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1999-08-05 第145回国会 参議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月五日(木曜日)    午後一時四十分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 佐々木知子君                 世耕 弘成君                 竹山  裕君                 仲道 俊哉君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 橋本  敦君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        法務省民事局長  細川  清君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        労働省労政局労        働法規課長    坂田  稔君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○商法等の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  去る三日、内藤正光君が委員を辞任され、その補欠として角田義一君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。陣内法務大臣
  4. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、株式交換及び株式移転制度創設するとともに、親会社株主に対する子会社業務内容開示充実等措置を講じ、また、金銭債権等につき時価による評価を可能とする措置等を講ずるため、商法有限会社法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  まず、商法につきましては、第一に、親会社子会社発行済み株式総数を有する完全親子会社関係を円滑に創設するため、株式交換及び株式移転制度を設けることとし、会社株式交換を行うには、株式交換契約書を作成して、株主総会の承認を受け、また、事前に各会社貸借対照表株式交換契約書等を本店に備え置き、株主閲覧等に供しなければならないこととするとともに、株式交換反対株主に対して株式買い取り請求権を認めることとし、さらに、株主等株式交換無効の訴えを提起することができることとしております。株式移転についても、株式交換の場合と同様の手当てをすることとしております。  第二に、親会社株主利益を保護するため、親会社株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所許可を得て、子会社株主総会議事録等閲覧等を求めることができることとするとともに、親会社監査役及び検査役は、その職務を行うため必要があるときは、子会社業務及び財産状況を調査することができることとしております。  第三に、会社財産状況を適正に表示するため、市場価格がある金銭債権社債株式等について、時価を付するものとすることができることとするとともに、配当可能利益計算上は、貸借対照表上の純資産額から、時価を付したことにより増加した貸借対照表上の純資産額を控除すべきこととしております。  次に、有限会社法につきましては、親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所許可を得て、子会社社員総会議事録等閲覧等を求めることができることとするほか、親会社検査役権限について、株式会社の場合と同様の改正をすることとしております。  最後に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律につきましては、株式交換及び株式移転制度創設及び親会社株主に対する子会社業務内容開示充実等措置を講ずることに伴い、所要の改正をすることとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  5. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 小川敏夫

    小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  持ち株会社創設ということになるわけでございますが、持ち株会社といいますと、すぐ戦前の財閥ということが思い浮かびます。そうした財閥を解体して持ち株会社を禁止していたこれまでの法制から、今回そうした社会経済情勢にかんがみこれを認めるということでございますが、その必要性についてさらに詳しく説明していただきたいと思います。
  7. 細川清

    政府委員細川清君) 御指摘のとおり、独占禁止法持ち株会社創設を禁止しておりましたわけですが、平成九年の秋の国会で一〇〇%の持ち株会社が解禁されたわけです。それはすべて解禁されたわけではなくて、事業支配力が過度に集中にならない場合については持ち株会社創設することができるということになったわけでございます。そのとき衆議院、参議院それぞれの商工委員会附帯決議がございまして、この解禁に伴って株式交換等持ち株会社創設を円滑にするような制度改正について検討するようにというふうに附帯決議がございました。  それからもう一つは、政府規制緩和計画におきましても、やはり現行法規定では持ち株会社創設が非常に煩雑であるということから、これを検討して早期に結論を得るようにというふうな計画になっておりまして、これが閣議決定されていたわけです。  そういうことを踏まえまして、現在の社会経済情勢を見てみますと、やはり私企業の再編にはこういった制度が必要であるというふうに考えておりまして、法制審議会では平成九年の十二月から審議を始めまして、昨年の七月に問題点を公表しまして各界の御意見を伺い、その結果を踏まえて本年に入りまして答申をいただきまして、この改正法案を提出させていただいた、そういう経緯でございます。
  8. 小川敏夫

    小川敏夫君 今回の改正株式交換あるいは株式移転制度というのが創設されることになっておりますが、この二つ制度を導入する、その仕組みやそれぞれのメリットについて詳しく説明していただけますか。お願いします。
  9. 細川清

    政府委員細川清君) これは、比較の対象としてどういう手段がほかにあるかということを考えてみたいと思うんですが、まず第一点、現行法で一番可能でありますのは公開株式買い付けでございます。これは、現実にキャッシュを出して株式買い付けるということでございますので、まず資金が必要であるということ。それからもう一点は、買い付けですから、買い付けに応じない会社株主は常にあるということで、一〇〇%の取得をすることは困難であるということが言われているわけでございます。  それからもう一つは、今度は子会社を設立しまして、そこに営業譲渡をするということによって持ち株会社をつくることができるわけですが、これはいわゆる抜け殻方式と呼ばれております。これにつきましては、やはり営業譲渡でございますから、商法上は現物出資なり事後設立というようなことになるわけですから、裁判所検査役を選任してもらってその調査を受けなければならないということになります。それに相当時間がかかるという問題。  それからもう一点は、さらには、これは個別の資産が譲渡されるわけですから、その資産について不動産である場合にはそれぞれ対抗要件を得なければならない。しかも、それが確定前の根抵当権のついている債権でありますと根抵当権設定者の個別の同意が必要であるということになるわけで、これも相当手続手間暇がかかるということになるわけでございます。  それから、第三者に対して親会社株式新株発行してそれでやるということもあるんですが、これについてもそれぞれの制限がございますし、また銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律というのがございまして、これはいわゆる三角合併を認めているんですが、その仕組みを申し上げますと、A銀行としますが、まずA銀行自分持ち株会社になるBという会社子会社として設立します。Bという会社が今度はCという銀行を設立いたしまして、もともとのA銀行C銀行合併するわけです。そして、合併したときにCが存続会社でAが吸収される会社になりますのですが、そのときCはAの株主に対して新株を交付するわけですが、その新株を今度はBに強制的に現物出資させて、そのかわりに今度はBの株式取得する、こういう複雑な手続になっておりまして、今御説明申し上げたところからおわかりのように、非常に手続が複雑であるということと、それからA銀行C銀行になるわけですから、従来の名称がそのまま使えない、あるいは免許は各行別に得なきゃならないという問題がございます。それぞれ既存方法には問題があるわけでございます。  そこで、今回の株式交換株式移転という手続創設いたしまして、これによりますと、既存会社株式株主総会特別決議によって交換することができるということになりますから、円滑に持ち株会社創設をすることができるということでございます。  その要件等につきましては、基本的には合併の場合と同じように考えることができますので、いろいろな要件等につきましてはそれに倣って作成しているというわけでございます。
  10. 小川敏夫

    小川敏夫君 こうした制度について先進諸外国ではどのような制度あるいは似たような制度を取り入れているのか、そこら辺との比較も教えていただければと思います。
  11. 細川清

    政府委員細川清君) 諸外国との立法例比較でございます。  まず、イギリスとフランスについてでございます。この両国におきましては、持ち株会社創設のための制度として、いわゆる少数株主締め出し買収制度が認められております。この制度は、一方の会社発行済み株式総数一定割合株主他方会社による公開買い付けに応じた場合には、買い付けに応じなかった株主株式についても強制的に買い取ることができるという制度でございます。  ドイツにおいては編入制度が認められています。株式総数一定割合を他の会社によって保有されている会社は、その株主総会決議によって編入会社編入されることができることとされております。  それから、アメリカには三角合併と今回御提案申し上げているような株式交換制度があります。これは州法によって若干異なりますが、三角合併だけのところと、両方があるところ、株式交換だけがあるところといろいろございます。三角合併制度は、先ほど御説明申し上げました銀行持ち株会社設立のための特例法と同じ仕組みでございます。それから、株式交換は今回御提案申し上げているのと同じでございます。  そのほかに、これらの諸外国におきましても、先ほど私が御説明申し上げました、いわゆる抜け殻方式とか公開買い付けによる方法というものはいずれもできることとされております。
  12. 小川敏夫

    小川敏夫君 この法案で、反対株主がいても実行できるという、メリットであると思いますが、その反面、反対株主は意に反して実施されてしまうということになりますが、そうした反対株主に対する手当てといいますか、そこら辺はどういうふうに講じてあるんでしょうか。
  13. 細川清

