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1999-02-26 第145回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二十六日(金曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  二月二十五日     辞任         補欠選任      岩井 國臣君     三浦 一水君      福本 潤一君     山本  保君      益田 洋介君     加藤 修一君      小泉 親司君     宮本 岳志君      須藤美也子君     池田 幹幸君      菅川 健二君     山崎  力君  二月二十六日     辞任         補欠選任      小宮山洋子君     江田 五月君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         倉田 寛之君     理 事                 鴻池 祥肇君                 竹山  裕君                 林  芳正君                 矢野 哲朗君                 今井  澄君                 平田 健二君                 山下 栄一君                 笠井  亮君                 大渕 絹子君     委 員                 市川 一朗君                 大野つや子君                 狩野  安君                 金田 勝年君                 岸  宏一君                 斉藤 滋宣君                 常田 享詳君                 長谷川道郎君                 松谷蒼一郎君                 三浦 一水君                 溝手 顕正君                 依田 智治君                 若林 正俊君                 海野  徹君                 江田 五月君                 郡司  彰君                 内藤 正光君                 広中和歌子君                 福山 哲郎君                 円 より子君                 柳田  稔君                 加藤 修一君                 浜田卓二郎君                 山本  保君                 池田 幹幸君                 小池  晃君                 宮本 岳志君                日下部禧代子君                 照屋 寛徳君                 入澤  肇君                 月原 茂皓君                 奥村 展三君                 山崎  力君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   小渕 恵三君        法務大臣     中村正三郎君        外務大臣     高村 正彦君        大蔵大臣     宮澤 喜一君        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君        厚生大臣     宮下 創平君        農林水産大臣   中川 昭一君        通商産業大臣        労働大臣臨時代        理        与謝野 馨君        運輸大臣        国務大臣        (北海道開発庁        長官)      川崎 二郎君        郵政大臣     野田 聖子君        建設大臣        国務大臣        (国土庁長官)  関谷 勝嗣君        自治大臣        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    野田  毅君        国務大臣        (内閣官房長官)        (沖縄開発庁長        官)       野中 広務君        国務大臣        (金融再生委員        会委員長)    柳沢 伯夫君        国務大臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国務大臣        (防衛庁長官)  野呂田芳成君        国務大臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君        国務大臣        (環境庁長官)  真鍋 賢二君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        竹島 一彦君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛施設庁長官  大森 敬治君        防衛施設庁施設        部長       宝槻 吉昭君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        環境庁企画調整        局長       岡田 康彦君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁大気保全        局長       廣瀬  省君        環境庁水質保全        局長       遠藤 保雄君        沖縄開発政務次        官        下地 幹郎君        沖縄開発庁総務        局長       玉城 一夫君        国土庁計画・調        整局長      小林 勇造君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     上田 秀明君        外務省北米局長  竹内 行夫君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  東郷 和彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省理財局長  中川 雅治君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        厚生省健康政策        局長       小林 秀資君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省老人保健        福祉局長     近藤純五郎君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        食糧庁長官    堤  英隆君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        運輸省鉄道局長  小幡 政人君        労働大臣官房長  野寺 康幸君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        建設省建設経済        局長       木下 博夫君        建設省都市局長  山本 正堯君        建設省住宅局長  那珂  正君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        宍戸  洋君    参考人        日本銀行総裁   速水  優君        預金保険機構理        事長       松田  昇君     ─────────────   本日の会議に付した案件公聴会開会承認要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○派遣委員報告平成十一年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○平成十一年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会開会いたします。  公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、来る三月四日に公聴会開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  平成十一年度総予算案審査のため、本日の委員会預金保険機構理事長松田昇君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 平成十一年度一般会計予算平成十一年度特別会計予算平成十一年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  8. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 先般、本委員会が行いました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。  まず、第一班の報告矢野哲朗君にお願いいたします。矢野哲朗君。
  9. 矢野哲朗

    矢野哲朗君 地方公聴会にかわります予算委員会派遣第一班の調査について報告をいたします。  第一班は、委員長団長とする十名で編成され、一月二十七日から同月二十九日までの三日間、和歌山奈良両県を訪れ、近畿地方産業経済及び両県の財政経済状況等について概況説明を聴取したほか、和歌山県においては梅干し工場紀州漆器伝統産業会館等を、奈良県においては県営福祉パークのほか、墨、茶せん等伝統地場産業について調査を行ったほか、観光連盟並びに商工会議所から、地元経済の現状並びに地域振興券活用等について意見聴取を行ってまいりました。  近畿地方景気動向は、公共投資が前年並みまで回復しているものの、個人消費は低調で、住宅設備投資も前年を下回っているほか、雇用情勢も一段と厳しさを増しており、全体として厳しい状況にあります。貸し渋りについては、信用保証協会利用等により幾分改善する傾向にありました。  和歌山県の経済情勢は、消費低迷雇用の悪化が続き、鉄鋼業など素材産業アジア諸国との競争激化で伸び悩んでおり、非常に厳しい状況にあります。財政状況は、景気低迷により県税が減少しており、基金の取り崩しによって予算を編成しているほか、県債発行額も増加しており、財政運営は厳しさを増しております。  奈良県の経済情勢は、地場産業繊維産業景気低迷と東南アジアからの輸入品の増加で伸び悩んでおり、雇用情勢全国平均より低い水準にあるなど、総じて厳しい状況にあります。財政状況は、県税収入が減少する一方で県債発行が増加し、県債残高予算規模を大幅に上回る額に達しており、財政運営は厳しい状況にあります。  なお、奈良県から、地方財政対策充実強化平城遷都千三百年に向けた取り組み、関西文化学術研究都市の建設道路網整備等について要望をいただきました。  以上で第一班の報告を終わります。  なお、調査の詳細につきましては、委員長のもとに文書による報告書を提出しておりますので、これを本日の会議録に掲載されますよう、お取り計らい願いたいと存じます。  以上であります。
  10. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、第二班の報告平田健二君にお願いいたします。平田健二君。
  11. 平田健二

    平田健二君 予算委員会派遣第二班の調査について御報告いたします。  第二班は、鴻池理事団長とする十名で編成され、一月二十七日から同月二十九日までの三日間、石川福井の両県を訪れ、北陸地方産業経済動向、両県の財政経済状況等について概況説明を聴取するとともに、石川県においては石川県立九谷焼技術研修所石川工業試験場等を、福井県においてはかすみが丘学園テクノポート福井などについて現地視察を行うほか、太鼓製造眼鏡製造など、地元産業についても広く調査を行ってまいりました。  北陸地方景気動向は、全体として見れば、低迷が続き、厳しい状況にあります。大型小売店売上高は、秋冬物衣料品が低調であるほか、家庭用品や飲食料品が振るわず、パソコンなど一部で改善の兆しが見られるものの、全体としては低調に推移しております。鉱工業生産は依然低水準にあり、雇用状況も依然として厳しい状況が続いております。  石川県の経済情勢は、基幹産業である繊維工業の業績が大幅に落ち込むなど、鉱工業生産指数が前年を引き続き下回るほか、個人消費は、百貨店・スーパーの売上高が減少し、総じて低調に推移しております。財政状況は、近年の景気低迷により税収が伸び悩む中、数次にわたる経済対策の実施に加え、減税による減収の補てんや地方財政に伴う財源対策により地方債増発を余儀なくされる厳しい状況にあります。  福井県の経済情勢は、製造業において化学・プラスチックが伸びているものの、主要産業である繊維衣料、機械、眼鏡はいずれも減少しているほか、雇用情勢も厳しい状況が続き、企業倒産は件数及び負債額ともに前年に比べ大幅に増加し、多発化の様相を示しております。財政状況は、景気低迷税収が落ち込む厳しい状況にあり、シーリングを設定する一方、県債発行財政調整資金の取り崩し等によって財源確保を図っております。  なお、石川県からは北陸新幹線早期全線開通能登空港建設促進について、福井県からは原子力発電所立地に伴う安全確保福井空港整備などについて要望がありました。  以上で第二班の報告を終わります。  なお、調査の詳細につきましては、委員長のもとに文書による報告書を提出しておりますので、これを本日の会議録に掲載されますよう、お取り計らいを願いたいと存じます。  以上です。
  12. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  両班から提出された報告書につきましては、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたします。     ─────────────
  13. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 昨日に引き続き、総括質疑を行います。日下部禧代子君。
  14. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。  新ガイドライン日本語訳についてまずお尋ねしたいと存じます。  周辺事態関連法案が今国会に提出されております。それは新ガイドライン実効性確保するためのものというふうに解釈してよろしいのではないかというふうに思います。日米政府間あるいは米軍自衛隊との間で具体的な支援が決定され実行に移される、そのベースとなるものが新ガイドラインでございます。  米国との協議あるいは米国との合意した文書英文だけである、以上のような解釈でよろしゅうございましょうか、総理
  15. 倉田寛之

  16. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 やはり大臣にお尋ねしたいと思います。
  17. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 事務的に政府委員から答えさせて、その後大臣を指名いたしますので、お聞きください。
  18. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 逆だと思いますけれども。
  19. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 事実関係についてお答え申し上げます。  平成九年九月に日米安全保障協議委員会で了承されましたいわゆる新たな指針は、英文のテキストにつきまして米側と交渉し調整を行ったものでございます。
  20. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今、政府委員が申し上げたとおりでございます。
  21. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これは今ガイドラインの問題には関係ございませんけれども、やはりこれは大臣の御見識が疑われます。大臣の御見識が疑われるということは、日本政府見識が疑われるということ、それは日本国民見識が疑われるということであります。  自自の連立内閣は、まず政府委員の制度というものを廃止して、大臣が直接お答えになるということを標榜なさっていらっしゃいます。そのことをまずこの国会から実践していただきたいというふうに思います。政府委員お答えになってから後に大臣お答えになるということは、これは恥ずかしいことだというふうにお思いにならなきゃいけないと思います。そのことを自自内閣は、もう既に御自分たちでおっしゃっているわけでございますから、ぜひとも実践をしていただきたいというふうに思います。  その点いかがでございますか、総理
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自由民主党自由党との間で合意をいたしました点につきまして、政府委員の廃止並びにその他副大臣創設等約束をいたしておりますので、これは法律を提案いたしまして、それが通過いたしますれば、そうした方向でこれからの審議につきましても、当然のことでありますが、進めさせていただくということだろうと思います。
  23. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 法案が通過してからの問題ではないと思います。単なるその形式の問題でなくて、どういう気持ちで法案をお出しになったのか、そのことをまずお示しになる、そのことがやはり法案が通過することの説得性を持つものではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自由民主党総裁という立場でも、また自由党党首との間でそうした考え方に一致を見ました。  ただ、これは国会あり方その他ございまして、両院の議院運営委員会等で、それに関連をいたしましての対応というものがございますので、そうしたことを今後法律案の成立とともに実行していくということでございまして、その精神は十分承知をいたしておりますが、現段階におきまして、それが制定されておりません立場での現在の審議あり方につきましては、これは現在の方向国会審議等を進めさせていただいておることでございまして、両党が結ばれたから、これで国会もその方式でやってよろしいということでもなかろうかと思っております。
  25. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私も、もともと政府委員というよりも大臣と議員との議論というものが交わされることが望ましいというふうに思っている人間の一人でございます。やはり本当の意味でのディベートというのが国会で行われるということは、これはどなたも否定することができないものであるというふうに思うんです。ですから、それは何も時間を置いてではなくて、今早速実行なさるということにおいて、これは異論を唱える人はどなたもいないと思うのでございます。ぜひとも、もう今国会、この今の私の質問のときからでも実行していただきたいというふうに思います。  新ガイドラインの問題に戻ります。  ところで、今新ガイドライン英文だけが正文であるというふうにお答えがございました。そして、日米間の公式合意文書というのは和文はないということでございますね。ということになりますと、今政府が出されております日本語の訳というのは、日本国民にとりましてだけではなく、アメリカ側にとっても非常に大きな意味があるというふうに思うわけでございます。  日本有事あるいは周辺有事などにおける自衛隊米軍との支援具体的内容において日米の認識あるいは理解というものが共通でなければならないということが大前提になるからでございます。英語の、つまり正式に論議される文章の意味を我々日本国民が誤解していたりしますと、これは非常に大きな意味がございます。  これは非常に具体的な取り決め、ただ単なる取り決めではなくて、それが具体的な現場に及ぼしてくる大きな意味を持つものであります。したがいまして、現場にいらっしゃる自衛隊方々にとっては命を落とすことになるかもわからない、またひいては日本国民にとってそういう危険も起きてくるかもわからない、やはりそういうものではないということであったらば、それをきちんと示しておくことも必要だと思います。また、そういう危険性があるものであったら、その危険性があるということもきちんと示すべきではないかというふうに思います。つまり、英文に、正文にいかに正確であるかということであります。これは文学作品翻訳ではないわけであります。いかに正確でしかもわかりやすいか。したがって、努めて意訳というものを避けねばならないということが日本語訳評価基準となるべきではないか、これはどなたも異論を差し挟む方はないと思うわけでございます。  さて私は、そういった観点からこの日本語訳を拝見いたしました。そしてまた、英文も何度も読み返してみました。しかしながら、どうしても私はこの日本語訳にいい評価を差し上げることができません。今申し上げたような基準で拝見いたしまして、そういう評価を与えることはどうしてもできないわけでございます。多分英語に御堪能な方々が、外務省方々あるいは防衛庁方々翻訳をなさったということはわかります。そして非常に御苦労なさった翻訳だなということも、これは両方を読めば読むほどひしひしと伝わってくるわけでございます。それはなぜそういうふうに苦労なさったかなというふうなこと、それはまたおいおい今から申し上げてみたいというふうに思います。  ところで、総理あるいは外務大臣、もちろん正文をお読みであって、そして日本語訳をお読みでいらっしゃるというふうに思いますが、採点はいかがでございましょうか。日本語訳採点をまず外務大臣からお願いいたします。
  26. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 正文については精査しておりませんが、私は自分の部下を信頼しておりますから、大変わかりやすいガイドラインになっている、こういうふうに思っております。
  27. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) これは私、外務大臣になりました以前に米国日本との間の交渉は進んでおりまして、そういった意味で、成案を得たわけでございますが、私も英文全文をみずから精査してはおりません。専門的な立場でこれを翻訳いたしました外務省の責任あるこの翻訳について、これを信頼をして、そしてこのガイドライン法を初めとしたすべての案件につきましては、これを政府として責任を持って提案させていただいているところでございます。
  28. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、総理及び外務大臣は大変重要なことを御発言になったと思うんですね。アメリカとの交渉はこの正文をもってなされるわけであります。その正文を精査していらっしゃらないということは、これは本当に大きな問題だと思います。  そしてもう一点は、部下を信頼している、つまりこの翻訳を信頼しているということであります。そうしますと、翻訳がもし間違っていたらば、その間違っていることに基づいて日本の重要な方向を決めていくということになるわけであります。これは非常に、今のお言葉というのは、私は一国を代表する方々としてはおっしゃってはいけない言葉ではないか。少なくとも外務大臣正文をきちっと精査する、それはもう当然のことではないでしょうか。
  29. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 世界には百数十カ国という国があって、それぞれの国の言葉を使っておりまして、そしてそういう中でそれぞれ通訳を使って、その通訳を信頼して正確な外交交渉を行っているわけであります。そして、私は部下が正確な訳をした、こういうふうに信じて新ガイドラインに当たっているわけであります。
  30. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 確かに、非常にいろんな国が世界じゅうにございます。そして、日本日本語を使っている国でございます。しかしながら、責任者といたしまして、少なくとも国際語である英語で書いてあるわけでございますから、これをきちっと精査していくということは、もう何も議論するまでもない前提にしておいていただかないことには大変なことになるというふうに思います。  それでは、非常に信頼なさっているというその部下の皆様がおつくりになりました日本語訳でございます。今お二人、総理とそれからまた外務大臣がおっしゃったように、この和訳ということがいかに今度は重要かと。もう全幅の信頼をお与えになっているわけでございますから、この日本語訳の重要性というものを今お二方に証明していただいたということにもなるわけであります。その重要な政府訳をそれでは少し精査をさせていただきたいと思います。  新ガイドラインというのは、日本のあるいは日米の安全保障問題における取り決めでございますね。だけれども、事実上これは日米の連合作戦協定といったような性格を持つというふうに、英文の方ですよ、これを一生懸命読むと、やはりどうしてもそういうふうにとらざるを得ないのであります。すぐれて軍事的な意味合いを含んだ合意文書だというふうに私は解釈いたしております。  だから、非常にわかりやすいんです。物すごくわかりやすいです。文学作品のようにこねてはおりません。非常にわかりやすい言葉遣い、構文を使っております。英語に御堪能な宮澤大蔵大臣はそれはおわかりだというふうに私は信じているわけでございます。したがって、軍事用語としての正確さということも非常に求められるものだというふうに思うわけであります。  一々たくさんの言葉を、疑問に思った言葉を、単語を私はここで精査するわけにはいきません、ここは英語の教室でも何でもないわけでございますから。したがいまして、私がおかしいなと思ったものの中から幾つかを選んでお考えを伺ってまいりたいというふうに思います。  まず、最初の単語がオペレーションでございます。新ガイドラインでは至るところにオペレーションという言葉が使われております。この用語というのは、この文書の中では軍事専門用語として使われていることが非常によくわかるんですね。したがって、新ガイドラインというのが非常に軍事的性格の強い文書であるということも、これを読めば読むほどわかってまいります。  新ガイドラインのⅣのところでございます。「日本に対する武力攻撃がなされた場合」のところで用いられているオペレーションは、米軍が行うオペレーション、自衛隊が行うオペレーション、いずれも「作戦」というふうに翻訳されております、こちらでは。  それに対していわゆるⅤの方です。Ⅳの方は日本有事の場合が書かれております。それから、Ⅴの方は周辺有事の項であります。そこになりますと、「オペレーション・オブ・ア・バイラテラル・コーディネーション・メカニズム」あるいはまた「US―ジャパン・オペレーショナル・コーポレーション」のオペレーションがいずれも「運用」と訳されております。それから、「コンバットオペレーションズ」のオペレーションは「行動」と訳されております。それからまた「コンダクティングオペレーションズ」「サーチ・アンド・レスキュー・オペレーションズ」「オペレーショナルエリア」、このオペレーションはアクティビティーと同じで「活動」というふうに翻訳されているんです。  日本有事の場合が「作戦」、そして周辺有事のときのオペレーションはこのように「活動」、「運用」それから「行動」と。なぜこういうふうに周辺有事とそれから日本有事の場合のオペレーションを使い分けなきゃならないのか。
  31. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) オペレーションという言葉は日本語に訳した場合非常に多義的な言葉でありまして、それぞれの文脈で正しいように訳すというのは、私は当然のことだろうと思います。  周辺事態における自衛隊の活動というのは必ずしも作戦行動に該当しないわけでありますから、まさにそういう訳をしたらそれは逆に誤りだということになりますし、周辺事態が生起したとしても米国は武力の行動を伴わない種々の活動を行うわけでありますから、その文脈に従って「活動」とやったり「運用」と訳したり「作戦」と訳したりする、これは当然のことだろうと思います。
  32. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 正文を読んでいらっしゃらない外務大臣がそういうことをおっしゃるのは非常におかしいと思うんです。正文を読みますと、今おっしゃった文脈に従うとやはりどうしても作戦というふうになった方が非常にわかりやすいのであります。本当は宮澤大臣にお聞きした方がいいのかもわかりませんが、アドバイスを後でいただきたいというふうに思います。  例えばこの米軍用語辞典を見ますと、オペレーションというのはやはり「作戦」というふうになっております。または、防衛学会が編集しました国防用語辞典というのを見ましても、作戦とは、与えられた任務を遂行するために計画され、体系づけられた対敵軍事行動であり、一般的に戦略、戦術を具体化したものを指すというふうに言われております。  したがいまして、やはりここは正文に沿った、正文の文脈に適した日本語訳をすべきだというふうに私は思います。そのことの方が国民の正しい理解を妨げることなく、また誤解とか幻想を与えるような訳にならないのではないかというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
  33. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) オペレーションというのは、それは戦闘作戦行動というのにぴったり当たる場合もありますし、もっと広い活動というところになることもありますし、その場できっちりした文脈に沿った訳がなされている、こういうふうに部下から説明を受けておりますし、私はそれを信頼しております。  そして、私の隣に英語に堪能な与謝野大臣がおられますが、まさに私の言うことは正しい、こういうことを言ってくださいました。
  34. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それは正文をお読みになってからの御意見にしていただきたいと思います。だから改めまして、正文をお読みになってから、またこの問題を外務大臣にお伺いしなければならないと思います。やはりこれは、外務大臣たるもの、私は全部ほかの大臣にそういうことを言っているわけじゃないんです。皆様に言ってるわけでもないです。外務大臣に申し上げているわけでございます。  次に、もう一つ言葉を差し上げてみたいと思います。やはりここで問題になっております海上交通の問題であります。「シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション」、これはいわばSLOCというふうに言われてもいるわけでございますが、日本でシーレーン防衛という言葉が使われておりますけれども、このシーレーン防衛と「シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション」というのは同じでしょうか、それとも違って使われているのでしょうか。
  35. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) このガイドラインにおきましては「シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション」という言葉が使われておりますが、その意味するところは、従来シーレーンということで議論されている概念と同様のものでございます。
  36. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 アメリカ軍の場合には、このSLOC、シーレーンというのは米軍の用語辞典で見ますと、シーはなくて、「ライン・オブ・コミュニケーション」というのはいわゆる後方連絡線あるいは後方兵たん線というふうに使われております。  つまり、米軍の理解では戦線の作戦部隊と根拠地とを結ぶ兵たん補給路を指しています。その海洋版というのが「シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション」というふうに解釈されるわけでございまして、アメリカ軍の解釈は、だから海上交通と訳すとこれは間違いになってしまいます。  ですから、日本語訳というのはやっぱりはっきりと海上兵たん補給路とすべきではないかと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  37. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) この輸送路は、軍事物資のみならず民間物資の海上輸送路でもあるため、これを兵たん輸送線等と訳すのははっきり誤りであります。
  38. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 はっきりと誤りというふうにおっしゃれないというふうに思うわけでございます。  つまり、兵たんというのはどういうことか。英語ではロジスティックスという言葉を使っております。日本の場合はそれが後方支援となっております。もう一方で、後方地域支援、「レア・エリアズ・サポート」というのがあります。英語では完全に違っているわけです。  ところが、日本語だったら、いわゆる後方支援、後方地域支援、地域が入ったか入らないかで日本語から受ける印象というのは、要するに英語のロジスティックスというのと全然違った形でとらえられてしまいます。  ですから、ロジスティックスで言っている後方支援と、それから「レア・エリアズ・サポート」、その支援とは中身が違うんですか。
  39. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 後方地域支援というのは、日本の憲法との整合性、武力行使との一体を確保するために日本側から持ち出した概念を、その部分について英語に訳したのが、今、委員がおっしゃった言葉でございます。
  40. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それは本委員会でも国際法には通用しないというお言葉が確認されております。自民党の先生が御質問なさったのに対してそういうふうなお答えがございます。したがいまして、やはりこれは海上交通ではなく海上兵たん補給路というのが正しいと私は思います。  次に、インフォメーションとそれからインテリジェンスという言葉でございます。  これは同じような意味日本語訳では使われているわけでございますが、例えば自衛隊とか米軍などでは、情報部隊などが情報収集すること、あるいはレーダーなどで情報を得ることをインテリジェンスアクティビティーというふうに言っております。それがいわゆる情報活動と言われております。そうして、こうしたインテリジェンスアクティビティーを通じて得た情報のことを軍事的用語ではインフォメーションと言っているわけであります。  要するに、インフォメーションというのは収集した生のデータを意味して、そうしたインフォメーションを処理し、それから評価を加えることによってそれがインテリジェンスになるということでありますから、インフォメーションとインテリジェンスとでは本当に区別しなければならないわけでございますが、その点いかがですか、外務大臣
  41. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) インフォメーションとインテリジェンスということは、英語では今、委員がおっしゃったような区別はありますけれども、日本語では情報という一つの言葉に集約されるのだろうと思います。例えば米国のCIA、セントラル・インテリジェンス・エージェンシー、これは中央情報局と一般に訳されておりまして、何も日本政府だけが言っているわけではありません。  それから、先ほど後方地域支援というのは国際法では通用しないと。通用しないと私は申し上げたんではなくて、そういう言葉は従来国際法上使われてこなかったということで、こういう言葉を新たにつくれば、それは国際的にそれなりに通用する言葉でございます。
  42. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今の外務大臣のお言葉というのは、非常にこの日本語訳を象徴するお言葉だというふうに思うんですね。やはり、日本だけが解釈していること、日本だけがわかっていること、日本だけに通用することを外務大臣は今おっしゃるわけであります。  しかしながら、重要なのは、これは日本国内の問題だけではないんです。国際的に通用しなければならないわけなんです。そして、英語正文がもとになって議論されるんですから、日本語の訳がもとになって議論されるんじゃないんです。だから、そのことを考えますときに、やはり今の外務大臣のお言葉というのは、非常に、後で会議録をお読みになると、御自分でこれは大変なことを言っちゃったというふうにお思いになると思うんです。  まだまだ私は幾つかの例を挙げたいのでございますが、時間が迫っております。したがって、今私がわずか二、三の例を挙げたそれだけからでも、日本語訳というのは、新ガイドラインの持つ性格、英語による正文が持つ性格というものがかなりゆがめられている、あるいは誤解を受けるような誤訳というような訳が行われている。  ですから、やはり米軍自衛隊との後方支援あるいは共同作戦のあり方を具体的に取り決める基礎となるものであります。国民には正しく正確に伝えられねばならないわけであります。それを伝える責任、義務は政府にあるわけであります。したがいまして、政府の今出されておりますこの日本語訳というのは、やはりもっとより正確な日本語訳に改訂版を提出すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  43. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 今の委員のお話をずっと聞いておりましても、改訂版を出す理由は全くない、こういうふうな印象を受けております。
  44. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 やはり正文をお読みになっていらっしゃらない外務大臣が、それはおっしゃってはならない言葉ではないかと。あくまでも正文英語なんです。したがいまして、日本語だけの文章を云々するということでは、これは全然日本の代表としてのお言葉とは思えないわけであります。  私は、ぜひともこの新ガイドラインの持つ重要性を考え、あるいはまた国民の知る権利ということを考えますと、日本国民日本語の正しい訳を出すべきだと思います。
  45. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  46. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記を起こして。
  47. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 先ほどの「シー・ラインズ・オブ・コミュニケーション」の訳に関しまして、先ほど大臣から答弁を申し上げましたとおりでございますけれども、この概念につきましては、日米間の協議の際にその実態的中身につきまして完全な一致を見ているわけでございます。  その意味するところは、先ほど大臣から申し上げましたとおり、この輸送路というのは軍事物資のみならず民間の物資の海上輸送路でもあるわけでございます。したがいまして、これを兵たん線と訳さず、海上交通というふうに訳したわけでございます。  ちなみに、先生が先ほど御指摘に出されましたガイドラインのパラグラフのすぐ後に、保護の対象になります船舶、シップスということが書いてございます。これはまさにシップス、船舶の保護について論じていることであるということがここからも明らかでございまして、単に艦船とか軍艦とか補給艦とか、そういうものの方だけを考えているわけではないということがその点からも明らかなわけでございます。
  48. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  49. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 速記を起こして。
  50. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これは見解の相違というふうなことで片づけてはいけないと思いますけれども、やはり議事進行のことを考えますと、私は少なくとも外務大臣にはここでお約束をひとつしていただきたいと思います。  やはり日本国の外交上の責任者である、つまり日本国民を代表して外国と交渉する方が正文を精査していないというその言葉、取り消すかあるいはこれから正文をちゃんと精査しますということをきちんとお約束いただくか。いかがですか。
  51. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 私自身がこれから英文を全部読むかどうかということで精査しろということであれば、そういうお約束はしかねるところでありますが、私の信頼している部下ともども、そのガイドラインについては日夜一生懸命精査をしているところでございます。(発言する者あり)
  52. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今のお言葉は非常に私は残念だというふうに思います。責任を持つお立場の方の言葉とは到底思えないわけであります。  外交交渉というのは正文でなされるのでありますから、やはりそれだけの意味を持つ、そして国民はそれを信頼しているわけです。あなたが部下を信頼するように、我々国民は、日本政府を、そして外務大臣外務省の皆さんを信頼しているがゆえに、やはり本当に正しい知識というものを私たちは、インフォメーション、それこそ情報を知りたいのであります。それは私だけの意見ではなく多くの方々が、今私が申し上げたようなことはもう民間では言われております。  そのようなことはかつて子ども条約のときにございました。子ども条約のときには、外務省はやはりそういう民間のさまざまな情報というものを無視でき得ず、三つの言葉の翻訳を変えられました。これはもう会議録にきちんと残っております。そういうことが過去にあったということであります。  そのことを考えますと、命にもかかわるかもわからないこのガイドラインについての日本語訳日本の国民は日本語訳でしかわからない、しかしながら交渉は日本語訳ではなされないわけであります。そういうことを考えますと、日本語訳の重要性ということを非常に私は、外務大臣、もっともっと考えていただきたい。  お答えをもう一度お願いいたします。
  53. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 外務省には五千人の職員がおりまして、それぞれの衝に当たっておりまして、そしてその最終的責任は私が持つ、こういうことでございます。
  54. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ですからなおさらのこと、その外務大臣のお言葉というのは私には信じられないようなお言葉でございます。ぜひともやはり外務大臣、もう少しまじめなお答え、御自分の責任を感じる、私たちがなるほどなと思えるようなお答えをいただきたいと存じます。
  55. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 必ずしも英語に堪能でない私が、その英文を見て、日本文と照らし合わせて間違っている間違っていないということをするよりも、そういうプロフェッショナルが外務省の中にいるわけでありますから、その人たちに既に精査もさせておりますし、そしてその結果については私が責任を持つと、こういうことを申し上げているんです。
  56. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そのような優秀な方々でも過ちがあったわけであります。それが子ども条約の例であります。
  57. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 日下部君、どなたに御質問をされますか。
  58. 日下部禧代子

  59. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 子ども条約のときに、より適切な訳があったことによってそれを直したという経過があったことは私も知っておりますし、そういったより適切な指摘を委員から受けたということはそれは大変ありがたかったことだ、こういうふうに思っています。  ただ、先ほどから答弁しておりますように、今の私たちの考えは、御指摘のあったことは誤訳でもないし、わざわざねじ曲げたのでもないし、その場その場の文脈において最も適した訳をしているということを申し上げたわけでございます。
  60. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 これは、子ども条約のときもやはりそういうお言葉であったけれども、究極にはさまざまな、国会だけではなく一般の国民の皆様のさまざまな正しい理解の上に基づいた情報を外務省も認めざるを得なくなったという経過がございます。  だから、いかに信頼を置いている方々でも過ちはあるわけであります。そのことを謙虚にお認めになるということは、日本国民のためにもこれは非常に重要なことだと思います。もし過ちがあれば正すというふうなお言葉はないでしょうか。
  61. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 過ちがあれば正す、それは当然のことだと私は思っておりますが、現時点で過ちがあると考えていないということを先ほど指摘されたことについては申し上げたと。委員おっしゃるように、過ちがあれば正す、これは当然のことでございます。
  62. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それでは、私は念のために、子ども条約のときにも申し上げたんですけれども、やはり外交文書政府訳というのは非常に重要であります。それは、いかに達人であろうと信頼なさっていらっしゃろうとも、過ちはあろうということが子ども条約のときに証明されたわけであります。したがいまして、私は第三者によるチェック機関の設置というものをあわせて提案させていただきたいというふうに思います。  では、次の質問に移ります。ガイドラインにつきましては、またこれからも質問をさせていただきたいと思います。  ところで、今、日本は高齢社会、非常に人口の高齢化が進んでおります。その中で介護問題というのは非常に深刻であります。介護保険制度が来年の四月から実施されますが、日本の介護問題についての総理の御認識をお伺いします。
  63. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 本格的な高齢社会の到来を控えまして、介護を要する高齢者が増加する中で介護問題は老後生活における大きな不安要因の一つと認識をいたしております。  こうした高齢者介護を社会全体で支える仕組みとして介護保険制度を創設したところでありまして、現在、市町村に大変御苦労をいただきながらその実施のために作業を進めさせていただいておりますが、平成十二年四月の円滑な施行に向けまして、介護サービスの供給体制の整備や制度を実施する市町村への支援等に今全力で取り組んでまいっておるところでございます。  現在の進捗状態につきましては、詳細は厚生大臣から御説明をさせていただければと思いますが、改めて、せっかくのこの制度が我が国におきましても定着をし、高齢者の皆さんが安心できる老後を迎えることのできるように、政府といたしましては全力で取り組ませていただいておるところでございます。
  64. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 厚生省にお伺いいたします。  保険者である市町村の不安というのは、その実施が来年の四月に迫っているのに依然として大きいというふうに聞いております。その市町村の不安の要因をどのように把握し、分析していらっしゃいますか。
  65. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今、総理から御答弁いただきましたように、私どもは、少子高齢化を迎えて介護保険の重要性を本当に重要だと考えておりまして、円滑なスタートを切りたいということで万全の体制をとりつつございます。  細かくは申し上げませんけれども、私どもは、これは法律を制定いたしますときから準備をいたしまして、まず認定については、もう既に各市町村でモデル的に実施をいたしまして、その当否について今検討もしております。また、いろいろ政省令で定める事項がございますから、昨年の十二月から、例えば保険料の段階的な定め方、あるいは四十歳以上の方々が要介護の状況はどういう条件が必要であるか等々を政令で規定いたしておりますし、なお、これから具体的な細かなことにつきましては、年度内におおよそのめどをつけて、政省令等の作業も進めたいと思っております。  なお、介護の一番肝心な点だと思われますが、介護報酬等につきましては、これは来年の予算要求との絡みもございますし、なお念査を要する点があります。最終的に大変重要な課題でございますから、これはなるべく早くやりたいのでございますが、年内と申しましょうか、そういうことできちっと対応してまいりたい。  それから、事務体制につきましては、もうコンピューターシステムその他を十分の十の補助で各市町村に設置をお願いして、配備しつつございます。また、府県の体制も整いつつございます。  そんなことで、あらあらのシステムの施行に伴う諸準備は私どもしておりますが、初めてのシステムの運用でございますから、いろいろ不安感があることも承知をいたしております。そしてまた、従来の福祉事業の措置的な事業と今度の介護保険との接点がどうなるかというのは本委員会でも議論になっておりますが、そういったもろもろの点についてさらに精査をし、それから現場の声をなるべく吸い上げて、現実的な対応ができるようにしたいというのが私どもの今の気持ちでございます。
  66. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 市町村の不安の一番大きな問題というのは、やはり職員の問題だというふうにも思います。もう既に本年の十月から具体的な施行準備、例えば要介護認定申請の受け付けとか、あるいは被保険者証の交付というものが十月から、ことしから始まるわけでございますね。  ですから、市町村にとって職員の確保というのは非常に深刻な問題でございますが、どのような対処をなされておりますか。
  67. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 介護自体のホームヘルパーとかそういう人的な要素はまた別個介護の事業計画の中で私ども手当てをしてまいりますが、それを行う市町村の職員の問題の御指摘でございます。  平成十年度からこの準備を始めまして、平成十年度には千百四十人、それから平成十一年度に八千四人ということで、地方財政計画上における財政措置をお願いして計上してございます。合わせて九千百四十四人ということになっております。  ただし、今後どの程度見込まれるかということでございますが、実際は一万四千人程度と見込まれておりますけれども、それじゃその差額はどうかといいますと、従来の老人福祉関係の措置的な要素で従事されている職員がございますから、それが大体四千ないし五千人と想定されます。その振りかえによりまして結局差し引き九千人から一万人の増員が必要になるのではないかと存じますけれども、これは自治大臣にもお願いして、地方財政計画上の措置として対応は既にしておるところでございます。
  68. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 自治省と厚生省、つまり厚生大臣自治大臣との連携というのはどのようになっておりますでしょうか。自治大臣にお願いいたします。
  69. 野田毅

