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1999-07-06 第145回国会 参議院 農林水産委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 谷本  巍君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 佐藤 昭郎君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 藁科 滿治君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 村沢  牧君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君    公述人        全国農業協同組        合中央会常務理        事        山田 俊男君        日本学士院会員        東京大学名誉教        授        大内  力君        財団法人日本生        態系協会会長   池谷 奉文君        農民運動全国連        合会代表常任委        員        小林 節夫君        全日本農民組合        連合会会長   鎌谷 広治君        阿蘇百姓代表  山口 力男君        全国消費者団体        連絡会事務局長  日和佐信子君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○食料農業農村基本法案内閣提出衆議院  送付)     ─────────────
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会公聴会を開会いたします。  本日は、食料農業農村基本法案につきまして、お手元の名簿の公述人方々から御意見を伺います。  まず、午前は、全国農業協同組合中央会常務理事山田俊男君、日本学士院会員東京大学名誉教授大内力君、財団法人日本生態系協会会長池谷奉文君、以上三名の公述人に御出席をいただいております。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、これより順次御意見をお述べいただきますが、あらかじめ会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず山田公述人にお願いいたします。山田公述人
  3. 山田俊男

    公述人山田俊男君) JA全中山田でございます。  本日は、二十一世紀国民の暮らしと命にかかわる憲法ともいうべき食料農業農村基本法案国会審議公述人としてお招きいただきましたこと、まことにありがとうございます。  私は、御審議いただいております食料農業農村基本法案賛成立場から意見を述べさせていただきます。  我々JAグループは、我が国農業がこのまま放置すると崩壊の一途をたどりかねないのではないかとする危機感を抱くとともに、とりわけウルグアイ・ラウンド交渉最後のとりでであった米が特例措置つきながら市場開放がなされてしまったことで、国内農業に関する国民合意への自信も揺らいでしまっておりました。  こうした中で、JAグループは、五年前の第二十回JA全国大会において、食料農業農村に関する新たな基本法制定を求めていくことを決議し、組織内部だけでなく、国民各層を巻き込んだ運動の提起を行ってまいりました。そして、全国一千万人署名運動取り組み全国各地消費者関係団体を巻き込んだ街頭署名シンポジウムの開催に取り組んでまいりました。  そして、食料農業農村基本問題調査会における論議、それを受けての農政改革大綱農政改革プログラムの策定、さらに新たな基本法案検討というさまざまな機会において、JA組合長JA青年部女性部意見も反映する取り組みを行ってまいりました。こうした取り組みを経て、ただいま審議されている食料農業農村基本法案は我々の意見が最大限取り入れられたものになっていると受けとめております。  そこで、最初に法案内容についての基本的な考え方を申し上げたいと存じます。  大きく評価できるのは次の点であります。  一つは、食料安定供給確保について、国内農業生産基本として位置づけたことであります。このことについては、衆議院審議において「国内農業生産の増大を図ることを基本とし、」と修正されましたが、さらに姿勢を明確にしたものであると受けとめております。  二つは、農業農村の多面的な機能発揮基本理念として位置づけたことであります。このことは、法律に盛り込むことで対外的に我が国主張として明確にしていくことの意義は大変大きいと受けとめております。  三つは、食料自給率について、その向上目標基本計画で定めるとしたことであります。今後、作物ごと生産目標設定とあわせて、国民食生活のあり方についても見直しを迫るものになると考えております。  四つは、担い手について、多様な担い手を位置づけたことであります。とりわけ、集落営農の位置づけを求めていた我々JAグループとしては大いに評価できる点でございます。  五つは、中山間地域等の直接支払い実施であります。対象地域対象行為等具体的事項について検討会において一定方向が出されていますが、まさに予算規模がどの程度になるのか、地域で実効あるものとして受けとめられるものになるのかどうか、今後の検討に大いに期待するものであります。  六つは、国境措置について、緊急に必要があるときは関税率調整輸入の制限を行うことを明確に法律に盛り込んだことであります。  七つは、食生活安全性衛生管理等消費者の視点を盛り込んだことであります。生産面での安全性や健康に配慮した環境保全型農業推進に加えて、原産地表示等考え方を明確にしたことは、安全な食品を求める消費者の要請にこたえるだけでなく、国内生産基本需要拡大していく意味を持ったものと考えることができます。  言うまでもなく、新たな基本法理念政策基本を定めたものであります。今後、具体的な政策がどう策定され実施されるかで評価が定まると考えております。そうした意味では、次のことが課題になると考えられ、国会におかれましてもこれらの政策具体化について御審議をお願いするところであります。  一つは、食料自給率向上目標設定取り組みであります。  JAグループは、目標数値についてはカロリーベースで五〇%を打ち出しています。この五〇%の論拠は、少なくとも国民食料安定供給と言う以上は供給熱量の五〇%は国内農業生産確保すべきだということと、昭和五十年代後半の我が国の平均的な食生活世界的に見ても最も栄養バランスがとれた、いわゆる日本型食生活と呼ばれるものであり、当時のカロリーベース自給率が五〇%台であったことからであります。  五〇%の目標を達成するためには相当の困難が伴うと考えられますが、生産面での麦、大豆飼料作物生産振興食生活面での米を中心とした日本型食生活の定着という両面での取り組みが進められなければなりません。我々JAグループは、麦、大豆飼料作物等について具体的な目標を定めた取り組みを行っていく所存であります。同時に、米を中心にした日本型食生活推進に全力を挙げていく所存であります。  二つは、経営安定対策充実強化であります。  JAグループの中には、市場原理だけが進んで所得確保対策がおざなりになるのではないかと不安視する意見があります。というのは、法律案にあるように、需要に応じた生産価格形成輸入品と競争する形になるため、相当低い水準での価格形成になることが想定されるからであります。  しかし、こうした価格形成生産者良品質生産努力とが相まって初めて輸入品で占められている需要を取り返していく条件ができるわけであります。そして、どうしても高くならざるを得ない国内生産コストを補てんする形で所得確保経営安定対策がきっちり充実されて初めて生産振興が図れるわけであります。  こうした中で、民間流通する麦の経営安定資金に見られますように所得確保対策の実現が図られており、大豆についても、所得確保とみなされる対策価格変動を緩和する経営安定対策検討が進められております。  今後、作物の特性を踏まえた対策充実強化がなされるとともに、作物を通じた農家経営全体としての経営安定対策検討が進められることがぜひとも必要であります。  三つは、農地総量確保有効利用推進であります。  農地確保有効利用については、法律案も、「国内農業生産に必要な農地確保」と「農地として利用すべき土地農業上の利用確保」を盛り込んでおります。食料自給率向上国民食料安全保障主張する以上は農地総量確保有効利用に万全を期していかねばなりません。  必要な農地については農振法でゾーニングをしていますが、この必要な農地においても転用が進もうとしております。農地農地として守るために、法律上も何か手だてがないのかどうか、徹底して検討していく必要があります。我々としても、農地農地として守る具体的な取り組み地域JA中心になって行っていく所存であります。  四つは、農業生産法人要件見直し株式会社形態導入です。  JAグループの中には、農業生産法人形態であっても、農地の投機的な取得や地域農業経営との調和が行われないのではないかとする心配が依然として根強くあります。一方、株式会社形態導入した場合、有限会社に比べて構成員拡大が容易であり、集落内の土地持ち非農家を広く構成員にできること、市町村やJA中心になって出資した株式会社形態農業生産法人を設立することも可能になることなど、農業振興地域活性化一つの手法にできるというメリットも一方で期待できます。  こうした中では、さまざまな不安や懸念を払拭する実効ある措置を講ずることが絶対に必要であり、一つには株式会社の参入に際して、きちんと農業生産を行うことになっているのかどうか、厳格な審査基準による審査実施二つには設立後に地域社会と調和した農業生産が行われているのかどうか、行動基準による監視、三つには法人要件を欠いたときの国による機動的な農地の買収が講じられるべきであり、具体化のための検討会においてこうした方向論議が進められることを期待しております。  五つは、中山間地域等直接支払い制度具体化であります。  既に検討会検討が進んでいると聞いていますが、JAグループ内からは、対象地域についてはいわゆる中山間地域だけでなく半島や離島さらには寒冷地等条件不利地域等対象にしてほしい、対象行為については農業生産活動にとどまらず農地保全管理農業用水、農道の維持管理等対象にしてほしい、直接支払い額については平たん地域等との生産コストの差だけでなく農業生産維持できる最低限のコストを償うようにしてほしい等々の意見が出されております。  集落協定に盛り込むべき内容具体化されることになりますが、現場の実情や地域の意向を踏まえた創意工夫が生かせる仕組みとすることが必要です。また、その際は、地域JAがしっかりとした役割を果たすことを求められるのは当然であると考えております。  六つは、このために必要な財源確保であります。  中山間地域等の直接支払い対策にしましても、財源水準いかんでは有名無実化しかねない心配があります。関係省庁予算対策も含めて、政府全体での必要な財源確保を図っていただきたいと考えます。  七つは、次期WTO農業交渉に向けた取り組み強化であります。  次期WTO農業交渉が迫る中で、国民食料安全保障農業農村多面的機能維持発揮国民合意として盛り込んだ新たな基本法制定は大きな後ろ盾になると考えます。  特に、世界最大食料輸入国として、これ以上の輸入拡大食料安全保障はもちろん国民生活国民経済の安定を脅かしかねず、農業農村の持つ多面的機能維持するための政策世界各国相互に認められるべきとする主張論拠になるものと考えます。  もちろん、こうした主張は広く国民各層合意があって初めて実現していくものであります。ウルグアイ・ラウンドにおいては、三度にわたる国会決議がなされたにもかかわらず、経済界やマスコミなど国論が一致しない中で、結局、特例措置つきながら米の市場開放が決定されましたが、今回は新たな基本法中心国民合意を形成していく盤石の基盤ができたことになるわけで、早速、全国段階では学識者消費者団体労働団体農林漁業団体等で構成する食料農林漁業環境フォーラムが設立され、新たな基本法WTO農業交渉についてのシンポジウムが開催されております。これらの動きは、我が国政府の今後の交渉を支える大きな力になると期待しております。  次期WTO農業交渉前哨戦として、七月十五日から五カ国農相会議が開催されると聞いております。中川農林水産大臣国民合意の新たな基本法制定を携えて戦いに臨めるよう、早期可決成立をお願いする次第であります。  最後に、新たな基本法名実ともに実のあるものにしていくためには、生産者消費者が手をとり合った国土・環境保全食料安定供給食料自給率向上に向けた取り組み強化が必要です。とりわけ、生産者JAグループ取り組みは大変重要だと考えております。  そこで、JAグループとしては、食料自給率向上に向けた地域農業振興再編運動を展開することとしております。  一つは、JA地域マネジメント機能を生かした農地利用調整農業経営法人化集落営農推進であります。二つは、農地の不作付解消有効利用対策推進であります。三つは、環境保全型農業推進並びに消費者の信頼を得て国産農産物優位性発揮する生産、流通、販売の取り組みJAグループ挙げた運動として展開することであります。四つは、需要に応じた米の計画生産と不足する麦、大豆飼料作物生産振興地域から積み上げるとともに、集団化担い手対策を実践することであります。五つには、我が国の風土に適した望ましい食生活推進する運動を、米の消費拡大対策と有機的に結びつけて連動させつつ取り組むものであります。  以上、JAグループとしての考えや取り組みについて述べさせていただきました。新たな基本法案早期に成立し、二十一世紀の指針として大きな役割発揮していくことを切にお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。
  4. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  次に、大内公述人にお願いいたします。大内公述人
  5. 大内力

    公述人大内力君) 大内でございます。  時間が大変限られておりまして、個々の論点に立ち入る余裕はないかと思いますので、これからはごく粗っぽい基本的な問題と私が考えますことにつきまして、ごく簡単に申し上げまして御参考に供したいと思います。いろいろ細かい点は後に御質問でもございましたらば、できる限りお答え申し上げたいと思います。  今度の基本法案でございますが、私の理解するところでは基本的には三つの核があると申しますか柱があるというふうに考えております。  その一つは、言うまでもなく食料安保という観点が非常に強く打ち出されたということでございまして、特に国内生産中心として食料自給率を高めていく、こういう観点が明確に出てきたということでございます。  これは言うまでもなく国際的に二十一世紀の初めから食料問題が非常に深刻になるという見通しがかなり広く持たれておりますし、農林水産省もそれにつきましてはいろいろの資料を集めシミュレーションまでやりまして、一定見通しを持っておられるわけでございます。  いずれにせよ、国際的に非常に食料が逼迫するという中で、仮に日本が金に任せて今以上に食料輸入拡大していくということになりますと、これは国際的に大変大きな日本のマイナスになるわけでございます。したがって、基本法案でははっきりしておりませんが、これは単なる日本国民の問題ではなくて、世界全体に対する日本の責任であるという点を明確にして食料自給力向上というものに十分努力をしていただきたいというふうに思います。  二番目の柱は、今、山田さんからもお話がありました多面的機能発揮ということでございます。  従来の農政はともすれば農業一つ産業として考えて、産業的な発展というところに重点が置かれてきたというふうに思われるわけでございますが、数年前の新農政以来、農林省は次第に環境問題その他の多面的な機能という点に重点を置くようになってまいりました。これが中山間地域対策、いわゆる日本型デカップリングの導入というものにもつながっているわけでございます。EUは御承知のとおり十年以上も前からそれをやっているわけでございますが、ようやくおくればせに日本にも入ってきたということは、遅きに失したという感じはいたしますが、大変大きな前進でございまして、ぜひこの問題にこれから重点的に取り組んでいただきたいと思います。  ただし、その点で考えますと、農業だけではとても問題は解決しないわけでございまして、林業、それから考えようによっては内水面の水産業というものまで含めまして、広く一次産業全体、あるいは農山村の工業、第三次産業、そういうものまで含めまして全体の問題を考えるという立場が必要かと思います。これは農業に関する基本法でございますから、林業その他が落ちているのはやむを得ないかもしれませんが、ぜひ林業基本法あるいは漁業基本法等もお考えくださいまして、この点に重点を置いた政策を展開していただきたいというふうに思います。  それから第三は、言うまでもなく価格政策でございますが、ここでは二つの点が強調されているように思われるわけでございます。  基本法案条文そのものには余りはっきり出ておりませんけれども、基本問題調査会、それから農政改革大綱等をずっと見てまいりますと、国内におきましてはできるだけ市場に任せる、価格支持政策を後退させて、むしろ市場の需給に任せた価格に落ちつかせる、それから外に対しましては市場開放を徹底して、そして国際的なルールに従うという考え方が入っております。  これからWTO交渉が間もなく始まります。その中で、日本は、例えば米についてもしばらくの間は高関税維持するということを主張するだろうと思います。しかし、世界の大勢からまいりますと、恐らく数年のうちには今の一〇%とか一五%というような常識的な関税率になり、それをさらに下げていく、こういう国際ルールが決まることはほぼ確実でございますから、この考え方は、結局そういう輸入農産物水準国内農産物価格が引きつけられていくということをそのまま容認する、こういう態度をとっていくように思うわけでございまして、この点には大変大きな疑問がございます。これは山田さんもおっしゃったとおりでございますが、後でもう一度立ち戻りたいと思います。  そういうふうに三つ理解したわけでございますが、前の二つは今申し上げましたように私も大変賛成でございます。というよりは、もっとこの点について大きな努力をしていただきたいということをお願いしたいわけでございますが、疑問になりますことは、この点についてどうも二つ矛盾がこの基本法案には含まれているように思われるということでございます。  その一つは、食料自給度を高めるという中では、当然のことでございましょうが、生産性向上ということが強く要求されるわけでございます。ところが、この基本法案を見ますと、生産性向上をどうやって実現するかという点につきましては、相変わらず土地資源をできるだけ優良な農業経営に集中する、そして規模拡大をする、そして近代技術導入することによって生産性を高めていく、こういう観点がそのまま入っているようでございます。  しかし、今までの経験で申しますと、このこと自体が第一には環境に対して非常に負荷を大きくするという問題を生んできたことは事実でございます。今、世界的に申しましても、日本だけではなくてアメリカを初めヨーロッパにおきましても、農業生産の上昇のために機械化化学化等を進めるということと環境保全ということをどう両立させるかということが大変大きな問題でございますが、その点についてのきちんとした考え方が欠けているのではないか。そうなりますと、多面的機能発揮というのと生産性向上というのはどこで両立し得るのか、どういう矛盾があるのか、こういうことをきちんと考えておく必要がありはしないかということでございます。  それからもう一つは、仮に日本で多少の規模拡大をするといたしましても、従来、農政審議会等で議論がありましたが、例えば水田作で三十ヘクタールとか五十ヘクタールとかいうような規模経営をつくっていく、こういうことでございますが、恐らくそういうものは日本全体を見ましても数えるほどの数しかできないわけでございます。また、そういう数える程度のある程度競争力がある経営ができても、それは基本法案で言っております農業の持続的な発展あるいは農村振興というものと果たして両立し得るのかどうかという問題がございます。  おまけに、三十ヘクタール、五十ヘクタールになりましても、米について申しましても、恐らく主要な米の生産国との間の生産性の格差というものは決して埋まらない。おまけに、日本農地価格は御承知のとおりアメリカに比べて百倍以上高いと言われております。労賃水準も恐らくは世界で一番高い水準であります。そういう高い土地を使い、高い労働力を使って、しかも三十ヘクタールというのは国際的に見れば依然として零細経営でございまして、そういう零細経営国際競争力ができるとは到底信じられないわけでございます。そこで、適当な国境措置というものがどうしても必要だということでございますが、それが先ほど申しましたような国際ルールに従うという基本法案考え方とどう両立し得るのかということが大変大きな問題でございまして、その点に疑問を持たざるを得ないということでございます。  それからもう一つは、今申しましたことでございますが、価格政策をそういうふうに国際的なルールに従って、しかも市場開放をますます進めていくということになりますと、例えば今関税化されました輸入米関税率は従量税で決められておりますが、従価税に直しますと一〇〇〇%を超えるというふうに一般に言われております。それが恐らく一〇%とか一五%に将来下がるということを考えますと、生産性を十倍とかそれ以上に上げなければならない、こういう問題があるわけでございますが、果たしてそういう条件の中で食料安保維持する、あるいは農業の多面的な機能を大切にしてそれをますます発展させるようにしていく、こういう政策がうまく動き得るのかどうか。  特に、条件不利の農山村、あるいは先ほど山田さんのおっしゃったような離島とか半島を含めてもいいわけでございますが、そういうところでは恐らく大部分の農業は成り立たなくなりまして、そして農村振興どころではなくて農村は無人化する、今でもそうなっている山村はたくさんございますが、そういう傾向がますます進むということを考えざるを得ないだろうと思います。したがって、また食料自給力向上ということも果たして可能であるか。  申すまでもなく、食料自給率を高めますためには、米よりはえさの問題が一番日本では重大でございます。今、三千万トン以上のえさを輸入しているわけでございまして、そのえさの対策というものをどうするかということになりますと、特に中山間地域というのは非常に重要な意味を持つわけでございますが、そこが無人化し、農業が成り立たなくなるということになれば、食料自給率を言ってみましてもむだなことにならざるを得ないということでございます。  こういうふうに考えますと、どうもこの基本法の構想には幾つかの重大な矛盾が含まれておりまして、その矛盾について十分我々が納得できるような形で説明が行われていない、あるいはそれに対応し得るような政策が用意されていない、こういう感じをぬぐい切れないわけでございます。  以上のような点につきまして、ぜひ皆さん方の十分な御審議をお願いし、我々が納得できるような対策を打ち出していただきたい、こういうことをお願いする次第でございます。  どうもありがとうございました。
  6. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  次に、池谷公述人にお願いいたします。池谷公述人
  7. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) このたびは農林水産委員会にお招きをいただきまして、大変ありがとうございました。今回の基本法案につきまして意見を述べさせていただきます。  二十一世紀が間もなく参りますが、最大の課題は環境問題でございます。この環境問題はもちろん日本でも大きな問題になっているわけでございますが、その中身は実は地下資源の過剰消費と生物多様性の喪失の問題であります。多くの日本の野生生物の絶滅の問題でございます。  地下資源は私たちのみならず将来世代の財産でもあるわけでございまして、私たちは今世紀、将来世代のことを考えず産業を発達させてまいりました。そのために、地下資源を過剰に消費してまいりました。その結果、レアメタル、つまり銅など幾つかの金属資源については二十一世紀の中ごろには枯渇してしまうということが予測されているわけでございますし、石油につきましても枯渇という問題はもちろんあるわけでございます。それとともに、消費したということはそれだけ等量のごみが出るわけでございまして、二酸化炭素というごみ、それからフロンというごみ、多くのごみが出るわけでございまして、地球温暖化問題を初めといたしまして、多くの環境問題を引き起こしているところでございます。  特に、今回の基本法案に関係いたしますのは生物の多様性の問題でございまして、日本の生物の多様性は極めて深刻な状態にあるということがわかっているところでございます。日本の植物は既に四種類に一種類が絶滅に近い状態でございますし、哺乳類は三種類に一種類、鳥類は五種類に一種類、爬虫類、両生類ともに三種類に一種類、淡水魚類等もやはり三種類に一種類が絶滅の危機にあるという大変な問題になっているわけでございます。生物の多様性は自然生態系の柱であり、つまり日本の自然生態系は今まさに音を立てて崩れているという現状にあるところであります。  生物多様性の喪失ということは、実は感情論でよく話が出てまいりますけれども、そういう問題ではないわけであります。生物の多様性は人間と野生生物のどちらが重要かという問題ではございませんで、こういった問題はそのまま実は食料ですとか医薬品ですとか、それから将来のアルコール燃料等のエネルギーの問題にも関係してまいりまして、私たちの将来世代の生活を支える最も重要な遺伝子資源になっているものでございます。これが永遠に失われることを意味することは大変大きな問題であるということになるわけであります。  一九九二年にブラジルのリオデジャネイロで今世紀最後で最大と言われた国連環境開発会議、地球サミットが開催されました。その翌年、九三年には我が国環境基本法制定されました。将来目指すべき社会の姿として持続的発展が可能な社会を掲げたところでございます。  私たちの社会を支える資源は生物資源と非生物資源の二つであります。この二つが私どもの生活を支え、将来世代の社会を支えるものでございます。再生産が可能なのは実は生物資源だけであります。したがって、持続的発展が可能な社会と申しますのは、生物多様性が保全され、野生生物の持続可能な利用が行われている社会と言えるわけでございまして、多様な野生生物こそ私たちの最終的な生存基盤であるという認識をきちっと持つ必要があります。  野生生物は原則といたしまして各地域ごとに保全される必要があるわけでございます。例えば、トキという生物が中国にいればいいというものではございませんで、やはり日本にもいなければいけないわけであります。遺伝子が違うのであります。  一例でございますけれども、日本全国に多くいたあのメダカが既に絶滅寸前の状態であるというこのことを見ましても、大変大きな問題が日本に起こっているということがわかります。もちろん、トキの問題も同じでございまして、百年前までは日本のトキは全国にいたものであります。こういうメダカから始まりましてトキまで、実は今までの日本の百年間の農業が大きくその絶滅に影響していたということがわかっているところでございます。  こういった多くの遺伝子をきちっと守っておくということは、将来世代にとって大変重要であるということがわかりますとともに、こういった地域地域に住んでいますそれぞれの種を守るということが非常に重要だということでございます。日本全国でどこかにいればもうほかでは要らないというものではなくて、その町々、その村々で野生生物をきちっと守っていくということが重要だということでございます。  かつて田んぼや水路に普通にいましたメダカまでもが全国各地で絶滅し、いよいよレッドデータブックに載せられたということでございますが、このメダカ、実はオリジアス・ラティペスと申しまして、稲の学名オリザに由来しているものでございます。そのメダカ、それからまたトキ、こういったものが実は日本の稲作の原風景の一翼を担っていたものでございまして、それが今絶滅の危機を迎えている、大変なことだということになるわけであります。日本の生物の多様性、すなわち自然生態系はこれからの農政のあり方に大きくかかっているということが言えるわけでございます。  私たち人間は、古来、自然生態系と調和しながら大地を開発してきたわけであります。しかし、最近百年間の開発行為はそれまでと違いまして自然生態系を再生不可能なまでに破壊いたしまして、結果的に現代世代だけの経済的繁栄を目指したものであったと総括せざるを得ない状態にあります。将来世代に環境問題という重い負の財産を多く与えることになってしまいました。こうしたことから、私たちは二十世紀の文明のあり方を反省し、これから始まる百年、つまり二十一世紀を自然生態系を回復する時代と位置づけ、全力を挙げて取り組んでいく必要があると思うわけであります。  自然生態系の柱は生物多様性でございます。私たちは、まさに人類の命運をかけて生物多様性の保全、回復に努めていかなくてはならないわけであります。生物の多様性という人類の生存基盤の崩壊につながる政策は、どのような理由であれ、後の世代の生存可能性を狭めるという意味で問題があるわけであります。日本において生物多様性が保全されるかどうか、その重要なかぎの一つ農政にあるわけであります。日本の持続可能な発展が保障されるために、食料農業農村基本法案に生物多様性の保全という考えが組み込まれていなければならないわけであります。  本基本法案に関する国会審議を拝聴させていただきました。この中で、小渕総理大臣、中川農林水産大臣におかれましては、自然生態系保全、生物多様性保全の重要性につきまして大変御理解をいただいているというふうに感じております。  しかしながら、具体的にこの法案を見せていただきますと、例えば多面的機能発揮、これを書きました第三条、また農業の持続的発展を書きました第四条、農村振興の第五条、農業生産の基盤の整備を書きました第二十四条、自然循環機能維持増進を書いております第三十二条、農村の総合的な振興を書いています第三十四条など、本基本法案に生物多様性保全観点をはっきりと導入する必要があるところであります。この部分がどうもあいまいであります。農村地域における生物多様性保全の重要性を本委員会における議決などによりまして国会の意思として示されることを切に望むものであります。  どうもありがとうございました。
  8. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  なお、御発言は私の指名を待ってからお願いをいたします。また、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願います。  それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 中川義雄

