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1999-03-09 第145回国会 参議院 文教・科学委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月九日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月八日     辞任         補欠選任      林  紀子君     筆坂 秀世君  三月九日     辞任         補欠選任      筆坂 秀世君     林  紀子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         南野知惠子君     理 事                 狩野  安君                 馳   浩君                 江本 孟紀君                 松 あきら君                日下部禧代子君     委 員                 阿南 一成君                 亀井 郁夫君                 北岡 秀二君                 世耕 弘成君                 仲道 俊哉君                 橋本 聖子君                 石田 美栄君                 佐藤 泰介君                 本岡 昭次君                 山下 栄一君                 畑野 君枝君                 林  紀子君                 筆坂 秀世君                 扇  千景君                 田名部匡省君    国務大臣        文部大臣        国務大臣        (科学技術庁長        官)       有馬 朗人君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      興  直孝君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 康宏君        科学技術庁科学        技術振興局長   田中 徳夫君        科学技術庁研究        開発局長     池田  要君        科学技術庁原子        力局長      青江  茂君        科学技術庁原子        力安全局長    間宮  馨君        外務省北米局長  竹内 行夫君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省学術国際        局長       工藤 智規君        文部省体育局長  遠藤 昭雄君    事務局側        常任委員会専門        員        巻端 俊兒君    説明員        国土庁長官官房        審議官      灘本 正博君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○教育文化学術及び科学技術に関する調査  (文教行政基本施策に関する件)  (科学技術振興のための基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、林紀子君が委員辞任され、その補欠として筆坂秀世君が選任されました。     ─────────────
  3. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 教育文化学術及び科学技術に関する調査のうち、文教行政基本施策に関する件及び科学技術振興のための基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 阿南一成

    阿南一成君 自由民主党の阿南一成でございます。本日は、委員長、理事、そして先輩、同僚の委員皆様方の御理解のもとに、文教科学委員会におきまして最初に質問の機会を与えていただきました。心から感謝を申し上げる次第であります。  質問に入ります前に、先日、大変痛ましいことに、広島県立世羅高等学校石川校長先生がみずからそのとうとい命を絶たれました。長年にわたって子供たちのために全身全霊を傾けてその職務に精励されてこられた先生を失ったことは本当に残念でなりません。深く哀悼の意をささげますとともに、石川先生の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。  また、本日は、大変御多忙の中、有馬大臣を初め関係省庁の方々にも御出席をいただきました。限られた時間の中で貴重な時間をちょうだいいたしましたので、早速質問に入らせていただきます。  まず初めに、私は、行政、財政、社会保障経済金融システム改革と並んで六大改革一つとして位置づけられています教育改革について大臣お尋ねをいたしたいと思います。  明治以降、我が国発展の歴史を振り返りますと、その根本には、我が日本国民教育に対する熱意はもとより、教育普及とその充実のためのたゆみない努力があったことは言うまでもありません。明治以降、欧米先進諸国に追いつくための国家近代化を進める中で、公教育制度整備を図り、その普及発展に邁進されてきた先人努力に深い敬意を表するものであります。まさに明治期におけるこの教育改革が、国民全体の基礎能力向上を図り、それが今日の我が国繁栄基礎をつくったものと私は考えておる次第であります。  また、戦後の焼け野原の状態からの復興期におきまして、我が国の最大の課題は、国民の所得を安定させることに重点を置きつつ、国民生活レベルをできるだけ一様に引き上げるということで、それがまた国民の総意でもあったと考えるのであります。だからこそ、国家としては、福祉国家政策を追求し、限られた資金を効率的に配分するために金融セクターをその規制下に置き、一方、民間においては、年功序列制終身雇用制度が発達していったものと理解をするものであります。  しかしながら、バブル崩壊それから官僚不祥事等をきっかけにいたしまして、こうした戦後教育の見直しの機運が高まり、経済構造改革行政改革必要性が重視されるようになったことは当然のことであると思います。  しかしながら、戦後、我が国が敗戦から復興し、世界第二位の経済大国にまでなった事実に対する正当な評価を忘れるべきではないと私は考えるものであります。このような教育成果は、我々の世代責任として確かに受け継ぎ、次の世代に引き継いでいかなければなりません。  今教育改革が進められておりますが、大臣は、明治以降、現在までの我が国教育についてどのように評価をされているか、その御所見を承りたいと思います。
  5. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) きょうは、一日、文教科学委員会先生方に御審議を賜りましてまことにありがとうございます。  ただいまの御質問にお答え申し上げます。  私は、実は明治以前の寺子屋を大いに評価する人間です。寺子屋の読み書きそろばんという伝統が現在も脈々と続いているということを後にまた申し上げたいと思います。  その上に、先ほどおっしゃられましたように、明治五年の学制発布による近代教育制度創設出発点として、さらにまた第二次世界大戦後の新しい教育制度導入を経て今日に至っておりますが、この間、それぞれの時代要請に応じてさまざまな改革を進めてきたところであります。戦前戦後を通じまして、こういう改革取り組み国民教育に対する熱意教育に携わる先人たち努力が相まって、我が国教育は着実に普及発展したところでございます。  日本の人は当たり前だと思っているんですが、日本人ほど字が読める国民はない。圧倒的に多くの人が読めるわけでありまして、こういう国はほかにない、そういうすぐれた面がございます。この点は、寺子屋の読み書きそろばん並びに明治五年の非常に早い時期の学制発布によるものだと私はありがたく思っております。  それからまた、私の専門について申し上げますと、中学校小学校子供たちの数学あるいは算数、それから理科、こういうものの実力が幸いにも一九九五年の調査によりますと世界で三番ぐらいのところにおります。こういうところで日本の初中教育、そしてさらに大学教育というのは極めて大きな成果をおさめたものと考えております。  しかしながら、いろいろな問題が現在山積しております。この知という、知識という問題について申しますと、国民理科に対する知識が非常に弱い。せっかく中学校ぐらいで強かったのが、国民として活躍する段階においてはどうも理科についての知識がやや弱いというようなことが先進諸国の人々との比較で出ております。こういうところにやはり問題が残っている。今、知の問題について申しました。徳・体についてはまたいつか申し上げることがあろうかと思います。  しかし、このような教育成果我が国近代化や戦後の経済発展経済成長、さらには今日の繁栄基礎となってきたということに関しましては御指摘のとおりでございます。これをさらに次代に健全に引き継いでいかなきゃならないと思っておりまして、これは我々の世代の大いなる責任であろうかと思います。したがいまして、さらに時代要請に応じて、特に二十一世紀にどういうふうに伸ばしていくかということで、不断改革を進めていかなければならないと考えております。
  6. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、真の教育ということについて。  私の考えます真の教育とは立派な人間をつくることであり、立派な人間とは、正義を身上とし、社会福祉の増進と文化向上に貢献する人材であるというふうに確信をするものであります。すなわち、国の教育指針が、国民の一人一人の幸福につながり、地域社会国家世界に貢献する人材を育成する、そのための教育でなければならないと考えております。  大臣所信において「人づくりは二十一世紀我が国の姿を形づくるものとの認識のもとに、教育改革推進に最大限の努力を払ってまいる決意であります。」と述べられております。今日の教育理念、いかにあるべきか、その御所見をお伺いいたしたいと思います。
  7. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 未来の担い手であります子供たちが、たくましく、心豊かに成長するということは、二十一世紀を確固たるものにするために極めて重要であり、必要なことであると思っております。極めて基本的なことであると思っております。  特に、今後の教育においてどういうことを望んでいるかということを申し上げますと、まず第一に、子供たちゆとりを持つ、そしてゆとりの中でみずから考え、みずから問題を解決していく資質能力、そしてまた正義感倫理観思いやりの心など、生きる力をはぐくんでいくということが一番重要なことであると考えております。こういう点で、これまでの教育は極めて成功してきたと申し上げながらも、やはり個性を重要視するという点ではいささか欠けているところがありました。どちらかといえば行き過ぎた平等主義というふうなことがございまして、この点に関して少し是正をしながら、子供たちの一人一人の個性能力を尊重した教育へと転換を図っていくことが重要であると考えております。  こういうことを踏まえまして、今後とも教育改革推進に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
  8. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、家庭崩壊についてでありますが、特に幼児期教育あり方子供人格を形成すると言われております。物の豊かさと便利さの追求を求める結果、時間と忙しさに追われた家庭育児にあって、乳幼児期育児託児所が担当する、小学校時代テレビゲーム、また両親不在によるコンビニ食家庭における育児は第二義的となっているのが今日の状態であります。しかし、近年では家庭児童虐待の問題も深刻化をしております。暴力等虐待のみならず、食事を与えないという保護者の怠慢も増加をしておると聞いております。  今日の生活様式は、私たち世代が体験した母の心のこもった食事や団らんを奪い、ぼろであっても愛情でつくられた衣服がきらびやかな既製服に取ってかわられる、そして家庭から母の愛と心を奪ってしまう。スイッチ一つの便利で豊かな生活の代償は余りにも大きいものがあるのではなかろうかというふうに考える次第でございます。さらに、物質の豊かさとともにその利便さを追求した消費は美徳と称する商業主義がその相乗効果を発揮する結果となり、国民価値観物質の豊かさにのみ目を奪われる結果となったのであります。  私は、この現代社会状況社会の病であると思うのであります。そして、青少年の現状は、この病気のウイルスがひ弱な青少年を直撃し、非常な勢いで感染しておる結果ではないかというふうに考えております。  二十一世紀目前にして、今日、バブル崩壊拓銀、山一証券の倒産、官僚不祥事など、まさに国家の存続の基盤を揺るがす危機的な状況が出現をしておるのであります。今こそ教育現場の現実の姿に視点を合わせて、今日までの成果課題を明確にして、よきは取り、あしきは捨てて、勇気ある教育改革に取り組まなければならないと考える次第であります。  教育行政国家百年の大計のもとに進めるべきものでありましょう。したがって、教育行政は景気対策等さまざまな重要政策とは全く性質を異にする次元のものであると思います。大臣所信において、「あらゆる社会システム基盤となる教育について、不断改革を進めていく」と述べられております。今こそ我が国の明確な教育再生政策を力強く打ち出すべきときであると考えますが、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  9. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御指摘のとおり、二十一世紀目前にいたしまして、教育はさらに重要性を増してきていると思っております。  そこで、今後の教育あり方につきましては、これまで中央教育審議会の「二十一世紀を展望した我が国教育の在り方について」の答申を初め、教育課程審議会、生涯学習審議会等各種審議会において、教育を取り巻くさまざまな課題等を十分に考慮しつつ御審議をいただいてまいりました。また、大学教育に関しては大学審議会が大変きめ細かく検討をしてくれております。  文部省といたしましては、これらの審議を踏まえつつ教育改革プログラムをつくりまして、それにのっとって改革の具体的な課題とスケジュールを明らかにしながら、これまでも心の教育充実を初めとする教育改革推進不断に取り組んできたところでございます。  現在、教育改革プログラムにつきましては、改革進捗状況等を踏まえ、またさまざまな緊急の問題もございますので、その改定を進めているところでございます。改定に当たっては、二十一世紀を見据えて我が国教育が将来どうあるべきかという観点を十分に踏まえての検討を行ってまいりたいと思います。  なお、一つ文部省の方で準備いたしましたのはどういうことかというと、お父さんお母さん育児で大変困っておられるという非常に現実的な問題がございますので、文部省がそこまで家庭のことについて入っていっていいかどうかと大変気になったのですが、今度「家庭教育ノート」という子育てについて二冊ほどの小冊子をつくりまして、お父様お母様にお配りをいたしたいと思っております。  そういうことで、今具体的に改革を進めているところでございます。
  10. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、文部省は昨年、中央教育審議会答申をもとに心の教育を軸にした教育指針を示され、取り組みを開始されていることにつきまして、私は大いに賛意を表するものであります。  時あたかも、小渕総理指導理念富国有徳論を掲げられたのでありますが、これはまさに物と心の調和の理論であろうかと思います。私は、物と心の調和のとれた豊かさを新たな価値観として確立することこそ、今後の我が国課題であるというふうに受けとめておるものであります。また、人には徳が必要であり、国家にも徳が必要と言われております。これを教育に当てはめると、徳育、知育、体育の整った教育を目指すことと受けとめておりますが、大臣の御意見をお聞かせください。
  11. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御指摘のとおりでございまして、徳育について教育を十分進めていく必要があると思っております。そういう意味で、先ほど知の面についてかなり詳しく申し上げましたけれども、さらに徳・体の方も重要視いたし、知・徳・体のバランスがとれ、知識のみでなく他者への思いやりや美しいものに感動するなどの豊かな心やたくましい体をはぐくむことは極めて重要であると思っております。  そこで、今度二〇〇二年より完全学校週五日制になりますが、そのもとで新しい学習指導要領においては、子供たちゆとりの中で生きる力をはぐくむことを目指して、みずから学び、みずから考える力を育成すること、正義感倫理観思いやりの心など豊かな人間性をはぐくむ心の教育推進、生涯にわたって運動に親しむことや基礎的体力を高めることを重要視し、心の健康等課題に適切に対応することなどに一層努めてまいりたいと思っております。
  12. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  先ほども申し上げました家庭教育の支援のためには、実効性のある対応策が急務であると思います。国民学校教育に対する期待、これもまた大きいと思うのであります。したがいまして、私は、家庭学校がお互いに責任のなすり合いをするのではなく、学校教育学校教育としての役割を再認識して評価していただければというふうに考えるわけであります。  学校教育の場でありますので力は必要はないというのが根強い世論のようであります。しかし、学校教育が行われるためには教師生徒関係、つまり教師が言うことを生徒が聞くという関係が最低限成立していなければならない。もっと言うのなら、騒いでいる生徒に対して先生が注意をして静かにならないというのでありますならば、これは、授業が成立しないのは当たり前であるというふうに考えるわけであります。そして、この教師の力は親や地域社会の支持があって初めて発揮されるもので、その後ろ盾を失った今、学校からこの力は消えつつあるのではなかろうかというふうに考えるのであります。  今日の教育現場は、まさに教師の受難のときと思うほど難しい、厳しい状況にあることを十分に承知をいたしておるつもりであります。しかしながら、それにしても私がお会いする多くの先生、明るさと活力を感じる先生がまことに少ないことに驚きと危機を覚えております。  大臣もいつかテレビで語っておられましたが、優秀な知的能力を持つ教師が必ずしも最良の教師ということではない、自分の記憶に残るよき先生は必ずしも校長にはなっていないといった意味のお話をしておられました。今こそ知識を超えた指導力、すなわち教師の人徳が求められているときであると思うのであります。私は、現場教師に対して資質を高めるためのフォローアップ教育を初め、心の教育進め方等について具体的な指導が必要であるのではなかろうかと思う次第であります。  また、教員養成課程におきまして、教師としての人格形成のための教育生徒個性、特性を発見し、子供の悩みを受けとめられる教師養成等が重要であると考えております。このことについて大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  13. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 御指摘のように、学校教育の成否というのは、その直接の担い手である教員資質能力によることが極めて大きいものと認識いたしております。しかしながら、現在の先生の中にも非常にすぐれた方が大勢いらっしゃるということを私は体験的に認識いたしております。  文部省といたしましても、教員養成、採用、研修の各段階を経て教員資質能力向上を図るための施策を積極的に推進しているところでございます。まず、現職教員に対する研修につきましては、初任者研修、それから五年目、十年目等経験者研修各種専門研修等を通じまして教員資質能力向上が適切に図られるよう、都道府県や指定都市による教員研修体系整備を支援しているところでございます。この中では、今日の教育課題を適切に踏まえ、特にいじめ登校拒否等に関する研修民間企業等における体験研修なども重要であると考えております。  なお、昨年十月の教養審答申では、修士課程を積極的に活用した教員養成あり方について提言をいただいたところでございまして、これを踏まえて、今後、研修休業制度創設を初め各種施策の実現に努力をいたしたいと思っております。  教員養成課程の問題でございますが、大学における教員養成カリキュラムにつきましては、昨年七月の教育職員免許法等の改正により、実践的指導を重視する観点からその充実を図ったところでございます。  具体的には、教員としての使命感涵養等をねらった教職の意義等に関する科目の新設、中学校教育実習期間の延長、これは二週間から四週間、中学校高等学校教員養成課程における教科の指導法充実などの措置を講じております。新しい教員養成カリキュラムは、平成十二年度四月の新入生から全面適用することとしており、その定着に向けて今後とも努力をしてまいる所存でございます。
  14. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、自然との触れ合い教育、心の教育についてお尋ねをいたします。  生まれ育った大地と環境人間形成上大きな影響を持つと言われております。四季折々の季節感の変化を享受し、自然と共生した我が国文化世界に誇る美術の文化を生み、感性豊かな国民性をはぐくんできたと思うのであります。自然との触れ合いの少ない今日、中央教育審議会答申のとおり、自然を規範にした学びこそ、自然との共生、生命の尊重、環境保全季節や時と順序、大自然の摂理等学びができるものと確信するものであります。  現在、農林水産省の進める環境に優しい有機農業導入による校庭の花園づくり学級農園実習、自然の中に身を置き、自然観察を目的にした野山の散策等体験学習を積極的に取り入れる等の取り組みが心の教育に必要ではないかと考えるものであります。今の子供たちには、命のとうとさ、親切さと思いやり、慈しみや物の哀れ等々、いわゆる精神面の欠如が問われています。暴力行為いじめなどの問題が深刻な状況となっている今日、先日も中学一年生の生徒がたばこを吸うことを強制されて自殺するという痛ましい事件もありました。  大臣は、所信において、特に重点を置いて取り組む課題の第一として、心の教育充実を挙げられました。文部省指導指針にも心の教育がうたわれております。しかしながら、現場教師はその具体化に戸惑っているのではないかというふうに考えておる次第であります。  我が国を称して、心を大切にする国と言わしめてきました。事実、茶道書道等の道という文字には精神性を重んじる心があらわれています。例えば、書道は一筆一筆に心を込めて書き上げるのが重要であり、その書き上げるプロセスが大切であると言われています。茶道における心とは、人生を生かし、自然を取り込み、美を取り込み、わび、さびの心で人をもてなす心配りであろうと思うのであります。学校生け花導入することにより、校内暴力がなくなったという事例もあります。また、和歌山の刑務所の女性受刑者教育生け花を取り入れることにより再犯者が激減したという統計も聞いております。まさに花による心身のリフレッシュ効果であろうかと思うのであります。  こうした我が国伝統文化学校教育にも取り入れる等の取り組みが必要ではないかと考えておりますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
  15. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まず、おもしろい調査があるということを申し上げてみたいと思います。それは、家事の手伝いをよくしている子供ほど正義感が強い、道徳観が強い。それからまた、自然に触れたことのある子供ほど道徳観があり正義感が強い、こういうふうなことでございます。  その一つといたしまして生け花ということも考えられると思いますが、文部省といたしましては、日本伝統文化について子供たち理解を深め、それを尊重していくということは重要なことであると思っております。そして、それは特に心の教育充実することに役に立つと考えております。  学校教育では、クラブ活動や部活動において生け花や茶の湯が行われているほか、社会科においても華道や茶道といった日本伝統的な文化を取り上げているところでございます。また、道徳教育においては、広く我が国文化伝統を大切にする心を育てる指導を行っております。  文部省におきましては、児童生徒が地域に伝わる文化伝統理解し体験することを目的として、伝統文化教育推進事業を実施しております。この中で、茶道を取り上げている例、例えば京都府宇治田原町でも見られるところでございます。  文部省といたしましては、学校教育においても引き続き華道や茶道を初め、我が国伝統文化に関する指導充実に努めてまいりたいと考えております。
  16. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、私の郷里、大分県竹田市でありますが、ここに電車が到着をしますと、土井晩翠作詞、滝廉太郎作曲の名曲「荒城の月」のメロディーが駅のホームに流れ、ああふるさとに帰ってきたんだなという幸せな気持ちでいっぱいになるわけであります。  ところが、新学習指導要領では、中学校の音楽に、扇先生が主張されておったようでありますが、和楽器を体験させるということで、これは取り入れられております。これは大変結構なことだと思うのでありますが、一方で共通教材がなくなり、「荒城の月」や「赤とんぼ」などという、これまで必修とされておりました日本の名曲が教科書から消える可能性が出てきたということであります。最近の教科書にはビートルズの「イエスタデー」も掲載されているようでありますが、もちろんこれが悪いことではないわけでありますけれども、こういう曲は聞く機会は別に幾らでもあるわけでありまして、唱歌や日本の名曲はなかなか聞く機会がない。  そういった意味におきまして、テレビやラジオなどを通じて聞くという機会が少ない、メディアを通じて覚えることが少ないこの名曲について私は大変関心を持っておるわけであります。こういう曲は大人になったときにしみじみとそのよさがわかるものでありまして、学校教育のありがたさはこういうところにもあるのではなかろうかと思うわけであります。  共通教材がなくなることによって、日本人に伝えておきたい、心に響くこのような名曲が姿を消すかもしれないことに、これでよいのかなという疑問を感じるわけであります。今回の措置をとった理由、またこのような日本の名曲を歌い続けていくことについて、大臣の御所見を承りたいと思います。
  17. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 我が国において歌い継がれ親しまれてきた日本のよい音楽文化世代を超えて歌い続けていくということは重要なことと考えておりまして、先生指摘のとおりでございます。  今回の学習指導要領の改訂においては、全教科を通じて学習指導要領を大綱化し、各学校が創意工夫を生かした教育活動を一層展開できるようにすることといたしました。  音楽科につきましては、学習指導要領上、指導すべき個別の曲名を示すことはいたしません。例えば、我が国で長く歌われ親しまれている曲など、扱う曲の選択の観点を示し、指導する具体的な曲の選定は各学校にゆだねられているところでございます。  文部省といたしましては、今後刊行されます学習指導要領の解説書において、これまで示してきた共通の教材、例えば先ほど御指摘の「荒城の月」であるとかあるいは「赤とんぼ」などを参考資料として示すことといたしております。このようなことから、小中学校において「荒城の月」を初めとする我が国で歌い継がれ親しまれてきた音楽が今後も指導されることになるものと考えております。
  18. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、私は、沖縄県の学校教育の危機を憂う県民の声にこたえまして立ち上がった財団の活動を、回を重ねて沖縄へ出張し視察してまいりました。  この財団は、県の教育委員会の認可を得た財団であります。教育関係者、PTA、そして多くのボランティアの支援を得て、各小中学校と提携をして文化教育事業に取り組んでおるものであります。それは、県下における幾つかの小中学校におきまして生け花茶道を課外授業の中に取り入れていただき、ボランティアの指導により、一輪の花を挿し、あるいは盆手前のお茶をいただく、一見ごく普通の営みであります。  しかしながら、この活動を取り入れることにより、荒廃していた学校が再生したという例もあるようであります。また、暴力行為の絶え間のなかった生徒が更生していったということもあります。学校生活が楽しく、生徒自身が明るい性格に変化していくという事実の報告に接しまして、改めて芸術、文化の果たす力が人間形成の上でいかに重要であるかをつくづく感じさせられた次第であります。ここにも、中央教育審議会答申、心の教育の確かさを実感させられたものであります。  将来を担う子供たちの健全で豊かな心、美しいものや自然に感動する心、よい行いに感銘し生命を大切にする心、他人を思いやる心など、生きる力の育成を願う情操教育の実践は、心の教育推進する際の極めて確かなアプローチの一つではなかろうかと思うのであります。生きる力の育成を願う情操教育の実践の書、「人花心」をここに持参しておりますが、心の教育推進する上で、沖縄におけるこの財団の活動は参考に値するものとの確信を持つものであります。  最後に、これらのアプローチの難しい心の教育充実にどのように取り組まれていくのか、大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  19. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 阿南先生が大変御努力なさっておられ、ただいま御指摘になられましたMOA沖縄事業団が、小中学校合わせて十数校において、学校のクラブ活動等で茶道や華道のボランティア活動を行ってくださっていることをよく存じ上げております。  これからの子供たち教育を進めていく上では、知識の習得に偏りがちな状況を改めて、豊かな人間性をはぐくむ心の教育充実を図っていくことが重要でございます。  そこで、具体的に文部省におきましては、学校教育活動に対する家庭や地域の人々の理解・協力を促すための事業を推進するとともに、完全学校週五日制の実施に向けまして、地域で子供を育てる環境等を整備する全国子どもプラン(緊急三カ年戦略)に基づきまして、各省庁とも連携してさまざまなプロジェクトを進めております。例えば、建設省と協力いたしまして、子どもの水辺再発見プロジェクトなどの各種新規施策を進めているところでございます。  委員指摘のように、豊かな教育を進めていくためには、単に知識として理解するだけではなく、生き物との触れ合いなどの自然体験やさまざまな社会体験等を通しまして子供たちの心の教育を進め、豊かな人間性をはぐくむことが大切でございます。今後ともその充実に努めてまいりたいと思っております。そういう意味では、地域社会の方々の御協力をぜひともお願いいたしたいと思っております。
  20. 阿南一成