    政府委員細川清君) これは株主総会決議によるものですから、当然反対株主があり得るわけでございまして、したがいまして、その反対株主の、これは少数株主になりますが、権利を保護するということが重要な問題になってくるわけでございます。  この手続改正案におきましては、まず株式交換契約等内容招集通知に要旨を記載して株主にその判断のよすがを与える、あるいは必要な関係書類事前あるいは事後にまで開示しておきまして、それを株主閲覧に供することによって判断に供する、そして株主総会におきましては、特別決議を要するものとして慎重な手続をしているわけでございます。  その中でも、さらに反対であるという株主がおられる場合には、これは投下資本の回収を認めるという観点から、反対株主はあらかじめ会社にその旨通知し、株主総会に出席して反対意思表示をした者につきましては、会社に対して株式買い取り請求をすることができます。  この株式買い取り請求は、基本的には価格会社とその株主との間で協議するわけですが、その協議がまとまらない場合には裁判所にその価格の決定をしてもらうという申し立てをするということになります。これは非訟事件手続法によるわけですが、裁判所はそこで、この株式交換等がなければ有すべき公正な価格判断するということになるわけでございます。  株式交換等がなければ有すべき公正な価格というのはどうやって算定するかと申しますと、一般的には、市場価格のある株式については、その株式交換等の話が市場に出回る前の価格を考慮して決めるということになりますし、市場価格がない株式につきましては、これはいわゆる収益還元方式とか類似会社比較方式とかいろいろございますが、そういったもので裁判所が定めていくということになるわけでございます。  整理して申しますと、反対株主としては最終的には株式買い取り請求権が与えられているということになるわけでございます。
  14. 小川敏夫

    小川敏夫君 株式買い取り請求権、この法案の問題だけではなくて、ほかの、現に商法上認められている株式買い取り請求権の場合もそうなんですが、実際になかなか株価算定が難しくてそう迅速にはいかない、あるいは株価算定に当たって、営業権とかのれんとか、そういった無形なものの資産価値がなかなか反映されない形で株価算定されてしまうような傾向があると思うんです。  そこら辺、もう少し迅速に、そして企業の生きている状態が正確に反映されるような株価算定する方向性を何か求められたらいいなと私は思っているんですが、そこら辺のところはいかがでしょうか。
  15. 細川清

    政府委員細川清君) 御指摘のとおり、株式買い取り価格算定するというのはなかなか難しい問題でございまして、実は私は裁判官の時代にそういうことをやったことがあるんですが、相当いろんな方法を駆使しまして、どういうことが適正かというふうに考えた経験がございます。  通常の用いられている方法は、市場価格のないものについては収益還元とか、要するに会社の有する資産を標準として判断するという方向になるんですが、そのときには、なるほどその会社資産というものをどう評価するかというのが大きく問題になってくるわけでございます。  現在のところでは、直ちにこれを簡素化するあるいは迅速にするということの名案があるわけではございませんで、裁判所に御努力をいただくことになるわけでございますが、私どもとしても今後、ただいま御指摘のような問題意識を持ちまして研究してまいりたいと考えております。
  16. 小川敏夫

    小川敏夫君 また総論的な質問に少し戻りますが、仮にこの法案ができてこういう制度が実際に実施された場合に、その利用される度合いといいますか、今、実際の経済界がこれを求めている度合いの強さといいますか、そこら辺はいかがなものでしょうか。
  17. 細川清

    政府委員細川清君) これは、この法案が通って施行されたら臨時株主総会をしたいと公式に言っている会社が実は二社ございまして、これは新聞等に出ておるんですが、我が国有数の大企業も含んでおります。そのほか、報道で報じられているものは相当数あるようにうかがわれました。また、私が聞きました場合でも、例えば救済の場合、今までとしては合併しかなかったわけですが、株式交換で全株取得することによって救済することも可能だということで、相当これは経済界は期待して待っておられるというふうに理解しております。  政府が開催しておりました産業競争力会議でも、日本の有数財界人から、大変これは期待しているので早く成立してほしいという御要望があったということも大臣から聞いているところでございます。
  18. 小川敏夫

    小川敏夫君 次に行きます。  親会社株主子会社議事録等閲覧を求めることができるという規定がございますが、親会社株主だから、総会屋とか余り乱用のことを心配する必要もないのかもしれませんが、普通に考えますと、親会社は、株主とは違うけれども子会社を支配しているわけですから、その状態を十分把握できるわけです。  そうすると、親会社株主がさらにまたそうした閲覧等を求めるというのは、その具体的な必要性といいますか、そこら辺はどういうことを想定しておられるんでしょうか。
  19. 細川清

    政府委員細川清君) 株式交換がなされますと、株式交換によって子会社になった会社の従来株主であった人たち親会社株主になるわけです。そうすると、従来であれば子会社の定款あるいは計算書類あるいは株主名簿あるいは帳簿といったものについて閲覧権があるわけなんですが、親会社株主になることによって直接子会社に対する情報開示が得られなくなってしまうという問題がございます。  したがいまして、今回の改正をするためには、従来株主が持っていた情報開示に関する権利については、これはやっぱり従来どおり保障するのが適当であろうという判断に至ったわけでございます。  ただ、親会社株主子会社株主ではありませんから、常に正当な理由でもって開示を求めることができるというふうには限りませんので、この法案では裁判所許可を得るということになっているわけでございます。そういうことで、株式交換によって生ずる従来の子会社株主株主権の縮減について対処したということでございます。  実際にどのような場合に用いられるかということでございますが、それはやはり子会社に問題があって、子会社に対する親会社株主権の行使が適切でないというような場合があった場合、仮に親会社取締役に対して株主代表訴訟で責任を追及するというようなことを考えますと、やはり子会社状況を知っておく必要がある。子会社株主総会親会社取締役が適切に株主権を行使したかどうかということを確認するためには、やはり株主総会議事録を見ておく必要があるだろうということになりますので、そういった場合にも利用できるのではないかというふうに考えているところでございます。
  20. 小川敏夫

    小川敏夫君 親会社子会社一つだけ持っているとは限らないので、複数の子会社を持っているケースがむしろ多いと思うんです。  今の説明ですと、特定の子会社の従来株主親会社株主になって、従来の会社であった子会社帳簿を見たいということですが、そうすると、従来株主でなかった別の子会社に関してはいかがなんでしょうか。これは認められる余地がないということになるんでしょうか。
  21. 細川清

    政府委員細川清君) ただいま申し上げましたのはいわば立法の動機でございまして、でき上がった制度といたしましては、親会社株主は、従来自分株主であった会社に限らず、すべての子会社について情報開示を求める権限があるということになるわけでございます。
  22. 小川敏夫

    小川敏夫君 では次に、財産状況の適正な表示という問題の部分ですが、この時価を付するものとすることができると、市場価格があるものについては。これは選択的になっておって、時価にしなければならないということではございませんが、この選択的に付することができるとしたその選択的の理由について説明をお願いいたします。
  23. 細川清

    政府委員細川清君) 今回の改正案で、金融資産について時価評価をすることができるということにいたしましたことは、これは企業情報開示ということではそれが適切であろうということで、大蔵大臣諮問機関である企業会計審議会でもそういう答申が一月にございましたし、また国際会計基準委員会でもその暫定基準で、やはり金融商品について国際的な統一的な基準として時価評価をするべきであるという答申が出ておりますので、そういった企業会計原則と調和させ、あるいは国際的な動向と調和させるために商法上も時価評価を付することができるようにというふうにいたしたわけでございます。  一方、これは選択的でございまして、任意的でございまして、強制はしていないわけでございます。  と申しますのは、我が国株式会社総数で百二十万社ぐらいございまして、そのうちに公開会社は三千社程度、そのほかで資本金五億円以上の会社も含めますと、いわゆる大会社というものは一万社程度しかなくて、そのほかはほとんど中小企業でございます。そういうところでは、金融資産の保有が少ないとか金融取引が少ないということがありますので、時価評価を行ったとしてもさほどの評価損益が出ないで会社財政状態等表示に対する影響が少ない会社もある。  それから、これは非常に実務界から言われていることでございますが、時価評価をすることは毎決算期において評価がえをしなければならないわけです。これが相当な負担になるわけでございます。これは取引所相場があるものは新聞を見ればわかるんではないかということになるんですが、市場価格があるというのは取引所相場に限りませんで、いわゆる店頭登録株式もそうなんですが、要するに随時売買、換金できる取引システムがあって、そこで形成されている相場、指標あるいは気配というものがすべて市場価格になるわけですから、その毎決算期評価がえを行うというのもこれは相当の手数になる。ですから、中小企業には相当負担になりますので、一律にこれを強制することは適当ではないのではないかという判断でございます。  他方公開会社につきましては、証券取引法開示すべき財務諸表については企業会計原則が適用されるということになっておりまして、これは強制でございます。したがいまして、この公開会社関係では、投資家に対して情報公開するという面におきまして、これは時価評価強制されるということになるわけでございます。
  24. 小川敏夫

