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1999-05-26 第145回国会 参議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十六日(水曜日)    午後零時八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二十三号     ─────────────   平成十一年五月二十六日    正午 本会議     ─────────────  第一 特定化学物質環境への排出量把握等   及び管理改善促進に関する法律案趣旨   説明)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  日程第一 特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案趣旨説明)  本案について提出者趣旨説明を求めます。国務大臣真鍋環境庁長官。    〔国務大臣真鍋賢二登壇拍手
  3. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  現代では日常生活経済活動に用いられている化学物質が数万種類に及ぶと言われており、近年では毎年約三百種類の新規の化学物質が開発、販売されております。一方、化学物質の中には、人の健康や動植物の生息などに有害な性状があるものもあり、特に近年、テトラクロロエチレン、ダイオキシン類等環境への排出に関する社会的な関心が高まっており、化学物質への対策強化政府の急務となっております。  こうした現下の状況対応するためには、有害性がある化学物質について、環境への排出規制製造使用規制中心とする従来の対策に加え、化学物質管理改善促進するとともに、環境保全の一層の推進を図るための新たな制度導入が必要であります。このように、化学物質管理改善促進し、環境保全上の支障未然に防止するという考え方は、平成八年のOECDによる勧告等に見られますように国際的にも共通の認識となり、主要先進国で実施され始めていることから、我が国としても国際的協調の動向に配慮しつつ施策を進めることが必要となっております。  そのため、特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進を図ることを内容とするこの法律案を提案した次第であります。  次に、法律案主要事項について、その概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進し、環境保全上の支障未然防止を図ることを目的とするとともに、国が定める化学物質管理指針に留意して特定化学物質取り扱い等に係る管理を行うこと等を事業者の責務とし、国及び地方公共団体は、事業者に対する技術的助言、必要な人材育成等措置を講ずることとしております。  第二に、事業者に、その事業活動に伴う特定化学物質排出量把握等及び国への届け出義務づけるとともに、国はその届け出られた事項について集計し、集計結果を公表することとしております。さらに、個別事業所排出量等情報につきましても、営業秘密確保しつつ、国民請求に応じて開示することとしております。また、届け出義務を課されない中小事業者家庭等からの排出量につきましては、国が当該排出量を算出、集計し、その集計結果を事業者から届け出られた排出量等とあわせて公表することといたしております。  第三に、事業者は、特定化学物質等を譲渡し、または提供する場合、その相手方に対して当該化学物質等性状及び取り扱いに関する情報の提供をしなければならないこととしております。  このほか、国による調査の実施、必要な罰則等に関し、所要の規定を設けることとしております。  以上が本法律案趣旨であります。  なお、本法律案衆議院において一部修正されておりますが、その概要は次のとおりであります。  第一に、対象物質を定める政令は、人の健康に係る被害等未然に防止されるよう十分配慮して定めることを明示すること。  第二に、事業者は、特定化学物質排出量等情報を、営業秘密に係るものを除き都道府県知事経由で国に届け出ることとし、この場合において都道府県知事当該届け出事項に関し、意見を付すことができるものとすること。  また、都道府県知事は、必要があると認めるときは、国に対し、営業秘密に該当するものとして届け出られた事項のうち当該地域に係るものについて説明を求めることができるものとすること。  第三に、「法律施行後十年を経過した場合」に法律施行状況について検討を加えるとしていたものを「法律施行後七年を経過した場合」と短縮すること。  以上でございます。(拍手)     ─────────────
