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1999-04-20 第145回国会 参議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十五日     辞任         補欠選任      藤井 俊男君     千葉 景子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         荒木 清寛君     理 事                 鈴木 正孝君                 服部三男雄君                 円 より子君                 大森 礼子君                 平野 貞夫君     委 員                 阿部 正俊君                 井上  裕君                 竹山  裕君                 吉川 芳男君                 海野  徹君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 藁科 滿治君                 橋本  敦君                 福島 瑞穂君                 中村 敦夫君    国務大臣        法務大臣     陣内 孝雄君    政府委員        警察庁警備局長  金重 凱之君        法務大臣官房長  但木 敬一君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        法務省入国管理        局長       竹中 繁雄君        公安調査庁長官  木藤 繁夫君        海上保安庁長官  楠木 行雄君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   金築 誠志君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提  出) ○出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法  律案内閣提出)     ─────────────
  2. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十五日、藤井俊男君が委員を辞任され、その補欠として千葉景子君が選任されました。     ─────────────
  3. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 千葉景子

    千葉景子君 おはようございます。  いよいよ外登法入管法審議ということでございますので、また大臣にも率直な御答弁をよろしくお願いしたいと思います。  それでは、冒頭、先般の本会議でもさまざま質問をさせていただきましたが、まず大臣の基本的なお考えをちょっとお聞かせいただきたいというふうに思っております。  大臣は、所信表明でも、法務行政に課せられた使命としては、法秩序の維持と国民の権利の保全ということも挙げておられます。そういうことが守られてこそやはり国民が豊かで幸せに安心して暮らせるということの認識大臣もお持ちであるかというふうに私たちも理解をさせていただきます。またさらに、法務行政のすべての分野について適宜適切な方策を講じて、新しい時代要請にもこたえたい、こういうこともおっしゃっておられます。  そこで、先般もお尋ねをいたしましたけれども、国際的な社会、こういう時代を迎えております。そういう中で、日本にもたくさんの外国の方が居住をされ、そしてさまざまな日本への貢献などにも努力をされておるということは御承知のところと思います。そこで、日本社会定住をして、そして社会構成員として生活をし、また社会的なコストにおいても応分の負担をされている、こういう在日外国人の方が多くおられます。  こういうことも踏まえながら、大臣は、日本居住をされている外国人皆さん人権についてどうお考えになっておられるのか、そして実情などをどう御認識されておるのか、お尋ねをしたいと思います。  また、その中でも、特に韓国朝鮮皆さん、いろいろな歴史的経過もございます。そしてまた、日本社会の一員としても現在があるというこの皆さんについて、特段にどのような御認識をお持ちであるのか、この点について、まず大臣人権についての基本的な考え方ということでお尋ねをしたいと思います。
  5. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 在日外国人方々につきましても、もちろん永住者特別永住者の別なくその基本的人権尊重されるべきである、このように考えております。  法務省は、このような認識に立ちまして、これまでも在日外国人方々人権擁護に努めてまいったわけでございますけれども、今後とも、委員指摘のような視点から人権擁護にさらに努めてまいる所存でございます。
  6. 千葉景子

    千葉景子君 特に韓国朝鮮籍皆さん人権などについては、特段大臣としてのお考え方はございますか。
  7. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今御指摘特別永住者については、歴史的な経緯もあるということを承知しております。  いずれにしましても、在日外国人方々につきましては、永住者特別永住者の別なく基本的人権尊重されるべきだ、このような観点に立って取り組んでまいります。
  8. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、そういう基本的なお考えをお持ちであるということはわかりました。しかしながら、在留在日外国人皆さん、大多数は日本社会で本当に普通の善良な市民、住民として生活をしておられます。ただ、所信表明などでこういうことは強調しておられますね。やはり来日外国人による犯罪等がふえている、こういうことにも触れておられます。  確かに問題点として取り上げるところはあろうかというふうに思いますけれども、このような御発言がございますと、特に日本人に比較して外国人犯罪が多いのではないか、あるいは外国人というと犯罪というつながり方、こういうイメージがどうしてもできやすい。そして、その発言を受けとめた側も、外国の人は危ないのかな、こういう受けとめ方もされかねないところがございます。  万が一にもそういう意味大臣考えておられるわけではなかろうというふうに思いますけれども、そういう意味では、在日あるいは来日をしている外国人が基本的には善良な市民であるという点についてはやっぱり確認をしておかなければいけない。犯罪ということを考えれば、それは外国人であろうが日本国民であろうがその違法行為というのは同様にやはり厳しく制裁をされなければいけない、これは共通のことでございますから、とりたてて外国人というところに主眼を置きますと、こういう問題点が起こるのではないかというふうに思います。  その点について大臣は、基本的な御認識としては多分誤りはなかろうと思いますが、改めてお聞きをしておきたいと思います。
  9. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今日の我が国を取り巻く国際環境変化我が国国際社会における地位の向上等に伴いまして、今後の出入国管理行政国際協調国際交流の増進への寄与という観点、また我が国社会の健全な発展の確保ということを理念として推進していく必要があろうかと思っております。  このような基本的認識、基本的な理念のもとに、委員指摘のように、外国人に対する一方的な見方ではなくて、バランスのとれた見方に基づく施策を行うよう最大限の努力を図っていく必要がある、このように考えております。
  10. 千葉景子

    千葉景子君 さて、昨年の十二月に衆参両院におきまして人権擁護推進に関する決議が採択をされました。これはもう御承知のところでございます。この決議を踏まえた人権擁護行政充実強化についてどのようにお考えであるのか、お聞きをしたいと思います。  これはもう大臣も、この決議を踏まえて努力をされるというお考えも示されておりますけれども、具体的にはどういう施策、どういうことを具体的に進めていこうとされているのか、特に、先ほども触れさせていただきましたけれども、在日外国人などについて人権擁護施策としてはどのような具体的なお考え方を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  11. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま御指摘になりました昨年十二月十四日に両議院で採択されました御決議は、すべての人々の人権尊重される平和で豊かな社会実現に努めること、このようにされておるわけでございます。  法務省といたしましては、この御決議趣旨に沿って今後とも人権擁護行政のより一層の推進に努めていく所存でございます。委員指摘在日外国人方々につきましても、その基本的人権尊重されるべきことは言うまでもございません。  そこで、法務省人権擁護機関といたしましては、まずは人権尊重思想の普及、高揚を図る立場から、積極的な啓発活動を行ってまいりました。また同時に、在日外国人方々基本的人権が侵害される事案が具体的に起こった場合には、人権相談人権侵犯事件調査、処理を通じまして、これらの方々人権擁護に努めておるところでございます。
  12. 千葉景子

    千葉景子君 一般的なことはこれまでにも同じようなお考え方はいただいております。やはり決議を踏まえた具体的な施策、例えばこれまで外国人人権なりを制約しがちであった制度とか法律を見直していくとか、あるいはむしろ人権保障に寄与する基本的な施策を取りまとめていくとか、そういう具体的なものが全く見えてこない。  今回のこれから審議されます外国人登録法あるいは出入国管理法、これもある意味では外国人人権に直接かかわっていく法案でございます。こういう一つ一つのものについて本当に具体的にどういうお考え方で、どう進めていかれようとされているのか、その具体的な進め方、あるいは中身というのを少しお聞かせいただきたいんですけれども、それはいかがでしょうか。
  13. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今回のお願いしております法案の中で、外国人指紋押捺制度廃止とか、その他いろいろ手続面簡略化、あるいは情報の公開等につきましても、こういう決議の御趣旨を踏まえて改善するということで取り組んでおるところでございます。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 決議を踏まえておやりいただいたかどうか、あるいはその他の制度につきましても、今後の審議の中でもう少し具体的に、大臣の基本的な御趣旨が本当にこういう施策の中に生かされているのかどうかはこれから確かめさせていただきたいというふうに思います。  それから、人権擁護推進審議会が設けられておりますけれども、この人権擁護推進審議会において在日外国人人権擁護に関して人権教育啓発などの面でどんな議論がなされているのか、あるいはなされておらないのか、その点についてお聞かせください。
  15. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 人権擁護推進審議会では、現在、人権教育啓発に関する施策基本的あり方について審議をいただいているところでございます。在日外国人に関する人権課題も視野に入れながら調査審議がなされているものと理解しております。  また、同審議会ではこの調査審議に資するため、各種人権課題について実情等を把握することを目的として、平成九年十二月と平成十年一月に関係団体からヒアリングを実施しましたが、その際、在日外国人関係団体からもその実情及び人権教育啓発あり方についてヒアリングを実施いたしたところでございます。これらのヒアリング結果をも踏まえまして、ことしの夏ごろをめどに答申を取りまとめていただけるものと、このように承知いたしております。
  16. 千葉景子

    千葉景子君 団体からのヒアリング等も踏まえてというお話でございました。特に在日外国人人権擁護という観点から考えますと、それを取りまとめておられる皆さんからの意見聴取なども当然必要であろうと思います。やはり毎日の生活の中で直接いろいろな体験を持ち、あるいは人権課題直面をしている、そういう方から意見を聞く、あるいは万が一にもこれまで人権侵害直面をしたというような方からのいろいろな証言を聞くというようなことも、これからの教育啓発活動においても重要なことであろうと思います。こういう当事者から意見を聞く、あるいは実情を聞くなどということはさらに今後も機会がございましょうか。
  17. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま御説明いたしましたように、人権擁護推進審議会では既にヒアリングをし、これからはこの審議会として人権教育啓発に関する調査審議に引き続きまして、人権侵害被害者救済に関する施策基本的あり方について調査審議される、こういう予定を伺っております。  したがいまして、そういう中で審議会において判断していただくことだろうとは思いますけれども、委員指摘のように、必要に応じてヒアリング等も検討していただくんじゃないか、このように考えております。
  18. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそのような十分な直接の意見なども触れていただいて、そういう中で審議会意見がまとめられることを私も期待をさせていただくところでございます。  さて、こういう大きな人権状況を踏まえながら、外国人登録法の今回の改正について具体的な課題に入ってまいりたいというふうに思っております。  今回の外国人登録法改正といいますのは、いろいろな諸条件、国際的な変化日本社会変化ということもございますけれども、さらにそれにプラスして、平成四年、外国人登録法改正がされましたときの衆参附帯決議、その際の審議でまだ十分に議論が尽くせなかった、あるいは今後検討すべき課題として決議をされた、こういう決議も踏まえて今回の改正がなされたというふうに説明がなされております。その前回改正の際の附帯決議をもう一度ちょっと皆さんにも思い起こしていただきたいというふうに思っております。  参議院の法務委員会での附帯決議でございますが、これは全部は大変長くなりますけれども、基本的には、「本邦在留外国人に対する行政在り方にかかわる内外の諸情勢の推移を踏まえ、外国人登録制度目的を明確にするとともに、外国人人権尊重して諸制度在り方について検討し、」、そしてその結果に基づいて一定の時期に適切な措置を講ずること、こういうことが基本的にはこの決議の大きな柱でございます。  さらに、それに対応する問題として、例えば「外国人登録証明書の常時携帯・提示義務等に関する規定の運用に当たっては、外国人日常生活に不当な制限を加えることのないよう配慮」しながら今後運用していくべし、こういうこともうたわれておりますし、罰則についても、「他の法律との均衡並びにこの法律における罰則間の均衡などを検討し、その結果に基づいて、」、これも適切に措置をするように、こういう決議、ほぼ同内容で衆議院でもやはり附帯決議がされております。  今回、この法律改正がこういう附帯決議趣旨も踏まえて行われたのであるとすれば、本当に今回の改正内容で足りているのかどうか、私は大変疑問に思うところでございます。  その意味で改めてお尋ねをいたしておきますけれども、このような外国人登録法目的を改めて考え直し、そして人権尊重した制度にせよ、罰則考え直してみたらどうか、こういうことに対してどう検討され、そしてその結果この改正案になったと思いますけれども、その検討結果はどうこの改正案に反映されているのでしょうか。まず御説明をいただきたいと思います。
  19. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま附帯決議がどう今回の法案に取り込まれているかということでございますが、若干長くなりますけれども御説明させていただきたいと思います。  今国会に提出いたしました外国人登録法改正案を策定するに当たっては、衆参法務委員会における附帯決議趣旨を踏まえまして、また諸外国制度調査するなどし、そして各界の有識者の御意見も伺うなど、さまざまな角度から検討いたしたわけでございます。  そして、目的についてでございますが、外国人登録制度目的につきましては、外国人我が国に入国し在留することについて許可を受けなければならない、外国人居住関係及び身分関係の中には、当然のこととして、その外国人許可を受けているかどうか、どのような許可を受けているかということが含まれておりまして、外国人登録法目的としては引き続き公正な管理という概念を維持していく必要がありますので、今までのことは基本的には現在でも変更はないものと考えておるわけでございます。  なお、外国人登録各種行政サービス基礎資料として利用される事例が増加しております。この場合であっても、その対象となっている外国人がどのような居住関係にあるのか、どのような身分関係を有している在留者であるかが正確に反映されていることを前提としてそれぞれの行政外国人登録制度を利用しているものでありますので、制度の根底には公正な管理という面があることは否定できないというふうに考えております。  また、罰則についてでございますが、外国人登録法新規登録申請変更登録申請等各種申請登録証明書の受領、提示署名などの義務を課しておりまして、その違反に対して一定罰則を設けております。  さまざまな角度から検討した結果でございますけれども、現段階におきましては外国人登録法上の諸制度実効性を担保するというためには必要な罰則であるということでございまして、これを見直さなければならないというような状況変化は認められないという結論に達したものでございます。  それから、今回の改正案において、指紋押捺制度廃止すること、居住地変更登録等に係る代理申請範囲を拡大すること、さらに永住者等に対しては、登録事項を一部削減すること及びその切りかえ交付申請までの期間現行の五回目の誕生日から七回目の誕生日に伸長すること、これらのことにつきましては、市区町村長市区町村あるいは外国人負担を軽減するとともに、円滑な外国人登録行政実現のために役立つのではなかろうかということを考えたところでございます。
  20. 千葉景子

    千葉景子君 御説明はわかりました。  ただ、本当にこれは附帯決議趣旨というものが生かされているのかどうか。とりわけ、附帯決議では外国人人権尊重して諸制度あり方考えよと言っているわけですね。今おっしゃいましたように、目的にはとりわけ変更は必要ない、それから罰則についてもこの程度が実効性を担保するのに必要だと言うんですけれども、じゃどこに本当に人権に配慮したあるいは人権尊重をした制度という観点があるのでしょうか。  それから、罰則などについても、本当にこれが実効性を担保してきたものであるのかどうか、そういう吟味も十分されたのでしょうか。大変疑問に感じますが、その点についてはいかがですか。
  21. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 基本的には我が国許可を得て入国していただくという立場の方でございますので、そういうものを踏まえながら十分人権に配慮したつもりでございます。  そして、その他の点、例えば切りかえ交付申請までの期間を伸長するとか、あるいは登録代理を認めるとかいうような点では十分配慮して行ったつもりでございます。
  22. 千葉景子

    千葉景子君 配慮したと言いますけれども、具体的にはどう配慮したのか答弁からはさっぱりわかりません。  これも個々内容から吟味をさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、今の御答弁から見ますと、前回国会での議論というのは一体何だったんだろうか。そして、これからできるだけ議論を深めていくようにという附帯決議、これは何の意味も持たなかったんだろうか。私は大変残念に思います。  そして、この六年間、一体何を検討されてきたのか、全く前回議論を一歩も前進された様子がない。これは大変遺憾に思うところでございます。これは改めてまた具体的に指摘をさせていただきたいというふうに思っています。  そこで、この議論の中で本当にまじめにやっていただかなきゃ困るという意味も含めてこういう点を指摘させていただきたいというふうに思うんです。  この改正について、指紋押捺については今回全廃をするということになりました。これは本当に当たり前といえば当たり前、むしろ六年前の改正時にこの問題というのは決着をしなければいけなかった課題でもございます。当然といえば当然のことでしょう。  ただ、この議論においてこれまで法務省は、指紋押捺にかわる手段として署名家族事項登録というのを採用してまいりました。その後、特段の問題も生じていない、かかる確認手段それなり定着をしてきたということで、すべての外国人指紋押捺制度廃止一つ理由にされておられます。  ところが、今動いている現行法審議においては指紋押捺制度適用除外者特別永住者永住者に限定いたしました。そのときの理由はこういうことなんですよ。永住者以外の外国人は一般に我が国社会への定着性が認められない、だから署名家族関係事項登録では同一人性の確認をすることはできない、だからそこには指紋押捺が必要なんだという御説明でした。  今回は、いや、そうじゃないんだということに突然なったわけですね。この制度で十分に機能できるんだということになりました。  前回理由と今回の理由と、その間で何か大きな社会的な、あるいは外国人居住において、存在において特段変わったことがあったのでしょうか。それとも、前回審議の際の理由というのは誤った根拠づけだったのでしょうか。こういうことがこの改正理由としてあらわれてくるんです。  こういうことを考えると、根本的にどういう考え方外国人の処遇の問題あるいは外国人に対する日本社会あり方考えているんだろうかということを本当に疑問視せざるを得ないんですが、この矛盾点についてはどう御説明になられますか。
  23. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員指摘のように、平成四年の改正におきましては、我が国定住性を深めた永住者及び特別永住者について、指紋押捺制度にかわる人物の同一性確認手段として署名及び家族事項登録を採用するということを行いました。  その後、これがどういうふうに推移するかということを五年後にさらに再検討しろという決議もございましたので、私ども注意深く見てまいりまして、その結果として、五年たってみたらこのやり方で特段の問題も生じておらず、こういう確認制度それなり定着しているということが確認されたということが一つの点でございます。  それから、もちろん、先ほど来申しておりますように、この五年間で諸外国実情をさらに調査いたしましたところ、先進国において指紋押捺制度を採用している国というのは極めて少ないということ、それから外国人登録事務を実施している地方自治体から事務合理化観点から指紋押捺制度廃止について要請が出されている、こういうようなことを踏まえまして今回の改正に至ったわけでございます。
  24. 千葉景子

    千葉景子君 どうもその理由はその場限り、場当たり的な感がいたします。  そうすると、永住者特別永住者については定着性もあり指紋などは必要ないんだと言ってきたわけですから、その他の外国人についても今回それを廃止するということは、ある意味では定着性がある、あるいは不安定さがない、だから指紋押捺制度が必要ではなくなった、こういう考え方なんですか。永住者特別永住者とほぼ同じような位置づけに至ったということでしょうか。
  25. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 指紋押捺にかえまして署名家族事項登録ということを全在住外国人に拡充する、いわゆる特別永住者永住者以外の外国人にも適用するということを考えるに当たりましては、必ずしも定住性ということではないんですけれども、果たして署名それから家族事項、特に家族事項が本当に役に立つのかということは当然のことながら検討いたしました。  それで、私ども、永住者特別永住者以外の方はそこで非常に差があるということを観念的に思った節が若干あるんですけれども、改めてこの中を分析してみますと、永住者特別永住者以外の外国人の方の中にどういうカテゴリーの方がおられるかというと、例えば私どもは日本人の配偶者等と言っておりますけれども、配偶者及びそのお子さんたち、このカテゴリーとか、それから定住者、当然のことながら家族滞在ですか、そういう家族事項を見ることによって同一性を確認できる人たちが意外に多いのではないのか。しかも、そういう人たちの数がこの五年間、十年間でニューカマーの方たちがどんどんふえておりまして、その中で日本人の配偶者とか永住者定住者、こういう人たちの数が非常にふえているわけでございます。  こういうことにも着目いたしまして、先ほど私が申しました説明に加えて、そういうようなことも検討の上、今回の結論に至ったわけでございます。
  26. 千葉景子

    千葉景子君 そういう御認識になってきたということを考えると、例えば改めて入国管理法の改正といいますか、新たなる排外的な罰則などを設けていくというのは非常に何か今回の法改正も矛盾が存在しているということが言えるのではないかと思います。これもまた後ほど細かく議論させていただきたいと思います。  さて、今回は指紋制度については廃止ということになりましたけれども、大変強く指摘をされてまいりました、附帯決議においてもでございますけれども、登録証の常時携帯義務、これについては何らこの改正案では触れられることがございませんでした。これについては国際的にも大変厳しい非難が寄せられております。  国連の規約人権委員会の勧告も、これは十分御承知のところであろうかと思いますが、昨年出されておりますけれども、ここでもこの常時携帯義務について大変懸念が示されているところでございます。  改めて指摘をしておきますけれども、その最終見解の中で、「委員会は、日本の第三回報告の検討終了時に、外国人永住者が、登録証明書を常時携帯しないことを犯罪とし、刑事罰を科す外国人登録法は、規約第二十六条に適合しないとの最終見解を示した意見を再度表明する。」、前回も言ったけれども何ら措置がされないから再度その点を表明する、「委員会は、そのような差別的な法律廃止されるべきであると再度勧告する。」と、これはもう私が繰り返さなくても御存じのところであろうと思います。  こういう指摘がなされていることについて、まずこの勧告についてはどのように法務省としては受けとめておられるのでしょうか。
  27. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま御指摘の規約人権委員会の最終見解、これは十分承知しております。  その中で委員が今御指摘なさったようなことがございますが、法務省といたしましては、外国人登録証明書の常時携帯制度につきましては、不法入国者や不法残留者が現在多数存在しているという今日的な状況にかんがみますと、その居住関係あるいは身分関係を即時的に把握する必要がある、そのため合理的かつ必要なものだ、このように考えております。  また、日本人に対する取り扱いとの間に差があるのではないかという見方もあろうかと思いますが、この点についても合理的な根拠があるということでございまして、したがって、御指摘市民的及び政治的権利に関する国際規約第二十六条に違反するものではない、このように考えておるところでございます。  なお、このような考えにつきましては、さまざまな立場において明らかにしておるところでございますけれども、今後とも各方面の理解が得られるように努めてまいりたい、このように考えております。
  28. 千葉景子

