関連技術の研究開発に対する助成も行っております。  また、環境関連産業がビジネスとして健全に発展していくためには、環境保全コストが市場メカニズムの中に適切に織り込まれていることが不可欠であります。この観点からは、消費者、事業者、地方自治体などの役割分担や費用分担についてのルールを定める家電リサイクル法の制定のような制度構築も有効であると考えております。  通産省としては、克服すべき課題の性質に応じまして、助成措置や規制的措置、国民の自主的取り組みの促進といった多様な政策手段を適切に組み合わせまして環境関連産業の発展基盤を整備いたしまして、循環型経済システムの構築に向けて施策を引き続き構築してまいりたいと考えております。
  88. 広中和歌子

    広中和歌子君 これは本当に技術もどんどん存在しているし、またそれに触発されて新しい技術も生まれますし、それから投資も呼び込むんです。ですから、ぜひさまざまな経済的手法を使って環境産業を盛んにしていただきたいと思うわけでございます。  今お言葉の中に、環境のためのコストというんでしょうか、そういうものも内蔵するような値段、プライスメカニズムということも大切だというふうにおっしゃいましたけれども環境と貿易について農林大臣にちょっとお伺いいたします。  私は、これはもう長いこと問題意識を持っていたんですが、日本の林業はかつては、もちろん日本の戦後を復興させるためには国内産の木材だけでは十分ではなかったということはよくわかりますから、当然輸入に頼らなければならなかったわけです。  ところが、最初のうちは少なくとも国内産は三〇%ぐらいあったんですが、それがだんだん少なくなってきた。なぜかといったら、一つには外国産の木材がもともと安いということもある上に、円高でもって輸入の値段が非常に安くなってしまった。つまり、日本の国内の林業というものは、林産物というのは国際競争力がなくなってしまったわけです。だから日本の森林が残っていいじゃないかというふうに、めでたしめでたしと言っておられない問題だろうと思うんです。つまり、日本の林業というのは、こう言っては失礼ですけれども余り元気がないわけで、そしてほっておけば木は健全に育つというものではなくて、さまざまな手入れが必要なわけでございます。  そういうような中で、私は、これも一つの経済的な手法かもしれませんけれども、輸入するときに輸入木材にある種の税をかける。そしてその税を植林に使う。日本の植林もそうでございますし、特に熱帯雨林などから輸入した場合にはそちらに植林の費用を出すといったようなこと、これが絶対に必要じゃないかと思っていたんですが、農水省の方にお伺いするといつも、あのときはウルグアイ・ラウンドですよね、ウルグアイ・ラウンドがございますからできませんと、もうその一点張りなんですよ。  それで、今度WTOができ、そしてWTOの中に、要するに環境を口実にして自由貿易を阻害するのでなければ環境の視点も配慮したWTOの方向性を示そうということが言われてもう数年になりますね。農林省としてどのようなお考えで、外務大臣はちょっときょう何か公務でお忙しいらしいのでおいでになっていただいておりませんけれども、外務省とともにWTOの場でどのような御主張をなさろうとしているのか、お伺いいたします。
  89. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘のように、我が国の林業の活性化、それからまた森林資源を守るということも、また世界の森林の保全、植林も大事でございます。現行WTO協定上はなかなか難しいものがあるわけでございますけれども、次期交渉におきましては、来年からする予定になっておりますけれども、地球的規模での環境問題等の視点も踏まえまして対応してまいりたい。  交換税という御指摘でございますけれども、関税に関して申し上げるならば、自由貿易の一層の改革の推進というのが実は次期WTO交渉一つの大きな柱でございますが、先生御指摘のように、地球環境の保全あるいは森林資源の保全といった観点からも我が国としては次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  90. 広中和歌子

    広中和歌子君 農林大臣、農業の視点からだって環境のことで御指摘になりたいんじゃないですか、それについてお答えは結構でございますけれども。  自治大臣、せっかくいらしていただいたのに一つ質問するのを忘れておりまして、失礼いたしました。  先ほどから何でもリサイクルすればいいというような言い方ばかりしておりましたけれども、同時に大事に使うということも大切でございまして、それにも経済的な手法というのが使われるんじゃないかと思います。  これはアメリカの例で恐縮なんですけれども、アメリカでは新車を買いますと利用税みたいなのがかかるんです。エクサイズタックスと言うんですけれども、一年目が一〇〇といたしますと、二年目には八〇%、三年目には六〇%、四年目には四〇%、そして五年目からゼロになるんです。つまり、長く持てば持つだけ税金が安くなるということです。そのために、アメリカでは車検をとるのにお金は余りかからないんですけれども、それでも車検をうんとかけても手入れをして使った方が安くつくといったような税制になっております。これについて日本でも導入されるお考えがあるかどうか、お伺いいたします。
  91. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 日本では自動車の保有について、都道府県税で自動車税が現在かかるようになっておるわけです。自動車税もそういう形に持っていったらどうかという御示唆かと思うんですけれども、率直に申し上げて、ある地方団体では、逆に保有が長引けば燃費効率が悪くなって排気ガスの出方がより大きくなるんではないかというので、十年を超えたところは逆に自動車税を重課しようというような発想がある。したがって、なかなか一概に言えないところがあるのかなというふうに思います。  ただ、自動車税そのものは、今ざっと九年度の決算ベースで見ますと一兆七千億の非常に大きな都道府県にとっての基幹的な税目になっております。それから、これは東京とか大阪だけじゃなくて地方に至るまで都道府県にとってはかなり安定性、普遍性を有しておる貴重な財源であるので、いろんな角度から十分検討しなければならぬと思いますが、自動車税のあり方について、今の環境との関係についていろいろ考えろということは引き続き勉強させてもらいたいと思います。
  92. 広中和歌子

    広中和歌子君 ちょっとしか使われていない自動車がごみとなって積まれているというような状況を見ますと、本当に日本は豊かなのか何だかわからないんですけれども環境にとっては大きな問題だろうと思います。  環境問題についての御質問を締めくくる前に、環境庁長官に、最近三番瀬を御視察になったと伺っております。私もつい最近見せていただいたんですけれども、それについてどのようなお考えをお持ちでしょうか。  私の印象では、ともかく千葉県だけじゃなくて神奈川も含めまして東京湾というのは九〇%既に埋め立てられております。しかし、見ますと、既に埋め立てられたところで未利用なところもあるし、またむしろ同じ公共事業に投資をするのであれば修復をするというような形でのお金の使い方もあるんではないか。先ほどごみ発電のことも申しましたけれども、千葉だけではなくて東京湾周辺でさまざまな土地利用というのができるんじゃないかと思うのでございますけれども、埋め立てそのものについてどのようなお考えをお持ちなのか、お伺いいたします。
  93. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 私も二月十五日の日に三番瀬の干潟を見せていただきました。船橋市側そしてまた市川市側から見せていただいたわけでありますけれども、率直に言って、まだ東京湾にもこんなにすばらしい干潟が残っておったのかなというのが印象でございました。それだけに、この干潟を大切にしていかなければならないという気持ちになったのは正直なところでございます。  この問題につきましては、私、先般手賀沼も視察をさせていただいたわけであります。二十四年間、最悪の状態になった湖沼だということで、何とかしなければならないということで、環境庁なりの提言をさせていただこうと思って視察をさせていただいたわけであります。そのときに知事さんにも、また議会の皆さん方にもお目にかかりまして、これからの埋立事業についての意見交換もいたしたわけであります。  ちょうど平成四年に、環境庁といたしましては、この干潟の埋め立てについての答申と申しましょうか、アセス問題についての意見を出しておるところでありまして、その意見も踏まえながら、県としてもその意に沿った努力をしておるというようなことでございました。  これからの問題もいろいろあろうと思いますけれども、知事さんを初めとして関係者の皆さん方との意思疎通を十分図りながら、やはり大切な干潟は守っていき、そしてまた、どうしても埋め立ててやらなければならない事業に対してはそれなりの理解も示していかなければならないんじゃないだろうか、こんな感じでございます。
  94. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  では最後に、西暦二〇〇〇年問題についてお伺いいたします。  この問題については、比較的日本では静かだったんですけれども、最近マスコミでようやく取り上げられるようになっているわけです。ただ、私のところに届いた緊急重大情報というのによりますと、西暦二〇〇〇年問題というのは、コンピューターの誤作動が二〇〇〇年一月以降に起こり、日付の西暦年の下二けた処理をするコンピューターが二〇〇〇年を一九〇〇年と判断するために起こる、それが二〇〇〇年問題でございます。  世界には大型、中型のコンピューターが一千万台あります。小型機は三億台あるそうでございます。その七、八割に二〇〇〇年問題がかかるということです。それで、五百億が埋め込みチップとして使われているわけですけれども、この一%から五%に問題があるんじゃないかと言われている。特に埋め込みチップの問題が大きくて、電力とかガスとか水道とか鉄道とか電話などに埋め込まれているために、もしかしたら非常な混乱が起こるのではないかというようなことで緊急重大情報ということになるんだと思います。  我が国は、この二〇〇〇年問題に対して、どのような認識を持たれ、どのような対応をしていらっしゃるのか、官房長官、お伺いいたします。
  95. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) お答えいたします。  委員が今御指摘になりました西暦二〇〇〇年問題への対応でございますが、コンピュータープログラムが今お話しのように二〇〇〇年以降の日付に対応しない場合にシステムが正常に機能しないといういわゆる二〇〇〇年問題は、その対応を誤れば国民生活や企業活動に重大な支障が生じまして、高度情報通信社会の構築に向けました信認を揺るがしかねないという重大な問題と認識をしているわけでございます。  この二〇〇〇年問題の重要性、緊急性につきましては、昨年八月、小渕内閣総理大臣が就任をされまして、初めて閣議の席で問題提起をされまして、率直に申し上げまして、認識の弱かった私どもは事の重大さに驚いたわけでございます。早速、小渕総理を本部長にいたしまして、高度情報通信社会推進本部を設置いたしますとともに、官民を含めました強力な取り組みを進めますとともに、行動計画を決定したところでございます。  特にその際、総理から予算面でも十分な配慮を行うようにという御指示がございまして、平成十年の計上予算は九十八億でありましたけれども、これに第三次補正並びに今御審議いただいております平成十一年度予算を含めまして百九十三億を急遽計上いたしました。  特に影響が非常にあると思われます中小企業への支援等に重点を置きまして、システムエンジニアの派遣を行う等の措置を講じまして三十六億円を計上させていただいて、今この行動計画に基づきまして模擬テストの実施などを行い、官民を挙げた総点検や危機管理計画の策定等を進め、逐次このフォローアップ等、そして組織的点検を行いまして、その対応に万全を期してまいりたいと思っておる次第であります。  御指摘のように、残された九カ月間でございます。重大な決意と万般の措置を講じまして遺憾なきを期してまいりたいと存じております。
  96. 広中和歌子

    広中和歌子君 総理の先見の明ということで大変感銘を受けますけれども、現金自動支払い機、CDでございますけれども、あれは問題ございませんか。つまり、何かそういう不安があるとみんながお金を引き出してたんすにしまい込むというようなこともあるかもしれませんけれども、その点についてはもう対応ができるでしょうか。
  97. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 昨年の九月に閣議決定をいたしました行動計画の中で、民間の特に重要分野、今おっしゃられたATMは金融という中に入るわけでございますが、重要分野につきましては特に入念なチェックと必要なプログラムの修正をやる、かつ模擬テストをやるということになっておりまして、その一環といたしましてATMにつきましても逐次やってきておりますが、これは四月、来月にはそれぞれの銀行におきましてATMが二〇〇〇年にきちんと対応できるかどうかということをチェックするということになっておりますので、その結果を踏まえまして、いずれ来月の半ばにはその結果も公表ができるんじゃないかというふうに思っております。
  98. 広中和歌子