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。内藤正光君。    〔内藤正光登壇拍手
  5. 内藤正光

    内藤正光君 私は、民主党新緑風会を代表して、ただいま議題となりました法律案に対し、総理並びに関係大臣質問いたします。  現在、世界では十万種もの化学物質製造使用され、それらを原材料としてプラスチック製品医薬品など私たちに身近な数多くの化学製品製造されております。しかし一方で、環境中に排出された化学物質環境を汚染し、食物連鎖を通じて人体に蓄積され、私たちの健康に著しく有害な影響を及ぼすことも最近のダイオキシン問題を通じて改めて認識させられました。  ところが、十万種もの化学物質の中で、その有害性が判明し、製造使用規制されているものはほんの一握りにすぎません。残り大半のものについては、健康や生態系に有害な影響を及ぼす可能性を持ちながらも、そのリスク評価が十分に行われていないがために推定無罪とされております。  もはや、化学物質一つ一つに科学的な検証を行い、有害性が判明したものから順次規制をかけていくといった従来の規制的手法では、対策はいつも後手後手に回り、国民の健康を守ることはできません。  そこで考え出された新たな手法PRTR制度です。この制度は、企業が有害な化学物質をどのくらい環境中に排出、廃棄したかを行政に正しく報告する、行政はそのデータを広く国民公表し、それをもとに行政企業地域住民の三者が対等に議論を行う、さらに投資家らは各企業環境への取り組みを監視する、これによって企業は自主的に有害な化学物質排出削減に努めるというものです。  しかしながら、霞が関というふるいにかけられた今回の法案は、OECDが各国に導入を勧告したPRTR制度とはおよそかけ離れたものとなってしまいました。この立場から、以下大きく三点にわたって質問をさせていただきます。  第一点目として、この法案は、相も変わらず省益を最優先させ、本来の趣旨を二の次、三の次とした縦割り行政そのものであることを指摘しておきます。  環境保護経済成長との調和を図っていくために、環境行政はますます重要になってまいります。それに対する政府意思表示環境省設置であったかと思います。にもかかわらず今回も、省益むき出しの調整の中でPRTR制度本来の趣旨は骨抜きにされ、その事態総理はただ傍観されております。  そもそも省庁再編基本理念とは何だったのか、また今後の環境行政はどうあるべきなのか、総理に改めてお伺いいたします。  修正案により排出量報告は各都道府県届け出ることになったものの、最終的にそれぞれの業所管官庁へ行きます。  そこで、環境庁長官並びに通産大臣にお伺いをします。  都道府県企業からの報告をただ受け取り、仕分けをして、業所管官庁へ送り届けるだけなのか、あるいは都道府県が主体的かつ責任を持って対応することになるのか。また、受けた報告に対して都道府県がどこまで情報正確性について議論でき、場合によってはその権限において再提出を命ずることができるのか。以上を含め、この法案に関して都道府県役割責任についてお尋ねいたします。  また、営業秘密については、企業は直接その業所管大臣へ申請します。その専門性ゆえにそれぞれの業所管官庁届け出るのが適当との説明もございました。しかし、多くの企業が多角化している今日、この考え方は大きな矛盾を抱えていると言わざるを得ません。  例えば、日本たばこでございます。日本たばこは、たばこのほかに医薬品や花などを手がけております。たばこ大蔵省医薬品は厚生省、花は農水省の所管ですが、たばこが主たる業務でありますから、この法案に関しては日本たばこ所管官庁大蔵省となるはずです。しかし、大蔵省医薬品や花に関する専門性を持っているとでも言うのでしょうか。また、日本たばこにとっては、たばこという既に成熟した分野よりも、今は規模が小さくともこれから業務拡大を図っていこうとする分野にこそ営業秘密があると考えますが、いかがでしょうか。  さらに、そのような事例については他省庁と連携をとりながら対応するというのであれば、最初から環境庁が一元的な窓口を務めるのが適当と考えますが、いかがでしょうか。  以上の矛盾について、環境庁長官並びに通産大臣から明快な答弁を求めます。  アメリカを初め、オランダ、カナダ、イギリスなどPRTR制度を既に導入した国々は、その理念にのっとり、いずれの国も環境省あるいは環境庁管轄をしております。日本でも新たに環境省設置し、その環境省環境行政を一体的に行うことを決定したはずではなかったでしょうか。  衆議院の本会議質問において総理は、政府全体で取り組む体制とするために業所管官庁ごと対応とするとの答弁をされました。では、諸外国では国全体での取り組みを行っていないのでしょうか。専門性は理由にならないことは、さきに申し上げたとおりです。