    千葉景子君 規約人権委員会で法務省もそのような説明をされ、それを議論した上で勧告は出されているんですよ。そういう説明をされても、いやそれではだめだぞと、そういうことを聞いても、なおかつこの法律は規約に違反をしている、人権に対する侵害になるということが指摘されているわけです。だから、それを繰り返し説明をいただいてもこれは平行線のまま。要するに、この規約人権委員会の勧告については、法務省としては、それはもう頭の上を通り過ぎていくあれにすぎない、一切それには耳を傾けないということのお考えを再度今示されたと同じだと思うんですけれども、今後もそういうことですか。
  29. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 規約人権委員会の勧告というのは、これはもちろん尊重するということは当然のことでございますが、ただいま申し上げました登録証明書の常時携帯制度につきましては、これは外国人居住関係とか身分関係を即時に把握するという観点から大変合理的でかつ必要であるというふうに私どもは考えておるところでございます。
  30. 千葉景子

    千葉景子君 また同じことを言うことになりますが、大臣も御自身として率直にそう思われますか。いかがですか。
  31. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現在、大変多くの不法入国者や不法残留者が存在しておりまして、このことがいろいろな難しい問題をもたらす一つの原因になっているということを考えますと、私としましては、常時携帯制度というのは大変必要かつ効果的なそれに対する方法ではなかろうか、このように考えております。
  32. 千葉景子

    千葉景子君 それについてはまた大臣にも議論をお聞きいただきながら、本当にそうかなという少し認識を改めていただくようにしたいというふうに思います。  ただ、この勧告は前回から二回目の勧告でございますので間に合わなかったということはないと思いますけれども、勧告が出てからこの法改正案が最終的にまとめられて出されるまで確かに時間は余りなかったんですね、その間。そういう意味では多少この勧告に沿った中身を盛り込めなかったとか、そういうこともひょっとしたらあるのかなという気もいたします。  そういう意味では、勧告を受けて、今回はもうまとめちゃったので間に合わなかったけれども、積み残している部分もあるから、やはりこの勧告に沿ってできる限りもう少し検討していこう、こういう点などはございますか。それとも、一切そんなことはないんだというお考え方でしょうか。
  33. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現在の私どもの立場先ほど申し上げたところでございますが、いろいろと御議論をひとつ拝聴させていただきたい、このように思っております。
  34. 千葉景子

    千葉景子君 それでは、少し具体的な内容としてお聞きをいたしますが、常時携帯の制度、それについての実情をまず確かめておきたいというふうに思います。  前回改正後現在に至るまで、常時携帯義務違反で送検をされている数、国籍、それから在留資格別で示していただくことができますか。
  35. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 過去四年間の数字でお答えいたします。平成六年、七年、八年、九年でございます。平成六年が二十七件、平成七年が三十件、平成八年が十七件、平成九年が二十一件でございまして、国籍別で見ますと、中国及び韓国朝鮮が大半を占めております。  なお、在留資格別の統計資料はとっておりません。
  36. 千葉景子

    千葉景子君 在留資格別には統計がないということでございますけれども、例えば指紋押捺の撤廃についても、ある意味では二段構えで永住者特別永住者、それから今回はその他の外国人ということで、この法の運用とか適用に当たっては、やっぱりその在留資格によっていろいろな適用のあり方、運用の仕方というのがされていると思うんです。  そういうことを考えると、国籍別はともかくとして、在留資格別には全く統計がない、あるいはその違いがわからないというのは、これだけ重要な法律で、これでしっかりと管理をするんだというお話とは随分実態は異なるんだなという気がいたします。  送検はされなくとも、例えば交番でちょっと話を聞かれるとかあるいは身柄が一定の時間拘束を受けるとか、こういうケースというのは幾らでもというか多々あるのではないかというふうに思いますが、送検はされていないけれども常時携帯義務違反ということによってさまざまな強制を受けるというようなケース、こういうことについては統計とかあるいは実態というものをきちっと把握をされておられますか。警察庁の方はいかがでしょうか。
  37. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 警察の方は、任意で処理している事件につきましての統計でありますけれども、都道府県から特に個別の事件の内容についての報告を求めておらないというようなことでございます。一般に、現場において逮捕の必要性等が認められないもので、なおかつ事案的にも軽微な事例であるというふうに私どもは承知しております。
  38. 千葉景子

    千葉景子君 そこのところがある意味では非常に問題を生じてきた部分でもあるわけです。  不携帯による送致件数というのはそんなに多くないんですよ、先ほど示していただきましたように。総数でいっても平成六年が二十七、七年が三十、八年が十七、九年が二十一。結局、送致に至るというようなことは逆に言えば本当にまれなことになってきている。しかし、そこまでに至る状況の中でいろいろな問題点が生じているというのが実態であろう。その実情というのは上がってきていないから数字としてはわからないということのようでございます。そこも大変問題であると思うんです。  前回改正審議の中でもいろいろな運用の問題点指摘をされました。そして、附帯決議でも乱用にならぬようにということも決議をされているわけです。これも前回を蒸し返すようですけれども、例えば常時携帯義務違反というケースとしては、本当に住んでいる家からすぐそばのふろ屋へ行くときにたまたま登録証を持っていなかった、それによって警察に連れていかれ、そして長時間の取り調べなどを受けた、これは一つだけちょっと象徴的に挙げさせていただきますけれども、こういうケースなども指摘をされてまいりました。  ただ、そういうことが少なくなってきているという事実は私も承知はいたしておりますけれども、弾力的、常識的な運用に努めるということでこの間は推移しておりますけれども、どうなんでしょう、具体的に、先ほど数値はないというお話ですけれども、その弾力的、常識的な運用の中でどういう運用実態にあるのでしょうか。その点については警察庁の方はどの程度承知をされているんですか。
  39. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 御指摘の点につきましては、昭和六十二年と平成四年の二度にわたる衆参両院附帯決議趣旨を踏まえまして、常時携帯・提示義務等に関する規定の運用に当たりまして、警察としましては場所的、時間的な条件だとか被疑者の年齢、境遇あるいは違反態様等を総合的に判断いたしまして、個々の事案ごとに可能な限り常識的かつ柔軟な対応に努めるように指導してきておる、こういう状況でございます。  そこで、例えば平成四年以降平成十年までの間に外国人登録証明書の不携帯で送致いたしましたのが百四十六件でございます。これは平成四年から十年で七年間でございますけれども、その以前の例えば七年間の合計件数の約二%程度にとどまっておるというような状況もあるわけでございまして、先ほどお話のありましたおふろ屋さんに行くときに外登証を携帯していないために云々というようなケースは、一般的なことで申し上げれば、もちろん個々に総合的にケース・バイ・ケースということでございますからいろんなことがありますでしょうけれども、我々としては常識的かつ柔軟な対応をこれまでもしておりまして、そういうことの結果として今申し上げましたような検挙件数の少なさということにつながってきておるのだろうというふうに思っております。
  40. 千葉景子

    千葉景子君 送致件数というのが本当に減っています。それだけ、逆に見れば常時携帯違反で立件しなければいけない必要性というのが非常に存在意義がないということも示しているんだろうというふうに思うんです。  弾力的かつ常識的といいますけれども、そもそも常時携帯をしているか否か、その違反を取り締まる端緒というのは、現在ではどういうきっかけでこの常時携帯違反の端緒となっているんでしょうか。先ほど言ったように、隣のおふろ屋に行ったときに職質のような形でこれこれということはほとんどなくなっているということでございます。普通、常時携帯の有無あるいは違反の有無を取り調べる端緒はどんなときが多いんですか。
  41. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) これはいろんな事件事件で端緒はさまざまであろうというふうに思っておりますので、個々にちょっと申し上げかねるわけでありますけれども、例えば強制捜査の対象になったような事件について申し上げますと、暴力団の構成員でございますけれども、これの偽装結婚事件の関係者である中国人を検挙した事件というのがあります。それも外国人登録証の不携帯ということで一連の捜査の過程でこれを端緒として検挙した、こういうようなことがございます。それからまた北朝鮮の工作員による各般の密出入国事件というようなのもありますし、それからまた北朝鮮による日本人拉致事件等々があります。  現場で逮捕の必要性があるのかないのか、そういうような判断を踏まえましてその事件事件、これもケース・バイ・ケースでなかなか個々の事件ごとに変わってくるわけでありますが、この事件の悪質性だとか、あるいはそのほか事案の性格等々を勘案して慎重に私どもは処理しておるということでございます。
  42. 千葉景子

    千葉景子君 結局は、常時携帯義務だけを調べるために何か行うということはほとんどできないわけですよね。結局、他の犯罪のおそれがある、そういう捜査の過程で常時携帯義務違反だということが発覚をするとか、そういうことであって、かつてのようにだれかれ隔てなく常時携帯、持っているかと、こういうことをやることが少なくなったとすれば、あとは犯罪に絡んでいるとか、ほかの犯罪で摘発をされて登録証の携帯がなかったということがわかるとか、そういうケースになってきているのではないかというふうに思うんです。それにもかかわらず、やっぱり常時携帯を強制をされているということについては大変制度的にももう無理があるのではないかというふうに思います。  そもそも、この常時携帯義務外国人登録証明書とほぼ類似をするもので常時携帯という義務を課している国というのは世界でどのくらいございますか。
  43. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 世界じゅうの全部の国というわけにもいきませんものですから、入管局で四十四カ国を選んで調査した結果によりますと、少なくとも我々が選んだこの四十四カ国はすべて、提示だけの国もございますけれども、常時携帯ないし提示を課しております。  この四十四のうち、アメリカほかの三十六カ国において登録証明書ないし旅券その他身分事項を証する書類の携帯、提示義務づけております。一方、登録証明書提示義務のみを課している国はシンガポールなど、この中で八カ国ございました。
  44. 千葉景子

    千葉景子君 今お聞きすると、提示だけを求めるという形をとっている国もあるわけです。確かに携帯義務というのもございますけれども、提示のみで十分に事足りているという国もあるようですので、ぜひそんなところはよくよく参考にしていただきたいというふうに思うわけです。  常時携帯義務なんですけれども、先ほど言いましたように、送致件数も非常に減っている、それから以前指摘されたような不当な運用もなされていないというようなことでもございます。結局、常時携帯によって、先ほど最初のお話でありましたけれども、即時的に何かを判断するということには無理があるということが言えるのじゃないかと思うんです。  というのは、常時携帯そのものが、例えば外国人居住の資格とかあるいは入国の資格そのものをあらわしているわけではないわけです。常時携帯というか、携帯してあるものを提示する、それによって内容確認されるということによって身分が改めて明白になるわけですから、結局、常時携帯そのもので何かを判断しようということは、常時携帯だけで何が判断できるのでしょうか。その点についてはいかがですか。
  45. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私ども入管でございますので、入管の仕事の範囲で常時携帯というのは非常に必要だということを御説明したいと思います。  私どもも入管法の違反調査をするということで、普通いわゆる摘発するという言葉を使っておりますが、仕事場ないし居所における摘発ということをいろいろやっております。現場に参りまして、そういう入管法違反の疑いのある外国人のおられるところで最初に我々の警備官が聞くことは、外登証をお持ちですかということでございます。当然のことながら適法な外登証を持っていれば我々の違反調査の対象からは外れるわけでございますので、それがないときにはとりあえず常時携帯違反というわけじゃないですけれども、向こうも納得してついてきていただける。実際に我々が摘発をやるのは夜遅くあるいは早朝とか、果たしてこれがどうなのかということを確認しようにも、市町村の役場が閉まっているような時間あるいは土日とか、そういうときで、即時的にこれが摘発の対象になる人かどうかというのを把握するというのは大変重要なことでございまして、我々の仕事の分野に関する限り非常に役立っている有用な制度だと考えております。
  46. 千葉景子

    千葉景子君 何かちょっとはっきりしないんですけれどもね。  これは論理的に言うと非常に矛盾をするわけで、先ほど、本当に乱用などはしないようにしている、おふろ屋へ行くときなどは携帯義務違反だというような取り扱いをしないということですね。ただ、逆に常時携帯で即時的に判断をしようとするならば、全員何らかの形で携帯しているかどうかチェックしないことには本当に適法な居住者なのかどうかというのはわからないわけです。偶然に当たった何らかの形で端緒があって調べた人はわかりますけれども、その人は正しい、ではそれ以外の居住している人が常時携帯しているかなどというのはわからないわけで、それは非常に制度としては差別的な取り扱いが起こりやすいし、それからその機能を果たそうとすれば、今度は全部常時携帯をしているかどうか調べるなんということは到底不可能になるわけです。  ですから、常時携帯という制度は存在はしているけれども、下手をすれば差別的なことになるし、逆になれば何の役にも立たないしと、こういう制度になっているのではないかというふうに思います。  だから、例えば即時に判断をする、そのために万が一にも肌の色とかあるいは外見とかいうことでその端緒を求めるとすれば、これは極めて人権侵害であるし、それから差別的な扱いということになるでしょう。では今度は、先ほど言ったように、どこかしこ常に携帯しているかどうかを調べるということになれば、これは不可能を強いるということにもなる。  結局、この制度はそういうことを含みながら、むしろ毎日毎日常時携帯していないと罰則が科せられるおそれがある、あるいは何らかのときにそういうもので処罰をされるおそれがあるという不安を助長するだけの制度ではないだろうかというふうに私は考えます。  しかも、少なくとも常時携帯という制度だけではなくて、提示を求める、提示義務づけているということもあるわけです。本当に何らかの確認を必要とするならば、提示を求めて、そしてそれによって確認をするということで足りるわけですし、むしろ逆に言えば、それをしなかったら常時携帯だけでは内容については最終的な判断がつかないということになるわけです。  そういうことでは、常時携帯の制度というのは、それが即時的に識別をするのに必要なんだ、それから十分にこれが不法滞在などを防止したりすることにそれなりに効果があるんだ、だから今回別に見直していないというようなお話が先ほどからございますけれども、どうでしょうか。この制度が本当に矛盾なく、あるいは率直に言って機能を果たしているとお考えですか。大臣、聞いておられてどう思われますか。いかがですか。
  47. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 確かに、この外登証の不携帯あるいは提示拒否で起訴された数というのが少なくなってきているということは、ただいまの警察庁の報告のとおりだと思います。  ただ、現実にまだそういう状況が続いているということであれば、私としては外登証の所持あるいは提示というのは必要な措置である、それを義務づけるための罰則もこれまた必要な措置である、このように考えております。
  48. 千葉景子

    千葉景子君 仮に、確認作業が必要だということを前提にいたしましても、今申し上げたようにやはり提示を求めてその内容確認するということが最終的には必要になる方法なわけです。  そのためには、例えば持っていてもらわないと、提示を求める際があるからやっぱり持っていてくださいよということであるならば、それは行政執行あるいは犯罪捜査の執行に当たって、そうしておいてもらわないといざというときに大変執行がスムーズにいかないということで、むしろ持っていてくださいというある意味ではお願い事をするようなものですから、そういう意味では行政の執行の利便に資するということであるならば、例えばこれを犯罪とするのではなくて、行政一定の秩序を守っていく、あるいはその執行をスムーズにするという意味では、行政罰、過料というようなことでも足りるのではないかというふうに考えます。  常時携帯は本当に送致件数も少なくなっている。これを犯罪として刑罰で強制をする。いつも犯罪者になるのではないかという不安を、多くの本当に健全な善良な外国人の毎日の生活にそういう不安をつくっているということは、いかにも人権に配慮のない、そしてまた制度本来の趣旨からも逸脱している制度であろうというふうに思いますが、どうでしょうか。改めてお考え方をお聞きしたいと思います。
  49. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 千葉委員のお話はお話として、そういうお考え方があろうかと思います。  現状、大変多くの不法入国あるいは不法滞在者がいるということの重大な影響、このことを心配いたしますと、その兼ね合いがどの辺にあろうかということだろうと思いますけれども、私どもとしては、現在提案しております現行どおりの外登証に関する取り扱いがぜひ必要でなかろうか、そういうことでこれからも御理解を賜りたいと思っているところでございます。
  50. 千葉景子

    千葉景子君 今兼ね合いとおっしゃいましたけれども、兼ね合いであるならば、機能しない制度とそれから人権尊重ということの兼ね合いを考えてみれば、おのずとやっぱり人権尊重しながら、そしてその制度が機能するような、あるいは本当に配慮できる制度として改めて考え直すというのがむしろこれからのあり方ではないかというふうに思います。  考え方考え方としてというお話でございましたので、ぜひこれはこの審議がまた煮詰まっていく段階におきまして、どういう考え方があるべき姿かということを改めて御提起させていただきたいというふうに思います。  次に、登録原票の問題について少し御質問させていただきたいというふうに思います。  今回の改正登録原票の開示の問題が法制度の中に盛り込まれました。これまで自治体におきましては、外国人登録済証明書が発行され、これが居住する外国人にとってはいわば私たちで言う住民票と同じような機能を果たしておりました。今回、原票の開示と登録原票記載事項証明書というのが発行されるということになりますが、外国人登録済証明書の制度はどうなっていくのでしょうか。このまま両方が尊重されるという形になるのか、それとも登録済証明書の方は廃止をされるという格好になるのか、これはどうなるんでしょうか。
  51. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 現行の外登証では開示の規定は全くございません。ただ、外国人皆さんから、入学、就職あるいは帰化等の手続上の必要から、居住関係または身分関係の証明書を出していただきたい、そういう要望がいろいろございます。  そこで、市区町村におきまして、いわば登録原票に基づき登録証明書とは別に登録済証明書というのを運用上出しているというのが現行状況でございます。今回は、この開示の点をはっきりと明文化したいと考えております。  それで、中身からいいますと、原則的には非開示ですけれども、はっきりと特定した分野に限ってはこれをするという法改正を出して、現在ここで御審議いただいておりまして、それによりますと、今委員指摘ありましたように、登録原票記載事項証明書というのが出せる、当然一定の条件のもとですけれども、ということになりますので、これが新設されることになりました場合には、これまでの登録済証明書の発給制度はいわば発展的に廃止される、このようになると考えております。
  52. 千葉景子

    千葉景子君 これまで、この登録済証明書については自治体の側でいろいろな配慮をしてこられました。例えば、プライバシーの保護などについては十分な慎重な対応をとりながらこの制度が運用されてまいりました。平成八年でも発行件数が百三十六万件以上ということでもございますので、これは本当に日常生活にとっても不可欠な制度として運用されてきたということが言えようかというふうに思うんです。  そういう意味では、これまでの運用がこれからのこの登録原票記載事項証明書の発行などに当たっても、プライバシーの保護とかあるいは本人の住民票にかわる非常に生活に直結をする制度として、これまでより何か不便になるとか、あるいはプライバシー保護に欠けるというようなことがいささかもあってはならない。法制度にしたら悪くなったということでは困るわけですけれども、その点についてはこれまでの運用を踏まえてどういう配慮を考えておられますか。
  53. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 登録原票には当然のことながら外国人皆さんのプライバシーにかかわる事項をたくさん含んでおりますので、その取り扱いには慎重な配慮が必要であると考えております。  それで、現在の登録原票に基づき作成された登録原票の写し票等は、法務省に送付された後、電算処理されて、現在そういうことをされておりますけれども、この電算上の個人情報については既に個人情報保護法の適用を受けております。  そこで、登録原票の整理、保管についても、電算上の登録記録と同様の配慮をすることが望ましいと考えておりますので、今回の法改正に当たりましては、この個人情報保護法を十分に参考にしながら法案を作成したということでございます。例えば、個人情報保護法の第五条第一項を参考にして、登録原票の記載事項の漏えい、滅失、毀損の防止その他登録原票の適切な管理のために必要な措置を講ずることとする云々というようなやり方で、これを十分に参考にしながらプライバシーにかかわる事項が慎重に配慮されるように考えたつもりでございます。
  54. 千葉景子

    千葉景子君 これはまた機会をあれしまして細かくお聞きをしたいと思っておるんですけれども、この登録原票記載事項証明書について不当な交付を受けた際、過料に処せられるということになっていますね。これは不当な交付あるいはプライバシーの侵害などがあってはいけないわけです。ただ、これは先ほど議論にもかかわりますけれども、もう機能しないような、そして人権に非常に重い負担をかけている常時携帯のようなものには罰則がかけられていて、プライバシーをきちっと保護して、そして不正な登録原票の流出などがされないようにということについては過料なんですね。  これは何かえらく刑の均衡を失している。あるいは本旨に沿った刑罰の適用あるいは検討が本当になされてきたのだろうか、こんな点でも私は矛盾を感ずるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  55. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今の点に関しましては、偽りその他不正の手段により、登録原票の写し等の交付を受けた者は五万円以下の過料に処するという規定が確かにございます。  それで、今回の改正に際しまして、当然のことながら戸籍簿それから住民基本台帳がどうなっているかというのを調べておりまして、それと同様の規定を今回置いたというわけでございます。
  56. 千葉景子

    千葉景子君 もう時間ですので、次回に質問を譲りたいと思いますけれども、ここは住民基本台帳法を参考にしたと。登録そのものは決して住民基本台帳法などを基本にはしておりませんよね。それとは全く違った外国人管理という手法あるいは考え方にのっとって行われている。しかし、プライバシー侵害などに大変かかわりやすい、こういうところについては過料で済ませている、この点についても私は非常に疑問に思います。  細かくは次回の質疑の際にまた質問させていただきたいと思いますので、御承知おきをいただいて質問を終わりたいと思います。
  57. 円より子

    ○円より子君 民主党・新緑風会の円より子です。  今、千葉議員からの質疑を聞いておりまして、なるべく重ならないようにしようとは思っていたんですが、ぜひとも大臣に聞きたいことがございます。  まず、先ほども話がありましたけれども、平成四年の改正の際の衆参法務委員会附帯決議というものは、「外国人人権尊重して諸制度在り方について検討し、その結果に基づいて、この法律の施行後五年を経た後の速やかな時期までに適切な措置を講ずること。」となっているわけで今回の改正になったんですが、私は、今回の改正案では外国人人権尊重して諸制度あり方について検討したとは全く思えないんですね。適切な措置も講じてはいないというふうにしか考えられません。まず、外国人登録法に関しては常時携帯制度廃止すべきだったと思いますし、また罰則規定もなぜ刑事罰にしたのか、そのままなのかが全くわかりません。そういったことや再入国許可制度廃止をすべきだと思っております。  さて、大臣前回所信表明で、昨年十二月に両議院において採択された人権擁護に関する決議を踏まえ、人権擁護行政充実強化を図ると述べられているんですけれども、一体この在日外国人、特に韓国朝鮮人の方々人権についてどのような認識をお持ちなんでしょうか、お聞かせください。
  58. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 在日韓国朝鮮方々を初めとする在日外国人方々につきましては、その基本的人権は当然尊重されるべきだ、このように考えております。法務省はこのような認識に立ちましてこれまでも在日外国人方々人権擁護に努めてまいったところでありますし、これからもその擁護に努めてまいる考えでございます。
  59. 円より子