    国務大臣野田毅君) この介護制度をよりしっかりした形でスタートさせなきゃならぬという点はもちろん大事な課題でありまして、厚生大臣から今答弁がありましたように、市町村におけるその事務のために必要な職員の手当てについては地方財政計画上所要の措置を講じたところであります。特に平成十一年度においては地方財政計画で約八千名の増員を計上しておるわけでありますし、あるいはその後、十二年度においても、若干この措置関係で減る部分が、老人福祉関係の措置がなくなるのが四、五千人程度ありますので、いずれにせよ全体で九千人から一万人程度の職員が必要になるのではないかと見込んでおります。したがって、今後とも事務量の推計を的確に行って必要な財政上の手当てはしてまいりたいと考えております。  ただ、職員の増員の財政上の側面よりも、どういうふうにより円滑な形で実施に向かうかという点で今いろいろ市町村に御苦労をいただいておるという段階でありまして、できるだけ具体的に各自治体の話も十分に聴取しながら、円滑な形で公的介護制度がしっかりとできるように努力をしてまいりたいと思っております。  なお、この点について、特に介護制度については、平成十一年度末までに基盤整備、実施主体の状況などを点検し円滑な実施が図られるよう財政あり方などを含め検討するという自民、自由両党間での合意がきちっとできておりますから、そういう意味で具体的な制度のスタートに当たって両党が協力し、そしてまたそれを具体的に踏まえた上で政府としても対応していくということで対処したいと考えております。
  70. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私は両党の協力を伺ったんじゃなくて、厚生省と自治省の連携のことを伺ったんです。
  71. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私どもは、平成十一年度予算を要求し編成する際に、この点につきましては厚生省が考えている考え方を自治省の事務当局にお示しし、事務当局側もこれを理解して、そしてただいま申しましたような財政措置を講じていただいておるということでございますので、その間非常に緊密な連絡をとってやっていることだけは確かなことでございます。
  72. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それは緊密な連携をとってもらわなければ困る問題であります。自治大臣、それはいかがですか。
  73. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 具体的に各市町村でいろいろ努力をいただいているときに厚生省と自治省が事務的に緊密な連絡をとっておるというのはもう当然のことでありまして、その点は遺漏のないようにしておるつもりでございます。
  74. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それではお言葉を信じまして、市町村における職員の充実というのはこれからもぜひとも前向きに取り組んでいただきたいというふうに申し上げます。  次に、市町村で大変心配している、市町村というより国民が心配している問題は、介護保険料がどのように、どの辺のところになるんだろうかということであります。  厚生省が示している基準額は今二千五百円ではなく別の金額が出ているようでございますが、どのような金額を今お示しになっていらっしゃいますか。
  75. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 保険料がどのくらいになるかというのは、委員の御指摘のように大変国民の関心の高いところでございます。法案の作成段階におきまして、おおむね当時の平成七年度の単価を用いまして二千五百円程度ということを基準にいろいろな議論をしていただいたことは御案内のとおりでございますが、これは平成七年度価格でございますし、さらにシステムが完成していない段階でございました。  私どもとしては、昨年の十月ごろに全国の担当者会議を招集いたしまして、計算式、つまりワークシートを示しまして大体こういう計算過程でどうだということをお示しして、試算を推計していただきました。そして最近におきまして、このワークシートに基づきまして具体的な数値をお示しいたしました。これは一つのモデルとして、施設のいろいろな種類によって、モデル的な市町村を想定いたしまして、具体的には八千五百人という場合を想定いたしまして、高齢者がどの程度の割合になるか、あるいは在宅介護のショートステイ施設、デイサービスがどの程度になるのか、あるいは施設介護の方の特別養護老人ホームあるいは療養型病床群はどうなるかの組み合わせによって随分変わってまいりますから、そのタイプを八つくらいに分けましてお示ししたものでございます。  したがって、療養型病床群等あるいは特別養護老人ホーム等が多いことを想定した場合には、平均いたしますと保険料の月額にかなりそれが反映してまいります。私どもの示したこの表によりますと、一番低い場合で二千八百三十二円から三千五百五十八円という数値を一応担当者課長会議に、これは決定ではございませんけれども、今お話ししたような前提のもとにお示しをしたところでございます。  ところで、この保険料につきましては、今さら申し上げるまでもございませんが、これは五段階、ある程度段階に分けまして中心価格を定めまして、これは介護サービス料から算定されてまいりますが、それを中心にして低所得者にはそれを五割まで低減する、あるいは所得のある方には五割増までできる。なお、町村によっては条例によってそれをさらに下げたり上へ上げることもできるような政令の基準を策定してございます。  そして、どうしてこうした格差が生ずるかというのは、ただいまも一部申し上げましたが、施設サービスとかホームヘルパー等の在宅サービスの充実度合い、それから特にその中では特養が施設サービスに入りますけれども、そういうものの水準の度合い、それから特に療養型病床群等の医療系の施設がどの程度あるかという地域差がございまして、現実ではこの保険料水準がある程度高くなることはやむを得ない面があると考えられます。  これらの条件につきましては、保険者である市町村におきましてそれぞれの介護事業計画を立てる前提で今検討中でございますので、私どもとしては、それらを踏まえて、なお先ほど申しました介護報酬の単価等も決定をして、そして具体的にはっきりした数値が示されるものと、こういうふうに考えておるところでございます。
  76. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 厚生省が提示したワークシートで市町村は今確かに大臣がおっしゃいますように試算をしているわけなんですけれども、例えば北海道の例を見ますと、最高が七千三十三円、最低が千四百六十円、そして平均が三千八百五円というふうになっておりまして、最高と最低で大変な格差がございます。北海道の中だけでもそれだけの大きな格差があります。その格差是正のための対策はどのように考えていますか。
  77. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは先ほど申しましたような施設サービス、ホームヘルパー等の在宅サービスの充実の度合い、療養型病床群等によって違いますが、そういうものが全くないような市町村におきましては、現在福祉事業としてやっているものを振りかえるというような可能性が非常に高いと思います。そういう場合は非常に単価が低く出る可能性がございます。  一方、北海道のような場合は医療費の水準もかなり高いものがございますし、病院の病床数等も多く、老人医療費の一人当たりも全国で最高になっておりますので、そういった実態を踏まえますと、ある市町村によっては計算上非常に高いものになる可能性もあると存じます。私どもとしては、保険システムでございますから一応のスタンダードによって設計をして、そしてそれを超過するもの等についてどう財政措置をするかという横出し、上乗せの問題があることは当委員会でも議論されておりますが、十分意識をいたしております。  なお、それでは低いところはどうすればいいかということですが、やはりこれは地域住民の方々要望等を踏まえまして、どうしても施設の充実が欲しい、財政上の理由によってどうしてもできないんだということであれば、私どもは特老あるいはその他の施設にショートステイ、あるいはデイサービスセンターについてもあとう限りゴールドプランを超えて今整備しようとしておりますから、それは十分対応をしていかなければならない。そして、何よりも保険でございますから、公正な負担と公正な給付、適正な負担と適正な給付が行われないといけないというように思っておるところでございます。
  78. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 上限と下限を設定するというふうなことはお考えになっていませんか。
  79. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 私どもは上限、下限を設定することは考えておりません。
  80. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、市町村で行われているその試算でございますが、いつごろまでに集計して、その分析した結果をどのように反映なさろうとしていらっしゃいますか。
  81. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、今実態調査を市町村にお願いいたしておりまして、設計がより具体的に進めばそれらを集計することになりますが、今直ちにというわけにはまいりません。実際は十月から介護保険の認定事業が公式に始まりますので、その辺をめどに置きながら、しかし実際のスタートは来年の四月からでございますので、それに十分間に合うような体制で確たる数値も集計をしていかなければならない、そのように考えております。
  82. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、大臣もおっしゃいましたように、保険料は非常に地方の格差というのがございます。  その要因というのは、高齢者人口、特に後期高齢者が多いところとか、大臣が御指摘になった施設入所者が多いところ、そしてまた所得水準が低いというふうな、そういうことが影響を受けるわけでございますが、特に施設の場合で今療養型病床群への転換が非常に進んでいるというふうに聞いております。  厚生省の目標値をさらに上回っているというふうに聞いているわけでございますけれども、特養に比べますと非常に療養環境はよくないわけです。一人当たりの居室面積におきましても、それからまたシャワーだけでいいというようなアメニティーといった部分も違うわけでございますけれども、この辺の問題はどのように進めていこう、解決しようと思っていらっしゃいますでしょうか。
  83. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 療養型病床群につきましては、私どもが都道府県の会合等で一応の基準として想定をお示ししたのは十九万床でございます。  これは六十五歳以上の人口に占める割合で約〇・八%程度ということに相なっておりますが、これで果たして上限を切るのかどうかという問題は、私どもはそうは考えておりませんので、実際には、これは医療計画上の病床数がまず算定されますから、それによって療養型病床群をどれだけにするかということが決まってくるわけで、それらを都道府県に対しまして報告を求めたりいろいろした結果では約二十二万床くらいになるというように予定がされております。  私どもとしては、二十二万床でいいかどうかという点はさらに個別の念査を必要といたしますけれども、これは各地域の高齢者の入院患者等の状況等を反映したものであるという事実もあろうかと存じますので、十分これを踏まえながら検討していかなければならない。これは医療計画による病床のセットと介護との接点の話になります。  そういう点で、私どもとしては、医療計画に定めます必要病床数の範囲内でどの程度介護の方に充てて、介護の施設としての療養型病床群にすべきかという点もこれから検討はしていかなければならないと思いますが、別に私どもこれを制限的に考えているわけではございません。  それから一方、病院の方では医療法に基づく医療計画で計画病床がございますから、それとの調和を図りながら適切に対応していかなきゃいかぬなというように思っておるところでございます。
  84. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 療養環境。
  85. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 療養環境の点につきましては、例えば特老なんかは四人以内というようなことを申しております。それで、三割程度は個室化を認めて補助をいたしておりますが、無条件に個室化をするということになりますと、やはりいろいろの面で弊害がある可能性があります。つまり、お年寄りの方々が一人だけでいるということは、ある面ではいい面もございますけれども、引っ込みがちになりがちだというようなこともございますでしょう。それからまた、そういたしますと職員の増加等が予想されますので、ここはある程度そういう基準でやらざるを得ないかなと。  ただし、民間等における施設につきましては、民間のいろいろの経営のあり方によってアメニティーの高いものを提供して、なおかつそれを保険でなしに自己負担でやるというようなことも十分考えられることは考えられますから、それを否定するものではございません。
  86. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、室料の差額というものを利用者が負担するということ。今度は特養老人ホームでも個室の場合には差額の利用者負担というふうなことが諮問されておりますね。これは、今の大臣の言葉に大分私は同意できないのであります。一人でいて寂しい、それはそういうふうに一見思えるかもわからないけれども、やはり人間というのは自分一人になりたいとき、それがどこかでなくちゃならない。それがついの住みかになればなるほどそうだと思うんですね。  したがいまして、やはり特養におきましても個室化というのは進めていくべきであります。病院においても、差額ベッドを取っておりますけれども、病院におきましても六人部屋なんかの状況というのはもう、私、お見舞いなんか行ったときに非常に大変な状態だということがわかります。例えば、お隣との距離が非常に狭い。ですから、お隣で非常にせきを、肺がんでもう末期の方でいらっしゃいましたけれども、お年寄りがすごいせきをなさるんです。そうすると、隣のベッドの人のカーテンがそのせきで揺すられるんです。そういう状況がございます。  だから、やはり病院でさえも大部屋というのはよくないんではないか。特養においても、個室化が進んでおればことしのようなインフルエンザのああいう集団的な感染というのもなかったのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  87. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、国民医療の水準との関係も私は全体的に考えた場合あると存じます。  医療水準がだんだん上がってまいりますと、委員の今おっしゃられるような要望が強まることは十分予測できます。しかし一方、この負担を保険システムで負担するということに相なりますれば、それは先ほど申しましたようにいろいろな経費、人件費等の増嵩を来します。医療関係でいえば医療費の増嵩につながります。  したがって、今医療関係者でいえば、個室とかあるいは二人部屋等は付加的な負担をお願いして、その選択によって可能な状況がつくられるような条件整備をしているところでございまして、委員の今おっしゃるようにすべて個室化を目標としてやるということについては、なお今の医療保険のレベルでは到底私は無理ではないかなと率直に、これは委員の御指摘ではありますが、申し上げざるを得ません。  しかし、入院患者あるいは施設の入所者の立場からすれば、プライバシーも保護されますし非常に自由にできるし、今感染症の問題も指摘されましたけれども、そういう感染症のおそれもないというようなメリットがあることもこれは否定できないことでございますから、将来問題として頭に置きつつ、現在ではそういうものを選好し、選ばれる方々には何分の、応分の負担をしていただきながらそういうことをやるという今の体制を直ちに変えるわけにはまいらぬ、こう申し上げるしかございません。
  88. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 この問題はまた改めて御議論させていただきたいと思います。  介護保険制度実施に当たって非常に問題になるもう一つは、いわゆる基盤整備でございます。新ゴールドプランは平成十一年度で終了いたします。一体その後どうなるのか。そこに介護保険制度が導入される。非常にこれは国民の不安でございますが、この点につきまして、まず総理は御見解いかがでございましょうか。
  89. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 介護保険制度を円滑に実施するためにも、在宅サービスと施設サービスとの均衡に配慮しながら介護サービスの供給体制を整備することが重要でございます。  介護保険制度におきましては、各地方自治体が介護保険事業計画を作成し、これに基づき在宅サービスを初めとする介護サービスの供給体制の整備を推進することとなっておりますが、今御指摘にありました新高齢者保健福祉推進十カ年戦略、すなわち新ゴールドプランが実は十一年度が最終年になっております。したがいまして、この終了後の取り扱いにつきましては、今後各地方自治体が介護保険事業計画の作成過程において見込むこととなる将来の介護サービスの必要量などを踏まえながら国としても適切に対応してまいりたいと考えておりますが、厚生大臣、その点につきましてなお補足してお話があればいただきたいと思います。
  90. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 今のゴールドプランは、総理大臣の御答弁にございましたように、十一年度をもって一応の終期といたしております。しかしながら、今の議論を通じても明らかなように、これからの施設の整備等はなお必要な面が多々予想されます。したがって、市町村の介護事業計画がもう策定されてまいりますので、そうしますと不足量その他もはっきりいたしますし、あるべき施設水準、施設の量、質ともに想定できると存じますから、委員の御指摘のように、新しい計画をつくるなりなんなり、今はまだ新計画をつくるというところまでは行っておりませんが、そういう方向で私どもは検討してまいりたいと思っております。
  91. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今のお言葉は国民はがっかりするのではないか、やはり不安はそれでは解消されないというふうに思うのです。もう来年の四月に実施が予定されているのにもかかわらず、まだ新しい計画がないなんというお言葉を今この予算委員会でおっしゃるということは、やはり国民にとりましては非常に不安が増大するわけでございます。
  92. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは私どもが新新ゴールドプランを策定しないということを申し上げているわけではございませんで、私どもは来年の四月からスタートするわけでございまして、その前提として各市町村が介護事業計画というのを立てます。  そして、やはり地方自治体がどのような需要を持っているかということを正確に把握いたしませんと、国が一方的にその数字の計画を立てて押しつける性格のものではございません。これはあくまで保険者である市町村等の要望を踏まえながら、そしてそれに即応して整備を図っていくといういわば受け身の点がこれは率直に言ってあるわけでございます。  私どもとしては、そういう建前は建前として、なお例えば特老の待機者等がある程度予想されることも知っておりますし、ショートステイ、デイサービスセンターもどの程度まだ必要なのか、あるいは今ちょっとゴールドプランの中で欠けていると言われておりますケアハウス、これなんかもこれからの老人介護と施設の関係で大変重要なものでございますが、やや整備がおくれておりますから、積極的に厚生省としてもそういった施設のあり方について府県等と相談しながら前向きには取り組んでいきますが、ただそれを計数化してやるには、やっぱり介護事業計画に基づく報告、それを前提とせざるを得ないということを申し上げているわけでございまして、決して私どもは施設はこれでいい、これ以上はもうやらないんだということを申し上げているわけではございません。現実に即して十分な対応をしていきたいというように考えておるわけでございます。
  93. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ニーズの把握というのが非常に重要なことはもう言うまでもございませんけれども、ビジョン、計画、どのような展望というものを持っているかということを示すということは、やはりこれは国民に安心を与える非常に大きな要素だというふうに思います。したがいまして、どのような方向でこのようにという中長期展望というものをやはりきちんとお出しいただきたいということを強く要望しておきたいというふうに思います。  それから、時間が少なくなってまいりましたけれども、最後に一言お聞きしたいのでございますが、首相の諮問機関の経済戦略会議がきょう夕刻最終報告書を出すというふうに聞いておりますけれども、どのような形で政策に反映していこうというふうなお心づもりをお持ちでしょうか。
  94. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 非常に精力的にお取り組みいただきまして、今夕私のところに最終報告を届けていただけるということでございます。その内容につきましては、政府といたしましてはこれをしっかり受けとめて対応しなければならないというふうに考えております。中長期的にわたる諸課題、大変多いわけでございますけれども、誠実にこれらについて対処いたしてまいりたいと思っております。
  95. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 伝え聞くところによりますと、国債の買い切りオペレーション枠の拡大ということも盛り込まれているというふうに聞いております。日本銀行総裁は、先日も本予算委員会において、あるいはまたG7においても国債の日銀引き受けはしないというふうにおっしゃっております。もしそのような買い切りオペレーションの増額というものが盛り込まれた場合には、やらないというふうにおっしゃられますか、それともそのことはまたやはり考慮しますというふうなお言葉でございましょうか。総理、いかがでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 日本銀行がいわゆる成長通貨に相当する程度の分を市中でオペレートしていらっしゃるのは、これは金融政策としてでございますが、新規発行を買っていただくということになりますとこれは財政支援でございますので、私としてはそういう支援をお願いするつもりはございませんし、日本銀行もまたそういう御意思はないと考えております。
  97. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 国債の日銀引き受けというのは、戦前の苦い経験の上に、これは日銀法の三十四条あるいは財政法の五条でもって禁止されているわけでございます。ですから、そのような経験ということを踏まえてやはり政府方々の御発言もいただきたいというふうに思うわけでございますが、かつて官房長官は国債引き受けについてはもう非常に積極的にやりたいようなお言葉がございましたけれども、それはどのような理由でそのようなお言葉をなさったのか。官房長官、いかがでしょうか。
  98. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私のこのところの発言の問題でございますけれども、先ほど金融政策につきましては大蔵大臣お答えになったところでございます。  小渕内閣は、経済再生のための内閣として重要な使命を帯びて、金融国会以来、大変国会の皆さんの御協力もいただきながら、現下の厳しい経済情勢に対応いたすために努力をしてまいったところでございますし、また予算及び税制等の諸施策に全力を挙げてきたところでございます。  過度にわたる円高あるいは円安は決して我が国の経済に好ましい結果を与えるものではございませんので、金利、為替その他の市場の動向が経済に与える影響につきましては十分注意をする必要があるということを常々会見のたびに、聞かれるたびに私は申し上げたところでございます。けれども、先ほど申し上げましたように、先般の過度にわたる円高が非常に厳しい状況でございましたので、質問に答えまして、金融当局においては、幅広い観点からこうした情勢に対応した適切な政策の検討をお願いしたいということを強く申し上げたところでございます。  ただ、私自身やや素直になれない性格がございまして、一束に束ねられることに拒否反応を示す傾向がございますので、つい、一列に一斉にだめだ、だめだと言われると、なお特別の場合もあるじゃないかとかいったようなことを考え、幅広い金融政策の考え方を模索することによって我が国経済を守っていかなくてはならないと。ある意味において、日銀が残って我が国が崩壊するようなことではいけないという思いをやや言葉の上で表現をしたわけでございますが、それぞれ大蔵省、日銀に金融政策がありますことは十分踏まえて発言をしたつもりでございます。
  99. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 一国の方向を決めるのに、御自身の個人の性格でもって決められたのでは、やはりこれは大変なことになりますので、以後、そのようなことはなきように申し上げておきたいと思います。  最後に、総理にお聞きしておきたいのでございますが、国債の日銀引き受け禁止ということは、日本では過去の経過、これは日本だけではございません、先進国もそうでございますが、やはり非核三原則と同じ国是に準ずるものというふうな形で、今後そういうお言葉には耳をかさないというふうにここで明言をしていただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか。
  100. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 財政法上、そうした条項を設けておるということの経過は十分承知をいたしておりますが、法律に基づいて政府はこれを誠実に執行していく、こういうことだろうと思います。
  101. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 終わります。
  102. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で日下部禧代子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  103. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、若林正俊君の質疑を行います。若林正俊君。
  104. 若林正俊

    ○若林正俊君 自由民主党の若林正俊でございます。  持ち時間十分、往復で三十分というごく限られた時間でございますので、テーマを二つに絞って意見を申し上げ、また関係閣僚、総理の御見解を承りたいと思います。  第一は、新しい農業基本法のことでございます。  いよいよ今国会に新しい農業基本法が提案されます。現在の農業基本法が制定されましたのは、今から三十八年前、昭和三十六年でありました。所得倍増計画のもとで日本の高度成長が始まったころ、農業と他産業との格差の是正を目的とした農政の転換に、当時農林省におりました私は情熱と使命感を持ってこの立案の下働きをいたしました。  農は国の基とか、農村は民族の苗代とか言われていましたが、あれから三十八年間、日本を取り巻く内外の環境は激変いたしております。その結果、日本の食糧生産力が低下し、食糧自給率は供給熱量ベースで四一%、穀物ベースで二九%。これは主要先進国の中で最低であるばかりでなく、世界百七十八の国・地域のうち実に百三十五位であるという惨めな状況にあります。各種の世論調査でも、国民の大多数の皆さんが将来に不安を感じているということが言われております。  この新しい農業基本法案では、食糧自給率を食糧の安全保障という観点から、総熱量カロリーベースで五〇%にすることを目標に据えて、各種の政策を集中的、重点的に実施しようとしているのですが、この五〇%という比率を法律では定めずに、基本計画の中で内閣が決めるというふうにしようとしているのであります。  立法技術上、法律で率を定めるということが大変困難であることは理解できるわけでありますけれども、農林大臣、新しい農業基本法案の最も重要で諸施策の基本、へそとも言うべきところですから、なぜこれを法案の中で、法律の中で書けないのか、国民にもわかるように説明をしていただきたいと思います。
  105. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘のとおりの日本の食糧事情でございますし、しかも自給率が最低であるだけではなくて下がり続けているというのが現状でもございます。  したがいまして、我々としても大変この問題については憂慮をしているところであり、できるだけ高い自給率というものを実現していきたいという気持ちがございます。そして、先生御指摘のように、今度の基本法におきましては、食糧の安定供給、平時の場合あるいは不測時の場合に対応できる国内生産を基本とした可能な限りの自給を確保できるようにしていきたいというふうに考えております。  それを前提にいたしまして、今回、自給率というものの目標を先生御指摘のように基本計画の中で策定をしたいというふうに考えておるところでございますが、根拠規定はもちろん基本法の中に書き込んで、それに基づいて基本計画の中で何%ということを品目ごとに実現可能なものでやっていきたいと考えております。  もちろん、私も個人的には、特に欧米主要国のように自給率を一〇〇%以上というふうにしたいという気持ちはあるわけでありますけれども、実現可能なもの、そしてまた消費者が受け入れ可能なものという幾つかの制約というか前提条件があるわけでございます。そしてまた、その前提条件を踏まえた上で品目ごとに策定をしていきたいというふうに考えております。  先生、今五〇%というふうに御指摘になりましたが、細かく品目ごとに精査をしていきます過程の最中でございますので、何%ということを今の段階で申し上げることができないわけでございますが、いずれにしても、実現可能なできるだけ高い自給率というものを設定していきたいと考えております。  その上で、先生の御指摘で、法律そのものについて書き込めないのかということでございますけれども、先生は農林の大先輩でもございますから、法制度、農政についてよく御存じだと思いますけれども、自給率を何%と書いても、与件が変わったり、世界情勢とか国内情勢が変わったりして設定を変更せざるを得ない状況も考えなければならないという問題とか、あるいはまた、ほかの立法例の中でこのような数字を具体的に目標として法律の中に書き込むという例を私は寡聞にして知らないという状況もございまして、あくまでも法律に基づく基本計画の中で、実現可能なできるだけ高い数値を品目ごとに基本計画の中で設定をしていきたいというふうに考えているということを御理解いただきたいと思います。
  106. 若林正俊

    ○若林正俊君 大変難しい問題であることは承知いたしておりますけれども、今の大臣のお話の中で、国際情勢の変化とか環境の激変などによってそれが守れなくなることを心配しながら法律に書けないんだというのは納得できないんですね。  これはやはり国の、国民の意思として、国家の安全のためにこの水準確保しようじゃないか、こういって決めることをもとにして新しい農業政策が展開されるわけですから、そういうことが理由であるとすれば、苦し紛れに後退していく可能性も、危険性もあるわけですから、そういうことではどうも納得できない。  私は、この率というのは総供給熱量、つまり需要量と国内生産量との比率で決まってくるわけです。国内生産量というのは政策目標で決めてそれを達成していけばできるわけですけれども、分母が大きく動いてくる。特に国民の食料嗜好が変わる、どんどんと高級化、欧風化していくという中で、どうも何か率は、政府の政策では分母の方を抑え切れないということもあってなかなか難しいということは自分なりに理解はいたしております。やむを得ないことかなと思っております。  そこで、その分母については国家の安全保障とかあるいはまた医療、健康管理と非常に関係があるわけです。日本型の食生活は大変バランスのいい、栄養的にも健康的にもいい食生活だと言われてきており、欧米でも注目しているわけですけれども、この日本型の食生活をやはりこれから大いに積極的に推進をしていく、そういうことによって食糧の国内生産、自給率というものを少しでも高めていく、そういう努力が必要だと思うんです。  その意味で、国民の食生活については自由に嗜好に任されることだからやむを得ないんだということではなくて、国の責務として、もっと国内生産に基軸を置いた、日本型の、米あるいは魚とか野菜とか、もちろん肉類もあります、牛乳もあります、そういう組み合わせの中で栄養バランスのいい食生活を推進していくんだ、国の責務でそれを推進していくんだというようなことを、そういう趣旨をやはり今度の基本法案の中には書いておいてもらいたい、こんなふうに考えるんですけれども、農林大臣、いかがですか。
  107. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 法案そのものをまだ国会にお出しできる状況じゃないので、それに基づく基本計画というものもまだ作業中という段階でございますが、先生御指摘のように、日本型食生活というものが、我が国の食文化というもっと広い概念をも含めまして大変いいものであるということを我々自身よりもむしろ諸外国の方が認識をして、欧米どこへ行っても日本レストランがあり、そこではその国の方々が、これはおいしいんだ、そしてヘルシーなんだということで、最近、はしを上手に使いながら食べている光景をよく見るわけであります。  翻って、我が国の方がまさに、日本型食生活というものが、例えばいわゆるPFCバランスがとれているとか、いろいろいい点が崩れつつあるという状況は我々としては決していい傾向ではない、むしろ日本型食生活を改めて確認し合う必要があるのではないかというふうに考えております。  また、別の側面から、先生最初に御指摘になりましたように、我が国は世界一の純食糧輸入国でありますし、自給率、あらゆる数字を見ても、極めて食糧に対する現状、そして将来に対する不安が強い。これは先生も御指摘のとおり、一般の国民の皆様方自身もその不安については多くの方々が感じていらっしゃるというふうに理解をしております。  また、世界的な人口と食糧とのバランス、長期的に見ましてもそういうことがあるわけでございまして、そういう意味日本型食生活を促進していきたいと考えておりますが、法律の中でやるということはなかなか、個人の問題、家庭の問題ございますけれども、そういう食べ残し、廃棄の削減をも含めた日本型食生活を教育の面で大いに促進していきたいというふうに考えております。  法律そのものに書き込むかどうかは別にいたしまして、基本計画の中でも含めて、その趣旨については大いに強調してまいりたいと考えております。
  108. 若林正俊

    ○若林正俊君 法案作成過程に今あるわけですから、できるだけそういう趣旨のことが、言ってみればにじみ出るようにといいますか、法律上明らかになるような御努力をお願いしたいと思いますけれども、自給率の問題、また日本型食生活についての国のあり方の問題について、総理、いかがでございますか。
  109. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 新しい基本法におきまして、食生活を見直し、改善に向けて、食料消費に関する知識の普及や情報提供の実施などの施策の基本的な方向を明らかにしてまいることになっております。  また、こうした方向に沿いまして日本型食生活の普及などを進めてまいらなければならないと考えておりますが、農水大臣が答弁申し上げましたように、今回の新しい農業基本法、今後二十一世紀にわたりましての一つの日本農業、また日本の食糧の本格的な方向性を定めることですから、理念をしっかり踏まえて、委員、にじみ出るようにというお話が今ございましたので、数値的にこれをあらわすことの困難性は、若干といいますか大変難しいのであろうと思いますけれども、御指摘のことを十分その理念の中に織り込まれるように努力をいたして法制定を考えていかなきゃならぬ、このように考えております。
  110. 若林正俊

    ○若林正俊君 食糧の安定的な供給の確保とあわせまして、農業農村が持っております国土あるいは環境保全の役割とか、あるいはまた伝統文化の伝承とか景観の維持とか、いろんな機能を持っております。そういう意味で、それらを織り込んだ新しい農業基本法がぜひともこの国会で制定されますことを願っている一人でございます。  次に、整備新幹線の問題についてお聞きをしたいと思います。  おかげさまで、北陸新幹線の東京―長野間は開業一年を迎えました。各位の御理解、御協力をいただいたことでございまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。  この開業一年間の実績は予想をはるかに超えた大きな経済効果を上げ、地域の活性化に役立っております。先般開かれました全国の新幹線に関係のあります各都道府県、市町村、あるいはまた経済界などの皆さん方の集まりで、長野県がその実績を報告いたしました。ごく概略、その報告をまず申し上げ、このような成果が一日も早く北海道から九州まで各地域で発現されまして、経済の再生あるいは地域の活性化、将来に夢と希望の持てる、そういう我が国にしていってもらいたい、このことを願うものでございます。  長野県がまとめたものによりますと、まず、この一年間の乗車実績でありますけれども、特急時代と比べまして四〇%増加しております。オリンピックがあったという特殊事情がありますが、オリンピックが終わった後も二四、五%という高い水準を維持しております。全国的にはこの景気状況ですから乗車が落ちておりますが、そういう中にありましてこれだけ大きな乗車効果が出ている、利用者がふえております。  また、東京圏に対しますオフィスや学校への通勤通学者も急増いたしているわけでございます。今まで東京で下宿をしていた、東京に住んでいたという人たちも、佐久から上田から長野、住居を移転したり、あるいはまた親元から通うといったような現象があらわれているわけでございます。それは、何といっても大幅な時間短縮の効果であったというふうに思うわけでありまして、三時間かかっていたものが一時間半、一番短いのは一時間二十分で行くわけで、私もおかげさまで通勤しようと思えば長野から通勤できる、そういう状況になっているわけでございます。  観光客はもちろんふえておりまして、長野の善光寺でありますとか上田の別所温泉でありますとか、軒並みかなりのふえ方でありますし、長野市を中心としたいろいろなコンベンションの件数や参加人員も急速に拡大をしております。関係駅のレンタカーも四〇%ぐらいの利用増になっておりますから、地域観光の拠点になっているということも言えると私は思います。  何といっても今度その効果が、税収でありますけれども、沿線市町村の建設費の負担額は七十億円でありましたが、十年度における償却資産にかかる固定資産税だけでも初年度一年間で十一億円の実績になっておりまして、住民がふえるとか企業がふえるとかというようなことによりましてかなりの税収も上げていく効果が出ているというふうに私は思います。  こういったもろもろの効果は、駅周辺の区画整理事業でありますとかあるいは都市再開発でありますとか、いろいろなことを含めまして大変に波及効果が大きいわけです。そういう意味で、今財政再建下で大変なことはよくわかっておりますけれども、しかしここは北海道から九州まで四千万人の国民がかかわっている、幅広い地域に影響するわけですから、夢と希望をしっかり持って、元気を出せるように、戦略的に重点的にこの新幹線投資については積極的な見直しをぜひ政府においても取り組んでいただきたい、こういうことをお願い申し上げるわけでございます。
  111. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 既に質疑時間が経過をしております。
  112. 若林正俊

    ○若林正俊君 それでは、もう時間がオーバーしているそうですから、運輸大臣さらに自治大臣大蔵大臣国土庁長官、そして最後に総理にその御見解を伺って、終わります。
  113. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) ただいま開業による時間短縮がもたらす経済効果、いろいろお説ございました。私どもとして、昨年十一月に決定した緊急経済対策におきましては、整備新幹線を初めとする高速鉄道網の整備は二十一世紀先導プロジェクトの一つとして位置づけられております。しっかりやりますので、御支援のほどお願いします。
  114. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 新幹線の重要性は御指摘のとおりでございます。したがって、これはやると決めたらやっぱり早くやるということが大事なこと、そしてこういう基幹的交通網を、御指摘のとおり国家戦略というか、そういうナショナルプロジェクトとしての位置づけをした上できちんと行うという基本的考え方は全く同感でございます。一生懸命努力したいと思います。
  115. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、運輸大臣自治大臣からも答弁がございましたが、新幹線の持つ重要性につきましては十分承知をいたしているつもりでございます。  今、長野新幹線の問題につきまして、その効果について実際の数字を挙げられてお示しをされましたが、広く日本全体の均衡ある発展のためにも、新幹線の持つ意義はまことに大きいと思いますので、政府としても十分検討いたしてまいりたいと思っております。
  116. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で若林正俊君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  117. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成十一年度総予算三案を一括して議題とし、質疑を行います。福山哲郎君。
  118. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 民主党・新緑風会の福山哲郎でございます。  きょうは、少しわからないことがたくさんありますので多少失礼なこともあるかと思いますが、質問させていただきたいと思います。  まず、予算委員会の冒頭、我が党の角田委員の方から中村法務大臣に対する適格性について質疑がございました。いろいろな問題について話があったんですが、問題の一月四日の賀詞交換会での話というのは出ていませんでしたので、私はひとつお伺いをしたいと思います。  まず、法務大臣、一月四日の法務省の職員を前にした会で、法務大臣はるるいろいろ述べられた後に、その中で、日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているのだと思いますというふうにいろいろ述べられたと報道で言われておりますが、これは間違いないでございますでしょうか。
  119. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 御指摘の発言は、そういうことが報道されておりますが、公式の例えばこういう委員会でしゃべるというような場でなかったので一言一句は覚えておりませんが、そういう報道にあるということは、それに近いことを言ったのでないかと思います。  そのことにつきましては、実は申し上げたかったのは、我が国が直面するさまざまな複雑な情勢を、司法制度改革をする、それを強調するためにお話ししたかったというのが真実でありまして、司法制度改革の必要性を強調する余り不適切な点がございましたので、翌日の閣僚懇談会においておわびを申し上げて発言を取り消させていただいた次第でございます。  まことに遺憾に思っておりまして、改めておわびを申し上げます。
  120. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 自衛権もないと。自衛権はありますよね、外務大臣。自衛権はありますよね、日本には。
  121. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 自衛権はあると思っております。
  122. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 自衛権もあります。日本は憲法改正もできるはずです。自衛権があるので自衛隊方々はPKOも含めて命をかけて頑張られている。それに対してこういう発言をされた法務大臣、どのようにお考えですか。
  123. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) もちろん、自衛権もございますし、今、外務大臣が言ったように考えております。
  124. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 改正に対しても憲法九十六条に改正条項がちゃんとあるわけです。これは、ある意味でいうと国民に対する私は冒涜だと思いますが、法務大臣、どう思われますか。
  125. 中村正三郎

