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1999-06-01 第145回国会 参議院 文教・科学委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月一日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      田名部匡省君     松岡滿壽男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         南野知惠子君     理 事                 狩野  安君                 馳   浩君                 江本 孟紀君                 松 あきら君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 亀井 郁夫君                 北岡 秀二君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 橋本 聖子君                 石田 美栄君                 佐藤 泰介君                 本岡 昭次君                 山下 栄一君                 畑野 君枝君                 林  紀子君                 扇  千景君                 松岡滿壽男君    国務大臣        文部大臣     有馬 朗人君    政府委員        警察庁生活安全        局長       小林 奉文君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君        文化庁次長    近藤 信司君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君    事務局側        常任委員会専門        員        巻端 俊兒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教・科学委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、田名部匡省君が委員を辞任され、その補欠として松岡滿壽男君が選任されました。     ─────────────
  3. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 自由民主党の世耕弘成でございます。  まず最初に、質問通告はしていないんですけれども大臣宇多田ヒカルという人は御存じでしょうか。
  5. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 知っております。
  6. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 さすが情報収集に熱心な大臣でいらっしゃると思います。ことし一番たくさんの著作権料を受け取る人物ではないかと思うんです。この人は音楽にも革命をもたらすと言われております。  今、デジタル革命というのが世の中で、仕事の面ですとか家庭生活の面でたくさん起こっておりますけれども、このデジタル革命、すなわち情報デジタル化であるとか、あるいはパソコン普及であるとか、あるいはインターネットの急速な普及、これが今、芸術作品流通世界でも大きな革命を引き起こしつつあります。  特に、音楽流通世界では、恐らくレコードの発明以降、第三回目の大きな革命が確実に進行しつつあるんじゃないかというふうに私は思っております。第一回目はカセットテープの普及であったと思います。そして第二回目はコンパクトディスクCDの登場だったと思います。そして今回、第三回目の革命というのは、MP3という新しい技術によって今引き起こされようとしているんじゃないかというふうに思っています。  今回、著作権法改正の議論に合わせたかのように、ここ数カ月で急速にこのMP3の大きな動きが出てきておりまして、恐らくことしじゅうには大手家電メーカーも含めてこの流れが音楽業界の主流として定着していくんじゃないか、そういうふうに言われております。  技術的に詳しい話は、私は参考人ではありませんので余りお話はしませんけれども、このMP3ということについて、この委員会でも著作権法を議論するに当たってきっちりと踏み込んだ話をしたということを残しておく必要があると思いますので、簡単にお話をさせていただきます。  まず、これは先ほどの宇多田ヒカルさんのコンパクトディスクでございます。このコンパクトディスク情報量にしますと大体六百メガバイトという情報量でございます。これはちょっとわかりにくいので、一番よく我々がワープロなんかで使いますこのフロッピーディスク、これで言いますと大体五百枚分に相当いたします。また、六百メガバイトという情報を今インターネットで、一般の家庭で手に入る、ちょっとコストはかかるけれども一番いい線を使ったとしても、大体理論値で一時間、現実には二時間ぐらいこれを電送するのにかかります。要するに、これ五百枚、しかもインターネットで送るので二時間ですから、持ち運びですとかインターネット上での流通というのは、技術的にこのままではどうしようもないということになるわけです。  ところがMP3という技術は、このコンパクトディスク情報を十分の一から十二分の一に圧縮できるという技術です。パソコン上にこのCDデータそのものを取り込みまして、そしてMP3に対応したソフトウエアがありますので、それで圧縮してしまう。そして、片やメモリー装置の方も相当進化しています。これが今一・五メガバイト入るんですけれども、新しいこういう装置がありまして、このフロッピーディスクより全然小さいですけれども、十倍から四十倍ぐらいの情報量が入る、こういうメモリーも開発されてきています。  要するに、これそのものが十分の一に圧縮して、そして受ける側が十倍から四十倍の能力を持ってきたということで、こういうメモリー装置CD一枚分の音楽を入れてコンパクトな状態で持ち歩きができるようになっている。そしてまた、情報量自体十分の一から十二分の一になるわけですから、インターネット上で送信にかかる時間も、理論値では十分以内でいけるようになってきている、こういう動きがあるわけです。  この技術を使った音楽流通というのが今新しく起こり始めていまして、さらに再生装置というのも開発されております。これが今、秋葉原なんかでは二万八千円ぐらいで売っているMP3の再生装置でございます。このコードでパソコンからMP3の音楽データをここへ取り込んで実際に再生ができるようになっております。これはもう現実に今アメリカでは大ヒット商品でありまして、日本でも品薄の状態が続いていると言われております。  スピーカーがついていない装置ですので、お回ししますので、音質がCD並みであるということを皆さんにもぜひお確かめいただきたいと思います。  また、先ほど申し上げましたこういうメモリー、これはまたことしの七月に発売される予定の新商品のプロトタイプなんですけれども、これは、先ほど申し上げたこういうカードに一たん音楽を取り込んで、こういう形で差し込んで再生ができるというようなものでございます。これも大体三万円程度で売買されてくるだろうと思います。  MP3を使った再生機というのは、CDというのはあくまでもあのお皿をぐるぐる回していますからモーターが要るんです。ところがMP3というのは、あくまでもパソコンソフトと同じで、読み込むだけですからモーターがない。さわっていただければわかりますが、非常に軽いですので、ちょっとお確かめいただきたいと思います。  こういう形で、受け側の再生する機器も登場してきて、今確実に売れ出してきている。まだ今マイナーなメーカーしか売っておりませんけれども、ソニーや松下もことしじゅうには確実にこの機器に参入するであろうというふうに言われております。  このMP3を用いた音楽流通というのは非常に大きな可能性を持っております。例えば、私が今いい音楽をつくって、私はカラオケがうまいのでぜひ皆さんに聞いていただきたいと思っても、何十枚もCDを出された江本先生とは違いまして、ネームバリューがないとか、あるいは売れ線でないという形になると、自費出版というのはあるかもしれませんけれども、いわゆる商品としてのCDをつくってもらうこと自体できないわけです。しかし、インターネットMP3を組み合わせることによって、アーティストサイドから見れば、売れ線でなくても、ネームバリューがなくても、ネットワーク上で直接自分の判断で音楽配信していける、そういうことができるわけです。  今現に、MP3を使って、もうそれだけで音楽をやりますというミュージシャン現実には出てきております。大手レコード会社との契約は破棄をして、徹底的にこのMP3の世界だけでやる、しかも著作権料の回収も一回三百円という形で、自分インターネット上の電子現金を使って直接回収する、そういうミュージシャン日本で一つ、アメリカでは幾つか、もう既に新しい形態として出てきています。  今度は逆に、音楽を聞くユーザーの立場で見れば、今までレコードCDを買うというと、レコード屋さんにまで出かけていって、しかも、試聴ができるものもたまにはありますけれども、大体パッケージとか、あるいはテレビやラジオでの評判から、これがいいかなと思って買ってくる。買って帰ってきたら、いや二曲ぐらいはよかったけれども残りの八曲はこんなの買って損しちゃったなということだってあり得るわけですけれどもインターネット配信では実際に自分で欲しいものだけを取り込める、この曲とこの曲とこの曲がいいということで取り込むことができる。そういう意味で、ユーザーサイドから見ても非常にメリットが大きい、そういう革命が今進行しつつあるんです。  しかし、これは大変大きな陰の部分もございます。その陰の部分というのが、今現実事件としても起こってきているわけですけれども、市販のCDの内容をパソコンに取り込んでそれを圧縮して、著作権者無断インターネット上で流通させてしまうというようなことが起こってきております。  これなんかは、現実ホームページの打ち出しですけれども、野猿ですとか宇多田ヒカルとか、今いわゆる若い人たちに非常に人気のあるミュージシャン音楽を、はっきり言って無料で引き落とせるようなホームページ、恐らくもう今はなくなっていると思いますけれども、こういうものがありました。高度な技術は全然必要ありません。私でもできますし、今こういう違法なホームページ日本で大体三千件あるというふうに言われております。  JASRACの皆さんも本当に今涙ぐましい努力をされていまして、そういう三千もあると言われているホームページを一個一個手作業で探されて、それぞれに警告書を送られたり、あるいはそういうホームページを手伝っている形になっているプロバイダーに対して削除の協力をお願いされたりと、涙ぐましい努力をされているわけであります。  このようにMP3は、音楽流通革命的に便利にする可能性がある一方で、著作権侵害ということでアーティスト生活そのものを破壊する可能性も秘めている、今後きっちりと整理していい方向へ引っ張っていかなきゃいけない非常に難しいものなんです。  文部大臣にお伺いしたいと思いますが、こういうインターネット上での音楽配信に関する現状を今どう把握されているのかということと、また、著作権保護観点やあるいは音楽文化進展観点から、インターネットによる音楽配信普及についてどのように評価されているかをまずお伺いしたいと思います。
  7. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) インターネットというものは、さまざまな点で非常にいい面と問題点が含まれていると思います。インターネットを通じての音楽配信につきましては、現在、関係者の間で話し合いが行われており、合法的な配信のための環境の整備が進められているということが一方でございますが、一方、無断音楽を大量に送信し、著作権者等利益を著しく害する違法な行為があると認識いたしております。  ネットワーク上に著作物をアップロードする行為につきましては、既に平成九年の著作権法改正において送信可能化権を設け権利対象としたところでございます。違法行為に対しては刑事罰を含む厳格な対応がなされることが必要であると考えております。  違法な音楽配信事業は今後ますます盛んになることが予想されることから、文部省といたしましては、適切な権利処理のためのルールづくりが促進されるよう働きかけていく所存であります。また、違法な行為をなくすためには、まず国民全体が著作権を尊重することが重要であることから、さまざまな機会を通じて著作権保護意識の一層の向上に努めてまいる所存でございます。
  8. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 ありがとうございました。  そして、今現実事件が起こってきております。警察庁の方も把握されていると思いますけれども札幌少年がこのMP3を実際に使って違法に音楽を流していたということで、家宅捜索が行われたという報道がございます。  しかし、三千ほど違法サイトがあるという中で、このケース警察庁としては一罰百戒という形でとらえられているのか。あるいは、著作権法違反というのは親告罪であるという側面があるわけですけれども、今後残りサイトへの対処をどうされていくのか。  この札幌少年というのは、私がこれを見る限りは、そんなにお金をもうけていたわけでもないし、何で彼が摘発第一号の対象になったのか、何か特に悪質な部分があったのかということをちょっとお伺いしたいと思います。
  9. 小林奉文

    政府委員小林奉文君) ただいま委員指摘事件は、新聞報道等にもございますように、札幌市に居住する十八歳の会社員著作権者許諾を得ずにプロバイダーサーバーコンピューター内にMP3を利用して音楽著作物を記憶蔵置させたものでございます。この事件につきましては、ホームページの開設、閉鎖を繰り返して行っていたということでございます。そういった中で、多数の最近のヒット曲を多くのインターネット利用者に違法送信していたということで、愛知県警捜索などの所要捜査を行っているところでございます。  こういった、委員指摘の、インターネット利用してMP3というデジタル情報を圧縮した方式のファイルによりまして、音楽関係権利者許諾を得ずに音楽送信する事案が最近増加しております。デジタル時代の新たな知的所有権侵害事案の一例として大きな問題になる、我々はこういうふうな認識でおるところでございます。  そういった観点で、警察といたしましても、先ほど先生の御指摘にございました、音楽関係権利者団体が行う違法サイトに対する警告等の活動と連携しつつ、違法サイト実態把握に努めまして、悪質な事案については厳正に取り締まってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  10. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 今、現実告訴という形のものは行われているんでしょうか。
  11. 小林奉文

    政府委員小林奉文君) 具体的なケースに応じまして、それぞれ告訴というものを受けまして事件にしていくということが一般的な捜査の方法でございます。
  12. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 MP3に限らず、この手のインターネットで行われている、わいせつ画像の配布とかそういう犯罪に共通することだと思うんですけれども、非常に技術的に大変だと思うんですね。  例えば、MP3というのは、そのままであればMP3のファイルだということは素人でも見てわかるんですけれども、それをうまく擬態をして隠すとか、あるいは十個ぐらいに分割をしておいて一個だけではわからないようにするとか、そういう手段もとっているサイトがあるというふうに聞いています。それで、これがMP3の違法サイトであるということが特定できたとしても、今度は逆に、だれがそれを載せたのかという追跡のあたりも非常に難しくなっていまして、プロキシーサーバーという、言ってみれば自分の正体を隠す装置なんというのがありまして、それを複数使っていたりするとなかなか見つけるのが大変です。  この辺の技術的な部分を、余りここでお話しいただけるかどうかわからないですけれども、どういうふうに今後対処されていく方針なのかを伺いたいと思います。
  13. 小林奉文

    政府委員小林奉文君) 最近、インターネット利用したいろいろな技術が日進月歩で大変進んでおります。そういった状況について、私どもはその技術等の動向を逐一勉強しておるところでございます。例えば、今先生指摘のございましたプロキシーサーバー利用した事件、こういったものについても幾つかございます。  私どもは、そういった最先端の技術をよく勉強し、それに追いつくような捜査技法を開発し、それぞれ所要捜査をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  14. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 ぜひその辺はしっかりと頑張っていただきたい。今後の情報通信社会の健全な発展の上で非常に重要なポイントになってくると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  続きまして、まず、現行著作権法の中でこのMP3というものがどういう位置づけになってくるのかということについて、ちょっと文化庁を中心にお伺いしたいと思います。  このMP3、今聞いていただいたこの黒い方、これはRioと言って今アメリカ大変ヒット商品であります。ダイアモンド社という会社がつくっている商品でありますけれども、これは実は、アメリカで発売されたときは、全米レコード協会レコード産業協会から、これは著作権侵害する、侵害を助長する機器だということで販売差しとめの訴訟が行われたような経緯もあります。それは最終的にアメリカでは却下されているようですけれども。  日本において、まず、このMP3を再生する機械そのものは合法なんでしょうか、あるいは違法という見解をお持ちなんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  15. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えをいたします。  MP3につきましては、インターネットを通じて音楽無断配信するという違法行為が大量に行われていることから、こういった録音再生機器は、無断配信された音楽を聞くためにも使われ、著作権者利益を害することになっているのではないか、こういう意見があることは承知をいたしておりますが、現行著作権法におきましては、音楽個人的に聞くために複製を行う行為自体は、私的使用のための複製として自由に行えることとなっているところでございまして、これらの録音再生機器そのもの違法性があるとまでは言えない、こういうふうに考えているところでございます。
  16. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 では、引き続きお伺いしますけれども、例えば自分でこうやって買ってきたコンパクトディスク自分の家でMP3に変換をして録音するということも、私的使用ということで問題ないということでよろしいんでしょうか。
  17. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 今申し上げましたが、現行著作権法では、著作権者複製権を認め、著作物複製する際に原則として著作権者許諾を得ることが必要でありますが、一方で、いわゆる私的使用目的とする場合には自由に複製が行える、こういうことにしておるわけでございます。このため、音楽用CDからMP3に変換をし録音する行為につきましては、それがパソコン携帯型プレーヤーなどを用いて個人で聞くことを目的として行われる限りは、私的使用のための複製として適法な行為となるわけでございます。  ただ一方で、先ほど委員が御指摘になった例にございますように、インターネットを通じて音楽無断配信するためにMP3に変換をし録音するような場合におきましては、これは私的使用のための複製とは言えず、著作権者等複製権侵害する違法な行為となる、こういうふうに考えております。
  18. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 インターネット上を見ていますといろんなうわさ話も飛んでいるわけですけれども、例えば音楽についても、さわりの部分だけ、二十秒か三十秒ぐらいだったら別にネットで流しても違法じゃないんだというような流し方もあったんですが、この辺については文化庁の御見解はいかがでしょうか。
  19. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 著作権者複製権公衆送信権等権利著作権法上認められておるわけでございますが、これらの権利は、著作物等の実質的な部分利用するのであれば、その部分の多い少ないにかかわりなく権利が働くことになっておるわけでございまして、例えば音楽著作物の場合で申し上げますならば、ワンフレーズ利用であっても基本的には著作権対象になると考えられるわけでございます。著作権者に許可を得ずに、許諾を得ずにネットワーク上で公衆配信するのであれば違法な行為となるわけでございまして、一部で言われておりますいわゆる三十秒ルール、こういったものは著作権法上根拠はないものと、こういうふうに考えております。
  20. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 今度は逆に、使う側からなんですけれども、例えば、このホームページは違法だな、ここに載っかっている音楽は恐らく著作権上クリアになっていないなということがわかっていながら、それを引き落としてMP3の機器で聞くこと自体はどうなるんでしょうか。
  21. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 例えばMP3の違法サイトから音楽をダウンロードする、こういった行為を考えてみた場合に、ダウンロードするその者にとりましては、それが個人的に音楽を聞くための複製であれば、先ほど来申し上げているとおり著作権法三十条第一項の私的使用のための複製に該当いたしまして、著作権者許諾を得なくても適法に行うことができるわけでございます。また、ダウンロードした音楽個人的に聞くことは、これはそもそも著作権対象となる行為ではないため、これもまた自由に行うことができるわけであります。  他方、MP3の違法サイト音楽をアップロードした者は、これはほかの者にその音楽をダウンロードさせることで公衆送信を行ったことになり、著作権者公衆送信権侵害する、こういうことになるわけでございます。
  22. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 先ほどから何回かその公衆送信権という話が出てきております。また、札幌警察家宅捜索に入ったケース公衆送信権侵害ということが第一のテーマになっているわけでありますけれども、しかし、現行法公衆送信権というのは、あくまでも私は放送というものを意識した送信権の設定なのかなという気がしております。決して個人インターネットを用いて多数の人に配信できるような事態というのを想定していなかったんじゃないかというふうに思っております。  特にアナログ時代は、個人で幾ら、私が公衆送信をやろうと思っても、電話でみんなに聞かせるわけにもいかない、テープにダビングしてそれを宅急便で送るといっても一体どれだけ手間がかかるかわからないという状態だったわけですけれどもインターネットになれば、私も今会館に置いてあるパソコン電子メールで、仲のいい人、ふだんやりとりする人を五百人ぐらい登録してありますから、もうワンタッチで音楽を送ることができるわけです。  こういうインターネット時代を踏まえた公衆送信権と、あるいは逆に私的使用関係、この範囲をどういうふうに考えるのか。  ちょっと漠とした話ですので具体的に申し上げますけれども、例えばインターネットを用いて、宇多田ヒカルさんの音楽はすばらしい、本当に親しい友達何人かに聞かせてあげたいと思ったときに、何人ぐらいまでであれば私的使用ということになるのか。  これは非常に難しいと思うんですけれども現実ネットワークを使っている人が今悩んでいる問題でもあるので、ちょっとその辺の御見解をお伺いしたいと思います。
  23. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 大変難しい御質問をいただいたと思っておりますが、著作権法の定義といたしまして、公衆は、不特定多数の者に加え、特定かつ多数の者を含む概念とされておるわけでございます。これに対しまして、特定かつ少数に対する送信、これは公衆に対する送信ではないために公衆送信権が働かないわけでございまして、例えば親しい少数の友人に電子メールを送るというような場合がこれに該当するかと思っております。  この、著作権法におきます多数か少数か、この多数の概念は相対的なものでございまして、多数に該当するか否かは著作物利用の具体的場面に応じて個別具体に判断をする。お答えになったかならないかあれでございますけれども、一般に何人からが多数であるか、少数であるかということはなかなか一概には言えないのではなかろうか、このように考えております。
  24. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 わかりました。  このように、まだMP3という新しい技術著作権法関係というのは一般人から見て非常にわかりにくい状態になっています。現実MP3の違法サイトを運営している人、これは当然違法は違法なんですけれども、本当のところは余り意識しないでやっている、ほとんどの人がお金を集める目的ではやっていなくて非営利でやっていると聞いています。あるいは、自分で運営しているホームページを一人でも多くの人に見てもらいたいがために、何か景品的なイメージで、ここで音楽をとれるよというようなことをやればいいんじゃないかという、こういう形でやっている人、あるいは大好きなアーチストがいて、その音楽をもっとみんなに聞かせたい、これなどはもうとてもファンとしてはあるまじき行為なんですが、そういうふうに思ってしまうような人もいる。  こういう形になっていますので、ぜひこの札幌の十八歳の会社員のようなケースをつくらない、あるいは無意識のまま犯罪者になってしまわないようにきっちりと啓蒙活動をやっていただきたいと思うんですが、その辺の取り組みは、警察庁文化庁、どういうふうに考えておられますでしょうか。
  25. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 委員指摘のように、著作権思想の普及啓発ということは大変大事なことでございまして、文化庁におきましては従来から、一般の方々を対象といたしました著作権セミナーでありますとか、学校の教職員、図書館の職員等を対象とした講習会を毎年実施しているわけでございます。  また、やはり青少年の時代から著作権尊重の意識を醸成するということが大事でございますので、著作権読本というような解説書を作成いたしまして全国の中学三年生に配布をしている、こんなようなこともいたしておるわけでございます。  特に本年は、一八九九年に著作権法が制定、施行されて百年を迎える記念すべき年でもございまして、著作権法百年を記念してさまざまな事業を実施する予定にいたしております。こういった事業を通じまして、さらに著作権に対する国民の一層の理解が深まるように努力をしてまいりたいと考えております。
  26. 小林奉文

