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1999-05-27 第145回国会 参議院 文教・科学委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         南野知惠子君     理 事                 狩野  安君                 馳   浩君                 江本 孟紀君                 松 あきら君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 亀井 郁夫君                 北岡 秀二君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 橋本 聖子君                 石田 美栄君                 本岡 昭次君                 山下 栄一君                 畑野 君枝君                 林  紀子君                 扇  千景君                 田名部匡省君    事務局側        常任委員会専門        員        巻端 俊兒君    参考人        専修大学法学部        教授       齊藤  博君        社団法人全国環        境衛生同業組合        中央会理事長   森  茂雄君        社団法人日本音        楽著作権協会会        長        遠藤  実君        社団法人日本芸        能実演家団体協        議会専務理事   棚野 正士君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出)     ─────────────
  2. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教・科学委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  著作権法の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会参考人として専修大学法学部教授齊藤博君、社団法人全国環境衛生同業組合中央会理事長森茂雄君、社団法人日本音楽著作権協会会長遠藤実君及び社団法人日本芸能実演家団体協議会専務理事棚野正士君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 著作権法の一部を改正する法律案議題といたします。  本日は、参考人方々から御意見を承った後、質疑を行います。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  皆様方には、ただいま議題となっております著作権法の一部を改正する法律案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますが、まず、齊藤参考人森参考人遠藤参考人棚野参考人の順序でそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただいた後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言は、意見質疑及び答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、まず齊藤参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。齊藤参考人
  5. 齊藤博

    参考人齊藤博君) ただいま御紹介いただきました齊藤でございます。  日ごろより我が国著作権法制につきまして意欲的に取り組んでいらっしゃいます先生方の前でこのようにお話しできますことは、まことに光栄でございます。  本日は、五点に絞りましてお話をさせていただきます。  第一点は国際著作権界動き、第二点としまして技術と法の結合、第三点としまして頒布権譲渡権、さらに四点としまして上映概念拡大、そして最後に附則十四条の廃止、以上の五点でございますが、時間の関係で時には省略するところがあろうかと存じます。  このところ、もう少し詳しく申し上げますと、一九九〇年代に入りまして著作権法制を取り巻く状況の動きというものは激しさを増しつつございます。一つには、著作物実演等利用する技術開発がございます。CDやDVD、フラッシュメモリーなど、著作物等を記録する媒体開発に加えまして、宇宙衛星、光ケーブル、インターネットなど、著作物等を伝送する媒体開発もございます。もう一つには、多様な媒体開発著作物等地球規模での流通を促しつつございます。そうなりますと、著作物等保護する水準諸国の間で開きが生じないよう、諸国法制をハーモナイズすることが求められるようになるのでございます。  そして、近年の特徴としまして、条約の持つ指導的な役割が改めて注目されるようになりました。著作物等利用する技術の普及につき、技術先進国途上国の間に生じていました乖離が狭まってきたのでございます。衛星を介しまして著作物等を送受信すること、これは今や地球規模で行われております。しかも、途上国におきましても、大きな基盤整備を要することなくこの種のことを行うことができるようになったのでございます。そのような中で、著作物等地球規模での保護が急がれるようになってきたのでございます。  その一つに、一九九四年の世界貿易機関、いわゆるWTO設立協定に附属しました知的所有権貿易関連の側面に関する協定通常TRIPS協定と呼んでおりますが、この種の協定がございます。そこには大胆な規定が盛り込まれております。すなわち、WTOに加盟する国や地域に対しまして、ベルヌ条約に加入していなくても、ベルヌ条約の定めるところを遵守するよう求めているのでございます。事は急を要するものでございますから、ベルヌ条約並み保護水準ベルヌ同盟国の範囲を超えて一気に達成しようとする大胆な戦略がとられているのでございます。もっとも、著作者人格権保護は除かれています。貿易関連の面からまずは財産権保護を達成しようとした結果でございます。  一九九六年も押し迫りました十二月には、世界知的所有権機関、いわゆるWIPOを舞台にしまして、WIPO著作権条約WIPO実演レコード条約が採択されております。この段階になりますと、著作物等をおさめたパッケージタイプのソフトの流通、俗に言いますと、いわゆる物流からインターネット等による著作物等送信へと関心が移ってくるのでございます。WIPO二つ条約もその点に焦点を合わせたものとなってございます。そこには、このたびの改正案にございます技術的保護手段回避権利管理情報改変等への対応も含まれているのでございます。  次に、技術と法の結合につきまして短くお話をさせていただきます。  技術的保護手段回避への対応にいたしましても、権利管理情報改変等への対応にいたしましても、デジタル時代を迎えました著作権法制のあり方を見ることができるのであります。これまででございますと、技術著作権法は相対する関係にございました。どちらかといいますと、極端な言い方をいたしますと、敵対する関係といいましょうか対立する関係にございました。しかし、デジタル技術は、その特性に注目しますときに、著作権等保護管理にとりまして力強い友人であるということがわかったのでございます。著作物等無断利用から保護するために技術の力をかりることができるようになったのでございます。  その場合、著作物等無断コピー無断送信を抑止する信号を入れ込む方法一つ考えられます。さらには、著作物等著作権等管理情報を入れ込むことも可能でございます。信号を入れましたり電子透かしを入れる手法はデジタル時代なればこそ可能なのでございます。この技術は、権利保護管理のみならず、著作物等流通にも変化をもたらそうとしているのでございます。  その一方、いかにすぐれた技術でございましても、これを迂回する装置を売る者、あるいは用いる者もあらわれてきます。権利管理情報にいたしましてもその改変等技術的には容易でございます。ここで法の関与が求められるようになるのでございます。このたびの法改正の意図も、技術と法の好ましい関係を保持する中で、著作物等保護につき新たな枠組みを提供するものと申すことができるかと存じます。  第三点としまして、頒布権譲渡権につきまして簡単にお話をさせていただきます。  一九九六年十二月の外交会議におきましては、二つ代替案が示されたところでございます。一つ頒布輸入の両権利を定めたもの、もう一つには頒布権のみで輸入権を組み合わせないものでございました。この二つの案のいずれをとるかということで議論がなされたわけでございますが、輸入権に消極的な国が多かったために、結果としましては頒布権のみを定めた案の方が採択されたところでございます。  そこまではよろしいのでありますが、我が国の問題に戻してみますと、譲渡権の創設という立法上手間のかかることをなさなければならないことになった次第でございます。詳細はまた別の機会に御説明があるのではないかと存じます。  第四点としまして、上映概念拡大でございます。  映像表示技術開発は、映画著作物のみならず、美術や写真の著作物など、静止画や言語の著作物のディスプレーをも可能にしてきたのでございます。そこで、これまでの映画著作物につき認められてきました上映権をその他の著作物にも及ぼそうということで、法改正がなされようとしているところでございます。これも、著作物の新たな利用技術への対応と申すことができます。  第五点としまして、附則十四条の廃止につきまして申し上げたいと存じます。  昭和四十五年における著作権法制全面改正に際しまして、演奏権保護を強化する一方、当時の利益状態を急激に変えることを避けるべく、経過措置一つとして設けられましたのがこの附則十四条の規定でございます。  政令で定める事業において行われるものを除き、当分の間、録音物による演奏録音物再生は自由、すなわち無許諾、無償で行うことができるとしたのでございます。当時におきまして、比較的小規模に経営する喫茶店等におけるレコード演奏につきましては、それまでどおり自由に行うことができるとしたのでございます。  演奏権保護を国際的な水準、すなわちベルヌ条約ブラッセル改正条約の求める水準にまで引き上げようとする中で、小さな喫茶店等におけるレコード演奏という、当時に存しました特殊事情に注目しまして、例外的、限定的に、それも経過措置として演奏権を制限したのでございます。その限りにおきましては、附則第十四条の規定は既にその使命を果たしたと申すことができようかと存じます。  簡単でございますが、以上で終わらせていただきます。
  6. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ありがとうございました。  次に、森参考人にお願いいたします。森参考人
  7. 森茂雄