    阿南一成君 大臣、大変ありがとうございました。  若干時間はあるのでありますが、党の理事から本岡先生の時間に食い込んではいけないということで、私も早口で申し上げましたので若干時間を余らせましたが、これで質問を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
  21. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 自民党の皆さんの質問の割り振りの中へ割り込んだような形になりまして申しわけございません。お許しください。  毎年のように通常国会には文部大臣所信が出ます。私はいつも楽しみにこれを読むのですが、いろんな面にわたってよく書けていると思います。ただ、私が気になりますのは、子供の人権という角度からの切り込みがどこにもないということが気になります。  というのは、人権教育のための国連十年というのが始まりまして、ことしは中間年というんですか、ちょうど真ん中になると思います。そして、これについてはさまざまな行動計画がなされて取り組みが進められているわけで、一体それがどうなっているのか、今後の見通しはどうかというのは、少なくとも文部省としてはここに書き上げるべきだと私は思います。  また、人権擁護推進審議会というのが法務省の所轄でありまして、そこで二年間で議論しているのが人権にかかわる教育と啓発の問題なのであります。差別をなくするという問題にかかわって教育と啓発が負うべき責任は非常に重いということからまず議論が進められております。  そういう意味においても、人権という事柄に対してもう少し系統的に深く切り込んだものが必要だと思います。二十一世紀は一体どんな時代かといろいろ言われますが、私はある意味では人権の世紀と言ってもいいというふうに思う一人なんです。そういう意味で、文部大臣、これはあなたが全部書かれたと思うんですが、人権という問題に対して一体どういう認識を持っておられるのかお話しください。
  22. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、人権は非常に大切であるし、人権教育は極めて重要なことと思っております。  まず、憲法及び教育基本法の精神にのっとり、基本的人権尊重の教育推進していくことは極めて重要であると認識いたしております。このため、学校教育においては、社会科、道徳、特別活動を初め、学校教育活動全体を通しまして基本的人権尊重についての理解と認識を深める教育充実するべく努力をいたしておりますし、児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育推進に努めているところでございます。  文部省におきましては、人権教育のための国連十年に関する国内行動計画を踏まえ、人権教育研究指定校事業及び教育総合推進地域事業を実施いたしまして、人権意識を培うための教育教育上特別の配慮が必要な地域における総合的な取り組み充実に努めております。  今後とも、学校における人権教育の一層の充実に努めてまいりたいと考えております。
  23. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこまでおっしゃるなら、なぜここに人権という一つの、今おっしゃったようなことを書かれなかったのかということをお尋ねしているんです。今のようなことを文部省がやったとかやらぬとかと私は言っているんじゃない。あなたがなぜここに書かなかったかということを尋ねているんです。
  24. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 繰り返しになりますけれども、教育基本法とか日本国憲法の精神にのっとってやっていくということはもう既に現在やっておりますし、平成十年六月に提出しました中央教育審議会答申においても、生きる力の核となる豊かな人間性として、生命を大切にし、人権を尊重する心などの基本的な倫理観、他人を思いやる心などが挙げられております。したがいまして、私としては、心の教育といったものの中にこれがきちっと入っているという認識でございました。そういう意味で、決して私が人権教育を軽視したというわけではなく、心の教育というものの中に十分入っていると考えた次第でございます。  そういう意味で、人権教育重要性についての認識が弱くなったということではございませんので、御理解賜れれば幸いでございます。
  25. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 心の教育と人権の教育を対置して、人権を大切にするとか人権の教育を心の教育に置きかえることができるかというと、私はできないと思います。ただ、心の教育に入るとか生きる力の中に入っているかというと、それは入っていると思います。だから、憲法、教育基本法と出せば全部あるわけで、それだけ書いておけばこんなのは要らぬということになるわけです。  だから、ここに書かれているというのは、やはりそのときの文部大臣が認識として何を重要視しているかということが出てくるというふうに私は見るわけでありまして、少なくとも文部大臣の意識の中には非常にそういう意味は薄いと言わざるを得ません。したがって、今おっしゃったように、人権という問題をもっと大事にして教育行政に当たっていただきたいということをここで強く申し上げておきたいと思います。そのことだけにかかわって議論するわけにまいりませんので、それはそのように申し上げておきます。  それから、私は、昨年の八月ですか、文部大臣が就任されたときの本会議でも三十人学級を推進することの重要性を述べました。また、ことしの一月二十一日の本会議でも同じような意味で述べました。しかし、いずれも本会議の質問ですから、見事に答えをはぐらかされてしまっても、再質問と言ってそこでやるわけにもいきませんし、黙って苦笑いをしておりました。しかし、きょうは少し時間がありますので、この三十人学級問題を政治家として、文部大臣としての有馬さんとちょっと論争をしてみたいと思います。  それで、三十人学級というのはここには少しも書いてないわけであります。ただ、どこから類推するかというと、二ページの「わかりやすい授業の実施に努め、楽しい学校づくりを目指すとともに」、これはそういう問題にかかわるんだろうというふうに思いますし、また、「教育諸条件の整備のため、個に応じたきめ細かな指導を行うチームティーチングの導入などの教職員配置の改善」というところにもそういうことを類推できる言葉があります。しかし、現実に三十人学級問題云々についての言葉がないわけで、それについてお尋ねします。  もう端的に言いますが、今なぜ三十人学級という問題を文部大臣がお話しになることが禁句のようになっておるんですか。私たち質問すると、絶えずあなたは、今、第六次教職員定数改善を進めております、それを二年延長した、まずそれを完全に実現するんですということを繰り返し繰り返しおっしゃる。しかし、あなたが文部大臣としてここに書いてあるように、わかりやすい授業の実施に努め、楽しい学校づくりを進めるとか、あるいは心の教育とかさまざまな今教育に必要な問題を推進していく条件づくりについて、現在の法律上定められている四十人学級というものがそのままでいいのかという問題と、さらにそれをもう少し小さな規模の学級にしていくということに対する教育的な効果というようなものについて、あなた自身の認識なりというものは少しも語られることがないんですよ。  私は、本会議だからやむを得ぬというふうにある程度は許容しております。しかし、これは委員会ですから、文部大臣として、いや、私は三十人学級は必要ないんだとおっしゃるなら必要ないんだとおっしゃってください。必要だというんなら必要だと、しかしどうなんだと、そうしたはっきりしたことをおっしゃってください。
  26. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、三十人学級はだめだということを申し上げてはおりません。それから、中央教育審議会での答申の際には、諸外国、特に欧米諸国並みの先生生徒の比にすべしというようなことを言った人間でございます。  しかし、学級編制の規模につきましては、おっしゃるように、一般的にはその規模が小さい方が児童生徒一人一人の特性等に応じた指導を行うことがよりよくできると考えられております。しかしながら、学級規模と学習集団と教育効果の関連についてはまだ必ずしも明確にはなっていない。  そこで、教育指導を効果的に行うのは、学年や教科等に応じてできるだけ小人数の学習集団を編成して授業を行ったり、チームティーチング等を取り入れる指導方法の改善を図るなど、きめ細かな工夫を行っていくことが必要であると考えております。  そこで、たびたび申し上げますように、文部省としては現在、今後の教職員配置のあり方、学級規模と学習集団のあり方等について、昨年の九月の中央教育審議会答申を受けまして、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れて、専門家の協力を得て検討を行っているところです。  また、私がその際に非常に興味を持つというか関心がございますのは、これは一九八〇年であったと思いますが、四十五人学級から四十人学級に学級規模を引き下げる際には次のような利点が考えられたところでございます。学級規模が縮小されることにより、総じて教師や児童生徒ゆとりが生まれるということ、それからもう一つ、よりきめ細かな指導や個に応じた指導が可能になる、こういう方針で一九八〇年に四十五人より四十人になりました。同じような議論が当時あったようでございます。で、もちろんそれを実現いたしますには十年ぐらいかかったんですね。それでやっと充実してきているわけでございます。  このように、四十五人学級に比べれば四十人学級にすることの効果はあったと私は考えておりますが、一方、四十人学級の実施にもかかわらず、不登校やいじめ校内暴力など児童生徒の問題行動等についてのデータが悪化していることもまた事実でございます。四十人学級の成果を上回るほどに児童生徒を取り巻く家庭社会環境の著しい変化が悪影響を及ぼしたということがそこにあるんじゃないかと思うんですね。この辺の関係についても私としてはよく検討した上で、今後どういうふうに一クラスの生徒の数を決めていくかということを決めたいと思っております。
  27. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 子供の数を一クラス当たり減らしていくということについて考えているとおっしゃいました。それで、今は確かに第六次教職員定数改善計画が二年延長されて進んでいるところでありまして、これが再来年完結するわけですね。その後一体どうするかと。こういう問題は、教育現場の今の実情からいえば、引き続きその改善計画を推し進めていくことが私は必要であると考えるんです。  それで、四十人学級を実施して、先ほどおっしゃったようにもう二十年近くなろうとしております。そして、今や三十人学級にするということは国民の中にほぼ合意ができていると私は思いますし、あとは文部省の決断の問題であるというふうにも思います。  そしてまた、今雇用問題がいろいろと議論されている中にあって、連合とそれから日経連ですか、経済団体との合同の百万人雇用創出ということの中にも、そうした三十人学級というふうなものによって教職員増、雇用増というふうなことも大きな現在の雇用対策の一つではないかという切り込み方もあります。  そして、子供の数も今減ってきておりますし、そのことによって教室を大幅に増しなければならぬとか学校が新しく必要になるとか、あるいはまた教職員の数にしましても、自然減というものと増というものの相殺ということで、実質必要な教員数というものも、単純に計算するよりも少なく見積もることができるというさまざまな意味で、これは今好条件にあると私は思います。  この時期を文部省は逸する手はない、こう思いますし、後ほどお尋ねしますけれども、子供のさまざまな心の問題とかあるいは不登校、いじめ、いろんなことで教育荒廃状況を起こしていることに対して文部省がチームティーチングとかいろんな施策を講じたことは、私は評価をしております。  しかし、それだけではなお現状を教育現場として正常な形に維持できないということがあって、年々それがふえていっているという事実もあります。だから、チームティーチングという問題も、今の四十人学級のときにチームティーチング、三十人学級になったらチームティーチングは要らぬのかというと、私はそうではないと思うんです。  また逆に、三十人学級でチームティーチングというのを、先生が十五人十五人に分けて、それでは十五人ずつ教えたらどうなるのかという問題だってそこにはいろいろあるわけでありまして、一つの形でなければならぬということはないというふうに、私は教育現場の実態から見ればあると思っております。  第六次教職員定数改善の問題の進捗を今見守っている、それを完遂させるんだということは当然わかります。だから、すぐ目の前にその後の問題、ポスト第六次教職員定数改善計画という問題があるんですから、そのことに対してはっきりとした方針を示して、それに対して具体的な対策を講じていくということを今やっていっても何も問題がないんじゃないかと思いますが、一体何が問題なのか、そういうことを議論することは何が問題なのか、はっきりさせてください。
  28. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 議論することは問題でないと思っております。よりよい教育が本当に実現されるということの目標を立てて議論することは結構でございます。  そのために、先ほど申し上げたように、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れて、専門家の協力を得て検討を行っているところでございます。そこでは、今後の教職員配置のあり方、学級規模と学習集団のあり方等について検討をいただいているところでございます。  しかしながら、御指摘のように仮に三十人学級を全国的に実施するということになりますと、国の財政的負担だけではなく地方自治体の財政負担が相当大きなものになる、それから私立の方にも負担をかける、こういうふうな問題について慎重な十分な検討が必要であると考えており、現在検討をしているところでございます。
  29. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 おっしゃるとおりであります。お金がかかります。しかし、文部大臣所信の中に書いておられるじゃありませんか。「私は、人づくりは二十一世紀我が国の姿を形づくるものとの認識のもとに、」と言って、文字どおり人づくりは二十一世紀基礎をつくっていくんです。  そのためにどれだけのお金が必要なのかということは、要するに二十一世紀をどういう世紀にするのかという中身の問題とかかわって、先行投資として投資するものに意味があるのかないのかということは国民が判断しなきゃ仕方がないでしょう。いや必要ないんだ、今のままでいいんだというのか、いや、それだけのお金をかけて必要なものなのかどうなのかという、あなたがおっしゃっているように、人づくりというものにかかわるいわゆる先行投資そのものじゃないですか。そこにかけたお金が本当に意味があったのかどうなのかというのは、二十五年、三十年たたなきゃわからないわけでしょう。  文字どおり、今かける人づくりのお金は、日本がかつてない少子高齢化時代という大変な社会状況に突入するときに、その社会を支えるのは今から生まれ育っていく子供たちが支えていくんです。従来の延長線上ではとてもこうした時代を支える子供が育ちようがないと、若干自分も現場教員をやってきた、私が教えたことの中身の反省も含めながら今思っているんです。  そういう意味で、おっしゃるように財政上は当然負担がかかります。しかし、その負担は未来の先行投資という意味とのてんびんにかけて国民に問いかける勇気が文部省になかったら困るじゃないですか。
  30. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 財政的に全く自由であるとすれば、いろんな案がつくられると思います。そういう外的条件を考え、初中教育だけではなく、文部省としては高等教育も預かっているわけです。それから、学術の研究をさらに進めなきゃいけない。留学生の問題がある。あるいはスポーツ・文化の問題がある。あらゆる観点で相当大きな財政負担があるわけでございます。  その中で、初中教育重要性は私は重々認識しておりまして、最大限の努力をしようと思っているわけです。したがいまして、そのために専門家の協力を得て、どういう行き方が一番いいか、物によっては、例えば音楽とか体育とかあるいは理科とか、それぞれの分野において大勢の教育の方がいい場合もある。体育なんかそうじゃないかと思う。特に、一つのグループをつくって教育をするときにはむしろ大きい集団の方がいい。理科教育は私の専門でございますが、理科教育は小人数の方がいいです、特に実験の指導など。こういうふうなことを勘案して、財政負担ということをどうやって最も効果的に解決していくか、これが我々に課された問題だということを重々認識しております。  ですから、あらゆるところをてんびんにかけながら検討を進めていきたいと申し上げている次第でありまして、決して小人数教育が悪いというようなことは言っていない、そのことは御記憶いただきたいと思います。ただ、財政負担の中で許されるのはぎりぎりどこかということを今模索していると申し上げたいと思います。
  31. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 きょうはそのほかにも論争したいことがありますのでこの辺でおいておきますが、今の段階で三十人学級問題について提起できない、文部省がこうおっしゃるならば、これは議員の側が立法府の立場からそれを提言して、議論をして、そしてそれを国の政策にしていけるように我々自身が取り組まざるを得ぬというふうに思います。  その場合に、文部省は恐らく足を引いたり必要ないと反対に回られることはないと私は思いますが、やはり今は、文部省文部省なりの立場、議員は議員の立場で、今学校現場の中で苦しんでいる子供たち学校の教職員、親たちのことを念頭に置きながら、よりよい教育条件を整備するために一緒に頑張らなきゃいかぬときではないか、こう思っております。だから、私どもとしては、三十人学級問題はやはり立法府の立場からどうしても提起しなければならぬということを決意として申し上げておきたいと思います。  それに関連して、いじめ、不登校という言葉が出てきております。学級崩壊という言葉が出ております。こうした子供の問題状況、一番最近のデータとして今どういうふうになっているか、簡単に御報告していただきたいと思います。
  32. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 平成九年度でございますけれども、いじめの発生件数は約四万三千件でございます。それから不登校の児童生徒、これは学校嫌いということで学校を欠席している子供の数でございますけれども、約十万五千人という状況でございます。それから学級崩壊につきましては、これはなかなか実数で確認するということが難しいわけでございますけれども、いろんなところから学級が成り立たないという状況も報告されておりまして、私ども今、国立教育研究所の方の協力もいただきながらその実状把握に努めているところでございます。  先生が今御指摘になりました問題行動と申しましょうか、そういったものの主なものを御紹介いたしますと今のような状況でございます。
  33. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それぞれはどうですか、累増というんですか、やっぱり前年比ふえていくという傾向にみんなあるんですか。
  34. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 不登校児童生徒につきましては漸増ということで、大変残念でございますけれどもふえつつございます。それから、いじめにつきましては、これは減ないし横ばいというような状況でございますが、非行の問題で校内暴力の問題につきましては漸増というような状況でございまして、私どもこうした状況につきましては大変憂慮をしているという状況にございます。
  35. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 子供が今大変憂慮する状態だとおっしゃっているが、学級崩壊というふうなことの中で、今度は先生の方が倒れていくということが起こるわけであります。  そこで、教職員の健康状態等について伺いますが、子供学校で荒れる、そういう心の病のような状態にかかる憂慮すべき状態にある。それに対応しておる学校の教職員は全体的にどういう状況にあるのか、その実態がもしおわかりになったら教えていただけませんか。
  36. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) 教職員の健康問題に関しましては、これは教員自身にとっても大変重要な問題でございますが、学校教育を円滑に実施していくという観点からも大変重要だと思っております。学校保健法に基づきまして、年一回定期の検査をする、その結果に基づいて適切な措置をとるということで、各学校でこれが実施されておりますが、特に最近、仕事も忙しくなった、あるいは学校でいろんな問題が起きておるということで、特に教員のメンタルヘルスの保持増進ということが重要な課題になってきているのではないかというふうに考えております。  とりわけ、教員は日常的に子供たちと接しますので、その人間形成に大きな影響を与えるという視点からもこの問題というのは考えていかなければいけないというふうに考えておりまして、各教育委員会におきまして、相談窓口の設置とかあるいは関連する医療機関との連携などによりまして、そういう相談体制の整備をしていくということに現在努めているところでございます。
  37. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 かつての教職員の健康問題で一番大きかったのは結核だったんです。私も二回結核になって十四条の適用を受けました。今はそうじゃなくて、いわゆる子供が荒れている状況、特に学級崩壊が起こるというのは、先生自身がもうぶっ倒れる、担任の教職員がぶっ倒れる、そして連鎖的に他の学級に波及していくということの中で、教員自身が退職するとか、あるいは休職に入ってしまうとかという事例が非常に多くなっているということを聞いているんですが、そういうことは統計上あらわれていませんか。
  38. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) そういったデータというのは私どもちょっと掌握しておりませんが、例えば病気休職者の数とか、そのうちに占める精神性疾患による休職、そういったデータはございますが、今先生がおっしゃったようなデータというものは私ども承知しておりません。  ただ、そういったことがこれからの課題だというふうに考えておりまして、そういったことには、校長や教頭というのがまずもって職員の健康保持増進の重要性を十分に認識する、教員が相談を受けやすいようにするというふうなことからまず始めていかなければいけないなというふうに考えております。
  39. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、それは校長や教頭の指導によって問題が解決するようなことであるならばさほど問題はないんですよ。したがって私は、今教育現場子供が荒れている状況は統計上出てきておりますが、それに対応して頑張っておる教職員は一体どうなのかという問題をきちっと押さえる必要があると思うんですよ。でなければ、教職員の側から崩壊していく可能性があるという心配を私はしておるわけでして、どういう調査をすればいいのかということはお任せしますが、教育現場の教職員の方の実態調査をぜひともやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  40. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 教職員の人事管理あるいは健康管理につきましては、基本的にはそれぞれの都道府県あるいは政令市等の任命権を有する教育委員会が責任を持っておやりになっているということだろうと思っております。  ただ、先生指摘のように、私ども全国的な傾向といたしまして憂慮いたしておりますのは、病気休職者につきましてはここ近年余り大きな変化がなかったわけでございますけれども、平成八年度と九年度の調査で相当数がふえておりまして、全教職員に占める割合はそれまで〇・四%以下でございましたが、それが〇・四四%という形で休職処分者の中で病気休職の職員が、全在職者に占める比率が非常に平成九年度は高くなったということがございます。  また、精神性疾患による休職者について見ますと、この比率がここ数年と申し上げてよろしいかと思いますけれども漸増傾向にございまして、かつて在職者比率が〇・一%程度でございましたのが、徐々に上がってまいりまして平成九年度で〇・一七%、こういう状況を私どもは大変事態を重く見ていることは事実でございます。  ただ、いずれにいたしましても、個々の教職員の人事管理を文部省が直接全国的な立場で行うということはできません。それぞれの職員の状況に応じた人事配置あるいは健康相談、あるいはカウンセリング等々につきましてはそれぞれの職場、あるいはそれぞれの任命権者において具体的な手だてを立てていただくほかはないわけでございます。私どもといたしましては、さまざまな担当者の会議等を通じまして、こういった傾向につきましては警鐘を鳴らしながら、ぜひ職員の健康管理体制につきまして、とりわけ最近はメンタルヘルスの管理につきまして重点を入れて取り組んでいただきたいということでお願いしておりまして、最近におきましては、各教育委員会におきましても、教職員の相談窓口等かなり積極的に設置をして対応していただいている状況だと承知しているところでございます。
  41. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 当然都道府県教委の問題ですが、文部省の方も関心を持ってと私があえてこれを持ち出したのは、教育条件整備という問題を、三十人学級を中心にまだまだ文部省として意を払ってもらわなきゃならないということを認識してもらおうと思って取り上げたわけです。  それじゃ、次に地教行法の問題です。地方分権の問題と絡んで若干お尋ねします。  地教行法の第五章「文部大臣及び教育委員会相互間の関係」というところにいろいろ文部省と地方教育委員会との関係が出ておりますし、また第十六条には教育長の承認ということがあるわけですが、このまず第十六条の教育長のところ、「文部大臣の承認を得て、教育長を任命する。」というのは、これは直すんだというふうに決定されておりますが、この場合に、教育長を教育委員と兼任というふうなことを認めるのか認めないのかという問題があるやに聞いております。  私は、やっぱり教育長はあくまで専任であるべきだと思うし、教育委員教育委員としての別の委員会としての専任事項があると思うんです。そうした兼任はさせるべきではないと思っておりますが、文部省はここのところはどういうふうに今後措置されるおつもりですか。
  42. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘ございました教育長の選任方法につきましては、地方分権推進委員会の勧告に基づきまして、政府といたしましては既に地方分権推進計画におきまして都道府県教育委員会並びに文部大臣の任命承認制度はこれを廃止するということを決定いたしておりますし、中央教育審議会におきましては、これを一つ前提といたしまして、その廃止した後の教育長の選任方法、適材確保方策というものがいかにあるべきかということで御議論をいただきまして、その結果、任命承認制度の廃止に伴って、「幅広く人材を確保するため、都道府県及び市町村の教育委員会の教育長の任命に際し、議会による同意を必要とすること。」という御提言をいただいているところでございます。  これを受けまして、私ども政府部内におきまして法案の策定作業を現在継続中ということでございますので、最終的な形につきましては、法案の形で国会に提出した後また御審議をいただくことになろうかと存じますが、教育長の議会同意をどのような形で行うかということにつきまして、現在、先生指摘ございましたように、市町村の教育長につきましては、原則五人の教育委員の中から教育長として選任をし、常勤の教育長として職務を果たしていただく、こういう現行法制の一つの形があるわけでございます。  それも踏まえながら、地方行政全体の中での整合性というような観点から総合的に今法制的な検討をしているところでございますので、今後、法案の段階で十分御審議を賜りたいと思っております。
  43. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 法案の段階で十分審議しますが、教育長と教育委員を兼任させるということも文部省の考えの中にあるんですか。
  44. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現在の地教行法におきまして、政令市を除きます市町村の教育長につきましては、教育委員の中から教育長を選任するという規定があるわけでございますので、この現行の規定は私ども検討の中での一つのモデルということに考えているところでございます。
  45. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 これはまた法律のときにも議論させていただきますが、教育委員教育長が兼任しているというそのメリットもありましょうが、教育長は教育長として固有の職責というか仕事があり、教育委員教育委員として教育委員会という一つ行政機関の中でのメンバーとして仕事をするということで、それが一緒になっているということによって起こっている問題の方が多いのではないかと私は思うんです。  文部省が兼任の方向でどうも今お考えのようですから、そこのところは十分僕らも研究して議論をいたしますが、そうすると、都道府県の教育長も、政令都市を除く市町村と同じように、兼任ということも視野に入れて今検討されているというふうに理解していいんですか。
  46. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現行制度上、政令市と都道府県におきましては文部大臣の承認を受けて教育長を任命するという形になっておりますので、新しい制度におきましても、都道府県と政令市の教育長につきましては全く同じ制度ということで私ども今検討をさせていただきたいと考えております。
  47. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 もう少し語尾をはっきりおっしゃってください。私は耳が遠いんです。ちょっとはっきりしてください。
  48. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 都道府県と政令市は全く同じ形で考えさせていただきたいと思っております。
  49. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、現在は別個ですから、教育長は専任、兼任はさせないということで考えているというふうに理解したらいいんですか。
  50. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 説明を省略してしまいまして申しわけございません。  今の制度上、都道府県と政令市につきましては文部大臣が任命の承認をするという形になっておりまして、政令市と都道府県につきましては、教育長は教育委員以外の者から任命するということは法律上規定されているわけでございます。  これに対しまして、政令市を除きますその他の市町村の教育長につきましては、すべて教育委員の中からそれぞれの都道府県の教育委員会の承認を得て任命をするということになっておりますので、任命承認制度を廃止した後の仕組みにつきましては、都道府県と政令市につきましては同じような形で、先ほど御議論ございました現在の市町村の、政令市を除きます市町村の教育長の任命方式がございますけれども、それも一つのモデルとして検討しているということでございます。
  51. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 要するに、今までは文部大臣が承認しておったのを、しなくなったと。それは当たり前ですよ、もう二十年も三十年もほったらかしておったんですから。それはそれでいいんですよ。その後、教育長を任命するについては、都道府県と政令都市は議会の同意人事として別に選ぶ、そして教育委員教育委員として別に選ぶ、兼任はしていないと。それはそのまま文部省としては法律的には残していくという意向なんですね。そのほかの市町村は教育委員の中から教育長を選ぶとなっているから、それはそういう形で進めていくと。  要するに、文部省が都道府県と政令都市の教育長を承認しておったところだけは、分権推進ですから当然そこは外すけれども、そのほかは今までと同じだと、こういうふうに理解していいんですか。
  52. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 現在法案の作成段階でございまして、最終的な形で御審議いただければもう少し明確になろうかと思いますけれども、議会同意を教育長について行ってはどうかという中教審の答申につきまして、その議会の同意をどのような形で行うかということにつきまして現在法制的な検討をしている最中でございまして、その議会の同意の仕方が場合によっては、現在政令市以外の市町村について行われているように、まず委員として議会の同意をいただいて、その上で教育長を選任するというような考え方も一つ検討の素材として現在法案の準備をさせていただいているというところでございます。
  53. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 わかりました。都道府県も、できれば教育委員として五人選んで、同意人事で、その中から教育長を選ぶということも考えていると、こうおっしゃるわけですか。  それは、従来も教育長は教育長として知事が同意人事で任命していくことを、専任にすることと兼任になることなんですが、なぜ専任にすることに問題があるとお考えなんですか。
  54. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) いろいろな議論はあるわけでございますけれども、現在まだ政府として最終の法案を固め切っていない段階でございますので、一つ一つの論点につきましてここで御説明するのはひとつお許しをいただきたいと思います。
  55. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 出てきたときにしっかり議論しますが、要するに教育委員会というのは、地方の都道府県なら都道府県、市町なら市町の教育行政に携わる独立した行政機関ですよね。それを委員会方式でもって束ねていくわけです。教育長というのは、これは別に都道府県なり市町が選任をして、そしてそれは行政官として行政責任を持って、一定の権能を持ちながら教育の執行にかかわっていくわけでしょう。だから、直接執行する人間と、教育委員会という専管事項の独立した委員会が別に存在しておることがごく普通であって、小規模のところで、そういうややこしいところは一緒でもいいじゃないかと便宜主義的にこの兼任というのを、便宜主義と言ったらいかぬが、二つに特段分ける必要はないだろうという場合に、兼任でもいいけれども、通常は当然、教育長という仕事は独立した形で存在させるのが普通じゃないですか。それを何で行政機関として別にするのかということについて僕はわからない。だから、そこについては僕らは納得できませんので、改めてまた議論をします。  そこで、もう一つ改めてお伺いしますけれども、同時に、教育委員会がいわゆる教育行政に携わる行政機関としてどのような権能を持つのかということなんですが、地方自治体の教育の予算の問題ですね、予算を編成したり予算を執行したりするそうした権能、権限もそうした教育委員会に、新しく法律化されてくるところの教育委員会に与えるというふうな事柄までお考えなのかどうなのか、いやそういうことは全く考えていないのかどうなのか、一言ちょっとお答えください。
  56. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 中教審は今回、教育委員制度全般について御議論をいただいたわけでございますけれども、最終的な御答申の中では、予算の編成権あるいは条例提案権等、現在都道府県知事あるいは市町村長が持っております権限について、これを独自に教育委員会に持たしたらどうかというような形での最終的な御提言はなかったところでございますので、私ども現在準備しております法律改正の中には、そのような法改正は含まない形で作業させていただいているところでございます。
  57. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 文部大臣、ちょっと一言お伺いしますが、文部省という名称をどうするんですか。大蔵省は、大蔵省に戻すんだという話があるが、文部省教育科学技術省というふうになるとかならぬという話でしたが、文部大臣はどういうふうにお考えなんですか。
  58. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 実は、橋本前総理のもとにありました行政改革会議の一員といたしまして、名前については随分苦労をいたしました。しかし、現在、御承知のように教育科学技術省という格好で一応決まっています。しかしながら、今は総理大臣の方に一切が任されておりますので、その結論を待ちたいと思っております。これは御承知のように、後藤田さんを座長とした有識者懇談会の報告が既に昨年十二月に総理へ提出されたところでございまして、これは一切総理の決断によるということでございますので、私はその結果を静かに待っているところです。
  59. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 わかりました。私は、改革ということで、分権の時代推進していくということで、教育も分権の中の軸になっていくと思いますが、やはり文部省という名称は改めた方がいいという立場です。  それでは、在日外国人の大学受験資格問題について若干お伺いします。  前回も質問いたしまして、現在調査中だということですが、調査の進展状況について御報告ください。
  60. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 昨年の末に大臣の命を受けまして、諸外国二十三カ国・地域の政府の当局とそれから約二百ほどの外国人の学校調査対象として現在調査中でございますが、それぞれの国の事情もあるようでございまして、すぐには回答を出せない、しばらく待ってくれというまず第一報が来たところもございますけれども、これまでのところ約三分の一ぐらいの回収をしているところでございます。しかも、その回収の中でも国によりまして、同じ国の中でありながら一つ学校は、例えば大学入学資格につきまして資格があるという御回答があるかと思えば、同じ国の中での別の学校は、インターナショナルバカロレアという別のバイパスを通りながらそういう資格があるという、若干まちまちな部分もありますので、そのあたりの精査をし、かつ回収率を上げてさらに整理してまいりたいと思っておるところでございます。
  61. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 一九九六年にも、文部省の委託研究である外国人学校研究会の、諸外国における外国人学校の位置づけに関する研究という報告結果があるようですが、ここでのデータもかなり今重要な意味を持つのじゃないんですか。
  62. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 御指摘のように、平成七年度に大学関係者の研究会での御調査をいただいたものがございます。諸外国の外国人学校を相手にしての調査でございましたが、これでもある程度の様子はわかるのでございますが、今回私どもが行っておりますのは先ほど申し上げましたように諸外国の政府レベルと各学校レベルと両方なのでございますが、この平成七年度に行われた調査は各学校レベルだけなのでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、各学校側の理解として大学入学資格があるという御回答の中にも、果たして無条件で資格があるのか、別のスキームの中でそういう資格が与えられているのかということの精査などをする必要がございますので、私どもが今回の調査でダブルチェックしながら確実を期してまいりたいと思っておるところでございます。
  63. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 念のために学校教育法施行規則六十七条を読んでいただけますか。
  64. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 学校教育法施行規則六十七条でございますが、「学生の入学、退学、転学、留学、休学及び卒業は、教授会の議を経て、学長が、これを定める。」とございます。
  65. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 文部大臣調査を待ってこれの答えを出しましょうということです。しかし、今の学校教育法施行規則六十七条には、はっきりと大学自治という立場から、「学生の入学」云々から、「卒業は、教授会の議を経て、学長が、これを定める。」、こうなっておるんです。  しかも、外国人学校の卒業生を入学させるということじゃなくて、自分のところの学校で勉強する力があるか、勉学する能力があるかどうかということを試験をするという、その資格すら文部省が一律に縛っているというのはいかがなものかということでこの議論がずっと進んでいるんですが、文部省が一斉に解禁して、大学の教授会の議を経てこれを認めなさいとか、認めてもよろしいとかいうふうなことを一律に指示を与えてやらすというふうなことをすると、これまた大学自治との関係にかかわってくる面も出てこようと思いますから、今言ったように、学生の入学から卒業、こういうことは「教授会の議を経て、学長が、これを定める。」と、こうあるんですから、もうこれはそれぞれの国立大学の判断に任せて、そして外国人学校の卒業生の受験資格は認めようということを教授会で決めれば、それはそこの教授会の決定に従ってそれが行われたんだと。そして、試験を受けさせてだめであれば入学させなければいいわけですから、入学させるだけの力があると認めれば、それはその学校の判断で入学させるというぐらいのことを、規制緩和じゃありませんが、もうやってもいいんじゃないかということをつくづくと思うんです。  でないと、ことしも大学院のところでどこか出てきたようですが、しかしそれは、受けたけれども結果がだめであったということで入学できなかった。結果として入学できなかったということは当然あるんですから、受験の機会まで奪うというのは、もうこの国際化時代、グローバルスタンダードとかなんとかいろいろ議論されている中で、なぜかたくなに国立大学がそれを拒み続けるのかということについてはどうしても納得のいかないところなんですが、大臣、いかがですか。
  66. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 今御指摘いただきました学校教育法施行規則の六十七条でございますが、この規定は、具体的に大学を受験した者について入学を許可するかどうかということについては「学長が、これを定める。」わけでございます。ただ、大学を受験する前提となります入学資格につきましては、学校間の接続や全体としての学校教育体系を明確にし、大学教育の水準の確保を図るという観点に立ちまして、一定の学修を修了した者に対してこれを認めておるところでございます。  そういった立場から、大学入学資格につきましては、学校教育法の規定に基づいて、高等学校卒業者またはそれと同等以上の学力があるとして文部大臣が認める者に与えられているところでございまして、それぞれの大学において個別具体に、この者には入学資格があるとかないとかというふうな判断をするということとなりますと、我が国学校教育体系にかかわる基本的な問題ということになりますので、これは認められないというところでございます。
  67. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そういう議論をずっとしてきたんですね。ところが、今言ったように、国際的に見てそういうことが通用する状況なのかどうなのかという点も我々は考えなきゃいけないと思うんです。  それで、昨年も、国連の規約人権委員会とか子どもの権利委員会とか差別防止・少数者保護小委員会、こうしたところでこの在日外国人の受験資格問題、公立と私立はそれぞれ半数近く門戸を開いているのになぜ国立だけがこの門戸を開かないのか、これは差別ではないかといったたぐいの意見が出されて、そしてそれぞれのところからは、それはおかしいな、国立大学の受験資格がないということは差別ではないかというふうな判断を、そうした国際的な人権問題を扱う機関のところで議論になっているという状況なんですよ。  それならそれで、そうした国際的なところで議論が出ている場にはっきりと文部省の見解を出して反論するなら、こういうところへ行って反論をきちっとやって果たしてそういうことが通るのかどうなのか、国際的に見て。日本がいかにこの教育の国立大学問題が閉鎖的な社会なのかどうなのかという問題を、そこであなたたちは恥をかくだけではないかと私は思うんですが、国際的なこうした人権関係の議論をしている場で、日本の国立大学が外国人学校子供の卒業生の受験資格を認めていないということが議論になっていてもなお、それはそれ、日本日本だというふうにこの問題をあくまで閉鎖的に拒み続けるのかどうか。  文部大臣、やっぱりそういう国際的な問題もあるということをお考えいただいて、いかがでしょうか。
  68. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 若干背景を御説明します。  いわゆるB規約人権委員会での御見解はあるわけでございますが、これは勧告というよりは懸念表明ということであることと、基本的に、ぎりぎり申しますと法的拘束力のない案件ではあるのでございますが、今御指摘ありました各種の人権問題の条約関係はいずれも、不合理な差別を禁止して、子供たちあるいは人々の人権を守ろうということなのでございまして、合理的な区別までを禁止しているものではないのでございます。  私どもとしては、この人権委員会の会合の場などでるる、一条学校各種学校との違い、それは朝鮮人学校であるから差別あるいは区別しているのではなくて、各種学校という一条学校とは違う学校体系での合理的な区別であるという御説明を申し上げているわけなのでございます。  それと、先生、先ほど大分以前の調査の御指摘がありましたので申し上げますと、もっと以前の調査なども含めまして私どもが周辺的に感じておりますのは、いわゆる外国人学校のそれぞれの国での位置づけというのは極めてまちまちでございます。私どももはるか昔には外国人学校法案という形で法的な位置づけを考えたこともあるのでございますが、諸外国においては、一定の認可とか登録とか承認を要する場合でございますとか、校長教員等に一定の資格を要するとか、それぞれの限定をしながら外国人学校の位置づけをされているところもあるようでございますし、それをさらに修正して現在調査中でございますので、それぞれの国での位置づけ、さらにその進学の資格の有無等についてもう少し精査いたしまして、さらに検討してまいりたいというのが現在の状況でございますし、かねがね申し上げておりますように、学校制度というのはある程度きっちりした体系がありませんと、その制度としての維持あるいは国際通用性等の上で問題もあるわけでございますので、その辺は御理解賜りたいと思います。
  69. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) たびたび申し上げるように、今回の調査では、特に大学入学資格等に焦点を合わせて調査をしているわけであります。その際に、日本教育機関が、例えばフランスにおける教育機関というふうなものがどういう取り扱いを受けているかということについて、もう一歩きちっと私として確信を持ちたい。日本人の学校すべてが大学に自由に行けるようにはなっていないと私は自分の経験から感じております。そういう意味で、どういう条件を満足すれば諸外国において日本学校が認められていくか、こういうことが国際化の時代において調べておかなければならないことだと思っております。  私は、テンプル大学等々に対しては、今回、大学設置基準が大綱化され、教員の条件というふうなものがずっと広くなったし、それからまた、施設等々に関する条件もかなり緩められておりますので、そういう意味で、テンプル大学等々外国の大学は、やはりきちっと手続を踏んで、日本大学として認めてもらうよう努力をしてくれということを繰り返し申し上げている次第であります。
  70. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 自治省、済みませんでした。高齢者の再任用問題を質問しようと思っておりましたけれども、申しわけございません。  これで終わります。
  71. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 自民党の仲道でございます。  有馬大臣は、省庁再編に先駆けて文部大臣科学技術庁長官を兼任するということになり、大変御苦労でございます。しかし、大臣はもともと科学者でもあり教育者でもありますので、この文部省科学技術庁との連携強化につきましては私たち大変大きく期待をいたしておるところでございますので、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。  今、我が国が二十一世紀に向けて科学技術創造立国を実現していくため、基礎研究の充実強化とともに、科学技術人材養成確保、科学技術に対する国民の関心と理解を深めていくことは極めて重要であります。特に、青少年が日ごろから科学技術に親しみ、探求心を育て、科学的な物の見方を学んでいくということは重要であります。  しかるに、ある学会による調査において、理科が好きな生徒の割合や将来科学を使う仕事をしたいと考えている生徒の割合が、多くの項目で我が国は最低の数値が報告をされております。先ほど大臣から理数については世界で第三位という報告がございました。多少そこのところでは矛盾するわけでございますけれども、学会の方の調査ではそういうふうに出ておるわけでもございます。  このような現状を打破して国民科学技術に対する理解の増進を高めるには、教育行政と連携して科学技術理解を深めるための施策を展開することが大切であろうと思いますが、大臣の考え方をお伺いいたしたいと思いますし、科学技術行政学術行政の連携にどのように取り組んでいくのか、あわせてその点についてお伺いいたしたいと思います。
  72. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 理科教育というような面とそれから学術行政科学技術振興行政、この辺がまさに文部省科学技術庁が大いに重なっているところだと思います。  先ほど、一九九五年に行われました国際比較の結果について申し上げましたけれども、それは十四歳の子供世界的に比較しております。御指摘のように、残念ながら高等学校に行くと子供たち理科に関する関心が半分ぐらいになります。小学校六年生のころですと八〇%。それから中学校に入りますとそれが徐々に下がっていって、高等学校で五〇%になる。  それからもう一つ憂慮すべき点は、十四歳の子供たちの成績は極めていいのですけれども、理科は好きか嫌いかという問いに対しては、六〇%の子供が好きだとは言っておりますが、中学校二年ぐらいの世界子供たち理科への関心と比べますと非常に低い。すなわち、よくできるけれども理科への関心が必ずしも高くないという問題がございます。  そこで、文部省といたしましてもさまざまな施策で、特に高等学校あたりの子供たち理科離れしないように、高等学校に入りますとがたっと理科に関心がなくなりますので、その辺についてさらに啓蒙していくというようなことを努力いたしております。同時に科学技術庁の方でも、何とかして科学技術に対して青少年理解を深めてくれるようにさまざまな施策を現在進めているところでございます。科学の祭典であるとか、あるいはサイエンス・チャンネルなどを置いたりいたしております。文部省といたしましても、サイエンス・チャンネルと同じように、子供たちに問いかけるような衛星放送を今考えているところでございます。  いずれにいたしましても、教育の上で、これは国民と言った方がいいと思いますが、理科離れに対して何らかの格好の手段を講じていかなければならないと思っております。  したがいまして、まとめますと、二十一世紀時代において日本が活力を保っていくためには、何といっても学術的な面での強さ、科学技術の面での強さ、そういうふうなものをさらに進めていかなければなりません。その中でも、科学技術重要性はますます増していくと思っております。  したがいまして、新産業創出を促すような研究開発やその成果の活用の促進、大学や国立試験研究機関における基礎的研究の推進、先ほど申し上げました青少年科学技術離れへの対策、それから科学技術人材をさらに養成するといったような面で両省庁が協力をいたしまして、今後さらに施策を進めていきたいと思っております。こういう点で文部省科学技術庁が協力する体制に入ってきたということは、二十一世紀に向かって極めて望ましいことだと考えております。こういう点でさらに努力をさせていただきたいと思っております。
  73. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 理科教育については今そういう御回答があったわけですが、私自身も実は中学校理科を教えた経験がございまして、教材によっては非常に生徒が興味を示しますし、おっしゃったように、高等学校に入ってかなりいろいろな理屈があって実験・実習ができなくなると非常に理科離れをする、そういう傾向は確かにあるんだろうと思います。  二十一世紀に向けての経済発展で、科学技術の振興が今おっしゃったように不可欠でございますが、科学技術の振興というのは我が国経済発展基礎を構築するものである、そういうふうに私も思います。活力あふれた経済社会を築き、豊かな国民生活を実現する上で大きな原動力となると信じておりますが、現在の厳しい経済不況を打開し次の時代を目指していくためにはどのような方針で臨まれるのか、その基本的なお考えをまたあわせてお願いいたしたいと思います。
  74. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 政府といたしましては、科学技術基本法及びそれに基づく科学技術基本計画に沿って、社会的、経済的に必要なニーズに対応いたしまして研究開発を強力に推進いたしたいと思っておりますし、同時に基礎研究を積極的に振興するということを考えております。それから、柔軟かつ競争的に開かれた研究環境の実現に向けて、新たな研究開発システムの構築のために制度改革等を進めているところでございます。科学者の端くれといたしまして、この科学技術基本法及び科学技術基本計画がつくられましたことを大変ありがたく思っております。  今後とも、現行の基本計画に沿って一層の科学技術の振興に努力をしていくとともに、基本計画の進捗状況に関する調査結果の分析や科学技術会議における議論を踏まえまして、さらに来るべき二十一世紀に向かって施策をどうしていったらいいかということを検討していきたいと思っております。
  75. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 次に、情報収集衛星についてお伺いいたしたいと思います。  昨年十二月の閣議において、外交・防衛等の安全保障及び大規模災害等への対応等の危機管理のために必要な情報の収集を主とした目的として、平成十四年度をめどにその導入を決定しております。平成十一年度の政府予算案にも合計百十三億円が計上されているようでございます。  現在、政府が検討している情報収集衛星の概要についてお聞かせをいただきたいと思いますし、また、この衛星が昭和四十四年の国会決議に抵触しないかどうか、その点についてもお伺いをいたしたいと思います。
  76. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 情報収集衛星は、外交・防衛等の安全保障、大規模災害の対応等への危機管理に必要な情報収集を主な目的といたしまして、一メートルの分解能を持つ光学センサー衛星と、一から三メートルの分解能を持つ合成開口レーダー衛星のそれぞれ二基ずつ、計四基で構成されております。そして、平成十四年度を目途に打ち上げることといたしております。  宇宙平和利用決議に関しまして、もとより国会においてその有権解釈がなされるべきものでございますが、昭和六十年に政府見解が出されております。それによれば、その利用が一般化している衛星及びそれと同様の機能を有する衛星につきましては自衛隊の利用が認められるものとされており、現在に至っております。これは一般理論と言っていると思います。  情報収集衛星の導入につきましては、この政府見解にのっとって進められております。昭和四十四年の国会決議等に抵触するものではないと考えております。
  77. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 それを聞いて一応安心をいたしました。このような情報収集衛星は、今後日本の安全保障、危機管理に関する能力を高める上で非常に重要であるというふうに考えております。  情報収集衛星への今後の取り組みに対する決意とあわせまして、科学技術振興に対する大臣の抱負も最後にお聞かせいただきたいと思います。今後の抱負です。
  78. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 現在極めて厳しい経済状況でございますけれども、さらに科学技術を進めていく努力をさせていただきたいと思います。同時に、学術ということについてもさらなる振興を図っていかなければならないと思っております。  特に科学技術で必要とされますことは、現在の厳しい経済状況を何とかして打破していかなければならない、それから地球温暖化、環境破壊等の地球規模の諸問題を何とか解決しなければならない、こういうことに努力をさせていただきたいと思っております。そして、国民に夢を与える、希望を与えるものであるべきだと思っております。このような科学技術の振興を図る上で、経済活性化に資する施策を積極的に展開し、社会的、経済的ニーズに対応した未踏の科学技術分野への挑戦、柔軟な研究開発システムの構築等に力を入れてまいりたいと考えております。  その際に、情報収集衛星を含め、地球観測などの分野の宇宙開発を積極的に進めるとともに、使用済み燃料輸送容器のデータ等によって残念ながら失われました原子力に対する国民の信頼回復を何とかしたい、取り組みたいと思っております。  私は、いずれにいたしましても、私たちの子孫にとって明るく希望に満ちた時代を迎えることができるよう、科学技術行政責任者として全力を尽くさせていただきたいと思っております。
  79. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 たまたま今大臣から使用済み燃料輸送容器の件について御答弁があったんですが、この問題についてちょっと私もお聞きをいたしたいと思っております。  と申しますのは、昨年の十月に私からも幾つかこの問題について質問をさせていただきました。前回の質疑ではまだ調査の途上ということで十分な御回答もいただけなかったものですから改めてお伺いいたしたいと思うんですが、使用済み燃料輸送容器のデータの問題が発生した原因は調べた結果何であったのか、明快にお答えをいただきたいというように思います。
  80. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) お答え申し上げます。  原因でございますが、企業及び技術者の個人に求められるモラルがまず欠けていたということがそもそもの原因というふうに考えられております。  これに加えまして、使用済燃料輸送容器調査検討委員会の報告書では、キットの製造、分析について原電工事及び日本油脂における具体的な取り決めが明確でなく、分析がおくれ、材料証明書の発行が間に合わない結果となったことが一因とされておりまして、その背景には、品質管理や監査の不備があったということが指摘されております。  また、材料仕様値の数値の意味重要性関係事業者に理解されていなかったこと、さらには、原電工事における技術的能力あるいは材料仕様値を満たすための技術的検討が十分に行われていなかったことも背景として挙げられております。
  81. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 今報告がございましたが、十月に取り上げたときも、恐らくそうではないかなというような予想のもとでの質問をいたしたわけでございますけれども、はっきりその結果が今言いましたように品質管理やモラルに問題があったということで、その報告を聞きながら今さらのように義憤を感ずるぐらいでございます。  非常に我が国は資源に乏しい、そして国策として取り組んでおる、そういう核燃料サイクル事業に携わっている原子力の関係事業者が今までそのような体制であったということは、本当に情けなく思う次第です。原子力関係者は、国民の大事な命、財産を預かり、我が国の将来の繁栄を担っているとの気概を持つべきであるし、一方で国の方でも、みずから検査をしているにもかかわらずデータの改ざんを見抜けなかった。  国では先月末に安全規制の充実強化の方策が発表をされておりますが、そこでお伺いしたいんですが、科学技術庁における再発防止策の内容はどうなっているのか、また再発防止はできるのかどうか、そこのところのはっきりした決意もお伺いいたしたいと思います。
  82. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) 当庁といたしましては、このような問題の再発を防止する観点から、特に輸送容器の製作に係る審査及び検査の充実強化を図ることをねらいといたしまして、品質管理体制、輸送容器製作に係る技術的能力、容器の製作方法に関する審査及び検査の充実方策を本年二月二十四日から施行したところでございます。  具体的には、まず品質管理につきましては、申請者から適正な品質管理計画の提出を求めまして、製造者の品質管理体制あるいは下請業者を含む品質監査の実施方法等について厳正に審査をいたします。このため、国際標準化機構が策定いたしましたISO九〇〇二に準拠いたしまして、核燃料物質輸送容器の製作に係る品質管理審査指針というものを二月二十四日に策定して関係者に通知したところでございます。また、品質管理の実施状況については、国による現場確認を実施することといたしております。  技術的能力につきましては、申請者から下請業者の選定基準等に関する説明を求めまして、下請事業者の技術的能力の審査方法等について厳正な審査を行うこととしております。  製作方法につきましては、具体的な品質管理体制、製作方法が固まった時点で製作方法に関する説明書の提出を求めることとしております。  検査につきましては、安全上の重要度を考慮しながら、国による効果的な立会検査を実施するということにいたしております。  このような審査・検査の強化のために、顧問会に品質管理、分析の専門家を二名ずつ新たに加えて体制を整備したところでございます。  輸送容器の安全規制につきましては、このような充実強化をした審査・検査体制によりまして厳正に対処してまいる所存でございまして、これによって再発防止に万全を期したいというふうに考えております。
  83. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  ただちょっと心配になるのが、先日この原燃輸送株式会社から、データの改ざんがあった輸送容器について、中性子遮へい材の材料仕様値を新たに設定したり、また輸送容器に収納する使用済み燃料の総放射能量を制限するという内容の設計変更の申請を行っておりますね。  輸送容器のデータ改ざん問題が原子力安全確保に対する国民の信頼を大きく損なっているところから見ると、その問題のあった輸送容器をもう一度使うということについては慎重の上にも慎重でなければならないと思うんですが、科学技術庁はその原燃輸送株式会社の設計変更承認申請を認める考えかどうか、そこのところをお聞きいたしたいと思います。
  84. 間宮馨

