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1999-06-14 第145回国会 参議院 本会議 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月十四日(月曜日)    午後一時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十九号     ─────────────   平成十一年六月十四日    午後一時 本会議     ─────────────  第一 地方分権推進を図るための関係法律の   整備等に関する法律案趣旨説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  日程第一 地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案趣旨説明)  本案について提出者趣旨説明を求めます。野田自治大臣。    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  3. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案趣旨について御説明いたします。  地方分権推進は、二十一世紀を迎えるに当たって、新しい時代にふさわしい我が国基本的な行政システムを構築しようとするものであります。  これまでの行政システムは、全国的統一性公平性を重視したものであり、我が国近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民の意識や価値観も大きく変化し、生活の質の向上や個性的で多様性に富んだ国民生活の実現に資するシステムの構築が強く求められています。  このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること並びに地方公共団体自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを基本とする国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。  このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会に報告したところであります。  この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について必要な改正を行おうとするものであります。  第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事市町村長を国の機関として国の事務処理させる仕組みである機関委任事務制度廃止することとしております。これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法改正を行うとともに、個々機関委任事務を定めている関係法律改正を行い、地方公共団体処理する事務自治事務法定受託事務とに区分することとしております。  また、機関委任事務制度前提として成り立ってきた地方事務官制度はこれに伴い廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。  第二に、法定主義原則一般法主義原則、公正、透明の原則に基づき地方公共団体に対する国または都道府県関与見直し整備を行うこととしております。このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごと関与基本類型関与手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々法律における関与基本類型に沿った必要最小限のものにするべく所要改正を行うこととしております。  第三に、国の権限都道府県に、また都道府県権限市町村移譲するため、関係法律において所要改正を行うこととしております。これに関連して、地方自治法等改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。  第四に、地方公共団体自主組織権を尊重し、行政総合化効率化を進めるため、必置規制廃止または緩和を行うこととしております。  第五に、市町村合併推進地方議会活性化、中核市の指定要件緩和等地方公共団体行財政能力の一層の向上行政体制整備確立を進めることとしております。  以上が地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案趣旨であります。  なお、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案は、衆議院におきまして次のとおり修正が行われております。  第一に、第一号法定受託事務については、できる限り新たに設けることのないようにするとともに、地方分権推進する観点から検討を加え、適宜適切な見直しを行うものとすること。  第二に、地方社会保険事務局または社会保険事務所職員について、新たに厚生省社会保険関係共済組合組織することができることとし、また、本法の施行日から七年間に限り、当該職員勤務地の所在する都道府県職員団体に加入し、当該職員団体の役員として専ら従事することができるものとするとともに、政府は、社会保険事務処理体制及びこれに従事する職員あり方等について、被保険者等利便性確保事務処理効率化等視点に立って検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要措置を講ずるものとすること。  第三に、政府は、地方公共団体事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源充実確保方途について、経済情勢推移等を勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。峰崎直樹君。    〔峰崎直樹登壇拍手
  5. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま趣旨説明を受けました地方分権一括法案に対して、総理大臣及び関係大臣質問いたします。  今から四年前の地方分権推進法制定出発点とする我が国地方分権推進取り組みは、明治以来の集権的な中央地方関係を改め、両者の対等・協力関係を築くとともに、日常的な行政事務のほとんどは、住民に身近な政府である地方自治体住民参加のもとに自主的、自立的に遂行する社会を目指して進められてきたものであります。  政府が提出した地方分権一括法案は、地方分権推進委員会の累次の勧告及びこれを踏まえた政府地方分権推進計画に基づいて法制化の作業が行われたものとされています。本法案では、これまで長い間我が国中央集権型行政システムの象徴となってきた機関委任事務廃止し、これらの事務のほとんどを自治体事務と位置づけたこと、国と地方自治体関係を対等・協力関係と位置づけ、自治体事務についての国の包括的な指揮監督権限廃止し、事務区分に応じた国の関与あり方地方自治法一般ルールとして規定したこと、国の関与について不服がある場合の国地方係争処理委員会や裁判所による係争処理仕組み整備したことなど、その基本的な枠組みについては評価に値するものであると考えます。  しかし、同時に、本法案については、二百五十余名の学者らによって内容見直しを求める声明が出され、また我が参議院の野党各会派所属議員で構成する参議院地方分権推進研究会からも、「地方分権一括法案徹底審議と残された課題早期取り組みを」と題するアピールが各大臣各党代表あてに提出されているなど、その内容上の問題点指摘する声が少なくありません。  本法案は、衆議院において与野党五会派共同修正がなされた上で本院に送付されたものでありますが、本院においてもぜひとも十分な審議を行い、問題点の解明と残された課題の解決に精力的に取り組む必要があることをまず申し上げておきたいと思います。  次に、具体的な法案内容についてお尋ねいたします。  本法案の主な柱の一つは、機関委任事務制度廃止と、それに伴う事務の再編成であります。そこでまず、この機関委任事務廃止後の地方自治体処理する事務の性質などについて、総理及び自治大臣お尋ねいたします。  法案地方自治法改正部分に示された法定受託事務定義をめぐって、なぜ地方分権推進委員会勧告で用いた「国民利便性又は事務処理効率性観点」という文言が消えて「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」という文言が用いられることになったのかという点が大変疑問であります。  政府説明によれば、勧告が用いた文言は、国と地方事務振り分けに係るものであるが、この法案においては、既に国の処理する事務地方処理する事務振り分けが終わった後の法定受託事務自治事務振り分けに係る定義規定なのでこのようになっているということであります。しかし、私はこのような説明では疑問がすっきりと解消するものとは思えません。  地方自治法改正部分では、まず第一条の二で地方公共団体と国の役割分担を明らかにし、これを踏まえて第二条第二項で普通地方公共団体処理する事務を明らかにし、第九項で、そのうち「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」については、法律、政令で特に指定することによって法定受託事務となり、それ以外は第八項の規定によってすべて自治事務と分類されることとしております。  もし、さきの説明どおりであるとすると、第一条の二に示された国、地方役割分担規定についても、今さら地方自治法に書く必要はないことになるのではありませんか。仮に、今後の立法の指針として第一条の二の存在意義があるのであるとすれば、法定受託事務定義勧告どおりで何ら差し支えないはずであります。政府案規定では、なぜ国の果たすべき役割に係る事務地方処理する事務となるのかがさっぱりわかりません。これらの点について、自治大臣からわかりやすい御説明をいただきたいと思います。  また、今回の地方自治法改正部分では、「地域における行政」、「住民に身近な行政」、「地域における事務」、「地方公共団体処理する事務」、「当該普通地方公共団体事務」などの文言がいろいろ用いられていますが、その使い分けが明快とは言えません。それぞれの文言意味使い分けについて、自治大臣答弁を求めます。  さて、自治体事務自治事務法定受託事務への区分については、省庁の頑強な抵抗によって、原則として自治事務という考え方からは著しく後退を余儀なくされております。「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」という第一条の二の精神は一体どこに反映されているのでしょうか。総理の御所見をお伺いいたします。  この事務区分について、衆議院での五会派共同修正により、今回法定受託事務区分されたものについても地方分権推進する観点から検討を加え、適宜適切な見直しを行うものとされました。私は、地方自治体が今後一層自治体行政充実向上を図り、着実に力をつけていく中で、より多くの事務自治事務として地域の実情に応じて自主的、自立的に遂行できる環境が整っていくものと思います。また、政府としても、今後、例えば三年ごと事務区分について総点検を行うなどの方法によって、積極的に法定受託事務から自治事務への区分がえを進めるべきだと思います。総理は、衆議院で五会派共同でのこの見直し条項追加されたことの意味をどのように受けとめ、具体的にどのように見直しを進めるお考えか、御所見をお示しください。  次に、法案の第二番目の柱である国の自治体に対する関与あり方についてお尋ねします。  