    政府委員小林奉文君) 委員指摘のように、私どもにおきましても知的所有権は極めて重要な権利であると考えておりまして、そのことを広く社会に啓発して、その侵害が抑止されるようにしていくことは極めて重要な課題だと考えております。  そういった観点から、警察といたしましても、これまで関係省庁、各種権利者団体の組織である不正商品対策協議会等と連携して広報・啓発活動を積極的に進めてきたところでございます。今後とも、ネットワーク上の著作権の保護の問題も含め、関係省庁、団体とも連携して広報・啓発活動に努めてまいりたいと思います。  なお、無意識の犯罪者ということでございますけれども、私どもは、プロバイダーから警告されたとか、いろいろな方々について事件を摘発しているということだけは御報告させていただきたいと思います。
  27. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 非常によくわかりました。  こういうふうにいろいろ著作権上の問題があるMP3という技術なんですけれども、私はこの新技術に関して決してネガティブになってはいけないというふうに思っています。  カセットテープが始まったとき、これも大騒ぎになりました。CD、MDが出てきたときも、これはもう大変なことになる、音楽産業は終わりだというような話が出ましたけれども、逆に今、音楽を聞くすそ野が大きく広がっているわけです。昔は百万枚も売れればそれこそ歴史的な大ヒットでしたけれども宇多田ヒカルさんはもう七百万枚売れようとしている。これだけ音楽のすそ野が広がったわけです。  また、家庭用ビデオが普及し始めたとき、このときも映画産業は大変反対をされましたけれども、逆に今、レンタルビデオ等を通して国民が映画に触れる機会が非常に増加をして、そして映画産業自体著作権料の形で潤っているということになっているわけです。  MP3についても全く同様に、否定的に処理していくのではなくて、著作権との整合を法的、技術的にきっちりととって、さらに音楽のすそ野、音楽文化のすそ野を広げる方向に持っていきたい、そういうふうに考えています。  そういう中で、もう一度総論的にお伺いしますけれどもデジタル時代インターネット時代に対応した著作権法のあり方あるいは著作権管理のあり方について、文化庁としてどうお考えになっているでしょうか。
  28. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) デジタル化ネットワーク化の進展に伴いましていろんな著作権制度の課題があるわけでございまして、これまでも、著作権審議会で議論の熟したものから逐次審議結果を公表し、法改正も行ってきたわけでございます。  今、この著作権審議会の中にマルチメディア小委員会というものを設けまして、さらにこういったデジタル化ネットワーク化時代に対応できるようないろんな法制度のあり方を含めて御検討をいただいておるわけでございます。  また、著作権管理の問題につきましても、これもまた、特に音楽の問題につきましては今、JASRAC、日本音楽著作権協会が一元的にやっておりますけれども、果たしてそれでいいのだろうか、もう少し著作権管理団体の設立要件を緩和し、同一分野の複数団体をもっと積極的に認めるべきではないかとか、あるいは、今のJASRACはすべての音楽に係る著作権の信託を受けておりますけれども、例えば演奏権だけを預かるとか、そういう選択の幅を権利者に認めるべきではないか、こういったさまざまな意見があるわけでございまして、そういった意見も踏まえまして、現在、著作権審議会で御審議をいただいておるわけでございます。  文化庁といたしましては、この審議会の検討結果あるいは国際的な動向を踏まえまして適切に対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  29. 世耕弘成

    ○世耕弘成君 以上で終わります。
  30. 馳浩

    ○馳浩君 自民党の馳浩です。よろしくお願いいたします。  まず、文部大臣にお伺いいたしますけれども、同僚議員の世耕委員質問の全体的な内容とも重なりますが、情報通信技術の日進月歩の発展というのは非常に目まぐるしく、これが日本経済発展の一つの生命線ともなっておりますが、一面、著作権者やあるいはメーカー側にとっては著作権侵害される大きな問題ともなっております。いわば企業同士が対立する一つの争点になってくるのはこの著作権の問題であると考えてもいいと思いますが、要はこの著作権法という法律の運用の仕方を考えていかなければいけないと思います。余りにも著作権者に配慮するような、著作権法というのは著作権者を擁護するための法律ではあるのですが、これを余りにも厳しく適用していくということになりますと、企業の活動に対しまして非常に厳しい規制をかけて、これが日本経済の発展に一つの足踏みをさせるようなことになっても困るわけであります。  この点について、今後文部省としてこの法律をどのように運用していくのかという姿勢が問われると思いますが、この点をお伺いしたいと思います。
  31. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 著作権制度は、文化的所産であります著作物の公正な利用に留意しつつ、著作権者の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的としております。御指摘のように、権利者や利用者のいずれか一方に偏することなく、バランスのとれた制度とする必要があると認識しております。両面ございます。そういう点でバランスのとれた制度をとる必要があると考えております。  一方、近年の技術の急速な進展等に応じて、権利者と利用者の利益のバランスを適時適切に見直していく必要があると考えております。このため、近年のデジタル化ネットワーク化の進展等、社会の変化に対応した著作権制度のあり方について著作権審議会において従来から御審議いただいているところでありまして、その審議結果や、さらに国際的動向などを踏まえまして、著作権制度のより一層の改善を図ってまいりたいと考えております。
  32. 馳浩

    ○馳浩君 この点を具体的な事例をもってお聞きをしたいと思います。  五月二十七日に東京地裁で中古ゲームソフト販売に関する判決がありました。争点は中古ゲームソフトが映画著作物に当たるか否かでありましたが、映画著作物であればゲームソフトのメーカー側に頒布権が認められ、極端な話、メーカー側が中古ゲームソフトの販売を禁止できることになるという事件でありました。この日の判決は、中古ゲームソフトは映画著作物に当たらないと判決し、中古ゲームソフトの販売は適法としたのであります。  その判決理由はともかくとして、重要な点は、昭和五十九年のいわゆるパックマン判決以来、裁判所は中古ゲームソフトを映画著作物に当たるとしてきたわけであり、今回の判決はその流れと明らかに違う判決だと思います。文部省は今回の判決をどのように位置づけておられますか。
  33. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えをいたします。  今先生から御指摘がございましたように、五月二十七日に東京地方裁判所から、ゲームソフトは著作権法上の映画の著作物に該当せず、頒布権は認められない、こういう判決が出されたわけでございますが、本件は、ゲームソフトメーカーが中古ソフト販売店に中古販売を中止するよう警告したのに対し、販売店側がメーカー側を相手取って、メーカーに頒布権に基づく中古販売差しとめ請求権がないことの確認を求めて訴訟を提起したものでございます。ゲームソフトと頒布権との関係について初の司法判断を下した事案である、このように認識をいたしております。  この判決そのものにつきましては、ゲームソフトが映画の著作物に該当するかどうかにつきましては、今先生がおっしゃいました昭和五十九年の東京地裁判決以来、これまでは肯定する判例が多かったことに照らせば、これまでの流れとは異なるものであり、メーカー側としてもこれはさらに上告審で争う、こういうお話を聞いておるわけでございます。  なお、このゲームソフトと頒布権との関係につきましては、現在、大阪地方裁判所でも係争中の事案がございますし、実は東京地裁で、これとは別件でございますが、中古ソフト販売店が争わなかったために実質的な議論はなかったものの、メーカー側の主張が認められた、こういうような事例もございます。  いずれにいたしましても、今回の判決が判例として定着をしていくかどうかということは予断を許さないものがあると考えておりますが、この判決がゲームソフトの保護について一石を投ずるものであり、文化庁として各方面に対してどのような影響があるかを今注目をして見守っているところでございます。
  34. 馳浩

    ○馳浩君 注目をしておられる間に、そしてメーカー側の方はさらに争うという姿勢でございます。数年はこの争いが続くとなると、中古ソフト販売の方は、適法と裁判でも認められたのだからどんどん売りますよというふうになってくる。メーカー側は、新製品を開発するための開発費とか大変な努力をしてきたにもかかわらず、すぐ中古ソフトが販売されるようになれば、今までの開発費どないするのと、今後のことについて非常に不安が大きいと思うんです。  文部省としては、中古ゲームソフトが映画著作物に当たるという今までの一連の判決の流れを踏まえて、ゲームソフトメーカーと中古ゲームソフト販売会社の調整を進めてきたと思いますが、その具体的調整の中身、両者の話し合いの内容も含めてぜひ教えていただきたいと思います。さらに、今回この判決が出たことによって、これを変えていく方針かどうか教えていただきたいと思います。
  35. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 先生指摘のように、一方では、著作者の権利利益を適切に保護していく、これは必要不可欠でございますし、一方で、やはり安いソフトを入手したいとする消費者の利益にも配慮する必要があろうかと思っております。  したがいまして、何らかの形でゲームソフトメーカーと販売店の共存共栄を図る方法があれば、これは全体として文化を享受する国民の利益にもなるのであろう、こういうふうに考えておるわけでございまして、実はこれまでも、ゲームソフトメーカーと販売業者との間でゲームソフトに関する流通ルールづくりを行う、こういう動きが見られたわけでございます。最近では、一部のメーカーから、一定期間の中古販売禁止と、中古販売の利益を一部還元する、こういった具体的な提案が行われていると承知をいたしておりますが、現時点ではまだ解決策はまとまっていないわけでございます。  こういった動きの中で、しかしそういう考え方に同調しない販売業者の方々もいらっしゃいます。そして、今回の判決が最終的な司法の判断を示したものでないにせよ、関係当事者間による解決策を探る動きに少なからぬ影響を与えるのではなかろうか、そんなところを若干危惧いたしておるところでございます。
  36. 馳浩

    ○馳浩君 この点はまさしく企業間の対立の源泉でございますので、この調整をするのが文部省なのか、あるいは流通の問題でもありますから通産省なのか、どちらなのか私はわかりませんが、非常に注目をするとともに、特に文化庁としては間に入っていただきたいなと思っております。  今回の法改正で、映画著作物以外の著作物にいわゆる譲渡権が付与されることになりました。この譲渡権は、いわば映画著作物の頒布権と権利の中身は基本的に同じと思いますが、そうであるならば、今回の法改正でゲームソフトにも譲渡権が認められるわけでありますから、ゲームソフトのメーカーは、中古ゲームソフトの販売をこの譲渡権を行使して禁止することも法律上可能になると考えてよいのでしょうか。
  37. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 現行著作権法では、映画の著作物のみに頒布権が認められているわけでございまして、今回御審議をいただいております今回の譲渡権は、一度権利者の許諾を得るなどして適法に譲渡された場合には、その後の譲渡には権利が及ばない、いわゆる権利が消尽をする、こういうことを規定いたしておるわけでございまして、お尋ねのゲームソフトの中古販売は、これは消費者に一度適法に販売されたゲームソフトを中古ソフトとしてさらに販売するものでございますから、そのような場合には、権利が消尽をしており、今回新設をいたします譲渡権によって中古販売を禁止することはできないものでございます。
  38. 馳浩

    ○馳浩君 ちょっと資料を見させていただいたら、ゲームソフトの販売市場は、三割近くが中古ゲームソフト、七割が新製品のゲームソフト。今おっしゃっているようなことになると、中古ゲームソフト市場は一千五百億円近くあるんだそうですね、まさしくこれをさらに拡大することになってメーカー側は大変困るんじゃないかなと思います。この点は、先ほどから申し上げておりますように両者の利害関係が対立するところでありますから、より一層注目して調整に入っていただきたいなとまずお願いを申し上げておきます。  次に移ります。  仮に、中古ゲームソフトが映画著作物に当たらないとの判例が近い将来確定した場合、新たにメーカー側の利益も考慮しなければならないと思います。その方法は二つありまして、一つは、ゲームソフトにも映画と同様頒布権を認める立法的な解決策。しかしこれは、今回の判例が映画ではないと言っているのに頒布権を認めるのは判例の意にそぐわない立法であり、これは難しいと思います。そしてもう一つの方法は、中古ゲームソフトの販売の際に二次使用料を取る、あるいはこの販売を相当期間禁止し、期間経過後の販売を認める等の方法になると思いますが、恐らく先ほど申されたことが調整の中身だったと思います。  この点について、先の話であるかもしれませんが、文部省としてどう考えておられるか、もう一度お願いします。
  39. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 中古ソフト販売の問題につきましては、基本的には、ゲームソフトメーカーと中古ソフト販売店との利益調整をどのように図っていくか、こういう問題だろうと認識をいたしておりまして、一義的には、両者の共存共栄という観点に立ち、ゲームソフトメーカーと個々の販売業者との当事者間での話し合いによりまして一定のルールが構築されることを期待いたしておるわけでございます。  中古ソフト販売に際して二次使用料の支払いを義務づけるという手法、これも一つの考え方かと思いますが、現行のこの著作権の考え方として、こういうものに二次使用料の支払いを義務づけるということは、これまた議論のあるところであろうかと認識をいたしております。  いずれにいたしましても、文化庁といたしましては、こういった関係の裁判の動向でありますとか関係者の意見などもお聞きをしながら、中古販売による影響についてさらに実態把握も十分行い、適切な検討を引き続き行ってまいりたい、かように考えております。
  40. 馳浩

    ○馳浩君 まさしくこれは、知的所有権をいかに我々日本人が尊重するかという精神的な哲学にもなると思いますし、対立する企業間の調整になると思いますので、重ねて調整にとにかく入っていただくようにお願いしたいと思います。  次に移ります。  今回の法改正で、著作隣接権者であるレコード製作者等も含めて著作権者に譲渡権が創設されますが、この譲渡権は、国内で行使されると国際的にも権利が消滅する国際消尽の権利か、そうではなく、国内でしか権利が消滅しない国内消尽の権利か、教えていただきたいと思います。あわせて、そう考えた理由も教えてください。
  41. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  今回新たに認められるこの譲渡権につきましては、国内外を問わず一度適法に譲渡された場合には、その後の譲渡には権利が及ばない、いわゆる国際消尽の考え方をとっているわけでございます。  なぜこういった国際消尽の考え方を今回の改正に当たり採用したかというお問い合わせでございますが、一つには、今回のこの譲渡権の新設は、基本的にはWIPO著作権条約を批准するために必要とされる国内法の整備を図るものでございまして、条約上の義務は、国際消尽する譲渡権を規定するものである、こういうふうに理解をいたしております。  また、国内のみならず、国際的にも著作物等の円滑な流通及び取引の安全を確保する必要性が高い、こういったことにかんがみまして、今回、国際消尽の考え方を採用したところでございます。
  42. 馳浩

    ○馳浩君 この譲渡権が国際消尽する権利であると次のような問題が生まれます。  日本レコード会社が中国を初めとするアジア諸国にレコード原盤の使用許諾、ライセンスをした場合に、アジア諸国はこの原盤を使って日本レコードを生産して日本に輸出して販売することになります。いわば日本レコードの逆輸入盤が登場するのです。しかも値段が、日本盤が二千五百円から三千円だとすると、逆輸入盤は大体五百円くらい。これでは日本レコードが売れなくなるのは火を見るより明らかであります。そこで、日本レコード製作者は中国等にライセンスを与えるのを現在ちゅうちょしている状況です。  この問題が解決されない限り、音楽業界の経済的な海外進出を初め、日本音楽文化の国際交流、発展ができなくなってしまうのではないかというおそれがあります。この事態を文部省はどうお考えですか。
  43. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 権利者が安い並行輸入品として逆輸入されることを心配せず、安心して著作物を国外で流通に置くことができるように、譲渡権につきまして国内消尽の考え方をとり、国外で既に適法に譲渡されたものであっても、さらに国内で譲渡される場合には譲渡権が行使できるようにすべきとする、そういう意見が日本レコード協会を初め関係者から出されていることは私どもも十分に承知をいたしております。ただこの問題は、日本文化をアジアなどの諸外国に積極的に紹介していくこととの関係だけではなく、現在、欧米等から多くのレコードを輸入しておるわけでございまして、こういった欧米等からの輸入盤の流通に対しても大きな影響を与えるものでございます。  したがいまして、そういった一面だけをとらえて性急な結論を導くことは必ずしも適切ではないのではなかろうか、今後、国際文化交流が有します今申し上げましたような二つの側面もあわせて慎重に検討していく必要があるのではなかろうか、こういうふうに考えております。
  44. 馳浩