    参考人森茂雄君) ただいま御紹介にあずかりました、私は全国環境衛生同業組合中央会を代表いたしまして、きょうお招きにあずかりまして本当にありがとうございました。  私ども団体は、二百五十四万施設、六百万人の会員を擁しております。私は実はこういう難しい問題には非常にわかりの悪いすし屋のおやじでございます。したがいまして、江戸っ子ではございますが、おわかりにならない点、そして私の申し上げる点に御無礼がございましたらお許しを賜りたいと思っております。  実は私ども、この問題につきまして、本年の二月十九日に文化庁吉田著作権課長さんから初めて附則第十四条の廃止についての内容説明をお受けいたしたわけでございます。  これに対しまして零細な利用者団体、私どもの今の団体でございますが、特に現在まで放置をされていた問題について、何で今この時期にこんな問題について急遽著作権法の一部を改正するんだろうか、また、その法案が出されてひとり歩きされてしまうんだろうか、非常な社会的混乱という問題についてお考えいただいていないんじゃないかというようなことで、実は私ども全国環衛中央会理事長会といいます会長会を開催させていただきました。  これは、日本でございますので九州から北海道までそれぞれの業種会長がおられまして、その方々にお集まりをいただきまして会を開いたわけでございます。そして、文化庁さんの方のお話によります第十四条の廃止につきまして反対したいというような皆様の御意向がまとまりまして、反対という要望を実は作成させていただきました。  これまでの間には、文化庁さんと厚生省さんとお話し合いをしていただいた上で、私ども全国環衛中央会意向という形で、全理事会の決議をもちまして反対をさせていただいたわけでございます。これはもう文書でお渡ししてございますので、ごらんをいただいたかと存じます。  特に私ども環衛業にとりましては、昨年の二月ごろから行われました五坪店以下までという例のカラオケ問題でございますが、この問題につきましても、実は徴収の問題についてかなり私ども団体では御協力を申し上げてきたというのが現状でございましたが、それにつきましてアウトインと申しますか、実は組合員以外の方々契約率が非常に低いということが言われておりまして、組合員からは、組合に入っているがためにこのような押しつけを受けてしまうのではないかというような、公正、不公平の問題が非常に浮かんできておりまして、何でこの時期に十四条を廃止するんだというような問題でございました。  二月二十六日になりまして、きょうお隣におられますJASRAC遠藤会長に初めてお会いをさせていただいたわけであります。そのとき私どもでは、一番関連のございますホテル旅館業社交業、そして飲食業団体の代表の方を交えまして、私と中央会専務が立ち会ったわけでございますが、皆様から異口同音に全く話にならないというようなことが出まして、関係団体に、私ども協議もされずに今日このようなことについてお話をされたということは非常に心外だというような話までその時点では出たわけでございます。遠藤会長さんは御同席をされましたので、そのときの模様はよくおわかりだろうと私は思っております。私どもが最も申し上げたいのは、利用者に対しまして公正な利用、そして協力を得るという問題ではないのか、そういう御説明が十分にあってもしかるべきではないのかな、こう思いました。  そしてまた、その後でございますが、この間、文化庁厚生省さんにお願いいたしましてお話し合いを続けていただいた結果、五月六日に林田文化庁長官にお会いをさせていただくことに相なりました。お話を伺っておりますと、ただいま先生お話をされたようなベルヌ条約等問題等も伺いました。世界における日本立場という問題点につきましても文化庁長官からお話をちょうだいいたしました。  私どもは、この問題についてはよく存じてはおりませんが、しかしながら、国際的な問題ということが出ましたので、私どもJASRACさんとともにこの問題について真剣に考えていこう、そして特に文化庁さんの方から仲介の労をとってくださるということでございましたので、細部の問題につきましては今後私ども利用者団体との間に入っていただいて十分意見をお聞きいただき、公正の問題、アウトインの問題、それからそのときに実は十四年四月以降というようなお話を伺ったのでありますが、私ども団体で決議いたしました十七年四月以降というようなことを長官に申し上げたわけでございまして、この問題につきましては後刻お話し合いの席で御指導を賜ろう、こういうふうに私どもは思いました。  それからまた、五月十日でございましたが、私どもでは理事会を開催いたしまして、著作権法問題の全国理事会でございまして、全国理事長さんにお集まりをいただきまして検討し、そして今の文化庁長官お話も交えまして、全国環衛連合会文書をもちまして現状の御報告をしたというのが現状でございます。  私どもは、著作権法改正の問題につきまして、本来でございますと絶対に反対だという意見を通したいわけでありますが、先ほど申し上げましたように、文化庁林田長官お話をいたしました際、国際的な問題だということは私ども理解をしなくてはならない、無視できない問題と考えまして、やむを得ず、まことに申しわけのない言い方ではございますが、条件つきで黙認と申しますか、そういう形をとらざるを得ないのではないだろうかということであります。  実はこの問題につきましては、私どもといたしましては、守れる法律をつくっていただきたい、そしてだれもが参加できて、皆様方がこの金額なら全員が賛成しようよと言っていただけるようなものであれば、私どもは喜んでその中で多くのアウト方々を御勧誘申し上げよう、こういう気持ちは変わっておりません。  以上であります。
  8. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ありがとうございました。  次に、遠藤参考人にお願いいたします。遠藤参考人
  9. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 遠藤実でございます。  本日は、私たち立場意見を申し述べる機会を与えていただきまして、まことにありがたく、まず冒頭に心より感謝をし、御礼を申し上げる次第であります。  私は、作曲家であるとともに、現在は日本音楽著作権協会会長を務めております。以下は略称JASRACと言わせていただきます。本日は二つ立場から考えを述べさせていただきますが、JASRAC会長の職というのは日常の実務には直接携わる立場ではございませんので、細かい点については不案内なところがあるかもしれませんが、この点あらかじめお許しをいただきたいと思います。  委員先生方には既に御承知と存じますが、JASRACとは、今から約六十年前の昭和十四年に、私たちの先輩である作詞作曲家が中心になってみずからの権利を守るために設立した社団法人でございます。当初六十八人でスタートした団体は、今日では約九千五百人の作詞作曲家と、約千七百のプロモートを行っている音楽出版者会員信託者として参加しております。JASRACはこうした会員によって運営されている組織でありますので、作詞作曲家音楽出版者会員選挙によって七十五名の評議員が選ばれ、その中からさらに選挙で各六名の理事が選出され、合議によって物事を運営するというシステムをとっております。  私たちJASRAC業務でありますが、一万一千二百名の権利者である会員信託者から著作権をお預かりして、音楽利用する方々から所定の使用料をお支払いいただき、その使用料権利者に分配するという著作権管理を主な業務としております。また、外国音楽につきましても、六十八カ国、九十三団体の海外の著作権協会相互管理契約を結んでおりますので、日本で使われるほとんどの音楽JASRAC利用許諾を受けることができるようになっております。このように、作家著作権を守ると同時に、音楽利用される皆様の窓口として利用の円滑を図っているわけでございます。  今回の著作権法の一部改正案では、既に御案内のとおり五項目の改正案が提出されております。この改正案内容はいずれも、世界知的所有権機関WIPO条約を批准して我が国著作権制度の国際的な調和を図っていくために必要な法整備であり、著作権者として念願してきたものでございますので、ぜひ今国会での成立をお願いしたいと考えております。  本日は、これらの法案のうち、私たち音楽家にとって長年の悲願でございます附則第十四条の廃止につきましてお話をさせていただきたいと思います。  今、日本じゅうで毎日たくさんのバックグラウンドミュージックBGMが流されております。喫茶店、デパート、ホテル、また銀行のロビー、空港の待合室などで一日に使われる曲の数は恐らく数千万曲に及ぶと思われます。ところが日本著作権法では、附則十四条の規定によって、レコードなどの録音物を使って再生演奏を行っても著作権使用料を支払わなくてもよいことになっております。これは世界的に見ると極めて不合理な規定であると受け取られております。私たち音楽をつくった者は、この規定によって、自分作品がどれだけBGMで使われても一切その対価を受けることができないのであります。そればかりか、外国作品についても同様でありまして、外国音楽家からも日本対応を早急に改めるよう強く求められているのが実情であります。  どのような業種であれ、営業していくためには、商品の仕入れや電気、ガス、水道、家賃の支払いなどさまざまな経費が必要だと思います。しかしながら、音楽だけは一切支払いをしないで自由に使って構いませんという法律になっております。音楽は、お客様の雰囲気を盛り上げて購買意欲を喚起したり、ロビーでの待ち時間に気持ちを和ませたり、水や電気のように目には見えないところでいろいろなお役に立っているはずです。また、お役に立っているからこそ、これほど多くの皆さんから御利用をいただいているのだと思います。それにもかかわらず、音楽だけはただですよというのでは、国際的な理解を得ることはできません。  なぜこのようになったのかと申しますと、現在の著作権法は今から約三十年前の昭和四十五年に全面改正をされたものです。それ以前の旧著作権法は、出所を明示すれば自由にレコード演奏を行うことができることになっておりました。この昭和四十五年の改正の際にもこの部分が大きな論点の一つとなりましたものの、著作権法の本則では、私ども希望どおりに生演奏録音物再生演奏を同じに扱うことになりました。  ところが、その当時、レコード演奏を多く行っていた喫茶店などの事業者方々に急激な御負担増をかけないことなど政策的な配慮が優先された結果、当分の間の措置として、営業上音楽利用が不可欠な一部の業種を除いて、レコード演奏からは料金を取らないという権利制限規定が設けられたのであります。私どもは、この措置には大変不満でございましたが、互譲の精神が必要なことも理解しておりましたし、この規定には「当分の間」とあるわけですから、それほど遠くない将来に廃止をされるのだと期待をし、ひとまず法改正を優先させることにしたのであります。  しかしながら、当分の間であったはずのこの措置が既に三十年を経過してしまい、この間に音楽利用方法も大きく変わりました。今やBGMは、レコードなどの録音物を用いる時代から、有線放送などを用いる時代へと移ろうとしています。国民の皆様著作権に対する理解も三十年前とは比べようのないほど深まったと考えております。また、私どもJASRACも、大量な音楽利用を効率よく、かつ公平に管理できるように努力を続けておりまして、管理をお任せいただいても十分に対応し得るだけの基盤はできております。現在では、附則十四条を残しておく理由は全くなくなったのではないかと思われます。  次に申し上げたいのは、この附則十四条のような規定は国際的にも例を見ないものでございます。国際的には、生演奏録音物による演奏は同一に評価されるべきものとされております。附則十四条のような規定は、欧米先進国はもとより、アジア地域にも見られておりません。  初めに申し上げましたように、JASRAC外国著作権管理団体管理契約を結んでいます。お互いに相手の国の音楽自分の国で使われた場合は、その国の著作権協会使用料を徴収して相手の国の団体に送金することになっております。この契約があることによって、私たち日本作家は、外国自分音楽が使われたときその使用料を受け取ることができるのですが、この附則十四条があることによって、外国作品日本BGMで使われても使用料は一切支払われないのであります。  例えば、昨年我が国で大ヒットいたしました「タイタニック」という映画がございます。この映画のテーマは大ヒットしていまして、今でも毎日のように町に流れています。ところが、この曲をつくった外国作家の手元には著作権料が届くことはないのです。このことは、EUなどからベルヌ条約という国際的に著作権保護し合う条約に違反しているのではないかとの指摘を受けておりますし、JASRACも国際会議などで外国著作権管理団体から早期に是正するよう要望を受けております。このような不均衡は、我が国の国際的な地位から考えても一刻も早く改善をする必要があるのではないでしょうか。  著作権と聞くと、一部の利用者方々から高額な使用料を払わなければいけないのかといった不満の声も上がるかと思いますが、しかし私どもも、BGM音楽管理に当たってそれほど高額な使用料をいただこうと考えているわけではありません。BGM利用全国津々浦々の非常に広い範囲で行われているのですから、一人一人の末端の利用者にはできるだけ御負担をかけないように、広く薄く管理していく方法を工夫したいと考えております。  法律が変わったからといって、いきなり使用料を払えなどという言い方をするつもりはありませんし、著作権の制度や、いただいた使用料がいかに公正に分配されているかなどの仕組みについて詳しく説明をさせていただくために、十分な広報と周知のための期間を設けたいと考えております。また、料率の決定に当たりましても、一方的に決めるのではなく、文化庁の御指導を受けながら、現在のようなこうした経済情勢を踏まえて、利用者団体方々と十分話し合って円満に決めていきたいと真剣に考えております。  作詞家、作曲家といいますと、マスコミなどに取り上げられるような一部の著名な人ばかりが注目されていますので、一見華やかな職業のように思われるかもしれません。しかし現実には、JASRAC会員信託者の中で著作権使用料だけで生活ができる人はほんの一部でございます。  また、音楽家がその才能を本当に発揮できる期間は、一般にごく短い期間に限られてしまうものです。いっときは売れっ子と言われるような時期があったとしても、それはごくわずかの期間にすぎません。若い感性はいずれ衰えるものであります。そのとき、私たちの生活を守ってくれるのが著作権制度であります。この制度があるからこそ、私たちはあしたへの希望を持って創作活動に取り組むことができるのであります。  しかし、この著作権制度も、作家生活を保障するにはまだまだ十分なものとは言えません。例えば、JASRACのメンバーである九千五百人の作詞作曲家のうち、JASRACから受ける年間の分配額が百万円以下の作家が実に八七%にも上っており、五百万円以上の分配を受けている作家はわずか五%にすぎないのが実情であります。  ことし十一月には、世界じゅうの著作権協会集まりであるCISACという国際団体理事会、執行委員会等を東京で開催することになっております。また、この機会世界の各国の著作権関係者などをお招きした国際シンポジウムも開催する予定でございます。これらの国際会議の席で、我が国の長年の懸案であった著作権法附則十四条の改正が成立されましたことを報告させていただくことができれば、これ以上の幸いはございません。何とぞ、私どもの三十年来の悲願を御理解いただきますよう伏してお願い申し上げます。  本日は、このように作家権利を守るための意見を述べる機会をつくっていただきましたことを、御出席のお一人お一人の先生方に厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。
  10. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ありがとうございました。  次に、棚野参考人にお願いいたします。棚野参考人
  11. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 社団法人日本芸能実演家団体協議会、略称芸団協の棚野でございます。  芸団協は、著作権法に言う実演家、すなわち俳優、演奏家、歌手、舞踊家等の団体、五十九団体を正会員とする社団法人でございます。実演家総数としては六万四千人をカバーしております。  本日、参考人として出席できましたことを本当に光栄に存じております。心から厚く御礼を申し上げます。  実演家を代表して次のとおり意見を申し上げます。  一九九六年十二月に作成されましたWIPO著作権条約WIPO実演レコード条約への対応を中心としまして、著作権法の一部を改正する法律案が本文教・科学委員会で審議されますことを実演家の立場からもまことにうれしく存じております。今国会で改正法が成立することを強くお願いする次第であります。とりわけ、録音物による演奏についての経過措置廃止は著作者にとって三十年間の悲願でありまして、著作者のパートナーである実演家としても著作権法附則第十四条の廃止に積極的に賛成いたします。  近年の情報のデジタル化、ネットワーク化に伴い、実演の利用が急激に発達、多様化しております。著作権法制度の見直しが実演家の立場からも要請されるところでありますが、緊急課題を一つだけ報告申し上げます。それは、視聴覚的実演の保護映画著作物あるいは映像に係る実演の保護の課題であります。  著作権法で、実演家は録音権、録画権、放送権、有線放送権、送信可能化権等の権利を与えられておりますけれども、実演家の許諾を得て映画著作物に録音・録画された実演については、この権利は適用しないと定めております。法律は、実演家に右手で権利を与え、映画著作物については左手で権利を取り上げるという結果になっております。ただし、テレビ番組の場合は実演家に一定の権利が与えられております。  この問題は、現行法成立のときからの三十年間にわたる課題であります。映画著作物に係る権利について、一九七〇年に成立しました現行著作権法は、伝統的映画の伝統的利用を前提として定められたものでありまして、その後急速に普及したビデオはその前提に含まれておりません。一九七三年、著作権審議会第三小委員会報告書にもそのことが書かれております。まして、その後の映像の新しい入れ物でありますLD、DVD、CD—ROM等の開発インターネットの普及あるいはケーブルテレビ、BS放送、CS放送等、映像の新たな利用手段の発達は当然に前提としておりません。一九六〇年代の実演等利用手段と九〇年代のそれを比較しますと格段の差があり、法制度の見直しは不可欠であるというふうに考えております。  この問題は、国内法の問題であるだけでなく、国際条約の問題でもあります。日本著作権法は実演家の権利に関して、一九六一年に作成されましたローマ条約、実演家、レコード製作者及び放送機関の保護に関する国際条約をモデルにしております。そして、ローマ条約では、この条約のいかなる規定にもかかわらず、実演家がその実演を影像の固定物または影像及び音の固定物に収録することを承諾したときは、その時以後実演家の権利規定は適用しないと規定しております。この規定は、WIPO「ローマ条約解説」自体が認めているとおり、伝統的映画の伝統的利用しか想定しておらず、映像の技術的発達、利用手段の拡大に適応しておりません。  「ローマ条約解説」ではこう述べております。ローマにおける交渉者たちは、疑いなく、過去六十年間存在した映画のことだけを考えた、その後、例えば家庭内で上映するために販売されるビデオのような新しい利用手段が開発された、このように解説しています。  情報・コミュニケーション技術の発展によって生じる課題について適切な解決策をもたらすために、ローマ条約にかわる国際規範として、一九九六年十二月に三十五年ぶりにWIPO実演レコード条約が作成されまして、さらにこのときの外交会議の決議を受けて、現在WIPOで視聴覚的実演に関する議定書が検討されております。  以上のように、映画著作物に係る実演、あるいは視聴覚的実演の保護は国内的にも国際的にも緊急の課題になっております。国内的には、著作権法の見直しの問題として、文化庁の映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、映像懇で一九九七年以来検討が行われております。また、国際的にはWIPOの常設委員会で検討が進められております。  この問題は、国内的にも国際的にも実演家にとりまして二十世紀に残されました最大の課題でありまして、二十一世紀に至るまでにどうしても解決をしたいと強く念願する次第であります。  以上のことを踏まえまして、この緊急課題についての実演家の基本的考え方を申し上げたいと思います。  一、情報のデジタル化、ネットワーク化の急速な発展は実演の利用に重大な影響を与えており、実演家の経済的、人格的権利について、特に映像に係る実演家の権利に関し著作権法の見直しを行うべきであります。それによって、著作権制度が実演家の創造活動を促進することができ、映像文化、映像産業の健全な発展に資する、このように考えます。  二、日々急激に発展、変化する今日の社会的、文化的、技術的状況において、映像に係る実演家の権利について三十年前の著作権法制度を維持するのでは新しい時代対応することはできません。  三、実演は、著作物同様、知的創造行為の所産であり、実演家は単に著作物の伝達者ではなく、創造者、創作者であります。実演家の権利は、著作権そのものとは概念されないものの、権利内容は著作者の権利と同等であるべきであり、権利のあり方からいえば、実演のすべての利用について実演家の権利が及ぶべきである、このように考えます。  四、この場合、映像に係る実演と音に係る実演を差別することなく、すべての実演が保護の対象となるべきであります。  五、一九九六年十二月の外交会議の決議に基づきWIPO実演レコード条約議定書が検討されている状況を考えても、国際社会においてリーダー的な立場にある日本は、国際規範の作成について積極的役割を果たすとともに、早急に国内法の見直しを行うよう関係者が協力すべきであると考えます。  以上でございます。ありがとうございました。
  12. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  なお、各参考人にお願い申し上げます。時間が限られておりますので、御答弁はできるだけ簡潔にお述べいただきますようお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 馳浩