    国務大臣中村正三郎君) 私がそこで申し上げたかったことは、憲法上の制約があり、いろいろ国際的な貢献ということにも制約があるんだよということを申し上げたくて申し上げたわけでありまして、一言一句記録をとったりするような会でもございませんので、私が申し上げたのはそういう意味でございます。そして、我々は憲法を遵守し擁護していく義務があるという中でお話ししたことでございます。
  126. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 日本は法治国家であります。そして、その法をつかさどる法務省の大臣が、幾ら賀詞交換会、多少はパーティーのような形なのかもしれませんが、自分たちの仲間にこういうことを言った、その見識というのを大変私は不可思議に思うわけで、この件について、総理はいかがお考えでしょうか。
  127. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 一月五日の閣議後の閣僚懇談会におきまして、私から法務大臣に対しましてその発言の真意をただしましたところ、司法制度に関する改革の必要性を強調するために、我が国が直面するさまざまな局面を説明し複雑な世界情勢に言及したかったというのが真意であるが、その改革の必要性を強調する余り表現に適切を欠いた点があったので、おわびして撤回するものであり、小渕内閣の閣僚として、当然のことながら、憲法を尊重、擁護することは当然のことである旨の発言がありましたので、私としてはこれを了承したという経緯でございます。
  128. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 総理の言われる富国有徳国家は、私も大変賛成です。だからといって、政治家の言葉に対して、撤回をしたから了承したというようなそんなに単純なものでしょうか。政治家の言葉というのは、大変重要な意義もあるし、国民に対する信頼もあるし、そういうことに対して、このような法務大臣内閣にいていただいていることに対して、総理としてはどうお考えですか。
  129. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 政治家のみならず人間の言葉というものは、これは千鈞の重みを持つものだというふうに認識をいたしております。  そういった意味で、言葉が過ぎるというような点があれば、これは反省をして、そうしたことの再びあり得ないようにということを願っておるわけでございます。内容のすべてについて私、逐一速記したものをいただいたわけではありませんが、法務大臣みずから、そういった立場で発言に十分でなかったということであり、かつまたそれを撤回するということでございましたので、私としては、今後のお仕事に最善を尽くしていただきたいという趣旨も込めまして、それを了として今日その責務に当たっていただいておる、こういうことでございます。
  130. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 最善にお仕事をしていただけるかどうか大変疑義があると思いますが、これでこの質問は終わりたいと思います。  では、次に行きます。  九五年一月、破綻金融機関に対する整理回収業務を担う整理回収銀行というものが設立されました。いわゆる東京協和、安全両信用組合の事業を受け継ぐという形なんです。この整理回収銀行は、四月一日から住専機構と合併をするということになっておりますけれども、九月末現在でのこの整理回収銀行の欠損金は幾らでしょうか、大蔵大臣
  131. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答え申し上げます。  今、先生が言われました整理回収銀行の昨年九月末の中間決算期における欠損金は、これは既に公表されているところでございますが、約千百億円となっております。
  132. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 この整理回収銀行も、いわゆる奉加帳形式で千六百億円のお金を民間それから日銀から集めてつくられたものでございます。  今、千百億円欠損金が出ていると言われていますが、では、ことしの三月末では欠損金は幾らの見込みですか。
  133. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  整理回収銀行のことしの三月末の欠損金の見込みにつきましては、現段階ではまだ確たることは申し上げられませんが、今言いました昨年九月時点でのこの整理回収銀行の純資産価格が、これも公表されているわけでございますが、二百八十四億円でございます。先ほどのお話で、この整理回収銀行の資本金は千六百億円でございますから、この純資産価格二百八十四億円を踏まえますと、約千三百億円を超えることになるんではないかと考えております。
  134. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 欠損金が千三百億円を超えるということですね。三月末で清算をしないと住専機構との合併はできない。この欠損金はどのように埋められるんですか。
  135. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生が言われましたのですが、昨年の秋の国会におきまして、与野党の合意の結果、これは法律に定めてございますが、預金保険法の附則と住専法の附則によりまして、まさに住管機構とこの整理回収銀行を合併するということになっているわけでございます。  この法律の合併を実現するためには、今言われました意味で設立される新しい整理回収機構は、実質的に全額国の出資の株式会社とするということでございますので、預金保険機構が日本銀行及び民間金融機関から整理回収銀行の株式を買い取る必要が生じてくるわけでございます。
  136. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 では、その買い取りの合併の比率はどうなっているんですか。
  137. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 両者の合併契約書というのがございまして、四〇対三ということになっております。
  138. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 つまり、五万円の額面であったものが八千八百七十二円になっているわけですね、整理回収銀行は。それで間違いないですね。
  139. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 先生がおっしゃるように、昨年の九月末時点の純資産価格が二百八十四億円でございますので、一株当たりに直しますと、まさに言われた八千八百七十二円となっているところでございます。
  140. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 実際に資本金は幾ら減るんですか、合併した後。
  141. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 先ほど先生の言われました合併比率ともこれは関連があるわけでございますが、結局、昨年の九月末時点の純資産価格二百八十四億円に基づきまして、両者の協議によりまして、この中間決算以後の損益とか資産、負債の変動を見込みまして、新会社の増加資本金は百二十億円ということになります。それが四〇対三の、三の基礎になっていると思います。
  142. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ですから、幾らぐらい資本金は減るんですか。大まかでいいです、三月末を迎えていませんから。
  143. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 資本金の千六百億円から、九月末では二百八十四億、さらに三月末では百二十億円をベースとしているということでございますので、その差額になるわけでございます。
  144. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 差額は幾らですか、それは。
  145. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 千六百億から百二十億マイナスするわけでございますから……
  146. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 だから。
  147. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 千四百八十億。
  148. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 千四百八十億円なくなるわけですね。日銀はこれに対して二百億円出資していますが、総裁、日銀は幾らなくなりますか。
  149. 速水優

    参考人(速水優君) 日本銀行は二百億出資をいたしております。ただいま御説明ございましたように、一株八千八百七十二円を前提として整理回収銀行が時価で買い取ると。いろいろ折衝、交渉もいたしましたけれども、これ以外に方法はないということでございましたので、私どもとしてはこの株を三十五億四千九百万円で売却いたします。売却損は百六十四億五千百万円となります。  この方針は、二月十六日、私どもも政策委員会において議論の結果決定いたしました。預金保険機構に対しては、二月二十二日に本決定に基づいて時価買い取りに応ずる旨を回答いたしました。
  150. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 つまり、日銀は百六十四億五千何がしかのお金が吹っ飛んだわけですね。これはいわゆる奉加帳方式で、この間、日債銀の八百億円に対して日銀総裁は八百億円毀損したとおっしゃられました。新しい整理回収銀行が合併するに当たりまして、これまた百六十四億飛んでいるわけです。  もう一つお伺いします。  いわゆるほかの各民間金融機関が収益支援契約をしていたと思いますが、その収益支援契約の中で未収金が九末で二百八十三億あったはずですが、この扱いはどうなっていますか。
  151. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 今、先生が言われましたように、昨年の国会の与野党の合意、さらには法律に基づいて合併を実現するためには、先ほどからお話しいただいている買い取り等、今言われました収益支援の話がどうしても必要になってくるわけでございまして、今のお話は資産に計上されております。
  152. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 各民間金融機関は、収益支援をまだこれから合併後も続けると言っているんですか。
  153. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 先ほどのように、法律上の整理回収機構を実現するためには、収益支援を継続する必要性は変わるわけではないものでございますので、預金保険機構及び整理回収銀行は民間金融機関に対しまして収益支援の継続の協力を求めているところでございます。
  154. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 おかしいじゃないですか。東京共同銀行、整理回収銀行の前身が解散をしたときは、民間金融機関はこの契約について解除ができると書いてあるじゃないですか。解除されたら二百八十三億円の未収金は入ってこないんですよ。
  155. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 今言われました支援契約書の中にこの条項がございますが、その点についていろいろ考え方がございまして、あくまでもこれは継続をお願いしなければ、資産に計上してあるわけでございますので、そこは継続をお願いしているということでございます。
  156. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 だって、先ほど言われたじゃないですか。新しい、要は国が出資をした預金保険機構からお金が出ていると。回収銀行は各民間機関が出資しているから収益支援金を出しているわけじゃないですか。預金保険機構が出しているものに対して、何で民間の企業が収益支援を続けなければいけないんですか。合理的な根拠を教えてください。
  157. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 繰り返しになって申しわけございませんが、結局与野党の合意のもとで、法律に基づいて全額国の出資の株式会社にして新しく整理回収機構を成り立たせていくためには、既に予定されております収益支援は、これは継続していただかないとその分だけはいわば穴があくという格好になるものですから、これは収益支援の継続をお願いする以外にないと考えております。
  158. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 これ、拒否されたらどうするんですか。
  159. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 先ほどから申し上げておりますように、収益支援の継続は資産項目として計上されているわけでございますから、今、議員が言われますように、仮にそれが打ち切られることになりますと、これは未収金が損失になるわけでございますので、法律に基づいた合併が困難になるという結果になるわけでございます。
  160. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 十二月に合併契約をするときに入るか入らないかわからない未収金をそのままにしておいて、もし未収金が入らなかったら債務超過じゃないですか。そうしたら、今おっしゃられたように合併できないんですよ。そんな先がわからないことに対して合併契約すること自体おかしいじゃないですか。
  161. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 法律に基づいて、これは住管機構と、まさに預金保険法の附則、住専法の附則にもう規定してあるものですから、その合併を実現するためには、合併後の整理回収機構の円滑な運営のためにも、これは民間金融機関に対して収益の支援の継続をお願いする以外にないので、法律を実現するためにこれは必要なお願いでございます。
  162. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 納得できないんですが、ひとつ日銀総裁にお伺いします。  総裁は、十二月二十二日付で預金保険機構の松田事長あてに、この回収銀行の出資に対して、信用秩序維持が目的で回収銀行の損失負担を出資者に求めるのは適当ではないという旨の文書松田事長に送られましたね。
  163. 速水優

    参考人(速水優君) 二月二十二日ですか。
  164. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 十二月二十二日。
  165. 速水優

    参考人(速水優君) 十二月二十二日。  要請の手紙はいただきましたけれども、それに対していろいろ討議をした結果、これはやむを得ないということで決定しまして、先ほど申し上げたように、二月二十二日に時価買い取りに応ずるということをお答えしました。
  166. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 総裁は、ではこれは出資者に求めるのは適当ではないけれどもしようがないから渋々認められたんですね。
  167. 速水優

    参考人(速水優君) 平成六年十二月に経営破綻しました東京協和信用組合それから安全信用組合の受け皿として設立された東京共同銀行、現整理回収銀行に対して、日本銀行及び民間金融機関はそれぞれ二百億円を出資したわけでございます。日本銀行としては、預金保険制度が十分整備されていないもとで信用秩序維持のためにやむを得ない極めて異例の緊急避難措置として出資を行った経緯等を踏まえまして、現在整理回収銀行が抱えている損失について出資者にその負担を求めることは本来必ずしも適当でないと考えております。  こうした考えに基づきまして、預金保険機構に対して、買い取りは時価ではなく額面で行われることが望ましい旨文書により伝達しております。
  168. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 日銀総裁が適当でないと言われているものに対して、買い取れと無理やり言って、百六十四億も損させたんですか。  大蔵大臣、いかがですか。
  169. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大変複雑な過去を持っておるケースで、私が十分知っている部分と多少知っておる部分とに分かれますが、結局あのころに御承知のように信用金庫がつぶれましたですね。そのときに、今のようなネットワークがございませんから、東京共同銀行というものをつくって、東京協和、安全及びコスモでしたか、一緒にしました。これはどこからも預金のペイオフを超える制度がございませんから、預金保険機構が面倒を見るわけにいかない。そこで、日銀にも民間からもお金を集めてともかくあの場をしのいで預金者にお金を払った。しかし、それがこの整理回収銀行の負債になってずっと続いておったわけでございますね。  そして、ここから先がちょっと非常に申し上げにくいことになるのですが、いまだに預金保険機構は整理回収銀行を救うという規定が遡及いたしませんから、その救済の方法がない。そうしているうちに、今度整理回収銀行がもう一つのものと一緒になるということに国会の立法で決められたわけでございます。  そして、しかも片方では民間の未収金がある。民間もこれは今さら出すのは本当にたまったものじゃないだろうと私も思うんですけれども、それはアカウントレシーバブルの方にございますから、国会のおっしゃるように合併をいたしまして、そして政府がさっきおっしゃったように五万円ですか、の株を八千幾らとおっしゃいましたね、そういうことで買い取って、しかしやっぱり民間からはそれをいただかないと国会でお決めになりました法律の実行というものができない、そういう立場政府はあると思います。  これは与野党でいろいろあのときに御承知のように大変複雑な御協議がありまして、大変複雑な御協議でありましたから、本来なら政府が機会を得て、そういう立法をしていただきますと民間からこれをどうしても取らなきゃならないという羽目になりますということを申し上げておくべきだったんだろうと私は今思います。  しかし、それはそういうふうな雰囲気も実際ありませんで、ああいう立法ができてしまいましたから、立法のとおりするとすれば、民間の各行に強く要請をしてひとつお願いできないかと、こう言うしかございませんということを政府委員は丁寧に申し上げようとしているんだと思うんです。非常に困ったことになっております。
  170. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 よく各大臣の先生方言われるじゃないですか、仮定のことには答えられないと。民間金融機関が支援を続けるかどうか仮定でわからないのに決めちゃったわけでしょう。おかしいじゃないですか。大蔵大臣、おかしいでしょう、これ。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 決めちゃったというのが、大変申しにくいのですが、政府立法でお願いしたのではなくて、国会の立法でそう決まった経緯ですから、決めちゃったというのは、そうおっしゃいましても、政府委員はなかなかさようでございますと申し上げられないわけで、私、ですからこの程度この場で申し上げますけれども。
  172. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 とにかくわからないことだらけなんです。いっぱいあるのでちょっと行きます。  日銀総裁にお伺いします。  山一証券に日銀特融を当初一兆二千億円出されたと思いますが、現状どのぐらい日銀に返済が行われていますか。
  173. 速水優

    参考人(速水優君) 今約五千億残っております。五千億ちょっと割っておりますが、五千億残っております。
  174. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 残が五千億ですか。
  175. 速水優

    参考人(速水優君) 貸し出し残高が。
  176. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 これは、山一が自己破産をしたときのこの残りの五千億の残高はどうなりますか、これも仮定の話なんですけれども。
  177. 速水優

    参考人(速水優君) 御指摘のとおり、山一証券向けの特融を投資者保護基金が承継するということになっておるわけで、同基金の総会の承認が必要とされるところでございますけれども、日本銀行としては、実際に投資者保護基金を活用する必要が生じた場合にも、関係者の理解と政府の責任によって適切な対応が図られるものではないかと考えております。
  178. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 では、その総会で否決されたらどうなるんですか。
  179. 速水優

    参考人(速水優君) それはわかりませんけれども、関係者の理解は十分得られるものというふうに考えております。
  180. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ここに山一特融を出したときの総裁談話があるんですよ。信用秩序の維持というみずからに課せられた使命を適切に果たしていくため、臨時異例の措置として日銀法第二十五条に基づき、同社の顧客財産の返還、資金を供給することにした、日本銀行資金の回収に懸念が生じるような事態はないと考えていると言っているわけです。  あるかもしれませんよね。総裁、いかがですか。
  181. 速水優

    参考人(速水優君) 資産処分、その本件の最終処理を含めまして、寄託証券補償基金の法制化、その他財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処したいということが大蔵大臣談話で平成九年十一月に、同社廃業が決まったときに発表されております。私どもはそれを信じておるわけでございます。
  182. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 私が何でこんな細かいことを申し上げているかといいますと、いいですか、回収銀行で百六十何億、日銀が出資をしたものが飛んだんです。今回、日債銀で八百億円飛んだんです。日銀特融は出資ではないから性格は違うかもしれないけれども、五千億円飛ぶかもしれないんです。  いいですか。信用秩序という打ち出の小づちがあって、この打ち出の小づちを大蔵省が振ったら、民間金融機関も日銀もみんなお金を出して、それで気がついたらこれだけ飛んでいっているわけです。  私が言っているのは、信用秩序の維持は大事だと思いますが、中央銀行としての日銀の権威とか威信とか、海外マーケットの日本の中央銀行に対する信頼というのはどうなるんですか、総裁。私は、総裁はお気の毒だと実は思っているんです。
  183. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それはむしろ大蔵大臣お答えすべきことかもしれないと思います。  と申しますのは、昨年の国会でいわゆるセーフティーネットをつくっていただきました。預金保険機構もございますし、政府も六十兆の出資をいたしまして、これでまずこういう場合の仕組みがおかげでできたわけですけれども、その以前には、二つの信用組合のときのように、何ともする方法がない、ペイオフの例の預金保証すらないわけでございますから、そういう預金者に対する手当てと、それから日債銀のときもそうだと思います、山一も業種は違いますが似ていると思いますが、一種の信用恐慌が起こりましたときにそれに対応する方法を欠いておったわけでございます、我が国の経済が。それが護送船団の罪であったろうとおっしゃれば私は否定いたしません。  やっぱり世話しながら何とかそれは済ませていこうと考えていて、いろんな事情がございましたが、それがいろいろ済まなくなってきたところで国会が立法をしていただいたわけですが、その前には、日債銀のときもそうでございますが、日銀がどうしてあそこで八百億円出したと。新しい勘定から政策委員会を開いて出されたわけですが、そうでないとほかの銀行にも協力をしてもらえないということが現実にあったんだと思いますね。それは奉加帳ということでまことにいかぬことでございます、今から考えれば。しかし、それ以外にやる方法がなかった。  ですから、日本銀行も好きでおやりになったんでないことはまことにはっきりしておりまして、日債銀のときは、ですから大蔵大臣がわざわざ談話を出されて日銀に協力を要請したと言っておられますように、日銀は内部手続はきちっとしておられますけれども、しかし大蔵大臣の要請であるとか全体の金融秩序の維持であるとかいうことで、言ってみれば心ならずもなさって、それがうまくいきましたらこういうことになりませんでしたが、不幸にしてうまくいきませんでしたので、一体出した金はどうなるのかということになった。  つまり、セーフティーネットがありませんでしたから、大蔵省がいわば音頭をとって日銀にもお願いをし、民間にもお願いをして金を出してもらって、何とかここは乗り切ろうといたしましたその乗り切りが成功いたしませんでしたので、あちこちに御迷惑をかけるようになった。それはまことに音頭をとった者に私は責任があると思います。過失や故意はなかったと思いますが、しかし結果責任はあると思いますが、それはセーフティーネットができなかった時代における、いわばそれ以外に方法のなかった処置であったのではないか、こういうふうに考えます。
  184. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 方法がなかった、だから日銀にもお願いをした、民間にもお願いをした、結果として失敗しましたと。そのお金が八百億、百六十億、五千億円です、大蔵大臣。確かにそれは一理あるかもしれない。でも、結果責任として、行政に過失責任があるかどうかわからないけれども、責任がありまして申しわけありませんと、それで済むことですか、大蔵大臣
  185. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう反省のもとに、大蔵省の行政というものは非常に批判をされましたし、また多少同じ関連もあって関係者がいろいろ処罰を受けたりいたしました。  その中で、そういう金融に関する権限を大蔵省が持っているのは適当でないという国会の御判断もいろいろ御議論になっているというようなことで、そのような行政のあり方が批判を受け、罰せられたというふうに私は反省をいたしております。
  186. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 日銀総裁、これだけ財務内容が悪くなっている状況と中央銀行としての威信、海外のマーケットそして国内のマーケットに対する信用低下に対してどのような見解をお持ちですか。
  187. 速水優