    ○馳浩君 この問題の立法的な解決策として、譲渡権の国際消尽を前提とする限りにおいて、輸入コントロール権を創設することが考えられます。この輸入コントロール権は現時点でも相当数の先進国が導入していると伺っております。日本でも十分考えられる手段と思いますが、いかがでしょうか。
  45. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  先生指摘のとおり、先進国の中には、例えばアメリカのように輸入権を認める国でありますとか、イギリスやドイツのように、これはEUの共同体内消尽の考え方を採用いたしまして、EU外からの輸入について著作権者権利を認める国があるわけでございますが、今回、私どもが考えておりますこの著作権法改正に当たりまして国際消尽の考え方を採用しておるわけでございますけれども、これは先ほども申し上げましたとおり、国際的にも著作物の円滑な流通並びに取引の安全を確保する必要性が大きいということと、それから経済団体を初めといたしましていろいろな関係団体からも国際消尽の考え方を支持する、こういう意見が表明された、こういったことを踏まえましてこういう考え方をとったわけでございます。  なお、この問題につきましては、平成十年十二月の著作権審議会第一小委員会の審議のまとめにおきましても、「他の知的所有権制度との」、これは特許権、工業所有権等でございますが、「バランスや諸外国の動向等を踏まえ、さらに検討していくべき課題であると考える。」、こういうふうな御提言もいただいておりますので、今後さらに引き続き検討してまいりたい、かように考えております。
  46. 馳浩

    ○馳浩君 ならば、問題となっている日本レコードの逆輸入盤のみを対象とする輸入権の創設は無理なのか、教えていただきたいと思います。  さらに、輸入段階での規制は無理としても、輸入後、国内販売の際に何らかの販売規制、例えば日本盤販売の時点から一定の期間販売禁止にするなどの規制ができると思いますが、この点はどうでしょうか。
  47. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  お尋ねの問題でございますが、レコードの保護につきましては、内国民待遇の原則によりまして、日本人のレコードと外国人のレコードとを同等に保護していくことが原則になっておるわけでございます。したがいまして、著作権法におきまして、日本レコードのみを対象として輸入権を認めたり、あるいは輸入後の国内販売の際に販売規制を行うなど特別な取り扱いを行うことは、これは困難なものと考えておるところでございます。
  48. 馳浩

    ○馳浩君 私は以上、中古ゲームソフトの販売、あるいは日本レコードの逆輸入盤について質問いたしました。同じ中身の製品の二次販売が問題ということであります。二次販売市場が大きくなり過ぎて、メーカー側が製作や開発に投資した巨額の資本を回収できない事態に陥っております。これを放置しておいては、どの企業も、毎年高くなる開発費を考えると新しいものをつくらなくなってしまう、ひいては、知的創造物を生み出して世界経済で生き残りをかける日本として、日本の姿勢そのものを後退させてしまうことになるのではないかと思っております。  これは一面、著作権問題でありますけれども、産業政策、流通政策にかかわる問題でもあります。この点、通産省としてどのようにお考えかお聞きして、私の質問を終わります。
  49. 江崎格

    政府委員(江崎格君) 私どもとしましては、著作物の円滑な流通利用ということと、それから著作権者などのその権利の保護をうまく両立させるということが、著作物をつくり出す産業ですとか、あるいは著作物を販売する流通産業、この双方の発展を図るということと、それから消費者が著作物を十分享受できる環境をつくるために、先ほど申し上げた二つのことをうまく両立させるということが非常に重要だというふうに思っております。  先ほど来御議論になっております中古ゲームソフトですとか、あるいはレコードの逆輸入などの著作物の二次販売の問題でございますけれども、これも、著作権者の製作費の適正な回収の必要性ということもございますし、それからまた消費者の所有権、これをどの程度制約できるのかという問題もございますし、それから販売業者のビジネスチャンスというものを尊重する必要があるということもあるわけでございまして、こうしたさまざまな立場からいろんな考え方がございます。  私どもも、こうしたいろいろな立場の議論を踏まえまして、基本的には関係者の間でみずからビジネスの枠組みをつくるということが重要だというふうに思っております。例えばその枠組みというのは、先ほども先生指摘ございましたけれども、例えば契約によって著作物利用の仕方を規定するというようなことも考えられますし、それから著作物の視聴とかコピーというものを制限するという技術的な措置を施すということによっても一部可能だというふうに思います。  ただ、いずれにしてもこういうことの前提として、海賊版などが蔓延しましてこうした努力を無に帰すということはあってはならないわけですので、海賊版を例えば税関できちっと差しとめるとか、それから著作物の違法の利用をきちっと取り締まるということは大前提だというふうに思っております。その上で、著作物流通業者ですとかあるいは著作権者、こういった関係者の間で、著作物の円滑な利用著作権などの権利の保護とのバランスがとれたビジネスの枠組みというものがつくられていくように、私どもとしましても、今後、文化庁を初め関係省庁と十分連絡をとりながら対応していきたいというふうに思っております。
  50. 馳浩

    ○馳浩君 終わります。
  51. 江本孟紀

    江本孟紀君 民主党の江本でございます。よろしくお願いします。  今回の改正案は全会一致で皆さん賛成ということでありまして、前回の委員会での参考人質疑、今までの御議論も含めると、どうも著作権料を取る方の立場だけでずっとお話をしているような気がしましたので、私は、ちょっと立場を変えて、きょうは取られる側の方の立場から少しお聞きしたいと思います。  いずれにせよ、マルチメディアの進展や、さまざまなコピーガードキャンセラー等の開発に対応するためにも、法整備ということに関しては大いにやっていかなければいけないということで、法案には賛成しておるんですけれども、やはり取られる側の人たちにも十分理解をしてもらわなければいけない。そういう意味では、この改正を機にもっと啓蒙活動とかそういったものをすべきではないか。徹底してやらないとなかなか理解を得られないんじゃないか。  先ほど世耕先生からお話があったようなMP3等について、機械類に関してはなかなか一般的には理解しにくい。我々の年代以上になりますと、携帯電話でさえもスイッチを入れるか外すかぐらいしかできないわけですから、なかなか難しいところがあって、そういうことばかりを強調してもなかなか理解を得られないということでありますので、ぜひとも、啓蒙活動というのはわかりやすく。これは考えたら、取る方、取られる側というような観点で見られるケースがあるわけです。  そこでまず最初に、今度の改正そのものにつきましては、附則第十四条というのが一つ大きな法案の趣旨だと思いますけれども、私は、この附則第十四条の廃止自体は問題ないと思いまして、遅きに失したというようなことを感じるんです。  そこで、通称JASRACは、店舗、ホテル、旅館、こういったところから演奏料を徴収できるということにこれからなるわけですけれども、これについて、この前の参考人質疑のときにも私はいろんなケースをお聞きしまして、先ほどもちょっとお聞きしたんですけれども、学校等は徴収しないということに決まっていますが、その他にもいろんな状況というのがあると思うんです。  例えば、またプロ野球の話で申しわけないですけれども、キャンプなんかで一日じゅう音楽を流すんです。あれは営利でもないんですね、単なるファンサービスというか。一日じゅうお客さんがぼうっと野球を見るのも退屈だろうというので音楽を流したり、それから選手も何となくリズムに乗って練習ができるとか、あれは一カ月間流しっ放しになるわけです。  そういうところもあるんですけれども、いろんなケースがあって、それを全部徴収していくというのはJASRACの方も大変だと思います。しかし、取られるということで大きな部分でいうと、店舗やホテル、旅館というのが一番メーンになっているわけです。  そこで、具体的なそういったところからの徴収方法、それから、これも一応は出ていますけれども徴収料の積算根拠、それから、そういうことによっての徴収料の見込み額、それから配分方法、こういったものについて少し御説明をいただきたいと思います。
  52. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 今回の附則十四条の廃止によりまして今後新たにJASRACの管理対象となるものは、JASRACの調べでは、一つはCD等を用いてレコード演奏をしている施設が約九万件ございます。それから、有線放送を音源とする店舗等が約百十二万件ある、このような推定をいたしておるわけでございまして、このうち、有線放送を用いるものでありますとか、CD等を用いてBGM用に製作されたテープを用いる場合につきましては、有線音楽放送事業者でありますとかBGM事業者が利用者分を一括して使用料を支払う、いわゆる元栓処理によって使用料を徴収する予定にいたしております。この結果といたしまして、個別の施設が個々にJASRACと契約をし、JASRACが使用料を徴収するケースは約六万五千件程度になるのではなかろうか、こういうふうに思っているわけでございます。  その使用料の額でございますが、この使用料は仲介業務法という法律によりまして文化庁の認可に係ることになっておるわけでございまして、今回の著作権法改正をお認めいただきますならば、その後JASRACと利用者団体が協議の上、文化庁に使用料規程の認可申請が出されることになるわけでございますが、この間の参考人質疑でも利用者側の団体等からもいろいろお話がありまして、こういった厳しい経済状況の中で使用料をできるだけやはり低額にしてほしい、こういった要望が大変強かったわけでございます。  そこで、文化庁といたしましては、この法案提出に際しまして直接いろんな利用者団体とお話し合いを申し上げてまいりました。その際、一応の文化庁の基本的な考え方をお示しいたしたわけでございます。  その中では、先ほど申し上げました元栓処理によって処理をする、これが大体九五%になろうかと思っております。この場合には営業収入の一%以下、現在最大手の有線放送事業者の場合で申し上げますならば、店舗は一回線当たり月額六千円の有線放送加入料を支払っておるわけでございますから、その一%以下、これがこの間来お話にございます月額六十円というお話でございますが、それ以下に抑える。あるいは個別の処理によって徴収する場合には、これはやはり手間暇もかかるわけでございます。これはホテル、旅館、あるいはお店の面積でありますとか宿泊定員によりまして区別を設けることといたしておりますが、多くの場合には月額五百円以下になろうか、こんな基本的な方針を示したわけでございます。  これは、先ほど申し上げましたように、利用者に過大な負担をかけないという観点からそういった上限金額を設けたわけでございまして、実はJASRACのほかの著作物の使用料と比べましても大変安い、低廉な金額になっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、これに基づきます徴収額は、今後、この法律改正後のJASRACと利用者団体側との協議によりまして実際の使用料額が決まっていくわけでございますから、これによりましてどれだけふえるかということはまだ明確ではございませんが、先ほどの上限をとって仮定をいたしますならば、おおよそ最大で九億円程度のJASRACの増収になるのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。  なお、分配のお話でございますが、原則として、これはほかの場合もそうでございますが、サンプリング調査により分配をすることといたしております。有線放送事業者やBGM事業者がいわゆる元栓処理で支払った使用料につきましては、録音使用料につきましては特別の実績が出ますのでその分配資料を活用し、有線放送使用料の場合にはサンプリング調査になろうかと思いますが、そういった分配資料を活用する、こういうことで今検討をJASRACの方でいたしておるところでございます。適切に対応してまいりたいと思っております。
  53. 江本孟紀

    江本孟紀君 次に、関連してですけれども、このJASRACという団体、社団法人日本音楽著作権協会ということでございますが、法人ということでいいますと、プロ野球の出身者が昨年設立させていただいた社団法人というのがありまして、私も少しかかわったものですから、社団法人という意味ではJASRACの方とスケールは違いますけれども非常に似たようなところがあって、参考の意味でこの組織のことについても多少お聞きをしたい。  この法人はもちろん文化庁の管轄下にある公益法人ということでございますが、平成八年に閣議決定されました公益法人の設立許可及び指導監督基準ということに照らして、JASRACという機関について少しお尋ねしたいと思います。  まず、健全な管理運営ということは非常に大事になってくると思いますが、その中で理事の選任、これは「同一の業界の関係者が占める割合は、理事現在数の二分の一以下とすること。」になっておりますけれども、これは守られておるのでしょうか。  それからまた、「常勤の理事の報酬及び退職金等は、当該法人の資産及び収支の状況並びに民間の給与水準と比べて不当に高額に過ぎないものとすること。」というようなことがこの基準の中には書いてありますので、そのような状況と比べていかがでしょうか。  なぜこういったことをお尋ねするかといいますと、先般、参考人でおいでいただいた遠藤会長がJASRACは非常に質素な団体であるということを力説されておりましたし、そこへもってきて音楽に関する著作権の独占団体ということでもありますので、当然、健全な運営がなされているとは思います。そこで、少し確認をする意味でお尋ねをしたいと思います。そこまでよろしくお願いします。
  54. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 二点あったかと思います。  まず第一点目のことでございますが、先生指摘になりました平成八年の公益法人の設立許可及び指導監督基準におきましては、理事について、「同一の業界の関係者が占める割合は、理事現在数の二分の一以下」、こういうふうに定められておるわけでございます。  現在、JASRACの理事は総員二十六名でございますが、その構成は、作詞家、作曲家で十三名、音楽出版者が七名、元職員が三名、学識経験者が三名、こういった多様な構成となっておるわけでございまして、先ほどの公益法人の設立許可及び指導監督基準は満たされている、このように考えておるわけでございます。  第二番目の役職員の給与、退職金の民間比較等でございます。  まずJASRACの職員の給与水準でございますが、日本経営者団体連盟、日経連がまとめました定期賃金調査というものがございます。この各年齢の所定労働時間内賃金と比較をいたしますと、一般職員の場合は日経連平均を若干上回る程度であるのに対しまして、管理職の場合につきましては、これも比較の方法にもよるんだろうと思いますけれども、やはりやや高い水準になっているのではなかろうかなと、こんなのが率直な感じでございます。  また、役員の給与水準でございますが、これもまた民間と正確に比較するデータがないわけでございますけれども、各省の指定職でありますとか政府系特殊法人の役員に比べますと、これもまた高目の水準になっているということは事実であろう、こういうふうに認識をいたしております。
  55. 江本孟紀

    江本孟紀君 また野球の話をして申しわけないんですけれども、プロ野球の出身者というのが全国に四千名以上いるんですけれども、その半数以上が加盟して社団法人を設立させていただいたんです。その中の組織図でいいますと、理事長から理事も全員無給でやるという団体で、営利事業というよりも、とにかく野球の振興のためにとかいうようなことで皆さんが無報酬で頑張っている。早く理事にも高額な給与を上げられるように、参考にして頑張りたいと思います。  そこで、給与、これも高い安いというのがどの程度かというのは私らも判断がつきませんけれども、そういったことによって変な批判をされないようにされた方がいいのじゃないかということであえてお聞きしたんです。  それから次に、このJASRACの扱う予算は、先般の参考人のときにも話が出ましたけれども文化庁の予算よりも多い金額を扱うわけです。音楽関係著作権を一手に引き受けてやるわけですけれども、しかし、利益を追求しない団体であるという理由だけで独占していることがいいのかどうかという問題は、先般、参考人として意見を述べられた全国環境衛生同業組合中央会理事長の森茂雄さんも指摘をされておりました。  そのときにも、ことしの二月に突然、附則十四条の撤廃の話が出たというようなことを言われておりまして、そこで何となく不満そうな感じで森さんも言っておられたんですけれども、交渉相手がJASRAC一カ所だけというのはおかしいんじゃないかというようなことを言っておられたんです。  この二月に突然、森さんのところにお話をしたということと、それからJASRACのような組織がもうちょっとあってもいいんじゃないかという声もあるとは思うんですけれども、その点について文化庁はどのようにお考えでしょうか。
  56. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  多少弁解じみたことになって恐縮でございますが、一つ目の二月云々の話でございますが、この附則十四条の問題は、究極的には、廃止後の使用料の徴収方法をどうしていくのか、あるいは使用料の額をどうしていくのか、あるいは使用料の徴収の実施時期をどうするのか、これがポイントになるであろう、こういうふうに予測をいたしたわけでございます。  そういうことで、直接の当事者でありますJASRACと全国環境衛生同業組合中央会との協議を推進するのが適当ではないか、こういう判断のもとに昨年の暮れから私どもは両者の協議を見守っていたわけでございます。その結果として、文化庁として、中央会、その構成団体へ、特に森理事長のところへ正式に説明に行くのが本年の二月十九日となったということでございます。こういったことが結果として利用者団体の混乱を招いたとすれば、私どもとしてもこれは素直に反省せざるを得ない、こういうふうに思っておるわけでございます。これが第一点のお答えでございます。  第二点目の問題でございます。著作権管理団体のあり方の見直しでございますが、著作権管理団体の設立要件を緩和し、例えば音楽の分野であれば複数団体化をもっと積極的に認めるべきではないか、こういう意見があることを私ども承知もいたしておりますし、そういうことで、著作権審議会におきましては、こういった音楽著作権の集中管理を規制しております仲介業務法、このあり方も含めまして現在検討をお願いしておるところでございます。この検討結果を踏まえまして、法改正を含め適切な措置を講じてまいりたい、このように考えているところでございます。
  57. 江本孟紀

    江本孟紀君 今のお答えによりますと、将来的にはあり得るというふうにとってもよろしいでしょうか。
  58. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) これはまだ現在、著作権審議会で御検討中でございます。ただ基本的な方向は、規制緩和の方向で今御議論が進んでおると思っております。  ただ一方では、そういった一つの集中的な管理団体があることによるメリットも大きいわけでございまして、複数化のデメリット、こういったものも十分慎重に考えていかなければなりませんし、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今JASRACは、作詞・作曲家の音楽著作権のすべての信託を受けている、あるいは受けない、オール・オア・ナッシングな世界でございますけれども、ある特定の権利だけの信託を受けるとか、もう少し権利者の選択の幅を広げていったらどうだろうか、こんなような議論もあるわけでございます。  そういったことも含めまして現在、著作権審議会で御議論いただいておりますので、その検討結果が出ますならば、これもまたいろんな関係する方々が多岐にわたるかと思っておりますので、私ども今回はまたさらに、前広にいろんな方々の御意見を聞きながら適切に対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  59. 江本孟紀

    江本孟紀君 次に、理事の構成で、所管する官庁の出身者という観点からお尋ねをいたします。  JASRACには、本省庁課長相当職以上を経験された方、いわゆる親元省庁が当該法人を所管する官庁の出身である方、退職後十年未満の間に当該法人の理事に就任された方はおられますか。もしおられるようでしたら、その方の現在の役職等についてお教えいただきたいと思います。お一人だけということであれば、所管する官庁の出身者が役員に就任したことにより、当該法人が所管する官庁と一体となって活動し、実質的な行政機関として機能するなどという危惧は全く無用だと思いますが、その点について少しお聞きしたいと思います。
  60. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 現在、日本音楽著作権協会の役員にお一人、文部省のOBがいらっしゃいますが、この方は、文部省在職中は課長職以上の職にはなかったものと認識いたしております。
  61. 江本孟紀