法案は、機関委任事務廃止に伴って、これまでの国から自治体に対する包括的な指揮監督見直し、国から自治体への関与地方自治法一般ルールとして規定するとともに、自治事務に対する国の権力的関与原則として否定することとしております。  ところが、その地方自治法自体が、自治事務処理について各大臣から是正要求があった場合に、自治体是正改善措置を講ずることを義務づけることとしております。このような自治事務についての自治体是正改善義務現行法上存在せず、委員会勧告等にももちろん何ら盛り込まれていなかったものであります。  また、地方自治法改正部分においては、普通地方公共団体組織及び運営合理化に係る助言等についての自治大臣指示、財務に係る実地検査市町村に関する調査についての自治大臣指示など、いわゆる個別法としての地方自治法上の権力的関与規定も設けられております。  自治事務に対してこのような国の権力的関与規定を設けるのは一体どのような理由からでしょうか。このような規定は、自治体誤りを犯すが国は誤りを犯さないという中央官僚の傲慢な考え方のあらわれではありませんか。仮に自治事務処理誤りがあっても、それは当該地方自治体議会住民によって当然に是正されるべきものと考えるのが地方自治精神なのではないでしょうか。自治大臣見解お尋ねいたします。  以上の地方自治法改正部分に加え、個別法改正部分においても、関与一般ルールから逸脱していると言わざるを得ない自治事務への権力的関与規定が多数設けられております。  まず、先ほど述べました地方自治法上の是正要求、これに対する是正改善措置義務と同様の規定港湾法漁港法道路法等多数存在します。これらは、なぜ地方自治法上の是正要求によらず、個別法上でわざわざ同様の規定を置いているのでしょうか。総理から、それぞれの個別法規定ごとに、その理由を明らかにしていただきたいと考えます。  また、地方自治法上の一般ルールでは、自治事務に関しては代執行を設けないという原則が明確にされているにもかかわらず、国土利用計画法建築基準法土地収用法都市計画法などの個別法において、ほとんど代執行と同種の国の直接執行規定が置かれております。勧告計画では、このような国の直接執行については、その要件国民利益を保護する緊急の必要がある場合に厳しく限るべきだとされていました。しかし、これらの個別法規定は、国の利害に重大な関係がある事項に関し必要があると認めるときというような極めて緩やかな要件で国が直接執行できるものとされています。この法案の書き方では、例えば国家公務員宿舎を建てるからという程度理由でも国が直接執行できてしまいます。私は、このような安易な規定は到底容認すべきものではないと考えます。これらの点につきまして建設大臣自治大臣それぞれの立場からの御見解お尋ねいたします。  自治事務に対する国の関与については、以上申し上げたとおり非常に多くの問題を含んでいると言わざるを得ず、少なくとも、今後これをできるだけ地方自治法一般ルールに合致したものに改めていく方向での見直しを不断に行っていくべきと考えますが、総理の御見解お尋ねいたします。  次に、税財源移譲問題についてお尋ねいたします。  国から地方への税財源移譲については、これまで大蔵省などの抵抗が強く、今回の法案では全く触れられておりません。国・自治体間の租税収入歳出総額の乖離を縮小する方向で、個人所得課税を初めとする基幹税目について税源配分を抜本的に見直し地方の充実した自主財源確保を図ることが今後の大きな課題であると考えます。  この点について、衆議院では、五会派共同修正により、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源充実確保方途について、経済情勢推移などを勘案しつつ検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとする附則追加がされました。また、宮澤大蔵大臣は、委員会での民主党所属委員に対する答弁の中で、経済状況が正常化するまでは待つべきだが、そのときにはしかし徹底的にやはり行財政の再分配にかからなければならないと思い切った発言をされたと聞いております。  自治大臣及び総理としても、この大蔵大臣決意表明を受けて、景気回復後、速やかに、かつ徹底的に行財政の再分配を行うという考えをお持ちかどうか、明確にお答えいただきたいと思います。  最後に、地方事務官問題に関連してお尋ねいたします。  法案では、戦後五十年以上にわたって暫定的に地方事務官が従事するとされてきた社会保険と職業安定に関する機関委任事務廃止し、これらを国の直接執行事務とすること、そして地方事務官廃止し、国の職員とするとしております。  私は、社会保険行政など住民に身近な行政サービスは、地域住民利便性向上を一番に考えれば、身近な自治体で行うべきと考えております。今回、衆議院では、五会派共同修正により、社会保険関係地方事務官であった方々について、職員団体の加入などについての一定期間特例などを設けるとともに、今後の医療保険年金制度改革などに伴い、被保険者等利便性確保事務処理効率化などの視点からの見直しを行う旨の附則追加されました。私もこれはぎりぎり最小限の必要な修正であると考えます。  これらの修正内容について、厚生大臣としての所見お尋ねいたします。  以上申し上げましたとおり、本法案地方分権推進にとって半歩前進をもたらすものであることは率直に評価申し上げますが、いずれにせよ、その内容は、本来の分権改革という目で見れば、衆議院での修正にもかかわらず、なお不十分と言わざるを得ません。今後、その個別法改正部分も含めて十分な国会審議を行い、よりよいものに仕上げていくことが本院の使命であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 峰崎直樹議員にお答え申し上げます。  まず、自治事務法定受託事務との区分についてお尋ねがございました。  この法案におきましては、事務区分は、機関委任事務廃止に伴い、地方分権推進委員会勧告に即して行ったものであります。また、関与あり方抜本的見直し権限移譲などを行うことといたしておりまして、今回の改正は新しい地方自治法第一条の二の趣旨を実現するものとなっていると考えております。  法定受託事務見直しについてのお尋ねでありますが、法定受託事務の創設は、将来にわたり厳に抑制されるべきものと考えております。本法案におきまして法定受託事務区分されたものでありましても、今御指摘追加条項を踏まえ、今後の社会経済情勢の変化に応じまして、地方分権推進する観点から適宜適切に事務区分見直しを進めてまいる所存であります。  是正要求についてのお尋ねでありましたが、是正要求自治事務に対する関与基本類型一つといたし、勧告計画において認められてきたものであり、必要に応じて個別法において定めることも否定されていないものであります。  御指摘個別法規定につきましては、港湾法については港務局を含めた港湾管理者に係る体系的な規定であるため、漁港法につきましては市町村が策定した漁港修築計画について直接国に届け出ることといたしているため、道路法については処分により損失を受けた者等に補償を行うことを明らかにするために規定を設けたものであります。  自治事務に対する国の関与についてのお尋ねでありましたが、今回の地方自治法改正によりまして、関与基本原則を定め、自治事務及び法定受託事務について関与基本類型を示すとともに、自治事務に関する基本類型以外の関与等についてこれを設けることのできる場合を限定しております。今後とも、国の関与をこの基本原則に則したものとしていくべきものであると考えております。  最後に、行財政配分についてのお尋ねがありましたが、地方分権一括法案についての衆議院における五会派共同修正の御趣旨も踏まえ、国と地方役割分担に応じた地方税財源充実確保については、今後、経済情勢推移税制抜本的改革方向等も見きわめつつ取り組んでいくべき重要な課題であると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  7. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 法定受託事務定義についてのお尋ねでございます。  新地方自治法第一条の二は、国と地方役割分担基本を明らかにする上で大きな意味があると考えております。各個別法において、国と地方事務配分が行われる場合には、国の本来果たすべき役割に係る事務であっても住民に身近な行政は、国民利便性等観点から、できる限り地方にゆだねるべきこととなります。法定受託事務定義は、これを前提として地方公共団体事務となったものについて法定受託事務区分するためのものであるため、法案のような表現としたものであります。  次に、「地域における行政」等の地方自治法規定における文言意味使い分けについてのお尋ねであります。  「地域における行政」というのは、国との対比において地方公共団体が広く担うべきであるというその役割規定するための文言であり、「住民に身近な行政」というのは、それを踏まえて国が地方にゆだねるべき分野を示すという観点から用いたものであります。また、「地域における事務」というのは、地方公共団体の権能を明らかにするための文言であり、「地方公共団体処理する事務」等は、自治事務法定受託事務を合わせた概念として用いたものであります。  次に、是正要求についてのお尋ねでございます。  地方公共団体の違法な事務処理等については、まずは地方公共団体のみずからの機関あるいは住民の手によって自主的に是正なされるべきものであります。しかし、例外的に、そのような形での是正がなされない、そしてその結果、当該地方公共団体行財政運営が混乱し、停滞をして、著しい支障が生じているような場合に、国等が何らかの形で関与することが必要と考えたところであります。  また、市町村組織運営合理化に係る助言等につきましては、都道府県を通じて行うことが適当であると考え都道府県助言勧告を行うよう指示することができるものとしております。  国の直接執行についてのお尋ねでございます。  これは、地方分権推進委員会勧告及びそれを踏まえた地方分権推進計画におきまして、国民利益を保護する緊急の必要がある場合には行うことができることとされているものであります。今回の地方分権一括法案における個別の法律規定は、基本的に国民利益を保護する緊急の必要がある場合を要件とし、あるいはこれに準ずる程度の厳格な要件を付したものとなっておりまして、地方分権推進委員会での議論を踏まえて規定されておるものと承知をいたしております。  最後に、行財政配分についてのお尋ねでございます。  地方分権一括法案についての衆議院における五会派共同修正の御趣旨も踏まえ、国と地方税財源配分見直しなど地方税財源充実確保については、今後、経済情勢推移税制抜本的改革方向等も見きわめつつ、できるだけ早い時期に取り組んでいくべき重要な課題であると考えております。(拍手)    〔国務大臣関谷勝嗣君登壇拍手
  8. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 建設省関係自治事務において認められました直接執行制度についてでありますが、一つには、仮に指示のみしかできないとされた場合には、国家的観点から公益上必要な国の施策が実現されない事態が生じることとなりますので、こうした事態を避けるため、審議会の確認を得た上でみずから必要な措置を行うことができるものとしたわけでございます。  また、公共利益増進私有財産との調整を行い、私有財産の保障を図る土地収用制度において、事業公益性について統一的かつ公平に判断する制度とするために、みずから必要な措置を行うことができるとしたわけでございます。  これらは、いずれも地方分権推進委員会での慎重な審議等を尽くした上で適切とされたものであります。  以上です。(拍手)    〔国務大臣宮下創平君登壇拍手
