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1999-05-13 第145回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十三日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     服部三男雄君  五月十二日     辞任         補欠選任      有馬 朗人君     日出 英輔君      竹山  裕君     保坂 三蔵君      角田 義一君     櫻井  充君  五月十三日     辞任         補欠選任      保坂 三蔵君     岸  宏一君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 岡野  裕君                 岸  宏一君                 日出 英輔君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 櫻井  充君                 千葉 景子君                 藁科 滿治君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    衆議院議員        修正案提出者   山本 幸三君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁刑事局長  林  則清君        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務大臣官房司        法法制調査部長        兼内閣審議官   房村 精一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出) ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出) ○司法制度改革審議会設置法案内閣提出、衆議  院送付)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十日、松村龍二君が委員辞任され、その補欠として服部三男雄君が選任されました。  また、昨十二日、角田義一君、有馬朗人君及び竹山裕君が委員辞任され、その補欠として櫻井充君、日出英輔君及び保坂三蔵君が選任されました。  また、本日、保坂三蔵君が委員辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事服部三男雄君を指名いたします。     ─────────────
  5. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 千葉景子

    千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。  きょうは外国人登録法入管法の引き続きの質疑でございますので、入管法にも関連をいたしますが、ちょっと通告をしていないんですけれども、おわかりであればお願いをしたいというふうに思います。  と申しますのは、昨日、コソボからいわば難民と称してよろしいのか、一家五名が日本来日入国をしたという報道がございます。これについてですが、この取り扱い方というのはどのような根拠、それから経過ということでございましょうか。ちょっと通告なしで大変恐縮ですけれども、おわかりであれば御説明をお願いしたいと思います。
  7. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今度のコソボ周辺諸国に避難しておりましたコソボ出身ユーゴスラビア人一家五名に対しまして、親族訪問目的で五月十二日に入国を認めた事実がございます。
  8. 千葉景子

    千葉景子君 親族訪問での短期入国というのは、当然通常でもあり得ることであろうかというふうに思うんですけれども、今回のケースは、全く通常ベースといいましょうか、そういう形で行われたものなのでしょうか。それとも一定の国際的な協力といいましょうか、人道上のそういうことも配慮に入れ、そしてそういう全体の一環としてこの五名の入国というのが位置づけられているのでしょうか。その点については基本的には法務省で判断をされるということでしょうが、そこで通常どおりされたものか、それとも政府全体として、特別な全体の形の中で決定をされたものなのでしょうか。
  9. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回につきましては、コソボから避難している親族を呼び寄せたいということを言っております在日ユーゴスラビア人からの要請があったことから、親族訪問目的入国を認めたということでございまして、これはあくまでも個別のケースでございます。  したがいまして、今回は、日本国政府としてコソボ難民の受け入れを決定したというふうなことの一環ということではございません。
  10. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと実情などをまた詳しくお聞きすることがあろうかと思いますが、冒頭確認だけさせていただきました。  それでは、きょうは入管法関連をして、中心にお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。  今回の改正につきましては、基本的には、もう既に議論はされておりますけれども、新しく不法滞在をしていることを処罰するというのが一点ございます。あとは、退去強制後の入国についてはその期間を一年から五年に延ばすということですね。それから、再入国許可については一定の緩和が認められたということがございます。  この基本になっておりますのが、これもしばしば出ておりますけれども、やはり外国人犯罪防止、それから不法滞在をできるだけ除去していくというようなことが挙げられるわけです。そして、その外国人犯罪実情というのが一体どのようなことになっているかということにつきましては、これも議論が既にございますけれども、やはり日本国内日本人に比して決して少ないわけではないということも指摘をされています。  この数なんですけれども、こういうことが言われているわけです。日本の総人口に占める来日外国人人口構成比というのはおおよそ一%、そして、それに対して来日外国人検挙人員日本人の一・七%。人口は一%なんだけれども犯罪率としては一・七%ということは、日本人に比べて犯罪を犯すことが多いのではないか、こういう数字になっているわけですね。  ただ、改めて考えてみますと、この来日外国人というのが一体どこまでを含んだ数字なのか、ちょっとそこを改めて確認させていただきたいというふうに思うんです。この来日外国人の数というのはどういうところまでを含めた数字なんでしょうか、まずお尋ねをしたいと思います。
  11. 林則清

    政府委員林則清君) ただいまのお尋ねの点でございますけれども、私ども、これを計上します際に来日外国人というふうにカウントしておりますのは、我が国においでになる外国人の方から、定着居住者永住者等の方、それから在日米軍関係者及び在留資格不明の方、国籍は不明であるが明らかに日本人でない、こういう者を除いたものを来日外国人というふうに言っておりまして、平成九年中のこれら来日外国人による刑法犯検挙人員は五千四百三十五人でありまして、これを平成九年中の刑法犯検挙人員の総数である三十一万三千五百七十三人で除した数が先生今御指摘の一・七%という数字で出てくるわけであります。  一方、我が国の総人口に占める来日外国人人口構成比におきましては、平成九年末の外国人登録者数百四十八万二千七百七名から永住者等の六十三万千七百七十五人を引きました八十五万九百三十二人に、平成十年一月一日現在の不法残留者数二十七万六千八百十人を加えた百十二万七千七百四十二人を来日外国人人口の数値として用いておるわけであります。  この百十二万七千七百四十二人というのを平成九年十月一日現在の我が国の満十四歳以上の総人口である一億八百三十一万人で除した数が一となる、そういう形で計算をしておるわけでございます。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 この母体となる数の中には不法滞在者は含まれるということですね。短期滞在などで入国をしている方々の数は含まれておりますか。
  13. 林則清

    政府委員林則清君) 人口の中に短期滞在は含めておりません。そして、来日外国人の方には一応含む形でカウントしております。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 そこのところだと思うんです。要するに、犯罪検挙をされる数の方は必ずしも人口に含まれる人々ばかりではなくて、例えば短期滞在をしている、入国をしているという中にも犯罪発生というのはあり得るわけです。そうすると、犯罪の数の方は短期滞在が含まれている、そして人口の方は人口という意味短期滞在者などは含まれていないということになりますと、比率を出す上で、片方は短期滞在も含まれる、母数の方は含まれないということになりますと、当然率は上がるわけですね、母数が小さくなるわけですから。  この点についてはどうでしょう。短期滞在はおおよそ考えても三百五十万ぐらい出入りがあるかと思うんです。そのうち十四歳未満がどの程度かというのがありますけれども、それを除いても三百万近い数は短期滞在者などで入ってきている。そういうものをやっぱりプラスして母数を考えないと、外国人犯罪率が高いという数字が出てくるのではないかというふうに思いますが、そこは統計上そういう出し方はされておられませんですか。
  15. 林則清

    政府委員林則清君) まさに御指摘のように、来日外国人という場合の数字の用い方と母数になる来日外国人人口というのが異なっております。これは御指摘のとおりでございます。ただ、来日外国人のうち、不法入国者数は当然のことながら不明でありますし、それから短期滞在外国人登録を要しない方については、時点を限った計上が困難でありますので、計上していない。  そういうことで、まさに先生指摘のような観点は十分持ち合わせなきゃいけないとは思うのでございますけれども、今のところ我々としては、厳密にそういう意味で両者の数字というのは違うのでありますけれども、できるだけ犯罪実態を見たいものですから、犯罪実態にできるだけ即したものを出せるようにという観点から一つの指標としてこういう数字を用いておるということでございます。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 ただ、ある意味ではこの法案背景に、外国人犯罪がどういう実態にあるのかということがやはり基盤になるわけですね。そうすると、そこを統計配慮して、そういう母数が違いますとか、あるいは統計とり方犯罪を見るときと人口を見るときとは異なっておりますということを明確にした上で数字を使いませんと、あたかも外国人犯罪が多いかの形で数字があらわれてしまう、そういうことになろうかというふうに思うんです。  私がおおよそ考えますには、人口ということではなくて日本滞在をする外国人という形で考えますと、外国人登録をしている、これは滞在をするという意味ではいいかどうか別として不法滞在をしたりしている、あるいは短期出入りをしている、こういうことも含めて考えますと、そしてそれと犯罪の数、これを除してみますと、おおよそ犯罪率というのは日本国内日本人犯罪率とそれほど極端に変わるものではないのではないかというふうに思うんです。先ほど八十五万人、百万人、それに短期滞在などを含めますと日本の総人口の、人口と言ってしまいますけれども、一・七五、一・五%以上くらいの母数になるのではないかと思うんですよ、日本に現実に一時期滞在をしている数というのは。  そうなりますと、よく数字で出てきますけれども、来日外国人人口は確かに一%という統計をとるんだと思うんですけれども、犯罪を起こす母体としてはやはり一・七、一・五以上の母数。そうすると、検挙人員先ほどありましたように一・七%ということであってもそんなに日本の社会と極端に外国人の部分が異なっているわけではないということになろうかと思うんですけれども、こういう見方をしておかしいですか。
  17. 林則清

    政府委員林則清君) なかなか統計とり方、大変いろいろと難しい問題があるというのは御指摘のとおりでありますので、私どもも先生の御指摘も十分踏まえながらなるべく実態に即した統計値が出るような用い方を、まだ工夫できるところがあれば考えてみたい、かように思います。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 そういう数字があるということですね。  それから来日外国人刑法犯、これは数、それからその犯罪罪名、これについてはどんな傾向があるでしょうか。
  19. 林則清

    政府委員林則清君) 来日外国人による刑法犯検挙件数につきまして過去五年間の推移を見てみますと、年々増加を続けておりまして、平成十年は二万一千六百八十九件ということでございまして、平成六年の一万三千三百二十一件に比べますと約六三%増加をいたしております。  これを罪種別に見ますと、殺人や強盗等凶悪犯は、年によって増減はございますが、平成十年の検挙件数は二百二十二件で、前年に比べまして二二%増加しており、ここ五年間においては最高になっておる。  一方、窃盗犯が年々増加傾向にございまして、平成六年の一万百二十件から平成十年には一万九千七十八件ということで、八九%の増加を見せております。  そのほか、傷害等粗暴犯でありますとか、詐欺、偽造等知能犯も、多少の起伏はございますけれども、全体としては増加傾向にあるという状況でございます。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 今のお話を伺いますと、いわば凶悪な犯罪というのは増減があるということですが、窃盗が極めて増加しているということがわかるのではないかというふうに思うんです。ですから、犯罪がふえているというときも、これもやはりどういう種類の犯罪がふえているのかということも十分考慮していかなければいけないというふうに思うんです。  さらに国別地域でもよろしいのですけれども、これではどういう傾向があらわれているのでしょうか。
  21. 林則清

