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簗瀬進君 私は、ただいま
議題となりました
民主党・新緑風会、
日本共産党、社会
民主党・
護憲連合の三党共同
提案に係る
法務大臣陣内孝雄君
問責決議案につきまして、
発議者を代表し
提案いたします。
まず、
問責決議案の案文及び
理由を朗読いたします。
法務大臣陣内孝雄君
問責決議案
本院は、
法務大臣陣内孝雄君を問責する。
右決議する。
理由
一、 法務大臣は、
我が国の法秩序を守り、人権を擁護することを任務としており、その職責は、法治国家たる
我が国において、極めて重要なものである。
特に、陣内孝雄君は、事実上更迭された中村前法務大臣の後任として、任命されたのであり、法務行政の
信頼を回復することに全力を傾注することが強く期待されていたのである。
しかるに、陣内法務大臣は、前任者同様、その職責を自覚することなく、法務行政の停滞を招き、
我が国の法秩序を乱し、人権侵害を深刻化させており、法務大臣として全く不適格である。
法務行政の正常化を図るためには、陣内孝雄君が、法務大臣の職から退くことが唯一の解決策である。
以上が本
問責決議案を
提出する
理由であります。
次に、
提案の
理由を具体的に説明申し上げます。
まず第一に、いわゆる組織的
犯罪対策三
法案に関する法務大臣としての指揮監督についてであります。
昨日、今世紀最後の皆既日食があらわれました。まさに
民主主義という太陽が黒いベールに覆われていく、そんな印象を持ったのは私一人だけではないと思います。
私も、実はこの本
会議において初めての牛歩を経験させていただきました。決して好きこのんでやったわけではありません、正直申し上げますと。歩きながら、じゅうたんを見、あるいはこの天井のガラスを見ながら、なぜ牛歩という戦術に訴えざるを得なかったのかということを真剣に考えさせていただきました。
まず第一番目に、私もかつて衆
議院を二期やらせていただきました。そういう中で、
委員会のいろいろな議論を聞かせていただきましたが、今回の盗聴法の議論ほど立法者の立法
趣旨が見事に
委員会で全く矛盾したものであるということが立証された
委員会はなかったと思いますが、いかがでございましょうか。(
拍手)
このような明らかな矛盾、
犯罪捜査といいながら実は
犯罪捜査にほとんど役立たない、携帯電話の傍受ができないということはまさに
犯罪捜査では全く無力であるということが見事に立証された、まさにそういう意味では、立法の目的が見事に達成されていないということが
委員会では立証されたと思いませんでしょうか。にもかかわらず、与党は数の多数を頼んでそれを実現しようとする。そして、
野党、もちろん我々も、
国会の中での
議席の数が少ないということは我々認識をいたしております。しかし、やむにやまれぬ気持ちで、やはり言論に訴え、そしてまた
討論、その上での
採決の手段に訴えていく、そういう結果になってしまいました。
私は、このことを見ながら、先ほど牛歩のときの心情を若干触れさせていただきましたけれども、
民主主義とは一体どうあるべきなのかということを個人として真剣に考えさせていただきました。
多数決を尊重しなければならない、これは当然だと思います。しかし、それだけでは足りないと皆さん思いませんか。もう一つは
反対意見の尊重、少数意見の尊重、まさにそこにあるのではないか。この二つが両々相まって初めて、
国民にとって、
賛成と
反対の二つの立場を超えた、本当に
国民にとってプラスの結論が出ると思いませんでしょうか。
まさに、そのために我々
日本の
国会がやっていることはまだまだ、正直申し上げると、
民主主義のレベルとしてはもう少し向上させていかなければならないのではないかと思っているのは私一人ではないと思います。(
発言する者あり)
そして、
発言をボリュームで封じようとするこの不規則
発言。私は、議会の華は不規則
発言であると言ってもいいと思います。しかし、それはまさに案件にぴしっとそぐった、まさに問題の核心をついたようなやじがお互いに与党から
野党から飛び交うような、そういう活発なやじが華になれるような、そういう