    政府委員(間宮馨君) 原燃輸送は、先生今おっしゃいましたように、中性子遮へい材の材料仕様値を新たに設定するということとともに、以前の材料仕様値に対する遮へいの余裕度と同等の余裕度を維持するために、容器に収納する使用済み燃料の総放射能量を低減するという内容の設計変更承認の申請を当庁に対して行ったところでございます。  当庁といたしましては、先ほど申し上げましたような充実強化された審査・検査体制により、この申請について厳正に審査していくこととしております。
  85. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 一応そういうことで信用する以外にないわけですが、審査については万全を期して、そしてこのような問題が二度と発生しないようにぜひしていただきたいと思いますし、国の将来にかかわる大事な問題でありますので、データ改ざん問題の発生防止に向けて、ひとつ最後に大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。
  86. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 何といっても、情報をいち早く公開するということが必要であると思っております。そして、巨大科学ということでございますので、さまざまな問題を起こすことがございますので、そういうときにはいち早く国民にお伝えするということであります。  まず、現場において安全運転の実績を積み上げてほしいと思っておりますし、そのことに最善の努力を払いたいと思っています。それから、地域の方々との間では、地元重視の姿勢のもとで事業活動について誠実に対応することが何よりも大切だと思っております。  また、国といたしましても、政策決定過程の透明性を高めるために、国民各界各層から幅広く御意見を伺いたいと思い、原子力政策円卓会議を開催しておりますが、これをさらに続けていきたい。  それから、シンポジウム、フォーラム、説明会などの開催を行いまして、原子力施策に対する国民の信頼回復に積極的に取り組んでまいりたいと思っております。そのために、先ほど既に申し上げましたように、情報をいち早く公開する、わかりやすい情報を提供する、国民各界各層との一層の対話の促進を図るというふうなことの努力をいたしたいと思っております。
  87. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 科技庁への質問は以上で終わります。  次に、日の丸・君が代を国旗・国歌として法制化する論議が参議院予算委員会でにわかに活発になりました。この発端は、御承知のごとく広島県の世羅高校の石川校長先生の自殺がきっかけであります。改めて校長先生の御冥福をお祈りいたす次第でございます。  そこで、単刀直入にお聞きします。日の丸・君が代を国旗・国歌として法制化することについて文部大臣の御所見をお伺いします。
  88. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 国歌・国旗に対しましては、長年の慣行により日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確立し、広く国民の間にも定着しており、学校においても各教育委員会及び学校長の協力により定着が図られてきたと考えております。  今回、二十一世紀を迎えるに当たって、国旗・国歌についても成文法としてより明確に位置づけられることについて検討する時期に達したのではないかと考えられることなどから、国旗・国歌の法制化も含め検討に着手することになったものと承知いたしております。  いずれにいたしましても、国旗・国歌についての法制化を含めた検討は政府全体にかかわる事柄でありまして、今後、政府部内の検討に参画するなど、適切に対応してまいりたいと考えております。
  89. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 このたびの広島の問題も含めて、校長先生の自殺等について、県教委が職務命令を出したことについて問題があるのだというような報道も一部に出されておるわけでございますが、この職務命令についての文部省の立場、また全国的に職務命令を出した県は何県あるのか、その点についてもお伺いします。
  90. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 学校の管理運営上、教育委員会がどのような職務命令を出すか出さないかということは、現行法制上、挙げてそれぞれの教育委員会の責任と権限に預けられているところでございます。  今回の、広島県教育委員会が県立学校長に対しまして、卒業式におきまして国旗掲揚、国歌斉唱をきちっと行うようにという形での指導通知に加えまして、個別に職務命令を出したということについては、法令上いささかも問題があるとは思っていないところでございます。  一般的には、通知、通達という形で所管の校長全員に対して適切な指導をしていくということが通常でございまして、個別の個々具体の形での職務命令を発するということは、特別の管理上の事情がない限りはふだんはないわけでございまして、近年、国旗・国歌に関しまして校長に対して職務命令を発したということにつきましては、平成二年に沖縄県において出されたということを承知しているだけでございます。  しかしながら、通知、通達という形では、きちっと行うようにということは各都道府県教育委員会一般に見られるところでございまして、今回の卒業式におきましても、広島県を除きます五都府県におきまして具体的な指導通知を発しているというところでございます。  なおまた、個々の学校長が個々の職員に対してどのような職務命令を出すかということにつきましては、これはまた別でございまして、個々の学校状況によりまして、学校内の管理運営状況にかんがみまして、これは年間通じて相当程度あろうかと思っておるところでございます。
  91. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 世論調査でも、学校行事での日の丸の掲揚に賛成する人が七九%、反対がわずか一三%、それから君が代斉唱についても賛成が七五%、反対が一七%にすぎません。そういう意味では、事実上私は国民的なコンセンサスは既に成立していると思うわけでありますが、そういう職務命令を出さなければ実施できない環境をつくった教職員組合の職場の責任が大きいと私は思うんですが、全国での国旗掲揚、国歌斉唱の実態はどうなっているのか、そこの点についてお伺いいたしたいと思います。
  92. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 一番最近の実施状況でございますが、昨年春の卒業式、入学式の状況を申し上げますと、国旗掲揚につきましては小中高を通しまして九八%以上、国歌斉唱が八〇%以上の実施率になっているというところでございます。県によりましては一〇〇%実施という県が相当数あるわけでございますが、一部の県におきましては実施の状況が大変低い状況がある、こういう状況でございます。
  93. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 そこで、現在の学習指導要領では、特別活動の中で、「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と記されているわけでございますが、このたびもし法制化されるとすれば、学習指導要領の中での位置づけはどのようになるのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。
  94. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 国旗・国歌の法制化につきましては、先ほど大臣から御答弁がありましたように、これから政府内部において検討されるという状況でございますので、その点はそれとして、学習指導要領上の位置づけでございますが、各学校におきまして特別活動あるいは社会科の授業、音楽の授業等においてどのように国旗・国歌を指導していくかというその基準を定めます学習指導要領の位置づけ自体は、私は変える必要はないのではないか、こんなふうに思っておりまして、これまでと同様に指導をしていくというふうになろうかと思います。
  95. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 そうしますと、法制化されることと、今法制化されていないことと、法制化というのはどういうように解釈すればいいのか、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。
  96. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) これも私から御答弁するのは僣越かと思いますが、私が思っておりますのは、ただいまは、国旗・国歌につきましては、慣習法あるいは国民的確信と、長い年月においてそうした定着が図られているということで国旗・国歌としての位置づけになっているわけでございますけれども、法制化ということになりますと、先ほど大臣の答弁にございました成文法をもちまして、明文をもって根拠が与えられる、こんなふうに考えているところでございます。
  97. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 そうしますと、先ほどの御答弁では今までと扱いは変わらないということですが、では、現在の学習指導要領で国歌の君が代を斉唱する指導をする、それが小学校の一年から六年までの間の音楽の時間にどのように位置づけられているのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  98. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 小学校音楽におきましては、各学年におきまして国歌君が代の指導を行う、こういうふうに規定されているところでございます。
  99. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 まさに模範答弁でございますけれども、先ほどの小中学校で国旗は九八%、国歌が八〇%ということですが、私がつい最近中学校の卒業式に行きましてPTAの皆さん方にお聞きをいたしますと、ほとんどの生徒が歌っていない。そして知らない。それで、実際に学校で君が代の練習をしたことがない。歌詞も知らないんですね。  ですから、そういう意味では、学習指導要領で位置づけられておることが守られていないということで実際に今のような現象が起き、私は、慣習法で式で国歌君が代を強制すべきものではないと思っています。これは、歌いたくないものを無理に歌わせるというようなことではない。  ただ、法制化されたことによってはっきり学習指導要領で、今の国際社会の中において国旗がどのようにあるのかという国旗の大事さ、特に国際社会の中における相手の国の国旗を大事にするというような面であるとか、国歌ということで法制化された以上、子供たちに義務教育段階で私はやはり国歌をはっきり指導する義務があるというように思うんですが、その点についての御見解をお願いします。
  100. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) ただいま音楽の指導において学習指導要領上どうかということでお答えをいたしました。しかし、実際には行われていないという御指摘がありました。  この点は、入学式、卒業式におきまして国旗掲揚、国歌斉唱につきましても学習指導要領上は行うものとするとありながら、先ほど御指摘を受けましたような状況があるということ、つまり、ルールとしての規定と実態が乖離しているという状況があるということ、それは率直に認めざるを得ないと思います。そこで、私どもはさまざまな機会をとらえましてその趣旨の徹底に努めているというところでございます。  そこで、お尋ねでございますが、この国旗・国歌につきましては私ども、これからの国際社会に生きていく子供たちにとって基本的なマナー、国際的なマナーの一つとして、基礎的、基本的な事項の一つとして大切なことであろう、こういうふうに思います。  そして、社会科等におきましては、国旗・国歌というのはいずれの国にもあり、またそれぞれの国の象徴として大切にされていて、それをお互いに尊重し合うということが必要だと。そして我が国の場合には、長年の慣行によって、日の丸が国旗であり君が代が国歌であること等を指導するというふうになっているわけでございます。  そして、音楽につきましても、各学年を通じましてこれを行うということになっておりまして、この面は、法制化するしないということにかかわりませず、現行の学習指導要領下におきましても、その重要性にかんがみてこれをしっかり行うことになっているわけでございますので、私どもは、法制化は法制化でまた別の問題として、現行学習指導要領下におきましても努力をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  101. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 現行の指導要領ではっきりしておるということですが、現実には今度のようにそれぞれ各学校で問題が起きているわけです。  今まで、明治以来、大正、昭和とずっと歌ってきて、もう慣習法で本当に国民の中に定着しておったのが、あの悲惨な第二次世界大戦のために、私たちの国旗・国歌に対する伝統が一時曲げられたわけですね。  ですから、その曲げられたことに対して、今反対運動をしている人たちはそのことを大きく前面に出してやっておるんですが、法制化される以上、国旗・国歌に対するところの文部省の態度というものをもう少しはっきりお願いいたしたいというふうに思います。
  102. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) もう既に局長より御答弁申し上げたように、国旗・国歌につきましては、長年の慣行によって日の丸・君が代が国旗・国歌であるとの認識が確かになっておりますし、広く国民の間にも定着していると考えております。  これを踏まえまして、たびたび申し上げますように、学習指導要領においては、卒業式、入学式において「国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする。」と明記しており、既に大部分の学校においては国旗・国歌の適切な取り扱いが定着しているところでございます。  しかし、一部には、御指摘のように、日の丸が国旗であり君が代が国歌であるという成文法の規定が単にないという理由で反対しているところも見られます。  今回、二十一世紀を迎えるに当たりまして、国旗・国歌についても成文法としてより明確に位置づけることについて検討する時期に達したのではないかと考えられることなどから、国旗・国歌の法制化も含め検討に着手することになったものと承知しております。  したがって、法制化の影響をすべて予想することはできませんけれども、法制化がなされれば、国旗・国歌に対する正しい理解がさらに促進されるという点で意義があることと考えております。
  103. 仲道俊哉

    ○仲道俊哉君 以前反対しておった社会党の村山元総理も総理のときにはっきりこの国旗・国歌を認めたわけでございますし、今は世論が随分変わってきておりますので、この機会に文部省は自信を持って、学校教育だけでなくて、社会教育家庭教育、すべての面について国民的な一つの問題としてこれはぜひ取り上げていただきたいと思います。  最後に、心の教育ということが大臣所信表明演説でも出ました。私はこの点については非常に高く評価をいたすわけでございますが、どうも私は、現状のいじめなり校内暴力家庭崩壊、学級崩壊、いろいろな戦後の教育の負の面が出てきたというふうに思っております。よい面もあるわけですけれども、負の面が出てきておる。  この負の面は、戦後五十年のあらゆる面に、政治の世界もそれからいろいろな行政世界もすべて負の面が出てきておるわけですが、教育の一番の根本をなすのは教育基本法ですね、教育基本法が教育一つの憲法ですから。私も現場におるとき余りよく認識していなかったんですが、その教育基本法を今度改めて見ますと、大臣が言う心の教育の面がこの教育基本法に全然出ていないんですよ。先ほど本岡先生が人権のお話をされました。人権のことについては戦後随分いろいろと大事にして、教育の面ではなされた。しかし、心の教育というのがそういう面では一つも出ていない。  私は、ちょうど江戸時代から明治になるときの、先ほど寺子屋の話が出ましたが、たまたま調べてみましたら、教育勅語なんて古くさいというように思うのですが、この中に、「父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭倹己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ学ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓発シ」というような、大臣が言う心の教育の問題がこの中に出ているのです。  今さら私は教育勅語を復活しろなんというやぼなことは言いませんが、改めて教育基本法を見直して、そして今憲法の問題がいろいろと論議されておりますが、文部省としては、この教育基本法に対するところの改定の意思なり、またはそういう方向なり、そういうことのお考えがないか。本当は時間があれば読んでもらおうと思ったのですけれども、そういうことについて今後の所信をお願いして、質問を終わります。
  104. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 教育基本法第一条をよく見ますと、「教育の目的」として、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、」というふうに書いてあります。続いて「勤労と責任を重んじ、」、次いで「心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」と書かれております。この「心身ともに健康な国民」というところに私は心の教育が入っていると思っております。したがって、人間としての基本的な倫理観社会ルールを遵守することなど、心の教育に通ずる基本的な事柄は今申し上げました第一条の趣旨に含まれていると思っております。  しかしながら、教育基本法については制定後さまざまな議論がございます。道徳教育などの記述が具体的文言としてないという御意見があることはよく承知しております。これにつきましては、現行学習指導要領などにおいても相当程度具体的に定めているところでございまして、新しい学習指導要領においてもより一層の充実を図ったところでございます。  いずれにいたしましても、教育基本法の見直しの検討につきましては、戦後教育の基本として果たしてきた役割を踏まえ、さまざまな意見にも耳を傾けて、国民的な議論を積み重ねながら慎重に行っていくべきだと考えております。
  105. 馳浩