    江本孟紀君 こういうことを聞くというのは、もっと時間があればたっぷり聞きたかったんですけれども、先ほどから言っていますように、取られる側からしたら焦点が全部JASRACの方へいきますから、やはりそういう意味でこの組織が世間から誤解を受けないような組織であっていただきたい、そういう思いで私は質問しているわけです。  特に、先般の参考人質疑のときに、私はあの遠藤実先生お話を聞いて本当に感銘いたしましたし、すばらしいお人柄です。しかし、全国環境衛生同業組合中央会理事長の森さんは、その御不満を、本当はこうじゃないのに、こんなの取られたくないのにと思っているのに、要するに遠藤会長の人柄でオーケーした、こういうことを言われたんですね。私は、それはちょっとおかしいんじゃないかと。お人柄ということは、本当は法律的に私ら不満なんだけれども、人柄でこれはオーケーしちゃったんだというように聞こえたんです。でも確かに、会長のお人柄ということによって何となく、大きな反対をする組織が、やはりそれだったら協力しよう、私たちも国際的に著作権のことについては理解しましょうというようなことがあったと思うんです。  こういったすばらしい会長がいる組織を、大勢の職員の方も含めて、もっと広く一般に理解されるようなサポートの仕方を私は大いにすべきじゃないかというふうに思うわけです。  そこで再度、文化庁としてはこのJASRACに対してそういった面も含めてどのような御指導をされていかれるのか。それから、大臣にこの御感想を聞いて、私の質問を次の石田議員に譲りたいと思います。よろしくお願いします。
  62. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 先生もおっしゃるとおり、JASRACは大変多くの金額を利用者等からいただき、それは基本的には著作権者に分配をしておるわけでございます。いやしくも社会からそういったことで批判を浴びることがないように、特に、これまた公益法人でございますので、私ども十分に、公益法人としての立場からさらに適切な管理運営がなされていくように、必要に応じて指導もし、また助言もしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  63. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) ただいま次長がお答え申し上げたとおりでございますが、日本音楽著作権協会すなわちJASRACは、音楽著作権に関する使用料の徴収・分配業務を行う団体であると同時に、公益法人でもございます。広く公共の利益を実現するための事業を積極的に実施し、同協会に対する社会的信頼を高める必要があると考えております。  この協会は、平成九年度から定款改正を行って著作権思想の普及や文化振興のための文化事業を開始し、平成十年度からは会費制を導入して、会費や関係団体からの助成金などを原資にして文化事業を実施しておりますが、今後は、事業内容の見直しに努め、文化事業の一層の充実強化を努めることが必要であろうと考えております。  文部省といたしましても、この趣旨に沿って同協会を指導してまいりたいと考えております。
  64. 江本孟紀

    江本孟紀君 終わります。
  65. 石田美栄

    ○石田美栄君 著作権法には直接関係ないのですが、ちょっと急を要するなという課題がございまして、急遽十六分とらせていただきました。  実は、アメラジアン、国際児の教育権については、三月五日に文部大臣への要請が出ていると思いますし、沖縄の県教育委員会に対しても公開質問状が出されました。三月九日のこの委員会で松あきら議員が質問されました。そして、そのときに辻村初等中等教育局長は、「アメラジアンスクールにつきましては、いわゆる民間の教育施設というふうに判断せざるを得ないと思います。」という答弁をされていると思います。その後、沖縄県教育委員会に対して何か指導なさいましたか。また、何か県教委の方から問い合わせがございましたでしょうか。
  66. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 私どもお伺いしているところでは、先生初め国会議員の先生方が沖縄においでになってじかに御調査いただいたとお聞きしているわけでございます。  全体の取り扱いにつきましては、現地でもお聞き及びかと思いますけれども、沖縄県教育委員会を中心に誠意を持って調査あるいは対応策を検討しているところでございまして、私どもはその対応を見守っている段階でございます。
  67. 石田美栄

    ○石田美栄君 三カ月近くも松議員が質問されてからたつんですが、現実に何の進展もないようでございます。  しかし、このアメラジアンスクール・イン・オキナワは、昨年六月に開設されてやっと一年を迎えようとしているにもかかわらず大変な反響があって、学籍のある公立の小学校、中学校だけでも四市町村にわたって、現在三十人の児童生徒が通っております。  実は、先ほどおっしゃいましたように、民主党は昨日現地に行ってまいりました。これは宜野湾市にあるのですが、私も行ってみて、沖縄というのは、ガイドラインだの基地の問題、今度サミットが開催される、そういう大きな問題では随分議論がされているんですが、そこの特殊な環境の中で生まれてきて成長している子供たちの部分には非常に問題があるなというのも肌で感じました。  このアメラジアンスクールというのは、ある人の善意でやっと小さい家を借りることができてやっているんですが、四つしか部屋がありません。いわゆる三Kの家でございます。四つのクラスがありまして、幼稚園のクラス、低学年は小学校一年から二年生、中学年クラスが三年生から五年生、そして高学年ということで六年生から中学三年生の四つのクラスです。一つは、それこそ台所のあるところが一教室、その奥に一部屋、二階に二部屋あって、四つの部屋で三十人が、古い机と、どこかから拾ってきたようないすです。  子供たちは、帰るときには帽子を深くかぶって、高学年、中学生なんかに当たる子供たちは、自分の中学校の前を通るときには車の中で影を潜めて帰っていく。しかし、来ている子供たちは、やっぱり学校に来るのがいいのか、生き生きとまではいきませんが、でも非常に一生懸命勉強している姿を見ました。ある子供なんかは、隣の市から四キロ毎日歩いてきているという子もございました。  これは何とかしてあげられないのか。施設についてもそうでありますし、これが今、不登校児なんかの民間の委託施設として認められれば研究委託費が受けられるといったようなことも、十一年度からですか、文部省はそういうこともされているという中で、特に沖縄という特殊性で、こうした何らかの財政的な援助、あるいは民間の施設として認めるような方法はないのかというふうに思いました。  現在は、子供たちの親から授業料を取り、施設等々については民間からの支援資金を募集していまして、三千円の年会費の振込用紙を私ももらってまいりましたが、そういうことで何とかみんなでやっているという状況でありました。  沖縄県では不登校児が現在千三百八十二人というふうにおっしゃっていましたけれども、県教委の方は、認められている民間施設はゼロだとおっしゃいました。県教委の方は、卒業認定というのは校長とか市町村が行うんだから、一人一人の子供について施設と学校とで話し合うことなんだとおっしゃるんですね。この場合は宜野湾市だけではなくて一帯に広がっている。学籍のある子ばかりではありませんから、子供たちの事情をお話ししているととても長くなりますので、県教委の方はそういうふうにおっしゃるし、校長先生は県教委が認めないからということでずっと来ているようです。どこも責任を今のところとっていないのかな。  宜野湾市の議員さんたちは、これを民間施設として前向きに取り組むように進めたいとおっしゃっていましたけれども幾つもの市町村にわたっているという。私は、こういうことは県の判断でやれるんだと思うんです、財政的な援助についても。教育については県の教育委員会にかなりの権限が渡されている、そのことも申し上げました。でも県教委の方たちは、ずらっと並んでおられましたけれども、非常に無関心、冷たい。私たちがほかの話、国歌・国旗の話とか三十人学級の話をしましたら一斉に顔を上げられて笑いながら話をされるんですが、これが沖縄の複雑な気持ちなのかなというふうには思いました。  現実にこういった子供たちが何人いるのかという把握もできていないようですけれども、こうした民間の教育施設として認める、あるいは何らかの沖縄の特殊性も加味した財政的な援助というふうなことはできないんでしょうか。私は、文部省がちょっと県教委に助言、あるいは何かをされることで進むのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) これは、先生がお心を痛めていらっしゃるように、たまたま二重国籍の子供たちではありますけれども日本人でもあるわけでございますので、私どもも心を痛めているところでございます。背景には、先生もおっしゃいましたように、沖縄の残念ながら不幸な歴史と、それから、若干言葉が過ぎるかもしれませんが、無責任なアメリカ人たる父親が養育しない責任と、その犠牲者たる子供たちの存在があるわけでございます。  これは、かねがね国会でも御論議ありましたように、アメリカ人の各外国でのこういう件につきまして、児童扶養義務を一定の協定によって双務的に結ぶ取り決めの可能性がないわけではないのでございますが、外務省と厚生省に御相談したところ、日本の場合に法制が整っていないということで、アメリカ人の父親からの養育費の支払いを受けることができないという状況が一つございます。  それからもう一つ、何らかの援助の仕組みということなのでございますが、これは先生御承知のように、憲法八十九条がございまして、公の支配に属しない教育の事業に対して公金を支出できないという大原則がございます。したがいまして、一定の学校法人等の場合は別として、全くプライベートなこういう教育施設についての公金の支出というのがなかなか難しいのでございます。  したがいまして、県なりがお考えいただいている、あるいは私どももそういう方向でむしろ解決できればなと思っておりますのは、今のところ全く無認可の自由な教育施設なのでございますが、これを各種学校なり専修学校という形で一定の法的な整備をさせていただければ、自治体からの御援助の道が開ける可能性があるということで私ども考えているところでございます。
  69. 石田美栄

    ○石田美栄君 やっぱり今の御答弁にも県教委の方と接したときと同じような冷たさを感じるんですが、二重国籍の子ばかりではありません。日本国籍を持っている母子家庭の子もいますし、軍属を退いた父親のいる子もいますし、現に学籍をきちっと持った子も三十人の中に十一人はおりました。ですから、二重国籍というふうなことで、無責任な父親ということだけでは解決できない。もっとこの内情を知っていただきたいと思うんです。  日本の国籍を持っているその十一人の子供も、幼稚園の子が案外多いのでびっくりしたんですが、想像がおできになるように、学校に行けばヤンキーゴーホームと言われたり、英語が少し不自由であれば、何で英語ができないのかと言われるし、日本語が不自由であればそれなりにいじめられる。ですから、二重国籍だけではありません。どんな事情があるにしても、日本に住んでいて、日本の戦後のいろんな事情を抱えた地域で生まれた子供たちに責任はないといいますか、子供たちの義務教育の権利は保障しなきゃいけないと思うんです。  いろんな事情のはざまで、義務教育を受ける権利も保障されないままに学齢期を過ぎて、そのまま社会にほうり出されていった人たちも過去にかなりいるようです。その子たちが今どうなっているのかといった実態調査、あるいは、そういったことが現在どういう状況にあるのかということについてすら県も国も、どうなんですか、多少把握しておられるんでしょうか。あるいは何らかの調査をなさる気持ちがあるんでしょうか。あるいはそれに対して何らかの対処をお考えなんでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  70. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 実態調査につきましては、沖縄県教育委員会の方で昨年行っております。ただ、御案内のとおり、自分が、あるいは自分の子供がアメラジアンであるということを必ずしも公表したがらない方々もいらっしゃるわけでございまして、そういうプライバシーの問題もある中で、沖縄県の調査で気を使いながら調査したようでございます。  米軍基地内等の教育施設に就学している重国籍者等については、約百七十人ぐらいという昨年五月現在の調査がございます。ただ、いわば先ほど申したような、あえてそういうことを公表したがらない方など相当いらっしゃるのではないかということが推測されてございますが、その全体の把握についてどういう形でどう調査すればいいのか、さらに今沖縄県教育委員会で御検討中と承知してございます。
  71. 石田美栄

    ○石田美栄君 県教委の方は、調査はしていないとおっしゃいました。でも、今基地内の施設に通っている二重国籍でも百七十人くらいいるとおっしゃいました。  今、基地外でいろんな形で母子家庭等々、プライバシーはある、でもそれは非常に複雑な中で、はざまでみんなが無関心で見逃している。名字を見ただけでもわかりますし、見ただけでもほとんどわかりますよね。そういう実態があるわけです。十一人学籍があるということは、きちっと国籍があるはずです。ほかの国旗・国歌のことなんかについてはきちっと指導されていて、沖縄は一〇〇%オーケーだときのうおっしゃいました。国旗・国歌については大丈夫だ、実施できていると、そう胸を張っておっしゃいました。  ですけれども、こういう子供たちのことについては、みんなが譲り合うというか無責任。国のちょっとしたプッシュがあればと思います。また今後ほかの党の方も視察に行かれたりで、このことについては急を要するという面があるようです。来ている子供たちは、公立にも学籍のある子だって十一人います。その子たちが出席扱いになればもっと胸を張って……。  やっている学習は非常にバイリンガルというか、きのうはちょうどベテランズデーで、メモリアルデーで基地は全部休んでいました。あるクラスを見ますと、アメリカ人の先生ですけれども、きょうは何の日かを日本語でも勉強し、それから英語でもやるというふうなことを並行しながら、子供たちも楽しくやっていました。  こういうことも含めて、ぜひ民間の教育施設として認めて、それに沿ったカリキュラム、教育内容にしていこうといろんな努力をされているようですので、民間の教育施設として認めるように県教委をちょっと指導していただけたらと。私、県教委のああいう人たちでは何もしないんじゃないかと本当に腹立たしい思いをしたのです。  財政的なことも何らかの方法を考えてください。沖縄は特殊事情もありますし、委託費というふうな範囲でもできます。ぜひ文部省も現地を見に行ってくださると、県教委も行ってくださるといいと思うんですけれども、お願いしたいと思います。  そして、最後に文部大臣に。こういう国際教育についてですけれども、今は何か一つの言語、文化を基軸にして、それにプラスほかの言語あるいは文化というふうな方向ですけれども、今の国際的な状況を見ていると、日本語文化、日本語プラス何々語文化、何々語といったようなダブルの教育といいますかバイリンガル、そこに文化を含めた国際人教育の試みを日本でもやっていっていいんじゃないかというふうに思うんです。今の国際化だとかそういうところはそうではなくて、日本語を基軸にして英語を学ぶことで外に出ていくというものですけれども、ブラジルだとかペルーだとかの日系の人たち日本に来て就労して、そこで生まれる子供たち、地域によったら日本語の学校に通って、そしてポルトガル語、そういう現状もございます。  ですから、国際人教育の試みとして、特に沖縄のような特殊な環境の中でバイリンガルというかダブルの教育といったような実験をしてはどうかなと思うんですが、文部大臣、いかがお考えでしょうか。
  72. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 二つの点についてお答え申し上げます。  実は先日、私はアメラジアンスクールの方々とお目にかかりました。いろいろ事情をお聞きいたしました。先ほど調査の件がありましたけれども、これはアメラジアン関係者の方たちにお聞きしたわけではありませんが、県の方に聞いてみますと、プライバシーの問題というのはやはり難しいということははっきりしているようであります。そういうプライバシーをどういうふうに解決しながら調査できるか、これはまた非常に難しい問題だと考えております。  ただ、今いろいろ御指摘の点は私どもも大変心配をしております。不登校の問題ということは一般論としても大変重要な問題でございまして、中教審の答申等々も踏まえ、文部省としても不登校の子供たちに対して、まず一般論から申しますが、学校外の機関で指導等を受ける場合には、一定要件を満たすときは本籍校の校長の判断により指導要領上出席扱いとすることが可能になるようになっております。  アメラジアンスクールにおける指導等を不登校児童生徒と同様に出席扱いにするかどうかにつきましては、まず一般論といたしましては、当該施設が一定の要件を満たした上で、本籍校の校長が教育委員会と提携をとって判断することができるようになっております。ですから、この辺はぜひお話し合いをしてくださいということを私はお願いしているわけであります。  出席扱いの要件といたしましては、当該施設における指導等が日本の義務教育制度を前提としたものであるということ、これは日本人であれば特にそうでありますね。学校、教育委員会と十分な提携、協力関係が保たれていること、それから、当該施設への通所または入所が、不登校児童生徒の学校への帰属を前提とし、かつ児童生徒の自立を助ける上で有効、適切であるというふうなことを満たしていることが必要でございます。  アメラジアンスクールの子供たちにつきましても、このような要件を踏まえつつ、地元教育委員会、学校、アメラジアンスクール、保護者間において、一人一人の子供たちの教育の機会を確保する観点に立った取り組みが図られるように、私は大いに期待をしているところでございます。  現在、沖縄県においてさまざまな観点から検討を行っていると聞いておりますが、文部省といたしましては、沖縄県における検討状況を踏まえてどういうふうな対応が可能か今検討していっているところでございまして、できる限りの援助はいたしたいと思っております。  これがまず最初の問題に対するお答えでございます。私どもも大変心配をしているということは申し上げておきたいと思います。  それから二番目の問題でありますが、既にポルトガル語などを使ったところは随分あると思います。浜松等はかなりポルトガル系の、すなわちブラジルからのお父さん、お母さんが来ている。そのために子供たちがポルトガル語であるというふうなことがありまして、随分現地で苦労していると聞いております。  そういう意味では、二国語の教育ということは大いに結構だと思いますけれども、やはり日本というところでありますので、日本語を中心にした教育、その上で他国語の教育ということも大いに行っていきたいと思っております。  特に、日米の重国籍を有するいわゆるアメラジアンの子供につきましては、日本の国籍も有することから、その教育を受ける権利を保障することは重要なことと認識いたしております。このため、義務教育段階にあるこれらの子供は、我が国の小中学校に就学する機会が与えられているとともに、アメラジアンの場合でありますと米国籍も有することで、保護者の選択によっては米国の学校等で学習することも認められているところであります。  ただ、将来いずれかの国籍を選択しなければならないという事情があることから、その教育の問題は難しい課題だということはよく承知いたしております。  いずれにいたしましても、現在沖縄県においてこの問題を検討中と聞いておりますから、その検討結果を待って文部省としても適切な対応をとっていきたいと思っております。  もっと一般にバイリンガルのことでございますが、それは確かに国際教育の上で重要なことでございますので、より積極的にさまざまな手段で、例えば総合的学習の時間等々をより積極的に使うことによりまして日本語以外の教育を行っていくということは重要なことと考えております。
  73. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  74. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教・科学委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 松あきら

    ○松あきら君 午前中に引き続きまして質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  ある人が創作をした小説や音楽の作品をほかの人が無断で印刷をしたり出版をしたり、またその内容を自由に変えてしまったり、そういうことができるとすれば、知的労力を費やして創作しようという意欲が失われてしまうことになります。ですから、知的活動で生み出される著作物を保護することは文化を支える上でもとても貴重なものだと思います。今回の改正も年来の問題を一つずつ解決していくその一歩となると、芸術文化に関する者といたしましては非常に喜んでいる次第でございます。  まず、日本音楽著作権協会、JASRACについてお尋ねをしたいと思います。  平成九年に定款変更をして、平成十年より会費を徴収することになったと、先日参考人でいらしていただきました遠藤会長がそういうふうに説明をされたわけでございます。会費として集めたその資金で公益活動をすることになったということは、考えてみると、それ以前の三十年はそういうことをしていなかったのかなというふうにも思えるわけでございますけれども、社団法人としての公益事業について文化庁はどのような指導をしてきたんでしょうか。
  76. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えをいたします。  先生御案内のとおり、JASRACは音楽著作権の管理団体でありますけれども、一方では、公益法人として多くの方々の利益を実現するための事業を積極的に実施しなければならないことは言うまでもないことでございます。  JASRACは昭和十四年に創設をされたわけでございますが、従来は使用料の徴収・分配業務に徹してまいりまして、著作権管理以外の事業を実施していなかったというのが実態であったかと思います。  文化庁では、公益法人の事業のあり方の見直しが求められる中で、著作権審議会の使用料部会というところに著作権等の管理団体における事業のあり方の見直しについて検討を依頼いたしまして、平成四年三月に同部会から、JASRACは、著作権思想の普及や芸術文化の振興を図る事業を実施し、JASRACに対する社会的信頼を高めることが重要である、こういった趣旨の御提言をいただいたわけでございます。そして、この提言を受けまして、JASRACの業務の改善を指導し、先ほど先生が御指摘になりましたように平成九年に定款を改正し、平成九年度から文化事業をスタートさせたわけでございますが、さらに十年度からは会費制を導入いたしまして、会費でありますとかほかの団体からの助成金などを原資といたしまして現在文化事業を実施している、こういう状況でございます。
  77. 松あきら