なぜ日本だけが業所管官庁ごと対応になったのか、納得のいく説明環境庁長官に求めます。  また、さまざまな霞が関的な事情があったにせよ、最終的には環境庁も、業所管官庁ごと管轄し、環境庁には二次的な情報だけが行くことになるこの法案に同意をされました。環境省となって環境行政を一元的に責任を持って担っていかなければならない環境庁に、その自覚と責任主体性があるのでしょうか。環境庁長官にお伺いいたします。  第二点目、情報正確性確保についてお尋ねいたします。  OECDマニュアルにもあるとおり、PRTR制度の目指す目標を達成できるか否かは情報正確性いかんです。アメリカでは、報告を怠ったり誤った報告をした際、一日当たり二万五千ドル、一カ月であれば七十五万ドル、実に一億円もの過料が科せられます。一方、本法案では、たかだか二十万円の過料であります。余りにも軽微で、その実効性を疑います。衆議院において、企業の自主的な管理改善を促すのがこの法案趣旨であり、高い過料はなじまないとの答弁がございました。しかし、届け出自体義務なのですから、この答弁には矛盾があるのではないでしょうか。  さらに、正確性確保するために、民主党衆議院で主張いたしましたように、企業に帳簿の備えつけ義務を課し、また環境庁長官立入検査権限を与えるべきと考えますが、いかがでしょうか。環境庁長官お尋ねいたします。  次に、いかに広範囲で正確な情報収集に努めるかという質問に対して、衆議院において、業界団体も使いながらとの答弁がございました。時代錯誤的であるのは言うまでもありませんが、ほかにも大きな認識不足が二点ございます。  一つ目は、いわゆる業界団体に属するような日本大手企業は、他の先進諸国に比べてISO14000の取得率も格段に高く、さらに自主的な環境監査結果を公表するなど、環境問題への取り組みもかなり進んでいると言えます。  二つ目は、日本環境負荷を減らしていくために、今、日本が取り組んでいくべきは、実は公害問題が叫ばれた七〇年代もその高いすそ切りゆえ規制対象外とされてきた中小企業です。そして、その多くが業界団体の力の及ばないところにおります。中小企業をも含めていかないことにはPRTR制度の効果を期待することはできません。すそ切りの高さに関する合理的かつ具体的な考え方環境庁長官にお伺いいたします。  また、PRTR制度中小企業にも適用するに当たって、過大な負担を軽減し、かつ正確な情報確保するためにも、中小企業への財政的かつ人的な支援を実施すべきと考えますが、通産大臣にお考えをお伺いいたします。  最後に、この制度において企業が受けるメリットについて御指摘をさせていただきます。  そもそも、なぜOECDPRTR制度導入に向け努力しているのでしょうか。それは市場競争環境という要素を新たに取り込むことで市場原理の欠点を補い、環境保護経済成長との調和を図るのがPRTR制度であると考えるからでございます。  例えば、アメリカでは、本制度により一九八八年から九六年の間に実に四五・六%もの排出量削減を達成いたしました。そして、それを可能としたのはまさに積極的な情報公開だったのです。それを刺激として、企業排出量削減に向け自主的な努力を進めてきたのです。つまり、企業サイドに立って言えば、情報公開がみずからの環境意識を高め、最終的には自分たち効率性向上にも資する。しかし、今回の法案内容では、企業側には情報収集届け出コストを負担させるだけに終わってしまいます。なぜならば、積極的な情報公開というPRTR制度の核が抜け落ちてしまっているからです。  我々民主党新緑風会としては、本来のPRTR制度環境保護経済発展との調和を図っていくためには必要不可欠なものであるとの認識に立ち、霞が関というふるいにかけられ抜け殻となってしまった今回の法案に再びその魂を吹き込むべく本院で真正面から議論をしていくことを申し上げ、私の質問を終えさせていただきます。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 内藤正光議員にお答え申し上げます。  省庁再編基本理念についてお尋ねがございました。  中央省庁等改革は、行政における政治主導を確立し、内外主要課題や諸情勢に機敏に対応できるよう、行政システムを抜本的に改めますとともに、透明な政府の実現や行政スリム化効率化を目指していくものでございます。  今後の環境行政あり方についてお尋ねがありましたが、内外環境を守り二十一世紀に引き継ぐことは重要な政策課題であり、環境省設置法案において、化学物質対策など環境を守るために必要な事務事業環境省に付与いたしております。これによりまして、環境行政充実強化を図り、国民一人一人の安全を確保し、私の旨とする安全へのかけ橋を築いてまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)    〔国務大臣真鍋賢二登壇拍手