    中川義雄君 きょうは、大変御多忙のところ当委員会に出席されまして、貴重な意見を述べていただきまして、本当にありがとうございました。  私は自民党の中川義雄であります。数点について公述人の皆さん方に質問させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、山田さんにお聞きいたします。  今、JAグループとしては最低五〇%以上の自給率ということを主張されました。私も正直言いますとそういったものを本当に具体化したいと思うんですが、今、大内公述人やいろんな人が言うように、農業の現実を考えたときに、本当に自給率向上させるということは難しいな、こう考えているわけであります。しかも、自給率向上のためには、政府や行政機関だけではできなくて、農業者みずからもそれに立ち向かっていかなければならないわけでありまして、その農業者の中核機関であるJAグループとしてはそのためにどういう具体的な方法で取り組んでいくのか、御意見がありましたらここで述べていただきたいと思います。
  10. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 地域農地をどう利用するか、自給率を五〇%というふうに申し上げた責任も含めまして我々生産者団体としてしっかり取り組まなければならないというふうに思っております。  具体的には、地域農地をどう利用するかということを地域の水田営農振興計画という形で積み上げることではないかというふうに考えております。不足する麦、大豆飼料作物については一定目標を持ってどう地域農地利用するか、さらには、米につきましては生産調整を行っておりますが、米の計画的な生産一定の指標を持ちました水田利用ということを考えていかなければならないと思います。  三点目は、中山間地域におきます条件不利地域の直接支払いにつきましても集落協定を定めるということになっておりまして、集落協定の中でどの農地をどういう形で利用していくか、農業生産を行うかということを定めることになりますので、そういう部分につきましても農協がしっかり役割を果たして地域農地利用を図ってまいりたいというふうに考えております。
  11. 中川義雄

    中川義雄君 今のお話はわかるんですけれども、現実として、例えば米の需給が非常に大変な事情になっていて、具体的に転作しなければ自給率向上にはならない。しかも、米よりカロリー生産性の高い作物を求めていかないと、ただ転作するだけでは、同じ面積を他の面積に変えただけではカロリーの自給率向上は図られないわけです。  ですから、どんなことを考えても自給率向上させようとすると、一つはもっと農業用地を拡大しなければならない。それからもう一つは、それを担う担い手をふやしていかなければならない。それともう一つは、分子であるカロリーというものについて、今は日本国民全体が大変な飽食の時代を迎えている中で、この飽食のままでいいのかというような問題も同じ農業人として国民に求めていかなければならない。  しかし、そのことは大変難しいことだとしましても、少なくとも農地規模拡大だとか、御承知のように遊ばせている土地も今相当ある中で、しかもこの問題につきましては離農者のいろんな条件がある。それぞれのJAがその中に入って、実質的には遊んでいる土地があるという中で具体的にもっとこういうことをやるんだというようなものがあれば示していただきたい。これから考えていくというならそれでもいいんですが、大変難しい大事なことなものですから、もうちょっと具体的にないでしょうか。
  12. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 実は、耕作放棄地が中山間地を中心にしまして全国で十六万ヘクタールあるというふうに言われておりますから、こうした耕作放棄がないようにまず具体的に取り組むことが当然求められるというふうに思います。それから、夏の農地利用が一〇%もなされていない、すなわち一番生産性の高い夏に何も植えられていないという部分があるわけでありまして、それらをきっちり作物で埋めていくということがあります。それから、先生御案内のとおり、土地利用率が全体で九五%で、一〇〇%使われていないという部分があります。  これらにつきまして、先ほど申し上げましたように、地域農地をどう利用するかという観点でこれらの利用率をずっと高めていくという取り組みを展開していきたいということが一つであります。その場合、先生がおっしゃいましたように、担い手がいなくて高齢化してどうするんだという議論があるわけであります。  今、全国では約五百のJAにおきまして農地保有合理化法人の資格を持っておりますが、大変残念なことに、しっかり取り組んでいるJA取り組みができていないJAの格差が余りにも目立っております。もちろん、農地利用調整全体に占めますJA、農協の取り組みは大変いいわけでありますが、そうしたJAの中でも格差が見られるわけでありまして、そこの部分につきましてしっかり活性化を図っていきたいというふうに思います。  それから、先ほども申し上げましたが、米を中心とする日本型食生活の定着の運動につきましては引き続きもっと力を入れて取り組んでいきたいというふうに考えております。
  13. 中川義雄

    中川義雄君 いずれにしましても、食料自給率向上させる、そして食料農業農村の将来にJAの果たす役割というものは非常に大きくなると思うんです。  私の北海道でも見られるんですが、条件の違ういろんな地域でありましても、相当農業としての条件の悪い地域でも、JAがしっかりしている地域は本当に活力のある地域社会がそこに形成されている。しかし、そうでないところにつきましては、かなりおくれた形の中で農民も農村も停滞しているというところが現実にあるわけですね。  ですから、JAはこの基本法推進するに当たって中核的な大きな役割を果たすと思います。その点につきまして、山田さんの方でも全国的に展開されておるようですが、その中で一つ目標としてあるのはJAの統廃合の問題ですね。JA機能をよくするためには、一定規模とそしてスリム化されたJA体制というようなものが必要になってくると思いますから、JAの合併の促進その他についてのJA考え方がありましたらここで述べていただきたいと思います。
  14. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 先生御指摘のとおり、JAによりまして取り組みの違いが相当あるぞということにつきましては、我々もしっかり自覚しておるところであります。  広域合併が大変進んでおるところでありますが、広域合併が進むことによって、実は従来集落なり村を中心にして営農指導が定着していた、ないしは顔見知りの中で丁寧な営農指導事業がなされていた、そういう部分が欠けてきているぞという指摘が一方でありますが、その一方で、広域合併する中で、技術の研究開発、技術の統一、いわば市場戦略の拡大等からしましても、さらに先生御指摘の人材といいますか、有力な、かつ優秀な勢いのある職員が十分働ける場が確保できるという意味におきましても、広域合併の中でそれぞれ優秀なJAがかなり出てきております。そうした事例報告をしっかりやりながら、さらに活性化に努めていきたいというふうに考えております。
  15. 中川義雄

    中川義雄君 次に、大内先生にお伺いしたいと思います。  今の先生の御指摘というのは本当に大変な問題だと私は思うんです。一方では、国際的ないろんな条件がある。それから、国内にもいろんな条件がある。農業にとって二つの大きな問題があると思うんですが、一つは、やはり農業生産性というものは他の工業の生産性と違いましてそう人為的に向上させることができない。ですから、同じような仕組みの中で産業としてとらえていきますと、国内での農業と農外との生産性拡大が大きな国内問題になってきます。それとまた、これも当然のことですが、農業というのは自然との関係があるものですから、自然的な条件の優位な諸外国とそうでない我が国のようなところとを単純に比較すると、これもまた大変な状況になる。この二重の苦を我が国農業は当初から担っていると思うんですね。  そこで、一つは国際的な問題に何としても対処しなければならない。しかも、御承知のように、二十一世紀をすぐ前に控えて、世界的に見ると人口が爆発して飢餓の世紀だなどと言われているわけです。もう自給率四〇%ぐらいということは、相当のお金で外国から輸入に依存して生きていることは事実であります。しかし、そのことは、また逆に言うと、すぐそばにいるアジアやアフリカの諸外国の飢餓に大きなマイナス面をもたらしていることも事実だと思います。  ですから、農業というものを国際的に見たときに、この国として国境措置をどうとるかということは非常に大事なことだと思いますので、まず日本はどういう国境措置をきちっと持って国際的に主張しなければならないか、もしあれば具体的に教えていただきたいと思います。
  16. 大内力

    公述人大内力君) 大変難しい御質問でございますし、事は外交交渉にかかわることでございますから、私に十分お答えできない点が多うございますけれども、やはり基本的には、今のWTO中心といたします一次産品にまで自由貿易をできるだけ広げていくことが望ましいという基本的な物の考え方に対してもう少しきちんとした対案を出し、日本がそれを精力的に主張して国際交渉の場でできるだけその主張を生かしていく努力をするということが必要だと思います。  二次産品あるいは知識産業その他につきましても、自由貿易というのが無条件にいいかどうかという議論は経済学者の間にもいろいろございますが、それはそれといたしまして、私は、一次産品というのは、貿易を自由化いたしますと輸出国にとりましても輸入国にとりましてもいろいろなマイナス面が出てくるというふうに考えております。  例えば、アメリカ農業もそうでございますが、輸出を余り拡大しようといたしまして地力維持ができなくなってきて荒廃が進んでいる、あるいは環境破壊が非常に著しくなるということが起こりますから、輸出国にとっても農産物の輸出を余り拡大するということは大きな問題でございます。また、途上国の林産物の輸出が途上国の環境を著しく破壊したということは御承知のとおりでございます。  それから、輸入国の立場から申しますと、農業は工業と違いまして自然的な条件に制約された産業でございますから、同じ立場、イコールフッティングに立って競争するということはもともと不可能なことでございまして、当然ハンディキャップは一定国境措置で埋めなければならない、こういう問題があるわけでございます。ところが、その辺がどうも今までの国際的な議論の中では抜け落ちておりまして、何か自由貿易が一番望ましいという風潮が非常に支配的になっております。  ですから、やはり一次産品につきましては、今申しましたようないろいろな問題を正確に指摘して、そして国際的な合意のもとに一定ルールをつくる、そのためにWTO中心的な役割を果たすように持っていく、こういう外交的な努力を非常に強めていくということがまず必要ではないかというふうに考えております。
  17. 中川義雄

    中川義雄君 聞きたいことはまだあったんですけれども、時間が来ましたのでこれで失礼させていただきます。申しわけありませんでした。
  18. 和田洋子

    ○和田洋子君 民主党・新緑風会の和田洋子と申します。  きょうは、お三人の先生方、ありがとうございます。  まず、大内先生にお尋ねをいたします。  先生の今ほどのお話をお聞きしますと、この基本法には二本の柱があるようで、コストを上げるためにまた技術の革新をしなければいけない、そういう意味と、日本農業が大変低迷している中で、いつもいつも整合性がない、そして裏腹の問題を抱えているというふうに御指摘をされました。私もまさにそういうふうに思っております。多面的機能とか、本当に農家に要求することが多いにもかかわらず、基本法ではきちんとしたことが何もなされていないということを考えれば、本当に整合性がなくて裏腹な問題を多く抱えている基本法だなというふうに思います。  そして、現行基本法にはすばらしい前文があって、その前文は農家の皆さんの心を本当に揺するもの、私たちは何回読んでみてもすばらしい前文だなというふうに思いますが、この基本法にはそういうものがなくてとても無機質な基本法じゃないかというふうに私は何回も指摘を申し上げておりましたけれども、先生はそういう点でどういうふうに思われますか。
  19. 大内力

    公述人大内力君) これは立法技術と申しますか立法の慣習の問題もございますので、どういうふうにお答えしたらいいのかよくわかりませんが、私はそもそも基本法というのは一つの宣言法にすぎないと思っております。これは罰則も何もついていないわけでございまして、現行の基本法も実際問題としては守られなかった部分がたくさんあるわけでございます。そもそも生みの親である小倉さん、当時の農林次官も基本法農政なんというものは日本になかったとまでおっしゃるくらいでして、一つの宣言法でございますから、余り細かいことをいろいろ書き込むよりも、もっと大所高所に立った基本的な物の考え方政府としての決意、それから国民に訴えるべきことをきちんと書き込むという方が基本法らしいという感じは私も持っております。  その点では、今の基本法の案は余りにも細かくなり過ぎまして、国民が読んでも恐らくきちんとした印象がつくれない、こういうふうな形になっているのではないかという点では先生に賛成でございます。
  20. 和田洋子

    ○和田洋子君 本当に無機質な、農家の皆さんの胸を打つような基本法でない。前文もない。宣言法だからそうなんだというふうなお話ですが、宣言法にしても余りにも胸を打たないという思いで私もおりますので、ぜひ基本計画の中で少しでも農民の皆さんのお役に立てるような基本法に私たちもしていきたいものだというふうに思っております。  山田さんにお尋ねをいたします。  今ほどもお話をしましたとおり、この基本法は、食料安定供給確保とか、多面的機能発揮とか、農業の持続的発展とか、農村振興というものを大きく取り上げながら、農家の皆さんに対しては求めることばかりで、山田さんもおっしゃっておられますように、所得の確保とか、農家の皆さんに対する思いが何もないというふうに思います。そういう求められるものばかりで、農家は今本当に担い手がいない、お嫁さんも来手がない、他産業との所得の格差も広がってしまった、そんな中で、こんなに求められて農家はやっていけるというふうに思いますか。
  21. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 私も、大内先生がおっしゃいましたように、この法律理念法であるといいますか基本的な政策方向を出したものというふうに承知しております。  ですから、この法律を生かすためには、ひとえに具体的な施策を、また関連する法制度をどんなふうに今後準備いただけるか、さらに和田先生が今おっしゃいましたように、基本計画の中にどういう具体的な政策を盛り込んでいただけるかということにひとえにかかっておるというふうに考えております。  先ほど私が公述申し上げました中でも、とりわけ市場原理所得確保経営安定対策の部分につきましても、これはひとえに具体的な作物ごと対策をどんなふうに今後講じていくかということにかかってきておるわけでありまして、そういう部分につきまして我々としても一生懸命取り組む所存でありますが、先生方の御支援もぜひいただきたい、そういう法律になっておるんだろうというふうに承知しております。
  22. 和田洋子

    ○和田洋子君 JAはマネジメント事業をされるというふうにお聞きをしました。今、農家の皆さんはコンピューターを使って世界農業なんかを勉強されて、すばらしい農業経営をしておられる方もたくさんいらっしゃいます。そういう中で、農協の営農指導というのは大変おくれているなんというふうに農家の皆さんがおっしゃっていることもたくさん聞いているわけですが、そういう点はどういうふうに思われますか。
  23. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 大変残念なわけでありますが、先ほどの中川先生からの御指摘にもありましたように、広域合併の中で必ずしも農協は十分な営農指導体制をつくり切れていないのではないか、ないしは地域から遊離している部分が出てきているのではないかという指摘が一方であるのも事実であります。  しかし、その一方で、広域化する中で有為な人材を大きく活用できる。それから、広域合併農協の中には営農センターをつくることにしております。そうした営農センターに市町村行政、さらには普及所、それから食糧事務所等の担当者、こうした形で協議会をつくりまして、知恵を結集して地域の営農指導全体に当たっていくという取り組みを進めているところであります。少しずつ効果は出てきているというふうに思っておりますが、さらに一層これらの機能を強めてまいりたいというふうに考えております。
  24. 和田洋子

    ○和田洋子君 池谷先生にお尋ねをいたします。  人間と野生生物のどちらが重要かというのは感情の問題ではない、野生生物の絶滅はそのまま食料や医薬品など私たちの生活を支える遺伝子資源が失われることを意味するというふうにおっしゃいました。遺伝子資源が失われるということの意味のもう少し詳しい御説明と、また三十二条の自然循環機能維持増進ということは生物多様性保全ということからして大変に必要なことだというふうにおっしゃいましたので、それについてもっと詳しくお尋ねをしたいと思います。
  25. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 遺伝子資源の件でございますけれども、私どもの生活を支えています食料は実は通常の野生の植物の遺伝子資源を利用いたしまして品種改良をしているわけでございます。  この品種改良した作物をずっと食べていけるならばそれはそれでいいわけですが、同一作物をずっとつくってまいりますとどうしても連作障害等が起こりまして、通常ですと一品種十年前後で生産性が下がってまいります。そこで、平均的には十年に一遍品種改良する。そのときに新しい遺伝子がないと次の食料はできないということがあるわけであります。  遺伝子を最も守っているところ、それは実は自然界でございます。人為的に守っているのはジーンバンクといいまして、これは農水省が筑波に持っています種子庫にございます。しかし、あちらの所長さんがおっしゃっていますように、ジーンバンクに幾ら種を集めておいても、その多様性からすれば自然界が持っている方がはるかに大きいということがわかっているところでございます。  我々の食料は非常に豊かでございますが、これは今までの先祖の方々が自然を守ってくれたから、その遺伝子を利用しているだけにすぎないのでありまして、将来世代の人たちが豊かな生活をするためには、今多くの自然を守ってあげなければ豊かな生活はできないということがはっきりわかっているところであります。それはすべての食料に言えることであります。  それから、医薬品でございますが、実は数年前に国連の方から各国で自然を守ってくれという特別声明が出たことがございます。それは、これから使います医薬品が多くの野生生物の遺伝子を利用するということから、遺伝子の絶滅が起こっているということは将来世代の薬ができないということで、何とかそれぞれの国々で自然を守ってくれということがありました。  それから、将来のエネルギーでございますが、もちろん石油・石炭エネルギーというのは有限でございますのでやがてなくなってまいりますけれども、自然生態系をとっておきますと、自然の太陽エネルギーを利用して有機物ができます。その有機物を自然界の中の酵母菌に食わせましてアルコール燃料をつくることが可能であります。そういうふうなことで、エネルギーの一つの柱が将来的にアルコール燃料になるであろうということはほぼわかっているところでございます。それを持続的につくるためにはやはり遺伝子の保存が必要でございまして、多くの遺伝子を守らない限り持続的な日本の国の発展はないということがわかっているところであります。  そういうふうなことから遺伝子の重要性が言われているところでございまして、遺伝子といいますのは、先ほどメダカの例を出しましたけれども、地域地域によって違うのでそれぞれの地域で守らなければだめだと、こういうことでございまして、一例に出しましたトキは中国にいればいいのではなくて、本来は日本のトキを守らなければいけなかったと、こういうことでございます。  それから、三十二条の自然循環機能維持の関係でございます。これは、もちろんこの中に書かれておりますのは、その絵にもございました、農林省の方から説明がございました牛に植物を食わせてという話でございますけれども、その食う食われるという関係、これは自然循環ではございますが、自然循環はもっともっとずっと大きな中で農業というものはあるわけでございまして、堆肥にしてそれを循環させればそれでいいというそんな小さな問題ではございませんで、人類生存の基盤でございます空気をつくりきれいな水をつくっていく、また土壌をつくっていく、しかも遺伝子を守る多くの自然の循環というものをきちっと守るということが大変重要だということでございます。
  26. 和田洋子