国会であってほしいと思うのは私だけではないと思います。
しかし、この議論の中でのやじのあり方はどうであったでありましょうか。本案とは関係ない、
法律の審議とは全く関係ない個人的事情に対する中傷。例えば、我が党の千葉
議員に対して難聴という、そういうやじが飛び交いました。それは、まさに難聴者に対する身体的な差別
発言をやじという形で堂々とおやりになっている。これは円
議員に対する
発言だけではありません。
まさに、皆さん、やじこそ議会の華にしましょう。そして、やじこそ本当の意味での議論にぴたっと、しかもウイットがあってお互いの笑いがとれるような、そういうやじを心がけようではありませんか。
ちょっと余計なことを言わせていただきました。
さて、陣内法務大臣の問責決議の
理由であります。
三
法案が
提出されたとき陣内君は法務大臣ではなかったために、その
提出の責任まで問うつもりはありません。しかしながら、その後の衆
議院及び本院での審議を通じ、その審議時間は全く不十分であったにもかかわらず多くの
問題点、疑問点が指摘され、法務省の答弁も二転三転する、そしてこれら三
法案のいろいろな欠陥が明らかになってまいりました。
犯罪にかかわりのない個人や団体の通信の秘密、まさに
民主主義の根幹の内心の自由を担保しているその部分を直撃するような憲法違反の疑いが大変強いものであるにもかかわらず、陣内法務大臣は、人権を擁護するという法務大臣としての大切な職責を顧みず、これら欠陥三
法案を撤回することなく、今日に至るまで専ら官僚が用意した原稿を棒読みすることに終始してきたのであります。大臣とは行政機関に送り込まれた
国民の代表であり、また
国民の
権利を守る守り手でなければならない。既に決まったことをただ機械的に遂行するだけであれば、これは官僚で十分務まります。
さらに、陣内法務大臣は、組織
犯罪対策法の必要性を強調しようとする余り、テレビ番組の中で、盗聴
法案があればオウム真理教による地下鉄サリン事件は防げたかのように軽率に
発言し、後で慌てて撤回する。公共放送を使って
国民に根拠のない情報を流し、そして盗聴法を意図的に過大評価させようとする態度、まさに法務大臣としての基本的な資質を欠くことは明白であると思いますが、いかがでありましょうか。(
拍手)
さらに、
通信傍受法案の審議に当たって、法務省は、あたかも
我が国が国際的な場面において捜査機関による
通信傍受を合法化することを要請されているかのような答弁を繰り返し、このような誤った事実が流布されることを一切黙認してまいりました。このような職務怠慢は断固として容認できるものではないと思います。
さて、第二の
理由であります。
今
国会で審議されている入国
管理及び難民認定法の一部を改正する
法律案について触れさせてください。
国連の規約人権
委員会は、入国
管理法について
日本に勧告をしてまいりました。
我が国で出生した在日韓国・朝鮮人のような永住資格を持つ外国人については、
我が国へ再入国する際、一々事前にその許可を取得する必要性をなくすように、こういうふうな勧告であります。
にもかかわらず、法務省は、このような正式な国際機関からの要請については、先ほど説明した盗聴法と全く逆であります。盗聴法では要らないことを積極的に流しながら、必要なことについては一切法的措置をとろうとしないのであります。
さらに、こうした国際的要請があること自体を入管法改正案の説明資料の中でも一切触れておりません。外交に関する事項を恣意的に取捨選択して
国民に伝えようとすることは、
国民を欺き国政を誤らせるものであります。全くもって許しがたい。
まさにこのような
理由から、法務大臣に対する資質を欠いていると指摘せざるを得ないわけであります。
第三の
理由、これは則定前東京高検検事長の女性スキャンダルに伴う処分及び法務省の綱紀粛正であります。
東京高検検事長という、社会正義の実現という重大な職責を担いながら、そして強力な権力を掌握するがゆえに公私にわたって一般の公務員よりもはるかに高い倫理性が
要求される者が、公費で女性を同伴して出張したとされ、その際、旅館業法に違反して偽名を用いてホテルに宿泊し、その女性に対し小切手で五十万、現金三十万の合計八十万円を手渡し、また、民間業者から銀座の高級クラブなどでたび重なる接待を受けていたとされる、まことに許しがたき不祥事の疑惑があったにもかかわらず、法務省はおざなりの調査をして無罪放免にしたのであります。
