○山本保君 私は、公明党を代表して、
平成九年度
決算及び当面する諸問題につきまして、
小渕総理大臣並びに
関係大臣に
質問いたします。
平成九年度は、将来、
財政学や
経済学の教科書に必ず載るであろうと思われる劇的な展開を見せた年でした。
当初
予算段階では、
経済は回復の動きを続けており、民間需要中心の自律的景気回復への
基盤が整いつつあるが、
財政赤字は危機的であるという判断から
財政構造改革元年と位置づけ、緊縮型の
財政で赤字減らしを目指したのであります。ところが、当初一・九と
予測した実質
経済成長率は
実績ではマイナス〇・四%であり、翌年二月の
補正にもかかわらず、
決算上の
不足額は一兆六千百七十四億円に上りました。この間、
財政構造改革法を成立させ、十年度当初
予算は縮小型にしつつ、直ちに三次にわたる
補正で十兆円以上の上積みをする。つまり、一年ちょっとの間で
財政方針が百八十度変わった矛盾したものでありました。
私は、まず、この点につきまして、今後も同じ轍を踏まないよう、少し細かくお聞きしたいと思います。
第一に、
政府が行う
経済見通しとは何なのか。近年、
政府経済見通しと
経済の実態とが大きく乖離しておりますが、既に前年の八月末には
予算の概算要求が締め切られ、その大要は出そろってしまっているにもかかわらず年末になってやっと見通しを決める、これなどは無意味ではないかとも思います。
総理並びに経企庁長官の見解を伺っておきます。
これに関連して、毎月の月例
経済報告は、客観的分析なのか希望的観測なのかはっきりしない。加えて、
変化の胎動とか不透明感というような不明確な表現はそぐわないものではないか。私は、客観的な指標の
報告だけにとどめて、景気判断の
報告形式は廃止した方がいいと思いますが、
経済企画庁長官はいかがお考えですか。
第二に、
政府の
経済見通しや
税収見積もりについて、
平成三年度
決算に関する参議院の警告決議では、「正確な
経済見通し」に基づく「
税収見積りの
精度向上に
努力すべきである。」としております。この決議に対する
総理の認識を伺っておきたい。
第三に、政策転換の責任についてお聞きいたします。
私
どもは、当時、八年度の景気は
消費税率引き上げ前の駆け込み需要によるものにすぎない、ここで引き締めをすることは無謀だと批判してまいりました。ところが
政府は、
消費税率引き上げなど八・六兆円の
国民負担を課し、これが景気の落ち込み、
税収の大幅減少をもたらしている、それにもかかわらず
財政構造改革法を成立させ、十年度
予算は九年度
補正よりも抑えた
予算を組んだのであります。しかし、
不況のときは積極
財政をとり、需要を喚起するということは
経済運営の常識ではないかと思うわけでございますが、これをなぜ行わなかったのか、
お尋ねいたします。
顧みますと、昭和四十八年、第一次オイルショックに引き続く狂乱物価を、当時の福田
大蔵大臣は田中
内閣の政策ミスであると批判し、みずからも蔵相を辞任しました。今回も、もちろん相次ぐ
金融機関の
破綻やアジア通貨変動などの要因があったとしても、それ以降の政治のかじ取りが問題であったのではないか、このように言わざるを得ません。
このような当時の
総理の判断の政治的な責任について、特に経企庁長官には、政局に絡まない客観的な立場からの率直な
所見をお聞きします。
次に、当面する
経済課題についてお聞きいたします。
最初に、
平成九年度末の国債残高は二百五十七兆円、十一年度末では三百二十七兆円、地方と合わせた長期
債務残高は六百兆円と見込まれております。そこで、一体どの程度の公債依存が許されるのか。もちろん、景気の動向との関係などの因子が絡むとは思いますけれ
ども、
大蔵大臣に
お尋ねしておきます。
また、地方におきましても、三十一道県が警戒ラインと言われる公債費負担比率一五%を超えております。こうした
財政危機の中で、例えば地方公務員定数削減計画の指針を提示するなど、さらに具体的な
目標設定を指示するのかどうか、
総理の見解をお伺いいたします。
次に、雇用
情勢について、十二月は四・三%の
失業率で、依然三百万人近くの方が
失業しております。特に、雇用保険は
