○堂本暁子君 参議院の会の堂本暁子です。きょうは参議院の会を代表して
質問をさせていただきます。
「平等、開発、平和」をテーマにしたメキシコでの
国際婦人年世界会議が一九七五年に開かれてから四半
世紀、そして北京で
世界女性会議が開かれてから四年、日本のすべての
女性はきょうの日を待ちに待っておりました。
今日、小渕
内閣が
男女共同参画社会基本法案を
国会に提出されたことに、まずは
敬意を表したいと思っております。今後、
国会における
審議を深め、今
国会での
成立を目指したいと願っております。
最初に、
男女共同参画社会基本法案を実効あるものとするための方策について、
官房長官に伺います。
基本法は、
社会的、文化的に
形成された
性別に縛られず、各人の
個性に基づいて
共同参画する
社会を目指しています。これは、一九九四年にカイロで開かれた国際人口・開発
会議において合意し、さらに一年後の北京
世界女性会議において国際的な潮流として確かなものとなったジェンダーの概念に基づいています。したがって、
基本法を
成立させることによって、日本は
国際社会に真に名誉ある地位を得ることにもなります。
先月、
国連の
女性の地位委員会において、日本
政府を代表し、目黒依子さんが
基本法案の
国会への提出について既に報告されました。
この
基本法案が国際的にも評価されるのは、
国内本部機構いわゆるナショナルマシーナリーの存立を担保し、行政
改革においてもそれをきちんと位置づけているということです。また、
基本法の策定過程において、広く
国民の
意見を募り、
審議会答申、さらに法文に反映させている点も評価できます。
この
基本法を実効あるものとするためには、今後、国レベルから
地方自治体レベルまでの
基本計画の策定や個別法の
制定や見直しが求められています。
官房長官の御所見を伺います。
次に、あるべき
男女共同参画社会と
基本法の
意義について
総理に伺います。
第二次
世界大戦後の日本は、
世界に類を見ない高度経済成長をなし遂げました。しかし、その過程で、
男性は企業戦士、エコノミックアニマルと言われるほど
仕事に徹し、
女性は
家庭にという
性別役割分担の図式が進み、固定化しました。
会社主義、つまり
男性正社員に対する企業の強い統制力は、下請や系列関係を通じて中小企業の従業員へ、そして合理化や民営化を通じて公共部門にも浸透したと言われております。ところが、このような会社主義が限界に突き当たり、経済界からすらも変革の必要性が指摘されていましたが、この変革が進まない間に日本経済は戦後最悪の不況に陥ってしまいました。
男女共同参画社会の
形成こそが日本の変革と創造の大きなかぎであり、大きな柱だと思います。
これは、橋本前
総理がしばしば強調されていたところですが、日本経済の再生を最優先しておられる小渕
内閣では一層緊急かつ不可欠な
課題でありましょう。
そうした
観点から、今日、
総理は、不退転の
決意でこの
男女共同参画社会基本法案を提出されたことと存じます。
総理の御所見と、それから
意義について伺いたいと存じます。
次に、文部大臣に伺います。
基本法は、真の
男女平等の
実現を目指して、
女性も
男性も、みずからの価値を高めることによって、二十
世紀型の均質で画一的な大量消費型
社会から脱皮し、一人一人が自分らしく、生きる自由と
責任を持つ
社会を
形成しようとしています。こうした
基本法の
理念こそが、次の
世紀に向けて、硬直化した
社会を打ち破り、具体的には
少子化、高齢
社会、環境破壊などの問題を解決し、新しい産業の創造をも可能にする起爆剤としての機能を果たすのではないでしょうか。
しかし、そのためには、何より
男女共同参画に関する教育、つまりジェンダー教育が不可欠です。幼少期から、
男女平等、さらに
男女が、また、さまざまな人がお互いに
尊重し合うことの
重要性を教育する必要があります。
ノルウェーでは、すべての教科書について
男女平等の視点から