    小川敏夫君 これは金銭債権社債株式等というふうにあるんですが、不動産は含まれないんでしょうか。
  25. 細川清

    政府委員細川清君) 株式会社が有する資産としての不動産につきましては、正確に分けますと二つあるわけでございまして、一つ不動産会社が持っている要するに販売用の土地、これはいわゆる棚卸資産ですから、商法上の流動資産と同じ評価方法が当てはまるわけでございまして、取得原価主義、または強制低価法、任意的な低価法、その二つになるわけでございます。  それから、それでなくて、工場の敷地とかあるいは本社の社屋とか、そういうものはずっと持っているもので、売買を予定していないものです。こういうものは固定資産商法上の規定で要するに取得原価を付するということになっております。  諸外国立法例等を見ましても、その後者につきましては原則として取得原価主義というものがとられております。  現在、国際会計基準委員会等でもいろいろ検討はされておりますが、国際的に不動産について時価評価をすべきだという方向はまだ確定しておりませんし、我が国企業会計審議会でもその方向はまだ出ていないということでございます。  したがいまして、不動産につきましては今回は従来どおりということで、今後、問題があるかどうか研究しなければならぬということでございます。
  26. 小川敏夫

    小川敏夫君 この法案趣旨ですと、市場価格が実際の取得価格よりも上がっているときに、価値が上がっているときに時価を付するのが一般的だと思うんですが、逆に下がっている場合もこれは当然あり得るわけですね。これは選択的ですから、下がっているのをわざわざ表示する企業はないとは思うんです。ただ、外部から見れば、やはり財産状況を適正に表示するという趣旨であれば、やむを得ない事情があるとしても選択的では少し足らないので、企業が都合のいいときだけ、資産価値が上がっているときだけ上がっているように示すのではないかというふうに思って、ちょっと私は、必ずしも反対するわけじゃないんですが、もう一つ中途半端かなという気持ちも持っているんですが、そこら辺はいかがでございましょうか。
  27. 細川清

    政府委員細川清君) 最近の経済情勢を見ますと確かにそういうことが言えるわけで、ただ商法原則から申しますと、例えば株式でごらんいただきますと、二百八十五条ノ六に規定がございます。第一項は、株式についてはその取得価額を付することを要すと言っておりまして、第二項で、二百八十五条ノ二第一項ただし書きの規定市場価格がある株式に準用するということになっています。二百八十五条ノ二第一項ただし書きというのは、時価が著しく下がって取得価額まで回復する見込みがないというときには強制的に低価で評価しなきゃならぬという規定がありますから、そうなりますと、もう回復する見込みのないときは低く評価することが強制されているわけでございます。  それからもう一点でございますが、時価評価を認めるというのは評価方法として時価評価を認めるということですから、ある株式が値上がりしているから時価評価する、ほかのものはしないということはできないので、要するに公正なる会計慣行ということになりますと、これはすべて時価評価するならするということになるわけでございます。  もう一つは、これは企業会計原則上言われておりますが、会計の評価のあり方として継続性の原則というのがございまして、途中で理由もないのに勝手に評価方法を変えてはいけないということがございます。そういうことから、選択制にしても適切な結果が得られる、問題は生じないのではないかというふうに考えているところでございます。
  28. 小川敏夫

    小川敏夫君 「市場価格がある金銭債権社債株式等」とあります。その「等」はほかにどのようなものが考えられるんでしょうか。
  29. 細川清

    政府委員細川清君) 国債、地方債というのがございますし、それから、これは条文には直接出てきておりませんが、例えばデリバティブズをどう評価するかというような問題もありまして、これもやはり時価評価するだろうということでございます。
  30. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると、この市場価格というのは、要するに証券市場とかそういった公設の市場が開設されて、それに上場されているもの、その市場において取引されているものという趣旨なんでしょうか。
  31. 細川清

    政府委員細川清君) ただいま小川先生の言われたものは、これは取引所における取引価格ということでございまして、市場価格に今回これを改めております。  それは、公設の取引所における相場というものは当然含むわけですが、それだけではなくて、店頭登録の株式とかいわゆるピンクシートというものがございますが、そういったものと同じものと考えていただきますとおわかりいただけますように、要するに随時売買、換金できる取引システムがあるということが前提でございまして、それによって形成されている相場なり指標なり気配というものが市場価格ということになるわけでございます。
  32. 小川敏夫

    小川敏夫君 そういうことで、評価方法を変えたことによって、時価評価をしたことによって純資産が増し配当可能利益計算上ふえるけれども、それは控除すべきということでありますが、課税の問題ではいかがでしょうか。見かけ上資産がふえて、一見利益がふえたかのような外形を呈するわけですけれども。
  33. 細川清

    政府委員細川清君) これは私がお答えしていいかどうかよくわからないんですが、課税の場合は、株式として売却可能なもので売却目的で保有しているものにつきましては、時価評価が高まればそこのところは課税するという考えだというふうに聞いております。
  34. 小川敏夫

    小川敏夫君 処分したときではなくて、評価がえしたときに課税するということなんでしょうか。
  35. 細川清

    政府委員細川清君) そういうことになるわけです。  そうすると、問題が生じますのは、まだ処分していないのに税金を払ったのでそれをどう考えるかということですが、それは会計的に考えれば、処分した年度に、後の営業年度で処分したならばそこで支払う税金を先に払ったということになりますので、これはそういう税金があった場合には繰り延べ税金資産ですね、先に払うべきものを今払ってしまっていますから。要は繰り延べ資産と見ることができますので、繰り延べ税金資産というふうにその額を計上しておく、貸借対照表のプラスの方に計上しておくということになるわけでございます。
  36. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると、逆に市場価格が下がって、取得価額よりも下がって損失が出ている場合に、やはりこれも評価がえしたことによって、売却をして実損が出たんじゃなくて、その前に評価損が出た段階で損失を計上して、その分他の利益が圧縮されて税額が安くなるということになるようにも思うんですが、それはそれでよろしいわけでしょうか。
  37. 細川清

    政府委員細川清君) それはそういうことになります。その場合は、先ほどと逆の例でございます。本来払うべき税金をまだ払っていないということになりますので、今度は繰り延べ税金負債ということでその額を経理しておくということでございます。これは昨年度から導入されました税効果会計の手法でございまして、それによってこういうことが認められるようになったわけでございます。
  38. 小川敏夫

    小川敏夫君 なるほど。そうすると、今度は評価した後また処分する段階では、評価した価格と年数が経れば実際の処分価格が異なる場合がございますね。それは処分した時点でまた調整することになるわけでしょうか。
  39. 細川清

    政府委員細川清君) だんだん税法の細かい話になってきたので私が責任を持って答弁することができないわけですが、それはそういうことになるだろうというふうに法律家として思います。
  40. 小川敏夫