    ○松あきら君 今お答えいただきましたように、昭和十四年の設立で、六十八名でスタートをしたというふうに聞いております。現在は一万人を超す、著作権を守る大きな組織に成長いたしたわけでございます。  先ほど江本先生質問をいろいろされておりましたけれども、この協会は、もちろん皆さんからそういう著作権のお金をいただいて、それをまた分配するという仕事をしているわけでございますけれども、じゃ、ここの職員は一体何人いるのかといいますと、役員が七名、職員が五百二十七名の五百三十四名いらっしゃるということで、先ほど給料等の問題も御質問いたしまして、一般は若干上回る、管理職は一般よりは高いかなというようなお答えでしたけれども、平均で計算しますと一人九百万円いただいているわけでございますね。平均で九百万ですからかなり高給じゃないかと、これは質問じゃないんですけれども、私も気がいたすわけでございます。  そこで、平均でこれだけのお金をいただいている。そうであれば、本当に作家に正当に支払われているんだろうか、そういう危惧が出てくるのも当然かなというふうに私は思うわけでございます。幾らだれに払っているかという資料を求めましても、やはりこれはプライバシーということでなかなか御提示いただけないわけでございます。プライバシーというものはもちろん守られるべきでありますから、一々、だれそれさんに幾らというのはできないといたしましても、私は、例えばどんな分野の何人の作家にこのように著作権料を払いましたという数字くらいは情報公開をしてしかるべきじゃないかと思うんですね。  例えば、演歌ですとかポップスですとか、あるいはクラシックでもダンスミュージックでもいいです。それが幾つの部門に分かれるのかというのもありますけれども、ある程度のそういう情報公開をすれば、じゃ、こういう分野が今売れているんだな、こういう分野が今売れていないんだな、そうするとこういう分野でこういう作家がまた違う作品を生み出してくれるかなと、著作権を取り巻く業界にもいろんな好影響を与えることになると思うんですね。そういう指導をすべきだと私は思いますけれども、いかがでございましょうか。
  78. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) JASRACの場合も情報公開に決して消極的なわけではないと思っております。例えば、使用料分配の多かった国内及び外国作品のベストテンでありますとか、国内作品のうち録音、カラオケ演奏のベストテンなどの情報を半期ごとに公表するなど、一定の情報公開を実施しておるわけでございますが、今先生から御指摘がございましたように、使用料の徴収・分配に係る統計資料の公開につきましては、信託者のプライバシーなどにも触れる重要な問題でもございます。どんな分野のといいましても、その年の、例えば演歌なら演歌、こういう分野でこれだといえばある程度また推測がされるというようなこともあるのかもしれません。  いずれにいたしましても、どの程度まで情報公開するかにつきましては、JASRAC内部において十分検討されることが必要だろうと考えておりますし、文化庁といたしましてもまた必要に応じて適切に指導をしてまいりたいと考えております。
  79. 松あきら

    ○松あきら君 多分そういうお答えかなというふうに思いましたけれども、今回の附則十四条の廃止、これについての江本先生の御質問のお答えの中でも、たしか近藤次長さんがお答えになった内容で、今回の附則十四条の廃止で最大九億円の増が見込まれるんじゃないか、この分配はサンプリング調査で決めているというふうにもお答えになったかなと思いますけれども、私は、今の業務が正当であるという文化庁の判断根拠、これをちょっと伺わせていただきたいというふうに思います。
  80. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) まず、基本的な仕組みでございますが、JASRACが利用者から徴収いたしました使用料は、一定の管理手数料を控除した上で各権利者に分配をしておるわけでございます。この分配は、演奏でありますとか放送、録音など著作物利用態様ごとに、分配の時期でありますとか分配の計算方法を著作物使用料分配規程、これはJASRACが定めておるわけでございますが、この規程に基づき行っておるわけでございます。  なお、この規程は、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律、仲介業務法と略しておりますけれども、この仲介業務法に基づきまして文化庁長官の許可に係らしめているわけでございます。そういう意味では、一応こういう分配規程の制定ないし変更につきましては文化庁がチェックを行っている、こういうことが一つございます。  また、実際の業務でございますが、仲介業務法に基づきまして毎年、業務報告書でありますとか会計報告書の提出が義務づけられているわけでありますけれども文化庁におきましては、提出をされましたこういった書類をもとに、あるいはまた必要に応じまして担当者から資料の御提出をいただき報告を受けるなどしてJASRACの運営の把握に努めている、こういうことでございます。
  81. 松あきら

    ○松あきら君 先ほどの近藤次長のお話の中で、第二、第三のJASRACということもあり得るのかな、そこに集中してしまうのはいかがか、いかがかとはおっしゃらなかったんですけれども、そういう考え方もあるみたいなことをたしかお話しなさったというふうに思いますけれども、私も今後の課題であるかなというふうにそれについては思うわけでございます。  JASRACの定款には著作権思想の普及音楽文化の振興がうたわれているわけでございますけれども、先ほど申しましたように、平成九年から会費を取って十年から公益事業を始めたというのでは、やはり公益事業に対して文化庁の指導監督がなされていなかったんじゃないかなと、そういうふうに私は思うわけでございます。  また、著作権の啓蒙について、有体物についてはモラルがあるが無体物については教育がおくれているという指摘参考人からも出たわけでございます。どんな高価なものであってもあっという間にコピーされてしまう、先ほどもMP3について三十分にわたって質疑応答されたわけでございますけれども、そういうふうにあっという間にコピーをされてしまう、そういう御指摘もあるわけでございます。  こういうことに対する著作権の啓蒙対策やあるいは教育をどのようにお考えか、文部大臣にお伺いしたいと思います。
  82. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 著作権は常に大切なことでございますので、どういうふうに保護していくか教育をしていかなきゃいけないと思っています。著作権を適切に保護し、その保護を実効性のあるものとするためには、その基盤として著作権保護の重要性について国民一般の理解を高めていくことが必要であると思っております。私自身もささやかな作品を無断で使用されることが非常にしばしばありまして、やはり著作権というのは大切にしてほしいなと思っております。  そのために文部省では従来から、まず第一に、一般を対象とした著作権セミナー、全国七カ所でやっておりますが、セミナーを初めといたしまして、学校の教職員や図書館職員、都道府県職員等を対象とした講習会を毎年実施いたしております。  それから二番目に、青少年期から著作権尊重の意識を醸成するため、著作権についてわかりやすく解説した著作権読本を作成いたしまして全国の中学三年生に配布しているところでございます。  このほか、特に本年は、明治三十二年、一八九九年に我が国の著作権法が制定、施行されて以来、百年を迎えましたことから、著作権法百年を記念いたしましてさまざまな事業を実施する予定にしております。これらの事業等を通じまして、著作権に対する国民の理解が一層高まるよう努めてまいりたいと考えております。
  83. 松あきら

    ○松あきら君 法律の中で、当分の間という、そういう言葉はよく出てくるわけでございますけれども、例えばこの附則十四条の場合は、「当分の間」というのは三十年だったわけでございます。著作者から、どうして三十年たっちゃったのか、本当にという切実なお声も上がったわけでございますけれども、どうして三十年も放置されたのでしょうか。
  84. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  附則十四条は、先生御案内のとおり、昭和四十五年の著作権法の全面改正時に、当時広範囲に行われておりましたレコード演奏の実態にかんがみまして、旧法において原則自由でありましたレコード演奏を即時に演奏権が働くこととした場合に社会に与える影響が大きい、こういうことで、当分の間の経過措置として設けたものでございます。  以後、附則十四条の廃止につきましては、平成四年三月の著作権審議会第一小委員会の報告におきましても廃止の報告が確認をされたのを初めといたしまして、平成八年にも著作権審議会から同様の提言がなされたわけでございます。それにもかかわらずこれまで附則十四条廃止の改正法案を国会に提出できなかったのは、一つには廃止に向けての条件整備に時間がかかったからだ、こういうふうに考えておるわけでございます。  もう少し具体的に申し上げますならば、音楽のBGM利用の実態として、昭和四十五年当時から現在に至るまで、レコード演奏から有線放送の利用への転換が徐々に進んできたわけでありますけれども、そういったことが、附則十四条の廃止による直接的な影響が減少した、こういうふうに判断されるまでやはり若干の時間がかかったということが一つございます。  それから、JASRACでは実は昭和六十二年からカラオケ演奏権の管理を始めたわけでございます。これを契機にいたしまして、JASRACも支部の常設でありますとか体制の充実に取り組みまして、カラオケ管理の適正な遂行と申しましょうか、そういう実績を上げてきた、そういったことが今回レコード演奏についての管理が可能となる体制の整備につながってきたんじゃなかろうか。そういうようなもろもろのことがございまして、若干この条件整備に時間がかかった。それと、利用者の方々にも必ずしもまだ十分な理解が得られなかった。それは、文化庁初めJASRACの側にも啓蒙の努力をもっともっとすべきであったという点もあろうかと思っております。  大体そういうような事柄だと認識をいたしております。
  85. 松あきら

    ○松あきら君 払う方あるいはいただく方という両者があるということでございますけれども、その支払う方の環境衛生同業組合中央会の理事長さんもしきりに、国際条約にかかわることだと説明を受けたというふうにおっしゃっておられたわけでございますけれども、今までどんな形で外国から指摘されておりましたでしょうか。指摘されておりましたとしたら説明をお願いします。
  86. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 平成八年、一九九六年でございますが、WTO、世界貿易機関のTRIPS理事会での各国著作権法レビューの際に、EUから、この附則十四条につきましてはベルヌ条約違反ではないかとの公式の指摘があったわけでございます。これに対しまして我が国は、現在文化庁に置かれておる著作権審議会において附則十四条を廃止をすることを支持しており、日本政府としてはこれを踏まえ検討中である、こういうふうに、外交会議と申しましょうか、そういった場でこれまで回答してきた、こういう経緯がございます。
  87. 松あきら

    ○松あきら君 これ、外圧なんでしょうかね。ちょっとそこのところわからないんですけれども。  次に、大臣にお尋ねしたいと思います。  日本の文化の振興についてでございますけれども文化庁の予算は、この間扇先生もおっしゃっておられましたが、著作権協会の扱い金額の九百八十億円よりも少ない予算でありまして、それは本当に残念なのでございますけれども、それでも文化振興マスタープランなどを策定しておりまして、今回の著作権法を通して感じたのは、文化立国を目指すのであれば、教育には教育基本法があり科学技術には科学技術基本法があるわけで、やはり芸術文化基本法をつくるべきだというふうに私は思うんですけれども、そういうお考えがありますかどうか、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  88. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御承知のように、まだ文化基本法はつくられておりませんね。ただ、文化の分野におきましては、現在、文化財保護法、著作権法など特定の事項についての法律は制定されております。ただ、今申し上げましたように、そして御指摘のように、文化、芸術全体の振興に関する基本的な法律は制定されておりません。  文部省といたしましては、文化を重要視していく、そして文化立国をしなきゃいかぬという気持ちは非常に強いわけでございます。文化を重視した国づくりと文化による国際貢献を行うため、芸術文化の振興や文化財の保存、活用、また文化の国際交流、協力など、文化振興のための各種施策を積極的に推進しているところでございます。かなりこれは推進できてきていると思っておりますが、まだまだ不十分であると私も認識いたしております。  芸術文化の振興に関する基本的な法的基盤の整備についても慎重に検討しながら、今後とも、文化立国の実現に向けて文化振興施策の充実に最大限の努力を傾注してまいりたいと私も強く感じている次第でございます。
  89. 松あきら

    ○松あきら君 私は、これだけ日本が大きな国にいろんな意味でなったわけでございますけれども、文化を大事にする心がやっぱりもっともっと育っていかなければいけない、やはり芸術文化を大事にしてほしいという気持ちでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  そこで私は、今回の著作権法の勉強を通じまして、デジタルとアナログというものについて随分考えさせられたわけでございます。先ほど来いろいろ出ておりますけれども、コピープロテクションにしても権利管理情報にしましてもデジタル技術があってこそなわけでございます。  なるほど、スピードも速いし便利だし、そういった意味では言うことがないわけでございますけれども参考人質疑のときに遠藤会長が、心が大事、そして余韻とか響きとかが大事、こういうふうにおっしゃっておられたわけでございます。そういえば、私たちの生活の中で余韻とか響きとかそういうアナログの世界がだんだん消えていってしまっているなというふうに思うわけです。方法、手段としてのデジタルは有用ですけれども、余韻、響き、感情となるとやっぱりアナログかなというふうに思うわけでございます。  学校教育でも、ついつい記号やマル・バツの答え、そういうものを要求してしまう。考えるとか感性を磨くとか、言うなればアナログ的要素というんですか、そういうものが学校教育でも大事になるんではないかというふうに思うわけでございます。  大臣は物理学者でもいらっしゃるわけでございますけれども、このデジタルとアナログというものをどう教育に、文化に生かしていくお考えがおありになるのかちょっとお伺いしたいと思います。
  90. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私自身がアナログ的人間だと思っておりますので、余りデジタルというようなことを考えたことがなかったんですけれども。  教育の上で多分アナログとかデジタルということを意識的に分けて考えることはないと思います。ただ、これからの学校教育でやっていかなくちゃならないと思っておりますことは、確かに知識を十分に子供たちが持つことは必要でありますけれども、単に一方的に多くの知識を教え込むだけではなくて、子供たちが自分で考える、そういう力を育てていかなければならないと思っております。  そういう意味では、少しゆとりを持って、厳選された基礎・基本を確実に身につける、これは非常にやっぱり大切だと思うんですね。まず基礎・基本を十分に身につけた上で、豊かな人間性やみずから学びみずから考える力など、生きる力と言っておりますが、それを養成していくことが必要だと思っています。その点で、先生指摘のように心が大切である、心の教育が極めて大切であると私どもも認識いたしている次第であります。  一方、文化というのはやはり創造性や感性をはぐくんでいく上で非常に重要でございますし、社会や経済に活力を生み出す源泉であります。子供たちにすぐれた文化、芸術や歴史的な文化の所産に触れて感動する機会を提供していくことが大切であると思っております。自然に触れることも大切でありますが、芸術に触れていくことも極めて大切だと私どもは認識いたしている次第でございます。  こういう点から、今後も心の教育や文化の振興に努めてまいりたいと思っております。
  91. 松あきら

    ○松あきら君 著作権法の十条には著作物の例示が示されております。その一が、「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」とあるわけでございます。  しかし、活字離れが昨今言われておりまして、その中で朝十分読書運動を実施して成果を上げている学校がある。これは実は全国で六百八十校ぐらいあるということなんですね。それで、朝十分間読書をしましょう、内容は何でもいいと。そして、先生も読むし、生徒たちみんなが何でも好きなものを読んでいいと。そうすると、最初は活字に親しんでいない子供たちが漫画の本なんかも持ってきて、漫画の本もだめとは言わないわけですね、何でもいい。  ところが、みんながいろんな本を読み出していく中で、初め漫画の本を読んでいた子供たちも、だんだん漫画の本じゃなくてそれが本当に普通の活字の書物になっていくということで、かなりいろいろな問題が起きているクラスなどでもこれをずっと始めていきましたらそういう問題行動がなくなってきたというんですね。  そして、これに関して、例えば十分読んで一カ月読んだから感想文を書けとか何か討論しましょう、一切それはないという。私、これは本当にすばらしいことだな、やはり読書運動を全国に広げていく必要があるというふうに思うわけです。  私個人的に言っても、私は非常に活字が好きな子でありまして、勉強は嫌いだったんですけれども少年少女文学全集とか、とにかく勉強しなさいと怒ろうと思っても、そういう本を読んでいるから母などがしかれなかったなんて言われるわけでございますけれども、こういう運動に対しまして大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
  92. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御指摘のように、読書というのは極めて重要であると思っております。  今お話がございましたように、授業開始前の一定の時間一斉に児童生徒が読書を行ういわゆる朝の読書活動につきましては、平成十年六月三十日の中央教育審議会答申におきましても、読書の楽しさとの出会いをつくることの重要性が指摘されております。参考にされるべき具体的な取り組みの例として紹介されているところでございます。  昨今の読書離れの傾向の中で、本との出会いを促すこのような朝の読書などの活動は極めて有意義な取り組みと考えております。文部省といたしましてもその拡大を促してきているところでありますが、今後ともそのような取り組みが一層広がるよう努力をさせていただきたいと思っています。  それからもう一つ、むしろお願いでありますけれども、朗読ということも極めて大切だと思っております。それから古典的なものを、万葉集の歌であるとか、そういうものを若いうちに記憶させておくということは日本の文化のために極めて重要であるし、子供たちの情操のためにも必要であると私は思っている次第であります。
  93. 松あきら

    ○松あきら君 余り難しいことを言うと子供たちも逃げていってしまうので、そういう古典的なものも大事ですけれども、まず手近にあるどんな本でもいいよということから始めると子供たちも非常に読書がしやすくなる、こういう環境をぜひつくっていただきたいというふうに思います。  それから、午前中に石田先生がアメラジアンの御質問をなさいました。私も質問通告はしていないんですけれども、せっかく石田先生が御質問くださったので、私もちょっと一言申し上げたいなというふうに思います。  私も三月に質問をいたしまして、きょう再度石田先生が御質問なさったことの答弁で、見守っているという、何か見守っているだけで本当に残念だなというふうに思うんです。  実は、私がこの質問をいたしましたときに外務省から、アメリカから二国間協定の話があったけれども法的に整っていなかったから断ったというようなお答えがあったわけでございます。それを初めて沖縄県議会が取り上げたと。今までどれだけ関係者がいろいろ運動していてもどちらかというと知らんぷりをされていたのが、質疑の中での答えから、やはりこれは県議会で取り上げてくれたということから一歩だというふうに喜んでくださったわけでございます。  私どもも実は今月の十二日に沖縄の方に行かせていただくわけでございますけれども、先ほど石田先生お話の中でも県の教育委員会でも調査もしていないというようなことも伺いましたし、やはり私はこれは絶対に進めていただきたいなと。プライバシーの問題もいろいろあって難しいけれども、しかし援助をしたいと思っているという大臣のお答えを先ほどたしかいただいたと思います。それをもう一度伺わせていただいて、質問を終わりたいというふうに思います。
  94. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先ほど石田先生の御質問でありますがお答え申し上げましたように、沖縄県においてさまざまな観点から検討を行っていると聞いておりますし、文部省といたしましても、沖縄県の検討状況がどうなっているかを単に見守るだけじゃなくて、さらに検討をしていきたいと思っております。ともかく、私ども文部省といたしましても、この問題は極めて重要な問題ということの認識を持っているということは繰り返し申し上げておきます。
  95. 松あきら