  9. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) お答え申し上げます。  衆議院における修正についてのお尋ねでございますが、地方事務官廃止に伴う今回の修正は、衆議院における審議内容を踏まえた所要修正であると認識しておりまして、この法案の成立後、改正法の施行に当たりましては、その趣旨を踏まえまして適切に対応してまいりたいと考えております。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  10. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 山下栄一君。    〔山下栄一君登壇拍手
  11. 山下栄一

    ○山下栄一君 私は、公明党を代表し、ただいま提案されましたいわゆる地方分権一括法案について、総理並びに関係大臣に対し、質問いたします。  平成五年、衆参両院地方分権推進に関する決議が採択されてからちょうど六年、本一括法案を私は本格的な行政改革への具体的な第一歩として一応評価するものであります。しかしながら、憲法また地方分権推進法に示された基本理念に照らし、極めて不十分であるとの観点から、以下質問いたします。  地方分権とは、文字どおり国と地方公共団体とで行政における権限を分けることであり、政府の言う役割分担もまた同義であります。平成六年十二月に閣議決定された地方分権推進に関する大綱方針の中で、その役割について政府は「企画・立案、調整、実施などを一貫して処理していくもの」と定義づけております。しかるに、本一括法案を概観してみると、役割分担のうち単に実施部門だけを地方自治体移譲した内容に終始しており、地方分権と冠するにふさわしい法案なのかとの疑念を抱かざるを得ません。  そこで、本一括法案の中で、国から地方移譲した役割のうち、企画立案、調整まで含めて移譲した権限一つでもあるのか、そのような例があれば示していただきたいのであります。  さらに、地方自治基本法たる地方自治法改正案の中で、自治体役割を「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」と規定しています。ところが、地方分権推進委員会勧告及び計画では総合的に担うとされていたのに、ここでなぜ「実施」という二文字をあえて挿入されたのか。大綱方針で示した地方が分担すべき役割を実施のみに限定するかの誤解を招くような文言はあえて加えるべきではないと考えますが、政府の方針変更の有無を含め、明確にお答えいただきたいのであります。  次に、地方自治体に対する国の関与についてお伺いいたします。  本一括法案の中で、機関委任事務廃止に伴い、自治事務法定受託事務に整理され、それぞれに国の関与基本類型規定されています。しかし、従来、国が直接的に権力的関与ができなかった固有事務、団体委任事務を含めた自治事務全般に、例えば各大臣是正義務を伴うような是正要求ができるという、国の権力的関与を認めることは政府の大綱方針に反するものであると考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。  また、機関委任事務廃止によって通達行政も当然なくなりますが、しかし、通達にかわって各大臣法定受託事務について処理基準を定めることが可能となり、法定受託事務機関委任事務とは実質的に何ら変わりないものとなっているのではないか。この処理基準の法的な性格とはどういうものなのか、違法性や公益性を害するなどの司法判断または国の関与に際しての基準となり得るのか、また、機関委任事務法定受託事務としたことによる自治体のメリットは何か、あわせて自治大臣より答弁を求めます。  国地方係争処理委員会についても、総理衆議院における議論の中で、行政機関の肥大化を極力抑制するため国家行政組織法第八条に基づく審議会として総理府に置くと答弁しています。そもそも、この委員会は、国と地方役割をより明確にし、よって行政効率性に寄与するものであり、肥大化などとの表現を使うこと自体、甚だ不謹慎であります。準司法機関たるべき委員会総理府に置く積極的な理由は何か。さらに、自治体が国の関与について裁判所に提訴できるのは委員会の審査を経なければならないとされる一方で、国が代執行を行う際は直接、裁判所に提訴できるのであります。この係争処理仕組みは明らかに地方自治体にとって一方的に不利であり、対等の関係とはほど遠いものではないでしょうか。総理の御所見をお伺いいたします。  また、政府は、地方分権推進委員会の目玉となるべきだった公共事業地方移管については完全に見送り、一方で中央省庁再編によって国土交通省という巨大な事業官庁を誕生させようとしています。橋本前総理は、そうした懸念に対して、公共事業については、まず国と地方の分担を徹底して見直すと再三国会答弁し、公共事業地方移管を中央省庁再編の前提として国民に約束していたのであります。総理、このことは、前内閣の方針を継承するという小渕政権の方針にも反し、国民への約束をほごにするものであると考えますが、いかがでしょうか。  昨年八月、地方分権推進委員会は、第五次勧告へ向けていわゆる論点整理を各省庁に示し、公共事業の大胆な地方移管を打診しましたが、中央官庁と自民党族議員の猛反発のあげく、立ち消えとなってしまったとのことであります。総理、これでは、省益あって国益なし、族議員あって国民なしとの批判は免れないと考えます。総理は、この論点整理をどう認識し、公共事業地方移管に対し、いかなるリーダーシップをとられてきたのか、御説明願います。  次に、地方自主財源の問題についてお伺いします。  地方分権推進計画の中では地方税財源充実確保がうたわれておりましたが、本法案に盛り込まれたのはわずかに法定外目的税の新設と地方債の発行条件の緩和だけで、従来の補助金行政の継続を宣言したような中身になっています。本当の意味での対等・協力関係を目指すなら、大幅に地方自主財源をふやすべきであります。そこで、本一括法案によって、現在六対四と言われる国と地方税財源の割合が具体的に何%地方分に上乗せされるのか、自治大臣より御答弁願います。  さらに、平成十年度末現在の地方全体の借入金残高は百七十六兆円にも達し、地方財政は危機的な状態と言わざるを得ないのであります。地方財政を悪化させた主要な原因には、税収不足にもかかわらず公共投資を続けてきたことによる過度の地方債依存と、バブル期に土地開発公社などを利用して大量に購入した公有地の塩漬け問題などがあります。いずれも政府の景気対策と称する政策によって誘導されたものであり、その責任を政府はどう考えているのか。今後こうした状況をつくり出さないためにも、地方自治体が自己責任のもと、自主的に財源を確保し資金を調達する道を広げるべきであると考えますが、あわせて総理所見を伺います。  地方分権は、シャウプ勧告といわゆる神戸勧告以来、長い歴史をたどってきたテーマであります。昭和二十二年、現在の地方自治法が制定されたとき、当時の植原内務大臣は、その提案理由の中で地方自治法地方自治に関する憲法附属の法典と位置づけ、翌二十三年、さらに地方分権を進めるべく同法は改正され、その第二条に国と地方の果たすべき権限をそれぞれ個別に列挙したのであります。先進諸国では、およそ憲法にこのような権限の例示規定を設けているところですが、本法律案政府がこの第二条の国の事務に係る例示規定を削除し抽象的な文言に後退させたことに私は強い懸念を示すものであります。  このことは、自治法制定から今回の分権委員会勧告に至るまでの先人たちの努力を踏みにじり、地方分権の歴史を地方自治法制定以前の五十二年前に逆戻りさせるかの印象を与えるものです。また、我が国を民主国家として憲法にも自治法にも国と地方の権能を例示しない極めて異質な法治国家と化してしまうのではないかと危惧するものであります。  なぜこの重要な例示規定をいとも簡単に削除してしまうのか、我が国地方分権の歴史認識も含め、総理の真摯なる答弁を求めます。  最後に、火だるまになって行革をやり抜くと言った橋本前総理の後に登板しながら、文字どおり火消し役となってしまったと言われないように、小渕総理地方分権推進にかける今後の御決意をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  12. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 山下栄一議員にお答え申し上げます。  権限移譲についてまずお尋ねがありましたが、本法案におきまして権限移譲規定する法律は三十五本であり、そのうち国から地方権限移譲されるものは森林法等九法律十事項であります。また、機関委任事務制度廃止に伴いまして、国の包括的な指揮監督がなくなることや、条例制定権の範囲が拡大すること等によりまして、地方自主性自立性が拡大され、地域の実情に応じた事務事業の企画立案等が可能となるものと考えております。  地方自治体役割についてお尋ねがありましたが、地方自治法第一条の二に規定する自主的かつ総合的な実施とは、企画立案、調整、具体的執行を一貫して処理することを意味するものでありまして、特に役割を限定する趣旨ではありません。したがいまして、平成六年十二月の閣議決定の大綱方針や勧告計画考え方を変更するものではありません。  自治事務に関する是正要求についてお尋ねがありましたが、地方公共団体自身による適正な事務処理が期待できないような例外的な場合には、国等がこれを放置することは適当でなく、必要な場合に限りまして関与することができることとしたものであります。その上で、国の是正要求に対し地方公共団体が不服である場合には、新たに設けた係争処理手続の対象としたところであります。このような国の関与は、さきの政府の大綱方針に反するものでもありません。  国地方係争処理委員会総理府に置く理由についてでありますが、国の関与を審査する事務は、各省庁に横断的にかかわるものであることから、他の行政機関の所掌に属しない事務を所掌事務とする総理府に置くこととしたものであります。  また、係争処理手続についてでありますが、審査請求の前置は、関与に係る行政部内の争いを、簡易迅速な手続により早期に解決することを旨としたものであります。他方、法定受託事務に係る代執行につきましては、地方公共団体自主性に配慮し、国は司法判断を経なければ代執行ができないこととしたものであり、地方公共団体にとって一方的に不利との御指摘は当たらないと考えます。  公共事業地方移管についてのお尋ねでありました。  公共事業見直しにつきましては、橋本前内閣時代に成立いたしました中央省庁等改革基本法の趣旨を踏まえ、直轄事業の一層の基準の明確化、範囲の見直しによる縮減や統合補助金の創設等を進めることといたしております。  また、論点整理は、第五次勧告検討するに際して地方分権推進委員会が当初示したたたき台であり、これを出発点として地域社会資本整備の実情等さまざまな観点からの検討を加えた上で、最終的に第五次勧告が整理されたものと認識しております。  いずれにいたしましても、今後とも公共事業の適切な遂行に積極的に取り組む所存であります。  次に、地方財政の現状についてのお尋ねでありますが、現在、我が国経済の厳しい状況によりまして、地方財政は、巨額な財政不足が続き、借入金が急増するなど、極めて厳しい状況にあると認識いたしております。したがいまして、このような地方財政の立て直しのためにも、地方財政の運営に支障が生じないよう十分配慮しつつ、各般の経済対策を実施することにより、まずは景気を回復軌道に乗せることが必要であります。  また、地方分権の進展に応じまして、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であると考えております。景気が回復軌道に乗りました段階において、地方財政需要の諸課題につき、中長期的視点から幅広くしっかりとした検討を行わなければならないと考えております。  事務例示の廃止についてのお尋ねでありましたが、今回、地方自治法に新たに第一条の二を設け、国と地方役割分担を明確化するとともに、地方公共団体役割として、地域における行政を自主的かつ総合的に広く処理する旨を規定いたしたところであります。  地方公共団体が広範な事務処理権能を有することは、今日においては広く国民に理解されているところであり、事務の例示はかえって地方公共団体事務を限定するかのような誤解を与えかねないことから、削除いたしたものであります。  最後に、地方分権推進する決意についてお尋ねがありました。  地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国基本的な行政システムを構築するものであります。私は、地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識をしており、本法案を今国会においてぜひとも成立させていただき、地方分権を具体的な形で進めてまいりますとともに、今後とも、地方分権推進計画等を踏まえた国から地方への事務権限移譲地方税財源充実確保などの推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  13. 野田毅