    小川敏夫君 話はまたもっともっと大変に広い問題、一般的な心構えで結構なんですけれども、法務大臣の方にお尋ねします。  商法ではこういう親会社子会社をつくる枠組みを大きく決めているわけですから、これによって景気がどうなるか、あるいは従業員の雇用関係がどうなるかとかいう問題には直接関係しないとは思うんです。ただ、こうした商法の問題あるいは経済再生に関するいろんな法制とかそうした問題を考えますと、いわゆる企業のリストラクチャーを促進する一つの流れの中の法律ではないかというふうにも思える部分があるんです。  こうした改正が経済の再生にどのように寄与すると思われるか、あるいは雇用問題に関してこれがどういうふうに結びつく面があるか、もしお考えがありましたらで結構でございますが、お答えいただけましたらお願いします。
  41. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 総理のもとに産業競争力会議というのがございます。その中での発言等を聞いておりまして、現在の経営者がどういうふうに考えているのかというようなことをお聞きしながら思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今経済が国際化して国際競争に打ちかっていくような産業の活力を取り戻さなきゃならぬ、そういう場合に系列化し効率化を図っていくということが大事で、持ち株会社というのが統括的な経営戦略の企画とか立案をする、そのもとでそれぞれの子会社が事業部のような形で効率的に経営に参画していくというようなことは、これからグループ化で世界の企業が競争力を強めていく中で日本においても大変有力な活性化の手だてだろうというふうに言われておると思います。  そのことが結果的には日本の景気を回復させ、雇用の増大につながっていくことは間違いないだろうと私も思っておりまして、ぜひこの制度の法整備をしておくということは喫緊の課題ではなかろうかと思うわけでございます。
  42. 小川敏夫

    小川敏夫君 法務大臣にもしお考えがあればということで結構でございますけれども、雇用との問題ではいかがでございましょうか。
  43. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今、リストラという中で企業の活力の再生ということが図られていくわけでございますけれども、そういう中で雇用の面が今非常に深刻な状況に立ち至っているわけでございます。  これは基本的には就業機会がふえていくということ、それはすなわち経済が活性化していく、そのためにはここで言うような会社の再編というようなものによって足腰の強い企業体ができてくるということが必要だと思います。そういう意味では、非常に雇用の増大にすぐという面は少ないかもしれませんけれども、中長期的には大変威力を発揮する企業の再編の手だてだろうと思います。
  44. 小川敏夫

    小川敏夫君 時間がありますが、この程度で質問を終わります。
  45. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  早速質問いたします。  大臣趣旨説明にもありましたように、この改正案の柱というのは、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみまして、株式交換及び株式移転制度創設すること、それからまた金銭債権等時価による評価を可能とする措置を講ずるというものでありますが、日本経済の再生にとって重要な法案であり、経済界からは一刻も早い成立が期待されていると認識しております。  ことしに入りましてからも、ソニー、上場三社を完全子会社に、商法改正によって株式交換を活用するとか、こういう記事もございますし、それから目玉の改革として業界が歓迎している、それから事業の活性化が見込める、こういう見出しも見るところであります。またあるいは、これが早く通らないと株価が暴落するんだ、こういう記事にも接しております。  持ち株会社創設することにつきましては、経済力の集中によりまして市場が支配される危険を理由にいわゆる独禁法によって禁止されていたわけですけれども、二年前の改正で規制緩和という観点からこれが解禁されました。ただ、その場合にも事業支配力の過度に集中される場合を除いてという制限がございますが、解禁されたわけですけれども、既に設立された持ち株会社は極めて少ないわけであります。  そこで、独禁法改正による持ち株会社の解禁とそれから今回提案の商法改正との関係についてわかりやすく説明していただければと思います。
  46. 細川清

    政府委員細川清君) ただいま御指摘のとおり、平成九年に独占禁止法改正されまして、事業支配力が過度に集中しない場合には持ち株会社を設立することができるということになったわけでございます。  そのときの衆議院、参議院の商工委員会審議におきまして、独占禁止法で解禁されたけれども、現在の法制のままでは円滑に持ち株会社創設することが困難であるということから、株式交換制度の導入について検討するようにという意味の附帯決議がなされたわけでございます。一方、政府規制緩和計画におきましても、このような制度の導入を早期に検討、実現すべきであるということが閣議決定されておりました。  そういうことを踏まえまして、私どもとしましては、現在の社会経済情勢にかんがみ、企業の再編に役立てるという意味で商法改正というものを御提案しているところでございます。
  47. 大森礼子

    ○大森礼子君 経済界が非常に歓迎しているということです。今回の株式交換制度等の創設によりまして、これが実行されることによる経済効果というのでしょうか、どのようなものになると考えているか。これまでなかったけれども、こういうことができるようになったのでこういう経済効果が期待できるという、そこら辺をわかりやすく説明していただきたいと思います。
  48. 細川清

    政府委員細川清君) この法案が成立しますと、持ち株会社創設が容易になるわけでございます。そういうことになりますと、持ち株会社企業グループ全体の経営戦略の企画立案、資金、人材の配分等の本社機能を担わせて、全体としての管理機構をスリム化することができるということになりますし、また合併と異なりまして、各会社の組織形態、企業文化等を生かしつつ経営戦略面での一体化を確保することができるということになります。  合併の場合ですと、合併した会社同士の気風が違いますし、あるいは賃金水準が違う、さまざまなことがございまして、いろいろ摩擦があるということは聞いておりますが、持ち株会社の形でございますとそういうことはないということになるわけでございます。  そういうことで、経営戦略の一体化を確保しながら、かつ組織運営や人事面での摩擦を回避しながら、各事業部門に相当する子会社の活性化を図ることができるということになるわけでございます。  このように、持ち株会社創設企業の再編成のための一つの手段でございまして、企業が単体ではなく一つ企業グループを形成して活動することにより、経営の効率化、国際的な競争力の向上等を図るために利用されるものでございます。外国にもこのような制度が認められておりますので、日本にも同じような制度を導入しまして、我が国企業が競争力を強化する、あるいは回復するということから、産業界からも大変要望があるということでございます。  以上でございます。
  49. 大森礼子

    ○大森礼子君 新聞の記事等を見ましても、企業グループ、これは経営戦略を立てるとか、こういうことも書かれてあります。国際的競争力を高めるということですね。  それから、よく銀行なんかの合併がどんどん行われましたけれども、もといた銀行会社の気風というんですか、中で実際に摩擦が生じている、こういう事実にも接したことがございます。  そういった面で、非常に積極的に評価される制度である、現行の制度では難しい一〇〇%子会社の設立が、今回導入の株式交換株式移転制度で容易になる。非常に積極的な面があるわけですが、しかし一方で、戦前の財閥のような復活とまではいかないまでも、経済力の過度の集中による市場支配の危険性が生まれるのではないか、こういうおそれが一切ないと言えるのかどうかということも問題になると思います。  戦後からの時代状況が変わっても、昔のような財閥の危険とか、こういう逆行するおそれはないのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  50. 細川清

    政府委員細川清君) 独占禁止法上は事業支配力が過度に集中する場合には持ち株会社の設立を許さないということになっておりまして、そこにつきまして、事業支配力の過度の集中というのはどういう意味かというのが問題になるわけです。  独占禁止法にはその定義規定がございますが、それを読んでもまたよくわからないということがありまして、具体的にその基準を明らかにすべきだということが実は先ほどの商工委員会附帯決議にあるわけでございまして、公正取引委員会におきましてそこをどう考えるかというのでガイドラインを出しております。  ちょっと今資料を持っておりませんが、聞くところによりますと、例えばグループ全体の総資産が十五兆円を超えている、そういうようなときには一つの目安になるというふうなことが定められたガイドラインがございまして、これによって公正取引委員会が独占禁止法の適切な執行を図っていくというふうに聞いております。
  51. 大森礼子

    ○大森礼子君 一方で企業グループが結集していきながら、一方で事業支配力の過度の場合には制約されるという、ここの調和の点が非常に難しいのであろうという気がいたします。  それから次に、株式交換等制度につきましては、株主総会での決議があれば一部反対株主がいても完全子会社化が可能になる、このメリットというのがよく言われております。  先ほど小川委員も質問されたわけですけれども、いわゆる株式交換等反対する株主の保護措置はどのようにとられているか。これは先ほどもうお答えになりましたので、答弁については結構です。  反対株主株式買い取り請求権とか株式交換無効の訴えの制度とかいろいろあるわけですけれども、そういうような制度としてあるということと同時に、そういうような少数株主に対してそういう制度を周知徹底させることがさらに少数株主の保護を図るために必要ではないかと思うんですけれども、こういう点についてはどのように検討されておられるでしょうか。
  52. 細川清