    参考人(速水優君) 日本銀行は、金融システム問題に対応するために信用秩序の維持という意味で、いわゆるレンダー・オブ・ラスト・リゾートと通常言われておりますが、最後の貸し手としての任務を果たさなきゃならない。これはどこの中央銀行でも持っている責任なんです。  今回の場合も、中央銀行の立場から、いろいろ金融システムの破壊に導かないための手段が何もできていない状況の中で考えられたセーフティーネットの一つの整備あり方としてこれを受けたものだと思います。しかし、結果としては、御指摘のように、新金融安定化基金を通じた日本債券信用銀行向けの出資とか、整理回収銀行向けの出資とか、いずれも毀損され得る事態となっていったことにつきましては、私どもとしても非常に重く受けとめております。  日本銀行としては、今回の痛みを伴った教訓を今後の対応に十分生かして、我が国金融システムに対する内外の信認を確保していけるよう引き続き努めていく所存でございます。同時に、中央銀行の財務の健全性が全体としてしっかり維持できるよう細心の注意を払ってまいりたいと思います。こうした観点からは、公的資金による資本増強の仕組みを含めてセーフティーネットの整備が進められたもとでは、こうしたリスクキャピタルの供与について今後一段と慎重に対応していくべきものと考えております。  いずれにしましても、今回の一連の教訓を踏まえて、昨年四月から施行されました新日銀法のもとで、我が国金融システムの健全性に役立つ対応を行ってまいりたい。これが新しい日本銀行に課せられた責務であると思います。  本件について外からどう見られるかという御心配を私どもも持っていますし、皆様もお持ちいただいているかと思いますが、中央銀行としてはこういったラストリゾートとしての役割というのは責任の一つでございますから、銀行券発行残高は今五十兆ですけれども、それの一割に相当する資本準備金というものを常に抱えております。そういうものの中で毀損が出てきた場合には払わざるを得ないということでございますから、その辺はそんなに御心配いただくようなことにはならないと思っております。
  188. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ありがとうございます。  先ほど大蔵大臣が故意、過失があるわけではないからと、もうやむを得なかったとおっしゃいました。  では、故意、過失がありそうなところに行きたいというふうに思います。日野長官、よろしくお願いします。  あなたは、予算委員会での答弁で何度も、不良債権の第Ⅲ分類の七千億円という数字がひとり歩きをした、どこかから心証を承って日債銀の方でひとり歩きをさせた数字だというふうにおっしゃっていましたが、きのうの参考人ではっきりと頭取は、大蔵省の検査の方から聞いた数字を積み上げて伝えたとおっしゃっています。  さらに、日野長官予算委員会で、大蔵省が検査の途中でいろんな形で数字を申し上げるようなことは一切ないはずだということを言われていますが、この答弁の食い違いについてどう思われますか。
  189. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) まず、後の方から御答弁申し上げますが、これは検査の途中でございますので、検査官がその検査の結果を検査対象行に対して言うことはありませんし、また言ってはならないことであろうということでございますし、日債銀の場合もそうであっただろうというふうに承知しております。  次に、前段の方のお尋ねでございますが、七千億円という数字は私はどこからも出てこないというふうに考えているわけですが、つまりこれは大蔵省が検査結果を確定して示達したのは平成九年九月で、平成九年五月に日債銀が増資要請を行った時点ではいまだ検査結果は判明していなかったわけでございます。しかし、当時日債銀が増資要請先に対して何らかの形で資産状況を説明する必要に迫られていたという事情がございまして、日債銀が途中段階で大蔵省の検査を受けております。それで、御自分の何か得られたようなそういった心証といいますか、みずから積み上げたその計数を何かの形で説明したということは承知しております。  私は、これまで答弁で申し上げたとおりでございますが、七千億円という数字は私どもといいますか大蔵省の方で最終的に通知した数字でもなければ何でもなくて、これは日債銀自身が積み上げた数字で、当局が積み上げて検査結果を示した数字ではないという趣旨で申し上げてきたわけでございます。
  190. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 では、東郷頭取がきのうの証言でうそをついていたというわけですか。
  191. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 昨日の東郷頭取の御答弁を要約して申し上げますと、一通りの資産査定を終えたような段階で私どもがとおっしゃっていますね。一人称です、ウイかあるいはアイかわかりませんが。検査の方々からお聞かせいただいた数字を足し上げたものが七千億円でございますと。  それからまた、さらに上田清司委員からの御質問に対しても、私どもが算定しと、こういうふうにおっしゃって、五月十九日に金融機関に伝えました、こういうふうにおっしゃっているわけです。
  192. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 もうおかしいんですよ、長官。あなたは、二月五日の予算委員会の速記録で、大蔵省の心証と申しますか、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるといったようなことはなかったものと承知しておりますと答弁されているんです。  今あなたは、一人称ですけれども、日債銀が、私たちが大蔵の検査の方から聞いた数字でつくったというわけです。大蔵の検査の方から聞いた数字と今あなたはおっしゃったじゃないですか。じゃ、大蔵の検査の方は数字を言ったわけですね。
  193. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 当時、日債銀が切迫しておりまして、日債銀がみずから積み上げた計数を説明していただろうということは十分にうかがえるところですし、私どももそうだったのかなというふうに思っているわけです。
  194. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 大蔵省の検査の方々から聞いたって、あなた今おっしゃったじゃないですか。じゃ、東郷前頭取はうそをついているわけですね。
  195. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) もちろん、検査でございますから、検査に行って、対象となる金融機関との間でその資産の査定をめぐっていろいろディスカッションしていることは当然にあり得るわけです。それは、ですから日債銀の方としても、大蔵省が一体どういう観点でこういうことを聞かれるかということは十分わかるわけですね。  しかし、大蔵省としては、それを第三者、日債銀以外のところにそういうことを言うということはあってはならないし、そういうことはなかったというふうに承知しております。
  196. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 だって、あなたは、検査の途中で知り得たさまざまなことについて、他にそれを申し述べるようなことはないと言っているじゃないですか。
  197. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 他にというのは第三者という意味でございます。
  198. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 でも、きのう頭取は、日債銀の七千億円を大蔵省に報告したとおっしゃっているんですよ、その時点で。
  199. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 報告を受けているかどうかは、とにかくそういうことを言っているという話を大蔵省が聞いていただろうとは私は思っております、そこは。
  200. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 今のは食い違っているじゃないですか。だって、きのう日債銀は報告をしたとおっしゃっているんですよ、長官
  201. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 七千億という数字を言っているということを、日債銀が言っているということは私はもうかねてから申し上げていると思います。
  202. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 わからないな。  では、もう一個行きます。  確認書の問題が出てきました。確認書はいろんなところにお願いをして、そしていろんなところが出してくれという向こうからの意思表示に対してこちらが出したというふうにおっしゃいました。全部ではない、一部だとおっしゃいました。これには大体二項目言われているというふうに日野長官はおっしゃいましたが、もう一度確認をお願いします。
  203. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 確認書は必ずしもチェンジしたところとの間ですべて同じ文言で交換したものではございませんから、複数ございますので、それを全部一つ一つ正確に申し上げれば別々なんですが、これを要約して申し上げますと、一つは、この再建策は全関係金融機関の同意がなければ成立せず、仮に成立しない場合には金融システム全体に大きな影響を及ぼしかねないということです。それから第二点は、当時の見通しとしては再建策が実行されれば日債銀の再建は可能であるということ。それから、さらにつけ加えますと、これは全くの要約になりますのであれなんですが、出資要請先に対しては再建策以上の追加負担を求めることはないという認識を大蔵省が有しているということを文書の中で確認していたということになります。
  204. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 その確認書を交わした時期はいつですか。
  205. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) これは区々でございまして、五月から六月にかけてということになります。
  206. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 それは出資をしていただければ再建可能だということが書いてあったわけですね。これはまさに検査の途中ですよね。何で検査の途中で、外に、表に出さないときに再建が可能かどうかが言えるんですか。
  207. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) この確認書を読みますと、再建可能な理由としては、日債銀は債務超過ではなく、この再建計画の実施によって再建が可能であるというふうに大蔵省としては判断した、こういうふうになっております。
  208. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 だって、検査の途中なんでしょう。債務超過ではなくと何で言い切れるんですか。
  209. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 再建計画は四月一日につくられたわけですね。それを早急に実行しなければならないというわけです。ところが、確かに今おっしゃるように検査は四月から入りましたが、九月まではまだ終わりません。終わっておりませんが、とにかくその途中で大蔵省としての判断を示さざるを得なくなったということで、大蔵省の判断を確認書という形によって示した、あるいは四月一日に大蔵大臣の談話という形で示したものでございます。
  210. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 さっき言ったじゃないですか。これは、日債銀については検査の途中で知り得たさまざまなことについて他にそれを申し述べるようなことはなかったものと承知しております、日債銀の間でやりとりがあったとおっしゃいましたよね。今おっしゃったじゃないですか。検査の途中ですが、切迫をしていたので検査のとき知り得たさまざまなことを言っているじゃないですか。
  211. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査は検査、それから大蔵省として当時再建が可能であるかどうかということを判断したということはあると思います。
  212. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 では、何のために検査をしたんですか。
  213. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査は、本来の金融機関の財務の内容が健全であるかどうかということを判断するために行ったということでございます。
  214. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 二千九百億円ものお金を出資してもらうのに、検査は検査、今一応債務超過ではないという判断をして確認書を配っている、検査の途中でですよ。おかしいじゃないですか、こんなの。
  215. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) これはたびたびお答え申し上げていることですが、その四月一日に日債銀の関連会社が破産の申し立てをいたしまして、日債銀自体がもし倒れるようなことになった場合には、その当時の金融システムが大変なことになる。しかも、現在のようなセーフティーネットはその当時整備されておりませんでした。  特に、金融債が預金保険の保護の対象となるかどうかについてもいろいろ御議論がございまして、そういった時点でもしも、金融債保護なども含めまして、預金者の保護も含めて、果たして日債銀が倒れるとどうなるかということを考えたときに、その四月一日に出された再建計画に基づいて再建せざるを得ない、そのためには出資先にいろいろお願いしたりあるいは日銀にお願いしたということでありまして、その当時は検査の結果がまだ出ておりませんでしたけれども、四月一日の現在ではやむを得ない措置ではなかったかなというふうに考えます。
  216. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 百歩譲って、お願いをするのはわかります。  債務超過ではないと言っているということは、これはある意味でいうと、価値をそこに与えているんですよ、長官。何の根拠で債務超過ではないと言ったんですか。
  217. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 大蔵省は大蔵省としての検査とはまた別の独自の、検査は検査部の方でやっているわけですが、銀行局の方では独自の情報の収集を行っているわけでありますし、それから三月末の時点の自己査定については、当時、監査法人、公認会計士が当時の会計基準にのっとった監査をした上で債務超過ではないという結論に達していたわけでございますから、この確認書が出されたことについては何ら当時としてはやむを得なかったものではないかというふうに存ずる次第です。
  218. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 大蔵大臣予算委員会の答弁で、詳しいことは存じません、みだりに申すべきことではございませんからと言って、みだりにいろんなことを外へ出すことはおかしいというようなことを大蔵大臣言われているんですが、今のお話を聞いてどのようにお感じになりますか。
  219. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いろいろの話を聞きましたり、またきのうの参考人の御意見は私は直接伺いませんでしたけれども、私が想像していたようなことであったかなと思って、後で報告を聞きました。  結局、四月一日に、大蔵大臣が呼びかけられて協力を要請されたということがございますね。その中で、大蔵大臣は、言葉として、この資本増強は不良債権の抜本的な処理と相まって日債銀の経営基盤を大きく改善するものと考えており、市場の信用を回復する云々と言っておられるわけですが、この段階において、大蔵大臣初め大蔵省も日銀も、資産超過ではないという恐らく心証を持っておられただろうと想像をいたすわけです。──債務超過です、失礼いたしました。そのゆえに、また大蔵大臣の意を受けて、大蔵省も各行に協力を要請されたと。  多分、そのときに、しかし大丈夫ですかと、そうはおっしゃるが本当に債務超過じゃないんでしょうねと、これは当然そういうやりとりはございますと思いますね。それで大蔵省は、大臣が言われたように、まず債務超過ではないと思っているということを今何々書というようなことで答えているようでございますね。  しかし、各行が、そうはいっても一遍やっぱり検査をしてもらわないとわからぬじゃないかというお話は恐らく当然あって、それで大蔵省の検査が四月十六日に始まっております。  それは、最終的には九月十日までかかるわけですが、その検査の途中で先ほどお話しのいろんな数字があって、それは想像いたしますと、検査部の人間と銀行の当局者は毎日毎日やりとりしておりますから、銀行がどのぐらいの不良債務を、検査官が見ているかということは、これはお互い同士ですから、やりとりするのは、第三者ではございません。そういう心証があって、どうも多分七千億ぐらいだなということを、恐らく上にも当然報告していると思いますね。それで東郷さんは、あちこちから聞かれますから、大丈夫なんだろうねと。いろいろ自分の受けた心証では七千億ぐらいだと思うなということを言っておられるし、日本銀行にもそういう報告をしておられる。  きのうの参考人のお話を聞きますと、そのことは銀行局長の耳にも入っていて、銀行局長は、そういうことは自分は否定も肯定もしないという立場をとり続けられるわけでございます。そういうことの中で、きのうもございましたと思いますが、七千億であっても、あるいは最終的にはこれは一兆一千二百十二億になりますが、それでも債務超過でないということを関係者はみんな思っておりますものですから、したがってどっちの数字であれ債務超過になることはない、こういうことに考えて一切のことが動いておったのではないか。  したがって、東郷頭取もそういう気持ちで、ただ恐らくこの銀行側の七千億という考え方と大蔵省の検査官の一兆一千億との間の差は、御承知のようにこれは銀行がコントロールできる部分である。したがって、銀行は低い方の話をしておられたし、大蔵省の銀行局も債務超過ではないと、こう思っている。  それが、最後に、あの翌年の三月の佐々波委員会まで続いておりまして、大蔵大臣が、佐々波委員会出席される前に佐々波委員会の方からいろいろラインシートが来ているので大蔵省で子細に調べてもらいたいということがあって、これはもう大変徹夜をして調べたりして、そしてここは想像なんですが、大臣に対しては、やっぱり債務超過というようなことは別に出ておりませんから、ただ非常に査定が甘いのでここのところはよく佐々波委員会に言っていただきたいということを大臣に申し上げた。大臣はそれを言われて、佐々波委員会は再度東郷頭取に大丈夫かねという念を押されたと。  ここまでが全部債務超過じゃないという意識で動いておるというふうに私は思うわけでございます。
  220. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 大変丁寧にお答えいただき、ありがとうございます。  もう一度日野長官にお伺いします。  根拠は何ですか。いたし方なかったのはいいですが、それでは債務超過ではないと言った根拠は何ですか。
  221. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) ただいまの御質問は、佐々波委員会の前の段階……
  222. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 前です。五月の時点です。確認書の中で。
  223. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 五月の時点でございますね。これは、三月の時点で自己査定をして、そのとき監査法人やあるいは公認会計士に見ていただきまして債務超過ではないということになったわけです。それが三月から五月にかけてのことだと思います。  それからもう一つは、検査が終わった後のこともそうなんですが、これは九月の中間決算に当然反映しなければならないわけですが、このときも監査法人にお願いしてそれを見ていただいたところ、会計原則に従って引当償却をした結果、やはりまだ債務超過にはなっていなかったというところではなかったかと思います。
  224. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 わかりました。  がらっと変えます。  日野長官、その年の日債銀の株主総会はいつでしたか。
  225. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 株主総会は、六月二十七日に定時株主総会として開かれております。
  226. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 先ほど日野長官が、日債銀でいろいろな事情があって聞かれたので、債務超過ではない、七千億だということをひとり歩きさせたとおっしゃいましたが、その特別な事情というのは何ですか。
  227. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 確認書と一口に申し上げますが、そのやりとりをした理由も、ちょうど五月から六月にかけてなんですが、それぞれの御要請先、金融機関にはそれぞれの個別の事情がございますので、どういった事情がおありかもよくわかりませんが、株主総会において、これは増資そのもの、出資そのものを別に株主総会で議決していただくわけではありませんけれども、例えば優先株の枠が非常に狭いために優先株引き受けのための枠を広げていただくということなどの関係もありまして、日債銀としていろいろお願いしたということではなかったかなと思います。
  228. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 もう一つお伺いします。  長官は、衆議院予算委員会等で示達書の数字について聞かれたときに、一兆一千二百十二億については答えられていますが、もう一つ、両論併記をされたという七千億については全然御答弁をされなかった。これは何で御答弁をされなかったんですか。
  229. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 示達書そのものは、これは大蔵省の官房金融検査部長と銀行局長と国際金融局長の三名の連名で日債銀あてになされておりますが、その中にはその数字は出てまいりません。  今なぜ両論併記という問題が生じてきたかということは、実は示達書の中に、詳しいことはこの示達書の中には書いていないんですが、なお書きといたしまして、検査報告書を参照されたいとあるわけです。  この検査報告書というのは、検査官が検査の結果を自分の直属の上司である検査部長に対して報告するために報告書としてつくられるものなわけです。その検査の過程でいろいろディスカッションをいたしまして、日債銀が自分のコントロールにある関連会社は自分がつぶさない限りは大丈夫なんだという主張をしておりますので、その主張の金額はこのくらいありますよというふうに金額を書いてあるわけです。それが四千幾らです。その数字を一兆一千幾らから引くと六千三百幾らになるわけですね。その六千三百幾らというものを一兆一千の上に小さい字で括弧して書いてあるということなんです。  示達書そのものには全然出てまいりません、その数字は。検査報告書を見ることによって初めて、ああ、検査官が上司に対して報告したときには自分たちの主張をそういう形で上司に報告したんだなということがわかるようになっているわけです。つまりは、日債銀の主張はあくまでもこうでありましたということを上司に報告するために、念のため一兆一千の上に六千三百という数字を書いて、なぜ六千三百になるのかというと、四千三百幾らは自分が倒さない限りは大丈夫な金額だ、こういうふうに書いてあるわけでございます。
  230. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ということは、示達書には両論併記はされていないわけですね。
  231. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) されておりません。
  232. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そこまで詳しく言われるんだったら、この委員会にその示達書を見せていただきたい。出していただけませんか。
  233. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 個別の金融機関のことに関しましては、従来からこれを公表したりあるいは御提出したりすることは差し控えさせていただいておりますので、それにのっとってやりたいと思います。
  234. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 あれだけ答弁されていて何で出せないんですか。個別の銀行のことじゃないですか。
  235. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 個別の銀行のこととおっしゃいますが、少なくとも私どもは、日債銀が特別公的管理になりまして、いわゆる破綻銀行になった時点で最大限、つまりどうしてこういうふうに破綻したかということは計数でもって検査の結果、金融監督庁の検査のみならず、大蔵省が平成九年に行いました検査の結果も公表していることでおわかりいただけるものと存じます。
  236. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 先ほども確認書は各社ばらばらだとおっしゃいましたね、それぞればらばらだと。何でばらばらなんですか。
  237. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) いろいろそれぞれの会社に御事情があろうかと思います。それで、確認書というタイトルのところもございますし、それから応接録というところもございますし、それから確認メモといったようなところもございますし、本当に区々でございます。  したがいまして、表題のみならず内容もそうでございますし、それから日にちも違います。いろんな意味で違うということでございます。
  238. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 この確認書もこの委員会に出していただけませんか。
  239. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) これは、双方が交換したものでございまして、私どもの方だけで判断するということはできない、それぞれの個別の銀行に何かいろいろ御事情があってこういったものを必要とされたものと思います。それぞれの銀行の実は名前を申し上げることもやはり差し控えなければならないというふうに私どもは考えているところでございます。
  240. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 これは資料請求をお願いしたいと思います。
  241. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまの福山君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたします。
  242. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 もう一度確認させてください。  示達書には両論は併記されていなくて、一兆一千二百十二億円だけだったんですね。
  243. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) もう一度繰り返して申し上げます。  日債銀に対する平成九年四月を基準日とし、同年九月に示達した大蔵省検査結果におきましては、第Ⅲ分類額は一兆一千二百十二億円でございまして、第Ⅲ分類の数字が両論併記されているわけではございません。
  244. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 第Ⅲ分類が両論併記ではなくて、それ以外、もう一個、先ほど四千億円、注みたいな形であるとおっしゃっていたのをもう一度教えてください。
  245. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) それも併記されておりません。検査報告書の方には注という形で書かれております。
  246. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 検査報告書というのは、どこからどこへ出すものですか。
  247. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) その検査を担当した検査官、複数いるはずですが、その複数名がその直属の部長である当時の金融検査部長に対してあてた報告書でございます。
  248. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 検査部長にあてた数字。何か頭が整理できなくなってきましたね。何かごまかされているような気がしているんですけれども。  では、もう一個お伺いします。  そうすると、日債銀の検査から、日野長官、検査部が出てこられたのはいつですか。
  249. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 立ち入り終了という御趣旨だと思いますが、平成九年の七月四日ということになっております。
  250. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 七月四日から九月十一日の示達書の通達まで、それだけ時間がかかった理由は何ですか。
  251. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査が終了いたしましても、やはり帰ってきまして数字を突き合わせる、それから資産の内容に問題がある場合にはそれをどういうふうに分けるかといったこととか、部内でいろいろ検討した上でということになりますので、確かに二カ月ぐらいの余裕、間はございましたけれども、そのぐらいの日数はこのぐらい大きな銀行になりますとあるのかなと思います。
  252. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 その間に日債銀と大蔵省の間にやりとりがあるわけですね。
  253. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 個々具体の場合にどうであったかはちょっと御遠慮させていただかないといけませんが、一般論として、金融検査に入りまして立ち入りが終了いたしまして、今度バックオフィスの方の審査に入るわけでございます。そこで、検査官が調べてまいりました内容あるいは検査官の見解、こういうものが法令解釈に誤りがないかどうか、あるいは先方の銀行なり監査法人との主張でやりとりがあった場合に、どちらの主張がどういう根拠を持っているか、こういうことをチェックしてまいりますのと、それから数字自体の誤りがないかどうかやってまいります。  その過程で、銀行側の見解をもう一度確認する必要があるとか、あるいは監査法人の意見をもう一度聞く必要があるとか、こういうことは起こり得るわけでございまして、一般論として申しますと、バックオフィスの審査に入りましてから後も銀行と連絡をとり合うことはございます。
  254. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 その連絡をとり合う議事録というのは用意されているんですか。
  255. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 失礼ですが、議事録と……
  256. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 そのお互いのやりとりに対しての、何か残っているんですか。
  257. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 内部的な覚えとして、例えばみんなで議論するときに紙に落とした方がわかりやすければそういたしますが、特段一々のやりとりを記録として残さなければいけないという手続は特にございません。
  258. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ちょっと僕も頭を整理しなければいけないので、次の集中のときにまたあれですけれども、基本的には三月の時点で四千七百億円だという第Ⅲ分類だった。それが五月の時点では七千億円になった。ところが、検査部から出てきた数字では一兆一千二百億円。三つがどんどんどんどん上がってきた。これはまずいということで両論併記をしたのではないか。その両論併記のための根拠として、先ほど言われた四千億が検査報告にあったのではないかなというふうに思っておりまして、今後また詰めさせていただきたいというふうに思います。  次に、ダイオキシンの問題に行かせていただきたいというふうに思います。  話が全然変わって恐縮でございますが、まずダイオキシンについて、総理にお伺いします。  二十四日に関係閣僚会議の初会合を開かれて、早速動かれたことに対しては大変評価をしておりますが、実はダイオキシンというのは、八四年に日本でも専門家会議をつくりまして、百ピコグラムというガイドラインを制定しました。でも、この十年間、TDIを何も制定せずに、ある意味で言うとほったらかしだったわけです。この時期に急にダイオキシンという形で関係閣僚会議の初会合を開かれたということで、私は対策としては非常に対応がおくれたという認識があるんですが、総理はどのようにお考えですか。
  259. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) そうおっしゃられればそういうことかもしれませんが、諸外国におきましていろいろ基準その他につきまして数字が出ておりました。ダイオキシンの問題につきましては、かねて来議論がされ、御指摘もいただいておりましたが、昨今、特にこの問題に対して国民の間に不安感その他大変大きなものになっておりまして、私自身も施政方針演説で安全へのかけ橋ということの中でダイオキシンを改めて取り上げさせていただきました。  そういった意味で、各省庁間におきまして基準のとり方その他が必ずしも一定でないということでありましたので、あえて政府全体としてもう一度お互い確認し合うと。厚生省あるいは環境庁、農水省その他関係の省庁で十分連絡をし、話し合っていかなければならないという、そうした状況にかんがみまして、あえて、おくればせであると言われればそうかもしれませんけれども、こうした閣僚会議を設置して真剣に取り組んでいかなきゃならない、こういったことで閣僚会議を開かせていただきまして、数点の問題につきまして内閣として取り組んでいくということに決定した次第でございます。
  260. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 国民の不安はピークに達していると思いますので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。  では、次に環境庁長官厚生大臣にお伺いします。  九五年と九六年に両官庁からピコグラム、今お手元にお配りしましたように、(図表掲示)五ピコグラムが環境庁、十ピコグラムが厚生省という形の対策の値が出たんですが、これに関して、なぜこの数字のずれがあったのか、御答弁願います。
  261. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 厚生省の方が先に発表いたしておりますのでちょっと申し上げさせていただきますが、耐容一日摂取量、TDIでございますが、これは委員御承知のとおり、健康影響の観点から、ある物質を一生涯とり続けても許される体重一キログラム当たりの一日の量でございます。  これは、種々安全性の基準として科学的知見、評価をし、解析の上設定さるべきものでございますが、厚生省ではダイオキシンのリスクアセスメントに関する研究班というのを設けまして、そして平成八年六月に、健康影響の観点から、この体重一キログラム当たり一日十ピコグラムと今申しましたTDIを提案申し上げました。この値は、当時の科学的知見等に基づきまして、動物実験等で得られた結果から総合的に判断をして算定したものでございます。  これに対しては、後で環境庁長官の方から御答弁があろうかと思いますけれども、私どもの理解するところでは、環境庁の検討会が報告いたしました健康リスク評価基準五ピコグラム・キログラム当たりは、環境行政におきましてダイオキシン類に関する環境保全対策を講ずるための目安として設置されたものと私どもは承知しております。環境庁の報告によりますと、健康リスク評価指針値は、人の健康を維持するための許容量を意味するものではなく、より積極的に維持されることが望ましい水準として設定されたものと理解をしておりまして、厚生省とのねらいの違いがございます。  一方、昨年の五月にWHOの専門家会合が開催されまして、ダイオキシン類のTDIにつきまして、それまでの十ピコグラム・キログラム当たりを見直しまして、当面の許容量を四ピコグラム・キログラム当たり、究極の目標、これはアルティメットゴールと言っておりますが、究極の目標を一ピコグラム・キログラム当たりとされました。  しかし、この四ピコグラムと一ピコグラムとの相違点につきましては、ちょっと英語の点で恐縮ですが、この四というのはWHOではマキシマル・トレラブル・インテーク・オン・ザ・プロビジョナル・ベーシス、こうなっておるんです。つまり、あるべき最大の耐容許容量というようになっています。そして、一ピコグラムの方はアルティメットゴールですから、これはさっき翻訳の問題ございましたが、我々としては究極の目標、あるべき目標、望ましい目標というように理解をしております。  そういうことで、厚生省として、この点は昨年の五月に専門家会合が開催されて提示はされましたけれども、それを裏づける詳細なデータ等が得られませんでした。したがって、ことしの一月にそれが入手できましたので、今環境庁と合同で専門家会議を開催いたしまして、TDI見直しを早急に行うべくワーキンググループをつくっておるところでございます。  そこで、所沢等の問題もこれあり、問題の緊要性にかんがみまして、総理大臣が先ほど仰せられたように、ダイオキシン対策閣僚会議を決めまして、その主要な問題としては、十と五の統一をいたしませんと国民の間に二つのスタンダードがあるというような誤解を与えておりますので、私どもとしてはきちっとしたものをつくろう、こういうことになった次第でございます。
  262. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 今、厚生大臣から環境庁と厚生省の違いにも触れていただいたところであります。環境庁としては、人の健康を確保するために、より積極的に維持されることが望ましい水準として、体重一キログラム当たり五ピコグラムということにいたしたわけでありまして、先ほど厚生大臣からお話がございました許容限度量のTDIとの差異が出たものと思っておるところであります。  先生御案内のように、WHOでも平成二年には十という数字が出ておったわけでありますけれども、昨年五月に一から四という数字が出たわけであります。公明党さんから出ておる数値も一という数字が出ておるようでございますけれども、これからの議論を深めていかなければならないわけであります。  先ほどお話がございましたように、厚生省と環境庁の間で専門家会議を開いて、その数値の的確なものを出していきたいということでございまして、その結論を待って整合性を図っていこうと思っておるところであります。いろいろ問題があろうと思いますけれども、御意見をいただきながら数値を決定させていただきたいと思っておるところです。
  263. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ありがとうございます。  実は民主党も先日、法律を出させていただきました。ダイオキシンの問題というのは、大変実はややこしくてわかりにくいんです。国民の皆さんもわかりにくい。中川大臣が言われましたように、ダイオキシンについては食品農作物に対して数値基準がなくて、公表すると風評被害になりかねないというふうに大臣がおっしゃられましたけれども、僕もそのとおりで、要は全然わからないわけです。  これを見ていただいてもわかりますように、五ピコと十ピコで、環境庁と厚生省がばらばら。それで、ピコグラムという数値の単位すらわかりにくいわけです。これは実は一グラムの一兆分の一なんですけれども、要は一体どんなものか僕らの感覚ではわからない。そうすると、安全基準がはっきりないと、大臣言われたとおり、例えば〇・〇一だから安全だとか〇・五だから安全だとか三だから危ないとか言われても、実感としては、ピコグラムという数値自体が国民にはないわけですから、ゼロなら正直言ってみんな安心だと思いますが、それが〇・一であっても二ピコでも不安さは変わらないわけです。そういった意味での安全基準の設定が早く要る。  私ども民主党の法案もすべてこれが一〇〇%というわけではないし、公明党さんからも大変いい法案が出ているわけで、この表を見ていただいても、現在の対策では、まず数値が不統一である、それから環境基準がないですから、一体どこなら安全だということが国民に伝わらない、それから数字がややこしい、それから排出基準も不十分だ、食品に対する基準も全くなくて、ましてや土壌についての法律も全然ないわけです。つまり、国民の不安がそういった点でピークに達していると思っておりまして、こういった面の食品の安全基準等をつくられることに対して、中川大臣はどのようにお考えでしょうか。
  264. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私も、ピコという単位が一兆分の一というのがなかなかぴんとこなくて、百メートル掛ける百メートル掛ける百メートルの水槽の中に一グラムのものを垂らしたのが一ピコだというふうに頭の中で今整理をしておるところでありますが、我々も、特に農林水産という食料について、安全性について責任があるわけでございまして、もちろんダイオキシンについて数値が少なければ少ないほどいいわけでありますけれども、食品ごとにどこまでが安全かということを調べることは技術的にも不可能でありますし、多分余り意味のないことではないかというふうに考えます。  農林省は、十一年度から三年間、毎年できるだけ多くの地域で農作物関係のダイオキシンの調査をやることにしておりますし、緊急で現在三省庁で所沢を中心にやっておる最中でありますけれども、その時点でどこどこ地方の何々という農作物のダイオキシン濃度が何ピコだったということと、自分がそのものを食べるときにはまた数字が変わっている可能性もあります。  それから、所沢では誤報によってホウレンソウが大変な被害を受けたわけでありますけれども、あのときでも、ホウレンソウを一日七束ずつ何十年食べないと安全基準を超えないというような数字を厚生省の方から我々は入手していたわけでございまして、何十年間ホウレンソウだけ食べる人というのは多分恐らくいないと思います。  そういう意味で、御飯あるいはいろんな農作物をそれぞれの好みによって食べるわけでございますので、毎年できるだけ綿密な、特定の地域のいつ時点でのどういう農作物についてはこのぐらいの数字でしたと、これが高ければ大変だということになりますし、低ければ低いということがいいとは思いますけれども、それをどういうふうにしていくかということについては余り意味がない。個別に少ないということが確認できればいいわけであります。  それよりも、先ほど厚生大臣環境庁長官が答弁されたように、耐容一日摂取量、いわゆるTDIの基準を早急につくっていただくことが国民的な安心の前提になると私は考えております。
  265. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 私も、食品一つ一つに安全基準をやって、魔女狩りのようにこれがだめだ、これがだめだというふうに言っていくのはいいとは思わないし、現実的に可能だとも思っていません。  しかし、何らかの形でこれは安全だというような基準が要るわけでして、TDIを設定しただけではなくて、その次の段階に至らないことには、さらに安全性の確保というか国民に対する安心感を与えられないというふうに思っておりまして、そこら辺で、大気、水質、土壌についての環境基準、例えば環境庁と厚生省さんが今回関係閣僚会議でTDIを定めた後、そこから落ちていく大気、水質、土壌に対する環境基準等の設置については、環境庁長官厚生大臣はどのようにお考えですか。
  266. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ダイオキシンにつきましては大体食品から摂取されることが非常に多いわけで、九割方食品から入ってまいりますので、あとは大気中からも若干入りますが、ほとんど食品からでございます。私どもは食品衛生の立場から、国民栄養調査というのがございまして、一日当たりトータルダイエットの量を調査いたしまして、十四のグルーピングをいたしまして、野菜とか魚とか肉とか米、ずっと十四品目に分けまして、それぞれについて、一品一品の食品はもう大変なことになりますから、今、委員のおっしゃったようにできませんが、グルーピングしたものについての、しかも加工して食べることが多いですから、そういう状況調査いたしまして、そしてそのテーブルをつくって、これは既に平成九年につくりまして発表しております。  それによりますと、詳細は省かせていただきますが、全体として食品の摂取量は二千十七グラムでございます。そして、それをそれぞれの品目別にダイオキシン及びコプラナーPCBも含めましていろいろ調査をするわけですが、今のところ私どもとしては二・四一という数値がございます。したがって、二・四一というのは、今度WHOが指摘されました四以下になっておりますので、例えば所沢の野菜の問題にしても、これを煮沸して私どもが摂取した場合に〇・〇幾つの話になるわけです。したがって、全体として二・四一が若干二・四三になるとか四二になるとかいうレベルの話でございますから、私どもとしては当初から大体安全性には問題ないんじゃないかなというように考えておりました。  なお、この問題のこういうやり方についても、今後さらに調査の種類をふやしたり、そしてより精密なものにしていく検討は必要かと思いますが、そういうアプローチをさせていただいております。ダイオキシンは食品から入るという点が非常に多いということを申し上げさせていただきました。
  267. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) コプラナーPCBの問題も含めてでございましょうか。  この問題につきましては、WHOとかアメリカ関係では数値のとり方が違ってまいっておると思うところであります。日本は一以下のものはゼロというような換算をしておるわけでありますから、そういう点ではこのコプラナーPCBをどういうふうに扱っていったらいいのか、それも今検討中でございますけれども、コプラナーPCBもPCBの一種でありますから、ダイオキシン類と類似した毒性を持つ化学物質であるというふうに位置づけて、これからの専門家会議で検討を急いでいただいておるところであります。
  268. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 とにかくこの件に関しては一刻も早く対策を講じていただきたいと思いますし、TDIの見直しだけに限らず、環境基準等の問題も含めて実は環境庁長官にそのお答えをいただいていなかったんですが、コプラナーPCBの話をまだ質問していなかったんですけれども前向きに御検討いただくということで、環境基準について今どう考えているか、お答えください。
  269. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 先ほど先生にPCBの件でございませんでしょうかという再質問をさせていただいたわけでありますけれども、これはもう厚生大臣が大方のことをお答えになりましたのでいかがなものかと思って答弁をおくらせていただいたわけであります。  環境基準の設定については、新しいTDIが設定できれば当然それをもとにして検討すべきものと考えております。環境基準の設定のためには、このTDIに加えて先ほど先生おっしゃいました大気、水及び土壌のそれぞれの媒体からダイオキシン類が人の体内に至る経路、それから生物濃縮度の科学的知見が必要ですが、これはまだ十分ではありません。このために、環境中でのダイオキシン類の実態を把握すべく、現在全国で四百カ所の大気、水質、土壌、底質、水生生物等について調査を進めておるところであります。  今後、引き続きまして科学的知見の集積に努めて、所要のデータがそろってから順次環境基準の設定について検討を進めてまいろう、こう思っておるところであります。
  270. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ぜひ早急によろしくお願い申し上げます。  さらに環境庁長官にお尋ねをします。  環境庁長官は御就任以来、環境保全が課題とされている地域を精力的に御視察をされておられますし、私もこの間申し上げましたがアルゼンチンのCOP4で御一緒させていただきましたし、昨年の十月には長官が名古屋の藤前干潟を視察しまして、十二月に、すばらしい干潟であり消滅や破壊には特別厳しく対応したいと保全の姿勢を明確にされまして、それを受けて今月十日、名古屋市は免許申請を取り下げ、干潟は守られることになりました。大変な環境庁長官の御勇断だと思いますが、そのことについての御感想をお願いします。
  271. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 環境庁がどうのこうのというわけではございませんでしたが、たまたま藤前干潟の消滅を考え、そしてまたその地が名古屋市のごみの捨て場になるというふうなことを目の当たりに見まして、ごみの捨て場だったらまだほかにあるんじゃないだろうかということで、干潟は一たん消滅するとなかなかもとに戻るのは不可能であると。代償措置として人工干潟も検討されておりましたけれども、専門家の意見を聞きましても、干潟が消滅するとなかなか人工干潟では代償措置としての役目は果たしませんよというお話であったわけであります。そういうところに焦点を当てながら、地元の御協力をちょうだいしまして、あのような結果が生まれたわけであります。  まして、環境行政が今大変問われておるところでありまして、特に愛知県におきましては、瀬戸市におきまして二〇〇五年には環境博覧会が、万博が開催されることになっておりまして、あれやこれやのことに思いをいたしながら、環境庁としての意見を、アセスメント前でございましたけれども、出させていただいたわけであります。愛知県や名古屋市の御協力をいただきまして干潟が残されたということは御同慶にたえないと思っておるわけであります。こういうことにつきまして国民的な御理解がいただければありがたいと思っておるところでございます。
  272. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 さらに今月十五日、長官は、藤前同様貴重な干潟が残る千葉県の三番瀬を視察されたと伺っております。さらには、和歌山県で雑賀崎という場所の沖合を埋め立て、新しい港を建設する計画があります。  長官は今月二十日にこの和歌山の雑賀崎沖も視察をされたようですが、視察の感想をお聞かせください。
  273. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 私は、かねてから百聞は一見にしかずということで、やはり持論は、その現地の視察によって裏づけされなければならないという哲学を持っておるわけであります。  その面に沿いまして、三番瀬の干潟が今問題になっておるということで、先般も千葉県の手賀沼の視察をさせていただいたわけでありますけれども、そこで沼田知事さんとお目にかかりまして、干潟の重要性について議論を深めたわけであります。  三番瀬の問題につきましても、もはや私の前任者の間で随分話も進められておったようでございますけれども、何はともあれ現場を見せていただきたいということで三番瀬や雑賀崎のところを見せていただいたわけでありますけれども、見た感じでは、やはり美しい環境というものはできるだけ保全していかなければならないという気持ちでいっぱいでございました。  しかしながら、千葉県におきましても、大変いろんな問題に関心を寄せていただきまして、環境庁の意にも沿うような努力をしていただいておるわけでありまして、十分話し合いの上にこの問題の処理に当たっていこうと思っておるところであります。  雑賀崎地区の灯台や庭園からもあの周囲を見させていただきましたけれども、瀬戸内海の国立公園にふさわしい景勝の地であるという認識を新たにいたしまして、従来から進めておりますこの埋立地の問題につきまして環境庁の意見を申しておりますけれども、なお一層の御協力をいただきたいと思っておるところであります。
  274. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 ありがとうございます。  では、最後にあと二、三問させていただいて終わりにしたいと思います。  このたび、輸銀とOECFが統合され、新たに国際協力銀行が設置されようとしています。これが実現をすると、出融資承認額で約三兆円という巨大な公的金融機関が誕生します。これは、日本がODAも含めて各国に対して資金援助をすることに対して大変国益上重要な機関になるというふうに私は思っておりまして、この存在はこれから先本当に重要だと思っておるんですが、外務大臣に当たり前のようなことをお伺いして恐縮ですが、ODAの基本原則についてお聞かせいただければと思います。
  275. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 政府は、援助に対する内外の理解を深め、幅広い支持を得るため、平成四年、我が国の援助の基本理念、原則等を示す政府開発援助大綱、ODA大綱を閣議決定いたしました。  ODA大綱は、援助の基本理念として、人道的配慮、国際社会の相互依存性の認識、環境の保全、自助努力の支援を示しております。また、その原則において、国際連合憲章の諸原則、環境と開発の両立、国際社会の平和と安定、民主主義、市場経済化、基本的人権の保障等を挙げ、二国間関係等とともに総合的に判断の上、援助を行っていくべきとしております。  政府としては、このようなODA大綱にのっとり、援助を一層効率的、効果的に行ってまいります。
  276. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 この原則は、基本的にOECFを中心に今まで業務としてやられてこられたわけですが、今回、輸銀と合併をすることになります。輸銀の中ではこういった原則はあるんでしょうか。大蔵大臣になるんでしょうか。経企庁長官ですか。よろしくお願いします。
  277. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) このたび、輸銀と経済協力基金が合併になりまして国際協力銀行になります。現在、経済協力基金の方では一定の環境基準を持っております。輸銀の方は、内規ではあるようでございますが、その点まだ明確に外部に発表したことにはなっておりません。  したがいまして、両方が合わさりましたならば共通のガイドラインを作成していきたい、そういうぐあいに考えております。これは、一方はODAで一方は民間の貿易関係ということで、考え方は同じでございますが扱いが少し変わっておりますので、今度合併したときに合わせたいというふうに思っております。
  278. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 もう御答弁いただいたのでありがたい話なんですが、OECFは環境配慮のためのOECFガイドラインというのをしっかりつくられておられまして、私としては、輸銀が合併をするに当たりまして、別々にガイドラインを持っているのはいかにも合併をしておかしいので、ぜひ統一のガイドラインをおくつりいただきたいということをお願いしようと思ったら、今もう長官お答えをいただいたので、それは前向きに検討されるということでよろしいわけですね。
  279. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 問題は輸銀の方にあるわけでございますから、なるべく一緒にやるように、片方は信用機関ですし片方は開発援助機関ですから、それは違うところはあるでしょうけれども、一緒のところはなるべく一緒にやるように輸銀の方にも申してございます。
  280. 福山哲郎

    ○福山哲郎君 大変前向きな御答弁をいただいてありがとうございます。  特に、環境と開発という先ほど外務大臣が言われたところに関しては、九七年六月のデンバー・サミットでの共同宣言というのがございまして、先進国からの民間資金の流れは、世界全体の持続的な開発に対して重要な影響を有する。各国政府は、インフラ及び設備投資に対する金融支援の際、環境要因を考慮することによって持続可能な慣行の促進を助長しなければならないというふうにデンバー・サミットでうたわれております。  これについて、日本としては、環境ガイドラインを今回の合併を中心につくっていただくことによって、新しい国際協力銀行の開発理念、それからODAとしての日本の海外への国益も含めて前向きに御検討いただきたいというふうに思っています。  時間が余ってしまいました。大変長時間にわたって質問をさせていただきましたけれども、これで終わらせていただきます。  どうも長い間ありがとうございました。
  281. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で福山哲郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  282. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、三浦一水君の質疑を行います。三浦一水君。
  283. 三浦一水

    三浦一水君 通告をしておりました総理初め関係大臣にはお待たせをいたしました。自由民主党三浦でございます。  午前中の若林先生の質問を引き継ぐような形になるわけでございますが、農業問題を中心にお伺いをしたいと思います。  若林先生の話にもありましたが、我が国の自給率は戦後一貫して低下をしている、そういった状況でございます。そういう中で世界の食糧需給は長期的には大変逼迫するものではないか、ガルブレイスさんの予測にもありますように、そういう見込みもあるわけでございます。  そういう中で、昨年九月の食料と農業とそして農村に関する基本問題調査会において、食糧を安定的に供給するため、国内農業を基本に位置づけをされたというこの事実におきましては、非常に今後の我が国の食糧安全保障そして農政の展開を図っていく中で大事な柱であると私は考えております。  新たな農業基本法を制定するに当たりましては、当然、国内農業生産を基本として位置づけをしていくべきだと考えておるわけでございますが、総理の御見解をこの点についてまずお願い申し上げたいと思います。
  284. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 国民の必要とする食糧を安定的に供給するとともに、不測の事態における食糧安全保障を確保することは国の基本的責務である、このことを強く認識いたしております。  このため、新しい基本法におきましては、国内農業生産を食糧供給の基本に位置づけまして、生産性の向上を図りつつ、消費者ニーズに応じた国内生産の増大を図るという考え方で新たな我が国の農政を構築していく必要があると考えております。  先ほど若林先生から昭和三十六年の農業基本法制定のお話がございましたが、私はその直後に衆議院に議席をいただきまして、当時、新しい基本法のもとで日本の農業をどうするかと。たまたま私の選挙区もそうした地域でございますが、その基本法のもとで日本農業が非常に進展してきたことは言うまでもないことだろうと思います。しかし、今この時点に立って新しい基本法を制定して、将来にわたっての食糧自給の問題も含めまして対応していくということは非常に重要なことでありますので、真剣に取り組んでいきたいと思っております。  詳細につきましては、農林大臣から御答弁あろうかと思います。
  285. 三浦一水

    三浦一水君 自給率をこの基本法の中に設定するかという議論につきましては、午前中、大臣からの所見もお伺いいたしました。そういう中ではございますけれども、基本計画の中で位置づけをしていきたいというお話がございました。  基本計画とはそもそもどのような効能を持つものなのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  286. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行農業基本法を抜本的に変えて新しい基本法をつくるわけでございますが、これは一年半にわたる総理大臣のもとでの調査会の答申を踏まえた大綱あるいはプログラムと基本法とが、ある意味では三位一体のような形でこれからの農政の基本になるわけであります。  また、その基本法というのは、あくまでも理念法といいましょうか、文字どおり基本法でございまして、それを実態でやっていく上で法律の改正等々がまた別に必要なわけであります。そういう中で、その基本法に文字どおり基本的な、理念的なものをうたうわけでございますけれども、それを実際に実現していくためのアクションプログラムといいましょうか、もっと現実的なもの。  ですから、午前中、若林先生にも御答弁申し上げましたが、例えば自給率を何年後にどのぐらいに、この品目とこの品目とこの品目等々を積み上げていって何%にしたいというものはちょっと法律には書きにくい。しかし、総理からも、その趣旨等をにじませたようなことを配慮したいという御答弁もございました。その基本法の理念に基づいて基本計画をつくるわけでございまして、実施計画のようなものであります。  一方、今度の基本法の中には見直し規定というものもあるわけでございまして、五年に一遍程度で政策を再評価して実態部分を現実に合わせる、あるいはまた、次の目標に向かっての一つの再評価をするというような手法も取り入れているわけでございまして、その再評価の対象になるのが具体的には基本計画ということになるわけでございます。  基本法とそれに基づく関連法案、そしてそれと一体となっております大綱、改革プログラムというものの土台の上にある具体的な実施計画というふうに御理解をいただきたいと思います。
  287. 三浦一水

    三浦一水君 大臣も十分御認識の中かと思いますが、やはり私は若林先生と同じように、自給率をきちっと念頭に置きながら国の政策を進めること、このことが、農業者に対しましても、あるいは消費者たる国民に対しましても最も安心感を与えるべき方法であると考えております。それを担保していただくがために、このような重ねての質問をしていることも御了解を賜りたいと思います。  中山間地域の問題に移りたいと思いますけれども、御存じのように、中山間地域は単なる農業生産だけではなくして、非常に多面的な機能を果たしていると一般的に言われるわけであります。河川の上流にあるということからも、あるいはまた傾斜地を利用した営農が行われている、水源の涵養でありますとかあるいは土砂の崩壊防止でありますとか、大変な公共的とも言える役割を私は果たしていると考えております。そこで、中山間地域とそしてまた中山間地域に住み、農業、林業にいそしむ方々、私は、これらの方はいわゆる環境の番人と言っても差し支えがないくらいの大事な役割を果たされているのではないかと考えております。一方で、その地域はと申しますと、大変御存じのとおりの高齢化が進んでいるわけでございまして、その後継者を確保していくことすら非常に経営基盤が脆弱な中で厳しい状況に直面をいたしております。  そういうこの中山間地の大事な機能をどう維持していくか、あるいは発揮していくか、国としても抜き差しならぬ重要な問題ではないかと考えております。この点、農林水産大臣の所見を承りたいと思います。
  288. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 中山間地域は農地の約四割を占める、こう言われておりますが、言うまでもなく、日本のこの細長い、三千メートル級から一挙に海抜ゼロメートルまで急峻な地形の中で、しかも雨が多いとか台風がやってくるというような地域でありますから、きちっとその中山間地域を保全することが、農業生産活動だけではなくてまさに国土保全あるいはまた景観、いろんな意味での、先生のお言葉をおかりするならば、番人としての先導的な役割を果たしている極めてこれはもう日本全体にとって重要な地域だというふうに我々も認識をしております。  したがいまして、この今回の中山間地域対策というものも、平成十一年度においてもいろいろな予算等を今御審議をお願いしているところでございますし、また新しい基本法あるいはまた新しい政策の中でも、中山間地域の位置づけと、それからそれに対してどういう機能をどのように評価をしていくかということについても、じっくりと、しかし極めて的確にやっていかないと、ほうっておけば荒れていく、耕作放棄地あるいは山が荒れる、それによって困るのは、川下に住む人々が直接の被害を大変受けるわけでございます。  したがいまして、来年度の概算要求の時点までに国民の合意が得られるような形で、中山間地域の農業、そしてそこに住む人々に対してどういう施策を講じていくことができるかということを今鋭意検討を始めているところでございます。
  289. 三浦一水

    三浦一水君 大臣は言葉にしてはおっしゃいませんでしたが、手順を踏みたいということをおっしゃったわけでありますが、今直接支払いという方式が盛んに議論をされております。私は、これはこの公益的な機能を積極的に評価する中で抜くことができない我が国の中で持つべき一つの政策であろうと考えている点も付言をしておきたいと思いますし、大臣、その点についてまたお考えがありましたら、お話をいただきたいと思います。  当然私は、今の議論の中では生産費の差額といったようなことがいろいろ議論をされているようでございます。しかしながら、それは果たしてそれで足りるのかなという思いも持っていることも述べておきたいと思っております。それと、水田だけでは私は対象として足りないと考えております。草地でありますとか飼料田あるいは畑といったものも当然その対象にすべきだと考えております。その点踏まえまして、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  290. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先ほどあえて抽象的な答弁をいたしましたが、先生おっしゃるとおり、中山間地域を守るための最大のポイントは、直接所得補償のやり方をどういうふうに導入していくかということだろうと思います。  中山間地域だけではなくて、いわゆる条件不利地域ということで、よく我々は中山間地域等条件不利地域という言葉や文章にするわけでありますけれども、その対象地域あるいは対象行為、対象者あるいは支払方法をどうするかということが、実はヨーロッパ等ではもうやっておるわけでありますけれども、我が国では歴史始まって以来のことでございますし、また国民的な御理解をいただかなければいけないということもあります。  その辺につきましてどのようにしていったらいいのかということは、先ほど申し上げましたように、来年度から実施できるように来年度の概算要求時点までに結論を出したいと思っておりますけれども、当然、先生がおっしゃられたような水田だけではないいろいろな農地、あるいはまたいろいろな耕種あるいは場所をどういうふうにするかといったことについて、我々はできるだけ前向きにこの結論がいただけるように今議論を見守り、またいろんな場での御議論を注意深く見守りながら結論を出していきたいと考えております。
  291. 三浦一水