    国務大臣野田毅君) お答えいたします。  法定受託事務に係る処理基準についてのお尋ねでございます。  これは、事務処理するに当たりよるべき基準ということでございまして、地方公共団体はそれに基づいて事務処理することが法律上予定されているものであります。したがって、処理基準に反する事務処理について国が是正指示をするということはあり得ます。ただし、当該関与係争処理の対象となった場合には、裁判所は処理基準に拘束されることなく、国の関与内容の適否を実質的に審査することとなるものであります。  また、処理基準では新たな事務の義務づけや関与などを定めることはできず、機関委任事務に認められていた通達とは大きく異なるものであります。  次に、機関委任事務法定受託事務としたことによるメリットについてのお尋ねであります。  機関委任事務制度廃止により、地方公共団体の条例制定権や地方議会の調査権の及ぶ範囲が拡大するとともに、包括的な指揮監督廃止され、国の関与が抜本的に見直されることとなります。これにより、地方公共団体は自主的、主体的に行政を展開していくことが可能となるものであります。このことは、住民にとっても、地方公共団体における政策形成への参加を通じて、みずからの地域あり方考え地域の実情に応じた政策を推進することを可能とするものであります。  最後に、地方税財源についてのお尋ねでございます。  地方分権の進展に応じて、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要なことでございます。今回の地方分権一括法案におきましては、法定外普通税の許可制度廃止し、国の同意を要する事前協議とすること、また法定外目的税を創設することなど、地方団体の課税自主権の拡充を図ることとしておるところでございます。  国と地方との税財源配分見直しなど地方税財源充実確保については、地方分権推進計画におきまして「国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方税源配分あり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る。」とされておるところでもございまして、今後、経済の状況、将来の税制抜本的改革方向も見きわめ、できるだけ早期に取り組んでまいらなければならない課題であると考えております。(拍手)     ─────────────
  14. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 富樫練三君。    〔富樫練三君登壇拍手
  15. 富樫練三

    ○富樫練三君 私は、日本共産党を代表して、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案について、総理質問いたします。  地方分権というなら、まず憲法と地方自治法に基づいて地方自治権を拡充し、地方自治体住民の安全、健康及び福祉を保持するという本来の姿を取り戻すことであると考えます。そのためには、政府の統制をなくし、権限と財源を地方自治体に大幅に移譲することがどうしても必要であります。これが国民自治体関係者の願いであり、地方分権の流れの基本であります。ところが、政府提案の地方分権一括法案はこれに逆行する重大な問題点を持っております。  まず第一に、国の関与についてであります。  憲法が定めた国と地方自治体関係は、相互の協力関係、厳密に言えば並立対等関係であります。その上で、国の関与原則として非権力的関与というのが基本であります。この点で、機関委任事務廃止するのは当然であります。本法案法定受託事務自治事務になるわけですが、この両方に国の権力的関与が引き続き深く入り込んでいるところに大きな問題があります。例えば、今まで権力的な関与が認められなかった自治事務に対して是正要求という権力的関与ができるようになり、自治体はこれに従う義務が生じます。  総理、これによって国は自治体のすべての事務に対して強制力のある介入、干渉の権限を持つことになるのではありませんか。分権というのなら、自治事務に対する是正要求規定などは設けるべきではないのではありませんか。また、是正要求はどういう場合、どういう基準によるのですか。国の政策、方針に反するということなのですか。  また、本法案では、地方自治を骨抜きにする代執行地方自治法に新たに明記しました。さらに、個別法に係る国の直接執行に新たな基準を設けました。例えば、自治事務となる建築確認行為に、国の利害に重大な関係がある建築物で、国が必要と認めればという新たな基準をつくり、最終的には建設大臣が直接執行できるというものです。  六月十日の衆議院特別委員会で、政府は重要な防衛施設であるとかあるいは原子力発電所などと説明しています。同様の直接執行都市計画法など他の個別法にも見られます。代執行には裁判が必要ですが、直接執行は裁判が要らないものです。すなわち裁判抜きの代執行であります。これでは、政府の都合で何でもできるということではありませんか。従来よりも一層強力なものにしようとしていることは明らかであります。  総理、このような自治事務に対する強権発動とも言える直接執行が何で地方分権と言えるのですか。このような関与をやめてこそ地方分権と言えるのではないですか。自治体に対して公正な裁判所の判断を受ける権利さえ奪うなどは、憲法上どうして許されるのか説明できますか。  第二に、助言勧告自治体の条例制定権についてです。  これまで各省庁からの通達の主要な根拠となっていた技術的な助言勧告地方の手足を縛ってまいりました。例えば、地方自治体の老人医療費無料化の対象年齢拡大に対して、慎まれたいとの厚生省の通達などであります。これらの干渉、介入は、本法案でも助言または勧告という形で受け継がれているではありませんか。  総理法律の範囲内で行う地方自治体の独自の政策に技術的助言勧告の範囲を乱暴に逸脱して介入する手段を確保しておいて、何で地方分権と言えるのですか。自治体が独自につくる条例や要綱などを憲法に基づいて幅広く尊重することこそ地方分権の流れに沿ったものではありませんか。  第三に、必置規制廃止、縮小の問題であります。  従来、必置規制行政一定の水準を維持する役割を果たしてきました。今回、これを廃止、縮小しようとしています。例えば、福祉事務所の職員の配置基準、公立図書館の館長の司書資格、公民館運営審議会、婦人相談員、農地主事にまで及んでいます。  これらはいずれも国民の暮らしに密着した最先端の行政であり、必置規制廃止、縮小によって行政サービスが後退するのではありませんか。後退させないというのなら、その具体的保障を示していただきたい。  国民の福祉や教育、環境行政などについて、全国的に一定行政水準を維持するためのナショナルミニマムの設定と必置規制の維持は、国の責任としてはっきりさせることこそ求められているのではありませんか。  第四に、地方財政問題についてであります。  地方分権にとって、権限税財源移譲は一体不可分のものであります。今、多くの自治体はかつてない深刻な財政危機に直面しています。その原因の大半は、借金してでも単独事業と大型公共事業をやれという政府の強力な指導にあります。このことは小渕総理自身が、一つの要因であったことは事実と認めざるを得なかったことでも明瞭であります。  ところが、本法案には、地方への税財源移譲課題が完全に欠落しています。これ自体、この法案地方分権に値しない重大な欠陥法案であることを示しているのであります。  政府は、長期の不況と国の財政の困難さを理由に、地方への税財源移譲を先送りしています。しかし、地方自治体の財政はもはや一刻の猶予もならない状況であることは政府が一番よく知っていることではありませんか。  総理、国と地方の財源配分是正に直ちに着手するべきではありませんか。なぜこれができないのか、理由を明確に示されたい。少なくとも、本法案税財源移譲の義務づけをこの際明確にすることがぜひとも必要であり、これがまさに分権への第一歩ではありませんか。  第五に、米軍用地特別措置法改定の問題です。  そもそも、憲法の平和原則のもとでは、軍用地のための土地収用は認められておりません。米軍用地特別措置法そのものが違憲の立法であり、本来廃棄されるべきものであります。  この法律は、九七年の改定による暫定使用で、使用期限が切れても米軍が居座れるものに改悪されました。今回の改定は、機関委任事務から国の直接事務とし、新設される緊急裁決や代行裁決を行えば、一気に国民の土地を取り上げられるというものであります。これは、土地所有者や地元関係者、市町村長都道府県知事、土地収用委員会の意見は無視するというものであります。  総理、これでは、アメリカが軍用地を欲しいと言えば、北海道から沖縄まで日本全国どこでも、関係者には有無を言わさず、強引に、素早く国民の土地を取り上げ、直ちに米軍に提供できるというものではありませんか。これこそ新ガイドラインで約束した米軍への新たな基地提供の仕組みではありませんか。アメリカの言うことは何でも無条件で受け入れるが、国民地方自治体の言うことは聞く耳持たずということであり、しかもこれが地方分権の名のもとに行われるなど断じて認められないものであります。  総理総理がアメリカ追随ではなく、日本の主権、日本国民利益、財産を守る日本の総理としての責任と政治姿勢を真に貫くのなら、この特別措置法の改定は撤回するのが当然ではありませんか。総理答弁を求めるものであります。  最後に、本法案は、地方分権と言いながら、その中身は地方統制法そのものであります。私は、国民が納得できる地方分権となるよう見直すべきであると考えます。  総理答弁を求め、質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 富樫練三議員にお答え申し上げます。  自治事務に対する是正要求についてお尋ねがありましたが、地方公共団体の違法な事務処理等が自主的に是正されることができないような例外的な場合には国等が何らかの形で関与することも必要と考えており、このため是正要求を設けたものであります。  そもそも、国の関与必要最小限度のものでなければならないという基本原則に基づくことといたしており、さらに是正要求自治事務に対する関与であることを考慮して、是正改善の具体的措置内容につきましては地方公共団体の裁量にゆだねるとともに、係争処理手続の対象としているところであります。  