    政府委員細川清君) この法案が成立いたした場合には、当然のことながら私どもとしてはその法律内容を周知徹底する必要があると考えております。従来から、こういう新しい法律ができた場合には各地でいろんな説明会をしたりとかいろんな雑誌等にそういう説明を載せるというようなことでやっておりますが、今回の改正につきましても、御成立させていただければそのようなことで周知徹底方について努めてまいりたいというふうに考えております。
  53. 大森礼子

    ○大森礼子君 次に、株式移転という方法によりまして完全親会社株主になることができるわけですけれども、その株式移転が期中といいますか、そういうときになされた場合、その決算期にありましては、もとの子会社株主として受けることができたはずの利益配当、これを受けることができなくなるのではないかと思うのですけれども、この点はいかがか。まず、それを質問いたします。
  54. 細川清

    政府委員細川清君) その点は確かに御指摘のとおりでございます。  Aという会社を設立する株式移転をBという会社がいたしまして、AがBの株を百%取得するということになったといたします。そして、営業年度の途中に行われたという場合ですが、その場合、Bが翌期の、次の決算期に配当をいたします。そして、その配当はAに行くわけですが、その営業年度では直ちに配当できないわけで、その次の決算期にそれが利益として出てくるわけですから、現実には株式移転をいたしますと翌々期に利益を配当することができるということになるわけでございます。  この点が問題ではないかということで、実は法制審議会審議の過程でも、合併の場合と同じように子会社利益準備金等の引き継ぎを持ち株会社の方に認めてはどうかという御意見もあったんですが、これは合併の場合には一つの法人ですからそれはできるわけですが、株式移転の場合には双方の資産は別個でございますので、そういうことを認めますと利益を二重に計上したことにもなりますし子会社債権者の利益も害することになりますので、それはできないということになりました。  では、実際にどうするかということですが、一つは、株式移転をするということが決まればその時点で中間配当をしておくということが考えられます。株式移転の前に中間配当する場合と、株式移転をした後で子会社が中間配当をし、親会社がそれでもって配当をするということが考えられるわけでございます。
  55. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。そういう問題点はないのかどうか、その問題点が生じた場合についてはその解決策はどのようにとられるか、これを質問しようと思ったんですが、中間配当という方法によるという、そこまでお答えいただきました。  それから、普通、株式会社といいますと、その要素というのは、株式、それから社員の有限責任と言われておりまして、その有限責任ということから、株式会社にありましては債権者保護の措置というのが非常に大事なものになってくるわけでございます。ところが、株式交換制度等につきましていわゆる債権者保護手続というものが設けられておりません。それで、株式会社である以上、やはり債権者の利益を保護する必要があると思うのですが、特にこの保護規定、保護手続といいますか、これが設けられなかった理由はいかなるものなのか、この点はいかがでしょうか。
  56. 細川清

    政府委員細川清君) 合併のように会社資産内容が変わる場合には、これを担保としている債権者の保護というのは当然必要になってくるわけでございます。この株式交換株式移転の場合には、従来の会社の法人格はそのままでございまして、資産等の移転は一切ないわけでございます。効果は、要するに株主の構成が変わるということでございます。そこで、そういうことであれば債権者保護の手続は要らないということが当然の帰結となってくるわけでございます。  それは制度の設計の仕方の問題でございまして、例えば、完全子会社なる会社に転換社債権者がいたというふうに考えていただきますと、その株式交換後は転換権を行使したら親会社株主になるということであれば、その転換社債権者の権利に影響が及びますからいろんな手当てを考えなくちゃならないわけですが、この法案ではそういうふうにいたしておりませんで、転換社債の転換権を行使した場合でも依然として従来の子会社株式取得するということで影響を与えないことにしておりますので、特に債権者保護等の手続は不要であるというふうに判断されたわけでございます。
  57. 大森礼子

    ○大森礼子君 法人格がそのままであって資産等の変化はないんだと、要するに株主の構成のみの変化だから特に債権者保護は必要としないということなんですが、ただ、この制度はすべてうまくいくとは限らないんじゃないかという気がするんです。だから、むしろその債権者保護が必要となるような場面は生じないのかどうかということで、今言われたお答えですと生じないということになるんでしょうけれども。  例えば、グループ化によっていろんな経営戦略が立てられる、その戦略が失敗する場合もあるし、あるいは会社のその収益力に差が生ずる場合もあると思うんですけれども、こういうのは債権者にとってもそれはもう仕方がないリスクだというふうに考えるべきなのか。  それから、債権者保護手続の点につきまして、こういう意見もございます。確かに、子会社となる会社については株式交換資産及び負債に何ら影響を及ぼさない、だから債権者保護手続は不要であると説明されるわけですが、もう一つ親会社となる会社債権者につきましては、子会社となる会社株式について過大な評価がされると資本の充実が害されるおそれがある、だから提供される株式の適切な評価を担保する制度ということなんですけれども、こういう点についてはいかがでしょうか。
  58. 細川清

    政府委員細川清君) 株式交換をいたしますと、子会社資産の実質価値子会社株式という形で親会社のものになるわけでございます。その場合に、その株式交換の比率等が適正に算定されていないとかそういうこと、あるいは株式交換によってふえた資産の額を反映するために資本金を変更する場合にそれが過大に変更されたということになれば、御指摘のように資本充実の原則を害するということになるわけです。  今回の商法改正案で考えておりますのは、まず、後者の部分につきましては、これは合併と同じような対応を考えるということにいたしておりまして、具体的には、子会社資産を上限として親会社資本金の増額を限度とするということを一点定めているわけでございます。  もう一つ、交換比率の問題につきましては、これも合併と同じ手法が取り入れられておりまして、交換比率の理由書というものを一般に公開するということによってその適正を担保するという形をとっているわけでございます。
  59. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。  それから次に、現行の商法二百十一条ノ二では、親会社とは他の株式会社発行済み株式総数の過半数の株式、または有限会社の資本の過半に当たる出資口数を有する会社というふうにございます。  親子会社の範囲につきまして、こういうふうに商法では持ち株割合による形式的な基準によっているわけなんですけれども、しかし他方で、支配状況といいますか、そういうふうな実質的な基準をとる必要はないのかどうか、こういうことも考えるわけなんです。この点、これまでの形式的な基準のみでよろしいのかどうか、この点についての見解をお尋ねしたいと思います。
  60. 細川清

    政府委員細川清君) この点につきましては、確かに御指摘のような問題があるわけでございます。  証券取引法に基づいて提出される財務諸表の書き方を定めた財務諸表規則というものがございますが、これが最近改正されまして、従来商法と同じ親子会社の概念を使っていたんですが、ここでは従来のいわば持ち株基準を改めまして、支配力基準というものを取り入れているわけです。例えば、四〇%から五〇%未満の株を持っているという場合でも、取締役その他の経営者の選任権について大きな影響力があるということで支配力があるというふうに認められる場合には、これは財務諸表規則上は親子会社として扱われます。そしてそれは関連の連結財務諸表との関係でそれを反映させるということになっているわけです。  ですから、その点では商法は持ち株基準、それから証券取引法は支配力基準ということになりまして、乖離が生じているわけですが、商法でどうして持ち株基準という形式的にとらえるかといいますのは、これは商法上の親子会社についてはそれなりの大きな法律効果があるからでございます。  まず第一点は、子会社親会社株式取得することができないという規定がございます。これは商法二百十一条ノ二ですが、これは大変大きな効果です。それからもう一つは、子会社が他の会社の株を持っている、その他の会社の株の四分の一以上の株式を持っているという場合には、その他の会社が有する親会社の議決権は行使することができないということになっているわけでございまして、これは商法二百四十一条の第三項でございます。  このようにはっきりした法律的な効果がございますので、支配力基準というようなやや不明確な基準ではこれはちょっと適用できないということになりまして、商法につきましてはそういった法的安定性の観点から明確な持ち株基準を今のところ維持せざるを得ないというわけでございまして、これにつきましても今後の検討課題ということであろうと考えております。
  61. 大森礼子