    三浦一水君 中山間地の農業を考えますときに、片方で忘れることができないのは林業が果たしている役目でもございます。今回創設すべく取り組みがされておりますのは農業基本法であって、林業基本法ではないということではございますが、いわゆる食糧、農業、農村であります。その地域を考える場合には、林業の問題を切り離して考えられないと思っております。先行きにおきましては、十分ここも範囲に入れながら御検討を賜っていきたいと思いますので、これは要請をしておきたいと思います。  次に、UR、ウルグアイ・ラウンドの次期交渉について幾つかお尋ねをしたいと思います。  ウルグアイ・ラウンドにおきまして、我が国が米について適用することとした関税化の特例措置につきましては、私はそもそもミニマムアクセスの数量が一般の関税化品目に比べまして非常に加重されている、重たいという認識を持っております。    〔委員長退席、理事竹山裕君着席〕  百三十四カ国の加盟国の中で、我が国の米のように八%とその期間内のペナルティーとも申すべきものが科せられているのは、イスラエルと我が国だけであるというのはよく御了解のところでございまして、これをもっていいますと、結果としてはこれは一つの制裁的な措置ではないか、特例と言えるのかな、そのような思いを持ち続けてまいりました。  このように、この選択そのものは我が国がみずから行った結果とはいいながら、実際この六年間、期間を経過してくる中で、まさに私は不公平とも言える国際的な取り決めではないか、我が国として主張できるところはないのか、そのような思いが強いわけでございます。  現在の米の関税化の特例措置について、総理はどのようにお考えを整理され、受けとめをなさっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  292. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ウルグアイ・ラウンドの農業交渉におきまして、すべての農産物を関税化するという包括的関税化を基本的考え方として調整が進められたわけでございます。我が国ではこれに対する強い拒否感があったことから、交渉の最終段階におきまして提示されたこの関税化の特例措置をぎりぎりの決断として受け入れたものであります。  ただ、この特例措置を適用したことによりまして、毎年のミニマムアクセス数量の増大が、関税化した場合に比べて二倍に加重されていることなどから、我が国にとって大きな負担となってきておると認識をいたしております。  三浦委員、今いろいろ我が国の立場を御指摘され、URにおきましてそうした形で我が国としてはお約束をせざるを得なかったと言ってはなんですが、協力をしてきたことにかんがみまして、最終的には、昨日申し上げましたが、ぜひ生産者の立場消費者の立場も十分理解し、かつまた全体的な国益を背景にいたしましてこの交渉等につきましては臨んでいかなければならないのではないか、このように考えております。
  293. 三浦一水

    三浦一水君 私は、次期交渉に向けましては、このミニマムアクセスの数量をできればもちろんゼロにしたいという思いはあります。しかし、少なくとも参加加盟国並みの通常ルールに戻していくという点では、我が国は憶するところは一点もないと考えております。それでこそ私は国際的な貿易ルール、我々も胸を張って加盟できるルールではないかという思いを持っております。  改めて総理に、この点を踏まえながら、次期交渉に臨む決意を承りたいと思います。
  294. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 結論的な決意は今、総理からお話がありましたので、もう少し具体的な話をさせていただきたいと思います。  次期交渉に当たって少しでも有利に運ぶために何をなすべきかということを国民的合意形成のもとで、また諸外国の理解を少しでも多くの国々に得るために、今まさに議論をしていかなければならない大事な時期だと思っております。  日本といたしましては、先生のお気持ちも私自身十分理解のできるところでありまして、関税化にあえて踏み切ったことも、次期交渉に向かって少しでも有利なポジションをとりたいということも実はあるわけでございます。  それから、次期交渉に当たって、正直申し上げて、現行のWTO農業協定が一部の輸出国に有利であって多数の輸入国にとっては不利な協定であるというふうに言わざるを得ません。例えば輸入国に対するミニマムアクセスのような義務はありますけれども、輸出に対する制限とか輸出課徴金の問題とか、そういうものについての禁止条項はないわけでございます。  何といっても貿易というのは、お互いに自由にやろうということで、合意あっての貿易だと、それを推し進めようということでありますから、少なくとも対等の立場でお互いに売りたいものを、また買いたいものを合意でもってやっていくというのが自由化の推進の基本だと私は思っております。  それから、先ほどの日本の中山間地域のような国土条件あるいは歴史、文化条件等々もそれぞれの国にあるし、また日本日本の特別のそういう条件もあるわけでございます。そういったものを総合的に、生産者あるいは国会等の場だけではなくて、今回は何といっても消費者の皆さんの強い支持と理解があって、国論が共通認識のもとで我が国の食糧の安定的な供給、これは国内生産が基本でありますけれども、備蓄あるいは一部は輸入ということになりますが、そういう目的のために消費者の皆さん、あるいは各界の皆さんも含めて、世界の百三十数カ国の次期交渉の場で我が国の立場を強く強く理解していただき、そして主張していくように今いろいろと作業を進めていただいているところでございます。  ミニマムアクセスなるものをゼロにするのか、何パーセントにするのかとか、あるいは二次税率をどうするのかとか、そういう具体的な作業については、ことし前半までをめどにいたしましてそれぞれの場でいろいろな御議論をいただき、国論をつくり上げていって外に打って出る今準備の段階でございますので、三浦先生にも引き続き御指導をよろしくお願いいたします。
  295. 三浦一水

    三浦一水君 国民の代表としての議員の立場としても精いっぱいの努力をする決意を申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。  経済企画庁長官に一点お尋ねを申し上げたいと思います。  経済の空洞化という言葉は最近余り使われなくなったような気がいたしております。円高をきっかけに我が国の企業が海外進出をどんどん果たしたという結果の空洞化であったわけでございます。しかし、これは死語ではないなとつくづく考えますし、むしろ周辺の企業、関連の企業においては今なお国外進出が果たされ、しかも大企業においては円高の状況その他の経済を見通しながら非常にフレキシブルに押したり引いたりできるところがあるのではないかという感じがしています。  しかし、いわゆる国内の中小企業が切られて、あるいはうまくいって一緒に進出をしたにしても、一たん海外に出ていった周辺企業、これについては国内に帰ってくる様子はないような感じがするわけであります。  今、経済不況につきましては、金融の問題が主であります。しかし、私は、この国が貿易を中心とし、そして生産を中心としながら立国を図ってきているという基本に立ち返って考えるならば、見落とすことができない。特に現在、地方の零細企業におきましても、撤収をする、あるいは一遍に切られてしまう下請工場が非常に多いわけでございまして、この辺企画庁長官としてどう現在の不況と絡めて御認識をお持ちか、お尋ねを申し上げたいと思います。
  296. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘でございますが、経済の空洞化という言葉は余り言わないです。産業の空洞化という方が非常に言われたわけでございます。  産業の空洞化というのは、円高の時期に非常に海外生産が有利である、日本の諸経費、特に人件費が高いから海外に進出した方が有利だ、市場もアジア市場、アメリカ市場が大いに成長するということで、日本企業の発展の一形態として大いに進められたことがございます。  現在のところは、日本の為替相場が一応落ちついたりしておりますので、それほど急激な変化はございませんが、基本的にはグローバル化が進みますと、やはり企業が国を選ぶ、どこへ立地すれば一番有利か、企業が国を選ぶというような時代になってまいりました。その点で日本は労働コストその他は高いのでございますけれども、委員御指摘のように、分厚い中小企業の下請網といいますか、そういう技術網ができておりますので、これが有利な下支えになってきたということが言えると思います。  ここへ参りましてアジア諸国の経済状況も非常に厳しくなってまいりました。アジアの方に進出しておりました大企業もそうですし、またそれについていった、あるいは単独で行った中小企業も非常に苦境に立っているというようなことがございます。  これからの日本を考えますと、委員御指摘のとおり、やはり加工貿易国でございますから、日本といたしまして、こういった製造業の競争力、そしてどのような分野を伸ばしていくか、今まではあらゆるものをワンセットで、フルセットで持っていなければいけないというようなことでございましたけれども、これからはなるべく得意分野をどんどん伸ばす、そして金融やサービスの面での得意分野とあわせて、製造業の中でも付加価値の高い、技術性の高いものを伸ばしていかねばならないと思います。    〔理事竹山裕君退席、委員長着席〕  経済学者がアメリカについて調べますと、資本集約的なものではなくして、極めて知識集約的なものが急成長していることがわかっております。日本製造業、サービス業、金融業を問わず、そういった資本集約的なものよりも、むしろ知識集約的な産業を伸ばしていく、そういったことが委員御指摘の国土の分散とも絡めて、どんな政策によってどうできるか、あらゆる面から検討していかねばならぬ問題だと思っております。
  297. 三浦一水

    三浦一水君 長官のお話はよくわかったところでございますけれども、これは企画庁じゃなくて通産省なりあるいは中小企業庁にお尋ねをすべきところかと思いますけれども、現実に地方におきまして、撤退されるよりは、我々の給料を下げてでも、あるいは時短をしてでも企業に残ってもらいたいという現状が続いているということはぜひ御認識を賜って、今後の政策運営に反映をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  298. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で三浦一水君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  299. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、加藤修一君の質疑を行います。加藤修一君。
  300. 加藤修一

    加藤修一君 公明党の加藤修一でございます。  まず、私は最初にダイオキシン汚染問題について質疑をいたしたいと思います。  先ほど来も同僚から質問がございましたけれども、いろいろ官庁の出されている資料を検討してまいりますと、どうもわからないことが非常に多いわけでありますけれども、そもそも日本のダイオキシンの排出量、これは一年間にどのぐらいなんでしょうか。これは環境庁にお願いしたいわけです。
  301. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ダイオキシンの発生原因と申しましたら、やはり燃焼過程とか漂白過程とか農薬製造過程とかいうところから発生すると言われておるわけでありますが、日本のダイオキシン発生の原因はほとんどが燃焼過程、いわゆる廃棄物の処理場から発生したものではないかと思われておるところであります。  そこで、換算の仕方も非常に難しゅうございます。大なる焼却炉、そしてまた小なる一般家庭の焼却炉等々からもいろいろと発生されるものと思っておるところでありますけれども、それを大方換算してみますると次のような状態になります。  平成九年五月に取りまとめたダイオキシン排出抑制対策検討会の報告では、我が国におけるダイオキシン類の年間の総排出量は、毒性等量換算で約五千百から五千三百グラムと推定されております。その内訳としましては、一般廃棄物焼却炉から約四千三百グラム、産業廃棄物焼却炉からは約五百から七百グラムと推定されており、その他金属精錬等の発生源からの排出量の推定を行っておるところでございます。  その後、ダイオキシン類の排出量については、厚生省から、昨年十二月までに達成すべき基準値八十ナノグラムを超過していたごみ焼却施設からの排出量が十分の一以下に減少していることが報告されております。また、通商産業省から、現在規制対象となっていない産業系の発生源からのダイオキシン類の年間排出量が報告されております。さらに、環境庁においては、現在未規制の小型廃棄物焼却炉など、いまだ排出実態が不明な施設についての排出実態調査を行っておるところであります。  これらの調査結果を踏まえて、環境庁では、現在ダイオキシン排出抑制対策検討会において、ダイオキシン類の年間総排出量の推計について見直しを行っておるところでございます。これらの推計結果については、推計方法も含めて公開してまいるつもりでございます。
  302. 加藤修一

    加藤修一君 今、大臣から五千百から五千三百ぐらいの間であるという話でございましたけれども、検討会の資料によりますと、産業関連のものについては、例えば産業廃棄物焼却によっては五百から七百というふうな話になっていますけれども、これは実はある大学の先生の推計値ですよね。これは一九九〇年なんですよ。九〇年のものをあちこちで私、見かけるんですけれども、最近までこれはやっていないということですか、この関係は。どうでしょうか。
  303. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 先生のおっしゃる数値は、一九九〇年の数値をもとにしながら平成九年五月に考えてきたものでございますが、それについて新しく、先ほど大臣が申しましたとおり、インベントリーを見直す形で今ダイオキシン排出抑制対策検討会の中で検討を続けているということでございまして、近々新しいものが出せるというふうに思っております。
  304. 加藤修一

    加藤修一君 そうしますと、ようやくこれから始まるという話になるわけですか。そういう理解をせざるを得ないんですけれども、どうですか。
  305. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 今まで、そういう意味では先生のおっしゃるとおりでございまして、具体的な数値を、具体的にどのように評価するかということでその数値を持っていなかったということで時間がかかっていたということになりますが、具体的に申し上げますと、今までの持っていた数値、一般廃棄物焼却炉それから産業廃棄物焼却炉、金属精錬、そのほかに新しく石油添加剤やたばこの煙などの燃焼系発生源についての八種類、それから漂白工程としてさらしクラフトパルプ、農薬製造としてのPCNB、ペンタクロロニトロベンゼン、殺菌剤の計十種類の発生源についての推計を現在行っているわけでございます。  そういう意味で、先生のおっしゃるように、新しいデータが関係省庁からも出始めているということをもとにして専門の先生方に検討いただいているということで、早いうちに出してまいりたいというふうに思っております。
  306. 加藤修一

    加藤修一君 先ほどの大臣の答弁の内容についてですけれども、五千百から五千三百ということですけれども、ある専門家あるいは学者に言わせますと、この数倍が出ているということが言われておりますけれども、これについてはどういう見解をお持ちですか。
  307. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 具体的に今、数値の問題については調査をしているという段階で、五倍であるかどうかということについて言及することは難しいというふうに思っております。
  308. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁の先ほどの検討会の報告書でございますけれども、私、非常に基本的な話を聞きますが、これには排出量が書いてあります。もう一方、発生量が書いてございますけれども、これはどう違いますか。発生量と排出量、どう違いますか。
  309. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 発生量については、具体的に燃焼過程の中で計算できる数値でございまして、排出ということになりますと、具体的に大気のところに出てくる数値というふうに考えております。
  310. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、発生量はどのぐらいですか、日本の。
  311. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 具体的な数値として今持ち合わせてございませんが、排出をするときの計算の形のものはございますが、その辺についても、具体的に申しますと、全部が燃焼過程における、先ほど申したとおりすべての数値を全部計算してつくられているわけではございませんので、平成九年五月の数値というのはそれだけに、データが少ないだけに問題があるかというふうには思っております。
  312. 加藤修一

    加藤修一君 要するに、排出量はあるけれども発生量というのは押さえていないと私は思うんですけれども、どうですか。
  313. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) そのとおりでございます。  つまり、先ほど申したように、すべての燃焼関係についてのデータを全部押さえていなかったということから考えれば、先生のおっしゃるとおりでございます。
  314. 加藤修一

    加藤修一君 どうして押さえていなかったんですか。
  315. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 具体的にそれだけのデータをつくり上げるということが作業としてできなかったということでございます。
  316. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、視点を変えますけれども、一般廃棄物の焼却量と産廃ごみの焼却量はどのぐらいですか。
  317. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 廃棄物処理法を所管いたしておりますので申し上げます。  一般廃棄物、これは市町村が一般の生活者から分別収集した廃棄物の問題でございますが、これは先ほど環境庁長官が言われましたように年間約四千三百グラムでございます。しかし、実はその後規制をいたしまして、その結果に基づく調査を推計いたしましたところ、平成十年九月時点のデータでは三千百グラム以下となっております。したがって、法規制実施前の四分の三以下に削減しているという実情がございます。  なお、私どもがそのとき定めました基準によりまして平成十四年十二月以降は既存のものでも規制を強化いたしますので、その理由によりまして、年間排出量が約六百グラム、つまり法規制実施前の四千三百グラムの七分の一まで削減されるということでございます。  一方、産業廃棄物焼却施設につきましては、これは環境庁長官が今五百ないし七百グラムというように言われましたが、あくまでもある程度の推定が入っていると思います。私どもとしては、これは実は調査をいたしまして、平成九年十二月から排ガス中のダイオキシン濃度を年一回以上測定することを義務づけておりまして、これによって、その結果を都道府県を通じて今把握中でございます。正確なところは申し上げられませんが、産業廃棄物の性格からいたしまして一般廃棄物の排出量の大体約十分の一程度というように見られますから、四千三百の十分の一というように、私もお伺いしていて、五百ないし七百というのはその程度の数値で、おおむねその程度かなという印象を受けたわけでございます。
  318. 加藤修一

    加藤修一君 先ほど排出量の話をいたしましたけれども、排出量と発生量、発生量については捕捉していないと。これは両方非常に大切な話だと思うんです。政府はこれをやるべきだと思います。検討すべきだと思う、推計するべきだと思いますけれども、どうですか。
  319. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 先ほど答弁しましたとおり、新しくわかってきている発生源についての資料が出てきておりますので、逐次出てきたものからそれを加えてまいりたいというふうに思っております。それから、新たなダイオキシンの発生の部分についての知見が出てくれば直ちにそれについての調査も着手するという形で、逐次ふやしていくという考え方を持っております。  いずれにしても、先生のおっしゃられましたとおり、一九九〇年、それから一九九五年というものを踏まえて、新しくわかってきている知見をもとにしてインベントリーをつくり直して考えてまいるということでございます。  ですから、発生源というのを押さえながら排出というのを考えるという手法は今までのとおりでございまして、これからとっていくつもりでございます。
  320. 加藤修一

    加藤修一君 私の質問の意図を理解していないように私は思っていますけれども、要するに、排出量はいいんです。排出量は今までの排出量がありますから、それはそれで推計していただきたいんですけれども、発生量ですよ。発生源という意味じゃなくて発生量。発生量というのは、焼却炉の中にも入っているわけですね、ダイオキシンは。私はそういうことを含めて言っているわけですよ。  だから、発生量と排出量、両面にわたって推計するという考え方ですねと、そういう念を押しているんですけれども、よろしいですね。
  321. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 一番押さえやすい数値というのは、排出が一番押さえやすいところというふうに思っております。まずそちらから押さえていくということになります。  ただ、熱源のかかっている部分についての理論的な数値というのがあるかと思っています。ですから、どちらから押さえるかということについては専門家と合わせながら考えていく。ただ、先生のおっしゃるとおり、発生源というのを押さえておかないとまずいということはしっかり考えております。  ですから、先生のおっしゃる意味と合わせながら考えているということであると思っております。違ってはいないんではないかという感じを持っております。
  322. 加藤修一

    加藤修一君 ここで余りこういうことをやっていると時間がたっちゃうんですけれども、要するに焼却炉の中に入っているダイオキシンの量もはかるということですね。計測するということですね。
  323. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 先生のおっしゃる意味のところで一つ考えているのは、発生をしていく過程の中で、燃焼過程の中で一番最後に大気に出てくる部分は一番大事な部分として押さえなきゃいけないという考え方になります。それから、先生のおっしゃる、焼却灰とかそういう過程の中に出てくる部分をどう押さえてそれを計算するかということがもう一つあるというふうに考えております。ですから、焼却灰の適正な処理の仕方とかそういうことも含めれば、当然その過程を押さえておくということになるかと思います。そういうことで考えております。
  324. 加藤修一

    加藤修一君 さまざまな調査をやっているわけだと思うんですけれども、最終的なそのナノとかさまざまな数値が出てくるわけですけれども、途中の例えば十七異性体のそれぞれの数値、そういったものもきちっと開示できる体制にありますか。
  325. 廣瀬省

    政府委員(廣瀬省君) 先生のおっしゃるように、2・3・7・8TCDDの問題に換算されるということが出てきていれば、ほかの異性体についてもきちっとはかっていってそれを加算しなきゃいけません。ですから、具体的にお願いしていることは、今、環境庁で大臣が先ほど申したとおり約四百の地点をやっておりますが、そういう意味では、関連の部分についてはきちっと測定していただき、それを2・3・7・8TCDDに換算していただいて数値を出す。そのかわり、基本的な、要するにもとの数値というのはきちっと報告をしてもらって換算をするということになります。そういう考え方で仕事をしております。
  326. 加藤修一

    加藤修一君 厚生大臣にお願いしたいんですけれども、そういった面での同様な質問なんですけれども、食品を含めて、ほかのかかわっている調査のいわゆる途中のデータそれ自体は開示できるわけですね。
  327. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 委員が今おっしゃられました毒性の強いダイオキシン、二百十種類くらいから二十種類くらいございますが、その中で毒性の強いものとして十七種類を指摘されたと思います。  我が国の調査方法は、米国では十くらいは一括して調査しているようでございますが、我が国は個別にやっておりますから、その物質ごとに。それは、その調査のプロセスあるいは数値等は私は公表して差し支えないものではないかと今のところ思っております。そのように考えております。  なお、食品等の問題につきましては、これはまた別個の、大気中の例えば廃棄物処理場における排出の問題と若干趣を異にしておりますから、私どもとしては、食品衛生上それが人間の口からどの程度入るかということが問題でございまして、ダイオキシンの場合はもう八割、九割は食物からとられますから、私どもとしては、大気汚染とかそういうこととまた別個な観点から食品における健康に対する影響度を、TDIを算定するということで、これは食品栄養調査によりまして、中のバスケットをつくりましてどういうものを大体想定するか、それぞれのTDIを出しまして、ピコグラムを出して総合的に安全性を確認しておる。今のところは、平成九年にやったのは二・四一という数値でございますから、今度のWHOの出した四以内にはとどまっております。
  328. 加藤修一

    加藤修一君 今、大臣の最初の方の答弁の中に、アメリカは一括して計測する、測定するというような答弁がございましたけれども、どういう意味でしょうか。
  329. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは私どもはどうしてそういうことがわかったかといいますと、日本のダイオキシンのコストとアメリカのコストで比較いたしますと、日本は大体二、三十万要します。アメリカはその半分くらいでございますが、そういった材料のとり方等にかなり影響しているようにも思います。それからまた精度の、確度の問題等もあるようでございまして、詳細はまだはっきり私も了知しておりませんが、大体そんなことで、日本では一つ一つの毒性物質を念入りにするということもございますし、アメリカの方は十種類くらいは一つのトータルとして何か考えているようにお伺いしております。  なお、詳細御必要であれば事務当局から答弁させますが、よろしゅうございますか。
  330. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 我が国におきましては、今、大臣から答弁がございましたように、いわゆる毒性を有する十七種類すべてについてそれぞれに測定いたしておりますが、私どもが承知いたしておりますところでは、米国では、通例その十七種類のうちの十種類のものにつきましては、分離しないで合算値で測定をしているというふうに承知しております。
  331. 加藤修一

    加藤修一君 いや、それは違うんじゃないですか。EPA方式ですよ、EPA方式では十七種類にわたって出していますよ、それをEPA方式と言っていますよ。言っていることがわかりませんね、私は。異性体十七種類一つ一つについて全部出していますよ、EPAは。厚生省も出しているのを私は知っていますけれども、方式は。
  332. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 私どもの承知いたしておりますのは、米国では、通常五塩化物と六塩化物、計十種類について合算値として測定を求めて毒性等量を算出しているというふうに聞いておりますが、先生の御指摘もございますので、もう一度よく調べてみたいと思います。
  333. 加藤修一

    加藤修一君 そこはきちっとお互いやらないと、おかしな値が出てくる可能性がありますよ。本当ですよ、これは。大変な問題を含んでいるところですから、はかり方については。  それでは、厚生省、通産省、それから環境庁にお伺いしたいんです。  このダイオキシンの削減計画、これは非常に大切なわけですけれども、先ほども厚生大臣から多少答弁がございました。それぞれちょっと削減計画をお示ししていただきたいんですけれども。
  334. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 先ほど若干申し上げましたので、私の方からまず申し上げさせていただきます。  これは、私の方としては排出削減計画というような明示したものではございませんが、基準値を段階的に強化するということをいたしております。すなわち新設の基準につきましては、例えば四トン以上、これは一時間当たりでございますが、立方メートル当たり〇・一ナノグラムでございますが、そういう基準にしております。  実は、既設の基準のもの、既設の施設を直ちにこれによることは、それは現実の問題として不可能でございます。したがって、既設の基準につきましては、平成十年十一月までは基準の適用を猶予いたしました。しかし、もう既に十年十二月からは、十四年十一月まで立方メートル当たり八十ナノグラムという基準値にいたして、これに基づいて規制を強化しております。  なお、平成十四年十二月以降は、例えば先ほど申しましたように、新規のものよりも若干まだ緩和しておりますが、立方メートル当たり一ナノグラム、これは一時間当たり四トン以上、一日処理量は百トン以上というようにさらに強化したものを策定しておりますので、全体として見れば削減計画に基づくものと広い意味で言っていいのではないかと存じます。  公明党さんの出されている削減計画というのは、明示的にこれをやろうということで、私なりにそれは評価しておりますが、また参考にさせていただきたいと思っています。
  335. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 主要十九業種について行いました排出実態調査によれば、我が国において大気中に排出されるダイオキシン類の約一割が産業活動等によるものと推定をされております。  御指摘のダイオキシン類の排出量の削減計画といったものは存在をいたしませんけれども、これまで産業界はダイオキシン類の排出削減に積極的に取り組んでおりまして、製鋼用電気炉については大気汚染防止法に基づく対策を進めているほか、鉄鋼業焼結工程、亜鉛回収業及びアルミニウム合金製造業の三種類は自主的にガイドラインを策定し、可能な限り排出を削減することといたしております。これらの努力によって、平成十四年末までには産業活動から排出されるダイオキシン類を現在の水準から約三割削減できると見込まれております。  通産省といたしましては、引き続きこのような業界の努力を支援いたしたいと考えておりますし、またダイオキシン類の発生抑制に関する技術開発等の推進、ダイオキシン類の計測方法の標準化の推進など必要な対策を進めてまいりたいと考えております。
  336. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) ダイオキシン削減計画につきましては、今、公明党、民主党からダイオキシン対策の法案が提出されておるところでございまして、今国会におきまして、これらの法案を各党間で協力し合って立派な法案として作成したいものだと思っておるわけでありますけれども、とりあえず内閣といたしましては、ダイオキシン対策閣僚会議の場を通じて、幅広い観点から総合的な対策の確立及びその推進を図ってまいる所存であります。引き続きましての御協力方をよろしくお願いいたしたいと思う次第であります。
  337. 加藤修一

    加藤修一君 今、三大臣にお聞きしたんですけれども、基本的にはやはり削減計画がないという話だと思うんです。  それで、私は通産大臣にお伺いしたいんですけれども、将来的には削減ができるというふうな表現をされておりますけれども、何を根拠にしてそうおっしゃったんでしょうか。
  338. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) まず、この問題の難しさということは先生よく御承知だと思いますが、ダイオキシン類といいましても種類が二百種類以上もあると言われておりまして、それらについての科学的なしっかりした知識を持たなければならないと思うわけでございます。  また、ダイオキシン類というのは非意図的に発生するものでございまして、その発生過程が完全に解明されているかどうかといえば、まだまだ科学的な知見をふやしていかなければならない部分がございます。  また、発生過程を解明することによって発生を抑制する技術というものは必ず見つかると私は考えておりますし、例えば、既にわかっておりますのは、大変高い温度で物を焼却すれば発生が抑制できるということは一部でわかっているわけでございます。  また、ダイオキシン類を監視するための測定技術というものも、この委員会で議論されておりますように、一兆分の一グラムという単位の話をしておりまして、ナノグラム、ピコグラムという数字も我々の直観では全くわからない世界、そういう世界の話を実は議論しております。したがいまして、そういう世界をやはり科学的な手法によってさらに知見を深めるというのは大事なことでございます。  私が申し上げました電炉を初め各業界では、ダイオキシン類の発生過程自体を抑制するためのいろいろな工夫をしておりますので、これは技術予測になりますが、やはりいろいろな技術を駆使することによって全体としては三割ぐらいの抑制が平成十四年には達成できるだろうというのが全体をトータルした予測でございます。
  339. 加藤修一

    加藤修一君 わかりました。きちっとそこの対応を考えていただきたいと思います。しかしながら、先ほどの三大臣の話は削減計画が基本的にないという話だったわけです。  我々といたしましては、国はやはり事業分野別にこういった削減計画を削減目標と同時につくっていかなければいけない非常に重要な話、内容だと思いますけれども、この辺について小渕総理大臣はどのように考えていらっしゃるでしょうか。
  340. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま加藤委員御専門のお立場での御質疑、また三大臣を初めとしての答弁をお聞きいたしておりまして、正直、私もこの削減計画を策定する前提の問題になかなか難しい問題が存在しているということを認識せざるを得ないわけでございますけれども、それぞれ三大臣が答弁いたしましたような趣旨で全力を挙げてその計画を立てる方向で努力をしていく。計画を立てることなくしては削減の努力もまたそれに対する対策も講ぜられないと思いますので、政府としては、この関係閣僚会議を通じましてそうした点につきましてもさらに各省と相協力しながら方向性を見出していきたい、このように考えております。
  341. 加藤修一

    加藤修一君 業種別、分野別の要するに削減計画を立てていきたいという積極的な答弁というふうに理解しましたけれども、それでよろしいでしょうか。
  342. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 業種別、産業別、その他の分類をどうするかという点につきましてはこれから検討させていただきますが、今、総理の申されたようにこの削減目標をつくるということは極めて私も大切なことだと存じます。そして、その対象、方法、分析方法等についてはひとつこれから議論をいたしまして委員の御指摘を踏まえながらまとめていくことが適切である、こう考えております。
  343. 加藤修一

    加藤修一君 それでは次に、ダイオキシンに関する検査体制等の整備について質問したいと思います。  まず、厚生大臣にお伺いしたいわけですけれども、検査費用というのは、この関係閣僚会議の資料によりますと二十万から三十万ということでありますけれども、国外と連携している会社もあるわけで、そういうところは非常に安い形でやっております。こういった国内の分析会社の分析価格が依然として高い、こういうことはどういうことに理由があるんでしょうか。
  344. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは、海外における検査費用の実態につきましては必ずしも正確な実態を把握しておりませんが、例えば米国では八万から十三万ないし十五万ということが言われております。それに対して我が国は二十ないし三十万と言われておりますが、これは学識経験者とかあるいは分析技術者によりますと、我が国のダイオキシンの分析方法が分析の精度を高めるための手間のかかる工程を組み込んでいる部分がかなり多いということが一つと、それから北米の大規模な分析会社では、先ほどEPAの話がございまして、これは調査をさせて後ほどまた御報告させていただきますが、業務分担が進んでおりまして、流れ作業的に効率的な分析が行われているというような原因が考えられるようでございます。  したがって、今後、この測定の問題につきましては大変重要な課題で、総理の設けられました閣僚会議の五項目の中にもございますので、ひとつ分析機器あるいは熟練した分析者等を養成しながら高い分析技術を擁するより多くの検査機関を確保するために努力をしていきたい、こう思っております。
  345. 加藤修一

    加藤修一君 ある意味でおくれているという話でありますけれども、厚生省が今の段階で把握している機関というのは国内の分析業者だけなのか。私は、やはり海外の非常に優秀な技術を持っているところとも連携してクロスチェックを行うとか協力し合うとか、そういったことが非常に必要だと思いますけれども、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  346. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先生御指摘のように、国内では例えば食品の分析をきちんとできるという、精度管理がきちんと行われているというのが現在三つでございまして、本年度中にあと幾つかの機関が精度管理に加わるということになっております。  確かに、精度を保つということは非常に重要なことでございますので、外国の測定機関との連携あるいは相互の精度管理等々、精度管理のあり方につきましては、今、大臣が申し上げましたとおり、大きな検討課題というふうに考えております。
  347. 加藤修一

    加藤修一君 関係閣僚会議で出された資料の件ですけれども、八ページに「定期的な外部機関による技術評価が必要。」というふうにあるわけですけれども、具体的にはどのような機関がこれを評価するわけですか。これは国際的に通用する方法であるわけなんですか。その結果については公開できるわけですか。あるいは平成九年度、十年度やっているように報告がございますけれども、その中身についても報告していただきたいわけです。
  348. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) ただいまの御質問に対して環境庁のこれまでの取り組みについて御報告したいと思います。  ダイオキシンの分析は、精密な機器とともに熟練した技術に支えられた極めて微量な濃度の分析という難しい問題でございます。環境庁では、まず全国の測定分析機関におけるダイオキシンの正確な分析が行われることを確保するためには、ばいじん、底質の共通資料を配付しまして、それをそれぞれ測定してもらってその結果を集計評価する、環境測定統一精度管理調査というのを現在やっております。環境庁としては測定分析機関が行った分析結果の評価につきまして、学識経験者より成りますところの検討会において評価をきちっと行う、分析結果の評価の方法及び手順については検討会で取りまとめられ次第、公表するつもりであります。
  349. 加藤修一

    加藤修一君 厚生省はどうですか。
  350. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 厚生省におきましては、食品中のダイオキシン検査を行っております機関に対しまして、検査の信頼性を確保するために平成九年度から研究班を設けて第三者機関によります技術評価、いわゆる外部精度管理調査を行っているところでございます。  この外部精度管理調査は、ダイオキシンの種類ごとの検査値及びその検査値に許容される誤差が確認されている検体を参加検査機関に配付した後に、検査の結果及び詳細な記録を回収いたしまして、国立医薬品食品衛生研究所におきまして参加機関の技術を評価するものでございます。平成九年度におきましては三機関について問題がないことを確認いたしましたし、また平成十年度におきましては六機関が参加して現在実施をいたしているところでございます。
  351. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁と厚生省にお尋ねいたしますけれども、要するに国際的に通用する方法でやっているというような理解で私はいますけれども、その中身、どういうふうにやっているかということについては当然公開すると、方法を。
  352. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 測定法につきましては、外国の測定法を十分参考にしながら専門家の御意見を聞いて定めておりますし、また先生御指摘のような資料は提出できるものと考えております。
  353. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) お答えします。  私どもも、先ほど御答弁申し上げましたように、分析技術の改善を図るためのものでありますから、分析手法、分析技術の改善を図るためにはきちんとそれを公表していくことが必要だと考えております。
  354. 加藤修一

    加藤修一君 精度管理とか要するに信頼性が深まるような形でやっていく、信頼性の確保というのは非常にこういった面については私は重要だと思いますけれども、平成九年度の結果というのはどういうふうに報告されておりますか。
  355. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 食品に関します結果につきましては、平成九年度の厚生科学研究費の報告書に記載をいたしております。
  356. 加藤修一

    加藤修一君 非常にそっけない答弁だと思いますけれども。
  357. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 大変失礼をいたしました。  平成九年度の厚生科学研究におきまして、ダイオキシン分析に係る外部精度管理手法及びその評価方法に関する研究というのが行われております。主任研究者は国立医薬品食品衛生研究所の食品部長でございますが、その研究報告書が公表されているということを申し上げました。
  358. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁。
  359. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) 私どもは先ほど来お答え申し上げておりますように、十年度の業務として行っておりますので、なお今後早急に取りまとめて公表するということになります。
  360. 加藤修一

    加藤修一君 標準的な分析あるいは測定方法、これは非常に私は重要なことだと思うんです。やはり、非常に不安になっている国民のことを考えてまいりますと、きちっとした精度がある、安定したしかも信頼が担保される、そういうことが求められていると思うわけであります。  既に、お手元に三枚の資料を配付してございます。ダイオキシン類の測定分析についてお尋ねしたいわけですけれども、私は、この中で定量下限値、これは非常に重要なキーワードだと思うんですけれども、ダイオキシンの測定器械がはかれない下限の値のことを定量下限値と言っているようでありますけれども、はかれないからクエスチョンであると。  しかし、このクエスチョンをどう考えるかというのは非常に重要だと思うんですけれども、厚生省並びに環境庁あたりはこの定量下限値ということについてどういう理解をしておりますか。
  361. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 測定限界が高いレベルにありますと、実際に存在していても測定値が出てこない、いわゆるNDという結果が出てくるわけでございます。これを下げることは極めて重要でございます。  近年、測定器の技術開発が進みまして、かなり測定限界が低い測定ができるようになっているというふうに承知をしております。
  362. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) 環境庁といたしましても、調査精度を上げるという意味におきまして、この定量下限値の調査のための精度を高めるための努力というものを今後ともしていく必要があると考えております。  現在、私どもといたしましては、ダイオキシンにつきましていろいろ調査をしておりますけれども、大気、水、土壌、底質、水生生物、この各媒体ごとに調査測定のマニュアルをつくっておりまして、それに従いまして定量下限値というものを各機関において遵守していただくということにしております。
  363. 加藤修一

    加藤修一君 厚生省の答弁の中にNDという言葉が出てまいりましたけれども、要するに定量下限値より小さいときにはNDであらわすと。  二枚目を見ていただきたいのですけれども、二枚目の上の表に縦方向に細長く丸が書いてありますけれども、私はNDをクエスチョンという形に示しております。この場合はクエスチョンが三個あると。  そういった意味で非常に少ないケースなわけですけれども、これに基づいて、EPA方式、WHO方式、それから厚生省のいわゆるマニュアルによる方法を使っていきますと、なかなか理解できないときもあるわけです。ND、クエスチョンをどういうふうに判断するかと。ゼロと判断するのか、どういう値で判断するかということが非常に重要な点だと思いますけれども、これについても私と同じように重要だと考えますか。
  364. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) NDの扱い方につきましては世界各国、今、先生のおっしゃったような一として扱ったり、二分の一として扱ったり、ゼロとして扱ったりといういろんな方式が用いられておりまして、我が国では現在のところゼロとして扱っております。  ただ、この議論は非常に重要な議論でもあろうかと思いますので、今後専門家の御意見を伺ってまいりたいと考えているところでございます。
  365. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁、どうですか。
  366. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) 環境庁としても同様の考えでございます。
  367. 加藤修一