自治事務に関する国の直接執行についてのお尋ねでありましたが、これは地方分権推進委員会勧告及び地方分権推進計画におきまして、「自治事務として地方公共団体処理する事項に関し、その性質上特に必要があるものについて、国民利益を保護する緊急の必要がある場合には、国は、法律の定めるところにより、直接事務を行うことができる。」とされているものであります。これは裁判を経て行われる代執行とは異なり、一定の場合には国に権限が留保されているものであります。  御指摘建築基準法等の規定は、地方分権推進委員会におきましても十分議論の上、勧告及び計画趣旨に照らして適切とされたものであります。  助言勧告についてのお尋ねでありましたが、助言勧告は法的な義務が生じる許認可や指示などとは性質上区別され、国の援助、協力の一つの形態として行われるものであり、地方公共団体にとっても有益なものであると考えております。  また、地方公共団体は、法令に反しない限り自主的に条例や要綱を設けて施策を進めていくことができるものと認識いたしております。  必置規制廃止、縮小について行政サービスが後退するのではないかとのお尋ねでありましたが、今回の見直しは、地方分権推進委員会勧告を踏まえ、地方公共団体自主組織権を尊重し、行政総合化効率化を進めることを目的といたしたものであり、これにより行政サービスが後退するというようなことは当たらないものと考えております。  政府といたしましては、今回、必置規制見直した分野の行政のサービスにつきましては、今後とも地方自主性自立性、国と地方役割分担を踏まえつつ、適正に対処してまいります。  地方税財源についてのお尋ねがありましたが、現在の我が国経済の状況によりまして極めて厳しい状況にある地方財政の建て直しのためにも、地方財政の運営に支障が生じないよう十分配慮しつつ、各般の経済対策を実施することにより、まずは景気を回復軌道に乗せることが必要と考えております。  また、地方分権の進展に応じまして、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であり、地方分権推進計画におきましては「地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図る。」とされておるところであります。  地方税財源充実確保につきましては、地方分権推進計画を踏まえ、経済情勢推移税制抜本的改革方向等も見きわめつつ、総合的に検討すべきものであると考えます。  次に、駐留軍用地特措法改正についてのお尋ねでありました。  これは地方分権推進委員会勧告を受け、国と地方役割分担を明確にするとの観点から、国が最終的に執行責任を果たし得る仕組み整備するものであり、日米防衛協力のための指針に基づく対応を目的とするものではありません。  改正に当たりまして、使用・収用の裁決を都道府県の収用委員会にお願いするなど、地元の関係者の意見が反映される仕組みとするとともに、適正手続や正当な補償の確保にも配慮いたしており、その成立を期待いたしておるところであります。  本法案は、国と地方役割分担を明確にするとともに、これまで我が国中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度廃止や国の関与あり方見直し等の抜本的改革を行うものであり、本法案の提出に当たりましては、地方六団体からも評価をいただいておるところであります。  衆議院におかれましては、参考人質疑や中央及び地方公聴会を含め熱心な御審議をいただき、多くの各党各会派の御賛同をいただいたところであります。  参議院におかれましても、慎重御審議の上、本法案を今国会においてぜひとも成立させていただき、今や実行の段階を迎えた地方分権を具体的な形で進めてまいりたいと考えております。  以上、御答弁を申し上げた次第であります。(拍手)     ─────────────
  17. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 日下部禧代子君。    〔日下部禧代子君登壇拍手
  18. 日下部禧代子

    ○日下部禧代子君 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、ただいま議題となりました地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案につきまして、総理並びに関係閣僚に質問いたします。  今回の地方分権改革は、一九九三年六月の衆参両院で採択された地方分権推進に関する決議に始まったものでありますが、さらにこの流れを決定づけたのが一九九五年五月の村山内閣における地方分権推進法の制定であります。この推進法に基づいて設置された地方分権推進委員会の精力的な議論を経て、わずか三年余りの間に五次にわたる勧告がまとめられ、本法案の上程に結びついたのであります。  本法案の核心は機関委任事務制度の全面廃止というところにあります。それは、明治以来の我が国中央集権型行政システムの変革であり、国と地方公共団体との関係が上下・主従の関係から対等・協力の関係へと大きく転換することを意味します。自治体が国の下請機関ではなく、地域住民の自主的な判断と選択にゆだねられ、本来の地方自治を実現するためには絶対不可欠の前提条件なのであります。  したがって、本法案において機関委任事務廃止が真に実効あるものになっているのかどうかが厳しく検証されなければなりません。それは、同時に国の権限、国の関与がいかに縮小されているかを点検することでもあります。我が国の未来、我が国住民の共同参画による真の民主主義が実現するか否かが問われる重要な法案であります。徹底した審議を求めるものであります。  ところで、ヨーロッパには一九八五年に制定されたヨーロッパ地方自治憲章がございます。前文において、地方自治はあらゆる民主主義的国家形態の本質的基盤であると位置づけ、さらに、多様な地方自治の擁護と強化がヨーロッパの建設に貢献すると、自治と分権の意義を高らかにうたっております。憲章は、地方自治体に付与する権限は十分にしてかつ独占的でなければならないとし、自主財源の付与に始まって、地方自治原理の尊厳を保持するための司法権利をも保障しているのであります。  今回の法律案と比べたとき、その余りの格差は何と表現したらよいのでありましょうか。中央政府あって初めて自治体ありとする内閣の認識がこのような格差を生んでいるのではないでしょうか。この憲章に盛られている精神は、今後の我が国地方分権にとって重要な指針となり得ると思うのであります。  総理、このようなヨーロッパ地方自治憲章と比較した上で、今回の我が国地方分権改革を歴史的にどう位置づけていらっしゃるのか。さらに、二十一世紀の地方自治あり方について基本的なお考えをお聞かせください。格調高い御答弁を期待しております。  次に、法案の形式と国会審議権の関係についてお尋ねいたします。  四百七十五本もの法律を一括法案として提案し、その上、中央省庁改革関連法案と一緒に審議することは、個別根拠法の中身の詳細な検討が事実上不可能になります。このように、一括法は国会審議の空洞化を招くものでもあります。  そこで、一括法案という立法形式として提出された理由及び行政分野別の個別精査についての総理の御見解お尋ねいたします。  日本国憲法は、第八章で地方自治の本旨に基づきと地方分権の重要性を規定しております。その本来の目標は、住民自治をいかに高めていくかではなかったかと思うのであります。しかしながら、情報公開、住民参加住民投票、そして住民による監視といった重要課題について、本法案はほとんど触れておりません。  個性豊かな地域社会の形成は、自立した自治体住民の自主的な活動によって推進されるものであります。そのためには、自治体における政策評価システムの確立、自治体独自での政策立案能力、住民参加制度整備住民投票の活用方策など、住民自治を支援する施策の充実が不可欠であると思います。自治大臣に御見解をお伺いします。    〔議長退席、副議長着席〕  住民自治支援及び地方分権の実現に際しては、独立した地方自治基本法を制定し、それを尊重した上での個別法改正を行うか、あるいは地方自治法を抜本的に改正して、基本法的な内容法律と実務的な手続法律とに内容を分離することを行うべきであったと思うのであります。  そういう理念が欠けていたために、地方自治法でせっかく一般ルールを定めておきながら、各省庁の個別法でその一般ルール精神を踏みにじるような規定が盛られ、かえって国の関与は強まり、分権に逆行した内容になっていることを強く感じるわけであります。地方自治の本旨を明示する地方自治基本法制定についての御認識を総理お尋ねいたします。  次に、駐留軍用地特別措置法についてお伺いいたします。  今回の改正で、代理署名、公告縦覧の手続を国の直接執行事務とし、また、収用委員会に関する事務法定受託事務とされたものの、内閣総理大臣が緊急裁決、代行裁決することができるようになっております。結局、収用委員会の判断とは関係なく、申請、裁決、収用をすべて内閣総理大臣が行うこととなり、実質的には収用委員会権限の剥奪と言わざるを得ないことが行われようとしております。  地域住民の福祉に責任を持つ自治体との協議や調整をすることなしに、一方的に国が執行できるとするのは到底許されるものではありません。地方分権を目指すこの法律と今回の改正措置は全く対立する内容となっております。総理の御所見をお聞きいたします。  国から十分な権限移譲が行われ、その裏づけとなる財源移転が同時に行われて初めて地方自治が現実のものとなることは言うまでもありません。先ほど紹介したヨーロッパ地方自治憲章においては、地方自治体は、広範な自主性権限を持つ十分な自主財源の付与が保障されております。  翻って我が国税財源や補助金の現状を見るとき、ヨーロッパの地方自治のレベルからははるかに遠いと言わざるを得ないのであります。  地方分権のかなめとなるべき地方財源の確保について本法案になぜ盛り込まれていないのか。あわせて、地方財源の充実についての今後の具体的なプログラムをお示しいただきたい。大蔵大臣自治大臣にお伺いいたします。  今回の地方分権に向けた改革は、日本の自治制度の歴史にとって画期的なことであります。しかしながら、改革の第一歩であります。第二、第三の矢を放たなければなりません。総理、第二次地方分権の実現に向けての青写真をどのように国民に示し、お約束をされるのか、総理の御決意と具体的な内容をお聞きしたいのであります。  本日、ただいま、長洲一二前神奈川県知事の県民葬が行われておりますが、長洲さんは、ポスト工業化時代が行き詰まりを見せていた二十二年前、現代文明にかわる新しい文明モデルとして地方の時代を提唱いたしました。「私たちの暮らしの現場である地域自治体が尊重され、大事にされるべきであり、福祉の時代、文化の時代、人間の時代は、まさに地方の時代でなければならない」という長洲さんの言葉は、今もなお新鮮な輝きを失ってはおりません。  戦後、日本国憲法で初めて第八章に「地方自治」が設けられ、日本国憲法と同じ日に地方自治法が施行されたことの重みに改めて思いをいたし、分権、自治こそ二十一世紀への日本の生き残る道であることを強く訴えて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  19. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日下部禧代子議員にお答え申し上げます。  今回の地方分権一括法案は、国と地方公共団体との役割分担あり方を明らかにいたしますとともに、これまで我が国中央集権システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度廃止や国の関与あり方見直し等の抜本的な改革を行い、国と地方を対等・協力の関係に置こうとするものであります。  