    広中和歌子君 最後になりますけれども、国内はまあまあとして、特に途上国、石油産油国などで大変問題が起こるんじゃないかというようなことが言われております。  アメリカは結構対応が進んでいるらしいんですけれども、それでも貨物鉄道みたいなどちらかというとちょっとおくれている部分、それに対して、もし鉄道に混乱が起こったような場合には、穀物倉庫としてアメリカの食糧輸送をほとんど引き受けている鉄道が麻痺してしまう、それが引き金になって食糧危機が全世界的な規模で起こるんじゃないか。  もちろん、日本は食糧の海外依存度が高いわけでございますけれども、そういうようなことを含めて、原油の輸入、それから食糧問題についてどのような予測のもとに備蓄等々をやっていらっしゃるか、お伺いいたします。
  99. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 重要五分野の中の一つがエネルギー分野でございまして、石油もそういうことなのでございますが、これにつきましてはおっしゃいますとおり外国からの輸入に大きく依存しているということで、一つは、国連の場におきましても専門家が集まりましてどういう対応が必要かというような議論をしております。  ただ、日本といたしましては、先ほどの総理のイニシアチブでつくられました行動計画の中でいろいろ詳しく決めておりますが、一つそのもとに顧問会議というのも置いておりまして、そこには石油の方の業界の代表者も入っていただいておる。当然、日本としては日本の国情に応じて、そういう事態が起きないようにいろいろな手を講じていく。コンピューター二〇〇〇年問題のマイナスのプログラムを直しているだけじゃなくて、安定供給が保たれるようにするためにどうすればいいかということも含めたいわゆる危機管理計画という問題にもなってこようと思いますけれども、その辺も今まさに準備をしておるということでございます。
  100. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。
  101. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。朝日俊弘君。
  102. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 民主党・新緑風会の朝日でございます。  同僚の広中議員の質問に関連して、私は特に医療保険制度の抜本改革の問題を中心に、一部介護保険制度の施行準備と関連して幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、平成十一年度予算編成の過程で、高齢者の薬剤負担にかかわる臨時特例措置というものがとられました。これは振り返ってみますと、平成九年の健康保険法の改正のときに相当すったもんだの議論をした上で、高齢者の方にもそれから現役の方にも薬の負担をいただこうじゃないかということで法律の改正をした。そして、平成九年の九月から実施されている制度でありますが、今回は、どういうわけか、法律によって定められた薬剤にかかわる負担を高齢者の部分だけ特別に免除しよう、その部分は国が費用をお支払いしましょう、こういう制度であります。  実は、きのうの国民福祉委員会でもこの問題は大分取り上げられまして、特に、何ゆえにこういう臨時的措置が突如出てきたのかという経過についていろいろ同僚議員からの質問もあり、大臣もお答えになっていました。そのときには、いろいろ経過はあるけれども、とにかく政府として判断したんだ、こういうお答えでありました。したがって、この経緯についてはきょうはあえて問いません。  しかし、どうも腑に落ちないというか、理解できないのは、そもそも平成九年のときの健康保険法の改正という法改正で、一剤の場合は無料だけれども、二剤から三剤の場合は幾ら、それ以上の場合は幾らと、随分きめ細かく薬剤の負担を法律で決めておいて、今回はその法律には一切手をつけないで予算措置でとにかく高齢者が払う部分だけかわりに払いましょうと、こういう制度、仕組みを取り入れることについてどうも腑に落ちないんです。  私は、厳密に言えばこれは法律に反するのではないか、仮に法律に反するとまで言わないまでも異例の措置ではないのか、こんなことがちょいちょい行われたのでは困るじゃないかという思いを持っておりまして、しかも、少なくともこういう措置は、平成九年の健康保険法改正の趣旨そのものから考えると、やはりその趣旨には反していることをやっているのではないかという思いがいまだに消えません。改めて厚生大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  103. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 一昨年の九月から薬剤費の定額負担をお願いしたのはもう御指摘のとおりでございます。これは当時の与党協におきます医療基本問題に関する方向性を踏まえたものだと私どもは理解しておりますが、今回の措置は、にもかかわらずその方向性をなぜ維持しなかったのかという点に御疑問があろうかとは思いますが、私ども予算編成過程におきまして、これは経過の説明はもう省略してよろしいということですが、いろいろ医療関係団体その他の調整あるいは党と政府との調整その他の中で、こういった経済情勢の中で一番医療費の負担が大きい老人医療費について、七十歳以上の人たちについて七月から定額負担を国が肩がわりしてこれを支出しよう、しかも高齢者ばかりではございませんで六十五歳以上の障害者についても同様でございますが、そうした措置を講じました。これはあくまでも応急的な措置でございまして、抜本改革に至る暫定的な措置であるというように私どもは理解して措置をさせていただきました。  それではなぜそれを維持しなかったのかという点でございますが、私どもは、平成十二年度から医療保険制度について抜本改革を今やろうとして取り組んでおります。率直に申しますと、その中で薬剤費の問題も当然取り上げられることになると存じますし、そしてまた、負担の問題もああいう定額方式でいいのか定率方式がいいのかというような議論まで発展させて議論を今しつつございますので、あくまで暫定的、応急的な措置として私ども決断をしたわけでございまして、この点は、そういった事情を御理解してくれと言っても理解できないと言われるかもしれませんが、そういうことでございます。  なお、これの違法性については、老人保健法の規定によって一部負担を支払うことが義務づけられておりますが、それを本人からどうしてもということでもございませんで、政策的に国がこれに対応することは何ら違法性がないということは私ども法制的な検討も十分行った上で措置しております。  そんなことでありますので、ひとつこの点は御理解をいただきたいなということでございます。
  104. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 かなり苦しい答弁で、率直に私自身はこの段階では理解をするわけにはいきません。  ただ、この問題だけやっていても始まりませんから先へ進みたいと思いますが、その前に大蔵大臣どうお考えですか。私は、現時点でもやっぱりおかしいと思うんです。法律違反だということをごたごた言うつもりは余りないんですけれども、法律で決めて、それでちゃんと御負担いただく。その法律はそのまま生きている。しかし、予算措置で高齢者の部分だけは免除する。これでどんどんやっていったら、一体もとにつくった健康保険法そのものの改正はどうだったんだということになりませんか。ちょっと大蔵大臣としてのお考えをお聞かせいただけませんか。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどまでの朝日委員のお話は確かに私も聞いたことのある話でございます。ですから、厚生大臣としては、将来大きな仕事をされなきゃなりませんから、よほど今のこういう経済情勢とか政治情勢とかお考えになって、ここのところはひとつやっておいた方がいいのかなとお考えになられた経緯をよく拝見しておりましたから、私ももうそれ以上申し上げずにわかりましたと。申し上げましたのは、しかし、これは将来大きな仕事をやっていただかなきゃなりませんのでと。そういうことで、おっしゃいますようにかなり例外的な措置であろうというふうに私も思います。
  106. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 少なくとも今、大臣お答えのように例外的な措置であって、こんなことがあれもこれもあったのでは一体法律改正を何でやるのかということになりかねませんから、そこのところだけはひとつ確認をしておきたいと思います。  その上で、私は、こういう措置をとったことによってどういう影響が出てくるのかということを心配しているわけです。少し事実経過というか、資料的に御説明をいただきたいと思うんですが、できるだけ簡潔にお願いします。  平成九年度の健康保険法の改正以降今日までの医療費全体の動向の特徴、とりわけその中で老人医療費はどんなふうに動いてきたのかということ。それから、その動き、流れの中で今回のような予算措置をとったら老人医療費の動向にどのような影響をどの程度与えると予想しているのか、ちょっと御説明いただけませんか。
  107. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 平成九年の医療保険制度の改正以降でございますけれども、医療費全体の伸び率は制度改正以降やや落ちたわけでございますけれども、制度改正から一年を経過いたしました十年の九月、十月、十一月の三カ月の実績で見る限りにおきましては医療費は改正前と同程度の水準になっているわけでございます。  老人医療費の動向もほぼ同様でございますが、数字で若干申し上げますと、九年の改正前で八年九月から九年八月までの、医療費の改定を除きまして実質で申し上げますと七%強、それから改正後の一年間でございますが五%、それから一年を経過した後、九、十、十一でございますが八・三%、こういうことでございます。  また、今回の老人の薬剤費負担軽減措置が平成十一年度の老人医療費に与える影響でございますが、一・四%ということで見込んでおります。
  108. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 つまり平成九年の健康保険法の改正、あのときに、とにかく健康保険財政がピンチで、いろんな制度改革をしなければいけないけれども、とりあえずは自己負担をふやしていただくことで何とかそのピンチを乗り切ろうじゃないかと。そのことによって、健康保険の自己負担分とそれにプラスして薬剤にかかわる自己負担を導入することによって医療費に一定程度の受診抑制効果を期待したと思うんです。ところが、これまでそういうやり方をやって効果が多少出ても一年たつと大体もとに戻るというのはもう経験則でわかっているわけで、案の定そういう状況になってきている。  だから、あれからぐっと引き続き医療費の伸びが抑えられ、とりわけ老人医療費の伸びが抑えられているような状況であれば、今回のような措置をとることもまだ考えられるんですけれども、そうじゃないわけです。思ったほどの効果がとりわけ老人医療の部分には出ていない。一年たったら案の定またぐっと伸びてきている。そこへこの措置をとる。当然老人医療費の増嵩にかなりインパクト、プッシュする効果を持たざるを得ないと思うんです。こんなことがわかっているのになぜやるのか、私はどうしても理解できないわけです。先ほど厚生大臣は、いや、今回の措置は抜本的な改革までの応急措置だ、大蔵大臣は後に残った仕事が大きいよ、こうおっしゃっている。  さて、二つ確かめたいんです。何をもって抜本改革とおっしゃっているのか。私たちもこれ、去年、おととし、随分抜本改革という言葉が流行しちゃって、何か抜本改革と言えば全部解決するかのごとき錯覚に陥った節があるんですが、厚生大臣がおっしゃっている医療保険制度の抜本改革というのは一体何を指しているのか、まずそれをはっきりさせてほしい。それから、それは必ずおくれることなく取り組まれるんですね。仮に抜本改革がおくれるとなったら、この措置は抜本改革までと書いてあるわけだから、ずるずるとこの措置は続けられることになるんですかということを二つお尋ねします。
  109. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 医療保険制度の抜本改革というのは、もう委員が御指摘のように、基本的な方向は一昨年の与党協の合意文書からスタートいたしております。  私どもは、それを受けて、総合的な見地から医療保険全体について見直そうということでございまして、具体的には診療報酬のあり方がまず第一です。診療報酬については、出来高払いからあるいは定額払いの方法も導入すべき余地があるかどうかという点でございます。  それから二番目は、薬価制度という厄介な話なんですが、これは一つ重要な視点なんです。なぜ厄介かと申しますと、これは、薬価制度につきましては既に審議会から答申が出ておりますけれども、いろいろの意見がございまして、特に私どもは、いわゆる日本型参照価格制度といいますが、薬剤定価・給付基準額制というのを主流に考えて、ずっと審議会で御審議をいただいてまいりました。しかし、それはかえって抑制になって、しかもまたいろいろの点でふぐあいだという意見が強力に展開されております。この調整をどうするかというのがただいまの大きな課題でございます。  それから第三番目は、これは老人保健制度に関するものでございますが、今、国保と並び市町村において老人保健の経理その他管理をやっていただいておりますが、これは市町村だけに任せるわけにまいりません。したがって、健保組合その他から応分の、高齢者がある程度の平均値がいると仮定して、その拠出金を出していただいておりますけれども、今のこういう経済状況のもとで、健保組合といえども決して楽ではないわけでして、その拠出についても非常に赤字組合が発生したりして問題が多いわけでございます。  したがって、この老人医療制度をどういう形でやるか。二つの方法がありまして、一つは老人保健制度というグループを全くシステムを別にして考えるか、あるいは筒抜け方式といいまして、国民健康保険の高齢者それから健保組合等はそれなりにオールジャパンで全部統合しまして先輩の面倒を見る制度に二本立てにするということで、この二つの方法のどちらかを選択する検討を今精力的にやっております。いずれこれの御判断を仰ぎ、私どもは判断しなくちゃいけない問題でございます。  なお、最後の四番目の問題は、医療提供体制の問題がございます。これは病床群その他をどう医療計画の中で配置をするかどうかというような問題を含め、またこれは医療提供機関のインフォームド・コンセントとかカルテの開示とか情報開示に沿った問題、あるいは医者の研修制度を制度として定立しようかどうかとかいうようないろいろな問題を含んでおります。  こうした主要な四項目について私どもは総合的に検討していく。そのねらいは何かといいますと、これはやはり基本的には経済成長と医療費の増嵩、少子高齢化を迎えてそういうことがございますから、医療の基本はやっぱりだれでも効率のいい医療の提供を受けるということが絶対これは必要条件でございますが、そのもとにおいて合理性、効率性もなければならない、むだを排していかなきゃいかぬという点もこれはもう十分配慮すべき点でございますから、そういった方向で十二年度の実施を目標としまして鋭意検討しているというのが現在の状況でございます。  それから、今の七百円の、七月からの薬剤費の問題ですね。これはやはり抜本改革まで基本的には継続すると私ども見ておりまして、これはそういう意味で応急的、暫定的なものであるというように私どもは考えておる次第でございます。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  110. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 ちょっと後段の質問に答え切っていないと思うんです。もし仮にこの抜本改革がずるずるとおくれるようなことになれば、この措置もずるずると続くんですかということ。
  111. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私どもといたしましては、医療改革、医療保険制度の改革をぜひやり遂げたいと思っておりますから、そういうことまでは想定いたしませんが、形としては、それがもしも不可能な状況にある、みんなが四つ不可能になることはございません。何が一番関係するかというと、薬価制度の問題が直接に影響するかとも存じますけれども、私どもとしてはこれは何らかの解決はどうしても得たいと思っておりますので、そういう事態は想定はいたしていないということでございます。
  112. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 想定はいたしていないんだけれども、もしかするとそういうことにかなりの可能性でなりかねないというふうに私は危惧をしているものですから、あえてお尋ねしているわけです。  確認をしますが、そうすると、何をもって抜本改革と言うかというと、四つほど大きな柱があるけれども、それが全部というふうなことでは必ずしもなくて、最も関連の深い新しい薬価制度の仕組みをどうするかということがこの問題と直接的に関連する、こういうふうに理解してよろしいか。
  113. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 四つが総合的にこの問題と関係はいたしておりますが、ただ私は薬価の関係だけ指摘を申し上げましたが、実は老人保健制度をどうするかということと非常に関係があります。  それから、定額負担でいいのかどうかという御議論をいただかなくてはなりません。私どもは、やはり定率負担の導入ということが必要ではないのかなと私個人としては思っておりますが、そういったことを含めて、老人医療制度あるいは薬価の問題、四つのうちでは特にこの二つが大きく影響するのではないか、こう思っております。
  114. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 後で指摘をしようと思ったんですが、私は、やはり少なくとも抜本改革と言われている中の新しい薬価制度の仕組みの問題と、それから現在の老人保健制度を見直してどういう高齢者のための医療保険制度をつくるかということと、この二つが大きくこの問題にはかかわるだろうと思うんです。  そこで、これは特に両方とも難しい状況に来ているわけです。あるいは作業が物すごくおくれてきているわけです。平成十一年度を越えて、つまり十二年度四月一日からきちっと制度改正ができないような状況が十分考えられると私は思っているんですが、大臣は想定していないとおっしゃいましたけれども、仮にそれができなかったら、平成十二年度もこれは続きますか。もう一遍聞きます。
  115. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私は、平成十二年度からと、こういうふうに申し上げていたつもりでございますが、診療報酬、薬価、老人保健の制度ビルトインの問題、それから提供体制、これはそれぞれニュアンスの相違があります。つまり、ニュアンスというのは、今の問題意識と解決のための手順、それからテンポ、そういう問題がございますから、一斉に四月一日からスタートできるかどうかは必ずしも、これはやってみないとわかりませんが、私はそうありたいと思っております。  よしんば、今申しました一番難しい薬価の問題とか老人保健制度の問題が、例えばこれは仮の話ですが、十二年四月一日でなくて多少ずれ込んでいくという場合はその期間はどうするのかというお尋ねでございますが、基本的にはそれは抜本改革をやるまで続くという意味で暫定的な措置だ、応急的な措置だというように私は理解しております。
  116. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 臨時特例措置の概要という厚生省からいただいたものを持ってきているんですけれども、趣旨のところで平成十一年度にと、こう書いてある。だから平成十二年度、もし仮に半年分でもやるとすれば、もう一遍平成十二年度予算で同じことをやらなければいけないんじゃないですか。そうなりませんか。
  117. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それは予算として、そういう私が今申し上げたような事態が一カ月でも二カ月でもずれ込んでまいりますと、定額負担を続けるということになれば、当然十二月の予算編成で判断すべきものということになると思います。
  118. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 参考までにお聞きしますが、今回、平成十一年七月一日から実施して予算額が千二百七十億円、こういうふうになっているわけですが、もしそんなようなことになってくると一体幾らぐらい、満年度でかかったら幾らぐらいを想定されていますか。
  119. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 大体、このほかに、先ほど申し上げましたけれども波及分がございますので、二千二百四十億ぐらいが今年度の額でございますので、それの五割増しということになりますので三千億から三千五百億の間ぐらいではないのかなと、こういうふうに思います。
  120. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 そういう意味では大変ばかにならない額になるわけで、私も決して延ばせと言っているわけじゃなくて、大臣がおっしゃっているように、何とか医療保険制度にかかわる抜本改革について関連する法案をぜひとも今国会に出してほしい、こういう立場で物を申し上げているわけです。つい先日、大臣の所信をお伺いしました。その中でも、今国会にどうしても提出したい、提出に向けて全力を挙げる、こういうふうに大臣も決意を述べられたので、そのことは支持しますし敬意を表します。  ただ、最近、例えばあちこちからのお話なりあるいは新聞を見ますと、ある新聞に意見広告が出て、それに対してある団体が猛烈にかみついてというやりとりがあるわけでして、つまり少し概念的に言えば、いわゆる診療側と医療費の支払い側との対立構造が物すごく厳しい状況になってきている。このままではさまざまな戦術をお互いに行使しかねないような状況になってきているのではないかと私は見ているんですよ。それだけに、大臣は今国会に関連する法案の提出に全力を挙げる、そのことで頑張ってほしいと思うけれども状況はそうたやすくないだろう。  さて、具体的に、ただ単に決意を申し述べられるだけではなくて、一体この状況をどうやって打開していこうとされているのか、ちょっと聞かせて下さい。
  121. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 医療提供側とそれから保険者側、特にまた経済団体、日経連等は大体保険者側の立場に立っておりますが、そうした両面から、特に薬価制度の問題について意見のあるのは委員の御指摘のとおりでございます。  薬価制度をどうするかというのは、審議会の答申の模様は先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、しかし中身をよく吟味してみますと、五つくらいの手法がいろいろ記述されております。その中で、さっき言った薬剤定価・給付基準額制が一番いいのではないかということが審議会の答申で述べられつつ、なおこれは非常に問題だということもつけ加わった特殊な、両論併記とまではいきませんけれども特異な答申になっております。  したがって、この問題は、仮にそれだけに固執をした場合には対決的な状況がなかなか解消しにくい面もあることも否定できないと思います。私どもは、そういう中で一つの案だけに絶対固執してどうかということではございません。基本的には今の薬剤定価・給付基準額制を提示しておるわけでございますから、その立場を放棄したものではございませんけれども、それもいろいろモディファイされた形もあり得るかもしれません。  要するに、薬価差がない診療報酬体系ということが望ましいわけでありますので、その道を、両者の意見調整ができるようなことで私ども取り組みませんと、対立したままずっと続くということは好ましいことではございません。現実的な対応も必ず迫られる時期が来ると思います。  私どもは、今そういう状況で努力をしているということでございますが、せっかく審議会であれだけの、一年以上にわたって審議された薬剤定価・給付基準額制でございますから、これを基軸にしてやっていただけるのが一番今の段階では適当ではないかと思いつつも、今も言ったような思いをめぐらしておるというのが率直な現状でございます。
  122. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 この問題は、もう既にきょうは三月十日でありますから、余り時間的余裕があるとは思っていません。また、ひとり厚生大臣をつかまえて、けしからぬじゃないかと責めるだけでは事が解決しないということは重々承知しています。  したがって、きょう、ちょうど総理大蔵大臣も聞いていただいているし、そして私どももこの状況、下手すると本当に全面対決になりますから、その状況だけは避けるべく知恵を出さなきゃいけないな、努力をしなきゃいかぬなというふうに思っていることをつけ加えておきます。  その上で、少し角度を変えて質問を続けたいと思います。この問題と密接に関連するわけですが、介護保険制度の準備が今、各自治体で精いっぱいの努力でとり続けられています。そこで、この介護保険制度の準備過程とそれから医療保険制度の抜本改革との問題がどんなふうに関係してくるか、私なりに問題点を整理してお尋ねしたいと思います。  まず、各論に入る前に改めて再確認をしておきたいのですが、というのは、介護保険制度、来年四月施行ということで今エンジン全開で取り組んでいただいていると思いますが、さまざまな理由を挙げて、来年四月実施についてこれを延期すべきではないかという意見がなお残っています。既に政府側としては、いや、これは来年四月に向けて全力を挙げて取り組むんだということをお答えいただいていると思いますが、改めて大臣のそのお考えをこの場でお聞かせいただきたいと思います。
  123. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは総理も本会議その他で御答弁をいただいておりますとおりでございまして、私どもは、来年の四月からの実施を変更するつもりは全然ありません。  そして、今委員のおっしゃられるとおり、制度面、実務面あるいは政省令の問題、あるいは不安があればその不安をどんどん言っていただいて、まだもう少し時間がございますから、最終的には十二年度予算で措置すべき問題もあろうかと思いますから、これは精力的にこなして円滑な滑り出しをいたしたい、こう思っております。
  124. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 そのことを確認させていただいた上で、同じ問題を二つに分けて考えてみたいと思うんです。これは幾つかの前提条件で考えていますので、またそういうことは想定していませんなんて言われると議論にならないんですが、考え方をすり合わせるということで受けとめていただきたいんです。  一つは、仮に来年四月までに医療保険制度の抜本改革、とりわけ現在の老人保健制度の見直し、これが間に合わなかったとしたら、現在の医療保険制度あるいは老人保健制度がそのままいくということになります。なりますと、医療について言えば、利用者負担、自己負担は定額になっています。ところが、来年四月からスタートが予定されている介護保険は、利用者負担は定率一割であります。  実際にかかった費用によってそれは負担が違ってくるんでしょうが、しかし、現在の医療保険の定額負担と介護保険の一割定率負担とを考えますと、どうしても一割定率負担の方がやや負担が重くなるであろう。一方で、病院に入っていれば、つまり医療保険で見ていれば今までどおり定額でいく。その経済的な差によって患者さんの流れが期待どおりに流れないんじゃないかということが想定されますが、この点どうお考えですか。
  125. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 老人医療は薬剤ばかりでなくて入院費も定額でございます。したがって、介護保険料は利用者も一割負担いただきますから、委員の御指摘のとおりこれは形が違ってまいります。しかし、一方、一割負担だと負担が重いのか軽いのかは、対象となる介護サービスと医療の提供の問題がございますから、ちょっと理屈っぽくて申しわけありませんが、一概には言えないんじゃないかなと。これは余計なことかもしれません。しかし、形は違っております。  したがって、今、委員の御心配は、老人保健・医療制度が確立されないままいきますと、そちらの負担がよしんば低いとした場合は療養型病床群とかそういう方向へ流れる可能性があるのではないかという御指摘だと思いますが、私ども基本的には介護は介護ということで仕切っておりますから、そういうおそれはそんなにないと思いますけれども、あるいは懸念をされる向きが、そういう制度の上から、観念的と言っては失礼でございますが、あり得るのかもしれません。  しかし、私どもは、これは療養型病床群とか、医療の世界と福祉の世界は、その調整をきちっとやった上で介護保険制度を設計いたすことにしておりますし、各市町村で在宅サービスとそれから施設介護サービス等の区分け、施設サービスの中に療養型病床群等の病院に準じたものがあるわけです。その世界からさらに乗り越えて病院に行くというのは、これはもう医療行為そのものですから、介護から外れます。  そういった仕切りをやっておりますから、懸念するようなことはそんなに生じないのではないかなというように率直に申し上げておきます。
  126. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 一つは、私は抽象的に問題を立てているつもりは全くないので、具体的に数字を示して、経済的な理由で流れが変わらないのかということを言っているわけで、これは訂正しておきます。  それと、もちろん本来あるべき施設に適切に処遇されるというのが望ましいわけですけれども、そもそも介護保険制度をつくるときにこんな議論があったんですよ。  いわゆる寝たきり老人の方が、ある人は特別養護老人ホームに入っている、ある人は老人保健施設に入っている、ある人は病院に入っている。ほとんど状態は一緒じゃないの、しかも病院に入っているといわゆる社会的入院という形でずっと長いこと入っている、医療費がどんどんかかる、状態像に着目してみたらほとんど同じ状態じゃないですかという話があったわけですよ。そういう調査もあるわけです。  だから、大臣おっしゃるように、その制度も仕組みも違うんだし、それぞれ適切なところに処遇されるであろうというのが期待されるのはわかるんですが、現実はなかなかそうはいきません。だから、制度上きちっと、少なくともいい流れになるように仕組んでおかないといけない、そういうことを私は申し上げているんです。  そういう点でもう一つ聞きます。  これはまだ具体的な固まった問題ではなくて、審議会で今検討されている老人保健制度にかわる新しい高齢者のための医療保険制度、二つの案が今検討されているとおっしゃいました。そのうちのいわゆる独立型の高齢者医療保険制度、いわゆるモデルA案ですね、これを見ますと自己負担が五%程度を想定しているんですよ。そうすると、これがそのまま新しい制度になるのかどうか、まだ今後の検討の余地が残されているんだろうけれども、仮に新しい独立型の高齢者医療保険制度、モデルAでいけば自己負担は五%で済む、ところで介護保険は利用者負担は一〇%だ、これはまた同じ問題が起きませんか。
  127. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御指摘のような趣旨だとそういう可能性は否定できないと思います。  ただ、このA型、B型の二つのタイプは、今数字を挙げて申されておりますが、これは一度そういう二つの方式でいかがかという中間的な意見の取りまとめがされまして、今は厚生省の方でA案、B案について五%というのは仮定の数字でございます。あくまで想定をされる主として関係団体等の意向を踏まえた試算として提出をお願いしているだけでございまして、最終的に五%とか七十五歳以上になるとか、そういうことを決めておるわけではございません。これからその数字のめどがないと議論ができないものですから厚生省として提出したというにすぎない資料であることは御理解いただきたい。  それで、私どもはこれをどちらかに採択をしてやる場合に初めて一体負担はどの程度が妥当であるかという検討が出てくるわけでございまして、そういう数字であるということだけはっきりさせておきたいと思います。  なお、もしもそういうことであればそういう流れが、先生御指摘のような点が理論上はおそれなしとしないという立論はよくわかります。
  128. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 それで、二つ例を挙げました。つまり、仮に現行制度がそのまま残っちゃった場合にはどうなるか、それから今審議会で検討されているものでいくとこんなことになっちゃいますよと。つまり、二つの場合も結局介護保険制度との整合性を十分考えて利用者負担あるいは自己負担の水準を設定しておかないと、そこの違いだけで、本来ならば老人保健施設か特別養護老人ホームに入っていただくのが適切な方が、自己負担が少ないがゆえに病院に残るというようなことになりかねないわけですね。  だから、一つは、来年四月までにちゃんと新しい制度をつくってくださいよということと、つくる際には介護保険制度との整合性を十分配慮してつくらないと妙なことになりますよということを私はこの二つの例で申し上げたいわけですが、この点についてはどうでしょうか。
  129. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 御指摘の視点は大変重要な視点だと思います。  なお、療養型病床群あるいは特別養護老人ホームの配置状況につきましては、今までの福祉事業ないし病院の医療計画の中で決められている問題でございまして、現実には各市町村の公平公正な分布と言えるかどうかという問題はございます。療養型病床群の多いところは比較的、療養型病床群というのは一番単価が高うございますから、それが保険料にはね返ってくるとかいろいろな問題に波及いたします。したがって、社会保険制度である以上、こうした問題の調整もある程度なされなければならないと思っております。  つまり、それは療養型病床群みたいなものを各市町村に置けというわけにまいりませんから、基幹病院みたいなところとかそういう大型の病院で療養型病床群を抱えておるところが多いわけですから、広域的な中で調整をしていく。医療計画の方で二次医療圏というのがございますが、大体そんな感じで府県に調整をしてお願いしていかないと、非常にアンバランスが生ずると問題があるという点はございます。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  委員のおっしゃられた二点は、大変意見として、本当にそういう視点があることもよくわかりますので、よく注意していきたいと思います。
  130. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 では次に、もう一つ違う観点から介護保険制度との関係でお尋ねします。  介護保険制度、法律にかかわる審議のときに、平成七年度だったか八年度でしたか、介護保険制度にかかわる総費用はおよそ四・二兆円と推計されると、その推計に基づいていろいろな、こんな負担になるだろうという御説明があったわけです。  さて、いよいよ来年四月施行を前にして、当初推計の四・二兆円というのが、私はこれでは済まないんじゃないかという実感を持っているわけです。例えば、それは単純に言えば平成七年度時点での価格で計算をしていますから、少なくともその分は上がっているでしょうということと、それ以外に、どうもいろいろ新ゴールドプランで基盤整備努力をしていただいたわけだけれども、どちらかというと施設サービスにかなり比重がかかってしまった嫌いがありはしないか。例えば、特別養護老人ホームは結構どんどんふえてきて予定を上回る整備数になってきた、そこへもってきて、先ほどお話があった療養型の施設も、これはある意味では予想を超えて整備が進んできているというか転換が進んできている。  こういうことを考えますと、介護にかかわる総費用はかなり推計よりも多くなるんじゃないかと思うんですが、その点、現時点でどの程度になるのか推計されているのかどうか、あるいはその見込みとしてどんなふうに考えておられるのか、ちょっとお聞かせください。
  131. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) 先生御指摘のように、四兆二千億というのは七年度の価格ではじいておりますので、その後の単価の上昇等によって若干上がるということでございます。  それで、その介護保険の総給付費の見込みでございますけれども、現在、各市町村におきまして需要の実態調査をやっております。地域におきます要介護者でございますとかサービスの供給量、こういったものの実態調査の把握をしておりまして、それがほぼ終わった時点ぐらいでございまして、これをもとにいたしまして必要なサービス量を見込む作業を今しているところでございます。  したがいまして、それで市町村の総額が出てまいるわけでございまして、これを都道府県の方で広域的な観点から調整していただく、その上で私どもの方に五月中に出していただく、こういうふうになっているわけでございまして、その上で私どもはそれをもとに試算をするということになりますとことしの夏ぐらいになる、こういうふうなことで、夏ごろには四兆二千億の新しい数字を、概算でございますけれども出したい、こういうふうに考えております。
  132. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 より詳細な数値は夏ごろにというお話なんですが、詳細な数値もさることながら、ある程度もう来年四月実施という段階なわけですからおおよそのめどというか見込みというか、あるいはかなり見込みを上回るのではないかとかという予想を立てる必要はあるのかなというふうに思うんです。  今、二つ問題が、問題というか非常に関心を集めています。一つは総費用が幾らになるのか、そしてそれぞれの地域のサービスの費用が幾らになるのか、そのことによって一号被保険者の保険料が幾らぐらいになるのかというのが一つありますね。これはきょうはちょっと質問は省略します。例えば、当初二千五百円ぐらいと言っていたんだけれども、いやいやとてもおさまりそうにない、三千円近くなりそうだという話が一方である。その問題は、もう少し詳細な介護費用が出てこないとなかなか明確にお答えになりにくいだろうから、しかも地域によって違うでしょうから、それはきょうはちょっとおいておきます。またいずれ近々お尋ねしたいと思うんです。  そこで、きょうお伺いしたいのは、一号被保険者の保険料ではなくて、いわゆる介護保険制度でいう二号被保険者に納めていただく保険料、つまり四十歳から六十五歳までがどのような形でこの介護保険制度について保険料を納めて支援していくかという仕組みがあるわけですが、その方たちからの保険料は現行の医療保険に上乗せして徴収されるというふうに私は理解をしているんですが、健康保険制度では、あるいは国民健康保険ではどうなるのか、ちょっと説明をいただきたいと思います。
  133. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えをさせていただきます。  健康保険あるいは国民健康保険におきますいわゆる介護保険の第二号被保険者の保険料についてでございます。第二号被保険者の保険料総額は、御案内のとおり、介護保険の費用総額の中から一部負担として患者負担をされている分あるいは公費負担をされている部分の残りについて、第一号と第二号の被保険者それぞれのいわば割合に応じまして案分比例をされて出てきますので、今ですと三三%ぐらいが第二号被保険者の総額になるであろうというふうになっております。  それを今度はそれぞれの、今お尋ねは各医療保険に来ましたときの負担の仕方である、徴収の仕方だろうというふうに思いますが、健康保険の場合におきましては、基本的には介護保険の第二号被保険者である被保険者に対しまして、つまり四十歳から六十四歳までの被保険者に対しまして一般保険料に上乗せをしまして、一般の保険料というのは、健康保険の方の費用に充てている、医療保険の方の費用に充てている費用に上乗せをしまして、一体的にいわば源泉徴収の形で賦課徴収をするというふうにして徴収をされることになります。  それから、国民健康保険におきましては、ほぼ同様の仕組みになるわけでありますけれども、介護保険の第二号被保険者が属する世帯に対しまして医療給付費分の保険料にこれも上乗せをしまして、介護納付金分の保険料をいわば医療給付費分の保険料と同様の賦課徴収方法によりまして賦課徴収をするということで、いずれもいわば上乗せをして一体的に徴収をしていくということになるわけでございます。
  134. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 現在の健康保険の保険料、医療保険の保険料に上乗せしてそれぞれ健康保険と国民健康保険の方から徴収していただく。現時点で、あるいは仮に四・二兆円という推計値を使うとしたらどれぐらいになるかという数字は出ませんか。
  135. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) 先ほどお話もございましたように四・二兆円、あるいはそういった数字が動くということはございますから、それがそのままだとしたらという前提で、そういう意味では仮置きの数字としてお聞き取りを願いたいと思います。  各保険制度によって、保険制度そのものに公費負担が入っている度合いあるいは被扶養者を抱えておられる度合いが違いますので若干それぞれ額は違いますけれども、健保組合で申しますと、今のような前提でいきますと、介護保険料がその第二号被保険者に相当する形でかかるものが料率にして八・四パーミルぐらいの格好になります。それから、政管健保でいいますと八・九パーミルぐらいの感じでございます。それから、国保の場合には半額の国庫負担が入りますので、額で申し上げますと介護保険料が千二百円ぐらいになります。  ただし、介護保険料としては今のようなことになりますけれども、介護保険ができることによりまして、かつてそれまでは医療保険で給付をされていた部分が介護保険に移るという部分がございますから、その分に従った医療保険分の保険料の減というのはございます。そこは今とんちゃくしない形で申し上げましたけれども、介護保険料の部分として言えば今申し上げたような数字が、とりあえず全体が四・二兆円というスキームのもとで申し上げればそういうことになっているということでございます。
  136. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 そうすると、仮に全体の介護費用が四・二兆円という推計のもとで考えて、しかも介護保険制度が動き始めることによって現在の医療保険、とりわけ老人医療の費用を節減する効果があるであろうということを差っ引いて単純に上乗せすると大体千分の八程度が上乗せされることになるだろう、こういう話であります。  それぞれ健康保険組合も国保も今どういう心配をしているかというと、ただでさえ健保財政は苦しい。先ほどもお話があったように、平成九年度の健康保険法の改正で一年間はぐっと抑制基調で来たけれども、どうも一年たつとそうではなくなってきている。そこで、もう健康保険組合によっては保険料を上げなきゃいかぬというような選択を迫られているところもある。そこへもってきて今度は来年四月から介護保険料が、今お話があったように幾つかの仮定をした上でも千分の八ほどオンされる。あるいは、国保の方でいえば千二百円程度オンされる。そのことによって、特に国保の方は、これまでも一生懸命未納者対策をいろいろやってきて収納率を上げる努力をしてきたんだけれども、またどんと未納者がふえるんじゃないかという悲鳴にも近い声が市町村から届いているんですが、この辺の問題については、厚生大臣、どうお考えですか。
  137. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それは、委員の御指摘のようなことが推察されるといいますか、傾向としてあり得る状況は否定できないというように思います。
  138. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 状況は否定できないと、それでどうされるおつもりですかということを聞いているんです。
  139. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、国保は国保、介護は介護というだけにまいりません。保険料を上乗せして収納するわけですから、収納率が下がることを防止しなければなりません。そういう点で、介護保険制度の意義をより徹底させていくということが絶対必要だと思います。  ただ、万々が一収納率が落ちた場合、どうしても収納を努力してもできない場合どうなるかという問題は私どもも頭の中にございます。それはまた何らかの対応措置を考えにゃいかぬが、とりあえずは、とにかく二つ合わせて、政管健保にしてもあるいは国保にしても上乗せの保険料を一緒に徴収するわけですから、そのことの理解を深めながら収納率を上げる努力を最大限していかなければならぬ、こう思っています。
  140. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 期待した答えじゃないんですね。だからこそ来年四月までに老人保健制度にかわる新しい高齢者医療制度をつくらなきゃいけないということなんですよ。そうしないと、今の老人保健制度の枠をそのまま残しておいて、その中であれこれやりくりしようと思っても、もう限界に近いところまで来ているんですよ。そんなこと国保の人たちはもう百も承知なわけで、それをこのままいって、さらに医療保険制度の抜本改革が何もなしに進んでいっちゃって、その上に介護の保険料がまたどんと来たらどうなるのかということを言っているわけで、そこの点もう一遍ちょっとお答えいただきたい。
  141. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 御指摘の点はごもっともでございまして、私も後で機会があったらちょっと申し上げようと思っていたんです。  その点は非常に大切なことでございまして、医療保険制度を合理化し効率化することがすなわち保険料の低下につながりますから、それはもう絶対欠かせない前提条件だと思います。それだけに、医療保険制度の抜本改革に向けては、国会での御同意を得ながらぜひ実現をしていきたいと思います。
  142. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 それでは、用意した質問を全部こなす時間もなくなってきましたので、少し要約、ピックアップした形でちょっと一、二追加をして終わりたいと思います。  先ほど厚生大臣の方からの御説明の中にもありましたように、今こういう問題が各地で取り上げられています。つまり、保険料は一体幾らになるのだろうか、そのための計算の根拠としては、サービスの総費用がどれくらいになるのだろうか、地域ごとにですね。そのサービスの総費用を計算するのに、在宅サービスよりもどうも施設サービスに傾きがちである、現状が。あるいは施設サービスの中でも療養型病床群という病院からの転換型の介護施設がふえればふえるほど介護費用、総費用が高まる。  こういう問題で、例えばある県では、実際に調査をしますと、施設サービスの中で療養型病床群が占める比率が六割にも達するために、その前提で総費用を計算し、その前提で一人当たりの保険料を計算すると、とてもとても二千五百円では済まなくて、三千五百円とか四千円とかという数字が出てきている。こういう問題が幾つかの地域で出てきているわけです。  先ほど大臣もおっしゃったように、逆にある地域では療養型病床群というのがほとんどないというところもあって、そういう意味ではこれから中期的には三つの施設類型が適切にバランスよく配置される。将来的にはこれらの三つの施設が、A、B、Cだとか、あるいは医療型だ、老健型だ、特養型だというふうに分けるのではなくて、一つのモデル的介護施設へ収れんされていく必要があるというふうに私は思うんですが、この点について大臣のお考えをちょっと聞かせてください。
  143. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今の介護保険の四月からの実施は、一応特別養護老人ホームは政策的にこれを重要視して充実を図ってまいりました。しかし、療養型病床群等は、これは既存の病院の病床の利用でございますので、賦存状況が地域によって違うということもございます。それから、老健施設等も同様な状況にあると思います。したがって、とりあえずはそれでスタートをしていくということによって各保険者間の単位における保険料の差異が生ずることはある程度やむを得ないというようにも考えます。  しかし、将来的には、今、委員のおっしゃられたように、やはり社会保険制度、介護保険制度というものをとる以上は、負担と給付の関係がバランスがとれて、地域的にも、これは全国単位が一つの保険単位でありますから、保険計算をやるわけですから、やっぱり公平な給付と公平な負担になるべく近づけていく。保険者はそれぞれ市町村でございますから形式的には保険者単位でありますけれども、そういうことが必要ではないかなというように全体としては考えております。
  144. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 時間がなくなってきましたので、この問題についてはまた国民福祉委員会の方でじっくりやらせていただきたいと思うんです。  ただ、私の意見だけ申し上げておきますと、そもそもこの介護保険制度をつくるときの議論としては、いわゆる寝たきり状態の人が相当数病院に社会的に入院している、果たしてそのことが本人にとっても適切なんだろうか、あるいは費用の問題としても果たしてこれでいいんだろうか、こういう問題で新しい介護の仕組みが必要なんだということを議論してきたと思うんです。  そういう意味でいうと、私は、療養型病床群というのは基本的には医療施設です、医療法に基づく施設だ。そこで一定の条件を満たせば介護保険の適用を受けるということになると思うんですが、そのボリュームが予想以上にどんどんふえてしまって、何のことはない、相変わらず病院に社会的に入院しているんだけれども、形が介護施設に変わってそのまま存続するということになりはしないかという危惧をしているんです。  もう一遍、そういう意味では、常に原点に返って、新しい制度のスタートに向けて再度検討すべきことが幾つかありはしないか。もっと率直に言えば、厚生省としてもそれぞれの地域ごとの特徴に合わせてもっと的確な指導なりアドバイスをすべきではないかというふうに思っていますので、これは私の意見として受けとめていただければと思います。  それでは最後に、厚生大臣と、それから締めくくりに総理にお伺いします。  今の議論、もう繰り返しませんが、私は今度の国会は、始まる前はまさしく社会保障制度改革国会だというふうに思っていた。思っていたんですが、幕をあけてみると、年金の制度改革も予算関連で出てきたのは凍結案だけだし、先ほど来議論している医療保険制度改革について言えば、全力を挙げるというふうにおっしゃっている割には姿形がまだ見えてこないし、結局この国会は何だったのか。社会保障制度改革肩透かし国会というふうに言われるんじゃないか。それじゃ困る。  特に私は、何度も申し上げているんですが、西暦二〇〇〇年というのは社会保障制度全体にかかわる一つの大きな節目だと思うので、それに向けて改めて医療保険制度のいわゆる抜本改革、先ほど大臣がおっしゃった四つの項目についてぜひ総力を挙げて取り組んでいただきたい。  そのことを決意を含めて大臣及び総理にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  145. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員の御指摘の点は、まさにいろいろ私どもが本当に検討しなければならないポイントを御指摘になっていらっしゃると存じます。  それで、今国会で姿が見えないということでございますが、御論議はいただいておりますが、私どもいろいろな調整その他の問題がございまして、法案は、年金については三月中に何とか出す予定に今させていただいておりますが、そのほかの四項目については、四項目全部法律改正を要するかどうかの問題点が一つあります。  それは、診療報酬のあり方については中医協マターでもございますので、あるいはこれは法案を要しないと思いますが、あとの三つにつきましては法律案を用意して今国会中に提出したいということで、三月中の提案は無理だと存じますけれども、なるべく早期に処理をしたいと思っています。
  146. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 少子高齢化が進行する中で国民が安心のできる社会を築くため、国民に信頼され、将来にわたって安定的に運営のできる社会保障制度を構築していくことが極めて重要であると考えております。とりわけ、高齢化の進展に伴いまして給付の増大が見込まれる中で、社会保障制度を高齢者介護や子育て支援といった国民の新たなニーズにも的確に対応しつつ、経済との調和がとれ、将来世代の負担を過重なものにならないようにしていくことが必要であると考えております。  このような考え方に立ちまして、制度相互の整合性、連携等に十分配慮しながら、制度の効率化、合理化等を図るため社会保障制度全体の構造改革に取り組んでおるところでございます。  これまで、高齢者の介護に関し、福祉分野と医療分野を再編成した介護保険制度の導入を図ることといたしたところでありますが、今後、目下の課題である年金制度や、かねてからの懸案であります医療及び医療保険制度の抜本的な見直しに取り組み、取り巻く環境の変化に対応し、信頼のできる安定した社会保障制度の確立を図ってまいらなければならないと考えております。  朝日委員御指摘のように二〇〇〇年には介護保険も始まるということでありまして、そういった意味でこうした社会保障改革というものは極めて重要でありますし、また、前橋本内閣におきましても六大改革の一つとして大きく取り上げておるわけでございます。  遅々として進んでおらないというお話もございましたが、政府といたしましては一つ一つこうした問題につきまして着実に成果が生まれるように努力をいたしますが、総合的に御指摘のように社会保障改革という観点から大きな課題である、国民的課題であるという立場で、政府を挙げて努力をいたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  147. 朝日俊弘

