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1999-07-29 第145回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十九日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  七月二十七日     辞任         補欠選任      斉藤 滋宣君     有馬 朗人君      脇  雅史君     井上  裕君      内藤 正光君     角田 義一君  七月二十八日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     岸  宏一君      井上  裕君     佐藤 昭郎君      竹山  裕君     佐々木知子君      角田 義一君     内藤 正光君  七月二十九日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     森下 博之君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 岸  宏一君                 佐々木知子君                 佐藤 昭郎君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 森下 博之君                 海野  徹君                 小川 敏夫君                 千葉 景子君                 内藤 正光君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    衆議院議員        修正案提出者   笹川  堯君        修正案提出者   山本 有二君        修正案提出者   上田  勇君        修正案提出者   漆原 良夫君        修正案提出者   達増 拓也君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        内閣法制局第二        部長       宮崎 礼壹君        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関  する法律案(第百四十二回国会内閣提出、第百  四十五回国会衆議院送付) ○犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案(第  百四十二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆  議院送付) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十五回国会衆議院送  付) ○公聴会開会承認要求に関する件     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十七日、斉藤滋宣君及び脇雅史君が委員辞任され、その補欠として有馬朗人君及び井上裕君が選任されました。  また、昨二十八日、有馬朗人君、井上裕君及び竹山裕君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君、佐藤昭郎君及び佐々木知子君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 おはようございます。自由民主党の世耕弘成でございます。  組織犯罪対策関連三法の審議も、そろそろ約三十時間近くになってまいりました。私、まだ国会議員になってわずかな期間ではありますけれども、今までいろんな委員会に入ってきましたけれども、これだけいろんな見解が示されていろんなやりとりがあった委員会は本当に初めてでございました。非常に興味深く参加をさせていただきました。  そして、まず、賛成の立場に立つ同僚議員質疑の中からは、やはり薬物犯罪を初めとする組織犯罪深刻化の現状が極めて明らかになったと思います。その中で、公共の福祉あるいは国民の安全を守る立場から、組織犯罪の犯人が行う犯罪通信について、極めて厳格なルールのもとで、大変残念ではあるけれども一部制限せざるを得ないということがはっきりしてきたんじゃないかと思っております。  そして、逆に、反対立場に立っておられる同僚議員の皆さんの質疑からもいろいろと問題提起がなされて、一部には確かにそうだなと思える部分もはっきり言ってありました。それは、私は法律を運用していく上で十分な配慮が必要だというふうに考えておりますし、そういうところは、しっかりと責任ある政府答弁を、今までも引き出してきたつもりですし、きょうもまた引き出していきたい、そういうふうに思っております。また一方で、ちょっとこれは誤解だな、ここはちょっと訂正しておく必要があるなというような部分もあったということを申し添えておきます。  そしてまた、この間二回続けて参考人質疑をやりました。法律専門家一日、そして技術専門家一日と二日間にわたって参考人質疑が行われまして、これまた大変意義深い見解が明らかになりました。  この参考人見解の中には、特に技術参考人見解の中には、えっとびっくりするようなことがあって、一昨日、昨日と私なりにいろいろと検証を深めてみました。きょうはその辺も踏まえたお話をしてみたいと思います。  私のきょうの質疑というのは、もう質疑をここまで三十時間近く尽くしてきているわけですから、今までの繰り返しというよりは、今まで行われた議論を踏まえてさらに前へ進める、そういう視点でやらせていただきたいと思います。  特に、以前の私の質疑で再三申し上げているんですけれども、技術的にできることとできないこと、法律上やっていいことと悪いこと、これがまだ非常に混同されている。反対側質疑に立たれる方の見解としても混同されているし、はっきり言って、政府側答弁もちょっとそこをはっきり仕切れていない部分があると思いますので、この辺をきょうはきっちりと整理をしたい、それを目的にやらせていただきたい。そしてまた、非常にあいまいで一般の国民が不安に見えることに関して政府のしっかりとした見解を引き出す、それも一つの目的として本日の質疑を行っていきたいと思います。  きょうは、技術の隘路には本当は余り入りたくないんです。しかし、どうしても話を進めていく上で、新しい分野にかかわる技術部分が特に相当混乱をしていると思っています。また、おとといの参考人質疑を受けての新聞報道を見ましても、その辺が非常に大きく関心を持って報道をされていましたので、あえてきょうはその辺にしっかりと踏み込んで話をしていきたい、なるべくわかりやすく、余り技術用語を使わずに御説明をしてまいりたいと思っております。  それでは、具体的な話に入ります。  まず第一に整理をしておきたいのは、通信傍受、まず電話世界で申し上げます。通信傍受を行う場所の問題の整理、これをまずやっておきたいと思います。  資料一の一、一番先頭のもの、これは、前も申し上げておりましたアナログ電話のつながる仕組みでございます。さらに、PTTという端末が朝日の報道あるいはこの中の質疑でも問題になっておりますので、そこもきょうはちょっと図の中に入れてみました。これがアナログ電話回線のつながる仕組みでございます。  本日もこんな分厚い資料を用意してきまして、同僚議員からは参考人として出席した方がいいんじゃないかと言われているんですけれども、踏み込んで話をしていきたいと思います。  このアナログ電話、これが今現在、この間のNTT東日本の常務の発言の中では、電話全体の九三%を占めているということでございます。そして、このアナログがだんだん今ISDNに移行しているということですが、これも参考人の陳述では、年間二百万回線程度の移行ということでございました。今、電話全体というのは六千万回線ございますから、大体三%程度毎年だんだんデジタルへ変わっていっているということでございます。ですから、しばらくは電話ネットワークの主流を占めるのは、今この資料一の一でお示しをしているアナログネットワークであるということをまずお断りしておきたいと思います。そして、将来、これは当然必ずデジタルにも変わっていきますし、光にも変わっていきますけれども、電話世界に限って言えば、その辺は余り本質的な問題ではないということも申し添えておきたいと思います。  さて、再三の答弁をいただく形になりますけれども、このアナログ電話の場合、警察傍受を実施するのは、ここで「主配線盤MDF)」と書かせていただいています、ここでのみだという答弁を前回いただいておりますけれども、それで間違いがないか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  5. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおり、アナログ電話につきましては、このMDFにおいて傍受を行うことが法的にも技術的にも最も適切でありますので、そこで実施することを想定しております。
  6. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 それでは、その次に①という形で書かせていただいていますけれども、交換機モニターをする形でつながっております試験制御装置、これは交換機の調子をモニターする装置ですから通話モニターできるのではないかなと思いますけれども、ここで行われないのはなぜでしょうか。
  7. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) アナログ回線電話の場合でございますが、試験制御装置端末、これはTWSとも言っておりますが、ここで傍受する方法では、通話中の回線に割り込んで傍受することはできることにはなりますが、あらかじめ特定回線傍受のための機器を接続した状態にいたしますとその回線への着信が不能となる、つまり話し中という状態になります。そのことから、その回線着信する通信傍受することはできないということになります。したがって、対象となった電話設置者においても直ちにその異常に気づくことになりますから、傍受方法として適当ではないということになります。  したがって、アナログ回線の場合、TWSから傍受することは考えていないということでございます。
  8. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 いかにも法律専門家的に非常に難しく説明なされたんですけれども、要するに、この試験制御装置を使って、今こんにちはと話をしている電話、もう既につながっている電話、そこをぱっと入って聞くことはできる、ああ今話をしているなというのを聞くことはできる。  これはどういう目的で使うかといいますと、例えば、ある人が外出先から自宅へ電話をかけたんだけれども、さっきから一時間も二時間も電話が話し中だ、もしかして家族に何かあったんじゃないかというときにNTTに問い合わせをされて、ずっとさっきから話し中の音が鳴っているんだけれども一体何なんだろうかと。そのときにNTTの社員が、その言われた番号に割り込んで、今通話が行われています、あるいは受話器が外れたままになっていたら、何の声もしないで部屋の音が、がちゃがちゃエアコンの音が聞こえていたりするので、これはいかぬ、受話器が外れているままだということで、ぐっと装置を回して警告音を鳴らす、このためのモニターをする装置なんです。決して通信傍受を待ち構えてするための装置じゃないですから、そういう機能はついていないんです。  待ち構えて傍受をしているとどういうことになるか、今御説明がありました。もう少しわかりやすく言いますと、待ち構えて傍受をしていると、そこへ電話をかけてきた人は話し中になっちゃうんです。例えば、暴力団の事務所に対してこのことをやったと思ってください。さっきからずっと話し中だ、これはおかしいぞ、うちの電話警察が割り込んでいるぞということがわかっちゃうということなんです。ですから、この試験制御装置においては通話傍受には適さない、使えないということでございます。そこを明確にしておきたいと思います。  それでは、今度、上のNTT無人局にある、今新聞でも話題になっていますし、反対立場に立っている方もこれが危険だということで再三取り上げられておりますけれども、この②のPTT端末、これについて少しお話をしていきたいと思います。  もう一回お断りしておきます。今この絵の中で、下にNTTビルというのがあって上にNTT無人局というのがあります。危険だと指摘される方は、いかにもこのPTT端末で下のNTTビル交換機アクセスをして傍受に使えるんじゃないかというふうにとられるんですけれども、そうじゃないんです。このPTT端末というのは、この絵でかいてあるように、もともと人がいない、NTT合理化で無人化しちゃった電話局があるんです。そこへ工事に行って、そこの交換機をいじった、配線をいじったときにちゃんとつながっているかどうか試験をしたい、そのための装置なんです。だから、このPTT端末というのは、ここに交換機が上と下に二つかいてありますけれども、下の交換機を遠くから見に行くためのものじゃないんです。今、工事をした人が、目の前にある交換機、その交換機NTT合理化によって試験機能というのは省かれているので、それを試験するためにあえて本局の試験装置にお願いして試験をしてもらう、そういうためのPTT端末なんです。  まず、そのPTT端末の用途を整理した上で法務省の方に、このPTTでなぜ通信傍受が行えないのかというのをもう一回確認させていただきたいと思います。
  9. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) アナログ回線の場合ということでお話しいたしますと、このアナログ回線試験制御装置につきましては、PTTを使用してそれにアクセスする場合に、通話が開始された後に操作を行って通信内容モニターすることは、先ほど世耕委員からの説明でもありました、これは可能でございますが、あらかじめ特定回線にそれを接続した状態にいたしますと、その回線からの発着信が不能になるということになります。  今度、デジタル回線制御装置の場合を考えますと、その専用のPTTにはそもそもモニター機能設定されていないということでございます。したがいまして、これを使いまして試験制御装置アクセスしましても通信内容モニターすることはできないということでございますので、以前にも申し上げているとおり、PTTを使うことは考えていないし、またそれを使って傍受することもできないということになっているわけでございます。
  10. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 今、デジタルまで先回りしてお話をしていただきましたが、そういうふうに説明するとまた混乱しちゃうんです。今、ちゃんとアナログから順を追ってやっていますから。  まず、アナログ電話は、PTTを使わないというよりも、そういう機能が全然ないので使えない、できないということをまず明確にしておきたいと思います。それで間違いないことだと思います。  そして、五月三十日付の朝日新聞の記事は、この傍受できない、使えないPTTをさらに警察署にまで持ち込んで傍受をする可能性があると指摘しておるわけですけれども、念のために聞きます、そんなことはあり得るんでしょうか。
  11. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そういうことは不可能ということでございます。
  12. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 技術的に、困難じゃないんですよ、不可能なことをこれ以上議論してもナンセンスだとは思うんですけれども、さらに確実にちゃんと議論を進めておきたいと思います。  さらに、じゃ百万歩譲って、もし技術的にPTT傍受ができるとして、しかしそれでも警察署に持っていって使うためには、まずNTTアクセスするためのID認証番号パスワードを教えてあげなきゃいけない、警察に。そしてさらに、NTTの手によって試験制御装置の入り口のところで警察署電話番号登録して、その電話番号からアクセスが来た場合、ちゃんと警察電話にもう一回かけ直してつなぐという作業ができるような設定NTTがしなくてはいけないということになるんです。百万歩譲った前提の上で言っています。  警察として、技術的に今の前提は全然めちゃくちゃな前提ですけれども、その前提に立ったとして、そのような協力NTTに依頼することがあり得るのか、あるいはそういう令状を出して裁判所で認められる可能性があるのか、確認をさせていただきたいと思います。
  13. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これまでにも明確に申し上げてきたところではございますが、警察施設傍受場所としては不適切でございます。警察施設において通信傍受を行うことを許す傍受令状が発せられることは考えられないということでございます。したがって、捜査機関が今の図の試験制御装置警察電話番号登録を求めるとか、あるいはこの装置アクセスするためのIDあるいはパスワードを割り当てるというように要求することもあり得ないということでございます。
  14. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 もう一歩、念のために聞きたいと思いますけれども、じゃ今度、パスワードを教え電話番号登録するというような行為、これはこの法案の第十一条に言う通信事業者の必要な協力に当たるんでしょうか、当たらないんでしょうか。
  15. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法案の第十一条に「必要な協力」という文言がございます。これは、個々の通信傍受を実施するために合理的な必要な協力を言うということでございまして、NTT施設外からNTT内の試験制御装置アクセスするためのパスワードの交付あるいは電話番号登録等はこの範囲を超えるものでございまして、必要な協力に当たらないということは明らかでございます。
  16. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 明確な答弁をありがとうございました。  百万歩譲った上にさらにもうちょっと譲っちゃって一千万歩ぐらい譲るんですけれども、万が一、そういう令状が通っちゃた、そして現場の捜査官NTTに向かって協力しろと言ってきた、もう本当に万々々々々が一。そのときにNTTが断る。この断るという行為は、この法律に言う断る正当な理由に当たるんでしょうか。
  17. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生御指摘法案の第十一条の必要な協力には当たらないということは明らかでございますので、捜査官がそのような要求をしても通信事業者がこれを拒否できることは当然でございます。
  18. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 もう一度アナログ電話の場合のPTTについて整理をしますと、もともとNTT傍受をする目的でつくったものではない。さらに、このPTTを使って傍受するということ自体技術的にできない。そして、今捜査当局も明確におっしゃいました。警察もそういうことを、つないでくれとかパスワードを教えてくれとか依頼をするつもりもない。裁判所令状も認められることはない。そして、NTTも、参考人がこの間言っていましたけれども、協力するつもりはない。また、断っても構わない。今、もうありとあらゆる状況がこのPTT通信傍受には使えないということを明確に示していると思います。もうこれ以上、私はアナログPTTについて議論をする必要はないんじゃないかというふうに思います。  それでは、今度はデジタル回線ISDNの場合についての確認を進めていきたいと思います。  今度は資料一の二をごらんいただきたいと思いますが、デジタルでは一体どこで傍受をすることになるんでしょうか。
  19. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) デジタル回線につきましては、NTT施設内におきまして、この試験制御装置端末を使用して特定回線に接続して傍受するということを予定しております。
  20. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 どうしてこの試験制御装置でしかやらないんでしょうか。アナログのときのようにMDFでやらない理由は何でしょうか。
  21. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) デジタル回線の場合でございますが、アナログ回線の場合と違いまして、MDF、主配線盤を使用して傍受しようとしても、デジタル信号音を捕捉することはできる、つまり、機械音は耳にすることはできますが、その復元がその場所では技術的に非常に困難であるということですので、試験制御装置端末における傍受を想定しているということでございます。
  22. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 それでは、先ほど警察は、アナログの場合、PTT警察に持っていこうとはしないし、NTTもそういう協力はしないし、協力義務はないということはさっき確認しましたけれども、その前提で聞きますけれども、デジタルの場合、試験制御装置でできるわけですから、それを線で延ばしたこのPTTでも聞けるような気が何となく外形的にするんですけれども、その辺はどうでしょうか。
  23. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘の点でございますが、デジタル回線につきましても、先ほどアナログ回線の場合に申し上げたのと全く同様のことが言えるわけでございまして、NTT施設外からNTT内の試験制御装置に接続して通信傍受を行うことはあり得ないということでございます。
  24. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 NTTは、このPTTにはそういうデジタルの場合は音を聞くというような機能は一切持たせていないということであります。また、先ほど来の話で言えば、そういう機能を持たせてくれというような要求があったとしても、それは協力する義務には当たらないし、当然お断りすることができるということをもう一度申し上げておきたいと思います。  さて、一昨日の参考人質疑の中でも、試験制御装置ポータブル試験端末の話が随分出ました。この試験制御装置を英語で略すと、NTT社内用語ですが、TWSといいます。そして、ポータブル試験端末PTTといいます。両方ともアルファベットであることが理由なのかどうかわかりませんけれども、このTWSPTT、相当議論が混乱していた。あるいは、一昨日の質疑の中では、一部この二つを全く混同して質問されているケースもありました。ですから、この際、二度とそうした混乱した議論にならないように明確に整理をしてみました。  次の資料二をごらんいただきたいと思います。  ここで、アナログの場合とISDNの場合に分けております。  アナログの場合、先ほどの資料一の一の①と対応していますけれども、まずNTTの人がいる電話局の中、そこには試験制御装置があります。そして、その試験制御装置ができることは、まず回線試験回線試験というのは、これはNTT電話をつないだときに必ずやる試験なんです。例えば、今回いろんなところで雨が降っていますけれども、雨が降ったら、ケーブルにちょっと穴があいていたら、そこに水が入って雑音が入るような場合がある。そういうときは、必ず電圧をチェックすれば電圧が低下するんです。そういう試験をやるのが回線試験だと思ってください。それはやれる。これは、横に見ていただければわかりますけれども、NTTが入れている試験関係装置というのは、そもそもこれをやるためのものですから、これは全部できるようになっているわけです。  もう一回縦に見ていきます。  NTT有人局内試験制御装置回線試験はできます。さらに、成立している通話、既にお話が始まっている通話へ割り込んで聞くこと、これはできます。そして次、逆に、待ち受けた場合の発信、これは丸と書いていますけれども、三角にしてもいいんです。発信は一応できるんです。これは、ある特殊な設定をすればです。普通にこの試験制御装置で割り込んで待ち受けただけでは発信もできません。  できませんけれども、お客さんの中にはこういう人もいるんです。おれのところ、ちゃんと電話着信するんだけれども、こっちからかけると変なところへつながるんだよなんというときがある。そういうときにNTTはどういう試験をするかといいますと、わかりました、お客さん、じゃ今から試験しますから、三分後に受話器を上げて発信してみてください、お客さんの方の調子がいいのか悪いのか見ましょうということで、発信を受けてそれでチェックするんです、発信側がちゃんと動いているかどうか。そうしたら、例えば、お客さんによっては、電話機に水をかけちゃって、実は自分は正確に電話をしているつもりだったんだけれども、ダイヤルのプッシュホンのボタンがおかしくなっていてつながっていなかった、そういうことがこれでわかる。  そのための試験をするために、特殊な場合にのみ試験制御装置で割り込んで待っていた場合、発信ができるというケース、これはレアケース、例外だと思っておいてください、あえて丸にしましたけれども。  そして、待ち受けた場合、これは先ほど申し上げましたように、相手からの話は全部話し中になります。ですから、暴力団事務所でこれをやった場合、傍受をしているということがばれちゃいます。ですから、ここはバツでございます。  そして今度、アナログPTT、先ほどの資料一の一の②の部分に当たりますけれども、NTTの無人の交換局内で使うPTT、これは当然回線試験、先ほど申し上げた技術的な電圧のチェックとか音質のチェック、これはできます。そして、成立している通話への割り込み、これもできます。しかし、待ち受けた場合には、待ち受けられたお客さんは発信もできないし着信もできない、そういう状況になります。  今度、ISDNの場合。NTT有人局内にある試験制御装置、これはすべてのことができます。回線試験、成立している通話への割り込み、あるいは待ち受けた場合のお客さんの発着信ができる。だから、デジタルの場合は唯一ここが傍受をする箇所になるわけです。  そしてもう一つ。NTT無人局内のPTT、これは逆に回線試験しかできません。そういう機能しかNTTは持たせていないし、一切できないようになっています。そのPTTを幾らNTTから盗んだとしても、ほかのことは一切できないようになっている。  こういうふうな整理になっているということをまず明確にしておきたいと思います。  このTWSPTTという議論、この委員会の中でも、私自身も取り上げているのがいけないのかもしれませんけれども、随分長い間議論をしてきましたけれども、皆さんも、本日の資料を、捨てていただいても結構ですけれども、資料二だけはぜひ保存していただいて、今後PTTに関して何かお悩みの点があれば、ぜひこれを一度見返していただきたい、そのように思っております。  さて次に、順番に進んでいきたいと思いますが、電子メールの傍受について。資料三をごらんいただきたいと思います。  これは、実は前々回の私の質疑でも使いました。左側に暴力団A組の事務所があって、そこに幹部がいる。電話回線でAプロバイダーというところへつながっている。そして、その組織の末端の売人がB社という会社で社員になって働いているんだけれども、実はB社のメールを使って麻薬の売買の情報のやりとりをしている。その設定でございました。  これも前々回の質疑の繰り返しになりますから、もう端的にお答えいただきたいと思います。この図の中で、警察がメールを傍受する可能性のある場所は、具体的にどことどこになるでしょうか。
  25. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 電子メールにつきましては、受信者のメールアドレスをまず特定いたします。  通信事業者でありますプロバイダーが管理するPOPサーバー内の受信者のメールボックスにおきまして、傍受すべき通信が行われるか否かを見張りまして、メールが受信された場合、直ちにこれをコピーして傍受することを想定しております。この図で言いますと、主として五ということに今の説明はなろうかと思います。
  26. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 暴力団Aの幹部が特定された場合は五、あるいは売人の側が特定された場合は九のいずれもPOPサーバーというところで傍受をする。  これもこの間、私、相当わかりやすく御説明したつもりですが、もう一回わかりやすく説明したいと思います。  POPサーバーというのが、いわゆる普通の郵便でいえば家のポストです。ですから、そこのポストに入れば、ある程度これはこの人あてのメールだということが特定できるので警察傍受をする。ですから、POPサーバーで傍受をする。  そして逆に、SMTPサーバー、これは実際にメールを送るときに置きに行くポストなんですけれども、ここにはみんながメールを置きに来ます。街角の郵便ポストあるいは郵便局のポストだと思ってください。そこにはいろんな人のメールが山ほど入る。ここで言うと八番と一番です。ここにはいろんな人のメールが山ほど入って犯人のメールだと特定できないので、ここで傍受することはないということです。  そして、そのほかのケーブル、二番の専用線ですとかほかのところ、これは言ってみれば郵便トラックみたいなものです。トラックを追いかけていって荷台に飛びついて、その山ほどあるメールの中から何かメールを抜き出すなんということは事実上不可能ですから、できない。  ということで、インターネットの電子メールを傍受する場合は、このPOPサーバーにおいてのみ傍受ができるということをもう一回明確に整理しておきたいと思います。  さて、一昨日の参考人質疑で私が一番衝撃を受けた、びっくりしたのは、インターネットの大専門家であるお二人の参考人、東京インターネットの高橋さん、そしてニフティの本名さん、お二人とも専門雑誌などでもよく読んでいる非常にインターネットの専門家であります。その専門家から、インターネットではリアルタイムの傍受ができないから、インターネットの電子メールにおいて通信傍受は意味をなさないという発言があった。これは私、本当にびっくりしました。  このことについてまず包括的に確認をしたいんですけれども、法務省として本当にそのように考えられるんでしょうか、御見解をお伺いします。
  27. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) インターネット通信におきましては、この法案の第二条二項に言う、現に行われている他人間の通信傍受ができないとは考えておりません。  例えば、電子メールにつきましては、受信者のメールアドレスを特定しまして、そのメールボックスにおいて傍受すべき通信が行われるか否かを見張りまして、メールが受信された場合には直ちに、すなわちリアルタイムでということだと思いますが、これをコピーして傍受することを考えておりますので、リアルタイムの傍受ということでございます。
  28. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 はい、そうですかと申し上げたいんですけれども、残念ながら、局長は法務省では、法曹界では大変お偉いんですけれども、インターネット界ではこの間の参考人二人の発言というのは非常に重みがあるんです。インターネットをやっている人は、やっぱり彼らの言っていることの方を信じる可能性がありますので、私、もう少し踏み込んで私なりの検証をしてみようと思って、一昨日、昨日といろいろ考えました。そこでふと思いついたんです。  この間、前々回質疑の冒頭に自己紹介的に申し上げましたけれども、私は、自分の議員会館の事務所にインターネットのサーバーを設置して、和歌山事務所とLANを結んで業務をやっております。ということは、私の議員会館のサーバーを例えばプロバイダーのサーバーだと仮定する。そして、議員室にある私の机の上に置いてあるパソコンと私のアドレス、これを犯罪者のパソコンだと考える。ここの資料三で言いますと、例えば私がここのbainin@b-sha.co.jp、そして、ここにある社内サーバーというのが議員会館の私の秘書の部屋に置いてあるサーバーだと考える。あるいは左側でもいいんです。私が暴力団の幹部だと考える。そしてAプロバイダーのサーバー、これが議員会館の秘書室の方に置いてあるサーバーだと考える。そう仮定することによって一つのシミュレーションができるというふうに思いついたわけです。  私あてのメールを私が気づくことなく第三者が傍受することができるかどうかというシミュレーションができるんじゃないかというふうに思いました。そして、秘書とともにゆうべ、きのうは本会議が長かったので、終わった後ほとんど夜中までかかっていろいろとやってみました。  最初は、サーバーのソフト、要するに秘書の部屋に置いてある大きなメーンのコンピューターのソフトを駆使して、先ほどもこの絵で申し上げているPOPサーバーに当たる部分に蓄積されている私のメールを何とか見られないかということで、それを直接見に行こうとしました。  資料四を見てください。そのときのパソコンの画面がこの資料四でございます。これは難しいように見えますけれども、ちょっと字が小さくて申しわけないんですけれども、画面が三分の一と三分の二、二つに分かれています。右側の大きいところ、ほかの人の個人名はマスクしてありますけれども、この世耕弘成というのが私のメールボックスそのものになるんです。あと、ほかに私の秘書三人の名前と遠隔からアクセスする和歌山のメールボックスがあります。  この世耕弘成という名前の左側にある、ちょっとつぶれて見にくくなっていますが、文書箱にメールが入ってくる絵になっている、これがいわゆるメールボックスなんです。今までメールボックス、メールボックスと話が出てきていましたけれども、きょうは皆さんに目で見ていただきたいと思って示しました。これがメールボックスなんです。  ここをあけてメールが見られればいいんじゃないかということで、きのういろんな方法で、いろんな本を読んでいろいろトライをしました。ここをクリックしたり、いろいろやったんです。あるいは、アクセスする権限を管理者という一番強い権限に変えてみたりしたんですけれども、私の使っているサーバーのメール管理ソフトというのは、やはり非常に通信の秘密に対する配慮が高かった。いかなる者がアクセスしようとも、いかなる権限を与えようとも私個人あてのメールをサーバーで見ることはできなかったんです。これは、残念ながらと言うべきか、私、実はある意味でほっとしたんです、私あてのメールを秘書に見られることがないですから。  それがないということがわかったんではっきりしたんですが、きのうの夜、なるべく連絡のつく専門家を探していろいろ聞いてみました。私や私の秘書は、ある程度パソコンは使えます、インターネットのこともわかっていますけれども、やはり技術的にそんなに高いわけではありません。ですから、専門家に聞きましたら、さらに高度な技術を持つ人がこのサーバーのソフト自体をいじっていけばメールの内容を見ることもできるということを教えてもらいました。  今、何だったら電話で言ったとおりやってみるかと言われましたけれども、ちょっと私や秘書では、そのとおりやって万が一サーバーを壊したら仕事が一切できなくなりますから、怖いという気持ちが働いて、できる可能性があるということは聞いて、やめました。この間プロバイダーの方がここへ見えて、警察が幾ら捜査令状を持ってきたって自分たちのサーバーをいじらすのは嫌だと言われた、あの気持ちが私きのう身をもってよくわかりました。本当に安易にいじれるものじゃないなということを感じました。  ですから、ここで、専門家の人ができると言いましたよということで終わりたいんですけれども、しかし、ここで終わったのでは、自民党の先生がこれだけいらっしゃる中で三回も質問に立たせていただいている意義がございませんので、それじゃいかぬということでさらに秘書と知恵を絞りました。  そこで意外と単純なことを思いついたんです。私のメールボックスそのものに転送の設定をしてやればいい。だれかのところへ転送する。具体的な捜査のときは、捜査官がそのプロバイダーのところにいて、横にパソコンを一台つないで、そのパソコンに転送する設定をしてやればいい。そういうふうにやってみたらどうだろうということで、今度は資料五で、私のところに捜査官はおりませんので、これは実際にやった話で、私の秘書のところへ転送しました。  これがウィンドウズの用語で世耕弘成というメールボックスのプロパティーと言います。これは、いろんな条件を設定する画面なんですけれども、そこの下に代理受信者という機能があります。要するに、私がいてもいなくてもだれかもう一人メールを見る人を設定することができるんです。ふだんは当然、なしにしてあります。きのうも終わった後、なしにしました。ちょっと穂苅美子という具体名が出ちゃっていますけれども、これは私の秘書の名前でございます。一たん私の秘書のところへ、代理受信者として設定して転送できるようにしました。そうしますと、私個人あてのメールを私の秘書が実際に見ることができました。そして、私の議員のテーブルにあるパソコンでは、そういうふうに見られているということはパソコン上幾ら探しても感じることはできなかった。ですから、犯人が気づかないうちにメールを転送することによって少なくとも傍受はできるということを、きのう私は現実に自分の部屋で自分のサーバーとパソコンと秘書のパソコンを使ってやってみました。  ですから、このようにして私が実証したメールの傍受方法、一つは実証できなかったですけれども、やってみたところ二通りあるんじゃないか。一つは、サーバーのソフトを操作することによってその操作者に権限を与えてメールボックスを見に行くこと、あるいはもう一つは、簡単なやり方として、転送設定をして転送先のパソコンでそのメールを見ること、傍受すること、この二つしかないと思うんですけれども、法務省の御見解はいかがでしょうか。
  29. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 専門家を前にしてまたいろいろ解説するのもなんだと思いますので、まさに御指摘のとおり、技術的には今委員が詳しく御説明になった二通りというふうに想定しております。
  30. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 この二通りということになりますと、この間のプロバイダーの証言、やっぱりサーバーは余りいじられたくないということをはっきりおっしゃっていた。さらに、私が実証したように、転送の方が割とサーバーの中に入らないで手軽にやることができる。そうなると、恐らくプロバイダーも余り不安感なく受け入れてくれる部分もあるのかなと思うんです。  どうでしょうか。この二つの方法のうち、やはり転送の手段の方が多くなると考えてよろしいのでしょうか。
  31. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的には、法案成立後、それぞれの事業者と十分な協議をして具体的な方法を決めていくことになりますが、御指摘のように、特定のメールボックスが受信したメールを自動的に転送するような設定を用いて傍受を実施するということは技術的に十分可能でございまして、また通信手段の特定という法的な問題も起きませんので、傍受方法としては適当と考えております。
  32. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 恐らく転送という手段を使われるケースが多いんだろうということがわかってまいりました。しかし、転送となると反対側立場の方の心配事というのが当たってくるんです。転送ということは、どこへでも転送できます、電子メールのアドレスさえあれば。  念を押しておきたいんですけれども、プロバイダーの建物以外の場所へメールを転送するということはあり得ないということを明確に言っておいていただきたいと思います。
  33. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案第六条をごらんいただきますと、「傍受の実施の方法及び場所」でございますが、裁判官が発付する令状の記載事項でございます。傍受の実施の場所は、個別の事案ごとに裁判官がその実施が可能な、最適な場所を決定するということになっております。  したがって、電子メールの傍受の実施場所としましては、プロバイダーの施設内において行うことを想定しておりまして、法的にそれ以外の場所で行うことは考えられません。したがって、対象となる通信をプロバイダーの施設以外の場所に転送して傍受するということはあり得ないということになります。
  34. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 あり得ないということがよくわかりました。ましてや、警察署へ転送するなんということも絶対にないということを確認しておきたいと思います。  また、それをプロバイダーが、そういう設定をしてくれ、@police.go.jpなんというところへ送ってくれと言われても、それは法律上、十一条上、断ることができるということを明確にしておいていただきたいと思います。
  35. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおり、警察署に転送して傍受することはあり得ません。また、捜査官からそのような要求が出た場合には、それを断るということは当然のことでございます。
  36. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 そうしますと、一応、今メールは技術的に傍受ができる。そして、自分でもきのうも転送という機能を使って傍受してみました。その上で、なぜあのインターネットの二大巨頭がどうしてリアルタイムの傍受ができないとおっしゃったのか、ここが私はどうしても理解できない。恐らく、法務省も悩んでおられると思うんです。  私もいろいろ推測をしてみました。まだあくまでも推測の域を出ませんけれども、もしかすると、このリアルタイムという概念をあのお二人は非常に厳格、限定的にとらえられたんじゃないか。要するに、電話の音声が電気で流れていくのを傍受するのと同じようなイメージで、いわゆるサーバーに一たん蓄積されてそれをあけて見るというような形ではなくて、専用線だとかあるいはサーバーの中の流れているデジタル情報そのものを傍受して解読するという意味で使われたのかもしれない、私はそう思います。でも、もしそういうふうな前提に立っているとしたら、それは当然できないんですけれども、これはあくまでも私の推測でございます。私は、一方的にそう証言していたなどとは言いません。推測でございます。  法務省に伺いたいんですけれども、この法案の「定義」に、現に行われている通信という表現がございます。この現に行われている通信というのは、私の推測ですが、もしかしたら、プロバイダーの代表の方がおっしゃった厳格なリアルタイム性、そこまで要求をしていると解釈されるんでしょうか。
  37. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案の第二条二項には、現に行われている他人間の通信を受けるという規定がございます。これは確かに、狭い理解ですと、現に伝送路上を行き来している電気通信を捕捉と、今先生のおっしゃったメールボックスに入る前の段階のみを意味するのかというふうにあるいは誤解されかねないわけですが、電子メールのメールボックスのように通信内容が蓄積される装置がございまして、これを継続的に見張って、通信される都度これを直ちに捕捉するということも、この現に行われている他人間の通信を受けるという概念には含まれるというふうに御理解いただきたいと思います。
  38. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 私もそう思います。ただ、それが例えば何時間もたつとか、一日二日たって置いてあるものとなると、それはやはり現に行われている通信とは言えないような気がするんです。  当然、サーバーの傍受をするということは、令状を持って、もうサーバーの横か転送先の端末捜査官及び立会人が張りついているわけですよね。そして、そこに犯人あてにメールが送られてきて、POPサーバーに蓄積されるとすかさず傍受をするということになると思うんですけれども、その間の時間というのはどれぐらいだと思えばいいんでしょうか。
  39. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 技術的には、瞬時といいますか、メールボックスに電子メールが入るのと同時にこれが他の機械にコピーされるというふうに御理解いただきたいと思います。
  40. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 瞬時ということですね。もし、この瞬時の蓄積をも認めないという理屈が成り立つとすると、実は大変なことになるんです。  インターネットからちょっと一たん電話に戻りますけれども、今、電話というのは交換機はすべてコンピューターなんです。電話は、昔はAさんとBさんという人が話していたら、必ずAさんとBさんの間に何らかの導線のつながりができて、極端な話、導線をずっと伝っていけば行けたんですね。昔の逆探知というのは、職人さんがそうやって交換機の中の接点をのぞいて追いかけていくと必ずAさんとBさんの間には通話回線が導線できれいにできている。これが昔なんです。でも、今はコンピューターなんです。音声といえども、本当に瞬時ですけれども、極めて短い間一たん交換機というコンピューターの中へ蓄積されて転送されているんです。  ですから、瞬時の蓄積も現に行われている通信ではないというような立場に立つと、もともとこの通信傍受といったものが、あるいはもう今後、これからデジタル世界が進んでいく中で一切通信傍受というのはできないということになるということを一つ指摘させていただきたいと思います。  そして、もしかして、一昨日の参考人が蓄積ということに非常にこだわられていたという立場に立つと、その後もう一つ言われましたこと、何で通信傍受令状で来るんだ、通信傍受令状よりも押収令状の方がいいじゃないか、適しているじゃないかとおっしゃっていたことも納得がいくんです。  さて、この犯罪捜査の電子メールの内容を把握するに当たって、押収令状がいいのか通信傍受令状がいいのか、どっちが十分な効果が期待できるのか、法務省見解をお伺いしたいと思います。
  41. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) メールボックスに入った電子メールでございますが、これは受信者によって技術的にはいつでも容易に消去することができます。したがって、そのメールボックスにおいてメールが受信されたかどうかということを見張りまして、受信された場合には直ちにこれをコピーして傍受するということが必要になるわけでございます。  これは、電子メールの受信が確認されるたびに捜索・差し押さえ許可状を請求するという方法によりましては、証拠の保全を図る前に、今申し上げましたように、技術的にデータが消去されるおそれが十分にございます。また、受信された電子メールを直ちに、すなわちリアルタイムで傍受しないと、そのほか時間的なタイムラグといいますか、捜索・差し押さえ令状ではデータの保存ということが不可能になってしまう。直ちにリアルタイムで傍受するという方法以外には保存する方法がないというふうに御理解いただきたいと思います。
  42. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 わかりました。  要するに、押収令状では、メールを押さえようと思ったら、メールが一通着くたびに裁判所へ行って押収令状をもらってこなきゃいけない。それは事実上、作業上無理ですよね。やはり通信傍受令状で対応せざるを得ない。そして、蓄積されたとはいえ瞬時に見るわけですから、これは十分私は通信傍受の範囲内で対処ができるというふうに考えるということを申し上げたいと思います。  そしてまた、一昨日の参考人の発言の中で一つ気になったことがあります。  これは、犯罪に関係しない他人の通信も、このインターネットメールを傍受した上で、傍受すべき通信であるか否かの判断をしなければならないことになって、犯罪とは関係のない一般ユーザーのプライバシーを侵害することになるのではないかという発言があって、これは私、ちょっと誤解されたなと思っているんですけれども、本当にそうでしょうか。法務省見解を伺います。
  43. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一昨日の参考人の今、委員指摘の発言は、先ほど委員の設例の中にもございましたが、例えば、このメールを発出する場合に、それがSMTPサーバーに入る。そうなると、先ほどはトラックに入ってしまうとか、あるいは街角の赤いポストの中にいっぱい通信が入っているような状態だと、こう言われましたが、確かにそれを傍受しようとしますと、犯罪に関係しない他人の通信をも傍受していくことになってしまうということがございますので、これはもう法案内容からいってそういった傍受はあり得ないということでございます。  この法案が予定しているのは、先ほどから申し上げていますように、メールアドレス等により特定された個人の、あるいはその特定された通信手段を用いた通信以外の通信傍受するということでございますので、他人間の通信も広く傍受するというようなことにはならないわけでございます。
  44. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 そうですね。ですから、SMTPサーバーでは傍受しない、必ず個人別に分かれているPOPサーバーで傍受するということですから、他人のメールを見ることはないんです。  もう一回資料四を見てください。はっきりと、もし世耕弘成あての傍受令状を持ってこられた場合は、この世耕弘成しかあけることはできないんです。下の和歌山事務所をあけようとしたら、それこそ立会人の外形的なチェックが働いて、あなた、待ってください、捜査令状世耕弘成のメールしか見ちゃいかぬのでしょうということで、立会人のチェック機能がまさに働く場所だということを申し上げておきたいと思います。  そしてもう一つ。参考人の発言でこれも気になったんですけれども、組織犯罪で使うような人は電子メールというのは複雑に転送していく、転送システムを利用していくと。ですから、転送を何回もかまされるとほとんど追跡ができない、捜査に実効性がないんじゃないかという指摘がありましたけれども、この辺の御指摘はいかがでしょうか。
  45. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 特定のメールアドレスに送られてきました通信を他のサーバーに瞬時に転送するということが、先ほど委員の御説明の中でも技術的には可能だということでございますが、他のサーバーに転送する際に、同時にその通信をコピーすることによりまして傍受することは技術的に可能でございます。また、この場合、通信手段の特定という法的な要請も満たしておりますので、転送システムが利用されたからといいまして、通信傍受の実効性が失われるということはないということでございます。
  46. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 あともう一つは、インターネットを犯罪に活用するときにはいわゆる匿名性を持つ技術、これをプロキシと言いますけれども、こういう技術を使ったり、あるいは暗号を使ってメールそのものを読めなくするから、仮にメールを傍受しても犯人の特定内容の解読は不可能だという指摘がありましたけれども、これについてはいかがでしょうか。
  47. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案の第十三条二項の問題でございますが、暗号を用いた通信等で即時にその内容を復元することができないような通信にありましては、まずその全部を傍受いたします。そして、速やかに解読の上、傍受すべき通信に該当するかどうかの判断を行うということになります。暗号解読の問題というのは、通信傍受に特有な問題ではございませんで、現在でも、押収したフロッピーとかフロッピーディスクに保存されている電子的情報には暗号化が施されている事例も想定できるところでありまして、現実にも、オウムの事件で押収された証拠物の中にはそれらが暗号化されたものもあった事例もございます。  捜査機関としては、暗号を解読するための要員あるいは捜査、装備の機材等の体制を整備するとともに、専門的知識を有する者にその鑑定を嘱託するということなどいろいろな方法が考えられます。解読のための捜査を尽くして、その内容を把握するということになります。  いずれにせよ、捜査は個々の事案ごとにそれに適した効果的な捜査手段を選択して遂行するということだと思います。
  48. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 ということですね。ですから、暗号解読のノウハウも、どの程度かはわかりませんけれども、捜査当局としてはお持ちである。あるいは、今までインターネットを使った犯罪も相当摘発をされているわけですね。ですから、犯人の特定ということについてもある程度のノウハウを持っておられる。それはもう恐らく犯人の技術と捜査の技術のイタチごっこになると思いますけれども、少なくとも、そういうものに取り組んでおられるということははっきりわかったと思います。  じゃ、もう一つ。これまたインターネットで悪いことをする場合に、例えばわいせつ画像を提供する場合なんかが典型的ですけれども、日本に置いておいたらすぐ見つかっちゃうだろう、あるいは日本の法律が簡単に適用されるだろうということで海外にサーバーを置いちゃう、そこを拠点にしちゃうということで捜査の手を逃れる手法というのがあるんですけれども、この辺についての対処はいかがでしょうか。
  49. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 我が国の捜査機関が外国に赴いて通信傍受その他の捜査活動を行うことは主権の関係でできないわけでございますが、外国に対しては、国際捜査共助ということによりまして、サーバーに蓄積されている情報に関して差し押さえをお願いする、あるいはその証拠の提供を求めるということなどを考えております。若干の時間がかかりますが、こういうことで技術的には可能だということでございます。
  50. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 そういうことで、インターネットのメールの傍受というのは、捜査の上で非常に使えるし、実際に傍受もできるし、そして技術的に、いろいろイタチごっこの面はあるでしょうけれども、頑張ればやっていけるものだということを整理しておきたいと思います。  そしてもう一つ。この間、一昨日の午前中の参考人、東京デジタルホンの桑折参考人の発言、これも私、正直に申します、衝撃的でございました。  携帯電話傍受は極めて困難であるという指摘でございました。特に、電話番号通信経路というものがその都度組み合わせて設定されるため、通信経路の特定に時間がかかるということ。これをやる場合、参考人の発言では二十分以上という話でした。そしてまた、仮に特定できたとしても、基地局を移動してしまうとまた二十分以上かけて特定しなきゃいけないということで、ほとんど傍受は不可能ということでしたけれども、法務省としてこの携帯電話傍受についてどのような見解をお持ちでしょうか。
  51. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、前提としまして、携帯電話傍受は現在想定されております組織犯罪の解明には必要不可欠でございます。  それでは、技術的にどうなのかという問題でございますけれども、委員指摘参考人の発言は、どうも現在のシステムを前提として、その技術的な問題に言及しているというふうに思われます。現在の携帯電話による通信システムが、その通信傍受を想定したものではないわけでございます。したがって、技術的に容易でないと言われる部分があることは我々も承知しているわけでございますが、そのような技術的な問題については解決が可能であると考えております。  通信傍受法案が成立した後に、技術的な問題を中心に捜査機関通信事業者との間で十分な協議、検討を行いまして、早急に問題点の解消を図りたいと考えておりまして、また解消を図れるものと考えております。
  52. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 そうですね。  電話と携帯電話、発展の歴史がいろいろありまして、電話というのは、やはり最初、音が切れるとか雑音が入るといういろんな苦情の中で育ってきましたから、どうしても通話状態モニターする機能というのは持っていたんです。携帯電話というのは、電波だからちょっと雑音が入ってもしようがないかなという感じで、余り音が悪いという苦情は直接来ないんです。音が悪いと不満をお持ちの方はいらっしゃると思いますけれども、どうしてくれるんだなんということは余りないんです。ですから、通話内容モニターする機能というのは今のところ携帯電話は持っていないわけです。ですから、今、傍受をすることは非常に難しい。  ですけれども、今難しいからといって放棄してしまっていては犯罪捜査なんかできないんじゃないか。歴史的に振り返ってみても、これは指紋の特定でもそうだと思いますけれども、無理だと思われたことを努力によって可能にして巧妙化する犯罪に対処してきたのが捜査技術発展の歴史ではないかと思います。  そしてまた、一つ指摘させていただきたい。今我々が使っている携帯電話、これはいわゆるPDCと言いますけれども、このPDC、別に永遠にこのままあるわけじゃないんです。どちらかというと、もう先の寿命が見えているんです。あと何年かです。各社がもう既に次世代の携帯電話という構想を明らかにして開発を始めています。NTTドコモもIMT二〇〇〇という形で二〇〇一年から始めます。もうプロトタイプもあります。ショールームへ行けば使えます。こういう、もうあと数年で商用化される次のものが来ているわけです。だから、今の携帯電話で、きょうこの時点で使えないからこの法律は欠陥だと言ってしまうのは余り性急な結論づけじゃないかなと思います。  逆に、せっかく今、次世代の携帯電話の開発が行われているわけですから、早期にこの法律を成立させて通信業界と話し合いを始めて、これから具体的な開発、詳細なスペックが決まっていく次世代携帯電話を設計していく段階で、犯罪捜査のための傍受機能というものを組み込んでいく協力通信業界に、当然私はその部分の開発コストは国が持つべきだと思いますけれども、これをやっていけば、ある程度コストもおさまった形でスムーズに傍受できる機能が入っていくんじゃないかという私見を申し上げます。  今度、資料の六番を見てください。これは、全く技術の素人ですけれども頭の体操でつくってみました。こういうふうにやれば携帯電話傍受もできるんじゃないか。  これは、ソフト開発の量とか、あるいはそれを追跡するコンピューターのスピードとか、いろんな技術的な制限があるかもしれませんけれども、左側の、傍受対象の携帯電話があってこれが発信をした。そして、サービス制御局から位置情報と発着信情報をつかんで交換機特定してその交換機に入って使用回線の情報、使用回線特定する、どのチャンネルを使っているかを特定する。  これは、もしかしたら、専門家から見たら荒唐無稽だと思われるかもしれませんけれども、私のような全くの素人が頭の体操で考えてもこういう絵がかけるわけです。こういうシステムを開発する努力をしていけば携帯電話傍受することができるんじゃないか。これは頭の体操ですので、私自身も、これを考えた上で、さらに抜け道はいっぱいあるだろうなと思います。具体的に幾つかありますけれども、それをここでしゃべると、将来、犯人に犯罪可能性を教えることになりますからそれは言いませんけれども、そういうことをまた一つ一つつぶして進むのが、これが捜査の進歩じゃないかなというふうに思っております。  さて、審議もいよいよ終盤を迎えております今、きょう私、冒頭で主目的だと申し上げた技術的な可否と法律的な可否を資料七として整理してみました。ちょっと見ていただきたいと思います。  横は、技術的にマルかペケか。そして、縦は法律的にマルかペケか。そして、それぞれABCDという四つのゾーンに分けました。  まず、Aゾーン。これは技術的にもできます。そして、法律的にもやってよい。例えば、先ほどから出ています主配線盤MDFでのアナログ電話傍受、あるいは試験制御装置でのISDN電話傍受、あるいはPOPサーバーにおける電子メールの傍受がこのAゾーンに当たる。Aゾーンについては余り議論の余地がないんだろうと思います。  そして、Bゾーン。これは技術的に困難であるけれども、法律的にやっても構わない問題。これは携帯電話であり、あるいは高度に暗号化されたメールなんというのはこの辺に入るんじゃないか。  そして、Cゾーン。これは技術的には可能なんだけれども、法律的にはやってはいけない。例えば電柱、引き込み柱での傍受、これは緒方議員の傍受のときにやったものですけれども、あるいはサーバーを丸ごと傍受しちゃう。  そして、Dゾーン。これは技術的にも不可能だし、法律的にもやってはいけない。例えば、PTTを用いた傍受ですとか、あるいはバックボーンや専用線というほかの人の情報も大量に流れている部分での傍受、これはやってはいけない。  こういうABCDの四つに整理できるんじゃないか。  Aについては、もう議論の余地はないと思います。  そして、Cについては、技術的にできるけれども、法律的にやっちゃいけない。ここは厳重に我々が見張っていかなきゃいけないと思います。また、立会人にも見張っていただかなきゃいけない。法律の運用をここは厳格にやっていただきたいと思います。  そしてDゾーン、これはもうどうでもいいんです。はっきり言って議論の余地はありません。技術的にもだめだし、法律的にもだめなんです。ここはもう議論するだけ時間のむだだからやめておきます。  問題はBゾーンです。技術的には今できないけれども、法律的にはやっても構わない。この分野こそ、これから一生懸命、業界と捜査当局国民の生活の安全のために技術開発を進めて、これを何とかしてAゾーンに持っていく努力、これこそが今やるべきことなのではないかという整理をさせていただきたいと思います。  さて、もう時間もなくなってまいりましたので、あと幾つか気になっていることがあります。  特にプロバイダーの皆さんから、捜査当局協力する際の技術的な不安感、あるいは警察技術への不信感というのが表明されていました。ここはちょっとはっきりしておきたいんですけれども、今までこういう不安感や不信感を抱かれたということは、十分業界とコミュニケーションがとれていなかったんじゃないかと思うんですけれども、十分な事前の業界への説明警察当局としてどうやるのかというようなことはやってこられたんでしょうか。
  53. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信事業者等の団体あるいは個別の事業者等と折に触れていろいろな話し合いをしてまいりました。  例えば、第一種及び第二種の電気通信事業者等を対象にいたしましては、それぞれ前後三回、協議会、説明会を開催してきております。また、本年六月に開催した説明会においては、第一種事業者五十六社、第二種事業者八十三社に参加をいただき、細かい点までいろいろ御説明を申し上げたところでございます。  また、法案成立後におきましても、施行まで約一年間の準備期間を予定しておりますが、その間に捜査機関通信事業者との間で十分な協議を行いまして、技術的な問題や運用上の問題に関する検討を進めて、傍受の実施を適正、円滑にするように今後とも最大限の努力をしていきたいと思っております。
  54. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 そうですね。協議機関の設置とか、あるいは警察当局へもちゃんと向こうも信頼を持ってもらえるような専門家を配置するということを何としてでも進めていただかないと、この話は円滑に進まないと思うんです。そこはしっかりとやっていただきたいと思います。  また、福島議員から指摘がありました小規模プロバイダーへの配慮、これは私も全く同感でございます。  私の地元でも、小規模なプロバイダーをやって地元の人に非常に頼りにされている人たちがいます。こういう人のところに対しても十分な配慮を行っていただきたい。間違っても、捜査令状を片手に突然やってきて、サーバーを押さえて勝手にいじるというようなことまではないと。あるいは、そういうところは、働いている人も一人もしくは三人ぐらいでやっているわけですから、立会人のことについても最大限の配慮をするんだということを明確に答弁していただきたいと思います。
  55. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 特に小規模のプロバイダーの方に協力を願う際には、その負担ということを当然考えなきゃいけないわけです。それで、その負担が過大にならないように、実施する際には十分に協議をし、適正に行っていきたいと思っております。  また、傍受を可能にする技術的な開発というのがやはりある程度必要でございます。コストについても大変事業者の方が心配されておりました。その点につきましても、事業者側の負担について十分に配慮していきたいと思っております。
  56. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 珍しく前向きな答弁をいただけたというふうに思いたいと思います。コスト負担、配慮を十分やっていただけるということだと思いたいと思います。  最後の質問ですけれども、これはプロバイダーだけでなくて電話事業者についても言えると思うんですけれども、万が一傍受をした、あるいはそれに協力したことによって契約者、ユーザーから訴えられるようなことがあるんじゃないかという心配、これは明らかにあると思うんです。そこの免責を、これは参考人もおっしゃっていました、明確にすべきじゃないかということがあるんですけれども、その辺についての御見解はいかがでしょうか。
  57. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その心配が非常に強いことも参考人のこの前の御発言を聞いてわかったわけでございますが、この通信傍受は、刑事訴訟法及び通信傍受法に基づきまして裁判官により発付された令状による強制処分として行われるというものでございます。通信事業者通信傍受協力したといたしましても、それは法的な義務に従ったものであることは明らかでございますので、顧客から民事上の責任を問われることはあり得ないというふうに御理解いただきたいと思います。
  58. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 相当いろんな問題を整理したつもりですけれども、これで質疑を終わらせていただきます。
  59. 内藤正光