    ○馳浩君 長野オリンピックの招致にかかわる疑惑問題について質問いたします。  国際オリンピック委員会、IOCの要請を受けて調査が行われ、そしてIOCに提出をされた日本オリンピック委員会、JOCによる国際オリンピック委員会問題プロジェクトの報告書の内容についてお伺いいたします。
  106. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) お答えいたします。  JOCは、プロジェクトチームの会議におきまして取りまとめました回答を二月十五日にIOCに送付をいたしました。  その内容は、本人もしくは家族等の長野訪問について、IOCの示しましたガイドラインに照らして不適切な行為のあった者ということで、複数回の訪問者が一名、三人以上の多人数での訪問に係る者が四名、本人の家族や友人のみでの訪問に係る者が四名、計九名いたということ。それから、日本画や日本刀が作成者の好意により贈られたということ。そして、エージェントの活用につきましては、情報収集及びその分析の目的でスタジオ6と契約、報酬は三十万スイス・フランで、長野に決定した場合の追加分として十五万スイス・フランの合計四十五万スイス・フランであったということが報告として行われたというふうに承知をいたしております。
  107. 馳浩

    ○馳浩君 事前に私もこういう質問をしますということでいただいた資料は一枚紙のものしかないので、もうちょっときちんとした報告書の内容を提出してくださるようにまず要請をいたします。  それから、IOCのガイドラインに基づいての調査内容ということでありますが、例えばこういうことが書いてあるので、二点だけでもちょっと読み上げさせていただきますが、「オリンピック大会開催立候補都市への費用に関る制限」というのがありまして、例えば「レセプション」。  立候補都市は、オリンピックの会議の機会に、カクテルパーティー、ビュッフェ、朝食、昼食、夕食あるいはその他宴会などのいかなる集団のレセプションを運営することを差し控えるものとする。また、オリンピックの会議の機会に、第三者により運営され、またいかなる方法によっても、立候補に関連するレセプション、又はその他の同じようなイベントに参加しないものとする。 こういうIOCの内規があると。これに照らし合わせての調査要請であり報告であったと思います。  あるいは、「プレゼント、贈り物、その他IOC委員への特権」というふうに、これはベネフィッツという英文でありますが、  立候補都市または、立候補都市や自分の利益のために活動する代理の第三者は、IOC委員及び、彼らの親族・親戚・同行者に対し、一人につき合計US$二〇〇(その他の貨幣で同価値のもの)を超えないお土産あるいは小さなプレゼントを除き、贈り物や直接的あるいは間接的な特権を与えることが禁止されている。 というふうになっております。  この二つのガイドラインに照らし合わせても、例えば長野オリンピックが決定したバーミンガムでのIOC会議の直前に日本が大きなイギリス元首相官邸をお借りして開いたパーティーであるとか、あるいは刀を贈ったとか日本画を贈ったとかいう問題は明らかに、違反というのは法規に照らし合わせての違反ですから、明らかに倫理上問題があるというふうに考えられてしかるべきだと思いますが、その点いかがお考えですか。
  108. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) 今委員がお読みになりましたのは一九九〇年版、一九九〇年に守るべき基準ということで出されておりまして、今読み上げましたような部分について、やはりバーミンガムでの問題などはこれに当たるだろうというふうに私も思っておりますが、いずれにしましても、こういった点についてもJOCの方で今調査をしておりますので、それを見守っておるという状況でございます。
  109. 馳浩

    ○馳浩君 当たるだろうじゃないです。当たるんです。刀にしても当たるんです。こういうことがあったという事実はあるわけですから、そういうことがあったということをひとつ十分しっかり受けとめていただきたいということが私の質問の趣旨なんです。  それで、先ほどの報告書の内容について三点ほど質問を続けますが、長野オリンピック招致委員会の会計帳簿の焼却問題について継続調査になっておりますが、なぜ継続となったのか。いつごろ調査報告ができて、どんな継続調査をするのか。より詳しい調査活動がなければ継続の意味がないと思いますが、いかがでしょうか。さらに、疑惑対象のIOC委員の人数は九人という報告書のことですが、長野からの報告では単純にIOCのガイドライン違反の疑いがある委員が十三人だったはずであり、なぜ九人に減ったのか。関連して、疑惑委員の氏名はこの報告書には記載されているのでしょうか。また、なぜその氏名を公表しなかったのか。お願いします。
  110. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) 会計帳簿の焼却の問題でございますけれども、JOCのプロジェクトチームは長野において当時の担当者から聞き取りを行いまして、会計帳簿の処分についての事実確認を行ったところでございます。  ただ、今後さらにその事実関係について確認するため、JOCの方においては裁判所に対して経緯の確認を行っていくというふうに伺っております。  それから二点目の、疑惑対象のIOC委員が九人に減ったではないかという部分でございますが、JOCは長野におけるヒアリング等の調査をもとに検討を行いました結果、本人もしくは家族等の長野訪問について、IOCの示したガイドラインに照らして不適切な行為があったという委員は九名であるというふうに判断をいたしましてIOCに回答したわけでございますが、この報告の中で、IFの仕事等での訪問及び現段階では確たる説明がなく事実確認ができなかった委員については報告の対象外としたというふうに書かれておると承知しております。  それから、疑惑委員の氏名を公表しない理由いかんということでございますが、今回の回答により指摘したIOCの委員に対しどのような対応をとるのかという判断はIOCがその権限と責任により行うものでございます。IOCに対しては氏名を明示してJOCとしては回答しておりますが、JOCとして個々の委員の氏名について公表はしないというふうに聞いております。
  111. 馳浩

    ○馳浩君 会計帳簿の焼却問題は継続調査でありますので改めて報告をいただきたいと思いますが、なぜ焼却しなければならなかったのか、やはりこれが一番の国民の関心でありますので、この点についての十分な調査をお願いしたいと思います。  次に、根本的な問題は、この調査メンバーがJOCの理事六人なんですね、八木座長のもとの。これはある意味では、JOCが長野オリンピック招致委員会に対して、頑張れよ、こういうこともああいうこともやりなさいよと言いながら、それに基づいて長野オリンピック招致委員会は頑張った、にもかかわらず何でJOCがおれたちのことを調べるんだと。これはどう考えてもおかしいわけでありまして、どうして外部の第三者による調査機関を設定してできなかったのか。なぜですか。
  112. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) オリンピック招致に関することにつきましては、立候補した都市がまず主体的に対応すべきものでございます。  国際オリンピック委員会から発出されたオリンピック招致活動に関する質問書は、日本オリンピック委員会に対するものでございました。そこでJOCの方は、我が国の国内オリンピック委員会として長野に出向きましてヒアリングを行うなど、事実の客観的な把握ができる書類が乏しい中、しかも七年以上の時間が経過しているという状況、それから限られた時間、二月十五日までという限度がございましたのでそういった時間において、しかも特別な権限がないという中で調査を行いまして、IOCに十五日に回答をいたしたわけでございます。  しかしながら、JOCといたしましても、IOCへの回答で調査を終了するものではなく、現在でも調査を進めているという状況でございます。その進展を見まして、場合によっては第三者の活用についての検討を行うというふうにJOCとしても考えておりまして、文部省としてはこのJOCにおける調査の今後の推移を見守っていきたいというふうに考えております。
  113. 馳浩

    ○馳浩君 余りにも、国としてというか文部省として、この問題の疑惑解明に対する姿勢が及び腰であるというふうに指摘をします。  なぜなんですかということになるんですが、その点は後でまた局長にもお伺いしたいんですけれども、大臣にお伺いしたいのはこういう観点からです。  文部省はJOCに対しても補助金を出しておりますし、そのJOCが長野オリンピック招致委員会を指導して招致委員会が運営をされて、結果としてこういう疑惑が出て指摘をされて疑惑追及に入ったということでありますが、この問題について私としては、やはり国として積極的に疑惑解明についての明確な態度を打ち出していただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。
  114. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 先ほど既に遠藤局長がお返事申し上げましたように、オリンピック招致というものは立候補した都市がまず主体的に行う、したがいまして、長野オリンピックの招致活動も、長野市や長野県を中心として組織された任意団体である長野冬季オリンピック招致委員会が中心になって行ったものでございます。  文部省といたしましては、オリンピック競技大会の開催が国際親善、スポーツの振興等に大きな意義を有するものでありますから招致委員会の活動に関し協力は行ってまいりましたが、任意団体である招致委員会に対しては、文部省指導等の権限は及ばないところでございます。したがって、基本的には、招致活動を行い、開催都市となった地元の長野市、長野県において調査等対応をすべきものであると認識しているところでございます。  しかしながら、IOCからJOCに対して送付された質問書に対応してJOCにより調査が行われており、JOCとしては、さきのIOCへの回答で調査を終了するものではなく、そのほかの不適切な行為についても、範囲を広げ、引き続き調査を進めていく方針であると聞いております。  したがいまして、文部省といたしましては、このJOCの調査の進展、さらなる進展を見守りつつ、必要に応じてJOCに対して指導を行うなど、適切に対応してまいりたいと思っております。
  115. 馳浩

    ○馳浩君 今の大臣の御答弁の趣旨というのは、招致委員会は任意団体であり、招致については自治体の問題であるというふうな趣旨であると思いますので、これに関連してはまた次に質問させていただきますが、先ほどの報告書の問題でもう一点局長にお伺いしたいんです。  実は、招致が決まる直前に日本ライフル射撃協会の役員が行った長野オリンピック関係の招致活動で、招致ににかかった費用の会計処理が不十分であったという問題です。一体どういう問題で、どうなっているのかということをお聞きしたいと思います。  さらに、これは実はさきのIOC問題プロジェクトでも問題になったテーマで、調査結果は長野オリンピック招致委員会とは無関係の招致活動となったが、この招致活動に使われたとされる一千万円は何に使われたのか、あわせてお聞きしたいと思います。  つまり、ライフル射撃協会の会計処理として一千万円が処理されたそうでありますが、これと招致委員会との関係であるとか、その一千万円が一カ月の間に使われたということでありますが、何のために使われたのか。そして、ライフル射撃協会の予算でありますから、本来ならば協会に入っている選手たちの強化とか普及促進に使われるべき予算がオリンピック招致に使われたということであるならば、協会に加盟している人にすれば、自分たちの協会の予算が食い物にされたというふうに考えられても当然なんですね。  この問題に十分答えていただかなければ、それぞれの競技団体が国内にありますけれども、自分たちの協会の予算が十分透明性を持って使われておるのか、そしてそれを管理しておる役員はちゃんとやっているのか、こういう疑惑にまで発展してしまいますのでこの点を明らかにしておきたいと思いますが、いかがですか。
  116. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) お答えいたします。  社団法人の日本ライフル射撃協会では、平成三年に当時の副会長がアフリカ諸国のIOC委員に対して長野オリンピックの招致活動を行っております。そのときに約一千万円の経費を使ったということでございます。  文部省では、これに要した経費約一千万円につきまして、社団法人でございますので、公益法人として適正な経理処理が行われたかどうかという観点から、その経理処理の方法について状況の把握を行ったところでございます。  その結果、当該招致に要した経費につきましては、平成三年度の決算書中、対外競技交流費それから選手強化費という費目がございまして、そこに計上しているという回答を受けたわけでございます。そこに分けて計上していたということでございますが、特に選手強化費で会計上整理するということは、名前からして適切さを欠くものではなかったかというふうに考えておりまして、この点については、機会を見てこのことについて法人に対して話をしていこうかなというふうに考えております。  なお、その約一千万円でございますが、その経費の主な使途は旅費や宿泊費であるというふうに伺っておりまして、この点について、つまりIOCの委員のところを回って歩いたというその点についての招致活動としてどうであったかということにつきましてはJOCが調査をいたしておりまして、その結果、報告書に盛り込むべき事柄はなかったというふうに聞いております。
  117. 馳浩

    ○馳浩君 私の質問の答えに全くなっていないと申し上げたいと思います。  なぜそのライフル協会が長野オリンピックの招致に対して関与しなければならなかったのか、そのためにアフリカ諸国を回らなければならなかったのか、一カ月余りに一千万円も使わなければいけなかったのか、その会計処理も、なぜライフル協会の予算で、それも費目を充てて処理をしなければならなかったのかという問題であります。  恐らく、背景にはいろんな人間関係もあるのでありましょうし、アフリカ諸国に対する働きかけの人的な、この人が行った方がいいだろうというふうなことからの指示もあったのかもしれないけれども、それは全く長野オリンピック招致委員会とは関係なかったというふうにしてその調査問題プロジェクトチームが関与し、それ以上突っ込まないというのは私はちょっと理解できないんですけれども、改めて答弁を要求します。
  118. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) その点につきまして私どもも伺ったわけなんですが、一つはオリンピックムーブメントの推進、JOCの加盟団体でございますから、オリンピックムーブメントをみんなで推進しましょうというその一翼を担っているわけでございますから、そういった観点から一つあります。  それから、このライフル協会自体といたしましても、バイアスロンがライフル射撃と関係が深く、冬季五輪の招致はライフル射撃の普及振興に寄与するんだという説明を受けております。
  119. 馳浩

    ○馳浩君 それは別に何もライフル射撃協会だけじゃなくて、ほかの関与する競技団体の協会にも要請したり働きかけを強めてもらえばいい問題であって、このライフル射撃協会の問題は、内部で処理されたという不透明な部分があるということを改めて指摘させていただきまして、次の質問に移ります。  先ほど大臣に御答弁いただきましたように、招致委員会が任意団体であり、招致については自治体の問題であるということであります。ならば、長野オリンピックの後に、やはり我々日本のスポーツ界としましては、二〇〇八年夏季オリンピックに大阪が名乗りを上げておるわけでありますが、大阪のオリンピック招致委員会、これ今現在は任意団体のままですね。任意団体のままであるならば、また同じような問題が起きても同じような文部省側の答弁で終わるんですよ。同じことの繰り返しをするわけにはいかないわけですよね。  実は私、長野オリンピックの疑惑については、深く追及しても、実際にあったことが出てきても、それについて法的な罰則も別にないわけでもありますし、モラルの問題として次にそういうことのないようにしましょうというふうな国民的な合意を得る必要があると思うのですが、二度と同じ過ちを繰り返してはいけないと思っております。  大阪オリンピックの招致委員会に対しては、国としてどのような指導あるいは関与をしていただけますかということを聞きたいと思います。
  120. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まず最初に、長野オリンピックは大変残念であったと思います。せっかくあれだけすばらしい演技が見られたにもかかわらず、こういう不祥事件があったということを大変残念に思っております。オリンピックの招致活動というのは、スポーツに係る事柄でございまして、あくまでもフェアプレーで正々堂々と行われるべきものと考えております。  今の御質問にお答えをいたしますが、まずIOC自体が、これからのオリンピック開催地決定方法の見直しやIOC自体の中の倫理の確立について現在検討が進んでいるところでございます。一方、JOCとしても、今回の調査において、今後の健全な招致活動に向けて対応の参考となる方策等についても検討しているものと聞いております。  文部省といたしましては、大阪オリンピック招致委員会が今後行う招致活動についても、IOCの検討の動向やJOCの検討結果を十分に踏まえた上で、適切に推進されるよう必要に応じてアドバイスを行う、そういうことをしながら対応してまいりたいと思っております。そこで適切な方針をとりたいと思っております。
  121. 馳浩

    ○馳浩君 ということで、大阪オリンピックの招致に向けてというのは、実は私のきょうの質問の主眼でありますので、新たに提言を三つほどさせていただきますので、どうお考えかお聞きしたいと思います。  まず第一には、招致委員会は任意団体ではなくて、特別法に基づく認可法人か、民法第三十四条に基づく公益法人として文部省の許可が必要とすべきであると考えます。その理由は、認可や許可をした責任上、文部省に招致委員会に対する監督責任が生じるからであります。そうすれば、会計帳簿の焼失などによる紛失は認可や許可の段階で事前に防止できるわけであり、招致活動の透明性が確保できると考えます。ちなみに、この招致委員会の母体であると明記されている長野オリンピック冬季競技大会組織委員会は公益財団法人だからであります。大阪のオリンピック招致委員会は今現在任意団体のままでありますが、法人として今からでもできないのでしょうかという一つの提言であります。  二つ目は、やはり招致活動の段階から第三者機関である倫理委員会というものを設けて、適正に招致委員会が活動するように今からでも倫理委員会を設けて、IOCのガイドラインに基づいて適正に招致活動を行えるようにこういう機関をつくるべきでないかというのが二つ目の提言であります。  三つ目は、内閣が出す招致活動に対する閣議了解の際に、招致活動がこのIOCのガイドライン等に違反しないように公明正大かつ適切に行われるようにする、そういう条件的な一文をこの閣議了解の際に挿入させるべきと考えますが、以上三点を私の提言として申し上げさせていただきたいと思います。  招致委員会を法人化するという問題と、倫理委員会を新たに設置するという問題と、閣議了解の際に一文を挿入して、国としても十分この招致活動に責任を持つというふうな一文を入れるという点、答弁は分けても結構ですので、お願いいたします。
  122. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) それでは私の方からは、認可法人か公益法人として文部省が認可すべきと考えるがどうか、大阪招致の方もどうかという点についてお答えいたします。  招致委員会をどういった形態、組織とするのかということは、まず、招致活動の中心となります開催都市あるいは招致委員会自身において検討されるべき問題であるというふうに基本的には考えております。  また、この大阪オリンピック招致委員会につきましては、その公益法人化に関して大阪市や招致委員会内部において現在検討が行われているというふうに認識をしておりまして、文部省としては、その大阪の意向というものを尊重して、適切に対処していきたいというふうに考えております。
  123. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 倫理委員会についてまず申し上げます。  先ほどから申し上げておりますように、現在、IOC自体が今後どうしていくかを検討しておりますし、JOCでもどういうふうに招致していくかということを今検討しております。  そこで文部省といたしましては、国際的な動向も踏まえた上で、JOCの検討が今後の我が国における各種国際大会の招致活動のあり方を指し示したものになるよう期待をいたしております。必要に応じてJOCに対して指導を行うなど、適切に対応してまいりたいと思います。  御指摘の倫理委員会でございますが、これを設置することについて、文部大臣の諮問機関としては設置できないと思うんですね。しかし、一つの考えであると私は考えております。どこに置くかということはまた考えなきゃいけないんですが、文部大臣の下に置くということはちょっと不適切かと思っております。  さて、条件的な一文を挿入できるかどうかということでございますが、御提案のような一文を挿入することにつきましては、IOCがガイドラインを定めた場合、これを遵守して招致活動を行うことは、閣議了解において言及することもなく当然のことであると考えております。なお、大阪オリンピック招致委員会では、正々堂々かつクリーンに招致活動を推進すると宣言したと聞いておりますし、これにのっとって招致活動を行うことにしているところでございます。  したがいまして、この精神が本当に生かされるということを前提にする限りにおいて、私は今のところ条件的一文はなくてもいいのかなと考えております。
  124. 馳浩

    ○馳浩君 最後に局長にもう一度お伺いしますが、大阪オリンピック招致委員会から今からでも公益法人として組織を整え直すというふうな要請があるならば、別にそれは構わないということですね。
  125. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、大阪市の方がそういう意向を持っておられるということであれば、私どもとしてはそれを尊重して前向きに対応したいと思っております。
  126. 馳浩

    ○馳浩君 今回の国内の問題もそうですし、これを踏んまえて、IOCの改革についてももっと日本としても提言を積極的に出していただきたい。私もオリンピック選手の端くれでもありますし、この委員会にも何名もオリンピックに関与する国際的な選手もおります。サッカーくじ法案も通りましたけれども、こういう問題ばかりでなくて、日本がオリンピックムーブメントに対していかに関与していくかという問題というのはもうちょっと積極的に発信していただかないといけない。  これは恐らく、国内的に騒ぎ過ぎると大阪オリンピックの招致に影響が出るのではないか、IOCの心象を損ねるのではないかというふうな思惑が見え隠れするのでありますが、私は逆だと思いますので、特に大阪オリンピックの招致委員会についてはより一層の透明性を持って、クリーンで公明正大、そうすればどこにも負けないようなオリンピックを開催できる能力があり意味があるということを私は発信していただきたいと思います。  IOC改革につきましても、アメリカのオリンピック委員会などはいろいろ提言を出しておりますが、もっと日本も積極的に提言を出すようにしていただきたいという要望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  127. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ─────・─────    午後二時九分開会
  128. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、筆坂秀世君が委員辞任され、その補欠として林紀子君が選任されました。     ─────────────
  129. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 休憩前に引き続き、教育文化学術及び科学技術に関する調査のうち、文教行政基本施策に関する件及び科学技術振興のための基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  130. 松あきら

    ○松あきら君 公明党の松あきらでございます。  大臣、お昼も召し上がらなかったようで、本当に御苦労さまでございます。引き続きましてよろしくお願い申し上げます。  私は、まずアメラジアン問題について文部大臣にお伺いをしたいと思います。  沖縄にもう一つの沖縄問題があるというふうに言われております。それはアメラジアンと呼ばれております子供たちのことでございます。これは主に米軍人と地元の女性との間に生まれた子供たちでございます。  母親の多くは、将来のことを考えて日本語と英語と二カ国語の教育を望んでいるわけでございますけれども、二カ国語どころか、養育費や学歴保障の問題など、必要な教育が保障されていないというのが現状であると思います。例えば、子供たちはふだん米軍基地の学校へ通っているわけですね。ところが、お父さんが軍を退役する、あるいは本国へ帰る、いろんな事情で。そうすると、もう次の日から学校に行かれなくなる。もし来るのなら年間で百六十万円払いなさいよと。それまではもちろんただで基地内のアメリカンスクールに通わしてくれているんですけれども、非常に厳しくて、次の日からもう即刻だめですと言われるそうでございます。そこで、それでは公立の小学校とか中学校へ通いたいな、行こうかなと思うと、既に学籍簿から外されて通えないというんですね。そういう現実が起こっているわけでございます。  こうした中、半年前に自主運営のアメラジアンスクール・イン・オキナワという学校が開設をされました。こうしたスクールに通える子供たちはまだごく限られた少人数の子供たちなんですけれども。また、こういう話があるんですね、ここに通うようになったら学籍を外されたという例もあるわけで、実は十七人中、二重国籍があって今のところ学籍をそのまま残してくれているのは一人だということなんですけれども、今、少し改善されたかもしれませんけれども、こんな状態なわけでございます。中には学齢期を過ぎたまま中卒の資格もなくて就職すらできない子供がいる、そういうふうにも聞いているわけでございます。  まず、こういった子供たちがどれぐらいいるのか、実態調査に至急乗り出していただきたいというふうに思いますけれども、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  131. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 沖縄県におけるいわゆるアメラジアン、日米の重国籍者でございますが、の子供たちについては教育上さまざまな課題があると受けとめております。先日もアメラジアンに関係しておられる方々にお目にかかりました。  沖縄県における実態については、県教育委員会において昨年五月に調査を行ったところ、百七十名が米軍基地内等の教育施設に就学しているようであるとの結果が出たということを承知しております。なお、重国籍者の正確な実態調査につきましては、個人のプライバシー保護等の問題もあり困難な面がございますが、沖縄県としてはこの点にも配慮しながら公立小中学校における重国籍者数の調査の可能性等も検討中と聞いているところでございます。
  132. 松あきら

    ○松あきら君 私は、文部省が県の教育委員会の報告だけを聞く、あるいはそれで満足している、現在までに当事者たちからきちんとした話を聞く聞き取り等の現地調査を実施していない、ここに大きな問題があるのではないかというふうに思います。  アメラジアンの子供たちの数は約三千人というふうに聞いておりますけれども、今現在、いろんなことで高校生等の不登校が問題になっておりまして、フリースクールも数できております。そのフリースクールには今民間指導施設としての許可が出ているわけですね。このアメラジアンスクールは、そういったフリースクールに適用されている本来認可してよいことが認可されず、しかも、そうなると当然のように卒業資格ももちろんないわけで、こういうことでは本当にお気の毒だなと。しかも、公立学校にある学籍を抹消していた、こういうことなんですね。これ、訴えられておりますけれども、どのような措置がされたのでございましょうか。
  133. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 県の教育委員会を通しましてこの実情について伺っておりますが、今の学籍の抹消ということにつきましてはこのように理解をいたしております。  先ほど大臣からも答弁がありましたように、この子供たちは二重国籍、二つの国籍を持ってございます。日本人として見ますと小中学校への就学義務がかかる、米国人等ということでありますればその問題はないということもございまして、教育委員会等におきましても若干扱いにおいて混乱等もあったようでございますが、就学義務の猶予・免除を受ける、そういたしますと当然小中学校への就学義務がなくなるということで指導要録が作成されない、これも学籍がないということのあらわれとしてあらわれている一つの事情のようでございます。  それからもう一つは、就学義務の猶予・免除を受けないまま、したがって、本来でありますと、日本国籍という観点から見ますと小中学校への就学義務を負いながら、その場合でも指導要録が作成されないという状況があった、これも二つ目のケースでございます。  いずれにしろ、この子供たち日本の小中学校におりませんで、先ほど先生からのお話もございましたように、基地内の学校やあるいはアメラジアンスクール等に行っているという状況もあったかと思いますけれども、そういった状況等もございまして、今のような就学義務猶予・免除の扱い、それから指導要録の扱いにおきまして、それが記載されないあるいは手続がとられていない、こういうふうな状況があったことは事実でございます。  ただ、保護者等からの御指摘、その他の御指摘もございまして、市の教育委員会におきましては、正しい手続と申しましょうか、回復措置をほとんど講じているというふうに伺っておりますけれども、なお詳細につきましてさらに私ども詳しく聞いてみたい、こんなふうに思っております。
  134. 松あきら

    ○松あきら君 今の就学義務猶予・免除ですけれども、非常にこれが実は大きくはだかっているわけで、沖縄に関しましてはこれを外していただきたいということがすごく声が大きいんですよ。というのは、七歳ぐらいでこれを適用されると、そうするともうそこで、あなたはもう日本国籍なくなりますから学籍は関係ありませんと、こういうふうなことが適用されてしまうんですね。  これは国際法上から見ても非常に問題があるのではないかと私は思うわけでございまして、こういうことをしっかりと沖縄という点に関しましてもう一度見直していただかないと、決まりですからこうですということばっかり言っていたのでは何の解決にもならないと私は思うわけですね。  とにかく、例えば二重国籍としたとしても、日本国籍もあるわけですから、本来、日本人として当然のサポートがあるべきだと思うわけですね。それが非常に私は大きな問題だというふうに思っております。  本岡先生も午前中に質問されておりましたけれども、私も、前の委員会で神奈川県の横浜中華学院、これも国立大学の受験を認めるように要請いたしました。先ほどどなたでしたか、御答弁の中で、不合理の差別ならだめ、合理的な区別ならいいみたいなことをおっしゃいましたけれども、何か考えられない、私はこれはいかにもお役所的な発想だなと。その中華学院の場合も一条校だからだめということなんですけれども、このアメラジアンスクール・イン・オキナワもやっぱりこういう本当に大きな障害があるわけでございます。もう一つの沖縄の問題と申し上げたのは、やっぱりそういうことをきちんと認識していただきたいと思うわけですね。  今現在、日本の国内で在日外国人には、一定の基準を満たした外国人学校の卒業生には公立高校の受験資格を与えておりますけれども、このアメラジアンを想定したものは全然ないわけでございます。国や地方自治体は、二重国籍を持つアメラジアンの子供たちには二つの母国語による教育の選択を整えてあげる必要も私はあると思いますけれども、これについてもいかがでございましょうか。
  135. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) ただいまの御指摘でございますけれども、アメラジアンの子供たちにつきましては、ちょっとお話しさせていただきたいと思いますが、日本人としての就学義務がかぶるかぶらない、同時に、そうでない場合につきましてはその問題がないということを先ほど申し上げました。それにつきましては私ども、この制度保護者なり子供たちの選択にゆだねながら、どういう形で学校教育に進んでいくかということにつきましては、その選択の余地を当人に与えているということでございますので、柔軟な対応がその限りではできるような仕組みになっておりますことをまず補足させていただきたいと思います。  それで、今のお尋ねでございますけれども、いわゆる外国人学校卒業生に対します公立高校受験資格につきましての詳細につき私どもは承知いたしていないわけでございますけれども、このアメラジアンスクールにつきましては、いわゆる民間教育施設というふうに判断せざるを得ないと思います。  そういう子供たちにつきましてどういう形での高校受験資格があるかといいますと、この学校が、小中学校との連携のもとに、いわゆる出席扱いを可能とするそういう施設として運営されるかどうか。そういうことになりますれば、本籍のあります小中学校のサイドでその実態を評価して出席扱いをするということが一つございます。それは、中学校校長が卒業を認めるという形で次へのステップが開かれるわけでございます。  それからもう一つは、猶予・免除を受けてしまう、そしてそうした小中学校への籍というものを求めないという場合でございますが、その場合にはやはり一般のルールに従いまして中卒認定試験を受ける、それにパスすることによって高校受験資格が開かれる、どちらかの方途がこの子供たちにも開かれているというふうに私どもは理解をいたしております。
  136. 松あきら