    ○馳浩君 自民党の馳浩です。よろしくお願いいたします。  まず、齊藤参考人にお伺いいたします。  今後の日本著作権法上の課題ということで、技術的な動向、国際的な動向に照らし合わせて緊急性のあるテーマ、これは何なのかということを教えていただきたいと思います。といいますのも、我々この委員会でもほぼ毎年のように著作権法改正について取り組んでおりますが、残念ながらいつもWIPO条約を受けて後追いということになっておりまして、どうしても泥縄式になっているのではないかなというふうな観点を持っております。今ほど棚野参考人からいただいた御意見ども非常に今後の法整備に向けて重要な問題ではないかと思いますが、専門家の立場から御意見をいただきたいと思います。
  14. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  先生御存じのように、デジタル技術あるいはネットワーキング、この領域におきまして大きな発展を見ている現在でございます。そういう中で、今回の改正もございますが、さらにその次の段階として何があるかということを考えますと、一つには権利の制限規定の見直し、これが緊急の課題ではないかと個人的には思う次第でございます。  これは、例えば私的使用のための複製とか、あるいはそのほかの制限規定著作権を制限する規定内での複製等の利用行為、これも、デジタル技術を駆使しました権利管理システムというものができましたときには、あるいは通常の利用形態と同じように扱うことができるのではないか。もちろん金銭の面におきましては従来どおり低いものになろうかと思いますが、権利の処理の仕方としては同様なものになろうかと思います。そうしますと、通常の著作物等利用と、それからこれまで行ってきました権利制限規定内での利用、これは同じ技術で処理ができるのではないか。  もちろんこれはデジタル対応の場合だけでございますから、アナログ対応の状況というものは依然として残ります。したがいまして、権利制限規定を見直すにしましても、デジタル技術に特化した見直しが必要かと思います。  長くなるといけませんので項目だけ申し上げますと、さらに権利保護の実効性の確保、エンフォースメント、これも極めて重要かと思います。  水際措置、これが有体物、複製物の移動でございますと税関等を通しましてチェックができるわけでございますが、ただいまはもう空から入ってくる、こういうときに権利管理あるいは著作物等保護につきましてどういうシステムが可能なのか、考える必要がございます。  最後に、国際私法、インターネット等を考えますと、著作物等を含む情報が地球規模で行き交うわけでございます。その際に準拠法をどうするかとか、かなり国際私法の面の詰めというものが残っているような気がいたします。  以上でございます。
  15. 馳浩

    ○馳浩君 先ほど来のお話を伺っておりますと、附則十四条の廃止について齊藤参考人にお伺いいたしますが、どうしても日本人の著作権という権利に対する考え方が非常に未成熟ではないかというふうに思っておりますが、今後の課題も含めまして、齊藤教授はどのように日本人の中にこの著作権というものの理解を定着させていくべきか、現行どの程度日本人が理解しておるのかなということの、日ごろ思っておられることをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  16. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  非常に大きなテーマでございます。附則十四条そのものはかなり特殊なものでございますので、今の御質問は一般的な御質問として受けとめさせていただきます。  御指摘のように、所有権を初めとします有体物に関する権利につきましては、法学教育も充実していますし、一般の意識も高い、モラルも高いのが現状でございます。他方、著作物等の無体物に関する権利につきましては、意識は決して高いものではない、情報につきましてのモラルもやはり低いと、このようにもうほとんど断定してよろしいのではないかと思います。  これは、無体物に関する法学教育もおくれている面がございます。もう一つ、現場の面で考えますと、一本二十万あるいは百万のソフトを瞬時にコピーできる、目の前でコピーできる。これはある意味では、これまでの財産の感じからすると不思議なことなのでございますね。しかし、今それが瞬時にできるということ、これはかなりの誘惑でございます。これを法意識の面あるいはモラルの面できちっとガードしていく、こういうことが急務であろうかと思います。繰り返しになりますが、法学教育のこの面での充実、それに伴いまして一般の方々への啓蒙とか、こういうことが必要であろうかと存じます。
  17. 馳浩

    ○馳浩君 森参考人にお伺いいたします。  お話を伺っておりまして、二点問題点があるのかなと思います。  まず一点目は、細部の問題は今後詰めていく、条件つきというふうな言葉がありましたが、これは具体的にはどういう点なのかお聞かせくださいというのが一点目です。  二点目として、さりとて、文化庁の仲介もあり、ほぼ理解を深められたと思いますが、その公平の面ですね、組合に加盟している人としていない人。ということになってくると、みんな組合から脱退していくんじゃないかというふうな心配、あるいは現在組合に加盟していない方にちゃんとこの法律に基づいてお支払いをしていただけるように加入を求めていくかという、この現場での御苦労というのは森理事長を初め考えていかなきゃいけない点だと思うんですね。その点についてのコメント、この二点をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 先生からのお話のとおりだと思います。  私ども団体でも実はアウトの問題については非常に難しい問題がございます。それだけに、JASRACさんの御対応はどうされるのか。組合に入っているがために、このような問題について、何でもかんでも組合員だからあなた方は協力しなさいと。これでは確かに抜けてしまうような状況でございます。  したがいまして、せんだってのお話からいたしましても、公平を欠くようなことでないお話し合いを進めてくださるという点を私ども理解をいたしまして、その点で、今後御協議をさせていただく中で十分申し上げながらこの問題は解決していきたいと、かように思っております。
  19. 馳浩

    ○馳浩君 利用者として支払う側と徴収する側で、法律で決まったから払えよ、今まで払っていないのに何だ、こういうふうな平行線になっちゃ困るんですね。やっぱりお互いの常に話し合いのもとでの理解が私は必要だと思いますので、その点は今後、もちろん文化庁にも仲介の労をとっていただきながらも、お互いに理解を深めてやっていっていただきたいというのが我々の一つの考えであります。  遠藤参考人にお伺いしたいんですが、そんな意味で、実は日本音楽著作権協会業務の実態ということについて少し詳しくお伺いしたいと思います。  現在、協会が著作権の信託を受けて管理している権利者の数、使用料徴収額及び分配額、経費分として差し引かれる手数料額、これはどのようになっているのかという実態をお聞かせいただきたいということと、加えて、それが欧米諸国音楽著作権団体と比較した場合にどうなっているか、協会としての運営の実態といったものを少しお聞かせいただきたいと思います。
  20. 遠藤実

    参考人遠藤実君) JASRAC権利を委託している会員信託者の数は、約九千五百人の作詞作曲家と約千七百の音楽出版者を合わせて一万一千二百人となっております。  JASRACが平成十年度に徴収いたしました使用料は九百八十四億八千万円でございまして、分配額は九百七十四億二千万円でございます。  また、JASRACを運営するための経費となります管理手数料の額は百三十八億二千万円となっております。JASRAC管理手数料率は平均で一四%程度となっておりまして、これは国際的に見ましても低い方の水準でございます。
  21. 馳浩

    ○馳浩君 わかりました。  まず冒頭に申し上げたいのは、権利者と、それから利用者から利用料金を徴収する、そういう仲介の立場にありますので、運営については非常に大変な御苦労も多いと思いますが、公平で公正な運営を今後もしていかれることを望みます。  と同時に、今後の全国環境衛生同業組合中央会との関係というものはやはり常に円滑に、文化庁の方にばかり顔を向いているのではなくて利用者の皆さんの方にまず顔を向けて、円滑に事を運ばれるようなお取り計らいというものをお願いしたいと思います。  その点について何かコメントをいただきたいと思います。
  22. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 全く先生の御指摘のとおり、環衛の森理事長とは仲よく兄弟のようにおつき合いをしたいと思っております。そして、お互いが本当に心行くまで話し合って、納得をした上でしっかりと握手をしてまいりたいと思います。そして、一万数千人の会員のために、少しでも生活が楽になるように頑張りたいと思っております。
  23. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございます。  最後に棚野参考人にお伺いいたしますが、きょうは一つの問題提起として御意見をいただいたと思います、実演家の著作権の問題ということに関して。  これは将来的な課題とは思いますが、さてそうなったときに、実演家の映像物に係る権利について、実際に芸団協として円滑な権利の処理というのはしていくことができる体制にあるのかどうか、この辺が大丈夫でしょうかというふうな観点です。
  24. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 実演家は一人一人が権利者でありまして、先生の御心配ももっともだと思います。そして、一つ作品には多数の権利者が関与しておりまして、円滑な利用のためには包括的な権利処理ということが当然に求められるであろうというふうに思います。  芸団協では、昭和四十六年の著作権法施行以来、包括的な権利処理機構の役割を果たしてまいりました。特に、平成五年には専門機関として、実演家の組織として実演家著作隣接権センターを発足させました。そして、昨年の十二月にはこの隣接権センターを関係団体協力を得まして再構築いたしました。権利者をすべて含めまして、当然俳優も含めまして実演家の包括的な権利行使システムの体制はもう既にできていると思います。ですから、いつ法改正がされても受け入れ体制はできているというふうに申し上げたいと思います。
  25. 馳浩

    ○馳浩君 素朴な質問なんですが、では、そういう場合には十分に円滑な分配がなされることができるということですね。
  26. 棚野正士

    参考人棚野正士君) はい、そのように思います。  なお、昭和四十六年から映画の中でもテレビの番組については権利処理を既にしておりまして、そこでは昭和四十六年以降の実績がありますので、私は十分に包括的な権利処理はし得る体制にあるというふうに申し上げていいかと思います。
  27. 馳浩