刑罰権を独占する検察にあっては、まさに検察のスローガン、秋霜烈日、厳しい自己規律が必要なのは当然であります。そして、このような不祥事が二度と行われないような厳格な調査と峻厳な処分が必要であることも言うをまちません。
しかるに、身内をかばおうとする法務省官僚のいいかげんな報告をうのみにし、さらに、これを契機として何らの具体的な綱紀粛正策を講じていないのは全く理解できません。
第四の
理由は、公安調査庁が特定
議員に対し選挙情報、地元情報を横流ししているという疑惑であります。
現在、公安調査庁に対しては、その組織のあり方、あるいは必要性がチェックされており、
政府における行革
論議においても不要論があったところであり、現に、地方支分局の大幅縮小、人員削減が決定されているところであります。
しかるに、公安調査庁は、みずからの組織を防衛するためには公安調査庁に理解を示す
議員との関係を深める必要があるとして、共産党など公安調査庁得意分野に焦点を当てた地元選挙情報を作成し、説明することが効果的であるとしているかのようであります。
公務員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとされ、厳しい罰則が定められている。しかるに、陣内法務大臣は、部下の中に違法行為を働いている者がいる、そんな報道があるにもかかわらず何ら調査もしていないのは明らかな職務怠慢であり、法務行政への
国民の
信頼を失わせるもの以外の何物でもありません。
第五の
理由は、今
国会で審議された司法制度改革審議会設置法に関連するものでありますが、陣内法務大臣は、法務省の最大の課題とされている司法制度改革について積極的なリーダーシップを全く発揮していないという点であります。
司法制度改革審議会設置法は、
内閣に司法制度改革を審議する機関を設置することを
内容とする
法律でありますが、同法は、
政府提出原案においてはその審議すべき
内容について全く具体的な規定を欠いていたため、審議会が、結局は司法の行政化と、それをさらなる推進をしていく、すなわち弱体化したままの司法を維持するための道具とされかねなかったのであります。
そこで、我々
野党は、審議会が審議すべき
内容について方向性を明確にすべきであると主張し、
国民により身近で利用しやすい司法制度の構築、
国民の司法手続への関与、法曹の質及び量の強化という具体的課題を列挙するよう法改正を実現したところであります。
第六の
理由でありますが、現在、
内閣が衆
議院に
提出している少年法改正案についてであります。
少年法はその立法目的を少年の健全な育成を期すこととしております。しかるに、
政府提出の改正案は、審理に検察官の関与を認めるとともに、検察官に対して事実認定及び法令の適用に関する抗告権を付与しようとするものであり、家庭的な雰囲気の中で少年の更生を図ろうとする少年法の
趣旨をゆがめ、少年を成人と同様の裁判方式のもとで厳しく弾劾しようとするものであります。これは、まさに少年法の基本を変えるものである。
このような改正案を何の疑問もなく
提出し、そしてそれをそのまま維持しようとするのは法務大臣としての適格性を欠くことの明瞭なあかしである、私はそのように言わざるを得ないわけであります。
以上、六点にわたり説明申し上げました。
聞くところによりますと、佐賀県御出身の陣内法務大臣、佐賀県からは今まで六人の法務大臣が出ているそうであります。第一番目は明治の司法をつくった初代司法卿江藤新平であります。江藤新平は薩長藩閥と戦い、まさに秋霜烈日の言葉どおり厳しい自己規律のもとに明治の司法を確立しようとした。そこに新しい明治という国家が生まれてきたわけであります。
どうか大臣はこの江藤新平さんの秋霜烈日の精神をよく学んでいただくよう心からお願いを申し上げまして、私の
提案理由の説明とさせていただきます。
御清聴まことにありがとうございました。(
拍手)
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