    ○松あきら君 アメラジアンの子供たちが高校を受験するとなると、その受験資格が問われると。現実問題は、中学の卒業認定試験を受けなさい、こう言われるそうですけれども。  今、アメラジアンのスクールは民間の施設というふうにおっしゃいましたけれども、民間指導施設、フリースクールに相当するかどうかという基準を、それぞれに任せるんじゃなくて、やっぱりこれは文部省としてきちんとそれはこうですよというような指針を出してあげるべきだと私は思うんですね。沖縄ではもう認められませんよということなんですから、やっぱりそれはきちんと国で私はやるべきだと思うわけでございます。  しかし、例えば中学校の卒業認定試験、これを今すぐ受けなければ高校受験できないとしたならば、日本語だけでなくて、例えば外国語でも出題されるべきなんじゃないか。だって、このスクールは英語でやっているわけでございます。中学卒業認定試験は日本語で出題するという規定がありますか。
  137. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 明文の規定はございませんけれども、中卒認定試験と申しますのは、日本学校制度において中学校を卒業しなかった、そういった子供たち中学校卒業の資格を与えるということでございますので、日本語で出題されるというように扱われてきております。
  138. 松あきら

    ○松あきら君 では、もし両方の国籍を持っていて、今まで基地内のアメリカンスクールで過ごした、その後はこのスクールに入ったと、残りの時間は。ですから、日本語が余り得意でないから外国語で出題してくださいといったときには、出題しますか。
  139. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 先ほど申しましたように、この中卒認定試験と申しますのは日本学校制度下のものでございます。  日本学校教育というのは日本語で行われているわけでございますので、その卒業資格があるかないかということでございますので、やはりこの試験も日本語で行うことになるというふうに思われます。
  140. 松あきら

    ○松あきら君 アメラジアンのお父さんは一般に米兵の方が多いわけですね。そうすると、本国へ帰ってしまうと家族は遺棄をされてしまう、こういう方が非常に多いそうでございます。先ほど申しましたように、基地の中のアメリカンスクールに通うとすると年間百六十万円程度授業料が必要になると。養育費が途絶えて、教育費が要るとなると大変ですよ、これは。  日本と同じように米軍が駐留するドイツ初め十九カ国の場合、米国の各州との間で養育費支払いに関する相互協定が結ばれているわけでございます。米兵が帰国しても、軍に所属している限り米軍が給与を差し押さえるなどの方法で養育費の支払いに責任を持つ。そのほか、退役していた場合でも、アメリカの厚生省の責任で取り立てが行われております。また、無認知、内縁ですね、で生まれたお子さんであっても大丈夫であるそうでございます。米連邦政府と協定を結んでいる国は二カ国、アメリカ合衆国として協定を結んでいる国はアイルランドとスロバキア共和国、こういうふうにあるそうでございます。  外務省にお尋ねしますけれども、日本はこういう協定を結んでおりますでしょうか。
  141. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) お尋ねの協定は、現在我が国は米国もしくは米国の州との間で結んでおりません。
  142. 松あきら

    ○松あきら君 では、合衆国も各州も全然ないというわけですね。  日本はアメリカからのこの協定の締結の意向を断った経緯があると聞いております。そのおかげで、この方たちは相談するところがなくて困っているというわけですね。  外務省にお聞きします。協定の申し入れを断ったことはあるんでしょうか。
  143. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 一九九一年のことでございますが、このときには米国政府ではございませんで米国の中のバージニア州でございましたが、バージニア州の方から我が方の大使館に対しまして、児童扶養義務の執行にかかわります双務的協定と申しますか、双務的な枠組みということの設定の可能性について打診、照会がございました。この照会と申しますのは、我が国日本がアメリカとの間で、いわゆる相互主義、この問題に関しまして相互主義が成り立つような国内法制度を持っているかどうかという照会でございました。  外務省といたしましては、関係省庁に照会いたしまして、また協議をいたしました上、我が国日本におきましては、米国とこのような相互主義を満たすことができるような国内法、法制度というものが存在しない、つまり、外国との間で児童の扶養に関します共助を規定する米国と同様の国内法を有していないというのが現状であるということを米側に回答しました。そうしまして、そのような双務的な枠組みということを設定することは考えていない旨伝えたことがございます。これは一九九一年のことでございます。  その後、先生御承知のとおり、米国では一九九六年に連邦法ができまして、その結果、米国の連邦政府が米国の各州を代表いたしまして、外国との間でこの種の児童扶養義務の執行に関する双務的枠組みを設定することができるようになったわけでございますが、これまで米国連邦政府から我が国に対しまして、このような協定と申しますか、枠組みをつくりたいという申し入れがあったということはございません。
  144. 松あきら

    ○松あきら君 協定とは一体そもそも何か。  養育費を払わない父親は犯罪者ですとアメリカの方はおっしゃっているそうでございまして、アメリカだけじゃなくて日本でも本当にそれは申し上げたいところでございます。  今、オーストラリア、オーストリア、バミューダ、カナダ、チェコ共和国、フィジー、フィンランド、ドイツ、ハンガリー等と協定を結んでいるわけですね。やはりこれは協定がないと養育費も受けられない、非常に困るわけですよ。イギリスやドイツが協定を結んでいて何で日本が協定を結べないのか。私は、国内法がないからなんてとんでもないお答えは聞きたくないなというふうに思いますね。日本はそんな国なんですかと、正直言って。  今すごく文部大臣にうなずいていただいてありがたいんですけれども、やっぱり早急にこういう協定を結んでこういった方々の負担を軽くしてあげるべきであると私は思います。大臣の力強いうなずきのお言葉、ぜひ御決意をお聞きいたしたいと思います。
  145. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 先生指摘のような制度を米国が有しておることは申し上げているとおりでございます。その米国政府が外国と御指摘になりましたような協定を結ぶに当たりまして、一定の要件をその外国が満たさなければならないということでございます。  この当時から、一九九一年に打診がございましたときから日本関係省庁において検討をしていただいたわけでございますけれども、米国の求めております要件というものが、我が国の法制度がそれに合致するようなものになっていないというようなことでございました。  他方、厚生省によりますと、我が国の母子家庭と申しますのは、我が国国内に住所を有している限りその母や児童の国籍を問わず受けられるものであるということで、いわゆるアメラジアン家庭も一般の母子家庭もこの点においては要件は同じであるというふうに聞いております。  いずれにしましても、先生指摘のとおり、アメラジアンの問題は養育費の問題、教育の問題等いろいろたくさんの問題があるわけでございますので、外務省といたしましても、今後とも関係省庁と協議の上、鋭意いろんな協議、努力を行っていきたいと存じます。
  146. 松あきら

    ○松あきら君 そういう法制度がないのであれば、よきように変えるのが私は政府であるというふうに思います。  やはり私は、アメラジアンの方だけではないと思いますけれども、つまり沖縄の女性だけではないと思いますけれども、やはりこういう制度がきちんとあってほかの国はやっているのに、日本の国はやっていない。  別に日本で何かしてくれというのは全然ないんです。向こうがしっかりと、ナショナル・チャイルド・サポート・エンフォースメント・アソシエーションというところが養育費問題を扱っていて、きちんとDNA鑑定までしてくれちゃうんです、逃げている男性に対しては。きちんとそこまでやってくださってお金をちょうだいする。  やはりこれは大きな問題でありますから、私はぜひ有馬文部大臣の御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  147. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) さまざまな問題があるようでございますので、少し検討させていただきます。
  148. 松あきら

    ○松あきら君 何か、先ほどのうなずきとは打って変わってそっけないというかあっけないお答えでちょっと残念でございますけれども、大臣の立場では今それ以上はお答えになれないんだというふうに思いますけれども、やはりもう少し行政人間的な考えを持ってしていただきたいなというふうに心からお願いするわけでございます。  それでは次の質問に参ります。  大学生が、教員資格のための福祉施設、つまりボランティア体験を教員免許を取るために要るわけでございまして、これについてお伺いをしたいと思います。  今、教員免許を取得するに当たりまして、社会福祉施設での研修が義務づけられているわけでございます。これは平成十年度から必須になりまして、かなりたくさんの学生がこれを受けているというか、取るわけでございます。  教員免許を与える各大学は、免許を希望する学生から研修手数料一万円を御存じのように集めておりまして、各県の社会福祉施設経営者協議会へ費用として送っているわけです。東京都の場合ですと一日二千円で、五日ですから掛ける五ということで、そのほかは、なぜか五百円安くて千五百円。この五百円の差はコンピューターとかいろんな関係があるそうでございまして、ちょっと東京だけが高いそうでございますけれども、こういうふうになっているそうでございます。  まず、文部省はどのように研修が行われているか把握をしていらっしゃいますでしょうか。
  149. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 文部省といたしましては、本年度からの介護等体験の制度導入に際しまして、全国社会福祉協議会を初めといたしましてさまざまな団体とも調整をしてまいりまして、平成十年の八月には介護等体験の実施についてという学生用の手引書も全国の大学に配付いたしました。  また一方、特殊教育学校につきましては、その受け入れのために、全国特殊学校長会が盲・聾・養護学校における介護等体験ガイドブックというのを平成十年の三月に発行していただくなど、この啓蒙活動のためには万全の施策をとってきたところでございます。現在まだ正確な数値は私どもとしても把握しておりませんが、全国社会福祉協議会の方で現時点で把握しております平成十年度の受け入れ予定者数は、およそ一万人強と伺っているところでございます。
  150. 松あきら

    ○松あきら君 このボランティア体験、ボランティア実習そのものは非常に私もよきことであるというふうに思います。  しかし、これは実際問題、いろんな問題が出てきているわけでございます。一つは、教員免許を与える学校にとってこの研修の事務量が膨大だ、負担が物すごく大きいと言われているわけです。私が聞きましたある大学では、私大ですけれども、一年生で五百人から七百人ぐらいいて、ですから千五百人ぐらい動くのではないかということなんです、一つ大学ですけれども。とにかく、いろんな意味で負担が大きいわけです。そしてまた、その社会福祉事務所自体も実はいろんな意味で大変だということなんです。  やはり私は、各施設へ手配をする、こういうことも学校がやりなさいよといっても数が本当にふえて大変だと。こういう当然かかるお金に関しては国が費用を負担すべきであると私は思いますけれども、いかがでございましょうか。
  151. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 学生が教員免許を取得するためにどうしても介護等体験をしなければならない、それにかかる実費でございますので、将来の自分自身の生活そのものにかかわる経費ということでもございますので、現在のところ、国としてこの経費を負担するという考え方はございません。
  152. 松あきら

    ○松あきら君 何かちょっと聞いたところによりますと、文部省はとても困っていると。これはいいことなんだけれども、お金もかかるしいろんなところから文句も出るというのを聞いています。けれども、やっぱり私は、これはよきことのためでございますので、しっかりと検討していただきたいというふうに思います。これは放置していますと、本当に各大学もそれぞれの施設も大変な問題が起きてくるのではないかというふうに思います。  そしてまた、受け入れ先の施設から実は大きな問題があるのであると。なぜならば、基礎知識のない素人の学生がどやどややってきて、何でもかんでもできるわけじゃないそうなんです。素人的に言えば、ボランティアはとてもいいことだし、お手伝い、サポートできることはいいことなんですけれども、例えば、おむつの当て方一つでもやり方がきちんとある、その処置を間違うととんでもないことになる、これは直接福祉施設の方にも伺ったわけでございます。  やはりこういう実態を今から調査しておくべきだと思いますけれども、これについてはいかがでございましょうか。
  153. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 御指摘の点につきましては、法律の審議の過程でもさまざまな御議論がございました。  私ども、この法律ができました後の指導の手引あるいは通知等におきましても、介護等の体験の内容につきましては、各学生の実態あるいは受け入れ施設の実態等を考えまして、画一的なもの、あるいはかなり高度なもの、あるいは施設等でかなり手間暇かかるようなものに必ずしも限定するのではなく、学生の実態あるいは施設の実態等に即しまして、例えば施設におきます直接介護を要しないさまざまなお手伝い的仕事、そういったものも介護体験の内容に含めて実施するようにという形で指導しているわけでございますので、それはぜひそれぞれの大学等での事前の指導、あるいは受け入れ施設等におきまして十分その趣旨を、私どもも徹底してまいりたいと思いますけれども、受け入れていただいた上で適切な方法で実施していただくように今後とも努力してまいりたいと考えております。
  154. 松あきら

    ○松あきら君 ぜひよろしくお願いいたします。  ボランティアというのは、取らなければいけない必須というよりも、本来は自発的に行うものでありますけれども、やはり今はまだ日本学校等ではいろいろな難しい問題があるわけでございます。  うちの子供の話で恐縮なんですけれども、もう大学生ですけれども、うちの子供はイギリスの学校で中学、高校も過ごしました。これはボーディングスクールですけれども、月に一、二回は例えば近所のお年寄りにみんな学校に来ていただいて、マンツーマンで一日を過ごす。そうすると、あちらの学校ですから、一つの教室があって先生が移動するわけじゃなくて、教室を自分たちが移動したりする。そういう環境も違うんですけれども、マンツーマンの中で、例えばお昼なんかサンドイッチを食べながら、何で遠い日本から来たのみたいな話とか、非常にお年寄りを大事にする心が芽生える。そしてまた、時々は学校から近所の教会へ行ってバイオリンを弾く、そういうのが組まれていて聞いていただく、そういうようなボランティアというものがごく自然のうちに身につくように、やはり学校教育の中にも教育とは思えないような形で自然に入っているわけでございます。  ですから、ボランティア教育とか必須とかいうと、必須ではカリキュラムが多いからとても難しいとかいろんなことがあるわけですけれども、少し広く、少し引いて、俯瞰というんですか、遠くから見ていただいて、ボランティアというものをもう一度見直していただいて、子供たちにそれが定着できるような形をこれからも考えていただきたいというふうに思います。  次に参ります。次に高校中退問題についてお伺いをいたします。  残念なことに高校中退が十一万人と言われております。学校側が中退のアンケート調査をいたしましたら、進路変更が五一・九%、学校生活不適応、学業不適応が二一・三%。中途退学者自身が回答した退学理由は、学業不適応三七・四%、進路変更一五・三%、こういうことなんですね。  今、フリーターというような言葉がよくマスコミや放送等で躍っておりますけれども、フリーターフリーターと言って、安易にアルバイトができる、あるいは生活ができるということで高校をやめてしまっている子も実は多いのではないかなというふうに思います。もちろん、いろいろなプレッシャー等でもう嫌になってしまったということもあるんでしょうけれども、一つはそういうこともあるかなというふうに思います。  また、学校先生も、これからはこういう時代だから、例えば、勉強が嫌いでも君はこういういいところがあるから、こういうところを伸ばしたらどうかというふうにアドバイスできる先生がやっぱり少なくなっているのかなと。金八先生テレビではあるわけですけれども、やはり実際問題は少なくなっている。そういったところにも中退がふえ続ける原因があるのかなというふうに思います。  しかし、今、教員の平均年齢が実は四十二歳ぐらいになっているわけですね。少し前にNHKの教育テレビ先生方がいっぱい集まっていろんな討論をなさったときに、私はもう二十代のころからずっと一番下で、教員の中で年が若くて、その先生は四十二歳とおっしゃったかな、まだ今でも一番下なんですと。下が入らないというわけですね。あと十年たてば平均年齢五十歳代になるわけでございます。今の子供たちにとって、小学校中学校、高校、二十歳も三十歳も違っちゃったら原始人扱いされるんじゃないかと思うわけですね。  私は、三十代で教員を続けるかどうか先生自身に考えるチャンスと申しましょうか、教員の若年定年選択制、そういうものも考えるべきじゃないかなと。もうそこまで考えなければいけないんじゃないかなと。教員自身に教育的情熱や意欲というものを自己判定していただいて、本当に教員に適しているのかどうか、もう自分はついていかれなくなっちゃっているんじゃないか、そういうことを考えてもらう、こういう制度がぜひ必要だと思いますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  155. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 教員の年齢構成につきましては、必ずしも一概に論じるわけにはいかないと私ども思っております。  と申しますのは、今から十年ぐらい前までは新採教員が多過ぎて、若い人ばかりで教育ができないという声が現場の声という形で出てきたわけでございますけれども、それが十年いたしますと若い人が一人もいないと。しかし、実際問題、平均年齢が三十歳ないし四十歳というところでは、世の中でいいますと一番働き盛り、脂の乗り切った人たちがその学校の中核を占めているということでございますので、学校全体の教育力全体ということから見ますと、私は一概にそれ自身がいいとか悪いとかいうぐあいに割り切れるものではないだろうと思っているところでございます。  いずれにいたしましても、各都道府県におきまして、毎年の退職者と採用教員の推移というものにつきまして、もう少し採用の計画的な調整というものがあってしかるべきであったかなという反省はいたしているところでございますけれども、御指摘のような公立学校教員につきまして一定年齢で定年制を設けるということにつきましては、現行の地方公務員法あるいは公務員制度全体の中で極めて困難な課題だろうと思っております。
  156. 松あきら

    ○松あきら君 とにかく先生が、今御答弁がございましたけれども、ほとんどの学校がもう高年齢化しているということは事実でございまして、問題になっているわけでございますね。ですから、これをどうしたらいいかということをもう少し真剣に私は考えていただきたいなというふうに思います。  それから、進路指導もなかなかできないような、要するに学業ばかり教えられる先生ではやはり困ってしまうというふうに思うわけでございます。  そして、私は今フリーターのお話をしましたけれども、例えば、高校を中退して二十過ぎまでフリーターをしていたと、しかしはっと目覚めて、やっぱりこれじゃいけない、何か手に職をつけたいと思っても、資格としては中卒になってしまうわけですね、高校を中退していますから。専門学校へ行きたいなと思っても、今度は高校卒業の資格が要るわけです。そこに大きな問題が出てくるわけですね。  私は以前もこれを質問して、大検は大変じゃないというそのときの御答弁だった。とんでもないんですよ。きょうはちょっと本を持ってきていないんですけれども、すごいあれだけの試験を受けて、大検十一科目ですか、大変な専門的な勉強もしなきゃいけない。私なんかから見たら大検なんか全然わからないわというような世界ですけれども、この大検を受けることも難しいというのが現状なんですね。  やはり私は、要するに中途退学者でもみんな働く機会を与えるべきだと、平等に。そして、生涯学習ですからやっぱり復活のチャンスがあってしかるべきだというふうに思うわけですね。ですから、例えばそういう専門学校に入るための試験制度、大検ではなくてそういうための試験、高校卒業検定試験でもいいです、そういうものを私は大検と別に設けていただきたい。いかがでございましょうか。
  157. 富岡賢治

    政府委員(富岡賢治君) 先生からこの間御指摘いただいた点でございますけれども、現在でも高校中退者の進学の道を開くものとしまして御指摘の大検制度があるわけでございます。これは大学、短大それから専門学校への受験資格が与えられるものでございます。  その水準の問題でございますけれども、現在の大検の検定が、高校卒業で必要とされます八十単位の約半分の内容によって設定されているわけでございまして、内容としては非常にミニマムなものになっております。また試験問題につきましても、今先生からそういう御指摘もございましたけれども、高等学校で履修する内容の基本的なことを理解していれば合格するということを念頭に置いて作成しているところでございますが、さらにその点につきましては一層留意してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  新たに専門学校の入学資格認定制度導入するというようなことにつきましては、そういう意味でややダブりというようなこともございますので、なかなか難しいかなというふうに考えているところでございます。
  158. 松あきら

    ○松あきら君 今、基本的なことがわかっていればいいような大検の試験内容というふうにおっしゃったと私は受け取れたんですけれども、物すごいハイレベルですね。いや、私だけじゃないんですよ。きょう持ってこなかったのは非常に残念なんですけれども、隣近所の先生にお見せしたら、もう全然わからない、こんなに難しい試験なの、こんなにたくさん受けなきゃいけないのと。これは最高学府を出られた優秀な方たちにとってみれば非常に簡単な基本的なことなのかもわかりませんけれども、私のようにそうでない者にとっては非常に難しいというふうに思います。でも、私の周りの最高学府を出られた先生方でも難しいとおっしゃっているんですから、やっぱりこの辺の考え方が非常に現実に即していないわけですよ。  もう時間がないのでやめなきゃならないんですけれども、きょうの新聞で、優秀な大学生は三年卒業もオーケーと、こういうふうにある新聞に出ておりまして、私はこれはこれで非常に結構なことであると思います。ある種エリートを育てることも大事である。日本の国にとっては大事でありますし、否定をするものではございません。しかし私は、エリートを育てるのと同様に、やはり大勢の落ちこぼれの子供たちのこともしっかり考えて、そして本当に皆さんにそれぞれのチャンスを与える、そういう基本的なことをしっかりと忘れないで大臣にこれから頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。
  159. 林紀子

    林紀子君 不況が一段と深刻化し、子供たち学校納付金の滞納とか授業料の滞納などが次々とニュースになっております。  私は、昨年の本委員会でも私立高校生の授業料滞納と経済的理由による中退の問題を取り上げまして、中退の調査だけではなくて、ぜひとも授業料の滞納調査ができないか、授業料を払えずに退学に追い込まれる生徒たちを何とか救えないかということを御質問いたしました。そして、局長からはその調査検討するという約束をいただいたわけですが、これはその後どうなっておりますでしょうか。
  160. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 御指摘ございましたように、公私立高等学校における中途退学者の状況については、その理由を含めて毎年調査を行っておるところでございます。  授業料滞納者に係る調査につきましては、御指摘をいただきまして文部省といたしましても都道府県にも具体の問い合わせを行ったわけでございますが、各私立高等学校における授業料徴収の方法などが異なることもございまして、滞納期間のとらえ方や滞納理由の把握がなかなか難しいというふうなこともございまして、率直に申しますれば、授業料滞納者の状況を正確に把握することが非常に難しいというふうな状況にございます。その点、御理解をいただければと思っております。
  161. 林紀子

    林紀子君 把握が困難という話なんですけれども、私立高校の先生方の組合であります全国私立学校教職員組合、全国私教連というふうに略しておりますが、昨年の秋、三カ月以上の学費滞納調査というのに取り組んで、二十六都道府県ですが、百八十学園の状況というのを発表しております。それによりますと、対象の生徒は二十一万五百四十八名いるけれども、そのうち三カ月以上の滞納が二千九百八十六人であった。学校によっては、一二・一%、一割以上も三カ月滞納している生徒がいるという状況もあるということなんです。  ですから、このように、やろうと思えば実態把握というのは可能じゃないかと思うわけです。生徒たちも今アルバイトをいろいろやっている、しかしそれを自分のために使えないで、弟の給食費に回したとか、また定期代に使う、学費は半分アルバイト料で出しているというようなこともあるし、友達が学費が払えなくなって退学をしなくちゃいけなかったけれども、自分は、お金の問題なのでその友達に何にもしてあげることができなくて本当に悔しかった、こういうことを言っている生徒もいるわけです。ですから、授業料を払えなくてやめざるを得ないこうした子供たちを救うためにも、調査もしてほしいし、また文部省として何か対策を講じてほしい、このことをぜひお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  162. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) 滞納につきまして、一律の滞納期間を設定をした上で、その月数以上の滞納をしている生徒がどのくらいいるのかというふうな形での調査というのは、これは可能だろうと思っております。ただ、その滞納理由ということになりますとなかなか把握が困難でございまして、正確な実態把握に至るそういう調査が可能なのかということにつきましては、先ほど申しましたように、率直に申し上げて、都道府県においても必ずしも自信が持てないというふうなことでございますので、その点、御理解を賜ればと思っておるわけでございます。  不況などで私立高等学校等の生徒が授業料滞納から退学に至るというふうなケースということは極めて残念なわけでございます。そういった事態に対応すべく、育英奨学制度の中におきましては、家計状況が急変をし緊急に奨学金が必要となった者に対しましては、従来から無利子奨学金の中で年間を通じて随時応急採用をするという仕組みを設けておるところでございまして、これによりまして、経済的な理由で学業が続けられないというふうな事態が生じないよう対処しておるところでございまして、この制度の適切な運用を今後とも心がけてまいりたいと考えておるところでございます。
  163. 林紀子

    林紀子君 確かに奨学金というのがあるわけですけれども、これの十年度の枠ですけれども、私立高校生の奨学金の枠というのが一万二千三百人だというふうに伺いました。私立高校生というのは全国で百三十万人以上いるということですから、貸与率というのはわずか一%ということになるわけです。応急対応の実績というのも私拝見させていただきましたけれども、ことしの一月までに公立、私立の生徒合わせて百七十二人だということなんです。これではやっぱり今の大変な状況に対応できないんじゃないかと思うわけです。  都道府県でも、例えば京都などでは、現行の補助制度の補助率を拡大する、それから、前年度の所得で見るのではなくて、今年度の激減している親の所得、そこを見てそれに対応する、こういうような形で補助制度というのを拡充しているということなんです。  地方の財政というのも今大変な中にあります。こういう中でも地方は頑張っているわけですから、大臣所信で「修学上の経済的負担の軽減などを図る」というふうにおっしゃったのを私もこの場で聞かせていただきましたので、ぜひこれは私学助成とか奨学金、私学助成も確かに助かりますが、それは学校の方に行くわけですから、直接生徒を救うようなそういう措置を御検討いただけないでしょうか。
  164. 佐々木正峰

    政府委員佐々木正峰君) ただいま京都府の事例について御指摘をいただいたわけでございます。京都府が行っておりますような私立高等学校授業料減免事業費等補助金、この制度は現在すべての都道府県において実施をされておるわけでございます。すなわち、学校法人が授業料等の減免を行った場合には、その学校法人に対して都道府県が補助を行うという制度が全都道府県で行われておるわけでございます。  文部省では、各都道府県に対し、この制度をぜひ弾力的に運用するようにという指導を繰り返し行っておるところでございまして、それを受けて、都道府県の中には、所得基準を緩和するなど制度の見直しを京都府のように行っておるところもございます。文部省といたしましても、引き続きそのような指導を各都道府県に対して行ってまいりたいと考えておるところでございます。  なお、応急採用制度について御指摘がございました。確かに、応急採用制度の実績は御指摘いただいたように平成十年度で申しますと七百九十人となっておるわけでございますが、現下の厳しい状況というものを踏まえて、貸与基準についてはさらに大幅な緩和を図ってまいりたい。具体的には、勉学意欲があり、学業を修了できる見込みがあると学校長が認める者についてはすべて貸与の対象としてまいりたいと考えておるところでございまして、当該制度のより弾力的な運用というものを心がけ、十分な対応をしてまいりたいと考えてございます。
  165. 林紀子

    林紀子君 今、七百何人という数字を挙げられましたけれども、この応急対応、たしかそれは大学生も専門学校生徒も含めた数だというふうに思います。ぜひその応急対応もしていただきたいんですが、また各地方自治体に対してそういうことをちゃんとやれと督促もしていただきたいんです。やはり文部省としても国としてもそういう何らかの対応をしていただきたいということを大臣の方からお答えいただけますでしょうか。
  166. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今年度は確かに数が少ないのですが、来年度におきましては、さきの公党間の合意において約一万人規模の緊急採用奨学金制度を新たに設けることとされておるところでございまして、文部省といたしましてもこの合意を重く受けとめ誠実に実行してまいる所存でございます。ですから、緊急採用奨学金制度というのはかなり大幅にふやすことができると思っております。
  167. 林紀子

    林紀子君 奨学制度だけではなくて、ぜひ緊急貸与をお願いしたいということも重ねてお願いいたしまして、次の質問に移らせていただきます。  最近、私「五体不満足」という本を読みました。大変なベストセラーになっているわけですが、そこでは「障害は不便である。しかし、不幸ではない」というヘレン・ケラーの言葉が引用されておりました。この言葉が本物になるために何をしなければいけないのかということも非常に考えさせられました。  そこで、きょうはまず、医療ケアを必要とする子供たちの通学保障ということについてお伺いしたいと思います。  医療技術の進歩によって、重度の障害を持つ子供たちが次々と学校へ通うことができるようになりました。例えば、気管切開をした子供は、時間ごとにたんを吸引しなければ肺に詰まって命にかかわる。また、食事のかわりに管を入れて栄養をとるなどの医療ケアが必要な子供がいます。こうした重度で重複障害を持つ子供たちというのは、これまで保護者の方が学校に付き添ってケアをしなければならなかった。しかし、お母さんが病気になったり用事があって学校に行けないというときには、子供たちも即、欠席になってしまう。何とかお母さんや家族がやっている医療ケアを学校社会全体で保障して、子供たちの通学というのがちゃんとできるように、また、二十四時間体制で子供の世話をしている親の負担も軽減していこうという動きが今全国に広がっております。  文部省もこの問題につきましては平成十年度、十一年度の二カ年で実践研究に着手しているということを伺いましたが、こうした医療ケアを必要とする子供たちの通学保障の意義についてどういうふうに認識されているかというのをまずお聞きします。
  168. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 御承知のとおり、これまで小中学部のみでございましたいわゆる訪問教育も、試行的ではございますけれども高等部まで広げまして、今これを行っております。  先般公表いたしました高等学校学習指導要領あるいは盲・聾・養護学校学習指導要領におきましては、この高等部の訪問教育を明確に指導要領に位置づけるという形で、完全学校週五日制下での学校運営ではスタートをしたいというふうに考えているわけでございます。  では、これはなぜかということでございますけれども、小学校中学校、義務教育にとどまりませず、それを終えました後も勉学に励みたい、あるいは職業的な自立を目指そう、そういう子供たちにつきましてはさらに高等部に就学する機会を与えるということでございます。教育の機会をより豊かに与える、これが私どもの考えている視点というふうに言えようかと思います。
  169. 林紀子

