○大森礼子君 公明党の大森礼子です。
きょうは、私にとりましては初めての
質問になりますので、まず最初に、私
ども公明党、そして私がどういう
立場から
質問するかという、これを少し明らかにしておきたいと思います。
昨年三月十三日に当時の与党が提出いたしました政府原案は、これは一言で言えば、あれば
捜査に便利との安易な発想によるものであると思います。証拠収集の方法としての代替性の有無などの検討がなく、
乱用の危険が極めて大きなものであったと思います。そして、公明党は政府原案については一貫して
反対の
立場をとってまいりました。浜四津代表代行が
反対を主張したのも当然でございます。
私たちは、ある
法律案に対しまず賛否を決めなくてはいけません。採決に賛成するか
反対するか。この時点では
反対という態度でございます。政府原案に
反対すること、これがイコール
憲法二十一条二項の例外は一切認めないとか、どんなケースにも
通信傍受を一切認めないということにはなりません。
修正案に
反対する政党で、
通信の
秘密の例外は絶対に認めない、あるいは
通信傍受という手法は一切認めないという主張をするところがありましたならば、明確にこの
委員会冒頭でその旨を明らかにしていただきたい。もしかすれば、基本的
立場は私たちと異ならないかもしれないからであります。また、そのような各会派の見解といいますか、
立場を明らかにすることが以後の
質問の
意味内容を
理解する手助けになると私は考えております。
まず、覚せい剤を初めといたします薬物が暴力団
関係者のみならず
一般の主婦や青少年にまで使用が拡大しているという現実に対しまして、国が対策を講ずるのは当然のことであると考えます。
そして、いわゆるマネーロンダリング規制
法案、これが
犯罪組織による
犯罪収益の剥奪を目的とするものであるとするならば、その
犯罪収益の多くを生んでいるのが暴力団による薬物
犯罪でございますから、その薬物の売買を規制しようとすることは当然のことであると私は考えます。
問題はいかなる方法でこれを規制するかということで、ここで
通信傍受法という
一つの
法案が出てきたわけでございます。
薬物
犯罪を規制するにはどうしたらいいか、こういうふうな観点から私
どもはその
犯罪摘発の方法として
通信傍受という方法が必要不可欠なのかという検討をしてまいりました。そして、極めて
限定された
犯罪について、
捜査手法として例外的に
通信傍受を採用することは許されるし、必要である、こういう結論に達しました。これは党内の法務部会で何回も何回も
議論を重ねまして、党独自の見解としてまずまとめ上げたものでございます。それが今回の
修正案として採用されたものであります。
公明党は変節したとか、こういう批判が他党からございますけれ
ども、公明党は党独自の
立場からあるべき
通信傍受の方法についての党の見解を示したわけでありまして、もし私たちが変節したというのでありましたならば、
組織犯罪対策について
通信傍受という方法を認めないならばどういう有効な
捜査手法があるのか、これを示さない政党、それから
通信傍受についてもこういうふうに
修正すればいいのではないかとか、こういう
立場を明確にしない政党というのは、これはむしろ私は怠慢ではないかというふうに言わせていただきます。
いずれにしましても、各党、一切認めないのか、
条件つきで認めるのか、
条件つきで認めるとして従来の検証許可
令状の運用にゆだねて立法措置を認めないのか、立法措置は必要だが政府原案同様
修正案には
反対だというのか、これがいまだ明らかでないように私には思えてなりません。
このようなことになりましたのも、政府原案が余りにも広範な
犯罪対象等を認めておりましたために、各党とも、うちの党も含めてですけれ
ども、その阻止のためにエネルギーを集中させ過ぎたからであると私は思います。本来冷静に検討すべき
組織犯罪対策や、あるべき
通信傍受法の
議論を空洞化させたことをとても残念に思います。
組織犯罪対策、これはとりわけことし上半期でも既に一トンを超える押収量があるということです。〇・〇三グラムを一発分として三千二百万発分ぐらいに相当すると言われておりますが、私が仕事をしておりましたときには、使用は大体〇・〇二グラムが多かったなと思うんですが、これはささいなことであると思います。非常に大量の覚せい剤が押収されている現実がございます。薬物汚染から
国民を守るために各党はいかなる対策を提示できるのか、これもこの
委員会で
審議すべきこと、検討すべきことではないでしょうか。
いろいろ