    内藤正光君 民主党・新緑風会の内藤正光でございます。本日、私は一時間余りにわたって通信傍受法について質問をさせていただきたいと思います。  まず、初めに申し上げておきたいことがございます。  やはり、憲法でも保障されているプライバシーの保護、これは大変重要視されなければなりません。しかし、その一方で、この日本、麻薬が蔓延しているだとか、あるいはまた犯罪組織が本当に善良な市民生活を脅かしている、これもまた厳然とした事実でございます。そういった事実に対して、警察にもそれなりの捜査手段を与えるべきだと、そう主張されます。私は、それはちゃんと合理性のある主張であるし、それに理があることは認めます。しかし、それにしては、余りにもこの通信傍受法案は欠陥があり過ぎる。そういった事実を認めるからこそ余りにもあらが目立ってくるんです。  例えば、形ばかりの立会人を置いて、これでよしとして果たして乱用の防止になるんだろうか。あるいはまた、今までの審議でも再三明らかになってまいりましたが、今回の通信傍受法案、インターネットはおろか携帯電話すらも想定したものではなかった。つまり、いわゆる黒電話、一般の電話を想定してつくられてきたものだと。だから、今いろいろなほころびが出てきているんだろうと思います。つまり、数々のお粗末な欠陥がこの通信傍受法案にはあるのではないのかなと思います。そういった立場から、以後、幾つか質問させていただきたいと思います。  まず、通信傍受法案の実効性というものについて質問をさせていただきたいと思います。  この通信傍受の対象としております犯罪が四つございます。一つは薬物、二つは銃器、三つは集団密航、そして四つは組織的犯罪、これらの犯罪において携帯電話が多用されているということはだれも否定はしないと思います。実際、衆参の法務委員会においても、多くの政府委員の方、大臣がこのあたりのことを答弁されております。  私は、ビデオテープを起こしました。実際、七月一日、松尾刑事局長もこのようにおっしゃっていたかと思います。  これらの犯罪において、犯行の準備、実行、犯跡隠ぺいのために複数の犯人間において相互に指示、命令、連絡、報告等が必要とされ、そのために適宜携帯電話等の電気通信が多用される現状を踏まえますと、これを傍受することは非常に効果的であり、その意義は大きいと思いますと。つまり、まとめていえば、携帯電話傍受組織犯罪に非常に効果的であるとおっしゃっております。  そのほかにも、七月六日、同じく松尾刑事局長は、オウムによる公証役場事務長の逮捕監禁事件では、携帯電話を使っていろいろな指示だとか連絡等がなされたというふうにおっしゃっているかと思います。ところが、社民党の保坂衆議院議員の盗聴事件を機にいろいろこの辺の携帯電話に関する認識を深められたのか、携帯のいわゆる盗聴は難しいというふうに確かにおっしゃったかと思います。  ところが、その同じ日、福島議員の質問に答える形で、携帯電話通信事業者の監視センターで傍受する予定であると。その認識はまだお持ちになられていたかと思います。  ところが、一昨日の参考人質疑で、参考人の方がこう明快に述べられております。携帯の場合、監視センターからの通信傍受も非常に困難であると。  そこで質問なんですが、どういう対応をされるのか。携帯電話の問題はとりあえずわきへ置いて、まず法案だけを成立させてしまおうというおつもりなのか。あるいは、もともと携帯電話のことは想定していなかったのか。あるいはまた、何か秘策でもお持ちなのか。秘策といえば、例えば電波をモニターできるように暗号規制をかけるつもりなのか。あるいはまた、先ほど出てきましたが、通信事業者のオペレーションシステムでもモニターできるよう通信事業者にシステム仕様変更を依頼あるいは強要するつもりなのか。ちょっと対応をお聞かせいただけますでしょうか。
  60. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず第一点でございますが、携帯電話通信傍受、これは現在想定されております四類型の組織犯罪のためには必要不可欠であります。これはもうこれまでの答弁でも何回も申し上げてきました。  それから、法案の立案段階で、先ほども申し上げましたが、こういう携帯電話の事業者も含めまして多数回にわたりましていろいろな協議、検討を行ってまいりました。携帯電話傍受もこの法案としては当然予定して立案されているというふうにまず御理解いただきたいと思います。  それでは、その技術的な問題はどうかということでございますが、先ほども世耕委員の御質問でも、あるいはその御質問の際にいろいろ技術的な解説をいただきましたが、私からも携帯電話による通信についての傍受は可能であるというふうに申し上げてあります。  それは、今、携帯電話通信事業者に対しまして、例えば今、委員のおっしゃるような新たにシステム自体を変えてもらうとか、あるいは相当に法外な負担をかけるとか、そんなことを想定しなくても、現在の技術水準でも傍受のための機材の開発は比較的容易であるというふうに我々は理解しております。  また、本法案が成立しまして施行まで約一年ございますが、その間にそれぞれの業者とそれぞれのシステムに適合した傍受のための機材の開発をする。そのコストにつきましては当然ほとんど国が負担するということになろうと思いますが、そうした機材を開発することによりまして、一昨日、参考人指摘されておりましたさまざまな技術的な困難性というものは解消されるというふうに我々は考えておりますし、また解消が可能であるということにつきましては、通信事業者から明確な回答もいただいております。
  61. 内藤正光

    内藤正光君 一年以内で開発が可能であるとおっしゃっているわけですが、では二つに分けて考えたいと思います。  まず、開発できなかった場合。やはり現行システムで傍受することを考えなければいけません。しかし、さきの桑折参考人の話によれば、現行システムで仮に傍受しようとした場合はこういうプロセスが必要になるかと思います。つまり、あらかじめ回線設定されているわけではございませんから、通話が開始した時点で回線探しを始めなきゃいけない。はっきり言えば、数百本の束の中から不特定多数の回線を一本一本洗っていかなきゃいけない、会話も聞かなきゃいけない。  ところが、この法案が認める傍受というのは三つしかないはずなんです。一つは犯罪通信、もう一つは該当性判断のための通信、そしてもう一つは別件通信でございます。しかし、現行システムで傍受をやろうとした場合、不特定多数の回線の全く赤の他人の会話を聞かなきゃいけないわけですが、これは認められるんですか。
  62. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 不特定多数の通話傍受するような仕組み自体は、この法案に明らかに違反しております。技術的には、そうしたことをしないで特定通信傍受する技術的な開発は可能であるということでございます。
  63. 内藤正光

    内藤正光君 ということは、開発されなければ携帯電話傍受は行わないというふうに理解してよろしいですね。
  64. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 想定の話というのはなかなかお答えしにくいんですが、技術的に開発が不可能である、その技術が開発できない限りは特定通信傍受することができないという状況が想定されますれば、それはこの法案によってはできないということでございますが、現在の使われております携帯電話のシステムそのものを前提にいたしますと、特定通信特定した上で傍受するということは技術的に可能でございますし、通信事業者と今後話し合いをする中で機材等についての開発もしていく所存でございます。
  65. 内藤正光

    内藤正光君 都合のいいときには、システム開発ができたらだとか何かいろいろおっしゃっているような気がしてならないんですが、システムの開発云々は水かけ論になってしまいますので、次の質問に移ります。  じゃ、通信傍受に対応できるよう、ドコモだとかデジタルホンだとかいろいろ会社がありますが、そういった各社にシステム仕様変更を要請する、あるいは強制するというふうに理解してよろしいですか。
  66. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) システム仕様変更というのが何を意味するのかよくわかりませんが、この法案は許容される範囲内において協力をお願いするということでございます。過度な負担あるいは過度な技術の開発を要求するということは相当でございません。したがいまして、その点に関しましても、十分にこれらの事業者の方と話し合いをして解決していきたいと思っております。  先日来の参考人の中で、確かに技術的に非常に困難な問題が幾つか指摘されました。  例えば、回線特定。これは、最適な回線に自動的に切りかわるというようなことがございますので、仮に一つの回線特定しても、それがかわってしまった場合には、その特定された回線通信が切れてしまうことになるので傍受できないというような御発言があったかと思います。そうすると、例えば十回線が携帯電話でその箇所で使われていた場合に、その十回線の残りの九回線でどの回線が使われたのかを順次チェックしていってまた回線を探し当てる、それまでにはかなりの時間がかかるというような御発言がございました。  例えば、その一例を申し上げますと、コンピューターを使用することによりまして十回線なら十回線のどの回線に移ったのかということを瞬時に判別するというような機材の開発は技術的には可能でございまして、今の例で申し上げましたように、技術的にいろいろ機材を開発し、電話傍受前提とした技術を開発していくことによりまして、参考人がいろいろ言っておりました現在の困難性の中の大部分のものは解消されるというふうに我々は理解しているところでございます。
  67. 内藤正光

    内藤正光君 私がシステム仕様変更と言うのは、局長がおっしゃっている技術開発そのもののことでございます。だから、交換機のソフトウエアの変更だとか、そういったことを申し上げております。  ところが、私は、先ほど自民党の世耕議員の話と一年以内に開発される話というのはある意味では矛盾があるんだろうと思います。というのは、先ほどの発言というのは、今、携帯電話はPDCという日本の規格を使っている、しかし寿命はそんなにはないというふうにおっしゃっている。これは事実でございます。新しい方式に変わります。もう寿命がないわけです。何年になるかわからない。あと三年か四年使えるかわからない。にもかかわらず、今の現行システムのために新たにお金を投じるというのは、私はどう考えても合理的な企業行動としては考えられないと思うんです。それでもやらせようということですか。システム仕様変更は、強制ですか、要請ですか、断ることができるんですか。  郵政省さんとの覚書の中では、システム仕様変更までは協力の範囲に入っていないと明確に触れられていたかと思いますが、この辺もあわせて明確な答弁をお願いします。
  68. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法案は、通信事業者等に合理的な範囲内で必要な協力をいただくということは当然前提にしているわけでございます。ただ、それを超えてまでの協力をこの法案で強制しているわけではございません。  そういう通信傍受のための機材の開発というのは、主として通信事業者等からいろいろ技術的な援助あるいは助言をいただくことは当然あるかと思います。それぞれの通信事業者によって使っているシステムが違うということでございますと、そのシステムの相違に応じた技術的な助言というのはいただかなければなりません。そうしたことの協力を得ながら国としてそういう機材を開発する。したがって、コストも、先ほど申し上げましたように、基本的には国が負担すべきものと我々は考えているわけでございます。  そうした中で、通信事業者にその事業者としての協力の範囲内の協力をお願いすることで今回の通信傍受法案を実行に移す場合の技術的な問題は解決されるというふうに考えておりますし、また、我々が通信事業者等といろいろな細かい打ち合わせをしてございますが、その中で、今のところそうした問題が不可能であるというような問題には立ち至っていないということでございます。
  69. 内藤正光