    ○馳浩君 私は、これは要らぬ心配かもしれませんが、例えば映画になったとき、主役、準主役、助演、脇役、果ては通行人までたくさんの方がかかわっておられるというときにどのように分配なされるのかなと。素人考えで申しわけありませんが、そういったことも含めて大丈夫なのかなというふうにお聞きしたんですが、いかがでしょうか。
  28. 棚野正士

    参考人棚野正士君) テレビ番組の例で申し上げますと、これは既に昭和四十六年から芸団協で処理しているわけなんですけれども、例えば大河ドラマの場合、多い場合は六百人の出演者がいるんです。この場合は芸団協が包括的に使用料を受け取りまして六百人一人一人に分配しているんです。ただその分配は、俳優の出演料に応じてランク分けしまして、おおよそのランクで一人一人の使用料を算出している。ですから、その実績はありますので、ノウハウは既にあるというふうに私どもは思っております。
  29. 馳浩

    ○馳浩君 こんなことを聞いて失礼なんですが、そのランクづけでもめたりすることはないんですか。
  30. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 出演料というのはいわば制作者の企業秘密ですので、私どもの方にはこの出演料は公開されません。ですから、制作会社の方に依頼をしまして、あるいは放送局に依頼して俳優のランクを決めてもらう。これにつきまして今までクレームのあったことはないように思います。
  31. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございました。  終わります。
  32. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 民主党の江本でございます。  きょうは各参考人の皆さん本当にありがとうございます。お忙しいところ、我々のために来ていただきまして本当にありがとうございます。  きょうは、この著作権法改正については我々も法案そのものには賛成の立場で、そういったことでいろいろ御意見を伺って、そしてなお審議をしてということで皆さんにおいでいただきました。ただ、私たちも全部わかっているわけじゃありませんのでちょっととんちんかんな質問をするかもしれませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。  私個人で言わせていただければ、齊藤先生とはかかわりないと思いますけれども、あとの方とは私もちょっとかかわりがあります。というのは、歌の方でいいますと、私は素人ながらちょっと歌がうまいものですから、昔レコードを出させていただいたこともあって、枚数でいうともう三十枚ぐらいあるんです。曲も結構あるんです、もうほとんど店では売っていませんけれども。それで、どなたが作曲したのか、作詞をしたのかというのは余り覚えていないんですけれども、ただ、JASRACの役員の中に、池田充男先生とか、それから友達では中山大三郎さんとかいろんな方がいて、そのかかわりということでいうと、単なる人のことじゃなくて、私自身もレコードを出したりなんかしたことがあります。  それから、実演家ということでいいますと、私も野球をやめた後いろんなことをやりまして、バンドを組んで歌を歌って全国を回ったこともあるんです。そういうことでいいますと、実演家の方になるのかなと。しかし、人の曲を勝手に使って歌っていましたので、その辺のことがどうなるのかなと、ギャラをもらって歌っていたものですからね。ただ、バンドとかそういう連中には本当に食えない連中が多い、ミュージシャンなんかですね。彼らともギャラを分け合って、いろんなところへ行ったこともありますし、それからいろんな団体から誘われて行ったこともある。そんなことでかかわっていたんですけれども、ただ、著作権とかそういうことに関しては、一般的に本当に関心が薄いといいますか、我々もそんなに考えていなかったです。  私は本も四十冊ぐらい出していますので、本の方の著作権については多少、もめたりなんだりいろんなことがあって関心はあったんです。そんなことで、今回の件についても、この権利は非常に大事な部分であるということで、実感として自分にもかかわっているということできょうは質問したいと思います。  とりあえず遠藤先生にお伺いしたいんですが、長年の念願といいますか、いろんなケースで問題になってはいたんですけれども附則十四条の廃止ということが今回の法案に盛り込まれたわけです。遠藤会長は、音楽家、それからそういったことですばらしい実績を残しておられますし、特に思いが深いと思うんですが、その点についてお気持ちをもう一つ聞かせていただきたいと思います。
  33. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 江本先生の幅広い才能を改めて伺うことができましたが、私、作家自身としてこの附則十四条という言葉は三十三歳のころ聞いているんです。今、六十六歳になりました。この問題は作家の間で消えそうになったりまた火がついたりして、作曲家として考えても、早く上程して皆さんに少しでもこの権利の得を与えてあげたいと。  私は、苦労を自慢するわけじゃありませんが、流しの生活を九年十年やりまして、裏町で鉄線のギターで指から血を流して、これはドだ、これがミだ、これがソだといって音を掌握して作曲家になった私ですから、著作権協会から初めて印税をもらったとき、真っすぐに座れない四畳半の馬の背中みたいなところで、そのお金を見て妻と本当に手を取り合って、はあ、歌にこういう権利があるのかと。  江本先生おっしゃったように、著作権という言葉は大変難しい響きなんですが、人に人権があるように、作品にも著作権がある、そういう御理解を賜りたいと思います。  私は新潟県の出身ですが、この会長をやってから著作権著作権といつもいつも聞いているものですから、なかなかいい曲が昔みたいにかけなくなりまして、この問題を解決して早く会長をやめたいというのが本音でございます。そして、あなたのふるさとはどこですかと聞かれて、今までは新潟県と言っていたんです。この前、著作権著作権と言っていましたから、ふるさとはどこですと言われて著作権と言ってしまったぐらい、こんな思いでございます。
  34. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 遠藤会長の思いは本当に、長い歴史の中で十分理解できます。  そこで、それと相反するといいますか、森理事長に少しお聞きしたいと思います。  今回のこの附則十四条の廃止によって新たな使用料の負担ということが生じた業界の代表であられるわけですけれども、先ほどの中にも、最初はこれは当然反対だと、長い間ほっておいて今ここで何なんだというお話がありましたけれども、最終的に御理解を示されたということで、その理由について先ほど国際問題の件も少しお話しされましたけれども、それ以外にも、これに関しての納得したポイントといいますか、そういったものがもしございましたらお願いしたいと思います。  それから、このことについてもう一度全体的にお願いしたいと思います。
  35. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 先生の御質問、非常にうれしいです。やっと僕の味方があらわれたなという感覚がいたしました。  遠藤先生著作権という、御自分の出身県がお変わりになったように、私はすし屋ですから河岸へ行って毎日魚を見ているんですが、どうもお魚が著作権に見えてしようがないんです。本当に苦しい思いをしながら一緒に出てまいりました。  私は、第一に、国際的な問題だという考え方がまずございました。第二番目には、文化庁さんが仲介の労をとってくださるということでございます。そして三番目には、何といいましても、遠藤先生は人間の機微に触れられる立派な先生でございますので、今後お話をしていく上には必ず先生との間で理解を得られるのではないか、こう思いました。そして最後には、日本の将来の問題でございます。将来を考えたときに、私どもやはりいつまでもこういうことは言っていられないのではないだろうかという点で、全国の皆さんを納得させるということは容易な問題ではございませんが、先生おっしゃるように料金の問題等出てまいりますから、これについては今後十分に対応させていただきたい。  私は特に思いますのは、音楽の文化的所産といいますか、そういう問題は財産権でございましょう。そして、これは国民の利用があって初めて評価されるものだ、こういうふうに思っておりますので、こういう時代に参りましたので、遠藤先生とこれから十分討議を続けていきたい、かように思っております。  ありがとうございました。
  36. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 次に、齊藤先生にちょっとお聞きしたいと思います。本当は事細かくいろんなケースを先生のお考えで聞かせていただきたいんですけれども、私、これは遠藤先生に聞いてもいいかなと思ったんですけれども、時々私も北島三郎さんのゴルフコンペに呼ばれて行くことがあるんですが、そうすると一日じゅう三十六ホールに演歌がずっと流れているんです。例えば、旅館、ホテル、そういった施設の業種が今決められていますけれども、ゴルフ場なんかはどうなるんですか、そういうケースの場合。済みません、齊藤先生によく聞こうと思ったんですけれども、これはどうしても遠藤先生の方に。
  37. 遠藤実

    参考人遠藤実君) それがやっぱり問題になっていて、そういうものもいただくということになっております。
  38. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 今、一応旅館、ホテル、そういった施設ということになっていますけれども業種をもっと明確に、例えばどこそこというふうにこの先何かに表示されるとかということはあるんですか。
  39. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 幅広く音楽を使って営業等々しているところは、大体、環衛さんを初めとしたホテル、それからロビーとか空港のレストランとか、そういうところが対象だと思います。やはりゴルフ場でそういう音楽気持ちをよくさせておりますから、それで球が飛ばない人はゴルフが下手な人でございます。それは音楽関係はないと思いますが、ゴルフ場は営業をしているわけですから、そこに音楽が流れているということについては、やはりバックグラウンドミュージックというような対象になるかと思います。
  40. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 その質問はちょっとしづらかったんですけれども、ゴルフ場でやるとき、北島さんが全部主催なんです。そうすると、主催の人が自分の曲をずっとかけているわけですから、そういう場合もそんなに分けられないのかなというのがちょっとあるんですけれども、その件はいいです。
  41. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 北島君のゴルフコンペで北島君自身が御自分作品をかけているとしたら、御自分が支払ってくれればいいと思います。
  42. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 そうでしょうね。  そこで、齊藤先生にお聞きしますけれども先生著作権審議会第一小委員会の主査でいらっしゃると思いますが、今回の法案は第一小委員会で審議をされて国会に上がってきたということですけれども附則十四条の廃止という結論が今回出たわけですが、審議会ではどのようなお話があって今回こういう形になったのか、お伺いしたいと思います。
  43. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  これは一回の審議ではございませんで、幾つかの段階を経てございます。かなり大きな問題でございますので、まず第一段階としまして、平成四年の第一小委員会におきましては、条件整備を進めまして、それに応じて立法措置を将来検討すべきだ、こういうところにとどめてございます。第二段階としまして、平成八年の第一小委員会におきましては、利用者団体理解を得るための広報活動、それから、附則十四条の廃止に際しまして権利処理のルールをどうやって整備するのか、この辺の検討がまず必要である、こういうことにとどめました。そして、このたびの第一小委員会、昨年のまとめになった次第でございます。  なお、あわせまして、有線放送等の普及によりまして、録音物による演奏そのものが後退しているという現状もあろうかと思います。したがいまして、利益状態に大きな変化はかつてほど生じないのではないか、こういうことでございます。
  44. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 次に、もう一度遠藤会長にお伺いしたいと思いますけれども日本音楽著作権協会という協会ですけれども、こういうことによって事業をされて、権利者というか、そういった人たち使用料を配分して、そしてその権利保護してあげるという意味では大変結構なことでありますけれども、やはり基本的には音楽文化を振興していく、そういったことも含めて非常に大事な存在である、文化的な意味合いからしても非常に大事な存在であるということです。  私は、音楽というような一つの範囲からいいますと、日本音楽著作権協会というのはやはり公益法人として、音楽でいえば創作振興、それからそういった点にかかわる文化事業なんかに対していろんな形で取り組んでいかなければいけないのではないか。これはちょっと僣越な言い方ですけれども、そういった意味で、どんなことを考えておられるのかお聞きしたいと思います。
  45. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 先生から御指摘がございましたとおりに、JASRACといたしましては公益法人として、ただ使用料をいただくだけでなく、社会のために役立つ事業を行う必要性を痛切に感じております。  そこで、昨年四月に定款を変更いたしまして、会員皆様からいただいた会費などによりまして、著作権思想の普及と音楽文化の振興を目的とした各種事業を実践しておるところでございます。これまでには演奏会とか寄附講座とか音楽療法への助成などの事業を行ってまいりましたが、今後さらに検討を加えまして、一層国民から喜ばれる、そして、JASRACといいますと一千億近い徴収をしている金持ちJASRACという全く誤解されたイメージを、そういった文化事業によって一掃したいと思っているんです。  この一千億近い徴収料が、入ったものが全部著作権協会のもので、大金持ちだというようなまだ考えを持っておられる議員の方もおるわけです。それは全く違う。それは全部作家に分配をしてしまって、著作権協会は一銭も、一円も財産を持っていない社団法人でございます。ですから、今度は定款の改正をしまして会費を導入したりして、その財源でもって文化事業を大いに促進していきたいと思っております。
  46. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 ありがとうございました。  時間が来ましたので、これで終わります。
  47. 松あきら