    林紀子君 訪問教育もスタートをするということで、大変それは喜ばしいことなんですが、医療ケアをしながら学校に通うという子供たちの問題で、私も先日、いろいろ学校が工夫しながら医療ケアを行っている養護学校を東京都内とそれから兵庫県に行って見てみてまいりました。大変感激をいたしましたが、大変重度な子供でも、学校に来て生徒とまた先生と一緒に学ぶことがどんなにうれしいことなのか、その表情で私の方にも本当に伝わってきたわけですね。  現場で工夫なさっている方たちの声を聞きますと、学校に看護婦さんなどのスタッフが不足している。直接子供とかかわっている担当の先生が医療ケアの研修を受けて、お母さんが習得した技術、その子供に合ったケアを習得することがどうしても必要なんだけれども、研修体制というのがなかなか確立していない。先生研修に行ってしまうともう現場では人手不足になってしまう。教えてくれるお医者さんの方もボランティアでやっているものですから、きょうは緊急な手術が入ったからだめですよということになってしまう。ですから、学校に看護婦さんを配置する、教員研修体制を確立する、そして専門医、医療機関との連携をとる、現場ではこういう大きなたくさんの要望が出されております。  文部省としては、こうした声に耳を傾けて、全国の養護学校で医療ケアを行えるように、現場の実情に即したガイドラインを出してほしいという希望が大変強いわけですが、そのことについてはどういうふうにお考えになっていますでしょうか。
  170. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 私どもが把握しておりますそうした子供たちの数でございますけれども、なかなか正確な数は難しゅうございますけれども、現在、肢体不自由養護学校に在籍しております子供たちが一万八千名余ございます。その中には、病院の中の学校に行っている子供たち、あるいは併設の子供たち等々ございまして、現実にも、医療機関との連携のもとに学校運営が行われているような学校があるわけでございます。  そうした子供たちをのけまして、大づかみな数でございますけれども、一割くらい。ですから、二千名くらいの子供たちが単独の学校において今、保護者のお力をかりるとか、あるいは養護教諭さんの中でも看護婦の資格を持った方が対応するとか、さまざまな各学校での工夫によって今先生からの御指摘の対応をされているというふうに聞いております。  そこで、問題でございますけれども、この問題は一つ医療行為とのかかわりがございます。したがいまして、ただ研修で対応できるにも限界があるわけでございます。  そういうことで、先ほど先生冒頭に紹介していただきました、私ども、十年、十一年度と二年間にわたって、医療機関と教育機関とのそういった関係をどういうふうにしていくのかと。一律にはなかなかこうだと言うのが難しゅうございます。そこで、まず実践的な研究をしてみようということでございます。それを受けまして、どのくらい私どもが一律的なガイドラインというものができるものかどうか、こうしたものも含めまして、医療との連携のあり方、これにつきましては研究をしていきたい。今現にやっておるわけでございますので、その研究を待ちたいというふうに思っております。
  171. 林紀子

    林紀子君 もう現場ではこの対応が迫られているわけですので、二年間ということがあるわけですけれども、きちんとしたものを出していただけたらと思うわけです。  次にお伺いしたいのは、全国の盲学校、聾学校、養護学校九百校のうち三分の一に寄宿舎というものがある。ここでも学校の老朽化とか加配されていないで職員の方が少ないとかいろいろ問題があるわけですけれども、実はきょうは、寮母という名前についてなんです。  寮母というとだれでも女の人を思うと思うんですけれども、実際にはこの寮母さんに男性が約七百人いる、全体の一四%を占めているということなんですね。寄宿舎には思春期や成人を迎える男子生徒も多いわけですから、入浴とか排せつの世話とか、どうしても男性の寮母さんが必要なわけですね。この寮母という名前を何とか変えてもらえないものか。  学校教育法上は寮母とうたわれているわけですが、今、保母さんが保育士になりましたし、男女機会均等法の改正で、女性のみ、男性のみの名称というのも次々と変えられているわけですね。ですから、これをぜひ早く変えていただきたい。  この寮母さんの仕事というのはまさに、生活の世話をするだけではなくて、放課後の生活を組み立てるとか、生活リズムを確立する教育であり福祉でありという重要な役割を担っているし、教員免許を持った方がたくさんいるということなんですね。ですから、この名前というのを、ぜひ現場の人たちにも聞いていただいて、例えば寄宿舎教員というようなのはどうだろうということも出ているんですが、この名前を早急に改正していただきたいということを最後にお願いしたいと思います。
  172. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) これも長い歴史といいましょうか沿革を持った職名でございますが、児童生徒の日常生活の世話等を中心といたしますその就業の実態を踏まえながらの職名だと思います。これは法律に定められております。  私どもも、男性の寮母さんがふえつつあるという中で、名称の問題につきましてどうあるべきかということは内々は検討課題だと思っていたわけでございますけれども、今、先生から端的な御指摘がございました。法律に書かれているということでもございますので、私どもも大変重たい課題と受けとめておりますので、これからどういった名称がよりふさわしいのか、いろいろな御意見もあろうかと思いますので、今後検討をしてまいりたい、こんなふうに思います。
  173. 林紀子

    林紀子君 終わります。
  174. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 日本共産党の畑野君枝でございます。  まず私は、学校施設の点検、改善について伺います。  学校保健法では、第三条の二で、「施設及び設備の点検を適切に行い、必要に応じて修繕する等危険を防止するための措置を講じ、安全な環境の維持を図らなければならない。」と定めております。それは、文部省小学校安全指導の手引でも述べられているように、学校は児童の教育の場として最も安全でなければならないからであります。  今、危険校舎、古くなった校舎への改善の要望が全国から寄せられております。私も直接学校へ伺っていろいろ要望をいただいております。  有馬文部大臣は、公立高校の危険校舎について調査をし努力をすると、衆議院の予算委員会で我が党の志位書記局長質問に答弁されました。大臣の答弁を聞いたお母さんから希望が持てたという声が寄せられておりますが、有馬大臣、その後の調査はいかがでしょうか。
  175. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 高等学校の危険建物の改築事業につきましては、その後、来年度の予算措置におきまして、地方財政計画におきまして、地方債及び地方交付税措置につきまして必要な地方財政措置をとりますとともに、その趣旨を本年一月二十八日に開催されました都道府県教育委員会等の担当の課長会議等で徹底を図って、今後の整備が適切に進められるよう指導いたしたところでございます。
  176. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 文部省から危険校舎面積について、公立学校の施設では、一九九七年で百七十万平方メートル、一九九八年で百七十二万平方メートルと伺っておりますが、県ごとの状況もぜひ今後出していただきたいと思うんですけれども、自治省の調べでは県別の調査がございます。公立高校の危険校舎面積は文部省の数字よりも多いんですけれども、この中で、東京、神奈川、千葉などでゼロなんです。ある県では調べていないのでゼロだと言っております。ですから、実態は国の資料以上に深刻だと私は思います。  高校以外でも、東京のある小学校では築四十年たって床に大きなひび割れがあるような状態ですが、危険かどうかの耐震度調査すらされていない。改築の予算がないから、改築するような結果が出たら困るので調査もできないと、その地域の教育委員会がおっしゃっております。  養護学校も大変な状況で、ある養護学校では窓枠が二センチ下がるとか、ひびが入っていない教室はないという築三十年近い校舎が危険かどうかの調査対象にも挙げられておりません。  こういう実態を大臣はどのように考えられているのか、すぐ直すべきだと思いますが、大臣いかがでしょうか。
  177. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 事実関係を私の方からまずお答えをさせていただきます。  いわゆる危険建物の危険校舎面積というものにつきましては、これは、いわゆる建築基準法上直ちにそれが危険であるかどうかという観点から行われているという性格のものではございませんで、一定の年数がたちまして、それに外的な条件や保存度等を加味いたしまして、国庫補助対象となり得るだけの一定の構造上の危険度が出たというものについて国庫補助対象の建物とする、こういう観点から耐力度点数を出すということにしてございますので、御指摘のように、具体的に個別の国庫補助あるいは建物の改築を行いましょうというような各設置者におきます具体的な条件が整わないと、そこは耐力度調査そのものもしていかないということでございまして、直ちにこれが学校の施設として危険であるかどうかというものとは別の要素であるということをひとつ御理解いただきたいと存じます。
  178. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 大臣、こういう点、もっと詳しく調べていく必要があると思うんですが、いかがですか。
  179. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) それは、各学校がはっきりと各地区の教育委員会におっしゃって、特に小中であれば、それに対して教育委員会がしっかりとまた県の教育委員会に言って、そして文部省の方に言ってくだされば、そのときにきちっと対処いたします。県でやれるべきこと、各村町でやれるべきこと、それぞれ調査の上で対応すると思います。きちっと各学校でその辺を対応してくだされば結構だと思います。  ただ、高等学校に関しては、先ほど局長が申しましたように国からの、特に全日制課程の危険建物改築事業は廃止になっていまして、その分は各県に補助金としてはもう出さなくなっていますから、直接国からというのは別なやり方で、すなわち地方債及び地方交付税措置といった必要な措置を今とっているわけでございますので、これはやっぱりしっかりやってくれということは既に常に都道府県教育委員会に言っているところでございますので、今のような問題があればどしどし教育委員会と御相談いただきたいと思います。
  180. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 有馬文部大臣から大変心強いお答えがございましたので、ぜひそれに国もこたえていただきたいというふうに思います。  さて、地震防災対策としての補強工事などの国の補助事業ですが、平成八年度から十二年度までとなっておりますが、各自治体からは、これでは間に合わないから延長してほしいという要望が強く出されています。  防災拠点としてもたえられるようにしていくという点で、国の補助を延長する必要があると思いますが、いかがですか。
  181. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 公立学校施設は、非常時、災害時においてやはり子供たちが完全に安全でなきゃならないということを考えておりますし、同時に、地域住民の応急の避難所としての役割も神戸の場合などを見ますと果たしているということがよくわかりましたので、耐震性能の向上を積極的に図っていかなきゃならないと思っております。  地震防災対策特別措置法に基づく地震防災緊急事業五カ年計画については、各都道府県とも平成八年度を初年度とする十二年度まで、先ほど御指摘のとおりでありますが、十二年度までの計画を作成しているところでございます。  公立小中学校等の耐震性能向上のための補強事業、改築事業の計画校数は、五年間全体で約九千校となっております。このうち平成十年度までの計画校舎は約四千三百校でありますが、耐震審査をした結果、補強工事が不要となった学校も幸いにもございます。それを除きますと進捗率は七五%になっていると推算されております。  文部省としては、現行の五カ年計画を着実に推進していくことがまず最重要課題と考えております。現行計画を延長していくかどうかは、これは計画全体の今後の進捗状況を勘案して、国土庁を中心として、文部省も含めた関係省庁において検討していくことになると思います。
  182. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 ぜひその方向で検討していただきたいと思います。  さて、築二十年以上の建物の大規模改造の中で、老朽施設改造工事の国の補助ですが、補助基本額の下限が七千万円ではなかなか工事に手をつけることができないということで、下限を下げてほしいという声がございます。下げるべきではないか。また、単価は実態に合わないという声が寄せられております。単価を上げるべきではありませんか。
  183. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 大規模の校舎の改修事業をどこまで国が見ていくか、あるいはどこまで地方自治体の責任においてやっていくかということにつきましては、従来からさまざまな議論がございますけれども、国と地方の役割分担を明確にすると同時に、地方公共団体が主体的に弾力的に老朽校舎等について大規模改造事業を行いやすくするというような観点から、現在、国庫補助基準につきましては、事業量七千万以上の事業を対象といたしまして国が補助金を出す、それ以外のものにつきましては、それぞれ地方債及び地方交付税による地方財政措置で対応するということにしているところでございまして、さまざまな状況等を考えますと、私どもとしては現行の基準というのは現在それなりの妥当な線であろうと考えているところでございます。  なお、老朽校舎全体の改築事業ということではなくて、部分的に教育内容・方法等の変化等に適応させるための改造であるとか、コンピューター教室や障害児童への対応のための改造、こういったものにつきましては、当然その事業の量に見合いまして、二千万円の事業量あるいは一千万円の事業量まで国が補助を見ましょうということで、個々の事業の内容を見ながら適切に対応しているところでございます。
  184. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 以前は二千万円が下限、それが四千万円に上がる、今回七千万円ということですから、そこは見直す努力は必要だというふうに私は思います。  それから単価ですけれども、例えば横浜市の例では、ある学校で十八億円かかったけれども、国の単価基準では十二億八千万円だというのですね。ですから、こういう点でも実態に合わせて単価を引き上げる必要があると思います。  地方自治体、例えば東京都の教育長さんが国へ要望書を出されまして、公立学校施設整備費への国の補助金が昭和五十五年度をピークに減って、平成十年度は予算額がピークの三〇%、事業量が一七%となっている。ところが、今、急増期に建てた校舎がちょうど建てかえの時期で、物すごい建てかえをしなくちゃいけない。改築もしなくちゃいけないし、補強もしなくちゃいけない。それから、大臣がおっしゃったように、地震対策ですとか開かれた学校づくりというところで補助を本当にふやしてほしいのだという声が出ているわけですから、そういう方向でぜひ検討していただきたいと思います。  さて、学校の安全ということで、私たちの党も総点検、総改善の取り組みをさせていただいて、大変な実態が全国から寄せられているのですけれども、例えば非常階段。神奈川県小田原市のある県立高校では、海からの塩の害でぼろぼろに腐食している、二百五十万円の予算がつかなくて非常階段が封鎖されて使えない、山形県のある中学校でも、非常階段が古くなって避難訓練のときに危なくて使えない、こういう状況です。それからまた愛知県のある小学校では、廊下が滑る、それで子供が手を骨折する、前歯を折った、こういう状況なのです。  ですから、学校の安全ということでは、初めに申し上げましたけれども、国の責任として学校施設の安全確保をぜひ各自治体に徹底すべきだし、危険な箇所はすぐ直す必要があるというふうに思いますが、いかがですか。
  185. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 学校の建物も、当然建築基準法の規定に従いまして、通常の民間の建物や公共施設の建物と同じようにきちっとした形でつくられて、日常の維持管理を設置者が行うというのは基本的な原則であろうかと思います。  文部省といたしましても、そういった観点から、各設置者が日常の学校建物の安全管理に滞りがないようにということで、例えば学校建物維持管理の手引というものを作成いたしまして、小さな市町村等ではなかなか目が行き届かないというような点につきましてフォローアップしようということで指導をしているところでございますので、今後ともこういった手引の活用等につきまして、都道府県教育委員会等を通じながら十分趣旨の徹底を図ってまいりたいと存じます。
  186. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 ぜひ設置者、自治体がふさわしい措置をするように、また自治体から出た要望についても国がこたえていただけるようにしていただきたいと思います。  特にトイレの問題なのですけれども、私も見てまいりましたけれども、授業にとっても、心と体の健康にとっても教育上大変大きな支障になっているというのがわかりました。  学校のトイレ研究会の調査結果を専門家の坂本菜子さんが「中央公論」で発表されているのですけれども、学校のトイレは五K、つまり暗い、怖い、臭い、汚い、壊れている。ある保健室の先生は、おなかが痛いと言って来る子の七〇%は大便を我慢しているせいだという例も挙げて、学校トイレの大半は日本人の生活水準より三十年から四十年おくれているのではないかと指摘をしております。文部省監修の「教育と施設」でも、阪神・淡路大震災での学校トイレの大切さが日本トイレ協会から報告されております。  国として補助制度を設けるなど、トイレに対しては特別の対策が必要ではないかと思いますが、いかがですか。
  187. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) トイレも含めまして個々の施設の維持管理あるいは改修というものは、それぞれの設置者におきまして適切に行われるということは基本であろうかと存じます。  文部省におきましては、個々の学校一つ一つの施設のところまで到底目が及ばないわけでございます。したがいまして、各設置者が全体として大きな建物を建てかえる、あるいは新しい建物をつくるという際におきましては、御指摘のようなトイレの一定の面積あるいは設備というふうなものも十分勘案しまして、全体としての補助基準面積あるいは補助基準単価というものを、それぞれの時期におきまして積算をしながら適切に対応しているというところでございます。  トイレにつきましては、近年の実情等にかんがみまして、平成十年度の第三次補正予算におきまして、教室の改造と一体で整備を行う際におきましては、工事全体二千万円以上のものにつきましても大規模改造事業の中で対象とすることができるよう改善を図ったところでございますので、今後この制度を十分活用していただきますよう趣旨の徹底を図ってまいりたいと思います。
  188. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 千葉県の高校生アンケートでも、トイレが壊れているとか、閉まらないドアがあるとか、においが強くて気分が悪くなることもあったなどの声が出されておりますし、私の住んでいる神奈川でも、学校先生方、それから新婦人のお母さん方からもトイレの問題が強く出されているのです。壊れた便器にガムテープが張ってあるとか、教室までにおって授業に影響が出る、こういう状況を改善する必要があると思います。  改善したところでは本当に歓迎されていまして、横須賀市でも論議して、子どもの権利条約に照らしても、教室と同じくらい重要な教育の場の主要施設がトイレだということで、トイレのリフレッシュ工事が始まって校長先生からも大変喜ばれているということです。ぜひ国としても大いに進めるための措置をさらに検討していただきたいと思います。  次に、学級崩壊について文部省もいろいろ調査されていると思いますが、横浜のある小学校の外国人子女教育の実態について伺います。  この小学校は外国人の児童が五十六名いて、低学年児童の約四〇%です。三年生では三十四人中十二人、一年生では四十二人中十九人の外国人等の子供たちということで、中国語、カンボジア、ベトナム、ラオスの言葉がクラスを飛び交っている毎日だと。そこで、子供たちは大体日常会話は話せても、教科の学習に使う言葉が難しくて文章問題が理解できないなど、問題もあって授業が成り立たないという状況になっております。  こうした問題について文部省としてはどのように対応をされているのでしょうか。
  189. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 日本学校に在籍をいたしまして、日本語が不自由であるということから特別な指導を必要とする外国人の子女につきまして、私ども平成九年の時点で一万七千人ほどが在学しているものと承知をいたしているわけでございます。  このための施策といたしましては、一定の数以上の外国人子女がおります際に、特別にこの指導を行うための教員を国の定数をもって加配するとか、あるいは外国人子女に母国語等で教育相談を行ったり、あるいは母国語の指導を行ったりしてくださるような指導協力者の派遣事業等もいたしておりますが、そのほか国といたしましては、日本語習得のために必要な日本語の指導教材や外国人子女教育指導資料の作成配付も逐次行ってきているところでございます。
  190. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 それでも間に合わないという実態だと思うんですね。今のままでは授業崩壊、学級崩壊が続くということですので、地元から出ているのは教員の加配をもっとふやしてほしいということなんですが、この点はいかがでしょうか。
  191. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 教員の加配につきましても、現行の第六次の改善計画を策定する際に、六年間で七百七十八人の改善を図るということで一定の今後の見込み数を積算いたしまして、さらにその前年に特別に二百七人を緊急に配置しておりまして、今次改善計画が終わります際には全体として千人弱を措置するということで進めているところでございますので、この数につきましては、特に平成十一年度予算ですべて配置をし終わるということで努力をしているところでございます。
  192. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 学校や自治体が要望を出したら、そういうことで国の方から出していただけますか。
  193. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 国が各学校の定数を見る限度というのは現行の標準法の中で決められているわけでございまして、こういった加配定数につきましても、計画全体の数、そしてそれに基づきます毎年の予算措置ということで限度がございますので、その限度の中で各市町村から都道府県に寄せられました全体の状況を見きわめながら、私どもといたしましては、各都道府県と個別に相談をしながらその枠の中で配分をさせていただきたいと考えております。
  194. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 時間でございます。
  195. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 ぜひ進めていただきたいというふうに思います。  一言だけ最後に。学校給食に針が混入しているということが、神奈川県の川崎市や横浜市、それから青森、京都などから報告されています。子供たちの安全のために万全の対策をとっていただきたい、その点だけ伺って、私の質問を終わります。
  196. 遠藤昭雄

    政府委員(遠藤昭雄君) お答えいたします。  ただいまの学校給食における異物の混入につきましては、ことしの二月中旬から三月八日までで十三都府県から三十一件の事故が私どもの方に報告をされております。このうち小学校は二十七件、中学校は四件でございます。食品別で言いますと、パンが二十三件で圧倒的に多く、その他八種類でございます。混入された異物は三十件が針でございまして、残り一件は、くの字に曲がった針金様のものであったということでございます。学校とか警察と関係機関でその原因について調査中であるというふうに承知しております。  こうした状況にかんがみまして、私どもといたしましては、調理場とか配膳室、給食時、いろんな各場面において具体的な留意点を示しますとともに、食材納入業者に対しましても、注意の喚起を含めまして三月三日付で各都道府県教育委員会に対して指導の徹底を図ったところでございます。今後とも、都道府県教育委員会に対しまして指導の徹底が図られるよう注意を喚起してまいりたい、このように考えております。
  197. 畑野君枝

    ○畑野君枝君 ありがとうございました。
  198. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 昨年九月の当委員会におきまして、中教審の答申「今後の地方教育行政の在り方について」の提出を受けまして、地方教育行政地域社会あり方について質問をいたしました。今国会には、さきの答申を法制化するに当たりまして地方分権に関する一括法案が提出されるわけでございます。きょうは、その一括法案における地方教育行政関係の事柄につきましてお伺いしたいと存じます。  地方分権を推進し、地方レベルでの教育改革を進めていくには、改革の主体である学校あり方が非常に重要でございます。学校が自主的、自律的なものになっていくということが必要だというふうに思うわけでございますが、昨年の九月の委員会におきまして、教育現場の裁量あるいは学校運営に対する地域社会保護者関係について文部大臣お尋ねしたところでございますが、まだ検討半ばであるということでございました。  今回、法制化に当たりまして、そのうちまず校長権限の規定など教育現場の権限強化に関する、あるいはまた学校裁量権の拡大に関する検討結果についてまずお伺いしたいと存じます。
  199. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 昨年九月にいただきました中教審の答申におきまして、法律事項として今国会に提出を予定しているものと、法律以外の部分で制度の改正を要するものと、それ以外に運用の時点で改めていくものと、大きく分けて三つに制度的には考えられるわけでございます。  今国会で予定をしております法律関係事項は、主として教育委員制度並びに国と都道府県、市町村におきます権限に関する事項が中心でございまして、今御指摘がございました校長の権限あるいは校長教育委員会との関係あり方、あるいは学校内におきます運営組織や職員会議等の問題につきましては、現在法律事項という形で予定してございませんので、現在、中教審の答申を受けまして、各関係団体、校長会や教育委員会あるいは職員団体等の団体でございますが、それぞれにおいて最もいい方法はどういうことなのかということについて、具体的にそれぞれのお立場でさらに御検討をいただきたいということで私どもお願いしておるわけでございまして、いずれ各団体等の御意向等を集約しながら、文部省でしかるべき形で制度化をしてまいりたいと考えているところでございます。
  200. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それはいつごろを予定していらっしゃいますか。
  201. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 今国会でお願いをいたします地方分権に関します法案の施行時期がいつになるかということでございますが、今私ども伺っているところでは、平成十二年の四月以降ということで伺っております。  そういたしますと、文部省関係教育委員制度の改善等につきましても、同じ時期から制度の改善が行われるということが予定されますので、私ども事務当局の腹づもりといたしましては、これらの教育委員制度にかかわります法律改正事項が施行される時期に合わせてその余の制度改正事項につきましても関係者の意向を取りまとめて、でき得れば平成十二年の四月一日から新しい制度で発足できるよう今後の準備を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  202. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それでは、進捗状況についてこれからまた時々お伺いさせていただきたいと存じます。  ところで、答申では、校長の人事権、財政権の拡大ばかりではなく、校長の任用資格におきましても、教員免許状を保持していなくても、十年以上教育に関する職にあった者またそれと同等と認められる者というように、任用資格が拡大されたというふうに私はとらえておりますが、それは具体的にどのような方々になるのでございましょうか。
  203. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 大変恐縮でございますけれども、御指摘校長の資格につきましても、具体的には学校教育法施行規則、文部省令でございますが、の八条に規定されている事項でございますので、中教審の御審議の中でも各校長会等の御意見も伺ってきたところでございますけれども、この答申を踏まえて具体的にどうするかということにつきましては、さらに主として校長会あるいは教育委員関係者等の御意見も十分承った上で、最終的には先ほど申しました時期までに学校教育法施行規則の八条の改正ということで措置をさせていただきたいと思っておりますので、具体的にどこまでその範囲を広げるかということにつきまして、今まだ私どもとしても具体的な腹案を持っていないわけでございます。
  204. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 具体的にはまだお考えが固まっていないということでございますけれども、大臣のお考えをまずお聞きしておきたいと思うんですが、この民間人登用への道が開かれたということは大変私は喜ばしいことだと思うんですね。教育界というのは大体ホモジニアス、同質的だというふうに言われて久しいわけでございますが、そういう点を打破するということの意味でも、私は民間人から校長を登用するというのはとてもいいことだと思います。  だったらば、そのような例えば十年以上教育に関する職にあった者とか、それと同等と認められる者などというふうなただし書きをつけずに、民間人というふうに広く人材を登用するということの方がいいのではないかと私は思うのでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  205. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) いや、これは大分苦労したところでございます。まだ私も去年の今ごろ中央教育審議会におりまして、そこで随分議論したことでありますが、やはり教育ということですので、余り教育関係のない方でもまずかろうというのが一方であるんですね。  一方では、今、日下部先生指摘のように、なるべく広く人材を求めたいということでいろいろ苦慮した結果が、先ほどおっしゃられた十年というふうなことでございましたけれども、今一生懸命考えているところでございまして、御指摘の点も考慮に入れさせていただきたいと思います。
  206. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 どうせそのような広く人材をということでしたら、ただし書きはないような形で、思い切り学校の特色、よく文部省の皆さんがおっしゃる特色ある学校ということに私は期待をしているところでございます。  ところで、校長の権限強化と並びまして、職員会議を見直すということも答申の中にございますね。東京都では、昨年の七月に都立高校、区市町村立学校学校管理運営規則というものを改正いたしまして、職員会議を校長の補助機関とすると規定しております。  これまで職員会議というのは、慣習として定着はしておりましたものの、国の法令上その設置規定というものが置かれているわけではなかったというふうに私は解釈しております。一体この職員会議の位置づけにつきまして、校長の権限に従属するものなのか、あるいは、いわゆる補助機関説、諮問機関説とそれぞれ学説がございますけれども、この職員会議の位置づけにつきまして、大臣はそのとき中教審の会長でもいらっしゃいました。どのような御議論があったのかも含めましてお伺いしたいところでございます。
  207. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 法令解釈の問題でございますので、私の方からまず御説明をさせていただきたいと思います。  学校教育法二十八条におきましては、校長の権限といたしまして、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」という規定がございまして、およそ学校運営に関する事項は、教育活動あるいは教職員の人事、施設管理面も含めまして、一応校長に任された範囲内においてはすべて学校長が全体の責任をとる、これが法令上の規定でございまして、職員会議は国の法令上の規定はございません。  各都道府県や市町村におきましても、必ずしも学校管理規則等の明確な規定がすべてあるわけではないわけでございますけれども、法令の解釈上といたしましては、この学校教育法二十八条の校長の権限を前提にいたしまして、その中で校長の職務が円滑に遂行できるための一つ学校内部組織というぐあいに考えるのが妥当であろうかと思っておりまして、それ以外に、学説的にそれが諮問機関であるとかあるいは補助機関であるとか、そういったことについて私どもとしてコメントする立場にございませんが、少なくとも、学校の意思決定の機関である、最高決定機関であるという考え方は法令上とり得ない立場だと私どもは考えているところでございます。
  208. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 今、局長がお答え申し上げたことでございますが、もうちょっと私の考えも加えて申し上げてみたいと思います。  学校が公の教育機関としての責任を果たすためには、校長教育理念教育方針のもとに全教職員が一致協力した学校運営が行われる必要があると思います。このような観点から、学校教育法においては、「校長は、校務をつかさどり、所属職員を監督する。」と規定されておりますし、校長学校運営の責任者であることを明らかにするとともに、その必要な権限を定めております。職員会議につきましては、もとよりこういう校長の権限と責任を前提として、校長の職務の円滑な執行に資するため、教職員間の意思疎通や共通理解等を図るために置かれたものでございます。  しかしながら、職員会議については法令上の根拠が明確でないということなどから、その運営をめぐる校長と教職員の考え方の相違により、本来の機能が発揮されていない場合があったり、職員会議があたかも意思決定権を有するような運営がなされるなどの問題が指摘されております。  このような状況を踏まえて、昨年九月の中央教育審議会答申においては、職員会議について、「法令上の位置付けも含めて、その意義・役割を明確にし、その運営の適正化を図る」ように提言がされました。  文部省といたしましては、現在、教育委員関係団体、校長会などの関係者の意見を聞きながら答申具体化に向かった検討を進めております。今後、学校教育法施行規則の改正など、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。  同様な問題が大学の教授会と学長あるいは学部長との間にもありますので、この辺に関しても現在検討を進めつつあるところでございます。
  209. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私が例に出しました東京都の場合につきましては、文部省はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  210. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 東京都がこのほど定めました学校管理規則におきましては、校長を補助するという文言でございまして、これをもって補助機関と解釈するか、それは別の問題でございますけれども、補助するという役割を持つものというぐあいに規定しているわけでございます。
  211. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 校長のリーダーシップが重要であるということは、これはよろしいといたしましても、やはり校長の恣意的な判断で学校運営がなされてしまうということは、これは大変なことでございます。学校というのは企業とかあるいは行政組織ではないわけで、専門的な教育機関でございます。そういった意味を考えますと、やはり職員会議と校長との関係というのは非常にこれからも考えていかねばならないことだろうというふうに私は思いますので、もう少したってまたお伺いをさせていただこうと思っております。  ところで、地域に開かれた学校づくりというのが今度の答申の大きな柱でございますが、目的でもございます。それを推進するための具体的な改善方策といたしまして、学校評議会制度の設置が提言されております。「法令上の位置付けも含めて検討することが必要」というふうに記されておりますが、これは具体的にはどのような法令上の位置づけというふうに解釈していいのでしょうか。例えば、国の法令、学校教育法施行規則の中で親規則のようなものをつくって、その規定の委任を受けて学校管理規則で定めるということもあるかもわかりませんし、あるいはまた、国の法令は規定なしにして、各学校の設置者が独自に学校管理規則で定めるというふうなことも可能かと思いますが、このいずれなのか、それともいずれでもないのか、どのようにお考えでございますか。
  212. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) これも大変恐縮でございます、先ほど申し上げましたような事情で現在検討中ということでございますが、御指摘のように中教審の答申におきましては「法令上の位置付けも含めて検討することが必要」と、こういう御提言でございますが、学校評議員につきましては、できるだけ設置者の判断に応じてこれを置くことができるようにというような御指摘もまたございます。また、とりわけその学校評議員の役割といたしまして、「学校評議員は、校長の求めに応じて、教育活動の実施、学校地域社会の連携の進め方など、校長の行う学校運営に関して、意見を述べ、助言を行うものとする」と、こういうことでございますので、先ほど申し上げましたように、学校教育法二十八条に規定されました校長学校の運営権あるいは所属職員の監督権というものを前提といたしまして、それに対して意見を述べ助言を行うということでございますので、法令上の位置づけを行います際にも、法律に基づいてこれを位置づけるということは必要ないものと私ども思ってございます。  先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、職員会議と同じように学校教育法施行規則に位置づけて、あるいはまた、その位置づけの仕方にもよりますけれども、さらに学校管理規則に最終的には位置づけて置いていただくというような仕組みを今後考えていかなければならないと思っておりますけれども、具体的な法令の規定の仕方、あるいはどの法令にどのように規定していただくか等につきましては、今後検討させていただきたいと思っておりますけれども、少なくとも法律の改正は要しないものと考えておるところでございます。
  213. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 学校評議会の役割でございますけれども、今のお言葉にもございましたけれども、校長の推薦に基づいて教育委員会が委嘱するということになっておりますが、ただこれを校長の求めに応じて意見を述べ助言を行うということだけに限定してしまうのか、あるいはまた、校長の求めに応じるだけではなく、みずから必要と判断した場合に意見を述べ助言を行うことができる、つまり、意思形成システムの外側にあって、システムのトップリーダーである校長に対して意見を述べ助言をすることでその意向を反映するということにとどまるのではなくて、保護者等が意思形成過程に加わって、そういう形で影響することでみずからの意思を実現するというシステム、やはりそこまでは考えていらっしゃらないのでしょうか。その点、いかがでしょうか。
  214. 御手洗康