    内藤正光君 もっと端的にお答えください。  この技術開発協力要請というのは断ることができるんですか。
  70. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的にどうというふうに想定していただけますといろいろまた事業者の人と協議をしながら検討することができますが、協力はあくまで基本的には任意でございます。
  71. 内藤正光

    内藤正光君 任意となりますといろいろな問題が出てくるわけです。受ける事業者もあれば断る事業者も出てくる。これでまた大きな問題が出てくるわけです。  つまり、断った事業者、犯罪者はここは盗聴不可能であるからということでみんなそっちを使うわけです。そうなると、この通信傍受法そのものが骨抜きになるわけです。使い物にならない。実効性がなくなるわけですね。そればかりか、みすみす了解してしまった事業者はばかを見るわけなんです。  例えば、お客さんに与えるイメージが悪くなる。つまり、自分が話をしている内容がもしかしたら聞かれているかもしれないというイメージ低下になる。あるいはまた、当然システムをつくるために国が補助をするといっても、それのメンテのためのコストがかかるわけです。つまり、そのコストは当然サービス料金に上乗せされる。そうなると、完全に競争上不利になるわけです。  その辺の問題も考えていらっしゃるんでしょうか。
  72. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法案の十一条には、「通信事業者等の協力義務」というものがございます。これは直接的には、傍受の実施に関しまして通信事業者等は正当な理由がないのにこれを拒んではならないという規定でございます。この通信傍受令状そのものの実施というのがいわゆる強制処分でございますので、こういう規定もあるわけでございます。  ただ、よくお考えいただきたいと思うんですが、この通信傍受というのはやはり犯罪の捜査のために不可欠であるということで現在こういう法案を我々としてはお願いしているということでございまして、そのための協力というのは、通信事業者等としましても非常に公共性のあるこういう事業を営んでいる立場でございますので、そうした法案の趣旨は私は十分に御理解いただけるものと思います。  ただ、先ほどから申し上げているように、その協力の範囲も、やはり先ほどの弱小、中小のプロバイダーについては、コストの面その他、あるいは協力の立ち会い等についても相当な配慮をしなければいかぬと私も思っておりますが、そうしたこともあわせまして、通信事業者協力できる範囲というのはおのずと限界があるわけでございます。それは国としても当然配慮することでございます。システム開発等につきましても、過度な負担を押しつけるなんということは毛頭考えておりません。あくまでこの法案の趣旨を御理解いただいて、技術的に協力いただける範囲内で協力いただく、それで国としてそういう装置等の開発についても行っていくということでございます。その点については、いろいろな協議の機会を通じて十分に御理解いただくつもりでおります。
  73. 内藤正光

    内藤正光君 はっきり言ってしまえば、応じない業者がいたらそれはそれでしようがないというふうにあきらめられるわけですか。
  74. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 個々の通信傍受については、強制処分でございますのでそれなりの強制がありますが、そのほかに技術開発その他で協力できないということがありますと、やはり我々としてはいろいろ説得をしますが、それでもなおかつ協力できないということでございますと、それ以上の方法はないということでございます。
  75. 内藤正光

    内藤正光君 はっきり言えば、今いろいろな通信事業者、中小も含めて、インターネットプロバイダーも含めて、何をどう協力したらいいのかというのがわからないんです。これに一番困っているんです。  後からちょっと質問しますが、通信傍受というもの、その行為自体は、はっきり言えば憲法の枠を超えているわけです。憲法の枠を超えて協力しなさいというわけですから、当然すべて、一挙手一投足何をやっていいのか何をやってはいけないのか、こういったことは明確にしなきゃいけないんです、一歩一歩。その辺のことをまず御理解いただきたいと思います。  だから、通信事業者が、もしこの法案が通ってしまったら、どういう協力をどこまでしなきゃいけないのか、あるいは断れるものなのかどうなのか、はっきりさせていただきたい。それも具体的に明確にしていただきたい。ちょっと答弁をお願いします。
  76. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、大前提が違うように思いますが、通信傍受そのものは現在までに検証という例で五例ございまして、高裁段階ではございますが、憲法に違反していることはない、つまり合憲であるという判断はあるわけでございます。それ自体が憲法違反であるというのは前提を欠いているなと私は思います。  それから、通信事業者の負担の問題です。私も一昨日の参考人質疑を聞いておりまして、大変不安が強いということ、あるいは、特に小さい業者の負担というものはなかなか個々のケースでは過重になってしまうという心配をされているなということもよくわかりました。例えば、立会人の問題一つをとりましても、参考人の発言の中で、二十四時間傍受ということになるととてもつき合えないとか、あるいは、ずっと何日間もということになるとそのプロバイダーの業務そのものがとまってしまうということもありました。私もそうだと思います。それはおっしゃるとおりだと思います。その点は当然配慮する必要がございます。  例えば、個別、細かいケースでどういう配慮が想定されるかということでございますが、小さいプロバイダーのところへ行って、POPサーバーから特定のメールアドレスのものをコピーするというような機材を持っていって備えつけたとします。そうすると、立会人をその事業者に基本的にはお願いするわけでございますが、機材をそのプロバイダーのところの機材に接続するための技術的な問題は、これはあるいは機材の保守管理に責任を持っている小さいプロバイダーの方でもやはり技術者にお願いせざるを得ないかと思います。  しかし、その後の立ち会いということになりますと、そこで立ち会っていたらほかの業務がとまってしまうということがわかりました場合には、それは事前に協議する中でほかの立会人を手当てするとか、そういった形の配慮は当然やらなきゃいかぬと思っております。また、技術的にも、そういうところで過重になるような技術を提供してくれとか、そういうことまでは到底要求できないということもよくわかります。そこらあたりは、通信傍受を具体的に実施する過程で、いわば事業者の方から負担が過重だとかあるいは過酷だとか、そういったことがちょっとでも出ないように十分に協議をした中で解決していきたいと思っております。
  77. 内藤正光

    内藤正光君 では、テーマが変わりまして、今度は立会人が負わされる責任についてということで質問をさせていただきたいと思います。  ここで一つの想定をしてみたいと思います。違法な通信傍受が現場の捜査官によって、組織的でなくても、現場の捜査官一個人でも構いません、違法な通信傍受が行われた場合ということを想定したいと思います。  例えば、テープ交換の際に現場の捜査官がテープをすりかえてしまった。あるいはまた、現場の捜査官令状には記載されていない回線傍受してしまった。あるいはまた、現場の捜査官が期限切れの令状を提示してそれで捜査を始めてしまった。あるいはまた、現場の捜査官が切断を余り行わず明らかに事件以外の会話を聞いている。ところが、立会人がそれを見過ごしてしまった。そういった場合にどうなるのかということですが、こういった違法な通信傍受捜査が行われたにもかかわらず立会人が見過ごしてしまった場合、通信事業者並びに立会人たるその社員は、民事上の不法行為責任あるいは共犯、幇助などの刑事上の責任、あるいは行政上の責任を全く負わないと断言できますか。  これは、内閣法制局にまずお伺いしたい。そして、その後、法務大臣にお伺いしたいと思います。
  78. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) お尋ねは、民法七百九条の不法行為責任が発生するかどうかという問題でございますので、一般論としてお答えを申し上げるしかないと思いますけれども、この法案に定めております傍受の立ち会いといいますのは、傍受の手続の公正を担保するための存在であることが求められている、またそれにとどまるということでございますので、立会人が立ち会ったために違法な傍受による損害が発生したりあるいは増加するというふうに評価されるということは想定できないと思っておりまして、したがいまして、今お尋ねのような責任を負うことは考えられないと私どもとしては考えております。
  79. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 立会人というのは、傍受の実施手続の適正を担保するために立ち会うものでございます。通信傍受を実施する主体はあくまでも捜査機関でありますから、その通信傍受に違法がある場合に民事上の責任が発生するといたしましても、その責めを負うのは捜査機関である、立会人が民事上の責任を負うことはない、このように考えております。
  80. 内藤正光

    内藤正光君 では、念を押させていただきますが、通信事業者並びにその社員が立会人として立ち会った場合、私が先ほど申し上げたように、結果として違法な捜査だった場合、それを指摘することができなくても、何ら民事上、刑事上あるいはまた行政上の責めを負うものではないと断言しているということですね。そういう理解でよろしいんですね。
  81. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 捜査官の違法行為を見逃したというようなことでその立会人が民事上の責任を負うことはあり得ません。
  82. 内藤正光

    内藤正光君 何かいろいろ条件をつけていらっしゃいますが、いかなる場合も民事、刑事、行政上の責任は負わないということですね。
  83. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 負いません。
  84. 内藤正光

    内藤正光君 ということは、あらゆる責めからも、責任からも免責をされるということですね。わかりました。じゃ、それはしっかり議事録に残されたものということで。  それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。  一応、責めは負わないとは言いつつも、民事、刑事、行政上の責任、一切から解放されているとは言いつつも、やはり裁判所に出廷をしなければならない場合も可能性としてはあるわけですね。  私は、一民間人に対する、通信事業者とはいえ余りにもいろいろ、例えば一日二十四時間、最大三十日間立ち会わなきゃいけないだとか、かなり重い負担なんだろうと思います。この一民間人に対して、捜査協力のためとはいえ、そういった重い負担を課すことに対して、まずどうお考えになられるのか、御所見をお伺いいたします。
  85. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 立会人の問題というのは、確かにその方に負担をかける問題であることは間違いございません。ただ、その負担が過度にならないような配慮というものはいろいろ考えられるところでございます。  例えば、立ち会いといいましても、非常に長時間傍受が続く場合には、連続して立ち会いいただくことについての精神的、肉体的な苦痛というのももちろんあると思います。それにつきましては立会人を複数にする、あるいは交代制にするというような形での負担の軽減というのも考えられるところでございます。  また、傍受する場所についての環境整備といいますか、そういった点につきましてもできる限りの配慮をすべきでしょうし、また捜査官との間で、例えば事前にある程度の話し合いをして、スポットモニタリングの具体的な方法にしてもよく御理解をいただいて、精神的に非常に負担感のない形で行ってもらうようにとか、それはそれでいろいろな配慮が必要だということは我々も承知しておりますので、この法案が成立して実施する段階では、そうしたことについても警察あるいはこれを実施する機関との間で十分に話し合いをして、また通信事業者等との話し合いの機会にもそうしたことを十分に御説明する、またお願いするということを考えております。
  86. 内藤正光

    内藤正光君 負担をそもそも小さくするためには、例えば二十四時間なんて言ってますが、二十四時間、それで三十日と言っていますが、それを最小化するという努力はしないんですか。
  87. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この法案の組み立て方そのものが、いろいろな要件のある中に、一つは電話傍受の補充性の問題があります。ほかの捜査手法を尽くして、これを最後にやらないとなかなか実態の解明ができないという意味で補充性でございますが、そうしたこともございますので、例えば漫然と十日間やるというようなことではありません。必要な期間を限る。  したがいまして、裁判官はその傍受令状の請求を見まして、いやこれは一週間やれば十分じゃないですかとか、あるいは二十四時間は必要ないんじゃないかと。例えば通常の勤務時間相当の午前十時から午後五時とかということで令状に条件をつける場合もございます。そうした点についても司法的なチェックは働くということでございます。
  88. 内藤正光

    内藤正光君 裁判官がチェックするということでしたが、まず申請する段階で、例えば時間を二時間ないし三時間とか四時間、あるいはまた夜七時以降とかいうように時間を最小化する努力はされないんですか。
  89. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) もうそれは当然の前提として厳密に考えてそういう努力をするということでございます。  これまでの御審議の中でも申し上げてきましたが、令状を請求する前にはかなり膨大な基礎的な捜査がございます。その中で、当該通信特定された通信が何時ごろに行われるのか、あるいは何日ごろに行われるのかというようなことももし特定できるのでありますと、それを特定して請求するということでございまして、それ以外に必要ない期間まで含めて長期間をお願いするというようなことは捜査手法としては考えておりません。
  90. 内藤正光

    内藤正光君 では、次のテーマに移りまして、立会人そのものについてお伺いしたいと思います。  なぜ通信事業者が立会人とならなければならないのか、第一義的に。平成九年四月十日の第六十九回の法制審議会においてもこんなような話があったかと思います。立会人に犯罪とは無関係な会話を切断する権限を認める必要がある、そのためには立会人が常時立ち会う必要があるが、通信事業者が無理であれば、だれが立ち会えばよいのか検討する必要があるというような趣旨の発言がございました。つまり、立会人は必ずしも通信事業者と最初から決められていたわけではないわけですね。  ところが、この法案では、ほぼ最初から通信事業者イコール立会人というような印象を与えるんです。正当な理由がなければ断れない。はっきり言えば、実行上正当な理由なんてなかなか見当たらないわけですね。つまり、なぜ通信事業者イコール立会人となってしまったのか、この議論の経緯を簡単にかいつまんで教えていただけますでしょうか。
  91. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通信事業者というのは、基本的には顧客の通信を媒介する。そのためには当然憲法の要請であります通信の秘密等も守るべき業務上の義務がございます。そのほかに、通信事業者というのはいろいろな機材を運用しているわけでございます。したがって、通信傍受を行う場合に、そうした事業者の立場というものがまず一つ前提として考えられなきゃいかぬと思います。つまり、一般の人に比べますと、この通信についての関与が業務上、またそういう機材という装置上からいいましても非常に深いことはおわかりいただけるかと思います。  したがって、立会人にまずだれが適当かというふうに考えた場合に、まず第一には通信事業者等であるということは自然の思考の経路でございます。ただ、先ほども触れましたが、例えばメールの場合に、小さなプロバイダーでありますと、じゃその事業者にずっとお願いすることの負担というものはまた一方で起きてきます。かなり長期間にわたる場合には、その業務が停止してしまう、あるいはその事業に重大な影響を与えるということがございますと、通信事業者だけにお願いするというのはなかなか酷な場合もございます。そうした場合でありますと、通信事業者以外の人も想定しなければいけません。  過去の検証令状の場合でも、基本的には通信事業者にお願いしたんですが、法律に明文の立ち会いの規定がないことをもって拒否されたというようなことで、次善の策として消防署職員等にお願いしたということがございました。  今回の場合も、そういう事実上の負担が過重になるというようなことが想定されます場合には、事前の話し合いの中で、通信事業者に立ち会いの御負担をいただく時間帯とかあるいは日とか、そういうものをかなり限定して、そのほかはそのほかの立会人を用意していただく、あるいは用意するというようなことで全体としての傍受計画を立てるということになろうかと思います。
  92. 内藤正光

    内藤正光君 私は、設備を保守する者としてそこの通信事業者の社員がその場にいなきゃいけないということは理解はします。しかし、それは名前がいけないんじゃないですか。立会人というよりも、あくまで技術協力者ですよね。立会人というと、どことなく何か法的責任を帯びているようなイメージを受けますが、技術協力者ですよね、あくまで。  だから、本来だったらば技術協力者として通信事業者にその場にいてもらっていろいろお手伝いをしてもらう、そのほかに例えば裁判所の職員なりなんなり本当の意味の立会人を置く。これで初めてこの通信傍受法案というのはそこの部分だけでも私はちゃんと機能するんじゃないかと思いますよ。  そこで、ちょっと質問させていただきます。  先ほど局長おっしゃいましたが、過去五件、合法的に行われた通信傍受捜査がございますが、それらについてちょっと明らかにしていただきたいんですが、特にこのポイントについて、だれが立会人になったのか、このとき通信事業者が立会人になったのかどうか、もしそうでなければ通信事業者はいたのか、またどういう役割でその場にいたのか、これが一点でございます。そして、切断権は認められていたのかどうか、実際に立会人による切断権は行使されたのかどうか、この点を含めて五件の例をかいつまんで教えていただけますでしょうか。
  93. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、五件の例でございますが、いずれも覚せい剤取締法違反でございます。  立会人でございますが、いずれの場合もNTTの職員に立ち会いをお願いしたというような経緯があったようでございますが、先ほど申し上げましたような理由で立ち会いを断られました。ということで、立会人は、五件のうち四件が消防署の職員にお願いしております。他の一件は県の薬務課の職員でございます。  それから、立会人による傍受の切断権の有無ということでございますが、三例について切断権を令状の条件にしたということでございます。他の二件はないということでございました。  以上でよろしゅうございますか。
  94. 内藤正光

    内藤正光君 切断されたんですね、実際に立会人が。
  95. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 済みません。ちょっと訂正がございます。  かなり大きな間違いでございました。切断権は五件とも令状に条件として入ったそうでございます。それで、三件と申し上げましたのは、現実に切断をした件は三件ということでございます。立会人が切断をしたという件がそのうちの三件ということでございます。
  96. 内藤正光

    内藤正光君 この五件の例は、いずれともそういった傍受というプロセスがうまくいったかと思うんですが、こういった五件の事例にかかわらず、そういった形態をとったわけですね。通信事業者はあくまで技術協力者としてその場に居合わせた、そして立会人はまた別途置いた。そして通信内容も、それはちょっとお答えにならなかったようですが、立会人は通信内容は聞いたんですか、どうだったんですか。
  97. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、五件のうち四件につきまして、スピーカーで通話内容を拡声させまして、つまりそこの傍受している箇所にいる人は聞けるわけであります。もう一件は、電話傍受装置通話内容を立会人も聴取するようにしてあったということですから、それは内容も聞いたということになります。
  98. 内藤正光

    内藤正光君 過去五件の通信傍受の事例はそのような形態をとったわけですね。にもかかわらず、今回の法案は全く違う形態をとっているわけです。  一つは、通話内容を聞いて切断権を行使できる立会人を設けなかったこと、もう一つは、本来技術協力者にとどめるべき通信事業者を形ばかりの立会人としてそれでよしとしてしまったこと。  何かこの五件の例は不都合があったんですか。不都合があったから今回の法案では全く違う形をとったんですか。納得のできる明快な答えをお願いします。
  99. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 立会人に何をお願いするのかということについては、これまで何回か御説明をしてきたわけでございます。  委員御主張のように、立会人にこの検証令状の場合と同じような切断権を与えるべきだという意見もこの検討の過程では当然あったわけでございますけれども、これまで申し上げているとおり、立会人に切断権を与えるということは、逆に言いますと、立会人が的確に当該犯罪に関連する通信かどうかの判断をするための基礎的な情報を持っている、つまり捜査官と同レベルといいますか、そういう的確に判断するための情報を持っているということが前提になります。  一つは、そういう立会人に捜査官の詳細な情報も含めてすべてこれを話すことが適当かどうかという問題がまずございます。それから、何といいましても、例えばNTTの職員は通信事業については専門家でございますが、捜査については素人でございます。仮に同じ情報を量的には与えたといたしましても、捜査としての的確な判断というものは捜査官に及ぶべくもないということは容易におわかりいただけるかと思います。  つまり、切断するか否かの判断を立会人にお願いするというのは、逆に言うと、立会人にかなりの負担をかけるということになります。それから、裁判所が立会人に傍受して切断をするということを認めた背景は、やはり通信の秘密の保護という憲法上の要請と犯罪捜査の必要という調和点をどこにとるかいろいろ考えた上に、その中の条件として、立会人に内容を聞かせて切断権を与えるということでその担保の一つにしようという判断があったのだと思いますが、本法案はもちろん通信の秘密とのバランスからいろいろな適正手続の規定を置いております。  例えば、原記録を丸ごと封印して裁判官が保管して、それを不服等の申し立てがあった場合には検証できるようにするという制度だとか、あるいはスポットモニタリングというような最小化のためのシステムというものを要求しているとか、そのほかのそういった適正化のためのいろいろな装置をこの法律は組み込んでおります。  そういったことを総合的にお考えいただければ、立ち会いについて今申し上げたようなマイナス点を考慮いたしますと、立会人には単に技術的な問題だけじゃなくて、立会人には原記録を封印してサインをするという非常に重要な役割も担っていただきますし、また修正で、意見を言った者は傍受記録に、傍受の実施の裁判所に対する報告に全部盛り込みましてそれを記載するとか、そういった形での立会人の役割はございます。  もちろん技術的にも、例えばNTTの職員でありますと、適切な端末装置が接続されたかどうかという問題とか、あるいは事前に十分に説明をした上で立ち会っていただくわけでございますが、スポットモニタリングという一つの手法について、説明したとおりの手法でやっているのかどうかということについてももちろん外形的にはわかるわけでございますので、その点のチェックだとか、あるいは先ほどテープを入れかえてしまうなんということがあったわけでございますが、やはり常時立ち会う中ではそうしたことがないようにということももちろん心の隅には立会人は置いているわけでございまして、そういった意味での違法行為のチェックということも重要な職務としてあるわけでございます。  そういった程度にとどめまして、内容についてはこれを聞かせるということはとらなかった、したがって、切断権についてもこれを規定していないということでございます。
  100. 内藤正光

    内藤正光君 誤解をしないように念のために言っておきますが、私は何も通信事業者に話を聞かせろと言っているわけじゃないんです。通信事業者はあくまで技術協力者として置いておいて、そのほかやはりチェックをする立会人を置いて、その人にちゃんと話を聞いてもらって切断権を行使してもらう。つまり、過去五件と同じような形をとればいいんじゃないかと言っているんです。  それで、立会人が切断権を行使するには、その事件それぞれについていろいろ精通していなきゃいけないとおっしゃいましたが、この過去五件の例に立ち会った四人の消防士と一人の県職員はそんなに事件に精通していたんでしょうか。  私が聞くところによれば、事前にちょっとした話を聞いたと、こういうときに切断してくださいよというような話を聞いてそれで立ち会いに臨んだという話を聞いているんです。ましてや、この五件も事件内容は麻薬だったということですが、この法案に定められた四件の対象犯罪も麻薬だとか犯罪だとか、そういった明確にわかるような事件なんですよね。どうなんでしょうか。
  101. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今の先生最後におっしゃいましたけれども、この五件とも非常に事例は共通しておりまして、覚せい剤事犯のいわば末端における密売事案でございます。事案の内容としては、比較的単純だという事案がたまたまこの五件とも共通しているわけでございます。ですから、そういうような説明をするについても、例えば膨大な資料をごらんいただいてというようなことまでは必ずしも必要がなかったように思います。  したがって、切断をするかしないかということについて判断する問題については、今この法案が想定しているような複雑な事案あるいは組織の中枢に迫るような場合の電話傍受というのに比べますと、非常に情報量としては少なくて済むというのがまず前提にございます。  それから、実際にこれは五つの事例で切断した件が三件あるわけでございますが、確かに捜査員に対して、これは切断しますよと言って切断したケースが基本だろうと思います。ただ、そのほかに、捜査員の方からこれは関係ない会話ですから切っていいですよというふうなことで、捜査員の方から切断をお願いしたケースも中にはあるようでございます。  実際問題として、そういう単純なケースとはいいながらも、立会人にやはり関係するかしないかというのを瞬時に判断していくだけの負担をかけるというのは、今最後に申し上げた例からいいましても、必ずしも適当でないという一つの証左でもあるのかなと私は思っております。
  102. 内藤正光

    内藤正光君 じゃ、ちょっと意地の悪いことを言いますと、先ほど局長、通信事業者並びに立会人たるその社員は、捜査協力するに当たって一切の責任から免れるというか、行政、民事、刑事とおっしゃいましたね、いいですね。そうなりますと、たとえ通信事業者を立会人という形で置いても、はっきり言って何の抑止効果もないんですね。どういう意味があるか。いろいろ技術協力をするだとかいろいろお手伝いするというのはあるんですが、この捜査の乱用を防止するという観点に立って考えた場合、この立会人制度というのはどれほどの意味があるんでしょうか。
  103. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) お尋ねは、刑事手続全般に言えることだろうと思いますが、捜索の場合でも被疑者以外の方に立ち会いをお願いすることがございます。  それでは立ち会いは全く無意味かというと、そういうことはございません。その場合でも、やはり捜査機関の違法行為に立会人が責任を負うことはまず考えられないわけですが、今の御質問でございますと、結局、例えば通信事業者でありますと、顧客の通信の秘密を守らなきゃいかぬという意味が一方にございます。その制約としての通信傍受というものを令状執行を受けてその実施に立ち会っているということでございますので、通常のそういう事業者の職員でございますと、やはりそういういわば職業人としての自覚はもちろん期待されているわけでございます。  そのほかに、一般の市民として犯罪の解明には協力する、市民としての立場からの義務がございます。そういったものについては、それは罰則あろうがなかろうが、やはり根底として法制度全般にはそういったことも前提としておりますので、それを全く否定するような組み立て方というのはあり得ないだろうと私は思っております。
  104. 内藤正光

    内藤正光君 時間の関係もありますので、最後のテーマになりますが、通信傍受捜査の乱用防止策について何点か質問させていただきたいと思います。  やはりそのうちの一つが国会報告ではないだろうかと思います。ところが、この法案で定められている国会報告は、ざっくりとまとめて報告するということなんですね。私は、先ほどから何回も申し上げましたように、この法案で定められている立会人制度が必ずしも適正手続の担保にはなっていない、つまり傍受乱用の懸念は払拭でき得ないわけなんです。  私は、ここの二十九条でしたか、国会報告において、例えば傍受すべき内容がなかった場合、そういった事例も含めて詳細な個々の通信傍受の事例を国会報告すべきではないかと思います。つまり、捜査に支障を生じるおそれがない限り、これはいたし方ないにしても、個々の事例ごとに対象となった罪名だとか傍受の実施期間や実施方法、あるいはそれに要した費用、つまりその通信傍受が本当に適正に行われたかどうかを個々に判断するに足る具体的な事実関係を私は国会に報告するべきだと考えますが、これは法務大臣、御所見をお伺いします。
  105. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 本法律案の第二十九条、これでは通信傍受制度のあり方についての検討資料とするため、政府において毎年その運用状況について国会に報告するということにしておるわけでございます。  報告する事項につきましては、傍受令状の請求及び発付の件数、罪名、傍受対象とした通信手段の種類、傍受の実施期間、傍受実施期間中の通話回数等でありますが、その具体的な内容につきましては、国会での御論議も踏まえまして、制度の運用状況について十分御理解いただけるようにしていく必要があると、このように考えております。
  106. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) けさも実は大臣とこの点についての協議をいたしました。基本的に大臣が今御答弁いただいたとおりでございますが、これまでの国会での審議あるいは参考人の御意見等を拝聴いたしますと、今御指摘のような点について大変いろいろな形の考え方がある、それから通信傍受については、前提が必ずしも理解されていないとはいいながらも国民の間にかなり広い範囲で不安感がある、報道機関等も含めてでございますが、そうした制度としての不安感あるいは運用についての不安感、あるいは乱用にわたる場合の被害の大きさ等についての不安感、さまざまなレベルの不安があることも国会における論議等を通じまして我々も十分に承知したことでございます。  今委員が御指摘の、例えば傍受令状を請求して傍受したけれども該当のものがなかったということにつきましては、この法案が成立し、それが施行され、ある程度の期間といいますか、国民の間にその運用をよく見きわめていただいて、その間に当然国会での御論議がまた継続してあると思いますが、そうした中で、安心していただくというのは言い方はおかしいんですが、そういったためにも今先生の御指摘の点については相当な配慮をする必要があると思いますし、国会における報告の中でもそうした配慮は十分に生かしていきたいと思っております。
  107. 内藤正光

    内藤正光君 じゃ、その方向でどうぞよろしくお願いいたします。  二つ目の乱用防止策、これはやはり私は違法収集証拠の排除の徹底だろうと思います。だれが立会人になるにせよ、外部からの監視も必要なんでしょうが、やはり現場の捜査官みずからの自律的な歯どめも必要ではないだろうかと思います。やっぱりそれは違法収集証拠の排除、つまり違法して集めた証拠は証拠能力を失う、これは徹底しなきゃいけないんだろうと思います。  まず局長、それに対する認識を、簡単で結構ですのでお答えください。
  108. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 従来の判例等で集積されております違法収集証拠の排除の考え方というのは、この電話傍受通信傍受のことにつきましても厳正に適用されるべきものと我々は考えております。
  109. 内藤正光

    内藤正光君 では、次に内閣法制局にお伺いしたいんですが、これは一般論でなんですが、違法に収集された証拠の証拠能力をめぐっては、これまで繰り返し裁判で争われてきたわけでございます。これは、そもそも憲法にも刑事訴訟法にも明文で定めた一般的なルールがないこと、これに起因するんだろうと思います。  この通信傍受法案にも二十六条ですか、それらしきものは盛り込まれているんですが、本来やっぱりこういう一般原則というのは刑事訴訟法を改正して、きちっと違法収集証拠の徹底排除とかいうのをうたうべきだと思うんですが、見解をお聞かせいただけますでしょうか。
  110. 宮崎礼壹

    政府委員(宮崎礼壹君) 御指摘のいわゆる違法収集証拠排除法則と申しますのは、御案内のとおり昭和五十三年九月七日に最高裁判所によって示された証拠法則だと承知しておりまして、簡単に申し上げれば、証拠物の証拠能力について、押収等の手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があるというような場合には、その証拠能力が否定されるべきであるという考え方であります。  御案内のとおり、それまでは必ずしも、供述証拠と違いまして、証拠物というのは客観性があるから証拠能力というのは広く認めるべきではないかという考え方がむしろ支配していたというふうに教わっておりますけれども、この判例を契機にそこのところが非常に厳しくルールが変わったというふうに受けとめられているというふうに承知しております。  ところで、その問題、そのルールを明文化、例えば刑事訴訟法の証拠法則を定めました三百二十一条以下の条文のところで明文化するかどうかという問題は、必ずしも通信傍受の関係で得られた証拠に限らない広範な問題だろうと思いまして、そこのところをどうするかというのはまた大変な、刑事訴訟法の改正をするかしないかどうするかという問題になりますので、現在、この場で当面している問題とはまた違うのであろうと思います。  他方、今回の法案の二十六条で書こうとしておりますのは、通信傍受によって権利を侵害されたと感じた被害者が、その被告人が起訴されたとかされないとかいうことにかかわらず、自分の権利の回復を主張して裁判所に不服申し立てをしたときに裁判官がこれを救済する趣旨の制度であります。  刑事訴訟法では、四百二十九条、四百三十条のところで、一般的な押収された証拠物等についての違法をめぐる不服申し立てに対する準抗告の制度がございますが、これは押収とか押収物の還付に関する処分というふうになってしまっておりますので、今回の通信傍受の結果得られるものというのは物そのものではありませんので、四百三十条による救済というのは直接は図れないんだろうということから、この法案の中でその四百三十条の準抗告に相当する規定ということで必要であろうと、こういうふうに考えられて設けられたものと承知しております。  したがいまして、この問題はこの限りで等身大にこの法律に盛り込むべきものであろうというふうに考えております。
  111. 内藤正光

    内藤正光君 ありがとうございます。  では、法務省にお伺いしますが、先ほども申し上げましたように、二十六条の三項ですか、それらしきものがあると、違法収集証拠の消去ですね。ところが、ただし書きがあるんです。何か難しいことが書いてありますが、要は、この通信傍受捜査においても、違法収集証拠というのは完全に排除はしていないんですね。私は、事通信傍受捜査においてはこれを徹底させないことには、現場の捜査官がこれぐらいはいいだろうという、そういう誘惑に駆られちゃうと思うんですよね。やはり自律的な歯どめ策として、私は、事通信傍受法案に関しては徹底して違法収集証拠の排除原則を明らかにすべきだろうと思います。  なぜこんな難しい言葉を連ねて完全には排除しなかったのか、ちょっと姿勢をお聞かせいただきたいんですが。
  112. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この規定の趣旨そのものは先ほど法制局の方から説明があったとおりでございまして、この二十六条三項の規定で仮にただし書きが適用になりまして消去しない場合でございましても、裁判で確立しております違法収集証拠の排除の法則は、例えばこれが公判廷で出された段階でそれを働かなくさせているというような、要するにパラレルになっているわけではございません。仮に排除しなくても、公判で違法収集証拠の議論でもって証拠能力を否定されるということも当然考えられるわけでございます。
  113. 内藤正光