    ○和田洋子君 ありがとうございました。終わります。
  27. 風間昶

    ○風間昶君 公明党の風間です。  きょうはお忙しいのにありがとうございます。  まず、山田常務に、先ほどの中川委員からの御質問ともリンクしますが、先ほどおっしゃったことしの米対策に関しての水田の振興計画のいわば見直しといいましょうか、営農システムを披瀝されましたけれども、僕は水田にこのまま日本農業が準拠していっては食料全体からいくと限界性があるのではないかというふうに思うんですが、この部分について、営農指導あるいは流通、販売を一手に束ねておるJAとしてどうお考えになっているのかということを一点お伺いしたいと思います。  それからもう一つは、先ほども中川委員が指摘されましたように、経営安定あるいは農地確保、それから生産法人要件等々、質問に絡んで論述をされた部分について、地域の中でJAとして、マネジメント機能という言葉は格好いいわけでありますけれども、どう役割を果たしていくのか。まさに、この新農業基本法が動き出していく具体的個別政策の中でどう役割を果たすのかというのが大事な視点になってくるのではないかというふうに思いますが、どう考えていらっしゃるのか。  まず、この二点についてお伺いしたいと思います。
  28. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 全体で水田は二百七十万ヘクタールありまして、我が国が所有しております農地全体は四百九十五万と言われておりますから、その大宗を占めておるわけであります。その二百七十万ヘクタールのうち約百万ヘクタール近い部分につきましては、米を植えられない、生産調整を行うという取り組みにしておるわけでありますが、その百万ヘクタール近い部分のうちのおよそ二割の部分につきましては実はほとんど十分な作物が作付けられていないという形で、調整水田なり保全管理の水田、率直に言いまして、米をつくらないだけの水田になっております。  現に、不足する作物対策が今これだけ言われておる中におきまして、麦、大豆飼料作物等不足する作物振興していくという取り組みをきっちり行わない限り、到底JA役割を果たしたことにならないのではないかという思いであります。  もちろん、そうした部分に作付を拡大していくためには、一定の支援対策も必要でありますし技術対策も必要でありますから、今後の水田の活用対策という部分につきましては、それらをしっかり根づかせてもらった上で必要な米の計画生産、それから必要な、ないしは不足する作物のしっかりした目標を持った作付対策地域から積み上げていきたいというのが地域水田営農振興計画の実践のねらいであります。言うは易しくて行うのは大変難しいというふうに思いますが、努力をしていかない限りは活性化はないのではないかというふうに思っているところであります。  それから、地域の中でJAはどういう役割を果たすかということであります。まさに、地域に根差した事業と組織運営があって初めてJAとしての役割があるというふうに考えております。そうした中では、地域担い手と一緒になりまして地域振興を図っていくということが一番だというふうに考えております。  そうした観点で、先ほど申し上げましたが、広域合併農協におきましては、広域営農センターを設置しましてそこにいろいろな知恵を集める、さらにその場に有力な地域担い手に集まっていただくという取り組みの中で地域の活性化を図っていきたいというふうに思いますし、さらに現在、地域の中で本当に地域農業を担う農家が限定されてきているという実情にある中で、そうした中核的な地域担い手と連携する事業の展開を図っていきたいというふうに考えているところであります。
  29. 風間昶

    ○風間昶君 その際、地域担い手、個人のレベルの方々との連携だけでは今後の農業生産活動はだめではないかと思うんですね。つまり、規模拡大に走っていって、なおかつそれでも難しい部分があって生産法人なりいろんな組織形態もあるわけですし、また自治体は自治体でJAさんの営農状況をじっと横目で見ながら農業基盤の整備について非常な関心を持っているわけですから、そことの関連で、ではどういう役割JAとして果たしていくのかということが問われるのではないかと思いますが、もうちょっと具体的に教えていただきたいと思います。
  30. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 地域の中で集落ごとに見ましても、とりわけ水田農業という観点で見ますと、四、五十ヘクタール抱えております集落の中で、六十歳未満で男子で将来とも農業をやっていくぞというふうに言える人はそれこそ二人いるか三人いるかというのが今の実情であります。そうした担い手がしっかり地域に残って農業をやってくれない限りは、地域振興は到底望むべくもないというふうに思っております。  もちろん、農協が中心になりまして集落の営農組合をつくるなりして、そしてそれら残っております中核的な農家にオペレーターをやってもらうなりしながら生産法人を育成しておるところでありますが、しかしその場合におきましても中心的な農家がちゃんと残るということが基本であります。  今、風間先生がおっしゃいましたように、そうした中核的な農家がむしろ規模拡大していく中で農協離れを起こしてきている側面があるのではないかという御指摘かと思いますが、我々JAの事業運営におきましても、そうした中核的な農家と密接に結びつく、さらには中核的な農家が求める事業展開をきっちりやっていける、そうした新しい事業運営をやっていかない限り、一緒になって地域農業振興はできないという考え方でもって生産法人との具体的な連携を進めているところであります。
  31. 風間昶

    ○風間昶君 それでは、池谷公述人にお伺いします。  先ほど自然と調和する農業ということの大事さをトキとメダカのデータを示していただきながら必要性を御主張されました。極めて根本の部分だと私は思うんです。  そこで、この法案でも環境という言葉が数カ所出てくるわけです。第三条には「自然環境保全」という言葉が出てきますし、御指摘の二十四条では「地域の特性に応じて、環境との調和に配慮しつつ、」という法文になっているわけですが、これは恐らくつくった政府の方が使い方を分けているということは何らかの意図があると感じる部分も実はないわけではないわけでありまして、そういう意味で、この三条に言うところの「自然環境保全」ということと、とりわけ二十四条の「環境との調和に配慮しつつ、」ということのとらえ方について御意見を伺いたいと思います。
  32. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) まず、三条でございますけれども、基本的に農業といいますのは第一次産業でございまして、少なくとも環境に負荷を与える産業であるということは世界的な認識でございます。したがいまして、自然環境農業が行われることによって守られてきたということには基本的にはならない。結果として伝統的農業がかなり自然を守ってきたという部分はあるわけでございますけれども、この三条の認識はかなり世界的な認識とは違っているような感じが強くいたします。  それから、二十四条の点でございますけれども、「環境との調和に配慮しつつ、」というふうに言われているわけであります。これは本来であれば環境保全と調和しつつ、そういうことであれば、例えば日本の生物多様性国家戦略ですとか環境基本法の関係から見ますと、そういった環境と調和しつつということだとわかるんですが、それになおかつ「配慮しつつ、」ということになりますとかなり薄まった感じでございまして、二十一世紀環境問題の柱になるということからするとかなり違った認識ではないか。EUが九二年から言っております環境にもっと力を入れるんだ、アメリカで八五年の農業法から入りました環境をもっと重大視していくんだというはっきりした目標からいいますと、「配慮」という言葉で二十一世紀農業を守り、二十一世紀国民を守ることができるかどうか、大変私は疑問に思うところであります。
  33. 風間昶

    ○風間昶君 解釈の問題もありますけれども、今の池谷さんの御発言は確かに大事な視点だと思います。  そこで、この法律を変える変えないということの問題はまたさておきまして、今お話しされた中には、要するに環境保全者としての農業もさることながら、環境加害者としての農業の反省というか、総括の部分がある意味では欠けていたのではないかということが原因として求められるのではないかというふうに思うわけです。そうしますと、先ほど大内先生も農業環境の両立ということは大変難しいとおっしゃいました。そうであれば、日本型の環境保全型農業というのは一体何なのかということになるんじゃないかというふうに思います。もちろん、それには環境基本法もあることですから、環境アセスあるいは環境アセスの後のモニタリングやその結果を国民、特に消費者へ情報提供する、公開するということがあるわけでありますけれども、これは基本的なことであります。  では、どうしたら環境農業ということが、まさに自然と調和した農業という文字どおりの一くくりの言葉でおさめられるような日本型の両立というのはどういう具体的なことが考えられるのか、池谷さんに伺いたいと思います。
  34. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 先月、六月に日本におきましても環境アセス法がいよいよ施行になったわけでございますが、具体的に環境アセスというものを本来であれば農林業においてもきちっと入れるべきでございまして、残念ながら今回の六月からのものの中には入っていないわけであります。  具体的に環境との調和といいますのは、もう少し深く考えてみますと、実は生物の多様性をどう守るか、つまり多くの野生の生き物をどう守るかということでございまして、それは実は環境アセスをきちっとすること以外に方法はございません。そのことによって、どこは農地としていくのか、どこは自然地としていくのかという土地利用をきちっとすることが基本であります。  それから、今までの農法のあり方、これも経済性を重視したために多くの野生生物を滅ぼしてきたことは事実でございますので、農法のあり方も改善していく。どこまで行くのか。それは基本的には日本に古来からいた野生生物を滅ぼさない範囲で開発するということ、つまり環境を守っていきながら発展できるという経済活動、そこに行き着くことになるのであろうというふうに思っています。
  35. 風間昶

    ○風間昶君 そうすると、耕さない農業、いわゆる野焼きも含めて、これがまた一つはダイオキシンの発生につながっていくという欠点もあるわけでありますから、そこまで極端でないにしても、そのことも一つは視野に入れるべきだという御主張でしょうか。
  36. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 一九八五年のアメリカ農業法がございますが、あのCRP政策に出ていますことは大変参考になるのでございまして、実はあれは持続的農業をするためには農地、土壌を守らなきゃいけないということとともに、多くの野生生物を守る必要があるという二つの要素があるわけであります。  持続的農業の基盤はその二つでございまして、土壌をどう守り、その遺伝子となる多くの野生生物をどう守るかということが基盤でございまして、本来であればそのことを議論して基本法の中にきちっと入れる必要があるのではないかというふうに思っております。
  37. 風間昶

    ○風間昶君 ありがとうございました。終わります。
  38. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 御苦労さまでございます。日本共産党の大沢辰美でございます。  最初に、大内先生にお尋ねしたいんですけれども、先生がお書きになりました「農業基本法三十年」というのを読ませていただきました。その中で、先生は、基本法農政という名のもとに展開された農政の最も重大な問題であったと言えるのが対外関係の調整に関する政策だと指摘をされております。無限定的な輸入自由化と関税引き下げとが生産に重大な支障を与え自給率の大幅低下を招いているという指摘、アメリカの圧力に次々と譲歩してきたことが決定的な影響を及ぼしているという指摘、結果においてはそれが自立経営の育成を吹き飛ばしてしまったのであると指摘をされていました。  私は、新たな基本法案が自由化推進輸入依存政策を続けようとしていることに重大な問題を感じております。新たな基本法制定に当たりまして、また次期WTO交渉を控えて、先生の指摘は重要な指摘だと思っています。先ほども基本的な例を挙げられて、特に米の例を述べられましたけれども、数年で大変なことになるという指摘をされました。私もそのように思います。  我が国の自由化推進輸入依存政策の転換、有効な国境措置について今質問もございました。先生も基本的には少しお答えをいただいたんですけれども、その点についてもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思うんですが、よろしくお願いします。
  39. 大内力

    公述人大内力君) 前の基本法のときには私も基本問題調査会委員をしておりまして、多少法案をつくるのに参加をしたわけでございますが、あのときはまだ日本は開放体制に入る直前といいますか、そろそろ入りつつあるという入り口のあたりでございまして、前の基本法では十分国際的な関係というものについての考慮がなかったことは確かでございます。ただし、当時は食料自給率が八〇%を超えておりまして、ほぼそれを守っていくということを前提として基本法は考えられていたと思います。  ところが、不思議なことに、基本法ができました直後から日本の開放体制が急激に進み始める。そして今日、まず林産物が先に犠牲になりまして、日本林業は御案内のようにもうほとんど瀕死の状態に陥ってしまうというところまで参りました。次第に農業にそれが及びまして、最後に米の関税化まで来るということになったわけでございます。  そういうふうに、国境において国内農業生産をどういう形で維持していくかということに対応したような措置を考える、こういうことがほとんど行われないままに自由化されてきたというところに今日大変大きな問題があるかと思います。  今度の基本法におきましてはその点が非常に不明確にしか規定されておりませんで、最初に山田さんが御指摘になりました国境措置は私の理解ではセーフガードにすぎないわけでございまして、非常事態、非常のときに大量の農産物が輸入されて、それが国内の農産物に非常に大きな影響を及ぼすときには適当な制限措置がとれると。しかし、これは一時的非常措置みたいなものでございまして、恒常的に国内農業維持していくためにどういう国境措置をとるかということについては基本法は何も言っていないというふうに理解しているわけでございます。  しかも、先ほど申し上げました基本問題調査会からの流れを見ますと、国際ルールが決まれば、やむを得ずか喜んでか知りませんが、とにかくそれに従っていく、こういう流れになっているわけでございますから、結局は自由化の方に押し流されていって、しかも関税率を年々下げていく、こういうことにならざるを得ないのではないかというふうに私は思っております。  そこで、基本的にはこれは外交交渉の問題で大変難しい、日本だけがどこまで頑張れるかという問題がございますし、今のWTOの規則によりますと、国境措置はできるだけ取り除かなければならないという義務を日本も負っているわけでございますから、すぐにどれだけの実効のある国境措置がとれるかということはなかなかわかりませんが、ただ唯一考えられますことは、仮に関税あるいは輸入制限等ができないといたしますならば、基本法に多少出ております価格に対する直接の所得補償、これをもう少し有効に利用する、特に中山間地域に対するデカップリングの補償というものも十分に利用していくということによって、しかもこれは生産を促進するような形で支出をいたしますと御承知のとおりWTOの赤信号にひっかかるというおそれがございますから、むしろ環境保全あるいは多面的機能振興ということを十分に念頭に置いて、そのために農業なり林業なりの正しいあり方、それから山村に相当の住民が定着をして環境保全にもそれなりの努力ができる、そういう仕組みを直接所得補償でつくっていく、これ以外には今のところちょっと考えようがないかと思います。  ただし、これには相当の予算が必要でございますから、その予算措置をどうするかということでございまして、聞くところによりますと、これは本当かどうか、うわさでございますが、今度の中山間地域の所得補償でもせいぜいのところ一軒当たり年に二十万円ぐらいだということが言われているようでございます。一軒二十万円ぐらいのお金を出しましても、月にすれば一万円とか二万円、一人にすれば二、三千円というような金でございますからほとんど効果がないということは明らかでございまして、この辺は今後皆さん方に十分検討していただきたいというふうに考えております。
  40. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 ありがとうございます。  もう一点、先生にお尋ねしたいんですけれども、農業新聞のインタビューの中で、先生が食料農業農村基本問題調査会の最終答申は新政策内容とほぼ同じと言っておられますね。そういうふうに批判をされていらっしゃいましたが、私どもも同様に考えております。構造政策的には規模拡大、効率化一辺倒の新政策はその矛盾が非常に明確になってきております。その新政策を継続するような基本法ではこれからの日本農業の再建、発展は図れないと思っています。  先生が新基本法が新政策内容を継続していると指摘されている点について、その問題点を含めて詳しくお尋ねしたいと思うんです。
  41. 大内力

    公述人大内力君) 大変いろいろな点がございまして、時間の制約もございますので十分お答えできませんけれども、例えば今の規模拡大という考え方、そして稲作について申しますと三十ヘクタールなり五十ヘクタールの規模拡大をしていけば日本農業国際競争力ができる、それをできるだけ育成していって生産性を上げコストダウンを図ることが将来の重要な課題だと、こういう考え方は新農政から始まりましてだんだん発展しながら今度の基本法にも受け継がれているというふうに私は理解しているわけでございます。  しかし、これはいろいろな問題がございまして、一つは、先ほど申し上げましたように、たとえ三十ヘクタールとか五十ヘクタールに規模拡大しても、これもいろいろな試算がございましてよくわかりませんが、せいぜいコストは半分ぐらいに下がるにすぎないと言われております。ところが、関税率が仮に一〇%に下がるということになりますと米価は十分の一ぐらいに下がるということでございますから、生産性が倍になってコストが半分になったところで稲作は成り立たなくなるということは当然のことでございますし、これは平均の話ですから、中山間地域のような条件不利地域では到底そういうことは実現できない。ということは、結局、国内の稲作がほとんど成り立たなくなるということを招くのではないかという問題がございます。  それから、これは池谷さんのお話とも関連しますが、そういう日本の大規模経営というのはどうしてもトラクターを入れ、それから化学肥料を大量に使う、それから農薬を使うというような形で生産性を上げるということを今までやってきたわけでございまして、これが大変な公害を引き起こしております。  特に、生物に対しても大変大きな負担をかけているわけでございまして、先ほどお話しのメダカもそうだと思います。これも大部分は農薬でやられているんだろうと思いますし、ドジョウがいなくなったということもトキにとっては大変大きな問題だったわけでございますが、なかんずく土壌微生物がそれによって非常に力を失いまして数も減りまして、したがって地力を維持するということがほとんどできなくなってきているということは非常に大きな問題があるわけでございます。  ですから、これから先の農業というのは、ただ規模拡大し合理化してコストを下げればそれでいいということではなくて、まさに環境に対して負荷をできるだけ小さくし、あるいは環境が改良できるということをあわせて考えながら、どういう農法を採用していくかということを考えなければならない。そのためには生産性が落ちるかもしれません。既にEUは、ある程度生産性が落ちてもやむを得ない、なるべく化学肥料や農薬は使わないようにしよう、こういう方針をとっているわけでございまして、日本もそろそろそういう方向を考えながら、それに償うだけの所得を農民に対して、生産者に対してどう補償をするか、こういう道を考えていかなければならない、そういう時期に入ってきているのではないかというふうに思っております。
  42. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 ありがとうございました。  一点、山田さんにお尋ねしたいんですけれども、自給率のことについてはほかの方からも質問がありましたが、私もちょっと一点伺います。  目標について具体的に、少なくとも五〇%という目標を掲げておられます。私たちも自給率向上基本法基本理念とするということで、できれば早い時期に五〇%以上に引き上げることを法案に明記すべきという方針を持っております。各野党の皆さんも審議を通じた中で自給率目標を明示すべきだと繰り返し言われていますが、基本計画の中でと政府の方は逃げ込んでいまして、政府からはいまだに自給率目標についての明確な答弁がございません。  その点についてJAとしてどのようにお考えか、一点お聞きします。
  43. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 食料安全保障国民への安定供給という観点からしますと、五〇%は何としてでも目標として定めて、さらにその目標に向けて取り組んでいく必要があるのではないかというふうに考えております。  ちょうど昭和六十年のときがカロリーベース自給率が五二%であります。その六十年のカロリーベース五二%の際の生産の動向を比較してみますと、供給熱量が当時と違いますので正確な比較はできないわけでありますが、あくまで生産面で比較してみますと、小麦では生産量で五三%増加させる、さらに大豆で五七%増加させる、さらに需要面では、米の消費量を七%逆にふやす、こういう取り組みの中で五〇%に近づけていく努力ができるものというふうに思っております。その際、作付面積では小麦、大豆だけでも十二万六千ヘクタールふやさなきゃいかぬことになります。耕地の利用率は今九五%でありますが、それを一〇%高めまして一〇五%へ持っていくということが必要になります。  それでは、これだけで五〇%を達成できるのかということになりますと、それだけでも大変難しいというふうに思いますが、少なくともそういう方向に向けた具体的な我々の努力もなされていってしかるべきだというふうに思っております。今後、基本計画が策定され、また国会でも御論議になろうかというふうに思っておりますが、我々としましては、基本計画の中に具体的に目標を定めていただいて、そして作目別の生産目標も具体的に定めて、そのことを一定の基準にして地域から積み上げていくという取り組みをしていきたいというふうに考えております。
  44. 谷本巍

    ○谷本巍君 初めに、大内先生に伺いたいと存じます。二点ほどお伺いいたします。  一つは中山間地域のことでありますけれども、このままでいったら、自給率の引き上げはおろか無人化していくであろうと、極めてショッキングなお話がございました。実態的にはまさしく私もそうだろうと思います。そうなってきたら川下の農業がもたない、川下の都市がもたないというようなことになっていくだろうと存じます。  こういう危機的状況を回避していくのには、先生が御指摘になっておりましたような国際化への対応の問題もあるでしょうし、それからまた農政のあり方の問題に基本があるだろうと存じます。そうした問題点があるわけでありますけれども、何といいましょうか、中山間地域対策についての根本的な対策と応急的な対策、その点で何か御教示いただけるようなことがございましたらひとつお話しいただきたい、これが第一点であります。  それから二つ目は、先生から農業基本法だけじゃなくて林業、漁業の方についても基本法をつくるべきだというお話がございました。それはなぜかということについて先生は触れておられませんでしたが、私どもも同じような考え方を持っておりますのは、これまでの基本法というのは縦割り、単品であったと。やっぱり環境の時代に見合うようにしていくのには、もう一遍そこのところのやり直しが必要になってきた。そういう意味で、新しい林業・漁業基本法が必要になっているのではないかと思うんですが、この点についても御所見がございましたらあわせて御教示いただきたいと存じます。
  45. 大内力

    公述人大内力君) 前の方の問題につきましてはいろいろの考え方があると思います。私は具体的なことを十分考えているわけではございませんが、何と申しましてもEUの条件不利地域対策というものにはかなり学ぶべき点が多いのではないかというふうに思っております。  EUの場合に非常に重要なことは、それぞれの住民、中山間地、農山村の生産者、あるいはその他の住民と、それから国なり地方団体になりますか、いずれにせよきちんとした契約をまずつくる。そして、一定の農法においてどれだけの家畜を飼い、どれだけの作物をどういう形で耕作するかということを決めて、それの生産費を積み上げまして、不足が生ずる部分については一定の所得を補償する、こういう考え方が強く入っているわけでございます。  そこで、先ほど山田さんからもお話がありましたが、特に農山地域につきましてはまず住民の組織をきちんとつくる、これはJA中心になるのか市町村が中心になるのか、いろいろ考えようはございましょう。あるいは地域差がございますから一律にする必要はないのかもしれませんが、いずれにせよそれときちんとした契約を結んで農法の採用の仕方等々を考えると同時に、所得については国がきちんとした責任を負う、こういう考え方をできるだけ早く詰めていく必要がありはしないかというふうに思っております。  それから、二番目の点につきましては、特に林業の方が先ほど申し上げましたようにはるかに大きな問題になっておりまして、ほとんど施業が放棄されているという状態になっております。それに追い手をかけるように、御案内のように国有林改革におきまして国有林の従業者の大量の首切りが行われております。今でさえ一万三千人でございますが、やがて五千人に減らすとか八千人にするとか、こういうことが計画されております。五千人とか八千人ということになりますと、恐らく帳面をつけたり調査をしたりする職員だけで、現場で働く人は一人もいなくなるというような状態にならざるを得ないわけでございます。  しかし、中山間地域というのは農業だけで経済が成り立つということはほとんどあり得ないわけでございますから、やはり林業を十分に考えまして、しかもこれは木材生産だけではなくて、山はいろいろな資源を持っております。例えば、既にもう大部分が消滅いたしましたけれども、木炭生産というふうなものが今日またいろいろ復活が図られて、また木炭は燃料としてはともかくとして、いろいろな用途があることは御承知のとおりでございまして、木炭生産をどういうふうにして回復させて、山の手入れをそれと結びつけながらどうして行うかというような問題がございます。  ついでに申し上げますと、木炭は中国の燃料問題を解決するためには大変重要でございまして、ぜひ中国に木炭を供給するという形で、中国の燃料問題に日本も応援をしていくということが大切だと思います。御承知のとおり、中国は木が大変足りない。しかも、燃料が足りないものですから、やたらに木を切ってしまいますので、砂漠化が猛烈な勢いで進んでおります。それを防ごうとして今練炭が随分普及しておりますが、この練炭は亜硫酸ガスを大量に発生いたしまして、大気汚染に大変大きな問題を引き起こしている。中国の燃料問題というのは大変深刻でございまして、例えば日本の木炭をそれにうまく結びつけることができないかどうかというような工夫をすることが多分あるかと思います。  いずれにせよ、林業農業とを別々に分けてしまいまして、農政農政、林政は林政で別々にする、また基本法も別にある、こういう考え方をやめて、むしろ農山村の産業的な基盤を整備するために林業農業もあわせて、あるいは地域によっては水産業まで取り込んで多様な生産基盤をどういうふうに整備していくか、こういう物の考え方をしていただきたい、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  46. 谷本巍