    政府委員林則清君) 平成十年中の来日外国人刑法犯検挙状況を見てみますと、地域別ではやはりアジアの国の刑法犯検挙人員が四千四十三人ということで、来日外国人検挙人員全体の七五%を占めて、極めて高い割合となっております。  国籍別検挙人員で見ますと、平成十年中では中国が二千二百八十一人ということで最も多い。次いで韓国、朝鮮が五百四十八人、ブラジルが五百三十六人、ベトナムが三百四十人、フィリピンが二百六十九人の順となっておりまして、目立ちますのは、ベトナム人検挙人員平成六年には百九十八人でありましたのが平成十年には三百四十人と、非常に増加傾向が強いというのが特徴であります。  これ、検挙状況罪種別で見ますと、先ほども御指摘ありましたように、平成十年中には窃盗犯検挙件数が一万九千七十八件、人員が三千九十八人と最も多いということで、来日外国人犯罪の多くを占めておりますが、一方で凶悪犯について見ますと、先ほども申し上げましたが、検挙件数二百二十八件、人員二百五十一名ということで、過去五年間で最高になっております。  傾向ということでございますけれども、最近一番著しいのが、犯罪組織化しているということが挙げられまして、平成十年には共犯事件が九千三百四十九件ということで、全体の四三%を共犯事件が占める。これは、平成六年の共犯事件が三千六百九十一件、約二八%でありましたものが、ここのところへ来て共犯事件が非常に増加してきておるということでありまして、このような来日外国人犯罪組織化されるということは、国内における不法滞在者中心にして組織化グループ化が進んでおるというのが一方であります。  また、海外に本拠を置く犯罪組織等我が国活動をし始めたという点が背景にあるということでありまして、具体的には、貴金属店対象にした広域多額窃盗事件でありますとか、あるいは旅券、外国人登録証明書等偽造事件というものが目立っております。  なお、不法滞在者による平成十年中の刑法犯検挙件数は八千六百四十七件と、来日外国人犯罪全体の約四〇%がこの不法滞在者によるものでございます。来日外国人犯罪と言っておりますけれども、その組織化はこの不法滞在者中心に行われておるということがうかがわれるところであります。  さらに、平成十年中の不法滞在者刑法犯検挙人員千三百二名のうち、不法入国不法上陸等検挙人員は三百五十一人で、二七%となっておりますが、この人数についても、平成九年中の二百九十六人と比べ大幅に、一九%ばかり増加しておる。  全体としてはそういう状況でございます。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 今数字を挙げて御説明をいただきました。いろいろな見方があろうかというふうに思うんですね。私は、やはり非常にアジア出身者、特に先ほど言ったように、ベトナムとかそういう地域の人の犯罪がふえているというようなこと、それから中国あるいは韓国というようなこともございました。  これを見ると、一面、日本定住性を持った、そういう資格で日本滞在をしている、そういう中に非常に犯罪が多くなっている。しかも、先ほども出ているように、窃盗というような、やっぱり財産あるいは生活に絡む犯罪が非常にふえているのではないかというふうに思います。  今おっしゃったように、確かに不法滞在の中にも犯罪が多くなっているという数字も出ようかというふうに思うんですけれども、あるいは組織化といいますか、共犯関係が多くなっている。ただ、決して特別に犯罪目的として入国をするというようなことが多くなっているわけではなくて、やっぱり日本生活の場で、あるいは日本定住性を持ったそういう人々の中にやむないこういう事態が生じているのかなという気もいたします。  そこで、大臣、今いろいろな数字を挙げながら、それから犯罪傾向、こういうようなものの説明警察庁の方からいただきましたが、確かに、決して犯罪がないわけじゃないんですね。ただ、先ほど言ったように、数字統計とり方あるいは犯罪内容等を考えますと、外国人だから非常に犯罪性があるみたいなとらえ方、そして、そう思われがちないろいろな発言や表現、こういうものにはやはり十分注意が必要なのではないかというふうに思うんですけれども、大臣はどういうふうに今の数字などを聞きながらお感じになられましたですか。
  23. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) この統計とり方の難しさというものを改めて感じたわけでございますが、そういう中にありまして、外国人国内におけるさまざまな活動を表現するとすれば、今のところ警察庁のこういう考え方、こういう数字というのはそれなりに一つ意味がある、説得力のある数字じゃないかなと思いながら伺いました。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひ、どういう数字であるのか、あるいは中身がどういうことであるのかということなどにも十分に配慮をしたとらえ方をしていただきたいというふうに思うんです。  それで、もう一つ、いつも犯罪罰則を強化したり、あるいは新しい罪名をつくるというときには、それの効果というようなことがやっぱり考えられるのだろうというふうに思うんです。  例えば、一九九〇年には不法就労助長罪導入をされました。それから、一九九七年には不法入国幇助罪導入された。これも多分こういうものをできるだけ防止しよう、減らしていこうということをもくろんだやはり改正であったというふうに思うんです。  ただ、実際にどうだろうかということを数などで調べてみますと、例えば不法就労助長罪がつくられてから三年間で不法残留というのはむしろ三倍近く増加しているんですね。それから、不法入国幇助罪導入されましてからも不法入国者というのが四〇%以上の増加ということになっております。重罰化したりあるいはいろいろなこういう犯罪罰則を強化することによって効果が本当に上がってきたんだろうかという感じがいたします。むしろ、増加をしたりあるいはどこかに潜り込んだりというようなケースをふやしただけなのではないかというふうにも思われるんです。  今回も不法滞在というものを新たに処罰するということになりますが、これまでの経過を踏まえて、今回の新たなる処罰規定導入というのがどういう意味を持つんでしょうか。本当に効果が上がるとお考えなのか、これまでの経過を踏まえて、いかがですか、大臣
  25. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 不法就労助長罪は、委員指摘のように、平成元年入管法改正により新設されたものでございますが、施行後約九年を経過したわけでございます。警察庁統計によれば、同罪の検挙件数平成六年以降近年の十年までの間、年間約三百人から五百人の間で推移しております。この不法就労助長罪新設というのは、不法就労助長を抑制し、ひいては不法滞在抑止にも効果を上げているものと、このように考えております。  また、集団密航助長罪については、これについてちょっと申し上げますと、平成九年に新設され、現時点法改正実効性を具体的に判断するということは大変困難ではありますけれども、不法入国に対する抑止にはなっているものと、このように考えております。  今回の不法在留罪新設によりまして、平成元年及び九年の法改正と相まって不法入国等防止に一層の効果を上げ得るものと、このように期待しておるところでございます。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 大臣は大分御期待を込めておっしゃっておられますけれども、ただ、これまでの経過などを見ますと、本当にどれだけ効果が上がるものか。それから、従来から言われておりますけれども、処罰規定があったからとて、すべてを検挙し処罰をするということも不可能なわけですね。そういうことも考えますと、いささか私は疑問である。  それと同時に、疑問である以上に、この不法滞在罪というものが極めて、前回議論がなされておりましたけれども、犯罪の性格として、犯罪類型としてわかりにくいということが言えようかというふうに思うんです。  もうこれは繰り返しになりますのであれなんですけれども、これまで不法入国に対しての処罰規定はございました。それは入国をすること自体が違法だということで、後は時効が進行していくという形ですね。そのいること自体滞在をしていること自体を毎日毎日、もう瞬時瞬時を違法であるということで処罰対象にはしてこなかったわけです。  今度はそれを処罰しようとするんですが、不法入国ということと不法滞在というのは一体どういう時点から不法滞在という行為が始まるということになるんでしょうか。  それで、不法入国という処罰類型がある。そうすると、入国した一瞬から今度は不法滞在という行為にころっと変わっちゃう、こういう考え方なんでしょうか。ちょっとどうしてもここの構造がいま一つはっきりしない。わかりやすく説明いただけますか。
  27. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 刑事罰の成否と適用の問題にかかわりますので、私の方からお答えをさせていただきます。  まず、後段の方の御質問にあります不法在留行為はいつごろから成立するんだろうかと、不法入国行為との関連の問題が一つあろうかと思います。  これについてまず申し上げますと、不法入国というのは、講学上といいますか、通常刑事的な言い方では即成犯と言われております。これは法の予定する法益侵害が生じたことによって完成、完了するというふうに通常定義されております。  したがいまして、この不法入国罪は旅券等を所持せずに本邦に上陸しようということで、例えば船で来ますと、領海に入った段階で即時に成立するということでございますので、その段階で既に既遂になっているということでございます。  その次の問題ですが、じゃ、その者が、船が港に着きまして上陸し、その後例えば結果的には一カ月後に東京で生活しているところを検挙されたような場合、どこから不法在留罪といいますか、それが成立するのかというのが確かに問題になります。  それにつきましては、抽象的に申し上げるというのはなかなか申し上げにくいわけですね。最終的には個別事案ごとに検討されるべき事案というふうには考えます。  抽象的に申し上げますと、言い方としましては、これも従来入管局長から御説明の中で御答弁申し上げたことなんですが、上陸後の時間的経過、場所的移動及び滞在の態様の変化等を総合的に考慮して判断されるべきものであるというふうになるわけでございます。  もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば上陸をして港で一服しているときに捕まったらどうなるんだと。これはやっぱり上陸行為、つまり不法入国行為の中でまだ評価されている行為なのではないかなと私は思います、仮にそういう形を想定しますと。  ところが、この人が迎えの車に乗ってもう移動を始めた、もう入国の港からかなりたっている、時間的にも経過している。こういうことになりますと、不法在留罪についてはもう着手があるといいますか実行行為の一部が始まっているというふうに見られる場合が多いのではないかなと思います。犯罪の成立については、大体そんなような概念をお持ちいただければよろしいかなと思います。  それからもう一点の、今回なぜ不法在留罪を設けることになったのかということでございますが、これについても刑事局としては犯罪を新しくつくることになりますので、入管当局と同じように検討させていただきました。  確かに、刑事的な観点からいいましても、外国人入国管理あるいは在留管理というのはその時々の諸情勢によって必要な制度あるいは必要な措置、あるいは必要な刑罰法規が整えられるべきものだろうと思います。  従来は、短期滞在等の後不法に残留する行為については残留罪という形で設けてありました。ところが、不法入国する者については、入国後、これは先ほど即成犯といいまして、犯罪が成立して、その後は時効が進行するわけでございますが、その後の行為につきましては犯罪対象とはしてこなかったことはそのとおりでございます。今回は、その後の行為犯罪対象にしようということでございます。  それで、なぜこういうことになったのか。やはり一つ外国人の在留管理あるいは入国状況の変化というのが刑事的に考えてもあるかと思います。従来から入管局長がお答えしてきたと思いますが、不法入国あるいは不法上陸後、不法に在留するという外国人の数は、経年で見ますとやはり推移がありまして、従来は比較的少数にとどまっていたというふうに思われます。その後、むしろ短期滞在等から不法残留するケースが多かったものですから、その対応をするということが当面の重要な国の施策だということになっておったかと思います。近年は、これは刑事的にも非常に大問題でございますが、船舶による集団密航事案というものが急増しております。  それで、我が国不法に在留する外国人というのが率にしましてもかなり激増するという、場合によってはそういう言葉を使ってもよろしいかと思いますが、そういったような状況の中で、やはりこの不法入国とその後の在留行為処罰対象にすることによって全体としてこういう不法入国事案を抑制する、あるいはその在留管理の適正を期するという必要が生じてきたものと刑事局としても考えまして、今回の法改正不法在留行為についての犯罪化ということについては積極ということで考えさせていただいているということでございます。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 御説明をいただいても、まず犯罪の成否、成立がどういう形でなるのかというのも、犯罪の成否ですから、罪刑法定主義ということから考えても厳格にならなければいけない。どうもそこがはっきりしない。それから、従来にプラスして不法滞在の部分をよりまた処罰対象にする。それによる何か効果、どういう法益がこれまで以上に守られていくのかというのがいま一つやはりはっきりしない。  結局は、不法入国というのは三年間の時効にかかりますね。ただ、逆に言えば三年間は処罰をすることが可能なわけです。どうもその幅を三年間じゃなかなか見つけにくいからもう少し長い間でも検挙をし、処罰をできるように何とかできないものか。どうも時効の延長の一つの手段のような形にされたのではないかという気がしないでもありません。  しかし、これはこれ以上論議をしていても多分そうだとはおっしゃらないと思いますので、私の意見として、考え方として申し上げておきたいというふうに思います。  次に、再入国許可制度についてお尋ねをしたいというふうに思うんです。  この再入国許可制度については、今回一定の緩和がなされました。しかし、改めて考えてみますと、規約人権委員会の意見の中でも、この問題についても大変重要な指摘がされているわけです。これは、日本で出生した在日韓国・朝鮮人のような永住者に対しても裁量による再入国許可の制度をとっているというのは、自国に戻る権利、こういうものを侵害するおそれがあるのではないかという大変貴重な指摘がされております。  確かに、永住者、特別永住者であっても、日本の場合には血統主義もとっておりますし、すぐに日本国籍というのを取得できるわけではない。外国人という国籍のない扱いになるわけですね。しかしながら、ここの指摘にもありますように、日本で生まれ育ち、そしてさらにはその二世、三世というほとんど日本を母国と、母国と言うとあれですけれども、生まれ育った自分の地域というふうに考え、そしてもうそれが当たり前になっているような皆さんについては、本来戻るところといえば決して外国ではなくてやっぱりこの日本だということが事実上は言えるというふうに思うんです。  そういうことについて、一般の外国人と同じような位置づけ、そして戻ってくるために、いわば一回出て日本入国をするということは自分の国に戻るということではなくて日本の国にまた入ってくることと同じだよということで再入国許可制度というのを設けているというのは、私はやはり非常に国際的な人権規約あるいは国際的な議論指摘、こういう意味からも大変問題があるのではないかというふうに思います。  そういう意味では、この再入国許可制度、これは緩和をされたとはいいますけれども、基本的な考え方を改めることによって、裁量による再入国なんだということではなくて、自分の国に帰ってくる権利として再入国許可制度を永住者あるいは特別永住者などにはもう適用しない、廃止することを検討すべきではないかというふうに思いますが、大臣いかがですか。
  29. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 再入国許可制度については、もう委員、専門家として重々御承知のことでございますけれども、我が国に在住している外国人が一たん出国する場合には、本来在留資格を失い、再び入国するに当たり改めて上陸手続をとらなければならないということになるわけですけれども、再度我が国入国しようとするときは、その上陸手続を簡便にするとともに、再入国した後は従前の在留資格及び在留期間等を継続させるためにこの制度があるわけでございます。  したがいまして、永住者または特別永住者についてもこの事情に変わりはないものと考え、再入国後はその法的地位のまま入国し引き続き在留できるという効果があることから、この制度は必要かつ合理的なものであると考えるところでございます。  なお、この制度については最高裁の判決でも是認されておるところでございます。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 その必要かつ合理的というのは、私には全然理解しがたいですね。先ほど言いましたように、実態からいいましても、それからさまざまな国際的な基準ということを考えてもどこが合理的なんだろうかということを思います。必要なのかということですね。  それから、ドイツなどでも血統主義をとっておるんですけれども、一定定住性のある外国人、要するにドイツの国籍を持っていないわけですね。しかしながら、いわゆる自国へ、自国といいますか、戻ってくる権利というものを保障するということを既に実行しているわけです。  よく私がこの質問をいたしますと、御説明くださるときに、いやこれはほとんど定住外国人の皆さんが二世、三世で旅券を持っていない、この再入国許可書を持っていると大変便利なんだというお話をされるんです。あたかも何かそれがこれを残しておく非常に便利な理由のような御説明もいただくんですけれども、これはそういう便利な必要があるならば、基本的にそれに即した、改めて外国へ行って戻ってくるときに便利な証明書をつくればいいわけで、これをやっぱり一般の外国人、改めて入国をしてくる外国人という位置づけで存続させておくということには、私は合理性そしてまた必要性というのはもう既に欠いているのではないかというふうに思います。  大臣先ほどお答えはいただきましたけれども、いろいろなこういう状況を踏まえて、じゃ、きょうやりなさいと言ってもなかなか難しいのかもしれないけれども、検討する余地はあるんじゃないですか。あるいはいろいろな制度など外国の例あるいは国際的な条約、そういうことも踏まえながら、大臣もせっかくですから少しお考えになってみたらいかがかと思いますが、どうでしょうか。
  31. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今ドイツ連邦共和国のことをお引きになってお話しいただいたわけですけれども、ドイツ連邦共和国におきましては法改正を行ったわけでございますけれども、一九九〇年ですか、その際のポイントは、いわゆる二世及び三世などの長期在留外国人の社会への統合、すなわち帰化を促進させようというのが一つの大きなねらいであったように私は理解しております。それからまた、長期在留を目的とした外国人の新規入国の制限、そしてさらに、欧州共同体内における人の移動の円滑化、こういったものが柱になっておると理解しておるわけでございます。  我が国についてどうかという貴重な御意見を賜ったわけでございますけれども、法務省といたしましては、先ほど説明申し上げましたように、この制度は必要かつ合理的なものであるというふうに考えておるわけでございます。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 今の御理解、もう一回それは少しお勉強をし直していただきまして、その理解は私はちょっと誤っているんじゃないかというふうに思いますので、そこは改めて少し勉強いただきまして、やはりこれを今後の大きな検討課題として考えていただきたいというふうに思います。これは要望しておきます。  時間も限られてまいりましたので、もう一つお聞きをいたします。  強制退去後の入国について一年から五年に延長されようということでございます。これもいろいろな議論がございました。私はこれについても異論はございますけれども、少なくとも私は三点、問題点を指摘しておきたいというふうに思うんです。  これは再入国、強制退去になりましてから、これまでは一年たてば一定入国の可能性が出てきた。ただ、一年ですぐ入国を認められていたかというと、これは別ですよ。ただ、可能性としてはそういう条件でありました。今度は五年ということになるわけですから、これは大変長い期間ですね。  一点は、今度、退去強制の手続、それからその判断、これをやっぱり厳格にきちっとまずやる必要がある。これまでは一年たてばまた入国できるから、まあいろいろあるけれども、一回出国してまた戻っていらっしゃいというような扱いが結構あるわけですね。こういうことは今度はできないわけですから、本当に厳格に考えていただきたい。  特に、私のもとにもいろいろな御相談もありますけれども、今ビジネスの面でもいろいろな勉強の面でもそれから活動の面でも、非常に多様な活動日本に来てされているわけです。これを一つ一つ見ますと、就労なのか、稼いでいるんじゃないかと疑われて、いや全然そういうことではない、こういう問題なども微妙なところがあるわけです。ですから、従来のように微妙なときには一たん出国して入国をしてくださいなどという取り扱いはできないということになりますので、この点を厳格にきちっとしていただきたい。  それから、短期滞在などは更新というのも可能なんですね。ただ、これもやっぱり現実的にはまたいらっしゃいという形でなかなか更新というのは、手続上も面倒なこともありますし、やりにくい。これからはこの更新という問題も十分にその滞在の内容あるいはその適法性ということも考えて、更新ということにも十分な私は配慮をしなければいけないというふうに思います。  それから、これはずっと皆さんからも指摘がございました。やはり家族の結合の権利、こういうものをきちっと尊重する。逆に言えば保障するという意味で、これは私はこの権利を認めて当然の滞在資格を認めていくべきだというふうに思うんです。例えば特別在留の一つの例をあるいは幾つかの認めるべきものを法定化する、あるいは類型化をして、例えば家族の結合というものについては当然特別在留を与えるというような形で、単なる自由裁量に任せることなく厳格に対応するということが私は必要だというふうに思います。  とりあえずこの三点、どうでしょうか、改めて今後どういう考え方をとっていかれるか、大臣にそのお考え方お尋ねしておきたいと思います。
  33. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) このたびの上陸拒否期間が一年から五年に伸長されるに当たって留意すべき大事なポイントを御指摘いただいたわけでございますけれども、この問題につきましては、まず第一点の退去強制の手続、判断をきちっとすべきではないかということについては全くそのとおりだと思いますし、また第二点の短期滞在の更新手続についても適正に行われなければならないというのも御指摘のとおりだと考えます。  三点目の自由裁量による特別在留許可とかそういうものについての基準等をもっと明確化していくべきではないかという御指摘につきまして、私どもといたしましては、非常に個別の事情が違うというようなこともありましてなかなか具体的な判断基準というのは示しがたいんじゃないか。むしろそのことによって、いろいろ個々の抱えておられる事情を酌みにくくする面も場合によっては起こるかもしれないということを私個人として考えるわけでございます。  そういった中で、特に退去強制の方が問題でございますけれども、人道上の見地などから特に十分な配慮をしながら適正な運用を図っていく必要がある、このように考えておるところでございます。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと時間がございませんのでここまでにいたしますけれども、この点について、特に最後の基準の明確化などについては、私はぜひ具体的に示せるようにしていただきたいというふうに思っております。  最後、これはお答えは要りません。外登法、指紋押捺拒否をされてこれまでさまざまな不利益などをこうむってきた皆さんの救済、原状回復、これについてはぜひ法制度あるいは何らかの具体的な措置をもって実行していただきたい。  従来から言われておりましたように、本当に最初に苦労をみずからしょって先鞭をつけた、あるいは井戸を掘った、こういう皆さんに対してこれが私たちがやるべき大きな責任ではないかというふうに思います。その点についてはぜひ法務大臣に特段の英断をお願いしたい、これを要望して、質問を終わります。
  35. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 承りました。
  36. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  きょうは、まず入管法改正の方から質問させていただきたいと思います。  今回の入管法改正につきまして、法律案の提案理由説明の中でこのような記載がございます。「平成九年に集団密航を助長、援助する行為等の処罰を内容とする出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律の御審議をいただき、同年に同法を施行したところでありますが、一時減少するかに見えた不法入国者は、その後再び増加傾向に転じております。また、退去強制された外国人がその後再び入国し、不法残留等により再度退去強制される事例も増加しており、これらの状況に早急に対応する必要が生じております。」。これが今回の法改正の理由だと思うんです。  確かに、平成九年に集団密航を助長、援助する行為等の処罰を規定した大きな入管法改正がございました。それにもかかわらず、まだそれほど時がたっていないのに、「一時減少するかに見えた不法入国者は、その後再び増加傾向に転じております。」と。それほど期間がたっていないのに、減少するかに見えてまたふえたというのが私はよくわからないんです。  まず最初にお尋ねいたしますが、不法入国者増加傾向に転じていると。そうしますと、私たちは、前回改正で必要と思われる手段というものを法律改正によって付与したのだというふうに思っておりましたけれども、これは効果がなかったということなのでしょうか。
  37. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) おっしゃいますように、集団密航による本邦上陸前または直後に検挙された集団密航者の数というのは、平成八年上半期それから下半期に比べまして、平成九年の上半期、この半期ごとでいきますと幾何学的にふえているという状況がございました。  それで、この集団密航を助長、援助する行為等の処罰を内容とする入管法の一部改正法が平成九年の五月十一日に施行されまして、その後、平成九年の下半期ではこの上半期の千三十人という数字が四百三十三人というふうに減少いたしました。これは恐らく、この法律の施行により集団密航を助長、援助する行為等が処罰されることになったことが威嚇の効果を上げたこと、それから関係省庁の緊密な連絡のもとに講じた集団密航の対策が成果を上げたことなどが考えられます。  しかしながら、その後の状況を見ますと、平成十年に入りまして、上半期が六百八名、それから平成十年の下半期が四百四十四名ということで、平成九年の下半期に比べまして再び増加傾向に転じております。  この原因はいろいろあろうかと思いますが、密航に成功した不法在留者の存在が新たな集団密航者を呼び寄せる誘因となっているというようなこととか、それから密航ルートの多様化、密航船舶における潜伏場所の巧妙化等、全般に手段の巧妙化、悪質化が進んだというようなこと。あるいは、このアジア地域全般において経済不振がございまして、それがこういう不法入国を望む者をふやしたというようなことがいろいろ挙げられるかと思います。
  38. 大森礼子