    内藤正光君 いろいろ議論を深めていきたいんですが、時間もございません。最後の一つ、通知制度について、三つ目の乱用防止策、通知制度についてお尋ねしたいと思います。  通信の当事者に対する通知制度については、該当性判断のための傍受を行ったにとどまる通信当事者に対しても通知を行うべしという議論があります。これは、基本的な人権であります通信の秘密を保障するということ、この重要性を踏まえたものであろうかと私は認識しております。  そこで、お伺いしたいんですが、この通知制度について、仮にこの法案が通過をしてしまった、そういう前提に立ってお話をするわけです、通過をしてしまっても、運用状況を見きわめた上で、最初の国会報告と同時に御省におきまして適切な改正案を私は出すべきだというふうに考えておりますが、大臣、御認識をお聞かせいただけますでしょうか。
  114. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 該当性判断のためだけで傍受した当事者についての通知の問題は、確かにそれでも通知すべきだというような議論もございますが、やはりこれは通知をすることのプラス面あるいはマイナス面、そういったものの総合的なバランスの問題ということでこれまでお答えしてまいりました。  基本的に、そういった考え方が実施の中で変更すべきような状況というのはなかなか想定されないわけでございますが、いずれにしましても、この法案の実施後、大変重要な法律でございますので、この運用状況については、先ほど申し上げたように、かなり予定よりも詳細に国会に報告するつもりでおります。その中で、今の点につきましてもいろいろ御論議をいただきながら、我々としてもその御論議をよく拝聴して考えていきたいと思っております。
  115. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 民主党・新緑風会の小川敏夫でございます。  ただいまの内藤委員の質問の中で大変に重要な問題が明らかになりました。すなわち、携帯電話に関して今の技術水準では実質上傍受は不可能という状態でございます。  これにつきまして、早急に通信業者に協力を求めてできるようにしたいということでしたが、しかし通信業者の協力義務は任意である、すなわち通信業者が応じなければただそれまでの話であって、実際上通信傍受ができないということになります。そして、携帯電話通信傍受を行うことが今のこの法案が考えている組織犯罪の取り締まり対処に対して最も有効な手段であるということも伺いました。  非常に重要な問題なので法務大臣に見解をお伺いしたいんですが、憲法で保障されている通信の秘密というものを制約して犯罪捜査通信傍受を行う。しかし、その最大の要点である携帯電話について実効性がない、その実効性は民間企業の自由意思にかかわるこれからの技術開発にゆだねてしまう。このような状態でこういう法律を成立させるということは非常な問題点を抱えている。その点をもう一度考えて法案をつくり直して出し直すべきだというふうに私は思うんですが、法務大臣はこの重大な問題に関してどのようにお考えでしょうか。
  116. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) これまでの論議でも明らかになっておりますように、技術的には解決が可能である。この問題につきましては、今後一年間の施行までの間に十分通信事業者等との話し合いも含めて早急に確立していきたい、このように考えております。
  117. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、一年以内に技術的に可能といっても、それは通信業者が任意に協力した場合のことであって、通信業者が任意に協力しなければ全く可能にならないわけですよ。  ですから、この法律の実効性は、通信業者という民間会社の任意の意思にかかわっているということ、そういう法律で憲法が保障した基本的人権を侵害するということは、これはもう許しがたい問題が内在していると思うんですが、今の法務大臣の答弁ではちょっと私の質問に答えていないように思うんです。刑事局長でもいいですから、お答えください。
  118. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) どうも先ほどからお伺いしておりますと、NTTが任意に例えば協力しないという前提お話が進んでいるように思いますが、先ほどから申し上げましたとおり、協力も過度の負担を課するような協力を我々は要求しているわけではございません。  通信事業として通信の秘密を守るという、一方で重大な責務がございますが、他方で犯罪捜査にある程度通信手段の業務を運用しているという公的な立場からくるいろいろな協力もまた考えられているわけでございまして、その中で合理的に御判断いただける範囲内の協力をいただければ我々としては十分だということでございます。技術開発につきましてもそのレベルの話として考えておって、技術的にはそれほど難しい話ではないと承知しておりますので、解決しているものと思っております。
  119. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 まず、NTT等の通信業者が協力しないという前提に立っている質問だというふうに私のことを言っておりますが、逆に聞きますと、では通信事業者すべての者が必ず協力する、こういう絶対的な保証があるんですか。
  120. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それはございません。ただ、あくまでも十分な協議をすれば御理解いただけると思っているわけでございます。
  121. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 それから、この通信事業分野も規制緩和で民営化されておりますから、新規参入業者もあるわけです。そういったことも考えれば、これはやはり業界のすべての業者が傍受できるように協力してくれればいいけれども、新規参入事業者も含めて一社でもそういう対応をしなければ、今度はその業者の携帯は犯罪捜査のための傍受がされないんだということで、みんなその業者の携帯を使いますよ。  そういう方法が今言ったように完全に保証されていない。全く業者の任意の協力によっているということ、この法案の実効性がそんな不確定なことに頼っていて、憲法の人権を侵害するということ、これは到底許されないと私は思う。大変に重要な問題が先ほど内藤委員の質問で明らかになったと思うんですが、法務大臣、いかがですか、そこのところの見解は。簡単に答えてください、局長なら。
  122. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生の御議論の任意とおっしゃいますけれども、基本は、これは通信傍受は強制を伴う令状による執行になっているわけです。ですから、十一条に事業者等の協力義務、これをうたっているわけでございますが、それ以上の協力については確かに任意だということは言えますが、基本的には、これは捜査の必要性ということからくる通信傍受令状をもってする強制執行だということでございます。したがいまして、捜索、差し押さえ等の場合と同じようにそれに従うということもまた当然に予定されているわけでございます。  ただ、あくまで私が任意だと申し上げているのは、それを踏み越えるような協力については、これは任意ですよと言っているだけでございます。
  123. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 もうこの問題は結論が出ているので余り時間を費やしたくないんですが、例えば法務省と郵政省と取り交わした覚書でも、通信事業者施設を整備する、そこまでの協力義務がないという覚書を取り交わしておりますね。イエスかノーだけで結構です。
  124. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今、手元にちょっとその覚書がすぐ出てこないわけでございますが、そういう予定されていない負担については強制することはないというような内容にはなっています。
  125. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 もう一点だけ確認しますが、この法案の十一条の協力義務は、あくまでも令状の執行に関しての協力義務でありますね。それを別にして、通信事業者の設備に関して何らかの設備投資をしろという協力義務は意味しておりませんね。
  126. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) お尋ねのような趣旨でありますと、そのとおりということでございます。
  127. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 では、ほかの問題に移ります。  PTTの問題が、私時間があれば聞こうという補欠で考えていたのですが、先ほどその問題が出ましたので、その点に関して質問させていただきます。  先ほどの自民党の先生ですと、技術的な問題と法律的な問題が混同されているという指摘がありまして、その指摘自身は大変に正しい指摘だと思うんですが、実はそう指摘して言われている方が混同されているというので、ますます議論が、わかっている人にはわかるのだけれども普通の人にはわかりにくい状態になっているということで指摘いたします。  このPTTですが、法律的な意味で言いますと、要するにPTTをすれば当該の回線通話中であれば傍受できるわけですね。局長、どうですか。
  128. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、アナログの場合とデジタルの場合とがございますが、どちらの場合でございましょうか。
  129. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 アナログです。
  130. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) アナログでございますと、先ほど世耕委員の分類にありましたが、PTTによりますと、成立している通話へ割り込んでモニターすることはできるということです。ただ、待ち受けた場合の発着信がこれはできないという仕分けになっています。
  131. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、正しい日本語としては、PTTであっても通信傍受はできる、ただ待ち受けができないので非常に有効な方法ではないと、こういう説明が正しい説明じゃないですか。ですから、できることはできるんじゃないですか。
  132. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、いろいろなあり得ない想定を三つも四つも置かないとそれはできないということですので、あり得ない想定を三つも四つもということは結論は不可能だと。
  133. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いやいや、PTTを接続した場合に通話中であれば傍受できるんだから、それは傍受できるわけですよ。ただ、待ち受けができないから犯罪捜査通信傍受を行うには不適切だと、こういうことだと思うんですが。  ただ、もう一つ論を進めまして、待ち受けができないのなら、じゃスポットモニタリングのように、一分置きに一秒ずつ通信に接続すればいいじゃないですか。つかんだときに通話中なら傍受できるわけですよ。つかんだときに通話中じゃなければ離せばいいだけで、また一分したらと、こうやれば、どこかの時点で通話があるときには傍受できるわけです。  それからもう一つ論を進めますと、携帯電話の場合には、将来開発される技術ができればできると言うんですよね。じゃPTTだって同じで、接続すれば通話中になってしまうというようなものでない技術を開発した新PTTを開発すれば、たちどころに解決できる問題ですね。これは技術的な問題ですけれども。
  134. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、世耕先生の資料の二をごらんいただくと、アナログの場合にPTTを使いますと、成立している通話へ割り込んでモニターすることはマルと。これはそのために開発した機材でございますので、NTTの職員がやるのであればマルなんです。しかし、それはNTTの方に、例えば傍受するのであれば、それに接続する番号を与えたり、あるいはいろいろパスワードが必要だったりIDが必要だったり、そういういろいろな前提を全部やった上でNTTの職員が運用する場合にはマルになるわけでございまして、それと直ちにそれが、じゃ捜査機関による通信傍受という話とは結びつかないわけでございます。
  135. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、だから、そこら辺を技術的な問題と法律的な問題と混同されている質問が先ほどなされたので私は正しているわけです。特に、朝日新聞のこの法案に対する批判見解が間違っていると。私は別に朝日新聞とは関係ありませんが、朝日新聞の批判は非常に正当な批判でありまして、それを間違っているかのように言う意見が何か堂々と発言をされているので私は指摘しているわけです。  それで、法律的な問題を聞きますと、PTTですと通信事業者施設の外で聞けるわけですね。私は、刑事局長にお尋ねするんですが、この法案の三条三項の文理解釈として、通信事業者施設の外部で傍受を行うことは許されているんですか、禁止されているんですか。
  136. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは先ほどから申し上げておりますが、通信事業者傍受をし得るような機材のある場所ということを想定しておりまして、そのほかの場所は想定しておりません。
  137. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、三条三項には、文理解釈してくださいよ、そういうことは書いていないじゃないですか。  もう一度お尋ねしますよ。この法案の三条三項の文理解釈で答えてください。今、局長が答えられたことは、この法案の三条三項のどこに書いてあるんですか。
  138. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ぎりぎりの言葉の文言だけ、三条三項ということでとらえますと限定されていないじゃないかということになりますが、この通信傍受自体がさまざまな制約をもとに実施が可能なことになっております。これは、この法案のいろいろな箇所に書いてあるわけでございまして、そうしたことを考えていただきますと、通信事業者等の看守する場所以外で行う通信傍受というのは、この三項に書いてあるケースを除いてはないということになります。
  139. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、それはこの三条三項の文理解釈からは出ない見解でございますね。  それで、何かPTTを使う場合にはNTTが積極的に協力しなくてはいけない。そこまでの協力する義務はない、パスワードの問題とかそういった議論がありましたが、この法案で言う通信事業者協力義務が課せられておりますね。協力義務内容が別に限定されていない、そこまでの協力をする必要はない、ミニマムも、要するに小さい方も大きい方も限度が書いていないので、その場その場の解釈で任せられているわけです。  先ほど、何か裁判官の令状が出ても通信事業者協力する義務がないというような御趣旨の発言があって、局長も認めておられたんですが、仮に裁判官がPTTによる傍受の必要を認めてそのような令状を発した場合にも、事業者は協力義務がない、拒んでもよろしいんですか。
  140. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 妙な議論だろうと思うんです。  私どもは、PTTによる傍受というものについて令状が出る可能性は皆無であるということを申し上げていますので、その前提で御議論いただくと、かえって国民は誤解をするだろうと思います。その範囲でお考えいただければおわかりかと思います。
  141. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私は、局長の答弁法律家として非常に国民をごまかす答弁だと思います。  PTTによる傍受が皆無と。つまり、先ほども言いましたように、この法律案通信事業者の外部から傍受することは禁止されていないわけです。裁判所がそういう方法も何らかの捜査の事情によって必要であると認めて令状を出せばできるんじゃないですか。裁判官が令状を出してはいけない、こういう条文にこの法案はなっているんですか。私はどこを読んでもそんな法案にはなっていないというふうに読めます。もしなっているんだったら、どこの条文でそれができないんですか。
  142. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、傍受場所として適切かどうかということがございます。それは適切な場所で行うようにということになっております。  それから、捜査機関TWSという装置警察電話番号登録を求めたり、あるいはその装置アクセスするためにIDパスワードの割り当てをするように要求する。つまり、傍受のためにはそうした手続が傍受令状の請求の際に必要になりますが、そんなようなことが許されることはないわけでございますので、それをもとに令状が出るということは全く前提を欠く議論でございますので、私はその限度でしかお答えいたしかねる、こういうふうに申し上げているわけでございます。  法文はどこだと言いましても、先ほど例えば適切な場所、あるいは当然この中で違法な捜査を前提にしたような手続等はございませんので、そうしたこともあわせ考えますと、先生の御議論になかなか立ち入ってお答えできないという事情もございますので、御理解いただきたい。
  143. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 この問題に余り時間を費やしてもしようがありません。  ただ、刑事局長が、恐らくPTTを使った通信傍受は実際にやらないだろう、裁判所令状を出さないだろうという意見ということなら意見として拝聴いたしますし、それならそれでいいですけれども、この法案が禁止しているかどうかという法律案の解釈においては、少なくとも禁止されていません。私はそのことを述べて、朝日新聞の記事が決して間違っていないということを指摘します。議論するならこの場じゃなくて、今度は当事者同士でもっと詰めた議論をしましょう。(発言する者あり)  委員長、何か質問者以外の方が耳元でいろいろ騒ぐんです。単発的なやじなら、多少こう──速記をとめてください、委員長、ちょっと時間のむだです。(発言する者あり)
  144. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) お静かに願います。
  145. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 委員長、まだしゃべっているじゃないですか。ちょっと速記をとめてください。
  146. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 質問を続けてください。
  147. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 傍受記録に関連してお尋ねしますが、前回、私が質問した際、刑事局長は、傍受令状の執行によって、それが局長のお言葉ですとヒットしない、したがって傍受記録が作成されないというケースは大変にまれなケースだと、こういうふうに答弁いたしました。  ただ、実際にアメリカのワイヤータップ・レポートなどを見ますと、裁判所で証拠として使われたものは二割であると。この法案も、後の刑事手続で使う、これは裁判所の証拠として使うということが主だと思うんですが、されたものについて傍受記録を作成する、証拠としない部分については傍受記録を作成しない。そうすると、アメリカのその例を見ますと、八割は証拠として使われない、すなわち傍受記録が作成されないケースだと思うんです。  そうすると、刑事局長が傍受記録が作成されないケースは極めてまれなケースだと言うのとアメリカの実例とは違うと思うんですが、そこら辺の御認識はいかがでしょうか。
  148. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 大変申しわけないんですけれども、委員前提が間違っておられます。  ワイヤータップ・レポートの、通話の中で二〇%前後が証拠として使われたというのは、全通話傍受した通話の中に対する比率でございます。その十数%あるいは二〇%という通話が多いのか少ないのかということにつきましては、例えば百万の通話があって二十万が使われたという計算になりますが、その百万の中には、アメリカでもスポットモニタリングをとっておりますので、ちょっと聞いた通話も全部入っているんです。それをまとめた上でその中の二割が証拠になったということは、我々捜査官の感覚からいいますと、大変効率のいい傍受をしているのではないかなというふうにむしろ思っております。  残りの八割が、この法案で言ういわばヒットしなかったといいますか、つまり傍受をしたけれども一件もひっかからなかった、傍受記録に載せるべき通話がなかったというふうに直結はしないんです。  アメリカの残りの八割の通話というのは、傍受している間に、一つの傍受通話が例えば千通話あります。機械的に言いますと、そのうちの例えば二〇%が裁判に使われる関連の通話でございまして、残りが関係ない、スポットモニタリングを含めた無関係の通話ということでございますので、八割が無関係じゃないかということは、今私が申し上げたような意味でとればそのとおりでございます。私がまれにしかそういう全くヒットしないケースがないと申し上げたのは、傍受令状傍受するとそれを一件ととらえて、例えば相当の件数を傍受した。そのうちの、例えばアメリカの例だと八割が全くヒットしないというケースになるじゃないかというふうに横に引き並べておっしゃられると、それは前提あるいは資料の引用の仕方がちょっと違っているなというふうに思います。
  149. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 確かに日本とアメリカで訴訟制度も違いますから、全くイコールとは言いません。しかし、そうはいっても、通話単位でも結構です、通話単位で八割が証拠とするようなものがなかったということですね。そうすると、趣旨が似たようなものなんだから、日本の場合でも通話単位で見ればやはり八割ぐらいが、余り変わらない数字が傍受記録を作成しない通話として出てくるのではないかと思うんですが、そういう意味ではいかがですか。
  150. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一つの令状傍受を実施した場合に、かなりの部分スポットモニタリングだけで終わる、つまり犯罪との関連性がない通話がかなりの部分出てくるだろうなということは、それはおっしゃるとおりだろうと思います。  そういう意味では、アメリカのワイヤータップ・レポートに言う八割、二割の大体の比率といいますか、それは日本で実施する場合にそのくらいになるのかどうかわかりませんが、あるいは想定されるような数字かもしれません。
  151. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 仮に、この法案が遠い将来に通って実施された場合にどうなるかという数字の予測を今ここで議論しても始まりません。  ただ、まれなケースか、私はまれなケースとは思っていないんですが、であっても、いずれにしても、通信傍受という強制処分を実行したけれども傍受記録が作成されないというケースがあるということは、これはお認めになるわけですね。
  152. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それはあり得ると思います。
  153. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私が思いますのは、憲法上、通信の秘密というものは保障されているわけです。ただ、犯罪の強制捜査ということによって通信の秘密の権利が侵害された。  それで、傍受記録が作成されないと、受けた強制処分に関して不服の申し立てが実際上できないんですよ、つまり強制処分を受けたことを知らないんだから。やはり憲法上、この強制処分を受けたことに対してそれを争う道が講じられていないということは、憲法上の刑事手続の精神に反すると私は思うんですが、刑事局長、そこら辺の見解はいかがでしょうか。
  154. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず第一に、そういうようなケースがまれだというのは維持させていただきたいなと私は思うんですが、非常に該当性が強いものについての傍受をやりますから、それがヒットしないということは恐らく考えられないんですが、理屈の上ではあり得る。ただ、その場合に、確かに原記録は裁判官の手元で保管されますが通知が行きませんので、不服申し立て等をする事実上の機会がないじゃないかという議論は、この立案の過程でもいろんな方からいただきましたし、そういう点についてのそれは検討事項であるということで検討いたしました。  ただ、いろいろ申し上げておりますが、例えばだれに通知をするのかとか、それはだれが通知するのかとか、そういったいろいろな問題がありまして、結果的には、まずケースとしては極めてまれにしか考えられないという前提ではございますが、そうしたケースについて、それを通知するという制度をとること自体のプラスマイナスがありますので、制度として置かなかったということでございます。  ただ、先ほど内藤委員からもいろいろお尋ねがありまして、またこの法案が国会に係属して以降のいろいろな議論の中で、今の御指摘の問題というのが非常にずっと問題として提起されてまいりました。  我々としてもその点は重く受けとめまして、先ほど国会報告の中で、例えば二十九条自体は文言としては記載してございませんが、そういう全然ヒットしなかったケースがどういうケースだったのか、それが何件ぐらいあったのか、事案としてはどんなケースなのか。ヒットしないという、場合によったら個別にプライバシーにわたるような事項を省きまして、会話は大体およそどんなものだったのかというようなことをある程度御報告の内容に盛り込めればなというようなことを今考えておりまして、それをごらんいただいて、またこの傍受の運用についての国会の御論議を待ちたいというふうに考えております。
  155. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ぜひ国会報告の際に、傍受記録が作成されないケースがどのくらいあったのか、私は決してまれなケースではないように思うんですが、明らかになるよう国会で報告していただきたいと思います。  修正案提出者の方にお尋ねするんですけれども、前回のやりとりの中で確認したいことなんですけれども、立会人が意見を述べます、その意見を述べた原記録が裁判所に送られます。ただ、その意見をされた原記録が裁判所に送られても、それだけでは裁判所は職権を発動して何らかのチェックに関する行動を監視するものではないと私は思っているんですが、修正案はどうもそうでないようなお話があったんですが、その点はいかがですか。その事実関係だけで結構です。
  156. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 今、委員が御指摘になりましたように、立会人が述べた意見は傍受の実施状況を記載した書面において裁判所に送付されるわけでありますが、これはあくまでこの傍受の実施状況を記録した書面を保管する裁判官のところに行くということでございますので、それをもって、直ちに裁判官が職権をもってその内容をチェックするというような構成にはなっておりません。  むしろ、この意見はその後、例えば不服申し立てがあった場合における裁判官の判断の材料、あるいは傍受期間の延長の可否の判断等、またあるいは公判段階におきます証拠排除の判断等の資料になり得るものだというふうには考えております。
  157. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 そうすると、今の御答弁から確認しますと、仮に延長もない、それから不服申し立てもない、後に裁判所の証拠としても使われないという場合に、しかし仮に捜査官による乱用があったという場合には、裁判官のチェックが実際上なされる機会がない、こういうことでよろしいんでしょうか。
  158. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) もちろん立会人は立ち会うときに、それは会話の内容に立ち入るわけではありませんけれども、外形的に公正が行われることを担保する目的で立ち会っているわけでございまして、その意味では立会人の重要な役割があるわけでありますが、今のお話にありましたように、もしそこで立会人が述べた意見が裁判所の方に記録とともに送付されたとしても、裁判官がそれをもって職権でその中身をチェックするというような構成にはなっていないのは、委員の御指摘のとおりでございます。
  159. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 何か同じことを二回答えられたように思うんですけれども、私はそれを踏まえて、さらに立会人の意見が延長の際の判断資料や不服申し立ての際の資料、刑事裁判となったときの証拠の能力に関する問題とか、そういったときに判断資料となるということだったわけです。  ですから、そういう判断資料になるような機会がなかった場合、仮に乱用があっても、裁判官がその乱用を傍受内容についてチェックする機会がないですねということを聞いているわけです。  それはあると言うんだったら、ある例を示していただきたいし、私はないと思うので、ないということをお認めになるんだったら、ないとお答えいただきたいんですが。
  160. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 修正案で述べられている意見というのは、立会人から述べられる意見は捜査官に対して述べられる意見でありまして、裁判所の方に送られるのはあくまでそれは保管という意味で送られるわけでありまして、今おっしゃったように、たとえその意見が裁判所の方に送付されてきたとしても、それをもってその保管を目的としている裁判官がいわゆる内容に立ち入る、あるいはチェックするというような構成にはなっていないのは、今お話しになったとおりでございます。
  161. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 そうすると、私の指摘は認めているわけですか、今の答弁は。  すなわち、もし乱用にわたる部分があった場合に、裁判官がそれをチェックするチャンスがないですねということをもう繰り返し尋ねているんですが、そのことについてはそれでよろしいわけですか。
  162. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 立会人が意見を述べてそれが裁判所の方に送られてきたからといって、直ちに裁判官が職権によって行動をとるものではないということは申し上げておるわけでございます。
  163. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ちょっと速記を中断していただきたいんですが、私は原記録を裁判所が職権で判断しないんだということについてはもう確認済みのことでして、そのことはもう答弁をいただいているわけです。それを踏まえて、では裁判所が乱用をチェックする機会があるのかないのかについて聞いているわけですが、その質問について全く答えないで同じことを四回答えているわけです、委員長
  164. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 答弁者は質疑者の意向をよく酌んで端的に答えてもらえますか。
  165. 達増拓也