    ○松あきら君 きょうは、参考人皆様、当委員会にお出ましをいただきまして本当にありがとうございます。  公明党の松あきらでございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  私も長い間舞台をやっておりまして、少なからず関係しているわけでございますけれども世界の流れに今まで沿っていなかった、これは世界の流れに沿うためにも、そして芸術、文化を育てるためにも著作権というものが守られなければいけないというふうに私は思っているわけでございます。  森理事長お話も先ほど来伺っておりまして、まさに今不景気で世の中がこういう時期ですので、何でこの時期にという、それは本当にそのとおりであるというふうに思います。しかし、中身をこれからしっかりと御検討いただくということで、この大きな流れの中で、国際化、国際的な流れの中でこれは認めていかなければならないという理事長のお考えはすばらしいなというふうに思ったわけでございます。  今、新聞などにもありますように、宇宙からの曲宅配なんということで、衛星等を使いまして、カラオケですとかいろいろな曲もどんどん衛星通信で流れてくるような時代になりました。そうなりますと、例えばホテルとかレストランとかいろいろなところでBGMとかに使われるわけでございますけれども遠藤先生、このBGMの曲というのを正確に把握するのはとても大変かななんて思うんです。例えば、だれの作品がどれぐらい使われているかということはどのように把握するのかなというふうに思うわけでございます。それと、その金額は大体お幾らぐらいになるのか、まず伺わせていただきたいと思います。
  48. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 今、通信カラオケ等いろいろ音楽の流れが急速に変わってまいりまして、一枚一枚CDをかけているという時代から、まさに今、有線放送でもってそういう音楽が流れているわけでございます。そして、その有線放送はどこで何をかけたかということがちゃんとわかっておりまして、そういうデータと、それからサンプリング調査をしたりして計算をするわけです。  個別の店ごとのサンプリング調査の組み合わせによって正確な分配を期したいと考えておりますし、有線放送事業者からいただく資料と、カラオケの場合のように、統計学に基づいて選ばれた個別の店ごとのそういった調査でかなり正確な数字が出ます。そして、この改正によりまして一人の作家に対する分配額は、当面は余り多くありません。例えば月額六千円の有線放送代としたらば、著作権協会は恐らくその一%以下、ですから、お店で六千円お払いをするような場合は六十円、一店から六十円の使用料をいただくというような、まことに謙虚な値段ではないかと自画自賛をしております。
  49. 松あきら

    ○松あきら君 六十円ということで、その六十円が高いか安いかというのは私もちょっと言えないわけでございます、隣に森理事長さんのお顔を拝見しているわけでございますので。  今、資料を拝見しておりまして、遠藤先生が先ほどからおっしゃっておりますけれども、約八七%の方がいわゆる収入が百万円以下の方、著作権料がゼロの方も随分多いという数字が出ておるんです。例えば著作権料ゼロの方で会員の方というのは、前は売れていたけれども時代で売れていなくてこういうふうになったというような、そういうことでしょうか。
  50. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 以前、私たち会員資格というのは、三年間連続で年間三十万円の使用料が入れば正会員として資格を得られるわけです。三年続いて四年目から全くゼロになってしまったという方でも、一回正会員になりますともうずっと正会員なわけです。  そういうことでもって、ゼロ会員でありながら正会員である方に対しても、通信のいろんなものとか連絡とか、それからJASRACで発行しているいろんな本を送ったりしまして、そういった負担も計算をしますと膨大な数字が並んでしまうわけで、そういう点で、これから使用料が減っていった場合、かなり苦しい状態になるのではないかということを危惧しております。
  51. 松あきら

    ○松あきら君 先ほど会費を取るようになったというふうにおっしゃっておりましたけれども、そういう収入がゼロとか低い方たちからの会費はどのようになっているんでしょうか。
  52. 遠藤実

    参考人遠藤実君) それは、正会員として残りたいですか、残らないで、正会員をやめて信託者だけでも結構ですよという二つの選択肢を提示しまして選んでもらいます。自分はもう会費を払いたくないという方は、正会員をやめて一般の信託者として信託をしていただければ、また作品に使用価値が出て使用料が入れば、信託者であっても会員であっても公平に分配はされていきます。
  53. 松あきら

    ○松あきら君 江本議員もおっしゃっておりましたけれども、そういった方たちにもいろいろな資料等をお送りしたり、なかなか苦しいというお話でございましたけれども、やはり創作活動また音楽振興のために、私もぜひこれからも文化的な事業として広げていってほしいという思いでございます。  次に、芸団協の棚野専務理事さんにお伺いしたいと思います。  先ほど、現在の状況を考えて再考してほしい、実演家の権利を認めてほしいということでございます。ちょっと基本的なことで申しわけないんですけれども、包括的な権利システムができているというふうに先ほどお答えになっていたと思います。これは日本ではまだ認められていないんですけれども、例えば諸外国、欧米等ではどういうふうになっているんでしょうか。
  54. 棚野正士

    参考人棚野正士君) ヨーロッパの場合も映像の権利をきちんと許諾権で認めている国というのは意外に少ないんですけれども、しかし報酬請求権でカバーするとか、つまり、映像についても実演家の権利は、許諾権であるとか報酬請求権であるとか、権利の形は別にしてもきちんと認めている国は非常に多いです。また、経済的な権利だけではなくて、人格権も著作権法の中にきちんと実演家について定めているという国はかなりございます。  ただ、アメリカの場合は別でして、アメリカの場合は著作権的な法制度上の保護はありません。ただし、契約によって実演家の権利、俳優の権利はきちんと守られている、アメリカの場合は契約というシステムで守られている、このように思います。
  55. 松あきら

    ○松あきら君 今、人格権というのを初めて私伺いまして、私も演じていた一人といたしまして、つくづくああそうだな、これはとても大事な観点であるなというふうに思います。  アメリカは、こういう法制度そのものはなくても契約でというお話がありましたけれども、アメリカというのは非常に芸能人に対して手厚いというか、そういうところでございますから、またちょっと日本などとは違うんだというふうに思います。  次に、齊藤先生にお伺いしたいと思います。  先ほど、権利管理情報電子透かしのこともお話に出てまいりましたけれども、いわゆる電子透かしにつきまして、今後どのように活用され、またそれが著作権保護とどのように関連してくると思われるか伺いたいと思います。
  56. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  先ほど例としてお出しになられました空からの音楽配信、こういうことも含めまして、それをターミナルというか端末段階で権利管理する、こういう仕組みが可能になろうかと思います。  つまり、従来でございますと、どういう曲がどれだけ流されたかということが把握できませんけれども、この権利管理情報著作物等に埋め込みますと、固有のコードが入りますものですから、これを管理システム、あるいは私どもは電子的著作権管理システムと言っておりますが、そういう中で処理をする。そうしますと、だれがどういう曲を複製したとか利用したとか、こういうことがかなり正確に把握できるわけでございます。その前段階として権利管理情報を埋め込むことが必要であろうかと、このように思っております。  以上です。
  57. 松あきら

    ○松あきら君 確かに、先生のおっしゃることはわかります。そういうふうに入っていますと、一々調べなくても、空から降ってきても、どこかからだれかが勝手に流したりしたとしてもそれが把握できるということで、これから大事な点かなというふうに思います。インターネットですか、いろんな方法で今流れてくるようになりましたので、大事な観点かなというふうに思います。  もう一つ先生にお伺いします。  著作権法権利侵害に対する手段は、権利が侵害された場合に、民事とかあるいは刑事で今までは事後的に行ってきたわけですけれども、今回の技術的保護手段というのは、回避専用装置などを規制することによって権利侵害を事前に防止するものであるというふうに思います。  著作権法にとっての意味というのはどのようにお考えでしょうか。
  58. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  確かにこれは画期的なことかと存じます。著作権法制のあり方にとりましても、これは画期的なことかと存じます。  デジタル時代に突入しますと、侵害によって生ずる損害の規模というものが極めて大きなものになります。先生御存じのように、デジタルの特性を考えますと、劣化しない、それから容易に非常に簡易な仕方で送信ができる、インターネットも含めまして送信ができる、こういうことでございますので、一たび侵害がなされますと事後的救済というのはほとんどできない。あるいは、通常の差しとめ請求にしましても対応し切れない。そういうことで、一歩前に装置等につきまして規制をしよう、こういうことであろうかと思います。  以上でございます。
  59. 松あきら

    ○松あきら君 私も、森理事長さんに、これから業界としてJASRACさんとか文化庁にどのような御意見、御要望があるかお伺いしたいという質問をしようと思っていたんですけれども、それでは、それを再度伺って終わりにしたいと思います。
  60. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 大変うれしい御質問をいただきまして、まず感謝いたします。  先ほどから何度も申し上げましたように、長官遠藤会長さん、非常に御理解がございますので、十分配慮した上で相談しましょうと言ってくださいましたので、その点にすべてをお任せしたいと思っておりますが、先ほど先生の御質問の中ですごくうれしかったことがございます。  これは、私どもとしましては、使用料の問題とか実施の時期、それからこういう問題については十分に煮詰めていただかなくちゃならない。そのための容認だと、私はそう思っているんです。先ほど六十円という話が出ていましたが、私どもは二十円か三十円だと、そういうふうに思っています。それから、十四年という問題は十七年だと、私はそう思っています。これはかなりやりとりがあることだと思いますが、でも環衛業者は今非常に困っているんです。この現状をどうしても理解していただきたい。私は、それをもう一回申し上げるチャンスを得まして感謝いたします。  ありがとうございました。
  61. 松あきら

    ○松あきら君 ありがとうございました。
  62. 林紀子

    ○林紀子君 きょうは四人の皆様に来ていただきまして、いろいろ参考になるお話を聞かせていただきましてありがとうございます。  日本共産党の林紀子でございます。  私は、まず遠藤参考人齊藤参考人にお伺いしたいんです。同じ問題なんですけれども、実は、この著作権法改正ということになりまして勉強を始めましたところ、大変素朴な疑問なんですけれども、これはどう考えたらいいのかなということがありましたので、そこからお聞きしたいんですが、それは著作権と著作隣接権との関係なんです。  といいますのは、遠藤参考人のすばらしい数々の作詞・作曲があるわけですけれども、そういうすばらしい作詞作曲家がいてこそすばらしい歌ができるというのはよくわかるんですが、すばらしい歌を作詞・作曲されても、それを実演する人、歌う人、演奏する人がいないと私たちの耳や目には届かない、楽譜を見ただけではそれがぱっと頭には浮かんでこないわけです。そういうことで、私も「北国の春」などは大変好きな歌なんですけれども、千昌夫さんがいたからこそ私たちの耳に届いてくるということがあると思うわけです。そういうことでは、まさに著作権と実演者の著作隣接権、それはもう本当に一体不可分じゃないかというふうに思うわけです。しかし、今現在のこの法律の中では、保護される権利という意味では、著作権と著作隣接権というのは大分開きがある、差があるんじゃないかというふうに思うわけです。  そういう中で、全くぴったり同じでいいのかどうかというのはわからないんですけれども、両者の権利というのは限りなく同等に保護をしていくという方向に向かっていってもいいんじゃないかなという本当に素朴な疑問なんですが、持ちましたので、まず、著作者である遠藤参考人と、それから研究者である齊藤参考人にそれぞれお聞かせいただけたらと思うんです。
  63. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 先生の御指摘する、つくる方、そして演ずる方、それは一体でありたいという気持ちもあります。しかし、作品がまずなければ全く歌い手はゼロでございます。ですから、やはり作品が重視をされ、それを歌った歌い手がその次に来る、これが私は、欲張りでなくて、正しい考え方ではないかと。何もないところから創作する、そしてそれによって、自分に合った楽曲を歌い手さんがもらって、ぴったりしたから大ヒットするわけです。  いずれにしても、同じ権利者として双方とも厚く保護していただければ一番ありがたいと思いますし、近い将来はそういうことになっていくと思います。どっちがこっちがというような仲間げんかをしてもしようがありませんから。ただ、私たち作曲家から言わせますと、全く何もないところから身を削るような思いをしてつくるわけです。そういうオリジナリティーに対しての対価は、やっぱり作者の方がというような、欲張っているんじゃないかと言われれば、私はそうですかと言いますけれども、素直な気持ちで言うとそういうことですが、いずれにしても、同じ権利者として双方とも厚く保護して、日本にいい歌がもっと生まれる、そして世界じゅうにいい歌がたくさん生まれることが平和のあかしだと思います。  そういうことでもって、さっき松先生からもいろんな質問がありましたが、会長職というのは実務をしておりませんものですからこのくらいのお答えしかできませんが、先生がおっしゃるように、同じ権利者同士でもっともっと話し合って、同等になるようになればいいなという願いだけここで述べさせていただきます。
  64. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  ただいまの御質問は、学術的なテーマでありますと同時に、国際政治が絡んだ相当生臭いテーマでございます。  ざっと申し上げますと、著作物なり著作権でございますが、この著作権の客体であります著作物は、表現の成果物とまず御認識いただいてよろしいかと思います。表現された物でございます。  これに対しまして、隣接権の客体と申しますのは行為の方でございます。ただいまもお話ございました著作物その他の情報を伝達する行為、実演もそうでございますし、レコードの製作あるいは放送、有線放送も同様でございます。したがいまして、事業者とか実演家、その行為に重点を置いてございます。したがいまして、保護の対象が違うということでひとまず分けてよろしいんじゃないかと思います。  そうしますと、保護について上下の関係というものはないわけで、保護期間をそろえるという、数字のそろえ方は可能でございますけれども、そもそも保護の客体が違うというようにまず考えております。  しかし、もう一つの国際政治が絡んだ問題ということになりますと、これは国際著作権界には大別しまして二つ法律主張がございます。一つは英米法系の主張、アメリカ、イギリス等の主張でございます。それからもう一つはヨーロッパ大陸法系の主張、我が国もその中に属してございますが、こういう考え方がございます。  大陸法系の諸国は、隣接権につきまして極めて重視をしまして、ローマ条約、隣接権条約でございますが、そういうものにも積極的に加入してきたわけでございます。しかし、アメリカはその種の条約には入ろうとしないわけでございます。どうしてかと申しますと、同国におきましてはレコード著作権の客体と割り切るわけです。製作物でございます。これも著作物の中で考えるわけでございます。隣接権という特別な概念を必要としないわけでございます。ここに大きな違いがございまして、今日におきましても国際会議等においてその辺の考えのずれというのは常に出てきております。  以上であります。
  65. 林紀子