    ○谷本巍君 山田全中常務に伺います。  先ほど常務からは営農上の対応について具体的なお話がございました。それをやっていく上で、政策上の条件整備として何と何があるのか。私が思いますのは、土地利用、人の問題、それから物ですね、施設とか機械とか。これも集落単位、それから小さいところは数カ集落単位でどういうぐあいに活用していくかということをみんなで知恵を絞らなきゃならぬような状況になっているわけですね。地域地域によって非常に状況が違います。そうしますと、この種のことをやっていくのにはやはり分権的な手法というのが基本に据えられる必要があるだろうと政策上の問題として思うことが一つです。  それから、もう一つ価格問題です。経営一定程度安定させていくのには、価格問題についていろいろな考え方が出されると思うんです。経営安定対策ということでは、相場が下がったときに補償水準が下がっていくといったような問題等々がありまして、価格対策についての要望が強い、そうした点があるだろうと思いますが、それらの点についてどのようにお考えになっておりますか。
  47. 山田俊男

    公述人山田俊男君) JA役割としまして、先ほども申し上げましたが、一ないし数集落の単位で担い手なり農地なり施設を有機的に統合しまして、そしてJAがその中におきましてマネジメント機能を果たす、これが大変重要だというふうに考えております。そのことによって初めて地域内の農地を有効に利用することができるわけでありますし、数少なくなっております担い手担い手としてちゃんと所得を確保していくという意味でも大変意義のある取り組みだというふうに思っております。そうした取り組みを促進させるための政策課題でありますが、農地利用調整をもっと弾力的に、ないしはそれを支援する仕組みが何としても必要だというふうに考えております。これが第一点であります。  二点目は、先生の御指摘にありますように、不足する大豆、それから麦をつくることにしましても、現に大きな価格水準の差があります。今後、需要に見合った生産を行っていくことになるわけでありますが、そこの間を埋める経営安定対策所得確保対策が十分なものでない限りは、とてもそのことは望むべくもないというふうに考えているところであります。さらに、地域の中では米の計画的な生産に匹敵する一定の助成体系がない限り、麦、大豆生産振興も望むべくもないわけでありまして、そういう意味合いにおきましては、米に負けない所得確保対策を麦、大豆ともに講じていただきたいということがあります。  最後に、施設等の整備であります。麦につきましても大豆につきましても、大量の生産を今後行う、計画的な生産を行うということになった場合に、必ずしも施設が十分ではありません。それらについてきっちりした計画的な施設配置が必要かというふうに考えております。
  48. 谷本巍

    ○谷本巍君 最後に、池谷会長に伺います。  私の持ち時間が少なくなってきておりますので、一点だけ伺うことにいたします。  事前に御提出をいただきました参考文書を拝見させていただきました。その中で、減反問題について会長一定の提言をしておられました。山田公述人のお話でも御承知と存じますが、自給率引き上げとの絡みから減反を総見直ししていくというような状況に入ってまいります。会長さんはかねがね減反批判をやってこられました。端的に申し上げますと、生産調整のみを目的とした農家への補償制度でしかない、生態系保全とリンクした減反政策への転換を行うべきだということを言っておられるわけであります。生態系保全を取り込んだ減反ということになりますか、その辺のところをもう少し具体的に御教示いただけませんか。
  49. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 減反問題でございますけれども、もちろん諸事情から減反をしなきゃならないということはよく理解をするところであります。しかしながら、どういう形で減反をするかということが大変重要でございまして、具体的に申しますと、例えばコスモス畑にしてそれでお金を払って減反をしていくという方法もあるわけでございますが、実は日本の多くの野生生物が絶滅に向かっているわけですから、例えばシギやチドリというものが春、秋に日本を渡っていきます。水田に少し水を張るだけでもそういった遺伝子を守ることができる、多くの野生生物を守ることができるわけでございます。  環境保全するということで農家の人にお金を払っていく、そういう格好で減反をするということはもはやアメリカにおきましてもヨーロッパにおきましても普通にやっていることでございますから、ただ単に外来品種を植えてそれでいいんだということではなくて、将来世代のことを考えた、環境とリンクした、環境を考えた施策を当然打つべきである。そのことは農業者にも御理解を願わなきゃなりませんし、それから都市住民にも御理解を願わなきゃならないわけでございますが、現在、環境問題がこれだけ大きなことになっておりますから、国民としてはかなり理解できるものであろうと思うわけでございまして、政策的にちょっと方向が違うのではないかなという感じを持っているわけであります。
  50. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  まず、大内先生にお尋ねいたします。  先生の先ほどのお話によりますと、二つ矛盾があると。国際ルールに基づいていくならばいわゆる自由貿易、国内においては市場原理導入ということから、そこには当然生産性向上環境保全という矛盾が出てくるというお話、さらにはそういう国際ルールに対して国内対策をどう進めていくかということに対しての整合性の問題、こういうお話がありました。この二つ矛盾、本当に私もこの矛盾を感じておりまして、ここの中でどうやったらその矛盾をうまく整合性に結びつけることができるのかな、これはまさに方程式より難しいような感じがいたすわけでありますが、その整合性をどのようにしたら持つことができるか、お教えいただければと思います。
  51. 大内力

    公述人大内力君) 先ほど申し上げましたように、市場開放あるいは規制をできるだけ緩和して市場経済にゆだねる、こういう基本的な考え方は今世界、少なくとも先進国においては共通の考え方になっておりますし、日本でもまたそれを促進しようという考え方でずっと来ているわけでございます。ですから、この勢いをどういうふうに変えていくかということが一つの大変大きな問題でございます。  少なくとも農業に関して申しますならば、次に始まりますWTOのラウンドの中で、一次産品については自由貿易をただ無限定的に広げていくということが、環境にとっても、あるいはそれぞれの国の経済にとっても大変大きな問題を持っているということをもっと明確に主張しながら、しかしそうはいっても、すぐに国際世論が動くかどうかということは、これは大変困難な問題でございますからすぐにはできないと思いますが、少なくとも日本は最大限そういう努力をする必要があるかと思います。  それについて一つつけ加えさせていただけば、日本は全体として国際機関に対しまして、IMFに対してもそうですし国連に対してもそうでございますが、金は随分出して費用の負担はしておりますけれども、職員が非常に少ないですね。WTOにもほとんど日本人の職員は行っていない。今はよく知りませんが、二、三年前に聞いたところでは、二人とか三人しかいないという話を聞きまして私もびっくりしたわけでございます。公式の議論のほかに、事務局でいろいろな案をつくったりいろいろなスケジュールを組むわけでございますから、日本人の職員を相当ふやして、有能な職員が準備をきちっとしながら、日本主張なり要求が国際機関の中で十分に生きていくような、そういう努力をもっとやっていく必要がありはしないだろうかということを感じております。  それから、国内につきましては世論全体の考え方が少しずつは変わりつつあるのではないか。特に、今のように環境の問題等が大きな関心を呼ぶようになりますと、ただ規制緩和とか市場経済にゆだねるとかいうことだけではうまくいかないという意識はだんだん国民の間に広がっていると思います。  それと同時に、もう少しそういう問題をきちんと反省すると申しますか、経済学の言葉で言えば、いわゆる市場の失敗と言われるものがどういう形であらわれてきたかということを、政府もあるいは民間も率直に分析をした上で、やはり一定の秩序立った経済の運営というものをどういう機構のもとで行っていくかということについて議論を深めていくことが大切ではないか、こういう感じを持っております。
  52. 阿曽田清

    阿曽田清君 次に、山田公述人に御質問いたします。  多面的機能が盛り込まれたということは大変意義があるということで、これは内外的に意義があるんだという程度にとどまっておりましたが、公述人自身からしまして、意義があるだけじゃなくて、これを入れたことによってどういう効果を求めていくのかということを一点お聞きしたいことと、農家方々、組合員の方々の営農と生活を守るというのが全中の一つの大きな役割であります。その中で、五〇%の自給率を上げるためにはということで昭和六十年を例に出して御説明がありました。  今、大内先生からお話がありましたような貿易自由化の中で、しかも市場原理導入というような観点の中で、これから五〇%、いわゆる六十年に近づけていくということは並大抵じゃない、むしろ私はどんどんまた下がっていく可能性すらあるというふうに逆に心配いたしておるのでありますが、全中として、生産者方々の営農と生活を守りながらそれだけ高めていく、そして自由貿易の中でやっていかなきゃならない将来、どうやって農協運動としてそれを進めていくといいますか、運動として展開していかれようとしているか、お考えがあれば教えていただきたいと思います。
  53. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 今回の新しい法律の中に国民食料安全保障農業の持つ多面的機能維持発揮ということが盛り込まれたわけでありまして、私は、そのことが今後のWTO交渉の大きな武器になる、後ろ盾になるというふうに考えております。  といいますのは、もともと農業生産活動食料生産するという機能だけではなくて、御案内のとおり、その後ろで国土保全や水や緑など環境保全機能を果たしておるわけであります。農業生産を縮小させるということはこうした機能を失うことになるわけでありまして、そういう面では、逆説的な言い方でありますが、新しい基本法農業の持つこうした機能を評価したということは、これ以上の輸入拡大農業の持つこうした多面的機能を縮小させることはさせないぞということを言外に主張しておるというふうに受けとめるわけであります。  こうした考えにつきましては、既に現行のWTO協定の前文におきまして、食料安全保障環境保護の必要性ということを非貿易的関心事項ということで盛り込んでおるわけであります。  また、昨年のOECDの農業大臣会合におきましてもこうしたことが一つの共通の認識になっておるというふうに考えておりまして、そういう意味ではこの具体化をきっちり図っていく、そのために世界最大食料輸入国である我が国のこれ以上輸入させないという取り組み主張意味を持つというふうに考えているところであります。そのことが我が国食料主権を主張していく論拠にもなっていくというふうに考えているところであります。  第二点目にありました、六十年を例にしました食料自給率目標の達成の取り組みを申し上げたわけでありますが、先生御指摘のとおり、並大抵の努力ではなかなか実現していかないというふうに思っております。六十年と比較しましても、圧倒的に地域農業担い手が高齢化し、かつ減少しておるのは事実であります。結果としまして耕作放棄や遊休地が生じておるというのも実際であります。  ですから、今後、六十年に持っていくにしましても、その不足する麦、大豆飼料作物生産の形にしましても、従来のような小規模零細に麦、大豆を作付しておるという形ではなくて、団地化し、集団化し、そして思い切って担い手なり法人組織がそれを生産性の高い形で担う、そのためには農地利用調整、集積がなければならない、そこにJA役割があり、かつ市町村、自治体等の役割もあるというふうに考えております。  六十年の段階に生産量を持っていくだけではなくて、間違いなくそこには土地利用担い手と思い切った政策の裏づけがない限り、その姿を実現することは難しいというふうに考えておりますので、引き続き具体的な生産対策ないしは生産の裏づけを持った取り組みにしていっていただきたいし、我々もまたしていきたいというふうに考えております。
  54. 阿曽田清

    阿曽田清君 最後に、池谷公述人にお尋ねいたします。  公述人がおっしゃるようなことへ持っていくということは本当に大事なことだというふうに私自身も理解いたしますけれども、しかし実際それが現場で、そういう土壌を守り、あるいは生物を守るということを主に置いていきますと、農業をする人たち自身がそこで生活をして、そしてそこで所得を上げていく、収入を上げていくという努力を一方ではやらなきゃならない、それに当然のことながら対立してくるというふうに思うんです。その点、そういう土壌を守り生物を守るということに理解は示しながらも、しかしそれを守ることに重点を置きますと、生産性を高め収入を上げていくということと相反することに現実はなるわけであります。  将来はまたそういうとらえ方が違った世論の動きに乗って変わってくるかと思うんですけれども、現段階ではそれは構ってはおれないというところが現実的にあると思うんですが、相対立する点を対立せぬようにする方法が何かありますか。
  55. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 基本的には、環境を守ることと農業生産とは対立するものではないというふうに考えております。  根本的な問題は、やはり自由貿易体制に私は問題があるんだろうと。例えば、日本のマテリアルバランスを見てみますと、物質的な収支を見てみますと、明らかに輸入超過でございます。おぎゃあと生まれた赤ちゃんを初め一人約四トン以上のごみを排出している現状があるわけでありまして、明らかに輸入超過であります。そういう中でもっと物を輸入するということは、猛烈な自然破壊を起こし、環境破壊を起こしている。現在も起こしていますし、これからも起こすということでございます。しかも、輸出した側は、大内先生が御指摘のとおり、非常に資源がなくなり貧しい生活になっていくという猛烈な世界的なアンバランスを起こしていることは事実でありまして、自由貿易というものの限界がもはや見えているわけでございます。  しかしながら、アメリカ等の圧力によりましてどうしてもそれを受け入れざるを得ない部分が多少あります。そのことから実は犠牲になっているのが日本農業でございまして、多くの物を輸出し、そのための差額から輸入しなければならない。第一次産品を輸入することから林業が荒廃し、農業が荒廃していくという構図が出ているわけでありまして、そこを変えない限り、基本的には農家の人の収入を上げることは難しいわけであります。  現実にはそういうことがあるわけですから、ではどういう形で農家の人の収入を上げるかということなんです。  それは、先ほどから申し上げておりますように、今、日本の多くの国民が理解しています環境問題というのは非常に大きな問題がある。その環境問題をリンクさせて、農家の人に環境保全するということをやっていただいてお金を払っていくということは至って自然な形でございまして、生産環境保全ということが相対立するのではなくて、環境保全ということからもちゃんと利益を得ればいいわけでございます。  実は、多面的機能が今回の中に入ったということは非常に意味があるわけでして、その入ったことが農家の収入にきちっとつながる、そういう形ですべきである。しかもそれは、前々から言っておりますように、生物多様性ということがベースですよ、それをはっきり国民に示して、その上で農家の人の収益を上げていく、そうすれば農家の人の従来の農産物の生産環境とがうまくリンクして、大変いい農業経営に行くのではないかというふうに考えております。
  56. 石井一二

    ○石井一二君 石井でございます。  公述人の先生方、本日は御苦労さまでございます。ひとつよろしくお願いいたします。  きょうは中央会から山田常務がお越しになるということで、実は兵庫県に山田さんという中央会の専務がおられまして、彼が来るのかな、彼も偉くなったものだなと思っておりましたら、もっと偉い方が来られるということでございました。  ここに八年六月二十九日の毎日新聞の記事がありますけれども、「新会長から厚い信任 農協改革への布石か」ということで、山田氏は「上の人間にも言うべきことははっきり言う」ということで、あなたと論議をし、あなたに言い勝ったならばすべて農協の体質が変わると、それぐらいの気持ちで私はきょうあなたの陳述を注意深く聞いておったわけであります。  さて、いろいろ課題があるということで御指摘になった中で、六番目に財源確保ということをおっしゃいましたけれども、これはもっと政府として財源の面倒を見てくれと言われるのか、農協に金があり余って困るからどんどん使ってくれと言われるのか、ここのところをもう一度ちょっと御説明願いたいと思います。
  57. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 国家財政全体の大変難しいところで、それは私がとやかく申し上げるよりも先生方が一番よく御存じでありますが、そんな中で一体どういう形で財源を使っていただけるかということにかかわることだろうというふうに思っております。  今回、国民の食、それから国民の命と暮らしにかかわる形で法律ができていくわけでありまして、その裏には間違いなく低い食料自給率なり、それから食の崩壊が進んでおる、国土保全の問題が出てきているというわけでありますので、ぜひ国の全体的な財源の中でこうした危機が進んでいる部分に対する手当てをお願いしたいというところがあります。  もちろん、先生から御指摘がありますように、農協に金が余っているのならそれを使えということかというお話でありますけれども、使い道の方策につきましていろんな手だてを講じていく、ないしは講じていただく中で使っていくような方法をきちっとつくっていかなきゃいかぬということも自覚はしております。
  58. 石井一二

    ○石井一二君 使っていく方法も考えなきゃいかぬという自覚があるとおっしゃいましたが、ちなみに貯貸率、貯蓄の中で幾ら貸しているかというものを見ますと、農協で二六・九%、信連に至っては一一・七%と、運用機能というのは極めて低いわけなんです。  それで、金をそういうぐあいに政府に要求されるということはわかりますけれども、私は、我々全議員は恐らく農協の応援者だと思うんです、小一年やってまいりましていろんな論議を聞いておりまして。ただ、若干申しておきたいことは、のど元過ぐれば熱さを忘れるというようなこともございますが、あの住専のときに、結果としてあれは農林系金融の救済であったというような意見があるわけであります。  私は、ここに文芸春秋という超一流の出版社が出しております「日本の論点」というまとまった本の中のコピーを持っておるんですが、「税金で救済された以上、農林系金融機関は社会的制裁を受けるべきである」という一つの大きな世論をぶち上げているわけです。  去る者日に疎しで、歳月がたつと皆忘れておられると思いますので、若干、住専のときの数値をここで御披瀝申しておきますと、母体行の貸付債権の放棄は三兆五千億、一般行で一兆七千億だったわけです。こういう中で、住専に対する最大の貸し手は農林系金融機関で、貸付金の元本五兆五千億、これを全額回収したのは農協だけなんです。それで、住専処理機構に五千三百億円を無税で、贈与税を減免してもらって返済しておる。贈与を受けておる。しかも、協同住宅ローンの問題を解決せずに後延ばしにして免れた。  こういった中で、放漫融資の経営責任と刑事責任というものを今、金融界のトップが具体的に身をもって受けておられる中で、あなた方はどういう反省をしておられるのか。将来、農協を担う大幹部の一人であるあなたの個人的な所見を御披瀝願いたいと思います。
  59. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 先生御指摘のとおり、農協金融の特性としまして、金は集まるんですが、その運用につきまして、運用先が農業並びに地域への融資という形でなかなか道が開かれ切れていない。といいますのは、農業全体の低迷の中で、さらにまた多様な金融機関との競争の中で、必ずしも十分な還元を果たし切れていないという部分がまずあります。それからさらに、農業への投資は回収が大変難しいわけでありますが、その分、長期の資金の提供は政府系の金融機関としてあるわけでありまして、またそのことと競争して、すべて農協が地域に還元するというのも大変難しいという実情にあります。そのことが結果としまして貯貸率をこんなふうに下げておる原因になっております。先生御指摘の住専の問題につきましても、そうした余裕金が住専への貸し付けということであらわれたのが事実であります。  ただし、この点につきましてはいろんな議論なり事実がありまして、母体行の保証のもとで、ないしは母体行からのいわば強い勧めの中で農協が住専に貸し付けたという事実もあるわけでありまして、その点は今までのさまざまな事実解明の中でも明らかになっている部分であります。  もちろん、金融機関としての貸し付け責任は大きいわけでありますから、すべて免れるというわけでは決してありませんが、その際の貸し付けに至りました経緯、それから貸し付けの保証が母体行によってなされていた事実、そういう部分を総体的に判断していかなければならないというふうに考えております。
  60. 石井一二

    ○石井一二君 この論議をしておりますと夕方までかかりますので、一たん話題を変えます。  例えば、ウルグアイ・ラウンド対策費として六兆百億円、これにもとかくの論議がありました。最近調べますと、そのうちの五分の四はもう支出済みだということでありますが、今あなたが要望されておりますいろんな問題点の中で、このお金がどう生きつつあるか。もう使っているんだから何らかの格好でその効果が、自給率にはこう反映したとか山間の農地についてはこうだとかいうような御所見があってしかるべきだと思いますが、御感想はいかがですか。
  61. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 六兆百億円のUR予算につきましては、かなり多くの部分が基盤整備等の対策に投じられたわけでありまして、そういう面では中山間地域も含めまして相当程度の基盤整備が進んだということは大変大きな効果を持ったものというふうに考えております。
  62. 石井一二

    ○石井一二君 では、それは感謝もしておるし、また効果も上がっておる、御安心ください、そういうぐあいにとらせていただきたいと思います。  先般、この委員会で論議をやったとき、私は大きなパネルを持ち込みまして、きょうも持ってきてもよかったんですが、要は、農地がどんどん減っていっておるということを憂えた発言をいたしました。現に、農地転用等についていろんな規制もございますが、どんどん転用されておりまして、公共事業という名のもとに全国的に道路の建設、高規格道路等によってどんどん農地がつぶされていっておる。また、中山間農地では担い手の問題もあろうと思いますし、また事業用定期借地権というような新しいものがここ数年前から出てまいりまして農地を食っていっておる。  こういう中で、私は、農地をある程度確保しておかないと、食料安保という観点から非常な懸念を抱いておるものでございまして、農振法がどうのこうのというような御発言もきょうございましたけれども、この問題についてあなたの御関心の度をひとつ御披瀝願いたいと思います。
  63. 山田俊男

    公述人山田俊男君) 先生御指摘のとおり、農村の優良農地の真ん中に道路ができまして、そしてその道路の周辺が多く転用されていく結果としまして、農村がかつてのようなきれいな農村から、そうではなくて道路っ縁にパチンコ屋ができたり、パチンコがいい悪いは別にしまして、スーパーマーケットができたり流通センターができたりしておるというのも事実であります。  果たしてそういう形のまま放置しておいて優良農地確保できるのか、農村の景観を守れるのか、それこそ農地総量を確保して自給率向上につなげることができるのかというふうに考えますと、そら恐ろしいところがあります。多分、先生は言外にそういう形での農地転用を、むしろ農業者自身もそのことによってメリットを得ているのではないかという御指摘があるのかもしらぬというふうに思うところでありますが、優良農地につきましては優良農地としてきっちり確保していく、そうした土地利用計画をしっかりつくる、そして農地農地として守るために税制措置も含めた対策を総合的に講じていく、こういう抜本的な取り組みがそれこそ今回の基本法の中で必要になってきているというふうに認識しております。
  64. 石井一二

    ○石井一二君 池谷先生、どうもきょうは御苦労さまでございます。  私も、あなたがされております運動基本的に大賛成でございまして、できる限り応援をしたいなという気持ちで資料等も読んでみました。そして、あなたがお出しになった十一年七月六日付の資料の一番最後に、「農村地域における生物多様性保全の重要性を、本委員会における決議等により、国会の意思として示されることを切に祈念申し上げる次第である。」、こういう言葉が書かれておりまして、私もこれには大賛成であります。  ところで、手元に来ている我々の決議の案を今見ているんですが、どうもそれらしい言葉が見当たりにくいような気がして心配をいたしております。わかりません、まだ全部読んでいないんですが。ただ、これは委員長と理事の方々の腹にある問題でございまして、私もできればこういったものが入ればいいなと思っております。  ここのポイントについて、御意見をもう一度改めて聞かせていただきたいと思います。
  65. 池谷奉文