    朝日俊弘君 せっかくあと二分ありますから、最後に私の意見、感想を述べて終わります。  きょう一番最初に話題にした高齢者の臨時特例措置の問題にしても、何かこの国会はとにかく景気対策、景気対策で、消費を刺激するためには社会保障の分野であってもいろんな経済的な負担を余りふやすようなことはまずいんじゃないか、こういう景気対策をにしきの御旗としたさまざまななし崩し的制度先送りが行われているような気がしてならないんです。  私は、経済というのは確かにお金の問題なんだけれども、もう一つは心理の問題なんだと思うんです。特に、社会保障制度についての不安感がたんす貯金に相当回っていることは確かなんです。年金にしろ医療にしろ福祉にしろ、セーフティーネットとしての社会保障制度そのものに対する不安感というのが非常に大きくて、ただ単に負担を軽くすればいいんじゃなくて、不安感をどうきちんと受けとめて信頼感に切りかえていくのかというのが大変大切じゃないか。  そういう観点で社会保障制度構造改革にぜひ取り組んでいただきたいことを申し上げて、終わります。  ありがとうございました。
  148. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で広中和歌子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  149. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、山下栄一君の質疑を行います。山下栄一君。
  150. 山下栄一

    ○山下栄一君 公明党の山下でございます。  初めに、教育問題をさせていただきたいと思います。  心の教育ということが中教審でも議論され、今教育改革の柱として位置づけられているということを繰り返し文部大臣からもお聞きいたしておりますし、総理も未来へのかけ橋という観点で教育改革、その中で特に心の教育ということを何度かおっしゃったと思うわけでございます。  私は、この心の教育ということが非常にあいまいになっておるのではないかと。というよりも、基本的な考え方をしっかりと認識しておかないと、かえって改革にならずに改悪になっていくのではないかという気持ちを持っておりますもので、心の教育の中身をもう一度確認しておきたい。教育改革と言われておる、その心の教育の中身、お願いします。
  151. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) このごろの子供たち状況を見ておりますと、まず社会全体のモラルが低下しております。家庭の教育力が明らかに低下しております。地域社会における人間関係が希薄化している。こういうことが背景になっていて、大人たちも問題が非常にある。また、子供たちに規範意識が低下している、忍耐力やたくましさが欠如している、自己中心的で責任感がない、乏しいということが懸念されております。  そういう意味で、まず、これからの子供たちには生きる力を身につけさせなきゃいけない。生きる力というのは、たびたび申し上げているように、自分で課題を見つけ、自分で学び、自分で解決していく力と、人を思いやる、倫理観を正しく持つ、美しいものは美しいと思う、崇高なものに対しては崇高なものという気持ちを持つ、そして健全な心と体、これが生きる力の定義でございますが、その生きる力の核となるのはやはり豊かな人間性である。この人間性をはぐくむことが重要だと思います。  そこで、具体的には、正義感や公正さを重んじる心、自立心、自己規律、自己抑制力を持つ、責任感を持つ、他人を思いやる心などを育てることが必要であると考えております。  こういうことを心の教育として広くとらえまして、具体的には、学校や家庭でもって、そして地域社会でもってこういうことを教えていただきたいと考えているわけであります。例えば、学校においては道徳教育の充実を図る、家庭や地域社会においては子供の心を育てていくための施策を文部省として積極的に推進してまいりたいと思っております。
  152. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これもしばしば申し上げておりますが、私、施政方針演説で司馬遼太郎氏の言葉を引用いたしまして強調いたしましたが、未来を担う人材として、頼もしい人格を持ち、自分に厳しく相手に優しい自己を持つ人間が求められると考えております。そうした人間に成長できるようにということでの心の教育ということだろうと思います。  このため、生きる力、助け合う心、そして自然を慈しむ気持ちをはぐくむことを原点といたしまして、幅広い視野を養い、個性を大事にして生きること、特にボランティア活動への参画等を通じて地域社会に貢献すること、人には多様な生き方がありお互いにこれをたっとぶことなどを重視していく、そういう人間に育つ、そのための教育、すなわちこれが心の教育ということだろうと思います。  利己といいますか個人主義は非常に発展しておるわけで、そのことはよろしいと思いますが、同時に、今申し上げたように利己と利他とバランスのとれた人間として育つというための教育、それが今、文部大臣もお話しされましたが、ある意味での道徳的な教育という面についての若干忘れられたといいますか、取り残された部分があるのではないかということで、心の教育を目指していきたいという趣旨だろうと思います。
  153. 山下栄一

    ○山下栄一君 いろいろおっしゃったんですけれども、僕は言葉が非常に先行しているというふうに思うわけでございます。  正義感それから公平性、自立心、責任感、他を思いやる心、自己中心的な傾向が大変強い、利他の気持ちを育てなきゃいかぬという、道徳教育ということも出ました。  私は、そういう意味では、先ほど文部大臣も大人の問題というふうにおっしゃいましたが、まさに心の教育を必要としているのは子供じゃなくて大人である、こういう認識がなくてはならないというふうに思うわけです。心の教育を叫んでいる人が、場合によっては最も心の教育を求められていると言えるかもしれない。特に社会的なリーダーと言われている方、特にまた統治機構の世界、立法府、行政府、その世界が最も心の教育が必要じゃないのかというふうに子供は一生懸命訴えているのではないかというふうに思います。  官僚不祥事が続いてまいりました。日本の大学入試で文科系で最も偏差値が高いのは東大法学部かもわかりません。その方々が大半を占める大蔵省の不祥事が大変大きな問題になりました。日債銀の問題も、きのうも参考人質疑がございました。金融不安を解消するという名のもとに、国民の税金、税金以外の国民のお金、これをたくさん投入して、仕方がなかったんだと言ってだれも責任をとらない。先ほど責任という言葉がありましたけれども、責任をとろうとしないで逃げているのは一体だれだ、このように子供は一生懸命訴えているのではないかというふうに思います。  国を守るべき防衛庁の方々が国民の税金をごまかす、そういうことを企業と一緒に、企業といっても日本を代表する企業と一緒になってやっていた。こんなことが繰り返されて、一方で心の教育を平然と叫ぶ、これでどうして世の中がよくなるかということではないかなというふうに思います。  心の教育を求められているのは大人であると。特に最も指導的立場にある、私も含めてかもわかりません、私は指導的立場じゃないかもわからぬけれども、国民の代表として今この場にお出ししていただいているわけでございます。  育児というのは、子供を育てるとは書くけれども、育児は育自である、自分を育てるということである。自己反省のないところに心の教育はあり得ない、こういう観点が大変大事ではないかというように思うんですけれども文部大臣、いかがでしょうか。
  154. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 大変重要なポイントをおっしゃっていただきまして、ありがとうございました。  中央教育審議会の答申の最終段階において、子供たち教育をよくするという前に、まず大人の問題であるということを認識いたしました。今御指摘のいろいろな階層の人々、いろいろな種類の大人たちがまずみずからを律し、正義感を持って正しく行動しなければ子供は育たない、このことは中央教育審議会の答申にあえて書き込んだ次第でございまして、随分私どもは心配いたしました。  子供の教育ということを論ずる中央教育審議会の答申において、社会にまで、家庭にまでお願いをすることがいいかどうか、随分私も心配をしたし、ちゅうちょいたしましたけれども、やはりこの際子供たち教育をよくするためには、もう既に世に出た人々、大人の人たちに訴えていく必要があると考えた次第であります。
  155. 山下栄一

    ○山下栄一君 共通の考え方もあるようでございますけれども、この心の教育を一体どうしていくかということでございますが、先ほど道徳教育という言葉が出てまいりました。心は目に見えない、形は目に見える。この目に見えない精神性をはぐくむことは、私は非常に難しいというふうに感じてまいりました。  子供が一番嫌がるといいますか、特に思春期の子供たちが嫌がるのは、言っていることとやっていることが違う、要するに口で言うことと行動、これが違うことを最も嫌がる。そこから信頼が崩れてくると。私も父親の一人でございますけれども、やはり言っていることとやっていることが違わないように一生懸命努力せないかぬということを日々感じておるわけでございます。目に見えないだけに非常に心の教育というのは実際難しいというふうに思います。  道徳教育を叫んでいたら心は育つか。心というのは、先ほどもお話がございましたように、正義感とか倫理観、人間、また自然を慈しむ心というふうになるのかもわかりません。善なる精神的な価値をはぐくむ方法というのは、口で叫んで上から下へ注入する、大人が子供に、教師が生徒に、親が子供に注入するという形では、注ぎ込むという形では私は育たないのではないかというふうに思っております。  文部省は、家庭教育が大事だということで、家庭教育ノートともう一つ何か、二冊つくられて配られました。配ることが心の教育につながるだろうと思われて配られたんじゃないかなと思うんですけれども、そんなことを一番嫌がるのが子供とか思春期の青少年じゃないかなというふうに私は思っておるんです。  だから、心の教育というのは、どうしたらそういう生きる力を、また利他の心をはぐくんでいけるのか、注入とか口で唱えて、また通達行政でそれはできるものではないというふうに感じているんです。  だから、もっとわかりやすく言えば、僕は教育行政の最高の立場にある文部省通達を出したりしてできるものじゃないというよりも、そういうことをすることが最も心の教育に反するのではないかというふうに思っているんですけれども、どうでしょう。
  156. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) ここにおもしろいデータがあります。  家庭で手伝いをする子供ほど正義感、道徳観が強いというデータであります。生活体験が豊富な子供ほど道徳観、正義感が身についているというデータであります。自然体験が豊富な子供ほど道徳観、正義感が強いというデータであります。  ですから、通達行政としてこういうことをしろということは申しておりません。文部省として考えておりますことは、まずボランティア活動や社会体験、自然体験等の子供の実体験を踏まえた活動や、学級や学校生活における具体的な事柄を取り上げた活動など、体験的な活動を通じて子供たちの内面に働きかけるような心の教育を充実したいと。これは何も通達ではございませんので、申し上げておきましょう。  まずは家庭にお願いしたい。先ほど申しましたように、私は本当に自分自身考えました。家庭の中まで入っていってあんなパンフレットを配っていいものであるか、これは本来家庭の人たちが考えるべきだと思いました。しかし、そこまでお願いをしなければならない時代だということで、私はついに断念いたしました。(「だれが悪いんだ」と呼ぶ者あり)今までのすべての人々でありましょう。
  157. 山下栄一

    ○山下栄一君 子供たちの内面に働きかけるということは、物すごく大事なことだと思います。心の教育というのは、内発力といいますか、働きかけるというか、感化するというか、触発するというか、そういう人格的な触れ合い、また自然との子供たちの触れ合いの中で薫発されていくというか、そういう形が正しい心の教育のあり方ではないか、上から下に注入するということは反することだというふうに感じております。  それで、私がちょっと感激した話に、シビレエイという魚ですけれども、話がございます。この話、文部大臣も御存じだと思いますけれども、ソクラテスが当時の青年たちに対話をしていくわけでございますけれども、その感化力がすばらしいと。どうしてソクラテスさんはあれほど心が荒れ狂っているはずの青少年を見事に感化されるのですか、こういうふうに問うたときに、ソクラテスはシビレエイの話をされて、シビレエイは人間をしびれさせる、それは魚自身がしびれているからだと。正義感にしびれ、そして勇気と思いやりにあふれている心が充満しておればそれは他をしびれさせるんだと。そういうまさに触発、感化という作業の重要性、直接全人格的触れ合いの中で徳というものが育っていくんだということを教えた言葉ではないかというふうに思うんです。  このことが今、家庭においても地域においても学校においても最も求められているのではないかというふうに感じておりますけれども文部大臣の所感をお聞きしたいと思います。
  158. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) まさにおっしゃるとおりでございます。  したがいまして、地域社会にお願いをしようと思っていることは、その地域地域においてすぐれた人々がボランティアとして子供たち教育、遊ぶことも含めて広い意味での教育を面倒見てくださること、それからまた道徳の時間あるいは地域社会において、ソクラテスでも結構でございます、すぐれた人々のことを子供たちに教えてくださること、これが重要であると思っております。  より具体的に申しますと、今各省庁と協力をさせていただいて自然体験をふやしたいと思っております。例えば建設省と協力させていただいて、子供たちに豊かな川や湖の周りで水辺をつくっていただく子どもの水辺再発見プロジェクト、あるいは農林水産省と一緒に子供たちに長期自然体験をさせるために子ども長期自然体験村を設置すること、そしてまた休耕田になっているようなところを利用させていただいて子供たちにあぜ道とせせらぎを楽しませるプロジェクト、あるいは通産省とともに子供たちに商業活動体験をさせる。そういうふうなプロジェクトを立てて、具体的に子供たちがさまざまな自然に触れ、社会のさまざまな面に触れる努力をさせていただこうと思っているところであります。
  159. 山下栄一

    ○山下栄一君 今、文部大臣は自然との触れ合いということを特に大事にされましたけれども、自然もそうでありますし、人間の触れ合い、教師と生徒、親と子ですけれども、全人格的に触れ合う中ではぐくむということが物すごく弱くなってきている社会であるというふうに思います。青少年のさまざまな問題はそこにあるのではないかというふうに感じておるわけです。  そして、午前中の君が代・日の丸の問題でございますが、法制化の議論の中で、教育現場にも混乱があるからこれを義務化すべきだという議論がございました。きょうの朝、広島県高校長協会会長さんは、教育現場が混乱している、高校先生は信頼できない、失望していると、このようにおっしゃいました。  そういう大人が混乱している中で、どうして心の教育ができるか、心から国旗に対して敬意を表せるか。それを無理やり強制するような、教育現場で法律によって義務化するような議論もありますけれども、それはまさに心の教育に反することだというふうに私は思うんですけれども文部大臣、いかがでしょうか。
  160. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) そのお答えに入る前にちょっと一つ、先ほど文部省とさまざまな省庁で協力をして子供たちの自然教育を図っていることの中で一つ重要なものを忘れましたのでつけ加えさせていただきます。  これは、環境庁と一緒にやっていることでございまして、国立公園、国定公園等のレンジャーの人たちに御指導を願って子供たちに自然を教えていただくということでございます。  今、学校現場での国歌国旗の問題について御質問がございましたが、これは学習指導要領でこのところ常に各教育委員会を通じて各高等学校あるいは小学校、中学校校長先生、そしてそれを通じて先生たちにお願いをし、またこの学習指導要領に従って、「国旗掲揚するとともに、国歌斉唱するよう指導するものとする。」と明記されている学習指導要領に従って子供たちにもしっかりと指導していただくようにお願いをしている次第でございます。
  161. 山下栄一

    ○山下栄一君 後の質問もございますので、最後に総理大臣にちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、さっき魚の話をしましたが、大人がしびれてないと子供もしびれない、教師がしびれないでどうして子供をしびれさすことができるか。大人の心を豊かにすること、これは物すごく大事だと。そういう観点で心の教育は考えないといけないというふうにもう一度言わさせていただきたいと思いますけれども、先ほど統治機構が最も心の教育を必要としているのではないかというお話をしましたが、総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  162. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お答えになるかどうかわかりませんが、子供は親の背を見て育つという言葉がありますが、やはり親自身がきちんとしていなければ子供も、したがって子供だけにすべて社会的責任を負わせるということはあり得ないというふうに思っております。  また同時に、今、統治機構といいますか、ある意味でその責任を持つ者の姿勢としては、古い言葉かもしれませんが、修身斉家治国平天下といいますか、みずから修めるということでなければならぬと思いますし、またそのためには天を敬い、やはり人を愛するという、そういう姿勢がなければならないと思っております。  日本はというわけではありませんが、全般的にほかの国々を見ますと、かなり宗教的な教育というものが子供の時代から教えられ、ドイツなどは宗教税までございまして、いろいろやっておられるわけでございますけれども、そういった意味で、心の問題の本質にはそういった底深い宗教的な気持ちというものもやはり涵養されてこなきゃならないというふうに思っておりまして、みずから省みて十分ではありませんが、一生懸命努力をさせていただいているところでございます。
  163. 山下栄一

    ○山下栄一君 次に、ダイオキシン問題をお聞きしたいと思います。  二月二十四日に総理大臣を中心に第一回閣僚会議が開かれました。私は、形としては、人体に大変な影響を与えると言われておるダイオキシン汚染、国の取り組みも今まではどちらかといえば省庁別々にやっておったけれども、内閣挙げて内閣の最重要課題として取り組むということもおっしゃっておりますが、そういうポーズはあるけれども中身が伴っていないのではないかというふうに感じております。  まず、労働省にお聞きしたいと思うんですけれども、大阪の能勢の環境美化センターの高濃度のダイオキシン汚染状況での労働作業、これが問題になっておるというふうに私は認識しておるわけでございますけれども、一般ごみも含めまして、要するにこの廃棄物処理、特に焼却施設で作業をされている労働者は全国でどれぐらいいらっしゃるんでしょうか。わかりますか。
  164. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 全国のごみの焼却施設で働いている労働者の方の人数でございますが、私どもいろいろ作業環境等についての改善を集団指導等で実施しておりまして、こうした施設はそれぞれ把握はいたしておりますが、現在、手元にそれらで働いている労働者の方の集計した数字がございませんので、後ほどまた提出をさせていただきたいと存じます。
  165. 山下栄一

    ○山下栄一君 私は、清掃作業員の方の、特に焼却場の焼却炉を掃除したり、また焼却灰の灰出し作業をされている方々の健康状態が極めて深刻であると認識しております。  この焼却施設の労働者への健康影響調査を平成九年度に労働省はされたというふうに思うわけでございますけれども、この調査、非常に少ない予算で、労働省予算でもない予算でされたわけですが、緊急でされたことは私はよかったと思いますけれども、これによって全国の労働基準局に出された通達、ポイントを教えてください。
  166. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) お話ございました通達でございますが、昨年、私ども全国の都道府県労働基準局に通達を出しました。  これは、一つは作業環境の問題でございまして、こうしたごみ焼却施設等における作業環境の中でのダイオキシンの濃度の測定の仕方、また管理すべきダイオキシン類の濃度を二・五ピコグラム以下に抑えておくこと等をまず指導の対象とすべきことに挙げております。  二つ目に、こうした作業場におけるそうした灰その他の物質の抑制装置といたしまして、そうした施設の改善の留意点、こういったものを挙げております。  さらに、作業する労働者の方々が有効な呼吸用の保護具を使用すること、あるいは作業中の労働者に粉じんの付着しにくい作業衣や作業手袋等を着用させること、特に焼却炉の内部に入る場合におきましてはエアラインマスク等を使用すること等を本通達で示しております。  この通達に基づきまして、各都道府県の労働基準局がこうしたごみ焼却の作業を行う業者等につきまして、個々に、あるいは集団でこの通達の徹底を進めておるところでございます。
  167. 山下栄一