    ○大森礼子君 要するに、構成要件としてはっきりさせなきゃいけないということでございますね。  それから、時価会計関係についてお尋ねしたいと思うんですが、先ほど小川委員から時価会計制度の導入、この趣旨、それから取得原価方式との選択となっている理由についての質問がありまして、既に御答弁をいただいております。  それであえて質問しないわけですけれども、この時価基準というのをとりますと、いわゆる評価益というものが出てくる場合がございます。それで、時価評価取得価額との差で評価益が出てくる、これは貸借対照表上の純資産のところに組み込まれるわけでありますけれども、商法利益配当の基準のところで今回改正が加えられております。二百九十条の一項の六号に一つこれが追加となっているわけでありまして、この評価益の利益配当への制限を設けられております。つまり控除できる形になっておりますけれども、この二百九十条一項のところの純資産額、ここから評価益というものが除かれるとする理由は一体なぜなのか、これを教えていただきたいと思います。
  62. 細川清

    政府委員細川清君) この二百九十条というのは非常に大事な規定でございまして、これは物的会社でありますから、債権者に対する引当財産会社資産であるという大原則がございますので、その会社資産が違法に流出しないようにという規定でございます。これに違反するといわゆるタコ配の罪になって刑事罰まで科されるという重要な法律でございます。  それで、ただいまの時価評価による利益の問題でございますが、時価評価市場価格でそのような価格があることになっておりますけれども、これはやっぱり現実に売買しておりませんから未実現の利益でございます。将来、市場価格は下がる可能性もあるわけでございますので、これを現実に売買して売買代金が入ってきたというふうに同じように見ることはできないんだということでございまして、やはり債権者保護ということを考えますと安全を考えなければなりません。別の言葉で言えば会計学上の保守主義ということになるわけですが、そういうことを考えまして未実現の利益は配当の資産とはいたさないということでございまして、現実に売買して金銭が入ってきた、あるいは売掛金債権が成立した、そういうふうになった場合にはこれは配当の利益としてカウントしてよいという考え方でございます。
  63. 大森礼子

    ○大森礼子君 それから次に、今回の改正によりまして従来使っていた用語が変わっている部分がございます。改正案の二百八十五条ノ五の第二項に「市場価格」という言葉が出てまいります。これは現行の商法ですと「取引所相場」、こうなっていたわけであります。それから、二百八十五条ノ六でも「取引所相場」が「市場価格」に変わっているわけです。  「取引所相場」というのと「市場価格」というのは一体どのように違うのか。それから、「市場価格」という言葉を使うことによって商法の他の規定で「取引所相場」という用語を使っているところ、これに影響を与えないのかどうか、こういう点についてお尋ねいたします。
  64. 細川清

    政府委員細川清君) 「取引所相場」と申しますのは、公設の証券取引所に上場されている株式または社債の当該証券取引所において形成されている取引価格でございます。これに対して「市場価格」とは、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時売買、換金等をすることができる取引システム等において形成されている取引価格、気配、または指標その他の相場のことを言うということで、一番典型的な例では、上場はされていないけれども店頭に登録して売買されている株式というのがございます。そういうものが含まれるわけでございます。  これは、どうして従来「取引所相場」ということになっていたかと申しますと、実はこの規定がつくられたのは昭和三十七年でございまして、当時は要するに市場価格というのはまさに取引所相場しかなかったわけなんですが、その後、さまざまな金融商品の取引のシステムができましたので、そういうものを取り入れたということでございます。  それから、他の規定との関係でございます。「取引所相場」という言葉はほかの商法規定でもいろいろ出てまいります。まず、商法百七十三条第二項で現物出資の検査の例外として取引所相場のあるものは検査が要らないということになっているわけですが、これは今回の改正案では改めないことにしております。これは、百七十三条は要するに資本充実の原則から定められたものでございます。  他方、この計算関係時価評価の導入というのは要するに情報公開、ディスクロージャーのためのものですから、その目的が異なるということで百七十三条の方は改めるべきではないんじゃないかということでございます。  それから、二百十条ノ二第二項と第十項、これはストックオプションのときの自己株式取得、それから第二百十七条の第二項の端株の売却、それから二百三十条ノ八ノ二の第三項及び第四項で端株の買い取り請求等について「取引所相場」というのが出てまいります。これは、やはりこういう場合には取引所相場でそのまま売買していいということを言っているわけですが、これは売買価格の適正ということを考えておりますので、公設の取引所相場ということで考えるのが一番よろしいのではないかということで、こちらの方はあえて改めておりません。  今回の改正に含みますのは、いわゆる企業の財務内容開示の観点からは取引所相場に限る必要はないけれども、他の観点からはこれを必ずしも改める必要がないという考慮の結果でございます。
  65. 大森礼子

    ○大森礼子君 質問は以上です。
  66. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初にお尋ねをいたしますが、この法案立法背景、立法事情といいますか、それは今日の経済情勢のもとにおける財界からの強い要望が背景にあるということはもう先ほどの議論からも明らかだと思うんですが、まずその点は民事局長もそういう御認識でいらっしゃいますか。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕
  67. 細川清

    政府委員細川清君) 御指摘のように、経団連を初め経済界から株式交換株式移転制度の早期導入を要望されていることは事実でございます。  ただ、もう少し申し上げますと、商法改正はその時々の要望とか都合だけでやっているわけではございませんで、昭和五十年に商法の基本的な問題点を法務省で公開いたしまして、そこで順番に全体の見直しをしているわけでございまして、その五十年の中で企業結合について問題を提起されていまして、平成九年には企業合併の見直しをいたしまして、そして今回は株式交換株式移転ということを考えています。明年度につきましては株式分割というふうなことを考えておりまして、計画的に商法を見直している、そういう中の一環であるという意味もあるわけでございます。
  68. 橋本敦

    ○橋本敦君 一環はいいんですが、その一環となる背景、事情として財界の強い要望があるという事実は否定できないでしょうと、こう聞いているんです。それはいいんでしょう。
  69. 細川清

    政府委員細川清君) 強い要望があることは事実でございます。
  70. 橋本敦

    ○橋本敦君 具体的に言いますと、本年六月十一日に小渕内閣が産業構造転換・雇用対策本部、これによって決定をいたしました「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」という文書があるわけですが、その二つ目が「産業競争力強化対策」、こうなっておりまして、その第一に「事業再構築のための環境整備」というのがございます。その事業再構築のための環境整備ということで、具体的には「企業の自助努力を前提としつつ、経営の「選択と集中」を通じた企業の財務体質の改善の円滑化に資するため、企業の組織形態の自由な選択、事業転換や過剰設備の廃棄等を容易にするための環境整備として、以下の措置を講ずる。」というようにして、その第一として、「企業組織の自由な選択」ということの中に「株式交換株式移転制度の導入」、これがはっきりと書かれておるわけです。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕  この文書では、「持株会社設立や会社の買収・子会社化を円滑に行えるよう、株式交換株式移転制度法案の今国会における早期成立と早期導入を図る。」、こういうことが明記されている、これは間違いありませんね。
  71. 細川清

    政府委員細川清君) 御指摘のとおりでございます。
  72. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、本年の六月三日に総理官邸におきまして第四回産業競争力会議が行われまして、そこでこの問題について重要な議論がなされているわけです。それは、第四回産業競争力会議議事要旨ということで資料として出されておりますから明らかなんですが、財界の一つとしてソニーの例をとってみますと、ソニーは本年三月に二十一世紀に向けたソニーの企業改革を発表いたしまして、二〇〇〇年一月一日を目途にソニー・ミュージックエンタテインメントをつくるということになっておりまして、こういった会社三社を株式交換制度を活用して一〇〇%子会社にするという方針を打ち出していることが明らかであります。  そういうことを打ち出しているソニーの社長が、今御指摘をいたしました総理官邸での六月三日の会議で、ソニーは株式交換制度を来年早々から使うことになるので、ぜひ今国会で成立させてほしい、これがもし通らないと株価にも非常に影響するし、海外からの日本の評価にかかわる、実務的にもそういう関係の準備をしておりますから大きな不安を持っています、こう言って、本法案の早期成立をその場で強く要請されていることが議事録で明らかであります。  これに対して、この議事録によりますと、陣内法務大臣が、株式交換制度については大変重要な問題だと認識しておりまして、早期成立に努力をしたいというふうにお答えになっている議事要録もございますが、大臣、この点はそのとおりでございますね。
  73. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) そのとおりでございます。
  74. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういった財界の強い要望を受けまして、総理も積極的にこれに対応するということで、今、ソニー社長からお話のあった、そういう御提案のあった株式交換制度の問題については、国会の中で法律案審議の順番を変えてでもやっていきたい、ここまでおっしゃっているんです。  これは、まさに今財界が産業競争力の強化、リストラの中で要望しているこの法案については、政府も挙げて財界の要望にこたえていくということで、まさに総理のおっしゃったように法案審議の順番を変えてでも今審議をやっている、こういうことであります。  しかも、私は、この法案は非常に重要な課題をいっぱい抱えておりますから、きょう一日の審議ではとても尽くせない、当然二日、三日をかけて審議すべきだと強く要求しているのでありますけれども、事実上きょう一日の審議だという方向で進んでいるのはまことに遺憾だと言うほかはないと思うわけであります。  そこで、この具体的な内容に関する二、三の質問もしたいんですが、その第一の問題として、現行商法規定でなぜいけないのかということであります。現行法によって持ち株会社化を実現するためには、方法がないわけじゃない。一つは買収方式と言われる方式があり、もう一つ抜け殻方式などと称せられている方法、こういうこともあるわけです。現行の商法規定で一〇〇%子会社実施がどこでどう困難なのか、なぜこの法案が必要なのか、民事局長、その点はいかがですか。
  75. 細川清