    公述人池谷奉文君) 環境問題は世界でも現在最大の課題になっているわけでございまして、その一つの柱でございます生物多様性、これがきちっと入るかどうか、これはもう基本中の基本でございます。これが入らなければ今後の農家の収入というものも非常に難しくなるということになるわけでございまして、本来であればこの基本法というものも本当はあと一回考え直す必要があろうかと、そのくらい重要に思っておるわけでございます。  次期WTO等の会議もあってどうしてもこの法案の改正が難しいということであるならば、せめて国会での決議をお願いする、それしか方法がないと言われればそれしかないということでございまして、大変重要なことであります。このことが抜けているということは大変重大なことだということをあと一回認識する必要があると思います。
  66. 石井一二

    ○石井一二君 終わります。どうもありがとうございました。
  67. 野間赳

    委員長野間赳君) 以上で午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  68. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、食料農業農村基本法案につきまして、公述人方々から御意見を伺います。  午後は、農民運動全国合会代表常任委員小林節夫君、全日本農民組合連合会会長鎌谷広治君、阿蘇百姓代表山口力男君、全国消費者団体連絡会事務局長日和佐信子君、以上四名の公述人に御出席をいただいております。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の本案審査参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、これより順次御意見をお述べいただきますが、あらかじめ会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず小林公述人にお願いいたします。小林公述人
  69. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 小林です。  食料農業農村基本法案について、特に食料自給率の問題を中心意見を申し上げます。  我が国の異常に低い食料自給率について政府基本問題調査会に提出した「食料安全保障政策推進について」、この文書で、「国がこれまで、食料自給率の低下に歯止めをかけるための各般の施策を講じてきているにもかかわらず、食生活の変化、農地の減少、担い手の減少・高齢化、耕作放棄地の増加等の様々な要因が影響して食料自給率が低下してきている」と、こういうふうに述べて、あたかも畜産物を多く食べるようになった消費者が悪いとか、あるいは農民の努力が足りないかのように言って政府自身の責任を全く棚上げにしているという点、私は、率直に言ってこれは逆であって、政府にこそ責任があると思います。  少しさかのぼってみますと、食生活の変化ということでありますが、昭和二十九年四月、今の学校給食法ができるときに大達文部大臣はこう言っています。学校給食によって幼少の時代において教育的に配慮された合理的な食事になれさせることが国民食生活の改善上最も肝要であると述べて、小中学校の時代に味覚を変えることが非常に大事だということを強調し、そしてそのあらわれとして、この法律の規則で、完全給食とはパンとミルクとおかずをいうというふうにして、米飯給食を除外しております。この規則が改正されて米飯給食が許可されるようになったのはそれから大分たった昭和五十一年のことです。これはもう法律ができたときに生まれた子供が母親になっておる時分です。  それは、まさにアメリカが要求した結果であり、その方針に沿ったものであることは、アメリカの小麦協会のリチャード・バウム氏がこう言っています。米食民族の胃袋を変えるという作戦が成功した、今後ふえることはあっても消費が減ることはないだろうという勝利宣言をしたり、あるいは合衆国政府関係者が、余剰農産物処理をしたり、あるいは相手の胃袋を変える上で学校給食ほど安上がりで効果的なものはない、こういうことは何人も言っております。こういう言明を見れば、ただ単なる栄養改善の問題ではないということは明らかです。現に、こうして国民一人当たりの米の消費量は、昭和三十五年当時に比べて、この三十六年間に平成八年には五八・八%にまで落ち込んでいます。自給率の低下の一要因であることは明らかじゃないでしょうか。  政府は、食生活の洋食化に伴って畜産物の消費がふえた、そういうふうに言っております。これが食料自給率の低下だ、畜産物をたくさん食べるのがその原因だと言っていますが、その原因をつくり、その政策推進してきたのは紛れもなく政府自身じゃなかったか。米飯給食を長いこと禁じてパン食を進めれば、おのずから畜産物が多くなってくる。この日本の風土に合った消費、食料、その政策を変えて、食料自給率の低下、これを消費者の責任にするというのは全くけしからぬ話だと私は思います。  しかも、この輸入優先のやり方、これが食料安全性は少々どうでもこの方が大事だと、そういう点で幾つかの政策消費者の不安を生み出しているということも間違いないことだと思います。  以上が消費者のことですけれども、生産の面でいうならば、現行農業基本法の言う選択的拡大、ここでは非常に強調をしていましたけれども、これはアメリカの余剰農産物と競合しないものをつくれというものでした。パン食が進んでも、国産小麦の生産がもし日本で続けられていたならば問題はないと思います。ところが、この選択的拡大、これとMSA協定による麦の輸入によって、大豆とともに壊滅的な打撃を受けたということは紛れもない歴史的な事実であります。  この二十年余り、農産物の輸入が年々ふえる一方、農産物の価格保証が後退する。農業衰退の原因と食料自給率の低下というのは、この輸入優先と農産物の価格保証の衰退、これにあるということは多くの農民がだれでも認めることじゃないかというふうに私は思います。まさに、責任は政府にあると思います。今また政府は学校給食の米に対して補助金を打ち切ると言いますが、この上さらに食料自給率を引き下げる、そうなるのではないかと思います。  私は、二十代から三十代にかけてこの手で麦をつくり乳を搾ってきて、そういう経過と歴史的事実を見てきた者として、食料自給率の低下、これを農民の責任に転嫁するなんということはとんでもないことだというふうに思います。  食料自給率を引き上げる上で決定的に重要なのは農産物の価格保証であります。政府市場原理、競争原理を強調します。しかし、九三年のあの大凶作、大減収のときに、米価が上がるという理由で政府は自主流通米市場を閉鎖してしまいました。市場原理というものがもし、過剰だから下がる、不足ならば上がる、こういうものならば、なぜこのとき閉鎖したのか。また、大暴落した九七年産の国産米に比べて九八年産米はほんのわずか上がっただけでありますが、この六月はまたむしろ下がっています。政府はそれでも市場原理に任せた方がいいと言いますけれども、昨年押しつけられた史上最高の減反、それと新米の不足、これを合わせれば百万トンになります。米価が上がるというならば、これだけの不足があるんだったら、本来、不足するならば上がるべきものです。ところが、ほんのちょっと上がっただけで、一昨年の二千円から三千円の暴落、これは全然基本的には解決していないし、政府の稲作経営安定対策、この補てん金なども、もうことしも下がるということは明白ですし、年々下がるだけです。  国産米が余るなら、外米、ミニマムアクセス米は輸入しないとか、援助米に回すなど、加工用、飼料用にも使わないというように明確に隔離すべきではないでしょうか。余っているのに輸入する、どうしてこれが市場原理と言えるでしょうか。韓国では、不作のときはミニマムアクセス米を減らす、そういう措置をとっていることは韓国の通関統計によっても明らかであります。米価が二十年以上前の水準で、しかも水田の四割近くも減反する、これは労働者にとってみるならば二十年前の賃金に据え置いたまま四割をカットしろというものです。  今、農水省は、この上作況が一〇〇を超えたならば飼料用にトン一、二万円で投げ売りさせる、そうして需給調整をするということを検討しています。魚沼のコシヒカリでも一俵六百円あるいは千円、そんなところ、ラーメン一杯か二杯です。その量はわずかかもしれませんけれども、そういうべらぼうな値段がほかのお米の値段を引き下げることは明らかです。これはもう農民に米をつくるなというものではないかと思います。  今、農業基本法を議論しているときにこういうことを議論し、しかも米ばかりか加工原料乳を初めすべての政府管掌作物価格保証をなくしていく。麦を民間流通にゆだねる。今度の基本法審議しているさなかにこういうふうなことがもう行われている。これで農民の生産意欲がわくわけはないし、自給率が上がるわけでもない。後継者が育たないし、農村女性の地位がどうして向上するでしょう。そういう意味で、私はこの法案の中に食料自給率という言葉を書きさえすればいいというものではないと思います。  この際、私がどうしても一言この市場原理について申したいのは、法案の第十九条で、「凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある」ときに、「食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずる」、こういう点であります。  これは、戦後の間もないころの強制供出と同じでありますが、今日のように生産費を抑えて、そして農業後継者がどんどん減る、今支えている高齢者の層がいなくなったら一体どうして増産できるんだろうか。さあ足りないから増産しろといってにわかにどうしてできるか。全く農業生産の何たるかを知らない、実態を知らない霞が関論理です。失礼ですけれども、もしこれを推奨する人があるとすれば、永田町の論理ではないかと私は思えてなりません。この一点から考えても、この問題を考えるだけでも、農産物の価格保証の廃止とか市場原理というふうなことを振り回すことはやめた方がいいと思います。  価格保証と所得補償の予算を外国と比べますと、八七年に比べて九七年には、EUは三・六五倍、アメリカは二・七九倍に伸びているのに、日本は三九%に落ち込んでいます。大銀行に六十兆円もつぎ込んだりする日本が、どうして二万円の米価を保証したり、膨大な負債に苦しむ畜産農民に政治の温かい手が差し伸べられないのか。私は、食料自給率を引き上げるためにぜひともこの価格保証の問題を皆さんに心からお願いしたいと思います。  食料自給率を引き上げる上でもう一つ大事な問題は、日本に非常に多い条件不利地域のことであります。  基本法案では、中山間地等の対策として所得補償をうたっていますけれども、今の価格保証は平場ですらやっていけない状況です。今度はこのすべての価格保証がなくなる。こういうふうな状況の中で、この平場につり合うように所得補償をしてみたところでしょせんやっていけない。そういうことを考えると、価格保証がまともであって、その上で初めてあの傾斜地で環境などを守る無償労働あるいは条件不利、そういうものに対しての所得補償をするというのが本当のありようではないかというふうに私は思います。  田んぼの区画を大きくすることだけを目標にする土地改良が行われ、中山間地はそういうことで取り残されています。長野県の栄村では、普通の基盤整備事業の対象にならないところ、そういうところでも村独自で創造的に田直し事業を行っています。これは構造改善局長賞ももらっています。高知県の大豊町では、ヘアピンカーブの続く急傾斜地でせま地直し事業という自主的な基盤整備を行って、過疎地の農民を非常に励ましています。  こういう中山間地、こういうところにこそいろいろな面での、言葉だけの単なる所得補償ではなくして、こういう条件不利地域に対して本当に価格保証等の上に立った政治の光が欲しいと思います。  沖縄本島は離島扱いではないようです。あれだけ離れていてもです。沖縄の離島に農産物の運賃の補助があったら、ニュージーランドやトンガのカボチャなんか入らなくても幾らでもここで補給できるのです。寒冷地の北海道でも本州の果ての地でも山間の寒村も、それぞれ農民は格差を持っています。  中山間地対策は、条件不利地域としてもっと広く、そして中央の官僚的、画一的なそういう押しつけをやめて、地域意見を尊重して、自主的な実情にあった対策を立てるようにぜひお願いしたいと思います。  最後に、WTO農業協定を改定し、民族の自立と生存にかかわる農業政策主張することができるように心から希望します。  WTO農業協定は、基本的に自由貿易一辺倒の立場から、食料の増産や安全性確保するための各国の努力に干渉し、事実上禁止しています。それはすべての人々が食料確保する権利を持つという食料主権をうたい上げたあのローマ食料サミットの方向に逆行するものです。  WTO農業協定の前文には、食料安全保障環境保護という条項があります。日本がこれらのことを要求して改定を主張することは決して無理なことではないと思います。道理のあることです。WTO協定の言う生産を抑制するようなことは、我が日本にとっても二十一世紀世界食料問題から見ても道理も展望もありません。このWTO協定に合わせた農業基本法ではなく、真にあすの食料農業農村のために役立つ、そういう基本法になることを切に願って、私の意見を終わります。
  70. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  次に、鎌谷公述人にお願いいたします。鎌谷公述人
  71. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 新しい食料農業農村基本法制定に当たりまして、中央の公聴会で発言の機会を得ましたことを大変うれしく思っております。  農地解放後五十年、ちょうど私が二十歳のときでございました。それから現行の基本法を三十代で迎えました。七十歳になりまして新しい基本法、こういうことをつらつら考えてみますと、感慨深いものがあります。そういう点で、この要旨に基づきまして率直に意見を申し述べさせていただきたいと思います。  鳥取県の農業事情につきましてもいろんなリポートがありますけれども、最近の地方新聞に鳥取県の農業事情が、資料のナンバー一を見ていただきたいと思いますが、発表されております。  その中で、中山間地帯の面積が鳥取県全体の八三%を占める、人口も相当なパーセントを占めるし、それから農業生産も過半数以上の生産量をまだ持っているという非常に重要な農業地帯でございます。  その農業地帯でどういうことが問題なのか。ここの中ほどに「子供がいない」という見出しがありますが、子供がいないというのは後継者がおらない、それから従事者が高齢化している、そういうことなんです。  それから、おしまいの二段目に「煮えたらくわう」ということで書いてあります。「煮えたらくわう」というのは鳥取県の地方言葉でございまして、煮えないもの、生煮えのものは絶対食ってはならぬぞという、何百年来の農民の哲学がこの「煮えたらくわう」という言葉の中にありまして、全部ではありませんけれども、生産者のみならず、地方の県、それから町村の関係者、農業団体の大多数の腹のうちに蔓延しているということでございます。  これにつきまして、もう少し具体的に、なぜそういう「子供がいない」、「煮えたらくわう」という思想が定着しつつあるかという点につきまして、私の集落の状況を表の第二で見ていただきたいと思います。  農家戸数が四十戸でございます。この欄外にバツ印が七戸ありますが、これは後継者が全然見当がつかぬ。ですから、五年か十年すれば大変な問題が出てきます。それから、丸印は十八戸ありますが、これは六十五歳以上の高年齢の者が主に農業を支えておるという状況でございます。これも五年か十年すれば閻魔大王の前に引き出されますから、やはり五年、十年というのが天下の分かれ目になるのではなかろうか、こういうふうに思っております。  四十戸の農家が水田を二千七百五十二アール持っております。そのうち、稲の作付面積が千六百十九アール、米の販売高約九百五十万円、一戸当たり二十数万円ですね。転作の割当面積が千百三十三アール、もしもこれに米をつくるとすれば、ことしの米価で約一千三百万円の米代収入があります。転作率は四〇%ですけれども、米代収入になりますと大体五〇%から六〇%の減収率になります。  それでは、それに補てんするといいますか、共補償を含めて約三百六十万円、一戸当たり九万円を受け取っております。この転作の実態はどうか。ここに書いてありますように、百数十枚の田んぼ一筆ごとを調査いたしましたところ、たばこが四十アール、それから飼料作物が四十アール、ネギが十五アール、それ以外、いわゆる転作田の一〇%に満たない以外はせいぜい自家消費ないしは転作の稲をつくっておらぬかつくっておるか、実地の検査が終わったら、それ以降はもうすき込むと。  こういうふうなことで、二十七町の一番優良な農地、これは国や県なり自己負担を含めて約二億円の資本を突っ込んで、裏作のできる暗渠排水もした立派な農地になっておるわけです。その農地の四〇%が、たった一戸当たり九万円の補助金を受け取ることによってがんじがらめになって、利用できないようなことになっております。  我々農民組合は、農地解放から戦前戦後伝統を持っておりましたから、この減反政策が始まる当初は、これはえらいことだと、日本農業をつぶすかもわからぬという危機感を持ちまして、激しく地方なり中央に抗議を申し込んだわけですけれども、依然力なく今日に至ってこういう事態を迎えて、非常に残念に思っております。国が金を出してせっかく優良農地をつくりながら、また国が金を出して農地を荒らし、農民の心までも荒廃させるというふうな結果は、私は亡国政策以外にないというふうに思っております。  また翻って、私の住む町の米以外の状況を調べてみますと、かつては裏作で麦のみならずそのほかいろんなものがありますけれども、これは全然ありません。ナシ、たばこ、これがわずかに残っておりますけれども、約三分の一に下がっております。それから、畜産は和牛の因伯牛ということで、大正年間にスイスブラウンを導入して今の和牛のもとをつくった発祥の地で、最盛期は北は北海道から南は沖縄まで購買客が来て我々のところから移出したわけですけれども、この和牛が今たった四戸なんです。酪農も三十数戸あったのがたった三戸。そのほか山間地で竹やぶがありまして、タケノコの加工施設が二カ所ありましたが、これが全部閉鎖。シイタケ、薪炭は全滅。金額にして一戸当たりに百万円以上の農業生産が、三十年代、四十年代に我々同志が本当に心血を注いだほかの農業生産が五十年代から六十年代、今日まで徹底的に破壊されて、農業よりは他産業に出た方がいい、こういうふうなことになってきまして、非常にざんきにたえぬ次第でございます。  そういうことで、優良農地がそうですから、山林、原野、里山、これは言わずもがなで、この資料ナンバー一の横にちょっと書いてありますが、「イノシシの気持ちになって」、「農山漁村を支える熟年技能士」、これはイノシシを退治する技能士をつくらなきゃならぬようなことに、クマとイノシシと猿ですね、特にことしはイノシシです。前のイノシシは収穫前に田んぼに出て稲をごちゃごちゃにする程度だったのが、最近のイノシシは水田に苗を植えると、苗肥を体中にまくりつけてごちゃごちゃにしてしまう。それから、さくをすればさくは跳び越える、網は破る、傍若無人なんです。クマも、二、三年前は保育園の冷蔵庫をあけたとか、ごくまだ一週間前は、鳥取市周辺四、五キロのところに出てきている。父兄が小学校の生徒を送り迎えしなきゃならぬ。  イノシシの気持ちになってイノシシに聞くと、おれらのすみかを人間どもが破壊した、おれらのすみかを返せ、危険を顧みないで好んで出ておるんじゃないというふうにイノシシは言っているそうですけれども、これはもう大変なことでございます。  そういう現象の中で、数々の農業を支えた人間の農業に対する心構え、こういうものが今日の農業の根幹になっておるわけですけれども、この心構えを持っておるような百姓は老齢化するし、持っておらない人や持っておらない若者が非常に多くなっております。  基本法というのは心構えだと思うわけです。格差の解消のため、選択的拡大、近代化、それから生活改善。我々は、生煮えどころじゃない、飛びついたのですけれども、飛びついてこのざまですから、今度は飛びついてはならぬぞ、農地だけはもう絶対売ってはならぬぞ、こういうふうに申しているわけです。ですから、そういう過去の実態を重要に受けとめていただきたい。  それから次に、組織の問題です。  時間がありませんので簡単に申し上げますが、集落の現在の組織は米以外に何かつくろうというふうな機能は全然ない。割り当てられた減反、稲をつくるなという面積についての割り当てとかもらった補助金を公正に分ける、こういう機能はありますけれども、生産をするという機能は全然ない。その上部組織であるJAに私は非常に大変なことが起きるのではなかろうか、こういうふうに思っております。  最後の、農業基本法制定に当たりまして、現行の基本法はどこに欠点があってどこで歯車が狂ってこういうことになったか。新しい基本法制定に当たって、百姓をやっている農業者はもう少し辛抱して頑張ってくれと参議院のいわゆる決議をいただいて、この「煮えたらくわう」をいい方向に行くようにしたい、こういうふうに思いますので、どうかよろしくお願いします。  以上です。
  72. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  次に、山口公述人にお願いいたします。山口公述人
  73. 山口力男