    ○松あきら君 終わります。
  96. 林紀子

    ○林紀子君 日本共産党の林紀子でございます。  今回の法改正で附則十四条が三十年ぶりに廃止されることは、著作権を保護していくという国際的な流れに沿うもので、大変重要な改正だと思っております。  さきに行われました参考人質疑でも、遠藤参考人は、著作者、著作権者という立場から感無量と言って歓迎の意を表明されました。また、棚野参考人も実演家団体として賛成するということをおっしゃっておりました。  そこでまず最初に、今回の附則十四条廃止の意義について、そもそもの話になりますが、文化庁はどうお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  97. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  著作権法附則十四条、これは先ほど来申し上げておりますように、昭和四十五年の著作権法の全面改正時に、当時広範囲に行われておりましたレコード演奏の実態にかんがみまして設けられました当分の間の経過措置でございます。  本来、生演奏とレコード演奏とで権利のあり方に差別を設けるということは、条約でありますとか諸外国の法制に照らしましても極めて特異な規定でありまして、音楽の著作者からは長年にわたってこの規定の撤廃について運動が続けられてきたものでございます。そういう意味におきまして、今回の改正は著作者の保護に資するものであると考えております。  また、我が国の著作権法をベルヌ条約が求める水準に適合させ、国際問題化する前にその要因を取り除くことによって国際的な協調に資する、そういう意味におきましても大変意義があるものと、このように認識をいたしております。
  98. 林紀子

    ○林紀子君 意義ということはよくわかったわけですが、参考人質疑では、今後使用料を支払う側の森参考人は、国際問題になることや日本の将来を考えて黙認するということをおっしゃいました。権利者と利用者というのはそれぞれの立場があるというふうに思うわけですが、使用料の徴収の対象についてお伺いしておきたいと思います。  ほとんどの店舗やホテルのロビーなどでのBGMに著作権使用料が課せられるということになると思いますけれども、今、音楽というのはいろいろなところでいろいろな使い方がされている。例えば、工場などで生産性向上のためにかけているBGMというのは対象となるのかどうか。福祉、医療関係というのはならないのではないかと思いますが、これはどうか。それから、例えば今は乳牛を飼育する牛舎にもBGMをかけて、音楽を流しながらお乳を搾るとお乳の出がいい、これも生産性向上かなと思うんですけれども、こんなものは対象となるのかどうか。  具体的に線引きをどうするのかということをお伺いしておきたいと思います。
  99. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 附則十四条廃止後の使用料の徴収の範囲でございますが、まず一つ基本的な考え方といたしましては、演奏権は、原則、公衆に対して音楽を聞かせる場合には演奏権の対象になるわけでございます。  演奏権の対象とならない場合といたしましては、個人的または特定少数の者による演奏、これはもともと権利対象外でございます。また、著作権法の三十八条一項の規定によりまして、非営利目的で聴衆から料金を取らない、こういった場合にも演奏使用料の徴収がなされないわけでございます。  それでは、具体的にどういうような場合が対象になるかということでございますけれどもCDによる演奏、今御指摘がございましたホテルのロビーでのBGMでございますとか、デパート、スーパーでのBGM利用、レストラン、喫茶店のBGM利用、これらのものは今回の十四条廃止後に使用料が徴収されるわけでございます。  それに対しまして、例えば学校の運動会でありますとか文化祭でのBGM演奏のように、非営利目的でかつ聴衆から料金を取ることなく行われる場合につきましては、先ほどの権利制限規定によりまして使用料は徴収されない、あるいは医療施設や福祉施設におきますBGM利用も基本的にはこれと同様に考えられる、こういうふうに理解をいたしております。  それから、これは厳密に言えば著作権権利制限に該当しないのでありますが、御指摘のような例えば事務所や工場等における職員を対象とした利用のように、営利目的であっても顧客等を対象とした営業活動とは異なり直接の営利性が低いと考えられる場合、こういったものもJASRACは使用料の免除措置を行うというような考え方に立っておるわけでございます。  それから、これは今御指摘でございましたのであれですが、個人的に楽しむ場合、これはもともと著作権対象とならないのでございますが、演奏権、これは公衆に直接聞かせると。これは先生に釈迦に説法で恐縮でございますけれども、人間に聞かせる場合を問題としておるわけでございますので、牛舎など動物に聞かせる場合は本来著作権対象にはならない、こういうふうに考えておるところでございます。
  100. 林紀子

    ○林紀子君 わかりました。ありがとうございました。  それから、実施時期ということですけれども、二〇〇二年、平成十四年四月以降で、利用者側の事情に配慮してこれから決定するということですけれども、今、戦後最大の大不況ということで、業者としてはどうして今の時期にという疑問が大変あると、これも参考人がおっしゃっておりました。お客さんが本当に大幅に減ってしまって、著作権料を気持ちよく払えるぐらいお客さんに来てほしいものだというのが率直なところだというふうに思うわけです。  実施時期については、利用者団体の意見をよく聞いてその要望に耳を傾ける。そして、著作権についても、先ほど来お話がありましたけれども、周知徹底が非常に重要なことではないかと思います。今後、関係団体、特に払う方の側にどういうふうに働きかけていくのかということもお聞かせいただきたいと思います。
  101. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 御指摘の点がまさしく今回の法改正に当たって大きな議論になったところでございます。特に附則十四条の改正に当たりまして利用者団体側の最大の不安は、こういった経済不況で経営が苦しい時期に過大な使用料負担を新たに負わせられるのではないか、こういう点が大変大きな不安であったわけでございます。  そういうことで、この法案を準備する段階で私どもは、もちろん利用者団体からそういったいろんな要望が出されたわけでございまして、この間来の参考人質疑でもあったわけでございますけれども、環境衛生同業組合を初めといたしましてホテル、旅館の関係者の方々あるいは中小企業の団体の関係者の方々、数多くの利用者団体の方々に文化庁みずからが基本的な認可方針をお示しし、御理解を得るべく努力したつもりでございます。  それが、先般来申し上げておりますように、元栓処理の場合は営業収入の一%以下にするでありますとか、個別処理の場合には多くの場合月額五百円以下になるであろうと。また、使用料の徴収の実施時期は、今回法律をお認めいただきますならば、JASRACが利用者団体と十分その実施時期でありますとか金額につきまして協議をし、使用料規程を文化庁に認可申請するわけでございますが、そのためには当然ある程度の周知徹底の期間が必要になるかと思っております。文化庁も、この法改正の趣旨をいろんな手段を通じまして利用者の方々に周知徹底を図ってまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、今後とも、JASRAC、利用者団体との調整に努めまして、円満で公平な著作権管理が実現されるよう文化庁としても努力してまいりたいと考えております。
  102. 林紀子

    ○林紀子君 今、円満で公平なというお話もありましたけれども、有線放送の元栓処理の場合、六十円よりもっと下げてほしいというのをかなり森参考人はおっしゃっておりましたので、多くの店舗が納得できる使用料の設定というのを、JASRACと利用者とのお話し合いだと思いますけれども、認可に当たる文化庁の方もぜひ大いに援助していただきたいというふうに思うわけです。  そして、それに関連いたしまして、私は、カラオケ著作権の使用料、これはもう前からこの使用料の徴収というのは行われているわけですが、このことに関連してお聞きしたいと思います。  これは既に一九八七年四月から徴収が始まっている、そして対象外となっていた五坪未満の店舗も九八年三月、去年から徴収が始まったというふうにお聞きしておりますけれども、この徴収のやり方について、JASRACの支部や委託員が徴収をしておりますけれども、それをめぐっていろいろトラブルがあるというお話を私も聞いているわけです。  例えば、お客さんがいるときにお店にやってきてお金を払え払えというふうに詰め寄る、来ていたお客さんも、これはまるでサラ金の取り立てのようだという感想を漏らしているようなこともあったという話を聞くわけです。  先ほど周知徹底というお話がありましたけれども著作権そのものについて理解を深めてもらうということがないとなかなか難しいところがあると思うわけです。本当に円満に徴収をしていくためにも、この著作権の理解を深めるということも大切だと思いますけれども、そのことに関してどういうようなやり方をJASRACはしていて、そして文化庁の方もそれに対してどういうような助言といいますか、そういうことをしているのかということも含めてお聞きしたいと思います。
  103. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  JASRACは、このカラオケの管理につきましては、地方に設置をしております二十二の支部において実施をしているわけでございますが、今先生から御指摘がございましたけれども利用者との間で契約をめぐってトラブルが発生をしている、こういう事例があるようでございます。ただ、そのトラブルの原因といたしましては、JASRAC職員あるいは市場調査を行っている嘱託職員の説明不足でありますとか接遇態度に起因する事例があるのも事実のようでございます。一方では、契約を拒絶したり契約交渉を引き延ばしたりしようとしてJASRACの職員とトラブルになる場合、こういうものもまた多い、こんなことをお伺いしているわけでございます。  現在、JASRACでは、そういった支部の職員や嘱託職員の接遇研修でありますとか著作権の研修を実施するなどいたしまして、職員の資質の向上に努めておる。また、利用者との交渉に当たりましては、あらかじめ文書で手続の必要性を知らせるとか事前に電話で説明を行うなど、できるだけ利用者の営業を妨害しないような心がけ、こんなこともいたしておると聞いております。  いずれにいたしましても、今後ともJASRACにおきまして、いろんなそういう情報なりなんなりをできるだけ早くそういった関係者に知らせていく、そういった努力も必要だろうと思っておりますし、今そういった方向でJASRACも努力をしておりますので、文化庁としてもバックアップしていきたい、かように考えております。
  104. 林紀子

    ○林紀子君 私が聞いた中でこういう話があったんですけれども、料飲業などというのは大変入れかわりが激しい職種ですよね。ある業者が五年前に開店して営業していたところ、JASRACから使用料を払うようにというふうに言ってきた。この業者が店を構える前から、ですから八七年からこのカラオケ使用料の徴収が始まったわけですけれども、その八七年から払ってくれという話だったんだそうです。債権債務を引き継いでいるというわけでもないので、それはおかしい話だということで拒否したところ、それでは五年分で結構ですということにはなったんだけれども、その五年分に遅延損害金も上乗せをされて、結局、総額としては八七年から支払った使用料と同じ額になったという話を聞いているわけです。  こういうやり方というのはどうもやっぱり不適切じゃないかなと思うし、こういう話を聞きますと、かなり強引な取り立てが行われているんじゃないかなという心配があるわけですが、こういうような例も含めて、文化庁の方は実情というのをつかんでいらっしゃるわけでしょうか。
  105. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) JASRACのこのカラオケ管理の方針によりますと、契約時前に利用実績がある場合は、カラオケ利用開始時から使用料を支払っている他の利用者との均衡上、カラオケ利用開始時にさかのぼりまして使用料の支払いを求めている、こういうのが実態でございます。  この取り扱いそのものにつきましては、そういった使用料負担の公平性の点からやむを得ないと考えられるわけでありますが、例えばカラオケ利用開始後の契約締結につきましてはさまざまな事情があるんだろうと思っております。例えば、長い間JASRACから何の連絡もなかったなど利用者に全責任を負わせることができないような場合も、そこはまたいろいろケース・バイ・ケースであろうかと思います。そういった場合、JASRACでは、利用開始時にさかのぼって既に契約があったものと同じ使用料を適用することや、支払い方法につきましても分割払いに応じ、原則として例えば二十四回払いまでのところを、利用者の事情によりましては弾力的に運用することなど、できるだけ利用者の実情に配慮した支払い方法を採用することにしていると聞いておるわけでございます。  いずれにいたしましても、悪質な利用者はともかくといたしまして、一般の利用者につきましては、できるだけ支払いやすい方法を採用するなど、円滑な契約業務が行われることが望ましいと考えておるわけでございます。必要に応じましてJASRACを指導してまいりたい、かように考えております。
  106. 林紀子

    ○林紀子君 今のお話にもありましたけれども利用者としては、契約したその時点から使用料を払うということであれば、はい、契約いたしましょうと、すぐそういうことになるんだと思うんですけれども、やはりさかのぼるというのが大変負担になるということはあると思うわけです。  今、二十四回払いというお話がありましたが、これが最長ということなんだと思うわけです。それを弾力的に運用するというお話もあったわけですけれども、カラオケの著作権使用料というのは一カ月、五坪以上だと四千五百円だというふうに見せていただいております。ですから、もし最長十年間さかのぼらなくちゃいけないということになりますと、払わなければいけないお金というのは五十四万円と、単純計算するとこういうふうになるわけですね。そうしましたら、今のように本当に不況の中で零細な業者が、これから四千五百円毎月払っていきますよ、それを最長二年間で五十四万円払ってくださいというのは、やっぱりかなり大きな負担になるんじゃないかというふうに思うわけです。  ですから、著作権という権利の問題としては、これは当然払わなければいけない問題だというふうに私は思うわけですけれども、その運用面での考慮というのがもう少しできないものなのだろうかなというふうに思うわけです。  先ほど、附則十四条の廃止のところでも、権利者と利用者の十分な話し合いを文化庁も仲介に立って行うというお話がありました。ですからそういうことでは、このカラオケ使用料の問題につきましても、特にさかのぼり分ですね、それは幅を持たせて、二十四回払いということじゃなくて、例えば十年分を払わなくちゃいけないというような人には五年とか七年とか十年とかをかけて分割払いをしていく、そういうことも考えていただきたい。悪質ではなくて、払いたいんだけれども今の状況ではなかなか払えないというような、本当に零細な業者に対しては減免というようなことも含めて、ここのところを考えていけないものなのかというふうに思うわけです。  文化庁が仲介に立ったために、十四条の問題についても、権利者と利用者が話し合いのテーブルに着いてこれをこれから進めていきましょうということになっているわけですから、このカラオケ使用料の問題につきましても、文化庁がしかるべき仲介を果たしていただくことができないのか、運用の面で本当に払いやすい方向を考えることができないのかということをぜひお願いしたいし、お伺いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  107. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) それぞれのケースでいろんなことがあるのだろうと思っております。できるだけそういう利用者の事情に応じた弾力的な運用、これもまたもちろん考えていかなければならない課題であると思っておりますが、一方では、まじめにその契約時から利用実績がある場合にお払いをいただいておるそういった業者といいましょうか、団体といいましょうか、お店もあるわけでございます。そういったバランスといいましょうか、そういうことも十分考えていかなければならない課題だと思っております。  また、カラオケの使用料の額そのものにつきましても、今のような、五坪まで店、五坪を超えたら四千五百円になるというような料金体系がいいのかどうか、これもまた少し検討しなければならない課題だと思っておりますが、いずれにいたしましても、公平ということを十分に大切にしながら、何がどこまでできるのか、弾力的な運用がどこまでできるのか、そういったものはまた引き続きJASRACとも相談をしてみたいとは思います。
  108. 林紀子

    ○林紀子君 確かに、カラオケの使用料の最低が三千五百円、最高が一万五千円、これは月々ですから、十四条の廃止に伴って、六十円でもまだ高いとおっしゃっているのから比べると大分差があるなという気がいたしますので、料金のところも含めてお考えいただけるということは大変ありがたいことだというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  次に、大臣にお聞きしたいと思いますけれども、映画の実演家にも第二次利用に当たっての権利を保障すべきではないかという問題です。  この問題は著作権法二十九条と九十一条の二項の改正問題ということになるんだと思うんですが、私も、今までの著作権をめぐっての委員会、いろいろ過去をさかのぼって先輩議員の皆さん質問を繰ってみましたけれども、これは何度も質問で取り上げられている問題。だけれども、今回の改正ではこれは見送られてしまったわけです。この問題についてこれからどのようにしていこうと思っていらっしゃるのか、ぜひこれは早く実現するべき問題ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  109. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) この裏側には非常に難しい問題があるようでございますね。なかなか一筋縄ではいかないようであります。私は重要な問題だということはわかっているんです。  少し歴史を見てみますと、昭和四十五年に制定された現行著作権法では、映画に出演する実演家の権利について、その許諾を得て一たん映画の著作物に録画された場合には、その後のビデオ化や放送などの二次的利用には権利が認められていない、これは御案内のとおりであります。しかしながら、ビデオ化や衛星放送等における利用など映画の利用方法も多様化してきたということで、昭和四十五年当時とは環境も大きく変化していることや、デジタル化の進展に対応して、実演家の権利を時代に合った内容に改善すべきであるという意見が強くあることはよく承知いたしております。  文部省といたしましては、この問題については、世界知的所有権機関、WIPOで行われております実演家の権利の保護に関する新たなルールづくりの状況も踏まえながら、文化庁に置かれましたいわゆる映像懇、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会において総合的に検討してまいりたいと思っております。なかなか難しい問題だということをよく認識いたしております。
  110. 林紀子