    政府委員(御手洗康君) 具体の制度の運用の中でさまざまなあり方があろうかと思います。特に学校評議員の設置につきましては、中教審の答申におきましても、設置者の定めるところにより置くことはできることとすると、こういう形で緩やかな制度として考えてほしいという御提言がなされているわけでございますので、もし置かないとすればまた別の形での意見聴取ということもあり得るわけでございますので、こういった点につきましてなお、設置者である教育委員会、あるいは学校責任者である校長会等の御意見を十分集約した上で今後の制度化に努めてまいりたいと考えております。
  215. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 その制度化にお努めになるときに、ぜひとも私の考えも考慮に入れていただきたいと思うんです。  前回もイギリスの例をお話し申し上げたと思いますが、イギリスだけではなく欧米におきましては、学校保護者との単なる接点ではなくて、予算執行なども含めて学校経営の中枢に入り込んで学校経営の意思形成に影響を与える、そういう形のものが欧米では一般的なものでございますね。だから、これを全部ではなく、学校とか地域の実情に応じてそこまでも考えていいのではないか、そのような柔軟性を含めていろいろとお考えを進めていただきたいということを、これは今どういうお考えかというふうに申し上げてもお答えは出そうもないんですけれども、私の希望として述べておきたいというふうに思います。  次の質問に移ります。  学校というのは税金あるいは授業料で賄われているわけでございますから、納税者あるいは授業料納付者にその経営内容が明らかにされることが不可欠でございます。これまでは、公立学校行政、つまり教育委員会に対してその責任を示せばよかったわけでございます。答申では、教育目標、教育計画等を年度当初に保護者、地域住民に説明する、またその達成状況についての自己評価も必要であるというふうにしております。  学校の経営に対する方針とか計画、あるいは結果に対する説明責任、アカウンタビリティーが必要であるというふうに記されているということは、今までとかく閉鎖的であったと言われている学校の運営体制ということに対しては非常に意味が大きい、つまり開かれた学校への大変な第一歩だろうというふうに私は評価をするわけでございますが、保護者に説明をするためにはきちんとしたデータが必要とされます。  そしてまた自己評価というのは、自己評価だけではなく、これは大学もそうでございますが、第三者による外部評価というのも必要ではないかというふうに思うわけでございます。いわゆる学校経営の責任をチェックする評価項目とか、あるいはまた責任のとり方ということもここで大きく問われてくる、これは大変な大きな問題だろうというふうに思うわけでございます。  保護者、地域住民に対する情報公開、あるいは学校の自己評価、いわゆるチェックシステム、アカウンタビリティーについてのお考え、これもまた御検討中ということになるかもわかりませんが、この点につきまして大臣はどのようにお考えでいらっしゃいましょうか。
  216. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) これは、小中学校高等学校だけでなく、大学などに特に強く求められていることでございます。特に、国民からのお金、すなわち税金でやっている以上、これはちゃんと説明ができなければいけないということで、私も非常に重要視していることでございます。  しかしながら、最近、方々の小学校中学校あるいは大学高等学校等々を回ってみますと、かなりちゃんとした要録などがつくられておりまして、既に相当各学校努力しておられるということがはっきり見えてまいりました。ただ、予算がどれだけあって、それがどう使われたかというところまでまだ細かく報告書が書いてはないようですけれども、少なくとも、どういう教育をやっているかとか、どういうふうな職員の配置であるとか、こういうことに関してはかなりもう現在でもアカウンタビリティーのあることが行われているようでございまして、私としては大変喜んでいる次第でございます。  しかしながら、御指摘のように、さらに一歩この点については進めさせていただきたいと思っております。
  217. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今の問題というのは、これ具体的にするというのは大変なことだろうというふうに思います。単に情報公開という言葉だけではなくそれを具体化するためには、これは現場ではさまざまな御苦労があろうかと思いますが、ぜひともそれを実現させていただきたいというふうに思います。  今回の地方教育行政制度改正というのは地方分権を目的としております。文部省を頂点としたこれまでのいわゆる中央集権的、上意下達式の教育行政から、個々の学校、あるいはまた地域の特色を生かした学校教育へと画期的なシステム転換を目指している改正でもございます。改正を成功させるには、やはり意識改革価値観の転換ということが求められているのは言うまでもないというふうに思いますが、教育の地方分権、地域に開かれた教育行政の実現に向ける大臣の御決意を承りたいと存じます。
  218. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 地方分権のみならず、今回、二〇〇二年よりの学校完全週五日制の導入、それに伴うカリキュラムの大幅な削減、あるいはまた総合的学習導入ということで、非常に多くのことを今改革しようと思っておりまして、この問題に関しては、おっしゃられますように、それぞれの人々、担当する人々、あるいはそれに関心を持つ人々の意識改革というのが大変必要でございます。こういうことに関しましては、少なくとも学校週五日制がどういう意味を持つかとか総合的学習の時間がどういうふうに行われるべきか等々に関しましては、今いろいろな地域で教育委員会の方々やあるいは父母の方々に対していろいろお話を申し上げているところでございます。  今後もこれをさらに活発に行っていきたいと思っておりますし、その中に地方教育分権の持っている意味とかやり方等々についてもう少しきちっとした姿が浮かんだところで、また方々でお話を申し上げるべく努力をいたしたいと思っております。
  219. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 地方の方々も必要でございますが、文部省内の意識改革価値観の転換ということは、これは長い間の考え方、システムを変えるわけでございますから、その点はいかがでございますか。
  220. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) その点は、私も含めまして意識改革をいたしますので、どうぞよろしく御支援のほどを。
  221. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 まず、そこなくしては地方の皆様にいろいろとお話をなさるということにはならないかと存じます。やはりこれは非常に大きな価値観の転換でございます。価値観の転換というのは、言うはやすくということでございます。これまでのいわゆる通達行政というものではなくなるわけでございます。したがいまして、この点に関しましては、ぜひとも大臣のお気持ちを省内全体にまずきちっと確立して納得のいくような意識改革に努めていただきたいと思います。もしお言葉がございましたらどうぞ。
  222. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私がこの際申し上げておきたいことは、さまざまな具体的な事例で感じたことですが、文部省の中はかなり進んでいることがあるんです。ところが、大学にせよ、小学校中学校高等学校にせよ、教育委員会にせよ、先の方は必ずしも文部省で考えていることを理解していない場合があるんですね。聞かれると、それはもうとっくの昔にできますよというようなことがたくさんあるんです。ですからこそ、先ほど申しましたように、それぞれの地域に行きまして、今こういうことを考えています、こういうことができますよということを御説明しようというのが今私どもが考えていることでございます。  ですから、もちろん文部省の中でいろいろと考え方を変えていかなきゃならない。意識改革はもちろん必要でございますが、同時に、各地方の、各地区ごとの教育委員会等々のお力添えも得ながら、さらにこういう改革を行うことを御理解賜るべく努力をさせていただきたいと思っております。
  223. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 長年、いわゆる通達行政にならされてきた日本でございます。ぜひとも今大臣がおっしゃいましたことを実現するための御努力をよろしくお願い申し上げたいと思います。  次の質問に移ります。  今年の五月で子どもの権利条約の批准から五年目を迎えます。昨年五月二十七、二十八日に、子どもの権利条約批准国としての第一回報告書に対する国連子ども権利委員会の審査が行われました。そして、六月に日本政府に対しまして四十九項目にわたる総括所見の勧告が出されております。  まず、文部省の所管項目はどの項目というふうに御承知いただいておりますか。項目の番号だけで結構でございます。
  224. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 非常に多岐にわたってございますけれども、項目だけで申し上げますと、三十三項目から始まろうかと思いますが、三十三、三十五、三十六、四十三、四十四、四十五、四十七、四十九等に当たろうかと思います。
  225. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 私は、二十、二十二、二十三、二十四、四十一も入るというふうに思いますが、いかがですか。
  226. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 御指摘の点も関係しているのでございますが、二十七以前の項目はこの委員会としての主な懸念事項として整理されておりまして、二十八以降が提案及び勧告という整理かと理解してございます。
  227. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 懸念事項にいたしましても勧告にいたしましても、やはりそれは文部省として考慮に入れていただきたいというふうに思います。  それらにつきまして、第二回の報告書を四年後に出されなければなりません。ですから、今そのフォローアップのために省内にさまざまな体制ができているというふうに思いますが、その進捗状況についてお伺いしたいと存じます。
  228. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 御存じのとおり、日本教育行政は、かねてから日本国憲法あるいは教育基本法に基づいて基本的人権の尊重を旨として進められてきてございます。  御指摘の児童の権利委員会から御提言がありましたもろもろの点につきましては、事柄といたしますと、例えば条約の広報でございますとか関係者の研修教育の徹底、さらには学校における体罰とかいじめ等の防止、あるいは青少年に対するポルノ等有害情報からの隔離等々、いわば従来から文部省が進めておる施策全体にわたる部分が多いわけでございまして、このため、私ども、この児童権利条約への対応ということではなくて、従来からの文部行政子供を中心としたより生き生きした教育の実現のための施策を全般にわたって進めているところなのでございます。
  229. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 もちろんそれは全体的なことではございますが、報告書をまた出さなければならない、だから、勧告に対しての対応ということがどうしてもこれは日本政府として、あるいは文部省として必要になるというふうに私は思いますし、例えば勧告の三十三項、これは教育のあらゆる段階において子どもの権利に関する系統立った研修及び再研修が必要というふうにされているわけでございます。  午前中も御質問があったかと思いますが、文部省として、いわゆる人権教育というものに対する考え方をどのように考えていらっしゃるのか、どのようにして進めていこうとなさっているのか。  人権といいますと、どうしても抽象的な概念になってしまいがちでございます。人権教育十年の行動計画におきましても、人権を抽象的な規範の表明としてではなく、自分たち生活、現実の問題としてとらえられるような指導学習を進めるべきだというふうなことも出されているわけでございます。この一見抽象的にとられがちな人権教育、権利というのは、日本ではどうもわがままというふうに解釈されているようなところもなきにしもあらずでございますが、自分の権利を主張するということは他者の権利も認めるということでございます。  そういうことも含めまして、大臣としてはこのヒューマンライツ、人権ということについてどのようにとらえていらっしゃいますでしょうか。
  230. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、この人権教育というのは非常に大切だと思っております。憲法及び教育基本法の精神にのっとって基本的人権尊重の教育推進していくことは極めて重要であるということは、もう言うまでもございません。  具体的にどういうことをしていくかということでございますが、学校における人権教育については、幼児、児童、生徒の人権尊重の意識を高める教育推進指導内容、指導方法の充実などが挙げられております。  そこで文部省といたしましては、各学校の人権教育取り組みへの一層の充実を図るよう教育委員会等へ指導を行っておりますし、同時に、人権教育研究指定校事業及び教育総合推進地域事業を実施して人権意識を培うための教育や、教育上特別の配慮が必要な地域における総合的な取り組み充実に努めております。  今後とも、児童生徒の発達段階に即して、学校教育活動全体を通じて、児童生徒の人権に十分配慮して、一人一人を大切にした教育を図っていかなければならないと思っております。  それからまた、私は特に長く外国にいたせいもありまして、人種差別ということが大嫌いなんです。この人種差別は何としてでも防がなきゃいけない、こういうことはやはり教育の上できちっと教えていかなくちゃならないと思っておりますので、こういうことに関しても努力をさせていただきたいと思っております。
  231. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 三十三項ではまた、子どもの権利条約をすべての教育機関のカリキュラムに編入するよう勧告しているわけでございますが、この点に関しまして文部省は今カリキュラムへの編入をどう実現しようとしていらっしゃるのか、具体的な道筋を示していただきたいと存じます。
  232. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) 学校教育におきます具体の場面でございますが、ただいま大臣からお話がございましたような基本的な考え方を踏まえまして、子供たち一人一人に人権というものについての理解を深める、そしてそれを尊重するということが大切だということを子供たちに培っていかなければいけないわけでございます。  具体的には、教科としては社会科が中心になろうかと思います。社会科におきまして、小中高それぞれに学習指導要領にも書かれているわけでございますけれども、それに沿って教科書がつくられ、そして日々の教師の実践が行われるわけでございまして、そこで行われるというのが一つ。それは、人権についての正しい理解を深めるという点では中心的な指導場面だろうと思います。  それから同時に、一人一人の子供たちが大切にされるということでは、道徳の時間ですとか特別活動の時間ですとか、その他教育活動のさまざまな場面でそれは相互に、あるいは教師から教えられなければならないわけでございますが、それは、それぞれの各学校の実態等を踏まえまして教師によって行われることが期待されていると思います。  繰り返しになりますが、一人一人の子供たちに人権についての正しい理解、啓発を行うという問題と、それから、一人一人の子供がまさに人権の尊重の対象になって一人一人が大切にされる、それは学校の活動全体を通して行われる、これが具体の場面だというふうに申せるかと思います。
  233. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 カリキュラムの中に編入するようにということに対して、この次の四年後の報告にどのようにお答えになるわけでございましょうか。
  234. 辻村哲夫

    政府委員(辻村哲夫君) ただいま申し上げましたように、具体的には社会科の授業が中心になろうかと思います。新しい学習指導要領におきましても、その点につきまして私ども配慮したつもりでございます。学習指導要領は非常に大綱化してございますので、あと具体にどのような肉づけが行われるかというのは、私ども解説書の問題もございますし、それから学習指導要領や、それをもとにいたしました教科書作成の段階においても配慮されることが期待されますし、その他、私ども指導資料の作成等を行ってそれを各学校の参考に資するとか、さまざまなことが考えられるわけでございますが、そうしたものが中心になろうかと思います。
  235. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今、資料を各校に配るというふうにおっしゃいましたが、勧告の三十三項におきましても、条約の規定が子供及び大人双方において広く知られるため、かつ理解されることを確保するためにさらに努力を行う、つまり広報ということがいかに重要かということを言っておりますが、外務省の場合、条約の発効後、ポスター形式のものを百万部つくって文部省を通じて各校に配ったというふうにも聞いております。しかし、これは一回きりだったというふうに私は聞いております。文部省の方も次官通知が一回出たというふうに聞いておりますが、子供たちというのは、毎年新しい子供たちが入ってくるわけでございますね。一回きりというのでは、これはいささかお粗末ということで、今の文部省のお答えとはかなり乖離があると思いますが、いかがでございましょうか。
  236. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、張っておいてくれればかなりもつと思ったんですけれども。
  237. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) もう時間でございますので、よろしくお願いします。
  238. 工藤智規

    政府委員(工藤智規君) 平成六年に発しました文部事務次官通知といいますのは、この条約の批准に伴いまして、都道府県教育委員会あるいは各大学等を含めた教育機関、関係機関に通知を発したものでございます。  実際に子供たちにどう広報するか、あるいは保護者の方々にどう広報するかというのはいろいろな手だてがあるわけでございまして、文部省が直接というほかに、それぞれの都道府県、市町村での御努力も必要なわけでございますし、次官通知をそのたびに出すというよりは、それで各機関の御努力を促していると御理解いただきたいと思うわけでございます。  なお、文部省が直接行う児童あるいは保護者等への広報活動といたしましては、児童向けのリーフレットを配りましたほかに、実は昨年の十月に文部省のホームページの中に児童権利条約あるいはその関係の御説明等々の解説も含めたホームページを開設しておりまして、一般からのアクセスが毎月のように件数がふえてございます。ちなみに、ここ三カ月ほどでのアクセス件数は約千八百件でございまして、このほかに外務省でも、条約全文等のアクセスができるような、そういう連携をとっているわけでございます。
  239. 扇千景

    ○扇千景君 この第百四十五国会において初めて科学技術庁長官として先日所信を伺わせていただきました。午前中にもおっしゃいましたけれども、文部大臣科学技術庁長官の兼任にとっては、これほどふさわしい人はいらっしゃらなかったのではないかと思って私も期待をいたしております。  ただ、所信を伺いまして、きょうは限られた時間でございますので一言だけ伺わせていただきたいと思いますのは、私たち長年、科学技術基本法が大切だということで、やっと科学技術基本法ができ上がりました。でも、私はこれで日本の将来の科学技術が万全だとは思いません。予算をとるだけが能ではありませんし、あるいは、まさに学校時代からこれを教育していくということにとっては、両省が一緒になって将来の日本をしょって立つ子どもを育てるということに関しては一番よかった選択ではないかなとさえ思っておりますけれども、科学技術基本法のみならず、評価制度というものをもう一度私たちの手で何とか早くつくって、そして日本の将来の科学技術のあるべき姿というものを評価していく、そして変えていく、そのことが私は科学技術にとっても大事だと思うんですけれども、そのことについて長官としてのお話を伺いたいと思います。
  240. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、たびたび申し上げますように、科学者の一人といたしまして、科学技術基本法が議員立法でつくられ、そしてまた翌年科学技術基本計画がつくられたということは大変ありがたかった。そのことによって、率直に申して日本じゅうの研究者が随分ハッスルいたしました。しかしながら、私も実は、個人で研究しているものに対しては、それはもちろん個人の責任でございますけれども、大きなお金を国からいただき国税でやっている以上、きちっと評価をしていかなきゃならないと思っております。  したがいまして、今回の科学技術基本計画に沿っていかなる成果が生まれつつあるか、そのことについては冷静に評価をしていただいて、その上でさらなる発展をお考えいただければ幸いでございます。  ただ、一つ、科学者の一人といたしましてお願いがございます。教育成果はさらに時間がかかると思いますが、研究の成果というのも決して一年二年でぱっと答えが出るものでございませんので、この前も申し上げましたように、アメリカのベンチャーが大学で非常に進んでまいりましたが、十年かかりました。そして、成果が本当に出るまで二十年かかりましたので、こういうふうに時間がかかる面があるということも重々お考えいただければ幸いでございます。しかしながら、評価はきちっとやらなければならないと私も思っております。
  241. 扇千景

    ○扇千景君 今の長官のお考え、そのまま私たちも同じ意見を持っておりますので、今後、科学技術に対しても、また教育の場でそれをどうリンクさせていくかということも、私たちも一緒に勉強をさせていただきたいと思っております。  いろいろ聞きたいんですけれども、まだ問題が多過ぎますので、きょうは科学技術に関してはその一問だけにさせていただきたいと思います。  実は、昨今言われております教育改革教育基本法について、私はきょうは少し伺いたいと思うんです。  私が今手にしております本、「日本人をダメにした教育」、こういうタイトルでございます。「子どもにわが信念を強制すべし」、三浦朱門さんでございます。この三浦朱門さんという人は、皆さん御存じのとおり、教育委員もなさったし文化庁長官もなさいましたし、いろいろ教育の場に身を置いて、しかも作家として活躍していらっしゃる方です。私はこの本を拝見しまして、教育改革に何か役に立つことがないのか、だめにした教育そのものはどこにあったのかということが探りたくて私も拝読させていただいたんです。  ここで、この中身について云々ということよりも、私はこの中に書かれていることでぜひ長官に改めて聞いていただきたいこともありますので、時間が限られておりますけれども、少し言わせていただきたいと思います。  私、この本を拝見しまして、ページをめくりました。「今、なぜ、私は教育を語らねばならないか 親として、大人として、夫として、教育者として、成功しなかったものの告白と告発」というページ、第一ページから大変私はどきっとさせられた文字が躍っております。  その中で私はやっぱり考えなきゃいけないと思ったことは、この中で、教育がおかしくなったのは大学論争以来です。学生がのさばるようになり、教師が自信を失った戦後の教育現場には、教え、学ぶ、教えられるではなく、先生生徒も仲間であり、友達であり、友達としての信頼感の上に、ともに学び、ともに楽しみ、そしてともに成長していくというセンチメンタリズムがあった。それを子供たちに見透かされたのですね。つまり、何をやってもいい、先生は怒れないんだ。先生を殴っても、殴られることは絶対にないと見透かされた。  また、現実の日本社会は、社会主義などとは縁遠いのに、進歩的なことを言う。さもなければ、社会家庭にヒステリックに反逆して、家庭内、学校内暴力を振るう。その象徴が大学紛争でした。この世代の本質は、建前と現実が完全に分離している。例えば、原発は反対だが、電気は無制限に使いたいという人間なのです。このような子供たちの親である第一次戦後世代を育ててしまったのは、私のような戦中老いぼれ世代教育の失敗です。「伝えるべきものがあると信ずるなら、それを子どもに強制することを恐れてはならない。すべての教育はそこから始まる、」と、三浦氏はこれを告白とし、そして告発として、反省もし指針もお持ちだろうと思うんです。  今大ざっぱなことを申しましたけれども、大臣はそれを今一部ですけれどもお聞きになって、何かお感じになりますか。
  242. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、大学紛争のときにも教育はきちっと行いました。論文も書かせました。そしてまたその後も、少なくとも私にどなられた学生は何人もいるはずです。そういう意味で、私は今の御説には全面的には賛成いたしません。しかし、一部にはそういうふうな情緒的な態度もあったと思います。しかし、これはやはり教育者としてきちっと自分を律していかなければならないと思っております。
  243. 扇千景

    ○扇千景君 これは一部でございますから、これは三浦朱門さんの御意見だろうと思って、でも私は、これを書くには相当の勇気が要られただろうと思います。そういう意味では、私は先ほど科学技術評価制度と申しましたけれども、それぞれの立場で、評価制度と同じように、欠点はどうだったのか、どこが足りなかったのか、だからこの現状があるのかということを反省材料の一助にするべきであろうと存じます。  それから、教育改革という言葉が世に躍っております。また、さきの橋本内閣においても六つの改革一つ教育改革を挙げられました。でも、教育改革の本当の中心は何なのだろうかと考えたときに、私はやはり教育基本法の改正に帰するのではないかと思います。  これを言うと大臣はどうお思いになるかわかりませんけれども、私も教育基本法を何度も読みました。これは昭和二十二年、戦後日本がアメリカの支配下にあるときにつくられた教育基本法です。けれども、日本をある程度弱くしようという意図はたとえなかったとしましても、書いてあることは民主主義とか自由主義とか平和主義ということであって、この中に民族の伝統とかあるいは家庭とかあるいは歴史とかそういうものは、これたった一枚ですよ、どこを拝見してもないんですね。この教育基本法ですとどこの国へ持っていっても通用するんです。日本でなくていいんですよ、国家観がないんですから。ですから私は、これは空気のような基本法だなと。  日本教育の基本法であるならば、やはり日本の味がするべきだ。しょうゆ臭くてもいいじゃないですか。私は、そういう基本法でなければならないのではないかと思うんです。少なくとも日本の味のする教育基本法というものにするべきだろうと思います。今、政治にも経済にもあるいは社会面においても、三つとも私はバブルを起こしていると思うんですね。その中の教育の一場面を語るときに、このぺら一枚の何の味もしない基本法では、私は教育改革の根本を語れないと思うんです。  私たちは、少なくとも教育改革を口にする限りは、二十一世紀日本の将来の教育のために教育基本法の改正がなされなければならない。いいところは残せばいいんです。私は、政治家としても文部大臣としてもその認識を伺いたいと思うんですけれども、いかがでしょう。
  244. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 教育基本法第一条を読みますと、今御批判になられたことでありますが、「人格の完成」と書いてありますね。これはやはり重要な心の教育だと思うんです。それから、「平和的な国家及び社会の形成者」となるということは、これはやはり……
  245. 扇千景

    ○扇千景君 どこの国でもいいんです。
  246. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) どこの国でもいいことが書いてあることは事実です。しかし、やっぱり基本的には世界じゅうどこの国でも当てはまるような法律が必要だと思うんですね。  それから、私が大好きなのは、「真理と正義を愛し、」というところですね。これはやはりすばらしい。それから、「個人の価値をたつとび、」、これは今、中央教育審議会でも随分言っていることでありまして、個人の特徴を伸ばしていきたい。それから、「勤労と責任を重んじ、」、このとおりにみんなが責任を持ってくれれば非常にいい。そういう意味で、「個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」、こうなれば理想的ですよね。  ですから、そういう意味で理想的な面もあるわけです。その点は生かさなきゃいかぬということを考えております。  道徳の問題等々に関しましては、現行学習指導要領でも既に相当具体的に書いておりますし、新しい学習指導要領において道徳教育重要性についてしっかりと述べているところでございます。しかしながら、御議論の点はよくわかりますので、やはり国民的な議論をもっと積み重ねていく必要があると思っております。
  247. 扇千景

