○富樫練三君 私は、日本共産党を代表して、
地方分権の
推進を図るための
関係法律の
整備等に関する
法律案について、
総理に
質問いたします。
地方分権というなら、まず憲法と
地方自治法に基づいて
地方自治権を拡充し、
地方自治体が
住民の安全、健康及び福祉を保持するという本来の姿を取り戻すことであると
考えます。そのためには、
政府の統制をなくし、
権限と財源を
地方自治体に大幅に
移譲することがどうしても必要であります。これが
国民と
自治体関係者の願いであり、
地方分権の流れの
基本であります。ところが、
政府提案の
地方分権一括法案はこれに逆行する重大な
問題点を持っております。
まず第一に、国の
関与についてであります。
憲法が定めた国と
地方自治体の
関係は、相互の
協力関係、厳密に言えば並立対等
関係であります。その上で、国の
関与は
原則として非
権力的関与というのが
基本であります。この点で、
機関委任事務を
廃止するのは当然であります。本
法案で
法定受託事務と
自治事務になるわけですが、この両方に国の
権力的関与が引き続き深く入り込んでいるところに大きな問題があります。例えば、今まで権力的な
関与が認められなかった
自治事務に対して
是正の
要求という
権力的関与ができるようになり、
自治体はこれに従う義務が生じます。
総理、これによって国は
自治体のすべての
事務に対して強制力のある介入、干渉の
権限を持つことになるのではありませんか。分権というのなら、
自治事務に対する
是正の
要求の
規定などは設けるべきではないのではありませんか。また、
是正要求はどういう場合、どういう基準によるのですか。国の政策、方針に反するということなのですか。
また、本
法案では、
地方自治を骨抜きにする代
執行を
地方自治法に新たに明記しました。さらに、
個別法に係る国の直接
執行に新たな基準を設けました。例えば、
自治事務となる建築確認行為に、国の利害に重大な
関係がある建築物で、国が必要と認めればという新たな基準をつくり、最終的には
建設大臣が直接
執行できるというものです。
六月十日の
衆議院特別
委員会で、
政府は重要な防衛施設であるとかあるいは原子力発電所などと
説明しています。同様の直接
執行が
都市計画法など他の
個別法にも見られます。代
執行には裁判が必要ですが、直接
執行は裁判が要らないものです。すなわち裁判抜きの代
執行であります。これでは、
政府の都合で何でもできるということではありませんか。従来よりも一層強力なものにしようとしていることは明らかであります。
総理、このような
自治事務に対する強権発動とも言える直接
執行が何で
地方分権と言えるのですか。このような
関与をやめてこそ
地方分権と言えるのではないですか。
自治体に対して公正な裁判所の判断を受ける権利さえ奪うなどは、憲法上どうして許されるのか
説明できますか。
第二に、
助言・
勧告と
自治体の条例制定権についてです。
これまで各省庁からの通達の主要な根拠となっていた技術的な
助言・
勧告が
地方の手足を縛ってまいりました。例えば、
地方自治体の老人医療費無料化の対象年齢拡大に対して、慎まれたいとの厚生省の通達などであります。これらの干渉、介入は、本
法案でも
助言または
勧告という形で受け継がれているではありませんか。
総理、
法律の範囲内で行う
地方自治体の独自の政策に技術的
助言・
勧告の範囲を乱暴に逸脱して介入する手段を
確保しておいて、何で
地方分権と言えるのですか。
自治体が独自につくる条例や要綱などを憲法に基づいて幅広く尊重することこそ
地方分権の流れに沿ったものではありませんか。
第三に、
必置規制の
廃止、縮小の問題であります。
従来、
必置規制は
行政の
一定の水準を維持する
役割を果たしてきました。今回、これを
廃止、縮小しようとしています。例えば、福祉
事務所の
職員の配置基準、公立図書館の館長の司書資格、公民館
運営審議会、婦人相談員、農地主事にまで及んでいます。
これらはいずれも
国民の暮らしに密着した最先端の
行政であり、
必置規制の
廃止、縮小によって
行政サービスが後退するのではありませんか。後退させないというのなら、その具体的保障を示していただきたい。
国民の福祉や教育、環境
行政などについて、全国的に
一定の
行政水準を維持するためのナショナルミニマムの設定と
必置規制の維持は、国の責任としてはっきりさせることこそ求められているのではありませんか。
第四に、
地方財政問題についてであります。
地方分権にとって、
権限と
税財源の
移譲は一体不可分のものであります。今、多くの
自治体はかつてない深刻な財政危機に直面しています。その原因の大半は、借金してでも単独
事業と大型
公共事業をやれという
政府の強力な指導にあります。このことは小渕
総理自身が、
一つの要因であったことは事実と認めざるを得なかったことでも明瞭であります。
ところが、本
法案には、
地方への
税財源移譲の
課題が完全に欠落しています。これ自体、この
法案が
地方分権に値しない重大な欠陥
法案であることを示しているのであります。
政府は、長期の不況と国の財政の困難さを
理由に、
地方への
税財源移譲を先送りしています。しかし、
地方自治体の財政はもはや一刻の猶予もならない状況であることは
政府が一番よく知っていることではありませんか。
総理、国と
地方の財源
配分の
是正に直ちに着手するべきではありませんか。なぜこれができないのか、
理由を明確に示されたい。少なくとも、本
法案で
税財源の
移譲の義務づけをこの際明確にすることがぜひとも必要であり、これがまさに分権への第一歩ではありませんか。
第五に、米軍用地特別
措置法改定の問題です。
そもそも、憲法の平和
原則のもとでは、軍用地のための土地収用は認められておりません。米軍用地特別
措置法そのものが違憲の立法であり、本来廃棄されるべきものであります。
この
法律は、九七年の改定による暫定使用で、使用期限が切れても米軍が居座れるものに改悪されました。今回の改定は、
機関委任事務から国の直接
事務とし、新設される緊急裁決や代行裁決を行えば、一気に
国民の土地を取り上げられるというものであります。これは、土地所有者や地元
関係者、
市町村長や
都道府県知事、土地収用
委員会の意見は無視するというものであります。
総理、これでは、アメリカが軍用地を欲しいと言えば、北海道から沖縄まで日本全国どこでも、
関係者には有無を言わさず、強引に、素早く
国民の土地を取り上げ、直ちに米軍に提供できるというものではありませんか。これこそ新ガイドラインで約束した米軍への新たな基地提供の
仕組みではありませんか。アメリカの言うことは何でも無条件で受け入れるが、
国民や
地方自治体の言うことは聞く耳持たずということであり、しかもこれが
地方分権の名のもとに行われるなど断じて認められないものであります。
総理、
総理がアメリカ追随ではなく、日本の主権、日本
国民の
利益、財産を守る日本の
総理としての責任と政治姿勢を真に貫くのなら、この特別
措置法の改定は撤回するのが当然ではありませんか。
総理の
答弁を求めるものであります。
最後に、本
法案は、
地方分権と言いながら、その中身は
地方統制法そのものであります。私は、
国民が納得できる
地方分権となるよう見直すべきであると
考えます。
総理の
答弁を求め、
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君
登壇、
拍手〕