    ○円より子君 それでは、同じく所信表明で、来日外国人による薬物密売手段云々と外国人犯罪に触れていらっしゃるんですが、外国人の一部の例を殊さらに取り上げて発言されることは、外国人イコール犯罪者というような誤ったイメージを日本社会に与えるようになると思うんですが、その点についてはどう思われますか。
  60. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 特に特定の国を名指ししてそういう発言をしたつもりはございません。
  61. 円より子

    ○円より子君 朝鮮民主主義人民共和国関連の報道の都度、無関係の在日朝鮮人学校の女生徒に対する嫌がらせや暴力行為も起こっております。これは本当に恥ずべき日本社会の意識だと思いますけれども、こういった人権擁護行政を所管なさっている法務大臣としてはどう思われますか。
  62. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ただいま申し上げましたように、国籍を問わず、人種、宗教、そういうものも問わず基本的人権は常に尊重されるべきである、このように考えております。
  63. 円より子

    ○円より子君 きょう外登法入管法改正審議に入ったわけですが、これも大臣法律案提案理由説明というのを行われました。ぜひともこういったものは国民の皆様にも逐一全部新聞記事等で知っていただきたいと実は思うのでありますけれども、どこを見ても外国人人権に配慮してという文言が全くございません。  出ているのは、例えば永住者及び特別永住者については前回指紋押捺制度廃止した、それで、その後六年余りを経て特段の問題も生じておらずということとか、地方自治体から事務合理化などの観点から指紋押捺制度廃止についての要請がありとか、それからまた入管法の方も、例えば正規在留者に対する再入国許可の有効期間の伸長、これは現在一年を超えない範囲で決せられることとされている、これを三年を超えない範囲に伸長するという、これについても「再入国許可に係る申請手続を簡素化し併せて事務合理化を図るため、」と。ここに流れているのは、すべて管理する体制の側が管理の手続が簡素になることだけをまるで法案改正理由になさっているようにしか読めないんです。  法務省というのは人権擁護のための省ではなかったんですか。大臣、御自分がお読みになったものですからよく覚えていらっしゃると思うんです。
  64. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 目的はあくまでも人権擁護推進するということでございます。その中で、今御指摘になりましたように、いろいろなほかのメリットもあるということを申し上げたつもりでございます。
  65. 円より子

    ○円より子君 ちょっと今のはよくわからなかったので、もう少しつけ加えていただけますか。
  66. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 法務省として人権擁護教育したり啓発したり、あるいはいろいろ救済していくというような立場は当然でございます。それは国の内外を問わず、そういう基本的な姿勢でいかなければならないということでございます。  今御指摘のように、それにしても事務の簡素化とか地方自治への配慮とかそういうような点が表に出過ぎて、あたかもそれが目的であるかのような表現をしたということについてのことでございますけれども、ねらいはあくまでも人権擁護推進するということを考えての発言でございまして、その中で今申し上げたようなことも当然メリットとしてあるから大いに進めていこう、このような趣旨で申し上げたつもりでございます。
  67. 円より子

    ○円より子君 提案理由説明の中に外国人人権のためにということが一切書かれていないということは、そういったことのねらいもあったけれども、表面上は事務合理化を図るためそういったことがとおっしゃいますが、こっちが大事だったんじゃないんですか。だから、ついそのことだけが出てきて、全く人権擁護外国人人権なんて考えていらっしゃらないとしかとれないんです。もし、そうじゃなかったとおっしゃるなら、この提案理由説明はおかえになりますか。
  68. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 私の提案した趣旨はただいま申し上げましたとおりでございますので、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  69. 円より子

    ○円より子君 今おっしゃったのが現実だとすれば、どうしてそのときに、こんなものは読めないと、官僚のつくった文章は。自分の言葉で、ちゃんと外国人人権擁護するためにかえるんだとなぜおっしゃらなかったんですか。
  70. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 法務省としては、常に人権擁護は基本的に大事である、これはもう大前提でございますので、それを踏まえた上でのこういう趣旨説明だということで御理解いただきたいと思います。
  71. 円より子

    ○円より子君 それでは、この五年間に、国会附帯決議も随分軽視されているものだと思いますけれども、外国人登録証の常時携帯についてとか、その辺が全く今回出なかった。常時携帯制度廃止とか、このあたりが全く出なかったことについてはどのような検討がなされたんですか。そういったことは大臣は当然お聞きになってこの趣旨説明をなさったんだと思いますが、お答え願えますか、大臣
  72. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) この問題につきましては、平成四年度の改正の際に衆参両院から附帯決議をつけていただいたわけでございますし、そういうものを踏まえながら、またあるいは外国実情そして有識者の御意見等を踏まえて、種々な角度からさまざま検討した結果でございます。
  73. 円より子

    ○円より子君 今の常時携帯の廃止については検討はあったんですか。
  74. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今の検討の中でそういう問題も大変重要な課題でありました。
  75. 円より子

    ○円より子君 検討があってどういうことになったわけですか。いろいろな意見があったかと思いますが、賛否両論。
  76. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現在、我が国に不法入国者あるいは不法滞在者が大勢いるというこの厳しい現実、これのもたらすさまざまな影響等を勘案すると、外登証の携帯ということはこれに対応する手段として大変有効かつ適切である、こういうふうに検討の結果、判断したわけでございます。
  77. 円より子

    ○円より子君 ちょっとこの常時携帯のことは後に回しますが、先ほど五年間にさまざまに検討してきた中で有識者からの声を聞いたとおっしゃいました。  この指紋押捺制度廃止やまた常時携帯のこと、さまざまこれにかかわってこられた方たちというのは有識者ではなくて在日外国人方々なんですね、それに本当に不利益をこうむったり、人権侵害をされてきたのは。そういった方たちからの意見は聞かれましたか。
  78. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 有識者の方から御意見を伺う機会を何度か持たせていただきましたけれども、その中で在日外国人の方にも御参加いただきました。
  79. 円より子

    ○円より子君 それでは、人権擁護推進審議会、ここで在日外国人人権擁護に関する人権教育及び啓発に関する施策ということについての論議がなされていると思いますけれども、ここでも人権侵害の被害者から、特に在日外国人方々から意見を聞かれたことはありますか。また、これから聞こうとなさるおつもりはありますか。
  80. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 人権擁護推進審議会が設置されまして、ここで現在人権教育啓発に関する施策の基本的なあり方について審議しているところでございます。  在日外国人に関する人権問題も視野に入れながら調査審議がなされている、このように承知しておりますが、この調査審議の中で平成九年十二月と平成十年一月、二回にわたりまして関係団体からヒアリングをしたわけでございます。この後、この審議会にはさらに調査審議を続けていただくわけでございますけれども、その際に審議会としてもさらに必要なヒアリングがあれば当然取り組んでいただけるものと期待しております。
  81. 円より子

    ○円より子君 先ほどから大臣人権についての御意見を伺っているんですけれども、ちょっと角度を変えまして、大臣管理という言葉からどういうことを連想され、どういうふうに管理という言葉を受けとめていらっしゃいますでしょうか。
  82. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 管理ということ、これは非常に幅広いものを意味していると思いますので、なかなか答えにくいところではなかろうかと思います。  これは使い方によって違うわけでございますが、私どもがもともと自然物とか人工物、こういうものを管理していくものではなくて、社会をどう管理していくかということでのお答えが必要かと思いますけれども、やはり全体としての統率といいますか、まとまりがつく中で個々の人の役割がどういうふうにあるべきかという、全体と個、個と全体の間をうまく調整しながら公益あるいは公序良俗が維持できるようにしていくことではなかろうかと思っております。
  83. 円より子

    ○円より子君 御存じのとおり、住民基本台帳法は、「住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もつて住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体行政合理化に資することを目的とする。」、これは住民のサービスということをうたっているわけです。それに引きかえ外国人登録法は、「外国人居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もつて在留外国人の公正な管理に資することを目的とする。」と書かれているわけです。  おっしゃるとおり、管理という言葉は幅広いかもしれませんけれども、先ほどいみじくも大臣がおっしゃったように社会管理する、やはりここは人権となかなか相入れない部分だと思うんです。もちろん、社会を安全に統率していく、管理していくことも法務省の仕事かもしれませんけれども、在留外国人方々人権ということを考えるならば、どうも管理の色彩が強過ぎる。こういう言葉もかえたいと思います。  そうしますと、先ほどの携帯義務とかそういったことに対して、余りにも携帯義務自体が生活の不便とかさまざまな問題を起こしております。そういったことだけじゃなくて、その罰則行政罰ではなくて刑事罰になっているわけです。これは本当に必要以上の管理をしていることにならないんでしょうか。
  84. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 外国人の場合には、当然に日本在留でき、当然に日本に出入りができる日本人とその点ではやはり違うわけでございまして、それに関してある種の措置をとり、それを罰則でもって担保するということは合理性にかなったものだと考えます。
  85. 円より子

    ○円より子君 今、必要にかなったとおっしゃいましたが、外国人登録証の常時携帯の目的と必要性の根拠というものは何なんですか。
  86. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 常時携帯の一番の主眼は、先ほどもお答えしましたけれども、やっぱり即時性だと思います。即時に身分関係居住関係が把握できるということが一番重要な点かと思います。
  87. 円より子

    ○円より子君 必要性の根拠も即時ということなんですか。
  88. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど来申しておりますように、居住関係それから身分関係を明らかにする、必要なときにはそれを即時に把握することが必要だということでございます。
  89. 円より子

    ○円より子君 先ほどから千葉委員質疑がありましたので、私は一応この常時携帯の廃止罰則規定を変えることを提案したいと思いますし、そういった観点から、この見直しを進められない限り、今回の改正はほとんどの在日外国人方々は廃案になった方がいいんじゃないかと思っていらっしゃることを伝えておきます。  それで、別の観点からお聞きしたいんですけれども、まず自由権の規約第十二条は、「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。」と定めております。在日外国人のうち、少なくとも五十四万人は日本で生まれ育ち、日本生活の基盤を置く二世、三世、四世です。彼らにとって日本は自国と言ってもいい存在だと私は思います。  ところが、日本政府は、難民条約の難民を除き、これらの人々に日本に帰ってくる権利を保障していません。これらの人々が出国するとき、一般の在留外国人と同様に、入管法第二十六条が定める再入国許可申請するしかないんですが、この再入国の許可というのは法務大臣の裁量ですか。法務大臣にお聞きします。
  90. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) そのとおりでございます。
  91. 円より子

    ○円より子君 裁量になっているわけですけれども、法務大臣の裁量にゆだねられていることで、これを得られないまま出国すれば、在留資格を失って新規入国者として扱われ、帰国の保証がないわけです。  一九八〇年代に、法務省は法文書上何の根拠もないのに指紋押捺拒否者に対する制裁措置として再入国不許可処分を連発しました。そして、彼らの海外渡航の自由や生活権を侵害してきたわけです。この中には、NHK青年の主張コンクールで優秀賞を取りながら、副賞のカナダ旅行を断念せざるを得なかった青年もおりますし、本当にいろいろな方がいらっしゃるんです。その制裁措置の唯一の原因であった指紋押捺制度そのものが今回全廃されることになれば、こうした人々が過去にこうむった不利益、これは今後、何らかの形で解消される手だてがあるんでしょうか。  先ほどから法務大臣は、今回の改正法の説明の中に事務合理化とかそういうことしか書かれていなかったが、自分の本意は外国の人たちの人権擁護することにあるとおっしゃいましたよね。そうしましたら、今まで指紋押捺を強制してきた我が国としては、それによってこうむった不利益を原状回復するなり救済するのが当然ではないかと思うんですが、いかがですか。
  92. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今お尋ね特別永住者方々については、御案内のように、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法第二条第二項で、平和条約国籍離脱者の子孫として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留する者である、このように言っておるわけでございます。  今御指摘の点に関してでございますけれども、この特別永住者が出国する場合は、事前に再入国許可を得なければ、決められておる「引き続き本邦に在留する」という要件に当たらなくなりますので、したがって特別永住者としての地位を付与するわけにはまいらない、こういうことでございます。
  93. 円より子

    ○円より子君 大臣、私の質問を聞いていらっしゃらなかったんじゃないんですか。全然意味がおわかりになっていないと思うんです。そんなことは前から存じております。──わかっていらっしゃるならもう一度答弁してください。同じことを言うのは時間のむだですので。
  94. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) わかる、わからないの話じゃなくて、人権の問題で、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の第二条第二項の中に、引き続き本邦に在留するということを条件としておりますので、その法律に基づいて処置するということは当然のことであるということを申し上げたかったわけでございます。
  95. 円より子

    ○円より子君 これは大臣がおっしゃるように、特別永住者になられた方たちというのは、私たちの国が植民地化したときにこちらにいらした方たちであって、その方たちへの償いの意味もあって特別永住者になられるという形をとったわけで、それは資格じゃなくて権利だと私は思うんです。そういった人たちに対してずっと指紋押捺制度を押しつけてきたり、それから一々法務大臣の裁量で再入国許可をもらわなきゃいけないなんというのは、これは大変人権を踏みにじった形の制度だったと私は思うわけです。  前回のときには永住者特別永住者には指紋押捺制度を廃し、そして今回はすべての在留外国人廃止する、それは反省の意を込めて改正なさるんだと思うんですが、先ほどから大臣法務省答弁の中には全く反省の気持ちとかというのがないんです。それだったら、今までその制度によって不利益をこうむった人たちの救済措置はできるのかということを私は先ほどからお聞きしているんです。それについて何条何項なんということは要りませんので、大臣意見をおっしゃってください。
  96. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 繰り返しになりますけれども、先ほどの二条二項の中で決められておる、引き続きという条件に乗らない限りは救済措置というのはあり得ないと思います。
  97. 円より子

    ○円より子君 何度言っても同じことしかおっしゃいませんので、もう次の話に行きますけれども、裁量で法律じゃないんですよ、大臣の裁量で再入国許可をしないで、そして永住資格を失った人に対しては、大臣の裁量で何とでもできるんじゃないんですか。私はそれを申し上げているんです。そういったことを考えるのが、外国人人権を大事にするとおっしゃる大臣の責任だと思います。  もう一つ例を挙げたいと思います。これは多分また御本人から御意見を聞くことになるかもしれませんけれども、日本で生まれ育った在日三世の崔善愛さんのことです。  御存じだと思いますが、彼女は日本で生まれ、そして育ち、日本の音楽学校を卒業なさったピアニストです。一九八一年に指紋押捺を拒否したために再入国許可がおりなかったわけです。それで予定していたカナダへの演奏旅行はしなかった。しかし、また今度一九八六年には、アメリカの大学にマスターコースの留学が決まって、このときは音楽家としての将来を断念することはできずに再入国の不許可処分のまま渡米したわけです。そして帰国した際に新規入国者とみなされ、同時に協定永住資格を失ってしまいました。  こうした彼女のような、先ほどから申しますように、今、彼女は日本の方と結婚して二人のお子さんもいらっしゃるわけですが、彼女は、私の故郷は日本だ、帰るところは日本しかないとおっしゃっているんです。このような過去の指紋押捺拒否によって今も大変著しい不利益をこうむっていらっしゃるんですが、もう一度お伺いしますが、こういった方についてはどう思われていますか。さっきから、どうできるかと言うと同じ御意見しかおっしゃらないから、どう思われますか。それは大臣の気持ちのことをお聞きしているんです。
  98. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今のお話を承って、大変お気の毒だなという気持ちはもちろん人間として十分持つわけでございますが、ただ法治国家でございますので、法律に従って処置せざるを得ないというこの厳しい現実も御理解賜りたいと思います。
  99. 円より子

    ○円より子君 またこの件については質問したいと思います。  もう一つ、今回強制退去者の上陸拒否期間が一年から五年に伸長されます。今でも一年と少しで入国できた人というのは大変少なくて、二、三年かかっているような現状で、日本で婚姻し子供がいるような方たちの家族の離散の悲惨さというのはかなり聞いておりまして目を覆うばかりでございますけれども、今回これを五年に伸長するということはだれを対象に考えているんでしょうか。
  100. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法入国、不法上陸、不法残留等の入管法違反を行った結果、退去強制処分になった外国人が対象でございます。
  101. 円より子

    ○円より子君 先ほどからいろいろ少し形を変えて質問させていただきましたけれども、どうも法にのっとってと言うだけで、きょう、たくさんの傍聴の方々も来ていらっしゃいますけれども、その方々にとって今回の改正というのは、決して御自分たちが日本で住み続けるための人権生活を保障するような形の改正ではない。その質疑についても、何というんでしょうね、同じように法律にのっとってとしか答弁できないとしても、情というものがもう少しあってもいいんじゃないかというふうな気がするんですが、そういうものが本当に感じられないできっと悔しい思いをしていらっしゃるのじゃないかと思いますし、私も大変歯がゆい思いをしております。  国際社会の中でも、これは国際人権自由権の規約委員会から何度も勧告を受けているところでありまして、外国人登録証を常時携帯していない永住外国人を刑罰の対象とし刑事制裁を科している外国人登録法は、国際人権規約二十六条に適合しない、こういうふうにも言われておりますし、日本は、憲法九十八条の二項では国際条約の誠実な遵守を義務づけているわけですから、こういった国際社会の中で日本という国を保持していくためにも、ぜひともこういった勧告をきちんと守り、また国際条約を誠実に遵守していただきたいと思います。  私たちは、同じ国に住む外国の人たちと、正直こういった法律があることはとても恥ずかしいと思いますし、ぜひとも今回の改正でよしとせずに、これは本当に小手先だけの改正だと思います。人権というもの、そういったものが考えられていないことは先ほど理由説明にも明らかでありまして、ぜひともそのあたりを検討し直していただきたいということを要望し、私の質問を終わります。
  102. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  103. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  104. 大森礼子

    ○大森礼子君 公明党の大森礼子です。  私は質問事項を通告しているわけでありますが、午前中の質疑、民主党の千葉委員と円委員がなさりましたが、それを聞いてちょっと確認させていただかないと先に進めないなということがありますので、まずその確認から入らせていただきます。そのことで本来用意しました通告事項がすべて終わらないかもしれませんが、この二法案につきましては十分審議をするべきであると考えますので、まず必要なことをさせていただきます。  円委員が二つの法案の提案理由の中に人権の言葉がないがという質問をされました。これはやはり重要なことだと思うんです。大臣法務省としては人権擁護は当然の前提ですから書いても書かなくても一緒だったみたいな言い方だろうと思うんですけれども、やはり言葉というのは大事だと思います。  大臣、正直にお答えいただきたいんですが、人権を配慮してという言葉を入れたかったのかどうか、いかがですか。
  105. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 御指摘のような気持ちで今はおります。
  106. 大森礼子

    ○大森礼子君 やはり言葉にならないと、文章にならないと、幾ら実はこうだったと言ってもそれは伝わらないわけでありまして、もし大臣がやっぱり人権を配慮してという言葉を入れたいのであれば、それはとても大事なことですから、我々、多分これに反対する委員はいないと思いますから、この提案理由に加筆してつけ加えられたらいかがですか。私たち反対しませんので、いかがでしょうか。
  107. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 御提案でございますので、ちょっと検討させていただきたいと思います。
  108. 大森礼子

    ○大森礼子君 ぜひ入れてください。私たちは絶対にそういうことは反対しませんので。  また、それを入れますと、この法案の中身につきましても、その提案理由説明、今、大臣積極的な答弁をされましたので、それを前提にこれから質問させていただきます。  まず、冒頭千葉委員外国人人権についてどうお考えかということを質問されました。在日の方、永住、特別永住の別なしにその人権尊重されるべきであるとおっしゃるわけです。だから人権尊重しその啓発を図っていかなきゃいけないとおっしゃるんですが、人権というものは言葉で言っただけでじゃ人権考えられているかどうか、関係ないと思うんです。要は、その人権感覚というものがいかに制度の中に、法案の中に組み込まれているかだと思うんです。  例えば、こういう対象となる方にとって、これまで非常にこれは人権侵害じゃないかと思っていた、非常に不利益をこうむっていた、これが今度の法改正によって解消した、これがあって初めて法務省人権擁護の省としての面目が保たれるのではないか。そして、そのときに初めて大臣人権尊重されるべきという言葉が本当だったんだなということになると私は思います。  前回附帯決議、参議院、衆議院ございます。実は昭和六十二年にもあるんです。このときから既に常時携帯義務については附帯決議がつけられている。平成四年を一応言いますが、今回の改正の中に附帯決議がどう反映しているのかとの千葉委員の質問に対しまして、大臣は本会議の代表質問に対する答弁でもおっしゃったんですけれども、外国人というのは許可なくしては在留できないという言い方をされるんです。これは物すごく私はひっかかるんです。許可なくしては在留できないということは、許可するかどうか、これは国の自由なんだというお考えなのでしょうか。
  109. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) そういうふうに外国の方に上陸なり入国を許可するという制度、これはもう我が国だけじゃなくて国際的にもそのような取り扱いをされておると承知しております。
  110. 大森礼子

    ○大森礼子君 私も司法試験の受験科目で国際法を選びましたから、一般原則としてはわかるんです。一般外国人につきましてはそういう言い方も当てはまると思いますが、私が問題としたいのは永住者の中で特に特別永住と言われる方でございます。  こういう方がサンフランシスコ条約で国籍が日本の国籍ではなくなった。そこからこの問題はスタートするわけですが、それからいろんな経過を経て協定永住とか特例永住、そういう形で特別永住許可が与えられてきております。このときに、政府としては、法務省としては与える与えないは全くの自由裁量だったのでしょうか。
  111. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) ちょっと条文を見ておりましたので。大変恐縮でございますが、ちょっとお待ちください。──済みません、恐縮でございますが、もう一度教えてください。
  112. 大森礼子