    衆議院議員達増拓也君) 立会人の意見というのはその裁判所に対して行われるものではなく、その捜査員に対して行われるものなので、捜査員が乱用した場合には、その場で立会人が、やめろとか、それは令状どおりの傍受じゃないのじゃないかと言うこと、それが立会人の役目なのでありまして、そういう意味では、乱用防止は立会人がそこの時点でやっているということであります。
  166. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 全然私の質問に答えていないんです。  じゃ、聞き方を変えますが、修正案の提出者、全員というわけではないんですが、衆議院段階というか早い段階ではこの法案反対されて、その反対される理由の一つとして、立会人に切断権を認めるべきだという議論がございました。ただ、それに関してはこれまで理由を聞きましたから結構ですけれども、立会人に中身を聞かせなくても、切断権も与えなくてもということで修正案ができております。その理由はもう聞きましたから説明は結構です。  それで、前回、立会人にそうした一緒に聞くというようなこと、あるいは切断権を与えなくても事後的に裁判所のチェックがあるからそれで十分だと、こういう御答弁をいただいたわけです。ですから、私は、事後的に裁判所のチェックがこの乱用にわたった部分に関しては全くないというふうに思っているわけです。しかし、答弁者の方は、事後的に裁判所のチェックがなされる、こういう考えのようですので、また、それがなされるから立会人に一緒に聞かせなくていい、切断権を与えなくていい、さらに、常時立ち会いにしたとか、そういう修正を加えたことで乱用の防止も既に十分だと、こういう考えだと思うんです。  それで、長くなりますけれども、その意味を踏まえて端的にお答えいただきたいんですけれども、捜査官が仮に乱用に及ぶ傍受を行った、それについて事後的に裁判所がチェックするという方法はどういうものがあるんでしょうかということを私は聞いているわけです。  それで、先ほど、立会人の意見が期間延長の際の資料にされる、あるいは不服申し立ての際の資料にされる、それから裁判所の証拠として何らかの判断がされるときに使用されると、この三つの例を掲げました。確かに、その三つの例では裁判官のその場におけるチェックがあると思うんです。でも、この三つがない場合、つまり、延長がなかった場合で、なおかつ傍受記録が作成されない、そのことによって不服申し立てがない、証拠として争われることもない、このケースではもう裁判所のチェックがないんですねと私は聞いているわけです。ですから、そこをイエスかノーかで答えてください。
  167. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) それはございません。
  168. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、事後的な裁判所のチェックが乱用の防止についてはないとなりますと、立会人のその現場におけるチェック機能も外形的なチェックだけであって中身についてはないんだから、そうすると、この法律傍受の実行及び実行後に関して有効な乱用防止のチェック機能がないと私は思うんですが、その点はいかがですか。
  169. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) 委員の御質問は修正案の範囲を超える部分もたくさん含まれていることだというふうに思いますので、後で法務省の方からも追加で答弁をいただくことになるかと思いますが、私どもといたしましては、この法案にも乱用防止のための適正な手続が担保される規定が種々設けられておりますし、なお修正を加えたことによりましてその対象となる犯罪も非常に限定をされました。薬物あるいは銃器などの四類型の罪種に限定されたことや、また傍受令状の請求者、発付権者も限定を加えるなどしておりますし、その他種々の、原案に比べますとさらに細かくその辺の制約を加えているところでございまして、全体的に見れば、通信傍受の乱用を防止するということについては十分な規定が設けられているというふうに認識をしているところでございます。  また、そのほか、実際にもともとの原案の中にも相当厳しい手続等の規定も設けられているところでございますので、その辺は修正とは直接関係ないところでございますので、法務省の方から御答弁をさせていただきたいというふうに思います。
  170. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 時間がないので、ほかの質問に行きます。  刑事局長にお尋ねしますけれども、コンピューター通信といったような場合には、傍受を始めた瞬間にすべての情報が入手される、すなわち試し聞きの部分がないということで、それについて局長の御答弁は、その場でディスプレーするか、あるいは文書に打ち出して該当性判断をしてその該当部分だけを持ち帰ると、こういうふうに御答弁いただいているんですが、この法案は、ただ速やかに傍受記録作成の作業を行うと書いてあるだけでして、傍受のその場において直ちに刑事局長が言ったような作業を行えとは書いてないんです。そこら辺のところはいかがですか。
  171. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 十三条の二項をごらんいただきますと、今、委員指摘のメールの傍受の場合、これは十三条の二項で行くわけでありますが、まずその全部を傍受すると。「この場合においては、速やかに、傍受すべき通信に該当するかどうかの判断を行わなければならない。」とありますので、「速やかに」の理解として、解釈としてということでございますが、その場所でできるものは立ち上げて該当性の判断をする。できないものについては当然、例えば暗号その他でありますと、持ち帰ってやはりその仕組みを解読した上で内容を理解するということがどうしても必要でございますので、それはそれで傍受記録として持ち帰るという以外にはないんだろうというふうにお答えしている次第でございます。
  172. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 一般電話傍受の際には、現場でテープを二本回して、一本を原記録として裁判所に送る、もう一本を署に持ち帰ってそこで傍受記録の作成作業をするんだと、こういうふうにこれまで聞いておったわけです。ですから、持ち帰るというふうに聞いておったわけです。  この「速やかに」という法律の解釈で、片方の場合には署に持ち帰ることを許して、どうしてコンピューター通信の場合にだけ署に持ち帰ることが許されない、直ちにその場でやらなきゃいけないと、こう都合よくといいますか、解釈が分かれてしまうんですか。
  173. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今回の法案には、通信技術的な側面がさまざまでございますので、それに着目した規定の仕方をしております。メールの場合はPOPサーバーのところで傍受をするということになりますが、通常の場合は、その場で機材を使いましてその内容の該当性の判断はできるわけでございますので、この「速やかに」の判断の中に、そういう場合にもかかわらずなおかつ持って帰るということは、この「速やかに」の解釈には違反しているということになります。
  174. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 であるなら、一般の電話の場合でも同じだと思うんです。ですから、コンピューターの問題が出てきてから、何かその問題に対処するために都合よく解釈を持ってきたようにも思うんです。私は、この「速やかに」という用語で、刑事局長が言っているように、直ちにその場でやらなければいけないという意味は出てこないと思います。刑事局長が言われるようだったら、この法案は、直ちにその場においてやりなさいと、こういうふうに書いていなくちゃいけないわけです、「速やかに」というのは法律用語としてももっと広い概念ですから。  逆の聞き方をします。コンピューター通信の場合に、直ちにその場において傍受記録の作成作業をやらなかった場合には、これはその捜査官のやり方は違法なんですか。
  175. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 「速やかに」の一般的な解釈あるいはその言葉の持っている意味は、まさに委員指摘のとおりだと思います。  ただ、私が申し上げたのは、POPサーバーのところで特定のアドレスのところへ来たものを瞬時に傍受してそれを立ち上げることができるのに、それを漫然と持ち帰るということはこの法律に違反しています。
  176. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 刑事局長の御答弁は非常に中身としては前向きでいいと思うんですけれども、ただ法案の解釈としては、どこにも書いてないんです、そういうふうには。だから私は、今、法案の審議をしているんですから、刑事局長のその気持ちはわかるけれども、法案の審議に対する答弁としては私は国民に対して誤解を与えるものだと思います。この法案は、直ちにその場において傍受記録の作成作業をやれとは書いてないし、「速やかに」という意味は、それを近くの自分の署に持ち帰ってそこで直ちにやったってこれは許される範囲だと思うんです。  じゃ、近くの署に持ち帰ることがすべからく禁止されているんですか、その暗号化という特殊な問題を除いて。
  177. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 大前提としまして、今回の法案通信傍受は、それに適した場所で、しかもこの法案で予定している立会人を置いた上での適正手続をするようにということになっております。  したがいまして、POPサーバーで傍受した、しかもそれは、その場所における機材を使って画面に立ち上げて該当性判断が容易にできる。立会人もそれを見ながら、立会人のいるところで、多くの場合が通信事業者等のその場所になると思うんですが、それができるにもかかわらず、立会人のいないところ、つまり、場合によりましたら捜査機関施設まで持ち帰ってその該当性判断をした上で消去したり残したりするという作業は、この法律には違反しているということでございます。
  178. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 違反しているとはっきり断定されたということはぜひ記録に残してもらいたいんですが、私は、法案の解釈からはどこにもそういう厳格な要件は規定されていないと。ですから、本来はそうしなくちゃいけないことをこの法案は規定していないから欠陥法案だと私は思っているんです。  時間がどんどん行ってしまうのですが、このコンピューター通信に関して先ほど世耕委員の質問で非常に有意義な点がございました。すなわち、転送する、これによって傍受できるということでございました。そうすると、その転送を受けるコンピューターが通信事業者施設でなくて外部にあったって、それはこの法律上は禁止されていないですね。  いいですか、刑事局長の、そういうことは好ましくないとか好ましいとか、そういう意見ではなくて、私はこの法律の解釈で聞いているんです。三条三項を読んでも私は禁止されていないと思うんです。この法律の解釈として、転送するコンピューターが通信事業者施設の外にあることもこの法律の解釈の範囲では可能ですね。
  179. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 転送という技術がありますから、これをどこへ転送するのも技術的には可能です。  ただ、先ほどから申し上げていますように、この法律は、傍受をするのに最も適した場所で、なおかつ立会人を正当に置いて適正手続に従って傍受するということでございますので、無限定にそれを転送しているということはこの法律は予定していないということでございます。
  180. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 私も無限定にとは言っていません。でも、法律が禁止していないんだから、そういう合理的な必要性があれば、そして裁判所がそれを令状に書けばよろしいんじゃないですか。例えば、非常に零細な通信事業者の場合にはコンピューターを置くスペースすらない。立会人がいるような、捜査官がいるようなスペースがなければそういうことだって考えられるわけですよ。  それに関連して、先ほど世耕委員の発言で大変に貴重な御意見を賜りまして、何か世耕委員は抜け穴を幾つも御存じだと。ただ、ここでしゃべると犯人にそういう手口を教えてしまうことになるので具体的なことは言わないということですが、一国会議員が抜け穴がもう幾つもあると言うのであれば、通信に関するプロの方は、やはりこの通信の分野に関しては相当いろんな分野を知っておられるでしょうから、抜け穴は幾つも御存じなのではないでしょうか。私は、抜け穴が幾つもあるとおっしゃられたその世耕発言は、この法案の欠陥を示す大変に貴重な状況証拠だと思うんです。  それから、転送の問題ですけれども、この法案では、傍受した原記録、これの複写をとること自体は禁止されていないわけですね。そうすると、例えば転送を受ける、転送を受けたそのものは通信事業者施設内かもわからないけれども、そこから再転送する、これは複写という意味も兼ねていると思うんですが、これだってこの法案では禁止されていないですよね。どうですか。
  181. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは傍受ということでございまして、先ほどから申し上げているように、この令状に記載された場所で立会人のもとでその傍受をするわけでございますから、原記録と傍受記録を作成する場所は、原則的には、例えばメールの場合でありましても先ほど言いましたように通信事業者のところでございます。  ですから、それを技術的には転送可能かどうかという問題は別にしまして、法律的には、そのほかの場所で違う作業をする、あるいは傍受記録を作成するという作業はこの法律では予定していないということです。
  182. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いや、この法律では予定していないと言うけれども、では、この法律の第何条のどこでそういうことを禁止しているんですか。
  183. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほども、メールを……
  184. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 条文を答えてくれればいいです。
  185. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) はい。  メールを例えばどこかへ転送する場合に、それは警察の方に転送すればできるじゃないかという御疑問があるいはあるのかもしれませんが、裁判所の指定した場所傍受をするということでございまして、それは、どの条文というよりも、この法律がそれぞれのところでそういう適正手続のいろんな適正担保のための制度に触れておりますので、この法律全体をごらんいただきたいというふうにお答えする以外にはなかろうと思うんです。
  186. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 いいですか、裁判所傍受場所令状特定するわけです。でも、その傍受したもの、記録媒体を複写することは禁止されていないわけですよ。裁判所が複写する場所をどこでなくちゃいけないなんということは、法律にも書いていないし令状にも書いていないわけです。自由なわけです。その複写の一方法として再転送という方法も私はあり得るんじゃないかと思うんです。  だから、それを複写の一方法として再転送することがこの法案の第何条で禁止されていますかと私は聞いているんです。
  187. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 傍受記録の作成について、条文として十九条以下ということになりますか、具体的な、技術的な方法も含めてこれを規定しているわけでございます。  また、原記録の作成あるいは複写についても、傍受というその前にある条文で規定しておりまして、場所あるいはその手法についてはこれらの条文からおわかりいただけるかと思っております。
  188. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 これらの条文と言われても、的確に禁止する条文がどこにもないこの法案は欠陥法案だと思いますが、時間がないのでほかの問題に行きます。  十六条の逆探知の問題ですが、この逆探知に関して、通信事業者協力しなければならないとこの法案の準用によってなっておりますね。この逆探知に協力する、つまり傍受をしている通信事業者じゃなくてその通信当事者との間に介在する通信事業者、ですから、これは傍受している通信事業者と同じ通信事業者の場合もありますよね。NTTなら、相手もNTTという場合もある。しかし、全く別な通信事業者の場合もあるわけですし、その全く別な通信事業者が複数介在している場合もあるわけです。  そういうところに具体的に逆探知の協力要請をするときに、令状を示せとか、何らかの資料を示せという条文になっていないものですから、具体的に逆探知の協力要請はどのような方法でするんでしょうか。その方法によっては非常に著しい問題が生ずると思うんですが、まず、具体的な方法を教えてください。
  189. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その逆探知が、その傍受の実施をしている通信事業者等ではない通信事業者協力も得る必要があるという場合の規定は法案の十六条の第三項で……
  190. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、その方法を聞いているんです。
  191. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これが通信事業者に対しまして同項の規定により行う探知である旨を告知する。これは、直接的には出かけていくなり、あるいは緊急の場合にはそのほかの通信手段ということになると思いますが、そうした措置をとることを要請することができるということになります。  したがいまして、今こういう形で電話傍受をやっていて、そこにかかってきた通信の一方の当事者の電話番号を知りたいと。これは、法第十六条第三項で、そういう場合にこの規定があるのでそれをお願いしますという言い方だと思います。
  192. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 ですから、通信事業者の方には協力義務があるわけです。それを、令状も持たない、何の資料も持たないで、この法十六条の執行だからお願いしますという口頭のお願いだけで逆探知の作業の協力通信事業者にさせるわけですか。もう時間がないので、端的に結論だけ答えてください。
  193. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これまでにも、強制処分に付随する処分については別個に令状を必要としないというのがそのことでございまして、この第三項も、その範疇の話として適宜の方法で告知して協力をお願いするということで、協力を要請された事業者はその前の二項の「正当な理由がないのに、これを拒んではならない。」という規定がかぶってくるということでございます。
  194. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 つまり、その強制処分に付随してできるというのは、これは当事者が同じなんですよ。逆探知の場合には全く当事者が違うんです。全然違う当事者のところに、令状も持たない、資料も持たない、ただ単に口頭の要請で協力義務を課すということは、これは法律上大変な問題があると思います。  時間がないので、次の質問に行きます。  第十五条の問題なんですが、弁護士の業務に関するものは傍受の除外対象になっております。この条文の書き方は、「他人の依頼を受けて行う」とあるわけです。ところが弁護士の場合には、依頼を受けるかどうかの、依頼を受ける前の相談というのもあるわけですよ。例えば被疑者が、先生済みません、こんな事件を起こしちゃって、弁護してくれませんかと。でも、そこで弁護士は、嫌だよと断っちゃう場合もあるわけです。私は、広い意味では弁護士の業務として傍受の対象から除外すべきだと思うんですが、この字面を見ますと、そういう依頼を受ける前の依頼に関する、受任するかどうかの交渉の部分は除外されてしまうように読めるんですけれども、そこの解釈はどうでしょうか。
  195. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのような狭い理解ではありませんで、今先生のお挙げになった事例は、まさにその業務に関するものとしてここで除外対象になる会話ということになります。
  196. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 もう本当にこの法案は数々の問題点、欠陥が多いものですから、聞きたいことがまだ倍も三倍もあるんですけれども、もう時間がほとんど来てしまいました。  最後に聞きますけれども、やはり十五条の問題で、マスコミ関係が除外されていない。これに関しまして、例えばマスコミの対象が無限定であってどうしようもないというような意見もありましたが、そういう問題はマスコミというものを限定した規則を設ければ解決できるわけでございます。報道の自由あるいは取材源の秘匿といった問題、これはやはり民主主義を基礎づける非常に重要な部分だと思うんですが、そこら辺についての配慮が十五条では欠落している。この点について、やはり私はそれに対処するような改正をするとか、まあ法案をつくらないのが一番いいんですけれども、あるいは将来どうするかとか、そういった問題についてきちんとした答弁をいただきたいんですが、いかがでしょうか。
  197. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 報道機関がこの十五条の対象から除かれている点につきましては、これまでにもその理由等は申し上げてきました。  ただ、報道の自由といいますか、あるいは取材源の秘匿ということに関しましては、我々も現在の社会においてそれが非常に重要な機能を果たしている、最大限に尊重すべきものであるという理解でございます。  したがいまして、この通信傍受等の実施あるいは運用に当たりましては、今申し上げた報道の自由あるいは取材源の秘匿ということにかかわるような通信傍受が現実に起こった場合には、今申し上げたそういう重要性も当然念頭に置きまして、それを最大限尊重するような運用をするということで、今後とも、具体的な事例等の検討も含めて、捜査機関の相互間でも十分に話し合ってそうした万全な運用をしていきたいと思っている次第でございます。
  198. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 最後に一言だけ。  その点に関して法務大臣の決意、まあ刑事局長の述べたとおりということでも結構ですから、お聞かせください。
  199. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 今、刑事局長が答弁したとおりでございます。
  200. 小川敏夫

    ○小川敏夫君 終わります。
  201. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後一時五分休憩      ─────・─────    午後二時四十五分開会
  202. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、阿部正俊君が委員辞任され、その補欠として森下博之君が選任されました。     ─────────────
  203. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の審査のため、八月四日午前十時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認めます。  つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  206. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 休憩前に引き続き、組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  207. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。早速質問に入ります。  午前中の質疑で、民主党の内藤委員の方から、この法案についてはプライバシーの侵害が心配であると。一方で、犯罪摘発のために必要性があることは認めるが、しかし、余りにも欠陥があり過ぎるんだという御意見がありました。これによりまして、これまで各党の立場がよくわからなかったのですが、要するに必要性はあるということをお認めになっている。だから、通信の秘密を侵すから一切認めないではないというお立場なのだということは理解できたと思います。  それにしましても、この法案については一般の黒電話を想定しているがためにいろんなほころびが出ているという御指摘がございました。最近、黒電話というのはほとんどないと思うんですが、普通の電話ということだと思います。  それから、数々のお粗末な欠陥が出ているということでありまして、だから一切認めないのではないけれども、法案の中身がよくないじゃないかと。違っていたら言ってください。  としますと、私たち公明党が自分の党の見解ということで出しました、原則禁止、例外的に制限的に認めるという、方向性としては同じかなという気がいたします。  それで、いろいろお粗末な法案、欠陥、欠陥と言われるんですけれども、おっしゃるのは結構ですが、欠陥だらけの法案とかお粗末な法案とか、短い単語だけで終わらせていただきたくない。その中身を、どこがどうですかと御指摘いただきたいというのが、修正案賛成者あるいは提案者側の希望でございます。そしてそれが、要するにその反論が説得力があるかどうかだと思います。  御批判があるのはよく存じておりますし、その中で、確かに御批判はあるんだけれども、実はこういう点を考えてこうさせていただきましたという点につきましては、私もこの参議院の法務委員会の場で質問を通じて明らかにしていっているつもりでございます。  例えば、立会人に何で切断権を認めないのだ、こういう意見につきましては、具体的に切断権を認めるとなるとどのような状況になるかということも明らかにいたしました。そこまでの負担をかけていいのか、また能力的に可能なのかということでございます。  それから通知の問題も、すべての人に通知すべきだということにつきましては、そのためには、やはり全部、住所、氏名、特定しなくてはいけないだろうしと、こういう問題がある。  それから、刑事訴訟法百条の方でも郵便物等の差し押さえを認めております、捜査に準用されておりますけれども。これもすべてに通知という形にはなっていない。ほかの条文との整合性とかも言えると思います。  それから十四条の、いわゆる別件盗聴と言う方もおられますが、これは緊急傍受という言い方が一番適当かなと思います。この点につきましても具体例を挙げて、では覚せい剤か何かで傍受しているときに殺人、これから殺そう、あるいは既に殺したという場合でも、将来の盗聴、傍受もだめだと言う方もいらっしゃるのであえて将来の設定をしまして、さあこれから殺そうと、これが明らかである場合にもそこで切れとするのが果たして正しいことなのかどうかという形で、具体的状況を想定して質問させていただいております。  先日の参考人の方で、反対派の方にこの質問をぶつけましたら、その方は、そうなんです、切るんですと。では殺されてから捜査しなさいということですねと、そうですと。これは、その立場としては非常に明快に答えられたと思います。後は、我々はそう考えない。反対派は切るべきだと考える、殺されてから強制捜査すべきと考える。両方、立場、意見、あると思います。要は、どちらが国民の方に支持されるかということで議論を尽くすしかないというふうに考えます。  自分の質問をしなくてはいけませんが、立会人のことについて、ちょっと伺っていて気づいたことも少し言わせてください。  確かに通信事業者の方が立ち会いをするのは問題があるのではないか、こういう御指摘がございました。ただ、これは原則をどうするかでありまして、むしろこれを除くとなりますと非常にまた問題で、逆に管理者の立ち会いを除外しておまえたちは何をしようとしているのかという批判があると思います。  それで、例えばの話ですが、窃盗犯人か何か、犯罪者が私の部屋にこっそり入って何か変なものを置いていったという場合、そうすると私の部屋が捜索の対象となります。そのときに警察官が令状を持ってきて、いきなり消防署員も来てやらせてくださいと言ったら、私は怒ります。何で私に立ち会わせないんだ、ここは私の部屋なんだと。それは勝手なことをされたら困るからであります。そして、その捜索等が適切になされているかどうかというのは、やはりその場について一番利害関係を持っているといいますか、こういう人の方が適切ではないかなと、こういうふうな気がいたします。  それでは質問に入りますが、修正案提案者の方、前回来ていただきながら質問できなくて申しわけありません。きょうは最初に質問させていただきます。  修正後の第一条、「目的」のところでございますけれども、この第一条の目的に「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ」、こういう文言が新たに挿入されております。政府原案ではこのような文言がございませんでした。これはもう反対派の方が以前御指摘されたそのとおりだと思います。その文言がないと、一方では組織犯罪対策三法だといいながら、この法案の中にそう解釈する根拠が示されていないことになります。これは、やはり問題であると思います。  それで、ここで要件とされているのは数人の共謀だけ、数人といえば二人以上、通信だったら送り手と受け手がいると。特に何も制約していないじゃないか、こういう問題が起こるわけでありまして、やはり組織犯罪対策三法というのであればその旨を法案の中にも示すべきではないかというお考えだと思います。  そこで、まず修正案提案者の方にお尋ねしたいのですが、この文言が入ることによりまして政府原案とどのような違いが出てくるのか。これは衆議院法務委員会でも聞かれておりますが、改めて確認させていただきたいと思います。
  208. 漆原良夫

    衆議院議員(漆原良夫君) 最近、オウム真理教事件のような組織的な殺人だとか、あるいは暴力団等による薬物、銃器の不正取引事案、あるいは集団密航事犯などの組織的な犯罪が平穏な市民生活を脅かし、あるいは健全な社会の維持発展を著しく害しているという現状にかんがみますと、これに適切に対処して一般国民の人権を守るためには、この種の犯罪の捜査手段として必要かつ最低限の範囲で通信傍受制度を認めることが必要であると考えます。  第一条に定める目的に、御指摘のとおり、「組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることにかんがみ」という文言を付加することによりまして、そのような本法案による通信傍受の制度の趣旨がより明確になり、今後、本法案の解釈、運用の指針となるだろうということを期待してこの文言を加えさせていただきました。
  209. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは一つのある解釈の基準になります。  というのは、具体的場面でどうなるか、これは一律に言うことはできないんですけれども、例えば対象犯罪の中に単純所持が含まれております。営利目的所持、これは対応する犯罪ですが、営利の目的が立証できなかったら単純所持で認定することになります。単純所持だからといって、ただ〇・一グラム持っているとかそういう場合ではございませんで、三キロ持っていても単純所持の場合がございます。  ただ、私たちが心配いたしましたのは、この通信傍受という方法組織犯罪対策であるといいながら、こういう解釈の基準がないがために、いわゆる末端の少量所持者、その摘発のみを目的として、つまり上へ突き上げする一つの端緒ではなく、最終的に末端のそういう少量所持者、単純所持者の摘発のみを目的として使われるおそれ、これを払拭できなかったわけでございます。  そういった意味で、こういうケースを想定しますと、この文言が入ることによって制約された、そして、これに反するような形はやはり乱用と評価されると思うのですが、刑事局長、そのような理解でよろしいでしょうか。
  210. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのように理解しております。
  211. 大森礼子

    ○大森礼子君 次に、法案三条一項三号、この部分も修正されておりますので質問させていただきます。これは対象犯罪、この準備として行われる場合についての規定でございます。  法案三条一項三号、これは当初その準備犯罪につきましては「禁錮以上の刑が定められている罪」、こういうふうになっておりました。ここが「死刑又は無期若しくは長期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪」というふうに修正されたわけであります。  これは、禁錮以上の罪といいますと、それでないものは何かといったら罰金のみ、科料のみで、じゃそんな犯罪は幾つあるのかといったら、そっちの方が少ないぐらいでありまして、禁錮以上、一見重たそうに見えますけれども、非常に広範囲になる、こういう配慮があったのだと私は思います。これは後で、そうであればそうだと、修正案提案者にお答えいただきたい。  その上にさらに、今言った罪が「別表に掲げる罪と一体のものとしてその実行に必要な準備のために」と、こういうふうに「一体のものとして」という要件が加わりました。この文言を入れることによりまして、政府原案の場合と比べてどのような違いが出てくるのか、修正案提案者にお尋ねいたします。
  212. 漆原良夫

    衆議院議員(漆原良夫君) 御指摘のとおり、通信傍受法案の原案では、第三条第一項三号の対象犯罪の実行に必要な準備のために犯された犯罪の範囲につきまして禁錮以上の刑が定められておりましたが、これではその範囲が広く、実際の傍受には、引き続き対象犯罪が犯されると認められるという要件があったとしても、遺失物横領罪あるいは刃物の携帯だとか旅券の不実記載とか、相当軽微な犯罪が実行された段階でも傍受が可能ということになっております。  これに対して、衆議院における修正では、対象犯罪を一定の組織性が認められる重大な犯罪に限定したことを踏まえて、御指摘のとおり、「死刑又は無期若しくは長期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪として、しかも「別表に掲げる罪と一体のものとして」という要件を付加したわけでございますが、この別表に掲げる罪の実行に必要な準備のために犯された犯罪と、当該別表に掲げる罪との間にいわば客観的な一体性が認められるということを必要としたわけでございます。  例えば、無差別の大量殺人を行う計画、謀議のもとで大量の毒物を違法に製造しているといった場合に、それぞれの犯罪自体の性質、一連の犯行の計画、謀議の存在等によって認定される客観的な一体性が認められることを要件としたことによりまして、第三条一項第三号による傍受が許される場合を、対象犯罪を含む一連一体の犯罪の一部が実行された場合に限定するという大きな限定成果があったのではないかなというふうに考えております。
  213. 大森礼子

    ○大森礼子君 欠陥だらけの法案と簡単に言われるわけですけれども、この三条一項三号につきましても、二重の縛りがかけられた修正案というふうに理解しております。  それから、この対象犯罪の中では、殺人につきましては組織的殺人を対象犯罪にしております。反対される方は、要するにこの対象犯罪についても反論があるのだと思いますけれども、一方で組織的殺人だけに絞ることに反対される意見も、これもないとは言えないと思います。  つまり、何で普通殺人を入れなかったのかと。人の生命侵害、こういう重大な犯罪についてはやはり対象とすべきではないか、こういう意見もあってしかるべきだと思うのですね、人の命という点につきまして。それにもかかわらず、普通殺人を対象犯罪から外しまして、そして組織的な殺人と、このように限定した理由はどのようなものでしょうか。
  214. 笹川堯

    衆議院議員(笹川堯君) 御承知のように、人の命は重いものでございます。できたら普通殺人もというのは原案にございましたが、我々とすると、組織的犯罪というふうに限定しないと余りにも犯罪の数が多く、同時にまた、個人的殺人というのは衝動的にも行われるわけですから、そういう意味も含めてなるべく小さくすることによって国民の理解をいただきたい、こういうことで限定をさせていただきましたので、普通殺人は外させていただきました。
  215. 大森礼子

    ○大森礼子君 要するに、組織犯罪対策であるということ、それと、被疑者となる人のその所属する社会といいますか、これを限定したのかなという気はいたします。  つまり、犯罪社会、暴力団社会と言ってもよろしいのでしょうけれども、それと一般市民社会、この間に言ってみれば、言葉が適切かどうかわかりませんが、ファイアウオールのようなものをつくる。殺人は一般市民も犯し得るわけでありまして、普通殺人を認めますと、勢い一般市民社会の中に通信傍受の手法が入り込むことになる。この点も警戒されてのことであろうと理解しております。  修正案の中身につきましては、これまでも質問させていただいております。修正案がいろいろ手を加えてできたにもかかわらず、この修正案に対しても、例えば監視社会になる、一般市民が監視される恐ろしい社会になると。この法律が施行されたその日からあなたの電話も盗聴されていると覚悟した方がいいとか、こういうことをまだおっしゃる方がいらっしゃいます。おっしゃるのは自由なんですけれども、それによって国民の方が不安に思っていることも事実だろうというふうに思います。  この法案だと、自由というものがなくなる、監視社会になる、あるいは恋人といちゃいちゃ話しているのも聞かれるという意見もある、批判もあるわけですが、修正案提案者の方にお尋ねいたします。  彼らの言っているような事態になるおそれがあるのか。そういうおそれがあるのであれば、国民が不安を募らせるのは当然ですし、そういうおそれがないにもかかわらず殊さらに言っているのであれば、むだな不安を生じさせないように説明してあげるのもこちらの責任だろうと思いますので、その点について、だれが聞いてもわかるように明確に御答弁をいただければと思います。
  216. 笹川堯

    衆議院議員(笹川堯君) そういうふうに反対する人が言われることも実は自由でございまして、まさに言論の自由でございますから。  ただ、でき得れば、本法が成立した暁には、政府の広報その他を通じまして一般国民に理解をされるように、また誤った解釈がされないようにそういう運動をすることも私は政府の責任じゃないかと思いますし、また、一政治家としても、この法案に取り組みさせていただきましたから、機会のあるごとに、一般市民が平穏な生活をしているところに踏み込んで何でもかんでも聞いてしまうんだよとか、そういうような誤った観念を払拭していただけるように運動していきたい、また理解をしていただきたい、こういうふうに考えておりますので、委員の皆さんにおかれてもよろしくお願いをしたいと思います。
  217. 大森礼子

    ○大森礼子君 時間の関係で修正案提案者の方への質問は以上でございます。ありがとうございました。  次に、法務省の方にお尋ねいたします。  午前中の内藤委員も国会報告の点について触れてくださいました。ですから、内藤委員が聞かれた範囲については重複を避けるのですが、これはアメリカのワイヤタップ・レポートが参考になると思います。それを参考にしてこういうような規定もされているのだと思うわけですけれども、法案の二十九条です。  七月十二日夜のTBSのニュース23で、問題点三つとしてこの点が触れられました。それで、十二日放送の報道につきましては、十三日にTBSが非常に迅速に訂正報道をしていただきまして、この点は私は大変評価しております。お礼を申し上げたいと思います。  その番組の中でも、この情報公開というものが捜査官あるいは違法な捜査の抑止力になっているというような報道がございました。  そうだとするならば、この国会報告もそのような機能が期待できると思うわけですけれども、これですと「罪名」というふうになっております。こうしますと、例えば、覚せい剤関係ですと覚せい剤取締法違反とか、ここまでしか記載されないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  218. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この点も、報告の性質上、やはり国民に具体的にどういう類型の中のどういう犯罪について傍受が行われたのかというのをある程度具体的に御理解いただく必要があると思いますので、それには、例えば覚せい剤取締法違反だけではなくて、それは所持なのか譲渡なのか密輸なのか、そういうことも含めまして分類した上で、おわかりいただけるような方法を考えております。
  219. 大森礼子

    ○大森礼子君 実は、それをお願いしようと思っていたわけでございます。これは罰条と言ったらいいのでしょうか、覚せい剤取締法違反でもどういう態様なのか、ここまで教えていただくということは非常に有効な情報になると思いますので、お願いいたします。  次に、警察庁の方にお尋ねいたします。  やはり共産党の緒方さんへの盗聴事件とかありまして、そして警察に対する不信がある、こうおっしゃるのは当然のことであると思いますし、厳粛に受けとめていただきたいと思っております。  それで、要は、手続的には規定してありますけれども、警察の内部でそういうふうな厳格な手続がとられるかどうかということについても確認しておきたいと思います。  例えば、該当性判断ですけれども、どのようにして該当性判断を行うか、そのルールづくりですね。  例えばスポットモニタリング、これは後で質問しますけれども、電話傍受の場合ですが、この場合でも、ある警察によったら一分聞いて一分中断とか、こちらでは三十秒聞いてとか、いろいろばらばらにやられますとやはり問題が生ずる。ですから、こういう手順についてのきちっとした警察内部でも統一的なルールといいますか、こういうルールづくりが必要だと思うのですけれども、この点、警察庁はどのように対応するおつもりでしょうか。
  220. 林則清

    政府委員(林則清君) お尋ねは、傍受の実施をしておる間に行われた通信傍受令状に記載された傍受すべき通信に該当するか否かの判断の手順というものをどうするんだということでございますけれども、これにつきましては、電話の場合と電子メールの傍受の場合に分けて説明をさせていただきたいと思います。  電話傍受の場合につきましては、該当性判断のための傍受を最小限のものにするために、今御指摘ありましたし、スポットモニタリングという方法によるということはもう間違いなくその方法によることになると思いますが、これにつきましては、内容につきましては法務省刑事局長からたびたび説明もありますし、先生はもう一番よく御存じでありますので、ここでは繰り返しません。  ただ、一点だけこれについてつけ加えますと、当該事件に関して他の捜査を尽くした上で傍受を行うことと、法案全部を見れば、補充性の要件その他で相当長期にわたって深く捜査をしてきた者が傍受するわけであります。したがいまして、傍受に従事する捜査員としては、特定犯罪実行等関連通信なのかそれともそれとは無関係の通信なのかの判断というのは、ここで御論議される以上に、実際捜査に従事しておる者については判断が比較的容易につくものである。その意味で、最小化のための方法としてスポットモニタリングというのが最も有効に機能するものというふうに考えております。  それから、電子メールのように傍受のときにその内容を知ることができないものにつきましては、その通信に係る信号全体を一たん傍受、つまりコピーして、これを文字等に変換した上で該当性の判断を行うということになるわけでありますが、この場合、該当性の判断を速やかに行わなければならないものとされておることは、小川先生の御指摘にもあったところであります。直ちに復元することが可能なものについては、立会人がいる傍受の実施場所において復元し、必要最小限度の判読を行って該当性判断を行うということを考えております。  そして、全体としてのあり方でありますけれども、警察といたしましては、何よりもこの法案の趣旨、この法案の本来いろいろ言われておる趣旨とそれから国会での具体的な御議論、これを十分踏まえて、前に申し上げましたスポットモニタリングの方法なりその他の手順というものを一番趣旨にそぐうように、国家公安委員会規則、あるいはもっとさらに細かい点については通達なり、いろんな形で厳格に規定をして、それを都道府県の警察に周知徹底し、そして本当に国会でいろいろ御懸念を示されたようなことが決してないような適正な傍受を実施していくということを考えておるところであります。
  221. 大森礼子

    ○大森礼子君 今、該当性判断等についてお答えいただきましたけれども、やはり国民の多くの皆さんが、あるいは反対派の方も一番心配するのは、例えば警察へ持ち帰った記録、その管理、保管、消去、これが厳格になされるかどうかということだと思います。  この点につきましても、通常の場合でも、押収した証拠物をどういうふうに保管、管理するかとか、実は内部では厳格な手続があるわけなんですけれども、記録の警察内部での保管とかそれから消去、この厳格な手続、あるいは記録簿なんかもきちんと作成されなくてはいけないだろうと思いますし、必要な場合にはコピーをとる場合がないとは言えません。その場合、そのコピーについても、だれがとったかとか、その消去がどうなったかとか、こういう点をきちっと確立された形で管理しなければいけないと思います。  それから、例えば押収でもそうですが、空振りということはこれはあることでございまして、そんな場合でも、たまたまだめだとかいうのではなくて、やはりそのどこに原因があったのかとか厳重な、内部で検討会をするとか、こういう作業も必要であろうと思います。  そこで、もとに戻りますが、記録の保管とか消去の厳格な手続とか、こういうことについてはどのようなやり方をなさるおつもりか、簡単で結構ですから、お尋ねいたします。
  222. 林則清