    ○大森礼子君 平成十年の上半期、六百何名とおっしゃいましたか。
  39. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 六百八人でございます。
  40. 大森礼子

    ○大森礼子君 六百八人ですか。  そうしますと、ここに出てくる文言、「一時減少するかに見えた不法入国者は、その後再び増加傾向に転じております。」というんですが、わずか平成九年の上半期、下半期、平成十年の上半期、下半期、これだけの動きをもとにこういう文章を入れられているわけですね。  それから、平成九年の上半期のものが下半期に減ったと、四百三十三人に。確かに威嚇効果といいますか、あると思うんですよ。今、日本へ行ったらやばいぞということが伝わってちょっと時期を待とうかという感じで動きが少なくなったのかもしれない。  それで、その後、増加傾向というんですが、平成十年の下半期、何人とおっしゃいましたか。
  41. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 四百四十四名でございます。
  42. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、半期ごとに言うと、平成九年が千三十人、四百三十三人、それから平成十年は六百八人、それから今挙げられた数字で、また増加傾向にというところが、少なくともこの件については数字上言えないんじゃないかなというふうな気がするんです。  立法を必要とする事情というのに数字というものはやはり非常に重要な資料となります。ですが、こういう文章で表現されても、前回の施行になってから余り日にちがたっていないから、法案準備の期間なんか入れますと、何が一体どういうふうに変わったのか、余りに早過ぎるのではないか。必要があればそういう立法措置をしていいのですけれども、こんなに早く措置をとらなくてはいけないということは、前の立法措置といいますか、そこに向かうときのいろいろな調査等々が甘かったんじゃないか、こういうふうな印象を私は受けます。  そうしますと、集団密航については一方で摘発する効果というのは上がりつつあると考えてよろしいのでしょうか。局長はどのように思われますか。
  43. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど申しましたようないろんな事情で日本不法入国したいという圧力が高まっている中で、前回法改正はそれなりの効果を上げたと思いますし、今回御提案申し上げております法改正と相まって一層の効果が期待できるのではないか、このように考えております。
  44. 大森礼子

    ○大森礼子君 いずれにしましても、こういう提案理由説明というものを理解する場合には、慎重に文言を読む必要があるなということを今回の数字を聞いて私は思いました。  次に、不法在留罪前回入管局長お尋ねしたのですが、ちょっとはっきり申し上げましてよくわかりませんでした。先ほど千葉委員の質問に刑事局長からお答えになっていただきました。補足的に質問させていただきます。  罪数の関係なんですけれども、不法入国罪ないし不法上陸罪とそれから不法在留罪との罪数、これはどのように考えたらよろしいのでしょうか。
  45. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず一般的に申し上げますと、包括一罪というふうにお考えをいただきたいと思います。包括一罪の概念というのは、個別的に見ますとそれぞれ独立して一個の犯罪が成立するけれども、行為としては数個にわたる場合でも全体として一罪で処断することが適当だという判断です。その場合に、一つのメルクマールは、目的とするところが単一だというふうに見られるということが挙げられるかと思います。  それで、もうちょっとここを若干詳しく申し上げさせていただきますと、例えば東京で不法就労するよという意図でブローカーの話に乗りまして、船でやってきます。そうしますと、領海に入った段階で不法入国罪が成立します。それから港におりまして、迎えのバスに乗りまして移動を始めると、恐らくその段階で不法在留罪の実行が始まって不法在留行為、つまりこれは状態犯、継続犯と言われていますが、それが成立するというふうな経過になりますので、目的的には日本不法就労して稼ごう、そのために不法入国して不法在留しようということで、刑法的な評価としては同一または類似の範囲ということが言えるかと思います。  そうなりますと、行為不法入国する行為と在留する行為と二つに別れます。行為は複数ありますが、範囲は恐らく刑法的な評価では一つでいいかなということですので、数個の行為で、またそれぞれの行為不法入国罪に当たり、不法滞在罪に当たるということですから、それぞれ犯罪に当たりますが、評価としては同一範囲に基づいた一連の行為であるということで包括一罪というのが適当かというふうに、これは恐らく従来の判例、学説の考え方からいきましてもおおよそこんな考え方になろうかと思いまして、処罰としては最も重い刑によって処断されるということになるわけでございます。  それからもう一つ、今一般的にと申し上げたのは、ちょっと留保をつけましたのは、例えば先ほどもちょっと千葉委員説明の中で申し上げました。ブローカーが船に同乗してくるケースが多いわけでございますが、ブローカーは上陸はします、一緒に。それで、港に迎えに来たバスに乗っけて、ああこれで彼らは行くなと見届けて船に戻る。この人を捕まえたときに、もう領海に入って不法入国罪は成立している。上陸したらもう不法に在留したことになるよと。これは余りに不法入国罪のカバーする範囲を狭く考え過ぎているんじゃないか。この場合は、まだ不法入国罪で評価される行為の範囲内だろう。この人は、やっぱり在留の意図で、つまり比較的時間的な経過を念頭に置いて日本にいるという意識で上陸した場合でないわけでございますから、その場合には不法入国罪一罪が成立します。  ところが、これまた希有なケースなんですが、中にあったことがあるんですが、不法に何十名かを入国させようということでブローカーが来ます。それで、港におりました。しかし、手違いで迎えが来ないケースがあるんですね。これは希有なケースと言いましたけれども、捜査上ではそういうケースも考えていろいろ手を打つわけでございまして、現実にあるわけでございます。そうなると、これは携帯電話で連絡をとり合って、その段階で、じゃおまえその辺のトラックなんかを雇って東京まで連れてきてくれ、こういう話になります。そうなりますと、例えば静岡の港から東京まで連れていく行為、これはブローカーですけれども、不法入国だけで評価していいのかというと、これはかなり時間的な経過もたちますし、相当期間日本に今度はいることになりますから、これは先ほど言いました二罪が成立する。  ところが、この場合は、先ほど申し上げた同一の範囲で継続して行う行為になるんだろうか。つまり、この人の最初の範囲は、入国して送り出したらさようならと帰る、つまりすぐ船に戻るつもりですから、この段階では不法入国の範囲だけなのでございます。その後新たに不法在留する範囲が生じてそれを実行に移すわけですから、この人の場合はどうも同一または単一の範囲ということは言えないだろう。そうなりますと、極めて希有なケースですが、この場合は併合罪になる。そうなりますと、一番重い罪の一・五倍の範囲内で処断されるということになります。  ちょっとくどく申し上げましたが、以上でございます。
  46. 大森礼子

    ○大森礼子君 どうもありがとうございました。やはり刑罰法令ですので、いつから犯罪が成立するのかとか、それから罪数、不法入国罪との関係とか、これはやはりきちっと御説明していただかないといけないわけで、御説明はわかりました。  それで、一つ不法在留罪につきましては、これは継続犯と考えて日本に在留する限り時効完成はないと理解してよろしいわけですね。確認いたします。
  47. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 継続犯というのは、犯罪類型を考えますと、犯罪が既遂に達した後も違法侵害の状態がずっと継続しているということをいいます。そうなりますと、不法に在留する罪でございますので、この種類の罪は犯罪の実行行為が継続しておりますので、時効は進行しないということになります。
  48. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは通告という形ではしていなかったのですが、刑事局長の御経験からお答えいただければその範囲で結構なんですが、継続犯というのは違法侵害状態がずっと続くということですから、この期間といいますか、これが長ければ長いほど犯罪の違法性は高いということに普通はなるのだと思います。  ところが、この不法在留罪につきましては、犯罪が長く続くということは日本の中に長くいるということでありまして、山の中に入って生活するわけじゃありませんから、それなりの生活基盤というものを築くと。長く続くということは、ほかの違法行為をしないから長く在留できているということにもなるわけですね。そうしますと、ほかの刑罰といいますか犯罪と違いまして、ほかの継続犯と違いまして、この不法在留罪につきましては期間が長いということをもって情状として悪く評価できないような性質があるのではないかと思うんです。普通の犯罪ですと、長ければ長いほど情状が悪いということになるんですけれども、この点について刑事局長、どのようにお考えになりますでしょうか。
  49. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 確かに最近の傾向不法に在留している人の検挙後の事情聴取等で見ますと、どうも借金の額が不法入国した時点でだんだんと上がってきているなと。つまり、ブローカーが値をつり上げているようなところもあるんじゃないかと思われます。そんなことを考えますと、必然的にそれを返すためには長く在留するということが一つあります。  ただ、長くいるという行為そのものをもって直ちにその長短によって、例えば二倍長いからおまえ二倍責任が重いと単純には言えないと思います。  不法在留している期間に個人は活動するわけですから、さまざまな事情がございます。例えば、事実上婚姻をするなんということもあろうかと思います。そうなると、なかなか相手との関係で日本を離れがたいというような事情も場合によると出てくると思います。その場合は、しかも子供ができる場合も考えられるわけでございまして、単に長くいたから違法性はその期間だけどんどんふえていくということにはならないのでありまして、具体的な事件を処理する過程でも、警察官、検察官、そこらあたりの事情には、十分違法性の評価、情状面で配慮する必要があります。個々のケースごとにそれは必要な配慮だろうと私は思っております。
  50. 大森礼子

    ○大森礼子君 次に、不法在留罪新設によりまして、日本にいる限り犯罪者になるわけですね。正規の手続を経ないで入国しても、不法入国ないしは不法上陸の罪を犯した人ですが、これまででしたら三年以上おりましたら時効は完成するというふうに考えられております。それで、やはり強制退去事由というのはもう変わらないわけなんです、続くわけなんですけれども、やはり犯罪を構成するかどうかというのは、本人にとっても与える影響というのが違いますし、また周りの取り扱いというのも違ってくるんだろうとは思うんです。  そうしますと、この不法在留罪新設によりまして、例えば在留特別許可の申請自体が出しにくくなる。例えば、みずから不法在留の方でも退去強制する中で在留特別許可というこの手続があるわけなんですけれども、時効が完成してしまったら単なる行政処分としての退去強制しか該当しないという場合と、犯罪にも該当するという場合とではちょっと申請自体がしにくくなるのではないか。つまり、そこでまた捕まっちゃうんじゃないかと思いますと、なかなか申請しにくくなる。  つまり、中には、不法入国自体は悪いことですけれども、一つ悪いことをしたからすべての行為が否定されるということではないと思うんです。不法入国自体は悪いことですけれども、しかし、ほかに長期間きちっと特に問題も起こさず生活している方にとって在留特別許可を得ようかどうしようかというときに、窓口に行くときに、進退両難、進むこともできず引くこともできないというような地位に陥れられるのではないかという気がするわけです。こういう場面が出てくると思いますが、局長、どのように思われるか。  そうした場合、そういうことが当然予想されるわけですから、それに対する対応ということも当然考えなきゃいけないと思うんです。あくまで人道的見地からということですが、いかがお考えでしょうか。
  51. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今現在、どういうふうにこの在留特別許可が許可されているかということを若干御説明した上で、今の御質問に答えたいと思います。  今現在は、例えば合法的に入ってきてそのまま在留期間を過ぎれば不法残留になって、これは当然刑罰法によって罰せられるわけですが、それで、四年たっても五年たってもそれは当然刑罰法の対象になるわけでございます。一方におきまして、不法入国で入ってきた者が四年、五年たてば、これは刑罰の対象にならないわけでございます。  ですから、それぞれの方法で日本に入ってまいりまして、四年たった場合、要するに三年を過ぎた場合、不法残留の人、こちらは当然今の法律の体系では刑罰の対象になるわけでございますが、それから不法入国で入ってきた人、我々が不法在留罪対象にしようとしておりますけれども、今は四年たてば刑罰の対象にならない人、この二つのケースで、在留特別許可で特に不法残留罪の対象になり得る人にはきつくやっているかということを言いますと、それは基本的にそういう差別は設けておりません。  したがいまして、今委員が御指摘になった点は、基本的に在留特別許可は人道的な見地を中心にして、そういう考慮からやるものですから、そこで差異が出てくるということはないと考えていただいていいと思います。
  52. 大森礼子

    ○大森礼子君 差異が出てこないかどうかちょっとよくわかりませんけれども、一応伺いました。  それで、退去強制後の上陸拒否期間というのが一年から五年に延びるということ、これは一部違法行為はあるけれども、まじめに生活してきた外国人にとっては、特に家族と呼ぶべき人がいる場合には、これはもう大変過酷な処置であろうというふうに私は思います。  それで、今の法律上、本来その手続上入ることができない人が日本に在留する、あるいは入国するという手続としましては、入管法上、特別上陸許可というのがございますね。それから在留資格認定証明書というのがございます、外から来る場合ですね。それから在留特別許可というものがございます。結局こういう制度で許可をとらなくてはいけない。  退去強制後の一年から五年を認めていいのかどうかと判断する場合に、今言ったような制度というものがいかに適切に運用されるかということになるのだと思います。本当はこういう場合も省令なりで明文化すべきだと思うのですが、一方でなかなか類型化しにくいということもあると思うので、そうであるならば、法務大臣の自由裁量の中身というものが裁量幅が広い場合と少ない場合といろいろあるんでしょうけれども、その裁量権というものをどのように法務大臣が行使するかにかかっていると思うわけです。  先ほど千葉委員の方からの質問に対しましても、大臣の人道的に対処をしていくという御答弁をいただいたわけですけれども、改めて確認いたしますが、こういう法務大臣の裁量にかかる制度について、特に個々具体的なケースにつきまして、本当に人道的見地ということからも適切な対応をしていただきたい、これをお願いしたいのですが、もう一度法務大臣のお考え、御決意というものをお伺いしたいと思います。
  53. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 上陸特別許可及び在留特別許可につきましては、それぞれ入管法の第十二条と第五十条の規定に従い、上陸の目的または在留を希望する理由、家族状況及びその他諸般の事情を総合的に考慮して判断しているところでございます。これらの事情は個々の事案によりまして大変いろいろ異なりますので、一般的な基準を設けるということは大変困難ではないか、このように考えます。  しかしながら、これらの許可に当たっては人道的な観点を十分に考慮いたしまして、事案に応じた処理に努めているところでありますが、今後ともより一層適切な運用に配慮してまいりたいと考えます。
  54. 大森礼子