  7. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 内藤正光先生にお答えを申し上げます。  総理から総括的な答弁がございましたので、箇条的な御答弁をさせていただきます。  都道府県役割責任についてですが、修正により、都道府県がより主体的に制度運営に参画することになりました。  具体的には、届け出のない事業者への指導記載ミスの書きかえの指導など、届け出義務履行確保責任を持っていただくことを期待しております。また、個別事業所データ地域環境施策への活用、事業者への技術的助言環境教育人材育成等にも責任を持って取り組んでいただきたいと考えております。  次に、営業秘密のある分野とその届け出先についてでございますが、営業秘密のある分野の想定はしておりません。届け出先当該営業秘密に係る事業所管する大臣となります。したがって、複数省庁所管する事業者についても、業種ごとに、事業規模大小を問わず、その業種に関する専門的知見がある大臣によって判断されるため、環境庁が一元的に営業秘密請求窓口を務める必要はないと考えております。  PRTR管轄でございますが、政府の組織や政府内の役割分担は国によりさまざまであり、我が国PRTR制度我が国の実情にふさわしいものとすべきであります。  本法案目的を達成する上で最も適当な体制として、環境庁と通商産業省を中心に、業所管省庁を含め政府全体で取り組む仕組みとしたものであります。  次に、環境庁主体性についてでございますが、環境庁制度中心となって、物質選定PRTR結果の集計公表や必要な調査を行うことなど、環境保全観点から主体的な役割を果たしております。したがって、届け出先業所管大臣であっても、環境庁PRTRにおいて果たす主体的な役割は揺るがないと考えております。  情報正確性確保でございますが、届け出違反過料は、金額にかかわらず、社会的信用の失墜、それに伴う経済的不利益があり、十分な抑止力と考えております。  なお、本法案のように届け出を受理する制度正確性確保罰則で担保することが一般的で、立入検査等を規定する例は承知いたしておりません。  PRTRすそ切り基準についてでございますが、パイロット事業経験中小企業対象としている欧米諸国制度運用実績などを参考にして、PRTR制度実効が上がるようなすそ切り基準にしてまいります。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  8. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) まず、都道府県役割責任についてのお尋ねですが、先ほど環境庁長官から既に答弁がありましたので省略をいたします。  営業秘密に係る制度矛盾があるとの御指摘ですが、事業者営業秘密に係る請求を行う先は、その事業規模大小にかかわらず、当該営業秘密に係る事業所管する大臣としています。  このような営業秘密の判断は、当該事業を取り巻く競争環境技術環境等を熟知している事業所管大臣が行うことが適当であり、環境庁が一元的な窓口を務める必要はないと考えております。  中小企業への支援についてのお尋ねですが、PRTR対象となる中小企業等に対しては、今後、環境庁及び通産省が一体となって、排出量推計方法に関するマニュアル推計ソフト届け出統一様式を作成し、中小企業を含む対象事業者に対し、きめ細やかな周知徹底技術指導を行う予定であります。  また、金融的支援措置として、中小企業金融公庫国民金融公庫の新たな政策的金融制度を創設し融資を始めることといたしております。  以上です。(拍手)     ─────────────
  9. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 福本潤一君。    〔福本潤一登壇拍手
  10. 福本潤一

    福本潤一君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案、いわゆるPRTR法案について、小渕総理並びに関係大臣質問いたします。  今日、化学物質による環境汚染の問題は、二十一世紀の人類の生存を脅かし、その対応策として環境の面で命の安全保障が要求される事態と言えます。  それは、最近のダイオキシン問題、生殖機能への影響も懸念される環境ホルモン問題、トリクロロエチレンなどの有機塩素系化学物質による地下水や土壌汚染問題、そして廃棄PCBの処理問題がいまだにそのままとなっているからであります。  我が国は、公害環境被害では幾多の悲惨な体験を経てまいりました。有機水銀による水俣病、カドミウムによるイタイイタイ病、PCBによるカネミ油症事件森永砒素ミルク事件等公害先進国であったことは忘れ得ない事実であり、公明党は、公害対策本部ダイオキシン対策本部設置して、生命環境を守る党として本格的に行動してまいりました。  