検討が行われていると聞いています。さらにヨーロッパやアメリカでは、二十年ぐらい前から、学部から修士、博士に至るまで、一貫してジェンダー研究を専攻できる大学がつくられ、今では数多くの大学で盛んに研究調査が展開されています。こうした教育や研究の成果として各国で的確な
男女共同参画政策が
実現しているのです。
一方、
我が国においては、一、二の大学でジェンダー研究を専攻することが可能なだけで、規模が小さく、数も少なく、大変立ちおくれております。
この
基本法を機会に、文部省としては、
男女共同参画、つまりジェンダー研究をぜひとも強化していただきたいと思います。文部大臣に御
決意のほどを伺いたいと存じます。
続いて厚生大臣に伺いますが、カイロの国際人口・開発
会議において、
女性の生涯にわたる健康、つまりリプロダクティブヘルス・ライツの概念と政策の具体化が国際的に合意されました。
基本法案の第三条でいう「
男女が
性別による
差別的取扱いを受けない」という法文は、この内容を担保しているとのことです。
厚生省が、この
基本法をきっかけに、総合的に
女性の健康を保障する視点から、より包括的な
女性の生涯にわたる健康政策を
実現してくださるよう求めます。厚生大臣の明確な御答弁を伺いたいと存じます。
総理大臣、
女性が
社会に
参画するために、
仕事につくことだけが必要だとは
考えておりません。
家庭、学校、地域などで、また、どのような立場にあっても、
社会における重要な意思
決定の場に
女性が参加できることが真の
男女共同参画なのです。
例えば、野菜を売るお店のおじさんと子育て中のお母さんが身近なごみや学校の問題について話し合い、その
意見が
地方自治体や国政に届く、そういった風通しのよさが必要です。
今は、男だから、女だからというような
理由で
家庭や会社に縛られ、
社会全体が閉塞状況に陥っています。それだけではありません。無力感、将来への不安が
社会全体を覆っていると言っても過言ではありません。これは
男女ともに実感しているところでございます。
カイロ文書には、「
男性の
責任と参加」という項を設け、「
男女双方の知識、態度、及び行動の
変化は、
男女の調和のとれたパートナーシップを達成するための必要条件である。」と述べています。今や国際的な流れの中で、
男女共同参画における
男性の
責任と参加が問われています。
女性と
男性が、
男性と
女性が、ともに変わり、地域や職域、学校や
家庭など、あらゆる場で活力のある状況を創造していくことが求められています。これこそが
男女共同参画の
意義であり、価値なのでありましょう。国際的潮流に追いつき、日本が二十一
世紀を乗り切るためには、
女性が変わると同時に
男性も変わっていく必要があるのではないでしょうか。
総理、この
法律が
成立した暁には、あなたも一人の
男性としてどうお変わりになるでしょうか。きょうはあえて伺いたいと思います。
一九九六年一月に、自民党、社民党、新党さきがけの三党連立政権は、北京における
世界女性会議の行動綱領に基づく総合的な
施策の推進を合意し、さらに同年十月、第二次橋本
内閣の発足に当たって、
男女共同参画社会を
実現するため、
基本法を
制定することを合意しました。
小渕
内閣がこれを引き継ぎ、二年半後の今日、
国会に
男女共同参画社会基本法案が提出されたことに感謝の意を表したいと存じます。このプロセスに深くかかわってきた者として感無量のものがございます。
メキシコ
会議から二十五年の間に、
世界の先進工業国も発展途上国も、ともに
男女平等と
男女共同参画についての認識を深め、政策を推進してきました。
しかし、
我が国は、高度経済成長によるGDP、GNPの高さは
世界の一、二を競うほどのレベルにありながら、
男女共同参画についての現状は低く、その大きな落差が国際的にも指摘されているところです。
今日、提出された
男女共同参画社会基本法によってこの落差が解消されることを期待し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君
登壇、
拍手〕