    ○大森礼子君 どうしましょう。やっぱり法務大臣だから知っておかなきゃいけないという気がするんです。それを余り追及するのも好きではないのですが、やっぱり歴史的な経緯を踏まえるという場合には法務大臣というのは歴史的経緯を正しく理解していなくてはいけないと思います。  そして、現に公の答弁で、許可を受けなくては在留できない、許可という言葉を使っておられます。確かに、届け出制でない、届け出をしたらみんな永住の資格がもらえるというものとは違いますから、それはあくまで許可です。しかし、許可だとしてもその中には裁量が働くわけですが、裁量の中にも自由裁量というものと覊束裁量というものと二つございます。  私はこれまで歴史的経過を見まして、いわゆるサンフランシスコ条約によりまして日本の国籍がなくなった方、いわゆる今在日の方といいましょうか、こういう方に永住権が与えられていった経過というのは、それは申請すれば、一定の要件を満たせばこれを許可しなくてはいけない。つまり、届け出制ではありませんが、覊束裁量であったと私は理解しているんですが、大臣、いかがでしょうか。
  113. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) そのとおりでございます。
  114. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうであるならば、国際法上の一般原則で、国家主権の機能として、外国人を入れるかどうかは国が決めることができる、許可することができると言えますけれども、この特別な歴史的背景というものをたどってみるならば、ここで言う許可というもの、許可を与えるも与えないも自由だ、こういうふうにとらえることはできないと思うんです。  私は、我が国におきましてはこの特別永住の方というものは一般の外国人と区別して考えるべきだと考えるんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  115. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) そういう考えに基づいて特例法で違った扱いをしているということでございます。
  116. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうしますと、今私が問題としたのは、よく一般的に言われる、外国人というのは許可なくしては我が国在留できない、あるいは永住にしても許可が要る、全部許可、だから管理の対象になるんだということでしょう。管理というのはコントロールでしょう。アンダー・ザ・コントロールという言い方になるんでしょう。そういうふうに形式的に考えるのではなくて、いろんな制度について考える場合に、一般外国人を頭に置くのではなくて、この特別永住の方については特別な配慮が必要だと思うのですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  117. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 特例法の中ではそういう配慮をすることになっておるわけでございますが、すべてということではないのではないかと思いますけれども。
  118. 大森礼子

    ○大森礼子君 特例法の中では配慮しているがすべてではないと思うがというのは、具体的にどういうことでしょうか。
  119. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 日本国民と全く同一にという意味を言ったわけでございます。
  120. 大森礼子

    ○大森礼子君 それはそうですよ、国籍が違うんですから。そこまでは言っておりません。  これから許可という場合はやっぱり分けて考えていただきたい。それから、許可というのを自由裁量というふうな意味でとらえていただきたくない。覊束裁量という意味での許可もあるということをまず念頭に置いて、私たちはこの法案審議をすべきであると考えます。  それからもう一つ前回附帯決議罰則均衡性についても検討すべきだと言っているのにこれはどう反映しているんですかと千葉委員に聞かれましたら、大臣は、公正な管理のためとおっしゃっているんですかね、実効性を担保するために必要な罰則であると。つまり、過料なんかじゃだめなんだ、刑罰の威嚇なんだ、だから変える必要はない、こういうふうにおっしゃったわけです。  実効性を担保するためというのは、具体的にどういうことを想定しておられますか。
  121. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 義務づけるわけですが、その義務を履行するに当たってどういう行政上の罰をかけるか、刑法上の罰をかけるか、その他いろいろな義務を実行するための措置としての意味合いを指して申し上げたところでございます。
  122. 大森礼子

    ○大森礼子君 実効性を担保するといいますと、取り締まる側は非常に便利ですよ、しようと思ったら幾らでも見せろ見せろと言えばいいわけですから。だけれども、される側からしたらどうかということなんです。それは取り締まる側からすれば実効性はあるでしょう。しかし、そのときに人権ということを考えるのであれば、目的手段の相当性というものが考慮されなくてはいけないと思うんです。  単に不法入国者、不正規な在留者を見つけるために効果はあるかもしれませんが、果たしてそれが人権の見地から見てすべての方に、今一般の永住の方と特別永住の方が大体六十万、わかりやすく六十万としておきましょうか。それから、第三回でしたか第四回の規約人権委員会への政府の報告だと、ここ数年は検挙者は二十人未満にとどまっているということです。二十人未満のために六十万人の方に網をかける、言ってみれば義務を課すというバランス感覚の問題なんです。  本当に大臣は必要だと思われますか。
  123. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) たびたび申し上げているように、近年、不法入国、つまり不法上陸とか不法入国、そういう形で国内に不法滞在する外国の人が多いという実態を考えますと、これが我が国の経済、社会、治安、その他あらゆる面にどういう影響を及ぼすのかということはやっぱり真剣に考えなきゃいかぬのじゃないかと思います。そういう上で、そういうものに備えての外登証の携帯なり提示の効果というのは期待できる、こういうふうに思っております。
  124. 大森礼子

    ○大森礼子君 不正規の人を捕まえる、そればかり考えず、これによって迷惑をこうむる人のことを考えてほしいんです。人権というのは、不必要な義務を課されないということも人権内容でございます。  その前に確認しておきたいんですが、常時携帯義務も、それから今回の案では全廃になります指紋押捺制度も、これは何の目的かなと思うんです。これまでの過去の答弁を見ておりますと、例えば昭和六十二年九月一日の衆議院法務委員会で小林入管局長が、「外国人の場合には、正規在留者と不正規在留者を区別する必要がある、これを見きわめる手段を確保する必要がある」ということで指紋押捺制度説明しておられるんです。  ついでながら申しますと、「不法入国者あるいは不法残留者というものが正規在留者を装う場合に、」「成りかわろうとする相手は、ほとんど例外なく長期在留者あるいは永住者であります。」と、だれかにすりかわろうとした場合には。だから、長期在留者永住者であればこそ、こうした不正規在留者が利用する余地を排除する必要があるから指紋押捺制度をと、ちょっとこの内容はわかりませんけれども、要するに正規在留者と不正規在留者とを区別する、これが目的らしいんですね。同一性確認手段というのがそういうことなんでしょう。  そうすると、常時携帯義務の方も、これは平成四年改正時の当時の政府答弁なんですけれども、適法な在留者と不適法な在留者を見きわめるのに必要である、こういうふうな答弁もあるんですが、もう一度局長確認させていただきますが、目的はそれでよろしいですか。
  125. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 繰り返し申しますように、外国人日本国民と異なり、我が国に入国、在留するために許可を受けることが必要でありますが、登録証明書の常時携帯制度は、このような外国人が合法的な在留者であるか否か等、その居住関係及び身分関係の即時的な把握を可能とするために設けられたものでございます。
  126. 大森礼子

    ○大森礼子君 いつもお答えになる内容なんですが、ではこっちを聞きましょう、質問があちこち行きますけれども。  これは同一性を確認するんですね。それで、常時携帯義務が必要だとする理由は、存続させるべきだという理由は、居住関係とか身分関係を即時に把握する、こうおっしゃいます。これは同一性を確認というのであれば、その人が正規在留者かどうかということがわかればいいわけでありまして、だから正規の在留者かどうかをそこで即時に把握するというのは文章として通じるんですけれども、居住関係身分関係を即時に把握しと、ここのところがどうも気になるんです、何か言葉で聞くとさらっといきそうなんですけれども。  居住関係を警察官が何か聞くとします、これは今の運用とかがあるんでしょうけれども、これまで聞いていたとしたら、どうもこれは不法入国者らしいなとか、あるいは現行法でしたら不法残留者らしいなということで、一つの有効な手段ですね。そうして当たっていくんでしょうけれども、それが正規か不正規かだけがわかればいいのであって、居住関係身分関係を即時に把握する、これは具体的に特別な意味が何かあるのでしょうか。
  127. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもが違反調査でいわゆる摘発という格好で正規か不正規かということを確認するというのは、一般的にどこかの町の道で不特定多数の人をつかまえて順番にやっていくというようなことではございませんで、当然のことながらいろんな事前の調査等をして、どうもここにそういう不正規の人がいるのではないかということを絞った上で、当然裁判所の許可を得てそういう摘発をやるわけでございます。その際に、中にいる外国人の方が正規か不正規かというのは実際に身分関係居住関係、どういう在留資格でおられるのかということまでわかりませんと、ここで本来働いていい人なのかどうかということがわからないわけでございます。  ですから、例えば一般の永住者の方であれば、あるいは定住者の方であれば基本的にどこで働くということに制限がございませんので、この方はここで働いておられるのは別に問題がないということがわかりますし、そうでないことであればこれは適法に働いていないということがわかる、即座というのはそれがその場で確認ができるということでございます。  私どもが摘発をやります場合には、先ほど申しましたけれども、真夜中にやったり早朝にやったり、その確認のために次の日の朝まで待つとかなかなかそういう余裕はないわけでございまして、私どもの範囲に関してはやっぱり即座にそういうものを確認する必要があるということでございます。
  128. 大森礼子

    ○大森礼子君 今、ちょっと裁判所の許可とかとおっしゃいましたね。裁判所の許可を得てという言葉が耳に入って、ちょっとお声が小さいものであと聞こえなかったんですが、裁判所の許可を得てどうされるとおっしゃったんですか。
  129. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 裁判所の捜索の許可でございます。
  130. 大森礼子

    ○大森礼子君 それでしたら、それはあったら便利です、捜査官としては。だけれども、やっぱり事前の調査もされて当たりをつけて、それで令状もとってということでやるわけでありまして、さっき局長みずからおっしゃったように、違反者がいないかというので町中へ係官が行って聞くわけではありませんから、それはやはりその捜査の方を事前調査とかきちんとするべき問題なのではないかと思うんです。  それから、警察の方もどんな場合かというので、暴力団の構成員の中国人を偽装結婚で逮捕したんだが、これは不携帯が端緒となったとあるんですけれども、端緒でしたらこれはワン・オブ・ゼム、いろいろ端緒がある中の一つにすぎない。  確かに捜査側はあれば便利ですけれども、便利だからといって全部利用しているわけではありませんで、むしろそういうことは捜査技術をもっと向上させるとか十分な事前調査をするとか、そういうことによって代替手段はあると思います。それで人が足りないというのであれば人をふやすことを考えるべきではないかと私は思います。  まず、数を聞きましょうか。先ほど千葉委員が聞かれたときに、警察の方がお答えになったんです。要するに登録証明書の不携帯の場合で検挙件数、人員ではなくて件数で、これは平成七年から言ったんですか、検挙・送致件数、平成七年三十、平成八年十七、平成九年二十一、平成十年十五、私がいただいた資料ではこうなっております。  それで、これは本来なら対応することなんですけれども、法務省の方にお尋ねいたします。この十三条違反で、六十二年に一つ改正があって附帯決議がついたから六十一年から本当はずっと聞きたいんですけれども、わかる範囲で結構ですが、時間の関係もあるからとりあえず今から五年間さかのぼるだけで結構です。起訴件数、不起訴件数、これを教えてください。
  131. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) それでは、過去五年ということで平成六年から申し上げますと、起訴件数は、平成六年一件、平成七年一件、平成八年から十年まではゼロでございます。不起訴件数でございますが、平成六年が二十八、平成七年が二十五、平成八年が十一、平成九年が十五、平成十年が九ということでございます。念のため申し上げますと、これは警察からの受理とその年の処理ですから、統計的には必ずしも数字は合わないということでございます。
  132. 大森礼子

    ○大森礼子君 わかりました。  こういうことで、もしこの目的というものが正規の在留者、特に不正規の方を摘発する手段、こういう考えであるならば既にその目的は失われているわけなんです。だから、どうしてこういう制度にそんなにこだわるのか。もちろん取り締まる側からしたら手段はたくさんあった方がいい。組織犯罪法とか通信傍受法とか、私が捜査官だったらそれは確かに手段がもらえたらうれしいけれども、人権との関係で果たしてどうかということで十分審議をしなくちゃいけないわけです。  永住者の方、一般、特別合わせて大体六十万とわかりやすい数字で申しました。それから、規約人権委員会での報告に過去三年間、年間二十人未満でその検挙数は推移しているということで、六十万割る二十、一人の検挙者のためどれだけ迷惑をこうむるか比率を出したら一対三万です。三万といったら、私は岡山、備前市の出身ですが、この人口は三万に満たないんですけれども、一人の変な人がいるために市民全部に正当な備前市民であることを立証せよと、何かこれを義務づけているような気がしまして、本当にバランスを欠くと私は思います。  この制度が何でおかしいかというと、例えば一人の違反者を見つけるということは、即時見つける、即時やりたいんです、即時するために三万人に義務を課しているというこのアンバランスさなんです。一人の発見のために三万人のそうでない人を巻き込んでいいのか、こういう問題だと私は思うんです。  それから、この常時携帯義務ということを在日の方が嫌がるのはすごくわかるんです。面倒くさいという以外にも、やはりそこには人権上問題がある。特別永住者の方も若い世代の方が育っております。日本人とどこが違うんですか。将来国へ帰ることもないでしょう。私も友人がおりますけれども、まず言葉がわからないからもう日本にしか住めない、日本が好きだから住む、こういう方が多いわけなんです。言語の問題も生活本拠の問題もございます。なのに一生、これまでの統計でいうと年間二十人の迷惑をかける人間のために常時携帯義務が課されるという、こんなばかげた話はないじゃないかということになります。  それから、この制度が私は非常に嫌なのは、不法入国者等でない、つまり不正規の在留者でないというこの立証責任を正規に在留している人に転嫁しているような気がして仕方がないんです、見せろと。おまえ、正当な在留者だったら証明書を出して立証してみせろ、こういうふうな考え方が私はこの常時携帯義務の中に感じられて仕方がないわけであります。ですから、私はこれにつきましてはやはり廃止を含めてもう一度考えるべきではないか、こういう考え方を持っております。ほかにもさっきの質疑でよくわからないことがいっぱいあったんです。  指紋押捺、円委員が聞かれたことなのですが、再入国許可との関係で、過去において指紋押捺を拒否した方が再入国許可が得られませんでした。そういう時代がございました。それについて、やはりその人たちがこうむった不利益というものを回復すべきではないか、何か救済措置考えるべきではないかということを円委員が質問されたわけです。それで、崔さんのケースを円委員が引かれまして、どう思われますかと。大臣は、お気の毒だなと思います、ただ法治国家であるから法律によって処罰しなくてはならない、こういう趣旨のことをおっしゃいました。  これは順序が問題なんです。お気の毒だな、だけれども法治国家だから仕方がないんだといって済ますのか、あの当時は法治国家であったから仕方がなかった、しかし今となってはあの方たちが主張した指紋押捺制度というものはこうして時代の流れの中で廃止されたではないか、そうすると、冷静に考えると結局あの人たちの人権感覚というのは正しかったんだということになると思うんです。  そうであるならば、あのときは法律によってそういう不利益処分をしなければならなかったけれども、今この時代となったら非常にお気の毒だから、これからどうするか、資格回復等をして何か考えてみようとか、こういうお考え法務大臣、ございませんか。
  133. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今の問題につきましては、確かに円委員に対してお説のような御返事をいたしました。お話を聞きますと大変お気の毒だなという気持ちを私も強く持ったわけでございます。ただ、現在の法律の上では、そういうものに対しても、引き続き日本にいなかったという意味合いから、再び特別在留邦人に戻すということができないということになるわけでございますが、入管法の枠内でこういう問題をどのように考えていったらいいのか、今お話を伺いながら救済措置としてどんな検討の余地があるのか考えてみる必要があるかなという気がいたしております。
  134. 大森礼子

    ○大森礼子君 積極的な御答弁ありがとうございました。  私たち日本人も本当に人権感覚というものは磨かなきゃいけないと私は思うんです。そうでないとやはり世界の国から笑われる。  千葉委員の質問のところでしたか、入管局長に対する質問で、平成四年の改正では永住、特別永住の方の指紋押捺制度廃止されたけれども、それ以外の一般外国人については残った。そのときの理由としては、永住以外の外国人定着性が認められないから家族事項登録では同一性が確認できない。これについて、この間いかなる事情の変化があったんですかと千葉委員お尋ねがありました。  局長答弁が、平成四年の改正のときには五年後に再検討をすることになった、五年たってみたら特段問題なかったとか、こんなことを言われたんじゃ、たってみてよりそのときに一生懸命考えてくれよと言いたいわけです。もともと問題がなかったから問題がなかったのかもしれませんよ。それから五年間各国の実情調査したら指紋押捺制度をとっている国は少ないというんですけれども、これが理由となるためには、その前の改正時には多かったけれどもこの五年間で減少したとか、こういう理由がないとこれ理由づけにならないんですよ。要請が出ている、これはずっと出ていますね。  こんなことを見ますと、やはりこの指紋押捺制度というものがいかに人権を侵害する行為であるか。それについて普通の人が、崔さんも普通のピアノ弾かれる方です、そういう人が自己の不利益も顧みずやはり不当なものに対して闘う、これは一つ人権に対する闘いであると思います。だから、不利益を承知で闘って、その運動の中で今回国の考え方も変わって、そしてやっと指紋押捺制度というものが全廃ですね、これ千葉委員おっしゃったように前回廃止すべきであって遅過ぎたと思うんですけれども、いずれにしてもこういう流れがあるわけです。そういう運動をされた方がいて初めてこうなったということです。そして、まさにその運動された方が不利益を受けたままというのは、これは放置しておいていいのかという気がいたします。  それで、やはりいろんな国の事情とかありますから、あのときはいいと思ってしたけれども今となってはやっぱりおかしかったということも素直に認めればいいと思うんです。そうしないと、ますます私は日本というのは人権後進国になっていくと思います。  そういった意味で、大臣法務大臣なんですから、自由裁量ですか、裁量権を持っている方なんですから、何とかこういう方の救済ができないかどうか積極的に考えていただきたい。それでお互いの相互理解というものも深まる、私はこのように思います。大臣、お願いできますでしょうか。
  135. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 人権の問題につきましては、たびたび申し上げておりますようにこれはもう基本的に一番大事なことでございますので、そういう視点からいろいろな問題を考えていかなきゃいけないと思うわけでございます。ただいま委員からいろいろお話ございました。ひとつ参考にさせていただきたいと思います。
  136. 大森礼子

    ○大森礼子君 さっきの補充の質問をしているうちにどんどん時間がたってしまって、でもきちっとやりたいと思います。  それから、同じく千葉委員先ほどの一般外国人について、家族関係ですか、登録とか署名で役立つのかという点について、これは局長答弁されたんですか、今ニューカマーというのがふえてきている、それで日本人の配偶者もふえているから家族で確認できる、こういうことをおっしゃいましたね。これ間違いないですか。イエス、ノーで結構です。
  137. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 若干数字を申しますと、そういう家族事項でもって同一性を確認できる可能性のある人、一〇〇%できるかどうかわかりませんけれども、可能性のあるカテゴリーの人たちがどういうふえ方をしたかということを申し上げたいと思います。  我々の言葉で日本人の配偶者等というカテゴリー、それから定住者、それから家族滞在、このカテゴリーで、平成四年の段階で三十七万七千という数字でございましたが、最近の平成十年十二月で出した数字で見ますと、この三つのカテゴリーを足した皆さんの数が五十四万二千というふうに非常に大きな数字になっております。これが私が先ほど申し上げたことに対する数字的な裏づけでございます。
  138. 大森礼子

    ○大森礼子君 やっぱり人が入ってくるようになりますと、特に今の若い方はおつき合いとか自由ですから、そういう結婚とか婚姻関係とかできるんだと思うんです。これが一つの傾向であると。だから一般の外国人についても指紋押捺でなくてもいいという根拠になっている、これはもう確たる事実だと思うんです。  一方で、日本人を配偶者等とする人がふえている。それは中には正規な方とは限らないと思うんです。ある期間がたったらその在留期間が切れちゃう場合もあるわけでありまして、在留期間が切れたからはいさようなら、これは余りにも薄情な話でありまして、そういう関係があったからまた在留するということもあると思うんですよ。なのに、外登法の方ではそれを一つの事実として引用しながら、入管法では、一たん強制退去の人が入るのに一年から五年に延ばすんですね。ちょっとバランスがとれてないのではないかと思うんです。人間が住むということは、そこにいろんな生活の基盤、人間関係もできますし、男女の関係もできますし、なのに一年を五年にぽんとするということは実態と合ってないんじゃないか、非常に過酷なやり方ではないかと思うんですが、局長、いかがでしょうか。
  139. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 基本的な発想といたしましては、正規の外国人の方に対する負担はなるたけ軽減できるものは軽減したいということでございますし、一方におきまして、不法な状態で法を犯して日本に滞在している人間、これに関しましてはその数がふえて新聞等でもよくにぎわしているとおりでございまして、いろんなところからもう少しきっちりと対策をとれないのかということを言われております。そういう者に対してはきっちり対応する。両者相まって一つのバランスのとれた入管政策がとれるのではないか、このように考える次第でございます。
  140. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは通告している事項なんですけれども、入管法の方に行きます。  被退去強制者に対する上陸拒否期間を一年から五年に伸長する理由として提案理由説明でこう言っているんです。「近年、不法残留等我が国からいったん退去強制された外国人がその後再び本邦に入国し不法残留等により再度退去強制されるという事例が増加しており、こうした状況に適正に対応するため、」と、こういうわけです。  一たん退去強制された、その後再び本邦に入国し、これ不法入国とは書いてありません。その後「不法残留等」と書いてありますから、また正規に入国して、それでその結果不法残留になった方、これをまず念頭に置かれているように文章上は読めるんです。  だから、全部こういう人が最初から不法残留を目的として入ったかどうかわかりませんし、極めて単純なパターンで決めつけて、そのために一年から五年というのはちょっと過酷過ぎるのではありませんか。退去強制された人でも再び入国できる状況であれば入国してもいいと思いますし、それから、こういう人が全部不法残留を目的として入国したとは言えないと思うんです。そこら辺の実態についてどういうふうに把握しておられるのか。そういう事例が増加していると言うんですけれども、この増加を示すような統計があるのでしょうか。大体でもいいんです。  済みません。数字を挙げてくれというのは通告しておりませんでした。では、その数字はこの次に聞きますから、その数字を除いたものを答えてください。
  141. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 私どもがベースにした数字は、退去強制手続をとった人間、去年でいいますと全部で四万数千という数字ですけれども、その中で前に既に一回退去強制している人間がいるかどうか。これは私どもはデータのチェックをいたしまして、そういうことをいつも調べているわけでございますけれども、その数字が最近年々上がってきているということでございます。  したがいまして、私どもが言っておりますリピーターといいますか、これは全部二回以上退去強制の処分に係った人間でございます。その数字がふえてきているということでございます。
  142. 大森礼子