    ○林紀子君 次に、森参考人にお伺いしたいんです。  先ほど、今回の附則十四条の廃止やむを得ず、条件つきでというようなお話で、これから話し合いを煮詰めていくということだったわけですけれども、その中で、守れる法律をつくってほしいというお話がありまして、私も方々の飲食店の方とか利用者の方のお話を聞きますと、今大変な不況の中で、本当に今どうしてというお話を必ず聞くわけです。  その中で、守れる法律ということで、この金額なら全員賛成だという線でというお話がありまして、今回の改正にかかわっては二十円とかいうお話が具体的に出ておりましたけれども、今までの利用者の金額、それもなかなか大変じゃないかというお話も出ております。  具体的に幾ら幾らという生の数字は言いにくいかもしれませんけれども、考え方の基準みたいなものというのが何かありますでしょうか。
  66. 森茂雄

    参考人森茂雄君) ありがたい御質問をまたちょうだいいたしました。  これはやはりお話し合いの問題でございまして、ここで申し上げるべきではないと私は思っておりますが、それでも、仮にこの問題が通りまして、そして広く多くの方々がこの費用を納めるようになりますと、当然安くなるべきではないか、私はこういうふうに思います。  例えば、先ほどの先生お話の六十円が、二十円が妥当かどうかわかりません。しかし、それと同じような考え方を持っていきませんと、私どもは平等という考え方を常に思っておりまして、アウト方々の問題もございますので、まじめな会員が泣かされるのは嫌です、かえってそういうふうに申し上げて、できるだけ文化庁さん、そして先生との調和をとっていただいた上で料金問題は決定をさせていただきたい、期間の問題についてもお話をさせていただきたい、かように思っております。  ありがとうございました。
  67. 林紀子

    ○林紀子君 それでは、次に棚野参考人にお伺いしたいんです。  今回の改正案では映像実演家の隣接権の保護というのは見送られたわけですけれども、もしこれが改正されて隣接権が保護されるということになったら、この権利というのは、先ほど来お話がありますけれども許諾権とか報酬請求権とか人格権とかということを挙げていらっしゃいましたけれども、この権利の行使ということについては具体的にどういうふうに行おうとしていらっしゃるのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
  68. 棚野正士

    参考人棚野正士君) まず、基本的な法制度の見直しの実演家側の姿勢の問題なんですけれども文化庁の映像懇談会で昨年ですか、一つの具体的な提案を申し上げたんです。単に原則的なことを申し上げているだけではなくて、具体的な提案を申し上げたんです。それは、要旨としてはこういうことなんです。  三項目ございまして、一番は、映像の複製、頒布、貸与、公衆送信等実演の利用については、実演家には許諾権を規定する。ただし、映像制作者に強い反対があるのであれば、実演家がその実演の映像の制作に寄与することを約束したときは、反対または特別の契約がない限り映像の利用について反対することができないと規定することもやむを得ないと。ただ、この場合、視聴覚固定物の制作者あるいはその利用者は、実演家に相当な額の報酬を支払わなければならない。その実際上の実演家の権利行使の方法としては、団体による包括的な権利行使システムが必要である。三番は、実演家の人格権を規定するということであります。  なお、先ほど申し上げましたように、芸団協は関係団体協力を得まして実演家著作隣接権センターを設置しておりまして、包括的な権利行使の体制は既にでき上がっているというふうに私は思っております。  以上でございます。
  69. 林紀子

    ○林紀子君 ですから、今のお話ですと、映画の場合はビデオ化されて次々とテレビに流されても全然保護の対象になっていないけれども、そういうことが実現した場合には、やみくもにそれを使ってはならないよということは言わないという、そういう話ですね。
  70. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 実演家の立場は、映像の制作者あるいはその映像の利用者と決して対立する関係じゃなくて協調関係にあるだろうと思います。パートナーだと思います。ですから、実演家にとりましては映像文化あるいは映像産業の進展ということが非常に重要でありますから、映像作品自体の円滑な利用というのはまず考えられるべきであろう。  そういうことからいいますと、やみくもに実演家が権利を振りかざす、権利というのはある意味では刀ですから、非常に危ないですから、やみくもに一人一人が振り回すということはいたしません、できない、こういう仕組みをぜひつくろう。そのためには、一人一人が刀を振り回すのではなくて、実演家著作隣接権センターという一つの機構によって包括的に処理をする、このように考えております。
  71. 林紀子

    ○林紀子君 実演家の皆さんの今の生活の状況、先ほど利用者の方のお話を伺ったんですけれども、その実演家の皆さんも今生活的には大変だ、所得の部分では大変だということを、芸団協が九七年に「芸能白書」というのを出されているのを私も見せていただいたんですけれども、年間所得というのが普通は、サラリーマンでしたら年収五百万、六百万ぐらいのところで人数からいうと山型のカーブになるんだけれども、実演者の方たちの表というのは限りなく年収百万とか二百万のところが高い山になって、だんだん高額になるに従って低くなっていく、人数は少なくなっていくという表を見せていただいたんですが、その実演者の方たちの実態といいますか、そういうものはどういうものなのかというのを聞かせていただけたらと思います。
  72. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 私どもでは五年に一度、芸能実演家の活動と生活実態調査をやっておりまして、九四年の資料によりますと、現代演劇にかかわる俳優たちの生活実態なんですけれども、収入を見た場合に、現代演劇にかかわる俳優たち、平均四十一・五歳、平均年収は三百七十八万円なんです。ただし、二百万以下が四三%を占めておる、こういう状況でございます。ですから、実演家というのは非常に厳しい状態にあるというようなことが言えるかと思います。  それで、法制度が整備されることで経済効果がどうなるのかということがあるかもしれません。ただ、実演家にとりましては、法整備というのは必ずしもお金の問題ではないように私は常々思っております。といいますのは、実演といいますのは全人格が投影された実演家の唯一の財産でありまして、問題は、それがルールなしに実演家の意思の全く届かないところで使われる、ここに問題があるのではないか。  そういう意味でいいますと、ルールができ、秩序が形成されて、わずかでもお金が俳優たちに入ってくるようになりますと、そのことは単にお金の問題ではなくて、俳優、実演家に払われる敬意の問題であるというふうに思うんです。そしてそのことが、俳優たち、実演家たちの生活あるいは仕事を支えていくのではないか、このように日ごろ思います。そういう意味で、法制度の整備は非常に重要であるというふうに思います。
  73. 林紀子

    ○林紀子君 では、最後にお伺いしたいんですけれども、今、一人一人の実演家のお話を聞きましたけれども日本全体を見渡して今度は大きな話で文化振興という面から考えましたら、国に対する予算の問題とか税制の問題とかいろいろお考えがあるかと思うんですが、文化振興という面でどういうことを国の方に御要望があるかということも最後に伺わせていただきたいと思います。
  74. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 実は、著作権の問題もさることながら、そのことこそ全芸能実演家にとって最大の問題であるように思うんです。  昨年、文化庁が「文化振興マスタープラン 文化立国の実現に向けて」という非常にいい報告書を出しまして、私、愛読しているんですけれども、その中でこう書いてあります。「心豊かな活力ある社会を形成していくためには、科学技術と文化いずれも振興する必要があり、科学技術創造立国の実現とともに、文化立国の実現が不可欠である。」というふうに述べております。そしてまた、この報告書の中で、文化に対する投資、支出は経済を活性化するものであり、文化の振興はそれ自体に大きな意義を有している。そればかりではなくて、より高次な経済社会への転換を促し経済改革に資すると。要するに、文化は経済を活性化する、活性化につなげるという視点を述べておりまして、そのことに非常に私どもは注目するわけなんです。  そして、芸団協として二つのことをぜひお願いをしたい。  一つは財政問題であります。文化庁の資料を見ますと、文化庁予算は平成十年度、八百十八億なんです。これは国の一般会計の予算総額に比べて、全体の一般会計予算総額の〇・一%なんですね。私ども立場でいいますと、文化庁予算を少なくとも国の一般会計予算の〇・二%ぐらいにぜひしていただきたい。  それともう一つは、芸術・文化団体の経済基盤強化のために税制改正をぜひ御検討いただけないか。この二つのこと、財政問題と税制の見直し、この問題を常に考えております。  以上でございます。
  75. 林紀子

    ○林紀子君 ありがとうございました。
  76. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 きょうは、お四方から、現場からの非常に率直な御意見を承ることができまして、本当にありがとうございます。  それでは、まず最初に齊藤先生にお伺いいたしますけれども、我々が今議題にしております法案といいますのは、一九九六年のWIPO著作権条約の批准に向けての国内の法整備法制度の改善ということが一番の大きな目的ではございます。ところで、外国におけるこの条約の批准に向けてのさまざまな法整備というのはなされていると思いますが、その辺の状況について、まず一点お伺いしたいというふうに思います。  それからもう一点は、今現在、国際的な課題というのはどういうものがあるのか。この二点について、まず齊藤先生にお伺いしたいと存じます。
  77. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  この新条約への加入といいましょうか、その準備は先進国におきましては鋭意進められているところでございます。現在のところ、既に加入を果たした国というものは数は少のうございます。しかし、先進国、もう少し詳しく申し上げますと、アメリカにおきましては昨年立法措置を終えまして、いつでも加入できる状況、準備は完了していると考えてよろしいかと思います。  今度ヨーロッパでございますが、これは御存じのように、まずディレクティブをつくりまして、それを今度は国内法におろしていく、こういう仕組みに変わりましたものですから、ただいまの段階、ディレクティブの案づくり、これに若干手間取ってございますが、これも終えましたならば、EU加盟国それぞれが国内法を具体的に整備する、こういうことで、そう時間はかからないのではないか、このように思っております。  それから次に、国際著作権界での課題という御質問でございますが、当面の問題でございますと、既にお話も出たかと存じますが、放送事業者保護、これまで実演家、レコード製作者までは終えましたが、今度は放送事業者が残ってございますので、そういうものをさらに別途条約をつくるかどうか、こういうことが急務の検討課題かと存じます。  それから、映像の保護の問題がございましょう。  もう少し進めますと、先ほどもお話し申し上げましたように国際私法絡みの問題でございます。準拠法の扱い、このあたりにつきまして著作権法制と国際私法の面、この突き合わせといいましょうか、これを行う必要があろうかと存じます。  以上であります。
  78. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 次に、遠藤会長にお伺いしたいと思います。  会長は、日本音楽著作権協会会長でいらっしゃいますが、今、齊藤先生からも、国際的にもさまざまな著作権に関しての課題があるということを伺ったわけでございますが、現行の著作権制度について、この点はどうしても改善すべきだなというふうにお思いになっている点がございましたら、まずそれをお伺いしたいと思います。
  79. 遠藤実