    ○山下栄一君 徹底されるのはいいんだけれども、これ去年の話ですよね、通達を出されたのは。それまで働かれた方々というのは、マスクもしないで、焼却灰に高濃度のダイオキシンが入っているその灰の灰出し作業をされたり、能勢でいうならば、あの何万ピコグラムというふうな濃度が検出された冷水塔のヘドロを、七万か九万かそういうレベルの高濃度の含まれていたヘドロを一生懸命月に一回か二回作業をされていた労働者もいらっしゃるわけです。去年やっとマスクをつけろとか作業衣に注意しろとかいう話ですが、それ以前の作業労働者というのは何万といらっしゃると思いますけれども、この健康影響が大変に私は心配になるわけです。  具体的に、二月九日でしたか、大阪の能勢の作業をされていた方々がお二人、これは大阪地域の宮田教授、ダイオキシンの専門家でございますけれども、その方がはかられた血液ダイオキシン濃度、通常の七倍から九倍というふうなデータが出てきて、この方々が国にも損害賠償、国にもそういう対応を求め、労災ですか、そういうふうなことを訴えるというふうな記者会見もされておりましたけれども、これに代表されるように、私はこの劣悪な作業環境でされていたこの方々というのは一人や二人じゃない、物すごい数いらっしゃる。この方々をどうするかということは大変大きな問題だというふうに思います。  ちょっと時間がそんなにございません。  このお二人のうちの一人は皮膚が黒くなる病気ということが指摘されておりますけれども、この病気についてちょっと教えてください。
  168. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) お答え申し上げます。  一つ通達の点でございますが、私どもごみ焼却施設等における労働災害の予防の観点から、以前から包括的な通達、それに基づいて自治体等を通じての安全面の指導を行うべき通達は出しておりまして、その中で、マスク、手袋等々の着用についてはかねて指導してきたところでございます。ただ、ダイオキシン類の取り扱い、管理すべき濃度等に限りまして、そこに焦点を当てた通達を検討の結果昨年改めて出したということでございます。  それから、もう一つ御指摘ございました能勢町の焼却施設で働いておられた方々の問題でございますが、私ども昨年の十月、十一月にこうした方々の血中におけるダイオキシン類の濃度の測定、あわせまして作業歴それから皮膚の視診等を専門家の方々にお願いして、目下それらの分析結果等の集計を最終段階にございますが急いでいるところでございます。そうした中で、御指摘ございましたような事例が当然上がってくるわけでございますが、そうした点につきましてもそうした分析の結果の中で明らかになってまいりますので、それがまとまりました段階で御報告をまたさせていただきたいと存じております。
  169. 山下栄一

    ○山下栄一君 この産業化学物質による皮膚障害として塩素ざ瘡という病気があるということを労働省の方に教えていただきましたが、この疑いがあるのではないかと。先ほどのお二人のうちの一人はそうだと、皮膚が黒くなるという。この塩素ざ瘡、簡単に説明してください。
  170. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 昨年十月、十一月に血中濃度等の測定をされた労働者の方々の中に御指摘のような症状を訴えておられる方がいるということは私ども承知をいたしております。そうした方につきましても、専門家の方が血中のダイオキシン類の濃度を測定するとともに、作業歴や皮膚の視診等を行い、その結果を現在最終段階でございますが取りまとめてございますので、取りまとまりましたらそういう点につきましても御報告をさせていただきたいと思っております。
  171. 山下栄一

    ○山下栄一君 今月中に報告があるというふうに聞いておりますけれども、この塩素ざ瘡という疑いのある方が私は能勢だけじゃなくて全国にいらっしゃるのではないかというふうに思います。  有害化学物質による皮膚障害、この研究は日本でも余り進んでいないと。私の知り合いの皮膚病のお医者さんにも聞きましたけれども、こんな事例はございませんでした。産業医学の観点からこの研究に携わった方は九州にもいらっしゃるそうでございますけれども、非常に研究者が少ないということだそうでございます。  これで思い出すのがカネミ油症事件であるわけでございまして、昭和四十三年に起きた黒い赤ちゃんが生まれたというこの食品公害事件。その赤ちゃんが育って子供を産んだ、また黒い赤ちゃんだったという衝撃的な話が伝わっておるわけでございますけれども、このカネミ油症も実はダイオキシン汚染が原因だったんだということが最近わかってきたというふうに聞いておりますけれども、このカネミ油症はダイオキシンが原因であったということ、これはよろしいんでしょうか。
  172. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) カネミ油症の御質問でございますが、昭和四十三年に確かに北九州市を中心にPCBの混入しましたライスオイルで大量の中毒患者が発生したわけでございます。  細かい点は省略いたしますが、この事件では急性あるいは急性毒性として皮膚病変を初めといたしますさまざまな臨床症状あるいはPCB胎児症などが見られまして、食品由来の事件としては大きな社会問題となったところでございます。
  173. 山下栄一

    ○山下栄一君 答えを言ってくれていない、ダイオキシン汚染。
  174. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) ダイオキシン類が入っていたかどうかというのは今ちょっと事実確認できませんが、PCBでございますので、当然今回いろいろ議論になっておりますいわゆるコプラナーPCBは入っていたというふうに類推できると思います。
  175. 山下栄一

    ○山下栄一君 コプラナーPCBはダイオキシン類に入れるという方向でTDIの見直しもされているんじゃないでしょうか、確認します。
  176. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 昨年五月のWHO専門家会合におきましては、ダイオキシン類のほかにコプラナーPCBもこれに含めてTDIを提案するという方向が出されていることは事実でございます。
  177. 山下栄一

    ○山下栄一君 いずれにしましても、去年の千八百万円の予算で能勢の美化センターの清掃作業員の調査だけをされておるわけでございますけれども予算の問題もあったと思いますが、私は全国の清掃作業員の方の調査もやるべきではないかと。三月に、結果がまだこれは出てきていないわけですけれども、私は非常に高濃度の血液中のダイオキシン濃度が検出されているというふうに聞いております。  先ほど、能勢のお二人の方、労災認定を求められている方のお話をしましたけれども、この方々も労働省の検査を受けておられるわけでございますから、まさにクロスチェックという形で国はどういうデータを出すかということが注目されておると思います。  この結果によれば、日本全国の清掃作業員の方、これは地方公務員扱いになっていない方がたくさんいらっしゃるわけでございます。下請の方々、極めて厳しい労働環境で働きながら非常に待遇が悪いという状況の中でも作業をされておるわけですけれども、民間の方もたくさんいらっしゃいます。  そういうことも視野に入れて、総理大臣中心のダイオキシン対策関係閣僚会議でしっかり検討していただきたいというふうに思いますが、この点、労働大臣総理大臣にお伺いしたいと思います。
  178. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 能勢町の焼却施設で働いておられる百人前後の方に関しては、お話のとおり今月中に調査結果を個々の労働者の方々にお知らせできると思います。  そして、全国の焼却施設に関しましては、厚生省、環境庁に今調査をしていただいています。その中でプライオリティーの高いところから同様なことをしていきたいというふうに考えております。
  179. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) せっかく発足いたしましたダイオキシン対策関係閣僚会議でございますから、その中で十分いろんな検討をさせていただきたいと思います。
  180. 山下栄一

    ○山下栄一君 腰を引かないで、腰の据わった対策をしていると。総理大臣が内閣の最重要課題の一つとして取り組むとおっしゃったその姿勢をこの問題でもぜひ示していただきたいというふうに思います。  それと、余り時間がございませんので、今回の対策会議で調査される予定のお茶の話でございますが、私はこのお茶の調査は本当にいいかげんな調査をされる予定なんだなということを感じております。  まず、この発端は、環境総合研究所の調査によって埼玉県産のお茶の濃度が大変高かったということでございます。それがわかった途端に次の日に、この問題も後から追加されてお茶も調査しようということになったというふうに聞いておるわけでございます。  この閣僚会議の資料の中にこういうふうに書いてあります。「二月十八日に埼玉県が公表した環境総合研究所の茶のデータについて、厚生省及び農水省は、水に極めて溶けにくいダイオキシンの性質から、通常のお茶の摂取では、健康影響はないと考えている旨の説明をし、関係者に冷静な対応を要請」したと。  これは基本的におかしいと私は思います。埼玉県では、埼玉県に限らずでございますけれども、お茶の葉っぱをお湯に入れて出てきたのを飲むだけじゃなくて、もともとのお茶の葉っぱを食べている、そういうことがあるわけです。埼玉県の学校給食でも、パンに入れたり、またまぜ御飯にしたり、ふりかけにしたり、学校給食で使われている。  だから、水に極めて溶けにくいから大丈夫だ、健康影響はないというのは、これは全然おかしい。こんなことで大丈夫ですなんというようなことを言うのは極めて無責任な政府の対応ではないか。  農水大臣、厚生大臣にお伺いしたいと思います。
  181. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘の、この三・八ピコグラムという農作物はお茶であるということが御質問でございますが、そもそも私どもといたしましては、二月一日のニュースステーションのあの報道が極めて不正確、あるいはまた場合によっては事実とかけ離れた報道であるということが事の発端にあるというふうに理解をしております。  ちょっと経緯を申し上げますと、まずホウレンソウがおかしい、ホウレンソウが三・八であるかのごとき報道があって、調べてみたら実はホウレンソウはそうではない、もっと低い数字だと。しかも、ホウレンソウ何グラムでアウトというのは、ホウレンソウに大気や水を加えた数字でもってアウトだというこの報道のいいかげんさ。  その延長の上に、実は三・八というものはお茶であるということでございますから、まずその製茶業者から調査をした数字そのものについても、私どもとしてはそれを前提に議論すべきではないと現時点では言わざるを得ないわけでございますが、仮にお茶についてそういう数字を前提にしての御質問だといたしましても、お茶は極めて水に溶けにくいという性質、またお湯に移行することは非常に少ない。さらに今、先生御指摘のように食べるということでございますけれども、食べるに関しましても、毎日何十グラムあるいは食べ続けなければそういう基準値にならないということ等々から、現時点でのデータの知見が少ないということも事実ではございますけれども、所沢のお茶に関しても直接的に直ちに健康に影響を及ぼさないものと考えております。  しかし、今データが少ないわけでございますので、農水省あるいは県、市、共同でお茶についても現在調査中でございまして、今月中に結果を公表できるというふうに考えております。
  182. 山下栄一

    ○山下栄一君 ちょっと時間がないので、厚生大臣、結構です。済みません。  農水大臣、この健康影響はないという理由がおかしいと僕は言っているわけです。水に極めて溶けにくいダイオキシンの性質から、通常のお茶の摂取では健康影響はないということは、葉っぱの方を食べるということの危険性といいますか問題点を全然指摘していないわけですね。それがおかしいんじゃないか、こんな理由で静めるのはおかしいと言っているわけです。まして農水省は一度もこの地域のお茶の調査もされたことはないんでしょう。  だから、そういうことでは納得できないというよりも不安がかえって広がるというふうに、何といういいかげんな理由で安全宣言まがいのことを言うのだという声があるわけでも何でもなくて、こういうふうな理由自身がおかしいんじゃないのかと。実際、学校給食で食べているわけですから、葉っぱそのものを。こんな理由を言われたらかえって混乱を起こすんじゃないか、こういうように思うわけです。  厚生大臣どうですか。
  183. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 基本的にお茶につきまして、今、農水大臣の言われたとおりだと思いますが、厚生省の方では食品の安全性という点からいろいろアプローチしておるわけですが、平均的な私どもの食生活では食品の総摂取量に占めるお茶の割合は極めて低いというように見ておりまして、同時にダイオキシンは今お話しのように水に溶けにくい性質を有すると。そしてお茶というのは、今食べるということがございましたが、私どもとしてはその量は把握しておりませんので、通常はお茶は、お茶を入れるという言葉にあるように、お茶の葉っぱから湯に移行する過程でダイオキシンがどのようなものであるかということで健康影響の判定をしたわけでございます。  これちょっと細かくなって恐縮なんですけれども……
  184. 山下栄一

    ○山下栄一君 結構です。いいです、もう時間もありませんので。
  185. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それでは、そういうことで私どもとしては、なるほどおっしゃられるとおり葉っぱの点は着目して、どういう熱を加えてどういう食品にしているかということも含めてやはり検討させていただくことにいたしましょう。
  186. 山下栄一

    ○山下栄一君 だから、お湯を入れてお茶を注いだらどれだけダイオキシンというのが出てくるんだということは、二%とか言われているけれども、そんな問題じゃないと。お茶を使った健康料理、お茶は健康食品だと。先ほど申したふりかけにしたりまぜ御飯にお茶の葉っぱを入れたりしているわけですから、お茶の葉っぱそのものがもし汚染のレベルが低くないのであるならば大変な問題だということになってくるわけですよ。視点が全然違うような理由でこういう静めるということについては非常に問題だ、取り組みがおかしいというふうに私は申し上げているわけです。  それで、この調査ですけれども、二月十九日から緊急に調査されるわけですけれども、これはもうホウレンソウの調査と全然違う調査をされるわけです。今お茶は農家は栽培していませんよね。新茶は五月。そのお茶はどこの産の、間違いなくその産地で栽培されたお茶が製品として、製茶として今販売されている、その原産地はここだということをしっかり特定できるのか。まして環境庁は、その栽培環境も大気も土壌も関連調査を行うというふうに書いてあります。ホウレンソウの場合は、ホウレンソウをつくったそのビニールハウスからとってくる、そのとってきたときの周りの環境はどうだということを関連して調べるわけですけれども、現在の製茶、仕上げ茶の場合にはそういうことができない。環境調査しようにも、とってしまった後のを調べるわけですから環境の関連も調べられない。そんなことをどうしてできるんでしょうか。国がしようとしている調査は、全然これは国民の信頼性を確保するというような調査じゃない、このように評価しますが、厚生大臣、どうですか。
  187. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 所沢産のものであるという前提でその経路を確定して調査すべきものだと思います。  しかしながら、今申しましたように、お茶を精製してつくる段階では熱処理も行われますし、いろいろ変化を来しますので、例えばホウレンソウの場合も生のままと煮沸した場合では非常に影響が違います。私どもとしては、お茶を食べるという前提での調査はしていないように思いますけれども委員の指摘されるように、理論的にはそれの経路がはっきりしなければ、静岡なのか宇治のお茶なのかわからないのにという問題は確かにございましょう。  しかし、お茶を入れて飲むという場合には、非常に少量のものであるということはどういう場合でも大体言えるのではないかと思います。
  188. 山下栄一

    ○山下栄一君 だから、国民の皆さんに安心していただけるような調査をしないと。そんな調査はできるはずがないんですよ。今お茶は栽培されていませんし、仕上がったお茶も、それは何カ月か前のときにとったお茶であるわけですから、周りの土壌とか大気はどうであったかというようなことをセットでやらないと調査しようがないわけですよ。  だから、この調査は、もうちょっと後からやるんでしたら、五月の新茶のシーズンに、すべての発生源から周りの環境から栽培地からそして工場での仕上げから、セットで全部調査して、この結果だということなら安心できるけれども、こんな調査は全然意味のない調査だ。  総理大臣、どうでしょうか。おかしい、こんな調査。
  189. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今回の調査は、確かに新茶のシーズンの前でございますから、これから出てくる所沢産のお茶ではございませんけれども平成十年度産の所沢の二試料、サンプルですね、それから入間市産二試料、狭山産二試料等々でございまして、そのお茶の出どころといいましょうか、地域は特定できるわけでございますので、それを前提にしてまず早急に調査をしたい。  それからまた、一般論として、全国的にも調査を今後はやりますが、緊急性の観点からそういう形で調査をしているところでございます。
  190. 山下栄一

    ○山下栄一君 私は、お茶の調査に代表されるように、何かこれは本当に小手先の対応をされようとしている。総理大臣は最重要課題とおっしゃっているけれども、腰の据わった、この最も汚染度の高いと言われている所沢周辺、ダイオキシンの人体実験場という話もありますけれども、その場所のきちっとした安心できる調査をしてくれないと、いつまでもこの問題は引きずったままいくのではないかというふうに感じております。  時間がもう参りましたので、きょうはこの程度で終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  191. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で山下栄一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  192. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、小池晃君の質疑を行います。小池晃君。
  193. 小池晃

    ○小池晃君 日本共産党の小池晃です。  私は、実施まで一年余りとなっている介護保険制度について質問をいたします。  まず、冒頭、総理にお聞きしますけれども、二月に全国町村会のアンケート結果が発表されました。財政面から見た介護保険制度の円滑な運営について、できないと思う、これが九・六%、そして現時点ではわからない、七二・八%。一月二十二日の読売新聞社の全国首長アンケート、これでは自治体の最重要課題に介護保険を挙げたのが九割、運用上の不安として財政負担の増大を挙げたのが八六%であります。  実施一年前にしてこれだけの不安が表明された制度がこれまであっただろうか。重い保険料負担、これで介護サービスがもし不十分であれば、よりよい老後の生活を求める国民の期待を裏切る。逆に、消費税を五%に上げたときに匹敵する国民生活への打撃となるのではないだろうか。保険料を一定水準に抑えながら介護サービスの整備を進める、保険料、利用料の減免制度などの低所得者対策も進めていく、そのためには国の責任が重大であります。  地方自治体の介護保険の運営について、国が責任を持って十分な財政援助を行うことが求められているのではないでしょうか。
  194. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) いよいよ介護保険制度が開始をされるに当たりまして、各地方自治団体のせっかくの努力に対しまして、国としても応分の力を注いでいかなきゃならぬということで対応してきておると思います。  昨年、全国町村長会議がありました後、官邸でその代表の皆さんもおいでいただきまして地方自治団体のお取り組みについて大変熱心なお話がありましたが、その中でも今、委員が御指摘のような点について、初めてのことでありますだけに非常に苦労されておる趣旨はお聞きをいたしました。  そういった意味で、政府としては全力を挙げて今地方自治団体の協力を得て、これが実施に万遺漏なきを期しておるところでございますが、その実態につきましては厚生大臣から御報告させていただきたいと思います。
  195. 小池晃

    ○小池晃君 初めてだから不安というのじゃなくて、十分な財政援助をされる見込みがないから不安が広がっているんですよ。そのような答弁ではやはり国民の不安、自治体の不安にこたえることはできないと私は思います。  そこで、厚生大臣にお聞きしたいと思いますが、現在、地方自治体の単独補助事業、これを介護保険制度の発足を口実に廃止する動きがございます。厚生大臣は、二月二十三日の当院質疑で、「これはむげにカットしっ放しにするわけにもいかない」、「どのような財源措置でどのような措置が可能かというのは、私どもはやっぱり問題意識として持っております。」と答えておられます。また、要介護認定モデル事業では今在宅介護を受けている方の一〇・一%が自立とされておりますけれども、そういう場合もこれは何らかの在宅サービスが必要なことは少なくない。こうした人たちにとって自治体の裁量による独自サービスというのは、これは重要な意味があるのではないか。  そこでお聞きしますけれども、介護保険施行後も介護事業者に対する自治体独自の補助制度、これは自治体の判断で一般財源で可能である、そうですね。それが一点。  そして、それとは別に、いわゆる上乗せ、横出し事業、市町村特別給付とか保健・福祉事業がございます。こういったものについては自治体の裁量で行うことができるし、そしてその財源として保険料だけではなくて、公費の繰り入れが可能であるかどうか、そのことを御確認願いたい。
  196. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 自治体の行う上乗せ、横出しのサービスの点についてまずお答え申し上げますが、これは社会保険方式によって標準的なサービスを保障するということになりますれば、当然出てくる問題でございます。  私が前回申し上げたのは、そういった福祉実態福祉事業の市町村による差がございますが、実態があるのをむげにこれを切り捨てるだけでいいのかという問題意識を持っておることを申し上げたわけでございまして、これは各市町村でそれぞれの必要に応じて対応をしていただくということであれば、一般論として、国費の補助というような福祉事業の継続というようなものでなしに、市町村の一般財源で措置はあるいは可能なのかなという見解を私は現在持っております。
  197. 小池晃

    ○小池晃君 それははっきりしていると思うんです。これまでの厚生省の見解としても、都道府県の一般会計支出により補助金を交付するか否かは都道府県独自の御判断にゆだねられるべきものということで、単独補助事業は可能だということははっきりしている。  ちょっと今はっきり明確でなかったんですが、上乗せ、横出し、市町村特別給付、保健・福祉事業についても公費の繰り入れは可能だということでよろしいんですね。
  198. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは保険システムの中の補完的に公費を投入するということではございません。別個な措置として対応することはあるいは市町村の独自の判断があるだろうということでございます。
  199. 小池晃

    ○小池晃君 補完的なサービスじゃないというふうにおっしゃいましたけれども、これはやはり今大きな問題が起きているのは、介護サービスを充実させていこうとすれば、一方保険料は上がらざるを得ないという問題がある。そして、保険料を抑えようとすれば介護サービスの整備がなかなか進められない。いわばジレンマに陥っているわけであります。  それをどう解決するかという点で、補完するものでないとおっしゃったけれども、やはり自治体で公費を投入するルートを持っておく、そのことはこの矛盾を解決していく上では一つの方法ではないか。そして同時に、やはりそのために国が十分な支援をしていくということが必要なんだということをここでは強調しておきたいというふうに考えております。  その上でお尋ねしたいんですが、要介護認定モデル事業の結果でございます。現在の特別養護老人ホーム入居者の六・一%が自立、要支援というふうにされて、施設入所の対象外となるという問題です。これは介護難民というようなことも言われておりまして、大変なことであります。  厚生大臣は、五年間の経過措置期間中は弊害のないように配慮をしていきたいというふうにお述べになりました。経過措置期間中の介護報酬として、もしも現在の措置費よりも大幅に下回るようなそういう金額が設定されれば、五年経過措置があるとはいっても、五年を待たずに退所を迫られる、そういうインセンティブが施設の方に働かないという保証はないわけであります。  大臣のおっしゃった弊害のないようにということの意味は、経過措置期間の自立、要支援の報酬というのは、これは特養ホームの経営に支障を来さない、現在の入所者が安心していられるような報酬上の配慮をする、そういう意味と考えてよろしいですか。
  200. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 基本的にはそう考えております。
  201. 小池晃

    ○小池晃君 同時に、経過措置が終わった後、五年後のことも大変重要であります。  厚生大臣は、当委員会で「五年間たちますと退所していただくことになります。」、こういうふうにおっしゃいました。そんなに簡単なことなのかということであります。  厚生省は、九七年度と九八年度に特別養護老人ホーム入退所計画実践試行的事業、これを行っております。きょう朝日新聞でも報道されております。実際に入退所計画を作成、実践するモデル事業、その九七年度の結果、これがここにございます。  五十七施設、四千百四十人について検討を行った。この結果、三百三十八人に退所計画が策定された。ところが、そのうち一体何人が退所計画に沿って退所したか。四千百四十人のうち退所者二十人、たった〇・五%なんです。ごくわずかしかいない。そして、その退所例というのも、極めて特殊なそういうケースが挙げられております。  例えば、北海道の例ですが、これは八十二歳の男性で、この方は特養老人ホームを退所して養護老人ホームに移ったというケース。この方の御夫人が実は特養ホームの待機者なんだと。御主人が養護老人ホームに移った方が併設の特養ホームに入所することができて、結果として同じ屋根の下で生活ができて大変感謝された、そういう話なんです。  それから東京都の例。東京都は独自に報告書をまとめております、東京都の方で。  二十八例について退所計画を作成したけれども、そのうち二十六例は介護保険制度以外のサービスによる援助が必要とされた。すなわち介護保険だけでは退所は不可能だということだったわけです。  実際に退所された方は一名だけ。その方のてんまつは、この事業報告書に書いてあるんですけれども、退所後、在宅での生活は、自力で動くことが少なくなり筋力の低下が見られ、日常生活の能力は落ちていると見られる。要するに、退所して状態が悪くなってしまったということなんです。  厚生省自身が音頭をとってお調べになったこの結果を見ても、特別養護老人ホームの入所者が退所をする、大臣、五年後には退所をしていただくとかなり簡単におっしゃいましたけれども、これは極めて困難なことだということを示すものだと思うのですが、いかがでしょうか。
  202. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 五年後の退所の規定につきましては、これは介護保険法自体に規定されておりますから、制度としてそうなっていることを前提とした上で、なお退所者の手当ては、いろいろの施設、ショートステイ施設に附置する宿泊施設等の整備も行いますし、そういった受け入れ体制を整えつつ移行をさせていただきたいというように今申し上げるほかはございません。  具体的なケースがそれぞれございますれば、それはまた市町村の中でケアマネジャーその他相談をしていただいて、強制退去というようなわけにもまいらぬでしょうから、十分高齢者の事情をそんたくしながら、適切な対応をするようにこれは指導していかなければいけないと思っています。
  203. 小池晃

    ○小池晃君 受け皿事業といいますか、その後の施策について聞いているんじゃないんです。それは後で議論したいと思うんですが、そうではなくて、その前提として、大臣の御認識として、特養老人ホームに入っている方を退所させるということ自体、これは極めて難しいことなんだと、できないとは言いませんけれども、かなり困難な仕事なんだということを、そういう認識が前提にあるかどうかなんです。それなしにその後の事業のことを議論しても、これは余り実のある議論にならないと思うので、その認識をお伺いしたい。
  204. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今の措置でやっておる老人ホームの入所基準と介護保険で行う介護度に基づいた収容とはおのずから基準が違いますから、差が出ます。  そして、現実に入所されている方からすれば、今までこのような処遇を受けておったのにもかかわらず何ということかという感じを受けられる可能性もあるケースは、これは否定できないと思います。  それは、今までの特別養護老人ホームというものが介護度ということだけでなしにいろいろな諸事情で入所いただいておる方も現実にはございますから、そういった方々は介護の観点からいえば退所していただくというのが筋ではないかと思うんですね。  ただ、困難性ということになりますと、それは私どももそう簡単にすぐアパートへ引っ越せというようなぐあいにはいかないだろうとは認識しております。
  205. 小池晃