    ○大森礼子君 ちょっと質問があちこちに行って済みません。警察の方にも来ていただきました。  常時携帯義務違反の検挙件数は先に千葉委員が聞かれましたので同じ質問ですから尋ねないわけですが、先ほど千葉委員に対する答弁の中で、検挙件数を挙げられた後に、提示要求をした数は調べていないとおっしゃったのでしょうか。ちょっと確認させてください。
  143. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 提示要求をしたということについての答弁先ほどさせていただいたわけではございません。  私ども、要するに登録証明書の携帯義務違反の取り締まりという場合に、任意とか強制とかいうような形での統計は持っておりませんでして、任意で処理している件数というものについて都道府県警察の方から特に個別的に報告を受けておらない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  144. 大森礼子

    ○大森礼子君 そうでしたら、これは通告していないのでわかればということで結構なんですが、検挙数は先ほど平成七年から平成九年の数を挙げていただきました。私も資料をいただいております。すごく少ないんです。規約人権委員会での報告のとおりに二十人未満で推移しておるんです。検挙した数はそれだけなんですが、提示を要求する行為はどのくらいケースがあるのでしょうか。これはわかりますか。わからないと思うんですけれども。
  145. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) まず申し上げますけれども、現時点ではわかりません。  それから、これから調査してそれがわかるかどうかというところなんですが、いろんな場面でそういうことをやって、そして事件、検挙に至らない場合というのもございますでしょうから、ちょっと統計はとれないというふうに思います。
  146. 大森礼子

    ○大森礼子君 なぜそれを聞くかといいますと、必要性というのがどの程度あるのかということも実は知りたいわけなんです。私は、検挙件数だけで言うと、いや検挙件数はそれだけだけれども、もっと必要性はあるんだという反論もあるかと思って、そういう数がわかればいいと思ったわけなんです。  それで、先ほど目的手段の関係でいいますと、検挙件数が年間二十人未満として、それで提示を求める数が余りに大き過ぎますと、検挙件数との関係で不必要な提示要求行為をしているのではないか、こういう言い方ができるんです。また、検挙件数と提示要求をする行為とが余り大きく違わなければこんなものは必要ないじゃないかと、どっちにしても問題だということが言いたいわけなんです。だから、まさに運用ということを考える場合には、それが妥当かどうかということ、これをどれだけの人に提示要求しているか、ここら辺がわからないとちょっと判断しかねるのかなという気が私はいたします。  それから、これまでの附帯決議の中で強調してこられたのが、外国人登録証の携帯制度については運用のあり方を十分考えると、運用の問題にしているんです。六十二年にも一回附帯決議がつきました。それから、平成四年に附帯決議がつきました。そして、これに対応して検挙件数が減っております。これは国会附帯決議を十分考慮してくれたのだなということで評価する面があるのですが、もう一つの問題があるんです。というのは、現場の運用に任せられるのかということなんです。  特に刑罰法令ですから、罰金ですから、運用とは何かいいように聞こえるんですけれども、これは刑罰ですから本当にそれでいいのか、運用でどうにでもなるのだったら、そもそもそういう刑罰を置くこと自体が私はおかしいのではないのかと思うんです。うっかりしていても義務違反になるわけです。それで、いろんな状況で運用に配慮をしている。これは現場の個々の取り締まり官の方の判断ですね。そうしますと、これで捕まった人間、私がもし常時携帯義務違反で検挙された、捕まったとなると、何で自分だけ捕まえるんだ、不平等じゃないか、こういう反論をしたくなるんです。  刑罰法令、特に一種の取り締まり目的の法令というものは、いろんな情状とかそういうものをむしろ配慮しないというのが原則ではないか、不平等な扱いをしないということ、一律にやるということ、これはこういう平等に扱うという要請も一方で来ると思うんです。ですから、運用運用でいくことは刑罰の性質から見て逆に不平等な扱いになる、恣意的な運用を許すことになる、こういう大きな問題点が出ると思うんです、運用運用でゆだねて。法文でこういう場合はだめと規定するのなら別です。刑罰法令を適用するかどうかを現場の運用にゆだねる、これは極めておかしいことであると思います。これは意見を言うだけにします。大臣に聞こうかと思ったけれども、次に行きます。  それでは、本来の質問事項に入らせていただきます。まず、警察の方の質問を先に終えておきましょうか。  指紋制度が全廃されます。指紋押捺制度というのは、同一性の確認といっても即時にはできないわけです。だから、考え方によったら、まず常時携帯義務で即時にして、悪い言い方をすれば引っ張っておいて、それからじっくり指紋照合してという形になるのかなと思うんです。しかし、捜査側から見れば指紋というのは非常に有効な手段でありましたけれども、いい悪いは別としまして、こういう警察の取り締まりとの関係で指紋押捺制度がなくなったことは、取り締まる側、警察としては特に支障はないと考えてよろしいのでしょうか。やっぱりあった方がよかったなとか。
  147. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 指紋押捺制度の全廃につきましては、平成四年の法改正指紋押捺制度にかわる方法ということで、同一人性の確認手段として署名及び家族事項登録というのが導入されておるわけでありまして、この定着状況などを踏まえまして法務省の方で検討された結果であるというふうに私ども思っております。  警察としましては、いろんな警察活動を行う上で外国人居住関係とかあるいは身分関係が明確になっていることが必要であるというようなことにつきましては、法務省の側に理解を求めてきたところでありまして、今回、こうした点を踏まえて改正案が検討されたものというふうに理解しておるところでありまして、今後、我々警察としましては、法務省と密接に連携して各種の警察活動に遺漏ないように対処してまいりたいというふうに思っています。
  148. 大森礼子

    ○大森礼子君 規約人権委員会での報告のことについて千葉委員お尋ねになったんですけれども、大臣お尋ねします。規約人権委員会はもう二回勧告されておるんです、外国人登録証携帯制度については。それは第三回の政府側の報告の中で、この外国人登録証携帯制度については、もう大臣が繰り返しておっしゃるように、外国人居住関係及び身分関係を現場において即時に確認する手段を確保するために採用されている、しかし本制度についても運用のあり方も含め適切な解決策について引き続き検討する、こういう報告がなされているんです。運用のあり方も含めと。だからこれは、運用というのは一つの検討事項でありまして、適切な解決策について検討する、こういう姿勢なんでしょう。これに対してこの委員会の方は、これは規約に反すると言っているわけです。  平成十年の四回の政府側の報告がどうなっているかというと、また理由等については、身分関係居住関係を現場で即時に確認する等です。その実効性を担保するために罰則が定められている。その後で、ただしとあって、事件送致された人員は過去三年間二十人未満で推移している、常識的、弾力的な運用がなされていますと。変なことをしていませんよということなんでしょう。その後に、なお外国人登録証明書の携帯制度あり方も含めて、この第三回のときには運用のあり方も含めてだったけれども、今度は携帯制度あり方も含めて外国人登録制度の抜本的な見直しについて現在日本政府においては検討が行われているところであると。検討が行われて今回の改正では何も変わらなかったということなんです。こんな報告を見たらちゃんと何かあるのかなと期待するのに、何か肩透かしを食ったような気がするんです。  ということは、もう十分検討したんでしょう。検討してなおこの常時携帯義務というのを続けなくてはいけない理由というのが先ほど大臣の御答弁なんだと思います。そうすると、その考え方が、これは平成五年からもうずっと検討してきてだめなんだと、これが最終結論なわけですから、将来変わりませんよね、大臣
  149. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これまでの経緯については、今委員のお話しのとおりでございます。  これで結論が出て、それで終わったということではございません。だから、きょうのような御議論を深めながら、さらにこの問題について、なお検討の余地があれば、当然引き続き取り組んでいかなきゃならぬ問題だろうと思っております。
  150. 大森礼子

    ○大森礼子君 この第四回の報告に対する規約委員会の、先ほど千葉委員もおっしゃいましたけれども、この常時携帯義務を課して「刑事罰を科す外国人登録法は、規約第二十六条に適合しないとの最終見解を示した意見を再度表明する。委員会は、そのような差別的な法律廃止されるべきであると再度勧告する。」と、二回言われているんだから、気づくものであればここで気づかなきゃいけないと思うんです、時期的に見まして。先で検討するんだったら今検討すべきじゃないかと私は思うんです。  この後は二〇〇二年ですか、第五回の報告。この規約委員会の方に仏の顔も三度までというのが通用するのかどうかわかりませんけれども、この次はどんな報告を持っていくのでしょうか。まさにこの勧告をこの改正のこのときに検討すべきだと思う。その結果、大臣がもう同じ答弁を繰り返すということは、日本の場合にはこれはもう二〇〇二年の時点でも変わっていないのではないかと思うんですが、大臣、変わる余地があるんですか。
  151. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現状において検討の結果はといえば、従来どおりの外登証にかかわる取り扱いを継続すべきであるというのが結論でございます。  今後、五年ごとの見直しのときまでにどうなるかということでございますが、この点についてはまたさらに検討を深めていく必要はあるのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  152. 大森礼子

    ○大森礼子君 向こうも再度表明すると、強い態度なんです。ちょっと質問しにくいのは、この改正案をやったときは前の中村法務大臣のときだったもので、陣内法務大臣じゃないから、どういうふうに検討したんですかと言いにくいところはあるのですが、しかし、この法案が出たのはやはり陣内法務大臣のときですから、行政の継続性ということで大臣にお聞きするしかないんですね。  二度の勧告を受けて、それでも変えなかった。これは次へ行ってまた同じことで再々度勧告するなんと言われたら、日本人として非常に恥ずかしいと思います、人権感覚がないのかということで。いや、そんなふうにおっしゃるけれども、日本では常時携帯義務についてはこういうふうな合理性があるんだと、むしろ反論してもらいたいと思うんです。反論できますでしょうか。  ここでのやりとりというのは、この勧告に対してどういう考え方をとるかということは、これは公の場ですから、二〇〇二年のカウンターレポートになるかもしれませんし、むしろ私は自信を持って、いや委員会はそう言うけれどもこういう事由があるんだというのであれば、合理性、必要性を説得力を持って説明していただきたいと思うのですが、大臣、それはおできになりますか。
  153. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現在の我が国の不法入国者や不法残留者が多数存在し、これがいろいろな社会、経済、治安等の上で懸念材料になっているということを私どもは踏まえながら、これまで国際人権規約委員会に対しては再三述べてきたところでございますが、理解を得るところには至らなかった。今後、そういう状況を踏まえて、さらにどういう取り組みをしたらいいのか考えていかなきゃならぬ、このように思っております。
  154. 大森礼子

    ○大森礼子君 委員会の方に理解を得るに至らなかったというんですが、理解できないから、こういうふうに再度勧告されているのではないかと私は思います。  もう時間がなくなりました。済みません、いっぱい通告していながら。これは十分審議させていただきたいと思いますので、次回に質問させていただきます。  一つ入管法改正趣旨の中で、不法入国者が再び増加傾向に転じとあるわけですね。この前の改正は一体何だったのか、役に立たなかったのかなと思うんですが、それは次回質問するといたしまして、要するに不正規の在留者がふえて困った状況にある、だから今回の改正をするんだという趣旨だと思うんです。それで、不正規な在留者と正規な在留者を区別する、これが一つの常時携帯義務の根拠であるとするならば、これから常時携帯しているかどうかのチェックをふやすということは非常に有効な手段ではないかと思うんです。そこはどうなんですか。  一方で不正規の人がふえている、その中でこの常時携帯義務の扱いというもの、検挙件数の見通しでもいいです、提示要求行為の見通しでもいいです、これはこれからふえていくと思われるのか、減っていくと思われるのか、いかがでしょうか。これはどなたでも結構です。
  155. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員指摘のとおり、不法入国者等については、今回の改正による不法在留罪の新設も含め、厳格に対応していく所存でありますが、外国人登録証明書提示については、平成四年の衆参両院法務委員会附帯決議趣旨を踏まえ、例えば外国人であるというだけで画一的、機械的に登録証明書を携帯しているかどうかを確認するような運用を行わない等、常識的かつ弾力的な運用がなされているところであり、今後も引き続き同様の対応がなされるものと考えております。
  156. 大森礼子

    ○大森礼子君 これは最後の質問になると思います。  六十二年、平成四年に衆参附帯決議を出しています。規約人権委員会の勧告、二回にわたる勧告です。これを考えるならば検挙件数はより減っていくんだろうと思います。そうしたら、前提となる提示要求行為、これ自体も減っていくんだろうと私は思います。  それで、前提となる提示要求行為、見せてくれというこの運用について、人権上の配慮をする、適正な運用をすると言いながら、すべての永住者特別永住者の方に依然として従来と同じ義務を課している、それから従来と同じ刑事罰で威嚇するというのは、これは矛盾した態度であると私は思います。  それは運用する側から、いやそんなに厳しくしないからいいじゃないかと言われても、保証は何にもないわけです、義務を課せられた者については。こんな場合はいいんだよ、こんな場合はだめだよ、こういうふうに法律で決めてくださればまだいいけれども、幾らそちらがいいと言っても、運用ですから、法律の根拠はありませんから、義務を課されている者の負担というものは、心理的負担、物理的負担もあるかもしれませんが、これは何ら軽減するものではありません。  私は、運用によって適正に図っていくという考えはもうやめるべきだと思う。運用者側の考え方でなくて、幾らちゃんとやっていますと言っても、義務を課されている側は、いつどんなふうに聞かれるかわからない、常に持っていなきゃいけないわけでしょう。むしろこんな場合は持っていなくてもいいと示していただきたいと思うんです。  運用のあり方を配慮するというのは、こういう義務を課されている人にとって何ら負担を軽減するものではないということを申し上げて、とりあえずきょうの質問を終わらせていただきます。
  157. 橋本敦

    ○橋本敦君 今回の改正によりまして指紋押捺制度廃止されるという事態を迎えるに至りました。このこと自体はもちろん当然のことでありますが、ここに至る過程で、みずからの人格の尊厳、あるいは人権をかたく守るという決意で指紋押捺強制に反対をし、その苦難を乗り越えた人たち、またそれを支えた多くの人たちの運動があったということ、また国会でも、そうした運動を背景にしながら、人権を守るという我が国行政の前進のためにこの指紋押捺制度について廃止に向けて論議を行ってきた、そういった経過があったということは、これは極めて重く受けとめるべき今日の問題だと思います。その点、大臣の御所見はいかがですか。
  158. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これまでの指紋押捺制度をめぐるいろいろな御努力、経緯、それは十分しっかりと受けとめた上で、これからも人権擁護問題については考えていかなきゃならないと思っております。
  159. 橋本敦