    参考人遠藤実君) これからはデジタル化、ネットワーク化の急速な進展に素早く対応することが大切になると思います。この点では我が国対応は国際的に見て大変進んでおりまして、今回の改正においても権利管理情報の改変の規制などが盛り込まれていることは大変ありがたいと思っております。  もう一つ著作権保護期間の問題でございます。  我が国著作権保護期間は著作者の生存期間と死後五十年を経過するまでとなっておりますが、これをさらに延長していただきたいという声が私たちの方にも相当あります。  世界の流れとなっておりまして、ヨーロッパでは既にドイツやフランスなどが死後七十年の保護期間となっております。また、昨年はアメリカにおきましても著作権保護期間を七十年に延長する法律が成立をいたしました。  ですから、ぜひ死後の保護期間を長くしていただきたいということがお願いでございます。
  80. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 非常に具体的なお話になりますが、コピープロテクトの解除をする装置などについての製造とか販売の禁止ということが今度の法改正でできるように、違反者に対して懲罰ができるようになるわけなんですが、最近の新聞を見ますと、一つ非常に新しい、MP3というのですか、これでインターネットで非常に簡単にいわゆる海賊版ができるということが報道されております。  こういうふうな想像もできないようなさまざまな技術の発達というのは、いい面と、それからこういった著作権なんかの侵害をもたらすという大きな課題も含んでいるわけでございます。例えばこのMP3について、これは警察庁が動き始めたようでございますが、著作権協会の方としてはどのような対応を考えていらっしゃいますか。
  81. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 現在のデジタル化、ネットワーク化の技術の進歩は、まさに先生おっしゃるとおりに目をみはるようなものがございます。このような技術は、社会を豊かにするすばらしいものであると同時に、一つ間違えますと一国の文化を滅ぼしてしまうほどの危険をはらんでおります。  マスコミなどで盛んに今取り上げられておりますが、インターネットでだれもがCDとほとんど変わらないすばらしい音質で音楽配信が行えるというような状況になっておりまして、MP3という音楽の音を圧縮する機器があるわけです。ですから、どれだけ作家が情熱を傾けてつくった作品でも、あっという間に世界じゅうに無料でばらまかれてしまうということが実際に起こっておるのです。大変な危機感を持っております。  以前は、こういったものをCDに入れようとしますと、アメリカの音楽であれば何カ月もかかったんです。何カ月もかかりますとその電話料だけで大変だから、だれもコピーはしなかった。それが半年になり、三カ月になり、一カ月になり、今は数秒です。数秒で既にCDの録音をされてしまうというような恐ろしいMP3であります。  今回の法改正におきましても、権利管理情報の改変の規制を織り込むなど、この面での法整備を進めていただいているところでございますが、インターネット世界では国境がありませんので、そして空にもう無数な音楽が飛び交っています。形のないものです。  今後は、これまで以上に国際間で協調して、これにどう対処していくかということが大きな問題だと思っております。
  82. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それと、もう一つ遠藤先生にお伺いしたいのですが、私はヨーロッパにかなり長いこと住んでおりまして、また日本に帰って、あるいは行ったり来たりしておりますと、日本というのは至るところで、音楽らしきものと言っていいのでしょうか、音楽というよりはむしろ音があふれてしまっているというすごい違いを感じるんです。だから、確かに音楽が流れている、しかしながらそれはもはや音楽というよりは騒音になってしまっているというふうなことを実感として感じるのでございますが、この辺の現象と著作権についての我々日本人の感覚というものとの何か関連性というのはあるとお思いでしょうか。音楽家としていかがでしょうか。
  83. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 若い方の好む音楽が、私どもの年配になりますと、大変力強いビートは感じるんですが、先ほど先生がおっしゃったように、ともすると騒音に、これはここだけの話にしてほしいんですけれども著作権協会会長としては言ってはいけないことを言ってしまったという感じでございますが、そういうふうに聞こえてきてなりません。  ヨーロッパの方は、私は余り外国を旅しませんが、確かにきれいなメロディーが時々流れているというような状態です。それは本当に町を豊かにしたり、人の心を和ませたりします。  でも、今先生がおっしゃる騒音にむしろ近いというか、人間がつくった音楽でなくて、まさにロボットがつくったというような、情緒というものも本当に感じられないんですね。でも、一つ作品として登録をされれば、そこには著作権が発生します。また、そういう音楽が我々の心が和むというような音を超えて今売れているという状態に、非常に反省をしたり、私が古くなったのかと後悔をしてみたり、勉強が足りないなと思ったりしております。  やはり日本人のよさというのは、音楽が終わった後、それからショーが終わった後、その余韻に酔いしれて、余韻に感動を持って、そしてまた人との別れも、後ろ姿を見てもう一回あの人と会いたいというような、そういう余韻のあるすばらしい音楽をつくっていきたいとなお心を燃やしている者でございます。
  84. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ぜひともそういう余韻を楽しませていただけるように、受ける側もそういう環境、そして心持ちにならなきゃいけないなとつくづく思いました。私どもこの仕事をしておりますと、そういうゆとりがございませんので、大反省を今したところでございます。
  85. 遠藤実

    参考人遠藤実君) 余韻の遠藤というぐらいでございますから。
  86. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ところで、森理事長にお伺いしたいのでございますが、今回、附則の十四条というのが廃止されますと、具体的にどのようなところでどのような形での影響をお受けになるのでございましょうか。
  87. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 私どもは、とにかくこの問題につきましては非常に不勉強でもございましたし、いきなり出てきた問題でございましたから随分悩みました。実際に行きますと、放送権だとか伝達権だとか何権だとかさっぱりわからなかったです。ですから、一般の私ども会員方々がこれならいいよと納得していただくには、私どもは、これから文化庁さん、そして先生を交えてお話をする中でしかお答えができません。  特に考えられますのは、私どもには全国環衛中央会という全国理事長の集まる会がございます。それから、それに関しまして業態問題研究会というのを持っております。この中で十分に討議をした上でお答えを出しながら、結局は料金の問題でございます、そしてその時期の問題でございますから、その点ははっきりお答えをいただきながら、皆様が納得した上で了解をしていきたい、かように思っております。  先ほど申し上げたように、日本の将来のためには、これはどうしても私どもも黙認せざるを得ないという点は変わっておりません。  ありがとうございました。
  88. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 先ほどのお話の中で、ことしの二月二十六日に初めて文化庁からお話があったとおっしゃいましたね。それまでは何もこの問題については御検討の機会が与えられなかったのでございますか。これでは余りにも時間がなさ過ぎると私も思います。
  89. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 本当でございます。伺うところによりますと、著作権審議会、それから利用者団体との十分な話し合いをというふうに言われているのだそうでございますが、その説明が二月十九日だったんです。そして、私は二月二十六日に遠藤先生に初めてお会いしたんです。  よく考えてみますと、私どもの今までの担当の方から聞きますと、カラオケの問題につきましては二カ月に一度程度のJASRACさんとのお話し合いがあったそうです。しかしながら、この問題については一切触れておられなかった。非常に汚いと言って怒った長がおります。これはお名前は言えませんが、そういうことでございまして、遠藤先生はその席で私とともに御自分の配下の方にも、お前たちは注意をしていないということをおっしゃっていただいたので私は下がりましたが、そういう現状がございました。
  90. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 やはりそれは本当に期間を必要とされるのだなというふうに、今のお話を承りましてそう思いました。  次に、映画の件につきまして少し承りたいと思います。  特に、映画の著作者の一人である映画監督でございますが、日本著作権法では、今もお話がございましたけれども映画監督が映画製作者に対して製作に参加することを約束しているときというのは、それはもう著作権というのが映画製作者に帰属するというふうに規定されているようでございます。  そこで、齊藤先生にお伺いしたいんですが、これは著作権法の二十九条あるいは九十一条、九十二条でございますか、関係する条文は。それで、この法律でこういう取り扱いになっている背景というのは一体どういうところにございましたのでしょうか。
  91. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  これは非常に長い沿革がございます。しかし、時間が限られていますのでかいつまんで申し上げます。  先生御存じのように、映画の製作に関与する者は非常に多うございます。著作者だけを取り上げましても、総監督以下多くの者が関与しています。他面、映画の製作には多額の資本を投下しなければいけない。したがいまして、映画利用面も確保するという面がございますものですから、国際著作権界におきましても、著作権をどういう形で集中させることができるか、さまざまな試みがなされてきたところでございます。  ベルヌ条約レベルでも、一九四八年のブラッセル改正条約の段階までは映画が独立の著作物であるということは認めていますが、その著作者はだれなのか、あるいは権利がだれに帰属するのかということにつきましてはなお議論の余地が残っていたわけでございます。  一九六三年のジュネーブの専門家委員会におきまして今度はイギリスが、制作者を著作者として扱うことができるのではないか、こういうかなり大胆な提言をするわけでございます。これは先ほども申し上げましたように、英米法系諸国と大陸法系諸国、この辺の法律主張が違いますものですから、今の提言につきまして大方の賛同は得られなかったわけです。  そういうときに出てきた案としましては、製作者に著作権を集中する方式、これにつきましては異論がないところでございますけれども、製作者への著作権の譲渡を推定する方式、これが一つあります。それから、製作者に著作権を法定譲渡する方式、我が国の二十九条はそういう方式でございます。さらには、著作者は反対または特別の約定がない限り映画利用を禁止することができないという、こういう種類の比較的マイルドな方式、こういうことが提言されていたわけでございます。  そして、最終的に一九六七年のストックホルムの外交会議におきましては、著作権の保有者を定めることについては国内法に留保する旨の案が採択されてしまいます。そうしますと、どういう仕組みを採用するのか、これは国内法がお決めになるということで、我が国は先ほど申し上げましたように二十九条、法定譲渡の道を選んだ次第でございます。  以上でございます。
  92. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 最後に棚野さんにお伺いしたいんですが、今の御説明のような経過、背景があったようでございますが、映画の場合、いわゆるワンチャンス主義というんですか、それが日本でとられていることが映画の第二次利用なんかにかかわってくるわけでございまして、私自身もこのお話をたびたびあちらこちらで伺っております。  したがいまして、今さまざまな御努力をなさっているお話を伺ってございますけれども、今、国内外でどのような形で取り組まれているのかというのは、一つはこの審議会がございますね、今まだ文化庁の中にございます。それがございますが、それ以外に具体的に一つ二つお挙げいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 棚野正士

    参考人棚野正士君) この問題はもう三十年以上の俳優たちのまさに悲願でございまして、現行法ができたときから俳優たちがこの問題に取り組み、多くの方が亡くなっている。それで、問題はやはり法制度の見直しということであります。そういう意味では、政府に対し、国会に対し、あるいは政府の諮問機関である著作権審議会等に対して理解を求めていく、こういうことを続けております。  ただ、国際的にも連携しませんと、これは国際的な問題でもありますので、国際俳優連合、FIAという組織があります。あるいは国際音楽家連盟、FIMという組織があります。こういったところと一緒に連携しながら運動している。なおかつ、法制度の見直しだけではなくて、一つはワンチャンス主義ということも言われておりまして、契約システムの確立ということが非常に大事ですので、契約問題についても取り組んでいる、こういう状況でございます。
  94. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございました。
  95. 扇千景

    ○扇千景君 四人の参考人におかれましては、本当に貴重なお時間を当院の審議のためにお運びいただいて、御礼申し上げたいと思います。私が最後の質問になります。  同僚議員からいろいろ御質問ございましたけれども、きょう私どもは改めてこの著作権法の一部改正ということに取り組んだわけですけれども、この法案が国会に出てまいりますまでにも、きょう、森理事長が払う側、片方のJASRACはもらう側という、利益関係が明快に払う方ともらう側というこの調整のために、私は本来もっと早く国会にこの法案が出てくるべきだったと思います。  しかも、これは参議院先議の法案でございますから、今国会の会期末を考えますればもっと早くと思っておりましたけれども、担当の文化庁としては、なるべく両者の御意見を聴取して、お互いが理解し合った上でこの法案を出したいということで今日までおくれたのであろうと理解しておりまして、御両者の話し合いを待ったということで今日になったということを頭の中に置いております。  今お話を伺っておりまして、一番日本著作権に関しては後進国であると言わざるを得ない状況であるというのはぜひ森理事長に御認識賜って、御自分たちのお仕事の順調な発展のためにも、これと仲よくしていくことが売り上げの倍増にもなる、雰囲気がよくてお客様もたくさん買ってくださる、この不況を乗り切るためにはぜひこれは必要なことなんだということを、会員の皆さん方とぜひ話し合っていただきたい。  先ほどからお伺いしておりましたら、JASRAC遠藤会長とも仲よく手をつないでいきたいということを聞きましたので、私はもうそれを伺っただけでも当委員会に御参考人として来ていただいたかいがあったなと思っておりますけれども、再度、森理事長のお考えと方針をお伺いしたいと思います。
  96. 森茂雄