    ○小池晃君 これは大変困難な課題だということだと思うんです。  東京都の事業報告、先ほど御紹介しましたけれども、こうも書いてあります。退所後のサービスについて検討した結果、退所者が在宅復帰できるのに必要なサービスを検討した結果、「住居の提供、家事全般、後見人、食事、外出、常時の見守りといった援助は、介護保険制度のサービスでは満たされない」、「これらの援助を行う仕組みが作られない限り、在宅復帰と在宅生活の継続は困難となる」、こういうふうに結んでおります。  要介護認定で自立、要支援となった施設入所中のお年寄り、退所が極めて困難であると。五年間の経過措置が終わってからも、機械的に退所させるようなことをするのではなくて、やはり何らかの責任を持った公的な、経過措置でない恒常的な制度が私は必要であるというふうに思うわけです。  その点で、先ほどちょっと大臣おっしゃいました受け皿となる事業の問題でございますけれども一つは、高齢者生活福祉センターというのも出されております。ところが、これは十人から二十人の定員の施設で自炊なんですね。生活援助員は一人。アパートの管理人です、言ってみれば。老人アパートなんですね。これだけではやはり特養退所者の生活保障というのはできないだろう、不十分だ。  それから、在宅の高齢者保健福祉推進支援事業、これは在宅に帰すという、そういう事業ですね。これは予算規模百億円であります。  こういうことでは、介護保険制度が始まる時点でこういう予算規模ではこれは全く不十分だというふうに思うんですが、その辺はいかがですか。
  206. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ショートステイ施設等に附置する施設はこれから充実していきたいと思います。  それから、もう一つが……
  207. 小池晃

    ○小池晃君 生活福祉センター。
  208. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 生活福祉センターですね、今の前者の話は。  それから、もう一つの高齢者の保健事業のことに、百億の問題に言及されたと思いますが、この問題は介護保険がまだ実施されておりませんからこの程度の規模になっておりますが、私どもとしては、そこは、その側面は、やっぱりホームヘルプサービスの必要性というのはあると思います、要支援の方々でも。したがって、それは重点的に来年のスタートに合わせて配慮すべきものかなというように思っております。
  209. 小池晃

    ○小池晃君 これは「介護の経済学」という厚生省や経済企画庁の官僚の方が書かれた本です。この中でも、「従来の施策で要介護者とみなされていたものが介護保険の対象とならない事態が明らかになれば、経過措置ではなく、何らかの恒常的制度が求められる」、そういうふうに書いてあります。  経過措置が終わったからといって簡単に退所を迫ることはできない、何らかの施設入所が続けられるような恒常的制度、あるいは在宅を支える十分な施策、そのための財源措置が必要であることを主張して、次に移りたいと思います。  次に、二月二十二日の医福審の合同部会、ここで新たに議論された問題ですが、訪問看護婦やヘルパーが指名料を徴収してもよいとそれまで言われていたんですけれども、これは撤回されました。これは撤回されて当然だと思います。しかし、施設入所の際の差額ベッド料、特養老人ホームの差額ベッドですね、これは政令に盛り込むという諮問がされております。  これは重大だと。やはり社会福祉施設の差額ベッドなんというのは前代未聞だというふうに思うんです。ただでさえ施設入所が非常に困難になる上に、ここに経済力による差別がさらに持ち込まれる。最も施設入所の必要性が大きい低所得者が取り残されていくんではないか、そういう心配が出るのは当然だろうと。三月八日の、おとといの合同部会でもこれは異論が続出したというふうに聞いておりますが、施設介護に対する不安がこれだけ広がっている以上、こういう新たな問題を、新たな障害、困難の種を持ち込むべきではないというふうに思うのですが、いかがですか。
  210. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この点は、今御指摘のように、医療保険福祉審議会で御審議をいただいておりまして、いろいろ両論があるようでございます。その差額を求めるとしても実際には極めてわずかなものであると通常考えられますけれども、その場合であっても利用者に混乱が生じないように、差額を負担できる個室の扱いの明確化や個室としてふさわしい環境整備に配慮すべきである等の意見がございます。  これは現実には、現在の特別養護老人ホームにつきましては個室等の差額徴収は行われておりません。そしてまた、この個室等の差額については運営基準において定めることになると思いますが、これらの審議会の結果を見て最終判断をしていきたいと思っております。
  211. 小池晃

    ○小池晃君 大臣、今まさにおっしゃったように、諮問書にも書いてあるんですよ、実態から見てもその対象は極めてわずかな施設と考えられると。だったら、こんな新たな種を持ち込むことないじゃないですか。これは合同部会の見坊委員の方からも、今これだけもめているのに、論議の種になるようなことはできるだけ消していただきたいと二月十五日の議論で言われております。  そして、厚生省自身が出している九八年八月の「介護保険制度Q&A」、厚生省の介護保険制度施行準備室が監修されて出されている本があるのです。それを見ても、「特別養護老人ホームの差額ベッドについては、施設整備に高率の補助金が導入されていること、需給が逼迫していること等から、慎重に検討すべきと考えています。」と書かれているのですね。補助金の入ったベッドは差額ベッドを取らないというふうにされるようですけれども、それにしても、もう前に言っていたこと、需給が逼迫しているという事情から見ればやるべきではないと厚生省自身がおっしゃっていたのですから、これはやはり撤回されるべきだというふうに思いますけれども、いかがですか。
  212. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 答申の趣旨を踏まえながらひとつ検討させていただきます。
  213. 小池晃

    ○小池晃君 さらに高額介護サービス費の問題をお聞きしたい。  これは検討をされているようですが、医療保険の高額療養費制度、これを参考にされているというふうに聞いております。しかし、介護保険制度では、今仮に設定されている利用料を見ても、例えば療養型病床群は四十六万一千円であります。それから、在宅で要介護度Ⅴの場合は三十五万円であります。この一割が利用料であるとすると、これは四万六千百円あるいは三万五千円、このぐらいの水準になってくるわけですね。  一方、医療保険の高額療養費制度というのは、これは低所得者には減免がございますけれども、六万三千六百円、多数該当といって一年間に三カ月以上六万三千六百円を上回った場合でやっと三万七千二百円、こんな水準をこのまま当てはめたのでは高額サービス費といっても免除にならない。ほとんど制度として有効ではないのではないか。施設介護の場合というのは、これに食費が加わるし日常生活費の負担があるわけです。しかも、介護というのは、入院は短期間で済む場合も多いですけれども、介護は長期間継続的な負担が避けられない。当然こういう介護の実態を考慮した検討がされるべきだというふうに思うのです。  その点で、医療保険の高額療養費の仕組み、例えば多数該当を最初から適用することであるとか低所得者のために一段階つくる、こういう仕組みは参考にしたとしても、この金額は参考にならない、すべきでないというふうに考えるのですけれども、いかがでしょうか。
  214. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) この介護サービスの一割負担の上限の問題でございますが、医療保険の高額療養費制度、今、委員のおっしゃられるとおりでございまして、六万三千六百円を超える場合にはそれは保険で見るという仕組みでございます。この額を私どもは一応のめどにはいたしますが、こういう高額なものにはならないと老人の場合には思います。  しかし、その額を幾らに上限設定するかについてはなおこれからいろいろ検討の上決定してまいりたいし、それから負担上限額の設定に当たりまして、高額療養費は過去一年間に三回以上の高額療養費の支給を受けている場合の自己負担上限額の特例ということでございますが、介護サービスは非常に長期にわたって継続してサービスを受けられるという性格もございますから、そういう点も考慮しながら、考え方としてはある程度そういうものも視野に置きながら検討していくのは当然じゃないだろうかなというように思っています。
  215. 小池晃

    ○小池晃君 その高額療養費制度を医療保険の世界のような高さにはしないということだろう。  もう一つ、今のお話の中で、低所得者に対してはもう一段階設けるということも考慮されているのかということと、医療費の場合は三カ月たってから初めて多数該当となるんですが、介護の場合はもうこれは初めからわかっているわけですから、最初からそういう考え方でいくのかどうか、そこをちょっと追加的にお聞きしたい。
  216. 近藤純五郎

    政府委員近藤純五郎君) まだこの中身については決まっておりませんけれども先生がおっしゃったようなことも参考にしながら検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  217. 小池晃

    ○小池晃君 最後に、これは私が昨年十二月の予算委員会質問させていただきました要介護認定の問題について質問をしたいと思います。  私が質問した九八年度モデル事業、これの結果はおかしいんじゃないかというふうにこの場で質問いたしましたが、これは案の定というか、市町村からも多数の、二千件近いと言われていますけれども、問い合わせが殺到しているということであります。昨年私が指摘したこと、これと同じようなことが多くの市町村から指摘をされております。これは直ちに正すべきだというふうに思います。  そこで、厚生大臣に伺いますけれども、大臣は、きょうもおっしゃいましたが、二月二十二日の当委員会でも、第一次コンピューターの処理がブラックボックスであってはいけない、だれにもわかるような仕組みでないといけない、初めての試みであるだけに、多くの方から意見をいただいて、それに基づいて準備をしていくことが成功の秘訣だ、こういうふうにおっしゃっています。  少なくとも、今広がっている不信感、これをこれ以上募らせないということが必要だと思うんです。そういう点でいえば、ソフトはでき上がったところで公開するというふうにおっしゃっていますが、それでは今の不信感を払拭することはできない。  どういう考え方で要介護認定がされているのか、できるだけわかりやすく、だれでも介護サービスを受ける人が、自分は要介護の何段階にあるかということが自分説明を聞いてわかるような、そういう考え方というかロジックというか、こういったものを示す必要があるんじゃないだろうか。そのことはもうソフトの完成を待たずにすぐにでもやるべきことではないかというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。
  218. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 認定ソフトのブラックボックスの公開化については、今、委員がおっしゃられたとおり私がそう答弁しておりまして、基本的には内容が確定し次第公開していいのではないかと思っております。ただ、委員のおっしゃられるように、要介護認定の考え方とかあるいはそれに関連するデータ等につきましては、現場で実際の業務に携わる市町村の関係者の方々を初め介護保険の利用者、その家族に対して提示する方法を工夫してまいりたいと思います。  なお、ブラックボックスと申し上げましたが、介護認定はいろいろの接触した情報を結局一つの時間帯に還元していくわけですから、それを結果として判定基準にして、しかもケアプランの中に反映していくわけですね。ですから、そういう単純化の作業があると思います。質を単純化して、そして給付の定量化を図っていくということだと思いますので、こういった点の仕組みを含めて、私はこんなに手があれなのにあの人はそれよりもいいのにどうなんだとか、いろいろの議論がなされていることも承知しておりますから、そういう基本的な考え方等は明確に説明をさらにする必要がある、PRはよくしないと正確な理解が得られないということだと思います。
  219. 小池晃

    ○小池晃君 そういう点では、その考え方、どういう考え方で認定をするのかということについては、ソフトの完成を待たずにできるだけ早く公開するということでよろしいんですね。それはそういうことでよろしいのかどうか、ちょっと確認したい。
  220. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) そのとおりでございます。
  221. 小池晃

    ○小池晃君 この要介護認定の問題は、介護保険制度の根幹にかかわる大きな問題だというふうに考えております。  日本医師会も、状態像を中心にして判定するやり方にすべきだ、専門家の意見を、二次判定を重視したやり方にすべきだというふうにおっしゃっております。やはり認定審査会の専門家のこの判断を重視するやり方、これが一つ大切であるということと同時に、体の機能だけではなくて、要介護者の家族構成であるとか、あるいはその経済状態、住宅事情、こういったものも総合的に判定される仕組みが必要である、そういうことをぜひ要介護認定のシステムをつくる際に反映させるべきだということを要求したいというふうに思います。  その上で、関連質疑井上美代議員にお許しいただきたいと思います。
  222. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。井上美代君。
  223. 井上美代

    井上美代君 日本共産党を代表して質問をいたします。  私は、新日本婦人の会で、十八年間にわたりまして我が子が通う学校ウオッチング運動をやってまいりました。この運動は、学校の施設を中心に、改善を必要とする箇所を総点検し、国や自治体に改善を求めて実現させていく運動でございます。私は、今も新日本婦人の会の会長をしております。そうした中で、これまで自治体などに随分要望もしてやってまいりました。教育委員会にも行きましたし、またいろんな議会も回って歩きました。そうした中で実現したものは、教育関係だけで三千六百十三項目に上ります。  こうした運動をやってきた者として、きょうは、小学校、中学校、そしてまた高等学校の危険・老朽校舎が深刻な現状にあることを述べまして、総理そして関係大臣にその改善に御努力をくださいますよう求め、質問をしたいと思います。  資料が皆様方のお手元に行っておりますでしょうか。その資料をぜひ見ていただきたいと思います。  学校ウオッチング運動で、二十四の都道府県、二百八十七校の実態を調査してまいりました。調査結果はかなり膨大でありますけれども、その中から特に資料にありますように七つの問題に分けましてその実情をまとめ、百二十七の問題点を挙げております。これで学校実態がどうなっているかということが委員の皆様にも大体おわかりいただけるんじゃないだろうかというふうに思います。  実態の「その一」ですけれども、私は時間が限られておりますのでその黒丸のところを引用したいと思いまして黒丸をしておりますが、子供の「命にかかわる危険な実態を放置」というのがあります。ここでは、「地震があったら倒れると思われる所あり、「危険立ち入るな」の立て札が」、「校舎の外壁がはがれ落ち、体育館の通路の屋根に落ち、そこからぶち抜けて下に落ちた。」などがあります。  「その二」は、「「くさい、汚い、暗い」トイレ」です。トイレに窓が一つもなくて悪臭が強い。くみ取りトイレが五個あるが、嫌で我慢して膀胱炎まで起こしてしまった子供がいる。幾つもの県でトイレは男女一緒。そして、使用禁止のトイレがあった、二、三カ所にならないと修繕に来てくれない。トイレのかぎが閉まらず、使用中に二回もあけられた、などなどあります。  「その三」の「学ぶにほど遠い教室」のところでは、「窓のサンの間から大雨がもれて教室が水びたしに」、そしてまた「教室の床が波うっていて机がガタガタする」などです。  また、「その四」の「あまりにお粗末な特別教室や体育館」では、「体育館は子どもたちにとって最悪のコンクリート床、夏暑く、冬寒い」など。  「その五」の「図書室、保健室カギがかかっている所も」では、養護の先生は一日百人もの生徒が来てとても大変だというようなことがあります。  「その六」では、「最低のプライバシーもなし」、これでは体育授業のための着がえを教室で男女が一緒に行っている、また校庭で女子が着がえをしているなどなどあります。  「その七」の「教職員や父母が備品調達・修理に奔走」のところでは、一年生の教室が暗く担任らがペンキ塗りをした、それでもまだ暗いというふうに言っておりますし、トラックを私費でレンタルして職員がほかの学校で余っている備品をもらいに走ったということなどなど、本当にこれを見ていますと今の子供の学校がどんなに荒れているかということがとてもわかります。  私は、ぜひ見ていただきたいと思って資料の一番最後に写真を入れました。この写真もぜひ見ていただきたいと思います。  左側、これは壊れたガラス窓のかわりにベニヤ板が張ってあるんです。ベニヤ板が張ってあればもう採光もない、ますます暗い体育館になっているということがわかります。また、真ん中にトイレがぽつんとあります。これは小学校の一、二年生用だけのくみ取り式のトイレなんです。使うのが怖いというので子供はここを使わないで、遠く離れた高学年のところに行っているんですけれども、そういう中身です。また、右側のはひび割れしております。そして、浮いている土台が柱で支えてあるんですけれども、そういう中身です。この驚くような実態、これをぜひ見ていただきたいというふうに思っております。  先ほどの調査の一番最後の三枚目の一番下になりますけれども、私ども運動をする中で改善をさせていくんですけれども、その改善がどんなに子供を喜ばせ、元気づけているかということがここに出ております。  「改修できれいになり、生徒が明るく」というところには、九七年の改修で校門やトイレ、図書室がきれいになった。中でも、トイレは生徒にとって何よりの喜びとなっている。また、環境が変わって校舎や校庭が広くなり、子供たちが明るく伸び伸びしてきていると。改修、改善が本当に子供たちの心まで明るくしている、元気づけているということがはっきりしております。そういう意味でも、このぼろぼろ校舎になっている荒れた学校を改善していくということが緊急に求められているというふうに思っております。  私はパネルも持ってきているんですけれども、その前に私は大臣にお聞きしたいというふうに思うんです。  まだ現場に行っておられないというふうに思うんですけれども、私がこの資料等で示しましたのを見てどのように総理はお考えになるのか、また文部大臣はどのようにお考えになるのか、それをぜひ聞かせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
  224. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私はかなり、もう既に十数校を歩いています。しかし、これほどひどいところはない。  ただ、私が不思議に思うのは、何で設置者である自治体がこれを早く手をお打ちにならないのか、このことに関してはやはり自治体の問題であると思っております。こういう施設を、非常に壊れていたり危なかったりするときには、やはりその市町村及び県できちっと手当てをしていただくべきだと私は考えております。
  225. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 公立学校の施設整備は当然重要と考えておりますが、その維持管理につきましては基本的に学校の設置者が行うものであります。  他方、国は教育水準の維持向上を図る観点から、公立小中学校の校舎等の新増築及び改築に要する経費につきまして補助を行っておるところでございまして、改修事業につきましても一定規模以上のものにつきましては国庫補助を行っておるところでございまして、今後とも市町村の事業計画に支障のないよう努めてまいりたいと思いますが、今ほど文部大臣から答弁をされましたが、それぞれの設置者におきまして、先生今御指摘のような地域があるとすれば、一日も早く改善していかなければならないものと考えております。
  226. 井上美代

    井上美代君 私は、今感想を言われたんですけれども、やはりまだ現場がどんなになっているかということを実感として感じておられないからああいう答弁ができるんだというふうに思うんです。地方で随分私たちもやってきておりまして、努力はしているんです。それでもこのように荒れているということですので、私は国会でこれを取り上げているわけなんです。地方自治体だけでできるならばここで取り上げなくてもいいんです。そこにあります。  私は順序を追って御質問をしたいのですけれども、何といってもやはり現地を見てほしい。文部大臣は幾つか見てくださったということでよかったと思っておりますけれども、もっと見てほしいと思うんです。だから、現場へ行って見るということが大事。  NHKのテレビで文部大臣子供たちと直接お話をされましたよね。そして、子供たちの声を聞いて答えておられました。そのテレビを見ましたけれども、非常に子供たち質問は鋭いです。要望も鋭いです。それにやはり私は、文部大臣も思われたと思いますが、大人の責任、そして国の責任というものを非常に感じてあの何日かを過ごしました。  やはり私は、直接触れる、直接動く、このことが非常に大事であると思います。私、御案内してもいい、御一緒に行ってもいいと思っているんですけれども、ぜひ学校を一緒に見ていただきたい、このように思います。総理大臣、お忙しいとは思いますけれども、ぜひ御一緒に見に行きたいと思いますが、いかがでしょうか。
  227. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私はこのところ非常に多くの学校を見ようと努力しているわけです。それで、子供たちと昼御飯を食べたり、先生方と直接お話をしたり、運動場等々を見ているところであります。  しかし、自治体の責任というのはやっぱり自治体でやらなきゃいかぬ。設置者が責任を持たなきゃいかぬ。これは各設置者の問題だと私は思います。ですから、これはやはり先生なり父兄なり父母なりがちゃんとそこで、どこを重点的に直す、どこにきちっと金を使うかということは御自分たちで判断をされてやっていただきたい。  しかし、国としては、例えばトイレのお話がありました、こういうものは重点的にやっています。それからまた、地震対策はやっています。エコスクールなどということはやっている。こういう点で、国全体として見た方がいいものについては、十分とは言えませんけれども努力をさせていただいております。まずは、それぞれの学校でお困りならそこでやっていただきたい。
  228. 井上美代

    井上美代君 総理大臣にも、ぜひ現地に見に行くということで、いかがでしょうか。
  229. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、写真も見せていただきましたので、それぞれの問題について文部省文部大臣もよく見ようということでございますので、その報告を得てみたいと思っております。
  230. 井上美代

    井上美代君 なかなか現地を見るということを渋っておられますが、やはり政治というのは現地を見て初めてここをこう直さなきゃいけない、非常に切実だということがわかるんですね。だから、そういう意味でも私はぜひ現地を見に行くということを言っていただきたいんです。
  231. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私は、かつて国大協の会長だったころに、政治家の人たち、それから文部省、それぞれの人たちに大学を見てくれと言った人間であります。大勢の人を呼びました。そして、国立大学に関しての管理費、施設費を増強してもらいました。そういう点で、国立大学のことであればこれは国が管理者として直接面倒を見なきゃいかぬ。しかし、公立学校というのは、やはり地方自治体がやっていることでありますから、まず地方自治体にお願いしている。  もちろん、私は見て回ります。そのときには、教育はどうあるべきか、特にいじめがないか、あるいは学級崩壊がないか、これは一生懸命見ております。しかし、建物に関しては、まずトイレなどということはやはりこれは地方自治体の責任でやっていただきたい。その上で大きな、先ほど申しましたトイレはかなり重要なことでございますので、国としても特別な予算を出してやっております。  ただ、私は子供たち気持ちを聞きながらやらなきゃいかぬということを最近痛烈に思っています。それは、私たちは西洋便所がいいと思ったらそうじゃないというような声がありますので、これは努力をいたしますが、そういう点で、国としてのやることと地方自治体がやることは分けていかなきゃいかぬと思っております。
  232. 井上美代

    井上美代君 地方は地方でやれというようなお話でございますので、それは後でまた申し上げて質問したいんですけれども、私はどうしても総理大臣にも実態を知ってもらいたい。だから行ってもらいたいけれども、もしどうしてもということであれば、全国調査をやってほしいというふうに思うんです。私は、私たちだけでもこれだけの調査をやっているんですから、国がやれないということはないというふうに思いますので、ぜひ全国調査をやるということをお約束願いたいと思います。
  233. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) その点は御心配なく。  文部省では、従来から公立学校施設実態調査を実施いたしております。特に公立学校の建物の建築年度が幾らか、三十年経たものが何%である、保有面積等の実態把握に努めております。そういうことで……(「面積だけじゃない」と呼ぶ者あり)面積だけでなくて、きちっとした建物の様子も見ております。
  234. 井上美代

    井上美代君 今面積を言われましたけれども、面積では見ていらっしゃるんです。でも、例えばトイレにドアがないとかカーテンだけがあるとか、そういうのを文部省は掌握できておりますか。そういうものがあったらぜひ見せてほしいと思っておりますけれども、それはないんです。だから、やっぱり本当に子供たちのことを思うならば、全国調査をやらないで文部省や国が予算をつけるということはできないと思います。  私は、全国調査をぜひやってほしいんです。それは、なぜこんなにまで現地にも行ってくれ、全国調査もやってくれと言うのかといいますと、先ほどから地方でやりなさい地方でやりなさい、こういうふうに言っておられますが、例えば文部省がこの七千万のお金を決めておられますけれども、その中にやはりトイレなどは対象にならないし、一定の金額にならなければ修理されないんです。だから子供たちは待たされて待たされて、何千万かになるまで待たされるわけなんです。そして現場がこんなに荒れてしまっているんです。  だから、いろんな制度の中にも問題があるわけです。そういうものを調べないで変えることはできないというふうに思いますので、私は全国調査をやってほしい、見にも行ってほしいということをお願い申し上げているところなんです。ぜひよろしくお願いしたいと思います。  総理大臣、いかがでしょうか。
  235. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 先ほどから繰り返して同じことを申し上げて恐縮ですが、学校トイレが児童生徒の健康に影響を与えるということはさまざまな指摘がなされておりまして、御指摘のような状況がございますので、平成十年度第三次補正予算では、教室の改造と一体で整備を行うトイレの改造工事についても大規模改造事業をやっているところでございます。工事費全体でトイレに関しては二千万ということを今計上しているところでございます。
  236. 井上美代

    井上美代君 今二千万の話が出ましたけれども、きのうそれを文部省の方で答弁をされたようで、それはよかったというふうに思っております。  私は、今ここにパネルを持ってまいりました。(資料を示す)今皆さん方は本当に小規模な小さな改築や修繕だろうというふうに思っていらっしゃるかもしれませんけれども、このパネルは埼玉県の例なんです。そして、ここの下のところがこういうふうにあいております。これは沈没してしまっているんです。これは受水槽なんです。受水槽だけれども、校舎もこのように同じようになっています。校舎のところは下の岩盤に支えをつけて支えているんですけれども、それが現状なんです。  このような大きなものになりますと、これはやはり国の予算を追加して、今のままでは直し切れない量と中身があるんです、それを見てほしいんですけれども。だからそういうことで、私は国の予算をどうしてもつけてほしいというふうに思っているわけなんです。  いかがでしょうか、総理。やはりこれは政治的な総理の判断によって今の少子化の問題を克服していく、そこに問題があると思うんです。御一緒に、総理思いも母親の私の思い一つだと思うんですけれども、いかがですか。
  237. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘の学校等の状況につきましては、それぞれ学校を設置しそれを管理する責任のあります各設置者である教育委員会におきましてそれなりの状況を把握し、御指摘のパネルの学校につきましても、多分、私ども承知している限りにおきましては、毎年の地盤沈下の状況、もともとくぼ地を埋め立てられた学校であったために地盤沈下の状況がございまして、そういった状況につきましては毎年県の方におきまして地盤沈下対策の工事を行っているところでございます。  具体的には、空洞の処理あるいはグラウンドについても土を入れるというようなことでそれなりの整備をしておるところでございまして、県立学校につきましては各県におきましてそれなりの対応をとっていただきたいと思っておりますし、また小中学校につきましては、一定の耐力度が出ました建物につきましては、市町村から申請がございますれば私どもとしてはその状況を見まして積極的に補助対象として取り上げてまいりたいと考えているところでございます。
  238. 井上美代