    加藤修一君 三枚目をごらんいただきたいのですけれども、NDに相当するクエスチョンが十一個ございます。  こういうケースの場合に厚生省の方式にのっとってやりますと、同じものに対する測定であるにもかかわらず、出てくる値が極めて違ってくる。EPA方式は四・〇七九ピコ、WHO方式は三・一九七、厚生省方式は二・三一、EPAと比べると約二倍ぐらいの違いがあるじゃないですか。  こういう形でもし今までの調査がやられているとすると非常に大変な問題だと私は理解していますけれども、どう考えていますか、これ。
  368. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先生試算をされた結果をお示しでございますが、私どもの直観といたしまして申し上げますと、定量下限値の数値がございます。例えば一の2・3・7・8TCDDがこのデータでは〇・〇六一となっておりますが、現在厚生省で行っております調査におきましてはこの定量下限値が〇・〇一でございますし、詳細を全部持っておりませんが、例えば十四番目の物質でございますと〇・三二となっておりますが、これが〇・〇三。あるいは十五番目も同じく〇・〇三というふうになっておりまして、検出限界がかなり下がりますとNDというのが減ってまいります。三枚目の紙は非常にNDが多い結果になっておりますが、現在の測定ではここまでいくのかなという感じをちょっと私は持っております。
  369. 加藤修一

    加藤修一君 三枚目の紙って、これは試算した結果じゃないんですよ。実際のデータですよ。実際に報告のあったデータですよ。厚生省のマニュアルに基づいてやった調査の結果ですよ、これ。
  370. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 出典を見せていただきますと、狭山茶業農業協同組合の狭山茶の調査のようでございまして、これは私どもが行ったものではございません。
  371. 加藤修一

    加藤修一君 私の言っているのは、マニュアルにのっとってやった結果だと言っているじゃないですか。マニュアルはどこがつくったんですか、マニュアルは。
  372. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先ほど御答弁申し上げましたが、検出下限界が相当高いところにある格好になっておりますので、先ほども申しましたように、私どもは今検出下限界をかなり下げておりますからこういうふうな結果が出るのかなという気がいたしているということでございます。
  373. 加藤修一

    加藤修一君 そうしたら、今まで信頼性の確保に努めるとかいろいろ言ってまいりましたけれども、一体どういう信頼性の確保に努めることをやってきたんですか、厚生省は、この関係で。何を言っているんですか。
  374. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 測定レベルを確保いたしますために、こういった測定を行っていただきます機関に対しまして測定マニュアルというふうなものを出しまして技術レベルの向上に資するようにいたしているところでございます。
  375. 加藤修一

    加藤修一君 答弁になっていないですよ。マニュアルの問題ですよ。答弁になっていない。
  376. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先ほども申し上げましたが、私どもの方法では検出下限界がこんな高い値にマニュアルではなっておりませんので、先ほどのようなお答えをした次第でございます。
  377. 加藤修一

    加藤修一君 それじゃ、先ほど分析業者をいろいろまとめて捕捉というか把握しているという話もございましたけれども、そういうことに対して適切な指導がなされていないということじゃないですか。
  378. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 何度も同じことを申し上げて恐縮でございますが、私どものマニュアルではこのような検出下限界ではなくて、もっと低いレベルでございますので、測定されたところがあるいはどこかわかればある程度評価はできるかもしれませんけれども、標準的な方法ではこんな検出下限界、高い値ではないということを申し上げているわけであります。
  379. 加藤修一

    加藤修一君 これは最近の調査ですけれども、要するにこの結果については問題があるという答弁ですね。
  380. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 先生御提示のデータにつきましては、また繰り返しになりますが、ちょっと評価を差し控えさせていただきますけれども、冒頭申しましたように、NDを今後どう扱うかというのは一つの研究課題だと思います。
  381. 加藤修一

    加藤修一君 研究課題だと言いますけれども、それじゃWHO方式とEPA方式、こういった国際的な基準について、この方式についてどういうふうに見解をお持ちですか、どういう認識を持っていますか。
  382. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 冒頭申し上げましたように、アメリカあるいはヨーロッパ諸国、各国におきましてNDの扱い方が異なっているというふうに聞いておりますので、そういった情報を踏まえ、かつ専門家の御意見も聞いてみたいということでございます。
  383. 加藤修一

    加藤修一君 今の方式については問題があるということですか、これは。
  384. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 検出可能なレベルが低ければ低いほど、不検出の際に検出下限値の二分の一として集計する場合とゼロとして集計する場合の差が小さくなるということは先生御承知のとおりでございまして、従来から検出下限値を下げるように努力しておりますので、この努力を今後とも続けたいと考えております。
  385. 加藤修一

    加藤修一君 そういうことだけじゃなくて、もっと積極的にこの辺の方式については再検討しなければいけないという理解ですが、どうですか。
  386. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 何度も同じ答弁をして恐縮でございますが、NDの扱い方につきましては、先ほども申し上げましたように、米国、国際機関あるいは諸外国の実例、専門家の御意見も聞きながら検討していく課題というふうに認識をいたしております。
  387. 加藤修一

    加藤修一君 定量下限値は下がったとしても、どっちかというとやはり厚生省の方式というのは低目に出る傾向があるんですよ。この辺についてはどう思いますか。
  388. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 非常に微量の単位でございますから、小数点以下、下の方では多少の差が出てくることはあろうと思いますけれども、現在の検出限界ではそんなに大きな差は出ないものというふうに私どもとしては考えております。
  389. 加藤修一

    加藤修一君 いや、そういうことじゃないですよ。実態、今までのさまざまな調査を見ていくと、厚生省の方式がやはり低目に出るようになっているじゃないですか。そこが一番問題になっているんじゃないですか。報道の中で問題になっている部分もそういうところがあるんですよ、課題として。問題があるんです。
  390. 小野昭雄

    政府委員小野昭雄君) 私どもとしては今の方式で十分国際的にも対応できると考えておりますが、先生の御指摘もございましたので、再度マニュアルをチェックしてみたいと思います。
  391. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、今まで厚生省がやってきた調査の中で食品中ダイオキシン類濃度、これは平成四年度から平成九年度にかけてですけれども、全部で一千三百五十二サンプル、約一億三千四百十万円使っておりますね。環境庁も緊急全国一斉調査ということで平成十年度で六千六百二十一サンプル、約十二億円使っているわけです。これについて、やはり三方式でそれぞれ計算してみることが大切だと思うんですね。何がきちっとなっているかどうか、要するに信頼性の確保ということを考えていったらそのぐらいの調査をやるのは当たり前だと私は思いますけれども、どうですか。税金のむだ遣いだよ、こんなの。
  392. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 非常に専門技術的な御議論がなされておりますが、私は率直にお伺いしておりまして、このEPA方式とWHO方式、厚生省方式で基本的には定量下限値についての乗数の違いが大きいと思いますから、これはやっぱり国際的な水準を参考にしながら決めるということは極めて重要でございますから、委員の御指摘のような点で検討させます。
  393. 加藤修一

    加藤修一君 ぜひ慎重な積極的な検討をお願いしたいと思います。  それでは、次に農水大臣にお聞きしたいわけですけれども、先ほど厚生大臣からトータルダイエットの話がございました。それはある意味では全国的な平均の食品中に含まれるダイオキシンの濃度の関係だと思いますけれども、高濃度地域がございます。所沢もそうですけれども、新利根町とか能勢町、日の出町等々ございますけれども、こういったところにおける地場の野菜についての調査は今までやったことがございますか。
  394. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 野菜でございますか。
  395. 加藤修一

    加藤修一君 はい。
  396. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 結論から申し上げますと、高濃度地域と言われているところについて、特に野菜について調査をしたことはございません。  野菜については、根から吸収されることがないとか、水に溶けにくいというダイオキシンの特性があるとかいうことがございまして、先ほどの厚生省の調査の中でも野菜のパーセンテージが全体で五%程度ということもあって、先生の御指摘のような調査はやっておりません。
  397. 加藤修一

    加藤修一君 今までやっているものについては平均的な中身だと思うんです。私が言っているのは、高濃度地域についてやっていないというお話ですから、ぜひ私はやるべきだと思いますけれども、どうですか。検討していただきたいと思います。
  398. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現に今、所沢で三省庁で調査をやっているところでございますが、平成十一年度から三年間かけまして、これは三回やるという意味でありますけれども、全国四十七都道府県の中をできるだけ多くのサンプリングをいたしましてやっていきたいと思っておりますが、特にそういう地域にも配慮をしながら全国調査を進めていきたいと考えております。
  399. 加藤修一

    加藤修一君 よろしく調査のほどお願いいたします。  それでは、環境庁にお願いいたしますけれども、新聞によりますと、補助金が足りない、環境庁が悲鳴というふうに書いてありますけれども、これは何の補助金が足りないかというと、ダイオキシン類の分析設備整備についての補助金ということであります。中身が、分析室の整備とか分析機器の整備という話になっておりますけれども、これは先ほど来いろいろ議論になっておりますように、十分こういった問題に対して対処するためには、都道府県の方にもそういった体制をつくらなければいけないという意味では、補助金をやはり強く大きくしていくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
  400. 真鍋賢二

    国務大臣(真鍋賢二君) 環境庁では、今年度から地方公共団体におけるダイオキシン類の分析機器等の整備に必要な経費に対して補助を行っておるところであります。  地方公共団体がみずから各種の発生源及び環境中のダイオキシン類を測定、分析することは、ダイオキシン対策の推進の観点から非常に重要であると考えております。  環境庁としても、地方公共団体のダイオキシン類の分析体制の整備につきまして引き続いて支援をしてまいろうと思っておるところでありますが、地方公共団体への支援という形になりますと、全国的にどういうケースで具体的になされるか、そういうところをよくよく調査しながら補助をしてまいろう、こう思っておるところであります。
  401. 加藤修一

    加藤修一君 突然でございますけれども、大蔵大臣、その辺の財政措置の関係についてはどのようなお考えでいらっしゃいますか、ダイオキシンの分析機器の補助金の関係について。
  402. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 関係閣僚からこれからいろいろお話があるようでございますから、それらは十分承っていきたいと思います。
  403. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、総理にお尋ねしたいと思いますけれども、今までのいろいろな議論、ほかの委員の方もダイオキシン汚染問題についてさまざまな質疑をしていたわけですけれども、どのようにお考えでしょうか、またどのように取り組むか、決意を含めてお示ししていただきたいと思います。
  404. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 数値その他を検査し、これが実態的にどのような影響を生ずるかという点につきましてはかなり専門的な検討が必要ではないかと思いますが、いずれにいたしても、人体に大きな影響を及ぼすということでありますので、そういった点で、先ほども申し上げておりますが、政府全体一体となりまして十分検討させていただきまして、その根源をいかにして取り除くか、そのための基礎的なデータを間違いなく把握できるようなことのためにあらゆる手段で努力をいたしていきたい、このように考えております。
  405. 加藤修一

    加藤修一君 それでは、在日米軍基地の環境汚染の問題に入りたいと思います。  最初に、総理にお尋ねしたいわけですけれども、在日米軍基地の環境汚染問題について小渕総理は一体どのようにお考えでしょうか。
  406. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 一般国際法上、外国軍隊は、接受国の公共の安全に妥当な考慮を払い、関係法令を尊重すべき義務を負っており、日米地位協定にも米軍がこのような義務を負っていることを確認する規定があるところでございます。在日米軍は、これらを踏まえまして、環境に関し、我が国の国内法令をも考慮した環境管理基準を作成し、これに基づいて厳格な環境管理行動をとっていると承知をいたしております。  環境に関連して具体的な問題が生じた場合には、政府としては、日米合同委員会の枠組み等を活用して対処してきているところであります。  今後とも、このような枠組み等を活用いたしまして、米側と十分に協議の上、我が国の公共の安全や国民生活に妥当な考慮が払われるようしかるべく対処してまいる考えでございます。
  407. 加藤修一

    加藤修一君 米国においては、国内の基地は環境について大変な配慮をしておりますが、これについて総理はどのように認識されておりますか。
  408. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 加藤委員御指摘のように、アメリカにおきましては大変こういった点についても考慮を深くしておると聞いておりますが、米国が国内の米軍基地におきまして行っている環境に対する配慮につきましては必ずしもすべて掌握しておるわけでありません。  したがいまして、具体的な問題についてコメントすることはなかなか難しいと思いますが、改めて、在日米軍が環境に関し、我が国の国内法令をも考慮した環境管理基準、先ほど申し上げましたが、これを作成して、それに基づいての厳格な環境管理行動をとっておると承知をいたしております。  政府としても、今後とも、米側と十分協議の上、我が国の公共の安全や国民生活に妥当な考慮が払われるよう、我が国としてはしかるべき対処をいたしてまいりたいと思っております。
  409. 加藤修一

    加藤修一君 おっしゃっていることはよくわかりますけれども、ただ、実態はそうではないということを指摘しておきたいと思います。  それでは、沖縄開発政務次官にお尋ねいたしますけれども、嘉手納基地のPCB廃油がため池に投棄された問題がございますけれども、米軍調査して、それについて対処を考えていて、しかも掘削をしなければいけない、しかし一メートルにとどまっていると。  下地政務次官は、政府調査団の団長としてこういった現地を視察して、地下水への影響なども含めて調査すべきだと、そういった意見をお持ちと思いますけれども、米軍調査をした結果についてどのように今見解をお持ちでしょうか。
  410. 下地幹郎

    政府委員(下地幹郎君) 今、委員がおっしゃいました問題でございますけれども、昨年の八月十七日に地元の新聞で報道いたしました記事の内容が大きな問題となりまして調査をすることとなったわけであります。  記事の内容といたしましては、米軍の嘉手納基地内で、一九六〇年の後半から七〇年代にかけて、有毒物質のPCBを含んだ変圧器のオイルなど廃油が基地内につくられたため池状の穴に投棄をされ、燃料油として民間業者に流通していたことが十六日までに明らかになった。当時の基地の従業員や廃油業者が証言をしたということの大きな問題でこの調査が始まったわけであります。  県民の健康にも大きな影響を及ぼす問題だけに、県民の不安を取り除くために、私ども沖縄開発庁が外務省防衛庁、環境庁に呼びかけまして、協力を得ながら、九月九日、九月二十八日、十一月四日の三回にわたり米軍に申し入れをし、事実関係調査を行った次第であります。  調査の結果はまだ出ておりませんけれども、この調査の手法や方法は日米間で違いはありますけれども、米国の環境保護庁が定めた調査基準によって今調査が科学的に行われているようでございますので、この結果を私どもは重視をしながら待ちたいというふうに思っております。
  411. 加藤修一

    加藤修一君 新聞に書いている談話というかコメントとはちょっと違っておりますけれども、先ほど総理が、国内法を守る、そして厳格に推進していると、管理行動については、米軍が。  このPCBの廃油の問題、ため池に投げておいたものについて、掘削は一メートルですよ。国内法で考えていきますと、国内法で例えば環境庁の土壌汚染の関係について見てまいりますと、土壌汚染調査については〇・五メーター、一メーター、二メーター、三メーター、四メーター、五メーター、それぞれの深度についてのサンプルをとらなければいけないというふうになっているわけです。これについてどう思いますか。
  412. 下地幹郎

    政府委員(下地幹郎君) 私ども、先ほど申し上げましたように、日米の間で調査方法の基準の違いがあることは存じ上げておりますけれども、今回の調査はアメリカの調査基準にのっとって行う、そしてその結果が出てから私どももまた新たに検討していきたいというふうな考えを持っておるものですから、今回は米国の環境保護庁の調査を重視していきたいというふうに思っております。
  413. 加藤修一

    加藤修一君 それは非常に私はおかしいと思います。私はこの種の問題について何回も質問しておりますけれども、国内法とアメリカの法と比べて厳しい方についてやる、そういう形で環境管理行動はとるというふうに言っているわけですよ、日本政府は。
  414. 下地幹郎

    政府委員(下地幹郎君) この環境の基準でありますけれども、環境庁のお話の中でもありますけれども、私どものプロジェクトチームで行ったときもそうでありますけれども、決して日本基準が厳しい基準であるというふうな認識は持っておりませんで、このアメリカの基準に対してもそれなりの科学的な根拠があるわけでありますから、まず2プラス2で決まって、米国のコーエン国防長官が派遣した調査団の結果は、私どもは重視をする事柄、大事だというふうに思っておりますから、決してそのことでその基準に誤りがあったり甘い基準の中でPCBの問題が、嘉手納の問題が行われているという認識はしておりません。
  415. 加藤修一

    加藤修一君 環境庁はどうですか。どういうふうに考えていますか。
  416. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) 私どもも、まずアメリカ側がやりました調査の結果を見て、その上で対応を考えていきたい、こう考えております。  それで、ちょっと申し上げますと、PCBについての基準でございますけれども、アメリカと日本については必ずしも一致はしておりませんで、こちらが厳しいものもあるし向こうが厳しいものもという点をちょっと申し上げます。  土壌については、日本では検出されないということになっております。アメリカは一ミリグラムであればいろいろな対策をとる、こういうふうな形になっておったりしております。いろいろそういうふうに基準等も違いもございますので、一概に判断できませんので、調査結果を見て対応していきたいと思います。
  417. 加藤修一

    加藤修一君 いや、いつもその手で逃げられるわけですけれども、言っていることは私の質問に対する答弁になっていませんよ。
  418. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) 今、私申し上げた点が御答弁だと、こう理解しておるのでございますけれども、御理解を賜りたいと思います。
  419. 加藤修一

    加藤修一君 いや、そもそも今までの政府の答弁は、きょうの答弁じゃないですよ、どっちか厳しい方に、つまり、これは検出されないというのが日本法律の中身ですよ。それから、ため池の調査だって、ずっと深いところに、そもそも温泉を掘るときは温泉の泉源まで行かなくちゃいけないわけですよね。汚染源も同じですよ。汚染源のところまで行って、そのサンプリング調査をしなければならないわけですよ。そういうような調査をしないで、上っ面の一メートルだけ掘削して、それで調査をやろうということ自体がおかしい話なんですよ。全くおかしいですよ。おかしいと思わない方がおかしいんですよ。
  420. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) 調査方式につきまして、先生御指摘のように、違いがあるということは一応私どもも立ち会いました際に認識しております。  しかし、問題は調査結果でございまして、その調査結果を見て我々としては判断していきたいと、これが我々の立場でございます。
  421. 加藤修一

    加藤修一君 そういう形で米軍にしてやられたケースが何回もありますよ。  オーバーシーズ・エンバイロンメンタル・ベースライン・ガイダンス・ドキュメントという、これは国防総省が出しているガイドラインですよ。これはホスト・ネーションに対してきちっとやらなくちゃいけないというふうにも書いてあるんですよ。ファイナル・ガバニング・スタンダーズというのもあるわけです。  これが既にあるにもかかわらず、そういう言い方をしているというのは逃げている証拠ですよ。違いますか。決まっているわけですから、既に。調査結果が出てから云々じゃないんですよ、決まっているんですから。
  422. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) ただいま先生、OEBGDに御言及をなされました。この文書は御指摘のとおりの米国防省の文書でございますけれども、この文書で書かれておりますのは、海外の米国防省施設における環境保護のための基本的な指針を定める際のしかるべき具体的な基準を示すことを目的としたものというふうに承知いたしておりまして、したがいまして、環境管理基準ということが中心の概念でございます。  ただいままでいろいろ御答弁申し上げておりますのは、調査の方法につきましては、それはこのOEBGDに基づきます環境管理基準に基づいての調査というよりは、それは米国調査方式に従って行われると。その結果を見て、我が方としての対応を考える。  ちなみに、また日米間には日米合同委員会の環境分科委員会というのもございますので、その調査結果が出た後に、いろんな議論、協議がそこで行われると、こういう段取りになろうかと思います。
  423. 加藤修一

    加藤修一君 その分科委員会ですけれども、機能していませんから、全然。機能していないじゃないですか。機能していないから実態問題としていろいろなことが起こっているんですよ。
  424. 遠藤保雄

    政府委員(遠藤保雄君) この分科委員会の議長は環境庁の水質保全局企画課長がやっております。  それで、今回の件でございますけれども、先方の調査、これは先方の調査団が習熟しておりました米環境保護庁が定めた調査方法、これに従いまして調査を実施したという経緯がございます。したがいまして、私どもはその調査結果を待っていろいろそれを評価してまいりたいということでございます。その場といたしまして、それでいろいろ問題が出てまいりましたら、この日米合同委員会のもとにあるこの環境分科委員会の場で関係各省と連携しつつ、問題を提起していきたいと思っております。
  425. 加藤修一

    加藤修一君 全然わからない。  なぜわからないかといいますと、厚木基地隣の産廃ダイオキシンの問題があったわけです。米軍側も調査しました、日本側も調査しました、しかし中身は十倍ぐらいの開きがあったと、調査結果が。そして、じゃ両方できちっとした考え方に基づいて調査しましょうと言って、報告だってないわけじゃないですか、まだ依然として。もう数カ月たつんじゃないですか、一年まではたたないかもしれませんけれども。しかしその中で、十二億円が国費として産廃業者に渡ったという話なわけですから。こういったケースだけじゃないですよ、いろいろほかにもたくさんあります。  いずれにしましても、例えば今のPCBの問題に戻りますけれども、外務大臣にお聞きしたいわけです。沖縄県がこれについては立入調査を要求しているわけですけれども、やはり日本の自治体が水質汚濁防止法の関係で工場に立入調査権を持っているように、米軍の基地に対して、こういった問題に対して、環境汚染の問題に対して立入調査権を制度として確立すべきだと思いますけれども、どう思いますか。
  426. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 立入調査につきましては、これまでも環境に関連して具体的な問題が生じた場合においては、問題が生じた米軍の施設・区域への立ち入りを含め、日米合同委員会の枠組み、特に合同委員会のもとに設けられた環境分科委員会等を活用して適切に対処してきているわけであります。  沖縄県におきましても、米軍の施設・区域において具体的な環境汚染が実際に問題となった際には、現地において周辺自治体による環境調査が行われてきていると承知しております。  例えば、具体的な環境汚染が問題となったわけではありませんが、嘉手納飛行場においては昭和五十一年以来、毎年、同飛行場の排水溝等において環境庁と沖縄県が水質環境調査を実施しております。  政府または地方公共団体が環境調査のため施設・区域に立ち入りを行う場合には、施設・区域の管理を行う米軍との間で調整を行い、その個別の同意を得て実施することとなります。具体的な環境汚染が生じた場合には、環境調査のための施設・区域への立ち入りが支障なく行われることが重要であり、今後とも日米合同委員会の枠組み等を活用して適切に対応してまいる考えでございます。
  427. 加藤修一

    加藤修一君 今の適切な対応ということに関係して、沖縄県がこの問題について申し入れをした。昨年八月ですよ。質問を文書で出しているが、いまだ回答がない。今の答弁に対して食い違いがあるんじゃないですか。
  428. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 先ほど下地政務次官が答弁されましたように、本質問書に対する回答については基本的に米側において判断すべきものと考えておりますが、米側におきまして昨年十月から十一月にかけて専門家から成る政府調査団が同飛行場に派遣され、現地を調査したところであります。現在、米側において取りまとめ中のこの報告書について、その公表につき米側協議しつつ適切に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  429. 加藤修一

    加藤修一君 冒頭に総理から答弁をいただきました。それに関連してでありますけれども、日米地位協定で環境保全に関する規定というのはどこの部分に当たるでしょうか、外務省にお尋ねします。
  430. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) お答え申し上げます。  地位協定には環境問題そのものにつきまして直接規定した条項というものはございません。  ただし、これも累次申し上げているところでございますけれども、だからと申しまして在日米軍が全く日本の環境に関する法令を無視してよろしいということではございませんで、国内法令の尊重義務というのが第十六条に定められております。さらに、米軍の活動は公共の安全に妥当な考慮を払って行わねばならないということも第三条に規定されているところでございます。
  431. 加藤修一

    加藤修一君 第三条にあるという話ですけれども、「公共の安全に妥当な考慮」、これが実は環境保全という点から考えて明示的にはなっていない、文言として。だから、明示的にすべきだと私は思うんです。  総理に尋ねたいわけですけれども、日米地位協定、これを改定して環境保全のための法的拘束力が伴うような制度をきちっとつくるべきだと思いますけれども、どういう認識をお持ちですか。
  432. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) 日米地位協定第三条は、日米安保条約のもとで米軍が使用を認められている施設・区域において、米軍が設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置をとることができる旨規定しております。米軍に対し施設・区域の一般的な管理を行う権限を認めることは、日米安保条約の目的達成のため我が国が米軍による施設・区域の施設を認める以上、これは当然の前提と考えられるわけでありまして、現時点において直ちに日米地位協定第三条の見直しを行うことは考えておりません。
  433. 加藤修一

    加藤修一君 米国に言うべきところはきちっと言うべきだ、毅然とした態度で臨むべきだという官房長官のお話が先日ありましたけれども、ドイツの現状というのはわかっていますか、NATOとドイツがやっている地位協定。  ドイツは、環境問題は非常に重要である、環境管理コードは大切であるということから、一年数カ月を費やして環境保全条項というのを地位協定の中に入れさせたわけです。そうしますと、こういった現実に対してどういうふうに判断されますか。
  434. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 日米地位協定とボン協定を比較することにつきましては、協定自体の規定ぶりに加えまして、関連する諸文書や実際の運用のあり方を含めまして検討する必要があると思います。したがいまして、一概に論ずることはなかなか困難でございます。  その上で申し上げますと、NATOの場合のいわゆる新ボン協定には環境に関する規定が設けられているわけでございますけれども、このようなドイツの場合と我が国の環境関連法令と米国の法令を比較した上でより厳しい方を選択しております環境管理基準、そういうものを在日米軍が作成いたしまして実施しているという場合を比較いたしまして、こういう運用ぶりを考えますと、一概にどちらがすぐれているといいますか厳しいといいますか、そういうことは論ずることはあえてなかなかしにくいことであろうと思います。
  435. 加藤修一

    加藤修一君 もう話になりませんね、正直言って。実態を見たらわかるじゃないですか。何が厳しい方の方法を使うだ。実態はそういうふうになっていないんですよ、実態は。ここを問題にしているんです、私は。だから法的な拘束力があるものにしなければいけないと言っているんですよ、少なくとも。何も日本だけがこういうことを主張しているわけじゃないんですから。ドイツだって大変だから本当にこつこつと協議をしながら、先ほど総理の答弁にもあったじゃないですか、十分な協議をしている。これだって協議の対象になるわけですよ。
  436. 竹内行夫

    政府委員竹内行夫君) 在日米軍は、先ほど来申し上げておりますし、先生からも御指摘がございました環境管理基準というものでそれを実施しているわけでございます。  それで、我が国とアメリカの間におきましては、地位協定のもとにおきます合同委員会というものもございまして、そこで問題があるたびに十分な協議、それからいろんな申し入れもしているわけでございます。  先ほど来御指摘になりました嘉手納飛行場におきますPCBの問題につきましても、報道に端を発しました件でございましたけれども、我が方からいろんな申し入れをアメリカ側にいたしまして、合同委員会でも話し合いまして、その結果として、米側調査団を派遣するということを2プラス2の閣僚レベルで決定して通知してきたということがございます。  したがいまして、我々としましても、もちろんこの基地の環境問題の重要性ということを軽視しているわけでは全くございません。それは先生の御指摘のとおり重要な問題でございますので、政府としてと申しますか、外務省といたしまして、十分にこの点については米側と詰めるべきところは詰めるという態度で臨んでいきたいと考えております。
  437. 加藤修一

    加藤修一君 今の答弁を少しは期待したいと思いますけれども、過去にこういうことがありました、私の質問に対して。  私は、ちょっと趣旨が、中身が違ってきますけれども、返還された基地あるいは返還前の基地も含めて、要するに基地で起こった事故、いわゆる経歴みたいなものですね、いわゆる運転記録とか、それにかかわる環境汚染の問題、そういったものについては日本側の方に立って情報の入手をきちっと私はつくっていくべきだというふうに言ったら、最大限努力しますと言うんです。最大限努力した形になっていませんよ。趣旨は、ちょっと意味が違いますけれども、同じなんですよ。何回こういうことを言っても、そのとき最大限とか厳しい方云々かんぬんと言いますけれども、全然答弁になっていません。検討してくださいよ。
  438. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 多分、平成九年の三月に委員の方から、土地の返還の際に作成する土地引渡調書に環境汚染の状況を明示すべきじゃないかという御質問に対し、検討するとの答弁をした経緯があったと思います。  この御指摘を踏まえまして検討した結果、返還地の有害物質等の調査及び処理を実施した場合、それらの内容を引渡調書に明示するよう関係する内部規定を改正したところであります。  すなわち、平成十年の四月六日付で改正した内部規定の概要は、返還土地が駐留軍用地特措法の適用地である場合は、引渡調書の返還時の状況欄にその調査及び処理の方法及び結果を記載することといたしました。また、賃貸契約による土地につきましては、引渡調書に添付する返還財産異動状況調査明細書に記事欄を設けまして、調査及び処理の方法及び結果を記載するように改めたところでございます。
  439. 加藤修一

    加藤修一君 外務大臣。手を挙げている。
  440. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) いいですか、外務大臣お答えになられますか。
  441. 高村正彦

    国務大臣高村正彦君) これから最大限努力してまいります。
  442. 加藤修一

    加藤修一君 では、関連質疑をお願いいたします。
  443. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。山本保君。
  444. 山本保

    山本保君 公明党の山本保です。  私は、ここで全然観点を変えまして、教育と福祉について、だれもが考えるわけでございますし、また、今、内閣でも一生懸命改革を進めている、こういう前提に立ちまして、その原理的な問題点をできるだけ専門家以外にもわかるようにお聞きしたいと思いますので、ぜひ答弁につきましてもそのようにお願いしたいと思います。  まず最初に、二月十六日でございます、私どもの公明党から介護保険制度の安定運営の確保に関する緊急提言というものを出させていただきまして、来年の四月に差し迫っております介護保険制度、さまざまな問題点がありますが、何とか問題を起こさないようにならないのだろうか、こういうことを申し上げたわけでございますけれども、小渕総理、この考え方につきましての御意見なり、また、今後の介護保険制度の運用についての御決意というところをお願いいたします。
  445. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 平成十二年四月から介護保険制度が円滑に実施されるよう、国といたしましても施設、マンパワー等のサービス供給体制の整備につきまして、新高齢者保健福祉推進十カ年戦略の達成に全力で取り組むとともに、市町村の施行準備等につきましても、できる限り財政面や実施体制面から支援をいたしておるところでございます。  先日、公明党からいただきました貴重な提言につきましても、その内容を十分に検討させていただき、制度の円滑な実施に向けて全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  446. 山本保

    山本保君 どうぞよろしくお願いしたいと思います。  そこで、私は現在、個人的なことですが、サッチャー前首相の回顧録を読んでおりまして、ちょうど一九八〇年のころ、まさに党内にも大変な問題がある中で構造改革を進めていくところを非常にぞくぞくしながら読んでおるわけなのですが、私は福祉、教育についても構造改革が非常に重要である。それは、一般的には公務員型から民間型へといいますといろんな問題が出てくることが多いのですけれども、この領域、特に介護などにつきましては、まさにお年寄りにとっても、また家族にとっても大変充実された生活が行われつつ、しかも国民の負担も減らすことができる、こういうものにしていかなければならない。介護保険制度というのはそのための第一歩であるというふうに考えておるわけです。  これはどなたでもお考えになりますように、改革の原理というのはいろいろありますが、簡単に言えば中央から地方へ、そして福祉でいえば施設入所型から在宅支援型、地域支援型、そして財政でいえば公務員型の措置費、公務員型から民間型へ、こういう原理だと思っておるのです。私は、きょうは最後の公務員型から民間型へということを聞くつもりでいたのですが、実は午前中の答弁で、厚生大臣、通告しなかったことなのですが、ちょっと気になりますのでお聞きしたいのです。  というのは、二十二万ベッドが特別養護老人ホームに必要である、こういうふうにたしかおっしゃったと思うのです。これについて、二十二万床、確かにそういう気がするのですが、このベッド数は一体何カ月間または何年間ぐらいその方がそこに入っているということを前提として推計されているものなのか、それをお聞きしたい。
  447. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 十九万と二十二万という数値は、午前中の審議で申し上げましたが、これは療養型病床群についてのことでございまして、特老ではございません。それは、一々個別の積み上げということではございませんで、地方公共団体における需要予測を集計したものでございますから、一概にどういうパターンで集積したというような性格のものではございません。
  448. 山本保

    山本保君 突然聞きましたのでそれ以上追及はしませんが、しかしここは先生方にも実は同じことなんでございます。地域を回られて、特別養護老人ホームもしくは今のいわゆる老人病院等で何万ベッド、何十ベッド各地域で要ると。ところが、今の施設というのは、大体、例えば地域によっては三年から四年というような形で入っておられるわけです。  しかし、本来福祉というのは、自分の生きてきたその生活の中で、これまでの友人とかいろんな人間関係の中で最期を迎えるということが一番よろしいわけでして、そうなりますとなるべく、さっき言いましたように施設型から在宅支援型、そしてどうしても最後に専門家が厚い手当て、ケアをしなければならないところで施設に入る。例えば半年間だけ入るようになれば、私の知っている限りでも今あるキャパシティーの六倍から七倍の方が入ることができるんじゃないか、こういうわけでございます。この辺を、きょうはこれ以上このことは申し上げませんが。  次に、大臣に私はきょうは民間型のことについてお聞きしたいんです。例えば、地域でいろんな社会福祉事業をする、そのときに社会福祉法人をとりたいと。幾らこれは要るんでしょうか、今。その要件をお願いします。
  449. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 社会福祉法人の設立に当たりましては、現在、法人が事業を行うための必要な物件等につきまして自己所有を原則とするなど、資産的な要件が定められております。  すなわち、社会福祉施設を経営する法人につきましては、所有権を有していること、国または地方公共団体から貸与または使用許可を受けていること、また、その使用許可を受けていない場合は地上権、賃借権の登記がなされていることというような保証措置を求めております。一方、社会福祉施設を経営しない法人につきましては、原則として一億円以上の基本財産を有していることというようなことを条件にいたしております。  私どもも、今、委員のおっしゃるように、国民の福祉に関する需要が増大、多様化してまいりますので、これに的確に対応できるように社会福祉事業とかあるいは社会福祉法人制度等、社会福祉の基礎構造全般について見直しの作業を進めておるところでございまして、この一環として、社会福祉法人の認可の基準につきましても資産要件を初めとしてできるだけ要件は緩和して、簡易に設立できて、参画していただけるようにしたいと思っておるところでございます。
  450. 山本保

    山本保君 二十人ぐらいの障害者の方がいろんな作業所をするにしても、また無認可で保育園をするにしても、一億円の金が要る。一体どういう根拠でこんな一億になっているのか。また、これはどういう規定でこれを決めているのか、これについても補足してください。
  451. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) ただいま御質問の社会福祉施設を設置しない場合の社会福祉法人の基準の一億円でございますけれども、これにつきましては昭和五十九年にこのような額に変更になっております。  そのときの考え方といたしましては、やはり社会福祉事業である以上、ある程度の運用利息があるとか、また社会的な安定、経営的な安定を求めるとか信用力があるというような観点から一億円という数字が出てきたものでございます。
  452. 山本保

    山本保君 法的根拠、法の規定は。
  453. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 法律の根拠につきましては、これは厚生省内部の通知でなっております。
  454. 山本保

    山本保君 つまり、これは大臣がその気になって変えられればすぐ変わるものなんです。別に法律に書いてあるわけでも何でもない。指導通知じゃないですか。そしてその当時の、福祉が変わってきた今一番大事なときにまずこれを最初にやるべきですよ。そして、さまざまな方の参加を求めた上で制度を変えなければならないんじゃないですか。大臣、どうですか。
  455. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは私どもも意識をしておりまして、身体障害者あるいはいろいろの不自由な方々のグループホームその他の経営等の問題とも関連いたしますので、なるべく簡易にこういった財産要件とか資産要件を緩和いたしまして、そして少人数でいろいろの施策をやるということも非常に重要な視点でございますから、そのような今検討をさせていただいております。
  456. 山本保