    公述人(山口力男君) まずもちまして、こういう非常に貴重な機会と時間を与えていただいたことに対して、先生方を初め本委員会に対して深く感謝を申し上げたいと思います。  私は、熊本県の阿蘇町というところで農業をやっております。きょうの肩書に阿蘇百姓村なんという非常に仰々しい肩書がつけてございますけれども、何のことはない、いわゆる米で生活をしておりまして、あるいは牛を飼いながら生活をし、少なくとも専業農家を自任する者の一人なんです。  しかし、今の情勢の中で、阿蘇百姓村というのは、少なくとも農業というものがこのまま衰退していったときに、社会的に与えるいろんな意味での弊害というか影響というか、非常に大きなものがあるんだということを含めて、普段なかなか農業にかかわる機会のない人たち向けにどうぞいらっしゃい、あるいは農業がやりたくてもその条件がなくてあきらめようという若者に、あきらめることはない、どうぞうちに来てみらんかいというような形で、この百姓村という名前をつけながら門戸を開いているというか、そういう活動をやっておる者でございます。  実は、ネクタイを締めながら久々に東京に出向いてきましたし、あるいは久々にこの国会にお邪魔をいたしました。といいますのは、もう十数年前になると思いますけれども、当時、いわゆる米価運動だとか農政運動ということでかなり頻繁にここへお願いに上がった記憶がございます。  今でもはっきり覚えておりますけれども、当時はいわゆる猫の目農政という言葉が非常に使われました。なかなか定まらないあるいは頻繁に変わる政策や方針に対して農家が非常にあきらめに近いような思いを持ったりしながら、あるいは不信、不信と言っては非常に恐縮な言い方ですけれども、そういう政策に対する不信感が非常に募っておった時代だと思います。  それはある意味では、個人的な私の感情も含めた意見ですけれども、三十六年の基本法の路線の中でこれ以上進んでいくのはもう難しいんじゃなかろうかと。当時出ておったのが、例えば十二品目だとかあるいは牛肉・オレンジ、そしてもしかすると米も自由化の対象になるかもしれないという論議のさなかでした。そういうさなかにあって、私は、もう三十六年のただ大量生産あるいは選択的拡大という路線の農業政策ではもういかぬのじゃなかろうかということを含めて、新しい基本法というものができてしかるべきだという思いをずっと持ち続けておりました。  それが、ここへ来てやっと平成の時代に新しい基本法制定されるということで、そういう意味合いでは、我が意を得たりということだけではなくて、少なくとも今度の基本法が前回のそういうような猫の目農政なんということを言われるようなものではなくて、首尾一貫して、今は確かにつらいかもしれぬけれども、これがあるから我々農民は頑張れるんだというようなものになってほしいという願いを持ちながら、注意深く自分なりにこのいきさつといいますか、これまでの経緯を見守ってまいりました。  そして、いよいよこの法案、新しい基本法が今生み出されようとしておるわけですけれども、それを踏まえて、そういう重大な関心を持ちながら熱意を持って見守ってきた立場から率直な意見を述べさせていただきたいと思います。  まず一つは、今度の基本法の中で農業が、単に食料生産するということのみではなくて、それ以外の効用効果も含めた多面的な機能ということがきちっとうたわれたことに対しては、私もこれは非常に評価をしております。あるいは、農業基本法であっても、単に生産者立場というか生産者の方を向くということだけではなくて、消費者立場であったりあるいは国民的な視点からこれを論ずべきという、これも私は至極当たり前のことだというふうにとらえております。  そういった基本的な路線というか方向性について異論を唱えるつもりはございませんけれども、しかしこの基本法が施行されてこれから五年、十年の時間の経過の中で、振り返ってみたらそこには現場の農民が一人もいなかったなんという状況になったときに、この基本法は一体何なんだというのがあるものですから、そこであえて申し上げておきたいことが幾つかあるわけです。  まず一つは、なぜ今度の基本法に対してそういったことを言わなくてはならないのか、あるいは不安になるのかというのは、いわゆる国民的な視点あるいは消費者立場ということを今度の基本法の中で強調されている割には、この基本法が出発をして今日に至るまで国民的な議論に必ずしもなっていなかったんじゃないか。本当に国民総出でみんなが参加して、食料問題だとか農業問題、農村の問題を考えようという議論の末に今日こうやってたどり着いたというふうに必ずしもなっていないんじゃないかという不安が一つあります。ですから、かけ声はかけておっても実態がそれに伴っていないんじゃなかろうかという不安がやっぱりあるんです。  何度も申し上げますけれども、今このまま農業を続けていいんだろうかというような状況の中で踏ん張っておる農家の人たちが、やっと出たんだ、この基本法があるから、これを支えとして、これをよりどころとして今のこの苦しみ、何としてでも踏ん張ってやるぞというようなたぐいのものにしてほしいという願いからすれば、やっぱり非常に物足りないというか、そういう国民的な議論にならなかったということが非常に不安でならないというのがまず一つあります。  それともう一つは、今度の基本法は、ある意味ではやむを得ないかもしれませんけれども、理念も、その表現も含めて、私もこれはなかなかいい表現だとは思うんです。しかし、そういう国民的な議論にならなかったという不安と同時に、今度の基本法が少なくとも私の周辺の現場で、今度はこういう基本法が出たぞ、こういうような法律が今度つくり上げられる、だから、さっき言ったように、今は苦しいけれども頑張ろうという気持ちになかなかならないというのは、一つはやっぱり具体性に非常に乏しいと。  例えば、いろいろ議論があって、後半に自給率という言葉が登場してきた、あるいはそれを上げなくちゃならぬというような表現が登場してきた。しかし、具体的にそれをどうやってどういう形で上げていくんだということにまで踏み込んでおけば、もう少し現場の我々も新しい基本法は信頼を置くに足る、あるいは根拠になり得ると思います。ただ自給率を上げなくちゃならないということにとどまってしまっておることに対して、あるいはそういうような表現に見られるように、今度の基本法が具体的に我々のかゆいところに手が届くようなものには必ずしもなり切っていないというところに対して非常に不安があるんだということをあえて申し上げておきたいと思います。  ですから、そういう意味合いで極めて抽象的な表現での今回の法案であるのならば、あえて前向きにこの法案をとらえるとすれば、我々現場に対してその中身も含めて色は自分たちでつけろというのか、こういうものだということできちっと我々が色づけをしていいというふうに今度の法案をとらえていいのか。そうなると、いわゆる農業の持っておる多面的な効果だとか機能ということについても、それぞれの地域でそれぞれの発想のもとに我々がそのことをきちっと提示して、政策も含めてきちっと国民が認めて、受けとめてくれる、そういうやりとりが今度の法案をきっかけとして可能であるのかどうかということを期待も含めてここであえて申し上げておきたいという気がするんです。  というのは、うちの集落で夏祭りを数十年来もうずっとやっているわけですけれども、私が今度の夏祭りの準備の幹事になりました。そして、地域の中で祭りの予算をいわゆる協賛金という形で、極めて数少ない地域産業、例えば私の地域は観光地なものですから、ホテルだとかあるいはそういう観光に基づくような幾つかの企業があります。環境論議は別としてゴルフ場もあります。こういうところが地域の夏祭りに対して協賛をし続けてきてくれておったんです。ところが、きのうずっと回ってみて、ほとんどがゼロ回答でした。というのは、うちの従業員のボーナスはカットしているんだ、あるいは給料までカットしているんだ、そういう中にあって、地域の実情はわかる、これまでの恒例、慣例ということもわかるけれども、本社の決裁がなかなかおりない、あるいは従業員のボーナスすら出せないのに村に対して祭りの協賛金は出せない、こういう実情です。  農業のこの十年間は、少なくとも私の知り得る限りそういう農業農村の衰退、あるいは農産物の価格の低迷の中にあって、いいか悪いかは別として何とかそれをしのぐ、何とかそれをカバーしておったのがそういった地元の産業である。しかし、こういうところがもうほとんどボーナスも出せない、あるいは大幅なリストラで人員整理していく。そうすると、ボーナスを受け取ることができない、あるいは人員整理されるのはみんな兼業農家の皆さん方です。  一方で、今度の基本法農村社会ということをうたっておるのならば、そういうところまで踏まえながら、きちっとしたフォロー体制なり含めてそういうものがないと、本当に名前にそぐわない、食料農業農村を掲げる割にはその実態を含めてついていけないということになってしまいかねないという心配をしております。そういう地域の実情、実態はなかなか東京までは届かないかもしれませんけれども、先ほどの方のおっしゃった鳥取であろうが、私のところの熊本であろうが、北海道であろうが、おおよそ体制的に変わるものはないと思います。  ですから、何度も申し上げますけれども、少なくとも今度の基本法を、日本じゅうの農家の人たちが苦しくても頑張る、そういう支えになるようなものに何としてでも仕上げてほしいと思います。そのことを申し上げながら、終わらせていただきたいと思います。
  74. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  次に、日和佐公述人にお願いいたします。日和佐公述人
  75. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) 全国消団連の日和佐でございます。  今回、公聴会公述人への公募に応募いたしましたところ、消費者団体として意見を述べる機会をいただきまして大変感謝申し上げるところです。  私ども全国消団連は、全国の四十四の消費者団体が参加いたしまして消費者問題に取り組んでおります連絡組織です。消団連では課題別に専門委員会が設置されておりまして、新基本法に関しても専門委員会の一つである新基本法検討会が農水省における審議と並行して検討をこれまで重ねてまいりました。今回、資料としてお手元にございます意見書をまとめまして、消団連機関会議で消団連としての意見書として承認されたところです。この意見書に基づいて意見を述べたいと思います。七点にわたって申し上げます。  一点目、食料農業農村基本法案基本的に賛成いたします。  今回の基本法案は、農業にとどまらず食料農村問題を盛り込み、総合的な農政を提起しています。その点においてこれを高く評価するものでございます。  第一章総則第十二条では「消費者役割」が明記されました。農業問題では、これまで消費者は、消費の主体であるにもかかわらず、今までいわば外野的な存在でしかありませんでした。「消費者」の文言が明記されたことだけでも画期的なことと言える面もありますが、私たちはむしろ当然なことと受けとめています。しかし、役割一つに書かれております「食料の消費生活の向上」では、非常に具体性に欠けておりまして、その意味するところを十分に理解できないでおります。  きょうは消費者の視点から幾つかの問題を提起いたしまして御検討いただきたいと思います。また、今後具体的な施策にぜひ生かしていただくことを要望いたします。  二番目、現在の食料農業農村環境の問題については深刻な認識が必要です。  食料が質、量ともに満たされることは基本的な人権だと考えております。国はだれもが安全な食料を安定的に入手できるようにする責任があります。食品の安全性確保自給率向上を図ることを基本法理念として明示するべきです。  三番目、食品の安全性確保政策。  現在、農産、畜産、水産の生産現場及び食品の生産と消費の距離は遠く、さらに遺伝子組みかえ技術応用農産物、クローン技術による家畜の生産など最先端技術による食品の開発、生産がふえ、消費者安全性を確かめる手段は非常に難しくなる一方です。このような状況の中で、消費者の食品への安全、安心への関心は非常に強くなってきております。  基本法理念では、第一章第二条において、食料安定供給の強調に比べて安全性価格等の位置づけが弱いと言わざるを得ません。また、「良質な食料」となっておりますが、その内容は明確ではありません。「食品の衛生管理」、「品質管理の高度化」、これは第十六条ですが、これは当然のことでありまして、「良質」の中には安全性、鮮度、おいしさ、栄養価、そして価格なども含まれると考えられます。また、その食品の内容の情報を示す表示も重要な要素であります。  価格につきましては、三十条で「農産物の価格の形成と経営の安定」については明記されていますけれども、流通のあり方と価格消費者価格の安定については欠いています。今後、具体的な施策に盛り込む必要があると考えます。  また、農薬等の使用に関して、三十二条で「農薬及び肥料の適正な使用の確保」となっておりますけれども、農薬の適正な使用は当然なことであります。農薬の使用の低減を図ることが必要になっています。  食品の表示は、さきに述べましたように、食品への安全、安心の判断に資する情報で一番身近なものです。表示は、消費者が適切な選択ができるよう、消費者の選択を保障するものでなければなりません。  また、先端技術を利用した食品の導入に当たっては、情報を公開し、安全性や生態系への影響はもとより、生命の倫理を含めて、消費者が参加したルールづくりが求められています。  「食料安全性確保」、「食品の表示の適正化」、十六条の具体的な施策の推進には、生産、流通、消費を通して、現在の縦割り行政ではなく、それぞれの行政の役割を明確にし充実するとともに、連携を強め総合的に施策を推進する仕組みを構築する必要があります。安全な食料の供給を前提とした制度、体制の整備、強化が必要と考えます。  四番目、環境保全。  環境保全は全人類的な行動の課題でありまして、優先させるべき課題です。農村農業は自然環境の保持、保水、治水の機能、景観の保持等、重要な役割を果たしています。しかし一方では、農薬や化学肥料の使用、畜産のし尿処理、養殖現場での海域汚染等、環境への負荷も挙げられています。環境への負荷の削減と、都市と農村、消費と生産をつなぐ持続可能な循環システムの確立は今大変重要な課題です。  「自然循環機能維持増進」が三十二条に挙げられていますけれども、現状の追認にとどまっています。明確に環境保全型農業への転換を図り、有機農業などその取り組み推進する農業者や消費者への支援を行うべきです。森林や林業環境保全と密接な関係にあることから、一体的な施策が必要と考えます。  五番目、食生活に関する指針の策定について。  「健全な食生活に関する指針の策定」が十六条二項に挙げられています。国民の健康と食生活にかかわる基礎知識の向上を図るために、情報の提供や食教育の施策が必要です。加工食品、簡便食品の利用、中食、子供の孤食、栄養補助食品、いわゆる健康食品など、現在の食生活の実態が問題視されていますが、食生活は非常に社会的な問題でもあります。核家族化、女性の社会進出、高齢者世帯の増加、男性の意識など、これは家事に参加しないという意識の転換が必要だという意味なんですが、その背景にあるものを反映して現在の食生活が構築されていると考えるべきです。また、その食生活は一人一人個人が選ぶものでありまして、行政が指針を策定して指導するたぐいのものではないと思います。  望ましい栄養バランスや栄養水準確保地域の特性を基本に、消費者生産者がともにつくり上げていく健全な食生活の指針が必要であると考えます。  六番目、消費者への支援。  低農薬あるいは無農薬栽培の試みがなされました当初は、農薬、化学肥料抜きで農産物はつくれないと、農業の異端者的な扱いでした。今日、環境保全型農業、有機農業へと発展し、消費者の支持層の広がりを見ますと、今昔の感があります。  その発展を支えてきたのは、農業者と消費者の安全でおいしい農産物を生産し食べていきたい、食べてもらいたいという願いのもとに払われた双方の大きな努力があります。消費者生産者は、回を重ねた交流、産地での農作業、双方の立場を出し合って、それは非常に激しい意見交換の場面も何度もありました。これら生産者との交流はほとんど消費者のボランティアによるものです。  環境保全型農業、有機農業は、今後は自然環境保全への重要な課題としてその位置づけは強化されなければなりません。同時に、その取り組み推進する農業者や消費者への支援を行うようにするべきです。  七番目、政策決定への消費者の参画。  今回の法案では、総則における条項が基本的施策において必ずしも具体化されているとは言えません。例を申し上げれば、良質な食料あるいは消費者役割などです。また、食料の安全、環境保全に関しては施策が弱いと言わざるを得ません。具体的な政策は今後にゆだねられているところが大変多くあります。政策決定過程への消費者の参加が位置づけられなければなりません。食料農業農村政策審議会の設置に当たっては、情報を公開し、消費者を初め広く国民の声を反映し、意見を反映したものとされなければならないと考えています。  私たち消費者は、安全な農水産物を摂取する権利を持っている一方、国内の農水産物の生産を増大させ自給率向上を図るためには、消費者食生活が大きな要素となることを認識しております。私たちは、消費者としての権利を主張するとともに、農業生産維持発展に積極的に参画していく役割を担っていくことを申し添えます。  ここで、大変申しわけないのですが、この公聴会に希望していて果たせなかった団体からぜひ意見を述べてほしいという要望が寄せられておりますので、つけ加えさせていただきます。  WTO農業交渉のよりどころとなるような法にすべき。前文をつけ、食料主権の明記を。  市場原理のみに頼らず、生産者が再生可能な価格設定消費者に対する価格の安定に関する価格政策が必要。  自給率について、率のみを問題にすると食べ方のみに責任が転嫁されるおそれがあります。基礎的な食料については、生産目標を立てる等きめ細かな政策が必要である。  直接所得補償について、有機農業環境保全型農業対象にするように。  審議会について、審議会は内閣総理大臣のもとに置く独立した行政委員会として位置づけることを要望します。  以上です。  最後に一言。  今回は四十年ぶりにまとめられた総合的な農業政策です。農業を国の基幹産業として位置づけ、消費者の視点を重視し、食料安全性確保自給率向上目標に、生産者消費者が共同して日本農業発展に尽くしていくこと、それを内容にした本会議での決議をぜひお願いしたいと思います。  以上です。
  76. 野間赳

    委員長野間赳君) ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  なお、御発言は私の指名を待ってからお願いをいたします。また、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に願います。  それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  77. 中川義雄

    中川義雄君 自由民主党の中川義雄です。  大変忙しい中、公述人の皆さん、ありがとうございました。  最初に小林さんにお聞きしたいんですけれども、私の方に来ている資料によりますと、農民運動全国合会代表常任委員となっておりますが、この組織はどういう組織なのか、簡単にお教えいただきたいと思います。
  78. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 私たちの目標というのは、日本農業と農民経営の安定を目指す、農民経営の安定を通じて日本農業維持発展させたい、こういうことを目的とした全都道府県にある組織です。
  79. 中川義雄

    中川義雄君 この資料によりますと、小林さんもかつて農民をやっていたのか、今もやっているのか、これは農民の代表者の組織ですから、多分今も農民をやっているんだとしたら、どんなような経営をなされているのか、お知らせいただきたいと思います。
  80. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 私は長野県の佐久市、標高六百六十メートルのところで、水田一ヘクタールだけですけれども、今でもやっております。でき得る限りうちへ帰って田んぼの様子を見たり、一切の仕事を私はやっております。  私の組織は、代表者である私が農民として農作業をやるということ、私のうちに仕事に行くこと自身を位置づけてくれまして、有給休暇や旅費までついてやっていますけれども、やはり全国運動をやっていますから、全部は自分が思うようになりません。でも、この仕事を今やりたいなというときにはやりくりして、ほぼすべての仕事には帰っております。
  81. 中川義雄

    中川義雄君 私の出身は北海道でございまして、北海道の常識からいいますと、一ヘクタールの土地農業をして農業所得で生活を支えるというのは、私の常識からいうともう不可能だと思うんです。どんなに生産性の高いものをやっても、一ヘクタールで水田をやり、それで所得を得るというのは、生きるための所得を得るというのはもう不可能だと思うんですが、小林さんのところでは農外所得と農業所得の比率はどのくらいになっているんでしょうか。
  82. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 農業所得の方は赤字です。  やっぱり私も、子供が生協に勤めておりまして、土曜、日曜の百姓しかできませんし、後のことを考えると、皆さんからは過剰投資と言われるかもしれないけれども、例えばコンバインならグレンタンクを持っていますし、トラクターなら二十四馬力の中古を買いました。そういうのを一式持っています。ですから、償却を考えると赤字になりますが、ただ将来を考えると、今むだでも農業維持したいという点で投資しているわけです。だから、当然のことながら赤字です。  私は、今の状況というのは多くの農民が兼業するのは当然だろうと思っています。下手な規模拡大をするよりも勤めて、それから定年退職になったら農業という人が多いわけですけれども、それも一つの現実的なある意味では賢明な選択だろうと思っています。
  83. 中川義雄

    中川義雄君 将来に夢を持ちながら、兼業として農業を。主業なのか兼業なのかわかりません。農業が兼業でその他が主業なのかよくわかりませんが、将来に夢を持っている。しかし、私は、将来に夢を持つということであれば、もっと経営規模拡大しない限り、農業に対する、農業で生きていく、それを主業にするとしたら、それではなかなかできないのではないか、これは私の考え方でありまして、そう思います。  同じようなことで鎌谷さんにお聞きしたいと思うんですが、鎌谷さんからいただいた資料を見て私はびっくりしているんです、正直言って。四十一戸で、水田面積が二十七ヘクタールであります。  私の住んでいる北海道の十勝では畑作で既に一戸当たり三十ヘクタールをはるかに超しております、一戸でです。ですから、二十七ヘクタールの水田で、この地帯の農業所得を主力に考えるとしたら、これもまた気の遠くなるような話です。  そこで、実態をお聞きしたいんですけれども、この四十一戸の皆さん方は水田にどのくらいの所得を依存し、水田以外の農業所得にはどのぐらい依存し、農外所得にはどのぐらい依存しているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  84. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 水田は二十七ヘクタールですけれども、最盛期はこれの約倍あるいは三倍の原野があったわけです。これが果樹園になったり採草地になったり、それから竹やぶがあったり、そういうことで畜産あるいは果樹、そういう組み合わせで我々の先代、先祖は昭和三十年、四十年代頑張ってきたわけです。  選択的拡大ということで今日まで来ましたけれども、四十年代の終わりごろになりますと、いっとき貧乏しようと思えば鶏を飼えと。だんだん貧乏をしようと思えば牛を飼えというふうな、そういう標語が出てきまして、それでもなお頑張ってきておる連中で今日を迎えておるわけです。だけれども、結局は他産業に、農業を放棄して移る。ただし、農地は、水田だけは手放してはならぬと。これは昭和初期の大不況のとき、その前は大好景気がありまして、株を一万円持って、貯金を一万円持って金利で食べられると言っておった部落の有力者が十年して家が絶える、こういう経験がありまして、農地だけは持つべきだということが我々の村には広まっておるわけです。  何とかそういう点でやりましたから、今回も「煮えたらくわう」を決め込んで、前の基本法には飛びついたけれども、今度は煮えるまで待たなきゃいかぬぞというふうに言っておるわけです。
  85. 中川義雄

    中川義雄君 次に、山口さんにお聞きしたいと思います。  阿蘇百姓代表というおもしろい名前で、何となくお姿を見てもやっぱり百姓村の代表だ、何か農業農村に夢を持ちながら、そしてまたあしたに大きな楽しさみたいな希望を持って農業をやっている非常に明るい感じを持ちまして、本当にお顔を拝見しただけできょうは非常によかったと思っているわけです。  専業農家と聞いておりますが、大体どれぐらいの経営規模で、どうやってやっているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  86. 山口力男

    公述人(山口力男君) 私の経営概況というのは、水田が十五ヘクタールです。それと、繁殖牛というか子取りの牛が二十五頭です。それと、ちょっといろいろ思いがあるものですから、その牛を飼うための草地が三十ヘクタール。あと、うちに農業をやりたいということで東京あたりを中心に来る若者たちと一緒にやっておるものですから、その人たちの冬場の仕事ということでイチゴを七百坪ぐらいやっております。それが私の経営の概況です。
  87. 中川義雄

    中川義雄君 これもまた北海道と違った非常に南の端で、北海道ぐらいの規模を持ってやっていらっしゃるのはさすがだなという感じがしております。しかし、これだけのことをやるのは大変なことだと思います。  その中で、尋常農業小学校というものをやっているというふうに聞いておりますが、これはどんなことなんでしょうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  88. 山口力男

    公述人(山口力男君) 尋常農業小学校ということをやっております。  まず、基本的には農業での暮らしや農業がこれだけ苦戦する世の中というのは決して尋常ではないと。もう少しきちっと農業農業として位置づけができるようなそういう尋常な社会になってほしいという願いを込めて尋常農業小学校というのをつくっております。これは先ほど申し上げましたように、基本的には農業に関心があって、農村の暮らしに関心はあってもなかなか機会がつくれない、ないという人向けにどうぞ来てくださいと。たとえ一時間でも一日でも一年でも構いません、うちへ来ればそういう機会をつくりますというのを旨としております。  尋常農業小学校には二コースありまして、そういう体験コースと、もう一つは本科生コースというのがあります。これは体験にとどまらず本格的に農業をやりたい、でも自分の周辺にその条件がない、そういう若者というか人たち向けにどうぞということでやっておる本科生コース。これは私と少なくとも一緒に同居しながらやるわけですから、多くても五人ぐらいで一年を単位として受け入れておりまして、今三人来ております。三人とも東京の方ですけれども、この人たち向けの本科生コース。  この二コースで尋常農業小学校というのをやっておりまして、だれかに頼まれたわけじゃないですけれども、私が村長で、校長というふうに名乗っております。選挙はありません。
  89. 中川義雄

    中川義雄君 山口さんは、先ほど農業基本法について、農民にとってこれから大丈夫なんだ、この基本法ができたからこれでいいんだ、そういうものであってほしいと。それに対して、これは非常に抽象的で具体性に乏しいという話だったんですけれども、これは基本法ですから非常に抽象的な部分が多いと思います。しかし、これから基本計画をつくって具体的な施策を展開するわけでありまして、我が自由民主党もそのために積極的にやっていきたいと思います。そのときはぜひ参考意見を聞かせていただきたいと思いますから、堂々と我が党へ来て、農民代表意見を陳述していただきたい、こう思っております。  それで、消費者代表で来られまして本当にいい話を聞かせていただいて、消費者代表の皆さん方がみずから日本の将来に対して、消費者立場から農業に対して本当に真剣に考えていただいている、私は感銘を持って聞いたわけです。  この基本法においても今後消費者が果たしていくべき役割を期待しているわけですが、消費者団体の責任者の一人として、この基本法に基づいて消費者としてこれだけはぜひ具体的に今度の基本計画その他をつくるときに一番大切にしてもらいたいのは何かということだけ、一言で結構ですから、お述べいただきたいと思います。
  90. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) 食品の安全性確保です。
  91. 和田洋子

    ○和田洋子君 きょうは、お忙しい中をありがとうございます。民主党・新緑風会の和田洋子でございます。  まず最初に、小林公述人にお尋ねをいたします。  どんなに科学技術が発達しても、農民の生産意欲がわかない政治のもとでは決して生産は上がらないでしょうというふうにおっしゃっております。そして、二十一世紀食料問題から見てもこの異常な食料自給率は極めて深刻で、これで国の自立が保てるでしょうかともおっしゃっております。この委員会でも、自給率を明示せよ、自給率は五〇%を割るなと、たくさんの質疑が出たわけですが、どの程度に思っていらっしゃいますか。
  92. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 自給率のパーセンテージですか。
  93. 和田洋子