    井上美代君 私は子供の問題を考える立場からきょう質問をさせていただいておりますが、少子化の中で本当に子供を育てるということがとても大変なんです。そういう意味で、子供たちが少しでも豊かに育つようになれば高齢化を抑えることもできるわけなんですね。日本の将来の不安というのも子供がなかなか育ちにくいというところから来ております。  だから私は、まずこの荒れたぼろぼろ校舎を直すことが子供の心を取り戻すことにもなる、お母さんや子供たち、親たちの喜びにもかわるということと同時に、私は、国がこれだけ全国的になってきている学校の荒れを直すことがやはり不況、景気を回復する、そういう大きな仕事にもなるんだということを申し上げたいんです。  それは東京都の場合なんですが、平成九年、東京都の学校工事関係で中小企業の受注金額の割合がありますけれども、これは九七・一%中小企業です。物品関係では八一・二%です。こういうふうに学校工事は中小企業を救い、そして景気回復に役立つ、そういう事業であるということもここで申し上げておきたいというふうに思います。  この荒れた学校につきましては、国連などの子どもの権利委員会の勧告でも日本は勧告をされております。特に施設における子供のプライバシーに関する権利を保護するために法的措置を含むことをやれということが勧告されておりまして、私は最後に、一分時間が残っておりますので、特にトイレの問題をつけ加えて、終わりにしたいと思います。  トイレは、先ほども言いましたように、私はこれは人権の問題であるというふうに思いますので、そういう意味で、トイレについては単独でも改修するときに補助対象にしてほしいということを強く求めて、総理の最後の御答弁をいただいて質問を終わりますが、よろしくお願いいたします。
  239. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 改善を図るべきものは改善していかなけりゃならぬと思います。
  240. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  241. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、清水澄子君の質疑を行います。清水澄子君。
  242. 清水澄子

    清水澄子君 社会民主党の清水澄子でございます。  午前中、盛んに日の丸・君が代の法制化について話がありましたけれども、日の丸・君が代を国旗国歌とする法律は明治政府以来ございません。日の丸については明治三年の郵船商船規則などで定めがありますけれども、法定されたことはありません。  しかし、当時、法律がなくても国旗国歌として扱ってきたでしょうし、現在もいろいろな意見はあるとはいってもそれは扱われております。このように百年以上も法制化がされなかったものをなぜ今緊急に法制化しなければならないというのか。この問題はそんなに軽い問題なのでしょうか。私はこれを総理にお伺いしたいと思います。
  243. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府としては、これまでも国旗国歌につきましては、長年の慣行により日の丸・君が代が国旗国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間にも定着していると考える旨は御答弁申し上げてきたところでございます。  しかしながら、よくよく考えてみまして、日の丸・君が代が国旗国歌として国民の中に広く定着している中で、二十一世紀を迎えるに当たりまして、諸外国では国旗国歌を法制化している国もあること、また成文法を旨とする我が国にあっては、国旗国歌につきましても成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えることなどから、今回、国旗国歌の法制化を含め検討に着手することにいたしたわけでございまして、決してこの問題を軽い問題と考えるというようなことはありませんで、むしろ重要なこと、これにまさる重要な問題はない、こういう気持ちで対処いたしてまいりたいと思っております。
  244. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、二月二十五日の本予算委員会総理は、これは最終的には国民の皆さんの動向も判断しなければならないと思いますと、今の時点では法制化ということではないということを答弁されています。  たった一週間で、今まさにこの時期に必要なことだというふうに、成文化しなければならないというその決断というのはだれにも理解ができないと思います。  そこで、私は総理にお尋ねいたします。  では、埼玉県の所沢の高校のことが報道されていましたけれども、これが生徒たちが日の丸・君が代の強制に反対して、卒業式には七割が欠席をして、そしてみずからが主催する卒業記念祭には全員が出席したと。それに対してPTAの会長は、自分たちは子供たちがどう判断するか待った、生徒たちが自分で考え、そしてそれを決めて、その方法で記念祭を実現させてやりたいと考えたと。また、子供たちはそういう自主的な校風を大事にしたい、こういうふうなことを言っておりますが、総理は、それならばこの法制化をするということの中で、このような学校は憂慮すべき学校という御判断でしょうか。
  245. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政府といたしましては、学習指導要領をして文部省がそうした形で各教育委員会等についてこの問題についてしかるべき対処をすべきと、こう言っておるわけでございますので、それに従わざるといいますか、その趣旨を理解されないということは、これは大変問題がある、こう認識いたしております。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕
  246. 清水澄子

    清水澄子君 それでは文部大臣、憲法には思想、信条の自由というのがあり、教育基本法では教育の自主性がうたわれております。そしてまた、昨年秋、中教審の答申では、文部省などの口出しはできるだけ減らして各学校の裁量の幅を広げる、そして自主的、自律的な学校づくりを目指すのだという現行の教育行政を見直す答申がなされているわけですけれども、こういう問題についてももっと学校現場で、教員同士とか生徒と教員とかPTAがよく話し合っていくということで決めていくような、そういう方向を私はとるべきではないかと思います。  そういう状況をやらないで、日の丸・君が代を上から強制したり、そして法制化ということは非常に強権的な押しつけになるわけですが、それは今まで申し上げた教育の自主性とか中教審のそういう答申とかとは一致するものなんですか。これはむしろその逆の方向にあると思いますが、文部大臣はどちらの立場にお立ちでしょうか。
  247. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 昨年九月の中教審の今後の地方教育行政のあり方についての答申でも提言されていますように、各学校の自主性、自律性の確立を図り、特色ある教育活動を実施できるようにすることは重要と考えておりますし、私も昨年の今ごろまで中教審の会長としてこの文言には責任を持っております。  しかし、自主性とか自律性の尊重というのは、勝手だということではないのです。校長学校の管理運営に関する権限を前提にする、校長教育理念や教育方針のもとに教育活動を展開することを期待するものでございます。そういうふうにお考えいただかないと確かに矛盾するというふうなお考えになるかと思いますけれども、そうではなくて、校長の管理運営に関する権限を前提にするということを繰り返し強調させていただきたく思います。
  248. 清水澄子

    清水澄子君 校長の管理運営文部省が上から統制する。それでは本当の意味の自主性はできません。ですから、特に教育の地方分権というのはこれから重要な課題になってくると思うわけです。  そこで、私はこれは非常に矛盾すると思うわけですけれども文部大臣、子どもの権利条約の十二条には、自己の見解をまとめる力のある子供に対してはその子供に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障するとあります。締約国はこれを保障しなければならないということがあるわけですが、この条約の精神から見ると、生徒たちが自分たちで卒業式を計画したということは間違いで、そういう意見表明とか自分たちの主体性というのはこれは主体性じゃないんだ、こういう判断になりますか。
  249. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私の解釈は、子供の権利というのは何も子供が好き勝手なことを言うことではないと思う。自分がやりたいことだけをやることが権利ではないと思います。やはりきちっと教えなきゃならないことは教えるということが教育者としての責任であろうと思います。  今回の法制化を含めた検討というものは、国歌国旗の根拠について慣習であるものを成文法としてより明確に位置づけることを検討するものだと思います。学校において、これまで国歌国旗指導に関する取り扱いを変えるものではございません。  そこで、児童の権利に関する条約第十二条一項では、児童個人に関する事項について児童がみずからの意見を述べることができることとされております。このことは確かに十分尊重されなければならないことだと私も認識しております。しかし、国歌国旗指導というものは、国歌国旗についての正しい理解と、我が国のみならず他の国々の国歌国旗を尊重する態度を育てていくことに通じているわけでありまして、これからの国際社会に生きていく日本人を育成するために実施しているものでございます。今後ともこのような考え方に立って指導を充実させていきたいと思っております。
  250. 清水澄子

    清水澄子君 子供の意見を学校とか私たち大人の社会で本当に聞きながら、子供を自分たち大人のパートナーとして扱っているかというと、私たちは全体をやはり見直さなきゃいけないわけですね。子どもの権利条約というのは、好き勝手をすることを認めるとか認めないとか、そういう意味で、子供を大人の従属した下に見ていた立場から、もっと本当に一緒に考えるという、そういう発想で新しくこれはつくられたものです。  ですから、私たちは自分を問い直さなきゃならない問題にいつも直面しているわけですね。特に学校現場は、なかなかそんな生徒の意見を聞きながらというところになっていない。これからそういうふうな民主的な学校のあり方というのを私たちはもっと本当に研究もしなきゃならないし、実践もしなきゃならない課題だと思っております。  そこで、文部大臣平成元年の小学校指導書の特別活動の項目に、「日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるとともに、児童が将来、国際社会において尊敬され、信頼される日本人として成長していくためには、国旗及び国歌に対して正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てる」というふうにあるんです。私は決して国旗国歌を尊重してはいけないなんて言っておりません。しかし、学校でそういうものを強制することで日の丸を掲揚し、君が代を歌っていれば、国際社会で尊敬され、信頼される日本人に育つとお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  251. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) やはり子供たちには教えるべきことは教えるべきだと思います。何にも教えないで、いきなり外国に行って星条旗を尊敬しろと言っても子供たちにはわからない。したがいまして、オリンピック等々で日本の若者、国民はよく非難を受けることがあるわけでありますが、これではだめだと思う。やはり日本の国歌国旗がどういうものであり、それは尊重すべきものだということを十分認識していればこそ、外国の国歌国旗に対して正しく起立をし、尊敬をするという気持ちになると思います。  例えば、アメリカで国旗を燃やしたらば刑罰になるというようなことがあるわけですね。こういうことは正しく教えていなければ、やはり日本人が国際的な人間になれないと思っております。
  252. 清水澄子

    清水澄子君 話が私の質問している本質的なところをちょっとずらせていらっしゃると思うので、私は国旗国歌を尊重することを否定していませんと言っているわけです。  ここで私は、むしろ国際社会で信頼を得るというのは、まず私たち日本には一つの歴史があります。ですから、過去の歴史を真摯に反省をしなきゃいけない、そういうことを教えなきゃいけないと思います。同時に、もっと人権感覚に敏感で、そして人間性豊かな資質を培っていく、そして自分とは異なるいずれの人の人権とか、さらにはいずれの国の人たちとも平和的で友好的な関係を大切にする、そういう品性を養った人間を目指すということが、国際社会において私はそれは信頼されることだと思うわけです。また、それをみんな目指さなきゃならないと思うんです。  むしろ、最も品格性を失っているのが日本人ということに対してさまざまな国際社会からの非難じゃございませんか。特にその中でも今回、この君が代・日の丸の法制化が伝えられましたその直後に、マレーシアの新聞論調ではこの日の丸・君が代の法制化について、日本はまた右傾化が始まっている、そういうことはアジア太平洋地域の脅威につながるというふうな警戒、それに真摯に耳を傾けるべきだと思うんです。残念ながら、私たちの過去というのはそれほどまだアジアの人たちには非常に敏感に受けとめられているということだと思うわけです。  そこで私は、先ほどから国旗国歌をとおっしゃいますが、日本は、ドイツ、イタリアのように、戦争が終わった後、戦争に対する反省から国旗国歌を改めた国とは違うわけです。日本の場合は、戦後もそのままその旗がシンボルであったということでこういう抵抗があるんだと思いますし、それは自国民の中にもそれがあります。そして、アジア諸国ではさらにそのことが暗い悪夢と重なっている。私は、そういう歴史を引きずっているということについては、もっと本当に真摯に重く受けとめなきゃいけないんじゃないかということを申し上げたいわけです。  私の方は、総理、この日の丸・君が代、とりわけ私は君が代について率直に申し上げたいわけです。子供たちに聞いてごらんになりましたですか。私は聞いてみました。そうしたら、君が代を歌って元気が出るかと聞いたら、いや沈んじゃうと。そして、君が代は明治時代の大日本帝国憲法の君主制のもとでの、この君というのは君主をたたえているわけですから、やっぱりそれは本当に時代には確かに合っていない。  それから言葉も、子供たちは歌っていてもどこで切れている文言なのかわからないというわけです。ですから、意味もよくわからない。私たちは、国歌というのは本当に自発的に国民の間からわき起こってくる、そういう誇りとか喜び、私は歌というのはそういうものが心に響いてくるものであると思うわけです。  ですから、私はここで、やはりこの問題は歴史を引きずっているという前提に立って、法制化をあくまでも強行しないで、最初、総理がこの予算委員会でお答えになったように、この君が代・日の丸のあり方について一度幅広い国民的な議論をして、そして二十一世紀にふさわしい国歌をつくっていくことの方が法制化をするよりもむしろ賢明だと私は思いますが、総理のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  253. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 君が代につきましては、過去にも文部大臣等が御説明申し上げておるとおり、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇をいただく我が国の平和で末永い繁栄を祈念したものであると理解されていると受けとめておるところでございます。したがいまして、我が国の国歌としてふさわしいものであると認識をいたしております。
  254. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、国民ともう少し議論をする、そして国民の多くのいろんな意見をまとめながらそういう方向に行くというお考えはお持ちではありませんね。絶対にそういう声は無視するということでございますか。法制化を強行なさるんですか。
  255. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 法律として法制化するということでございますから、法律となりますれば、国権の最高機関の国会で十分御議論をいただいて対処いたしていくことは当然のことと認識しております。
  256. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、やはり強制されるわけですね。  学校現場ではどうなさいますか。法制化というのは、今の学習指導要領よりも、今度は法制化すればさらに義務化を強制するわけですね。そのことを考えて法制化なさるんですか。
  257. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この点につきましては、午前中に官房長官も御答弁されておりまして、政府部内で今、法制化をどのような形で行うかということにつきまして、最終的な論議をいたしておりません。  どの点をどう国民に理解を求めていくかということでございまして、したがいまして、この点につきましては、現段階で内閣としてまだ方向性、どこまでがこの立法によりまして国民の皆さんの義務と権利にかかわる問題であるかということにつきましては、これから内閣におきまして十分検討してまいりたいと思っております。
  258. 清水澄子

    清水澄子君 ぜひ本当の意味で、逆戻りじゃなくて、やはり二十一世紀のアジアの中で生きていく日本ということを深く考えた上での検討を私は要請いたしておきます。  次に、厚生大臣に年金についてお伺いいたします。  厚生省の年金改正案大綱におきましては、「国庫負担の割合の引上げ及び保険料凍結解除の時期は同時とし、できるだけ速やかに実施する。」とされております。  しかし、凍結のみを先行させ、国庫負担の引き上げを後にするということになると、後代への負担増が急激なものとなり、その効果が相殺されるのではないかと思います。また、年金財政をさらに悪化させることになって、かえって将来不安を高めて景気対策の効果も期待できない。したがって、私どもは国庫負担増と保険料というのはやはり九九年度に同時に行わなければならないと考えますが、厚生大臣、いかがでしょうか。
  259. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 年金制度は永続的な制度でございますから、安定性が極めて重要なことでございます。一方、中長期の財政再計算の問題でもございますから、中長期的な視点も踏まえて均衡を図っていかなきゃいかぬというのは大前提にございます。  一方、少子高齢化を迎えまして給付者が非常に多くなるという実態がございますので、保険料で調整するか、給付で調整するか、あるいは支給開始年齢で調整するか、いずれかその三点の要点に集約されてまいりますが、今回は、私どもとしては二〇二五年までの期間を想定いたしまして、保険料も一応の値上げを想定はいたしました。  しかしながら、景気が当面こういう状況でございますから、平成六年度の改正時における計画で二・五%、五年間で上げることが出されておりますが、五年たちますがまだそれが完成しておりません。これを仮に完成させるとすればことしの十月に実施いたすことになります。よしんば、今一七・三五%ですが、一九%にするだけで二兆円以上の保険料の収納増になります。  このことは、今、小渕内閣として総理を先頭に経済対策にあらゆる手段を講じて景気の回復に努めようとするときに、個人の可処分所得をそれだけ吸い上げることになります。所得税で四兆円以上の減税をした効果が半減するというような問題もございますので、私どもはとりあえず景気の回復に最重点の力を置くという意味でこれを凍結させていただきました。  一方、平成六年の年金法の改正におきまして、将来的には国庫負担率の引き上げを検討すべしということが法律で明記されておりまして、同時に、当時の附帯決議で三分の一を二分の一にすべきであることが決せられております。  私どもはその趣旨を踏まえまして、全額税方式というわけにはまいりませんが、ぎりぎりの選択として二分の一までは何とかできないものかという観点から、今回の改正案では、二〇〇四年の次の財政再計算期までに必要な安定の財源を得て、そして法律改正によって三分の一を二分の一にすることを明定することを今予定させていただいております。  委員の御主張とはちょっと変わった視点の、両方の視点を調整した結果そのような対応にさせていただいておりますが、直ちに二分の一にするというのは莫大な財源を要しますし、安定した財源が本当に確保できるかどうか、平成十一年は困難であると。しかも、これは単年度限りの財源でございませんで、継続してなおも拡大していくという性格のものでございますから、なお私どもは慎重な検討を必要とするということで処理をさせていただいております。
  260. 清水澄子

    清水澄子君 いろいろ慎重な検討とおっしゃいますけれども、最近の世論調査によりましても、国民の不安要因というのはやはりこの長期の不況と年金制度を挙げているわけですね。それで七五%という数字が出ておるわけです。ですから、この年金改革については非常に関心が高いわけです。  この二分の一の国庫負担引き上げというのは、九四年のときに立法府で全会一致でお互いが決を、意思をとったわけですね。それが来年には入っていない。そういう一方で三十兆円にも及ぶ、経済効果が必ずしもはっきりしていない公共事業中心に歳出は使われているわけです。総理、なぜ基礎年金の国庫負担増にそれらの中の一部を盛り込むことができなかったんでしょうか。
  261. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ちょっと、三十兆、国債とどういう関係で言われましたのか。  私の方の思いでは、こういう財政状態でございますのでやむを得ず三十兆円余の国債をお願いしているほどのことでございますから、そういう状況でございますので、二分の一の国庫負担をこの際やるというような財政状況にはない、こういうふうに申し上げたいんです。
  262. 清水澄子

    清水澄子君 国債発行で借金財政でやるのであっても、そのお金の使い道というところが、最も国民の生活不安を解消する方向に私はやっぱり出すべきであったと、こういうことでお伺いしたんですが、答弁は同じことだと思いますので、次に参ります。  これは総理にお伺いをしたいわけですけれども、今少子化社会をめぐってさまざまな議論が交わされておるわけですが、そこでやっぱり非常に見落とされている大きな問題があると思います。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕 それは、生まれてきた子供をどう育てるかという以前に、生まれる前の胎児がダイオキシンや環境ホルモンによって深刻な影響を受けているという現実です。  御存じのように、ダイオキシンや環境ホルモンは子供や女性の生殖健康に最も深刻な影響をもたらしてきておりまして、そしてそれは生殖機能異常とか免疫機能低下とか、それから脳神経などへのさまざまな影響が指摘をされております。それらは、国際的にそういうふうなダイオキシン汚染で影響を受ける状況が報告されておるんですが、日本でも水俣病が多発した地域では男の子より女の子の出生率が高まるという報告もあります。それから、カネミ油症の被害者が出産した女の子には第二次性徴に関して何らかの異常が見られたという報告もあります。また、ダイオキシン汚染が問題となっていた所沢市地域は、新生児死亡率や子供のぜんそくとかアトピー性皮膚炎罹患率が非常に大きく平均を上回っているという調査結果も出ております。  特に、最近アメリカ等の科学者たちが警告をしているわけですけれども子供たちは母親の子宮内で生命の芽を宿した初期からホルモン系の攪乱作用の影響を受けずに誕生することができなくなっているということを明らかにしているわけです。こういう状況に対して、こういう影響をどう認識し、どのように対策を立てようとされておられますでしょうか。
  263. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ダイオキシン等が女性の生殖機能や胎児あるいは乳幼児の健康に影響を与えるとの指摘があることは認識をいたしております。  現在、我が国における母乳中のダイオキシン濃度や人の摂取量は欧米先進諸国とほぼ同程度であり、健康影響があらわれるレベルではないと承知をいたしております。  今後とも、人の健康影響に関する調査研究を進めるとともに、廃棄物焼却施設等からの排出削減を徹底することなどによりまして、国民の健康確保のために万全を期してまいりたいと思います。今、先生御指摘のいろいろ細かいデータその他につきましては、今どの程度調査が進んでおるか、厚生大臣からもしありましたら御報告させていただきます。
  264. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) それじゃ、補足させていただきます。  我が国の母乳中のダイオキシンの濃度でございますが、今、総理の御答弁にありましたように、これは外国に比べてそんなに高い数値ではございません。一九九七年に脂肪一グラムで十七・四ピコグラムということになっております。  ちなみに、諸外国では十、十五、二十以上というような各国の例もございます。
  265. 清水澄子

    清水澄子君 先に厚生大臣が尋ねないものを答えてくださったのであれしますが、それはもう一つ後の方だったんです。  最近、特に高濃度地域においては、電話相談をやっている方から伺ったんですが、今まではどのようにしたら母乳を飲ませられるか、どうやって子供が母乳を飲むようにするかという質問が多かったんだけれども、最近はどのようにしたら母乳を与えなくて済むかというふうな相談がほとんどだということでございます。これは、いかにみんながやっぱり汚染を心配しているか、そしてそれは母乳だけでなくて、母乳というのは自分の食べた食品から入ってまいりますから。  今、食品の汚染が非常に多いわけですね。特に日本は魚の汚染がとても多いわけです。ですけれども、今、厚生大臣は諸外国と同じように汚染度は低いんだとおっしゃいましたが、それはちょっと甘いんじゃないかと思います。  今、日本では母乳の汚染濃度が低くなったという統計があるんですが、それは一番汚染度の高い近海の魚介を食べなくなったというか、とれなくなった。そして、沿岸漁業からたくさんの輸入してくる食品を食べる。その輸入食品がふえていくのとあわせて減ってきているんですね。ですから、それは食料事情の問題とこの汚染濃度の低下というのが結びついたという非常に皮肉なことがあるわけですけれども、漁業地帯の人たちにはそれは決していいことではないと思います。  ですから、そういうことで日本の現状がそれによって食品や母乳の汚染濃度が低くなったと認識してしまうのは早いのではないか。日本は、特に今時分ダイオキシン問題が起きて、これは早くから指摘されていたことですね、今の状況の焼却炉ではそうなると。しかし、それに何も手を打てなかったわけです。  ですから私は、そういう平均的に数字を出しても、濃度を強く受けているところ、汚染を強く受けているところと別にしなきゃならないと思いますから、そういう点については、母乳等に対して、やはりこれは次の世代を汚染いたしますから、ぜひもっと厚生省は真剣に実態を調査していただきたい。そのことをぜひ要望いたします。
  266. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 調査は継続してこれはやらなければなりません。  その前に、委員の御指摘ではございますが、厚生省の検討会を平成八年以降やっております。その場合に、母乳についてのTDIとの関係でございますが、母乳は通常一年間程度の短期間の摂取であると。したがって、生涯にわたって摂取する場合のTDI量をそのまま用いて安全性を検討することは妥当ではないという意見がございます。また、母乳が乳児の発育、感染防止及び栄養補給に与える効果は大きいという点から、今後とも母乳栄養を推進していくべきであるとの方向が専門家会議等から出てございます。  一方、WHOの専門家会合におきましても、母乳の有効性の観点からWHOの母乳推進の立場は変更しないとの議論が行われたと承知しております。つまり、母乳から多くのダイオキシン類は取り込んでいるが、母乳の有効性等の観点からはWHOは母乳推進の立場は変更しない方向で議論するという報告がなされておることをつけ加えさせていただきます。  なお、これによって母乳の検査は必要ないということを申し上げているわけではございませんで、母乳のさらに必要性というものはやはりあるということを申し上げたわけであります。  なお、もう一点は、TDIの中で魚の問題に触れられました。確かに、TDIは我が国で今までやったのは二・四一ピコグラム、これは体重一キログラム当たり、TDIでございますから、人間が一生それを摂取してもそれ以下であればよろしいと、これがWHOで今度出されております一ないし四という数字ですね。それで、今の日本の食品の構成からして二・四一になっておりますが、その中で一番高いのはやっぱり魚類であることはこれは事実でございます。そういった食品の総合的な検討も必要であろうかと思っています。
  267. 清水澄子