    山本保君 できましたら数百万円単位にしていただければと思っております。  次に、介護保険の全体の総量についてちょっと不思議な気がするんです。といいますのは、午前の答弁にもありましたように、まだ一つ一つの介護報酬も決まっておりませんし、そしてその人数も決まっていない。どうしてそれなのに総額が決まり、一人当たり一月二千五百円という数値が出てくるんですか。
  457. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) これは法案審議の過程におきまして、一つの具体的な数値をお示ししないと具体的なイメージが出なかったという私は事情があると存じますが、それは、大体その当時の人員を基礎に、平成七年度の単価を用いまして計算をいたしました。したがって、当時も介護費用総体が四兆二千億というようなことでございましたし、それから一カ月の保険料も二千五百円ということが非常に人口に膾炙されるといいますか、そういうものだというように思われてきておりますが、実際はそういうことではございませんで、それは今度政令で定めましたけれども、保険料の算定は別の基準でいたします。二千五百円になるところもございますし、それ以上のところもありましょうし、市町村、保険者によってはそれ以下のところもあり得るということになろうかと思います。
  458. 山本保

    山本保君 大臣、それはちょっと勘違いをされています。推計値が先にあるがゆえに、サービスの今度報酬が決まるんですよ。だから問題なんです。  そこで、今お話にありましたように、実はそれは平成七年の時点の福祉の費用の措置費と言われるもの、または在宅の支援の単価をもとにしたんです。正直に言えば、そのとおりなんです。  ところが、今やこれからの福祉というのはそうではなくて、民間で一生懸命善意でやっているいろんなNPOの方だとかそういう方を、入れかえるとは言いません、これから総量が要りますから、しかし、少なくともそちらになるわけなのに、どうしてそれが今までのままで伸びるのか。そんなこと自体が最初からおかしい。  一般的に、九割が今、公務員の費用型です。そして、その値段についてもいろんなさまざまな説がありますが、二対一から、もっと三対一ぐらいだと言われている。これを簡単に掛ければこんなにお金が要るはずがない。どうでしょうか。
  459. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ただいまお話し申し上げました総体としての介護費用四兆二千億あるいは月額二千五百円というのは、当時における審議の前提として、仮定計算ということでございますから、この点は私どもは、このスキームをそのまま維持していこうとか、これがあるべき姿だとは決して思っておりません。  委員の御指摘のように、介護保険の問題は、多くのボランティアあるいは地域の人たちの人間関係その他非常に大切にしなければならない点がございますから、私も委員のおっしゃられるような精神というのは非常に大切にしていかなければいけない、そしてシステムを構成していかなければいけない、このように思っております。
  460. 山本保

    山本保君 私だけが安くなるはずだと言っておりますのは、今、安い値段でやっている方のものをそのままでいいと言っているわけではない、これは当然です。  さて、ただ大臣、今のお気持ちはわかりますが、ところが、そのために大変なネックが一つあるんです。それは法律の中に、介護報酬は大臣が指定すると書いてあるんですよ。これはどういうふうになりますか。つまり、これだけ両極端に人為的に分けられた報酬のグループがあるんですよ。どういうふうにこれを、統一の単価を決めますか。全くおかしいじゃないですか。
  461. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) ちょっと委員のおっしゃられる意味が、必ずしも的確に私には理解できておりませんが、これはサービスを提供する事業者が民間であると否とを問わず、介護保険システムということでございますから、一定の基準値に基づきまして介護報酬等を定めるということは、これはシステムとしては当然ではないかと思うんです。それを自由価格というようなことにいたしますれば、これは保険料もいただいておることでありますし、一部負担もお願いしていることでございますから、それは一定のスタンダードというのはどうしても必要だろうと、こう思います。
  462. 山本保

    山本保君 きょうはこの議論は問題提起だけしておきます。  次に、ちょっと飛ばしまして、介護支援専門員という方が先回選ばれた。大変な重要な仕事を持つキーパーソンでございます。秘密保持でありますとか公正中立でありますとかまたは専門性、どういう形でこれを担保されるのか、また現行の規則ではその方たちはどういうふうな条件がかけられているのか、お願いします。
  463. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) いわゆるケアマネジャーと言われるものでございまして、これは私どもは、介護の中のいろいろ介護の設計、あるいは家庭と市町村との連絡役その他、非常に重要な役割を果たす専門員だと理解しております。そして、これは国家試験、試験制度によって既に九万人くらいを決定しております。非常に希望が多くて二十万人以上の受験者があったようでございますが、この点については、やはり資質の向上とそれから介護に対する深い理解と温かみがないと困ります。  貴党の出されました、冒頭に言われました安定運営の確保に関する緊急提言におきましても、私も拝読させていただきましたけれども、「専門職としての倫理綱領の作成と遵守を義務づける」というようなことが書かれておりますが、大変参考になると存じますから、そんな方向で一つのあるべき姿を示してまいりたい、このように思っております。
  464. 山本保

    山本保君 ありがとうございます。  それでは、次に教育問題に移ります。  教育委員会制度について、総理大臣、まさに今行政改革の一つに地方分権、そして教育行政においては既に戦後、教育委員会制度。しかし、例えばこれは文部省の白書ですが、昨年の分にはこの六百ページにも及ぶところで教育委員会制度が書かれているのは一ページ。ことしの分は中教審が出ましたので五ページになっていますけれども、実質上は一ページです。非常に軽視しているんじゃないかという気がしてならないんですが、総理大臣いかがでしょうか。
  465. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 教育改革を実現し、子供一人一人の個性を尊重した教育活動を推進するためには、教育の分野における地方分権を推進し、地域の特色を生かした施策を展開することが必要であると思います。このため、各地域において学校教育、社会教育、文化、スポーツ等の振興を担う教育委員会が地域の実情に即して主体的かつ積極的な役割を果たすことができるよう、教育委員会制度の改革に積極的に取り組んでまいりたいと思います。  今、委員御指摘のように、白書につきましてそのようなページ数になっておったということでございますけれども、ぜひこの委員会制度は我々も、戦後こうした制度ができておるわけでございますので、さらに充実をしていかなければならない。そういった意味で、その白書のページ数はともかくといたしまして、文部省を中心にさらに努力をしていきたいというふうに考えております。
  466. 山本保

    山本保君 文部大臣にお聞きしたいんです。  現状は、総理大臣の言われたのとどうも違うんではないか。申しわけないが、大変お年寄りの委員の方もしくはお役所のOBとか学校の教員のOBが出る。これはレーマンコントロールとしての教育委員会の本来の筋ではないと思うんですね。こういう行政委員会審議会と一緒になっちゃっているんじゃないかというような気もするんですけれども、大臣いかがでございますか。
  467. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 中央教育審議会といたしましても、教育委員会が極めて重要である、特に地方教育行政の上でかなめであるということを考えて随分議論いたしました。  現在、我々といたしましても、教育委員会は極めて重要である、それは審議会ではない、あくまでも行政にきちっと携わるものであると判断をいたしております。
  468. 山本保

    山本保君 まさに地域の公立学校を管理するのが委員会でございますので、その辺をよろしくお願いしたいんです。  ところが、努力と言われますが、実は一つまたここにもおかしなことがある。なぜならば、昭和二十三年七月、私の誕生日なものですからよく覚えているんですが、教育委員会法ができた。このとき、実は教育委員というのは五人だと決まっていたんです。当時は一万以上の自治体があり、今三千数百になって、そして都市部の人口は当時の一・五倍になっているにもかかわらず、いまだに教育委員は五人と決まっている。全くおかしいんじゃないかと思うんです。これは法律です。どうでしょうか。
  469. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 確かに、人口がいろいろ違うところがあることはよく我々も認識しているのですが、これは先ほど申しましたように、審議機関ではない、行政機関である、執行機関であるということから、やはり人数というのは、人口の大小によらずやるべきことは決まっているということで五人と決められておりますし、今日もその方針をとっております。しかしながら、非常に小さな町村においては、人口規模や財政状況などがございますので、現在でも三人という例外が許されているということを申し上げておきたいと思います。  ただ、近年、地域住民の教育行政に対する関心、要望が多様化しておりますので、地域住民の多様な意向を教育行政に反映することが求められております。このような観点から、先ほど申し上げましたように、昨年九月の中央教育審議会の答申では、都道府県や市の教育委員の数の弾力化が提言されているところでございます。文部省といたしましては、国、地方を通じた行政改革、財政改革の流れや地方行政制度の全体との整合性を踏まえつつ、制度の改正を検討してまいりたいと思っております。
  470. 山本保

    山本保君 当時、二十万人以上の市は十市、現在は六十市、こういうところで一体国民の、住民の教育の意思がたった五人の委員でできるのかということです。  次に、もう時間がありませんのでちょっと早口になりますが、学級編制についてお聞きしたい。  教育学では、学級編制に妥当な数はない。当然なんです、なぜならば、子供の状態だとか教科の方法、目的によって違うわけですから。ですから、今や法律で定めている学級編制の定数というのは、あれは予算上の定数じゃないか、それがどうして、法律を見ても基準とすると書いてあるのに全国一律で学級が決まっている。これが問題じゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  471. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 現行の第六次教職員配置改善計画では、重点はチームティーチングにあります。このチームティーチングというのは、まさに御指摘のとおり、クラスのやり方をいろいろ弾力化しようということでございます。具体的に申しますと、教科によって、あるいは学年や児童生徒の習熟度等によって弾力的な学習集団の編制を行おうと、こういうものであります。さらに、昨年九月の中央教育審議会の答申におきましても、さらに学級編制基準の弾力的運用について提言がされております。  文部省といたしましては、専門家の協力を得まして、どういうクラス編制がいいか、どういうふうな教育の仕方がいいかということを、学校週五日制がいずれにしても二〇〇二年から始まりますので、それに向けて現在検討をしているところでございます。
  472. 山本保

    山本保君 最後に、一つだけ。これは福祉の方でも申し上げたことですが、私は五人ぐらいのベテランの優秀な先生が私学をつくるということを教育だってもう認めていいんじゃないか、それが教育の構造改革だと思っているんです。この学校法人の設立認可要件を緩めるという方針を提案したいんですが、いかがでございますか。
  473. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) さまざまな弾力化ということが考えられますけれども、一定の基準は保たないと、これはやはり基礎教育ですから、そういう意味で一定の基準ということは今後も要求されるかと思っております。
  474. 山本保

    山本保君 それでは終わります。  ありがとうございました。
  475. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で加藤修一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  476. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、池田幹幸君の質疑を行います。池田幹幸君。
  477. 池田幹幸

    池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  日債銀問題について質問いたします。  これまでの衆参両院の論議を通じまして、日債銀問題については、大蔵省と二人の前元大蔵大臣の対応、それに対して国民の大きな疑惑が起きております。昨日の参考人質疑などでは、各紙が一斉にそのことを取り上げております。  そこで、私はまず、これまで日債銀については債務超過ではないんだということをこの二年間言われ続けてきたわけですけれども、昨年十一月、突如として債務超過、特別公的管理ということに移りました。小渕総理大臣は、昨年の十二月十三日に監督庁の検査結果を踏まえて日債銀に対する特別公的管理を決定されました。日債銀にとっては寝耳に水だというふうに伝えられておりますが、日野監督庁長官にまず伺います。  特別公的管理の決定のもとになった当局の査定と日債銀の自己査定の食い違いについて説明してください。
  478. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 具体的な数字は後で申し上げるといたしまして、日債銀が自己査定しておりました査定の金額と、私どもが検査をさせていただいて、当局査定と申しますか、その差がかなりの金額に上ったということでございます。
  479. 池田幹幸

    池田幹幸君 第Ⅲ分類で見ましても、当局の査定が一兆三千百十億円、それに対して日債銀の自己査定が五千九百三十一億円、かなりというよりも非常に大きな食い違いが起きておるんですが、それではこの食い違いはどういうところから出てきたんでしょうか。どのような判断が違っておったのか、御説明ください。
  480. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  私どもの当局査定結果と自己査定結果の乖離が大きい理由といたしましては、日債銀の自己査定基準自体に問題があること、それから自己査定基準の適用に問題があることなどが主な理由として考えられるわけでございます。  一例を挙げさせていただきますと、自己査定におきましては、特定先に対しては、当行、つまり日債銀が支援を継続する限り全額回収が可能であるとして、基本的に要注意先のⅡ分類にとどめているものなどが認められるところでございます。
  481. 池田幹幸

    池田幹幸君 それが一番大きな問題だったと私も思います。  そこで、昨日、衆議院予算委員会参考人質疑が行われました。そこで日債銀の東郷前頭取は、関連会社、ペーパーカンパニーに債権を移したことについて、金融機関では一般に行われていることなんだ、世間で言われている飛ばしなどではないんだ、事業化だとか回収の極大化だといった形で開き直っておりましたが、実態を見れば、これはもうまことにお笑いぐさだと思うんですが、有名な神田神保町のあの土地ですけれども、地上げがとんざしたまま塩漬けになっておる。そのままで何が事業化だと私は言いたいんです。ともかくバブルの夢をもう一度といったような、そんな魂胆があるのかなということで聞いたんですけれども。  最終的に日債銀の特別公的管理を決められた総理に伺いますけれども、大手企画とか桜田企画といったペーパーカンパニー、これに不良債権を移して日債銀の不良債権の実態を覆い隠す、こういったやり方、これは特別公的管理を言い渡した総理としてこんなことを言わせっぱなしでいいのか、まず伺いたいと思います。
  482. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 担保にとった、あるいは担保権を執行しているというような過程の中で、完全な収益を上げられない資産について少しでも有効に活用しようということで別会社を立てて、そしてそれに何がしかの事業をやらせてそこから収益を上げていこうということ、これは一つの考え方ではあろうと思います。  しかし、監督庁の検査においては、その意図はともかくとして、実態を見て、そしてその実態から回収可能性というものを判断して今のような、今、監督庁長官が申したようなそういう評価を、債権としての評価をした、こういうことであろうと思います。
  483. 池田幹幸

    池田幹幸君 その意図や希望はどうあれ、実態を見れば事実ペーパーカンパニーに移して焦げついているわけですね。これを世間では飛ばしと言っているわけですから。飛ばしをやっていることに変わりないわけです。  そこで、日債銀がこういう形で不良債権を移しておる、そして日債銀が倒れない限りこれはもう大丈夫なんだということを言っておるわけですけれども、このことを大蔵省は九七年の検査のときにもう知っていたはずなんですね。そして、これについては昨日、東郷前日債銀頭取が回収の極大化に有効だと大蔵省も認めてくれたというふうに言っております。  そこで、私はこれはもし事実とすれば大蔵省が飛ばしの勧めをやっておるというふうに言わなければならないんじゃないかと思うんです。  さらに、東郷頭取は、九月の検査報告書に、この手法は回収の極大化の面で有効であると記載してある、ここまで言っているわけですが、これは事実ですか。
  484. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  日債銀の東郷前頭取が昨日の衆議院予算委員会参考人質疑の中で、大蔵省検査で受け皿会社の活用が有効であるとして大蔵省から何か評価されたといった趣旨の発言をされている点でございますが、検査結果報告書、これは示達書と一緒に日債銀に渡したものでございますが、ここで、この日債銀及び関連ノンバンクの不良資産を子会社、孫会社へ移行する手法は回収財源確保ひいては回収額の極大化の面で有効な面もあるが、損失拡大のリスクを内包していることから、当初は回収を促進するために用いた手法が資産内容悪化の大きな要因となっている旨指摘している箇所を指しているものと思われます。  しかしながら、これは受け皿会社を活用する方法を有効であるとして大蔵省が決して評価したものではございませんで、資産内容の悪化の大きな要因となっているということを指摘したものと承知しております。
  485. 池田幹幸

    池田幹幸君 そういう意図で大蔵省は書いた。その一部分をとって東郷前頭取はそういう発言をしたわけですけれども、いずれにしても私不思議なのは、検査報告書というのは、先ほどの質疑を聞いておりますと、検査部長に出すものだと。何でこれ東郷頭取は知っているんですか。
  486. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) お答えいたします。  先ほども御答弁申し上げましたが、九月の示達のときには金融検査部長、それから銀行局長、国際金融局長連名による示達書のほかに、その示達書の中になお書きとして、検査部長に対する検査官の検査報告書を参照するようにという、そういう記載がございまして、検査部長に対する検査報告書を日債銀に示達書と一緒に渡しているわけでございます。そこで、東郷頭取がその検査報告書の内容をごらんになって、そういう発言をされたものというふうに理解しております。
  487. 池田幹幸

    池田幹幸君 昨日の衆議院における参考人質疑で示達書のこと、今言われましたけれども、このことについては、要するに大蔵省の査定、一兆一千二百十二億円の問題とそれから七千億円の問題が併記されておるということを言われたんだけれども、しかしそれは日野長官が先ほど否定されました。  そうすると、その示達書についてはⅢ分類の一兆一千二百十二億円という数字のほか、どんなことが書かれているんですか。
  488. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 現在の検査結果の通知のやり方と比較、対比して御説明申し上げると御理解していただけるものと思いますが、現在は検査と監督というものを峻別しておりまして、検査が終わりますと検査結果通知というものを当該の金融機関に対して交付いたしまして、監督上の観点からのいろいろな措置につきましてはその検査結果通知とは別な方法でやっております。したがって、現在は示達という言葉は用いておりません。  ところが、大蔵省当時は示達という言葉を用いておりましたのは、単に検査が終了したときに、検査が終了したということを検査の内容を通知するのみならず、もっと大事なことは、示達書の中に書かれていることですが、検査の中で当局が把握いたしましたさまざまな問題点について、こういった点を改善すべきである、指導と申しましょうかあるいは命令と申しましょうか、そういったものが銀行法に基づいて記載されているものが示達書でございますので、何か数字を挙げて結果を指摘するというよりも、むしろこれからこうすべきである、あるいはこうした方がいいのではないかといったことが書かれているのが示達書の内容だというふうに御説明すると御理解いただけるのではないかと思います。
  489. 池田幹幸

    池田幹幸君 そうしますと、第Ⅲ分類の一兆一千二百十二億円と、それから日債銀が言っておった七千億円、その差額については大蔵省はどうしろという、どういうふうな指導をここに書かれたんですか。
  490. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) それにつきましては、どうしろといったようなことはございません。
  491. 池田幹幸

    池田幹幸君 大蔵省は、一兆一千二百十二億円ということを書いた以上、考えておることは、この差額四千億円については関連会社への飛ばしだ、こういったことについてはやめるべきだという、やめさせるべきだという考えがあって書いたんじゃないんですか。
  492. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 当局としての査定は一兆一千二百十二億円ということでございます。これは第Ⅲ分類ですね。したがいまして、その後どういう引き当てあるいは償却をするかということは、当時のルールでは監査法人、公認会計士がその結果を見まして引き当てあるいは償却をするという仕組みになっておりますので、それは示達書の中でこちらが申し上げていることを日債銀が理解すれば、どういうふうにすべきだということは当然おわかりいただけるという仕組みになっていたわけでございます。
  493. 池田幹幸

    池田幹幸君 では、日債銀は当然それをわかってきちんと償却なり引き当てをやりますという形になったんですか。納得したんですか。
  494. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査の示達をしましたのが九月十一日でございますが、ちょうど九月期の中間決算でございますが、その際に監査法人と日債銀は協議いたしまして、査定をされた資産一本一本につきまして日債銀としてはいかなる引き当て、償却をすべきかということを決定したものというふうに承知しております。
  495. 池田幹幸

    池田幹幸君 どうもよくわからないんですがね。  結局、大蔵省はその一兆一千二百十二億と七千億の差額ということをしっかり見た以上は、これを正せという態度であったのだろうと私は思っておったのですが、どうもそうじゃないのじゃないか。  きのうの東郷前頭取の証言とそれから参考人質疑の山口元銀行局長の答弁を見てみますと、結局この七千億円の問題については、検査部が知らない間に山口元銀行局長に出資銀行から問い合わせがあったけれども、これはあえて否定する材料もなかったので容認した、検査部には知らせていないというふうに言っているんです。  そうすると、銀行局と日債銀で一緒になって出資銀行等に七千億だということを思い込ませようという意図がそこにあったとしか思えないんですが、これはどうなんですか。
  496. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) ただいまのお話はちょうど平成九年五月ごろのことではないかと存じますが、四月から検査に入りまして、検査官と日債銀との間では資産の査定その他検査の内容をめぐりましていろいろディスカッションするといいますか、あるいはちょうちょうはっしやるといいますか、行われていたころだろうと思います。  この検査の仕組みも少し詳しくお話しした方が御理解いただけるものと思いますが、何か書類を銀行から引き揚げてきて、銀行の人とはまた別なところで検査官だけがその書類を見るというようなことではございませんで、その書類を見るにしましても、当該金融機関の方と一緒に見ながら、この資産はどうであるかということになります。  つまり、例えば自己査定でⅡ分類になっているものが仮にあったといたしまして、これについて検査官がいろいろな質問あるいは書類の提出を銀行法に基づいて求めるといたしますと、やはりそれは日債銀にとりましては、これはどうも検査官はⅡ分類ではないというふうに考えているのじゃないか、Ⅲ分類と考えているのじゃないかというふうに恐らく御自分の、金融機関側の心証としてだんだん検査の過程を通じて積み上がってくるのじゃないかと思うんです。  恐らく、その七千億という数字もそういった過程で、検査官とのやりとりを通じまして積み上げられた数字を、日債銀としては、どうも金融検査官は大体七千億ぐらいと第Ⅲ分類を査定するのじゃないだろうか、こういうことを自分で心証として得たものを増資を求めた先に対して自分の心証として恐らくお話しになったことではないだろうか。  ただ、それを銀行局といたしましても、日債銀がそういうことを説明しているということは聞いておりますけれども、しかしまだ検査の途中でもございますし、銀行局が検査をしているわけでもございませんし、それを否定するとかあるいはそうだとかいうことはやはり言えませんので、そういうことを日債銀が自分の心証として言っていることを聞いていたということになろうかと思います。
  497. 池田幹幸

    池田幹幸君 どうも検査官と日債銀はそういう形で以心伝心だったと。銀行局長は検査部とは関係なしに日債銀と話をして、七千億円だと日債銀が言っているんだからほっておこうか、こう思ったと。どうももう一つはっきりしません。  ただ、ではこの七千億円の問題、片一方では大蔵省は一兆一千二百十二億ということをだんだん心証を固めつつあったその過程で、しかもその最終段階では一兆一千二百十二億ということをはっきりさせた。その段階で、これはもう重大なことですよね、この食い違いというのは。それは、当時の担当者は大蔵大臣、当時は三塚大蔵大臣なんですが、報告をきちんとしたんでしょうか。
  498. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 検査の結果そのものを御報告するということはなかったというふうに承知しておりますが、ただ増資の計画、特に四月一日に大蔵大臣の談話まで発表されていることでございますので、日債銀として増資が必要であるとか、あるいは増資をするに当たっては債務超過に陥っていない銀行であるとかということは御報告申し上げているというふうに承知しております。
  499. 池田幹幸

    池田幹幸君 この検査というのは、単なる検査じゃなしに、今言われたように増資の問題が絡んでいたわけですね。そこで、三塚大蔵大臣としては奉加帳まで回して増資してくれるようにということをやっておった。その大臣としては、非常にその問題というのは関心のあるところだと思うんですね。  この検査の結果の報告なんですけれども、大蔵省の文書決裁規則上は確かに大蔵大臣に知らせるとは書いていないけれども、しかしこれは慣例上、必ず重要な問題についてはそういったことをやってきたんじゃないですか。
  500. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) おっしゃるように、決裁は、文書決裁規則で局長あるいは部長というところに決裁権限が委任されておりますけれども、私が聞いておりますところでは、案件によっては、決裁はそれとして、内容についてさらに上のレベルの方へ概略を御報告するケースもあったと聞いておりますが、具体的にどうであったかというところまでちょっと、記録が手元にもございませんし、わからないのでございますが。
  501. 池田幹幸

    池田幹幸君 この問題いろいろと聞いていきますと、どうも一番肝心かなめの大蔵大臣のところでぼやっとするのです。一番責任のある大蔵大臣がどこまで知っていたのかということがはっきりしない。  特に、次の松永大蔵大臣のことについても、今言われたことが同じように起こっているのですね。大蔵大臣にまでは検査結果は報告していないということになっておるのですが、しかし両大臣にしても、部下が報告を持ってこなかったからということで、それで済ませておける状態じゃなかったろう。特に、松永大蔵大臣の場合にはそれが言えるのじゃないかと思うんです。  というのは、松永大蔵大臣就任の経緯というのは御承知のとおりで、そのときに時の橋本首相は松永氏起用の理由について、検事という前の仕事も蔵相という仕事の重さに適任だ、今回調査をするということ、調査をする厳しさが必要だと、そういうことを考えて起用したというふうに言っているわけです。要するに、当時の接待汚職事件というものに絡んで三塚大蔵大臣辞任された、その後を受けた松永大蔵大臣ですからそういうことになったわけですね。そこで、松永大蔵大臣も、私も法曹界に長年いた経験を生かして充実した調査がなされるようにしていきたい、こう言っているわけです。  そこで、今問題にしているのはこの直後の問題のことなんですけれども、当時は接待汚職事件に絡んで大蔵検査官とそれから金融機関のなれ合いが問われて、検査の正確さが接待によって損なわれている問題が問われておったわけですね。不良債権の検査に手心が加えられたんじゃないかとか、不良債権の処理がそのためにおくれたんじゃないかとか、そういったことが指摘されていた時期でした。ですから、松永大蔵大臣としては、これはもう部下が持ってこないからどうのこうのなんて言っていられない、何としても早く資料を持ってこいということをやらなければいけない、事務方からの報告をうのみにすることを許されるような状況じゃなかったと思うんです。  小渕総理、私は、松永大蔵大臣もこの検査結果のことについては報告を受けていない、知らない、一兆一千二百十二億円の数字のことについても知らないというふうに、いろいろ事前に聞きますと大蔵の方から言われるわけです。知らせていないとも言われるわけです。私は信じられないんですね。  そこで、小渕総理に伺いたいんですけれども、松永大蔵大臣が検査結果を知らされていなかったし、またみずから知る努力もしなかったというふうに信じられますか。いや、総理にお伺いしたいんですが。
  502. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私も確とはお答え申し上げられないのですが、先ほど福山委員にこういうことでもあろうかと申し上げた、自分がその場にいたらというような、それにしかすぎませんけれどもね。  松永さんのお立場では、この四月一日に再建を呼びかけて、これはまあ思い切って呼びかけられたわけでございますね。そして、それが七月二十九日には増資が済んでおります。したがいまして、大蔵大臣としてはもとより債務超過ということは思っておられませんし、また現実にそういう事実は当時なかったわけでございますから、無事にこの増資が完了したというそこのところは関心を大きく持っておられたと思います。  そのときは、いわゆる七千億円という話が御承知のようなことで話としてあるわけですが、そのことも多分大蔵大臣は特に関心はお持ちにならなかったと思います。というのは、関心を持たれたのは増資が無事に完了するかどうかであって、債務超過じゃない限りはその数字がどれであろうと大蔵大臣としてそう関心をお持ちになる必要はない心境だったと想像いたします。  そして、一兆千二百十二億円がわかりますのは九月でございます。そのときにはもう既に増資は完了しておりますし、一兆一千二百十二億円というのは、これは検査の結果の示達でございますから、これも債務超過という示達ではございません。  ですから、銀行局長がそのことを大臣に御報告したかどうか、債務超過ではないし、増資は完了しているし、恐らく大蔵大臣がそのことにそんなに関心を持たれたとは私は想像いたしません。したがって、銀行局長もそのことをわざわざ御報告をしたかどうか、多分それはそうでなくても不思議ではないなというのが、これは私の想像でございます。
  503. 池田幹幸

    池田幹幸君 宮澤大蔵大臣の想像はそれとして伺いますけれども、しかしこれだけ調査を期待される、それからあれだけ接待汚職で問題になって、そしてどうも検査官がやっていることが信じられないと言われているわけですからね。それについていろいろ疑惑が持たれておるときに、そこへ乗り込んだ大蔵大臣が検査官のやったことをうのみにして、もう一回きちんと調べろ、数字を見せろというようなことをやらない。そういうことに関心を持っていなかったろうと言われるのは私は納得できないですね。恐らく、そういうことはやられたんじゃないかと私は思っておるんですが、具体的にその問題については後でお伺いします。  そこで、日野長官に伺いたいんですが、ことしの二月十六日の衆議院予算委員会における我が党木島議員の質問に対して、日野長官はこう答えているんです。日債銀の自己査定は関連会社について甘いと報告し、大蔵大臣はその趣旨を確認すべく委員会で発言したと承知しておりますと。つまり、自己査定について大蔵大臣に対してどういう報告をしたのか、大蔵大臣は審査委員会でどんな発言をしたのかという質問に対する答弁なんです。ということは、関連会社について自己査定が甘い、こう大臣報告したと。大臣は、甘いというのはどういうことなんだ、どんなに甘いんだ、どの程度甘いんだと当然聞かれたと思うんですけれども、どうなんですか。
  504. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 佐々波委員会に御出席になります大蔵大臣に対しまして、事務当局は、先ほどお話がございましたように、銀行から提出された自己査定結果を過去の検査結果等に照らして検討した結果、日債銀については査定が甘いと考えられる関連会社について、頭取に対して、これに対する考え方を十分に確認していただきたいということを申し上げたというふうに承知しております。  大臣は、その審査委員会に御出席になりまして、これを審査委員会の場で御発言されたものというふうに承知しております。そして、審査委員会におきましては、こうした大蔵大臣の御発言あるいは各委員の御意見などを踏まえた上で、頭取からの直接のヒアリングあるいはさらなる議論を経て議決に至ったものというふうに承知しております。
  505. 池田幹幸

    池田幹幸君 そんなあなた、甘いんじゃないかと聞かれて、頭取がなるほど甘いですと言いますか。大臣が甘いんじゃないかと聞くときには、自分はその数字を持って、何に照らして甘いということを持たないと聞けないじゃないですか、そんなこと。
  506. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 資産の査定が甘いということを大臣が頭取にお聞きになれば、頭取は一体何を言われているかということは、もうずっとこの一年近くやってきているわけですから、具体的に数字を挙げてこうだとかああだとかいうことを大臣から言われなくても、当然それはすぐにぴんとくるはずではないかと思います。
  507. 池田幹幸

    池田幹幸君 そんなでたらめなことはないでしょう。審査委員会で選ばれた六人がそこで真剣な討議をするんですよ。そのときに、自分は何も持たないで、君は甘いんじゃないか、ははあ恐れ入りましたと言うと思っているんですか、そんなこと。いいかげん過ぎるんじゃないですか。もう一回答えてください。
  508. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 審査委員会の目的からお話しすれば御理解いただけると思いますが、審査が行われた昨年の三月時点においては、申請銀行が審査基準に適合しているかどうかを審査することを目的としているわけでございまして、過去の検査結果とか、あるいは自己査定の結果を議論することを目的とした場ではないわけでございます。  したがいまして、確かにその個々の検査結果を大臣に御報告することはなかったわけですが、審査基準上問題となる債務超過かどうかとか、あるいは再建可能性があるかどうかという点についてはきちっと御報告されたものというふうに承知されております。  日債銀につきましては、その前の年の平成九年九月の中間決算やあるいは経営再建策の実施状況を踏まえまして、その基準を満たすということを判断しておりましたことから、その旨大臣には御報告したというふうに承知しております。
  509. 池田幹幸

    池田幹幸君 とても納得できません。しかし、角度を変えてその問題について聞きます。  私は、当然のことながら、四千億円の飛ばしがありますと報告を受けて、それをつかんで大臣は出たんだろう、出席されたというふうに思うんですけれども、どうしてもそうじゃないんだとおっしゃるわけで、何にも持たずに出られたと。  そこで、ちょっと角度を変えて聞きますが、松永蔵相の責任が重大だとさっき申し上げましたけれども、九八年の資本注入を決める際に、佐々波委員長から特別の依頼を松永大蔵大臣は受けているわけです。これは議事要旨にあるわけです。  そこで、松田事長にちょっとお伺いしますけれども、佐々波委員会は限られた時間の中で各銀行の資産内容について正確性、妥当性ということを確認していこうということですから大変な仕事なんですが、そこで委員の重要なメンバーである大蔵大臣に精査を求めたと。精査というのは具体的にどのようなことを依頼されたんでしょうか。何で大蔵大臣にそういう各銀行の正当性、正確性、妥当性について精査を求めたのか。そして、その依頼の結論として、大蔵大臣はその精査の結果をどのように委員会報告されましたか。
  510. 松田昇

    参考人松田昇君) お答えいたします。  先生御指摘のように、審査の始まる前に委員長から、審査委員、当時六名でございましたけれども、その中で検査の権限をお持ちで実際に検査の実績をお持ちの大蔵大臣とそれから金融機関の考査をやっておられてその権限と実績をお持ちの日銀の総裁、二人に対して依頼がございました。  それは、一つは、申請に係る事実関係について誤りがあるかないか、それについてチェックをお願いいたしたい、二番目としては、それに絡んで、審査について留意すべき事項があればそれについて御指摘もいただきたい、こういうことでございました。  それに従って、私どもは、十年三月末の自己資本の比率を上げるということについていいか悪いか、それについての審査をいたしたわけでございますので、健全性確保計画と呼ばれます計画をとりまして、いろんな数値、載っておりますけれども、そのほかに非公式ということを前提に各金融機関から十年三月末の、ちょうど二十日間ぐらいのタイムラグはありますけれども、見込み値ではあるけれども、まず自己査定を出してくださいと、それを大蔵大臣と日銀総裁にチェックをお願いした、こういうことでございます。  それで、各審議を始めますときは、個別銀行ごとに、大蔵大臣と日銀総裁からまた個別にそれぞれチェックをされた結果をお聞きしました。  主力になりましたのは、検査結果もさることながら、主力はそのとき銀行からお取り寄せになったラインシートですね、自己査定を直接支えるラインシートを直接大蔵省と日銀の担当官がお調べになって、その結果を大臣総裁にお上げになって、それを総括的な意見としてお聞きしたと。ちょうど一週間ほどの日程の中で二十一行の是非を決めなければいけないという時間の制約がございましてそういう方式をとってやってきた、こういうことでございます。
  511. 池田幹幸

    池田幹幸君 始まる前、事前にというお話だったんですが、これは私の理解では、佐々波委員長から検査の権限と実績を持っているんだから、その検査結果を踏まえて、日債銀が出してきた不良債権の今言われた見込み値のチェック、これをしてくれと。  これは委員会の総意ということでお願いしたというふうに私は伺ったんですが、そうではないんですか。
  512. 松田昇