このことは、長い歴史を有するヨーロッパ評議会の制定いたしましたヨーロッパ地方自治憲章が、地方自治体があらゆる民主主義的国家形態の本質的基盤の一つであること、また、真の権限を持った地方自治体の存在が効果的に市民に身近な行政を供給し得ることを宣言しているのと同じ認識に立つものであります。  今回の改革は、戦後、日本国憲法によって保障された地方自治が、機関委任事務制度に象徴される古い衣を脱ぎ捨て、二十一世紀を迎えるにふさわしい姿となるべく、力強い一歩を踏み出すことになるものと考えております。  なぜ一括法案という立法形式にしたかというお尋ねでありましたが、今回の地方分権一括法案は、第一次から第四次までの地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して作成した地方分権推進計画に基づくものであり、同一の趣旨、目的を有するものであること、また、改正の大宗を占める機関委任事務廃止及びこれに伴う事務区分の再構成や関与見直しにつきましては、地方自治法で新たに規定される通則との整合性に配慮した関係法律整備が必要であり、これらの法律が相互に関連していて一つの体系を形づくっているものであること等の理由で一括法案として立案したものであります。  地方分権推進は極めて重要な課題でありますので、政府といたしましては、今国会におきまして十分な御審議をいただき、その成立をぜひお願いしたいと考えております。  地方自治基本法の必要性についてのお尋ねがありましたが、現行の地方自治法は、国と地方公共団体との基本関係の確立を目的といたしており、まさに地方自治に関する基本的な法律であると考えております。  地方自治法内容を充実することがまさに地方分権の理念を明らかにすることであると考えており、今回、国と地方役割分担あり方を示すとともに、機関委任事務制度廃止、国の関与等に係る一般ルールの創設や関与に係る係争処理手続等を新たに盛り込むなど、抜本的な改正を行うことといたしております。  次に、駐留軍用地特措法改正についてお尋ねでありますが、これは、地方分権推進委員会勧告を受け、国と地方役割分担の明確化の観点から、安全保障上の我が国の条約上の義務の履行に直接係る同法の事務につきまして、収用委員会役割、機能を尊重しつつ、適正手続確保等に配慮しながら、国が最終的に執行責任を果たし得る仕組みとするものであり、地方分権に対立するといった指摘は当たらないと考えております。  最後に、さらなる地方分権推進に向けた決意についてお尋ねがありましたが、政府といたしましては、地方分権推進法に沿って国民が豊かでゆとりの実感できる社会を実現するために地方分権に取り組んできたところであります。  地方分権推進法の期限切れ後の体制につきましては、その時点で状況を踏まえ判断すべきことであろうと考えておりますが、いずれにいたしましても、同法に規定されている地方分権推進に関する基本理念や基本方針の考え方に沿って、今後とも、地方分権推進計画等を踏まえた国から地方への事務権限移譲や、地方税財源充実確保などの推進に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  20. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 住民自治を支援する施策の充実が不可欠ではないかとのお尋ねでございます。  今回の法改正そのものにより、地方公共団体自主性自立性が高まり、住民の意向を踏まえて行政を進めることができるようになる、このことは住民自治の面において大きな意義を有するものであると考えております。  なお、個々具体の住民自治の充実方策につきましては、法律制度で一律に定めるよりも、地方行政の現場で創意工夫を生かすことが望ましいものでありますが、国におきましても、今後、住民投票制度や直接請求制度見直し検討などに取り組んでまいりたいと考えております。  次に、地方税財源の充実についてのお尋ねでございます。  地方分権の進展に応じて、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要でございます。  地方分権推進計画におきましては、「国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方税源配分あり方についても検討しながら、地方税の充実確保を図る」とされているところでございます。地方税財源充実確保については、この地方分権推進計画を踏まえ、経済情勢推移税制抜本的改革方向等も見きわめつつ、総合的に検討してまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  21. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 地方自治体の財源の充実の必要性についてお述べになられましたが、この点につきましては、基本的にはただいま御審議をいただいております法案におきましても、また政府地方分権推進計画におきましても同様なことを述べておりますので、認識の問題といたしましては、私どもも同様に考えておりますことは間違いございません。  ただ、いかにも今日における我が国の経済状態、財政状態が異常でございまして、これが正常になってまいりましたときにこの問題は決して避けて通れない問題として解決をしなければならないと思っております。  先般御審議をいただきました平成十一年度の国税収入は、ちょうど昭和六十二年ごろの財政収入と同じ水準に落ちておりまして、十年余り後退をいたしております。正常な姿とは到底思えない状況であります。したがいまして、一般会計は大変高い国債に依存をしておりますことは御存じのとおりであります。  また、地方財政につきましても、今年度の予算編成の際に自治大臣と随分御一緒にお話をいたしましたが、まことに惨たんたると申してもいいような状況でございまして、殊に従来の不交付団体、富裕団体が非常な税収不足に陥っているというようなことで、今回、地方財政につきましては、自治大臣と御相談をいたしましていろいろなことをいたしましたが、これはいわば当面を渡ろうという措置でありまして、こういうことが長く続けられるとは到底思えないようなことでございます。  そういう状況でございますから、一日も早くこの経済状況を正常に戻さなければならない、その上でこの問題には着手しなければならないと思っておりますが、例えば我が国の経済が仮に年率二%ぐらいな成長軌道に乗ったと判断されましたときには、一番にしなければならないのは、地方ばかりでなく国と地方行財政の再配分、それをどうするかということを検討することであると考えております。  したがいまして、御質問と私どもの認識は決して異なっておるわけではございませんが、一日も早くそのような処理ができますような経済状況、財政状況を招来いたしたい、かように考えておるわけでございます。(拍手)     ─────────────
  22. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 高橋令則君。    〔高橋令則君登壇拍手
  23. 高橋令則

    ○高橋令則君 私は、自由民主党並びに自由党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のありましたいわゆる地方分権一括法案について、総理及び関係大臣質問いたします。  我が国は今大きな岐路に立っていると思います。我が国は、明治以降、欧米先進国に追いつき追い越すことを目指し、政治、行政、経済、そして社会構造をつくり上げてきました。それは徹底的な中央集権の構造であります。  すなわち、政治、行政では中央地方に君臨し、経済社会においては官が民に目標を示し、規制と行政指導等によってこれを誘導していくというやり方でありました。  このシステム我が国近代化、経済社会の発展に大きく貢献してきたことは否定できません。しかしながら、二十一世紀を目前に控え、我が国を繁栄に導いてきたさまざまなシステムが、今や内外の激変に適切に対応できない深刻な制度疲労に陥っております。二十一世紀に向けて新たなシステムを構築することが、今まさに喫緊の課題になっているのであります。  私ども自由党は、自己責任原則を大前提としたフリー、フェア、オープンな社会の実現、国民一人一人の能力が最大限に発揮できる社会の構築を基本政策としております。そのため、今の行政システムの構造改革を積極的に推進しなければならないと考えております。すなわち、今回の政府による中央省庁等改革関連法案とともに、この地方分権一括法案をそのための第一歩として早期に実現する必要があると考えておるものであります。  第二次大戦後、地方自治については、憲法の定める地方自治の本旨に基づいて制度化され推進されてきました。しかし、その実情は果たしてどのようなものになってきたのでありましょうか。新しい地方自治を標榜しながら、その実態は次第に変貌し、中央が許認可権や補助金等で地方を縛り、陳情政治や官官接待等により国民の厳しい批判を受けるなど、真の地方自治にはほど遠いものになってきたことは明らかであります。  その意味において、平成七年の地方分権推進法の制定、地方分権推進委員会の累次にわたる勧告地方分権推進計画の策定など、地方分権推進に向けた取り組みが進められ、今回その一つの到達点とも言うべきこの法案国会に提出されたことは、まことに意義深いものがあります。関係各位の御努力に対して深く敬意を表する次第であります。  さて、これによって、今の地方自治ではなく、あるべき地方自治を想定し、これに基づいて地方分権推進するというものでなければなりません。地方分権推進基本理念は、国と地方公共団体役割を明確にし、地方が国に従属する関係から、国、地方が対等となる関係に改めることにあると考えております。  まず、総理地方分権推進基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。また、この法案が成立することによって地方の分権がどのように進められるか、その認識をお聞かせいただきたいと思います。  地方分権は、国全体の行政改革に資するものでもなければなりません。この法案が成立することによって地方公共団体にさまざまな権限移譲されることになりますが、これに伴って地方公共団体行政機構の肥大化をもたらすことがないこと、そしてまた、地方行政の改革が引き続き推進されることが必要であります。  今回の地方分権に伴う国、地方を通ずる行政改革の期待できる効果について、総理所見をお聞かせいただきたいと思います。  この法案の主たる柱の一つは、機関委任事務制度廃止とこれに伴う事務の再編成であります。明治以来の中央集権行政システムの象徴となっていた機関委任事務廃止することにしたのは、まさに歴史的な大転換であり、高く評価されるべきものと考えます。  これに対して、法定受託事務が多く、自治事務の割合が少ない、あるいは国の関与が懸念される等の批判もあります。  そこで、機関委任事務廃止の意義とともに、これらの論点について自治大臣所見お尋ねいたしたいと思います。  次に、市町村合併についてであります。  地方公共団体地域における行政を自主的、自立的に企画立案、実施そして調整することができるように、行財政基盤の強化と、行政経費を削減し、自立できる足腰の強い地方公共団体に再編する必要があると思います。特に、真に自立できる地域社会を実現するために、基礎的な地方団体である市町村役割が極めて重要であります。  私ども自由党は、市町村合併を積極的に推進し、現在、全国三千二百三十二の市町村を当面千に再編し、最終的には自立した三百の市に再編すべきものと考えております。  市町村合併推進基本的な考え方総理に、そしてまた、その取り組みの方策を自治大臣お尋ねいたします。  次に、地方分権に関連して、市町村長諸氏、都道府県知事の多選禁止の問題についてであります。  地方自治のいわゆる三ゲン、すなわち人間、権限、財源は今後さらに地方に大きく傾斜していくでありましょう。