    ○林紀子君 大変難しい問題とおっしゃるわけですけれども、今、カラオケの使用料に関しましても公平性というお話が出てきたわけですね。この著作権という体系を貫いているのは公平性という問題だと思うんですね。そうしますと、テレビで出演して、それがビデオに収録されて、次にまた放映されるときにはちゃんと俳優さんにはお金が払われるのに、映画の場合は、それが同じ形になって受け手としては見えるのにそれは払われない。全く公平性を欠いていると思うんですね。そういう意味では、ぜひこれは、難しい問題はあっても、何とかして公平を貫くというところで文化庁の方も文部省の方もお考えいただきたいと思います。  それでもう一つ触れたいのは、公平の問題ということでは、これも長年の懸案になっている写真の著作権、一九五六年発表以前の作品については著作権が既に切れているという問題です。ですから、今大変活躍をなさっていらっしゃる写真家の方たちも、自分が若いときに写した写真というのは、もうどんどん無断で使われていても全然それには権利がない。これも公平性を非常に欠いている問題だと思うわけですね。レコード著作権につきましては遡及いたしましたよね、そのことにつきましてもぜひこれは実現を早く図っていただきたいということを強くお願いしたいと思います。  最後に、これは著作権の問題とは関係ないんですけれども、教科書の検定に関して最近大変重大な報道がありましたので、そのことについてお聞きしたいと思います。  報道によりますと、文部省の教科書調査官が、検定意見の通知後に、一たんパスさせた国旗・国歌の取り扱いに関する部分について口頭で訂正を求めた、こういうものですね。  これは昨年の秋、国旗・国歌をその国を代表するものとして互いに尊重し合い、敬意を払って扱うようにしますというふうになっていた教科書の記述に、ことしの一月になって、自国の国旗や国歌を尊重する表現を入れろというふうに調査官が編集者に要請した、こういうことが報道されておりましたけれども、こういうことはあったのでしょうか。
  111. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 事実関係を説明させていただきたいと思いますが、この問題は、検定意見、これは検定審議会に基づいて検定意見が確定するわけでございますけれども、これに基づきまして発行者におきまして記述の修正をするわけでございますが、この記述の修正の過程は、申請者、つまり発行者と担当官との間で通常数次にわたってやりとりをする、そうした過程を経まして記述の修正ということが行われますが、その間に起こった問題でございます。  事実関係を明確にしなければいけませんので、具体的にちょっと御説明させていただきたいと思いますが、今先生がおっしゃいましたとおり、この申請図書につきまして、国歌につきまして記述を修正すべしという意見、これは検定意見としてついたわけでございます。今、新聞報道等で行われておりますのはその部分以外のところでございまして、この検定意見に基づきまして発行者が修正作業をする、その段階で担当官との間でいろいろなやりとりがあったわけでございますが、その中で、同じページの中に、この発行者が出しておりました教科書に、自国の国旗・国歌を尊重していく態度が必要であるといった記述が現行の教科書にはございました。それが今回の申請図書にはその記述がなかったということがございましたものですから、担当官が、これは検定意見ではありませんということを明示しながら、この点についての指摘を行ったというものでございます。  これを受けまして申請者側におきまして、検定規則実施細則に、検定意見に従った修正以外の修正、こういう規定があるわけでございますけれども、この手続にのっとりまして記述の修正が行われ、そしてその結果、先生今紹介されましたけれども、自国の国旗・国歌を尊重することについても、現在この教科書が書いてございますと同じような記述が追加されて確定したと、こういう経緯のものでございます。  検定意見ではないということを明示しつつその指摘を行った、それを受けて申請者におきまして、これは一般的に行われているものでございますが、教科書をずっとつくっていく過程で検定意見に基づいて直す、それ以外に発行者の側で、こういうことであればこういう記述にした方がいい、みずからこうした方がいいというようなもので、検定意見に従った修正以外の修正も、これはしばしば行われるわけでございますけれども、その手続にのっとって行われたということでございます。  したがって、検定意見の通知後に担当官がみずからの判断で検定意見として修正を求めて、そして修正を要求してこのようになったということではないという点を明確に御理解賜りたいと思います。
  112. 林紀子

    ○林紀子君 私たちは、日の丸・君が代というものが国旗・国歌だということは国民の合意がないわけですけれども、しかし、学習指導要領があるからということで、それを盾に検定で押しつけるということそのものについて、やはり許せないことだというふうに思うわけです。  今回の問題は、今御説明ありましたけれども文部省自身が、こういうふうに検定のやり方はするんだ、そしてこういうふうに教科書会社側は直すんだという、やっぱり今のお話を聞いてもそれに違反しているんじゃないかというふうに思うわけです。これは、検定審議会の意見ではありませんよということをはっきりさせたから調査官が教科書会社にそのことを言ってもいいということになりましたら、この審議会というものは全く不必要になるわけですし、これはやっぱりルールから外れているというふうに思うわけです。  ですから、そういう意味で今回の問題というのは、中身のことはもちろんですけれどもルールに違反したということで、今後あってはならないことじゃないかというふうに思いますので、そのことを強く指摘いたしまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。
  113. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 最初に、現行著作権法において権利が十分に保障されているとは言いがたい映画の著作物に関する問題についてお伺いいたしたいと思います。  映画というのは文化と言ってもいいというふうに思います。文化の中でも重要な地位を占めているのではないかというふうにも言えると思うのですが、現在、テレビその他さまざまなメディアの発達に伴いまして、我が国の映画界というのはかつての全盛期とは比べ物にならないくらい、例えば映画会社が倒産していくというようなことも含めまして厳しい状況に置かれていると思うわけでございますが、映画が文化であるという認識があるならば、国として、映画の振興あるいはまたフィルムの保存、そういったことに関しても何らかの対応をすべきだと思います。  例えばフランスなどではかなり一生懸命にやっているように私は受けとめておりますけれども、我が国といたしましては映画振興のためにどのような対応をしているのか、具体的にまずお答えいただきたいと存じます。
  114. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 映画芸術の振興でございますが、文化庁がまず直接的に実施する事業といたしまして、一つは優秀映画の顕彰を行う優秀映画作品賞、こういった事業を平成二年度から実施いたしておりますし、平成七年度からは優秀映画の公開上映に必要な経費の援助、さらに平成十年度からは映画のシナリオコンクール支援事業、こういったような事業を今展開しておるわけでございます。あるいは、若手の芸術家に国内外での研修機会を提供する芸術フェローシップという制度がございますが、この中には映画の関係者も入っておりまして、在外研修でありますとかあるいは国内での研修、こういった方面にも参加をしていただいておるわけでございます。  それから、我が国の映画芸術振興の拠点といたしまして東京国立近代美術館にフィルムセンターが設けられておるわけでございます。このセンターは、日本及び世界の映画フィルムあるいは映画関係資料の収集、保存、修復、調査研究を行いますとともに、さまざまなテーマによる企画上映でありますとか優秀映画の地方巡回上映を行っておるわけでございます。こういったものへの助成というようなことも行っておるわけでございまして、平成十一年度におきましては、特にすぐれた日本映画の鑑賞機会を提供する優秀映画鑑賞推進事業、あるいは貴重な映画フィルムの修復事業、これの拡充をいたしたところでございます。  それから、日本芸術文化振興会という組織がございますけれども、ここにおきましては、芸術文化振興基金によりまして、映画製作活動に対する助成でありますとか、国内で開催される国際映画祭への助成を行っておるわけでございます。  文化庁といたしましては、今後とも映画芸術の振興を図るためにこういった施策を充実していきたい、かように考えておるところでございます。
  115. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今幾つかの助成の具体的な例を挙げていただいたのですが、それは金額にすると一体どの程度の額になるのでございますか。
  116. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 十一年度の文化庁関係の映画芸術の振興施策関係予算でございますが、文化庁の計上予算と東京国立近代美術館フィルムセンター分とを含めまして十一年度の予算額で申し上げますならば六億五千二百万円でございます。なお、このほかに芸術文化振興基金の助成金が二億五千万ほどある、こういう状況でございます。
  117. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今の金額、これはただそれだけではなかなかコメントがしにくいのでございますが、過去に比べて次第に額が上がっていっているのか、あるいはまた他の国に比べてどうなのか、相対的にお知らせくださらないとコメントができないのでありますが、いかがでございましょうか。
  118. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) ちなみに、五年前と申しましょうか、平成七年度と平成十一年度の今の予算を比べますと、平成七年度の映画関係文化庁並びに東京国立近代美術館フィルムセンターの予算を合計いたしました金額は五億八千六百万余でございます。平成十一年度の予算が六億五千二百万でございますから、六千六百万円ぐらいの増ではなかろうかと思っております。  諸外国との映画関連予算の比較でございますが、それぞれの国の映画を取り巻く状況でありますとか、あるいは組織のありようが異なりますのでなかなか単純には比較ができないわけでございますけれども世界の主要アーカイブということで、日本の東京国立近代美術館の予算は先ほど申し上げましたような六億余の予算でございますが、これはちょっと手元の資料が古くて恐縮でございますが、例えばイギリスの英国映画協会、アーカイブの名称でございますが、これは十年前でございますのでちょっと比較しにくいのでございますが、年間予算が約七億円。あるいはドイツの連邦資料館、フィルムアルヒーフというアーカイブでございますが、一九九八年で約八億円の年間予算と承っております。ただ、フランスは別格でございまして、国立映画センターの年間予算が五百億円ぐらい、こういうふうに伺っているところでございます。
  119. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、大体具体的な金額、また他の国との比較をおっしゃっていただきましたので大体位置づけが少しずつ鮮明になってきたわけでございますが、フランスというのはとにかく文化に対して、映画におきましても日本とは比較にならないぐらいの大変なお金を投じているなということもわかったわけでございます。  こういう状況を踏まえまして、大臣に御感想を承りたいのでございますが、大臣も映画は一つの芸術文化であるというふうに位置づけていらっしゃるのでございましょうか。あるいは、今まで研究者としてお暇もなかったので映画なんぞはなかなかごらんになる暇もなかったのかもわかりませんけれども、これからの映画の振興についての御決意を承りたいというふうに思います。
  120. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、今は行けなくなりましたけれども映画が大好きでありまして、特にフランス映画とかアメリカ映画はよく見た人間であります。それから、私自身も科学映画を二つほどつくりまして、二つとも多分コマーシャルになっていると思います。映画をつくることを手伝いました。今はむしろビデオの方に移りましたけれども、そういう意味で、映画というのは大変教育の上でも役に立つものと認識いたしております。  映画は国民の非常に身近な娯楽として生活の中に定着するということと、それから総合的な芸術として重要な位置を占めてきている、それからまた、今申し上げましたように、科学技術等の教育にも役に立つということを十分認識しております。  しかしながら、現在の邦画界は、国際映画祭で高い評価を得る作品や興行的に成功する作品が出るなど明るい状況も見られるものの、全体として見れば、製作本数、鑑賞人口等はピーク時に比べて残念ながら激減していると認識いたしております。  一方、マルチメディアの進展の中で、大変多様化する国民の需要に対応した多彩な映画ソフトの確保が大きな課題となっております。その重要な供給源としての映画の果たす役割はさらに大きくなっているんじゃないかと認識いたしております。  こういう現状を踏まえまして、映画芸術の振興のために、先ほど文化庁次長が御説明申し上げましたような諸施策の充実が必要であると考えております。
  121. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私も、外国におりまして、外国の映画館におきまして、映画祭などのときに、日本で見ることのできなかったかつての名画などを見ました。  そういう中で、ヨーロッパの場合ですと、その作品がいいと、映画であるにもかかわらず映画館の中で拍手が起きるわけであります。小津監督あるいは黒沢監督の映画というのは、当時私は日本におりませんでしたのでヨーロッパで見ました。そのたびに映画館全体が拍手をするわけであります。私は日本人であることをそのとき大変に誇らしく思いまして、監督にかわってお礼を言いたいような気持ちになったことがたびたびございました。  今、そういう全盛期を過ぎているような気がいたしますが、また若手の方たちが一生懸命に頑張って、カンヌ映画祭などでも時々賞をもらっていることを報道で聞くわけでございますが、ぜひとも国といたしましても、今大臣がおっしゃいましたように振興のために御尽力いただきたいというふうに思います。  次の質問に移ります。  先ほど映画の実演家についての御質問がございましたけれども、私は主に監督及び撮影あるいは美術などのスタッフについての著作権についてお伺いしたいと思います。  現行著作権法におきますと、映画の著作物著作権の帰属について、著作権法第十六条では、映画の著作物の著作者は、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。」と定められております。一方、第二十九条の第一項では、「映画の著作物著作権は、その著作者が映画製作者に対し当該映画の著作物の製作に参加することを約束しているときは、当該映画製作者に帰属する。」というふうに定められているわけでございます。  つまり、映画監督及びスタッフは創作活動を行った著作者であるにもかかわらず、著作者による財産権は保障されていないということになるわけであります。著作者が持つべき著作権がなぜ映画に限って著作者に帰属しないのか、映画製作者に帰属するのかというのはなかなかこれは理解しがたいことであるわけでございます。  昭和四十五年、一九七〇年の現行著作権法が制定されるときに一体どのような御議論があったのか、そして、どうして現行のような規定となったのか、その立法趣旨について御説明をいただきたいと存じます。
  122. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 今、映画の著作物につきまして、先生から御指摘があったとおりでございます。  著作権法十六条で、映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した映画監督等が著作者である。一方、二十九条で、著作権の帰属につきましては、著作者が映画製作者に対し製作に参加することを約束しているときは映画製作者に帰属する、こういう規定になっておるわけでございます。  このような規定となっておりますのは、一つには、映画の製作に多数の人間が関与しており、かつ多額の製作費を必要とすることから、映画の著作物につきましては映画製作者に権利を集中させ、円滑な利用確保をする必要性が高い、これが一点でございます。  二点目には、映画の著作物利用に関しましては、映画製作者と映画監督等の著作者との契約によりまして映画製作者が権利を行使するという実態が従来からあったということでございます。  また第三番目には、他の先進国におきましても、映画製作者に財産権である著作権を帰属させている。先ほど諸外国の映画の予算等のお話を申し上げましたが、例えばフランスやドイツにおきましても、経済的権利であります財産権であります著作権は映画製作者にあるわけでございます。これはアメリカ、イギリス等も同じでございまして、そういった国際的な規定と申しましょうか、そういったこと等の理由によりまして現在のような法律上の規定になっておる、こういうことでございます。
  123. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 当時は多分そうであったかもわからないんです。当時はいわゆる五社体制と呼ばれた映画の製作体制がございました。しかしながら、五社のうち大映とか日活は倒産してしまいました。そして残っている東映とか松竹、東宝というのは、これは自主製作というのは非常に少なくなっているというふうに聞いております。日本映画の全製作本数に占める割合というのは二割程度だそうでございます。したがって、今申し上げた残った映画会社でございます東映、松竹、東宝というのは、映画製作というよりはむしろ配給会社になっているのが現状というふうに言われております。  他の国ということでございますが、例えばアメリカの場合には非常に大きな資本をかけたというふうなことがあると思いますけれども、フランスなどでは製作会社というのが特定にあるわけではなく、製作するときにいろいろな方面から製作費を集めてくるというシステムになっているわけでございます。  そういうことを考えますと、この法制定当時とはかなり状況も変わってきております。また、制定のときに、文教委員会におきまして附帯決議が付されております。映画の著作権の帰属問題については「早急に検討を加え、速やかに制度の改善を図ること。」というふうに附帯決議に述べられているわけでございます。  それから三十年近くが経過しております。法改正についてももっと積極的に検討されるべきだというふうに思いますが、現在の文化庁の取り組み状況、またその方針についてお伺いします。
  124. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えいたします。  映画監督等の権利につきましては、関係団体から、著作権法の原則どおりに、著作者である映画監督等に財産権である著作権が認められるべきである、こういう強い意見があることは承知をいたしております。  文化庁といたしましては、平成九年十一月に、先ほども大臣からお話がありましたが、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、映像懇と略しておりますけれども、これを設置いたしました。この会議には、映画監督や映画製作者等の関係者あるいは学識経験者、いろんな方々に御参加をいただきまして、映像分野の実演の保護のあり方でありますとか映像の保護のあり方、これは映画の著作物の保護期間のあり方等々でございますが、さらには映像の円滑な利用のための方策等、映画監督等の権利のあり方を含めました映像に係る著作権の諸問題につきまして総合的に検討をいただいているところでございます。  私どもは、映画監督も映画製作者も映画文化を担う重要な役割を果たしていらっしゃる、こういうふうに考えておるわけでございまして、映画文化全体の発展という観点から、今後とも、映像に係る著作権問題の重要な論点としてこの問題につきまして引き続き検討してまいりたい、かように考えております。
  125. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 著作権法では権利が保障されていないけれども、しかしながら、二次利用された場合の追加報酬の問題等については契約をそれぞれ結べばよいというふうな、契約ということも先ほどお話がございましたけれども、監督につきましては、日本映画製作者連盟との団体協約によってある程度の追加報酬が得られるということもあるそうであります。しかしながらこれは、例えば一億円売れてもそれはわずか二十万円程度だというふうにもかねがね監督から伺っているところでございます。しかしながら、今、日本映画製作者連盟加盟の製作会社が非常に減少している、少なくなっているということで、この契約ということも有名無実化しているそうでございます。  また、監督以外の著作者、つまり美術担当とか撮影だとか照明とか録音、そういったスタッフは団体協約を結ぶことさえ拒否されているのが現状であるというふうに聞いているわけであります。  当事者間の契約のみに任せるのではなくて、法律によって映画の二次利用にかかわる権利というものをやはり法的に保障すべきだというふうに私も考えますが、大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  126. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 一つは、現在、国際的な場におきまして映画監督を含めた、実演家等を含めました視聴覚的な実演の問題についての御議論もございます。私どもといたしましては、今、映像懇談会で幅広い観点から御議論もいただいておりますし、またそういった国際的なWIPOの場での議論、こういったものも十分踏まえながら、今先生がおっしゃったようなことも含めまして、総合的な観点から引き続き研究をしてまいりたい、かように考えております。
  127. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それでは、次の質問に移りたいと存じます。  一九九六年の十二月、いわゆるWIPOの外交会議で、WIPO著作権条約、そしてWIPO実演・レコード条約が採択されました。今回の法改正によりましてWIPOの著作権条約というのはもう批准を待つばかりになっているというふうに思うわけでございます。条件はすべて満たされることになるというふうに思うわけでございますが、このWIPO著作権条約を批准している国はどのような国がこれまでございますでしょうか。そして、もう一つ続けて質問したいのでございますが、なぜ今国会に批准というところまで行かないのでございましょうか。  その二点につきましてよろしくお願いします。
  128. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 本年の四月現在で私どもが承知をいたしておりますWIPO著作権条約の締結国でありますが、七カ国ございます。ちなみに名称を申し上げますならば、WIPO著作権条約を締結しております七カ国は、インドネシア、エルサルバドル、キルギス、パナマ、ハンガリー、ベラルーシ、モルドバ、こういう国でございます。  なお、アメリカは、昨年の十月にこの著作権条約とWIPO実演・レコード条約、両条約を批准するために必要な法改正を終えまして、現在締結のための手続中である、このように承知をいたしております。  それから、今国会におきましてWIPO著作権条約の締結のための承認を求めない理由ということでございますが、今回の改正案による法改正が行われますと、今委員指摘のように、我が国の著作権法はWIPO著作権条約の義務を満たし、この条約を締結できることとなるわけでございます。条約の締結のために国会の承認をお願いすることは、これは外務省の所管でございますが、WIPO著作権条約の締結につきましても、私どもといたしましては今国会中に承認が得られるよう外務省に対して繰り返し要請を行ってきた経緯はございます。しかしながら、早急に締結すべき条約が他に数多く存在すること等の理由から、外務省内での優先順位の設定によりまして、WIPO著作権条約の締結のための承認につきましては残念ながら次期国会以降に延期されることになった、外務省からはそのような話を承っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今後とも、WIPO著作権条約の早期締結がなされますよう、外務省への要請を継続してまいりたいと考えております。
  129. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 順位というのは何を基準にして決めるのか、それはまた一つの議論かと存じます。  やはり文化的なこと、国際的に通用することというのは、これは外務省が扱っていくものすべてに通じることではございますが、文化的なことというのも優先順位としてかなり価値の高いものだということを、ぜひとも文化庁、頑張って主張してください。  ところで、今WIPOで今申し上げた条約以外にも幾つか検討をされている条約があるというふうに聞いておりますが、どのような条約が今検討をされているのでございましょうか。その条約の主な内容、あるいはまた、その条約に対する我が国の方針がもし決まっているとしたらばその方針、また国内法との関係などについて、お願いいたします。
  130. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) お答えをいたします。  WIPO、世界知的所有権機関におきましては、デジタル化ネットワーク化等の進展に対応した著作権制度の国際的枠組みの構築に向けまして、さまざまな新条約の検討が進められているわけでございます。  幾つか例を挙げて御説明を申し上げますと、一つは、平成八年十二月に採択をされましたWIPO実演・レコード条約が実演家の権利につきましては音の実演のみを対象としていることから、先ほど来議論がございます同条約の議定書として、映像分野の視聴覚的実演に係る実演家の権利保護を目的として、視聴覚的実演に関する議定書の検討が現在進められております。  また、著作物のような創作性はないんですが、製作に当たっての投資に着目をいたしまして、創作性のないものも含めて編集物あるいはデータベースを保護するために、データベースに係る投資の保護に関する条約、この検討も現在行われているところでございます。  さらに、WIPO実演・レコード条約におきましては、今回は実演家とレコード製作者の権利が規定をされましたが、放送事業者の権利が規定をされていない、こういったことから、各国の放送事業者やその団体の要望によりまして、放送事業者の権利に関する条約の検討も開始をなされたわけでございます。  こういった国際的検討に際しまして、我が国といたしましても積極的にリーダーシップを発揮し、国際的な調整と申しましょうか、ハーモナイゼーションに貢献するために、一方では、国内では先ほど申し上げました映像懇談会あるいは著作権審議会において積極的に議論を進めておるわけでございます。今後とも、これら国内における議論の内容がWIPOにおきます新条約の検討結果に反映されるよう、私どもも積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  131. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 インターネットなどを通じまして著作物あるいは実演等が国境を越えて流通するのが今日の状況でございます。したがいまして、著作権にかかわる国際的なルールづくり、あるいは国際的な調和というのはこれから我が国にとって重要な課題だというふうに思います。  今、批准の問題に少し触れましたけれども日本の場合、何かやるときについ他の国、それも他の先進国、大国と言われている国々がどうするのか、そこが条約に批准するのかしないのか、きょろきょろと外を見、そしてまた、自分から発信するということをなかなかしてこなかった。確かにそれは安全ではございますけれども、やはりもう日本自分の国から発信するということが必要な時期にとうに来ているというふうに思うわけでございます。  文化行政ということも大きく含めまして、今、一つの例でございますけれども著作権の国際的なルールづくり、あるいは国際的な調和ということにつきましてこれから我が国がどのような姿勢をもって進むべきか、その御感想あるいはお気持ちを大臣にお聞きいたしまして、質問を終わりたいと存じます。
  132. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 日本が文化を発信していかなければならないということは私も大賛成でございます。そしてもう既にかなりやっていると私は思っております。  今御指摘インターネット等々、デジタル化ネットワーク化等が極めて急速に進展しているようなときには、さらにまた国際的な著作権保護というふうな点においても、今後さらに日本は国際的に主導権をとっていろいろ進んでいかなければならないと思っております。  きょうは、ここでは著作権制度に関して主に御議論を賜りましたけれども、例えばWIPO等々を使いまして著作権制度に関するさまざまな条約の検討が進められておりますが、我が国といたしましても今後積極的に検討に参画していきたい、そしてさらに発信を盛んにするよう努力をさせていただきたいと思っております。
  133. 扇千景