議論を聞いておりまして思うことは、
通信傍受法案は組織的な
犯罪、とりわけ私
どもは薬物
犯罪というのを強調したいわけですけれ
ども、この摘発のための手段であります。目的のための手段でございます。
議論が手段の細部に拘泥する余り、
通信傍受という手段を与えないならば、目的である
組織的犯罪対策として他にいかなる有効な方法があるのか、こういう
議論がなされないとしたならば、これは非常に残念なことであります。これは
国会の
議論の中で各党は明らかにすべきです。この部分の検討が欠落していることを
指摘させていただきます。
なぜこのようなことを申しますかといいますと、午前中の
議論で、民主党の小川
委員の方から
乱用のおそれということで、例えば通知等すべて行かなかったならば、事後的なチェックをどうするのかというやりとりがございました。
私、実は伺っておりまして、小川
委員が意図するところをわかっておりました。要は、全く
乱用というものをなくするならば、これは一番いい方法は原記録、これは
立会人が外形をチェックするわけですが、その外形チェックされたこの原記録を
裁判官が全部チェックするというのが一番
乱用の危険がないパーフェクトな方法であろうと私も思います。例えば
裁判官が全部その原記録をチェックして、ああこれはいいですよというオーケーが出てから
傍受記録を作成するとかすれば、これは全く
乱用の危険はないわけで、非常にすばらしい方法であると思います。しかし、それが実際できるかどうかということなんですね。
裁判官が忙しいとかいろいろ言われておりますけれ
ども、実際に原記録を全部
裁判官がチェックする、すばらしい方法だけれ
ども、これをチェックするとしたならば、現実にどういうふうな問題が起きるかということでございます。その原記録を全部聞くわけですから、
捜査機関が聞いたと同じ時間、
裁判官はそのテープの再生に張りつけになると思います。
裁判官がチェックするんですから、裁判所の書記官におまえちょっとやっておいてくれなんということは許されないと思います。これが果たしてできるのかということと、それから現実にそこまですることが必要なのかという
判断があると思います。これは無理であろうと原案作成者も思ったんだと思いますし、私も思います。
そこで、じゃ別の方法はないかということで通知
制度、これに
一つの事後チェック機能をゆだねたのだと思います。そうしますと、
裁判官が事後的に原記録を全部チェックする、これを一〇〇%としますと、この通知による方法ですと、次善の策ですからどうしても一〇〇%満たされない部分が出てくると思います。ここが
皆さんが
心配されている
乱用の危険ということだと思うわけです。
そうすると、
裁判官のチェックと通知によるチェックと、その差が必ず出てきます。
乱用があるかもしれません。じゃ、これがあるからだめだというのか、それとも一方で
組織犯罪対策として、一方で薬物
犯罪を防がなくてはいけない、この
必要性との兼ね合いでここまでの差ならば仕方がないではないかという、要はこの
判断であると思います。
それから、
乱用といいますと、余りいいかげんな言い方をしてはいけないんですけれ
ども、人間がいる限りどんなところでも
乱用というのはあり得ると思います。これがいいというわけではありません。
法律にやはり明文化、
条文化する、
文章で
表現するということですから、微に入り細に入りすべて
規定することはできません。そして、人間を我々はコントロールできないわけですから、
乱用の危険というのは至るところにあると私は思います。ですから、一〇〇%
乱用がない
制度なんかはつくるのは不可能だと思います。ただ、いかにそういうことが少ないように努力して
規定をつくっていけるか、これに私たちは挑戦するしかないのではないかというふうに思います。
以上、前置きが長くなりましたけれ
ども、こういう姿勢から公明党、
質問をさせていただきます。
きょう、実は私にとっては初めての
審議で、ほかの方の、特に
反対会派の方の意見を伺うというのはとてもいいですね。ああそういう考えがあったのかと気づくことがございます。ですから、本当に精力的に
審議を尽くしていかなくてはいけないんだなというふうに私も思った次第でございます。
例えば今まで気がつかなかったいろんなことに気づいてくる。午前中に民主党の
角田委員が、
憲法二十一条二項、
公共の
福祉による
制限というものは明文として入っていない、これは
憲法が絶対的に認めないという趣旨ではないかと。
憲法の例外として認めているのは
郵便物の差し押さえ、
郵便物等といいましょうか、これは