かつ、そのように進められていかなければなりません。これに伴って、大統領制度に準ずる首長制度の弊害も目立ってくるとする指摘があります。  しかるがゆえに、この多選禁止を避けて通ることのできない問題として検討すべきものと考えますが、自治大臣所見お尋ねいたします。  次に、地方分権を保障するためには、その財源の充実確保が肝要であります。  そのため、国と地方公共団体税財源配分あり方を根本的に見直す、そして地域の実情に応じた事業推進するため、地方公共団体に対する国の補助金、負担金等をできるだけ廃止し、当該補助金等に相当する額を一定のルールに基づいて地方公共団体に一括交付することが必要であると考えます。大蔵大臣並びに自治大臣にそのお考えお尋ねいたします。  次に、地方分権推進に伴う国土の均衡ある発展の必要性についてであります。  地方分権によって地域地域の自立発展が大いに期待されますが、一方において、国土の均衡ある発展を図るために、過疎、山村、離島等の条件不利地域においても健全な地域社会を守ることが重要であります。これらの地域役割に応じて国の適切な支援、対応策が今後ますます必要と考えますが、総理所見お尋ねいたします。  最後に、前段申し上げましたように、地方分権推進には、憲法の地方自治の本旨、地方自治法地方分権推進法並びにこの法案のエッセンスを総括し、地方自治の理念と根本原則を明らかにすることが必要であり、かつ継続的な取り組みが求められるものと考えます。  そのため、私ども自由党は、地方自治基本法の制定を主張していることを申し上げておきたいと思います。  冒頭申し上げましたように、今回の地方分権一括法案は、機関委任事務廃止を含む地方分権推進のための重要な一つのステップであります。  この法案の早期成立を願うとともに、地方分権を今後さらに推進され、あるべき地方自治の早期実現を心から期待いたしまして、私の質問といたします。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 高橋令則議員にお答え申し上げます。  地方分権推進基本考え方及び本法案の意義についてお尋ねがありましたが、言うまでもありませんが、地方分権は、ただいま議員御指摘基本理念を踏まえつつ、二十一世紀にふさわしい我が国基本的な行政システムを構築するものであります。  地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識をしており、本法案の成立によりまして、地方分権を具体的な形で進め、明治以来形成されてきた国、都道府県市町村という縦の関係である中央集権型行政システムを変革し、対等・協力の横の関係を構築したいと考えております。  地方分権推進による国、地方を通じた行政改革の期待できる効果についてのお尋ねがありました。  地方分権推進は、今日、我が国が取り組んでいる行政改革の大きな柱の一つであります。国と地方公共団体それぞれの役割分担が明確化し、国の関与必要最小限に限られることとなるため、国、地方を通じた行政の簡素効率化が図られるものと考えております。  市町村合併に係る基本的な考え方についてのお尋ねでありましたが、地方分権の成果を生かし住民サービスの向上を図るためには、市町村の主体的な取り組みのもとに市町村合併を積極的に推進し、行財政基盤の強化を図るべきであると考えております。このため、本法案に思い切った支援措置を盛り込むほか、都道府県の協力も得ながら市町村合併を総合的に推進してまいります。  最後に、過疎、山村、離島、半島などの条件不利地域振興についての御質問がありました。  国土の均衡ある発展は、重要な政策課題であると考えております。このため、さまざまな面で不利な条件にあるこれらの地域につきましては、その実情に応じ、地方公共団体の自主的、主体的な取り組みを支援しつつ、国としても産業基盤や生活環境の整備等の施策を進めてまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  25. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 機関委任事務廃止の意義などについての御質問がございました。  この法案の成立によって、中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度廃止をされ、関与の抜本的な見直しとあわせて地方公共団体自主性自立性は大幅に高められ、国と地方公共団体関係は上下・主従の関係から大きく転換をされるものと考えております。  また、法定受託事務の数につきましては、今回の法案作成に当たって地方分権推進委員会勧告に即して事務区分を行ったところでありますが、将来にわたり法定受託事務の創設は厳に抑制してまいりたいと考えております。  関与につきましては、今回の法案において、機関委任事務に係る国の包括的な指揮監督廃止しますとともに、関与法定主義基本原則手続ルール及び係争処理制度地方自治法規定いたしました。さらに、個別の法律における関与につきましても見直しを行い、その整理、縮小を図ったところでございます。  これにより、全体として関与は大幅に縮減され、地方分権趣旨を実現するものになっていると考えております。  次に、市町村合併取り組みの方策についてのお尋ねでございますが、まず、本法案に、地域審議会の設置、合併特例債の創設などの思い切った支援措置を盛り込んだところであります。さらに、合併推進のための財政措置を拡充するほか、合併推進のガイドラインをお示しして、都道府県の積極的な取り組みを要請するなど、市町村合併を積極的かつ総合的に支援してまいります。  次に、首長の多選禁止についてのお尋ねでございます。  これは、地方分権推進計画におきまして、「首長の選出に制約を加えることの立法上の問題点や制限方式のあり方等について、幅広く研究を進めていく。」とされたわけでございます。これを踏まえ、現在、自治省におきまして学識経験者による研究会を設け、調査研究を進めておるところでございます。白地に絵をかくというのと違って、現実に該当者もあるわけでございます。そういう点で、各党各会派におかれましても、十分御議論をちょうだいいたしたいと考えております。  国庫補助負担金を廃止し、一括交付することについてのお尋ねでございます。  政府としては、地方分権推進計画等に基づき、地方公共団体自主性自立性を高める見地から、国と地方との役割分担見直しにあわせて積極的に国庫補助負担金の整理合理化を進め、地方税、地方交付税等の地方一般財源の充実確保を図ることといたしております。  また、第二次地方分権推進計画に基づきまして、公共事業に関し、地方公共団体が裁量的に施行できるよう、国が箇所づけしないことを基本とした統合補助金を平成十二年度に創設することとしております。  国庫補助負担金につきましては、自由党として、包括交付金方式を提唱しておられることを十分承知いたしております。  いずれにしても、地方公共団体が自主的、主体的に事業を実施できるよう、必要な財源措置あり方について見直しを進めてまいりたいと考えております。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  26. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 国と地方との税財源配分の問題につきましては先ほども一部お答えを申し上げましたが、この平成十一年度の国税収入の見積もりは四十七兆円余りでございますが、平成の初めには実は六十兆円を超したことが御承知のようにございますので、大変に異常な状況になっております。また、その状態は地方においても変わりませんので、早くこのような異常な状態を脱して、我が国経済を回復の軌道に乗せました上で、二十一世紀の初頭における税制あるいは財政の課題、それは中央ばかりでなく地方にも及ぶものでございますが、抜本的な再検討をしなければならないということを強く考えておるところでございます。  それから、補助金の問題につきましてお話がございまして、今、自治大臣が一部お答えになられましたが、補助金などを全部廃止することができるかどうかという問題でございます。  これは、将来必ず検討されるべき課題でございますけれども、今考えますと、国が地方の自治ということを損なうという意味でなくて、国が全国で一定行政水準を維持したいと何かについて考える場合、あるいは国が特定の施策を持っておりまして、それを推進したいと考える場合に、地方自治を損なうという意味ではなくて、補助金等を使わせていただきたいと考えることは現実にあることでございます。そういう場合にはどうするかという問題がございますが、これは国と地方役割分担等を再検討いたしますときにあわせて解決できる問題がかなりあろうと思いますが、そういう問題がありますことを申し上げておきたいと思います。  ただし、御質問の御趣旨のように、いわゆる統合補助金でございますが、これは、国があちこち事業の箇所を指定するとか、あるいは内容についてあれこれ言うことでなくて、事業箇所あるいは公共団体がその内容について主体的に定めることができるということは、これはいかにも今までの補助金について問題がございますので、おっしゃいますように、統合補助金を創設すればかなりそれを地方にお任せすることができるということは同感でございまして、今、自治大臣が言われましたように、平成十二年度の予算編成につきましてはそれを実行いたしたいと考えております。(拍手)     ─────────────
  27. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) 菅川健二君。    〔菅川健二君登壇拍手
  28. 菅川健二

    ○菅川健二君 私は、参議院の会を代表して、ただいま趣旨説明がありました地方分権一括法案に対して、総理及び関係大臣質問いたします。  日本列島は、今、政府の相次ぐ経済再生策の実施にもかかわらず、依然として経済の先行きは不透明であり、国民生活不安は解消せず、総閉塞状態に陥っております。  このような状況を打破し、国民が真に生きがいを実感できる社会を構築するためには、従来の中央集権型行政システムから、住民に身近な地域のことはみずからが決定し、みずからが責任を負う地方分権システムに転換することが現下の急務であります。この実現によって、初めて国民が意欲を持って個性豊かな地域づくりに取り組むことが可能になると考えます。  平成七年に成立した地方分権推進法や、それに基づいて発足した地方分権推進委員会の中間報告は、このような考え方を基調として出されましたが、その後、橋本総理のときに、現実的で実行可能な案としての注文がつけられ、平成八年から提出された第五次にわたる勧告は、各省庁との合意による妥協の産物で、中途半端なものとなりました。  これに基づき作成された地方分権一括法案は、さらに後退した内容をも盛り込んでおり、機関委任事務廃止一定の前進を見たものの、なお法定受託事務が半数近くを占めるなど、当初期待された分権改革とはかけ離れていると言わざるを得ません。  総理、この分権法案地方分権のあるべき姿から見てどの程度前進したのか、さらに、今後取り組むべき課題をどのように考えているのか、率直な御感想をお聞かせください。  それにつけても、地方自治体関係者のこの法案に対する関心は冷ややかなものがあります。それは、肝心な金に関する手当てが全く欠けているからです。  国と地方関係は、従来の上下・主従の関係から対等・協力の関係に改めることとされておりますが、財源の面では、依然として二千五百件に及ぶ国庫補助金という形で上下関係が厳然として存在しており、三割自治と言われているように、自主財源も一向に改善されません。とりあえず、国のひもつき補助金は直ちに思い切ったメスを入れるべきです。