    清水澄子君 議論していると時間がなくなるんですが、WHOは、母乳を飲ませるという方針は恒久的なものでなくて、現時点では変えないということを言っております。それは、それでもって安全性が確立したわけではなくて、先ほど申し上げたように、ヨーロッパは乳製品を食べますから牛乳の基準というのは厳しいですね。日本の場合は魚や食品を食べての母乳になるわけですから、だから母乳の問題というのは特に日本ではみんな不安があると思いますから、それらは一般的な数字じゃなくて、ぜひ日本の独自性の中で調査をしていただきたいと思います。  環境庁長官に、WHOのダイオキシンの一日の摂取量の見直しがあったわけですが、特に幼児に対する環境リスクというものも非常に多く議論されております。アメリカの食品安全法では、基準を定めるに当たっては無害であるという合理的根拠を必要とするということと、成長期にあって感受性が高い乳幼児、子供に対する安全性を特別に考慮して、必要な場合には子供への安全率は最高で大人の十倍を掛けなければならないとなっているわけです。だから、そこは具体的に子供への対応基準というのを非常に考慮しております。  私は、あらゆる環境基準を女性の生殖健康とか胎児とか乳幼児、子供に対するリスクの視点から見直すべきだと思うわけです。そういう意味でもTDI、これは四ピコグラムではなく一ピコグラムということを目標にしつつ、できるだけ日本の中ではその他の発生源を抑えていくということとあわせてやっていただきたいと思いますが、そういう点で環境庁長官からの環境基準についてもお答えいただきたいと思います。
  268. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生の座右の銘で「元始女性は太陽であった」という文言がございました。私は、その太陽であるというのがまさに女性じゃないかと思っております。母乳を与えることによって親子の人間関係と申しましょうか愛情というものが個々に通ずるわけでありますから、母乳が危ないというようなことになっては、これは大変悲しい現象だと思っておるわけであります。安心して母乳を差し上げられるような親子関係というものが早く構築されてほしい、こう願っておるわけであります。  そこで、WHOからも一から四ピコグラムという一日の耐容許容量が発表されておりますけれども、これは決してこれが安全であるとかその数字が多くなったから危険であるとかいうものではまだないと私は思っておるわけであります。  と申しますのは、昨年の十二月にも京都で世界環境ホルモン会議を開催いたしましたところ、意見がたくさん出まして、二分、三分されたような状態でございました。環境ホルモン、ダイオキシンについての定義がまだそういう不確かな状態にあるわけでありまして、決して私は楽観論を述べておるわけではございませんけれども、余り数字にこだわった形で危険度を表示するよりも、その数字でもってやれば安心だというような状態をつくり出していくことが大切なことだと思っておるわけであります。  今、環境庁、厚生省の専門家会議においてその数値を出して研究しておりますし、またWHOとの数値の整合性もありまして、その点、安心ができる数値にしていきたいと思っておるところであります。
  269. 清水澄子

    清水澄子君 もう一つしか質問できませんが、最後に厚生大臣、PCBの問題です。  PCBの製造禁止から二十七年がたっておりますが、なお処理体制は確立されておりません。そして、本来保管されるべきPCBの約六割が行方不明になっていると言われているわけです。これに対して、都道府県及び政令市の六割以上が国が主体となった処理体制の早期確立を求めているわけですが、厚生省は逆に地方自治体に対応を求めるという、そういうふうにお互いに責任の押しつけ合いが起きております。もちろん、事業主の責任でもあるんですが、あると言っても行方不明になっているわけです。  これはダイオキシンの猛毒を含んだ有害毒物なんですね。ですから、やはりもっと適切にこの問題について情報を公開され、そしてもっと処理方法についても住民の理解を得られるようにすべきだと思いますし、それからPCBの環境基準はあるんですけれども、汚染の調査や対策を定めた市街地の土壌汚染防止の法律はないわけです。ですから、化学物質審査法による規制第一号物質になったPCBの処理、これについて先送りをしないで、やはり早く厚生省、国が責任を持ってこれに迅速に対応されることを要望したいと思いますが、厚生大臣、よろしくお願いいたします。
  270. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) このPCBの問題は、カネミ油症事件を契機としてこの処理の問題が非常に切実な問題になっているのは承知しております。  厚生省としては、廃棄物処理法によりまして高温焼却による処理方法を認めておりますが、現在、処理施設の設置についても地元住民等の理解を得ることが困難であると。現在は処理可能な施設はなく、保管せざるを得ないのが現実の状況でございます。実際に処理しているのはある会社一社だけでございまして、ほかはほとんど保管されている状況、それから今、委員の言われたように、一部不明になっているようなものもあるようでございます。  私どもとしては、PCBの問題はやはり化学的に分解する処理方法を実用化する、これはアメリカ等で行われているようですが、外国から輸入技術を踏まえまして対応していかなければなりませんが、ただここで申し上げておきたいのは、例えば電柱のトランス、ああいうものにも現在も使われているわけです。  そういう実態がありますから、これは厚生省だけでやるということはなかなかできないので、あとは通産省その他関係省庁とあわせて、これは非常に難解な問題として今日まで伝わってきているケースでございますから、よく関係省庁で協議しなければならないと思っております。
  271. 清水澄子

    清水澄子君 終わります。
  272. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で清水澄子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  273. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、入澤肇君の質疑を行います。入澤肇君。
  274. 入澤肇

    ○入澤肇君 まず、厚生大臣にお聞きしたいと思います。  今も清水委員からお話がございまして、答弁されておりましたけれども、国民年金の国庫負担額につきまして、「平成十六年(二〇〇四年)までの間に、安定した財源を確保し、別に法律で定めるところにより、」というふうに三月五日の年金制度改正案大綱では述べられております。また、そのように大臣も答弁されておりますけれども、この「安定した」という言葉は、継続的という言葉はさっき言っていましたけれども、そのほかに特定された財源ということを意味するものでしょうか、念頭にありましょうか。
  275. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、私どもは特定をして、この財源であれば安定だというようなことを今は申し上げる段階にはないということです。
  276. 入澤肇

    ○入澤肇君 私もそうだと思うんです。  まず第一に、財源問題を考えるに当たりまして、やはり徹底した行財政改革を推進することが必要であると私は考えております。特に、支出の問題につきましては、今までなかなか挑戦してできなかったこと、これらに大胆に私は取り組むべきじゃないかと思うんです。  例えば、税の徴収システムでございますけれども、国税の職員が今五万七千人ぐらい、それから地方税の職員が八万二千人。私、昔調べたときは十四万人ぐらいいたと思ったんですけれども、きょう調べてもらいましたら八万二千人。徴税コストを見ますと、国税は大体百円を徴収するのに一円五十数銭、それから地方税は百円徴収するのに三円五十数銭という数字がございます。徴収の部分ぐらい国税、地方税を一緒にしてしまったら、これは背番号制の問題は別にしまして、相当な経費の節減になるんじゃないか。  それから、社会保険庁の職員が一万七千人おりますけれども、コンピューター化も進められておりますし、さらに税方式に移行すればこの社会保険庁の職員の人員も経費も相当節減できる。こういうふうな問題を避けないで、大胆に取り組むということはまずお考えになっていただけないでしょうか。
  277. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど国税と地方税の少なくとも徴収面においてとおっしゃいましたが、それから社会保険税等々、実際一元化した方法ができればお互いに便利だろうと、それはしばしば議論されることですけれども、やはりそれは地方自治の問題であるとか、あるいは税というものがいわゆる徴収についての強制権を持っている持っていないとか、いろんな問題があると思います。  しかし、いずれにしても私は、経済成長がある程度の確実なサイクルに入りましたときには、財政も税制も、中央と地方の関係も、そうして恐らく社会保障の問題も、一遍全部考え直さなきゃならないときがどうしても来るというふうに考えていまして、今、委員も二〇〇四年というお話をされたんですが、その時期は二〇〇四年ではちょっとまだ無理かなと思ってみたり、しかしできるだけ早くそういうことをしないと間に合わないなと思ってみたりいたします。一遍そういうことを全部、そこから日本が結局新しくなるわけだと思いますので、いろんなことを考えなければいけないんじゃないかというふうには思っております。  その場合、租税番号と言わずに、何か国民全体に共通のナンバリングをすることがいいとか悪いとかいうことももう一遍確かに問題になってくるのではないか。もうそのときは、前へ向かっての新しい日本でございますから、今までのことに余りとらわれずに考えなければならない時期が来る、来なきゃならないように思っております。
  278. 入澤肇

    ○入澤肇君 税方式にするか、それから保険方式でいくか、これは自由党と自民党との間でかなり難しい問題、ハードルを越えなくちゃいけない難しい問題になっておりますが、二〇〇四年まであるからといってほうっておくんじゃなくて、直ちに私は、予算委員会が終わった後でもいいですから、財源問題について検討する関係閣僚かあるいは政策チームでいいですから、何らかの仕組みをつくることが必要じゃないかと思っているんですけれども厚生大臣、いかがですか。
  279. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、今自自連合の政府でございますので、一義的には与党間で御相談いただくのが適切かと思います。
  280. 入澤肇

    ○入澤肇君 与党の中でもきのうもよく話し合っておりますけれども、ぜひ政府の方からも財源問題について、政府部内だけでは十分に検討できないのであれば、与党の方にも検討をお願いしたいということを申し入れてもらいたいと私は思っております。  続きまして、この間、総理大臣は多摩ニュータウンに行かれました。五階建てのエレベーターのないところを見たとかということが新聞に出ておりました。  今から二十年か二十五年前にあのような住宅都市づくりがあったわけでございますけれども、高齢者対策という観点から、こういうものを抜本的に私は改善することが必要じゃないかと思っているんですけれども、まず感想をお聞きしたいと思います。
  281. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 多摩ニュータウンは日本を代表する先駆的なニュータウンでありまして、そこに居住する各層の方々や地元の首長さん等と意見を交換させていただきました。その中で、大変住みやすい町だとの意見もありましたが、最初の入居から約三十年を経て居住者の高齢化等が進む中、新たな課題も生じていることを対話や視察の中で実感をいたしました。  この視察を受けまして、多摩ニュータウンをモデルとして、少子高齢化に対応してだれにとっても豊かで住みやすい町づくりに向けたニュータウンの活性化について、建設省、住都公団にしっかり勉強をするよう指示したところでございます。  今、委員御指摘のように、最初四十六年ごろ建設をいたしました集合住宅、これにつきましては階数もかなり、五階、六階かと思いますけれども、エレベーター等も設置されておらない。そういうところには大変建てかえの要望も強いんです。ところが、今一番新しいのになりますと、居住を求める方々の倍率が物すごく高い。したがって、同じニュータウンの中で非常に古いのと全く最新のとございまして、そういった意味では時代の変遷をつぶさに感じたわけでございます。  かつて、最初にこのニュータウンで建設をされたようなところにつきましては、できる限り改築その他も考えなければなりませんし、また当初はそういうところの一階は非常にお店がたくさんありましたけれども、今や大変大きなお店が出てきておりまして、そうした個々のお店の経営その他が大変厳しくなりまして、シャッターのおりているようなところがたくさんあるという意味で、この日本を代表するニュータウンにおきましても種々問題があるなという印象を持ちました。  しかし、その地域に住んでおられる方々に、ここに住んでよかったという形の調査をいたしましたところ、今なお九〇%を超える方々がよかったと言っておるということでございます。ここばかりがよくなってはいかぬとは思いますけれども、やはり一つの日本を代表するモデル的な地域でございますので、ぜひこういう新しいニュータウンの姿というものを、全国的に見ましてもどういう姿であるべきかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、精力的に、これを担当する住都公団初め建設省にも強く、その新しい、よりすばらしいニュータウンの建設について努力するように指示しておるところでございます。
  282. 入澤肇

    ○入澤肇君 今この御質問を申し上げましたのは、実はスウェーデンの社会福祉改革でエーデル改革というのがございます。このエーデル改革は、高齢者医療保健とか介護サービスにつきまして基礎自治体レベルでいろんな工夫がなされて、そして全体として高齢者を医療施設から介護施設に移動させ、さらに在宅へという流れを促した大改革でございましたけれども、在宅へという流れを促すためにはどうしても住宅の改善が必要でありまして、象徴的なのが多摩ニュータウンであったものですから申し上げたんです。私は議員になってから何回か公的狭小老齢住宅の改善を図ってくれというふうに申し上げておりますけれども、その一つの典型例が多摩ニュータウンじゃないかと思っているわけであります。  若き日に田中内閣ができまして、列島改造の本部ができました。私もそこへ引っ越させていただきまして、多摩ニュータウンに山手線の内側の三千ヘクタール、四十万都市をつくるということで、あそこに建設計画が始まったんです。  見に行きまして、武蔵野の雑木林を全部取り払って余りにも人工的な町をつくるというので、これはいけないということで帰ってきてから問題にいたしまして、国会では亡くなられた小宮山先生なんかもヘリコプターで見に行って、そして三分の一計画を変更してもらったんです。その変更されたところによい住宅街ができているんです。もともとできたところは十三階建てで、一階などは独身者が入って、とても狭くて今は住めるようなところじゃない。こういうふうなところをきちんと改善していかないと、私は、来るべき高齢者対策、高齢者の時代に十分に対応できないんじゃないかと思っていますので、ぜひこういう点について力を入れていただきたいと思うわけであります。  それから三つ目に、赤い羽根の使用状況につきましてちょっとお聞きしたいんです。  赤い羽根は二十七年にできまして、たしか二百六十億円ぐらい毎年お金を集めています。法律でやっているものですからうまくいきました。私が現役の役人のときに緑の羽根が同じ時期にできまして、十一億円から十三億円ぐらいしか集まっていないので、これを議員立法でお願いいたしまして法律になりました。おかげで緑の羽根は二十五億円ぐらいになって、五年間で百億円ぐらいにしたいというふうに今みんな張り切っておりますが、この赤い羽根の使途につきまして注文をつけたいんです。  実はこの間障害者のシンポジウムに出ました。無認可の小規模の共同作業施設がたくさんできているんですけれども、この共同作業施設、一定の基準に該当する場合には認可されるんですけれども、なかなかお金がなくて補助基準に該当しないというところがたくさんあるようでございます。  この赤い羽根を障害者のための小規模共同作業施設に重点的に振り向けてくれないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  283. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) ただいまの赤い羽根の配分先でございますけれども、現行法の規定は、満遍なく配分する、つまりその地域、その県の社会福祉事業者の過半数に配分するということになっております。これにつきましては、現在、私ども見直しをやっておりまして、共同募金の配分につきまして、もう少しめり張りのきいた計画的な配分ができないのかということで現在考えておりまして、必要な法改正について検討しているところでございます。  今、先生のおっしゃいました、いわば地域のために頑張っている団体に対しても配分できるような法案の方向で現在検討しているところでございます。
  284. 入澤肇

    ○入澤肇君 満遍なくというのはいいんですけれども、計画的にやればいつかは順番が行くわけですから、例えば国体だとか何かと同じように順番がいつかは行くわけですから、ぜひ重点的に、効率的に配分するように配慮していただきたいと思います。  それから次に、ひとつ文部大臣にお聞きしたいんですけれども、この間、毎日新聞で投書を見ていましたら、主人がリストラで失業して給料がダウンした、子供を私立学校に入れたいと考えていたんだけれども、この分では所得が少なくなったので公立学校に入れざるを得なくなったと嘆いた投書が載っているんです。  私自身は小学校からずっと公立学校の出身でございますけれども、公立学校がこのように評価されるようになった理由は一体何なのか、公立学校というのは今どういう役割を果たしているのかにつきまして、これは文部省じゃなくて大臣自身の御見解をお聞きしたいと思います。
  285. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 私もほとんど公立におりましたので、ただ、旧制の高校ですが最後の三年間を私学で暮らしました。それぞれいいところがありますね。  今御指摘のことは私も非常に心配しているんですが、しかし私は、やはり私立学校の持っている独自の建学の精神というのは大切にしたいと思います。そこで個性豊かな教育活動を展開するところに特色があると思います。一方、公立学校というのは、それぞれの地域を中心にして、そこの地域の特色を生かしていくという点では何といってもこれは公立学校のよさではないかと思います。そういう意味で、理想的には私立と公立がそれぞれ特色を発揮しながら頑張ってくれるといいと思っております。  今の御指摘の点でございますが、公立学校が私立学校に比べて評価が低いのではないかということでございますけれども、一概に私はそうは判断できないと思います。  確かに巨大都市、東京等の巨大都市でうわさを聞くとそういうところがございますけれども、少なくとも私がいた地方の公立は非常に頑張っております。そういう点で、いろいろな地域ごとに事情は違うんじゃないかと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、今のような御指摘を受けないように公立学校が頑張るようにこれから対応いたしたいと思いますし、必要なことは申していきたいと思っております。  いずれにいたしましても、公私を問わず、教育条件の整備に努めていきたいと思っております。やはり何といっても子供たち教育をよくすることが一番重要だと思いますので、その点の努力をさせていただきたいと思います。  なお、二〇〇二年になりますと学校完全週五日制になります。私がしばしばいろいろな場所でお願いをしていることは、国立、公立は完全に五日制になる。しかし、私立の少なくとも一部分は六日制をやる可能性があります。そして、入学試験の勉強をそこでするというようなことが起こり得るので、このことに関して私は、私学に対しても国立や公立の学校と同じように完全週五日制をとっていただきたいと思っている次第でございます。  いずれにいたしましても、私学も公立も、それぞれ特徴を生かした、特色を持ったいい学校になることを願っている次第でございます。
  286. 入澤肇

    ○入澤肇君 私も実は人事院の面接試験官をやったことがあるんですけれども、まず国立大学のいわゆる有名なところに入るのは、東京を中心に大体、麻布、開成、灘、ラ・サール、筑波大学の附属高校とかそういうところですね。それから、公務員試験で法経学士を一万二千人ぐらい受けて、二百人は受かるでしょう。その半分は大体、麻布、開成、灘、ラ・サールなど。  そういうふうなことを見ていますと、公立学校に入れないで、小学校四年生ごろから塾に通わせて、そして私立学校に行って一貫教育をやる。ところが、この人たち、面接してみますと、クリエーティブな能力といいますかオリジナリティーがほとんどない、小さいときから勉強ばかりやっていましてエネルギーを失っている、そういう人が多いような感じがするんです。十分な読書もしていない。ただ受験のために勉強する。  韓国では塾を禁止しているんですね。塾を禁止しています。我が国も、もう少し伸び伸びと本当に能力を発揮できるような学校のシステム、こんな投書者が出るようなものじゃなくて、みんなが喜んで経費の安い公立学校に率先して行くようなことも念頭に置いて、バランスのとれた教育行政をぜひやっていただきたいと思います。  それから、もう一点だけ。  ダイオキシン問題でございますけれども、調査がもう一つ前向きに進まないという印象を私は持っています。これについては、どうも人体への影響についてもう一つはっきりした症例が見えていないというふうな気がしているんですけれども、当局として何か症例をつかんでいたら教えていただきたいと思います。
  287. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) ダイオキシンの人体への影響についてのお尋ねでございますが、現在までのところはっきりしておりますのは、いわゆる工場の事故等によりまして急性に大量暴露を受けたというふうなケースは報告がございます。そういった報告と、また実際には動物実験のデータをもとにいたしましていわゆる発がん性あるいは内分泌攪乱作用等が指摘をされているわけでございます。  しかしながら、日常生活におきまして長期にわたりまして微量に暴露を受けるというようなものの健康影響につきましては、国際的にも我が国におきましても知見が十分集積をされている段階ではございません。したがって、どういうものがあらわれ、どういう指標をもとにすればチェックできるかということはわかっておりませんので、これは長期にわたるとは思いますけれども、私どもは厚生科学研究費を用いまして人体影響というものをいろんな面から研究を進めておりまして、これらの積み重ねの中で初めてはっきりしてくることではないかと思っております。
  288. 入澤肇

    ○入澤肇君 月原委員の関連質問をお願いします。
  289. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。月原茂皓君。
  290. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 自由党の月原です。  きょうは、環境問題について環境庁長官にお尋ねいたします。  中国の江沢民主席が我が国を公式訪問された際、中国国民から日本国民への友好のあかしとしてトキ一ペアを天皇陛下に贈呈され、そして環境庁が引き受けて今やっておられるわけですが、真鍋長官はこのトキにどういう思いを寄せておられるのか、まずお尋ねしたいと思います。
  291. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 思いはたくさんあるわけでございますけれども、こういうところでございますので簡単に答弁をさせていただきたいと存じます。  トキは日本の自然を表徴する鳥類であるとともに、我が国及び中国のみに生息している絶滅のおそれの高い種であります。しかしながら、日本国名で学名もついておるわけでありまして、ぜひこのトキを大切にしてまいりたいと思っておるところであります。  したがいまして、我が国で飼育、繁殖をさせることの意義につきましては、まず第一にトキの繁殖拠点をふやし、危険分散を図り、世界のトキの種の保存に貢献するという大きな意義を有するものであります。  また、近年まで佐渡に野生で生息していたことを考えると、人工繁殖への取り組みのみならず、将来は野生のトキの復活も検討していく必要があると考えており、そのための努力の第一歩として意義深いものと考えます。  いずれにいたしましても、ヨウヨウとヤンヤンの二世誕生が一日も早く実現し、またこのことを通じまして日中両国民の友好が一層促進されることを願っております。
  292. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 本当に長官も考えられておるように進むことを祈るものであります。  そしてまた、環境教育というか環境の問題について、日本でもこういうものをちゃんと守って、そしてトキが楽しく飛べるような環境になるというようなことを考えると、環境の問題についても非常に大きな役割をこのトキが果たすと、長官が言われたとおりだと思います。ただ、繁殖というのは相手のあることなのでなかなか難しいんでしょうが、着実にそれを実行していただきたい、こういうふうに思います。  それでは次に、現在、河川の生活環境の保全にかかわる水質環境基準というものが決められておる。それは利水の目的に応じて場所によって異なるということをこの間ちょっと説明を受けたんですが、聞いてみれば、それらの多くは四十年代後半に設定された基準のようなことを聞きます。  しかし、それ以降、今先ほどダイオキシンから始まっていろいろ皆さんが問題にされておりますが、時代とともに汚染のもとが多種多様化してきておる。そういうことから積極的に見直して、それにふさわしい、それは全国一律の基準ではなくて、この川は特にこういう点を注意するというふうにそれぞれ個別にやっていくというふうにしたらどうかなと私は思うんです。  とりあえずは、少なくとも時代が大変変わってきた、多種多様な汚染物質がある、そういうときに当たって基準というものを長官の時代にきちんとその方向づけをしていただきたい、こういうふうに思うんです。
  293. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 河川の生活環境の保全に関する水質環境基準につきましては、全国の河川で昭和四十五年以来順次設定されてまいりました。その後、水質が改善したり、人々の河川に対する考えが変化してきたなど河川の水質に対する時代の要請も変化してきております。  このようなことを踏まえて、環境庁では昨年度より水質環境基準の見直しを順次行ってきているところであります。今後も引き続き積極的に見直しを進めてまいりたいと思っております。
  294. 月原茂皓

    ○月原茂皓君 先ほど私が質問した問題でさらにちょっと後半の方を詳しく言うと、こういうことができないかなと、こう思うことがあります。それは、ある川は特に魚がたくさん泳ぐことができるとか鳥が寄ってくるとか、あるところは周囲の景観を保つとか、そういうふうにできたらなと、こういうふうに思います。  とにかく、春が来たら鳥が鳴かないという、カースンの「サイレントスプリング」にありますが、そういうのではなくて、本当に我々の国で環境というものを大切にして、そしてそこに鳥が飛び、チョウが飛び、そしてまた我々人間が憩いの場所とできるような、そういうふうな川自身にも場所によってそういうふうな特色を与えていくという方策を将来考えられないか、していただきたいなということを希望して、長官の御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  295. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 時間がございませんので簡単に申し上げますけれども、河川等を含む水環境の場合、水質のみならず、水量、水生生物や水辺の景観などを総合的にとらえることが重要と認識しております。御提案の清流を守るべき河川や景観を守るべき河川といった目標も、こうした観点の重要性を御指摘になったものと理解しております。  環境庁においては、これまで日本全国に存在する清澄な水の中から名水百選を選定いたしまして、地域による保全活動を推進してまいりました。また現在、水質、水量、水生生物及び水辺地を含めた水環境現状を総合的に評価する指標についても検討しているところであり、御指摘の点も踏まえて、これまた積極的に取り組んでまいりたいと思っておるところであります。  以上でございます。
  296. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で入澤肇君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  297. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、堂本暁子君の質疑を行います。堂本暁子君。
  298. 堂本暁子

    堂本暁子君 小渕総理大臣、総理は日本国のトップにおられる方でございます。そうですね、総理。  自然界でも、例えば微生物がいて、それから昆虫がその微生物の上にいて、それから昆虫を食べる鳥や小動物がおりますけれども、そのトップが日本の場合にはワシやタカだと、こう言われているわけです。ですから、総理は恐らくワシやタカの気持ちが一番わかる方なんだと私は思っております。きょうは、総理にはワシを中心に質問をさせていただきたいというふうに思っております。  ロシアのオホーツク海沿岸から越冬するために日本にやってくるオオワシやオジロワシ、こういったワシが三年ぐらい前から鉛中毒で死んでいるということを総理は御存じでいらっしゃいましたか。
  299. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) たしか新聞その他で報道されまして、日本を代表するといいますか、そういった大きなワシや猛禽類が鉛中毒でしょうか、そういうことで被害が出ているようなことは承知をいたしております。
  300. 堂本暁子