    ○橋本敦君 振り返って見ますと、占領下、外国人登録令がつくられたわけですが、そこでは指紋押捺制度がなかった。ところが、指紋押捺制度として出てきたのが一九五二年、いわゆる平和条約発効で外登法ができたとき、こうなったわけですね。その外登法ができて、外国人登録令にはなかった指紋押捺制度持ち込まれたのは、その法制定を契機にしてまさに在日外国人皆さんに対する管理体制強化ということがその当時の基本的な柱であったように思いますが、入管局長、どうですか。
  160. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 当時、指紋押捺制度が導入されたのは戦争直後の混乱の時期でございまして、韓国から来られた方の入れかわり、人間の入れかわりのケースが非常にふえて、これは何とかしなきゃいけないと。そのためには同一性を確認するのに一番いい制度指紋押捺制度だということでこの制度が導入された、このように承知しております。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 おっしゃったとおり管理、取り締まりが基本的な目的であったということなんですよ。  その当時非常に私が注目したのは、日本人に対してはもちろん指紋押捺強制なんかないわけですね。ところが、一九五〇年代に国民指紋法構想というのが出されて、各自治体で日本人に対しても指紋押捺を進めるという動きが起こってきたことがあったですね。そのときに注目することですけれども、一九五二年一月に地方自治庁、今の自治省ですが、その自治庁が「条例で指紋押捺を強制することの可否について」、こういうことに対する回答を先例として出しているんですが、そのときに、地方自治庁行政課長の全国自治体警察連合事務局あての回答はどう述べているかといいますと、条例が犯罪捜査以外の目的のために制定されるものであるとするならば、事柄の性質上、指紋の採取に応ずる義務を課することが行政目的を達成するために必要不可欠であり、かつ必要最小限度の自由権の制限であるかどうかについて慎重な検討を加える必要がある、一般的には消極的に解すべきである。つまり、人権侵害だから消極的に解せよ、そういう条例はだめだよ、こういう回答をしているわけですね。  これはまさに日本国民に対しては、人権を守る上から指紋押捺の強制など許されないよということをこの五二年のときには言っているわけです。その同じ年に在日外国人皆さんには、おっしゃったようにそのときの情勢から管理、取り締まりを基本に指紋押捺強制制度が出された、こういうことです。だから、そもそも出発のときから日本国民との間の差別という原点的な印を打ってこの問題は出発してきたわけです。もう出発のときからそういう意味では深く人権にかかわる問題として問題を持っていたわけです。  そこで、外国の例ですが、法務省調査によりますと、外国人一般に指紋押捺義務を課している国が日本を除いて二十五あるという表があるんですが、例えば韓国、香港、フィリピン、アルゼンチン、チリ、コロンビア、メキシコ、ベネズエラ、パラグアイ、それからアメリカ合衆国、ヨーロッパではスペイン、ポルトガル、先進的国々と言われる中では非常に少ない。  これで問題なのは、自国民にも指紋押捺義務を課している、そのために外国人にも指紋押捺義務を課しているというのが大半なんですね。自国民には指紋押捺をさせないけれども、しかし外国皆さんには指紋押捺をさせるという国は日本だけなんですよ。法務省、御存じですか。
  162. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) ちょっと昔のことは今資料を持ち合わせておりませんけれども、最近の状況では、先進国外国人にだけ指紋押捺義務を課しているという国は非常に少ないと承知しております。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 ないんですよ。アメリカでも指紋押捺義務は自国民には課していないけれども外国人に課しています。御存じのように、アメリカの国籍法は出生地主義ですから、そこで生まれた外国人の子供はもうアメリカ国籍が取得できますから、指紋押捺義務には該当しないですよ。日本のように、日本で生まれたら子々孫々にわたって指紋押捺義務が課されるという特異な人権を侵害する国というのは、世界でも例がないと言ってもいいんですね。  ここに一つ例があるんですが、この指紋押捺を拒否するという勇気ある行動をとられた韓さんという方がいらっしゃるわけですが、その方がどう言っていらっしゃるかというと、  いままで何度となく、指紋を押してきました。しかし、考えてみると、私の子も孫も同じように押しつづけることになります。私は、子孫にこれといって残してやれない代わりに、指紋を採られなくて済むようにぐらいは、してやれないかと思ったんです。最近、日本では「国際化だ」とか、「国際人権」だとか、さかんに叫ばれています。指紋が残っていることは、それと矛盾するように思えてなりません。 こうおっしゃっているんですね。まさに私は、そういう日本における外国人取り締まり的特殊体質が人権侵害としてずっと残ってきたというように言わざるを得ないと思うんです。  そこで法務省に伺いますが、この外国人登録法違反、指紋押捺拒否ということで、最近の検挙件数はほとんどないと思うんですが、統計はどうなっていますか。
  164. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 外国人登録法違反について、先ほどお尋ねがありましたが、統計としては罰条ごとの統計はございません。ただ、今回の改正等の経緯がありましたので、全国の検察庁に対しまして調査を実施いたしました。それで平成元年から十年間を調べてございます。  平成元年から五年までの間に登録証不携帯罪で起訴されました件数は四十一件、提示拒否罪の起訴はないということがわかっております。平成五年以前に起訴されました事件の裁判結果の方でございますが、これはその以前のものは把握しておりませんが、六年以降に起訴されたものは三件ございます。三件の事件について申し上げますと、一件は不携帯罪と常習累犯窃盗、これで懲役三年、罰金八万円。もう一件は不携帯罪と軽犯罪法違反、罰金十万円及び拘留二十九日。残り一件は提示拒否罪と覚せい剤取締法違反、懲役一年二月ということになっております。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 最近は減ったということはわかりました。  それでは、この指紋押捺強制制度ができてから、今おっしゃった平成元年以降はわかりましたが、それまでの長い間に指紋押捺拒否を理由として起訴されあるいは逮捕される、そういった件数のすべての資料はありますか。
  166. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) ただいま申し上げましたとおり、外登法上の罰条ごとの統計はとっておりませんので、個々にお答えするというのはまた調べないといかぬと思いますが、古い件数になりますと果たして正確な調査ができるかどうか確信がないところでございます。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 大変な苦難を経てこの問題のもとで検挙され裁判を受けられたという方もたくさんあるんですが、そういう資料が正確に出ないというのも、行政として在日外国人皆さんを含め国民に対する人権を守るという立場からいって私はやっぱり問題だと思います。  先ほど法務大臣は、この指紋押捺制度がなくなったということに関して、再入国の問題あるいは裁判を受けてその結果不利益を受けた問題、そういったことに対しては適正な補償を含めて検討する必要があるということをおっしゃったんですが、私も全く同感です。その前提として、法務省としては、指紋押捺拒否に関してどういう事件がどれだけありどういう不利益をどれだけこうむられた方があるかということをわかる範囲でまず正確な調査をして、その上でそういう人たちに対して国の行政として今何をなすべきか、このことを検討する必要があると思いますが、大臣、いかがですか。
  168. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) お答えする前に、ちょっと私の意が、表現が不十分だったために伝わっていないのではないかという心配がございますので。  私が申し上げましたのは、指紋押捺制度が今日に至るまでの間いろいろな経緯があった、そういうことを踏まえて、これからは人権問題に慎重に十分考えながら取り組んでいくべきだということを申し上げたかったわけでございます。  そして、今の調査のことにつきましては、いろいろな問題を解決するためにはやはり必要な資料の収集、分析、それからそれに基づく判断が大事だということはおっしゃるとおりでございますので、そのような取り組み方をしなきゃならないと思いますが、一方、先ほど刑事局長が申し上げましたような事情もありますので、その辺を踏まえながら努力してまいりたいと思っております。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 善処してもらいたいと思います。  私は、この指紋押捺問題について大変注目している判決があるんですが、それは京都在住の尹昌烈さんという方が指紋押捺拒否の問題で裁判を起こされまして、国家に対して損害賠償請求をやられた。一審で敗訴されたんですが、大阪高裁が一九九四年、平成六年十月二十八日に判決をいたしました。この中で言っていることは私は今日でも非常に重要だと思うんです。  指紋ということについては、指紋を媒介として個人を識別する、そういうものですから、指紋を他人に察知されることによって他人に知られたくない生活上の事実の秘匿が危険にさらされる結果となる。そうすると、みだりに指紋押捺を強制されない自由、これはプライバシーないし自己に関する情報をコントロールする権利の一つであって、国民の幸福追求権を定めた憲法十三条によって保障されていると解せられる。つまり、みだりに指紋をとられない自由というのは我が憲法の十三条で保障しているんだよということを裁判所がはっきり言っておるわけです。  そしてこの問題について、さらにこの裁判では、十三条ということが同時に、従来指紋犯罪捜査に重要な役割を果たしてきたため、指紋を強制されるということでは犯罪者扱いされたような侮辱感、不快感ないし被差別感を覚えがちであるから、そのとおりですね、だからみだりに指紋押捺を強制することは、個人の尊厳を傷つけるという意味においても、憲法十三条によって許されないと明確に判断している。私はそのとおりだと思う。だから、よほどの合理的理由と合理的必要性がない限りは違憲なんですよ、そもそも。憲法違反だと。  そういう点で、我が国指紋押捺制度の経過を見てみますと、いろいろ批判もあり、そして特別在留許可を受けた皆さんにはなくしていくとか一回だけにするとかいうような経過も経てきたわけですが、それはやっぱり人権を守れということの中でそういう経過が出てきたわけです。  しかし、この裁判所の判決では、そういう経過を経てきたけれども、少なくとも控訴人ら平和条約国籍離脱者に対して指紋押捺を強制することは、人権を制限する必要性が十分でないという点で憲法十三条に、国民との間で不均等な、日本国民との間でですよ、取り扱いをする合理的な根拠が乏しいという点で憲法十四条に違反するのではないかと疑うに足る状況にあったと考えられるという判決をしている。  私は、これは非常に大事な判決だと思うんです。だから今度指紋押捺制度廃止されたということは、我が国在留する外国人皆さん人権を守ると同時に、我が国自身が我が国の憲法に基づいた正しい行政をやっていくという上でこれは非常に大事な課題であったというように私は理解すべきだと思うんですが、大臣、そう理解して当然でしょうね。
  170. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 今、お話を伺いながら、なるほどなというふうな感じを受けたところでございます。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 次に、同僚委員からもいろいろ指摘されましたが、常時携帯義務の問題に論を移していきたいと思います。  私も、この常時携帯義務は、今回これをなくすということでやってほしかったと痛切に思っておるわけでございます。この問題については、先ほどから議論がありますように、もう既に一九九八年十一月十九日の日本政府に対する勧告の中で明確に、「外国人永住者が、登録証明書を常時携帯しないことを犯罪とし、刑事罰を科す外国人登録法は、規約第二十六条に適合しないとの最終見解を示した意見を再度表明する。」ということで、再びこういう厳しい勧告が出ているわけです。  ここで言う二十六条というのはどう書いてあるかといいますと、言うまでもありませんが、「すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。」。これは国際人権規約です。明確です。ですから、このために法律は、こういうあらゆる差別を禁止する、そしてまた政治的意見で差別してはならないし、国民的もしくは社会的出身、出生または他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障すると、はっきり書いてあります。  だから、そういう意味で、国際人権規約からいっても、今日国際的な時代だ、あるいは条約を大事にする、国際関係を大事にする、こう言っている我が国が、ここまで二十六条ではっきり示され、そしてこういう厳しい再度の勧告を受けているこの問題について、本当に国際的な立場日本が筋を通すならば、直ちにこれをやめるという方向で政府自身も論議を積極的に起こすべきじゃありませんか。この国際人権規約をどう考えていますか。
  172. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 国際人権規約そのものは、私どもは尊重しなければならないと思っております。  今度の報告についての私ども政府としての考え方は、これまで申し上げましたように、いろいろな形で時間をかけて検討してきた結果、現在指紋押捺制度については御案内のようでございまして、その他の外登証の携帯・提示等については、従来どおりの法の仕組みがいいという結論に達したわけでございます。それぞれ勧告なり懸念を受けて誠心誠意対応しているつもりでございます。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の答えは全く納得できません。国会での法務委員会衆参における附帯決議でもこの問題についてはかねてから、もう詳しく言いませんけれども、検討を求めてきたことでしょう。附帯決議がなされたときに大臣は、陣内大臣じゃなくても、歴代法務大臣附帯決議尊重するとみんなおっしゃっている。ところが検討はしていないんです。  結論は、その方向はだめだということが言われているだけであって、本当に真剣にこの問題が省内で検討されたという形跡が見当たらないのが私は残念です。検討しているとすれば、具体的に省内にこういうプロジェクトチームをつくり、こういう委員会をつくり、あるいはこういう識者を集めて検討するという誠意を示すべきだと思います。今後、検討するつもりはありますか、ありませんか。大臣、いかがですか。
  174. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) これまでもずっと対応してまいったわけでございますが、この問題はこれからも検討は続けていかなければならない、このように思っております。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 これまでも検討してきた答えがさっきあなたが言ったようにだめだという答えなんだから、これからそうじゃなくて、これだけ国際的に問題になり国会で論議になっている、真剣にこれを受けとめて、積極的に前向きに検討する姿勢でやれないんですかという質問ですよ。検討するというのはどっちを向いて検討するんですか。まさか後ろ向きじゃないでしょう。
  176. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) もちろん規約の趣旨を体して検討していくというわけでございます。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 どうもこの点が私は残念でなりません。  大臣日本行政に対して裁判所がどう言っているか、もう一つ例を挙げましょう。  下関の趙さんという方が一九八六年、山口地裁に裁判を起こされまして、その控訴審判決が一九九〇年十一月二十九日、広島高裁でありました。その判決の中で裁判官がこう言っています。  在日朝鮮人が、その歴史的経緯により日本において置かれている特殊の地位にもかかわらず、日本人が憲法ないし法律で与えられている多くの権利ないし法的地位を享有し得ず、法的、社会的、経済的に差別され、劣悪な地位に置かれていることは事実であるが、右は在日朝鮮人が日本国籍を有しないためではなく、主として日本の植民地支配の誤りにより在日朝鮮人が置かれた立場を顧慮せず、日本人が享有している権利ないし法的地位を在日朝鮮人に与えようとしなかった立法政策の誤りに由来する こういう判決があるんです。  これは私は極めて貴重な判決だと思います。つまり、日本の政府自身の戦前及び今日に至る歴史認識が問われているよ、そういう立場からこの問題を見なければ、将来、未来に向かって、外国人皆さんとともに生きる本当に開かれた日本社会の方向へ進まないよ、こういうことを警告している判決だと思いまして、私はこの判決は非常に大事だと思うんです。  そういう点で、この常時携帯義務というのは、これは本当に早く廃止するという方向に行かないと、不当な差別と重みと人権侵害を毎日の暮らしと生涯を通じて押しつけているんです。なぜそんなことをいつまでもやる必要があるんですか。そして、合理的な理由としてどこにあるかということがさんざん同僚委員からもありましたが、現にこの問題で立件された数は減ってきているし、事実上としても機能しなくなっている社会的実態もあるんです。  そういう意味でこの問題は、法務省に国際人権規約及び勧告に応じて必要な措置をとる方向で積極的に検討を開始するということを私は重ねて強く要求して、大臣、もう一遍お答えいただきたい。ちゃんと検討してくれますか。
  178. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 引き続き検討を続けます。
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 国籍問題に関連して、開かれた方向に我々自身が進むためにも多くの課題があります。  最高裁に一つお伺いしたいのは、一九七七年に金敬得君が司法試験に合格されまして、司法修習生の任用で問題になりました。しかし、そのとき最高裁は、初めは外国人であるからこれは採用できない、選考要項の欠格事由に日本国籍を有しない者とあるからだめだという話があって、厳しい世論の批判を受け、運動なさった皆さんの成果もあって採用されまして、立派に弁護士になられました。私も弁護士ですが、我々弁護士会にはこんな国籍条項はありません。  最高裁に伺いますが、外国人で司法修習生で勉強されるようになった方、これまでに何人ぐらいいらっしゃるのか、この選考要項はどういう運用をなさっているのか、お答えいただきたい。
  180. 金築誠志

    最高裁判所長官代理者金築誠志君) お答え申し上げます。  平成十一年度の司法修習生採用選考要項、これはことしの春、司法研修に入った司法修習生の採用選考要項でございまして、この要項は毎年定めることになっております。  この要項によりますと、選考を受けることができない者として、「日本の国籍を有しない者(最高裁判所が相当と認めた者を除く。)」、こういうふうに規定されております。したがいまして、日本国籍を有しない者でありましても最高裁判所が相当と認めれば司法修習生として採用されることになっておりまして、先ほど指摘の昭和五十二年の金敬得氏の採用の問題がきっかけでございますが、その後の昭和五十三年度以降、今のような選考要項になっておるわけでございます。  昭和五十三年度以降、六十人をちょっと超えるようですが、約六十人の永住が認められる在日外国人からの選考の申し込みがあったわけでございますが、日本国籍を有しないことを理由として採用が認められなかった例はございません。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 運用によって認めていらっしゃるんですが、この選考要項の欠格事由で日本国籍を有しない者とあるのを、今おっしゃったように最高裁が相当と認めた者を除くという一歩後退した規定じゃなくて、全面的に日本国籍を有しない者というそのこと自体をなくす方向で検討していただきたいというふうに私は思います。  それから、もう時間がないので次は法務省に伺うんですけれども、実は検察審査会法、この検察審査会というのは、これは言うまでもありませんけれども、公訴権の実行に関して民意を反映させるという制度からできているわけです。検察の公訴権の執行について民意を正確にしかも正しく反映してやるという民主的な制度ですから、非常に大事な制度です。したがって、そこの検察審査員にどういう方が任命されるかというのは、民意を反映するという立場でこれは合理的に考えなくちゃならぬ。ところが、この検察審査会法第四条によりますと、「検察審査会は、当該検察審査会の管轄区域内の衆議院議員の選挙権を有する者の中からくじで」これを選ぶ、こうなっていますから、そうしますと、外国人は一切入れないわけです。  今、在日外国人皆さんでも地方公務員に採用される、あるいは地方で納税されていますから、同時に選挙権を取得するのは当然だという運動が起こって、選挙権付与の運動だって進んでいるわけですよね。ところが、この検察審査会法第四条は、衆議院選挙権を持っていなければ選ばれないよ、こういうわけですから、これはやっぱり差別条項の一つに該当すると僕は思うんです。だから、国際人権規約からいいましても、そしてまたこの問題についての合理的な理由からいっても、こういう規定で在日外国人を選考から差別するというそのこと自体の合理性はもうないと思うので、これの検討をすべきではないかと思いますが、いかがですか。
  182. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 公訴権の実行に関しまして民意を反映させる、そのことによって公訴権の執行の適正を図るというために設置されました検察審査会というものでございますが、これを構成する検察審査員は、国の統治権の一つであります公訴権の行使を審査いたしまして、その当否につき議決を行うとされております。その議決書謄本の送付を受けました地方検察庁の検事正は、その議決を参考にしまして公訴を提起すべきものと思料するときは起訴の手続をしなければならないと同法で定められております。  このように、検察審査員は国家意思の形成あるいは公権力の行使に参画するということになるわけでございます。そのようなことに、外国人にその資格を与えるということにつきましては慎重に検討すべきものであると考えております。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後に。今の答弁は、日本政府も批准をした人種差別の撤廃に関する国際条約を踏まえると、それでいいかどうか問題ですよ。この条約の第五条の(c)項にどう書いてあるか。「政治的権利、特に普通かつ平等の選挙権に基づく選挙に投票及び立候補によって参加」する権利、その次に、「国政及びすべての段階における政治に参与し並びに公務に平等に携わる権利」。これはまさに人種差別の撤廃に関する基本条約で、外国人であっても公務の適正な運用に対して適正に意見を反映する機会があってよろしいという考えからできているわけですよ。日本政府はこれを批准しているんですよ。ですから、今の刑事局長答弁はその点で納得できませんが、時間が来ましたので次回に譲ります。
  184. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 冒頭、則定衛さんの事件についてお聞きいたします。  先日、給与とは別に口座があるということを説明していただきましたが、これは東京三菱銀行霞が関支店の当座預金口座ということでよろしいですか。
  185. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 前回そのようにお答えしたとおりでございます。
  186. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 十二日に調査結果を発表されましたけれども、口座は土、日にチェックをされたのでしょうか。
  187. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 口座の調査の問題でございますけれども、基本的には個人のプライバシーの問題にかかわる事項でございましたが、今回の一連の行為あるいは問題とされている行為の性質上、調査の対象といたしました。調査自体を実行いたしましたのは月曜までにというふうに申し上げてしかるべきかと思いますが、その経緯は金曜から月曜にまたがっているというようにお考えいただきたいと思います。
  188. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 その口座は、この法務委員会で名前が出ました佐藤章さん、松田さん、その関連会社からの振り込みはあったのでしょうか。
  189. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) ただいまの口座でございますが、お尋ねは、この口座を利用しました小切手の振り出しとその現金化ということにかかわるものだと思いますが、その点につきましても、口座を精査いたしまして、当該小切手が振り出された前後を調査いたしましたが、今お尋ねの両氏、S氏とM氏ということになっておりますが、その両者からの振り込み等、出所不明な入金は一切認められませんでした。
  190. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 前後ではなく、例えば佐藤章さんから、知り合った以降という点についてはいかがですか。
  191. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) お尋ねですので、口座が開設された経緯等を御説明いたしますと我々の調査内容もまたおわかりいただけるかと思いますので、若干付言いたしますと、この当座預金口座、これは則定氏が昭和四十七年に開設したものでございます。その経緯は、同氏はそれまで外務省に出向いたしまして在外公館に勤務しておりました際にパーソナルチェックを活用したことがございます。その後も、帰国後このパーソナルチェックというのが非常に便利なものであるというふうに考えておったようでございまして、衣類とかあるいは自動車等の購入に当たって小切手を利用するということでこの口座を使っていたわけでございます。  それで、お尋ねの問題の女性との関係で支出されました金額でございますが、前回も御報告しましたとおり、平成六年十月ころに五十万円及び三十万円、二回にわたりまして合計八十万円がこの口座から支出されております。  先ほど申し上げましたとおり、この前後についてはもちろん、これに関連するといいますか、S氏やM氏等、出所の不明な入金は一切認められなかったわけでございます。この口座の開設以降現在までも、念のため、基本的にはこれは個人的な口座でございますので問題はあったわけでございますが、事案の性質上、それをチェックさせていただいた結果、そうした出所の不明な入金は一切ございませんでした。こういう趣旨でございます。
  192. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 出所不明かどうかではなく、開設以降、佐藤章さん、松田さんと知り合った以降、その関連会社からの振り込みがあったかどうかについてお聞かせください。
  193. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) それもないという趣旨でございます。
  194. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 女性は、則定さんが払ったのは三十万円、残りの八十万を佐藤さんが払ったというふうに言っていますが、女性の証言をなぜ採用しないのでしょうか。
  195. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) この間の経緯につきましては、私どもとしては、関係者といいますと則定氏、それからS氏、あるいはM氏も間接的には関係しているかもしれないということでございます。それから当該女性ということで、関係者と思われる方については、この点につきましてかなり詳細に立ち入った質問をいたしましてお答えをいただいておりますが、そうしたことを総合いたしますと、女性に渡された金額は、則定氏からは八十万円であるという事実が認定されたということでございます。
  196. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私も女性から長時間話を聞きました。彼女が検察庁から調査を受けたのは日曜日の十時十五分から十二時十五分の二時間。でも、その日の日曜の産経新聞には問題なしという調査結果が既に出ております。本人は、私が日曜日に検察庁に行ったのは全く意味がなかったのではないかというふうに言っておりますが、いかがですか。
  197. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) いかなる金がいつ、どういう趣旨で渡されたのかというのは、関係者からいろいろその点についての説明を受けて、そうした点について総合的に検討して事実関係を認定する。あらゆる事項がそのようなことになると思うんですが、今回の場合もある意味ではオーソドックスな調査方法をとりまして、できる限りの調査の結果は、今申し上げたとおりの結論であるわけです。
  198. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 ロイヤルサルートから佐藤章さんへの請求書はどうなっておりましたか。
  199. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 個々具体的にどうだということについては、今回の調査についての関係者の協力を得ることにつきましてはいろいろな条件が付されたり、あるいはこれは捜査ではありませんので強制力を使うことはなかなかできません。そんなこともありまして、我々としてはできる限りの御協力をいただくということで、その点は徹底してやってまいったつもりでございます。  それで、個々の飲食店といいますか、クラブというかバーというか、そういうところも含めまして、それがどういう状況であったかということは、基本的にはその店の営業の問題がございますし、あるいはそこでだれがどう飲み食いしたのかということについてもプライバシーの問題があると思います。  それで、我々としては、今雑誌等で指摘されました、則定氏が関係業者とかあるいは業者とか、場合によりますと特定の知人等から過度に接待を受けたり、あるいはそういういわば問題になるような供応を受けたりということがあるかないかという点で、まさにこれは則定氏の職務に関係するのか、あるいは職責上問題になるのか、あるいはそのほかを含めまして監督上の注意をすべき事項に当たるのかという観点から調べはしたということでございます。  そういうことでございますので、個々細かくお尋ねをいただくということもまたわからないことはないわけでございますが、それを個々にお答えするということにつきましては、やはりプライバシーの問題、あるいは御協力いただいた方々との問題で限界があるということもまた御理解いただきたいと思っております。
  200. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 大蔵省は接待疑惑を立件されて処分を受けたわけですから、そういう意味ではプライバシーのことをこちらは聞いているわけではありません。今後もこちらも調査をし、また再度の調査をお願いしたい。また、その調査結果の詳細な分を発表していただきたいと改めて申し上げます。  それで、本題の不法滞在罪の新設についてお聞きします。  実は私は、アジアからの出稼ぎ女性の緊急避難所の協力弁護士をしてきたのですが、今回の不法滞在罪はそういう人たちにとって極めて過酷な状況になるというふうに考えております。  御存じのとおり、オーバーステイについては今でも処罰されるわけですが、違うパスポートで入国をした以降、今は三年たてば時効ですけれども、この不法滞在罪の新設により、その後継続犯としていつまでも、何十年日本にいても犯罪が常に成立していくという点については、むしろ被害者として人身売買の結果連れてこられて、にせのパスポートを押しつけられた女性たちにとってはこの新設は極めて過酷になると思いますが、いかがでしょうか。
  201. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法在留罪の新設は、近年、我が国での不法就労活動を目的として船舶により集団密航するなど、その後我が国に不法在留している不法入国者及び不法上陸者がこの数年非常にふえているということでございまして、その不法在留行為は適正な出入国管理の実施を妨げているのみならず、我が国社会、治安等に悪影響を及ぼしているということでございます。しかしながら、現在の法律では在留期間を経過して我が国在留する行為に対する罰則はありますが、不法入国または不法上陸後に我が国に不法に在留する行為を直接の処罰対象とする罰則は設けられておらず、その取り締まりに支障を生じておりますので、この不法在留罪を新設したわけでございます。  個々の事案によっていろんな事情はあろうかと思いますけれども、この法律を御提案申し上げた基本的な趣旨はもちろんそういうことでございます。個々のケースに関して非常に人道的な問題があれば、そのときそのときに応じてケース・バイ・ケースで対応するということになろうかと思います。
  202. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 女性の場合もそうですが、難民の場合も合法的な入国の要件を備えることができない場合も多いと思います。  日本が批准している難民条約三十一条は、難民に関し、「不法に入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。」と規定をしております。その点で、難民の人が難民認定制度を使う場合にこの不法滞在罪が重くのしかかるということがあると思いますが、いかがでしょうか。
  203. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 議員の御質問は、難民条約三十一条の規定との関係かと思いますが……
  204. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 難民条約が、「不法に入国し又は不法にいることを理由として刑罰を科してはならない。」というふうになっておりますけれども、不法滞在罪が新設されれば、その難民の人たちも処罰の対象になるわけで、難民条約と矛盾するのではないかという点です。
  205. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 御指摘の難民の地位に関する条約の三十一条第一項の趣旨を踏まえまして、今回の法改正の中で第七十条の二の規定を改正しまして、迫害を逃れるため我が国に不法入国または不法上陸し、その後不法に在留する外国人に対し、不法在留に係る刑罰を科さないこととするという規定を設けております。
  206. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 殺人罪でも十五年で時効です。状態犯か継続犯かというのはやはり非常に大きい違いがあると思います。つまり、日々百年暮らしていても時効が成立しないわけで、決して合法、いてもいいということにはならない。その時効の制度観点からいって酷ではないでしょうか。
  207. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今の法律の格好ですと、不法残留罪、すなわち合法的に日本に入ってきて、その認定された在留期間を超えて不法残留になった人は、形式的には引き続きずっと不法残留という罪の対象になるわけでございます。  一方におきまして、非合法に入った、不法に日本に入ってきた方は、これは三年たつと時効が成立して、あとは刑罰をかけられないという明らかにアンバランスの状況にございます。この状況はやはり一つの整合性のあるものに統一する必要があろうかと思います。  なお、もうはるか昔に日本に入ってまいりまして、既にいろいろな家族関係ができているような方等に関しては、委員承知のようにいろいろな救済の道はあろうかと思います。
  208. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 あと、違法に入ったと言われている中でも、密入国のようなケースばかりではなく、女性の場合は、法務省も言うとおり、黒い手配師のもとでブローカーの中での国際的人身売買で入ってくる、その後日本人の男性と恋愛をしたり結婚をしたり子供が生まれたりということがあります。もちろん、特別在留許可申請というのはありますけれども、この件数も限られております。  それで、諸外国の中では、不法滞在罪的なものがあるところもありますが、他方、サミット加盟国、ヨーロッパの国ではアムネスティ、つまり合法化、恩赦という制度も合法的に設け、違法をある段階で合法に、一定の要件を満たせば合法に転ずるということもやっております。  ですから、長く住み、納税というか消費税なりいろんな税金を払い、そして子供が生まれたりいろんな状態になった場合に、ある場合には何年暮らせばアムネスティというので救済をされるわけですが、日本はそういう制度はありません。そういう点では、この不法滞在罪は一方的、酷だと思いますが、いかがですか。
  209. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) サミット国の中でも、いわゆるここで言います不法在留罪に相当する刑罰を置いておる国はございます。  それから、委員おっしゃるように、確かにアムネスティということで、それまで不法に滞在していた人間を合法化するということを実施した国は確かにございますけれども、年度を決めて、何年いればもう自動的に合法化するということをやっているのはむしろ少なくて、これはやはりどこの国でも非常に大きな政治問題になるケースですから、そのときそのときの事情でやっている場合もあるし、やらない場合もあるという状況かと思います。
  210. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 それでは、日本ではアムネスティのような制度考えていらっしゃるんでしょうか。
  211. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本の場合にはアムネスティのような制度は必ずしもなじまないと思っております。
  212. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 なぜですか。
  213. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 日本に来て、不法入国、不法上陸してそのまま引き続き不法に在留する人、それから不法残留の方、こういう人たちのビヘービアを見ていますと、やはり一度長くいれば合法化されるということがわかれば、恐らく何とかしてそのときまで逃れよう、居座ろうということで、そういう不法に滞在することをむしろエンカレッジするようなことになろうかと思います。
  214. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 私が見ておりますと、短期で入ってくる人よりは長期で日本の中に居続ける人の方がずっと安定して働き続けたりしているというふうに思います。  次に、上陸拒否期間の一年から五年への延長についてお聞きいたします。  だれを対象に一体考えているのかということなんですが、今でも、先ほど円さんが質問されましたように、退去強制後一年で再上陸できている例は非常に少ないと思います。つまり、偽造パスポートで入ってくる人はこれにひっかからない。しかし、恋愛をして結婚しよう、何とかしようというふうに大まじめにきちっと申告をしたりしますと、むしろこれにひっかかる。  ですから、この条文が五年に延びることで非常に困るのは、むしろ恋愛をしたり結婚をしたりあるいは離婚のために裁判をしたい、労災の申請のためにきちっと手続をとりたい、裁判、例えばブローカーの刑事告訴の事件などもありますけれども、そのために日本にもう一度来たい、そういう人たちだと思いますが、いかがですか。
  215. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 今でも一年過ぎてもなかなか日本に来れない、ほとんどの人が来れないというようなお話でございますけれども、法律の格好としては、退去強制処分を受けて本国に退去強制された外国人については、一年たてば、適正な手続をとればまた日本に入ってこれるということでございますので、普通ほかに問題がない人の場合にはそういうことが、もちろんその手続でちょっと時間がかかるということは当然ございましょうけれども、そんなに多く起こることではないんだと思っております。
  216. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 いや、それがそうではないんです。  弁護士としても、あなた、帰りなさいよ、一年たてばもう一回入国できて今度は合法的にちゃんと彼女と結婚できるからと言うのは、物すごく弁護士のアドバイスとしてはリスキーで、全く責任がとれないんですね。  例えば、イランの男性の場合でも、一たん帰ってしまうと日本との査証免除協定が停止中ですから日本行きの航空券を購入することができない。つまり、女性がもう向こうに行くしかないというような問題もあります。  例えば実例で、イランの人が九四年に不法残留容疑で裁判の結果、三年の執行猶予判決を受けて退去強制になった。その後、九七年に日本人女性とイランで結婚、九八年七月に在留資格認定証明書の交付を申請したが却下。これは、懲役一年以上の有罪判決を受けた場合に当たるとはいえ、猶予期間は過ぎておりますが、入管法違反ということが過去にあるので、正式に結婚しているのに再入国できるかどうかわからない、入国できていないなんということもあります。  つまり、弁護士として思うのは、日本にずっと居続けてもなかなか合法にならない。特別在留許可申請を知らない外国人も多いし、仮に申請しても法務大臣の全くの裁量である。しかし、じゃ合法に転ずるために外国に行って一年待てと言っても、入ってこれない可能性が極めて高い。まさに本当に困っているんですが、法律どおりには全くいっていないんですが、どうですか。
  217. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほど私は、適正な手続を踏めば、それに従って行えば、もちろん手続で時間がかかることはあるかもしれないけれども、そんなずっと入れないということはないはずですということを申し上げたつもりでございます。  今、先生がおっしゃったケースは、一つは懲役刑を受けている、これは一年ではございませんでいわゆる永久のクラスでございますので、その場合には一年たったら入れるというケースではございません。  それから、イランの方のあれがございましたけれども、イランは昔は査免協定があって割と自由に日本に来れたのに、その後その査免協定がなくなったのでそういうことになったわけで、そういう事情があるのはちょっとこれはいたし方のないことだと思います。
  218. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 入管法違反で起訴され判決を受けるケースがあるんですね。ですから、別に窃盗とか殺人とかそういうのではなく、入管法違反のオーバーステイで有罪判決を受けて強制退去になるとなっていますから、どうしてある人は起訴され、起訴されないのかというように思います。  結局、この一年が今でも問題があるのに、一年が五年に延びますと、例えば、結婚している場合、子供が生まれた場合、五年間日本に入ってこれないということになりますので、人権規約の二十三条が家族の保護規定などを置いておりますけれども、これに反するのではないかと思いますが、いかがですか。
  219. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 執行猶予がついても、一年以上の有罪判決を受けた場合の方は、残念ながらこれは一年が五年になっても十年になっても同じでございまして、これによって変わることはございません。  あと、そういう結婚されてお子さんがおられて五年間離れちゃうのかということでございますが、これは当然ケース・バイ・ケースで考えるべき対象のことですけれども、いろいろな情状を見た上で、これまで同様、法務大臣による上陸特別許可というもので人道的な配慮が明らかに必要なケースについてはそれに応じた措置がとられるということになろうかと思います。それは今までと同様でございます。
  220. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 しかし、特別在留許可申請を知らない外国人も大変多いですし、それからやはり怖いのは、法務大臣の全くの裁量ですから、申請して認められたらいいけれども、万が一だめだったらどうしようというようなことも実は大変思います。  五年別居はやはり大変厳しいと思います。法務省がつくられた民法改正案も五年別居が裁判上の離婚理由になっておりますから。もちろん本人たちはけんかして別居しているわけではありませんから、多分当たらないというケースになるかもしれませんが、五年別居ですともう十分破綻の理由や結果になるんではないかというふうに思います。  そういう意味では、今現在、配偶者ビザで新規入国する外国人数も一九九七年で一千五百人、一九九七年における配偶者ビザでの在留者がもう十五万人という状況ですから、特に不法滞在罪と上陸拒否期間の延長は恋愛をしたり結婚したり子供が生まれた人にとって酷になるというふうに思います。  ある女性が私の彼はシュワちゃんよりすてきだというチラシをつくってまいていたのですが、シュワルツェネッガーさんは有名人ですから特別上陸できたわけですけれども、すてきなバングラデシュの彼がいても、国外に退去するとなかなかもう戻ってこれないだろうし、日本女性が外国に行くのも大変負担になる場合があって、非常に困っているケースがたくさんあります。そういう意味では、これをぜひこうしないでほしいということを強く述べたいと思います。  それから、外国人登録証の常時携帯義務のことです。ほかの議員さんもたくさんおっしゃいました。  ちょっと私も再度確認したいのですが、国籍取得における血統主義を採用する国の中で、旧植民地出身やその子孫、永住資格を持つ者に対して同様の義務を課す国があるか、自国民にも携帯を義務づけている国を除いた場合に、果たして日本のような制度をやっている国があるのでしょうか。
  221. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 申しわけございません。そういう角度から勉強しないで来たものですから、今ちょっと資料を持ち合わせておりません。
  222. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 では、こちらも検討しておりますが、ぜひまた正確に教えてください。  先ほどからも話が出ておりますが、大森さんの話でも出てきましたけれども、提示と携帯はやはり違うと私は思うんです。提示ですと、ちょっと待ってください、家にとりに帰ってきます、見せますと言えますけれども、携帯義務ですと常に持っていないと処罰をされる。例えば、私たちも議員バッジをつけていないと処罰されるなんて言われたら物すごく精神的に負担を感じるんですけれども、やはり物すごく精神的な圧迫感だと思います。  規約人権委員会がなぜ限定的にであれあんなに強く再度言うのかといいますと、強制連行で連れてきた人の二世、三世の人たちにどんなに日数がたったとしても常時携帯義務を課している、それはやはりおかしいという問題関心がありますけれども、それについてはいかがでしょうか。
  223. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) これはもう何回も前からお答えしているとおりの答えでございまして、日本人と外国人では出入国、それから在留にかかわる取り扱いが当然違うわけでございまして、それに応じてこういうシステムができ上がっているわけでございます。
  224. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 先ほど、再入国についての質問がありました。ドイツは、ドイツに十年以上住みドイツの学校に六年以上通った子供は再入国権が自動的に生ずるという立法があるわけですけれども、例えば日本でもそういうことは考えられないのでしょうか。
  225. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 委員承知だと思いますけれども、特別永住者の場合は入管特例法によりまして特にいろんな面で優遇された措置をとるように規定されております。  もちろん再入国の許可自体は一般的には法務大臣許可にかかわらしめる問題でございますけれども、特例法の中で、これは十条でございますけれども、「法務大臣は、特別永住者に対する入管法第二十六条の規定の適用」、これは再入国許可に関する規定の適用でございますが、「に当たっては、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律趣旨尊重するものとする。」ということで特に厳しい規制がかかっているわけでございまして、これを踏まえて特別な扱いをしているということでございます。
  226. 福島瑞穂