    政府委員細川清君) まず第一に、御指摘公開買い付け方法でございますが、これは要するにその買い付けのために当然のことに多額の資金を要するというのが第一点でございます。今回の株式交換制度であれば、自社の株を交付することによって子会社と称する会社の株を取得することができるということになりますので、その問題が解決するわけでございます。それから、公開買い付けでございますと、当然ながら買い付けに応じない人がいるということで、一〇〇%の子会社をつくることが困難ということになるわけでございます。  それから、御指摘の二番目の抜け殻方式の場合は、要するに子会社を設立してそれに現物出資をするということで、全部現物出資、営業を現物出資しまして自分会社が抜け殻になって持ち株会社になるという仕組みでございます。この場合には、商法上は裁判所の選んだ検査役が必要でございまして、これが調査するということになりますので、それに時間がかかるということがいろいろ指摘されまして、なかなか計画的に実行しがたいということが経営者の方から言われているというのが二番目でございます。  それから三番目でございますが、そういう方式じゃなくて、今の会社をそのままにしておいて、新たに自分会社持ち株会社をつくりたいと言いますと、それは現在の方法では一般論としてはないわけでございまして、先ほど御説明申し上げましたが、銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律というのがございますが、これではできるんですが、先ほど申しましたように、そこでは非常に手続が複雑であるということで、さまざまな問題があるということでございます。  以上のようなことで今回の制度が必要だというふうに考えたわけでございます。
  76. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、今御答弁のとおりだと思うんです。  ですから、大企業、財界の主要な企業が、一〇〇%子会社をつくるということのために今御指摘になったような障害や難点ということをクリアして、一〇〇%子会社をつくることが容易になるようにという方向でこの法案の中身ができているということはもう明白ですね。  例えば、今おっしゃった現物出資、いわゆる抜け殻方式、こういうことになりますと、御指摘のように、商法百八十一条によりまして、裁判所検査役を選任してもらわなきゃならぬ、そしてそれを含めて調査結果を株主総会に出さなきゃならぬという手続も要るわけでしょう。それから、もう一つ公開買い付けということになりますと、全部買い付けられるかという保証がない上に、株価が高いということで資金の投与もかなりのものになる可能性も出てくるわけです。ですから、そういう意味では、今度の法案というのは、全く一〇〇%子会社をつくろうという財界、大企業の要望にこたえる法案だという性格をあらわに持っているというように私は考えざるを得ないと思うんです。  一面、それでは子会社の、小株主株主権の保障の問題は一体どうなるかという問題を、これも考えてみる必要があるんです。その点について、この法案との関係で、小株主と言っていいでしょう、そういう人の株主権の保障ということについて民事局長はどのようにお考えになっていますか。
  77. 細川清

    政府委員細川清君) 株式交換がされますと、従来の子会社株主親会社株主になるわけでございます。そこで、まず一つ手続という面において、子会社となるものの株主の保護をしなければならぬということで、まず事前事後情報開示するということと、それから株主総会による特別決議を要することといたしましたこと、それから三番目には、反対株主には公正な価格での買い取り請求を認めるということ、それから事後開示を認めた上で、六カ月内に限って、要するに違法な株式交換がなされた場合にはこの株式交換無効の訴えをすることができるという制度を準備したわけでございます。  もう一つ、その交換が成立した後の問題といたしましては、従来、自分株主である会社のさまざまな情報に接することができたわけですが、株式交換になりますと親会社株主になりますので、当然には子会社情報を得ることができないということになりますので、今回の改正におきましては、そこのところを、従来閲覧等ができたさまざまの書類については裁判所許可を得てそれを当然閲覧できることにしたというわけでございます。具体的な対象としては、定款、株主名簿社債原簿、端株主の名簿、それから会社計算書類取締役会の議事録株主総会議事録、そういったものを裁判所許可を得て閲覧できるようにした。  それからもう一つは、親会社監査役子会社の監査もできる、親会社について裁判所が選任した検査役は必要な場合には子会社についても調査することができる、そのような手当てをいたしたわけでございます。
  78. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃいましたけれども、この株式交換ということについて、根本的な問題は、要するに一〇〇%合併を進める上で、株式交換ということで親会社の株を交換してもらうということか、もしくはそれが嫌ならば買い取り請求権ということを行使する、この二つでしょう。  だから、会社そのものが大きなところに合併されてしまって、自分株主総会における発言権は、小さな会社であればそれなりの株式を持っていますからありますけれども、大きな会社に行けばそれこそ全株式の中のごくわずかになりますから発言権も落ちてくるということもあって、そういう合併反対だということの意志表示をしても、それは株主総会決議で決まってしまえばそれはどうにもならないから、あとはもう法律株式の交換ということで親会社の株をもらうか、買い取り請求権を行使するか、このどっちかしかない。これはもう間違いないでしょう。
  79. 細川清

    政府委員細川清君) それはそのとおりでございますが、ただ、今御指摘の事態は合併の場合にも同じことが起こるわけで、非常に大きな会社が小さい会社を吸収合併したときは、経済的には今御指摘の事態と全く同じ状態が起こるわけです。  今回の法案では、その吸収合併について株主保護にとられている方策と同様の方策をこの株式交換についても取り入れたということでございます。
  80. 橋本敦

    ○橋本敦君 それにしても、この株式交換制度がそういうように適用されるということで、一〇〇%子会社ということは親会社にとってはやりやすくなることは間違いないんです。  これらの問題について、日弁連も多くの指摘をしてきました。例えば株主によるチェック、これが実際会社経営に合理的に働くかという問題に関連をして、日弁連としては、我が国の大企業の経営につきまして、株式の相互持ち合いの結果、株主による監視の機能が十分に機能しなかったという過去の経過がある。しかし、最近は、代表訴訟の手数料が定額化されたこともありまして、株主の代表訴訟ということで、いわゆるコーポレートガバナンスということでの有効な手だてとなってきているわけですけれども、純粋持ち株会社が出てきますと、代表訴訟などの株主権の行使が今まで以上にやりにくくなって、重大な支障を来すおそれがあるということを言っておりますが、局長はこの点についてお考えはいかがですか。
  81. 細川清

    政府委員細川清君) 御指摘のとおり、親会社株主子会社株主でありませんから、子会社取締役の違法行為について株主代表訴訟を起こすことはできないわけでございます。その点につきましては法制審議会等でも相当議論がされたわけですが、今回は特に対策を盛り込まなかったわけでございます。  その理由を申し上げますと、まず、子会社の管理につきまして親会社株主は、それはやはりその親会社資産の管理でございますから、親会社取締役に委任している。取締役会社に対して善管注意義務があり、忠実義務があるということになると思います。ですから、親会社取締役が適切に株主権を行使しないということによって、あるいは株主として子会社取締役に不当行為があった場合に代表訴訟を起こさないということであれば、それは親会社取締役が職責を怠っているということになりますから、親会社取締役に対して責任を追及するということになる、それが商法上の大きな原理原則にかなった考え方ではないかということでございます。  それからもう一つは、現在は親子会社というのは多数実はございます。これは、今後は新しい株式交換等制度を導入すれば相当その数はふえるのではないかと思いますが、現在でも多数あるわけです。それを前提にいたしますと、これで商法の原理原則と異なることをやるには、相当現状が問題であるということがはっきりしていないといかぬのだろうと思うんですが、そこのところはまだ実証されていないということが一つあると思います。  また、外国立法例を見ますと、明文の規定でこれを置いている外国立法例はないようでございまして、アメリカの判例で二重の代表訴訟を認めたものがあるということでございます。  そういったことを考えますと、こういった親子会社の一般の問題は、代表訴訟も含めまして今後の課題であるというふうに思っておりまして、これからの運用状況を見て、直すべきものがあれば検討していかなきゃならぬというふうに考えているわけでございます。
  82. 橋本敦