    ○扇千景君 昨日、FIFAから二〇〇二年ワールドカップの公式のエンブレムが発表されました。きのう夜テレビで先生方もごらんになっただろうと思います。  まず、このエンブレムが決定されたということに関して、大臣ごらんになったと思います。(資料を示す)もっと大きいポスターがあればよかったのでございますけれども、まだございません。御感想はいかがでございますか。
  134. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私はどうもデザインの才能がありませんが、これはとてもよくできていると思いました。  国際サッカー連盟、FIFAの二〇〇二年FIFAワールドカップサッカー日本・韓国公式エンブレムが昨日、国際サッカー連盟と日韓の両大会組織委員会から発表されたということをよく承知いたしております。このエンブレムのデザインは、中央にトロフィーを置き、地球とサッカーボールをイメージした円が基調となっていると聞いております。  私としましては、このエンブレムができたことによって、日韓共同開催となる二〇〇二年ワールドカップ大会の広報がより一層行われまして、大会が盛り上がりのあるものになることを大いに期待しております。  先日、韓国大使ともお会いいたしまして、日本と韓国の間のワールドカップサッカー大会が成功裏に終わるようお話をしてきた次第でございます。
  135. 扇千景

    ○扇千景君 大臣は大変いいエンブレムができたということですけれども日本の中には、アジアで行われるサッカーになぜヨーロッパのデザイナーの作品が使用されたのかなんという声もございますし、色彩は大体韓国の色合いではないかなんという人もおりますし、いろいろ意見はありますけれども、要するに、これに決まったことですから、スポーツですから、決まったルールのままぜひ成功させていただきたいなと思います。このエンブレムがどうのこうのということよりも成功することが第一でございますし、やがてもうすぐたちますとマスコットも決定されるようでございますので、これはこれとして、大臣がいいのではないかとおっしゃいましたから、私たちもよきかなということで納得したいと思います。  一応エンブレムが決まりましたけれども、サッカーのワールドカップとしては初めての両国の共催でございますから、これから両国のお客様の輸送関係、それからビザの問題、それから両国の会場の入場料の問題、両方が同じ入場料を取るのか取らないのかというような問題等々、それからまだ日本においては優勝戦の会場が決まっておりません。横浜なのか埼玉なのか、先生方がそれぞれ運動していらして、私たちも横浜を拝見いたしましたけれども、そういうこともこれからだんだん盛り上がるとともに、地元もあるいは先生方もやきもきして加熱してくるであろうと思われます。  要するに私は、一歩一歩二〇〇二年に向かってこういうことが決まってまいりますので、いい意味での加熱はよろしいけれども、一方で解決しなければいけない問題が多々ありながら、ただそれぞれの個利個略だけで加熱するということは厳に慎むべきであろうと思います。  それと、遠藤局長いらしてくださっていますけれども、私たち文教委員会としては、いわゆるサッカーくじ、スポーツ振興くじに対して大変多くの論議をし、また、衆議院と違って参議院では大変時間をかけてこのスポーツ振興くじ法案というものを通したんです。その後スポーツ振興くじが着々と準備されてはいますけれども、先ほどからの著作権の話と一緒にしては悪いんですけれども、JASRACの話が出ました。これは独占企業ではないかと、端的に言えば。著作権に関しては日本ではJASRACが独占でやっているじゃないか、独占企業ではないかというふうな、それらしきお話も今まで同僚議員から出ました。  私は、スポーツ振興くじの取り扱いに関しても、ある程度そういうことが出てくることが懸念されるということだけは厳に慎むべきであるし、この委員会でスポーツ振興くじを審議した過程からいっても注意しなければいけないと思います。著作権法に入りますので、時間がありませんから一言だけ、局長からでも結構ですから、現在の状況、あるいはこの委員会でスポーツ振興くじ法案が通ったあのときの審議を勘案しながら、現在の報告を簡単にしていただきたいと思います。
  136. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) お答えいたします。  スポーツ振興投票くじに関しましては、四月十五日に金融機関に対し説明会をいたしまして、六月二十四日に提案書の締め切りを行いまして、それから日本体育・学校健康センターにおきまして外部の審査委員会を設けまして、そこで金融機関の選定の審査をしていただく、夏ごろぐらいには委託金融機関を選定したいというふうに考えております。  この過程はもちろんでございますが、金融機関が選定されました後も、先ほど扇先生がおっしゃられましたように、国会で御審議いただきましたさまざまな点につきましては十分留意をして実施に向けて努力をしていきたいというふうに考えております。
  137. 扇千景

    ○扇千景君 くれぐれも気をつけていただきたいことは、名前のとおり、スポーツ振興であるということのために私たちはこの委員会でもるる審議して通した法案でございますから、通常のただ射幸心をあおるだけのスポーツくじにならないようにぜひ今後気をつけていただきたいと思います。  また、著作権法はこの委員会の今国会最後の法案でございますので、また一般質疑の時間があろうと思いますので、今のことに関しましては一般質疑の時間で細かいことを審議させていただきたいと思いますので、著作権法質問に入りたいと思います。  同僚議員からもお話しございましたけれども、御存じのとおり、今まで我が国の著作権というのは大変後進国であると、感じとして言われております。それはむべなるかなということで、今までの習慣で、我々は小さいときから、私なんかもう年でございますから、育つときからお水を飲んだらこれはただで、お水をお金で買って飲むなんということは考えもしませんでした。ところが今はミネラルウオーターで、もうとにかく水道の水を飲まないで、ミネラルウオーターもお金を出して買いに行くというような時代になりました。空気は、日本の空気はみんなよくて、これだけは天から与えられたものだと思ったら、このごろは環境ホルモン等々、空気を吸うのも日本はおかしくなったんじゃないかと思われて、すべてそういうものにお金がかかるということの知識が私は全くなかったと言っても過言ではない。  だから、先日この委員会参考人においでいただいて、JASRAC、著作権料をいただく団体、あるいは先ほどもございましたけれども環境衛生同業組合、お金を払う方の参考人からもるるお話がございました。お互いにまだまだ、変な話ですけれども、何でも払う方は安ければいい、取る方は何でも高ければいいという、当然の摂理でございますからこれをとやかく私たちが言うつもりはございませんけれども、そのように著作権というものが我が国の国民の中に認識度が薄かったということは私は言わざるを得なかったであろうと思うんですね。  著作権の関連法案というのは、これは大変古いと思うんですけれども明治二年、一八六九年に一番最初に出版条例の公布がされました。だから歴史的には、ああなるほどなと思って私も資料を拝見して、ああ日本もかなりやっていたんだなと思うんですけれども、その後の国際的なレベルの著作権法に発展するまでの期間が長かった。  しかも、著作権というものが、先ほどからるるお話しございましたけれども、昭和四十五年に現行著作権法が公布されましてから、私もこれは参考資料で調べましたけれども、今まで著作権法改正というものが十三回にわたって国会で審議され、そして十三回にわたって著作権法改正がなされてきた。  その都度手直しをされてきたんですけれども、先ほどからの著作権法の審議を聞いておりましたところ、午前中に世耕議員がおっしゃいましたけれどもMP3等の新しい機器がどんどん出てまいりました。そのように、私どもは今まで昭和四十五年の著作権法の公布から十三回にわたって改正してきたにもかかわらず、先ほどもお話がございましたけれどもまだ残っている部分がある。WIPOの話もしかり。  それから、みんないい音だななんて、けさMP3の話を聞いたんですけれども、まだまだこれにとどまらないんですね。御存じのとおり、日々新しい機械が出ておりまして、CD—ROMでありますとかMDだとかDVD、MOなど次々に開発されてまいります。いろんなものに小型にデジタルで蓄積されて、それが配付されていく。ここまで来たと。  しかも、きょう皆さんが聞いたようにMP3まで来たけれども、もっとこれからは新しい分野が出てくる。WIPOだけではなくて、はっきり申し上げてこれからは光ケーブルであり、あるいは人工衛星であり、やがては日本もお金を出しております宇宙ステーションもあり、そういうところでどのように音楽が使われていくか。あるいは、それは耳から入る音だけですけれども、これも日々改正しなければいけない部分が、追っかけ追っかけの著作権ですからまだまだ出てくると思うんですね。  まして近々では、今外務省がWIPOの承認に対しても順番という話が出ましたけれども、今まで後進国だと言われた我が国の著作権の状況を、これから出てくる光ケーブルとか、今私が申しました宇宙衛星等々のどんどん新しいものに追いつけ、追い越せとまでいかないんです、追いつくだけでも精いっぱいという著作権法を今後どのように検討していくか。その都度その都度追っかけの改正ではなくて、あるいは、今御提案にありましたWIPOに関しても、諸外国に比べて一歩前進することが、後進国である日本が先進国だということを証明する一歩になると思うんですけれども文部省が外務省にどのように働きかけていき、後進国を先進国に変えることができるのか、その心構えを伺いたいと思います。
  138. 近藤信司

    政府委員近藤信司君) 確かに、特にデジタル化ネットワーク化の急速な進展によりまして著作権法の制度の見直しということが常に課題として出てくるわけでございます。私ども著作権審議会を開きまして適時適切に対応しているつもりではございますけれども、むしろ、そういった技術の進展と申しますか、それが先を行っているというような側面もまたございます。  ただ、日本著作権法の制度そのものが国際的にそんなにおくれているかと申しますと、制度の仕掛けとしては、私どもは我が国の著作権法はかなりレベルとしては高いのではなかろうかと思っております。  問題は、一つは国民の中におきます著作権保護意識普及啓蒙という課題がございますし、何分にもこの著作権法世界は、午前中からも審議がございました権利者と利用者との、これもまたいろんな方々があるわけでございます、そこの利害が複雑に絡み合っていると、そこのところをどういった形で整理していくかと。それは一つには、権利の内容、制度そのものを見直すということももちろん委員指摘のとおり大事でございますし、もう一つには、関係者の間でそういうルールづくりを早急にしていく、こういった努力もまたやっていかなければならないと思っております。また、外国への対応、これはまたきっちりと私どもやっていかなきゃならぬ課題だと思っております。  いずれにいたしましても、そういった多くの課題がこの著作権世界で山積をしておるわけでございまして、それぞれの課題に時宜を失することがないように一生懸命頑張ってまいりたいと思っております。
  139. 扇千景

    ○扇千景君 その態度を貫いていただきたいんですけれども、同僚議員からお話しございましたし、特に私が言うと何か自分のために言っているようだと思われるので言いよどんでいるんですけれども、実演家の人格権に関しても私はぜひ考慮すべきであろうと。  たまたま今先生方が監督だとか映画に附属した現場の人たちお話をされましたけれども、今回の著作権法で音というものは大体これでカバーできるんだろうと思うんですけれども、あとは、音ではなくて映像についての基本的な人格権というものがなぜ認められないんだろうか、実演家に対しての著作権、いわゆる隣接権等も含めて今後の課題として、何か私利私欲で言っていると思われると困るので遠慮をしながら言うんですけれども、一銭も今入っておりませんので、深夜映画が再放送されて何か入ってくればみんなにコーヒーぐらいをと、これは余分ですけれども、それくらい思っておりますけれども、これはやっぱり真剣に実演家というものに対しての権利も認められるべきであろうということを私から申し上げておきます。  最後に、文化庁というものがこの委員会の審議に出てくるということが大変少のうございます。著作権法があったりあるいは宗教法人法があるときぐらいしか文化庁というのはなかなか出てまいりません。先ほどからもお話しございまして、私はこの間も参考人のときに申し上げたんですけれども文部省の中に文化庁の設立意義というものがどこにあるのか、大臣がどのように文化庁を考えていらっしゃるのか。  いつも言うんですけれども、文化立国なんて言葉はだれでも使えるんですけれども、実態が伴わない。特に私が申し上げたいのは、国立劇場だとか新国立劇場、箱物ができるときには予算は一生懸命とったんですけれども、国立劇場ができ新国立劇場ができ、箱物が終わると文化庁予算がまたどんと少なくなる。  私は、そうではなくて、総予算の〇・一%しかない文化庁予算というものを、文化立国という言葉を口にするのであれば、世界並みにとは言いませんけれども、少なくとも世界の半分ぐらいはなければ文化立国なんて言葉は軽々に使っていただきたくない。  ぜひ、文化というものを大事にする。変な話ですけれども、戦後一生懸命経済を復興させようと思ってきましたけれども、経済摩擦が起き、貿易摩擦が起き、そういう他国との摩擦というものも文化によって解消できるという点を今まで忘れがちでした。もうこの国会が終わりますとすぐ概算要求が始まります。たまたまきょうは文化庁が出てまいっておりますので、文化庁の設立意義と日本の文化予算の今後の取り組みについての大臣の姿勢を伺って、質問を終わりたいと思います。
  140. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、文化というのは極めて広いものだと思っております。私の専門といたしておりました科学技術というのも、これもまた文化の一つであると考えております。  しかし、文部省文化庁の場合はやや狭いところにあろうかと思いますが、狭いという意味は、学術というふうなものを外したところにあるわけでありまして、芸術とかあるいは考古学なども文化の中の一部だと思いますけれども、そういう面での文化というのはやはり非常に重要だと考えております。文学等々もこれも文化の中に入ってくる。  そういう点で私も、文化庁の予算というか日本の文化予算が少ないということはかねがね心配をしております。かつて、国際文化交流の上での予算をどうするべきかというような委員会をお手伝いしたことがありますが、その際から特に国際文化交流の予算というものをふやしていかなきゃならぬということを私は強く主張していた人間であります。教育の上でもやはりもっと予算をふやさなければいけない、それから科学技術でもふやさなければいけない、学術でもふやさなきゃいけないと思っておりますけれども、同時に、文化というものにおいてももっと予算をきちっとふやしていかなきゃならないということを常々考えている人間でございます。
  141. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  著作権法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  143. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、江本孟紀君から発言を求められておりますので、これを許します。江本孟紀君。
  144. 江本孟紀

    江本孟紀君 私は、ただいま可決されました著作権法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、社会民主党・護憲連合、自由党及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、著作権思想の一層の普及・啓発に努めるとともに、近年のデジタル化ネットワーク化の進展に伴う著作物等利用形態の多様化及び著作権制度に係る国際的動向にかんがみ、著作権の保護を適切に行うため、次の事項について配慮すべきである。  一、附則第十四条の廃止に係る著作物使用料の徴収が適正かつ円滑に実施されるよう、関係者間の調整に努めること。  二、著作権の集中管理の在り方については、権利者の適切な保護を図るとともに、利用者の多様なニーズを踏まえたものとなるよう、仲介業務制度の見直しも含めて検討すること。  三、実演家の人格権及び視聴覚的実演に関する権利について検討を進め、「WIPO実演・レコード条約」の早期批准を目指すとともに、視聴覚的実演に係る新たな国際的合意の形成に積極的役割を果たすこと。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  145. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいま江本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  146. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 全会一致と認めます。よって、江本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、有馬文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。有馬文部大臣
  147. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。ありがとうございました。
  148. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十六分散会