    政府委員(林則清君) 法に規定されております傍受記録以外の記録の完全な消去を担保するために考えておりますのは、傍受した通信を記録した記録媒体、つまり裁判所へ提出する傍受の原記録以外につきましては、記録の保管簿を作成した上で、指定した捜査幹部の厳重な管理下に置かなければならないということを規定したいと思います。  それから、傍受した通信を記録した後における傍受記録以外の記録の消去等一連の手続を明確にした上で、各手順を行うべき者を必要最小限に限定し、それ以外の者には犯罪関連通信以外の通信は知り得ないものとするということを制度的にきちっと内部で確立したい、こう思っております。  また、傍受した通信を記録した記録媒体のコピーにつきましても、コピーの作成者、作成部数については必要最小限にとどめるとともに、コピーをした場合には、前に申し上げました、記録の保管簿に所要事項を記載するなどして、適正に管理をしてまいる所存であります。  今申し上げましたことにつきましては、国家公安委員会規則、通達等で、先ほど同様、厳格にこれを規定し、都道府県警察に周知徹底して運用してまいりたい、かように考えております。
  223. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでは、七月二十七日の参考人質疑に関しまして質問させていただきます。  インターネット業界の方からは、捜査機関と協議する、そういう機会を持ってほしい、こういう御要望がございました。これは本当に必要なことであると思います。傍受を実施するに当たりましては、技術的に法的に、その時点において何ができて何ができないかを十分に知悉する必要があると思います。  それから、技術改良も非常に速いスピードで進んでおりますので、円滑な実施をするため円滑な協力を求めるには、インターネット業界のみならず、いわゆる通信事業者の方との十分な協議が必要と考えます。午前中の質疑世耕委員の方からこの点について質問がございました。これまでそういうコミュニケートをとってこなかったのかということでしたけれども、私は、時期的に法案成立前の段階は先ほどの御説明でよいとして、これが成立しまして公布から施行までの間に何をするかということ。  それから、例えば実施方法というのを決めなくてはいけないわけですけれども、これはいろんな設備の状況等によりまして、それぞれ場面、やり方が違ってくる場合もあるのかなと、こういうことも想像いたします。令状執行の具体的場面においても、その協力者側とやはり協議が必要であろうというふうに思います。  それから、先ほど言いましたように、技術はどんどん進歩しておりますので、そういう環境も変わってくるかもしれない。ですから、適宜の協議ということも必要になってくるであろうというふうに思います。  この点について、これからのことですけれども、どのようにお考えなのか、まず最初に法務省の方にお尋ねいたします。
  224. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 協議の場面はいろんな場面で考えられますが、まず、それぞれ電話の場合あるいはインターネットの場合等にかかわる業者との間で、つまり通信業者との間で、この法案が成立いたしました場合には再度といいますか、これまでにもいろいろ内容の広報には努めたわけでございますが、成立後、この内容の周知徹底を図ると同時に、業者の方と十分にその要望等を聞く機会を設けまして、また、通信傍受を実施する当方あるいは警察との関係においてそれぞれどういう隘路があるのか、あるいはどういう機材が新たに開発される必要があるのか、あるいはどういう機材があればもっとより適正に傍受ができるのかといったような全般にわたりまして何回もの協議の機会を持っていきたいと思っております。一般的な方向というものをその中で定めた上で、具体的な技術の開発なり機材の開発なりに入っていきたい。  それから、今御指摘のとおり、そうした一般的な協議にとどまらずに、個別の傍受の場合には当然時間的に許す範囲内で、この前にといいますか協議をした上で、どの程度の御負担をおかけするのか、あるいはどの程度協力をお願いするのか等も含めまして、個別にはまたその時点で協議をするということになると思います。  また、それ以外に、恐らく委員指摘のように、技術の進歩というのは目覚ましいものがあるんだろうと思います。数年のうちには、例えば旧来の手法が陳腐になることも先ほど世耕委員の御指摘にもあってうかがわれるところでございますので、その折々で新しい技術についての情報提供をいただき、それに対する通信傍受技術の革新を図るということについても協議が必要だろうというふうに考えている次第です。
  225. 大森礼子

    ○大森礼子君 今、法務省にお尋ねしましたけれども、ただ、個々の具体的場面とかになりますと、やはり現場でこれを実施するのは警察の方であろうと思います。  そこで、警察の方でも現場での十分な協議があって初めて円滑な協力をいただけると思いますが、警察の方でもそういう努力を怠らないということでよろしいでしょうか。簡単で結構です。
  226. 林則清

    政府委員(林則清君) 松尾刑事局長から説明がありましたのと全く同じでありますけれども、簡単に申しますと、本案が成立しました場合には、同法の趣旨に従って適正にこの通信傍受を実施するため、また通信事業者の負担を軽減するという観点からも、通信事業者警察の間で協議の場を設定することが絶対に必要であるというふうに考えておりまして、具体的には警察庁、都道府県警察、それぞれのレベルにおいて傍受の実施方法技術的詳細などについて、負担の最小限、あるいはその他いろんな面から十分な協議を行ってまいりたいというふうに考えております。
  227. 大森礼子

    ○大森礼子君 次に、協力についてですが、捜査というものは本当にいろんな方の協力の上に成り立っているというふうに私は思います。目撃者、参考人の方、お話をいただくにもやはり相手の時間的都合とかいろんなことをお願いして事情をお伺いするわけでありまして、捜査側が高飛車な態度とか強権的な態度をとりますと協力は得られない場合もあるわけでございます。  通信事業者の方は、今は民間企業でございます。それで、こんなことを言っていいのかどうかわかりませんが、公務員とかやっておりますとなかなか気づかないのですが、やはりその人の稼働時間というのはコストと連動しております、営利事業でございますから。そういった点からも、協力を要請するに当たっては、本当にそういう民間の事業者の方に過度の負担を課すべきではないというのは当然であると思います。法案十一条、協力義務も、正当な理由があれば拒めることになっております。事業所の規模によっては、常時立ち会いを要請することが大きな負担になる場合もございます。  抽象的なお答えになるかもしれませんけれども、特に現場で協力を求めるのは警察だと思いますので、この点について、相手側の事情というものを十分配慮していただけるかどうか御答弁いただきたいと思います。
  228. 林則清

    政府委員(林則清君) 全く御指摘のとおり、警察といたしましても、例えば立ち会い一つとりましても通信事業者の方にとっては大変大きな負担になるという認識は十分持っております。  そこで、実際行う場合に通信事業者の方と綿密に協議を行い、通信事業者側の事情というものを十分考慮、しんしゃくしてその負担を最小限にするよう努めたい。そして、場合によっては、今御指摘ありましたようにコストの負担ということにつきましても、現実の運用の場面では、立会人の負担等を考慮して立会人の方に対する実費の支払い等ということについても考慮しなければならない可能性も、あるいは場面といいますか、それも十分あるというふうに考えております。
  229. 大森礼子

    ○大森礼子君 それから、七月二十七日のこの参考人質疑技術面を中心としたものでございました。携帯電話では通信傍受に困難が伴うとの意見も確かに出されました。しかし、これは技術的に将来も不可能であることを意味するのではないということもおっしゃいました。今、困難というのは、そもそも今の携帯電話のシステムが通信事業として、傍受とかそういう必要がないということも一つの理由になっております。もし傍受を想定していない現在のシステムを前提としまして、傍受が困難だからという理由で携帯電話を対象外とするならば、それは犯罪集団に対しまして、これからは犯罪の御相談はどうぞ携帯電話をお使いくださいと暴力団に推奨するようなものかなというふうに思います。犯罪集団は、携帯を使えばやりたい放題になり、技術の進歩の前に捜査機関が敗北宣言をすることになると思います。当然、必要な手段が開発準備されると思うんですが、この点につきましては午前中の質疑法務省がお答えになりましたので、答弁は要りません。  それから、参考人の方が御指摘しておられましたとおり、捜査機関側も、通信事業の技術面に対して通信事業者と同等の専門的知識を持たなければならないのはこれは当然であると思います。また、調査研究も不可欠であると思います。現場を預かる警察としてましては、どのような体制で臨むのか、概要で結構ですから簡単にお答えいただきたいと思います。
  230. 林則清

    政府委員(林則清君) 御指摘のとおり、情報通信技術というのが非常なスピードで発達しておる現代社会において、これを犯罪行為に利用する者に的確に対処していくというためには高度な専門的な知識、技術力が必要であるというのは御指摘のとおりであります。  そこで、警察におきましては、警察部内の情報通信システムの整備、維持管理、運用を通じて情報通信技術に関する人的資源及びノウハウを有する、余り知られておりませんが、高度の専門家集団である情報通信部門というのがございます。この部門の職員の能力の活用を図りつつ、さらなる専門専従員の要員の確保あるいは必要な装備資機材の整備に努めることにより、情報通信に関する高度の技術力を確保していきたいと思っております。  もう少し具体的に申しますと、本年四月一日に、電磁的記録の解析その他情報通信技術を利用する犯罪の取り締まりのための情報通信技術に関することなども所掌事務の一つとします、警察庁に技術対策課という大変専門家をそろえた課が設置されたところでありまして、通信傍受法案が成立した場合には、傍受した通信の解析、解読等に関してこれが核になって技術的な支援を行うことも想定しているところであります。  警察庁としましては、通信傍受に関し、この技術対策課の職員をも含めて全国で約四千名こういう情報通信部門、高度の専門家を抱えておりますので、この人材とノウハウを活用して技術的支援を行っていく、そしてまた研究も行っていくということで考えております。
  231. 大森礼子

    ○大森礼子君 捜査側の方が十分な知識がありませんと事業者も不安に思って十分な協力も得られないと思いますので、その点よろしくお願いいたします。  それから、インターネット業界の参考人、これは本名さんだったでしょうか、従来の捜索・差し押さえ令状方法でよいのではないかという意見がございました。なぜリアルタイムで傍受する必要があるのかという点につきましてはリアルタイムのとらえ方でございまして、これは午前中、世耕委員の方に法務省がお答えになりましたので重複していたしません。オンアライバルというかメールボックスに入った瞬間という、これがこちらのとらえたリアルタイムということだろうと思います。  それで、捜索・差し押さえ令状では十分ではないという理由について、これも午前中お答えになりましたけれども、簡単にお答えいただければ参考人の疑問にも答えられると思います。法務省、お願いします。
  232. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、リアルタイムで把握してそれを消化しなければ、このメールの場合等については即時にこれを消去するなり転送するなり把握不能にする技術がございますので、そのリアルタイムの把握というのが必要でございます。  捜索・差し押さえ令状というのは、あくまでその対象を特定しましてこれを押さえる手法でございますが、入った都度その内容確認した上で裁判所にかけていくということが必要になってくるというのはいかにも不可能であるし、余り現実的ではないということでございますので、どうしても捜索・差し押さえ令状ででき得る範囲というのが極めて限定されているということで、この通信傍受法案令状が必要だということになるわけでございます。
  233. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。  それから、法案十三条、該当性判断の傍受について規定をしております。  よくこの審議の中で、電話とそれからインターネットの場合とは全然違うのだから、これを一つの法案の中で規定したこと自体がおかしいのではないかと言われるわけですけれども、私は必ずしもそうは思いません。この法案をどのように具体的場面で適用するかということだと思います。  十三条のこの該当性判断のための傍受でありますけれども、これは電話傍受につきましては、その該当性判断についてはスポットモニタリングという方法でございます。Eメールについてはスポットモニタリングが観念できていないのではないかという批判があるわけですけれども、十三条は、この該当性判断を全部スポットモニタリングにしなきゃいけないということを規定しているのではなくて、電話の場合、ここに規定してある必要な最小限度の範囲でやれる該当性判断というと、いろんなプライバシーの問題を考えてスポットモニタリングという制度に行き着いたのだと思います。そして、Eメールの場合には仕組みが違いますから、この必要な最小限度の範囲の中身が異なってくるのだと私は理解しております。  法務省にお尋ねしますが、この該当性判断の方法は対象となる通信の性質等によって異なってくると考えるわけですが、それをまさにこの条文に規定したものですが、その理解でよろしいでしょうか。
  234. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 十三条の一項、二項、書き分けているというのは、まさに委員指摘のような通信技術的な側面というものに着目して書き分けたわけでございます。ただ、通信傍受という一般的な問題については、その技術上の理由によってこれを別の法律につくる、あるいは違ったような仕組みをつくるということは適当でないというふうに考えております。
  235. 大森礼子

    ○大森礼子君 いろんな質疑で、その部分法案に明記されていないという批判もあるんですけれども、やっぱり法文というのは条文の表現する限度というものもございます。かといって、あいまいでいいわけではございません。ですから、その解釈というのは明らかにしておくという作業が必要となるわけであります。すべて網羅的にしようとしますと、それ以外は許されるということになりまして、これは立法技術の問題もあるというふうに私は思っております。  それで、通常の押収の場合と比較して考えてみたいのですが、捜索と差し押さえ、こういう強制処分がございますが、厳密に言いますと、まず捜索令状においては物の発見を目的とした強制処分をする、それから押収すべきものを見つけたら差し押さえ令状で押収するという規定で、これは通常、一体として捜索・差し押さえ令状として発付されることもあるわけでございます。  そして、メモ類、手紙類、いわゆる書類ですけれども、これを押収する場合には本当に押収すべきものかどうかわかりませんから当然目を通すことになります。それは、目を通したものは目にした人の記憶に残るわけですけれども、ずっと記憶に残るかどうかは別としまして一たん残る形になります。しかし、これまでこの通常の押収の手続につきまして、これも該当性判断と言っていいと思うんですが、一たん目にしたものは記憶に残るから、この手続は問題であるというふうな論争は起きなかったと思います。それは不可欠の手続だからであります。それで、通常の書類の場合でも押収すべきかどうか、この該当性判断が要る。ここの部分はある意味で捜索の性質を持つのかなと、押収すべきものを見つけるという意味では、そう気がいたします。  それで、この傍受令状の場合には、通常の押収とパラレルに考えた場合、捜索、押収すべきものを発見する行為、これは該当性判断と思いますが、それから差し押さえ、押さえる、この二つに対応する性質をあわせ持つ令状と理解できるのかなと思うのですが、法務省にお尋ねします。その理解でよろしいでしょうか。
  236. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのような理解だろうと思います。
  237. 大森礼子

    ○大森礼子君 このように分けて考えた方が理解がしやすいわけです。  先ほども指摘しましたが、電話傍受ではスポットモニタリングなのにEメールではそれができないからおかしいという批判があるわけですが、Eメールについてはリアルタイムのスポットモニタリングと流れている情報、これはPOPサーバーに入る前につかまえるというやり方も技術的には将来不可能ではないと思いますから、そこまでやる必要があるのかなという気がいたします。もちろん、通信事業者への機材への影響等も考えますと妥当ではない、バランスを欠くやり方だろうと思います。  それで、その方法ではなくて、既に法務省説明しておりますPOPサーバー、メールボックスの入った時点で捕捉する、このやり方がEメールの場合におけるこの十三条に規定する必要最小限度の該当性判断である、このように解釈できると思うんですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
  238. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) Eメールの場合のまさに傍受というのがそういう手法ということになります。Eメールの場合の該当性判断ということになりますと、これは傍受した後に立ち上げまして、そのメールを読んで、それで振り分けをするというのがこの該当性判断に該当するのかなというふうに思います。
  239. 大森礼子

    ○大森礼子君 最後にもう一つ短くお答えください、論点ですが。  よく、令状主義の原則からして、逮捕される場合でも令状をその本人に示すのにこの法案では事前提示がないという批判がございます。逮捕、勾留等については身柄拘束を受ける本人に示さなければ意味がないのは当然でありまして、隣の人に示してもしようがないわけであります。身柄拘束以外の場合どうなるかということですね。  修正案に反対する立場からの令状を事前に見せるべきだという主張は、処分の前に必ず見せろと、処分を受ける者に、これは被疑者だと思うんですが、必ず見せろという主張ではないかと思うんです。令状の事前提示、これは憲法上の要請かどうか、これについて質問しようと思ったんですが、判例を見ればわかりますのであえて質問しません、時間の関係で。  それで、通信傍受令状の執行に際しまして、被疑者に、その当事者に、強制処分を受けるのかもしれませんが事前提示ができない理由、これは考えてみたらわかるじゃないかと言われるかもしれませんけれども、気づかないことというのはありますので、この事前提示ができない理由について、子供にでもわかるように説明していただければ大変ありがたいと思います。
  240. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 令状の提示は必ずしも憲法上の要請ではないわけでございますが、二つ申し上げますと、一つは、捜索・差し押さえ許可状というのは処分を受ける者に示さなければならないとはなっておりますが、刑事訴訟法の二百二十二条あるいは百十条でございます。ただ、例えば同法の二百二十二条あるいは第百十四条二項というのは、不在であるなどの場合には居住主等を立ち会わせることができないときは隣人その他地方公共団体の職員を立ち会わせるというようなことにもなっておりまして、必ずしも処分を受ける本人に示さなきゃならないということにはなっておりません。  通信傍受令状の場合に、その傍受を受ける対象者に事前にこれを告知するということになりますと、これはもう通信そのものをやめてしまうということは目に見えておりますので、そういった点からもこれは本質的にできないということになります。したがいまして、通信事業者等の場所で行う場合には通信事業者等にそれを提示するということにしてあるわけでございます。
  241. 大森礼子

    ○大森礼子君 強制処分を受ける、会話の所有者といったら当事者ということになるんだと思いますけれども、事前にこれからあなたの電話をこうやって傍受をしますと令状を見せたらそんなもの使うわけないわけでありまして、見せられるわけがございません。その時点で目的を達しないということが明らかになります。それから、相手方にもどこからかかってくるかわからないから見せることができないということで、これはもう当たり前のことではないかなというふうに私は思います。  それで、強制処分につきまして、例えば被疑者の知るところでない場面で捜索、差し押さえとかされる場合もございますね、いろんな立ち寄り場所とかあるわけですけれども。そんな場合でも、明文ある場合を除いて被疑者にそれを示すこと伝えること、これも必ず法律は要請していないと考えておりますが、その理解でよろしいでしょうか。
  242. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そのとおりだと思います。
  243. 大森礼子

    ○大森礼子君 時間が来たので終わります。
  244. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず最初に、法務省にお伺いをしたいと思うんですが、法務省からいただいた資料で、本件の犯罪捜査のための通信傍受いわゆる盗聴に関する法律案の対象犯罪の数、これを調べてみますと、まず対象犯罪の数は、配付資料でお渡ししておりますように、その数は、覚せい剤については輸入、所持、原料の譲り渡し、あるいは武器製造については武器の所持、製造、それからまた譲り渡し、こういったことも含めまして全部で四十件、四十種類といいますか、これだけの数であることは間違いございませんね。
  245. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおりでございます。
  246. 橋本敦

    ○橋本敦君 それからさらに、法案の第十四条でいわゆる別件傍受ができる短期一年以上の罪に当たるその種類を調べてみますと、配付資料にありますとおりでございますけれども、これはかなりの数に上っておりまして、総計において百四十五件、刑法の罪名数で言えば六十四件、特別法犯も入れますと八十一件で、百四十五件の多数に上っております。  こういった中には、例えば現住建造物の放火、こういったことだとか、通貨偽造あるいは証書偽造・行使、あるいは非現住建造物等の放火や往来妨害、こういったことも含まれておりますし、さらには建造物以外の放火もあれば、あるいは水防妨害とか水道の損壊とか、こういったことも含まれておりまして、その数は百四十五件に上っているという、こういう多数であることも間違いございませんか。
  247. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおりであります。
  248. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、別件傍受も含めて、本傍受法案いわゆる盗聴法案について、対象犯罪となる数は罪数からいってもかなりのものだということが言えます。  しかも、それについて、現に犯罪が行われた場合に限らずその犯罪が行われると疑うに足りる、そういった可能性も含めて犯罪関連事項として傍受の対象になるという可能性があるわけですから、市民生活にかかわって、かなりの範囲のものがこれらの対象の中に入ってくる可能性が否定し切れないと思うわけですね。  そしてもう一つの問題は、こうした問題がいわゆる組織的犯罪ということでくくれるのかという問題でありますが、その問題について先ほども質問、御意見がありましたけれども、法案それ自体の名前から見ましても、この通信傍受法案いわゆる盗聴法案は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案、こういうことでありまして、マネーロンダリングやあるいは刑罰加重等については明白に組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案と、こうなっております。  組織的な犯罪処罰及び犯罪収益規制等に関する法律案で言う組織的な犯罪とは、団体性を持ち、指揮系統命令、任務分担、実行犯、こういったことの意思が相通ずる、全くそういう意味での組織性を持った犯罪を対象としているということは法案の名称、趣旨からいっても明らかですが、通信傍受法案で言う組織性というのはそこまでの組織性を言っているものではない、これは明白ですね。
  249. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 確かに、数人共謀というような表現になっておりますけれども、この対象犯罪は四つの類型に絞られておりまして、薬物関連犯罪あるいは銃器関連犯罪はいずれも犯罪組織自体あるいは犯罪組織との関連のもとに行われる犯罪でございます。ほかの集団密航の罪あるいは組織的な殺人はまさに組織的な形態で行われる犯罪そのものでございます。  また、他の方法によっては犯人を特定し、または犯行の状況もしくは内容を明らかにすることが著しく困難であること、補充性と言っておりますが、これも要件としておりまして、この法案による通信傍受が組織的な犯罪に対抗するための限定的、例外的な捜査手法であることは明らかであろうと思います。およそ組織的な犯罪と言えないような広範な犯罪まで傍受の対象になることはないものと考えております。
  250. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうじゃないのじゃないですか。  今おっしゃった問題について言えば、数人共謀してというのは、具体的には二人以上共謀すれば数人共謀してに該当するんでしょう。まず、ここをはっきりしてください。
  251. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは今の御指摘のとおりでございますが、先ほど申し上げましたように、そういった犯罪類型そのものが犯罪組織によって行われる可能性が非常に強い犯罪ということで御理解いただきたいと思っております。
  252. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、可能性があり、犯罪が組織的に行われる可能性が強いという、そういう判断がかえって危ないんですよ。  それからさらに、今そうおっしゃるならば言いますけれども、この第三条第二項を見てください。第二項では、別表に掲げる罪、いわゆる対象犯罪ですが、「譲渡し、譲受け、貸付け、借受け又は交付の行為を罰するものについては、前項の規定にかかわらず、数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があることを要しない。」と法律にはっきり書いてあるじゃないですか。  だから、これについては麻薬の所持、譲渡あるいは交付、そういうことについては二人以上の共謀さえ要らない、まさに単独犯でもいいんだとはっきりと法律に書いてあるじゃありませんか。間違いないですね。
  253. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 繰り返しになるようで恐縮でございますが、犯罪の性質自体が、暴力団組織等を中心とした組織犯罪ないし関連して行われるというところに着目したものでございます。
  254. 橋本敦

    ○橋本敦君 はっきり答えてください。  私が指摘したように、数人の共謀によると疑うに足りる状況があることを要しない、そういうものも傍受の対象になるとはっきり書いてあることは間違いないでしょうというんです。
  255. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それ自体は御指摘のとおりでございます。
  256. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、修正案等にもいろいろありましたけれども、結局、社会生活、市民生活にかかわって、いろいろなところで通信傍受が市民生活の中に一定の被疑者を中心としたかかわりのつながりの広がりの中で入ってくるという、そういう市民の不安、危険性というのはなくならないわけです。  今さっき指摘したように、別件傍受について考えてみましょう。法案について言うならば、まさに十四条です。この別件傍受では、先ほど私が言ったように百四十五件、そういった多数の罪名がついた犯罪が、傍受をしている、盗聴しているその間にそういうような犯罪が行われている、あるいは実行することを内容とすると明らかに認められる通信だと、こうなりますと、それは共謀とか何も関係ないんです。そういうことと関係なしに傍受ができる。間違いありませんね。共謀の要件はありませんね。
  257. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その要件はつけてございません。
  258. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、このような別件傍受というのは、共謀の要件さえなく、聞かれただけで、まさにそれが傍受の対象とされてしまうわけです。  だから、そういう意味では、ある被疑者のよく使う公衆電話、あるいはある容疑者がよく行く喫茶店の電話、あるいはある容疑者が特定の団体あるいは会社に勤務していて、そこの特定電話を使う場合、そういったことについて傍受をされて、別件の問題からこれだけ多数の犯罪が関連して出てきたら、共謀とかなんとかいう組織性の要件なしに聞かれる可能性と危険性があるということがわかりました。これは大変な問題だと思うんですね。  そこで、そういった問題について最小限法則ということで人権侵害を防ぐというお話がいろいろありましたから、その問題について考えてみたいと思うんですが、一つの例になりますのは九二年十月十五日の東京高裁判決で、これはいわゆる山梨事件の判決でありますけれども、この事件で裁判所がどう言っているかということであります。  裁判所は、「現在の社会生活において、電話は必要かつ不可欠な通信手段であり、これなくしては社会生活が成り立たないといっても過言ではない。そのような電話通話内容通話中の当事者双方に知られずに傍受、録音することは、憲法二十一条二項の通信の秘密を侵害する行為であり、犯罪捜査のためといえども、原則としてこれが許されないことはいうまでもない。」とはっきり言っているわけですね。  犯罪捜査のためであっても原則として許されないんだ、特別の要件の場合にのみ許されるという立場をとって、ここではどういうように要件を絞っているかといえば、犯罪の重大性、嫌疑の明白性それから証拠方法としての重要性、必要性、そういったことも検討するわけです。  その一つとして、被疑事実について被疑者を特定し、実態を解明する確実な証拠を取得する手段として他に方法が容易にないこと。つまり、他の方法では確実に容疑者をつかみ、証拠を挙げることができないという、そういう他の方法が容易に見つからなかったこと。ほかにないという、そういう理由じゃないんですよ。やってみたけれどもほかになかったんだということ、これが一つです。これは大事です。  それからもう一つは、その通話は覚せい剤の密売のみに使われる専用電話である疑いが極めて濃厚だ、だから覚せい剤の密売と関係のない一般の市民の会話が傍受される、そういうおそれが少ないんだ、まさに犯罪に使われる専用的電話だという、そこまで具体的に疎明をし、そして証拠を出して明らかにしているということが二つ目。  それからもう一つは、傍受の期間については二日間と限定して、時間についても午後五時から翌日午前零時までと限定をする。  それから、もう一つの厳しい要件としては、対象外と思料される電話については立会人に直ちにその関係機器の電源スイッチを切断させるという条件がついている。つまり、切断権を認める。  これだけ厳しい要件を付しているんです。この検証令状による問題でもいろいろ意見はありました。ありましたが、これだけ厳しい要件を出している。  こういう要件に比べてみますと、本法案はまず第一に、今私が指摘したような問題について言うならば、まさにこの通信傍受以外にほかに方法がなかったということを実際にやってみた結果であるという疎明がなくても、犯行の状況を明らかにすることがほかの方法では著しく困難であればよいとなっているし、それからもう一つは、犯罪関連通信が行われることが間違いないのじゃなくて、そういうように使われると疑うことができるということで要件が足りるということになっているし、それからさらには、今言ったように切断権そのものがない、こういうことですね。  したがって、この東京高裁判決が示した憲法二十一条二項の通信の秘密との関係で、本来捜査といえども許されないんだが、仮に合憲だとしたらこれだけの厳しい要件が必要だというその厳しい要件から見ると、本法案ははるかに緩く要件が広くなって、人権侵害の可能性が高い、こう言わざるを得ないと私は思うんです。これだけの厳しい要件が東京高裁判決で既に厳しく指摘されたことについて刑事局長はどうお考えですか。
  259. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) いろいろな論点がこれには含まれるわけでございますが、例えば、今御指摘の事例では、立会人に犯罪と関係ない通信を切断する役割を与えているところであります。  検証令状による通信傍受には、傍受の実施方法、あるいはその作成保存、通知等の事後処置、あるいは不服申し立て手続等、傍受の実施の適正を担保するための法律的な明文の規定がございません。その適正担保は、立会人の役割に大きく依存せざるを得なかったという状況があったわけでございます。そうしたことから、この立会人の切断権というような留保がついた、あるいは条件がついたというふうに理解しているところでございます。  しかし、この法律案におきましては、傍受した通信はすべて記録しまして、立会人が封印をして裁判官が保管すると、その内容を事後的にチェックできる仕組みを設けております。立会人にいわゆる切断権を与えるためには、立会人に事件の証拠関係あるいは通話してくるであろう関係者の人間関係などの詳細を、捜査機関が把握している情報すべてを知らせた上で内容を聞いてもらうということが必要になるわけでございますが、立会人にそこまで関与を認めることは、立会人に過度の負担を強いる、また関係者のプライバシーを保護するという観点からも適当でないと考えた次第でございます。むしろ、全体としてこの本法案による傍受の方が、検証令状による傍受よりもその要件は厳格でございまして、立会人による切断の有無等によって合憲性が左右されるものではないと考えております。
  260. 橋本敦

    ○橋本敦君 全く見解が違いますね。裁判所が切断権を合憲であることのための要件として認めたという重大な問題についての認識は、極めて私は刑事局長の認識としては賛成しがたいと思います。  これまで検証許可令状によって行われた傍受の実例が五件あったというお話がございました。その資料を私もいただいております。その中で、先ほどお話がありましたが、三件については現に立会人が関係のない通話だと言って切断を命じたのがあったというお話でしたね。回数はどのくらいかわかりますか、三件それぞれ、わからなければ構いませんが。
  261. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今手元に、回数そのものは資料がございませんので。
  262. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういった問題も私は大事だと思うんですが、少なくとも立会人が警察官に対して、この通話は関係ありませんよ、切りなさい、こう言って切断をしたということは、やはり通信傍受ということが犯罪に直接関係のない市民の会話が入ってくる可能性をチェックするものとして非常に大事だったことなんですよ。その点は、私は大事にしなくちゃならぬと思います。  そして、それに関連をして、今度の法案でも、立会人というのは切断権がありませんが意見を述べることができるということがあります。その意見は、その立会人には被疑事実の要旨は知らされないんですから、中身についての切断的意見を言えなくて、外形的な捜査官の捜査のやり方について意見を述べるだけ、こう理解しておられると思いますが、間違いありませんね。
  263. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その点は、御指摘のとおりでございます。
  264. 橋本敦

    ○橋本敦君 その意見さえ、聞かなければならないという法規定はありませんね。
  265. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 通常ですと、立ち会いの事件については尊重するというのが基本的な姿勢であろうと思いますが、格別明文があるわけではございません。
  266. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問は、意見を聞かなきゃならないという法の規定もありませんねという確認です。
  267. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その規定はございません。
  268. 橋本敦

    ○橋本敦君 裁判所に実施した記録を出しますが、裁判所からも意見が付されておっても、捜査官に対してチェックをしたり、意見を言うという手続はこの法にはありませんね。
  269. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおり、その明文の規定はございません。
  270. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、市民の無関係の通話、それに対するチェックが守られるかという保証は本当にないということを心配するんですね。携帯電話の場合については、その問題はもっともっと大きな問題になってくると思うんです。  この携帯電話傍受については、これは技術的に大変困難であるというようなことが参考人からいろいろ言われまして、この問題については大きな議論になったんですが、刑事局長は、携帯電話同士の通信についてもこれを傍受するというのはこの通信傍受法案いわゆる盗聴法案の非常に重要な中身、眼目、また重要な要素である、だからしたがって、この点については、ぜひこのことが可能になるように今後技術的開発も進めていかなくちゃならぬという御意見を先ほど述べられましたが、間違いありませんか。
  271. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 間違いございません。大変大事なことだと思います。
  272. 橋本敦

    ○橋本敦君 先ほどお聞きをした検証許可状による電話傍受の実例として、携帯電話傍受したという例が一つあると私は理解しております。第四例ですが、間違いありませんか。
  273. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一例ございました。
  274. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、携帯電話による傍受技術的に困難だというけれども、現にやった例もあるわけですね。  その例で私が重要だと思いますのは、その第四例で、いただいた資料によりますと、傍受した通話は百十一件、そのうち犯罪関連の通話が二十七件で、何と八十四件が犯罪に関連のない通話であったという資料でありますが、間違いありませんね。
  275. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 間違いございません。
  276. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり、携帯電話が多数の市民に利用される、それが傍受をされるということになれば、有線通信以上に犯罪無関係の通話がそこに入ってくる可能性を現にこの検証令状でも示しているわけですよね。  だから、そういう意味で非常に重要なんですが、この問題で午前中の議論も聞いておりまして、私はこれも大事だなと思ったのは、今後技術開発を電気通信事業者に要請をすると、こういうことですが、その協力要請については、協力義務法律上ありませんから全くの任意であるということはお認めになりました。  確認しますが、それは間違いありませんね。
  277. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘のとおりでございます。
  278. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところが、おっしゃったように、携帯電話同士の傍受というのはこの法案の大事な中身だから、これから技術開発をどんどん業者にもやってもらわにゃならぬというようにおっしゃっているんですが、しかし、その問題について業者は法律上は協力義務がないわけでしょう。しかも莫大な費用がかかる。そういうようなことをこの法案を通して本当にやっていいんですか、またやれるんですか。  例えば、莫大な費用がかかる、その費用のコストは国が負担すべきものだと刑事局長はお答えになりました。そんな国が費用を負担するという、そういう規定はどこの法律のどこに書いてありますか。
  279. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは通信傍受をお願いするわけでございますから、お願いする側が技術的な開発を基本的にはやり、またその開発に必要な協力が必要なわけですが、そのために必要なコストについては基本的には負担するというのがいわば当然常識的な話だろうと思います。
  280. 橋本敦