    参考人松田昇君) それは委員長から特にお二人にお願いをしたということだと思います。
  513. 池田幹幸

    池田幹幸君 結構です。  それでは、委員長から要するに頼まれたわけですから、松永大蔵大臣は事務方に当然その検査結果資料を見せろということはやられるはずなんですけれども、ここがもう一つはっきりしないんですね。  検査結果の具体的なケースは大臣に知らせなかったと先ほどの話もある。やっぱり松永大蔵大臣のときにもそういうふうな話があるんですが、知らされなかった大臣は、ちゃんと教えろということでその数字を要求されなかったんでしょうか。
  514. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今のことはなかなかお答えされる方がいらっしゃらないようなので。  思いますのに、ラインシートですね、大蔵省の検査の専門家たちは、御依頼を受けて調べて、それは略式ですが三月末の予想のバランスシートとあわせまして、それを大蔵大臣は頼まれて帰られて、そして恐らく一日ではできませんでしょうが、大変一生懸命やったんだと思います。  その間、この話は、今から御回想なさいますと、何でそんな大事なときにしなかったのかねという感想をお持ちになると思いますけれども、雰囲気は、既に増資ができて再建に乗っている、しかも債務超過ではないという雰囲気の中で進められておりましたから、大臣としても、佐々波委員会から預かられた資料について事務当局にチェックをおさせになって、それについての意見を委員としてお述べになる、そういう気持ちでおられたと思うんです。  一兆千二百十二億円という数字は、確かに検査部は持っておったわけでございましょうけれども、そもそも債務超過というような疑念が全然わいておりませんから、したがって佐々波委員会から受け取られました資料について誠実にお答えになればいいと、大蔵大臣はそうお考えになったと私は想像いたします。  それで、恐らく大臣に事務当局が御報告いたしましたのは、チェックをいたしました、それでどうも債務について甘いところがあると申し上げたといいますのは、これはおっしゃいますように一兆千二百十二億円と七千億円の間の見方の違いのところを言っておるに違いございませんけれども、そういう甘いところがございますから、これは佐々波委員会がよくもう一遍東郷頭取にお確かめになる必要がございますと、こういうことを大臣に私は報告したと思うんです。大臣は、それをそのとおり佐々波委員会でおっしゃったんだと思います。  しかし、その中にはもう債務超過という問題はそもそもございませんから、大臣としてはそういうことで監督官庁としての三月末のいわば見通しに基づく銀行の見積もりについての意見を言われた、私はそういうふうに思いますので、どうもその間に不自然に私には思われるところがないので、もしこれは債務超過だということが大蔵省あるいは大蔵省銀行局、官房検査部ですか、にあったとすれば、それは大臣報告されることはあったかもしれませんけれども、そういうことはなかったし、また大臣が佐々波委員会について報告されることも銀行から出したデータについての評価ということでございましたから、そういう報告は別になかっただろうなと。  今になりますと、大事なことが抜けているんじゃないかという印象をお持ちになるかもしれませんが、そのときはそういうふうに思った者は恐らくいなかったのではないかと私は想像するんです。
  515. 池田幹幸

    池田幹幸君 宮澤大蔵大臣、いろいろ想像なさったわけですが、間違いが大体三つほど大きなところであるんです。  一つはラインシートの精査の問題、これについては一週間もかけていません、二、三日。そのやり方も信頼できるものじゃないというのが一つあります。  それから、大事なことを言われたんですが、審査委員会の中で一兆一千二百十二億と七千億円の差額、こういったところについて疑問が持たれたということについて、大蔵大臣はそれに答えるための準備だけしていればよろしいんですということを言われたんだが、審査委員会にはこの一兆一千二百十二億という数字は上がっていないんです。それが一つあります。  それから、債務超過の問題。債務超過について余り問題になっていないようにおっしゃるけれども、これは金融危機管理審査委員会議事要旨の中でもやっぱり大きな問題になっておったんです、大きな問題になっているんです。だから、わざわざ大蔵大臣にそのことについて調べてくれということを言っているんですよ。ですから、大蔵大臣は債務超過ではないかなという疑いの目を持って改めて調べなければいけない立場にあったんですよ、松永大蔵大臣は。その点は、宮澤大蔵大臣の想像は間違っておったということをまず申し上げたいと思います。
  516. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ラインシートに一週間もかかって調べたなんて申し上げておりません。短い時間の間で多分徹夜をしてやったということを聞いております。  それからその次に、一兆千二百十二億と七千億の差と申しましたのは、私が甘いというのは何のことだと、大蔵大臣が事務当局から債務の計算が甘いところがございますと言われてなすったのは何のことかと言えば、解説的に言えばその問題でございましょうと今申し上げたのであって、佐々波委員会でだれもそういうことを言ったわけではございません。  それから、当時の佐々波委員会の中で、日債銀について債務超過があるという御議論があったんでしょうか。(池田幹幸君資料を手渡す)  「関連会社の不良資産については、頭取からの聴取においても十分明確になっていないが、現時点で、債務超過のおそれは全くないのかどうか、大蔵大臣日本銀行総裁の考えを明確にしてほしい。」と、こういう御発言があったわけですか。なるほど、わかりました。  これは恐らく審査をされる側で確かにされなければなりませんから、債務超過であれば公的資金の導入はできませんので、確かに大蔵大臣に御調査を願いたいということの中に、なるほど記録としてはあったかもしれません。
  517. 池田幹幸

    池田幹幸君 その差額の問題についてはそういう形で理解したということでそれは結構です。結局、今お読みいただいたとおり、債務超過の問題、それから飛ばしの問題、そのことについては非常に審査委員会の中でも関心が持たれておったわけですね。  そこで、日債銀の飛ばしについて今のように全員に関心を持たれておった中で、これは関連会社についての自己査定が甘いというふうに大蔵大臣報告すれば当然大きな問題になったはずだし、大蔵大臣に対して、甘いということはどんなことなんだ、どのくらい甘いんだ、具体的な数字はどうなんだということで当然求められたと思うんですけれども、松田事長にひとつその点を伺いたいと思います。
  518. 松田昇

    参考人松田昇君) 先生御指摘の点でございますけれども、結局仕組みとして、大蔵大臣と日銀総裁からそれぞれ事実関係についてお伺いした上で、先ほど来出ておりますように、関連会社については甘いところがあるから直接頭取に確かめましょうという御指摘もありましたし、それから経営の再建計画が健全に進捗しているかどうか、そういうことについても留意して聞きましょうというような御指摘もあったように覚えております。  そこで、頭取ヒアリングではその二点を聞いた上で、なお戻ってきて、さらに進めてまた委員同士でいろいろお話をして、それで最終的に債務超過ではない、それから審査基準の一から五まで全部パスするということを審査委員六人全員で共通の認識を持って決定したと、こういう経過でございます。
  519. 池田幹幸

    池田幹幸君 いや、甘いということを先ほど日野長官報告されたんだということを言っていますから、甘いと聞けばどれほど甘いんだというふうに当然聞かれたんじゃないですかと伺っておるんです。
  520. 松田昇

    参考人松田昇君) お答えいたします。  甘いという御指摘がございましたので、頭取ヒアリングでもその点についてどういう査定をしているのか、それからどういう考えでやっているのかというお話を聞きました。それから、別の委員からも飛ばしについての質問もありまして、頭取からその点もヒアリングをして、その上で審議をして債務超過ではないという認識を共通にしたと、こういうことでございます。
  521. 池田幹幸

    池田幹幸君 七千億円という数字は恐らく各委員の中にあったんだと思うんです。一兆一千二百十二億という数字は知らせていないからなかったんだと思うんですけれども、それで七千億という数字が委員の中にあって、そんな数字も全然知らされないで、それで大蔵大臣から大丈夫です、債務超過ではありませんというふうに言われてほかの皆さん納得したとしたら、これは私はとんでもない話だと思うんですね。それこそ甘いというか何というか、ずさんきわまりないというふうに思うわけですが、結局、今言われたようなそんな形の議論で終わったんだとすれば何をか言わんやだと私は思います。  そこで、さらに伺いたいと思うんです。今私が示した佐々波委員会の議事要旨の中からなんですけれども、その委員は、「関連会社の不良資産については、頭取からの聴取においても十分明確になっていないが、現時点で、債務超過のおそれは全くないのかどうか」、こう聞かれているんですね。はっきりしていないんだということを言って、それで調べろと言っている。それから、「今回の申請額の償還財源としてみた場合に、収益が非常に少ないという気がするが」どうなのかと、こういうかなり突っ込んだ質問まで出ているんですよ。  これをちゃんと審議されたんですか。大蔵大臣はこういう数字を持って当然出ておられたと思うんですけれども、いかがですか。
  522. 松田昇

    参考人松田昇君) お答えいたします。  まだ議事録を全面公開いたしておりませんので細かなことは申し上げられませんけれども、日債銀の審査の過程で今、先生御指摘のような二つの議論が最終的な審議の席で出たことは間違いありません。
  523. 池田幹幸

    池田幹幸君 結局、数字で答えられたんでしょう、大臣は。
  524. 松田昇

    参考人松田昇君) 具体的な数字を述べられたかどうかは定かじゃございませんけれども、いずれにしても債務超過でないということと、それから収益還元力もあるというようなことの御発言は承ったように思います。
  525. 池田幹幸

    池田幹幸君 私は、大臣は数字をちゃんとつかんでおってやったんだと思うんですがね。  昨日、松永元大蔵大臣がテレビで発言されております。それによりますと、守秘義務があるから口外できないと、このことに関して言っておられるようです。今さら何が守秘義務だと私は言いたいんですが、検査結果を知っていたということはこの御発言から明らかですよね。検査結果を知っているんだ、数字も知っているんだ、だけれども守秘義務があるから言えないんだと。とすると、結局知っていたということになって、知っていながら、いろいろ聞かれて数字を示さない。  実は、大蔵省の検査では一兆一千二百十二億円の第Ⅲ分類があるんだ、四千億円の飛ばしがあるんだと、そういうことを言わなかったとすれば、これは私は背任にすら当たるのじゃないかと思うんですね、知っておれば。私は知っておると思うんですけれども、どうしても知っていないというふうにおっしゃる。これはもうとんでもない話だというふうに私は思います。  要するに、松永大蔵大臣は知っているけれども言わないよと言っているのに、何で大蔵省当局は大臣は知らないんだ知らないんだと言い続けるのですか。
  526. 日野正晴

    政府委員(日野正晴君) 金融監督庁といたしましては、私どもが知っている限りのことを申し上げているつもりでございます。
  527. 池田幹幸

    池田幹幸君 要するに、知っていても知っていなくても松永大蔵大臣の責任は極めて重大なわけです。要するに、検査結果も全部握っておる、そういう人が、そういう大蔵大臣が、事実関係について特段の誤りはありません、債務超過でもありませんというふうに発言する。それを委員の皆さんが信用する。これは甘いと思うけれども、一応信用する。ということになりますと、こういう点では松永元大蔵大臣の役割はまさに決定的なわけですよ。それをみんな信用して、そうか、債務超過じゃないのか、それじゃ公的資金を投入しよう、こういうことになるわけですから。  何とも私は言いようがありませんが、同じことを繰り返し言うつもりはありませんけれども、ともかく審査委員会のそのやり方は、もしそんなことでやられたとしたら大変ずさんだというふうに私は言わざるを得ません。  そこで、一つ紹介しておきたいのですが、この議事要旨の中で、今井委員が最後の段階で発言しているのですけれども、「子会社等を介在させての所謂飛ばし問題についても、悉皆審査が出来たとは思っていないが、懸念される場合に関し、分かる範囲において調査をした積もりである。」というふうに言っておられるのですが、もしそういう形で実際数字も示さないで大丈夫だ大丈夫だと言われてそれで済んだのなら、確かにこういう感想を持たれるだろうなというふうに思うんですね。  一体、委員の皆さんは、当時の松田さんも含めて、こういう認識でこの審査を終わったのですか。
  528. 松田昇

    参考人松田昇君) 今井委員の考えというか御意見は御意見ですが、私どもも精いっぱいやらせてもらったと思っています。
  529. 池田幹幸

    池田幹幸君 主観的に精いっぱいなさったということを私は否定するつもりはありませんけれども、こういうシステムの中では幾ら一生懸命やったって、これは国民に対して本当に責任を持った結論を下せたとは言えないのじゃないかと私は思います。  これはもう重大な問題です。これから七兆四千五百億円さらにまた公的資金を投入しようという段階に来ております。こんな問題も明らかにしないでそんなことができるはずがない。とするならば、参議院においては、衆議院で行われたような参考人ではなしに、きちんとした形で証人喚問をすべきだろうと思います。  そこで、私は、当委員会における松永元大蔵大臣初め、三塚元大蔵大臣、松下元日銀総裁、これはもう既に理事会で証人喚問要求をしておりますけれども、それに加えて山口元銀行局長も加えて証人喚問を要求したいと思います。  さらに、その九七年の検査結果報告書と示達書、これもあわせて当院に提出していただきたいと思いますが、委員長
  530. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) ただいまの池田君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会で協議することといたしたいと存じます。
  531. 池田幹幸

    池田幹幸君 では、宮本委員関連をお許しください。
  532. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 関連質疑を許します。宮本岳志君。
  533. 宮本岳志

    宮本岳志君 日本共産党の宮本岳志でございます。  去る二十一日未明、JR山手貨物線で工事をしていた方々五人が臨時回送列車にはねられて死亡するという痛ましい事故が発生いたしました。  私は、この事故でお亡くなりになった五人の方々の御冥福を心からお祈りするとともに、残された御家族の皆様に心からお悔やみを申し上げるものです。  この事故で亡くなった方の御遺族から二十三日に我が党に手紙が寄せられました。こういうものです。  「おとなしい性格、優しくていつもにっこりと笑っている人でした。」、そして「事故の様子を知れば知るほど、防げたはずの事故だったとくやしい思いがこみあげてきます。これまでも同様の事故は何度も起きていました。犠牲になるのはいつも下うけの、そして多くは出かせぎの現場作業員です。」、「二度とこのようなことが起きないように、原因の究明と再発防止の手だてを」と切々と訴えておられます。  まず総理に、防げたはずの事故だったというこの声も受けて、原因究明と再発防止への決意をお伺いいたしたいと思います。
  534. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今回、JR東日本山手貨物線におきまして、工事中の作業員が列車にはねられ、五名のとうとい命が失われたことはまことに遺憾であります。  今後、このような事故を防止するため、事故原因を早急に究明し、万全の再発防止対策をとるよう関係者を指導してまいりたいと思います。
  535. 宮本岳志

    宮本岳志君 そこで、この重大事故の原因を明らかにすることがどうしても必要だと思います。  まず、事実関係をお伺いしたいんですが、運輸大臣、今回の事故の概要と、特にその原因について報告してください。
  536. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 関係者の御遺族に対して、まず心からお悔やみを申し上げたいと思います。  今、委員から二月二十一日の事故の内容について多少御説明がありました。私の方からは、本件の事故の原因については現在調査中でございます。回送中の臨時列車に作業員が触車したものであり、工事着手の際に必要な列車運行確認が行われていないと推定されるなど、基本的なルールが守られていなかった可能性が高い、そのようなことから、労働省また警視庁、そして運輸省で今調査をいたしているところでございます。
  537. 宮本岳志

    宮本岳志君 今回の事故は、現場責任者にダイヤ表すら渡っていなかったということが大問題になっております。  JRは、当初ダイヤ表は作業者側から請求されなかったからなどとして、ダイヤが伝わったかどうかの確認すらしていなかったということですが、これはとんでもない話です。臨時回送列車が伝わっていなかった、列車が来ないと思い込んでいるんですから、当然見張りについてもおろそかになるわけです。ダイヤというのは勝手に変わるわけないんですから、JRが変えたわけですから、列車を走らせる者が、つまりダイヤを変えた者がダイヤを伝える、変更を伝える。運輸大臣、これは当たり前のことじゃないですか。
  538. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 今申し上げましたように、事故原因はまさに調査中でございます。委員の御指摘ももっともの点もございます。そういう意味では、どういう形にしていけば二度とこのような事故が起こらないか、私ども徹底的な調査を進めてまいりたい、こう思っております。
  539. 宮本岳志

    宮本岳志君 JRの安全軽視の姿勢は今に始まったことではないです。これまでも同じような接車死亡事故が繰り返されてまいりました。  運輸大臣、JR発足後こうした接触事故が何件で何人が死亡しているか、お答えください。
  540. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 線路内におきまして作業中に作業員が列車にはねられるいわゆる触車事故について、最近のJR各社の状況を見ますと、現在詳しくは精査中でございますが、平成五年以降、今回の事故も含めまして二十一件発生しておりまして、これによりまして三十六名の方々が死傷しておるという状況でございます。
  541. 宮本岳志

    宮本岳志君 私どもの入手した国労の調査によると、JR発足後百十人と膨大な数が出されております。あなた方の数でも五年間で三十六人、昨年は何と一年間に五件、八人の方が亡くなっている。  運輸省はどんな対策をとり、JRはどんな報告を行ったか、お答えください。
  542. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 御指摘をいただきましたように、昨年の一月、二月、同じような事故が続きました。事故を起こした各社に対して警告を行うとともに、同種事故の再発防止を図るため、JR各社など関係者を集め緊急鉄道保安連絡会議を開催し、触車事故防止の総点検等を実施したところであります。  正直申し上げて、その後事故が少なくなり、一定の成果があったかと考えてはおりましたけれども、甘かったと今反省をいたしております。
  543. 宮本岳志

    宮本岳志君 甘かったというお話ですが、運輸省は事故のたびに警告というのを出しております。私もその警告というものも見せていただきました。また、警告は報告を求めておりますので、警告に基づく報告というものも出されております。  JR東日本はちょうど一年前にも中央線青柳駅構内で今回と同じような接車事故を起こして、一名が亡くなりました。新潟運輸局長名の警告が出されて、これに対してJR東日本が出した報告というのがここにございます。中身を読みますと、「作業責任者は、運転指令等関係各所と必要な事項についての打ち合わせを確実に行う。」、あるいは「列車見張人を配置すべき作業においては、その配置を確実に行う」。一年前にJRの方から運輸省にこういうふうに報告をしております。  ただ、こういうことが全然守られていない、相変わらず同じ事故が繰り返されているじゃないですか。一体何人の人が亡くなったら本気で対策をとるのか。運輸大臣、JRはあなた方の指示などまじめに受けとめていないんじゃないですか、いかがですか。
  544. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) まず最初に、安全というものをどう守るか、これはまず、運輸省の仕事といたしまして、お客様それから一般市民、この安全というものを徹底して守る。これは最近でも、航空会社に対しても私自身厳しい追及をいたしているところでございます。  そういった意味では、まず第一に、安全というものはその定義になっていくだろうと。今回の労働災害、こういうケースでございますので、運輸省の一つの権限、また労働省の権限、両者あわせながらしっかりやらなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  545. 宮本岳志

    宮本岳志君 今まであなた方が警告やいろいろやっても一向に根絶されないんだから、今回も警告を出したというだけではもうだめです、今まで出してもだめだったんですから。報道によりますと、JR東日本だけで今回のような間合い作業、つまり列車をとめずにやる作業が百から二百、一日にある。全国では膨大な数になります。この報告を見ましても、JRはまさに下請任せの姿勢というのは何ら変わっていないです。鉄道事業者みずから安全対策をやる、正すと何も触れていないわけです。  運輸大臣、こういう状況ですから、鉄道営業法に基づく省令である鉄道運転規則に反する、その立場で厳しく指導すべきじゃないですか。
  546. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) そこは先ほどから申し上げておりますとおりに調査中でございます。  まず第一に、ルールというものがあり、それをしっかりお互いが守りながら仕事をやっていたか、そこは当然追及されなければならない。そのことがはっきりわかった時点でどう改善していけるか。また、他のJR、他の民鉄も二度と同じようなことが起こらないように注意を促していかなきゃならないということが一つであります。  それからもう一つは、科学的に何かやる方法はないんですかと。列車が近づいたときに、もしルール違反をしてでも、万が一の場合でも事故を起こさない方法はないものか、この辺も十分検討してまいりたい、こう思っております。
  547. 宮本岳志

    宮本岳志君 そのルールがきちっと責任あるもので定められているかということが問題なんですよ。  鉄道運転規則第四条では、鉄道事業者は、線路、電車線路または運転保安設備の保守、工事等を行う場合、細則を定めてあらかじめ地方運輸局に届け出なければならない、こういうことになっております。この細則にはこうした保線作業等の作業行動についての内容は含まれておりますか。
  548. 小幡政人

    政府委員(小幡政人君) 運輸省で決めております細則には含まれておりません。それに基づきまして事業者が決めておる内容に入っておるということでございます。
  549. 宮本岳志

    宮本岳志君 そこに運輸省の責任が問われていると思うんです。安全作業のためにどういう基準を守らせなければならないかという基準もない。全部事業者任せでしょう。そして、現実に事業者はみずから決めたマニュアルすら守っていないが、運輸省はそのチェックすらやっていないじゃないですか。やろうと思えばできるんですから、運輸省が一定の基本を示して鉄道事業者に細則として届けさせる、そういう措置をとるべきではないですか。
  550. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) そこは、先ほどから申し上げておりますとおり、まず第一に、お客様、市民の安全。作業現場の場合は、これは例えば建設現場もあります。工場現場もあります。まさにそういう場において、どういうルールを我々が民間の皆さん方にお願いしていくか、また規制をしていくか、こういう問題になるであろうと思います。  そういったものを、全体を見回しながら、しかしながら安全が確保できるように私ども再チェックをいたしますということを申し上げております。
  551. 宮本岳志

    宮本岳志君 大体、鉄道事業者としてのJRの責任というのは、非常に重いと思うんです。  先ほど、建設現場の話をされましたけれども、今回のこの接車事故というのは、ただ単なる工事現場が危険だという話ではなくて、列車が走っているわけですよ。そして、列車は鉄道事業者が走らせているわけですよ。だから、当然間合い作業については、列車を走らせる鉄道事業者が安全のために責任を持つのは当然だ。これだけ重大な事態が続いているわけですから、この際、せめて間合い作業というときだけでも常時JRの職員が立ち会ってやると。これ、どうですか、運輸大臣
  552. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) これは、先ほどから申し上げておりますとおり、工場の中での現場建設現場、すべて発注者が立ち会わなければならないのか、どういうチェックの仕方があるのか、まさにこれから詰めていく議論でありますので、どうぞ再検討を行うということで御理解を賜りたいと思います。
  553. 宮本岳志

    宮本岳志君 しっかり検討をしていただきたい。  同時に、事故のたびに警告が出されていますが、地方の陸運局長が事故の当事者にしか出していない。労働省の場合は全事業者に要請を行っております。今こそ運輸大臣の名前で、全鉄道事業者に対して安全総点検を呼びかけると、やるべきだと思いますが、いかがですか。
  554. 川崎二郎

    国務大臣(川崎二郎君) 私の名前ではございませんけれども、各地方からすべての事業者に連絡をさせていただいて、総点検をお願いしているところでございます。
  555. 宮本岳志

    宮本岳志君 次に、労働省にお伺いいたします。  今回の事故を労働安全衛生法に照らしてどう受けとめているか。発注者であるJR、さらに元請である保安工業株式会社、この法的責任はどうなっているか。発注者のJRも元請の保安工業も現場に管理者を置いていなかったということがはっきりしておりますが、これはいかがですか。
  556. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今回の事故につきましては、労働省、私どもといたしましても大変残念であり、重く受けとめておるところでございます。  御指摘ございましたような点につきましても、我々、事故が起きました直後、品川の労働基準監督署の監督官等が現場に参りまして、関係機関と合同で、そういった点も念頭に置きつつ、実情、原因等の調査を行っておるところでございます。その後、本省担当官も含めましてさらに調査を行っておりますので、そうした調査結果を十分見きわめて、安全衛生法等の問題に照らして我々対処してまいりたいと思っております。
  557. 宮本岳志

    宮本岳志君 一つだけ建設大臣にお伺いいたします。  この元請である保安工業株式会社というのは、建設大臣の許可事業者だと思います。この会社は今度の仕事をほとんど下請に丸投げしていると思うんですが、これは建設業法第二十二条の違反ではないですか。
  558. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) まず最初に、私からも御遺族の皆様方に心からお見舞い申し上げたいと思います。  さて、建設大臣の認可かどうかといいますのは、先生御理解いただいておると思いますが、二つの県にまたがります業者は私の認可でございまして、単独県であれば知事の認可ということになっておりまして、この保安工業は二つ以上の県にまたがっておりますので私の許可を受けた業者でございます。  それで、建設業法第二十二条におきましては、元請負人があらかじめ発注者の書面によってそれを下請にというようなことを了解を得ておればいいんですけれども、それ以外の場合には一括して他人に請け負わせたり、一括して請け負ってはならないという規定になっております。  したがいまして、先生御指摘のように、そういう文書の契約がなければ、あるいはまたその後のそういう経過を確認しなければなりませんが、そういう文書がない場合には違法ということになると思います。
  559. 宮本岳志

    宮本岳志君 時間が参りましたので終わりますが、我が党は、この事故の原因の徹底究明とともに、JRの安全管理責任そして運輸省の責任を明確にすることを求めます。最低、運輸大臣が直接乗り出して、JR東日本だけでなく全事業者に安全総点検を求めるということ。二つ目に、今回のような危険な作業については、最低、運輸省として細則の基本を示すということ。そして第三に、監視体制について、たとえ外部に委託する場合でも、せめて間合い作業については常時JR職員が現場に立ち会う、このことを要求して質問を終わります。
  560. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で池田幹幸君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  561. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 次に、松谷蒼一郎君の質疑を行います。松谷蒼一郎君。
  562. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 自民党の松谷でございます。  大分時間が遅くなりましたので、簡潔に質疑を行いたいと思います。どうかよろしくお願いを申し上げます。  最初に、総理にお伺いをいたしたいと思いますが、昨年の七月、小渕内閣が発足をいたしまして以来、大変な時期でございました。金融問題あり、景気の問題があり、そして行革、財政、いろんな問題を抱えて船出をされたわけでありますが、半年を超えて、現在、小渕内閣に対する支持率は三五%に達するという非常に国民の支持を得て、現在内閣は大きな期待をされているんではないかというように思います。  ただ、小渕内閣としてこういうような方向で政策を打ち出したいという一つの目玉というものが何かなというように思うのでございます。例えば、池田内閣の所得倍増計画でありますとか大平内閣の田園都市計画でありますとか、そういうようなものが思い浮かびますが、小渕内閣として何が目玉の政策であるのかということについてお伺いいたしたいと思います。
  563. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 橋本内閣の後を受けまして内閣を発足いたしました。現下の経済不況の状態をまずは脱却しなければならないということでございまして、経済再生内閣ということで出発をさせていただきました。そのために、まず金融システムの世界的な信認を得なきゃならぬということで二法を通過させていただきましたが、今なお経済の再生のために十一年度予算も含めまして、またその前の補正予算等につきまして、今全力を挙げて努力をいたしております。  御指摘のように、これから何をさらに二十一世紀に向けて考慮すべきかということでございますので、改めてこの内閣として将来にわたりましての新しい方向性につきまして今後とも努力をいたしまして、国民そして国家のために最善を尽くしていきたいということを考えております。  目玉と申し上げて恐縮ですが、これからの日本の新しい姿はどうあるべきかということにつきまして、有識者の皆さんのお話も承りながら、将来にわたっての日本のビジョンを改めて描いて努力をいたしていきたいと思っております。
  564. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 確かに経済再生、これが極めて重要でありますし、小渕内閣としてはいろいろな施策を打ち出してこられた。まことに敬意を表する次第でありますが、例えば池田内閣の所得倍増計画に匹敵するようなものがあるとすれば、恐らく小渕内閣として出されている生活空間倍増戦略プランであります。これも一つの柱ではないかというように思います。  確かに、我が国の生活空間というものは、単に住宅だけではなくて、あらゆる環境すべてを取り巻く空間というものが非常に寒々とした状況にある。ヨーロッパやアメリカに行きますと、その思いを強くするわけであります。そういう意味では、このたび生活空間倍増戦略プランを打ち出された小渕内閣小渕総理の識見に対して非常に敬意を表する次第であります。  ただ、閣議決定はされたんですが、中身をいろいろと分析しておりますと、これというパンチのきいた政策が余り見えないのかなと。与党でありますから余り言えないのでありますが、若干そういう気がいたします。総花的なところがあるんじゃないか。  例えば、この生活空間倍増計画におきましては地域戦略プランが柱になっているんですが、これについては今国土庁を中心にしていろいろな計画の申請をいただいているようでございますが、四百七十六プラン、市町村の数で三千百八十。これでは小渕内閣の生活空間倍増はこれだというのがちょっと見えにくいかなという気がいたします。  そういう意味で、恐らく総理は、そういうことではなくて、おれの考えはこれだというのがあるんだと思うんですが、そのお考えをお示しいただければと思います。
  565. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 地域戦略プランにつきましては、今国土庁を中心に取りまとめをいたしておりますが、総額四兆円という規模で考えておりますが、既に全国の各市町村から総額にして六十兆円に近い要望が出ております。  従来は一市町村単位で事業を展開しようとしておった幾つかの事業もありますが、今般は幾つかの市町村が一緒になりまして、ある意味では地方の三千三百のそれぞれでなくして、もう少し地域がまとまって事業を行うというために今それぞれ検討をいたしております。それぞれの地域の中から生まれ出るよきアイデアを十分実行していくということに意味があろうかと思っておりまして、ぜひこれを実行させていただきたいと思っております。
  566. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 恐らく総理としては深い思いがあると思うんですが、それをぜひ実現されることを希望いたします。  時間がありませんので、次に景気対策、金利、住宅についての質問に移らせていただきます。  せんだって、私どもの同僚議員、片山虎之助委員から野球の何番バッターというような比喩で質問がありました。  景気対策、景気回復のためのいろいろなバッターがあるんだと。その中で、一番バッターは公共投資である、二番バッターは住宅、三番バッターが消費、四番バッターが設備投資。それに対して大蔵大臣の方から、一番バッター、二番バッターは確かに検討を、住宅は若干難しい面がありますが、ただ打力がこの二つは若干足りないんだというようなお話がありました。  確かに、公共事業というのは、官公庁から発注をして、それが多少の波及効果はあると思いますが、景気回復につながっていくものでありますが、それ自体の投資額というのはそう大きなものじゃない。  ただ、住宅の場合は、これは一種の消費でもありますし、大きな意味では個人の設備投資でもあるわけですね。そういう意味では単なる官公庁発注ではなくて、ある意味では民間の消費も含めた大きな形での経済のリーダーになっていけるんじゃないだろうかというように思います。しかも、大体平成九年度の投資額で二十四兆円。これは全体のGDPに対して四・七%であります。しかし、生産誘発効果が一・八倍で、これを加えますと八・七%。さらに耐久消費財等への波及効果が一世帯当たり百八十万円程度ある。そういうようなことを考えますと、大体GDPの全体の一割あるいはそれ以上の効果があるんじゃないだろうかと。  そういう意味では、大蔵大臣としてこの住宅投資についてどんなふうにお考えなのか、御見解をいただきたいと思います。
  567. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは私の申し上げようが悪うございました。  昨日、一番バッター、二番バッターというお話がありまして、私が申し上げようとしましたのは、公共投資政府自分でできますし、住宅も一生懸命金利や税制でお願いをしております、実際しかし金額的にGDPで申せば大きいのは消費と企業設備です、そう申し上げようとしたのでございましたが、確かにGDPでは二十一兆五千億円ですが、あらゆる一そろえのものがこれで住宅が建つと動きますから、その波及効果は大変大きゅうございまして、私ほかの二つを申し上げようといたしましてちょっと申し上げようが不足でございました。おっしゃるとおりと思います。
  568. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 景気が非常に厳しい状況にありますが、その中で若干動き出したのが私は住宅建設だというように思っております。いろいろな指標から見ましても、例えば、住宅展示場に来るお客さんの数もこの十二月、一月ふえてきております。それから、契約段階におきましても、住宅産業関連のところで調べますと前年同月比ではふえてきております。そういう意味では、いよいよ住宅に火がついて少しずつ動き出したかな。これはまさに経企庁長官の言う景気回復への胎動であるなというように思うわけであります。  ところがこれに対して、税制それから土地は土地価格がまた下がってきておりますからこの辺はよろしいんですが、金利の面で若干不安感がある。というのは、現在、住宅金融公庫の金利は二・二%であります。ところが、御案内のとおり、国債の増発等によって長期金利が高くなってきている。二・二%ぐらいまで行って、それからさらに若干下がって今一・九ぐらいでしょうか。しかしながら、まだ高い水準にあります。ところが、この長期金利に財投金利は連動いたします。住宅金融公庫の資金というのは財投資金を原資としているわけであります。そうなってくると、全体の財務状況が非常に住宅金融公庫も厳しくなってきている。その中で、この二・二%の金利をきちっと維持ができるかどうか、この問題が非常に大きな問題として浮上してきているわけであります。  これについて、まずやはり根本的には長期金利を何とか安定化していく必要があるんじゃないだろうか。その点についていろいろな方策があるんだろうとは思いますが、日銀による新規国債の引き受けというのはちょっと別にいたしまして、しかし既存の国債について買い切りの買いオペを行っていくという考え方があります。  これについては、官房長官は比較的前向きの御意見であるというように伺っておりましたが、いかがでございますか。
  569. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 私は、記者会見におきまして、記者の皆さんからの御質問に答えまして、党内はもちろん民間のエコノミストの皆さん方からもいろんな意見があるところであるので、現在の市場の動向を踏まえながら、政策当局はその幅広い議論をしてもらい、政策のまた効果が出るようにしていただきたいということをお願いした次第であります。
  570. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 きょうはもう時間がありませんので、その辺でこの問題については終わりますが、ただ、建設大臣に伺いますが、住宅金融公庫の金利、現在二・二%でありますが、これをせっかく住宅建設に、まさに回復への胎動が始まっておりますので、住宅公庫の金利を維持してもらいたいというように思いますが、いかがでございましょうか。
  571. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) きょう発表したところでございますが、今の二・二は三月十二日まででございましたが、それを大蔵省の御理解もいただいて三月二十六日まで二週間延長いたしました。
  572. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 大変結構なことでございますが、ただ三月十二日が三月二十六日、それで、その申請を若干期限を延ばす、そういうことでなくて、やはりこの景気対策のために非常に重要ないわばエコノミカルスタビライザーとしての住宅建設というものを理解されて、できましたら当分の間は金利を据え置くというようなことで御理解いただければというように思います。  ただ、御案内のとおり住宅金融公庫の財務状況は非常に悪うございます。来年度の予算につきましても、一般会計からの補給金が四千三百五十億、特別損失が千四百二億、公庫はまさに言うなれば破綻寸前であるというような状況であろうかと思うわけですね。ただ、景気対策のために何とか公庫、頑張らなくちゃいけないし、景気対策だけじゃありません、住宅建設の、住宅水準の向上のためにも頑張っていかなきゃならない。非常に苦しい選択を迫られているわけでございますが、こういうような状況の中で、三月二十六日じゃなくて、夏までか秋までかわかりませんが、当分この金利を維持していくという御決意をここでいただけませんでしょうか。
  573. 関谷勝嗣

    国務大臣(関谷勝嗣君) 私はそのように希望するんですけれども、大蔵大臣がいいと言えば、今ここで約束をいたします。
  574. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 それでは、この問題については若干おきまして、次に、防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  沖縄の米軍基地の問題、これは非常に難しい状況でございます。しかし、実は本土におきましてもいろんな問題があるわけで、例えば長崎県の佐世保市におきましては、佐世保港は米軍自衛隊とそれから主要な産業が同居をしておりまして、米軍の艦船が入ってくるたびにいろんなトラブルを起こしているわけでございます。最近も、米軍の艦船が入ってくるということで、今月の二十八日に大規模な市民デモが起こるというようなことも聞いております。その都度佐世保の基地をめぐる問題は揺れ動くわけでありますが、何とかこの辺を、米軍自衛隊地元との間で基本的な枠組みというものをつくっていただけるようにぜひお願いをいたしたいのでございますが、いかがでございましょうか。
  575. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 佐世保における港湾施設の使用につきましては、ただいまお話がありましたとおり、施設が非常に狭隘な中に、米軍自衛隊、民間企業の使用がふくそうをしております。地元においていろいろ問題が生じていることは十分承知しているところであります。  港湾施設の使用計画の実態についての指摘の趣旨を踏まえまして、今後この対策につき防衛施設庁において関係機関とも鋭意調整を図り、できるだけ早い機会に基本的な方向をつけたいと思っております。
  576. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 なお、佐世保弾薬補給所が佐世保の市内にございますが、これについてもいろいろと問題があるわけでございます。これは何とか移転ができないものかどうか、これについて御見解をいただきたいと思います。
  577. 野呂田芳成

    国務大臣野呂田芳成君) 弾薬庫のそばに民家があったりして、大変これは慎重にしなきゃいかぬと思っておるわけで、来年度の予算に八百万円ほどの調査費をとりました。これで調査を進めまして、地元における移転先地の環境づくりも委員にも御協力してもらわなきゃいけませんが、本問題が早期に解決できるように前向きに取り組んでまいります。
  578. 松谷蒼一郎

    松谷蒼一郎君 どうもありがとうございました。  これで終わります。
  579. 倉田寛之

    委員長倉田寛之君) 以上で松谷蒼一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は来る三月一日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十二分散会