そこで、総理に、まず、環境生命環境と健康の関係をいかに考えておられるか、理念、哲学をお伺いします。  さらに、政府がかねがね明言してきた環境汚染問題には未然防止観点から取り組むとした姿勢と決意、そして公害問題の反省をどうとらえているのか、総理にお伺いいたします。  次に、我が国におけるダイオキシン対策は諸外国に比べておくれ、一九八三年、愛媛大学研究チームごみ焼却施設からダイオキシンを初めて検出し、警鐘を鳴らし続けて十六年、対策は遅々として進まず、ついには周辺住民の健康や野菜などの安全性をめぐって社会問題化するまでに至りました。この状況は、繰り返してはならない公害環境被害を再び現出しかねない状況と言えると思います。  我が党は、こうした事態を踏まえ、ダイオキシン類対策特別措置法案を本院に提案し、耐容一日摂取量、TDIを法定化し、環境基準を設定し、総量規制等措置を講じようとしております。  そこで、ダイオキシン問題について、法的枠組み議員立法対応して進めていることに対する総理の御認識をお伺いします。  続いて、PRTR制度の諸問題について伺いたいと思います。  世界で十万、我が国で五万とも言われるおびただしい化学物質が生み出されており、前述したような人への直接の被害の問題に加え、化学物質内分泌攪乱作用、いわゆる環境ホルモン作用などが懸念されるグレーゾーン化学物質への対応が求められております。  私は、このようなグレーゾーン化学物質による環境汚染を防止するためのPRTR制度の成否は、このシステムに対する信頼性をどう確保するかにあると考えております。なぜなら、化学物質管理については、政府及び地方自治体公共部門企業NGO三者が共同して取り組んでいくことが重要であり、リオの地球サミットでもこの基本姿勢が確認されておるところです。この基本的取り組み枠組みの上に立って運用していかなければ、規制でもなく経済的手法でもないPRTRのような法制度実効性はおぼつかないと思っております。  ところが、今年、三月二十四日に開かれたシンポジウムに参加したNGO専門家から、欠陥法案であるとか、今の政府案ならない方がましだという意見が相次いだと報道されております。このような問題が生じたのは、法案合意形成の仕方にあったと考えます。  第一に、通産省化学品審議会安全対策部会リスク管理部会合同部会でもパブリックコメントを求めてはおります。ただ、それは、意見を求めているだけで、政府などの公共部門企業NGO三者で合意を形成しつつ制度化していく過程とはほど遠いものでありました。  いま一つは、制度の改変に対する柔軟性であります。この法案では、当初、十年後の見直しとなっておりましたが、OECD理事会勧告で示された柔軟性を持った制度であるとは言えなかったように思われます。こうした課題につきましては、我が党などの指摘によりまして七年後見直しという適正な修正がなされました。この修正を高く評価しております。  しかし、これまでの合意形成あり方については少なからず問題が残されております。通産大臣の御認識をお伺いします。  第二に、届け出先業所管官庁としたことであります。これにより、いわば皮一枚を残して通産省制度となってしまったことであります。  私は、この制度我が国における二十一世紀化学物質による環境汚染防止の柱であり、昨年九月には政府要望書質問主意書提出し、法案作成の経過を注視してまいりました。環境庁長官集計公表を担当するとはいえ、営業秘密に関しては業所管官庁から通知される化学品分類名について説明を求めるだけにとどまっております。拒否権もないありさまです。どこの国にPRTR届け出先通産省初め業所管官庁とした国があるでしょうか。環境庁長官の御見解をお聞きしたい。  第三に、地方自治体の位置づけであります。  平成九年度から環境庁が実施してきたパイロット事業は、神奈川県、愛知県の一部地域で行われ、その過程は、事業者にとっても、そして両県にとっても貴重な経験であったはずであります。これを土台にして制度を構築していけば、自治体に届け出仕組みに自然とつながっていったはずであります。それが、昨年夏ごろからの通産省の急激な動きにより、事態が急転直下変わってしまいました。これではNGO地方自治体が問題とするのは当然であります。特に、自治体の役割が限定的になっていったことは残念でなりません。  ただ、これについても、我が党等の指摘により、衆議院で、都道府県知事を経由することになりました。依然として不十分な印象は残りますが、一定の評価はできます。  法案に示された事項に加え、政省令にゆだねられている事項が多く、特に、届け出先となる業所管官庁の範囲、届け出先事業者の足切りの基準、足切りされた事業者や移動体など非点源からの推計方法化学物質のリストアップの数など、運用いかんではこの法案の性格を左右しかねない重要な事柄であるにもかかわらず、骨子が明らかにされておりません。