    ○大森礼子君 自由裁量ですから、こういう基準というものを明文化するのは困難であろうということは理解できないわけでもございまん。ただ、そういう措置と本当に人道的な対応を積み重ねられますと、こういう場合にはしてくれるんだなと一つの予測がつくようになると思うんです。恣意的な運用をしないということはもちろんですけれども、やはりこういうケースには認める、これが積み重ねられれば一つの目安になるというふうに私は思います。  それから、関口千恵さんという参考人の方が来られて、「在留特別許可」という御本、大臣も読んでいただいた、局長も読んでいただいた。それで、あれを話半分と仮に聞きましても、そうは思いませんけれども、事務所の職員の対応とか、まずそこら辺からも改善していっていただきたいなということです。  それから、裁判を受ける権利との関係でも質問いたしました。  訴訟等を起こしている場合に、それと退去強制手続との絡みがどうなるのか、もうこれは手続なんだからといって退去強制手続を進めますと、一方で裁判の権利を失うということになります。局長は訴訟代理人ということをおっしゃいましたけれども、確かにそういう方法はありますけれども、やはり訴訟ですから当事者本人が法廷に出て証言するとかいろんな、訴訟行為の当事者ですから、やっぱり本人が不在のままでは裁判を受ける権利というのを行使したことにはなりにくいんだろうと思います。  この点は答弁は求めませんけれども、こういう個々具体的なケースについて、人道的な常識的な対応というものをしていっていただきたいと思います。  次に、難民条約との関係についてお尋ねいたします。  入管法七十条の二のところで、不法入国とか不法上陸等をした者、こういう人は当然犯罪を構成するから裁判を受けることにもなるわけですが、難民の方等につきましては刑を免除する、こういう規定がございます。  それで、難民条約三十一条一項との関係でお尋ねします。  この条約の方では、   締約国は、その生命又は自由が第一条の意味において脅威にさらされていた領域から直接来た難民であつて許可なく当該締約国の領域に入国し又は許可なく当該締約国の領域内にいるものに対し、不法入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。ただし、当該難民が遅滞なく当局に出頭し、かつ、不法入国し又は不法にいることの相当な理由を示すことを条件とする。 こういう内容になっております。  それで、この刑罰を科してはならないという難民条約の解釈について、日本政府は、この刑罰を科してはならないという意味について、有罪なんだけれども刑の執行はしない、刑の免除ですから、有罪だけれども刑を免除するということですから、という趣旨に考えておられるのか。というのは、私は、そういう難民に対しましては裁判手続により有罪にするという手続から解放してあげることも意味しているのかという気がするものですから、ここで政府の見解をお尋ねしたいと思います。
  55. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 刑事罰則の適用、運用の話でございますので、私からお答えいたします。  不法入国あるいは不法残留等が罪名として掲げられてある特定の外国人が検挙されたケースを考えますと、冒頭からその者が実は私は難民でございますというような話になれば、それは難民については難民の認定の手続その他我が国では認定手続が整備されているわけでございますので、当然そちらの方に乗っかっていく話でございます。したがって、刑事の対象としては基本的に外れていく話だろうと思います。  ところが、そういうことを最初に主張せずに、外国人登録証を持っていない、もちろん旅券も持っていないというような状態で捕まる。そのうちに捜査の過程で、実は私はボートピープルでございますとかいろんな難民であることを趣旨とした弁解が出てくることもございます。その場合には、捜査当局としては、まだ捜査の過程でありますればそこらあたりの事実関係の特定がまず先行するということは当然でございます。その段階でいろいろな立証調査活動が当然入るわけでございますが、難民であるという可能性が非常に強い場合には、その段階でもそちらの方に手続が移行しますから、それはそれで刑事の対象にはならないわけでございます。  ところが、裁判の過程で、どういう経緯かわかりませんが、私は、今まで何にも言ってこなかったけれども、集団密航なんかで入ってきたのではなくて、かくかくしかじかで実は難民なんだけれども、そういうことで入ってきたんですということを公判の場で発言するときに、ではそれはどうするのかという問題がございます。その場合には、まずここで書いてある刑の免除というぎりぎりのところの考え方は、とどのつまり捜査の過程でもそういう主張についてはほとんど出ず、あるいは出ない、それが公判の過程でいろいろ出た段階で仮にそういう主張があっても、刑の免除というところで刑罰は科しませんよというところを最終的な段階で担保したというようにお考えいただければいいかと思います。
  56. 大森礼子

    ○大森礼子君 刑の免除ということは、これは前科として残るんでしたでしょうか。ちょっと忘れたんですが、教えてください。
  57. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 罪名としては、犯罪は成立するけれども刑は科さないということでございますから、犯罪が成立したという意味では記録は残るということでございます。
  58. 大森礼子

    ○大森礼子君 前科になるわけですね。
  59. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そういうことです。
  60. 大森礼子

    ○大森礼子君 だから、有罪ですから前科が残るということで、そこで問題があるのかなと思います。  時間の関係で次に行きます。  規約人権委員会の勧告の中で、四回報告の中身ですけれども、政府の四回報告については、再入国許可問題については政府側は報告していないわけですね。それにもかかわらず、規約人権委員会の方は勧告の中でこの制度を取り上げたというのは、背景には崔善愛さんの問題があったんだというふうに伺っております。  確認しておきたいのですが、この規約人権委員会の勧告の中でこういう文言がございます。日本語の訳なのですが、「自国」という言葉はみずからの「国籍国」とは同意義でないということを注意喚起する、こういう文言がございます。これについて、これは法務省の見解になるのでしょうか、この勧告の中と同様な解釈を我が国もとるのかどうか教えてください。
  61. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員指摘の国際人権B規約第十二条第四項に規定されている「自国」は、我々といたしましては国籍国であると解しております。  なお、この点につきましては最高裁の判例、平成四年十一月十六日でございますが、においても、「自国の解釈としては、戸籍というような統一籍を備えていない国はともかくとして、我が国のように国籍・戸籍という統一籍を備えている国においては、国籍国を意味するものと解さざるを得ない。」とされているところでございます。
  62. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、人権規約第十二条四項「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」、この「自国」の解釈なんですけれども、そこの解釈をめぐりまして規約人権委員会の見解と日本政府の見解とが異なっているということになるわけですね。イエス・ノーで結構です。
  63. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そのとおりでございます。
  64. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは、一つの条約の中の解釈をめぐって違うということは、ではどっちの説に従ってこの条約を遵守するのかという問題がありまして、違ったままでいいということにはならないと思います。いずれ問題提起します。  それから、この再入国許可の制度ですが、先ほど千葉委員も御質問になりました。大臣は、必要的かつ合理的理由ですとおっしゃるわけです。最高裁の見解というのを引かれるわけですけれども、この最高裁の見解はもちろん三権分立で尊重いたしますけれども、時代によって考え方が変わってきます、許可制度とかあり方とか政策的なもの、特に自由裁量的なものというのはその時々の政策とかが反映するわけですから。ですから、それをもって固定的に最高裁もこうだからこれでいいんだということにはならないと思います。  その上で質問するのですが、再入国許可を受けた場合に、何でこれが必要な制度かということで、再入国する場合の上陸審査事項ですか、これが旅券、査証が有効であるということと、当該外国人が第五条一項各号のいずれにも該当しないこと、つまり上陸拒否事由に該当しないことというこの審査だけで済む、だから許可を受けた人の方が上陸の手続が簡単なんだと説明されます。今言ったのは一般論です。  それで、入管特例法の七条の方でこれについて特例がございます。特別永住者につきましては、再入国許可を受けた特別永住者は、「入管法第七条第一項中「第一号及び第四号」とあるのは、「第一号」とする。」ということですから、結局旅券、査証が有効であること、これさえ再入国時にチェックすればいいということになります。  一方で、日本人の帰国のところの規定がありまして、このときにも日本人は、幾ら日本人でも旅券とかそういうものが有効であるということはチェックするわけですね。そうしますと、実質は日本人入国時の審査の中身というのは変わらないじゃないかと思うんです。  局長、間違いございませんか。
  65. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本人の場合には帰国の確認を行うだけでございますけれども、外国人の場合は、特別永住者の場合に非常に限定されているとはいえ、あくまでも審査の対象になっているというところが違います。
  66. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうですか。だから、日本人の場合はパスポートとかその形でならぱっと通して、特別永住者の方でしたらこれは偽造されたものじゃないかということで調べるということなんでしょうか、今のお答えですと。  では、特別永住者で再入国許可を与えなかったケースというのがありますかどうか、件数、過去五年ぐらいがわかればいいと思うんですが、わかる範囲内で結構です。
  67. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 過去五年で調べてみましたけれども、特別永住者に対して、再入国許可が申請されて与えなかったというケースはございませんでした。
  68. 大森礼子

    ○大森礼子君 そこなんです、ないのであろう、ほとんど全部出ていると。前回もそういう趣旨のことを御答弁になりました。  それから、上陸審査の内容、要するに旅券、査証が有効であるかどうかだけですよね、そうであるならばこんな制度はもう特別永住者の方についてはなくてもいいんじゃありませんか、こういう質問をしますと、いや、もうその外国人は一たん出たら在留資格を失いますからと言うんです。在留資格を失うのが前提であればこれは便利ですよ、向こうで手続をしなくてもいいわけですから、再入国する場合に手続をしなくてもいいわけですから。その前提を変えて日本人と同様に扱ってもよろしいのではないかと私は素朴に思うのですが、それではどうしても都合が悪いという理由は一体何なのでしょうか。
  69. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 自国民の場合には基本的に国から出てそれから帰ってくる、あるいはその国に在留するということに関して特別の許可は要らないわけでございますけれども、外国人の場合にはそうならないということで、やはり再入国許可の制度は維持する必要があるということでございます。
  70. 大森礼子

    ○大森礼子君 周りの方でも理由がよくわからないと。もう一度お答えいただけますか。
  71. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本人の場合には基本的に自国を自由に出国して、それから自由に戻ってきて、かつ日本で在留するということが権利としてあるわけでございますけれども、外国人の場合は必ずしもそうでないということですから、そういう再入国の許可の制度を維持する理由があるわけでございます。
  72. 大森礼子

    ○大森礼子君 全然理由になっていないと思います。人道的見地からといっても人権とか考える場合、もっとやっぱり実質的に考えなきゃいけないわけでしょう。崔さんだって言っていたじゃないですか。アメリカで韓国の話をして、あの方はチェさんと言っておりますけれども、チョエさんとおっしゃるんですか、私は韓国語の発音ができないんですと。私は日本語の発音で自分の名前を言ったら韓国の方に通じませんと。私の帰る国は日本しかないんですと。こういう方たちが日本に今住んでおられるわけです。今言った理由では全然理由づけになっていないと私は思います。本当に時間がないのが残念です。  今、円さんが理由があると思っているのかしらとそばで言っていますが、思っているとすれば問題だなということを指摘しておきます。  それから、崔さんの問題にもう一度触れさせていただきます。  一番最初に、私がこの質問をしましたら、大臣が何か入管法の枠内で検討するとおっしゃって一時喜んだんですが、でもよく考えてみると入管法の枠内というのがどういう意味なのかというふうに考えておりました。  これまでの大臣答弁ですと、特別永住許可の資格回復はちょっと難しいと。これは法律の規定に基づいたらできないんですよ、法律の規定に基づいたら。できるんだったらもうやっていますから。一般永住ならというふうな御答弁であったと理解しております。しかし、法律の規定でその規定どおりやったらまず通るわけです、一般永住でも。一般永住での要件というのは崔さんは満たしていると私は思いますので。そうすると、大臣が崔さんの話を聞いて非常にお気の毒と考えたと。お気の毒と考えた日本法務大臣がこの方に対して示す誠意というのは一体何かといったら、一般永住の申請用紙を出してください、私ぽんと判こを押しますからという、ただこれだけでしかないわけです。やはり人道的立場に立った対応という場合には、これは法律の規定の範囲外のことになるのが通常ではないかというふうに私は思います。  この点につきまして、先ほどの規約人権委員会の第四回の勧告についても、再入国許可制度について規約人権委員会がコメントしたのは、崔さんのこの裁判の例があったということを前提にしていると私は理解しております。この問題につきまして私ども真剣に考えなきゃいけない、一人のことだからこそ真剣に考えなきゃいけないと思います。この資格回復問題について我々がどういうふうな態度に出るかということは、崔さんだけの問題ではなくて、多くの在日の方、それから韓国の方もじっと見ているのではないかと思います。  大臣、きょうは結論は出しませんけれども、今回の改正で指紋押捺制度全廃となります。いろんな経過はあったけれども全廃となる。これ自体は評価すべきだと思うんです。遅過ぎたという感がありますけれども、これは評価すべき。しかしながら、この崔さんを一人ぽつんとおいたままであるならば、本当にこの指紋制度というものは完了した問題にならないだろうと思っております。私たちも一緒にこの崔さんの問題について考えていきたい。難しいことは聞きませんけれども、だから大臣も一緒に考えていただきませんかと申し上げたい。いかがでしょうか。簡単でいいです。
  73. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) たびたびのそういうお考え、私も大変共鳴しているところでございます。そういう中にありまして、私としては、入国管理行政上可能な限度で救済する、そういうことでこれから一生懸命ない知恵を絞っていく必要があるかなと思っております。
  74. 大森礼子

    ○大森礼子君 ない知恵と誠意を持ってこの問題に対応していきたい、これは大臣のみならず我々の責任でもあると考えております。  それから次に、外国人登録法の問題に移ります。  前回外国人登録証の常時携帯義務に関しまして入管とそれから警察の方に、特別永住者の方に限定したいと思いますが、どんな場合にその提示を求めるのかということをお尋ねいたしました。時間の関係で警察の方からのみお答えいただきました。そのお答えの中で、北朝鮮の工作員の事件四件を教えていただいたんです。それで、これがいつごろの事件かということを聞き忘れたものですから、それぞれの事件の名前四つ、それから何年の事件であったか、これをお答えいただけますでしょうか。
  75. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 前回、この外国人登録証明書の不携帯あるいは提示拒否で近年検挙した北朝鮮スパイ事件として四つの事件を御答弁させていただきました。  その検挙でありますが、男鹿脇本事件というのが昭和五十六年八月でございます。それから日向事件というのが昭和五十六年六月でございます。それから磯の松島事件というのが昭和五十五年六月。それから、日本人拉致事案の一端が明らかになった宇出津事件というのがございます。これが昭和五十二年九月ということでございます。  それからなお、我が国におきましては戦後約五十件の北朝鮮関係の諜報事件が検挙されておるわけでありまして、そのうち十三件が外国人登録証の不携帯または提示拒否で検挙しておるということでございます。そして、現在も相当数の北朝鮮の工作員が活動しているものというふうに推定されるところであります。  警察としましては、今後こういう北朝鮮関係の諜報事件の検挙に努めていくわけでございますけれども、いずれにしましても、こうした事案に対応する上で外国人登録証の携帯あるいは提示義務の制度というのが重要な役割を果たしてきたというふうに考えております。
  76. 大森礼子