    ○和田洋子君 はい。
  94. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 私は、そういうことはよくわかりませんけれども、ただ五〇%なんというものはその気になればそう遠くなくできるだろうと思います。  日本はモンスーン地帯です。ヨーロッパのような極端なことを言うと草しかできない、冷涼で雨の少ないところで草が一番適していてそこで牧畜が盛んになるというようなところの食生活とモンスーン地帯の食生活はおのずから違うと思います。何も全部外国のまねをしなくても、日本には日本食生活というふうに考えますと、例えばもう少しお魚を食べていいんじゃないか。それから、北海道では、やはりああいうところには麦をつくってほしいし、牧畜も十分盛んなところで酪農には本当に適していると思うんです。要するに、日本の風土に合ったような食生活にするだけでも大分違うだろうと。そういう意味では、私は、粉食がいけない、パン食がいけない、肉がいけないというのではないんですけれども、基本はやはり日本型食生活というものが大事だと思います。今のは消費の面です。  それから、生産の面でいいますと、少なくとも耕地の多くのところで一年に二回、三回とつくるところはないと思うんです。水田なども、私のところは長野の標高六百六十メートルですからちょっと無理ですけれども、上田あたりの標高が五百メートルぐらいになりますと、昔は水田の裏作に小麦をつくったものです。  ですから、私は、ほかのものに比べて価格保証があったために米に集中したということがありますから、何でも効率がよければいいというので早植えする、こんな小さな苗を早植えして、本当ならば六月の初めごろに田植えができればいいのに五月にするとか、それで小麦をつくらなくなる。つまり、土地利用率を、つくれるところでもうんと少なくした。  私も長野から全国を歩くようになってみてつくづく思ったんですけれども、北陸とか東北などは非常に湿原の多いのに驚きます。何でも区画整理を大きくすればいいんじゃなくて、乾田化もし、水田が多面的な機能を持てるように、つまり畑作にしたり、あるいは田んぼにしたりというような、そういう田畑輪換ができるようにすることも考えるとまだまだ相当やることがあるだろと。価格保証ももちろんですけれども、農業生産そのものから見てもまだまだやることはたくさんあるだろうと思います。  そういう意味で、食料自給率というものは、食生活を変えるというところまでなりますと時間がかかりますけれども、そういった生産そのものだけで見ても、私は国がやる気になればそれはそう難しい話ではないというふうに思います。
  95. 和田洋子

    ○和田洋子君 ありがとうございます。  時間が限られていますので、一問ずつお伺いをしたいと思います。    〔委員長退席、理事三浦一水君着席〕  次に、鎌谷公述人に中山間地域の直接支払いについてお尋ねをします。  条件不利地域等に修正すべきだというふうにおっしゃっております。条件不利というのは、中川委員は、鎌谷さんの地域だと二十七ヘクタール、北海道は一軒でも三十ヘクタールあるなんというふうにおっしゃっていました。でも、農林省の規模拡大に沿ってやった北海道の農業が一番苦労しています。規模拡大して借財を持って、そして基盤整備事業の償還金を持って米の価格低迷で本当に悩んでいる規模拡大農家のことも考えれば、中山間地域条件不利地域とするべきだというふうにおっしゃいましたが、条件不利というのは日本農業全部が条件不利だと思うんです。  そういう意味で、どういうふうにお考えでしょうか。
  96. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 中山間地域農業は、国が残すべきかつぶしてしまうべきか、ここに来ておると思うわけです。  ただ、我々のところは土地の大部分を占めておるわけですから、これをやめさせると水から何から大変なことが起きるんじゃなかろうか。これを保存するには、水路にしても相当な労力やそういうものが要るわけです。これをだれか一人に任せるにしても、やる者もないわけです。  だから、非常に兼業化が進んでおる中山間地帯は、本当に農業担い手が老齢化し、若い連中は農業なんて、農業収入はもう生活費のほんの一部ですから、さらに麦をつくろうとか何をつくろうかなんてとても問題外です。ですから、非常にここは難しいですね。  我々自身も残念なことは残念だけれども、さらに麦を復活するとか畜産を復活するとかといってもこれは容易ならざることですから、非常に大変な事態が来ております。これから成り行きで五年か十年すれば何とかなるだろうということではないです。  以上です。
  97. 和田洋子

    ○和田洋子君 山口力男公述人にお尋ねをします。  平成五年六月二日に国会参考人においでになって、今の我々に対して農業あるいは農村社会を担ってもらうというのは余りにも無理があるというふうにおっしゃっておられます。私もそうだと思います。今現在なおのことだというふうに思います。そういうこともありますけれども、安心して農業をやっていける条件環境を自分たちの力でかち取っていくというふうにおっしゃっておりますが、どういうことですか。
  98. 山口力男

    公述人(山口力男君) 平成五年でしたか、何をしゃべったかももう既に忘れてしまいました。しかし、その当時の思いと今の思いはほとんど変わっていないです。やっぱりまず個人があるわけで、私は農業が好きですし、農業をそんなに悲観的にもとらえていないんです。ですから、そういう意味合いでは農業の持っておる可能性も含めてまだ信じたいというのがあります。  しかし、そういう個人の思いをあたかもそいでしまうような、芽を摘んでしまうような中央の政策であったり流れであっては困るという思いも一方ではあります。それと、最終的にはどう生きていくのかということも含めて極めて個人的な問題にたどり着いていってしまうと思いますから、私はなりわいとしてこれでいくということで多分その当時申し上げたというふうに思います。  そういう考え方を持っておるものですから、いきなり担い手とか後継者とか当時は言われまして、あたかも日本農業とか熊本の農業を担わなきゃならぬような言い方をされるとそれは困ります、そんなものを担うつもりはありませんと。私は熊本の農業日本農業を担えるほどの力もない。そうじゃなくて、自分がやりたくて自分がそう信じているから農業をなりわいとしてここでこうやっていく、そういう思いで多分申し上げたと思うし、いまだにそれは変わらないと思います。  ですから、先ほど申し上げましたが、今度の基本法一つのきっかけとして、その表現が抽象的であればそれはそれでよかろう、そのかわりその表現をどう解釈して、それにどう色づけするのかはおのれ自身だろうから、そういう形で解釈させてもらいますよということを申し上げました。そういう基本的なスタンスはいまだに変わりません。  つまらぬことを申し上げますけれども、規模拡大して大きな経営をすれば、その分だけこの国では借金がふえます。でも、やっぱりこれを何とかして返してきちっと見通しを立てたいということで踏ん張ってはおります。  先生に五年にしゃべったことをいきなりぽっと言われて今戸惑ってしまいまして、しっかり覚えておかなきゃいけなかったんですけれども、忘れておりました。済みません。
  99. 和田洋子

    ○和田洋子君 お祭りのことをおっしゃいました。私が子供のころ、大体、農業というのは耕すことであり、文化は耕すことであるというふうに習った記憶があります。そして、祭りというのは政、政治だというふうにも習いました。どうぞ頑張って農業をやっていただきたいと思います。  次に、日和佐信子さんにお尋ねをいたします。  何かちょっと書かれたことを抽出するので申しわけありませんが、日本農業への全面的な信頼と強化は残念ながら形成されていない、消費者の皆さんからは農業の予算は不明確だというふうにいろいろ書かれていると思います。とても残念なことだというふうに思います。  早くに都会というか消費者の皆さんと農業をしておられる皆さんとの交流を図りながら、教育の面とかそういう面で頑張って御理解を得ていかなければいけないなという思いもあります。そして、私は農業者ではないんですが、出身は会津ですので農業者の立場をよく存じております。  農業は、食料も供給するし、水も空気も全部川下に送っている、そして人材までも。高校までちゃんと卒業させて、仕送りをして大学に行かせた子供たちが結局、都会で就職をして税金を納めているんだと。そういうことからすれば、私たち川上というのは結局、川下のためのあれなんですが、本当は川上の生活をしっかりしていかなければいけないという思いもありますので、消費者の皆さんも農業者の気持ちをわかってほしいなという思いが一つ。  あともう一つ、本会議決議をぜひということでエールを送っていただいたんですが、どんなことを本会議でやっていったらいいか。その二点、お尋ねをいたします。
  100. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) 最初の件でございますが、多分、私が農業予算を見直せというふうに何かに書いたことをおっしゃられたのだと思っております。  私自身は農業者ではありません、農家の出身ではありませんけれども、現在、中山間地域、特に畜産の地域が非常に厳しい状況に置かれています。そこをどうやったら活性化させていくことができるだろうかというような委員会に所属しておりまして、全国各地の中山間地域、主に畜産地域ですけれども、見て回っておりまして、そこでの感想も一つ申し上げたいと思っております。  現在の農業予算のあり方、いわば箱物に対して非常に予算が潤沢に出ているという状況がありまして、ある地域では何十億とかけた建物がたくさんあるんですけれども、人がいない、そういう状況がありました。  それから、今はやりということになりますと、いわゆる車でのキャンピングの施設、それが本当にどこに行っても同じようにつくられている。それはもうちょっと工夫が必要なのではないか。あるところではそれが必要かもしれないけれども、あるところではもうちょっと違った施設が必要なのではないか。それがもうキャンピングがはやれば画一的に施設をつくるというようなことが見受けられまして、やはりその地域その地域に合った農業予算の使い方があると思います。  それともう一つ感じていることは、やっぱり人だというふうに思うんです。ハードには予算が出ますけれども、ソフトにはなかなか予算が出ないという現実がありまして、どうやって人を育てるか、そこにも予算を十分にかけてほしいなと思います。  それともう一つは、そういう非常に困難な地域であるにもかかわらず、非常に頑張って活性化させて、みんなが前向きに明るく、自分たちでどういう地域をつくっていけばいいのかということで非常に工夫していらっしゃる地域もたくさんあるわけです。山口さんのような方もたくさんいらっしゃるわけです。そういうところと画一的なところとを比較しますと、やはり人だなという感じがいたしますので、ぜひソフト面に対して農業予算を転換してほしいという意味合いでございます。  本会議での決議の内容なのですが、先ほども申し上げましたけれども、農業を国の基幹産業ということで定めて、そして消費者農業者が協力して農業発展させていくということで、元気が出るような決議をぜひお願いしたいと思います。
  101. 和田洋子

    ○和田洋子君 ありがとうございました。
  102. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 本日は、公述人の皆様、貴重な御意見もいただき、また現場で苦労されているお話も貴重な御意見としてお伺いをいたしました。  先ほど中山間地域の問題を鎌谷公述人に和田議員からお聞きになっておりました。私も、中山間地域に対する直接支払いの問題、これから政府検討してやっていくことになるんですけれども、今、政府基本的考えの一番基準に置きたいのは傾斜率ということで、これだけとは言っておりませんが、でもこれを基本としながらやっていきたいというような考えを政府としては持っているようでございます、傾斜率ということで。鎌谷公述人はその点を条件不利地域までとおっしゃった。  では、政府が言っているこの傾斜率ではかろう、これが基準だというのと、現場から見ればそうじゃないんだと。こういうことも考慮しなくちゃいけない、こういうことも考慮しなくちゃいけないんだという御意見をきっとお持ちなんだろうと思うので、直接支払いの基準の問題についてどんなことを現場の人間としてお考えなのか、その点を教えていただきたいと思います。
  103. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 中山間地域農業生産を取り戻すというのは非常に困難な状態でございます。そういってほうけるわけにもいきませんから、直接支払いということが議題になってきております。ただし、お金を出していただく、だからやれ、これだけではもう僕は、もらうものはもらい、ありがとうございましたとも言うし、要らぬわいと言う者もおらぬでしょうけれども、これだけでは何かいけないというふうに思います。  最近、スイス山岳地帯からふもとを、ドイツ、フランス、スイスを見てきたわけです。韓国で身土不二という思想運動国民的に展開されておりますが、ヨーロッパに行ってスイスの農民連盟からポスターをいただいて、ここに持っておりますけれども、ヨーロッパの農業も国土は人間の体だという国民運動が戦後五十年間にわたって展開されておるわけです。そして、農民自身が非常に誇りを持っておるわけです。ですから、第一に安全な食料生産する義務がある、第二に地方自治に参加する義務がある。義務ですよ、権利じゃない。そういう自主運動がヨーロッパの山岳地帯の農業の中で展開されておりまして、何かその点これはしまったなというふうな、もうちょっと早く来てみればよかったなと。そういう前提がないと、何かお金を与えるから元気出せと、農民というのはそんな経済的なものじゃない。  かつて、我々の農業を支えておる支柱は子供のときから教えられた二宮尊徳であり、農は国の基なりというものが支えになったけれども、今はないです。農はどちらかというと厄介者みたいに言われる。そういう点を政府もこれからの新基本法で展開していただきたい。お金はやるから元気出せやというふうなことでないようにしていただきたいというふうに思っております。    〔理事三浦一水君退席、委員長着席〕
  104. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 おっしゃるとおりの部分、共感する部分は随分あるのであって、結局この中山間というのをどう位置づけるかという問題なんだろうと思うんです。結局そこがきちんと機能していなければ、例えば先ほども川上、川下の議論がありましたけれども、健全な中山間が維持されなければ国土としても機能しないものになり、そこを担っていただいている農業もである。ただ、ここで一体何をすればいいのかということが、結局、減反政策、いろんな問題で変化していく中で持つものがなくなってきたというような環境にあるわけです。  その一環として、直接支払いという問題はやっぱり国土をどう機能させるかという問題の中で出てきた話であって、ただ単に直接支払いだけの問題じゃなくて、そこで今後何を続けられるのかという問題で、これはなかなか簡単に言える話でもないような気がする。それならば、逆に言うと現場の方々にそういったものをどう、それは直接支払いだけじゃ誇りが持てないのは当たり前の話であって、そこで何をどうするのかという議論はこれからもっともっと詰めなくちゃいけない話だろうと、こう思っておるんです。  それはそれとして、次は山口さんにお聞きします。  先ほどおっしゃいましたが、日本農業を私一人で担う、熊本を担う、そう言われてもたまらぬと。ただ、一つ山口さんがおっしゃりたかった部分で、これからの一番の問題だろうと思う担う人たちの問題でございます。  なかなか一つの方法が見つからないからこそ山口さんとして、さっき言われた尋常農業小学校ですか、そういったものもみずから試みとしておやりになって、実際にそれをやってみた結果、何人かの人がそうやって来るという状況はわかった。  では、その経験を踏まえた上で、一体これから本当に日本農業を担う若い人たちをどうすれば引き寄せることができるのか。もちろん、地域地域ごとの政策をやっていく、地域ごとに皆さんが努力することも大事です。その一方で、日本全体として何をこれからやっていけばこういう担い手を少しでも確保していける方向になるのか。例えば、農業高校の問題も随分論議されて久しく、まだ結論も出ていないと私は思っております。  その意味で、担い手について、御自分の体験から、もちろん山口さん個人が努力されていることは大いに評価しますが、その一方で、これをどう全体に広げることができ得るのか。こういう点について、政府としてやれる点、それから農業者として努力できる点、その辺を含めて御意見を伺えればありがたいと思います。
  105. 山口力男

    公述人(山口力男君) これはあくまでも私の考え方ですけれども、最近は担い手という言葉に変わりましたが、その前には後継者という言葉がありました。ところが、非常にこれは斜めに物を見るような表現になりますけれども、後継者という言葉から連想するものは伝統芸能の世界です、極めて特殊なものを特殊な人たちの手によって細々と維持していくという。農業は果たしてそういうような表現、とらえ方でいいのかというのがずっとありました。  ですから、そういう意味合いでは、農業の後継者というか担い手を議論するときに、あくまでも世襲に固執するような形で受け継いでいくということのみで議論していったら可能性というのは少ないのではなかろうか。そうじゃなくて、若い人たちが学業を終えて職業を選択するときに、選択肢の中に農業が並び得ているかどうかということからきちっと検証していく必要があるんじゃなかろうかというのがまずありました。  ですから、そういう意味合いでは、農業がやりたい、農業をやってみたい、あるいは村の暮らしを営んでみたいという若者がいるのならば、それをきちっと選択できるような条件、状況というのをどこかでつくっていくべきじゃなかろうか。それは、例えば広い意味合いでは教育的な側面もあるでしょうし、あるいは社会の持っておる雰囲気あるいは価値観を含めてみんなが少しずつそういう転換をせにゃならぬかもしれませんけれども、基本的には学業を終えた若者たちが選択しようとするときに選択肢の中に農業という分野がきちっとまずは成立し得る、なり得るような条件というのをつくっていくべきだろうというのがあったものですから、とりあえず自分でできるという意味合いではさっき言った尋常農業小学校という形で、農業をやりたいという希望を持つ人がおればどうぞという形で全部受け入れております。  この間、六年ぐらいやっておりますけれども、十人ぐらいの方が見えられました。首尾よくみんな農民というんですか、経営者として独立、自立された方ばかりではないんです。それはその中の三人ぐらいの方で、残りの方はまたもとに戻ったり、あるいは路線変更されたりということもありました。  ですから、私が唱えているほど事は順調にはいっておりません。その中にはいろんな問題がありまして、いわゆる村社会であったりだとか、あるいは都会の中でしみついた感覚として権利は主張するけれども、いわゆる村の慣習とか慣行を含めて義務は負わないとかいうことが結局、旧来の村の人たちとのあつれきになったりとか、いろんな問題があります。しかし、私は今後も続けていく価値はあると思います。  今たどり着いた結論として、これはもう繰り返しになりますけれども、あくまでも世襲世襲ということで固執せずに、基本的にやりたい人がやれるような感じで、そして一定の厳しい条件つきでも私はいいと思うんです。私は、やっぱり村は守るべきと思いますから、郷に入れば郷に従えじゃないですけれども、もし村で暮らすのならば、農業をやりたいというのならば、こういうことをきちっと踏まえて、あるいは守るということの条件つきでもいいですから、村社会側もそういう新村人も迎えるような意識の変革あたりも含めて少しずつ整えていくべきかなと。そういうところから後継者問題というんですか、担い手論議というのは進めていくべきじゃなかろうか、そういう気持ちがしております。
  106. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。  本当に、後継者というより担い手という問題は非常に大事な問題です。私どもも地元でやはり高齢化の問題、次を継がない問題、それは農業に希望があるかないかというような問題も含めて問題を抱えながらやっておりますし、その意味では非常に参考になる御意見をいただいたと思います。  最後に、日和佐公述人に簡単に二点ぐらい聞かせていただきたいと思います。  一つは、遺伝子組みかえ食品の問題が先ほどお話の中にございました。これは結論的に言うと、やっぱり消費者団体としてはこれをきちんと表示すべきだという考え方に立っていらっしゃるのかどうか、それを確認しておきたいのが一点です。  それともう一つは、消費者教育という問題で御苦労されて、これまでそういう有機農業の問題でそういう理解を得てきたというお話もいただきました。ただ、その一方で、消費者はいまだに見ばえのいいものを求めるという傾向は変わっていないのであって、その中で農業者がどれだけ苦しみながらこれをやっているかという問題もある。この辺の問題も含めて今後大事になってくるのは、もしおっしゃるようなものが実現するためには、これはもちろん国でやるべき問題なのかどうかわかりませんが、とにかく消費者教育という問題が必要不可欠だと思うんですけれども、そのことも含めてお話をいただければと思います。
  107. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) DNA組みかえ食品については表示をすべきだという見解です。  消費者教育についてなんですが、確かに現実にそういう事実がございます。ですけれども、それは本当に鶏か卵かという議論になってくるわけでして、そこで非常に重要なのは流通業、食品産業役割ではないか。食品産業が今までやってきたさまざまな売り方、そのこともかなり消費者の嗜好に対して影響を与えているというふうに思っております。  ですけれども、ただ他者を責めていても仕方がないわけでして、やはり消費者の方にも農産物というのはこういうものだというような情報をきちんと流していく。それは消費者教育というほど大げさなものではなく、そういう情報をきちんと流していくということが非常に重要になってくると思っています。  それで、農業政策の中に消費者がきちんと位置づけられて参加をしていくということで、そのことの理解も広がっていくのではないかと考えています。
  108. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ありがとうございました。
  109. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 公述人の皆さん、御苦労さまです。日本共産党の大沢辰美でございます。よろしくお願いします。  最初に、日和佐さんにお聞きしたいんですけれども、日本農業新聞にお書きになったのを読ませていただいて、その中で消費者から見た新農基法案ということで指摘をされています。その中に、食品の安全性確保食料自給率向上を図ることを基本法理念として明示すべきだと意見を述べられていますが、私ももちろん同感です。  今日、残留農薬基準や輸入食品の検疫体制の緩和がやられていますし、また国際基準に合わせて食の安全を脅かす規制緩和も行われてきています。遺伝子組みかえの食品の表示の確立も、輸出国や開発企業に押されて遅々として進んでいません。  基本問題調査会答申では、国内政策の立案に当たって国際規律との整合性に留意するとしていますけれども、そのようなやり方では私は食品の安全性確保はできないのではないかと思うんですが、国民食料と健康を守る立場から、基本法制定に当たって食品安全の確保のためにどのような施策を考えていらっしゃるか、述べていただけたらと思います。
  110. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) 一つは、先ほども申し上げましたように、食品の安全にかかわっては複数の行政が関与しているという事実がありまして、なかなかそこの関係で安全行政が進展しづらいという面があります。  例えて申し上げますと、農薬に関して、農薬の登録については農薬取締法によって農水省が管轄をしておりますけれども、農薬の環境への影響については環境庁が管轄をしております。しかしながら、環境庁は科学的な専門家を抱えていないという状況がありまして、環境への影響評価に関してはそれを厚生省に依頼しているという状況があります。したがって、厚生省が環境への影響を評価し、それを環境庁にまた戻すという形になっております。もう一つ、食品への残留基準については厚生省が管轄をしているという、その三つの省庁がかかわっていて、そこが非常にうまく連携がとり切れていません。  農薬の登録は先に進行していきます。ということは、農薬は現実に使われることになるわけですね、農水省が許可をいたしますと。ところが、後追いで厚生省は農薬の残留基準を設定するという形になりますので、当初は残留基準値がないままに農薬が使用されるという状況が生まれるわけです。現在その差を埋めるべく作業が行われておりますけれども、使用が許可されております農薬すべてに残留基準が設置されていないという現状が現実にはございます。そういうことですので、それぞれの省庁の役割は明確にしながらも、総合的に各省庁が連携をとり合って効率的に安全性確保されるような施策をとれるように行政間の制度の整備が必要であろうというふうに思っております。  それから、コーデックスの国際基準に関してですが、これはコーデックス基準が既に決定されていながら日本ではそれがまだ導入されていないというケースがございまして、その意味合いでは、コーデックス基準に合わせるということで日本での基準策定を急いだという経過も現在のところあります。ですから、コーデックス基準が一方的に悪い、悪者だという評価はできないと私は思っております。  ただし、問題は、コーデックスの基準は欧米の食生活基本にしています。そういう意味合いで、アジアの食生活、アジアといっても非常にまちまちですけれども、いわゆるその国その国の食生活基本にした考え方にはなっていない。特にアジア、日本という意味合いではそういう問題がありまして、そのあたりの食生活の調査も現在進められてはいますけれども、自国の独自な食生活を反映した上での基準の作成ということを日本政府は強力にコーデックス委員会に申し込んでほしいと私どもは考えています。
  111. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 次に、担い手の問題について小林公述人にお聞きしたいと思います。  基本法案では、現行基本法と異なって、農業生産担い手について効率的、安定的な農業経営の育成、法人化推進がやられようとしています。家族農業経営発展を明記している現行基本法からは大きく後退していることを私は危惧しています。また、価格保証の廃止に伴う経営安定対策も育成すべき担い手に限定されようとしています。これでは大多数の農家農政対象から外されて、家族農業は衰退するのではないかと非常に心配しています。この点で地域農業を考えたとき、その影響をどう考えられますか、御意見をお聞かせください。
  112. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 法人化の問題ですね。
  113. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 担い手の問題です。
  114. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 担い手のことで言いますと、実際に今認定農家として十三万人もいるというような見解も出されたようですけれども、三百万農家のうち十二万六千ぐらい、これはわずか四%そこそこだと思います。ことしの二月に発表された農水省統計情報部の資料によりますと、今まで認定された農家はわずか四%しかありませんけれども、その六〇%の人、つまり全体の二・四%ぐらいの人たちが残るぐらいで、あともう一度さらに続けて認定農家として後継者としてやっていくか、再申請をするかといったら、しないというのが稲作で六三%を超えているわけですし、地域的に見れば、あの規模の大きい北海道だって六五%にすぎないという点で見ると、私は、今の後継者問題は規模拡大すればいいとかということだけでは簡単にいかない問題があるだろうと思います。  家族経営がだめだから株式会社だというようなお話がありますが、私は株式会社の前に、よく家族経営法人化の問題が対立させられて考えられますけれども、今ある法人化というのは農事組合法人のようなもので、大部分が家族労働を主とした経営、家族経営を補完する形で作用していると思うんです。だから、余り家族経営法人の問題を対立させるのは適当ではないと思うんです。  ただ、株式会社というのはそういう農事組合法人に出資という形で入って、それでだんだんこれに取り組んでいくというようなことで、資金がつぎ込まれたときに、もし株式会社の言うことを聞かなければ引き揚げるとなったら、やっぱり支配されるという点では株式会社の問題というのは非常に大きな問題を残すであろう、農地までいずれはとられていくだろうというふうに思います。  特に、今いろんな植物を栽培して新しいエネルギーや素材を開発するというようなことが世界で行われているようですけれども、そういうことも含めて、あるいは農業というものはもうからないから株式会社なんかが手を出すわけはないというような議論もありますけれども、それは今の考えであって、本当にみんな農業がこれほどもうからないからやめだというふうに投げ出したときに、しかも二十一世紀食料の時代だというときに、なるほど食品関係の企業の方で百兆円市場だなんて言っているわけですから、そういうところで、今の考えでもうからない農業に企業が参加、参入するわけないというふうには決められないだろう。  その意味では、食料戦略の問題なんかでも二十年、三十年というスタンスで、アメリカにせよ、日本の財界の方にしてもそういう見方で来ていますから、私は余り短期的に株式会社農業に参入するわけがないというふうなことは言えないんじゃないかというふうに思っています。
  115. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 もう一点お聞きしたいんですけれども、価格支持についてです。  今、小林さんは価格支持の廃止について陳述されましたけれども、一昨年から米の価格暴落のもとで大規模農家が大変な状態になっているということを指摘されています。私の調査でも、大規模である人ほど大変な状態になっているという統計上の数字も出てまいりました。これは、今までの新農政からの市場原理に任せた結果だと私も思うんですけれども、これで育成すべき農家担い手が育つとは思えません。  そういう中で、生産者の現状も踏まえて、この問題について、価格支持が廃止になった件についての御意見も含めてお聞きしたいと思います。
  116. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 価格保証のことは私はさっきの公述で全体的に申し上げたつもりです。今の御質問、よくわかりかねますが、どういうことですか。
  117. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 価格支持が廃止された場合、本当に今でも大規模経営が大変なのに、一層大変なことになるのではないか。そういう点を生産者の現状を踏まえてもう一度お聞かせください。
  118. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 私は、ついこの間も北海道の人たちに全道的に集まってもらったときの会議に行ってきましたけれども、やはり膨大な負債を抱えているわけですね。規模拡大に伴って膨大な負債を抱えている、しかもてん菜の砂糖の関係、あるいはバレイショのでん粉の問題でも価格支持がなくなるし、麦なども全くなくなる。民間流通だから勝手にせいということになりますが、その意味では本当に大変だと言っていました。特に、大豆大豆なたね交付金が廃止されるようになるわけです。  そういう方向にありますが、大豆だの麦だのバレイショだのてん菜だの、そういうものは輪作の作物として非常に大事なもので、これらを欠かすと北海道の畑作農業というのはほとんど成り立たなくなると思うんです。そういう意味で、農業生産そのものがだめだし、そして今でも膨大な負債で苦しんでいる。  私の友人なんかも、もし死んだら何とかなるだろうということで、猛烈に高い生命保険を掛けております。農協の生命共済を掛けているんですが、何と月に三十五万円掛けているわけですよ。牛を飼うというのは非常に規模拡大した酪農家です。そういうことを考えると、非常に多くの人が規模拡大してもやっていけないというのが現状であろうと思います。  ですから、さっき申しましたように、北海道の中でも地域的に見ると農業経営改善計画の再申請、つまり認定農家をもう一度続けたいということで一度は申請したけれども、もう一度やるかというときに、北海道ですら六五%しか申請しない、あとの三五%の者はやらないと言っているわけです、先ほど申しました農水省の調査で。それくらいですから、今の価格保証がなくなったらそれは相当厳しい、恐らく全面的に崩壊せざるを得ないような厳しい状況であろうと思います。
  119. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 ありがとうございました。
  120. 谷本巍