特に、公共事業のむだな配分指摘されておりますが、地域の実情に合った効果的な執行を図るためには、地方自治体事業の選択と箇所づけを全面的にゆだねるべきです。  公共事業の国庫補助金を地方自治体へ一括して交付することについて、関係各省の協力を得て直ちに実施するお考えはないか、自治大臣にお聞きいたします。  さらに、地方の歳出に見合う自主財源確保が不可欠です。地方税財源を強化するため、例えば所得税の一定部分の地方への移譲、法人事業税の外形標準課税、地方消費税の強化等を図るべきではないでしょうか。あわせて御所見をお聞きいたします。  総理には、このような国庫補助金のあり方地方税財源の充実について、基本的な認識をお聞かせください。  次に、この法案には、地方分権観点から、地方自治の本旨に反する規定があります。  その典型的なものは、自治事務に対する各大臣是正要求という強制的な関与規定を置いたことです。このことは、各省庁の地方自治体に対する行き過ぎた不信のあらわれであり、自治事務は、自治体の裁量に任せることが当然保障されなければなりません。自治事務に対する措置義務を課すような規定は削除さるべきと考えますが、自治大臣、いかがでしょうか。  次に、懸案であった社会保険、職業安定に係る地方事務官制度廃止し、これらの事務を専ら国の事務として国家公務員が直接執行することは、社会保険や職業安定関係事務が長年にわたり都道府県事務と密接不可分なものとして定着している現実を無視し、中央省庁のスリム化、地方分権推進観点からも逆行しているのではないかと考えます。総理の御所見をお聞かせください。  あたかも失業者の増大は、深刻な社会問題となり、内政の最大の課題となっている現在、地方自治体は、企業誘致や障害者、高齢者の雇用支援のほか、先週政府が決定した緊急雇用対策でも、雇用の創出に大きな期待が寄せられており、失業者へのきめの細かい生活保障にも重要な役割を果たしております。このような時期に、職業安定事務を国に引き上げ、地方の雇用行政に空白を生み出すことは、国と地方が一体となって実施して初めて効果を発揮する雇用政策に重大な支障を来すものと考えます。  労働大臣には、雇用行政に対する地方自治体役割をどのように認識し、地方自治体の雇用政策の実施体制をどのように考えているのか、具体的な方策をお聞きいたします。  次に、この法案が成立することに伴い、地方自治体の首長の権限が一層強化されることになります。このこと自体は歓迎すべきことではありますが、反面、権力の集中による弊害も懸念されます。特に、都道府県知事、政令指定都市の市長等の多選による弊害もさらに大きくなることが予想されます。この際、同時に、これらの首長の多選を制限するような方策を講ずべきと考えますが、総理のお考えはいかがでしょうか。  以上のように、あるべき姿の地方分権に向かって、まだまだ大きな課題が山積しております。このような時期に、中央省庁が再編され、自治省が総務省の一部門にすぎなくなることは、地方分権推進すべき立場の閣僚を欠くことになります。また、地方と国とを合わせた歳出の約七割、国家公務員の約三倍の職員を有する三千三百にも及ぶ地方自治体の頼るべき駆け込み寺もなくなります。地方分権が完全に達成されるまでの当分の間、地方自治担当の特命大臣を置くべきではないかと考えますが、総理の御所見を伺います。  最後に、小渕総理には、先日の本会議でも、群馬県の中山間地域に育てられたと申されました。谷間のラーメン屋から海の家のラーメン屋に、凡人から非凡な人に称せられ、支持率も上げ潮です。  地域から多彩な人材が輩出するよう、これまでの地方分権のように中央権限地方に分け与えるという発想ではなく、地域こそ活力の源泉であるとの観点から、地方主権を目指したシステム改革を断行すべきであると考えます。  分権改革にかける総理の決意をお聞きして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  29. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 菅川健二議員にお答え申し上げます。  まず、地方分権推進状況及び今後の取り組むべき課題についてのお尋ねがありました。  本法案は、国と地方役割分担あり方規定するとともに、これまで我が国中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度廃止や国の関与あり方見直し等の抜本的な改革を行うことといたしておることは御承知のとおりでございます。  このことによりまして地方公共団体自主性自立性が高まり、地方分権の大きな前進であると考えております。この法案平成五年の国会決議以来の一つの到達点としてとらえた上で、引き続き地方分権推進計画等を踏まえた事務権限移譲地方税財源充実確保など、地方分権推進に積極的に取り組んでまいります。  御指摘の一括交付金についてでありますが、行政目的を異にする補助金等を全般的に統合し、地方公共団体等に交付するという趣旨のものであるとすれば、国が一定行政水準を維持するためや国の特定の施策を推進するための政策手段である補助金等の重要な機能を損なう等の問題があるものと考えられます。  なお、公共事業に係る個別補助金に関しては、第二次地方分権推進計画におきまして、適切な目的を付し、具体的な事業箇所、内容について地方公共団体が主体的に定めることができることなどを内容とする統合補助金を創設することとなっており、平成十二年度予算におきまして統合補助金が実現されるよう積極的に取り組んでまいりたいと考えます。  地方税財源についてでありますが、地方分権の進展に応じて地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要と考えられます。  今後とも、地方分権推進計画に沿って国庫補助負担金の積極的な整理合理化事務権限移譲などを推進し、地方税、地方交付税等の必要な地方一般財源の確保に努めるとともに、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方税源配分あり方について検討しながら地方税の充実確保を図るべきものと考えられます。  地方事務官が従事する事務についてでありますが、そもそも国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じて事務分担することが責任の所在を明確にし、ひいては地方分権に資するものと考えられます。  社会保険関係事務は国が経営責任を負う保険事業であり、一体的な事務処理による効率的な運営が要請されるものであることから、また、職業安定関係事務は国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、これらを国の直接執行事務とし、地方事務官厚生事務官及び労働事務官とすることとしたものであります。  地方事務官は現在でも国家公務員であり、その定員は国家公務員の総数に算入されておりますので、地方事務官制度廃止によりましても国家公務員数が増加することとはなりません。また、今後とも事務執行に当たりましては、効率的な事務処理体制整備に努めてまいります。  首長の多選を制限すべきとの御指摘でありますが、地方分権推進計画におきまして、首長の選出に制約を加えることの立法上の問題点や制限方式のあり方について幅広く研究を進めていくといたしておりまして、現在、自治省におきまして学識経験者による研究会を設け、調査研究を進めているところであります。各党各会派におかれましても十分御論議をいただきたいと考えております。  当分の間、地方自治担当の特命大臣を置くべきではないかとのお尋ねでありましたが、地方自治は憲法に位置づけられた重要な理念であることから、総務省設置法案の中で、その任務として地方自治の本旨の実現を掲げるとともに、そのための所要組織整備を行うことといたしており、地方自治を担当する総務大臣がその役割を適切に果たしてまいるものと考えております。  最後に、地方分権推進する決意についてお尋ねがありましたが、地方分権は二十一世紀にふさわしい我が国基本行政システムを構築するものであります。私は、地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識しております。本法案を今国会においてぜひとも成立させていただき、地方分権を具体的な形で進めてまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣野田毅登壇拍手
  30. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 公共事業の国庫補助金の一括交付についてのお尋ねでございます。  政府としては、先般、閣議決定されました第二次地方分権推進計画に基づき、公共事業に関し地方公共団体が裁量的に施行できるよう、国が箇所づけしないことを基本とした統合補助金を平成十二年度に創設することといたしております。現在、それぞれの所管省庁において具体的な内容検討しているところでございます。  公共事業に係る補助金の一括交付金化にすることにつきましては、地方公共団体が自主的、主体的に事業を実施できるようにするために必要な財源措置あり方の問題であります。精力的に検討を進めてまいりたいと考えております。  地方税財源についてのお尋ねでありますが、地方分権の進展に応じ、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要でございます。地方分権推進計画におきましては、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、地方税の充実確保を図ることとされているところであります。  今後、地方分権推進計画を踏まえ、当面の課題であります法人事業税への外形標準課税の導入についての検討を進めるとともに、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、国と地方税源配分あり方についても検討しながら、地方税財源充実確保を図ってまいりたいと考えております。  それから、自治事務に対する是正要求についてのお尋ねでありますが、地方公共団体の違法な事務処理等が自主的に是正されることが期待できないような例外的な場合には、国等が何らかの形で関与することも必要ではないかと考えておるわけです。  是正要求はこのような意味で設けられた規定でありますが、自治事務に対する関与であることを考慮して、是正改善の具体的措置内容については地方公共団体の裁量にゆだねるなど、必要最小限のものとするとともに、係争処理手続の対象としているところであります。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣甘利明君登壇拍手
  31. 甘利明

    国務大臣(甘利明君) 雇用行政に対する地方自治役割及び実施体制についてお尋ねがありました。  雇用施策の推進地方の立場からも極めて重大な課題でありまして、都道府県は、企業誘致や創業支援を通じた雇用機会の創出、あるいはUターン希望者に対する企業・生活情報の提供など、地域の実情に応じた雇用施策を自主的かつ積極的に実施する立場にあると認識をいたしております。  そこで、地方事務官制度廃止後の雇用施策の実施体制につきましては、今後、各都道府県におきましても検討されるものと承知をいたしておりますが、国といたしましても、新たに設ける都道府県労働局と都道府県との連絡調整の場の創設をする、あるいは雇用に対する情報の相互の積極的提供など、両者の連携の確保に万全を期する所存でございます。(拍手
  32. 菅野久光

    ○副議長(菅野久光君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会      ─────・─────