    ○橋本敦君 大臣、予算項目としてはどんな予算を組むんですか。
  281. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほど、警察庁の林刑事局長からもお話がありましたけれども、警察においては通信関係のこういった作業に当たる部署というものがあるわけでございまして、それなりの予算が当然あるのだろうと思います。そこの技術開発の経費が、この法案が通りますとそれなりにまた増額を国にお願いするということに当然なるのだろうと思います。  また、検察庁としても独自に通信傍受に当たることも想定されますので、そのための費用をしかるべき年度の費用として要求していくということは当然考えております。
  282. 橋本敦

    ○橋本敦君 大変なことをおっしゃいますね。  この法案が通れば、携帯電話同士の通信傍受、盗聴するための業者開発費用を警察も検察庁も予算にきちんと組んでふやしていくとおっしゃる。大変なことじゃありませんか、それは。この法案がそこまで、法務省が考えているような予算措置まで含むなんて法案自体にはどこも書いていないんですからね。また、そんなことを協力義務としてやらせてよいということも書いていないんですよ。  そしてもう一つ、私は重大な問題だと思うんですが、いわゆる最小化措置について、有線通信についてはわかりました。つまりスポットモニタリングをやる。これも本当にそのとおりやれるかどうか保証はありません。  先ほど警察庁からお話がありましたが、国家公安委員会がきちっとした通達なり規則をつくるという話がありましたが、まだできていない、検察庁も何もできていない。本当なら、それはここの審議に出して、法案審議の一環として審議する対象になる重要な中身じゃありませんか。刑事局長、どう思われますか。
  283. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法案が成立しますと、実施に必要ないろいろな制度をさらに整備していくということは通常あることでございまして、本法案においても、それぞれの機関がこの法案の成立を待ってそうした具体的な内容に即した実施要領等を定めていくということは、通常の流れとして御理解いただきたいと思います。
  284. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさに憲法二十一条にかかわる通信の秘密、これが大きくあるわけでしょう。それを捜査のために制約をしていく、内在制約だと皆さんおっしゃる。しかし、それでも関係のない市民の通話は聞かないように最小化原則の処置はしなきゃならぬ、そうでなきゃ違憲になっちゃうと。その最小化の処置はどうするんだと言ったら、その中身はこれからつくる、考えると言う。こんなものは、まさに法律要件の厳しい要件として法に規定するか、ここで審議すべきですよ。そんなの審議しないでそれでいいなんということは、私は審議として成り立たぬと思いますよ。  特に、Eメール、インターネット通信の関係について言うならば、途中でスポットモニタリング、インターセプトできないんですから、局長はさっき、その信号全体を傍受して、できる限り速やかに復元の上、必要最小限度の判読によって該当性判断を行うと、こうおっしゃっていますね。いただいた資料はそうです。だから、電話傍受じゃなくて、途中でインターセプトできないんですから、速やかに全文がまさに傍受の対象文書として立ち上がってくるわけです。それを見るわけです。ですから、犯罪関連以外の部分も全部見て、その文書を全部見た上でそれがどうかと、こういうことを検討するわけでしょう。  しかも、Eメールは、この間の参考人もおっしゃっていましたが、一日に百万通を超える数も入ってくるというところもあるわけですよ。そこで二十四時間傍受をしておって、どんどんメールが入ってくる、それが立ち上がってくる。それを文書にしてどうやってそこで見る、一々選別ができるのか。そんなことはそこでできますか、どうですか。
  285. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 特定の具体的な犯罪状況の中で傍受ということの対象が決まり、傍受手法が決まってくるわけでございます。ここで想定されている犯罪等を考えますと、一日に百万通ものメールを受ける者がこれに関与するということはとても考えられません。やはり技術的な対応をする範囲内のことというふうに我々としては想定しているわけでございます。
  286. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、関係のないのも全部見られるんです。一たん見た上で選別すると言うんです。しかも、そこで、その場所でやらなきゃならぬという規定は法律にないんですよ。たくさんあるからといって警察に持って帰ってやるということが仮にあったとして、それは法律違反と言えますか。法律違反と言えるかどうかだけで結構です。
  287. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、やはりその場で容易に立ち上げができまして選別可能になってくるのであれば、速やかにという趣旨はその場でやるということに御理解いただきたいと思います。
  288. 橋本敦

    ○橋本敦君 たくさんあって速やかにということで、その場でやれなくて警察署へ持って帰って選別するという行為を仮にやったら違法になりますか。違法になると法律にどこに書いてありますか。書いてないでしょうと言っているんです。
  289. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、速やかにという法律の理解の問題です。つまり、メールの場合の傍受がどういう形態でどういうような対象者に行われているのかという、その具体的な事案によって確かに異なってくることはあろうかと思いますが、原則としてはその場所で選別をするということを法律は予定しているというふうに申し上げておきます。
  290. 橋本敦

    ○橋本敦君 全面的に否定はされませんでしたね。そうなるんですよ。そういう心配があるんです。  それからもう一つ伺いますが、犯罪に関連あるものとして刑事手続用に傍受記録をつくります。これは裁判所へ出します。証拠能力はどうなりますか。弁護人がそれに同意しないといった場合の証拠能力、証拠採用はどうなりますか。
  291. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは、法廷でその証拠能力の点についてはいろいろな争いがあることも可能性としてはあると思いますが、通信傍受法案に決める適正な手続で採取されたものにつきましては、証拠能力はこれを否定される根拠はないということだと思います。
  292. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、弁護人が同意しなくても証拠能力があるとなりますと、被疑者の通信がそこに入っている、それが傍受記録で出るでしょう。被疑者あるいは刑事被告人は、自己に不利益な供述は強要されないと憲法三十八条に書いてある。そして刑事訴訟法百九十八条は、被疑者には黙秘権があると書いてある。  いいですか、黙秘権も、不利益な供述を強要されないという憲法三十八条も、こんなものは吹っ飛んじゃうじゃないですか、被疑者の通信がそのまま傍受記録で持って行かれたら。ここにも重大な憲法違反性があり、被疑者の人権保障というまさに憲法と刑事訴訟法の基本理念がそこで侵害されるという重大な問題がありますよ。どうお考えですか。大問題ですよ。
  293. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 同じような状況は、例えば捜索の際に被疑者の差し出した手紙を押収してくる。これは証拠で出す際にも同じ問題があるわけでございまして、この通信傍受法案が格別新しいそういう証拠能力についての判断をここでつくり出したとか、あるいは規定したということではございません。
  294. 橋本敦

    ○橋本敦君 証拠にならないことも十分裁判所の判断によってはあり得るという意味ですか。そんなむだなことがあるんですか。
  295. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 違法収集証拠のルールがございます。裁判所の判断でございます。
  296. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、確認しますが、せっかく通信傍受傍受記録をつくっても証拠に採用されないことも裁判所の判断によってはあり得ると、そういうことだということと理解してよろしいわけですね。  そういうむだなことならやめてもらいたい。
  297. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先ほど申し上げました違法収集証拠ということで排除されることも、理屈の上ではあり得るということでございます。
  298. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がありませんので、また続きをやります。
  299. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 社民党の福島瑞穂です。  まず法務大臣、お願いします。  きょうお配りした三つの資料があります。衆議院法務委員会NTT視察時配付資料というのを見てください。「電話及びISDN回線における通信傍受NTT資料)」と書いてあるものです。  大臣にお聞きいたします。  「傍受ポイント(c)」、そこにこう書いてあります。まず電話回線のところ、「試験制御装置の操作を行い、交換機回線対応部に割り込み接続し、傍受用機器により通信内容まで識別可能。(但し、通話切断後は割り込んだ回線からの発信は不可。)」。これは正しいですか、正しくないですか。大臣、お願いします。
  300. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 刑事局長に答えさせます。
  301. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 済みません、大臣お願いします。
  302. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 技術的な問題ですので、私からお答えした方が正確であり、かつ適当だろうと思います。  今お読みになったところは、そのとおりだろうと思います。
  303. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それから、「電話回線における通信傍受について」という一九九八年五月二十九日、衆議院、NTT視察のときの配付資料法務委員会と書いてありますが、ここには、一番右側の上、アナログ回線、「通信中に割込むことは可能。ただし、予め割込んでおくと、発着信が不能」と書いてあって、左にできる、丸と書いてあるわけです。  次に、参議院の一九九九年七月二十八日、法務委員会の方の資料ですと、今度はアナログ回線のところは「通信中に割込むことは可能。待ち受けは不可能」、試験制御装置、三角となっております。  きょう私がお聞きしたいことは、衆議院では、まず衆議院の国会議員に対しては、試験制御装置の操作を行い、TWSで、MDFの部屋は狭いので、NTTに行ったときに、この試験制御装置を使って盗聴をするというふうに説明を受けたというふうに聞いております。現にこれは丸というふうに書いてあるんですけれども、これが参議院に来ますと、試験制御装置が三角になって、そして世耕さんの発言ですとバツという感じになるんだと思うんですけれども、なぜこれが丸から三角、そしてバツになったのかについて教えてください。
  304. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは午前中の技術的な部分質疑応答の中である程度明らかになったと思いますが、まず、五月二十九日というふうに手書きであります衆議院法務委員会視察資料ということで、これが丸となっているのは、恐らくこれは通信中に割り込むことは可能だと。つまり現に通信が行われているときに、それに試験制御装置を使って割り込んだ場合にはそれはもちろん内容が聞けるわけですので、これはそういう理解で丸だろうと思います。  ところが、参議院の法務委員会資料として、ここに確かに三角になっているんですが、通信中に割り込むことは可能と、しかし待ち受けは不可能という意味で丸でもバツでもなく三角というような判断だろうと思います。これはどなたが作成した資料かわかりませんが、恐らく作成した人の説明を聞くとすると大体そんな説明になるのだろうと思います。  それから、バツというのは、さらに通信中に割り込む、つまり通信がいつ何どき行われるかということがわかっていないとこれはできないわけでございますから、いわゆる通信傍受の手段としてはこれは適当でない。あるいは、令状をとって常時傍受していくということも技術としてはこれは難しいだろうという意味でバツになったんだろう。そのように御理解いただけると統一的に御理解できるかなと思います。
  305. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私の疑問は、衆議院では、デジタル回線もできるし、TWSで盗聴するというふうに衆議院の法務委員は聞いております。参議院になった途端にTWSは使えない、これは試験制御装置であって盗聴目的でないから特にアナログ回線の場合は使えないのだという主張がされたわけです。  私がお聞きしたいことは、なぜ説明が変わったかということです。衆議院の説明が間違っていたんでしょうか。
  306. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 恐らく技術者がそれぞれ御説明に当たったと思いますので、その技術者の状況設定の違いによって今申し上げたような三通りの結論が出るわけでございますので、いずれも技術者がどういう状況のもとで設定してその答えをしたかということにかかってくるわけでございまして、この本質的な機能そのものがその説明の期間に変わったというようなことではないと思います。
  307. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 そうだとしますと、私自身は、朝日新聞の記事も、あるいはそれを前提にした私あるいは中村さんの質問も、要するに今のTWSに少し付加すればそれは盗聴制度として使えるわけですから、その点で衆議院の議論前提に実は考えているということを申し上げたいと思います。  それから、二番目にちょっと申し上げたいのは、衆議院法務委員会のときの配付資料、表になっている部分なんですが、電話回線のところ、発信が不可というふうになっております。そして、衆議院の方のもう一つの方は発着信が不能となっています。そして次に、参議院の方では待ち受けが不可能、つまり着信が不可となっています。これは書き方が違うんですけれども、矛盾している。つまり、衆議院の方の説明では発信ができない、それで参議院の方は着信ができないというふうに書いてあるわけですが、これはどうしてでしょうか。
  308. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今、確かにこの資料をこうして見ますと、資料自体のどうも作成者が違うんじゃないかというような感じもします。ただ、試験制御装置の理解の仕方はそれほど変わるわけではないと思います。  確認までに申し上げておきますと、アナログの場合でございますけれども、その回線からの発信につきましては、これを接続しておきますと、今度受話器を上げても無音の状態になるということです。ただ、ここのところで若干表現が変わってくるのは、特別のコマンドを使用することによってアクセスしている当該回線からの発信のみを可能とすることもできるという技術的な問題もありますので、それを使えばこの発信傍受はできる、ただし受信はできない。そういうことで丸、バツ、三角の違いが出てくるんだろうと思います。
  309. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 衆議院の法務委員発信が不可と思っていて、参議院の方の説明では着信が不可という説明を私たちは受け続けていたんです。  では、松尾刑事局長にお聞きします。  TWSアナログ回線の場合、盗聴に使うということはあるのでしょうか。
  310. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、今申し上げましたように、通常の状態でありますと、通信しているところへ割り込んで内容を聞くことは可能ですが、待ち受けすることはできませんので、アナログ回線の場合にはTWS試験制御装置と言うのでしょうか、これを傍受の機械というふうには想定していません。午前中に申し上げましたMDFという主配線盤のところが一番容易でありますし、わかりやすいということで、ここで傍受することが想定されているということであります。
  311. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は、携帯電話を盗聴するような技術開発よりはTWS着信を可能にする技術開発の方が恐らく簡単だろうとは思います。  ところで、申し上げたいのは、衆議院の法務委員会NTTの視察に際しては、アナログデジタルを分けないでTWSで盗聴するというふうに説明しているんです。MDFの部屋はとても狭い、ここに人がいてお茶を飲んだりコーラを飲んだりできるような状況ではないからTWSデジタルアナログもやるのだという説明をしているんですね。  そうしますと、衆議院ではでたらめの説明をしていたんでしょうか。どうなんでしょうか。説明のやり直しが必要だと思いますが、衆議院に対して。いかがですか。
  312. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 果たしてそのような御説明をしたのかどうか定かではありませんが、先ほど申し上げましたように、条件の設定いかんによって答えも違ってきますので、そこの技術者がどういう理解のもとで、どういう条件のもとで説明を申し上げたかというのを詳細に聞かないと、間違ったのか、あるいはその段階では一つの状況下である説明をしたということで、誤解というより正しい説明だったのかということはなかなか私からお答えするのも適当ではないのかなと思っています。
  313. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 今操作できる人は、これは衆議院の法務委員会、七月二十三日ですが、TWSは一万五千人、PTTは約一万名というふうに郵政省の天野政府委員が答えています。この法務委員会で、ですからTWSについての評価がかなりもめました。TWSで盗聴できるんだ、いや、できないんだということだったんですが、結局、松尾刑事局長からすると、丸、三角、バツというのは説明の仕方によって丸にもなり三角にもなりバツにもなる、そういうことでよろしいですか。
  314. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的な内容は申し上げましたので、その内容ということであればそのとおりでございます。
  315. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 衆議院の法務委員は皆かたくTWSで盗聴できるというふうに思っていますので、衆議院、参議院合わせて、今実態としてはこうだという説明をし直す必要があると思います。  では、次に、内藤さん、そして橋本さん、両方の委員が携帯電話について聞かれました。私自身も実は非常に驚きまして、一番初めに、今携帯を使った集団密航事犯がふえている、携帯を使った薬物事犯がふえているというので、だから盗聴法だと言われて、保坂展人さんの盗聴事件が起きて、いやいや、携帯は盗聴できないと言われると、これは前提が違う、そんな話は聞いていなかったという思いでいます。  つまり、一番問題な携帯電話が盗聴できないのであれば、この法案は白紙に戻すべきだというぐらいに私は思っています。一番必要だと言ったことが今の時点で技術的にはできないというふうに技術者もおっしゃっているわけです。松尾刑事局長、その点について先ほどからも質問がありましたが、技術開発の見通しはあるんですか。
  316. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 携帯電話傍受が極めて重要だということはおっしゃるとおりだと思います。  技術的にできないという表現、確かにあれはできないというか難しいということを参考人がおっしゃっていたことも、またそれは私も聞いておりましたので理解しておりますが、先ほどからお答えしているように、現在、携帯電話の件に関して業者が開発している機材というのは、これは傍受するために開発しているわけではございません。携帯電話通信を適正に行う、そのために必要な機材を所有しているということでありますので、それで傍受をしてくれというと難しい点がいっぱいありましてという話になります。参考人の御意見あるいは表現の中には、今私が申し上げたような状況を想定して非常に困難な場合が多いんですということでございます。  確かに、現在の携帯電話を行っている通信事業者の持っている機材あるいは技術をもちますと困難な場合もあるかと思います。それは参考人の御意見のとおりだと思います。ただ、我々がこの法案を立案する過程におきましては、それでは傍受前提にして機材を開発するということであれば、それは技術的に可能かと、あるいはその費用は、いわゆる許される範囲内といいますか、極めて莫大な金がかかると、こういう話になるとこれは事実上できないことになりますが、いわゆるそれほどの金額でなくできるのかということについては、それは何回にもわたって技術者から聞いております。その結果の我々の結論は、携帯電話通信傍受は可能である。法案成立後、実施までに一年あるわけでございますが、一年間あれば、技術を開発し、機材を開発する。また、それなりに、その際には通信事業者からの任意の協力をいただく必要はもちろんあるわけでございますが、そういったことも含めまして十分に可能であるというふうに考えている次第でございます。
  317. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 この間、J―PHONEの方は億単位かかるというふうに言いました。携帯電話はさまざまな会社があります。法務省は、現時点においてそのコストは幾らというふうに試算していますか。
  318. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的に試算しているわけではございませんが、例えば検察庁なり警察なりの予算がつぶれてしまうというほどの金額ではないというふうに思っています。
  319. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 具体的に詰めていないわけで、将来的に可能だろうというのでは、私はこの法案は、大げさに言えば白紙に戻していただきたい。やるんだやるんだと、大物を捕まえるんだ、だから携帯をやるんだと言って、携帯は今の時点で技術的にできないと言われたら、白紙に戻してくれというふうに思います。私は、使っていない携帯をあすから使おうかというふうに思うわけですから、それはひどいんじゃないか。結局この法律、今の時点でもすごく抜け道がある。きょう午前中に世耕さんが、ここでは教えられないけれども抜け道があるというふうにおっしゃっていましたけれども。  それからもう一つ。覚書の中にありますが、衛星携帯電話があって、それに関して松尾刑事局長は衆議院の法務委員会で、傍受できない、盗聴できない、技術的にできないということをおっしゃいました。そうしますと、これは六十万ぐらいかかると言われていますが、私は悪い人はこれを使うだろうと。国会議員もぜひこれを買った方がいいのではないかと思いますけれども、一台六十万するというふうに言われますが、私は、結局やっぱり大物あるいは悪い人はこういうものを使うだろう。そうすると、暗号も使えない、予防もできない、何もできないとっぽい市民が盗聴されるというふうに私は思います。  ですから、その衛星携帯電話について今、現に傍受できないわけですから、そうしますと、結局法律をつくっても必ず明確な抜け穴がある、これについてはいかがですか。
  320. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) イリジウム通信というものだと思いますが、これについては、現在の技術ですと、業者の持っている技術といいますか、これだと傍受は難しいということは申し上げました。ただ、本案成立後、この点についても、技術的な開発の可能性の有無、それから、この通信自体が今後このように固定的な形で行われるかどうかという点も注目していかなければならないと思います。  全体として技術的な問題を言えば、現在の携帯電話で駆使されているような技術について、傍受という観点から見て、これを技術的に傍受可能な状態の機材を開発するということはそれほど難しいことではないし、金額的にもさほど高額に当たらないというのは、通信事業者等からのアドバイス等を受けて、我々もそう理解しています。  例えば、先ほども午前中申し上げましたが、現在の難しさの一つに、通信回線が自動的に切りかわるというふうに携帯電話の場合になっています。Aの携帯電話が使っていた現に通信中の回線でありましても、Bの携帯電話が割り込んできてそちらの方が優先される場合もある。そうなると、Aの携帯電話で使っていた通信回線は別の回線に切りかわる。どうもこれは自動的に行われるようでございますが、そうした場合でも、傍受ということを前提に機材を開発するということであれば、一定の、例えば十回線ある中で、ではどこの回線にそのAという携帯電話通信が移ったのかということについて瞬時に識別する装置をつくることはさほど難しいことではない。ただ、現在、通信事業者の間でそれは必要ありませんので持っていないということだけの話でございますので、そうした技術の開発と機材の開発というのは今後必要なことになってくると思います。一年あれば十分に準備できると考えております。
  321. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 大物を捕まえるという前提法律をつくるというふうに聞かされていたのですが、法律ができ上がる時点でいっぱい抜け穴があるということが今の時点ではっきりしていると思います。だとすると、結局何のための盗聴制度なのかという根本に戻るわけです。  それで、インターネットと盗聴についてお聞きします。  法務省は、インターネットを盗聴する場合、どういう方法を具体的に考えていらっしゃいますか。
  322. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 午前中にも申し上げましたが、プロバイダーのところにありますPOPサーバーというところでメールアドレスで特定した、つまり郵便受けを特定して、そこに傍受されるものを瞬時に同時にコピーするという形での傍受を予定しています。
  323. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 午前中に、電子メールのコピーをほかの場所へ転送するということもおっしゃいました。  ほかの場所へ転送する、ほかの場所というのはどういうところですか。
  324. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その場合は、我々の捜査機関としてはそれは想定しておりません。転送する場合にいたしましても、まずAというメールアドレスの郵便受け、ここに入ってきて、これが転送されるというその段階で捕まえることは技術的に可能でございますので、それがいかように転送されてももとで捕まえるということでございますから、そんなややこしい方法をとらなくてもそれは可能でございます。
  325. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 松尾刑事局長は午前中に、例えば非常に小さなプロバイダーのところで立ち会いとかいろんなことが難しければ転送するというふうにおっしゃったんですけれども、具体的にどこへ転送するんですか。
  326. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この場合でも、基本的にはその通信事業者の立会人が複数いる場合には全員というわけではございませんが、小さいプロバイダーでありますと、やはり一人は当該通信事業者技術者に立ち会ってもらう必要がどうもあるんだろうと思います。  したがって、その施設がどうも狭くてそこでなかなかできない場合は、例えば直近の傍受機器を置けるところということが当然考えられるわけでございまして、線をつなぐなりなんなりすることもありますし、場合によりましたら、その場合には転送というやり方でそちらへ送るということもあり得ると思います。  ただ、基本的には、そのメールアドレスで特定したPOPサーバーの特定の受信、それを捕まえればいいわけですから、あとは技術的に解決する問題だろうと思っています。
  327. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ほかのところへ転送、警察へ転送ということもあるかもしれませんが、そういう場合、立会人はどこにいるんですか。
  328. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 警察への転送はあり得ないと思います。
  329. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 でも、別の部屋に、条文上あり得ないとはどこにも書いてないわけですが、世耕さんの言うように、一万歩譲って別の部屋にあるコンピューターに転送する、その場合、立会人はどこにいるんですか。
  330. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その場合でも、場所設定する際に裁判所令状で最も適当な場所ということになるわけです。それは、立会人がもちろん何人かいる場合には交代でそこに入ってきて立ち会ってもらうわけですから、そういうスペースも要るでしょうし、捜査員も単数ということはなかなかないわけですから、複数いる場合が多いと思います。そういった者がそこで作業できる、つまり傍受という捜査作業ができる場所ということで、しかもそういったことが可能になり、かつ適当な場所ということですから、それが警察ということはあり得ないということです。
  331. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 警察でもなく、プロバイダーのところでもなく、では一体どこに転送するのだろうというふうにも思いますが、立会人はどこにいるんですか。
  332. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それは傍受する場所におります。
  333. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 転送先ということでよろしいんですね。
  334. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 機械の状態等、その部屋の設備からいってとても何人も入れないような場合には、例えばこれは想定されますが、どこか直近で部屋を用意できるところということもあろうかと思います。あるいは、業者がそのオフィスしか持っていないということでありますと、例えばそのビルの中の適当な場所を拝借するなり、あるいはそれがもし無理ならば、直近の公共施設といいますか、そういうところの部屋を借りるなり、それは工夫のしようで、業者との話し合いの問題だろうと思います。その上で、そこに立会人がいて受信をするということになります。
  335. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 プロバイダーが一人で経営している場合、その立会人はだれになるんでしょうか。
  336. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そういう場合も仮に想定いたしますと、まずPOPサーバーに傍受の機械を取りつけるということは、一人で経営している経営者の事業者にとりましては、自分の機械が大丈夫かなというのがありますし、変なものに接続されないかな、ちゃんとした接続をしてくれるかなと、恐らくそういう強い関心がおありだと思いますから、立会人の一人は業者だと思います。  ただ、一人しかおりませんとあとの作業ができませんので、その場合には、その事業者と話し合って、例えばこの時間帯のところはだれ、あるいは冒頭のここは事業者、あとは消防署の職員なり、その場で決められた立会人と交代しつつやっていくということが想定されるだろうと思います。
  337. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 転送した場合の立会人は一体何を立ち会うんでしょうか。
  338. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 立会人の役割は、基本的にはこれまで述べていた役割と全く同じでございます。  機材がちゃんと特定された通信通信内容傍受するように接続されているかとか、あるいはその場所でメールを立ち上げて、そのメールが該当するのかどうかという判断をすることになりますが、そういう作業をやっているかどうかとか、そういったことでございますから、プロバイダーの大きな事務所でやる場合と転送先でやる場合と基本的には変わらないというふうに御理解いただきたいと思います。
  339. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 小さなプロバイダーの場合、いかなる形であれ立会人というのは非常な負担になるだろうというふうには思うんですが、もしそのプロバイダーが転送するのを拒否した場合はどうなりますか。
  340. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは、拒否されないようにいろいろ説得するということがまずあるわけでございますが、いずれにしても、非常に厳しい環境でなかなか難しいということになりますと、転送ではなくてそれを可能にする方法、例えば、小さい業者のPOPサーバーから何らかの形で線を引いて、転送でない形でそれが落ちるように、そういうことが技術的に可能であればそういうこともまた開発されるんじゃないかと思います。  つまり、それはPOPサーバーのメールアドレスで特定された郵便受けに入るメールが機械的に傍受する機械に移ればいいわけですから、そういった技術は、私は素人ですけれども、それはそれほど難しくないんだろうと思いますので、転送だけに限らないだろうと思います。
  341. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 プロバイダーは、転送であれ何であれ、依頼者との関係で信用をなくすので、当然ですが非常に抵抗するだろうというふうに思いますけれども、弱小であれば、小規模であればあるほど警察に極めて抵抗しづらいだろうというふうにも思います。  国会の報告義務について議論がありましたが、アメリカのワイヤータップ・レポートと随分違う条文になっております。御存じのとおりアメリカのワイヤータップ・レポートはかなり詳細で、令状一件ごとに、発付した裁判官の氏名、盗聴期間、対象犯罪、盗聴方法、盗聴された通信数と犯罪関連通信数、逮捕者数、有罪者数、要した経費の金額というものをきちっと記載する。一件一件のチェックが可能です。  しかし、日本の二十九条は似て非なるものでして、先ほど内藤さんがざっくりとおっしゃったとおり、一件一件ごとのチェックはありません。ですから、何件通話をしたか、それから、令状の発付の件数とかそういうのはわかるにしても、一件一件のチェックはできません。  アメリカのワイヤータップ・レポート並みに国会報告を一件一件出すということについてはいかがですか。
  342. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 国会への報告でございますが、先ほど内藤委員の御質問にもお答えしました。  今回の法案提出後いろいろな議論がございました。また、この通信傍受について、国会での御議論以外にも、マスコミあるいは一般市民の中に一般的な不安感といいますか、そういうものがある程度部分で強く存在することもよくわかっております。そうしたこともありますので、国会への報告でございますが、ここの二十九条に文言として書かれているもの以外にもいろいろ事項を考えていきたいと思っております。  例えば、全然該当性のある通信がなされなかった傍受というものも理屈の上では考えられるわけでございますが、そういったものについての件数等にとどまらず、具体的にはどういう状況であったのかということが国民、国会にもおわかりいただけるような内容の報告もできれば盛り込みたい。新しい通信傍受システムでございますので、やはり十分に国民の理解を得る、あるいは国会での今後の論議についても、それに十分資するような資料として有効に機能するようにその内容については充実させたいと思っています。基本的には、アメリカのワイヤータップ・レポートのそれぞれの項目を参考にしていく、それに我が国のいろいろなそうした判断をつけ加えていきたいと思っております。  ただ、一点だけ、後ろ向きで申しわけないんですが、コストの点は、いろいろ検討してみたんですが、なかなか難しいこともございます。通信傍受の捜査だけでなくて、これまでにも、例えば誘拐の場合の大がかりな捜査だとか、いろいろなもので物すごい経費がかかる捜査はいっぱいございます。そうした場合に、ではどうなんだと、こういう話とか、それから人件費はどういうふうに算定するのかとか技術的な問題がございますので、具体的な金額というところまで出せるかどうかはわかりませんが、そういった難しさはあることもまた御理解いただきたいと思っております。
  343. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 一件一件について出していただくように、きょうは確約はとれませんでしたが、また食い下がってぜひ確約をとりたいと思います。  それで一点、先ほどちょっと言い忘れたことで、参議院と衆議院の二つの示しているものが、おもしろいことは、衆議院にあって参議院にないもの、消えているものがあります。下の注です。「FAXやデータ通信の場合には、その通信方法を解析しないと識別不可(リアルタイムでは分からない)。」という部分が参議院になって消えております。これは何で消えたのでしょうか。
  344. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 申しわけございません。私、その資料の流れといいますか、その経過の中で関与しませんでしたので、それぞれの表現の違いについて今先生から御指摘いただいて初めてわかる程度で、なぜ消えたのかというのは、むしろ作成者が何らかの判断があったんだと思いますが、それ以上のことはちょっとお答えいたしかねます。
  345. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 これは先ほど世耕議員の意見もありましたし、参考人からも出ました。やはりファクスやデータ通信の場合にはその通信方法を解析しないと識別不可と。リアルタイムをどう理解するかということもありますけれども、これは衆議院ではあったにもかかわらず参議院になって消えているというのは、どうして消えたんだろうというか、おもしろいというか、というふうに私は思いました。  最後に、もう時間がありませんから、衆議院は、例えば私と同じ社民党の保坂展人さんは、二回NTTの見学に行っております。TWSに関して、衆議院には、デジタルアナログとを分けずにTWSで盗聴するというふうに説明がなされています。  ですから、ぜひ衆議院に対して、今の参議院の議論をもう少しきちっと、そうではなくて今の現状ではこういうことがわかったということをある程度説明する必要はあるのではないか。衆議院の議論は、まだインターネットなどについて不十分なまま残念ながら法案が通過したというふうに私は思っております。参議院の方でもこれだけNTTの中のことについて議論しましたので、私もTWSを操作してみたい、壊さないようにしますが、とも思いますので、ぜひ視察をお願いしたい。これは委員長にお願いいたします。  以上です。
  346. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 最初に、組織犯罪防止三法案の審議をめぐる報道の姿勢について私の意見を申し上げてから質問に入りたいと思います。    〔委員長退席、理事大森礼子君着席〕  この問題の第一は、けさほど来、世耕委員が御指摘になっておりました五月三十日の朝日新聞、「電話傍受 NTTの外でも可能」という見出しの記事でございますが、この記事は明らかな間違いであるということがはっきりしたわけでございます。間違った論理の上でいろいろ質問されるということも、これも大変迷惑なことでございまして、またそれを前提政府側を追及するということもおかしなことになるわけでございます。そういう意味では大変国民の判断をも混乱させるという意味がありまして、非常に問題であるという指摘をまずしておきます。  それから第二点は、一昨二十七日に参考人質疑を行ったわけでございますが、それについて昨日二十八日に各紙が報道したわけでございます。全紙というわけじゃなくて、朝日新聞と毎日新聞と東京新聞、東京のメディアではその程度報道だったんですが、朝日新聞が、「携帯電話傍受は困難」 技術者ら意見」という大きな見出しで、「ネット業者も懸念」というので、一面トップにこの記事を持ってこられた。それは報道の自由、表現の自由でございますので、そのことについて私がとやかく批判を言う立場ではございません。  しかしながら、一連の朝日新聞のこの報道を見ていますと、私も表現の自由、それから国会で発言する自由を持っていますので申し上げますが、我々の法務委員会の審議を報道されることはありがたいことですが、この朝日の一連の報道を見ていますとそうありがたがってもおられない、何か特定目的で公正さを欠いた誘導報道をしているのではないかという印象を私は持ちます。朝日がこれだけの報道をするについては、それなりの覚悟の上のことだと思います。これは率直に言いまして、朝日新聞はそういうふうな意図はないと思いますが、結果として、若干の時代錯誤や問題意識の錯誤があったとすれば、過激派とかあるいは国際的な組織犯罪、現代社会の病的な凶悪犯罪から、日本の社会、人類社会を壊そうとしているそういう人たちを利することになるんじゃないかと私は非常に危惧するものでございます。そういうことにつながるという報道のあり方の問題点を私の意見としてまず最初に指摘させていただきます。  質問に入りますが、保坂衆議院議員が告発をされましたいわゆる盗聴事件、その後刑事局長の答弁の中で、特捜も捜査していると思いますが、法務省としても調査するという発言があったんですが、どういう状況か、現時点での状況を説明していただきたい。
  347. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的な告訴があって現に東京地検の特捜部が捜査をしているということは承知しておりますが、法務省としては、この通信傍受法案を現に御審議いただいているということでございまして、その中で質疑等に出ておりますTWSとかPTTとか、そういった言葉が出てくるような内容傍受が現に行われて、それが告訴の内容になっているということでございましたので、技術的な側面からこの点については無関心でいられないわけでございまして、したがいまして技術的な側面の問題に限って調査検討を行っております。  技術的な面に限って申し上げますと、携帯電話機と無線基地局との間のマイクロ波、無線ですね、これを傍受して盗聴するということは極めて困難であります。それから、携帯電話とあるいはまたは固定電話の交換局等におきまして交換機に接続するなどして通信傍受することは通信事業者等の協力なくしては不可能であるということは、我々は技術的な問題としては承知しております。  それでは、保坂議員の例の盗聴の告発内容に書かれているようなああいう手法が果たしてどうなのかということでございますが、技術的な側面から申し上げますと、少なくともPTTを操作してTWSアクセスし盗聴しましたというような記載は、これは不可能なことを書いているというふうに我々は理解しております。それではなぜあのようなことになったのかは、これはもう今後の捜査の結果をまつより仕方がないだろうというふうに考えている次第でございます。
  348. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 保坂議員の告発の内容でのいわゆる盗聴というのは技術的に不可能だというお話だと思いますが、そうしますと、これは推測を交えるとよろしくないんですが、結局、電話ですから二人がいるわけですが、どっちかの周辺で何らかの方法でその話をつかまえたといいますか、とらえたといいますか、盗聴したといいますか、そういうことになると思います。  この組織犯罪防止三法案反対する集会がいろいろ開かれておるわけでございますが、その中、集会で配付された資料を点検しますと、過激派の中で盗聴が行われているというような内容の記事があるんですが、そういう事実を法務省として掌握しているか、あるいはそういったこととこの保坂議員の問題との関連性というのはあるのかどうか、その点ちょっとお聞きしたい。
  349. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 私、以前の答弁の中で、保坂議員の告発事案についてでございますが、通信傍受したということも可能性としてはそれはあるのかもしれませんが、他方で、この通信の当事者の両方の会話をたまたま耳にしたといいますか、あるいは録音したということもあるかもしれません。そういったことで、その会話内容の一部を起こす、あるいはあたかも傍受したかのような体裁をとってそれを外部に出すというようなことも可能性としては捨て切れないものですから、そういったことも当然可能性の中には含まれるわけでございまして、最初からそれを捨ててしまう、あるいはそういった可能性を無視するということもいかがなものかというようなことは、たしか衆議院の法務委員会だったと思いますが、申し上げております。  したがいまして、いわゆる盗聴なのかどうかということも、基本的なところ、疑問としては私は個人的にはございます。盗聴以外の方法でもああいう内容についての会話を復元することは可能な場合があろう、そういった可能性についても恐らく検察当局はあらゆる可能性を捜査して真相解明に努めているというふうに思います。
  350. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 そうしますと、保坂議員も被害者そのものでございますので、保坂議員の周辺ではそういうことはまずないと思いますが、やっぱり平河クラブという記者クラブの中の問題が一つあって、これは調査、捜査されたわけでございますが、その問題のテレビ朝日のデスクの隣のデスクというのはどういう社かおわかりでしょうか。
  351. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 私の立場からいいますと、これ以上具体的な捜査にかかわるようなことまで言及するのは適当じゃない場合もございまして、今のお尋ねはまさにそこを踏み越えていると思いますので、その点はまた御答弁をいたしかねるというふうに思います。
  352. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 わかりました。今のお話を理解します。  ただ、これは見れば一目のことでございまして、たしかテレビ朝日、いわゆる系列で並ぶわけですから、テレビ朝日の右隣は朝日新聞という、こういう事実があるということを申し上げて、次の質問に入ります。  集団密航事件についてお尋ねしたいと思います。  平成九年、十年及び十一年の上半期での集団密航事件の実情と傾向はどういうものか、警察庁、お答えいただきたいんです。
  353. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ことしの上半期に検挙した集団密航者、六百九十二人でございます。これは昨年同期と比べて八十九人の増加になっております。それから、昨年一年間に検挙した集団密航者、千二十三人ということでございます。一昨年は千三百六十人ということでございまして、ことしは去年を上回るペースで今推移してきておるというようなことがございますので、このままの形でいきますと、三年連続で千人を超える多数の検挙が見込まれるというような状況にあるわけでございます。  その内訳を見てみますと、中国人による密航というのが昨年の場合は検挙者全体の人員の約八割強でございます。それから、ことしは上半期までで九割強、一昨年は九割弱という状況になっておりまして、いわゆる蛇頭というふうに呼ばれております密航請負組織が介在しておりまして、韓国船への洋上での乗りかえとか、あるいは船底に隠し部屋をつくった船を使用したりといったようなことで、その手口も大変悪質巧妙化しておる、こういう状況にございます。  したがいまして、警察におきましては、海上保安庁等関係機関とも連携をいたしておりますし、それからまた沿岸住民の方々の御協力も得たりということで、水際検挙に努めておるということでもございます。それからまた、改正入管法で集団密航助長罪というものができ上がっておりますので、この積極的な適用というようなこと等によりまして、この組織の摘発に努めておるというようなことでございます。  ただ、複数の国にまたがる組織による犯行だというようなこともございます。それから、今申し上げたようないろいろな悪質な手口も用いておるというようなことがございますので、なかなか検挙も容易ではない、こういうようなのが実情でございます。
  354. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 これも覚せい剤同様、大変な社会問題、それから新しい形の凶悪犯罪につながるものだと思います。  検挙した数のふえていることもさることながら、もちろんこれは検挙できないものも大分あると思いますが、その検挙に至らないものの状況に対して警察当局はどのような認識をされていますか。
  355. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) いわゆる検挙に至らない集団密航件数なり人員なりということでございますけれども、正確な数字の把握というのは大変困難でございます。検挙した集団密航事件の捜査の過程で、別の未検挙の集団密航事件を把握するというような場合もあるわけでございます。  例えば、去年の五月でございますけれども、これは千葉県警が検挙したものでございますが、四十五人密航者を逮捕しまして、その後の捜査をしましたところが、その四十五人の密入国を手引きした蛇頭という組織が、捕まるまでの去年の一月から五月までの間に約百九十人の中国人を密入国させておった。つまり、四十五人のほかに約百九十人の中国人を密入国させていたということがわかった、こういうような事例が幾つかあるわけでございますが、なかなか全体の数というのは把握するのは困難だと。ただ、相当な数に及ぶであろうというふうには考えております。
  356. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 今、蛇頭という名称がしばしばお話の中に出てまいりますし、我々もマスコミ等で名前だけは承知しておるんですが、その組織の実態、概要は必ずしも私たちは理解していないわけなんです。    〔理事大森礼子君退席、委員長着席〕  また、密航問題だけじゃなくて、この間、川崎の数人の中国人の殺人事件ですか、これも蛇頭が絡んでいたというような報道もありますが、蛇頭という組織の実態はどんなものか、御説明していただけませんか。
  357. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) この蛇頭というのも必ずしも全容を解明するに至っておらないわけでございますが、蛇頭、スネークヘッドというふうに呼ばれておるわけですが、これは中国から日本等へ密航を請け負う組織の総称でございます。  総称でございますので、これには数多くの独立した組織があるわけでございまして、しかも個々の組織の構成員の入れかわりが大変に激しいということでございます。さらに言えば、それぞれの異なったグループの離合集散というのも激しいというようなこと、かつまた非常に秘密性の強い組織だというようなことがございまして、なかなか組織の全容解明に至っておらない、こういうようなことでございます。  ただ、これまでの捜査の結果でわかっておりますところを申し上げますと、蛇頭という密航請負組織でございますけれども、この請負料というものを入手することを目的にしまして、中国でまず密航しようとする人たちの勧誘をするという役割、それから引率をするという役割の人、それから船の調達をする、そしてその船で運ぶということ、それから今度は日本での密航者の受け入れをするという役割、それからこの密航者を隠匿する、そういうような一連の行為を一つのグループが行うというような組織でございます。  こういう組織が存在しておるがために、集団密航事件が多発しておる原因になっておるというふうに思っておるわけです。  日本におきまして受け入れ組織を蛇頭はやはりつくっておりまして、日本国内で広域的に活動しておるということでございますし、さらに申し上げますならば、一部我が国の暴力団との連携というのも見られる。それから最近では、今、先生御指摘ございましたけれども、請負料の取り立てをめぐってでございますが、監禁だとか誘拐だとかあるいは殺人等々の凶悪事件まで発生させておるというようなことがございます。  例えば、昨年の十月ですが、これはほとんどが密航費用を支払えないという中国人に対してなのでございますが、金づちだ、こん棒だ、手拳だということで、殴ったりけったりという暴行を加えて殺害させるというような事例等も幾つか見つかっておりまして、そういうことでの検挙事案等もあるということでございます。
  358. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 蛇頭なんかの場合に、集団密航という犯罪だけでなくて、かなり悪質な犯罪へ波及してそれを起こしているというお話でございますが、恐らく今までの取締法制度でなかなか対応できない部分があると思います。現行制度が想定していなかった問題点は相当あるんですが、いかがでございましょう、今の取り締まり諸制度でこういった蛇頭という新しい凶悪犯罪組織に対して対応できるんでしょうか。
  359. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 先ほど来御答弁させていただいておりますけれども、集団密航事件のほとんどがこういう蛇頭を初めとする国際的な密航請負組織というのが関与しておるということでございます。  しかも、ただいま御答弁いたしましたように、その役割分担がそれぞれ国をまたがってでき上がっておって多数の関係者がおるというようなことになっておりますので、例えば一つの密航事件というものを実行するに当たりましても、その首謀者というのが海外におるという場合が大変多いわけでございます。そうすると、電話等、相互の連絡に対応するというようなこと等も密行的に行われておるというようなこともございます。手口が大変に巧妙だということも申し上げました。あるいは暴力団とも連携しておる者が一部見られるというようなことで、そうした連携も増加しておるというような傾向にもあります。  そこで、私ども、水際検挙ということで、これに大変力を入れておるところでございますけれども、やはり暗数があるだろうというふうに思っておるわけでございます。仮に犯行に関与した者を一部検挙しても、首謀者の検挙とかあるいは犯罪の全容解明に至るような供述が得られないというような困難な状況にあるということでございます。
  360. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 となると、やはり通信傍受システムというのはどうしても早急に必要なものだと私は思います。  携帯電話傍受方法については、一定の期間、一定の研究によってそのシステムを整備してもらわないといけないわけですが、こういった巧妙、悪質、そして国際的に広がっていく犯罪、これはもう日本人だけじゃなくて人類の敵だと思うんです。  確かに、基本的人権というものも大事でございます。通信のプライバシーも大事でございます。しかし、そういう犯罪が次から次へと、我々の日本人だけの社会でなくて、大きくグローバルに行われている現状の認識というのは私は深刻なものだと思います。  何で私がそういうことを申し上げるかといいますと、平成九年十一月三日に高知県の以布利港というところで蛇頭の集団密航事件が摘発されております。これは私の生まれたすぐ近くでございます。そして最近も、宇和島から四国の西南端、きのうからきょうにかけて大雨が降っておるんですが、あの地域の海岸というのは、住民の人たちが何かおかしな船が陸地に近寄ってくるとかということをしばしば見ていて非常に不安感を持って、現実にもう私たちの生まれたところの地域というのはそういう住民の不安感というのが非常に募っております。  ですから、ひとつ大臣、何とか早く、もちろん法律を成立させることは我々の仕事なんですが、成立をさせていただければ、それを早く整備して、早くそういった凶悪犯罪の防止なりあるいは対応に役立てるように要望しますが、ちょっと御感想をいただいて終わりたいと思います。
  361. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 全く同様の考え方を持っております。  私は佐賀県でございますが、佐賀県でもつい最近、初めてのことですけれども、かなり大量の密航の人が来たということで大騒ぎでございます。同じような不安を住民が今抱き始めております。どうか委員の先生方、御理解の上、この法案が一日も早く成立するようにお願い申し上げたいと思います。
  362. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 通信傍受、いわゆる盗聴というものをやる権利、これをやるということは巨大な権力を手にすることであります。この法案が通りますと、この権力を一公共機関が独占するということになるわけです。  そうなりますと、この法案をつくるに当たっては、一番重要なテーマというのは、どれだけ乱用の歯どめができるかというところが最大のテーマだと私は思っているんです。ですから、今たくさんの人が法案反対しておりますけれども、その人々の反対理由の九〇%はやはり乱用のおそれということなんです。そうなりますと、ではこの法案がそのために十分に具体的な歯どめが明記されているかということになりますと、かなりあいまいであるということで問題になっているわけです。  普通の法案と違いまして、この法案というのは、非常に運用面と技術面というところが重視されなきゃならないという非常に特殊性を持っていると私は思うんです。しかしながら、大変法案が普通に読んでもことごとくわかりにくいものですから、いろんな質問をします。しかし、答えをいただいてもかなりはっきりしないニュアンス、どちらかというとそういう面に関してはこれから協議したり研究したりというニュアンスのお答えが多いわけなんです。  私は、どうもこれは法案をつくる過程が逆だったんじゃないか。まず、そうした技術的な問題というのが重要なんですから、そこのところを詰めて、運用とか手法とか技術面の知識を獲得しながら構築していくという形で法案をつくらなかったために、今こうして非常に矛盾に満ちた質疑が続いているのではないかというふうに私は考えているんです。  そういうような観点から、やはり不明な点、要するにこれからこれからというんじゃだめだし、その点はお任せくださいと、そして法案に違反するようなことは、そんなことはあり得ないというような、そういう根拠でもってこの法案を見逃すというわけにはいきません。  最初の質問です。これは大臣にお聞きします。大臣でもわかる質問です。  先ほど橋本議員も福島議員もお聞きしたんですけれども、携帯電話について盗聴可能な技術開発をするというふうに言っているわけなんです。これはお金がかかるので、どのぐらいかかるんだという質問があったんですけれども、お答えがはっきりしないんですけれども、再度確認したいんですが。
  363. 陣内孝雄