    参考人森茂雄君) ありがとうございます。  もう何度も申し上げましたが、やはり余りにも唐突に出された問題であっただけに、私は十分理解ができませんでした。遠藤先生とお会いをいたしまして、非常に遠藤先生のお人柄に触れましたから私はこうは申し上げておりますが、本来でございましたら、この問題に対しては絶対反対ですとあくまでも言い切るのが私どもの業界の代表だと思っております。  しかし、今先生がおっしゃられたように、日本の将来という問題を考え、日本が一番おくれているということは私どももともに認識しなくてはならないというのは、文化庁長官から十分お伺いいたしました。その上で、私はそういう意味で黙認せざるを得ない、こういう形であります。
  97. 扇千景

    ○扇千景君 森理事長お話もわかりますけれどもJASRACさんも著作権のセンターもおつくりになって御勉強になり、あるいは芸団協さんも御存じのとおり隣接権センターもおつくりになって、おのおの団体というものは自分たちの職業の将来に関して勉強していらっしゃいますので、社団法人でいらっしゃる限りは、自分たちの営業の権利等々も含めて、文化庁が言ってきたのが遅いというのは私も遅いということを改めて委員会で言いますけれども、やっぱり団体として勉強しながら、今の社会に自分たちはいかに位置するべきかということを御自身で研究なさるということも、私は一つ抜けていたのではないかなと言わざるを得ないと申し上げておきたいと思います。これからの皆さん方の業界の発展のためにも、今後は時代におくれないように社団法人として研究していただきたいということを申し添えておきたいと思います。  齊藤先生、いろいろ審議会等々で御審議いただいてお世話になっておりますけれども、今、森理事長のおっしゃるように、私も冒頭に申しましたように、著作権というものが日本に行われて本当に後追いで来たものですから、先ほど同僚議員からもありましたけれども、国民一人一人の著作権に対する認識というものが大変低いと言わざるを得ない。  その中で、先ほど料金の話がいろいろ出ましたけれども、今回のこの十四条の撤廃ということに関しては、三十年来の悲願であったからということで私はいいと思うんですが、金額が出てしまったのであえて言いますけれども世界レベル、今いろいろ加盟国の話が出ましたけれども、この加盟国の大体の平均からいいまして、WTOの百三十四カ国加盟、あるいは隣接権問題の百四十五カ国加盟ということから比べまして、世界的なレベルで著作権の今の徴収料というのは、各国段差があろうと思いますけれども、果たしてどの程度であるかお教えいただきたいと思います。
  98. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  著作物利用の形態によってこれはまちまちかと存じます。したがいまして一律には申し上げることができませんが、その利用の量は非常に多うございますから総額は多い、しかし単価はそう高いものではない、このように認識しております。
  99. 扇千景

    ○扇千景君 単価は高くないというのは、今、森理事長からなるべく二十円ぐらいにしてほしいとか、あるいは遠藤会長の方から六十円ぐらいではないかということの、国際レベルの相場というものはお考えになり得ますでしょうか。
  100. 齊藤博

    参考人齊藤博君) お答え申し上げます。  附則十四条絡みでございますとかなりホットなものでございますので、私が勝手な数字をお出ししてもまた混乱を招くかと存じます。  しかし、原則的なことを申し上げますと、演奏権の制限につきまして、我が国は不自然な形で二本立ての制限規定を設けていたわけです。これははっきり確認しておかなければいけない。  一つは、附則十四条という暫定的な経過措置がついています。それからもう一つは、正規の制限規定がございます。営利を目的としない演奏につきましては自由に行うことができると三十八条に書いてございます。  したがいまして、変則的な制限の方は外し、本来の演奏権の行使が可能であるということであれば、やはりそれなりの対価というものは、場面にもよりますけれども、請求することは可能であろうかと、このように思うわけであります。
  101. 扇千景

    ○扇千景君 遠藤参考人としては、三十年来の念願がかなって、きょうは大変明るい気持ちで御出席いただけたと思います。ですから後で申し上げます。  ただ、芸団協、芸能実演家団体協議会という舌をかみそうなあれですから芸団協と略させていただきますけれども、芸団協の棚野さんのお話で、先ほどからも話に出ておりましたいわゆる実演家の隣接権問題ということに関して、今回もこの条約の中には組み込まれておりません。  しかも、私も女優の端くれをしておりまして、二十五年間女優をしまして、映画にも出ました、舞台にも出ました、テレビにも出ました。先日もこの委員会理事会で、ゆうべ夜中の映画であなたを見たよと言われましたけれども、私には上映通知もありませんし、一銭も入りません。入っていれば皆さんにおコーヒーぐらいおごれたんですけれども。  そのようなことで、いわゆる実演家というものに対しての権利保護というのがまだ抜けているわけですけれども、それに対して隣接権センターを設置して棚野参考人の芸団協では研究なさっておりますけれども、現在、どのくらいの回数で、どのような結果が出ているのかがわかれば簡単にお聞きして、細部の資料であれば委員に後日お配りいただきたいと思いますけれども、お願いしたい。
  102. 棚野正士

    参考人棚野正士君) 実演家著作隣接権センターを昨年再構築しまして、しかも関係団体協力を得て再構築したんです。それで、関係団体といいますのは、現在の芸団協の正会員団体、五十九団体六万四千人以外の関係団体、具体的な名前を申し上げますと、日本音楽事業者協会あるいは音楽制作者連盟、事業者あるいは制作者といった実演家のパートナーたち協力も得て隣接権センターを再構築したということを申し上げたいと思います。  そういう意味では、従来は社団法人芸団協内の隣接権センターでありましたけれども、今後はいわば、法人芸団協の中にありますけれども日本の隣接権センター、しかも内容的には世界最強のものにしたい。隣接権処理、実演家の権利処理もヨーロッパにおいてもまだまだ発展途上でございまして、隣接権処理のシステムを日本としてはむしろ発信したい、輸出したいというぐらいの意気込みであります。そういう意味では、芸団協における著作隣接権センターはそういった方向を目指すということで委員がみんな努力しております。  そして、権利者の数でいいますと、日本の実演家の権利を所有する人たちの相当部分は既に私どもはカバーしているというふうに申し上げていいかと思います。  ただ、隣接権センターが初めてできたというのではなくて、むしろこの種の業務は、昭和四十六年、現行法施行以来、芸団協がある部分では、例えばレコードの二次使用料とか貸しレコードの問題とか、文化庁の指定団体としての業務を行っておりますので、そういった実績に立ってつくり上げたということでございます。
  103. 扇千景

    ○扇千景君 遠藤先生にもお伺いしたいんですけれども、先ほどから九千五百人、要するに千七百人を合わせて一万一千二百人というお話がございましたけれども日本音楽家の中にJASRACに所属しない人はいるんですか、いないんですか。いらっしゃるとすれば推定どれくらいいるのか。おわかりになりますでしょうか。
  104. 遠藤実

    参考人遠藤実君) JASRACに加盟をしていなくても、JASRACに所属をしたりしている出版者に所属をしている、その出版者がJASRACに入っているということで、ほとんど入っていると言っても過言ではないと思います。
  105. 扇千景

    ○扇千景君 同じことを森理事長に伺いたいんですけれども、今、森理事長理事長として御出席いただきましたお立場全国環境衛生同業組合中央会、この会に所属しない一般の、もっと零細な、私は何とかですと今お話ございましたけれども、町のおそば屋さんですとか、その辺の加盟していない人たちがどういう御意見かということもあろうと思うんですけれども、それはどのくらいの率で未加盟者がいるんでしょうか。
  106. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 正確には申し上げられませんが、業種によって全部違います。例えば私どもに今十六の業種がございまして、理容、美容、クリーニング、公衆浴場とか、それぞれその中ではかなりの参加率、要するに組合員が大勢の業種もございますし、また中には半数近いという業種もございます。  しかし、このJASRACさんとの問題については、先ほどの先生のお言葉を返して申しわけないんですが、私どもは絶対に今日まで御協力をしてきたわけです。これからも協力をしていくんです。そしてその中において、先生と手を組みながら、お話し合いをした上で、一般の方々が、こういう料金を設定してくれてよかったと言っていただいて初めて私は文化というものが向上していくんだと思っています。  したがって、現在組合に入っておられない方々に対しても、社交業理事長さんを通じて、どうか説得してください、お仲間に入れてくださいと、こう申し上げております。
  107. 扇千景

    ○扇千景君 その場合、これは森理事長もそうでしょうし遠藤会長もそうだと思いますが、会員でない人たち話し合いもあるけれども、その人たち著作権料の徴収の仕方はどこが関与し、どこが交渉するんでしょうか、お二方に伺いたい。  それじゃまず、JASRACさんはどういうふうに。
  108. 遠藤実

    参考人遠藤実君) JASRACの職員が入って説明をして、そして心の解け合いを感じ合いながら徴収をしていきたい、そういう考えで職員が当たります。
  109. 森茂雄

    参考人森茂雄君) 非常に難しいことだと思います。  私ども団体話し合いをいたしますが、今の先生お話は個々の問題のように伺います。ですから、私は、こういうことを先生に申し上げては失礼なのでございますが、JASRACさんがお一つでございます。第二、第三のJASRACさんがあればもっと値段交渉は別だと思っております。
  110. 扇千景

    ○扇千景君 もう一度伺いたいんですけれども遠藤会長、そうしますと、加盟していらっしゃらない方には個別にJASRACの事務局の人が直接に一対一で交渉をして、一たんはJASRACにお払いいただくということになるんでしょうか。
  111. 遠藤実

    参考人遠藤実君) そういうことになると思います。  それから、先ほど先生がおっしゃったように、ちょっと話が飛びますが、著作権料の総額、国際水準から見てですけれども、たまたまここにありますが、徴収の総額は、アメリカ、ドイツに続いて世界日本が三番目でございます。そして演奏関係の徴収額では、国内総生産、GDPから見ますと世界で二十一番目です。国民一人当たりが支払った使用料では世界十六番目という状況でございまして、日本の国力や音楽利用される量を考慮に入れますと、さらに低いレベルではないかと考えております。
  112. 扇千景

    ○扇千景君 きょう、こうして参考人においでいただきまして、それぞれの組合なりあるいは団体の長として御意見をいただきましたけれども、これから文化庁も指導をして、今申し上げましたように、組合に入っていない人たちがこれから払わないときには、あそこは何だとか、日本の低レベルだという、そういうふうに会員じゃない人たち著作権に対する認識が私は漏れている部分があろうと思いますので、そのことに対しては、お互いの業界で切磋琢磨し合って、検証し合って、組合に入っていない人にも、今の著作権のあり方、著作権法というものがあるということの認識をぜひ先頭に立って周知徹底して、みんなが気持ちよく、音楽やいろんなものを聞きながら不愉快になるということじゃ逆効果でございますので、ぜひその辺の御指導を、きょうせっかくおいでいただいた森理事長遠藤会長に重ねて御努力していただきたいと思います。  もう一つ棚野参考人におかれましては、今回、映像実演家の方の漏れている部分を、私どもも力及ばずだったんだろうと思いますけれども、今後著作権法改正の中に御要望が達せられるようにぜひ文化庁にも働きかけていただき、きょうも同僚議員がみんなこうして聞いておりますので、頑張っていきたいと思います。  そしてもう一つ、最後の締めでございますから申し上げたいんですけれども、今、遠藤先生が、我が国の総生産量の一人の率からいえばまだ低いですと、著作権の徴収料から見れば世界第三位だとおっしゃいました。  私は、大変この委員会として恥ずかしいと思いますことは、文化立国だということで文化庁はおいしいことを文章には書いておりますけれども、御存じのとおり、文化庁予算が八百十八億、JASRACの収入が言ってみれば九百八十四億と、文化庁予算よりもJASRAC著作権の徴収料の方が多いということは、我が国にとっては大変恥ずかしいことである。何のための文化庁の設立か、何のために文化庁があるんであろうかということで、私は、きょうの委員会参考人皆様と一緒に日本の文化のために頑張っていくことを参考人皆様にお約束して、質問を終わりたいと思います。
  113. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間御出席いただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会