    ○大森礼子君 一応年数はわかりました。最後のもので昭和五十六年八月ということですね。  これは検挙のための一つの手段になるということはわかるわけです。申し上げたいのは、不可欠な、これがないと絶対できないことなのか、それとも捜査手法の中のワン・オブ・ゼムにすぎないのかという問題だと私は思うんです。  今そのことに触れられましたので申し上げますと、平成六年から平成十年までの不携帯の検挙数、これは警察庁の資料をいただいたので言いますと、平成六年から平成十年でトータルしますと六十九人です。ということは年間十四人という数になります。検察庁の方にもお尋ねしました。これは起訴件数ということでお尋ねしました。平成六年一件、平成七年一件、平成八年以下はゼロということでございます。そして、これは不携帯のことですから何も特別永住の方に関するとは限らないわけでありまして、多分ほとんど特別永住でない方ではないかなというふうに私は考えているわけです。いずれにしましても、場合によっては検挙できるという目的のために、特別永住者の方は約五十四万三千五百名ぐらい平成九年十二月現在でいらっしゃると伺っておりますけれども、この方に網をかける携帯義務は不当であるということを改めて申し上げておきます。  特別永住者と一般永住者と分けて差別しているように思われるかもしれませんけれども、まず一番問題があるところから議論していくべきと思うので、この法案の審議に当たっては一応特別永住者ということで限定させていただいております。  次に、刑罰との関係ですが、前回、運転免許証の不携帯とか提示義務違反とか、こういう刑罰の不均衡さといいますか、これについて少し触れました。  平成四年の衆参の附帯決議で、「外国人登録法に定める罰則について、他の法律との均衡並びにこの法律における罰則間の均衡などを検討し、その結果に基づいて、適切な措置を講ずること。」、こういう附帯決議が出されておりますが、今回の改正案にこれが生かされたという形跡は見られません。  それで、この附帯決議をどのように検討していただいたのか、どのように検討した結果この罰則の部分を変えなくてもいいという結論になったのか。もちろん、附帯決議は拘束力はありませんから、いいよと無視することもできるわけですが、一応気になりますのでお尋ねいたします。
  77. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回、国会に提出している外国人登録法改正案につきましては、衆参法務委員会における附帯決議の趣旨を踏まえまして諸外国の制度を調査いたしました。それから、各界の有識者の御意見を伺うということもして、多様な角度から検討をしたところでございます。  その過程で、外国人登録証明書の常時携帯制度につきましても検討を行いました。特に、平成九年三月から平成十年五月にかけまして七回にわたり、学者、ジャーナリスト、実務経験者、外国人有識者など、異なったメンバーから外国人登録制度について御意見を伺いましたところ、登録証明書の携帯についても毎回取り上げられ、そこでさまざまな意見が出されておりました。  しかしながら、諸外国の中にも我が国と同様の制度をとっている国が少なくなく、また不法入国者不法残留者が多数存在するという今日の状況の中にあって、外国人が合法的な在留者であるか否かを含めて、その居住関係等を即時的に把握するという制度の実効性を担保するためには刑罰による担保が必要であると考えるに至ったので、罰則についての見直しは行わないことにしたということでございます。
  78. 大森礼子

    ○大森礼子君 いろんな会議で各界から意見を聞いたというけれども、その中身が知りたいわけでありまして、どういう理由づけによって、諸外国の例もありますけれども、今の話を聞いていまして、いろんな各界の意見をお聞きになるのは結構です。その方たちが外国人といった場合に、どういう方を想定しているのか。今の御意見は、みんな在日の方も特別永住の方もそうあるべきだ、こういう意見だったんですか。
  79. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この制度を維持すべきだという意見と、この制度は全面的ないしは一部廃止すべきだと、いろいろな意見がございました。
  80. 大森礼子

    ○大森礼子君 だから、非常に十把一からげ的な議論でありまして、外国人だっていろんな方がいらっしゃるわけですから、特別永住、一般永住その他の外国人の方。いろんな各界の学識経験者からも御意見を聴取したのでしょうけれども、特別永住者の方についてもほかの外国人と同じように皆さん考えておられたのですか。
  81. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者とそうでない方たちを分けて考えるべきだ、そういうような御意見もその中では出されました。
  82. 大森礼子

    ○大森礼子君 そこを聞きたいわけです。制度そのものだったら、一般外国人と言ったら変な言い方ですけれども、永住の方以外の方については入管行政上私も必要だと思います、そこを含めたならば。それでは特別永住者の方についても必要なのでしょうかということが今の大きく問題になっているところなんです。特別永住者の方については罰則があって、常時携帯義務そのものについても批判があったと思うし、今は刑罰のことを聞いていますので、罰金でなくてもいいのじゃないか、こういう御意見もあったと思うんですが、ちょっと聞いていると時間がなくなりますので次に行きます。  それでは、局長は十分に検討したとおっしゃるのでしたら、運転免許証の携帯義務違反とか提示義務違反を前回私は申しましたでしょう。携帯義務違反は二万円以下の罰金または科料、提示義務違反は五万円以下の罰金。どういう場合に提示を求められるかというと、要するに定型的に事故の危険があるような運転をしていると認められるような場合です。こういう場合ですら二万円以下の罰金とか五万円以下の罰金なんです。明らかにこれ一つをもってもなお均衡がとれていないのじゃないかというふうに思います。  それから、戸籍法とか特に住民基本台帳との違いというものを、附帯決議で刑罰の均衡を考えるということは、こういうことについて検討してみなさいということなんでしょう。そういう検討がなされていないことになるのですから、もしなされているというのだったら、住民基本台帳とかいろんなものと、住民基本台帳の方はほとんど過料です。そのことと外登法の罰則との不均衡さ、これは議論になったんでしょうか、どういう結論になったんでしょうか。
  83. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 戸籍法とか住民基本台帳の取り扱いとの違い等につきましては、先ほど申しました検討会で議論になりました。  ただ、この種の意見は、ここはあくまでも各層の方々から伺うという場所でございまして、そこでどっちにするということを結論づけるというたぐいの会議ではございませんので、特定の結論が出たということではございません。
  84. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうでしょう。別に各界の方がすべてお決めになるわけじゃなくて、各界の御意見というのはあくまで法務省一つの参考資料とされるわけです。だから、法務省がどういう姿勢をとるのかということが最も大事なわけであります。  それで、前回も言ったわけなんですけれども、例えば記録そのものの、原票そのものの正確性を担保するためには少し強い強制が要るのかなという気もいたします。でも、常時携帯義務というのはそうじゃないわけです。いつも持っていなければならないという不便さ、常時携帯義務自体も私は廃止すべきだと考えているんですが、そうであるから余計に罰金二十万円なんてとんでもない話だと思うんです。  最後の質問になりますけれども、まず局長、それから法務大臣お尋ねします。  これは何で過料、行政罰ではだめなんですか。何で刑罰でなくてはいけないんですか。そして、罰金二十万円という大きな額でなくてはいけないんですか。その理由を説得力を持って説明していただきたいと思います。
  85. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これはしばしば私が述べているところでございますけれども、外国人我が国入国、在留するために我が国政府から許可を受けることが必要であり、一般的にはその活動内容も制限を受ける立場にございます。  不法入国者不法残留者が多数存在するという今日的状況の中では、登録証明書の常時携帯制度は外国人が合法的な在留者であるか否か等、その居住関係及び身分関係を即時的に把握するために合理的かつ必要なものであり、この目的を達するためには過料のような行政罰ではなく刑罰による担保が必要であると考えております。
  86. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 特別永住者であっても、入管の現場、あるいは不法入国者不法残留者等と間違われないようにするというようなことがいろいろな局面で大事であると思いますので、登録証明書の携帯あるいは提示というのは非常に大事な措置だと思いますが、ただいま委員が繰り返しおっしゃっているようなことについても、それなりの委員の思いが込められておるということで拝聴させていただきました。
  87. 大森礼子

    ○大森礼子君 もう一問できそうですので、聞きます。  特別永住者の方についてのそもそも外登証の常時携帯義務、やっぱりここにまた戻らなきゃいけないのかなと思うんです。  先ほど、警察の方にお聞きして入管の方に聞かなかったんですけれども、いいですか。  二世、三世の方が育っておる、日本で生まれ育った方で韓国のことを知らない方もいっぱいいらっしゃいます。外見、見た目、日本人と同じです。言葉も日本人と同じです。イントネーション、アクセントも多分同じだと思います。そして、生活習慣も同じで全く日本人、それから韓国籍かもしれませんけれども違和感が全くない。しかし、一方は外登証を持たなきゃいけないとなった場合、そうしたら、入管として、特別永住者の方について携帯義務を廃止したらどんなときに困るんですか。  こう聞いたら、さっきとまた同じような文言を繰り返すのかもしれないけれども、日本人と全然区別のない人に正規な在留者か不正規かどうかと区別する、これが当てはまるとお考えなんですか。
  88. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法就労者など入管法違反の疑いがある外国人について勤務先あるいは居住地において摘発を行うことがあり、このようなときに適法な在留者か否かを確認するため外国人登録証明書の提示を求めておりますが、摘発は夜間、早朝あるいは祝祭日に実施することも多いため、登録証明書の常時携帯義務を廃止すると適法な在留者か否かを即時的に確認できず、結果として不法就労者が摘発を免れるという不都合が生じることになりかねません。  また、不法入国者不法残留者等が多数存在する今日的な状況にあっては、不法就労者の摘発のような特別の局面以外であっても、ある外国人不法に在留しているのではないかとの疑義があるような場合など、その外国人が合法的な在留者であるか否かを含めてその居住関係及び身分関係を即時的に把握できることが必要でありますので、すべての外国人について常時携帯義務を課す必要があると考えております。
  89. 大森礼子

    ○大森礼子君 いつもすべての外国人を一くくりにするんです。  確認です。今御答弁なさったことは、歴史的背景のある特別永住の方についても当てはまると局長はお考えなんですか。そう確信しておられるんですか。
  90. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者についても当てはまると考えております。
  91. 大森礼子

    ○大森礼子君 その考えは全くおかしいと申し上げて、質問を終わります。
  92. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  93. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  94. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私はまず冒頭に、通告しておりました盗聴器の件、「フラッシュ」に盗聴器を全国の警察に納入したという方の話が載っておりますので、通告していたとおり、この話をお聞きいたします。  一九五七年ごろ、中野に警察のさくら寮というのがあったのは事実ですか。
  95. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) さくら寮なるものは承知しておりません。
  96. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 このリオン株式会社と盗聴器を警察に納めるということで契約を結びましたか。
  97. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 警察は、いろんな部門で装備資機材を犯罪捜査等のために整備しておるというようなことはございますけれども、ここに出ておりますような盗聴と言われるような行為を行うための機材というのは調達しておりません。
  98. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 一セット二十万円、百セット以上を警察庁に納めた、こういうことはなかったんでしょうか、あったでしょうか。
  99. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 承知しておりません。
  100. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 他のメーカーに依頼したことはありますか。
  101. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ございません。
  102. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 この記事の中で、名前も顔も公表し彼自身がこの告発をしています丸竹洋三氏は、緒方靖夫さんの国家賠償請求等のあの裁判の中でも証人として証言をされています。  では、彼のこの証言は事実ではないんですか。
  103. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) いずれにしても、先ほどから御答弁させていただいておりますけれども、この記事の中にいろいろなことが書かれておりますけれども、御指摘のような盗聴と言われる行為を行うための機材というのは、調達した事実はございません。
  104. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 例えば、緒方さんの裁判あるいはこの記事が出た以降、調査等をされたことはありますか。
  105. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 調査といいますと、調達とかという意味かどうかなのでございますけれども、今申し上げましたように、もともと私ども調達した事実はないというふうに御答弁させていただいております。
  106. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それでは、現実とは違う証言がたびたび出ているのですが、それについては全く放置ということでいらっしゃるんでしょうか。
  107. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ただいま申し上げたとおり、御答弁させていただいたとおりです。
  108. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 そうすると、ある人物が時期等を全部特定し、会社名も明らかにし、こういうふうに契約を結び、こういうふうに納入し、場所はどこでという証言をされているけれども、これは警察とは全く無関係だということでしょうか。
  109. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) そのとおりでございます。
  110. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 反論をされたことはありますか。
  111. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 個々の報道について、一般論でございますけれども、逐一反論、コメント等をいたしたりはしておりません。
  112. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 していないということで聞いておきます。また今後もこの件についてはお聞かせください。  では、先ほど数々の委員から再入国の権利について質問が出ました。私もその点について、まず冒頭お聞きをいたします。  規約人権委員会は明確に勧告をしております。規約人権委員会は、日本で出生した在日韓国・朝鮮人のような永住者に関しては、事前に再入国許可を取得しなければならないという要件を取り除くよう強く要求しております。これについて今回改正案に盛り込まれていないというのは大変問題だと思います。それで質問をいたします。  一九八八年に国連差別防止・少数者保護小委員会に提出され起草作業が始まった「自国を含むいずれの国からも離れ自国に帰るすべての者の権利における被差別に関する宣言」、「出国・帰国の権利宣言」と言われているものですが、この十一条は合法的永住者の居住国への帰国権というものを定めております。  この草案に対して一九八九年に寄せられた各国からのコメントの中で、この十一条の削除を求めたのは西ドイツと日本だけで、他は全部承認をしております。しかも、そのドイツは一九九〇年の外国人の連邦への入国及び滞在に関する法律十六条で、八年以上滞在し、うち六年間ドイツ国内の学校に通学した者に再入国権を認めました。  先ほど、大森委員の質問の中で、特別永住者についてはこの再入国を拒否した例はないというふうにしっかり答弁をされております。だとすると、この再入国許可の制度、とりわけ特別永住の人たちについてはもう全く許可は要らないのだというふうに思いますけれども、国籍法に血統主義をとり第二世代以降の外国人が多い国の中で、これらの人々の再入国権を認めていない国が果たしてあるんですか。
  113. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 申しわけございません。血統主義をとって、かつ再入国という制度をとっている国があるかどうかということでございますが、初めて伺ったものですから、こういう国があるとかないとかとちょっとお答えできません。申しわけございません。
  114. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 これは日本だけではないかというふうに思っております。今後、私の方ももうちょっと調べますが、よろしくお願いします。  それで、先ほどもさまざまな委員から質問がありましたけれども、例えば永住者の再入国権を権利として認めると、何か実社会上問題が生ずるのでしょうか。私はまだすとんとわからないので、その点をお聞かせください。何が困りますか。
  115. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 永住者といえども外国人でございますので、やっぱり外国人である以上は権利として日本に出入国できるというわけではございませんので、やはり再入国許可の制度が必要だということでございます。
  116. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 外国人だからという一般論ではなく、もしこの許可制度を撤廃して何が本当に困るのかということを教えてください。もし実務上困らないのであれば、制度を維持する理由がないと思います。
  117. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ちょっと仮定の問題で、どういうときにこういうのが必要だということを今すぐお答えできませんですけれども、合理的な理由によってこの制度を維持しているわけでございまして、やはりこれを維持する必要があると考えております。
  118. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 勧告が出ております。そして、私は、制度は合理的な理由がなければ撤廃すべきである、検討すべきであると思います。何が実際困るんでしょうか。あるいはその検討はされたのでしょうか、されなかったのでしょうか。
  119. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然いろんなことを検討した上で、この制度を維持することが必要だということで維持しているわけでございます。
  120. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 検討されたのであれば、何が困るか教えてください。
  121. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) こういう許可という制度をとっているわけでございまして、全体の入管の仕組みの中でこの制度が必要だからとっているわけでございます。
  122. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 許可の制度をとっているからではなく、なぜ許可の制度をとる社会生活上、実務上の理由があるかについて教えてください。
  123. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然、許可の制度をとっているわけでございますので……
  124. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 違うんです。なぜ許可の制度をとっているかということを聞いておるのです。
  125. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 申しわけございませんけれども、いつも言っていることの繰り返しになります。  再入国許可制度は、我が国に在留している外国人が一たん出国する場合には本来在留資格を失い、再び入国するに当たり改めて入国・上陸手続をとらなければならないところ、再度我が国入国しようとするときはその入国・上陸手続を簡略化するとともに、再入国した後は従前の在留資格及び在留期間等を継続させるものであります。  したがって、永住者または特別永住者についてもその事情に変わりはなく、再入国後はその法的地位のまま入国し引き続き在留できるという効果があることから、この制度は必要かつ合理的なものであると考えております。
  126. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私たち委員が納得しないで質問をし続けるのは、なぜ許可の制度が必要なのかという実務上の理由が全く示されないまま来ているということです。実務上の理由を明確に示してはいただけないということできょうは聞いておきます。  では次に、ほかの委員、この間も円委員、そしてきょうも千葉委員が聞かれたんですが、外国人犯罪がふえているという立法事実についてです。  前回、私も聞きました。分母と分子の数が違うんじゃないかということです。この間、外国人は百九万人ということなんですが、これは国勢調査その他から分析して百九万人だというふうにおっしゃいました。これには、新規入国者三百六十六万人、そして不法滞在者は入っておりません。しかし、なぜか分子の方には五千三百八十二人の中にいわゆる不法残留不法就労などの人たち九百五十一人が入っております。つまり、分母はとても狭くして分子はがっとふやしている中での計算だと思いますが、この点はいかがですか。
  127. 林則清