    ○橋本敦君 今御答弁のように、検討すべき問題があることは率直にお話しになったわけです。具体的に言いますと、事業会社少数株主の立場から見まして、代表訴訟を提起するということになりますと、それは事業会社取締役に対してはできますけれども、実質的な支配者である親会社取締役の責任を追及する、そういうような訴訟は起こせますか。
  83. 細川清

    政府委員細川清君) 親会社子会社の経営について不当な影響を及ぼして、例えば子会社株主債権者等に損害を及ぼしたという場合に、考えられますのは、一つ商法二百六十六条ノ三の規定でございます。それから、一般的な不法行為の規定あるいは法人の不法行為の規定というものが適用される可能性はあるわけでございます。
  84. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは現在の商法規定でできる、こういう結論ですね。
  85. 細川清

    政府委員細川清君) ただいまのは、現行法としてできることを申し上げたつもりでございます。
  86. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、もう一つの問題として、持ち株会社を容易にするというのであれば、企業結合から生ずるいわゆる少数株主権の問題、それからまた、一般債権者との利害関係資産の流出管理あるいは不当な条件による融資の防止、取引制限などいろいろ不公正な取引に対処できる法整備ということをきちんと行っておかないと、これからの産業活動において競争力強化、リストラ等でそういったことをいわば軽視した大企業の経営活動等が野放しになってはいけないと思うんです。この点は、私が言うんじゃなくて、私が目にした商法学者の多くの皆さんも、今後の課題としてそういったことに対する立法的規制なり措置なり、そういった考え方を整備しておく必要があるという意見もかなりあるんですが、局長としては、その点についてお考えはいかがですか。
  87. 細川清

    政府委員細川清君) 親子会社の問題は、一般につきましては、現在も親子会社が相当数あるわけでございますので、そういったものの中で本当に法制的な新たな手段を講じなければならないだけの問題があるかということがもう一つはっきりしていないというふうに思っておりまして、ですから、先ほど申し上げましたように、この今回の改正案が成立いたしまして、その運用がなされ、実際に適用がなされて、問題が生じないかどうか、私どもとしてもこれを注意深く見ていかなければならないというふうに思っていると申し上げたところでございます。
  88. 橋本敦

    ○橋本敦君 要するに、多くの課題がある。  根本的に言えば、これまで我が国商法の基本原則であった原則が、大きく持ち株会社を認める方向、あるいはまた今言った株式交換制度によって一〇〇%親会社をつくることが可能になる方向で、財界の要望に沿って大きく商法のこれまでの原則ということが変わってきつつあるというところが私は社会的に重要だと思うんです。そのことと同時に、合併される企業で働く労働者に労働条件上どういった不利益が生ずるのか生じないかということも、国会としては十分検討しておかなきゃならない問題だと思います。  その点で、九七年の独禁法改正のときに、参議院の商工委員会で行われた附帯決議がございまして、労働省にこれから伺うんですが、この附帯決議の第四項では、   持株会社の解禁に伴う労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。   なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。 こういう附帯決議が行われております。この附帯決議に関して、今進んでおりますこういった商法改正等に関連をして、この附帯決議の実現に労働省としてはどのような対応、お取り組みをなさっていらっしゃるんでしょうか。
  89. 坂田稔

    説明員(坂田稔君) 先生御指摘附帯決議との関係でございますけれども、平成九年の独禁法改正附帯決議を受けまして、労働省では、労使関係者に労働法あるいは民法の専門家も交えた学識経験者を加えまして持ち株会社解禁に伴う労使関係の懇談会というものを設置し、現在、精力的に御検討をいただいているところでございます。  この懇談会におきましては、ことしの秋ごろを目途に最終的な結論をまとめる予定としておりまして、労働省といたしましては、その結論を踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
  90. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。  だけれども、実際にはリストラがどんどん進み、産業競争力の強化ということで財界の再編、あるいは独占企業の集中ということが行われているわけですから、今おっしゃったようにそういうテンポで間に合うのかどうか、私は労働者の権利を守るという上からテンポとしては甚だ遅いということを心配せざるを得ません。  具体的にお伺いしますけれども、この一〇〇%子会社ということが仮に実現をしますと、子会社のときに存在した子会社の労働組合は一〇〇%親会社になった親会社に対して団体交渉権を持ちますか。
  91. 坂田稔

    説明員(坂田稔君) 御質問は、労働組合法で言うところの使用者とは何かということになろうかと思いますが、現行の組合法におきましては、使用者につきまして特段の定義規定はなく、一般に言われております労働契約の当事者でありまして、労働者を雇用する地位にある者を言うこととされております。したがいまして、一〇〇%子会社であるからといいまして、それをもって直ちに使用者となるものではないというふうに理解をいたしております。  なお、判例におきましては、契約の当事者である雇用者以外の事業者でありましても、その基本的な労働条件等につきまして雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には使用者に当たる、そういう判断もされておりまして、その判断はケース・バイ・ケースになされるということでございます。
  92. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、よくわからないんですね、ケース・バイ・ケース。  端的に言って、完全に一〇〇%親会社ができる、そこに吸収合併されるという子会社で独自の労働組合を組織していた労働者が労働条件等について一体だれと交渉できるのか。親会社とできるのかということについては、今おっしゃったようにケース・バイ・ケースということですから、具体的な保障はないというのは、これは私は大問題だろうと思います。  それからもう一つは、吸収合併、一〇〇%親会社の設立に伴って労働条件が親会社と平均化されるということになってきて、従来の労働条件よりも賃金もその他の労働条件も下がるという問題が出てくる。こういった場合に、それは労働契約上の措置として当然にそうなってしまうんですか。それとも従来の労働条件を法律上、権利上、主張できるんですか。それはどうですか。
  93. 坂田稔

    説明員(坂田稔君) 一般的に子会社の労働者は、親会社との間ではなくてその当該子会社との間に雇用関係があるということでございます。ただ、子会社の労働者が解雇された場合には、その会社を相手取り、解雇無効やあるいは地位保全の訴訟を裁判所に提起することは可能と考えておりますけれども、その当該訴訟の適否やあるいは当該解雇の有効性につきましては、裁判所において個別具体的に判断されるものと考えております。
  94. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、この問題についても個別具体的に裁判所判断してもらわなきゃならぬ、裁判所へ持っていったら、いや、これは訴えは相当ではないよ、雇用関係の当事者ではないよということになって、親会社には訴えが提起できないということになるかもしれないということになれば、労働者にとって、今のリストラの中で大変な不安が及ぶわけでしょう。  だから、そういう意味では、今度の場合は、財界の要望にこたえての株式の交換制度を中心とする一〇〇%親会社をつくるということと、労働者の権利を保全するという大事な、憲法で言えば二十七条の関係でありますけれども、そこのところが伴わないで、こういうことをどんどん進めていいのだろうか。労働省は今お話しのようにケース・バイ・ケースでしかわかりませんと、そしてまた、いろんな対応についてはこれからやるんですという意味では、私はこれは重大な問題点を残した法案としか言わざるを得ない。  今日、リストラで失業が深刻になり、全国で本当に多くの労働者が今日の不況の中であえいでいる中で、大きな会社だけがどんどん一〇〇%合併子会社をつくるために便利な方法がこの法案で与えられている、そこで働く者の権利が保全されないということになれば、私は国政としては大問題だと思います。  こういう問題を指摘して、時間が来ましたので質問を終わります。
  95. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十分散会