    ○扇千景君 見識のある文部大臣をいただいておりますから、改むることに恐るるべからず、私はそう思います。今おっしゃったいいところは、私はいいと思っています。足らざるを足していくのが我々の仕事であろうと思いますので、そのことを申し上げておきたいと思います。  それから、午前中少しお話に出ました広島県立世羅高校の石川校長の死去は、私は世の中に大きなショックを与えたと思います。その意味においても、私は石川校長の御冥福を祈るとともに、我々はそれをどう今後に生かしていくかという大きな課題を課せられたと認識しております。  財団法人日本修学旅行協会というものがございます。そこによりますと、昨年、十年度に海外へ修学旅行に行った高校は、全高校の一一%に当たる九百三十六校に上っております。その中での一位は韓国で二百四十七校、二位は中国で百五十一校に上っています。  その中でも、実は三月五日付の韓国日報の社会面のトップ記事がこれでございます。ハングル語で書いてございますので私にはよく内容は読めませんけれども、この三月五日付の韓国日報の社会面のトップ記事では、君が代で悩みの校長の教え子たち、五年前からタップコル公園で謝罪の参拝という見出し、このハングル語はそうなんだそうです。そして、昨年十月十六日の様子が詳しく報じられております。世羅高校の男女生徒約二百人は、昨年十月十六日午後四時、タップコル公園の三・一運動、いわゆる独立運動です、記念塔前でひざを折って座り、日帝侵略と植民地蛮行を謝罪する文章を朗読したと書かれています。  私は、修学旅行がいけないと言うつもりはありません。けれども、修学旅行というのは、まして海外にまで行って修学旅行をするということは、学生生活の中での貴重な体験学習になろうと思うんです。ところが、この新聞記事のように、せっかく海外へ修学旅行に行きながら、両国の真の友好というものを私は残念ながらこれでは学べないと思います。  真の友好というのは、お互いが言うべきことを言い合って築かれるものであって、お互いが自国の歴史と文化に誇りを持って他国の歴史と文化にも理解を示すということによって初めて成り立つものであろうと思います。  私は、前に文教委員会でも申しました。今から十年ほど前でしたか、ソウル・オリンピックのときに、修学旅行の日本の高校生が、優勝国の国旗掲揚のときに起立もせずにひんしゅくを買ったというのがございました。日本の高校生だけが優勝旗の掲揚にオリンピック場内で起立をしなかったんです。先生も起立をしなかった。  そういう意味では、去年の十月八日、金大中大統領のあの演説の中で我々は大きな感銘を受けました。大統領の演説の中で、日本明治維新で独自的な近代化に成功し、西欧の文化を受容して大きな発展を遂げました。しかしながら、当時の日本は帝国主義と戦争の道を選択することにより、日本国民はもとより、韓国を含むアジア諸国の国民に大きな犠牲と苦痛を与えました。しかし、第二次世界大戦後、日本は変わりました。日本国民は汗と涙をささげて、議会制民主主義の発展とともに、世界が驚く経済成長を遂げました。そしてついに世界第二位の経済大国となった日本は、アジア各国の国民に無限の可能性と希望の道標を示したのでありますと。  期せずして去年の同じ十月、片方では、二十一世紀に向かって両国で友好を保ちながらやっていこうという大統領の希望に満ちた演説。片方、同じ十月には世羅高校の生徒二百名が下にひざまづいて謝罪文を読んだという。私は、先ほど教育基本法にありましたように、世界に通用する日本人を育てるということを目的とするならば、やはり真の友好とは何かということを教えるべきだろうと思います。そういう意味において私は、こういうことがあったから石川校長に結びつけるつもりはありませんけれども、石川校長とか生徒、そういうものだけに押しつけることはいかがかなと思います。  また、時間がありませんから続けて申し上げますけれども、国際的に通用する人間を育てるためには、少なくともふだんから自国やまた他国の国旗・国歌に対する敬意を払うことのできない国民は、私は国際的には失格者だと言っても過言ではないと思います。むしろ、それを敬愛し尊敬することが真の国際親善に尽くすことになろうと思います。  また、日の丸・君が代に敬意を払わないということは、我々は今憂慮すべき事態に陥っているという認識を持たなければならないと思います。その要因はいろいろあろうと思いますけれども、そのうちの一つは、一部の日教組などによる学校での日の丸・君が代への敵視や拒否により、子供のころから尊敬するという習慣を持ち得なかったということも一つの要因であろうと思います。その意味では、高校生たちはむしろ私は被害者でもあろうと思います。外国へ行ってひんしゅくを買うような態度を平気でするということ自体も欠陥の一つであろうと思うんです。  今、総理から国旗・国歌の法制化の検討に入れという指示があったということですけれども、文部大臣としてそのことに対してどうお考えですか。
  248. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まず、国旗・国歌の取り扱いでございますが、たびたび申し上げるように、現在学習指導要領においてこれを正しく教えるようにということを図っているわけでございます。そういう点で、現在、小中学校高等学校大学の人々に国旗・国歌に対する認識が随分深まったと思っております。  そして、御説のように、日本の国旗すなわち日の丸、国歌すなわち君が代をきちっと子供たちに教えておかないと、外国に行ったときに外国の国旗や国歌に対しての尊敬がないということは明らかでございます。この点については、たびたび申し上げるように、現在学習指導要領において最大限の努力をさせていただいているわけであります。  今回の法制化の問題でございますが、これは午前中にも申し上げたかと思いますけれども、今回の法制化を含めた検討は、国歌・国旗の根拠について、今まで慣習であるものを成文法として明確に位置づけることを検討するものでありまして、学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないということでございますので、今までどおり文部省としては、各学校における卒業式、入学式において国旗掲揚、国歌斉唱をきちっと実施していただくよう指導していきたいと思っております。しかし、これを国として考えるということでございますので、これに対しては私どもも大いに協力をしてまいりたいと思っております。
  249. 扇千景

    ○扇千景君 少し早口になりますけれどもお許し賜りたいと思います。  諸外国、世界じゅうの国旗・国歌の制定形式というものを外務省を通して入手して、ここにも書いてございます。国会の周りの道路に国旗があると、きょうはどこのだれがお見えになっているのか、あの国旗はどこのものだったかなと、国賓がいらっしゃいますと、覚え切れません。  この中をざっと見ましても、早口で申しわけないんですけれども、国旗を憲法で制定している国、中華人民共和国、フィリピン、インドネシア、ベルギー、スペイン、フランス、イタリア、ドイツ連邦共和国、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、ユーゴスラビア、ソビエト社会主義共和国連邦。  法律で制定されている国、タイ、トルコ、エジプト・アラブ共和国、ポルトガル、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、オーストリア、チェコスロバキア、アメリカ合衆国、メキシコ、キューバ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド。  勅令等で制定している国、大韓民国、インド、イスラエル、イギリス、オランダ、デンマーク、カナダ、エチオピア。  慣習によるもの、スイスのみ。  これは国旗でございます。  国歌。憲法で制定されているところ、フランス、ポーランド。  法律で制定されているもの、フィリピン、トルコ、スペイン、ポルトガル、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン。  勅令、政令、大統領令等で決定している国、インドネシア、タイ、ベルギー、ギリシャ、ブルガリア、カナダ、オーストラリア、大韓民国。  人民委員会、閣議、憲法制定議会等により決定されている国、中華人民共和国、インド、オランダ、イタリア、スイス、ドイツ連邦共和国、オーストラリア、チェコスロバキア、ソビエト社会主義共和国連邦、ニュージーランド、エチオピア等々。まだまだありますけれども時間がありませんからやめます。  少なくとも私は、国連に参加している国、あるいはすべてのスポーツ競技においても、日本人で異論を唱える人はあっても、外国人で日の丸を見てあれを日本の国旗だと思わない人はいないんです。それくらい私は定着しているものであろうと思います。  ここに、「論座」という本の三月号がございます。これで、各政党、各新聞社、各テレビ局のアンケートを全部とりました。「「日の丸・君が代」をどうとらえていますか」ということでございます。  中身は省きます。大ざっぱに言います。ここに書いてある表題だけ。自由民主党、「きちんと理解して身につけることが必要」。民主党、「国旗・国歌への敬愛は自然な母国愛から醸成される」。いいことを言っていますね。公明党、「日の丸・君が代は軍国主義再現にはつながらない」。日本共産党、「日の丸・君が代には法的根拠がない」。ただ、新聞赤旗の二月十六日付では、国民的議論を得て法制化した方がよい。どういう考え方か示されたい。社会民主党、「日の丸・君が代の認識は国民の判断に任せるべき」。我が自由党、「教育現場指導するのは当たり前のこと」。  あるいは、NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビテレビ朝日、テレビ東京、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞、朝日新聞、あらゆるものの日の丸・君が代に対する考え方を特集してございます。  これを全部読んでも、我々は、この国会の場で少なくともこれを法制化する、そして二度と石川校長のような惨劇を生まないためにも、きちんとした方針を国が示さなければならないときに来ている。むしろそれが、今、国際的な数字を私が早口に言いましたけれども、これを法制化して諸外国あるいは近隣の諸国に恐怖を与えるなんということは、自分の国が全部法制化できているんですから、そんなことあろうはずがない。  文部大臣、今後こだわっていきたいということをおっしゃいましたので、ただし時間がありませんから一言だけ注文をつけます。内閣総理大臣が法制化を指示されたということですけれども、国旗・国歌を法制化する以上、少なくとも普通教育の課程であらゆる式典におけるその掲揚、斉唱は義務づけなければならないということであるはずですね。ところが、連立を組みましたから改めて申し上げますけれども、内閣官房長官は、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨ではなく云々、学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導の取り扱いを変えるものではない、そういう政府見解が発表されたと新聞に載っているんですけれども、私、直接聞いていませんから。  でも、私はこれは重大な誤りだと思うんです。少なくとも、国旗掲揚と君が代斉唱の義務づけを行わないような国旗・国歌の法制化であるならば、私はそれはむしろ実現しない方がいいと思います。なぜか。当然でしょう。この政府見解ですと、この法律は気に入らない、気に染まないから、その向きの人たちは遵守しなくてもよろしいと、立法以前に私は暗黙の了解を与えているのと同じことだと思います。  私、これでは法制化する意味がないと思うんですね。気に入らなければ守らなくてもいいというような立法をすること自体が法治国家の面目を、私はむしろ自分で首を絞めていると思いますけれども、これだけ聞いて終わります。  いかがですか。どうかかわっていくのか。
  250. 小野元之

    政府委員(小野元之君) 法律の解釈に関する問題でございますので、私の方で答弁させていただきます。  お話しございましたのは官房長官の記者会見でのことでございますが、国旗・国歌を法制化しました場合に児童生徒に強制するのかどうかということをマスコミに聞かれたわけでございます。そのことに対しましては、御承知のように、先ほど来議論が出ておりますけれども、学習指導要領におきまして、学校の儀式、卒業式、入学式等では国旗を掲揚し、国歌を斉唱するものとするということで、学校に対しては既に学習指導要領における義務づけができておるわけでございます。  法律上の強制かどうかということにつきましては、学校として教育課程に取り上げて、式次第にきちんと取り入れるという意味では、校長教員に対して義務がかぶっておるわけでございますけれども、一人一人の子供の内心に立ち入ってまで強制することはできないということを官房長官はおっしゃったわけでございます。  その趣旨は、あくまでも学校でございますから、式次第に取り入れて子供たちにきちんと指導する、その意味ではすべての学校できちんと指導してほしいということを文部省指導しておるわけでございますけれども、子供たちの心の中まで立ち入るといいますか、どうしても物事に反対する子供も中にはいらっしゃるわけでございまして、その内心までは立ち入らないということを明確にしておるにすぎないわけでございまして、国旗・国歌が法制化をされた場合に、先ほど来大臣も答弁しておりますように、より明確な位置づけができるわけでございまして、文部省としては、これを踏まえて、さらに学校現場に対してきちんとした指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  251. 扇千景

    ○扇千景君 答弁が時間内に入らなくて済みませんでした。今後やります。
  252. 田名部匡省

    田名部匡省君 私が最後ですので、大臣、ちょっと御辛抱いただきたいと思います。  私は、質問要旨も何にもつくっていませんし、お答えの方もどうぞ自由に、考えをお互い言い合う、後から何を言ったかといって揚げ足を取るようなこともいたしませんし、よろしくお願いをしたいと思います。  まず、所信表明の中で、ゆとりの中で生きる力あるいは心の教育と、こういうお話でありますが、心の教育というのはもう昔から文部省がよく使ってきた言葉で、ゆとりというのはごく最近のような気がするんですね。言葉は何となくわかるような気がするんですが、一体今何をやるのかということになると、国民の皆さんも、心の教育と言われても何をやろうかなということがあると思うんです。どうぞその辺、簡単にわかりやすくまずお答えいただきたいと思います。
  253. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まず、ゆとり教育、おわかりいただけるようで大変うれしいのですけれども、今までの教育はかなりかっちりしたものでございました。そのことにおいて日本教育がかなり成功していたことは事実でございます。しかし今日、やはり単に覚えただけではなく、それを理解して、そして自分の血や肉にして、そして行動できるようにしなければいけない。そういう意味で、子供たちが勉強したことをそしゃくするゆとりを与えたい、ゆとりの時間を与えたい、これがゆとり教育ゆとり意味でございます。  同時に、教職員の方たちも大変忙しい。そこで、少し授業の内容を減らすというふうなことでゆとりを持たせたい。具体的には二つございます。一つは、学校を完全に週五日制にする。それからもう一つは、したがって教える量を二割ないし三割削減する。こういうことで具体的にゆとり子供さんたちに持ってもらおうと思っております。  そうすると必ず出てくる問題は、少し知識の量が減って困るじゃないかという御批判が出てくるんですが、私どもは、自分でゆっくりとそしゃくすることによって、さらに自分で勉強するというふうな方向にいくだろう、すなわち生きる力を持つだろうということで、ゆとり教育の成功を信じているわけでございます。  では、心の教育はどういうことかということが今御質問の点でございますけれども、心の教育というのは、やはりみんなそれぞれがきちっとした倫理観を持って、そして他人を思いやる、それからまた正義感をきちっと持つ、あるいは美しいものは美しく思う、こういうふうなことをしっかり教育をしていくことが心の教育だと思っております。  その心の教育をやるためには、前には専ら学校にのみお願いをしていたわけです。それを今回根本的に思想を変えました。すなわち、心の教育ができていないのはなぜかというと、我々年をとったというか、父親であり、母親であり、おじいさんであり、おばあさんであるその世代がそもそもきちっとした心の教育ができていなかったと私は思う。それを思いますから、今回はぜひともみんなが一緒に努力をしてよい心の教育を施していただきたいと思うわけです。  したがいまして、お父さん、お母さんにぜひとも、もっと正しいことは正しいということを教えてほしい、そういうふうなことを今回お願いしようとして今進んでおります。これが心の教育の内容でございます。
  254. 田名部匡省

    田名部匡省君 家庭学校地域社会が一体となってと、こういうことがありますが、今家庭を見ますと、私は、子供教育というのはやっぱり親に相当部分責任があるなと。それは、少子化でありますから、手がかかるんですね。家庭ではお年寄りは一応長寿で、孫でも生まれようものならもう猫かわいがりでしょう。私のところにも孫がおりますけれども、見ておりますと、朝起きると顔を洗ってやる、御飯食べるときは口の中に御飯入れてやる、洋服は着せてやる、出かけるときは靴履かせてくれる、ああいうことを私はうるさく怒るものですが、子供が何にもしないでもなるようになっているんですね。  一方では、学校というと、不登校の問題でありますとか、崩壊だとか荒れるとかさまざまある。あるいは地域社会を見ると、毎日の新聞を見ると、だれがどうした、これがこうした、役所を初め政治家も、地方の市町村長は何か金をもらったといっては逮捕される記事がしょっちゅう載っている。文部大臣、大変いろいろお書きになっていますが、これを変えるというのは容易じゃないなと思うんですね。思うけれども、やらなきゃならぬというふうに思います。  これはお答えいただこうと思ったけれども、時間が余りないので先へ進ませていただきますが、不登校問題について、わかりやすい授業の実施に努める、楽しい学校をつくろうと。私たちのころといえば、年とったやつはすぐ昔の話ということになるけれども、六十人ぐらいの学級で、今三十人学級とか四十人とかっていろいろ議論しておりますが、生活もそんな豊かではなかったけれども、私は学校が楽しくて、勉強しに行くんじゃないんですよ、友達と遊ぶために学校へ行くようなものでして、それでもやっぱりそこそこ人に迷惑をかけないで今日を迎えたということなんですね。  しかし、わかりやすい授業ということになると、どこにポイントを絞って教育するか。今ゆとりの話もありましたが、ゆとりが出てくるとどこへ行くかというと塾へ行くんですよ。お金を持った人たちはみんな塾へ通わせるんですね。そうすると、教室の中に、塾へ行って相当進んだ子供と、お金がなくて勉強もろくにしない子供と一緒に置いておくとどういうことになるか。  私もアイスホッケーの監督を随分長くやりました。どこに絞って教えようかといつも悩んだんですね。トップの選手に的を絞ると今度は下の方がなかなか理解してくれない。真ん中辺に合わせるとうまい選手はおもしろくない。教育というのは難しいなと思う。この間ある学校長の文部大臣賞受賞祝賀会へ行きまして、あいさつしろというから、やっぱりこれからは、特に頭のすぐれた子供一つの教室に集めた方がいい、一緒にしない方がいいと。そうするとレベルの高い授業ができますよ。ただ問題は、教育というのは、知識を高めるのか、人間をつくるのかというところがどうもこうして見ておってよくわからない。  そこで私は、高校、大学受験のときに一番困るのは、スポーツの方でもありますが、体育先生というのは盲腸みたいなものですよ。これは受験科目にないんですから。ですから、今我々の世代になると、会うと体に気をつけて頑張れと言うんですよ。だれも勉強して頑張れと言う人は一人もいない。体に気をつけて、体に気をつけてと言う。それほど健康というのは大事なんですね。大事なんですけれども、体育先生というのは、体育の時間に英語の勉強したり数学の勉強しているから、もう全くスポーツやらないんだ、体育の時間に。  私は、ボランティアを一生懸命やったとか、スポーツとか音楽とか絵とか、それぞれ能力はあるんですね、卒業するとみんなそれぞれの道でやっぱり役に立っているんです。だから、別に物理学者を誕生させるなとは言いませんよ、文部大臣のように優秀な科学者もおるし、それはそれでいいんですよ。だから、受験のときにそういう能力をそれぞれ評価をして大学へ入れる、高校へ入れるということになると、勉強ばっかりしておっては入れませんから、今度はその人たちも別の分野で一生懸命になるんじゃないだろうか。  これが、いろいろ書いてありますよ、ここに。学歴によらず、学校の選抜方法を多様だとか、あるいは改善をしていくというところで私はお考えいただいたらどうかなという気がするんですが、大臣、どうですか。
  255. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 非常に示唆に富むお話をいただきました。今、最終的な御質問は、入学試験をどうするかという点であろうと思います。  しかし、中教審で非常に強く申しましたことは、ちょっと途中でおっしゃられた、よくできる子と普通の子とゆっくり伸びていく子、私はゆっくり伸びていく子を大器晩成型と言っているのですけれども、それぞれにやっぱりきめ細かい教育をしていかなきゃならないということを申し上げているわけであります。  さて、入学試験のことでございますが、中学校から高等学校高等学校から大学、そこにおいてやはりそれぞれの子供の特徴が将来最も生きていくような格好での選択が行われることを望んでおります。さまざまな大学がございます。さまざまな高等学校がありますので、それぞれの学校の特徴に応じて選考をしてほしいと言っているわけであります。そのときには、体力も考えていいし、口頭試問もやってもいいし、調査書でもいいし、さまざまなやり方がある。単に学力試験だけではなくさまざまなやり方でやってくださいということをお願いしているわけでございます。
  256. 田名部匡省

    田名部匡省君 ここに奨学金制度でありますとか第三者評価を含む多面的な評価システム等、いろいろいいことがたくさん書いてありますが、私も五十四年に国会に出てきてから文教関係が長かったのです。そのときによく言うのは、これ地元でも言うとみんな感心して聞いてくれるのですが、東大はもう目的を達したのではないかと、国立大学は。そういってもなかなか反対の人も強いから、せめて授業料は私学と国立と一緒にしたらどうかと。かつては、お金がないが優秀な子供は国立大学に入ったという時代があったけれども、今は塾に通わせて金を持った人の子供が大体入っているのが多いのじゃないでしょうか。となれば、その面での目的は果たした、しかし、いろんな研究とかそういうことで必要だというのならば、私は授業料は原則一緒の方がいいと。  というのは、国立大学に入った人たちの授業料でも何でも国民全体で負担するのです。ところが、自分の子供は国立大学に入れないと私立大学に行きます。そうすると丸々かかるわけですね。丸々持ったほかに国立大学生徒の分も負担すると、両方ですよ。ところが、国立大学に入ると私学分の負担がないのですから。だから、これはもうこのぐらい不公平なことはないと言って演説をやるのです。  どうでしょう、奨学金制度をもっと拡充して、優秀で卒業したら将来はうんと稼ぐのですから、その中から返済をする、それをまた借りると。ぐるぐる回せばいいのですから。そういうふうにしないと、別な方にもっとやらなきゃならぬこと等これから出てくるので、私は、単純な発想で申しわけないのですけれども、実は私学と公立と差のあることは余りいいことではないのではないか、こう思っているのですが、どうでしょうか。
  257. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 授業料のことでございますが、私学と国立の差はそれほど質的なものではなくなりました。平均一・六、七倍ぐらいまで下がっております。入学金はほとんど、医学部とか何かは別ですよ、しかし全体に言って一・一倍とか一・三倍ということでございます。  そこで、一つお考えいただきたいことがあるのです。ヨーロッパ、ドイツ、フランスは大学の授業料はただです。入学金はありません。イギリスもそうです。ただ、イギリスは少し今度から取ろうかと言っているようです。アメリカと日本だけです、非常に高い授業料を取るのは。どちらがいいか。私は、高等教育というのはもっと国が根本的に助けるべきだということを主張しているわけです。私学助成をふやすことによって私学の授業料を減らすべきだと私は思っているのです。これから授業料を私学がふやさないように努力をしていただきたいと思っているわけです。同時に、国立の方も授業料は今の程度に置いておきたい。国家にとって非常に重要な人を育てる上で、やはり高等教育にもっと日本は力を出していかなければならない、そういう意味でもう一度授業料の問題というものは真剣に考えなきゃならないと思っております。そういう点で私学助成のことももっと真剣に考えていかなければならない。  どちらがいいか。私学を本当に伸ばしていって私学だけにすると、これはもう日本だけです、そうしたら。アメリカも私学が多い。七五%が私学です。数の上では日本も七五%が私学。しかしながら、三〇%の子どもだけを、学生だけを育てているのがアメリカの私学です。あとの七〇%は州立が教える。日本は七五%を私学にお願いしているわけです。これでいいのですか。これを私は皆さんにぜひともお考えいただきたい。日本の高等教育を進めていく上でぜひともお考えいただきたいことでございます。
  258. 田名部匡省

    田名部匡省君 それぞれの国の違いがあると思うのです。本当に勉強しようと思って行く生徒が多い国もあれば、まあ結婚式に大学ぐらい卒業、短大ぐらい出ないとということで行くのか、それはもうみんな国によって違うし、大学に行く数は少ないところもあるしさまざまあるので、我が国我が国のこれからの進み方で行かなきゃならない、こう思うのです。  時間が、大分もらったのですけれども余りありません。  ワールドカップサッカーの大会、二〇〇八年のオリンピックの問題、これはまだ決まっていませんから、どこでどうなるかは。忘れないでいただきたいのですが、二〇〇三年冬季アジア大会というのを青森でやるのです。アジアはどうでもいいというなら別ですけれども、ぜひ一生懸命頑張っていい大会をしたいと思っておりますので、お忘れなくとお願いをしておきたいと思います。  それから、よく健康ということ、心身ともに健康的だと。健康というのは何も体力がもりもりしたのが健康なのではなくて、社会的にも優秀でなきゃいかぬわけです。そうすると、今こうして見ているとなかなか健康という人はいないですよ。体は丈夫だけれども社会的にはちょっと問題あるとか、あるいは、別な方はいいが体が弱いとかいろんなことがあるので、さっき言ったように、健康の教育というのは学校で今どの程度されているか。  我々のころは、例えば栄養とか、こうすれば丈夫になるとか、こうすればこうだという授業というのはなかったのです。ただグラウンドへ行ってサッカーやったり柔道やったりしているだけで、これが体育の時間だった。ですから、子供のときから、野菜を食べればこうなる、カルシウムはこうだという教育をずっと受けていると、うちへ帰ってきて、お母さん、もっとカルシウムの多いのを食べさせろとかなんとか言うと思うのです。そういう健康教育学校教育の中でやっぱりやっていく必要があるのじゃないか、こう思います。  それから、私は監督時代に、今でも子供たちに教えるのですけれども、アイスホッケーは、団体スポーツは特に日本が弱い。なぜ弱いか。よくまず見ることを教えなさいと。見れば、どうすればいいかという考えが出てくると思う。  それはさっきの子供と同じ。手とり足とり、それ左へ行け右へ行け。子供は何のことだかわからぬ、どっちへ行けばいいのかというのは。それは怒られるから右に行ったり左に行ったりしているわけですね。ところが、試合をやってこいと言うと、監督はグラウンドに入っていけませんから、サッカーでもラグビーでも。そうすると、そこで初めて子供たちは周りを見て、敵に渡さないようにパスをしなきゃならぬというけれども、ふだんそういう訓練をしていませんから、敵にばかりパスをしている。これは本当なのですよ。やってないことをやらせるのですから、強くなるわけがないと、こう言っているのです。  それは今の日本と同じことなんですよ。見て考える必要はないんです。何か困れば国がやってくれるものだから、何にも考える必要もなきゃ見る必要もないで育ったんです、国民が。今になっていよいよ国がおかしくなってくると、さあ、あれもこれもといったって、ふだんやったことないんですから。だから、教育というのはやっぱり本当にどこに視点を置いて教えてやるかということが非常に大事だ、こう思うんです。  時間がありませんからきょうは私の一方的な話になっちゃいますけれども、後でちょっとお答えいただきたい。  文化財の問題で、三内丸山の遺跡がある。これは私のところばかりじゃありませんが、陳情に来て、何かあるんだそうですね、特別何とか、この史跡でも。だから私は、この間来たから、余計なところへ来るなと。それは国が見てランクをきちっと決めればいいのであって、頼めばやってやるというものでないから来るな、こう言っておきましたが、えてして陳情に来たら何かしてやるというのは、もうそろそろそういうものは、学術的にこの史跡はレベルの高いものだと踏んだらやってやればいいので、この二点をまずちょっと簡単にやってください。
  259. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) まず、文化財のことでございますが、これはきちっと研究者が中心になり、それから文化庁におります専門家が中心になってきちっと客観的に評価しておりますので、単に圧力団体が多いからといってランクが上がるものではございませんので、その点は御安心いただきたいと思います。  もう一つ、何でしたっけ。
  260. 田名部匡省

    田名部匡省君 スポーツの話。
  261. 有馬朗人

    国務大臣有馬朗人君) 私は、もっとスポーツを盛んにして、子供たちのみならず、年とった人も丈夫であるべきだと思っております。そのためにはやはり学校週五日制にして、土日は山を歩く、野原を駆けるようにしていただきたい。そのときには絶対お父さんお母さん子供に塾へ行けというふうな指導をしないでいただきたいと思います。
  262. 田名部匡省

    田名部匡省君 スポーツ振興投票制度というのは私がもう十何年前に提案して、やっと仕上がったんですが、こうして見ると、結構役に立っているところもあるなと。  特に、外国語教育の一層の充実というのは、私はオリンピックに選手で行ったときに、バンクーバーへ行きまして、ミルクが通じなかったんです。私じゃないんですよ、早稲田の先輩が。場所も通じない、行く場所が。発音が悪いものですから、ミルクと言っても、ミルクはわからなかったんです。メルクと言うんですね、向こうは。それで、十年も英語を教わってミルクが通じない英語を教わって何だと、こう言って文教部会で、あのときは文教局長のころですよ。それから外国から先生を入れるようになって、これもできない者の功績だったな、こう思っております。  科技庁長官としてに申し上げますが、核融合のことも、実は私が当選した年に福田先生のお供をして名古屋、大阪、京都大学を視察しまして、これはすばらしいものだというので議員連盟をつくって、みずから事務局長をやったんです。そのときは文部大臣をやった砂田さんが会長で、森さんが幹事長でこれつくったんです。随分予算もとってやりまして、ITERまで伸びてきておるんです。  ところで、きょう国土庁来ていますか。むつ小川原なんですが、二千三百億の借金をしょって、もうこれどうにもならなくなっちゃって、それで銀行に六割債権を放棄してくれと。苫東もそうでしょうね、それでまた新しくつくるんです。新しく会社つくればどんどん土地が売れるようになるんですかと。売れるならつくって結構ですよ。それよりも、私は国が土地を買い取れと。今、平米五千円、県が出して売ろうとしたら売れないんです。  ですから、私は、どこの役所が責任だといって国土審議会のとき聞いたら、私のところでという役所は一つもない。二回の委員会、何ぼ怒られたって頑張り通せば変わりますから……(「大蔵だよ」と呼ぶ者あり)いや、大蔵でもないんですよね。科技庁でもなければどこなんだ。これがないことには無責任になって、ですから私は、むつ小川原開発株式会社の社長が来たときに、もう経費かからないようにしてくれ、売れないんだから会社つぶせと、そうするとあとかかりませんから。それが土地に全部何十年もオンしていって、高い土地になっちゃって売れていないわけですから、この処理の仕方、これは国土庁から聞いたら、いや私の方は十何省庁かの窓口だと言うんです。どこが責任とる役所なんですか、最終的には。
  263. 灘本正博

    説明員灘本正博君) むつ小川原開発につきましては、青森県が基本計画を作成いたしまして、政府におきましてこの基本計画を参酌しつつ所要の措置を講じる旨の閣議口頭了解をやっております。さらに、北東公庫、青森県、それから経団連主導の民間が出資をいたしました第三セクターのむつ小川原開発株式会社が用地の買収、造成、分譲を行ったわけでございます。  こういうふうに、非常に多岐にわたる関係者の協力と連携のもとに進められてきた事業でございます。したがいまして、私どもは先生指摘の十四省庁会議の事務局をもちろんやっておりますし、融資をしております北東公庫の監督も担当をしております。そういう関係で、現在このむつ小川原開発問題の今後のあり方について関係者と一緒に鋭意協議中であるという状況でございます。
  264. 田名部匡省

    田名部匡省君 結局、どこでも同じことをやっているんですが、元本も利息も戻してもらえぬものですから、絶対反対だと、こう言ってやっているんですね。無理して銀行が六割債権放棄すると、銀行は株主総会がもつかどうかわからぬですね。しかも、銀行がおかしくなると今度は公的資金導入だと。小型版を向こうでやらざるを得なくなるんですね。使用目的もあれは石油コンビナートだったんですよ。そんなものはオイルショックでぶっ飛んじゃってそのままになって、見直せとこう言っているんです。そのうちに備蓄タンクができる、核融合の再処理施設ができると。別な方にどんどん進んでいるので、この見直しをしなさいと、こう言っているんですね。  今、県も一生懸命になってやっているようですが、いずれにしても、ITERを呼ぶとか、あるいは文部省は何だというのをいろいろやっているようですが、ITERというのは一つしかないんです、苫小牧もITERだ、青森もITERだというとどっちへ行くんですか。やるならば、いつまでにやりますという確約をすれば銀行は金を続けるんですよ。それがないものですから嫌がっちゃっている、地元の銀行は。  きょうは、答え聞こうたって明確には答えられない話をしていますから、よくよく検討して、県の実情もとらえて、県の負担が余り多くならぬような仕組みというのを考えないと。新幹線も三分の一は地元負担ですから、金持ったところはただで通って、いよいよ貧乏な県に来たら三分の一金出せという話。そういうことばかりやっていると地方はもうもちませんから、どうぞしっかり相談して処理をしていただきたい、こう思います。  もう時間ですから終わります。ありがとうございました。
  265. 南野知惠子

    委員長南野知惠子君) 本日の調査はこの程度とし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会