    ○谷本巍君 初めに、鎌谷公述人にお伺いいたします。  先ほどのお話の中では、鳥取県の中山間地域は全農地の八三%を占めておるというお話があり、さらにはまた集落が崩壊的状況にあるというお話もありました。集落が崩壊状況になってしまいますと、対策のしようが僕はないだろうと思うんです。ですから、集落の立て直しの方法として、応急手当て、それからその先の政策等々についてお考えがあればお聞かせいただきたい、これが一つであります。  それからもう一つの問題は、不足農産物の生産問題で、きょうも午前中、公述人からいろんなお話がございました。つまり、大豆や小麦の生産を高めていくということであります。これは委員会でもこれまでずっとこの種の話があったんですが、肝心なのは、もう一つ大きい問題は飼料作物の問題なんです。これが自給率を決定的に低くしているわけですね。ですから、ここを上げていく上で、こういう方法があるではないかといったような御意見等々があればお話しいただきたい。
  121. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 今の私たちの住んでおる集落はやはり米をつくるという、この生産があるから実行組合とか集落は残っておるわけでして、これが今、水田の四〇%がもう耕作放棄寸前まで来ておるわけですから、これを何とかやめてもらったら、せめて二年ぐらいやめてもらったらまた息を吹き返すのではなかろうか、こういうふうに思います。やめるについてはいろいろ問題がありますが、それだけですね。  それから家畜ですが、かつては、平均八反に満たない水田ですけれども、それに付随する原野等がありまして、自給の牛で、全然外側から買わぬでも一匹は飼えて子取りができた。だから、牛一匹が田んぼ二反、三反の値打ちがあったわけです。ですから、豚、鶏はおりますが、それらの大家畜は農業の中でどう位置しておるのか、なくてもいいものか、なくてはならぬものかということが基本法の中に私はうたわれるべきだと思います。  それから、残念ながら今度、ふん尿処理法だか何だかが通過したそうですが、家畜のふん尿というのは、今後、自然保護、持続的農業の資源なんです。一番大事な資源なんですが、これが厄介者扱いされて、家畜農家の負担になって、それならやめるわと、こういうことが起きるのを今心配しております。  それから、自給率の低下の中で、相当な家畜用の穀物が輸入されておると思います、数量はわかりませんけれども。人間の場合は、米でも消費するのは古米はいけぬとか味がいいのがええとかやかましゅう言われて、なかなかこれは大変なんです。しかし、牛や鶏の場合は、においは敏感なんですけれども、色がどうだの味が悪いとかいいとかというようなことは言わぬわけですよ。だから、酪農とか肥育とか養豚とか鶏をどうして自給するかということを生産者や飼料会社や政府、行政が一生懸命に考えてやれば、僕は大分いいところまでいくと思います。  自給率を高めるというのは、人間が相手なら、古いものはいけぬ、それは色がどうだのぐだぐだ言いよる民主主義の世の中ですからなかなかですけれども、牛や鶏や豚は言いやしません。だから、そういう点でひとつやってください。
  122. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に、山口公述人に伺います。  時間がありませんので簡潔にお答えいただければと思います。  先にいただきました資料で、あなたが言っておられたことで忘れられないのは、土地は万民共有のものだと言っておられることであります。そしてまた、入会権が阿蘇の大景観を守ってきたというふうにおっしゃっておられます。  コモンズ的規模拡大というのが日本農業が生き延びていく先というのは私はもう見えてきたような気がいたしますが、それだけに最近、コモンズ的発想、こうした発想による地域農業づくりが大事になってきたという意見もかなり今出てきているところでありますが、それらの点についてどうお考えでしょうか。
  123. 山口力男

    公述人(山口力男君) 先生のおっしゃるとおりで、全くそのとおりだと私は思ったものですからそういうふうに言っておると思います。  私のところは、町全体で三千五百ヘクタールの水田とそれの三倍ぐらいの草地がありまして、これは入会権という権利で守られてきました。私は、今後も継続してこの入会権というのは残すべきであるというのと、それと個人的な考え方として、例えばその農地はだれのものかという議論を、今思い出しましたけれども、十年ぐらい前に全国の司法書士さんたちの集まりの中で私は発言した記憶があります。  少なくとも私どもにとって農地というのは、いわゆる農業をやるために不可欠な条件として、これはだれのものかれのものという次元をもはるかに超えたところのもっと大事なものだという認識を持っておる。そういう意味合いでは、善管注意義務でもってこれをきちっと管理する義務が我々にはあるんだというような意味で、農地をだれのものかれのものというのは余り議論としてはいい議論ではないと。農地は、資産とか財産よりも、それをもっと超えた農業をやる者にとっては命みたいなものだと、そういう意味合いで申し上げたと思っております。
  124. 谷本巍

    ○谷本巍君 ありがとうございました。  次に、日和佐公述人にお伺いいたします。  消団連の要請文書を拝見いたしますと、政策決定過程への参加を消費者の権利として保障すべきだという問題提起がございます。  環境問題なんかについては、これはもう行政側と市民団体が一体的にやるという状況になってきております。私も、これからの食料問題については同じような状況になっていかなきゃならないし、すべきだろうと思っておりますが、ここで言われているところの政策決定への参加というのは具体的に言いますとどういう点を指してのことでございましょうか。
  125. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) 消費者役割というのが明記されております。消費者役割があることを否定するものではありませんで、積極的に役割はあると思っております。ただし、この農業基本法の中では役割だけが書かれているわけです。役割を果たす上ではやはり権利も必要であるというのが私どもの主張でありまして、食料というのは十分な量と十分な質、良質な食料、それを十分に得るということは消費者としての基本的な人権であると考えております。  したがって、政策決定の場、審議会、それからあらゆる委員会、研究会、検討会がございますが、そういう場に積極的に消費者の参画を位置づけて、政策決定過程においてきちんと消費者の声を反映できるようにするべきであるというのが私どもの主張です。
  126. 谷本巍

    ○谷本巍君 ありがとうございました。  最後になりましたが、小林公述人に伺います。  先ほど、あなたは大きい声で日本には日本食生活がある、こうおっしゃいました。まさしくそのとおりであります。今度の新しい基本法案では、政府が指針をつくっていくということを言っております。これを基本にしていろいろな行政展開を工夫していくということだろうと思うんですが、私はこれだけでは食べ方は変わらぬと思います。といいますのは、学校給食に始まり、食と農の乖離の関係というのがつくられてしまっておるわけでありますから、これをどう回復するかといったような具体的な問題等々があるからであります。  そうした点等も含めて、食べ方を変えるということについての運動上、政策上の問題点等について考え方があればひとつお聞かせいただきたいのです。
  127. 小林節夫

    公述人(小林節夫君) 日本型の食生活という点からいえば、給食にもっとお米の回数をふやすということ、これは栄養士さんたちに聞いても非常に御飯のときには喜ばれるという話を聞きます。私は、やはりその意味では国が継続すべきだと思います。  それから、お米はもちろんですけれども、特に地域の産物ですね、野菜も畜産物も、そういう地域のものをつくってもらうというのは非常に大事なことだろうと思います。それは味覚や日本型食生活を進める上でも大事ですし、それから地方でもってその地域でとれたものがその地域の学校に上がるというようなときに、例えばきょうはだれそれさんのおじいちゃんがつくったお芋が煮物に出ていますよというような話があると、何か非常に地域農業についての関心が高まるんだそうです。そういう話も聞きますので、やはり学校給食というものは味覚をつくる上で非常に大事です。  それから、私はパン食は何でも全部反対だと言っているわけではないんです。例えば、北海道に小清水というところがありまして、網走のちょっと北の方だと思いますけれども、そこの農家の人たちが言うのに、あそこにはパン屋さんがいて、日本の小麦はパンに適さないと言うけれどもそんなことはない、どんな小麦でもその地域に合ったやり方があるので、あそこではいろんな国産小麦をつくって、そして学校給食にも提供しているそうです。  ですから、その点では地域振興にもなるし、全国にそういう点を普及する運動上も非常に大事だし、現にそういう実際にやっていることを見れば、もっと多くのところでやってもいいんじゃないかというふうに思っています。それはまた食文化の問題にもなるだろうと思っています。  以上です。
  128. 谷本巍

    ○谷本巍君 ありがとうございました。
  129. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  まず最初に、山口公述人に質問をいたします。  猫の目農政というお言葉を使われて、私も久しぶりに聞いたなという感じを持ちました。四十年代によく農政の曲がり角とか猫の目農政とかということで、我々も若いころ盛んに言っていたわけでありますが、もう既にそれさえも免疫化されてしまったんでしょうか、最近はそういう言葉は聞かなくなってしまったわけであります。農政に対する期待というものがそれほどなくなってしまってきたことのあらわれなのかと思わざるを得ないわけであります。  そんな中で、先ほどの話の中で、地域が独自で色合いを出せるような政策というものをつくれればつくっていい、そういうふうに今回の農業基本法というものをとらえていいものならば、それぞれの地域で色合いをつけて新しい農政というものを展開していけるんだがというようなお話がありました。  私が新しい基本法が予定されておる中で非常に期待をいたしておるところは、現行農業基本法は国の方針に地方公共団体が準じている、こういうことになっておりますが、今回の新しい農業基本法の中には、国と地方公共団体が相協力して、そして責任を持ってやっていくというようなことが記されておるわけでありまして、これに私は大変期待を持っております。今まで全国画一的な農政というものが行われてきた、そこにこういういろんな問題等も出て、各地域そのものが個性といいますか特性を出し切れずに全国画一的な農政のもとでの今日の農業事情にあるのではないか。  そこで、今、山口公述人がおっしゃいましたが、地方がそれぞれの特性を生かして、いわゆる適地適産を第一にとらえながら、この地域はこれで伸ばしていこう、そこにはみんなの意見を取り入れて取り組んでいく。それは、先ほどのお話の中で地域がそれぞれ色合いを出してやっていくことを期待するような話であったわけであります。そういう各県なり地方公共団体が主体的に自分たちの農業というものはこういうふうにしてやっていくんだということが前提で、国がそれを支援、誘導していくということがまず私は大事だろうと思うんですが、山口公述人もそのようなお考えなのかどうか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  130. 山口力男

    公述人(山口力男君) 大変生意気な言い方をいたしますけれども、三十六年の基本法の中で大きく欠落しておったのはその点だと思います。非常に恐縮ですけれども、霞が関でつくった一本の物差しで沖縄の米つくりもあるいは北海道の米つくりも一律にはかるということは、どだい私は無理があるというふうに思っておりました。  本来、農業政策というのはその地域地域条件を加味しながらきめ細やかにとられるべきという、理想論かもしれませんけれども、そうあるべきものだというふうに思っているんです。私の町内ですら端と端では、同じ米つくりであっても粘土質と火山灰の土壌ではおのずからつくり方が違うんです。そのぐらい非常にきめ細やかな配慮の必要な分野が私は農業だと思っておりますから、それを画一的に一律に一本の物差しではかり続けてきた、そういう部分を私はやっぱりおかしいと思い続けておりました。  新しい基本法の中では、私は今、先生がおっしゃったような、地方公共団体という表現になっておりますけれども、そういう表現というのは、従来の画一的な農政のあり方ではなくて、北海道には北海道の、沖縄には沖縄の、そういう諸条件を含めて、それを十二分に踏まえながらの農業政策をこれから展開していくんだという解釈をしたかったんです。  ですから、例えば私みたいに十ヘクタールとか二十ヘクタールの規模拡大の可能な場所もあります。しかし、やりたくてもそういうことができない中山間地域と言われるような地域もあるんです。私は、両方に農業というのは要る、そういう物差しをきちっと当てはめていくべきだというふうに思っております。今度の基本法では、我々が長い間何かかゆいところに手が届かないもどかしさを覚えながら見守り続けた、そういう部分が改善された形で今度は展開していくんだというふうに期待を大きく持っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  131. 阿曽田清

    阿曽田清君 次に、日和佐公述人にお尋ねいたします。  消費者方々生産者の方と共生していくといいますか、いわゆる連携していくというのが今まで非常になかったと思うんです。今までは市場側から、消費者のニーズだということで、こういうものをつくらないと高く売れませんよということで、いろいろと産地にはそういう情報が流れてきました。例えば、きれいで糖度もあってとか、おいしくて、そして毎日決まった量をきちんと市場に出してくれないと高く売れませんよということで、産地はそれにこたえようとして一生懸命やってきた。化学肥料を使って均質なものをつくり、農薬を使って虫の食わないようなきれいなものをつくる、そういうことに精いっぱい心がけてきたのが今までの産地だったんです。  ところが、最近はそうじゃなくて、おっしゃったように、安全性がきちんと確保されておる、担保されておる農産物、それを一番我々は求めているんだと。色もあるいは形もそうでなくてもいいけれども、皆さん方が責任を持ってこれなら心配も何も要りませんというようなものを消費者側が評価して、きちんと高い値段で買っていただけることが見えてくれば、産地はそういうことへの動きが展開できると思うんです。  そういう意味では、消費者からのメッセージ、真のメッセージ、それにまた市場がこたえてくれる、消費者がこたえてくれるというところが今まで欠けていたと思うんですが、そういう点での消費者団体一つの御努力といいますか、今後も御活躍をいただきたいと思うんですけれども、いかがなものでしょうか。
  132. 日和佐信子

    公述人日和佐信子君) おっしゃるとおりだと思っております。ですから、今後は、その中間を取り持っている流通産業、いわゆる食品産業役割も非常に大きなものになってくるのではないかというふうに考えておりまして、ぜひ食品産業方々にもそのことをきちんと心得て政策を遂行してほしいな、そのように思っております。  一方では、消費者生産者との交流というものも全くないわけではありませんで、むしろそれは近年非常に活発に取り組まれてきていると思っています。それは、単に産直というような活動だけではなくて、それにプラスしてエコライフあるいはグリーンツーリズム、グリーンライフといろいろな言い方がありますけれども、農村体験というような形での交流というのも始まってきておりまして、それは非常に進展してきていると思っています。  そのようなことから、消費者農業を実際に体で体験して考える、農業者は消費者意見考え方を、そこでお互いに意見交流をするということが非常に大事なこととして広がってきているというふうに思っております。  私ども消費者団体といたしましては、消費者側に対して農業の現実、それと何が問題であるのか、消費者は何を課題としなければいけないのかという情報をきちんと流さなければいけないというふうに思っております。どれだけの力があるかはわかりませんけれども、生産者との交流、生産者に対する消費者側からの情報の提供についてルートを探しながら、そういうこともやっていかなければならない今後の私どもの課題であるというふうに思っております。
  133. 阿曽田清

    阿曽田清君 鎌谷公述人と小林公述人に、時間がありませんので簡単に質問させていただきます。  昔は、自分の家で牛を一頭、そして子取りもやっていたというようなことで、それはえさを全部賄っていた、ところがもうそれがなくなってしまっているというようなお話でありました。  私は、この農水委員会でよく言っているんですけれども、飼料米という米を、人間が食う米じゃなくて畜産用のえさ米を研究開発し、それを減反に当てはめてやったら、水田に水を張ってともに水田が生かされるんじゃないかということで主張をいたしてきているんです。  この私の一つの思いは、オーストラリアに行ったときに、いつしか知らない間に牛も小麦を食っていたと。それは非常に自然体で、今まで人が食っているのが小麦だと思っていたのが、知らない間に牛まで食っていることも自然の姿になってしまっていた。  オランダに行きましたときに、オランダの農林水産省のある方がおっしゃっていたんですけれども、オランダではオランダの飼料、牧草を食べて乳量あるいは増体量がふえる牛を逆に開発しているんだと。自国でとれるものを食べて、それで乳量もふえるし、また増体量がふえていくような牛そのものを改良している、こういうような話があって、なるほどなと思ったんです。  そういう飼料米という形で、減反に対して畜産用のお米をつくるというようなこと等に対する御見解をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  134. 野間赳

    委員長野間赳君) 時間がございませんので、鎌谷公述人、小林公述人、順次お願いをいたします。
  135. 鎌谷広治

    公述人(鎌谷広治君) 簡単に申し上げます。  飼料米について、これは結構なことで、我々も減反が始まりましたときから全国的に取り上げて、実験田も持っているわけです。ただ、水田での作業体系が組み立てられぬのが一つ難点。それから、米は人間の食べるものという固定観念が農家の中にあります。それからもう一つは、米はもみ殻をかぶっておりますから、もみ殻をそのままやるとどうなるかという実験もまだしていないわけです。だけれども、もみ殻のまま、あるいはもみ殻が一割や二割入っておっても、しょせん繊維ですから、金属じゃないですから。今、肥育では発酵飼料でやっておりますし、発酵剤を使ってもみ殻のまま飼料化する、そういう技術に本格的に農林省が取り組んでいただいて、そして全国に普及させるとすれば水田が一番だと、連作障害はないし。ほかの飼料作物は連作障害が出るわけです。非常に結構なことですからぜひともお願いします。
  136. 阿曽田清

    阿曽田清君 結構です。
  137. 野間赳

    委員長野間赳君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  これをもって公聴会を散会いたします。    午後三時二十七分散会