    ○福島瑞穂君 きょうの話の中でも大分出てきておりますが、特別在留許可にしても今の制度にしても法務大臣許可なわけです、裁量です。ですから、弁護士としてもそうですが、申請するまではわからない、どういう結論が出るのか実はわからない。ですから、例えば先ほども出ている指紋押捺拒否をした人は、再入国できるかどうか非常に不安を感ずるとか、再入国の権利をもらえないで新規入国になるという事態が生じます。  今回は入管法外登法改正ですが、その根底に、外国人政策が非常に広範な裁量のもとになっていて、管理の客体であって、やはり本人たちが非常にストレスを感ずる制度である。非常に大きな裁量があるので自分がどうなるかわからない、お上に盾突いたりうるさかったりデモに行ったり指紋押捺拒否したりするとどうなるかわからない、そんな中で日々暮らすストレスというのは物すごく大きいと思いますが、もう少しそういう制度を変えるということをぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。  特に、先ほども出ましたが、二〇〇二年にはまた規約人権委員会で議論があります。そのときに変えていないということはとても問題だと思いますが、最後にその点についてだけお答えください。
  227. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 人権擁護の問題につきましていろいろと御議論をいただいたわけでございますが、このことは極めて基本的に大事な問題であるという認識のもとにこれからも十分検討を続けてまいりたいと思います。
  228. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 自由党の平野でございます。  外国の方が日本で暮らす、滞在する、あるいは入国、出国する際に、国際的な基準で外国の方たちの人権尊重され、守られなければならないのは当然のことでございます。議題になっております二つの改正案は、そういった人権、あるいは外国方々日本の法制度の中で何らかの制約をするという性格のものだと思います。  この両案に対して基本的には賛成の立場でございますが、現実の問題としまして、外国方々の中には心ない人が日本に不法に入国したり、あるいは犯罪を起こしたり、また場合によりましたら日本の国家体制を覆そうという目的日本に入られるケースも事実としてあるわけでございます。人権擁護とそこの制約ということはなかなか難しい兼ね合いだと思いますが、そういった非常に心ない人たちによる行為があるために善良な外国方々が迷惑しているということも事実だと思います。そういう観点から、私は少し事実関係を確認したいと思います。  先月、御承知のように日本の領海、日本海で北朝鮮の工作船が潜入していろいろ問題を起こしたわけですが、この問題に関連して、産経新聞の三月二十九日の朝刊にはこういう報道がございました。  工作船の任務は陽動作戦で、日本の警備・防衛当局が工作船を注視している間に数十人の工作員部隊が太平洋側から日本に潜入した、との証言を複数の関係者から得た。潜入した工作員は朝鮮人民軍総参謀部偵察局など破壊活動を専門とする部隊とされる。判明しているだけで青森、茨城、千葉、愛知、熊本、宮崎などに潜伏しているとみられる。 等々の記事が報道されております。  これについて、公安調査庁、警察庁、それから海上保安庁、三つの部局に、どのような情報を持たれておるか、あるいはこの報道に対してどのような御所見をお持ちか、お聞きしたいと思います。
  229. 木藤繁夫

    政府委員(木藤繁夫君) 御指摘の報道につきましては承知しておりますけれども、現在までのところ、工作員の潜入があったと判断し得る情報には接しておりません。  公安調査庁は、日ごろから北朝鮮の工作員について重大な関心を持って調査に取り組んでおりまして、御指摘の報道につきましても現在鋭意調査を進めているところでございます。
  230. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 私ども警察におきましてもそういう報道は承知いたしておりますけれども、これまでのところ、警察におきましてそのような情報には接しておらないところでございます。  ただ、警察の方では、集団密航事件の多発等の現下の情勢がございまして、これを踏まえて全国の関係県において累次沿岸警備の強化というのを実施してきておるということでございまして、こうした中で、先生が御指摘の不審船事案のあった三月中でございますけれども、幾つかの集団密航事件も検挙されておるわけです。例えば六日に福井県、十七日に福岡と兵庫、十八日に長崎、二十四日に広島、二十五日に福島、二十六日に兵庫、合計七県、二百三名の集団密航事件を検挙しておるというような状況があるわけでございます。  したがいまして、陽動作戦ではないかというような見方もございますけれども、少なくともこうした沿岸警備を累次強化してきておるという中での集団密航事件の検挙という警察活動の実態から見ますと、そういう可能性は低いのではないかというふうに考えております。
  231. 楠木行雄

    政府委員(楠木行雄君) 海上保安庁におきましては、当日、その不審船事案発生直後に、私の方から全管区の海上保安本部長に対しまして全国の沿岸海域の警戒を強化することを指示いたしました。全管区におきましては、巡視船艇、航空機による沿岸部のパトロールを強化するとともに、関係機関との連絡を密にいたしまして情報収集体制の強化等を図ったところでございます。  ただ、先生御指摘の新聞報道のような事実は海上保安庁といたしましては承知しておりません。
  232. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 公安調査庁は調査中という結論だと思います。それから警察庁は可能性は低いだろうということと理解します。それから海上保安庁は、これも報道について否定しているわけじゃございませんが、どちらかというと可能性は低いという見方だというふうに認識してよろしゅうございますか。  いずれも、可能性の問題はともかくとして、否定はしていませんね、これはもちろん三つの機関がすべてパーフェクトにこういったことに対して対応できるはずはございませんので。衆議院のガイドライン委員会でもこのことが問題になって、野田国家公安委員長も情報に接していないという見方、同時に、しかし工作員の潜入についてはあり得るだろう、可能性がある、このことじゃございませんが、そういう見方をしております。  そこで、ちょっと細かいことで恐縮でございますが、この不審船の問題が発生したころ、三月十五日ごろから二十三日ごろの期間で結構でございますが、北朝鮮関係の船舶が日本に寄港、停泊していた状況を知りたいと思います。これは海上保安庁でございましょうか、船名、船の種類、それから停泊の港等について御説明いただきたいと思います。
  233. 楠木行雄

    政府委員(楠木行雄君) 御指摘ございました三月十五日から二十三日までの間に本邦に停泊をしておりました北朝鮮船籍の船舶について調査いたしました結果、これは延べでございますが、舞鶴を初めとする日本の全十二港に貨物船が十七隻、それから冷凍運搬船が六隻、合計延べ二十三隻が停泊をしておりました。一つ一つ船名を申し上げるということも可能でございますが、かなり多うございますので、当面省略させていただきます。
  234. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 この中にチソン号という名前の船舶はあったでしょうか。
  235. 楠木行雄

    政府委員(楠木行雄君) チソン号という名前の船舶で、ただし厳密に言いますとチソン三号という北朝鮮船籍の貨物船が、三月二十日から二十二日までの間鹿児島県の志布志港に、それから三月二十三日から二十五日までの間福岡県の博多港に入港していることを確認しております。
  236. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 チソン三号という船の名前だということがわかりましたが、この関係をちょっと聞きたいんです。  おととし、一九九七年の四月九日にチソン二号という北朝鮮の船が、宮崎県の細島港でハチみつ缶に覚せい剤約七十キロを入れて、これは末端価格で百十九億円と言われている、そういう事件があって捕まったという事件があります。この船はチソン二号というふうに私は確認していますので、先ほどのチソン三号とは別の船だと思いますが、同じ名前を使うということはやっぱり同じ機関か同系列の動きの中の一つだと思います。  私が申し上げたいのは、日本の空港はかなり厳重にそういう犯罪防止というものが行われて、それでもいろいろ問題があるんですが、それなりの対応はされておると思いますが、港がどうもいろんな問題を起こす。特に北朝鮮の貨物船とのトラブル、あるいは可能性がないわけではない工作員の潜入という不法入国というものを許す港湾の問題が一つあると思います。  そこで、例えば私たちが新聞の報道で承知しているだけでも、これは入国とかそういうものには関係ないかもわかりません、昨年の秋でございましたが、土佐沖の覚せい剤の、これはわざと流したんじゃないかと思いますが、その後の裁判で北朝鮮のものだということを判定しております。私の生まれたところに流れ着いたものですので私も非常に心配をいたしましたのですが、黒潮に流して一定の距離で受け取って日本の中に入れようとしたようでございますが、そういった事件。それから、たしか平成七年でございましたか、北朝鮮への支援米を北朝鮮の貨物船が日本のいろんな港にとりに来たときに、神戸と大阪でサリンの原料あるいはウラニウムをつくる工程に要る弗化ナトリウム五十グラムを日本から不法に持ち出そうとしたことが二件。  そういうような大変びっくりするような問題があるのでございますが、一九八七年の大韓航空機爆破事件以降で結構でございますが、北朝鮮関係の船舶が日本に寄港、停泊したときに違法な活動をした状況、実例について説明していただきたいと思います。これは海の部分とそれから陸に上がった部分と二つに分けられると思いますが、海上保安庁と警察庁の方から御説明いただきたいんです。
  237. 楠木行雄

    政府委員(楠木行雄君) 一九八七年以降に発生をいたしまして海上保安庁が送致いたしました北朝鮮籍の船舶が関係する事件につきましては、合計二十六件ございます。  まず、違反内容でございますが、業務上過失往来妨害事件、これは船の衝突等でございます、こういったものが十五件。それから油の違法排出など海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の違反が九件。それから一万円札関係の偽造通貨行使が一件。さらに航路の航行に関する海上交通安全法違反が一件。  以上でございます。
  238. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) 今、先生御質問ございました昭和六十二年の大韓航空機事件以降の日本に寄港、停泊しておる北朝鮮関係の船舶が関連する違法事案としまして警察が把握しているところでございますけれども、これらの船舶の船員等が直接違法行為に関与したものでございませんけれども、四件ほどございます。  一つは、昭和六十三年の九月ですが、北朝鮮に一時帰国する在日朝鮮人商工連合会の幹部が、ココム規制品のパーソナルコンピューター等を通産大臣許可を受けずに新潟県の新潟西港から北朝鮮船舶で不正に北朝鮮に輸出しようとした事件でございます。  それから二つ目は、先生今御指摘ありましたけれども、平成八年の一月及び二月、貿易会社の社員が化学兵器関連物質、弗化ナトリウムと弗化水素酸でございますけれども、これを通産大臣許可を受けずにそれぞれ大阪港、神戸港から北朝鮮貨物船で不正に北朝鮮に輸出していた事件であります。  三つ目は、平成八年の三月から十月にかけまして、貿易会社が潜水具、これは非磁性のスキューバ用ダブルバルブというものでございますが、これを通産大臣許可を受けずに新潟県の新潟西港から北朝鮮船舶で不正に北朝鮮に輸出していた事件。  それからもう一つは、平成九年四月、今御指摘ございました貿易会社社長、暴力団幹部らが共謀の上でハチみつ缶に隠匿された覚せい剤、約六十キロでございますけれども、宮崎県の細島港に入港した北朝鮮貨物船で密輸入した事件でございます。  以上です。
  239. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 わかりました。  これは日本の海上保安庁とか警察にいわば発覚して責任を問われたケースだと思いますが、発覚せずにそのままになっているケースだってこれの何倍もあると思います。  さて、この四件の警察で把握した事件ですが、最終的にその責任の処理というのはどうなっておるでしょうか。刑事事件として立証して最終的にどういうペナルティーといいますか、結果になっておるでしょうか。
  240. 金重凱之