    政府委員林則清君) 午前中の千葉委員の御質問にもありましてお答えしたところでありますけれども、来日外国人ということでとっている中には、おっしゃるように、母数になる分母のところと、入ってくる者が、分子の部分が若干違いがあるわけですけれども、これは先ほども申し上げましたように、不法入国者数は不明であるために計上が困難である、それでまた、外国人登録を要しない短期滞在者については時点を限った数値がとれないというようなこともありまして、それでこれは計上をしないということで、ある意味ではおっしゃるような問題点があるんですけれども、なるべく実態に沿った一つの指標としてああいうとり方をしておるということであります。  ただ、少し離れるかもしれませんが、実態数としての、絶対数としての犯罪、検挙された者は増加しておるわけであります。
  128. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 今おっしゃったように、分母には数がわからないからということで不法滞在者は入っていないわけです。そして、短期の、例えば三日来るといった新規入国者は入っていないわけです。しかし、分子には五千三百八十二人のうちいわゆる入管法違反の人たち九百五十一人は入っておりますし、短期滞在四百十二人も入っております。計算の仕方が全くおかしいと思います。分母には不法滞在者は入っていない、でも分子にはしっかり千人近く、五千三百のうち千人近くはそういう人たちが入っているということで、計算の仕方が違う。先ほど千葉委員も、日本人に比べて犯罪が多いとは余り言えないんじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、私自身は日本人と比べて同じかそれ以下というふうにも考えられるのではないか。要するに、なぜ分子に入れて分母に入れないのかということは全く納得がいきません。  次に行きます。  この法務委員会で、まだ三回目ですが、参考人も入れますと四回目ですが、浮かび上がってきたのは、日本における外国人政策が全く根本的には変わっていない。住民基本台帳法の第一条は「住民の利便」と書いてあります。しかし、外国人登録法は「公正な管理」というのを目的に掲げておりまして、結局、外国人犯罪者予備軍で公正な管理の対象というふうにしか見られていないということを感じます。それは全く変わっていないのではないでしょうか。  先ほど大森委員罰則のことを聞かれましたので、それについては省きます。  次に、その点でお聞きしたいことは、外国人登録法における登録義務の内容がなぜこんなにたくさんあるのか。永住者、特別永住者についてもそうです。登録事項の「職業」、これはなぜ必要なんですか。
  129. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 職業は、当然のことながら在留資格と非常に関係がございますので、「職業」という項目が必要なわけです。
  130. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 しかし、日本人の住民票には職業などを書く欄はありません。外国人はなぜ必要なんですか。
  131. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 外国人の場合には、入管法による在留資格により入管法に基づく在留期間の間だけ在留できるということがございますので、職業ということが特に重要なわけでございます。
  132. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 では、永住者、特別永住者は必要ないと思いますが、いかがですか。
  133. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そのとおりでございます。
  134. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 そのとおりであれば、ぜひ撤廃をしていただきたいと思います。  では、永住者、特別永住者についてはなおさら、「勤務所又は事務所の名称及び所在地」、「国籍の属する国における住所又は居所」、「旅券番号」、「旅券発行の年月日」、これは不必要だと考えますが、いかがですか。
  135. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 永住者及び特別永住者は日本の社会への定着性が高く、「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」を登録させた上でこれらの事項を通じて居住関係及び身分関係を把握しなければならない必要性に乏しいことなどから、これらの事項の登録を要しないことといたしました。しかしながら、永住者、特別永住者であっても、その居住関係及び身分関係を明らかにするため、「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」以外の登録事項は当該外国人の身分関係の把握のためになお必要であり、さらに登録事項を削減することは困難と考えております。  また、非永住者については、永住者及び特別永住者と異なり我が国における在留活動に制限がある者も少なくなく、「職業」及び「勤務所又は事務所の名称及び所在地」をも登録事項としておく必要があると考えております。
  136. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 永住者、特別永住者に関して、国籍国に生活の本拠がありませんから、「国籍の属する国における住所又は居所」、これは要らないんではないですか。  それから、旅券を所持しない者も朝鮮民主主義人民共和国の場合ですとあり得るわけですから、「旅券番号」、「旅券発行の年月日」、これも要らないと考えますが、いかがですか。
  137. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 特別永住者の大多数は国籍欄の記載を韓国ないし朝鮮として登録しておりますが、我が国において出生した特別永住者につきましても、その親の本籍が韓国に存在しその戸籍に親子関係が記載されているのが通例であるところから、本国における住所として本籍地を記載させることによりその特別永住者の身分関係の把握に役立っております。また、中には特別永住者の側から本国の戸籍謄本を提出して「国籍の属する国における住所又は居所」の欄の記載の訂正を求める例も存在しております。  したがって、本欄の記載はなお意味があるものと考えております。
  138. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 なぜ「国籍の属する国における住所又は居所」が身分の確定に役立つんですか。
  139. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど言いましたように、特別永住者につきましては、その親の本籍が韓国に存在しその戸籍に親子関係が記載されているのが通例であるところから、本国における住所として本籍地を記載させていることによりその特別永住者の身分関係の把握に役立っておる、こういうことからでございます。
  140. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 本当にこのさまざまな登録事項が必要なのか、こちらももう一度検討しますが、ぜひ削除の方向でお願いいたします。  次に、御存じのとおり住民基本台帳法上は事務従事者の守秘義務規定があります。しかし、外国人登録法には守秘義務の規定がありません。これは大変不均衡ではないか。外国人の登録事項はかなりたくさんあるわけですが、事務従事者に守秘義務の規定はありません。これは不平等ではないかと考えます。いかがでしょうか。
  141. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今回の法改正に伴いまして、その中で新しく「登録原票の管理」という項目、第四条の二でございますけれども、それを設けております。そこでは、「市町村の長は、登録原票を当該市町村の事務所に備えるに当たつては、記載内容の漏えい、滅失、き損の防止その他の登録原票の適切な管理のために必要な措置を講ずるものとする。」ということを書いてございまして、プライバシーの保護にも意を用いているところでございます。
  142. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 そうであれば、ぜひ外登法にも守秘義務の規定をきちっと入れていただきたいと思います。  それで、外国人の登録原票はなぜ今まで非開示だったのでしょうか。
  143. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今まで開示規定自体が外登法には一切ございませんでした。ただ、この登録原票に載っております事項は当然のことながらプライバシーに属することが多く記載されていることもあり、登録原票は原則として非公開ということで扱ってまいりました。  しかし、外国人本人やその代理人から求めがあった場合や、関係行政機関から法令の規定に基づき、または職務上の必要があるなど合理的な理由により照会がある場合には、例外としてという言い方ではございますが、運用上、照会に応じるということにしてきておりました。
  144. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 プライバシーというのは本人が情報をコントロールする権利というふうに今は考えられておりますから、本人あるいは代理人が申請をすれば登録原票の中身については開示してもいいというふうに思いますが、なぜ今まで非開示だったんですか、プライバシーの観点とおっしゃいましたけれども。
  145. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども申しましたように、原則として非公開という格好にはしておりましたけれども、外国人本人やその代理人から求めがあった場合には基本的にはこれの求めに応じておりました。
  146. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私は非開示というふうに当事者の方からも聞いております。  ところで、先ほど関連ある官庁などから照会があれば開示するというふうにおっしゃいましたが、具体的にどういう場合でしょうか。
  147. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 法律の規定に基づいて照会があるときには開示したというようなケースといたしましては、例えば刑事訴訟法第百九十七条第二項に基づく検察庁とか警察署とかからの照会というのがございます。それ以外にも、例えば所得税法とか地方税法、そういう法律を根拠にしてそれぞれの関係の官庁からの求めがあるとき、さらに言いますと弁護士法第二十三条の二第二項に基づく弁護士会からの照会、こういうものに対しましては開示を行ってまいりました。
  148. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 法務大臣は、人道的に取り扱うべき問題については今までどおりということを不法滞在罪あるいは再入国拒否期間の伸長の問題に関しておっしゃいました。  ところで、大阪で、例えば日本人と結婚した超過滞在外国人が特別在留許可の申請のため入管に出頭した場合、ほとんど身柄を拘束されております。例えば東京でも、日系女性と超過滞在のペルー人が結婚し、子供も生まれ、特別在留許可の申請中であったにもかかわらず、自宅から警察官によって勾留をされました。理由は超過滞在以外にはなかったと言われております。  このようなことが実は日常茶飯事に行われております。私たちは、私たちなんて勝手に言うのも変ですが、だからこそ不法滞在罪あるいは再入国拒否期間の伸長に関してまた新たな人権侵害が起きるのではないかと大変危惧をするわけです。  法務大臣の考える人道的取り扱いとは何を意味するのでしょうか。法務大臣、お願いします。
  149. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これまで委員指摘のようなことを申し上げましたが、その背景に考えられます一つは、婚姻の状態が安定して続いているとか、そういうことから人道的に配慮する必要があるというふうなのがケースの多くの場合だったと思います。
  150. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 では逆に、大臣は現在そのようなことが行われていることについてはいかがお考えですか。
  151. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) それぞれの事情を十分勘案しながら適正な手続がとられておる、私はそういうふうに判断しております。
  152. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 結婚して特別在留許可申請、これはなかなか認められない、あるいは時間がかかります。身柄を拘束されるということが起きていて、それで適切に行われているのでしょうか。
  153. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今、委員がおっしゃっているような形ですべてが動いているというふうには承知しておりません。それぞれ個々の事情に応じた適切な手続を踏んでおるというふうに理解しております。
  154. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それでは逆に、現実に起きている問題について改善、あるいはこういう事案があるということで要請をしたいと思います。  先日、病院の中での治療義務を優先するのか、あるいは通報義務の方を優先するのかということで、今例えば労働基準監督署の場合も、労働災害からの救済が本来業務とされ守秘義務は優先されておりますし、かつての国会答弁では守秘義務の優先ということが言われております。前回は、守秘義務と病院の治療義務のことなどについて議論があったときに、通報というふうにおっしゃったんですが、これは守秘義務が優先されるべきではないでしょうか。
  155. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 入管法の第六十二条の二項は、国または地方公共団体の職員は、その職務を遂行するに当たって退去強制事由に該当する外国人を知ったときは、その旨を通報しなければならない、このように規定しております。他方、公的な保護施設あるいは公立病院に勤務する者が国または地方公共団体の職員である場合は、国家公務員法ないし地方公務員法によりいわゆる守秘義務が課せられているところでありますが、公務員に入管法上の通報義務が課せられている以上、一般的には通報義務が優先するものと考えております。
  156. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 通報義務が優先されるのであれば、外国人の人は病院に行ったりあるいは労働災害の申請をするということそのものが全くやれなくなると思います。むしろ、そういう答弁は今までの国会答弁よりもより後退している、一部の実務よりもはるかに後退しているというふうに思いますが、いかがですか。
  157. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもの基本的な立場は先ほど述べたとおりでございますが、人権侵犯の関係において、例えば不法就労外国人がそれを所管する官署に相談にあらわれたというような場合には当該外国人の人権を尊重する必要がありますが、法律上の義務としては入管法上の通報義務があることから、その通報義務を履行すると課せられている行政目的が達成できないような特殊例外的な場合には、通報義務により守られるべき利益と各官署の職務の円滑な遂行という法益との比較考量により、双方の利益を守るように関係機関と相談して円滑に行政を進めているところでございます。
  158. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 では、この通報義務を優先させないようにお願いします。  また、入管法、外登法が管理のための法律から一歩も出ていないことについて、今後議論が必要ではないかと思います。  以上です。
  159. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 まず最初に、外登証の常時携帯義務についてお尋ねします。  先ほど、大森委員から大変明確で専門的、具体的な、最も重要な質問が出ました。しかし、お答えを聞いていると、その質問に的確に対応していないということを感じたんです。八カ月この委員会におりますけれども、こういうケースは大分多いわけです。ここでは余り日本語が通用しないのかなというような感想を持っているんです。私も文章を書く人間ですし、ジャーナリズムの仕事もしましたから、こういう応答というのは一般社会ではとても考えられないです。株主総会だったらパンクしちゃいますね。大騒ぎになってしまう。企業の会議でも通用しない。そういうことがここで行われているということを大変疑問に感じております。  先ほどの大森委員からの質問に対しての答えも、何を言っているのか一生懸命考えたんです。そうしたら、まとめてみると、結局必要だから必要であるという答えなんですよ、日本語でどう解釈しても。そういう答えというのはちょっとあり得ないわけですね。ですから、じゃこの答えの裏に何があるのかなと思ったら、役所にとって必要であるということなんだ、どうもそういうニュアンスとして考えたわけです。しかし、法律というのは社会に役立つためにあるわけです。そして、整合性というものがないといけない。その整合性について一生懸命聞いていたわけなんですけれども、全くそれが出てこない。  こういう質疑応答の形というのは大体いつごろからこれは始まっているんですか。法務大臣にお伺いしたいんですけれども、明治維新からですか。
  160. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 委員会においては、できるだけ委員会の審議を通じて国民の皆様に御理解いただけるような努力はなされておると思います。時によっては今委員が御指摘なさったような懸念もなきにしもあらずと思いますが、精いっぱい努めさせていただきたいと思います。
  161. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは、あいまいなお答えができないように、もうちょっと具体的なお答えの出るような質問をします。  警察の方にちょっとお聞きしたいんですけれども、例えば近所に車で買い物に行った場合、シートベルトをしていなかった。それで、警官が来て違反切符を切るわけですけれども、そのとき免許証を提示しろと言うわけです。そうしたら、それが要するに在日の人の名前であったというようなことがありますね。  そうした場合には、外登証を出せというふうに指示があるわけなんでしょうか。
  162. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) なかなかケースが非常に難しいだろうというふうに思っておるわけです、一般的に申し上げるのは。要するに、警察官が職務執行をする現場で、その外国人の身分関係だとか居住関係を確認する必要があるというようなケースであれば、今のような場合にはそういう必要な限度において必要な措置をとるということになるでしょうし、そういう必要がないようなケースということであればそれはやらないということだというふうに思っております。
  163. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ですから、私がお聞きしたのは非常に具体的な場面ですね。その場合の必要なケースと必要じゃないケースというところはどういうふうに判断するんですか。
  164. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ですから、いろいろこれはあり得ると思います。例えば、現に捜査中の犯人を追っておってとかいうようなことがあって、そういう疑いが強いというような可能性があった場合に、その人の身分を確認したりというような必要がございますし、あるいは例えば北朝鮮の工作員みたいな者が今言うようなことで車でどこかに行っているというようなケースがもしあったりというようなことがあれば、それはそれなりに提示してください、あるいは携帯していないですかというようなことを聞くということはあり得るというふうに思うんです。  ただ、一般的に、そういうことではなくて、ただ単に車で買い物に近所にちょっと行きましたというような、そういう必要性のないような場合にまでその提示を求めたりというようなことは通常あり得ないだろうというふうに思っています。
  165. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 法務省も前々から現場の警官が人権に配慮した弾力的運用をするように努力しているということですけれども、そうした細かいケースの運用のガイドラインというようなものはつくっていないんでしょうか。
  166. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) ガイドラインというようなことのお話ではございますけれども、昭和六十二年と平成四年の二度の衆参両院の附帯決議の趣旨というのがございます。これも踏まえまして、私ども、この外国人登録証明書の常時携帯義務あるいは提示義務等に関する規定の運用に当たりましては、場所的条件とか時間的条件、あるいは被疑者の年齢や境遇、あるいは違反態様等を総合的に勘案して、それぞれのケースごとに可能な限り柔軟かつ常識的な対応をするようにということで一線を指導してきておるというようなことでございます。
  167. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 それでは入管局長にお伺いします。  四月二十日の千葉議員も、またきょうも質問が出たことでございますけれども、外登証の常時携帯は必要だというその大きな理由に、入管法による摘発を行う場合の利便性ということを強調されていたわけです。法務大臣は利便性と人権とどっちをとるかといったら利便性をとるという驚くべき答えをいただいたわけですけれども、しかし、これが本当かどうかということを大変疑っているわけです。  なぜかといいますと、私はこの前の質問で収容令書の発付状況のことをお聞きしたんですけれども、そのお答えをいただきました。それで、収容には二つ種類があります、通常収容、要急収容ということで。要急収容のパーセンテージを聞いたら、そのお答えが、〇・一%にも満たないということなんです。それで、発付率も一〇〇%だと。そして、その報告文書によりますと、その理由としては、容疑事実に該当すると疑うに足りる相当の理由を客観的資料により検討、確認しているためだというふうになっているんです。  そうしますと、これは事前に客観的資料によって検討、確認をして収容令書を発付しているわけですから、もう既に摘発対象外国人が非合法であるということは確認されているわけなんです。ですから、外登証は関係ないわけなんです。利便性と全く関係ないんです。ですから、これは大分答弁と矛盾しているんじゃないでしょうか。これは外登証携帯の理由にならない、利便性の問題については。どうなんでしょうか。
  168. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 摘発に行きまして、この人は不法就労ではないかという対象の人に向かって最初に聞くことは、外登証を持っていますか、こういう質問でございます。現に、不法就労している外国人の七割、八割は不法残留であるわけですけれども、これは外登証を持っているなり持っていないなり、あるいは旅券を持っている。それの期限を見ますれば、これは果たして合法的に滞在しているのかしていないのかというのは客観的にすぐわかるわけでございます。それで、それを踏まえて令書の請求を行っているということでございます。
  169. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうした非常にまれな、本当に〇・何パーセントというような問題のために何十万人という外国人が常時携帯を義務づけられるというのは理由にはならないと思うんです。何度も今までも申し上げましたけれども、常時携帯の圧迫感というんですか、そういうことを想像していただきたいんです。常識的に考えて、常時携帯をしているのとある場所にきちっと保管しておくということと、どちらが紛失の危険性があるというふうにお考えでしょうか。大臣、どう思いますか、常時携帯。
  170. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 紛失に対する保管性ということであれば委員のおっしゃるようなこともあろうかと思いますが、これはもともと本人であるかどうかを確認するために必要だということで、やはり携帯していただかなければ即時的に身分関係等が確認できないわけですので、これは保管していたのではちょっとぐあいが悪いんじゃないか、こう思います。
  171. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 しかし、一生二十四時間携帯していなきゃいけないんですよ。そして、なくしちゃいけないと思うその恐怖感に何十万人の人間をいつまでも置いておくということを人道的だとお考えでしょうか。
  172. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これについてはたびたび御答弁申し上げましたけれども、過ぐる衆参法務委員会の附帯決議においてその点の取り扱いについては十分配慮して、今おっしゃったように二十四時間携帯するという形式的なことを求めておるところではないというふうに理解しております。
  173. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 次に、登録原票の開示のあり方ということについてお尋ねします。  政府改正案の第四条の三、これは部分的な開示制度が設けられているわけですけれども、政府案第六項によりますと、本人以外、つまり本人代理、国の機関または地方公共団体、弁護士などへの開示には、請求を必要とする理由その他法務省令で定める事項を明らかにする必要があると定めています。つまり、本人以外への開示によりプライバシーが損なわれる危険性があるのではないかと思うんです。  そこで、「国の機関又は地方公共団体」というものは具体的にどういう団体のことを想定しているんでしょうか。
  174. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 改正法第四条の三第四項の「国の機関又は地方公共団体」で開示制度の利用が予想されるものとしましては、国民年金や国民健康保険の適用を受けることとなる者を抽出しその適用対象者名簿を作成する社会保険行政機関、あるいは予防接種や各種検診の実施、老人福祉サービスについて本人に案内通知を行うためその対象者を調査する公衆衛生・社会福祉行政機関、あるいは就学年齢に達した児童の両親に対する就学通知等を行うため当該年齢に達した者を調査する教育行政機関、郵便配達業務の円滑かつ適正な遂行を図る目的で世帯名簿を作成する郵政行政機関、このようなものが考えられます。
  175. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 捜査機関とか公安調査とか、そういうものは入らないんですか。
  176. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ちょっと舌足らずで申しわけありませんでしたが、先ほどの話はこの改正法第四条の三第四項の「国の機関又は地方公共団体」に関してはどういうのがあるのかという御質問と解釈して今のようにお答えしたわけでございます。  第四条の三の第一項では、「市町村の長は、次項から第五項までの規定又は他の法律の規定に基づく請求があつた場合を除き、登録原票を開示してはならない。」、こういう規定がございます。それで、この「他の法律の規定に基づく」云々というところに、先ほど私が申し上げました刑事訴訟法等に基づく警察その他からの資料要求が含まれているわけでございます。
  177. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 次に、指紋の問題をお聞きしたいんですけれども、今までためてきました指紋は、これは徐々に廃棄していくというふうにお答えいただいたと思うんですが、全部廃棄したということの証明はどういう形でやられるんでしょうか。
  178. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもの責任において廃棄したということなのでございますけれども、前回お答えしたとき若干舌足らずの面があったものですから、ちょっと追加で御説明させていただきます。  前回私が話しましたマイクロフィルムに入れて云々というのは、平成五年中に新しい制度に移行した登録原票に関してはそういうことがございまして、指紋がついたままマイクロフィルムに入れてしまったものですから、それの削除に今非常に時間がかかっているというようなことを前回御報告したと思います。  それで、それ以外で、それ以降、平成六年度に新しい制度に移行した登録原票につきましては平成九年に回収しましたけれども、そのうち十六歳以上の永住者または特別永住者にかかわる当該登録原票は約十二万六千票ございました。これについて、市区町村で指紋が抹消されていないものはすべて当局で抹消の上、マイクロフィルムに撮影いたしました。同じく平成七年度に新しく制度に移行した登録原票については平成十年に回収しましたが、このうち同じく十六歳以上の永住者または特別永住者にかかわる当該登録原票は約十九万四千枚ございました。これについて、市区町村で指紋が抹消されていないものはすべて当局で抹消の上、マイクロ撮影いたしました。  なお、平成八年以降に切りかえた登録原票は市区町村に保存されていますが、今後計画的に回収する予定でございます。
  179. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 マイクロに収集したものは捨てないんですか。それは保存するということなんですか。
  180. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当然破棄いたします。
  181. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ですから、破棄したというこの辺のところの証明はどうなんでしょうか、第三者がチェックできるんでしょうか。
  182. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私ども入管局登録課の人間が焼却場まで参りまして、焼くのを確認してまいっております。
  183. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 内輪でやるとこれは証明にならないわけですから、その辺のところはまた別の機会を設けて考えた方がいいんじゃないかと私は思います。  それから、再入国問題についてお伺いしますけれども、この提案理由の説明によりますと、再度退去強制事例の増大のためということなんですが、実際に統計的根拠があるんですか。
  184. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 済みません、もう一度御質問いただけますでしょうか。
  185. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 再度退去強制事例の増大のため上陸拒否期間の延長を行うという言葉があるわけですけれども、増大しているのかどうかという数字的根拠はあるんでしょうか。
  186. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもが毎年、退去強制手続をとって本国に帰しておりますけれども、その際ヒアリングを行っておりまして、過去にそういう退去強制をされたことがあるかどうかということを聞いた上で確認しております。  その数字でございますけれども、平成九年では、我々が退去強制した人間のうちで三千九百七十二名が過去にも退去強制されたことがあるということを言っておりまして、我々も確認しております。これは退去強制された者全部の中で八%の数字でございます。  一方におきまして、次の平成十年でございますが、この数字が四千五百三十五人というふうにふえております。これは平成十年中に退去強制をした人間の約九%という数字でございます。したがいまして、比率の面でも絶対数の面でもその数がふえ続けているということでございます。
  187. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 たとえそのような事態がありましても、実際にまた不法入国してくるというケース、つまり犯罪的な意図を持っている人間あるいはそうした種類のプロ、こうした人たちは偽造パスポートでどんどん入ってくるわけですから、再入国拒否期限を一年から五年に延ばすというただ数字的な問題でそうした事態というのは絶対に解決できないんじゃないかというふうに思われるんですけれども、いかがでしょうか。
  188. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 退去強制された人間が再び戻ってくる場合にどういう格好で戻ってくるかということでございますけれども、おっしゃるとおり、やっぱり正規のルートだと危ないので、では偽造パスポートで来ようという人間も確かにおりますけれども、一方におきまして、正規のルートで再び入ってくる、しかも不法就労を目的として再び入ってくるという人間の数もたくさんございます。  いずれにしましても、これは片一方だけを取り締まってもだめなので、不法入国で入ってきた人間、それから合法的に入ったけれども不法残留した外国人、ともに両方について手当てをしなきゃいかぬというふうに考えております。
  189. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 その問題の基本なんですが、この法律案の提案理由説明の中で、「不法在留行為は、適正な出入国管理の実施を妨げているのみならず、我が国の社会、経済、治安等に悪影響を及ぼしております。」というふうに言い切っているんですが、これはちょっと一方的で実態からかなり離れた見解じゃないかと私は思っているんです。  といいますのは、それは犯罪者もいっぱいいるでしょう。ですから、そうした問題は別の角度でちゃんとやらなきゃいけないとしても、不法滞在者と一概に言っても、何度も言っていますとおり、長野オリンピックなんかではそうした人々を使ったわけじゃないですか。日本の行政も企業も利用したわけですよね。そうして、それはある意味では貢献者です。役立っているという部分がある、不法で入ったこと自体はいけないんだけれども。ですから、要するに全部悪影響ということにはならないんです。  それからまた、実際に入ってきて、いろんな国の人が来ますから、なかなか教育機関なんかでは用意できないような語学の教師だとか、そういうことをやっている人たちはたくさんいるわけです。それから、そういう人たちが地域に住みついていくことによって、ある意味では文化の紹介というようなこと、日本人がそういうものに接する機会をつくっていくというような部分、非常に肯定的な部分もあるわけなんです。ですから、そうした問題を見ないでただ悪影響を及ぼすというふうに断定するのは、実質的な形というものとは恐ろしく離れているというふうに考えますが、法務大臣、どうでしょうか、そういう部分というのは認識されませんか。
  190. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 国際化の時代でございます。外国との交流親善その他適正な手続を経て我が国に多くの方が来ていただく。そういう中で、今おっしゃいました文化、各方面にわたってお互いのいいところをとり合うということはこれからも目指していかなければならないと思いますが、これはあくまでも適正な手続の上にそういうものが花咲くようにお願いしたいと思っております。
  191. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そうしたプラスの面を生かすという観点も法の中にきちっと整備していかないと、外国人すなわち悪人だという発想でこの法案のすべてがその方向に向かっているというふうに感じますので、ぜひもう少し二十一世紀の国際化という複雑な時代に適応できるような大修正を検討していただく、それをお願いして質問を終わります。
  192. 橋本敦