平成六年度から連続した赤字が続いており、このままでは
破綻という危機的
状況になります。労働大臣はどのような方針でこの改善を図られるのか、
お尋ねいたします。
また、昨年十一月の
緊急経済対策では、百万人の雇用創出がうたわれ、これに基づいて介護、福祉を初めとする雇用創出が展望されていますが、この見通しについて
総理にお聞きしたいと思います。
さらに、雇用構造全体が大きく変わりつつあります。この中で、職業能力開発を労働省のみの
施策として行うことには限界があるのではないか。私見ですが、
大学や
大学院を土曜、日曜に開講し、
中小企業に働く労働者を優先して受講させること、これこそが本来の公教育の役割だと考えますが、労働大臣の御意見をお聞きしたい。
次に、
国家財政のあり方に最も影響を持つのは、将来における
社会保障のあり方であります。
平成八年度の
社会保障給付費は
総額で六十七兆五千四百億円であり、
平成九年九月の試算によりますと、
平成三十七年度、西暦二〇二五年の
総額では二百十六兆円から二百七十四兆円とされております。
これまで、細川
内閣の福祉
ビジョン以来、
社会保障の構造改革については、年金、医療費などの構成割合とか公費負担のあり方、
国民負担率等々が問題とされてきたように思いますけれ
ども、本来、
社会保障全体の構造改革というものは、この私的負担を含めた総費用の
増加をどのように引き下げていくかについての議論でなければならないと思います。
厚生大臣はこの
目標をどのように認識し、指示されておられるのか、お聞きしたい。
次に、
財政構造改革です。これは、単に
政府支出を何%抑えるというつじつま合わせではないでしょう。十一年度のように、まず景気回復を最優先、そして超積極
予算と、この中でも本質的な構造改革の考え方が生かされなければならないはずですし、まして、
経済成長率が二%になったら構造改革を再開するというような機械的なものでもないはずであります。今後の
日本経済は、ゼロ
成長が基本であるとも言われております。低
成長の中でこそ、
政府主導というこの構造を変えていく必要があると思います。構造改革の本質について、
総理の基本認識をお伺いいたします。
また、十一年度
予算は、需要重視といいつつ、
所得税減税が中堅所得層への恩恵が薄く、個人消費を刺激する
効果が弱いのではないかと思いますが、
大蔵大臣の見解を承ります。
一方、公共
事業については、昨年一月、参議院で、「その効率的・
効果的実施」を求める警告決議を行っております。しかし、投資効率が高いとされる都市型
事業の優先順位がなお低くなっているのではないか、また省庁別のシェアが大して変わっていないのではないか、
大蔵大臣に
お尋ねいたします。
さらに、
財政投融資であります。十年度当初の五・九%増、五十二兆九千億円とふえておりますが、この中で焦げつきも憂慮されており、自主運用を含めた今後の改革方針をお聞きいたします。
最後に、会計
検査院の
平成九年度
決算検査報告に関連して、全般的な問題だけをお聞きいたします。
第一に、現在、衆議院
予算委員会で取り上げられている
日本債券信用
銀行の不良
債権虚偽
報告についてであります。
平成九年四月から九月に行われた大蔵
検査の最終結果、一兆一千二百億円の
回収懸念債権額などがなぜ市場や
金融危機管理審査委員会に
報告されなかったのか、その責任はどこにあるのか、
総理並びに
大蔵大臣の
所見を伺います。
第二に、防衛庁装備調達をめぐる過大請求に対する防衛庁の対応や、
検査報告における文部省の架空名目による謝金等の支出の
指摘や、空出張など一連の都道府県における不正経理など、税金の使途にかかわる官公庁の構造的な不正に対して厳しい姿勢を示すことこそ、
国民に対する信頼を取り戻す第一歩であると考えるのでありますが、
総理の
所見をお伺いいたします。
最後に、会計
検査は有効性の
観点から行われることが今後特に重要であると思いますけれ
ども、一体、
国民の満足度や
社会全般の利便性の
向上などをどのように評価していったらよいのか、
総理の
所見を
お尋ねいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君
登壇、
拍手〕