    堂本暁子君 私自身は実は余りよく知らなかったんです。鉛中毒の問題があるということで二週間ほど前に北海道へ参りました。そして、エゾシカの被害なんですが、その実態を調べに行ったわけですけれども、そのときに釧路から斜里に向かう途中に弟子屈という町があります。その弟子屈へ着いたときに、実は鉛中毒で死んだワシに迎えられた。  総理、このワシなんです。(資料を示す)資料でも皆様にお配りしてございますけれども、このワシ。ほんの数時間前まで生きていた。生きたまま持ってこられて、私が着いたときはもう死んでいました。とても何か胸が痛くなりましたけれども、ワシから私は死の抗議を受けたような気持ちがいたしました。  きょうは、その死んだワシにかわって質問をさせていただきたいというふうに思っております。  このオオワシ、オジロワシも一九七〇年、昭和四十五年に文化財保護法で天然記念物に指定されています。日本の宝なんです。それから、種の保存法でも九三年、平成五年には国内希少野生動植物にも指定されています。  ですから、したがって、こういった法律で当然守られるべき日本の種、鳥なんです。それを迅速に守るべきだというふうに総理はお考えではいらっしゃらないでしょうか。
  301. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 当然保護されていかなきゃならないと思っております。
  302. 堂本暁子

    堂本暁子君 心強く思います。やっぱりトップの方同士と言っては失礼ですけれども、ワシの気持ちをわかっていただけるような気がしてうれしく思います。  そこで、環境庁長官に伺いたいんですけれども、鳥獣保護法の改正案がこの国会に出ております。そのこととこのワシのこととが無関係ではないわけです。  北海道では、農業被害が出たことから、九四年以降は雌シカの狩猟が解禁になりました。年間およそ五万頭から六万頭のエゾシカが今殺されているということです。このシカを撃つのがライフルなんですが、その弾が鉛なんです。ワシは食べるわけですが、やはり弾が当たったところが一番つっつきやすい。だから、そこをつっつくものですから、ライフルの弾も食べてしまうということで中毒になるわけです。オジロワシ、それからカラス、そういった弾であたった鳥が今どんどん死んでいるわけなんですが、ハクチョウとかカモとかそれからガンなんかはもう前から問題になっていました。  私は、実は国会でもう六年、七年ぐらい前から、こちらはライフルではなくて散弾銃です、散弾銃についてずっと質問もし、環境庁にもお願いをしてきまして、やっと環境庁は散弾については二〇〇〇年の秋から地域的に禁止することを決めている。ところが、エゾシカなどの狩猟の規制を緩和するという鳥獣保護法の改正案がこの国会に出ているにもかかわらず、ライフルの方は規制されていない。  これは環境庁長官にぜひともお願いしたいんですが、片方で緩和をして、はい、もっとシカをとりなさいというようなことをなさるのであれば、それにも私は実は反対なんですが、農家の方のことも十分に理解した上でもっと日本の自然全体として守る考え方が大事だと思いますけれども、とりあえずは、この鳥獣保護法を改正するのであれば、ライフルの鉛も一緒に規制しなければこれは大変困ります。見解をぜひ伺わせてください。
  303. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生御指摘のように、鉛の散弾銃によって捕獲されたシカというものは大変体内にたくさんの散弾がされておるわけであります。そして、そのシカを持ち帰って適切な処理ができるならばいいといたしましても、なかなか重うございますし、また山の中でございますので、いいところだけの肉をとって帰ろうというハンターが多いわけです。ですから、そういうハンターには、できるだけの注意を払って、そういう処置をしたものならば土中に埋めてちゃんとした処理をしてほしいということでお願いをいたしておるところであります。また、それらに対する補助的な処理もいたすべく考えておるわけでありますけれども、なかなか実行に移せないのが現状であります。  また、その散弾銃にいたしましても、鉛でなくして、銅の散弾銃とかその他代替品をつくるべきだということでいろいろと考えておるところでありますけれども、なかなか研究開発が十分でもございませんし、またその銃の取りかえ、買いかえということになりますと金銭的な、経済的な面の支出もあるものですから、その辺の配意が十分できていないわけでありますけれども、そんな点に心しながら今後できるだけ害を少なくする、そしてまた狩猟に対してもエチケットを守っていただくような方法を講じていきたいと思っておるところでございます。
  304. 堂本暁子

    堂本暁子君 大臣、シカは確かにしまわなきゃいけないということになっているんですが、大きいのは百二十キロ、それから雌で七十キロ、そしてハンターさんの方はもう五十代、六十代なんです。そうすると、そんな百二十キロのシカを雪の中なかなか運べない。これはもう大変難しいということでおいおいに、お金がかかるから、銃にかかるから。しかし、これだけワシがどんどん死んでしまう、それからタンチョウヅルも飲んで死んだ、資料にもお入れしてありますけれども。そういうことがどんどん起こっているところで、ハンターの方の都合もあるでしょう、しかしどっちが優先かということです。  きょう、厚生大臣もいらっしゃいますから、質問には入れていませんけれども、酸性雨は鉛を溶かすということで、これは人体にだって危険なんです。今、散弾銃の場合には毎年七十一トンがばらまかれている。それが酸性雨が中国から来るようなとき、どういう影響があるのか、このことも考えなきゃならない。人体にどういう影響があるのか、稲にそれが入るのか入らないのか、この研究はまだのようですけれども、きょうは厚生省への御質問はできませんけれども、やはりどうして も、ハンターの都合よりは日本の自然全体、そして健康のこと全体を考えたら私は即刻禁止すべきだと思います。  通産大臣に伺いたいんですけれども、デンマークやオランダではもう散弾銃を全面禁止しております。ライフルについては、カリフォルニア州で自主規制をコンドルが死に出したので始めたということです。もし、日本が環境先進国というのであれば、私は何が本当のオールタナティブ、代替弾になるのが、かわりの弾になるのがいいのかということも難しいとは思いますけれども、少なくとも鉛をこれだけ日本の田んぼとか、そして五万頭のシカを撃つために使うとか、そういうことは鳥だけではなくて人間の方にだって危険なことですので、ぜひともその供給体制をとっていただきたいということで御見解をいただきたいと思います。
  305. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 散弾銃の鉛散弾による水鳥の鉛中毒の問題については、環境保護の観点から、国際的にも代替散弾への転換が進んでおります。通産省としても、代替弾であります軟鉄散弾への切りかえ、使用時の安全性の確保等について環境庁とも協力して関係業界を指導してきたところでございます。  また、オオワシ等の保護の観点から鉛ライフル弾も銅弾に代替するという問題については、現在国内において鉛ライフル弾、銅弾ともに生産が行われていないため、関係自治体等において海外からの銅弾の安定的な供給等についても検討が行われていると聞いており、通産省としてもこうした検討を踏まえまして必要な協力を行っていきたい、そのように考えております。
  306. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。  かわりの弾がやはり必要だと思うので、通産大臣にぜひともその点よろしくお願いいたします。  通産大臣ああおっしゃっているので、環境庁長官、やはりこれは環境庁として英断すべきことだと思うんです。もうハンターの都合とか銃を買いかえるとかということと、さっきトキはこれから野生にしたい、それなのにこのオオワシは今やあと十年で絶滅するかもしれない。またオオワシをロシアからもらってきて、二羽、三羽をどうのこうのということではございません。もうそのことよりも、今まで、このグラフを見ていただけばわかるんですけれども、資料に入れてございますが、駆除されるエゾシカの増加に伴って、ワシが、九六年から九七年が八羽、それから九七年から九八年が二十羽、そしてことしはもう一・六倍の早さで死んでいる、こういうふうに幾何級数的な早さで死んでいるわけです。  そうしましたら、トキのようになってから、はい、ワシを野生に戻しますなんて、トキよりもずっと難しいと思います、ワシは王様なんですから。やはりワシに対しても私は、ワシの問題だけではない、それは日本の国の問題で、例えば法隆寺の御物がとられたりしたらこれは大問題なのと同じに、特別天然記念物のように指定されているものはこれはどうしても大事にしなければならない。何としても来年の秋、散弾と一緒にライフル銃の鉛も規制するということを伺いたいんですが、いかがでしょうか。
  307. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先生の御高説もっともだと思っております。できる限り意に沿うように私たちも頑張ってまいりたいと思っています。  ただ、代替品いろいろございますけれども、その研究成果と相まって措置をしてまいらなければならないと思っておるところであります。
  308. 堂本暁子

    堂本暁子君 まだもし時間が許されれば、後でまた鉛のことを伺いたいと思います。  もう一つ、同じ北海道で大変心痛むことに出会いました。これは高山植物の盗掘です。資料にずっと列挙してございますけれども、これも全く天然記念物、それを盗みに来る。このことについて警察の方に、国家公安委員長きょうお越しくださっているので伺いたいんです。  もう何しろ東京でもこういう大会がございまして、日本じゅうで起こっています。ですけれども、北海道は北なのでそれだけひ弱な、弱い高山植物がいっぱいある。そして、日本のアポイ岳というところでは高山植物は国の天然記念物として指定されている。そこへ泥棒に行くわけです。  この表でいいますと、下から何番目かに、九六年にアポイ岳と書いてありますけれども、十六種三十株とっていった。それから、九七年、アポイ岳、これも十五種六十二株を盗んでいる。こんなものじゃないんです。これはたまたま出会った人が、パトロールしていた自然保護団体の人があったからこの六十何株。私が聞いた話ではトラックで百株とか運んでいるというようなのも聞きました。  こういうようなことですけれども、法律で申しますと、これももう本当に絶滅間近、日本のそれこそ正倉院の御物と同じように、何千年何万年という形で進化してきた日本の宝物が今こういう形で盗まれている。ところが、警察の取り締まりが非常に甘いんじゃないかというふうに言われています。もっと、外国なんかでやっているように、氏名を公表するとか身柄を拘束するようなことがあっていいんじゃないか。  例えば森林法で申しますと、百九十七条では三年以下の懲役または三十万円以下の罰金というふうになっているんですが、懲役刑なんかは全然ない。もう罰金を払ってももうかるから平気なんだそうです。  この辺に関してはもっとしっかり取り締まっていただきたい。いかがでしょうか。
  309. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 特別天然記念物に指定されている高山植物の違法な採取行為については、警察としても厳正に対処すべきものであるという認識をいたしております。特に反復、継続するような悪質な事案については、御指摘のとおり、積極的かつ厳格な対応が必要であると認識をいたしております。
  310. 堂本暁子

    堂本暁子君 そこは、反復というのが問題なんです。同じ人が、初犯だったら捕まえない。だけれども、その間に天然記念物はなくなっちゃうんです。だから一回目でも、アツモリソウを、大臣、これは一株幾らだか御存じですか。──御存じない。一株五万円で売っているんです。百株とれば五百万です。それで三十万の罰金。これは痛くもかゆくもないわけですね。  そんなことでは日本はだめです。スイスへ行ったら、いっぱいスイスの山は高山植物があって、切ったら逮捕ですよ。カナダだって逮捕です。アメリカはちょっと私知りませんけれども、日本は反復しない限り、初犯では逮捕もしない。三十万円。これはちょっと問題なのではないかというふうに思います。  もう一度その点について、警察の方の対応、初犯でも現場でどうするか伺いたい。
  311. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) もちろん、その事案の内容によって、悪質なもの、今の御指摘のようなトラックを持っていってそういうようなケース、かなり個別具体ケースによって対応の仕方は異なるとは思います。  今まで報告を聞いておりますと、三十万の罰金が科せられているとか幾つかの事例は承知をいたしておりますけれども、なお一層悪質な事案に対しては厳格に対応していくということで指導してまいりたいと思います。
  312. 堂本暁子

    堂本暁子君 ほとんど悪質だということがわからないんですね。リュックサックに入れて普通の登山者と見分けがつかない、そういう人が何人も入っていって、そして今度は車に入れて、道路が大変便利になりましたから、それで捕まってしまう。  きょう法務大臣にもお越しいただいていると思いますが、やはり問題は三十万の罰金、これで果たしていいのかということです。文化財保護法、それから自然公園法、森林法、こういったことに基づいて私は懲役刑ぐらいがあってもいいんじゃないか。法隆寺の御物を盗んだらそのぐらいのことがあるかもしれない。こんな大事な日本の宝が絶滅しちゃってなくなって、ああ、あれはなくなっちゃったんだというようなことになる。これは余りにも今の時代の寂しさとでも言いたいというふうに私は思いますが、法務大臣の御見解、ぜひ伺いたい。
  313. 陣内孝雄

    国務大臣(陣内孝雄君) 求刑は、具体的事件ごとに検察官において犯罪の軽重、犯行の動機やその目的、態様、利得の有無あるいはその内容、犯人の前科、改悛の情の有無等、諸般の事情を総合的に考慮して決めるものでありますので、いかなる求刑か、求刑が適切かどうかについては一概に論じられないということは御理解を賜りたいと思います。  なお、一般論として申し上げますと、御指摘の自然保護の重要性については、検察官が犯罪の軽重を判断するに当たり、十分考慮すべき事情でありますので、処分、求刑を決定する重要な判断要素の一つになる、このように考えております。
  314. 堂本暁子

    堂本暁子君 法務大臣に御就任になってすぐにこの実態を知っていただいたことは大変ありがたいと思います。法務大臣としてこれから全国にいろいろ影響があると思いますので、小さい花は小さい花だけのことでは私はないと思います。日本じゅうに何億年、何千万年という間ずっと進化してきた花を私たちの時代に全部この地球上から絶滅させるということは間違っている。しかも、これだけの法律があるわけですから、法の番人としての法務大臣に期待するところ大でございます。よろしくお願いいたします。  総理、何かワシのことで総理質問するのもあれなんですが、トップ同士と思って聞いていただきたいんですが、総理大臣は空気銃はどんな弾を使っているか御存じでしょうか。
  315. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 子供のころ空気銃で鳥などを撃った経験はありますけれども、小さな鉛の弾ではなかったかと思います。
  316. 堂本暁子

    堂本暁子君 私は使ったことがないので知りませんでした。さすが御存じということで、鉛なんです。  今度、鳥獣保護法の改正、これはライフルやなんかが使える人たちは空気銃も使っていいということになっているわけです。ということはどういうことかといいますと、鳥獣保護法の改正で、ハンターに何か歯どめがかかるのではなくて、空気銃の使用を奨励しているということになってしまうわけです。それで、むしろ鉛の使用がふえる、そういうことなんです。ですから、規制緩和ということは、逆に言えばそういう有害な物質が多くばらまかれるということになる。  私は、イギリスへ行ったときに、ブレアさんは福祉環境については大変中央集権だ、こういう方針をとったということをイギリスの議員に聞きました。私は、本当にこういう問題についてこれから分権化が進んで、各県で猟期も、それからとる頭数もそれぞれ決めていいということに法律が出てくるわけですけれども、それが一方で有害な物質を私たちの環境に振りまくということがあるということは大変問題だと思います。その点について、環境庁長官に、これは環境庁長官しか答弁はないと思うんですが、御所見を伺いたい。局長だったら何言うかわからない。
  317. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) 一言申し上げさせていただきますが、ライフル銃を撃てる方でも空気銃を撃つためには別な免許が現在必要でございますので、それを合理化するというのが今回閣議決定していただきました鳥獣保護法改正の第二の柱でございます。
  318. 堂本暁子

    堂本暁子君 今度は使えるわけですよね、空気銃が。使えることになったわけでしょう。改正案にはそうなっているわけですね。
  319. 丸山晴男

    政府委員(丸山晴男君) さようでございます。ライフル銃を持てる方が免許を取らないと空気銃が使えないということが現在ございますので、その合理化を図ったものでございます。
  320. 堂本暁子

    堂本暁子君 確かに、ハンターの都合からいえばその方がいいわけです。しかし、環境の保全とか、それから安全ということからいったら、大変に鉛の弾が多くばらまかれるという事実はあります。  総理に最後に私は伺いたいんですけれども、単にワシの問題とか鉛の問題、小さい問題ではないというふうに思っております。これは地球環境の問題で、ワシはロシアから来る、この間、ロシア大使ともちょっとこの話をいたしましたけれども総理よく御存じのロシアのシベリアからやってくるわけですね。これは国際的な問題、そして日本の責任ということだと思うんです。小さいことのようでそれが大きな問題だと思います。そして、時代の中でいえば、次の世紀、またその次の世紀にまでかかわる大きな問題、その問題についてぜひとも積極的な施策を総理大臣としておとりいただきたいと願っておりますが、いかがでしょうか。
  321. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 渡り鳥もあるんだろうと思いますが、日本に来て種が絶滅するようなことがあってはならぬということは当然のことで、日本としては、日本に飛来したものはこれを積極的に保護いたしていくべきものと考えます。
  322. 堂本暁子

    堂本暁子君 ありがとうございました。
  323. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で堂本暁子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  324. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、西川きよし君の質疑を行います。西川きよし君。
  325. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願いいたします。  先日は、総理には高槻の市長さんの件で大変心のこもった御答弁、本当にありがとうございました。本日は、障害者施策に関連して御質問を申し上げます。  昨年のことですけれども、兵庫県の一人のお父さんからこういう本を一冊送っていただきました。「娘より三日間長生きしたい」というタイトルの本でございます。本書は、知的障害者であるお嬢様の成長ぶりを明るいタッチでお父様が書かれたものでございます。書名は、障害者の娘を現在の社会に安心して託して先立てない不安な気持ちを表現したものであります。障害は病気ではなく生かすべき一つの個性というメッセージを送っておられるように思います。  障害者施策推進本部長といたしまして、障害者プランの推進等々に取り組むに当たりまして、総理思いといいますか、まず冒頭、お伺いしたいと思います。
  326. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 西川議員が知的障害を持つ娘さんのお父さんの書いた本、そこでお示しですが、「娘より三日間長生きしたい」という本を引用されながら、今御質問がありました。  お話を聞きましたので、私もぜひこれを拝見したいと思いまして入手いたしたく指示したのでありますが、もともと一千部の発行だったということでこれを手にすることができず、議員から大変申しわけなかったのですがファクスでちょうだいをいたしまして、その点について私も読ませていただきました。親の気持ちとしては本当にみずからの命が尽きてしまったら一体こういう子供たちがどうなるかという、大変つらいお気持ちをまさにこの本にされておるわけでございます。  そういう意味で、知的障害を持たれる方々の親御さんのお気持ちを改めてこの本を通じて承知をいたしたわけでございまして、もろもろの施策を通じて、政府としてもそうした不安をどう取り除いていったらよろしいのかということにつきまして全力で努力をしていかなきゃならない、改めて読ませていただきまして痛感いたした次第でございます。
  327. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございます。  子供を持つ親にとりまして、子供より長生きがしたい、そんなことを口にするだけでも知らない人は非常識だなと思われるかもしれません。しかし、今の社会の中で、子供を残して死ぬわけにはいかない、子供より長生きをしなければならない、子供を愛すればこそ、どこの親でもそうですけれども、そのように願っているお父さん、お母さんがたくさんいるのも現実です。  この本を読ませていただいて、親と子のきずな、家族のきずな、本当に改めてこの大切さを僕も感じさせていただきました。その中でも、現状における問題等々、毎月の生活の中からのメッセージが送られている点、幾つか御質問をしたいと思います。  まず最初は、身体障害者または知的障害者に対する自動車税などの減免措置についてです。この中にお父様が書いておられますけれども、お父様はいろいろ転勤をなさる方で、「これまでの自動車登録手続きをした大阪府は、私の名義であっても身体障害者が利用するということで免税措置を受けていた。しかし、愛知県の自動車取得税と自動車税の免税措置を受けようと思えば、申請人が成人の身体障害者である場合は、本人名義の自動車しか対象にならない」と、こういうふうに書いてあります。  この減免措置については、自治省が厚生省と協議の上で各自治体に通達を出されておりますが、その中の減免の範囲についてまずお伺いしたいと思います。
  328. 成瀬宣孝

    政府委員(成瀬宣孝君) お答えをいたします。  身体障害者、知的障害者または精神障害者にかかります自動車税等につきましては、通達によりまして、日常生活において歩行することが困難である障害者がみずから使用する自動車や生計を一にいたします者等が障害者のために使用する自動車につきましては自動車税、軽自動車税、自動車取得税を減免することとしているところでございます。  この減免措置の対象となります自動車を具体的に申し上げますと、まず障害者が取得しまたは所有する自動車で専ら障害者本人が運転するもの、それから次に障害者が取得しまたは所有する自動車で専らその通学、通院等のために障害者と生計を一にする方が運転するもの、そしてさらに身体障害者で年齢が十八歳未満の者、知的障害者または精神障害者と生計を一にする者が取得しまたは所有する自動車で専らその通学、通勤等のために生計を一にする者が運転するものなどが対象とされているところでございます。
  329. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  この御家族の場合は結果的には減免の対象になったわけですけれども、しかしその通達どおりに運用になりますと、十八歳以上の身体障害者については御本人が取得する、または所有する場合でないと対象になっていませんので、実際には多くの自治体でそうした場合でも対象としている現状からいたしますと、この自治省からの通達についても年齢を削除した上で改めて各自治体に配慮をお願いしたい、こう思うわけですけれども、ぜひ自治大臣からお答えをいただきたいと思います。
  330. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) この減免措置は、公共交通機関を利用して外出することが困難な障害者のために使用する自動車について講じられるものでありますけれども、税制上の均衡や課税の公平の観点から、その対象を一定の自動車に限っておるということであります。これは四十五年度の改正で今御指摘のような形に、減免措置を講ずるという取り扱いになったわけであります。  この問題、御指摘になりました減免措置については、地方団体通達で示しております対象を一部広げて、つまり通達の範囲を超えて実施しておられるそれぞれの地域がございます。したがって、そういう例もあるし、あるいはそうでないところもあると。ここはそれぞれの自治体がどのように自主的に御判断をされるかという部分でもあります。そういう点で、これからもいろんな方面の意見を聞いた上で考えてまいりたいというふうに思います。そういうことです。
  331. 西川きよし

    西川きよし君 ぜひ自治大臣によろしくお願い申し上げたいと思います。  次に、知的障害と身体障害の重複障害に対する施策についてお伺いをしたいと思います。  少しまた本の方を読ませていただきたいと思います。   重複障害者は、身体障害者の施設では知的障害があるから無理だと断られ、精神薄弱者の施設は、身体障害があれば施設も職員も対応が出来ないと断られる。重複障害者は不利益を受けることが多い。厚生省の施策も、身体障害者と知的障害者との垣根がない障害者の立場に立った施策を推進してもらいたいものである。 というふうに本の中に書いてあります。  ことしの一月に出された障害者関係三審議会の意見の中でも検討が必要との指摘もありますけれども現状説明と今後の検討内容について、今度は厚生大臣にお願いしたいと思います。
  332. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 知的障害と身体障害をあわせ持っております重複障害者でございますが、これにつきましては、障害児施設として重症心身障害児施設というのがございます。これは全国に八十カ所でございまして、社会福祉法人ないし県が主体になってやっておりますが、定員は八千人くらい重複障害児を収容できるようになっております。  そしてまた、知的障害者更生施設とか身体障害者更生施設等の施設がございますが、障害の状況に応じまして重複障害を受け入れるということもいたしておりまして、知的障害者の更生施設に入所している重度の重複障害者に対しては、国として措置費の二〇%加算の重度加算を行うなど処遇の充実を図っております。  なお、知的障害者と身体障害者が施設等を相互に利用する相互利用制度でございますとか、授産施設あるいはデイサービス事業におきましてこの重複障害者を受け入れやすい環境の整備に努めております。  なお、今後、今、委員の指摘のありましたように、身体障害者福祉審議会の意見等を踏まえまして、さらに施設での処遇の充実を図っていきたいということと、重複障害者に対しまして、音声言語機能障害者等について特に重複障害者のコミュニケーションの確立等も必要でございますから、訓練プログラムの開発をやるとか、あるいは現在の職員研修が障害者施設別を前提としてございますので、重複障害者の処遇について十分な対応ができないのではないかという指摘もございますから、こうした側面から職員の養成研修等もやってまいり、その充実を図ってまいりたいと思っております。
  333. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  大変心に残った文面がありますので読ませていただきたいと思います。時間がもうないものですから、時間になりましたら終わります。   不思議に思ったことはディズニーランドには障害者割引がない。大阪から出かけると、交通費や宿泊費の負担も大きく、さらに、入場料金が高額なので、割引があれば大いに助かるのだがと思った。   娘は、広い園内を松葉づえで大変なので車いすを利用した。どのアトラクションも、車いす用の別の入り口から入って、階上へはエレベーターを利用し、必ず誘導と介助がある。アトラクションは、二日間の入場でほとんど回ることが出来、十分楽しむことが出来た。   園内のどこへ行ってもバリアフリーが徹底されており、確かに、割引制度がないのも当然かもしれない。日本の施設では、「障害者に対してバリアがあるから申し訳ない」「障害者に十分な対応が出来ないから、せめて入場料金を割り引きます」ということなのだろうか。 こう書いてあるんです。  冒頭で、障害は病気ではなく生かすべき一つの個性と、こういう部分をしっかりと僕たちも受けとめて頑張っていきたいと思います。  総理に感想を一言いただいて、質問を終わります。
  334. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 最後のお話はいろいろと思いを新たにさせられたことだと思っております。  いずれにいたしましても、そうした親御さんのお気持ちが、十分この世の中でそうした方々の気持ちにこたえられるようにあらゆる施策が講ぜられなきゃならぬと思っております。
  335. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。
  336. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で西川きよし君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて教育環境福祉に関する集中審議は終了いたしました。  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十四分散会