○橋本敦君 今のバランス論というのは、私は合理的な理由にならぬと思います。
といいますのは、オーバーステイというのは正当に滞在する
権利は
もともとあったわけですからね。その人がオーバーステイしたというそのことから、具体的に不法残留罪ということが出てくるわけでしょう。本件の場合は、まさに行為の端緒が不法入国であり不法上陸であるという、そのこと自体が違法行為として既に刑法上犯罪の構成
要件として明確になっているわけです。そういう犯罪の構成
要件が明確になっているその犯罪が、三年で時効になり時効
制度の
適用を受けるということなのに、事実上この時効
制度を無にしてしまうということになるじゃないですか。だから、今あなたがおっしゃった不法残留罪の場合と基本的に違うんですよ。だから、この
ケースについては公訴時効
制度を無にしてしまうことに実体的になるということについて、人権上の問題として
法務省はどれだけ深く検討したのかと聞いているんですが、それは答弁がないです。
しかも、第二番目の問題として、人権上さらに問題なのは、
大森委員も指摘されたので私は詳しく聞きませんが、聞く予定にしていたんですが、構成
要件上の不明確性が甚だしいんです。いつの時点から不法在留罪になるかというと、あなたの先ほどの説明では、それは個々別個の判断が必要ですと。不法上陸して、それからどこかのところへ滞在する目的で出発を始めたらそれは不法滞在が始まる、犯罪の始期だと、こういう感じでおっしゃいました。ところが、それならじっとそこに三日も四日もいたらそれはどうかというと、不法在留罪にはならない、こう言うわけでしょう。じゃ、どこかへ向かうといったって当てもなく向かうのか、明確に向かった場合がそうなのか、それが判然としない。
結局、あなたが最後にどう言うかというと、個別具体的な
状況で一概に言えません、最後は
裁判所が判断するんですと。それは
裁判所は判断しますよ。判断するけれども、捜査をして立件するのはどうするんですか。いい加減なことでやったら、それこそ人権侵害でしょう。だから、そういう構成
要件の不明確性というのはぬぐいがたいわけですよ。
そして、もう
一つ人権上の問題として私が指摘したいのは、こういうような犯罪を新設するについて、今実際に不法入国をして不法に滞在していると見られる二十七万なりあるいは三十万近くいると
法務省が言っている
人たちの中で、現に犯罪が増加しているかどうかということについて具体的に調べた資料はありますか。