    ○国務大臣(陣内孝雄君) 金額についてということでございますと、今これだけというふうな確たる御返事はいたしかねます。
  364. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 わからないということですか。  しかし、この法律は成立したらば一年以内に施行しなきゃいけないんですよ。そうしたらば、来年度予算を要求しなきゃいけないのに、この七月末の時点でわからないという話になると、かなりこれはふまじめな話じゃないかと私は思うんですが。
  365. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 具体的な金額を言われますと、やはり大臣のお答えになります。  ただ、私も先ほど申し上げましたように、既にこの法案の立案の段階から携帯電話傍受の問題を含めまして、技術的な可能性の問題あるいはその技術を開発するための経費、その期間というようなことは、それなりの通信事業者等のアドバイスを受けながら、警察当局でもいろいろ検討をしているということでございまして、法案が成立しますと、それを実現するための予算措置というのが当然必要でございます。それを予算要求の中で盛り込むことになりますが、具体的な金額としては、先ほど申し上げたように、途方もない金額ですと我々としても、技術的には可能だけれども結果的には不可能だということになってしまいますので、可能だということを申し上げないんですが、そうした途方もない金額がかかるような技術の開発ではないということでございます。
  366. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 携帯電話にかかわらずさまざまな傍受機器というものが必要になってくるわけですよ。そういうことに関して詰めている、そして来年度予算に間に合うというお答えですか。
  367. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これは成立後一年という期間を準備にかけさせていただきますが、その後に施行されますので、施行の時点ではそういう技術、機材それから人材の養成ということになりますと、これは逐年強化していくということになろうかと思います。  現在警察におります通信技術専門家といいますか、先ほど警察庁の刑事局長からもお答えしましたが、相当な人数おりますが、新たに通信傍受のための訓練もする必要があると思いますし、そうした訓練をその一年間にしながら機材の開発をしていくということでございます。  したがって、予算要求には当然、この法律が成立した場合の技術的な開発費用、装備の調達費用等については要求するつもりでおります。
  368. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 では次に、警察施設の中で通信傍受ができるかどうかという質問で、これはこの前の委員会でも私がいたしました。  これは二つの面がございます。これは技術的な面あるいは法的な面ということでした。  技術的な面に関しましては、七月二十七日の参考人質疑で四人の参考人にお聞きしたわけです。この場合は、携帯電話的な装置でもってやるということは非常に困難である、リアリティーがないということは言われましたが、通信事業者のところから専用回線をずっと引いてそれをやることはこれはもう簡単である、つまり技術的には可能であるということです。  ですから、それが警察施設であるかどうかということは、今度は法的に問題になりまして、これは七月十三日の法務委員会松尾局長さんから一〇〇%法的にはできないという明言をいただいたわけです。こうなりますと、それをやれば違法ということになるんですか。
  369. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まさに通信傍受をしようとする捜査機関、これをどのように適正担保するか。裁判所としては、最も適切な場所を選び、立会人その他のシステムを整えるわけでございますので、その当の警察の中で通信傍受を行うということは、この法律は全く想定しておりません。  したがいまして、もし仮に、まずそんなことで令状が出るわけはございませんが、技術的には可能ですから、それをやればまさに盗聴しているということになると思います。つまり、法律では許されないということでございます。
  370. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それは盗聴するということではなくて、施設を移すという行為そのものなんです。それが違法かどうかということをお聞きしておるんです。
  371. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 法律は、警察施設を使って傍受をするということはこの法律では許されないと言っています。それが、施設を移すというのはどういう意味だかよくわかりませんが、警察施設を利用して傍受を行うということは許されないというふうに御理解いただきたいと思います。
  372. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 その警察施設ということの定義が問題です。先ほどの福島議員の質問で、転送する適当な場所を探すということになりますと、主体的に探すのは警察ですから、これはもう警察施設になってしまうんじゃないですか。
  373. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) どういう名称で呼ぶかという問題になりますといろいろな見解があろうと思いますが、小さなプロバイダーのところでPOPサーバーから傍受をしたいというときに、机も置けない、あるいはそれなりの人数がいますから入れないというときには、それは別の場所を用意しなきゃいけません。裁判所令状請求する場合に、そういった事情も全部書いて、次善の策としてここでやりますと。その際に、警察施設と書いたら、これは令状は出ません。
  374. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 いや、書いたらではなくて、実質上それはもう警察施設というふうにみなされるんじゃないかということを聞いているわけなんです。
  375. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 警察施設ということになりますと、それは呼び方の問題もあろうかと思います。しかし、実質的には、警察の署なりあるいは警察に附属する施設なり、そういうところでの傍受ということでお答えするならば、それはできないということは何回も申し上げているとおりでございます。
  376. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 つまり、そういうことが実は法案の中にはっきり書いていないわけなんです。ですから、あいまいさ、欠陥法案であるということの小さな一つの例なんですけれども、やはり法的にできないと法務省がはっきり言うんでしたら、警察施設に盗聴基地をつくるということを禁止する法案が必要なんじゃないでしょうか。
  377. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この通信傍受法案の、例えば第三条とか第十一条、第十二条といろいろ傍受の条件等が書いてあるわけでございますが、そうしたようなところをごらんいただきますと、傍受を行う機関の施設そのもので行うということはこの法律では予定していないといいますか、できないというふうにこれは当然読めるということになります。
  378. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 松尾さんが一〇〇%法的にできないと明言したその直後に、私はその法的根拠がどうもわからないので、法務省の担当参事官に来ていただいて法的根拠について尋ねたわけです。そうしましたら、これは、できないという理由は三条三項、十二条、十三条で特定的に言っているし、法案全体もそれを縛っているというふうな回答をいただいたんです。  ところが、七月二十二日の参考人質疑で三人の法律専門家、神洋明弁護士、田口守一早大教授、村井敏邦一橋大教授、そうそうたる法律専門家にそのことを尋ねたんです。この三条三項、十二条、十三条で警察施設に盗聴施設を置くことはできないというふうに読み取れるかということをお聞きしましたら、この三人の専門家は、文理的にはできないとはっきり言っているんです。これは与党が呼んだ人も野党が呼んだ人もみんな一様にそう言うわけです。  そうすると、この大事な前提でもって、法務省法律専門家たちです。そして、一般に選ばれた非常に信頼感のある法律家たちは全部できないと言って、これは真っ二つに分かれる。こんなあいまいのまま法案というものを通していいんでしょうか。この点に関してどういうふうにお考えでしょうか。
  379. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 御指摘参考人でございますが、御質問と参考人の答えといろいろごらんいただきますと、この法案の第三条第三項のみについて、これでそう読めるかというお尋ねでございました。  その点については、これだけでは読めませんということを確かに明確に言っている。それはそのとおりだろうと思いますが、先ほどから申し上げているように、法案の全体の趣旨と裁判官による法的判断を前提にしますと、裁判官が警察署をあるいはその施設傍受場所とする命令を発付することはあり得ないと、田口参考人はこの点では正しく指摘していたと我々は理解しております。
  380. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 これは文理的に読めないと言って、三条三項、十二条、十三条ということを挙げてお聞きしたんです、私の質問は。それに対して、文理的にできないというはっきりと結論的なことを言われたんです。  これは裁判にこの問題が持ち込まれた場合どうなるのか。憲法七十六条第三項で、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」という項がありますけれども、しかし、こうした解釈が要するにはっきり分かれてしまっているというような状況の中で、裁判官というのは、大体判定基準というのはどういうふうに持ったらいいかわからなくなるんじゃないかと私は思うんです。  普通の法律というのは、個々のケースのいろんなニュアンスでの判断の違いはあると思いますが、大きな方向性というのは法曹界はきちっと一致した合意の上でやっていくんじゃないかと思うんですが、それとも、実は一〇〇%法的にできないと答えても裁判官の判断であるから自由であるというふうに考えてこういうふうにお答えになったんですか。
  381. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず、前提としまして、警察署傍受場所とするような令状が出るわけがございませんので、それが裁判所警察署傍受場所とすることの当否が論ぜられる機会というのは私はないんだろうと思いますが、御指摘のとおり、この法案に関する法務省の解釈そのものに裁判所や裁判官の判断を拘束する法的な効果、効力はございません。  それは御指摘のとおりだと思いますが、裁判所等がこの法律が成立しまして具体的な条項を解釈をせざるを得ないということになりますと、国会における論議が、その中には政府側答弁も含めてでございますが、これは立法者の意思がどこにあったのか、立法者はこの点をどう考えていたのかということは当然手がかりとして重要な参考になるということでございますので、ここにおける論議はそういう意味でも大変重要だと思っておりますし、私もそれを念頭の一部に置きながら御答弁申し上げているということでございます。
  382. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは立法上といいますと、法務省が回答したような形のものが裁判官の方向性に影響を与えるという意味だと思いますが、法曹界がこれをできないと言っていることは、もうそれは影響はないというふうに断言されるんですか。
  383. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 条文の解釈というのは、おおむねそんなに狂うことは、異論が出るということはないんですが、場合によりますと、甲説、乙説、丙説といろいろな議論が一つの文言をめぐってされることはまたあるわけでございます。  法曹界がというのがよくわかりませんが、学者の意見あるいは実務家の意見としても分かれることはもちろんあります。ただ、その場合には、裁判官としてはこの法文と、まず立法者の意思という国会内の論議、それから、それまでのいろいろな法理論の積み重ねがございます。また、施行後相当たっている法律については判例の積み重ねも当然あるわけでございまして、そうしたことを総合してお考えいただけるんだろうと思います。  ただ、今御質問の警察施設傍受することは許されるかという問題については、この法案の全趣旨ということで御理解いただけるならば、さほどの異論が出るとは私は考えておりません。
  384. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 私は、この法案警察施設とは何かということがはっきりしないということは大欠陥だと思いますし、また、そこでやっていいかどうかわからないということがやはり法曹界で意見が分かれているということは重大問題であるということと、今の松尾さんの、何かデパートのようなつかみどころのない回答に対しては全く納得できないんです。  ですから、このことは大きく世で問われていかないと大変大きな問題となると思うんです。これは、つまり警察施設でやるということは密室性がなおさら高まってしまい、乱用性に対する疑いというものがまさに増大してしまうわけなんですよ。このことを指摘して、次の質問に移りたいと思います。  第六条の方をちょっとごらんいただきたいんです。これは「傍受令状の記載事項」に関する法文なんです。  法文では、「傍受令状には、被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、傍受すべき通信傍受の実施の対象とすべき通信手段、傍受の実施の方法及び場所、」等々と書いてあるわけですけれども、この中で「傍受の実施の方法」といった場合、電話の場合は大体の想像はつくんですけれども、インターネットに関した場合はどういうふうに記載するんですか。具体的に例を挙げて説明していただきたいんですけれども。
  385. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) インターネット通信傍受する場合ですが、傍受令状の「傍受の実施の対象とすべき通信手段」というところには、例えばプロバイダーA株式会社のPOPサーバー中のメールアドレス、ここに具体的にアドレスがざっと入りますが、このメールボックスに入る電子メールというように対象とする通信手段は書きます。  それから、「傍受の実施の方法及び場所」でございますが、例えば所在地を書きまして、東京都世田谷区どこどこ何番地と、こうなります。このプロバイダーA株式会社本社において、同社のPOPサーバー中のメールアドレス、ここにアドレスが具体的に入りますが、このメールボックスに入る電子メールをコピーすることによるという、この場所方法がこういうような感じになると思います。
  386. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 同様に、この法文の中の「傍受の実施の方法及び場所」と書いてあります。インターネットの場合、この場所というのは具体的にどのレベルを指すんでしょうか。つまり、通信事業者特定の部屋なのか、建物なのか、あるいは住所か、あるいは地域かということなんですけれども、どういうふうに記入をするんでしょうか。
  387. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 令状請求の性質上、場所特定している必要がございます。今申し上げた中には、プロバイダーA株式会社の本社ということで場所特定しているということでございます。例えば、東京都世田谷区だけではだめでございまして、何番地所在のA株式会社の本社でやりますと、こういうことで裁判官に許可をいただくということになります。
  388. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それから、ちょっと関連の質問があるんですけれども、通産省の方をせっかくお呼びしているので、先に時間の関係で御質問します。  一昨日の参考人質問で、インターネット業界を代表する参考人のお二人ともが、やはり本音ではこの法案に対して非常に強い懸念を示されました。これまでそのほかにも私も個人的にいろんなインターネット業者に聞きましたら、やはり具体的に何を要求されているのか、何をしなきゃいけないのか、どれだけの負担になってしまうのか全く法律を読んでもわからない、こんなものいきなりかぶせられたのでは非常に不安である、困る、もうちょっと様子を見てほしいんだという意見が圧倒的なんですよ。  これは、正面玄関から行って各社長に役所がどうだと言われたって本音は言わないと思いますが、本音は実はこれにあるわけです。なぜかといいますと、これは非常に発展途上の産業でありますし、二十一世紀の日本経済の根幹であるということはもう社会的通念になっている分野でありますから、余り妙なことをしないでほしいということが共通した認識だと思うんです。  日本の産業を所管する通産省としまして、このことは十分承知でしょうが、要するに、電話盗聴というものを基準にしながら、そのままコンピューター通信にも法案をかぶせてしまったものですから整合性に欠ける部分がたくさんあるんです。  そうしますと、やはり将来的に産業界が混乱したり萎縮効果があらわれるということが予想されるわけですけれども、この点に関して通産省はどういうふうな感想を持たれていますか。
  389. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 中村先生御案内のとおりでございますが、デジタル革命とも言われるパラダイムシフトが今大潮流としてあるわけでございます。  そういう中で、インターネットを活用した、例えば電子商取引といったようなものも大変な勢いで発達をしております。私ども、ことしの初めに調査をいたしましたけれども、九八年にこの電子商取引が八・七兆円日本でもございました。これが五年後には七十二兆円になるというような試算もあるぐらいでございまして、大変なこれからの経済の発展の大きな起爆剤になっていくものだろうというふうに考えております。  実は、昨年の十一月でございますけれども、内閣の高度情報通信社会推進本部というところで、今後の推進に向けた基本方針というのが決められておりますけれども、そこでも、高度情報通信社会の発展は民間の自由な競争の原動力だということで、政府は民間の活力を引き出す環境整備を行っていくことが大事だというようなことが指摘されているところでございます。  ただ、加えまして、この基本方針では、従来型の犯罪に加えましてネットワークを利用した犯罪等不正行為への対策というのもまた重要なものだということで記述されているわけでございます。高度情報通信社会の形成という光の部分と、それに伴う影の部分のバランスをとっていくということが非常に大事なんではないかというふうに考えているわけでございまして、今度の法律もそういう意味でお考えをいただいているものというふうに認識をしているところでございます。
  390. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 この法案作成の段階で、通産省としてはどういう形で参加して、どのような要求をしたのか、あるいは産業という視点からこれだけはやってくれというようなポイントをきちっと押さえて参加したのか、その点を教えていただきたい。
  391. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 私どもこの法案の提出に当たりましては、閣議で決定をしているわけでございますから、事前の御相談もいただいておりまして、いろいろ内部で議論した結果、同意をした次第でございます。
  392. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 もっと具体的に、この点は守ってくれというようなポイントというものは示したんですか。
  393. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 特に具体的に問題点を示したということはございません。
  394. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それはとんでもない話じゃないですか。今、インターネット業界は物すごく内部で反発しているんですよ。次々と今陳情が来ています。とにかく、電話盗聴はともかく、コンピューター通信に関しては考え直してくれ、もう一回つくり直してくれという要請が非常に強いんです。そういう反発があるということは、やはりこれは通産省のつまりこの法案に対する参加の仕方が非常に無責任だったんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがですか。
  395. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) 最初に申し上げましたように、高度情報通信社会の形成ということに当たっては、もちろんそこから出てくる大変希望の部分と、そこから問題がいろいろ出てくるということは我々も承知をしておりまして、そういう中でバランスをとりながらやっていくということが大事なわけでございます。  そういう意味で、我々は、この法案は趣旨において適切なものではないかというふうに考えた次第でございます。
  396. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 全く答えにも何にもなっていませんし、産業に対する通産省の、将来に対するきちっとした危機感とか方針というのが全く感じられないんです。  ですから、これは法務省だけがやっていいような法案ではありません。やはり郵政省も通産省も、そして法務省もそういうことの詰めというものをきっちりやってから法案を具体的につくるという作業をしないと大変なことになると思うんです。  私は、もう一度この法案をやり直していただきたいということを強く要求して、今回の質問を終わります。
  397. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 三案に対する本日の審査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会