○直嶋正行君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま議題となりました年金
改正案に対し
質問いたします。
現在、
日本経済はかつてない長期不況に陥っていますが、こうした
状況をつくり出したのは
政府の経済
政策の失敗にほかなりません。さらに、年金や医療制度の抜本改革先送りが
国民の不信、不安を増大させ、その結果、不況をさらに悪化させるという悪
循環になっていると
考えます。
先月発表された経済企画庁の
国民生活選好度調査では、四十歳以上の
国民の八割近くが老後
生活に不安を感じると述べています。また、二十代の若者でさえ五四%が同様のことを述べています。二十代の若者の過半が老後
生活に不安を持つなどということは私には全く信じられないことであり、まさに今の
日本は病んでいると言わざるを得ません。
総理は、この数字をどのように受けとめておられるのでしょうか。また、このような
国民意識に対して政治の責任と
役割をどのように
認識されているのでしょうか、お伺いいたします。
近年、
日本の社会は構造的な変貌を遂げつつあります。例えば、これまでの家族単位や夫婦単位から個人単位で自立する社会に向かいつつありますが、こうした個の自立は自由をもたらしてくれる反面、人々の孤独や不安感を増大させます。また、土地神話の崩壊、大企業の倒産、終身雇用制の崩壊など、これまで信じられてきた安心の二文字はことごとく崩れ、すべてがリスクに変わっていく不安感があるのではないでしょうか。米国流の競争社会への傾斜は、我々に成功への可能性と同時に、生き残っていけるかという不安とストレスとを抱え込ませたのではないでしょうか。
〔
議長退席、副
議長着席〕
そして、今日まで
日本の
経済成長を支えてきた、いわゆる団塊の世代を中心とする中高年齢層の多くがこうした
変化にさらされ、みずからの将来も含めて最も厳しい
状況に置かれているのではないでしょうか。やや極端な言い方ですが、私は、年金問題は団塊世代問題だと思っています。彼らがみずからの老後を安心できるよう国家の所得保障制度として向こう二、三十年安定した年金制度を提供することが何よりも肝要と
考えます。
また、団塊ジュニアの人々も既に学業を終え、社会に参加しつつあります。彼らの親の老後問題への
対応は当然若者たちの年金制度、ひいては社会への信頼感を高めると思います。
今、一連申し上げた
考え方についての
総理の御見解を求めます。
こうした立場から今回の
国民年金保険料凍結
法案を見ますと、
政府・
与党内で
議論が混乱した結果、結論を先送りしたつなぎの
法案であって、年金制度改革としては何の意味も持たないと言わざるを得ません。むしろ、逆に制度改革を複雑でより難しくしてしまったと言えます。
厚生大臣のコメントがあればお伺いいたします。
さらには、年金問題について厚生省、経済企画庁、経済戦略
会議、また、連立政権の相手方である自由党も含め、
政府・
与党の中でも意見が全く異なり、何ら方向性さえ示せず大混乱を続けているのが実態であります。小渕
総理も、重要な問題であり、
検討するとしかおっしゃっていません。私は、若い世代の多くが
日本の年金制度は早晩つぶれてしまうと本気で信じているのではな
いかと危惧していますが、こうした
政府内の混乱が
国民の不信と不安をさらに増幅させていることは間違いないと思います。
総理は、こうした
事態をどう
認識し、具体的にどのように
対策されるおつもりですか。明確な
方針をお示しください。
次に、年金制度の安定性について伺います。
年金に対する
国民の不安を解消する際、最も重要な視点は制度の安定性であります。しかし、
政府は制度の安定性を財政上の均衡としか
考えておられません。そのため、
負担と給付の数合わせ、つじつま合わせだけの
議論に陥っていると言えます。
政府は、財政再計算の都度、年金制度の
基本部分を変更してきました。これらは
国民の生涯
生活設計の与件となっており、本来軽々に動かせないものであります。それをわずか五年ごとに動かすことが、
国民の不安と制度に対する信頼感の欠如を生み、年金制度の安定性を損なっています。財政上の安定は、必要条件であっても制度目的ではありません。それは制度を運営する側の立場であって、
国民の立場に立った安定には必ずしもつながりません。
総理は、
国民の立場に立ったとき、制度の安定に何が最も重要で、そのために制度をどう変えていくべきとお
考えですか。明確にお答えいただきたい。
次に、今回の
法案の年金改革における位置づけについて伺います。
今回の
法案は、
我が国経済の
状況にかんがみ緊急避難的な
措置として講じられたものであるとのことですが、それではこの
法案は、
政府の年金改革の一環というより、経済
対策と
理解すればよいのでしょうか。
衆議院に提出した民主党の対案は、国庫
負担を引き上げ、その見合いで保険料を引き下げることで、将来の基礎年金を社会保険方式から税方式に移行させる年金改革の第一歩として位置づけました。
政府の
法案は、こうした年金制度改革との
関係は全くないのでしょうか。
厚生大臣に伺います。
また、今回の
政府の年金
改正案大綱も肝心なところは不確定なままであります。保険料凍結解除と国庫
負担の二分の一への引き上げは同時期とされていますが、具体的にはいつどのような条件で行われるのでしょうか。また、国庫
負担二分の一への引き上げと安定した財源
確保は一体とのことですが、安定した財源とは具体的には何を指すのでしょうか。
厚生大臣は、二〇〇四年までに
政府の
政策目標である経済回復が実現することに期待されているようですが、経済情勢に左右されるとしたら、それは安定した財源と言えるのでしょうか。
厚生大臣に伺います。
総理は、財源
確保の具体的な方策は
国民的な
議論によって真剣に
検討されるべき課題と、これから
議論するかのように言われております。しかし、この財源問題は、前回九四年
改正時に同様の
議論があり、その結果、
法律の附則に
検討条項が盛り込まれております。
政府は、この五年間一体何を
検討されてきたのでしょうか。結局、今回も財源を詰められずに先送りになってしまうのでしょうか。
政府部内の
調整や
与党内の
調整がつかないことを理由に改革が進まないというならば、
総理が思い切った政治決断とリーダーシップを発揮されるべきであります。早急にという抽象的な言葉はもう要りません。いつまでにどうすると、具体的に
総理のお
考えをお聞かせください。
さて、
政府は年金問題を
議論する過程で
関係審議会に諮問し、
答申を得ることになっています。しかし、この
手続がどうも正常に行われなかったように思われてなりません。
問題の一つは、
与党内で決着が図られていない課題、具体的には基礎年金の税方式化の問題を残しながら、
政府が
審議会に諮問、
答申を求めたこと。いま一つは、年金
審議会の重要なメンバーである労働側委員三名が、
審議会の運営や諮問を了解する
内容に抗議し、
審議会を退席したにもかかわらず、その後
答申を確認したことであります。
審議会は実質的に厚生省が運営しており、諮問、
答申の
手続について疑問が残ります。この点、
政府の見解と今後の
方針について、
厚生大臣に伺います。
我が国の年金制度は
国民皆年金と言われ、老後の所得保障の制度としてこの
考え方は今後も守って
いかなくてはなりません。しかし、若年層を中心に未加入・未納問題が言われ、
国民皆年金は既にほころびを見せており、さらに拡大するおそれがあります。
その原因は、年金制度への不信感であると
考えられます。従来の発想を超えてどうすべきかを真剣に
議論して
いかない限り、今の
日本に充満するあらゆる不安は解消しないことを強調して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君
登壇、
拍手〕