これらについても今後の審議において明確にしていただかねばなりません。現時点において予定されている内容環境庁長官にお伺いいたします。  最後に、重ねて総理お尋ねいたします。  環境問題に対する我が国取り組みは、これまで地方、現場が先進的に取り組み、国がそれを追認するという状況であったと思います。言いかえれば、地方、現場が環境問題に取り組む意欲に比べて、総理を初めとする内閣の意欲はまだまだ不十分なのではありませんか。それが今回の法案のような環境庁が弱々しい関与しかできない法案になっている原因ではないでしょうか。  これから行政改革において環境省構想をどのように強化していくおつもりか、現在示されている環境省の機能などを先進国の機能に比して恥じないものとなるよう、例えば林野行政、水道行政等とのなお一層の連携など環境省を一層充実強化すべきという我が党の主張にどうこたえていただけるのか、総理の所見を伺い、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三登壇拍手
  11. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 福本潤一議員にお答え申し上げます。  環境生命環境と健康に関する理念、哲学についてお尋ねがありました。  私は、人類は地球環境の大きな恵みに支えられて初めて健康で文化的な生活を送ることができると認識いたしております。こうした認識に立ちまして、人類共有の生存基盤である有限な地球環境を健全な状態に保全して将来の世代に引き継いでいかなければならないと考えております。  環境汚染問題への取り組み姿勢公害問題への反省についてお尋ねがありました。  環境政策の推進に当たりましては、これまでの公害に係る経緯を振り返りつつ、環境汚染未然防止観点から取り組む決意であることを申し上げます。  ダイオキシン問題に係る議員立法についてお尋ねでありました。  この重要な問題につきまして、現在、多くの政党が積極的に企画立案し、政党間で話し合いが進められていることは高く評価すべきものと考えております。  政府では、ダイオキシン対策推進基本指針を策定いたし、対策を進めております。今後、国会と政府の共通の理解のもとに対策が充実されることを強く念願いたしております。  最後に、環境省についてのお尋ねがありました。  内外環境を守り、二十一世紀に引き継ぐことは重要な政策課題であります。環境省設置法案におきまして、化学物質対策など環境を守るために必要な事務事業環境省に付与するとともに、森林行政、水道行政等との一層の連携を図ることといたしております。これらを通じまして環境行政充実強化を図ってまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)    〔国務大臣真鍋賢二登壇拍手
  12. 真鍋賢二

    国務大臣真鍋賢二君) 福本潤一先生にお答えを申し上げます。  PRTR届け出先でございますけれども、政府の組織や政府内の役割分担は国によってさまざまであります。我が国PRTR制度我が国の実情にふさわしいものとすべきであると考えております。環境庁と通商産業省を中心に、業所管省庁を含めて政府全体で取り組む仕組みであり、法目的を達成する上で最も適当な体制であると考えております。  政省令にゆだねられている事項について申し上げます。  届け出先となる業所管省庁は、通商産業省、農林水産省、厚生省などであります。  届け出事業者すそ切り基準は、従業員数や化学物質の取扱量によって定めることといたしております。  非点源からの推計は、届け出られた同業種排出量データ、統計資料を用いて行うことといたしております。  対象物質は、当面、二百ないし三百程度になることをそれぞれ想定しておるところでございます。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣与謝野馨登壇拍手
  13. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 法案作成に当たっての合意形成あり方についてのお尋ねですが、御審議いただく法案は幅広い意見を集約した上で提出されたものでございます。  また、衆議院における法案審議を踏まえ、公明・改革クラブからの御提案による修正を含むものであり、各方面のさまざまな御意見を踏まえたものとなっていると認識しております。(拍手
  14. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会      ─────・─────