刑事訴訟法百条、そして
捜査には
刑事訴訟法二百二十二条の一項でしたでしょうか、これで準用されております。それから
受刑者の
通信という例外、例外はこれだけだとおっしゃるのでしょうか。もしそうだとするならば、時代
状況というものを考えてみる必要があると思います。
この
刑事訴訟法はいつ施行かというと昭和二十四年で、多分この
郵便物等の差し押さえもこのころからあったのだと思うんです。それで、例外はこれだけなんだから、
通信傍受なんか認めていないんだと言われると、ちょっと待ってくださいよと。その当時、
電話というのはどれくらい普及していたのかということです。その当時、携帯
電話があるはずもございません。戦時中の
官憲の
人権侵害の色濃い時代ですら、実は
郵便物については、これも
通信の
秘密の
対象ですけれ
ども、例外を認めていた。私はむしろここに意義があるのではないかというふうに思っております。
それからもう
一つ、
角田委員の
質問で非常に納得した部分がございました。
角田委員は
五条の
解釈について聞かれまして、「
通信の
状況を監視」という
意味はどういう
意味ですかというふうに
質問されました。つまり、中身を含むのであるならばそれが
一般市民の
一般会話も
侵害する、こういう不安を持っている人もいるという
質問でございました。これを聞いてやっと私は納得したんです。
といいますのは、
修正案というのは原案と変わりがないと簡単に切って捨てる人もおりますけれ
ども、私
どもは一生懸命考えました。そして、考えたところ、その
修正案が出た後も、何だこんなの変わりないじゃないかと。あるいは
修正案を前提としましても、この
法律が施行されたその日からあなたの
電話は警察に
盗聴されていると覚悟した方がいいなんということを言っておる人がおるんですと。監視
社会になる、あなたの
電話も
盗聴されるとか、どう考えてもそういうことにならないわけですから、何でこんな
議論が出てくるのか、まさかわざと
国会議員がデマ宣伝するわけないし、おかしいなと実はずっと悩んでおったんです。先ほどの
質問を伺いまして、ああそうか、そういう
解釈のところでわからないところがあったのだから、そういう不安をつくる原因になったのだなというふうに気がつきました。
ですから、やはり
国民の
皆さんも
修正案の中身がまだよくわからないがために、いたずらに不安を抱いておられる方がいらっしゃる。それから、政府原案ははっきり言ってひどかったものですから、あの亡霊にまだ悩まされている方もいらっしゃるのかなと思いますので、本当にこういう
審議を通じていたずらな不安は取り除いてさしあげるべきだろう、こういうふうに私は思います。
それで、
質問に入るわけですが、民主党さんが
質問をされて、
反対派はどこら辺が問題だと考えておられるかよくわかりました。それから、
修正案に対するほかの批判はどういうものか。
一つ手がかりになりますのは、六月十三日でしたか、NHKの「日曜討論」がありまして、民主党さん以外は法務
委員の理事、オブザーバーが出た
関係がありまして、そこでこういう批判があるんだなということがわかりました。
それで、いろんなところで批判が出てきます。これを前提にして、こういう部分はどうなっておりますかと、
修正案提案者の方、それから法務省の方に順次お伺いしたいと思います。
まず最初に、これはNHKの「日曜討論」で、従来の
捜査方法でいいじゃないか、こういう意見がございました。検証許可
令状による従来の
通信傍受の方法で足りる、だから
通信傍受法は要らないということだと思います。私
ども、党の見解をまとめるに当たりまして、ほかに有効な
捜査方法があるかどうか、こういう検討をしていったその結果、
対象犯罪を四種類に絞りました。
議論をわかりやすくするために、薬物
犯罪ということを前提としてまず
質問をしていきたいというふうに思います。検証許可
令状で足りるかどうかの前提といたしまして、
修正案の提案者の方にお尋ねいたします。ただ、
捜査の現場におられた方はいらっしゃらないと思いますので、あとはまた
刑事局長に補充していただければというふうに思います。
薬物事犯の検挙、これは末端の使用者等が捕まって、それから上へ突き上げていく上部被疑者への突き上げという方法が通常なわけですけれ
ども、これも含めまして、薬物事犯の検挙、摘発について、
通信傍受は必要な
捜査手法なんだ、従来の
捜査手法ではもう限界があるんだ、こういう点が当然あると思うのですが、これをなるべく詳しく具体的
状況に即してお話しいただきたいと思います。