    ○橋本敦君 私からも引き続いてお尋ねをいたします。  入管局長にまず初めに伺いたいんですが、今回指紋押捺制度が廃止をされるということで、私たちも妥当な措置だと思っておりますが、これについては大変長い間いろんな拒否運動、留保運動等がございました。そういった指紋押捺拒否に対していろいろな不利益処分が実際は行われたと思うんですが、類型的に言ってどういうような対応策としての不利益処分がありましたか。
  193. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不利益処分と申しますか、指紋押捺制度があった時点では、それに違反する者は当然法違反者でございまして、それに見合った措置がとられたということだと思います。
  194. 橋本敦

    ○橋本敦君 その見合った措置の概要はどういうものなのか述べてほしいという質問なんです。
  195. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) よく知られている例といたしましては、指紋押捺を拒否し再入国許可を受けないままに我が国を出国したことにより、既に付与されていた永住者としての法的地位が失効し、その後我が国入国して長期間の在留を求めている、そういうケースがございます。  それから、指紋押捺を拒否した結果、在留期間が短縮されたことを不服としてその後の在留期間の更新許可の申請を行わず、その結果として長期間の不法残留に至っている、そういうような外国人が二人確認されております。
  196. 橋本敦

    ○橋本敦君 今回は、指紋制度そのものが国の方針としても法律でも廃止されるわけですから、そういった不利益処分については可能な限り権利回復の措置をとるということがあってもよいと思うんです。その一番大きな問題として、特別永住者の資格の剥奪という問題について考えてみましょう。  この問題については、参考人でお越しになった崔さんの例が典型的なんですが、崔さんの再入国不許可処分の取り消しに対する最高裁の九八年十月四日の判決があることは御承知のとおりですね。そこで最高裁はどう言っているかということが一つは大事なんです。  本件不許可処分がなされた結果、上告人は協定永住資格を保持したまま留学を目的として米国へ渡航することが不可能になった、そしてあえて渡航するならば永住資格を失うということになる。こういうことで、協定永住資格をその場合は失わざるを得ない状況に陥ったものと言うことができるのであって、本件不許可処分によって上告人、つまりこの場合は崔さんですが、受けた右の不利益は重大であるという最高裁の判示がある。その不利益は極めて重大であるという判示があることは局長、御存じですね。
  197. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) はい、承知しております。
  198. 橋本敦

    ○橋本敦君 まことに不利益は重大なんですよ。協定永住資格というのはある意味では日本に在住する永続的権利です。それが、指紋押捺をしないということによって、法務省の行政的判断で指紋押捺拒否を許さないという報復的な措置として、出国した場合は再入国は許可しませんよという処分にまで行く、そういうことが問題の発端であったわけです。  そういう措置自体最高裁も極めて重大な不利益を本人に与えるということであるのですが、なぜ最高裁がこの処分を取り消さないで承認したかといいますと、最高裁は、その当時の状況として、指紋押捺を拒否する運動が全国的な広がりを見せ、指紋の押捺を留保する者が続出するという社会情勢のもとにあって、出入国管理行政に少なからぬ弊害が生じていたと見られるのであり、そういう場合に出入国の公正な管理を図る上でこのような方針で臨んだこと自体は首肯し得るところである、こう言っている。これは当時の状況です。  ところが、今はそのような指紋押捺拒否運動ももう要らないし、なくなっている。そういう点で、不許可処分を合理的だと今の時点で判断する社会的状況はもうなくなっているわけです。ですから、そういう意味では、この判決はまさに今私が指摘した状況のもとにおける判決であって、権利回復をしてはならぬというようなことを言っている判決では全然ないはずなんです。  その点、局長はどうお考えになりますか。この判決はそういう趣旨でしょう。
  199. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 権利回復云々については、直接その判決が触れてはいないと思います。
  200. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっとわかりづらかったので、もう一遍言ってください。
  201. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 権利回復について、その判決が直接に触れているということではないと思います。
  202. 橋本敦