    政府委員(金重凱之君) まず一つの、昭和六十三年九月の事件でありますけれども、これは平成元年の二月に新潟県警が検挙したものでございます。在日朝鮮人商工連合会の幹部は罰金二十万円となっております。  それから二つ目、平成八年の一月及び二月の事件でございますけれども、これはその年の四月に兵庫県警が検挙したものでございます。これは貿易会社の社員が罰金二十万円ということになっております。  それから、平成八年の三月から十月にかけての事件でございますけれども、これは平成十年の十月に警視庁で検挙したものでございます。ただ、これは社員、法人ともに起訴猶予ということになっております。  それから最後の、平成九年四月のハチみつ缶に関連しての覚せい剤の密輸入事件でございますが、現在公判中でございます。
  241. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 わかりました。  実は平成七年から八年にかけまして我が国は北朝鮮に大量の支援米を援助あるいは安い値段で売ったわけでございますが、最近の工作員の潜入データがございませんので客観的なことではございませんが、しかし、ただいまのお話あるいは衆議院のガイドライン特別委員会の野田国家公安委員長発言など、やはり相当可能性が強くて、我が国の危機管理一つの大きな問題点である、私はこういう認識をしているわけでございますが、それの原因はこのときの支援米の受け渡しの問題にあったんじゃないかというふうに思っております。  御承知のように、アメリカも韓国も同じように支援米を北朝鮮側にしたわけでございますが、アメリカも韓国も、アメリカの船あるいは韓国の船で北朝鮮の港に運んで、そして支障のないような形で向こうに引き渡しておりますが、なぜか日本の場合、北朝鮮の貨物船が一挙に日本の港にとりに来て、そこで引き渡した。そして、引き渡した先どこに行ったのか確認できないような貨物船もあったようでございますが、このときの調査によりますと、日本の北海道から九州、沖縄を除く各地に、日本の主要港三十三港、延べ九十九回北朝鮮から日本の港に支援米をとりに来ている。例えて言えば、東京港には七回、延べ七十三日間停泊していたという記録を私たちは確認しております。  当時、国会でも追及いたしましたし、私も当参議院の法務委員会で取り上げたんです。当時の杉原公安調査庁長官お尋ねしたんですが、このときも重大な関心を持っていろいろ調べているという話でございましたんですが、私はその後の北朝鮮工作員による日本潜入の問題はこのときの港湾の向こうの調査内偵が非常に大きなベースになっているんじゃないかという推測をしておりますが、その辺について公安調査庁はどのような御見解でございましょうか。
  242. 木藤繁夫

    政府委員(木藤繁夫君) 先生御指摘のとおり、公安調査庁といたしまして、破壊活動防止法に基づきまして公共の安全を図るという観点から、北朝鮮から往来する船舶につきまして必要な範囲で調査をしてきたところであります。  北朝鮮船舶の中には朝鮮総連の幹部に対する種々の接触を行っていると思われる者などもありまして、重大な関心を持っているわけでございますけれども、しかしそうした調査の具体的内容につきましては、これを明らかにすることは今後の調査に支障を来すおそれがございますので、答弁を差し控えさせていただきたい、こう思っております。
  243. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 前回もそういうお答えでございました。調査の具体的内容についてここで申し上げることは適切でないというお答えでございましたが、私も具体的な詰めたことを聞こうとは思いませんが、そういう可能性といいますか、あるいは港湾の管理なり日本の危機管理という立場から港のありように問題があるんではないかという私は問題意識を持っていますが、その辺についてはいかがでございますか。
  244. 木藤繁夫

    政府委員(木藤繁夫君) 一般論として申しますと、港湾というところには外国船舶が寄港いたしまして、その寄港した船舶に人が出たり入ったりし、また物資が搬出入されるわけでございますから、そういったものについて、北朝鮮からの船舶につきましてはそこに不穏な動向があるかないかということを当庁としては重大な関心を持って調査しておるところでございます。
  245. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 その重大な関心を持って調査している内容について、公安調査庁の業務の中には、調査の過程で得られた情報、資料を必要に応じて関係機関に提供するという役割がありますが、そういう役割は果たしていますか。
  246. 木藤繁夫

    政府委員(木藤繁夫君) 重大な関心を持って調査しており、いろいろな情報といいますか、そういう動きなどもわかったりする場合もあるわけでございまして、そうしたことにつきましては、公共の安全を図るという観点から、必要に応じまして政府とか関係機関に随時そうした情報を提供しておるところでございまして、今後も引き続き関係機関との連携を密にいたしまして北朝鮮船舶の調査を行ってまいりたいと考えております。
  247. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 関係機関の中に国会は入りませんか。
  248. 木藤繁夫

    政府委員(木藤繁夫君) 国会の場でお答え申し上げるということになりますと、それは非常に公の場でございますので、できる限り差し支えない情報は国民の前に提供したい、このように思いますけれども、それにつきましては事柄の性質上限界があるということでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  249. 平野貞夫

    ○平野貞夫君 事柄の性質上限界はあると思いますが、むしろ一定の公表をすることは工作員が入ることを抑止する効果があるのじゃないかと私は思うわけでございます。  ですから、情報ですからこれはなかなか難しいわけでございますが、これからの公安調査庁のあり方も含めて、重大な関心を持って調べていますと言うのは結構ですが、調べた結果、政府機関の一定のところに報告されて、それが封印されるようなことでは、これは何のために調査庁があるかという存在そのものにもなるわけでございますので、その点は少し、こういう時世でございますが、積極的に対応していただきたいということを大臣及び長官に要望しておきます。  それでは最後に、これは答弁は結構でございます、大臣に要望しておきますが、何かの機会に関係閣僚等とも御協議いただければと思います。法務大臣は、法と秩序を守ることでございますから、一連のこういったことについても無関心ではないと思います。  御承知のように、飛行場とか港湾というのは私は国境だと思いますし、また危機管理の一番重要拠点だとも思いますし、見方を変えれば日本国の軍事的施設でもあると思います。ですから、ここの危機管理上の整理、管理は非常に大事と思います。何度も申しますが、飛行場については一定のものができておると思いますが、港湾についてはほとんどその管理を自治体に任されているわけでございます。自治体もなかなか手薄でございますし、また管理の仕方もいろいろわからない部分があると思います。  したがって、国の重要な危機管理問題については、港湾については非常に多くの出入りがあるものです。海に囲まれた日本でございますので、国自身が責任を持って当たるということをぜひひとつ検討していただきたい。そうでなければ私たちは安心して暮らせないという要素があると思いますので、その点をお願いいたしまして、質問を終わります。
  250. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 外国人登録法の問題、出入国管理及び難民認定法の問題、これはもう既にたくさんの委員が基本的な質問をされてしまいまして、私とほとんど重複してしまっている。法務委員会では後出しじゃんけんというのは余り有利じゃないという感じなんですけれども、そこで同じ問題を別の角度からちょっとお聞きしたいと思うんです。  人権というのは自分の身を相手の立場に置きかえてのみ理解できる、そういう観念だと私は思うんです。要するに、殴った人というのは殴ったことは簡単に忘れがちなんですけれども、殴られた人というのはずっと覚えているわけです。そういう部分があるわけです。そういうことに関して法を人間がつくり、そして人間が使用するわけですから、やはり法をつかさどる人々の人間性によって様態が変わってくるということだと思うんです。そういう意味では、大臣法務省の人々の人間性とか人格というものが大変重要な問題になってくると思うんです。  そこで、大臣にお聞きしますけれども、大臣は自分の個人的な人生で今まで人権というものについて考えてみたことがおありでしょうか。あるとすれば、具体的にどんな体験でどういうきっかけだったか、ちょっと教えていただきたい。
  251. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 私どもが戦後日本国憲法を学んだときに、大事な柱の一つ基本的人権擁護、もちろん民主主義とか平和主義がございますが、そういうようなことを学びながら来たわけでございます。そして、そういう中で、今いみじくもおっしゃいました相手の気持ちになれというのは、そういうことはたびたび私自身も経験したことでございました。  特にこれは、角田委員がいらっしゃいますけれども、私は仕事柄ダムの建設をするということに長い間携わってきておりまして、そこには、憲法二十九条ですか、財産権の保障といいますか、公共の福祉に限ってそれを制約できるということであるわけでございますけれども、公権力によっていろいろ公共事業を行う場合に、それに対して、そこに住んでいる住民、国民市民、そういう人々の気持ちを、心の痛みを、ひだをよくかみしめるようにしなきゃいかぬということを長い間体験したつもりでございます。  そういうことはこれからも忘れずに、しっかりとあらゆる場面で思い起こしながら取り組んでいきたいと思います。
  252. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 そういう大変貴重な経験をされて、人権というものを御理解いただいているようですけれども、例えば外登証の常時携帯義務ということ、これは日常的に大変な心理的圧迫があると思うんです。  さっき福島議員が言われたわけですけれども、私なんかも、バッジをつけないとここへ入れてもらえないと言われたものですから、朝からバッジバッジということで何の意味もない疲れ方をするわけです。バッジですらこんなものですから、外登証を持っていない、そうしたら逮捕されるかもしれないとか、それから二十万円以下の罰金だとか、こういうことを二十四時間ずっと考えて、一生そうでしょうね。そして、その子供たちもそうだということは、この不自由さ、あるいは恐怖感、圧迫感、これは人権抑圧の最たるものだと思うんです。  たかが一枚の証明書を持って歩くかどうかというような問題ではないんです。毎日普通に生きていくということに対する大変な障害なんです。そういう感覚、大臣、どうでしょう、想像できませんか。
  253. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) いろいろな方がいろいろな立場でそれぞれのプレッシャーがあるということは、よく理解できるわけでございます。そうはいいながらも、やはり状況の違いによってそれがまた正当化される場合もあると思いますので、その辺が一般論として申し上げますと大変難しい問題じゃなかろうかというふうに考えております。
  254. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 この問題は、ダムの問題でも正当化されるとは必ずしも私は思いませんけれども、ダムとはちょっと違います。状況の違いによって正当化されるなんてものじゃなくて、これは普遍的な、人間が普通に生きていくという権利です。こういう問題だと思うんです。  この人権の観念、これはもうこれから国際的にもどんどん拡大していくわけですし、また進化していくという状況があるわけですけれども、私はこういう外登証の携帯義務ということ自体、何か管理する、管理したがるのはよくわかるけれども、余り意味がない、むしろ幼稚で何か恥ずかしい。日本の国がこんなことをやっている、本当に外聞が悪いという気持ちが非常に強いんです。これを二十一世紀まで持ち越していく、これは恥ずかしいという感じはありませんか。
  255. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 外登証携帯あるいは必要に応じて提示させるというこの制度そのものは、我が国に限った制度ではないということでございます。  振り返って、我が国の場合を考えますと、大変外国から不法入国・上陸をする人が多い、また不法に滞在する人が多いというようなことから、これによってもたらされるいろいろな影響、こういうものに対してどう対応したらいいかということも同時に考えていかなきゃならぬと思いますが、そういうものに対する一つの抑止あるいはそれを防ぐ手だてとしての外登証の携帯あるいは提示意味合いがあるということもぜひ御理解いただきたいと思います。
  256. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ほとんど御理解できないから聞いているわけなんです。つまり、不法入国して悪いことをする、それは確かにある程度ありますけれども、これは普遍的な問題じゃないです。圧倒的にたくさんの在日外国人、しかも長い間永住している人々なんかにこれは当てはまらないわけです。  外登証の携帯義務の根拠ということをほかの委員も何度もお聞きになったんですけれども、どうやら捜査なんかのときに身分関係を即時的に把握する、このためにどうしても必要だという答えなんです、根拠が。しかし、そうした捜査だとかそういうケース、例というもの、そのもの自体が極めて日常的に少ないわけです。圧倒的多数の外国人にとっては例外的な部分なわけです。  ですから、そういう職務執行の場合の利便性ということを根拠にしてこれをやるというのと、圧倒的多数の在日外国人人権ということが今てんびんにかかっていると思うんですけれども、大臣はどちらをおとりになりますか。
  257. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 現状の必要性については、先ほど来申し上げたところでございます。  現在の状況にかんがみまして、私どもとしては、今日の外登証の携帯・提示の規定並びにそれに対する刑罰については尊重する必要がある、このように考えております。
  258. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 要するに、圧倒的多数の人々の人権と捜査なんかをやるときの利便性を比べた場合は、そっちをとるという驚くべき発言で、大臣人権の観念というのを本当に持たれているのかどうか、大変疑問に思います。  そもそも人権擁護局というのがまだあると聞いてびっくりしたんですけれども、どうしてこうした抑圧的な法律を残そうと。人権擁護局というのは人権を守ろうとしないんですか。一体ふだんは何をやるところなんですか。
  259. 横山匡輝

    政府委員(横山匡輝君) お答えいたします。  私ども法務省人権擁護機関といたしましては、外国人方々人権を含めまして、広く人々の人権擁護するために、人権啓発活動人権相談に応じ、あるいはまた人権侵害があると認められるような場合には人権侵犯事件として調査、処理するなどしまして人権擁護に努めているところでございます。
  260. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ですから、こんなばかげた抑圧的なものを残すということに対して、人権擁護すると言っているわけですけれども、要するに在日外国人とか一般の人々の人権擁護するんじゃなくて、皆さん人権擁護しているんじゃないでしょうか。  九二年の衆参法務委員会で、この問題に関して、検討し適切な措置を講ずると決議したわけです。それで、五年たっても何も変わらない。簡単に言いますと、これは国会を無視していると思うんです。つまり、国会をばかにしているということだと思いますが、この国会をばかにする権利の根拠というのは何なのでしょうか。
  261. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 数次の衆参両院における同趣旨附帯決議につきましては、私ども、これを尊重すべきものだということで取り組んでまいっております。  そういう中で、現在の検討の結果においては、ただいま提案しているような法律内容になっておるということを御理解いただきたいと思います。
  262. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ばかにされて御理解というのはなかなか難しいわけです。私はわからないんです、こういう関係が。  国家公務員試験に受かっただけでそういうことになるのか。私は受けなかったからパスしませんが、受けたら入ったかもしれないですから、余りそれが根拠になってばかにされてもらっちゃ困ると思いますけれども、ちょっと具体的なことを聞きます。  外国人登録原票というのがあるんですけれども、これには、職業、勤務先、過去の居住歴、生活歴、学歴、職歴、犯歴、これは住民基本台帳と比較しますと、報告項目がもう圧倒的に過剰だと私は思うんです。なぜこんなにいろんなことを書かなきゃいけないのか。極めて差別的な仕組みではないかなというふうに感ずるんです。これはもっと簡素化したらどうなのか。修正してもらいたいと私は思うんですけれども、どうでしょうか。
  263. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 外国人の方の場合には、日本人と違いまして戸籍の裏打ちがございません。そういうようなことと、それから当然のことながら、外国人特有の情報を把握しておく必要があるということで、登録事項は二十、場合によっては十八ということになっております。  ただ、ここに書いてありますのは、ばっと早口で読みますと、登録番号、登録の年月日、氏名、出生の年月日、男女の別、国籍、国籍の属する国における住所、出生地、職業、旅券番号、旅券発行の年月日、上陸許可の年月日、在留の資格、在留期間居住地、世帯主の氏名、世帯主との続柄、申請に係る外国人が世帯主である場合には世帯を構成する者、本邦にいる父母または配偶者、それから勤務所または事務所の名称及び所在地というようなのが全部で二十項目ございまして、ちょっと今委員がおっしゃった中のそのとおりではございません。もちろん、この中では……
  264. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 居住歴というのはないですか。
  265. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 居住地はございます。
  266. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 転々とした歴。
  267. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 歴はございません。
  268. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ありますが。
  269. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) この中にはございません。  もちろん、委員のおっしゃった中で、職業とか勤務先というのは通常日本人の場合にない項目でございます。これは、外国人の場合には在留資格、在留期間というのを設けておるものですから、それとの兼ね合いで設けているものでございます。
  270. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 住民基本台帳でも大体状況というのは把握できると私は思うんですけれども、これだけのたくさんの項目がふえてきたということは、実際問題として、国民総背番号制というものの導入という話もありますが、そのための実験というんですか、そういう形で行われているのではないかという疑いの声もあるわけですけれども、どうでしょうか。
  271. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 先ほども申しましたように、外国人の場合には日本人と違う状況にあるものですから、登録事項についてもおのずから違ってくるということでございます。
  272. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ですから、外国人の方がやりやすいのでそれを実験としてやって、今度は日本人の番だという流れの中にあるのかとお聞きしているわけです。
  273. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 少なくとも私どもとしてはそういう意識はございません。
  274. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 普通の逮捕令状に相当する収容令書というのがあります、出入国管理及び難民認定法に関連して聞いているわけですけれども。これが発令される場合ですけれども、第三者的なチェックがないということですね。入管当局の内部の手続だけになってしまう。これはちょっと裁量権が大き過ぎるんじゃないかなというふうに危惧しているわけです。また、摘発者を収容するという行政処分が行政手続法の枠外にありますから、異議申し立てをするチャンスがないという構造になっているんです。やはりこれはちょっとまずいんじゃないか、制度的に欠陥がある。  いずれにしても、規約人権委員会が勧告しているような第三者委員会的なものを適切な形でつくらないとまずいんではないかと思いますが、いかがでしょう。
  275. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) まず収容令書の方でございますけれども、収容令書は、入管法第二十四条各号に定める退去強制事由の一つに該当すると疑うに足りる相当の理由がある場合に、収容令書を直接執行する入国警備官の請求により、入国警備官とは別の官職で職務権限を有する主任審査官が要件を慎重に審査の上発行しているもので、問題はないものと考えております。  入管の中で警備官という肩書きのカテゴリーの人と、それから審査官という別のカテゴリーの人間になっていまして、その審査官の中でも主任審査官という人だけができるということで、その人たちが適切に執行していると考えている次第でございます。  それから、被収容者を収容するというのが行政処分で、行政手続法の枠外にあるために異議申し立てができずということで、規約人権委員会の勧告でそのことが言われたのではないのかという御指摘でございました。  私ども先般、当局の収容施設における処遇の根拠法令でございます被収容者処遇規則というものを改正しまして、収容施設の長が被収容者から直接意見を聴取したり、巡視等の措置を講じて処遇の適正を期すべき旨を新たに規定したところでございます。当局の収容施設は、行刑施設とは異なり、被収容者の矯正、更生を目的としたものではなく、あくまでも退去強制事由に該当する者を実際に送還するまでの間、一時的にその身柄を確保しておくことを目的とするものであることから、施設の長の責任において処遇の適正を図ることで十分であると考えておりまして、委員会の勧告するような独立した機関を設けるまでの必要はないものと考えております。
  276. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 この問題をまたやり出すと長くなりますので、大変大きな問題だということをひとつ認識していただきたいと思うんです。  最後に、九七年に、長野県下で行われたオリンピック施設建設に外国人労働者がたくさん加わったわけですが、その後ホワイトスノー作戦というので労働者の追い出しがあったわけです。働いている最中は不法滞在を認めていて、終わると一斉に摘発して逮捕したり追放するということなんですけれども、これは一般的に言ってもかなり品性が下劣な行動ではないか。特に国際的に日本当局のえげつなさというのは大変大きな批判の対象になっておりますし、やはり日本に対する印象というのは物すごく悪くなっていく。これは国際化の時代日本にとって大変よくない状況だと思うんです。  こうした臨時労働者の待遇、それからその後の扱い方ということに関して、より弾力性のある法整備なりシステムというものを用意しないと、この国の司法というものが非常に評判が悪くなるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  277. 竹中繁雄

    政府委員竹中繁雄君) 不法就労外国人の数が非常に多くて、我が国出入国管理の根底をなす在留資格制度を揺るがし、公正な出入国管理の秩序を乱すとともに、我が国の広範な分野において種々の問題を招来しているということで、もっと厳しく取り締まらなきゃいけないんじゃないかという御批判も各方面からいただいているところでございます。  このような状況にかんがみまして、不法就労等の入管法違反外国人について厳正に対処するということは、特段の問題とされるべきことではないと考えております。
  278. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 私が聞いているのは、そういう取り締まれということじゃないんですよ。不法であることを承知していて働かせておいて、それで終わったらば今度は捕まえるという、これは法を超えたもっと日本人の道徳的な感覚を試されるような事態なんです。このことに関して、実際にそのときに労働者が必要なら必要で、そんなトリックのような形でやらないで済む、あるいはそこで働いた臨時労働者がまだもっと働きたいというようなことがあれば、それに対してもっと柔軟な法の適用、そういう形を考えてはどうかという問題なんですけれども、法務大臣、どうですか。
  279. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 申しわけございませんが、このホワイトスノー作戦そのものについては私は知識がほとんどないわけでございますけれども、ただ、出入国管理行政というのは、この時代国際協調あるいは国際交流の増進への寄与、我が国社会の健全な発展の確保の理念に沿って、外国人の一層の円滑な受け入れ等を推進していかなければならない立場にあろうかと思います。  そういうことでこれからも取り組んでまいりたいと思っております。
  280. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 ほとんど会話が通じないという状況がずっと続いているわけですけれども、最後に一つだけ。  則定前検事長の問題ですけれども、別口座があって、その口座のつくられ方について説明がありました。しかし、ああそうですかということでもなくて、やはり大変グレーな感じがするわけです。私は別に確証はないけれども、いろんなケースを想像していくときに、検察の内部に、あれは別に則定さんだけの話ではなくて、実は従来から裏口座というようなものが慣習的にあって、そういう業者からいろいろなお金が振り込まれていたというようなことはなかったんでしょうか。  というのは、それはこの前の委員会で聞きましたけれども、検察の交際費が十万円しかないとか、そんな状況だったらリラックスしてちょっと一杯飲むというようなことはできないわけですから、どうしたってどこかからお金が来てしまうという細工が必要になるんじゃないかというふうに客観的に見ると思えるわけなんですけれども、いかがでしょうか。
  281. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) 今回、雑誌の記事で、検察の最高幹部の一人が関係業者から接待を受けたり、場合によると資金援助も女性の関係であったのではないかという記載内容でございました。  我々、私も含めまして、それを読んだときは大変重大な問題として受けとめて直ちに調査に入ったわけでございますが、その真実の姿といいますか実態は、これまで随分御説明申し上げてきましたけれども、関係業者とのつき合いということで、関係業者というのは職務上関係のあるという意味で理解するとすれば、それはない。それから、そのほか友人関係にいたしましても、金銭の肩がわりをしてもらうとか、いわば倫理上、道徳上非難されるようなつき合いがあったのだろうかということも調査したところでございますが、これまで繰り返し御答弁申し上げましたように、そういった点も、服務上あるいは法令上問題となるような行為はなかったと調査結果をはっきり申し上げているところでございます。
  282. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 私がお聞きしたのは、則定さんの個人的な問題ではなくて、そうした口座というのが組織のやっぱり慣習的なもの、そうしたものとして恒常的にあるのではないかという質問なんですけれども、どうなんでしょうか。
  283. 松尾邦弘

    政府委員(松尾邦弘君) そういうものはございません。  ただ、今回の雑誌の記載で、あるいは例外的にしても検察の最高幹部と言われているような検察官に対してそういう疑惑が報道されたということで、そういった事実があるかないかも含めまして調査をいたしましたけれども、今お答えしましたとおり、そういうことはないということでございます。
  284. 中村敦夫

    ○中村敦夫君 質問を終わります。
  285. 荒木清寛

    委員長荒木清寛君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二分散会