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政府委員(
松尾邦弘君) まず、今回の
法案に盛り込まれております
通信傍受のシステム
自体が、先ほど申し上げましたように、いろいろな面で諸
外国と比較しますと大変厳しい内容になっているということは
委員御
指摘のとおりでございます。これはさらに、原政府案から
修正案になりました
段階でいろいろな要件が加重されたといいますか、さらに厳しいものに今なっているわけでございます。
委員の先ほどの御発言の中にもございましたけれども、やはり
我が国の
通信の秘密に対する国民の感覚といいますか、そういったものとか、あるいは確かに戦後のいろいろな経緯の中で、具体的に言いますと、神奈川において行われました共産党の幹部に対する
通信の傍受の
事件、盗聴の
事件というのがございまして、ある
意味では、私はほかの
場所で負の遺産というような表現を使わせていただきましたけれども、やはり
捜査機関側にとりまして、国民にマイナスのイメージを与えている点等、いろいろな諸要素がございます。
こうしたことを勘案いたしますと、現時点における
通信傍受の
制度として
我が国に初めて法律で明定されるわけでございますので、非常に慎重にお考えになる、国会の論議でも非常に慎重な対応が必要であるという論議がされていることについては、我々
捜査機関としても理解できるところでございまして、
制度の第一歩のあり方としては、こういう形でまず一歩を踏み出させていただいて、とりあえず国民に対して
通信傍受というものの実際の運用を見ていただくということが肝要かなというのが今の感覚でございます。
それから二番目に、国際的な問題でございますが、たまたまあすから
我が国でFATFという国際機関の総会が七月二日まで開かれます。これは一九九八年、昨年の七月から
我が国が議長国として就任している会合でございまして、そもそも設けられましたのは、
平成元年のパリで開催されたアルシュ・サミットの経済宣言で、マネーロンダリング対策のための作業部会が必要であるということで設立された機関でございます。二十八の国・地域、国際機関が参加しておりまして、パリのOECDに事務局が設置されているという機関でございます。
このFATFの昨年の対日審査というのがございまして、ここで
我が国の、主としてマネーロンダリング関係でございますが、
法整備についての審査を受けたことがございます。
その際に、
我が国が主要国の法
制度と比較して資金洗浄対策法制が極めて不十分であるということが強く
指摘されたところでございます。その際に、
捜査当局の内部における独立した資金洗浄対策部門を設置すること、あるいは電子的監視を含む特別な
捜査手法の利用等の追加的な処置を資金洗浄対策においても考えるべきであるという勧告がなされたわけでございます。
我が国は、それに対しまして、現在、国会で
組織犯罪対策三法という形で
法案を審議をしていただいているところですということを言っております。昨年の七月から議長国になりまして、その会合があすから
我が国で行われるということでございます。
この
一つの例に見られますとおり、
我が国はG8を中心にした先進諸国の中で
組織犯罪対策法制という
意味では一番おくれた国でございます。このマネーロンダリングにかかわる
法整備、あるいは
通信傍受を中心とします
捜査手法、あるいは
組織犯罪に対する
処罰規定の加重といったいろいろの面においておくれているという
指摘が強くなされているわけでございます。
実は、先日、国連の次長、アルラッキさんという方が
日本に来たことがございます。主としてマネーロンダリングの関係で
我が国の
現状等の視察に来られたというふうに聞いておりますが、その際にも、やはり
日本が今言ったような
法整備面でおくれているという
指摘を私に対してもしておりました。
その際に私が非常に強く印象づけられたことがございますが、諸
外国では実体法を整備しまして加重規定等を置くということは
組織犯罪対策に非常に重要だと。それと同時に、ただそれだけでは
検挙できなければ絵にかいたもちに終わるということを非常に強く言っておりました。そのための
制度として
捜査機関にやはり有効な
捜査手法を与えるよう検討すべきである、そのためには基本的人権の観点等との調和も非常に重要だということ、調和を図りながらそういった新しい
手法を検討すべきであるということを言っておりました。
今回の法
制度等も、その際に私の方から説明をいたしました。それについて
服部委員から今御
指摘がありましたけれども、
通信傍受の
制度がこのようにある
意味では厳しい、非常に諸
外国から見ると厳しい制約のもとでしかできないということについては、大丈夫かというような心配もされていたことも事実でございます。
そうした中におきまして、今回のFATFの会合で、ある程度の
我が国のそうした
法整備についての言及がなされるのではないかということで我々としても注目しているところでございます。
それから、今のアルラッキさんの言と
委員の質問とは関連しますのでちょっと申し上げますと、アルラッキさんという方はイタリアの
組織犯罪対策のある
意味では専門家という経歴がございまして、その後、国連に移られて国際的な
組織犯罪対策の元締めをしているという方でございますが、その方に、諸
外国で、特にイタリア、あるいは国連に加盟している主要国で
通信傍受の
制度を導入するに当たっていろいろな反対はなかったんでしょうか、そこらあたりはどうでございましょうかという話を聞いたんですが、やはりそれなりにいろいろな議論があったということをおっしゃっておりました。
ただ、そうした議論を経た上で制定された
通信傍受制度の運用について、少なくとも主要国の間で今大きな論議はされていない、大きな反対の動きはないということをアルラッキさんは認識されているということでございました。
この三点でよろしゅうございましたか。