    ○橋本敦君 逆に言えば、権利回復措置を日本政府がとることはだめですよといったように読み取れる判決でないということです。触れていないんです。  そこで、話を変えますが、大森委員からも指摘があった人権規約との関係でいいますと、この国際人権規約第十二条の二項及び四項ですが、「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」ということが書いてある。この「自国」というのは国籍国であるという解釈だというお話がありました。なぜ永住資格を持っている国は含まれないんですか。
  203. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 永住資格を持っている者といえどもやはり外国人であることには変わりないわけでございまして、外国人である以上は日本人と違いまして自由に日本から出国しまた戻ってくる、権利として戻ってくるということができない立場の人たちですから、先ほど言いましたような解釈になるわけでございます。
  204. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっと自信のないような答弁ですね。  日本で協定永住資格を持ち、長年日本に住み、日本に住居を有し、日本で仕事を持ち、日本で家族がある。ところが、自分の国籍国にはそういうような生活条件というのはないし、日本にむしろ生活の本拠がある。そういう人が人権規約で言う自国に戻る権利の「自国」というのは、生活の根拠も何もない、ただ国籍上あるその国籍国だよと。協定永住資格を持っている、現に生活の根拠があるその国でないという、そんな解釈を勝手にしていいんですか。  日弁連は、その問題については、言うまでもなく、この問題について言う「自国」というのは、これは国籍国だけではないということをはっきり解釈として言っております。  と同時に、これは大森委員指摘された一九九八年十一月十九日の規約人権委員会の勧告ですけれども、ここでどう言っているかというと、当委員会は、「締約国に対し、「自国」という文言は、「自らの国籍国」とは同義ではないということを注意喚起する。」、はっきりこう言っています。これはお読みになったと思います。国際的な解釈は、まさにそこで言う「自国」というのは国籍国とだけ限定しちゃだめよ、そういうふうに解釈すると本当に人権を守るという立場から見て妥当性を欠くよ、この点を締約国に注意を喚起するということを明白に言っておるわけです。  こういう見解に対して積極的に検討する、そういう検討はやったんですかやっていないんですか、どうですか。
  205. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 再入国許可の問題につきましては、当然、このB規約委員会の最終的見解が出た後検討をいたしましたけれども、先ほど私が申しましたような理由によって、やはり特別永住者といえども再入国許可の制度は合理的であるという結論に達したということでございます。
  206. 橋本敦

    ○橋本敦君 その検討の判断結果というのは全く変わらないのか。そして、日本の第五回報告の提出日は二〇〇二年十月と指定されていますが、変わりません、人権委員会のこの勧告で言う解釈は難民条約の解釈として間違いですと、そういうことを人権委員会に報告するつもりですか。そんなことが国際的に通用しますか。国際人権規約の解釈を国際人権委員会で厳密に判断して、国際的な意見を集めてこういう判断をしている。日本がその判断は間違いですよ、そんなことを言う資格とまたそういうことを言う条件というのはあるんですか。もっと真剣に検討すべきじゃないですか。
  207. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員指摘の国際人権B規約第十二条第四項に規定されている「自国」は国籍国である、このように解しております。  この点については、最高裁判例平成四年十一月十六日においても、「「自国」の解釈としては、戸籍というような統一籍を備えていない国はともかくとして、我が国のように国籍・戸籍という統一籍を備えている国においては、「国籍国」を意味するものと解さざるを得ない」とされているところでございます。
  208. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは法務省のどこで出したいつの結論ですか。
  209. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 前から持っておりまして、今でも持っておる結論でございます。
  210. 橋本敦

    ○橋本敦君 前から持っておって今でも持っておるといって、あなた、この勧告が出た後積極的に検討したんですか、そんなことで。  あなたは最高裁判例にもそうだということをおっしゃいましたが、その最高裁判例というのは、今私が指摘をした九八年十月四日の判決のことですね。そうですね。
  211. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私が申しました判決は、平成四年十一月十六日の最高裁の判決です。
  212. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、ちょっと古いわけです。  そこで考えてくださいよ。私が指摘した十月四日の判決、あなたが指摘した平成四年の判決、それより後に、去年の十一月十九日に規約人権委員会から日本政府に対して勧告が出されている、その勧告を言っているんです。  だから、最高裁はこの勧告が出されたということを判断資料としてもまた知識としても到底御存じないときの判断です。だから、国連規約人権委員会のこの勧告が出たということ自体は、最高裁が判断をするに当たって重要な参考資料として検討される可能性があるんです。だから、この規約人権委員会の判断が出る以前の最高裁判決を持ってきて金科玉条のごとく言うということは、私は、国際的な条約やあるいは規約や人権問題の解釈については、それはもう守旧姿勢そのものであって今日の情勢に適合しない、こう思います。  私は、この点について、私が指摘したことも踏まえて、指紋押捺をしなかったために再入国不許可処分によって協定永住資格を剥奪されたその問題については、こういう勧告もありますから、改めて法務省として、これからの課題として人権を守る立場から再度真剣に検討することを強く求めたいと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  213. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 特に指紋押捺を拒否したために再入国許可が得られなかったことについて、私どもとしては入管法の枠内で最大限の解決のための努力をしていきたい、このように考えております。
  214. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論はどうなるか。最大限の努力、御検討の中に私が指摘したことも踏まえて、今日の国際社会に通用する方向での判断を法務省としては導き出していただくことが必要だというように言っておきたいと思います。  それで問題は、この問題の根源にあるのは出入国管理及び難民認定法二十六条の問題なんです。この二十六条の存在自体が、再入国の許可を得て出国した外国人にだけ在留資格が喪失することなくまた戻ってこられる、こういうことなんです。  この点について、当委員会に参考人としてお越しになった田中宏先生が、この問題については、再入国許可制度は日本に在住される永住者については適用外とすべきだという御意見をおっしゃいました。その趣旨は、どう言っておられるかといいますと、これはもともと一定の期間を通じて在留外国人をチェックするということが本来のこの法二十六条の持つ機能だったんだが、協定永住者はそういう管理監督期間ということなしに永久的に永住できるものですから、そういう意味では田中さんはこうおっしゃっています、そういう人は限りなく日本国籍を持っている人と同じようないわゆる内国民待遇をとるべきだと私は考えていると。私もその意見には賛成できるんです。ですから、期限のない永住者については再入国許可制度そのものがなくていいのではないかという御意見をおっしゃっている。私はその意見に賛成する立場で申し上げているんです。  それと同じことが今私が指摘した人権委員会の勧告でも言われているじゃありませんか。二十六条の問題について人権委員会勧告はどう言っているかといいますと、「この法律に基づき、第二世代、第三世代の日本への永住者、日本生活基盤のある外国人は、出国及び再入国の権利を剥奪される可能性がある。」。可能性がある、そのとおり剥奪されたんです、法務省の政策によって。合理的法律の根拠というより、むしろ法務省の政策によって、指紋押捺制度を強制し一般化しようという政策によって剥奪されたんです。  だから、そういう意味で、「この規定は、規約第十二条二及び四に適合しないと考える。」ということと同時に、委員会としては、「締約国に対し、日本で出生した韓国・朝鮮出身の人々のような永住者に関して、出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律から除去することを強く要請する。」という勧告が出ている。これはお読みになったとおりです。間違いない。  こういうことに対して積極的に対応していくべきだ。二十六条そのものを廃止せよと言っているんじゃありません。少なくとも日本政府が永住者として永住権を認めた人に対しては、内外人平等、まさに日本国民と同じような立場で、出入国の権利そのものは二十六条いかんにかかわらず認めるという方向で法の適用と運用を考えていく時期に来ているのではありませんか。  入管局長の見解はどうですか。
  215. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) このB規約委員会の最終見解につきましては私どもも承知しているところでございます。  しかしながら、日本入管法の立場といたしましては、もちろん特別永住者はある面では限りなく日本国民に近い扱いが特例法によってされているわけでございます、特に退去強制事由の制限等々で。にもかかわらず、特別永住者といえども最終的にはやはり外国人であるということでございまして、その者の出入国に関し日本の再入国許可制度のようなものを設けることは合理性にかなったものだと考えております。外国におきましても、例えばアメリカ、カナダあるいはオーストラリア、そういうところでは永住者について再入国許可制度と同様な制度を維持しているというふうに承知しております。
  216. 橋本敦

    ○橋本敦君 なかなか前向きに検討をするという答えが出ないんですが、議論しても時間がありませんから、私は、この点の検討を今後法務省の中で積極的に行うように、そうしないとまた規約人権委員会からもっと厳しい勧告が来ますよということを言っておきましょう。  もう一つの問題は、大森委員指摘されたけれども、私も大事だと思っているのは、難民条約との関係なんです。  難民条約三十一条で、既に指摘されたように、難民であって許可なく入ってきたという場合に、その難民に対して不法入国したということを理由に刑罰を科してはならないということをはっきり書いてありますね。この問題について刑事局長は、不法滞在罪の捜査あるいは不法入国の捜査の中でそのことが申告され、出てきたら、手続は刑事手続よりもむしろそっちの難民認定という手続に切りかえていくということで救済するというお話がありました。それは法務省の方針ですか。
  217. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 基本的に難民ということでありますれば、これは管理の対象という面も多少残るとは思いますが、むしろ基本にはどう保護すべきかという観点からの対応が国としては必要なことだと思います。したがいまして、不法入国あるいは不法残留ということがあって始まったケースにつきましても、難民ということが正面に出、あるいはそういう申し出があり、手続があるということでありましたら、それはやはり国として切りかえていくべきものというふうに考えております。
  218. 橋本敦

    ○橋本敦君 入管局長のお考えは。
  219. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今の刑事局長のお答えと同じでございまして、現在のシステムでも、普通に合法的にパスポートを持って入ってきまして、その上で難民認定をしたいということで来ますれば、通常九十日の短期のビザを出しまして合法的な滞在を認めるということをやっております。それから、そういう事情にないような場合には、私どもは一時庇護の制度というのもございますので、通常のやり方で難民申請をしてこられる方については合法的なルートで対応ができるという状況になっております。
  220. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで幾つか問題があるんですが、一つは、我が国の入管行政で難民条約はあるけれども難民認定はなかなか容易にされないという問題がよくあるんです。だから、その点は、難民申請について難民の認定、人権擁護の観点から積極的な検討を要するということを一つ指摘しておきたい。  それからもう一つは、先ほど刑事局長は、不法滞在罪もしくは不法入国罪で起訴されて、その裁判の途中で実は難民だということでこの条約の適用を受けて難民としての処置をしてもらいたいということがあった場合に、刑の免除という裁判所の判決になるだろうということをおっしゃいました。  刑の免除ではなくして、刑罰を科すという公訴の提起そのものがさかのぼって効果を失うべき性質のものじゃないでしょうか、もともと難民なんですから。公判の途中で難民だという申請があり、難民という認定がなされるということですから、その場合は、刑の免除ではなくして、検察官の方が公訴の取り消しという処置をするということが本来のすべきことではないかと私は思うんですが、どうなんですか。
  221. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 一般的な形ではなかなかお答えしにくいと思いますが、ケース・バイ・ケースだろうと思います。取り調べの対象者のいろいろな事情で難民であるということがなかなか言えなかったような事情でも、これは希有な事例だと思いますけれども、もしそんなことであればそれはそれでまた尊重せざるを得ませんので、刑事手続が始まっているからといってそれを押し通すということは手法からいっても適当ではないだろうと思います。しかし、いかなる場合がそれに当たるのかはケース・バイ・ケースでございます。  また、念のため申し上げておきますと、難民認定の手続というのはかなり厳格なといいますか、要件もきちっと決められております。また、そういったことがあると同時に、今、橋本委員も御指摘のように、難民だという主張をするケースは比較的多うございます。しかし現実にはなかなかそれが認められるケースは少ないと思います。むしろ認められないケースの方が圧倒的に多いわけです。その背景には、難民であるということを言うことによって在留期間を延ばしたいというような意図のもとに、実際には難民ではないにもかかわらずその主張をするというケースもありますので、そういった点について、難民認定の運用についてはやはりそういう観点からは慎重な運用が必要だということにはなろうかと思います。
  222. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が聞いているのは、慎重にやられるのはいいが、慎重にやった結果難民条約に基づく難民認定をすべきケースだということがわかった場合は、刑の免除じゃなくて私は公訴の取り消しだと思いますがどうですかという質問なんですよ。そういうケース
  223. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今、ケース・バイ・ケースとして申し上げましたが、事例としてはなかなか考えにくいケースではございますが、御指摘のようなことが証拠上きちっと認定されればあるいはそういうことになろうかと思います。
  224. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう時間がなくなって、聞きたいことはたくさん用意したんですが、今度不法滞在罪新設をされ、そしてまた再上陸期間の延長ということで、人権問題に深くかかわるということで指摘をしてきたんですが、それに対して入管局長大臣も、不法在留であれ、あるいは不法残留であれ、人道的ケースということについて言うならば、在留特別許可を判断するに当たって従来どおり人権を尊重するという立場からやっていきますということで、大事な答弁があったわけです。この運用はそういう人権を守る立場からしっかりやってもらわなくちゃならぬのですが、今大臣及び入管局長がこういう答弁をなさったということが地方の入管局や職員の皆さんにきちっと通達されておりませんと不安がいっぱいあるというのが多くの人の声です。  こういう問題について、きちっと地方の入管局その他にもそうした人道的運用をやるということについて何らかの示達なり通達なり研修なりをおやりいただいて、人権を守る入管行政をやっていくということをきちっと貫いていただく必要があるのではないか。そのことをお願いしたいんですが、大臣いかがでしょうか。
  225. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 仰せのとおりだと思います。  これから、機会を探してというよりも積極的に、そういう国会での論議が現場の皆さん方によく理解できるように努めていきたいと思います。
  226. 橋本敦

    ○橋本敦君 よろしくお願いします。  時間が来ましたので終わります。
  227. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  228. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 速記を起こしてください。     ─────────────
  229. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 次に、司法制度改革審議会設置法案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。陣内法務大臣
  230. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 司法制度改革審議会設置法案について、その趣旨を御説明いたします。  二十一世紀の我が国社会においては、社会の複雑多様化、国際化等に加え、規制緩和等の改革により社会が事前規制型から事後チェック型に移行するなど、社会のさまざまな変化に伴い司法の役割はより一層重要なものになると考えられ、司法の機能を社会のニーズにこたえ得るように改革するとともに、その充実強化を図っていくことが不可欠であると考えられます。  そこで、政府といたしましては、このような観点から、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関を内閣に置く必要があると考え、この法律案を提出することとしたものであります。  その要点は次のとおりであります。  第一に、内閣に司法制度改革審議会を置くこととし、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するとともに、調査審議した結果に基づき内閣に意見を述べることをその所掌事務とすることとしております。  第二に、審議会は、委員十三人以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから両議院の同意を得て内閣が任命することとしております。  第三に、審議会の事務を処理させるため、審議会に事務局を置き、事務局に事務局長のほか所要の職員を置くこととしております。  なお、この法律は、政令で定める施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うこととしております。  以上がこの法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  231. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 次に、司法制度改革審議会設置法案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員山本幸三君から説明を聴取いたします。衆議院議員山本幸三君。
  232. 山本幸三

    衆議院議員(山本幸三君) 司法制度改革審議会設置法案に対する衆議院における修正部分について、その趣旨を御説明いたします。  政府提出の本法律案は、第二条において、審議会の所掌事務として、「審議会は、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する。」と規定しておりますが、衆議院においては、審議会の所掌事務をより明確にするため、「明らかにし、」の下に「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の」との文言を加える修正を行ったものであります。  以上が政府提出の本法律案に対する衆議院における修正部分の趣旨であります。  何とぞ本修正に御賛同くださいますようお願いいたします。
  233. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時三十五分散会